共働き夫婦が建てた67平米コンパクト平屋。エアコン1台で夏冬も家中快適なアメリカンハウス

家を建てるとなれば、かつては「2階建て3LDK以上」が一般的でしたが、最近では約70平米前後のコンパクトな平屋の需要が見られるようになりました。子どもが巣立ったのをきっかけに2LDK・約67平米の平屋を新築したTさんご夫妻の住まいの事例から、“コンパクト平屋”の魅力を探ります。

子育てを終えたのをきっかけに、夫婦2人の家づくりをスタート

賃貸住宅に住んでいたTさんご夫妻(夫30代・妻40代)は、お子さんが巣立ち、2人だけの生活になったのを機にマイホームを検討しはじめます。

大きな壁になったのは資金計画。2人は新築のために貯蓄してきたわけではなかったため、当初は「無理かもしれない」と思っていたそう。しかし偶然、依頼した建築会社が不動産業も営んでいたため、「夫の年齢であれば十分な融資が下りること」「収入に見合った予算の立て方」などのアドバイスを受け、家づくりが現実のものになります。

Tさんご夫妻(写真撮影/片山貴博)

Tさんご夫妻(写真撮影/片山貴博)

家を建てるにあたり、Tさん(妻)にはある譲れない思いがありました。

「私が思春期のとき、実家が2階建てで、2階の子ども部屋にこもりがちになっていました。それもあって、家のつくり次第で家族の過ごし方が変わることを、身をもって知っていたのです。現に子育て期間を過ごした賃貸アパートはワンフロアだったので、子どもたちと料理をしたり気さくに会話したり、コミュニケーションが取れて本当によかったなと。夫婦2人にはなりますが、こうした背景から“コンパクトな平屋”にすることは外せませんでした」

年齢を重ねて体が思うように動かなくなったとき、平屋であれば負担が少ないはず。また、夫は車いじりが大好きで、ガレージでメンテナンスをするほか、屋外で食事や庭づくりをしたいとも思っていました。建坪を抑えれば、庭のスペースを最大限に確保できる。さまざまな点で小サイズの平屋は理にかなっていたと言います。

妻の意見に夫は大賛成。
2年かけていくつかのエリアを見て回り、埼玉県内にある約120坪の土地を購入しました。

ブルーを利かせたリラックス感あふれるアメリカンハウスが完成

夫が元来、車好きだったことや、妻のインテリアの嗜好から“アメリカンハウス”に惹かれていた2人。2021年10月に2LDK・約67平米の平屋を完成させました。

本体価格1000万台前半。2LDK・約67平米。竣工年月2021年10月(画像提供/デザインハウス・エフ)

本体価格1000万台前半。2LDK・約67平米。竣工年月2021年10月(画像提供/デザインハウス・エフ)

アメリカンハウスの世界に忠実に屋根やポーチをデザインしたT邸。敷地は農地転用されたばかりで周辺が静かだったことが決め手に。植樹したヤシの木もこだわり。外構、ヤシの木の植樹はヤシの木を販売している会社「ザルゲートガーデン」に依頼(写真提供/Tさん)

アメリカンハウスの世界に忠実に屋根やポーチをデザインしたT邸。敷地は農地転用されたばかりで周辺が静かだったことが決め手に。植樹したヤシの木もこだわり。外構、ヤシの木の植樹はヤシの木を販売している会社「ザルゲートガーデン」に依頼(写真提供/Tさん)

照明もこだわり。夜は昼間と違った趣に(写真提供/Tさん)

照明もこだわり。夜は昼間と違った趣に(写真提供/Tさん)

「今まで子育てに忙しくて暮らしにあまり手をかけられなかったので、新居には理想を込めました」(妻)

室内はブルーや白の壁・ブラウンの床を基調にした明るく穏やかな空間。LDKを吹き抜けにし、窓を大きく取ったことで、ミニマムな平屋とは思えない開放感が広がります。
リビングのソファに腰掛けると、窓の外にはやさしく葉を揺らすヤシの木が。まるでアメリカ西海岸を訪れたかのようなムードです。

T邸では将来、体が思うように動かせなくなったときに備えて床をフラットにしていますが、部屋ごとに床に異なる素材を使い、アクセントウォールを取り入れるなどして、各スペースの印象が変わるようにしています(写真撮影/片山貴博)

T邸では将来、体が思うように動かせなくなったときに備えて床をフラットにしていますが、部屋ごとに床に異なる素材を使い、アクセントウォールを取り入れるなどして、各スペースの印象が変わるようにしています(写真撮影/片山貴博)

庭を望むリビングのソファは、とくに夫が気に入っている場所(写真撮影/片山貴博)

庭を望むリビングのソファは、とくに夫が気に入っている場所(写真撮影/片山貴博)

高低差をつけてバランスよく配された植物が、くつろぎのムードを演出。スペースごとの色調に合わせ、ダイニングには木製ブラインド、リビングにはブルーのカーテンを採用しました(写真撮影/片山貴博)

高低差をつけてバランスよく配された植物が、くつろぎのムードを演出。スペースごとの色調に合わせ、ダイニングには木製ブラインド、リビングにはブルーのカーテンを採用しました(写真撮影/片山貴博)

関連記事:2023年住宅トレンドは「平屋回帰」。コンパクト・耐震性・低コスト、今こそ見直される5つのメリットとは?

