電力の半分は風力、7割以上が再生エネルギーのデンマーク。約5000基の風車で叶えるまでの軌跡とは?

環境先進国として先進的な取り組みを続ける国、デンマークを象徴する存在のひとつが、なんといっても風力発電です。古くは粉挽きや排水の役割を担うために村々にあった風車が、時代の変遷とともに、発電のための風車へと変わりましたが、今も昔も「風車のある風景」がデンマークらしさ、と言えるかもしれません。今回は、デンマークのエネルギー分野で主役的な役割を果たしている風力発電にフォーカスします。

農家は「農耕と発電」の二毛作!

飛行機でコペンハーゲンのカストラップ空港に近づくと窓から見えてくる、くるくる回るたくさんの白い風車たち。デンマークに(帰って)来たなぁと嬉しくなる瞬間です。この光景を見ると嬉しくなるのは私だけではないようで、デンマークを訪ねてくれる人のほとんどが、同じように「風車が見えてきてワクワクした!」と話してくれます。なぜなんでしょう、この感覚。自然が電気をつくっているのを目の当たりにできるからでしょうか。

そして、コペンハーゲンから約160km南下すると、私が暮らすロラン島があります。現在、デンマーク国内で一番風力発電が盛んなのは、デンマーク西部の沿岸地域ですが、2番目に盛んなのが、ロラン島です。

ロラン島(写真提供/ニールセン北村朋子、撮影/ Rune Johansen)

ロラン島(写真提供/ニールセン北村朋子、撮影/ Rune Johansen)

ここまで来ると、どの方向を見ても、必ず風車が視野に入るような感じで、本当にたくさんの風車が立っています。ロラン島では現在約260基の陸上風車があり、洋上にも162基の風車があります。風力発電以外に、近年は太陽光発電も増え、また農業から出るワラを燃料としたバイオマス発電や、家畜の糞尿や食糧残渣を利用したバイオガスによる発電なども含むと、ロラン島は、島内で使う電力の8倍~10倍の電力を、主に風力による再生可能エネルギーでまかなっています。

ロラン島の2023年7月までの再生可能エネルギーでの発電と消費電力のデータ。青が風力発電、黄色が太陽光発電。今年はこれまでに82.9%の電力を再エネでまかなっている(画像提供/REEL、出典:Lollands Energisystem)

ロラン島の2023年7月までの再生可能エネルギーでの発電と消費電力のデータ。青が風力発電、黄色が太陽光発電。今年はこれまでに82.9%の電力を再エネでまかなっている(画像提供/REEL、出典:Lollands Energisystem)

現在、デンマーク全国では約4,200基の陸上風車があり、1時間あたり約470万kWのエネルギーを生み出すことができます。また、洋上風車は630基にのぼり、1時間あたり約230万kWのエネルギーを生み出していて、デンマークの電力供給の約半分は風力発電で賄われています。

デンマークの風力発電機の分布図。風力発電がいかに盛んかがわかる(画像提供/Plan- og Landdistriktsstyrelsen、出典:Info om vedvarende energikilder)

デンマークの風力発電機の分布図。風力発電がいかに盛んかがわかる(画像提供/Plan- og Landdistriktsstyrelsen、出典:Info om vedvarende energikilder)

風力発電の容量と国内電力供給に占める風力発電の割合。青は洋上風力、緑は陸上風力、赤は風力による電力供給の割合(画像提供/Energistyrelsen、出典:Energistatistik2021)

風力発電の容量と国内電力供給に占める風力発電の割合。青は洋上風力、緑は陸上風力、赤は風力による電力供給の割合(画像提供/Energistyrelsen、出典:Energistatistik2021)

自治体別風力発電の容量。青色が濃いほど風力での発電容量が多い。右下にあるロラン島は西側が濃い青色(画像提供/Energistyrelsen、出典:Energistatistik2021)

自治体別風力発電の容量。青色が濃いほど風力での発電容量が多い。右下にあるロラン島は西側が濃い青色(画像提供/Energistyrelsen、出典:Energistatistik2021)

陸上風車を所有するのは、主に設置できる土地を持つ農家や、地域の風力発電組合で、近年は、風車の大規模化に伴い、再エネ関連企業が所有する例も増えてきています。ロラン島をはじめ、デンマークでは農家の人たちが作物を収穫するのと同時に、収穫後のワラを売却して地域の熱供給や発電の原料にしたり、畑にある風車や太陽光パネルから電力を収穫して売電し、収入を得るのは当たり前のこと。それぞれが持つリソースを最大限に利用することで、各農家の収益も安定しますし、農家の収入が増えれば、地方自治体は税収が増え、地域が潤うことにつながります。また、当然ながら、地域や国のエネルギーの自給率を上げることにも繋がり、エネルギーの安全保障にも大きな意義をもたらします。

デンマークの農家(写真提供/ニールセン北村朋子)

デンマークの農家(写真提供/ニールセン北村朋子)

陸上風車の高さは、約150m。ビルの高さに例えるなら、およそ40階くらいと同じになります。また、東京タワーの大展望台も地上150mで、デンマークで見かける陸上風車とほぼ同じ高さです。洋上風車はさらに大きくて、200mにもなります。ブレード(羽根)はゆっくり回っているように見えるのですが、実はブレードの先端部分では時速250kmを超えるスピードで回転していて、新幹線に近い速さなのですから驚きです。

農地に立つ大型風車たち。高さは150m!(写真提供/ニールセン北村朋子)

農地に立つ大型風車たち。高さは150m!(写真提供/ニールセン北村朋子)

ロラン島沖の洋上風力発電パーク(写真提供/ニールセン北村朋子)

ロラン島沖の洋上風力発電パーク(写真提供/ニールセン北村朋子)

■関連:デンマークのまちづくりやエコ関係の記事

自分たちが使うエネルギーは自分たちで選びたい!

冒頭にも触れたように、デンマークでは、風車のある風景は昔から馴染みのあるものでした。12世紀から13世紀にかけて小麦から粉を挽くために、また低地の湿地の排水をするために、風車は重要な役割を果たしていました。また、当時は製粉は地域の権力者が管理する仕組みで、地域の穀物を挽く独占的権利を持っていましたが、1862年に食の自由化がなされて、農民が農場製粉所を設置することが可能になり、風車は市民のものとなっていきました。1920年ごろには、2万~3万基の家庭用製粉風車があったようです。

発電のための風車が初めてつくられたのは1891年、物理学者のポール・ラ・クールがアスコウ・ホイスコーレ(デンマーク発祥の「人生の学校」と呼ばれるフォルケホイスコーレ(※)のひとつ)で実現しました。実際に普及するまでには少し年月がかかりましたが、1970年代のオイルショックによるエネルギー危機が大きな転機となります。今でこそ、デンマークは再生可能エネルギーの先進国として知られるようになりましたが、70年代当時は中東の石油に頼りきりで、エネルギー自給率は5%を切るほどでした。

※フォルケホイスコーレ……デンマーク発祥の全寮制の成人教育機関。17.5歳以上なら誰でも入学でき、資格やスキルを得るのではなく、より良く生きるために、誰にも評価されずに自分や社会、世界と向き合う時間を持つことができる。

