
9万8,000円 / 33.27平米
山手線「目黒」駅 徒歩10分
高台を駆け抜けていく爽やかな風を、存分に楽しめる部屋。おまけにゆったりめのバルコニーまで付いてきます。
マンションが立つのは、目黒と恵比寿の中間くらいの目黒区三田。ゆったりとした街並みにどこか品のいい空気が流れる、個人的に大好きな街です。
部屋は全体的にリフォームされ、古いな ... 続き>>>.
圧倒的に不動産情報が多いですが。。。。
建物の老朽化、空き家問題、高齢化、人口流出。都市の多くが頭を抱える問題です。そのようななか大阪の下町「昭和町」では、長い歴史を誇る長屋をローコストで再活用し、街に活気をもたらしています。成功に導いたのは、代々続く地元の不動産会社。三代目社長の「気づき」がきっかけでした。「長屋の保存活動ではない。やっているのは長屋の“活用”だ」。そう語る三代目社長に、奏功の秘訣をおうかがいしました。
「私は長屋の保存活動はしていない」「誤解されるのですが、私は長屋の保存活動はしていないんです」
「丸順不動産」代表取締役、小山隆輝さん(57)はそう言います。
「丸順不動産」三代目、小山隆輝さん。電動アシスト自転車と首からさげたカメラがトレードマーク(写真撮影/出合コウ介)
大阪府大阪市阿倍野区(あべのく)「昭和町」。大阪メトロ御堂筋線の巨大ターミナル駅「天王寺」から南へ一駅くだった場所にある細長いエリアです。
「昭和町」はその名のとおり昭和時代の面影を感じさせてくれる、のんびりした雰囲気に包まれた街。あべのハルカスがそびえる大都会、天王寺のそばだとは信じがたい印象。近年はテレビをはじめとしたメディアがこぞって「下町レトロ散歩」特集の舞台に昭和町を選ぶようになりました。
昭和町のゆったりムードに大きく貢献しているのが「長屋」。現在ではあまり見かけない長屋ですが、昭和町には築100年前後という貴重な長屋が奇跡的に数多くのこっています。
昭和町の随所にのこる長屋。古風で落ち着いた雰囲気を活かし、ヨガサロンを開く例もある(写真撮影/出合コウ介)
なかでもおしゃれなお店が6軒ずらり並ぶ「桃ケ池長屋」は昭和町エリアのランドマーク的存在。桃ケ池長屋をはじめ古い家屋のリノベーション計画が功を奏し、国勢調査によると1995年(平成7年)から2020年(令和2年)までのあいだに965人(大阪市における住民基本台帳人口数)が増加しました。大阪市の多くの街が人口流出や高齢化による人口減にあえぐなか、これは快挙です。
昭和町の長屋に新たな命を吹き込んだエキスパートが、大正13年(1924年)創業の「丸順不動産」三代目、小山隆輝さん。
小山「昭和町5丁目で生まれ、昭和町4丁目で育ちました。57年の人生を昭和町の徒歩5分圏内で過ごしています」
小山さんは生粋の昭和町っ子。先述の「桃ケ池長屋」や、大正14年築という長屋をリノベーションして大阪古民家カフェブームの先鞭をつけた「金魚カフェ」など、数々の物件をブレイクさせた立役者です。電動アシスト自転車をこぎながら日々、昭和町の風景を撮影しSNSで発信し続ける。そんな不動産界のインフルエンサーとしても知られています。
金魚カフェ(写真提供/小山さん)
金魚カフェ(写真提供/小山さん)
金魚カフェ(写真提供/小山さん)
ただ、活躍ゆえに“誤解”が生じている様子。
小山「ときどき“長屋再生人”と紹介されます。いいえ、違うんです。長屋を文化財として保存したいわけじゃない。元通りにしたいわけでもない。やりたいことは“長屋の活用”です。だって、長屋だけきれいになってもしゃあないやないですか。そうではなく、長屋など既存の建物を活用し、エリアの価値を向上させたいんです。目指すは“上質な下町”。そのためにも、いいプレイヤーを昭和町に集めたい。それが私のメインテーマですわ」
長屋の保存ではなく、再生でもない。メインテーマは「長屋の活用」と「エリアの価値向上」。その言葉の真意をさぐるべく、先ずは小山さんが手がけ、いまや大阪の人気スポットとなった「桃ケ池長屋」を案内していただくことにしましょう。
「昭和町ってどこやねん」と言われた知名度の低さ「桃ケ池長屋」へ向かう道すがら、長屋が注目される以前の昭和町の姿はどんなものだったのかを、小山さんは語ってくれました。
