お墓の近くの物件って、実際どうなの?

もうすぐ春のお彼岸。「お墓」「墓地」「霊園」……これらの言葉に、どのようなイメージをおもちですか? 「特になんとも思わない」「供養のための大切な場所」と思う人がいる一方、「ちょっと怖いな」というイメージをおもちの方もいるようです。物件探しの際にお墓近くの物件を紹介されたら、あなたはどうしますか? 今回は、墓地の近くに住むことについてお伝えします。
お墓は怖くない? 火の玉とか出ない!?

ある時、「お墓近くの物件は怖そう」と都市部に育った筆者が言うと、友人に不思議そうな顔をされました。筆者の家のお墓は、少し郊外の霊園の一角にあり、非日常を感じる場所です。一方、友人の家のお墓は隣接するお寺の中にあるものだから、日常の風景に過ぎないとのこと。

「火の玉とか出るんじゃないの?」と筆者が聞くと「最近は火葬だから出ないよ」と笑われ、一蹴されてしまいました(火の玉は、土葬された遺体の中にあるリンが化学反応を起こすことで発生するといわれています)。でも墓地近くに住むって、実際のところはどんな感じなのでしょう……。そこで、不動産のプロにお話を伺うため「アパマンショップ自由が丘店」を訪問しました。

墓地近くの物件について教えてくださったのは、アパマンショップ自由が丘店を運営する株式会社アップルグループのアップル東京株式会社 執行役員の片岡潤(かたおか・じゅん)さん。実は片岡さん自身がお寺や神社に囲まれた下町の地域で育ったという、不動産のプロでありながら、墓地近くで暮らすことに慣れている「プロ」でもありました。

風通しよく、日当たり良好な物件も

「自由が丘近辺、それから目黒や西大井にかけては歴史的な経緯からお寺が多く、墓地も多い地域ですが、それほど家賃を下げなくても借りる方が多いですね。お寺や墓地が近いというよりも、物件の内容、スペックのほうを重視される方がほとんどです」(片岡さん)

意外にも墓地の近くの物件を気にする方は少ないということで、気にしていた自分が少し恥ずかしいような……。店舗で物件の内容(広さや設備など)を確認して気に入ったのであれば、墓地のことはさておいて、実際に現地に行って内見する方がほとんどとのこと。

「お墓や、墓地のあるお寺のそばにある物件は、日当たりや風通しなどがよい場合が多いです。ですから、迷っていても、見に行って『ここに決めよう』という方もいらっしゃいます。まわりが静かですから、そういった意味では住みやすいと思いますよ。お墓の場合は近いといっても、塀や道で隔てられているのでそれなりの距離が保たれています」(片岡さん)

卒塔婆のクローズアップ(画像/PIXTA)

卒塔婆のクローズアップ(画像/PIXTA)

墓地が近いことをもし大家さんがマイナスに感じている場合、家賃や敷金・礼金を割安に設定することがあります。これは借り手としてはうれしいポイントです。これらお金の面に加え、設備などを充実させて部屋のスペックを高くすることで好条件にし、借り手に「この物件がいいな」と思わせる工夫をしている物件もあるそうです。

実は静かで住みやすい?

「日当たりがよくて静かな墓地近くの物件は、気に入って住み続ける方が多くいらっしゃいます」(片岡さん)。入居者は単身者や家族など、エリアによってさまざま。ただ片岡さんいわく、デメリットは、どうしても周辺の夜道が暗めになってしまうこと。そのため、女性よりも男性の入居者の方が多いのだとか。

前述の筆者の友人は、「お盆にはお参りの人たちがたくさんやってくる」と言っていました。そのあたりはどうなのでしょうか。

「お盆やお彼岸には確かにたくさんの方がお越しになりますが、うるさすぎるという苦情を受けたことはないですね。その時期がそういうものでしかたないという認識もありますし、そもそも単身者の方は、自分も帰省などで留守にしていることが多いためでしょう」(片岡さん)

鐘楼(画像/PIXTA)

