コワーキングスペース付き保育園ってどう? 共働きのパパライターが訪問してみた

働き方改革が叫ばれている昨今。さまざまな企業で就業の形態が変わってきていますが、テレワークや在宅、起業などでフリーランスとして働く親にとって、「じゃあ子どもはどうするの?」という問題が出てきます。なぜなら、特に待機児童が多い都心などでは、そうした働き方をしている家庭は認可の保育園に入りにくいからです。でも子どもを見ながら仕事は現実的ではない……。もうすぐ2歳になる子どもがいるフリーランスライターの私にとっても他人事ではありません。そんななか、働きながら子育てもしやすい『子育て施設付きのコワーキングオフィス』が増えているという話を聞き、子持ち&共働きでフリーランスの筆者が実際に施設を訪れてみました。
罪悪感なく仕事も子育ても楽しめる それが暮らしを充実させる

まず訪れたのが東京都立川市、立川駅から徒歩5分ほどの場所にあるコワーキングスペース「Cs TACHIKAWA(シーズ立川)」。ワーキングスペースと企業主導型保育園「みらいのたね保育園」が併設されています。企業主導型保育園とは、簡単に言うと国から補助を受けた「民間」の保育園です。こうした施設は多摩地区初とのことです。

外観からはそれほど大きく見えないビルの2階にあるので、狭い託児所レベルかなと思いきや、保育室は約60m2と広々。「初めて訪れた人も、思ったよりとても広いと驚いてくれます」(スタッフ)。もちろん保育園として届け出されているので、スタッフ数など環境は整っています。また食事もメニューから食材までママスタッフが工夫を凝らして考えたものを提供しているそう。

そしてコワーキングオフィスは保育園の入り口から廊下を隔ててすぐ。Wi-Fi、コピー機、ロッカーなど設備が整ったオフィス内は、子どもの声もほとんど聞こえず、仕事に集中できる環境です。もちろん気軽に子どもの様子を見られたり、急な発熱などの事態が起きても5秒で到着。特に乳幼児がいる親にとって保育園からの連絡に気をもむことがなく、安心して働けそうです。

利用者からも
「以前は夜中に寝かしつけた後、深夜しか仕事ができなかったのですが、ここでは子どもの近くにいながら仕事に集中できるのでとても助かっています」(30代女性)

「子どもの様子をみながら仕事をするタイミングをうかがう毎日でした。仕事先に迷惑をかけたり、自分もこれでいいのかと悩んだり、ついそれが子どもの前で態度に出たり。でも今は、子どもにも、自分にも、そして仕事先にも罪悪感なく仕事ができます」(30代女性)
という声が聞かれます。

【画像1】外観からは想像できないほど広い保育園スペース。訪れた日は保育士兼シーズプレイスの社員でもあるスタッフが流ちょうな発音で英語のレッスンをしていました(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

【画像1】外観からは想像できないほど広い保育園スペース。訪れた日は保育士兼シーズプレイスの社員でもあるスタッフが流ちょうな発音で英語のレッスンをしていました(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

【画像2】クラウドファンディングも活用してそろえたという園内の設備。特にフルオーダーメイドの机やおもちゃは木の温かみが感じられて心地よさそうです(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

【画像2】クラウドファンディングも活用してそろえたという園内の設備。特にフルオーダーメイドの机やおもちゃは木の温かみが感じられて心地よさそうです(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

【画像3】コワーキングスペース。レンガ調で彩られた壁やインダストリアルなロッカーなどおしゃれ!フリーアドレス席20席を中心に個室も。もちろんWi-Fiやプリンターなども完備。会議にも使えるレンタルルームも(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

【画像3】コワーキングスペース。レンガ調で彩られた壁やインダストリアルなロッカーなどおしゃれ!フリーアドレス席20席を中心に個室も。もちろんWi-Fiやプリンターなども完備。会議にも使えるレンタルルームも(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

【画像4】仕切りを設けた個室。もちろんコンセントなども備えられており、集中して働きたい人に利用されています。住所登記もできるので、起業する人も多いとのこと(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

【画像4】仕切りを設けた個室。もちろんコンセントなども備えられており、集中して働きたい人に利用されています。住所登記もできるので、起業する人も多いとのこと(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