そこで、エネルギーの自給を高めるための議論が活発になり、その解決策として急浮上したのが原子力発電でした。当時の国と電力会社は原発を推し進めようとしましたが、原発についてもっと詳しく知ってから活用するかどうかを考えたいと訴える市民団体OOA(原子力発電情報協会)が立ち上がり、原発のメリットとデメリットについて幅広く情報を集め、国民と共有し、議論を促したことや、79年にスリーマイル島で原発事故が起きたことも影響し、時が経つにつれて世論は原発反対へと傾いていきました。

そして1985年、デンマークはついに原発を選択肢から外したエネルギープランを採択。チェルノブイリで原発事故が起きたのは、デンマークのこの決定の翌年の86年のことでした。以降、デンマーク国内で自給自足できるエネルギーの大きな可能性を秘める選択肢として、風力発電の開発と普及が一気に加速して今に至ります。

(写真提供/ニールセン北村朋子)

(写真提供/ニールセン北村朋子)

デンマークの農民や市民が風力発電に関心を持つようになったのは、投資目的だけではありません。ロラン島で初めての市民風車のメンバーになったビャーネ・エネマークさんは、以前インタビューした時に「どういうエネルギーを使いたいかは、国や電力会社ではなく、国民や一般市民に決める権利がある」と話してくれましたが、地域のみんなと環境に良いことに取り組みたい、という気持ちと連帯感が、デンマークの市民を突き動かしています。そして、その意志を尊重する民主主義と政治があることも不可欠です。

デンマークの現在のエネルギー政策は、2012年に打ち出されたもので、2050年までに化石燃料から脱却することと、それに先立って2030年には二酸化炭素の排出量を1990年比で70%削減するという目標を設定しています。さらに、昨年暮れに発足した新政権では、2050年の化石燃料からの脱却目標を2045年に前倒しし、二酸化炭素の削減に関しては2050年までに110%を達成するという、野心的な目標を新たに設定しています。EUの2040年目標となっている、2019年比で二酸化炭素排出量を90%削減する、という方向性とも連動しながら、これからもデンマークではさらに風力発電を増やしていく予定です。

余るほどできる再エネの電力を、さまざまに使い回す

風力発電をはじめとして、再生可能エネルギーによる電力供給は増える一方のデンマーク。今の一番の関心事は、大量につくられる電力を、供給過多の時に効率的に貯めておいて、電力供給が足りない時に使ったり、電気としてだけでなく、輸送燃料や熱供給に使うためのPower to X への取り組みです。

Power to X とは、電力を熱や水素、メタンなどに変えて蓄え、輸送エネルギーや熱エネルギーなど電気以外のエネルギーで幅広く活用するための技術とデザインのこと。例えば、再エネの電力が余っている時間帯に水を電気分解して水素を取り出し、水素そのものとしてだけでなく、水素と二酸化炭素を組み合わせてメタンやメタノール、アンモニアやケロシンを生成することで貯めておくことが可能になり、輸送燃料などに利用することができるようになります。実際に、デンマークを代表する世界的海運会社、マースク社も、こうしたグリーンメタノールを燃料とするコンテナ船を今年から北欧で導入予定です。

また、ロラン島でも、Power to X の設備の建設が予定され、予定通りに進めば2027年から稼働の見込みで、さらに、こうしたPower to X によってつくられるグリーンな天然ガスを利用する、デンマーク国内初のバイオ小麦精製所もつくられる予定になっています。このバイオ小麦精製所は、食品に使うための小麦の精製だけでなく、現在は輸入に頼っているグルテンを国産できるようになることで、魚の養殖用の餌や養豚の飼料に活用することができたり、また食用にできる部分以外からさまざまな成分を取り出して、バイオポリマーをつくることによって、現在は石油化学原料からつくられている衣類や靴、医療品などを、こうしたバイオ素材でつくることを目的としています。化石燃料からの脱却は、石油化学製品からの脱却も同時に行っていくことを意味します。風力発電などの再生可能エネルギーは、こうした私たちの生活を支える素材づくりにも、大きく関わってきます。

Power to X を図解したもの。再生可能エネルギーの電気と水と二酸化炭素があれば、分子の形で貯めることができるほか、輸送部門など、さまざまな形で利用が可能になる(画像提供:Ranboll、出典:ANALYSE AF MULIGHEDER FOR POWER-TO-XOG GRON GAS PA LOLLAND)

Power to X を図解したもの。再生可能エネルギーの電気と水と二酸化炭素があれば、分子の形で貯めることができるほか、輸送部門など、さまざまな形で利用が可能になる(画像提供:Ranboll、出典:ANALYSE AF MULIGHEDER FOR POWER-TO-XOG GRON GAS PA LOLLAND)

再生可能エネルギーにおけるエネルギー生産は、天候に左右されるなど不安定要素が多いと指摘する声もあります。ただ、その再エネによる発電が高度に進むと、それをどううまく使い回すかという可能性も広がります。
今年の夏は、国連のアントニオ・グテーレス事務総長が「地球温暖化から地球沸騰化の時代が到来した」と警告するほど、世界各地を酷暑が襲い、深い爪痕を残しています。気候変動対策は、正真正銘、待ったなしです。

みなさんが毎日使っている電気は、どこから買っていますか? その電気は、どこから来ていますか?何でつくられていますか? それは、あなたが望む形でつくられていますか?

「どういうエネルギーを使いたいかは、国や電力会社ではなく、国民や一般市民に決める権利がある」ことをぜひ忘れないでください。そして、自分だけでなく、子どもたちや未来の世代のためにも、責任のある選択をできているかどうか、今一度、考えてみませんか?

●取材協力
・REEL
・andel

●参考文献
ロラン島のエコ・チャレンジ デンマーク発、100%自然エネルギーの島(ニールセン北村朋子著、新泉社)

世界基準の超省エネ住宅「パッシブハウス」を30軒以上手掛けた建築家の自邸がスゴすぎる! ZEH超え・太陽光や熱エネルギー活用も技アリ

夏涼しく冬暖かい快適さと、世界基準の超省エネを両立した、ドイツ発祥の「パッシブハウス」。これまで30軒以上のパッシブハウス計画に携わってきたパッシブハウス・ジャパン代表理事の森みわさんが、長野県軽井沢町に自ら設計したセカンドハウスをつくったと聞き、お邪魔してきました。
高次元な断熱性能と、斬新な熱供給システム、自然素材や自然のエネルギーを取り入れたデザイン……パッシブハウスの最新の取り組みを見ていきましょう。

似ているようで異なる、パッシブハウスと省エネ住宅軽井沢町追分に完成した「信濃追分の家」。資料が整い次第、パッシブハウス認定の申請を行う予定(写真撮影/新井友樹)

軽井沢町追分に完成した「信濃追分の家」。資料が整い次第、パッシブハウス認定の申請を行う予定(写真撮影/新井友樹)

ルームツアーの前に、パッシブハウスは日本でいう省エネ住宅と何が違うのか、改めて整理してみましょう。
まず、省エネ住宅とは、高断熱・高気密につくられ、エネルギー消費量を抑える高効率設備を備えた住宅のこと。対してパッシブハウスは、太陽や風など自然の持つ力を建物に取り入れて、必要とするエネルギーを最小化。さらに高断熱・高機密、熱ロスの少ない換気システムなどを駆使してエネルギー消費量を抑える、というアプローチの違いがあります。