鐘楼(画像/PIXTA)

音で言えば、お寺なら朝晩鐘の音がします。筆者も以前住んでいた物件で、朝晩お寺の鐘の音が聞こえてくるところがありました。定刻に鳴る音は規則正しい生活を促しますし、風情があってそれはそれでよいかもしれませんね。

「個人的には、ここ10数年くらいの間に、お墓を気にしない人がさらに増えたように感じています。駐車場があって1日中音が絶えず、夜中も皓皓(こうこう)と明るいコンビニなどや、救急病院の近く、あるいは大通り沿いや線路沿いよりも、墓地の近くのほうが、個人的には住みやすいと感じます」(片岡さん)

お墓をどのようなものとしてとらえているかには個人差がありますが、「なんだか怖そうだなー」と敬遠していた筆者も、お話を聞いて「なるほど!」と思わせられました。

日当たりがよく、静かで、スペックや家賃に恵まれていることもある墓地近くの物件。これから家探しをする方は、ぜひ候補に入れて考えてみてください。南無。

もし今住んでいる部屋が実は事故物件だとしたら…解約したい派は6割超!事故物件調査[3]

事故物件調査シリーズ、最後は「解約」に関して。知らずに住んでいたけれど、今住んでいる部屋が実は事故物件だったら……。あなたなら解約しますか? アンケートで解約したい、したくない人と答えた人の理由もそれぞれご紹介します。

※本企画は、弁護士ドットコムニュース編集部との共同企画です
今の部屋が事故物件だったら「解約したい」が6割超え

もし、自分が住んでいる部屋が事故物件であることを知ったとしたら、あなたならどうしますか? 調査では、「解約したい」という人が66.5%、「解約したくない」という人は33.5%という結果となりました。

事前に知って契約しているなら納得の上なので受け入れられますが、知らなかった場合はやはり「解約したい」と思う人が多いよう。ただし、3人に1人は「解約したくない」と答えていて、事故物件に対する捉え方がさまざまであることがうかがえます。事故の内容や時期によっても「解約したい」「したくない」は変わってくるかもしれませんね。

【画像1】解約したくない人も一定数(3割強)いることがわかる(出典/SUUMOジャーナル編集部)

【画像1】解約したくない人も一定数(3割強)いることがわかる(出典/SUUMOジャーナル編集部)

解約したい理由は「気持ち悪い」「不気味」が多数

「解約したい」と回答した人の理由としては、大きく分けると「気分的、心理的に嫌」「不動産会社や大家さんに対する不満」「家賃に対する不満」の3タイプがありました。

気分的、心理的に嫌
・知ってしまったら、気持ち悪くて家にいても落ち着かないと思う(32歳・女性)
・気持ち的に事故があったと考えると住んでいたくない。やすらげない自宅は嫌。家賃が安くなっても嫌だ(33歳・女性)
・不気味だから(34歳・男性)
・ネガティブな要素がある家には住みたくない(38歳・男性)
・子どもがいるので、人が死んだという物件に住みたくない(38歳・女性)

不動産会社や大家さんに対する不満
・事前にそう教えてくれなかったことで、貸主に不信感が生まれる(38歳・女性)
・本来告知義務があると思うが、無かったことに対する不満(46歳・男性)
・入居時に事故物件という説明もなく家賃もほかと同じだとしたら、不動産会社を信用できないから(41歳・男性)
・事故物件とは何も聞いていないので、クレームを言って引越ししたい。引越し費用は出してもらいたい(48歳・女性)
・今知るということは、意図的に隠されていたということなので不気味だから。 入居前には必ず知りたい(24歳・男性)

家賃に対する不満
・事故物件ならその分安いはずなのにそうでないから(38歳・女性)
・事故物件であるのに、家賃が相場通りなら住みたくない(44歳・男性)
・知らないで入居したし、解約が難しいなら安くしてほしい(32歳・女性)
・すぐの引越しは難しいので、説明責任を問いただし、家賃を安くしてもらう(36歳・男性)
・まずはどんな事故があったのか聞いてすぐに引越しを考えて、新しい物件が見つかるまでは家賃交渉したい(38歳・女性)