頑張りすぎなくても大丈夫。ゼロ百ではない働き方を

施設を運営しているシーズプレイス代表の森林さんにお話を伺いました。

「私自身が子育てをしながら働いていたこともあり、仕事と子育ての両立の大変さ、働くママたちが諦めて仕事を辞めることで社会から取り残されていく悲しさを身をもって経験してきました。そうした人を減らしたいと立ち上げた、『働くママが本気でつくった保育園』であり、『コワーキングオフィス』です。50人近くいるスタッフはほとんどがママ。保育士資格を持つスタッフが子どもたちを交代で保育し、さらに会社の仕事もしています。だから、働くことも、子育ても、どちらも精一杯楽しみたいというママさんたちに寄り添いやすいと思います」

そんなシーズプレイスの「Cs TACHIKAWA(シーズ立川)」。当初はセキュリティを考えて女性限定のコワーキングオフィス&保育園だったのですが、男性も利用できるようになったとのこと。

「実際に利用されている女性たちからの要望です。いろいろな人と一緒に働くことで新しい発見や刺激があるし、ネットワークをつくって事業を始めるなどにもつながるということで。ドロップイン(一時利用)はパパさんも含めて男性が多いので、社会的にこうした施設のニーズは高いんだと実感しています。また、会議室も設けているのですが、例えばスイーツ店など飲食店やコスメ関連などで起業する際に、プレイベントを行えるようフレキシブルにしています。こちらも利用者が多いですね」

森林さんはこれからの時代の働き方、生き方の意識を変える場として、この施設を考えているといいます。

「朝9時に出社して生産性がないのに定時まで働いたり、時短制度利用することで周りを気に病みながら働いて、毎日子育てにも追われて、心も体もすり減っていくという社会はよくないと誰もが思っています。でも、なかなか現実を変えるのは難しい。だから何かを諦める。……ではなく、私たちを使ってほしいと思っています。さらに、東日本大震災の際に実感しましたが、立川はじめ多摩地区から都心通勤している人たちは、たちまち帰宅困難者になってしまいました。万一の際のリスクもこれからは考えていかなくてはいけません。愛する我が子と<安心>して<楽しく>生きていくには、よくいわれる職住近接はもちろん、『職育近接』の暮らし方が必要だと思います。仕事か子どもか、ゼロか百かの選択肢ではない生き方をこの場所から発信していきたいと考えています」

そんな「Cs TACHIKAWA(シーズ立川)」は、商業施設や大規模公園など、生活施設が充実する立川駅近くという立地も人気の理由だといいます。

「ちょっと早めに仕事を終えられれば、子どもと一緒にさまざまな施設を楽しめるし、たまにはひとりで一息つくこともできます。より前向きに仕事に集中できるというかモチベーションにつながると思います。またイベントなど地域と触れ合う機会もご提案しているので、刺激や住む街に愛着も持てる。夕方バタバタと保育園に迎えに来て、ただ保育園、職場と家の往復だけでウイークデーを過ごすとなかなかできない暮らし方もできる。きっと生き生き暮らせるのではと思います。そんな姿を親が見せていれば、子どもにもきっといい影響があると思います」

【画像5】シーズプレイス代表の森林育代さん。フルタイムからパート、契約社員などさまざまな仕事を子育てしながらこなしてきた経験から起業。多様な働き方、子育て、生き方ができる社会をつくっていきたいと話します((写真撮影/山口俊介(BREEZE))

【画像5】シーズプレイス代表の森林育代さん。フルタイムからパート、契約社員などさまざまな仕事を子育てしながらこなしてきた経験から起業。多様な働き方、子育て、生き方ができる社会をつくっていきたいと話します((写真撮影/山口俊介(BREEZE))

多様なサービスを持つ子育て施設付きワーキングスペースも増加中

コワーキングスペース&保育園or託児施設はニーズの高まりから都内はじめ各地に増加中です。くわえてシーズプレイス同様、単なる「保育施設」+「ワークスペース」に限らない多様なアイデアをもつ施設も登場しています。次に訪れたのが、JR山手線大塚駅そばにある「RYOZAN PARK」。ビルの5階から7階が運営施設で、7階が「子育てヴィレッジ」という子育て施設とワークスペースが共存する空間です。ワークスペースはフリーアドレスで、カウンターでは働きながらガラスサッシ越しに保育士と遊ぶ子どもの様子を見ることもできます。