「ヨーロッパでは、ゼロエネルギーハウス(エネルギー収支をゼロ以下にする家)・プラスエネルギーハウス(プラスにする家)への足掛かりとして、パッシブハウスがあります。少ないエネルギーで快適に暮らせるパッシブハウスの普及がまずあって、その先に創エネハウス(※)があるという位置付けです」と森さん。

※創エネハウス…太陽光パネルなどでエネルギーをつくり出すことができる住宅

省エネルギーを実現するために、高い断熱性能が必要ということは、共通事項です。
国が定める省エネ基準は、2025年以降すべての新築住宅に「平成28(2016)年基準」の適合が義務づけられます。2030年頃までには、さらにZEH(ゼッチ/エネルギー収支をゼロ以下にする家)基準(断熱等級5、一次エネルギー消費量等級6)まで引き上げるとしていますが、それだけでは不十分だと森さんは言います。

パッシブハウス・ジャパン代表の森みわさん。セカンドハウスの場所は、外気温が低くても日射量が豊富で、移住者が多くコミュニティが形成しやすい軽井沢町を選んだ(写真撮影/新井友樹)

パッシブハウス・ジャパン代表の森みわさん。セカンドハウスの場所は、外気温が低くても日射量が豊富で、移住者が多くコミュニティが形成しやすい軽井沢町を選んだ(写真撮影/新井友樹)

「ZEHで地域ごとにUA値(外皮平均熱貫流率)を定めて断熱性能を高めようというのは、家を魔法瓶化するという意味で良い方向に向かっています。ただ、例えば同じ地域にあっても家を180度回してみれば全然条件が違うはずなのに、家の向き、近隣に住宅や樹木があるか、樹木は落葉樹か常緑樹か、夏と冬で日射量がどれだけ違うかは考慮されません。

『太陽と風に素直に設計する』ということを大切にするパッシブハウスでは、PHPP(Passive House Planning Package)というシミュレーションソフトを使って、建設する場所の標高、気象条件、月ごとの日射量、周辺環境、家族構成に給湯需要まで、あらゆる個別の条件を入力して温熱計算をしています。それはもうシビアに。そうやって建物のエネルギー収支を厳密に予測しながら設計して、入居後の実測値とのギャップをなくしているのです」

日本の省エネ基準の数倍もの温熱性能・省エネ性能が求められるパッシブハウスは、その土地の条件に合わせてオーダーメイドで設計され、冷暖房に頼らずとも年中快適に過ごすことができる“究極のエコハウス”というわけです。

階段まわりのアースカラーが木のぬくもりのアクセントに(写真撮影/新井友樹)

階段まわりのアースカラーが木のぬくもりのアクセントに(写真撮影/新井友樹)

今回訪問した森さんの別邸「信濃追分の家」は、これまで森さんが設計を手掛けてきた中での発見を踏まえ、パッシブハウスの進化形をめざしたといいます。コンセプトである「パッシブハウス+α」を実現するための、具体的なメソッドを6つ教えてもらいました。

メソッド1 南から45度振れた敷地で、太陽光を最大限に味方につけるコーナーガラス真南に向いた大きなコーナーガラス。この家の象徴的存在でもある(写真撮影/新井友樹)

真南に向いた大きなコーナーガラス。この家の象徴的存在でもある(写真撮影/新井友樹)

まずリビングに入ると、斜めに向いた階段が目に飛び込みます。実はこの敷地、南から45度振れたロケーション。そこで、階段室を真南に向けて、2階のコーナーガラスの大開口から各方向に光が差し込むようにレイアウトしています。建物角からの日射によって、冬の暖房エネルギーを積極的に取得する工夫です。

階段室の吹き抜けには、照明作家・鎌田泰二さん制作の大きなペンダント照明を。ブラインドがなくても、ほどよい目隠しになった(写真撮影/新井友樹)

階段室の吹き抜けには、照明作家・鎌田泰二さん制作の大きなペンダント照明を。ブラインドがなくても、ほどよい目隠しになった(写真撮影/新井友樹)

蜜蝋仕上げの鉄の手すりがシンプルでかっこいい(写真撮影/新井友樹)

蜜蝋仕上げの鉄の手すりがシンプルでかっこいい(写真撮影/新井友樹)

2階の間取りはこの階段室を中心に、東西にシンメトリーになるよう居室を配しています。1階には間仕切りの壁はなく、軸がずれたようなこの階段室が、玄関、和室、キッチン、リビングといった領域をやんわりと区画し、視線を切る役割を担っています。おかげで、開放的でありながら落ち着いた、居心地のいい空間になっているのですね。

「軽井沢の冬の厳しい外気温にも関わらず、この向きの敷地を選んだのは、“エコハウスの意匠は自由である”というメッセージを放つための挑戦だったかもしれません」と森さん。真南向きじゃなくてもパッシブハウスはつくれるし、自由で堅苦しくないデザインも叶う。そんな証となった実例です。

リビングの大きな開口部は敷地の向きに素直につくり、階段室を真南にレイアウト(写真撮影/新井友樹)

リビングの大きな開口部は敷地の向きに素直につくり、階段室を真南にレイアウト(写真撮影/新井友樹)

メソッド2 バイオマス燃料と太陽熱、太陽光とEV車でエネルギーを地産地消森さんによるスケッチ「信濃追分の家リニューアブル(再生可能エネルギー)・マックスな設備計画」。冷暖房は熱交換換気装置に内蔵され、1台のヒートポンプで全館空調が完結しているため、ペレットストーブは給湯器として位置付けられている(画像提供/KEY ARCHITECTS)

森さんによるスケッチ「信濃追分の家リニューアブル(再生可能エネルギー)・マックスな設備計画」。冷暖房は熱交換換気装置に内蔵され、1台のヒートポンプで全館空調が完結しているため、ペレットストーブは給湯器として位置付けられている(画像提供/KEY ARCHITECTS)

この家の最大の特徴といえるのが、ペレットストーブと太陽熱集熱器による熱供給を取り入れて、給湯と補助暖房に充てていること。ガス給湯器は設置していません。太陽光発電パネルは搭載しているものの、電気を熱に変える割合は大幅に減らしています。

イタリア製のペレットストーブは、玄関スペースにビルトイン(写真撮影/新井友樹)

イタリア製のペレットストーブは、玄関スペースにビルトイン(写真撮影/新井友樹)

Wi-Fi経由で着火操作が可能。冬、太陽熱が足りない場合は夕方着火するようタイマーを入れると、2~3時間でお風呂のお湯が沸き、余力で壁暖房としても放熱(写真撮影/新井友樹)

Wi-Fi経由で着火操作が可能。冬、太陽熱が足りない場合は夕方着火するようタイマーを入れると、2~3時間でお風呂のお湯が沸き、余力で壁暖房としても放熱(写真撮影/新井友樹)

信州らしい熱源を、と選んだペレットストーブ。炎の揺らぎは見ているだけでほっとする。燃料は地域で購入することで、地域内でのエネルギー自活が可能に(写真撮影/新井友樹)

