住まいの中での寒暖差による「寒暖差疲労」や「ヒートショック」に注意

LIXILが、20代~50代の男女4700人を対象に、冬(主に11月~2月)における「住まいの中での寒暖差と住宅の断熱に関する意識調査」を実施した。近年は地球温暖化により「暖冬」になることもあるが、同社によると、暖冬の場合は急激な寒暖差が起こりやすく“寒暖差疲労”に注意が必要なのだという。調査結果を詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
「住まいの中での寒暖差と住宅の断熱に関する意識調査」を実施/LIXIL

特に「朝起きて布団から出る時」に寒暖差を感じる人が多い

これから本格的な冬の寒さが到来する。「冬、普段生活している自宅の中で過ごしている際に、場所や時間によって寒暖差を感じることがあるか」と尋ねたところ、寒暖差を感じるという回答が74.1%(「感じる」39.4%+「どちらかというと感じる」34.7%)だった。

寒暖差を感じると回答した人に「寒暖差を感じる瞬間」を尋ねると、ダントツで「朝、起床し布団から出る時」(69.5%)となった。2位の「脱衣所で服を脱ぐ時」(48.0%)、3位の「浴室から出た時」(40.8%)と比べてもかなり多い回答だ。

かくいう筆者も、この記事を執筆している日の朝は外の気温が1℃だったので、布団から出るのがつらかった。昼でも10℃なので、ひざ掛けをしてパソコンに向かっているありさまだ。

「寒暖差疲労」と「ヒートショック」に注意

LIXILによると、「一日の温度差が7℃以上あるときに寒暖差疲労は起こりやすいとされている」という。寒暖差疲労とは、「寒暖差による体温調節により多くのエネルギーを使用することで、体に疲労が蓄積し、疲労感やめまいといった症状を引き起こす」もの。

約7割が寒暖差を感じる「起床して布団から出る時」は、「温められた布団から冷えた室内に出ると、体が急激に冷やされることで血圧が上がり、ヒートショックを引き起こす危険がある」というのは、気になる点だ。住まいの断熱リフォームのビフォー/アフターで、起床時の血圧がかなり違うという研究結果(【画像1】)もあるのだ。「手の届く範囲に羽織れるものを用意しておく」、「暖房器具をタイマーセットし、朝方に部屋が暖かくなるようにする」、「寝室だけでも断熱リフォームを行い部屋の気温差を一定に保ちやすくする」などの対策を検討したい。

起床時の血圧の比較

【画像1】
※日本サステナブル建築協会 断熱改修等による居住者の健康への影響調査 中間報告(第3回)資料より
起床時の血圧の比較(出典: LIXIL「住まいの中での寒暖差と住宅の断熱に関する意識調査」プレスリリース)

住宅内で寒さを感じる場所は、ヒートショックの発生リスクが高い

住宅内で「寒さを感じる場所」と「暖かさを感じる場所」を尋ねると、【画像2】のような結果となった。おおむね居室やお湯をたくさん使う場所は暖かく、居室でない場所は寒く感じるようだ。リビングや寝室は暖房器具で暖めるものの、トイレや脱衣所、廊下などは日当たりが悪く、暖房もしないということだろう。

冬の自宅で寒さを感じる場所、暖かさを感じる場所

【画像2】
冬の自宅で寒さを感じる場所、暖かさを感じる場所(出典: LIXIL「住まいの中での寒暖差と住宅の断熱に関する意識調査」プレスリリース)

同社の「住まいStudio」にある、断熱性能の異なる3つの部屋で同じ0℃の環境下で比較したのが【画像3】だ。断熱性能の違いを説明すると専門的になるので、分かりやすく言うと、「左」の昭和55年省エネ基準は「昔の家」、「中央」の平成28年省エネ基準は「今の家」、「右」のHEAT20 G2は「断熱性能のかなり高い家」と考えてよいだろう。外気温0℃はかなり寒い環境なので、暖房のある「居間」でもサーモカメラで見ると昔の家や今の家では青い色が残っている。一方、断熱性能のかなり高い家では、暖房のない廊下やトイレでも居間の暖房が効いて青くなっていない。同じ外気温、同じエアコン設定でも、住宅の断熱性能によってかなり違うことが分かる。

「住まいStudio」の3つ部屋の温度の違い

【画像3】
「住まいStudio」の3つ部屋の温度の違い(出典:LIXIL「住まいの中での寒暖差と住宅の断熱に関する意識調査」プレスリリース)

実は筆者は、住まいStudioを訪問してこの3つの部屋を体験したことがある。窓の断熱性能の違いもあって、暖房のある居間でも窓際にいるとかなり寒さが違ったと記憶している。断熱性能のかなり高い家では、暖房ではなく送風でも十分に暖かった。建築コストも異なるが、住む間の電気代も変わることだろう。

また、昔の家では居間とトイレの温度差は12.1℃、今の家でも温度差は9.6℃だったが、断熱性のかなり高い家では温度差は5.3℃とその差は縮まり、部屋の間を移動する際の身体への負担も小さくなるので、ヒートショックの発症リスクも軽減されるという。

窓まわりの断熱リフォームのススメ

住宅の断熱性能の違いが室温に大きく影響するわけだが、「これまでに断熱リフォームを検討、もしくはしたことがあるか」を尋ねている。「断熱リフォームをしたことがある」が6.7%、「断熱リフォームをしたことがないが、検討したいと思う(検討中である)」が9.5%で多いとはいえないが、昨年の調査結果と比べるとそれぞれ約1.4倍に増えたという。

「今後断熱リフォームを実施したい住まいの箇所」の1位は、56.9%の「断熱性の高い窓を設置/交換」だ。実は筆者も以前、窓の断熱リフォームを行った。冬の朝の窓ガラスの結露がひどかったので、それから解放されたのがうれしかった。工事は一日で終わったので、窓際が寒いという家の場合はぜひ窓の断熱リフォームを検討してはいかがだろう。

家の断熱性能を高めると、エコにつながることや光熱費が抑えられることが言われるが、最も大切なのは家の中にいる時の快適性が上がることだと思う。暑さ寒さの不快感が軽減し、寒暖差疲労やヒートショックのリスクも下げられるのは、日々の生活のなかで重要なことだ。家の断熱性能を高めていくと建築コストもかかるが、先進的窓リノベ事業(2024)などの補助金や減税などの優遇措置もあるので、上手に活用して冬を快適に過ごすことを考えてほしい。

●関連サイト
LIXIL「住まいの断熱と寒暖差に関する調査」

SNSが浸透した今、インテリア提案も新たな局面へ。感性を形にするデザインシステムとは?

積水ハウスが、新デザイン提案システム「life knit design(ライフ ニット デザイン)」を6月30日から全国で始動するという。そのプレス向けの発表会が、6月20日に開催された。併せて、「life knit atelier(ライフ ニット アトリエ)」の内覧会もあり、筆者も参加してみた。

【今週の住活トピック】
「life knit design(ライフニットデザイン)」6月30日始動/積水ハウス

「和・洋・モダン」などから、「静・優・凛・暖・艶・奏」の6分類へ

積水ハウスの説明によると、“感性”を住まいに映し出すのが、新デザイン提案システム「life knit design」だという。“時間と共に愛着を編み込む住まい”といった意味合いがあるそうだ。これまでは、その時々に流行した「和・洋・モダン」などといったテイストをベースにしていたが、より普遍的な“感性”をベースにした空間提案をするのが、ライフ ニット デザインということだ。

その感性とは、これまでの積水ハウスの施工事例などのインテリア画像約6600点から受ける印象を言語化して、日本カラーデザイン研究所の言語イメージスケールを元に3D化した結果、おおらかな6つの感性フィールドを導き出したもの。例えば、静かな、くつろいだ、豊潤な、凛とした、などをプロットして、おおらかな(重なる部分もある)関係性をグループ化した結果、「静・優・凛・暖・艶・奏」の6つの感性フィールドに集約した。

【6つの感性フィールド】
「静 PEACEFUL」:しなやかな空気感…ローコントラスト、同系色
「優 TENDER」 : さわやかな空気感…すっきりナチュラルな木質感
「凛 SPIRIT」: 緊張感のある空気感…上質なシンプルさ
「暖 COZY」: 暖かみのある空気感…暖かみのある木質感
「艶 LUXE」: 贅沢な空気感…ハイコントラスト、重厚感
「奏 PLAYFUL」: 心躍る空気感…ワクワクする色やカタチ

6つの感性フィールドをプロット

積水ハウス プレゼン資料より転載

この提案システムはインテリアとエクステリアが対象で、エクステリアについても同様に、美しい景観を構成する「明度グラデーション」を特定している。顧客の感性から、インテリアやエクステリアをプランニングするのが新しい提案の手法だ。

好みのインテリア画像から感性を判断して空間を提案

説明を聞いただけでは具体的なイメージがわかないし、家族といえどもそれぞれ感性が異なる場合はどう提案するのだろうと疑問に思った。「SUMUFUMU TERRACE新宿」内に、実際に提案をする場となる「life knit atelier」があり、そちらに移動してさらに詳しく話を聞いた。

SUMUFUMU TERRACE新宿/筆者撮影

SUMUFUMU TERRACE新宿/筆者撮影

まず、同社が開発した「interior communication tool」で顧客の感性を調べる。内覧会では、筆者のいるグループから、夫役・妻役・子ども役の3人で実際に試してみることに。筆者は手を挙げて、子ども役を担当した。家族3人は、別々のタブレットで次々と映し出される36枚のインテリア画像を見て、好き(♡)かそうでもないか(△)をマークをタップして直感的に選ぶ。すべて選び終わると、好きなインテリア画像だけが映し出されるので、その中からベスト5を選ぶ。ベスト5については、その理由(例えば、使ってみたい家具や小物がある、過ごし方のイメージがわいたなど)も入力する。

積水ハウス プレゼン資料より転載

積水ハウス プレゼン資料より転載

入力が終わると、同社のスタッフが家族3人の選んだベスト5を一覧にして出してくれた。今回は、にわか家族なので、好きなインテリアがあまり重ならない。特に夫役の選んだ画像は、重厚感のある画像が多くて他の家族と全く一致しなかったが、妻役と子ども役はナチュラルな印象の画像が多く、数枚重なって選んでいた。「このように家族でも感性は一致しない場合はどうなるのか」という疑問を抱えたまま、次のステップへ移動。

筆者撮影

筆者撮影

インテリアの提案をしてくれるスタッフのいる部屋には、すでに家族の好みの画像が共有されている(写真左のディスプレイ)。そのうえで、好みの画像やその理由などを基に、一つのインテリアイメージをCG動画で提案してくれる(写真右のディスプレイ)。CG動画では、最初に平面の間取りが提示され、その間取りをどう作りこむかのCGが空間や角度を変えて映し出される。床・壁・天井といったシンプルな空間に、家具などを掛け合わせることで感性を表現するということなので、CG動画には家具、照明、ラグなども入っている。また、サンプルも用意してあるので、実際の色味や手触りなども確かめながら、決めていけるという。

今回の家族に提案されたCG動画は全体的にナチュラルな印象だったので、妻役と子ども役で共通する感性が優先されているのだろう。家具が気に入ったなどの理由によっては、誰かの好みの家具も配置されているのかもしれない。実際には、家族が提案されたCG動画を見ながら、床材はこうしたいなどと話し合い、要望に応じて変更された動画で確認しながら決めていくので、家族の感性が異なれば、家族で協議して解決することになるようだ。筆者が念のために、提案されるCG動画の数を聞いてみると、それぞれを組み合わせて提案するので、何万通りにもなるという。

住宅の範疇といえば、インテリアのうち内装や住宅設備になるが、提案されるCG動画には家具やラグなども配置されている。家具などの販売やあっせんもしてもらえるのかを聞いたところ、家具や照明はもちろん、観葉植物や絵画などの相談にも応じているという。その場ですぐに、照明や観葉植物を差し替えたCGを見せてくれた。至れり尽くせりだ。

最後に、マテリアルビュッフェのあるコーナーに移動した。ここでは、床材や壁紙、カーテン等のサンプルが展示してあるほか、6つの感性フィールド別のコラージュボックスが用意されている。コラージュボックスとは、「暖」の感性ならインテリアの内装はこうした組み合わせがオススメといったセットがボックスに収納されているものだ。残念ながら、どの感性に該当するといった判定はしてもらえないが、好みのセットをベースに、素材を触りながら他の感性の素材も取り入れて決めていくということになるのだろう。

マテリアルビュッフェのコーナー/筆者撮影

マテリアルビュッフェのコーナー/筆者撮影

ベースがあるので、家づくりを効率的に検討できるのがメリット

エクステリアに関する体験はできなかったのでよくわからないが、インテリアについては、感性にマッチしたものをトータルに提案してもらえるので、それをスタートラインにして検討できるという点で、決定するまでの時間の短縮が図れるだろう。

またその際に、家族の好みが見える化されるので、互いに話しやすいという利点もあるだろう。最近は、新築やリフォームの際に、好みの画像を用意して希望を伝える人も多いと聞く。この仕組みでは、積水ハウスが用意した画像だけでなく、例えばインスタグラムの好みの画像を提示すれば、それも加味して分析することも可能だという。

一方で、実際の家づくりでは、インテリアだけでなく、決まった広さの中で間取りを固めるため、スペースの取り合いという側面もある。スペースと好みのインテリアを上手に織り込むのが、スタッフの腕の見せ所となるのだろう。

また、インテリアについては至れり尽くせりなので、あれこれとこだわるほどにいろいろなものを新たに買うことになる可能性もあり、コスト管理という側面も欠かせないように思う。

さて、感性を軸として空間を提案するという新しい手法は、画像や動画に親しんでいる今の人たちにマッチしているのだろう。「何となく好き」な画像が、こうした手法でつきつめていくと、床や壁が好みなのか、家具が好みなのか、居住空間が好みなのかといったことが認識できるようになり、言語化されていくのも面白い。

一方でトータル提案されるのがメリットである半面、提案から外れるものを加えた途端、デザインが崩れてしまうので、住む人のインテリアセンスも問われることになるのだろう。

●関連サイト
積水ハウス「life knit design(ライフニットデザイン)」6月30日始動
「life knit design」ウェブサイト

賃貸住宅の管理業者に初の立入検査、97社うち59社に是正指導。入居する時の注意点は?

国土交通省は、2023年1月~2月に全国97社の賃貸住宅管理業者などに立入検査を実施した。「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」の施行後、初めての立入検査となった。検査を実施した背景やその結果などについて見ていこう。

【今週の住活トピック】
賃貸管理業者などへの初の立入検査を実施/国土交通省

「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」とは?

まず、この法律が制定された背景について説明しよう。

賃貸住宅はオーナー(大家)が管理する場合もあるが、近年は管理業者に委託するケースが大半だ。管理業者は、家賃や敷金などの受け取りや賃貸借契約の更新、退去時の立ち会い、敷金の返還などの一連の業務を行うほか、建物の点検や補修、清掃なども行っている。賃貸暮らしにおいては、きわめて重要な役割を担っているのだ。さらに、サブリースと呼ばれる、管理業者がオーナーから借りて、それを管理業者がエンドユーザーに又貸しする形式も増えている。

出典/国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」より転載

出典/国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」より転載

一方で、宅地建物取引業者やマンション管理業者の場合は法規制があり、国土交通省の監督下にあるが、賃貸住宅管理業者には法規制がなかった。そこで、オーナー・入居者と管理業者の間のトラブル防止を目的に、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が制定され、2021年6月に施行された。

その内容は、「賃貸住宅管理業者の登録制度の創設」(管理戸数200戸未満は任意)と、主に次のようなことを義務づけたもの。
・管理受託契約を締結する際に重要事項を説明する
・受託した業務の実施内容を定期的に報告する
・家賃などの財産を自身の財産と分別して管理する
・業務管理者を配置する

賃貸住宅管理業者などへの立入検査の結果は?

登録制度への賃貸住宅管理業者の登録数は、2023年3月末時点で8943社、管理戸数は合計で約790万戸となっている。今回、法律に則り適正に事業が営まれているかどうかについて、全国97社に対して立入検査を実施した。

国土交通省は検査を実施した結果、97社のうち59社に対して是正指導などを行った。かなりの割合だが、気になる指導内容を見てみよう。

指導の対象(重複あり)について、件数が多いものには次のようなものがあった。
・28件「管理受託契約締結時の書面交付義務違反」
→ 書面に記載すべき項目に不備があるなど
・18件「書類の備え置き及び閲覧義務違反」
→ 業務状況調書を作成しない、電子保存のみで書面化していないなど
・17件「管理受託契約締結前の重要事項説明義務違反」
→ 重要事項説明書に記載すべき項目に不備があるなど

国交省「【概要版】賃貸住宅管理業者等への全国一斉立入検査結果(令和4年度)」より転載

出典/国交省「【概要版】賃貸住宅管理業者等への全国一斉立入検査結果(令和4年度)」より転載

国土交通省では、一部の賃貸住宅管理業者などに法律の内容について理解不足が見られたが、指導した結果、59 社すべてで是正がなされたことを確認している、と公表した。

賃貸住宅に入居する場合の注意点

賃貸住宅に入居する場合は、賃貸住宅の管理は誰が行うのかを確認しよう。管理を管理業者が受託している場合は、管理業者が登録制度に登録しているかどうかも確認しておきたい。登録事業者かどうかは、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」の「賃貸住宅管理業者」タブで検索できる。

また、国土交通省では、「貸主が建物の所有者ではない場合」には、次の3点を確認するように入居者に注意を促している。

■「貸主が建物の所有者ではない場合」の注意点
(1)入居する部屋はサブリース住宅かどうか
(2)賃貸借契約書に、貸主が建物のオーナーに変わった場合に住み続けられる旨の記載があるか
(3)サブリース業者から維持保全の内容や連絡先の通知を受けているか
(出典:「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」のサブリース住宅の入居者への注意喚起リーフレットより)

サブリース住宅の場合、オーナー(所有者)はサブリース業者と賃貸借契約を結び、サブリース業者は入居者に又貸しして転貸借契約を結ぶ。この場合の転貸借契約には、オーナーが誰であるかも記載するように、国土交通省では指導している。また、オーナーとサブリース業者の間の賃貸借契約が終了した後も、入居者がそのまま住み続けられることが契約書に記載されていれば、万一のときも安心だ。

また、維持保全とは、賃貸住宅の建物や設備などの清掃や点検、補修などを行うことで、入居者の生活に支障がないように適切に管理されることが望まれる。サブリース住宅の場合はサブリース業者が行うので、具体的にどんなことをするのか、不具合があった場合などにどこに連絡すればいいかが通知されていることが必要だ。

スマホを耳に当て微笑む女性

(写真/PIXTA)

さて、いまの賃貸住宅は、その多くが管理業者によって管理されている。入居者にとっては、家賃の督促や故障・修繕の対応、他の入居者への苦情対応などについて、誰に相談してどう対処してくれるかは、日々の生活に大きく影響する。賃貸住宅に入居する際には、管理についてもしっかりと確認してほしい。

●関連サイト
国土交通省「賃貸住宅管理業者及び特定転貸事業者59社に是正指導~全国一斉立入検査結果(令和4年度)~」
国土交通省の賃貸管理業者検索サイト
●参考サイト
国土交通省の賃貸住宅管理業法ポータルサイト
「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」のサブリース住宅の入居者への注意喚起リーフレット

住宅購入者の関心が高いワードはやはり【フラット35】、「住宅ローン減税」!購入時に知るべき制度も解説

リクルートが「『住宅購入・建築検討者』調査(2022年)」を公表した。この調査では、住宅の購入や建築を検討するうえで、知っておきたい制度などについての理解・関心度も聞いている。その結果、理解・関心度の高いワードの多くが、住宅ローンや減税に関するものだということが分かった。

【今週の住活トピック】
「住宅購入・建築検討者」調査(2022年度)公表/リクルート

住宅購入・建築検討者は一戸建て派が多数を占める

調査は、首都圏、東海圏、関西圏の三大都市圏と政令指定都市のうち札幌市、仙台市、広島市、福岡市に住む、20歳から69歳の男女で、過去1年以内に住宅の購入・建築、リフォームについて具体的に検討した人を対象に行われた。

検討している住宅の種別(複数回答)は、「注文住宅」が過半数の56%で、「新築一戸建て」32%、「中古一戸建て」29%、「新築マンション」32%、「中古マンション」26%、「(現在住む家の)リフォーム」15%となっている。「一戸建てか、マンションか」を聞く(単一回答)と、「ぜったい」と「どちらかといえば」の合計で、「一戸建て派」が63%、「マンション派」が22%と、一戸建て派が多数を占める結果となった。

また、検討している物件に、「永住する」と考えているのは45%、「将来的に売却を検討している」のは24%、「将来的に賃借を検討している」のは5%だった。

過半数が名前も内容も知っている、【フラット35】、「リノベーション」、「住宅ローン減税」

この調査では、「税制・優遇制度などへの理解・関心」について、詳しく聞いている。聞いた税制・優遇制度は、「今後創設予定の税制・優遇制度」、「住宅購入に関する税制・優遇制度」、「住宅購入に関する金利・補助金」、「物件の構造・仕様、取引、他に関するもの」に大別され、それぞれ複数項目を聞いている。

その項目の中で、「言葉も内容も知っている」と回答した割合(以降は、「認知度」と表記)の多いものを挙げてみよう。

■認知度の高い項目(上位10項目)

順位制度名等認知度1【フラット35】75%2リノベーション63%3住宅ローン減税※56%4【フラット35 S】46%4空き家バンク46%6固定資産税の減額措置45%6スマートハウス45%8贈与税の特例42%9認定長期優良住宅41%10住宅リフォームの減税制度40%※住宅ローン減税については、さらに細かく聞いているが、順位としては省略した。
リクルート『住宅購入・建築検討者』調査(2022年度)を基に筆者が作成

認知度の上位には、住宅ローンと減税に関するものが多く入っているのが目立つ。ローンと税金は多くの人に関係するだけに、認知度が高くなっているのだろう。ちなみに、認知度が低かったのは、「BELS」(23%)や「安心R住宅」(25%)だった。

【フラット35】と「住宅ローン減税」のどこまで知っている?

この調査では、回答者に対して言葉とその内容について説明文を提示し、そのうえで、知っているかどうか聞いている。その説明について、紹介しておこう。

まず、1位の【フラット35】と4位の【フラット35 S】。

【フラット35】全期間固定金利の住宅ローンである【フラット35】において、2023年4月よりすべての住宅について、省エネ基準への適合を求める制度の見直しが行われる。【フラット35 S】一定の基準を満たした住宅を取得する場合、一般の住宅より金利を引き下げる制度。

住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する【フラット35】だが、ポイントは、2023年4月以降は省エネ基準に適合していないと利用できないことだ。金利を引き下げる優遇制度である【フラット35 S】は、すでにZEHなど省エネ性の高い住宅ほど金利が優遇される仕組みに変わっている。

2位の「住宅ローン減税」については、「返済期間10年以上の住宅ローンを利用して住宅を購入した場合に、住宅ローン残高の0.7%を所得税等から控除」と概要を説明しており、認知度は56%になっている。実は、調査ではさらに細かく聞いている。

【住宅ローン減税×環境性能】環境性能の優れた住宅では、減税の対象となる借入限度額が上乗せになる。【住宅ローン減税×中古OK】新耐震基準適合住宅(1982年以降に建築された住宅と定義)であれば、住宅ローン減税が適用される。【住宅ローン減税×増改築OK】自宅の増改築でも基準を満たせば、住宅ローン減税が適用される。【住宅ローン減税×新築床面積】2023年末までに建築確認を受けた新築住宅であれば、床面積が40平米以上50平米未満でも適用される。(それより以前は床面積50平米以上で適用対象)【住宅ローン減税×耐震改修】新耐震基準を満たさない中古でも、取得後一定期間内に耐震改修して基準を満たせば、住宅ローンが適用される。

いずれについても、認知度は46%~51%と高く、住宅ローン減税については細かい適用条件まで理解している人が多いことがわかる。

リノベーションなど認知度の高いワードを再確認

以下、上位に挙がった項目について、説明していこう。

リノベーション既存の建物に大規模な改修工事を行い、用途や機能を変更して性能を向上させたり付加価値を与えること。空き家バンク地方自治体が、空き家の賃貸・売却を希望する所有者から提供された情報を集約し、空き家をこれから利用・活用したい方に紹介する制度。空き家対策の一つとして注目されている。固定資産税の減額措置2024年3月末までに新築住宅を取得した場合、固定資産税が3年間(マンション等の場合は5年間)、2分の1に減額される。スマートハウス太陽光発電システムや蓄電池などのエネルギー機器、家電、住宅機器などをコントロールし、エネルギーマネジメントを行うことで、家庭内におけるエネルギー消費を最適化する住宅。贈与税の特例住宅取得等資金として、子や孫が親や祖父母から贈与を受ける場合、通常の住宅で500万円、省エネ等住宅で1000万円まで贈与税が非課税になる。認定長期優良住宅耐震、省エネ、耐久性などに優れた住宅である長期優良住宅と認定されると、所得税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税が軽減される。(住宅ローン減税では借入限度額が上乗せされる)住宅リフォームの減税制度耐震改修、バリアフリー対応、省エネ対応、三世代同居対応、長期優良住宅化対応の工事を行うと所得税等の控除がある。リクルート『住宅購入・建築検討者』調査(2022年度)を基に筆者が作成

少し補足説明をしておこう。
「リノベーション」については明確な定義がないのだが、住宅業界では一般的に、劣化した部分を建築当時の水準に改修するだけでなく、今の生活に合うように機能を引き上げる改修を行うことをいう。そのため、大規模な改修工事になることが多い。

「空き家バンク」は、かつては自治体ごとに公開しているホームページを見に行くしかなく、使いづらいものだったが、いまは民間の不動産ポータルサイトによって統一した内容で全国の空き家が探せるようになっている。

「スマートハウス」は、一般的にHEMS (home energy management system) と呼ばれる住宅のエネルギー管理システムで、家庭の電気などのエネルギーを一元的に管理する住宅のこと。IT技術を活用した住宅としてはほかに、IoT住宅(アイオーティー住宅。インターネットで住宅設備や家電などをつなげてコントロールできる住宅)などもある。IT技術によって、今後も多くのものがホームネットワークでつながり、安心安全や健康などの住生活の向上も期待されている。

ほかは、主に減税に関する項目が上位に挙がった。いずれも期限付きの減税制度となっている。期限がくると延長されるか、縮小されるか、終了するかになるので、注意が必要だ。

知っておきたい「新築住宅の省エネ基準適合義務化」と「インスペクション」

最後に、認知度が高くはなかったが、知っておきたい項目について紹介したい。それは「2025年新築住宅の省エネ基準適合義務化」(26%)と「インスペクション(建物状況調査)」(32%)だ。

新築住宅、特に一戸建てのような小規模な建築物にも、省エネ基準への適合が義務化されることになっている。適合義務化は、2030年までにZEH水準まで引き上げる予定となっている。こうした新築住宅への義務化によって、既存の住宅と省エネ性能に開きができる点も押さえておきたい。

「インスペクション」(32%)はもっと認知度が高いと思っていたので、少し意外に思った。中古住宅の売買において、宅地建物取引業者は、建物状況調査の事業者をあっせんするかどうかや、対象の住宅が建物状況調査を行っているかどうかなどを伝えることになっている。建物の状態はしっかり把握しておきたいものなので、認知度が上がることを期待したい。

さて、説明文が簡単に記載されていたとしても、「言葉も内容も知っている」というレベルは人それぞれだろう。何となく分かっているというレベルから、適用条件や期限まで正確に把握しているレベルまでさまざまある。実際に制度を利用しようとするときには、正確に理解していることが求められるので、この機会にぜひ各制度への理解を深めてほしい。

●関連サイト
リクルート「住宅購入・建築検討者」調査(2022年度)

Z世代は「新築」「一戸建て」がお好き? 駅からの近さより広さ重視の結果に

パナソニック ホームズが、若年者(Z世代)を含む住宅購入検討層や将来的な購入検討層を対象に、「住まいに対する意向調査」を実施した。そのなかでも特に「結婚と住まいの意向についてのアンケート」(リリース資料の図7~13が対象)を中心に、Z世代ならでは住まい観について見ていくことにしよう。

【今週の住活トピック】
「住まいに対する意向調査」を実施/パナソニック ホームズ

Z世代は一戸建てのマイホームがお好き?

この調査では、住宅購入の潜在的もしくは将来の顧客層と考えられる、15歳から49歳の独身男女に、「結婚したらどこに住みたいか」を聞いている。その結果は、圧倒的に「一戸建ての購入」を選んだ人が多数を占めた。とりわけZ世代(この調査では15歳から25歳と定義)では、他の年齢層が4割ちょっとであるのに対して56.0%が、一戸建ての購入を選んでいる。

図 7 結婚したらどこに住みたいですか。

出典:パナソニック ホームズ「住まいに対する意向調査」

どの種類の住宅に住みたいかを聞いた調査は過去にも多くあり、賃貸より購入、マンションより一戸建てが多いのが一般的だ。しかし、Z世代では一戸建ての購入を希望する人が極めて多いという点が大きな特徴といえるだろう。

次に、「住宅を購入するとしたら、何を優先するか」を聞いたところ、どの年齢層でも、1位が「立地が良い」、2位が「ローンの返済に無理がない」、3位が「新築であること」、4位が「資産価値があること」となった。

図 8 住宅を購入するとしたら、何を優先しますか。

出典:パナソニック ホームズ「住まいに対する意向調査」

ただし、他の年齢層と違い、Z世代で目立つのが、「新築であること」の比率の高さだ。2位の「ローンの返済に無理がない」(24.9%)とほぼ同等に「新築であること」(24.2%)を選んでいるのだ。

Z世代などの若年層は「新築」住宅がお好き?

実は、同時期に公表された、リクルートの「住宅購入・建築検討者」調査 (2022年)でも、似たような傾向が見られた。リクルートの調査は、過去1年以内に住宅の購入・建築やリフォームを検討した20歳から69歳の男女を対象にしている。独身に限っていないこと、より住宅への関心が高い層であるといった違いがあることを前提としてほしい。

こちらの調査では、ストレートに新築が良いか中古が良いかを聞いている。その結果、新築派が全体で68%になっているが、20代で見ると「ぜったい新築」が35%と新築への意向が他の年齢層より高いことが分かる。

新築・中古意向

出典:リクルート「住宅購入・建築検討者」調査 (2022年)

どちらの調査結果を見ても、若年層ほど「新築派」が多数を占めている。理由が確認できないのでよく分からないが、かつては若年層ほど新築へのこだわりが弱く、古着文化などに見られる中古を上手に活用するといった傾向が見られたのだが、今はそうではないことがはっきりした結果だ。

Z世代などの若年層は「近さ」よりも「広さ」を選ぶ?

さて、パナソニック ホームズの調査結果に戻ろう。「住宅を購入しようとして、費用が足りなかったら」という質問で選んだ選択肢も年齢層によって違いが見られた。年齢が高くなるほど、購入をあきらめて賃貸にすることを選ぶ比率が高くなる。一方、Z世代で顕著なのが「遠くにしても良い」という選択だ。他の年齢層では、「狭くしても良い」のほうが「遠くにしても良い」を上回っているが、Z世代だけは狭さよりも遠くを選んでいるのが大きな特徴だ。

図 9 住宅を購入しようとして、費用が足りなかったらどうしますか。

出典:パナソニック ホームズ「住まいに対する意向調査」

この傾向は、リクルートの調査結果でも見られる。こちらはストレートに、広さか駅からの距離かを聞いているが、若い年齢層ほど、駅からの距離派が減って、広さを優先する傾向が強くうかがえる。

広さ・駅からの距離の意向

出典:リクルート「住宅購入・建築検討者」調査 (2022年)

パナソニック ホームズでは、Z世代が、費用が不足していれば遠くても狭くても良いので、新築の一戸建てを購入したいという傾向がうかがえることから、「自分の時間やプライベートを大切にするとされるZ世代は、心地よく快適に過ごせて、共同住宅と比べて比較的近隣に気を使わなくて良い空間を新築一戸建てに求めているのかも知れない」と分析している。

一方、リクルートのSUUMO副編集長の笠松美香さんは「Z世代は、親元で暮らしている人も多く、自分で住まい探しを経験した人は他の世代に比べて少ないと推察されます。どうしても住まいのイメージが実家や友人・親戚の家などの生活感あふれるタイプと、メディアやSNSで見かけるピカピカでおしゃれなものと両極端なイメージになっているのではないでしょうか。だとすると、『新築じゃない家はキレイじゃない』と思いこんでしまっている人も多いのではないかと思いました。中古物件もリフォームすれば新築のような見た目になることを、住まい探しの経験を積んでいくほど認知していくので、年齢が上がっていくことで、中古でもキレイにできるし安い、といったようにコストと天秤にかけて許容していく層が増えていくのではないでしょうか。住まいは一生必要なものだけに、個人の住まい観も、一生アップデートされていくものだと思います」などと考察していただけるとうれしい。

パナソニック ホームズの調査対象である、独身のZ世代(15~25歳)はまだ具体的に住宅の購入を検討している人は少ないと思うが、リクルートが調査した20代でも似たような傾向が見られた。ということは、これから先に住宅購入を検討する世代では、新築志向、広さ志向が強いということは考慮すべき点だ。

一方、これまでは中古住宅をリノベーションして再販する事業者が少なかったが、取り組みを強化する事業者が増えている。新築ではないが、リノベーションによって新築並みの中古一戸建てが増えれば、若年層の有効な選択肢になるのではないだろうか。

●関連サイト
パナソニック ホームズ「住まいに対する意向調査」
リクルート「『住宅購入・建築検討者』調査(2022年)」

Z世代の一人暮らしの特徴って? 重要なのは家賃、インテリアは”映える”韓国風がトレンド

Z世代(1995年以降生まれの若年層)を対象としたシンクタンク組織「Z総研」が、Z世代の女性を対象とした「一人暮らし」に関する意識調査を行った。それによると、Z世代の女性の約8割が一人暮らしをしたいと思っているという。そこで、Z世代の一人暮らしの特徴を見ていくことにしよう。

【今週の住活トピック】
「Z総研トレンド通信Vol.18『一人暮らし編』」を発表/N.D.Promotion

Z世代の多くが「一人暮らしをしてみたい」、重視するのは「家賃」と回答

Z世代が研究の対象となるのは、彼らが生まれた時からデジタルデバイスやインターネット、SNSといった環境が身近にあった「デジタル・ネイティブ世代」で、これまでの世代とはその特徴が異なるからだ。

さて、Z総研が全国のZ世代の女性301人に「一人暮らしをしてみたいと思うか」と聞いたところ、「現在している」が6.6%、「してみたい」が80.4%で、「してみたくない」の13.0%を大きく上回った。

物件を探す際に重視したい条件としては、「家賃」がダントツの82.4%で、次いで、「最寄り駅からの距離」(32.6%)、「間取り」(28.6%)となった。以前に別の調査で、一人暮らしのZ世代に同様の質問をした結果でも、家賃がダントツで、交通アクセスと間取りが並んだので、やはりなによりも「家賃重視」なのだ。

“映え”を気にするZ世代ならでは!賃貸アプリに内装の写真の多さを求める

一人暮らしの物件を探す際には、賃貸アプリを使うのだろうが、「何を求めるか」にZ世代女子の特徴が表れた。回答結果は次のようなものだ。

賃貸アプリ(サイト)に求めることはなんですか?

(出典/N.D.Promotion「Z総研トレンド通信Vol.18『一人暮らし編』」より転載)

通常は不動産のポータルサイトに、「掲載物件が多い」(62.1%)ことを求める。テレビCMでも掲載数ナンバーワンなどとアナウンスしているのは、そのためだろう。検索サイトなので、もちろん検索のしやすさ、例えば「細かく条件設定できる」(51.5%)ことなども重視される。ところが、それらを上回って最多だったのが「内装の写真の豊富さ」(75.4%)だ。やはり“映え”を気にする世代ならではのことだ。

当サイトで、「コロナ禍でインテリアへの関心が高まる!20代から50代まで幅広い層がインスタを参考に」 という記事を書いたが、20代以下はインテリアへのこだわりが強く、インテリアの参考にするのは圧倒的に「Instagram」で、次いで「YouTube」だった。インテリアのこだわりが、室内の画像情報を重視することにつながっているのだろう。

インテリアにこだわるけど、落ち着いた色合いを好む

さて、この調査で筆者が最も印象に残ったのが、「一人暮らしの理想のインテリアテイスト」を質問した結果だ。筆者の記憶をたどると、インテリアで根強い人気のテイストは、「北欧風」だ。北欧のスウェーデン発祥の家具メーカー「IKEA」の人気が高いのはそのためだ!と思っていた。

ところが、Z世代の回答を見て驚いた。「北欧」はわずか2.0%。「シンプル」(36.5%)と「韓国風」(26.9%)の人気が極めて高いのだ。

一人暮らしの理想のインテリアテイストを教えてください

(出典/N.D.Promotion「Z総研トレンド通信Vol.18『一人暮らし編』」より転載)

Z総研によると、「ホワイト基調のふわふわした女の子みたいな部屋が理想。YouTubeでインフルエンサーのお部屋紹介動画を見るのも好きで、実際に同じインテリアを購入した」(18歳/高校3年生)、「木の素材が好きでウッド調でシンプルなお洒落カフェのようなお部屋にしたい。自分好みにDIYするのも興味がある」(16歳/高校1年生)といったコメントがあったという。

「韓国風」ってどんなテイストなのだ?

ところで、「韓国風」とはどんなテイストなのだろうか? 「中国風」や「アジアンテイスト」などはわかる。が、「韓国風」とはどんなものかよくわからなかったので、SUUMO編集部のZ世代の編集者に聞いてみた。

彼女によると、「韓国風インテリアは、主に白やアイボリー、素材はウッドなどを基調としているため、あまり派手さはないものの、形状などが個性的で女性が好むアイテムが多い印象」だという。

それを聞いて自宅を見回すと、ダークブラウンの家具が多い。仕事用に最近購入した、無印良品の引き出しボックスだけがアイボリーだ。時代に遅れないように、韓国風をもっと意識しようと思う筆者だった。

ちなみに、「一人暮らしする際に買いたい憧れのインテリアブランド」については、「Francfranc」(38.5%)と「IKEA」(34.9%)の人気が高く、次いで「無印良品」(12.0%)や「ニトリ」(7.6%)となった。いずれも、豪華なインテリアではなくナチュラルなインテリアで、リーズナブルなブランドが多く挙がったのが特徴だ。

一人暮らしする際に買いたい憧れのインテリアブランドはありますか?

(出典/N.D.Promotion「Z総研トレンド通信Vol.18『一人暮らし編』」より転載)

IKEAといえば、北欧テイストではないのか?と思い、インターネットで「IKEA」×「韓国風」で検索してみると、IKEAの韓国風インテリア事例が出るわ出るわ。ほかの組み合わせでも同様で、どのブランドも韓国風を意識してインテリアの商品開発を行っているようだ。

さて、Z世代はデジタルネイティブで、SNS映えを気にする世代である一方、日本の好景気を知らない堅実な世代でもある。一人暮らしをするにしても、無理のない家賃を意識し、シンプルでリーズナブルなインテリアではありながら、自分の個性が表現できるものを選んで購入するといった像が浮かび上がる。

近年は、コロナ禍の影響で自宅にいる時間も長くなっている。Z世代それぞれにとって居心地の良い住まいを選んで、快適な一人暮らしをしてほしいものだ。

●関連サイト
N.D.Promotion「Z総研トレンド通信Vol.18『一人暮らし編』」

子どもの転落事故、自宅の窓やベランダに潜むリスクとその防止策は?

先日、痛ましい事故のニュースを目にしたところだが、以前から窓やベランダからの子どもの転落事故については、注意喚起がされていた。また、窓やドアの経年劣化なども事故の原因になるという。子どもの安全を守るためにも、窓やベランダなどのリスクについて考えていこう。

【今週の住活トピック】
「ご注意ください!窓やベランダからのこどもの転落事故」/政府広報オンライン
「放置しないで!窓・ドアの危険サイン」/製品評価技術基盤機構(NITE)

窓やベランダからの転落事故は1歳と3・4歳の子どもに多い

2023年3月10日に政府広報オンラインが「ご注意ください!窓やベランダからのこどもの転落事故」をリリースした。子どもは成長するにつれて活動範囲が広くなり、好奇心から大人の想定を超える行動をすることがある。東京消防庁管内の緊急搬送事例では、1歳と3・4歳で窓やベランダからの転落事故が多いという。

年齢別救急搬送人員

年齢別救急搬送人員(東京消防庁管内で発生した、2017年から2021年までの窓やベランダからの転落事故における年齢別の救急搬送件数(総数=62))(出典 東京消防庁「住宅等の窓・ベランダから子どもが墜落する事故に注意」より転載)

政府広報オンラインに紹介されていた事例としては、次のような行動から転落事故が生じている。
●こどもだけで部屋にいて、網戸に寄りかかる
●ソファなど足場になるものから窓枠まで登る
●ベランダの手すりにつかまっていて、前のめりになって転落
●ベランダの室外機に登り、手すりを越えて転落

事故事例から分かることは、「子どもだけで部屋にいるときに窓が開いている場合」や「窓やベランダの手すりまで足場を使って登れる場合」などでリスクが高くなることだ。

子どもの転落事故を防止するためのポイントは?

子どもの転落事故を防ぐには、窓やベランダの周辺でリスクの高い環境を作らないことが大切だ。具体的には、次のような対策が考えられる。

(1)補助錠を付ける
ポイントは、子どもの手が届かない位置に補助錠を付けること。

(2)ベランダには物を置かない
プランターやイス、段ボールなどが足場になるので、できるだけ物を置かないこと。エアコンの室外機は置かざるを得ないので、室外機を「手すりから60cm以上離す」か、子どもだけでベランダに出ないようにする。

(3)室内の窓の近くに物を置かない
ソファやベッドなどが足場になるので、窓に近い場所に家具を置かないように配置を工夫する。

(4)窓、網戸、ベランダの手すりなどに劣化がないかを定期的に点検する
網戸がはずれやすくなっていないかなど、定期的に点検する。

窓やドアの危険サインを見逃さない

窓などの点検については、事業者の製品安全の取り組みと消費者の安全のための検査や調査などを行っているNITE(ナイト)も注意喚起をしている。2023年3月23日に、「放置しないで!窓・ドアの危険サイン ~事故に遭わないための点検ポイント~」をリリースした。

思いがけない出来事に「ヒヤリ」としたり、事故が起こりそうになって「ハッ」としたりすることが、大きな事故につながることから、見た目に異常がなくても、不具合が起きていないか点検をすることが大切だという。例えば、部品が損傷したことで、窓が落下したりドアが倒れたり、はめ込んであるガラスが割れたりすると、怪我をしたり腕や指が挟まれたりといった事故につながる。

具体的な点検ポイントとしては、次のようなものが挙げられている。

■窓・ドアの点検ポイント
□ がたつきがないか。
□ スムーズに開閉せず、重たくなっていないか。
□ 開閉時に異音がしないか。
□ 破損や変形がないか、さびている箇所はないか。

特に子どもは、リスクを感知することが難しいので、大人がリスクを引き下げる環境を整えることが大切だ。春になると外出の頻度や換気の回数なども増えるので、窓やドア、ベランダの手すりなどに不具合はないか点検し、子どもの転落を防止する対策を取り、悲しい事故が起きないようにしてほしい。

●関連サイト
政府広報オンライン「ご注意ください!窓やベランダからのこどもの転落事故」
製品評価技術基盤機構(NITE)「放置しないで!窓・ドアの危険サイン」
東京消防庁「住宅等の窓・ベランダから子どもが墜落する事故に注意!」

9割超が「省エネ住宅を選びたい」、背景に光熱費高騰。2025年省エネ基準義務化前に【フラット35】も適用要件を改定

物価高、とりわけ光熱費の高騰が家計に大きな影響を与えている。電気代が2倍以上になった家庭もあるといった調査結果もある。その影響からか、省エネ住宅への関心が高まっているという。詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
「環境と住まいに関する意識調査」結果を発表/一条工務店

電気代の高騰が家計を圧迫している現状

一条工務店が、2023年2月に全国の男女750名を対象に「環境と住まいに関する意識調査」を実施した。「現在、電気代の高騰が家計を圧迫していると感じますか?」と聞いたところ、実に96.9%が「感じる(とても感じる65.6%+やや感じる31.3%)と回答した。電気代の高騰が、ほとんどの家庭の家計に影響を与えていることになる。

MILIZEとTEPCO i-フロンティアズが合同で、2023年2月に実施した「家計の管理に関する調査」(調査時期:2023年2月、調査対象:20~59歳の男女2000名)の結果を見ても、「値上がりを実感したもの」として挙がったのは、「食品」(66.6%)や「ガス」(45.0%)を抑えて、「電気代」が70.6%と1位になった。

日本トレンドリサーチとナチュラルハウスが共同で、2023年3月に実施した「電気代に関するアンケート」では、「2023年1月と昨年1月を比べて、電気代がどうなったか」を聞いている。

2人暮らしの回答結果では、最も多かったのが「昨年より1.1~1.3倍ほど高い」、次いで「昨年より1.4~1.7倍ほど高い」だった。「2倍以上」という回答も一戸建てで4.6%、マンションで2.9%おり、電気代の高騰ぶりがうかがえる結果となった。

出典:日本トレンドリサーチとナチュラルハウスの共同で実施した「電気代に関するアンケート」(調査時期:2023年3月、調査対象:一戸建てまたはマンションに住んでいる男女1341名)

出典:日本トレンドリサーチとナチュラルハウスの共同で実施した「電気代に関するアンケート」(調査時期:2023年3月、調査対象:一戸建てまたはマンションに住んでいる男女1341名)

電気代が家計を圧迫する結果、冷暖房を我慢するようなことがあると、ヒートショックなどの健康被害につながってしまう。一条工務店の調査で、「電気代が高すぎるために冷暖房を我慢する等、快適さを犠牲にすることがありますか?」と聞いた結果、79.2%がある(「よくある」30.1%+「時々ある」49.1%)と回答した。由々しき事態だ。

出典:一条工務店「環境と住まいに関する意識調査」

出典:一条工務店「環境と住まいに関する意識調査」

97.5%もの人が、省エネ住宅を選びたいと思うと回答

実は、光熱費の高騰により、省エネ住宅への関心が高まっている。一条工務店の調査で、「今後、新たに家を購入する場合、省エネ住宅(※)を選びたいと思いますか?」と聞いた結果、77.5%が「とてもそう思う」と回答しており、「ややそう思う」(20.0%)を加えた97.5%が省エネ住宅を選びたいと思っていることになる。
※調査では、省エネ住宅を「家庭の消費エネルギーを抑えるための設備の設置や施工を行った住宅」と定義

出典:一条工務店「環境と住まいに関する意識調査」

出典:一条工務店「環境と住まいに関する意識調査」

なかでも、20代と30代でその割合が高くなっている。では、省エネ住宅を選びたいと思う理由はどういったことだろう。

省エネ住宅を選びたいと回答した人に、次のグラフ図の4つの項目がそれぞれどの程度、省エネ住宅を選びたい理由として当てはまるか答えてもらったところ、「昨今、光熱費が高くなったから」が最も強い理由で、次いで「夏は暑く冬は寒いなど、住環境の面で今の家が快適に過ごせないから」となった。

出典:一条工務店「環境と住まいに関する意識調査」

出典:一条工務店「環境と住まいに関する意識調査」

2025年には、省エネ住宅が当たり前になる

さて、省エネ住宅と一口に言っても、きちんと定義がある。

住宅の省エネ基準については、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」で定められている。この基準に適合した住宅を「省エネ基準適合住宅」といい、省エネ住宅とは、原則としてこの省エネ基準適合住宅を指すことになる。

建物の天井や壁・床を断熱材でしっかりおおうことで、住宅の断熱性が上がる。この断熱性能は、法律の改正によって次第に引き上げられている。住宅の性能を統一基準で示すのが「住宅性能表示制度」で、法改正により省エネ基準が引き上げられるごとに、新築時に求められる最低限の「断熱性能等級」も2→3→4と引き上げられてきた。

一方、住宅で生活すると冷暖房設備を使ったり給湯器を使ったりして、エネルギーを消費する。エネルギーをできるだけ消費しない、効率の良い設備を使うことでも、住宅の省エネ性が高まる。そこで加わった住宅の性能が「一次エネルギー消費量等級」で、現行の省エネ基準では等級4が求められている。

どういった仕様なら等級4を達成するかは、東京と北海道のような寒冷地とでは異なる。その地域に応じた「断熱性能等級4」と「一次エネルギー消費量等級4」を満たす住宅が、省エネ基準適合住宅となる。

実は、住宅のような小規模な建築物は、今現在は省エネ基準に適合させることを推奨しているものの、義務とまではされていない。ただし、2025年には義務化される予定で、そうなると新築住宅はすべて省エネ住宅ということになる。

注意したいのが、これに先駆けて、全期間固定金利型の住宅ローンである【フラット35】の適用要件が変わることだ。2023年4月以降の設計検査申請分から【フラット35】の新築住宅の技術基準が省エネ基準適合住宅となる。つまり、省エネ基準を満たしていない新築住宅は【フラット35】が使えなくなる。そうはいっても、今の新築住宅の大半は省エネ基準を満たしているので、使えないという新築住宅はかなり限定されるはずだが、注意したい点だ。

新築住宅と中古住宅で省エネ性に差が生じる

新築住宅では、省エネ基準を満たす省エネ住宅が当たり前になる一方で、すでに建築された中古住宅は、建築当時の省エネ基準を満たせばよかったので、現行の省エネ基準を満たす住宅はあまり多くはないと言えるだろう。

省エネ基準は、実は2030年までに「ZEH(ゼッチ)基準」(断熱性能等級5と一次エネルギー消費量等級6)に引き上げられる予定だ。新築住宅を供給するデベロッパーは、すでにZEH基準への取り組みを始めているので、今後はますます新築と中古の省エネ性に差が出ることになる。

となると、先の調査のように「省エネ住宅を選びたい」と思う人は、新築住宅を選ぶか、中古住宅を省エネ改修することを選ぶか、といった選択をすることになる。省エネ性の高い住宅にするには一定のコストもかかるが、光熱費の削減や夏は涼しく冬は暖かい住環境になるというメリットが得られるので、長い目で見て考えてほしい。

●関連サイト
一条工務店「環境と住まいに関する意識調査」
MILIZE・TEPCO i-フロンティアズ「家計の管理に関する調査」
日本トレンドリサーチ・ナチュラルハウス「電気代に関するアンケート」
ナチュラルハウス 会社HP

2022年の新築マンション平均購入価格、首都圏・関西ともに2001年以来の過去最高金額に!一方、平均面積は過去最低

リクルートの調査研究機関『SUUMOリサーチセンター』は、「2022年首都圏新築マンション契約者動向調査」の結果を発表した。その結果を見ると、新築マンションの価格上昇の影響がさまざまな形で表れていた。同じWITHコロナの2021年と比較して、どんな変化があるかを見ていきたい。

【今週の住活トピック】
「2022年首都圏新築マンション契約者動向調査」を発表/リクルート

首都圏の購入価格は5890万円で、2001年以降最高額に

調査は、新築マンションの購入契約者を対象に、2022年1月~12月に集計した、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県:5972件の結果をまとめたもの。

新築マンションの首都圏の平均購入価格は、5890万円だった。2021年より181万円増加し、2001年の調査開始以来最も高くなった。これは、「6000万円以上」が37.6%、「5000~6000万円未満」が21.8%など、5000万円以上の占める割合が全体の約6割に達しているからだ。特に「6000万円以上」は、10年前(5.5%)や5年前(30.5%)、前年(35.6%)に対して拡大し続けている。

購入価格(実数回答)(出典:リクルート「2022年首都圏新築マンション契約者動向調査」)

購入価格(実数回答)(出典:リクルート「2022年首都圏新築マンション契約者動向調査」)

自己資金比率は22.1%で前年(19.1%)より3ポイント増加している。にもかかわらず、購入価格が上昇した影響か、ローン借入額の平均は4963万円で前年(4941万円)より22万円増えている。特に借入額「5000万円以上」が45.3%と半数近くにまで拡大しているのが注目点だ。

世帯総年収も平均で1034万円となり、前年(1019万円)より増加。シングル世帯をのぞき、夫婦のみ世帯、子どもあり世帯、シニアカップル世帯のすべてで平均世帯総年収が1000万円を超えた。首都圏の新築マンションマーケットは、以前に比べ、より世帯年収の高い層を中心に動いていることが分かる。

なお、住宅ローンの契約形態は、「単独名義で契約」が69.0%、「世帯主と配偶者(パートナー)のペアローン」は29.9%で、ペアローンの割合は2018年以来、3割前後で推移している。

新築マンションの平均面積は、2001年調査開始以来で最も小さく

2022年の購入契約者のライフステージを見ると、最多は「子どもあり世帯」(第一子小学校入学前25.4%+小学校以上11.0%)の36.4%で、次いで「夫婦のみ世帯」の30.2%だった。一方、「シングル世帯」(男性7.3%+女性10.9%)は18.2%で、「シニアカップル世帯」(7.6%)とともに、2001年の調査開始以来最も高い割合になった。

購入した新築マンションの専有面積は、平均で65.9平米。前年の66.0平米とほぼ横ばいではあったが、2001年の調査開始以来最も小さいという結果になった。

専有面積(実数回答)(出典:リクルート「2022年首都圏新築マンション契約者動向調査」)

専有面積(実数回答)(出典:リクルート「2022年首都圏新築マンション契約者動向調査」)

また、「50平米未満」は「シングル男性世帯」で40.2%、「シングル女性世帯」で55.4%を占めるなど、全体に占めるシングル世帯の割合増加も、平均面積の縮小化に影響をしていると考えられる。

購入価格は、専有面積が狭くなるほど安くなる。面積の縮小化は、価格上昇によって手が届きやすい価格帯を求めた結果という見方もできるだろう。

東京23区の居住者の約37%が、購入時に他のエリアに流出

購入価格は都心部ほど高くなる。調査結果の平均購入価格を見ると、東京23区が7041万円、東京都下が5347万円、神奈川県が5553万円、埼玉県が5459万円、千葉県が4372万円だ。いずれのエリアも前年より上昇している。

一方、購入した物件の所在地は東京23区が最多の33.9%、次いで神奈川県の28.5%だった。注目点は、東京23区の割合が減少していることだ。5年前の2017年では東京23区は43.2%だったが、以降減少し続けている。

これを購入者の前住所とクロスして見よう。いずれのエリアも同じエリアで購入する割合が高いのだが、23区から23区への購入割合の減少が顕著だ。2017年では74.5%だったが、2022年では63.4%まで減っている。東京23区居住者の残りの4割弱が、購入の際に「他のエリアに流出した」ことになる。

契約前住所別 購入物件所在地(東京23区)※直近6年間の推移(出典:リクルート「2022年首都圏新築マンション契約者動向調査」)

契約前住所別 購入物件所在地(東京23区)※直近6年間の推移(出典:リクルート「2022年首都圏新築マンション契約者動向調査」)

この結果は、東京23区の新築マンションの価格が高くなりすぎたことから、手が届きにくいと思う人が他のエリアで購入したという流れに見える。専有面積の小さいものを探すのか、より低価格なエリアで探すのか、あるいは中古マンションや新築一戸建てなどの別の物件種を探すのか、といった選択を求められたのかもしれない。

関西圏も首都圏とほぼ同じ傾向が見られる

リクルートは首都圏の調査結果発表の翌日に、関西圏の結果も発表している。その結果を見ると、関西圏も首都圏と同様の傾向が見られる。ただし、価格などの数値は異なる。

関西圏の平均価格は5071万円で前年より上昇し、2001年の調査開始以来最も高くなった。自己資金比率は平均27.6%、ローンの借入総額は平均4304万円で、いずれも前年より上昇した。世帯総年収も平均が921万円に増加したが、ペアローンの割合は2割前後で推移している。

シングル世帯とシニアカップル世帯の割合が、2001年の調査開始以来最も多いのも首都圏と同じだ。平均専有面積は68.7平米で、こちらも2001年の調査開始以来最も小さい。

ただし、流出状況は首都圏とは異なる。関西圏で最も平均価格が高いエリアは、大阪市内の5528万円だ。次いで、京都エリア(5471万円)、北摂エリア(5140万円)、阪神間エリア(5052万円)の順となる。契約前住所別に購入物件所在地を見ると、大阪市内→大阪市内は75.5%で前年(68.7%)より増加している。むしろ、北摂エリア→北摂エリアが前年の84.8%から75.5%に減少し、北摂エリア→大阪市内への移動が前年の7.0%から13.1%へと増加している。エリア間の価格差が首都圏より小さいということもあるが、大阪市内に魅力的な物件が多かったという見方もできるだろう。
この点について、SUUMO副編集長の笠松美香さんに聞いた。大阪市内の新築マンションの供給が関西圏の中では堅調で、梅田エリアを筆頭に開発が続き、将来の発展期待性が高いことに加え、大阪市内の平均価格が5000万円台とまだ手が届きやすいことから、首都圏とは流出状態が異なるのだろう、ということだ。

さて、首都圏と関西圏の違いは「重視項目」でも見られる。物件を検討する上で重視した項目は「価格」が最も多く、首都圏で90.2%、関西圏で86.9%。次いで「最寄り駅からの時間」が首都圏で82.9%、関西圏で79.3%、「住戸の広さ」が首都圏で73.1%、関西圏で63.7%だった。

しかし、首都圏では「通勤アクセスの良いエリア」が59.7%で4位になるのに対して、関西圏では53.6%で6位だった。関西圏より通勤時間が長くなりがちな首都圏ならではのこだわりだろう。

マイホームを手に入れるには、価格、広さ、周辺環境、交通アクセスなどさまざまな重視項目から帰着点を見つける必要がある。どこを重視してどこを妥協するかは、人それぞれなのだろう。

●関連サイト
リクルート「2022年首都圏新築マンション契約者動向調査」
リクルート「2022年関西圏新築マンション契約者動向調査」

住宅ローン「変動型」利用者が減少傾向に。金利上昇リスクを抑えるには?

住宅金融支援機構が発表した「住宅ローン利用者の実態調査結果(2022年10月調査)」によると、増加していた「変動型」の利用者が減少に転じたという。それでもなお、約7割が変動型を利用している。金利が上昇した場合、変動型を利用していても問題はないのだろうか?

【今週の住活トピック】
「住宅ローン利用者の実態調査結果(2022年10月調査)」を発表/住宅金融支援機構

「変動型」が減少し、「固定期間選択型」と「全期間固定型」が増加

まず、住宅ローンの金利タイプについておさらいしておこう。35年などの返済期間を通して金利が固定される「全期間固定型」、当初の3年や5年、10年などの選択した一定期間だけ金利が固定される「固定期間選択型」、半年ごとに金利が見直される「変動型」の3タイプがある。今のような低金利の局面において、全期間固定型は変動型よりも金利が高く設定されている。

次に、調査対象者や時期を確認しよう。調査対象は、2022年4月~9月の間に住宅ローンを借りた1500件で、調査は2022年10月~11月に実施された。金融緩和策を維持してきた日本銀行が、長期金利の変動許容幅を従来の0.25%程度から0.5%程度に広げ、実質の利上げかといわれたのが、2022年の年末のこと。これにより、いよいよ金利上昇が現実的になってきたと指摘されたのだが、これよりも前に住宅ローンを借りた人に調査を実施したことになる。

では、調査結果を見ていこう。今回の調査で注目されたのは、「変動型」が減少したこと。代わって「固定期間選択型」や「全期間固定型」が増加した。それでも、69.9%が変動型を選んでいる。やはり、変動型の低金利に魅力を感じるということだろう。

利用した金利タイプ

利用した金利タイプ(出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2022年10月調査)」)

低金利のメリットを活かしたい人が多いなか、金利の上昇リスクを抑えたいと考えて、全期間固定型や固定期間選択型を選んだ人が以前より増えたのだろう。

実際に「今後1年間の住宅ローンの金利見通し」を聞いた結果は、「現状より上昇する」が41.7%になり、前回調査(2022年4月調査)の39.2%よりわずかに増えた。特に、全期間固定型を選んだ人では、上昇するという回答が、前回の45.1%から今回の52.7%に増加している。変動型より金利は高く設定されているものの、低金利のいまのうちに全期間の金利を固定してしまおうと考えた人もいたのだろう。

変動型を選んだ約7割のなかでも、金利上昇に強い人、弱い人がいる

調査時期よりも現時点のほうが、金利上昇が現実的になっている。実際に、全期間固定型の代表となる【フラット35】の最頻金利※は、2023年3月時点で、5カ月連続で上昇した。変動型はまだまだ金利が上昇する気配はないが、長期に金利を固定するものは少し上がっているのだ。
※※最頻金利とは、取扱金融機関が提供する最も多い金利のこと

つまり、これから考えるべきリスクは金利が上昇することで、利息が増え、毎月の返済額(ボーナス時加算も併用していればその返済額も)が増えてしまうことだ。返済額が増えても、家計に支障がない人もいれば、それによって返済が難しくなる人もいるだろう。

まず気になる点、その1は「融資率」だ。住宅価格(注文住宅なら建築費用)の何割を住宅ローンで充当するかで、頭金を1割入れていれば、9割が住宅ローンとなる。調査結果を見ると、変動型を選んだ人が最も多いのが「90%超100%以下」ということだ。さらに「100%超」つまり、住宅価格だけでなく諸費用分まで借りた人でも、変動型を選んだ人が多いのも気になる。

融資率

融資率(出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2022年10月調査)」)

融資率90%超で変動型を選んだ理由が、低金利の変動型でなければそこまで借りられなかったという人は、要注意だ。

例えば、毎月12万円の返済(年間返済額144万円)で住宅ローンを35年返済で借りるとする。変動型(金利0.45%で試算)なら、借入可能額は4662万円だが、全期間固定型(金利1.45%で試算)なら借入可能額は3950万円に下がる。毎月12万円の返済で4500万円を借りたい場合は、変動型などの低金利のものしか選択できないということになる。

もちろん、月々の家計に余力があれば、金利上昇に伴う返済額の増加の影響は少ない。その意味では、気になる点、その2は「返済負担率」となる。返済負担率とは、年収に対して年間の住宅ローンの返済額が何%になるかを表すものだ。

一般的に住宅ローンでは、年収が高くなるほど、高い返済負担率でも借りられるようになる。例えば、先ほどの事例(毎月返済額12万円)では、年収600万円の人なら、返済負担率は24%なので問題はない。これに対して、年収400万円の人だと返済負担率が36%まで上がるので、金融機関側から借入額を減らして毎月の返済額を抑えるように求められることになる。

返済負担率

返済負担率(出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2022年10月調査)」)

調査結果を見ると、多くの人が返済負担率10%超から25%以内の安全圏で借りている。が、年収400万円以下の人で返済負担率25%~30%だったり、高年収でも支出の多い家計で返済負担率が35%超だったりすると、支出の削減が難しい場合もあるので、金利上昇に伴う返済額の増加の影響が大きくなるだろう。

金利上昇リスクに対して具体策をもとう

そして最も気になる点、その3が「金利上昇リスクへの対応を考えていない」場合だ。調査結果を見ると、変動型を借りている人で、金利上昇で返済額が増加した場合の対応について「見当がつかない、わからない」という人が20.7%もいる。

金利上昇に伴う返済額増加への対応

金利上昇に伴う返済額増加への対応(出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2022年10月調査)」)

資金に余力があって、返済を継続できる(31.6%)、全額完済できる(13.6%)なら問題はない。また、「一部繰り上げ返済をする」(24.5%)という人も多いのだが、元金の一部を繰り上げて返済するので、そのための資金が必要になる。「借り換え」(9.0%)も同様で、相応の諸費用がかかる。貯金に余裕がなくて融資率9割超という人には、難しい対応策かもしれない。

また、金利上昇のために変動型から借り換える場合、借り換え先の金利も上昇しているはずだし、一般的に変動型よりも先に長期間金利を固定するタイプが上がっていくので、金利上昇に気づいたときには、すでに借り換え先の金利も上がっていてリスク回避の効果がないという場合もあるだろう。

変動型は金利が上昇しても急激に返済額は増えないけれど…

急激に金利が上昇したバブル期のときに導入されたのが、変動型の5年ルールだ。急激に返済額が増加するのを抑えるために、金利が上昇して利息が増えても、返済額の設定見直しは5年おきとし、返済額を増やす場合でも1.25倍までに制限するというもの。今でもこのルールを適用する金融機関は多い。

したがって変動型で金利が上昇した場合でも、このルールによって、急激に返済額が増える事態にはならない。しかし、返済額が増えないだけで、支払うべき未払い利息は残る。元金も減らないため、トータルの利息はどんどん積み上がることになる。

住宅ローンは35年間などの長期間にわたって返済するものだ。自分や共に住宅ローンを借りたパートナー、あるいは勤務先の事業などによって、収入が想定より減ってしまうリスクもあるので、目いっぱい借りてしまうことに注意したい。さらに、金利上昇リスクが高まる状況なので、これから借りる人はぜひ、金利が上昇したときにどう対応するかを考えて、住宅ローンを選ぶようにしてほしい。

●関連リンク
「住宅ローン利用者の実態調査結果(2022年10月調査)」(住宅金融支援機構)

中古マンション市場、築20年以内が好調? 首都圏不動産流通の動向を解説

東日本不動産流通機構(以下、東日本レインズ)の「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」の結果を見ると、築20年以下の中古マンションのニーズが底堅いことが分かる。詳しく見ていくことにしよう。

【今週の住活トピック】
「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」を発表/(公財)東日本不動産流通機構(東日本レインズ)

首都圏の中古マンション市場は、築30年超物件の比率が拡大

データ元の東日本不動産流通機構について、説明しておこう。まず、指定流通機構とは、国土交通大臣指定の組織で、各地域の主な不動産会社が会員となっているもの。会員の不動産会社は、REINS(レインズ)と呼ばれるネットワークシステムに、不動産の情報を登録することで情報を共有している。東日本レインズは、全国のうち東日本地域を管轄している。

今回のデータは、東日本レインズが2022年の1年間において、REINSに新規に登録されたり成約の情報を得たりした、首都圏の中古マンションと中古一戸建ての物件を“築年数”の観点から分析し、市場動向をまとめたものだ。

今回の首都圏の市場動向の特徴の1つが、築年数の古い中古マンションの市場に占める比率が高いことだ。
中古マンションの市場を見ると、「築31年超」の物件が占める比率は、新規登録物件(新たに売り出した物件)で2021年44.7%→2022年46.9%に拡大し、成約物件(契約が成立した物件)で2021年29.7%→2022年31.5%に拡大している。その分、築年の浅い「築5年以内」や「築11~15年」が縮小している。

新規登録物件・成約物件ともに、「築5年以下」の比率が拡大している中古一戸建て市場と比べると、対照的な結果だ。

築20年以内の中古マンションの売買は好調?

特に注目したいのが、築20年以内の中古マンションの状況についてだ。

まず、築年帯別の平均価格を見ていこう。
売り出す側はできるだけ高く売りたいので、まずは希望価格で売り始める。一定期間で売れない場合は、価格を下げることになるし、買う側はできるだけ安く買いたいので、不動産会社を通じて価格交渉を行う。このため、新規登録価格よりも成約価格のほうが下がるというのが一般的だ。

中古マンションの平均平米単価と中古一戸建ての平均価格を見ると、新規登録物件と成約物件で、常に一定の開きがあるのは、このためだ。そして、それぞれ築年帯が古くなるほど下がっていく傾向が見られる。

上が中古マンションの築年帯別平均平米単価、下が中古一戸建ての築年帯別平均価格(出典:東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」)

上が中古マンションの築年帯別平均平米単価、下が中古一戸建ての築年帯別平均価格(出典:東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」)

次に、築年帯別の新規登録件数に対する成約件数の割合=「対新規登録成約率」を見ていこう。
中古マンションでは、「築6~10年」が最も対新規登録成約率が高く(35.2%)、「築0~5年」「築11~15年」「築16~20年」がおおむね28~30%程度となり、築20年を超えると下がり続けることが分かる。

これに対して、中古一戸建て市場の対新規登録成約率では、築6~築25年以内ではおおむね30~32%で横ばいとなっており、中古マンションに比べると築年帯別による対新規登録成約率の差が小さくなっている。

築年帯別の取引動向「対新規登録成約率(成約件数/新規登録件数)」(出典:東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」から一部データ抜粋)

築年帯別の取引動向「対新規登録成約率(成約件数/新規登録件数)」(出典:東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」から一部データ抜粋)

「対新規登録成約率」(出典:東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)から一部データ抜粋」)

「対新規登録成約率」(出典:東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」から一部データ抜粋)

中古マンションのカギは、広さ&築年か?

中古マンションには、「築年帯別平均価格」のデータもある。実はこちらを見ると、築20年以内までは新規登録件数と成約件数の平均価格がかなり近いことが分かる。

中古マンションの築年帯別平均価格(出典:東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」)

中古マンションの築年帯別平均価格(出典:東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」)

具体的に平均価格を見ていくと、次のようになっている。「築6~10年」では、成約平均価格が新規登録平均価格を上回っている。

○成約平均価格○新規登録平均価格築0~5年:6638万円6777万円築6~10年:6193万円6053万円築11~15年:5543万円5616万円築16~20年:5250万円5578万円

ではなぜ、築20年以内の平均価格では両者が近くなっていたのか。これは平均面積を見ると分かる。築20年以内までは、新規登録物件の平均面積は約55~65平米であるのに対し、成約物件の平均面積は約63~70平米と開きが大きくなっている。

中古マンションの築年帯別平均面積(出典:東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」)

中古マンションの築年帯別平均面積(出典:東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」)

したがって、築20年以内の中でも、面積が広いもののニーズが高く、その結果として成約物件の平均価格が高くなっていると考えられる。対新規登録成約率が最も高くなっている「築6~10年」は、「築年数×面積×価格」のバランスがよいということだろう。

そうはいっても、築20年以内の中古マンション平均価格は5000万円を超える高額となっている。平均価格が2000万円台となる「築26~30年」、「築30年超」の価格的訴求もあり、築年数の古いものへの需要も高いのが実態だ。

おそらく、築年数が浅いものの中でも面積が広いもの、築年数が古いものの中でも利便立地や管理状況のよいもの、などが選ばれて成約に結び付いているのだろう。築年数の浅いものの市場シェアが少ないからといって、それだけで売れるわけではなく、広さと価格とのバランスが大事だと理解しておきたい。

●関連リンク
「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2022年)」(公財)東日本不動産流通機構(東日本レインズ)

猫飼いさんの家選び、マンション・戸建て・リノベ、どれがいい?注意したいポイントは”ペットトラブルの防止”

2月22日は「猫の日」だったのニャー。「猫の日」にちなんで、ゼロリノベを運営するgroove agentが、東京都在住の猫を飼っている20~40代の男女1000人を対象に、猫と暮らす家に関してアンケート調査を実施した。それによると、猫と暮らす家にはお悩みがいろいろあるのだという。どんなことだろうか?

【今週の住活トピック】
「猫と暮らす家のお悩みランキング」を公表/groove agent

3位「家具や壁で爪をとぐ」、2位「毛が抜けて敷物や洋服につく」、そして1位は?

筆者はかつて「ペットは犬より猫? 散歩、しつけの手間が犬人気下落の要因か」という記事を書いたが、ペットフード協会の調査によると、飼育されるペットの頭数は、2014年以降ずっと猫が犬を上回っている。それほど、ペットとして猫の人気は高いのだ。

家族同様の愛猫でも、猫と暮らす家についてはお悩みも多いようだ。ゼロリノベの調査によると、お悩みの3位は「家具や壁で爪をとぐ」、2位は「毛が抜けて敷物や洋服につく」、そして1位は「猫飼育可能な物件が少ない」という結果だった。

出典:ゼロリノベ調べ

猫と暮らすうえで、家の中のことは対応方法を自身で工夫できたとしても、住める家自体が見つけにくいことが最大の悩みごとというわけだ。

猫と暮らすために住み替えるなら、新築戸建て?

調査対象者が現在猫を飼っている家は、「賃貸」が51%、「持ち家」が49%とほぼ同じだ。ただ、「猫と暮らす家」として満足しているのは全体の44%で、その内訳は「持ち家」が57%を占めたので、持ち家のほうがやや満足度が高いようだ。賃貸に不満を感じる理由としては、家が狭いことなどが挙がっているという。

では、「猫と暮らすために購入・住み替えするなら」どんな家がよいのだろう。結果は「新築戸建て」が最多の32%だった。「中古戸建て」の14%と合わせると戸建てが46%になり、マンション(新築マンションと中古マンションの合計で39%)より戸建てのほうが猫と暮らしやすいと思っている人が多いようだ。戸建てに住み替えを検討している人のコメントに、「管理組合などの規定に縛られない戸建てに住み変えたい」とあるように、マンションでは「管理規約」などでペット飼育に関する細かい制限があるからだろう。

出典:ゼロリノベ調べ猫の飼育が可能な物件を探す際に注意したいこと

猫の爪とぎ用のボードを壁に張ったり、こまめにブラッシングしたりと、猫を飼ううえでの工夫などはいろいろあるだろうが、ここでは、猫が飼える物件を探すときに注意したいことを説明しよう。

まず、賃貸物件について。はじめから「ペット可」で入居者を募集している物件を選びたい。その場合でも、ほかの入居者とのトラブルを避けるために、ペット飼育のための建物になっていたり、飼育のルールがあったりするほうがよいだろう。賃貸物件の中には、エントランスに足洗い場があったり、室内の壁のクロスを上下に分けて下の部分だけ張り替えできるようになっているものもある。また、一般的には、退去の際にはペットによる臭いや損傷について原状回復が求められるので、室内の仕様設備や契約書の内容などもしっかり確認したい。

次に、新築や中古のマンションの購入について。マンションには「管理規約」などの規則がある。必ず「ペット飼育可能」になっているか確認し、ペット飼育の条件としてどんなルールがあるかを詳しく調べよう。ペットの大きさや頭数に制限がある場合がほとんどなので、自分の希望通りに猫が飼えるか確認したい。ほかにも、ペット委員会などの飼育者の組織があり、予防接種を義務づけるなどの会則が整っているほうがよいだろう。ペット対応型マンションとして、ペット飼育のための共用設備や設計がなされているものもある。

新築か中古かについては、いろいろな考え方があるだろう。先ほどの調査結果では、猫と暮らすために購入・住み替えをするなら新築戸建てに住みたいと回答した人のなかには、「注文住宅にすれば自分たちにも猫にも住みやすい家が設計できるかもしれないから」とコメントした人もいて、分譲の新築物件ではなく注文住宅を建てるイメージをもっている人もいるようだ。同じ理由で、中古住宅を買ってリフォームやリノベーションをしたいと回答した人もいるだろう。

猫の安全や健康を守るには、滑りにくい床材やペットドア・キャットウォークの設置など、通常の住宅にはない仕様や設備を採り入れる必要がある。そういう意味では、中古住宅を買ってすぐに、あるいは一定期間が経ってからペット対応のリフォームをするという選択肢も有効だ。

最後に指摘したいのは、猫を飼っている人との情報交換も大切だということ。戸建てのほうが規制を受けることなく猫を飼える側面もあるが、マンションの場合には飼育仲間と情報交換ができるという側面もある。何を重視するかをよく考えて、詳しく調べたうえで物件を選ぶのがよいだろう。

さて、本連載の筆者の担当編集者は犬派らしいが、SUUMOジャーナルの記事で「猫」のテーマは人気だという。丸まって寝たり猫じゃらしで遊んだりする姿を見れば、癒やされて家事や仕事の疲れも解消されることだろう。室内で飼いやすいこともあって、猫人気は今後も続くと思われる。飼い主にとっても愛猫にとっても、暮らしやすい家が増えることを期待している。

●関連サイト
「猫と暮らす家のお悩みランキング」(ゼロリノベ調べ)

「住みたい街ランキング2023」発表! 大宮と浦和で明暗、新宿が注目の理由とは?

リクルートが、 首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県)に居住している20歳~49歳の1万人を対象に実施した「SUUMO住みたい街ランキング2023」を発表した。ランキングの結果も気になるが、なぜこの街が?という要因も気になるところだ。今回のランキングで注目の街を紹介していこう。

【今週の住活トピック】
「SUUMO住みたい街ランキング2023 首都圏版」を発表/リクルート

住みたい街ランキング2023は、TOP4までは変わらず

さっそく、2023年の住みたい街(駅)ランキングの結果を紹介しよう。「横浜」が首位を、「吉祥寺」が2位を堅持し、昨年3位に食い込んだ「大宮」がその位置をキープし、「恵比寿」が4位を死守するなど、TOP4は2022年と同じ顔触れとなった。

住みたい街(駅)総合ランキングトップ10(首都圏全体/3つの限定回答)(出典:リクルート)

住みたい街(駅)総合ランキングトップ10(首都圏全体/3つの限定回答)(出典:リクルート)

TOP10で注目したいのは、まず「鎌倉」の躍進だ。もともと歴史のある良好な住宅地として人気があったが、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の影響もあってのことか。次の注目点は、「新宿」「池袋」「渋谷」「東京」のターミナル駅がランクアップしていることだ。常に再開発などのプロジェクト案件があり、いずれも話題を集める街だ。

また、11位~25位までを見ると、顔触れは同じようだが順位が少し入れ替わっている。品川や表参道などの都心の街がランクダウンし、舞浜や船橋、立川など郊外の人気駅がランクアップしている印象を受ける。都心の低迷と郊外の上昇の傾向は、2022年も見られた現象なので、コロナ禍で、自分が暮らしている街から近い街が再評価される傾向が続いているようだ。

11位以下では「舞浜」(17位)、「みなとみらい」(26位)、「有楽町」(27位)、「所沢」(30位)、「和光市」(31位)、「新浦安」(37位)、「守谷」(47位)が過去最高位になっている。

住みたい街(駅)総合ランキング11位~25位(首都圏全体/3つの限定回答)(出典:リクルート)

住みたい街(駅)総合ランキング11位~25位(首都圏全体/3つの限定回答)(出典:リクルート)

明と暗に分かれた「大宮」と「浦和」。その違いは?