もちろん集中して働きたいなら6階のワーキングスペース専用のフロアや5階の個室オフィスを使うことも可能です。またシーズプレイス同様、一日だけの利用もできますし、打ち合わせ用の会議室も完備。オフィス登記もできます。

施設を運営する代表の竹沢さんは「それぞれの生活や仕事の空間だけでなく、お互いのアイデアや文化、言語や友情までもがシェアされる場所」としてつくったそうです。

「子どものそばで働ける場所ではあるのですが、待機児童解消や働き方改革など崇高な理念を持っているわけではないんです。もっとみんながハッピーになれる生き方、暮らし方がしたい。そんな仲間がつくれる、集う場所として活用してもらえたらと。だからよく言われる『働くママ』だけでなく、『パパ』もいらっしゃいますし、もちろん独身、DINKSもいらっしゃいます。年齢も経歴も国籍すら異なる多様な人たちが、情報交換したり、切磋琢磨したり、コミュニティをつくったり。生き方の可能性を広げられる空間でありたい」と語ります。

また、こうした子どもと一緒のコワーキングスペースだからこその可能性もあるといいます。

「さまざまな起業家の方も施設を活用されているのですが、最初は子どもの声が気になるという人もいたと思うんです。でもたとえ自分の子どもではなくても、声を聞いたり、成長していく様子を見ていたら「この子どもたちが未来を描ける社会をつくらないといけないのではないか」などと発想してくれるんじゃないかと。そうするとビジネス創出の仕方や方向性に新しいアイデアが生まれるのではないかと考えています」

訪れた日も子連れで仕事をしているパパ、ママが見受けられました。サッシ越しに働く親の姿を見ながら過ごす子どもたち。「親の背中を見て育つ」という言葉を実感します。ちなみにRYOZAN PARKの子育てヴィレッジでは、この春から「イングリッシュプリスクール」を開校するとのこと。英語を遊びながら学べる施設で、託児だけでない付加価値も提案するとのことです。

【画像6】7階の子育てヴィレッジ。3歳までの子どもたちが保育士とともに過ごします(画像提供/RYOZAN PARK)

【画像6】7階の子育てヴィレッジ。3歳までの子どもたちが保育士とともに過ごします(画像提供/RYOZAN PARK)

【画像7】子どもスペースとワーキングスペースが隣接。カウンターのサッシ越しに子どもの様子をみながら働くこともできます(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

【画像7】子どもスペースとワーキングスペースが隣接。カウンターのサッシ越しに子どもの様子をみながら働くこともできます(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

【画像8】5階にあるフリーアドレスのコワーキングスペース。カフェのような空間には年齢も国籍も多様な方々が利用しています。奥にはごろ寝スペース、ビル屋上にはバーベキューラウンジがあり、リラックス空間が多いのも特徴的(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

【画像8】5階にあるフリーアドレスのコワーキングスペース。カフェのような空間には年齢も国籍も多様な方々が利用しています。奥にはごろ寝スペース、ビル屋上にはバーベキューラウンジがあり、リラックス空間が多いのも特徴的(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

「コワーキングオフィス&子育て施設」は、訪れるまで保育園の代替で「子育てしながら働ける施設」、「子どもの近くで働ける施設」というイメージでしたが、多様な働き方でライフスタイルの可能性を広げてくれる場所だと実感しました。ちなみに、今年2月には、世田谷区が保育機能付きシェアオフィスの支援事業を行うと発表。行政と民間双方で生き方、働き方を広げてくれる環境整備に期待したいですね。

●取材協力
・みらいのたね保育園
・RYOZAN PARK大塚

知っておきたい「一生賃貸」にひそむリスク。あなたに向いているのは持ち家?賃貸?