解約したくない理由は「住み心地に問題ない」「引越しが面倒」など

一方、「解約したくない」と回答した人の理由は以下のとおり。

住み心地に問題がなければ
・入居前に徹底したリフォームや仏事を行っており、居住後も問題がなければ契約更新の時期まで住み続けると思う(36歳・男性)
・長年住んでいるが、怖い事がなかったから(37歳・女性)
・事故物件だと分かったところで住み心地が変わる訳ではないから。ただ、安くしてくれるかどうかは交渉したい(36歳・男性)
・今の部屋に愛着があるので(23歳・女性)
・住み慣れているのであまり心境に変化はないと思う(22歳・男性)

引越しが面倒、お金がかかる
・その時の状況にもよるが、他物件を見つける手間、引越し費用、などトータルで考えると、しょうがないので、そのまま住み続けることになると思います(49歳・男性)
・手続きが面倒だし、新しい部屋を探すのも大変だから(26歳・女性)
・退去するのが面倒だから(30歳・男性)
・引越すのにまたお金がかかるから(39歳・女性)
・引越しは面倒。 入居してしばらく経過していたら気にしない(45歳・女性)

条件が気に入っているから
・住み心地に問題ないし利便性が良いから(29歳・女性)
・家賃やエリアを気に入っているので(30歳・女性)

その他
・事故物件は気にならないのでそれを理由で解約はしないが、事故物件対策(自分が借りる前に短期間だけ人を住まわすなど)を行われていた場合、家主の心根が気に食わないので解約を検討すると思う(33歳・男性)

今回の調査では、何も知らずに事故物件に住んでしまった場合「解約したい」と答えた人が6割を超える結果となりましたが、実際には解約できるものなのでしょうか。弁護士の瀬戸仲男(せと・なかお)さんにお聞きしました。

「解約できる場合もあり得ます。消費者契約法に基づいて契約を取り消すことができる場合もありますし、あるいは、民法に基づいて契約を解除し、損害賠償請求をすることができる場合もあります。ただし、戦うためには「証拠」が必要です。事故物件であることの確かな証拠を確保しなければなりませんので、準備を怠らないようにしましょう」(瀬戸さん)

また、悪質な不動産仲介業者のなかには、過去に事故物件だった事実を隠す「事故物件ロンダリング」を行っているケースもあるようです。具体的にはどのようなものなのでしょう?

「『事故物件ロンダリング』とは、事故物件をクリーニング(洗浄)して、嫌われない物件に変えてしまおうという行動のことを指します。一番多く行われる方法は『サクラを入居させる』という方法です。宅建業者の中には『事故が起きた後、一度でも次の入居者が入居すれば、そのまた次の入居者に対して、事故物件であることを説明しなくても、宅建業法上の重要事項説明義務に違反しない』と考えている業者がいるようです。そこで、このような業者は、自社の社員やアルバイト学生などを使って一定期間だけ事故物件に入居させて、クリーニングしようとするわけです。

あるいは、借地借家法の『定期借家契約』も事故物件をクリーニングする方法として利用されることがあります。事故物件であることを説明したうえで借主を募集した場合、低家賃でなければ借主はほとんど現れません」

「事故物件だということを知らされずに入居したのでは、精神的に参ってしまい、心療内科などの病気になりかねませんね。多少の不安感ならば、お祓いしてもらって住み続けるという選択肢もあり得ますが、多くの方にとっては大問題でしょうね。病気になる前に転居して、気持ちを落ち着けてから、家主や仲介業者との交渉などを始めるとよいでしょう」

事故物件に住んでいたからといって、必ずしも何かが起きるわけではありません。心理的な嫌悪感をもったり、霊的なものを感じる体質でなければ、事故物件であっても普段通りの生活をすることは可能です。先の調査で、家賃の安さなどから、あえて事故物件を選択する人もいます。どうしても事故物件に住みたくない、周辺に住むのも嫌という人は、事前に不動産会社や大家さんに確認をとっておく、専門サイトでチェックするなどの対策をしてくださいね。

