ニューヨーク人情酒場 寿司職人が攻略対象の乙女ゲー状態な職場! サイケデリック神絵師ヤスさんの琴線に触れたのはあのアーティスト

一見華やかな大都会、ニューヨークでの暮らし。しかし、生活にはお金がかかる!
生活を維持するために多くの移民が働く場所、それは飲食店。
単身やってきたニューヨークで飛び込んだ先は大衆酒場。愉快な同僚と寿司との出会い、そして別れ。
仕事って、生活って、幸せってなんだろう?そんなことを考えながら寿司を巻く日々のこと。

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寿司職人だらけの乙女ゲーみたいな職場

パラグアイ人のオーナー・ルイスが職場に抱えている日本人寿司職人は3名。みなさんとても優しくて話しやすい方ばかり、そして全員が職歴30年以上の大ベテラン。
そんな偉大な方々にもかかわらず、かなりフランクでお互いを思いやっており、職場はとても和やかな環境です。それにしても個性のベクトルが全く違う方向に行き過ぎて、見方によっては乙女ゲーじみた環境ですね(ただし全員60代以上)。

NYにおける日本人コミュニティはとても狭く、同じ業種や年代でお互いを助け合っている節があります。
一度業界に入ると繋がりができるので、仕事を一旦離脱してもその後また同じ業界で何か紹介してもらえるということが大いにあります。
逆に、すごく狭いコミュニティなので噂話は一瞬で広がってしまうともいえるため、日頃の行いには注意が必要です。
まあ、目立った悪いことをしない限りは生きていけると思いますが。

サイケデリック寿司職人ヤスさん

NYで寿司一筋40年以上のヤスさんをブルピジジイとして紹介してきましたが、絵描きなこともあってか、そこはかとなくサイケデリックです。主な議題は宇宙、自然、そして新しい学校のリーダーズ。新しいものに目が向いていますね!

寿司職人さんはみんながみんなトシさんのようにフレンドリーな印象というわけではありませんが、あらゆる意味でヤスさんの存在はかなり稀有(けう)だと思います。それにしても前の職場で一緒に働き始めた時はこんなに長い付き合いになるとは思っていなかったなぁ。

ヤマモトレミ

作者:ヤマモトレミ
89年生まれ。福岡県出身。2017年、勤めていた会社の転勤でニューヨークに移住。仕事の傍ら、趣味でインスタグラムを中心に漫画を描いて発表していたところ、思った以上に楽しくなってしまい、2021年に脱サラし本格的に漫画家としての活動を開始。2022年にアメリカで起業し個人事業主になりました。アメリカで食っていくために寿司をやっていくことを決意し、週4ブルックリンで寿司をつくっています。

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ニューヨークのおうち訪問。米仏クリエイター夫妻が子ども達と暮らす、本に囲まれたブルックリンの築140年アパートメント

アメリカ・ニューヨークのマンハッタンからイースト川を越え、南東部に広がるブルックリン。ゆったりとした自由な空気が流れ、モノづくりも盛んで、クリエイターやアーティストが多く移り住んでいる場所です。ギャラリー、壁画、若手起業家が興したブルワリーやウイスキー醸造所など、クリエイティブでおしゃれなものがあふれています。ブルックリン美術館や植物園、森のように広くて緑豊かなプロスペクトパーク(Prospect Park)など自然や文化的施設にも恵まれ、閑静な住宅街はファミリー層に人気です。プロスペクトパークから目と鼻の先にある、3階建ての築140年になる歴史的なアパートメントビル最上階に住むクリエイター一家のお宅を訪れました。

フランス人はブルックリンがお好き?

市民の憩いの場であるプロスペクトパークの隣に面する閑静なパークスロープ地区の一角に、クリエイターのファミリーが暮らすアパートメントがあります。写真史家&インディペンデント・キュレーターとして活動するポリーヌ・ベルマール(Pauline Vermare)さんと、夫でビデオ・プロデューサーのマーク・レッサー(Marc Lesser)さん、10歳の長男サムくん、そして猫のウーディーくん(16歳)&犬のアーチーくん(4歳)が仲良く暮らす明るいお部屋です。

リビングルームは窓が多くて明るく、大きなカウチを置いてもまだスペースが余りあるほどゆったりと広いスペース。右側にもさらに小部屋が続く。築140年のアパートメントだが、室内はリノベーションされしているので年月や古さはまったく感じない(写真撮影/Masao Katagami)

リビングルームは窓が多くて明るく、大きなカウチを置いてもまだスペースが余りあるほどゆったりと広いスペース。右側にもさらに小部屋が続く。築140年のアパートメントだが、室内はリノベーションしているので年月や古さはまったく感じない(写真撮影/Masao Katagami)

ポリーヌさんはICP(ニューヨークの有名な写真博物館)の元キュレーターで、現在はブルックリン美術館の写真キュレーター。夫マークさんと長男サムくんとこの家で暮らし始めて6年。「アーチー(犬)は4年前にテキサスからアダプト(保護)。16歳のウーディー(猫)はフランス出身のフランス人よ」 (写真撮影/Masao Katagami)

ポリーヌさんはICP(ニューヨークの有名な写真博物館)の元キュレーター。夫マークさんと長男サムくんとこの家で暮らし始めて6年。「アーチー(犬)は4年前にテキサスからアダプト(保護)。16歳のウーディー(猫)はフランス出身のフランス人よ」 (写真撮影/Masao Katagami)

「光がふんだんに差し込む明るいお部屋でとても気に入りました」。ポリーヌさんは夫と家探しをしていた際、この家に足を踏み入れた時の印象をそう振り返ります。「あとは細部の内装ね。レトロなモールディング(※)やガラスの柄などのディテールが昔ながらの技法で芸術的でとても繊細なデザインなんですよ」

※モールディング…壁や天井、ドアや家具など内装の細部に施した帯状の装飾のこと。床と壁の継ぎ目の巾木など枠どりを装飾したり、部材の接合部を美しく魅せる効果がある

ところどころにあるモールディング、白壁にかけられた絵画や写真、暖炉や観葉植物などの配置やバランスが絶妙。「このお家を気に入った理由は明るさとレトロな装飾なの」(ポリーヌさん)(写真撮影/Masao Katagami)

ところどころにあるモールディング、白壁にかけられた絵画や写真、暖炉や観葉植物などの配置やバランスが絶妙。「このお家を気に入った理由は明るさとレトロな装飾なの」(ポリーヌさん)(写真撮影/Masao Katagami)

キッチンとリビングの間のダイニングスペース(写真撮影/Masao Katagami))

キッチンとリビングの間のダイニングスペース(写真撮影/Masao Katagami)

ダイニングスペースのドアのガラス窓の柄。ほかにもモールディングやステンドグラスなど細部のディテールが美しい(写真撮影/Masao Katagami)

ダイニングスペースのドアのガラス窓の柄。ほかにもモールディングやステンドグラスなど細部のディテールが美しい(写真撮影/Masao Katagami)

「公園、子どもの学校、地下鉄の駅これらすべてが2、3ブロック圏内でとても便利な場所なんです。迷いなくこの家は運命だと思いました」(ポリーヌさん)

アパートからすぐそばにある大自然豊かな市民の憩いのプロスペクトパーク 。マンハッタンのセントラルパークと同じ設計者、フレデリック・ロー・オルムステッド(Frederick Law Olmsted)とカルバート・ヴォー(Calvert Vaux)によるもので、どこかセントラルパークと似ている。子育てや犬の散歩にも適した環境 (写真撮影/Masao Katagami) 

アパートからすぐそばにある大自然豊かな市民の憩いのプロスペクトパーク 。マンハッタンのセントラルパークと同じ設計者、フレデリック・ロー・オルムステッド(Frederick Law Olmsted)とカルバート・ヴォー(Calvert Vaux)によるもので、どこかセントラルパークと似ている。子育てや犬の散歩にも適した環境 (写真撮影/Masao Katagami) 

フランス出身、日本育ち→NY在住

運命の出逢いはこれだけではありません。

フランス・パリで生まれ、リヨンで育ったポリーヌさん。家庭の事情で10歳から14歳まで東京の笹塚で、さらに14歳から17歳まで香港で育ったそうです。ニューヨークに住むようになったきっかけは2009年、MoMA(モマ=ニューヨーク近代美術館)で開催されたフランスの写真家アンリ・カルティエ-ブレッソン(Henri Cartier-Bresson)のショーで、アシスタント・キュレーターを務めたことでした。

キッチンとリビングの間にあるダイニングルーム。キッチンの奥はベッドルームと子ども部屋が広がる(写真撮影/Masao Katagami)

キッチンとリビングの間にあるダイニングルーム。キッチンの奥はベッドルームと子ども部屋が広がる(写真撮影/Masao Katagami)

渡米3週間が経ったころ、道端であるアメリカ人男性とひょんなことから出会いました。2人には写真家のソール・ライター(Saul Leiter)の下で働いている共通の友人がいることがわかり、意気投合したそうです。この男性(マークさん)こそがポリーヌさんの未来の夫となる人でした!2人の出会いのきっかけになったということで、結婚の際はライター氏から結婚祝いが贈られたそうです。

そうやってファミリーとなった今、ブルックリンに住むようになった理由を尋ねると、ポリーヌさんはこのように説明します。

「冷蔵庫も作業用カウンターも大きくて料理がしやすく気に入っている」と言うキッチン。家族のためにスタッフド・ベジタブル(野菜の詰め物)などフランス料理をつくることも多いという(写真撮影/Masao Katagami)

「冷蔵庫も作業用カウンターも大きくて料理がしやすく気に入っている」と言うキッチン。家族のためにスタッフド・ベジタブル(野菜の詰め物)などフランス料理をつくることも多いという(写真撮影/Masao Katagami)

「フランス人ってなぜだかブルックリンが好きなんです。たぶん少しフランスに似たヴィンテージな街の感じとか、交通の便も良くておいしいバゲットも買えるところとか、そういう理由からだと思うんです。素朴な『小さな村』のようなこの街の雰囲気もフランス人が好きなところなんですよ」

ポリーヌさんとマークさんが結婚して住んだアパートメントは、地下の暗い部屋だったそうです。そこで数年暮らし、息子のサムくんを出産。2017年に新居探しをはじめました。

「ニューヨークで良い家に出合うのは簡単なことではないのです。どの物件もとても高額だし、競争率が高くて良い条件のものはキャッシュ払いが可能な客にすぐに買われてしまいます。そんな事情もあり、この家に出合った時、不動産ブローカーに『気に入ったのなら今すぐ決めないと、すぐに取られてしまいますよ』と言われ購入を決めました。そしてこの決断は大正解でした」

小部屋から見たリビングルーム(写真撮影/Masao Katagami)

小部屋から見たリビングルーム(写真撮影/Masao Katagami)

1886年(推定)に建てられた光がふんだんに降り注ぐ素敵なレトロ・アパートメントは、まさにやっと出合えた物件でした。

この日はちょうどサムくんの友人も遊びに訪れていた。天井の高さを生かし、子ども部屋はハイタイプのロフトベッドを配置。下のスペースを有効活用している(写真撮影/Masao Katagami)

この日はちょうどサムくんの友人も遊びに訪れていた。天井の高さを生かし、子ども部屋はハイタイプのロフトベッドを配置。下のスペースを有効活用している(写真撮影/Masao Katagami)

子ども部屋からの景色。「今の季節、ここからの景色が大好きなの」とポリーヌさん(写真撮影/Masao Katagami)

子ども部屋からの景色。「今の季節、ここからの景色が大好きなの」とポリーヌさん(写真撮影/Masao Katagami)

ニューヨーカーらしく、本にあふれた暮らし

コロナ禍以降リアル書店が次々に復活するほど本好きな人が多いことで知られるニューヨーク。ポリーヌさんが日本育ちということも影響し、部屋のところどころに配置された日本の小物に加え、ニューヨーカーらしく本棚には本がぎっしり並んでいるのも特徴です。

リビングルームの横にあるスペースを生かし、ここにも本棚とカウチが置かれている(写真撮影/Masao Katagami)

リビングルームの横にあるスペースを生かし、ここにも本棚とカウチが置かれている(写真撮影/Masao Katagami)

ポリーヌさんが専門家としてコメントを寄せてきた書物。そして愛着のあるそろばん。そろばんは10歳から4年間、教室に通っていた時に使っていたもの。「3級を取ったわ。息子にもたまに教えているんですよ」(写真撮影/Masao Katagami)

ポリーヌさんが専門家としてコメントを寄せてきた書物。そして愛着のあるそろばん。そろばんは10歳から4年間、教室に通っていた時に使っていたもの。「3級を取ったわ。息子にもたまに教えているんですよ」(写真撮影/Masao Katagami)

いつも家族のそばにいる犬のアーチーくん。この街ではペットも歴とした家族の一員(写真撮影/Masao Katagami)

いつも家族のそばにいる犬のアーチーくん。この街ではペットも歴とした家族の一員(写真撮影/Masao Katagami)

本好きであることが伝わってくる家づくりですが、なんと彼女自身が今年6月に新書を出版するそうです!これまでソール・ライター、また日本の写真家・川田喜久治氏が2022年に発売した写真集『ヴォルテックス』についてのエッセイ本をいくつか出版してきた彼女ですが、6月に発売される新書は彼女自身が本の共同編集を初めて手掛けたそう。

ポリーヌさんが出版するのは『I’m So Happy You Are Here: Japanese Women Photographers from the 1950s to Now』($75)という本です。1950年代以降に活躍した原美樹子、野村佐紀子など約100人の日本人女性フォトグラファーを考察し紹介するものです。この本はアメリカのみならず、日本とフランスでも、それぞれの言語の翻訳版の出版が決まっています(こちらのタイトルや表紙デザインは現在制作中)。

なぜフランス出身である彼女が日本人女性写真家に興味があるのかと尋ねたところ、「日本で育ったから」というのが大きな理由の一つでした。ただ、そのほかの理由も興味深いです。

「日本では19世紀以降すばらしい写真作品がたくさん生み出されたのに、海外では日本の森山大道やアラーキー(荒木経惟)など男性写真家が知られているだけで、女性写真家についてはほとんど知られていないのが現状です。それで私はすばらしい日本人の女性写真家の歴史を世界に紹介したいと思いました。それがこの本づくりのきっかけでした」

ポリーヌさんによれば、日本のみならず自身の出身地・フランスや現在住んでいるアメリカでも、男性写真家に比べて女性写真家に脚光が当たることは少ないとのこと。「私はその壁をぶち破り、日本人の女性写真家の活躍や表現力を示したかったのです」

『I’m So Happy You Are Here: Japanese Women Photographers from the 1950s to Now』 (写真提供/Pauline Vermare)

『I’m So Happy You Are Here: Japanese Women Photographers from the 1950s to Now』 (写真提供/Pauline Vermare)

ほかにも、夫マークさんとコラボして制作した短編ドキュメンタリー映画が、今年4月から7月までアイルランド写真美術館(Photo Museum Ireland)で上映されます。これは日本人写真家・岡村昭彦氏のアイルランドでの人生と仕事を紹介した作品です。

岡村昭彦氏関連は、「『I’m So Happy ~』の編集後、本の編集も手掛けました。こちらは4月に出版しました」とポリーヌさん。

『Akihiko Okamura, Les Souvenirs des Autres 』 (写真提供/Pauline Vermare)

『Akihiko Okamura, Les Souvenirs des Autres 』 (写真提供/Pauline Vermare)

ブランド物から道で拾ったアンティークまで

クリエイターとして忙しい日々を過ごすポリーヌさんとマークさん。最後に、夫妻のお気に入りのお店やブランドを教えてもらいました。

「たくさんあるけど、家のすぐ近所にあるミシュラン星を獲得したイタリア料理店のフローラ(Flora)は共にコロナ禍を乗り越えた今、私たちにとって家族のような存在で、大好きなお店です。家具のお気に入りのお店で言うと、リビングにあるランプはブルードット(Blue Dot)、カーペット(ラグ)はサファビア(Safavieh)のもの。カウチはABCカーペット&ホーム(ABC Carpet & Home)のもので、来週配達予定の新しいカウチはボーコンセプト(Bo Concept)で購入しました。探せば良いものがたくさんある街ですが、ストリートにも素敵な年代物の家具が落ちていることがあるんですよ。これらもストリートでたまたま見つけたものです」と言って、年代モノの素敵なアンティークの鏡とサイドテーブルを見せてくれました。

「サイドテーブルと鏡は道で見つけたものなんです」(ポリーヌさん)。路上にお宝がよく落ちているニューヨーク。引越しの際に人々が不要な物の処分のためにストリートにわざと置いて行き、必要な人がそれを勝手に持って行く(写真撮影/Masao Katagami)

「サイドテーブルと鏡は道で見つけたものなんです」(ポリーヌさん)。路上にお宝がよく落ちているニューヨーク。引越しの際に人々が不要な物の処分のためにストリートにわざと置いて行き、必要な人がそれを勝手に持って行く(写真撮影/Masao Katagami)

ストリートで見つけたという鏡(写真撮影/Masao Katagami)

ストリートで見つけたという鏡(写真撮影/Masao Katagami)

ブランドも好きだけど、ブランドものだけで固めず抜け感も楽しむ。そんな自然体でフレンドリーで優しい雰囲気の彼らを体現したお家とインテリアでした。

取材/文:安部かすみ、撮影:形上将夫

ポリーヌさん&マークさんお気に入りのお店
Blu Dot
SAFAVIEH
abc carpet & home
BoConcept
Flora

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レストランビジネスでの仕事

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出勤日数が増えるにつれ、個性豊かな同僚たちとの交流も増えていきます。ルイスの店の従業員には彼の元からの友人や身内が多く、仕事中もとても和やかな空気。イザベラもルイスとは長い知り合いのようですが、私が22歳の時とは全く比べ物にならないほどにしっかりしていてルイスといつも言い合いをしています!

