「子どもをもつ、もたない」人生、どっちが幸せと言えるの? 窪美澄の新刊『いるいないみらい』インタビュー

子どもをもつ、もたないという選択は、多くの人が人生のなかで直面することです。そして、2011年ころから使われ始めた「妊活」という言葉は、それをより突きつけるものかもしれません。でも果たして、「子どもをもつ、もたない」が幸せの尺度だと言えるのでしょうか。第161回直木賞候補作である『トリニティ』や『じっと手を見る』などで知られる作家・窪美澄(くぼみすみ)さんの新刊『いるいないみらい』では、「子どもをもつ、もたない」の選択に直面し、家族のカタチを考える人たちが描かれています。
窪さん自身は離婚を経験し、シングルマザーになってからライター活動をはじめ、子育てを経験されています。自身が経験したことと、作品に出てくる登場人物の人生、それぞれを聞いてみました。
家族のカタチを模索しながら、懸命に生きる人々を描く作品

――著書『いるいないみらい』は、どのような背景があって書かれたのでしょうか。

もともと私は女性の妊娠や出産などをテーマに書くことが多かったのですが、今回は「妊娠や出産以前、子どもをもつかもたないか、迷っている人たちの物語を書いてみませんか」と編集者に提案されたんですね。そのことで悩んだり、考えているうちに時期が過ぎてしまったり、子どもをもつことはできたけど亡くしてしまったりという人たちを書きました。それぞれ悩みながらも一生懸命生きる人々の姿を書こうと思いました。

『いるいないみらい』(窪美澄 著、KADOKAWA刊)

『いるいないみらい』(窪美澄 著、KADOKAWA刊)

――1話の「1DKとメロンパン」のように、子どもに関する考え方の違いで悩む夫婦は実際にも少なくないと思います。「子どもをもつ、もたない」ということについて、窪さんはどのようにとらえているのでしょうか。

私が考えるのは、「子どもがいる人生だけが絶対的な幸せではない」ということです。子どもがいなくても不幸せではないし、何かが欠けているわけでもないと思います。世間では子どもをもつ家庭が完璧な丸のようなイメージがあるかもしれませんが、実際はそうとも限らない。
「1DKとメロンパン」の夫婦もそうですが、たとえ子どもというパーツがなかったとしても、カップルや夫婦二人だけでも、もちろん一人であっても、十分丸く満たされていますよ、ということを思いますね。

――「子どもをもつ自信がない」「子どもが嫌い」という女性のお話や、男性の不妊治療についてのお話もありますね。

そうですね。「私は子どもが大嫌い」のお話の主人公のように、「子どもが嫌い」という価値観も全然アリだと思うんです。でもなかなか言いにくいことじゃないですか。子どもが嫌いっていうとヒトデナシ、のような目で見られがちですよね。でも、子どもに興味がない女性だって実際はいるわけです。みんながみんな子どもが好き、と思うほうが間違っていると思います。

少子化などの問題があって国は「子どもは二人以上産むべき」みたいな風潮がありますが、私は少し反発があって。押し付けのように感じることがありますね。だって産みたかったけれどタイミングが合わなかったり、産めたけどあえて産まなかった選択をすることもあるわけでしょう。子どもをつくる、つくらないの選択の自由はあっていいはずだと思うんですね。

私は今回の作品を書くにあたってほとんど取材はしていないんですが、第2話「無花果のレジデンス」だけ、不妊治療の男性のお話を聞きに行きました。不妊治療は女性ばかりがクローズアップされるけれど、子どもをつくろうとなったときに、実際は男性不妊の治療も女性と同様に大変。だけどなかなか知られていない部分がありますよね。性別で分けるのは間違っているかもしれないけれど、もしかしたら男性不妊のほうが、告げられる側としてのショックは大きいのかもしれないと思いました。

当事者の気持ちを大事に。世間の価値観で生きる必要はない

――窪さんがこうしたさまざまな価値観を世の中に広く伝えたいと思うようになったバックグラウンドをお聞きしてもよいでしょうか。また、窪さんは自身の人生で世間の価値観を押し付けられたり、「これは違うでしょ」と感じたりした経験はありますか。

私の両親は、離婚して12歳のときに母親が出ていってしまって。その年齢で今の自分の状況を周りに説明するのが難しかったという経験があります。だからかもしれませんが、片親だから何だ、のような反骨精神が昔からありました。「世間の風潮や意見はこうだけど」と周りから言われても、当事者が感じていることがすべてだと気づいてからはスルーできるようになりました。子どものころからスルースキルを身に付けた感じです。

結婚して出産したあと、私は離婚を経験し、シングルマザーになりました。息子が中三くらいから書く仕事を始めたのですが、仕事が忙しいときも、朝早くから起きて、朦朧とした頭で息子のためにトンカツを揚げて。思わず指まで揚げそうになりました。毎日のお弁当に加えて、部活後にお腹が減るのでおにぎりを持たせるんですが、10kgのお米があっという間になくなって、それも大変でしたね。

いくらスルースキルを身に付けたと言っても、息子を片親にしてしまったことの責任は感じてはいます。でも、息子の学費も払ったし、卒業できたし、とりあえずは大丈夫だったと思っています。

また、子育て中の記憶では、街の八百屋のおじちゃんとかが息子に「おう、歩けるようになったか坊主!」なんて声をかけてくれることがよくあって。それはうれしかったですね。血縁は関係なく「街に家族がいるような感覚」で育てていけたのも良かったと思います。

今私は一人暮らしですが、とても楽しく過ごしています。でも周りから「一人で大丈夫?」「寂しくないの?」などの世間の多数派の見方で心配されることには違和感があります。今回の小説の登場人物たちもそうですが、人それぞれ見方は違うし、感じることも違います。どんな人生を生きても、当事者である自分の気持ちを大切にするべきだと思います。

(写真撮影/片山貴博)

(写真撮影/片山貴博)

――息子さんを育て上げた窪さんですが、息子さんの妊娠中などに「子どもをもつことに不安を感じる」ことはなかったのでしょうか。

実は私、最初の子を産んで18日で亡くしているんですね。今いる息子は二人目なんです。一度、子どもの死を経験してしまったので、子どもが大きくなるまではとても怖かったです。実際に何かあったらどうしよう、病気になったらどうしよう、など不安がつきまといましたね。

最初の子は今生きていたら28歳なんですけど、仕事で出会う若い編集者さんを見ると「あ、うちの息子は今生きていたらこのくらいなんだ」と思ってビックリすることがあります。

第4話「ほおずきを鳴らす」のなかで、子どもを亡くした男性の主人公が出てくるのですが、今回の作品のなかで一番実体験の心情を投影したストーリーだったかもしれませんね。

家は、その人の暮らしぶりのベース、気持ちも変えるツール

――第1話「1DKとメロンパン」というタイトルや、エピソードの中に必ず家の特徴や間取り、街の描写があるなど、窪さん自身も家がお好きなのでしょうか。

そうですね。家を見るのは結構好きです。家の間取りもよく見たりしますね。ちなみに私はつい2カ月前に引越したばかりなんです。場所は直前に住んでいた家から20m先の隣のマンション。それまでは8階建ての3階だったんですけど、そばに建物が建ってしまって。日当たりが悪くなって穴蔵みたいになってしまったので、仕事するには落ち着くのですが、やっぱり普段は日当たりがある部屋がいいですよね。今は13階建ての10階です。日当たりはいいし、眺めもいいんですけど、眺めはしばらくすると飽きますね(笑)。

――家の特徴や間取りを描写されることには、どのような意図がありますか?