別々のことをしていても近くに感じられる心地よさは平屋ならでは

T邸では玄関に入るとすぐに洗面室・トイレ・脱衣室があります。とくに洗面室には直接、玄関からアクセスできる通路が設けられていて、帰ってきてすぐ手洗い・うがいをし、そのまま脱衣室で汚れた服から着替えることが可能。もちろん、LDKには掃き出し窓があるので、こちらからも屋外に気軽に行き来することが。
庭でたくさんの時間を過ごす2人ならではの間取りと動線です。

「家中を滞りなく動き回れるよう、2つの個室以外は極力、区切りをなくしました。どこでもつながりを感じられて、逃げ場がないのがよいところ。喧嘩しても、いつまでも口を利かないわけにはいきませんから(笑)」(妻)

「2階建てよりは関わりを持ちやすいと感じている」と語るご夫妻。
休日はソファでくつろぐ夫の傍らで、妻がダイニングのテーブル席で副業のアーティフィシャルフラワーの作品づくり。別々のことをしながらひとつの空間で過ごす心地よさを、この平屋に住むようになってますます実感していると言います。

玄関に入ると右手に洗面室への出入口とシューズクローク。向かいの2つのドアは、右がトイレで左が脱衣室。畑仕事などの後、LDKに入る前に汚れを落とせます(写真撮影/片山貴博)

玄関に入ると右手に洗面室への出入口とシューズクローク。向かいの2つのドアは、右がトイレで左が脱衣室。畑仕事などの後、LDKに入る前に汚れを落とせます(写真撮影/片山貴博)

身支度の時間が重なると洗面台が取り合いになるため、カウンターを長めに取って鏡を2人分配置。「玄関のすぐ近くに洗面台を配したプランは、とくにコロナ禍で役立ちました」(妻)(写真撮影/片山貴博)

身支度の時間が重なると洗面台が取り合いになるため、カウンターを長めに取って鏡を2人分配置。「玄関のすぐ近くに洗面台を配したプランは、とくにコロナ禍で役立ちました」(妻)(写真撮影/片山貴博)

風が強い日が多い地域のため、脱衣室(兼ランドリールーム)を広めにしてたくさん部屋干しをできるよう工夫(妻)(写真提供/デザインハウス・エフ)

風が強い日が多い地域のため、脱衣室(兼ランドリールーム)を広めにしてたくさん部屋干しをできるよう工夫(妻)(写真提供/デザインハウス・エフ)

アーティフィシャルフラワーの作品は、妻が試しに手づくりしたことから虜になり制作しているもの。将来は家のガレージで教室を開きたいと考えています(写真撮影/片山貴博)

アーティフィシャルフラワーの作品は、妻が試しに手づくりしたことから虜になり制作しているもの。将来は家のガレージで教室を開きたいと考えています(写真撮影/片山貴博)

作業部屋もつくりました(写真撮影/片山貴博)

作業部屋もつくりました(写真撮影/片山貴博)

屋内外をつなぐミニマムな平屋は、ご近所づき合いにも好影響

引越してきて約1年半、ドライガーデンに挑戦したり、庭で食事をしたり、自分たちらしく暮らしを満喫している2人。アメリカンハウスの外観が目を引くこともあってか、その光景を見てよく道行く人が声をかけてくれるのだそう。

「子どもがいないと地域に溶け込みにくいイメージがありましたが、そんなことはまったくなくて、BBQに飛び入りで参加してもらって仲良くなり、プライベートでご飯を食べに行ったり、古くから住むお年寄りに家庭菜園で育てた野菜をおすそ分けしてもらったり。豊かな交流を広げています」(夫)

庭から玄関・LDKそしてまた庭へ。屋内外を行き来しやすい“コンパクト平屋”だからこそ、人との距離が縮まっていく――。その好循環も、ここに住む魅力のひとつと言えるでしょう。

軒先には英字の標識を立てた愛らしいドライガーデンが。手前の花壇には、季節ごとに異なる花々を植えています(写真撮影/片山貴博)

軒先には英字の標識を立てた愛らしいドライガーデンが。手前の花壇には、季節ごとに異なる花々を植えています(写真撮影/片山貴博)

フラットな床で将来の備えも万全。一方で防犯対策は念入りに

Tさん(妻)は長年、看護師をしてきたことから、さまざまな介護の現場を見てきたそう。そのため「将来の万一のときに備えて」というのも、平屋を選んだ大きな理由です。仮に車椅子になったとき、平屋だと上り下りがない分、2階建てより負担が少ないと言えますが、床の段差をなくし、さらにスムーズに移動できるようこだわりました。

キッチンの壁は掃除しやすい人造大理石を採用。現在ゴミ箱を収めているカウンター下の空洞は、将来、車椅子を入れて座ったまま料理ができるようにするためのアイデア(写真撮影/片山貴博)

キッチンの壁は掃除しやすい人造大理石を採用。現在ゴミ箱を収めているカウンター下の空洞は、将来、車椅子を入れて座ったまま料理ができるようにするためのアイデア(写真撮影/片山貴博)

「過ごしやすさの話で言うと、エアコンはLDKに1台備えただけ。部屋数を最小限にとどめた分、光熱費を抑えられていますし、掃除もラクにできます。また、意図的に収納スペースを少なくし、ものを目に届きやすくし、管理しやすくする工夫もしました」(夫)

平屋のメリットを享受しているご夫妻ですが、懸念している点がひとつあると言います。

「『平屋は防犯面で気をつけた方がいい』と聞くため、セキュリティサービスに入るほか、窓に防犯フィルムを貼る、フェンスを装備するなどして対策を徹底しています」(夫)

平屋は今後の2人の暮らしを魅力的なものにする、ベストな選択

「屋外との一体感を得られ、家中を移動するときに負担が少なく、ご近所ともつき合いやすくて。これ以上ないくらい自然体でいられるのが、平屋のよさかなと。
今後はガレージとウッドデッキを完成させたいです」(夫)

