お隣さんの枝が自分の敷地に伸びてきた、切ってもいい? 4月から民法改正で空き家問題に影響も

お隣さんとはうまくやっていきたいもの。お隣さんの樹木などが自分の敷地に入り込み、通行の邪魔になったり美観を損ねたりした場合には、何とかしてほしいと伝えたい。とはいえ、世の中いろいろな考え方のひとがいる。無用なトラブルをさけるためには、ルールが必要になる。民法にも隣家との関係を調整する規定がある。「相隣関係(そうりんかんけい)」と呼ばれるものだ。この相隣関係の規定の一部が改正され、2023年4月より施行となる。(1)隣地使用権、(2)竹木の枝の切除・根の切取り、(3)ライフライン設備の設置・使用権、の3つだ。今回はそのうちの(2)竹木の枝の切除・根の切取りについて解説する。

隣地から侵入する竹木の根は自分で切れるが、枝は切ってもらうのが原則

「隣地の木の枝が越境している時は木の所有者に切ってもらう。一方、根が越境している時は自分で切ってしまってOK」。これはわりと有名ルールなので、聞いたことがあるかもしれない。枝と根で扱いが違うのだ。なんで?と思う人もいるだろう。

枝や根も含めて竹木(樹木)といえども財産だ。所有者以外は勝手に切除できない。これが原則だ。「他人の土地に越境している方が悪いんだろう!切っちゃえ」というのはダメなのだ(自力救済の禁止、といいます)。明らかに向こうが悪いと思うような違反行為があった場合にもその竹木の所有者に対応してもらうことになる。

つまり、枝に関するルール=他人のものなのだから勝手には切除できない、というのが法律的には普通の発想なのだ。では、なぜ根は隣地所有者が切ることができるのか。民法の解説書などを読むと次のような説明がある。

①枝切りは、竹木の所有者が敷地内で切除できるが、根は伸びている隣地に入って作業する必要がある(隣地所有者に切ってもらった方が、作業が容易)。
②枝は、果実などがついている場合など、財産的価値があることもある。一方、根には価値がない。

うーーん、根菜などは根にも価値があるのでは、という気もするが……。それはともかく、「枝は切れない。根は自分で切れる」が原則なのだ。この点は2023年4月以降も変わりはない。

隣地の所有者がわからない、というのも珍しいことではない

ところがこのルールには一つ問題がある。越境している木の枝を隣地所有者に切ってもらうおうとしても、空き地など隣地の所有者がわからない、連絡が取れないという場合だ。そんな時はどうすればよいのか?

実は日本には「所有者不明の土地」が少なくない。有識者で構成される「所有者不明土地問題研究会」の報告によれば2016年時点の調査で所有者不明率は20.3%。この割合を全国に適用すると約410万ヘクタールの土地が所有者不明、ということになる。…と言われてもぴんとこないが、なんと九州本島より広いのだそうだ。土地の所有者が不明、ということは決して珍しいことではないのだ。

隣から枝が越境していて美観を損ねたり、庭の利用の邪魔になっている。しかも所有者が不明。となると…。まぁ、普通は勝手に枝を切っちゃいますよね。でもさきほど説明したように、法律上は勝手に切ることは許されない。私もいちおう大学の教員なんで、「勝手に切っちゃいましょう」などと無責任なことはいわずに法律の解説を続けることにする。

所有者不明の場合にはどうすれば?

話を戻す。土地の所有者が不明と聞いて、登記を見ればわかるのでは?と思ったかもしれない。しかし、相続が発生した際に登記がされない、ということも珍しくはない。相続登記が義務ではないことがその理由だ。登記はお金もかかるし、面倒なのでつい放っておかれてしまう。実は、この点も法改正され、来年、令和6年4月より相続に伴う登記が義務化される。とはいえ、現状すでに、登記上の所有者が死亡している、連絡先が不明などということも少なくない。土地の所有者を探すのがなかなか大変ということになる。

また、所有者が分かっていても、枝を切ってくれない、ということもあるだろう。高い木の枝などは業者に依頼しなければ切るのも難しく、お金もかかるだろう。枝は所有者に切ってもらえ、と言われても所有者がわからない、わかっても切ってくれない、では困ってしまう。

「こんな状況なら、自分で切ってしまっても相手も文句は言わないでしょう」と思うかもしれないが、個人間のケースばかりではない。例えば、所有者不明の土地から道路に伸びた枝や葉が信号を見えにくくしている、公園の美観をそこねている、というケースもある。道路や公園を管理する市町村としては、勝手に切断するという違法行為を犯すわけにはいかないのだ。

登記申請書イメージ

(写真/PIXTA)

枝を自分でも切ってもよい場合とは

そこで今回の法改正だ(やっと本題に入る。前置きが長いのが大学教員の悪い癖)。以下3つのいずれかに該当する場合は、越境した枝を切ることが法律上も可能になった。

①枝を切ってくれ、と催告したのにいつまでも切除されない。
②竹木の所有者が不明。または所有者はわかっているが連絡先が不明
③急迫の事情があるとき

①。まずは、竹木の所有者(通常は土地の所有者か使用者だろう)に枝を切ってくれ、と催告する。それでも「相当の期間」切除されないのならば、越境された側が枝を切ってもかまわない、と改正された。なるほど。でも「相当の期間」って…。いったいどのくらい我慢すればよいのだろう??