小山「とにかく街の知名度が低かった。こんな話があるんです。昭和町でBarをやっていた男性がミナミやキタにいる友達のところへ遊びに行った。友達に『昭和町で店をやってるから、遊びに来てな』と言ってショップカードを渡した。するとそのカードを見た友達が、こう言ったんです。『昭和町って、どこやねん』。同じ大阪市内、同じ御堂筋線沿線にもかかわらずですよ。それくらい地味で目立たない街でした」
(写真撮影/出合コウ介)
現在ではメディアの人気コンテンツとなり、憧れの気持ちを抱いて訪れる若者も多い昭和町にも、そんな無名時代があったのです。
小山「私が二十代のころは少子高齢化が進み、人口は減少。『昔はにぎやかな商店街やったのに誰一人として歩いていない』。そんな寒々とした風景でした。このままではあかん。昭和町をなんとかしなければならない。最初にそう思ったのが25年くらい前。子どものころから通っていた散髪屋さんのおっちゃんが私に、『あんたら不動産屋ががんばらなんだら、街がようならへんやんか。人もお店も増えへんやないか』と言ったんです。それ以来、“不動産屋ができる、街をよくする方法”を考えるようになりました」
街の人が危機感を抱くほどさびれていた昭和町。それを解決する糸口の一つが、長屋だったのです。
「上質な下町」のシンボルとなった「桃ケ池長屋」やってきた「桃ケ池長屋」。「昭和4年(1929)の資料が残っている」という、大正時代と昭和のはざまに誕生した4軒長屋と近隣の2軒の計6軒。「焼き菓子カフェ」「洋裁工房」「おばんざい(お惣菜)」など6つのお店が並んでいます。年に1、2回、不定期で長屋総出のイベントを行い、その日はたくさんのお客さんでにぎわいます。小山さんが目指す「上質な下町」と呼べる空間づくりに大いに貢献しています。
桃ケ池長屋(写真撮影/出合コウ介)
かつての桃ケ池長屋(2003年撮影)(写真提供/小山さん)
そのうちの一軒、平成23年(2011年)に入居した「カタルテ」は器と雑貨のお店。注目すべき作家の一点ものをはじめ、店主の宮倉さんが焼き物の産地である信楽や丹波立杭などに足を運んで選んだ逸品が並びます。
(写真撮影/出合コウ介)
(写真撮影/出合コウ介)
(写真撮影/出合コウ介)
実は「桃ケ池長屋」という名称は、「昔からあったものではない」のだとか。
宮倉「桃ケ池長屋という名前は長屋のみんなでつけました。勝手にね(笑)。『長屋でイベントをするときに呼び名をつけたいね』『じゃあ近くに桃ケ池公園があるし、桃ケ池長屋にしようか』って。そうして勝手に名前を呼んでいたら、だんだん定着してきたんです」
(写真撮影/出合コウ介)
店舗兼住居のこの「カタルテ」、梁など昭和の趣を残しながらも無理やりな懐古趣味はなく、見事に現代と調和しています。
(写真撮影/出合コウ介)
宮倉「アルミサッシなど、古い長屋と雰囲気が合わない建具は入れたくなかったので、大家さんによい方法はないかと相談しました。大家さんがとても理解がある方で、ご自身がお持ちの取り壊す古い建物から『要るものがあるなら持っていっていいよ』と言ってくださって。大工さんと一緒にメジャーを持って計りに行き、使えそうな建具を運んできました」
(写真撮影/出合コウ介)
「カタルテ」は、古い長屋に別の古い建具を継ぐという、ありそうで意外とない方法で新しいスペースをデザインしていたのです。
小山「この物件は家主さん、借主さん、大工さん、三者の美意識が合致した好例です。私が長屋に着手しはじめた当時はまだ大工さんは“きれいにするのが当たり前”でした。『あそこを残して。ここを残して』と言っても理解してもらえなかった。ひたすら、闘いでしたね」
「桃ケ池長屋」が好評を博した秘訣、それは小山さんのトータルプロデュース力にありました。
宮倉「小山さんが、世代が近い人を横並びでつないでくださったんです。世代が近いから相談できるし、『イベントを一緒にやろうよ』という動きになっていきました。長屋が一つのカラーをもっているおかげで続けられているのかな。小山さんのはからいがなかったら、何年かで店を辞めちゃっていたかもしれない」
小山「一軒一軒で考えるのではなく、世代をできるだけ合わせていく。いいプレイヤーを揃える。それが『長屋が街を変える』第一歩やと思うんです。ぜんぜん違うテイストのものを並べても、街としておもろくないですから。そやから僕はしっかりとお話をして人となりを見ます。『どんな人か』が大事やから」
