小規模な街中のビルでも、脱炭素に資する木造ビルになる!ブルースタジオが推進するプロジェクトの挑戦を徹底解説

大島土地建設とブルースタジオが、『まちの大家による都市の面的木造化』推進プロジェクトを推進している。「都市の木造化」のために、中小規模事業者でも計画可能な小規模木造ビルのモデルが必要で、それを構築し普及を図るというものだ。そのモデルとなる「OS annex 2」が上棟し、見学会が開催されたので参加した。

まちの大家に小規模な木造ビルを建てるという選択肢を提供

政府の2050年カーボンニュートラル宣言に見られるように、脱炭素が求められている。その方策の一つが、木造化・木質化だ。住宅・建築分野において、積極的に「木」を使うことで温室効果ガスの吸収を増やせるからだ。大規模な建築物では、大手ゼネコンなどが独自の工法を確立し、すでに木は燃えやすいというイメージを覆すような高層の木造ビルをいくつか建てている。

一方、建築・不動産業界の多数を占めるのは、中小規模の事業者だ。中小規模の事業者がビルの木造化に取り組まない限り、都市の面的な木造化は進まない。そう考えて動き出したのが、大島土地建設三代目代表でブルースタジオの専務取締役でもある、大島芳彦さんだ。大島土地建設は、東中野のみで小規模ビル7棟を賃貸する、いわゆる「まちの大家」だ。その大島土地建設が施主(大家)となり、ブルースタジオが建築設計を担当して、木造化による賃貸ビル「OS annex 2」を建築することを決意した。

都心商業地域の主たる建築物は、2000平米未満の商業・事務所ビル。このクラスの「小規模ビル」の木造化技術の標準化とその普及が目的だ。「中小規模不動産事業者、中小規模設計事務所、中小規模工務店」でも計画可能な標準工法による小規模木造ビルの建築モデルを構築することで、本質的な『都市の木造化』の促進を目指すという。

つまりは、まちの大家(大島土地建設)でも、まちの設計事務所(ブルースタジオ)やまちの工務店(今回は礎コラム)と共に、小規模な木造ビルを建てられる建築モデルを用意したので、実際に建てた事例を見て同じように建ててほしいということだ。

見学会で熱く語る、大家兼blue studioディレクターの大島芳彦さん(筆者撮影)

見学会で熱く語る、大家兼blue studioディレクターの大島芳彦さん(筆者撮影)

小規模ビルの木造化、その手法とは?

建築モデルとなる「OS annex 2」の概要を見ると、JR中央・総武線「東中野」駅徒歩2分、敷地は間口約9m・奥行約17m、8階建て、延べ床面積714.46平米となっている。大島さんによると「都心部の建物の約7割は10階建て以下、間口10m以下」の縦長のビルだというので、その典型の建物と言えるだろう。ただし、木造化と言ってもすべてが木造というわけではない。設計上はすべて木造とすることは可能なのだが、そうすると建築コストがかなりかかるため、経済合理性を考えて、1~4階は鉄骨造、5~8階は木造としている。

1~4階は、標準的なラーメン構造の2時間耐火の鉄骨造だ。ラーメン構造とは、「柱」(垂直方向)と「梁(はり)」(水平方向)で四角形の枠を構成して建物を支える構造のこと。柱と梁をしっかり接合することで、地震の揺れで変形しないようになっている。
※鉄骨造は両方向のラーメン構造

この鉄骨造の上に、1時間耐火の木造を載せる構造となっている。木造部分は、構造となる木材(カラマツ)を強化石膏ボードで両側からはさんで耐火被膜とし、さらにその両側面を木材の耐震フレームではさむ「門型」フレームのラーメン構造としている。ただし、門型フレームは、開口部側の一方向のラーメン構造なので、奥行側にブレース(筋交い※)を入れる形を採っている。
※四角形に組まれた骨組みに対角線状に入れる補強材のこと

ビルの構造の説明図

ビルの構造の説明図

筆者はかつて、大手ハウスメーカーが建てた木造の賃貸マンション(5階建て)を見学したことがあるが、それも経済合理性を考えて1階をRC(鉄筋コンクリート)造としていたので、混構造となるのはよくあることなのだろう。

この構造がよく分かる上棟の段階で、見学会が行われた。

数回に分かれて行われた見学会。筆者参加の回も大勢が見学に訪れた(筆者撮影)

