9人に1人が家具・家電などの長期リース型サブスクを利用。メリットやデメリットなども解説

家具と家電のレンタル・サブスク「CLAS」は、春の引越しシーズン到来前に「家具・家電に関するアンケート」を18歳~49歳の男女1,000人に実施した。そこで、高価格帯の商品を長期にわたって利用する「長期リース型」のサブスクについて調べたところ、9人に1人が利用していることが分かった。

【今週の住活トピック】
1000人への実態調査で見る「春の新生活の家具・家電事情2024」を公表/CLAS

長期リース型サブスク、11.7%=9人に1人が利用している

サブスクとは、サブスクリプション(subscription)の略。ある商品やサービスを一定期間、一定額で利用できる仕組みのこと。サブスクの中でも長期にわたって利用する「長期リース型サブスク」を利用しているか聞いたところ、「利用している」が11.7%、「利用していない」が88.3%という結果に。おおむね9人に1人が長期リース型サブスクを利用していることになる。

長期リース型サブスクを利用している人を年代別に見ると、20代(13.8%)と30代(14.3%)が10代や(10.0%)や40代(6.7%)よりも多い。CLASの個人会員属性も20代後半~30代が中心であることから、この年代に耐久消費財を所有しない傾向があるという。

長期リース型サブスクを利用してますか(年代別)

出典:CLAS

次に、長期リース型サブスクを利用していると回答した人に、利用しているサブスクの商品を聞いたところ、「家電」が48.7%と最も多く、次いで「家具」の42.7%となった。家電や家具は生活する上で必要なものだが、金銭的負担も大きいことから、サブスクを利用することが多いのだろう。

利用している長期リース型サブスクは

出典:CLAS

2021年時点で近い将来7~8人に1人が利用していそうと予測

別の調査結果を見てみよう。LINEリサーチでは、2021年5月に18~59歳の男女を対象に「家具・家電の定額制レンタルサービス」の現状の認知率や利用率、今後の流行予想などについて調査を実施した。

2021年時点ですでに、「家具・家電の定額制レンタルサービス」の認知率は45.9%(「知っているし、使っている」「知っているし、今は使っていないが以前使っていた」「知っているが、使ったことはない」の合計)で、半数近くが「知っている」状態だった。

次に、自分の身のまわりで「どのくらいの人が使っていそうか?」という『現在の流行体感』を聞いたところ、流行体感スコアは2.3(=100人中およそ2人が利用している)という結果に。では、「1年後、自分のまわりでどのくらいの人が使っていると思うか」という『近未来の流行予想』を聞くと、流行予想スコアは13.0(=100人中およそ7~8人に1人が利用していそう)という結果になった。

2024年2月に実施したCLASの調査結果では、長期リース型サブスクの利用者は9人に1人だったので、2021年時点の予想はかなり近い結果だと言ってよいのだろう。

家具・家電の定額制レンタルサービスの今と1年後

出典:LINEリサーチ

なお、自分が今後使ってみたい(今後の利用意向)かを聞くと、利用意向ありが26.2%(「ぜひ使ってみたいと思う」「機会があれば使ってみたいと思う」の合計)と、近い将来は自分が利用したいと思う人が増えていた。

家具家電の長期リース型サブスク、メリットとデメリット

実家を出て一人暮らしを始める、結婚や同棲で新たに二人暮らしを始める、といったときに、新居の家具家電を買いそろえるのは大変な場合がある。引越しによる初期費用がかさむなか、家具家電のレンタルを利用すれば当初の費用を抑えることができる。

一定期間だけ単身赴任することになった場合も、同様だろう。家族と再び暮らすときに、単身赴任時の家具家電の処分をする必要もない。子どもの年齢が一定期間だけ必要となるものなども、一定期間レンタルすることが有効だ。

また、高額な家具家電を使いたいとき、「いきなり買うのは不安だけど、一定期間使ってみたい」という場合も使い勝手が良さそうだ。つまり、「必要な期間だけ使える&コスパのよさ」がメリットと言えるだろう。

