残価設定型の住宅ローンってどんなもの?メリットや注意点などをわかりやすく解説

パナソニックホームズが、一般社団法人移住・住みかえ支援機構が開発した長期優良住宅対象の残価設定型住宅ローンについて、楽天銀行との提携を経て、返済期間が最長40年の「楽天銀行オプション付加型残価設定住宅ローン」の取り扱いを開始すると公表した。残価設定の住宅ローンとは、一体どんなものなのだろう?

【今週の住活トピック】
楽天銀行と返済期間最長40年の残価設定型提携住宅ローン取り扱いを開始/パナソニック ホームズ

住宅ローンにおける残価設定のローンとは?

住宅ローンでは耳慣れないローンだが、カーローンではよく耳にする「残価設定型ローン」。車の購入の際に、あらかじめ将来の下取り価格を設定して、車両価格から下取り価格(残価)を差し引いた金額に対してローンを組む方法のことだ。

では、住宅版ではどうなるのか?
パナソニックホームズの残価設定型住宅ローンは、移住・住みかえ支援機構(以下「JTI」)が提供する「残価設定型住宅ローン」を利用するもので、通常の住宅ローンに、「返済額軽減オプション」と「買取オプション」という二つのオプションを付ける形になる。

大雑把に言うと、通常のローン返済をする途中で、あらかじめ決められたオプションが行使できる時点で、返済額は大幅に減るが終身でローン返済を続けるか、住宅ローンの残高と同額で買い取ってもらうかを選べる、といったものだ。残価設定時期などはJTIが決める。

したがって、JTIが大きな役割を果たすことになるので、JTIが残価設定型住宅ローンの仕組みを提供する背景について見ていこう。

JTIが残価設定型住宅ローンを提供する背景は?

JTIは国土交通省の支援を受けて設立した、持ち家を長く活用してもらうことを目的とした一般社団法人。シニア層が使わなくなった住宅を子育て世代に向けて転貸する「マイホーム借上げ制度」などを提供している。

2021年に住生活基本計画の見直しが行われた際に、「ライフスタイルに合わせた柔軟な住替えを可能とする既存住宅流通の活性化」のため、残価設定ローンを含む多様な金融商品を活用することが盛り込まれた。これを契機に、JTIが、維持管理体制の充実した事業者が施工する認定長期優良住宅について、将来の残価を保証する仕組みを開発した。これが、残価設定型住宅ローンだ。

したがって、残価設定型住宅ローン対象となるのは、国の認定を受けた「長期優良住宅」で、施行する事業者も指定されたハウスメーカーに限られるので、対象は一戸建てになる。また、取り扱いができる金融機関も、現時点で指定されているのは、日本住宅ローン、三菱UFJ銀行、楽天銀行だ。

※長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅。長期に使用するための構造及び設備を有していること、維持保全の期間や方法を定めていることなどが求められる。

残価設定型住宅ローンの仕組みをもっと詳しく

残価設定型住宅ローンについて、下の概念図でもう少し詳しく見ていこう。

例えばJTIが残価設定月を20年後に設定した場合、通常の住宅ローンの返済をしていくが、30歳で借りて50歳で残価設定月に達したら、リバースモーゲージ(死亡時に担保不動産を処分して残債を返済する住宅ローン)の仕組みを使った「返済額軽減オプション」を選ぶ(左側)か、その時点のローン残高の額で買い取ってもらう「買取オプション」を選ぶ。また、「返済額軽減オプション」を選んだ場合でも、途中で「買取オプション」を行使することもできる(右側)。

出典:パナソニック ホームズのリリースより

出典:パナソニック ホームズのリリースより

まず、「返済額軽減オプション」について見ていこう。「1」では通常の住宅ローンの返済となるが、残価設定月以降にオプションを行使すると、元金の返済額をJTIの保証する残価に合わせることで返済額を大幅に軽減する「新型リバースモーゲージ」に切り替わる。借り入れから50年経つと元金の返済がなくなり、51年目以降は利息のみの返済となる。そのため、「2」、「3」と段階的に返済額が減る形になる。

次に、「買取オプション」について。残価設定月に行使した場合は、その時点の住宅ローン残高と同額で、また返済額軽減オプション選択後に行使した場合は、新型リバースモーゲージの残高と同額で、JTIが買い取る形となる。

残価設定型住宅ローンのメリットやデメリットは?

残価設定型住宅ローンのメリットは、長期間返済する中でいくつかのリスクを回避できることにある。例えば定年後に想定したよりも収入が減ってしまった場合でも、「返済額軽減オプション」によって、返済額を抑えることができる。

また、一定期間住んでから売却しようとしたとき、住宅市況が悪化して売却額では住宅ローンの残債を返せないといったときでも、残債と同額で売却できるので、ローンから解放される。住宅市況が良好で高く売れるときは、自身で売却した額で住宅ローンを完済すればよい。

このように、住宅ローンによって自由な住替えを妨げられることがなくなるのだが、注意点もある。

「返済額軽減オプション」を行使した場合、当初の住宅ローンに付帯した団体信用生命保険は終了し、以降は団体信用生命保険に加入できない。また、終身で返済することになり、当初の住宅ローンよりも利息を多く払う場合もある。

なお、認定長期優良住宅は、長期使用ができるように認定計画に沿ったメンテナンスを継続的に行うことが求められる。そのため、一般的な住宅よりも点検や補修費用などがかかってしまうことも、理解しておきたい。

社会的に見ると、残価設定型住宅ローンを利用した住宅は、いずれのオプションでも、最終的にはJTIに帰属するので、良質な住宅が空き家になることはない。こうしたメリットもある残価設定型住宅ローンだが、利用できる住宅(事業者)や金融機関が限られるので、どの住宅でも利用できるわけではない。とはいえ、ローンを利用する側にとって、多様な選択肢の一つになるので、こうした住宅ローンがあることを知っておいてほしい。

●関連サイト
パナソニック ホームズ「楽天銀行と返済期間最長40年の残価設定型提携住宅ローン取り扱いを開始」
移住・住みかえ支援機構「残価設定型住宅ローン利用者フォーラム」

内窓DIYで室温10度も断熱できる省エネ対策。ホームセンターで買えるお手軽キットでも可能

「夏暑く、冬寒い」「結露ができて不快」、こうした住まいの問題を解決するには、どうやら「窓」の改修がいいらしい、ということが知られるようになりました。とはいえ、どのくらい効果があるの?DIYで手軽にできない?などの疑問はつきないはず。そうした疑問や悩みを解消してくれる「断熱改修はじめの一歩」ワークショップが長野県で開催されました。子どもも参加OK、ホームセンターで買える簡易的な内窓キットと最低限の工具だけを使って内窓のDIYをしよう! という一見お手軽な内容にも関わらず完成した内窓をつけたところ、なんと10度も表面の温度差が生まれるという驚きの結果に。その様子をレポートします。

内窓をDIYで自作してみたい!長野県全域から希望者殺到!

「断熱改修はじめの一歩」という講演会とDIYワークショップが開催されたのは、長野県上田市。二部構成で、一部は断熱推進イニシアチブ合同会社の木下史朗さんによる講演、現役の建具職人でもある有限会社クボケイの窪田智文さんのミニレクチャー、二部は市販されている内窓キットを使ってのDIYワークショップというもの。主催は長野県上田地域振興局で、運営にあたるのがNPO法人上田市民エネルギーです。

近年、内窓をDIYで作成できる「内窓キット」がホームセンターなどで購入できるようになっています。今回のワークショップではこの「内窓キット」を用いて、建具職人を講師に招いて、内窓を実際につくるという試みです。ちなみに、必要な道具は差し金や鉛筆、カッターなどの身近なものばかり。DIYの心得がなくとも誰でもできるといいます。

一部の講演会には上田市在住の方だけでなく、長野県内各地から約60名が参加し、二部のワークショップの定員20名はわずか数日で満員になったとか。想像以上の関心の高さに圧倒されますが、長野県上田市は冬の寒さはもちろん、夏はびっくりするほど暑くなるそう。

「全国的に暑かった2023年ですが、上田では全国最高の38.4度を記録したこともあるほど。とにかく夏は暑いんです。さらに冬は寒いため、二酸化炭素削減にも健康面でも、建物の省エネ性能向上が必須なんです」と話すのは上田市民エネルギーで理事長を務める藤川まゆみさん。

長野県はこうした自然の厳しさを背景に、住まいや建物の省エネルギー性向上を推進しており、上田高校や白馬高校など複数の県立高校で高校生が企画運営する断熱ワークショップを支援しています。また、こうした学生の断熱に関する取り組みがニュースになることも多く、それを見聞きした保護者をはじめ、一般世帯にも関心が広がっているようです。すばらしい流れですね。

■関連記事:
白馬村から雪が消える?! 長野五輪スキー会場も直面の気候変動問題、子ども達の行動で村も変化

断熱改修の初心者に向けて。講演会でしっかりと知識を身に付ける!

まず一部は「断熱改修はじめの一歩」と題して、断熱推進イニシアチブの木下史朗さんが、自宅のサーモグラフィ画像をあげつつ、自宅や軽井沢の高性能賃貸「六花荘」を建てたこと、軽井沢の空き家を性能向上リノベさせたエピソードを紹介。

木下さんが断熱に目覚めるきっかけとなった家の寒さ。室内だが窓枠の表面温度は1度(画像提供/断熱推進イニシアチブ)

木下さんが断熱に目覚めるきっかけとなった家の寒さ。室内だが窓枠の表面温度は1度(画像提供/断熱推進イニシアチブ)

高性能賃貸「六花荘」をサーモグラフィカメラで撮影。もっとも冷たいのは牛乳。室温は20度程度に保たれており、裸足でも大丈夫な暖かさに(画像提供/断熱推進イニシアチブ)

高性能賃貸「六花荘」をサーモグラフィカメラで撮影。もっとも冷たいのは牛乳。室温は20度程度に保たれており、裸足でも大丈夫な暖かさに(画像提供/断熱推進イニシアチブ)

木下さんが実際に性能向上リノベをした物件。改修前はUa値0.94でしたが改修後は Ua値0.28と大幅に性能向上(画像提供/断熱推進イニシアチブ)

木下さんが実際に性能向上リノベをした物件。改修前はUa値0.94でしたが改修後は Ua値0.28と大幅に性能向上(画像提供/断熱推進イニシアチブ)

加えて、日本の既存住宅のうち、1999年の省エネ基準(2025年義務化予定)に達しているのがわずか1割程度しかないこと、建築物が断熱されていないため多くのエネルギーを無駄にしていること、断熱性能をあげるにはまず「窓」が大切であることを説明していきます。実体験+データを交えての話はリアリティがあるうえ、建築士ではなく、ひとりの住まい手としての体験から得た話となっており、非常にわかりやすいものとなっていました。

また、現在は「先進的窓リノベ事業」「長期優良住宅リフォーム推進事業」「信州健康ゼロエネ住宅(リフォーム)」といった助成制度があること、省エネ性能が高いものほど補助額が高いこと、今ある窓の内側にもう一枚窓をつくる工法、今ある窓枠を壊さず新しい窓に交換する工法があることなども紹介されていました。

上田高校の断熱改修ワークショップの施工前

上田高校の断熱改修ワークショップの施工前と施工後(画像提供/断熱推進イニシアチブ)

上田高校の断熱改修ワークショップの施工前と施工後(画像提供/断熱推進イニシアチブ)

断熱材を入れたところはオレンジで15度になっているが、入っていないところは紫色で7.6度。表面の温度差7.4度!(画像提供/断熱推進イニシアチブ)

断熱材を入れたところはオレンジで15度になっているが、入っていないところは紫色で7.6度。表面の温度差7.4度!(画像提供/断熱推進イニシアチブ)

参加者には子育て世帯が多いのかと思いきや、年配世代も多数参加していました。築年数が経過した住まいは無断熱、または断熱性の低い住まいが多いので、当たり前といえば当たり前かもしれません。講演のあとには、断熱材の主な材質とその特徴の違いについての質問が飛び出すなど、講演者・参加者のみなさんの本気度合いに圧倒されます。

建具職人によるDIYのコツ。成否の鍵を握るのは採寸と裁断

その後、二部でも登場する現役の建具職人・窪田智文さんが登壇し、ホームセンターで販売されている内窓キットを使って内窓を作成するコツを話してくれました。窪田さんは2012年の技能五輪全国大会家具部門で銅メダルに輝き、現在でも建具と家具を担当する現役の建具職人です。今までも上田高校などの断熱ワークショップを手伝っているそうですが、地元にこうしたトップクラスの職人さんがいて、協力を得られるのは大変貴重です。

窪田さんによるDIYのミニレクチャー。みなさん熱心にメモをとっていらっしゃいます(写真撮影/嘉屋恭子)

窪田さんによるDIYのミニレクチャー。みなさん熱心にメモをとっていらっしゃいます(写真撮影/嘉屋恭子)

窪田さんによると、ホームセンターでも内窓のDIYキットの取り扱いは増えているとのこと。DIYキットの内容は(1)窓枠に貼るレール、(2)サッシにあたるフレームのセットで、価格は2000~4000円程度。これに加えて、窓ガラスに相当するポリカーボネートを購入し、1窓約1万円程度でできるそう。

既存の窓に加えて、内窓を1枚つけると空気層ができます。空気は熱を伝えにくい性質をもっているため、冬は暖かく、夏は涼しくなる、これが内窓での断熱性が向上する理由です。
内窓のDIYを成功させるにはいくつかコツがあるそうですが、要約すると以下になります。

(1)既存の窓枠をしっかり採寸する
・定規はしっかりした材質で、まっすぐ良いものを使う
・レーザー計測器もあるが、自分でもしっかり確認を
・幅や高さだけでなく、真ん中の高さ、斜めもしっかり測る
(築年数が経過した物件はたわんでいることがあるため、たわんでいたら要補正)

(2)窓にあたるポリカーボネート板をまっすぐ裁断する
・ポリカーボネート板を、計測したサイズどおりに、まっすぐ切ること
・一度に切ろうとするのではなく、表面に筋をつけていき、徐々に裁ち落とす
・自分で切るのが難しい人はホームセンターのカットコーナーで依頼するとよい(ホームセンターにもよるが、1カット100円以内)

また、窓が大きいほど採寸・裁断が難しくなるため、まずは小さな窓からはじめてみて、成功したら次の窓をすすめるとよい、とアドバイスしていました。

温度差10度! 部屋の体感はぐっと暖かくなった

そしていよいよ二部のワークショップへ。今回は上田地域振興局が入る上田合同庁舎3階の会議室の内窓合計14枚を作り、その後も使っていく計画です。市民参加で公共建築物の断熱性が向上できるのは、とても有意義な取り組みですよね。何しろ(1)ワークショップの場として活用でき、(2)設計施工費用を抑えることができる、(3)建物の省エネ性能が高まる、(4)内窓を知らなかった人も目にすることができ、興味が湧く、など一石四鳥にもなるからです。

講師となる窪田さんに加え、木下さん、小さなお子さんはもちろん、高校生、大人など幅広い世代の参加者がいっしょに作業をしていきます。まずは安全のためにラジオ体操を行いますが、同じ空間で体操をするとぐっと気持ちの距離が縮まり、和やかな雰囲気になります。

また、SUUMOジャーナル編集部員も人生初のDIY体験で参加しましたが、「取材じゃなければ、人生で一度もDIYをしないと思う」というタイプだそう。興味はあるものの、なかなか腰が重い。これは、多くの人が同じ気持ちになるのではないでしょうか。

そんなDIYスキルも事情も異なる参加者が力を合わせ、完成したのが14枚の内窓です。まずは完成したところからご覧ください。下の写真でいうと、右の白枠が設置した内窓、左の結露しているのが既存の窓です。

窓にさわって温度の違い感じるお子さん。既存の窓は冷たく結露していますが、内窓はひんやりとせず温かい!(写真撮影/嘉屋恭子)

窓にさわって温度の違い感じるお子さん。既存の窓は冷たく結露していますが、内窓はひんやりとせず温かい!(写真撮影/嘉屋恭子)

完成した14枚の内窓をはめこんだ様子。内窓と既存の窓、その表面温度差10度にも(写真撮影/嘉屋恭子)

完成した14枚の内窓をはめこんだ様子。内窓と既存の窓、その表面温度差10度にも(写真撮影/嘉屋恭子)

内窓をつけたところ。サーモグラフィカメラで撮影すると17度と温かくなっています(写真撮影/嘉屋恭子)

内窓をつけたところ。サーモグラフィカメラで撮影すると17度と温かくなっています(写真撮影/嘉屋恭子)

既存窓を撮影するとなんと7度。そばによるとひんやりとした冷気を感じます(写真撮影/嘉屋恭子)

既存窓を撮影するとなんと7度。そばによるとひんやりとした冷気を感じます(写真撮影/嘉屋恭子)

取材日は最高気温5度、外はみぞれ交じりの天気でしたが、内窓はつけるとその表面温度は17度に。手のひらでさわるとより温かさを実感します。約2時間でここまででき、さらに直後で冷やされていないとはいえ表面温度にこんな変化があるとは。まさに感動!のひとことです。

内窓DIYするなら、ホームセンターのカットサービスを活用すると簡単に!

ここであらためて、どのようなプロセスで進められていったのか紹介します。

<使う道具>
内窓キット 14枚分
ポリカーボネート板 14枚分
軍手、差し金、鉛筆、カッターなど

<ワークショップの流れ>
(1)窓レールにあたるパーツの切り落とし
(2)窓レールにあたるパーツを貼る
(3)フレームパーツを切り落とし
(4)ポリカーボネート板を切り落とす
(5)フレームをはめ、フィルムを剥がす
(6)完成した窓を窓枠にはめる

こうしてみると、特別な道具は使わず、材料を切断して貼ったり、枠にはめていったりと、難しい作業はしていません。ただ、やっぱりそこは初対面の人との共同作業になるので、談笑しつつ手探りで作業を進めていきます。

(1)指示にしたがって窓枠になるパーツを指定のサイズに裁ち落とす(写真撮影/嘉屋恭子)

(1)指示にしたがって窓枠になるパーツを指定のサイズに裁ち落とす(写真撮影/嘉屋恭子)

(2)カットした窓枠を両面テープで貼って固定しているところ(写真撮影/嘉屋恭子)

(2)カットした窓枠を両面テープで貼って固定しているところ(写真撮影/嘉屋恭子)

既存の窓枠の手前、白い樹脂が貼り付けた内窓のレール部分になります(写真撮影/嘉屋恭子)

既存の窓枠の手前、白い樹脂が貼り付けた内窓のレール部分になります(写真撮影/嘉屋恭子)

(4)ポリカーボネート板を規定のサイズに裁断していきます(写真撮影/嘉屋恭子)

(4)ポリカーボネート板を規定のサイズに裁断していきます(写真撮影/嘉屋恭子)

カットできたポリカーボネート板にフレームをはめこんでいきます(写真撮影/嘉屋恭子)

カットできたポリカーボネート板にフレームをはめこんでいきます(写真撮影/嘉屋恭子)

最後にフィルムを剥がして完成(写真撮影/嘉屋恭子)

最後にフィルムを剥がして完成(写真撮影/嘉屋恭子)

白いフレームがDIYで作った内窓です。1面ですが、達成感と充実感が湧き上がります(写真撮影/嘉屋恭子)

白いフレームがDIYで作った内窓です。1面ですが、達成感と充実感が湧き上がります(写真撮影/嘉屋恭子)

参加されたみなさんに感想を聞きましたが、「実際にできるか不安だったが、楽しかった」「プロの技がすごいなと思った」などの感想が。なかには「DIYはあきらめてプロに依頼しようと思いました」「ホームセンターで切断してもらって、はめるだけならできるかも」との声も。確かにホームセンターで「裁断」までしてもらえていれば、ぐっと家庭でも取り入れやすいと思いました。

筆者は窪田さんのキズをつけないコツ、四隅のサイズを少しずつ調整していく仕事の確かさ、身のこなしなどが印象に残りました。なかなか見られない建具職人の仕事ぶりは、まさに眼福です。

さらに今回、DIY初体験だった編集部員はDIYに開眼したらしく、黙々とポリカーボネート板を切り落としていました。「無心になれていい。モノをつくる達成感がふつふつと湧いてくる」とのこと。DIYは無縁と思っていても、目の前で一つの形になっていく、クリエイトする喜びはやっぱり人の心に訴えかけるものがあるようです。

主催した長野県上田地域振興局環境課の上原さんによると、企画の背景を「地球温暖化対策として、やはり窓がよいということを聞いて、今回のワークショップを企画しました。想像以上に反響があり、関心の高さを実感しました。また、実際に手を動かすなかで得られたものは大きいですし、何よりみなさん進むとにこにこしてらして。身近なところから環境負荷を減らすとともに、住まいが快適になればうれしいですね」と話していました。

今回の講演とワークショップ、大きな反響もあったようなので今後、上田だけでなく、長野県全域に広がっていくかもしれません。こうした「断熱改修」の流れが、日本全国の津々浦々に広がっていったらいいのに、そう願わずにはいられません。

●取材協力
・長野県上田地域振興局環境課
・NPO法人上田市民エネルギー
・断熱推進イニシアチブ
・有限会社クボケイ

猫飼いさんの家選び、マンション・戸建て・リノベ、どれがいい?注意したいポイントは”ペットトラブルの防止”

2月22日は「猫の日」だったのニャー。「猫の日」にちなんで、ゼロリノベを運営するgroove agentが、東京都在住の猫を飼っている20~40代の男女1000人を対象に、猫と暮らす家に関してアンケート調査を実施した。それによると、猫と暮らす家にはお悩みがいろいろあるのだという。どんなことだろうか?