数回に分かれて行われた見学会。筆者参加の回も大勢が見学に訪れた(筆者撮影)

建築中の建物内に入り、ビルの構造をこの目で確認

間取図と現地写真で、鉄骨造と木造の違いを見てほしい。鉄骨造のフロアでは左右それぞれに柱が3本ずつ、木造のフロアではそれぞれに柱が5本ずつ入っているのが分かる。

■鉄骨造のフロア

2~4階の間取図

2~4階の間取図(間取図提供:ブルースタジオ)

1階の様子

1階の様子(筆者撮影)

■木造のフロア

5~8階の間取図

5~8階の間取図(間取図提供:ブルースタジオ)

6階の様子

6階の様子(筆者撮影)

木造部分を詳しく見ると、下の写真の緑色の部材が主要構造部で、木材をそのまま見える形にした耐震フレームで両脇をはさんでいる。奥行側は隣にマンションがあるので、斜めのブレースを入れて耐震補強している。床は山型デッキプレートを使った合成スラブ構造で、天井部分にデッキプレートが見えている。

8階の木造部分(筆者撮影)

8階の木造部分(筆者撮影)

さて、見学会では、もっと詳しい説明があったのだが、筆者は建築の専門知識がないので、残念ながら構造や設計について詳しいことがよく理解できなかった。木造防耐火監修の桜設計集団による木造門型フレームの加熱実験が行われるなど、標準モデルとなるような細かい設計がなされているので、詳しく知りたい場合は、ブルースタジオに確認をしてほしい。

小規模木造ビルで、賃料設定はどうなる?

さて、木造ビルは決して安価で建てられるものではない。国からの補助金などを受けているが、それでも賃料は周辺相場より高めになる。募集する賃料は、2~4階(専有面積76.45平米)で38万2800円、5~8階(専有面積71.61平米)で39万600円※8階のみ41万2300円(賃料はいずれも消費税別)。

ただし、ZEB-ready(ゼブ・レディ=完全なZEB/ゼロエネルギービルではないが、ZEBを見据えた先進建築物としての条件を備えたビル)を取得し、通常より電気代を抑制できることに加え、外壁面に太陽光パネルを設置することで、テナントが光熱費を抑えることができるようになっている。また、外から見て木造ビルであることがすぐに分かるようにデザインされているので、地球環境に配慮したビルに入居することの意義などSDGsの要素も加わり、そのうえで賃料を見てもらえると考えている。

大島さんは、木造ビルの建て方だけでなく、こうした募集ノウハウなども合わせて提供できるのではないかという。

さて、地球温暖化が進み、カーボンニュートラルに向けて待ったなしの状況になっている。住宅や建築分野の脱炭素は、資金力や人手のある大手事業者が先導して取り組むことが多いが、現実には小規模な住宅や建築物が街中には多く存在している。小規模な建築物でも脱炭素に取り組みやすい手法があり、成功事例が増えていけば、街の中に木造のビルが増えていくかもしれない。大島さんの挑戦に、今後も注目していきたい。

●関連サイト
ブルースタジオ プレスリリース「まちの大家による『都市の木造化』促進計画 都心商業地域における小規模木造ビルの標準化プロジェクト」

土間や軒下をお店に! ”なりわい賃貸住宅”「hocco」、本屋、パイとコーヒーの店を開いて暮らしはどう変わった? 東京都武蔵野市

「なりわい賃貸住宅」、「暮らしの町あい所」として話題になった「hocco(ホッコ)」。13戸の賃貸住宅のうち5戸は居住者がなりわいとしてお店を開ける店舗兼用住宅だ。誕生から1年が経過し、「グッドデザイン賞」も受賞した。いま、そこに住む人はどんな暮らし方をしているのだろうか? 再び、訪れることにした。

2022年度グッドデザイン特別賞を受賞した「hocco(ホッコ)」は今?

