
8万1,000円 / 18.63平米
京王線・井の頭線「明大前」駅 徒歩10分
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東京都がこのほどまとめた「都民生活に関する世論調査」の結果によると、約7割が東京に定住意向があることが分かった。その理由となるのは、第一に発達した交通網なのだが、こうした利便性とは違う項目も上位に挙がっている。その理由とは……。
【今週の住活トピック】
「都民生活に関する世論調査」結果を発表/東京都
「都民生活に関する世論調査」は、東京都全域に住む満18歳以上の男女を対象に郵送やインターネットで実施し、1883人の有効回収を得たもの。
今住んでいる地域の住みよさを聞いたところ、「住みよいところだと思う」は81.5%、「住みよいところだと思わない」は8.8%と、8割を超える人が住みよいと思っている。さらに、今住んでいる地域に今後も住みたいと思うか聞いたところ、「住みたい」は69.5%、「住みたくない」は11.3%となり、約7割が今の地域に住み続けたいと思っている(=地域定住意向あり)ことが分かった。
一方、「東京は、全般的に見て住みよいところか」を聞くと、「住みよい」は58.0%、「住みにくい」は6.6%と、約6割が住みよいと思っており、これは地域の住みよさより低い結果となった。さらに、東京に今後もずっと住みたいと思うかを聞くと、「住みたい」は69.7%、「住みたくない」は9.1%となり、約7割が東京に住み続けたいと思っている(=東京定住意向あり)という結果に。「東京は住みよい」と回答した割合よりも、東京定住意向ありの割合のほうが高い点が興味深い。
次に、それぞれの定住意向を分析すると、いずれも、そこに「長く住んでいる」人ほど定住意向が高まる傾向が見られる。東京定住意向については、さらに「東京生まれであるかないか」で、約15ポイントの開きがあった。生まれた地域、長く住んでいる地域には、今後も住み続けたいと思う、つまりは「住めば都」となることがうかがえる結果だ。
出典/東京都「都民生活に関する世論調査」の結果より抜粋転載
定住したいのは、「住み慣れているから」「利便性が高いから」のほかにも…次に、それぞれの定住意向あるなしの理由を見ていこう。
「地域定住意向あり」の1308人にその理由を聞いた結果を見ると、次のような項目が上位に挙がった。
1. 買物など日常の生活環境が整っているから 66.3%
2. 自分の土地や家があるから 43.0%
3. 地域に愛着を感じているから(住み慣れているから) 41.4%
4. 通勤・通学に便利なところだから 40.3%
また、「東京定住意向あり」の1313人にその理由を聞いた結果を見ると、次のような項目が上位に挙がった。
1. 交通網が発達していて便利だから 79.2%
2. 東京に長く暮らしているから 53.7%
3. 医療や福祉などの質が高いから 36.7%
4. 文化的な施設やコンサート・スポーツなどの催しが多いから 28.6%
住み慣れていることに加えて、地域の生活利便性や東京の交通網の発達などが住みたいと思う大きな理由になっているが、東京定住意向では、「医療や福祉の質の高さ」や「文化的な環境のよさ」など、利便性以外の要因もその理由として挙がっている点に注目したい。
東京定住意向の理由をさらに、東京生まれか否かで見ると、「交通の便利さ」はどちらも最多であるが、東京生まれの人は「長く暮らしている」ことが圧倒的に多い。これに対して、東京生まれでない人では、「文化的な環境のよさ」と「人間関係がわずらわしくない」が多くなっている。つまり、文化的な環境や地域の人間関係などは、東京生まれでない人の定住意向に影響を与える要因になっている、と言えそうだ。
出典/東京都「都民生活に関する世論調査」の結果より抜粋転載
なお、地域定住意向がない理由は「地域に愛着を感じないから」(27.7%)「家賃などの住居費が高いから」(同率27.7%)、東京定住意向がない理由は「生活費が高いから」(62.2%)が最多となった。
文化的な活動への興味関心は高いが、楽しんでいるのは若い世代?では、文化的な活動について、どう思っているのだろうか?