レストランビジネスでの仕事も長くなってきましたが、同僚は南米の方が圧倒的に多いです。シチュエーションは人それぞれだけど、英語を全く話さない方も多いため、現場でスペイン語がわかるとものすごい強みになります。
私は一切話せず、これをきっかけに勉強しようとスペイン語の語学学習のクラスを取り始めましたが、本当に難しくてなかなか定着しません。大人になってからの言語の習得って本当に大変ですよね。

NYのレストランで一番こわいもの

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お店を閉める作業は従業員一丸となって行います。キッチン回りを徹底的に掃除・消毒し、 明日の営業に備えるのです。
NYで一番多い害獣といえば、なんとネズミ!日本ではほとんど見たことがなかったのですが、 こちらでは至る所で目にします。地下鉄や路上にもうろうろしているので毎回ギョッとしてしまいます。

ネズミを防ぐには、 米などの穀類が床に落ちたままにしないように気を付けることが大切です。今回バターを投げる羽目になったのも、虫やネズミ予防のためといっていいと思います(ゴミ袋を完全に処理したあとだったため)。

レストランビジネスには保健所からInspectorという職業の人が不定期でやって来て、清潔さの基準を満たしているかなどを査定します。これがすごく細かい上に厳しく、査定に合格できなかった場合はビジネスを一定期間閉めないといけなくなることもあるため、オーナーは戦々恐々です。食品の保存状態や温度ひとつで営業できなくなることもしばしばあります。

お店の窓にA、B、Cといったアルファベットの書かれた紙が貼られていますが、Aはインスペクターの査定に合格したとても清潔なお店という意味です。そして、もちろんルイスのお店はAです!

ヤマモトレミ

作者:ヤマモトレミ
89年生まれ。福岡県出身。2017年、勤めていた会社の転勤でニューヨークに移住。仕事の傍ら、趣味でインスタグラムを中心に漫画を描いて発表していたところ、思った以上に楽しくなってしまい、2021年に脱サラし本格的に漫画家としての活動を開始。2022年にアメリカで起業し個人事業主になりました。アメリカで食っていくために寿司をやっていくことを決意し、週4ブルックリンで寿司をつくっています。

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Greenpointでハムを買う

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最近、生活用品の買い物は仕事場のあるGreenpointで済ませています。何せ安いし、Greenpointでしか買えないものがとても多いため。ポーランド系アメリカ人のコミュニティとして知られていて、特に最近ホットな街です。

東欧のお菓子には当たり外れも多いけれど、その分見たことがないようなものを試す楽しさがあります。そして、記事でも紹介したように一番おすすめなのは加工肉(ハムやソーセージ)です。カウンターに行って、係の人に肉塊をスライスしてもらう方法がポピュラーです。

アメリカで売っているパッケージの生ハムは高い上においしくもないのですが、Greenpointで買う肉屋の生ハムは感動するほどおいしいのでぜひ試してみてください!
買い方については、重量買いになるのですが、0.25lb(ポンド)で約二人分。二人分が欲しい場合、店員さんに”Can I have a quarter pound of 〇〇(ハムの名称) sliced please?”(キャナイ・ハブ・ア・クオーター・パウンド・オブ・〇〇・スライスド・プリーズ)と言えばOK。最初は戸惑うけど、慣れたらこれ以外のハムが食べられなくなりますよ!

ちなみに私が好きなのはPoledwica Lososiowa(ポレドヴィカ・ロゾシオワで合っている
のか?)で、これはスモークされた豚のハムという意味らしいです。言えるかよ!

ホセとの出会い

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みんなの弟ポジション、ホセは本当に可愛らしい21歳の男の子。粗野で口も悪いルイスと真逆のキャラクターかと思いきや、やっぱり親族なのもあってヤンチャな一面もあり、そこもまた可愛かったです。
アメリカのOmakaseは店員さんやお客さんとのコミュニケーションが楽しみで来る人も多いのですが、私はこのコミュニケーションが大の苦手!しかし、ホセはお客さんからも大人気で、ルイス曰く「ホセがシフトに入っている時の方がお客さんたちはチップをはずむ」ということでした。

アメリカのレストランではチップ制度があり、戸惑う人も多いですが、飲食店で働く人の給与は基本の時給にチップが上乗せされるため、これは労働者にとってはとても大切な制度なのです。レストランに行って素晴らしいサーバーに出会ったら、チップを多めに払うと喜ばれますよ!

ヤマモトレミ

作者:ヤマモトレミ
89年生まれ。福岡県出身。2017年、勤めていた会社の転勤でニューヨークに移住。仕事の傍ら、趣味でインスタグラムを中心に漫画を描いて発表していたところ、思った以上に楽しくなってしまい、2021年に脱サラし本格的に漫画家としての活動を開始。2022年にアメリカで起業し個人事業主になりました。アメリカで食っていくために寿司をやっていくことを決意し、週4ブルックリンで寿司をつくっています。

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世界の名建築を訪ねて。アメリカ建築史における重要な都市・セントルイスで名物の高層集合住宅「公園脇の100mタワー(100m Above the Park)」

世界中の建築を訪問してきた建築ジャーナリスト淵上正幸が、世界最先端の建築を紹介する連載15回目。今回は、アメリカのミズーリ州セントルイスにある高層集合住宅「公園脇の100mタワー(100m Above the Park)」(設計:スタジオ・ギャング)を紹介する。

アメリカ建築史を語るうえで欠かせない重要な都市、セントルイスにある名物集合住宅

「公園脇の100mタワー」は、アメリカ合衆国の中央部にあるミズーリ州のセントルイスに立つ高さ116mの高層集合住宅タワーである。セントルイスという街は、アメリカ建築史における特筆すべき重要な都市なのだ。アメリカはかつて東部から西部に向けて開発が進行したが、その拠点の一つになったのが、セントルイスであったからだ。そのようなアメリカ開発史の軌跡を留めた都市が、セントルイスというわけなのである。

(C)Tom Harris

(C)Tom Harris

今日セントルイスを訪れると、以下の文章にも出てくる「ゲートウェイ・アーチ」という著名建築があり、それ故にこの町の名前を世界的に有名にさせているのだ。アメリカ建築界の巨匠であったエーロ・サーリネンが設計した名建築であり、高さ192mの美しい半円形アーチの建築は、内部をトロッコに乗って頂上まで登れるようになっている。頂上の窓から西部の大平原を一望に見晴らすことができるという、エポック・メイキングな建築である。

エネルギー負荷を減らす建物形態がユニーク

「公園脇の100mタワー」は1階に店舗などの商業施設をはじめ、アメニティー施設、パーキングなどがある。上階の住戸群からは西側にフォレスト・パークを望み、東側には上述の有名な「ゲートウェイ・アーチ」を望むことができる。特にフォレスト・パークの樹木によりフレーミングされた建物は、この上なく優雅な佇まいを見せている。

(C)Tom Harris

(C)Tom Harris

「公園脇の100mタワー」は平面的には樹木の葉に似たユニークなプランをもち、立面的には段状に連なる形態は、全体的なエネルギー負荷を減らし、そのユニークな建物形態が近隣では話題となっている建築である。

建物は4階分をひとつのまとまった層とし、上部に向けて開くようなデザインとなっている。この層が積層化されて建物全体が構成されている。従ってファサードは、テラスを広く取るよう上広がりになるよう角度が付けられている。つまりテラスがあるのは4層の一番下の階にある住戸に限られているので、全住戸の4分の1だけということになる。また住民コミュニティー用の共有のアメニティー空間は、グリーン・ルーフ・スペースに設置されており、緑の庭園で住民同士の活動や語らいができるようデザインされている。

敷地のオリエンテーションや環境条件による種々のメリットを高めることで、樹木の葉のようなプランや、積層化された建物形態はその効果を最大にしている。逆に全体的なエネルギー負荷を減らすことで、住民の満足感を向上させている。

周辺の景観も建築を引き立てる要素に

緑の森や雪景色といったダイナミックなシーンを生み出すフォレスト・パークは、変わりゆく日差しや天候をエンジョイする建物の素晴らしい背景になっている。このアパートメントは特にフォレスト・パークと有名なゲートウェイ・アーチへの眺望が素晴らしく、それがこの建築の魅力的な特徴になっている。個々の住戸はコーナー部分にリビングを配して、2方向への視界が可能になっている。パノラミックな景色に加えて、住戸内にはハイ・クオリティの太陽光をふんだんに導入している。1階には店舗スペースもあり、公園側へのワイドなストリートスケープが楽しめる。

(C)Sam Fentress

(C)Sam Fentress

真冬の雪で周囲が白化粧をすると、建物は開口部以外の白い外壁が近隣環境に同化して“白のハーモニー”を奏で、住民たちはそのアンサンブルを楽しむことができる。やはり女性建築家のデザインによると、シックで華麗な外観の佇まいが、納得できる素晴らしさを秘めているようだ。

●関連サイト
100 Above the Park

人口6割減・貧困で治安悪化の街、ラストベルトからよみがえりのカギは市街地3分の1の空き家! 農園などに活用する驚きのまちづくりとは? アメリカ・フリント市

地方へ帰省した時や旅先で、「空き家が増えたな……」と思うことはありませんか。人口が減り始めた日本では、空き家や集落をどのようにしていくか、難しい課題が浮き彫りになっています。今回はそんな空き家対策として参考になりそうな、米国のミシガン州郊外フリント市の「グリーンイノベーション地区」の計画について取材しました。

市街地の1/3が空き家に! 治安も悪化、貧困層が取り残された街

今回、お話を伺ったのは横浜国立大学で人口減少と都市の規模の適性化を目指すまちづくりを研究している矢吹剣一准教授。矢吹先生が事例として注目しているのは、米国のミシガン州郊外にあるフリント市の「グリーンイノベーション地区」の計画です。

アメリカ・フリント市(写真提供/矢吹剣一さん)

アメリカ・フリント市(写真提供/矢吹剣一さん)

そもそもフリント市は自動車メーカー・ゼネラル・モーターズ(GM)創業の地で、最盛期の1960年代~70年代には約20万人が暮らし、「全米でもっとも豊かな都市の1つ」とまでいわれた街でした。ただその後、工場の移転と閉鎖にともない人口は激減、2022年には約8万人と半分以下にまで落ち込んでいます。

横浜国立大学 大学院都市イノベーション研究院 准教授・矢吹剣一さん(写真提供/矢吹剣一さん)

横浜国立大学 大学院都市イノベーション研究院 准教授・矢吹剣一さん(写真提供/矢吹剣一さん)

産業の勃興と衰退によって人口の増加・減少が起きたのは、石炭や造船業が盛んだった都市と同様といってよいでしょう。ただ、米国と日本では土地に関する価値観が異なります。

「米国は日本と異なり、土地への執着が低いため、仕事のあるところに引越し・移住をするのが当たり前です。そのため、家賃や税金を滞納したままの状態で、ある日突然、住人がいなくなるということが頻発するんです。当然、残されたのは、税滞納状態となった空き家や空き地、あるいは移住する費用が払えない貧困層という状態になります」

貧しく、行き場のない人だけが取り残されたほか、人種ごとによる居住地域の違いなども問題を複雑化させています。さらに追い打ちをかけたのが、サブプライムローン問題に端を発した2007年の住宅バブルの崩壊です。フリント市内の住宅でも差し押さえが相次いだこともあり、市内の総不動産のうちなんと1/3が遊休地化し、空き地・空き家(しかも荒廃している)だらけだったとか。さすが米国、空き家・空き地問題のスケールもケタ違いです。

ランドバンクを介して土地を利活用。農園が健康や治安の改善にも役立つ

税金などを滞納して差し押さえられた不動産は、行政などに差し押さえられたのち、公的な性格をもつ「ランドバンク」が権利を保有し、再生・利活用の道を探ることになります。

「フリントが位置するジェネシー郡は、2002年に公的なランドバンクを設立しています。差し押さえた空き家は解体されるだけでなく、適切にリフォームして販売や賃貸されたり、土地だけで貸したり、管理、活用の方法を模索します。なかでも注目は、『サイドロットプログラム』。その名前の通り、side-lot(隣地)、つまり、隣の人に低額で貸したり、売却したりというもの。困ったときに頼りになるのは隣の人ということで、隣地を低額で売却または賃貸してもらい、管理してもらうという取り組みです」(矢吹先生)

隣地が管理されておらず、荒れていると困るのはまさに隣の家の住人ですし、日本でも昔から「隣の土地は借金してでも買え」と言われてきたほど。とても合理的な取り組みといえるでしょう。広くなったスペースは庭や子どもの遊び場として活用しているようです。とはいえ1区画は450~500平米超もあり、隣の区画と合わせれば900~1000平米、3区画合わせれば1500平米にもなります。テニスコート(ダブルス)の広さが約261平米なので約6面、こうなってくると家の敷地というより畑ですね……。

「ランドバンクは、土地を隣家に貸す以外にも、地元の住民団体やNPOなどに貸し出して、農園やコミュニティガーデンとしても活用しています。カギになるのは、教会や地域コミュニティ。米国の教会も、日本の寺院でいう檀家さん、つまり信徒さんがいないと成り立たないんですね。ですから、牧師と信徒のみなさん、NPO、地元の学生さんなどがともにコミュニティガーデンで野菜を育て、近隣住民で分け合うという取り組みをしているんです。フリント市や近隣のデトロイト市は全米平均よりも貧困率が高く、日頃の生活にも困っている方も多いのですが、こうした住民の栄養状態を改善し、健康促進をする、という意味でも農園(都市農業)は役立っています」(矢吹先生)

放置された空き家は、行政やランドバンクによってチェックされる。状態によって4段階にわけられ、撤去解体、リノベ、リフォーム、賃貸など、再生の方法が模索される(写真提供/矢吹剣一さん)

放置された空き家は、行政やランドバンクによってチェックされる。状態によって4段階にわけられ、撤去解体、リノベ、リフォーム、賃貸など、再生の方法が模索される(写真提供/矢吹剣一さん)

コミュニティガーデン、農園では、住民たちが一緒になって草刈りや緑の管理、畑作をすることで、治安維持、景観の向上、住民の栄養やメンタルヘルスの改善などに役立つこともわかっているそう。行政としても草刈りなどの空き地を管理するコストが低減でき、住民、行政、双方にメリットのある仕組みです。

「コミュニティガーデンでは野菜を提供するだけでなく、農業に必要な資材を貸し出したり、苗を売ったり配ったりしています。米国でも日本の地域おこし協力隊のような地域に貢献したいと活動する若者がいるのですが、彼らが農業を手伝っていることもあります。教会の牧師さんもまちづくりや都市計画について関心が高く、教会の一角にまちづくりに関する展示パネルもあるほどです」

教会(写真提供/矢吹剣一さん)

教会(写真提供/矢吹剣一さん)

コミュニティガーデンで活動する人たち。緑を手入れすることで、住民の栄養やメンタルヘルスの改善、治安維持できることがわかっている(写真提供/矢吹剣一さん)

コミュニティガーデンで活動する人たち。緑を手入れすることで、住民の栄養やメンタルヘルスの改善、治安維持できることがわかっている(写真提供/矢吹剣一さん)

教会の一角にあるまちづくりに関する展示パネル(写真提供/矢吹剣一さん)

教会の一角にあるまちづくりに関する展示パネル(写真提供/矢吹剣一さん)

重要なのは覚悟と都市計画。住民参加で「合意形成」もなされる

とはいえ、ランドバンクは万能ではありません。フリント市全域で約2万2000区画ある空地に対して、何区画かずつの規模で活用したところで、全体の問題解決にならないからです。問題の本質は、都市がどうあるべきなのか、その設計図である、「都市計画」が機能していること。ここが機能していないと、本質的な人口減への対応は難しいといいます。