信州らしい熱源を、と選んだペレットストーブ。炎の揺らぎは見ているだけでほっとする。燃料は地域で購入することで、地域内でのエネルギー自活が可能に(写真撮影/新井友樹)

外気温の影響を受けにくい太陽熱集熱器。集熱管の外側が真空になっていて断熱効果に優れている。なかなかインパクトのある佇まい(写真撮影/新井友樹)

外気温の影響を受けにくい太陽熱集熱器。集熱管の外側が真空になっていて断熱効果に優れている。なかなかインパクトのある佇まい(写真撮影/新井友樹)

玄関にビルトインされたペレットストーブは、16畳用エアコン並みのパワーがあり、温水出力に対応。燃焼エネルギーの8割を温水に、残り2割が輻射暖房として放熱されます。庭に設置した太陽熱集熱器は、真空ガラス管内のヒートパイプが太陽光により加熱され、不凍液を温め循環させるもの。
木質バイオマスと太陽光という再生可能エネルギーを温水という熱エネルギーに変えて、キッチンにある300Lのタンクに熱を貯湯していく仕組みです。

ペレットストーブと太陽熱集熱器からの温水を集める貯湯タンク。この家ではあえて見えやすいよう、キッチンに設置(写真撮影/新井友樹)

ペレットストーブと太陽熱集熱器からの温水を集める貯湯タンク。この家ではあえて見えやすいよう、キッチンに設置(写真撮影/新井友樹)

左奥のドアの先が貯湯タンクのスペース。シンクには95℃まで対応の熱湯栓も付いていて、煮炊きに必要なお湯は一瞬で沸いてしまう(写真撮影/新井友樹)

左奥のドアの先が貯湯タンクのスペース。シンクには95℃まで対応の熱湯栓も付いていて、煮炊きに必要なお湯は一瞬で沸いてしまう(写真撮影/新井友樹)

田舎暮らしに欠かせない車は、電気自動車を導入。V2H(Vehicle to Home)を実現している(写真撮影/新井友樹)

田舎暮らしに欠かせない車は、電気自動車を導入。V2H(Vehicle to Home)を実現している(写真撮影/新井友樹)

もうひとつ注目したいのが、電気自動車を蓄電池に見立てていること。屋根の東西に載せた3.8kWの太陽光パネルで発電した電気は、主に照明と冷蔵庫、換気システムに使用します。「それらの消費電力はだいたい400Wとして、15時間で6kWh。EV車のバッテリー40kWhのうち6kWhをまわせばいいのですから、夜間に車から家に送る量としては大した量ではありません」と森さん。冬の夜間に仮に暖房を切っても、翌朝の室温は1~2℃も下がらないパッシブハウスだからこそ実現できるライフスタイル。
「ただし、オフグリッド仕様にはしていません。数日間曇りの日が続けば、発電量は低下します。そういうときは電力会社に頼る。逆に発電して余った分は渡すこともできる」

太陽光・熱エネルギーを最大限活用し、電力系統ともつながりながら、無理のない範囲でエネルギー自立している家なのです。

メソッド3 高性能の家は床暖不要!土壁暖房パネルを日本初導入無垢のフローリングが素足に心地いい(写真撮影/新井友樹)

無垢のフローリングが素足に心地いい(写真撮影/新井友樹)

建物自体の性能が高いパッシブハウスは、床暖房がなくても、窓辺も頭上も室温がほぼ同じ、温度ムラがないのが特徴です。「もう床から温める必要がそもそも無いですし、実は木の床は、床下から温めようとしても断熱してしまうのです。ここはヨーロピアンオークの無垢フローリングを使っていて、木は熱伝導率が低い。だから床暖房にすると放熱の効率が悪いんです」と森さん。
かわりに導入したのが、ドイツ製の土壁暖房パネルによる輻射式暖房です。給湯がメインのペレットストーブですが、余ったお湯はこの土壁暖房の熱源として使われます。パネルは厚みのある自然素材のため、調湿性、蓄熱性も期待できそうです。

立てかけてあるオブジェのようなものは、土を高圧でプレスして製造されたドイツ製の土壁暖房パネル。温水配管を効率よく巡らせるよう掘り込みがついているのが特徴で、これを補助暖房として壁面に埋め込んでいる(写真撮影/新井友樹)

立てかけてあるオブジェのようなものは、土を高圧でプレスして製造されたドイツ製の土壁暖房パネル。温水配管を効率よく巡らせるよう掘り込みがついているのが特徴で、これを補助暖房として壁面に埋め込んでいる(写真撮影/新井友樹)

暖房パネルは1階の北側にある和室と2階の洗面脱衣所の漆喰塗り壁内部に設置。ゲストが宿泊する部屋と、服を脱ぐ脱衣室の室温を、冬場にほんの少し上げられるようにと配慮した設計(写真撮影/新井友樹)

暖房パネルは1階の北側にある和室と2階の洗面脱衣所の漆喰塗り壁内部に設置。ゲストが宿泊する部屋と、服を脱ぐ脱衣室の室温を、冬場にほんの少し上げられるようにと配慮した設計(写真撮影/新井友樹)

メソッド4 信州カラマツのサッシ+仏・サンゴバン社製のガラスで美しく窓断熱トリプルガラスに、信州カラマツの木製サッシ。かなりの厚みがあるのがわかる(写真撮影/新井友樹)

トリプルガラスに、信州カラマツの木製サッシ。かなりの厚みがあるのがわかる(写真撮影/新井友樹)

リビングの大きな窓の先はウッドデッキ。軒の長さも日射に合わせて緻密に計算されている(写真撮影/新井友樹)

リビングの大きな窓の先はウッドデッキ。軒の長さも日射に合わせて緻密に計算されている(写真撮影/新井友樹)

断熱性に優れた木製サッシは、長野県千曲市の山崎屋木工製作所によるもの。長野県産材のカラマツの美しい木目がぬくもりを感じさせます。ガラスは、仏・サンゴバン社製のトリプルガラスECLAZを採用。一般的なトリプルガラスより熱貫流率が低く高断熱、さらにペアガラス並みに日射熱取得率が高い、高性能ガラスです。
「しかも高透過なミュージアムガラスのため、非常に景色が良く見えるという特徴もあります」(森さん)。映り込みの少ないクリアな窓からは、軽井沢のみずみずしい緑が鮮やかに眺められます。

コーナーガラスの左右はサンゴバン社製のトリプルガラス、中央は安曇野市の丸山硝子の技術で実現したガラスコーナーだが、諸事情により日本板硝子のトリプルガラスとなった。中央のガラスだけ少し室内の映り込みがあるのがわかる(写真撮影/新井友樹)

コーナーガラスの左右はサンゴバン社製のトリプルガラス、中央は安曇野市の丸山硝子の技術で実現したガラスコーナーだが、諸事情により日本板硝子のトリプルガラスとなった。中央のガラスだけ少し室内の映り込みがあるのがわかる(写真撮影/新井友樹)

木製サッシが絵画のフレームのよう(写真撮影/新井友樹)

木製サッシが絵画のフレームのよう(写真撮影/新井友樹)

ドイツのヘーベ・シーベ金物の技術により隙間なくぴったり閉まるエアタイトサッシ。空気や熱、音をシャットアウト(動画撮影/塚田真理子)メソッド5 田舎暮らしをより豊かにする“パッシブセラー”ワインや食料の保管庫として活用できるセラーは、待望のスペース(写真撮影/新井友樹)