「何か地域のために役立つことができたらとも考えている」と笑顔を見せる2人。
妻は、幸運にも迎えられた新しい日常をこう話します。

「思えば私の小さいころからの夢は、看護師になって平屋を建てることでした。それが実現したのは夫のおかげ。とても感謝しています。
今は子どもが手を離れ、時間的なゆとりができていますが、そのことと平屋とが融合し、いい状態で過ごせていると感じます。
リビングからヤシの木を眺めては、夫婦で『いいね、うちは』と話しているんです(笑)」(妻)

2人だけの生活になってたどり着いたTさんご夫妻の平屋。
自分たちらしい解である小さな住まいからは、予想を上回る幸せが生まれているようです。

あたたかい季節は週1・2回、庭に出て音楽やお酒を楽しんでいるご夫妻。「夜、家から見る庭があまりにきれいで、自宅にいることが信じられない気持ちになります」と話します(写真撮影/片山貴博)

あたたかい季節は週1・2回、庭に出て音楽やお酒を楽しんでいるご夫妻。「夜、家から見る庭があまりにきれいで、自宅にいることが信じられない気持ちになります」と話します(写真撮影/片山貴博)

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・40代共働き夫婦、群馬県の約70平米コンパクト平屋を選択。メダカ池やBBQテラスも計画中で趣味が充実
・50代人気ブロガーRinさんがコンパクト平屋に住み替えた理由。暮らしのサイズダウンで夫婦円満に

●取材協力
デザインハウス・エフ

40代共働き夫婦、群馬県の約70平米コンパクト平屋を選択。メダカ池やBBQテラスも計画中で趣味が充実

自分のライフスタイルに合った暮らしを実現できると、家選びの際に平屋を選ぶ人たちが増えています。40代の久保田さん夫妻も、家を新築する際、迷わず決めたのが平屋の一戸建てでした。タイルのテラスから庭とつながる、約22坪(約73平米)のコンパクトな家。その住み心地と、「多くの人に平屋をすすめたい」という理由をうかがいました。

2階はなくていい。コンパクトなワンフロアが理想

群馬県在住の久保田さん夫妻がお住まいなのは、22坪のコンパクトな平屋の家です。以前住んでいたのも、同程度の広さの平屋の賃貸住宅だったというご夫妻。「趣味で飼っているメダカが増えてしまって、今1000~2000匹くらいいるんです。以前の賃貸の家は古く、庭もなかったので、メダカの水槽を置ける庭付きの家に住み替えよう、と思ったのがきっかけでした」(久保田さん夫)

メダカがみるみる増えてしまったのが住み替えのきっかけだったといいます。庭先に置いたプレハブの小屋には、メダカに関連する道具がいっぱい(写真撮影/片山貴博)

メダカがみるみる増えてしまったのが住み替えのきっかけだったといいます。庭先に置いたプレハブの小屋には、メダカに関連する道具がいっぱい(写真撮影/片山貴博)

当初、中古の2階建ての家を見学したおふたり。そこは1階にキッチン、リビングと1部屋、2階に2部屋ある間取りでした。「内覧して、正直、2階はいらないなと思いました。ずっとふたり暮らしだから、部屋数があっても使わないですし。何十年か先、足腰が弱ってきたら、きっと2階には行かなくなって物置になってしまいそう。それなら、ワンフロアでコンパクトな平屋がいいなと思ったのです」(久保田さん妻)

その後、スマホで家探しをしていたところ、近所でモデルハウスを販売するという情報を見つけました。
「見学してみて、ひと目惚れ。廊下もない平屋のワンフロアで、吹き抜けで家中が明るく、住みやすそうだなと感じました。ロフトがあって、なんだか遊び心もあるなぁと」(妻)
ただ、その家は予算に合わなかったこと、完成品ゆえ仕様や色などが選べなかったため、改めて新築を依頼。土地探しから始めました。

22坪、2LDK。南側に3室ある、明るく開放的な住まい

ほどなくして、おふたりの仕事先から近い住宅地に約83.4坪の土地を見つけ、840万円で購入しました。「建物は、17坪、19坪、24坪、27坪の4つのプランのうち、19坪プランを選びました。ただ、住宅ローンは【フラット35】を使いたかったのですが、22坪以上でないと適用にならないとのこと。だけど24坪プランではうちには部屋が多すぎる。そこで相談して、19坪プランの居室部分を3坪分広げるかたちで、22坪の家を建てることにしたのです」(夫)

間取りは、いくつか用意されていたパターンのうち、3室が南に面した2LDKを選択。価格は1000万円台前半でした。

黒×茶色の外壁がシックな平屋。屋根にはソーラーパネルを設置しています。庭の右側、カバーをかけているのがメダカの水槽(写真撮影/片山貴博)

黒×茶色の外壁がシックな平屋。屋根にはソーラーパネルを設置しています。庭の右側、カバーをかけているのがメダカの水槽(写真撮影/片山貴博)

ずらりと並んだメダカの水槽(写真撮影/片山貴博)

ずらりと並んだメダカの水槽(写真撮影/片山貴博)

玄関ドアは明るいブルー。玄関ホールから居室につながり、廊下はありません(写真撮影/片山貴博)

玄関ドアは明るいブルー。玄関ホールから居室につながり、廊下はありません(写真撮影/片山貴博)

玄関脇はアウトドアグッズなどがしまえる土間状の収納スペース。ここにもメダカの鉢が(写真撮影/片山貴博)