(写真撮影/出合コウ介)
お話を聞くにつけ、いいこと尽くしのように感じる長屋のリノベーション。とはいえ、およそ100年も前の建物の再利用です。不便はないのでしょうか。
宮倉「気になる点は物音でしたね。壁が共有なので。お隣さんの会話の内容がわかっちゃうくらい筒抜け。『こちらが出した音も向こうに聞こえているんだろうな』と思って、電話する場合はわざわざお風呂場で話をしていました」
決して厚くない壁。しかも共有。長屋は言わば一つの大きな家。共同体だからこそ両隣との関係性が重要になってきます。
宮倉「お互いにお店をしていて、一緒にイベントをする仲間。人柄がわかっているから許容できました。『お互い様だよね』って。ときにはお隣の物音に安心感をおぼえる日もありました。まったく見知らぬ人だったら『うるさいよ』ってなっていたかもしれません」
一軒一軒ではなく、長屋全体をどうするかをトータルで考える。小山さんの発想と手腕はトラブル回避にも活かされていたのです。さらに、長屋での商いは物音などのリスクを超えた大きなメリットがあると宮倉さんは言います。
宮倉「広さに対する家賃の安さは魅力ですね。プラス、この雰囲気。ピカピカじゃなくって、歴史があるものにしか出せない温かな雰囲気が得られるのはとてもありがたいです」
タウン誌などにもたびたび採りあげられる桃ケ池長屋。「やりたいことは長屋の保存や再生ではなく“活用”」「長屋の活用によるエリアの価値向上」。小山さんの信条は、「桃ケ池長屋」というかたちではっきりと可視化されていたのです。
長屋の雰囲気になじんでいる看板猫のエモンちゃん(写真撮影/出合コウ介)
「長屋が文化財なら、昭和町はお宝だらけや」そもそも、なぜ昭和町には昭和初期の長屋が多く残っているのでしょう。理由は大正時代にさかのぼります。
小山「大正時代から昭和のはじめにかけて大阪市は経済が大きく発展しました。“大大阪”“東洋のマンチェスター”と呼ばれるほどだったんです。そのため人口が急増した。かつての東京市(1943年/昭和18年に廃止)よりも多かった。結果、たちまち住宅難が起きました。各地から続々と転入してくるため、住む人を吸収できなくなってきたんです」
サラリーマン家庭の住居の用意に急を要した大阪市。そこで建てられたのが、長屋でした。大阪市は特有の土地区画整理計画「長屋建築規則」を制定。長屋という名のニュータウン開発事業に乗り出したのです。
小山「大正時代までこのあたりは畑やったんですけれども、区画整理をして、長屋の寸法に街割をしたんです。そやから当時は長屋がザーッと並んでいました。言わば元祖ベッドタウンです。区画整理がスタートしたのが昭和のあたま頃やったんで、“昭和町”という地名になったんです」
なんと、昭和町という地名自体が、長屋の開発が由来だったとは。そんな深い縁がある長屋に再びスポットが当たる出来事がありました。それが「寺西家阿倍野長屋の再評価」。
「寺西家阿倍野長屋」とは昭和7年(1932年)に建築された近代的な4軒長屋。戦前の庶民の都市住宅としての様式を今に残す貴重な建築であることが評価され、平成15年(2003年)、長屋としては全国初となる「登録有形文化財」に指定されたのです。
寺西家阿倍野長屋(写真提供/丸順不動産)
小山「登録文化財になったという新聞記事を見て、『そんな文化財になるような長屋なんかあったか?』と探しに行ったところ、そこにあったのはどこにでもある普通の長屋。『これが文化財になるんやったら町中が文化財だらけや。これを使わない手はないやろ』と思いました」
現場へ行って寺西家阿倍野長屋を見上げた小山さん。そのとき「散髪屋のおっちゃん」から言われた「あんたら不動産屋ががんばらへんかったら、街がようならへん」のひと言が蘇ってきたのだそう。
小山「昭和町の長屋は、確かに質が高い。『京都では町家のリノベーションを当たり前にやっている。だったら昭和町は、長屋でそれができるんやないか』。そうひらめいたんです。意識して素敵なテナントを誘致したり、古い建物のよさを残したりすれば、街が元気になるんじゃないかと。散髪屋のおっちゃんのあの一言と長屋が頭の中でピタッとくっついた瞬間でしたね」