●調査概要
・[事故物件に関する調査]より
・調査期間 2017年12月21日~25日
・調査方法:インターネット調査(ネオマーケティング)
・対象:全国の賃貸集合住宅にお住まいで、半年以内に賃貸で部屋探しをする予定のある方
・有効回答数:400名●取材協力
・アルティ法律事務所代表 瀬戸仲男弁護士

事故物件だけど条件がよい物件があったら、あなたなら借りる?借りない?事故物件調査[2]

部屋探し中に偶然出会った事故物件。物件の条件次第では借りることを検討しますか? 今回は、事故の内容や起きた時期によって検討状況は変わるのか聞いてみました。検討する、しないと回答した人の理由も合わせて紹介します。
※本企画は弁護士ドットコムニュース編集部との共同企画です。
自然死、病死の場合には、条件が合えば検討する人が約半数も

今回の調査では、事故物件に住んだことがある人は5.5%と少数派でした。ただ、部屋探しをしているなかで、見つけた物件が「事故物件」であることを偶然知ることがあるかもしれません。そんなとき、物件の条件(家賃や広さなど)によって検討するでしょうか。ほかのみんながどうしているのか気になるところですよね。

結果は、該当の部屋であっても自然死や病死であれば住むことを検討すると答えた人が約半数。さすがに該当の部屋で自殺や他殺があった場合には3割に届きませんでしたが、少数ながら検討する人はいて、需要はあるようです。また、自殺や他殺であっても、該当の部屋ではなく同じ建物内で起こった場合であれば、検討するという人が4割いることも分かりました。そして事故物件の内容に関わらず、女性より男性のほうが検討する割合は高いようです。

【画像1】隣や上下階、同じ建物内の場合など、該当の部屋でなければ「検討する」という人がそれぞれ約4割いた(出典/SUUMOジャーナル編集部)

【画像1】隣や上下階、同じ建物内の場合など、該当の部屋でなければ「検討する」という人がそれぞれ約4割いた(出典/SUUMOジャーナル編集部)

自殺や他殺は、何年たっていても時期にかかわらず契約しないという人が7割以上

では事故が起きた時期によっては検討する、しないは変わるのでしょうか。

該当の部屋で自殺、他殺があった場合には、それぞれ71.5%、73.0%が「時期にかかわらず、検討しない」と回答。特に女性は8割以上が「検討しない」と答えました。
一方、該当の部屋で病死、自然死があった場合はそれぞれ28.0%、28.8%が「2年未満でも、検討する」と回答しており、事故の原因によって検討する、しないは多少変わってくるようです。

ちなみに事故物件に関しては、「事故から○年経過までは告知義務あり」といった告知時期に関する明確なルールが存在しません。借りるという選択をするとしても、事故があったかどうかの事実は知りたいもの。ルールが存在しないとすれば、自ら確認をするのが入居後に後悔しないために賢明と言えそうです。

【画像2】該当の部屋でなければ、時期を問わず検討する人が4割を超えた(出典/SUUMOジャーナル編集部)

【画像2】該当の部屋でなければ、時期を問わず検討する人が4割を超えた(出典/SUUMOジャーナル編集部)

「相場より家賃が安い」「交通利便性が良い」場合、事故物件でも検討する人が多数

次に、先の質問で「物件の条件次第で検討する」と回答した人に、どんな条件なら事故物件の契約を検討するのか聞いてみました。

ダントツで多かったのは、「相場より家賃が安い」で9割以上が支持。男女別で見ても、男女ともに9割以上が検討すると答えています。次に「交通の利便性が良い」(65.5%)、「リフォーム済みできれい」(57.9%)、「部屋の間取り・広さがちょうどよい」(56.6%)、「部屋の設備がよい」(55.7%)と続きます。家賃はもちろん、同じエリア・相場の物件と比較して、条件が少しでもよければ事故物件でも候補として検討する人が多いようです。