「東京には美術館や劇場、映画館など文化施設が集中し、さまざまな展覧会や公演が行われているが、こうした文化的な環境を楽しんでいるか」と聞いたところ、「楽しんでいる」(楽しんでいる+まあ楽しんでいる)が49.8%、「楽しんでいない」(楽しんでいない+あまり楽しんでいない)が48.8%と拮抗する結果となった。
出典/東京都「都民生活に関する世論調査」の結果より転載
「楽しんでいる」という回答は、若い世代ほど多い傾向が見られる。20代男性では64.9%だったものが、60代男性では34.9%に、20代女性では77.9%だったものが、60代女性では51.2%になるなど、年齢が上がるにつれて「楽しんでいる」という回答が減っている。
なお、男性(全体平均44.6%)より女性(54.1%)のほうが「楽しんでいる」回答が多い傾向も見られた。また、東京都区部(53.2%)のほうが市町村部(43.1%)より「楽しんでいる」割合が高いが、これは都心部に文化施設が多いことが影響しているのだろう。
次に、「芸術や文化を鑑賞したり、文化イベントに参加したりすることに興味関心があるか」と聞いたところ、興味関心が「ある」(ある+少しある)は71.5%に達した。興味関心については「楽しんでいる」回答の内訳ほどには、年代や地域の差が見られなかった。
出典/東京都「都民生活に関する世論調査」の結果より転載
また、どのような文化鑑賞や文化イベントに参加したいのかは、「映画」(58.5%)、「展覧会(美術・歴史・写真・文芸など)」48.3%、「コンサート(ポップスなど)」41.6%などが上位だった。
総務省が発表した「2022年の住民基本台帳人口移動報告」によると、「東京都は、2020年に減少した転入者数が3年ぶりに増加に転じ、増加を続けていた転出者数が減少に転じており、東京都への移動の動きが活発になりつつある」という。コロナ禍で感染拡大が激しかった東京都は、他県への転出が増加したものの、2022年には転入超過数が大幅に上昇した。
「東京一極集中」の要因として、東京に就業の機会が多いことを挙げることが多いのだが、今回の調査結果を見ると「仕事を見つけやすい、事業を起こしやすい」といった理由で、今後も住みたいと思う人はそれほど多くはなかった。住み続けたいと思わせるには、文化的な環境のよさなども大きな要因になることを、再認識した次第だ。
●関連サイト
東京都「都民生活に関する世論調査」結果
LGBTQと呼ばれるセクシュアル・マイノリティの人たちにとって、同性が二人で入居できる物件が限られたり、セクシュアリティへの偏見から審査で断られてしまったりと、住居探しはかなりハードルが高いこともあるようです。一方でそのような住まい探しの問題に積極的に取り組む不動産会社も存在します。LGBTQの当事者は、自身が抱える住まいの問題や支援の取り組みについてどのように感じているのでしょうか。LGBTQの人たちの居住支援を行うNPO法人カラフルチェンジラボの三浦暢久さんに聞きました。
セクシュアル・マイノリティの人たちが抱える居住問題LGBTQの人たちの居住問題とは、主に二つあります。一つ目は外見と戸籍上の性の違いや、同性パートナーとの同居など、パーソナルな部分を明かす必要性と、それが理解されるかという不安やストレス。二つ目はそのことに対する偏見やサポート不足から、希望する物件が借りられない・買えないことです。
「通常では気づかないような、些細に思われることが、LGBTQ当事者の住まい探しの壁となることが多々あります。セクシュアル・マイノリティの当事者たちは、常に偏見に晒されてきました。自分たちがどのように見え、どう判断されるかに対して非常にセンシティブなんです。不動産会社に行くこと自体を怖いと感じる人が多く、それをどう解消するかが住まい探しの最初のハードルです」(三浦さん、以下同)
実際に、カラフルチェンジラボが行った「2021年セクシュアル・マイノリティーの居住ニーズに関するアンケート」によれば、多くのLGBTQの人たちが不動産会社に行くこと自体に不安を感じていることがわかります。
特にL(Lesbian、レズビアン)やFB(Female Bisexual、女性のバイセクシュアル)など、不動産会社に行くことに不安を感じる人が多く、半数以上に上る(資料提供/NPO法人カラフルチェンジラボ)
またパートナーとの同居を希望する当事者にとって、二人の関係を根掘り葉掘り聞かれるのは、決して気持ちの良いものではありませんし、理解不足や偏見によって話が進まないこともあるそう。