日本建築の粋を集めた「お屋敷長屋」このように長屋や既存の古い建物およそ30軒を蘇らせてきた小山さんに、もう一軒のケースを見せていただきました。「水回り以外は昭和初期の雰囲気のまま」という、5戸が連なる長屋です。
2019年より家族3人で居住している建築士、城田研吾さんはこう言います。
城田「物件を見る前は、『長屋をDIYしたい』と考えていました。部屋を自由に改造できる条件で物件を探していたんです。けれどもこの長屋を初めて内見したとき、『このまま住みたい』と思いました。手を入れる必要がない、理想の住まいだったんです」
(写真撮影/出合コウ介)
屋内は丸窓の「灯りとり」、欄間、土壁、漆喰など、惚れ惚れとするほど昭和の意匠が遺されています。特に立派な床の間が印象的。
玄関(写真撮影/出合コウ介)
キッチンとリビングをつないで広々とした空間をつくりだしている。段差を考慮したテーブルをオーダーメイドし、二間をまたぐように設置した(写真撮影/出合コウ介)
小山「フルサイズの床の間が、この長屋の特徴です。床の間は無駄と言えば無駄なんですけれども、当時は『床の間のない家なんて家やない』という文化があり、必須の設えだったんでしょう。ほかにも門があり、庭があり、燈籠が建てられている。大きなお屋敷の様式を全部きゅっと詰め込んである。だから“お屋敷長屋”と呼ばれる場合もあります。しっかりした邸宅で、落語に出てくる、八っつあん熊さんがいるような庶民の長屋とはずいぶん違いますね」
寝室(写真撮影/出合コウ介)
書斎(写真撮影/出合コウ介)
(写真撮影/出合コウ介)
棚は城田さん自身が造作(写真撮影/出合コウ介)
取材時、中庭には赤い桃の花が咲いていました。城田さんはこの家を「もものきながや」と名づけ、風流な景色を楽しんでいます。いやあ、若くしてこの長屋を気に入るとは、シブいご趣味ですね。
(写真撮影/出合コウ介)
城田「僕らの世代は原体験がないぶん、逆に昔の趣が残っている家って好きなんじゃないですかね」
小山「新車に乗りたい人がいれば旧車に乗りたい人もいる。新しいジーンズが好きな人がいれば、リーバイスのヴィンテージを好む人もいる。それと同じとちゃいますか」
(写真撮影/出合コウ介)
長屋はジーンズに例えるならばヴィンテージ。長屋の魅力がさらに鮮明になってきました。
昭和町の住民と店とをつなぐ「バイローカル」活動小山さんの取り組みで刮目(かつもく)すべきもう一つの軸、それが昭和町の住民と地元の商売人との縁をつなぐ「buy-local(バイローカル)」という活動。具体的には昭和町にある素敵な商店およそ80軒が掲載されたマップつきの小冊子を年に一回発行し、PRしてゆく行いです。小山さんは2013年4月から、街の有志とともにバイローカル活動をはじめました。
小山「バイローカルとは、そもそもはアメリカのコロラド州で生まれた『小さな商店の雇用を守ろう』という運動でした。コロラド州のバイローカルは大資本に立ち向かう抗議活動やけど、昭和町はそこまで好戦的やない。志だけを継いで、街の“よき商い”を昭和町に住む人にもっと知ってほしい、そんな気持ちでやっています。理想は“内発的発展”。地域の人たちが自分の街にある店を選択し、守り、昭和町の中で365日、経済が循環する環境を整えていきたいんです」
小冊子のほか、使いやすいMAPも配布している
マップを見ていると、新旧の魅力的な個人商店が満載。「少し歩くとこんなにたくさんのオリジナリティと出会えるのか。昭和町カルチャーすごい!」と驚かされます。
バイローカルマップを配布する大事なイベントが、長池公園にて開催される年に一度のマーケット。出店数は50店舗前後。あまりの人手に昨年は平日開催にせざるをえなかったというから、いかにバイローカルという理念が昭和町に根付いたかがうかがい知れます。
小山「人を寄せて儲けるのが目的ではない。マーケットを開くことで、地元の人とお店の人とでコミュニケーションをとってもらいたいんですよ。『あんたんとこのお店、どこやの? 今度遊びに行くわ』『あんたのお店、前から知ってたんやけど、どんなお兄ちゃんがやってるかわからへんかったから、行くん怖かってん。なんや~、あんたかいな~。ほんならこれから行くわ~』みたいな。バイローカルのマーケットを通じて知らないお店と出会ってほしいんです。ゆっくり話をしてほしいから、本音は、あんまりたくさんの人に来てほしくない(笑)」