【画像3】事故物件であっても、家賃が安い物件は魅力のよう(出典/SUUMOジャーナル編集部)

【画像3】事故物件であっても、家賃が安い物件は魅力のよう(出典/SUUMOジャーナル編集部)

また、「相場より家賃が安い」を選んだ人に、例えば8万円の物件で、どのくらい安ければ事故物件でも契約するか聞いたところ、「相場より30%安い、5.6万円以下なら」と答えた人が3割を超え、「それ以上安い場合なら」は22.9%いました。8万円の家賃なら1年で96万円の負担ですが、30%安い場合には67.2万円で済みます。一人暮らしなどでは、家賃をできるだけおさえたいのに加え、ずっとそこに暮らすわけではないため、わずかの期間なら安い家賃で住みたいと思う人が多いのかもしれません。

【画像4】相場より3割以上安いなら検討すると答えた人は半数を超えた(出典/SUUMOジャーナル編集部)

【画像4】相場より3割以上安いなら検討すると答えた人は半数を超えた(出典/SUUMOジャーナル編集部)


最後に、「物件の条件にかかわらず、検討しない」と答えた人に、その理由を具体的に聞いてみました。
多かったのは「なんとなく怖い」「なんとなく嫌」というもの。決定的な理由があるわけではないけれど、心理的に受け付けない、嫌悪感がある人が多そう。ほかにも、「ポジティブな気分になれない」「その情報が頭から離れずくつろげない」「心霊現象がおきそうだから」などの心理的なものが多数。また、「イメージが良くなく、周りに自殺したことを知っている人がいると、色々言われそう」といった周りの目を気にするコメントも見られました。

今回の調査では、「事故物件」の心理的瑕疵の内容や時期によって、検討状況は変化するのかどうかのアンケートを取りましたが、法的に事故物件の告知義務は決められているのでしょうか?弁護士の瀬戸仲男(せと・なかお)さんにお聞きしました。

「宅地建物取引業法(宅建業法)の規定によって、宅地建物取引業者(宅建業者)は、物件についての説明義務を課されています。これを『重要事項説明義務』と言います。買主・借主は、物件において人が異常死したという事実について大いに気になるものです。このような人の気持ちに影響を与えるマイナスの要素を『心理的瑕疵』と言います。この心理的瑕疵についても、重要事項説明書で説明すべきであるとされています」

「仮に、宅建業者がこの説明義務に違反して、事故物件であることを説明せずに業務を行った場合、宅建業法違反となり、免許停止や、悪質であれば宅建業法上の罰則を科されることにもなりかねません。また、説明義務違反が重大である場合、例えば、事故の内容(自殺なのか、他殺なのか。他殺の場合、被害者の人数や、殺害方法が残忍なものかなど)、物件の規模、用途、金額などによっては、単に宅建業法違反という行政法規違反に問われるだけでなく、刑事法規(刑法上の詐欺罪<不作為による欺もう行為>など)にも問われる可能性がありそうです」(瀬戸さん)

また調査結果からは、事故物件に住むことを検討する理由として、「家賃が安い」ことを挙げる人が多いことが分かりました。実際に事故物件を借りたいといった場合に、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。
「事故物件の「事故」の内容を書面に書いてもらっておきましょう。例えば、本当は「他殺事件」であるにもかかわらず、「自然死」などと説明されて入居した後に、近所の人などから真相を聞かされて、損害賠償請求などを行う場合、説明の食い違い(虚偽の説明)を立証するのは困難ですが、書面化しておけば、安心ですね。重要事項説明書の「特記事項」の欄に具体的な事故の内容を書いておくようにお願いしてみましょう」(瀬戸さん)

今回の調査で、事故物件のなかでも自然死や病死などであれば借りることを検討する人は多く、事故物件に対する捉え方はさまざまだということが分かりました。とはいえ自殺、他殺などは、たとえ条件がよくても契約はしない人が7割以上ですから、検討するかしないかは、事故の内容にもよるようです。