一方、レンタルでは新品とは限らないこと、好きな家具家電がレンタルできることは限らないこと、長く使うとかえって割高になること、などのデメリットもある。

Z世代は、「モノ消費」よりも「コト消費」を好み、所有にこだわらないとか、「買い物で失敗したくない」という意識が強いといった傾向があると言われている。今回の結果を見ると、こうした若い世代を中心に、一定の人たちが生活の中で賢くサブスクのサービスを利用していることがうかがえる。家具家電についても選択肢が増えることで、私たちの生活の仕方も変化していくのではないだろうか。

●関連サイト
【CLAS調査レポート】 9人に1人が長期リース型サブスクを利用、 「家電」と「家具」に人気が集中!
LINEリサーチ、今と近未来の流行予想調査(第七弾・家具、家電の定額制レンタルサービス編)を実施

サブスク「DOME住む」で東京ドームシティに住める! 定額でホテルや温泉、遊園地を使い放題

東京ドームを中心に遊園地や温泉、ホテルまでそろった東京ドームシティ。なんと、定額でホテル暮らしや温泉、遊園地で遊び放題のまるごと「住める」サブスクリプション(サブスク)プラン「DOME住む」が人気を集めています。三井不動産と東京ドームホテルが贈る、働く、遊ぶ、リラックスもまるごとできる、新しい暮らし方をご紹介しましょう。

東京ど真ん中で展開される「DOME住む」は破格の15泊15万円!

2021年は多くのホテルが「ホテルのサブスク」を打ち出しましたが、夏にはなんとホテルだけでなく周辺の遊園地や温泉、食事、ホテル宿泊も含めた、一大エンターテインメント”シティ”に住めるサブスクが登場しました。

「DOME住むプラン」は、東京ドームシティ内の東京ドームホテルに15連泊または30連泊できるというものです。
住むというだけあって、連泊中は敷地内の「東京ドーム天然温泉 スパ ラクーア」に入館無料でお風呂に入り放題、東京ドームシティ内のアトラクションは乗り放題、東京ドームホテルのレストランなどの施設を利用できるレジャーチケット「得10(とくてん)チケット」も付いてきて、東京ドームシティに暮らす楽しさを存分に満喫できます。当たり前ですが室内は清潔感があり、得10チケットを使えばホテルレストランで食事もできる(当たり前ですが調理も片付けも不要……!)それでいて15連泊で15万円、ちょっと贅沢すぎるのではないでしょうか。夏には30連泊プランを販売したところ、なんとあっという間に完売だったといいますが、それも納得です。

「DOME住む」で利用できる東京ドームホテルの客室(写真撮影/相馬ミナ)

「DOME住む」で利用できる東京ドームホテルの客室(写真撮影/相馬ミナ)

窓のむこうには都内の風景(写真撮影/相馬ミナ)

窓の向こうには都内の風景(写真撮影/相馬ミナ)

夜はこんな夜景が眼下に(写真提供/東京ドームホテル)

夜はこんな夜景が眼下に(写真提供/東京ドームホテル)

筆者は今まで「ホテルライク」を売りにしたマンションをたくさん見てきましたが、まさか本物のホテルに住める日がくるとは……。
テレワークが当たり前になった今、仕事もできて、遊べて、気分転換もできて、ホテルにこんな使い方があったのか!とまさに目からウロコです。

「ホテルライクなマンション」ならぬ、「リアルホテルライフ」でテレワーク(写真撮影/相馬ミナ)

「ホテルライクなマンション」ならぬ、「リアルホテルライフ」でテレワーク(写真撮影/相馬ミナ)

ホテル最上階にあるレストランからの眺め(写真撮影/相馬ミナ)

ホテル最上階にあるレストランからの眺め(写真撮影/相馬ミナ)

アーティスト カフェ「パノラマランチ」(写真提供/東京ドームホテル)

アーティスト カフェ「パノラマランチ」(写真提供/東京ドームホテル)

ホテルサブスクは好調、暮らし方の新しい選択肢に

東京ドームホテルがあるのは東京都文京区。「住み続けたい自治体ランキングTOP50」(2021年、SUUMOリサーチセンター)では3位にランクインしたほど人気の街ですが、分譲価格にしても家賃にしてもやはりお高く、なかなか手がでるエリアではありません。そんな文京区に住めるというのも、貴重な体験です。
では、このプランがはじまった経緯はどこにあるのでしょうか。