2020年開催時の様子(写真提供/小山さん)
自分が住む街にどんなお店があるのか、意外と知らないものです。バイローカルは住民と店とのマッチングの機会をつくり、街がよい商いを支える地盤をつくりました。おかげで、こんな利点があったのだそうです。
小山「2020年の夏はコロナでしんどい時期でしたけれども、街の人がテイクアウトでお店を支えた。お店も必死やけど、街の人たちも必死でした。『この店がつぶれたら絶対に困る』ってね」
昭和町なら駅から離れていても商売が成立する。それが理想「長屋なんて更地にしてアパートを建てましょう」「コインパーキングにしてしまいましょう」が当たり前ななか、あえて古い建物の活用で街を衰退から救った小山さん。今後の展望は。
小山「これまでの経験で得た知見を活かし、おもろいエリアをさらに広げていきたい。街のはずれにも素敵なお店があって、周遊しながら楽しめる。そういうふうにならんと街ってしまいに廃れると思うんですよ。駅前でないと商売が成り立たん、そんなんではあかん。『昭和町なら住宅地でも商売が成立するんですよ』と伝えていかなければ。駅前一極集中ではなく、歩いて行ける場所、あるいは自転車でまわれるエリアに、自分の暮らしを豊かにしてくれるお店がいくつも点在している。それが街の理想形かなって思うんです」
確かに、バイローカルのマップを見ていると、点々とあるすべてのお店をぐるりと回遊したくなります。そうしてきょろきょろしているうちに、きっとさらに街が好きになる。
バイローカル会議の様子(写真提供/小山さん)
小山「象徴的な出来事がありました。駅前のいい場所に店舗が空いたので、お客さんをご案内したんです。けれども、そのお客さんが言うには、『すっごいええ場所やねんけれども、ここだと家賃を払うために仕事をせなあかん。ちゃんとていねいに商いをしたいから、もっとさびしい場所でいいです』と。その感覚なんです、昭和町は」
昭和町を訪れないと出会えない素敵な個性がある。希少となった長屋も、現代でいえば個性的な存在です。小山さんは今日も電動アシスト自転車で街を駆け抜けながらええもんを見つけ、昭和町をさらに「おもろい街」にすべく奮闘しています。
「私はただの不動産屋さん。けれども、街のことを考える不動産屋さんです。そやから、なんでもします。街の不動産屋はなんでもやりますよ」
●取材協力
丸順不動産株式会社
Facebook:@marujunfudousan
暮らしと商いの不動産(丸順不動産の物件ブログ)
丸順不動産の三代目は毎日なにをしてるんや?(公式ブログ)
Twitter:@KoyamaTakateru
Instagram:@takaterukoyama
365日バイローカルライフ
昭和なまちのバイローカル
器と暮らしの雑貨 カタルテ
Mono architects モノ アーキテクツ(城田研吾さんの設計事務所)
リクルートが2022年3月に発表した「SUUMO住みたい街ランキング2022 関東版」にて、見事5年連続の1位に輝いた横浜駅。大型商業施設や人気観光スポットが豊富にあり、JR各線をはじめ多数の路線が乗り入れていて利便性もよいうえに、爽やかな海景色も楽しめるため人気があるのもうなずける。今回はそんな横浜駅まで30分圏内にある駅の中古マンションの価格相場を調査。専有面積20平米以上~50平米未満の「シングル向け」と、専有面積50平米以上~80平米未満の「カップル・ファミリー向け」それぞれの、価格相場が安い駅トップ15を見ていこう。
横浜駅まで30分以内の価格相場が安い駅TOP15【シングル向け】
順位/駅名/価格相場(路線/駅の所在地/横浜駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 伊勢佐木長者町 1840万円(市営地下鉄ブルーライン/神奈川県横浜市中区/7分/0回)
2位 海老名 2048万円(相鉄本線/神奈川県海老名市/27分/0回)
3位 吉野町 2059.5万円(市営地下鉄ブルーライン/神奈川県横浜市南区/10分/0回)
4位 南太田 2170万円(京浜急行本線/神奈川県横浜市南区/8分/0回)
5位 京急鶴見 2275万円(京浜急行本線/神奈川県横浜市鶴見区/7分/0回)