事故物件に住む場合、その部屋自体もそうですが、周辺の環境などにも気を付けたいもの。特に原因が他殺だった場合などは周辺の治安が心配です。立地的に安全かどうか、侵入しやすい建物の構造ではないかなど、事前にきちんと確認をするようにしましょうね。

●調査概要
・[事故物件に関する調査]より
・調査期間 2017年12月21日~25日
・調査方法:インターネット調査(ネオマーケティング)
・対象:全国の賃貸集合住宅にお住まいで、半年以内に賃貸で部屋探しをする予定のある方
・有効回答数:400名●取材協力
・アルティ法律事務所代表 瀬戸仲男弁護士

怖いイメージのある事故物件、住んだことがある人の3割はあえて選択!? 事故物件調査[1]

事故物件と聞くと、マイナスなイメージがあるかもしれません。そんなところに住みたくないという人もいれば、安いなら住みたいという人もいるようです。今回は、事故物件に対して抱くイメージや、住んだことがある人の声などを紹介します。
※本企画は弁護士ドットコムニュース編集部との共同企画です。
やはりレア!? 事故物件に住んだ経験がある人は1割以下

事故物件と聞いて、どんなものか皆さんはすぐに答えられますか? 事故物件とは、過去に事件や事故による死亡、自殺、自然死などがあった物件を指します。昨今、テレビのニュースなどで取り上げられることも多く、耳にした人も多いかもしれません。今回調査を行う上で、「事故物件」という言葉を知っているか聞いたところ、「よく意味を知っている」と答えた人は64.3%、「なんとなく意味を知っている」人は31.8%でした。

また、これまでに事故物件に住んだ経験はあるかどうかの質問に対しては、「住んだことはない(事故物件かどうか確認したことがある)」が59.8%と一番多く、「分からない(事故物件かどうかの確認はしていない)」(34.8%)と続きました。賃貸物件の場合には、清掃・洗浄・内装張り替えなどを行ってから新たに貸し出されることが多いため、不動産会社などから告知がなければ事故物件と分からないケースもあるかもしれません。筆者も賃貸物件を探して契約したことが何度もありますが、事故物件かどうか確認したことはなく、約6割が「事故物件かどうか確認したことがある」と回答したことが驚きでした。これもニュースなどで事故物件が取り上げられたことが、少なからず影響しているのでしょうか。

また、事故物件に実際に「住んだことがある」は5.5%で、事故物件と分かっていて住む人は少ないことが分かりました。

【画像1】「なんとなく意味を知っている」は3割。「よく知っている」を合わせると9割以上の人が事故物件という言葉を知っていた(出典/SUUMOジャーナル編集部)

【画像1】「なんとなく意味を知っている」は3割。「よく知っている」を合わせると9割以上の人が事故物件という言葉を知っていた(出典/SUUMOジャーナル編集部)

【画像2】5.5%は事故物件に「住んだことがある」と回答した(出典/SUUMOジャーナル編集部)

【画像2】5.5%は事故物件に「住んだことがある」と回答した(出典/SUUMOジャーナル編集部)

もともと事故物件で探していた人が3割も。理由は「家賃が安いから」がトップ

次に、事故物件に住んだ経験がある人に、事故物件であることを知ったきっかけ・タイミングを聞いてみました。

結果、「もともと事故物件で探していた」(31.8%)が、「不動産広告の記載で知った(告知事項あり、心理的瑕疵ありなど)」「内見時・契約時に不動産会社から聞いた」「住み始めた後に、近隣の人から聞いた」(同率18.2%)をおさえて1位となりました。事故物件というと人気がなさそうと思いがちですが、あえて事故物件を探している人が3割もいることから、一定の需要があることが分かります。

選んだ理由を聞いてみると、「賃料が安かったから」が多数。ほか、「条件や間取りが良かった」「立地が良かった」なども。「家賃が安く立地も良かったが、悩んでいるうちに候補にしていた物件に空きが無くなり「事故物件」へ決めざるを得なかった」という人もいました。