ワインや食料の保管庫として活用できるセラーは、待望のスペース(写真撮影/新井友樹)

高い断熱性と気密性により、夏季は25℃、冬季は20℃前後と、家中の温度ムラがないのがパッシブハウスのメリットですが、実は保存食の保管が難しいところでした。漬物や味噌などの食品を保管したくても、室温だと傷みが早いので冷蔵庫に入れないといけないと以前クライアントに言われてしまったのです。

でも、田舎暮らしをするとなれば、自分で仕込んだ発酵食品を置きたいとか、たくさん採れた野菜を保管したいという声は多い、と森さんは言います。そこで、基礎の断熱材をあえて取って、自然の温度変化にまかせた“パッシブセラー”を階段下に設けたのが、今回の新たなチャレンジ。

「軽井沢は凍結深度が80cmでこの家は基礎も深いので、建物直下の土中の温度変化が少ないという特徴があります。昔ながらの床下空間のような感覚ですね」。エアコンで温度管理せずとも、室内よりも7℃ほど低い空間が完成しました。ワインセラーとしても活用できそうです。

メソッド6 防音して空気は逃す。プライバシーと換気を叶える、革新的な室内ドアドア下に隙間はなく、かわりに縦のスリットから一定方向に空気を逃す(写真撮影/新井友樹)

ドア下に隙間はなく、かわりに縦のスリットから一定方向に空気を逃す(写真撮影/新井友樹)

2階の寝室と洗面室のドアには、通気機能を持つ革新的なドア「VanAir」を導入しました。従来の室内ドアは、閉めた状態でも換気ができるよう、ドアの下部に1cmほどの隙間を設けているのが一般的。このドアは、表と裏で互い違いに縦のスリット(通気口)があり、空気はドアの芯を経由して反対側へと流れる仕組み。24時間、空気は一定の方向に流れ、においや淀みもしっかり排気してくれるのです。かつ、防音性能を備えており、音漏れの心配もありません。

ドア下に隙間はなく、かわりに縦のスリットから一定方向に空気を逃す(写真撮影/新井友樹)

ドア下に隙間はなく、かわりに縦のスリットから一定方向に空気を逃す(写真撮影/新井友樹)

洗面脱衣室、バスルームの空気もスムーズに排気され、一年中結露やカビとも無縁(写真撮影/新井友樹)

洗面脱衣室、バスルームの空気もスムーズに排気され、一年中結露やカビとも無縁(写真撮影/新井友樹)

クローゼット上の木ルーバーのうしろは、熱交換換気から新鮮空気を各部屋に供給する給気グリル。ここから供給された空気は脱衣室等のウェットエリアの排気口へと流れる(写真撮影/新井友樹)

クローゼット上の木ルーバーのうしろは、熱交換換気から新鮮空気を各部屋に供給する給気グリル。ここから供給された空気は脱衣室等のウェットエリアの排気口へと流れる(写真撮影/新井友樹)

なお、換気システムには、室内の熱をリサイクルしながら室内と室外の空気を入れ替える「Zehnder CHM200」を使用。換気ユニットにヒートポンプを組み込んだもので、熱交換換気、冷暖房、除湿、空気清浄が1台で行えます。
基本的には自動制御ですが、タッチ式パネルで操作も可能です。

取材時(6月下旬)の室温は24.5℃、湿度53%。真価が問われる冬が楽しみ(写真撮影/新井友樹)

取材時(6月下旬)の室温は24.5℃、湿度53%。真価が問われる冬が楽しみ(写真撮影/新井友樹)

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家族が集う家、ずっといたくなる家新しい挑戦がたくさん詰め込まれた家(写真撮影/新井友樹)

新しい挑戦がたくさん詰め込まれた家(写真撮影/新井友樹)

大きな窓がもたらす開放感、気持ちのよさは、何ものにも変え難い(写真撮影/新井友樹)

大きな窓がもたらす開放感、気持ちのよさは、何ものにも変え難い(写真撮影/新井友樹)

信濃追分の家の設計期間は約1年、施工工事は10ヵ月ほど。初挑戦の取り組みも多く、建築費はおよそ5,500万円。一般的には、パッシブハウスの建築費は新築住宅+1.5~2割というのが目安だそうです。毎月の光熱費は月1万円以内と、ランニングコストはかなり抑えられる見込み。ただ、目に見える数字以上に一年中過ごしやすく、その快適さはプライスレスなもの、と森さんは言います。

「パッシブハウスに住んでいる方のお話を聞くと、朝スッと布団から出られるようになった、冷え性が治ったという声が多いですね。あとは、家があまりにも快適だから家にずっといたくて、会社を辞めて自宅でできる仕事を始めたとか、孫がしょっちゅう遊びに来るようになった、という声も。家族が集う家、といえるかもしれません」
パッシブハウスが心身にいい影響を与えてくれたり、大袈裟ではなく人生が変わったりすることもあるのですね。

信濃追分の家は、今後体験宿泊も受け入れていく予定だそうです。パッシブハウスを検討したい方は、一度この心地よさを体感してみてはいかがでしょうか。

明るいリビングで仕事をすることも多い森さん(写真撮影/新井友樹)

明るいリビングで仕事をすることも多い森さん(写真撮影/新井友樹)

さらに近い将来、太陽光でつくる余剰電力を分解してメタンガスをつくる、Power to Gasにも着目しているという森さん。こちらはまずパッシブタウン(富山県黒部市の集合住宅)での挑戦を見守りたいとのことですが、次々と新たな可能性を追求する森さんの取り組みに注目したいと思います。

●建物概要
在来木造2階建て
【フラット35】S適合(耐震等級3)
建築面積:88.04平米
延床面積:129.58平米
敷地面積:519.61平米

現在、2012年竣工の福岡パッシブハウスでは新オーナーを募集中。価値のわかる方にぜひ引き継いでほしい、と森さんは言う(画像提供/KEY ARCHITECTS)

現在、2012年竣工の福岡パッシブハウスでは新オーナーを募集中。価値のわかる方にぜひ引き継いでほしい、と森さんは言う(画像提供/KEY ARCHITECTS)

(画像提供/KEY ARCHITECTS)

(画像提供/KEY ARCHITECTS)

●取材協力
パッシブハウス・ジャパン
KEY ARCHITECTS

無印良品の小屋ズラリ「シラハマ校舎」に宿泊体験。災害時に強い上下水道・電気独立のオフグリッド型住宅の住みごこちって? 千葉県南房総市

シラハマ校舎は、千葉県南房総市白浜町の小学校跡地を活用してできた複合施設です。無印良品の小屋がずらりと並んだその一角に、2022年、上下水道、電気も既存インフラに頼らない「オフグリッド小屋」が誕生したといいます。省エネが注目される昨今、以前よりも耳にする機会が増えた「オフグリッド小屋」、一体どのように活用されるのでしょうか。可能性を探るため、シラハマ校舎に話を聞きました。

タイニーハウス(小屋)人気は健在。ウェイティングリストは27組も!