2週間が目安!?

これは「個別の事情を踏まえて判断」される。要はケースバイケースなのだ。ここらあたりが法律の頼りになるような、ならないような点と思うかもしれない。竹木の位置や大きさや枝の越境状況、土地の利用状況、竹木自体の財産的価値など様々な事情があるだろうから、一概には線を引けないのだ。

とはいえ、目安となるものがないわけではない。法案を審議した参議院法務委員会では、「竹木の所有者に枝を切除するために必要な時間的な余裕、時間的な猶予を与えるという趣旨からすれば、基本的には二週間程度は要することになるのではないか」という説明が政府参考人からあった(「第204回国会 参議院 法務委員会 第9号 令和3年4月20日」と検索すれば誰でも議事録を読むことができます)。「相当の期間」を判断する材料のひとつになるかもしれない(2週間経過すれば勝手に切ってよい、ということではないですよ。念のため)。

所有者を探さなければならない!?

また、②にあるように所有者が不明ならば、自分で枝を切ってしまってもかまわない。放っておくと伸び続けてしまうから、これはありがたいルールだ。とはいえあくまで「所有者が不明」「所有者がわかっても連絡が取れない」という場合の話だ。所有者を探す努力をしなければダメなのだ。

空き地や空き家など住んでいる人がいない場合では「所有者を探すのが面倒だな」と思うかもしれない。登記で所有者を調べるにもお金がかかる。登記に記載された土地の所有者が死亡している、住所が変わっている、ということもありうる。そのため根の場合と同様、自分で切れる、という案も検討されたようだが、それは採用されなかった。竹木所有者の権利を守るためだ。

③は差し迫った危険があるときだ。時間的余裕がないのであれば、枝を切って構わない。具体的には、「地震により破損した建物の修繕工事用の足場を組むために、隣地から越境した枝を切る」といった場合などを想定している。

費用は誰が負担するのか費用のイメージ

(写真/PIXTA)

竹木の枝や根の切り取りに専門業者に依頼しなければならない場合、当然、タダではない。この費用は誰が負担するのか。

枝や根の越境は、不法行為(他人の権利を侵害する行為)に該当し、損害賠償請求権が発生するから、竹木の所有者が負担することが筋だろう。法改正について議論した衆議院法務委員会でも政府参考人からそのような回答があった。しかし、費用負担については改正法でも明文化されていない。事案ごとに協議や調整を行う、ということになっている。
(このあたりの議論も国会の議事録を読むことができる。興味のある方は「第204回国会 衆議院 法務委員会 第6号 令和3年3月23日」で検索を)。

空き家となった実家は大丈夫?

今回の法改正によって、個人の宅地だけでなく、道路や公園など公共用地に、隣接地の竹木が越境してきた場合、新しいルールに基づいて枝を切り取ることが可能となった。

とはいえ、それは隣地所有者が切除しなかった場合の話だ。そもそもは、空き家となった実家などで近隣に迷惑をかけるようなことのないよう、所有者が管理すべきものなのだ。今は利用する予定がないから、といって放っておく、隣地に枝が伸びている、枯れ葉もたくさん落ちている、という事態も珍しくない。土地の所有者である以上、責任をもって管理しなければならない。さらに言えばお隣さんと良好な人間関係を築いておくことも大切だろう。円満な人間関係があれば、法律など持ち出す必要はないのだから。

約3人に1人が「近隣トラブルの経験あり」

日本法規情報(株)はこのたび、「近隣トラブルに関するアンケート調査」を行った。調査期間は2018年12月4日~12月18日。558人(男性278人、女性280人)より回答を得た。
それによると、これまでに「近隣トラブルに遭った経験がある」と回答した方は28%、「自分はないが、身の回りで聞いたことはある」は33%、「自他共にない」は39%。「経験がある」と「自分はないが、身の回りで聞いたことはある」を合わせると61%となり、過半数以上が近隣トラブルに遭った経験があるということが分かった。

経験したトラブル(複数回答)は、「騒音(子どもの泣き声、ペットの鳴き声などを含む)」が30%、「境界線の問題」が17%、「ゴミの不法投棄、ポイ捨て」13%、「理由が分からないが無視する、難癖をつける人がいる」11%、「その他」29%。「騒音」における被害が最も多い。また、前回調査(2016年)と比べると10%増加しており、「騒音」によるトラブルは増加傾向にあるようだ。

トラブルについて誰かに相談しましたか?では、「相談していない」が31%、「警察などの公的機関」が17%、「親・兄弟等」13%、「本人に直接相談した」11%、「信頼できる友人」8%、「士業などの専門家」8%、「その他」12%。3割超が誰にも相談していないことが明らかとなった。

相談をしなかった理由は、「余計トラブルになりそうだったので」が49%と約半数。「近隣なので、顔を合わせた時に気まずいので」が25%、「ご近所同士、迷惑をかけるのはお互い様なので」8%、「相手が近隣の重鎮的な存在(権力をもった存在)であったので」4%、「その他」14%。およそ半数の人が、相談しないことで更なるトラブルを回避しているようだ。

ニュース情報元:日本法規情報(株)

住まいのトラブル調査【購入編】購入物件で一番多いトラブルは「近隣トラブル」!