私は登場人物のバックボーンをしっかり考える作家でありたいと思っているのですが、今回の登場人物を考えるときに、「その人たちがどんな家に住んでいるのかを書こう」という裏テーマがありました。このぐらいの年収だったらこのくらいの部屋かなとか、この人たちだったらこういう間取りの家だろうな、などを考えてストーリーに入れていきました。細かな部屋の間取りが分からないと主人公たちの行動をなかなか追えないんですよね。家がその人の暮らしのベースになるわけですから。

「無花果のレジデンス」の参考にした稲城市(画像/PIXTA)

「無花果のレジデンス」の参考にした稲城市(画像/PIXTA)

――各ストーリー内の舞台として想定している地域はありましたか。

そうですね、きっちり決まってはいないんですけど、「無花果のレジデンス」のお話ではファミリータイプのマンションが並ぶ地域であり、自分が生まれ育った稲城市を参考にしました。あのあたりはどのマンションも子ども二人くらい生まれるとちょうどよい3LDKの間取りなので、「育児を想定して買った場合、子どもがいなかったらツライかもなあ」とは思いましたね。
あとはメロンパンを売るパン屋さんのある街は、何となく東京の東側のイメージがあります。自分の知っている街を思い浮かべることが多いのでどうしても東京のイメージになって書くことが多いですね。

これからの未来を見据えて、自分の希望とする「家族の形」を模索している人はたくさんいると思います。ただ、今回の窪さんのインタビューを通して感じたことは「幸せって未来にくるものではなく、すでにこの場にあるもの」ということでした。今、そばにいてくれるパートナーや親兄弟、友人、自分を丸ごと受け入れてくれる人たち。その人たちが、今の自分のほっこりとした丸い幸せをつくってくれているということ。未来は「子どもをもつ、もたない」の選択肢があるかもしれないけれど、それはタイミングやパートナーの意見、いろんな条件が合わさって決まるということ。そして、どんな未来を選んだとしても、それは「今の幸せの延長」なのだということ。

「子ども」というパーツがあってもなくても、今の幸せは欠けることなく続いていくのでしょう。どんな未来があってもいい。いろんな家族があっていい。そう、窪さんに教えていただいたような気がしました。

●プロフィール
窪 美澄
1965年、東京都生まれ。フリーの編集ライターを経て、2009年「ミクマリ」で第8回女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞しデビュー。11年、受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』で第24回山本周五郎賞を受賞、本屋大賞第2位に選ばれた。12年、『晴天の迷いクジラ』で第3回山田風太郎賞を受賞。その他の著書に『クラウドクラスターを愛する方法』『アニバーサリー』『雨のなまえ』『よるのふくらみ』『水やりはいつも深夜だけど』『さよなら、ニルヴァーナ』『アカガミ』『すみなれたからだで』『やめるときも、すこやかなるときも』『じっと手を見る』『トリニティ』などがある。

平成生まれの独身者、今後も「おひとり様生活を続けたい」47.6%

(株)FJネクストはこのほど、ひとり暮らしをしている平成生まれの独身者を対象に、「おひとり様生活」に関するアンケート調査を実施した。調査は平成30年11月15日~18日にインターネットで実施。20代男女400人から回答を得た。
それによると、おひとり様生活のメリットは、「時間を自由に使える」が最多で73.5%。次いで「他人に干渉されない」が62.3%。自由で気ままな生活に喜びを感じている結果となった。一方デメリットは、「食生活が乱れる」が最多で44.0%。「人と話をしなくなる」24.5%、「特にない」17.5%が続く。メリットと違い、デメリットは人それぞれのようだ。

独身・一人暮らしの生活を楽しんでいますか?では、全体では「大いに楽しんでいる」(43.5%)、「ある程度楽しんでいる」(44.8%)を合わせた“楽しんでいる”との回答が約9割(88.3%)となった。男女別でみると、男性の方が「大いに楽しんでいる」の割合がやや高く、男性46.0%、女性41.0%となっている。

今後もおひとり様生活を続けたいですか?では、「続けたい」(「一生続けたい」+「できれば長く続けたい」)が47.6%、「続けたくない」(「あまり続けたくない」+「すぐにでもやめたい」)が52.6%で、「続けたくない」がわずかに上回った。

それぞれの理由を見ると、「続けたい」人は、「楽しいから」「楽だから」「気楽」「自由に生きたい」「時間を自由に使えるから」など、「楽」を挙げる人、「自由」を挙げる人が多く、回答者の4割強(45.7%)を占めた。一方、「続けたくない」人は、「結婚したい」を理由に挙げる人が多く、これと関連する「家庭を持ちたい」「子どもが欲しい」「一生独身はいや」も合わせると、「結婚」を意識している人が回答者全体の4割(40.0%)を占めている。

ニュース情報元:(株)FJネクスト

独身者のマンション購入年齢、30代が44%

スタイルアクト(株)は、独身者が自宅マンションを購入することを「家活(TM)(いえかつ)」と称し、このほど、「家活(TM)」を行った方に何歳で自宅マンションを購入したかアンケート・調査を実施した。
調査は2018年4月13日~4月24日、7月17日~7月21日にインターネットで行った。何歳で自宅マンションを購入したかを51人に聞いたところ、購入時年齢は「25~29歳」が18%、「30~34歳」が21%、「35~39歳」23%、「40~44歳」18%、「45~49歳」10%、「50~54歳」6%と、30代(「30~34歳」+「35~39歳」)が44%と最も多い結果となった。

また、独身時に自宅マンションを購入した人83人に購入理由を聞いたところ、「家賃を払い続けるのが勿体無いから」と答えた人が31%、「持ち家は資産になるから」22%、「魅力的な物件を見つけたから」22%、「住宅ローン金利が低いから」19%などが続いた。「同じ払うなら早めに買おう」と思う傾向や、「一生賃貸は考えられなかった」との回答もあった。

ニュース情報元:スタイルアクト(株)