玄関脇はアウトドアグッズなどがしまえる土間状の収納スペース。ここにもメダカの鉢が(写真撮影/片山貴博)

完成した住まいは、玄関ホールから洋室とLDKにつながっていて、リビングの奥に和室、キッチンの先に洗面脱衣室と浴室。廊下がなく、無駄なくまとまった間取りです。
「コンパクトなんだけど、キッチンも広いし、脱衣所もゆったりしていて着替えるのも楽です。洋室は寝室として使っていて、和室は今のところなにも置いたりせず、親や友人が泊まりにきたときに使えたらいいかなと思っています」(妻)

客間として使う予定の和室。物干しポール(オプション)もあり、室内干しもここで(写真撮影/片山貴博)

客間として使う予定の和室。物干しポール(オプション)もあり、室内干しもここで(写真撮影/片山貴博)

洗面脱衣所もゆったり広々(写真撮影/片山貴博)

洗面脱衣所もゆったり広々(写真撮影/片山貴博)

コンパクトだからとにかく家事が楽!のびやかな天井高は平屋ならでは。ロフトもプラスしました。テーブルを置かず、ダイニングスペースを広く使っています(写真撮影/片山貴博)

のびやかな天井高は平屋ならでは。ロフトもプラスしました。テーブルを置かず、ダイニングスペースを広く使っています(写真撮影/片山貴博)

当初のプランより広げたというLDKは18.5畳(30.63平米)とゆったり。天井が高く、オプションで2畳ほどのロフトもプラスしたそう。「実家ではロフトが自分の部屋だったので。でも、下で事足りてしまうし、ハシゴの上り下りが大変なので、今は使っていません」(夫)
壁紙の色は用意されていた3タイプから白ベースのカラーを選んだこともあり、明るくすっきり、広々と感じます。

白を基調にしたキッチン。リビングからカウンターの手元が見えないのですっきり(写真撮影/片山貴博)

白を基調にしたキッチン。リビングからカウンターの手元が見えないのですっきり(写真撮影/片山貴博)

「天井が高いのは憧れでした。以前住んでいた賃貸と広さはそんなに変わらないのに、おかげでここは開放的だなと感じます。ダイニングテーブルを置くと動線の邪魔になりそうだったので、食事はリビングのテーブルで。それもあって空間が広々と使えています。収納スペースも限られているけど、本当に使うものだけにして、すっきりさせています。いちばん気に入っているのは、家事が楽なところ。特に掃除は、お互い仕事をしているので週末に掃除機をかける程度ですが、10分もかからないで終わってしまうのがうれしい」と久保田さん(妻)は笑います。

シンプルな洋室はふたりの寝室に(写真撮影/片山貴博)

シンプルな洋室はふたりの寝室に(写真撮影/片山貴博)

動線も無駄がありませんよね。
「そこも便利だと感じています。うちの実家は3階建てで、私の部屋は3階にあったので、忘れ物をするといちいち3階まで階段を上がって取りに行かないといけなくて、それが本当に大変でした。今は車に乗ってから、『あ、アレ忘れた』と家に取りに戻っても、探すのは1階だけだからささっと(笑)。とても楽ちんです」(妻)
家の中の温度差がないのもよかった点。各部屋にエアコンは設置してありますが、この冬はリビングにある24畳用のエアコンのみ稼働させ、家中快適に過ごせたといいます。

休日はリビングでひたすらごろごろ

ふたりともテレビを見るのが大好きで、リビングのソファでまったり、お酒を飲みながら過ごすのがなによりの楽しみだといいます。
「せっかく庭もあるので、これから活用していきたいですね。先日、暖かい日に七輪を出して焼肉をしたんです。春にはBBQするのもいいな」と妻。

ソファでテレビを見ながら過ごすのが楽しみというふたり(写真撮影/片山貴博)

ソファでテレビを見ながら過ごすのが楽しみというふたり(写真撮影/片山貴博)

夫は「以前鯉を飼っていた知人が、ひょうたん型の大きな生簀をくれたので、庭に置いてメダカを放したんです。ここに屋根を付けたり、自然池みたいにしたい」と夢がふくらみます。
両親が遊びに来たときも、「ここはふたりにちょうどいい広さだね!」と絶賛したという住まい。ストレスなくのびのび過ごしているおふたりの姿が印象的でした。

大きな生簀にたくさんのメダカが。いずれは屋根も付ける予定(写真撮影/片山貴博)

大きな生簀にたくさんのメダカが。いずれは屋根も付ける予定(写真撮影/片山貴博)

久保田さんがこの家で暮らして半年ほど。今後どんな方に平屋ライフをおすすめしたいですか?
「もう、みんなにすすめたいです。土地が狭いとどうしてもスペースが足りず2階建て、3階建てになってしまうと思うんですけど、ある程度土地の広さがあれば、平屋ってとても便利ですよ、と伝えたいです。普段の家事も、メンテナンスや将来的にリフォームするのも楽だと思います。うちは屋根に太陽光発電をのせているんですが、いつか劣化して交換するときも、2階建てより平屋の方が便利ですよね」(妻)

(写真撮影/片山貴博)

(写真撮影/片山貴博)

ふたり世帯、シニア世帯のニーズを捉えるコンパクト平屋

平屋商品に注力するIKI株式会社(ケイアイスター不動産グループ)によると、平屋の販売数は年々増加傾向にあるといいます。特に契約者の割合が高いのは、夫婦/パートナーとのふたり世帯、次いでシニアで、年齢でいうと40~50代の関心を集めているようです。