「一般的な『二人入居OK』の物件は、夫婦や兄弟姉妹など、家族であることが前提です。同性カップルは家族とは認められず、物件の選択肢が極端に少なくなります。また、収入では特に問題が無いのに、同性カップルを理由に『ゲイの人が住んでいるとは近隣の住民に説明できないから』などといった、とんでもない偏見を理由に審査の段階で断られたというのも、実際にあった話です」
先の調査では、セクシュアル・マイノリティへの理解を得られず、大家さんには同居人がいることを告げず、隠れてパートナーと暮らさざるを得なかったという人の割合が60%以上にもなることが判明しました。これは同居人を申告していないことになるので、本来は契約違反にあたり、それを理由に退去を求められることも起こりえます。そのような不安な状況で生活をしていかざるを得ないのは大きな問題です。
パートナーと暮らすことを隠して、一人暮らしとして契約するケースも多いが、もし見つかれば契約違反で退去を求められることも(資料提供/NPO法人カラフルチェンジラボ)
LGBTQ当事者の住まい探しを支援する、カラフルチェンジラボの取り組み住まいの問題を抱えているLGBTQの人たちに対して、三浦さんが居住支援を始めようと考えた一番のきっかけは「自分自身の住まい探しの経験だった」と語ります。三浦さん自身、セクシュアル・マイノリティの一人であり、男性パートナーと同居を始めるときに困難を感じた当事者でした。
「今のパートナーとは10年前から現在の賃貸物件に一緒に住んでいます。私自身は2015年ごろから『九州レインボープライド』というLGBTQを筆頭に、マイノリティの人たちが自分らしく生きられる社会の実現を目指すイベントを開催してきましたが、パートナーは今も自身がセクシュアル・マイノリティであることを公表していません。実際に住まい探しではとても苦労をしました。多くのLGBTQの人たちと出会い、生活の不安や不満を聞くなかで、最も深刻だと感じたのが住まいの問題だったのです」
カラフルチェンジラボが主催する、九州レインボープライド。たくさんの人や企業、各国の領事館も参加している(画像提供/NPO法人カラフルチェンジラボ)
三浦さんの住まいへの課題感を具体的な活動へと変えたのは、福岡市を代表する不動産会社、三好不動産の三好修社長との出会いでした。
「三好社長にこれまでの自分の活動やLGBTQ当事者の住まいの問題について話したところ『営業担当者たちに話をしてほしい』と講演の機会をもらいました。以降、三好不動産の各店舗でLGBTQの人たちへの居住支援の取り組みがスタートし、私たちがそれをサポートさせてもらっています」
三好不動産の各店舗の入り口にはもちろんLGBTQフレンドリーな企業であることを示す「レインボーマーク」が貼られています。また、三浦さんたちの取り組みもあり、レインボーマークを掲示する店舗や会社も少しずつ増えつつある様子です。
LGBTQ当事者が望む居住支援は「フレンドリーとうたっているが、接客は自然体で」では、実際にLGBTQの人たちは、レインボーマークを掲げる不動産会社やその接客についてどのように感じているのでしょうか。先の調査によれば、当事者が「LGBTQフレンドリーをうたう企業に望むこと」として一番多かった意見は「フレンドリーとうたっているが自然に接してほしい(64.9%)」、次に多いものが「セクシュアリティは確認しないでほしい(42%)」でした。
そして、「レインボーステッカーが入り口に貼ってあると入店しやすい(41%)」「自分のセクシュアリティや二人の関係は自分のタイミングで言いたい(36.2%)」という意見が続きます。
LGBTQの人たちが不動産会社に最も求めていることは「フレンドリーとうたっているが接客は至って自然体で行ってほしい(64.9%)」(資料提供/NPO法人カラフルチェンジラボ)
「不動産会社が『LGBTQフレンドリーである』という意思表示をすることは、とても大事です。なぜなら、LGBTQ当事者の中には、自分たちを受け止めてくれる企業なのかどうかがわからないと、相談に訪れることすら躊躇(ちゅうちょ)してしまう人が多いからです。しかし一方で、特別扱いをしてほしいわけではない。これが当事者の最も切実な声です」
さらに、LGBTQの人たちの住まい探しの問題は入居申込みの手続きや審査の際にも生じます。トランスジェンダー(出生時の身体的な性別が、自身が認識している性と異なる人のこと)が本人確認書類を提示すると、外見との違いに驚きを隠さない担当者がいたり、管理会社の偏見によって審査が通らない同性カップルがいたりします。