中古リノベを選ぶ独身女性が増加中! リノベ女子の暮らしとは

東京をはじめ首都圏で、中古マンションをリノベーションする一人暮らしの女性が増えている。住まいに合わせて暮らすのではなく、住まいを自分らしく変えられるリノベーション。今回は、中古マンションを購入してリノベーションし、理想の暮らしをかなえた「中古リノベ」の実例とともに、選択する人が増えている背景やメリット・デメリットを紹介する。
賃貸・新築購入に並び「中古リノベ」も次の住まいの選択肢に

「実は中古マンションを買って、リノベーションしたんだ」という知り合いが周りにチラホラ現れ、「中古リノベ」が賃貸への引越しや新築マンションの購入と同じような感覚で、次の住まいを考える際に選択肢のひとつになってきていることを実感している人も多いだろう。
ある程度カスタマイズできる賃貸や新築も増えているが、なぜ中古物件を買ってリノベーションをする「中古リノベ」を選ぶ人、特に単身の女性が増えてきているのか。リノベーションのメリット・デメリットと照らし合わせながら、その理由を探っていこう。

「中古リノベ」は住まいに感性を反映できる点が大きなメリット

10年ほど前までは、住まいに手を加える場合、“リフォーム”と呼ぶことが多かったが、現在は“リノベーション”と呼ぶ場合がほとんどだ。両者の違いを一般社団法人 リノベーション協議会では、壊れたトイレの交換や破れた壁紙を張り替えるなどの“原状回復”がリフォームであるのに対し、使える箇所があれば残しつつ暮らしに合わせた家全体の改修をリノベーションと定義している。従来はパーツの組み合わせが中心の「修繕」という概念から、最近は空間全体をオーダーメイドする人が増え、その自由度も格段に大きくなっていると言える。

画像提供/リノベーション協議会

画像提供/リノベーション協議会

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同協議会の樽宏彰さんによると、リノベーションをする人が増えてきた理由は「住宅ローンを組むことが可能になった」点が最も大きいという。20年くらい前までは、リノベーション費用を住宅ローンで一本化して組むことができず、現金で支払うか、別途金利の高いリフォームローン等で手当てするしかなかった。「リノベーション済み物件」が登場し、中古相場で「リノベーション」の価値が認知されるようになり、追いかけるようにここ10年で「中古物件+リノベーション」の一本で住宅ローンを組めるようになった。

「中古リノベ」を選ぶ人のなかでも単身の人は、「賃貸で保証人などで苦労しなくて済むように所有しておく『将来の住まいに対する備え』、新築ほど高価な資産は必要ないが自分らしい暮らしがしたい『経済合理性を求めつつ資産形成』の視点をもっている方が多いように思います」と樽さん。

特に女性には、インテリア好きや料理などの趣味をもつ人も多い傾向があり、実現したい暮らしをイメージすること、つまり感覚的な部分から、マンションの購入を検討しはじめるという。

賃貸とは違い、自分のものになること。未完成の新築物件とは違い、現状を確認して購入し自由に設計できること。そして何より、“新築にはない味わい”があることが、感覚的な部分からスタートしている彼女たちにとって、大きく響くのだろう。

リノベーションの認知度・関心度に関する調査「『住宅購入・建築検討者』調査(2016年度)」(リクルート住まいカンパニー※詳細は記事末にて) リノベーションの認知度は96.9%、関心度は52.1%で、2016年時点で2012年の約1.8倍に。世帯別では、男女ともにシングル層の認知度が高いことが分かる

「『住宅購入・建築検討者』調査(2016年度)」(リクルート住まいカンパニー※詳細は記事末にて)
リノベーションの認知度は96.9%、関心度は52.1%で、2016年時点で2012年の約1.8倍に。世帯別では、男女ともにシングル層の認知度が高いことが分かる

「中古リノベ」のデメリットを理解した資金計画が重要

ただし、「中古リノベ」にはメリットばかりでなくデメリットもあるので注意が必要だ。マンションの面積や築年数、耐震性などの条件によって、住宅ローン減税制度(ローンの一部に相当する金額が所得税や住民税から控除される制度)が使えない場合や、住宅ローンが組めるようになったとはいえ、物件価格+リノベ工事費のフルローンを組むことが難しい場合がある。

特に単身の場合は、一人で完済できるかを問われるため、無理のない資金計画が重要となる。中古マンションの購入に当たっては、年収や勤続年数などで借りられる金額に差が出るが、自己資金が必要な場合があり、早い段階で不動産会社経由でローンの相談をしておくといいだろう。一般的に「年収の5倍、年間の所得に対して25%のローンの支払い」の範囲に収めるのが理想的とされるので、参考にしよう。

“理想の暮らし”を形にした実例を紹介

身を置きたい空間のイメージがふくらみ、資金を用意できたら、準備万全! 「中古リノベ」を実現させるには、どんなステップを踏むのか。東京都豊島区の中古マンションを購入し、リノベーションを行ったKさん(40代・女性・独身)の実例を紹介しながら、その流れを追っていこう。

天井や配管がむき出しになった躯体現しの内装。それでも優しい質感の白い壁や木のフローリングに温もりを感じられ、Kさんが買い集めた古家具やアンティークの照明が良く合う(写真撮影/masa(PHOEBE))

天井や配管がむき出しになった躯体現しの内装。それでも優しい質感の白い壁や木のフローリングに温もりを感じられ、Kさんが買い集めた古家具やアンティークの照明が良く合う(写真撮影/masa(PHOEBE))

以前は家族所有のマンションで暮らしていたKさん。駐車場の隅で偶然出会った生まれたばかりの野良猫、現在は一緒に暮らす「わさび」(取材時3歳・メス)との出会いが「中古リノベ」への背中を押した。

「管理規定でペットが飼えないマンションだったのですが、そのまま見捨てることもできず、里親を探したり、友人に預けたりしていました。しかし、引き取り手が見つからず、安心して飼える環境が必要だと感じました」とKさん。また、蚤の市やアンティークショップなどを巡り、掘り出し物を探すのが好きなKさんは、「自分の暮らしの理想形があったのと、40代という年齢は、ローンを組むならそろそろリミットかなと思って」と、このタイミングでマンション購入に踏み切った理由を振り返る。

内覧した際に気になったという梁の出っ張りは、躯体現しで活かした。左側に写る対面式キッチンのカウンターは、この雰囲気に合う質感をもち、水に強いモールテックス仕上げに(写真撮影/masa(PHOEBE))

内覧した際に気になったという梁の出っ張りは、躯体現しで活かした。左側に写る対面式キッチンのカウンターは、この雰囲気に合う質感をもち、水に強いモールテックス仕上げに(写真撮影/masa(PHOEBE))

窓の外には視界を遮る物がなく、カーテンが不要なほど。カーテンレールは今や、植物をつるすために機能している(写真撮影/masa(PHOEBE))

窓の外には視界を遮る物がなく、カーテンが不要なほど。カーテンレールは今や、植物をつるすために機能している(写真撮影/masa(PHOEBE))