まさしく久保田さん夫妻のように、ふたり世帯からの注目が高まる平屋暮らし。一戸建てといえば、部屋数を確保した2階建てをイメージしがちですが、自分たちの暮らし方によりフィットした、シンプルでミニマルな平屋、そんな選択肢も定着しつつあるのだなと実感しました。

●取材協力
ケイアイスター不動産株式会社
規格型平屋注文住宅IKI(イキ)
※ひら家IKIは、ケイアイスター不動産グループのIKI株式会社が販売する商品です

50代人気ブロガーRinさんがコンパクト平屋に住み替えた理由。暮らしのサイズダウンで夫婦円満に

50代でマンションから平屋に住み替え、人気ブログ「Rinのシンプルライフ」で暮らしを発信しているRinさん。
“一戸建てマイホーム”といえば、「2階建ての3LDK以上」といった既定路線があったが、70平米前後のコンパクトな平屋がじわじわ需要を伸ばしている。ミニマムな広さと価格で、自分らしい豊かな暮らしを実現できる「コンパクト平屋」の可能性とは?
Rinさんが平屋を選択した理由と6年ほど経ったいまの暮らしを聞いてみると、介護に携わってきたRinさんならではの賢い選択が見えてきた。

Rinさん 介護支援専門員・介護福祉士・防災士の資格を持ちながら、シンプルな暮らしを実践し発信する人気ブロガー。2018年6月に完成した千葉県の平屋で夫婦二人暮らし(写真提供/Rinさん)

Rinさん
介護支援専門員・介護福祉士・防災士の資格を持ちながら、シンプルな暮らしを実践し発信する人気ブロガー。2018年6月に完成した千葉県の平屋で夫婦二人暮らし(写真提供/Rinさん)

(写真提供/Rinさん)

(写真提供/Rinさん)

子育て時期は、通学・通勤に便利なマンション暮らしを選択

娘の高校進学をきっかけに、Rinさん夫妻が購入したのは駅に近い約80平米のマンションだった。結婚当初は賃貸暮らしだったが、娘の通学の便を考え住宅購入を検討することに。一戸建てかマンションか悩んだそうだが、共働きなので駅、銀行、スーパーなど商業施設、病院が徒歩圏内にあることが必須、そして、娘の個室も確保できる広さを求めるとなると、一戸建てはそもそも3人に便利な地元駅近くになく、「予算的にもマンションの選択肢しかありませんでした」

「夫の実家が一戸建てで、長男なので将来帰ることになりそうでしたし、そのとき売ることも考えると、当時はマンションがベストでした」(Rinさん)

以前住んでいたマンションは2LDK(約80平米)(写真提供/Rinさん)

以前住んでいたマンションは2LDK(約80平米)(写真提供/Rinさん)

やがて子どもが独立。整理整頓後の理想は「小さな住まい」に

10年ほど住んだころ、子どもが就職し独立した。
その間にRinさんは整理収納アドバイザーの資格を取得していて、「子ども部屋の片付けや使わないモノの整理整頓をしていくうちに、ムダなスペースが見えてきました」

使わないスペースにもホコリが溜まるし、冷暖房費もかかる。何より日常の家事動線がスムーズではなくストレスになる。
「10年住むと水回りなど設備交換がしたくなります。リフォームも検討しましたが結構な費用がかかることがわかったので、いっそのこと小さな家に住み替えたいと思いました」

夫の実家には義妹が同居することになったことも、住み替えへの追い風となった。

住み替え先としてマンションも候補になったが、当時住んでいたエリアのほとんどはファミリー用のマンションで、それまでの家よりコンパクトなマンションは探せなかったそう。

整理収納アドバイザーの資格を取得しているRinさん、キッチン収納も美しい(写真提供/Rinさん)

整理収納アドバイザーの資格を取得しているRinさん、キッチン収納も美しい(写真提供/Rinさん)

(写真提供/Rinさん)

(写真提供/Rinさん)

3駅ずらして郊外へ。土地と平屋を予算内で購入

小さなマンションが無理なら「ずっと夢だった平屋を建てたい」気持ちが高まったという。

「実は、生まれ育ったのが平屋でした。子どものときは階段のある2階建てを羨ましく思ったこともありましたが、振り返ると洗濯物干しや居室とリビングでの上下移動がなくて暮らしやすかったんです。マンションも便利ですが、平屋なら駐車スペースまで玄関から数歩の距離。買い物が重くてもオッケー。ゴミ出しも近いです。
マンション住まいは管理組合の規則に従うのがルールです。大規模修繕になったらバルコニーの植木鉢を運び入れたりしなければなりませんが、年をとったら自力では無理だと思っていました」
そして「階段がないと動線がラクで『平屋は過ごしやすかったよね』と実姉とよく話していたんです」とRinさんは振り返る。

「予算内だったら建てるのもいいよね」と夫も賛同した。
土地探しから始めたRinさんだったが、最初は本当に建てられるという自信はなく軽い気持ちだったそう。この後どのぐらい稼げるか、老後にいくら必要か、ある程度予測をつけられるのが50代。夢だったとはいえ、予算は限られる。
「でも、マンションを試しに査定してみたら、予想より1,000万円くらい高く売れそうだとわかってびっくり。なんとかなりそうだと思いました」

当時は夫妻とも通勤の必要があった。駅から歩けること、商業施設が豊富、といった生活利便性への条件は変わらなかったが、最寄り駅を2、3郊外にずらせば予算内で一戸建て用地を探せることがわかってきた。
「運よく50坪(約165平米)ほどの土地を見つけられて、購入することができました。自宅マンションもスムーズに売却できました」(Rinさん)