家を買うというリスクを冒したくない、住みたいところに住み替えしやすい、などの理由から、『一生賃貸』でいいと思っている人もいるでしょう。でも「買わないリスク」というのもあります。どんなリスクがあるのでしょう。また、『一生賃貸』に向いている人とはどんな人なのでしょう。不動産を通じたライフプランに詳しいファイナンシャルプランナーの永田さんに聞いてみました。
一家の稼ぎ手に万一の事態があったときにリスク大

持ち家:住宅ローンの支払いは「団体信用生命保険」で残債が「ゼロ」に
賃貸:家賃が払えず「引越しを余儀なくされる」ことも

「よく比較される賃貸と購入ですが、お金の面では住居費の総額は条件次第で変わるため、一概にどちらがトクかは断言できません」という永田さん。では『一生賃貸』のリスクはというと、まずは「万が一のときの保証」が挙げられると言います。

「借り続けることへの対抗軸に上がるのが、住宅ローンを組んで購入すること。この住宅ローンを組む際には多くの場合、団体信用生命保険に加入します。万一、ローンを組んだ人が亡くなった際、残債がゼロになる保険です。その結果、残された家族には住み続けられる場所と資産を残すことができます。賃貸の場合は世帯主が亡くなっても家賃を支払い続けなければなりません。家賃を抑えるため、引越しを余儀なくされることもあるでしょう。そのため『一生賃貸』を選択する場合は、生命保険の加入や、日ごろからの貯蓄などでリスクを軽減するための備えが必要となるでしょう」(永田さん)

住宅ローンが払えないvs家賃が払えない。どちらが大変?

持ち家:返済が滞り事故情報が登録されると信用も毀損
賃貸:事故情報が登録されなければ再スタートを切りやすい

「どちらも大変なことですが、住宅ローンのほうが厄介なことになることが多いです」(永田さん)。実は住宅ローン(住宅購入)を原因として破産した人は近年増えており、10年間で約1.5倍になったという統計があります(※1)。低金利もあって頭金を入れずに無理な住宅ローンを組み、支払いができなくなったり、共働きを前提にして購入した場合、離婚や病気などで片方が働けない状態になってしまい、支払えなくなったりするケースが増えています。住宅ローンの場合、支払いの滞納を続けると、借入先の銀行等の金融機関は一括返済を求め、任意売却などをしない場合は、競売に向けて裁判所から現況調査が入るなど大変なことに。また、「ローンの事故情報が登録されると、しばらくの間、住宅ローンやカードローンあるいはクレジットカードの利用が難しくなるなど、その後の生活に支障が発生することも考えられます」(永田さん)

一方、賃貸の場合も、滞納が続くと督促のうえ、保証人、保証会社も巻き込むことになりますが、「事故情報が登録されることがなければ、支払い完了後に家賃の安い部屋に引越して住居費を抑えるなどで、再スタートを切りやすいかもしれません」(永田さん)。住宅ローンのように巨額のお金を一括で返済ということがない分、支払い滞納時のリスクは少ないと言えるかもしれません。

※1:2014年破産事件及び個人再生事件記録調査(日本弁護士連合会)

年金を当てにする試算は持ち家前提。DINKSはリスク軽減策を

持ち家:住宅ローンがなくなり生活費だけの負担に
賃貸:年金ベースの試算では家賃+生活費の支払いは難しい

「『一生賃貸』のリスクは、年金生活になるリタイア後も家賃の支払いが続くことでしょう。生活費と住居費を年金でまかなうのが難しくなるので、退職までに貯蓄しておく必要があります」(永田さん)。必要な貯蓄額は家賃によって変動しますが、例えば総務省が発表している家計調査(平成28年)では、2人以上無職・世帯主65歳以上世帯の支出は住居費を除き、生活費は25万3152円。一方、年金などの収入は20万5682円で、毎月4万7470円は貯蓄からまかなう必要があります。65歳から90歳までの計算で1424万円になります。これに住居費が加わるのですが、例えば家賃10万円の場合、25年計算だとすると合計3000万円。つまり約4400万円が必要になります。

特にDINKSはリスク回避を考えておく必要があるといいます。「共働きで現役バリバリの方々は収入や体力があり、子どもがいないと教育費負担を考えなくて済む分、財布のひもが緩みがち。多少家賃が高くても余裕があるので、希望の暮らしを優先して貯蓄がおろそかになりやすいです」(永田さん)

ちなみに住宅・土地統計調査(総務省・平成25年)によると、ほとんどの年金生活者は持ち家で、約1.5万円が住居費として算出されています。持ち家は住宅ローン支払いが終わる分住居費が少なくなるので、その分貯蓄は少なく済みやすいのです。「また持ち家の場合は売却、賃貸運用という選択肢もあります」(永田さん)