2021年10月に筆者は「武蔵野市に店舗兼用の『なりわい賃貸住宅』が誕生!住宅街に顔の見える交流拠点を」という記事を書いた。東京都武蔵野市に、小田急バスが自社のバス折返場に建設した複合施設「hocco(ホッコ)」を取り上げたものだ。

hoccoは2022年10月に、2022年度グッドデザイン特別賞・グッドフォーカス賞[地域社会デザイン]を受賞した。「住宅地の真ん中にあるバスターミナルを地域交流拠点として開発した新しい取り組み」として評価されたものだ。審査員のコメントを見てみよう。

「駅から離れた立地のバスターミナルに店舗併用の賃貸住宅を建てることで、住む人の『なりわい』が地域の人々の新しい交流を生む魅力的な場となっている。中庭に面して店舗が並び、店舗は土間と軒先の空間を通じて中庭へと繋がる。軒下があることで人は気持ちよくお店の前でたたずみ、住む人とその『なりわい』に出会うことができる。個性あふれる『なりわい』が魅力となり、地域の人が自然に集まれる場ができている」

1年前、hocco誕生の際には、その仕掛けが面白いと思い、取材して記事にした。それが、入居が始まって1年経った今、実際にはどんな「なりわい」や「地域の人との出会い」が生まれているのだろうか? hoccoの建築設計・賃貸管理をしているブルースタジオの広報・平尾美奈さんに案内してもらった。

全13戸の賃貸住宅『hocco』(撮影/片山貴博)

全13戸の賃貸住宅『hocco』(撮影/片山貴博)

hocco配置図(画像提供/ブルースタジオ)

hocco配置図(画像提供/ブルースタジオ)

hoccoは、13戸の賃貸住宅が中庭を囲むように建ち、バスターミナルに近い5戸が店舗兼用住宅となっている。その特徴は、中庭に開かれた土間だ。「土間」と玄関前の「軒下」で“なりわい”を行うことができる。

04S号室「rn press + RIGHT NOW BOOKSTAND」(撮影/片山貴博)

04S号室「rn press + RIGHT NOW BOOKSTAND」(撮影/片山貴博)

※04S号室の間取り(画像提供/ブルースタジオ)

※04S号室の間取り(画像提供/ブルースタジオ)

現在は、次のような店舗が営業されている。
01S号室「l’atelier de nature(ラトリエ ド ナチュール)」:パンと焼き菓子の店
03S号室「玉草屋」:庭・外構・室内観葉のデザイン施工の店で、店舗で植物を販売
04S号室「rn press + RIGHT NOW BOOKSTAND」:新書古本を扱う書店
05S号室「オーブン屋」:オーブン料理のテイクアウト専門店。弁当販売も
13S号室「The Pie Hole LA 小金井公園」:パイとコーヒーの店

店長は猫のモリオ。本を買うためだけでないコミュニケーションが生まれる店

なりわい賃貸の居住者の一人、株式会社rn press代表取締役の野口理恵さん(41歳)が切り盛りする、書店「RIGHT NOW BOOKSTAND」(04S号室)を訪れた。この書店の店長は猫のモリオだ。

エキゾチックショートヘアのモリオ(1歳10カ月)。人懐っこいので、店長に任命された!?(撮影/片山貴博)

エキゾチックショートヘアのモリオ(1歳10カ月)。人懐っこいので、店長に任命された!?(撮影/片山貴博)

そもそもここに入居を決めたのは、猫のモリオが発端だった。コロナ禍で野口さんとパートナーが家にいるようになってから二人とも外出すると、高齢の猫・うなぎが鳴くようになり、新しく子猫のモリオを飼うようになった。元気がよすぎるモリオのために、ペットが飼える階段のあるメゾネットの賃貸住宅を探していた時に出合ったのが、hoccoだ。土間を自由に使ってよいと聞き、編集の仕事を長くしていることから、土間を書店にしたらどうかと思いついた。

04S号室「rn press + RIGHT NOW BOOKSTAND」1階の事務所。2階がプライベート空間。テーブルの上の籠の中にいるのが6歳のうなぎ。ここに引越してから生後10カ月のマニも飼い始めた(撮影/片山貴博)

04S号室「rn press + RIGHT NOW BOOKSTAND」1階の事務所。2階がプライベート空間。テーブルの上の籠の中にいるのが6歳のうなぎ。ここに引越してから生後10カ月のマニも飼い始めた(撮影/片山貴博)

自分がセレクトした本を置けたらよいと思い、いろいろな本屋のレイアウトをリサーチしたが、最終的には知り合いの元木大輔さん主宰のデザインスタジオDaisuke Motogi Architecture (現DDAA)に本棚の造作を依頼した。本のサイズはそのジャンルによっても変わるので、どんなジャンルの本を何冊ほど置きたいとイメージを固め、それに合わせて本棚をつくってもらった。