【今週の住活トピック】
「猫と暮らす家のお悩みランキング」を公表/groove agent

3位「家具や壁で爪をとぐ」、2位「毛が抜けて敷物や洋服につく」、そして1位は?

筆者はかつて「ペットは犬より猫? 散歩、しつけの手間が犬人気下落の要因か」という記事を書いたが、ペットフード協会の調査によると、飼育されるペットの頭数は、2014年以降ずっと猫が犬を上回っている。それほど、ペットとして猫の人気は高いのだ。

家族同様の愛猫でも、猫と暮らす家についてはお悩みも多いようだ。ゼロリノベの調査によると、お悩みの3位は「家具や壁で爪をとぐ」、2位は「毛が抜けて敷物や洋服につく」、そして1位は「猫飼育可能な物件が少ない」という結果だった。

出典:ゼロリノベ調べ

猫と暮らすうえで、家の中のことは対応方法を自身で工夫できたとしても、住める家自体が見つけにくいことが最大の悩みごとというわけだ。

猫と暮らすために住み替えるなら、新築戸建て?

調査対象者が現在猫を飼っている家は、「賃貸」が51%、「持ち家」が49%とほぼ同じだ。ただ、「猫と暮らす家」として満足しているのは全体の44%で、その内訳は「持ち家」が57%を占めたので、持ち家のほうがやや満足度が高いようだ。賃貸に不満を感じる理由としては、家が狭いことなどが挙がっているという。

では、「猫と暮らすために購入・住み替えするなら」どんな家がよいのだろう。結果は「新築戸建て」が最多の32%だった。「中古戸建て」の14%と合わせると戸建てが46%になり、マンション(新築マンションと中古マンションの合計で39%)より戸建てのほうが猫と暮らしやすいと思っている人が多いようだ。戸建てに住み替えを検討している人のコメントに、「管理組合などの規定に縛られない戸建てに住み変えたい」とあるように、マンションでは「管理規約」などでペット飼育に関する細かい制限があるからだろう。

出典:ゼロリノベ調べ猫の飼育が可能な物件を探す際に注意したいこと

猫の爪とぎ用のボードを壁に張ったり、こまめにブラッシングしたりと、猫を飼ううえでの工夫などはいろいろあるだろうが、ここでは、猫が飼える物件を探すときに注意したいことを説明しよう。

まず、賃貸物件について。はじめから「ペット可」で入居者を募集している物件を選びたい。その場合でも、ほかの入居者とのトラブルを避けるために、ペット飼育のための建物になっていたり、飼育のルールがあったりするほうがよいだろう。賃貸物件の中には、エントランスに足洗い場があったり、室内の壁のクロスを上下に分けて下の部分だけ張り替えできるようになっているものもある。また、一般的には、退去の際にはペットによる臭いや損傷について原状回復が求められるので、室内の仕様設備や契約書の内容などもしっかり確認したい。

次に、新築や中古のマンションの購入について。マンションには「管理規約」などの規則がある。必ず「ペット飼育可能」になっているか確認し、ペット飼育の条件としてどんなルールがあるかを詳しく調べよう。ペットの大きさや頭数に制限がある場合がほとんどなので、自分の希望通りに猫が飼えるか確認したい。ほかにも、ペット委員会などの飼育者の組織があり、予防接種を義務づけるなどの会則が整っているほうがよいだろう。ペット対応型マンションとして、ペット飼育のための共用設備や設計がなされているものもある。

新築か中古かについては、いろいろな考え方があるだろう。先ほどの調査結果では、猫と暮らすために購入・住み替えをするなら新築戸建てに住みたいと回答した人のなかには、「注文住宅にすれば自分たちにも猫にも住みやすい家が設計できるかもしれないから」とコメントした人もいて、分譲の新築物件ではなく注文住宅を建てるイメージをもっている人もいるようだ。同じ理由で、中古住宅を買ってリフォームやリノベーションをしたいと回答した人もいるだろう。

猫の安全や健康を守るには、滑りにくい床材やペットドア・キャットウォークの設置など、通常の住宅にはない仕様や設備を採り入れる必要がある。そういう意味では、中古住宅を買ってすぐに、あるいは一定期間が経ってからペット対応のリフォームをするという選択肢も有効だ。

最後に指摘したいのは、猫を飼っている人との情報交換も大切だということ。戸建てのほうが規制を受けることなく猫を飼える側面もあるが、マンションの場合には飼育仲間と情報交換ができるという側面もある。何を重視するかをよく考えて、詳しく調べたうえで物件を選ぶのがよいだろう。

さて、本連載の筆者の担当編集者は犬派らしいが、SUUMOジャーナルの記事で「猫」のテーマは人気だという。丸まって寝たり猫じゃらしで遊んだりする姿を見れば、癒やされて家事や仕事の疲れも解消されることだろう。室内で飼いやすいこともあって、猫人気は今後も続くと思われる。飼い主にとっても愛猫にとっても、暮らしやすい家が増えることを期待している。

●関連サイト
「猫と暮らす家のお悩みランキング」(ゼロリノベ調べ)

首都圏の住宅流通市場、昨年は価格は上昇&成約は減少と硬直気味。2023年はどうなる?

2023年に入って、2022年の住宅市場の動向が相次いで公表された。そこで今回は、東日本不動産流通機構(通称:東日本レインズ)の首都圏の流通市場の動向について見ていくことにしよう。ポイントは、価格の上昇と成約件数の減少だ。

【今週の住活トピック】
「首都圏不動産流通市場の動向(2022年)」を発表/(公財)東日本不動産流通機構

住宅の流通市場が分かるレインズとは?

住宅の流通市場を見るのによく利用されるのが、レインズだ。レインズ(REINS)とは、「Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)」の略称で、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムのことだ。一定の媒介契約を結んで不動産を仲介する事業者は、このネットワークを通じて、物件情報を共有することが義務づけられている。

不動産流通機構は、現在全国で4つ(東日本地区、中部圏、近畿圏、西日本地区)あり、不動産の売買物件と賃貸物件を扱っている。今回は、売買物件について動向を見ていこう。なお、東日本を担当しているのが東日本不動産流通機構で、主に首都圏の不動産取引の情報を公開している。

首都圏の2022年の流通市場、前年より成約件数が減少し、価格は上昇

では、2022年の首都圏の流通市場の動向を見ていこう。ここでいう「成約物件」とは、指定流通機構に契約が成立したと報告された物件(いわゆる、契約済み物件)のことで、「新規登録物件」とは、新たに指定流通機構に登録された物件(いわゆる、新規売り出し物件)のことだ。

東日本不動産流通機構が公表した、中古マンションの成約物件の状況を見ると、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年には、外出自粛が求められたこともあって一時的に取引が縮小したものの、底固い住宅需要があり、成約件数が2019年より微減にとどまった。2021年には、コロナ禍でリモートワークが普及した影響を受けるなどで、住宅需要が拡大し、成約件数はコロナ前の2019年より増加した。withコロナが続く2022年には住宅需要が落ち着きを見せ、成約件数は2020年同様となった。

一方で、平米単価や価格は年々上昇し、2022年には上昇幅が大きくなっている。平均の専有面積が若干小さくなり、築年数がより古くなっているにもかかわらずだ。

中古一戸建ても、似たような傾向が見られる。成約件数は、2020年で落ち込みはないものの、2021年で増加し、2022年には元に戻る動きを見せている。土地や建物の面積や築年数に大きな変化はないものの、価格は上昇を続けている。

首都圏の流通市場の動向(2022年)

*2021年より、戸建住宅・土地の用途地域が未設定・無指定の物件について集計対象から除外する等の集計条件の変更を行っている。
出典:東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2022年)」より抜粋

コロナ禍で新規登録件数は減少するが、中古マンションでは2022年に上場に転じる

次に、首都圏の新規登録物件の動向を見ていこう。新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年以降、売却活動のために自宅に人を入れたくないからか、コロナ禍なので住宅の売り時でないと判断したからか、自宅を売りに出す人が減ったことで、新規登録件数が減少している。ただし、中古マンションでは、2022年に新規登録件数が増加に転じている。

一方、売り出し価格は、2021年・2022年でかなり強気の値付けをしている。これは、今売る理由がある人だけでなく、中古マンションの価格が上昇していることが報じられたことから、高く売れるなら売ろうという人が多くいたと考えられる。

首都圏の流通市場の動向(2022年)

**2022年より、新規登録の集計範囲を変更(媒介契約更新や登録期間延長を除く新たな登録のみに絞って計上)している。
なお、これまでと同じ基準での比較が困難であるため、前年比を「-」と記載している。
出典:東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2022年)」より抜粋

住宅を買う人の数は安定しているのに、売る人が少ないとなると、市場全体で流通する物件数が減っていく。実際に、東日本不動産流通機構の「月例マーケットウォッチ」で各年の12月末の在庫物件数の推移を追ってみると、次のようになった。

■中古マンションの在庫物件数(首都圏)
2019年末   2020年末   2021年末   2022年末
47,051戸 → 38,173戸 → 35,718戸 → 41,665戸
■中古一戸建ての在庫物件数(首都圏)
2019年末   2020年末   2021年末   2022年末
22,764戸 → 17,921戸 → 13,157戸 → 14,754戸

2021年12月末時点までは急速に市場の在庫物件数が減少してしまったが、2022年に新規登録物件数が増えたり、在庫がだぶついたりして、在庫物件数が増加に転じる形となった。特に、中古マンションでは2022年に在庫物件数が急激に増えている。

では、2023年の住宅流通市場はどうなる?

在庫不足が価格を押し上げる要因になったという側面もあるが、流通市場の在庫物件数は戻りつつある。一方で、成約件数は減少している。これは、コロナ禍で生じた住宅需要による住み替え、たとえばより広い住宅へまたは遮音性や省エネ性などのより性能の高い住宅へという住み替えが、一段落したという見方もできれば、買う側と売る側の希望条件や希望価格が折り合っていないという見方もできるだろう。

特に中古マンションでは、価格の上昇が長く続き、好条件の中古マンションに手が出にくいという市況にもなっている。2023年は在庫も増えていることから、価格調整局面に入ると考えられる。中古マンションの価格に落ち着きが見えれば、中古一戸建ての価格も落ち着いていくだろう。

気になるのは、住宅ローンの金利動向だ。日本銀行が長期金利の上限を0.25%程度から0.5%程度に引き上げる金融緩和策の修正をして以降、金融市場の長期金利に連動する【フラット35】や長期間金利を固定する住宅ローンの金利がじわじわと上がっている。

住宅ローンの金利が上昇すると、ローンの借入可能額が減ってしまったり、毎月の返済額が多くなったりするので、買う側に大きな影響を与える。国際的に不動産投資市場を見ると日本の住宅は割安に見えるので、マンションはまだ影響が小さいものの、マイホームとして買われる一戸建てはローンの金利動向の影響を受けやすい。

今はまだ住宅ローンの金利に大きな変動はないが、今後の景気動向や日本銀行の方針変更などによって、金利が大きく動き出すと、駆け込み需要が起きて価格がさらに上昇したり、急速に市場が冷え込んだりといった事態も想定できる。

2023年は、住宅ローンは超低金利、住宅価格は上昇トレンドといった、これまで通りの状況が続くと考えない方がよいだろう。2023年に住宅を買うなら、あわてないように希望条件を明確にしておき、金利上昇を踏まえた無理のない資金計画を立てることが大切だ。2023年に売る気なら、流通市場の相場をデータなどでよく理解して、適正な価格で売り出すことが大切だ。

●関連サイト
(公財)東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2022年)」

世帯年収アップも、住宅取得費や借入額も増加! 戸建注文住宅の実態調査2021年度の結果は?

住宅生産団体連合会(以下、住団連)の「2021年度戸建注文住宅の顧客実態調査」の結果が公表された。ウッドショックなど建築資材の高騰が指摘されていたので、コストアップが気になるところだが、どうなっていただろう。住宅ローンの借り方や住宅に設置する最新の設備などにも、影響はあったのだろうか?

【今週の住活トピック】
「2021年度戸建注文住宅の顧客実態調査」結果を報告/(一社)住宅生産団体連合会

昨年度よりも住宅取得費が増加し、借入額や自己資金が増加

この調査は、三大都市圏と地方都市圏に注文住宅を建てた人を対象に住団連が毎年行っているもので、2021年度で第22回目となる。

まず、注文住宅を建てた人の平均像を見ていこう。世帯主年齢の平均は39.9歳で、平均世帯人数は3.14人。夫婦に子どもが一人というのが、平均的な顧客層なのだろう。

次に、建てた注文住宅の平均像を見ていこう。
●建築費は3816万円(対昨年度1万円増)
●建築費の1平米単価は30.6万円(対昨年度0.5万円増)
●土地代を含む住宅取得費は5783万円(対昨年度446万円増)
●延べ床面積は124.5平米(対昨年度2.3平米減)
●自己資金は1481万円(対昨年度188万円増)
●借入額は4967万円(対昨年度366万円増)
●世帯年収は993万円(対昨年度29万円増)
●借入金の年収倍率5.00倍(対昨年度0.23ポイント増)
※土地の取得方法は、従前の敷地(建て替え)28.2%、新たに購入(54.1%)などがある。

住団連では、「世帯年収が増加したものの、建築費、住宅取得費が上昇し続けていることから、延床面積を抑制するとともに、自己資金や借入金を増やすことで対処している状況が読み取れる」と分析している。

約4割が夫婦で住宅ローンを借り、夫婦で返済する形をとっている?

住宅取得費が増加するにつれて、借入額も増加しているが、では誰が住宅ローンを借りているのだろう?結論から言うと、夫婦で力を合わせて借りている人が多いことがわかった。

夫婦2人でお金を出し合ってマイホームを買う場合、方法はいくつかある。
最近増えているのが「ペアローン」だ。ペアローンとは、1つの物件に対して、夫婦それぞれが自分の収入に応じて住宅ローンを借りるというもの。(ちなみに、ペアローンは夫婦に限らず、同居している親子などでも利用可能)

もう一つの方法が、「収入合算」。収入合算は、例えば夫が住宅ローンを借りる場合に、妻の収入を上乗せして、その収入に対してローンを借りるもの。民間金融機関の多くは「連帯保証型」の収入合算を採っているので、住宅ローンの返済をするのは夫だが、妻は夫の連帯保証人となって万一のときに返済の義務を負う。なお、妻の収入の全額ではなく、半分程度を上乗せできるとする金融機関が多い。(ちなみに、【フラット35】など一部のローンでは「連帯債務型」の収入合算を取り扱っている)
※ローンを借りた人を債務者といい、連帯保証が債務者の返済を連帯して保証するのに対し、連帯債務は二人とも債務者となる。

この調査では、ペアローンあるいは収入合算を利用しているかどうかを聞いている。その結果、39.6%がいずれかを利用して、夫婦(または親子)でローンを借りている。

また、ペアローンと収入合算と、どちらが多いかというと、収入合算が55.8%、ペアローンが44.2%という比率になった。

ペアローン・収入合算の利用状況(出典:住団連「2021年度戸建注文住宅の顧客実態調査」)

ペアローン・収入合算の利用状況(出典:住団連「2021年度戸建注文住宅の顧客実態調査」をもとにSUUMO編集部作成)

甚大化する災害や新型コロナウイルスの影響で、住宅のプランは変わった?

次に、住宅のプランを見ていこう。近年は、甚大化する災害や新型コロナウイルスなどの影響で、注文住宅のプランにも変化が見られる。

新しい生活様式などへの対応・関心を複数回答で聞いた結果から、採用した・あるいは関心があるの回答率の高い(30%を超える)ものを抽出してみた。

【テレワーク・オンライン授業環境への対応】
テレワークスペースの設置         43.3%
【ステイホームに対応した快適な居住性能】
良好な遮音性・防音性・省エネ性等     40.5%
【感染防止に配慮した住宅】
玄関に近い洗面スペース          41.8%
【災害時の自立的継続居住性能(レジリエンス性の強化)】
耐震性の確保(長期優良住宅等)      64.3%
創エネ設備(太陽光発電・エネファーム)  35.2%

自宅で仕事をしたり長時間自宅にいたりするので、仕事のスペースや住宅性能を求める意識が高くなっていることがわかる。また、災害も増えていることから、自宅のレジリエンス性への関心も高い。

こうした変化を受けて、最新設備・技術などの採用率が近年増加したものを調べると、以下の3つが顕著に伸びていた。

最新設備の採用率の比較

最新設備の採用率の比較(出典:住団連「2021年度戸建注文住宅の顧客実態調査」をもとにSUUMO編集部作成)

なお、最近注目されるZEH(net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略語)についての回答を見ると、2021年度は「ZEHにした」割合は27.9%で、「検討は行ったが、ZEHにしなかった」が24.4%となった。ZEHの採用率は年々増加しているが、現状では3割弱といったところだ。

ZEHの検討の有無(出典:住団連「2021年度戸建注文住宅の顧客実態調査」)

ZEHの検討の有無(出典:住団連「2021年度戸建注文住宅の顧客実態調査」をもとにSUUMO編集部作成)

ZEHにしなかった理由では、「スケジュールが大きくかわってしまう」が 45.3%と最も高く、次いで「掛かり増し費用が高いと感じたから」が22.4%だった。ZEHにするには、住宅の省エネ性能を高めたうえで、太陽光発電パネルなどの創エネ設備に加え、エネルギー消費効率の良い給湯器や冷暖房設備、照明などを設置する必要があり、その分コストがかかる。そのため、ZEHではない住宅よりも費用が高くなることや、それをカバーするZEH関連の補助金の申請・承認に時間がかかることなどが、採用しなかった要因となっていることが考えられる。

注文住宅のメリットは、建て主が住宅の性能や間取り、設備を選べることだ。若い世帯では夫婦共働きが当たり前になり、住宅ローンも2人で力を合わせて借りている。調査結果の中には、「家事負担軽減に資する工事(ビルトイン食器洗機、浴室乾燥機、宅配ボックス、キッチン・洗面所・トイレに設置する収納等)」の採用率が50.2%という結果もあり、家事が楽になるものを積極的に選んでいることもうかがえる。

さらに、耐震性や省エネ性、災害対策などにも関心が高い。しかし、費用面の制約もあり、優先順位をつけて選んでいることがうかがえる結果だ。今はマイホームに対して求める機能も多様化しているので、ますます予算内で何を選ぶかしっかりと考えることが大切になっていくだろう。

●関連サイト
(一社)住宅生産団体連合会「2021年度戸建注文住宅の顧客実態調査」

自宅サウナを楽しむ人が増加中! サウナ付きマンションや一戸建てが人気

サウナ愛好家が増え続けている昨今。ついには、サウナを兼ね備えた分譲マンションや建売一戸建てまで登場しています。住まいのサウナ事情をお伝えします。

サウナをオプションで選べる分譲マンションが登場。ロウリュや外気浴も!