住まいのトラブル調査シリーズ。賃貸編に続き、購入編です。賃貸住宅とトラブル内容は異なるのか、トラブルにあったことのない人はどんな回避法を行ったのかなどを紹介します。また、物件探しや契約時、内覧までの期間に経験した具体的なトラブル内容を大公開。賃貸編との違いもチェックしてみてくださいね。
購入物件では「近隣トラブル」がトップ

前回の賃貸編では、「物件の欠陥や設備の故障などのトラブル」(67.7%)がトップ、次いで近隣トラブル(61.0%)が多い結果だったトラブル内容。購入物件の場合には、どのような結果となるのでしょうか。

結果は、「近隣トラブル」(14.8%)が1位、「物件の欠陥や設備の故障などのトラブル」(10.7%)が続きました。購入物件の場合、町内会への参加やゴミ出しなど、周囲のご近所さんと付き合いややりとりが多くなります。そのため、賃貸物件では2位だった近隣トラブルが購入物件ではトップなのかもしれません。また、物件の欠陥、設備の故障に関しては、購入物件は事前によく確認してから契約に至ることが多いので、賃貸物件よりも数が少ないのでしょう。
その他、購入物件ならではのリフォームやリノベーションでのトラブルも6.2%ありました。

トラブルのなかでは近隣トラブルが1位だが、各項目「経験したことがない」と回答した人が8割を超えた(出典/SUUMOジャーナル編集部)

トラブルのなかでは近隣トラブルが1位だが、各項目「経験したことがない」と回答した人が8割を超えた(出典/SUUMOジャーナル編集部)

一方、「トラブルを経験したことがない」と回答した人に、トラブル回避のために気を付けていたことを聞いてみると、以下のようなコメントが挙げられました。

【購入前に気を付けたこと】
・購入前に、マンションに住んでいる人がどのような人なのかなど情報収集を行った(55歳・男性)
・住宅関係の知人にいろいろアドバイスをもらった。防犯対策にも気をつけたい(49歳・男性)
・トラブルについて、ネットで調べた(45歳・男性)
・口頭でやり取りしない、必ず文書で残す(50歳・女性)
・信頼できる会社、信頼できる担当者と交渉した(47歳・女性)
・購入するときに、その土地柄、雰囲気などを不動産会社に聞き、理解した上で購入を決めた(44歳・女性)

【購入後に気を付けたこと】
・近所付き合いは、こまめにする(54歳・男性)
・日ごろから顔を合わせたら挨拶をしておく(46歳・男性)
・夜はテレビの音を小さめにしたり、子どもに騒がないように言い聞かせていた(37歳・男性)
・事前にご近所に挨拶回りをした(58歳・女性)
・多少のことは我慢する。生活音などに気を付ける(54歳・女性)
・近所の人に不快な思いをさせないように騒音やペットの臭いなど 気を付けている(47歳・女性)

物件探し、契約時、内覧でのトラブルは「納期遅れ」「施工ミス」など

どんなシチュエーションにおいてもトラブルは起こり得ますが、物件探しや契約時、建設中、内覧のトラブルは、事前に知っておけば防ぐこともできそう。具体的にどんなトラブルがあったのかチェックしてみましょう。

【物件探しのとき】
・近隣建物やその付近で、違法建築で建築中のものがあった(54歳・男性・新築マンション)
・希望の物件を紹介してくれなかった(49歳・男性・中古マンション)
・マンション購入を決めて、手続き中に売り切れたということが何度かあった(34歳・女性・中古マンション)

【ローン契約、物件契約時】
・ローン仮審査の時仲介業者が報告を怠ったため延期になった(40歳・男性・中古マンション)
・地下埋設物処理(57歳・男性・中古一戸建て)
・10年以上働いていると思っていたが、ローンを組む段階で実際は10年以内だったので、予定していたローンの審査が通らなかった(49歳・女性・新築マンション)

【建設中】
・隣地の所有者にある権利を主張された(49歳・男性・新築マンション)
・工程の遅れで、子どもの進学に影響があった(48歳・男性・中古一戸建て)
・境界の塀をつくるのに、合意が得られなかった(58歳・女性・中古一戸建て)

【内覧のとき】
・カウンターキッチンにひびが入っていた(58歳・男性・新築マンション)
・排水が漏れた(52歳・男性・新築一戸建て)
・造り付けの棚がゆがんでいた(37歳・女性・新築マンション)