さらに「『一生賃貸』の最も大きなリスクは、高齢になって自分が弱ったとき」と永田さん。「家賃が苦しいとなれば、安い賃料の物件に引越してコストを下げればいいのですが、老齢になるにつれ借りられる物件の選択肢が減っていくことは事実です。現在、サービス付き高齢者向け住宅が充実してきたり、空き家利用の促進などから、一昔前に比べて借りやすい環境は整いつつあります。しかし、今もって大家さんは支払い遅延リスクや、何かあった際のことを考えて高齢者を敬遠しがちです。結果、いいなと思った物件が借りられないこともあります。また、認知、判断機能が衰えると、契約行為そのものができなくなることもあります。子どもがいる場合は成人した子どもが代わりに契約するという手段もとれますが、単身の場合はそれも難しい。さらに、施設への入居が必要となったときに、持ち家は売却して入居資金をねん出する方法が考えられますが、賃貸では貯蓄を切り崩さなければなりません。これも老後が長い時代のリスクのひとつといえるでしょう」(永田さん)

こうした上で人生設計を考える一つの目安が年齢であると永田さんはいいます。
「私は賃貸派も購入派も50歳台がひとつの節目だと考えています。現役のときとリタイア後では、賃貸に対して受け入れられるリスクや探す物件も変わってきます。リタイア後の生活が想像できるようになる50歳台、60歳台こそ、今後の「住まい」について、あらためて持ち家にするか賃貸にするか、じっくり検討することができるタイミングなのではないでしょうか。もちろん、その時点でどちらでも選択できるように、若いうちから老後資金の備えをしっかり準備しておくことが大切なことは言うまでもないでしょう」

【画像1】老後に突入する前に「住まい」について持ち家にするか賃貸にするかじっくり検討すべきだと語る永田さん(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

【画像1】老後に突入する前に「住まい」について持ち家にするか賃貸にするかじっくり検討すべきだと語る永田さん(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

気軽に引越しやすく、住みたいところにも住みやすい、住居費だって抑えようと思えば抑えられる。そんな賃貸のメリットも『一生賃貸』となるとリスクがあるようです。特に高齢になった際のことを考えた、長い人生設計をすることが大切のようです。

●取材協力
・(株)フリーダムリンク

羽田新ルート、住民説明会で聞いてみた 「都心上空を低空飛行、本当に大丈夫?」

2020年オリンピック開催に向けて、国際線の需要拡大のため羽田空港への着陸ルートが見直されようとしています。うちは空港近くじゃないから……と思っている人が多いかもしれませんが、実は新ルートでは、豊島区、練馬区、中野区、北区、板橋区……と都内の幅広い範囲の上空を飛行予定。そこで、飛行高度や騒音、落下物など気になる問題を探るべく、国土交通省が行っている「住民説明会」に潜入してみました。過去の経緯はこちら:都心上空を旅客機が飛ぶ!? 羽田空港の離着陸新ルート計画とは練馬区の住民説明会に潜入!どんな説明がされるの?

広大な敷地で開放的な練馬区光が丘公園。今回潜入したのは住民の憩いの場に隣接した「光が丘IMA光の広場」。商業施設内のオープンなホールです。休日とはいえ寒さが厳しいなか、説明会には多くの来場者が見受けられました。住民説明会は今回で第4回目(第4フェーズ)。これまで新飛行ルートが通る自治体で開催され、累計1万3000人超が参加している(国土交通省担当者)とのことです。

ちなみにこの羽田空港国際線の新ルートに関係するのは、埼玉県と東京都が中心です。埼⽟県内ではいずれも約1800mから900mと⽐較的⾼い⾼度を保つとのこと。ところが羽田空港に向かっていく東京都内に⼊ると、東側ルートでは、豊島区や練⾺区⽅⾯から新宿、表参道、⽩⾦⾼輪、品川と都⼼上空を南下し、それぞれの⾼度は、新宿駅が約915m、広尾駅が約600m、品川駅が約450mと空港に近づくほど低下します。

もう一つ設定される⻄側ルートは、練⾺区⽅⾯から中野、渋⾕、代官⼭、⽬⿊、五反⽥、⼤井町を南下。渋⾕、恵比寿駅近辺が約610m、五反田駅近辺が約455m、そして最も低くなるとされている⼤井町では約300mになります。これは東京タワーより低い⾼度です。