6位 阪東橋 2290万円(市営地下鉄ブルーライン/神奈川県横浜市南区/9分/0回)
7位 黄金町 2294万円(京浜急行本線/神奈川県横浜市南区/6分/0回)
8位 大森海岸 2380万円(京浜急行本線/東京都品川区/24分/1回)
9位 鶴見 2425万円(JR京浜東北・根岸線/神奈川県横浜市鶴見区/9分/0回)
10位 八丁畷 2480万円(京浜急行本線/神奈川県川崎市川崎区/14分/1回)
10位 大森 2480万円(JR京浜東北・根岸線/東京都大田区/18分/1回)
12位 神奈川 2589.5万円(京浜急行本線/神奈川県横浜市神奈川区/1分/0回)
13位 石川町 2685万円(JR京浜東北・根岸線/神奈川県横浜市中区/7分/0回)
14位 川崎 2780万円(JR東海道本線/神奈川県川崎市幸区/7分/0回)
14位 関内 2780万円(市営地下鉄ブルーライン/神奈川県横浜市中区/5分/0回)
【カップル・ファミリー向け】
順位/駅名/価格相場(路線/駅の所在地/横浜駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 かしわ台 1889万円(相鉄本線/神奈川県海老名市/29分/1回)
2位 善行 2280万円(小田急江ノ島線/神奈川県藤沢市/29分/1回)
3位 鶴間 2285万円(小田急江ノ島線/神奈川県大和市/29分/1回)
4位 金沢文庫 2330万円(京浜急行本線/神奈川県横浜市金沢区/17分/0回)
5位 藤沢本町 2380万円(小田急江ノ島線/神奈川県藤沢市/29分/1回)
6位 さがみ野 2480万円(相鉄本線/神奈川県海老名市/26分/1回)
7位 下永谷 2485万円(市営地下鉄ブルーライン/神奈川県横浜市港南区/17分/1回)
8位 十日市場 2490万円(JR横浜線/神奈川県横浜市緑区/26分/0回)
9位 京急富岡 2585万円(京浜急行本線/神奈川県横浜市金沢区/18分/1回)
10位 南林間 2670万円(小田急江ノ島線/神奈川県大和市/27分/1回)
11位 鶴ケ峰 2698万円(相鉄本線/神奈川県横浜市旭区/10分/0回)
12位 小机 2780万円(JR横浜線/神奈川県横浜市港北区/16分/0回)
12位 洋光台 2780万円(JR京浜東北・根岸線/神奈川県横浜市磯子区/21分/0回)
12位 相模大塚 2780万円(相鉄本線/神奈川県大和市/24分/1回)
15位 大和 2839.5万円(相鉄本線/神奈川県大和市/19分/0回)
横浜大通公園(写真/PIXTA)
「シングル向け」1位は横浜市中区に位置する、市営地下鉄ブルーライン・伊勢佐木長者町(いせざきちょうじゃまち)駅で価格相場は1840万円。駅北側には商業エリアとして発展してきた「伊勢佐木町」が広がり、駅自体の所在地は「長者町」なので、駅名はその2つの地名を合体したわけだ。駅から歩いて5分ほどの伊勢佐木町には全面歩行者天国の「イセザキモール」をはじめとする商店街があり、地元民に愛される老舗も点在している。また、地下駅の地上出口は「大通り公園」につながっており、東西に延びる細長い公園内を歩くと10分もかからずに隣駅の関内駅にたどり着く。この関内駅は14位にランクインしており、価格相場は2780万円。徒歩10分弱の距離でありながら、伊勢佐木長者町駅と価格相場の差が940万円もあるのは少々驚きだ。そして関内駅を越えてさらにそのまま歩き続けると、大さん橋がある海辺までも駅から徒歩20分ほど。横浜駅まで電車で約7分というだけでなく、徒歩でも横浜の主要エリアに行ける便利な立地だ。
海老名駅西口(写真/PIXTA)
2位は相鉄本線・海老名駅で価格相場は2048万円。こちらは神奈川県海老名市に位置し、横浜駅から乗り換え不要だが所要時間は約27分とやや離れている。しかしJR相模線と小田急小田原線も乗り入れており、小田急線の快速急行や急行に乗ると乗り換えなしで45分前後で新宿駅まで行くこともできる。また、海老名駅の東口には複合商業施設「ビナウォーク」や「イオン海老名店」、西口には「ららぽーと海老名」といった大型商業施設が立ち並び、大いににぎわっている。横浜や新宿に行かなくても、日常の買い物はもちろん食事から映画鑑賞まで地元で楽しむことが可能だ。さらに西口エリアでは再開発が行われており、高層マンションの住居エリアとオフィス棟、商業施設などからなる「ViNA GARDENS(ビナガーデンズ)」の整備が進行中。2022年4月より10階建て複合施設「「ViNA GARDENS PERCH(パーチ)」の施設が順次開業しているほか、2025年度内にエリア一帯の完成が予定されている。今後、注目度が高まる街と言えそうだ。