「ご存じのようにコロナ禍で暮らしが大きく変わり、ホテルの宿泊需要が蒸発してしまいました。そこでホテルの活用法としてサブスクリプションサービスを打ち出し、三井不動産グループが展開するザ セレスティンホテルズ、三井ガーデンホテルズ、sequenceで利用可能な『サブ住む HOTELどこでもパス』『サブ住む HOTELここだけパス』を2月に発売したところ、これが大好評でした。そこで早い段階で、連携している東京ドームホテルでもできないか企画を練っていました」と話すのは三井不動産ホテル・リゾート本部ホテルリゾート運営一部運営企画グループの江連沙織さん。

左から、東京ドームホテル総支配人室営業企画課広報 渡辺友紀さん、三井不動産ホテルリゾート本部の名塚旭さん(リモート参加)、江連沙織さん(写真撮影/相馬ミナ)

左から、東京ドームホテル総支配人室営業企画課広報 渡辺友紀さん、三井不動産ホテルリゾート本部の名塚旭さん(リモート参加)、江連沙織さん(写真撮影/相馬ミナ)

ちなみに、はじめに発売したホテルサブスク「サブ住む」には、全国各所にある三井不動産グループが展開しているホテルに連泊できる「HOTELどこでもパス」と、お気に入りのホテルにじっくり連泊できる「HOTELここだけパス」の2種類ありますが、それぞれ利用者の傾向が異なるといいます。

「どこでもパスのほうは、20~30代で、仕事もテレワーク中心で、仕事と旅がシームレスな方が多いですね。一方で、ここだけパスは40~60代で、自宅近くのホテル、または会社近くのホテルを確保し、出勤しつつ、仕事をするというスタイルが多いように見受けられます。また家の近くのホテルを借りて、ホテルを仕事部屋にしたり、会社近くに借りたホテルから出勤するという使われ方もされていました」(名塚さん)

東京ドームのすぐ隣に立つ東京ドームホテル。遊園地があるからでしょうか、どこか街全体にワクワク感が漂っています(写真撮影/相馬ミナ)

東京ドームのすぐ隣に立つ東京ドームホテル。遊園地があるからでしょうか、どこか街全体にワクワク感が漂っています(写真撮影/相馬ミナ)

セカンドハウスやホテルに缶詰仕事と聞くと、文豪や大金持ちという別世界の使われ方を想像してしまいましたが、今回のコロナ禍を受け、わりと身近に使えることがわかったように思います。東京ドームホテルの『DOME住む』は、この「サブ住む」での反響を受け、夏前に販売しましたが、それまでとは違った使われ方をしていたといいます。

ホテルと住まいはもっと気軽で近い存在に!

「夏に『DOME住む』を利用した方にアンケートを取りましたが、東京都内や近郊にお住まいのご利用者が多く、ご家族連れで30連泊している方もいらっしゃいました。周辺にはレジャー施設もたくさんあるので、お子さまは遊んで、大人は仕事をして、夜はゆっくりお食事を楽しむ、そのように自由に時間を使って過ごしていると30日があっという間なのではないでしょうか」(渡辺さん)

東京ドームシティのアトラクション。「DOME住む」なら乗り放題(写真撮影/相馬ミナ)

東京ドームシティのアトラクション。「DOME住む」なら乗り放題(写真撮影/相馬ミナ)

東京ドームシティは、いってみれば「遊園地」なわけで、「遊園地に住む」というのは子どもにとっても夢のよう。ホテル住まいなら親もごはんづくりなどの家事をお休みできますもんね。近くに美術館や博物館も多数あるので、勉強もできますし、コロナ禍で遠出はできないけれど「夏休みを楽しみたい」という使われ方をしていたようです。

アトラクションだけでなく、イベントやショップもたくさんあるので、15連泊できても時間は足りないだろうな(写真撮影/相馬ミナ)

アトラクションだけでなく、イベントやショップもたくさんあるので、15連泊できても時間は足りないだろうな(写真撮影/相馬ミナ)