説明会は、こうした高度やそれに伴う騒音、飛行機の見え方、さらに落下物への対策など、関係する自治体の住民が気になる情報を中心にパネルが展示され、適時国土交通省の職員が参加者に対して説明を行ったり、質問に答えるという形式でした。また職員によると、説明会を開始した当初は自治体が所有する施設の会議室などで行っていたのですが、現在は、誰しもが参加して質問がしやすいよう、商業施設のホールや駅前広場などオープンな場所でも積極的に行うようにしているとのことです。

騒音がイメージできる体感ブースもあり、実際に体験してみましたが、個人的な感想としては、音に関しては最も音量が大きい場所でもそこまで気になる音量ではありませんでした。ただ、大井町周辺の高度約300mと同等の高度を飛行する映像は、かなりの圧迫感を感じました。

【画像1】会場には騒音を体感できるブースも。高度や騒音レベルなどを、今回のルートに近い大阪の環境を収録し、映像と音から体感できる。羽田空港内にも常設されているとのこと(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

【画像1】会場には騒音を体感できるブースも。高度や騒音レベルなどを、今回のルートに近い大阪の環境を収録し、映像と音から体感できる。羽田空港内にも常設されているとのこと(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

【画像2】飛行経路やよく寄せられる疑問への回答を、パネルで分かりやすく展示。国土交通省の職員が案内したり、デスクで質問に答えている。商業施設内で誰でも入れるため気軽に訪れやすい印象(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

【画像2】飛行経路やよく寄せられる疑問への回答を、パネルで分かりやすく展示。国土交通省の職員が案内したり、デスクで質問に答えている。商業施設内で誰でも入れるため気軽に訪れやすい印象(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

「騒音、事故…」説明会参加者の住民に、不安に思うことを聞いてみた

実際に説明会に訪れていた参加者の何人かにお話を伺ってみました。最も不安に思うことはやはり「騒音」「事故、落下物への対策」でした。

「気になるのはやっぱり音。車輪を出したときと出さないときの騒音は違うと聞いたことがあり、住んでいる場所ではどういう状況で飛行するのかを聞きにきました」(60代 男性/練馬区在住)

「大阪の方で航空機からパネルが落下したニュースを見たのでちょっと心配で。落ちて来たら防ぎようがないのでやっぱり少し不安です。対策はしっかりすると言われてもいまいちピンと来なくて……」(50代 女性/練馬区在住女性)
こうした不安の声が多く聞かれました。

その一方で、
「国際線が増えて、訪日外国人が増えれば、インバウンドで経済が良くなるメリットがあるし、そうしたポジティブな説明も聞けました」(40代 男性/板橋区在住)
「成田空港より羽田空港の方が都心からのアクセスがいいので、旅行好きの人にはいいかもしれませんね」(40代 男性/豊島区在住)
という声も。

パネルや職員の説明では「ここ10年墜落事故は起きていない」、「落下物に関しても、羽田空港周辺はゼロです」と安全性の説明が多く聞かれました。

【画像3】商業施設内のオープンな説明会会場のため、多くの通行人が足を止めてパネル展示などを眺めていた(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

【画像3】商業施設内のオープンな説明会会場のため、多くの通行人が足を止めてパネル展示などを眺めていた(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

危険度、騒音レベル、不動産価値etc. 住民説明会で直撃してみた

とはいえ安全性、騒音問題、さらには不動産価値下落などの不安要素もあることから、会場で説明中の国土交通省の鈴木さんに直撃してみました。「参加者の皆さまの多くが関心をもっているのも、まさにご指摘の点についてですね。確かに落下物事故は過去10年間(平成19年度~平成28年度)の発生件数は、成田空港周辺で19(部品13件、氷塊6件)ありましたが、羽田空港周辺では0件となっています。ただ2017年9月に、成田空港に到着した航空機からパネル(重さ約3kg)が脱落した事案や、関西空港発の航空機から重さ約4.3kgの胴体のパネルが脱落し、大阪市内を走行中の車両に衝突した事案等が発生したこともあり、さらなる落下物対策に取り組んでいます。3月末をめどに世界でも類をみない落下物対策への新たな基準案を策定する予定です」

また騒音に関しては、「防音対策では現状で対象となる施設はない想定ですが、一定基準以上の騒音が発生する場所の施設、建物に対して防音工事の助成があります。また、空港の国際線着陸料について、航空機の重量と騒音の要素を組み合わせた料金体系に見直し、航空会社に対して低騒音機の使用を促進し、現行経路を含めた経路での全体の音の低減を図ります」といいます。