物件探しへと動き出し、当初は新築やリノベ済み物件を探した。しかし、イメージする暮らしと間取りが合わず、中古マンションを買って、自分好みに変えようと思うようになったという。条件はまずペット可であること。そして以前の住まいより広い50平米以上、通勤に便利な場所、駅徒歩数分以内であることなどを優先項目に挙げ、ピックアップした物件を不動産屋さんと約2カ月半、毎週2、3件、計10件ほど内覧した。

LDKには、わさびが運動できるようにキャットウォークを設けた。登りやすさはもちろん、年を取ってわさびが遊ばなくなったら棚として使えるようにも考慮されている(写真撮影/masa(PHOEBE))

LDKには、わさびが運動できるようにキャットウォークを設けた。登りやすさはもちろん、年を取ってわさびが遊ばなくなったら棚として使えるようにも考慮されている(写真撮影/masa(PHOEBE))

LDKにはキャットトンネルがあり、キャットトイレがある洗面脱衣室につながっている(写真撮影/masa(PHOEBE))

LDKにはキャットトンネルがあり、キャットトイレがある洗面脱衣室につながっている(写真撮影/masa(PHOEBE))

その際、「SUUMOジャーナルに掲載されていた『中古マンション見学のポイント』を参考に、部屋以外にもマンションのゴミ置き場、駐輪場が整理整頓されているかなど管理状態もチェックしました」とKさん。築年数がたっているが、管理体制がしっかりしていることもあって気持ち良く過ごせているという。

現在住む物件は、候補のなかで当初の条件に合う順位としては下位のほうだったというが、「当時現在のLDK部分を仕切っていたアコーディオンカーテンを開けたとき、視界が開けたのが気持ち良く、見晴らしが気に入って購入を決めました」

部屋が細かく分かれていた約71平米の2LDKを、ドアがなく緩やかに区切られた1LDKに変更。さらに玄関土間を広げ、オープンな収納にしたことで、よりのびやかな空間に生まれ変わった(画像提供/インテリックス空間設計)

部屋が細かく分かれていた約71平米の2LDKを、ドアがなく緩やかに区切られた1LDKに変更。さらに玄関土間を広げ、オープンな収納にしたことで、よりのびやかな空間に生まれ変わった(画像提供/インテリックス空間設計)

フィーリングが合う会社や担当者との出会いも重要

物件探しの段階からリノベーション会社に依頼すれば、物件探しからリノベーション工事まで、ワンンストップで行ってくれる。その場合は、どの壁が壊せて、どの部分が変えられないなど、アドバイスを受けながら物件を探すことができるので、効率が良いと言えるだろう。

しかしKさんの場合は自分で物件を探し購入したため、希望を実現できるリノベーション会社を別途探す必要があった。Kさんは雑誌などを見て気に入る事例ページをブックマークして、その数が多い3社ほどに連絡。好きなインテリアショップなどの話が合った会社に依頼することにした。

LDK入口のアンティークの扉。プランが決まる前にKさんが一目ぼれし購入したもので、補修して使用している。リノベーション会社によって、部材の持ち込みは不可の場合があり注意が必要(写真撮影/masa(PHOEBE))

LDK入口のアンティークの扉。プランが決まる前にKさんが一目ぼれし購入したもので、補修して使用している。リノベーション会社によって、部材の持ち込みは不可の場合があり注意が必要(写真撮影/masa(PHOEBE))

洗面台のレトロな鏡は、引越し祝いに友人からプレゼントしてもらったもの。こだわりがなかったという水まわりの機能はシンプルに。その分居室に予算を回し、費用面でメリハリをつけた(写真撮影/masa(PHOEBE))

洗面台のレトロな鏡は、引越し祝いに友人からプレゼントしてもらったもの。こだわりがなかったという水まわりの機能はシンプルに。その分居室に予算を回し、費用面でメリハリをつけた(写真撮影/masa(PHOEBE))

設計担当者とは、1カ月半で5回ほど打ち合わせを行い、3パターンほど提案があったという。「担当者とはひたすら意見交換し、一緒に1カ月半の間、ひたすら部屋のことを考えていました。自分の好みを突き詰める、いい時間だったと思います。大変な面もありましたが、その分、図面、そして部屋が完成したときは感動しました」

リノベーション会社の担当者のアドバイスに沿って近隣住民への挨拶を行い、購入契約後から工事を開始。入居はその4カ月後になった。

お気に入りだけに囲まれた自分仕様の住まい

現在の住まいでKさんは、休日にはインナーテラスで本を読んだり、ソファに腰掛けてDVDを観たりと、目的なしにゆっくり過ごしているそう。

寝室に設けたインナーテラスは、主に南向きで2面採光のため、日当たり・風通しともに良好。梁の出っ張りと床タイルでの切り替えが、寝室とインナーテラスとを視覚的に区切る(写真撮影/masa(PHOEBE))

寝室に設けたインナーテラスは、主に南向きで2面採光のため、日当たり・風通しともに良好。梁の出っ張りと床タイルでの切り替えが、寝室とインナーテラスとを視覚的に区切る(写真撮影/masa(PHOEBE))

模様の入ったすりガラスが味わい深い棚も、Kさんが以前の住まいから使っていた古家具のひとつ。以前は食器棚としての役割を果たしていたが、現在の住まいでは本棚に(写真撮影/masa(PHOEBE))

模様の入ったすりガラスが味わい深い棚も、Kさんが以前の住まいから使っていた古家具のひとつ。以前は食器棚としての役割を果たしていたが、現在の住まいでは本棚に(写真撮影/masa(PHOEBE))

「以前から気になってはいたものの、中古マンションを買ってさらにリノベーション工事と、ゼロからやるのは難しいと最初は思っていました。でもちょっとした理由から実際に動いてみて、振り返ると意外と思い通りに部屋全体を自分仕様にできたので、『中古リノベ』がブームとなっている理由が分かる気がします」

都心にもかかわらず、日当たり・風通しがよく開放的で心地よい空間。古くから建つため、恵まれた立地条件であることが多いのも中古マンションならではのメリットだ。わさびもこの部屋にお気に入りの場所をたくさん見つけ、のびのび暮らしている。

インナーテラスで日向ぼっこをするわさび。風通しを良くするために開けられたウィークインクローゼットの上やインナーテラスのカウンターなど、お気に入りの場所を教えてくれた(写真撮影/masa(PHOEBE))

インナーテラスで日向ぼっこをするわさび。風通しを良くするために開けられたウィークインクローゼットの上やインナーテラスのカウンターなど、お気に入りの場所を教えてくれた(写真撮影/masa(PHOEBE))

部屋が完成した後も少しずつ手を加えながら、自分らしい暮らしを満喫しているKさん。「家に居る時間が増えたのと、余計なものを買わなくなりました。本当に気に入ったものしかこの空間に置きたくないので」と、部屋全体を愛おしそうに眺める様子が印象に残った。