現在も15連泊と30連泊のプランを販売していますが、好調とのこと。また、住まいと異なり、ホテルは契約が簡素で初期費用が不要といった実利的な点を評価されているといいます。

ただ、気になる今後ですが、どうなるかは未定だそうです。テレワークは普及しましたが、一方で、「定着するか」どうかは見えないところもあるため、確かにホテルとしては難しい判断になるのかもしれません。

とはいえ、今回のような“街のサブスク”が今後も展開されるとしたら、引越し前や移住を検討している地方など住んでみたい街のホテルでお試し居住をしてみたりするという使い方もできそうです。ほかにも、高齢になったので身軽にホテルで暮らしたり、テレワークで旅をしながら各地を巡って暮らす、なんていう使い方は大いにアリなのではないでしょうか。街のサブスクをきっかけに、新しい街との出合いや、暮らしに対する発見があるかもしれません。

2021年は帝国ホテルをはじめ、さまざまなホテルが「ホテルに住む」「ホテルでテレワーク」という新しい活用法を打ち出し、ホテルサブスクもいろんな種類が登場しています。これからの「ちょい住み」「気軽な住まい」の場所としての「ホテル」は、もっと普及していくかもしれません。

●取材協力
東京ドームホテル
三井不動産

コロナで「フラワーロス」が深刻! 花と花農家を救う花屋の挑戦

2020年春先、新型コロナウイルスの感染拡大で卒業式や結婚式など花が欠かせないイベントの中止が相次ぎ、多くの花が出荷できず廃棄され、半年以上経つ今も業務用花の需要低迷は続いています。その過程で、まだ綺麗なのに捨てられる花(フラワーロス)をなくそうと、花業界はさまざまな取り組みを開始しました。今回は、コロナ禍以前からフラワーロスの解決に積極的に取り組んできた株式会社BOTANICの上甲友規(じょうこう ともき)さんに話を聞きました。
イベントの中止で花の需要が低下、大量のフラワーロスが発生

まだ食べられるのに廃棄される食品「食品ロス」の量は年間612万トンも発生しています(2017年度、農林水産省発表、2020年4月現在)。食品ロスは2012年から国が削減に取り組み数値を公表していますが、「フラワーロス」は正確なデータがありません。「食品ロス」ほど、身近に感じている人は少ないのではないでしょうか。

「フラワーロスのとらえ方はさまざまで、統一された定義はありませんが、大きく分けて3つあります。ひとつは店舗にディスプレイしていた花がお客様の手に渡らず残ってしまったもの、結婚式などのイベントの装飾花で朝にディスプレイしてイベントが終了すると家には飾れてもお店で売ることはできない花、そして生産者のもとで供給過多になり出荷されずに捨てられる花があります」と話すのは、BOTANICの上甲友規(じょうこうともき)さん。まだ十分に愛でることができる綺麗な花が燃えるゴミとして捨てられる現実は、想像するだけで心が痛みます。

株式会社BOTANICの代表取締役 上甲友規さん(写真提供/BOTANIC)

株式会社BOTANICの代表取締役 上甲友規さん(写真提供/BOTANIC)

コロナの影響で卒業式、送別会など花が欠かせない各種イベントが中止・延期・縮小され、花が出荷されず大量の花が廃棄される「フラワーロス」「ロスフラワー」がニュースになりました。

コロナ禍になる以前から、この問題は注目されており、農林水産省は2020年3月6日、花の消費拡大を目指し、花業界を支援するため、家庭や職場で花を飾り、花の購入促進を広く呼びかける「花いっぱいプロジェクト」をスタートし、趣旨に賛同する地方自治体、企業、全国の団体などが協力。フローリストらによるフラワーロスを減らすプロジェクトも始まり、花のある暮らしの提案を続けています。

「コロナ禍以降、花を贈るといった個人消費の需要は増えていますが、イベントの減少で花業界全体が低迷し、今後どうしたらいいかと不安を抱えている生産農家は少なくありません」と上甲さん。フラワーロスをなくすには、一時的な支援ではなく、根本的な改善が必要です。