さらに都心の一部の住民から不安の声が上がっているのが「不動産価値」の下落。騒音や事故のリスクからマンションなど住宅の価値が下がるのではという懸念だ。実際に住宅専門家でも意見の分かれるところで、下がるという人もいれば、影響は飛んでみないと分からないという声も。国土交通省では「一般的な不動産の価値は騒音などの環境面、立地などによる地域要因に、人口の増減や需給バランス、音に関していえば個人差もあります。複合的な要因があるので、飛行経路と不動産価値の変動に直接的な因果関係を表すのは難しいと考えています」とのこと。

打開策のひとつとして、実際の運用前に試験飛行ができるかという質問をしたところ、「現在の羽田空港には着陸⽤の誘導装置がないことや、空港の運⽤を⼀時⽌めなければならないことなどから現状では対応は難しい」らしく、試験飛行の実現は望み薄だそう。

その上で鈴木さんは「私たちとしては、今後も住民の皆さまに説明会を含めて情報を積極的に発信し、ご不安やご懸念を解消していきたいと考えています」と話してくれました。

【画像4】お話を伺った国土交通省航空局航空ネットワーク部の鈴木さん(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

【画像4】お話を伺った国土交通省航空局航空ネットワーク部の鈴木さん(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

【画像5】会場となった光が丘IMA周辺。この青空の下で安心して暮らしたい。そう思えるほど澄み切った青空だった(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

【画像5】会場となった光が丘IMA周辺。この青空の下で安心して暮らしたい。そう思えるほど澄み切った青空だった(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

羽田空港国際線の新飛行ルートについては、2020年までに運用を開始したいということです。ただ今回の光が丘周辺で、新ルートについて知っているか道行く家族連れや公園利用者に訪ねたところ、知らないと答える人のほうが多く、まだまだ認知度が低いのが現状のよう。国土交通省や関係自治体のホームページでは、住民説明会の今後の日程や開催場所などが分かるので、ぜひ一度足を運んでみてはいかがでしょう。

●取材協力
・国土交通省航空局

それってリフォーム詐欺かも…? 悪徳業者の手口と対抗策

心躍るリフォーム。その一方で昨今は、悪徳会社による「リフォーム詐欺」も世の中を騒がせています。 詐欺に巻き込まれないまでも、業者の見極め方やいざというときの解決策を知りたいところ。欠陥住宅問題やトラブル解決に取り組む「NPO法人 建築Gメンの会」理事長の大川さんにポイントを伺いました。
耐震、床下、屋根など次々と契約を迫る。こんな事例があるので注意!

詐欺事例のなかでは、「次々詐欺」といわれる手口が非常に多いという大川さん。いくつかの事例を紹介します。

<ケース1>点検しますという訪問で床下を見て「湿気がすごい」などと言って不安をあおり、本来ならば必要のない工事の契約を勧めてくる。その契約がとれると、次は屋根、外壁、小屋裏を見て、同じ手口で次々と工事の契約を勧めてくる。検査の結果、通常の2~3倍の工事費を支払ってしまった(建設業法による建設業登録不要な500万円未満の工事となるよう、複数回に分けて契約させる手口)

<ケース2>「近所を回っているのですが、床下のシロアリ検査を無料でしますよ」と訪問。「さらに屋根の瓦が傾いているのが気になります」などといって、このままだと雨漏りするので屋根全体を工事したほうがいいと言われ、つい流れで即日契約。

また、工事自体は行っているので一見正当性があるように見えるが、不合理な工事やずさんな工事をされてしまうこともあるという。なかには感情に訴えてくる手法もあるとのことです。

<ケース3>外壁の補修が必要という名目で訪問。塗装も行ったがその後の第三者検査の結果、塗装の質が悪かったり、養生の仕方が雑で、塗料があちこちに飛散。また鍵穴が塗料で埋まっていたり、ドアまで塗装されて開かなくなったり。加えて床下の換気効率を上げなくては腐るといわれたものの、調湿材を敷きこむ工事をされ、逆にその調湿材が湿気をため込んでしまい換気効率がダウン。結局別業者に依頼することに。