タナカカツキ氏の漫画『サ道』やそのドラマを火付け役に、サウナブームが到来。従来のサウナ施設に加え、自然の中や都心のビルの屋上などで楽しむ新感覚のサウナが人気を集め、アウトドアや家で楽しめるサウナテントも話題になりました。今年に入ってからは、なんと、サウナを備えた住宅のニーズが高まっているといいます。中古マンションのリノベーションでサウナを導入する人も出てきているほか、伊藤忠都市開発はサウナをオプションで選べる分譲マンション「クレヴィアたまプラーザ」の販売を開始。「クレヴィアたまプラーザ」を企画した伊藤忠都市開発 住宅事業部の木内伸太郎さんに企画の背景を伺いました。

クレヴィアたまプラーザ(写真提供/伊藤忠都市開発)

クレヴィアたまプラーザ(写真提供/伊藤忠都市開発)

「コロナ禍で自宅で過ごす時間が増え、今後もテレワーク継続の可能性があります。そのため、クレヴィアたまプラーザは、自宅でいかに快適に過ごせるかを考慮した設備とデザインになっています。サウナをオプションで設置できる『ONE MORE ROOM』は、在宅時間が増える中で趣味などの多目的に使える部屋として企画されたものです。プライベート空間でサウナを楽しみたいという需要を見込み、一つの提案として、サウナをオプションに加えました」(木内さん)

「クレヴィアたまプラーザ」は、東急田園都市線たまプラーザ駅から徒歩7分の南傾斜の丘に立つレジデンスです。窓から街を眺望できる33戸のうち、Lタイプの住戸にオプション(有償)でサウナを選ぶことができます。北欧メーカーのドライサウナは、ロウリュ(サウナストーンに水をかけて熱い蒸気を発生させること)も可能な本格派。発汗したあとは、浴室で水風呂に入り、隣接するルーフデッキで外気浴ができる至れり尽くせりな設計です。温かいお風呂と冷たい水風呂に交互に入る温冷交代浴は、自律神経への刺激と血行を促進するとされ、休憩をとりながら入るとことでヒートショックを防止できます。

バスルーム(「D」)の下に位置する「ONE MORE ROOM」のオプションとしてサウナを設置可能(画像提供/伊藤忠都市開発)

バスルーム(「D」)の下に位置する「ONE MORE ROOM」のオプションとしてサウナを設置可能(画像提供/伊藤忠都市開発)

住宅市場にも訪れたサウナブームは、マンションだけにとどまりません。「クレヴィアたまプラーザ」だけでなく、伊藤忠グループのイトーピアホームでは、都内の建売一戸建て住宅にスウェーデン製サウナの導入を企画。10月初旬にサウナ付き一戸建て2棟を竣工しました。8月20日から購入希望者の事前エントリーを開始したところ、販売会社のアラモード練馬店には多くの反響があり、すぐに完売したというから驚きです。

写真はA棟で導入したサウナ(写真提供/AVANTO)

写真はA棟で導入したサウナ(写真提供/AVANTO)

サウナ付き一戸建て住宅が登場! サウナはパブリックからパーソナルな存在へ

サウナ付き新築一戸建てのドライサウナルームの選定、および空間のデザイン監修を行ったのは、サウナの本場北欧生まれのサウナメーカー「ティーロヒーロ」の販売代理店「AVANTO」です。今回、新築一戸建てに採用したのは、ドライサウナです。

ヒーターは熱くないようにカバーで覆われ、異常温度を察知すると自動停止する安全性を備えています。家庭では一般的に単相100Vが主流ですが、こちらのサウナ導入には、単相200Vが必要です。価格帯は、サウナヒーターは30万円~、サウナルームは228万円~。木造3階建て3LDKのサウナ付き新築一戸建ては、洗面室と浴室に隣接してサウナルームがあり、サウナのあと、浴室の水風呂に入り、階段を上ってルーフバルコニーに出る動線になっています。

1階・2階部分の間取図の一部。1階の洗面室に隣接してドライサウナルームを設け、2階のルーフバルコニーは、周囲の視線が気にならないよう高めのフェンスで囲っている(画像提供/AVANTO)

1階・2階部分の間取図の一部。1階の洗面室に隣接してドライサウナルームを設け、2階のルーフバルコニーは、周囲の視線が気にならないよう高めのフェンスで囲っている(画像提供/AVANTO)

サウナ付き一戸建てを購入したYさん夫妻は、もともとサウナに入るのが共通の趣味。決め手となったのは、サウナを楽しめる間取りと動線と夫のH・Yさん(28歳・会社員)は言います。

「コロナ禍で旅行に行けないストレス発散に週3回ほど街のサウナに通っていました。でも、サウナは密室なのでしゃべる人がいると気になります。それだったら、家にサウナをつくりたいと思うようになりました。今回の物件は郊外ですが通勤に支障はなく、価格は5000万円代でしたが、即決でした」(H・Yさん)

(写真提供/AVANTO)

(写真提供/AVANTO)

(写真提供/AVANTO)

(写真提供/AVANTO)

安全機能があるので自宅での使用に不安はなく、手入れは入浴後にタオルでサウナの内部を拭くだけ。電気代も毎日1時間入ってもひと月3千円以内と二人で何度もスーパー銭湯に行くより割安です。

「外で入るのと違って、温まったままベッドに行けるのもうれしいです」と妻のA・Yさん(27歳・公務員)。入居は11月から。好きなアロマを焚いてみたいと入居を心待ちにしています。

好みに合わせて場所や時間、サウナを選べる流れがきている

AVANTOの広報の竹下あすかさんは、上記のイトーピアホームのサウナ付き新築一戸建てにとどまらず、「サウナを特別な日だけでなく、誰でも自宅で楽しめるものにしたい」と言います。

「今から○年ほど前は、街のスーパー銭湯などで入れるサウナといえば、100度以上の高温になるドライサウナが中心でした。当時はおじさまが、ぐっと我慢して入るというイメージで、若い人にはそれほど人気ではなかったんです。それが、私が学生になったばかりのころ、△年くらい前、スチームタイプのサウナがXXXに登場しました。ジリジリと熱いスーパー銭湯のドライサウナに比べ、スチームサウナは室内の温かな蒸気で温まるものです。不眠などの不調が改善され、疲れが残らなくなったのに感動しました」(竹下さん)

東京都渋谷区神宮前にあるショールームでは、本場北欧のドライサウナとスチームサウナの実物展示をしています(要予約)。在宅ワークの合間に頭を休められるので、IT系やクリエイティブ職の人を中心に、体験し、自宅に導入する人が増えているそうです。

ドライサウナ(左)とスチームサウナ(右)の2種。右はスチームサウナは体験することができる。機器を設置すれば既存の浴室がそのままサウナにできるというもの(写真提供/AVANTO)

ドライサウナ(左)とスチームサウナ(右)の2種。右はスチームサウナは体験することができる。機器を設置すれば既存の浴室がそのままサウナにできるというもの(写真提供/AVANTO)

まずはズラリと並ぶオーガニックのアロマやシャンプー、ボディソープからハニーシトロンのアロマを選び、発汗を促すようにブレンドされたオリジナルハーブティーをいただいてからスチームサウナへ。スチームサウナとは、水蒸気で40℃~50℃の室温にするサウナです。ドアを開けると霧がいっぱいに満ちています。身体を洗ったあとに、壁付けのベンチに腰掛け、10分ほどすると、ジワジワと汗をかいてきました。アロマの香りのする温かな蒸気に包まれます。十分に温まったあと、最後は、水シャワーで汗を流します。シャワーを浴びて驚いたのは、非常に細かい粒子のミストであること。肌に吸い付くようです。

無料のスチームサウナ体験は完全予約制。リネンのフェイスタオルやバスローブも用意されている(画像提供/AVANTO)

無料のスチームサウナ体験は完全予約制。リネンのフェイスタオルやバスローブも用意されている(画像提供/AVANTO)

アメニティーも充実。シャンプーやボディソープは5種類、アロマは13種類から選べる(画像提供/AVANTO)

アメニティーも充実。シャンプーやボディソープは5種類、アロマは13種類から選べる(画像提供/AVANTO)

スチームサウナから出たあとは水分を取りながら、チェアで風を浴びて一休み(画像提供/AVANTO)

スチームサウナから出たあとは水分を取りながら、チェアで風を浴びて一休み(画像提供/AVANTO)

「スチームサウナは、もともと、特別にサウナスペースをつくらなくても、今ある浴室に取り付けることもできます。手入れはシャワーをかけるだけ。蒸気でカラッと乾くので清潔で掃除いらず。1回の入浴で3リットルの水しか使わないので、経済的です」(竹下さん)

木の香りのするドライサウナルームは、シンプルでモダンなデザイン。ボックス状で特別な工事不要で設置ができます。セルフロウリュすることで蒸気と温度を快適に調整することができます。

「10分ほど入れば頭がスッキリするスチームサウナはテレワークなどの休憩時間や朝の忙しくなる前に、温冷交代浴すると1時間ほどかかるドライサウナはゆっくり夜に楽しむのがオススメです。サウナが、自宅で過ごすライフスタイルの新しい選択肢になれば」(竹下さん)

リネンのバスローブを着て水を飲んで心地よい風に当たりながら休憩すると、心身がリラックスして最高に気持ちよく、「ととのう」感じがしました。

北欧のむく材でつくられたドライサウナルームの実物を見ることができます(画像提供/AVANTO)

北欧のむく材でつくられたドライサウナルームの実物を見ることができます(画像提供/AVANTO)

まだまだ高まりそうなサウナ熱。サウナがより日常的な存在になれば、一過性のブームで終わらず、マラソンやヨガのように健康維持のツールとして定着するでしょう。浴室には浴槽とともにサウナ、さらには浴槽を設置せずにスチームサウナのみを楽しむ――。そんなふうに、サウナが日本のお風呂ライフに根付くのもそう遠くないのかもしれません。

●取材協力
・伊藤忠商事株式会社
・株式会社AVANTO

「品川駅」まで60分以内、新築&中古一戸建ての価格相場が安い駅ランキング 2021年版

一戸建て住宅を購入する際、暮らしやすさを左右する周辺環境は気になるところ。また、通勤時やおでかけにあたって交通の便がよい立地かどうかも選ぶ決め手の一つだろう。とはいえ職場がある都心周辺だと物件の価格帯が高いし、テレワークが普及した今、職場への近さばかりでなく落ち着いて住める住環境も重視したい……。そんな人に向け、今回は「品川駅まで60分以内」のエリアに絞って一戸建て住宅の価格相場を調査してみた。さまざまなオフィスが集まる品川駅は、山手線をはじめとするJR各線に加え京浜急行本線、東海道新幹線が通り、さらに将来的にはリニア中央新幹線の開業も予定されている。そんな品川駅までアクセスしやすく、さらにリーズナブルに住める街はどこなのか? 新築&中古それぞれの一戸建て住宅の価格相場が安い駅トップ10を一挙ご紹介!
●品川駅まで60分以内の価格相場が安い駅

【新築一戸建て編】TOP11駅
順位/駅名/価格相場/土地面積中央値/建物面積中央値
(主な路線/所在地/品川駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 北小金 3140万円 土地108.92平米 建物96.67平米
(JR常磐線/千葉県松戸市/48分/1回)
2位 相模大塚 3285万円 土地70.66平米 建物104.83平米
(相鉄本線/神奈川県大和市/50分/2回)
3位 北柏 3290万円 土地114.98平米 建物100.60平米
(JR常磐線/千葉県柏市/51分/1回)
3位 天王台 3290万円 土地130.05平米 建物106.66平米
(JR常磐線/千葉県我孫子市/53分/0回)
5位 上尾 3380万円 土地105.34平米 建物90.67平米
(JR高崎線/埼玉県上尾市/54分/0回)
5位 新田 3380万円 土地95.54平米 建物102.22平米
(東武伊勢崎線/埼玉県草加市/49分/2回)
7位 薬園台 3399万円 土地110.15平米 建物104.33平米
(新京成電鉄/千葉県船橋市/52分/1回)
8位 さがみ野 3480万円 土地84.67平米 建物99.36平米
(相鉄本線/神奈川県海老名市/51分/2回)
8位 新井宿 3480万円 土地100.05平米 建物90.99平米
(埼玉高速鉄道/埼玉県川口市/54分/1回)
8位 追浜 3480万円 土地87.63平米 建物96.45平米
(京浜急行本線/神奈川県横須賀市/45分/1回)
8位 飯山満 3480万円 土地110.00平米 建物103.58平米
(東葉高速鉄道/千葉県船橋市/50分/2回)

【中古一戸建て編】TOP11駅
順位/駅名/価格相場/土地面積中央値/建物面積中央値
(主な路線/所在地/品川駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 みずほ台 3390万円 土地103.69平米 建物98.27平米
(東武東上線/埼玉県富士見市/55分/2回)
2位 南太田 3400万円 土地61.44平米 建物93.97平米
(京浜急行本線/神奈川県横浜市南区/34分/1回)
3位 踊場 3490万円 土地104.00平米 建物95.71平米
(横浜市営地下鉄ブルーライン/神奈川県横浜市泉区/37分/1回)
4位 西大宮 3590万円 土地121.23平米 建物100.92平米
(JR川越線/埼玉県さいたま市西区/58分/1回)
5位 上星川 3680万円 土地107.14平米 建物98.54平米
(相鉄本線/神奈川県横浜市保土ケ谷区/35分/2回)
6位 竹ノ塚 3898万円 土地88.29平米 建物85.91平米
(東武伊勢崎線/東京都足立区/41分/2回)
7位 北綾瀬 3930万円 土地67.91平米 建物89.41平米
(東京メトロ千代田線/東京都足立区/41分/1回)
8位 京成立石 3980万円 土地63.82平米 建物79.90平米
(京成押上線/東京都葛飾区/37分/0回)
8位 希望ヶ丘 3980万円 土地107.09平米 建物96.39平米
(相鉄本線/神奈川県横浜市旭区/42分/1回)
8位 弘明寺 3980万円 土地66.83平米 建物96.05平米
(横浜市営地下鉄ブルーライン/神奈川県横浜市南区/40分/1回)
8位 鉄道博物館 3980万円 土地95.00平米 建物104.74平米
(埼玉新都市交通伊奈線/埼玉県さいたま市大宮区/55分/1回)

「新築」編は商業施設充実の街から緑豊かな街まで多彩な顔ぶれ

「新築一戸建て」ランキングの1位は、千葉県松戸市に位置するJR常磐線各駅停車・北小金駅で価格相場は3140万円。4駅先の松戸駅でJR上野東京ライン直通のJR常磐線快速に乗り換えると、品川駅まで乗り換え1回・計約48分で行ける。北小金駅周辺は水戸街道の宿場町・小金宿として江戸時代から栄え、一帯には歴史ある建物も残されている。駅から北へ10分ほど歩くとアジサイの美しさで知られる「本土寺」が、そして南へ7分ほど歩いた小学校の裏手には樹齢約320年と言われるしだれ桜が迎える「東漸寺(とうぜんじ)」がたたずんでおり、どちらの古刹も紅葉が見事なことでも評判だ。

本土寺(写真/PIXTA)

本土寺(写真/PIXTA)

北小金駅南口側にはペデストリアンデッキ(高架歩道)が整備され、複合商業ビル「ピコティ北小金」の西館・東館に直結。西館には保育所や飲食店があり、東館はスーパーの「イオン北小金店」を核として日用品に服飾品、100円ショップやスポーツクラブなど多彩な店舗をそろえている。駅北口前にもスーパーがあるほか、「本土寺」へ向かう参道沿いに米や酒の個人商店や飲食店も点在。また、駅の半径約500m圏内に小学校が3軒あるのも特徴的。それだけ子育て世代が住む街なのだろう。北小金駅を通るJR常磐線各駅停車は終点の北千住駅から先は東京メトロ千代田線に直通運転されており、大手町駅や赤坂駅、表参道駅などへ乗り換えせずに行ける点も魅力だ。

2位は神奈川県大和市に位置する相鉄本線・相模大塚駅で、価格相場は3285万円。1駅隣の大和駅で特急に乗り換えて横浜駅に行き、さらにJR東海道本線に乗ると品川駅まで乗り換え2回・計約50分。所要時間が多少は増えるものの、相模大塚駅から相鉄本線の急行で直に横浜駅へ向かい、そこからJR東海道本線を利用する乗り換え1回のルートでも品川駅まで1時間以内にアクセスできる。また、隣接する大和駅には新宿方面へ向かう小田急線も通っており、大和駅経由で乗り換え1回、1時間前後で新宿駅に行くことも可能だ。

さがみ野駅(写真/PIXTA)

さがみ野駅(写真/PIXTA)

相模大塚駅から大和駅とは反対方面に1駅行くと8位・さがみ野駅がある。価格相場から予想されるように、さがみ野駅には駅ビルもあり相模大塚駅よりも買い物環境は整っているようにも思える。しかし相模大塚駅も徒歩5分圏内にドラッグストアとスーパーがあるので、日常の買い物には困らない。もう少し歩くとJAの直売所もあり、新鮮な野菜を手に入れることもできる。駅から北に10分ほど歩くと「泉の森」へ。引地川源流域の大和水源地を中心にした広大な森には多彩な植物や野鳥が息づき、園内にはキャンプ場や郷土民家園も。この「泉の森」から引地川沿いに南下すると、滝が流れる親水広場や花木園を備えた公園「ふれあいの森」が広がっている。自然を身近に感じながらのびのびと暮らせる魅力的な環境と言えるだろう。ただ、駅の北側にはこうした広大な森があり、そして駅の南側は米軍基地が大きな面積を占めているため、駅近辺の住宅地は限られている。

上尾駅東口の風景(写真/PIXTA)

上尾駅東口の風景(写真/PIXTA)

1位は千葉県、2位は神奈川県の駅だったが、トップ10には埼玉県の駅もランクイン。価格相場が3380万円で5位になったJR高崎線・上尾駅は埼玉県上尾市の中心地で、駅からまっすぐ伸びる通りを8分ほど歩いた場所には市役所も。品川駅に行くには、JR上野東京ライン直通のJR高崎線に乗ると約54分で到着する。また、JR高崎線は新宿方面に向かうJR湘南新宿ラインとの直通運転もされており、上尾駅から新宿駅まで乗り換えることなく約45分で行くことも可能だ。

上尾駅の周辺は商業施設が充実している。100円ショップと飲食店が入った駅ビル「イーサイト上尾」があるほか、駅東口のペデストリアンデッキはスーパーやドラッグストアなどの店舗と公共施設・住宅の複合ビル「A-Geo タウン」や、「丸広百貨店 上尾店」に直結。駅西口側にはイトーヨーカドーを核とするショッピングモール「ショーサンプラザ」や総合病院もあるなど、日常生活に必要なものは駅周辺に備わっている。駅を中心にした商業エリアを越えると、一戸建てや集合住宅の合間に学校や幼稚園が点在する住宅街。そして住宅街を越えた駅から車で10分圏内には、プールや釣り堀を備えた「さいたま水上公園」や、ショッピングモールの「イオンモール上尾」と「アリオ上尾」、ホームセンター、家電量販店までそろう便利な環境だ。