提携農園から新鮮な花と新聞が直接届く花のサブスク(定期便)都内に3店舗あるフラワーショップ「Ex. Flower Shop & Laboratory(イクス、フラワーショップ アンド ラボラトリー)」の自然光が入る明るい店内(写真提供/BOTANIC)

都内に3店舗あるフラワーショップ「Ex. Flower Shop & Laboratory(イクス、フラワーショップ アンド ラボラトリー)」の自然光が入る明るい店内(写真提供/BOTANIC)

「BOTANICは花屋の流通の複雑さ、大量な廃棄ロス、マーケティングのやり方、働く側の労働環境など、花屋の業界全体にある課題を解決したいと2014年に立ち上げた会社です。“花き業界をアップデートする”をミッションに自分たちが描く理想の花き業界をつくりたいという想いがあります」

その継続的な課題の解決のために、BOTANIC が提供するサービスのひとつが、花のサブスクリプションサービスです。

2017年にBOTANICが開始した花のサブスクリプションサービスの「霽れと褻(ハレトケ)」。生産者が旬の花を開花状況を見ながら収穫する(写真提供/BOTANIC)

2017年にBOTANICが開始した花のサブスクリプションサービスの「霽れと褻(ハレトケ)」。生産者が旬の花を開花状況を見ながら収穫する(写真提供/BOTANIC)

花のサブスクリプションサービス(サブスク)は、あらかじめ契約して定額料金を支払った顧客に旬の新鮮な花を定期的に届けるシステムで、顧客は、ポスト投函や手渡し、宅配ボックスなどを通じて受け取ります。

「サブスクが今までの店舗で販売するスタイルと違うのは、売れた分だけ仕入れること。お店は選択肢を多くして一定以上の在庫を抱えていないと成り立ちませんが、オンラインで注文を受け、注文があった分だけ提携農園で花を切り取り、採れたてを顧客に出荷できるのが大きいです」(上甲さん)

つまり、花のサブスクリプションサービスによって「店舗でのフラワーロス」と「生産者のもとでのフラワーロス」を削減することができます。

「霽れと褻(ハレトケ)」は、花と新聞が届く定期宅配便。顧客はどんな花が届くか分からない楽しみもある(写真提供/BOTANIC)

「霽れと褻(ハレトケ)」は、花と新聞が届く定期宅配便。顧客はどんな花が届くか分からない楽しみもある(写真提供/BOTANIC)

タブロイド判の8ページの新聞は、写真や絵を使って分かりやすい記事が満載で、保存しておきたくなるような内容(写真提供/BOTANIC)

タブロイド判の8ページの新聞は、写真や絵を使って分かりやすい記事が満載で、保存しておきたくなるような内容(写真提供/BOTANIC)

「霽れと褻(ハレトケ)」は、花とともに、その花にまつわるストーリーなどを掲載した新聞を配達しているのが特徴です。花を飾ることプラス、届いた花の名前や特徴、生産者に取材した花のストーリー、お手入れ方法、飾り方のコツなどを網羅した新聞が届くことで、知識欲が満たされ、花への興味が深まります。

その重要なカギになるのが生産者です。同社は、全国各地の100近くの花農家と会って、信頼できる花農家と提携。「安定供給ができるか、花の美しさや日持ちといった品質、配送に耐えられるか、などを見極めて提携しています。コロナ禍が続いて、生産者の方も、自らオンラインで花を販売したり、弊社の取り組みに対してさらに前向きに受け取っていただけるようになり、意識が変わってきたと感じます」

オンライン販売では生産者との交流が重要。花の新聞も直接生産者に会って話を聞いてまとめている(写真提供/BOTANIC)

オンライン販売では生産者との交流が重要。花の新聞も直接生産者に会って話を聞いてまとめている(写真提供/BOTANIC)

タイムロス、フラワーロスをなくしブーケにして届けるサービス

国内の花農家は約8万1000戸あります。花が開花するまでは、種を蒔いてから約3カ月~6カ月、胡蝶蘭などのように3年以上かかる花もあります。花農家が時間をかけて育てた花は、農協などの出荷団体がまとめて、市場を通して花屋に届くルートが一般的で、通常4~5日かかります。