窓が多くドアが少ない開放的なKさんの住まい。好みの内装写真を通して建築士とイメージを共有。特に取り入れたかった室内窓にはこだわり、色とサイズを入念に確認して造作した(写真撮影/masa(PHOEBE))

窓が多くドアが少ない開放的なKさんの住まい。好みの内装写真を通して建築士とイメージを共有。特に取り入れたかった室内窓にはこだわり、色とサイズを入念に確認して造作した(写真撮影/masa(PHOEBE))

●取材協力
リノベーション協議会●実例の設計・施工
インテリックス空間設計●調査概要
「『住宅購入・建築検討者』調査(2016年度)」(リクルート住まいカンパニー)

独身者のマンション購入、メリットは「資産形成」

スタイルアクト(株)(東京都中央区)は、独身者が自宅マンションを購入することを「家活(いえかつ)」と称し、「家活」経験者に自宅マンション購入で感じたメリットとデメリットについてアンケート調査を行った。対象は同社運営ウェブサイト「住まいサーフィン」会員で、独身時に自宅マンションを購入した83人。調査期間は2018年4月13日~4月24日、7月17日~7月21日。調査方法はインターネット。

それによると、「家活」のメリットとして最も多かったのは「資産形成」で34%。「住環境の快適性や利便性」(30%)、「将来の安心、精神的充足」(22%)、「コスト減少」(12%)などが続いた。

一方、デメリットには「ランニングコストがかかる」(16%)や「ローン返済」(13%)、「住み替えが難しい」(13%)、「資産価値の目減り」(7%)などがあったが、「特になし」(29%)が一番多かった。

自宅マンションを購入して人生がどのように変わったと感じますか?では、「将来の安心、精神的充足」(26%)が最多。「生活の質の向上」(16%)、「住環境の快適性」(5%)よりも大幅に高い結果となった。

ニュース情報元:スタイルアクト(株)

購入経験者が語る! 「中古マンションを買いたい」と思ったときに、準備すべきこととは?

「そろそろマイホームが欲しい。中古マンションを買ってリノベーションしたい」と思っても、まず何から手を付けていいか分からないと思うことはないだろうか。インターネットや情報誌で物件探しをするのも大切だが、あらかじめ自分自身で準備しておくと、住まい探しがスムーズにいくことは多い。今までに2回マイホームを購入した筆者の体験からアドバイスしたい。
一番大切なのは、マイホーム購入への優先順位を決めておくこと

最初にするべきことは、「マイホームを買いたい」と思ったきっかけを明確にしておくことだ。「家賃がもったいないから」とか「結婚するから」とか「子どもが生まれるから」といった時期的な理由ももちろんあるが、もっと具体的な「自分がマイホームで実現したい生活」をまとめておくことが大切だ。

例えば「もっと便利なところに住みたい」のか「もっと静かなところに住みたい」のか。あるいは家族が増えるから「もっと広い住まいが欲しい」のか、子どもが独立したから「もっとコンパクトに住みたい」のか。さらに家族全員できちんと話し合っておくことも大事なのだ。自分はいいと思っても、他の家族の意見が違うこともある。

できればかなえたい要望を箇条書きにして、優先順位をつけておくべきだろう。いろいろな物件を検討しているうちに、自分の本来かなえたい要望から、どんどん離れていくことがある。また優先順位を決めておけば、物件の検索をする場合の大切なキーワードになる。また不動産会社に相談するときも要望に近い物件を探してもらいやすくなるはずだ。

【画像1】(写真/PIXTA)

【画像1】(写真/PIXTA)

どれ位ローンが借りられる? 自分自身のデータを用意しよう

自分の要望はもちろんだが、自分自身を客観的に評価してもらうためのデータを用意しておくことも大切になる。住宅ローンがどれくらい借りられるか、そしてどのくらいの額なら無理なく返済できるかのめどを立てておきたい。それによって選ぶ物件の予算が異なってくる。

大手企業の会社員や公務員であれば、それほど心配することはないが、起業したばかりの事業者やフリーランスの場合、思ったほどローンが借りられない場合が多い。会社員や公務員の場合でも、車のローンを抱えていたり、カードローンが残っていたりすると金融機関の評価は厳しくなるので、事前に自分がどれくらいの評価があるかを金融機関に相談してみることをすすめたい。

私がはじめて中古マンションを買ったのは20代後半だった。女性で単身、しかも小さな編集プロダクションのライターでは、なかなか金融機関も不動産会社も本気になってくれない。頭金がどれくらい用意できるか、年収はどれくらいあるかなどを示す必要があった。つまり、自分がどれくらい本気でマイホームを買う気があるかをプレゼンするための材料が重要なのだ。

最近では金融機関のサイトを利用したり、ファイナンシャルプランナーに相談したりすることができるので、借りる住宅ローンの目安は物件探しと並行して実施しておくべきだろう。

不動産会社も、いい物件情報が入ってきたときに優先的に紹介したいのは、すぐに購入する準備ができている人だ。確かに最初から収入などの個人情報を伝えるのは抵抗があるだろう。しかし信頼できる担当者に出会えたら、より親身になってもらうためにも、自分のデータはきちんと知ってもらうほうがおすすめだ。

【画像2】(写真/PIXTA)

【画像2】(写真/PIXTA)

マイホームに100%はない! 時には片目をつぶることも必要

マイホームへの要望と予算が決まったら、実際に足を運んで物件を見に行くことになる。ただし不動産は100%満足できる物件に出合える確率は低いと思っておこう。2000万円の予算で探す人でも、1億円の予算で探す人でも、必ず「ここだけは残念」という点が出てくることがある。

ここで最初につくった箇条書きが役に立つ。夢のない話をしてしまうようだが、マイホーム探しの極意は、自分の理想と現実を、いかにうまく帳尻を合わせるかだと思っている。

1回目の購入時に私があきらめたのは「沿線」だった。当時はバブル絶頂期だったので、最初の希望だった中央線から有楽町線に変えざるを得なかった。「都心からの近さ」は変わらないが方向を変えて思いどおりの広さと間取りを手に入れた。

2回目は「築年数」だった。その代わりに「都心立地」の物件を購入した。いずれも私自身は満足して住むことができたので、優先順位を決めていてよかったと思っている。

中古マンションは実際の建物を確認できるのがメリット

中古の場合は、図面の段階で購入することが多い新築マンションに比べて、実際の建物やマンションの管理状態を確認できるのが大きなメリットだ。

エントランスや共用廊下がきちんと清掃されているのはもちろんだが、ゴミ置き場の清掃状態や分別状況などを確認しよう。また掲示板も管理状況がよく分かるポイント。清掃や点検の予定が書いてあったり、管理組合主催のイベントが開催されていたり、町会に参加していたり、しっかりコミュニティが形成されているところは安心だ。