外観パース。徹底してシンプル(画像提供/Rinさん)

外観パース。徹底してシンプル(画像提供/Rinさん)

建築面積約60平米、建築費1,600万円台。以前のマンションより2割ほど狭くなった。夫の社用車と自家用車の2台分の駐車スペースが必要だったのも、一戸建てを選んだ理由のひとつ。「でも、夫の退職後は社用車がなくなり、高齢になったら自家用車も手放します。そのときのためにも駅から歩ける場所にこだわりました」(Rinさん)(画像提供/Rinさん)

建築面積約60平米、建築費1,600万円台。以前のマンションより2割ほど狭くなった。夫の社用車と自家用車の2台分の駐車スペースが必要だったのも、一戸建てを選んだ理由のひとつ。「でも、夫の退職後は社用車がなくなり、高齢になったら自家用車も手放します。そのときのためにも駅から歩ける場所にこだわりました」(Rinさん)(画像提供/Rinさん)

広さと豪華さはいらない。家事がラクな住まいを追及

家事がラクにできる住まいを熱望したRinさんが選んだのは、全国に展開し、平屋タイプも積極的に展開しているハウスメーカーだった。

「モデルルーム見学は楽しかったです! ですが、家事にムダのないシンプルな平屋が建てたい、という希望を理解してもらえるハウスメーカーさんは少なくて。『この広さならもっと広い家が建てられます』『坪あたり建築費もおトクになります』って各社さんが言うなかで、担当者が要望に沿ったプランを提案してくれたのが印象に残りました」

「介護士の経験から、室内で温度差が生まれにくい全館空調を推奨しているのも決め手でした。高血圧の夫のヒートショック現象が心配でしたし、寒がりな私にも魅力的なポイントでした」

建築時の様子(画像提供/Rinさん)

建築時の様子(画像提供/Rinさん)

キッチンからリビングと和室が見渡せる。「夫は家づくりにノータッチ。設計の打ち合わせは全面的に任せてくれました」(Rinさん)(写真提供/Rinさん)

キッチンからリビングと和室が見渡せる。「夫は家づくりにノータッチ。設計の打ち合わせは全面的に任せてくれました」(Rinさん)(写真提供/Rinさん)

「小上がりにした和室を気に入ってくれて、いつも寛いでいますよ」(Rinさん)(写真提供/Rinさん)

「小上がりにした和室を気に入ってくれて、いつも寛いでいますよ」(Rinさん)(写真提供/Rinさん)

天井に埋め込まれたエアコンが家全体の排気と給気をコントロールしている(写真提供/Rinさん)

天井に埋め込まれたエアコンが家全体の排気と給気をコントロールしている(写真提供/Rinさん)

老後が身近になる50代。何もかもめんどうになる前に最後の家づくり

早ければ40代後半から、多くの場合は50代になると、親の老いが身近になってくる。
元気だった両親も徐々に体力が衰える。気力が萎えてくる。片付けがおっくうになる。新しいことに手が出せない。そんな両親の変化が、やがて来る自分の未来と重なってくる。

さらに介護の仕事に携わるRinさんにとって、老後は現実世界だ。
「住み替えの決断をできて、引越しという大仕事をやり遂げられる50代が最後のチャンスになると思いました」と、夢だった平屋の建築に取り掛かった。

「年をとると書類1枚書くのも面倒になるんですよ。不動産購入契約、建築請負契約、住宅ローン締結……、ややこしい手続きや書類に立ち向かう気力が50代ならまだあります」

「子育て世代ための住まいには、老後には不向きなこともある。たとえば子どものオモチャやスポーツ道具をたくさん収納できる大きな納戸。奥から重いものを持ち運ぶなんてできなくなります。扇風機のような季節家電が入るくらいの奥行きがあれば十分。洋服も若いときほど多くなくていい。洋服全部が一目でわかるように収納できると厳選できます」

「かっこいいインテリアであふれた住まいも、私の希望にはありませんでした。光いっぱいの大きな窓にドレープたっぷりのカーテン、メンテナンスに気を遣えるうちはいいのですが、ガラス窓の掃除は大変です。カーテンの洗濯と干す作業も重労働。できなくなると湿気でカビが生えて健康被害の原因になります。そんなお家をたくさん見てきました」

寝室からつながる夫婦のクローゼット。左右を夫、妻それぞれで使用している。寝室→クローゼット→洗面所→ランドリースペースまで洗濯動線一直線。引き戸なので、ドアが邪魔になることもない(写真提供/Rinさん)

寝室からつながる夫婦のクローゼット。左右を夫、妻それぞれで使用している。寝室→クローゼット→洗面所→ランドリースペースまで洗濯動線一直線。引き戸なので、ドアが邪魔になることもない(写真提供/Rinさん)

(写真提供/Rinさん)

(写真提供/Rinさん)

キッチン横のパントリー。奥行きが浅く、全部見渡せるので何があるのか忘れない(写真提供/Rinさん)

キッチン横のパントリー。奥行きが浅く、全部見渡せるので何があるのか忘れない(写真提供/Rinさん)

「我が家でラッキーだったのは、夫が年下で住宅ローンを組める年齢だったこと。娘の教育費がかからなくなったぶん、余裕が出てきたころでもあります」(Rinさん)。

多くの金融機関では70歳までに住宅ローン返済を終えることを理想としている。Rinさん夫妻は夫名義で10年で完済する予定で住宅ローンを組んだのだそう。

一方で、年齢を重ねると病気がちになり、住宅ローン締結に不可欠な団体信用生命保険が締結できないリスクも増えてくる。
「夫には成人病の不安がありましたが、無事に保険審査が通りました。考えたくもないですが、夫に何かあったあとも私の住まいが確保されるので子どもにも心配をかけなくて済むので安心ですね」と、Rinさんの笑顔は晴れやかだ。