「滞納された不動産の個別の利活用をはかったところで、ランドバンクは黒字化はおろか、人件費も出せるかどうかというのが現実です。フリント市は財政難も続いています。そのため、2013年に『マスタープラン』、日本でいうところの総合計画と都市計画マスタープランを合わせたような計画を作成し、この時にはじめて人口減・低密度化をふまえた都市計画を立案しました」(矢吹先生)
これは日米共通のようですが、ふるさとの人口減少に対し、回復することは難しいと認め、受け入れるのは非常に覚悟のいること。希望的観測、こうあってほしいという願望、政治的な意向で「玉虫色の決着」になりがちですが、人口が半分以下と、どん底までいったフリント市はついに覚悟を決めたのです。

「この覚悟を決めた2013年の都市計画では、空き地をコミュニティガーデンなどにしていき緑豊かな住宅地を目指す『グリーン・ネイバーフッド』、できるだけ新たな人が来ることを想定せず、1つ1つの土地そのものを広くする『グリーン・イノベーション』という2種類の地区を設定しました。特に空洞化のひどかった地区は『グリーン・イノベーション』として、できる限り人の流入を抑えて、とにかく土地を合筆、集約化していき、将来の不確実性に備えるとしています。結果的に人の流入は制限出来ませんでしたが、それぞれが使用する1区画あたりの面積を大きくして、なるべく大きな面積を管理してもらう仕組みをつくることができました」

グリーン・イノベーション地区の様子(写真提供/矢吹剣一さん)

グリーン・イノベーション地区の様子(写真提供/矢吹剣一さん)

ポケットパーク(写真提供/矢吹剣一さん)

ポケットパーク(写真提供/矢吹剣一さん)

人口が増え続けている米国では都市「縮小」、「撤退」という概念にまだ拒否感があります。そのため、居住エリアを「縮小」するのではなく「低密度」な状態でも維持することを目指し、同時にさまざまな社会状況に対応できるよう「不確実性に対応する可変性の高さ」というコンセプトを打ち出したのです。
「グリーン・イノベーション地区」はまず、空き地を緑地やコミュニティガーデンとして活用しようと謳います。そして、将来に備えて空いた土地を徐々に合筆集約しておく、そうすれば大規模工場の誘致、農園の誘致など起死回生的なチャンスへの対応も可能で、不確実な情勢に対応しやすいというわけです。いわば「二段構えの施策」といえるでしょう。

赤いエリアが町の中心市街地。周囲の住宅地には、空き家・空き地が多い地区が点在していました。これら(上図・緑部分)を「グリーンイノベーション地区」と名付けました(画像提供/矢吹剣一さん)

赤いエリアが町の中心市街地。周囲の住宅地には、空き家・空き地が多い地区が点在していました。これら(上図・緑部分)を「グリーンイノベーション地区」と名付けました(画像提供/矢吹剣一さん)

もちろん、自分が住む地域が「グリーン・イノベーション地区」になることに難色を示した住民もいました。それはそうですよね、「あなたが住む場所はもう新しい人は来ず、将来は広大な緑地です!」と言われたら、住民が反発するのは必至です。ただ、住民も実際にワークショップに参加していくと、都市計画やまちづくりの必要性としてなによりフリントがおかれた深刻な現状を理解し、納得していくのだとか。
「地価の低さもありますが、自分たちの目で空き家調査をしたこと、自分たちの意見や議論でグリーン・イノベーション地区のエリアを決めたこと、細かい規制内容も住民意見を反映したことが、合意形成の上で非常に大きかったと言えます」

日本は戦後の住宅難もあり、都市でも農村部でも、とにかく土地の分筆が続けられてきました。いわば現在のフリントの真逆状態です。ゆえに所有権者と利害関係者が増えすぎてしまい、合意形成や、現在および将来の全体最適な土地の利活用を難しくしていますが、その意味でもとても示唆に富んでいるように思います。

また、日本の都市計画制度は米国ほど効力をもっていません。例えば、水道・電気などのインフラ保守管理を効率化するために居住地域を厳しく制限する、自治体ごとに用途地域をカスタマイズして望ましい将来像へ都市空間を誘導するなどの制限はできていない状態です。

「米国でも都市部の『縮小』という現実に向き合うのは非常に困難でした。でも、人口が減るという現実を受け入れ、覚悟を決めたところから再生がはじまっているんです。日本でも同様に、厳しい現実に向き合わないといけない。まずはそこからではないでしょうか」(矢吹先生)

もちろん国の成り立ちや価値観が違うので、すべてを真似する必要はありませんが、公的な性格をもつランドバンク、住民参加型のコミュニティ、強力な都市計画、行政の覚悟……など、岐路に立つ日本も見習うべき点は多いのではないでしょうか。

Center for Community Progressによる動画
「How to Use Property Condition Data for Vacant Land Stewardship(空き地管理のための不動産状況データの使用方法)」

●取材協力
横浜国立大学 大学院都市イノベーション研究院 准教授
矢吹剣一さん
専門は都市計画・都市デザイン・まちづくり。主に人口減少時代における土地利用政策(マスタープラン/ゾーニング)、空き家・空き地の政策(利活用および管理・除却)、共創まちづくり(住民参加による計画策定技法/公・民・学連携のまちづくり)に関して研究・実践を行っている。
福島県いわき市生まれ。筑波大学第三学群社会工学類(都市計画主専攻)卒業。東京大学大学院都市工学専攻修士課程修了。株式会社久米設計勤務後、東京大学大学院都市工学専攻博士課程修了。博士(工学)、一級建築士。東京大学特任研究員・アーバンデザインセンター坂井チーフディレクター、神戸芸術工科大学助教、東京大学先端科学技術研究センター特任助教を経て、2022年10月より現職。

ニューヨーク人情酒場 NYのトレンド”OMAKASE”に驚愕! 爆音サルサ・レゲトンのパリピさがヤバい

一見華やかな大都会、ニューヨークでの暮らし。しかし、生活にはお金がかかる!
生活を維持するために多くの移民が働く場所、それは飲食店。
単身やってきたニューヨークで飛び込んだ先は大衆酒場。愉快な同僚と寿司との出会い、そして別れ。
仕事って、生活って、幸せってなんだろう?そんなことを考えながら寿司を巻く日々のこと。

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NYでのトレンド、OMAKASEについて教えよう

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漫画でも説明したように、NYで現在OMAKASEは一つのジャンルとしてとてもトレンディで、街には数多くのOmakaseレストランが出来始めています。流行に敏感なニューヨーカーに対し、おしゃれで楽しいダイニングエクスペリエンスが得られるという提案で売っているところが多い印象です。
あっと驚くような仕掛けが込められた一品や、看板メニューの派手な料理などを用意しているお店も多いです。20代~30代の、新しいものが大好きな人たちがよく遊びに来てくれるのでインスタ上での見栄えはとても重要なファクターのようです。

そして私が新しく働き始めたのもOmakaseレストラン!オーナーのルイスは、ブラジルとアルゼンチンの間にある内陸の国パラグアイ出身。パラグアイ出身の人と働くのはマジで初です。日本人オーナーのお店だともう少し落ち着いた空間を楽しめそうですが、私が働くお店はラテンの人々が仕切っていることもあり、大変陽気な空気で毎夜遅くまでパーティーが行われています。
人と話すのが嫌いというわけではないけれど、全く知らないいろいろな国の人々と英語で世間話をしながらの仕事というのは難しいと感じることもあります。

しかし、飲みながら仕事していると中盤ぐらいから大丈夫になってきます。言い換えると、アルコールが必須という感じです。酒じゃあ!!

ヤマモトレミ

作者:ヤマモトレミ
89年生まれ。福岡県出身。2017年、勤めていた会社の転勤でニューヨークに移住。仕事の傍ら、趣味でインスタグラムを中心に漫画を描いて発表していたところ、思った以上に楽しくなってしまい、2021年に脱サラし本格的に漫画家としての活動を開始。2022年にアメリカで起業し個人事業主になりました。アメリカで食っていくために寿司をやっていくことを決意し、週4ブルックリンで寿司をつくっています。

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NYレストランビジネスでの職探し

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さて、大好きだったお店はなくなってしまいましたが、それでも日々は回って行くので仕事を探さなくてはなりません。何があっても腹は減るし、自分で自分の面倒は見なくてはならない。
NYのレストランビジネスの求人方法は多種多様ですが、一般的な日本の就職活動みたいなかしこまった面接などはほぼ起こらないと思っていいと思います。逆にいうと自由度がすごく高いので、どんな人にもチャンスがある、という感じです。

NYのレストランビジネスで働く人というのは移民がメインで、なかには英語がほとんど話せない人もいます。そんな人にも必ず働き口が見つかるというのはNYならではな感じがありますが、同じ民族同士での助け合い精神のようなものは強く感じられます。
また、土地的に南米が近いこともあり、スペイン語ができると同僚との距離も一気に近くなります。新しいボスのルイスも第一言語がスペイン語。ペルー人やメキシコ人の同僚も多く、スペイン語を体得したくてレッスンも受講しましたが、これがめちゃくちゃ難しくて、私にはうまくいきませんでした。

次回以降、アメリカのおまかせレストランを紹介する記事を書きたいなと思っています。よろしくお願いします!

ヤマモトレミ

作者:ヤマモトレミ
89年生まれ。福岡県出身。2017年、勤めていた会社の転勤でニューヨークに移住。仕事の傍ら、趣味でインスタグラムを中心に漫画を描いて発表していたところ、思った以上に楽しくなってしまい、2021年に脱サラし本格的に漫画家としての活動を開始。2022年にアメリカで起業し個人事業主になりました。アメリカで食っていくために寿司をやっていくことを決意し、週4ブルックリンで寿司をつくっています。

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NYマンハッタンで話題、最高価格25億円の高級コンドミニアムに潜入。ブランド家具付き「ターンキー」って? ニューヨーク(アメリカ)

アメリカ・ニューヨークのセントラルパーク南端から2ブロック南の57丁目は、「ビリオネアズ・ロウ(Billionaires’ Row)」、つまり「億万長者の並び」と呼ばれています。この通りを中心に近年、次々と富裕層向け高級コンドミニアムの建設ラッシュが続いています。

今回はこの地区に新たに完成したばかりの、高級ホテルとの複合住居ビルに案内してもらいました。ホテル暮らしのような生活ができる新築コンドミニアムで、家具付きのオプションも選べます。どのような物件なのか、見てみましょう。

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販売価格は1億7,600万円~25億円。東京の高級エリア千代田区より3~4割高!?

マンハッタン56丁目にこのほど完成したばかりの高層新築コンドミニアム、「ONE11 Residences at Thompson Central Park(ワン・イレブン・レジデンスズ・アット・トンプソン・セントラルパーク)」 。
ハイアット系列の豪華ホテル 「トンプソン・セントラルパーク」の客室の上階(34階~42階、99世帯分)がONE11 Residences at Thompson Central Parkの住居スペースになっています。
販売価格は119万5,000ドル~1,695万ドル(約1億7,600万円~25億円)です。

「居住スペースは1階のホテルロビーから出入りも可能なため、ホテル内の施設に行きやすく、まるでホテル暮らしのような生活ができるんですよ」( ONE11 Residences at Thompson Central Parkのセールス・ディレクター マリア・マイニエリさん)

ホテル、トンプソン・セントラルパークの客室の上階(34階~42階)がONE11 Residences at Thompson Central Parkの住居部分。写真は廊下から見渡せるセントラルパークの景色(c) Kasumi Abe

ホテル、トンプソン・セントラルパークの客室の上階(34階~42階)がONE11 Residences at Thompson Central Parkの住居部分。写真は廊下から見渡せるセントラルパークの景色(c) Kasumi Abe

セントラルパークまで3分と自然豊かな最高の立地で、それぞれの部屋の窓には四季折々の美しい景色が広がります。徒歩圏内はオフィス街と商業街で、地下鉄の駅、高級デパート、カーネギーホールなどの文化的施設も充実し、とてもにぎわいのある地区です。

日本に住んでいる方々がイメージしやすいよう、首都圏を中心に新築マンションを取材してきた情報誌『SUUMO新築マンション』編集長・永田幸樹氏にも話を聞いてみました。まず街の中心に位置する緑豊かなセントラルパークを皇居となぞらえるならば、東京でいうと「距離感などを考慮すると千代田区をイメージするのが良いのではないでしょうか」とのこと。

ただし、価格面は平方フィート(psf)あたりの平均価格から確認しても、千代田区より3~4割程度高いようです。東京都心でも特に人気エリアである千代田区より3~4割高いとは、さすが“ビリオネアズ・ロウ”界隈(ニューヨークの富裕層エリア)です。しかも高級ホテルの上階とは、一度は憧れるシチュエーションです。

住居部分の下層が豪華ホテルと連結。会員制高級ラウンジやレストランも使える

さっそく ONE11 Residences at Thompson Central Parkの中に入ってみましょう。

ONE11 Residences at Thompson Central Parkとホテル「トンプソン・セントラルパーク」の入口は2つ別々にありますが、高層複合ビルのため、建物内のロビーで繋がっています。奥に進めばホテルのレストランやバーがあり、ミーティングや仕事終わりの1杯などで立ち寄りやすい雰囲気です。

1階にあるホテル「トンプソン・セントラルパーク」のバー(c) Kasumi Abe

1階にあるホテル「トンプソン・セントラルパーク」のバー(c) Kasumi Abe

1階にあるホテル「トンプソン・セントラルパーク」のレストランスペース(c) Kasumi Abe

1階にあるホテル「トンプソン・セントラルパーク」のレストランスペース(c) Kasumi Abe

建物内にはホテル「トンプソン・セントラルパーク」のVIPとONE11 Residences at Thompson Central Parkの住人だけが利用できる高級会員制スタイルのラウンジ兼コワーキングスペースも完備しています。軽く飲みながら休憩をしたり、リモートワークをしている人の姿もちらほら見かけます。

「ONE11 Residences at Thompson Central Parkの居住者は最初の1年間、ここで提供されているフード&ドリンク類は無料サービスとなります」( マリア・マイニエリさん)

ホテルのVIPとONE11 Residences at Thompson Central Parkの住人だけが利用できるラウンジ兼コワーキングスペース(c) Kasumi Abe

ホテルのVIPとONE11 Residences at Thompson Central Parkの住人だけが利用できるラウンジ兼コワーキングスペース(c) Kasumi Abe

NY生活を即開始できる。オプションで家具付き物件も

この物件には、ターンキー(turnkey)と呼ばれるオプションもあります。ターンキーとは簡単にいえば、家具付きの物件のこと。住人が契約後に鍵を受け取り、ドアを開けてすぐに生活が始められるという意味から、そのような言葉が使われています。

ONE11 Residences at Thompson Central Parkでは、インテリアの専門家がコーディネートした家具を丸ごと購入することもできます。もちろん自分でインテリアを選びたい場合は、ターンキーなしのオプションを選ぶことも可能です。

「ターンキー物件のインテリアは、人気のトーマス・ジュール・ハンセンによるコーディネートです。インテリアや家具、壁にかかっている絵画、リネン、キッチンのお鍋や食器、バスルームのソープ類、タオルなどまで丸ごと購入できますから、すぐに生活を開始できるのです。外国のお客様にとって海外生活を即スタートできるのはとても便利なオプションのようで、好評です」( マリア・マイニエリさん)

ゆったりした入口スペース(c) Kasumi Abe

ゆったりした入口スペース(c) Kasumi Abe

ターンキーを選べば、センスの良い家具からインテリア小物まで全部ついてくる。自分で選んだり買い物したりする手間が省け(c) Kasumi Abe

ターンキーを選べば、センスの良い家具からインテリア小物まで全部ついてくる。自分で選んだり買い物したりする手間が省ける(c) Kasumi Abe

ターンキーのオプションを選べば、このようにテーブルや棚に置かれたインテリア小物もすべてついてくる。そのオプションを選ばなくても見ているだけでインテリア選びの参考になりそう(c) Kasumi Abe

ターンキーのオプションを選べば、このようにテーブルや棚に置かれたインテリア小物もすべてついてくる。そのオプションを選ばなくても見ているだけでインテリア選びの参考になりそう(c) Kasumi Abe

セントラルパークを臨むベッドルーム(c) Kasumi Abe

セントラルパークを臨むベッドルーム(c) Kasumi Abe

アイランドキッチン。冷蔵庫、IH調理器、食器洗浄機、ワインクーラーなどすべてミーレ社製(c) Kasumi Abe

アイランドキッチン。冷蔵庫、IH調理器、食器洗浄機、ワインクーラーなどすべてミーレ社製(c) Kasumi Abe

窓付きの明るいバスルーム。「アメリカでは非常に珍しく浴槽から出てお湯を流せるタイプになっています」( マリア・マイニエリさん)。日本人も使い勝手が良さそう(編集注:通常アメリカのバスルームはトイレと浴槽が同じ室内にあり、日本の浴室のように浴槽の外で体を洗ったりお湯を流したりすることはできない)(c) Kasumi Abe

窓付きの明るいバスルーム。「アメリカでは非常に珍しく浴槽から出てお湯を流せるタイプになっています」( マリア・マイニエリさん)。日本人も使い勝手が良さそう(編集注:通常アメリカのバスルームはトイレと浴槽が同じ室内にあり、日本の浴室のように浴槽の外で体を洗ったりお湯を流したりすることはできない)(c) Kasumi Abe

収納スペースがたっぷりのウォークイン・クローゼット(c) Kasumi Abe

収納スペースがたっぷりのウォークイン・クローゼット(c) Kasumi Abe

リビングとベッドルームからセントラルパークの四季の移ろいを楽しむことができる(c) Kasumi Abe

リビングとベッドルームからセントラルパークの四季の移ろいを楽しむことができる(c) Kasumi Abe

冒頭で価格帯はご紹介しましたが、各住居の気になるお値段は? 以下は住居ごとの一例です(すべてターンキーなしの価格)。

Residence 36A ー (1ベッド、1バスルーム  707平方フィート=65.7平方メートル)
$2,050,000(約3億1,027万円)

Residence 37C ー (2ベッド、2バスルーム 1,133平方フィート=105.2平方メートル)
$2,695,000(約4億790万円)

(オプションのターンキーを選ぶ場合、住居の大きさに応じて追加費用は16万ドルから25万5千ドル、約3,000万円前後)

ホテル上階の住居スペース、ターンキー物件、日本では?