住み心地はというと、「普通だった」という声が多数を占めました。ただ一部には、「普通に暮らしていたけど近隣の目が気になった」「気持ちが悪かった」「いろいろ物音がきこえた」という人もいました。

【画像3】「事故物件サイトで知った」という人も約1割。専門サイトでチェックするのも方法のひとつ(出典/SUUMOジャーナル編集部)

【画像3】「事故物件サイトで知った」という人も約1割。専門サイトでチェックするのも方法のひとつ(出典/SUUMOジャーナル編集部)

事故物件のイメージは「家賃の安さ」のほかに「怖い・不気味」が7割以上

事故物件というと、どんなイメージがあるのでしょうか。結果は「家賃が安い」と「怖い・不気味」が7割を超え、「心理現象がありそう」(43.3%)、「リフォームや清掃が行き届いている」(13.8%)が続きます。

イメージばかりが先行しがちですが、実際に事故物件に住むとなると躊躇(ちゅうちょ)する人も多いはず。家賃が安いというだけで「借りてみよう」とは思わないかもしれません。まずは契約の前に事故物件であるかどうか確認することが重要です。

【画像4】「家賃が安い」「怖い・不気味」とイメージする人が圧倒的に多かった(出典/SUUMOジャーナル編集部)

【画像4】「家賃が安い」「怖い・不気味」とイメージする人が圧倒的に多かった(出典/SUUMOジャーナル編集部)

事故物件かどうかを知るには、物件情報から知る方法と、自分から不動産会社に聞く方法の2通りがあります。
一つ目は、物件情報にある「告知事項あり」という記載がある場合。借りる側に伝えるべき重要事項があるという意味であり、事故物件である可能性があります。宅地建物取引業法では、このように事故物件の場合には借り手に内容を説明するよう告知義務が定められています。記載があるときには、不動産会社に確認するといいでしょう。

もうひとつは不動産会社に自ら確認する方法です。というのは、告知義務はあるものの、その期間については法律で定められていません。特にあなたの前に誰か違う人が住んだ後などは、不動産会社は改めて告知をしない可能性があります。気になる人は、記載がなくても契約前に確認することをおすすめします。

事故物件であっても、事故があったことや内容をきちんと告知し、家賃を下げてくれる誠実な大家さんや不動産会社が扱う物件なら安心かもしれません。

今回の調査で、多くの人が言葉の意味は知っていると答えた「事故物件」。そもそも、どのような定義なのでしょうか。弁護士の瀬戸仲男(せと・なかお)さんにお聞きしました。

「事故物件というものが法令で定義されているわけではありませんが、一般に、自殺、他殺、不審死など忌み嫌われる事件・事故があった物件のことだとされています」(瀬戸さん)

「賃貸物件などの建物には、「瑕疵」(キズのこと)があることがあります。例えば、水漏れや給湯器の故障などは「物的瑕疵」といいます。これに対し、事故物件といわれるものは「心理的瑕疵」というものです。物件が壊れているわけではありませんが、心理的な気持ちの問題として避けられる物件です。
 心理的な瑕疵ですので、気にならない人にとってはキズでもなんでもなく、むしろ相場より安い賃料で入居できるので、お得な物件といえます」(瀬戸さん)

今回の調査で、事故物件にも「家賃が安い」などの理由から、一定の需要があることが分かりました。「事故物件は絶対にイヤ!」という明確な意思がある場合でなければ、事故の理由によっては検討する物件の候補に入れてみるのもアリかもしれません。ただし借りる場合には、「こんなはずじゃなかった」とならないよう不動産会社に詳細を確認して納得の上で! 住んでから「やっぱりイヤ」とならないよう気をつけてくださいね。

●調査概要
・[事故物件に関する調査]より
・調査期間 2017年12月21日~25日
・調査方法:インターネット調査(ネオマーケティング)
・対象:全国の賃貸集合住宅にお住まいで、半年以内に賃貸で部屋探しをする予定のある方
・有効回答数:400名●取材協力
・アルティ法律事務所代表 瀬戸仲男弁護士