「中古」編は品川駅まで40分前後の駅も多数ランクイン

「中古一戸建て」ランキングの1位は、埼玉県富士見市に位置する東武東上線・みずほ台駅。価格相場は3390万円で、「新築一戸建て」編の1位よりも250万円高かった。東武東上線の池袋駅を経由して、JR埼京線とJR山手線を乗り継ぐと品川駅までは約55分。池袋駅までは東武東上線の準急に乗って約26分で行くことができる。みずほ台駅は東口にも西口にもスーパーが入った駅ビルがあるうえ、駅周辺にもスーパーが複数。そして東口の駅ビルにはファストフード店やカフェ、西口の駅ビルには100円ショップが入っており、駅前には飲食店もあるので、コンパクトな範囲で買い物も食事も楽しめる。そんな駅前からしばらく歩くと住宅街へ。高層の建物はあまりなく、農地も点在する落ち着いた街並みだ。住宅の合間には複数の小中学校や幼稚園、保育園、学習塾もあるので、子育て世代のファミリーが多く住んでいるようだ。

常照寺(写真/PIXTA)

常照寺(写真/PIXTA)

2位は神奈川県横浜市南区の京浜急行本線・南太田駅で、価格相場は3400万円。京浜急行本線で横浜駅までは4駅・約8分、そこからJR東海道本線に乗り換える。すると品川駅までの所要時間はトップ10で最短の約34分だ。南太田駅の北側には「太田の鬼子母神さま」と呼ばれる「常照寺」の境内が広がっている。ここの鬼子母神像は8代将軍徳川吉宗のころには大奥に祀られていたものだそうで、現在その本尊を祀る大本堂の見事な造りも見ものだ。駅西側には市立横浜商業高校と県立横浜青陵高校があり、駅から北東へ歩いて3分ほどの「ドンドン商店街」で例年の夏に開催される縁日では、両高校の生徒も手伝いとしてひと役買っているのだそう。この商店街に青果店や精肉店、手づくりおむすび店や飲食店が並んでいるほか、駅南側にもスーパーやドラッグストア、飲食店がある。また、駅前を通る県道218号・平戸桜木道路を東へ進むと、自転車なら15分ほどで横浜のみなとみらいエリアへ。見どころ豊富な人気エリアまで気軽に行ける立地も魅力だ。

トップ10を見てみると埼玉県または神奈川県の駅が大半を占めていたが、東京都の駅も3駅ランクインしている。その一つ、東京都葛飾区に位置する8位の京成押上線・京成立石駅は品川駅まで乗り換えせずに、約37分で行くことができる。品川駅に京成押上線は通っていないが、京成立石駅を出た京成押上線は4駅先の押上駅で都営浅草線に、さらにそこから13駅先の泉岳寺駅で京成急行本線に、それぞれ直通運転されているため乗り換え不要というわけだ。道中の都営浅草線区間内にある浅草駅や日本橋駅、新橋駅へも1本で行くことが可能だ。そんな京成立石駅周辺にはかつて多くの町工場があり、そこで働く人に向けた居酒屋や食堂が密集していた。現在も駅前の立石仲見世通りの商店街では、昭和レトロな風情を漂わせる飲食店が営業中だ。商店街には手づくりの餃子や揚げ物など、それぞれに個性豊かな品を扱う総菜店も点在し、日々の食事の支度をサポートしてくれる。

立石仲見世(写真/PIXTA)

立石仲見世(写真/PIXTA)

こうしたどこか懐かしさ漂うこの街も、変化の時を迎えている。京成立石駅を中心にした四ツ木駅~青砥駅間では2023年3月の完成を目指して連続立体交差事業が進行中で、工事にともなって飲み屋街の一部店舗は閉店に。しかし駅の高架化により高架下空間が有効活用できるほか、11カ所の踏切がなくなることで線路が分断していた市街地が一体化する効果も見込まれている。さらに駅の北口と南口、両方の再開発にも着手。北口には駅前広場が整備され、広場の西側には住宅と商業施設からなる35階建ての複合ビル、東側には公共・公益施設や商業施設が入る13階建てのビルが2028年度内に誕生予定だ。さらに南口には地上125mにおよぶ住宅・商業施設の複合ビルが2024年度に竣工予定だそう。今後の数年間で世帯数がぐっと増え、街の活気も高まっていくだろう。

●調査概要
【調査対象駅】品川駅まで電車で60分圏内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】
駅徒歩15分圏内、物件価格相場3億円以下、築年数40年未満、敷地権利は所有権のみ
■新築戸建て:新築物件(築1年以上の未入居物件を含む)
■中古戸建て:築15年以内
【データ抽出期間】2021/2~2021/4
【物件相場の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された中古マンション価格から中央値を算出
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、朝7時30分~9時の検索結果から算出(2021年5月31日時点)。所要時間は該当時間帯で一番早いものを表示(乗換時間を含む)
※記載の分数は、駅内および、駅間の徒歩移動分数を含む
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が2回までの駅を掲載

「空家スイーツ」でニュータウンを盛り上げたい! 埼玉の高齢化NO1の街に新土産

高度経済成長期、都市近郊に多数造成され、数多の家族が思い出を築いた「ニュータウン」。巣立った子どもたちは戻ってこず、近年では「高齢化」「過疎化」「限界集落」など、ネガティブな文脈で語られることが多くなっています。そんな流れを打破するような動きが、埼玉県の鳩山ニュータウンで起きています。今回は担い手となっている生活芸術家でアーティスト・レトロ系YouTuberの菅沼朋香さんと焼き菓子作家の山本蓮理さん、彼女たちを支える人々の話をご紹介します。
高齢化と過疎化が進むニュータウンに新名物「空家スイーツ」

池袋駅から電車で1時間弱、高坂駅からバスで15分ほどの場所にある「鳩山ニュータウン」は、1区画60坪程度、ゆったりとした街並みが保たれた美しい街です。昭和40年代から平成にかけて開発され、埼玉県を代表するニュータウンのひとつと言われていますが、近年の都心回帰現象によって、「高齢化・過疎化・空き家の増加」といった課題が山積しています。

電柱なども埋設され、空を広く感じる「鳩山ニュータウン」(撮影/片山貴博)

電柱なども埋設され、空を広く感じる「鳩山ニュータウン」(撮影/片山貴博)

メインストリートには商店なども立ち並びますが、シャッターも多く、ものさびしい印象を受けます(撮影/片山貴博)

メインストリートには商店なども立ち並びますが、シャッターも多く、ものさびしい印象を受けます(撮影/片山貴博)

筆者は昭和52年生まれ、横浜のはずれの分譲住宅地で育っているだけに、空は広くて大きな歩道があって、街路樹が並ぶ様子を見ると「初めてだけど、懐かしいなあ」という思いがこみ上げます。

今、この「鳩山ニュータウン」でつくられ、一躍、脚光を集めているのが「空家スイーツ」です。ニュータウンの民家の庭に植えられたはっさくやゆず、金柑など、さまざまな果樹の実をジャムにし、ロシアケーキの材料として、「空家スイーツ」と名付けて商品化、発売したところ、大注目となっているのです。

ニュータウンで採れた果実のジャムを型抜きしたクッキーに入れ、オーブンで焼いて「ロシアケーキ」に。生地には鳩山町の地粉を使っている。超地産地消!(撮影/片山貴博)

ニュータウンで採れた果実のジャムを型抜きしたクッキーに入れ、オーブンで焼いて「ロシアケーキ」に。生地には鳩山町の地粉を使っている。超地産地消!(撮影/片山貴博)

空き家や民家の庭で実ったフルーツをジャムにして、クッキーの型に置いていきます(撮影/片山貴博)

空き家や民家の庭で実ったフルーツをジャムにして、クッキーの型に置いていきます(撮影/片山貴博)

ニュータウン土産として商品化した「空家スイーツ」。レトロなパッケージ&リボンがかわいい!(撮影/片山貴博)

ニュータウン土産として商品化した「空家スイーツ」。レトロなパッケージ&リボンがかわいい!(撮影/片山貴博)

ニュータウンの印象は「息苦しい」「近未来」。住んだ実感は?!

この空家スイーツを生み出したのは、生活芸術家でアーティスト・レトロ系YouTuberの菅沼朋香さんと焼き菓子作家の山本蓮理さんという2人の女性です。もともとまったく鳩山ニュータウンには縁がなかったものの、2016年、鳩山町のまちおこし拠点である「鳩山町コミュニティ・マルシェ」の立ち上げメンバーとして携わることになったのが、すべてのはじまりだといいます。

左から、菅沼朋香さん、山本蓮理さん(撮影/片山貴博)

左から、菅沼朋香さん、山本蓮理さん(撮影/片山貴博)

もともと、愛知県出身で名古屋近郊のニュータウン育ちの菅沼さんは、ニュータウンそのものに対し「画一的でどこか息苦しい」とあまり良い印象を持っていませんでした。一方、山口県出身の山本さんは、「地方にある町や村の区画とも違うし、東京の大都会とも違う。まっすぐの道路、区画……。見たことのない風景で、近未来!って思いました」。近未来! そういえばアニメや映画など、昭和に描かれた近未来の風景とニュータウンの風景って、近しいかもしれません。

ただ、コミュニティ・マルシェで働き鳩山ニュータウンの一戸建てで実際に暮らすようになった菅沼さんは、アーティストとして町を観察したことで、あらためて良さが再発見できたといいます。

「引越してきた当初、庭付き一戸建ては大きくて持てあますと思っていたんですが、実際に暮らしてみると庭の草木の手入れだって季節を感じられて楽しい。ニュータウンって空も広いし、緑も豊かで心地よいんです。私は1980年代生まれなんですが、物心ついてからずっと不況で、大学卒業がリーマン・ショックと、高度経済成長を知らない世代なんです。かつて、こんなに豊かな暮らしがあったんだなあって。今、見落としていただけで、緑や夢などがつまった暮らしがあることに気が付きました」とその良さに気が付いたそう。それをさっそく歌にして、レコーディングしたというからさすがアーティストです。

一方で、周辺にお店がないことに気がついた菅沼さん、2017年に鳩山町に中古の一戸建てを借り、2019年に購入、1階部分をセルフリノベーションし「ニュー喫茶 幻」をつくることを企画。資金はクラウドファンディングで募り、2019年2月にオープンさせました。ここまでの発想と行動力、ただただ脱帽です。

一戸建てを改装して、住まいのその一角を「ニュー喫茶 幻」に(撮影/片山貴博)

一戸建てを改装して、住まいのその一角を「ニュー喫茶 幻」に(撮影/片山貴博)

不思議と落ち着く空間で、お酒が飲みたくなります。名物は「宇宙コーヒー」です(撮影/片山貴博)

不思議と落ち着く空間で、お酒が飲みたくなります。名物は「宇宙コーヒー」です(撮影/片山貴博)

2人の女性と町の人の架け橋になったのは、地元のサポーター

とはいえ、若い2人の女性の活動は、高齢化が進む鳩山ニュータウンでは、異質の存在だったようです。
「20から30代女性って、この町に一番いない層なんです。だから若い2人で何かしようとすると、目立ってしまう。はじめは、遠巻きに見られている印象でした」と振り返ります。

ただ、試行錯誤するなかで、2人ががんばっている様子が徐々に受け入れられるようになったといいます。
「スーパーに行くと、驚くほどたくさん人がいて、暮らしているんだなって思ったんです。ただ、遊んだり、息抜きする場所がないから、ガランとしてしまう。他にも、イベントで昭和歌謡ライブをしたときはすごく盛り上がったことがあって、やっぱり年代問わず外で遊べる場所を求めていたことに気がついたんですよ」と山本さんが話します。

確かにニュータウンは名前の通り、ベッドタウン、つまり、眠る&子育ての機能面を重視されて造成されているため、大人が食事をしたり、遊んだり楽しめる場所は少ないもの。今でいう「多様性」が欠けていたことに気がついたといいます。

また、「ニュー喫茶幻」を通じて、近隣住民との架け橋になってくれる存在が生まれました。菅沼さんが鳩山ニュータウンに引越してきたあとに、移住してきた江幡正士(まさお)さん(70代男性)です。

「2人の取り組みを見ていて、これは面白いかもしれないって。できることをはじめてみようと思いました」(江幡さん)と、応援することを決めたそう。2020年に「空家スイーツ」の話が持ち上がると、果樹のある家を見つけては声をかけ、収穫させてもらったといいます。やはり「楽しく」「おもしろく」取り組んでいると、人は自然と集まってくるのかもしれません。

江幡さんの家の隣家に住むおじいちゃん(90代)の庭に生った梅の実。時期がきたら収穫して梅ジャム→「空家スイーツ」に変身(撮影/片山貴博)

江幡さんの家の隣家に住むおじいちゃん(90代)の庭に生った梅の実。時期がきたら収穫して梅ジャム→「空家スイーツ」に変身(撮影/片山貴博)

(撮影/片山貴博)

(撮影/片山貴博)

おじいちゃんがお庭の手入れが難しくなったため今は少し寂しくなってしまいましたが、かつては藤の花なども咲き誇る見事なものでした(撮影/片山貴博)

おじいちゃんがお庭の手入れが難しくなったため今は少し寂しくなってしまいましたが、かつては藤の花なども咲き誇る見事なものでした(撮影/片山貴博)

シェアハウスにシェアアトリエ…、若い人が呼び合うように!

「まち起こしのきっかけとしてコミュニティ・マルシェができ、2020年には空き家を活用した『国際学生シェアハウスはとやまハウス』で町内に学生が暮らすようになりました。また、はとやまハウスの卒業生が中心となって、2021年4月に「シェアアトリエniu(ニュウ)」が誕生しました。おもしろいことをしていると、人が人を呼び合っている感じです」と菅沼さん。

「はとやまハウス」(写真撮影/永井杏奈)

「はとやまハウス」(写真撮影/永井杏奈)

ちなみに「はとやまハウス」住人の学生さんは『鳩山町コミュニティ・マルシェ』で月32時間働けば家賃が無料になる仕組みで、仕事の一貫として『空家スイーツ』の作成を手伝ってくれることも。町は関係人口が増えるし、学生は家賃が抑えられると双方にメリットのある施策ですね。

シェアアトリエniuは、東京藝術大学の大学院を卒業した人、在籍する院生などが活動の拠点にしています。アートや建築、デザインに携わる若い世代が移住しつつ、1階で展覧会やワークショップを企画/開催する予定だとか。

「シェアアトリエniu」(撮影/片山貴博)

「シェアアトリエniu」(撮影/片山貴博)

庭付きの一戸建てをシェアアトリエに。花岡美優さん(写真)を含めた3人が活動の拠点にしている。花岡さんは日本画・現代アートを専攻する(撮影/片山貴博)

庭付きの一戸建てをシェアアトリエに。花岡美優さん(写真)を含めた3人が活動の拠点にしている。花岡さんは日本画・現代アートを専攻する(撮影/片山貴博)

はじめは菅沼さんや山本さんなど数名だった鳩山ニュータウンの活性化の試みですが、今、新しい波として広がっている印象です。

「今まで、コミュニティ・マルシェ、ニュー喫茶幻、空家スイーツ、シェアハウスと毎年、さまざまな動きをしているのですが、今後は自分が前に出ていくというよりも、今、集まってきている人を応援するスタンスになると思います。あと、アーティストとして、『世界中のレトロ可愛い』を見たり、集めたりしたいな」と菅沼さん。

豊かさは金銭だけではなく、心、時間、人とのつながりなど、さまざまなことを通して実感できるものなのでしょう。高度経済成長期は戻ってきませんが、若い世代を魅了する「ニュータウン」が持っている豊かさや可能性は、今後、もう一度、評価される気がします。

●取材協力
空家スイーツ
シェアアトリエniu

「空家スイーツ」でニュータウンを盛り上げたい! 埼玉の高齢化NO1の街に新土産

高度経済成長期、都市近郊に多数造成され、数多の家族が思い出を築いた「ニュータウン」。巣立った子どもたちは戻ってこず、近年では「高齢化」「過疎化」「限界集落」など、ネガティブな文脈で語られることが多くなっています。そんな流れを打破するような動きが、埼玉県の鳩山ニュータウンで起きています。今回は担い手となっている生活芸術家でアーティスト・レトロ系YouTuberの菅沼朋香さんと焼き菓子作家の山本蓮理さん、彼女たちを支える人々の話をご紹介します。
高齢化と過疎化が進むニュータウンに新名物「空家スイーツ」

池袋駅から電車で1時間弱、高坂駅からバスで15分ほどの場所にある「鳩山ニュータウン」は、1区画60坪程度、ゆったりとした街並みが保たれた美しい街です。昭和40年代から平成にかけて開発され、埼玉県を代表するニュータウンのひとつと言われていますが、近年の都心回帰現象によって、「高齢化・過疎化・空き家の増加」といった課題が山積しています。

電柱なども埋設され、空を広く感じる「鳩山ニュータウン」(撮影/片山貴博)

電柱なども埋設され、空を広く感じる「鳩山ニュータウン」(撮影/片山貴博)

メインストリートには商店なども立ち並びますが、シャッターも多く、ものさびしい印象を受けます(撮影/片山貴博)

メインストリートには商店なども立ち並びますが、シャッターも多く、ものさびしい印象を受けます(撮影/片山貴博)

筆者は昭和52年生まれ、横浜のはずれの分譲住宅地で育っているだけに、空は広くて大きな歩道があって、街路樹が並ぶ様子を見ると「初めてだけど、懐かしいなあ」という思いがこみ上げます。

今、この「鳩山ニュータウン」でつくられ、一躍、脚光を集めているのが「空家スイーツ」です。ニュータウンの民家の庭に植えられたはっさくやゆず、金柑など、さまざまな果樹の実をジャムにし、ロシアケーキの材料として、「空家スイーツ」と名付けて商品化、発売したところ、大注目となっているのです。

ニュータウンで採れた果実のジャムを型抜きしたクッキーに入れ、オーブンで焼いて「ロシアケーキ」に。生地には鳩山町の地粉を使っている。超地産地消!(撮影/片山貴博)

ニュータウンで採れた果実のジャムを型抜きしたクッキーに入れ、オーブンで焼いて「ロシアケーキ」に。生地には鳩山町の地粉を使っている。超地産地消!(撮影/片山貴博)

空き家や民家の庭で実ったフルーツをジャムにして、クッキーの型に置いていきます(撮影/片山貴博)

空き家や民家の庭で実ったフルーツをジャムにして、クッキーの型に置いていきます(撮影/片山貴博)

ニュータウン土産として商品化した「空家スイーツ」。レトロなパッケージ&リボンがかわいい!(撮影/片山貴博)

ニュータウン土産として商品化した「空家スイーツ」。レトロなパッケージ&リボンがかわいい!(撮影/片山貴博)

ニュータウンの印象は「息苦しい」「近未来」。住んだ実感は?!