こうしたラウンジを備えたコンドミニアムやターンキー(家具付き)の物件は、日本でも増えているのでしょうか? 前出の『SUUMO新築マンション』の永田氏に聞きました。

「日本ではホテルと一体的に開発される分譲マンション自体がそもそも稀有な存在です。前提として、日本のマンションでは大規模物件を中心に共用部が充実しているケースが多く、高級感のある設えの物件も一定数ある状態です。とはいえ、ONE11 Residences at Thompson Central Parkのようにコンドミニアムに住みながら、同じ建物内にあるホテルの施設を利用できる物件も登場しています」

形式は違えど、ホテルライクな暮らしができるコンセプトの物件は、日本でも登場してきているようです。そのような中には高層階を購入した人のみが利用できるサービスもいくつか見られます。最近では、大阪市内に誕生した『Brillia Tower 堂島(ブリリアタワー堂島)』(フォーシーズンズホテルと一体の高級分譲マンション)が一例です。

ターンキー物件については、「ニューヨークでも同様かと思いますが、日本では分譲マンションのオプションとしては珍しいタイプで、ごく稀に存在している印象です。富裕層向けのハイクラスの物件はそもそもゼロベースでカスタマイズすることを前提にしているケースも多いです。空間づくりにこだわる方が多いのが背景にあるのですが、カスタマー自身が間取りや設備までトータルコーディネートしているケースが少なくありません」。

ターンキー物件そのものは珍しいものの、近いサービスを享受できる富裕層向けのハイクラス物件はよくあるようです。

コンドミニアムを購入する場合、「プロのインテリアコーディネーターによってすでにセレクトされている家具や小物を丸ごと購入できるのを便利としてそこに価値を置く人」から、「時間がかかって良いから自分ですべてのインテリアをコーディネートしたい人」、また「プロにお願いしなくて良いから少しでもインテリア価格を抑えたい人」など、住居に求める理想やライフスタイルの好みはさまざまです。それを踏まえ「諸々のオプションがあって選ぶことができる」のが、ONE11 Residences at Thompson Central Parkの強みであり特徴だと思いました。

●関連サイト
ONE11 Residences at Thompson Central Park

ニューヨーク人情酒場 ついに店の要・チャトも離脱…!?シビアなNYの飲食業界の洗礼が酒場を襲う…!

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漫画

チャトとの別れ

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初日から顔を合わせたチャトが辞めることは、店にとっての一つの柱がなくなるような喪失感がありました。入れ墨だらけで見た目はすごく怖いけど、熱いハートを持ったペルー男児のチャト。ものすごく仕事ができるのにお茶目で心優しく、従業員全員から慕われていました。

ニューヨークで暮らしていくことは決して楽ではありません。特に子どもがいると、保育園に入れるとかどんな学校に入れるのかとか、本当にいろいろな問題が出てきます。
日本に比べて物価も高く、NYCの保育園は月に2000ドルが最低ラインで、区域によって教育の質にもかなり明確に差が出てくるため、判断は簡単ではありません。
何よりもチャトと家族のみんなに幸せになってほしいという気持ちがあったけど、同時に兄貴のような存在がいなくなってしまうことの不安や悲しさが押し寄せて、この日は本当にやるせなく、つらかったです。

余談ですが、このお店で働くうちにペルーのいろいろな調味料について学びました。
Acevichadoソースというのはニンニクが効いたさらっとしたマヨネーズのようなソースで、マグロの刺身によく合うのです。ペルーは魚の生食文化が発達しているので、料理も日本人の舌に合うものが多いなというのが個人の感想です。

衝撃の告知

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なんかおかしいなとは思っていたけど、こんな展開はさすがに予想していなかったよ。
NYでの飲食ビジネスは本当に入れ替わりが激しい。お店の経営にしても、ストリート1つで客層が完全に変わってくるため、一筋縄ではいきません。このお店はラテン系の住人とお店がすごく多いストリートにありましたが、一本道を挟めば地元の人はほとんどがイタリア系白人なのでお店の雰囲気も全く変わってくるのでした。
とにかく店の入れ替わりは激しいし、何年も継続できるビジネスというのは本当に奇跡のような出来事で、手腕が求められるのです。オーナーさんたちにはただならぬプレッシャーがかかっていたと思います。
どうなるこの店、どうなるヤマモト。次回、一旦最終回です。よろしくね~!

ヤマモトレミ

作者:ヤマモトレミ
89年生まれ。福岡県出身。2017年、勤めていた会社の転勤でニューヨークに移住。仕事の傍ら、趣味でインスタグラムを中心に漫画を描いて発表していたところ、思った以上に楽しくなってしまい、2021年に脱サラし本格的に漫画家としての活動を開始。2022年にアメリカで起業し個人事業主になりました。ブルックリンのレストランで週4で寿司ローラーをやっています。

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世界の名建築を訪ねて。ザハ・ハディドによる62階建て超高層集合住宅タワー「ワン・サウザンド・ミュージアム(One Thousand Museum)」/アメリカ・マイアミ

世界中の建築を訪問してきた建築ジャーナリスト淵上正幸が、世界最先端の建築を紹介する連載7回目。今回は、アメリカ・マイアミにある62階建ての超高層の集合住宅「ワン・サウザンド・ミュージアム(One Thousand Museum)」設計:ザハ・ハディド(ザハ・ハディド・アーキテクツ)を紹介する。

マイアミにザハ・ハディドが残した形見。豪華マンション「ワン・サウザンド・ミュージアム」

マイアミといえば、アメリカきっての常夏のリゾート・エリアであるだけに、いわゆるマンションとなると広々としたハイエンドかつゴージャスな建築が多いのは当たり前である。加えてデザイン的見地からも凝った作品が多い。「ワン・サウザンド・ミュージアム」はそのような今日的なマイアミ・スタイルのなかで、一頭地を抜くデザイン性の高い作品ということができる。

建物はマイアミのミュージアム・パークという有名な公園の真向かいに位置している。ビスケーン湾に面した広さ30エーカーの公園は、2013年にマイアミ・ダウンタウンにおける重要な公園のひとつとして開発されたものである。ここには同市の新しいアート・ミュージアムや科学ミュージアムなどの施設があり、知識を与える公園として市民にとっては特に人気のある公園となっている。

((c)Hufton+Crow)

((c)Hufton+Crow)

ザハ・ハディドの設計による高さ約213mの超高層集合住宅タワーである「ワン・サウザンド・ミュージアム」は、62階建て延床面積約84,600m2というかなり大きな集合住宅だ。しかし、全戸数はわずかに83戸と少ないのだ。その内訳はタウン・ハウス:4戸、ハーフ・フロア・ユニット:70戸、フル・フロア・ユニット:8戸、ペントハウス:1戸、駐車場は260台分ある。これから分かるのは、一番小さな住戸でもハーフ・フロアの広さがあり、各住戸は平均3台分の駐車スペースを確保していることになる。まさにマイアミならではの豪華マンションということになる。

((c)Hufton+Crow)

((c)Hufton+Crow)

ザハ・ハディドの超高層ビル研究が活かされた作品

「ワン・サウザンド・ミュージアム」のユニークなデザインは、ザハ・ハディド事務所の超高層ビルに関する研究の成果を引き継いだもので、建物全てに及ぶエンジニアリング技術で裏打ちされたザハ特有の流れるような華麗な建築表現となっている。建物のコンクリート・エクソスケルトン(外骨格)は、ペリメーター部分を流体的なラインでデザインし、それらが構造的支持体である縦型交差ブレース(筋交い)となっている。

最高階から最低階まで一つの連続したフレームで構成された建物は、上昇するに連れてベース部分から立ち上がった柱が扇形に広がるブレースとなり、コーナー部分で側面からの同じようなブレースと繋がることによって建物をひとつの堅固なチューブとし、マイアミの強い風荷重に対抗している。そのカーブした支持体が強烈なハリケーンを物ともしない強固なダイヤゴナル・ブレース(交差ブレース)を形成している。

((c)Hufton+Crow)

((c)Hufton+Crow)

「ワン・サウザンド・ミュージアム」はグラスファイバー強化コンクリート製の型枠を使用(コンクリートの型枠を残して構造材として利用)しており、工事がタワーの上部に進むに連れて所々で残存されているのだ。このような永久的なコンクリート型枠により、また最小のメンテナンスが可能な建築的仕上げとすることができたという。

エクソスケルトンのフレームが建物のペリメーターにあるため、タワーのインテリア・フロアはほとんどコラム・フリー(柱がない状態)となっているメリットがある。外壁に現れた巨大なブレースの曲率により、各階のフロア・プランは少しずつ異なっている。低層階ではテラスがコーナーからキャンティレバー(片側だけが固定され、反対部分が張り出している構造)で出ているのに対し、上層階では巨大なブレースの背後に配されている。

最上階には居住者のためのアクアティクスセンターやラウンジなども

アメニティー施設としては、最上階にアクアティクスセンター、ラウンジ、イベントスペースがあり、ランドスケープデザインが施されたガーデン、テラス、プールなどは、ロビーや居住者用パーキングの上部に設けられている。

((c)Hufton+Crow)

((c)Hufton+Crow)

なお、ザハ・ハディドは2016年3月31日にここマイアミの病院で他界した。ザハ終焉の地に完成した「ワン・サウザンド・ミュージアム」は、彼女の手から生まれた流麗なデザインの形見となっている。それは彼女の冥福を祈っているかのような佇まいで、マイアミの海辺に屹立(きつりつ)しているのである。

●関連サイト
One Thousand Museum

ニューヨーク人情酒場 ペルー人・チャトは金曜になるとハイテンションに! メルは別れ際もモテ女! 飲食業界の出会いは一期一会

ニューヨーク人情酒場へようこそ!これは、ブルックリンにある小さな酒場(レストラン)で起こったいろんな出来事。
大都会の夜、一杯の酒から始まる人間模様。作者はこのお店で今お寿司を作っているよ。

漫画

週末のチャトはだいぶ変

漫画

ペルー人のチャト。基本は陽気ですが、週末になると奇妙なほどにテンションが高い時があります。
バチャータというのは、ドミニカ共和国発祥の非常に情熱的なダンス!男女ペアになって踊ります。
南米の人々は本当にダンスが大好き!理由を聞いたら、小さなころから当たり前のように毎日ダンスを踊って過ごすからなんだそう。年齢を問わず、家族の集まりの場でも必ずダンスの時間があるんだって!日本の片田舎で育った人間からしたら考えられないことですが、すごくおもしろいですね。
金曜にテンションを上げても、結局土日は働くのが料理人なのであんまり意味ないのでは?と思ったりもしたけど、まあ週末だしね!って感じで、みんなで仲良く飲みながら仕事することもあります。

ペルー人人情物語

漫画

ご紹介した通りに週末は変なテンションのチャト。しかし、たまにこういう優しいところを見せるので、憎むなんて絶対できません。
踊りながらもささやかに気を配ってくれていたのか!と感動しましたが、実際は単に私の機嫌が悪そうに見えたからアイスで元気出せや!という感じだったのかも?!それでもとってもうれしい。小さな優しさが職場を円滑にすることをチャトは身をもって教えてくれました。
昔から日本人の移民が多いこともあり、ペルー人のスタッフはみんな親日家の印象です。オーナー陣をふくめ、本当に優しいスタッフが多かった!
ペルー名物料理、セビーチェは元々日本からの移民が刺身を保管するために編み出したレシピなんだって!いつか行って本場の味を食べてみたいな。

メルが仕事をやめることになった

漫画

同僚のメルが急にフロリダに引っ越すことになりました。メルはコロンビア人ですが、フロリダは南米の人々から人気があります。南米からの移民がすごく多い土地柄、スペイン語がどこでも通じること、また美しい海があり、都市部ではパーティーカルチャーが盛んであることも理由なんだとか。物価や地価もNYより安いはず。一度旅行で行ったことがあるのですが、のんびりとしたとてもいいところでした。
それにしてもメルは「オタクにも優しいギャル」を体現するような女の子でしたね。アメリカの飲食業は入れ替わりがすごく激しく、一期一会の出会いだらけです。

ヤマモトレミ

作者:ヤマモトレミ
89年生まれ。福岡県出身。2017年、勤めていた会社の転勤でニューヨークに移住。仕事の傍ら、趣味でインスタグラムを中心に漫画を描いて発表していたところ、思った以上に楽しくなってしまい、2021年に脱サラし本格的に漫画家としての活動を開始。2022年にアメリカで起業し個人事業主になりました。ブルックリンのレストランで週4で寿司ローラーをやっています。

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漫画

いや、なんだよSake Bombって

漫画

にわかに信じがたいドリンクSake Bombですが、これが意外なほど浸透しています。しかも、お箸の上に載せた日本酒入りのおちょこはテーブルを手で叩きまくった振動でビールの中に落とすという野蛮極まりない手順で完成します。挙げ句の果てにビールと日本酒を混ぜたものを飲むというのだから日本人としては目も当てられないといったところですが、アメリカのパリピにはSake Bomb好きが多い印象があります。でも、そもそも日本酒を置いているバーでないとできない遊びなので、条件的には厳しいです。(アジア人経営でないアメリカのバーで日本酒・焼酎を置いているところは少ない。)
アメリカのパリピのやるドリンキング・ゲーム的な遊びは、私のようなオタクの日本人には経験がないほど原始的なものが多く(球をコップに投げ入れて外れたらショットを飲むやつとか)ちょっと困惑してしまいます。でも、あんまり知らない人と距離を詰めるにはちょうどいいのかも!?

ちょい飲みが激しすぎる問題

漫画

日本でサラリーマンを経験した人間といたしましては、「ちょっと飲みに行く」のイメージは仕事終わりの居酒屋での一杯だったんですが、パーティー好きなアメリカ人やラテンアメリカ人にとってはちょっと違ったようです。
とくにラテンの人々はサルサミュージックが流れ出すと自然に腰が動き出し、週末はどこでも構わずに踊り出してしまいます。上司も部下も関係なく、踊ってるときはみんなハッピー。おおらかで優しい心を持った人が多い印象で、ダンスが下手な私にも踊りを教えてくれたりなど。
でも、この日はかなり激しかったな。次誘われたら参加してみようと思います。絶対浮くと思うけど……。

ヤマモトレミ

作者:ヤマモトレミ
89年生まれ。福岡県出身。2017年、勤めていた会社の転勤でニューヨークに移住。仕事の傍ら、趣味でインスタグラムを中心に漫画を描いて発表していたところ、思った以上に楽しくなってしまい、2021年に脱サラし本格的に漫画家としての活動を開始。2022年にアメリカで起業し個人事業主になりました。ブルックリンのレストランで週4で寿司ローラーをやっています。

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漫画

トシさんが仕事を休むことになった

漫画

いつも前向きなお寿司フェアリー・トシさんとの日々は平和に過ぎていきました。どんなことがあっても動じず声を荒らげたりも一切しない、奇跡のように心優しくニコニコ笑顔の寿司職人トシさん。彼の存在をあがめるようにして働いていましたが、そんなトシさんから頑固親父ヤスさんへのシフトチェンジは正直難しいところがありました。でも、何事においても第一印象が悪ければ悪いほど、その後の印象が変わりやすいもので・・・?
(この漫画を描くにあたりヤスさん本人の職場にご挨拶に行き、概要を説明して漫画にしてOK!という許可を頂いています)

ブルピじじい

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共通の話題が一切ない人と話している時に、話題をひねり出そうと頭をフル回転する瞬間ってあるよね。私はあの瞬間がすっごく苦手です。
しかし、苦し紛れのスモールトークがきっかけとはいえ、ヤスさんの絵は本当に素晴らしいものでした。職歴40年のベテラン寿司職人ヤスさんですが、寿司を作っている時以外は自宅で絵の制作に励んでいるそうです。NYには本当にいろいろなバックグラウンドをもった人がいて、みんなの経歴を聞くだけでもとても面白いです。第一印象で決めつけることなかれ!
それにしてもこんな素敵な絵が誰の目にも留まることがないなんて本当にもったいない。ここに出した3枚の絵は結構最近描かれたものらしいですよ!