管理員がいれば挨拶しておこう。管理員の人柄は住み心地に大きく影響する。できれば管理規約なども確認しておきたい。ペットの飼育は可能かどうか、駐車場の空き状況なども、聞けるとベストだ。きちんと対応してくれる管理員がいることはマンションの管理組合もきちんと機能していることになる。

意外に仲介会社は細かいことは把握していない場合がある。不安なことがあれば質問しよう。しっかり調べて返答してくれる会社が信頼できる目安になる。

【画像3】(写真/PIXTA)

【画像3】(写真/PIXTA)

たくさんの物件を見て回るうちに、「優先順位」が変わってくることももちろんある。そんなときは、その理由が自分に知識が身に着いたからなのか、冷静な判断ができなくなっているのか、見直してみることが必要だ。「ここだけは譲れない」という点と、「これは譲れる」という点を明確にすると、自分にとって満足できる「マイホーム」に出会えるだろう。

東京駅まで30分以内・中古マンション価格相場が安い駅ランキング【シングル編】

家を購入するとき、重視する項目の大きなひとつが交通の便だろう。通勤や通学先への近さや乗り換えの有無など、人によって重視するポイントはさまざまだが、日本の玄関口ともいわれる東京駅へのアクセスを重視する人は多いかもしれない。
東京駅はJR主要幹線と東京メトロ丸ノ内線が乗り入れ、東海道新幹線・東北新幹線の起点駅であるなど、通勤・通学はもちろんのこと、国内外から人が行き来する巨大ターミナル駅。
今回は、その東京駅まで30分圏内の、中古マンションの価格相場が安い駅をリサーチし、シングル、DINKS、ファミリーと世帯のタイプ別にトップ10を紹介する。まずは、ワンルーム、1K、1DK、1LDKの物件を対象とした、シングル向けの結果から見てみよう。
●シングル向け、東京駅まで30分圏内の物件相場が安い駅TOP10駅
(順位/駅名/価格相場(沿線/所在地/東京駅までの所要時間)
1位 鶴見 1430万円(JR京浜東北線ほか/神奈川県横浜市/約26分)
2位 葛西 1680万円(東京メトロ東西線/東京都江戸川区/約26分)
3位 北池袋 2080万円(東武東上線/東京都豊島区/約26分)
3位 板橋本町 2080万円(都営三田線/東京都板橋区/約29分)
5位 新子安 2175万円(JR京浜東北線/神奈川県横浜市/約30分)
6位 亀戸水神 2180万円 (東武亀戸線/東京都江東区/約25分)
6位 巣鴨新田 2180万円(都電荒川線/東京都豊島区/約26分)
6位 とうきょうスカイツリー 2180万円(東武伊勢崎線/東京都墨田区/約27分)
9位 小岩 2190万円(JR総武線/東京都江戸川区/約21分)
9位 北千束 2190万円(東急大井町線/東京都大田区/約28分)

1位は横浜・鶴見駅。ラッシュ時には始発列車もアリ!

1位になったのは、神奈川県横浜市にある鶴見駅。幹線であるJR京浜東北線の沿線のため、乗り換えなしで東京駅まで利用できる。快速なら約26分だが、普通列車にのっても約30分で東京駅まで到着可能。しかも、ラッシュ時には鶴見駅始発の列車も設定されている。

「鶴見」というと工業地帯というイメージをもつ人も多いだろうが、鶴見駅周辺は横浜市の副都心に指定され、商業施設が多く入った駅ビル「CIAL鶴見」をはじめ、飲食店や銀行、スーパーなどが点在し、生活に必要なものは不自由しないだろう。また、物件数もランキング内では一番多く、単身者の住環境がととのっていることがうかがえる。

【画像1】鶴見駅(写真/PIXTA)

【画像1】鶴見駅(写真/PIXTA)

3位の北池袋は、東武東上線の各駅停車駅。日本最大級の繁華街のひとつである池袋の隣駅であり、距離も2キロ弱と近いため、池袋駅の圏内ともいえる。池袋で遊んで終電を逃しても、徒歩でも帰宅が可能なので、シングルの気楽さを満喫できるのではないだろうか。

とうきょうスカイツリー駅周辺は買い物環境が充実。浅草駅や押上駅も使えて便利!

6位のとうきょうスカイツリー駅も、遊びや趣味を優先したいシングルには楽しい場所だろう。観光名所である東京スカイツリーや、商業施設「東京ソラマチ」のおひざ元であるため、食べ物やファッションアイテムなどの買い物に困らない。

また、1駅隣は浅草駅で距離も遠くなく、散歩がてら歴史ある街並みや料理を毎日楽しむことも可能だ。東京スカイツリーを挟んだ反対側の最寄駅、押上駅を利用すれば、成田空港(時間によっては羽田空港も)まで一本という便の良さも、旅行が好きなシングルには魅力的だろう。

また、東武伊勢崎線は東京メトロ日比谷線と半蔵門線と相互直通運転しているのも、大きな利点。有楽町や渋谷など、通勤や遊びに便利な街へ乗り換えなしで行くことができる。

【画像2】東京スカイツリー(写真/PIXTA)

【画像2】東京スカイツリー(写真/PIXTA)

東京駅からの所要時間が一番短かったのが、9位の小岩駅。総武線の各駅停車駅で、かつ隅田川と荒川と2つの大きな川を越えるため、都心からとても離れたような気持ちになるのだが、意外にも約21分で東京駅に到着できる。駅周辺はスーパー以外にも商店街が多く、生活必需品の購入には便利。また、駅東側には韓国料理店が立ち並んでおり、焼き肉好きにはぴったりの街かもしれない。

身軽なシングルにとって、通勤環境と同じくらい趣味や交流の場も重要視するポイントだろう。マンション購入を考えるときは、会社までのアクセスだけでなく、駅周辺の環境も見極めたいところ。自分が求めるそのものスバリな駅や沿線でなくても、理想の暮らしをかなえられる駅はまだまだたくさんあるといえそうだ。

次回は、DINKS向けに、中古マンションの相場が安い駅を紹介予定。

●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている東京駅まで電車で30分圏内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】駅徒歩15分圏内、築年数40年未満、専有面積100m2未満、ワンルーム、1K、1DK、1LDKの物件(敷地権利は所有権のみ)
【データ算出期間】2016年10⽉1⽇~2017年9⽉30⽇
【物件相場の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された中古マンション価格から中央値を算出
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、平日の日中時間帯の検索結果から算出(乗換回数は問わない)
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している