購入物件では、物件探しから始まり、契約、建設、内覧まで、実際に住むまでにいくつもの工程があるため、トラブルが起こる確率も賃貸物件よりも高くなる可能性があります。しかし、実際に起こったトラブルを事前に知っておくことで避けられるトラブルも多いはず。これから物件購入を検討されている方は、今回のトラブル事例を参考にして、面倒なトラブルに巻き込まれることがないよう、快適な新生活のスタートに役立ててくださいね。

●調査概要
・[住まいのトラブル調査 購入編]より
・調査期間:2018年3月12日~13日
・調査方法:インターネット調査(ネオマーケティング)
・対象:全国の購入物件(一戸建てまたはマンション)にお住まいの20歳~59歳の方
・有効回答数:男女600名(新築一戸建て150名、中古一戸建て150名、新築マンション150名、中古マンション150名)

自治体によって違う! 「ごみ出しのルール違反」はトラブルの元 賃貸管理のプロに聞く[10]

ご近所に対する不満として登場することが多い「ごみ出しのマナー」。実は、ごみに関するクレームを言ってくる方のほとんどは匿名です。他人の捨てたごみに関して、誰が捨てたか監視したり、中身をチェックしたりすることに抵抗のある方が多い証拠だと思いますが、クレームを言う側の「口うるさい人だと思われたくない」という気持ちがこの問題を厄介にしています。
みんなが嫌な思いをしないためにも、どんなときにごみに関するクレームが発生するのかを学び、予防に努めるのが得策だと思います。それでは、実際に発生したごみクレームの事例を見ていきましょう。

【連載】賃貸管理のプロに聞く
賃貸仲介・管理の現場に20年以上携わっているプロが、賃貸物件に住む人から相談の多い事例と解決方法をご紹介する連載です。ごみ出しのクレームが発生する理由は、自治体ごとにルールが違うから

これまで連載では、ご近所トラブルが発生しやすいのは「新しく引越してきたタイミング」であると書いてきましたが、「ごみ出し」に関するトラブルも同じです。

これは、ごみ出しのルールが自治体ごとに違うことが大きな原因となっていると思います。

まず多いのは、分別の間違いによるご近所トラブルです。ごみの分別に関しては、分別するごみの種類が多い地域と少ない地域との差がかなりあるため、きちんと分別しているつもりでも実は間違っていることが多々あります。

東京23区で見ても、例えば足立区は「燃やすごみ、燃やさないごみ、資源ごみ、粗大ごみ」の4種類の分別で、資源ごみは「古紙、びん、缶、ペットボトル」に分かれており、新しく引越してきた人にも比較的分かりやすくなっています。

一方で、リサイクルに力を入れている練馬区では、一般的な分類に加えて、古着・古布や使用済み食用油、なべやフライパンなどを区立施設で回収していたり、携帯電話などの有用金属をリサイクルしたり、家庭用のインクカートリッジをプリンターメーカーと協力してリサイクルするなどしています。なんと、在宅医療で出る注射針まで薬局で回収していると言うから、その意識の高さに驚きです。

例えば練馬区から足立区への引越しならば問題は起こりにくいのですが、逆のケースだった場合どうでしょうか。今までと同じように分別して出していたら当然目立ってしまいますし、回収されずに集積所に残されればクレームの原因になってしまいます。

「ごみ出しをする時間」にもルールが!

完璧にごみを分別してもクレームになってしまうケースもあります。その原因は、ごみ出し時間のルール違反でした。

分別のルールだけでなく、ごみを出してよい時間帯も各自治体で異なります。ある方は「前日の夜に出してよい地域」から「当日の朝にしか出してはいけない地域」へと引越ししたため、夜にごみを出してご近所の方に見咎められてしまいました。

また、最近は24時間ごみ出し可能なマンションが人気ですが、比較的規模が大きく管理費も高めのマンションでないと導入は難しいものです。こういう便利なマンションに慣れていて、その感覚のまま地方転勤などで24時間ごみ出しができない賃貸に引越したケースなどは、ご本人も大変かもしれません。

なぜなら24時間ごみ出し可能な物件は、入居者さんがマンション専用のごみ庫に出したごみを、収集日に合わせて作業員の方が表に出してくれており、間違った分別をやり直してくれる場合もあるから。

そんな至れり尽くせりの暮らしに慣れてしまっているためか、ごみ出しに関してあまり知識が無い、といったケースもあるのです。するとごみ出しの時間に決まりがあることを知らなかったり、知っていても「ちょっとくらいいいか」と夜中に出してしまったりしてトラブルになることがあります。

夜にごみを出したらだめなのはなぜ?