宅配ボックスは大型のものをチョイス。個人宅用だからマンションの共用部の宅配ロッカーのように満杯なことがない。部屋まで運びやすいのも平屋ならでは(写真提供/Rinさん)

宅配ボックスは大型のものをチョイス。個人宅用だからマンションの共用部の宅配ロッカーのように満杯なことがない。部屋まで運びやすいのも平屋ならでは(写真提供/Rinさん)

マンションか一戸建てか!? 防犯・防災面では一長一短

年をとっても段差がなく安全に住めるという点は、マンションも平屋も同じ。
では、防犯・防災面ではどのように考えているのか、防災士資格も持つRinさんに尋ねてみた。

「多くのマンションはオートロックですし、上層階なら通行人が窓の前を通り過ぎることもありません。防犯面ではマンションの方が安心かもしれません」

「ですが、高齢者の住まいとしてはライフラインの確保が大事です。いったん災害が起こって水や電気ガスが止まったとき、特に高齢者には一戸建ての方が生活を維持しやすいと考えています。エレベーターを使えなくなったらマンション高層階住民は重い水や食料の買い出しが難しい。自宅のトイレが使えず地上まで降りなければならないような場合、水分を控える高齢者もいて、あっという間に体調が悪化してしまう。助けを呼びやすい点でも、一戸建ての方が優れているのではないでしょうか」

玄関ホール、トイレ、ランドリー室などは換気ができる滑り出し窓にした。ホコリが溜まるブラインドもなし。室内の様子がわからないようにくもりガラスを選択(写真提供/Rinさん)

玄関ホール、トイレ、ランドリー室などは換気ができる滑り出し窓にした。ホコリが溜まるブラインドもなし。室内の様子がわからないようにくもりガラスを選択(写真提供/Rinさん)

寝室や風呂場などにはFIX窓(はめ殺し窓ともいわれる開閉できない窓)。こちらも、くもりガラス(写真提供/Rinさん)

寝室や風呂場などにはFIX窓(はめ殺し窓ともいわれる開閉できない窓)。こちらも、くもりガラス(写真提供/Rinさん)

「マンションと一戸建て、それぞれ一長一短ありますが、我が家では防災時のリスク軽減も考えて平屋を選びました。防犯面も、侵入者が隠れられるような塀は建てない、侵入口になる大きな窓は最小限にする、など工夫をしています」。一般的に平屋は2階がない分、建物が安定するため支えやすい。地震が起きてもダメージが小さいので、東日本大震災や熊本地震後、平屋に注目する人は増えている。

「ご近所や友人、娘が来てくれて寛げるような空間作りも心掛けました」というRinさん。周囲の人の見守りも、セキュリティの一端を担うはずだ。

出入りできる大きな窓はリビングと和室のふたつだけ。カーテンが少ないと洗う手間が省ける(写真提供/Rinさん)

出入りできる大きな窓はリビングと和室のふたつだけ。カーテンが少ないと洗う手間が省ける(写真提供/Rinさん)

暮らしがシンプルになるコンパクト平屋は、夫婦円満のとっておきアイテム

平屋に暮らし始めて6年ほど。Rinさんが住まいに求めていた「家族仲良し」は現在進行形だ。

「いま思うと、前のマンションではイライラすることが結構あったなあって。だって、自分も働いているのに夫は家事にあまり協力してくれない。子どもがいたこともあってモノがあふれていて、必要なときにすぐ見つけられない。疲れちゃっていましたね」

必要なものだけを厳選し、家事動線を整えた平屋暮らしになったいま、夫婦の仲良しレベルがアップ。
「モノが少ないと、すぐ掃除できるんですよ。掃除機をかける前に、まず散らばっているモノを片付けたり、家具を移動しなきゃいけなかったりするから面倒になるんです。床面が広がっていたら掃除機もすんなりです。洗濯物干しも、洗濯機から出してすぐ掛けられるバーがあると楽ちん。家事ストレスが減ったので、夫に優しくなれた気がします」と笑うRinさん。
さらに、何をどうすればいいのか “家事の見える化”が進んだ結果「夫が自然に家事をできるようになりました。お互いの様子を感じ取れる住まいということもあるのでしょうね」

リビングと和室のテーブルを繋げると10人は楽に座れる。和室の段差は30cmほどで、腰掛けておしゃべりするのにちょうどいいそう。「段差があるとリビングのホコリが和室に入り込まない効果もあるんですよ」(Rinさん)(写真提供/Rinさん)

リビングと和室のテーブルを繋げると10人は楽に座れる。和室の段差は30cmほどで、腰掛けておしゃべりするのにちょうどいいそう。「段差があるとリビングのホコリが和室に入り込まない効果もあるんですよ」(Rinさん)(写真提供/Rinさん)

キッチン(写真提供/Rinさん)

キッチン(写真提供/Rinさん)

Rinさんの計算外だったのは「庭で野菜づくりを楽しむ自分」。当初、庭を全面コンクリートにするつもりだったが、外構工事の担当者に「いずれ土いじりをしたくなりますよ」とアドバイスされ、半信半疑ながら一部だけ花壇にしたのだそう。

「夫はまだ通勤していますが、自分は自宅での仕事が多くなりました。知人に教えられて花壇で野菜づくりを始めてみると、植物の成長がとても楽しい。時間に余裕が出てくると自然に触れたくなるものなんですね。そういう意味でも、平屋を選んでよかったです」