花きが消費者に届くまでの主な流通ルート。市場経由率は76%、市場外取引は24%(2017年)(出典:農林水産省「花きの現状について」2019年12月)

花きが消費者に届くまでの主な流通ルート。市場経由率は76%、市場外取引は24%(2017年)(出典:農林水産省「花きの現状について」2019年12月)

BOTANICは2019年、花の流通経路を見直したサービス「Lifft(リフト)」を開始しました。これは「花のサブスクリプションサービスの延長上にあるサービスで、提携農家です。オンラインで注文を受けてから採花した花を直接仕入れて、ブーケにして届けています。フラワーロスとタイムロスがなく、流通コストや人件費、実店舗の家賃などを削減でき、価格を抑えて新鮮な花を届けることができます」

フローリストが束ねたブーケを花が傷まない工夫をした専用ボックスで届ける「Lifft(リフト)」(写真提供/BOTANIC)

フローリストが束ねたブーケを花が傷まない工夫をした専用ボックスで届ける「Lifft(リフト)」(写真提供/BOTANIC)

廃棄ロスをなくす未来の花屋を目指すコンセプトショップ

2020年2月、BOTANICは、さらにフラワーロスゼロを目指し、クラウドファンディングで支援を呼びかけ、花・植物・人が交わるサスティナブルな施設「Lifft Concept Shop(リフトコンセプトショップ)」がオープンしました。

ショップには植物相談デスク、イートインスペースを併設。花農家から仕入れて3日間以内の花のみを販売し、4日以上経つ花はビル内のカフェで活用しています。また、Web(Zoom)でコンセプトショップを見ながら無料で花選びの相談ができるコンシェルジュサービスも開始しました。

Lifft Concept Shopのショールーム(写真提供/BOTANIC)

Lifft Concept Shopのショールーム(写真提供/BOTANIC)

「個人消費や、花を飾る習慣が少しずつ増えた実感があります。今後も、このような活動を通じて、花の需要と供給のギャップをなくすよう取り組んでいきたいと思います」(上甲さん)

日常に花を取り入れフラワーロスを低減。花を飾るお手入れのコツは?

花の魅力について上甲さんに聞きました。「花の魅力はいつか枯れてしまうこと。五分咲き、八分咲き、十分咲きと開花して、首が垂れて変化していく、その時々に味があり、生きていると感じられます。お花は贈り物のイメージがありますが、自分自身の気分がいいときも元気が出ないときも一輪からでも気軽にお花を買っておうちで楽しんでほしいですね。

お花を選ぶときは、お花屋さんとコミュニケーションをとって、教えてもらうのがいいと思います。花瓶は
家にあるコップでもOK。短くて4、5日、毎日水を変えて、茎を斜めに切ってお手入れをすると1週間以上持ちます」というアドバイスも。

一般社団法人花の国日本協議会(2020年)によると、新型コロナウイルス感染予防対策として自宅で過ごす時間が長くなってから、「花やグリーンを飾りたい」という気持ちになった人が90%、そのうち、とても飾りたくなった人が65%、また実際に花を飾る頻度が増えた人が56%いることが分かりました。

また、「花の取り扱い方法や飾り方が分からない」という人は 30~40 代女性で 7 割以上、花を飾りたい気持ちがあっても知識のなさがハードルを上げてしまっていることも分かりました。花もし素敵に花を飾れたら、もっと花を身近に置きたいと思うのではないでしょうか。花き業界6団体と花き文化団体3団体から成る「日本花き振興協議会」では、花を飾り馴れていない花初心者のための特設サイト「はじめて花屋」を開設。コンテンツのひとつ「#花のABC」では、初めて花を飾る人のための基礎知識を紹介しています。

花の初心者を対象に、これだけは知っておきたい基礎知識を分かりやすく動画などでまとめたサイト「#花のABC」

初めて花と暮らすときに知っておきたい7つの基礎知識
1)清潔な花器に、水は半分くらい
2)花の下葉(水に浸かる葉)は取り除く
3)茎は斜めにスパッと切る
4)エアコンの風が直接当たらない涼しい場所に置く
5)水は毎日取り換える
6)水を変えるたびに切り戻す
7)枯れた花、傷んだ花は取り除く
(「#花のABC」から抜粋、詳しい説明はWebサイトを参照)