ブルピじじいとの交流

漫画

やっぱり好きなものが共通していると仲良くなるスピードも自然と早くなりますよね。ヤスさんの絵の世界観は意外にもほのぼのとして、絵のことを話している時の言葉選びは調理場とはまるで別人。作品も言葉もどことなく儚く、詩人のような印象がありました。
さらに、調理場での態度にも納得がいくほど、作っていただいたお寿司は本当においしかったです。何事も一流を極めている人ってかっこいいよね!
そして絵の世界観とのギャップが激し過ぎて困惑。絵の話を振ってみてよかった!

ヤマモトレミ

作者:ヤマモトレミ
89年生まれ。福岡県出身。2017年、勤めていた会社の転勤でニューヨークに移住。仕事の傍ら、趣味でインスタグラムを中心に漫画を描いて発表していたところ、思った以上に楽しくなってしまい、2021年に脱サラし本格的に漫画家としての活動を開始。2022年にアメリカで起業し個人事業主になりました。ブルックリンのレストランで週4で寿司ローラーをやっています。

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世界の名建築を訪ねて。“曲面テラス” に覆われた超高層集合住宅タワー「アクア・タワー(Aqua Tower)」/アメリカ・シカゴ

世界中の建築を訪問してきた建築ジャーナリスト淵上正幸が、世界最先端の建築を紹介する連載3回目は、“曲面テラス”がユニークな超高層集合住宅タワー「アクア・タワー(Aqua Tower)」(アメリカ・シカゴ)を紹介する。

曲面テラスが醸すユニークな超高層集合住宅タワー(c) Hedrich Blessing

(c) Hedrich Blessing

今日、ニューヨークは超高層ビル群が櫛比(しっぴ)する垂直都市として世界的に知られている。スレンダーなスカイスクレーパー(超高層ビル)群が林立する様は、まさに経済的なシンボルともいわれている。だが摩天楼発祥の地はシカゴなのだ。シカゴにはかつて長らく米国1の高さを誇っていた高さ442mの「ウィリス・タワー(旧シアーズ・タワー)」や、それに続く344mの「ジョン・ハンコック・センター」があり、それらの偉容は、シカゴの超高層都市としてのアーバン・イメージを特徴づけてきた。

そうした中、シカゴをベースに活躍する女性建築家ジーン・ギャングが率いる建築設計スタジオ・ギャングが登場し、ここ20数年、主にユニークな集合住宅タワーを設計し評判になっている。彼女は1997年に事務所をシカゴに開設。女性建築家として世界的に有名であったイギリスのザハ・ハディド亡きあと、徐々にアメリカから世界を視野に収めた活動を展開しているスター・アーキテクトである。

彼女が数年前に発表したマルチ・ファンクショナル(多機能的)な集合住宅タワーが、世界的に評判で話題になっている。82階建て約263mの高さを誇る「アクア・タワー」は、4~18階にホテル、19~52階にレンタル・アパートメント、53~79階にコンドミニアム、80~81階(※)にペントハウスが配されている延床面積176,510m2の大きな超高層建築である。いわゆるブラウンフィールド(古い工場などの廃棄跡地)と呼ばれる約16,700m2の敷地に立つ建物は、敷地の50%をグリーンのオープン・スペースとして開放し、シカゴの標準的なゾーニング基準である25%をはるかに超えている寛大なデザインが人気である。この集合住宅タワーの発表で、彼女は一躍世界的に知られるようになった。
※米国では日本の1階部分をグラウンド0(0階)とするため、82階部分は、81階と呼ぶ

(c) Hedrich Blessing

(c) Hedrich Blessing

眺望を追求し、最大3.6m突出させたテラス

「アクア・タワー」が一見して他のビルと異なるのは、そのユニークな外観にある。建物が立つエリアはミシガン湖に近いが、周辺には同規模のタワー群が建ち並んでおり、眺望を楽しむビュー・ライン(視線)がところどころで遮られているのが現状だ。そのため近隣に立つビル郡の間隙(かんげき)を縫って眺望視線を獲得するために、テラスに工夫が施されているのだ。

(c) Hedrich Blessing

(c) Hedrich Blessing

建物は各階のプランがコンタ・ライン(等高線)のようにうねっている。特にテラスは曲面となって最大3.6mほど突出している。それは眺望、日影、ルーム・サイズ、居室タイプによって異なっている。建物外壁を見上げると、それらが機能に根ざした非常に彫刻的なヴァーティカル・ランドスケープ(垂直の景観)を呈しているのだ。「アクア・タワー」は強烈なアイデンティティーを生み出し、シカゴ・スカイラインにおける個性的なランドマーク建築として登場したのである。

3階の広いルーフガーデンには多数のアメニティー施設が3階平面図(画像提供/筆者)

3階平面図(画像提供/筆者)

建物はシカゴの建築群の中で、最も広いグリーン・ルーフガーデンのひとつをもつビルとしても知られている。3階の広いルーフガーデンには多数のアメニティー施設があり、住民は自由な時間を楽しく過ごすために、外部に行かなくても十分事足りるようになっている。アメニティーとしては、プールをはじめ、ジム、シアター、ジョギング・コース、室内プール、見晴台、庭園、囲炉裏、禅ガーデン、ヨガ・テラス、バーベキュー・コーナー、脱衣室など、多くのヘルスケア&エンターテイメント施設が充実している。またサスティナブル・デザインとして、自然採光、自然換気、雨水利用をはじめ、開口部まわりには6種類ものガラスが使用されている。特にバード・ストライク(鳥の衝突)予防のために、フリット・ガラスを使用するなど、配慮が行き届いた超高層集合住宅タワーでもある。

●関連サイト
Aqua Tower
スタジオ・ギャング

世界の名建築を訪ねて。ウーブン・シティなど手掛けるビヤルケ・インゲルス設計の集合住宅「ザ・スマイル」/NY

世界中の建築を訪問してきた建築ジャーナリスト淵上正幸が、世界最先端の建築を紹介する連載1回目は、アメリカ・ニューヨークにある複合開発ビル「The Smile(ザ・スマイル)」(設計:ビヤルケ・インゲルス(BIG))を紹介する。

火星移住計画、トヨタ「ウーブン・シティ」も手掛ける世界的建築家の作品

今日ニューヨークで話題の建築家ビヤルケ・インゲルスは、デンマークのコペンハーゲン出身の建築家で、まだ48歳という世界の建築界では圧倒的に若さを誇る建築家である。いわゆるアトリエ派といわれる建築家集団(個人名を会社名として使用し設計活動をしている会社)では、おそらく世界有数の規模を有する建築デザイン・アトリエだ。その作品は世界中に展開され、さらに「火星移住計画」なども発表している。     

彼の事務所は「BIG」、すなわちBjarke Ingels Group(ビヤルケ・インゲルス・グループ)と呼ばれ、生み出す建築作品は、そのデザインの形態的ダイナミズム、アイディアの先進性、イノベイティブな機能性など、圧巻の魅力を兼ね備えている。それゆえトヨタが富士山麓に計画しているスマート・シティである「ウーブン・シティ」の都市デザインも任されているのだ。

イースト・ハーレムに打ち込まれた建築的スパーク

ニューヨークのハーレムといえば、多くの人はマンハッタンの北側方向にある治安が悪い場所というイメージをもっていると思う。あながち間違いではないが、近年では治安は以前より良くなっているようだ。裏通りなどはやめて、表通りを歩いていれば安全ということである。

ハーレムの存在はニューヨークの都市的多様性を示す好例であろう。縦長のマンハッタンにはロウアー・マンハッタンからアップタウンに向けて北上して行くと、先述のアーバン・ダイバーシティを種々体験することができる。そしてセントラル・パークを越えると、ハドソン川沿いにあるハーレムに行き着く。

さてビヤルケ・インゲルスがデザインした「ザ・スマイル」は、ハーレム125ストリートとハーレム126ストリートというふたつの通りをつなぐという大きな建物である。1階に看護学校を擁し、上部に集合住宅があり、両ストリートをつなぐ複合開発ビルだ。延床面積26,000平米の建物は、集合住宅の3分の1は手ごろな値段のアパートメントで、この界隈における集合住宅の多様性の一翼を担っている。

T字形をした建物プランにより、ユニット・サイズやレイアウトにバラエティがある一方、近隣ビル群との連繋も強化したデザインとなっている。この南側キャンティレバー部分は、125ストリートに面した既存の商業ビルの上部に浮遊するように見え、発展するアップタウンにおけるダイナミックな起爆剤となっている。

建物における最大の特徴となっている126ストリート側ファサードは、壁面が上部にいくに従って緩やかに湾曲を増していくという、従来の直線的なストリート・ラインに対し、ソフトでエレガントな形態となっている。このデザインは建物のマッス(躯体)を市のゾーニング規制に対応させているし、さらに集合住宅が多いこのストリート界隈に、より多くの直射光を導入するという、巧みな配慮が生きていて素晴らしい。

上部にいくに従って緩やかに湾曲を増していく壁面ファサード。チェッカーボードのパネルの合間は居室の窓にあたり、床から天井までの景色が楽しめる

上部にいくに従って緩やかに湾曲を増していく壁面ファサード。チェッカーボードのパネルの合間は居室の窓にあたり、床から天井までの景色が楽しめる

ニューヨークとはいえ、この辺はにぎわうフィフス・アベニューなどとは違って超高層ビルがないので通りがそんなに暗くはない。だがそれでもニューヨーカーは都心の超高層ビル群の間を巡るストリートの暗さを、日ごろ体験しているので、その気持ちが強いのだと思う。インゲルスもそうした気持ちから、ここハーレムでファサード・デザインに粋を凝らして、街路により多くの自然光を導入しようと考えたのだろうと思う。

建物名の「ザ・スマイル」については、彼の真意は分からないが、曲面壁のファサードは建物がスマイルして(笑って)いると考えたのかもしれない。そのファサード全体に使用された連続するチェッカーボードのパネル・システムは、個々の住宅ユニットに床から天井までフルハイトの開口部を可能にした。そのためテナントは同市のオープンでワイドな景色をエンジョイすることができる。さらにセントラル・パーク方向へのイースト・ハーレムや、北方向のハーレム川やブロンクスの眺望が可能になっている。

のんびりとしたルーフデッキからのワイドな眺望は圧巻

エントランスはタイル張りで、近隣の壁画アートからインスピレーションを得た強烈なカラー・コンクリートのデザイン。界隈のビル群に対しユニークでウェルカムな態度をアピールしている。内部のアメニティとしては、フィットネス・センターをはじめ、メディア・ルーム、リラクゼーション・スパ、ソーシャル・ラウンジ、さらにスカイライトで明るい3層吹き抜けのギャラリーを見晴らすワーク・スペースがある。

さらに外部のルーフトップ・アメニティとして、ワールプール・スパ、水泳プール、その他のソーシャルな活動や集会用に種々のタイプのスペースを提供するルーフデッキがある。建物の外装は黒色のメタル・パネルに対し、インテリアの居住スペースはニュートラルかつミニマルな空間となっている。インテリア全般において、空間は木材、コンクリート打放し、スティール・トラスといった建築素材で構成。それに対し、パブリックなアメニティ・スペースではより多くのファサードのメタル・パネルやカラー・タイルを組み合わせている。

のどかなルーフデッキから遠望するマンハッタン中心部の超高層ビル群が素晴らしい!

のどかなルーフデッキから遠望するマンハッタン中心部の超高層ビル群が素晴らしい!

ユニークな形態で界隈を明るくする「ザ・スマイル」は、前世紀のセットバック規制をクリアしている。良き隣人として、建物は既存の界隈の仲間となり、コミュニティのエネルギーを吸収し、イースト・ハーレムのコミュニティに新たなスパーク(火花)を点火したようだ。

●The Smile (New York, USA)
ザ・スマイル(アメリカ、ニューヨーク)

NY現地レポ! 新型コロナ、戦争、物価高。「モノ不足」に市民が悲鳴

コロナ禍になって3年目。アメリカでは「モノ不足」が叫ばれるようになって久しい。
2020年3月、日本と同様、アメリカでも人々は未曾有の脅威に備え「買いだめ」に走った。それによりトイレットペーパー、消毒液、不織布マスク、風邪薬、長期保存用のパスタや米といった食料品、ミネラルウォータなどがスーパーの棚からごっそり消えた。
感染拡大の落ち着きとともに品不足は解消されたが、コロナ禍3年目の今年になっても、さまざまな「モノ不足」が社会問題になっている。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

アメリカで深刻な粉ミルク不足

日本では、新型コロナや戦争などに関連して材料不足・労働力不足による値上げや品不足が取りざたされているが、それだけとも限らない。例えば今春、ベビーフォーミュラ(粉ミルクなど乳児用ミルク)の品薄が子を持つ親にとって切実な問題となった。

そもそもの原因は、粉ミルクを飲んだ乳児4人が細菌による感染症で入院、うち2人が死亡したことだ。この粉ミルクは米最大手アボット・ラボラトリーズのミシガン州の工場で製造されたもので、同社は問題発覚後、製品を回収し工場の稼働を停止した。その影響で消費者がパニック買いをしたことで、5月半ばには全米で粉ミルクが常時より43%減り、どの店でも品薄状態に陥った。

きっかけは1社の感染症によるもので、厳密に言えば労働力不足や戦争などが関連したものではないが、コロナ禍で社会不安が広がるなか、人々がニュースに敏感になり、ちょっとした異変を感じては買いだめに走り、商品が棚からごっそりなくなるという意味では、この2年で発生したほかの品不足騒動と類似している。

その後FDA(アメリカ食品医薬品局)は、外国製粉ミルクの輸入を認める方針を発表し、ヨーロッパからの輸入に頼る緊急対策を打ち出した。さらに、工場の衛生環境の見直しなどを条件にアボット社の再稼働を許可したことで、問題はさしずめ落ち着いたように見られるが、店によってはまだ品薄状態だ。足りない地域の人々は、他州に買いに行ったりオンラインで購入したりしている。

7月下旬になっても、ニューヨーク市内のドラッグストアでは乳幼児用製品が品薄状態  (c) Kasumi Abe

7月下旬になっても、ニューヨーク市内のドラッグストアでは乳幼児用製品が品薄状態 (c) Kasumi Abe

ドラッグストアでは、タンポンも不足気味だ。まったくないわけではないが、商品によっては空の棚が目立つ。

タンポン売り場。7月下旬、ニューヨーク市内のドラッグストアにて (c) Kasumi Abe

タンポン売り場。7月下旬、ニューヨーク市内のドラッグストアにて (c) Kasumi Abe

ニューヨークタイムズによると、タンポンの品薄状態はインフレによる消費者物価の上昇が背景にあるという。また、金融関連の専門メディア、ブルームバーグによると、インフレにより今年5月の時点で、生理用ナプキンの平均価格は今年の初めに比べて8%以上上昇し、タンポンの価格は10%近く上昇した。

タンポンの製造を行うタンパックス(Tampax)社は、コットンやプラスチックなどの原材料を入手するのに高いコストがかかっていることにより(製造が)非常に不安定であると発表している。

コロナ禍以降のモノ不足について、ニューヨークタイムズは、粉ミルクやタンポン以外にも「トイレットペーパー、自動車、厨房機器などの世界的なサプライチェーンが品薄の危機に晒されている」と報じた(筆者の住むエリアでは、トイレットペーパーの仕入れはここ1~2年ほど安定しているが、全米では品薄の場所もあるようだ)。

また筆者は本屋を取材した際、出版業界でも紙不足と労働力不足で印刷が減っているという話も聞いた。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

米労働省労働統計局(U.S. Bureau of Labor Statistics)によると、2021年6月と比べて、食品価格は10.4%上昇した。具体的に卵は33.1%、レタスは11.4%、パンは10.8%値上がりし、消費者物価指数(CPI)は1981年以来もっとも高い上昇率だという。ガソリンの高騰も報じられている。