この空家スイーツを生み出したのは、生活芸術家でアーティスト・レトロ系YouTuberの菅沼朋香さんと焼き菓子作家の山本蓮理さんという2人の女性です。もともとまったく鳩山ニュータウンには縁がなかったものの、2016年、鳩山町のまちおこし拠点である「鳩山町コミュニティ・マルシェ」の立ち上げメンバーとして携わることになったのが、すべてのはじまりだといいます。

左から、菅沼朋香さん、山本蓮理さん(撮影/片山貴博)

左から、菅沼朋香さん、山本蓮理さん(撮影/片山貴博)

もともと、愛知県出身で名古屋近郊のニュータウン育ちの菅沼さんは、ニュータウンそのものに対し「画一的でどこか息苦しい」とあまり良い印象を持っていませんでした。一方、山口県出身の山本さんは、「地方にある町や村の区画とも違うし、東京の大都会とも違う。まっすぐの道路、区画……。見たことのない風景で、近未来!って思いました」。近未来! そういえばアニメや映画など、昭和に描かれた近未来の風景とニュータウンの風景って、近しいかもしれません。

ただ、コミュニティ・マルシェで働き鳩山ニュータウンの一戸建てで実際に暮らすようになった菅沼さんは、アーティストとして町を観察したことで、あらためて良さが再発見できたといいます。

「引越してきた当初、庭付き一戸建ては大きくて持てあますと思っていたんですが、実際に暮らしてみると庭の草木の手入れだって季節を感じられて楽しい。ニュータウンって空も広いし、緑も豊かで心地よいんです。私は1980年代生まれなんですが、物心ついてからずっと不況で、大学卒業がリーマン・ショックと、高度経済成長を知らない世代なんです。かつて、こんなに豊かな暮らしがあったんだなあって。今、見落としていただけで、緑や夢などがつまった暮らしがあることに気が付きました」とその良さに気が付いたそう。それをさっそく歌にして、レコーディングしたというからさすがアーティストです。

一方で、周辺にお店がないことに気がついた菅沼さん、2017年に鳩山町に中古の一戸建てを借り、2019年に購入、1階部分をセルフリノベーションし「ニュー喫茶 幻」をつくることを企画。資金はクラウドファンディングで募り、2019年2月にオープンさせました。ここまでの発想と行動力、ただただ脱帽です。

一戸建てを改装して、住まいのその一角を「ニュー喫茶 幻」に(撮影/片山貴博)

一戸建てを改装して、住まいのその一角を「ニュー喫茶 幻」に(撮影/片山貴博)

不思議と落ち着く空間で、お酒が飲みたくなります。名物は「宇宙コーヒー」です(撮影/片山貴博)

不思議と落ち着く空間で、お酒が飲みたくなります。名物は「宇宙コーヒー」です(撮影/片山貴博)

2人の女性と町の人の架け橋になったのは、地元のサポーター

とはいえ、若い2人の女性の活動は、高齢化が進む鳩山ニュータウンでは、異質の存在だったようです。
「20から30代女性って、この町に一番いない層なんです。だから若い2人で何かしようとすると、目立ってしまう。はじめは、遠巻きに見られている印象でした」と振り返ります。

ただ、試行錯誤するなかで、2人ががんばっている様子が徐々に受け入れられるようになったといいます。
「スーパーに行くと、驚くほどたくさん人がいて、暮らしているんだなって思ったんです。ただ、遊んだり、息抜きする場所がないから、ガランとしてしまう。他にも、イベントで昭和歌謡ライブをしたときはすごく盛り上がったことがあって、やっぱり年代問わず外で遊べる場所を求めていたことに気がついたんですよ」と山本さんが話します。

確かにニュータウンは名前の通り、ベッドタウン、つまり、眠る&子育ての機能面を重視されて造成されているため、大人が食事をしたり、遊んだり楽しめる場所は少ないもの。今でいう「多様性」が欠けていたことに気がついたといいます。

また、「ニュー喫茶幻」を通じて、近隣住民との架け橋になってくれる存在が生まれました。菅沼さんが鳩山ニュータウンに引越してきたあとに、移住してきた江幡正士(まさお)さん(70代男性)です。

「2人の取り組みを見ていて、これは面白いかもしれないって。できることをはじめてみようと思いました」(江幡さん)と、応援することを決めたそう。2020年に「空家スイーツ」の話が持ち上がると、果樹のある家を見つけては声をかけ、収穫させてもらったといいます。やはり「楽しく」「おもしろく」取り組んでいると、人は自然と集まってくるのかもしれません。

江幡さんの家の隣家に住むおじいちゃん(90代)の庭に生った梅の実。時期がきたら収穫して梅ジャム→「空家スイーツ」に変身(撮影/片山貴博)

江幡さんの家の隣家に住むおじいちゃん(90代)の庭に生った梅の実。時期がきたら収穫して梅ジャム→「空家スイーツ」に変身(撮影/片山貴博)

(撮影/片山貴博)

(撮影/片山貴博)

おじいちゃんがお庭の手入れが難しくなったため今は少し寂しくなってしまいましたが、かつては藤の花なども咲き誇る見事なものでした(撮影/片山貴博)

おじいちゃんがお庭の手入れが難しくなったため今は少し寂しくなってしまいましたが、かつては藤の花なども咲き誇る見事なものでした(撮影/片山貴博)

シェアハウスにシェアアトリエ…、若い人が呼び合うように!

「まち起こしのきっかけとしてコミュニティ・マルシェができ、2020年には空き家を活用した『国際学生シェアハウスはとやまハウス』で町内に学生が暮らすようになりました。また、はとやまハウスの卒業生が中心となって、2021年4月に「シェアアトリエniu(ニュウ)」が誕生しました。おもしろいことをしていると、人が人を呼び合っている感じです」と菅沼さん。

「はとやまハウス」(写真撮影/永井杏奈)

「はとやまハウス」(写真撮影/永井杏奈)

ちなみに「はとやまハウス」住人の学生さんは『鳩山町コミュニティ・マルシェ』で月32時間働けば家賃が無料になる仕組みで、仕事の一貫として『空家スイーツ』の作成を手伝ってくれることも。町は関係人口が増えるし、学生は家賃が抑えられると双方にメリットのある施策ですね。

シェアアトリエniuは、東京藝術大学の大学院を卒業した人、在籍する院生などが活動の拠点にしています。アートや建築、デザインに携わる若い世代が移住しつつ、1階で展覧会やワークショップを企画/開催する予定だとか。

「シェアアトリエniu」(撮影/片山貴博)

「シェアアトリエniu」(撮影/片山貴博)

庭付きの一戸建てをシェアアトリエに。花岡美優さん(写真)を含めた3人が活動の拠点にしている。花岡さんは日本画・現代アートを専攻する(撮影/片山貴博)

庭付きの一戸建てをシェアアトリエに。花岡美優さん(写真)を含めた3人が活動の拠点にしている。花岡さんは日本画・現代アートを専攻する(撮影/片山貴博)

はじめは菅沼さんや山本さんなど数名だった鳩山ニュータウンの活性化の試みですが、今、新しい波として広がっている印象です。

「今まで、コミュニティ・マルシェ、ニュー喫茶幻、空家スイーツ、シェアハウスと毎年、さまざまな動きをしているのですが、今後は自分が前に出ていくというよりも、今、集まってきている人を応援するスタンスになると思います。あと、アーティストとして、『世界中のレトロ可愛い』を見たり、集めたりしたいな」と菅沼さん。

豊かさは金銭だけではなく、心、時間、人とのつながりなど、さまざまなことを通して実感できるものなのでしょう。高度経済成長期は戻ってきませんが、若い世代を魅了する「ニュータウン」が持っている豊かさや可能性は、今後、もう一度、評価される気がします。

●取材協力
空家スイーツ
シェアアトリエniu

「東京駅」まで60分以内、新築・中古の一戸建て価格相場が安い駅ランキング 2020年版

期せずして「新しい日常」を送ることになったことで、人々の仕事や暮らしに対する意識も変化が起きている。「おうち時間」を大事にする人が増えた結果、小麦粉不足が起きるほどパンづくりが人気を集めたり、自宅でキャンプを楽しむ「家キャン」が流行したり……。住宅業界においては、購入する物件タイプとして少し都心からは遠くても一戸建てを希望する人が増えている様子。そこで今回は、東京駅まで60分圏内にある一戸建ての価格相場が安い駅を調査! 築1年未満の「新築編」と築1年以上・築15年未満の「中古編」、それぞれの価格相場が安い駅TOP10を紹介しよう。●東京駅まで60分以内の価格相場が安い駅TOP10
【新築一戸建て編】
順位/駅名/価格相場/土地面積中央値/建物面積中央値
(沿線/所在地/新橋駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 龍ケ崎市 2080万円 土地174.03平米 建物100.43平米
(JR常磐線/茨城県龍ケ崎市/55分/0回)
2位 取手 2174.5万円 土地154.12平米 建物102.47平米
(JR常磐線/茨城県取手市/47分/0回)
3位 六実 2285万円 土地120.04平米 建物98.89平米
(東武野田線/千葉県松戸市/49分/1回)
4位 運河 2390万円 土地135.05平米 建物102.87平米
(東武野田線/千葉県流山市/55分/2回)
5位 二和向台 2580万円 土地132.05平米 建物98.64平米
(新京成線/千葉県船橋市/55分/1回)
5位 東我孫子 2580万円 土地141.87平米 建物102.87平米
(JR成田線/千葉県我孫子市/52分/1回)
7位 滝不動 2585万円 土地110.33平米 建物98.54平米
(新京成線/千葉県船橋市/50分/1回)
8位 高柳 2680万円 土地120.37平米 建物99.14平米
(東武野田線/千葉県柏市/47分/1回)
9位 三咲 2690万円 土地139.71平米 建物102.67平米
(新京成線/千葉県船橋市/53分/1回)
10位 実籾 2750万円 土地116平米 建物99.37平米
(京成本線/千葉県習志野市/50分/2回)

【中古一戸建て(築1年以上、15年以内)編】
順位/駅名/価格相場/土地面積中央値/建物面積中央値
(沿線/所在地/新橋駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 高柳 2230万円 土地130.95平米 建物101.02平米
(東武野田線/千葉県柏市/47分/1回)
2位 せんげん台 2380万円 土地100.18平米 建物93.98平米
(東武伊勢崎線/埼玉県越谷市/50分/1回)
3位 大袋 2480万円 土地102.72平米 建物96.79平米
(東武伊勢崎線/埼玉県越谷市/48分/1回)
4位 飯山満 2590万円 土地123.48平米 建物100.19平米
(東葉高速鉄道/千葉県船橋市/42分/2回)
5位 新河岸 2680万円 土地105.65平米 建物99.37平米
(東武東上線/埼玉県川越市/56分/2回)
6位 西所沢 2835万円 土地100.55平米 建物92.95平米
(西武池袋線/埼玉県所沢市/56分/1回)
7位 新柏 2980万円 土地122.44平米 建物101.54平米
(東武野田線/千葉県柏市/46分/1回)
7位 馬込沢 2980万円 土地137.34平米 建物100.27平米
(東武野田線/千葉県船橋市/40分/1回)
7位 鶴瀬 2980万円 土地100.44平米 建物99.77平米
(東武東上線/埼玉県富士見市/52分/1回)
10位 上福岡 2990万円 土地120.05平米 建物99.73平米
(東武東上線/埼玉県ふじみ野市/54分/2回)
10位 北上尾 2990万円 土地120平米 建物106.72平米
(JR高崎線/埼玉県上尾市/47分/0回)

「買うならマンションより一戸建て」派が昨年よりも増加傾向

中古マンションの価格相場を紹介する連載記事『「東京駅」まで60分以内、中古マンション価格相場が安い駅ランキング 2020年版』(https://suumo.jp/journal/2020/12/01/176523/)では、「通勤時間が多少かかっても、広さを重視して住まい探しをしたい」層が増加傾向にあることを紹介した。この結果が導き出された調査の第2段として、リクルート住まいカンパニーが今年8月~9月に行った住宅の購入・建築・リフォームを考えている人に対する意識調査(「第2回 コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査」)では、「購入を検討する物件はマンションと一戸建てのどちらか」についても調べている。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

その結果はというと、2019年12月実施の調査と比べて「一戸建て派」が首都圏では5ポイント増(56%→61%)。全国的に見ても、札幌市を除く全調査対象地域で「一戸建て派」が増加していた(関西、東海、仙台市、広島市、福岡市で2019年12月比2ポイント増~15ポイント増)。この調査結果からは、これまで以上に一戸建て需要が高まっていることが見て取れる。そんな注目の一戸建て物件、「東京駅まで60分圏内」という条件で調べた価格相場ランキングが上記リストの通り。ここからはランクインした駅について見ていこう。

新築一戸建ては茨城県・龍ケ崎市駅、中古一戸建ては千葉県・高柳駅が1位

「新築一戸建て編」で最も価格相場が安かったのは、JR常磐線・龍ケ崎市駅。価格相場は2080万円で、市場に出ている物件の中央値は土地面積が約174平米、建物面積が約100平米という広さ。東京駅までは55分、JR上野東京ラインに直通のJR常磐線を利用すれば乗り換えせずに1本で行くことができる。

龍ケ崎市駅前の街並み(写真/PIXTA)

龍ケ崎市駅前の街並み(写真/PIXTA)

龍ケ崎市駅はかつて「佐貫駅」という駅名だったが、2020年3月に駅が位置する茨城県龍ケ崎市の市名を掲げた駅名に。改称の背景には、「龍ケ崎市の認知度を高めるとともに、駅周辺地域を市の玄関口として活性化させていきたい」との想いがあるようだ。市では2016年に龍ケ崎市駅周辺を整備する基本構想を策定。同プランに基づいて誕生した「龍ケ崎市駅前こどもステーション」は、始業前に預けられた子どもたちを市内の保育園や幼稚園などに担当スタッフがバス送迎を行う「送迎ステーション」と、子育てに関する相談・情報提供・交流の場となる「子育て支援センター」の機能を備えており、働く子育て世代の力強い味方となっている。

今後も駅北西部にある牛久沼エリアへの道の駅開設や、駅周辺道路の整備などが予定されており、発展が期待される街と言えるだろう。現在の龍ケ崎市駅周辺の環境は、駅の西側にスーパーやホームセンター、ディスカウントストアと、大型店舗が並んでいる。駅の東側~南側には小中学校や幼稚園、保育園、スーパーなどが点在。駅周辺の住宅街を過ぎると、田園や森、牛久沼が広がるのどかな風景も見られる。

「中古一戸建て編」の1位は、東武野田線・高柳駅で価格相場は2230万円。市場に出ている物件の中央値は土地面積が約131平米、建物面積が約101平米という広さ。東京駅に向かうにはまず東武野田線で柏駅へ行き、JR上野東京ライン直通のJR常磐線に乗り換える。すると乗り換え1回、計47分で到着する。2020年3月のダイヤ改正により東武野田線は全線(大宮駅~船橋駅間)で急行列車の運転が開始し、本数も増発。高柳駅は急行停車駅なので、急行に乗れば柏駅まで最短7分、船橋駅までは最短12分で行くことができる。

高柳駅西口の街並み(写真/PIXTA)

高柳駅西口の街並み(写真/PIXTA)

高柳駅は千葉県柏市の南端部に位置しており、駅から南西方面と南東方面へそれぞれ10分も歩くと千葉県の松戸市や鎌ケ谷市に入る。そのため同じく高柳駅を最寄駅とする住宅であっても、柏市・松戸市・鎌ケ谷市いずれの住民となるかは立地により変化。市によって住民サービスに違いがあり、子どもが通う公立の学校や幼稚園なども変わってくるため、物件探しの際はその点も意識したほうがよさそうだ。ちなみに柏市・松戸市・鎌ケ谷市の子ども医療費助成制度を見比べてみると、対象者が0歳~中学3年生という点は3市共通。通院1回・入院1日あたりの自己負担金は柏市と鎌ケ谷市が各300円、松戸市は各200円となっている。

高柳駅の西口に出ると、スーパー「ヤオコー」を核として100円ショップやリサイクルショップも備えたショッピングセンターが見える。駅東側にも2019年にオープンしたスーパー「ジョイフーズ高柳店」があり、駅の線路を挟んで西側と東側、どちらに住まいを構えても買い物がしやすそう。また、駅東口には駅前広場を整備する計画が進行中だ。駅周辺の住宅街には公園が点在し、駅から北に車で20分弱の手賀沼から流れ出て駅東側まで続く大津川沿いには田園地帯が広がっている。自然を身近に感じながら生活できる環境だ。

東京駅から60分圏内なら新築・中古ともに東武野田線の沿線に注目東武野田線(写真/PIXTA)

東武野田線(写真/PIXTA)

「中古一戸建て編」1位の東武野田線・高柳駅は、「新築一戸建て編」でも8位にランクインしている。新築一戸建ての場合は価格相場が2680万円で、中古一戸建てよりも450万円アップ。しかし土地面積、建物面積ともに新築だと中古よりも狭い物件が多い様子。物件の質が異なるため単純に比較はできないが、同じ高柳駅周辺でよりゆったりした暮らしを楽しみたいのならば中古一戸建てに着目するのもよさそうだ。

しかし「新築一戸建て編」と「中古一戸建て編」のトップ10を見比べると、新築のほうが中古よりも価格相場が安く、土地面積は広い傾向が見られる。新築のほうがお得感のある物件と出合いやすいというのは意外ではないか? そんな疑問をSUUMO編集部にぶつけたところ、こんな見解を述べてくれた。

「中古一戸建てのランキング上位の駅は、かつてのニュータウンとして人気を集めたエリアが多いようです。そこに注文住宅として建築にこだわって建てられた住宅が、築10年から15年を経て市場に出てくると価格相場は高めなりがちです。一方、新築一戸建てランキングの上位には比較的新しく開発され土地が安めのエリアが多い。そうした土地のコストを抑えて建築された建売住宅が多いため、新築一戸建ての価格相場のほうが安い傾向が出た可能性があります」

まず新築一戸建てと中古一戸建てで物件の供給数が多いエリアが異なり、エリアによる地価も違ってくる。さらに建物も、当時こだわって施工費をかけて建てられた中古がある一方、新築はまとめてプランニング・建築することでコストを抑えて手に入りやすくなっている……といったさまざまな要因が掛け合わさり、ランキングだけ見ると新築一戸建てのほうが価格が低く見える複雑な結果となったようだ

では実際に新築と中古でランクインしたエリアは異なるのかを見てみると、「新築一戸建て編」は1位と2位が茨城県、3位以下は千葉県が独占。「中古一戸建て編」は千葉県と埼玉県が入り乱れる結果となっており、確かにエリアの傾向は異なるようだ。

東武東上線(写真/PIXTA)

東武東上線(写真/PIXTA)

駅の路線に目を向けると、「新築一戸建て編」「中古一戸建て編」ともに東武野田線が3駅ずつランクイン。また、新築のランキングには新京成線が3駅、中古のランキングには東武東上線が3駅、それぞれランクインしている。「新築一戸建て編」の新京成線の駅は二和向台(ふたわむこうだい)駅(5位)~三咲駅(9位)~滝不動駅(7位)の並び順で連続しており、二和向台駅~滝不動駅間は直径で2km弱しか離れていない。また「中古一戸建て編」の東武東上線の駅は、新河岸駅(5位)~上福岡駅(10位)~ふじみ野駅(ランク外)~鶴瀬駅(7位)と、1駅ランク外の駅を挟みつつ連続した並び順。新京成線と東武東上線、それぞれまとめてめぐりやすい駅がランクインしているので、休日に訪ね歩いて自分好みの住みたい街かどうかを確かめるのもよさそうだ。

一戸建て物件の価格相場を調査した今回のランキング。「東京駅から60分圏内」という条件に限るなら、中古よりも新築のほうが手を出しやすい価格相場という意外な結果が判明した。これは「一戸建てを買うなら、予算的に中古物件かな」と考えていた人にとって、選択肢が広がる嬉しい情報だ。予算と相談しつつ新築・中古を問わずにエリアを見極めながら探していくと、お気に入りの物件と出あえるチャンスが増えるだろう。

●調査概要
【調査対象駅】東京駅まで電車で60分圏内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】
駅徒歩15分圏内、物件価格相場3億円以下、築年数40年未満、敷地権利は所有権のみ
■新築一戸建て:新築物件(築1年以上の未入居物件を含む)
■中古一戸建て:築1年以上15年未満
【データ抽出期間】2020/6~2020/8
【物件相場の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された中古マンション価格から中央値を算出
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、朝7時30分~9時の検索結果から算出(2020年8月31日時点)。所要時間は該当時間帯で一番早いものを表示(乗換時間を含む)
※記載の分数は、駅内および、駅間の徒歩移動分数を含む
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が2回までの駅を掲載