それにしても、「浦和」(12位)が昨年の5位からTOP10外までダウンしたのは意外だった。SUUMO編集長・池本洋一さんの分析によると、20代・30代のランキングで吉祥寺を抑えて初の2位になるなど、注目度を集めた大宮に対して、広域からの注目度が低かったのが浦和だという。

「大宮」については、池本さんが「コンパクト東京?」と呼ぶほど、若者が魅力を感じる街の賑わいがあるのだそうだ。

SUUMO住みたい街ランキング2023首都圏版 記者発表会資料(出典:リクルート)

東京と大宮の比較(出典:リクルート)

まず、駅周辺の商業施設に東京にしかなかった店が進出している。次に、氷川神社のある大宮公園からコクーンシティをつなぐ「氷川参道」の周辺に活気がある。街路樹に沿って個性的な店が並び、集客力のある「さいたまスーパーアリーナ」や「NACK5スタジアム大宮」なども隣接している。駅周辺には飲食店の多い通りもある。これが近くに凝縮しているので、コンパクトな東京のようだというのだ。

一方、「浦和」は、大宮が埼玉県内外の広域から票を集めている(地元のさいたま市からの投票シェアは23.8%)のに対して、地元の投票シェアが43.4%であるなど、地元の人気に支えられている感が否めない。加えて、浦和駅西口の駅前再開発が進行中であるため、当初あった地元の個人商店が立ち並ぶ商店街がなくなり、一時的に賑わいが減っていること、大宮に比べて賃料が高いことなどが影響しているのではないかというのが、池本さんの分析だ。再開発事業は2026年6月竣工予定だというので、今後に注目したい。

「新宿」は、コロナ禍からの復調の象徴か?

次に注目したいのが、「新宿」だ。2023年にTOP5に入る躍進を見せたが、その原動力となっているのが「シングル男性」だ。ライフステージ別の内訳を見ると、新宿に投票したのはシングル男性が44.9%を占めている。シングル男性のシェアが、1位横浜は22.1%、2位吉祥寺は20.7%、3位大宮は24.0%であることと比べても、突出して高い。

ランキングTOP10のライフステージ別内訳(出典:リクルート)

ランキングTOP10のライフステージ別内訳(出典:リクルート)

もともとコロナ前の2019年のランキングでは、新宿は5位だった。2023年にコロナ禍から復調したと言ってよいだろう。SUUMOによると、新宿の街の魅力項目として高かったのは、「魅力的な働く場や企業がある」「文化・娯楽施設が充実している」「仕事のできる施設(コワーキングスペースやカフェなど)がある」などで、電車バスで行きやすいなど交通利便も上位に挙がった。たとえば、センスの良い飲食店やお店の魅力度が高い「恵比寿」などと比べると、働く・遊ぶ・買う+交通利便など多様な魅力をもつことが、コロナ禍からの復調が進んだ要因だといえるだろう。

特徴(個性)のある街はやっぱり強かった

上位以外で注目の街として、「流山おおたかの森」と「所沢」を挙げておこう。

千葉県としてのランキングでは、2位:舞浜、3位:船橋、4位:柏、5位:千葉を抑えて、1位に躍り出たのが「流山おおたかの森」だ。その魅力項目TOP10を見ると明らかなように、「子育て」や「教育環境」の高さが目立つ。

一方の「所沢」は2022年の48位から2023年には30位に急上昇しただけでなく、「穴場だと思う街(駅)ランキング」でも4位に入るなど、その躍進ぶりが注目される。所沢の魅力項目TOP10も明確だ。「住居費の安さ」「コスパのよさ」「生活上の利便性」など、暮らしやすさが目立つ。所沢駅直結の商業施設「グランエミオ所沢」の完成に加え、2024年秋にも大規模商業施設が完成する予定で、街の発展への期待値も躍進の要因になっているようだ。

「流山おおたかの森」と「所沢」の街の魅力項目TOP10(出典:リクルート)

「流山おおたかの森」と「所沢」の街の魅力項目TOP10(出典:リクルート)

横浜や大宮、新宿に比べて多様な魅力要素がないものの、「商店街」と「公園」、「知名度」といった強力な要素があることが、吉祥寺に根強い人気がある理由だろう。その街ならではの魅力的な個性のある街は、やっぱり強いということだ。

さて、当サイトで昨年「住みたい街ランキング2022」について記事を書いたとき、最後に、「『鎌倉殿の13人』が始まり、来年のランキングで鎌倉が急上昇するような気がする」と書いた。結果は、急上昇というほどではないが、10位から8位にランクアップした。メディアで取り上げられる機会が増えて、鎌倉のもつ歴史的な背景が広く伝わったからだろう。来年も、街の魅力がしっかりと広域に伝わった街が、ランクアップすることだろう。

●関連サイト
「SUUMO住みたい街ランキング2023 首都圏版」

家事分担「妻9割、夫1割」が最多。夫婦で無理なく分担するには?

夫と妻が家事を分担している割合は、お宅ではどの程度だろうか? リンナイが、夫と妻にそれぞれ聞いたところ、「妻が10割」と回答したのは、妻のほうは23%いたが、夫のほうは8%しかいなかった。どうやら家事に対する認識にかなりの開きがあるようだ。

【今週の住活トピック】
「『夫婦の家事分担』に関する意識調査」を公表/リンナイ

家事分担の割合、夫と妻で認識にズレがある!

こんなことが、あるのではないだろうか?
「夕食は何を食べたい?」と妻に聞かれた夫が、負担をかけまいと「なんでもいいよ」と答えたら、なぜだか妻の機嫌が悪くなった。

食事の後、夫が妻をいたわって「皿洗いをするよ」と言ってくれた。その後、妻がキッチンに行ってみると、たしかに皿は洗っていたが、シンクやコンロまわりは汚れたままで、キッチンの生ごみもそのままだった。妻は黙って後片付けをしたが、なんかモヤモヤした。

筆者がこんな想像をしてしまうような調査結果だったのが、リンナイの「『夫婦の家事分担』に関する意識調査」だ。

最近の男性は家事参加にも積極的だというが、夫婦の家事分担割合を夫と妻それぞれに聞いた結果、最多は「妻9割、夫1割」(女性34%・男性28%)だった。夫が2割、3割という回答も多いが、特徴的なのは「妻10割」の結果だ。自分が10割していると思っている女性が23%いるのに対して、妻が10割していると思っている男性は8%しかいない。男性から見ると、自分も1割や2割はしていると思っているのに、女性側から見たら、家事の範囲とは思えないという認識のズレだろう。

夫婦の家事分担(N=男性1305、女性1045)(出典/リンナイ「『夫婦の家事分担』に関する意識調査」のリリースより転載)

夫婦の家事分担(N=男性1305、女性1045)(出典/リンナイ「『夫婦の家事分担』に関する意識調査」のリリースより転載)

男性が行っている掃除は、ごみ袋の取り替え!?

では、男性と女性がそれぞれ、自身は「どんな家事を行っている」と自認しているのだろうか? 掃除(男性53%/女性94%)、買物(男性50%/女性95%)、洗濯(男性41%/女性95%)が、男性が行っている家事のTOP3だ。女性が「パートナーにやってほしいと思う家事」の第1位(54%)が掃除なので、「掃除」は男性がしている、女性が男性にしてほしい、という点で一致しているように見える。

そこで、担当している具体的な家事について質問した結果を見よう。「掃除」については、次のような結果だった。なんと男性が行っている掃除の第1位は、「ごみ袋の取り替え」(37%)だった。

担当している具体的な家事:掃除(N=男性1305、女性1045)(出典/リンナイ「『夫婦の家事分担』に関する意識調査」のリリースより転載)

担当している具体的な家事:掃除(N=男性1305、女性1045)(出典/リンナイ「『夫婦の家事分担』に関する意識調査」のリリースより転載)

同様に、「食事」について見ると、男性が行っている第1位は「食器洗い・乾燥」(34%)だ。一方、女性は、「献立を考える」(94%)ことに始まり、調理後の「残った食材の保管・管理」(83%)や「食器・調理器具の収納」(83%)まで、一連の家事を8割以上で行っていた。

担当している具体的な家事:食事(N=男性1305、女性1045)(出典/リンナイ「『夫婦の家事分担』に関する意識調査」のリリースより転載)

担当している具体的な家事:食事(N=男性1305、女性1045)(出典/リンナイ「『夫婦の家事分担』に関する意識調査」のリリースより転載)

「献立を考えるのが面倒」という人は多い。「負担に感じる家事」を具体的に聞いた結果を見ても、最多の57%の女性が、献立を考えることを選んだ。何を食べたいか聞かれたときに、「なんでもいい」という回答が、いかに気が利かないものかわかるだろう。今どんな食材があるのかを聞いて、それで作れる献立を答えたら、家庭の平和が保てるのではないかと思う次第だ。

また、女性が「パートナーにも気にかけてほしい家事」として最多だったのは、食事では「コンロなど調理機器の掃除・手入れ」(39%)、掃除では「換気扇の油汚れ掃除」(39%)だった。

女性は家事を行う際に、いろいろなことを考えている

家事に対する夫と妻の認識の開きは、まだある。それぞれの家事で「重視するポイント」を聞いた結果を見よう。
食事を例に挙げると、女性は、「食材・食事の費用を抑えたい」(74%)、「手軽に作りたい」(66%)、「後片付けを楽にしたい」(64%)など、費用や調理・後片付けの手間などいろいろ考えている。男性は「特にない」(35%)という人も多く、「手軽に作りたい」では22%しか重視していない。

コンロの魚焼きグリルに入れて焼くだけと思って、「魚でも焼いて…」と言ったりすると、魚焼きグリルの掃除はけっこう手間がかかるので、墓穴を掘るかもしれない。

家事に関して重視するポイント:食事(N=男性1305、女性1045)(出典/リンナイ「『夫婦の家事分担』に関する意識調査」のリリースより転載)

家事に関して重視するポイント:食事(N=男性1305、女性1045)(出典/リンナイ「『夫婦の家事分担』に関する意識調査」のリリースより転載)

話し合って、上手に家事分担をしよう

リンナイのリリースには、「知的家事プロデューサー 本間朝子先生監修 家事シェア満足度チェックテスト」も紹介されている。その中からいくつか抜粋してみた。あなたの家庭ではどうだろうか?

■「家事シェア満足度チェックテスト」より抜粋
1.家事は家族で支え合ってするものだと思う
2.夫婦で家事のバランスややり方について話し合っている
3.散らかしたものはそれぞれ本人が片づけている
4.家事が思ったようにできなかった時も責められたり否定されることはない
5.家事が思うようにできない時は臨機応変にサポートし合っている

共働きだからといって、家事分担は5:5が理想的とは限らない。やり方にこだわりがある家事については、中途半端に分担しないほうがよい場合もあるし、互いにやり方を譲り合って共有し、互いの空き時間に行うのが効率的な場合もある。

また、女性が負担を感じる家事でパートナーに気にかけてほしい家事、たとえば「コンロなど調理機器の掃除・手入れ」、「水まわりの汚れ掃除」、「換気扇の油汚れ掃除」などを、男性が積極的に担当するといった分担もあるだろう。

女性である筆者は女性目線で記事をまとめてしまうのだが、女性の負担がいまだ大きいとはいえ、以前よりは男性の家事参加が増えていると感じている。SUUMOジャーナルの筆者の担当編集者は男性だが、家事分担サポートアプリを使って、妻との家事分担を話し合ったばかりだという。

家事を可視化して、無理のない分担方法を考えていくことで効率的に行うことができれば、空いた時間を子育てなど他のことに使うことができるだろう。そんな家庭が増えていくことを期待している。

●関連サイト
リンナイ「夫婦の家事分担」に関する意識調査

都民の約7割が東京に定住意向あり。交通利便性、住み慣れていること以外にカギとなる魅力とは?

東京都がこのほどまとめた「都民生活に関する世論調査」の結果によると、約7割が東京に定住意向があることが分かった。その理由となるのは、第一に発達した交通網なのだが、こうした利便性とは違う項目も上位に挙がっている。その理由とは……。

【今週の住活トピック】
「都民生活に関する世論調査」結果を発表/東京都

調査結果に表れる「住めば都」の実態

「都民生活に関する世論調査」は、東京都全域に住む満18歳以上の男女を対象に郵送やインターネットで実施し、1883人の有効回収を得たもの。

今住んでいる地域の住みよさを聞いたところ、「住みよいところだと思う」は81.5%、「住みよいところだと思わない」は8.8%と、8割を超える人が住みよいと思っている。さらに、今住んでいる地域に今後も住みたいと思うか聞いたところ、「住みたい」は69.5%、「住みたくない」は11.3%となり、約7割が今の地域に住み続けたいと思っている(=地域定住意向あり)ことが分かった。

一方、「東京は、全般的に見て住みよいところか」を聞くと、「住みよい」は58.0%、「住みにくい」は6.6%と、約6割が住みよいと思っており、これは地域の住みよさより低い結果となった。さらに、東京に今後もずっと住みたいと思うかを聞くと、「住みたい」は69.7%、「住みたくない」は9.1%となり、約7割が東京に住み続けたいと思っている(=東京定住意向あり)という結果に。「東京は住みよい」と回答した割合よりも、東京定住意向ありの割合のほうが高い点が興味深い。

次に、それぞれの定住意向を分析すると、いずれも、そこに「長く住んでいる」人ほど定住意向が高まる傾向が見られる。東京定住意向については、さらに「東京生まれであるかないか」で、約15ポイントの開きがあった。生まれた地域、長く住んでいる地域には、今後も住み続けたいと思う、つまりは「住めば都」となることがうかがえる結果だ。

地域定住意向(地域居住年数別)

東京定住意向(東京生まれか否か/東京居住年数別)

出典/東京都「都民生活に関する世論調査」の結果より抜粋転載

定住したいのは、「住み慣れているから」「利便性が高いから」のほかにも…

次に、それぞれの定住意向あるなしの理由を見ていこう。

「地域定住意向あり」の1308人にその理由を聞いた結果を見ると、次のような項目が上位に挙がった。
1. 買物など日常の生活環境が整っているから          66.3%
2. 自分の土地や家があるから                 43.0%
3. 地域に愛着を感じているから(住み慣れているから)     41.4%
4. 通勤・通学に便利なところだから              40.3%

また、「東京定住意向あり」の1313人にその理由を聞いた結果を見ると、次のような項目が上位に挙がった。
1. 交通網が発達していて便利だから              79.2%
2. 東京に長く暮らしているから                53.7%
3. 医療や福祉などの質が高いから               36.7%
4. 文化的な施設やコンサート・スポーツなどの催しが多いから  28.6%

住み慣れていることに加えて、地域の生活利便性や東京の交通網の発達などが住みたいと思う大きな理由になっているが、東京定住意向では、「医療や福祉の質の高さ」や「文化的な環境のよさ」など、利便性以外の要因もその理由として挙がっている点に注目したい。

東京定住意向の理由をさらに、東京生まれか否かで見ると、「交通の便利さ」はどちらも最多であるが、東京生まれの人は「長く暮らしている」ことが圧倒的に多い。これに対して、東京生まれでない人では、「文化的な環境のよさ」と「人間関係がわずらわしくない」が多くなっている。つまり、文化的な環境や地域の人間関係などは、東京生まれでない人の定住意向に影響を与える要因になっている、と言えそうだ。

東京に住みたい理由(東京生まれか否か別)

出典/東京都「都民生活に関する世論調査」の結果より抜粋転載

なお、地域定住意向がない理由は「地域に愛着を感じないから」(27.7%)「家賃などの住居費が高いから」(同率27.7%)、東京定住意向がない理由は「生活費が高いから」(62.2%)が最多となった。

文化的な活動への興味関心は高いが、楽しんでいるのは若い世代?

では、文化的な活動について、どう思っているのだろうか?
「東京には美術館や劇場、映画館など文化施設が集中し、さまざまな展覧会や公演が行われているが、こうした文化的な環境を楽しんでいるか」と聞いたところ、「楽しんでいる」(楽しんでいる+まあ楽しんでいる)が49.8%、「楽しんでいない」(楽しんでいない+あまり楽しんでいない)が48.8%と拮抗する結果となった。

東京の文化的な環境を楽しんでいるか

出典/東京都「都民生活に関する世論調査」の結果より転載

「楽しんでいる」という回答は、若い世代ほど多い傾向が見られる。20代男性では64.9%だったものが、60代男性では34.9%に、20代女性では77.9%だったものが、60代女性では51.2%になるなど、年齢が上がるにつれて「楽しんでいる」という回答が減っている。

なお、男性(全体平均44.6%)より女性(54.1%)のほうが「楽しんでいる」回答が多い傾向も見られた。また、東京都区部(53.2%)のほうが市町村部(43.1%)より「楽しんでいる」割合が高いが、これは都心部に文化施設が多いことが影響しているのだろう。

次に、「芸術や文化を鑑賞したり、文化イベントに参加したりすることに興味関心があるか」と聞いたところ、興味関心が「ある」(ある+少しある)は71.5%に達した。興味関心については「楽しんでいる」回答の内訳ほどには、年代や地域の差が見られなかった。

文化鑑賞・文化イベント参加への興味関心

出典/東京都「都民生活に関する世論調査」の結果より転載

また、どのような文化鑑賞や文化イベントに参加したいのかは、「映画」(58.5%)、「展覧会(美術・歴史・写真・文芸など)」48.3%、「コンサート(ポップスなど)」41.6%などが上位だった。

総務省が発表した「2022年の住民基本台帳人口移動報告」によると、「東京都は、2020年に減少した転入者数が3年ぶりに増加に転じ、増加を続けていた転出者数が減少に転じており、東京都への移動の動きが活発になりつつある」という。コロナ禍で感染拡大が激しかった東京都は、他県への転出が増加したものの、2022年には転入超過数が大幅に上昇した。

「東京一極集中」の要因として、東京に就業の機会が多いことを挙げることが多いのだが、今回の調査結果を見ると「仕事を見つけやすい、事業を起こしやすい」といった理由で、今後も住みたいと思う人はそれほど多くはなかった。住み続けたいと思わせるには、文化的な環境のよさなども大きな要因になることを、再認識した次第だ。

●関連サイト
東京都「都民生活に関する世論調査」結果

首都圏の住宅流通市場、昨年は価格は上昇&成約は減少と硬直気味。2023年はどうなる?

2023年に入って、2022年の住宅市場の動向が相次いで公表された。そこで今回は、東日本不動産流通機構(通称:東日本レインズ)の首都圏の流通市場の動向について見ていくことにしよう。ポイントは、価格の上昇と成約件数の減少だ。

【今週の住活トピック】
「首都圏不動産流通市場の動向(2022年)」を発表/(公財)東日本不動産流通機構

住宅の流通市場が分かるレインズとは?

住宅の流通市場を見るのによく利用されるのが、レインズだ。レインズ(REINS)とは、「Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)」の略称で、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムのことだ。一定の媒介契約を結んで不動産を仲介する事業者は、このネットワークを通じて、物件情報を共有することが義務づけられている。

不動産流通機構は、現在全国で4つ(東日本地区、中部圏、近畿圏、西日本地区)あり、不動産の売買物件と賃貸物件を扱っている。今回は、売買物件について動向を見ていこう。なお、東日本を担当しているのが東日本不動産流通機構で、主に首都圏の不動産取引の情報を公開している。

首都圏の2022年の流通市場、前年より成約件数が減少し、価格は上昇

では、2022年の首都圏の流通市場の動向を見ていこう。ここでいう「成約物件」とは、指定流通機構に契約が成立したと報告された物件(いわゆる、契約済み物件)のことで、「新規登録物件」とは、新たに指定流通機構に登録された物件(いわゆる、新規売り出し物件)のことだ。

東日本不動産流通機構が公表した、中古マンションの成約物件の状況を見ると、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年には、外出自粛が求められたこともあって一時的に取引が縮小したものの、底固い住宅需要があり、成約件数が2019年より微減にとどまった。2021年には、コロナ禍でリモートワークが普及した影響を受けるなどで、住宅需要が拡大し、成約件数はコロナ前の2019年より増加した。withコロナが続く2022年には住宅需要が落ち着きを見せ、成約件数は2020年同様となった。

一方で、平米単価や価格は年々上昇し、2022年には上昇幅が大きくなっている。平均の専有面積が若干小さくなり、築年数がより古くなっているにもかかわらずだ。

中古一戸建ても、似たような傾向が見られる。成約件数は、2020年で落ち込みはないものの、2021年で増加し、2022年には元に戻る動きを見せている。土地や建物の面積や築年数に大きな変化はないものの、価格は上昇を続けている。

首都圏の流通市場の動向(2022年)

*2021年より、戸建住宅・土地の用途地域が未設定・無指定の物件について集計対象から除外する等の集計条件の変更を行っている。
出典:東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2022年)」より抜粋

コロナ禍で新規登録件数は減少するが、中古マンションでは2022年に上場に転じる

次に、首都圏の新規登録物件の動向を見ていこう。新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年以降、売却活動のために自宅に人を入れたくないからか、コロナ禍なので住宅の売り時でないと判断したからか、自宅を売りに出す人が減ったことで、新規登録件数が減少している。ただし、中古マンションでは、2022年に新規登録件数が増加に転じている。

一方、売り出し価格は、2021年・2022年でかなり強気の値付けをしている。これは、今売る理由がある人だけでなく、中古マンションの価格が上昇していることが報じられたことから、高く売れるなら売ろうという人が多くいたと考えられる。

首都圏の流通市場の動向(2022年)

**2022年より、新規登録の集計範囲を変更(媒介契約更新や登録期間延長を除く新たな登録のみに絞って計上)している。
なお、これまでと同じ基準での比較が困難であるため、前年比を「-」と記載している。
出典:東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2022年)」より抜粋

住宅を買う人の数は安定しているのに、売る人が少ないとなると、市場全体で流通する物件数が減っていく。実際に、東日本不動産流通機構の「月例マーケットウォッチ」で各年の12月末の在庫物件数の推移を追ってみると、次のようになった。

■中古マンションの在庫物件数(首都圏)
2019年末   2020年末   2021年末   2022年末
47,051戸 → 38,173戸 → 35,718戸 → 41,665戸
■中古一戸建ての在庫物件数(首都圏)
2019年末   2020年末   2021年末   2022年末
22,764戸 → 17,921戸 → 13,157戸 → 14,754戸

2021年12月末時点までは急速に市場の在庫物件数が減少してしまったが、2022年に新規登録物件数が増えたり、在庫がだぶついたりして、在庫物件数が増加に転じる形となった。特に、中古マンションでは2022年に在庫物件数が急激に増えている。

では、2023年の住宅流通市場はどうなる?

在庫不足が価格を押し上げる要因になったという側面もあるが、流通市場の在庫物件数は戻りつつある。一方で、成約件数は減少している。これは、コロナ禍で生じた住宅需要による住み替え、たとえばより広い住宅へまたは遮音性や省エネ性などのより性能の高い住宅へという住み替えが、一段落したという見方もできれば、買う側と売る側の希望条件や希望価格が折り合っていないという見方もできるだろう。

特に中古マンションでは、価格の上昇が長く続き、好条件の中古マンションに手が出にくいという市況にもなっている。2023年は在庫も増えていることから、価格調整局面に入ると考えられる。中古マンションの価格に落ち着きが見えれば、中古一戸建ての価格も落ち着いていくだろう。

気になるのは、住宅ローンの金利動向だ。日本銀行が長期金利の上限を0.25%程度から0.5%程度に引き上げる金融緩和策の修正をして以降、金融市場の長期金利に連動する【フラット35】や長期間金利を固定する住宅ローンの金利がじわじわと上がっている。

住宅ローンの金利が上昇すると、ローンの借入可能額が減ってしまったり、毎月の返済額が多くなったりするので、買う側に大きな影響を与える。国際的に不動産投資市場を見ると日本の住宅は割安に見えるので、マンションはまだ影響が小さいものの、マイホームとして買われる一戸建てはローンの金利動向の影響を受けやすい。

今はまだ住宅ローンの金利に大きな変動はないが、今後の景気動向や日本銀行の方針変更などによって、金利が大きく動き出すと、駆け込み需要が起きて価格がさらに上昇したり、急速に市場が冷え込んだりといった事態も想定できる。

2023年は、住宅ローンは超低金利、住宅価格は上昇トレンドといった、これまで通りの状況が続くと考えない方がよいだろう。2023年に住宅を買うなら、あわてないように希望条件を明確にしておき、金利上昇を踏まえた無理のない資金計画を立てることが大切だ。2023年に売る気なら、流通市場の相場をデータなどでよく理解して、適正な価格で売り出すことが大切だ。

●関連サイト
(公財)東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2022年)」

東京都23区のファミリータイプの賃貸住宅が活況。就業環境や働き方の変化が影響?

三菱UFJ信託銀行が、資産運用会社や不動産管理会社などの24社に対して、「2022年度 賃貸住宅市場調査」(2022年秋時点)を実施し、その結果を発表した。それによると、「東京23区ではファミリータイプのリーシングが好調」だという。詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
【新レポート発行】独自調査「2022年度 賃貸住宅市場調査」を発行/三菱UFJ信託銀行

ファミリー向け賃貸住宅の需要が高まる!?

2023年1月17日の日経新聞の「ニュースぷらす」欄で、「分譲高騰 ファミリー向け賃貸に需要」という見出しが躍った。ファミリー向け(広さ50~70平方メートル以下)の賃貸住宅の平均募集賃料が上昇しているのだという。

同じ週にリリースされた、三菱UFJ信託銀行の「2022年度 賃貸住宅市場調査」でも、ファミリータイプの好調ぶりが指摘されている。東京23区や首都圏において、ファミリータイプのリーシング(不動産の賃貸を支援する業務)のDI【=(ポジティブな回答の割合-ネガティブな回答の割合)×100)】が大きくプラスになっているからだ。

エリア別のリーシング環境

(注) 1. 本調査におけるDIは、「(ポジティブな回答の割合-ネガティブな回答の割合)×100」と定義します。
2. 「ダウンタイム」とは、前テナントの契約終了から新テナントの契約開始までの空室期間を指します。
エリア別のリーシング環境(出典/三菱UFJ信託銀行「2022年度 賃貸住宅市場調査」より転載)

東京23区のファミリータイプの稼働率DIは41.0、テナント入れ替え時の賃料DIは28.7、半年後の予想でも稼働率DIは30.1、入れ替え時の賃料DIは24.8と大きくプラスとなり、ポジティブな回答が多かったことがわかる。東京23区を除く首都圏でも、同様の傾向が見られ、好調ぶりがうかがえる。ただし残念ながら、名古屋市のファミリータイプでは大きくマイナスになっている。

同行では、テレワークの普及等によって広い間取りを求める動きも影響してか、23区のファミリータイプの稼働率や賃料、ダウンタイム(空室期間)が改善し、半年後もその傾向が続くと見ている。一方、名古屋市では、エリアや物件による差があるものの、入れ替え時の賃料が低下、ダウンタイムが長期化し、広告費を増やしてリーシングを強化する市場が当面続くとしている。

ファミリー向け賃貸住宅に需要が高まる理由

では、特に首都圏でファミリータイプの賃貸住宅需要が高まる要因はなんだろう?考えられる要因はいくつかある。まず、マンションの価格が上昇しているため、購入を考えた場合に手が届きにくいことがあげられる。不動産経済研究所が公表した「首都圏マンション市場予測」によると、2022年1月~11月の新築マンションの平均価格は、首都圏で6465万円、東京23区に至っては8230万円となっている。中古マンションでも価格は上昇し、東日本レインズが公表した「首都圏不動産流通市場の動向(2022年)」によると、2022年の首都圏の成約平均平米価格は67.24万円(70平米換算で4707万円)、23区では100.32万円(70平米換算で7022万円)だった。

さらに、当サイトでも何度か記事にしたが、コロナ禍で自宅にいる時間が長くなり、住まいに多くの機能を求めるようになり、ユーザーの志向が住宅の広さや部屋数を求めるようになったこともあげられる。その結果、一戸建て志向が高まったといわれているが、賃貸物件で一戸建ては数が少なく、購入する場合は駅から離れた場所や郊外に供給が多いため、利便性を重視するとファミリータイプの賃貸マンションなどに落ち着く、といったこともあるだろう。

また、コロナ禍で雇用環境が悪化するなど、収入安定への不安なども、購入に待ったをかける要因になり、まずはより広い、あるいは性能の高い賃貸住宅へ引越すという流れも考えられる。

日本の若者は都心志向が強い?

一方、シングルタイプについては、東京23区でもファミリータイプほどの大きなプラスはなかったものの、半年後の予想で稼働率のDIが20.8となっている。コロナ禍で東京都からの転出者が増えて一時的に人口が減少したが、「東京都における就業環境の回復や人口の転入超過拡大への期待等が影響」して、稼働率の改善を見込む回答者が多い可能性があるという。

さて、シービーアールイーが、「ジャパンレポート-Live Work Shop 2023年1月」という特別レポートを公表した。それによると、他の国と比較した場合に日本では賃貸志向が強いものの、その一方で、引越し頻度は他国より低い傾向にあるという。また、日本では「若い世代ほど引越しの意向が強く(Figure13)、『他の都市の中心部』に行きたい(Figure14)と考えている」という。特に、Z世代(18~25歳)でこの傾向は顕著だ。このレポートでは、都心志向が強いのは「就労機会が都市部、特に首都圏に集中していることがその理由だと考えられる」と分析している。

出典:シービーアールイー「ジャパンレポート-Live Work Shop 2023年1月」

出典:シービーアールイー「ジャパンレポート-Live Work Shop 2023年1月」

就業環境や働き方が賃貸住宅市場に影響

また、三菱UFJ信託銀行の調査では「今後1年間のリーシングマーケット全体に与える影響が大きいと考える項目」についても聞いている。「個人の就業環境や収入の増減」が最多となり、「テレワーク等の働き方の変化」、「新型コロナウイルス等の感染拡大の状況」が続く結果となった。感染状況はもちろんだが、それよりも就業環境や働き方が、賃貸住宅市場に大きく影響するということだ。

今後1年間のリーシングマーケット全体に与える影響が大きいと考える項目

(注) 1位:2pts 2位:1ptsとして計算し、合計値を集計しました。合計ptsは68ptsでした。
今後1年間のリーシングマーケット全体に与える影響が大きいと考える項目(出典/三菱UFJ信託銀行「2022年度 賃貸住宅市場調査」より転載)

こうして見ていくと、就業環境や働き方は、人が移動したり、マイホームを購入するか賃貸にするか分かれたりといった、生活拠点となる住宅に与える影響が大きいことがわかる。住宅市場を見るうえでは、住宅の賃料や価格、住宅ローンの金利だけでなく、労働環境にも注意を払う必要がありそうだ。

●関連サイト
三菱UFJ信託銀行【新レポート発行】独自調査「2022年度 賃貸住宅市場調査」
シービーアールイー「ジャパンレポート-Live Work Shop 2023年1月」

2023年は省エネ住宅がお得!補助が出る優遇制度、活用方法を解説。「住宅省エネ2023キャンペーン」はじまる

住宅の省エネ化を推し進めている政府は、さまざまな優遇制度を設けている。そこで、国土交通省・経済産業省・環境省の3省連携により行う「住宅の省エネリフォーム支援」および国土交通省が行う「ZEH住宅の取得への支援」について、共通ホームページを開設した。どんな優遇制度なのか、見ていくとしよう。

【今週の住活トピック】
「住宅省エネ2023キャンペーン」開始/国土交通省

「住宅省エネ2023キャンペーン」とは3つの補助事業の総称

「住宅省エネ2023キャンペーン」という名称は、住宅の省エネ化を推進する次の3つの補助事業の総称だという。いずれも2022年度補正予算で成立して間もない補助事業だ。

1. 先進的窓リノベ事業(予算1000億円:経済産業省・環境省)
2. 給湯省エネ事業(予算300億円:経済産業省)
3. こどもエコすまい支援事業(予算1500億円:国土交通省)

省それぞれで補助事業を個別に進めるだけでなく、3省連携によりワンストップで利用可能にするなどで使い勝手を良くしている。では、それぞれどんな事業なのか見ていこう。

断熱性の高い窓に交換することで最大200万円までを補助

「先進的窓リノベ事業」とは、経済産業省の「住宅の断熱性能向上のための先進的設備導入促進事業」と環境省の「断熱窓への改修促進等による家庭部門の省エネ・省CO2加速化支援事業」をまとめたもの。既存の住宅のリフォームが対象で、内窓を設置したり、外窓やガラスを断熱性の高いものに交換したりした場合、リフォーム工事の内容に応じた所定の補助額の合計金額を、1戸当たり200万円を上限に還元する事業だ。

省エネ効率の高い給湯器の設置で5万円~15万円/台を還元

「給湯省エネ事業」とは、「高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金」のこと。対象となる高効率の給湯器と1台当たりの補助額は、次の通り。台数制限があり、一戸建てはいずれか2台まで、マンションなどの共同住宅はいずれか1台までだ。

・「ヒートポンプ給湯機(エコキュート)」:補助額5万円
・「ヒートポンプ・ガス瞬間式併用型給湯器(ハイブリッド給湯機)」:補助額5万円
・「家庭用燃料電池(エネファーム)」:補助額15万円

「先進的窓リノベ事業」とは違って、新築住宅や賃貸住宅などの設置についても、補助金の対象となる。

■申請者(補助対象者)
高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金の概要

※ 新築住宅とは、完成(完了検査済証の発出日)から1年以内で、人の居住の用に供されたことのない住宅をいいます。既存住宅とは新築住宅以外の住宅をいいます。
経済産業省資源エネルギー庁「高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金の概要」より転載

ZEH水準の新築住宅に100万円を補助する「こどもエコすまい支援事業」

「こどもエコすまい支援事業」は、ZEH住宅の新築、または一定の住宅リフォームを対象とする補助事業だ。まず、新築への補助については、ZEH水準の住宅の新築で100万円の補助が出る。ただし、子育て世帯あるいは若者夫婦世帯に限られる。なおZEHとは、一般的にネットゼロエネルギーハウスを指すが、この事業では所定の条件が定められている。

次に、住宅のリフォームへの補助について見ていこう。まず住宅の省エネリフォームが必須条件で、併せて行うそれ以外の一定のリフォームについても補助対象になる。必須の省エネリフォームとは、「外壁や屋根、天井、床の断熱改修」「窓の断熱改修」「エコ住宅設備の設置」だ。

補助額は、リフォーム工事の内容に応じた所定の補助額の合計金額を、30万円を上限に還元する。ただし、子育て世帯あるいは若者夫婦世帯については、上限額が上乗せされて最大で60万円になる。

なお、子育て世帯とは18歳未満の子どもがいる世帯、若者夫婦世帯とはいずれかが39歳以下の夫婦世帯であるが、工事の着工時期によっていつ時点の年齢かが異なるので注意が必要だ。

■こどもエコすまい支援事業のリフォームへの補助
【リフォーム】
(1)対象工事
 1.(必須)住宅の省エネ改修
 2.(任意)住宅の子育て対応改修、防災性向上改修、バリアフリー改修、空気清浄機能・換気機能付きエアコン設置工事等

(2)補助額
リフォーム工事内容に応じて定める上限補助額は下表の通り
高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金の概要

※1 売買契約額が100万円(税込)以上であることとします。
※2 令和4年11月8日(令和4年度補正予算(第2号)案閣議決定日)以降に売買契約を締結したものに限ります。
※3 自ら居住することを目的に購入する住宅について、売買契約締結から3ヶ月以内にリフォームの請負契約を締結する場合に限ります。
※4 自ら居住する住宅でリフォーム工事を行う場合に限ります。
※5 法人、管理組合を含みます。
経済産業省資源エネルギー庁「高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金の概要」より転載

3省連携により補助事業の併用も可能に

「こどもエコすまい支援事業」のリフォームの対象となる工事には、窓の省エネ改修やエコ住宅設備が含まれる。窓の省エネ改修は「先進的窓リノベ事業」と、エコ住宅設備のうち高効率給湯器については「給湯省エネ事業」と重なる。

基本的に国の補助事業は、対象が重なる他の補助事業と併用ができないが、3省連携により補助対象が重複しない場合に限り併用を可能としている。省エネリフォームについて、3省の制度をまとめたのが下表だ。

令和4年度第2次補正予算省エネ支援策パッケージ

経済産業省資源エネルギー庁「令和4年度第2次補正予算省エネ支援策パッケージ」より転載

いずれの補助事業も補助対象の条件が細かく定められているので、利用を検討する場合は確認してほしい。なお、いずれの補助事業も、申請を行うのは工事を行う事業者(国の登録事業者であることが必須)で、事業者から消費者に還元される仕組みとなっている。

国は「2050年カーボンニュートラル」に向けて、住宅の省エネ化に力を入れている。補助事業の対象となる省エネ性が次第に引き上げられているが、補助金制度により促進しようとしている。こうした制度を上手に活用して、住宅のリフォーム費用を軽減することを考えるとよいだろう。ただし、補助金ほしさに不要な工事まで行うのは本末転倒。必要な工事は何かを優先することをお忘れなく。

●関連サイト
国土交通省「住宅省エネ2023キャンペーンはじまります!」
住宅省エネ2023キャンペーンについて

【フラット35】同性パートナーの申込み、今年から可能に。必要書類、住宅ローンの返済方法は?

住宅ローンの商品内容は、その時々のニーズに応じて見直される。全期間固定金利型ローンの代表格【フラット35】も例外ではない。2023年1月から同性パートナー同士で、【フラット35】が借りられるようになった。どんな仕組みなのだろうか?詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
【フラット35】2023年1月から同性パートナーと連帯債務で申し込み可能に/住宅金融支援機構

同性パートナーとでも住宅ローンを利用できるようにする動きに

同性パートナーでも、単独で住宅ローンを借りて住宅を購入する場合は、あまり問題にならない。しかし、協力してお金を出し合って購入しようとすると、親子や婚姻関係のある夫婦であれば、それぞれで住宅ローンを借りる「ペアローン」や2人の収入を合算して借りる「収入合算」などの仕組みが利用できるのに、婚姻関係が結べない同性カップルの場合は、こうした仕組みを利用できないことも多い。

また、どちらかが単独で住宅ローンを借りて購入し、実際には2人の収入から返済していく場合には、問題が生じてしまう。住宅ローンを借りていない人が出した返済分が、家賃として出されたものなら「不動産所得」として、資金援助として出されたものなら「贈与」として、いずれも借りた人の課税対象になる可能性があるからだ。

こうしたことから、同性パートナーでも住宅ローンを借りられるようにしようという動きになり、ペアローンや収入合算の対象となる「配偶者」の定義に同性パートナーを含めるという形で、同性カップル向けの住宅ローンを取り扱う金融機関が増えている。

【フラット35】で同性パートナーと借りる仕組みは?

では、【フラット35】の場合を見ていこう。

【フラット35】とは、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携し、提供している住宅ローンで、35年などの長期間にわたって金利が変わらないのが特徴。提携先の民間金融機関によって、実際に借りるときに適用される金利や融資手数料は異なる。

同性パートナー同士で【フラット35】を利用するには、地方公共団体の「パートナーシップ証明書」や同性パートナーに関する合意契約に係る公正証書などの書類が必要だ。これは【フラット35】に限らず、多くの金融機関で共通する条件だ。

■主な必要書類(次の1または2いずれかの書類)
出典/住宅金融支援機構HPトピックスより転載)

出典/住宅金融支援機構HPトピックスより転載

【フラット35】を利用する場合は、同性パートナーで「収入合算」が利用でき、住宅ローンの申込者に収入を合算する人は「連帯債務者」となる。加えて、2人とも団体信用生命保険に加入できる「夫婦連生団信(デュエット)」を利用できるのが、大きな特徴だ。

2人で協力して住宅ローンを返済する方法はいくつかある

夫婦であれ、同性カップルであれ、2人で協力して住宅ローンを借りる方法はいくつかある。どういった場合に利用できるかは、金融機関によっても異なる。

近年増えている「ペアローン」は、同一物件に対して2人がそれぞれ住宅ローンを借りるものだが、【フラット35】では利用できない。

次に、民間金融機関の多くが収入合算で採っているのが「連帯保証」で、ローンを申し込んでお金を借りる人(債務者)の連帯保証人となる仕組みだ。この場合の連帯保証人は、万一のときには返済の義務を負うが、返済するのはあくまで債務者なので、住宅ローン控除や団体信用生命保険の対象にならない。

【フラット35】の場合は、収入合算で「連帯債務」とする借入方法としている。連帯債務者は、債務者と同等に返済する義務を負う。一般的に、住宅ローン控除の対象になるが、団体信用生命保険の対象にならない事例が多いのだが、同性パートナーが連帯債務者となる場合も「夫婦連生団信(デュエット)」を利用することができるようになった。どちらか一方が亡くなった場合に、残りの住宅ローンが保険金で返済されるので安心だ。ただし、デュエットを利用する場合は、金利上乗せの形で追加の保険料相当費用を支払うことになる。

このように、2人で協力してローンを借りるにはいくつか方法がある。一般的な方法を下表にまとめたので、借り方の違いを理解して、金融機関に詳しい条件を確認するのがよいだろう。

■2人で協力して住宅ローンを借りる方法

※金融機関が夫婦連生団体信用生命保険(【フラット35】では「デュエット」)を用意している場合は連帯債務者も加入できる。「2人で協力して住宅ローンを借りる方法」筆者作成

※金融機関が夫婦連生団体信用生命保険(【フラット35】では「デュエット」)を用意している場合は連帯債務者も加入できる。「2人で協力して住宅ローンを借りる方法」筆者作成

さて、共働きが当たり前になり、また、LGBTへの理解も深まっている時代だ。こうした時代の要請にこたえて、住宅ローンも変化している。選択肢は豊富にあるので、自分たちに合う住宅ローンを選んで、賢く住宅を購入してほしい。

●関連サイト
【フラット35】2023年1月から同性パートナーの方とも連帯債務でお申込みいただけます。

家賃債務保証会社の強引な「明け渡し条項」に使用差し止め判決。裁判で争われたポイントは?

ニュースメディアで数多く報道された、家賃債務保証会社の強引な明け渡し条項の使用差し止めという、最高裁判所の判決。住宅業界に身を置くものとしては気になる判決だ。どういったことが争われ、どういった判決になったのだろう。筆者なりに分析してみたい。

【今週の住活トピック】
家賃債務保証会社の「追い出し条項」は無効の判決/最高裁判所

家賃債務保証会社とは?国の登録制度とは?

最高裁まで争われることになったこの訴訟で、訴えられたのは家賃債務保証会社だ。裁判の話の前に、まず「家賃債務保証会社」とは何かを説明しておきたい。

通常、賃貸住宅を借りるときには、借主が家賃を支払わなかったり、住宅の設備機器を壊したりした場合に、代わりに家賃や修理費を負担する「連帯保証人」が求められる。多くは親などの家族が連帯保証人になるが、何らかの事情で連帯保証人を立てられない借主もいる。家賃債務保証会社(以降、保証会社)は、借主の家賃を貸主に保証する会社で、保証会社に保証を依頼することで、連帯保証人を立てなくても賃貸住宅を借りることができるようになる。

借主が保証会社を利用するには、家賃の0.5カ月~1カ月程度の保証料を払い、入居後も定期的に「更新保証料」を払うことになる。保証料を払っているからといって、滞納した家賃を払わずに済むわけではない。保証会社は貸主に対して家賃を肩代わりするが、滞納した家賃は保証会社が借主に請求することになる。

保証会社は肩代わりした家賃を回収する必要があるので、保証会社によっては、強引な取り立てをするといったトラブルが発生することもあった。そこで2017年10月に、国土交通省は保証会社の登録制度を設けた。一定の基準を設け、その基準を満たす保証会社が登録することで、適正な家賃債務保証の業務を行う事業者として情報を公開するものだ。ただし、任意の登録制度なので、登録しなくても保証会社として業務を行うことはできる。

「家賃債務保証業者登録制度」の登録業者であることを示す「登録家賃債務保証業者シンボルマーク」(出典:国土交通省のサイトより転載)

「家賃債務保証業者登録制度」の登録業者であることを示す「登録家賃債務保証業者シンボルマーク」(出典:国土交通省のサイトより転載)

また、2020年4月の民法改正では、連帯保証人が保護される改正が行われた。連帯保証の契約で連帯保証人が個人の場合は、極度額(保証する金額の上限額)を書面で合意することが求められるようになった。この改正により、貸主側が借主に、連帯保証人ではなく保証会社の利用を求めるケースが増えている。

保証会社が消費者に不利益のある契約をするのは×

では、判決の内容を見ていこう。といっても、筆者は法律の専門家ではないので、その点はご容赦いただきたい。筆者が理解したのは次のようなことだ。

まず、ポイントとなるのは、家賃債務保証会社が賃借人(借主)と交わす保証に関する契約書の中の特定の条項の使用を差し止めることを求めたもの。定型の契約書に、こうした条項があるのは消費者が不利益になるので、使ってはいけないのではないか?ということが争われたわけだ。

次に、どういった条項かというと、2つある。
ア)借主が家賃などの支払いを怠り、その額が家賃の3カ月分以上に達したときは、借主に催促することなく賃貸借契約を解除できる
イ)借主が家賃などの支払いを2カ月以上怠り、保証会社が合理的な手段を尽くしても借主と連絡が取れず、電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況などから相当期間住んでいないと認められ、かつ、もうこの部屋を使う意思がないと客観的に見て取れる場合、借主が異議を述べないなら、賃貸住宅を明け渡したとみなす

最高裁はア)について、家賃滞納を理由に催促なく賃貸借契約を解除することは、あながち違法とはいえないが、貸主ではなく保証会社が、合理的な事情がある場合などの限定もなく、催告なしに解除できるのは、消費者に不利益を与えかねない。

イ)については、家賃滞納、連絡不能、利用実態なし、利用する意思が認められないといった条件で明け渡したとすることは、あながち違法とは言えないが、賃貸借契約が終了してない場合に保証会社の一存で明け渡したとみなすのは不当だし、利用の意思がないと客観的に見て取れるという要件は明確ではなく、意義を述べる機会が確保されているわけでもないので、消費者に不利益を与えかねない。

よって、消費者契約法に基づき「ア)イ)の条項がある契約書を使ってはいけない」と判断した、という判決だと筆者は理解した。

最高裁は、地裁、高裁とは異なる判断をした。いわゆる保証会社の「強引な明け渡し条項」に対して、適正な法的手続きを踏まない条項に歯止めをかける形となった。

強引な明け渡し条項は不当とされたが、家賃を滞納すると、賃貸借契約が解除されたり保証会社から家賃に遅延損害金などが加算された額を請求されたりといったことも起こりうる。家賃が払い続けられる額かどうか、しっかり見極める必要がある。

賃貸借契約時の保証会社を選ぶのは、貸主や仲介会社、賃貸管理会社などの貸主側だ。そうはいっても、保証契約は借主自身が保証会社と結ぶもの。契約解除や明け渡しに関する契約内容については、事前に確認しておくべきだ。トラブルは事前に回避したいものだ。

●関連サイト
裁判所の最高裁判所判例集

つらい冬の寒さ。住宅の断熱性能を高めることで、健康面など冷暖房効率向上以外のメリットも

LIXILが、20代~50代の男女4700人を対象に「住まいの断熱」に関する意識調査を実施したところ、 省エネ効果などへの理解は深いものの、健康への影響については理解が低かったという。住まいの断熱の影響について、詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
「住まいの断熱と健康に関する調査」を実施/LIXIL

最も寒さを感じるのは「トイレ」と「浴室」。寒さ対策は「スリッパ」や「暖房の2台使い」

これからは、冬の寒さが気になるところだ。では、冬(主に11月~2月)に自宅で寒さを感じるのはどの場所だろうか。調査結果を見ると、寒さを感じる場所として最も多く挙がったのが「トイレ」(52.2%)で、次いで「浴室」(51.8%)、「洗面所(脱衣所含む)」(48.7%)となった。逆に、「リビング」(33.6%)や「寝室」(37.7%)など、普段生活をしている場所では寒さを感じている人が比較的少ないということが分かった。

冬(主に11月~2月)の住まいで寒さを感じる場所(出典: LIXIL「住まいの断熱と健康に関する調査」)

冬(主に11月~2月)の住まいで寒さを感じる場所(出典: LIXIL「住まいの断熱と健康に関する調査」)

冬(主に11月~2月)の「自宅で寒い時にとっている行動や対策」については、「フローリングの上ではスリッパを履くようにしている」(35.2%)、「エアコンとストーブ、こたつとストーブなど複数の暖房を同時に使用する」(33%)、「ひざ掛けを頻繁に使っている」(20.9%)が上位に挙がった。寒がりの筆者も、スリッパとひざ掛けは冬のマストアイテムにしている。

冬に住まいで寒い時にとっている行動や対策(出典:LIXIL「住まいの断熱と健康に関する調査」)

冬に住まいで寒い時にとっている行動や対策(出典:LIXIL「住まいの断熱と健康に関する調査」)

「住まいの断熱」の省エネ効果は理解が進んでいるが、健康への影響については…

脱炭素社会、省エネなどで注目される「住宅の断熱」。この調査で、「住宅の断熱とは、熱の流入・流出を防ぎ、建物の内外の温度差に対して室内が極端な影響を受けないようにすることを意味する」と定義して、認知度を調べたところ、「言葉を聞いたことがあり、どのようなものか知っている」が59.7%になった。

6割が認知していることになるが、「住宅の断熱性能を高めることにより、どのような影響があると思うか」と聞いたところ、半数以上があると回答したのが、「冬は家の中が暖かくなる」(76.6%)、「光熱費を削減できる」(74%)、「エアコンの効きが良くなる」(71.9%)、「夏は家の中が涼しくなる」(62.3%)だった。屋外の暑さ寒さを取り入れにくくするので、室温を保ちやすく冷暖房効率も良くなると理解していることになる。

さらに「CO2排出量の削減に貢献できる」(30.7%)と、省エネへの貢献についても一定の理解がある。その一方で、「心疾患(ヒートショックなどの健康リスク)を低減する」(30.6%)や「アレルギー症状を緩和する」(8.1%)」といった“健康への影響”については、低い回答となった。

住宅の断熱性能を高めることの効果(出典:LIXIL「住まいの断熱と健康に関する調査」)

住宅の断熱性能を高めることの効果(出典:LIXIL「住まいの断熱と健康に関する調査」)

LIXILによると、「冬季の在宅中平均居間室温の調査では、北海道が19.8℃であるのに対し、最も寒かったのが香川県の13℃、大阪府でも16.7℃と、温暖地、特に西日本エリアほど冬の室温が低い都道府県が多いという結果が出ている」※という。寒冷地は住宅の断熱化が進んでいるせいか、むしろ温暖地のほうが住宅内の室温は低いというのだ。さらに、室温の温度差が心筋梗塞や脳卒中、肺炎での冬の死亡者数と相関しているとされているという。
※「スマートウェルネス住宅等推進調査委員会 調査解析小委員会(委員長:伊香賀)第5回報告会(2021.1.26)」より

住宅内の寒暖差は、ヒートショックのリスクに

住宅内で、暖かい部屋から寒い部屋に移動するなどで急激な温度の変化があると、血圧が大きく変動することをきっかけにして起こる健康被害のことを「ヒートショック」という。トイレは住宅内で北側に配置されることが多いし、入浴の際には身体を露出するなどで体表面の温度が下がる。その後で身体が暖められると血圧が急激に上下するため、ヒートショックを起こすと考えられている。

消費者庁でも、冬季に多発する高齢者の入浴中の事故(ヒートショック)への注意を呼び掛けている。東京都健康長寿医療センターでは、「脱衣所や浴室、トイレへの暖房器具の設置や断熱改修」により、ヒートショックを防ぐことを勧めているほか、入浴時には「シャワーによるお湯はり」や「湯温設定41℃以下」、「食事直後・飲酒時の入浴を控える」ことなども対策として挙げている。温暖な地域であっても、注意を怠らないほうがよいだろう。

断熱性能の高い住宅では、結露やカビの発生を抑える

では、調査項目にあった「アレルギー症状の緩和」についてはどうだろう?
高断熱高気密住宅についての情報発信を行っている「断熱住宅.com」の近畿大学・岩前篤教授のコラムによると、新築の高断熱高気密住宅に引越した人を対象に健康調査を行ったところ、断熱性能が高くなるほど、アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎、気管支ぜんそくなどの諸症状が改善されたという結果が出たという。

なぜかというと、高断熱高気密住宅では、人体に害のあるカビの発生を抑える効果があるからだ。カビの多くは結露しやすい湿気の多い場所を好むので、「室内の温度差をなくし、かつ適切な換気システムを使った住宅は結露しにくく、そうした有害なカビを発生させない」のだという。

結露などの湿気がカビを呼び、暖房された部屋ではカビをエサとするダニも呼んで、ハウスダストでアレルギー鼻炎を引き起こす筆者のような人が健康被害を受けるわけだ。

「住まいの断熱」は、省エネ性に注目されがちだが、健康被害の抑制という効果もある。LIXILによると「約5000万戸ある日本の既存住宅の断熱性能をみると、現行基準(高断熱)の住まいは10%にとどまり、残り90%が低い断熱性能、または無断熱であるというのが現状」だという。

政府はカーボンニュートラルに向けて、住宅の省エネ性向上に力を入れている。断熱改修についても、補助金などを用意しているので、自宅の断熱改修について検討してはいかがだろう。

●関連サイト
LIXIL「住まいの断熱と健康に関する調査」
「断熱住宅.com」近畿大学・岩前篤教授のコラム「第1回冬の寒さと健康」
東京都健康長寿医療センター「入浴時の温度管理に注意してヒートショックを防止しましょう」

ZEHの認知率が直近5年間で最高値に!2030年度のZEH基準義務化については?

リクルートが注文住宅の「建築者」(過去1年以内に注文住宅を建築した人)と「検討者」(今後2年以内に注文住宅の建築を検討している人)に調査を実施した。今回は調査結果の中でも、「ZEH(ゼッチ)」に関する結果に注目して見ていこう。

【今週の住活トピック】
「2022年注文住宅動向・トレンド調査」を発表/リクルート

ZEH認知率は77.4%、直近5年間で最高値。経済的メリットは月8562円

リクルートが実施した2022年の調査結果によると、「ZEHの認知率(内容まで知っている28.6%+名前だけは知っている48.8%)」は77.4%となり、直近5年の中で最高値となった。注文住宅建築者の4人に3人以上が、ZEHを認知していることになる。

また、ZEHを導入した人に「光熱費等の経済的メリット」を聞いたところ、平均額は8562円/月になった。電気代は気候によって変わるので毎月同じ額ではないが、この額なら年間を通じて電気代のかなりの部分をカバーできるのではないか。一方で、金額帯別に見ると、「5000円以上10000円未満」が最多の29.2%だが、次に「2500円未満」(26.3%)が挙がるなど、実際には各家庭でばらつきが大きいことも分かる。

SUUMO副編集長・中谷明日香さんは、「ハウスメーカー大手各社も、ZEH商品の強化を図っていますし、ZEH導入による光熱費などの経済的メリットの大きさからも、今後も導入率は伸びていくのでないかと見立てています」と分析している。

ZEH導入による光熱費等の経済的メリット(全国/ZEH導入者)(出典:リクルート「2022年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

ZEH導入による光熱費等の経済的メリット(全国/ZEH導入者)(出典:リクルート「2022年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

2030年度にはZEH基準が義務化される!この認知度はかなり高い

ところで、ZEH基準が2030年度からの新築住宅で義務化されることをご存じだろうか?

経緯を説明しよう。政府は2050年カーボンニュートラル宣言を受けて、建築物の省エネ性強化を加速させている。建築物には「省エネ基準」が定められており、住宅以外の建築物では現行の省エネ基準に適合していないと新築できないことになっている。この省エネ基準について、新築住宅でも2025年度には適合するように義務化する予定になっている。さらに、2030年度以降は義務化する基準を「ZEH基準」に引き上げようとしているのだ。

ここまで認知しているのは、住宅の省エネ性能について関心の高い人に限られるのではないかと思うが、調査結果を見てみよう。「建築者」の認知度は34.1%と3人に1人は認知していることになるが、「検討者」の認知度はさらに高く50.2%と2人に1人が認知している状況だ。検討者が自分事としてとらえていることがうかがえる結果だ。

Z2030年度ZEH基準義務化の認知状況 上図:建築者 下図:検討者(出典:リクルート「2022年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

Z2030年度ZEH基準義務化の認知状況 上図:建築者 下図:検討者(出典:リクルート「2022年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

ZEH導入とZEH基準義務化は、同じZEHでも同じじゃない

さて、ZEHの導入で光熱費等の経済メリットが平均で月8562円だったというのは、太陽光発電などで電気を生み出しているからだ。住宅の省エネ性をいくら高めたとしても、住宅内でエネルギーを消費するので、エネルギー収支はマイナスになり、ゼロエネルギーの家にはならない。プラスマイナスゼロにするには、住宅の設備機器で電気をつくり、エネルギーをプラスする必要があるのだ。

最近は電気代が上がっているので、経済的メリットを大きく感じられることだろう。太陽光発電設備については、設置費用が100万円程度かかるといわれている。先行投資費用を電気代などの経済メリットによって、住みながら時間をかけて回収するという形だ。政府だけでなく、東京都でも新築一戸建ての太陽光発電設備の設置を推し進める予定だ。そこで、補助金を出したり、初期投資は電力事業者が負担する(屋根貸しや電気代の一定期間サブスクなど)手法を用いて、初期費用の負担軽減を図る仕組みを広げようとしたりしている。

一方、2030年度から新築住宅で適合義務化となる「ZEH基準」は、必ずしも太陽光発電などで電気を生み出すことを求めていない。現行の省エネ基準よりも省エネ性の高いZEH基準に引き上げて、住宅そのものの省エネ性の底上げを図ろうとしているのだ。

住宅の省エネ性を高めるにはいろいろな方法があるが、たとえば東京の気候なら、天井や壁・床を覆う断熱材をより厚くしたり、窓まわりのガラスを複層ガラスからLow-E複層ガラス(遮熱タイプ)に、窓枠も熱を伝えやすいアルミサッシから樹脂サッシに切り替えたりして、省エネ性の高いZEH基準を実現するといった具合になる。その分コストが上がるので、気になるのは建築費のことだろう。

気になる建築費の高騰、新築住宅へのZEH基準義務化の影響は?

近年は、資材不足や円安、燃料費の影響などで住宅の建築費が上がっている。この調査で「建築者」に対して「建築費高騰を認識していたか」を聞いたところ、75.1%が認識していたと回答し、41.6%が「建築費高騰の影響があった」と回答した。

一方、「検討者」に対して、「建築費高騰を認識しているか」を聞くと、建築者よりさらに多い89.7%が認識していると回答した。また、「建築費高騰の今後の予想」では、62.3%が「現在より上がっていく」、26.6%が「現在の水準が続く」と回答し、合わせて約9割が建築費は今後もさらに上がるか高騰したまま推移すると予想している。

建築費高騰の今後の予想(検討者/建築費高騰の認識者)(出典:リクルート「2022年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

建築費高騰の今後の予想(検討者/建築費高騰の認識者)(出典:リクルート「2022年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

調査では、「検討者」に対して「建築費高騰で予算オーバーした場合にどうするか」も聞いている。最多は「予算を増やす」の39.4%だったが、「土地費用を抑える」(27.4%)や「建築費と土地費用を両方抑える」(21.3%)など、建築プランへの影響もみられた。

建築費高騰で予算オーバーした場合の予算・建築プラン変更の有無(検討者/建築費高騰の認識者)(出典:リクルート「2022年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

建築費高騰で予算オーバーした場合の予算・建築プラン変更の有無(検討者/建築費高騰の認識者)(出典:リクルート「2022年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

では、省エネ基準の引き上げによる建築費のコストアップはどうだろう?
現行の省エネ基準に適合している住宅がすでに普及していることから、省エネ基準の義務化で建築費が上がるとは思えないが、2030年度以降のZEH基準の義務化では、建築費に影響があると考えられる。ただし、いまの建築費高騰とは違って、義務化によるコストアップは予想できることなので、政府は優遇制度などで支援するだろう。

すでに、住宅ローン減税の控除対象となる住宅ローンの限度額をZEH基準などで引き上げたり、【フラット35】S(【フラット35】の金利引き下げ制度)でZEH基準を追加して優遇するなどの手を打っている。今後も、「こどもエコすまい支援事業」による補助金などが予定されている。

建築物の省エネ性の引き上げについては政府が力を入れているので、減税や補助金、融資などのさまざまな支援策が用意されるだろう。こうした優遇制度を有効に活用して、希望する建築プランで省エネ性の高い住宅を建てられることを願っている。

●関連サイト
リクルート「2022年注文住宅動向・トレンド調査」

寝室は夫婦・パートナー同室、別室?実態とそれぞれのメリット

積水ハウス 住生活研究所では、“いい夫婦の日”に向けて、「夫婦の暮らしに関する調査(2022 年)」を実施した。この調査では、全国の20~60代既婚男女に、配偶者やパートナーと一緒に寝ているかどうかを聞いている。いわゆる夫婦同室・別室問題だが、その結果はどうなったのだろう?

【今週の住活トピック】
「夫婦の暮らしに関する調査(2022 年)」結果を報告/積水ハウス 住生活研究所

55歳以上の夫婦になると寝室は別々で寝ている。その理由は…

自宅において夫婦で最も長く過ごすのは、実は寝ている時間だ。もちろん、夫婦で生活時間が異なるという場合もあるだろうが、夜のほぼ同じ時間帯で寝ているという場合が多いだろう。では、そのときにどのように寝ているのだろうか?

今回の調査では、「ふだん配偶者・パートナーとどのように寝ているか」を聞いており、下のグラフのような結果になった。ダブルベッドかシングルベッドかなどの違いはあっても、「同じ部屋で寝る」という回答は年代によって大きく異なることがわかった。

出典:積水ハウス 住生活研究所「夫婦の暮らしに関する調査(2022 年)」より転載

出典:積水ハウス 住生活研究所「夫婦の暮らしに関する調査(2022 年)」より転載

55歳以上では、「別々の部屋で寝る」という回答が過半数を占めるが、20~54歳までは「同じ部屋」で寝る回答のほうが多い。なかでも、20~24歳については、ラブラブだからなのかわからないが、「一つの寝具で寝る」という回答が56.1%と極めて高くなっている。

ではなぜ、55歳以上になると寝室を別にする人が多くなるのだろうか?

別室で寝ている人に「別々に寝ることになった理由としてあてはまるもの」を聞いたところ、「相手のいびきや歯ぎしり、寝言などがうるさいから」(29.6%)、「お互いの生活時間がずれているから」(28.1%)、「配偶者・パートナーと最適な環境(温度設定など)が違うから」(24.5%)といった、快適に寝るための現実的な理由が挙がった。ほかにも、「1人の時間を持ちたいから」(27.6%)や「お互いのライフスタイルが違っているから」(27.0%)など、それぞれ個人の時間を尊重する理由も見られた。

出典:積水ハウス 住生活研究所「夫婦の暮らしに関する調査(2022 年)」より転載

出典:積水ハウス 住生活研究所「夫婦の暮らしに関する調査(2022 年)」より転載

やっぱり夫婦は同じ部屋で寝るべき!?

睡眠時間をしっかり確保することは日々の生活で大切なことだが、別室で寝ている人に「配偶者・パートナーと同じ寝室で寝たいか」と聞くと、16.3%は「同じ寝室で寝たい」と回答した。

出典:積水ハウス 住生活研究所「夫婦の暮らしに関する調査(2022 年)」より転載

出典:積水ハウス 住生活研究所「夫婦の暮らしに関する調査(2022 年)」より転載

「同じ寝室で寝たいと思いながら別室で寝ている人も意外といるのか」と、この結果に筆者は驚いた。そこで、その人たちの「同じ寝室で寝たい理由」を見ると、「夫婦だから」「特に離れる理由がないから」がいずれも34.4%で最多となった。夫婦は一緒にいるべきという考え方が根強いようだ。

出典:積水ハウス 住生活研究所「夫婦の暮らしに関する調査(2022 年)」より転載

出典:積水ハウス 住生活研究所「夫婦の暮らしに関する調査(2022 年)」より転載

次に多い理由は、「同じ寝室で寝るほうが経済的・省エネだから」(28.1%)という合理的なもの。「比較的年配の世代ならではだ」と思ったのは、別室で寝ていると自分や配偶者の健康面での異常に気づきにくいことなど、健康面の安心や見守りができる点なども一定の人が理由に挙げていることだ。

寝室が同室のほうが夫婦の仲が良い!?

同研究所で調査結果を分析したところ、「仲が良いと認識している人は、一緒の部屋で寝ている割合がより高くなる」という。そうはいっても、夫婦の仲の良さは、寝室が同室か別室かとは、直接的には関係はないと考える。

夫婦同室で寝ているところに、「別室で寝たい」というのは、いびきや冷暖房設定の違いで熟睡できないといった理由でもないと言い出しづらい、ということもあるかもしれない。ほかにも、家の部屋数や広さによって、それぞれに寝室が割り当てられないといった事情で同室にしているといったこともあるだろう。

このように、夫婦の寝室が同室か別室かは、さまざまな事情が重なって決まると考えられる。睡眠という心身ともに重要な活動の鍵を握る寝室だけに、互いが納得していればどちらでもよいのではないだろうか。

同室・別室、それぞれのメリットや工夫点

そうはいっても、寝室を同室にするか別室にするかで、それぞれにメリットがある。メリットの例を挙げてみよう。

●夫婦の寝室が「同室」のメリット
・スキンシップが増える
・一緒にいることで、会話が増えたり安心感を得られたりする
・相手の健康上の異常に気づきやすい

●夫婦の寝室が「別室」のメリット
・相手の影響を受けずに安眠を確保できる
・自分一人の時間を持てる
・ケンカの後などの気分をリセットできる

どのメリットを大きく感じるかは、それぞれの組み合わせで違ってくるだろう。正解は特にないのだ。ただ、希望通りにはいかないという場合もある。別室でスキンシップを持ちたいなら、時々同室の時間を持ったり、同室でもプライバシーを保ちたいなら、寝室を家具やパーテーションで仕切ったりといった工夫をする方法もある。

寝室をどうしたら互いが快適に眠れるか、ざっくばらんに話し合ってみるとよいだろう。「別室にしたい」と相手が言い出したからといって、相手への愛情が薄れたとは限らないのだ。

●関連サイト
積水ハウス 住生活研究所「夫婦の暮らしに関する調査(2022 年)」

コロナ禍で「風邪をひかなくなったと」感じる人が増加!どんな暮らし方が予防につながっている?

積水ハウスの住生活研究所が、「自宅における感染症・風邪の予防意識・行動に関する調査(2022年)」を実施し、その結果を発表した。それによると、コロナ禍で風邪をひかなくなったという人が多いという。コロナ禍による生活様式の変化が常態化するいま、どんな暮らし方をしているのだろうか?詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
「自宅における感染症・風邪の予防意識・行動に関する調査(2022年)」結果を報告/積水ハウス 住生活研究所

6割以上がコロナ禍でインフルエンザや風邪をひかなくなったと思っている

調査結果によると、コロナ禍前と比較して「インフルエンザや風邪をひかなくなったと思うか」と聞いたところ、63.8%が「思う/やや思う」と回答した。その要因のひとつが、感染症への予防が習慣化していることにある。加えて、在宅勤務が増加した人ではインフルエンザや風邪をひかなくなったと思う回答が78.5%と多いことから、通勤などの外出機会が減っていることも挙げられる。

積水ハウス 住生活研究所「自宅における感染症・風邪の予防意識・行動に関する調査(2022 年)」より転載

積水ハウス 住生活研究所「自宅における感染症・風邪の予防意識・行動に関する調査(2022 年)」より転載

帰宅後は洗面所に直行?家の中にウイルスを持ち込みたくない

次に、「外出から帰宅後、まず室内のどこに行くか」を聞くと、「洗面所」という回答が最多になった。また、コロナ禍前は48.0%だったものが、現在は60.0%に高まり、帰宅後にまず手洗いという行動が習慣化していることがわかる。

積水ハウス 住生活研究所「自宅における感染症・風邪の予防意識・行動に関する調査(2022 年)」より転載

積水ハウス 住生活研究所「自宅における感染症・風邪の予防意識・行動に関する調査(2022 年)」より転載

手洗いや手の消毒のほかにも、「帰宅した際、家の中のどこも触らずにまず手を洗う」 が 25.3%(コロナ禍前9.9%)、「帰宅した際、玄関で除菌や消毒をする」が 18.7%(コロナ禍前6.5%)とコロナ禍前より増加しており、ウイルスを家の中に持ち込まない意識が高まっていることがわかる。

自宅の中でもマスクをつけるシーンがある!?

感染予防の習慣化のなかでは、マスク着用もあるが、自宅の中でもマスクをつける場合がある人も多い。この調査では、49.7%が現在、自宅の中でもマスクをつけることがあると回答したという。「在宅時にマスクをつけることが多いシーン」では、「自分の体調がよくない時」(29.0%)のほか、「家族の誰かの体調がよくない時」(24.3%)、「家族や友人と一緒にいる時」(15.5%)などが多かった。

マスクの取り扱いについて、住生活研究所が実施した「小さな暮らしアンケート~マスク編~(2022 年)」によると、使い捨てマスクの帰宅後の扱いについて、「捨てる場所」・「仮置きする場所」どちらも「リビング」が最多だった。次に多いのは、捨てる場合は「キッチン」(23.7%)、仮置きする場所は「玄関」(21.6%)となった。

積水ハウス 住生活研究所「小さな暮らしアンケート~マスク編~(2022 年)」より転載

積水ハウス 住生活研究所「小さな暮らしアンケート~マスク編~(2022 年)」より転載

Withコロナの状態が長引くなか、家の中の感染予防の行動が常態化している。これからは、帰宅後すぐ手洗いするためにあちこち触らずに洗面所に直行できる動線などを工夫したり、玄関に除菌・消毒剤の置き場所、リビングなどにマスクを置いたり捨てたりする場所を設けたりといった家づくりを考える必要もありそうだ。

寒くなると窓を開ける換気もしづらくなる。インフルエンザの感染拡大の懸念もあり、予防対策を続ける必要があるだろう。それにしても、在宅中もマスクをせざるを得ない状況からは早く脱出したいものだ。

●関連サイト
積水ハウス「自宅における感染症・風邪の予防意識・行動に関する調査(2022年)」

住宅購入時にみんなは何を重視する? 若年層は「IT重説」「電子署名」に高い利用意向

不動産流通経営協会(FRK)が公表した2022年度の「不動産流通業に関する消費者動向調査」によると、住宅を購入する際には、立地や建物を慎重に確認している人が多いことがわかった。高額な買い物となるだけに当然のことではあるが、どういった手順を経ているのだろう?調査結果を分析していこう。

【今週の住活トピック】
「第27回(2022年度)不動産流通業に関する消費者動向調査」結果を公表/不動産流通経営協会(FRK)

新築か中古かにこだわらなかった人が増加!

この調査は、FRKの会員会社の協力により、首都圏で2021年4月から2022年3月までに住宅を取得した人を対象にWEBアンケートを実施(有効回答1311件)したもの。新築住宅購入者は267件、中古(既存)住宅購入者は1044件だった。

まず筆者が注目したのは、「新築・既存にはこだわらなかった」と回答した人が増加していることだ。
●住宅購入にあたって探した住宅の種類で「新築・既存にはこだわらなかった」割合
新築住宅購入者:
2020年度:19.2%  2021年度:17.3%  2022年度:26.6%
中古住宅購入者:
2020年度:44.3%  2021年度:47.0%  2022年度:52.5%

新築住宅購入者では「新築住宅のみ」や「主に新築住宅」という人がまだ多いものの、中古住宅購入者ではこだわらなかった人が過半数に達した。これは、新築住宅(特に新築マンション)の販売が縮小する一方で、中古住宅市場が活性化していること、新築マンションの価格が上昇していることなどの影響もあるのだろう。

購入にあたって建物検査の利用が増えている!

中古住宅を購入する場合、建物の状態に不具合はないかが気になるものだ。一般消費者が見ただけではわからない点もあるので、専門家の確認もほしいところだ。今回の調査で、中古住宅購入者に対し、住宅購入にあたって建物検査を実施したかどうか聞くと、「何らかの建物検査を行った」人が52.2%となり、過半数を占めた。特に、中古一戸建て購入者については、実施した比率は72.1%とかなり高くなる。

出典:住宅購入にあたっての建物検査の実施状況(対象:中古住宅購入者)(出典/不動産流通経営協会「2022年度不動産流通業に関する消費者動向調査」より転載)

出典:住宅購入にあたっての建物検査の実施状況(対象:中古住宅購入者)(出典/不動産流通経営協会「2022年度不動産流通業に関する消費者動向調査」より転載)

さて、ここで言う「何らかの建物検査」について少し説明しよう。何らかのという表現となるのは、いろいろな形態があるからだ。

最も多いものが、中古住宅を仲介する不動産会社が売主から預かった中古住宅の「建物保証」をするケースだ。不動産会社自身がそれぞれの方法で住宅の大きな不具合がないことを保証するもので、建物に加えて「住宅設備保証」もするケース、住宅設備保証だけをするケースもあるが、建物保証にかかわるものが建物検査に該当する。

ほかにも、民間の検査機関が行っているホームインスペクション(原則売主が行うが、費用を買主が負担する場合もある)を行っている場合も該当する。また、検査と保険をセットした「既存住宅売買瑕疵(かし)保険」に加入する場合も、検査を行うので建物検査に該当する。

これらのいずれかを行った中古住宅を購入した人が、52.2%いたということだ。

大半が事前に水害ハザードマップを確認している

新築・中古を問わず、近年災害が甚大化していることもあって、災害リスクを気にする人も多いことだろう。調査結果を見ても、全体で91.2%が自然災害のリスクについて「考慮した」(57.6%)あるいは「やや考慮した」(33.6%)と回答した。

目を引くのが、「水害に関するハザードマップ」を確認した人の多さだ。「地震に関するハザードマップ」を確認した人もほぼ6割と高いので、関心の高さがうかがえるが、水害の場合は9割を超える高さとなっている。

事前に確認したハザードマップの種類について(出典/不動産流通経営協会「2022年度不動産流通業に関する消費者動向調査」より転載)

事前に確認したハザードマップの種類について(出典/不動産流通経営協会「2022年度不動産流通業に関する消費者動向調査」より転載)

実は、2020年8月28日から契約前の重要事項説明の際に、水害ハザードマップを提示することなどが、宅地建物取引業法の改正で義務づけられている。水害ハザードマップを確認した比率が9割と高いのは、近年の台風や集中豪雨による水害を目の当たりにして、早めに自らハザードマップを確認した人もいるだろうが、仲介会社からの重要事項の説明によって確認したという人も多くいるからだろう。

20代・30代では契約に関するデジタル化の意向が高い

不動産会社が買主に対面で重要な事項を書面で説明したり、対面で契約書を交付したり、というのが従来のスタイルだった。今ならメールやWEB会議の普及によって、WEB会議で重要事項説明を聞いて(=「IT重説」)メールなどで書面を受け取ったり、「電子署名」を使って売買契約書の交付を受けたりといったことができる環境が整っている。

今回の調査で、「IT重説」および「電子署名」の利用意向を聞いたところ、いずれも20代・30代で利用意向が高いことが分かった。

今後住宅を購入する際のIT重説の利用意向(出典/不動産流通経営協会「2022年度不動産流通業に関する消費者動向調査」より転載)

今後住宅を購入する際のIT重説の利用意向(出典/不動産流通経営協会「2022年度不動産流通業に関する消費者動向調査」より転載)

売買契約締結における電子署名の利用意向(出典/不動産流通経営協会「2022年度不動産流通業に関する消費者動向調査」より転載)

売買契約締結における電子署名の利用意向(出典/不動産流通経営協会「2022年度不動産流通業に関する消費者動向調査」より転載)

「IT重説を利用したいと思う理由」では、「不動産会社に行く手間が省けるから」(86.1%)と「重要事項説明を実施する日程調整の幅が広がるから」(65.0%)が多く、「IT重説を利用しないと思う理由」では、「住宅購入に関わる大事なことなので対面での説明がよいと考えるから」(75.2%)が多かった。

また、「売買契約締結における電子署名を利用したいと思う理由」では、「保管に場所を取らないから」(79.2%)、「パソコンやスマートフォンなどでいつでもどこからでも契約締結できるから」(63.0%)、「印紙税が発生せず費用負担が減るから」(62.1%)が多く、「売買契約締結における電子署名を利用しないと思う理由」では、「住宅購入に関わる大事なことなので書面がよいと考えるから」(84.1%)が多かった。

デジタル関連法案などの施行によって、今は買主と不動産会社双方が合意するなどの条件が整えば、契約に関するIT化が実際に行えるようになっている。

近年は、中古住宅を購入してリノベーションをしてから住むスタイルも普及している。その際には、隠れた不具合がないか建物検査事業者やリフォーム事業者と確認したり、災害リスクの程度を調べたりして、それらの対策を施すことが大切だ。購入とリノベを一体的に進めるには、契約が効率よくできるIT化を活用するのもよいだろう。快適な住まいを手に入れるために、賢い消費者になってほしい。

●関連サイト
不動産流通経営協会(FRK)「第27回(2022年度)不動産流通業に関する消費者動向調査」

「家に欲しい設備」アンケート結果が発表! 3位・防犯カメラ、2位・宅配ボックス、1位は?