筆者も「STAY HOME」の呼びかけ以来、週1回の花のサブスクを契約し、常におうちに生花がある生活をしています。リビングや玄関に飾るのもいいですが、テレワークのときパソコンの脇に花を飾るのも和みますし、花の香りや自然の色に癒やしとパワーをもらっています。

花のサブスクは、忙しくて花を買いに行く時間がない人にもうってつけですし、生花は鉢植えに比べて気軽にさまざまな種類が楽しめるのも魅力です。

筆者が契約している花の定期便で届いた花の一例。1回500円(送料別途)のリーズナブルなコースでも、暮らしと気持ちに与える影響は大きい(撮影/佐藤由紀子)

筆者が契約している花の定期便で届いた花の一例。1回500円(送料別途)のリーズナブルなコースでも、暮らしと気持ちに与える影響は大きい(撮影/佐藤由紀子)

コロナ禍の影響で注目されるようになったフラワーロスは、潜在的にある問題です。ネットショッピングが急増して、花もリアル店舗からオンラインへ移行・開始する業者が増え、捨てられるはずの花をリサイクルして商品化する取り組みも始まっています。フラワーロス問題へ前向きに取り組むことで、花農家や花業界の未来が変わりつつあると感じます。

業務用花に比べればささやかですが、一人ひとりが花を暮らしに取り入れることが、フラワーロスの削減につながります。そして、消費者は品質のいい花が安く買えるようになり、ムダなごみの量も減らせるメリットもあります。サブスクリプションやオンライン購入などを利用して、気軽に試してみてはいかがでしょうか。

●取材協力
株式会社BOTANIC
日本花き振興協議会
はじめて花屋(日本花き振興協議会)
#花のABC

”アート後進国”日本を変える? 絵画サブスクのある暮らしとは

ZOZO創業者の前澤友作氏によるバスキアの絵画購入や、「美意識」をテーマにしたビジネス書がベストセラーになるなどの影響で、最近アートに関心をもつ人が増えている。その一方で、日本は諸外国と比べて生活の中にアートが浸透しておらず、”アート後進国”といわれている。

そんななか、利用者数を伸ばしているのが、絵画のサブスクリプションサービス「Casie(カシエ)」だ。毎月定額で商品をレンタルできるサブスクリプションサービスは購入に比べるとハードルはかなり低く、これまでアートに触れてこなかった人でも気軽に原画を生活に取り入れられる上、芸術家の支援にもつながるという。

株式会社Casie代表取締役社長CEOの藤本翔さんに話を聞いた。

SNS時代に「人と違う部屋をつくりたい」

『Casie』はアートビギナーを対象とした絵画のサブスクリプションサービス。画家たちによる一点物の原画を毎月定額でレンタルでき、2019年1月のWEBサービスオープン以来、一般家庭を中心にユーザー数を伸ばしている。

取り扱う絵画は6,500点以上。絵画のサイズによってライト、レギュラー、プレミアムの3つのプランがあり、どのプランも月1回まで交換可能だ。リビング、玄関、ダイニング、寝室などに絵画を飾ってみると、「想像以上の迫力に感動した」という感想が数多く届いている。

「これまで家にポスターを飾っていたのですが、原画は人生で初めてでした。やっぱり原画って素敵ですね。世界に同じものが一つもないことに価値を感じています。開封したときに絵の具の香りがフワッとして、とてもカラフルな可愛いペガサスの絵だったので、子どもたちも大興奮していました」(利用者の声)

Casieでレンタルしたペガサスの絵を部屋に飾った親子(写真提供/Casie)

Casieでレンタルしたペガサスの絵を部屋に飾った親子(写真提供/Casie)

届く絵は自分で指定することもできるが、おまかせも可能。藤本さんによると、特に好みの作家が固まっていないビギナーに「おまかせ」の利用者が多いそうだ。

「絵画って現物を見ないと分からないし、価格は高いし、購入しようと思うと意思決定が大変なんです。でもサブスクならどんどん交換できるので、その過程で自分の好みも分かってきます。弊社ではお部屋にどんな絵画が合うかといった相談にも乗っており、一人一人にぴったりな絵を届けるようにしています」(藤本さん)