LGBTQの人たちが本当に必要としている支援は、特別な何かではなく「当たり前に」入居できることです。
LGBTQの人たちへの支援は、まず「自分の偏見」について知ることから三浦さんはまず、多くの人に「アンコンシャス・バイアス(無意識の思い込み、偏見)」があること、そのために気づかないうちに相手を傷つけてしまう可能性があることを知ってほしい、と警鐘を鳴らします。
「例えばトランスジェンダーの方に『私より全然男(女)らしいですね』といった、良かれと思って発言した何気ない一言も、言った方は褒め言葉のつもりかもしれませんが、言われた本人は、自分はニセモノだと言われているように感じてしまうことがあります。
自然に接客するためには、LGBTQの人たちが置かれている環境や考え方を理解していないと難しいでしょう。不動産会社の担当者であれば、家賃滞納のリスクヘッジのために詳しくプロフィールや本人確認をすることも必要でしょうが、いきなり立ち入ったことまで聞かれるのは誰だって嫌なものです」
三浦さんたちは、LGBTQ当事者に関するイベント開催や「住まいのプロジェクト」実施のほか、不動産会社をはじめとする企業にもコンサルティングを行っています。企業向けの講演ではLGBTQの人たちについて最低限理解してもらうために、ハラスメント問題・法的問題・同性婚について、社会や世界全体の考え方がどのように進んでいるのかを詳しく話すそう。マイノリティの人たちの特徴だけでなく、取り巻く社会環境の両方についてよく知ることが、差別や偏見のない社会につながっていくことを示しています。
カラフルチェンジラボが企業を対象に講演を実施したときの様子。LGBTQフレンドリーな企業を増やしていくには、まずは事実を知ってもらうことが大切というスタンスで続けている(画像提供/NPO法人カラフルチェンジラボ)
これからのLGBTQフレンドリー企業、そして社会に望むこと三浦さんたちが実施する住まいプロジェクトの協力企業も数社に増えてきましたが、全国にある何万もの不動産会社の中では、まだまだLGBTQの人たちへの理解が広まっているとはいえません。
カラフルチェンジラボがコンサルティングを依頼される不動産会社にヒアリングをすると「LGBTQの人たちへの取り組みを特別に行う必要があるのか」「LGBTQ当事者だと言ってくれれば、配慮して対応するのに」といった回答も多いそうです。しかし、何が問題なのかを正しく理解して能動的に行動しなければ、いつまでも社会は変わらないし、解決しないのです。
「企業が積極的にLGBTQに歩み寄らなければ、偏見に晒されるリスクがあるため、住まい探しの相談もできない人はたくさんいます。そこを理解しなければ、LGBTQの人たちが安心して住める、暮らせる社会は実現しないでしょう。
私は、LGBTQの社会参画によるマーケットへの影響は大きいと思っています。電通ダイバーシティ・ラボの『LGBTQ+調査2020』では、理解が進まないことで機会を損失していたり、当事者が消費に消極的になっている商材・業界の規模は5兆円を超えるともいわれています。また、当事者ではない人においても、約45%がLGBTQフレンドリーな企業の商品やサービスを利用したいと回答しているのです」
さらに三浦さんは「LGBTQの人たちが晒されている問題に取り組むことは、差別や人権の問題に取り組むのと同じこと」だと続けます。
「コンサルをしている企業がLGBTQ当事者への取り組みを行うと、副産物として必ずといっていいほど『サービスの質が向上した』『コミュニケーションが活性化した』という評価をもらいます。自分を知り、他者への配慮を学ぶことはLGBTQの人たちに限らず、障害をもつ人、高齢者など、全ての人がその人らしく生きることが当たり前の社会となるために、必要なことだからです」
来場者数1万人を超えた九州レインボープライド2022のステージ(画像提供/NPO法人カラフルチェンジラボ)
LGBTQの人たちへの居住支援においては無知や偏見が主な原因となるため、適切な知識を身に付けた上で取り組まなければ、個人や企業の自己満足になりかねません。また、LGBTQフレンドリーを示す店舗や会社があることは、LGBTQ当事者にとって相談しやすい指標となる一方で、それを表明した以上、LGBTQの人たちの気持ちを理解した対応をする責任がともないます。
三浦さんの言葉の通り、自分と他者への理解を深めることで、全ての人が生きやすく、住みやすい社会にしていきたいものですね。
●取材協力
NPO法人カラフルチェンジラボ