【シングル編】東京駅まで30分以内・中古マンション価格相場が安い駅ランキング

家を購入するとき、重視する項目の大きなひとつが交通の便だろう。通勤や通学先への近さや乗り換えの有無など、人によって重視するポイントはさまざまだが、日本の玄関口ともいわれる東京駅へのアクセスを重視する人は多いかもしれない。
東京駅はJR主要幹線と東京メトロ丸ノ内線が乗り入れ、東海道新幹線・東北新幹線の起点駅であるなど、通勤・通学はもちろんのこと、国内外から人が行き来する巨大ターミナル駅。
今回は、その東京駅まで30分圏内の、中古マンションの価格相場が安い駅をリサーチし、シングル、DINKS、ファミリーと世帯のタイプ別にトップ10を紹介する。まずは、ワンルーム、1K、1DK、1LDKの物件を対象とした、シングル向けの結果から見てみよう。
●シングル向け、東京駅まで30分圏内の物件相場が安い駅TOP10駅
(順位/駅名/価格相場(沿線/所在地/東京駅までの所要時間)
1位 鶴見 1430万円(JR京浜東北線ほか/神奈川県横浜市/約26分)
2位 葛西 1680万円(東京メトロ東西線/東京都江戸川区/約26分)
3位 北池袋 2080万円(東武東上線/東京都豊島区/約26分)
3位 板橋本町 2080万円(都営三田線/東京都板橋区/約29分)
5位 新子安 2175万円(JR京浜東北線/神奈川県横浜市/約30分)
6位 亀戸水神 2180万円 (東武亀戸線/東京都江東区/約25分)
6位 巣鴨新田 2180万円(都電荒川線/東京都豊島区/約26分)
6位 とうきょうスカイツリー 2180万円(東武伊勢崎線/東京都墨田区/約27分)
9位 小岩 2190万円(JR総武線/東京都江戸川区/約21分)
9位 北千束 2190万円(東急大井町線/東京都大田区/約28分)

1位は横浜・鶴見駅。ラッシュ時には始発列車もアリ!

1位になったのは、神奈川県横浜市にある鶴見駅。幹線であるJR京浜東北線の沿線のため、乗り換えなしで東京駅まで利用できる。快速なら約26分だが、普通列車にのっても約30分で東京駅まで到着可能。しかも、ラッシュ時には鶴見駅始発の列車も設定されている。

「鶴見」というと工業地帯というイメージをもつ人も多いだろうが、鶴見駅周辺は横浜市の副都心に指定され、商業施設が多く入った駅ビル「CIAL鶴見」をはじめ、飲食店や銀行、スーパーなどが点在し、生活に必要なものは不自由しないだろう。また、物件数もランキング内では一番多く、単身者の住環境がととのっていることがうかがえる。

【画像1】鶴見駅(写真/PIXTA)

【画像1】鶴見駅(写真/PIXTA)

3位の北池袋は、東武東上線の各駅停車駅。日本最大級の繁華街のひとつである池袋の隣駅であり、距離も2キロ弱と近いため、池袋駅の圏内ともいえる。池袋で遊んで終電を逃しても、徒歩でも帰宅が可能なので、シングルの気楽さを満喫できるのではないだろうか。

とうきょうスカイツリー駅周辺は買い物環境が充実。浅草駅や押上駅も使えて便利!

6位のとうきょうスカイツリー駅も、遊びや趣味を優先したいシングルには楽しい場所だろう。観光名所である東京スカイツリーや、商業施設「東京ソラマチ」のおひざ元であるため、食べ物やファッションアイテムなどの買い物に困らない。

また、1駅隣は浅草駅で距離も遠くなく、散歩がてら歴史ある街並みや料理を毎日楽しむことも可能だ。東京スカイツリーを挟んだ反対側の最寄駅、押上駅を利用すれば、成田空港(時間によっては羽田空港も)まで一本という便の良さも、旅行が好きなシングルには魅力的だろう。

また、東武伊勢崎線は東京メトロ日比谷線と半蔵門線と相互直通運転しているのも、大きな利点。有楽町や渋谷など、通勤や遊びに便利な街へ乗り換えなしで行くことができる。

【画像2】東京スカイツリー(写真/PIXTA)

【画像2】東京スカイツリー(写真/PIXTA)

東京駅からの所要時間が一番短かったのが、9位の小岩駅。総武線の各駅停車駅で、かつ隅田川と荒川と2つの大きな川を越えるため、都心からとても離れたような気持ちになるのだが、意外にも約21分で東京駅に到着できる。駅周辺はスーパー以外にも商店街が多く、生活必需品の購入には便利。また、駅東側には韓国料理店が立ち並んでおり、外食好きには楽しい街だろう。

身軽なシングルにとって、通勤環境と同じくらい趣味や交流の場も重要視するポイントのはず。マンション購入を考えるときは、会社までのアクセスだけでなく、駅周辺の環境も見極めたいところ。自分が求めるそのものスバリな駅や沿線でなくても、理想の暮らしをかなえられる駅はまだまだたくさんあるといえそうだ。

次回は、DINKS向けに、中古マンションの相場が安い駅を紹介予定。

●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている東京駅まで電車で30分圏内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】駅徒歩15分圏内、築年数40年未満、専有面積100m2未満、ワンルーム、1K、1DK、1LDKの物件(敷地権利は所有権のみ)
【データ算出期間】2016年10⽉1⽇~2017年9⽉30⽇
【物件相場の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された中古マンション価格から中央値を算出
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、平日の日中時間帯の検索結果から算出(乗換回数は問わない)
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している

代々木上原で家賃7万円。“普通の家賃”で都心に暮らす2組に話を聞いた

都心住まいにあこがれても、「家賃が高そう」と、都心で暮らすことを考えたことすらない人も多いのではないでしょうか。でも、探してみると意外に平均的な家賃で住める物件もあります。そこで、実際に都心にお住まいのかたに「意外と都心で暮らせるよ!」という体験談と部屋探しのアドバイスをうかがいました。

※平均的な家賃…一人暮らし世帯7万1000円、3人以上世帯11万円(出典:リクルート住まいカンパニー/2016年賃貸契約者に見る部屋探しの実態調査【首都圏版】)
※都心…ここでは千代田区、品川区、渋谷区、新宿区、中央区、文京区、港区の7区を指します

「代々木上原」家賃7万円、一人暮らしのHさん

代々木上原に住むヘアメイクアーティストHさんは表参道のサロンに勤務する富山県出身の32歳。彼女の部屋のお家賃は、6.7万円にプラス0.3万円の管理費の計7万円。駅徒歩10分、代々木上原は坂が多いのですが、それほど気にはならないそうです。

Hさんは、下北沢の2DKでルームシェアをしたあと、2年後の更新タイミングで引越しをすることに。そのタイミングで出合ったのが、この代々木上原の物件です。すでに4年住み、つい先日2回目の更新を終えました。5年目に突入していることからも、なかなか気に入っている様子がうかがえます。

「渋谷駅まで、徒歩20分程度の距離なのに、わりと落ち着いた雰囲気です。緑も多くて静かな環境。物件探しのときは更新期限が迫っていて時間がなくあせっていたのですが、友人が紹介してくれた不動産屋さんが親切で、運よく気に入った物件が見つかりました」(Hさん、以下同)