2016年、千葉県の房総半島の先に誕生した「シラハマ校舎」は、廃校となった長尾小学校・幼稚園の敷地と建物を用途変更してできた施設です。敷地内には18ある小屋が立つほか、レストラン(完全予約制)、シェアオフィス、コワーキングスペース、宿泊施設で構成されています。ちなみに小屋の1棟の広さは12平米で、バスやキッチン、トイレなどの水回りは共用で使います。運営しているのは、妻がこの町の出身者という多田夫妻。

小屋は発売当初、「どんな人が買うんだろう?」という声もありましたが、現在、ワーケーションやシェアオフィス、2拠点生活の場所として活用されていて、2019年に完売、2023年現在はウェイティングリストに27組もいるという人気物件です。(関連記事:コロナ禍で「小屋で二拠点生活」が人気! 廃校利用のシラハマ校舎に行ってみた 千葉県南房総市)

シラハマ校舎の夜景(写真提供/シラハマ校舎)

シラハマ校舎の夜景(写真提供/シラハマ校舎)

「今、1棟、販売されているんですが、見学にいらっしゃる方も多いですね。人気があるため、中古価格も崩れていません。
ただ、比較的大きな畑付きで、ほぼ毎週末、手入れが必要になるんです。週末くらいはゆっくりしたいというニーズが強いので。となると、当然、人を選んでしまう。やはり小屋でゆったりしたいという人は多いので」と話すのは、シラハマ校舎の企画から管理、運営までをご夫妻で行っている多田朋和さん。

また、コロナ禍で広まったアウトドア人気やキャンプ人気は未だに衰えず、特に房総半島では次々とキャンプ場が誕生しているよう。キャンプのようでもあり、別荘のようでもある、シラハマ校舎の「小屋」は、手堅い需要があるようです。

平時はキャンプ場、非常時は避難場所。小屋を柔軟に活用する

この大人気のシラハマ校舎の敷地の一角がさらに進化して、2022年には「オフグリッド」の小屋ができました。オフグリッドとは、電力などの送電網につながっていない独立型電力システムのこと。このシラハマ校舎では、電力だけでなく、なんと上下水道も既存のインフラに頼らず、自立して運営できる仕組みをつくったそう。一体なぜなのでしょうか。

「きっかけは、2019年の台風です。送電網が停止し、白浜町一帯も停電、陸の孤島となりました。避難場所となったコミュニティセンターの受け入れ可能人員は最大で80人ほど。そのため、150人近い人が避難できない状態になりました」と多田さん。また停電したことで9月の残暑が住民を直撃したほか、浄化槽も稼働できず、衛生状態もよくなかったといいます。

2022年末の取材時も、一角に残されていた井戸。今回のプロジェクトでは、こちらも活用(撮影/ヒロタ ケンジ)

2022年末の取材時も、一角に残されていた井戸。今回のプロジェクトでは、こちらも活用(撮影/ヒロタ ケンジ)

小屋はそもそもサイズが小さいため、使う電気エネルギーは最小限ですみます。そのため、生活に使う電力は太陽光発電でも十分まかなえるのです。いわば、「小屋の利点」を活かして、平時と非常時の二段階活用を実践したかっこうです。誰もが空想したり、アイデアとしては浮かびますが、民間の試みでさらりと行ってしまうところが、多田さん夫妻のすごいところ。

新しい小屋の内観。こうしてみると普通のホテルですね(写真提供/シラハマ校舎)

新しい小屋の内観。こうしてみると普通のホテルですね(写真提供/シラハマ校舎)

新しい小屋の内観。電気なので、キッチンはIHです(写真提供/シラハマ校舎)

新しい小屋の内観。電気なので、キッチンはIHです(写真提供/シラハマ校舎)

「もともと下水道はなく、浄化槽(※)を利用する地域なので、非常時でも電気と水さえあれば機能します。また小学校の敷地内には古い井戸があったので、これを吸い上げて配水に利用することに。太陽光発電と水を確保できることで、いざというときも下水も稼働するんです。電気だけなら、オフグリッドでまかなえる施設はたくさんありますが、上下水が既存インフラから独立して稼働するのは、日本でもシラハマ校舎くらいじゃないかな」と多田さん。

※敷地内に設ける小規模な汚水処理設備で微生物の働きなどを利用して汚水を浄化する古くからある仕組み

万一のことを考え、シラハマ校舎そのものは送電線とはつながっていますが、いざというときは電力を買わなくても稼働するとのこと。

今のところ大きなトラブルはナシ。課題は冬場の発電量。

実際に稼働してみて、課題はないのでしょうか。
「シラハマ校舎は、南向きの土地なので、夏であれば十分に発電できるのですが、問題は冬ですね。日照時間が短いので発電した電気を一日で消費してしまうんです。そのため、オフグリッド小屋に宿泊していただくお客様には、連泊してもらう場合、別の小屋に移動してもらっています(笑)」

小屋の裏側。太陽光発電した電力を蓄えておける蓄電池が設置されている(写真提供/シラハマ校舎)

小屋の裏側。太陽光発電した電力を蓄えておける蓄電池が設置されている(写真提供/シラハマ校舎)

なるほど、運用でカバーできる範囲の課題なんですね。エネルギーの地産地消というか、オフグリッドで建物を運営するのは、もう「リアル」にできることなんだなと実感します。使うエネルギーとつくるエネルギーのプラスマイナスゼロの住まいを「ZEH(ゼッチ)」(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)といいますが、まさに小屋もZEHの時代なんですね。

「今は小屋1棟でお貸ししていますが、2棟つなげて1つにキッチンとお風呂、トイレをつくり、1つをベッドルームにした宿泊棟もつくろうかと思っています。こちらもZEHで、使うエネルギーとつくるエネルギーはプラスマイナスゼロにする予定です」と多田さん。

シラハマ校舎のアップデートはまだまだ止まりそうにありません。
「水でいうと、エアコンから出た排水や汚水などをあわせてフィルターで濾過(ろか)し、真水にして循環利用できる技術もあるのですが、商業施設や複数人が利用することを考えて、導入を見送っています。技術的に問題ないといっても、気分的に嫌悪感を抱く人がいるのは理解できるので」(多田さん)。水の技術にも興味があるほか、海岸沿いに所有する農地に小型風力発電設備を設置する計画も進めています。

白浜町はその土地柄、強い海風が吹いています。これを活用し、小規模事業でも環境に貢献していきたいとのこと。こうした施策に興味を持ち、企業や自治体の視察希望者が次々とやってくるそう。

小学校らしさを残してリノベ。オフィスやレストランなどが入っています(撮影/ヒロタ ケンジ)

小学校らしさを残してリノベ。オフィスやレストランなどが入っています(撮影/ヒロタ ケンジ)

「どこの自治体や企業も環境への取り組みが欠かせません。自社の勝機はどこにあるのか、意識の高まりを感じますね。また、日本国内では廃校が毎年約400~500ほどあるので、どこも地方自治体は活用方法に頭を悩ませています。校舎は廃校して他用途で活用しようとすると、耐震補強工事や用途変更に手間がかかるんです。シラハマ校舎の場合、校舎をワーケーションオフィスとして活用しつつ、小屋を宿泊場所にしています。これは他の自治体でも有効な『パッケージ』として輸出できないかなと考えているんですが、なかなか運用が難しいようで。あとは韓国でも少子化によって同様の問題が起こると予想されているので、『廃校活用パッケージ』として輸出できたらおもしろいですよね」(多田さん)