都内の住宅着工戸数、3か月連続減少

東京都はこのたび、令和元年6月及び令和元年第2四半期の新設住宅着工を発表した。それによると、都内における6月の新設住宅着工戸数は11,203戸。前年同月比では、全体で10.5%減と3か月連続の減少となった。

利用関係別でみると、持家は1,425戸(前年同月比4.6%増、3か月ぶりの増加)、貸家は5,411戸(同17.5%減、3か月連続減少)、分譲住宅は4,175戸(同8.8%減、3か月連続減少)、マンションは2,397戸(同17.7%減、3か月連続減少)、一戸建ては1,725戸(同4.8%増、4か月ぶりの増加)。持家は増加したが、分譲、貸家ともに減少した。

第2四半期においては、新設住宅着工戸数は33,220戸。前年同期比では、貸家、持家、分譲住宅ともに減少し、全体で12.6%減と4期振りの減少となった。

地域別でみると、都心3区は1,609戸(前年同期比20.1%減、3期ぶりの減少)。都心10区は8,085戸(同8.0%減、4期ぶりの減少)。区部全体では25,576戸(同11.6%減、4期ぶりの減少)。市部では7,483戸(同16.9%減、5期ぶりの減少)。

※都心3区:千代田区、中央区、港区
※都心10区:千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、台東区、墨田区、江東区、渋谷区、豊島区

ニュース情報元:東京都

6月の住宅着工戸数、3か月ぶりの増加

国土交通省は7月31日、令和元年6月分の住宅着工統計を公表した。それによると、6月の住宅着工戸数は前年同月比0.3%増の81,541戸、前年同月比で3か月ぶりの増加となった。利用関係別にみると、持家は同12.9%増の28,394戸、9か月連続の増加。貸家は同12.2%減の30,645戸、10か月連続の減少。

分譲住宅は同7.8%増の21,870戸、3か月ぶりの増加。そのうち、マンションは同4.2%増の8,597戸、3か月ぶりの増加。一戸建住宅は同10.0%増の13,096戸、先月の減少から再びの増加となった。

ニュース情報元:国土交通省

5月の住宅着工戸数、2か月連続の減少

国土交通省はこのたび、令和元年5月の住宅着工統計を発表した。それによると、住宅着工戸数は前年同月比8.7%減の72,581戸、前年同月比で2か月連続の減少となった。利用関係別でみると、持家は前年同月比6.5%増の24,826戸、8か月連続の増加。貸家は同15.8%減の26,164戸で9か月連続の減少。

分譲住宅は同11.4%減の21,217戸、2か月連続の減少。そのうちマンションは同22.7%減の9,165戸で2か月連続の減少、一戸建住宅は同0.4%減の11,899戸、6か月ぶりの減少となった。

ニュース情報元:国土交通省

2月の住宅着工数、3か月連続の増加

国土交通省はこのたび、平成31年2月の住宅着工の動向を公表した。それによると、2月の住宅着工戸数は71,966戸で、前年同月比4.2%増、3か月連続の増加となった。利用関係別でみると、持家は前年同月比+9.9%の21,992戸、5か月連続の増加。貸家は同-5.1%の27,921戸、6か月連続の減少。

分譲住宅は同+11.4%の21,190戸、7か月連続の増加。そのうち、マンションは同+10.5%の9,132戸、7か月連続増加。一戸建住宅は同+12.2%の11,844戸、3か月連続の増加となった。

ニュース情報元:国土交通省

一戸建てに住む女性、約6~7割が「冬は非居室空間で寒さを感じる」

ダイキン工業(株)はこのたび、「住宅内の非居室空間と寒さに関する実態調査」を行った。調査は2018年12月4日(火)~5日(水)、一戸建てに住む首都圏在住の女性200名を対象にインターネットで行ったもの。
それによると、冬場に住宅内で寒さを感じる空間・場所トップは「洗面室・脱衣室」で約7割(71.0%)。次いで「廊下」(70.0%)、「玄関」(67.5%)、「トイレ」(59.5%)が続く。これら上位はいずれも非居室空間で、住宅内でも約6~7割の女性が「寒さ」を感じているようだ。また、「寝室」でも約3人に1人(33.0%)が寒さを感じており、非居室空間だけでなく、寝室のような居室空間においても「低温」の状態にいる女性が多いことが分かった。

空間・場所別の暖房器具の使用率をみると、「キッチン」は58.2%、「洗面室・脱衣室」は31.6%。また、「廊下」(5.3%)、「トイレ」(6.3%)、「玄関」(2.5%)などではほとんど暖房器具が使われていなかった。「キッチン」における暖房器具使用率が高くなっているのは、LDK空間でのエアコン使用が含まれていることが影響しているものと考えられる。

非居室空間で暖房器具を使っていない理由トップは「その空間・場所に暖房器具が設置されていないから」で45.9%。「寒くても我慢できるから」(37.8%)、「必要性を感じていないから」(35.7%)が続いた。非居室空間で寒さを感じている人が6~7割存在しているにもかかわらず、暖房器具は設置せず、我慢できると考えてしまう人が4~5割存在するようだ。

また、いずれかの非居室空間で「暖房器具を使っている」と答えた方に、非居室空間で使っている暖房器具に対する満足度を聞いたところ、約3割(33.1%)が「満足していない」(「全く満足していない」(6.2%)+「あまり満足していない」(26.9%))と回答。不満足の理由としては「すぐに暖かくならない」(37.2%)、「スペースをとって邪魔」(32.6%)、「暖房の効果が弱い」(30.2%)といった声が上位に上がっている。

ニュース情報元:ダイキン工業(株)

挿花家・雨宮ゆかさんの自然が身近にある暮らし その道のプロ、こだわりの住まい[3]

一面に広がる田んぼを通り過ぎ、坂道を登ると、庭先に薪を積んだ一軒家にたどり着く。ここは、挿花家の雨宮ゆかさんが夫で写真家の雨宮秀也さんと暮らす自宅。ゆかさんは日常の花を生ける教室「日々花」を主宰しながら、各地でワークショップや生け込みなども行っている。教室とはまた別の空間である自宅でどんな風に花を楽しみながら暮らしているのか、話を伺った。【連載】その道のプロ、こだわりの住まい
料理家、インテリアショップやコーヒーショップのスタッフ……何かの道を追求し、私たちに提案してくれるいわば「プロ」たちは、普段どんな暮らしを送っているのだろう。プロならではの住まいの工夫やこだわりを伺った。

庭にもエントランスにも季節の草花がある。軒先には積まれた薪、日曜大工の道具、玄関の先にある土間には花材が置かれている。リビングに入れば、広い窓からまぶしいほどの光が差し込み、まるで山小屋に来たかのよう。玄関に入る前から気持ちがいい空間だということが伝わってくる。

「ここは小屋みたいな家なんです。家を建てるときに伝えたのは、自分たちの暮らし方。それをもとに中村さんが考えてくださった形がこの家なんです」とゆかさんは話す。中村さんとは建築家の中村好文氏。住宅を多く手がけているだけあり、暮らしやすい家をつくるスペシャリストである。

(写真撮影/雨宮秀也)

(写真撮影/雨宮秀也)

(写真撮影/雨宮秀也)

(写真撮影/雨宮秀也)

暮らし方を伝えてできた、五右衛門風呂のある一軒家

家を建てるに当たり、当時住んでいたアパートでの暮らしを要望書にまとめたという。見せてもらうとイラストとともに二人の一日がよく伝わってくる内容になっている。朝から電灯をつけなければいけないのが悲しい、本が入りきらない、夫の秀也さんが自宅で撮影するときのスペースが足りないといった不便さや、お昼ご飯は庭で食べることもある、一日の締めくくりはつくりながら飲みながらの晩御飯、など、食の時間を大切にしていることなどが書かれている。

「これ以外の要望は特に伝えなかったと思います。あ、夫と中村さんが二人で盛り上がって五右衛門風呂にしようというのはありました」とゆかさんは当時を振り返る。玄関前にあった薪(まき)は五右衛門風呂のためのものだったのだ。

建築家の中村好文さんに提出したという要望書。ゆかさんがイラストと文章でそれまでの自分たちの暮らしを表現している。不満や不便なこと、何を大切にしているかがよくわかる一枚(画像提供/雨宮ゆかさん)

建築家の中村好文さんに提出したという要望書。ゆかさんがイラストと文章でそれまでの自分たちの暮らしを表現している。不満や不便なこと、何を大切にしているかがよく分かる一枚(画像提供/雨宮ゆかさん)

完成した家の間取りもゆかさんが描いた(画像提供/雨宮ゆかさん)

完成した家の間取りもゆかさんが描いた(画像提供/雨宮ゆかさん)

完成した家の間取り。神奈川県川崎市に建てた。1階はリビングダイニングキッチン兼スタジオに、夫の仕事部屋、お風呂とトイレ。東西に土間が通っている。2階はもともと納戸にしようとしていたスペースをゆかさんの仕事スペースに変更した(画像提供/雨宮ゆかさん)

完成した家の間取り。神奈川県川崎市に建てた。1階はリビングダイニングキッチン兼スタジオに、夫の仕事部屋、お風呂とトイレ。東西に土間が通っている。2階はもともと納戸にしようとしていたスペースをゆかさんの仕事スペースに変更した(画像提供/雨宮ゆかさん)

土間も五右衛門風呂もあるという一軒家。そこでの暮らしは、仕事をしながら薪割りをしたり、庭の手入れをしたりと、やることはたくさんある。
「最近、地主さんから裏の土地を貸してもらえたので、畑を始めたんです。本当は山野草を植えたかったんですけど、ひとまず野菜を始めたら楽しくて」と言う。

五右衛門風呂用の釜にダッチオーブンを入れて料理をしたり、庭に出てコーヒーを飲んだり、教室の生徒が来てわら仕事をしたり、この家だからこそできる生活を楽しんでいる様子が伝わってくる。

1階は玄関から五右衛門風呂まで土間に。花材はもちろん、食材のストックなどの一時置き場としても活躍している。「買い物や仕事帰りにとりあえず荷物を置いておけるのでとても便利です」(写真撮影/雨宮秀也)

1階は玄関から五右衛門風呂まで土間に。花材はもちろん、食材のストックなどの一時置き場としても活躍している。「買い物や仕事帰りにとりあえず荷物を置いておけるのでとても便利です」(写真撮影/雨宮秀也)

秀也さんの希望で作った五右衛門風呂。「薪割りの大変さとかを差し引いても、つくってよかったと思っています。お湯の温まり方が違う。夏は夜のお湯が朝まであたたかいこともあるほど」(写真撮影/雨宮秀也)

秀也さんの希望でつくった五右衛門風呂。「薪割りの大変さとかを差し引いても、作ってよかったと思っています。お湯の温まり方が違う。夏は夜のお湯が朝まで温かいこともあるほど」(写真撮影/雨宮秀也)

無垢材の良さが感じられるから、スリッパは捨てた

新しい家での暮らしを始めてすぐにゆかさんが気がついたのは、スリッパが要らないということ。
「無垢(むく)の床材を使っているのですが、特に仕上げ材などを塗ったりしていないんです。木の質感をダイレクトに感じられるからとても気持ちよくて、スリッパは捨てました」。

また自然と物を片付けるようになったということも、二人にとってのメリットだったとか。
「それまでは仕事道具を持って帰ってきて、リビングやダイニングに置きっ放しということが多かったんです。でも、この家ではそれぞれの仕事部屋をきちんと確保できているし、何よりリビングに物を出ていると気持ちが悪いなと感じるようになった。この白い壁をきちんと見える状態にしておきたいという気持ちがあるから、お互いに何も言わずとも片付けるようになっているんだと思います」と、壁に目を向ける。そこは夫の撮影スタジオとしても使う空間。

左官で白く仕上げた壁の前には、ゆかさんが生けた花が置かれているほかには物はない。余白があることですっきりと感じられ、花も引き立って見える。余白を生むためには、ものを減らすことにも気を配った。
「本はたくさんあるんですが、それでも厳選しました。それに洋服もかなり減らしたと思います。食器も水屋に入るぶんだけにしていますし」と話す。自分たちに必要なものを見極めた暮らしだということがよく分かる。

広く白い壁は、ご主人のスタジオになったり、ゆかさんの花を楽しむスペースになったり、臨機応変に使っている。ものを出しっぱなしにしなくなったというのもよく分かる気持ちのいい空間(写真撮影/雨宮秀也)

広く白い壁は、夫のスタジオになったり、ゆかさんの花を楽しむスペースになったり、臨機応変に使っている。ものを出しっぱなしにしなくなったというのもよく分かる気持ちのいい空間(写真撮影/雨宮秀也)

(写真撮影/雨宮秀也)

(写真撮影/雨宮秀也)

また、「何よりも、朝起きてパチンと電気をつけなくて済むようになったことがすごくうれしくて。天気が悪くても1階はいつも明るいんです」とゆかさん。リビングダイニング、キッチンが一続きになっているので、どこにいても窓の外を眺めることができる。庭にはゆかさんが選んで植えたという草花が生い茂り、その奥には丘の緑が見える。

「ここに住んで気がついたのは、季節は春夏秋冬4つじゃないということ。もっと細かくて、10日単位で季節が変わっていくんじゃないかと思うくらい。例えば、山を見ていると芽吹き始めたころの緑と、葉が開ききった緑とは違うんです」とうれしそうに教えてくれる。広い窓があることで、外と距離が近くなり、自然の移り変わりを身近に感じることができる。「家で仕事をしていても、ご飯を食べたり、お茶を飲んだりしながらふっと窓の外を見れば気分転換になるし、外とのつながりって大切なんだと感じています」

(写真撮影/雨宮秀也)

(写真撮影/雨宮秀也)

(写真撮影/雨宮秀也)

(写真撮影/雨宮秀也)

草花を飾る前に、まずスペースをきちんと確保する

そうして感じる季節の移り変わりや外の空気は、花を生けるということで室内にも取り入れている。仕事柄、花は常に身近にあるが、自宅でもそれは変わらない。くだんの白い壁の前以外にも、玄関や食器棚にしている水屋箪笥(だんす)の中には、いつも草花がある。

「水屋の中に花を飾るというのは、アパートに住んでいたころに思いついたことなんです。狭くて飾るスペースがないなかでの苦肉の策です」。一段の半分は何も置かないようにして、花のスペースと決めているのだそう。ガラス戸を閉めるとギャラリーのようにも感じられる一角だ。この方法は、動物と一緒に暮らしている人や小さなお子さんがいる人にとっても、草花にいたずらをされずに済むのでオススメだという。

「花を飾るのが難しいという悩みを聞くことが多いんですが、まずは置くスペースを確保することが大切なんです」。ものが多く飾られていたり、収納されている中に草花を飾っても紛れてしまって引き立たない。食器棚の一段の半分だけでもいいから、スペースを空ける。余白をつくることで、飾った花が生き生きとした姿に見えてくるのだ。

以前住んでいた家から持ってきた食器棚代わりの水屋箪笥。これを使いたいと中村さんに伝え、スペースを階段下に確保してもらった。上段の右下を花のスペースと決めて食器は入れないようにしている(写真撮影/雨宮秀也)

以前住んでいた家から持ってきた食器棚代わりの水屋箪笥。これを使いたいと中村さんに伝え、スペースを階段下に確保してもらった。上段の右下を花のスペースと決めて食器は入れないようにしている(写真撮影/雨宮秀也)

背景にものを置かずにスペースを確保するだけで、ぐんと草花が引き立って見える。使っている花器はカップ。専用の花器を使うこともあれば、食器を転用することもあるそう(写真撮影/雨宮秀也)

背景にものを置かずにスペースを確保するだけで、ぐんと草花が引き立って見える。使っている花器はカップ。専用の花器を使うこともあれば、食器を転用することもあるそう(写真撮影/雨宮秀也)

季節を感じられる花や緑を選んで楽しむ

飾る空間をつくったら、実際にどのような花材を選んだらいいのだろう?
「みなさんお花屋さんで購入することが多いと思うんです。そのときに花として選ぶものは1種類でいい。そこにグリーンを加えるようにするのがオススメです。アイビーでもいいし、ハーブでもいい。枝ものを購入できるなら、紅葉している、実がついている、新緑など、季節感を感じられるものを」。

そう言われて玄関の壁を見てみると、花にプラスされているのは小さな柿がなった枝で、なるほどと思う。もしもベランダで鉢植えをしたり、庭で育てることができる人なら、寄せ植えするのもいい、とも。

「寄せ植えだとそれぞれ競い合うのか、かえって丈夫に育つ気がします。それにお互いの植物が虫除けになったりすることもあるから安心。組み合わせるときは、紅葉するものや線の細いもの、まだら入りの葉のものや花のものなど、それぞれ葉に特徴がある緑を選ぶようにすると、生けるときに重宝します」。例えば、もみじ、ススキ、どくだみを組み合わせると、もみじが紅葉し、ススキの細長い線が動きを出してくれ、どくだみでは花も緑も楽しめる。

(写真撮影/雨宮秀也)

(写真撮影/雨宮秀也)

小さな柿がなった枝をあしらった玄関。花に枝ものや葉ものを組み合わせるだけでいいと考えると、気楽に草花を楽しむことができる (写真撮影/雨宮秀也)

小さな柿がなった枝をあしらった玄関。花に枝ものや葉ものを組み合わせるだけでいいと考えると、気楽に草花を楽しむことができる(写真撮影/雨宮秀也)

花を生けるにも、暮らすにも、無理せずに。ゆかさんたちは、それまでの暮らしを考え、自分たちに何が必要かをきちんと見極めて生活している。五右衛門風呂はあるが、広いスペースは必要ない。花を飾る空間は大切だが、たくさんの洋服はいらない。小屋のような一軒家で自然とともに過ごす毎日は、これからもとても健やかに過ぎていくに違いない。

リビングダイニングとキッチンはひとつながりのスペース。「壁などで仕切らないことで開放感もあるし、動線もスムーズ。何よりどこにいても窓の外が目に入るのがうれしい」とゆかさん(写真撮影/雨宮秀也)

リビングダイニングとキッチンはひとつながりのスペース。「壁などで仕切らないことで開放感もあるし、動線もスムーズ。何よりどこにいても窓の外が目に入るのがうれしい」とゆかさん(写真撮影/雨宮秀也)

●プロフィール
雨宮ゆか
日常の花を生ける教室「日々花」主宰。展覧会やワークショップなども開催。身近な植物をさりげなく美しく生活に取り入れる姿にファンが多く、雑誌や書籍などで活躍中。
>HP

首都圏の小規模一戸建て価格、1都3県全て上昇

(株)東京カンテイは11月20日、2018年10月の「新築小規模木造一戸建て住宅平均価格」月別推移を発表した。これは、敷地面積50m2以上~100m2未満、最寄り駅からの所要時間が徒歩30分以内かバス20分以内、木造で土地・建物ともに所有権の物件を調査したもの。それによると、10月の首都圏新築小規模一戸建ての平均価格は、前月比+1.6%の4,542万円と反転上昇した。都県別では、東京都は+1.1%の5,424万円と反転上昇。神奈川県は+1.9%の4,032万円と3ヵ月ぶりに反転上昇。千葉県は+2.8%の3,918万円と反転上昇。埼玉県は+0.3%の3,693万円と3ヵ月連続上昇。首都圏の小規模一戸建て価格は、1都3県全てで上昇した。

近畿圏の平均価格は、前月比+2.1%の3,266万円で反転上昇。大阪府は-0.7%の3,132万円と7ヵ月ぶりに反転下落。兵庫県は+7.8%の3,733万円と大きく反転上昇。京都府は+2.0%の3,046万円と反転上昇。近畿圏の主要府県では大阪府が7ヵ月ぶりに下落に転じたが、兵庫県、京都府ともに反転上昇したため、近畿圏全体で上昇となった。