日本トレンドリサーチがロゴスホームと共同で、「家に欲しい設備」に関するアンケートをインターネットで実施し、その結果を公表した。それによると、「モニター付きインターホン」がかなり重要な設備になっていることが分かる。詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
「家に欲しい設備」についてアンケートを実施/日本トレンドリサーチ

欲しい設備、家に付いている設備のナンバー1は「モニター付きインターホン」

調査対象は全国の男女で1332件の有効回答を得たもの。このうち、「持ち家」に住んでいるのは55.3%。持ち家に住んでいない44.7%に対して、「家を購入するとしたら絶対に付けたい設備は何か」を聞いたところ、次のような結果になった。

家を購入するとしたら絶対に付けたい設備(複数回答可)(出典:日本トレンドリサーチ「家に欲しい設備」アンケート結果より転載)

家を購入するとしたら絶対に付けたい設備(複数回答可)(出典:日本トレンドリサーチ「家に欲しい設備」アンケート結果より転載)

TOP3には、「モニター付きインターホン」(51.2%)、「宅配ボックス」(44.6%)、「防犯カメラ」(42.6%)が挙がり、セキュリティや不在時対策などに重きが置かれていることが分かる。

これに対して、持ち家に住んでいる55.3%に、「購入した家にはどのような設備が付いているか」を聞いた結果は次のようになった。

購入した家に付いている設備(複数回答可)(出典:日本トレンドリサーチ「家に欲しい設備」アンケート結果より転載)

購入した家に付いている設備(複数回答可)(出典:日本トレンドリサーチ「家に欲しい設備」アンケート結果より転載)

持ち家の付帯設備についても、1位は「モニター付きインターホン」(53.8%)となった。一方、「宅配ボックス」や「防犯カメラ」は、10位と11位になり、「浴室暖房乾燥機」や「カウンターキッチン」が上位に挙がった。

これは、「モニター付きインターホン」の重視度が高いことに加え、持ち家への普及が広がっていると考えられる。セキュリティを重視していても、防犯カメラまで設置されている家はまだ少ないということだろう。

ひとくちに「モニター付きインターホン」というけれど

さて、モニター付きインターホンとは、テレビモニター付きドアホンともいい、「インターホンにテレビカメラを取り付け、住まいの中から外の様子や訪問者の顔を見ることができる装置」(SUUMO住宅用語大辞典)のことだ。あらかじめ訪問者の顔を確認すれば、不用意に玄関ドアを開けてしまうことが避けられる。

防犯面で役立つ設備だが、実はさまざまなものがある。今回の調査ではマンションか一戸建てかが明らかではないが、一戸建てではシンプルに、玄関にカメラ付きインターホン(子機)を設置して、家の中のモニター(親機)で来訪者を確認する形になる。

一方マンションの場合は、オートロック機能が付いている物件では、エントランスの自動ドアもモニターで応答しながら開けることができるので、エントランスと住戸の玄関の2段階のセキュリティに対応する。また、マンションの住戸内にはモニター画面が住宅情報盤に組み込まれていて、インターホンの機能のほかに火災報知設備やガス漏れセンサー、非常時の通報機能など住まいの安全を守る多様な機能が備えられているのが一般的だ。

さらに、モニター付きインターホンはさまざまに進化して、モニターがカラーになり画質も向上したり、録画機能が付いたりしている。カメラが広角レンズになって死角がないものもあれば、スマートフォンと連携して外出先でも来訪者が確認できるものもあり、いろいろな商品が登場している。

もし、注文住宅などで自身で商品を選べるのであれば、不審者の確認を徹底したいのか、子機を活用して住宅内の会話もしたいのかなど、どういった機能を重視するのかを見極めて、商品を選ぶとよいだろう。

また、現在は設置されていない中古住宅でも、後付けで設置できる場合もある。中古一戸建てでは、玄関のインターホンが電池式で配線がなくても設置できるものがある。中古マンションでは、さすがに個人でエントランスをオートロックにすることはできないが、管理組合の承認が得られれば、玄関にモニター付きインターホンを設置できることもある。

住まいの機能として、外部からの侵入を防ぐということも求められる。モニター付きインターホンが普及してきたのは、住む人の安全に配慮した結果だろう。上手に活用したいものだ。

●関連サイト
日本トレンドリサーチ共同調査「家に欲しい設備」についてアンケート結果
ロゴスホーム

低金利のうちに検討したい住宅ローンの借り換え! 注意点は?

住宅金融支援機構が、2021年度中に借り換えをした998人に調査をした「住宅ローン借換えの実態調査結果」を公表した。住宅ローンは超低金利が長く続いているが、こうしたなか、どういった借り換えが行われていたのだろう?今回は、住宅ローンの借り換えについて考えてみたい。

【今週の住活トピック】
「2021年度 住宅ローン借換えの実態調査結果」を公表/住宅金融支援機構

借り換えによって全期間固定型が減少し、変動型が増加

住宅ローンの借り換えとは、現在返済している住宅ローンの残金を一括返済して、別の住宅ローンを契約すること。返済しているローンの金利よりも、借り換え後の金利が下がれば、借り換えることで利息を削減することができる。

住宅ローンの金利タイプには、半年ごとに金利が見直される「変動型」、返済当初一定期間の金利を固定する「固定期間選択型」、返済中金利が変わらない「全期間固定型」がある。固定期間選択型は、当初固定期間を2年、3年、5年、10年などから選ぶもの。全期間固定型は、住宅金融支援機構と民間金融機関の提携ローン【フラット35】が代表的なものだ。

今回の調査結果によると、借り換えの前と後では、利用する金利タイプのシェアが、次のように変化していた。
〇借り換え前→借り換え後
変動型 40.4%→49.2%(+8.8)
固定期間選択型 45.4%→43.9%(-1.5)
全期間固定型 14.2%→6.9%(-7.3)

変動型が増えて、全期間固定型が減っているのが大きな特徴だ。ということは、全期間固定型を借りていた人が、借り換えで変動型に移ったということだろうか? 詳しい内訳を見ると、次のようになっていた。

金利タイプ別借換えによる構成比の変化(出典/住宅金融支援機構「2021年度 住宅ローン借換えの実態調査結果」)

金利タイプ別借換えによる構成比の変化(出典/住宅金融支援機構「2021年度 住宅ローン借換えの実態調査結果」)

低金利時代には、金利を固定する期間が長いほど金利は高く設定される。したがって、借り換えで低金利なローンを狙うなら、全期間固定型から金利が変動するものに、固定期間選択型の長いものからより短いものへといった借り換えが行われるのがセオリーだ。

調査結果を見ると、借り換え前後で同じ金利タイプを選んだ人が多いが、借り入れ当時と比べて金利水準が下がっていれば、同じ金利タイプへの借り換えでも低金利のローンを利用できるからだろう。しかし、なかにはセオリー通りではない借り換えをしている人もいる。変動型から固定期間選択型や全期間固定型など、より金利を固定する期間が長いもの選んだ事例だ。

借り換え理由はなんといっても「低金利」だが、金利上昇を不安視する人も

では、借り換えの理由を見ていこう。
当然ながら、「金利が低くなるから」と「返済額が少なくなるから」という理由が圧倒的に多い。適用される金利が低くなれば、残りの返済期間が同じでも返済額を少なくできる。収入の減少や物価の上昇に伴い、毎月の返済額を抑えることが最大の理由という場合もあるだろう。

一方、「今後の金利上昇・返済額増加への不安」を挙げた人も多い。金利上昇のリスクを避けたい場合は、全期間固定型を選ぶか、固定期間選択型のなかでも固定する期間が10年など長いものを選ぶのがセオリー。低金利のうちに、長期間金利を固定できるからだ。

ほかの理由については、ローンの優遇金利の仕組みを説明したほうがわかりやすいだろう。
固定期間選択型の場合、当初の固定期間で大幅に金利を引き下げ、以降は優遇幅が小さくなる「当初優遇タイプ」とずっと一定の金利を引き下げる「通期優遇タイプ」の2種類がある。前者の場合、借り入れ当初の金利は低いが、固定期間終了後の金利が当初と同じだとしても優遇幅が小さくなることで、適用される金利は上がってしまう。

同様に、全期間固定型の場合でも、性能の高い住宅であれば当初一定期間金利を引き下げる【フラット35】Sを利用した場合も、金利引き下げ期間が終わると優遇がなくなることで、適用される金利が上がる。

こうした事情から、ローンの適用金利が上昇するタイミングで借り換えたいとか、優遇幅を通期で適用させたいから借り換えたいといった理由が挙がるわけだ。

また、固定期間選択型の場合、固定期間終了後は再度固定期間を選ぶ場合もあるが、変動型に移行する場合もある。「変動金利に移行するのが不安」というのは、こうした事情だろう。

借換え後の金利タイプ別借換え理由(出典/住宅金融支援機構「2021年度 住宅ローン借換えの実態調査結果」)

借換え後の金利タイプ別借換え理由(出典/住宅金融支援機構「2021年度 住宅ローン借換えの実態調査結果」)

なお、今回の結果は2021年度に借り換えた人の調査なので、市場の金利上昇圧力が強まっている今後であれば、金利上昇リスクを避ける借り換えをする人がもっと増えるのかもしれない。

住宅ローンの借り換えで注意したい点とは?

住宅ローンの借り換えでは、新しい住宅ローンに切り替えることで、低金利などの条件がよいローンを借りることができる。ただし注意したいのは、完済するローンと新たに借りるローンについて、それぞれ手数料などの諸費用がかかることだ。

たとえ数十万円の諸費用を払っても、借り換えによる利息削減効果のほうが大きい、というのが前提だ。借り換え前後の金利差が小さかったり、ローンの残高が少なかったり、残っている返済期間が短かったりする場合、利息削減額よりも諸費用のほうが上回ってしまう可能性もある。諸費用と利息削減効果を必ず試算して、総合的に判断する必要がある。

また、借り換えは新規に借りる場合と同様に、融資審査を受けることになる。世帯収入が減っていたり転職したばかりであったり、あるいは健康面に不安があり団体信用生命保険(以下、団信)に加入できないといった場合には、借り換えができないこともある。

こうした注意点はあるものの、いまはすべての金利タイプで低金利であることに加え、金融機関の優遇金利がかなり低くなっている。借り換えで優遇金利が適用されることで、借り換え前後の金利差が大きくなるという人が多いだろう。

また、借り換えによって、希望の金利タイプを選べたり、団信にオプションを付けたりなどの見直しができるといったメリットもある。住宅ローンのメンテナンスの一環として、低金利のいまのうちに借り換えを検討するのもよいだろう。

●関連サイト
住宅金融支援機構「2021年度 住宅ローン借換えの実態調査結果」

コロナ禍後も家で運動する人増!自宅のどこで?どうやって?

コロナ禍で、運動不足を感じている人たちが自宅で運動をしたいと考えるようになった。こんな調査結果を積水ハウスが公表した。現在まで自宅での運動を続けている人が多いというが、どんな運動をどこでやっているのだろうか? 詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
「自宅での運動に関する調査」結果を公表/積水ハウス

運動不足を感じて、自宅で運動する人が増加!?

筆者自身の話で恐縮だが、新型コロナウイルスが蔓延したとき、通っていたスポーツジムがクローズしてしまい、困ってしまった。体力づくりをしてきたので、トレーニングを中断すると元に戻ってしまうのではないかと不安になった。そこで思いついたのが、YouTubeを活用して筋トレやヨガなどを毎日行うことだ。

スポーツジム閉館時は、自宅で一日に何度も運動していた。開館してからは自宅での運動量は減っているものの、座りっぱなしの仕事だけに今も継続して運動するようにしている。

筆者と同じような人が多いということが、積水ハウスの調査結果にも表れていた。「コロナ禍で以前よりも運動不足になったと感じる」人が55.8%(「とてもそう感じる」と「ややそう感じる」の計)と半数を超えた。在宅勤務をしている人に絞ると、同じ回答は70.3%にもなった。

「運動したいと思うか」と聞くと、「自宅で運動したい」という人が55.0%に達し、「屋外で運動したい」(32.4%)や「ジムなどの施設で運動したい」(18.2%)よりも多いことがわかった。自宅で運動したいと考えている275人に、実際に自宅で運動をしているかを聞くと、「コロナ前から現在まで続けている」が30.2%、「コロナ禍で始めて、現在も続けている」が19.3%だった。筆者の場合は、19.3%に該当するわけだ。

一方、自宅で運動したいと回答したものの、現在自宅で運動していない人に理由を聞くと、2番目に多かった「運動が嫌い・面倒」(29.5%)は仕方がないとして、1番目に多かったのは「忙しい・時間がない」(38.8%)、3番目が「スペースがない」(20.1%)で、時間と場所が課題になっていたことが分かる。

女性のほうがコロナ前よりも自宅で運動している!?

では、自宅でどんな運動をしているのだろうか? 何らかの運動をしている人に、「どんな運動をしているか」を聞いたところ、男女でかなり違いがあることが分かった。

男性では、「屋外でのランニング・ジョギング・ウォーキング」が最多で、コロナ前(数年間)で55.1%、現在で54.1%と、過半数が屋外で走ったり歩いたりしている。2番目に多いのは「自宅での器具を使用しない筋力トレーニング」となり、男性は筋肉を使う運動が好きなようだ。

一方、女性も「屋外でのランニング・ジョギング・ウォーキング」が2番目になり、コロナ前から継続している人が多いようだが、それよりも多かったのが「自宅でのヨガやストレッチ」だ。コロナ前では36.4%だったが、現在では46.4%と大きく伸びている。女性では「YouTube動画を参考にしながらの運動」も10ポイント近く伸びているのも特徴だ。

どんな運動をしているか(男/女・コロナ前/現在別) (出典:積水ハウス「自宅での運動に関する調査」より転載)

どんな運動をしているか(男/女・コロナ前/現在別) (出典:積水ハウス「自宅での運動に関する調査」より転載)

全体的に運動する場所の違いを見ると、男性は、「ジムでの筋力トレーニング」と「ジムでのランニング・ジョギング・ウォーキング」がコロナ前から比べると現在では大きく減っていることから、ジムでの運動から自宅での運動へと場所を変えている傾向がうかがえる。また、女性もジムから自宅への流れが見られるが、加えて、コロナ前より自宅での運動量が増える傾向がうかがえる。

自宅での運動、やっぱりリビングが最多

さて、自宅で運動する場合は、どこで行っているのだろう? 結果はやっぱりというか、最も広い空間であろう「リビング」が71.9%と最多となった。次いで、「主寝室」が40.1%。筆者も、主にリビングでYouTubeを見ながら、ヨガをしたり踊ったりしているが、起きた時と寝る前に寝室のベッドの上で、腹筋やヨガをしている。納得の結果だ。

自宅で運動をしている部屋/空間(複数回答)(出典:積水ハウス「自宅での運動に関する調査」より転載)

自宅で運動をしている部屋/空間(複数回答)(出典:積水ハウス「自宅での運動に関する調査」より転載)

では、自宅での運動を続けるために、どんな工夫をしているのだろう? 最多は、「家具をどかしたり片づけたりする必要のない運動スペースを確保」の42.9%。これは重要なことで、筆者は初め仕事部屋にヨガマットを敷いてやってみたのだが、手を回したり足を伸ばしたりしたときに、ゴミ箱や書棚、椅子の脚などにぶつかってしまい、リビングに移動した。今わが家のリビングの家具はテレビ前に寄せられていて、思い立ったらすぐに運動できるスペースが確保されている。

2番目に多いのが「家事や仕事の隙間時間に実施」(35.6%)、3番目が「時間を決めて実施」(32.8%)となり、時間と空間を上手に活用している人が多いことがわかった。

自宅で運動する理由、感染症対策よりも多いのは?

気になるのが、「自宅で運動する理由」だが、興味深い結果となった。「費用がかからないから」(46.3%)が最多で、現実的な理由だった。続いて、「隙間時間を活用できるから」(40.1%)、「時間に縛られないから(好きなタイミングに運動ができるから)」(37.3%)となり、時間を有効に使えることが上位に挙がった。

屋外やジムで運動するには、女性の場合は身だしなみにも気を使う必要があるが、5番目の「人の視線を気にする必要がないから」も自宅のよさだろう。もっと多いと予想していた感染症対策については、「感染症の恐れがないから」(36.2%)の4番目だった。

自宅で運動を続けている理由(複数回答)(出典:積水ハウス「自宅での運動に関する調査」より転載)

自宅で運動を続けている理由(複数回答)(出典:積水ハウス「自宅での運動に関する調査」より転載)

さて、自宅で運動をするためには、時間を有効に使うことと、場所を確保することがカギだ。場所は、思い立ったらすぐ運動できるように、片づけなくてもよいスペースを用意して、ヨガマットなどの器具の置き場所をその近くに設けることをお勧めする。

コロナ収束後も、在宅勤務などが続き、自宅での運動も続くだろう。自宅は、仕事をしたり運動をしたりする場所にもなるので、これからは多様な機能を考慮して住まい選びをしてほしい。

●関連サイト
積水ハウス「コロナ禍で広がる自宅トレーニング、手軽に始める4つのヒント」

世帯年収アップも、住宅取得費や借入額も増加! 戸建注文住宅の実態調査2021年度の結果は?

住宅生産団体連合会(以下、住団連)の「2021年度戸建注文住宅の顧客実態調査」の結果が公表された。ウッドショックなど建築資材の高騰が指摘されていたので、コストアップが気になるところだが、どうなっていただろう。住宅ローンの借り方や住宅に設置する最新の設備などにも、影響はあったのだろうか?

【今週の住活トピック】
「2021年度戸建注文住宅の顧客実態調査」結果を報告/(一社)住宅生産団体連合会

昨年度よりも住宅取得費が増加し、借入額や自己資金が増加

この調査は、三大都市圏と地方都市圏に注文住宅を建てた人を対象に住団連が毎年行っているもので、2021年度で第22回目となる。

まず、注文住宅を建てた人の平均像を見ていこう。世帯主年齢の平均は39.9歳で、平均世帯人数は3.14人。夫婦に子どもが一人というのが、平均的な顧客層なのだろう。

次に、建てた注文住宅の平均像を見ていこう。
●建築費は3816万円(対昨年度1万円増)
●建築費の1平米単価は30.6万円(対昨年度0.5万円増)
●土地代を含む住宅取得費は5783万円(対昨年度446万円増)
●延べ床面積は124.5平米(対昨年度2.3平米減)
●自己資金は1481万円(対昨年度188万円増)
●借入額は4967万円(対昨年度366万円増)
●世帯年収は993万円(対昨年度29万円増)
●借入金の年収倍率5.00倍(対昨年度0.23ポイント増)
※土地の取得方法は、従前の敷地(建て替え)28.2%、新たに購入(54.1%)などがある。

住団連では、「世帯年収が増加したものの、建築費、住宅取得費が上昇し続けていることから、延床面積を抑制するとともに、自己資金や借入金を増やすことで対処している状況が読み取れる」と分析している。

約4割が夫婦で住宅ローンを借り、夫婦で返済する形をとっている?

住宅取得費が増加するにつれて、借入額も増加しているが、では誰が住宅ローンを借りているのだろう?結論から言うと、夫婦で力を合わせて借りている人が多いことがわかった。

夫婦2人でお金を出し合ってマイホームを買う場合、方法はいくつかある。
最近増えているのが「ペアローン」だ。ペアローンとは、1つの物件に対して、夫婦それぞれが自分の収入に応じて住宅ローンを借りるというもの。(ちなみに、ペアローンは夫婦に限らず、同居している親子などでも利用可能)

もう一つの方法が、「収入合算」。収入合算は、例えば夫が住宅ローンを借りる場合に、妻の収入を上乗せして、その収入に対してローンを借りるもの。民間金融機関の多くは「連帯保証型」の収入合算を採っているので、住宅ローンの返済をするのは夫だが、妻は夫の連帯保証人となって万一のときに返済の義務を負う。なお、妻の収入の全額ではなく、半分程度を上乗せできるとする金融機関が多い。(ちなみに、【フラット35】など一部のローンでは「連帯債務型」の収入合算を取り扱っている)
※ローンを借りた人を債務者といい、連帯保証が債務者の返済を連帯して保証するのに対し、連帯債務は二人とも債務者となる。

この調査では、ペアローンあるいは収入合算を利用しているかどうかを聞いている。その結果、39.6%がいずれかを利用して、夫婦(または親子)でローンを借りている。

また、ペアローンと収入合算と、どちらが多いかというと、収入合算が55.8%、ペアローンが44.2%という比率になった。

ペアローン・収入合算の利用状況(出典:住団連「2021年度戸建注文住宅の顧客実態調査」)

ペアローン・収入合算の利用状況(出典:住団連「2021年度戸建注文住宅の顧客実態調査」をもとにSUUMO編集部作成)

甚大化する災害や新型コロナウイルスの影響で、住宅のプランは変わった?

次に、住宅のプランを見ていこう。近年は、甚大化する災害や新型コロナウイルスなどの影響で、注文住宅のプランにも変化が見られる。

新しい生活様式などへの対応・関心を複数回答で聞いた結果から、採用した・あるいは関心があるの回答率の高い(30%を超える)ものを抽出してみた。

【テレワーク・オンライン授業環境への対応】
テレワークスペースの設置         43.3%
【ステイホームに対応した快適な居住性能】
良好な遮音性・防音性・省エネ性等     40.5%
【感染防止に配慮した住宅】
玄関に近い洗面スペース          41.8%
【災害時の自立的継続居住性能(レジリエンス性の強化)】
耐震性の確保(長期優良住宅等)      64.3%
創エネ設備(太陽光発電・エネファーム)  35.2%

自宅で仕事をしたり長時間自宅にいたりするので、仕事のスペースや住宅性能を求める意識が高くなっていることがわかる。また、災害も増えていることから、自宅のレジリエンス性への関心も高い。

こうした変化を受けて、最新設備・技術などの採用率が近年増加したものを調べると、以下の3つが顕著に伸びていた。

最新設備の採用率の比較

最新設備の採用率の比較(出典:住団連「2021年度戸建注文住宅の顧客実態調査」をもとにSUUMO編集部作成)

なお、最近注目されるZEH(net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略語)についての回答を見ると、2021年度は「ZEHにした」割合は27.9%で、「検討は行ったが、ZEHにしなかった」が24.4%となった。ZEHの採用率は年々増加しているが、現状では3割弱といったところだ。

ZEHの検討の有無(出典:住団連「2021年度戸建注文住宅の顧客実態調査」)

ZEHの検討の有無(出典:住団連「2021年度戸建注文住宅の顧客実態調査」をもとにSUUMO編集部作成)

ZEHにしなかった理由では、「スケジュールが大きくかわってしまう」が 45.3%と最も高く、次いで「掛かり増し費用が高いと感じたから」が22.4%だった。ZEHにするには、住宅の省エネ性能を高めたうえで、太陽光発電パネルなどの創エネ設備に加え、エネルギー消費効率の良い給湯器や冷暖房設備、照明などを設置する必要があり、その分コストがかかる。そのため、ZEHではない住宅よりも費用が高くなることや、それをカバーするZEH関連の補助金の申請・承認に時間がかかることなどが、採用しなかった要因となっていることが考えられる。

注文住宅のメリットは、建て主が住宅の性能や間取り、設備を選べることだ。若い世帯では夫婦共働きが当たり前になり、住宅ローンも2人で力を合わせて借りている。調査結果の中には、「家事負担軽減に資する工事(ビルトイン食器洗機、浴室乾燥機、宅配ボックス、キッチン・洗面所・トイレに設置する収納等)」の採用率が50.2%という結果もあり、家事が楽になるものを積極的に選んでいることもうかがえる。

さらに、耐震性や省エネ性、災害対策などにも関心が高い。しかし、費用面の制約もあり、優先順位をつけて選んでいることがうかがえる結果だ。今はマイホームに対して求める機能も多様化しているので、ますます予算内で何を選ぶかしっかりと考えることが大切になっていくだろう。

●関連サイト
(一社)住宅生産団体連合会「2021年度戸建注文住宅の顧客実態調査」

あと2年半で東京の新築住宅の太陽光発電設置が義務化! メリット・デメリットを解説

東京都が2025年4月から新築住宅に太陽光発電の設置を義務づけるという基本方針を決めた。このニュースはかなり話題になり、都民の声は賛否両論だった。都内で新築住宅を建てたり買ったりする場合、必ず太陽光発電を設置しなければならなくなるかというと、そういうわけではない。詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
「カーボンハーフ実現に向けた条例制度改正の基本方針」の策定について/東京都

東京都は、なぜ太陽光発電の設置義務化に踏み切ったのか?

東京都では、「2050年ゼロエミッション東京」の実現に向け、「2030年カーボンハーフ」を表明している。2030年までに温室効果ガス排出量を50%削減(2000年比)=「カーボンハーフ」するために、さまざまな施策を打ち出している。今回、東京都が策定した「カーボンハーフ実現に向けた条例制度改正の基本方針(案)」に盛り込まれたのが、2025年4月からの新築住宅への太陽光発電の設置義務化だ。

都内のCO2排出量の32.3%を家庭部門(住宅)が占めているが、単身世帯の増加により都内の世帯数が増えていることもあって、業務部門や運輸部門等ではエネルギー消費が減っているのに対し、家庭部門だけは増え続けている。

そこで、住宅の省エネ化を推進しようと考えられたのが、「東京ゼロエミ住宅」。東京の地域特性などを踏まえて、都が独自に定めた高い断熱性能をもった断熱材や窓を使って、省エネ性能の高い家電製品などを取り入れた住宅だ。東京ゼロエミ住宅を支援する補助金の制度なども設けてきた。

一方で、都内の建物の屋根にも着目した。都内には、住宅の敷地が狭くて屋根が小さかったり、住宅が密集して隣家の陽当たりを確保するために屋根が変則的な形になったりする場合も多い。そうなると太陽光発電設備を設置しても、十分な発電量が得られないことから、「東京ソーラー屋根台帳(ポテンシャルマップ)」を公開するなどしてきた。地図上のどの建物の屋根に太陽光発電を設置すれば、どの程度の発電量が見込めるかわかるというものだ。ただし、設置に適しているとする建物のうちの4.24%しか設置されていないのが実情だ。

そのため、太陽光発電の搭載に適した建物には極力設置しようと考えて、新築住宅への義務化に舵を切ったのだ。

設置の義務を負うのは誰?すべての新築住宅に設置しなければならない?

太陽光発電の設置義務化について、さまざまな疑問が湧くだろう。1つずつ詳しく見ていこう。

疑問1:設置する義務があるのは誰か?
注文住宅の建設事業者や建売住宅を新築分譲する事業者が対象で、都内に一定以上(年間の都内供給延床面積が合計2万平米以上)の建物を供給する50社程度が義務化の対象となる見込みだ。

疑問2:日当たりの悪い住宅や狭小な住宅でも設置しなければならない?
義務化の対象となる大手の住宅供給事業者には、供給棟数に応じた再エネ発電量の総量が求められる。各事業者は、その総量を達成するために、新たに供給するどの建物に太陽光発電を設置するかを判断していく。設置に適さない住宅(算出対象屋根面積 20 平米未満など)については、設置基準算定から除外可能としている。

疑問3:太陽光発電設備を設置するとどんなメリットがある?
東京都の資料によると、4kWの太陽光パネルを設置した場合、初期費用98万円が10年(現行の補助金を活用した場合6年)程度で回収可能。30年間の支出(※)と収入を比較すると、119万円程度(現行の補助金を利用した場合は159万円程度)の経済効果がある計算になる、という。

※専門業者による「点検」や発電した電気を家庭で使えるように変換するための「パワーコンディショナーの交換」などの費用を支出に加算。ただし、設備をリサイクルする際には、別途30万円程度の費用が発生。

住宅供給事業者が太陽光発電に適していると判断した住宅については、事業者が設置のメリットなどを丁寧に説明して、注文住宅の施主や新築分譲住宅の購入者は納得したうえで建てたり買ったりすることになるだろう。

住宅所有者のメリット・デメリットと今後の課題

さて、義務化により太陽光発電設備が設置された住宅の所有者は、原則として、その設置費用や使用する間のメンテナンス費用、最終的に廃棄(またはリサイクル)する際の費用などを負担することになる。売電収入で補う方法が先ほどの東京都の試算だ。

一方、固定価格買取制度による電力の買取価格は下がっている。逆に、さまざまな要因で電力会社の電気代は上がっている。そのため現状は、発電した電気を売るよりも自宅で使うことで節約する人の方が多い。自宅で使う場合には、発電しない夜間に電気を使えるように家庭用蓄電池も設置する必要があり、それには別途の費用もかかる。

ただし、災害などで停電になった場合でも、日中は太陽光発電により、夜間や雨天は蓄電池により、自宅で電気を使うことができる。いわゆる災害に強い住宅になるわけだ。

環境省の「太陽光発電設備の導入意向に関するアンケート調査」(2018年10月実施)の結果を見ると、太陽光発電設備を導入したい理由としては、「発電された電力を自宅で使用することで電気料金を節約するため」が最も多く、「地球環境への貢献」と「売電収入」が続き、「災害、停電時の非常用の電源とするため」の順となった。

一方、導入を希望しない理由としては、「初期投資費用が高いため」が最も多く、「投資回収年数が長い」と「設備が壊れたり修理やメンテナンスで高額な費用がかからないか不安」が続き、「買取価格が下がるなどでどれくらいの年数で投資が回収できるか不安」の順となった。

いずれにしても、投資回収期間が長くなるので、その間の電力買取の仕組みを安定させること、初期投資費用を抑えられるように支援制度を用意すること、設備の廃棄・リサイクルの仕組みを整備することなどが必要となる。初期費用を抑える方法として、補助金などのほかに、都ではリースや屋根貸しなどの手法も推し進めたい考えだ。

出典:東京都「カーボンハーフ実現に向けた条例制度改正の基本方針(案)」より転載

出典:東京都「カーボンハーフ実現に向けた条例制度改正の基本方針(案)」より転載

東京都は2022年12月の第4回都議会定例会で条例改正案を提出し、議決後2年程度の準備・周知期間を設けたうえで、2025年4月の施行を目指すとしている。支援制度などの詳細はその間に決まるだろう。

一方、政府も「2030 年において新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が設置されることを目指す」としている。太陽光発電設備などの設置を推し進める方針なので、家庭で発電した電力を安定して買い取る仕組みづくりに力を入れてほしい。

●関連サイト
東京都:「カーボンハーフ実現に向けた条例制度改正の基本方針」の策定について
東京都:カーボンハーフ実現に向けた条例制度改正の基本方針等の制度改正に関する情報
東京都:「東京ソーラー屋根台帳」(ポテンシャルマップ)

災害時、避難所でなく「在宅避難」するための条件は? 一戸建ては「レジリエンス住宅」という選択肢も

9月は「防災月間」になっている。1923年9月1日に発生した「関東大震災」、1959年9月26日の「伊勢湾台風」と、以前から9月には甚大な災害が多いのだ。積水ハウス 住生活研究所の調査によると、災害時に避難所へ行くより在宅避難を望む人が多いというのだが……。

【今週の住活トピック】
「自宅における防災に関する調査(2022年)」 を公表/積水ハウス

災害時に避難所に行くのは抵抗感がある。理由はプライバシー

「自宅における防災に関する調査(2022年)」(調査対象500人)によると、災害時に避難所に行くかというと、どうやら抵抗感のある人が多いようなのだ。「災害時に避難所へ行くことに抵抗感があるか」を聞くと、コロナ禍前の時点でも、61.0%が「抵抗がある」と回答したが、コロナ禍の現在においては、抵抗を感じる人がさらに増え、74.6%が「抵抗がある」と回答した。

出典:積水ハウス 住生活研究所「自宅における防災に関する調査(2022年)」

出典:積水ハウス 住生活研究所「自宅における防災に関する調査(2022年)」

では、なぜこれほど抵抗感があるのだろう? 避難所へ行くことに抵抗があると回答した373人にその理由を尋ねたところ、「プライバシーがないから」が72.7%に達し、「新型コロナウィルス感染症の懸念」の60.9%よりも多くなった。避難所の感染対策や衛生面の不安もあるが、なによりプライバシーがないことに抵抗感が強いようだ。

出典:積水ハウス 住生活研究所「自宅における防災に関する調査(2022年)」

出典:積水ハウス 住生活研究所「自宅における防災に関する調査(2022年)」

「在宅避難」するための条件とはどんなもの?

避難所に行かないなら、どうするのか?となると、「在宅避難」をすることになる。そうはいっても、住宅が安全ではないのに、避難生活をおくるわけにはいかない。

マンションが多い自治体などでは、「在宅避難」を勧めている場合もある。新耐震基準のマンションは、過去の大地震でも倒壊する件数が少ないことから、避難所には家が倒壊した人などを優先しようということだ。そのため、ホームページなどに在宅避難に関する情報を多く掲載している。例えば、東京都台東区が用意している「在宅避難判定フローチャート」を見ていこう。

災害時において自宅に倒壊や焼損、浸水、流出の危険性がない場合に、そのまま自宅で生活を送る方法を「在宅避難」と位置づけ、在宅避難が可能かどうかは、こちらのフローチャートで確認するように呼び掛けている。

■台東区の在宅避難判定フローチャート

判断1 危険を見極める
チェックポイント
・自宅の家屋に倒壊などの被害があるか?
・隣家の倒壊・火災などで自宅に影響があるか?
・自宅が水害や土砂災害の被害を受け、生活できないか?
→ 危険または不安を感じたら避難所へ
→ 危険がなければ判断2へ
※応急危険度判定が実施された場合には、判定結果に従う

判断2 生活できるか確認
 チェックポイント
・日常生活をするうえで、他人のサポートが必要になるか?
→ 自宅での生活ができなければ避難所へ
→ 不安がなければ在宅避難へ
なお、自宅だけでなく避難所も、停電や断水している場合があり、その対策のため設備にも限りがあるが、在宅避難者も避難所のマンホールトイレなどの利用や食料受給が可能としている。

そして、在宅避難をするためには、非常用備蓄品(飲料水や燃料、食品、生活用品等)を常備するように促している。

このフローチャートを見ると、自宅が停電や断水している場合であっても、在宅避難してほしいということのようだ。

在宅避難を支援する「レジリエンス」の設備機器もある

先ほどの調査結果に戻ろう。「自然災害による被災経験または計画停電の経験がある」という人が64%もおり、「経験したことのある事態」で多いのが、「自然災害による停電」(74.7%)、断水(38.8%)、計画停電(34.4%)だった。計画停電を含み、停電の経験者が多いことが分かる。

出典:積水ハウス 住生活研究所「自宅における防災に関する調査(2022年)」

出典:積水ハウス 住生活研究所「自宅における防災に関する調査(2022年)」

次に停電の経験者239人に、停電時の行動を尋ねたところ、85.4%の人が「自宅で電力が復旧するまで我慢する」と回答した。自宅での防災対策についての質問では、飲料水や非常食などを備蓄したり、家具の転倒に備えたりしている人が多いが、「災害時の電力確保」をしている人は9.4%しかいなかった。我慢するのはかなり大変だろう。

では、災害時の停電や断水でも最低限の生活ができるようにするには、どうしたらよいのだろう?マンションの場合、共用設備は管理組合で維持管理するものなので、すべて各家庭で判断できるものではないが、一戸建ての場合は各家庭で住宅用設備機器を選ぶこともできる。

最近では、ハウスメーカーの多くが、災害などのリスクを乗り越える力をもつ「レジリエンス(※)住宅」という、さまざまな設備機器を組み合わせた住宅を提供している。

※レジリエンス(resilience)…強靭さ、弾性(しなやかさ)、回復力といった意味を持つ英単語

レジリエンス住宅としてよく見られるのがまず、自宅に「発電機能」を備えること。例えば、屋根に太陽光発電システムを搭載するなど。ただし、停電時に発電できるのは太陽が出ている間となるため、雨や夜の時間帯に電気を使うには、「蓄電機能」を備える必要がある。例えば、家庭用蓄電池に発電した電気をためて使うなど。発電システムと蓄電池などを組み合わせることで、災害時の停電に備えることができるのだ。

ほかにも、ガスと水道が来ていれば発電と給湯ができる「エネファーム(家庭用燃料電池)」を使う選択肢もある。断水時には発電ができないが、エネファームはお湯を「貯湯タンク」にためるので、いざというときにタンク内の水を取り出して使うことができる。

また、電動車を使って、車から住宅に電気を供給するという方法もある。説明してきたような設備機器を設置するには、もちろん費用がかかるし、それらを維持していくことも必要となる。どこまでどのように備えるかは、家庭ごとに判断すればよいだろう。

災害への不安を抱えるだけでなく、具体的に災害リスクに対する備えをして、万一のときに在宅避難ができるような体制を整えておくことが大切だ。いまは住宅の設備機器で災害に備えるという選択肢があることも、知っておいてほしい。

●関連サイト
積水ハウス 住生活研究所「自宅における防災に関する調査(2022年)」
台東区「在宅避難と備蓄について」

不動産広告、駅からの徒歩分数表示など9月1日に改正!住まい探しや不動産売却時に注意

不動産公正取引協議会連合会は、改正された「不動産の表示に関する公正競争規約(以下、表示規約)」及び「表示規約施行規則」を、2022年9月1日に施行するという。これによって、10年ぶりに不動産広告に関するルールが変わることになる。具体的に説明していこう。

【今週の住活トピック】
9月1日施行の「新 表示規約・同施行規則」について/不動産公正取引協議会連合会

不動産広告に掲載する情報には細かいルールがあり、実情に応じて変更している

まず、「表示規約」について説明しよう。不動産広告には、物件のどんな情報を掲載するか、掲載する情報はどんな基準で表示するかといった、統一したルールが必要だ。全国9地区の不動産公正取引協議会では、会員の不動産業界団体に所属する不動産事業者が守るべき自主規制ルールを運用し、そのルールを公正取引委員会と消費者庁から認定を受けている。このルールが表示規約だ。

表示規約では、土地や新築分譲住宅、中古マンションなどの物件種別ごとに表示すべき事項を定めているほか、「新築」といえるのは完成後1年未満で、かつ、未入居のものと規定したり、「徒歩1分=道路距離80メートル(端数切り上げ)」、「1畳=1.62平方メートル以上」といったさまざまな表示の基準を設けている。

今回の改正の経緯について、改正案を取りまとめた同連合会の会員である首都圏不動産公正取引協議会の理事・事務局長の佐藤友宏さんに聞いた。表示規約の大きな改正は、前回2012年5月31日に施行された。それから10年が過ぎ、その間に協議会には、不動産広告を扱うSUUMOのようなポータルサイトや不動産事業者から、さまざまな問い合わせや要望が寄せられていた。実情に合わない部分なども出てきたため、改正作業に着手したという。

消費者に不利益にならないかを改正の線引きに

例えば、不動産広告に掲載する建物の写真については、実際に取引するものを掲載するルールだが、新築住宅で建物が未完成の場合、「取引しようとする建物と規模、形質及び外観が同一の他の建物の外観写真」であれば掲載することができる、としている。ところが実際には、同一の他の建物の写真であるのはまれなことで、広告上では「施工例」などと称して規定に適合しない他の建物の外観写真を掲載している事例も多かった。

不動産ポータルサイトの任意団体である「不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)」で調査したところ、「施工例として他の建物の写真を掲載すること」について、ほぼ8割の消費者が許容するという結果もあり、「同一の建物でなくとも、規模、形質、外観が類似する建物であれば掲載できる」と変更した。

ルールを決める線引きのラインは、業界の実情に合っているか、消費者に利益がある、または不利益がないかということ。表示規約の改正には、公正取引委員会と消費者庁からの認定が必要であり、消費者に不利益となるような変更はなされないのが原則だ。

要注意!徒歩所要時間などに大きな変更あり

佐藤さんに、特に消費者に知っておいてほしい改正点を聞いた。今回の改正では「徒歩所要時間や道路距離を算出する場合の起点の考え方と分譲物件の所要時間表示」の影響が大きいという。どういうことだろうか?

徒歩1分=道路距離80メートルと定められているが、問題はどこから(起点)どこまで(着点)の距離かということ。改正前はその施設などから最も近い物件(敷地)の地点を起点または着点とするルールだった。一定規模の分譲地や大規模なマンションの場合は、多くの一戸建てやマンションが建っている場合があり、筆者も経験したことがあるが、広告に記載された徒歩分数では取材先のお宅に行きつけなかったということが起こる。

今回はこうした点でいくつか改正点がある。まず、【画像1】のような住宅の戸数が複数ある分譲物件の場合、従来の最も近い住戸からの所要時間に加え、最も遠い住戸からの所要時間も表示すると改正した。同様に、周辺情報として例えば市役所等がある場合の表示方法も「○○市役所まで200mから450m」や「○○市役所まで3分から6分」(今回の改正で公共施設や商業施設については、道路距離に代えて所要時間の表示も可能となった)と最近と最遠の幅で表示することになる。

【画像1】最も近い住戸からの徒歩所要時間に加え、最も遠い住戸からの時間も表示する

出典:「表示規約・同施行規則の主な改正点を解説したリーフレット」より転載

出典:「表示規約・同施行規則の主な改正点を解説したリーフレット」より転載

また、【画像2】のように物件から駅などの施設までの徒歩所要時間や道路距離を表示する際、マンションやアパートの場合は、その起点を「建物の出入り口」と明文化された。

ちなみに、駅の出入口は駅舎の出入口が起着点となり、改札口としなくてよい。地下鉄の場合は地上にある出入口となるので注意してほしい。

【画像2】所要時間や道路距離の起点は、マンションなどの場合は「建物の出入り口」とする

出典:「表示規約・同施行規則の主な改正点を解説したリーフレット」より転載

出典:「表示規約・同施行規則の主な改正点を解説したリーフレット」より転載

では「なぜ、消費者への影響が大きいのか」を佐藤さんに聞いた。最も遠い住戸までの所要時間も併記することは、消費者にはわかりやすいというメリットがあり、特にデメリットはない。一方、マンションの出入口を起点とすることも、消費者にわかりやすい改正点だ。ただし、従来のルールでは敷地内の最も近い地点から計測して構わなかったので、広告する際に【画像2】の敷地(緑色の部分)の最も駅に近い場所から計測してもルールに違反することはなかった。

改正前にマンションを購入し、これから売ろうとしている場合、購入当初の物件パンフレットには、例えばA駅から徒歩2分のマンションと記載されていても、売るときにはマンションの出入口が起点に変わるため、計測し直した結果、A駅から徒歩3分とか4分という表示になる可能性がある。

自分のマンションは駅から徒歩2分だと思っていたのに、広告では違う分数で表示されてビックリ!といったことのないように、ルールの変更点を正しく理解しておくことが大切なのだ。

まだまだある、広告表示の改正点

ほかにも、いろいろな改正点がある。所要時間を調べるには、ほとんどの人が交通ルート検索サイトやアプリなどを利用しているだろう。その場合、乗り換えや待ち時間を含んだ所要時間が計算される。従来のルールでは、「乗り換えが必要な場合はその旨を明示」とだけだったので、所要時間には乗り換え時間や待ち時間を含めると変更した。

【画像3】所要時間に乗り換え・待ち時間を含む(最寄りのA駅からC駅まで30分~33分)

出典:「表示規約・同施行規則の主な改正点を解説したリーフレット」より転載

出典:「表示規約・同施行規則の主な改正点を解説したリーフレット」より転載

また、電車などの所要時間について、改正前は「平常時の所要時間を著しく超えるときは通勤時の所要時間を明示すること」とされていたので、よほど差がない限り、最も短い所要時間を表記しており、通勤ラッシュ時の所要時間ではなかった。今回の改正では「朝の通勤ラッシュ時の所要時間を明示し、平常時の所要時間をその旨を明示して併記できる」に変更された。

ほかにもさまざまな改正点がある。詳しく知りたい場合は、不動産公正取引協議会連合会のホームページで確認できる。

不動産広告は、マイホームを選ぶ際に重要な情報となる。そのため、消費者が同じモノサシで比較できるよう、同じルールで広告しようと、不動産業界自らがルールを定めている。物件を選ぶ消費者側も、どんなルールで掲載しているのか、ルールをきちんと守っている会社かを、しっかりチェックすることが大切だ。

●関連サイト
不動産公正取引協議会連合会「公正競争規約の紹介」
「表示規約・同施行規則の主な改正点を解説したリーフレット」
「不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則の新旧対照表」

「空家特措法」施行から7年、空き家問題はどうなった? 実家の相続方針は早めに検討を

空き家問題がクローズアップされ、「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家特措法)」が2015年に施行されてから7年。国土交通省が定期的に、市区町村の取り組み状況について調査しているが、全国で空き家対策が進んでいることが分かる結果となった。

【今週の住活トピック】
「空き家対策に取り組む市区町村の状況について」(令和4年3月31日時点調査)を公表/国土交通省

空家特措法により地方自治体の空き家対策を促した結果は?

空き家といえども、誰かが所有している私的な財産だ。本来は所有者が、適切に管理する義務がある。ところが、所有者が分からない、あるいは長年放置されているといった空き家が増加し、近隣トラブルが生じているという問題が表面化した。その対策として制定されたのが「空家特措法」だ。

空家特措法の狙いは2つあり、第一に国の指針に沿って、各地方自治体で空き家の実態を把握し、適切な管理を促したり空き家やその跡地を活用したりする体制を整えること。第二に、近隣トラブルを引き起こすような空き家(「特定空家等」と呼ぶ)を減らしていくことだ。

国土交通省が公表した調査結果によると、第一の狙いの核となる自治体の「空家等対策計画」の策定状況を見ると、1397市区町村(全自治体の80.2%)が策定済みだった。また、第二の狙いである「特定空家等」に対する自治体の措置状況(法施行から2021年度末まで)は、「助言・指導」が3万785件、「勧告」が2382件、「命令」が294件、「行政代執行」が140件、「略式代執行」が342件だった。

助言・指導  30,785件
勧告     2,382件
命令     294件
行政代執行  140件
略式代執行  342件
合計     33,943件

ちなみに、「勧告」に従わない場合は、「固定資産税・都市計画税の住宅用地に係る課税標準の特例」の適用対象から除外され、「命令」に従わない場合は、50万円以下の過料が課せられる。また、「行政代執行」は、特定空家等の所有者に代わって行政が強制的に措置を行うことで、「略式代執行」は、特定空家等の所有者が特定できない場合に行政が措置を行うことをいう。

このように空き家対策は徐々に進んでいて、空き家を取り壊して更地にしたり、問題となる部分を修繕などによって適切な管理になったりした事例も増えている。調査結果によると、空家特措法によるものが1万9599件、自治体の取り組みによるものが12万2929件、合計14万2528件の管理不全の空き家が改善されているということだ。

空家特措法の措置により除却や修繕等※がなされた特定空家等 19,599件
左記以外の市区町村による空き家対策の取組により、除却や修繕等※がなされた管理不全の空き家 122,929件
合計  142,528件
※除却や修繕等:除却、修繕、繁茂した樹木の伐採、改修による利活用、その他適切な管理

固定資産税の軽減目的で空き家を放置は通用しない

各自治体がそれぞれの実態に応じて取り組む空き家対策のほかに、空き家のまま放置される原因を減らしていくための措置もなされている。

まず、自治体から「勧告」を受けても従わない場合の「固定資産税・都市計画税の住宅用地に係る課税標準の特例」の適用除外について説明しよう。土地や建物を所有する場合に、固定資産税などが課される。とはいえ、マイホームは生活の基盤であるので、人が居住する建物の土地には課税額を軽減する措置がある。それがこの特例だ。

具体的には、固定資産税についてはその評価額が「小規模宅地」(敷地面積200平米まで)では1/6に(都市計画税については3/1)に、「一般住宅地」(200平米を超える部分)では1/3(同2/3)に軽減される。特定空家等に該当する空き家の中には、更地にしてしまうとこの軽減措置が受けられなくなるので、老朽化した家を取り壊さないというケースも多いことから、空き家を残したとしてもこの軽減措置が受けられない措置を導入したというわけだ。

相続した実家の利活用には減税措置も

次に、「空き家の譲渡所得の特別控除」の適用がある。不動産を売却して得た費用は、譲渡所得として課税対象になるが、実際に居住していたマイホームであれば、譲渡所得から最大3000万円が差し引ける「居住用財産の特別控除」の適用が受けられる。ただし、相続した実家などは売却する本人が居住していないので、相続後に売却する場合は対象外となる。相続した実家などについても、利活用を促す目的で、譲渡所得から最大3000万円差し引けるようにしたのが、「空き家の譲渡所得の特別控除」だ。

この特別控除の適用を受けるためには、ポイントが2つある。1つは、故人が亡くなる直前まで住んでいた、あるいは要介護になって老人ホームに入所したために亡くなるまで空き家になっていた場合。もう1つが、実家が、1981年(昭和56年)5月末日までに建築(いわゆる旧耐震基準)された住宅で、相続人が耐震リフォーム(いわゆる新耐震基準)をしたうえで土地と建物を売却した場合、あるいは、住宅を取り壊して更地にして売却した場合。

2つの条件を満たした場合は、3000万円までの控除によって、譲渡所得税が0円になる事例が増える。今回の国土交通省の調査では、「空き家の譲渡所得の特別控除」に係る確認書の交付実績も調べている。それを見ると、2021年度末までの累計は、962市区町村で5万743件の交付実績があった。2021年度単年で見ても、631市区町村で1万1976件が交付されており、年々増加している。特に、住宅価格の高い都市圏で交付実績が多いのが特徴だ。

さて、空き家対策については、相続登記の申請を義務化するなど、政府は次々と手を打っている。今後も「不動産を負動産にしない」手立てが続くことだろう。実家が空き家になる可能性があるなら、早めに家族で話し合い、登記はどうなっているのか、誰がどのように実家を引き継ぐのか、売ったり貸したりできる状態かなど、具体的に検討しておきたいものだ。

●関連サイト
・国土交通省「空き家対策に取り組む市区町村の状況について」(令和4年3月31日時点調査)
・国土交通省「都道府県別等の調査結果」(令和4年3月31日時点調査)

シニア向け分譲マンションって高齢者施設とどう違う? 平均価格や提供サービス例は?

東京カンテイが、『シニア向け分譲マンション』の供給動向について分析した結果を公表した。ところで、シニア向け分譲マンションとはどういったものか、ご存じだろうか? 分析結果を参考にして、その実態を見ていこう。

【今週の住活トピック】
「『シニア向け分譲マンション』の供給動向分析」を公表/東京カンテイ

シニア向け分譲マンションとはどんなもの?

東京カンテイが分析したのは、これまで供給された(2023年までに竣工予定のものを含む)全国の98物件、1万4947戸(2022年6月末時点)のシニア向け分譲マンションについてだ。

『シニア向け分譲マンション』について、東京カンテイでは、区分所有建物(いわゆるマンション)であること、などの同社のデータベース登録基準に合致するという前提の下で、次のように定義している。
・敷地内にケア施設がある、または一棟全体が高齢者に配慮した設計である
・管理費とは別にケア関連サービスを受けるための費用条項がある

分譲マンションなので、購入して所有権を持ち、売却したり相続させたりすることができる。一般的な分譲マンションと違うのは、ハードとなる建物はバリアフリーなど高齢者が安全に住むことへの配慮がなされ、ソフト面では高齢者が望むさまざまなサービスの提供が求められるという点だ。

シニア向け分譲マンションは、一般的に、おおむね自立して生活できる高齢者を対象にしている。そのため、提供するサービスも健康維持が目的であったり、生活満足向上が目的であったりするものも多い。分析結果から具体的に見ていこう。

平均価格は4386万円、徒歩15分圏内の供給も多い

まず、どのエリアに供給されているかと言うと、以前は「東海地方」(特に静岡県)など、気候が温暖で過ごしやすい、あるいは自然豊かで温泉があるといった地域での供給が多かった。近年になると、東京・神奈川・千葉や大阪・兵庫などの都市圏での供給が多くなっている。

出典/東京カンテイ プレスリリース「シニア向け分譲マンション供給動向」より転載

出典/東京カンテイ プレスリリース「シニア向け分譲マンション供給動向」より転載

次に「最寄駅からの所要時間」を見ると、最多は「バス便」(30.6%)になる。これは、自然が豊かな地域に立地している影響が大きいが、バス停まで3分以内などの物件も多いという。一方、2番目に多いのが「徒歩5分以内」(24.5%)で、徒歩15分圏内の物件が全体の6割を占める。このように、自立した高齢者が対象なので、徒歩で移動できる場所の物件が多いのが特徴だ。

出典/東京カンテイ プレスリリース「シニア向け分譲マンション供給分布」より抜粋し、筆者が作成

出典/東京カンテイ プレスリリース「シニア向け分譲マンション供給分布」より抜粋し、筆者が作成

気になる価格はどうだろう?
2020年以降の供給物件で見ると、平均専有面積は60.08平米、平均価格は4386万円となっている。関東地方に限定して見ると、平均専有面積は59.15平米、平均価格は4245万円なので、全国平均とさほど変わらない。

また過去の推移を見ると、バブル期に面積は広く(66.14平米)、価格は高く(5879万円)なったが、2000年以降は、平均専有面積はおおよそ60平米、平均価格は3000万円台で落ち着いている。ただし、平均坪単価は2000年代199.9万円、2010年代200.5万円、2020年以降240.4万円と、近年は上昇傾向にある。

シニア向け分譲マンションではどんなサービスを提供している?

さて、シニア向け分譲マンションには、どんな施設が設けられているのだろう?

同社では、2000年以降に竣工した73物件を対象に、「食事サービス」「娯楽サービス」「医療サービス」「介護サービス」の4つに区分して、それぞれの設備の付帯状況を調べている。それぞれの区分で多いものを見ていこう。

■シニア向け分譲マンションにおける付帯施設の導入状況(対象:2000年以降竣工の73物件)
「食事サービス」
・レストラン・食堂94.5%

「娯楽サービス」
・ホビールーム60.3%
・娯楽室57.5%
・AVルーム46.6%
・カラオケルーム45.2%
・温泉28.8%
・体操室19.2%

「医療サービス」
・医療提携87.7%
・クリニック・診療所24.7%

「介護サービス」
・訪問介護事業所21.9%
・居宅介護支援事業所19.2%
※出典/東京カンテイ プレスリリース「シニア向け分譲マンションの付帯施設&ランニングコスト」より抜粋

食事サービスを提供する「レストラン・食堂」の導入率は94.5%と極めて高い。分譲マンションなのでキッチンが部屋にもあるはずだが、ここで提供される食事は栄養士などが考えた食事になっているので、家事負担の軽減だけでなく健康面でもメリットがあるだろう。

娯楽サービスでは、「ホビールーム」や「娯楽室」「AVルーム」「カラオケルーム」の導入率が特に高い。以前は、趣味ごとに部屋が設置される事例が多かったが、広い部屋を多目的に使えるように変わってきているという。AVルームやカラオケルームは、一般の大規模マンションでも多く設置される共用施設なので、利用者が多いということだろう。

また、医療サービスでは、「医療提携」の導入率が極めて高い。自立した生活を送れると言っても、病気やけがの心配もあって、医療サービスは頻繁に受けたいということだろう。半面、介護サービスは医療サービスに比べると導入率は高くはない。

こうしてマンション内に施設が多く設けられたり、いろいろなサービスを提供したりするので、管理費や修繕積立金は、一般の分譲マンションより高額になる。各種サービスによる便利さが高まれば、それに伴ってランニングコストも増えるということだ。こうした施設を活用して住人同士の交流を深めたいという、アクティブなシニアに向いていると言えるだろう。

高齢期に住む拠点はさまざまにある

高齢者の住まいとしては、ほかにも「有料老人ホーム」や「サービス付き高齢者向け住宅」などがある。

まず、有料老人ホームは、食事提供や家事支援、健康管理、介護サービスなどのいずれかが提供される介護施設で、利用料を支払う形になる。「介護付」「住宅型」などのタイプがあり、介護付きではホームが介護サービスを提供するが、住宅型では外部の介護サービスを利用する形になる。

次に、サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)は、高齢者が安心して住めるような建物で、安否確認や生活相談といったサービスが受けられるが、毎月賃料を支払う(長期間の賃料を前払いする場合もある)賃貸住宅である。「一般型」と「介護型」があり、一般型は主に介護度が軽い人が対象だが、介護度が重い人にも対応できるようにしたのが「介護型」だ。国の支援もあって、サ高住の供給数が増えているのも特徴のひとつだ。

住宅型の老人ホームや一般型のサ高住の中には、シニア向け分譲マンションに近いものもあるが、契約形態や費用面などに違いがあるので、違いをきちんと理解しておきたい。

さて、自宅を高齢期に向けてリフォームして住み続けることも含めて、高齢期を過ごす拠点にはさまざまある。立地、居室の状況、提供されるサービスの有無、介護サービスの受け方などがそれぞれ異なるので、どのように暮らしたいか、どういったマネープランを立てるかなどをよく考えて選んでほしい。

●関連サイト
東京カンテイ「『シニア向け分譲マンション』の供給動向分析」

都市部で混雑率の高い路線・低い路線のランキングは? 2021年度の都市鉄道の混雑率調査結果が発表!

国土交通省では、毎年度通勤通学時間帯における鉄道の混雑状況を調査している。大都市圏での通勤電車といえば、ぎゅうぎゅう詰めで混雑状況はかなり厳しいものがあるが、2021年度はどうだったのだろうか?

【今週の住活トピック】
「都市鉄道の混雑率調査結果(令和3年度実績)」を公表/国土交通省

コロナ禍で三大都市圏の混雑率は大きく減少

まず、三大都市圏の混雑率の推移を見てみよう。いずれの圏域も混雑率は、1975年度は200%前後とかなり混雑していたが、1980年代、90年代まで徐々に下がっていき、2000年以降からはおおむね横ばいとなっていた。ところが、2020年度、2021年度では大幅に混雑率が下がった。

三大都市圏の混雑率の推移

注)混雑率:最混雑時間帯1時間の平均(主に令和3年10月~11月の1日又は複数日の乗車人員データを基に計算したもの)

これは明らかに、コロナ禍における人流抑制が要因だろう。リモートワークや時差出勤が推奨されたことで、混雑率は大きく引き下げられた。2021年度は微増となったが、今後も新型コロナ感染状況の影響を受けそうだ。

さて国土交通省では、混雑率の目安を示している。1975年度の200%というと、体がふれあい相当圧迫感がある状態だ。コロナ前の東京圏の163%では、新聞を広げて何とか読める程度だろう。それが、2021年度には104%~110%の範囲になったので、定員乗車(座席につくか、吊革につかまるか、ドア付近の柱につかまることができる)レベルになっている。これなら通勤時間帯でも苦にはならない混雑具合だろう。

混雑率の目安イラスト

混雑率の目安(出典:国土交通省「資料1:三大都市圏の主要区間の平均混雑率の推移(2021)」)

JR東日本の中央線(快速)は、混雑率が山手線より高く、埼京線より低かった

そうはいっても、筆者が利用する電車は、たまに通勤時間帯に乗車するとけっこう混雑している。もう少し詳しく見ていこう。

資料3「都市部の路線における最混雑区間の混雑率」の中で、筆者が使っている東京圏のJR東日本「中央線(快速)」を見ると、中野→新宿(7:41~8:41)で混雑率は120%になっている。主要区間の平均108%よりはかなり高くなっている。
注)主要区間:国土交通省において継続的に混雑率の統計をとっている区間等

かつてゲキ混みと言われた山手線なら、もっと混雑しているのではないかと思って見てみると、「山手線内回り」新大久保→新宿(7:39~8:39)で103%、「山手線外回り」上野→御徒町(7:40~8:40)で94%だった。なんと中央線(快速)は山手線を上回っていた。山手線はターミナル駅が多いので、乗客の入れ替えが多いことも影響しているかもしれない。上野-御徒町間については、2015年に「上野東京ライン」が開業して、宇都宮線・高崎線・常磐線が東京駅に直接乗り入れることで、山手線の混雑が解消された影響もあるだろう。

では、同じようにゲキ混みと言われる埼京線はどうだろう?「埼京線」板橋→池袋(7:51~8:51)は132%と中央線(快速)を上回っていた。もっと混雑している路線を見つけて、不謹慎ながらちょっと嬉しくなった。

都市部で混雑率の高い路線・低い路線ランキング

では、今回の調査で最も混雑率の高い路線はどこなのだろう?気になったので、混雑率の高い順に紹介しよう。

■混雑率の高い路線ランキング
※都市部の路線における最混雑区間の混雑率(2021)より

1位:144%
東京都交通局「日暮里・舎人ライナー」赤土小学校前→西日暮里(7:20~8:20)
2位:140%
西日本鉄道「貝塚線」名島→貝塚(7:30~8:30)
3位:137%
JR東日本「武蔵野線」東浦和→南浦和(7:05~8:05)
4位:132%
JR東日本「埼京線」板橋→池袋(7:51~8:51)
4位:132%
JR西日本「可部線」可部→広島(7:30~8:30)
6位:131%
都営地下鉄「三田線」西巣鴨→巣鴨(7:30~8:30)
7位:130%
JR東日本「信越線」新津→新潟(7:27~8:27)
8位:128%
東京メトロ「東西線」木場→門前仲町(7:50~8:50)
9位:127%
東京メトロ「日比谷線」三ノ輪→入谷(7:50~8:50)
9位:127%
横浜市交通局「4号線」日吉本町→日吉(7:15~8:15)

全体的に見ると、住宅地から都心に向かう乗換駅のところで混雑しているという印象だ。人口の多い東京圏の路線が多いのも特徴だろう。

となると、今度は混雑率の低い路線も気になってくるではないか。どんな路線だろう?

■混雑率の低い路線ランキング
※都市部の路線における最混雑区間の混雑率(2021)より

1位:14%
関東鉄道「竜ヶ崎線」竜ヶ崎→佐貫(7:00~8:00)
2位:23%
能勢電鉄「日生線」日生中央→山下(6:45~7:45)
3位:29%
東海交通事業「城北線」比良→小田井(7:40~8:40)
4位:31%
阪堺電気軌道「阪堺線」今船→今池(7:30~8:30)
5位:32%
山万「ユーカリが丘線」地区センター→ユーカリが丘(6:30~7:30)

さて、路線別の混雑率に注目して紹介してきたが、コロナ禍で混雑率が下がっているのが実態だ。となると、気になるのはポストコロナ。コロナ感染が落ち着いても、リモートワークがある程度継続すると見られているが、すべての人がリモートワークをできるわけではない。仕事柄、通勤せざるを得ない人も多いので、通勤時の混雑状況というのも、住まい選びには重視したい点だ。

●関連サイト
国土交通省「都市鉄道の混雑率調査結果を公表(令和3年度実績)」

ドラマ『魔法のリノベ』放送開始! リノベーション理解や事業者選びのヒントにも

7月から「魔法のリノベ」というテレビドラマがスタートした。リノベとはリノベーションのこと。住宅関連のテーマのドラマなので、さっそく視聴した。住宅の間取りや製品などが多く登場するのだが、住宅建材・設備機器メーカーの企業LIXILが製品をドラマの撮影セットに提供しているという。で、ドラマはと言うと……。

【今週の住活トピック】
システムキッチンや水栓、サッシ、インテリアなどLIXIL製品をドラマ撮影セットに美術協力/LIXIL

テレビドラマ「魔法のリノベ」放送スタート!

関西テレビの「魔法のリノベ」サイトを見ると、「人生こじらせ凸凹営業コンビが、“住宅リノベ”で家や依頼人の心に潜む魔物をスカッと退治!」とある。どうやら、住宅のリノベーションを通じて、依頼した家族の人生のリノベーションまでしてしまうことが、「魔法のリノベ」という意味らしい。

原作は星崎真紀さんの漫画だ。筆者は漫画を拝読していないので、放送されたテレビドラマでしか、その内容を把握できていない。初回は、波瑠さん演じる真行寺小梅が、間宮祥太朗さん演じる福山玄之介が営業を務める『まるふく工務店』に転職してくる下りが描かれ、中山美穂さんと寺脇康文さんが演じる夫婦の古い家をリノベする…という展開だった。

LIXILによると、このドラマの「1階 まるふく工務店」と「2階 玄之介の部屋」に、システムキッチンや水栓、サッシ、インテリアなどの製品を美術協力しているという。

玄之介の部屋(出典/LIXILニュースルームより)

玄之介の部屋(出典/LIXILニュースルームより)

玄之介の部屋のリビングで、小梅が登山用の寝袋にくるまって寝ていて、芋虫状態で子どもに発見されるというシーンがあった。工務店の2階というからには、それなりの設備機器が設置されていて当然だろう。LIXILでは、最新のシステムキッチンやキッチン・リビング収納、非接触で吐水/止水ができるタッチレス水栓、ハイブリッド窓、内装壁機能タイル、インテリア建材などを美術協力していているという。

美術協力しているLIXILの製品(出典/LIXILニュースルームより)

美術協力しているLIXILの製品(出典/LIXILニュースルームより)

住宅のリノベーションとはなんだ?

今ではよく使われる用語になっている「住宅のリノベーション」だが、実は正式な定義はない。

一般的に住宅業界では、リフォームは経年劣化した部分を建築当時の水準に戻す改修工事のこと。リノベーションとは、キッチンなどの設備の交換や間取りの変更などの大規模な改修工事だけでなく、いまの生活を快適にするレベルに住宅の性能を引き上げることも含んでいる。たとえば、第1話で中山美穂さんの実家をリノベーションする際に、キッチンの交換や間取りの変更に加えて、古い家なので耐震性も引き上げようという話が出ていた。耐震基準なども年代によって変わってくるので、いまの基準に引き上げることが安全性確保のために大切だからだ。

リノベーション業界の団体である(一社)リノベーション協議会のホームページを見ると、リノベーションを次のように定義している。

「リノベーションとは、中古住宅に対して、機能・価値の再生のための改修、その家での暮らし全体に対処した、包括的な改修を行うこと。例えば、水・電気・ガスなどのライフラインや構造躯体の性能を必要に応じて更新・改修したり、ライフスタイルに合わせて間取りや内外装を刷新すること」

この定義について、リノベーション協議会の会長である内山博文さんに話を聞いた。
この定義は10年以上も前、協議会を立ち上げる時に決めたもので、当時はリフォームとリノベーションの違いもあいまいだった、という。包括的な改修としたのは、住宅の機能改修というハード面だけでなく、そこに住む利用者のソフト面も含めて、住宅の価値を上げていこうという考えだった。

10年以上経ったいまでは、世の中にリノベーションがポジティブに受け取られて、今住んでいる住宅をリノベーションするだけでなく、中古住宅を買ってリノベーションをして住むという選択肢も一般的になってきた。リノベーションが、新築という規制の枠にはまらない、自分らしい暮らしをデザインするのに最適な方法だと気づいたからだろうと、内山さんは見ている。

リノベーションで魔法はかけられる?

さて、ドラマタイトルに「魔法の」という修飾語がついているが、「リノベーションで魔法はかけられるか?」と内山さんに聞いてみた。「事業者もいろいろあるので、すべての事業者に当てはまるとは思わないが」という前置きはあったが、「生活者の目線で一緒に課題を解決できる事業者が増えてきたと思っている」と、会長らしい視点のコメント。生活者の希望を超えるものを提案できる、ある意味で魔法が使える事業者も数多くいるということだろう。

第2話では、夫婦別寝室プランを夫婦それぞれで希望するが、希望している理由に加えて、夫婦の関係性を読み取ってプランを提案していた。生活者と同じ目線で課題を解決してこその提案だ。

最後に、「このドラマに、どんなことを期待しているか?」と聞いた。内山さんは「ドラマは、2社のリノベーション事業者が競争する展開となっているので、どういう会社を選んだらよいかということが、視聴者に伝えられることに期待している」という。

ドラマでは、事業者側の都合を上手に隠して顧客に提案するライバル会社と、生活者目線で提案する小梅たちの会社が競争をする形になっている。実際に、リノベーションをやるという事業者は多いが、事業者の提案はそれぞれ異なる。当初の玄之介の営業のように、顧客の希望条件をそのまま図面にする提案もあれば、小梅のように生活者の代わりに課題を解決する提案もある。なかには、顧客の希望を無視した事業者側の都合による提案もあるかもしれない。

建築の専門知識のない一般の消費者には、その違いがわかりにくいだろう。となると、各社から見積もりを取った結果、工事費用の金額だけに目が行きがちということも。ドラマ効果で、提案内容をしっかり見極めるということが一般的になって、自宅での暮らしの価値を上げるようなリノベーションが実現することを、筆者も大いに期待している。

●関連サイト
ドラマ「魔法のリノベ」ホームページ
LIXILニュースルーム「7月スタートのカンテレ・フジテレビ系月10ドラマ「魔法のリノベ」 番組枠内で“夏の断熱リフォーム”を訴求するインフォマーシャルを放映開始」

節電するという人9割超!住宅に自然の力を取り入れ省エネできる「パッシブデザイン」への関心も過半数超える

LIXIL住宅研究所では、異例の早さの梅雨明けとなった6月末に、全国の一戸建て居住者を対象に「今夏の家庭での節電」などについて調査を実施した。その報告書を見ると、節電に取り組むのは、電気料金の高騰が大きな理由となっているが、節電を社会的な課題を解決するために必要なことと見ていることもうかがえる。“パッシブデザイン”への関心度も調査しているので、結果を詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
「今夏の家庭での節電に関する調査結果報告書」を公表/LIXIL住宅研究所

電気代や電力不足は気になるが、節電はそれだけの理由ではない?

猛暑が続くと、エアコンなどの冷房を使わざるを得ない。となると、電気料金の高騰も気になるところだ。LIXIL住宅研究所の調査結果によると、「今年の夏、電気料金の高騰は、自宅の家計費に影響があると思うか」という問いに、あるという回答が84.7%(深刻な影響がある:34.0%+若干影響がある:50.7%)だった。

次に、「今年の夏、自宅での節電に取り組もうと思うか」を聞くと、93.4%(徹底的に:11.9%+できるだけ:54.8%+最低限は:26.7%)が取り組もうと思うと回答した。では、取り組もうと思った人たちが、節電に取り組む理由は何だろう? その理由は次の通りだ。

出典:LIXIL住宅研究所「今夏の家庭での節電に関する調査結果報告書」

出典:LIXIL住宅研究所「今夏の家庭での節電に関する調査結果報告書」

電気代の負担減や電力不足への懸念などが理由として挙がる一方で、「節電に協力すべき」「無駄なことはしたくない」「脱炭素社会の実現のため」など、家計や生活へ支障があるからとということだけではなく、社会のために必要なこととして節電に取り組む前向きな姿も浮かび上がってくる。

エアコンの効率的利用のほかに、日差しや風を意識した節電対策も

では、自宅で節電に取り組もうと思っている人たちは、どんな節電対策を考えているのだろうか?

「扇風機を使用する(買う・増やす)」(55.1%)や、「冷房の設定温度を高めに設定する」(49.8%)、「家族が集うリビングなどを集中的にエアコンで冷やす」(30.3%)、「省エネタイプの家電(エアコンや照明器具など)に買い替える」(18.3%)といった対策が、上位に入っている。これらの対策は、一般的によく言わることだが、筆者は別の項目に注目してみた。

出典:LIXIL住宅研究所「今夏の家庭での節電に関する調査結果報告書」

出典:LIXIL住宅研究所「今夏の家庭での節電に関する調査結果報告書」

「日差しが直接部屋に差し込まないように、すだれやよしずを置く」(34.6%)
「窓際やベランダなどに水盆をおいたり打ち水して、温度が下がった風が入ってこさせる」(13.6%)
「植物による緑のカーテンを育てて日差しを和らげる」(12.0%)

これらに共通するのは、夏の暑い日差しを遮ったり、涼しい風を室内に通したりと、自然のエネルギーを上手にコントロールして、節電しようとする取り組みだ。

さて、今回の調査結果で興味深いのは、「省エネ性に優れたパッシブデザインの住宅(一戸建て住宅)について興味があるか」と聞いている点だ。どうやら興味があるという人が多いようだ。
「既にパッシブデザインの住宅に住んでいる」(4.7%)
「パッシブデザインの住宅にとても興味がある」(13.6%)
「どちらかというと興味がある」(40.7%)

「パッシブデザインの住宅」ってどんな住宅?

では、そもそも「パッシブデザイン」とは何だろう?

パッシブ(passive)とは英語で「受動的」という意味で、反対は「積極的、能動的」のアクティブ(active)となる。「アクティブデザイン」を先に説明すると、太陽光発電や冷暖房機器などの最新の設備を効率的に組み合わせることで、快適な居住空間を確保することを目指す設計手法のことだ。

これに対して、「パッシブデザイン」は自然エネルギーを有効に利用して、快適な居住空間を確保することを目指す設計手法だ。いずれの場合も、住宅の断熱性や気密性を高くして、夏の暑さや冬の寒さの影響を受けにくくするという点は共通する考え方だ。

パッシブデザインを具体的に見ていこう。夏涼しくするには、熱を遮り、室内に風を通すことが重要になる。かたや冬暖かくするには、冷気を遮断したうえで、熱を取り込んで蓄えることが重要になる。そのためには、主に次のような設計上の工夫が求められる。

○日差しを遮蔽する
夏の日差しは室内の温度を上げてしまうので、深い軒をつくって遮ったり、夏は葉を茂らせ冬は葉を落とす落葉樹を窓のそばに植えたりすることが有効になる。

○日差しを採り入れる
夏は太陽の位置が高いので深い軒が日差しを遮ってくれるが、冬は太陽の位置が低いので室内に日差しが届き、熱や光を室内に採り入れることができる。熱を壁や床にためることで蓄熱され、暖かさを保つこともできる。

軒

※軒とは:屋根の下部の突き出している部分のこと。屋根の延長上にある軒によって、雨や強い日差しから建物を守ることができる。(写真/PIXTA)

○風を取り込む
窓から風を取り込むことは、換気のためだけでなく、室内の熱を外に出す効果もある。暖かい空気は天井近くに上昇し、涼しい空気は床近くに留まるという特性があるので、高窓などから暖かい空気を外に出し、住宅の下の方にある窓から空気を取り込んで、住宅内に風の流れをつくることができる。

このほかにも、いろいろな設計上の工夫があるが、自然エネルギーを利用するには、日照時間や日差しの入る角度、窓の向きや大きさ・配置、その地域の風の通り道や時間帯の風の変化など、さまざまな設計上の計算が必要となる。
 
さて、もともと日本の住宅は、深い軒や庇(ひさし)、多くの窓、吹き抜けなどを上手に使って、夏涼しい家になるよう工夫していた。パッシブデザインは、以前から研究されてきたものなのだが、最近は、オフィスの設計手法として注目されている、「バイオフィリックデザイン」というものも登場している。

バイオフィリックデザインとは、植物や木材、自然光や自然音など、自然を感じさせる要素を採り入れることによって、そこで働く人の幸福度や生産性などを高めようとするものだ。日本でも、いくつかの企業が取り組んでいるほか、実証実験を行っている自治体もあり、職員のオフィスに対する満足度や主観的な作業効率の向上などを調べているという。

四季のある日本では、気候の変化に対応しなければならないのだが、自然の変化を身近に感じることもできる。自然と上手に付き合ってきた我々なので、節電についてもできる範囲で、自然エネルギーを活用したいものだ。

●関連サイト
LIXIL住宅研究所「今夏の家庭での節電に関する調査結果報告書」

省エネリフォーム向け「グリーンリフォームローン」新設!最大500万円・融資手数料不要、実家にも利用可!

菅政権下で政府は、「2050年カーボンニュートラル」(温室効果ガス実質排出ゼロ)を宣言した。この実現に向けて、政府は今、住宅の省エネルギー性能の向上を目指している。既存の住宅については、省エネリフォームを推進しているが、住宅金融支援機構では、省エネリフォームを資金面から支援する「グリーンリフォームローン」を創設した。どういったローンなのだろうか?

【今週の住活トピック】
2022年10月から「グリーンリフォームローン」の取り扱いを開始/住宅金融支援機構

最大500万円、返済期間10年以内、融資手数料・担保・保証不要など使い勝手がよい

まず、どういったリフォームローンなのか、商品概要を広報資料で見ていこう。

出典:住宅金融支援機構の「グリーンリフォームローン」に関するプレスリリースより抜粋転載

出典:住宅金融支援機構の「グリーンリフォームローン」に関するプレスリリースより抜粋転載

対象となるのは、住んでいる持ち家の省エネリフォームだけでなく、セカンドハウスや実家などの省エネリフォームも対象となる。年齢的にローンを借りづらい親に代わって実家の省エネリフォームを行う際に、融資を受けることもできる。

融資額は工事額が上限だが、最大500万円(※1)まで。ローンの返済期間は10年以内、全期間固定金利で申し込み時点の金利が適用される。また、融資手数料も不要で、無担保・無保証、団体信用生命保険は利用可能(※2)。住宅ローンを返済中でも利用しやすいなど、条件的には使い勝手がよいローンといえそうだ。

※1:省エネリフォームと併せて行うその他のリフォームも融資対象になるが、その場合は省エネリフォームの工事費の金額までが対象。
※2:住宅金融支援機構の「高齢者向け返済特例」を利用する場合は、有担保、団体信用生命保険の加入不可。

ただし、重要なのは「一定の省エネリフォームが求められる」という点だ。定められたリフォーム工事の実施を証明するために、検査機関による現場検査なども必要になり、その手続きや検査料などの負担が発生する。

「グリーンリフォームローン」の対象となる省エネリフォームの基準とは?

「グリーンリフォームローン」の適用金利などの詳しい内容はまだ決まっていないが、省エネの性能の水準によって、「グリーンリフォームローンS」という、さらに低金利なローンも提供される予定だ。

出典:住宅金融支援機構の「グリーンリフォームローン」に関するプレスリリースより抜粋転載

出典:住宅金融支援機構の「グリーンリフォームローン」に関するプレスリリースより抜粋転載

基準について簡単にいうと、住宅の一部でも「省エネ基準を満たす断熱性能を引き上げるリフォームをする」か、「指定の省エネ設備を設置する」かすれば、「グリーンリフォームローン」の対象になり、さらに「ZEH水準を満たす断熱性能を引き上げるリフォームをする」と「グリーンリフォームローンS」の対象になる。といっても、部位や省エネ性能の基準などが細かく定められているので、対象となるかは建築士や施工会社などにきちんと確認する必要がある。

「省エネ基準」、「ZEH水準」、「断熱等性能等級」について解説

「省エネ基準」や「ZEH水準」、その基準となる「断熱等性能等級」などの専門用語が多く出てくるので、少し説明を補足しよう。

まず、省エネ基準は国が法律で定めているもので、住宅の省エネ基準は法律の改正などに応じて、段階的に引き上げられている。ここでいう「省エネ基準」は最新の省エネ基準(平成28年基準と呼ばれる)のことで、2025年度までにすべての新築住宅に適合させることが義務化されることになっている。つまり、今ある住宅について現時点では、最新の省エネ基準に適合していない住宅が多いわけだ。

省エネリフォームで課題となるのは、住宅の構造体としての断熱性能だ。夏の暑さや冬の寒さを住宅に伝えにくく、室内の冷暖房による熱を外に逃がしにくくする「断熱性能」を高めることがカギになる。断熱性能のレベルのモノサシとして用いられているのが、「住宅性能表示制度」による「断熱等性能等級」だ。

住宅性能表示制度は、住宅の性能を統一基準で評価しようとするもので、新築の場合で10分野のモノサシがあり、その1分野に省エネ性能がある。その省エネ性能は、外皮(外気に接する建物の壁や天井、床、窓など)のモノサシとなる「断熱等性能等級」と一次エネルギー消費量のモノサシとなる「一次エネルギー消費量等級」に分かれる。

この断熱性能等級は等級1から等級5まであり、最新の省エネ基準は等級4、ZEH水準は等級5に該当する。なお、今後、さらに断熱性能の高い等級6や7が新設されることになっている。

ちなみに、ZEH(ゼッチ)とは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略称で、太陽光発電などで創出したエネルギー量と住宅内で消費するエネルギー量が年間でおおむねゼロになる住宅のこと。ここでいう「ZEH水準」とは、住宅の外気に接する壁や床などの断熱性能に注目したもので、ZEH住宅かどうかを問うているわけではない。

出典:住宅金融支援機構の「グリーンリフォームローン」に関するプレスリリースより転載

出典:住宅金融支援機構の「グリーンリフォームローン」に関するプレスリリースより転載

「グリーンリフォームローン」の申し込み方法や適用金利などの詳しい内容が決まるのはこれからだが、住宅の構造体の断熱性能を引き上げるリフォームをするには、それなりに費用もかかる。それを支援するために、対象となる省エネ基準のレベルは高いものの、比較的使い勝手のよいリフォームローンを用意しようということだろう。

説明したように、政府は住宅の省エネ性能の引き上げに力を入れている。そのため、最新の省エネ基準を新築の最低レベルとして、今後求める省エネ性能のレベルをZEHやそれ以上に引き上げようとしている。省エネ性能の高い新築住宅が増えれば、省エネ性能の低い既存の住宅へのニーズが薄れる可能性もある。

住宅内の暑さ寒さに対する快適性に加え、住宅市場への流通性なども考えると、リフォームをするなら省エネ性を高めるという選択肢も検討してはいかがだろう。

●関連サイト
住宅金融支援機構/「グリーンリフォームローン」の取り扱いを開始

電気代を抑えながらエアコンを使うにはどうすればいい? 猛暑の節電対策とは?