外観も学校らしさを残している(撮影/ヒロタ ケンジ)

外観も学校らしさを残している(撮影/ヒロタ ケンジ)

キッチンや水回りなどの共用施設がある建物(撮影/ヒロタ ケンジ)

キッチンや水回りなどの共用施設がある建物(撮影/ヒロタ ケンジ)

さらに昨年には農業法人を立ち上げ、ワイナリー+ソーラーシェアリング(太陽をシェアし太陽光発電とパネルの下で農産物を生産する取り組み)も現在計画しているとのこと。これが可能になると、天候関係なく果実ができたり、収穫できたりするようになるのだとか。なんでしょう、房総半島の先にある民間の施設なのに、どこよりも新しい試みをはじめています。

強い風を利用した風力発電も計画中(撮影/ヒロタ ケンジ)

強い風を利用した風力発電も計画中(撮影/ヒロタ ケンジ)

小屋に注目が集まっている昨今ですが、オフグリッドやソーラーシェアリングなどと組み合わせ、どこよりもユニークな挑戦を続けるシラハマ校舎。小屋や環境、これからの暮らしに興味がある人なら、ぜひ一度、訪れてソンはないと思います。

●取材協力
シラハマ校舎

災害時の大停電、切り札は「地域マイクログリッド」。電気の地産地消は進むか?

気候変動の影響で、災害が頻繁に発生しているなか、「地域マイクログリッド」が注目されています。これは「既設の送配電ネットワークを活用して電気を調達し、非常時にはネットワークから切り離して電気の自給自足をする柔軟な運用が可能なエネルギーシステム」(資源エネルギー庁「地域マイクログリッド構築のてびき」より)のことで、現在各地域に導入推進をしています。一体どのような仕組みなのか、資源エネルギー庁の担当者にお話を聞きました。

エネルギーは中央集権型から分散型へ

2018年の北海道胆振東部地震や2019年に発生した台風15号の被害により大規模停電被害が発生し、“インフラ断絶“が大きな課題になったことは、多くの人にとって記憶に新しいと思います。これは、エネルギーのシステムが中央集権型システムで、電気が一括供給されていることが原因でした。通常、電力は各地域の大手電力発電所で大量につくられ、そして送電線からその地域の施設や住宅に供給されます。この中央の送電システムが断絶すると、一気に全体のライフラインが絶たれてしまいます。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

そこで着目されたのが、リスク分散が期待できる分散型エネルギー。従来の大規模・集中型エネルギーとは違い、集中型エネルギーを使いつつも、各地域の特徴も踏まえ、小規模かつさまざまな方法や地域からの分散型エネルギーも上手に活用することで、「電力レジリエンス強化」をすることができるのです。「レジリエンス(resilience」とは、「弾力」「回復力」「強靭」といった意味で使われ、防災分野においては、災害発時にその影響を強くしなやかに乗り越え、速やかに回復できる状態を指しています。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

中央集権型から分散型への変化。多様な環境と供給方法に対応することができる(資料/資源エネルギー庁「総合資源エネルギー調査会 長期エネルギー需給見通し小委員会(第6回会合) 資料1」)

中央集権型から分散型への変化。多様な環境と供給方法に対応することができる(資料/資源エネルギー庁「総合資源エネルギー調査会 長期エネルギー需給見通し小委員会(第6回会合) 資料1」)

分散型エネルギーの好活用「地域マイクログリッド」

さらに分散型エネルギーは、地域のエネルギーをその地域で消費することによる省エネ効果を見込むことも。そのために国が推進しているのが「地域マイクログリッド」です。

「地域マイクログリッドは、平常時は下位系統の潮流を把握し、災害等による大規模停電時には自立して電力を供給できるエネルギーシステムです。平常時は地域の再生可能エネルギーを有効活用しつつ、電力会社などとつながっている送配電ネットワークを通じて電力供給を受けますが、非常時には事故復旧の一手段として送配電ネットワークから切り離され、その地域内の再生可能エネルギー電源をメインに、他の分散型エネルギーと組み合わせて自立的に電力供給可能なシステムです」(担当者)

このモデルは、都市部・郊外・離島では、送配電ネットワークの密集度や非常時に期待される役割がそれぞれ異なるため、対象エリアの特性に合わせ、その仕組みも最適化していきます。

経済産業省 資源エネルギー庁が2021年4月に公表した「地域マイクログリッド 構築のてびき」によると、地域におけるマイクログリッドのシステムモデル例が次のように示されています。

地域マイクログリッドの仕組み例。非常時に断絶されても、リスクヘッジできる仕組みになっている(資料/資源エネルギー庁「地域マイクログリッド 構築のてびき」)

地域マイクログリッドの仕組み例。非常時に断絶されても、リスクヘッジできる仕組みになっている(資料/資源エネルギー庁「地域マイクログリッド 構築のてびき」)

このモデル図では、平常時と非常時の電気の流れが異なることを示しています。非常時には大型の発電所との送配電ネットワークを切り離し、再エネ電源等から直接の送電を受けることで、生活復旧に必要最低限の電力が確保できるようになっているのです。

なぜ今マイクログリッドなのか?

なぜ今、マイクログリッドが注目されているのでしょうか? それはマイクログリッドによって「分散型電源」である再生可能エネルギーを効率よく活用できるからです。そもそも、電力はエネルギーの状態で貯めておくことはできない上に、送電の間にその一部が失われる「送電ロス」があります。電力を生み出すところと使うところが離れるほどそのロスは大きく、本来地域で電力を作って地域内で消費する分散型モデルの方が無駄なく使えるのです。近年、太陽光発電など再生可能エネルギーを普及させる取り組みが進み、分散型電源を活用しやすいマイクログリッドというエネルギーシステムが注目を集め始めました。そうしたなか、国は地域マイクログリッドの構築を後押しするために、補助事業も行っています。2018年度と2020年度には、それぞれ10組を超える民間企業や地方自治体などが参画したマスタープランが採択されました。これから徐々に取り入れようとしている企業や団体も増えてきているようです。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

地域マイクログリッドでプラン採択された団体は多くありますが、事業完成という実例はまだない状況です。一方で、自営線を活用する事例としては、宮城県大衡村の第二仙台北部中核工業団地にある『F-グリッド』(2015年開始)が挙げられます。

宮城県大衡村の、第二仙台北部中核工業団地にある「F-グリッド」(資料/経済産業省『地域マイクログリッド構築の手引き』)

宮城県仙台市大衡村の、第二仙台中核工業団地にある「F-グリッド」(資料/経済産業省『地域マイクログリッド構築の手引き』)

「F-グリッド」が導入された地域内では、日頃から蓄積しているエネルギーをF-グリッド内各工場へのエネルギー供給のみならず、余剰電力は東北電力を通じて近隣の地域防災拠点である大衡村役場などへ供給し、さらにはプラグインハイブリッド車と、充放電システムを拠点に配置をしているため、有事の際にすぐに災害支援活動ができる体制を備えています。