では、なぜごみを夜のうちに出してはいけない地域や物件があるのでしょうか。それにはいくつか理由があります。

生活スタイルが多様化して暮らしのサイクルが人によって異なるため、ごみを出したい時間も人それぞれ。ただでさえ一週間のうち半分以上が何らかのごみ収集の日に当たるのに、みんなが自由な時間にごみを出してしまうと、ごみ集積所はいつでもごみがあるような状況になってしまいます。

割れ窓理論(割れた窓をそのままにしていると、そこにはごみが捨てられ、環境が悪化し、犯罪が増える)をご存じの方も多いと思いますが、われわれ管理会社の経験から言っても「ごみがさらなるごみを呼ぶ」という法則が確かにあると感じています。ごみが常にある状態にしておくと、不法投棄が増え、周辺が汚れ、環境が悪化していくのです。

また、地域によっては長時間置いておくと猫やカラスに荒らされてしまうこともあります。もっと困ることには、長時間置かれているごみは放火の原因にもなるのです。周辺の住環境を保つためにも、ごみ集積所の近くに住んでいる人の安全のためにも、ごみ出しの時間帯はきちんと守りたいものです。

本当に迷惑なのは不法投棄!!

これまで小さなルール違反の話をしてきましたが、私たち管理会社が一番困っているのは、「粗大ごみの不法投棄」です。

不法投棄されやすい賃貸住宅では防犯カメラを設置したり、ごみストッカーを設置したりして捨てられにくくするなどの対策を取っています。本来は賃貸住宅の住環境を安全に保つための防犯カメラが、入居者さんへの疑いの目として利用されることはとても残念ですが、物件によっては入居者さん自身による不法投棄が多いところがあることも事実なのです。

不法投棄が頻発するのは引越しで退去するタイミングが多いため、防犯カメラを見てみるとせっせと粗大ごみを運んでいる引越し予定の人が映っていることがあります。また、普段から不法投棄を苦々しく思っている入居者さんからの目撃証言で犯人が発覚したりもします。

犯人が発覚したらもちろん注意するわけですが、粗大ごみは事前申し込み制の自治体が多く、申し込んでから回収までに数週間掛かる場合もあり、「引越し日に間に合わなかったのでつい……」と言われることもしばしば。注意されて嫌な思いをしないためにもきちんと正規の捨て方で捨ててほしいものです。

また、引越し当日に粗大ごみ回収の業者さんを呼んで、「値段が高すぎる!」とトラブルになっている人を時折見かけます。急ぎで依頼したいときは、自治体の粗大ごみ受付センターに一度相談してみましょう。もしくは私たち管理会社に事前に連絡をいただければ、リフォーム業者さんに粗大ごみ回収を依頼できる場合もあります。しかし、いずれの場合も自治体の回収より高額になりますので、前もって計画を立てて粗大ごみを捨てるのが一番です。

【画像1】粗大ごみを運ぶ住人(イラスト/藤井昌子)

【画像1】粗大ごみを運ぶ住人(イラスト/藤井昌子)

ごみをきちんと分別してルールを守っている人は、少しでも違反をしている人のことをとても厳しく見ているケースが多いように感じるかもしれません。しかし、ごみ出しのマナー違反は他の入居者さんやごみ集積所を共有している近隣の方に迷惑を掛ける行為なので、怒るのも無理はないと感じます。

なぜなら、ひどい状態が続けば、何らかの対策を取らざるを得なくなり、管理費が値上げになってしまう可能性もあるのです。また、ごみ集積所が回収されないごみでいっぱいの物件は、入居募集をしても決まりにくく、物件自体の価値も下がってしまうため、大家さんやわれわれ管理会社にとっても本当に困る行為です。

お互いに気持ちよく暮らすために、お住まいの地域や物件のルールをしっかり確認して、きちんとごみを出してくださいね。

谷 尚子谷 尚子 賃貸住宅での暮らし応援団
独立系の賃貸管理会社ハウスメイトパートナーズに勤務。仲介・管理の現場で働くこと20年超のキャリアで、賃貸住宅に住まう皆さんのお悩みを解決し、快適な暮らしをお手伝い。金融機関・業界団体・大家さんの会等での講演多数。大家さん・入居者さん・不動産会社の3方良しを目指して今日も現場で働いています。●「賃貸管理のプロに聞く」記事一覧
・賃貸管理のプロに聞く[1] 入居後のトラブルで一番多い「騒音」問題の解決方法とは
・賃貸管理のプロに聞く[2] 一人暮らしの女性必見!「のぞき・ストーカー・痴漢被害」を防ぐ方法とは
・賃貸管理のプロに聞く[3] 意外と多い「漏水」被害。被害者、加害者になったらどうする?
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・賃貸管理のプロに聞く[5] 火事になってからでは遅い! 賃貸暮らしの人に必要な防災の知識とは
・賃貸管理のプロに聞く[6] 誰もが避けたい「ご近所トラブル」。発生にはお決まりのタイミングが!?
・賃貸管理のプロに聞く[7] 住人の“暗黙ルール”を見極めよ! 駐輪場でのトラブルを防ぐコツとは
・賃貸管理のプロに聞く[8] 他人にとっては非常識!? 「バルコニー」はトラブルの種だらけ
・賃貸管理のプロに聞く[9] 私物を放置していない? 「共用廊下」でクレームが起こるメカニズム