なんと6月中に猛暑が続き、東京電力管内で「電力需給ひっ迫注意報」が連日発令される事態になっている。家庭でも節電が促される一方で、熱中症のリスクも指摘され、適切なエアコンの使用を求めるなど、暑さに振り回される日々がもう始まっている。これから迎える本格的な夏の暮らしが心配このうえないが、どうしたらよいのだろう?

【今週の住活トピック】
「住まいにおける夏の快適性に関する調査(2022年)」結果を公表/積水ハウス 住生活研究所
「『自宅の省エネ意識』に関する実態調査」結果を公表/フリエ住まい総研

コロナ禍の外出自粛が緩和ムードでも、夏は自宅で過ごしたい!?

積水ハウスの住生活研究所が、「住まいにおける夏場快適性に関する調査(2022年)」の結果を公表した。それによると、「約2人に1人が他の季節と比べ、夏場の日中は自宅にいる時間が増えると回答した」という。詳しく見ていこう。

「夏場の日中、外出したいか、自宅で過ごしたいか」を聞いたところ、「自宅で過ごしたい」という回答がコロナ禍前と比べて、20代では減少(38.0%→33.0%)したが、その他の30~60代では増加(50.8%→57.8%)している。この夏は旅行を促進する動きもあり、外出自粛が緩和されるムードではあるが、約半数が自宅で過ごしたいと考えていることがわかった。その理由は、「夏の暑さ」で、約8割が「暑くて外出したくない」と回答したという。

出典:積水ハウス 住生活研究所「住まいにおける夏場の快適性に関する調査(2022年)」

出典:積水ハウス 住生活研究所「住まいにおける夏場の快適性に関する調査(2022年)」

また、「夏に自宅で長時間過ごす上で、気になることやネックになること」という質問では、「電気代」が64.0%と最多になり、2位の「運動不足」(37.8%)や3位の「室内温度調整」(23.2%)に大差をつけて気にしていることがわかった。これは、在宅勤務の増加などで、自宅にいる時間が長くなったことも影響している。コロナ禍で自宅にいる時間が長くなった人ほど、電気代が上がったと回答していることからもうかがえる。加えて、最近は電気代の値上げが相次ぎ、エアコンの利用による電気代が気になるのは当然のことだろう。

電気代の上昇が夏の省エネ意識を高めている!

次に、フリエ住まい総研の「『自宅の省エネ意識』に関する実態調査」を見ていこう。「今年の夏は自宅の省エネを意識するか」を聞いたところ、「はい」という回答は 83.5%にも達した。「以前に比べ省エネ意識に変化はあったか」を聞くと、51.9%の人が「向上した」と回答した。

省エネ意識が向上した人たちに対して、「省エネ意識が上がった要因」を聞いたところ、9割近い87.9%が「電気代の上昇」と回答した。直接的に家計に響く電気代が、省エネのモチベーションになっているというわけだ。

出典:フリエ住まい総研「自宅の省エネ意識」 に関する実態調査

出典:フリエ住まい総研「自宅の省エネ意識」 に関する実態調査

では、具体的にどういった省エネに取り組んでいるかというと、「エアコンの温度設定」「照明をこまめに消す」「エアコンの使用を控える」などが上位に挙がった。

出典:フリエ住まい総研「自宅の省エネ意識」 に関する実態調査

出典:フリエ住まい総研「自宅の省エネ意識」 に関する実態調査

さきほどの積水ハウス 住生活研究所で、「夏の電気代の対策」を聞いた調査結果では、「エアコンの稼働時間を減らす」「家族で一つの部屋に集まってエアコンの稼働台数を減らす」「エアコンとサーキュレーター・扇風機を併用する」など、エアコンの電気代の削減に関する項目が多くなった。

出典:積水ハウス 住生活研究所「住まいにおける夏の快適性に関する調査」

出典:積水ハウス 住生活研究所「住まいにおける夏の快適性に関する調査」

夏の省エネや電気代対策は、やはりエアコンの電気代をいかに削減するかということになるようだ。

夏のエアコンの電気代対策、あなたはどうしている?

「エアコンの電気代対策」としては、すでに調査項目に挙がっているものもあるが、一般的に以下のようなものが挙げられる。
・省エネ性の高いエアコンを使用する
・設定温度を上げる
・サーキュレーターや扇風機を併用する
・エアコンのフィルターなどを定期的に掃除する
・短時間の外出ならエアコンをつけっぱなしにする

ほかに効果が大きいのが、「窓の断熱性向上」や「窓の遮熱の工夫」だ。窓は直接外気に触れているので、省エネ性の高い窓(ガラスやサッシ)に変えるリフォームをすると、外気の影響を受けにくくなり、夏・冬共に節電効果が大きい。また、積水ハウスによると、「手軽にできる夏の日射対策としては、窓の外をつる植物などで覆うグリーンカーテンやすだれ、外付けのシェード、遮光・遮熱シート等も効果的」だという。

最後に、住宅設備機器メーカー株式会社コロナの提案を紹介しよう。寝苦しい夜のエアコンは「除湿運転で28度設定」がオススメだという。「除湿運転(弱冷房除湿)」は、弱冷房により除湿をするので、ゆっくり温度を下げることができ、風量も弱いことから喉を痛めにくいというメリットがあるからだ。さらに、寝苦しい夜は、扇風機を併用し、体に風が当たらないように注意しながら部屋の温度ムラをかき混ぜるとより快適に過ごすことができるそうだ。

気になる電気代について、コロナの広報に聞いてみた。
部屋の広さや室温・外気温度などの様々な要因に大きく左右されるので、必ずとは言えないようだが、「冷房運転」が室温を設定温度にできるだけ早く合わせようとする運転を行うのでそれだけ電力がかかるのに対して、「ドライ(除湿)運転」は除湿を重視しながら設定温度に合わせる運転を行うので、設定温度に達する時間はかかるもののそれだけ電力を節約できるという。

6月末から猛暑に悩まされるとは思いもしなかったが、地球温暖化の影響もあるので、今後は長い夏の暑さを覚悟する必要があるのだろう。そのためには、一時的に費用はかかっても長い目で見て、窓の省エネ改修や省エネ性の高いエアコンへの買い替えなどを検討したほうが良いと思う。

7月8月とまだまだ暑い夏は続きそうだ。それぞれの家庭で節電の工夫をして、この夏の暑さを乗り切ってほしい。

●関連サイト
積水ハウス 住生活研究所「住まいにおける夏の快適性に関する調査」
フリエ住まい総研「自宅の省エネ意識」 に関する実態調査

リフォームで使える減税制度や補助制度が分かる「ガイドブック」をチェックしよう

(一社)住宅リフォーム推進協議会では、住宅のリフォームをする際に、リフォームの種類や進め方、リフォームの支援制度などについて、消費者にわかりやすく解説したガイドブックを発行している。このたび(一社)住宅リフォーム推進協議会から発行された令和4年度版「リフォームガイドブック」を参考にして、リフォームの支援制度を中心に紹介していこう。

【今週の住活トピック】
令和4年版「住宅リフォームガイドブック」を発行/(一社)住宅リフォーム推進協議会

令和4年度(2022年度)から大きく変わった、所得税の減税制度

実は、リフォームの減税制度については、2022年度から大きな制度変更があった。以前の減税制度については知っているという人も、減税制度について全く知らないという人も、まずは基本原則を知っておこう。

まず、住宅を買ったり建てたりした場合で住宅ローン(返済期間10年以上)を利用した場合に減税となる「住宅ローン減税」(住宅借入金等特別控除)については、リフォームをした場合でも適用対象になる。リフォームの工事費用が100万円を超える、対象となるリフォーム工事を行うなどの条件はあるが、耐震や省エネなどの特定のリフォームに限定されない点が大きな特徴だ。

次に、大規模な地震や高齢化社会への備えなどを目的として、住宅の性能を向上させるリフォーム工事を対象にした減税制度がある。ここでは「リフォーム促進税制」と呼んでいるが、具体的には、「耐震」「バリアフリー」「省エネ」「同居対応」「長期優良住宅化(耐震や省エネ、耐久性向上などを複合的に行うリフォーム)」の5つのリフォームが対象になる。

実はここまでの基本的な考え方は、2021年度までと大きく変わっていない。変わったのは、減税制度の種類が整理されたことだ。2021年度までは「投資型」と「ローン型」と呼ばれる複数の制度があったが、2022年度からは下表の2つの制度になっている。

(一社)住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームガイドブック(令和4年度版)」より転載

(一社)住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームガイドブック(令和4年度版)」p.36より転載

性能を向上させるリフォームを支援する「リフォーム促進税制」

先ほど挙げた5つの性能を向上させるリフォーム「耐震」「バリアフリー」「省エネ」「同居対応」「長期優良住宅化」については、それぞれどういった工事が減税制度の対象になるかが、細かく定められている。所定の要件を満たす場合には、リフォーム工事をしたその年分だけ、工事費用の一定額が控除される。

具体的には、次の手順で控除額が決まる。
A:対象となる工事費用(注)の限度額 × 控除率10%
(注)対象となる工事費用は、国がリフォーム工事内容ごとに定めた「標準的な工事費用相当額」から国や地方公共団体からの補助金等を差し引いた額であり、実際にかかった費用とは異なる。

なお、対象となる工事費用の限度額は、「耐震」250万円、「バリアフリー」200万円、「省エネ」250万円(太陽光発電設備設置の場合は350万円)、「同居対応」250万円、「長期優良住宅化」250~600万円(工事内容によって異なる)となる。

加えて、定められた工事の費用が限度額を超えたり、これらの工事以外の対象となるリフォーム工事を同時に行った場合は、その分についても5%が控除される。
B:〔対象となる工事のAの限度額超過分 + (その他のリフォーム工事費用-補助金等)(注)〕 × 控除率5%
(注)Bの工事費用は、Aの対象となる工事費用と同額までで、最大限度額はAの工事費用と合計して1000万円まで。

控除額は、AとBの合計額が控除されるという仕組みになる。

対象が広い「住宅ローン減税」、リフォーム促進税制と併用できない場合も

リフォームで「住宅ローン減税」の適用を受ける場合は、控除期間10年間、控除率0.7%、控除対象のローン限度額は2000万円となり、所得税で控除しきれない場合は一部住民税からも控除される。

なお、国や地方公共団体から補助金や給付金などの交付を受けている場合は、対象となる工事費用から補助金等が差し引かれる。

上の表で○がついている「耐震」「バリアフリー」「省エネ」の条件を満たす工事については、住宅ローン減税の対象にもなる。△がついている「同居対応」「長期優良住宅化」は定められたリフォーム工事の条件を満たせば、それぞれ住宅ローン減税の対象になる。

では、どの減税制度を使えばいいのだろう?
住宅ローン減税は、耐震を除いてリフォーム促進税制とは併用できない。このように、減税制度によって併用できる場合、できない場合があるのが注意点だ。併用の有無も考えて、どの減税制度が最も効果があるかを検討するのがよいだろう。

なお、ガイドブックによると、リフォーム促進税制の最大控除額は1年で105万円(複数の対象となる工事を行った場合)、住宅ローン減税の最大控除額は10年で140万円だという。

固定資産税の減額が適用されるリフォームもある

「耐震」「バリアフリー」「省エネ」「長期優良住宅化」のリフォームについては、家屋にかかる固定資産税の減額の対象にもなる。「工事完了後3カ月以内」に市区町村等に申告手続きを行う必要があるが、工事完了後の翌年度分で次のような減額を受けられる。

(一社)住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームガイドブック(令和4年度版)」より転載

(一社)住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームガイドブック(令和4年度版)」p.37より転載

なお、所得税の控除と固定資産税の減額に適用される要件は同じではないので、それぞれに細かく確認する必要がある。ガイドブックには、それぞれの主な適用要件が記載されているので、詳しく知りたい場合はガイドブックを参照されたい。

リフォームにはさまざまな補助制度もある!

このガイドブックが優れているのは、リフォームの基本的な知識だけでなく、リフォームの減税制度や補助制度などのお得な情報も得られることだ。

補助制度は、国が行うものと地方公共団体が独自に行うものなど、さまざまにある。リフォーム工事を依頼した事業者が全てを把握しているわけではないので、使える補助金があるかどうか、自分でも調べるのがよいだろう。

さて、ガイドブックでは国土交通省「省エネ」リフォームの補助制度について、どういったものがあるかチャートを掲載している。こちらを紹介しよう。

(一社)住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームガイドブック(令和4年度版)」より転載

(一社)住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームガイドブック(令和4年度版)」p.46より転載

国土交通省の省エネリフォームの補助事業だけでも、これだけあるわけだ。それぞれの補助事業については、その概要と事業の詳細情報が掲載されたHPのURLがガイドブックに掲載されているので、そちらで確認されたい。

リフォームに関する減税や補助制度などは、それぞれに、リフォーム工事の内容や費用、住宅などに細かい要件がある。使えると思っていたのに、使えなかったということもあるので、事前に十分に調べたり、リフォーム工事の施工会社に相談したりすることが重要だ。また、所得税の減税では納めた所得税額が限度になるので、計算上の額が全額控除されるとも限らない。面倒ではあるが、情報を正確に集めた者勝ちとも言えるので、こうしたガイドブックを利用するとよいだろう。

●関連サイト
(一社)住宅リフォーム推進協議会:「住宅リフォームガイドブック(令和4年度版)」

相続経験者の6割以上が知らない!相続登記の義務化。登記しないと10万円以下の過料も

アスカネットが、過去5年以内に親などの家長を亡くした40代以上(465名)に「葬儀・相続に関する調査」を実施した。相続する財産の有無はわからないが、相続が発生した人が対象と考えられる。そんな相続を経験した人でも、6割以上が「相続登記の義務化」を知らないという。詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
「葬儀・相続に関するアンケート調査」結果を公表/アスカネット

相続を経験した6割以上が、2024年の相続登記義務化について「全く知らない」

2024年4月1日から施行予定の「土地・建物の相続登記の申請義務化」とは、相続により不動産を取得したときには、名義人の変更をする不動産の登記をしなければならないということ。アスカネットの調査結果によると、2024年4月から相続登記が義務化されることについて、65.2%が「全く知らない」と回答した。一方「知っている」という回答は15.7%だった。

出典:アスカネット「葬儀・相続に関するアンケート調査」

出典:アスカネット「葬儀・相続に関するアンケート調査」

相続については、法律で定められた相続分の割合に従って相続する「法定相続」があるが、生前に「遺言」などでどのように相続してほしいか伝えておくこともできる。また、相続する人が全員で遺産の分割について協議して合意する「遺産分割協議」というやり方で、法定相続分や遺言の内容と異なる割合で相続分を決めることもできる。

特に、主要な相続財産が不動産の場合は、不動産を売却した額を分け合うのか、誰かが不動産を相続して金融資産を別の相続人で分け合うのかなど、具体的に決めておかないと相続が難航することもある。

また、どんな相続財産があるかを明確にしておかないと、遺された家族が知らない、親族で代々相続してきた地方の不動産があったといったこともある。

そのためには、親が生きているうちから、相続財産の内容やどのように相続させるかを親族で話し合っておくことが望ましい。調査結果を見ると、こうした話し合いについて「全くなかった」という回答が57.4%になるなど、準備のないまま相続が発生したこともうかがえる。

出典:アスカネット「葬儀・相続に関するアンケート調査」

出典:アスカネット「葬儀・相続に関するアンケート調査」

なぜ、土地・建物の相続登記が義務化されるのか?

ではなぜ、2024年4月1日から土地・建物の相続登記が義務化されるのだろう?その背景には、「所有者不明土地」の問題がある。国土交通省が2022年6月10日に公表した「令和4年版土地白書」でも、所有者不明土地に対する取組状況が大きく取り上げられている。

所有者不明の土地問題が浮き彫りになると、2018年に「所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議」が立ち上がり、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が制定され、土地の所有者を合理的に探す仕組みなどが作られた。相続登記は任意だったので、利用していない土地の登記が滞り、登記がされないまま相続が何代も行われた結果、多くの所有者がいるはずなのに登記情報から所有者を探せないという事態が起きていたからだ。

2020年には30年ぶりに「土地基本法」が改正され、土地の所有者に土地を適正に管理する責務を課した。2021年には、民法や不動産登記法の改正が行われ、相続登記等の申請を義務化することなどが定められたほか、所有者不明の土地や管理不全の土地について、裁判所が管理人を選任して管理を命ずることができる制度なども創設された。さらに、相続などにより土地所有権を取得した者が一定の要件の下で、その土地の所有権を国庫に帰属させることができる「相続土地国庫帰属法」が創設された。

こうして、所有者不明土地の対策の一環として、土地・建物の相続登記の義務化を定める不動産登記法の改正が成立したわけだ。これが施行されるのが、2024年4月1日とされている。

相続登記はいつまでにする?罰則はある?

では、相続登記の義務化とは、具体的にどういったことだろう?

不動産を取得した相続人は、そのことを知った日から3年以内に相続登記を行うことが義務づけられる。正当な理由がないのにこれを怠った場合は罰則(過料10万円以下)がある。あわせて、相続人1人からでも登記ができる「相続人申告登記」という新たな登記方法を導入するなど、登記手続きの手間や費用を軽減するなどの措置も取られる。

問題になるのは、遺産分割協議の話し合いがまとまらない場合だ。この場合は、法定相続どおりにいったん登記をして、協議がまとまってから相続状況に応じた登記を申請することになる。この場合も遺産分割が成立した日から3年以内の登記が求められる。

登記の義務化は2024年4月からなので、それ以前に相続した場合は対象外というわけではない。相続後に未登記のままであれば、施行日から3年以内に登記する義務が生じる。また、施行後に家族の知らない相続財産があると分かった場合も、それを知ってから3年以内に登記しなければならない。

したがって、相続が発生する前から登記について確認しておくなど、家族でよく話し合う必要があるだろう。場合によっては、登記にかかわる土地や住宅についてこれまでの経緯を知っている人から情報を集める必要もあるかもしれない。

次に施行されるのが、住所等変更登記の義務化だ

義務化は相続時だけではない。登記簿上の所有者の住所や氏名が変更になった場合も、変更日から2年以内に変更登記の申請が義務化される。これは、転居などによって所有者がわからなくなることを予防するためだ。こちらも正当な理由がないのに義務に違反した場合は、5万円以下の過料の対象となる。

住所などの変更登記は、他の公的機関との情報連携がなされれば手続きが簡素化される。例えば個人であれば、本人の了解を得て登記官が住基ネットの情報に基づいて登記を行うといった仕組みも導入されることになっている。住所等変更登記の義務化やこの簡素化の仕組みについては、2026年4月までに施行されることになっている(施行日は未定)。

本来は、土地や建物の所有権を主張できる決め手となるのが不動産登記だ。それなのに、利用されない土地が生じたことで登記をしない事例が増え、それが何代も繰り返されることで、所有者を特定するのに時間も手間もかかるという事態になっている。これからは、原則通り、後に遺された人たちが困らないように、きちんと登記しよう。

●関連サイト
アスカネット「葬儀・相続に関するアンケート調査」
国土交通省「令和4年版『土地白書』の公表について」
法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)」

コロナ禍でインテリアへの関心が高まる!20代から50代まで幅広い層がインスタを参考に

一条工務店が実施した、「住まいのインテリアに関する意識調査」の結果によると、コロナ禍で在宅時間が増え、インテリアへの関心が高まっているという。この調査では、インテリアにこだわりたい理由や選ぶときに参考にする媒体なども聞いている。詳しく見ていくことにしよう。

【今週の住活トピック】
「住まいのインテリアに関する意識調査」結果を発表/一条工務店

コロナ禍で在宅時間が増えた人のうち、6 割以上がインテリアにこだわるようになった

「住まいのインテリアに関する意識調査」では、63.4%が「コロナ禍で在宅時間が増えた」と回答した。在宅時間が増えた人に、「在宅時間が増えたことで、インテリアにこだわるようになったか」と聞くと、「とてもこだわるようになった」が 14.7%、「ややこだわるようになった」が 50.9%で、6 割以上がインテリアへのこだわりが増したと回答した。

さらに、インテリアへのこだわりが増した人に、「こだわるようになった場所」を聞くと、圧倒的に「リビング」が多く、87.3%に達した。

在宅時間が増えたことでインテリアにこだわるようになった場所  上位 5 項目(出典/一条工務店「住まいのインテリアに関する意識調査」結果より転載)

在宅時間が増えたことでインテリアにこだわるようになった場所(上位5項目)複数回答(出典/一条工務店「住まいのインテリアに関する意識調査」結果より転載)

インテリアの参考にする媒体として、Instagramが存在感を発揮!

次に、「インテリアを選ぶときに参考にする媒体はどれか」を聞いたところ、20代以下・30代・40代では「Instagram」が1位となった。また、50代・60代以上では「雑誌」が1位だったが、50代では2位に「Instagram」が挙がるなど、幅広い年代でInstagramがインテリア選びに大きな影響を与えていることがわかった。

インテリアを選ぶときに参考にする媒体 複数回答(出典/一条工務店「住まいのインテリアに関する意識調査」結果より転載)

インテリアを選ぶときに参考にする媒体 複数回答(出典/一条工務店「住まいのインテリアに関する意識調査」結果より転載)

また、20代と30代では「YouTube」という回答も上位に挙がっている。インテリアのプロが選んで提案してくれる「雑誌」、「インテリアショップ」、「モデルハウス」といったものよりも、一般の生活者が選んだインテリアを見せることの多い「Instagram」や「YouTube」が上位に挙がっていることから、若い世代ではインターネットで日常的に、より身近で真似しやすいものを参考にする傾向がある、と考えられるだろう。

インテリアにこだわるのは居心地のいい空間にしたいから、わずかながらSNS映えも

この調査で「インテリアにどの程度こだわりたいか」と尋ねると、どの年代も7割以上がこだわりたいと回答したが、その傾向は若い世代ほど強く見られた。また、特徴的なのは、「全てにこだわりたい」という人も一定数いるものの、多くの人は「妥協する点はあるが一部こだわりたい」と、限定的にこだわりたいという意向を示している点だ。

インテリアにどの程度こだわりたいか(出典/一条工務店「住まいのインテリアに関する意識調査」結果より転載)

インテリアにどの程度こだわりたいか(出典/一条工務店「住まいのインテリアに関する意識調査」結果より転載)

また、全てまたは一部こだわりたいと回答した人に、「インテリアにこだわりたい理由」を聞くと、すべての年代で、「居心地のいい空間にしたい」がダントツで最多(20代以下:71.4%、30代:81.1%、40代:84.3%、50代;81.7%、60代以上:90.7%)だった。

2位と3位には「気分が上がる」と「インテリアが好き」が入り、居心地のいい空間にいると気分が上がると感じる、インテリア好きが多いということもうかがえる。

インテリアにこだわりたい理由 複数回答(出典/一条工務店「住まいのインテリアに関する意識調査」結果より転載)

インテリアにこだわりたい理由 複数回答(出典/一条工務店「住まいのインテリアに関する意識調査」結果より転載)

注目したいのは、「SNS映えを意識」が20代以下で他の年代よりも高いことだ。他の年代でも「来客からの視線」といった周囲からの見られ方を意識してはいるが、InstagramなどのSNSでどう映るかも意識しているのが20代以下の特徴だ。

若者が「住まい」に対してどのような意識を持っているのかをさらに理解するために、別の調査も見てみよう。
SHIBUYA109エンタテイメントが18-24歳に「Z世代の住まいに関する意識調査」を実施したところ、「理想の暮らし」として上位に挙がったのが、「Wi-Fi等インターネット環境が整っている」(56.5%)、「セキュリティがしっかりしている」(48.8%)、「自分の好きなインテリアに出来る」(43.3%)だった。ネット環境・セキュリティ・インテリアが、理想の住まいのキーワードになっているわけだ。

あなたの理想の暮らしを教えてください 複数回答(出典/SHIBUYA109 lab.調べ「Z世代の住まいに関する意識調査」結果より転載)

あなたの理想の暮らしを教えてください 複数回答(出典/SHIBUYA109 lab.調べ「Z世代の住まいに関する意識調査」結果より転載)

同社は並行して、Z世代へのグループインタビューも行っているが、「Instagramなどでは、部屋全体のインテリアを好みのテイストに変えるのは現状の金銭面的にハードルが高いことから、写真に映る部屋の一部分だけオシャレにする工夫を凝らしている事例も見られ、写真に映る部屋の一部分を “SNS映え”な雰囲気に演出している」と指摘している。

画像に映る部屋のインテリアにこだわるという傾向は、イマドキの若者の特徴のようだ。それにしても、写真や動画がたくさん見られるInstagramは、インテリアに対する影響がここまで大きいのかと驚くばかりだ。

コロナ禍においては、長くいる部屋のインテリアを居心地のいいものにしたいと考えたり、画像に映る部屋のインテリアをセンスよくしたいと考えたりする人が増えたようだ。筆者も会議や取材等で、オンラインミーティングを利用する機会が一挙に増えた。筆者などは部屋を片づけるのが面倒なので、画面の背景は書斎風の写真を当て込んでいるが、背景がおしゃれな室内だったらいいのになあと思うことがある。

●関連サイト
一条工務店「住まいのインテリアに関する意識調査」
SHIBUYA109エンタテイメント「Z世代の住まいに関する意識調査」

あなたの実家は大丈夫?7割の子どもが必要と思う「実家の片づけ」

日本ホームステージング協会が高齢者(65歳~)の親がいる子ども世代(40歳~69歳)110名に対し、実家の片づけに関する実態調査を実施した。子ども世代の約7割が、実家の「片づけ」の必要性を実感しているという。近年、“実家の片づけ”の問題は注目を集めているが、子ども世代はどう思っているのだろう?

【今週の住活トピック】
「実家の片づけに関する実態調査」を実施/(一社)日本ホームステージング協会

子ども世代の多くは、実家は物が多く片づけが必要だと思っている!

高齢者の親がいる子ども世代に、「実家の状況について不安に思うことがあるか」を聞いたところ、70%があると回答(かなりある25.5%+ややある44.5%)した。また、「実家は物が多いか」を聞くと、「非常に多い」が22.7%、「多い」が27.3%となり、半数が実家に物が多いと感じていることがわかった。

次に、「実家の片づけの状況」を聞くと「常に片づいている」のは30.9%、「短時間の片づけできれいになる」のは17.3%であるのに対し、「どの部屋も片づいていない」のは14.5%、「片づいていない部屋がある」のは36.4%となった。

Q5.あなたの実家の「片づけ」の状況を教えてください。(出典:日本ホームステージング協会「実家の片づけに関する実態調査」)

Q5.あなたの実家の「片づけ」の状況を教えてください。(出典:日本ホームステージング協会「実家の片づけに関する実態調査」)

実家が片づいていないと思う人が多いためか、「実家の片づけは必要だと思うか」を聞くと、思う(非常にそう思う30.0%+ややそう思う37.3%)が67.3%と7割弱に達した。

実家の片づけができない理由は「時間」「着手方法」「捨て方」にあり

Q5で「片づいていない部屋がある」「どの部屋も片づいていない」と回答した50.9%の人に、「実家の片づけができない理由」を複数回答で聞いた結果は、次のようになった。

Q8.実家の片づけができない理由を教えてください。(複数回答)(出典:日本ホームステージング協会「実家の片づけに関する実態調査」)

Q8.実家の片づけができない理由を教えてください。(複数回答)(出典:日本ホームステージング協会「実家の片づけに関する実態調査」)

TOP3を抜き出してみると、次のようになる。
・片づけを手伝う時間がない:35.7%
・物が多くてどこから手を付けたらいいかわからない:33.9%
・趣味で集めたものや思い出のものが捨てにくい:30.4%

「時間」「着手方法」「捨て方」が問題だと感じていることがわかる。ちなみに、「親と会う回数で近いもの」を聞いた結果は、「年に数回程度会う」が過半数の56.3%だった。この回数では、片づけを手伝う時間は十分に取れないだろう。

片づける目的を共有し、支障のない範囲で片づける

さて、筆者が以前、実家の整理をした方に取材した事例を参考に、対処方法を考えてみよう。
親が高齢になって、体力や気力が落ちて家事がおろそかになったり、物忘れをするようになったりすると、家の中が雑然として“片づいていない”状態が目につくようになる。さらに、場合によっては、判断力が落ちているために同じようなものを2つ買うなど、無駄な契約を勧められるがまま交わしていることもある。

実家を訪れた子どもがこのアラームに気づいたら、できるだけ早い段階で片づけに着手することが大切だ。取材した人は「あと5年早く、後期高齢者になる前であれば、両親の判断力や体力もあったので、もっと整理が楽だった」と振り返る。

ただし、両親に任せていては片づかないことが多い。片づけられない理由は「要・不要の判断ができないこと」と「体力が落ちて物を移動させることが難しいこと」。子どもたちが代わりに物を動かすことはできるが、問題は「要・不要の判断」だ。

子どもが見て不要と思うものでも、親にとっては、想い出のある捨てられないものかもしれない。それを捨てようとすると、互いに感情的になって収まらなくなる。例えば、「親が生活する上で安全を確保するため」とか「使っていないものをリサイクルするため」など、片づける目的を共有しておくとよいだろう。共有できれば、「これはないほうが安全だよね?」とか「これはリサイクルできるものだから処分しようね」などと納得してもらいながら、捨てるものを選別できる。

そうしたとしても、捨てたものを親が拾ってきてしまうこともあるというので、子どもの基準で完璧に整理しようとせず、親の意向を聞いて、不要と思えるものでも支障がない範囲で残しておくという方法もあるだろう。

片づいていないというアラームを感じたら、できるだけ「時間」を作って実家に行き、定期的に片づけを手伝うことで、親の判断力や体力の低下を確認することもできる。片づけをする時間の中で、相続について話し合ったり、終の住まいのあり方を聞いたりなどができれば、単に実家が片づくだけでなく、さまざまな問題解決の糸口にもなりそうだ。
さて、あなたの実家は片づいているだろうか?

●関連サイト
日本ホームステージング協会「実家の片づけに関する実態調査」

子ども部屋は何歳から必要? その理由は? 不要派の意見も

ゼロリノベを運営するgroove agentが、首都圏に住む30~40代の既婚女性を対象に、子ども部屋について調査をした。それによると、8割以上が子ども部屋は必要だと回答したという。では、いつごろ、どの程度の広さの子ども部屋を想定しているのだろう?詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
子ども部屋が必要か不要か、適齢期や広さについて、アンケート調査を実施/groove agent

子ども部屋が必要なのは、小学校低学年?高学年?

この調査で「子ども部屋はいくつくらいから必要だと思うか」を聞いたところ、意見は分かれた。「小学校高学年」が最多の40.0%で、次いで「小学校低学年」が30.5%と続き、「中学生以上」も21.2%いる。概ね小学生のときに子ども部屋が必要になるという回答だ。

出典:ゼロリノベ調べ

出典:ゼロリノベ調べ

小学校に入学すると、ランドセルに教科書や副教材、学習用具などの持ち物が増える。宿題をするなど家庭で学習する場所も必要だ。小学校入学を期に、学習机を買い与える家庭も多い。となると、子ども部屋が必要と考える人も多いのだろう。

ただ、マイホームを購入した家庭を取材すると、低学年くらいであれば親のそばで学習することが多くため、実際にはリビングで宿題をするという事例が多い。寝るのも親と一緒だ。まだ親離れしていない年齢なので、持ち物を管理する区切られたスペースがあれば、個室は必要ないかもしれない。

一方、高学年になると、子どものほうが親離れや自我の芽生えなどから親との距離を取りたいと考えるようになる。子どものほうが、親の目が常に届くことがない個室を求める、ということもあるだろう。さらに、中学生以上になると、定期試験などのために集中して勉強をしたいというニーズも出てくる。家庭内の音や人の気配を遮断したいという理由で、個室が必要という場合もあるだろう。

とはいえ、子どもの成長ぶりは子どもそれぞれだ。親との距離感についても、子どもそれぞれで違いもあるので、最終的には、子どもの状態や子ども自身の意向によって、子ども専用の空間を用意するのか、個室を用意するのかが、分かれるのだろう。

子ども部屋が必要な理由、必要でない理由

次に、子ども部屋が「必要だと思う理由」と「必要ないと思う理由」について見ていこう。

まず、「子ども部屋が必要だと思う理由」では、「プライバシーの尊重」が45.8%と最多だった。「自立心や自己管理能力が身に付く」が27.0%、「集中できる学習環境」が23.8%と続いた。

出典:ゼロリノベ調べ

出典:ゼロリノベ調べ

一方、「子ども部屋が必要ないと思う理由」では、「親の目が届かなくなる」(50.0%)、「引きこもりの心配」(30.3%)などが上位に挙がった。

出典:ゼロリノベ調べ

出典:ゼロリノベ調べ

部屋を用意するだけでなく、親と子どもの約束事も大事

筆者個人の考えだが、子ども部屋を用意する最大のメリットは、「自立心や自己管理能力が身につく」ことにあるだろう。親が片付けるのではなく、自分で片付けるなどして物を管理するという、基本的な生活習慣を身につけることに大きな意味がある。

もちろん、プライバシーの確保や集中できる学習環境も重要だ。ただ、そのことだけを重視すると、単に親の目を嫌って自室に引きこもってしまったり、部屋にいるだけで集中して学習する習慣が身につかなかったりといったリスクも生じる。プライバシーが尊重されることと自己管理能力を身につけることは、表裏一体だ。自分のスペースは自分で管理することを、その広さを拡大しながら徐々に身につけていき、その先に個室の管理があるというのが理想的だと思う。

自立心や自己管理能力を育てるには、しつけも重要だ。しつけと言うより、親と子どもとの約束事と言う方が適切かもしれない。帰宅したらまず家族に挨拶をするといったことから、子ども部屋の中の物は自分で整理して片づけるなど、親子間で約束事を決めておき、守られなければ子ども部屋を解消することも視野に、互いに納得するということが望ましい。約束事が守られていることを確認するために、親が部屋に入って一緒に整理の仕方を確かめるといった事態があることも理解してもらおう。

そうすれば、親の目が全く届かなかったり、自分の部屋にばかりこもっていたりといった不安も、解消されるのではないだろうか。

SUUMOジャーナルの筆者担当編集者の事例を紹介すると、子ども部屋を用意する際に、一緒に壁紙を選んで張り替えたり、その部屋で使う家具を一緒に組み立てたりしたそうだ。子どもたちは部屋に対する責任感を持ったようで、しっかりと管理しているという。筆者は、実に良い方法だと思う。

子ども部屋の広さは、6畳必要?

さて、この調査では、子ども部屋の広さについても聞いている。最多だったのは、「6畳」の54.6%で、次いで「5畳」の17.3%となった。

出典:ゼロリノベ調べ

出典:ゼロリノベ調べ

ミキハウスが運営するハッピー・ノート ドットコムの調査「どうする我が家の“子ども部屋”」で、子ども部屋に何を置くか聞いている。
・学習机(78.1%)
・本棚(75.6%)
・ベッド(68.8%)
・エアコン(62.7%)
・クローゼット(53.8%)
など、さまざまなものが置かれることがわかる。

となると、やはり6畳程度はほしいところだろう。とはいえ、都心部などでは、住宅そのものの広さを確保することが難しくなっている。子どもが2人以上いる場合は、なおさら広い子ども部屋を用意しづらくなる。子どもの状況に応じて、寝るのは家族と一緒で学習室だけを設けたり、子ども専用の収納スペースを別に設けたりと、柔軟に工夫をするのが良いだろう。

子ども部屋を検討するのを好機ととらえ、子どもの考えを聞いたり、親の希望を伝えたり、互いにどういった暮らし方をしたいか確認したりすると良いと思う。子どもの親離れも大切だが、親の子離れも大切だ。同じように徐々に独立していくと、良好な関係が維持できるだろう。たかが子ども部屋、されど子ども部屋だ。

●関連サイト
子ども部屋が必要か不要か、適齢期や広さについて、アンケート調査(ゼロリノベ調べ)
どうする我が家の“子ども部屋”(ハッピー・ノートコム調べ)

“5つ星”のマンションが分かる!?4月からスタートしたマンション管理適正評価制度

「マンションは管理を買え」と言われるほど、管理の良し悪しで経年による姿が変わる。その一方で、マンションの管理のレベルを客観的に評価した情報はこれまでなかった。その管理の質を評価する「マンション管理適正評価制度」が、2022年4月からスタートした。どんな制度なのか、詳しく見ていこう。

管理の状態を等級で評価する制度がスタート

「マンション管理適正評価制度」をスタートさせたのは、マンション管理会社の業界団体である「一般社団法人マンション管理業協会」だ。マンション管理業協会に、制度創設の狙いなどを聞いた。

「マンション管理適正評価制度」ができたそもそものきっかけは、管理の質が市場で評価されていないことから、評価する基準をつくって、市場に情報開示していこうということだという。これまでは、そうした評価基準がなかったので、現時点でマンションを購入しようとする人は、不動産会社を通じて、管理規約や修繕積立金の積立額などの情報を入手して、自身で判断する必要がある。とはいえ、専門知識がないとマンションの管理を評価するのは難しいことから、売買の際に管理の質が重視されにくいのが実情だ。国土交通省の調査結果を見ても、「マンション購入の際に考慮した項目」(複数回答)で、共用部分の維持管理状況を考慮した割合は1割程度と低くなっている。

■マンション購入の際に考慮した項目

出典:国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果」より転載

出典:国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果」より転載

そこで管理業協会では、2019年に関連団体に呼び掛けるなどして『マンション管理適正評価研究会』を立ち上げた。研究会で検討を重ねた結果、2020年3月に報告書をとりまとめ、その「とりまとめ」を基にブラッシュアップして、評価制度を構築したのが「マンション管理適正評価制度」だ。

一方で、国の政策として、2020年6月に「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」の改正が行われ、2022年4月に施行されることとなった。法改正により、国の基本指針に基づいて、地方公共団体がマンションに対して管理の適正化を推進する役割を担い、地方公共団体が適切な管理計画を持つマンションを認定する「マンション管理計画認定制度」が創設されることになった。

これを受けて、「マンション管理適正評価制度」の評価項目も、国の認定制度と齟齬がないように調整され、最終決定に至っている。したがって、2022年4月からは、「マンション管理業協会の評価制度」と「国の認定制度」の2つの制度が始まることになったが、管理業協会で2つの制度を同時に評価することもできる体制が整っている。

国の制度との違いは、マンション管理の見える化

国の認定制度の目的は、高経年化したマンションが急増していることから、主にマンションの老朽化を抑制することにある。認定基準についても、管理組合が維持管理を適正に行えるルールになっているか、大規模修繕工事が実施できる費用を積み立てられる計画になっているか、などマンションの維持管理計画を重視した16項目(地方公共団体で独自の認定基準も追加できる)が設定されている。また、認定基準をすべてクリアしたマンションだけが認定される、という制度になっている。

これに対して、管理業協会の評価制度は、マンションの管理に求められる広範な審査項目が30項目設定され、国の認定制度より多くなっている。それぞれの項目はポイント制で評価され、マンションの管理レベルを総合的に判定する形だ。そのため、管理のレベルが高くても低くても評価が出され、評価は6段階(無星~星5つまで)で表示される。

例えば、筆者は住んでいるマンションで、持ち回りの理事長や大規模修繕工事の修繕委員などを経験して、マンションの管理状態をある程度把握しているが、筆者のマンションは、国の認定制度では認定されない可能性が高い。というのも、「区分所有者名簿や居住者名簿を作成し、一年ごとに更新している」という項目で唯一×がつくからだ。一方、管理業協会の評価制度では、おおむね評価基準をクリアしているので、総合判定で「★★★★★」になると考えている。

このように、似ているように見える制度ではあるが、目的や評価方法が異なるので、必ずしも結果が同じになるとは限らないわけだ。特に、管理業協会の評価制度では、管理全般が適正に行われているかの「見える化」がなされるので、管理組合だけでなく、サポートする管理会社にも参考になる指標となるだろう。

マンション管理を5カテゴリーと総合評価で表示

では、具体的に評価項目を見ていこう。評価項目は次の5つのカテゴリーに分かれ、それぞれの項目ごとにポイントが設定されている。

■評価内容(5カテゴリー)

出典:マンション管理業協会「マンション管理適正評価制度」パンフレットより転載

出典:マンション管理業協会「マンション管理適正評価制度」パンフレットより転載

例として、1の「管理組合体制」について説明しよう。国土交通省では、管理規約のひな型となる標準管理規約を用意しているが、ペット飼育や民泊などの問題を受けて、必要に応じて改正を行っている。これに準拠する形でその都度管理組合が管理規約を改正している場合、マンション新築当初から相当の期間が経っているのに管理規約を全く改正していない場合など、規約の整備状況によってポイントが変わる設定となっている。

また、3の「建築・設備」では、長期修繕計画についてだけでなく、マンションに義務付けられたさまざまな「法定点検」(エレベーターや消防設備の点検や水質の検査など)を行っているかといった、国の認定制度にはない項目も含まれている。ほかにも、4の耐震性の審査項目や5の緊急対応やコミュニティ形成などの審査項目などもあり、管理の質をうらなう広範な項目が審査対象となる。

審査結果は5つのカテゴリーごとにポイントが加算され、最後に総合評価を合計ポイントと6段階(無星から★5つまで)評価で表示される。総合評価でマンション自体の管理レベルがわかるだけでなく、どのカテゴリーが弱いのかなどの傾向もわかる仕組みだ。

■等級評価
総合計得点
90~100点特に優れている★★★★★
70~89点優れている★★★★☆
50~69点 良好★★★☆☆
20~49点 改善が必要★★☆☆☆
1~19点 管理に問題あるが、情報開示あり ★☆☆☆☆
0点以下管理不全の疑いあり☆☆☆☆☆
※項目によってはマイナスのポイントもあるので、総合評価でマイナスになる場合もある

評価された結果は、管理業協会の「マンション管理適正評価サイト」で公開される。ただし、マンションごとに異なるペット飼育や民泊の可否などについては、情報を開示するかどうかを管理組合で選べるようになっている。

出典:マンション管理業協会の資料を基にSUUMO編集部が作成

出典:マンション管理業協会の資料を基にSUUMO編集部が作成

スタートした新制度の申請方法は?今後の普及は?

管理組合が「マンション管理適正評価制度」を利用するには、まず管理を委託している管理会社等に相談し、おおよそどういった評価になるか事前評価をしてもらうことから始まる。その結果を基に、申請するかどうかを総会の決議で諮る必要がある。申請するとなれば、マンション管理業協会指定の講習を修了した管理業務主任者やマンション管理士に管理状態を評価させ、評価結果の登録を行う流れとなる。

この際に、登録料5500円(2022年度は無料)と評価・申請手数料(管理会社や評価者によって異なる)が必要となる。なお、1年ごとに更新する必要があり、更新されれば新しい評価の情報がサイトに公開される。(更新されない場合、一定期間でサイト上の表示は消される)

さて、4月からスタートしたばかりの制度だが、今後はどのように展開していく予定なのだろう。マンション管理業協会によると、管理組合の総会は基本的に年に1回の開催なので、評価制度への申請は徐々に増えていくと想定しており、総会の設定が多い5月、6月を経て7月以降に申請が増えてくると見込んでいるという。

申請数が増えて情報開示が進めば、住宅市場でマンションの管理評価が市場価値に反映されることが期待される。このほか、長期的には、維持管理の良いマンションの損害保険料の割引や共用部分の修繕に関わる金融機関の融資の優遇などがインセンティブになることを期待しているという。

管理業協会の評価制度も国の認定制度も、管理が良好なマンションであることを世の中に知らせる効果がある。が、管理組合の理事会は一般的に持ち回りで担当するので、費用を負担して申請しようと動くには、高いハードルがあると思われる。制度が普及して、現実的に住宅市場で売りやすくなったり高く売れたりするといった、強いインセンティブが必要になるだろう。

今後、評価されるマンションが増加し、購入を検討する際に情報が入手しやすくなれば、影響度が増していくことが考えられる。長期的な視点で見守りたい。

●取材協力:マンション管理業協会
【プレスリリース】「マンション管理適正評価制度が4月1日より開始」
マンション管理適正評価サイト

自然災害の後は、悪質な住宅修理業者に注意!3~5月に急増する理由とは

雪解けシーズンの到来で、雪災による住宅修理サービスによるトラブルが増えるという。損害保険ジャパン(以下、損保ジャパン)が、消費者の認識を調査するために「雪災への対策・悪質な住宅修理業者に関する意識調査」を実施したので、その結果を詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
「雪災への対策・悪質な住宅修理業者に関する意識調査」を実施/損害保険ジャパン

雪解け後に多い、自然災害被害を狙った悪質な住宅修理業者の訪問営業

損保ジャパンによると、雪災などの自然災害による住宅の損害は、加入している火災保険で補償されることが多い。一方で、この時期には、「保険金の範囲内で修理するので自己負担はない」などと言って不当な復旧修理を行ったり、「保険が使える」と言って保険金の請求代行の契約を勧誘したりといった、トラブルが多発する。

こうした悪質な事業者は、高額な手数料や解約手数料などの請求を狙ったものだが、3~5月の雪解け後に訪問が活発化するという。

「雪災への対策・悪質な住宅修理業者に関する意識調査」では、全国の1万6062人を対象に調査している。地域の降雪量についての内訳は、「冬は日常的に積雪がある」が11.9%、「頻繁に降雪があるが日常的な積雪はない」が5.9%、「年に1回から数回降雪があり積もる場合もある」が37.1%、「雪はめったに降らない」が45.1%だ。

この人たちに、「自然災害後や雪解け時期に、悪質な住宅修理業者が過大な保険金請求を目的として被害の有無に関わらず、訪問してくることや連絡がくることを知っているか」と聞いたところ、「知っている」は33.0%、「知らない」は67.0%となり、3人に2人はこうした悪質な住宅修理業者について認知していないことが分かった。

「自然災害後や雪解け時期に、悪質な住宅修理業者が過大な保険金請求を目的として被害の有無に関わらず、訪問してくることや連絡がくることを知っているか」(出典:損害保険ジャパン「雪災への対策・悪質な住宅修理業者に関する意識調査」)

「自然災害後や雪解け時期に、悪質な住宅修理業者が過大な保険金請求を目的として被害の有無に関わらず、訪問してくることや連絡がくることを知っているか」(出典:損害保険ジャパン「雪災への対策・悪質な住宅修理業者に関する意識調査」)

ちなみに、「知っている」と回答した人が悪質業者の存在を知ったのは、「テレビのニュース」(64.7%)や「新聞や雑誌の記事」(45.4%)、「WEBニュース」(34.8%)など、マスメディアからの情報だった。

14.3%が悪質な住宅修理業者の勧誘を受けた経験あり

次に、悪質な業者が訪問や連絡をしてくることがあることについて、「知っている」と回答した5307人に、「悪質な住宅修理業者が起こすトラブルや、被害について知っているもの」を複数回答で聞いたところ、「ずさんな工事をされる」と「本来必要のない手数料を請求される」がそれぞれ6割以上と広く認知されていた。また、「その他」の回答事例として、「プロパンガスボンベが雪でこわれている。避難してほしいといわれ、その間に窃盗する」といったものもあった。

「悪質な住宅修理業者が起こすトラブルや、被害について知っているもの」(複数回答)(出典:損害保険ジャパン「雪災への対策・悪質な住宅修理業者に関する意識調査」)

「悪質な住宅修理業者が起こすトラブルや、被害について知っているもの」(複数回答)(出典:損害保険ジャパン「雪災への対策・悪質な住宅修理業者に関する意識調査」)

さらに、「知っている」と回答した5307人に、「悪質な住宅修理業者の勧誘を受けたことがあるか」と聞くと、「ある」と回答したのは14.3%で、実際に勧誘を受けた経験のある人が1割以上いることも分かった。

勧誘を受けたことがある756人に「勧誘を受けたのはいつごろか」を聞くと、「春(3~5月頃)」が最も多く、今の時期が最も注意を要する結果となったが、台風などの自然災害が多い「秋(9~11月頃)」など、それ以外の時期にも勧誘の経験があることから、常に注意を怠ってはいけないことも分かった。

「その修理業者にはいつごろ勧誘されたか」(出典:損害保険ジャパン「雪災への対策・悪質な住宅修理業者に関する意識調査」)

「その修理業者にはいつごろ勧誘されたか」(出典:損害保険ジャパン「雪災への対策・悪質な住宅修理業者に関する意識調査」)

勧誘を受けるなどして困ったときの相談先は?

実際にこうした勧誘を受けて困ったときには、どうしたらよいのだろうか?

まずは、きっぱり断ることだ。相手方の社名や氏名を確認して、「御社の話は断ります」「リフォームの必要はありません」などと明確な意思表示をすることだ。

それでも困ったことになったら、調査を実施した損保ジャパンでも保険加入者に対して「住宅修理トラブル相談窓口」を設置しているので、加入している損害保険会社に相談するという方法もある。

ほかにも、全国各地にある消費生活センターや国民生活センターが相談に応じてくれる。また、住宅リフォーム・紛争処理支援センターの「住まいるダイヤル」でも相談に応じてくれるので、こうした相談窓口の存在をあらかじめ知っておくと心強いだろう。

悪質業者は家に入り込んで、契約を断りづらくするテクニックを持っているものだ。問われるがままに住宅の保険や補修履歴、家族構成などを話してしまい、そこに付け入るスキを与えてしまうということもある。

特に高齢者は、長時間話を聞いてしまって断りづらくなったり、あいまいに断っている間に家に入り込まれたりといった事態を招きかねない。きっぱり断ること、家族や相談窓口などに相談してから決めるなどと言って次のステップに進ませないことが大切だ。

●関連サイト
「雪災への対策・悪質な住宅修理業者に関する意識調査」と「住宅修理トラブル相談窓口」の設置について/損害保険ジャパン

2021年の新築一戸建て価格、この8年で最高額に。フルローンは金利上昇リスクに注意

リクルートが2021年の「新築分譲一戸建て契約者動向」(首都圏)を発表した。この調査は、首都圏の新築分譲一戸建てを契約した人を対象に、購入物件や購入行動などを聞いたものだ。購入価格や広さ、駅からの距離、購入者の資金計画などに変化はあったのだろうか?

【今週の住活トピック】
「新築分譲一戸建て契約者動向」調査(2021年首都圏調査)公表/リクルート

平均購入価格は4331万円で、調査開始以降で最高額。広さは前年並み

まず、2021年に新築分譲一戸建ての契約をした人の購入物件について、見ていこう。購入物件価格の平均額は4331万円で、2014年の調査開始以降で最高額になった。内訳を見ると、「3000万~3500万円未満」と「3500万~4000万円未満」がそれぞれ約17%で、3000万円台が全体の3分の1を占める。いっぽうで5000万円以上の物件も24%を占めるなど、価格はかなり分散していることがうかがえる。

出典:リクルート「新築分譲一戸建て契約者動向」調査(2021年首都圏調査)より)

出典:リクルート「新築分譲一戸建て契約者動向」調査(2021年首都圏調査)より)

次に、購入物件の広さを見ると、建物の平均面積は99.0平米。100平米前後の「95~100平米未満」(22.1%)と「100~105平米未満」(25.2%)に集中している。また、土地の平均面積は120.5平米で、120平米前後の「100~120平米未満(32.7%)と「120~140平米未満」(23.9%)に集中している。広さはいずれも前年並みだ。

一戸建てとして好まれる面積は、土地120平米前後、建物100平米前後あたりになるが、立地条件などによって価格は変わるということだろう。

出典:リクルート「新築分譲一戸建て契約者動向」調査(2021年首都圏調査)より)

出典:リクルート「新築分譲一戸建て契約者動向」調査(2021年首都圏調査)より)

ちなみに、リクルートの「新築マンション契約者動向」(2021年首都圏調査)と比べてみると、新築マンションの平均購入価格は5709万円でやはり調査開始以降の最高額となったが、平均の専有面積は66.0平米と調査開始以降で最も小さくなった。新築マンションでは価格の上昇につれて専有面積は小さくなる傾向が見られるが、新築分譲一戸建てでは広さはあまり変わらず、平均価格だけが変動している印象だ。

また、新築マンションでは、シングル世帯の購入者が18%(男性7%・女性11%)であるのに対し、新築分譲一戸建てでは、シングル世帯は3%だった。

最寄り駅からの平均徒歩分数は14分、年々増加する傾向に

では次に、購入物件の立地を見ていこう。
最も多かったのは「東京都の23区外(市部エリア)」の24.1%だが、埼玉県、神奈川県、千葉県もそれぞれ20%近辺であり、立地は首都圏全体に分布していることがわかる。「東京23区」は15.1%で前年よりは増加した。

出典:リクルート「新築分譲一戸建て契約者動向」調査(2021年首都圏調査)より

出典:リクルート「新築分譲一戸建て契約者動向」調査(2021年首都圏調査)より

最寄り駅からの距離を見ると、平均徒歩分数は14.0分。「徒歩11~15分以内」が26.0%で最も多いが、次いで「バス・車利用」(24.7%)や「徒歩6~10分以内」(21.5%)も多かった。平均徒歩分数は、2014年の調査開始時は11.6分だったが、次第に長くなり、徒歩10分以内の占める比率が年々減少する傾向が見られる。

マンションと違って、一戸建ての購入者は車通勤の人も多く、駐車スペースにこだわって(夫婦それぞれの2台駐車可能)住まい探しをしている事例も見られる。また、コロナ禍の働き方の変化の影響もあってか、駅近へのこだわりが薄まっているように感じられる。

出典:リクルート「新築分譲一戸建て契約者動向」調査(2021年首都圏調査)より)

出典:リクルート「新築分譲一戸建て契約者動向」調査(2021年首都圏調査)より)

4人に1人がフルローンで一戸建てを購入

次に、購入した世帯の状況を見ていこう。

まず、世帯主の平均年齢は36.7歳。「30~34歳」(28.9%)と「35~39歳」(24.8%)で、30代が過半数を占めた。この傾向は近年変わっていない。また、既婚世帯に占める共働きの比率は68.6%で、年々増加傾向にある。平均世帯年収は779万円で、2014年以降最も高くなった。

さて、購入者の資金計画を見ると、自己資金の平均額は573万円。1000万円以上用意した世帯もいる一方で、自己資金0円、つまり全額ローンで購入した世帯が25.3%もいる。

出典:リクルート「新築分譲一戸建て契約者動向」調査(2021年首都圏調査)より)

出典:リクルート「新築分譲一戸建て契約者動向」調査(2021年首都圏調査)より)

では、ローン借入額はどうだろう?平均借入額は4075万円で、こちらも調査以降の最高額となった。「4000万~5000万円未満」が最多の26.4%で、次いで「5000万円以上」(19.7%)、「3500万~4000万円未満」(18.7%)、「3000万~3500万円未満」(18.2%)の順に多いという結果だ。

出典:リクルート「新築分譲一戸建て契約者動向」調査(2021年首都圏調査)より)

出典:リクルート「新築分譲一戸建て契約者動向」調査(2021年首都圏調査)より)

30代で新築分譲一戸建てを購入する人が多いことから、自己資金などの準備が十分ではない世帯がある一方で、共働きの増加により世帯年収が増加し、多額のローンを借り入れることができるようになった、という背景もあるのだろう。

調査結果によると、総年収1000万円以上の既婚共働き世帯が、全体の22.6%。総年収1000万円以上の既婚共働き世帯について、世帯主、配偶者それぞれの平均年収を見ると、世帯主が905万円、配偶者が548万円だったという。

さて、筆者が気になるのは、4人に1人がフルローンだということ。万一、変動金利型などの低金利を活用して、めいっぱい借りている世帯があるなら、早めに今後の金利上昇リスクについて検討しておく必要があるだろう。

実は、金融市場の長期金利がじわじわと上昇している。金融市場の長期金利と連動する、全期間固定型の住宅ローン「フラット35」の金利も2・3・4月と連続して金利が上がっている。長く続いてきた住宅ローンの超低金利時代だが、市場の金利上昇圧力が高まっているのだ。いまのところ、変動金利型などの金利は上がっていないが、長期間金利を固定するローンの方が先に上がっていくので、マイホームを購入した後は住宅ローンのメンテナンスについても怠らないようにしてほしい。

●関連サイト
リクルートの調査結果
「2021年首都圏 新築分譲一戸建て契約者動向調査」
「2021年首都圏 新築マンション契約者動向調査」

都民は要チェック ! 住宅の助成制度・お得情報まとめサイト「TOKYOすまいと」

東京都では、「住み替えやリフォームをお考えの方に向けて、契約する前に知っておきたい、良質な住まいを選ぶためのヒントや気を付けるべきポイントなどをまとめたホームページを新たに開設しました」と広報した。“東京の膨大な不動産情報にアクセスする際のガイド役を果たす”ということなので、筆者がそのお役立ち度を見ていこうと思う。

【今週の住活トピック】
東京の住まい選びをサポートする情報サイト「TOKYOすまいと」を開設/東京都

「TOKYOすまいと」サイトを閲覧してみた

東京都が広報したサイトの名称は「TOKYOすまいと」。サブキャッチに「住まい選びの東京アクセスガイド」とある。

コンテンツを見ると、次のように多様なものだ。
●良質な住宅の見分け方とは?
●知ってお得な助成制度とは?
●初めて住宅を借りる時に気を付けるべきことは?
●子育てしやすい住宅とは?
●高齢者にやさしい住宅とは?
●環境にやさしいエコ住宅とは?
●既存住宅(中古住宅)購入のポイントは?
●住宅リフォームの成功の秘訣とは?
●災害に強い住宅で安心して暮らすためには?
●健康で快適な暮らしをするためには?
●公的機関が供給する住宅とは?
  
各コンテンツの内容を見ていくと、見分け方や注意ポイントの解説をしている内容ではなく、参考になる情報を記載したサイトを紹介する形となっている。つまり、詳しい情報を入手したい場合の“中継基地”といった感じで、サブキャッチ通りまさに「アクセスガイド」だった。

お役立ち度が高いコンテンツはこれだ!

このコンテンツの中で筆者が最も役立つと思ったのは、「初めて住宅を借りる時に気を付けるべきことは?」だ。「既存住宅(中古住宅)購入のポイントは?」も同じ観点で役立つと思った。

これらのコンテンツでは、東京都が作成したガイドブックなどを数多く紹介している。
以前から東京都は住宅を借りたり買ったりする住宅消費者向けに、わかりやすいガイドブックを作成しているので、機会があれば、筆者はそれらのガイドブックの活用を勧めている。公的機関が作成するガイドブックのスタンスは、法律などに沿った“正論”でまとめられている。理論武装ができる手引きになるので、専門知識が不動産会社などと比べて乏しい住宅消費者には、一度は目を通してほしいと筆者は思っている。

これまでそのガイドブックは、東京都のHP内で探しづらかったのだが、このサイトに集約されて探しやすくなった。「初めて住宅を借りる時」で特にお勧めなのが、「賃貸住宅トラブル防止ガイドライン」(東京都作成)と「住宅賃貸借(借家)契約の手引き」(不動産適正取引推進機構作成)だ。契約時や退去時に生じやすいトラブルを防ぐための、重要な情報が細かく記載されている。東京都のものは、特に、退去時にトラブルになりやすい「原状回復」について詳しく解説されている。

また、「既存住宅(中古住宅)購入のポイント」で特にお勧めなのは、「安心して既存住宅を売買するためのガイドブック」の「戸建住宅編」と「マンション編」(東京都作成)だ。東京都に限らず、家を購入しようと検討している全国の人に見てほしい内容となっている。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

東京都独自の助成制度がすぐ調べられる

このコンテンツの中で次に役立つと思ったのは、「知ってお得な助成制度」だ。 国の助成制度も紹介しているが、東京都独自の助成制度もまとめて紹介されているので、東京都で住宅を取得したり改修したりする際に、どんな助成制度があるのかを知ることができる。また、住宅の特徴別のコンテンツでも、該当する助成制度を重複して紹介しているので、関心のある住宅から助成制度を探すこともできる。

ただし、区や市などの独自の助成制度もあれば、掲載されていない国の助成制度もあるので、東京都民が受けられる助成制度は必ずしもこのサイトに紹介されたものがすべてではないと考えてほしい。自身でも、利用できる助成制度がほかにないかを確認するのがよいだろう。

一方で、「○○住宅とは」といったコンテンツに、一般的な住まい選びのポイントが書いてあると期待して見ると、ちょっと違うと思うかもしれない。これらは、国や東京都が推奨する性能の高い住宅について紹介するものが多いので、住宅価格は高くなっても性能が高くて安心して居住できるものを探している人に向くコンテンツだろう。

そのなかでも「子育てしやすい住宅」では、子育てしやすい住宅の条件を知る情報もあるので、検討中の人には参考になるだろう。東京都が独自で行っている「子育て支援住宅認定制度」は、安全性や家事のしやすさなどに配慮された住宅で、かつ、子育てを支援する施設やサービスの提供など、子育てしやすい環境づくりのための取組を行っている優良な住宅を認定する制度。少し専門的にはなるが、認定制度の詳細やその認定基準となるガイドラインも紹介されているので、関心のある人は頑張って読み込んでみてはいかがだろう。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

このように、「TOKYOすまいと」には住宅を買ったり借りたりする際に参考になる情報が多様に紹介されているので、気になる項目があれば、リンク先に飛んで詳しい情報を確認したうえで、適切な住まい選びをしてほしいと思う。加えて、「相談窓口」なども紹介されているので、東京都で万一トラブルになったときにも確認するとよいだろう。

名称は「TOKYOすまいと」ではあるが、多くの情報は東京都に限らないものなので、住まい選びをしている全国の人ものぞいてみてはいかがだろう。

●関連サイト
・東京都のプレスリリース
・「TOKYOすまいと」

10代、20代の賃貸トラブルが多発。国民生活センターが賃貸借契約や原状回復などに注意喚起

国民生活センターが、若者向け注意喚起として、住宅の賃貸借に関するトラブルについてチェックポイントなどを紹介している。特に、親元を離れて新たな生活を始める際に、賃貸借の契約をすることが多いので、契約内容をしっかり確認するように呼びかけている。

【今週の住活トピック】
「賃貸借契約にまつわる相談件数とトラブル防止のポイント」を発表/(独)国民生活センター

住宅の賃貸借に関する相談件数の2割は20歳未満~20歳代!

国民生活センターによると、住宅の賃貸借に関する消費生活相談のうち、契約当事者が 20 歳未満および 20 歳代である件数は、毎年2割ほどを占めるという。契約する時のトラブルだけでなく、入居中や退去時についても、契約内容に起因するトラブルは多い。

住宅の賃貸借のトラブル事例として、国民生活センターは次の事例を挙げている。
事例1:入居前に解約を申し出たら、支払った敷金などを含む約18万円がほとんど返ってこなかった。
事例2:賃貸マンション退去後に、原状回復費用として17万円もの額を請求された。

なぜ、こんなトラブルが起きるのだろうか?

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

契約後は、契約書に記載された内容に文句は言えない

賃貸住宅を契約する際には、契約上重要な説明を受けた後、賃貸借契約を交わす。契約をすると、そこに記載された内容を理解したうえで契約したものと解釈されてしまう。つまり、そこに記載されたとおりに実行されても文句は言えないし、逆に記載されたことと異なること、あるいは記載されていないことは交渉できるわけだ。

賃貸借契約書には、国土交通省が推奨するひな形がある。しかし、個人と個人が契約を交わす場合、それぞれに事情があるので、常識から考えて消費者側に著しく不利となるものを除き、互いが合意すればどういった契約内容でもかまわない。そこで、事前に契約に関する書類にどういったことが記載されているか、確認することが重要になる。

「申し込み」の段階であれば、自分の都合で契約を取りやめることができ、預けた申込金は返還される。しかし、契約が成立した後は、たとえ実際に入居する前に解約したとしても、「契約解除」について契約書に記載された内容通りに手続きがなされても文句は言えない。

入居時だけでなく、退去時のトラブルも多い。特に、「敷金」と退去時の「原状回復」費用との精算をめぐるトラブルは多い。そこで国土交通省では、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を作成し、HPに公表している。国土交通省では、契約書に原状回復に関する取り決めを具体的に明記するように推奨しているので、契約前にガイドラインを確認しよう。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

契約時、入居中、退去時のトラブルを防ぐには?

契約するまでに、契約内容についてしっかり理解しておくのはとても重要なことだ。国民生活センターでは、特にチェックしてほしい項目をリストにしている。

出典:国民生活センター/若者向け注意喚起シリーズ「新しいお部屋で新生活!『賃貸借契約』を理解して、トラブルを防ごう!!」より転載

出典:国民生活センター/若者向け注意喚起シリーズ「新しいお部屋で新生活!「賃貸借契約」を理解して、トラブルを防ごう!!」より転載

加えて、退去時のトラブルを防ぐには、いつから損傷していたかなどが分かるように、入居前や入居時に、貸主などと一緒に状況を確認したり、写真を撮ったりしておきたい。また、入居中も損傷が生じたら貸主に相談して、必要な補修を行ってもらおう。放置して損傷を大きくさせたり、無断で補修をしたりすると退去時のトラブルになりかねない。

普通に生活している間に、年月による壁紙の日焼けや家具を置いた跡などが発生するのは当然のこと。原状回復として、退去時に借主が負担するものには当たらない。原状回復費用は、借主側が生じさせた損傷などを負担するものなので、原則をよく理解し、契約書の原状回復の取り決めを確認しながら、費用負担について貸主側と交渉しよう。

賃貸住宅は、わが家ではあるものの、あくまで貸主の住宅を借りているもの。そのことを踏まえて、適切に使用するよう心掛け、契約書の内容をよく理解して生活しよう。無用なトラブルはないほうがよいにちがいない。

●関連サイト
「賃貸借契約にまつわる相談件数とトラブル防止のポイント」を発表/(独)国民生活センター
国土交通省が定めている「原状回復をめぐるトラブルとガイドラインガイドライン」

家を買う人は必見!4月から変わる「フラット35」、10月には省エネ基準の大幅見直しも

35年などの長期間にわたり金利が固定される住宅ローンの【フラット35】。住宅ローンを借りようと考えている人なら、一度は検討したことがあるだろう。実は、4月以降で制度変更がある。どんな点が変わるのか、詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
「【フラット35】2022年度4月以降の制度変更事項のお知らせ」を発表/住宅金融支援機構

【フラット35】のバリエーションは意外に多い

【フラット35】は、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携している住宅ローンで、長期固定金利である点が大きな特徴だ。住宅金融支援機構という公的機関が関わっている住宅ローンなので、一定の品質が確保されていると認められた住宅でないと利用できない。

今は、民間の金融機関による変動金利の住宅ローンだけでなく、【フラット35】のような長期間、金利を固定するものも低金利なので、住宅の品質面で安心できるだけでなく、長期間低金利を享受できるのが【フラット35】の魅力だろう。さらに、より性能の高い住宅には、当初の一定期間の金利を引き下げる優遇措置も設けられていて、「【フラット35】S」と呼ばれている。

実は、住宅金融支援機構によると、2020年度の【フラット35】の利用者のうち、92%が【フラット35】Sの利用者だったという。2021年度の2月末時点でも89%だというので、およそ9割が一般の【フラット35】ではなく、金利引き下げを受けられる「S」を利用したわけだ。

【フラット35】Sには、金利AプランとBプランがあり、Aプランで当初10年間、Bプランで当初5年間、適用される金利が0.25%引き下げられる。住宅ローンの一般的な返済方法である元利均等返済では、返済当初ほど返済額に占める利息の割合が大きいので、【フラット35】Sを利用するメリットは大きいのだろう。

ほかにも、中古住宅を購入して一定の要件を満たすリフォームを行う場合(住宅事業者が一定の要件を満たすリフォームを行った中古住宅を購入する場合も対象)に、当初一定期間金利が引き下げられる「【フラット35】リノベ」もある。こちらも、金利AプランとBプランがあり、Aプランで当初10年間、Bプランで当初5年間、適用される金利が0.5%引き下げられる。

【フラット35】S、【フラット35】リノベのプラン内容

【フラット35】S、【フラット35】リノベのプラン内容

このほか、自治体がマイホーム取得者(予定者含む)に補助金の交付などの支援をしている場合で、住宅金融支援機構と連携した際に利用できる、「【フラット35】地域連携型」もある。該当すれば当初5年間【フラット35】の金利が0.25%引き下げられ、【フラット35】Sと併用もできる。

4月から「【フラット35】維持保全型」が創設される

2022年4月の制度変更では、「【フラット35】維持保全型」が創設されることになった。これは、いま政府が力を入れている住宅の維持保全施策に対応したものが対象となる。具体的には、以下の通り。

出典:住宅金融支援機構のホームページ「【フラット35】2022年度4月以降の制度変更事項のお知らせ」よりSUUMO編集部作成

出典:住宅金融支援機構のホームページ「【フラット35】2022年度4月以降の制度変更事項のお知らせ」よりSUUMO編集部作成

(1)は、住宅の耐久性や省エネ性などの高さに加え、維持保全計画が立てられていることなどを条件に認定される「長期優良住宅」であること。(2)と(3)は、4月からスタートする、国の「マンション管理計画認定制度」に認定されることが条件で、(2)が新築版、(3)が中古版となる。

また、古い中古住宅については耐震性や劣化状況の検査を推奨しており、(5)はインスペクション(建物検査)で劣化がないとされたもの、(4)はインスペクションに基づいてリフォームされた(あるいはリフォーム案が提示されている)「安心R住宅」に認定されたもの、(6)は住宅の構造上重要な部分について検査と保険がセットになった「既存住宅売買瑕疵(かし)保険」が付いている住宅だ。

該当する場合は、当初5年間、金利が0.25%引き下げられる。これは、【フラット35】Sと併用でき、金利Bプランと併用した場合は金利引き下げ期間が10年間になり、Aプランと併用した場合は当初5年間の金利引き下げ幅が0.5%(6年目~10年目は0.25%)になる。

ほかにも、【フラット35】地域連携型の中でも、子育て支援に該当する場合に限り、金利引き下げ期間が当初5年間から当初10年間に延長される。

10月からの変更点は大きい!「省エネ性」の条件が厳しくなる点に注意

気になるのが10月からの変更点だ。【フラット35】Sの適用基準の引き上げが予定されているので、かなり影響があるだろう。

現行の【フラット35】Sの基準は、金利Aプランでは、「省エネ性」、「耐震性」、「バリアフリー性」、「耐久性・可変性」のいずれかで一定以上の基準をクリアすることが条件で、金利BプランではAプランより低い基準が設けられているほか、中古住宅独自の基準も設けられている。

住宅金融支援機構によると、現状の【フラット35】Sの資金実行件数のうちほぼ半数が「省エネ性」基準をクリアすることによるというが、この「省エネ性」の基準を引き上げる変更が予定されている。加えて、「省エネ性」に新たに「ZEH(ネットゼロエネルギー住宅)等」を設けて、省エネ性が高いほど金利引き下げが拡大するようにし、中古住宅の【フラット35】S(金利Bプラン)の「バリアフリー性」の基準も高めることになっている。具体的には、次の通り。

■【フラット35】S等の基準の見直し

出典:住宅金融支援機構「【フラット35】2022年度4月以降の制度変更事項のお知らせ」についてのご案内チラシより転載

出典:住宅金融支援機構「【フラット35】2022年度4月以降の制度変更事項のお知らせ」についてのご案内チラシより転載

金利の引き下げについては、ポイント制になり、ポイント数によって当初5年間0.25%引き下げ~当初10年間0.5%引き下げまでの間で設定される。

政府は、「2050年カーボンニュートラル」に向けて、住宅の省エネ性の基準を段階的に引き上げていく。それに先行する形で、【フラット35】についても、2023年4月以降(設計検査申請分)、新築住宅では「断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上」に適合しないと、利用できなくなる点にも留意したい。

マイホームを取得する場合、住宅ローンの果たす役割は大きい。長期間にわたって返済していくことになるので、どの住宅ローンを選択するかは大きなポイントだ。【フラット35】の利用を検討している場合、変更点を知っているか知らないかで資金計画が変わることもあるので、正しい情報をタイムリーに入手することが大切だ。

●関連サイト
「【フラット35】2022年度4月以降の制度変更事項のお知らせ」を発表/住宅金融支援機構

コロナ禍で注目された「住まいのニーズ」、定着したのはどんなもの?

リクルートのSUUMOリサーチセンターが、新築分譲マンション、新築一戸建て検討者を対象に、コロナ禍中の住宅に求めることの変化をテーマとして調査を行った。コロナ禍初期にニューノーマルスタイルとして注目された「あれ」のニーズは、その後どうなったのかニーズ調査の結果を見ていこう。

【今週の住活トピック】
「新築分譲マンション・一戸建て商品ニーズ調査(2021年)」を公表/リクルート

コロナ感染で注目された「除菌・非接触」や「玄関手洗い」は今後も必要?

調査時期は2021年9月13日~21日。東京都などに出されていた緊急事態宣言が解除された2021年10月1日直前、感染者数がかなり抑制されていった時期に該当する。調査対象は、首都圏、関西圏、東海圏、札幌市、仙台市、広島市、福岡市に住む20代~60代の2100人だ。

調査では、さまざまな性能や設備、スペースについて、次の2点を聞いている。

変化 : コロナ禍を経験したことで「必要だと思うようになった」と回答した比率
永続度 :コロナ禍が収束した後でも「必要だと思う」と回答した比率

縦軸を「変化」、横軸を「永続度」にして、それぞれの全体平均値を中心にした十字(マトリクス図)に、調査した各項目の結果を配置すると、右上が、「変化」も「永続度」も全体平均より高いブロックになる。つまり、今回のコロナ禍でその必要度が増し、コロナ禍が収束した後も必要度が高いものになる。

一方、左上のブロックは「変化」は全体平均以上だが、「永続度」が全体平均以下で、コロナ禍で必要度が増したものの、感染が落ち着いたらそれほど必要ではないかも…というものになる。

住宅設備の永続度×その変化

まず、左上のブロックに入ったものを見ていこう。

出典:リクルート「新築分譲マンション・一戸建て商品ニーズ調査(2021年)」より転載

出典:リクルート「新築分譲マンション・一戸建て商品ニーズ調査(2021年)」より転載

マンションも一戸建ても、除菌・非接触関連が多いことが分かる。特にマンションで見ると、「窓を開けずに換気ができるウイルス除菌システム」、「感染症対策がとられた設備があること」、「除菌対応エレベーターがあること」、「共用部入り口に除菌ツール置き場や検温センサーがあること」、「玄関で手洗いができる設備」が挙げられる。

一戸建てでも、「ウイルス除菌システム」と「玄関で手洗いができる」が左上ブロックに入っている。これらの設備などは、感染拡大初期に注目されたものが多い。その頃は特に、新築一戸建てで「玄関手洗い」の間取りが話題になったが、確かに最近ではあまり話題にならなくなった。

謎のウイルスが蔓延して疑心暗鬼になっているときは、直接的な対策となる設備などの必要度が増すものの、予防対策が分かってきたら、コロナが落ち着けばそこまで必要と思わないと見方が変わったのだろう。

「通信環境」「換気」「遮音性」「省エネ」の基本性能は必要度が高い

次に、右上のブロックを見ていこう。「変化」も「永続度」も全体平均より高くなったものだ。

出典:リクルート「新築分譲マンション・一戸建て商品ニーズ調査(2021年)」より転載

出典:リクルート「新築分譲マンション・一戸建て商品ニーズ調査(2021年)」より転載

マンションで見ると、「変化」(平均25.9%)、「永続度」(平均21.3%)ともに平均以上に配置されたのが、「通風・換気性能に優れた住宅であること」、「通信環境が充実していること」、「遮音性に優れた住宅であること」、「省エネ性(冷暖房効率)に優れた住宅であること」と「宅配ボックスが充実していること」の5つ。

一方、一戸建てで見ると、「変化」(平均26.5%)、「永続度」(平均20.7%)ともに平均以上に配置されたのが、「通風・換気性能」、「通信環境」、「遮音性」、「省エネ性(冷暖房効率)」、「陽当たりの良い住宅であること」と「収納スペースが充実していること」の6つ。

どちらにも共通するのが、「通風・換気性能」、「通信環境」、「遮音性」、「省エネ性(冷暖房効率)」の4つの基本性能だ。コロナ対策、テレワークやテレビ会議、在宅時間長期化などの影響を受けて注目されたものだが、住宅の基本性能であるだけに、室内環境の向上に寄与するものだ。今後もニーズが続くと見てよいだろう。

加えて、マンションでは「変化」が20.9%と平均値より少し下だったためにこのブロックに入らなかったが、一戸建てで入った「陽当たりの良さ」も快適性を高める重要な基本性能だ。特に「永続性」が高いのが特徴で、在宅時間長期化で必要性が再認識されたが、陽当たりの良さはコロナの状況にかかわらずニーズが強いということだろう。

“基本性能”ではなく、“スペース”に該当するが、「収納スペースの充実」も「陽当たり」と似たような傾向が見られた。根強いニーズがあるようだ。

住宅の基本性能や快適性のニーズが今後も高い

次に、純粋に「永続度」の必要度が高いものを見ていこう。

「永続度」の高いTOP10
1.通信環境
2.通風・換気性能
2. 陽当たり
4.収納スペース
5.遮音性
6.省エネ性
7.広いリビング
8.掃除・洗濯などをラクにできる
9.家族それぞれが一人で仕事や趣味に集中できるスペース
10.宅配ボックス(マンションのみ)

TOP10を見ていると、コロナ禍で在宅時間が長期化し、住宅の基本性能などが再認識されたことが分かる。そのうえで、通信環境が1位になったのは在宅勤務やオンライン授業などの影響によるものだろう。9位も同様だ。また、8・9・10位には共働き世帯率増加の影響も見て取れる。

住宅内の設備や間取りは、リフォームなどで変えることもできる。一方、陽当たりや通風、遮音性、省エネ性などは、後から変えることが難しい。住まいを選ぶときには、後から変えることが難しいものを重視するのが基本だ。そういった意味でも、基本性能を重視する傾向は喜ばしいと思う。

●関連サイト
「新築分譲マンション・一戸建て商品ニーズ調査(2021年)」を公表/リクルート

「今は不動産の買い時」。あえてそう考える人の理由とは?