<ケース4>複数人で業者が訪問。屋根や外壁などのリフォームを提案し、その場で大まかな見積もりを提示。「高すぎる」と断ったところ、その場で一人が「上の者を説得します」と電話。その間、別の人間が家主に家の思い出などを聞き、いい人をアピール。その後電話をしていた業者が「金額をこれだけ抑えられました!説得できましたよ」と努力をアピール。まあそれならと契約書にサインしてしまい、必要のない工事や相場より高い工事を行う。

【画像1】ひび割れや塗装はげなど外から見て分かるような家は、悪徳業者に口実をつくられやすく狙われやすい(写真/PIXTA)

【画像1】ひび割れや塗装はげなど外から見て分かるような家は、悪徳業者に口実をつくられやすく狙われやすい(写真/PIXTA)

あやしい業者かどうかを見極めるには

もしも悪徳リフォーム業者が接触を図ってきたら……。どんな業者があやしいのか、見極めのポイントを教えてもらいました。

<1>いきなり訪問してくるリフォーム業者
突然訪問が多い。まったく心当たりのない業者の訪問には、話に乗らず、できるだけ家に入れないことが肝心。

<2>その日のうちに見積もり、契約を迫ってくる
悪徳業者は工事の既成事実をつくるために即日契約、次の日に工事開始と急いでくる。話を聞いて建物を見せてしまっても、契約までには検討期間を設けるのが防衛手段に。

<3>その場で「耐震診断を行う」「見積もりを出す」などと言い出したら疑うべし!
もちろんリフォーム業者によるが、本来はその場ですぐにできるものではないので、できる、出すと言ったら悪徳業者の確率が高い。

アポなし訪問の業者の全てが悪徳とは言い切れないが、やはり「いきなり訪問販売をしてくる業者」には注意をしたほうがよさそうです。

また悪徳リフォーム業者に引っかかりやすい人の特徴として大川さんは次のように話します。
「高齢者のみの世帯(特に独居高齢者)がターゲットになることが多いですね。こうした方々は築年数の古い家に住んでいて、自分で自由に使えるお金を持っていることが多い。オレオレ詐欺などもそうですが、やはり高齢者を狙ってくる率が高いです。また子ども世帯が遠方に住んでいて疎遠だと、相談もしにくく、子どもが訪れたところ、詐欺工事がすでに行われていたというケースも多いです。独居が長かったりすると人情にもほだされやすいですね。防衛するためには、家族はもちろん、普段から隣近所とコミュニケーションをとり、誰かに相談できる体制をつくっておくことが大切だと思います」

だまされた!と思ったら、どこに相談すればよい?

「公的な相談機関が第一歩だと思います。例えば公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター、消費生活センターですね。こうした機関は無料相談を受け付けていたり、検査を行える建築士や消費者被害に詳しい弁護士をあっせんしてくれるなどの対応をしてくれます」(大川さん)

またいざ訴訟となる場合、法的な観点から直接弁護士に相談するのも手。クーリングオフ制度も使えるので、適用される内容や期限なども聞いておきたいところです。さらに建築目線で工事が適当かどうかを素人が判断するのは難しいので、信頼できそうなリフォーム業者に相談するのもひとつの手段です。さらに建築Gメンの会のような、専門家の視点で検査や技術的な側面から工事を評価できる建築士も相談に乗ってくれます。

「とにかくあやしい、だまされたかも、と思ったらなるべく早く相談するのが大切です。前述したとおり、悪徳業者は契約から工事までが早いです。工事の既成事実をつくられたり、工事完了して逃げられたりしたら厄介になります」

【画像2】NPO法人建築Gメンの会理事長・棲建築事務所代表取締役 大川照夫さん(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

【画像2】NPO法人建築Gメンの会理事長・棲建築事務所代表取締役 大川照夫さん(写真撮影/山口俊介(BREEZE))

誰しも思い入れのある住まい。長く快適に暮らすためのリフォームはとても大切。そこに付け込んでくるような悪徳な業者に引っかかって悲しい思いをしないためにも、ぜひ今回上げたポイントを参考に、被害にあわないよう心掛けたいところです。特に高齢者をターゲットにすることが多いということで、自分だけでなく親のことも考えて、注意しておくことが必要になるのではないでしょうか。

●取材協力
・一級建築士/NPO法人建築Gメンの会理事長/棲(すみか)建築事務所代表取締役 大川照夫さん