インフレ以前もアメリカの都市部では物価、家賃、外食費は高かったのだが、以前ならスーパーでちょっとしたものを購入し て5000円~1万円程度で済んでいたものが、インフレの今は、6000円~1万1000円出さないといけない状態だ。買い物1回あたりは約1.1倍と微増だが、塵も積もれば結構な出費となる。筆者も極力外食を減らし自炊を増やしているのはもちろんのこと、単価が高くなったもの自体の購入自体をやめた、もしくは購入する回数を減らしたケースもある(例えば、6ドルから数セント値上がりしついに7ドルに達したお気に入りのジュースなど。6ドルでも高いと思ったが、7ドルになると手が出せない域になったと感じた)。

価格高騰の波は、さまざまな分野に影響を及ぼす

例えばニューヨークでは、数々の映画でもおなじみの観光地であるセントラルパークのボートハウスが2022年10月16日、150年の歴史に幕を閉じることが7月21日に発表された。閉店理由は「人件費と物価の上昇による」という。「また1つ、ニューヨークのアイコンがなくなる」と、市民を失望させるニュースだった。市内ではコロナ禍以降、店舗の閉店が増えるなど、ボートハウスの閉店は氷山の一角だ。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

また、都市部では住宅不足による家賃高騰も続いている。

新型コロナがサプライチェーンにもたらす影響

コロナ禍初期、行動制限により世界中の工場が操業を停止した。それにより何が起こったかというと、サプライチェーン(商品や製品が消費者の手元に届くまでの調達、製造、在庫管理、配送、販売、消費という一連の流れ)の一時停滞と、世界の物流の寸断だ。

コロナ禍3年目のいま、初期とは別の問題が生じている。一時は停滞していた経済活動が回復し、需要が増えたのはいいが、供給が追いつかない状態なのだ。コロナ禍以降、住宅着工件数が急増したことで、輸入木材の価格は2021年10月の時点で、コロナ禍前の2019年12月に比べて1.8倍に、自動車や電子機器に使われる銅の価格は2021年11月、2019年12月の1.5倍にはね上がった。木材や銅などの資源価格が急激に上昇し、コンテナ不足などもあり物流が混乱している状態だ。

労働力も足りない

コロナ禍以降の不足は「モノ」など物質だけではない。「人」や「労働力」もそうだ。

筆者は日常生活のあらゆる場で、人手不足を感じている。例えば、銀行に行くにも予約が取りにくい状況だ。その理由を行員に尋ねると「Labor shortage(人手不足、労働力不足)」と説明される。薬局では、万引き防止で鍵のかかった商品を出してもらおうと店員を呼んでも、しばらく誰も来てくれないことがある。スタッフが足りていないのだ。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

現在は真夏のプールシーズン真っ盛りだが、ライフガード不足でいくつかの公共プールの閉鎖(もしくは入場制限)が報じられた。

また、今はそれほど深刻ではないものの、今後はオリーブオイルの品薄も懸念されている。オリーブの生産国の1つ、イタリアでオリーブ急速衰退症候群といってオリーブの樹木を枯らす細菌が急速に蔓延しているのが原因だ。専門家によると、そのせいで過去5年間で生産量が約50%も損なわれるなど大きな被害が出ている。これに加え、世界中のサプライチェーンの問題、労働力不足、ウクライナでの戦争も供給に影響を及ぼすというのだ。

このようにコロナ禍以降の「人・モノ不足」は、アメリカのみならず世界各地での切実な問題だ。
市井の人の視点としては、モノ不足に関して「まったくない」状態ではないので行政の目立った対策はないものの、以前と比べて「チョイスが限られるようになった」のは事実。世界的なサプライチェーンの問題はしばらく続きそうだが、それさえ解決できたら少しは人・モノ不足も解消されていくだろうと、人々は期待を寄せている。

NY、経済活動再開で家賃相場が30%増の地域も! シビアな世界の不動産事情

新型コロナウイルス感染症拡大で、2020年以降大打撃を受けたアメリカ・ニューヨーク。一時はロックダウンで街から人が消え去り、さらにはリモートワーク/テレワークなどの新たな働き方の浸透によって、多くの市民が市外や州外へ転出した。それに伴って、市内の不動産価格や家賃が下落。あれから2年。コロナ禍3年目となった今、感染状況は一進一退だが、不動産価格や家賃相場は再び上昇傾向になっている。そこには全世界から人が集まる大都市ならではの「ある理由」があった。

NYと日本、いま「住みたい街」とは?

アメリカの大都市ニューヨークでは、東京や大阪などと同様に、街によってそこを選ぶ人の世代やライフスタイルが異なる。収入が十分でない若年層が注目するのは、マンハッタンの外れの地域や、川を越えたクイーンズだ。タウンハウスという一軒家を借りて何人かでシェアしていることもある。子育てをしているファミリー層はマンハッタンから電車で1時間ほどの郊外にある、広い庭付きの一軒家が好まれる傾向がある。富裕層はマンハッタンのパークアベニューやアップタウン、トライベッカなどに好んで住む傾向だ。個性を求めているアーティストには、クリエイティブで独自の文化があるマンハッタンのダウンタウンや、広いロフトが多いブルックリンなどが人気だ。

ブルックリン(写真/PIXTA)

ブルックリン(写真/PIXTA)

ちなみに日本では、今コロナ禍による影響も大きな要因となって、都心よりも郊外の人気がやや上昇している。在宅時間が長くなり、人々が利便性に優れた都心だけでなく郊外の住環境などにも目を向けた結果だろう。 今年発表された「SUUMO住みたい街(駅)ランキング2022」でも、横浜駅や吉祥寺駅、恵比寿駅の人気は相変わらずだが、上位に埼玉県の大宮市や浦和市など、郊外の都市がランクインしたのが特徴的だった。

ニューヨークも同様、観光客が多いマンハッタンの繁華街ではなく、中心部から少し離れた場所や郊外などが「住みたい街」として注目されている。

2年前、この街は新型コロナウイルスの感染拡大によって大打撃を受け、経済が壊滅状態となった。感染を避けるため、またはリモートワーク/テレワークの浸透によって、多くの市民が市外や州外へと続々と転出したことが地元メディアでも報じられた。それによって、不動産価格や地価、家賃の下落が起きたのだ。不動産の調査をする「ストリート・イージー」によると、2021年1月~3月期のマンハッタンの月の家賃の中央値はコロナ騒動が勃発した時期の前年同期比17%減の2700ドル(当時の為替で約29万円)だった。これは集計を開始した10年以来で最低の数値だった。

コロナ禍3年目、不動産市場が再び活況に

しかしコロナ禍3年目となる今、ニューヨーク市内での不動産価格や地価、家賃の上昇が伝えられている。

「ニューヨークは戻った」という見出しを掲載したビジネス誌『FORTUNE(フォーチュン)』のウェブ版記事は、「アメリカの金融資本の需要はかつてないほど高まっている」とし、マンハッタンの家賃が記録的な金額に達したと報じた。

マンハッタン(写真/PIXTA)

マンハッタン(写真/PIXTA)

同誌によると、マンハッタンの家賃は昨年に比べて24%も上昇したという。中央値は昨年より705ドル(9万円以上。1ドル128円計算。以下同)も値上がりし、(今年3月時点で)3700ドル(47万円超え)に。家賃の上昇は、オフィス勤務の復活や学校再開に伴い人々が市内に戻り、空室が少なくなったことを意味する。空室率は昨年2月の時点で12%近かったが、今年の同時期は1.32%まで下がっている。

マンハッタン以外でも、ブルックリンで昨年に比べて10.5%上昇し、中央値は2900ドル(37万円超え)、クイーンズで14.5%上昇し中央値は2888ドル(37万円超え)に達するなど、市内の至るところで家賃が上昇している。

地元メディアのニューヨークポストによると、特に中心部や繁華街(マンハッタンのアッパーウェストサイドやダウンタウン、ブルックリン)の駅近くの物件において家賃が上昇傾向にあるという。

NY、エリア別の家賃相場

家賃が東京の2倍もしくはそれ以上とも言われるニューヨーク。家賃相場はエリアにより、また間取りやビルの状態などによって異なる。
ニューヨークは全体的に家賃が急上昇しています。特にマンハッタンは前年同月比で30%くらい上がっていると思います。ブルックリンも負けずに上がっています」と話すのは、滝田不動産(Yoshi Takita REALTOR(R))の代表、滝田佳功(たきたよしのり)さん。

Living NY社に勤務する、ニューヨーク州認定の不動産エージェント、木城祐(ひろし)さんも、「特に家賃が上昇しているのはマンハッタンです。アッパーマンハッタン(北部)など一部エリアを除いて、上がり続けています」と話す。

アッパーウエストサイド(写真/PIXTA)

アッパーウエストサイド(写真/PIXTA)

木城さんによると、昨年は入居者を呼び込むための優遇措置で、家賃割引や仲介料なしといった物件もあったが、現在の市場ではそれらの優遇措置はほぼ見られないという。

「日本人留学生などに人気のイーストビレッジ地区やローワー・イーストサイド地区ではパンデミック中、入居者が大量に流出し、多数の空室が出て大家は頭を抱えました。しかし昨年秋に市内の大学が対面授業の再開を発表するや否や、学生が州外や国外から市内に戻り、瞬く間に空室がなくなってしまったのが印象的です」(木城さん)

また前述の「優遇」の恩恵を受けた入居者も1年契約が終わった途端に家賃が大幅に高騰し、住み続けられず慌ててほかのアパートを探すケースもよくあるという。

滝田さんは、学校が再開して学生が戻ってきたあと、学生寮のルームシェアが撤廃されたため、寮以外の一般のアパートを借り始めた学生も多いという情報を聞いており、そんな事情も家賃上昇に拍車をかけている一因になっていそうだ。

学生だけでなく、新しくビジネスを始める人々や一度は郊外や州外に引越しをしたがやはりニューヨーク市内での生活が良いと感じた人などが戻り、市内を拠点にしたことで、家賃の高騰に拍車をかけた。

家賃以外で、暮らしで変化したこと

ニューヨーカーの暮らしを圧迫しているのは家賃だけではない。物価高騰も暮らしを圧迫している。
家賃上昇に加え、最近アメリカでは記録的なインフレが続いている。2021年から加速して39年ぶりの高水準となり、ガソリンや日用品、食費などあらゆる物価が高騰している。特にロシアによるウクライナ侵攻後、ガソリン価格が過去最高値を更新した。

また、物不足も深刻だ。住宅建築需要の増加によって、木材不足・価格高騰(ウッドショック)や半導体などあらゆる不足が連日ニュースとなっている。そして最近は、粉ミルク不足も大きな社会問題となっている。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

今後、家賃相場の高騰に対するなにか対策がされていくのか

また、インフレとは無関係に、世界を代表する大都市ニューヨークは、世界中から移住者が増え続けており、家賃は恒常的に毎年上昇し続けている。ブルックリンのアパートに住む筆者の家賃も、13年前の引っ越し当初の家賃と比べて、円にして数万円単位で値上がりしている。家賃上昇と物価高騰のWパンチで、ますます大都市は住みにくくなっている。

「この街を一層ユニークで味のあるものにしてきたのは、ここで生まれ育ったニューヨーカーたち。そんな彼らが、物価上昇と家賃の高騰に悲鳴を上げている。以前と同じ住居やエリアに住み続けられないのだとしたら、それはとても残念なことです」と、木城さんは話す。

滝田さんも、以下のように言う。
「ニューヨーク州の条例では、コロナ禍に家賃が払えなくなった住民のために『Eviction Moratorium(強制立ち退き猶予)』が設けられ、今年1月15日まで、大家による強制立ち退きは禁止されていました。またハードシップ手当として、家賃支払いができない人のための補助金も出ていたので、本当に家賃が支払えなくて退去させられた人は少ないと思います。また、生活費に困窮した市民が申請し、審査に通れば、よりリーズナブルな家賃で住める『アフォーダブルハウジングのプログラム』などの措置もあります」

最近物価高騰が報じられる日本だが、それでもコンビニに行けば、数百円単位の美味しいものに出合うことができる。当地でも昔から1ドルピザなるものがあったが、コロナ禍で次々に閉店が報じられている。物価上昇と家賃上昇などで、この大都市はさらに住みにくい街として汚名を着せられていくのか? 人々は戦々恐々としている。

●取材協力
Yoshi Takita REALTOR(R)
Living New York

NY「ビリオネア通り」の不動産が活況! 億万長者だらけの最新マンションに潜入

ニューヨークには、世界の億万長者が好んで住んでいる通りがいくつかあります。その最たる通りの名は、「Billionaires’ Row(ビリオネアズ・ロウ)」。「億万長者の並び」という意味で、世界の名だたる実業家や投資家など選ばれし者が注目するストリートです。

なぜここがそのように富裕層の人々から関心を向けられているのでしょうか。この通りの一角に今年新築されたばかりのマンションを特別に内見させてもらいながら、不動産専門家に話を聞きました。

NYのビリオネア通り(億万長者通り)って?

ニューヨーク・マンハッタンのセントラルパークからほんの2ブロック南にある東西に延びる通り、「ビリオネアズ・ロウ(億万長者通り、ビリオネア通り)」は、実業家や投資家、セレブなど世界中の富裕層が好んで売買する高級物件が集まっており、富の象徴となっています。

(写真提供/7w57)

(写真提供/7w57)

この通りには以前より、お金持ち御用達の高級老舗デパート「Bergdorf Goodman(バーグドルフ・グッドマン)」や「Nordstrom(ノールドストローム)」、ルイ・ヴィトン、シャネルなど世界を代表するハイブランド店が点在しています。この通りが住居や投資物件としてビリオネアや投資家の関心を集め始めたのは、かれこれ13年ほど前にさかのぼります。

2009年、当時としては市内でもっとも高層のコンドミニアム「One57 (ワン57)」が この通りに着工しされ、14年に完成しました。これに続けとばかりに、11年には、それよりもさらに高層(当時、市内で一番高い住居用)ビルとして85階建ての「432 Park Ave.(432パークアベニュー)」もこの通りに着工され、15年 に完成。それを機にビリオネアズ・ロウはゆうに80フロアを超える縦に細長い超高層ビルの建設ラッシュが続き、「Race to the Sky(空に向かった競争)」として活気付きました。現在は8棟ほどの超高層タワーマンションが立ち並んでいます 。

「432 Park Ave.」(写真撮影/安部かすみ)

「432 Park Ave.」(写真撮影/安部かすみ)

縦に細長いビルが立っている通りが、ビリオネアズ・ロウになる(写真撮影/安部かすみ)

縦に細長いビルが立っている通りが、ビリオネアズ・ロウになる(写真撮影/安部かすみ)

「マンハッタンの57丁目は、不動産市場の動きを注視する目の肥えた(実業家や投資家などの)世界中のバイヤーたちを魅了する超高層のラグジュアリーなコンドミニアムが集合したことで『ビリオネアズ・ロウ』という称号(呼び名)で呼ばれるようになりました。ここ10数年以上にわたって販売記録を更新し続けています」と説明するのは、米不動産大手コーコラン社のライセンス・セールスパーソン、ジョアンナ・パッシュビー(Joanna Pashby)さん。

432パークアベニューには一時期、女優のジェニファー・ロペス氏が当時の婚約者、アレックス・ロドリゲス氏と共にペントハウスを購入し話題になるなど、セレブも多くこの通りに物件を所有するようになりました。

またほかにも、イギリスの歌手スティング(Sting)ほか、デル(DELL)の創設者、マイケル・デル(Michael Dell )氏、アリババの共同創設者、ジョセフ・ツァイ(Joe Tsai)氏、HGTVネットワークの創設者、ケニス・ロウ(Kenneth Lowe)氏、日本の女優、松居一代氏など世界のそうそうたる富裕層がビリオネアズ・ロウに物件を購入したことが、メディアなどで報じられています。

特にデル氏が2015年に購入したワン57の最上階2フロアにわたるペントハウスの価格は、100.47ミリオンドル(1ドル130円計算で130億円超え)。市内で販売された最も高額なアパートとして話題をかっさらいました。

57丁目には、超高級の老舗デパート「Bergdorf Goodman」(写真)や「Nordstrom」、世界のハイブランド店などが軒を連ねる(写真撮影/安部かすみ)

57丁目には、超高級の老舗デパート「Bergdorf Goodman」(写真)や「Nordstrom」、世界のハイブランド店などが軒を連ねる(写真撮影/安部かすみ)

ビリオネアズ・ロウの5分圏内には、広大で緑豊かなセントラルパークが広がり、四季折々のレクリエーションが楽しめる(写真撮影/安部かすみ)

ビリオネアズ・ロウの5分圏内には、広大で緑豊かなセントラルパークが広がり、四季折々のレクリエーションが楽しめる(写真撮影/安部かすみ)