引越しに当たってHさんが出した条件は「仕事で通う表参道に近い」「日当たりがよい」「建物がしっかりしていそうな『鉄筋・鉄骨』で、木造はNG」の3つが主なもの。ユニットバスで一口コンロ、洗濯機も外置き(ベランダ)ですが、それは仕方がないことと割り切っており、6.7万円と管理費3000円でこの物件なら文句はないと満足しているそうです。

【画像1】Hさんが勤務する表参道(写真/PIXTA)

【画像1】Hさんが勤務する表参道(写真/PIXTA)

築年数は30年と古めですが、リノベーションが施され、内装は白で統一されています。白熱灯の間接照明は特にお気に入りだそうです。これまでご近所づきあいや家そのものに関しては特にトラブルはありませんでしたが、一度だけねずみがはいってきた痕跡を見つけたことがあったそうです。直接遭遇はしませんでしたが、すぐに駆除業者を呼んで消毒と予防をしました。その後は痕跡もみつかりませんし、遭遇もしていませんが、怖い思い出になっているそうです。

「収納もたっぷりあります。3畳分あるロフトは、部屋とは区別してメイクの練習などのアトリエとして使っています。希望していた日当たりも3面採光で気持ちがいいです!」

今でも十分都心といえますが、“THE都心”への憧れの気持ちは尽きることがないようで「もっと都心に住みたい!」というHさん。表参道まで自転車通勤できる快適な毎日を過ごせているようです。

「北参道」家賃11万円、家族4人で暮らすNさん

副都心線北参道駅から徒歩7分、11万円の物件にお住まいのNさん(36歳)。ご主人と保育園に通うお子さま2人の4人で暮らしています。フリーのスタイリストとして働いていて、ご主人も同じ業界。昼間はお子さんを保育園に預けています。7階建ての3階にあるお住まいは1LDKで、広さは60m2弱、築年数は30年。住んで3年目とのこと。

以前は代々木にお住まいだったNさん、引越したきっかけは、「駐輪場」でした。「大きな地震があったときに駐輪場の屋根が壊れたのですが、大家さんは修復してくれず、駐輪場そのものがなくなることに。子育て世代の私たちに自転車は必須ですから、引越すしかありませんでした」(Nさん、以下同)

そのタイミングでNさんが2人目のお子さんを出産。上のお子さまを連れて遠方のご実家へと長期帰省している間にご主人があっという間に物件を決め、Nさん不在の間にお一人で引越し作業を敢行。その際、ご主人が決めた条件は「家賃」「間取り」「直感」という3つだったそう。「新居の要望を言う余裕もなかったのですが、なんとなく代々木の20万円の部屋と同じくらいのところを探してくれると思い込んでいました」

数カ月後、実家から帰ってきて新居にはじめて入ったHさん。外観に気になるところはないし、室内もリノベーションされていてきれいでした……が、「洗濯機は外置き、代々木の部屋にあった独立洗面台がないことに驚きました」

最初は憤ったものの、だんだんと慣れてきたそう。また、以前から9万円も家賃が下がったために、生活にはずいぶん余裕が出たといいます。「二人とも自営業(フリー)で、生活にあまりお金をかけるのは不安なので、ちょうどよいのかもしれません。今は不自由を感じなくなりました」

部屋数が少ないため、親子・夫婦喧嘩したときなども顔を合わせねばなりません。しかたなく一緒の布団で寝ることになるので、家族の距離が近くなり、以前よりもよりあたたかな生活ができているようです。

ところで、Nさんの部屋はどうして11万円という破格なのでしょうか。

不動産屋さんで20万円以下の物件を探していて11万円の部屋を見つけたご主人は、当初やはりすこし心配になったそう。実は、このお部屋は地方にお住まいのご高齢の方が、もともと投資用に購入した部屋。ただ、そこまで家賃収入に執着がなく家賃を安く設定しているとのこと。また、「住みやすいように」と床の張り替えなど、積極的にリフォームもしてくれるそうで、とてもいい大家さんに出会えたようです。

Nさんのマンションは管理員さんも古くから住んでいるご近所さんも親切だといいます。「いまだに回覧板があったり、ものをもらったりあげたりする」ような、古きよきご近所づきあいをしているそうです。

都心暮らしの一番のメリットは職場や目的地まで距離が近いこと。ネットショッピングでより生活が便利に

Hさんは都心暮らしについて「職場から近いのがいちばんです。自転車も使え、移動時間が短いし、タクシーを使っても安いです」とよさを教えてくれます。

Nさんは、もともとは都心で暮らすことを不便に感じていたようです。いちばん近いドラッグストアが人通りの多い竹下通りにあるなど、日常の生活に向かないと思っていたからです。ただ、いまはネットで日用品から食品までなんでも買えます。もともとは職場まで徒歩や自転車でいけることから都心に住み始めましたが、「都心でより便利に安く暮らせる時代が来た」とNさんは思っているそうです。

「どんな場所でも『住めば都』。意外とどこでも変わらない生活ができます。買い物するお店がなくても、ネットで探せます。それに、このあたりはタクシーの1メーター410円でどこでもいけますし、カーシェアリングを利用すれば子どもがいても移動が楽です。ママ友もたくさんいますが、みんな子育てに仕事にと、パワフルなのが都心。空気もみなさんが思っているほど悪くないですよ」(Nさん)

また、都心は意外と子どもを遊ばせやすいとも感じているそうです。「歩いていける国立競技場には子どもが自転車の練習をできる場所がありますし、代々木公園や新宿御苑も近いです。ただ、小さな公園など、家の近所に遊ぶ場所がないのがすこし不便かもしれません」(Nさん)

都心に普通の値段で住む 家探しのコツとは?

Hさんは「お部屋探しのコツは不動産屋さんと仲よくなること。不動産屋さんはやっぱり最新の情報をもっていて、仲よくなっておけばいち早く教えてくれます」と言います。

また、「妥協できる点とできない点を決め、優先順位をつけておきました。例えば私は同じユニットバスでも許せるタイプのものと許せないタイプのものがあったので、そういう細かいところまで決めて、たくさん見たほうがよいです。探せばあるので、あきらめない。よくばってもよいと思いますし、焦点を決めて探してみてください」とアドバイスしてくれました。

数年後にはお子さまの小学校入学に合わせて、勉強部屋確保のためにも引越そうと思っているNさん。ご夫婦での開業も予定されているそうですが、またこの近くに住むことになりそうです。都心の暮らしやすさを知っているからこそ、また都心へと引越したくなるのかもしれません。

探すのが難しいと思われがちな「都心の手ごろな部屋」。自分の譲れない条件を絞れば、希望の家賃に収まる物件は見つかりそうです。また、場所によっては静かな生活を送ることもできますし、ネットショッピングがより便利になり、日常生活にお金がかかり過ぎたり、日用品を買うお店がなくて不便ということも以前よりなくなってきたように感じます。都心に憧れをもっているかたは、都心暮らしを検討してみてもよいかもしれません。