野口さんのご自慢の“本が浮いているように見える”ようデザインされた本棚(撮影/片山貴博)

野口さんのご自慢の“本が浮いているように見える”ようデザインされた本棚(撮影/片山貴博)

本業の編集の仕事を続けながら、副業の本屋の仕事も加わり、かなり大変ではないかと心配になったが、「むしろ本業がはかどるようになった」という。月曜~水曜は本屋を休んで本業に充て、木曜~日曜は本屋を営業するスタイルを取っている。本屋の営業日は1階の事務所にいる必要があるので、事務作業や執筆業務を集中してでき、以前よりメリハリがついてはかどるのだとか。本屋営業日に編集の仕事が入ることもあるので、営業は不定期となるが、インスタグラムやツイッターで営業時間を告知している。

では、本屋の営業状況はどうだろう? 以前の賃貸住宅の家賃との差額分を稼げればいいという程度に考えていたが、それを十分に超える収入になっているという。よく売れるのは「料理本」と「絵本」だ。近くに小さな子どものいる家庭が多いからだが、子どもたちは本よりも猫のモリオやマニがお気に入りだ。閉店時でもガラス越しにモリオを呼ぶ子どもの声が聞こえることもあるという。

年配の方が多いのもこの地域の特徴だ。縄文文化の研究をしていたというように、得意分野をもつ高齢者がその分野の本についていろいろ教えてくれることもある。読んだ本の感想を教えてくれる人もいて、野口さんのほうでも、この作家が好きならこちらの作家も好きだと思うと、本を紹介することもある。知的な会話を楽しみたいために通ってくる常連さんもいるとか。

地元の街の小さな本屋さんは、単に本を買いに来る場所ではなく、本に関する会話を楽しんだり、店長猫たちと遊んだりできる、交流の場になっているようだ。

なりわいの入居者は商店街ではなく、地域の人とふれあえる場所での開店を選んだ

次に訪れたのが、「The Pie Hole LA 小金井公園」。2022年7月にオープンしたパイとコーヒーの店だ。この店のY・Hさんが入居を決めたのは、バスターミナルからOPENの看板がよく見える13S号室だ。

13S号室「The Pie Hole LA 小金井公園」(撮影/片山貴博)

13S号室「The Pie Hole LA 小金井公園」(撮影/片山貴博)

The Pie Hole LAは、ロサンゼルス発の焼き立てパイとオーガニックコーヒーを提供するブランドだ。西麻布、軽井沢に店舗があり、期間限定で百貨店などに出店することもある。

東京都武蔵野市にずっと住んでいるHさんは、開催されていたhoccoのイベントに訪れて、地域の人たちと交流できる場所であること、なりわいができることを知った。もともと地域の人たちとのコミュニティーを作ることに興味があったHさんはhoccoに魅力を感じた。

店内にはハンドメイドのパイが並べられたショーケースやエスプレッソマシンが並んでいる(撮影/片山貴博)

店内にはハンドメイドのパイが並べられたショーケースやエスプレッソマシンが並んでいる(撮影/片山貴博)

ハンドメイドのパイは、Hさん自身が工場で手づくりしたものを、店に運んで販売している。13S号室は角地なので軒下が広く、椅子とテーブルを置くことができるが、店舗兼用住宅の中では土間が狭いので、レイアウトに苦労したという。

中心に据えられたショーケースには、おいしそうな総菜パイとデザートパイが並ぶ。パイはグランドメニューに加えて季節ごとのパイの展開もしているので、常に新しいパイに出合える。

人気のパイは、奥の「シェパーズパイ」(挽き肉とポテトを使ったミートパイ)と手前の「マムズアップルクランブルパイ」(りんごとクランブルのデザートパイ)。筆者も買ってみた(撮影/片山貴博)

人気のパイは、奥の「シェパーズパイ」(挽き肉とポテトを使ったミートパイ)と手前の「マムズアップルクランブルパイ」(りんごとクランブルのデザートパイ)。筆者も買ってみた(撮影/片山貴博)

名物のアップルパイには、長野県産のりんごを使っている。東京では購入できない、その農家より仕入れる珍しい品種のりんごの販売や、近所の農家と共同して野菜の販売もはじめた。近所の農家の野菜を使ったおかずなどの商品を今後考えていきたいという。