私物を放置していない? 「共用廊下」でクレームが起こるメカニズム 賃貸管理のプロに聞く[9]

共用部の使い方で嫌でも目についてしまうのが共用廊下や階段です。

私たち管理会社にも苦情が多く寄せられる部分なのですが、すぐには対処できないのが実は厄介なところ。なぜなら、騒音や自転車が止められないなどの問題と違い「今自分に直接迷惑がかかって困っている」というよりは、「危険な気がする」「見ていて何となく不愉快」というレベルから発展していくことが多いからです。

今回は共用廊下にまつわるクレームの発生と、そのクレームが悪化するメカニズムまで見ていきましょう。【連載】賃貸管理のプロに聞く
賃貸仲介・管理の現場に20年以上携わっているプロが、賃貸物件に住む人から相談の多い事例と解決方法をご紹介する連載ですそもそも、共用廊下に私物を置いてもいいの?

マンションやアパートの共用廊下に、私物を置く方がいらっしゃいます。遭遇することが多いのは、子ども用のベビーカーやおもちゃ、キックボードや自転車など。大人が使うものだと、レジャーに使う道具や、車や自転車関連の道具など。傘立てや植木鉢などを置いている方も見かけます。室内に置くには場所を取ったり汚れたりする、という種類のものが共用廊下に置かれがちです。

そもそも共用廊下に私物を置いていいのかと言うと、答えはNOです。消防法や自治体の火災予防条例にも規定があるため、消防署の査察や消防用設備等点検の際に、「共用廊下や階段に置いている物を撤去してください」と指摘されることがあります。地震や火災が発生した際に避難の邪魔になったり、火が燃え移って避難路がふさがれたりすることがないようにするためです。

邪魔にならないなら、私物を置いてもいいの?

では、避難の邪魔にならなければ私物を置いてもいいのでしょうか。

「傘立てや自転車の空気入れなど小さなものをちょっと置くくらいなら、うるさく言わなくてもいいのでは?」と思う方も多いと思います。玄関ドアが廊下から少し奥まっている建物などは、そこにものを置いても廊下自体の幅には関係なく、避難の邪魔にはならないように思えますよね。

しかし、いざ火災が発生すると、そこに置いたものが廊下側に倒れないとも限りません。照明が消えて暗くなったり煙が充満したりするなかで、誰かがそれにつまずいてけがをしたり、逃げ遅れてしまったりしたとしたら、それはとても大きな問題です。

それなら、エアコンの室外機置場などの上に、廊下側にはみ出さないように倒れないものを置いた場合や、一番端の部屋で廊下部分が他の方の避難通路になっていない場合は、専用スペースとしてものを置いてもよいのでは? と思う人もいるでしょう。

実はこれもNGです。これはこれで「見苦しい」と感じる方や「子どもが触ったら危ない」と心配する方からクレームが来ることがあります。

そもそも、クレームが発生していなかったとしても、共用部分の使い方に決まりがある場合はNGです。たいていの賃貸借契約書には、階段や共用廊下に物を置くことを禁止する条文が入っています。気になった方は、チェックしてみましょう。

「もうちょっと……」、が思わぬクレームに発展

クレームを言って来られる方の話をお聞きすると、たいていの方は「前々から気になっていたが、だんだん置かれるものが増えてきた」とか、「ずっと放置されているので汚い、不要なごみを放置しているのではないか」などと仰います。

私の過去の経験で「これはさすがに見苦しいし非常識だ」と思ったのは、共用廊下で洗濯物を干していた方です。現場に見に行くと、廊下の手すりだけでなく廊下に面している共用階段の手すりにまで洗濯物がずらり。手すりだけでは足りなかったのか、エレベーター前の広くなっているスペースに物干しざおが渡してあり、運動靴までぶら下がっている始末です。

【画像1】共用廊下に洗濯物を干す居住者(イラスト/藤井昌子)

【画像1】共用廊下に洗濯物を干す居住者(イラスト/藤井昌子)

クレームを言って来られた方にお聞きしたら、最初は部屋の前だけに干されていたのが、日を追うごとにだんだんと洗濯物が増えてきて今の状態になったとか。「恥ずかしくて晴れた日には人を呼ばないようにしている」と言われてしまいました。

これでは、もし募集中の空室を見に来た方がいても決まるわけがありませんので、安全の問題だけでなく、大家さんの賃貸経営にも迷惑がかかることになります。

こんなにひどい例にはめったに遭遇しませんが、共用廊下に物を置いていてご近所からクレームになるときには“ある傾向”があります。それは、「注意されないし、もう少しくらい大丈夫かな?」と少しずつ置くものを増やしたり、使わないまま放置したりと“行為がエスカレート”してきたときです。悪気なくやってしまう方がほとんどなので、廊下に置いてあったものを片付けて「すみませんでした」と謝って終わらせたいですよね。

しかしながらクレームを言って来られる側は「うるさいと思われると嫌なので、自分が苦情を言ったと相手に分からないようにしてほしい」と匿名を希望される場合がほとんど。注意された方は誰に言われたのか分からず謝ることすらできません。