利用者を伸ばしている背景には、「人と違う部屋をつくりたいニーズがある」と藤本さん。SNSで「自分だけの個性を表現したい!」と考える人たちに、世界に一つの原画を飾ることがマッチしているという。

Casieでレンタルした絵画を部屋に飾った様子の投稿(Instagramより引用)

Casieでレンタルした絵画を部屋に飾った様子の投稿(Instagramより引用)

また藤本さんによると、壁や床のインテリアはソファーなどの家具よりも部屋の印象を左右する。模様替えのたびに部屋のイメージをガラッと変えたい人、気分転換をしたい人にも、絵画サブスクのニーズがあるようだ。

アートを飾る人が増えなければ、芸術家は育たない株式会社Casie代表取締役の藤本翔さん(写真提供/Casie)

株式会社Casie代表取締役の藤本翔さん(写真提供/Casie)

アートのニーズの高まりにサブスクリプションサービスという形で応えた「Casie」。サービスを始めた背景には「日本の芸術家を支えたい」という藤本さんの想いがある。

一般家庭でアートが飾られることの少ない日本は、実は“アート後進国”。欧米や東南アジアではごく一般の家庭にもアートが飾られているにもかかわらず、日本ではアートが生活に浸透していない。

「アートには『資産価値』と『インテリア』という二つの文脈があります。前者については前澤友作さんのバスキア購入で注目されたように、一部の富裕層が行っているものですが、後者の『インテリア』文脈のマーケットはまだ日本で確立していません」

藤本さんによると、日本におけるアートの販売市場規模は3300億円。その7割は画廊や百貨店向けの売り上げであり、一般人が購入するハードルは高い。アート初心者は自宅に絵画を飾りたいと思ったとしても、原画を手にする機会は限られていた。

「インテリアとしてのアートの文脈を育てなければ、資産価値としてのアートの文脈も十分に育ちません」と藤本さん。アートのマーケットの規模が小さいということは、日本のアーティストが創作を続けながら生計を立てるのが難しいということを意味する。

「日本のアーティストを取り巻く状況を変えるためには、アートを飾ったり、購入したりする人を増やす必要があるんです」

Casieに作品を預けているアーティスト「Moeistic Art」さん(写真提供/Casie)

Casieに作品を預けているアーティスト「Moeistic Art」さん(写真提供/Casie)

絵画サブスクはアーティストを救うか?

アーティストを想ってCasieを運営する藤本さんは、芸術家ではない。起業する前は会社員をしていたそうだが、どのような想いからこの事業を立ち上げたのだろうか?

「僕の父が生前、絵を描く仕事をしていました。自分の描きたい絵だけを描いて生計を立てていくことは当時も難しく、商業用の絵を描いたりしていました。才能あるアーティストは創作活動に全エネルギーを投下するので、作品発表や販売に向けたエネルギーを残しておくことができません」

日本の芸術家人口は約50万人(2010年国勢調査を元にCasieが算出)。そのうち芸術家の仕事だけで生活できているのはわずか15.6%(2000年 文化庁「我が国の芸術文化の動向に関する調査」より)。才能や意欲があっても作品が売れず、生計が立てられないために創作を断念する人は後を絶たない。

そんななか、Casieが現在契約しているアーティストは約300人(2019年1月時点)。そのうち9割以上が日本で活動するアーティストだ。レンタル料金の35%、売れた場合は販売価格の60%が彼ら・彼女らに還元される。

さらに利用者のもとにはアートだけではなく、作家について詳しく記載されたプロフィール資料などが一緒に届けられる。単にアートを鑑賞するだけではなく、描かれた背景を知ることで、利用者が作家を好きになる仕組みだ。

絵画と一緒に利用者に送られる同梱物。(写真提供/Casie)

絵画と一緒に利用者に送られる同梱物。(写真提供/Casie)

一人一人が自分の家や部屋にアートを飾ることが、日本にアート文化を定着させる第一歩。その先に、芸術家が才能を発揮できる社会が待っているのかもしれない。

●取材協力
Casie (Instagram)