全宅連・全宅保証協会では、毎年9月23日を「不動産の日」と定め、消費者向けに、住居の居住志向及び購買等に関する意識調査を実施している。今回公表した、2021年9月23日~11月30日までに実施した調査結果(有効回答数2万3349件)を見ると、買い時について揺れている消費者の様子が見てとれる。

【今週の住活トピック】
2021年「不動産の日アンケート」結果公表/全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)・全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証協会)

不動産の買い時かどうか、判断できない人が多い?

東京都に出された4回目の緊急事態宣言は2021年7月12日~9月30日まで。この間の7月23日~8月8日は、東京オリンピックが開催されていた。全宅連・全宅保証協会の調査時期は、この緊急事態宣言の終盤から宣言が明けて新型コロナウイルス感染者数がかなり抑制されていった時期に該当する。

この時期に「いま、不動産は買い時だと思いますか?」(単一回答)と聞いたところ、「買い時だと思う」が10.5%、「買い時だと思わない」が25.6%、「分からない」が63.9%となった。これを前年と比べると、「買い時だと思う」が減少して、「分からない」が増加する形となった。

「分からない」という回答は6割を超え、過去最高水準の数値になったという。市場が読み切れず、判断ができない人が多かったということだろう。

Q1.いま、不動産は買い時だと思うか?(単一回答)(出典:全宅連・全宅保証協会「2021年『不動産の日』アンケート結果」より転載)

Q1.いま、不動産は買い時だと思うか?(単一回答)(出典:全宅連・全宅保証協会「2021年『不動産の日』アンケート結果」より転載)

「買い時だ」VS「買い時でない」それぞれの理由

では、「買い時だ」「買い時でない」と思った理由はなんだろう?

買い時だと思う人に対して「買い時だと思う最も近い理由は何ですか?」、買い時だと思わない人に対して「買い時だと思わない最も近い理由は何ですか?」とそれぞれに聞いて、選択肢を1つ選んでもらった結果が次のものだ。

不動産が買い時だと思う理由(買い時だと思う人のみ) 

不動産が買い時だと思わない理由(買い時だと思わない人のみ)

「買い時だと思う」「買い時だと思わない」理由(出典:全宅連・全宅保証協会「2021年『不動産の日』アンケート結果」より転載)

まず、「買い時の主な理由」から見ていこう。
■「住宅ローン減税など住宅取得の為の支援制度が充実しているから」41.4%
■「不動産価値(価格)が安定または上昇しそうだから」25.4%
■「今後住宅ローンの金利が上昇しそうなので(今の金利が安いので)」22.5%

次に「買い時ではない主な理由」を見よう。
■「不動産価値(価格)が下落しそうだから」が28.8%
■「自分の収入が不安定または減少しているから」26.5%

不動産価格が横ばいまたは上昇と見るか、下落と見るかで、買い時感が変わっている点が興味深い。価格の件を除くと、「買い時」では「支援制度が充実」や「金利が上昇しそう」、「買い時ではない」では「収入が不安定など」が主な理由になっている。

さて、買い時理由1位に挙げられた住宅ローン減税だが、実は2022年からは2021年と制度内容が変わっている。住宅ローン減税の控除率が1%から0.7%に下がり、控除期間が10年から13年に延びるなどの制度変更があったが、2025年末まで延長される。制度変更によって減税額が2021年より減ってしまう人もいるが、それでも当初13年間あるいは10年間にわたり、ローンの利息に相当する程度の額が還付される効果は大きい。

また、住宅取得資金として贈与をした場合の非課税枠についても、2022年から限度額が下がるが、2023年末まで延長される。ほかにも、リフォームに関する減税や各種の補助金などもいろいろあるので、購入を支援する制度は多いと言えるだろう。

一方、買い時ではない理由2位の「収入の不安定や減少」については、その程度にもよるだろうが、住宅ローンを組むにはリスクがある。たしかに、買い時ではないと思う大きな理由になるだろう。

買い時に影響する、金利は?住宅の価格は?

では、住宅ローンの金利や住宅価格はどうだろう?

まず、住宅ローンの金利については、日本銀行が政策金利をゼロあるいはマイナス金利に誘導し、景気や物価を押し上げる政策を取っているので、住宅ローンも長期間低金利が続いている。

一方で「金利の先高感」を持つ人も多い。実際に、2022年の2月、3月と長期間金利を固定する【フラット35】や固定期間選択型の当初10年間だけ金利を固定する「10年固定」などの金利が上がっている。これは、市場の短期金利と長期金利の動きの違いによるものだ。市場の長期金利が、コロナ禍でも先行して経済が活性化したアメリカの物価上昇(インフレ)と利上げの動きなどによって上昇したことで、長期金利と連動する【フラット35】や10年固定の金利が上がったという構図だ。市場の短期金利に連動する「変動金利型」の金利は変わっていない。

金利については、この先を予測することは難しいが、これ以上はもう下がる余地がないところまで来ているので、上がることはあっても下がる可能性は低いと言ってよいだろう。

次に、見方によって買い時感が変わる「不動産価格」だ。不動産価格が下落すると見た人のなかには、一部に「東京オリンピックが終わったら不動産価格が下落する」といった噂が流れており、そうした影響もあるのかもしれない。筆者の専門は住宅なので住宅価格について見ると、現時点で住宅価格は下落していないし、コロナ禍のテレワークの普及などによる新たな需要も生まれ、新築も中古も上昇傾向にある。

特に新築の価格は、土地値や建築費用、金利などの影響を受ける。いずれを見ても、今後下がる見込みのものはないので、住宅価格も下落するよりは横ばいか上昇する可能性のほうが高いだろう。

さて、金利も住宅価格も、グローバル経済の影響を強く受けるものだ。数年前は、新型コロナウイルスなどの感染爆発が世界中で起きるとは想像もしていなかったし、直近でも、軍事力で他国に侵攻する事態を想像できた人も少なかっただろう。たとえ専門家といえども、金利や不動産価格を予測することが難しいのが現実だ。

となると、買い時かどうかは、子どもの成長や家族構成の変化、生活環境の変化などで「自分自身に住宅を買う理由があるかどうか」、が一番の決め手になるのだろう。子どもの成長は待ったなしだし、不満のある住宅に住み続けるのは不便だろう。思い立った時が買い時、と考えれば、予測が難しい金利や価格をそれほど気にする必要はないかもしれない。

●関連サイト
「2021年「不動産の日アンケート」結果公表/全国宅地建物取引業協会連合会・全国宅地建物取引業保証協会

2022「住みたい街ランキング」、郊外の人気上昇が続く。キーワードは「活性化」

リクルートが、 首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県)に居住している20歳~49歳の1万人を対象に実施した「SUUMO住みたい街ランキング2022」を発表した。コロナ禍の影響がうかがい知れる結果となった。さて、ランキング上位の街は?

【今週の住活トピック】
「SUUMO住みたい街ランキング2022 首都圏版」を発表/リクルート

住みたい街ランキング2022は、大宮(埼玉県)がTOP3に食い込む!

では、2022年の住みたい街(駅)ランキングの結果を紹介しよう。TOP3は、「横浜」が首位を堅持し、「吉祥寺」が3位から2位にランクアップ、「大宮」が3位に食い込み、「恵比寿」が2位から4位にダウンする結果となった。

住みたい街(駅)総合ランキングトップ10(首都圏全体/3つの限定回答)(出典:リクルート) ※1、※2 本年度より「新宿」は新宿、西武新宿、新宿西口を、「船橋」は船橋と京成船橋を合算している

住みたい街(駅)総合ランキングトップ10(首都圏全体/3つの限定回答)(出典:リクルート)
※1、※2 本年度より「新宿」は新宿、西武新宿、新宿西口を、「船橋」は船橋と京成船橋を合算している

TOP20に注目して見てみると、恵比寿だけでなく、目黒、品川、中目黒、表参道といった都心部の人気の街が順位を下げている。これに対して、大宮(埼玉県)に始まり、浦和(埼玉県)、鎌倉(神奈川県)、船橋(千葉県)、流山おおたかの森(千葉県)が順位を上げた。都心の人気エリアが低迷し、郊外の街が上昇する構図となった。

なかでも、昨年のTOP20圏外から今回TOP20入りしたのが「船橋」「流山おおたかの森」「北千住」だ。

さらに、TOP50の中で大きくランクアップした街を見ると、有楽町(52位→34位)があるものの、神奈川県の藤沢(30位→25位)、埼玉県の川越(46位→30位)、千葉県の新浦安(46位→42位)、神奈川県の辻堂(50位→46位)と東京都以外の郊外の街のほうが目立つ。

これはコロナ禍の影響が出ていると考えられる。在宅時間が長くなり、利便性に優れた都心だけでなく、郊外の住環境などにも目が向けられた結果ではないだろうか。

ランキング上昇の陰に、街の活性化や新しい人の流れあり

いくつか注目したい街を挙げていこう。

まず、「横浜」は年代別(20代・30代・40代)でも、ライフステージ別(シングル男性・シングル女性・夫婦のみ・夫婦+子ども)でも1位になり、人気の高さを見せつけた。神奈川県民の圧倒的な支持に加え、東京都・千葉県・埼玉県・茨城県の住民からも一定の支持を集めているのが特徴だ。

ランキングTOP10の居住都道県別内訳(出典:リクルート)

ランキングTOP10の居住都道県別内訳(出典:リクルート)

次に3位に食い込んだ「大宮」を見ると、シングル女性の8位を除き、すべての年代、その他のライフステージ別でいずれも3位以内に入った。「住みたい理由」で急増したのは、「雰囲気やセンスのいい、飲食店やお店がある」(10.9%→25.1%)だという。

いずれも共通しているのは、歴史のある街ではあるが、再開発が進んでおり、新しい店舗や文化娯楽施設などが増えるなどで街が活性化し、新しい人を呼び込んでいる点だ。

TOP20にランクアップした「船橋」も、駅周辺に大規模商業施設があるのだが、それに加えて、バスケ人気の高まりで「千葉ジェッツ」(船橋市をホームタウンとする、Bリーグのプロバスケットボールチーム)愛が、地元に愛着を深めたという見方もできる。活性化や新しい人の流れは、こうしたことでも生まれるものだ。

「流山」はなぜ大きくランクアップしたのか?

さて、「流山」である。なぜここまでランクアップしたのだろうか?

実は、流山市は子育て家族の流入に力を入れていることで知られている。「住みたい自治体」のランキングでも、流山市が55位から29位へと大きくランクアップした。その投票率が高かったのが、30代女性と共働き・片働きの子育て夫婦だというので、「子育てのしやすさ」が功を奏した結果だろう。

SUUMO編集長の池本洋一さんによると、子育てに関する自治体サービスなどが充実していることに加え、「流山おおたかの森駅」の駅前に多くの施設が集結していることで、駅周辺であらゆることが完結する時間効率性も、子育て夫婦に評価されているという。駅周辺には大規模な商業施設だけでなく、子育て施設や医療施設、運動場などがあり、子育てには嬉しい環境が整っている。

この結果、流山市は人口の増加率が全国1位となるほど、新しい住民を呼び込むことができているのだ。

個性のある街はやっぱり強かった

ランクアップした街を見て個人的に思ったのは、個性のある街はやっぱり強いということだ。

以前は「利便性」や「知名度」などの影響が大きく、都心部の中でも“おしゃれな”、“先進的な”イメージがある街がランキング上位を占めていたが、今回は子育てしやすい「住環境」や「自然豊か」などの影響が大きいランキングとなった。ランクアップした街で見ると、例えば「海に近い街」(鎌倉、藤沢、新浦安、辻堂)、古都の街並みが残るなど「文化的背景のある街」(鎌倉、川越)、「文教地域」で知られる浦和、夢の国にも近くて「新しい街」の新浦安など、もともと他の街よりも明確な個性のある街が、評価を高めたという印象を持った。

さて、筆者が好きな三谷幸喜さんの『鎌倉殿の13人』(NHK大河ドラマ)が始まった。関連番組を見て、鎌倉の街の成り立ちなどについて多くの知見を得ることができた。自身では武力を持たず、血筋で棟梁となった源頼朝は、街づくりで権威を示す必要があったというのだ。こうした情報を知ると、来年のランキングで鎌倉が急上昇するような気がしてくる。それはそれで楽しみだ。

●関連サイト
調査先へのリンクを入れてください(編集部で分かり次第)

「電気代請求にビックリ」で断熱への関心高まる!コロナ禍リフォームのポイントは?

リノべるが2022年1月に、首都圏で持ち家の人に対して、住まいの断熱に対する意識や対策状況について調査したところ、直近に断熱対策をした人が多いことがわかった。断熱対策をするきっかけは、どんなことだったのだろうか。

【今週の住活トピック】
「断熱に関する意識調査」の結果を発表/リノべる

自分の実感値が断熱への関心を高める?

この調査の回答者は、首都圏(1都3県)の持ち家に住む20~50代。なかでも、30代と40代が39.9%ずつと大半を占めるのが特徴だ。働き盛りの年代だけに、このコロナ禍でテレワークなど働き方に変化のあった人も多いことだろう。

まず、「断熱」を「住まいをつくる材料(建材)により外気温の影響を和らげること」と位置付けて、「住まいの断熱に関心があるか」を聞いたところ、関心があるという回答が61.7%と、断熱への関心の高さがうかがえる結果となった。

断熱への関心があり、さらに昨年より今年のほうが関心は高まったと回答した人に対して、そのきっかけを聞いたところ、ダントツで「家の中の寒さや暑さを不快に感じた(60.9%)」となった。次いで「電気代が高くなった(37.0%)」となり、テレワークや巣ごもり生活による「在宅時間の長期化」の影響が見て取れる。室内の体感温度に不快な思いをしただけでなく、電気代の請求額を見て恐ろしくなったという、リアルな実感が断熱への関心を高めたといってもよさそうだ。

関心が高まったきっかけ(出典:リノべる「断熱に関する意識調査」より転載)

関心が高まったきっかけ(出典:リノべる「断熱に関する意識調査」より転載)

2020年以降のコロナ禍で断熱対策をした人が過半数

さて、室温環境に不快な思いをしたなどで断熱への関心を高めた人たちは、住まいの断熱性を上げる対策をしたのだろうか?調査結果によると、「断熱に関心がある人」の54.4%が「住まいの断熱対策を行った」と答えた。

住まいのどの部分の断熱対策を行ったかについては、以下のような回答だった。
1.窓(二重サッシ、断熱サッシ):51.3%
2.壁   :50.3%
3.床   :46.5%
4.天井  :41.7%
5.玄関ドア:12.3%

では、その断熱対策はいつ実施したのだろうか? 2021年になってからが38.5%、2020年が14.4%となり、新型コロナウイルスの感染が拡大した時期に断熱対策をした人が、合わせて52.9%もいたことになる。

断熱対策の実施時期(出典:リノべる「断熱に関する意識調査」より転載)

断熱対策の実施時期(出典:リノべる「断熱に関する意識調査」より転載)

やはり、自宅にいて暑さや寒さを不快に感じたり、増加する電気代の額に震えを感じたりしたことが、断熱対策を進める要因になったのではないだろうか。

今後は断熱性の高い家が増加する!?

快適な室内生活と健全な家計に影響する住まいの断熱だが、地球環境にも優しいことから、政府は住まいの省エネ化を推進している。

住まいの省エネ化のためには、大前提として住まいの断熱性能が高く、部屋を暖めたり冷やしたりするためのエネルギーをあまり使わないことが求められる。加えて、エネルギーの消費量が少ない給湯器や照明機器などを設置して、エネルギーの消費量を抑えられ、住まいが省エネ化される。

電気を使うだけでなく、太陽光発電などの設置により電気をつくり出してくれれば、エネルギーの消費量をプラスマイナスでゼロにすることもできるようになる。これが、いわゆるZEH(ゼッチ)住宅だ。政府は、最終的にZEHを増やしたい方針なので、減税や補助金など、あの手この手で優遇する構えだ。

既存の住宅の省エネリフォームにも、減税や補助金などで後押ししようとしているので、今後は断熱性の高い住宅が増えることは間違いないだろう。

住宅の断熱性を高めることは、冷暖房効率が上がり、快適に過ごせたり、部屋間の室温差が小さくなったり、電気代・ガス代を削減できたりなど、メリットを感じやすいのが特徴だ。リフォームなどで費用をかけても、いろいろな形で自分に戻ってくるので、自宅にいて不快に感じることがあるなら、住まいの断熱について考えてはいかがだろう。

●関連サイト
「断熱に関する意識調査」の結果を発表/リノべる

コロナ禍で家づくりに変化。半数以上が欲する空間や設備とは?

コロナ禍がなかなか終息せずに、長引いている。こんななかで住宅展示場を訪れた来場者の住宅計画はどう変わったのだろうか? 2021年8月~10月にかけて実施した、総合住宅展示場来場者アンケートの結果から掘り下げてみよう。

【今週の住活トピック】
「総合住宅展示場来場者アンケート 2021調査報告書(Web版)」を公表/住宅生産振興財団・住宅展示場協議会

コロナ禍の新しい生活様式が家づくりにも影響

まず、在宅勤務やテレワークの状況を見ていこう。
新型コロナウイルス発生・拡大以前(2020年4月以前)から在宅勤務・テレワークを実施していたのは、10.1%だった。これに対し、発生・拡大以降になると40.8%にまで拡大し、調査時点では36.4%が在宅勤務・テレワークを実施していた。

調査結果の「在宅勤務・テレワークを意識した家づくりへの関心度」(関心がある+やや関心がある)を見ると、前年の35.0%から7.7ポイント増えて、42.7%になっている。内訳を見ると、年代や働き方(共働きかどうかなど)による違いと比べて、在宅勤務・テレワーク実施別による違いが大きかった。

特に「関心がある」という回答比率を見ると、在宅勤務・テレワークのみ(通勤0割)が42.9%と最も高く、在宅勤務・テレワーク3割(通勤7割)の23.2%まで順次下がっていく。ただし、「やや関心がある」を含めた“関心度”で見ると、在宅勤務・テレワーク7割(通勤3割)が84.1%(39.7%+44.4%)と最も高くなった。在宅勤務・テレワークの実施経験によって、関心の強さと広がりが異なるようだ。

出典/住宅生産振興財団・住宅展示場協議会「総合住宅展示場来場者アンケート 2021調査報告書(Web版)」

出典/住宅生産振興財団・住宅展示場協議会「総合住宅展示場来場者アンケート 2021調査報告書(Web版)」

半数以上が「空気環境や換気に配慮した空間」を検討したい

次に、具体的にどういった家づくりをしたいのかを見ていこう。

「家づくりの際、検討したい空間や設備」で、最も検討したい比率が高かったのは、「空気環境や換気に配慮した空間」の52.5%で、次いで「仕事と家事・子育てを両立できる空間」の40.0%となった。

ただし、年代や働き方などによる違いもある。例えば、「仕事と家事・子育てを両立できる空間」では、若年層(34歳以下)が最も高く、「夫婦がお互いひとりで仕事ができる空間」では、熟年層(50歳以上)が高くなった。家庭に子どもがいる場合の年齢の違いなどが、影響しているのだろう。

また、在宅勤務・テレワークの実施率の高いほうが、「自宅で仕事ができる空間」や「仕事と家事・子育てを両立できる空間」で検討したい比率が高い傾向が見られた。

一方、「空気環境や換気に配慮した空間」はあまり違いがなく、検討したい比率がどの属性でも高い点が注目される。「自宅で仕事ができる空間」などの項目で検討比率の低い、在宅勤務・テレワークはしていない(通勤10割)層では、「空気環境や換気に配慮した空間」56.1%と最も高く、特に空気環境への関心が高いことがうかがえる。

出典/住宅生産振興財団・住宅展示場協議会「総合住宅展示場来場者アンケート 2021調査報告書(Web版)」

出典/住宅生産振興財団・住宅展示場協議会「総合住宅展示場来場者アンケート 2021調査報告書(Web版)」

ZEH導入・採用意向は3割弱にとどまる

コロナによる新しい生活様式と同様、住宅業界に大きな影響を及ぼしているのが「2050年カーボンニュートラル」だ。この実現に向けて政府が最も力を入れているのが、ZEH(ゼッチ)住宅。「ZEH」とは、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」を略したもので、住宅の断熱性・省エネ性能を上げることに加え、太陽光発電などによってエネルギーをつくり、年間の「一次エネルギー消費量」がゼロ以下の住宅のことだ。

調査結果では、ZEHの導入・採用意向を聞いている。「既に導入・採用を進めている」は3.9%、「導入・採用を検討している」は6.2%、「導入・採用したい」は18.7%で、導入・採用意向ありの合計は28.8%だった。

出典/住宅生産振興財団・住宅展示場協議会「総合住宅展示場来場者アンケート 2021調査報告書(Web版)」

出典/住宅生産振興財団・住宅展示場協議会「総合住宅展示場来場者アンケート 2021調査報告書(Web版)」

調査ではZEHの認知経路も聞いているが、多くはハウスメーカーの営業担当や展示場と回答している。展示場に来る、住宅検討がまだ初期段階の人にとって、間取りや換気といった、今、住んでいる住宅でも気になっている点に比べて、まだ視野に入っていないのだろう。プランの詳細を検討する段階で、希望に入ってくるのかもしれない。
政府がZEHの普及に力を入れていることもあって、2022年度の税制改正では「住宅ローン減税」などの優遇制度で、ZEHなどの省エネ性能の高い住宅がより優遇されるようになる。こうした状況を受けて、今後は導入・採用意向が高まるのかどうか、注目したい点だ。

見てきたように、長引くコロナ禍の影響などで、家づくりの計画も大きな変化が見られた。これからも、家族構成だけでなく、テレワークや共働きなどの働き方の違いが、家づくりに影響していくのだろう。

○関連サイト
「総合住宅展示場来場者アンケート 2021調査報告書(Web版)」を公表/住宅生産振興財団・住宅展示場協議会

コロナ禍でもリフォームは堅調。新生活の様式への対応も

コロナ禍によって生活スタイルは大きく変わったが、住宅やリフォームもその影響を受けている。住宅リフォーム推進協議会では、住宅リフォームの実態を把握するために、リフォーム事業者・一般のリフォーム消費者(実施者・検討者)向けにそれぞれ調査を行った。さて、コロナ禍においてリフォームの実態にどんな変化があったのだろうか?

【今週の住活トピック】
2020年度「住宅リフォームに関する消費者・事業者実態調査」を公表/(一社)住宅リフォーム推進協議会

コロナ禍で変化した消費者のリフォームニーズ

まず、リフォーム事業者の調査結果を見ていこう。

回答した事業者の内訳を見ると、工務店が54.2%、リフォーム専業事業者が23.4%、ハウスメーカーが4.4%、デベロッパーが1.1%などとなっている。設計事務所などは回答事業者には含まれない。また、居住用物件のリフォーム工事の年間施工件数は、「10~100件未満」が41.6%、「100~500件未満」が30.1%となっている。

事業者に、消費者への情報提供件数について、2019年度と2020年度を比較してもらったところ、48.0%と半数近くが「変わらない」と回答した。一方で、「減少した」が35.9%、「増加した」が16.1%となり、なんらかのコロナ禍の影響があったことがうかがえる。

また、「増加した」と回答した事業者に、消費者ニーズの変化について聞いたところ、「テレワークのスペースの確保」、「換気設備の更新」、「非接触型器機への変更」、「温熱環境の改善」が多く挙がった。

事業者:コロナ禍による消費者ニーズの変化(出典/(一社)住宅リフォーム推進協議会「リフォーム事業者調査」の結果をもとにSUUMO編集部作成)

事業者:コロナ禍による消費者ニーズの変化(出典/(一社)住宅リフォーム推進協議会「リフォーム事業者調査」の結果をもとにSUUMO編集部作成)

「テレワークスペースの確保」は、テレワークの普及によるもので、「換気設備の更新」、「非接触型器機への変更」は、新型コロナ感染予防によるもの、「温熱環境の改善」は、在宅時間が長くなるなかで冷暖房効率のための断熱改修ニーズの高まりということだろう。

「築10年以上15年未満」では初回のリフォームが76.5%

次に、「リフォーム実施者調査」を見ていこう。調査対象は、過去3年以内にマイホーム(築10年以上)のリフォームを実施した25歳以上の人だ。

直近に実施したリフォームが何回目なのかを聞いたところ、「初回」という人が過半数の53.1%、次いで「2回目」の24.7%となった。それを物件の築年数別に見ると、「築10年以上15年未満」では「初回」が76.5%と最も多い。以降、築年数の長期化に伴い、リフォームの回数が増える傾向がある。

筆者が注目したのは、物件の取得とセットでリフォームしたか、もともと保有していた物件をリフォームしたかだ。物件の取得と合わせてリフォームした人では「初回」の割合は67.7%とかなり高いが、保有していた物件をリフォームした人では「初回」の割合は48.1%になる。調査対象となる築10年以上の物件を取得した人では居住する前にリフォームする意向が強く、居住中の人では物件の築年数が長くなって老朽化を感じたり不具合が生じたとき、その都度リフォームするという姿が見て取れる。

実施者:リフォーム実施回数(出典/(一社)住宅リフォーム推進協議会「リフォーム実施者調査」の結果をもとにSUUMO編集部作成)

実施者:リフォーム実施回数(出典/(一社)住宅リフォーム推進協議会「リフォーム実施者調査」の結果をもとにSUUMO編集部作成)

また、リフォーム実施者の検討時の平均予算額は261.0万円、実際のリフォーム平均費用額は341.3万円だった。予算を上回った人が挙げた理由は、「予定よりリフォーム箇所が増えた」(52.5%)、「設備を当初よりグレードアップしたから」(43.4%)が上位になった。

リフォームの「優遇制度」を自分から相談した活用者も多い

今回の調査では、リフォームに関する「税制優遇制度」についても事業者、実施者、検討者に聞いている。検討者の調査対象は、築年数10年以上の物件に住んでいて、今後3年以内にリフォームを実施する予定の人だ。

まず、7つの税制優遇制度についての認知度を見ると、リフォーム検討者では「耐震リフォーム減税」の61.0%が最も高く、次いで「バリアフリーリフォーム減税」の60.7%となり、最も認知度が低いのが「同居対応リフォーム減税」の44.0%で、意外に全体に認知度は高い。比較的新しい優遇制度である、同居対応リフォームや長期優良化リフォームの減税に対する認知度が低いようだ。

これに対して、リフォーム実施者の認知度は、最も高いのが「住宅ローン減税(増改築)」の36.7%、次いで「バリアフリーリフォーム減税」と「省エネリフォーム減税」の32.4%だった。検討者より実施者の方が認知度が低い理由は、実施者の認知度は「もともと知っていた、または自分で調べて知った」、「業者に勧められてはじめて知った」の合計であるのに対し、検討者は「内容を理解しており活用したいと考えている」、「内容を概ね理解している」、「制度は聞いたことはあるが内容は理解していない」の合計であることから、検討者ではまだ理解途中の人を含んでいることが要因になっているのかもしれない。また、リフォームを検討すると情報収集から始めるのに対し、実際にリフォームの必要に迫られている人には、優遇制度を調べる余裕はないといったこともあるのかもしれない。

さて気になるのは、事業者の優遇制度の認知度だ。認知度が最も高いのは「省エネリフォーム減税」の91.4%で、最も低いのが「同居対応リフォーム減税」の75.9%だった。事業者だけに認知度は高いものの、いずれも「制度を知らない」という事業者が少なからずいるうえ、「制度は知っているが概要を把握していない」と回答した事業者も多い。

事業者:税制優遇制度の認知・理解度(出典/(一社)住宅リフォーム推進協議会「リフォーム実施者調査」の結果をもとにSUUMO編集部作成)

事業者:税制優遇制度の認知・理解度(出典/(一社)住宅リフォーム推進協議会「リフォーム実施者調査」の結果をもとにSUUMO編集部作成)

では、リフォーム実施者の税制優遇制度の活用率はどうだったのだろう?
優遇制度を認知している人では、「同居対応リフォーム減税」(51.4%)、「長期優良化リフォーム減税(固定資産税)」(49.4%)、「耐震リフォーム減税(固定資産税)」(48.2%)の活用率が高い。

調査では、「自分から業者へ相談して活用した」か「業者に勧められて活用した」かも聞いている。「耐震リフォーム減税(所得税)」、「住宅ローン減税(増改築)」を除いて、「業者に勧められて活用した」ほうが多いが、いずれの制度も実施者側から活用したいと相談した場合も多いことが分かる。

実施者:税制優遇制度の活用度(出典/(一社)住宅リフォーム推進協議会「リフォーム実施者調査」の結果をもとにSUUMO編集部作成)

実施者:税制優遇制度の活用度(出典/(一社)住宅リフォーム推進協議会(一社)住宅リフォーム推進協議会「リフォーム実施者調査」の結果をもとにSUUMO編集部作成)

したがって、優遇制度を活用したい場合は、事業者任せにはせずに、自分でもよく調べて活用できるかどうか事業者に相談することも大切だということだ。

リフォームをする場合は、工事の費用や施工の品質が気になるところ。きちんとリフォームして、費用は安く、おまけに優遇制度についても詳しい事業者を選びたいと思うだろうが、すべてが同時には成立しにくいという側面もある。費用が安い理由が施工の品質が低いことにあったり、大きな事業者で丁寧な対応ができ、優遇制度などにも精通するスタッフがいる場合には、工事費用は高くなったりするからだ。

リフォーム事業者に一番求めるのは何かを考え、自身でも情報収集や確認などを怠らないことをお勧めしたい。

●関連サイト
2020年度「住宅リフォームに関する消費者・事業者実態調査」を公表/(一社)住宅リフォーム推進協議会

コロナ影響がお湯にまで!この冬、絶対に給湯器を故障させてはいけない理由と対策

この冬、「給湯器が故障すると交換できない」という大問題が起きている!優良住宅部品(BL部品)の認定・普及を担う、一般財団法人ベターリビングでは、故障の予防をするよう勧めている。詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
「冬期における給湯機器の故障予防等について」注意喚起/ベターリビング

なぜ給湯器の故障を予防する必要があるのか

ベターリビングがなぜ、給湯器の故障予防を訴えているのだろう。それには、次のような背景がある。
1.冬は気温が下がるので、給湯器の配管の凍結が発生するなど、故障が起こりやすい
2.現在、給湯機器については、海外からの部品供給の遅延により市場在庫が不足している

給湯器の交換ができないといったことは、ニュースなどでも話題になっていたが、「住んでいる賃貸住宅の給湯器が故障したので、大家に修理交換を求めたら3カ月先になるという回答だったので、それならその間は家賃を減額してほしいと要望した」といったツイートが、Twitterでも話題になったりしている。

そこで同財団は、給湯器の故障を防ぐなどの情報を取りまとめて、ホームページに公開したというわけだ。

冬の給湯器の故障を防ぐにはどうしたらいいのか

同財団の「冬期における給湯機器の故障予防対策等について」に記載された、寒波到来時の予防対策を紹介しよう。

(1)長期不在でもコンセントを抜かず、電源プラグがコンセントに差し込まれている状態にする
給湯機器には、外気温の低下を感知すると自動的に作動する機器本体の「凍結予防ヒーター」と、機器本体と浴槽間の配管を水で満たし凍結を予防する「自動ポンプ運転装置(追焚き機能付きのみ)」が備え付けられているので、電源プラグがコンセントに差し込まれていることを確認する。

(2)追焚き機能付き給湯機の場合は、浴槽には一定量の水はりをする
「自動ポンプ運転装置」は、配管内を水で満たし、浴槽と給湯機器を循環させることにより配管の凍結を予防するもので、特に一戸建てで屋外に配管が露出し、保温が不十分な箇所がある場合に有効。
リモコンの電源を切っても作動するが、事前準備として、浴槽内の循環金具の上 5cm以上の高さまで水(残り湯も可)で満たすことが望ましい。

(3)給水元栓を保温する
給水元栓とは、給湯機器への給水の元栓(バルブ)のこと。通常、給水元栓には保温措置がなされているが、屋外設置で保温措置がなされていない場合には、設備工事業者に当該作業を依頼するか、緊急的な措置として、タオルを巻きつけ、上から防水のためのビニールでカバーをするとよい。

さらに、配管などが凍結した場合には「自然解凍を待ち、熱湯をかけたりしない」、積雪時には「給湯機器の給気・排気口の除雪を行う」といった予防対策も紹介している。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

また、「リモコンに故障表示(数字)が点滅したとき」「配管部の水漏れや換気部に煤が付着するなどの異常を見つけたとき」「使用中に異音(異常な高温など)がしたとき」には、給湯機メーカーやガス会社の窓口に問い合わせをするように、注意を呼び掛けている。

なお、住宅リフォーム・紛争処理支援センターでは、「住まいるダイヤル」において、家庭用給湯器の供給遅延に関する相談対応をしている。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

教えて!そもそも家庭用の給湯器がなぜ不足しているの

ネット上では、『給湯器が壊れたものの交換できないので、銭湯通いになっている』『お風呂に入れなくなったので実家に戻っている』といった、お風呂難民の声も多く挙がっている。

SUUMO編集長の池本洋一さんによると、新型コロナウイルス感染拡大による海外(特にベトナムなど東南アジア)のロックダウン(社会隔離措置)の余波が、住宅建材・設備の納品遅延につながっているという。現地工場がフル稼働できないので、生産量が減少しているわけだ。特に、「温水洗浄便座」と「ガス給湯器・コンロ・乾燥機」の納品遅延が目立つのだとか。

「これに対して、政府も動いています」と池本さん。経済産業省と国土交通省の連名で、給湯機器の関係団体に対して、家庭用給湯器の安定供給に向けた対応を行うよう要請したほか、経済産業省でも、部素材調達におけるボトルネックの把握とその解消に向けた取り組みや代替調達先の紹介など、必要な対応を図っていくとしている。

給湯器不足はいつ頃解消される見通しなのだろうか?池本さんによると、少しずつ納期遅延は短くなっているものの、在庫回復にはまだ数カ月はかかる見込みだという。少なくとも寒さの続く間は在庫不足なので、給湯器の故障を防ぐために個人でできることはしておくのがよいだろう。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

さて、オミクロン株が猛威を振るうなど新型コロナウイルスの流行収束はまだ不透明だ。家庭用の給湯器の納期も見通しが立ちにくいので、自衛策に努めて寒さの厳しい時期に風呂に入れないといったことのないようにしたいものだ。

●関連サイト
ベターリビング「冬期における給湯機器の故障予防等について」
住宅リフォーム・紛争処理支援センター「家庭用給湯器の供給遅延に関する相談対応について」

住宅ローン減税、2022年以降どうなる? これから家を買う人が知るべきポイント

与党の「税制改正大綱」が決定し、住宅ローン減税の控除率引き下げが確実となった。控除率の引き下げは、以前より会計検査院の指摘を受けていたことによるもの。控除率1%では、住宅ローンの金利で0.4%台のものもあるので、利息分より多く還付しているいわゆる「逆ザヤ」となっていたからだ。今後の住宅ローン減税について詳しく解説していこう。

【今週の住活トピック】
政府与党が「令和4年度税制改正大綱」を決定

現行の住宅ローン減税をおさらい

2022年度からどうなるかの前に、まずは今適用されている住宅ローン減税の概要を確認しておこう。

現行の住宅ローン減税の概要(筆者作成) ※控除額全額を所得税から引き切れなかった場合は、住民税からも一部控除される

現行の住宅ローン減税の概要(筆者作成)
※控除額全額を所得税から引き切れなかった場合は、住民税からも一部控除される

現行の住宅ローン減税は、控除期間が原則10年間だ。消費税増税による緩和策として、10年間+3年間の特例が適用されていた。

なお、ここでいう「中古住宅」は、売主が個人である場合だ。売主が個人の場合は消費税がかからないのだが、不動産会社などの法人が売主で中古住宅をリノベーションして販売している場合は、建物価格に消費税が課税されるので「消費税10%適用物件」に該当する。また、「認定住宅」の場合、上記の表のローン限度額に1000万円上乗せされることで、最大控除額が100万円多くなる。この「認定住宅」と認められるためには長期優良住宅や低炭素住宅など所定の条件をクリアする必要がある。

2022年からの住宅ローン減税はどう変わる?

では、与党の税制改正大綱では、住宅ローン減税はどう変わると言っているのだろうか?

令和4年度税制改正大綱の住宅ローン減税の概要※控除額全額を所得税から引き切れなかった場合は、住民税からも一部控除される(筆者作成)

令和4年度税制改正大綱の住宅ローン減税の概要(筆者作成)
※控除額全額を所得税から引き切れなかった場合は、住民税からも一部控除される

会計検査院から指摘されていた「控除率」は一律0.7%になった。新築住宅については、その分「控除期間」を原則13年間にしている。また、控除の対象となる「ローン限度額」が、居住年が2022・2023年の場合よりも2024・2025年のほうが段階的に縮小されるようになっている。

そして今回最も注目したいのは、住宅の省エネ性能によって、住宅ローン減税の恩恵が変わってくることだ。政府は「2050年カーボンニュートラル」を提唱し、脱炭素化に力を入れている。住宅ローン減税を活用して、住宅の省エネ性を引き上げようという考えだ。

カギになるのが「認定住宅等」の中身だ。具体的には、次のような区分けになっている。

令和4年度税制改正大綱の住宅ローン減税で認定住宅の場合(筆者作成)

令和4年度税制改正大綱の住宅ローン減税で認定住宅の場合(筆者作成)

最も優遇されるのが、「認定住宅」だ。これは現行の認定住宅と同様に、長期優良住宅や低炭素住宅に認定されたものになる。高い性能が求められるので、いずれもさまざまな減税等の優遇措置が受けられるものだ。

次に優遇される「ZEH水準省エネ住宅」とは、ZEH並みの省エネ性能等を有する住宅が該当する。「ZEH(ゼッチ)」とは、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」を略したもので、住宅の断熱性・省エネ性能を上げることに加え、太陽光発電などによってエネルギーを創り、年間の「一次エネルギー消費量の収支」がゼロ以下の住宅。ZEH水準省エネ住宅は、住宅の断熱性・省エネ性能がこのZEHの水準を満たすものを指し、太陽光発電設備の設置の有無は問われない。

最後の「省エネ基準適合住宅」は、現行の建築物省エネ法の平成28年(2016年)基準が該当する。近年では新築住宅全体の8割、なかでも新築一戸建ての9割がこの基準を満たしていると言われている。ただし現時点では、新築住宅に適合義務は課されていないので、新築住宅がすべて適合住宅に該当するわけではない。2025年度までに、すべての住宅で省エネ基準適合を義務化する見通しとなっている。

したがって、これらの省エネ性の条件を満たさない場合は、新築も中古も「それ以外」の控除額となる。加えて、税制改正大綱には、2024年以降に建築確認を受ける新築住宅などで、一定の省エネ基準を満たさない場合は、住宅ローン減税の適用対象外になるという記載がある。つまり、2024・2025年に居住開始する新築住宅でも、省エネ性によっては住宅ローン減税が受けられない可能性があるので、注意したい。

なお、不動産会社などが買い取った中古住宅をリフォームして、売主として販売する場合で、一定レベルのリフォームをしたものは、新築住宅と同額の控除額となる。

対象者の所得要件や中古住宅の築年数要件なども変わる

これまで大きな変更点を中心に紹介してきたが、このほかにもいくつか変更点がある。

(1)対象者の所得要件の引き下げ
これまでは、住宅ローン減税を受けるには、ローンを借りた人の合計所得が3000万円以下という要件があった。2022年1月1日以降に居住開始した場合は、これを2000万円に引き下げるとしている。

(2)中古住宅の築年数要件を撤廃
これまでは、中古住宅の場合に、「木造住宅は築20年以内、耐火構造(いわゆる鉄筋コンクリート造りのマンション)は築25年以内」といった要件があった。この築年数要件が撤廃される。代わりに「登記簿上の建築日付で昭和57年1月1日以降の住宅」(いわゆる新耐震基準)といった条件が加わることになる。

(3)住宅の床面積の一部緩和
住宅ローン減税が受けられる住宅には、「床面積が50平方メートル以上」という要件がある。が、現行の住宅ローン減税でも、13年間控除の対象の場合で合計所得が1000万円以下の年は、「床面積40平方メートル以上」でも適用されるようになっている。今回の税制改正大綱でも、2023年12月末までに建築確認を受けた新築住宅は、床面積40平方メートル以上で適用されることとしている。

税制改正大綱は、今後の国会で関連税制法案が成立することが前提となる。また、住宅ローン減税にはここに記載した以外のさまざまな要件があるうえ、関連税制法案で詳しい条件が追加されることもあるので、詳細が確定したら十分に確認をしてほしい。

これからは、省エネ性の低い住宅には減税などの恩恵を与えない、という政府の動きが見えるので、住宅を建てたり買ったりする際には、省エネ性能について関心を高めてほしい。

●関連サイト
政府与党の「令和4年度税制改正大綱」

子育て世帯・若者夫婦の新築住宅に最大100万円補助!新設「こどもみらい住宅支援事業」を解説

令和3年度補正予算案が閣議決定した。その目玉政策として国土交通省が創設予定なのが、「こどもみらい住宅支援事業」だ。子育て世帯・若者夫婦世帯に対し、省エネ性能の高い新築住宅を取得したり住宅の省エネ改修をしたりする際に補助金を交付するという。今まさに住宅の取得やリフォームを検討している人には、見逃せない制度になるだろう。

【今週の住活トピック】
こどもみらい住宅支援事業を創設/国土交通省

新築住宅を取得する子育て世帯・若者夫婦世帯とリフォームする世帯が対象

こどもみらい住宅支援事業は、「子育て支援」と「2050年カーボンニュートラル」を目的としているので、対象者や対象住宅などに次のような条件がある。
(1)高い省エネ性能を有する注文住宅を新築する/子育て世帯または若者夫婦世帯
(2)高い省エネ性能を有する新築分譲住宅を購入する/子育て世帯または若者夫婦世帯
(3)一定のリフォームをする/住宅の所有者(法人を含む)※居住者または管理組合・管理組合法人

ここでいう「子育て世帯」とは、申請時点で18歳未満の子どもがいる世帯、「若者夫婦世帯」とは、申請時点でいずれかが39歳以下の夫婦世帯のことだ。居住するために新築したり購入したりする、いわゆるマイホームが対象。

注意点は、この補助金を申請するのが住宅を所有する世帯ではなく、住宅の施工や販売、リフォーム工事を行う事業者である点だ。定められた登録事業者と工事請負契約または売買契約を結ぶことが前提となっている。

次に対象となる期間だが、補正予算案の閣議決定日である2021年11月26日以降に契約(工事請負契約・売買契約)を締結し、建築事業者・販売事業者が事業者登録(2022年1月開始予定)後~2022年10月31日までに着工することが条件。ただし、リフォームについては、2022年10月31日までに工事が完成することが求められている。

最大で新築は100万円、リフォームは30万円の補助金

住宅に求められる性能については、新築住宅については高い省エネ性が条件となっていて、レベルによって補助金の額が変わる。

●マイホームの新築・購入の場合(1)(2)
A:補助額100万円/戸 性能/ZEH、Nearly ZEH、ZEH Ready、ZEH Oriented
B:補助額 80万円/戸 性能/認定長期優良住宅、認定低炭素建築物、性能向上計画認定住宅
C:補助額 60万円/戸 性能/最新の省エネ基準適合住宅(断熱等級4かつ一次エネ等級4以上を満たす住宅)

●住宅のリフォームの場合(3)
必須:住宅の省エネ改修
任意:住宅の子育て対応改修、耐震改修、バリアフリー改修、空気清浄機能・換気機能付きエアコン設置工事等
補助額:リフォーム工事内容に応じて定める額 上限30万円/戸※
※子育て世帯・若者夫婦世帯は、上限45万円/戸(既存住宅購入を伴う場合は60万円/戸)
※安心R住宅の購入を伴う場合は、上限45万円/戸

リフォームで必須となる省エネ改修とは、「窓まわりの断熱改修(窓ガラスを複層ガラスにする、内窓を付ける、窓自体を交換する等)」、「建物の外壁、屋根・天井、床の断熱改修」、「エコ住宅設備の設置(太陽熱利用システム、高効率給湯器等)」「子育て対応改修(家事負担の軽減につながる設備の設置)」のいずれかの工事を行うこととされている。

また、大きな窓のガラスの交換で1枚当たり8000円、高効率給湯器の設置で1戸当たり2万4000円、外壁の断熱改修で1戸当たり10万2000円など、それぞれに補助額が定められていて、実施した工事の補助額を合計した額の上限が30万円などとなっているので、必ず上限額までもらえるわけではない。

と、まとめると上記のようになるのだが、専門的な用語が多いので、これで分かったというユーザーが多くはないだろう。そこで、いくつか用語解説をしていこう。

補助額が変わる省エネ性能の違いとは

新築住宅のAで条件とされる「ZEH(ゼッチ)」とは、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」を略したもので、住宅の断熱性・省エネ性能を上げることに加え、太陽光発電などによってエネルギーを創り、年間の「一次エネルギー消費量の収支」がゼロ以下の住宅。エネルギーを創っていても、ゼロ以下には達しない場合に、そのレベルなどに応じてNearlyやReady、Orientedなどがつく。ZEHの普及は、「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けて政府も本腰を入れており、補助金を出すなどで支援もしている。

次にBの条件となる「長期優良住宅」とは、住宅の寿命を延ばす目的で創設されたもので、建物の耐久性に加え、リフォームのしやすさや維持管理計画などが条件となる。「低炭素建築物」は建物の省エネ性に加え、低炭素化に効果のある設備などを導入することが条件となる。いずれも高い性能が求められるので、全期間固定型ローンの金利優遇となる【フラット35】Sで、金利優遇期間が最長の10年となるAタイプの基準になっているほか、税制などの優遇措置も受けられる。

Cの条件となる「最新の省エネ基準」は、2025年までに新築住宅のすべてで適合させることが義務づけられる予定のものだ。詳しい説明をすると長くなるので、筆者の「脱炭素社会の実現に政府が本腰。2030年の住宅のあるべき姿とは。」の記事を参照してほしい。

いずれの場合も高い省エネ性能が求められるので、新築住宅を取得すれば補助金の対象になる、というわけではないことを理解しておこう。

また、リフォームの場合に上限が引き上がる「安心R住宅」は、耐震性があり、インスペクション(建物状況調査等)が行われた住宅で、リフォームに関する情報提供があるなどの住宅のこと。ただし残念ながら、登録されている住宅はまだ少ない。

なお、「こどもみらい住宅支援事業」は、これからの国会で予算案が成立することが前提になる。また国会での審議に向けて詳しい条件を明記されたり、変更されたりする可能性もある。まだ正式に決定しているわけではないが、すでに対象となる契約期間になっているので、新築住宅を建てる・買う、あるいは自宅や購入する中古住宅をリフォームする予定のある人は、しっかり情報を入手して、今のうちから検討しておくとよいだろう。

●関連サイト
国土交通省「こどもみらい住宅支援事業を創設します!」
国土交通省「こどもみらい住宅支援事業について」

自宅内の寒暖差、つらい人が9割。ヒートショックや体調不良の原因にも

季節は真冬へ向かっている。冷え性の筆者には、つらい季節の到来だ。そんななか、自宅内の寒暖差がつらいと感じる人が9割もいるという調査結果が発表された。自宅内の寒暖差は、暮らしにもいろいろ影響を与える。詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
「冬の自宅内の寒暖差に関する意識調査」結果を発表/一条工務店

冬の自宅内の寒暖差、93.5%がつらい、33.2%が体調不良を経験、77.2%がヒートショックを懸念

一条工務店が、「冬の自宅内の寒暖差に関する意識調査」を実施した。「寒い時期に、自宅内で暖房のある場所とない場所の寒暖差がつらいと感じることがあるか」を聞いたところ、感じるという人が93.5%(「常に感じる」66.3%+「時々感じる」27.2%)もいることが分かった。

感じると回答した人に、「自宅内で寒暖差がつらい場所はどこか」を複数回答で聞くと、最も多いのは「脱衣所」の71.7%、次いで「トイレ」の61.0%など、水まわりといわれる場所で寒暖差を感じている。

自宅内で寒暖差がつらい場所 上位6項目(出典/一条工務店「冬の自宅内の寒暖差に関する意識調査」結果より転載)

自宅内で寒暖差がつらい場所 上位6項目(出典/一条工務店「冬の自宅内の寒暖差に関する意識調査」結果より転載)

また、「自宅内の寒暖差が原因で体調不良になったことがあるか」を聞いたところ、「ある」と回答した人が33.2%となり、3人に1人は寒暖差による体調不良を経験したというほどの深刻ぶりだ。
室温の高い部屋から低い部屋に移動するときの急激な温度差によって、血圧が大きく変化して引き起こされるのがヒートショックだ。
「自身または家族のヒートショックが心配か」と聞くと、心配と回答した人は77.2%(「とても心配」29.3%+「やや心配」47.9%)と、ヒートショックへのリスクを懸念していることも分かった。

冬の自宅内で寒い場所は、掃除も億劫だし時間もかけたくない!?

さて、自宅の水まわりの場所で寒暖差を感じることが多いという結果だったが、そうした場所では日常の掃除への影響も大きいようだ。

「自宅内の寒さが原因で億劫になる家事はあるか」を複数回答で聞いたところ、最も多いのは「浴室掃除」の48.5%で、「暖房を使用していない部屋の掃除」も41.7%となった。「寒い部屋で家事をするのは億劫」と感じる人が多いということだろう。

また、「自宅内の寒さが原因で掃除する頻度が減る、もしくは掃除する時間を短縮する場所はあるか」を複数回答で聞いたところ、北側に配置されることが多い「玄関」が36.9%と最多となり、次いで「浴室」「トイレ」洗面所」「脱衣所」といった水まわりが顔をそろえる結果となった。億劫でも掃除をするしかないけど、「回数を減らしたり、かける時間を減らしたりしちゃう」ということだ。

(出典/一条工務店「冬の自宅内の寒暖差に関する意識調査」結果より転載)

(出典/一条工務店「冬の自宅内の寒暖差に関する意識調査」結果より転載)

寒暖差をなくすには、住まいの断熱性がカギ

脱衣所や浴室、トイレなどは、暖房をしている部屋との温度差が生じやすい。間取りによっては玄関もそうだろう。急激な温度差は体調不良やヒートショックなどのリスクを生む。調査結果からもわかることは、寒暖差はそうした身体への影響も大きいだけでなく、家事が億劫になるなど、活動量を減らすという影響もあることだ。

寒暖差をなくすためには、衣類で調整する方法もあるが、浴室や脱衣所などはそれができない。また、脱衣所などに暖房器具を置いて暖めておくという方法もある。が、やはり解決策の王道は、自宅内の寒暖差が少ない「断熱性の高い家にする」ということになるだろう。

断熱性の高い家は、「ヒートショックを起こしにくい」「活動的になり、家事もしやすい」「光熱費が抑制できる」といったメリットがある。住宅を買う際に断熱性を意識する、住んでいる住宅の断熱改修をするなども考えるのがよいだろう。

調査で、「自宅内の寒暖差がなくなるなら、どのくらい費用をかけても良いと感じるか」と聞いたところ、寒暖差を「常に感じる」と回答した人ほど、かけてもよいと思う金額が多い傾向が見られた。51万円以上かけてもよい人は全体では37.6%だったが、寒暖差を感じる人は43.8%になった。

自宅内の寒暖差がなくなるならかけてよいと思う費用(出典/一条工務店「冬の自宅内の寒暖差に関する意識調査」結果より転載)

自宅内の寒暖差がなくなるならかけてよいと思う費用(出典/一条工務店「冬の自宅内の寒暖差に関する意識調査」結果より転載)

かけられる予算には制約があるだろうが、窓から出入りする熱は意外に多いので、まずは窓の断熱改修を優先するとよいだろう。窓ガラスを省エネガラスに交換したり、金属サッシを樹脂サッシに交換したりといったことで、暖房で暖めた熱が外に逃げにくくなる。

「寒いのは我慢する」という考え方はリスクがある。ぜひ、自宅内の寒暖差を見直して、リスクを減らす行動を起こしてほしい。

●関連サイト
「冬の自宅内の寒暖差に関する意識調査」結果を発表/一条工務店

「住宅ローン選び」で44%が後悔している。他人任せではダメ!

住宅ローン比較サービス「モゲチェック」を運営するMFSは、「住宅ローン選びの後悔」に関するアンケート調査を、住宅ローンを借りた経験のある30歳以上60歳未満を対象に実施した。その結果、44%の人が住宅ローン選びで後悔していることが分かった。詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
「住宅ローン選びの後悔」に関するアンケート調査結果を発表/MFS(モゲチェック)

44%が住宅ローン選びで後悔している!

この調査で、「住宅ローン選びで後悔していることはあるか」を聞いたところ、44.0%が「ある」と回答した。
次に、「住宅ローン選びで後悔していることは何か」を聞くと、「もっと金利の低い金融機関を選べば良かった」が最多の42.7%、次いで「違う金利タイプを選べば良かった」の29.1%、「不動産会社に言われるがままに選んでしまった」の22.5%が続いた。

ほかにも、返済期間やボーナス払い併用の有無など、後悔するポイントは実にさまざまということがよくわかる結果だ。

住宅ローン選びで後悔していること(出典/MFS「住宅ローン選びの後悔」に関するアンケート調査結果より転載)

住宅ローン選びで後悔していること(出典/MFS「住宅ローン選びの後悔」に関するアンケート調査結果より転載)

住宅ローンは多種多様、ローンの組み方も人それぞれ

金融機関によって用意している住宅ローンは異なる。同じ金融機関でも複数の住宅ローンのタイプがあるし、同じ金利タイプのローンでも金融機関によって金利が異なるなど、実に多種多様だ。

例えば、年に2回金利が見直される「変動金利型」、当初の一定期間だけ金利が固定される「固定期間選択金利型」(固定3年、固定10年など)、全期間金利が固定される「全期間固定金利型」のタイプがある。これに加えて、「ネット専用」の場合と「店頭の窓口」の場合で金利が異なったり、金利を割り引く優遇金利にも「当初大きく引き下げる」タイプと「ずっと一定割合を引き下げる」タイプがあったりなど、複雑きわまりない。

また、返済中に適用される金利が変わる金利タイプのものでは、市場の金利が変わったり、優遇期間が終わった場合などに、適用される金利が変わって返済額が増えるということも起こる。そんなときに、別の金利タイプにすればよかったと後悔するかもしれない。住宅ローンの返済は長期にわたるので、返済中の変化についてもあらかじめ理解しておく必要がある。

さらに近年は、住宅ローンに必ず必要な団体信用生命保険(※)に疾病保障付きなどの保険の特約を付けるといったオプションも多い。保険料は金利に上乗せとなることが多いのだが、金利を下げたいからと言って特約を途中で解約することは、原則としてできない。住宅ローンを機に保険を考え直す人も多いので、このようなオプションについてもあらかじめ理解しておく必要がある。
(※)住宅ローンの返済中に借り入れた人が死亡、高度障害になったときに住宅ローンを清算する保険

住宅ローンの組み方もそれぞれ適した組み方がある。例えば返済期間については、最長35年間というのが一般的だが、1年単位で組めるので33年間でも29年間でもよいわけだ。さらに、ボーナス時にローンの一部を返済する組み方もできる。ボーナスを当てにしてボーナス返済の額を多くしたり、定年までに返済を終えようと短い返済期間で組んだり、毎月の返済額を減らそうと最長期間で組んだりといったことで、返済中にもっとよく考えればよかったと後悔した人もいたと、調査結果からうかがえる。

62%が不動産会社の紹介先の金融機関を選んでいる

このように、住宅ローンの種類や組み方は千差万別で、それぞれにメリットやデメリットがあり、違いをきちんと把握するのが大変な状況になっている。それならば、「不動産会社が提案する住宅ローンでよいのではないか」と思う人も多いのだろう。

調査結果を見ると、「不動産会社の紹介先の金融機関を選んだ」という人が62.0%もいる。ただし、「自分で選んだ」人よりも、不動産会社の紹介先を選んだ人の方が、後悔している度合いがやや高いという結果もある。

住宅ローンを借りる金融機関は「不動産会社の紹介先」か「自分で選んだ」か(出典/MFS「住宅ローン選びの後悔」に関するアンケート調査結果より転載)

住宅ローンを借りる金融機関は「不動産会社の紹介先」か「自分で選んだ」か(出典/MFS「住宅ローン選びの後悔」に関するアンケート調査結果より転載)

「不動産会社が紹介する金融機関を選ぶ」メリットは、事前に金融機関が住宅の担保価値を評価することなどで、融資の審査が早く、借り入れの手続きがスムーズなことにある。場合によっては、提携ローンの金利優遇によって低金利なローンが用意されることもある。一方で、選べる住宅ローンが少ないデメリットもある。

逆に、自分で住宅ローンを探す場合は、様々な金融機関のローンを比較検討して、自分に最も適した金利や条件の住宅ローンを選ぶことができる。不動産会社に紹介された金融機関も選択肢のひとつになる。最終的に、紹介された金融機関の住宅ローンを選んだとしても、他人任せで選んだのと比較検討したうえで選んだのとでは、納得感は大違いだ。

また、不動産会社が提案する住宅ローンの組み方は、できるだけ多く借りられるように、金利タイプは低金利な変動型で、返済期間は最長の35年間の返済計画となることも多い。ところが、教育費などの支出が増えるので、金利上昇による返済額の増加を嫌う家庭もあれば、定年までのもっと短い期間で返済期間を設定したいという家庭もあるだろう。

不動産会社はパソコンで何通りもの資金計画を試算することができるので、希望条件を伝えて、複数の試算をしてもらうとよいだろう。重要なのは「他人任せ」ではなく、自分で住宅ローンに関する情報を集めて、違いを知っておくことだ。

返済後も住宅ローンのメンテナンスを忘れずに

返済中に住宅ローンで悩むことがあったら、金融機関に相談しよう。ボーナス返済の割合などは変えることができるし、繰り上げ返済で返済期間を短くすることもできる。別の金利タイプに切り替えられないか、別のローンに借り換えできないかなど、後悔することがあれば相談してみよう。

住宅ローンを選ぶ際に限らず、返済中のローンの見直しをする際にも、住宅ローン関する正しい知識が求められる。長期で返済する住宅ローンは、生活への影響が大きいだけに、最新の情報を収集したうえで、最適な組み方になっているかのメンテナンスを忘れないようにしてほしい。

MFS(モゲチェック)「住宅ローン選びの後悔」に関するアンケート調査結果を発表
https://www.mortgagefss.jp/pressrelease/1497/
https://mogecheck.jp/articles/show/ArKz81lk4DoJq97oeQJV

カーボンニュートラルで注目のZEH住宅、2021年の導入率は26%

2021年11月16日にイギリスで開催されたCOP26(第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)が閉幕した。日本政府は、脱炭素を目指す方策の一つに、住宅のZEH(ゼッチ)比率を高めることを挙げている。リクルートの調査によると、2021年度に建設された注文住宅のZEH導入率が増加したという。詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
「2021年 注文住宅動向・トレンド調査」を発表/リクルート

ZEH認知率は約73%、導入率は約26%

ZEHとは、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」を略したもの。住宅の断熱性を上げ、エネルギー消費量を抑える設備を設置することに加え、太陽光発電などによってエネルギーをつくり、年間の「一次エネルギー消費量」を正味(ネット)で、おおむねゼロ以下にするものだ。

また、ZEHが正味で一次エネルギー消費量を100%以上削減するのに対し、75%以上削減できる住宅をNearly ZEH(ニアリーゼッチ)と呼んでいる。

出典:経済産業省 資源エネルギー庁の資料のうちZEHの定義より転載

出典:経済産業省 資源エネルギー庁の資料のうちZEHの定義より転載

リクルートが全国の注文住宅建築者に調査したところ、2021年建築者の「ZEHの認知率(内容まで知っている+名前だけは知っている)」は72.9%だった。2017年から増加傾向にあったが、2020年建築者の認知率が73.1%だったことから「頭打ち」の様相だとしている。

ZEH認知者に、ZEH導入検討の状況を聞いたところ、「導入した」のは26.2%で、過去最高の導入率だったという。

ZEH認知者における導入検討状況(全国/ZEH認知者)(出典:リクルート「2021年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

ZEH認知者における導入検討状況(全国/ZEH認知者)(出典:リクルート「2021年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

住宅の省エネ性を高めると、快適に暮らせる環境になる一方で、建築コストもかかる。ただし、光熱費が削減されるので、長期的にコストを回収することができる。では、どの程度の削減効果があったのだろう?調査結果では、平均で月に8060円、月に1万5000円以上という人も11.8%いた。

ZEH導入による光熱費等の経済的メリット(全国/ZEH導入者)(出典:リクルート「2021年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

ZEH導入による光熱費等の経済的メリット(全国/ZEH導入者)(出典:リクルート「2021年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

ZEH住宅の普及がカーボンニュートラルで求められる理由

調査結果のZEH導入率26.2%という数値は、実は政府の目標よりかなり低い。その理由を説明しよう。

COP26の「グラスゴー気候合意」では、世界の平均気温の上昇を1.5℃未満に抑えるために、温室効果ガスの排出量を2030年までに45%削減(2010年比)、2050年にゼロにすることも明記している。COP26に出席した岸田総理大臣も、「2050年カーボンニュートラル」の実現を表明した。

カーボンニュートラルの実現には、家庭での取り組みも重要だ。住宅も多くのエネルギーを消費しているので、さらなる省エネ化や脱炭素化の取り組みが求められている。TBWA HAKUHODOとFUKKO DESIGNが、「自分は何をしたらいいの?」と思っている人向けに制作した『気候変動アクションガイド』を見ると、「個人でできる対策と効果」として、最も温室効果ガスの排出量削減に効果があるのが、「ゼロエネルギー住宅」にすること、次いで「太陽光パネルの導入」だった(出典: Ryu Koide et al.(2021) Environmental Research Letters.16 084001)。

「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方検討会」が取りまとめたりまとめた2050年までのロードマップでも、2030年までに新築される住宅の省エネ基準をZEHレベルに引き上げること、新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が導入されることなどを提示している。詳しくは、SUUMOジャーナル記事「脱炭素社会の実現に政府が本腰。2030年の住宅のあるべき姿とは」を参照してほしい。

政府は、2020年ごろには新築住宅の半数ほどがZEH住宅になることを想定していたので、調査結果の26.2%ではかなり想定を下回ることになる。今後はZEHレベルの義務化を求めるなどで、新築のZEH住宅を一気に普及させる計画だ。

ますます進む太陽パネルの設置や住宅のZEH化

「2050年カーボンニュートラル」を目指して、ここに来ていろいろな動きが出ている。東京都では「新築住宅に太陽光発電の義務化」を検討していると報道されている。実現するかどうかまだわからないが、再生可能エネルギーの創出に力を入れる考えだ。

また、野村不動産は、分譲戸建シリーズ「プラウドシーズン」の大規模住宅地の展開において、温室効果ガス削減に寄与する取り組みを積極的に推進するとして、全75区画で太陽光パネルを搭載した新築一戸建てを販売した。東急不動産は、今後同社が開発する分譲マンション「BRANZ(ブランズ)」、高級賃貸マンション「COMFORIA(コンフォリア)」、学生向け賃貸マンション「CAMPUS VILLAGE(キャンパスヴィレッジ)」の全物件で太陽光パネルを標準搭載することを決めた。

このようにハウスメーカー、デベロッパー各社が新築住宅へのZEH化や太陽光パネルの搭載を強化する方向で動いている。これからはさらに住宅のZEH化などが進んでいくことになるだろう。

政府や自治体、企業は脱炭素に向けてかじを切りつつあるが、私たち個人が生活の中でできることはあるのだろうか。
先ほど紹介した『気候変動アクションガイド』を見てみると、「衣類は大切に長く着よう」「LEDへ交換しよう」「休暇は近場で過ごそう」「植物由来の食事に転換しよう」などが挙げられている。私たちの子孫が暮らす地球のために、今できることから始めたいものだ。

コロナ禍で関心が高まる“空気環境”。気になる「よどみ」の解消法は?

コロナ禍で、これまでよりも自宅の“空気環境”への関心が高まっただろう。ダイキン工業が、「第27回現代人の空気感調査」として、インドア(室内)とアウトドア(屋外)の空気に対する意識を調査した。その結果によると、コロナ禍で在宅時間が増加したことで、これまであまり意識してこなかった室内空気の息苦しさなどに気付くなどの変化が見られたという。

【今週の住活トピック】
「インドア(室内)とアウトドア(屋外)の空気感調査」を発表/ダイキン工業
「冬場の自宅の乾燥・換気に関する意識調査」を発表/一条工務店

コロナ禍の自宅の空気環境の課題は、空気のよどみ、室内の温度と湿度の維持・調整

ダイキン工業が、テレワークを経験し、コロナ禍前より在宅時間が増えている会社員(20~50代)に、「自宅の空気に息苦しさ(閉塞感・密閉感)やよどみ(こもっている、滞留している感じ)のようなものを感じることがあるか」を聞いたところ、68.0%の人が「感じる」(「よく感じる」20.8%+「たまに感じる」47.2%)と回答した。

「自宅でのテレワーク時に、次の空気の課題についてどのくらい感じるか」を聞くと、「空気のよどみ」「快適な温度の維持・調整」「快適な湿度の維持・調整」が上位に挙がった。

■自宅でのテレワーク時に感じる空気の課題
自宅でのテレワーク時に感じる空気の課題(出典/ダイキン工業「インドア(室内)とアウトドア(屋外)の空気感調査」より転載)

自宅でのテレワーク時に感じる空気の課題(出典/ダイキン工業「インドア(室内)とアウトドア(屋外)の空気感調査」より転載)

課題として上位に挙がった3項目を男女別に見ると、「空気のよどみ」は男性のほうが多いが、「室温」と「湿度」の維持・調整では女性のほうが多いことも分かった。

また、「室内の空気環境がテレワークのパフォーマンスに影響すると思うか」を聞くと、92.5%が「影響する」(「影響すると思う」48.0%+「どちらかといえば影響すると思う」44.5%)と回答した。

換気を意識するものの、乾燥する冬は換気を怠りがち

さて、自宅の空気環境は夏場と冬場では状況も変わる。次に、一条工務店が発表した「冬場の自宅の乾燥・換気に関する意識調査」を見ていこう。

室内の空気環境は、新しい空気を室内に取り込む「換気」をすることが解決策になるが、「新型コロナウイルスの影響で換気を意識するようになったか」を聞いたところ、67.5%が「換気を意識するようになった」(「すごく意識するようになった」29.5%+「意識するようになった」38.0%)と回答した。

調査では具体的に、自宅の換気について「1日の換気回数」と「1日の換気時間」を夏と冬でそれぞれ聞いている。回数はいずれも「1~2回」が6割超と最多だったが、「0回」は夏(上)が10.5%であるのに対して、冬(下)は20.2%となり、全く換気をしない人が夏の2倍になった。また、換気時間は、夏では「10分以上」が55.7%と最多で「5分未満」は21.4%と少なかったが、冬では「5分未満」が44.8%と最多で、1日の換気時間が5分未満なのは夏の2倍以上になっている。冬になると、換気の回数も時間も一気に減ることが分かる。

■1日の換気回数
1日の換気回数

■1日の換気時間
1日の換気時間

1日の換気回数と換気時間(夏と冬の比較)(出典/一条工務店「冬場の自宅の乾燥・換気に関する意識調査」より転載)

「自宅の換気を面倒だと感じるか」を聞くと、76.0%が「面倒と感じる」(「すごく感じる」35.4%+「まあまあ感じる」40.6%)と回答し、換気を意識するものの換気をすることは面倒だと感じる人が多いことが分かった。

空気環境対策として、アウトドアを活用する手も

先ほどのダイキン工業の調査結果に戻ってみよう。空気環境の3大課題は「よどみ」「室温」「湿度」だった。室温を維持するには住宅の気密性・断熱性を高めるのが効果的だが、気密性・断熱性を高くすると室内の空気が外に出にくいので、中にいる人の呼気や煮炊きした湿気などがとどまり、空気がよどみやすい。

その対策として換気が必要となる。最近の住宅は24時間換気システムが義務付けられているので、機械換気で自動的にゆっくり空気を入れ替えることが可能だが、窓を開けて自然換気をしようとすると、冬の冷たい外気が室内に入るのを嫌ったり、室内が乾燥しているので湿気に気付きにくかったりという背景もあって、冬に換気を怠りがちになるのかもしれない。

さて、ダイキン工業の調査では、「自宅の空気に感じる息苦しさ(閉塞感・密閉感)やよどみ(こもっている、滞留している感じ)を解消(または予防)するためにしていること」を聞いている。一番多かったのは、やはり「換気」(73.9%)だったが、「近所を散歩する」(64.6%)や「ベランダに出る」(46.4%)など、アウトドアの空気を活用していることが分かる。

■空気の「息苦しさ」や「よどみ」を解消するためにしていること
空気の「息苦しさ」や「よどみ」を解消するためにしていること(出典/ダイキン工業「インドア(室内)とアウトドア(屋外)の空気感調査」より転載)

空気の「息苦しさ」や「よどみ」を解消するためにしていること(出典/ダイキン工業「インドア(室内)とアウトドア(屋外)の空気感調査」より転載)

また、コロナ禍で「ソロキャンプ」がはやるなど、アウトドア活動が注目されたが、上記の空気の息苦しさやよどみの解消についても、ベテランアウトドアユーザーの回答に興味深い傾向があるという。ベテランアウトドアユーザーは「換気」(78.8%)、「近所を散歩」(76.9%)など、10項目中8項目で回答者の全体平均を上回った。中でも、「近所をウォーキング等」(73.1%)、「近所の公園に行く」(46.2%)は全体より大きく上回り、同社では、「『外』の空気とつながる手段を意識的・無意識的に、いくつも講じることで、心身ともにリフレッシュできているのではないか」と見ている。

筆者自身も今の季節は、外から戻って玄関を開けた途端、室内の空気のよどみに気付くことがある。あわてて窓を開けたり、キッチンの換気扇をつけたりしている。外の空気を吸うことで、室内のよどみに気付く効果もあるので、換気することは重要だが、外の空気でリフレッシュすることの効果も大きいだろう。

●関連サイト
ダイキン工業「インドア(室内)とアウトドア(屋外)の空気感調査」
一条工務店「冬場の自宅の乾燥・換気に関する意識調査」
E-mail:prg@daikin.co.jp
株式会社一条工務店 担当:津川、甲斐、加藤 E-mail:koho-office@ichijo.co.jp

来春から成人年齢は18歳に。はじめての一人暮らしは賃貸借契約に注意!

全宅連・全宅保証協会では、毎年実施している消費者セミナーとして、スペシャルサイト『大人へのトビラ』を公開した。成人年齢引き下げが予定され、18歳で成人してから一人暮らしを始める人に向けて、賃貸借契約の注意点などを紹介したもの。どんな内容か、紹介していこう。

【今週の住活トピック】
「消費者セミナー2021秋『大人へのトビラ』スペシャルサイト」を公開/全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)・全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証協会)

2022年4月1日から成人年齢が18歳に

スペシャルサイトのテーマの一つが、2022年4月1日からの「成年(成人)年齢の引き下げ」だ。民法改正により、2022年4月1日から成人年齢が20歳から18歳に引き下げられる。これから高校を卒業し、一人暮らしを始める予定の人たちは、成人として初めて契約という行為をする可能性がある。

サイトでは、民法改正の経緯などに加え、賃貸借契約や売買契約などの不動産の取り引きをする場合、未成年と成年では大きく違う点を説明している。未成年者は親などの保護の下にあるので、契約をする場合に親権者の同意が必要とされ、同意がない契約は原則として取り消すことができる。一方、成年者は単独で契約ができるが、自由に取り消すことはできなくなる。それだけ、契約について強い責任が生じるわけだ。

はじめての一人暮らし、賃貸借契約の注意点は?

スペシャルサイトのメインテーマは、「一人暮らしの賃貸借契約の注意点」。契約に責任が伴う以上、自身でトラブルのないように注意する必要があるからだ。

(画像提供/全宅連)

(画像提供/全宅連)

サイトではまず、部屋探しの際には、「入居予定日から逆算してスケジュールを組み、予算を立てて、計画的に取り組むこと」「希望条件を整理し、優先順位を決めておくこと」などのポイントのほか、賃貸住宅の人気の設備や間取りの見方などを紹介している。

そして、住みたい部屋が決まったら、さまざまなルールを確認し、宅地建物取引業者から重要事項の説明を受け、入居時に部屋の状況をきちんと確認することなどの注意点も紹介している。

文字だけでなく、マンガを交えて興味をもてる工夫もしているが、「部屋探しの流れ」「賃貸借契約の基礎知識」「金銭管理の基礎知識」「生活マナーの基礎知識」「こんな時にどうする?(トラブル対策)」など、動画(『はじめての一人暮らしガイドムービー』)で詳しい説明をして、はじめての一人暮らしのガイドとして役立てて欲しいとしている。11月24日には、はじめての一人暮らしの注意点をまとめたアニメーション動画も公開する予定だという。

「連帯保証人」や「原状回復」を理解している?

さて、このサイトでは「連帯保証人」と「退去立会と原状回復」について、詳しく説明している。

「連帯保証人」は家賃の滞納などがあったときに、借りた人と連帯して責任を負う人。親が連帯保証人になることが多いだろう。最近は、連帯保証人の代わりに、家賃保証会社の利用を求めるケースが多い。保証会社は借りる人から保証料を受け取り、滞納時に家賃を立て替えたりする。ただし、家賃を払わなくてよいわけではなく、保証会社はしっかり請求するので、この制度についてよく理解しておく必要がある。

入居中に部屋を損傷させた場合、退去するときに元に戻す義務がある。これが「原状回復」だ。ただし、国土交通省のガイドラインでは、普通に生活していれば経年劣化などが生じるので、それは原状回復の範囲外としている。こうしたことを理解していないと、貸し手と借り手のどちらが負担すべきかトラブルになったりするので、ガイドラインについても理解しておく必要がある。

賃貸借契約についてさらに理解しておこう

このほか、賃貸借契約に関して注意しておきたいことがあるので、いくつか補足をしておこう。

部屋が気に入って借りたいとなると、優先順位を確保するために「申込金」を求められる場合がある。この申込金は、借りる意思を示して優先的に審査をしてもらうためのものなので、申込金=契約の成立ではない。申し込んだ後に契約が成立しないこともあれば、契約する前に部屋を借りるのをやめることもできる。この際には、「申込金は返還される」のが原則。一時的に預けたお金という扱いだからだ。申込金を払う場合も「領収書」ではなく「預り証」を受け取ろう。

宅地建物取引業法では、賃貸借契約を結ぶ前に、仲介を行う不動産会社は、入居予定者に対して賃貸物件や契約条件に関する重要事項の説明をしなければならないとしている。これが「重要事項説明」で、必ず書面が提示され、口頭で宅地建物取引士が説明することになっている。重要なことばかりなので、早めに書面を受け取って内容を確認し、不明点を不動産会社に問い合わせるようにしたい。ただし、不動産会社自身が賃貸住宅の貸し手である場合は、重要事項説明をする義務を負っていない。それでも重要な事項は説明するはずなので、契約前にしっかり確認をしておこう。

「重要事項説明」と同様に重要になるのが、「賃貸借契約書」の確認だ。重要事項説明を受けて、納得したら正式に契約を結ぶことになる。この書面も早めに受け取って、目を通しておくのがよい。賃料などの支払いルールや敷金などの扱い、部屋を使用する際の禁止事項、契約の解除、原状回復の範囲など、知らないでは済まされない内容が記載されているので、しっかり確認しよう。

おかしいと思っても、その場で契約を取りやめるのはなかなか難しいことだ。やはり事前に書面を受け取って親に見てもらったり、その場に同席してもらったりして、人生の先輩から助言を受けることをオススメしたい。

公開されたサイトでは、「宅地建物取引士」についても説明している。成人になれば、宅地建物取引士などの国家資格が必要な職業に就くこともできる(国家試験合格が前提)ようになる。一方で、酒やたばこなどは健康被害への懸念などから、20歳以上とされたままなのでお忘れなきように。

「消費者セミナー2021秋『大人へのトビラ』スペシャルサイト」を公開/全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)・全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証協会)
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コロナ対策、人気は「玄関クローゼット」。一戸建ての設計に世相が見えた!

住宅金融普及協会が、住宅事業者を対象に、近年供給されている一戸建ての設備及び仕様等に関する実態を把握するためのアンケート調査を実施した。その結果は、近年のコロナ禍や災害頻発などの社会情勢を反映したものになった。詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
「住宅の設備および仕様等に関する事業者アンケート調査」結果を公表/住宅金融普及協会

住宅設計上のコロナ対策では、玄関にクローゼットが人気?