3位は横浜市南区にある、市営地下鉄ブルーライン・吉野町駅で価格相場は2059万5000円。1駅先に6位・阪東橋駅、2駅先に1位・伊勢佐木長者町駅という位置関係だ。駅周辺は繁華街というよりは住宅街といった趣で、大型商業施設は見当たらない。とはいえスーパーやコンビニは点在し、下町風情が漂う商店街として地元で愛される「横浜橋商店街」も阪東橋駅方面に歩いて15分ほど。日常生活の買い物には困らないし、多彩な商業施設がある横浜駅まで電車で約10分なのだから、住む街として十分に快適な環境だろう。
横浜橋商店街(写真/PIXTA)
この3位・吉野町駅をはじめ1位、6位、14位とトップ15に4駅がランクインした市営地下鉄ブルーライン。同路線は神奈川県藤沢市の湘南台駅~横浜市青葉区のあざみ野駅間の32駅を結んでいる。そして今後、あざみ野駅から神奈川県川崎市にある小田急小田原線・新百合ヶ丘駅に向け、路線の延伸と4駅の新設が計画されている。開業目標は2030年とのことなので少々先だが、横浜市と川崎市を結ぶ新ルートの誕生により路線価値が向上し、沿線の駅の人気も高まるかもしれない。
さてトップ15よりもう1駅、12位にランクインした京浜急行本線・神奈川駅をピックアップして見ていこう。今回調査の基点駅にした横浜駅は、価格相場が3089万5000円だった。そして神奈川駅は横浜駅よりわずか1駅・約1分しか離れていないのに価格相場は2589万5000円と、価格相場に500万円もの開きがあるのだ。両駅間は直線距離だとわずか650mしか離れておらず、神奈川駅周辺に住んだとしても横浜駅周辺の商業施設は徒歩圏内。その一方で神奈川駅周辺は緑豊かな公園があったりお寺の敷地が広がっていたりと、横浜駅よりも落ち着いた街並みとなっている。買い物や遊びに便利な環境がいいけれど、にぎやかすぎるところは避けたい……という人には、神奈川駅は住む街の候補になりそうだ。
「カップル・ファミリー向け」は、価格相場が横浜駅の半額以下の駅がずらり「カップル・ファミリー向け」で最も価格相場が安かったのは、神奈川県海老名市の相鉄本線・かしわ台駅。相鉄本線の快速や急行で大和駅に行き、そこから特急に乗り換えると30分弱で横浜駅へ。急行1本でも40分弱で横浜駅に到着する。横浜駅まで「すごく近い」ほどでもないが、価格相場の違いを見ると所要時間も気にならなくなるかもしれない。横浜駅の「カップル・ファミリー向け」中古マンションの価格相場は5489万円だったのに対し、かしわ台駅は1889万円。30分弱の距離を離れると3600万円も価格相場が低くなるなら、かしわ台駅も住まいの候補地として一気に浮上するのではなかろうか。
そんなかしわ台駅の周辺環境は、駅から徒歩15分圏内に市立中学校と2つの市立小学校がある住宅地。駅から徒歩5分ほどの場所には総合病院があるのが心強い。日用品の買い物は、駅周辺にあるスーパーやドラッグストア、100円ショップで済ませられるだろう。目久尻川沿いの「海老名市北部公園」をはじめ、公園も複数点在しているため、子どもの遊び場にも困らなさそう。また、1駅隣は「シングル向け」で2位にランクインした海老名駅。ショッピングや映画などの施設が豊富な海老名駅まですぐ行ける点も魅力の一つだ。
海老名駅東口ロータリー(写真/PIXTA)
2位は神奈川県藤沢市にある小田急江ノ島線・善行(ぜんぎょう)駅で、価格相場は2280万円。まず藤沢駅に行き、JR東海道本線に乗り換えると横浜駅まで約29分で到着する。藤沢駅から小田急江ノ島線でさらに先に進むと、3駅で片瀬江ノ島駅へ。夏は海水浴客でにぎわうビーチや水族館、歩いて渡れる島・江の島といった観光スポットが充実した、江の島・湘南エリアまで気軽に行けるロケーションだ。また、善行駅周辺はスーパーやドラッグストア、日常使いできる飲食店といった商店が立ち並んでいる。駅東側は陸上競技場や球技場からなる県立のスポーツセンターと高校が広い面積を占めているため、住宅街はスポーツセンターを越えた国道467号沿いや、駅の西側に広がっている。住宅街を過ぎると果樹園や田畑などの田園風景も残され、駅西方の川沿いには親水広場や湿生植物園が整備された「引地川親水公園」も。自然を感じながら暮らしたいファミリーには嬉しい環境だろう。