愛知県は前月比-1.2%の3,833万円と反転下落。中部圏全体では-1.0%の3,711万円と反転下落した。

ニュース情報元:(株)東京カンテイ

オール電化住宅数、2018年度は31.6万戸の見込み

(株)富士経済(東京都中央区)はこのたび、オール電化住宅の地域別の普及状況を調査した。
それによると、太陽光発電システムを設置している住宅数(ストック住宅)は2018年度に322万戸、普及率は6.0%が見込まれる。単年度での導入数は2012年度に開始したFIT(固定価格買取制度)の全量買取制度の特需が落ち着いた2014年度以降前年割れが続いたが、2018年度以降は毎年度18万戸程度の導入と、横ばいが予想される。ストック住宅は増加を続け2030年度に520万戸、普及率は9.7%になると予測。

オール電化住宅数は東日本大震災以降前年割れが続き、2016年度は新築・既築合わせて29.1万戸まで落ち込んだが、西日本エリアを中心とする原子力発電所の再稼働や電力小売全面自由化を契機に、オール電化住宅のPR活動やサブユーザー向けの営業支援などが活発化し、2017年度は前年度を上回った。2018年度は翌年に迫る消費税増税前の駆け込み需要などもあり新築・既築共に増加し、31.6万戸が見込まれる。

しかし、2020年度以降は駆け込み需要の反動減や人口・世帯数の減少などから、戸建住宅を中心に新築着工住宅数の減少が加速し、新築のオール電化住宅数は再び前年割れが予想される。一方、既築のオール電化住宅数は、既存電力会社による営業強化に加え、卒FIT住宅の余剰電力の活用先としてPV連携エコキュートが注目されていること、太陽光発電システムの価格下落により訪問販売事業者などがオール電化の提案に回帰していることなどから、今後も増加が予想される。

ニュース情報元:(株)富士経済

船橋市「AGCテクノグラス中山事業場」跡地で大規模複合開発プロジェクト

千葉県船橋市「AGCテクノグラス中山事業場」跡地で進む再開発プロジェクトの概要が発表された。同事業は、大和ハウス工業(株)初となる4事業(戸建住宅・賃貸住宅・分譲マンション・商業施設)の大規模複合開発プロジェクトとなる。「AGCテクノグラス中山事業場」は、1966年から自動車ヘッドライト用ガラスなどを生産する工場として稼動していたが、2012年9月に生産体制再編のため閉鎖。その後、2018年7月、AGCテクノグラスと大和ハウス工業が跡地に関する土地売買契約を締結し、開発に着手することとなった。

事業地は、JR「船橋駅」まで2.5km圏内、東武アーバンパークライン(野田線)「塚田駅」より徒歩4分に立地。事業面積は57,456.19m2(17,380.49坪)。近郊には「行田公園」をはじめ、子育て支援施設、商業施設、医療施設(「船橋総合病院」「船橋市立医療センター」)などもある。

プロジェクトでは、開発地の北側に集合住宅街区として分譲マンション(571戸・11階建て)、賃貸住宅(低層:39戸・3階建て、中高層:225戸・11階建て)を配し、南西側に戸建分譲住宅街区として26区画、南側に商業施設街区を計画している。

総事業費は約260億円。工期は2021年3月までの予定。

ニュース情報元:大和ハウス工業(株)

住宅購入検討で重視したこと、「立地・周辺環境」がトップ

ハイアス・アンド・カンパニー(株)(東京都品川区)はこのたび、住宅購入者や購入検討中の消費者の意向・動向を探る市場調査を実施した。調査対象は全国の25歳~39歳までの直近3年以内の住宅購入者・今後3年以内の住宅購入検討者。調査期間は2018年6月29日(金)~7月4日(水)。調査方法はWebアンケート。有効回答数は900名。

それによると、住宅購入を検討し始めた際に重視していた点は、全体としては「立地・周辺環境」が80.9%で最多。この傾向は検討対象が注文住宅であっても建売住宅であっても同様。ただし、注文住宅検討者・既購入者は「住みたい家の性能の高さ(断熱性・気密性・防音性等)」や「インテリアデザイン」を重視する回答が全体回答に比べ高かった。

住宅購入を検討する際に不安に思っていた点は、全体では「建物の性能に関する知識不足」がトップで57.1%。次いで「立地・周辺環境に関する情報不足」で53.4%。特に建売住宅検討者・既購入者は「立地・周辺環境に関する情報不足」が全体回答の割合よりも高く、また、注文住宅検討者・既購入者では「住宅性能に関する知識不足」が全体回答に比べ高かった。

住宅購入を検討する際、もっとも参考にした情報は、「住宅展示場やモデルハウス」で62.4%。注文住宅検討者・既購入者が展示場を活用することは当たり前として、建売住宅検討者・既購入者も「展示場やモデルハウス」を参考情報としていることがわかった。

建売住宅購入を検討する理由として、「価格の明示や間取りや内装が決まっていること」が多くを占める。一方で、課題や不満として「自分で決められない」「外観が他の家と似ている」「自分の理想や希望に対してできることが少ない」といったことが挙がった。

また、注文住宅購入を検討する理由のトップは、「間取りや内装について自分の理想のイメージを作れること」。一方で、課題や不満として「金額」「間取りや内装などを自分で決めることが手間」「理想の家つくりが自分にできるか自信がない」といった回答がある。

ニュース情報元:ハイアス・アンド・カンパニー(株)

4人家族で50平米台? ワールドカップ開催地ロシアの住宅事情

サッカーのワールドカップ開催で盛り上がるロシア。テレビでも連日報道されていますね。街中のインタビューをみると、街並みがきれいだなとか、ロシアの住まいってどんな感じなんだろう? 広いのかな? 共産圏だったから何か違うのかな? などいろいろ気になりますよね。というわけで、ロシアの住宅事情を調べてみました。
ロシアの家は4人家族で50平米台。なぜ狭い?

まずロシアといえば「広い」という印象ですよね。そう、世界で一番広い国は、ロシアです。 面積は1710万平方km、日本の約45倍の広さがあります。これだけ国土が広かったら家も広いのだろう、軽井沢みたいな広大な敷地の木立の隙間から一軒家が見える、そんなイメージかと想像していました。ところが、そんなことはないようです。都市部は基本的に集合住宅、そして面積は家族4人の住まいで50平米台が主流だとか。意外に狭いのです。

どうしてなのでしょうか?

話は旧ソ連時代にさかのぼります。当時は国が無償で国民に住居を提供していました。共産圏の国だったので「公平性」を重んじます。また「効率性」も重んじます。その結果、効率よく暮らせる集合住宅で、最低限の生活ができる広さということでこの形になったのだとか。

また暖房とお湯も関係しています。ロシアの冬はとても寒いので、各住戸にお湯や暖房をひく必要があります。このときに広大な敷地の一戸建てにそれぞれお湯やガスの配管を回すのは非効率です。日本でも空き家が増えてこのインフラの維持が問題になっています。だからロシアでの原則は「都市部に集まって暮らす」という形になっているようです。

百聞は一見に如かず――ということでさっそく家庭訪問してみました。訪問した街は、サッカーワールドカップ日本代表のキャンプ地、カザンです。

1970年代~1980年代の日本の団地を彷彿(ほうふつ)とさせる。どの集合住宅も戸数が多い(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

1970年代~1980年代の日本の団地を彷彿(ほうふつ)とさせる。どの集合住宅も戸数が多い(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

さて、到着してまず感じたのは、規模の大きさ。正確な戸数は聞きそびれてしまいましたが、イメージはURの高島平団地です(東京都板橋区にあるUR団地、総戸数は約8000戸)。さっそく部屋に案内してもらいます。あれ? 玄関ドアが2枚ある? さすが寒い国ロシア、玄関ドアは2枚仕立てが多いようです。そしてバルコニーも日本とは趣が異なります。サンルーム仕様になって窓が付いているのです。日本でも日本海側の家にはこのサンルームが多いと聞きます。

写真左:2枚ある玄関ドア 写真右:窓付きのバルコニー(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

写真左:2枚ある玄関ドア 写真右:窓付きのバルコニー(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

そして室内に。通されたのはダイニング・キッチン。決して広くはないのですが、日本よりも暖かい感じがします。なぜそう感じるのかといえばそれは壁紙とファブリックでした。他の居室もそうですが、白い壁がひとつもありません。部屋ごとに好みの壁紙が張られ、テーブルにはクロスが掛けられています。

キレイな柄に包まれたダイニング・キッチン(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

キレイな柄に包まれたダイニング・キッチン(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

この壁紙はこの家の妻が張ったそうです。ロシアでは壁紙は自分で張るのがフツーだそうです。ある意味料理をつくるのと同じ感覚だとか。平均月収が7万円(ホワイトカラーエリートでその倍)で家賃と光熱費で3万円くらい。支出に占める住居費比率は高い。だから内装などは自分たちでやるというのもありそうです。キッチンは入居時に自分で設置することも多いそう。天井や床や壁も未仕上げが普通。天井壁床で40万円くらい払うと仕上げてくれますが自分でやる人も多いのだとか。

これは別の部屋を訪問したときの写真ですが、全部自分でつくったのよと誇らしげに教えてくれました。ちなみにこの部屋の住人はシングル女性です。すごい。

シングル女性が造作したバスルーム。日本の銭湯のようだ(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

シングル女性が造作したバスルーム。日本の銭湯のようだ(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「こっちも見て! 狭いから天井吊りの収納つくったのよ」「次は貯めたお金で古くなった窓を断熱性の高いものに変えるのよ」と次から次へとやりたいことがあるそう(日本の集合住宅と違い窓も玄関ドアも個人の判断で変えてOK)。日本でもDIYが流行っていますが、ここはレベルが違います。住んでから少しずつ暮らしをよくしていくことは、ここロシアでは当たり前のようです。

次の2枚の写真は少し郊外にある一戸建ての子ども部屋。どちらの部屋も個性的な壁紙が張られ、ファブリックも装飾品もかわいい。日本のマンションモデルルームのようです。

カザン市郊外にある一戸建ての子ども部屋。モデルルームではありません(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

カザン市郊外にある一戸建ての子ども部屋。モデルルームではありません(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

ロシアの一戸建て事情はどうなっているの?

ロシアは市内中心部が都市計画上、ほぼ集合住宅しか建てられません。しかも広さは40~60平米と狭い。やはりこの生活にストレスを感じる人もいるようです。またカザンのようにやや裕福な層が出始めている都市では、郊外の戸建住宅を買い始める動きも出てきています。そう、公団住宅が羨望のまなざしだった時代から、郊外の一戸建てへあこがれがシフトした日本の30~40年前と似たような状況です。

そんなロシアでの一戸建てはどんなものかというと……写真(下)のようなレンガの家です。子どものころに読んだ『3匹の子ぶた』にに出てくるあのレンガの家です。

ロシアの一戸建てはレンガブロックを積んだものが多い(写真撮影/IIDA SANGYO RUS)

ロシアの一戸建てはレンガブロックを積んだものが多い(写真撮影/IIDA SANGYO RUS)

ロシアの一戸建てにはいくつか課題があるそうです。おもなものを4つほど挙げます。
ひとつは施工精度。未仕上げで引き渡す文化があることも影響してか、大工さんの仕上げの精度が日本と全然違うそうです。大げさな比喩になりますが、日本はミリ単位の仕上げ水準ですが、ロシアはセンチ単位くらいの差があるとか。

もうひとつはその構造と断熱。レンガ造りが標準で、これだけ寒いのに断熱材が使われていません! 推定50cm以上ある分厚いレンガが断熱材になってます。見た目は頑丈ですが壁の断熱は課題があります。

そして3つ目は引き渡しの水準。キッチン、バス、トイレ、内装仕上げは含みません。内装はホームセンターで買ってきて自分で取り付ける、あるいはそれをプロに別で依頼する方法が一般的。ただ、ロシアでも日本でいうパワーカップル(共働き夫婦で二人とも高収入)が登場してきており、この若い世代からすると、ある程度内装仕上げもお任せしたいというニーズも出てきているとか。

4つ目として品質保証がないこと。日本では住宅品質確保促進法(品確法)というのがあって、第三者の専門機関が住宅の性能を評価し、購入者に分かりやすく表示したり、、引き渡し後10年以内に瑕疵が見つかった場合は、売主が無償補修などをしなくてはならないという制度がありますが、それがロシアにはありません。

ロシアに一戸建て住宅の日本代表が進出!?

さて、そのロシアに、日本の住宅会社、飯田グル―プホールディングスが進出します。日本の分譲一戸建ての3割のシェアをもつ一戸建て業界の日本代表です。

先に書いたように(1)レンガ造り (2)造りがやや雑 (3)未仕上げ引き渡し (4)品質保証がない というロシアの一戸建ての課題に対し、(1)日本の木質在来工法 (2)日本品質 (3)内装仕上げ済み  (4)第三者評価をつける というチャレンジです。その最初の家、モデルハウスが完成し、事業の正式なオープニングセレモニーが開催されました。

写真左:当日のレセプションでは日本式で鏡割りが行われた  写真右:第一号物件を購入されたミハイルさん(写真/IIDA SANGYO RUS)

写真左:当日のレセプションでは日本式で鏡割りが行われた  写真右:第一号物件を購入されたミハイルさん(写真/IIDA SANGYO RUS)

本来はモデルルームとして使いたかったのに、「ぜひ売ってほしい」という方が現れて、既に契約もしたとのこと。この住宅は構造材のみシベリア鉄道で運び、残りの資材は現地調達(将来は現地での建材生産も見込む)。日本の大工がロシア大工を指導しながらつくった家。第三者の専門機関による住宅の性能評価も付いてます。

第一号物件の外観と内装。見た目は日本のものと似ているが、トリプルガラスのサッシなど完全に現地仕様(写真提供/IIDA SANGYO RUS)

第一号物件の外観と内装。見た目は日本のものと似ているが、トリプルガラスのサッシなど完全に現地仕様(写真提供/IIDA SANGYO RUS)

感銘を受けたのは「MADE WITH JAPAN」という思想。これは“MADE IN JAPAN=日本製”とは少しニュアンスが違います。木造在来工法や建築の仕上げ精度、建物に第三者評価を付けるなどは日本のものを導入するのですが、あくまでも仕組みや技術をもっていくだけ。WITHとは一緒にやっていきましょう、現地の資材を使って、現地の大工さん、現地の販売員のみなさんと一緒にいうことなんです。なんだかすてきではありませんか。

もう少し細かくみてみましょう。木材は、森林大国であるロシアの地域木材を活用します。その木材を精度高く施工するために日本のプレカット技術を導入します。プレカットとは、設計図に基づいて建材を工場でカットしてから現地に運び大工は現場では組み立てるだけにする仕組みのことで、これにより工期を短縮し、現場での施工の精度向上もできるというものです。同社が長年磨き続けてきた技術・ノウハウを惜しみなく現地のプレカット工場、マシンに注ぎ込んでいます。

さらに飯田産業のエース大工である上杉学氏をロシアに駐在させ、日本並みの施工精度を実現する現場施工技術をロシアの大工に教えています。日本の木造建築技術・ジャパンウッド・テクノロジーを駆使して、ロシアの一戸建て品質を上げ、日本と同じくローコストで提供します。そしてなるべくそのお金がロシア内部に落ちるように現地生産・現地雇用にもこだわっているのです。

写真左:ロシアの大工に技術を教える上杉氏 写真右:ロシアのプレカット工場。日本式に細かくチューニング・教育を行った(写真提供:IIDA SANGYO RUS)

写真左:ロシアの大工に技術を教える上杉氏 写真右:ロシアのプレカット工場。日本式に細かくチューニング・教育を行った(写真提供:IIDA SANGYO RUS)

「MADA WITH JAPAN」は売り方にも反映。ロシア事業の実行責任者である大河龍也氏は「ご案内の仕方、接客の仕方もおもてなしの心で日本流にこだわりたい」と、接客も日本水準にしようと現地の従業員に発破をかけています。

「誰もが当たり前に一戸建てが買える社会にしたい」を掲げる同社、そのビジョン実現に向けて挑む壮大なチャレンジがFIFAワールドカップの日本のキャンプ地カザンで始まったことに、なんだか奇遇で運命的なものを感じます。

●取材協力
飯田グループホールディングス

一戸建て育ちVSマンション育ち! “そこで育った”からこそ分かる「良さ」討論会

住宅系のメディアで度々議論される「一戸建てVSマンション」。それぞれのメリット・デメリットについて、これまであまたの専門家がさまざまな知見を述べてきた。管理費やら資産運用やら、さまざまな観点は参考にはなるものの、ぶっちゃけ「実際に住んでみないと実感が湧かない」というのが正直なところではないだろうか。

では、いっそのこと専門家ではなく、実際に「そこで育った人」たちに討論させてみてはどうだろうか? 専門家が語る長所・短所ではなく、そこに暮らして大人になったからこそ分かる「良さ」を語ってもらうのだ。

そこで、今回は一戸建て、マンション、それぞれの環境で育った男女6人を招き、各々が思う魅力や子どものころの思い出を語ってもらった。
写真撮影/榎並紀行

写真撮影/榎並紀行

集まってもらったのは「一戸建てで育った3名」と「マンションで育った3名」の計6名。それぞれ、思い出を振り返りつつ「良さ」を主張してもらうことにした。さらには、逆に相手側の「うらやましかったところ」も述べてもらおう。

写真撮影/榎並紀行

写真撮影/榎並紀行

こちらは一戸建て育ちの3名。向かって左からタカダ氏、ハコちゃん、タニ氏。

写真撮影/榎並紀行

写真撮影/榎並紀行

一方、マンション育ちの3名。向かって左からポインティ氏、アイハル氏、ホウキバラ氏。

育ったからこそ分かるマンションの良さ

というわけで、さっそく語っていただこう。口火を切ったのはマンションチームのホウキバラ氏。いわく、子どもにとってマンションほど魅力的な遊び場はないと語る。

【マンションの良さ・その1】子どもにとってマンションは絶好の遊び場

ホウキバラ(マンション育ち、以下、マ)「マンション住まいの利点が最大に活かされるのは、小・中学生時代じゃないかな。マンションのほうが、遊ぶ空間に恵まれていると思うんですよね」

のっけから熱いホウキバラ氏(写真撮影/榎並紀行)

のっけから熱いホウキバラ氏(写真撮影/榎並紀行)

ホウキバラ(マ)「ポコペン(※)って遊びがあるじゃないですか? だいたい4~5人でこぢんまりとやる遊びなんですけど、そんなポコペンもマンションを舞台にするととても壮大になります。僕がやっていたのはマンションの敷地全てをフィールドにした『サバイバルポコペン』です」

※ポコペンとは……鬼は隠れている子を探し、見つけたら所定の場所に戻り「〇〇くん、ポコペン」などと叫びながらタッチする遊び。なお、地域によってさまざまなローカルルールがある。

サバイバルポコペン??? いきなり知らない遊びが出てきて戸惑う一戸建てチーム(写真撮影/榎並紀行)

サバイバルポコペン??? いきなり知らない遊びが出てきて戸惑う一戸建てチーム(写真撮影/榎並紀行)

タカダ(一戸建て育ち、以下、戸)「公園じゃダメなの?」

ホウキバラ(マ)「公園だとヨコにしか広がりがないけど、マンションの場合はタテも使える。上の階から下の階の様子をうかがったり、情報を伝達したり。かけひきの楽しさもグンと上がります。ポコペンに限らず、マンションって子どもの遊びの想像力を広げてくれると思うんですよね。それでいて、どこか遠くに行かれるよりマンションの敷地内で遊んでくれたほうが親も安心できる。マンションって、小学生でも扱いきれるスケールなのがいいんですよ。もちろん、危険な遊びはダメですけど」

155497_sub05

【マンションの良さ・その2】やっぱり眺望は魅力!