筆者が注目した調査結果の一つが、「住宅設計における新型コロナウイルスの感染予防対策への取り組み」についてだ。住宅事業者がコロナ下の2020年度に供給した、一戸建ての注文住宅または建売住宅について、次の4つの設備等を設置したかどうか聞いている。

(1)玄関に手洗い設備等の設置
(2)玄関にクローゼット等の設置
(3)在宅勤務スペースの設置
(4)宅配ボックスの設置

その結果は以下の通り。各住宅事業者が供給した「すべての住宅に設置した」か「一部の住宅に設置した」か、あるいは「設置実績がない」かを回答したものだ。

住宅金融普及協会「住宅の設備および仕様等に関する事業者アンケート調査」より転載

住宅金融普及協会「住宅の設備および仕様等に関する事業者アンケート調査」より転載

最も設置されたと考えられるのが「玄関にクローゼット等」だろう。玄関に下足入れ(靴箱)を設置するのは当然として、その脇などにコートなどが収納できる高さのクローゼットを設置するプランだ。そこにコートや上着、カバンなどを収納すれば、外出先から持ち込んだウイルスを玄関で留める効果が期待できる。

「宅配ボックス」や「在宅勤務スペース」の設置も多い。宅配ボックスは、外出が減ってネット購入が増えたこと、対面せずに受け取れることなどから、ますますニーズが高まった。在宅勤務がコロナ下で普及したことで、自宅にワークスペースを設けるニーズも生まれた。

「すべての住宅に設置」と「一部の住宅に設置」の比率の違いは、コロナ前からニーズがあったかどうかではないだろうか? 玄関脇のクローゼットや宅配ボックスはコロナ前からニーズがあったものだが、ワークスペースは一部の人にしかニーズがなかったし、「玄関手洗い」はコロナ禍で創出されたニーズだ。コロナ前は洗面所で手を洗えば十分だったので、玄関に給排水管を引いてまで手洗い場を設けるプランはめったになかった。こうした違いが、今回の調査結果にも影響していると思われる。

いずれにせよ、新型コロナウイルス感染拡大により、住宅の設計に変化が生じたことは間違いないだろう。

住宅の耐震性向上のために制振の採用が増加?

次に筆者が注目したのは、「震災対策への取り組み」だ。南海トラフ地震などの巨大地震が発生するリスクが高まっている。そんななかで、住宅の耐震性をより高めたいというニーズが感じられる結果だ。

住宅金融普及協会「住宅の設備および仕様等に関する事業者アンケート調査」より転載

住宅金融普及協会「住宅の設備および仕様等に関する事業者アンケート調査」より転載

住宅の耐震設計には「耐震」「免震」「制振(制震)」がある。地震の揺れで倒壊しない頑丈な構造にしようというのが「耐震」で、一戸建ての一般的な建て方になる。

これに対して、「免震」は基礎の上に揺れを吸収する免震装置(積層ゴムやボールベアリングなど)を設置して、その上に建物を支える鉄骨の架台を置いて建物の土台を載せることで、建物と地面を切り離す工法。地震の揺れが建物に伝わる前に吸収されるので、揺れが大幅に軽減される。ただし、費用もかかるので一戸建てで採用される事例は少ない。

一方、最近増えているのが、壁などの構造材の一部に制振装置(ダンパーなど)を使って、地震の揺れを吸収する「制振」だ。免震が地震の揺れを建物に伝えないようにするのに対して、制振では揺れは建物に伝わるものの建物内で揺れを吸収するので、一般的な耐震工法に比べて揺れを抑えることができる。免震ほど費用が掛からないので、採用しやすいという側面もある。

今回の結果を見ると、大規模地震のリスクが高まるなか、より住宅の耐震性を高めようと「制振」を提案したり、選ばれることが多いと見てよいのかもしれない。

また、今回の調査では、行政が普及を図っている「感震ブレーカー」についても質問している。大規模地震では、電化製品が落下することなどによる発火や停電が復旧した際に起こる通電火災などの「電気による火災」も多い。感震ブレーカーは、震度5強以上の地震を感知して分電盤の主幹ブレーカーを強制遮断するもの。不在時やブレーカーを落とす余裕のないときでも自動的に遮断できるので、電気火災を防止する効果がある。

調査結果では42%の住宅事業者が感震ブレーカーを設置(「すべての住宅に設置」22%、「一部の住宅に設置」20%)していた。

こうして調査結果を見ていくと、住宅設計においてはその時々の情勢によるニーズが反映されていると感じる。その後に情勢が変わっても、日々の生活に便利だったり安全だったりするものは、引き続き採用されていくだろう。社会情勢と住宅のプランは、密接に関係しているのだ。

「住宅の設備および仕様等に関する事業者アンケート調査」結果を公表/住宅金融普及協会

空き巣の侵入防止、「道路からの見えやすさ」「窓ガラス」「窓とシャッター」がポイントに。

旭化成ホームズのくらしノベーション研究所では、自社が提供した一戸建ての開口部などの修理記録を元に、過去15年間の侵入被害についての調査結果をまとめた。その結果を見ると、地域によって侵入経路に違いがあることや、省エネガラスの普及などで侵入手口が変化したことなどが分かった。詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
くらしノベーション研究所調査報告「戸建て住宅侵入被害15年間調査」

コロナ禍の留守宅の減少で、住宅への侵入窃盗は大きく減少

同社によると、コロナ禍でステイホームが広がり、留守になる住宅が減ったことから、空き巣狙いなどの侵入窃盗の被害が大きく減少しているという。ただし、住宅への侵入窃盗は年々減少傾向にあるものの、オートロックやピッキング対策錠が普及してきたマンションに比べて、ポストコロナにおける一戸建ての侵入窃盗のリスクは高いと考えられる。

同社では「道路との関係」「窓ガラス」「窓とシャッター」について、侵入窃盗被害の傾向を分析している。それぞれについて、具体的に見ていこう。

「東京・神奈川」と「関西圏」「中部圏」で侵入経路に違い

まずは、建物と道路との関係性について見ていこう。一戸建ての場合は、前面は道路に面し、三方は他の住宅に囲まれている形状が多い。道路から見て建物の裏側や建物の側面の奥側は、道路から見えづらい「ケアゾーン」となる。

調査結果を見ると、以前は道路の奥側のケアゾーンの侵入が圧倒的に多かったが、近年はケアゾーンの侵入が大きく減っている。同社は、下記のような「ディフェンスライン」で道路から見えやすく、侵入を防ぐプランを提案しており、そうした効果が考えられるとしている。

ゾーンディフェンス概念図(出典/旭化成ホームズ・くらしノベーション研究所「戸建て住宅侵入被害15年間調査」より転載)

ゾーンディフェンス概念図(出典/旭化成ホームズ・くらしノベーション研究所「戸建て住宅侵入被害15年間調査」より転載)

興味深いのは、「東京・神奈川」と比べると、「関西圏」では建物側面からの侵入被害が増え、「中部圏」に至っては、正面からの侵入被害も格段に増えることだ。この地域による違いの要因はいくつかある。まず、「東京・神奈川」の都市部は密集市街地が多く、通行人の視線による防犯効果も高い。東京・神奈川よりも道路幅や敷地に余裕が生じる地域では、建物側面の中央付近からの侵入が多くなることが挙げられる。

また、車社会の中部圏では、犯罪者が車で乗り付けて、道路に近い場所で犯行に及び、車で逃走するという事例が多発していたことが挙げられる。そうなると、道路側から建物奥に向かって照明を当てて側面を明るくしたり、カーポートより前で侵入を防ぐなどの手立てを考える必要があるという。

防犯ガラスはガラス破りに効果あり!?

サッシや窓から侵入する場合、ガラスを割って侵入することが多い。近年は省エネ性の高い複層ガラスなどが普及し、ガラスが単層(1枚)の普通ガラスより防犯性も高くなる。

下記を見ると、普通ガラスの場合は「ガラス割り」で侵入する事例が多いが、防犯性の高いガラスの場合はガラスを割らずにサッシ自体をこじ開ける「こじ開け」事例の比率が高いことが分かる。ガラス割りに時間のかかる防犯ガラスでは、サッシをこじ開ける手口へと転換しているわけだ。

また、人が通れる幅ではない細い窓(スリット窓)や地盤面から2mを超える高さの窓(高窓)からの侵入が少ないことから、スリット窓と高窓の防犯対策が有効なことも分かったという。

グラフの横軸は被害時期(例:2006年~2010年)を示している(出典/旭化成ホームズ・くらしノベーション研究所「戸建て住宅侵入被害15年間調査」より転載)

グラフの横軸は被害時期(例:2006年~2010年)を示している(出典/旭化成ホームズ・くらしノベーション研究所「戸建て住宅侵入被害15年間調査」より転載)

窓を開けたままに注意!面格子付きの窓でも油断は禁物

一戸建ての特徴に「勝手口」が挙げられる。この勝手口のドアも狙われる対象だ。特に、格子付きの上げ下げ窓が開いている「無施錠」の状態での被害が多いという。

(出典/旭化成ホームズ・くらしノベーション研究所「戸建て住宅侵入被害15年間調査」より転載)

(出典/旭化成ホームズ・くらしノベーション研究所「戸建て住宅侵入被害15年間調査」より転載)

また、「面格子」のある窓はない窓に比べて侵入リスクが低いが、面格子のある浴室の窓が開いている状態での侵入が多かった。浴室は湿気が気になるので窓を開けておき、浴室の窓くらいならとそのまま外出してしまう場合も多いのだろう。防犯の最大の対策は居住者側の「施錠」という基本的な防犯行動だということがよくわかる結果だ。

また、一戸建ての窓は「シャッター」付きのものも多い。シャッター付きの窓では、圧倒的にシャッターが開いていた状態での侵入被害が多い。同社では、空き巣は夕方から夜に犯行が多いと言われているので、昼間にシャッターを開けたまま外出し、夜になって照明がついていないことで留守だとわかる状態になることが要因だと見ている。

(出典/旭化成ホームズ・くらしノベーション研究所「戸建て住宅侵入被害15年間調査」より転載)

(出典/旭化成ホームズ・くらしノベーション研究所「戸建て住宅侵入被害15年間調査」より転載)

侵入窃盗の被害に遭わないためには、住宅の設計や設備などを防犯という観点で検討することに加え、カギをかけたりシャッターを閉めたりといった、基本的な防犯行動が最も重要だということが分かる報告書だった。マイホームで空き巣などの侵入窃盗被害を受けたら、金銭的なものだけでなく、精神的にも大きなダメージを受ける。被害を受けてからでは遅いので、マイホームの防犯については常に意識したいものだ。

2021年「住み続けたい街」ランキング発表!住民からの評価が高い街の特徴とは?

毎年、「住みたい街」のランキングを発表しているリクルートが、住民の実感調査による「住み続けたい街」のランキングを発表した。「住みたい街」のTOP3は、横浜、恵比寿、吉祥寺だったが、「住み続けたい」となると顔ぶれが変わってくる。では、どの街が上位になったのだろう。

【今週の住活トピック】
「2021年住み続けたい街(自治体/駅)ランキング」関東版を発表/リクルート

住み続けたい自治体ランキングのTOP3は、東京都の武蔵野市、中央区、文京区

関東圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県)の街(自治体・駅)について、「お住まいの街に今後も住み続けたいですか?」と聞いた結果をランキングしたのが、「住み続けたい」街(自治体・駅)ランキングだ。

「住みたい街」は多くの人が憧れる街だが、「住み続けたい街」は住民の居住継続意向によるものだ。人によって“住みやすさ”は異なるので、居住の意向もそれぞれとなるが、住み替えの際に参考となる多様な視点を提供したいというのが調査の目的だという。

実際に、「住んでいる街に今後も住み続けたい」と思っているのは、「とてもそう思う」(17.1%)と「そう思う」(50.4%)を合わせた67.5%に達する。3人に2人は住み続けたいと思っていることになるが、筆者自身も住んでいる街に住み続けたいと思っている1人だ。

では、「住み続けたい自治体」のランキングを見ていこう。TOP3には、東京都の武蔵野市、中央区、文京区が挙がった。

■住み続けたい自治体ランキング 上位50位(1次調査全体/単一回答)
出典:リクルート「SUUMO住民実感調査2021年住み続けたい街(自治体/駅)ランキング」

出典:リクルート「SUUMO住民実感調査2021年住み続けたい街(自治体/駅)ランキング」

ランキングを見ると、東京都の人気自治体が多数ランクインしている。ただし、4位に逗子市、8位に葉山町、12位に鎌倉市、13位に藤沢市など、神奈川県の「湘南三浦エリア」が上位に食い込んでいる。また、埼玉県では、さいたま市の複数の区が上位に入り、さいたま市中心エリアが奮闘。千葉県では、浦安市の評価が抜きんでて高い。

また、SUUMOリサーチセンターの分析によると、14位の横浜市都筑区、25位の印西市、36位の稲城市、39位の多摩市と「郊外大規模ニュータウン」が上位に入る傾向が見られるという。たしかにいずれも、「港北ニュータウン」「千葉ニュータウン」「多摩ニュータウン」の中心的な自治体だ。

一方で興味深いのは、ライフステージによって評価が変わるということだ。シングルや夫婦のみでは逗子市がTOPになるが、子どものいるファミリーになると目黒区がTOPになる。また、夫婦のみでは、浦安市や葉山町が上位になるなど、ライフステージによって住み続けたい街に求めるものが異なることがうかがえる。

■ライフステージ別/住み続けたい自治体ランキング 上位10位(1次調査全体/単一回答)
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出典:リクルート「SUUMO住民実感調査2021年住み続けたい街(自治体/駅)ランキング」

出典:リクルート「SUUMO住民実感調査2021年住み続けたい街(自治体/駅)ランキング」

「住み続けたい」と思う背景には地域への愛着がある。その条件とは?

リクルートでは、「住んでいる街の魅力」について、2次調査をしている。2次調査では、「歩ける範囲で日常のものはひととおり揃う」や「散歩・ジョギングがしやすい」「防犯対策がしっかりしている」「教育環境が充実している」「街に賑わいがある」「街の住民がその街のことを好きそう」などの街の魅力35項目について評価をしてもらった。

その結果、「その街に住み続けたい」と思う人は、地域への愛着を示す「住民がその街のことを好きそう」という項目を実感できている人が多いことが分かった。さらに、「その街を好きそう」との相関性を見ると、「安心・安全・子育て」に関係する7項目と「地域の発展・将来性」に関係する4項目で関係性が強いことも分かってきた。

■住み続けたい街になるための条件とは?
出典:リクルート「SUUMO住民実感調査2021年住み続けたい街(自治体/駅)ランキング)

出典:リクルート「SUUMO住民実感調査2021年住み続けたい街(自治体/駅)ランキング」

そうはいっても、街ごとに個性が異なるので、それぞれ魅力に挙がる項目も異なる。実際の「住み続けたい街」の上位の自治体を見てみよう。

例えば、1位の武蔵野市では、「利用しやすい商店街がある」が最も高く、吉祥寺を抱える武蔵野市ならではの魅力もあるが、「人からうらやましがられそう」「街に賑わいがある」「個性的な店がある」「行政サービスが充実している」「防災対策がしっかりしている」など、地域への愛着と相関の高い魅力項目が上位に数多く挙がっている。

全体4位、シングルと夫婦のみでは1位の逗子市で見ると、「地域に顔見知りや知り合いができやすい」が最も高く、湘南エリアらしい「自然が豊富」「散歩・ジョギングしやすい」に加え、「人からうらやましがられそう」「個性的な店がある」「不動産の資産価値が高そう」などの地域の発展・将来性に関する魅力項目が多かった。

また、郊外大規模ニュータウンを抱える自治体では、「住宅街が整然としている(通りや並木など)」が最も高く、「公園が充実している」「散歩・ジョギングしやすい」など、ニュータウンならではの魅力が挙がる一方で、「教育環境・子育て環境が充実している」「防災対策がしっかりしている」など安心・安全・子育てに関する魅力項目が多く評価されていることが分かった。

こうして見ていくと、行政による安心・安全の街づくりに加え、地域の発展・将来性などの期待感が持て、地域に顔見知りができやすいコミュニティが形成されていることなどが、「この街が好き」だから「住み続けたい」と思わせる条件になっていると考えてよさそうだ。

「住み続けたい駅」ランキング1位は東銀座、2・3位は江ノ電の石上、鵠沼

最後に、「住み続けたい駅」のランキング上位を紹介しておこう。

■住み続けたい駅ランキング 上位50位(1次調査全体/単一回答)
出典:リクルート「「SUUMO住民実感調査2021年住み続けたい街(自治体/駅)ランキング」」(プレスリリース)

出典:リクルート「SUUMO住民実感調査2021年住み続けたい街(自治体/駅)ランキング」

東銀座、馬喰町、東日本橋、人形町、水天宮前など、住み続けたい自治体全体2位の東京都中央区の駅が多数ランクインしている。中央区の中でも、歴史を感じさせる街が顔を並べたのも興味深い。歌舞伎好き、着物好きの筆者には顔なじみの駅ばかりだ。

また、湘南エリアを走る江ノ島電鉄線や小田急江ノ島線の駅がTOP10の半分を占めており、みなとみらい線も25位までに3つ入っている。そのほかでは、北参道、代々木上原、千駄ヶ谷、参宮橋など代々木公園周辺の駅が多いのも特徴だ。

行政サービスがかかわる自治体という区切りもあるが、同じ沿線や大型公園の周辺には、共通する魅力があるということだろう。

さて、ランキングの結果を見て、あなたはどう思っただろう?おそらく、意外に思う結果も多かったのではないだろうか。ライフステージによってランキングが変わるように、人それぞれで“住みやすさ”を感じる点は異なる。自身が地域を好きになる条件を振り返ってみて、住み替え先を選ぶ際の条件としてはいかがだろう。

○リクルート「「SUUMO住民実感調査2021年住み続けたい街ランキング」」

関心が高まる地方移住。都民では「都心まで2時間以内」までが分岐点に

コロナ禍で「地方移住」への関心が高まり、地方移住に関する調査もいくつか実施されている。リクルートの調査では、東京都内在住の会社員は46.6%もの人が地方移住に関心を示したという。地方移住をするメリットやデメリットはどういったことだろうか?新しい調査結果をいくつか見ていこう。

【今週の住活トピック】
「地方移住および多拠点居住の考え方についてのアンケート調査」を公表/リクルート
【最新移住事情 2021】を公表/高知市

コロナ禍で地方・郊外への移住を検討する人が増加

コロナ禍でテレワークが普及し、通勤をする機会が減った人もいるだろう。感染の長期化で、家族で家にいる時間が長くなったという人も多いだろう。自宅周辺で過ごす機会も多くなり、「わが街」に求める条件が変わったり、より子育て環境の良好な立地を求めたり、近くにリフレッシュできる場所を求めたりと、「どこに住むか」のニーズに変化が生じている。

加えて、人口が減少している地域の自治体の中には、移住者の受け入れを積極的に行っている例も多い。高知市もそのひとつだが、【最新移住事情2021】と称した全国調査を実施し、その結果を公表している。

全国の1766人に「地方移住」の予定や関心の程度を聞いたところ、31.2%が関心ありと回答した。内訳は、これまでに「地方移住をした」が7.2%、「地方移住の予定あり」が2.0%、「地方移住に関心があり、情報収集をしている」が3.5%、「地方移住に関心はあるが、検討に至っていない」が18.5%だ。

出典/高知市【最新移住事情2021】リリースより転載

出典/高知市【最新移住事情2021】リリースより転載

地方移住に関心がある(移住済みを含む)552人を分析すると。20代・30代の若者や男性で関心が高い傾向が見られたが、リモートワークの頻度などの勤務体制ではそれほど差が見られなかったという。

一方、リクルートが東京都在住の会社員2479人に調査を行ったところ、「地方や郊外への移住に興味がある」と回答したのは46.6%(とても興味がある11.5%+興味がある35.1%)にも達した。高知市の全国調査と比べると、東京都在住の会社員はかなり関心の度合いが高い。

ただし、興味があると回答した人に、興味があるのは「都心までどの程度で行ける地方や郊外か」を聞くと、最多は「都心まで1時間から2時間」の43.3%、次いで「都心まで1時間程度以内」の31.8%と、比較的近距離の移住に興味を持っていることが分かった。

出典/リクルート「地方移住および多拠点居住の考え方についてのアンケート調査」より転載

出典/リクルート「地方移住および多拠点居住の考え方についてのアンケート調査」より転載

高知市の調査では、回答する側は遠距離の地方に移住をすることを想定していたと思われるが、リクルートの調査を見ると、東京都在住の会社員は都心から2時間以内の近距離への移住に興味を持っており、その違いが関心の高さにも表れていると見てよいだろう。

また、高知市の調査で、地方移住に関心がある人の中で、「コロナ前後での地方移住への関心が高まった」人を見ると、一人暮らしの場合で41.7%、友人と住んでいる場合で75.0%となり、家族や夫婦で住んでいる人の場合よりも「単身者」のほうが、地方移住への関心が高まったという結果になった。

出典/高知市【最新移住事情2021】リリースより転載

出典/高知市【最新移住事情2021】リリースより転載

単身の場合は身軽に地方移住が検討できるが、家族の場合は通勤や通学のハードルを考えて近距離の移住を検討するという見方ができるのかもしれない。

ゆとりや豊かな自然が魅力の地方移住、交通利便や仕事などのハードルも

次に、それぞれの調査で、移住に興味を持つ理由について見ていこう。

まず、高知市の調査では、「地方移住をしたい理由」で1位「ゆとりのある生活をしたい」と2位「自然の多い環境で生活したい」が40%以上となり、ゆとりと自然が大きな要因になっている。また、「地方移住の不安」については、「交通の利便性」「人付き合い」「仕事」「医療の充実」が上位に挙がった。

出典/高知市【最新移住事情2021】リリースより転載

出典/高知市【最新移住事情2021】リリースより転載

次に、リクルートの調査で、「移住を考えたきっかけと新型コロナウイルス感染拡大の関係」を聞いたところ、新型コロナの影響により、「テレワークなどの柔軟な働き方が可能になった」や「より良い住環境で生活したいと思った」が上位に挙がった。

出典/リクルート「地方移住および多拠点居住の考え方についてアンケート調査」より転載

出典/リクルート「地方移住および多拠点居住の考え方についてアンケート調査」より転載

また、「地方や郊外への移住の不安や心配事」については、「仕事面」が64.0%、「経済面」が56.7%と上位に挙がり、リクルートの調査においては「働き方」や「仕事」の占めるウエイトが高くなっている。

移住実践者が感じた課題は、知り合いがいなくて寂しい!?

さて、最後に、直近3年以内に移住(移動前後の居住都道府県が異なる移動)をした人への調査結果を見ていこう。

ウォンテッドリーが自社のビジネスSNS「Wantedly」ユーザー(1968人)に調査したところ、20%に当たる395人が直近3年以内に移住していた。年代で見ると20代と30代前半の若い層が多い。

移住した人に「移住して良かった点」を3つまで選んでもらったところ、1位が「家賃などの生活コストが下がった」(42%)、2位が「生活のペースがゆっくりになった」(39%)、3位が「満員列車に乗らなくて良くなった」(35%)という結果になった。

一方で、「移住して課題に感じる点」を3つまで選んでもらったところ、1位が「知り合いがいないのが寂しい」(39%)、2位が「都心と比較して仕事が少ないので、今後のキャリアが不安」(27%)、3位が「車がないと何も出来ないのが面倒」(21%)という結果になった。

出典/ウォンテッドリー「コロナ禍における移住と働き方に関する調査結果」より転載

出典/ウォンテッドリー「コロナ禍における移住と働き方に関する調査結果」より転載

この結果をさらに、移住先が地元か地元以外かによって分類したところ、「地元への移住者」では「今後のキャリアが不安」が最多であるのに対し、「地元以外への移住者」では「知り合いがいないのが寂しい」が最多となった。地縁のない土地に実際に移住した人は、知り合いとのコミュニケーションが取れずに寂しいと感じるのが実態のようだ。

こうしていくつかの調査結果を見ていくと、一口に地方移住といっても、地縁のない遠距離の地方に移住するのと、都心にも通える近距離の移住とでは、かなり状況が異なることが分かる。近距離であれば、これまでの仕事や人間関係を継続する方法もあるが、遠距離となると仕事や生活、人間関係が様変わりすることもある。

そうした実態をよく理解したうえで、働き方や価値観がコロナ禍で変わった今、自分が望む暮らしが送れる場所を拠点に選び、より満足できる人生へと一歩踏み出すのもよいだろう。

リクルート「地方移住および多拠点居住の考え方についてのアンケート調査」
高知市【最新移住事情 2021】
ウォンテッドリー「コロナ禍における移住と働き方に関する調査結果」より転載

しつこい疲れは「寒暖差疲労」かも?季節の変わり目は要注意

暑かった夏も終わり、不安定な季節がやってきた。最近は、気圧の変化などによる「気象病」について、天気予報で注意を呼び掛けるようにもなっている。リンナイでは「寒暖差疲労」に関する意識調査を実施した。約3割もの予備軍がいるというが、あなたは予備軍に該当するだろうか?

【今週の住活トピック】
「寒暖差疲労に関する47都道府県別意識調査」を発表/リンナイ

YESの数で診断!あなたは寒暖差疲労予備軍?

まずは、リンナイの「寒暖差疲労 簡易チェックシート」から、寒暖差疲労の可能性をチェックしよう。

■リンナイ作成「寒暖差疲労 簡易チェックシート」(久手堅先生監修)
□ 夏の暑さも冬の寒さも苦手
□ ずっと冷暖房が効いているなど、温度が一定の環境にいる時間が長い
□ 気温差が激しくなる季節の変わり目は、体調を崩すことがある
□ 寒い場所から温かい場所に移動すると、顔がほてりやすい
□ 代謝が悪く、むくみやすい
□ 手や足など、体の一部が冷たく感じることがある
□ 寝つきや寝起きが悪い
□ 入浴中、湯船に入って体の芯から温まるまで時間がかかる
□ PC作業やスマートフォンの使用時間が長い(1日平均3時間以上)
□ 肩こり、首こりがある

YESの数はいくつあっただろうか?
ちなみに、筆者は4つだったが、担当編集者は8つもあったという。8つもあるなら「寒暖差疲労予備軍に違いない」と思ったら、4つ以上が予備軍だというので、筆者も予備軍というトホホな結果になった。

監修した久手堅医師によると、「『寒暖差疲労』とは、気温差が大きいために体温を調整する自律神経が過剰に働き、体が疲れてしまうこと。寒暖差疲労の症状を訴える人は寒さの入口に当たる秋ごろから徐々に増え始める」という。

寒暖差疲労予備軍は、男性より女性、年代別では30代で多い

リンナイによると、4つ以上チェックが入った「寒暖差疲労予備軍」は28.3%。残りの71.7%はチェックの数が3つ以下だというので、3割の方に筆者も編集者も入ることが分かった。

最も「当てはまる」という人が多かった設問は「夏の暑さも寒さも苦手」(48.2%)、続いて「肩こり、首こりがある」(38.7%)と「PC作業やスマートフォンの使用時間が長い(1日平均3時間以上)」(37.5%)だった。逆に、最も少なかった設問は「入浴中、湯船に入って体の芯から温まるまで時間がかかる」(6.9%)だ。

筆者も担当編集者も当てはまった「肩こり、首こり」は、自律神経の乱れを引き起こす大きな誘因だそうだ。「3時間以上のPC/スマホ使用」も該当するので、寒暖差疲労は気象だけでなく、デジタル化したライフスタイルも影響しているようだ。

男女別で見ると、圧倒的に男性より女性の方が予備軍は多く、年代別で見ると30代に予備軍が多い。男女で筋肉量などが違うことや、30代は社会活動が活発であることなどが影響しているのだろうという。

出典/リンナイ「寒暖差疲労に関する47都道府県別意識調査」より)

出典/リンナイ「寒暖差疲労に関する47都道府県別意識調査」より)

発表!寒暖差疲労予備軍などの都道府県別TOP3

リンナイの調査では、都道府県別の結果を公表している。主な結果は以下の通りだ。

■都道府県別「寒暖差疲労予備軍」の割合
1位:新潟県(40%)
2位:滋賀県(38%)
3位:青森県・岐阜県・沖縄県(36%)
最下位:和歌山県(12%)

■都道府県別「疲れを感じやすいと思う」の割合
1位:島根県(88%)
2位:福島県・茨城県・熊本県(84%)
5位:長野県・三重県(82%)
最下位:神奈川県(54%)

■都道府県別「冷えを感じている」の割合
1位:高知県(64%)
2位:兵庫県・鳥取県・徳島県(52%)
5位:滋賀県(50%)
最下位:奈良県(26%)

■都道府県別「長風呂県(湯船につかる平均時間)」
1位:茨城県(17.9分)
2位:滋賀県(17.1分)
3位:佐賀県(16.5分)
最下位:京都府(10.3分)

寒冷の北海道・東北、温暖な九州・沖縄などの地域性の影響もあるだろうが、意外に結果がばらけていると思った。1位と言われてもあまりうれしくない項目もあるが、あなたが住んでいる都道府県は入っているだろうか?詳しいリリースには、他の調査項目の順位も出ているので、興味があればご覧あれ。

では、季節の変わり目のいま、「寒暖差疲労」の対策はどうしたらよいのだろう?

調査の回答者で「季節の変わり目に寒暖差で悩んだり、身体の不調を感じることがある」人がその対策として行っていることは、「十分な睡眠をとる」(52.1%)、「規則正しい生活をする」(39.9%)、「運動をする」(25.5%)が上位だった。

一方、久手堅医師による対策は、寒暖差疲労の代表的な症状である冷えは初期段階で手足に表れるので、「入浴をして体を温め、疲労をためないようにする」ことだという。おススメは「38~40℃のぬるめのお湯に10~15分程度つかる」。また、肩こりを感じている人は、「耳たぶストレッチ」が効果的だという。「耳たぶの少し上を水平方向に引っ張る⇒5~10秒たったら離す」を数回繰り返すのだそうだ。

筆者も季節の変わり目は体調を崩すことが多いので、お風呂に入ってよく寝ることを心がけようと思う。皆さんも自分の体調管理には気を付けてほしい。

【参考】
「寒暖差疲労に関する47都道府県別意識調査」を発表/リンナイ

内見も契約もオンラインでOK!?コロナ禍で進む、部屋探しのオンライン化

リクルートの住まいに関する調査・研究機関「SUUMOリサーチセンター」が、「2020年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)」を実施した。その結果を見ると、コロナ禍で部屋探しのオンライン化が進んでいることが分かった。具体的に見ていこう。【今週の住活トピック】
「2020年度 賃貸契約者動向調査(首都圏) 」結果を公表/リクルート

契約者の2割がオンライン内見を実施、特に男性で多い

部屋探しでは、希望条件に合う賃貸物件を探して、実際に見学したうえで契約するかどうか決める、というのが一般的だろう。

リクルートの調査結果では、「部屋探しの際に見学した物件数」は平均で2.7件。ただし、「部屋探しで物件を見学していない(物件見学数0件)」という人が1割近く(9.9%)もいる。遠方に住んでいて、現地に行けなかったということなのか、前の居住者がまだ住んでいて、室内を見られないから行かなかったということなのか……。

一方で、最近増えているのが、見学者は現地には行かずに、不動産会社のスタッフが現地から動画で中継する「オンライン内見」だ。コロナ禍の影響が大きいのだろう。

今回の調査結果を見ると、「オンライン内見」を実施したのは約2割(オンライン内見のみ:13.5%、オンライン内見と現地内見の併用:6.2%)に達した。

出典:リクルート「2020年度 賃貸契約者動向調査(首都圏) 」

出典:リクルート「2020年度 賃貸契約者動向調査(首都圏) 」

特徴的なのは、男性のほうが圧倒的に女性より「オンライン内見実施率」が高いということだ。面白いのは、男性では20代が31.4%と最も高く、30代(23.7%)、40代(20.6%)と年齢が上がるにつれて低くなる。これに対して、女性では20代が11.0%と最も低く、30代(14.5%)、40代(19.8%)と年齢が上がるほど高くなっていく。それでも、どの年代も女性の実施率が男性を超えることはなく、7割以上が実際に現地に行っている。

「オンライン内見のみ」、「両者併用」、「オフライン(現地内見)」の実施者を比べると、賃料や探し始めから契約までの期間などにそれほど大差はないが、見学した平均物件数に違いがあるという。「オンライン内見のみ」が3.2件、「オフライン」が2.9件であるのに対し、「両者併用」は4.1件。オンラインとオフラインを併用することで、より多くの物件を見学できたということだろう。

オンライン契約とは?なぜ可能になったか?

さらに調査では、「オンライン契約」についても聞いている。この調査の「オンライン契約」は「賃貸物件の契約をオンライン上で完結させられる」ことと定義され、不動産業界で言う「IT重説」を指している。

重説とは「重要事項説明」を略したもの。不動産会社が仲介して賃貸借契約を結ぶ場合は、契約前に不動産会社から、物件や契約条件などに関する重要事項説明を受けることになっている。宅地建物取引業法では、重要事項説明は、宅地建物取引士が説明する内容を記載した書面に記名押印し、口頭で説明を行うこととされている。

ただし、近年はインターネットの映像などを活用して、わざわざ不動産会社に行って対面で説明を受けなくても契約できるようにしてほしいという要望が高まった。それを受けて国土交通省では、宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方を提示して、IT重説の実証実験などを経て、ITを活用した重要事項説明を可能にしたのだ。

IT重説を法的に有効にするための細かい条件が設けられているので、どんな形でも認められるわけではないし、重要事項説明や契約は書面で行わなければならないので、書類の送付や返送などが必要になるが、最も重要な契約に関する行為がオンラインで完結することが可能になっている。

さて、調査結果に話を戻そう。こうしたオンラインによる賃貸借契約を利用した経験があるかを聞いたところ、7.0%が「利用経験あり」と回答した。世帯構成別に見ると、「ファミリー」(10.5%)とひとり暮らしの中でも「女性社会人」(9.5%)で高くなっている。

出典:リクルート「2020年度 賃貸契約者動向調査(首都圏) 」

出典:リクルート「2020年度 賃貸契約者動向調査(首都圏) 」

オンライン化のメリット・デメリットは?どう利用するのがよい?

では、部屋探しのオンライン化が進むことで、どんなメリットがあるのだろう?

第一に、「時間の効率化」がある。現地に足を運んだり、不動産会社に出向いたりしなくて済むので、移動時間や交通費の負担を削減できる。第二に、新型コロナウイルス感染の対策として「密を避けられる」ことがある。感染の収束が見通せない今なら、外出を控え、不動産会社のスタッフとの密な空間を避けられるメリットは大きいだろう。

一方で、デメリットもある。特にオンライン内見では、最寄駅から現地までの道のりで得られる情報や現地周辺の住環境、室内の距離感、細かい内装の質感などの情報が得にくいこともある。男性より女性の方がオンライン内見の実施者が少ないのは、現地周辺のセキュリティや日々の買い物、室内のキッチンの使い勝手など、細かい点が映像では確認しづらいといったことも影響しているのかもしれない。

また、IT重説で操作に不慣れな場合は、操作方法に気を取られて最も重要な説明の中身に集中できない、といったことも懸念される。他方、オンライン会議に慣れている場合は、事前に書類が送られるので、じっくり目を通して疑問点などを整理して臨むことができるなど、メリットを感じる人もいるだろう。

筆者自身の見解では、物件の見学数を増やすために効率的にオンライン内見を利用することはよいと思う。しかし、住み替えには手間や費用もかかるので、契約する物件を決める際には簡単に決断せず、必ず現地を訪れてほしい。また、契約の際に重要なことは、契約時に細かく説明されるさまざまな条件などをきちんと理解することだ。それを踏まえて、オンラインによるかどうか判断するのがよいだろう。

オンライン内見もIT重説も、すべての不動産会社が対応できるわけではないので、必ずしも希望すれば応じてもらえるわけではない。しかし、今後はさまざまな生活シーンでオンライン化が進み、部屋探しのオンライン化も進展していくことだろう。

今回の調査結果によると、オンライン内見を実施した最高年齢は79歳だという。高齢者だからといった固定観念は、なくしたほうがよいようだ。

○リクルート「2020年度 賃貸契約者動向調査(首都圏) 」

スマート家電、人気第2位はお掃除ロボット!ダントツの第1位は?

LIVING TECH協会が20代~50代でスマート家電を保有している505人に調査をしたところ、人気のスマート家電が分かった。しかも、家族構成によって、微妙に使われ方や人気の家電が異なるという。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「スマート家電の利用実態調査」結果を報告/LIVING TECH協会

ダントツ人気は「スマートスピーカー」、次いで「お掃除ロボット」

「スマート家電」とは、インターネットを通じて遠隔操作ができる家電製品のこと。スマートフォンやタブレット端末と連携することで、簡単に操作できるようになる。

スマート家電の中には、AI(人工知能)が搭載されたものもある。AmazonやGoogleの「スマートスピーカー」は音声を認識し、好みの音楽を流したり、天気やニュースを教えてくれたりする。また、自走で掃除をする「お掃除ロボット」でAI搭載のものなら、間取りや家具の配置を認識し、掃除のレベルを設定するといったこともできる。

では、どんなスマート家電を持っている人が多いのだろう?調査結果を見ていこう。

出典:LIVING TECH協会「スマート家電の利用実態調査」結果をより転載)

出典:LIVING TECH協会「スマート家電の利用実態調査」結果をより転載)

ダントツは「スマートスピーカー」(46.9%)だ。なんと、半数近くの人が所有している。なにをかくそう、機械音痴の筆者でも、スマートスピーカーを家に置いて、明日の天気や現在の気温を聞いたり、3分間測ってもらったりしている。そして時々「よく分かりませんでした」と言われて、悲しい気持ちになったりもしている。

2番目は、「お掃除ロボット」(35.2%)。スイッチを押せば勝手に掃除をしてくれるので、使っている家庭も多いのだろう。以降は、僅差になるが3番目が「スマートライト」(24.6%)、4番目が「スマート家電コントローラー」(20.4%)、5番目が「ネットにつながるエアコン」(19.2%)だった。

実は、家族構成によって、少し順位が変わってくる。それぞれのTOP3は以下の通りだ。

■単身者
(1)スマートスピーカー:52.8%
(2)お掃除ロボット:32.1%
(3)スマート家電コントローラー:26.4%
■子育てファミリー
(1)スマートスピーカー:49.6%
(2)お掃除ロボット:40.5%
(3)スマートライト:29.5%
■親と同居
(1)スマートスピーカー:50.3%
(2)スマートライト: 39.5%
(3)お掃除ロボット:26.8%

「スマートライト」は、インターネットに対応した照明器具。スマートスピーカーを通して、音声で照明をつけたり、外出先でスマホから遠隔操作をして照明を消したりもできる。また、「スマート家電コントローラー」は、通常は家電ごとにそれぞれリモコンがあるが、それらをまとめてコントロールするもの。

スマート家電を組み合わせることで、スマートスピーカーを通して音声で家電を操作したり、スマホから遠隔操作したりできるようになる。筆者はそこまで使いこなしていないが、いまはネットにつながるエアコンや冷蔵庫、電子レンジなどもあるので、帰宅前にエアコンを入れたり、買い物中に冷蔵庫内の食材を確認できたりできる、らしい。

スマート家電は、音声操作や遠隔操作、家事負担の軽減に効果大

では、スマート家電を導入して、どんな効果を感じているのだろう?

こちらは、「音声操作」(32.3%)、「家事負担軽減」(31.5%)、「遠隔操作」(30.9%)が三大メリットとして挙がった。

出典:LIVING TECH協会「スマート家電の利用実態調査」結果をより転載

出典:LIVING TECH協会「スマート家電の利用実態調査」結果を報告より転載

ただし、効果の感じ方も家族構成によって違いが見られた。
■単身者
(1)音声操作:42.5%
(2)遠隔操作:29.9%
(3)非接触やハンズフリー:28.8%
■子育てファミリー
(1)遠隔操作:37.3%
(2)音声操作:34.5%
(3)家事負担の軽減:34.1%
■親と同居
(1)家事負担の軽減:34.4%
(2)音声操作: 33.1%
(3)遠隔操作:29.3%

単身者は、音声操作に大きな効果を感じているが、子育てファミリーになると、遠隔操作でエアコンや照明などのオンオフができることに効果を感じている。この理由は定かではないが、単身者は、誰かに何かの操作を頼む代わりに音声操作をしたり、スマートスピーカーが会話相手になったりということもあるのだろう。また、子育てファミリーは、家族の生活向上のために、外出先から操作をすることも多いと思われる。

また、家事負担の軽減は、主にお掃除ロボットによるところが大きいのではないか。外出中、または自宅で他の家事や仕事をしている間に掃除をしてくれるので、家事効率を実感できるということだろう。

スマート家電の活用者を発見!その活用方法は?

実は、SUUMOジャーナル編集部の筆者の担当編集者(子育てファミリーに該当)も、スマート家電を使いこなしているという。

まず、スマートスピーカーを各部屋に設置し、それぞれ定時に音声アナウンスが流れるようにしているという。例えば、朝には今日は何のゴミの日かアナウンスしたり、子どもの保育園に持っていくものを列挙したり、出かける時間に火元確認を呼びかけたりするように設定している。

また、スマートスピーカーに子どもの歯磨きや寝る時間を呼びかけさせたり、絵本の読み聞かせサービスを利用したりして、子育ての負担軽減にも活用しているのだ。

もちろん、家電を連携させて、音声でエアコンやテレビの操作をしたり、寝室の照明を定時にオンオフしたりと、大活躍させている。仕事と子育て、家事に忙しい日々なので、「リマインド機能」などでヒューマンエラーを防止できること、音声や遠隔で操作ができて時間の節約になることなどを、大きなメリットに感じているという。

このように、家庭の状況に応じてスマート家電を使いこなせれば、日常の生活が便利になるだけでなく、ストレスの軽減にもなる。いまは、スマート家電の種類も多いので、暮らしのどの部分を効率化したいかによって、上手に組み合わせていくのが良いだろう。

一方で、調査結果では「複数家電の一括操作」をしている割合は17%とまだ多くはないのが実態だ。スマート家電を選ぶのが難しかったり、一般的なものより価格が高かったり、それぞれを連携させるための設定をする必要があったり、セキュリティの課題が指摘されたりと、普及するにはまだハードルもある。

とはいえ、これからの生活には欠かせないものになるだろうから、筆者ももっといろいろ試してみたいと思う。

脱炭素社会の実現に政府が本腰。2030年の住宅のあるべき姿とは。

政府の「2050年カーボンニュートラル」宣言を受けて、住宅分野においてもさらなる省エネ化が求められている。「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方検討会」では、2050年までのロードマップを取りまとめて公表した。住宅の省エネ化は今後どうなっていくのだろう。【今週の住活トピック】
「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方」を公表/国土交通省(国土交通省・経済産業省・環境省3省連携)

2050年までの住宅等の省エネ化の道筋が示された

2020年10月、菅義偉内閣総理大臣が「2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする。すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言した。この背景には、年々深刻さを増す地球温暖化問題がある。2015年に採択された「パリ協定」では、主要排出国を含む多くの国に、2050年までにCO2排出量の大幅削減やカーボンニュートラルの実現を求めている。こうした流れを受けての宣言だ。

カーボンニュートラルの実現には、家庭でのCO2削減やエネルギー消費量も重要となる。住宅も多くのエネルギーを消費しており、さらなる省エネ化や脱炭素化の取り組みが求められている。検討会では、2050年(長期)、2030年(中期)と逆算して段階的な省エネ対策のあるべき姿をとりまとめ、それを公表した。

○2050年及び2030年に目指すべき住宅・建築物の姿(あり方)

●2050年:ストック平均でZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能が確保され、導入が合理的な住宅・建築物において太陽光発電設備等の再生可能エネルギーの導入が一般的となること

●2030年:新築される住宅・建築物についてZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能が確保され、新築戸建住宅の6割に太陽光発電設備が導入されていること

このあるべき姿に向けて、行政が具体的に動くわけだが、住宅に限定して私たちに影響がありそうなものをピックアップしてみた。その内容を見ていこう。

●ボトムアップ:2025年度にすべての住宅で省エネ基準の適合を義務化し、2030年までにはその基準をZEH(ゼッチ)レベルに引き上げる
●レベルアップ:省エネ性能のボリュームゾーンを引き上げる。ZEHなどの住宅に対する補助などの支援をしつつ、誘導基準をZEHレベルに引き上げ、長期優良住宅や低炭素建築物の認定基準などもZEHレベルに引き上げるなど、2030年までに省エネ性能の基準を引き上げる
●トップアップ:より高い省エネレベルを実現するために、ZEH+やLCCM住宅などの取り組みを促進する
●既存住宅:省エネ改修を促進する

ZEHやLCCMなど聞きなれない用語についてはのちに解説するとして、住宅、特に新築住宅については「ボトムアップ」「レベルアップ」「トップアップ」のレベル別に、あるべき姿が提示されている。また、これから建設される住宅は省エネ基準への適合を義務化することでレベルを引き上げることができるが、既存の住宅は改修を行わないと性能が引き上げられない。そのため、効率的・効果的な省エネ改修を促進することも掲げられている。

2025年までのポイント:「省エネ基準」の適合義務化

さて、ロードマップを理解するために、省エネに関する基準について整理していこう。

まず、省エネ基準について説明しよう。省エネ基準は、「エネルギーの使用の合理化等に関する法律(省エネ法)」によって最初に定められたもので、昭和54(1979)年の制定以降、平成4(1992)年、平成11(1999)年、平成25(2013)年に改正され、その内容を強化してきた。

さらに住宅を含む建築物の省エネ化を図るために「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」が成立し、省エネ法の平成25年基準がスライドする形で、建築物省エネ法の平成28(2016)年基準が制定された。これが現行の「省エネ基準」だ。

現行の省エネ基準は、建築物の構造や窓まわりなどの断熱性能を高めて熱の出入りを少なくすること(外皮基準という)に加え、住宅設備による消費エネルギーの違い(省エネ性の高い給湯器やエアコンを使ったり太陽光発電で発電したり)なども加味する(一次エネルギー消費基準という)。さらに、地域の気候条件の違いも考慮するなど、複雑な計算をしたうえで総合的に測られている。

新しく建築物を建てる際には、この省エネ基準を満たす必要があり、非住宅の大規模~中規模の建築物はすでに適合の義務化が進められている。住宅については、一戸建てなど小規模住宅で努力義務(2021年4月以降は建築士から建築主への説明義務)、マンションなど中・大規模住宅(300平米以上)には届け出義務が課されているが、いよいよ2025年度にはすべての住宅で適合が義務化される見通しだ。

2030年までのポイント:省エネ基準を「ZEHレベル」に

省エネ基準とは「最低ここまでは満たすべき」というもので、建築物省エネ法ではそれより高い「誘導基準」があり、それを2030年までにはZEHレベルに引き上げることもロードマップに盛り込まれた。

では、ZEH(ゼッチ)とは何かについて、説明しよう。
ZEHとは、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」を略したもの。住宅の断熱性・省エネ性能を上げることに加え、太陽光発電などによってエネルギーを創り、年間の「一次エネルギー消費量」を正味(ネット)で、おおむねゼロ以下にするものだ。

ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の仕組み(出典:経済産業省の資料より転載)

ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の仕組み(出典:経済産業省の資料より転載)

ZEHはハウスメーカーの注文住宅では普及しつつあるものの、まだ一般的ではない。しかし、2030年までには、すべての住宅の最低水準の省エネ性をZEHレベルにしようとしているわけだ。

認定住宅の基準もZEHレベルに引き上げ、トップレベルの住宅の促進も

住宅の省エネに関する基準はほかにもある。
「低炭素建築物」は「都市の低炭素化の促進に関する法律」に基づく、低炭素化が講じられた建築物のこと。省エネ基準よりも一次エネルギー消費量を抑えたうえで、節水対策やヒートアイランド対策、HEMS(家庭で使うエネルギーを見える化して最適化を図る管理システム)や太陽光発電、蓄電池によるエネルギーマネジメントなどの措置を2項目以上講じることなどが求められている。

また、「長期優良住宅」は「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づき、長期にわたり良好な状態で使用するための条件を満たす優良な住宅のこと。省エネ性に加えて、劣化対策、バリアフリー性、維持管理・更新の容易性、住戸面積などの多くの条件を満たすことが求められている。

いずれの場合も、所管行政庁に申請し、認定基準を満たせば認定を受けることができる。それぞれの省エネ性の認定基準をZEHレベルに引き上げることもロードマップに掲げられている。

ZEHレベルよりもさらに省エネ性が高いのが、「ZEH+」や「LCCM住宅」だ。
「ZEH+(プラス)」 はZEHより一次エネルギー消費基準や外皮基準を強化し、HEMS導入などで年間の一次エネルギー消費量の収支をマイナスにする住宅のこと。「LCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅」は、建設時に省エネ性を高めることに加え、住宅の長寿命化などにより居住時や廃棄時までの住宅のライフサイクルを通じて、一次エネルギー消費量の収支をマイナスにする住宅のことだ。

今回公表されたロードマップでは、こうしたトップレベルの省エネ性の住宅への取り組みも促進するとしている。

新築住宅の太陽光発電設備の設置拡大も視野に

ZEHを目指すには、エネルギーの消費を抑えるだけでなく、エネルギーを創出することも行わなくてはならない。そのために、太陽光発電設備の設置の義務化も検討されたが、ロードマップでは2030年までに一戸建ての6割に太陽光発電設備の設置を目指し、2050年までに設置が一般的になることを目指すとしている。そのために、低コスト化や設置に対する支援制度なども求めている。

最後に、このとりまとめは「2050年カーボンニュートラルの実現及びこれと整合的な2030年度46%削減という野心的な目標の実現に向けて」、住宅や建築物についての実行計画(進め方)を示したもので、「国土交通省、経済産業省、環境省においては、2050 年までにカーボンニュートラルが実現できれば良いという考えを持たず、可能な限り早期にビジョン(あり方)が実現できるように継続的に努力することを求める」とまとめている。つまり、検討会は「2050年カーボンニュートラル」宣言をしたからには、高いハードルに努力して挑みなさいと言っているのだ。

必ずしもロードマップ通りになるとは限らないわけだが、住宅の省エネ性能が高まっていくことは確実だろう。そのために建設コストなどが上がって住宅価格への影響もあるだろうが、コストよりも快適性が高まることのメリットは大きい。地球温暖化で熱中症のリスクも高まり、長時間の冷房により電気代も上がっていくので、住宅のさらなる省エネ化に大いに期待したい。

「脱炭素社会に向けた住宅・建築物における省エネ対策等のあり方・進め方」を公表/国土交通省(国土交通省・経済産業省・環境省3省連携)

「相続登記の義務化」空き家所有者の76%が知らない実態

空き家が増加している問題が指摘されている。その要因のひとつに不動産登記がされていないことが挙げられているが、カチタスが全国の空き家所有者(有効回答963人)に調査をしたところ、「相続登記の義務化」についての認知度はわずか2割程度だった。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「 第1回 空き家所有者に関する全国動向調査(2021年)」結果を公表/カチタス

空き家所有者の76.8%は「相続登記の義務化」を知らない

「相続登記」とは、相続により不動産を取得したときに、不動産名義を相続人に変更すること。一見当たり前のことのようだが、これまでは義務ではなく任意だったので、すぐに活用しない場合などでは相続登記をしないということが行われてきたのだ。

カチタスが空き家所有者に、相続登記の義務化を知っているか聞いたところ、「知っている」は23.2%しかおらず、「知らない」という人が大半だった。

(出典:カチタス「第1回 空き家所有者に関する全国動向調査(2021年)」)

(出典:カチタス「第1回 空き家所有者に関する全国動向調査(2021年)」)

では、空き家の相続について家族と話しているか聞いたところ、「家族と話していない」人が66.7%だった。空き家の登記情報や相続後の使用もしくは処分方法についてあいまいなままで相続となると、残る家族に迷惑がかかることもあるので、空き家をどうするかを家族できちんと話し合っておきたいところだ。

(出典:カチタス「第1回 空き家所有者に関する全国動向調査(2021年)」)

(出典:カチタス「第1回 空き家所有者に関する全国動向調査(2021年)」)

所有者不明の土地をなくしていくための対策

ではなぜ、相続登記が義務化されるのだろう?

空き家が管理されずに放置されることで、近隣トラブルや衛生上、防犯上などさまざまな問題を引き起こす「空き家問題」が話題になった。政府は、こうした迷惑空き家に対して、2014月11月に「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家対策特別措置法)を成立させ、私有財産である住宅に行政が関与できるような対策を取った。

一方で、放置された空き家や土地に対して管理を求めたり処分したりしようするときに、所有者が分からないという問題も浮き彫りになった。何代にもわたって相続登記がなされていないと、まずは最後の名義人からその相続人たちを探し出し、その相続人たちが他界していれば次の代に相続権が引き継がれるので、さらに次の代を探し……と、その土地の相続人の数がねずみ算式に膨れ上がる。放置された土地の所有者を探すために多大な時間と費用が掛かることに加え、土地を活用しようとした場合に相続人全員の合意を得るのは至難の業だ。

2017年に「所有者不明土地問題研究会」から最終報告が出されたが、そこには、「2016年時点の所有者不明土地の面積は約410万haで、九州本土の面積の約367万haをすでに上回る」という、衝撃的なデータが紹介された。その最終報告では、相続登記の義務化を含む、すべての土地の所有者が明らかになるための施策や、活用されない土地を手放す仕組みをつくることなどが提言された。

こうした提言を受けて、政府は対策に着手し、不動産登記法の改正、民法等の改正、相続土地国庫帰属法の新法制定などを行ったのだ。

法改正などによりどう変わる?何をしなければならない?

では、法改正などによって何が変わるのだろう?不動産の相続や登記などが、主に次のように大きく変わることになる。

(1)相続登記の義務化
不動産を取得した相続人は、そのことを知った日から3年以内に相続登記を行うことが義務づけられる。正当な理由がないのにこれを怠った場合は罰則(過料10万円以下)がある。ただし、登記手続きの手間や費用を軽減するなどの措置も取られる。
(2)住所等変更登記の義務化
登記をした名義人は、住所や氏名などの変更日から2年以内にその変更登記を行うことが義務付けられる。正当な理由がないのにこれを怠った場合は罰則(過料5万円以下)がある。
(3)土地の所有権を放棄しやすい仕組み
相続したものの土地を手放したい場合は、一定の要件(建物が立っていない、土壌汚染がない、権利関係に争いがないなど)を満たせば、国庫に返納できる。ただし、審査手数料や10年分の管理料などを負担する。

このほかにも、管理不全や所有者不明の土地・建物について、裁判所が管理人を選任して管理させたり、その土地に不明な共有者がいる場合は残りの共有者で管理できるようにしたりなど、土地の利用を図る方策も取られている。

2021年4月28日に公布されたこれらの法改正等は、原則として公布日から2年以内に施行されるが、相続登記の義務化は公布日から3年以内、住所等変更登記の義務化は公布日から5年以内に施行される予定となっている。

空き家を所有している人、今後に土地や住宅の相続が想定される人などは、相続登記の義務化などを視野に入れ、今から準備をしておくのがよいだろう。その際には家族で話し合ったり、その土地や住宅についてこれまでの経緯を知っている人から情報を集めたりすることも忘れずに。

「 第1回 空き家所有者に関する全国動向調査(2021年)」結果を公表/カチタス

コロナ下の在宅ワークや巣ごもりで電力消費量はどう変化したか

旭化成ホームズでは、自社が提供したヘーベルハウスに設置したHEMS端末を介して、建て主(一戸建て約2000棟)の電力消費量傾向の調査を実施し、それを解析した。その結果を見ると、コロナ禍の行動変容により、あきらかに電気の使われ方が変わったことが分かる。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
コロナ禍での年間家庭用電力消費傾向をHEMSデータから解析/旭化成ホームズ

コロナ禍の行動変容で電力消費量が増加。特に2021年の正月で顕著

東京に初めて緊急事態宣言が発出されたのが、2020年4月7日のこと。当時の安倍総理大臣が要請して、全国の小中高が3月2日から春休みまで臨時休校になり、小池都知事などが不要不急の外出自粛を求めたうえでの緊急事態宣言だった。

旭化成ホームズの解析結果によると、2019年度(2019年4月~2020年3月)と感染拡大期に入った2020年度(2020年4月~2021年3月)の年間積算電力消費量を比較してみると、2020年度の年間の電力消費量は前年度より9.7%増加していた。

さらに、月ごとに電力消費量を比べてみると、前年同月より大きく消費量が伸びているのが、2021年1月と2020年8月だ。詳しく見ていくと、学校が休校になった2020年3月から電力消費量が増加し始め、旅行や帰省の自粛を促した8月には一段と増加した。一方で、GoToトラベルを実施した10月~12月には電力消費量の伸びが鈍化したものの、感染者の増加によりGoToトラベルは12月28日から停止となり、年末年始は自宅で過ごそうと自粛が呼びかけられ、電力消費量も一気に増加した。

出典/旭化成ホームズ「コロナ禍での年間家庭用電力消費傾向をHEMSデータから解析」より転載

出典/旭化成ホームズ「コロナ禍での年間家庭用電力消費傾向をHEMSデータから解析」より転載

同社が2020年と2021年の正月の過ごし方を調査したところ、2021年の正月は「出かけることはせず、自宅で過ごした」人が、前年の31.5%から72.0%に倍増し、帰省や旅行をした人が減ったことが分かる。この結果からも、巣ごもりの生活と電力消費量に深い関係があることがうかがえる。

出典/旭化成ホームズ「コロナ禍での年間家庭用電力消費傾向をHEMSデータから解析」より転載

出典/旭化成ホームズ「コロナ禍での年間家庭用電力消費傾向をHEMSデータから解析」より転載

コロナ禍で一日の生活スタイルも変化。特に2020年で顕著

コロナ禍の行動変容は、一日の生活スタイルにも影響している。

同社が2019年~2021年の3年間の4月の時間帯別電力消費量を比較しているが、同じコロナ禍でも2020年と2021年では違いも見られる。在宅勤務に関する多くの調査結果では、初めての緊急事態宣言中が最も在宅勤務の比率が高い傾向が見られたが、同社の調査でも、仕事をしている夫も妻も、2020年の4月・5月が最も在宅勤務の実施率が高くなっていた。

こうした影響もあって、2020年4月では朝の電力消費のピークが後ろにずれているが、2021年4月では2019年並みに戻っている。また、在宅勤務やオンライン学習の普及などで、2020年の昼食時と夕食時の電力消費量は大きく増加したが、2021年は2020年ほどの消費量には至っていない。ただし、2020年・2021年の夕食時のピークが2019年4月より1時間ほど前倒しになる傾向は変わらず、定着したことも分かる。

出典/旭化成ホームズ「コロナ禍での年間家庭用電力消費傾向をHEMSデータから解析」より転載

出典/旭化成ホームズ「コロナ禍での年間家庭用電力消費傾向をHEMSデータから解析」より転載

世の中の雰囲気も、電力消費量に影響か?

解析結果を詳しく見ていくと、コロナ禍において、緊急事態宣言や休校要請、GoToキャンペーンなどの施策が人の動きに大きな影響を与え、それによって勤務先の在宅ワークなどの推奨や外出自粛などで各人の生活スタイルに変化が生じていることが、電力消費量からも分かる。

とはいえ、感染者数が2020年より増加している2021年4月時点で、電力消費量は2019年水準に戻りつつあった。いわゆる“自粛疲れ”が指摘されて久しいが、こうした世の中全体の雰囲気といったものの影響も大きいと思われる。

いままた、新型コロナウイルス変異株(デルタ株)の影響で感染者が爆発的に増え続けている。2021年の夏も旅行や帰省の自粛が求められているが、東京2020のオリンピック・パラリンピックが開催され、外出自粛が薄れている懸念もある。この夏の人の動き次第で、電気消費量にも影響を与えることだろう。

さて、在宅ワークで家庭の電力消費量が増加し、家計の支出が増加することになる。在宅ワークが増えれば、その分オフィスの電力消費量は減少するので、将来的には勤務先が電力手当を支給するという時代が来るのかもしれない。

●取材協力
・コロナ禍での年間家庭用電力消費傾向をHEMSデータから解析/旭化成ホームズ

コロナ禍で進む「オンライン内見」、利用者から「実物の物件のほうが良かった」との声も

MMD研究所は、2021年6月に「コロナ禍での物件・部屋探しに関する調査」を実施した。コロナ禍の2020年4月以降に物件を探した人の中で、オンライン内見をした人にも調査を実施している。どんな人がオンライン内見をしているのだろうか。【今週の住活トピック】
「コロナ禍での物件・部屋探しに関する調査」結果を公表/MMD研究所

オンライン内見とは?今なぜ注目されている?

まず、オンライン内見とは何か説明しよう。
「オンライン内見」とは、内見希望者に代わって、不動産会社のスタッフが現地へ行き、オンラインを使って映像や音声で物件内の紹介をするサービスのこと。ネット環境のある場所なら、自宅や会社などどこにいても物件見学をすることができる。

新型コロナウイルス感染の対策として、外出を避け、不動産会社のスタッフと密にならないで物件を確認できるオンライン内見が注目を集めている。オンライン会議などの経験が増えて、インターネットを介して動画でコミュニケーションを取ることに慣れてきたことも要因だろう。

MMD研究所の調査結果で、どのオンラインサービスを利用したかの結果(複数回答)を見ると、「Zoom」が50.5%と最も多く、「LINE」(47.4%)、「Skype」(35.8%)、「Microsoft Teams」(33.5%)、「Google Meet」(30.9%)だった。

20代が最もオンライン内見をしている

さらに調査結果を見ていこう。2020年4月以降に物件を探した1159人を対象に、物件を内見した方法を聞いた(複数回答)ところ、全体平均では「訪問内見」が53.0%、「オンライン内見」が37.9%となった。

出典:MMD研究所「コロナ禍での物件・部屋探しに関する調査」より転載

出典:MMD研究所「コロナ禍での物件・部屋探しに関する調査」より転載

「オンライン内見」が高い性別・年代別をピックアップすると、次のようになった。
20代男性(n=196) オンライン内見:55.1%  訪問内見:57.1%
30代男性(n=174) オンライン内見:47.7%  訪問内見:55.2%
20代女性(n=193) オンライン内見:33.9%  訪問内見:56.5%

オンライン内見については、「20代」と「男性」がカギになっている。まず、男性では、20代男性が最多で、年代が上がるにつれてオンライン内見の利用は下がっていく。また、女性では、20代こそ55.2%と高いものの、30代では23.4%まで下がるなど、全体的に男性に比べるとオンライン内見の利用は多くはない。

また、どの性別・年代別を見ても、訪問内見のほうが多く利用されており、訪問内見とオンライン内見を併用していることもうかがえる。

オンライン内見経験者の利用意向は高い

この調査では、オンライン内見で契約をした378人に、「実際に物件を見た際にオンライン内見とのイメージの差があったか」を聞いている。その結果、「実際の方がオンライン内見で見たより良かった」が最多の54.2%で、「実際の方がオンライン内見で見たより悪かった」が34.9%、「実際とオンライン内見のイメージの差はなかった」が10.8%となった。

オンライン内見と実際の物件を見比べると、実際のほうが良かったという人もいれば、悪かったという人もいるなど、必ずしも同じ印象をもつとは限らないということのようだ。

出典:MMD研究所「コロナ禍での物件・部屋探しに関する調査」より転載

出典:MMD研究所「コロナ禍での物件・部屋探しに関する調査」より転載

そうしたこともあってか、オンライン内見経験者430人に、「今後も物件を探す際にオンライン内見を利用するか」を聞いたところ、「実際に物件を内見するのとオンライン内見、どちらも利用すると思う」という“併用派”が52.3%と最も多くなった。一方で、「オンライン内見だけで物件を探すと思う」が37.4%と、“オンライン内見派”も4割近くいた。併用、単独合わせて89.7%が今後も利用すると支持しており、オンライン内見で効率よく住まい探しをしたい人が多くいることが分かる。

出典:MMD研究所「コロナ禍での物件・部屋探しに関する調査」より転載

出典:MMD研究所「コロナ禍での物件・部屋探しに関する調査」より転載

オンライン内見のメリット・デメリットは?どう利用するとよい?

オンライン内見のメリットとデメリットを整理しておこう。

オンライン内見の最大のメリットは、内見をするために現地に足を運ぶための時間や手間が減るという“効率の良さ”だろう。特に、転勤などで遠方から住まい探しをする人、一人暮らしの子どものために親子で住まい探しをする家族などには、効率の良さのメリットが大きい。

かたやデメリットとしては、カメラを通して物件を見るために、現地の日当たりや音、空間の広さ、部屋の雰囲気、細かい内装の質感などが確認しづらいという点が挙げられる。また、最寄駅から実際に歩くことで得られるアクセスや周辺環境の情報が不足するなど、現地に行ってこそ得られる情報も多い。

また、通信環境が整っていないと映像や音声が不安定になったり、通信の契約形態によっては通信費がかさんだりする場合があることなどにも注意したい。

では、どのようにオンライン内見を活用したらよいのだろう?

まず、訪問内見と同様ではあるが、何を重視して住まい探しをするかをあらかじめ決めておき、内見時には確実にその点をチェックすることだ。オンライン内見では、不動産会社のスタッフの案内で見ることになるので、気になる点は「収納の戸を開けてサイズを教えてほしい」「コンセントの位置を見せてほしい」「しばらく音を聞かせてほしい」など、さまざまな注文を付けて見落とすことのないようにしたい。

また、現地に行かないと得られない情報もあるので、オンライン内見を利用して物件を絞り込んだら、最終的に決める際には訪問内見をすることなども検討してほしい。

コロナ下で急速に増加した「オンライン内見」ではあるが、コロナ終息後もその効率性から継続されることが想定される。これからは住まい探しで、オンライン内見を賢く利用する時代になっていくことだろう。

○MMD研究所「コロナ禍での物件・部屋探しに関する調査」

コロナ終息後もテレワークは定着する見込み。理想の働き方はオフィス・テレワーク併用?

三菱地所では、コロナ禍の環境変化を調べるために、2020年6月以降、東京都に勤務する首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)のオフィスワーカーに定期的に調査をしている。今回は、第三回(2021年6月調査)の結果を公表した。定着しつつあるテレワークについて、オフィスワーカーはどう評価しているのだろうか。【今週の住活トピック】
「第三回就業者アンケート調査」結果を公表/三菱地所

コロナ終息後もオフィスのみは30%、オフィス・テレワーク併用が65%

筆者は住宅事情に詳しいとして、他の媒体から取材を受けることもある。先般は、「コロナ終息後にテレワークはどうなるか」と聞かれた。これまでの各種調査を見る限り、一定層はテレワークを評価しており、続けたいという意向を示している結果が多い。そこで、「頻度は今とは変わるかもしれないが、終息後も何らかの形でテレワークは継続されると見ている」と答えた。

テレワークの継続がうかがえる結果が、三菱地所の調査結果にも見られる。まず、現在のオフィスとテレワークの比率と、現在理想と思う比率を聞いた結果を見よう。

現在のオフィスとテレワークの比率では、「オフィスのみ」33%、「オフィス・テレワーク併用(オフィス50~90%)」33%、「オフィス・テレワーク併用(オフィス10~40%)」26%、「テレワークのみ」8%となっている。東京都に勤務するオフィスワーカーの3人に1人は、勤務日には通勤をしてオフィスに通っていることになるが、大半はオフィスにも行くがテレワークもしており、オフィスに通わずテレワークのみという人も1割近くいるわけだ。

これが、現在の理想の比率を聞くと、「オフィスのみ」の比率だけが19%に下がり、テレワークの比率を今より増やしたいと考えている人が多いことが分かる。

出典:三菱地所「第三回就業者アンケート調査」

出典:三菱地所「第三回就業者アンケート調査」

では、コロナ終息後はどうなると見ているのだろう。コロナ終息後は、「現在」よりもオフィスで働く比率が高いと見る傾向がうかがえ、「テレワークのみ」や「オフィス・テレワーク併用(オフィス10~40%)」が、現在よりも下がっている。また、「オフィスのみ」も現在より下がるが、「オフィス・テレワーク併用(オフィス50~90%)」が42%に増えるという予想になった。

ただし、コロナ終息後についての「希望」も聞くと、「現在の理想」と同じような比率に変わる。つまり、自分の仕事は、コロナ終息後もオフィスとテレワークの比率が変わりはするものの、テレワークを併用する形が継続すると考えているが、オフィスワーカーそれぞれの希望は、今よりテレワークの比率を増やしたいと思っているということになる。

打ち合わせやディスカッションは、オフィス(対面)の方が生産性は高い?

テレワークは、感染対策として「三密」を避けるために奨励されたのだが、コロナ終息後もテレワークが続くと見ているのは、別の理由があるからだろう。一部の業務の生産性の向上や浮いた通勤時間を有効に使えるなどのメリットを感じる人が多いと考えられる。

一方で、オフィスに集まって勤務するスタイルも無くならないと見る人が多い。今回の調査では、業務の生産性についても聞いている。特に顕著なのが、「社外との打ち合わせ」、「社内ミーティング(共有目的)」、「社内ミーティング(ディスカッション)」、「社内ミーティング(プレゼン)」など、一堂に会して互いの表情やアイコンタクトなどで状況が確認できる会議については、オフィス(対面)での生産性が高いと考える人が多いことが分かる。

出典:三菱地所「第三回就業者アンケート調査」

出典:三菱地所「第三回就業者アンケート調査」

ほかの個人作業についても、オフィス(対面)のほうが生産性は高いと考える人が多いのは、ちょっと意外な結果だった。となると、テレワークが支持される理由は仕事の効率よりも、それによって生み出された時間の有効活用ができることなのかもしれない。

テレワークの場所は自宅が94%、シェアオフィスを希望する人も

では、テレワークをしている場所はどこだろう。これはやはり、「自宅」という人が94%だった。ただし、「理想」の場所を聞くと、「シェアオフィス」や「カフェ等その他」が増える。

●実態
自宅:94%、シェアオフィス:5%、カフェ等その他:2%
●理想
自宅:72%、シェアオフィス:21%、カフェ等その他:7%

実態と理想が乖離しているのは、「在宅しか認められていないから」(27%)や「シェアオフィスの料金が高く、会社の補助・負担がないから」(28%)などが挙がり、自宅以外の場所で働く環境が整えば、シェアオフィスなどでのテレワークが広がる可能性が感じられる。

また、コロナ禍で注目された新しいライフスタイルについては、半数近くが「興味がない」と回答しており、次いで「興味はあるが、現実には無理で検討に至らない」が多いという結果だった。

出典:三菱地所「第三回就業者アンケート調査」

出典:三菱地所「第三回就業者アンケート調査」

同社では、「『郊外居住』『地方居住』『二拠点生活』を積極的に検討しているワーカーは10%程度。逆に『都心居住』『自転車通勤』を志向するワーカーも 10%程度あり、単純に都心⇒郊外・地方への人口流出が急速に進むとは言い切れない」と分析している。

コロナ禍が長引くなか、テレワークが普及し、そのメリットとデメリットが分かるようになってきた。コロナ禍で一気に普及したテレワークだが、終息した後でも、オフィス(対面)とテレワークを使い分けて、併用される時代が来るだろう。

コロナ禍で分かったことは、働き方が変わると住宅ニーズも変わることだ。コロナ終息後は、副業の普及などもあってさらに働き方も変わるだろう。それに応じて住宅ニーズも変わるので、注目していきたい。

●参考
「第三回就業者アンケート調査」結果を公表/三菱地所

高齢者を狙い、自宅を売却させる悪質業者に注意。「理解できないまま売却契約をしてしまった」

国民生活センターは「高齢者の自宅の売却トラブルに注意-自宅の売却契約はクーリング・オフできません!内容をよくわからないまま、安易に契約しないでください-」と呼び掛けている。どういったトラブルが起きているのだろうか?【今週の住活トピック】
「高齢者の自宅の売却トラブルに注意」の呼びかけ/国民生活センター

売るつもりのない高齢者の自宅売却契約で、トラブルが多く発生

全国の消費生活センターなどに、「強引に勧誘され、安価で自宅を売却する契約をしてしまった」、「解約したいと申し出たら違約金を請求された」、「自宅を売却し、家賃を払ってそのまま自宅に住み続けることができるといわれ契約したが、解約したい」といった、自宅の売却に関する相談が寄せられているという。同センターが紹介した具体的な相談事例を見ていこう。

〇相談事例(1)強引な営業で売買契約をしてしまった(80代女性)
一人暮らしの高齢者の自宅に、自宅を売らないかという不動産事業者が訪れ、長時間繰り返し強引な営業をされ、「マンションを売ったら入所できる施設を探してあげる」などと言われ、断れないまま売買契約をしてしまった。
〇相談事例(2)強引な契約後、解約に高額なキャンセル料を請求された(80代女性)
何度も不動産事業者に自宅売却の営業をされ、理解できないまま売買契約をしてしまい、その場で手付金約450万円を受け取ってしまった。クーリング・オフができると思い、翌日に契約の解約を申し出たら、解約するなら約900万円を払うように言われた。
〇相談事例(3)有利な話だと、売却と賃貸借の契約をさせられた(80代女性)
要介護認定を受け自宅で一人暮らしをしているが、有利な話があると不動産事業者が訪れた。「自宅マンションを1000万円で買い取る。その後は13万円の家賃を払って住み続けられ、管理費や修繕費、固定資産税がかからなくなるのでとても有利だ」と、長時間の営業が続き、意識がもうろうとするなかで契約してしまった。そんな高い賃料は払えないので解約を申し出たが、もっと安い賃貸物件を紹介するというだけで、解約に応じてもらえない。

相談事例はほかにもあるが、共通しているのは、高齢者をターゲットに、強引な営業をしているということだ。これらの相談について、同センターでは以下のような問題点を挙げている。

(1)迷惑な勧誘、長時間の勧誘や嘘の説明によって消費者が望まない契約をしてしまう
(2)契約内容等について消費者の理解が不十分なまま契約してしまう
(3)判断能力が低下している消費者が契約し、後になって家族等が気づき、トラブルになる
(4)契約内容によっては、売却後に住宅の修理等の費用負担を求められることがある

自宅を売却した後で、雨漏りやシロアリ被害などがあったとして、修理費用を請求されたという相談事例もあり、契約内容がわからないまま契約してしまうリスクも指摘されている。

不動産事業者に自宅を売却してしまうと、解除が難しくなる

さて、訪問販売で商品を購入したりした場合は、「クーリング・オフ」ができるということが一般的に知られている。一定の期間内であれば、無条件で契約を解除することができるというものだ。

もちろん、宅地建物取引業法(以下、宅建業法)にも、クーリング・オフの規定がある。ただし、同センターでは、「自宅を不動産業者に売却した場合、クーリング・オフはできません」と強調している。どういうことだろう?

クーリング・オフは、無理やり契約をさせられた買い手を保護することにある。宅建業法では、不動産の売主が宅地建物取引業者(以下、宅建業者)であり、宅建業者の事務所や買い手側が申し出た自宅などではない場所(例えば喫茶店など)で契約をした場合などは、クーリング・オフの対象になる。ただし、買い手が宅建業者の場合は、不動産のプロなので保護をする観点から外れるため、クーリング・オフの対象にはならないのだ。

また、契約の解除についても宅建業法で規定がある。買い手から手付金を受け取った場合、「解約手付け」という扱いになるので、売り手側から契約を解除するには「手付金の倍返し」で解除することになる。さらには、手付解除の期間が過ぎると違約金を請求される場合もある。相談事例(2)のように約900万円もの倍返しの額を請求されることもあるので、注意が必要だ。

また、相談事例(3)は、「リースバック」という手法を悪用した事例だ。「リースバック」は、正式には“sale and leaseback”、つまり賃貸借契約付き売却のこと。自宅などの所有不動産を第三者(この場合は不動産事業者)に売却し、売却先と賃貸借契約を結んで、元の所有者が賃料を払ってそのまま住み続けるという仕組みだ。一般的に、売却額は相場より低く、賃料は相場より高く設定されることが多い。

自宅を売ったことを周囲に知られずに、売却で得た資金を活用できるなど、契約の仕組みを理解していればメリットもある手法だ。相談事例では、この手法を悪用しているので、最初に自宅の売却が成立した時点で、契約の解除が難しくなってしまう。

予防するための対処方法は?子や孫世代の協力も必要に

不動産登記は、手続きさえ踏めば誰でも閲覧ができるので、登記簿の内容から高齢者が所有している不動産だと知ることができる。ほかにもさまざまな方法で集めた情報をもとに、高齢者のみが暮らしている住宅などにターゲットを絞って、強引な営業をかけているのだろう。

他の人と相談できないように囲い込んで契約を取り付けているので、子どもや地域包括支援センターの人などが気づいたときには、売買契約が成立してしまっているということになる。

では、どういった対応をすればよいのだろう?

●よく分からないことや納得できないことがあったら、解決するまで契約はしない
●勧誘が迷惑だと思ったらきっぱりと断り、今後勧誘しないように伝えましょう
●不安に思った場合やトラブルになった場合は消費生活センター等に相談してください

同センターでは、消費者に対して上記のようなアドバイスをしている。加えて、宅建業者の関係団体に対して、法令順守などを要望している。

国民生活センターの啓発資料「自宅の売却トラブルに注意」を転載

国民生活センターの啓発資料「自宅の売却トラブルに注意」を転載

とはいえ、長時間の強引な営業を受けている高齢者自身が、そのときになってきっぱり断ることには、ハードルもある。子どもたち世代(あるいは孫世代)や近しい関係の人が、こういったトラブルが起こりうることを伝え、強引な営業をされた場合にどう対処するか、あらかじめ対処方法を決めておくのがよいだろう。

また万一、高齢の親や知人が強引な営業により売買契約をしてしまい、契約を解除できるかどうか不明な場合には、できるだけ早く地域の消費生活センターや国民生活センター、弁護士などの専門家に相談しよう。もし高齢者自身の判断能力に不安がある場合には、早めに成年後見制度などの利用も検討しておきたい。

さて、いったん売買契約が成立してしまうと、その解決に時間がかかり、解決のために費用負担が生じることも多い。被害に遭ったダメージに加え、解決に至るまでのさまざまな負担もあり、高齢者には耐えがたいことになるだろう。そうした被害から高齢者を守るためにも、子どもや孫の世代を含む周囲の人が、まずは家に入れない、絶対に契約をしないための対処方法を一緒に考えてほしい。

【関連リンク】
「高齢者の自宅の売却トラブルに注意」の呼びかけ/国民生活センター

「夏のボーナスは減る」と3割が予想。どうする、住宅ローンのボーナス返済

住宅ローン比較サービス「モゲチェック」を運営するMFSは、「新型コロナウイルスによる、住宅ローンボーナス返済への影響」に関するアンケート調査を、現在返済中の30~50代に実施した。その結果、ボーナスの支給額減少と住宅ローンの返済に深い関係があることが分かった。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「新型コロナウイルスによる、住宅ローンボーナス返済への影響」について調査/モゲチェック(MFS)

コロナ下の夏のボーナス、「減る」と予想した人は3割前後

住宅ローンの返済方法には、「毎月の返済のみ」と「毎月の返済+ボーナス時に返済を加算」の選択肢がある。ボーナス時の返済を併用する方法のメリットは、その分だけ毎月の返済額を抑えることができることにある。例えば、3000万円を借りる場合、全額を毎月の返済だけにするよりも、2000万円を毎月の返済に、1000万円をボーナス時の加算に割り振ったほうが、毎月の家計に余裕が持てることになる。ただし、ボーナスの支給額は景気の影響を大きく受けるので、無理のない範囲にとどめることが推奨されている。

今回のMFSの調査によると、住宅ローンの返済でボーナス返済を併用している人は、全国で35.6%だった。ただし、関西ではボーナス返済を併用する人は19.8%と少なくなる。関西のほうがより堅実な家計なのだろうか。

しかし、いまはコロナ下だ。業績が悪化している業種もある。「この夏のボーナスは減る」と予測した人が多い業種は「公務員」(38.2%)、「製造業」(35.2%)、「情報通信業」(31.7%)、「飲食・宿泊を含むサービス業」(31.6%)などが上位に挙がった。また、年代別に見ると、「減る」と予想したのは、「30代」で31.4%、「40代」で28.4%、「50代」で26.6%となり、若い世代のほうが、減ると予測した人が多いという結果になった。

昨年より夏のボーナスは減るか(年代別)(出典/MFS「新型コロナウイルスによる、住宅ローンボーナス返済への影響」より転載)

昨年より夏のボーナスは減るか(年代別)(出典/MFS「新型コロナウイルスによる、住宅ローンボーナス返済への影響」より転載)

夏のボーナス支給額が、住宅ローンの返済額より下回る人が多数続出!