同じ階にお住まいの方から不快に思われていたのに、その相手が誰だか分からないというのはやはり気分が良いものではありませんよね。共用廊下に私物を置いている方は、他人から指摘される前に、わが身を振り返り、気を付けたいものです。

安心安全快適な住環境は、みんなでつくるもの

「ちょっとだけ」の気持ちで置いたものを他の人が見て「あのうちも置いているから私も置こう」と置く人が増え、「注意されないからもう少しくらい増えても大丈夫だろう」と置く量も増えていくのが、この問題の悪化のメカニズムです。

そして、われわれ管理会社がとても困るのが、私物の放置を注意したときに、「今までもずっと置いていたのに今さら注意されるのはおかしい」と言われたり、「あの人も私物を置いているのに私だけ注意されるのはずるい」と反論されてしまったりすることなのです。

共用廊下や階段に私物を置かないのは、お住まいになる方全員の安全のためや、住環境を守るためなので、おかしい、ずるいという議論になるとわれわれも本当に困ってしまいます。

置くものの種類や量や置いている期間について、どこまでが良くてどこからがダメかという決まりをつくるのは本当に難しく、入居者さん同士でクレームになった場合は、われわれも「全てダメですよ」と言わざるを得なくなります。

共用廊下は日常的に目に付きやすい部分なので、自分は普通に使っているつもりでも、もしかしたら苦々しく思っている人がいるかもしれません。

心当たりのある方はクレームになっていないうちに気をつけていただけると、ご自分も嫌な思いをしなくて済むと思います。逆に、他の人の置いている荷物が増えたり起きっぱなしになっていたりしていることに気がついた方は、ひどくなってからでは解決に時間がかかってしまうので、ぜひお早めに管理会社や大家さんに教えてくださいね。

お互いが節度をもって暮らすこと、そして、自分は良くても他人の迷惑になったり不快に思われたりする可能性があるという視点をもつことが、共同住宅で気分良く暮らす秘訣だと思います。

谷 尚子谷 尚子 賃貸住宅での暮らし応援団
独立系の賃貸管理会社ハウスメイトパートナーズに勤務。仲介・管理の現場で働くこと20年超のキャリアで、賃貸住宅に住まう皆さんのお悩みを解決し、快適な暮らしをお手伝い。金融機関・業界団体・大家さんの会等での講演多数。大家さん・入居者さん・不動産会社の3方良しを目指して今日も現場で働いています。●「賃貸管理のプロに聞く」記事一覧
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・賃貸管理のプロに聞く[8] 他人にとっては非常識!? 「バルコニー」はトラブルの種だらけ

他人にとっては非常識!? 「バルコニー」はトラブルの種だらけ 賃貸管理のプロに聞く[8]

共用部なのに、ついつい「自由に使っていい場所」と思ってしまいがちなのがバルコニー。以前この連載で、「避難通路なので邪魔になるところに物を置いてはいけない」という話をしましたが、それ以外にもバルコニーの使い方がトラブルの元になるケースがいっぱいです。実際に発生したクレームの事例から、ご近所トラブルを未然に防ぐ方法を学びましょう。【連載】賃貸管理のプロに聞く
賃貸仲介・管理の現場に20年以上携わっているプロが、賃貸物件に住む人から相談の多い事例と解決方法をご紹介する連載です使うも使わないも自由じゃないの? バルコニーの盲点とは

バルコニーは「頻繁に出る」という人と「全く出ない」という人にはっきり分かれます。まずは、「全く出ない」タイプの入居者さんのお部屋で実際に起こったトラブル事例をご紹介します。

台風で大雨が降った日のこと、管理会社の24時間コールセンターに一本の電話がかかってきました。窓から雨の様子を見ようとしたら、バルコニーに大量の水がたまって今にも部屋の床の高さまで届きそうな状況とのこと。このまま水が部屋に入ってきてしまったら大変です。排水不良が起こっていることは間違いないので、急いで建築図面を調べました。すると、そのマンションのバルコニーには、排水ドレン(雨水などを排水する管や溝のこと)が全部屋になく、同じフロアに2カ所だけあることが分かりました。該当するお部屋の方にお電話しましたがつながらなかったため、空室だった隣の部屋から覗いてみることにしました。

なんと、ものすごい量の枯葉とほこりが絡み合って排水ドレンをふさいでいたのです。取り急ぎ、持って行った傘を隔壁版の隙間から突っ込み、柄(え)の部分で詰まっているものをかき出しました。すると、ゴーッ! と勢いよく、そのフロアのバルコニー全体にたまっていた水が流れ出し、床上浸水を防ぐことができました。

翌日、排水ドレンのある部屋の方とお話をすると、バルコニーには入居してから一度も出たことがなく、まさかそんなに枯葉やゴミがたまるとは思っていなかったとのことで、大変驚いていらっしゃいました。

ここまでひどいケースは滅多にありませんが、バルコニーの掃除を怠っている人がいると、雨が降ったときに水がたまり、ゴミやタバコの吸い殻がプカプカと流れてくる、という苦情が時折出てきます。自分の部屋のベランダやバルコニーに排水ドレンがある方は、ときどき掃除をするようにしてくださいね。

晴れた日には布団を干したい! でも、まさかのクレームが……!