新築の「7w57」にいざ潜入

パッシュビーさんが次に注目するのは、ビリオネアズ・ロウの五番街と六番街の間に新築されたコンドミニアムの「7w57」です。

7w57は今年春に完成したばかりの、20階建て高級アパートメント(コンドミニアム)です。

「15戸のコンドミニアム(15家族分の住居物件)があり、ペントハウスは2フロア(この2フロアもカウントすると、ビル自体は22階建てということになる)で、セントラルパークを望む屋外スペースもあるんです」とパッシュビーさんは案内してくれます。

米コーコラン社のライセンスセールス、パッシュビーさん(写真撮影/安部かすみ)

米コーコラン社のライセンスセールス、パッシュビーさん(写真撮影/安部かすみ)

7w57の外観(写真提供/7w57)

7w57の外観(写真提供/7w57)

ロビー。当地の高級物件では言わずものがなの、24時間ドアマンサービス(写真提供/7w57)

ロビー。当地の高級物件では言わずものがなの、24時間ドアマンサービス(写真提供/7w57)

パッシュビーさんは、まず6階の2ベッドルームのお部屋から案内してくれました。

ニューヨークの高級物件で、特にコロナ禍以降の需要が高いプライベートエレベーターが、このアパートメントにも備えられています。プライベートエレベーターを降りると、アート作品が飾られたギャラリー風の長くてゆったりとした廊下の向こうに、広々とした豪華なリビングルームが広がっています。全面ガラス一面に映し出された57丁目の通りの景色自体が、まるで「アート作品」のようです。

窓全体がアート作品のような、6階のリビングルーム(写真提供/7w57)

窓全体がアート作品のような、6階のリビングルーム(写真提供/7w57)

リビングルームから57丁目のビリオネアズ・ロウを見下ろす(写真撮影/安部かすみ)

リビングルームから57丁目のビリオネアズ・ロウを見下ろす(写真撮影/安部かすみ)

(写真撮影/安部かすみ)

(写真撮影/安部かすみ)

窓側から見た6階リビングルーム(写真撮影/安部かすみ)

窓側から見た6階リビングルーム(写真撮影/安部かすみ)

6階の住居スペースは、1723スクエアフィート(約160平米)の面積に2ベッドルーム(寝室)、2.5バスルーム(浴室とトイレ)、リビング兼ダイニングルーム、キッチンエリアなどを含む5部屋が完備されています。

(画像提供/7w57)

(画像提供/7w57)

6階のキッチンスペース。洗浄機が備えられているのはもちろん、「料理の煙を換気扇がすぐにキャッチし吸い取ってくれ、キャビネットには指紋が付きにくいんですよ」と、使い勝手がいいように細かい部分まで配慮されています(写真提供/7w57)

6階のキッチンスペース。洗浄機が備えられているのはもちろん、「料理の煙を換気扇がすぐにキャッチし吸い取ってくれ、キャビネットには指紋が付きにくいんですよ」と、使い勝手がいいように細かい部分まで配慮されています(写真提供/7w57)

キッチンスペース(写真提供/7w57)

キッチンスペース(写真提供/7w57)

ホテルのような、バスルーム(写真提供/7w57)

ホテルのような、バスルーム(写真提供/7w57)

(資料提供/7w57)

(資料提供/7w57)

ベッドルーム(写真提供/7w57)

ベッドルーム(写真提供/7w57)

もう一つのベッドルーム(写真提供/7w57)

もう一つのベッドルーム(写真提供/7w57)

また最上階の2フロアと屋上テラスで展開するペントハウスは、2801スクエアフィート(約260.2平米)の面積に、2ベッドルーム(寝室)やリビング兼ダイニングルーム、キッチンエリアなどを含む5部屋に、2.5バスルーム(浴室とトイレ)などに加え、セントラルパークを眼下に望む広い屋外スペース(北と南の2カ所、1017スクエアフィート(約94.4平米)なども完備されています。

ローワーレベル(下階)(画像提供/7w57)

ローワーレベル(下階)(画像提供/7w57)

アッパーレベル(上階)(画像提供/7w57)

アッパーレベル(上階)(画像提供/7w57)

テラス(屋外スペース)(画像提供/7w57)

テラス(屋外スペース)(画像提供/7w57)

ペントハウスのリビングルーム(写真提供/7w57)

ペントハウスのリビングルーム(写真提供/7w57)

ペントハウスのベッドルーム(写真提供/7w57)

ペントハウスのベッドルーム(写真提供/7w57)

ペントハウスのベッドルーム(写真提供/7w57)

ペントハウスのベッドルーム(写真提供/7w57)

ペントハウスのキッチン(写真提供/7w57)

ペントハウスのキッチン(写真提供/7w57)

ペントハウスのバスルーム(写真提供/7w57)

ペントハウスのバスルーム(写真提供/7w57)

ペントハウスの2フロアをつなぐ階段(写真撮影/安部かすみ)

ペントハウスの2フロアをつなぐ階段(写真撮影/安部かすみ)

ペントハウスの北側に位置する屋外スペース。ここと別に南にも屋外スペースがあり、専用のキッチンやお手洗いスペース、ストレージ(倉庫)などを完備(写真提供/7w57)

ペントハウスの北側に位置する屋外スペース。ここと別に南にも屋外スペースがあり、専用のキッチンやお手洗いスペース、ストレージ(倉庫)などを完備(写真提供/7w57)

目の前は豪華なセントラルパークとアイコンビルのザ・プラザ(プラザホテル)。四季折々の季節がここから楽しめる(写真提供/7w57)

目の前は豪華なセントラルパークとアイコンビルのザ・プラザ(プラザホテル)。四季折々の季節がここから楽しめる(写真提供/7w57)

問い合わせは国内外の富裕層からきているとのこと。コロナ禍3年目でさらに不動産市場が活気付いているニューヨークで、このような超高級物件の需要は相変わらず高いようです。

住居用としてもそうですが投資先としてもますます目が離せないビリオネアズ・ロウ。「Race to the Sky(空に向かった競争)」は、今後もさらに活気付いていきそうです。

●取材協力
7w57
※記事中の部屋情報

6階
$3,950,000(1ドル130円計算で約5億1000万円)
5Rooms, 2 Bedrooms, 2.5baths
約1723 平方 ft(約160平米)

ペントハウス
$12.5 million(1ドル130円計算で約16億円)
2 Bedrooms, 2.5 baths

屋内スペース
約2801平方 ft(約260.2平米)

屋外スペース
約1017 平方 ft(約94.4平米)

●関連URL
One57(ワン57)
432 Park Ave.(432パークアベニュー)

ニューヨーカー、日本に魅了され自宅を「Ryokan(旅館)」にリノベ! 日本の芸術家は滞在無料

ニューヨーク・マンハッタンの繁華街にある、8階建てのビル。エレベーターで上階に上がるまで、このビルの中に「和の空間」が存在しているなんて誰が想像できるでしょう?
持ち主は、26年前の訪日以降、日本の大ファンになり日本の文化に敬意を表すニューヨーカーの男性です。一体彼はなぜ、自宅を和室空間にリノベーションしたのでしょうか? お部屋を見せてもらいました。

訪日で日本文化に魅了され、自宅を和の空間に大改造

ニューヨーク・マンハッタンのダウンタウン地区。地下鉄ユニオンスクエア駅から徒歩5分の便利な場所に、煉瓦造りのコンドミニアム(日本でいう分譲マンションにあたるもの)があります。この辺ではよく見かける 歴史的なヨーロッパ建築の8階建てビルです。

エレベーターで7階に上がり、廊下の奥のドアを開けると、なんと2間の「和室」が広がっています!

京都から取り寄せた畳以外の和の素材は、アメリカ現地で調達したもの。全部で約700スクエアフィート(65平米)(写真撮影/安部かすみ)

京都から取り寄せた畳以外の和の素材は、アメリカ現地で調達したもの。全部で約700スクエアフィート(65平米)(写真撮影/安部かすみ)

持ち主は、スティーブン・グローバス(Stephen Globus)さんというマンハッタン生まれ・育ちの生粋のニューヨーカーです。彼は26年前、出張で初めて日本を訪れ、京都・龍安寺の冬景色の美しさに息を呑んだと言います。その後も、東京・新宿の友人の日本家屋に滞在する機会が幾度かあり、「畳の生活」に魅了されたそうです。

ニューヨークに戻ってからも「畳の間が恋しい」と思うようになり、当地にある日系の施工会社、MiyaSに相談したところ、ニューヨークでも和の空間をつくることができると知り、早速自宅の大改築を依頼。2004年に完成したのが、この和室空間なのです。

茶会用に水屋も備わっている(写真撮影/安部かすみ)

茶会用に水屋も備わっている(写真撮影/安部かすみ)

床の間(写真撮影/安部かすみ)

床の間(写真撮影/安部かすみ)

「日本人はチェックアウトの際、必ず来た時よりも綺麗に掃除して出発しますね」と感心する、家主のグローバスさん。お気に入りの浴衣を羽織って(写真撮影/安部かすみ)

「日本人はチェックアウトの際、必ず来た時よりも綺麗に掃除して出発しますね」と感心する、家主のグローバスさん。お気に入りの浴衣を羽織って(写真撮影/安部かすみ)

構想の段階では、ただ「自分のために和室を」いうコンセプトでしたが、完成すると噂は瞬く間に広がっていき、「茶室として利用できないか?」という周囲のリクエストが多く集まったそうです。それに応え、せっかくなので茶室として一般向けに、スペースの提供を始めました。そうして茶会イベントが徐々に増え、日本人や日系の人々、日本文化が好きな地元の人の間で「話題の場所」になりました。

ただ、ここはそもそも茶室専用に つくったわけではなかったため、茶道口(点前をするときの亭主用の出入り口)や炉(ろ)がない状態です。本格的な茶会イベントが頻繁に行われると、どうしても不便が生じてしまうようになりました。

そこでグローバスさんは、今度は8階の別の自室スペースとペントハウスのスペースを利用して、本格的な茶室にリノベをしたのです。そうして誕生したのが「グローバス和室」(憩翠庵)でした。

現在は、7階を「グローバス旅館」としてアーティスト向けのゲストハウスにし、8階とペントハウスの「グローバス和室」を、当地在住の茶の講師(表千家流、上田宗箇流)に使ってもらい、一般向けに茶会を定期的に催しています。

8階は茶室スペースの「グローバス和室」。写真は昨年12月に行われた着物の展示イベント(写真撮影/安部かすみ)

8階は茶室スペースの「グローバス和室」。写真は昨年12月に行われた着物の展示イベント(写真撮影/安部かすみ)

「グローバス旅館」について特筆すべきは、ここはアーティストであれば「無料」で滞在できる場所ということです。その理由をグローバスさんに聞いてみると、「私は芸術が好きなので、日本とアメリカの文化交流の場をつくりたいのです。才能ある日本人アーティストにニューヨークで夢を叶えてほしい」と言います。

「予算が限られた中で活動をしている芸術家が多く、いざニューヨークでアート活動と言っても滞在費用はかさみますから、才能ある芸術家のサポートができたら嬉しいです」。つまり、ここで芸術活動をしてもらう代わりに、無料でこの和室空間を彼らの滞在先として提供したい、ということなのです。

これまで滞在したアーティストやパフォーマーの数は100人を優に超え、茶会、絵の展示会やライブ・ドローイング・パフォーマンス、生け花、舞踊、琴や三味線などの演奏会、着物の展示会などさまざまなイベントが行われてきました。

例えば2016年、当地在住の日本人カップルのために、福岡県の宮地嶽神社から宮司や巫女を招き、神前結婚式を行っています。「その時は6人の巫女さんが当旅館に滞在しました」(グローバスさん)。

グローバス旅館の奥の部屋(写真撮影/安部かすみ)

グローバス旅館の奥の部屋(写真撮影/安部かすみ)

2部屋にある布団は3人分なので、それ以上のグループでは過去に、寝袋で滞在した人もいたそうです。「私の提供しているものは、カルチュラル・グッドウィル(文化に絡んだ親善活動)です。つまり私がトップアーティストを支援したいという気持ちによるものですから、(通常の)ホテルやホテルのようなサービス、アメニティがここにあるわけではないことをご理解ください」。そして、「ニューヨークで夢を叶えてもらって、私が日本に行った時に彼らのプログレス(進化)を見るのを楽しみにしているんですよ」と、目を輝かせながらグローバスさんは言います。

ここでの芸術イベントおよび滞在に興味があれば、下のウェブサイトの「Contact」から問い合わせてみてください。

障子の外は、ニューヨークの日常の景色が広がっている。室内は外界の音が遮断され、ここがマンハッタンというのを忘れてしまうほど静か(写真撮影/安部かすみ)

障子の外は、ニューヨークの日常の景色が広がっている。室内は外界の音が遮断され、ここがマンハッタンというのを忘れてしまうほど静か(写真撮影/安部かすみ)

2年に及ぶコロナ禍。年の大半をビーチで過ごす

普段はベンチャー・キャピタリストとして活動するグローバスさん。2020年春、ニューヨークで新型コロナウイルスの感染が大拡大し、人々の間ではリモートワークがニューノーマルとなりました。これを機に州外や国外に居住地を移した人も多いです。

グローバスさんも人口密度が高く、ウイルスが蔓延する市内に留まることをやめ、2020年と2021年はそれぞれ5月から11月の間、セカンドハウスのある郊外のロングアイランド(ニューヨーク州南東部に広がる 地域)にある、車の通行が禁止されている島、ファイアーアイランドのビーチハウスで生活しました。

また今年頭まで、家族の住むフロリダやヨーロッパ、そしてハワイにも滞在。「仕事をしている以外は、人の密度が低いビーチを散歩するような生活でした」と、すっかり大自然の中で充電してきた模様です。

州民の大多数がワクチン接種を完了し、感染状況が落ち着きつつあるニューヨークには、2月に戻ってきたばかりです。避難生活中も着物の展示イベントなどを開催し、そのようなイベントを行うたびに、スーツケースを抱えて、戻って来ていました。

久しぶりに故郷であるニューヨークに戻り、アメリカ用につくられたやや深めの堀ごたつに腰掛けてくつろぐグローバスさん。「やっぱり和の空間は心が落ち着きますね」と言いながら、心底リラックスしているようでした。

●取材協力
グローバス和室
グローバス旅館(ゲストハウス)
889 BroadwayNew York, NY 10003

量産型”折りたたむ家”は10坪で約580万円!イーロン・マスクも住むと話題の最新プレハブ住宅

コロナ禍で高インフレが続く米国では、タイニーハウス(小さな家)などの低価格住宅への需要は増すばかりだ。そんななか、ネバダ州ラスベガスを拠点に置く企業BOXABL(ボクサブル)による、5万ドル(約580万円)のプレハブ住宅「カシータ」というモデルが話題になっている。テスラ社のイーロン・マスクが住んでいると報じられたことも。いったいどんな住まいなのか、BOXABL社ディレクターのガリアーノ・ティラマーニさんにインタビューをした。

住宅を“折り畳む” !? 工数や配送コストを下げて低価格を実現

イーロン・マスクがテキサスの住居としてタイニーハウスを利用していると米国INSIDERが報じ、話題になったのがBOXABL(ボクサブル)社のプレハブ住宅「カシータ」。

(写真提供/BOXABL)

(写真提供/BOXABL)

BOXABL社のプレハブ住宅は、1部屋(モジュールと呼ぶ、約35平米)に水回りや電化製品もすべて完備されているのに約580万円と低価格。その秘密は、折り畳めるようにしたことで配送コストを、生産工程の自動化したことで生産コストを下げたこと。2021年10月の受注開始以来、全米50州から7,000万件以上の注文が入っているという。同社の共同創業者で、ディレクターのGaliano Tiramani(ガリアーノ・ティラマーニ)さんに詳しい話を聞いた。

(写真提供/BOXABL)

(写真提供/BOXABL)

(写真提供/BOXABL)

(写真提供/BOXABL)

オンライン取材に応じたボクサブルの創業者でディレクターのガリアーノ・ティラマーニさん(写真提供/筆写撮影)

オンライン取材に応じたボクサブルの創業者でディレクターのガリアーノ・ティラマーニさん(写真提供/筆写撮影)

ガリアーノさんらが事業を立ち上げたのは2017年。きっかけは、当時カリフォルニア州で、庭付き一戸建て住宅の庭に付属住宅(ADU)を建て、それを賃貸したり、居住スペースを広げたりする需要が高まっていたことだったという。CEOでガリアーノさんの父であるパオロさんは、工業デザイナーやエンジニアとしてプレハブ住宅の生産に関わるなかで、現代の住宅における2つの課題に気が付いた。