ボーナス返済を併用している人に、「今年の夏のボーナス支給額は、住宅ローンのボーナス返済額を上回るか(上回ったか)」を聞いたところ、「上回る」つまり、ボーナスの支給額でボーナス返済をしても手元に残る人が半数以上ではあったものの、「返済すべき額より支給額が下回る」人や、「支給額は上回るがその他の返済を考慮するとマイナスになる」人も相当数いる。特に30代では、合わせて48.0%の人がボーナスの支給額を住宅ローンの返済などに充てると赤字になるという、厳しい現実が浮き彫りになった。

今年の夏のボーナス支給額は、住宅ローン返済額を上回るか(出典/MFS「新型コロナウイルスによる、住宅ローンボーナス返済への影響」より転載)

今年の夏のボーナス支給額は、住宅ローン返済額を上回るか(出典/MFS「新型コロナウイルスによる、住宅ローンボーナス返済への影響」より転載)

コロナ収束後にはボーナスの支給額が元に戻り、一時的に貯蓄を取り崩すなどで対応できるという場合ならいいが、今後もボーナス返済が家計を圧迫する可能性があるなら、このままにはしておけない。ボーナス返済について何か対策をしているのだろうか?

コロナ下で「ボーナス返済について検討、もしくは実行したことがあるか」を聞くと、「検討・実行した」人は特に30代で多く、37.5%にも達した。若い世代ほど夏のボーナス支給額が減るという人が多く、そのことが住宅ローンの返済にも大きく影響しているがうかがえる。

ボーナス払いについて検討・実行したことがあるか(出典/MFS「新型コロナウイルスによる、住宅ローンボーナス返済への影響」より転載)

ボーナス払いについて検討・実行したことがあるか(出典/MFS「新型コロナウイルスによる、住宅ローンボーナス返済への影響」より転載)

ボーナス返済が厳しい…その対策方法は?

さて、住宅ローンのボーナス返済の対策をするとしたら、どんなことが考えられるのだろう?

まず、ボーナス返済の額を減らしたり、無くしたりすることが考えられる。割り振りの変更は手続きをすればでき、さほど難しいことではない。例えば、3000万円のうち1000万円分をボーナス返済分にしている場合なら、それを500万円に減らしたり、全額を毎月返済にしたりするわけだが、その分だけ毎月返済分の割合が増えて、毎月の返済額は増えることになる。

つまりこの「ボーナス返済の変更」は、ボーナスの支給額が減っても、毎月の返済には余裕がある場合に効果を発揮する。

ところが、MFSの調査で「毎月の住宅ローン返済が家計の負担になっているか」を聞いたところ、半数近くが負担(とても負担+少し負担)になっていると回答している。毎月の返済も負担になっているのであれば、ボーナス返済分を抑えて毎月の返済に上乗せするという選択肢は、とりづらいことになる。

毎月の住宅ローン返済は家計の負担になっているか(出典/MFS「新型コロナウイルスによる、住宅ローンボーナス返済への影響」より転載)

毎月の住宅ローン返済は家計の負担になっているか(出典/MFS「新型コロナウイルスによる、住宅ローンボーナス返済への影響」より転載)

MFSによると、今回具体的な対策として最も多く挙がったのが「他金融機関への借り換え」で、ほかにも「借り入れ先の金融機関への相談」、「FP や専門家に相談」が挙がったという。

ボーナス返済も毎月の返済も厳しい場合は、まずは「借り入れ先の金融機関に相談」するのがよいだろう。例えば、返済期間を延ばす(30年から35年など)ことで、住宅ローンの返済額を抑える対応策などを用意していることも多い。具体的に何ができるかは、金融機関などによって異なるので、まずは借り入れ先に相談することをお勧めする。ただし、返済期間を延ばすなどの対応策によって利息が増えて、最終的に返済する総額が増えることに留意してほしい。

また、調査で多かったという「他金融機関への借り換え」は、いま適用されている金利よりも、新たに借りるローンの金利のほうが低いことで効果を発揮する。ローン残高が多く、返済年数が長く残っている場合ほどその効果は大きい。ただし、別の金融機関と改めて住宅ローンの契約を結び直すので、当初借りたときと同様にかなりの諸費用がかかることが留意点だ。

対応策がよく分からない、決められないという人は、FP(ファイナンシャルプランナー)などの専門家に相談するとよいだろう。例えば借り換えであれば、異なる金融機関の住宅ローンで返済プランを試算したうえで、それぞれのメリット・デメリットなどの説明をしてくれるので、借り換え後も返済に無理がないか確認して選ぶことができるだろう。

毎月の返済額を抑えたい(あるいは返済額を増やすことで返済期間を短くしたい)という理由で、ボーナス返済に頼ってしまうと、景気の影響で思った通りの支給額が出ないこともある。今回の調査で、「ボーナス返済の併用を選んだことを後悔している」という人が14.0%(30代に限ると22.9%)いた。

ボーナスは、日ごろの生活の赤字をカバーしたり、旅行などのレジャーに充てたり、家具家電の買い替えに充てたりと、使い道が多様にある。ボーナスの額が減る事態も想定して、ボーナス返済についてよく考え、ローン返済中も万一に備えた貯蓄をすることをお勧めしたい。

65歳以上の“入居拒否”4人に1人。知られざる賃貸の「高齢者差別」

65歳からの部屋探しを支援するR65が、全国の「65歳以上」と「20~30代」を対象に、65歳以上が住宅難民になりやすいことについて調査したところ、意識にギャップがある実態が浮かび上がった。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題」に関する調査結果を公表/R65

高齢期になると賃貸住宅を借りづらくなる

実は、高齢者は賃貸住宅を借りづらいという現実がある。年金収入だけで貯蓄を取り崩すなどにより家賃が払えなくなるリスクに加え、高齢になると火の不始末による火災などのリスクが高くなり、さらに単身者の場合は孤独死のリスクも生じるなど、貸主が高齢者に貸すことを敬遠するといったことがあるからだ。

内閣府の「高齢者の住宅と生活環境に関する調査」(平成30年度)によると、「住まいに関して不安と感じていることがあるか」と聞いたところ、60歳以上の持ち家層では24.9%が「ある」と回答したのに対し、60歳以上の賃貸住宅層では36.5%が「ある」と回答した。賃貸住宅層のほうが不安を感じている人が多いのだ。

調査で住まいに関して不安を感じている賃貸住宅層に、具体的にどのような点を不安に感じているかを聞くと、「高齢期の賃貸を断られる」(19.5%)、「家賃等を払い続けられない」(18.2%)を挙げている。このことからも、高齢期に賃貸住宅を借り続けることが難しいと感じている人が多いことが分かる。

その実態を具体的に調べたのがR65の調査だ。実際に「不動産会社に入居を断られた経験があるか」を聞くと、全国では23.6%が「はい」と回答した。関東圏に限ると断られた経験がある人は27.9%にまで上がる。さらに、断られた経験の回数を聞くと、「1回」という人が半数近くになるが、「5回以上」という人も13.4%(関東では17.6%)もいた。

出典:R65「『65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題』に関する調査」より転載

出典:R65「『65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題』に関する調査」より転載

20~30代では、高齢者が賃貸住宅を借りづらい現状を知らない人のほうが多い

次に、20~30代に、こうした「65歳以上がほとんどの賃貸住宅を借りられない現状を知っているか」聞いたところ、「はい」という回答が65歳以上では64.2%だったのに対して、30代では41.4%、20代では35.6%とその差がかなりあるという結果になった。

出典:R65「『65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題』に関する調査」より転載

出典:R65「『65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題』に関する調査」より転載

こうした現状を知った20~30代は、「高齢者の受け入れはリスクが伴うのでしょうがない」53.8%(とてもそう思う16.2%+まあそう思う37.6%)と思うと回答する一方で、「年齢を理由に住まいを選択できないことはおかしい」(63.0%)、「将来のことを不安に思う」(67.8%)、「社会課題としてもっと周知されるべき」(72.7%)などの問題意識も高めている。

出典:R65「『65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題』に関する調査」より転載

出典:R65「『65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題』に関する調査」より転載

高齢者向きの賃貸住宅を探すには?

高齢者が住みやすい賃貸住宅は、貸主が入居を拒まないだけではなく、立地のアクセスのよさや段差などがないバリアフリーな建物であることが求められる。となると、部屋探しはなかなか大変だ。

公的な住宅としては、UR都市機構のUR賃貸住宅の高齢者向けの賃貸がある。また、国土交通省では、住宅確保要配慮者(高齢者や障がい者、低額所得者など)の入居を拒まない賃貸住宅(=セーフティネット住宅)を登録し、「セーフティネット住宅情報提供システム」によって物件を検索できるようにしている。しかし、数は十分ではない。

民間の不動産会社やポータルサイトなどでも、高齢者向けの賃貸住宅を探しやすいようにしている事例は多い。さらに、貸主の不安を払しょくするような仕組みを提案したり、貸主の意識を変えるように啓蒙したりという活動をしている事例もある。子ども世帯が親世帯の部屋探しを支援することによって、高齢者がこうしたサイトに出会えるようにサポートすることも大切だろう。

そうはいっても、高齢者の希望条件に合う賃貸住宅は、まだまだ少ない。これからは高齢化がさらに進み、多様性を受け入れる社会にもなっていくはずだ。それに対応した仕組みづくりや意識改革がますます求められる。部屋探しに苦労する人を、少しでも減らせるようになっていってほしいと切に願う。

「災害への備えを十分にしている」家庭はわずか1%!?激甚化する自然災害にどう備える

ジュピターテレコム(J:COM)のグループ会社であるジェイコム少額短期保険が、ミドル世代(30~40 代)の持ち家世帯を対象に「災害、生活への備えに関する実態調査」を実施したところ、災害への備えが不十分という結果が出た。あなたは大丈夫だろうか?【今週の住活トピック】
「災害生活への備えの関する実態調査」を発表/ジュピターテレコム(J:COM)

「災害への備えが十分」と思う人はわずか1.3%

近年、災害リスクが急速に高まっている。巨大地震が発生する確率は高く、豪雨や台風による浸水被害も甚大化している。これまでの予想をはるかに上回る災害に対して、備えは十分にできているだろうか?

今回の調査で「災害への備えは十分だと思うか」と聞いたところ、「そう思う」つまり備えは十分と思っている人はわずか1.3%しかいなかった。備えが不十分(「全くそう思わない」16.1%+「あまりそう思わない」38.3%)という回答が過半数を占め、「どちらともいえない」が32.1%だった。

さらに、「災害に遭った時の備え」として対策していることを複数回答で聞くと、半数前後の人が「食料、飲料、水の備蓄」や「生活必需品の備蓄」と回答した。いずれも、被災後に命が助かって生活インフラが整うまでの当面の生活のためのものだ。

災害にあった時の備えとして、実際に対策していることを教えてください(回答者 523/複数回答) (出典:J:COM「災害生活への備えの関する実態調査」より転載)

災害にあった時の備えとして、実際に対策していることを教えてください(回答者 523/複数回答)
(出典:J:COM「災害生活への備えの関する実態調査」より転載)

一方、「転倒防止などの家具の配置」や「避難経路などの確認」といった、命を守るための対策を行っているのは4人に1人程度。被災後の「生活再建のための費用」を保険や貯蓄でねん出する対策をしている人は4~5人に1人程度という結果となった。

命を守れてこそ当面使う備蓄が生かされるわけだし、万一の時に生活再建をするには多額の費用がかかる。こうした備えをするのも重要な災害対策だ。

建物の火災保険に加入している人は8割超えだが、家財は半数以下

次に、保険の加入について見ていこう。今回の調査は持ち家世帯が対象ということだが、住宅ローンを借りて家を買った場合、建物の火災保険に加入することが求められる。そのため、建物の「火災保険」への加入率は、84.3%と高くなっている。

生活再建のためには、建物に加えて家の中の家財に保険をかけることも検討したい。その場合は「家財保険」になるが、加入率は44.6%と半数に満たない。もちろん家財は貯蓄で備え、高額となる建物には保険を掛けるという人もいるだろうから、一概にはいえないが、家財保険の認知度が低いという可能性も考えられる。

(出典:J:COM「災害生活への備えの関する実態調査」より転載)

(出典:J:COM「災害生活への備えの関する実態調査」より転載)

また、「家財保険の対象に含まれるものはどれか」を聞いたところ、「テレビ」(59.7%)、「冷蔵庫」(57.9%)、「洗濯機」(54.9%)などの価格のはる家電を対象と思う人が過半数となる一方、「くつ」(19.3%)、「めがね」(17.6%)、「本」(17.4%)などの日用品などは対象にならないと思っている人が多いことが分かった。

実際は、家具や衣服などの日常生活に使用している動産はほとんど「家財」として扱われるため、くつや眼鏡、本なども家財保険の補償対象となる。

筆者の場合は、眼鏡に意外とお金をかけているので、対象になるのだと改めて認識した。ただし、保険の加入時期によっては対象とならない場合もあるようなので、いずれにせよ家財の対象の範囲については事前によく確認しておきたい。

災害への備え、どうしたらよい?

さて、災害への備えはやろうと思えばきりがないほど広範囲に及ぶ。家庭それぞれの事情に応じて、優先順位をつけるのがよいだろう。ただし、まずは命を守ることを優先してほしい。家具の固定やガラスの飛散防止など、できることから始めたい。

また、災害による損失を貯蓄で備えるのか、保険で備えるのか迷うところだ。一般的には、ライフイベントなど予想ができるものは貯蓄で、頻繁に起こらないが起きたら多額の費用が必要になるものは保険で備えるのがよいといわれている。

そういう意味では、災害の備えは保険である程度カバーしておくのがよいだろう。ただし、建物の火災保険では地震による火災は補償されないので、地震に備えるには火災保険に付帯する地震保険への加入が必要だ。また、火災保険でも補償範囲がセットになっているものもあれば、選べるものもある。これから災害が起きる可能性のある「水害」も補償されるかなど、加入する火災保険でどこまで補償されるのか、内容をきちんと確認しておくことが必要だ。

同じ水の被害でも、台風によるもの、地震後の津波によるもの、上階からの水漏れによるものなど、加入している保険によって補償対象が分かれる。保険に入ってさえいれば、すべて補償されるものではないので、上手に活用するようにしたい。

災害への備えをするには、まずはマイホームの災害リスクの程度を知ることが大切だ。そのためにはハザードマップでリスクの程度を確認したり、過去の災害の状況を確認したりしてほしい。災害に対する家庭での備えについては、首相官邸のサイトに詳しい情報があるので、こうしたものを参考にするとよいだろう。「備えあれば憂いなし」だから。

〇首相官邸:災害に対するご家庭での備え~これだけは準備しておこう!~

住宅ローン控除、中古住宅では適用条件に注意!築古物件でも控除を受ける方法とは

不動産仲介会社の業界団体である不動産流通経営協会(FRK)が公表した「中古住宅購入における住宅ローン利用等実態調査」によると、中古住宅を購入した人の多くが住宅ローンを利用し、住宅ローン控除の適用も受けているが、そのことが物件を探す際に大きな影響を与えているという。どういうことだろうか?【今週の住活トピック】
「中古住宅購入における住宅ローン利用等実態調査」結果を公表/不動産流通経営協会(FRK)

中古住宅の売れ筋は築25年以内だが、築古住宅の購入者も3~4割いる

この調査は、2018年~2020年の3年間に中古住宅を購入した、全国の20歳以上を対象に実施したもの。本調査有効サンプル数は2393件で、購入した中古住宅の内訳は、中古一戸建てが1357件、中古マンションが1036件だった。

まず、購入した中古住宅の築年数を見ていこう。
中古一戸建て(画像の青線)では、築25年以内の住宅の購入が多く、なかでも「築6年~10年以内」と「築1年~5年以内」で高くなっている。また、中古マンション(画像の赤線)も築25年以内の住宅の購入が多く、「築11年~15年以内」「築16年~20年以内」「築21年~25年以内」で高くなっている。価格が手ごろで、かつ築年の比較的新しい住宅を買った人が多いことがうかがえる。

実はFRKが注目しているのは、築古の住宅を購入した人も多いということだ。中古一戸建てでは「築21年以上」を購入した比率が43.0%、中古マンションでは「築26年以上」を購入した比率が31.0%いる。

購入した中古住宅の築年数(出典/不動産流通経営協会「中古住宅購入における住宅ローン利用等実態調査」より抜粋転載)

購入した中古住宅の築年数(出典/不動産流通経営協会「中古住宅購入における住宅ローン利用等実態調査」より抜粋転載)

FRKが、一戸建てで築21年以上、マンションで築26年以上に注目しているのは、「住宅ローン控除」の適用条件と関係しているからだ。

知っておきたい中古住宅の住宅ローン控除のポイント

住宅ローン控除についての認知度は高く、今回の調査でも認知度は91.5%(「どのような制度か具体的に知っている」49.1%+「具体的ではないが制度があることは知っている」42.3%)に達した。

住宅ローン控除についておさらいすると、年末の住宅ローンの残高の1%を10年間、所得税などから控除する制度のことだ。消費税率引き上げによる負担軽減として、8%または10%の消費税がかかる住宅では「年末の住宅ローン残高の上限を4000万円」に、10%の消費税がかかる住宅では「3年間延長(最大控除額80万円)」に、それぞれ期間限定で拡充されている。

ただし、中古住宅の多くは売主が個人なので、個人間売買では消費税が課税されないために、こうした拡充策の対象外となる。つまり、個人の売主から購入する中古住宅の場合は、従来の「年末の住宅ローン残高の上限は2000万円」となるので、その1%×10年の200万円が最大控除額となる。

ちなみに中古住宅でも、いわゆる中古再販住宅(不動産会社が買い取った中古住宅をリフォームして、売主として販売するもの)は、消費税率10%がかかるので拡充策の対象となる。

住宅ローン控除の適用条件には、住宅の耐震性も含まれる

築古住宅を購入した人も多いという今回の調査結果が注目されるのは、住宅ローン控除の適用条件に築年数が関係するからだ。住宅ローン控除の適用を受けるには、いくつかの条件がある。主な条件として、以下のようなものがある。

○購入者の条件:合計所得金額が3000万円以下
○住宅ローンの条件:返済期間10年以上
○住宅の条件(1):床面積が50m2以上(※期間限定で40m2以上に緩和、その場合、合計所得金額は1000万円以下まで)
○住宅の条件(2):耐震性を有していること

最後の住宅の条件(2)の耐震性に関して、築年数が関係することになる。中古住宅の場合は、木造(いわゆる木造の一戸建て)で築20年以内、耐火構造(いわゆる鉄筋コンクリート造りのマンション)で築25年以内という条件がある。築年数がこれを超える場合は、建築士などの検査による以下3つのいずれかの証明書が必要になる。

中古住宅の耐震性の要件(出典/国土交通省のすまい給付金サイト「住宅ローン減税制度利用の要件」より転載)

中古住宅の耐震性の要件(出典/国土交通省のすまい給付金サイト「住宅ローン減税制度利用の要件」より転載)

築古が理由で、住宅ローン控除の利用をあきらめた人は多い

次のフロー図は、中古住宅を購入した人の制度利用の状況と、その理由を示したものだ。

住宅ローンおよび住宅ローン控除の利用状況【住宅ローン控除非利用者理由】(全体像)(出典/不動産流通経営協会「中古住宅購入における住宅ローン利用等実態調査」より転載)

住宅ローンおよび住宅ローン控除の利用状況【住宅ローン控除非利用者理由】(全体像)(出典/不動産流通経営協会「中古住宅購入における住宅ローン利用等実態調査」より転載)

住宅ローンを利用した人のうち69.3%が住宅ローン控除を利用しているが、25.3%は利用していない。利用しなかった人の68.3%が、適用条件を満たす物件ではなかったことを理由に挙げた。なお、物件以外の理由としては、住宅ローン控除のメリットが少ないことなどが挙げられている。

物件が適用条件を満たさない理由として、多くの購入者は「住宅の条件」を挙げた。そのなかでも、住宅の条件(1)の床面積を挙げた人(特に首都圏の中古マンション購入者で多い)よりも、条件(2)の築年数を挙げた人のほうが多いことが分かる。

また、築年数が一戸建てで21年以上、マンションで26年以上だとしても、3つの証明書のいずれかを取得すれば適用対象になるが、69.8%と多くの人が「特に何もしていない」と回答し、築古が理由となって諦めていたことがうかがえる。

築古物件の住宅ローン控除は、耐震基準適合証明書の取得によるものが最多

しかし前述のとおり、築年数が適用条件を超える場合でも、耐震に関する証明書があれば住宅ローン控除を利用することは可能だ。住宅ローン控除を利用した人のうち、築年数要件を満たさない物件を購入した人について、次のフロー図で見てみよう。

住宅ローンおよび住宅ローン控除の利用状況【築年数に代わる要件】(全体像)(出典/不動産流通経営協会「中古住宅購入における住宅ローン利用等実態調査」より転載)

住宅ローンおよび住宅ローン控除の利用状況【築年数に代わる要件】(全体像)(出典/不動産流通経営協会「中古住宅購入における住宅ローン利用等実態調査」より転載)

住宅ローン控除を利用した人のうち、23.4%が一戸建てで築21年以上、マンションで築26年以上の住宅を購入したが、3つの証明書のうち、耐震基準適合証明書の取得によって適用条件を満たした人が最も多いことが分かる。

ただし、調査結果によると、耐震基準適合証明書を「自分で手配した」という人は50.5%と半数に過ぎない。43.2%が「もともと証明書が取れている物件だった」と回答している。また、既存住宅売買瑕疵(かし)保険とは、中古住宅の検査と保証がセットになった保険で、保険に加入するには耐震性を満たしていることが条件になる。この保険に加入することで適用条件を満たした人が次に多いのだが、「自分で手配した」のは26.3%とさらに少なくなり、「もともと保険に加入していた物件だった」という回答が73.7%に達した。

つまり、住宅ローン控除については、築年数や床面積など、広告の物件情報や不動産会社から簡単に得られる情報で判断するものの、買い主が自ら耐震基準適合証明書の取得に動いたり、瑕疵保険に加入するように動いたりして適用を受けようとする事例は極めて少なかったといえるだろう。

建築士等の検査による証明書を手配するには、時間や費用がかかるからかもしれない。しかし、マイホームとして買って長く住むのだから、少し費用や手間をかけてでも、耐震性で安心できるものを買うほうがよいだろう。また、そのためには専門知識が求められるので、こうした相談にきちんと応えてくれる不動産会社を選ぶ必要もある。

もちろん、面倒のない築年の比較的新しいものを選ぶのか、安くて希望条件に合う築古のものを買って好みにリフォームすることを選ぶのかなどは、各自それぞれで判断すればよい。ただ、知らなかったと後悔することのないように、還元効果の大きい住宅ローン控除については、正しい知識を持って検討してほしい。

コロナで強まる一戸建て志向、2人暮らしの過半数が「一戸建てで暮らしたい」。

「ファンくる」を運営するROIが、3度目の緊急事態宣言中の2021年4月26日~5月6日に、住宅事情についての意識調査を実施した。それによると、コロナの流行をきっかけに、既に引越しをした人が3%、引越しを検討中の人が15%いたという。コロナ禍での住み替え需要は根強いようだ。【今週の住活トピック】
「コロナ禍における住宅事情についての意識調査」を公表/ファンくる(株式会社ROI)

部屋数が少ないほどコロナ禍で引越しを考える!?

「コロナの流行をきっかけに引越しをしたいと思ったか」を聞いたところ、「はい」という回答は18%(引越し済み3%+検討中15%)となり、コロナ流行により住み替えニーズが生じているという結果となった。1人当たりの部屋数を居室やリビングルームをそれぞれ1室としてカウント(ダイニングルームはカウント外)して算出し、部屋数別に集計したところ、部屋数と住み替えニーズに関係性が強いことが分かった。

1人当たりの部屋数が1室の場合は、「はい」という回答は34%(引越し済み3%+検討中31%)まで増加し、部屋数が多くなるに連れて減っている。使える部屋が少ないほど、コロナの流行をきっかけに引越しをしたいと思う人が増える傾向があるということだ。

※1人あたりの部屋数に別集計したグラフ コロナの流行をきっかけに引越しをしたいと思ったか?(1人当たりの部屋数別)(出典:ファンくる「コロナ禍における住宅事情についての意識調査」より転載)

※1人あたりの部屋数に別集計したグラフ
コロナの流行をきっかけに引越しをしたいと思ったか?(1人当たりの部屋数別)(出典:ファンくる「コロナ禍における住宅事情についての意識調査」より転載)

その理由は、「コロナ禍において自宅で不便に感じていること」の結果からうかがい知ることができる。1番多かったのは「オンオフの切り替えがしづらい」だが、上位には「運動できるスペースがない」「部屋が狭い」「仕事ができる部屋がない」など、住宅のスペースに関するものが多く挙がっているからだ。

コロナ禍において、自宅で不便に感じていること(複数回答)(出典:ファンくる「コロナ禍における住宅事情についての意識調査」より転載)

コロナ禍において、自宅で不便に感じていること(複数回答)(出典:ファンくる「コロナ禍における住宅事情についての意識調査」より転載)

1人世帯・2人世帯のマンション志向に変化

コロナ禍の住宅ニーズに関する調査結果の多くが、「一戸建て志向の強まり」を指摘している。今回の調査結果では、部屋数や部屋の狭さなど自宅のスペースに不満を感じている人が多いことが分かった。となると、やはり「一戸建て志向」が強まるのだろうか?

コロナ流行前とコロナ禍で、それぞれ「一戸建てとマンションとどちらに住みたいと思うか」を聞いた結果を見てみよう。全体を比較してみると、コロナ流行前よりコロナ禍のほうが、一戸建て派が増えていることが分かる。

■一戸建て派(一戸建て+どちらかといえば一戸建て)VSマンション派(マンション+どちらかといえばマンション)
○コロナ流行前
一戸建て派56%(39%+17%)VS マンション派44%(21%+23%)
○コロナ禍
一戸建て派63%(44%+19%)VS マンション派36%(18%+18%)

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コロナ禍において、戸建てとマンションのどちらに住みたいと思うか?(世帯人数別)※コロナ流行前とコロナ禍を比較(出典:ファンくる「コロナ禍における住宅事情についての意識調査」より転載)

コロナ禍において、戸建てとマンションのどちらに住みたいと思うか?(世帯人数別)※コロナ流行前とコロナ禍を比較(出典:ファンくる「コロナ禍における住宅事情についての意識調査」より転載)

これを世帯人数別に集計してみると、実は世帯人数によって、一戸建て派とマンション派の比率が大きく変わっている。これをコロナ流行前とコロナ禍で比較してみると、いずれの世帯人数でもコロナ禍のほうが一戸建て派は増えている。

世帯人数が3人以上では一戸建て派がもともと多いのだが、コロナ禍で一戸建て派の増加割合が大きいのは、むしろ世帯人数1人や2人のほうだ。特に、2人世帯では、コロナ流行前はマンション派が55%と過半数を占めていたが、コロナ禍になると一戸建て派が増えて、マンション派は46%になっている。

一戸建てに住むなら、4割が「間取り・広さ」を重視

さて、この調査では、「一戸建てに住むとしたら、最も何を重視するか」を聞いている。ダントツで最多は「間取り・広さ」(40%)で、次いで「周辺環境」(25%)、「耐震・耐久性」(15%)、「住宅設備」(7%)の順となった。やはり、ここでも「間取り・広さ」への関心が高いことがうかがえる。

とはいえ、部屋数が多いとか、使える空間が多いといった理由だけで一戸建てを選んでいいわけではない。

そもそも一戸建てはマンションに比べて独立性が高い。そのため、建物や庭、外構、植栽のメンテナンスを自身で計画的に行う必要がある。一方、マンションは共用部分を管理組合という組織で共同で管理したり、管理組合で定めた生活のルールを守ったりする必要がある。ただし、管理会社に一部を委託することができ、セキュリティの高さなど、共有だからこその充実した設備を利用することもできる。

このように、一戸建てとマンションでは生活の仕方が異なるなどの違いもあるので、こうしたことも意識したうえで、リモートワークやおうち時間の充実を考える必要があるだろう。

コロナ禍で自宅が住みづらいと感じたとき、自宅のスペースの使い方を見直したり、リフォームで間取りを変えようと検討したりした人も多いだろう。それでも広さが不足していたり、通信環境や音の問題を解消できなかったりする場合は、住み替えを考えることになる。その場合も、10年後15年後など長期的な視点に立って、自分の暮らし方をどう変えたいかよく考えるのがよいだろう。

●取材協力
「ファンくる」

「家が暑い」は若者ほどストレスに。40代以上は「暑いのは当たり前」?

コロナ禍で在宅時間が長くなり、住宅内の暑さや寒さが気になりだした、という人も増えているのではないだろうか。ヒノキヤグループが全国の一戸建てに住む20代~40代に調査をしたところ、室内の暑さ寒さへのストレスについて、興味深い結果が出た。【今週の住活トピック】
「一戸建て住宅の室温に関するアンケート」結果を公表/ヒノキヤグループ

20代のほうが暑さ寒さへの不安や不満が強い!?

まず、画像1の結果を見てほしい。

出典/ヒノキヤグループ「一戸建て住宅の室温に関するアンケート」から転載)

出典/ヒノキヤグループ「一戸建て住宅の室温に関するアンケート」から転載

一戸建てに住む人で、「夏の暑さ」や「冬の寒さ」について、「不安・心配」と思う人、「不満・ストレス」を感じる人は、いずれもおおよそ8割いる。

この結果を年代別に見たのが、画像2だ。

出典/ヒノキヤグループ「一戸建て住宅の室温に関するアンケート」から転載)

出典/ヒノキヤグループ「一戸建て住宅の室温に関するアンケート」から転載

調査対象の20代・30代・40代で比較すると、明らかに20代が最も「不安・心配」や「不満・ストレス」を感じる比率が高く、40代が最も低いことが分かる。

この結果を、ヒノキヤグループでは「上の年代には『家の中に室温差があることは当たり前』という考えが定着していると見受けられる」と分析している。

冷暖房設備があって当たり前の世代は?

筆者は40代よりさらに上の年代だが、子どものころは家にも学校にも冷房設備がない暮らしをしていた。学校で試験を受けるのも、夏場はハンカチで汗をふきながらという状態だった。たしかに、夏は汗をかき続けるほど暑いのが当たり前だった。

この調査の上の年代といっても、40代のことだ。20代と40代でそれほど環境が変わるものだろうか。

そこで、学校の冷房設備の設置状況を調べてみた。文部科学省が公立の小学校・中学校等の2020年9月1日時点における冷房設備の設置率を調べたところ、普通教室では93.0%に達していた。夏でも冷房不要な涼しい地域があるので、かなり高い比率と言えるだろう。

3年ほど前の2017年4月では設置率が52.2%と過半数の水準だったので、近年急速に設置率が上がっている。地球温暖化の影響もあって熱中症のリスクが高まるなか、公立学校の冷房設備の設置率を高めるように誘導した結果だ。

また、約11年前の2010年10月では、普通教室の冷房設置率は19.3%だった。例えば25歳の人で考えると小学校を卒業した年は2009年だから、学校での設置率は2割以下だったということになる。20代でも、学校では冷房のない教室だった人が多いことに驚いた。

文部科学省「公立学校施設の空調(冷房)設備の設置状況について」(令和2年9月時点調査)

文部科学省「公立学校施設の空調(冷房)設備の設置状況について」(令和2年9月時点調査)

次に、内閣府の「消費動向調査」で最新の「主要耐久消費財の普及率の推移」(二人以上の世帯)から、ルームエアコンの普及率を調べてみた。思ったとおり、エアコンの普及率は次第に増加しており、最新の2021年3月では92.2%になっている。ここでは、それぞれの年代で生まれた年の普及率を見ていくことにしよう。

年代 (生まれ年)/ エアコンの普及率
●40代(1972年~1981年)/ 9.3%~41.2%
●30代(1982年~1991年)/42.2%~68.1%
●20代(1992年~2001年)/69.8%~86.2%

内閣府「消費動向調査」令和3年3月実施調査結果よりSUUMO編集部グラフ作成

内閣府「消費動向調査」令和3年3月実施調査結果よりSUUMO編集部グラフ作成

ルームエアコンの普及率では、20代と40代ではかなり開きがある。やはり、冷房のない住宅で子ども時代を過ごした人は、40代より20代のほうが少ないと見てよいのだろう。

加えて、1997年に京都で開催されたCOP3で採択された「京都議定書」で、先進国の温室効果ガスの排出量削減が定められた。これを機に、住宅の断熱性能を引き上げることが求められるようになり、住宅の省エネ性が高まったという影響もあるだろう。外気の影響を受けにくく冷暖房効率の良い住宅の普及によって、20代は子ども時代を、暑さ寒さを感じにくい住まいで過ごした人が多いのかもしれない。

暑さ寒さを感じにくい高齢者は特に注意を

さて、40代より上の世代、特に高齢者は、体温調節機能が低くなるといわれている。若い世代に比べて、汗をかきにくくなったり、夏は体内の熱を逃がしにくく冬は体内の熱を逃がしやすくなったりするからだ。また、皮膚の温度センサーが衰えて、暑さ寒さを感じづらくなる。その結果、夏は「熱中症」、冬は「ヒートショック」の危険性が高くなるので、注意が必要だ。

高齢者は、古い一戸建てに住んでいる場合も多いので、住宅は外気の影響を受けやすく、節約志向が強いので冷暖房を使わないこともある。不満やストレスを感じても、「夏は暑いもの、冬は寒いもの」という認識から、我慢してしまうとさらにリスクは高まる。

これから気温が高くなっていくので、高齢者の家族は、室温に注意したり、高齢者に冷房を使うように促したりなどして、気を配ってあげてほしいと思う。

若い世代ほど暑さ寒さへのストレスを感じやすいという結果だったが、今の10代は、家でも学校でも冷暖房設備による安定した室温の環境で過ごすことがさらに多いのだろう。彼らが大人になると今の20代よりも暑さ寒さにストレスを感じるようになるのではないかと思うと、それはそれで心配な気もする。

「密」と「カビ」を防げ!今こそ知りたい「正しい換気」

旭化成建材の快適空間研究所は、新型コロナウイルス感染拡大前と比べて、「換気」に対する意識や行動がどう変わったかを調査した。それによると、換気への関心は高まったが、適切な換気ができていない人もいるという実態が浮かび上がった。どういったことなのだろう?【今週の住活トピック】
「住宅内の空気・換気に関する意識と実態」調査結果について/旭化成建材

新型コロナウイルス感染拡大前より換気への関心は高まる

快適空間研究所の調査は、2人以上で暮らす持ち家および賃貸居住者(回答者数1752人)を対象としたもの。
感染拡大前と比較して関心が高まったかどうか聞いたところ、「室内の空気のきれいさ」(54.9%)や「室内の換気」(57.0%)について関心が高まった(「とても」と「どちらかといえば」の計)という回答が多かった。

一方、自宅の換気ができていると思うかを聞くと、「できている」という回答は49.2%とほぼ半数で、「どちらともいえない」(28.9%)、「できていない」(17.8%)、「よくわからない」(4.1%)と、換気ができていることに自信が持てない人が多いことが分かった。

では、感染拡大前後で換気に関する行動に変化はあったのだろうか?
画像1を見ると、冬場ということもあるのか、それほど大きな行動変化は見られなかった。また、いずれの場合も、「換気=定期的に窓を開ける」という行動を取る人が多いことも分かった。

出典/旭化成建材「住宅内の空気・換気に関する意識と実態」調査結果についてより転載

出典/旭化成建材「住宅内の空気・換気に関する意識と実態」調査結果についてより転載

24時間換気システムとは?利用状況は?

さて、画像1の質問の選択肢で「24時間換気システムのスイッチを入れる」というものがあるが、そもそも24時間換気システムとは何だろう?

24時間換気システムとは、「機械換気設備」によって2時間で家の中の空気がすべて入れ替わるように設置されるものだ。機械換気とは、給気ファンを動かして外気を取り込み、排気ファンから汚れた室内の空気を外に出すこと。給気も排気も機械を使うことで、強制的に換気するようになっている。

24時間換気システムが一般化した背景に、シックハウス対策として、2003年7月に建築基準法が改正されたことがある。この改正では、住宅を含むすべての建築物を新築する際に、仕上げ材を規定したり、24時間換気システムを設置したりすることが義務づけられた。

出典/国土交通省「快適で健康的な住宅で暮らすためにー改正建築基準法に基づくシックハウス対策―」パンフレットより、一戸建ての事例を抜粋転載

出典/国土交通省「快適で健康的な住宅で暮らすためにー改正建築基準法に基づくシックハウス対策―」パンフレットより、一戸建ての事例を抜粋転載

つまり、2003年7月以降に着工された住宅には、持ち家・賃貸住宅を問わず、原則として24時間換気システムが設置されていることになる。

ちなみに、筆者のマイホームは、法改正の前の2000年に建築されたものなので、24時間換気システムは設置されていない。窓や換気口を開けたり、キッチンや浴室の換気扇を動かしたりして、自分の手で換気をしている。

では、24時間換気システムは、実際にどの程度利用されているのだろうか?その結果が画像3となる。

出典/旭化成建材「住宅内の空気・換気に関する意識と実態」調査結果についてより転載

出典/旭化成建材「住宅内の空気・換気に関する意識と実態」調査結果についてより転載

築10年以内の住宅は法改正後なので、24時間換気システムが設置されていることになる。それでも、63.4%しか利用していないというのが実態だ。築11年以上の住宅でも一定の人が利用しているが、義務化前から設置している場合や、リフォーム等で新たに設置した場合などがあるのだろう。

適切に換気するには正しい知識が必要

24時間換気システムが設置されているであろう住宅なのに、利用していない人がいるのはなぜか?それは、住んでいる住宅の設備について、正しく理解していないからだ。

24時間換気が法律で義務化されていることを知っているか聞くと、築10年以内の住宅に住んでいる人でも「聞いたこともない」(36.9%)、「聞いたことはあるが意味は知らない」(11.6%)と、正しく理解できていないことが分かる。

出典/旭化成建材「住宅内の空気・換気に関する意識と実態」調査結果についてより転載

出典/旭化成建材「住宅内の空気・換気に関する意識と実態」調査結果についてより転載

画像1の結果で「24時間換気システムのスイッチを入れている」のは、感染拡大後で19.9%だった。これを、「24時間換気システムを利用している」と回答した人に限ってみると、スイッチを入れているのは62.4%まで上がるという。とはいえ、利用している人でも4割弱の人がスイッチを入れていないということは、適切な換気ができていない可能性がある。

また、「窓開け換気」について見ても、画像1の結果で「定期的に、窓を開けていた」「常に、窓を開けていた」と回答した人に、どのように窓を開けているか聞くと、「対面する壁面にある窓を2カ所以上開けている」のは32.2%、「対面・隣接する壁面にある窓を3カ所以上開けている」のは8.2%で、最も効果的に換気ができる方法を取っていたのは、合わせて40.4%だけだった。

なかには、住んでいる住宅には居室に窓が1カ所しかないとか、同じ壁面にのみ窓が2カ所あるといった理由で、分かっていてもできないという場合もあるだろう。が、いずれにしても、効果的な窓開け換気がされていない可能性が高いことも分かった。

適切に換気するための注意点

では、「適切な換気」とはどうしたらよいのだろう。ダイキンのホームページ「上手な換気の方法~住宅編~」によると、次のような方法を紹介している。

まず、「24時間換気システム」を設置している住宅の場合は、換気口を開けたうえで、常にスイッチを入れておくこと。電気代がもったいない、室内の気温が変わるといったことで、スイッチを切ってしまう人もいると聞くので、宝の持ち腐れにならないように注意したい。

次に、「窓開け換気」をする場合は、部屋の窓を2カ所開けて、部屋全体に風の流れをつくるようにすること。窓が1カ所しかなくて風の流れがつくれない、あるいは、同じ壁に2カ所なので窓を開けても部屋の壁側だけしか風が流れないという場合は、例えば扇風機を使って風の流れをつくる(ドアを開けて扇風機を窓の外に向けてかける)、キッチンの換気扇を同時に動かすといった工夫をするとよいという。

さて、コロナ禍で換気の重要性が高まっている。また、これからの梅雨時には室内の湿気も上がるので、カビの発生などを防ぐために換気が求められる。快適に暮らすには、正しい換気方法を理解して、新鮮な空気で汚れた空気を押し出すようにしよう。

日常的な掃除時間、あなたはどのくらいかけている?3割が15分以下と回答

プラネットが、消費財や暮らしにまつわるトピックスを紹介する『Fromプラネット』 の第155号として、家の掃除に関する意識調査の結果を発表した。それによると、1回当たりの掃除時間は3割が15分以下と回答するなど、短時間で済ませていることが分かった。【今週の住活トピック】
意識調査FromプラネットVol.155/「家の掃除に関する意識調査」

掃除スタイルは“定期的派”と“小まめ派”で8割近く

あなたは掃除するのが好きですか? 筆者なら迷うことなく、NOと回答する。単に掃除機をかけるだけなら苦にならないが、その前に散らばったものを片付ける作業が必要で、筆者の場合はこの片付けに時間が取られがちだ。それに、はたいたり、拭いたり、磨いたり、掃いたり…と意外にやることは多い。ちゃんとやると時間がかかるし、やらないと部屋が汚れるし。どうやって時短をするか、悩ましいところだ。

さて、調査結果によると掃除スタイルは、「定期的に掃除」が45.3%と最多で、次いで「気づいたときや時間が空いたときに小まめに掃除」の“小まめ派”が32.4%で続いた。「月1回などまとめて掃除」と「日頃は軽く済ませて、大掃除で念入りに」を合わせた“まとめて派”(7.9%)や“目をつぶる派”(9.3%)や“しない派”(5.1%)は少数だった。

掃除は定期的、あるいは小まめにする人が多いようだが、注目したいのは、子どもが小さい家庭では、“定期的派”が62.9%と突出して多くなる点だ。子どもが汚したり散らかしたりなど片付きにくいことや、安全面、衛生面などに配慮してのことだろう。

掃除スタイル(出典/FromプラネットVol.155「家の掃除に関する意識調査」より転載)

掃除スタイル(出典/FromプラネットVol.155「家の掃除に関する意識調査」より転載)

掃除時間は、年代が上がるほど長くなる

では、掃除に1回あたりどのくらい時間をかけているのだろう?その結果は、筆者が思うより短かった。

「15分以下」が30.9%、「16~30分」が45.6%。合わせて76.5%が掃除時間は30分以内という結果だ。注目したいのは、年代が上がるほど掃除時間が長くなる傾向にあることだ。年代が上がるほど、時間をかけてしっかり掃除していることがうかがえる。恐らく、小まめな掃除や軽く済ませる掃除の内容、気になるところを掃除してあとは目をつぶる場合の目のつぶり方などに、年代によって違いがあるのだろう。

日常的な掃除の所要時間(1回当たり)(出典/FromプラネットVol.155「家の掃除に関する意識調査」より転載)

日常的な掃除の所要時間(1回当たり)(出典/FromプラネットVol.155「家の掃除に関する意識調査」より転載)

水まわりは毎日掃除している人が多く、その担当は女性?

そうはいっても、場所によって掃除の頻度は変わる。毎日の調理で汚れる、キッチンのシンクまわりやコンロまわり、毎日入る浴室は「ほぼ毎日(週に5回以上)」、トイレや掃除機をかけるのは「週に1~2回」が多いという結果が出ている。一方で、掃除の頻度が低いのは、窓や網戸、ベランダ、換気扇だった。

その掃除は主に誰がしているかというと、圧倒的に女性が多い。男女別に「自分がしている」という回答を比べてみると、男女差が大きい(男性より女性が圧倒的に多く掃除をしている)のは、キッチンのシンク周り(50.8)、コンロまわり(50.5)とトイレ(44.5)。男女差が小さいのは、ベランダ(29.2)、浴室(24.7)、窓、網戸(21.5)だった。つまり、男性の家事参加が多いのは、大掃除でのベランダや窓、網戸の掃除や、日常の浴室掃除ということになる。

各場所を主に誰が掃除するか(出典/FromプラネットVol.155「家の掃除に関する意識調査」より転載)

各場所を主に誰が掃除するか(出典/FromプラネットVol.155「家の掃除に関する意識調査」より転載)

さて、東京・大阪など4都府県では4月25日から3回目の緊急事態宣言期間となり、5月12日からは愛知県・福岡県もこれに加わる見込みだ。全国的にステイホームが求められているので、ゴールデンウイークを自宅で過ごした人も多いだろう。普段は家族に掃除をまかせっぱなしの人は、ステイホームの今こそ、大掃除や模様替えだけでなく、普段から家族がどんな作業をして家を綺麗に保ってくれているのか、実践して理解するよいタイミングだろう。

在宅ワークで浮いた通勤時間はどう使う?夕方以降の生活リズムに変化

旭化成ホームズのくらしノベーション研究所が、緊急事態宣言解除後の2020年9月に、在宅ワークにおけるくらしの現状について2回目の調査を行い、「在宅ワーク・夫と妻のニーズ」として報告書をまとめた。調査の結果では、週1回以上の在宅ワーカーが約8割を占め、在宅ワークが定着しているが、特に夕方以降の生活に変化が見られるという。どう変わったのだろうか。【今週の住活トピック】
調査報告「在宅ワーク・夫と妻のニーズ」/旭化成ホームズ

在宅ワーク日は、睡眠時間が長くなり、夕食時間が早くなる傾向

くらしノベーション研究所では、新型コロナウイルスの世界的感染拡大への対策として在宅ワークが急速に普及し、暮らしが「令和在宅ワークモデル」になったことに注目している。そこで、自社設計施工の住宅に住む、夫妻どちらかが在宅ワークをしている1492人に調査を行った。

緊急事態宣言解除後、感染拡大がひと段落した9月時点の在宅ワークの頻度を聞くと、次のようになった。この調査対象では少なくとも週に1日以上在宅ワークをしている人がほぼ8割に達している。

在宅ワークの頻度(出典/旭化成ホームズ「在宅ワーク・夫と妻のニーズ」調査報告書から転載)

在宅ワークの頻度(出典/旭化成ホームズ「在宅ワーク・夫と妻のニーズ」調査報告書から転載)

在宅ワークが今後も定着していることがうかがえる結果だ。となると、生活時間は変わるのだろうか?

通勤日と在宅ワーク日を比べると、在宅ワーク日は通勤時間が不要になる。その時間はどこにいくのだろうか?まず、起床時間が遅くなり、就寝時間は早くなり、その結果として睡眠時間が長くなっている。さらに、夕食の時間が早くなっている。同研究所では、夕食以降の生活時間の変化に注目している。

在宅ワークの頻度(出典/旭化成ホームズ「在宅ワーク・夫と妻のニーズ」調査報告書から転載)

在宅ワークの頻度(出典/旭化成ホームズ「在宅ワーク・夫と妻のニーズ」調査報告書から転載)

ほとんどの在宅ワーカーは、夕食前に仕事を終えているが、なかには夕食後に再び仕事する人もいる。仕事よりも家族との時間を重視する姿勢が、次の結果からもうかがえる。

「仕事が残っていても家族の夕食に合わせる」夫:62%、妻:66%
「夕食後にも在宅ワークをすることがある」 夫:58%、妻:57%

同研究所によると「長子が幼児、小学生の場合に夫の夕食時間の早まりが大きい」という。

在宅ワークで家族と時間を共有する機会が増えた

在宅ワークしている本人に、在宅ワークによる「機会」の増減を聞くと、夫・妻ともに「家族とのコミュニケーション」が最も増えたと回答した。次いで、夫は「家族一緒の夕食」と「通信販売の利用」、妻は「調理をする機会」と「家族一緒の夕食」が増えたとの回答が多かった。夫・妻ともに、家族と時間を共有する機会を増やしていることが分かる。

また、在宅ワークによる「不安」の増減を聞くと、夫・妻ともに「光熱費増の不安」が最も増えたと回答した。在宅時間が長くなれば、家で食事をする回数も増えるし、冷暖房機器や空気清浄機、PC等の端末機器などの使用時間も長くなる。光熱費の増加で家計が圧迫されることに不安を感じる、という構図だろう。

夫と妻で異なる在宅ワークを行う場所、それぞれのメリットは?

では、在宅ワークをどこで行っているのだろう。これについては、夫と妻の差が際立つ回答となった。

夫は「個室派」が約6割を占めたのに対して、妻は「LD(リビングダイニング)派」が7割以上を占めた。LDのどこで仕事をしているかというと、妻の5割近くがダイニングテーブルを使っており、それ以外の場所では、LDKの造り付けカウンターや書斎コーナーなどが挙がった。

また、夫がLDで仕事をするのは、共働きの場合が多く、妻が通勤している、どちらも在宅ワーク(同時に在宅ワークしているとは限らない)をしている場合は、「LD派」が4~5割に増加する。これに対して、妻が非就業(専業主婦)の夫の場合は、「個室派」が7割まで増加する。恐らく、妻が不在であればLDを専用できることが影響しているのだろう。

在宅ワーク時に一番使う場所(出典/旭化成ホームズ「在宅ワーク・夫と妻のニーズ」調査報告書から転載)

在宅ワーク時に一番使う場所(出典/旭化成ホームズ「在宅ワーク・夫と妻のニーズ」調査報告書から転載)

同研究所によると、LD派は、「仕事の合間に調理や洗濯などの家事ができる」を始めとして家事関連のメリットを挙げる人が個室派より多く、個室派は、「仕事に集中できる」ことを挙げる人がLD派より多いという。また、LD派ではほかにも、「日中は部屋が明るいから」、「机が広くてPCなどを置きやすいから」といった声もあった。

在宅ワークがきっかけで夫の家事時間が増加!?

在宅ワークによる夫の家事時間の増減を聞いたところ、家事時間が増えたという回答が多かった。特に、「若年層」(長子小学生以下、子がいない場合は40代以下)のほうが、「熟年層」(同中学生、50代以上)より「増えた」という回答が多い。さらに、夫の在宅ワーク場所が「LD派」のほうが、「個室派」より「増えた」という回答が多く、生活動線の中にあるLDで仕事をするほうが、家事参加が増える傾向にあるようだ。

夫の家事時間の増減(出典/旭化成ホームズ「調査報告:在宅ワーク・夫と妻のニーズ」リリースから転載)

夫の家事時間の増減(出典/旭化成ホームズ「調査報告:在宅ワーク・夫と妻のニーズ」リリースから転載)

在宅時間の増加で飼い犬の行動にも変化!?

話が変わるが、犬の情報サイト「INUNAVI」の「コロナ禍における愛犬の体調・態度の変化」調査によると、「コロナ禍で飼い主自身が家にいる時間が増えた」という回答は69.7%。一方で、愛犬のほうはというと、食欲や排便、睡眠の変化と比べて最も「変わった」という回答が多かったのが、「普段の行動の変化」(56.3%)だった。どう変わったかというと、ぶっちぎりのトップが「甘えん坊になった」だ。

コロナ禍の在宅時間の増加で、飼い犬ですら飼い主との関係に変化があったというのだから、家族間にも変化が生じるというのは納得できる。

さて、在宅ワークが今後も定着すると見られている。最近では、在宅ワークを前提として家を建てたり、買ったりする人が増える傾向にある。在宅ワークによって、家族と時間を共有する機会が増える一方で、光熱費増加の懸念や運動不足解消の必要性なども生じる。これからの住まい選びでは、在宅ワークの経験を活かして、快適な住まいの条件をよく考えてほしい。

最大300万円の補助!「長期優良住宅化リフォーム推進事業」の募集が開始

政府は、既存の住宅の性能を引き上げるリフォームを推奨している。「長期優良住宅化リフォーム推進事業」もその一つで、最大の場合300万円になる補助金を出している。令和3年度(2021年度)の募集が始まったが、令和3年度版で追加された項目もある。注意点なども含めて、どういった事業なのか説明していこう。【今週の住活トピック】
令和3年度「長期優良住宅化リフォーム推進事業」の募集開始/国土交通省

長期優良住宅化リフォームでは、どんな工事が対象になる?

「長期優良住宅化リフォーム」とは、その名の通り、長期間にわたって高い性能を維持する住宅にリフォームすることだ。したがって、ベースになるのは、既存住宅への一定水準の劣化対策や耐震性と省エネ性の確保がなされることだ。

(出典/国土交通省「長期優良住宅化リフォーム推進事業」パンフレットより転載)

(出典/国土交通省「長期優良住宅化リフォーム推進事業」パンフレットより転載)

補助の対象になるためには、事前に「インスペクション(建物検査)」を行い、既存の住宅の状態を把握する一方、どういったリフォームを行ったかの記録(リフォーム履歴)を残し、今後どういったメンテナンスをするかの計画(維持保全計画)を作成することが求められる。

また、性能向上のリフォームだけでなく、インスペクションで指摘を受けた箇所の改修工事やバリアフリー工事、テレワークの環境整備のための工事(令和3年度追加項目)、高齢期に備えた住まいへの改修工事(令和3年度追加項目)など、いくつかの関連する工事も補助の対象になる。

さらに、性能向上のリフォームのほかにも、複数世帯が同居しやすい住宅とするためのリフォーム工事(三世代同居対応改修工事)や子育てしやすい環境整備のためのリフォーム工事(子育て世帯向け改修工事)、自然災害に対応するための改修工事(防災性の向上・レジリエンス性の向上改修工事=令和3年度追加項目)なども補助の対象になる。

(出典/国土交通省「長期優良住宅化リフォーム推進事業」チラシより転載)

(出典/国土交通省「長期優良住宅化リフォーム推進事業」チラシより転載)

引き上げる性能のレベルで変わる補助金の額

補助金の額は対象となるリフォーム工事費の1/3。ただし、リフォーム後の性能によって、補助金の限度額が変わる。
基準となるのは、国が定めた「長期優良住宅(増改築)」の認定基準に達しているかどうか。認定基準に達した場合は「認定長期優良住宅型」となり、認定基準に達したうえでさらに省エネ基準が高い場合は「高度省エネルギー型」となる。また、認定基準に達していない場合でも、劣化対策、耐震性、省エネ性が一定の水準に達した場合は「評価基準型」となる。それぞれの補助金の限度額は次の通り。

●補助限度額(戸当たり)
(1)評価基準型:    100万円 (150万円)
(2)認定長期優良住宅型:200万円 (250万円)
(3) 高度省エネルギー型:250万円 (300万円)

なお、「三世代同居対応改修工事を実施する場合」、「若者(40歳未満)や子育て世帯(18歳未満の子がいる世帯)が工事を実施する場合」、「中古住宅を購入し、売買契約後1年以内に工事を実施する場合」には、50万円が加算され、( )内の限度額になる。

個人が利用する場合は、申請タイプのうち「通年申請タイプ」になると考えられるので、上記のいずれかで申請することになるだろう。

補助金を使いたい場合は、業者選びに注意

さて、最大の注意点は、この補助金を申請できるのは、リフォーム工事の施工業者または買取再販事業者(中古住宅を買い取ってリフォームして売り出す事業者)ということだ。したがって、個人が利用する場合は、この事業の「事業者登録」をした施工業者を選ぶ必要がある。

この事業者の登録は現在受付中だが、以前の事業ですでに登録している事業者もおり、国土交通省では登録された事業者の情報を公表している。
○令和3年度 長期優良住宅化リフォーム推進事業・事業者情報の公表

求められる性能や補助金の計算方法など、施工会社でないと分からない点が多いので、まずは登録された事業者に相談してみるのがよいだろう。

コロナ禍で、在宅時間が長くなり、住まいの性能を気にする人が増えてきた。自宅に長くいるからこそ、地震による被災リスクが気になるし、省エネ性による快適さや光熱費の軽減を感じるようになる。性能向上のためのリフォームには費用がかかりがちだが、こうした補助金などでカバーする方法もあるので、リフォームを検討する際には知っておいてほしい。

○国土交通省「長期優良住宅化リフォーム推進事業」チラシ

長引くコロナ不況、知っておきたい住宅支援。ひとり親向けの「セーフティネット住宅」も充実へ?

国土交通省は、セーフティネット住宅に登録するための基準となる、ひとり親世帯向けのシェアハウスの要件を新設した。これによって、家賃が低額な住宅にひとり親世帯が入居できる選択肢が増える。どういったことか、詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
ひとり親世帯向けシェアハウスの基準を新設/国土交通省セーフティネット住宅とは、住宅を借りるのが難しい人のための住宅

新型コロナウイルスの感染拡大による雇用環境の悪化で、ひとり親世帯は失業や減収など、生活を脅かされている。特に非正規雇用のひとり親の場合、事態はより深刻だろう。住宅の確保は生活の基盤であるため、低額な家賃の住宅を借りやすくする政策が望まれる。

それに対応するのが、「セーフティネット住宅」だ。どういった住宅なのかを説明しよう。

低額所得者や高齢者、被災者、子育て世帯など、入居審査などで不利となり住宅確保が難しいと言われている人は、政策的に住宅確保要配慮者とよばれている。こうした人たちが賃貸住宅の入居を希望したときに、入居を拒まない住宅を登録しているのがセーフティネット住宅だ。ひとり親世帯(18歳未満の子ども)で一定額以下の月収の場合は、この住宅を利用できる。

セーフティネット住宅には、住宅確保要配慮者の入居を拒まない住宅とそうした人たち専用の住宅の2タイプがある。専用の住宅の場合、大家は2つの補助が受けられる。ひとつが住宅の改修費に対する補助で、もうひとつが入居者の家賃を安くするための補助だ。専用住宅は、これらの補助を受けて家賃や家賃債務保証料が設定されるので、借りる方には経済的メリットが大きい。

また、セーフティネット住宅に登録されるには、一定の広さや耐震性などを満たす必要がある。登録基準は、一戸の場合とシェアハウスの場合で異なり、これまではひとり暮らし用のシェアハウスの基準しか設けられていなかった。今回は、シェアハウスの基準に「ひとり親世帯用」の基準を新設したため、ひとり親世帯の選択肢が増えることになる。

セーフティネット住宅のマッチングや入居支援をする団体がある

セーフティネット住宅は、自身で「セーフティネット住宅情報提供システム」のサイトから探すことができる。物件の概要や写真、家賃、敷金・礼金、問い合わせ先などもこのサイトで確認できる。しかし、セーフティネット住宅の特徴は、マッチングや入居支援してくれる相談窓口もあることだ。

各地にある「居住支援法人」は、登録されたセーフティネット住宅の情報を提供するだけでなく、生活支援などの相談に応じることになっている。入居者にとっては、家賃債務保証や、見守りなどの生活支援などの幅広いサポートを受けることができるのが大きなメリットなのだ。

住宅確保要配慮者にあたる人で、賃貸住宅の入居に困難を抱えている場合にはまず、自分が住む自治体のサイトで「居住支援法人」を検索し、その中から相談窓口を見つけて相談することをお勧めしたい。

さて、新型コロナウイルスの影響で、一部の業態の雇用が喪失するといった事態も起きている。なかには、住居費の負担に困って金利の高い消費者金融から借りることを考えている人もいるかもしれない。しかし、きちんと探せば、利用できる救済措置が見つかることもある。困ったときこそ、適切な相談窓口に相談して、多くの情報を集めることが大切だ。

●登録住宅について:セーフティネット住宅情報提供システム
●住宅確保要配慮者居住支援法人について:国土交通省

東京都民が移住・二拠点居住したいエリアランキング発表!選ばれる場所のポイントは「身近さ」と「住むイメージのつきやすさ」

リクルート住まいカンパニーが「移住」「二拠点居住」に焦点を当てて、その大票田となる東京都在住者に対して、どのエリアに拠点を持ちたいかを聞いた。票を集めたエリアをランキングした結果、意外に近いエリアがトップになった。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「東京都民が移住・二拠点居住したいエリアランキング調査」を公表/リクルート住まいカンパニー【東京都】八王子・奥多摩エリア と【神奈川県】鎌倉・三浦エリアが2トップ

東京一極集中が指摘されるなか、新型コロナウイルスの影響で東京都からの転出超過が続いている。また、働き方の変革が急速に進み、テレワークを導入する企業が増えたことで、地方への「移住」や都心と地方の二地域に拠点を持って行き来する「二拠点居住」がしやすくなり、いま注目が集まっている。

リクルート住まいカンパニーの調査では、東京駅から50km以上離れたエリアを「地方」と定義して、東京都在住の20代~60代に居住したいエリアを聞き、希望する順位に応じた得点を算出して、ランキングした。その結果は次のようになった。

「移住したい」エリアランキング 上位10

「二拠点居住したい」エリアランキング 上位10

「移住したい」「二拠点居住したい」エリアランキング 上位10(出典:リクルート住まいカンパニー「東京都民が移住・二拠点居住したいエリアランキング調査」より転載)

「移住したい」「二拠点居住したい」ランキングでは、順位は異なるが、「【東京都】八王子・奥多摩エリア」 と「【神奈川県】鎌倉・三浦エリア」が1位と2位になった。いずれも首都圏のエリアだ。

3位以降は顔ぶれが少し変わり、「移住したい」ランキングでは、3位「【北海道】石狩エリア」、4位「【沖縄県】離島・諸島エリア」 、5位「【福岡県】福岡エリア」といずれも東京から離れたエリアとなった。

一方、「二拠点居住したい」ランキングでは、3位「【神奈川県】湘南エリア」、4位「【静岡県】伊豆エリア」と東京から行き来しやすい距離のエリアが続き 、5位の「【沖縄県】那覇エリア」以降に遠方のエリアが入る結果となった。移住と違って、二拠点居住のほうが東京と行き来する頻度が多くなるからだろう。

さて、移住支援などを行っている「ふるさと回帰支援センター」への窓口相談者が選んだ移住希望地ランキング(2021年3月5日公表)では、「1位:静岡県 2位:山梨県 3位:長野県」となっている。調査対象者が同センターを訪れて相談をした人なので、積極的に情報提供や窓口相談を行っている自治体が上位に挙がる傾向がある。

そのため、リクルート住まいカンパニーの調査と結果に違いはあるが、リクルート住まいカンパニーの調査でも、静岡県の伊豆エリアの人気が高いことに加え、「移住したい」ランキングで18位~20位は長野県のエリアが占め、「二拠点居住したい」ランキングで7位と18位に長野県と山梨県のエリアが入るなど、その人気ぶりがうかがえる。

都民に身近な八王子・奥多摩エリアが人気なのはなぜ?

さて、筆者は東京生まれ・東京育ちのバリバリの東京都民だ。「都民の日」の10月1日は全国どこでも学校が休みだと思っていて、大学に入学して休みじゃないことに驚いたほどだ(小中高が公立だったので休みなだけだった)。そんな筆者にとって「八王子・奥多摩エリア」は、通勤圏の範囲でもあり、遠足やキャンプに行く場所でもある。そんな身近な場所が、移住や二拠点居住の場所として上位になるのはなぜか、筆者は疑問に思った。

この疑問をSUUMO副編集長の笠松美香さんにぶつけたところ、その謎が解明された。
SUUMOでは、2019年のトレンド予測キーワードとして「デュアラー=デュアルライフ(二拠点生活)を楽しむ人」を挙げた。この際の調査で、全国を対象に二拠点居住したい場所を選んでもらったところ、おおむね6割~7割が自分の住む都道府県を挙げた。この結果を笠松さんは、「近くて愛着があり、イメージしやすい場所に二拠点目を持って行き来したいというニーズが強いのではないか」と分析したという。

また、今回の調査では、「地方移住または二拠点居住を検討している・強い関心がある」層と「関心あり」層が対象になるように調査対象者を絞っているため、なんとなくというより、具体的に移住先や二拠点目を考えてエリアを選択した人が多いという背景もある。

その結果、住むイメージがつきやすいエリア、家族が住んでいたりレジャーなどで何度も行ったりしたエリアが上位に挙がったというのだ。「八王子・奥多摩エリア」や「鎌倉・三浦エリア」、「湘南エリア」、「伊豆エリア」はまさにそうしたエリアなのだろう。

ほかにも、遠方でありながら、札幌を擁する「【北海道】 石狩エリア」や「【福岡県】 福岡エリア」などの地方の大都市や、「【沖縄県】 離島・諸島エリア」などの人気リゾートエリアが上位に入るのも理解できる結果だ。

レーダーチャートで分かる、エリアが人気な理由

さて、調査では地図を示すなどして具体的な自治体名を挙げているが、「八王子・多摩エリア」に含まれるのは「八王子市、青梅市、あきる野市、日の出町、奥多摩町、檜原村」だ。またリリースでは上位エリアのレーダーチャートを紹介している。これを見ると、そのエリアがどう見られたかがよく分かる。

「八王子・多摩エリア」では、車の移動がしやすく、住居費が安いこと、子育て環境が良いことが高く評価されている。高尾山や秋川渓谷、奥多摩湖などの豊かな自然が評価を上げる要因のようだ。都心部に行きやすい点も安心材料になっているのではないか。

【東京都】八王子・奥多摩エリア(八王子市、青梅市、あきる野市、日の出町、奥多摩町、檜原村)(出典:リクルート住まいカンパニー「東京都民が移住・二拠点居住したいエリアランキング調査」より転載)

【東京都】八王子・奥多摩エリア(八王子市、青梅市、あきる野市、日の出町、奥多摩町、檜原村)(出典:リクルート住まいカンパニー「東京都民が移住・二拠点居住したいエリアランキング調査」より転載)

一方、古都鎌倉や海のイメージが強い「鎌倉・三浦エリア」のレーダーチャートを見ると、「エリア内に賑わいがある街がある」点が特出して高い。エリアのイメージの良さや街に個性があることが人気を集めた要因だ。

【神奈川県】鎌倉・三浦エリア(鎌倉市、逗子市、横須賀市、三浦市、葉山町)(出典:リクルート住まいカンパニー「東京都民が移住・二拠点居住したいエリアランキング調査」より転載)

【神奈川県】鎌倉・三浦エリア(鎌倉市、逗子市、横須賀市、三浦市、葉山町)(出典:リクルート住まいカンパニー「東京都民が移住・二拠点居住したいエリアランキング調査」より転載)

さらに、「【沖縄県】 離島・諸島エリア」では、自然の豊かさが高く評価され、「【北海道】 石狩エリア(札幌市、江別市、千歳市、恵庭市、北広島市、石狩市、当別町、新篠津村)」では、医療施設の充実と食べ物がおいしいことなどが、「【静岡県】 伊豆エリア」では、気候の穏やかさやエリアの発展性などが、それぞれ高く評価されている。

60代の1位は「【静岡県】伊豆エリア」。リタイア後にはリゾート地が人気

次に、回答者の年代による違いを見ていこう。

20代、30代、40代、50代が「移住・二拠点居住したいエリアランキング」で1位と2位に「【東京都】八王子・奥多摩エリア」 と「【神奈川県】鎌倉・三浦エリア」を挙げたのに対して、60代では「【静岡県】伊豆エリア」、2位「【神奈川県】鎌倉・三浦エリア」、3位「【神奈川県】箱根・足柄エリア」と、静岡県・神奈川県のリゾート・温泉地が上位を占めた。リタイア後の生活を想定して選んだ場合、八王子・奥多摩ほど近くなくていいが、東京近郊でリラックスできる場所を選んだということだろう。

さて、笠松副編集長は、移住・二拠点居住の「子育て環境が良いから」ランキングにも注目していた。1位「【栃木県】宇都宮エリア」、2位「【香川県】高松エリア」など、適度に都市圏で生活と教育環境のバランスが取れている街が上位になったと言う。テレワークの普及で親たちの働く場所の自由度は広がったが、次は子どもの学ぶ場所の自由度が広がることを期待したい。

イマドキの中高年の住み替え、65歳の前後で住まい選びの条件を変えている

三井不動産リアルティが三井のリハウスを通じて、6年以内に持ち家を購入して住み替えた首都圏在住の45歳以上を対象に調査を実施したところ、65歳より前の住み替えと後の住み替えでは、住まい選びの条件が異なることが分かった。どう違うのか見ていこう。【今週の住活トピック】
「中高年層の住みかえ等に関する調査」を実施/三井のリハウス(三井不動産リアルティ)65歳以上では、家の広さをよりコンパクトに

調査対象者を住み替え時の年齢によって「45歳以上65歳未満」と「65歳以上」に分類し、「住み替え理由」を聞いて比較してみると、まず、家のサイズ感などに違いがあることが分かった。

「65歳未満」の人では最多の29.0%が「より広い家に住みたかったため」と回答した。これに対し、「65歳以上」の人では最多の24.4%が「自身の高齢化による将来に対しての不安」と回答し、次いで「子供や孫との同居または近居」(20.0%)、「バリアフリーの設備が整った住まいへの住みかえ」(19.3%)と、高齢化をより意識した理由が上位に挙がる結果となった。

住みかえの理由として当てはまるもの(複数回答)(出典:三井のリハウス「中高年層の住みかえ等に関する調査」より抜粋転載)

住みかえの理由として当てはまるもの(複数回答)(出典:三井のリハウス「中高年層の住みかえ等に関する調査」より抜粋転載)

では、実際に住み替えた物件の広さは違うのだろうか?「住み替えによる広さの変化」を聞くと、「65歳未満」では広くなった人が過半数であるのに対し、「65歳以上」では狭くなった人が過半数となった。住み替え理由の違いは、実際に購入した家の広さの違いに表れていることが分かる。

「65歳以上」で住み替える場合、住まいはよりコンパクトなものを選ぶ傾向が強まるようだ。

住みかえにより家の広さに変化はあったか?(単一回答)(出典:三井のリハウス「中高年層の住みかえ等に関する調査」より転載)

住みかえにより家の広さに変化はあったか?(単一回答)(出典:三井のリハウス「中高年層の住みかえ等に関する調査」より転載)

65歳以上では、立地選びで買い物や通院の利便性を重視

次に、住み替え先の立地について見ていこう。

さきほどの「住み替え理由」では、
・「交通利便性が高いエリアへの住み替え」65歳未満:15.2%、65歳以上:14.1%
・「生活利便性が高いエリアへの住み替え」65歳未満:13.3%、65歳以上:18.5%
と、交通アクセスや生活面での利便性向上を理由にする人が、多い結果となっている。

なお、通勤から解放されると考えられる65歳以上のほうが、交通アクセスよりも生活面の利便性をより求める傾向がうかがえる。

さて、立地に関する調査結果を見ると、住み替えによって「駅からの距離」が近くなった人はいずれも40%程度と変わらないが、65歳以上の人が近くなったとより多く回答したのは、「総合病院など大きな病院」や「商業施設」だった。

住み替えによる住環境の変化(単一回答)(出典:三井のリハウス「中高年層の住みかえ等に関する調査」より転載)

住み替えによる住環境の変化(単一回答)(出典:三井のリハウス「中高年層の住みかえ等に関する調査」より転載)

リタイアして在宅時間が長くなると、食料品や日用品を買う頻度も多くなる。こまめに買い物しやすい「商業施設」の近くを求めるというのは納得できる選択だ。また、若い時には意外に見落としがちなのが、「総合病院などの大きな病院」だ。高齢になると多くの診療科を受診することになるので、一カ所で受診できる総合病院が近くあるメリットが高まる。65歳以上(40.0%)と65歳未満(27.7%)で選択に違いがあるのはそのためだろう。

さて、45歳以上65歳未満の住み替えでは、リタイア前であったり子どもが独立前であったりして、通勤や子どもを優先しがちということも。でも、いずれは通勤から解放されたり子どもが独立したりするので、65歳以上の重視点も考慮して住まい選びをすると、シニアライフが快適になるのではないだろうか。

また、65歳以上の住み替えでは「より狭い家」を志向しているが、いずれは2人あるいは1人になることを考えて、より思い切ったダウンサイズをしてはいかがだろう。予算的にはその分だけ立地を重視できるので、コンパクトな暮らしを実践することをお勧めしたい。

【東日本大震災後10年】築21年以上の木造住宅、9割が大地震で倒壊の恐れ

東日本大震災から10年。2021年2月にも大きな余震があり、巨大地震への不安をぬぐえないでいる。そんななか、木耐協が耐震診断結果の調査データを公表した。建築基準法の耐震基準が大きく変わると、耐震診断の結果も連動して変わる結果となっている。そこで、建築基準法と耐震診断の耐震性について掘り下げたいと思う。【今週の住活トピック】
「木耐協 調査データ(2021年3月発表)」を公表/日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(木耐協)耐震診断をした木造一戸建ての9割が現行の耐震基準を満たしていない

木耐協の耐震診断の調査は、1950年~2000年5月までに着工された「木造一戸建て(在来工法・2階建て以下)」が対象となる。今回の調査データは、2006年4月~2021年2月に行われた耐震診断の結果に基づいている。

木耐協が耐震診断結果を把握している2万7929棟で見ると、現行の耐震基準を満たしているのはわずか8.5%。残りの91.5%は耐震基準を満たしていない(大地震で倒壊する可能性がある/倒壊する可能性が高い)。住宅が倒壊してしまうと、そこに暮らす人々の命を守れないことになる。

なお、調査対象の一戸建ての平均築年数は37.15年とかなり古い。耐震補強工事をする場合は、おおよそ150万円かかるという。

建築基準法の耐震基準と耐震診断の診断基準の考え方は?

ここで、建築基準法の耐震基準と耐震診断の判定方法について、整理しておこう。

まず、建築基準法は、生命や財産、健康を守るために建築物について最低の基準を定めた法律だ。地震から身を守るための基準も含まれている。耐震基準については、「1981年6月」に大幅に改訂され、それより前を「旧耐震基準」、それ以降を「新耐震基準」と呼んでいる。

木造一戸建ての耐震基準は、さらに「2000年6月」にも大きな改訂があった。つまり、2000年6月以降に建築確認申請を受け付け、着工された木造一戸建てが、現行の耐震基準で建てられた住宅とみなされる。木耐協の耐震診断の調査は、1950年~2000年5月までに着工された住宅なので、旧耐震基準の住宅と、現行より劣る新耐震基準の住宅(木耐協では「81-00木造住宅」と呼んでいる)が対象ということになる。

木造一戸建てに関わる耐震基準の改訂

(作成/SUUMO編集部)

建築基準法と耐震診断の考え方の違いについて、木耐協のリリースで詳しく説明されているので、それを紹介しよう。

まず、建築基準法では、耐震計算する際に想定する地震を次の2段階に分けている。
・大地震:建物が建っている間に遭遇するかどうかという極めてまれな地震(数百年に一度起こる震度6強クラスの地震)
・中地震:建物が建っている間に何度か遭遇する可能性のある地震(震度5強程度)

つまり、「大地震時には人命を守ること」、「中地震の場合には建物という財産を守ること」を目標とするのが、建築基準法の考え方だ。

これに対して、耐震診断では人命を守ることに重点を置き、「大地震時に倒壊しない」ための耐震性確保を目標としている。したがって、耐震診断では大地震への対応という1段階のみで考えている。

木耐協の「耐震性の評価方法」は、(一社)日本建築防災協会の一般診断法に基づいて行った耐震診断で、診断結果(評点)により次の4段階で判定している。(1)と(2)が現行の耐震性を満たしている住宅となる。
(1)倒壊しない
(2)一応倒壊しない
(3)倒壊する可能性がある
(4)倒壊する可能性が高い

81-00木造住宅も耐震診断が不可欠

さて、さきほどの耐震診断の結果を再度見てみよう。「旧耐震基準住宅」と「81-00木造住宅」に分けて見たところ、現行の耐震基準を満たすとみなされる住宅((1)と(2)の合計)は、旧耐震基準住宅では2.7%しかないが、81-00木造住宅では増加して14.1%になるものの、85.9%には倒壊のリスクがある。

※築年が1950~1980年を旧耐震住宅、1981~2000年5月を81-00木造住宅に分類

※築年が1950~1980年を旧耐震住宅、1981~2000年5月を81-00木造住宅に分類

つまり、1981年6月以降に着工した新耐震基準の木造一戸建てであっても、2000年5月までに着工したものの大半が倒壊するリスクがある、という結果だ。

政府は、地震による住宅の倒壊を防ぐために、旧耐震基準の木造一戸建ての耐震化に力を入れている。そのため、ほとんどの自治体で、耐震診断の診断員を派遣したり、耐震診断や耐震改修設計、耐震改修工事の費用の一部を助成したりする制度を用意している。特に巨大地震の可能性が高いとされる地域の自治体ほど、助成制度の内容を手厚くする傾向が見られる。

原則として、旧耐震基準住宅の現行基準への耐震化が助成の対象となるが、中には81-00木造住宅の場合でも費用を助成する自治体もある。また、「現行の耐震基準まで補強する」という改修工事の条件だと、改修工事費用の自己負担額が払えないからと工事そのものを断念する人もいるため、より低い耐震工事のレベルでも助成する自治体も一部にはある。

とはいえ、木耐協の調査データによると、81-00木造住宅でも倒壊リスクが高いため、補助金等の助成の有無にかかわらず、自宅をリフォームする際や中古一戸建てを購入する際には、ぜひ耐震診断を受けてほしい。

予算に応じた補強工事を検討して、リスクを軽減しよう

木耐協は、「予算内で可能な『減災設計』も視野に」入れることも勧めている。住宅の築年数が長くなるほど、住む人の高齢化も進むため、長期のローンを組んだりすることもできず、耐震改修工事の費用負担が大きな問題となる。であれば、予算に応じた範囲でも耐震補強をしたほうがよいというわけだ。

もちろん、耐震診断の「(1)倒壊しない」に引き上げるまで補強工事をするのが理想だが、諦めて何もしないよりは、捻出できる費用でできるだけ補強することのほうがリスク軽減になる。

例えば、耐震補強で効果が大きい工事はいくつかある。
・構造上の柱などの接合部に金物を取り付ける
・耐力壁を追加したり、筋交いなどを補強したりする
・腐朽や蟻害で弱くなった柱や土台を強化する
・土瓦の屋根を軽量なものにふき替える

すべて実施するだけの費用を負担できないとしても、建築士と相談して最も効果の高い工事を選んで実施するということも、視野に入れるとよいだろう。

また、中古一戸建てを買う場合は、耐震改修工事は住み始めてから工事することが大変になる(壁を剥がす工事が多く仮住まいが必要になるなど)ので、住む前に実施しておくのが効率的だ。まず耐震診断を受けて、これから住む住宅の耐震性を把握することがきわめて大切だ。

住宅はそこに住む人の命や財産を守る箱でもある。自治体の助成制度や耐震リフォーム減税・グリーン住宅ポイント制度などの優遇制度を利用したり、高齢者であればリバースモーゲージを利用したりと、費用負担を軽減する方法もある。東日本大震災後10年の節目に、地震に対してどう備えるのか、長い目でよく考えてほしい。

2021年の「住みたい街」、埼玉県が大躍進!コロナ禍で目覚めた地元愛?