天気のいい日は「バルコニーに布団を干したい!」という方が多いはず。また、限られたバルコニースペースなので、物干し竿だけでなく、バルコニーの手すり部分を使って、布団を干すという方もいると思います。でも、これが原因でクレームになることがあるのです。

あるとき、「上の部屋の方の布団の干し方が我慢ならない」という内容の電話がかかってきました。「まずは写真を見てほしい」と言われたので見てみると、なんと上階から垂れ下がった毛布が柄もはっきり分かる状態で写っていました。上階の方は毛布を太陽にたくさん当てたいがために、ぎりぎりまで垂らしていたのでしょう。

すぐに上の方にお話をしました。最初はピンと来ていないようでしたが、写真をお見せしたら納得され、下の方に謝罪して事態は収まりました。

干し方に関していうと、布団たたきによる音やほこりもクレームになります。最近では「布団をたたいても意味がない」という説もあり、「布団をたたく」という行為は、人によって常識が大きく違うようです。引越したばかりのときは、周りに住んでいる人の布団の干し方をチェックしてから行うのが無難だと思います。

その他、布団干し自体が禁止されていたり、禁止とまでは行かなくても非常識な行為であると思っている人が多い地域や物件もあります。私の経験では、港区や目黒区などいわゆるおしゃれなエリアに多いルールや慣習のようです。他のエリアから引越してきて布団を干したら、大家さんや近隣の方から「みっともない!」とクレームを言われたという話しも時々聞きます。

布団だけではありません。洗濯物についても過去に一度だけですが「派手な色のTシャツを外から見えるように干すなんて、お宅の管理しているマンションの住人は何を考えているのか!」と、近隣にお住まいの方から怒られたこともあります。

私たち管理会社は、そういった特殊なルールがある賃貸物件に入居する方には事前に説明するようにしています。しかし、説明を受けた本人以外のご家族が、悪気なく布団を干してしまうケースもあります。入居規則はご家族全員で共有するようにしてくださいね。

タバコの煙に、ゴキブリも!? ほかにもあるクレーム事例

ほかには、タバコに関するクレームも多いです。煙の臭いが洗濯物や布団につく、煙が換気口から室内に入ってきて迷惑、タバコの吸い殻が隣のバルコニーから転がってくるなど、パターンはさまざま。喫煙者は、隣のバルコニーに洗濯物や布団が干されてないか、赤ちゃんがいるご家族ではないかなどに気を配っておいたほうが無難です。お隣と顔を合わせたときに、「バルコニーでタバコを吸うことがありますが、何か気になることがあれば言ってくださいね」などと声をかけておくのもご近所トラブルを防ぐいい方法です。

【画像1】バルコニーでタバコを吸う男性(イラスト/藤井昌子)

【画像1】バルコニーでタバコを吸う男性(イラスト/藤井昌子)

その他には、バルコニーに出しているペットの鳥かごから羽が飛んで来て汚いというクレームや、上階の人が植物の水やりをする度に、その水が下階に垂れて迷惑している、などのクレームもきます。段ボールを捨てるのが面倒でバルコニーにためている人がいたときは、段ボールが雨で湿ってゴキブリが大量発生したことも。

引越しのときに処分しきれなかった家具などの不要物を、バルコニーにぎっしり置いていたご家族は、「これではいざと言うときに非難はしごが使えない! 命の危険があるのになんて非常識な家族なんだ!」と上階の方に言われ、引越し早々にもかかわらず、気まずくなって早々に退去されてしまったこともあります。

これまでクレームになりうる事例を挙げてきましたが、クレームを言った方が神経質になりすぎているケースももちろんあります。困ったことがあるときは、ぜひ私たち管理会社に相談してくださいね。

「バルコニーの広さが気に入ってお部屋を決めた」と言われると、私たち管理会社や大家さんはうれしいものですが、実はバルコニーはクレームになりやすい場所です。

それは、バルコニーを大切な空間として使う方もいれば、ごみや不要物の置き場と考える方もいるように、きっと感覚の違いが現れやすい場所だからなのでしょう。「自分の常識と他人の常識は違う」という意識をもつことが、ご近所トラブルを防ぐ第一歩だと、管理会社の仕事をするなかで日々感じています。

谷 尚子谷 尚子 賃貸住宅での暮らし応援団
独立系の賃貸管理会社ハウスメイトパートナーズに勤務。仲介・管理の現場で働くこと20年超のキャリアで、賃貸住宅に住まう皆さんのお悩みを解決し、快適な暮らしをお手伝い。金融機関・業界団体・大家さんの会等での講演多数。大家さん・入居者さん・不動産会社の3方良しを目指して今日も現場で働いています。●「賃貸管理のプロに聞く」記事一覧
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