その一方で、「地域マイクログリッド」の構築には技術的にもクリアしなければならない点やビジネスモデルとして収益を確立することに課題点があり、これをクリアすることが普及の鍵となるようです。

あらゆる地域で安定稼働するまで、まだ少し時間がかかりそうですが、地域にこうした安心材料が一つでも増えると、市民にとってはとても嬉しいですね。

また補助事業とは別の制度を利用する形で、マイクログリッドの仕組みを導入している事例もあります。千葉県木更津市にある、広さ30ヘクタールの農場で食や農業体験ができるサステナブルファーム&パーク「クルックフィールズ」では、2021年2月に蓄電池システムを導入しました。「クルックフィールズ」では、2019年9月の台風15号による停電を経験して、長期停電時でも家畜のいる牛舎等への電力の安定供給や、地域住民の避難所として電力供給を自前で行えるようにしたいと思い導入に踏み切ったとのこと。自立したライフラインだけではなく、何かあったときには地域との人たちと助け合える、今後こうした施設は増えていきそうです。

太陽光発電設備を導入後に蓄電池施設も導入し、マイクログリッドの仕組みを作っている。(写真提供/クルックフィールズ)

太陽光発電設備を導入後に蓄電池施設も導入し、マイクログリッドの仕組みを作っている(写真提供/クルックフィールズ)

地域マイクログリッドによる期待と効果とは?

地域マイクログリッドは、対象エリアの分散型エネルギーを活用します。こうした分散型エネルギーの活用によって、災害時や非常時のレジリエンス強化だけではないメリットがあると期待されています。それは環境負荷削減と、エネルギーの高効率での地産地消ということです。地域マイクログリッドに取組むことそのものが地域に新たな産業振興をもたらす可能性もあります。エネルギー課題と街づくりを一体化して取組むことで、地域の活性化につながるかもしれません。
こうした災害や非常時に強い、そして自分たちだけで自立した暮らしを営むことができる街づくりというのは、生活する人としては安心感があり、住みやすいのではないでしょうか。今後住まいを選ぶ一つのキーワードとして、マイクログリッドを取り入れるエリアは、注目ポイントになりそうです!

●取材協力
・資源エネルギー庁
・(株)KURKKU FIELDS

三井不動産と東京ガス、「日本橋スマートエネルギープロジェクト」始動

三井不動産(株)と東京ガス(株)は、共同で設立した三井不動産TGスマートエナジー(株)を通じて「日本橋室町三井タワー」内(東京都中央区)に「日本橋エネルギーセンター」を竣工し、4月1日より「日本橋スマートエネルギープロジェクト」を開始した。同事業は、両社の強み・ノウハウを活かして、既存ビル群も含めエネルギーを街ごとリニューアルする日本初の取り組み。日本橋室町周辺地域に、電気と熱を安定供給していく。

大型CGS(コジェネレーションシステム)を「日本橋室町三井タワー」地下のプラント内に設置、地下に独自に張りめぐらせた自営線により、周辺ビル・商業施設に向けて平常時・非常時ともにエネルギー供給を行うエネルギーネットワークを構築した。導入した大型CGSは災害時の信頼性が高い中圧ガス導管を活用して発電しており、広域停電時にも建物のBCP(Business Continuity Plan)に必要な電気の供給(年間ピークの50%)が可能になる。

供給対象は「三井本館」や「三越日本橋本店本館」といった重要文化財や、「武田グローバル本社」を始めとする既存建物を含む約20棟。また、帰宅困難者を収容する一時滞在施設にもエネルギーを供給し、面的なエネルギーレジリエンスを向上させ、安心・安全な街づくりに貢献する。

両社は、今回の日本橋における都心型スマートシティの取り組みを推進していくと同時に、今後、豊洲など他エリアにおけるスマートエネルギープロジェクトでも連携を予定。災害に強く、環境に優しい安定したエネルギー供給が支える魅力ある街づくりに取り組んでいく。

ニュース情報元:三井不動産(株)

虎ノ門一・二丁目地区の再開発事業が認定

国土交通省は3月22日、都市再生特別措置法の規定に基づき、森ビル(株)が申請していた民間都市再生事業計画「虎ノ門一・二丁目地区第一種市街地再開発事業」について認定した。事業地は東京都港区虎ノ門一丁目208番1他。地下4階・地上49階の複合施設(事務所、店舗、ホテル、ビジネス発信拠点等)、地下3階・地上4階の店舗・駐車場、地下1階・地上12階の複合施設(事務所、店舗、住宅、子育て支援施設等)を建設する。

また、地下鉄日比谷線新駅の整備と一体となった立体的な駅広場や、新駅と周辺市街地を結ぶ地上・地下の歩行者ネットワークの整備等により、交通結節機能を強化。帰宅困難者支援や自立・分散型エネルギーシステムの導入により、地域の防災機能も強化していく。

事業施行期間は、2019年10月1日~2023年2月28日の予定。

ニュース情報元:国土交通省

エネルギー自由化の認知、電気92.3%・ガス77.4%、電通調べ

(株)電通のエネルギー関連のグループ横断組織、チーム「DEMS(ディームス)」は、第6回「エネルギー自由化に関する生活者意識調査」を行った。
調査時期は2017年12月22日~12月27日。対象エリアは9電力会社管内(沖縄電力管内を除く)。対象者は全国20~69歳の男女5,600名。調査方法はインターネット。

それによると、電力自由化について「内容まで知っている」は25.1%(前回24.6%)、「内容はわからないが、自由化されたことは確かに知っている」51.7%(同52.3%)、「見聞きしたことがある」15.4%(同14.7%)を合わせると、全体の92.3%(同91.6%)と電力自由化の存在が広く知れわたり、認知は高止まりの状態であることが分かった。

ガス自由化については、「内容まで知っている」15.2%(前回16.1%)、「内容はわからないが、自由化されたことは確かに知っている」39.7%(同41.7%)、「見聞きしたことがある」22.5%(同22.3%)を合わせると全体の77.4%(同80.1%)が認知されており、ガス自由化の認知については未だ拡大の余地が残っている。

電力自由化で「電気の購入先を変更した人」は11.4%(前回9.8%)、「電気の料金プランを変えた人」は7.9%(同6.9%)と、「変更者」は全体の19.3%となり、前回の16.7%より2.6ポイント増加。管内別では、電気の購入先変更は東京電力管内19.0%、関西電力管内17.6%、北海道電力管内15.0%、電気の料金プラン変更は中国電力管内17.2%、中部電力管内15.0%、四国電力管内12.4%の順。

ガス自由化で「ガスの購入先を変更した人」は7.8%と、前回より3.1ポイント増加。「比較検討したが変更していない」は23.0%と、前回より1.7ポイント増加。

購入先を変更しておらず、かつ変更の意向がない人の理由は、「変更の手続きが面倒 大変そう」(電力27.6%、ガス23.0%)のほか、今まで通り慣れている会社の方がよい」(電力27.1%、ガス25.0%)、「現在と比べて安くならない」(電力24.9%、ガス22.1%)、「メリットがよくわからない」(電力24.8%、ガス22.1%)、「変更することに不安」(電力23.1%、ガス21.2%)、「変更することで損をしたくない」(電力22.9%、ガス21.5%)などが挙がっている。

ニュース情報元:(株)電通