地域の農家の野菜の販売も試している(撮影/片山貴博)

地域の農家の野菜の販売も試している(撮影/片山貴博)

パイやコーヒーは、hoccoの居住者はもちろん、地域に暮らす人や近くの小金井公園に訪れる人が買いにきてくれる。開店してからまだ5カ月なので、いまは店を知ってもらうために火曜の定休日以外は毎日オープンしているという。

地域の交流拠点を目指して、定期的にイベントも開催

「なりわい賃貸住宅」では、野口さんの本屋や「玉草屋」(03S号室:庭・外構・室内観葉のデザイン施工の店)のように、本業とは別に店舗を営業している入居者もいれば、Hさんのパイとコーヒーの店や「オーブン屋」(05S号室:オーブン料理のテイクアウト専門店)のように、本業として店舗を営業している人もいる。どちらも成り立つのがhoccoの魅力だろう。

03S号室:玉草屋(画像提供/玉草屋)

03S号室:玉草屋(画像提供/玉草屋)

建築設計・賃貸管理をするブルースタジオによると、店の業種が重ならないように配慮しているという。店舗だけでなく、キッチンカーなども呼び込むようにしているので、取材した日には移動販売の花屋「ena to nico(エナトニコ)」がクリスマス用の商品も並べて営業をしていた。

クリスマス向けの商品も数多く用意されていた(撮影/片山貴博)

クリスマス向けの商品も数多く用意されていた(撮影/片山貴博)

店主の林実和さんは、2022年2月からhoccoに毎週(現在は毎週金曜)出店している。毎週出店しているのは、hoccoの環境がとても気に入っているからだ。hoccoの住民で毎週花を買っていく人もいるし、周辺の住民がランチを買いにきたときや犬の散歩の途中で寄って花を買っていく。林さんは、常連さんがいるので市場で花を選ぶ際にとても悩むという。

「ena to nico」はフラワーカーによる移動販売専門の花屋だ(撮影/片山貴博)

「ena to nico」はフラワーカーによる移動販売専門の花屋だ(撮影/片山貴博)

ほかにも、年に1~2回は、地域に開かれたイベントを開催している。2022年は桜咲く4月と10月にイベントを開催した。最新の10月10日に開催した「hoccoの秋祭り」では、hoccoの住民が主体となり、入居者の知り合いやなりわい賃貸店舗が出店し、当日限定の商品などを販売したり、ワークショップを行ったりした。

入居者がハロウィーンのデコレーションを行い、「玉草屋」とその知り合いの「アトリエ自作自演」が、カボチャのペイントなどのワークショップを行い、ハロウィーンムードを盛り上げた。取材をした野口さんは知り合いの「大福書林」に、Hさんは知り合いの「cafe247」に出店を呼び掛けた。

2022年10月に「秋祭り」を開催。時期的にハロウィーンの飾りつけで盛り上げた(画像提供/ブルースタジオ)

2022年10月に「秋祭り」を開催。時期的にハロウィーンの飾りつけで盛り上げた(画像提供/ブルースタジオ)

手芸用品の販売を行った「アトリエ自作自演」。デコレーションパーツは玉草屋のワークショップにも使われた(画像提供/ブルースタジオ)

手芸用品の販売を行った「アトリエ自作自演」。デコレーションパーツは玉草屋のワークショップにも使われた(画像提供/ブルースタジオ)

05S号室「オーブン屋」は特別メニューを提供(画像提供/ブルースタジオ)

05S号室「オーブン屋」は特別メニューを提供(画像提供/ブルースタジオ)

この地域には、古い団地もあれば新しいマンション群もあり、年配の人や子育て家族が多く住んでいる。こうしたイベントは、hoccoの常連客だけでなく、地域の人たちに広くhoccoを知ってもらい、地域交流の場となるようにという狙いがある。イベントには小田急バスやブルースタジオもスタッフを派遣して、当日の設営・片付けや交通整理などを行ったが、いずれは入居者たちだけでイベントが開催できるようになるとよいと考えているという。

現在、hoccoに入居募集中の住戸はないが、店舗兼用住宅への関心は高く、入居待ちの人もいるという。暮らしの延長でなりわいができること、地域の人たちの顔が見えるコミュニケーションができることなど、ほかにはない魅力を感じてのことだろう。新時代を感じさせる拠点だと思う。

●関連サイト
hocco物件専用WEBサイト