ホウキバラ(マ)「あと、これは言わずもがなかもしれませんが、マンションの良さといったらやはり眺望です。うちの親父は『リビングから富士山が見える』という理由だけでマンションを買いました。結果的に職場まで片道2時間の通勤という代償を払うことになりましたけど、それほどまでに景色というのは人を魅了するんだなあと子どもながらに思いましたね」

ポインティ(マ)「うちも眺めは良かったな。自然豊かな場所で、窓から四季折々に風景が移ろっていく様子が眺められました。子どものころはそんなのまったく興味なかったけど、大人になってから振り返ると季節の風景が思い出にひもづいて、よりエモーショナルな気持ちになれる」

ハコちゃん(戸)「それは素直にうらやましい!」

155497_sub07

【マンションの良さ・その3】住民同士の属性が近く、友達ができやすい

アイハル(マ)「私がマンションで良かったと思うのは、幼なじみができたことですね」

マンションには同年代の子どもがたくさん住んでいたと語るアイハル氏。何度も引越しを重ね、最終的に実家は一戸建てになったというが、思い出深いのはマンションでの暮らしとのこと(写真撮影/榎並紀行)

マンションには同年代の子どもがたくさん住んでいたと語るアイハル氏。何度も引越しを重ね、最終的に実家は一戸建てになったというが、思い出深いのはマンションでの暮らしとのこと(写真撮影/榎並紀行)

ホウキバラ(マ)「確かにマンション、特に新築の場合は同じ属性の世帯が多く住んでいるから友達はできやすいし、距離的にも近いから密になるよね。僕は6階に住んでたんだけど、3階のモトちゃんと少年野球でもバッテリー組むくらい仲が良かった」

ハコちゃん(戸)「すてきな思い出」

ホウキバラ(マ)「ヒマなときにすぐピンポン鳴らしてキャッチボールしようぜって。あと、隣に住んでた子とも仲良くて、壁を挟んで向こう側がその子の部屋だった。僕が壁をドンドンってたたくと向こうもたたき返してきて、それが『遊ぼうぜ!』の合図だった。そういう気楽さはマンションならではだと思う」

155497_sub09

【マンションの良さ・その4】協調性や察する力など「大人力」が身につく

タニ(戸)「そういうコミュニケーションはうらやましいと思うけど、音が響くのは嫌じゃない? 隣人同士の騒音もだけど、マンションって大概ワンフロアだから家族同士のプライバシーを確保するのも難しそう」

ポインティ(マ)「まあ、家族が喧嘩してたりすると筒抜けなのは確か。うちも両親がよくケンカしてましたね、夜中に。でも、だんだん深夜ラジオみたいな感覚で聞き流すようになったけど」

タカダ(戸)「なんか達人っぽい」

両親の喧嘩はラジオだったと、独特の経験談を語るポインティ氏(写真撮影/榎並紀行)

両親の喧嘩はラジオだったと、独特の経験談を語るポインティ氏(写真撮影/榎並紀行)

ポインティ(マ)「両親の喧嘩に僕が口を挟むことはないんですけど、どっちの言い分が正しいのか分析したり、そういうことはやってましたね。丸聞こえだったがゆえに大人の事情を知ることができ、察する力とか、物事をバランスよく公平に見る力、ジャッジする力が養われたような気がします(笑)」

ホウキバラ(マ)「ポインティさんのケースはやや特殊かもしれないけど、マンションって密なコミュニティであるがゆえに『大人力』みたいなものは身につきやすいと思います。大人と触れ合う機会も多いし、協調性とかが磨かれる気がする」

アイハル(マ)「確かに、マンションだと騒音問題とかもあるけど、それはお互いさまだよねって。私が育ったマンションでも、基本的にそういう協調性をみんなが互いにもって暮らしていたと思います」

155497_sub11

一戸建ての良さは?

【一戸建ての良さ・その1】一戸建ての子どもはイケてる気がする

では、一方の一戸建ての良さは何だろうか? 日当たり良好な庭付き一戸建てで育ったというタカダ氏が猛然と吠える。

タカダ(戸)「まず、一戸建てって子どもにとっても何となく誇らしいよね。“一国一城”の子どもっていうプライドをもてるし、自信満々で友達を呼べる」

タニ(戸)「それは確かに。マンションと値段が同じだったとしても、根拠のない“金持ち感”みたいなものはあったね」

一戸建て育ちの誇りを語るタカダ氏(写真撮影/榎並紀行)

一戸建て育ちの誇りを語るタカダ氏(写真撮影/榎並紀行)

ポインティ(マ)「確かに、一戸建ての子どもって何かキラキラして見えたような気がする」

タカダ(戸)「そう、ちょっと中二っぽいことを言わせてもらうと、一戸建てって“主人公”っぽさがあるんですよね」

アイハル(マ)「???」

タカダ(戸)「少年漫画とかアニメの主人公って、だいたい一戸建てに住んでませんか? のび太やサザエさん一家は言わずもがな、キャプテン翼とか、タッチとかもそう。食パンかじりながら自宅を出るとか、幼なじみと2階の窓越しに行き来するとか、漫画におけるベタなシーンも一戸建てが舞台だからこそ映えると思うんですよ」

アイハル(マ)「確かに、主人公の実家がマンションってあまりない気がする……」

ホウキバラ(マ)「それは地味にちょっと悔しい」

155497_sub13

【一戸建ての良さ・その2】人が集まりやすいため、ホスピタリティが磨かれる

タニ(戸)「あと、さっきタカダさんがちょっと言ってたけど、人を呼びやすいってのはあると思う。一般的には一戸建てのほうが部屋がたくさんあったり、庭があったりして広いので集まりやすいし、みんなも来たがる」

ハコちゃん(戸)「私の家にも友達はよく来ていました。うちの場合は一戸建てで、なおかつ小学校が目の前だったので、余計にたまり場みたいになってましたね。おかあさんは大変だったと思うけど……。でも、来客用のお菓子は常にストックされていて、それはうれしかったな」

タニ(戸)「小学校のすぐ近くなんて、もう住んでるだけでヒーローだよね。で、友達が来てくれると楽しいのもあるけど、ホスト精神というか、おもてなしの精神みたいなものが自然と身につく気がします。マンション住まいだと大人力が磨かれると言ってましたけど、こっちはホスピタリティが養われる」

155497_sub14

【一戸建ての良さ・その3】思春期のプライバシーを守れる

タカダ(戸)「あと、僕はやっぱり家族同士でも互いのプライバシーは必要だと思うし、その点でも一戸建てに利がある。特に思春期のころですよね。僕は2階に子ども部屋があったので、主に1階にいた親と心理的、精神的にほどよい距離感を保つことができました。ワンフロアのマンションだと、自分の部屋はあっても家族がすぐ近くにいる感じがして落ち着かないと思います」

アイハル(マ)「親は心配だろうけど、確かに子どもとしてはある程度の距離は保ちたいですよね」

タカダ(戸)「距離って大事なんだよ。少年マガジンのグラビアを熟読してる姿とか、ゼッタイ親に見られたくない。だから、グラビアを読みつつ別のページを指で挟んでおいて、親が階段を上る足音が聞こえたら瞬時にMEGUMIから『はじめの一歩』に切り替える。そういう危機管理ができるのも一戸建てならではだよね」

ハコちゃん(戸)「……意外としょうもない話だった」

155497_sub15

実はマンションがうらやましかった点は?

ここまで一歩も譲らぬ両者。そこで、「互いにうらやましかった点」を聞いてみた。まずは一戸建てチームに「マンション住まいのうらやましかったところ」を聞いてみると……

写真撮影/榎並紀行

写真撮影/榎並紀行

【マンション住まいのうらやましい点】すぐに友達と集まれる

タニ(戸)「さっきホウキバラさんも話していたけど、やっぱり友達とすぐ集まれるっていうのはマンションならではの魅力だと思う。学校帰り、ランドセルを置いたらすぐマンションの1階に集合とか、そういうのはうらやましかったですね」

タカダ(戸)「確かに、遊戯王のカードがはやったときにマンションのやつらはロビーでバトルしてて、あれはうらやましかったな。風でカードもめくれないし、雨でぬれる心配もないし」

ポインティ(マ)「確かに、遊戯王はうちのマンションでもはやってました」

タカダ(戸)「ロイヤルマンションってところが主戦場になってたから、よく遠征に行ってた。だから小学生のときはまっすぐ家に帰らずロイヤルマンションに直行するっていう」

ハコちゃん(戸)「公園とかに行かなくても、マンション自体がコミュニティスペースになるからいいですよね。あと、マンションは学年関係なく仲良くなれるのがうらやましかった。一戸建てだと、家に兄妹がいないと他学年の子と絡むことはないから」

155497_sub17

一戸建てへの憧れポイントは?

では、マンション育ちから見た一戸建てのうらやましい点は?

【一戸建て住まいのうらやましい点】とにかく広い!

アイハル(マ)「やっぱり、何といっても『広い』ってことですね。庭で愛犬を遊ばせたり、バーベキューをしたり。マンション住みからするとキャンプ場でやるような特別なイベントを家でできるっていうのは、本当にうらやましかった」

ホウキバラ(マ)「確かに庭は憧れだった。野球少年だったから庭でティーバッティングできるとか、本当にうらやましかった。あと、同じマンションの友達の家に行くとほぼ間取りが同じなんだけど、一戸建てはすごく自由な感じがして楽しかったのは覚えてるなあ」

155497_sub18

一戸建てとマンション、どっちも良いけど……

というわけで、まとめると……

【マンションの良さ】
・子どもにとってマンションは絶好の遊び場
・やっぱり眺望は魅力!
・住民同士の属性が近く、友達ができやすい
・協調性や察する力など「大人力」が身につく
・すぐに友達と集まれる

【一戸建ての良さ】
・一戸建ての子どもはイケてる気がする
・人が集まりやすいため、ホスピタリティが磨かれる
・思春期のプライバシーを守れる
・シンプルに広い

ということになった。それぞれに良さがあり優劣はつけられないが、一戸建て育ちとマンション育ちでは幼少期の思い出や思春期の悩み、考え方や育ち方にも微妙な違いが生じるように感じた。専門家が語るメリット・デメリットは参考になるが、「子どもにどんな風景を見せたいか」、「どんな思い出を刻んでほしいか」といった視点も、同じくらい大事なのかもしれない。そんなことを思い起こさせてくれる討論会だった。

※今回のメリットはそれぞれの体験がもとになっているため、一戸建て、マンションともに一概には言えません

2017年度の定期借地権、戸建ては52件86区画

(公財)日本住宅総合センターはこのたび、2017年度「定期借地権事例調査」の結果を発表した。同センターは1994年以降、定期借地権制度と個人・世帯の住宅取得ニーズとの関連性の定量的検証のための基礎データとして、定期借地権付分譲住宅事例のデータ収集を行っている。2017年度の調査時期は2017年4月~2018年3月まで。

それによると、2017年度における戸建て住宅の収集事例数は、52件86区画。都道府県別にみると、第1位は愛知県の62区画、第2位は静岡県の10区画、次いで大阪府の5区画で、収集された事例の約72%が愛知県となっている。土地面積については、最大面積が200m2を超える事例は52件中9件と全体の17%。収集された物件においては前年度同期(24%)よりも低下した。

マンションの収集事例数は15件639戸。前年度同期の14件1,193戸と比較すると、1件あたり戸数が約85戸から43戸となり、減少している。都道府県別マンション発売戸数は、第1位が東京都の306戸、第2位が大阪府の149戸、第3位が兵庫県の85戸、第4位が愛知県の49戸。東京都と大阪府で71%を占めた。また、今回集計した15件のうち、最大専有面積は最低でも71.43m2で、平均は90.57m2だった。

ニュース情報元:(公財)日本住宅総合センター

一戸建ての不満点、1位はアレの手入れ、SUUMO調べ

憧れの一戸建て。マンションよりマイホーム感があり、間取りも広くて住みやすそうなイメージだが、実際の住み心地はどうなのだろう。

そこで(株)リクルート住まいカンパニーが運営する不動産・住宅サイト「SUUMO(スーモ)」は、「住んでみて分かった住まいの不満点(一戸建て編)」についてアンケート調査を実施し、結果を「SUUMOなんでもランキング」としてまとめた。

【調査概要】
●調査時期:2017年10月4日~2017年10月5日
●調査対象者:全国の20~59歳までの男性138名・女性135名
●調査方法:インターネット
●有効回答数:273

【調査結果】
Q.住んでみて分かった住まいの不満点は?(複数回答可)
1位:庭の手入れが大変 17.2%
2位:お風呂が寒い 9.2%
3位:収納が少ない 8.4%
4位:ご近所付き合いが大変 7.0%
5位:日当たりが悪い 5.5%
6位:壁が薄い 5.1%
7位:洗濯物を干すスペースが狭い 3.7%
8位:風通しが悪い 3.3%
8位:トイレの個数が少ない 3.3%
10位:部屋が狭い 2.9%
10位:ローンが高かった 2.9%
※上位10位まで表示

1位は「庭の手入れが大変」(17.2%)。庭があるなんてうらやましい限りだが、実際は「思ったよりも芝生が伸びるのが早かった」「雑草も多いし、植えた木が想像以上に伸びて落ち葉とか手入れが大変」など、定期的な手入れが必要で、夏などは「草刈りをしないと蚊がわいて大変」になる模様。

2位は「お風呂が寒い」(9.2%)。「日が入らない」「北向き」と設置場所の問題もある様子。また、「大理石なので、冬は寒くて、お湯がすぐさめる」「広くて良いと思ったけど、冬場は寒い」など、豪華だったり広かったりすることが、冬にはマイナスに働くことも。実家のお風呂をさして「古かった」という声もあった。

3位は「収納が少ない」(8.4%)。「荷物がありすぎて、収納スペースが足りなくなった」「おもちゃがしまえない」などの声が。収納が少ないというより、ものが多すぎたり、増えたりして収納が足りないという人が多く見られた。

4位は「ご近所付き合いが大変」(7.0%)。「町内会があるから」という声が多数。そのほか、「ゴミ当番などが大変」「冠婚葬祭、全てに呼ばれ大変だった」などのコメントがあった。

5位は「日当たりが悪い」(5.5%)。「隣の建物が高くて日が当たる時間が短い」「隣の家が近い」「お隣さんとの境界線に塀があるため1階の日当たりが悪い」など、立地や隣近所との物理的な問題がある人が多い。以下、「壁が薄い」「洗濯物を干すスペースが狭い」「風通しが悪い」「トイレの個数が少ない」と続く。

一戸建てならではの不満点がズラリと並んだ今回のランキング。マンション住まいでは気がつかないポイントが分かった。アンケートを参考に、満足のいく住まいを購入してほしい。

【主なコメント】
●庭の手入れが大変:特に草木の成長する夏の時期に手入れが大変。(46歳・男性)
●お風呂が寒い:お風呂は広いが、温まるのが遅い。(25歳・女性)
●収納が少ない:収納ケースで十分かと思っていたが、想像よりも衣類が増えたため。(28歳・男性)
●ご近所付き合いが大変:回覧板とか面倒。(42歳・女性)
●日当たりが悪い:電気代がかかる。(39歳・男性)
●風通しが悪い:窓を全部開けても夏場は風が通らない。(38歳・女性)
●トイレの個数が少ない:夜中にトイレに行くときに大変。(41歳・女性)
●ローンが高かった:有名なハウスメーカーにしたためか高い。(39歳・女性)

「SUUMOなんでもランキング」コーナー:住まいに関する様々なテーマについてアンケートを実施し、結果をまとめた記事を隔週で発表。

リフォーム費用、首都圏平均は591.2万円、リクルート住まいカンパニー調べ

(株)リクルート住まいカンパニーはこのたび、「2017年 大型リフォーム実施者調査」を行い、その結果を発表した。対象は首都圏・東海圏・関西圏の20歳以上の男女で、300万円以上のリフォームを3年以内に実施した人。有効回答数は826。

それによると、リフォーム費用は全体で平均610.4万円となった。エリア別では、首都圏が591.2万円、東海圏674.7万円、関西圏607.4万円で、首都圏が最も安い。年代別では、20-40代は617.7万円、50代以上は608.3万円と、20-40代が9.4万円上回った。

リフォームのきっかけは、戸建リフォームでは「家が古くなった・老朽化した」(46.8%)、「住宅設備が古くなった・壊れた」(43.4%)、「外観の見栄えが悪くなった」(18.9%)など、家の老朽化への不安や外観の古さがきっかけとなる傾向が見られた。

マンションリフォームでは「住宅設備が古くなった・壊れた」(46.8%)、「設備の使い勝手に不満がある」(28.6%)、「間取りに不満がある」(20.8%)、「好みのインテリア・デザインに変えたい」(18.8%)、「収納スペースの確保」(18.2%)など、間取りの使い勝手改善や内装の刷新願望がきっかけとなる傾向が見られた。

リフォームにおける重視項目においては、戸建リフォームでは「最新機能のついた設備を設置したい」(18.6%)、「省エネルギー性の向上」(17.3%)、「断熱性の向上」(16.7%)、「耐震性の向上」(13.9%)など、機能性の向上や住宅性能の向上を重視する傾向。

マンションリフォームでは「家事がしやすい」(31.2%)が最も高く、「デザインや質感が気に入っている設備や素材を取り入れたい」(27.3%)、「収納スペースが充実している」(26.6%)、「最新機能のついた設備を設置したい」(26.0%)など、間取りの使い勝手やデザインを重視する傾向が見られた。

ニュース情報元:(株)リクルート住まいカンパニー

もう一度建てるなら「3階建てにしたい」が増加、「2階建て」は減少、住環境研究所調べ

積水化学工業(株)住宅カンパニーの調査研究機関である(株)住環境研究所は、このほど「実現したい暮らしニーズ(もう一度建てるとしたらどんな住まいがいいのか)」調査を実施し、その結果を発表した。この調査は住まいの潜在ニーズ、特に2階建てと3階建てが混在する市場において、理想の住まいがどのようなものなのかを探ることを目的に行ったもの。

調査対象は2005~2017年に2階・3階建てを建築した20~69才の単身者を除く単世帯家族。調査エリアは全国(北海道・沖縄を除く)。調査方法はWebアンケート。調査時期は2017年8月。有効回答は1,200件(2階建て建築者:1,000件、3階建て建築者:200件)。

それによると、2階建て建築者も建設計画時には15.2%が3階建てを検討していたことがわかった。そこで、「もう一度建てるなら」と質問すると、「3階建てにしたい」が29.2%と約3割にまで増加。一方で、「2階建て」は検討時の81.8%から、願望は73.1%にまで減少した。3階建て居住者も3階建て願望は70.2%(検討時66.1%)にまで増加、2階建ては20.2%(同29.8%)に減少した。

2階建て建築者のうち、もう一度建てるなら「3階建てを検討」する割合を居住地別に見ると、東海32.3%(3階建て建築者:実績あり15.8%)、首都圏31.9%(同21.8%)、近畿圏22.1%(同20.1%)、その他地域29.3%(同8.0%)だった。近畿圏よりその他地域のほうが高いことから、3階建ては大都市圏だけでなく、全国的にニーズが高まっていることが分かる。

2階建て建築者と3階建て建築者の入居後満足度(+15~-15点の7段階の加重平均値)を比較すると、総合満足度は3階建て居住者7.4に対し、2階建て居住者は7.0で3階建て居住者の満足度が高い。満足度の差が大きいのは、「プライバシー確保」が2階建て居住者4.5に対し3階建て居住者5.7、「収納スペース」は3.9に対し5.0、「外まわりの計画」は3.9に対し5.5、「住まいからの眺め」3.7に対し5.2となっている。

3階建て願望(2階建て建築者)を実現したい暮らし別に見ると、1位が「水害に備えた暮らし」(50.1%)で、次いで「エレベーターのある暮らし」(47.2%)、「大型バルコニーのある暮らし」(43.3%)と続く。

ニュース情報元:(株)住環境研究所