一つ目は、「建築現場における人間による作業量の多さ」だ。それは100年前からほぼ変化がなく、一棟の家を建てるのに数カ月から数年の時間を要し、大量の人材が必要だ。
二つ目は、「配送」。プレハブ住宅は工場で部材生産、加工し、組立を行うことで価格を抑えることができるが、ガリアーノさんによると「多くのプレハブ住宅の生産者が、配送時のトラブルで損をしてきた」とのこと。具体的には、何度も運ぶことでの燃料コストの負担や、配送途中に部材を傷つけてしまったりなどである。

これらの課題に対し、「住宅を折り畳むこと」と「配送しやすいサイズにした上で、工場での大量生産すること」で、高品質の住宅を手ごろな価格で提供する仕組みをつくり上げた。

「今はあらゆる製品が、『組立てライン』さえ構築できれば、低コストで高品質なものがつくれる時代だ。しかし住宅にはその考えが欠けていた。私たちの技術は、住宅業界の価格に大きな影響を与えると考えている」とガリアーノさん。

(写真提供/BOXABL)

(写真提供/BOXABL)

(写真提供/BOXABL)

(写真提供/BOXABL)

1分間に1戸の生産を目指す

ボクサブルが採用したのは、自動車のオートメーション方式だ。ポルシェの生産方式を真似て、まるで自動車工場のように、住宅を自動化してつくる。最終的には、1分間に1戸を目標に生産を拡大する予定だという。

プレハブ住宅「カシータ」は、現在1日あたり2棟生産されている。2022年の年末までに、1日あたり10棟の生産が可能な体制になる見込みだとガリアーノさんは話す。現在は、最初に受注を受けたフロリダの現役軍人用住居156棟の生産と建設を行っている。

「需要を満たすには、現在の工場の10倍の大きさが必要」と、はやくも拠点を拡大する計画を進めている。

(写真提供/BOXABL)

(写真提供/BOXABL)

「ボクサブル流こそ未来の住宅だ」

「カシータ」は、375平方フィート(約10坪・約35平米)のモジュールで、8フィート×13フィート(約2.4m×約4m)に折り畳まれて台車に引かれて運ばれていく。料金には洗濯乾燥機、食器洗い機、オーブン、電子レンジなど、ソファとベッド以外の主な家具が含まれていて、引き渡し時はそれらがすべて完備されている状態。現地で住宅を“広げ”、排水と電気の接続さえ終えれば、すぐに生活が開始できる。モダンな家具や設備を配置し、機能性を重視し生活しやすさを追求したデザイン性にこだわりを持った、小さいが快適な住空間が広がる。

(写真提供/BOXABL)

(写真提供/BOXABL)

(写真提供/BOXABL)

(写真提供/BOXABL)

(写真提供/BOXABL)

(写真提供/BOXABL)

ガリアーノさんは、「私たちは、世界中のさまざまな環境条件に対応できるよう、カシータの工学技術に多くの時間を費やしてきた。猛暑や強風、地震、水害など、さまざまな環境条件に対応できるような建材を選び、従来の建物よりも強く、安全で、エネルギー効率に優れた建物になるよう、細心の注意を払ってつくり上げた」と胸を張る。ジオバーニさんも、「私達が使っているのは、木材よりもエネルギー効率が高く、低コストで、長持ちし、強度が高いなど、より優れた素材だ」と話す。

「カシータ」が使用しているのは、木材ではなく、鉄やセラミックボード、断熱材として発泡スチロールなどの素材。発泡スチロールは、軽量で硬質な「独立気泡」の断熱材であるため、最小限の水分しか吸収しない。その結果、吹雪やハリケーン、洪水などの厳しい天候にも耐えることができるという。さらに、最大25万ポンド(125t)の圧力に耐えることができ、耐震構造になっている。

ボクサブルが使用している壁面パネルの耐火テストの様子

さらに、「昨今注目を集めている3Dプリンター住宅よりも未来志向だ」と続ける。「(3Dプリンター住宅は)ほとんどの場合、コンクリートの外壁を3Dプリントしているだけだ。家というのは、コンクリートの外壁よりももっと多くの要因がある。私たちは、その解決策が『組立ライン』にあると思っている」(ガリアーノさん)

(写真提供/BOXABL)

(写真提供/BOXABL)

すでに完備されたキッチン、オーブン、冷蔵庫(写真提供/BOXABL)

すでに完備されたキッチン、オーブン、冷蔵庫(写真提供/BOXABL)

確かに3Dプリンターの家は、原材料の面で無駄がないと言われているが、そのサステナビリティ性は、外壁を作りにおける工程を削減できる、ということに限られる。一方でボクサブルの組立ラインは、住宅の外見だけでなく、室内装備に至るまでデザインを統一することで、建築時の無駄を省き、また住宅としてのエネルギー効率を高めているという。

ボクサブルは今後、生産の過程で出る廃棄物を減らし、エネルギー効率も向上させていくことを目指す。「効率化」が、サステナブルな生産に結びつくと考えているという。また、カシータのリサイクルや二次流通についてジオバーニさんは、「将来的に、カシータを売却したり、移動させたりすることも可能だ」と話してくれた。

すでに海外展開も視野に

「カシータ」は現在1種類のみだが、今後は顧客のニーズに合わせて、サイズや形を変えた住宅生産も検討しているという。

さらに、海外展開も視野に入れている。
「海外では、私たちの技術を活用してパートナー工場をつくりたいと考えている。すでにWebサイト経由で問い合わせを受けた国際的な大企業と話し合いを始めている」と話すガリアーノさん。

海外展開もすでに視野に入れている(画像提供/BOXABL)

海外展開もすでに視野に入れている(画像提供/BOXABL)

とはいえ、まだまだ課題もある。日本でも木材価格が高騰するウッドショックや給湯器の部品不足が話題になったが、米国の建築業界でも原材料不足と、価格の高騰が問題になっている。これにともなってカシータの販売価格も、今後は6万ドル(約690万円)に引き上げざるを得ないと話す。

「壁面パネルは自社生産している。スチールや発泡スチロールも自分たちで生産し、垂直統合を進めており、最終的にすべての部品を自社生産に切り替えられれば、もっと生産スピードを上げられる」とガリアーノさん。自社生産に加え生産効率が上がれば、価格のコントロールもしやすくなるとのこと。

「カシータ」は災害があった被災地に、すぐに住みやすい住宅を提供することも可能だ。ほかにも既存の物件の庭先に小さな個室を建て、趣味部屋にしたり、賃貸したりすることも可能だ。その可能性は無限に広がる。土地に限りがある日本でも、新たな住宅のヒントになるかもしれない。

※原稿中の日本円は2022年2月28日時点のレートで計算したもの

●取材協力
BOXABLディレクター Galiano Tiramani氏

コロナ禍のNYで高級物件ニーズ高まる!「4億円超アパート」に潜入 米国ニューヨークよりレポート

新型コロナウイルスによるパンデミックで、一時は冷え込んだニューヨーク(アメリカ)の不動産業界も、昨年春から再び以前のような活気が市場に戻ってきました。今、新築物件もどんどん建設されています。
そんななか、マンハッタンの高所得者が多く住むアッパーウエストサイド地区で建設が進められている新築物件をのぞいてみる機会がありました。ニューヨークの高級アパートメント(日本でいう高級マンション)での暮らしってどんな感じなのでしょうか?「4億円超」の新築物件を特別に内見させてもらいました 。

国内外から注目されている高級エリアの新規物件

高級エリアであるアッパーウェストサイド地区は、ニューヨークの中でも比較的治安が良いとされています。同地区は、コロンビア大学やアメリカ自然史博物館があるなど文化的施設に恵まれ、落ち着いた雰囲気です。

今回内見に来たブティックビルディング「212 West 93rd Street」は93丁目で現在建設が進められていて、最寄りの地下鉄駅から徒歩1分。セントラルパークやリバーサイドパークまで数ブロック。もし近くに住んだら毎朝早起きして、セントラルパークにジョギングや犬の散歩をしに行ってみたい、そんな想像が膨らみます。

また、近所には日本食レストランや人気スーパー、Trader Joe’sやWhole Foods Marketなどもあり、都心から地下鉄で15分と少し離れた落ち着い生活、楽しく充実したニューヨーク生活が送れそうです。

セントラルパークもすぐ近く(写真撮影/Kasumi Abe)

セントラルパークもすぐ近く(写真撮影/Kasumi Abe)

人気スーパーの、Trader Joe's(写真撮影/Kasumi Abe)

人気スーパーの、Trader Joe’s(写真撮影/Kasumi Abe)

最寄りの駅もすぐ近く(写真撮影/Kasumi Abe)

最寄りの駅もすぐ近く(写真撮影/Kasumi Abe)

「212 West 93rd Street」は14階建てで、中には20のコンドミニアム(20家族分の住居)があります。

ロビーには24時間ドアマンが常駐し、ペット可の物件です。犬や猫を飼っているニューヨーカーはとても多いので、大切なポイントでしょう。またほかにもこの物件の「あるポイント」が高く評価され、現在多くの問い合わせが国内外からきているということです。

(写真撮影/Kasumi Abe)

(写真撮影/Kasumi Abe)

コロナ禍で専用エレベーターや屋外テラスへの需要高まる

「コロナ禍を乗り切りパンデミックから何とか抜け出そうとしているニューヨークではこの数カ月、高級不動産物件の需要が非常に高まり、市場は再び活気に満ちています」と説明するのは、ヘンリー・ハーシュコウィッツさん。この物件の独占販売およびマーケティングエージェントをしている米大手不動産情報サイト「Compass」の不動産ブローカーです。

「物件購入者は新たな優先順位を設けて物件を探しています。この5階にある5Bのコンドミニアムのような、専用エレベーターや屋外テラスが完備した物件です」とハーシュコウィッツさん。これらはコロナ以前は「贅沢なプラスアルファ」だったのが、パンデミックで『必要なもの』という評価が付くようになったそうです。一時はロックダウンしたニューヨーク。感染拡大防止のため、密を避けソーシャルディスタンスが求められる中、そのようなプライベートが守られた自分専用のエレベーターや、テラス、バックヤードなど自分専用の「屋外スペース」の需要が高まっているとのことです。

さっそく、5Bの物件を見せてもらいました。

5Bは、2048スクエアフィート(約190平米)の面積に、4ベッドルーム(寝室)、3バスルーム(浴室とトイレ)、リビング兼ダイニングルーム、キッチンエリアなどを含む全8室が完備されています。

5Bの間取り(画像提供/212 West 93rd Street)

5Bの間取り(画像提供/212 West 93rd Street)

(写真撮影/Kasumi Abe)

(写真撮影/Kasumi Abe)

ロビーから専用エレベーターに乗ると、5階の5Bで止まりました。専用エレベーターと言えば、フロア直結のタイプや住居直結のタイプなどがありますが、この物件の5Bのタイプはエレベーターと居住スペースが直結していて、扉が開くと目の前に「ギャラリー」と呼ばれる、広くて長いスペースが広がります。壁にお気に入りのアートを飾ると、お招きしたゲストに鑑賞してもらいながら奥のリビングルームにご案内できる素敵なウェルカムスペースになりそうです。

お気に入りの絵を飾ったりアートを置いたりできそうなギャラリースペース(写真撮影/Kasumi Abe)

お気に入りの絵を飾ったりアートを置いたりできそうなギャラリースペース(写真撮影/Kasumi Abe)

リビング兼ダイニングルームや、それぞれのベッドルームは自然光で明るく、天井も高く広々とした印象です。大きなカウチやキングサイズのベッドを置いてもゆとりがあるスペースで、「おうち時間」をゆっくりくつろげそうです。

ビルの設計はODA、内装や家具、照明などのインテリアはGRADE New Yorkによるもの(※モデルルームのため、インテリアは販売物件についてきません)(写真撮影/Kasumi Abe)

ビルの設計はODA、内装や家具、照明などのインテリアはGRADE New Yorkによるもの(※モデルルームのため、インテリアは販売物件についてきません)(写真撮影/Kasumi Abe)

以下の写真が、コロナ禍で需要が伸びている、リビング兼ダイニングルームに隣接したテラススペースです。このビルの70%のコンドミニアムに、このような広々とした屋外テラスを完備されています。「中には、平均的なマンハッタンのスタジオアパートよりも広いテラスもありますよ」とハーシュコウィッツさん。

また、このような屋外テラス付き物件はマンハッタンではそれほど多くないということ。確かに街中を見て回っても、自分の住宅にテラスやベランダがあるのは「ほんの一部の特別な物件」ということがわかります 。

テラスだけで250スクエアフィート(約23.2平米)あり、大きなチェアやテーブルを     置いても十分ゆとりがあるほど(写真撮影/Kasumi Abe)

テラスだけで250スクエアフィート(約23.2平米)あり、大きなチェアやテーブルを置いても十分ゆとりがあるほど(写真撮影/Kasumi Abe)

向かいには高層ビルが立っていますが、大きな通りを挟んでいるのでご近所との圧迫感などは感じません(写真撮影/Kasumi Abe)

向かいには高層ビルが立っていますが、大きな通りを挟んでいるのでご近所との圧迫感などは感じません(写真撮影/Kasumi Abe)

5Bの気になるお値段ですが、販売価格は419万5000ドル(約4億8000万円超)。これに加えて3288ドル(約33万円)の共益費と3148ドル(約32万円)の税金が毎月かかります。共益費はドアマンや共有部の清掃、光熱費などで、この物件だけが特別なわけではなく、ニューヨークの高級物件を購入した場合は通常これくらいになります(支払い方法は、契約内容次第)。

ピンからキリまでさまざまな物件があるニューヨークでは数億円単位の物件は決して珍しくありませんが、その中でもこのビルは、(設備や周りの環境も含めた)物件自体の価値を総合的に判断すると、かなりラグジュアリーな物件と言えるでしょう。

また5Bの隣のユニット、5Aも同様に専用エレベーターがついています。

(写真撮影/Kasumi Abe)

(写真撮影/Kasumi Abe)

1562スクエアフィート(約145平米)の面積に、3ベッドルーム(寝室)、2.5バスルーム(浴室とトイレ)、リビングルーム、ダイニングルーム、キッチンエリアなどを含む全6室が完備されています。

5Aの購入価格は290万ドル(約3億3000万円超)。こちらの物件にも共益費と税金が毎月かかります。

5Aのベッドルーム(写真撮影/Kasumi Abe)

5Aのベッドルーム(写真撮影/Kasumi Abe)

バーベキューグリルも完備の眺望の良い屋上(完成予想図)。私だったらラップトップ(ノートパソコン)を持参し、マンハッタンの景色を見ながら執筆仕事をしたり、天気の良い日は日向ぼっこしたり、友人を招待してバーベキューパーティーをしたりしたいです(写真提供/212 West 93rd Street)

バーベキューグリルも完備の眺望の良い屋上(完成予想図)。私だったらラップトップ(ノートパソコン)を持参し、マンハッタンの景色を見ながら執筆仕事をしたり、天気の良い日は日向ぼっこしたり、友人を招待してバーベキューパーティーをしたりしたいです(写真提供/212 West 93rd Street)

そのほか、住民専用のスポーツジム、ビル自体にキッズルーム、ロッカーや倉庫スペースなども完備されています。ロビーなどの共有部分は2020年に工事がスタートし、今年の第1クオーター(1~3月)にすべての共有部分が完成予定です。

お問い合わせは、プライベートをより重視した人、中心地ではなく少し離れた落ち着いた環境をお求めになられている高所得者層の人(国内、国外)からあるようです。内見を終え、コロナ以降もこのようなプライベート空間が充実したアパートの需要が高まっていくと思いました。

■取材協力
212 West 93rd Street

※記事中の部屋情報
#5B – 212 West 93rd Street
$4,195,000 ↓
8 rooms, 4 beds3 baths約190平米

#5A – 212 West 93rd Street
$2,900,000 6 rooms, 3 beds2 baths, 1 half bath
約145平米

「吉祥寺」駅徒歩2分に商業施設、2019年9月オープン

ヒューリック(株)は、都市型中規模コンパクト商業施設「HULIC &New KICHIJOJI」(ヒューリック アンニュー キチジョウジ)を、2019年9月に開業すると発表した。同施設はJR・京王線「吉祥寺」駅徒歩2分、「井の頭公園」周辺の落ち着きと賑わいが共存するエリアに立地する地上5階・地下1階。築17年の病院をコンバージョンし、商業施設としてリニューアルするもの。

B1Fには、食肉専門店「千駄木腰塚」が初めて手掛ける飲食物販店「Bistro1048」がオープン。1-2Fは「アディダス ブランドコアストア 吉祥寺」で、ランニング、トレーニングの機能スポーツギアやスニーカーまで、幅広いアイテムを展開する。

3Fには、アメリカで話題のサーフエクササイズ専門スタジオ「サーフフィットスタジオ 吉祥寺店」がオープンするなど、スポーツからグルメ、クリエイティブまで、多彩なテナントを誘致する。

ニュース情報元:ヒューリック(株)