引地川親水公園(写真/PIXTA)
3位は小田急江ノ島線・鶴間駅で価格相場は2285万円。2位と同じ路線だが善行駅からは北へ7駅目、と少し離れた神奈川県大和市に位置している。1駅隣の大和駅で相鉄本線に乗り換えると横浜駅にたどり着く。鶴間駅は小田急江ノ島線の各駅停車しか停まらない駅の一つだが、そのなかでは1日の乗降人員が最多(2020年度データ)。その理由は、駅周辺の施設の豊富さにありそうだ。大和市役所に市立病院、さらにスーパーや飲食店に加えイトーヨーカドーやイオンモールといったショッピングモールも駅から徒歩15分圏内。歩いて20分ほどの場所には約900種もの植物が息づく「泉の森」、車で10分ほど走るとコストコやホームセンターも。近隣からもわざわざ訪れたくなるような施設がそろい、暮らしやすい街と言えそうだ。
泉の森(写真/PIXTA)
ここまでトップ3を見てきたが、横浜駅までの所要時間はいずれも約29分。4位以下を見ても、20分前後かかる駅が多くランクインしている。物件の予算は抑えたいけど、横浜駅までの所要時間もなるべく短いほうがいい……。そうお望みならば、11位にランクインした相鉄本線・鶴ケ峰駅に注目だ。
11位・鶴ケ峰駅は横浜市旭区に位置し、相鉄本線の通勤急行なら横浜駅まで2駅・約10分の近さ。それでいて価格相場は横浜駅の2分の1以下、2698万円となっている。そんな鶴ケ峰駅周辺には役所や消防署、市立図書館といった公共施設がさまざまあり、横浜市旭区の中心的なエリアだ。スーパーや飲食店、保育園にクリニックまでそろう駅直結の「ココロット鶴ヶ峰」をはじめ、商業施設も充実。駅西側には精肉店や鮮魚店、惣菜店に日用品店や飲食店が立ち並ぶ鶴ヶ峰商店街もある、活気ある街並みだ。この駅はちょっと変わっていて商店街を抜けた先、駅から5分ほど歩いた場所にバスターミナルがある。そこからバスに乗れば約15分で「よこはま動物園 ズーラシア」に到着。毎週土曜は小中高生だと入園無料なので、子どもとの休日の定番お出かけ先にしても楽しそう。
今回のランキングを振り返ってみると、「シングル向け」は横浜駅まで10分以下の駅が大半だったのに対し、「カップル・ファミリー向け」は30分ギリギリという駅も多かった。しかし横浜駅から離れるぶん、「カップル・ファミリー向け」にランクインした駅は横浜駅に比べて価格相場がだいぶリーズナブルで、トップ11駅にいたっては横浜駅の2分の1以下という結果に。自然が豊かで落ち着いた環境の駅も多いので、子どもをのびのび育てたいと考えるファミリーには、横浜駅周辺に住むよりもかえって魅力的かもしれない。
●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている横浜駅まで電車で30分圏内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】
駅徒歩15分圏内、物件価格相場3億円以下、築年数35年未満、敷地権利は所有権のみ
シングル向け:専有面積20平米以上50平米未満
カップル・ファミリー向け:専有面積50平米以上80平米未満
【データ抽出期間】2022/1~2022/3
【物件相場の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された中古マンション価格から中央値を算出
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、朝7時30分~9時の検索結果から算出(2022年3月28日時点)。所要時間は該当時間帯で一番早いものを表示(乗換時間を含む)
※記載の分数は、駅内および、駅間の徒歩移動分数を含む
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が2回までの駅を掲載