夫妻の暮らしはこれからも変わっていく。
「ゆくゆくは高齢者施設への入居も視野に入っています」とRinさん。50代からの暮らしに喜びをもたらし、ゆるやかな変化も包みこむコンパクト平屋には、理想の住まいの形があった。

●取材協力
Rinさん
ブログ「Rinのシンプルライフ」

【DINKS編】東京駅まで30分以内・中古マンション価格相場が安い駅ランキング

家を購入するとき、立地はとくに重視するポイントだろう。交通の便の良さは誰もが求めるものだが、どう重視するのかは、世帯のタイプによって異なるもの。その基準のひとつになるのは、日本の玄関口ともいえるターミナル駅、東京駅へのアクセスだ。
そこで、東京駅まで30分圏内の、中古マンションの価格相場が安い駅をリサーチ。今回は2K、2DK、2LDKの物件を対象とした、DINKS向けのトップ10を紹介する。
●DINKS向け、東京駅まで30分圏内の物件相場が安い駅TOP10駅
(順位/駅名/価格相場(沿線/所在地/東京駅までの所要時間)
1位 江北 1780万円(日暮里・舎人ライナー/東京都足立区/約28分)
2位 西新井大師西 1990万円(日暮里・舎人ライナー/東京都足立区/約30分)
3位 京成立石 2280万円(京成押上線/東京都葛飾区/約27分)
3位 西川口 2280万円(JR京浜東北線/埼玉県川口市/約29分)
5位 四ツ木 2330万円(京成押上線/東京都葛飾区/約26分)
5位 青砥 2330万円(京成本線/東京都葛飾区/約29分)
7位 下総中山 2380万円(JR総武線/千葉県船橋市/約26分)
8位 小菅 2480万円(東武伊勢崎線/東京都足立区/約29分)
9位 板橋本町 2500万円(都営三田線/東京都板橋区/約29分)
10位 綾瀬 2535万円(JR常磐線・東京メトロ千代田線/東京都足立区/約26分)

23区内で2000万円を切る江北駅が1位 近所で楽しく飲める街も

1位は、東京都足立区に位置する江北駅。駅の周辺の商業施設は多くないが、スーパーや家電量販店などがあり、生活必需品の買い物に困ることはなさそうだ。また、2位の西新井大師西駅は、日暮里・舎人ライナーで江北駅と隣同士。両駅ともに東京23区内でありながら、価格が2000万円を切ることは、大きな魅力といえるだろう。

3位は東京都葛飾区の京成立石駅。駅前には下町情緒あふれるアーケード街、立石仲見世通りや、昭和レトロな飲食店が並ぶ「呑んべ横丁」などがあり、仕事帰りに夫婦で待ち合わせて赤ちょうちんで軽く飲んで帰宅、といったオトナの時間が味わえそうだ。

しかし京成立石駅は、これから工事が始まる京成押上線の高架化対象区域のため、オトナの雰囲気ある街並みを楽しめるのは、残りあとわずかかもしれない。その代わり、現在は交通渋滞が課題となっている11カ所の踏切がなくなるほか、高架下空間には公共施設などが整備される予定。生活する上で快適さが向上することは間違いないだろう。

【画像1】立石仲見世通り(写真/PIXTA)

【画像1】立石仲見世通り(写真/PIXTA)

商店街がある街は、ファミリーになってもそのまま住めそうな魅力

7位の下総中山駅は千葉県船橋市。JR総武線の各駅停車駅だが、京成中山駅が徒歩圏内のため、京成本線も利用が可能だ。駅前は24時間スーパーなどの買い物拠点のほか船橋市役所の連絡所もあり、用事をコンパクトに済ませられる。お互い仕事で忙しいDINKSにとって心強い味方となりそう。こちらも再開発が進んでおり駅前は整然としているが、少し歩けばローカルな雰囲気が漂う店舗もあり、休日はのんびり散歩ができそうだ。

9位の板橋本町駅周辺は、環七通りと中山道17号線が交差しており、車の便が良い。スキーやゴルフなどアウトドアレジャーが好きで車を所有する夫婦にとっては、趣味を満喫するのに住みやすそうだ。

駅前のスーパーは小規模なものが多いが、中山道の隣に並行している旧中山道は板橋本町商店街という長い商店街。今後子どもが生まれたとしても、買い物を含めて快適に住み続けられる街だろう。

また、板橋本町駅は都営三田線沿線。東京駅までは1回乗り換えがあるが、実はその必要がない場合も。大手町駅で下車すれば、地上からも地下からも東京駅に出られるため、実質は乗り換えゼロだ。

【画像2】中山道(写真/PIXTA)

【画像2】中山道(写真/PIXTA)

夫婦共働きで子どもがいない世帯は、比較的経済的な余裕があることが一般的で、双方が趣味やこだわりを大切にしている家庭も多い。マンションを購入するなら通勤に加え、それぞれの好きなことやライフスタイルへの考慮も必要かもしれない。

次回は、ファミリー世帯向けに、中古マンションの価格相場が安い駅を紹介する。

●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている東京駅まで電車で30分圏内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】駅徒歩15分圏内、築年数40年未満、専有面積100m2未満、2K、2DK、2LDKの物件(敷地権利は所有権のみ)
【データ算出期間】2016年10⽉1⽇~2017年9⽉30⽇
【物件相場の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された中古マンション価格から中央値を算出
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、平日の日中時間帯の検索結果から算出(乗換回数は問わない)
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している