リクルート住まいカンパニーでは、 関東圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県)に居住している20歳~49歳の7000人が回答した「SUUMO住みたい街ランキング2021 関東版」を発表した。調査時期が2021年1月のコロナ禍であるが、ランキングに変動はあったのだろうか?【今週の住活トピック】
「SUUMO住みたい街ランキング2021 関東版」を発表/リクルート住まいカンパニーコロナ禍の住みたい街ランキング2021は、「横浜」が無敵の強さを見せる

さて、2021年の住みたい街(駅)ランキングの結果は、1位「横浜」、2位「恵比寿」、3位「吉祥寺」とTOP3は4年続けて同じ顔触れとなり、安定した人気を誇る結果となった。なかでも、横浜は各世代・各ライフステージから幅広い支持を集め、得点で2位以下を大きく突き放す強さを見せた。

住みたい街(駅)総合ランキングトップ20(関東全体/3つの限定回答)(出典:リクルート住まいカンパニー)

住みたい街(駅)総合ランキングトップ20(関東全体/3つの限定回答)(出典:リクルート住まいカンパニー)

コロナ下の調査ということで、筆者はランキングに変動があるかどうか気になっていた。というのも、コロナ下では郊外の街に人気が出ているという話題が多く、郊外の街で躍進があるのではないかと思っていたからだ。

しかし、ランキング上位に大きな顔ぶれの変動はなかった。複数路線が利用できるターミナル駅が上位に並び、にぎわいや利便性の高い街が顔をそろえたという印象だ。とはいえ、今回のランキングで注目したい点もある。近年着実に順位を上げている「さいたま新都心」や20位以内に躍り出た「舞浜」、「桜木町」など、埼玉県や千葉県、神奈川県の人気の街が、ランキングを上げている点だ。前年20位以内からランキングを下げたのは、「二子玉川」と「赤羽」なので、3県の人気の街が東京都の街を抑えたわけだ。

ほかに、2020年では得点60点未満のためにランキング圏外だった街で、2021年にランキングに入った街にも注目したい。85位の「逗子・葉山」、116位の「志木」、129位の「本郷三丁目」、132位の横浜「山手」、136位の「大森」、138位の「根津」、141位の「聖蹟桜ヶ丘」、同「ふじみ野」、147位の「朝霞台」、150位の「西日暮里」、155位の「ユーカリが丘」、160位の「蒲田」、同「中央林間」、163位の「武蔵小金井」、170位の「菊名」だ。

広域での知名度がやや低くちょっと地味な印象があるが、住み心地がよい街が見直され、数多くランキングに入ってきたということだろう。ちなみに、新駅「高輪ゲートウェイ」は64位だった。

自虐で知られる埼玉県の街が、住み心地のよさで躍進の気配

前年のランキングでは、「大宮」、「浦和」、「さいたま新都心」のさいたま市中核エリアの躍進が注目された。2021年でも、さいたま市中核エリアの躍進が続いたことに加え、33位の「和光市」、34位の「川口」、44位の「所沢」が過去最高順位を記録するなど、埼玉県勢が大躍進を見せた。

SUUMO編集長・池本洋一さんがランキングの記者発表会で説明したところによると、1都4県全体や埼玉県民から「埼玉票」が集まったからだという。特に注目したいのは、これまでは自県以外に投票していた埼玉県民が、自県にこれまでより多く投票したことだ。

埼玉県民が自県に投票した比率を見ると、過去4年で最高の55.4%に達している。その一方で、東京都民が自都に投票した比率は過去4年で最低の84.0%だった。埼玉県民が自県を見直して投票したのに対して、東京都民の票は他県に流れたというわけだ。

自県から自県への投票を集計した比率(出典:リクルート住まいカンパニー)

自県から自県への投票を集計した比率(出典:リクルート住まいカンパニー)

さらに、池本さんの分析によると、「その街を魅力的だと思う」項目で、浦和やさいたま新都心、川越では「街の住民がその街のことを好きそう」が、さいたま新都心や和光市では「人からうらやましがられそう」が、上昇したが、これらの項目は埼玉県民が東京都の街を選ぶ際に上位になる項目だという。

つまり、以前は東京都の街に憧れとして感じていた魅力を自県の街に感じるようになった、といった変化が起きて、自県の街に投票したと考えられるわけだ。

地元に長く滞在し、改めて住み心地のよさを感じるなど、コロナ禍による変化という側面もあるのかもしれない。埼玉県といえば、過激な「埼玉ディスり」で話題を呼んだ映画『翔んで埼玉』が思い浮かぶ。タモリが「ダサイタマ」という表現を広めたのに始まり、筆者の好きな落語でも三遊亭円丈師匠が「悲しみは埼玉に向けて」という新作落語を作ったりと、自虐ネタで知られる埼玉だが、どうやら埼玉県民は、自県をリスペクトするようになったようだ。

コロナ禍を受けて「理想的な街」に求めるのは、医療施設の充実

また、ランキングでは「今後の注目される街」も発表され、「錦糸町(東京都墨田区)」、「聖蹟桜ヶ丘(東京都多摩市)」、元住吉(神奈川県川崎市中原区)」となった。

これらの街が上位に選ばれたのは、コロナ禍の変化が関係している。「新型コロナウイルス感染症拡大の影響によって、回答者にとっての理想的な街の条件が変化した度合い」を「とても意識するようになった」~「ほとんど意識しなくなった」の5段階評価で尋ね、「とても意識するようになった」と「やや意識するようになった」の回答率の合計で、理想的な街の条件のランキングを行ったところ、次のような結果になった。

コロナ影響による「理想的な街」への意識変化TOP10(関東全体/単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー)

コロナ影響による「理想的な街」への意識変化TOP10(関東全体/単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー)

1位は病院や診療所などの「医療施設の充実」だ。コロナ感染者が入院できずに、自宅療養を強いられた事例が多かったことなどが影響しているのだろう。次に、「一回の外出で複数の用事を済ませられる」、「歩ける範囲で日常のものはひととおり揃う」、「徒歩や自転車での移動が快適だ」など、地域の暮らしの利便性を重視する項目も上位に挙がった。一方、憧れ系の項目は下位になった。

なお、記者発表会では、俳優の磯村勇斗さんやタレントの若槻千夏さんも登壇した。緑の丸っこいSUUMOくんも応援に表れ、いつも緑のネクタイをしている池本さんに色を添えるように、ゲストの二人も緑のファッションでご登場。

埼玉県出身の若槻さんは、「大宮が目黒の上に来た」、「ランキングに埼玉の多くの街が入っている」と埼玉躍進に喜びを見せた。また、今住んでいる「渋谷」の魅力についても語った。一方、磯村さんは井の頭公園や美味しいカレー屋がある「吉祥寺」に注目し、「スーパーが近くにあるか」「落ち着けるカフェがあるか」などを住みたい街の条件にしていると語った。

また、サウナアンバサダーをしている磯村さんには、池本さんが自然豊かでグランピングもできる「飯能」をおススメしていた。

さて、2021年のランキングの結果は、前年のランキングと大きく変わったという印象はあまり受けなかった。しかし、コロナ禍というまれな事態を経験したわれわれは、間違いなく今後住む街を選ぶ際の見方を変えるだろう。これからのランキングにそれが表れるのかどうか、来年のランキングにも注目したい。

コロナ禍の2020年、自宅を売りたい人は増えたのか?売却したい理由とは?

リクルート住まいカンパニーが、2回目の緊急事態宣言が発令される直前である2020年12月に、居住用不動産の売却を検討し、情報収集や不動産会社への問い合わせ、査定依頼、売却の実施など何らかの行動を取った人にアンケートを実施した。売却を検討または実施した人の意識は、新型コロナの感染拡大でどう変わったのだろう?【今週の住活トピック】
「2020年 住まいの売却検討者&実施者調査」を公表/リクルート住まいカンパニーコロナ感染拡大で不動産の売却にどんな影響があった?

まず先に、アンケート結果のうちコロナウイルスの影響についての結論を紹介しよう。

●コロナ感染拡大によって、売却を検討するに際して、「抑制」や「促進」、「条件変更」など何らかの影響があった人は7割超に上る
●コロナ感染拡大が売却検討の「促進」になった人では、その理由に感染拡大の影響が具体的な形で見られる
●売却を検討・実施した人が、売却に際して不満に感じることは「価格の妥当性」がトップ
●コロナウイルス感染の影響を受けた2020年は、前年よりも不動産の売却を検討する人が少なかった

居住用の不動産の売却を検討する際に、どういった影響があったかを聞いたところ、「影響は特になかった」と回答したのは26.7%だった。大半の人は、後押しになったなど「促進」されたり、中止や様子見をしたなど「抑制」されたり、売却希望価格を変えたなど「条件変更」をしたりと、なんらかの影響を受けていた。

同社が2020年11月に公表した「第2回 コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査」(調査時期は2020年8~9月)で、住宅の購入や建築を検討している人に同じような質問をしている。今回のアンケートと同じ首都圏の結果を見ると、購入・建築検討者では「影響はない」という回答が41%だったことと比べると、売る側の26.7%という回答は少ない(つまり何らかの影響を受けた人が多い)という印象を受ける。

また、「抑制」や「促進」の理由を見ると、「抑制」の理由では「外部との接触を避けたい」、「不要不急だから」といった感染そのものを避ける動きもあるが、「希望する価格で売れなさそうだから」といった停滞ムードによるものもあった。さらに、「しなければいけないことが増えた」や「時間がない」など、今はそれどころではないといった様子がうかがえる回答も多い。

コロナ感染拡大が検討の「抑制」になった理由(複数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2020年 住まいの売却検討者&実施者調査」より転載)

コロナ感染拡大が検討の「抑制」になった理由(複数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2020年 住まいの売却検討者&実施者調査」より転載)

次に「促進」された理由では、「もっと住みやすい住まいに住み替えたいから」、「自分の価値観や考え方が変わったから」、「テレワークに適した環境に住み替えたいから」など、コロナ感染拡大の影響がポジティブな形で表れている。特に、感染拡大が強く懸念されるようになった2020年4月以降に検討を始めた人ほど、その傾向が強く見られる。一方で、「すぐにお金にする必要が生じたから」や「ローンの支払いが困難になったから」など、ネガティブな影響で売却を検討せざるを得なくなった人も相当数いる。感染拡大の影響はさまざまな形で表れているようだ。

コロナ感染拡大が検討の「促進」になった理由(複数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2020年 住まいの売却検討者&実施者調査」より転載)

コロナ感染拡大が検討の「促進」になった理由(複数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2020年 住まいの売却検討者&実施者調査」より転載)

不動産売却の際の不満は、価格の妥当性が分からないこと

さて、売却を抑制された人の理由で「希望する価格で売れなさそうだから」というものがあった。この背景として、実際に査定を依頼して提示された額を見て希望価格で売れなさそうと思ったのか、停滞ムードからなんとなく高く売れなさそうと感じたのかは定かではない。

とはいえ、不動産売却の際に最も不満に感じるのは、「価格」のようだ。調査結果では、「売り出し価格」と「価格査定」の妥当性に対する不満が上位に挙がった。

売却検討・実施における不満(複数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2020年 住まいの売却検討者&実施者調査」より転載)

売却検討・実施における不満(複数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2020年 住まいの売却検討者&実施者調査」より転載)

では、「価格査定」と「売り出し価格」とは、それぞれどのように決まるのだろうか。

まず、価格査定による査定額とは、多くの場合、類似物件の過去の成約事例を集めて、成約した時期の違いや物件の属性の違い(方位や駅距離など)によって価格を調整し、媒介を依頼される契約期間の3カ月以内に売れるであろうと算定された額だ。

ただし、実際に複数社に価格査定を依頼してみると、提示される額にかなりバラツキがあることも多い。これには、いくつか理由が考えられる。

まず、その店舗の得意エリアかどうかという違いがある。対象物件のあるエリアで、実際に売買を成立させた事例を多く持っていたり、購入希望者の相談を多く受けていたりすれば、そのエリアの事情に詳しくなるのでより的確な額を提示できる。次に、査定額を出す担当者の経験の違いなどから、過去の成約事例から物件の属性(広さや最寄駅からの距離、方位、築年数など)データだけを見て、算定してしまう場合もある。実際には、その地域で人気のある場所や人気のマンションだった場合は相場より高く売れるし、管理の良いマンションであれば同じ築年数でも高く売れるということがあるからだ。

また残念ながら、高い査定額を出した方が媒介を依頼されると考えて、実際の査定額よりも高い額を提示する場合もあるので注意が必要だ。

それに対して売り出し価格は、一般的には査定額と売主の希望額の間で設定されることが多い。早く売りたい事情がある場合などは、査定額に近い額で売り出す必要があるし、時間がかかっても高く売りたいと考えるなら希望額に近い額で売り出すのがよいだろう。

適切な売り出し価格でないと、見学者が表れなかったり、内見はあっても先に進まなかったりということになりかねない。つまりは、査定額が適切であること、不動産会社が適切な助言をすることが、スムーズな売却には不可欠ということだ。

そのためには、価格査定の提示額だけでなく、その額を提示した具体的な根拠を聞いたり、そのエリアの詳しい市況を聞いたりして、信頼できる不動産会社かどうかを見極める必要がある。

最後に、売却を検討する人の多さについて確認しておこう。これまでの調査結果はすべて、居住用不動産の売却を「主体的に検討した」621人が調査対象だが、調査対象者すべてに、売却を検討した月と検討を終了した月を聞いて、その間を検討月と見て分析した結果だ。

同社では「売却検討者の出現率」という表現をしているが、四半期ごとに2020年と2019年を比べると、2020年のほうが前年よりも、出現率が0.4~0.7ポイント低くなっている。つまり、コロナ下の2020年は前年よりも、売却を検討した人が少ないという傾向が見られた。

売ろうとしている人が少ないということを、市場が活性化していないと見るのか、競争相手が少ないので売りやすいと見るのかは、人それぞれだろう。筆者は、需要がそれほど縮小していない状況なので、売ろうとしている人が少ない(供給が少ない)ほうが、売るには有利ではないかと思う。

わが選択に悔いなし?賃貸と購入、一戸建てとマンション……それぞれの満足度は?

「家を買うか、買わないか?」「買うなら一戸建てか、マンションか?」といった住まいの問題。日本トレンドリサーチによると、どんな住まい方を選択した人でもその大半が後悔していないという。では、どう考えて選べばいいのだろうか。【今週の住活トピック】
「家に関するアンケート」結果を公表/日本トレンドリサーチ(運営会社NEXER)持ち家(一戸建て・マンション)、賃貸のいずれでも、大半が選んで良かったと回答

日本トレンドリサーチのアンケートの結果では、回答者の今住んでいる「家」の居住形態は次のような比率だった。

・持ち家 71.2%(一戸建て54.3%・集合住宅16.9%)
・賃貸  27.5%(一戸建て3.3%・集合住宅24.2%)

(出典:日本トレンドリサーチ「家に関するアンケート」より転載)

(出典:日本トレンドリサーチ「家に関するアンケート」より転載)

アンケート回答者では、一戸建ての持ち家が圧倒的に多いという結果だ。

また、持ち家の場合の今の家での居住年数を見ると、21年以上が半数近い48.2%を占めた。一方、賃貸の場合の賃貸住宅での合計の居住年数を見ると、こちらも21年以上が41.4%を占めた。いずれの場合も、今の居住形態を長期間継続している傾向がうかがえた。

そのうえで、「家についての現在の気持ちとして最も当てはまるもの」として、自分の選択を「良かった」と回答した人はいずれもかなり多い。特に持ち家(一戸建て)で高く94.7%に達し、持ち家(マンション)の85.9%、賃貸住宅の78.0%の順になった。

家についての現在の気持ちに最も当てはまるものとして「良かった」を選んだ割合(出典:日本トレンドリサーチ「家に関するアンケート」より転載)

家についての現在の気持ちに最も当てはまるものとして「良かった」を選んだ割合(出典:日本トレンドリサーチ「家に関するアンケート」より転載)

これは人間の心理として、自分の選択を間違っていたとは思いたくないので、自分に不都合な情報を見ないようにしたり、自分のものに高い価値を感じたりするという背景もあるだろう。21年以上もその居住形態を続けている人が多いのも、より一層こうしたバイアスをかける要因になる。

とはいえ、家という支出的に大きな問題で、自分の選択が「良かった」と思っている人が大半というのは喜ばしいことだ。

持ち家VS賃貸、一戸建てVSマンション、それぞれの違いは?

さて、大半がよかったと思っているのであれば、買うか借りるか、買うなら一戸建てかマンションか、についてはどう選択したらよいのだろう?
基本は、それぞれのメリットやデメリットを理解したうえで、自分の暮らし方に適しているのはどれかを考えることだ。

□持ち家のメリット
●資産なのでキャッシュ化できる
●先々も住む場所が確保される
●所有しているので、自分の判断でリフォームなどができる
●住宅ローン返済後は維持費だけになり、支出を抑えられる
□持ち家のデメリット
●住む場所が固定され、気軽に引越しがしづらい
●家を保有するための税金や家のメンテナンス費用がかかる
●定められた額を完済するまで返済し続けなければならない
●所有しているので、住宅の維持を自分で判断し行うことになる

持ち家と賃貸では、メリットとデメリットがそれぞれ逆転する。住まいの安定性という面では、賃貸は高齢期に借りづらい傾向があるなどで持ち家に軍配が上がるが、持ち家は簡単には引越しができないという足かせが生じる。コストの流動性では、賃貸が持ち家より高く、コストの推移という面では、現役世代には持ち家のローン返済額が重い負担となるが、リタイア後の年金暮らしには賃貸の賃料が重い負担となる。

したがって、長期的な生活設計を考慮して、買うか借りるかを選ぶのがよいだろう。なお、一般的に、持ち家は賃貸より広くて性能の高い住宅が手に入りやすいといわれており、住宅の質という面も見逃せない点だ。

一方、買う場合の一戸建てかマンションかも、それぞれにメリットとデメリットがある。

□一戸建てのメリット
●住宅の独立性が高く、自分の判断で住み方やメンテンス方法を決められる
●マンションよりも増改築の自由度が高い
●駐車場や庭などを確保しやすい
□マンションのメリット
●建物や共用の設備、庭などの管理やメンテナンスを管理会社に委託できる
●ワンフロアで段差が少ない
●セキュリティやゴミ置場、宅配ボックスなどの共用設備面が充実している

一戸建てとマンションの大きな違いは、マンションは建物や設備を共有する共同生活になるという点だ。そのために生活上のルールがあり、共用財産を適切に維持するために管理方法や修繕計画を管理組合で決めることになる。共同生活を煩わしいと思うのか、自分だけで判断しなくて済むので気が楽と思うのかなどによって、どちらが向いているか変わるだろう。

なお、コスト面で、マンションは管理費や修繕積立金を支出しなければならないデメリットがある、という人もいる。しかし、一戸建ても庭の手入れや建物や外壁の補修などを行う必要がある。そのために時間を使ったり計画的に積み立てたりしなければならないので、必ずしもデメリットには当たらないと思う。

持ち家であれ賃貸であれ、一戸建てであれマンションであれ、選択して後悔しないためには、メリットとデメリットを理解して、自分の暮らし方に応じて判断することがカギになる。メリットだけを見て選んだり、他人の意見で判断したりすることが後悔の元になる点は、どんな選択をするのにも共通のポイントだ。

長引くコロナ禍、大学生のオンライン授業も継続中。学生の部屋探しにも影響か

共立メンテナンスが寮で暮らす学生に、オンライン授業などについて調査を行った結果、前期と後期で違いがあるものの、オンライン授業は継続していることが分かった。これからの学生の住まい選びは、自宅でのオンライン授業を意識せざるを得ないようだ。【今週の住活トピック】
「コロナ禍における授業状況や生活に関するアンケート調査結果」を公表/共立メンテナンス2020年度の学生のオンライン授業の比率は、前期と後期で異なる

学生寮で暮らす大学生・専門学校生1813名に、「2020年度、自身が履修していた授業のオンライン比率」を聞いたところ、前期(2020年8月以前)では、ほぼ半数(47.4%)が「全てオンライン」と回答していたが、後期(2020年9月以降)になると、「5割未満がオンライン」が最多の32.1%、次いで「全てオンライン」が21.3%となるなど回答が分散した。後期で比率が下がっている学生が多くなっているとはいえ、オンライン授業はコロナ下で継続していることが分かる。

学生自身が履修する授業のオンライン比率(出典:共立メンテナンス「コロナ禍における授業状況や生活に関するアンケート調査結果」より転載)

学生自身が履修する授業のオンライン比率(出典:共立メンテナンス「コロナ禍における授業状況や生活に関するアンケート調査結果」より転載)

また、コロナ禍の3大不安は、「将来(就活等)」(50.5%)、「コロナ感染」(50.2%)、「友人と会えない」(49.1%)だったが、新1年生に限ってみると、「授業形態」(48.2%)と「新たな出会いがない」(32.5%)ことへの不安が高いことも分かった。

学生は、感染リスクがなくなっても3割程度のオンライン授業を期待

新型コロナウイルス感染の対策として、多くの学校で取り入れたオンライン授業ではあるが、学校サイドでも試行錯誤が続く。そのため、自校の学生にオンライン授業に関する調査を実施した学校も多い。

早稲田大学が2020年8月に実施した調査では、オンライン授業の実施割合はどのくらいが適切か聞いている。感染リスクがある場合では、オンライン授業が「7~9割」が最多の47.6%、次いで「10割」が21.0%となり、7~10割とする回答が68.6%を占めた。一方、感染リスクがなくなった場合では、「1~3割」が最多の46.9%、次いで「4~6割」が19.6%となり、1~6割が66.5%を占めた。

この数値を平均化すると、適切な実施割合は、感染症リスク下ではオンライン授業7割vs.対面授業3割、リスクがなくなった場合ではオンライン授業3割vs.対面授業7割になるという。感染リスクの程度によって適した割合は変わるものの、リスクがなくても全体の3割程度はオンライン授業を継続したいという学生の意向がうかがえる結果だ。

メリットとデメリットのあるオンライン授業、部屋探しにも考慮を

次に、国際基督教大学(ICU)が2020年5月に実施した調査結果を見ると、オンライン授業のメリットとして「通学する必要がない」、「感染症への不安が軽減される」、「オンデマンドの授業は自分のスケジュールに合わせて視聴できる」といったことが上位に挙がった。

逆にデメリットとして上位に挙がったのは、「長時間端末の画面を見るので疲れる」、「モチベーションの維持が難しい」、「クラスメートとのディスカッションがやりにくい」などだった。

ほかにも調査結果からは、自宅の通信環境を整えたり、静かな環境を確保するために、同居人や家族に静かにしてもらうなどの工夫をしている様子がうかがえた。中には部屋を借りたり引越したりした学生もいた。オンライン授業を受ける部屋の環境も大きな課題だ。

さて、コロナが収束した後も、そのメリットを活かして、一定の比率でオンライン授業が実施されると見られ、対面授業とオンライン授業の併用が当たり前になるだろう。2019年11月に学生情報センターが実施したひとり暮らしの学生に対する実態調査では、部屋を選ぶ決め手の1位は「学校の近さ」だったが、それから1年後のいま、学生の環境は大きく変わってしまった。この春に部屋探しをする学生は「学校の近さ」と「オンライン授業への配慮」を前提に選ぶことになるだろう。

昨年コロナ前に行われた調査では、学生が部屋を選ぶときの重要項目は「学校の近さ」だったが、オンライン授業が当たり前になると部屋選びの基準も変わるだろう。

学生であるからには、スタディスペースを確保するのはもちろんのこと、Wi-Fiなどの通信環境をチェックすることや、周囲の部屋からの音、外からの音などにも注意して、長時間自室にいても快適な日照や通風、建物の省エネ性なども確認するのがよいだろう。さらには、リフレッシュできる場所があるかなど、街選びも重要になる。

単に、賃料が安い部屋だからとか、イメージの良い街だからとかいったことだけで決めてしまうのではなく、長時間自宅にいてオンライン授業を受けられる環境かどうかも、冷静に見極めてほしい。

2020年度の新1年生にとっては、クラスメートと交流しづらい環境になって孤立感を感じるなど、厳しい一年になってしまった。学生らしい、クラスメートと和気あいあいする姿を取り戻せるように、一日も早い収束を願うばかりだ。

●早稲田大学 オンライン授業に関する調査結果

https://www.waseda.jp/top/news/70555

●ICU オンライン授業に関するアンケート調査結果

https://www.icu.ac.jp/news/2008151300.html

震災から10年、コロナや自然災害で家づくりへの意識は変わった?

2020年9月に、全国の住宅展示場に来場した人に対して、住宅展示場協議会が調査を実施した。「総合住宅展示場の魅力と新しい生活への対応、災害意識の変化」と題した調査報告書を見ると、在宅勤務・テレワークによる住宅計画への影響や、東日本大震災から10年を迎え、自然災害に対応する住宅への考え方の変化についても触れられている。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「総合住宅展示場来場者アンケート 2020調査報告書」を公表/住宅生産振興財団・住宅展示場協議会コロナ禍で在宅勤務・テレワークを意識した家づくりへの関心が高まる

最初の緊急事態宣言(2020年4~5月)による住宅計画の変更について聞くと、「見直したものの変更はなかった」が最多の63.8%で、着工時期や予算などを見直した人は限定的だった。次に、在宅勤務・テレワークを意識した家づくりへの関心度を聞くと、関心がある(関心+やや関心)は35.0%だったが、在宅・テレワークの実施経験別で見ると、緊急事態宣言以前から実施していた人ほど関心が高いことが分かった。

出典:住宅展示場協議会「総合住宅展示場来場者アンケート 2020調査報告書」

出典:住宅展示場協議会「総合住宅展示場来場者アンケート 2020調査報告書」

具体的に検討したい家づくりを聞くと、「仕事ができる空間・部屋」が最多の66.1%で、次いで「状況に応じて仕事部屋や子供部屋などいろいろな用途に使える部屋」(32.5%)、「電話・テレビ会議などがしやすい遮音性の高い部屋」(31.7%)が続いた。

自然災害を意識した家づくりへの関心は高く、耐震性能の高い住宅への意識も高い

さて、東日本大震災から10年が経ち、この間も地震や豪雨・台風などによる災害が頻発している。恐ろしい力を持つ自然災害を目の当たりにして、災害への意識は変わったのだろうか?

「自然災害を意識した家づくりへの関心度(関心+やや関心)」を聞くと、地震は98.7%、台風は93.8%、豪雨は93.4%といずれの災害にも高い関心を示した。なかでも、2016年の熊本地震や2017年7月の九州北部豪雨、2018年7月の西日本豪雨、2020年7月の熊本豪雨など、甚大な被害に遭った九州・四国地方での関心度が高い傾向がうかがえた。

では、自然災害を踏まえた住宅計画として、どういったことを意識しているのだろうか?
意識や導入意向が強い(非常に強い+少し強い)のスコアの高い順に上位5つをみると次のようになる。
1:住宅(建物)の選定にあたっては耐震性能重視という意識(87.0%)
2:住宅建築にあたっては、地盤調査をしっかり行いたいという意識(86.7%)
3:多少建築費(価格)がアップしても安全・安心な住宅を取得したいという意識(81.8%)
4:省エネルギー設備の導入意向(74.5%)
5:耐震性能については公的機関の証明付き住宅を、という意識(73.3%)

出典:住宅展示場協議会「総合住宅展示場来場者アンケート 2020調査報告書」

出典:住宅展示場協議会「総合住宅展示場来場者アンケート 2020調査報告書」

同協議会では、東日本大震災直後に行った同様の調査結果と比較しても、大きな変化が見られないことから「震災から約10年たった現在でも、自然災害への意識は根深く残っていることが分かる」と分析している。

さて、コロナ禍で以前よりも在宅時間が長くなっている。コロナ終息後も、テレワークやオンライン授業などがある程度は継続される、とも見られている。自然災害はいつ起こるか分からない。家にいるときに被災する可能性も高いだろう。

となると、ハザードマップなどで災害リスクの程度を把握して、多少コストがかかったとしても、安心・安全な住まいで暮らすことの重要性を考えてほしい。

コロナ禍の2020年、首都圏の中古住宅市場はどう動いた?

コロナ禍の影響を受けた2020年の住宅市場の動向が、相次いで公表されている。そこで今回は、東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が公表した、首都圏の中古住宅(マンション・一戸建て)の動向について、詳しく見ていくことにしよう。【今週の住活トピック】
「首都圏不動産流通市場の動向(2020年)」を公表/(公財)東日本不動産流通機構(東日本レインズ)東日本レインズの市場動向は、どんなデータを使っている?

まず、レインズ(REINS)とは何かについて説明しよう。「Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)」の略称で、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムのことだ。東日本を担当しているのが東日本不動産流通機構(通称東日本レインズ)だ。不動産を仲介する事業者は、このネットワークに登録された物件情報を活用して、物件の売買を仲介している。

今回東日本レインズが公表した市場動向は、首都圏の中古マンション、中古一戸建て、新築一戸建て、土地について、それぞれ成約物件と新規登録物件について分析している。
○成約物件:レインズに契約が成立したと報告された物件
○新規登録物件:レインズに新たに登録された物件

ここでは、中古住宅(マンション・一戸建て)に絞って、市場動向を見ていこう。

中古マンションは2020年に成約件数減少、成約価格上昇

コロナ禍に見舞われた2020年は、好調だった中古マンション市場にも影を落とした。首都圏では2016年を機に、新築マンションよりも中古マンションのほうが売買の件数が上回る状況が続き、中古マンションの成約件数は上昇トレンドにあったのだが、2020年は首都圏のすべてのエリアで前年を下回る結果となった。

2020年を月次で見ると、緊急事態宣言中の4月と5月の成約件数が対前年同月の5割減、4割減まで減少したことが、年間の結果に大きく影響した形だ。

一方で、中古マンションの成約物件の価格は1平米当たりの単価(首都圏平均55.17万円)でも、成約価格(首都圏平均3599万円)でも、全てのエリアで上昇となった。中古マンション市場では、人の動きが止まる緊急事態宣言中は取引が減少したものの、人の動きが戻れば取引が活発化し、価格が下がらないという構図になったようだ。

中古マンションの成約状況(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2020年)」より転載)

中古マンションの成約状況(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2020年)」より転載)

中古マンションが人気となる要因に、新築マンションの供給数減少と価格高止まりが挙げられる。中古マンションの価格帯別成約件数を見ると、最も多く成約したのは「3000万円~5000万円」の価格帯(32%)だ。また、3000万円以下の成約件数が減少するのに対して、5000万円を超える価格帯の成約件数は増えている。2020年の新築マンションの平均価格が6084万円だったことを考えると、新築マンションに手が届かない層が中古マンションに目を向けたという様子がうかがえる。

中古一戸建ては2020年に成約件数は微増、成約価格は微減

一方、2020年の中古一戸建ては、中古マンションとは異なる動きを見せた。成約件数は前年を上回り、過去最高を更新したが、成約物件の価格(首都圏平均3110万円)は前年を下回った。

中古一戸建ての成約状況(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2020年)」より転載)

中古一戸建ての成約状況(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2020年)」より転載)

この結果は、中古一戸建て市場が安定していることを映したと見るのがよいだろう。成約件数は微増、平均価格は微減といえる範囲だ。例えば、中古マンションの平均価格を8年前の2012年と比べると、8年間で44.0%も上昇しているが、中古一戸建ての平均価格は8年間で6.6%しか上昇していない。

また、コロナ禍の影響が小さかった要因に、在宅勤務の普及で仕事スペースを確保するための広さを求め、一戸建てニーズが高まっていることも挙げられる。SUUMOの「第2回コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査」の結果では、マンションか一戸建てかの選択で、一戸建て派がコロナ流行前の56%から9月時調査では61%とさらに多くなった。

中古一戸建ての成約件数を2020年の月次で見ると、緊急事態宣言中の4月と5月の成約件数が対前年同月の4割減、2割減と大きく減少し、平均価格も下落したが、10月と11月になると対前年同月の4割増、2割増と大きく伸び、平均価格も上昇トレンドに変わった。コロナ禍の一戸建て人気が押し上げたと見ることもできるだろう。

中古市場は新たに売り出される物件が激減している!?

もう一つ注目してほしいのが、新規登録件数が減少していることだ。中古マンション、中古一戸建てともに、対前年の1割減となった。新型コロナウイルス感染の影響は、買う人の需要を減らす方向よりも、売る人の意欲を奪う方向に動いたようだ。

中古マンションおよび中古一戸建ての新規登録状況(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2020年)」より転載)

中古マンションおよび中古一戸建ての新規登録状況(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2020年)」より転載)

買う側の需要が縮小していないのに、市場に新たに売り出される物件が減れば、売り出し中の在庫が減る。ただし、買う側がほしいと思える物件が市場になくなるとマッチングしなくなるので、売買が成立しづらくなる可能性も生じる。したがって、首都圏の中古住宅の市場にとってリスクとなるのは、売り出し物件が今後も減ってしまうことだろう。

在宅のまま自宅を売り出す場合、コロナ禍で人に出入りされるのはいやだという人もいるだろう。しかし、条件の良い住宅であれば、競争相手が少ない今は高く売れるチャンスでもある。市場の動向をきちんと把握したうえで、それぞれが判断してほしい。

コロナ禍で新たな「ファミリー・ルーティン」発生!住まいへの影響は?

LIXILが実施した「家族時間の変化と住まいに関する調査」の結果によると、コロナ禍で家族時間が増加し、それによって“ファミリー・ルーティン”が変化したという。新たなルーティンとはどんなものか、詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「家族時間の変化と住まいに関する調査」を実施/LIXILコロナの流行前後で家族時間が増え、帰宅後すぐの入浴も増える傾向に

LIXILの調査で、「コロナ禍で以前と比べて家族の時間は変化したか」を聞いたところ、ほぼ4人に1人に当たる23.5%が、家族の時間が増えたと回答した。増えたと答えた人に聞くと、以前より1日あたり平均約4.4時間も増えている。家族時間が増えた比率を「在宅勤務」を実施している人に限ってみると、ほぼ3人に1人に当たる32.6%にまで高くなった。

では、家族時間が増えるとどうなるのだろう?調査結果を見ると、「家で家族と食事をする回数」や「掃除をする回数」などが増える傾向が見られた。

次に、仕事をしている人に、「帰宅後に行っていることの順番」を聞き、新型コロナウイルスの流行前と流行語でどう変化したかを比較している。流行前も流行後も、1番目に行っているのは「ご飯(食事)」だが、流行前(42.6%)よりも流行後(38.1%)のほうが減っている。逆に流行後に増えたのは、「お風呂(入浴)」で、17.8%→21.2%に増加している、

「子どもとの時間」や「自分の時間」にはそれほど大きな変化はなかったので、新型コロナウイルス流行後は、食事よりも入浴を優先させる傾向がうかがえる。

帰宅後に行っていることの順番(流行前と流行後の比較:有職者のみ)(出典/LIXIL「家族時間の変化と住まいに関する調査」より転載)

帰宅後に行っていることの順番(流行前と流行後の比較:有職者のみ)(出典/LIXIL「家族時間の変化と住まいに関する調査」より転載)

半数近い家庭で「帰宅後の消毒」と「定期的な換気」がファミリー・ルーティンに

「コロナ禍で増えた新しいファミリー・ルーティン(家族での約束・習慣)」について聞くと、「帰宅したら消毒」と「定期的な換気」が半数近くに上る家庭で行われていた。ほかにも、週末のまとめ買いや帰宅後すぐの着替え・入浴、飲食のテイクアウト、ネットショッピングの活用、使用後のモノの消毒が3位から7位になり、20%を超える比率に達している。

コロナ禍で増えた新しい家族の習慣(ファミリールーティン)として行っていること(複数回答)(出典/LIXIL「家族時間の変化と住まいに関する調査」より転載)

コロナ禍で増えた新しい家族の習慣(ファミリールーティン)として行っていること(複数回答)(出典/LIXIL「家族時間の変化と住まいに関する調査」より転載)

しかも、こうした新しいファミリー・ルーティンについては89.9%、つまり9割の人が今後も続ける予定と回答している。新しいルーティンは今後も定着していきそうだ。

玄関から洗面所までの13.3歩の間で、ウイルスや菌を持ち込む?

コロナ禍で、帰宅後の手洗い・うがいは必須になっているが、この調査で、いまの住まいの玄関から洗面所までの距離を聞いたところ、平均で13.3歩の距離だったという。

ちなみに、筆者のマンションの場合、玄関から洗面所の前まで6歩、中の洗面台までなら7歩ほどで行ける。実際に測ると洗面台まではほぼ3.5mだった。13.3歩ならこの倍近くになるので、ウイルスや菌を室内に持ち込むリスクのある距離は7m前後になると考えられる。特に、マンションよりも一戸建てのほうが、玄関から洗面所までの距離が長くなる間取りが多いと思われるが、意外にリスクは高いと思った。

となると、玄関でできるだけ消毒・除菌をして、室内に持ち込まないようにするのがカギになりそうだ。

コロナ禍で防音機能のニーズが高まる

調査結果で、筆者がもう一つ注目したのが、「防音機能が付いた部屋が欲しい」という結果だ。半数近い45.9%が欲しいというのは、かなり高い比率だと思う。家族時間が増えたことや在宅勤務が増えたことで、音を遮断したいというニーズが高まっているのだ。防音性能を高めるには、リフォームや住み替えなどを視野に入れる必要がある。

防音機能が付いた部屋が欲しいか(出典/LIXIL「家族時間の変化と住まいに関する調査」より転載)

防音機能が付いた部屋が欲しいか(出典/LIXIL「家族時間の変化と住まいに関する調査」より転載)

コロナ禍で新しい生活様式が広がるにつれて、家庭それぞれのファミリー・ルーティンも変化している。そうなると、これまでは不満に感じなかった住宅の性能や間取り、設備などに不都合を感じるようになる。不都合を解消するには、模様替えなどをしてさまざまな工夫をすることも必要だが、大がかりなリフォームをしたり、別の家に住み替えたりする必要が生じることもある。

コロナがもたらした新しいファミリー・ルーティンは、住まいの新たな需要を生み出すことにもつながるようだ。

20代がこれからの住まい選びを変える?多様性を許容する柔軟な世代

積水化学住宅カンパニーの調査研究機関である住環境研究所が、ニューノーマル時代の住まい方について調査を実施した。その結果、20代が他の年代と比べて違いがあることが分かった。20代の住まい方の意識に焦点を当てて見ていこう。【今週の住活トピック】
「ニューノーマルの時代の住まい方に対する意識調査」を公表/住環境研究所コロナ禍で変わった暮らし、20代は新しい暮らし方に関心大

住環境研究所では、20~59歳の既婚男女に調査している。20代といっても、単身者ではなく既婚者であることが前提だ。また、暮らし方については次のような定義をしたうえで調査をしている。

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従来からある暮らし方

まず、新しい暮らし方いついて、「してみたい(続けたい)かどうか」聞いたところ、20代はいずれにも最も高い関心を示したという。特に他の年代と比べて関心が高かったのは、表中1の「技術的最先端の暮らし」と表中2の「職住一致」だった。

一方、従来からある暮らし方についても、最も高い関心を示したのは20代だという。特に他の年代と比べて関心が高かったのは、表中3の「エコな暮らし」と表中4の「二世帯居住」だった。

当該項目を“してみたい(続けたい)”と答えた回答者の率(%)(出典:住環境研究所「ニューノーマルの時代の住まい方に対する意識調査」)

当該項目を“してみたい(続けたい)”と答えた回答者の率(%)(出典:住環境研究所「ニューノーマルの時代の住まい方に対する意識調査」)

全体的に見ると、若い年代ほどいろいろな暮らし方への関心が高くなる傾向があり、特に20代では多様な暮らし方を受け入れやすいといってよさそうだ。

20代は田舎、郊外、都会と多様な場所での暮らしに関心大

次に、暮らしたい場所について聞いたところ、ここでも20代の多様性が目立った。表中5の「郊外暮らし」はどの年代でも高い結果が出たが、特に20代が高く、「田舎暮らし」や「都会暮らし」でも20代が最も高い結果となった。

当該項目を“してみたい(続けたい)”と答えた回答者の率(%)(出典:住環境研究所「ニューノーマルの時代の住まい方に対する意識調査」)

当該項目を“してみたい(続けたい)”と答えた回答者の率(%)(出典:住環境研究所「ニューノーマルの時代の住まい方に対する意識調査」)

同研究所では、20代が自然環境のよい「田舎」や利便性のよい「都会」にも高い関心を示しながらも、その中間に位置する「郊外」に最も関心が高くなっているのは、「様々な暮らし方に関心を抱く一方で、理想と現実のバランスを重視する側面も見ることができる」と分析している。

また、「総じて20 代が様々な暮らし方・暮らしたい場所に対し関心を持てるということは、住まい方の多様性を許容する『柔軟性』を有しているためだと考えられる」とも見ている。

ゆとり世代・Z世代の20代は、ワークバランスやプライベートを考える?

今の20代と言えば、1992年~2001年生まれ。日本では、ゆとり教育を受けた「ゆとり世代」と呼ばれる。ゆとり世代は、年功序列や終身雇用といった仕組みが崩壊しているのを目の当たりにした世代なので、就職すれば安泰といった意識が薄く、仕事よりプライベートを重視すると言われている。

また、1990年代後半から2000年生まれはZ世代と呼ばれている。1960年代から1970年代後半生まれのX世代、1980年代前半から1990年代前半生まれのY世代(ミレニアル世代とも呼ばれる)に続く世代である。

Z世代の特徴は、デジタルネイティブで、ネットワークで常につながっている世代であること。一方で、定年退職年齢が引き上げられ、長期間働き続けることが想定されているので、ワークライフバランスを考える世代でもあるという。

こうした特徴を持つ20代は、テレワークへの対応がスムーズで、働く場所をオフィスに限らない生活がイメージしやすく、新しい暮らし方に順応しやすいと考えられる。プライベートの時間も重視するので、オフィスへの通勤に便利な都会だけでなく、田舎やほどよい距離感の郊外といった立地も魅力的に見えるのだろう。さらに、贅沢をしない20代は、経済合理性から二世帯居住への関心も高く、エコな暮らしやミニマムな暮らしへの志向性も高い。

また、ネットワークで直接の知り合いだけでなく、広い世界の人ともつながれるので、多様な価値観を受け入れやすいという特性もある。若いからいろいろなことを受け入れやすいという側面もあろうが、20代の年代的な特性も影響をしていると見てよいだろう。

こうした20代が子育てステージに移行するにつれて、マイホームを取得する中心層になっている。新しい価値観や多様性を持つ世代だけに、それぞれに自分らしさを重視した暮らし方の基準を持ち、これまでとは異なる住まい選びをすることが期待される。

今20代の人たちがこれからどんなマイホーム選びをするのか、興味深く見守りたい。

2021年、住宅取得やリフォームの支援制度はどうなる?ポイントを解説

コロナ禍で日本の経済が落ち込んでいる。その回復のために、住宅の取得やリフォームを行う場合の、ポイント制度の創設や減税の拡充などの政策が公表されている。それを受けて、住宅生産団体連合会(住団連)では、その支援策を分かりやすくまとめたリーフレットを作成、同会のホームページから閲覧やダウンロードできるようにして普及に努めている。リーフレットで紹介されている支援策について紹介しよう。【今週の住活トピック】
リーフレット「「住まいづくりを応援する支援策」を掲載/住宅生産団体連合会グリーン住宅ポイント制度の創設

まず目玉となるのが、創設された「グリーン住宅ポイント制度」だ。新築住宅の建築や購入、中古住宅の購入、住宅のリフォーム工事などで、30万ポイント(1ポイント=1円相当)を基本に、最大の場合で100万ポイントまでもらえる制度だ。

制度の詳細は、すでに筆者の記事「コロナ禍で『グリーン住宅ポイント制度』を創設!気になる条件とポイントを解説」で説明しているので、こちらを参照してほしい。

かつての住宅エコポイントの違いは、さまざまな政策課題をカバーしようとしている点で、地方移住や災害リスクの高い地域からの移転、中古住宅購入時の性能向上リフォームなどを推進する内容なども盛り込まれている。どういった場合にポイントがもらえるかは、一度目を通しておいたほうがよいだろう。

住宅に関する減税制度も拡充される!

新しい制度ではないが、すでに用意されている消費税増税緩和策の減税制度が拡充される。その中で、リーフレットに掲載されている以下の3つの制度について紹介しよう。

○住宅ローン減税の控除期間を3年間延長
○すまい給付金
○贈与税の非課税枠の拡充

(1)住宅ローン減税の控除期間が13年間に

「住宅ローン減税」とは、住宅ローンの年末残高(上限4000万円※)の1%を10年間控除するもの。消費税が10%に増税された際に、住宅の工事費用や建物の取得費用(土地は非課税)が2%上がることの緩和策として、控除期間が10年だった住宅ローン減税の期間を3年間延長し、13年間にする制度が導入された。

3年間延長されるのは、A. 住宅ローンの年末残高(上限4000万円※)の1%、B.建物価格(上限4000万円※)の2%(3分割して1年ずつ控除)のいずれか小さい額が控除される。※ただし、認定住宅の場合は上限5000万円

住宅ローン減税の3年間延長については、新型コロナウイルスの感染拡大で商品の納品遅れや工事の遅れが発生したため、2020年4月の緊急経済対策として、マイホームを建築する場合は2020年9月末、新築・中古住宅の購入やリフォームの場合は2020年11月末までに契約をしたうえで、2021年12月末までに入居すれば適用が受けられるように延長されていた。

2021年度税制改正大綱では、これをさらに延長し、マイホームを建築する場合は2020年10月~2021年9月末、新築・中古住宅の購入やリフォームの場合は2020年12月~2021年11月末までに契約をしたうえで、2022年12月末までに入居すれば、控除期間13年間の適用が受けられることになる。

加えて、これまで住宅の床面積が50平米以上という条件を緩和し、合計所得が1000万円以下であれば床面積を40平米以上であれば適用されるように拡充する案も予定されている。

(2)すまい給付金
「すまい給付金」とは、新築住宅または中古再販住宅(売主が事業者でリフォームしたものを販売する中古住宅※)を取得する際に最大50万円が支給される制度。住宅ローン減税では恩恵を受けにくい、現金で住宅を取得した人や所得が低く所得税などの納税額が少ない人をカバーするものなので、所得の額などによって段階的に給付額が変わる制度となっている。
※個人が売主の中古住宅を購入する場合では、消費税が課税されないので対象外となる。
こちらはさらなる延長等がないので、2021年12月末までに入居する場合が対象となる。

(3)贈与税の非課税枠の拡充
父母や祖父母から子や孫に、住宅取得の資金として贈与した場合、一定の額までが非課税となる制度。消費税増税の緩和策として、非課税枠は2500万円または3000万円(良質な住宅の場合)に引き上げられ、契約した時期が2020年4月~2021年3月までは1000万円または1500万円、2021年4月~12月までは700万円または1200万円と、段階的に非課税枠が小さくなるようになっていた。

2021年度税制改正大綱では、2021年4月~12月までに契約した場合も、1000万円または1500万円に拡充される(ただし、2021年1月以降12月末までの贈与について)ことになる。

加えて、住宅の床面積の下限を50平米以上から40平米以上に引き下げる(贈与を受ける人の合計所得が1000万円以下の場合)という拡充案も予定されている。

断熱リフォームやZEH(Net Zero Energy House)補助金制度も

また、リーフレットには、経済対策として2020年度3次補正予算に盛り込まれている、「既存住宅における断熱リフォーム・ZEH化支援事業」による補助金も紹介している。ZEHとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略で、簡単に言えば発電や蓄電の設備を搭載した省エネ住宅のことだ。住宅の断熱性能の向上に加え、省エネ設備で消費するエネルギーを抑え、太陽光発電システムなどを使って再生可能エネルギーを創ることで、年間エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指している。

・中古一戸建ての断熱リフォーム
 120万円/戸を上限に断熱リフォーム費用の1/3を補助
・中古マンションの断熱リフォーム
 15万円/戸を上限に断熱リフォーム費用の1/3を補助
・一戸建てのZEH化(新築・改修)
 60万円/戸を補助
※その他、別途設備等への補助あり

さらに詳しい情報はリーフレットでご確認いただきたいが、拡充案については国会で予算案や税制改正案が成立する前提となっている。

さて、こうして見ていくと、2021年はポイント制度や減税、補助金等の豊富な支援制度があることが分かる。住宅購入やリフォームを考えている人にとっては、決して購入環境が悪いわけではないことは、知っておいてほしい。

どうなる2021年の住宅市場??住宅トレンドは都心か、郊外か?

コロナ禍で、静かな生活を送ることになった2020年。2021年には明るい話題に多く触れたいものだが、住宅市場は今後どうなっていくのだろう?いくつかの調査結果を確認しながら、見ていくことにしよう。【今週の住活トピック】
「第2回 生活価値観・住まいに関する意識調査」を実施/カーディフ生命コロナ禍で住まい選びに大きな変化

2020年はコロナ禍で住まい選びに大きな変化が見られた。
●おうち時間が長いから気になる、住宅の基本性能。
●コロナ禍で普及する在宅ワーク、あなたは個室派?LD派?
●駅距離よりも家の広さが欲しい?コロナ禍で変わる住まい選び
●2畳だけでも個室がほしい!コロナ禍で変わる、間取り意識
●新型コロナの影響で、お出かけ先は自宅周辺へシフト
など、筆者も何度か住まい選びの変化について記事にしてきた。

コロナ下の「在宅時間の長期化」と「在宅勤務の普及」が大きな影響を与え、住まい選びが変化しているが、住宅の広さや部屋数へのニーズ、自宅周辺の環境を重視する傾向が強まり、「郊外志向」の増加も指摘されている。

テレワークの頻度によって、郊外か都心かが変わる?

では、2021年は、郊外に人気が集中するのだろうか?カーディフ生命が実施した「第2回 生活価値観・住まいに関する意識調査」で分かりやすい結果が出ている。

住宅未購入者全体の住宅購入意向率は35%だったが、テレワーク経験者に限ってみると52%とかなり高くなった。また、購入したい場所は郊外か都心かを聞くと、住宅購入意向者のうち約54%が「郊外派」で、「都心派」は約46%だった。

一方、テレワーク経験者で見ると、テレワークの頻度によって違いがあり、テレワークの頻度が高い「半分以上テレワーク」は「郊外派」が、「テレワーク半分未満」は「都心派」が多いという結果になった。

テレワーク経験者の住宅検討場所(住宅購入意向者)(出典/カーディフ生命「第2回 生活価値観・住まいに関する意識調査」より転載)

テレワーク経験者の住宅検討場所(住宅購入意向者)(出典/カーディフ生命「第2回 生活価値観・住まいに関する意識調査」より転載)

逆に言えば、通勤する頻度が高いほど都心を志向し、通勤頻度が低いほど郊外を志向する傾向が見られるといってよいのだろう。

また、郊外志向の高まりは、戸建ての住宅市場には追い風となるだろう。

矢野経済研究所が12月16日にリリースした「戸建て住宅市場に関する調査を実施(2020年)」によると、「従前からの職場や都心へのアクセスの良さといった利便性に対するニーズはある一方、リモートワークの普及による在宅時間の長期化から、広さや快適性を求めるために郊外へ戸建て住宅を求めるニーズも増加しており、特にハウスビルダーが供給する建売住宅は値ごろ感とも相俟って販売増加につながっているなどの傾向もみられる。」と分析している。

新築マンションの供給は都市部に多い?

一方、新築マンションの販売動向では、相変わらず都市部への供給が続くと見られている。

不動産経済研究所が12月21日に公表した「首都圏・近畿圏マンション市場予測2021年」を確認しよう。
2021年の新築マンションの供給戸数は、首都圏で3万2000戸、近畿圏で1万8000戸と予測している。2020年はコロナ禍で供給が減ったが、2021年は奈良県を除く全エリアで前年を上回り、コロナ前の2019年並みに回復すると見ている。

エリアについては、首都圏では「引き続き都区部の大規模案件が市場をけん引、近郊エリアも注目タワーが始動」、近畿圏では「大阪市部の超高層物件は2021年も継続の見通し」などと、都市部のタワーマンションの供給が続くとしている。

一方、新築マンションの価格については、2020年(1~11月)の平均価格は、首都圏で6254万円(95.9万円/平米)、近畿圏で4249万円(69.8万円/平米)だった。いずれも2019年の首都圏5980万円(87.9万円/平米)・近畿圏3866万円(68.0万円/平米)を上回る結果となった。

コロナ下で一時的に住宅市場が縮小したが、2021年は従来通り好調維持か?

筆者は、2020年上半期の住宅市場について「緊急事態宣言の発令前~解除後、首都圏の住宅市況はどう動いた?」という記事を書いた。この記事では、新型コロナウイルスの感染が拡大し、緊急事態宣言が出された3・4・5月については、住宅の営業を停止した事業者も多かったことから、住宅市場は一時的に大きく縮小したが、6月以降回復基調にあると分析した。

7月以降の東日本不動産流通機構の中古マンションや中古戸建てのデータ(2020年7~11月)を見ると、成約件数は元に戻り、特に10月でいずれも大幅に上昇、成約平均価格も上昇をしている。一方で、新規に売り出される物件数は以前より少ないことから、市場の在庫戸数が減少している。つまり、新築マンションの供給数が減っていた影響もあって、中古住宅市場はこれまで好調に推移していると言えるだろう。

また、コロナ禍による地価への影響については、ホテルやオフィスなどの商業地で大きく下がっているものの、住宅地の下がり方はそれほど大きくはない。住宅購入の意欲も、新しいニーズが発生したこともあって、減退しているわけではない。

こうしたことから、総じて2021年の住宅市場に出回る戸数や価格などに大きな変動はなく、従来通りの傾向が続くと見てよいだろう。

ただし、これまでも二極化が指摘されており、全ての住宅に需要があるのではなく、特長のある住宅に人気が集まる傾向は続くだろう。通勤をする人たちは都心部へのアクセスがよいなど利便性がよい住宅を求め、テレワークが業務の多くを占める人たちは住環境がよく、わが街が充実している、手ごろな価格と広さの郊外の住宅を求めるなど、それぞれに住みやすい条件がそろう住宅が好まれるだろう。

さらに、「住宅ローン減税」が継続され、新たに「グリーン住宅ポイント制度」が設けられるなど、政府は住宅取得を促進する政策をとっている。住宅ローンの金利も低金利が続くと予測される。住宅を購入する環境は整っているので、住み替えを検討している人は不安視せず、自分たちが暮らしやすい住宅を探すとよいだろう。

コロナ禍で「グリーン住宅ポイント制度」を創設!気になる条件とポイントを解説

令和2年度3次補正予算案が閣議決定したのを受けて、国土交通省は、新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ経済の回復を図るため、一定の省エネ性能のある住宅などに対して、「グリーン住宅ポイント制度」の創設を決めた。今まさに、住宅の取得やリフォームを検討している人には、見逃せない制度になるだろう。【今週の住活トピック】
「グリーン住宅ポイント制度」を創設/国土交通省住宅の取得は30万、リフォームは上限30万が基本の「グリーン住宅ポイント制度」

コロナ禍で落ち込んだ経済の回復を目的に、かつて申し込みが殺到した「住宅エコポイント」や、消費税増税緩和策だった「次世代住宅ポイント制度」のような、ポイント制度が創設されることになった。

受け取れるポイント(1ポイント=1円相当)は、マイホームの新築、購入の場合で30万ポイント、住宅のリフォーム(貸家を含む)の場合で上限30万ポイントがベースとなり、特定の条件を満たす場合に上限が引き上げられる。

では、どんな条件を満たせばポイントが受け取れるのか?

まず、契約(売買契約または工事請負契約)の時期に関して、次のような条件がある。
○補正予算案が閣議決定した12月15日以降2021年10月31日までに契約を締結する

次に、住宅については、一定の省エネ性能を有するなどの条件がある。ただし、新築住宅か、中古住宅か、リフォームかで条件は異なる。

○新築住宅(建築または購入)
(1)省エネ基準に適合する住宅 30万ポイント
ただし、「東京圏から移住するための住宅※」「18歳未満の子ども3人以上の世帯が取得する住宅」「三世代同居仕様である住宅」「災害リスクが高い区域から移住するための住宅」のいずれかの場合は、「特例」として30万ポイント加算される(計60万ポイント)。

(2)高い省エネ基準に適合する住宅 40万ポイント
長期優良住宅や低炭素住宅などの認定住宅やZEHなどの高い省エネ性能を有する場合は、基本が40万ポイントになり、(1)に記載した4つの特例のいずれかに該当する場合は60万ポイント加算される(計100万ポイント)。

○中古住宅
(1)空き家バンク登録住宅 30万ポイント
(2)東京圏から移住するための住宅※ 30万ポイント
(3)災害リスクが高い区域から移住するための住宅 30万ポイント
(4)住宅の除却に伴い購入する中古住宅 15万ポイント
なお、(1)~(3)で住宅の除却を伴う場合は計45万ポイントになる。

※東京圏からの移住とは、一定期間、東京23区内に居住、または東京圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県※一部地域を除く)に居住して東京23区内に通勤している人が、東京圏外に移住することをいう

○住宅のリフォーム
断熱改修かエコ設備の設置のいずれかは必須工事。これに併せて耐震改修やバリアフリー改修を行う場合はポイントの対象となり、工事部位ごとに決められたポイント(0.2~15万ポイント)が設定され、該当するごとに加算される仕組み。上限は1戸当たり30万ポイントまで。ただし、加算したポイントの合計が5万ポイント未満の場合は制度の対象外。

また、この加算ポイントは、中古住宅を購入してリフォーム(売買契約から3カ月以内にリフォーム工事請負契約を締結)をする場合は、ポイントがそれぞれ2倍でカウントされる。

なお、次の場合は、特例として上限が45万ポイントまで引き上げられる。
(特例1)若者・子育て世帯がリフォームを行う場合
(中古住宅を購入してリフォームを行う場合は、さらに60万ポイントまで引き上げ)
(特例2)若者・子育て世帯以外の世帯が、「安心R住宅」を購入してリフォームを行う場合

新築住宅と中古住宅については、自ら居住する「持ち家」に限られるが、住宅のリフォームについては「貸家」も対象になる。一方、賃貸住宅を新築する場合は、一定の条件を満たせば1戸当たり10万ポイントが与えられる。

与えられたポイントは、これから公募で選定される商品と交換できる。加えて、ワークスペースの設置工事や防音工事、菌・ウイルス拡散防止工事などの「新たな日常」に資する追加工事、防災に資する追加工事の代金に充当することもできる。

既存の住宅の性能向上や移住促進、「新たな日常」リフォームを促進する効果も?

さて、ポイント制度の内容を見ていくと条件がかなりバラバラという印象を受ける。これは、政府がどういった住宅を後押ししたいのかが強く影響しているからだ。

国際的に関心の高い省エネについて、住宅の省エネ化を推進したいということが第一。耐震性や断熱性の低い住宅のリフォーム、特に中古住宅を購入して入居する際のリフォームによって、性能を引き上げたいということが第二。さらに、空き家対策や地方移住などの課題に加え、甚大化する災害対策として災害リスクの高い地域からの移住も促進したい狙いだ。

加えて、コロナ禍でテレワークが普及したり在宅時間が長期化したりして、住まいに対するニーズが変化したが、そうした新しいニーズに対応する工事の代金にポイントを充当可能とすることで、促進したいと考えているわけだ。

こういった背景から、適用されるそれぞれの条件には細かいルールがある。ポイントをもらいたいのであれば、詳しいルールを確認する必要があるだろう。一方で、ポイントをもらうために、必要のないリフォームをしたり、希望条件を変更したりといったことをすべきかどうかは、よく考えた方がよいだろう。あくまで、自分が希望する条件に合致するならポイントを利用しよう、というスタンスがよいと思う。

さて、「グリーン住宅ポイント制度」は、これからの国会で予算案が成立することが前提になる。まだ正式に制度が認められる前ではあるが、今のうちから情報を収集して検討しておこう。とはいえ、国土交通省はさまざまな施策をしている。グリーン住宅ポイント制度には、「省エネ基準」「三世代同居仕様」「空き家バンク」「安心R住宅」など、一般の方には耳慣れない専門用語も多く見られる。

分からないことがあれば、住宅を分譲や仲介する不動産会社、建築やリフォームをする施工会社などに相談して、どういったことを言っているのか、具体的にどんな条件があるのか、詳しく説明を聞くのがおススメだ。逆に、こうしたことを説明できない不動産会社や施工会社であれば、信頼できるかどうかを見直す要因になるだろう。

ニーズ急増の宅配ボックス、築何年のマンションから当たり前に?

大和ライフネクストが管理する分譲マンションについて、同社のマンションみらい価値研究所が宅配ボックスの設置率などを調査し、レポートにまとめた。一定の築年数以下であればほぼ設置されている、という境目があるという。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
分譲マンションの宅配ボックス設置率および設置検討の事例を調査/大和ライフネクスト マンションみらい価値研究所ネットで買い物するなら、宅配ボックスは必須アイテム?

コロナ禍で外出自粛や在宅勤務などが続き、家にいる時間が長くなっている。その影響で、ネットショッピングが増加していると聞く。「長く家にいるので買った荷物を受け取れる」と思う人もいるだろうが、「時間を気にしなくて済むので宅配ボックスは便利」とか「対面で受け取りたくないので宅配ボックスを利用したい」と思う人もいるだろう。

リクルート住まいカンパニーが実施した「第2回 コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査」で、「コロナ拡大による住宅に求める条件の変化」として、「宅配ボックス・置配ボックスを設置したくなった」という選択肢を設けたところ、首都圏で20%、関西で18%、東海で22%がYESと回答した。約2割の人が、コロナ拡大で宅配ボックスなどへのニーズを高めているわけだ。

これからマンション購入を検討しようという人で、宅配ボックスの有無を条件に挙げる人も多いだろう。では、分譲マンションに宅配ボックスはどの程度設置されているのだろう?

築20年以下のマンションなら、宅配ボックスが設定されている

マンションみらい価値研究所の調査結果によると、同社が管理するマンション3921件のうち、全体の70.8%に宅配ボックスが設置されていた。

さらに築年数別の設置率を見ると、「築20年以下」のマンションであれば、99%以上に宅配ボックスが設置されていた。「築21年以上25年以下」では78.9%の設置率なので、ある程度期待できそうだが、26年以上になると設置率はがくんと低くなる。この結果から「2000年以降に分譲されたマンションでは標準設備として宅配ボックスが設置されている」といえるとしている。

築年数別宅配ボックス設置率(出典:大和ライフネクスト マンションみらい価値研究所「分譲マンションの宅配ボックス設置率および設置検討の事例について」)

築年数別宅配ボックス設置率(出典:大和ライフネクスト マンションみらい価値研究所「分譲マンションの宅配ボックス設置率および設置検討の事例について」)

後付けでマンションに宅配ボックスを設置できる?

では、後から宅配ボックスを設置することはできるのだろうか?

同社が管理するマンションで宅配ボックスが設置されているのは70.8%だが、内訳は、新築時から設置されていたのは68.3%(2677件)、後付けで管理組合が設置したのは2.5%(98件)だった。同社のレポートでは、管理組合が宅配ボックス新設を総会の議案とした事例(112件)を集めて、分析している。98件は総会で宅配ボックスの新設が可決されたが、14件は否決または継続審議となっていたという。

レポートでは、総会で可決に至らなかった理由を調査し、いくつかの課題を浮き彫りにしている。最も大きいのは「設置費用」の問題だ。長期修繕計画は、劣化部分を改修することが中心になるので、通常は新たに設置する設備などの費用は盛り込まれない。それでなくても修繕積立金が不足しがちだ。それでも宅配ボックスの設置費用に充てるのかなど、費用をどうするかは大きな課題となるだろう。

ほかに、いつも在宅しているので荷物を受け取れると反対する人が多かったり、事前にアンケートなどで意向を確かめていないなどの総会運営上の問題も。また、設置場所が適切かという、マンションのスペース上の問題もある。

「マンションの高齢化と宅配ボックスの設置議案の否決は無関係ではないだろう」とレポートでは分析している。高齢者は在宅時間が長いことや、宅配ボックスから自分の住戸まで荷物を運べないなど、宅配ボックスの便利さより不便さを感じることがあるからだ。

逆にいうと、管理組合が費用と設置場所などの問題をクリアし、宅配ボックスのメリットなどを周知して事前に意向を確認するなど、適切な総会の運用をすれば、後付けで設置できる道があるということだ。

国土交通省もマンションの宅配ボックス設置を促進

さて、国土交通省では、宅配ボックスの設置によって再配達が減少することから、配送業界の働き手不足やCO2排出削減などの目的で、宅配ボックスの設置を推進している。

マンションのような共同住宅は、建築基準法の容積率の規制を受ける。ただし、エントランスと共用廊下が一体となっているような場合で共用廊下に宅配ボックスを設置する際には、容積率規制の対象外とするなどの考え方を明確にして、設置しやすくする工夫もしている。

<まとめの文>
ところで、筆者が住んでいる分譲マンションにも、宅配ボックスはあるが、宅配ボックスがあれば必ず利用できる、というわけでもない。

年末年始やゴールデンウイークなど不在する人が多い時期には、すぐに受け取れない人もいるので、宅配ボックスの空きが少ないということが起きる。特に、大型のボックスは数が少ないので、誰かの荷物で埋まっていると次の人が利用できないということになる。

うちのマンションでは、一定期間、宅配ボックスの荷物が引き取られないと、管理員が該当のお宅に声がけをするようにしている。

さて、宅配ボックスの適切な運用方法を検討するのも、管理組合の役割だ。今後、マンションの高経年化が進めば、ますますマンションの課題が増えていくと予測される。管理組合が円滑に活動しているかどうかは、マンション選びにも、重要な指標になるだろう。

どうなる、これからのマンション価格?コロナ禍でも住宅購入は抑制より促進?

リクルート住まいカンパニーは、緊急事態宣言下の5月に引き続き、8月~9月(8/24~9/11)にかけて実施した、首都圏・関西・東海と一部の政令指定都市に在住する、住宅購入・建築やリフォームを検討している人たちに調査した結果を公表した。8/24~9/11という調査時期は、第3波が訪れたいま振り返れば、第2波が収まりつつあった時期に当たるのだが、調査結果にどんな違いがあったのだろう?【今週の住活トピック】
第2回「コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査」を公表/リクルート住まいカンパニー第2波後も在宅勤務の影響で、住まい探しは促進傾向?

緊急事態宣言下で行われた同社の第1回の調査結果については、SUUMOジャーナル「駅距離よりも家の広さが欲しい?コロナ禍で変わる住まい選び」で詳しく紹介している。第2回の調査結果を見ると、第1回と同じような傾向が見られる。具体的に見ていこう。

「コロナの拡大によって住まい探しにどういった影響が出たか?」について、以下のように分類したところ、全体として第1回の調査結果より「抑制された」という割合が減っている。

○影響はない
○抑制された
・モデルルーム・モデルハウス・住宅展示場・不動産店舗・実物物件を見に行くことをやめた
・検討を休止した、いったん様子見にした
・検討を中止した
○促進された
・住まい探し始めのきっかけになった
・住まい探しの後押しになった
・契約の後押しになった

コロナ拡大の住まい探しへの影響(特定の項目に回答した人のみ/単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「第2回 コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査」より転載)

コロナ拡大の住まい探しへの影響(特定の項目に回答した人のみ/単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「第2回 コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査」より転載)

ただし、この結果には地域差も見られ、関西では「抑制」のほうが「促進」より多いが、東海ではイーブンに、首都圏では「促進」のほうが「抑制」より多くなるという結果になった。

これは、在宅勤務などの影響が見て取れる。「テレワークの実施率」を見ると、全国的に緊急事態宣言中に大きく上昇し、7~8月末になると減少しているが、それでも首都圏では62%と依然として実施率は高い。

【緊急事態宣言中と7~8月末のテレワークの実施率】
首都圏:72% → 62%
関西 :53% → 47%
東海 :51% → 41%

その影響もあってだろうが、「住まいの検討のきっかけ」(複数回答)を聞くと、首都圏では「在宅勤務になった/増えた」(5月調査では「在宅勤務になった」)が急増して、最多のきっかけ要因になった。結婚や子どもの誕生などのライフステージの変化に加えて、特に首都圏で、テレワークが住まいを検討する大きなきっかけになっている。

住まいの検討のきっかけ(複数回答)※上位3つを抜粋(出典:リクルート住まいカンパニー「第2回 コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査」より抜粋転載)

住まいの検討のきっかけ(複数回答)※上位3つを抜粋(出典:リクルート住まいカンパニー「第2回 コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査」より抜粋転載)

コロナ下では「在宅時間の長期化」と「在宅勤務の継続」の影響大

住宅に求める条件は、住み替えを考えるきっかけによっても変わる。今回の調査結果を見ると、(1)在宅時間が長くなったこと、(2)在宅でのテレワークが続いていること、が住宅の条件にも影響していることがうかがえる。

※:今回調査から選択肢に追加した項目(前回調査では選択肢に含まれず) コロナ拡大による住宅に求める条件の変化(複数回答)※上位10を抜粋(出典:リクルート住まいカンパニー「第2回 コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査」より抜粋転載)

※:今回調査から選択肢に追加した項目(前回調査では選択肢に含まれず)
コロナ拡大による住宅に求める条件の変化(複数回答)※上位10を抜粋(出典:リクルート住まいカンパニー「第2回 コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査」より抜粋転載)

コロナ下では換気が求められるので、「換気性能」や「通風」などが上位に挙がる。加えて、従来も重視されてきたが、「日当たり」「省エネ性」「遮音性」などの機能や「宅配ボックスなど」の設備は、在宅勤務や会食の自粛などで在宅時間が長くなったことも影響しているだろう。また、特に首都圏では、在宅勤務でニーズが高まる「仕事専用スペース」「通信環境」が、1・2位を占め、在宅勤務による影響の大きさがうかがえる。

どうなる?住宅市場の動向は?価格は?

では、これからの住宅市場はどうなっていくのだろう?

住宅購入・建築やリフォームについては、大半の検討者が「影響なし」と回答しており、「抑制された」比率は前回調査より下がっている。首都圏では、むしろ「促進された」比率のほうが多いという状況を見ると、住宅市場は比較的安定していると見てよいだろう。

例えば、東日本不動産流通機構が公表している首都圏の中古マンションや中古一戸建ての取引データを見ると、4・5月こそ一時的に売買の成約件数が大きく落ち込んでいるが、以降は回復しているし、成約した価格については、コロナ下でも大きな下落もなく、いまのところ安定している。

次に、研究機関の予測を見てみよう。

東京23区のマンション価格と賃料の中期予測/2020下期(出典:日本不動産研究所)

東京23区のマンション価格と賃料の中期予測/2020下期(出典:日本不動産研究所)

一般財団法人日本不動産研究所が公表した「東京23区のマンション価格と賃料の中期予測/2020下期」を見ると、東京23区の新築マンションの価格と賃料は、2020年~2025年までほぼ横ばいで推移すると予測している。新築マンションの価格については、新型コロナによるマクロ経済の停滞の影響は小さいと見ており、2020年に新築マンションの供給が減少しているが、主な購入層の経済余力は減少していないため、価格は下がらないという見立てだ。

こうしたことから、住宅市場に限れば新型コロナによる影響はあまり大きくないので、当面は価格も大きな変動はないと見てよさそうだ。住宅購入はライフステージの変化や今の住まいに対する不満などがきっかけになる。もしいま住み替えたいと思ったのであれば、コロナの影響に左右されることなく、冷静に判断するとよいだろう。

○日本不動産研究所/「東京23区のマンション価格と賃料の中期予測/2020下期」

コロナ禍で仕事も暮らしも丸ごとデザインし直す“クラシゴト改革“が進む

コロナ禍で生活者にさまざまな行動変容が起きた。住宅にかかわる行動変容を調べていくと、「住まいの選び方」と「働き方」がまさに表裏一体と感じることが多い。そんななか、リクルートホールディングスが、「Afterコロナの”働く”と”住む”の関係性」をテーマにした、オンラインによる「コレカラ会議(第3回)」を開催した。どんな変化が起きるというのか、紹介しよう。【今週の住活トピック】
「コレカラ会議」第3回を開催/リクルートホールディングス「コレカラ会議」とは何ぞや?

例年、リクルートホールディングスでは、その年の「トレンド予測」を発表していた。SUUMOジャーナルでも、これまで度々記事として紹介してきた。しかし、世界中がコロナの真っただ中にいるなか、例年とは違う形でトレンドを予測しようとしている。

事務局の説明によると「今までの『社会における良い兆し』の発信から、一段進化して『日本の未来を“良い未来につなげる兆し”』の発信へとシフトする」のだという。すでに、仕事と教育の関係性をテーマにした第1回、婚活、仕事、進学の関係性をテーマにした第2回が開催されている。

そして第3回は、筆者の専門領域である「住まい」と、コロナ禍で表裏一体だと強く認識された「仕事」の関係性からafterコロナの“良い未来につなげる兆し”を発信する、オンラインセミナーが12月2日に開催された。

暮らし方も変わり、働く人も変わる「クラシゴト改革」が起きる

リクルート住まいカンパニー『SUUMO』編集長の池本洋一さんと、リクルートキャリアHR統括編集長の藤井薫さんによる発信の内容を整理すると、次のようになる。

まず、コロナ禍で、「働き方」が変化した。自由に「テレワーク」ができるようになったり、副業を認める企業が増えたりした。特に、テレワークは多くの人に肯定的に受け止められ、今後も何らかの形で継続すると予測される。

そうなると、勤務先に通勤するという前提が薄れるので、通勤重視で選んだ今の家に住み続ける必然性がなくなり、住む場所の選択肢が広がってくる。また、通勤時間が無くなったことで新たな時間が生まれ、その時間を、自分がやりたかったことに使えるという状況も生まれた。
まとめると、テレワークがキッカケとなり、「仕事や暮らしの自由度・裁量度」が増すという変化につながったと発表された。

第3回「コレカラ会議」の様子(撮影:リクルート住まいカンパニー広報)

第3回「コレカラ会議」の様子(撮影:リクルート住まいカンパニー広報)

藤井さんによると、コロナ禍において、自分の人生・キャリアを見つめ直した人も生まれた。人生とは何か、自分にとって幸せとは何かを見つめ直した結果、自分のやりたい暮らしを実現するために、仕事選びにおいても時間の自由度やテレワーク・副業の裁量度などが重視されるようになっている。

こうしたことから、with コロナ・afterコロナに加速すると予測されるのは、画像2のように「暮らし方」と「働き方」もともに変える「クラシゴト改革」を行う人が増えることだとしている。

第3回「コレカラ会議」資料より転載

第3回「コレカラ会議」資料より転載

「クラシゴト改革」を先取りする人も多数出現?

実は、すでにこれを先取りして、暮らし方も働き方も変えてしまった人がいるという。池本さんは7人の実践者を紹介した。

●テレワークとフレックス制を利用して、都内とワーケーションの暮らしを実現
(20代後半、独身男性の事例)
コロナ前は、IT関連会社に通勤勤務。コロナの影響でフルテレワークに変わり、誰にも会わない生活に。そこで鎌倉の実家に戻って、朝夕は趣味のサーフィンを満喫する生活に変える。都内の自宅に戻ってからも、小田原などでワーケーションしながら、サーフィンを続ける。勤務先が試験的に、自宅以外の場所でのテレワークを認めたことが大きかった。

●副業に加えてテレワークが可能になり、多拠点居住の生活を実現
(20代後半、妻と二人暮らしの男性の事例)
コロナ前は、民間気象会社に通勤勤務。副業を認めてもらい、フォトグラファーの仕事も週末にしていた。コロナの影響でテレワークが可能になり、多拠点居住を開始。平日も朝夕はフォトグラファーの仕事ができるようになり、土日は撮影に加えてさまざまな場所に行き、感性を磨けるようにもなった。多拠点居住では、住まいの定額制サービス「HafH」を利用するなど、住居費の抑制に工夫をしている。

第3回「コレカラ会議」資料より転載

第3回「コレカラ会議」資料より転載

ほかにも、テレワークが可能な会社に転職して、東京で子育てをしながら、地域おこしのふるさと副業に参画した人の事例、フルテレワークになって生まれた時間を、地元の飲食店支援などのコミュニティ活動を行った人の事例などが紹介された。

藤井さんからは、働き方を変革する企業の事例紹介があり、時間と場所の自由裁量が広がると、仕事やキャリアを変える人が出てきて、生き方そのものを丸ごとデザインし直す人が増えていくとまとめた。

最後に、オンライン会議では質疑応答の時間もあり、「これまで言われてきた“働き方改革”と今回の“クラシゴト改革”とは、根本的にどこが違うのか?」という質問があった。

それに対して、藤井さんは「働き方改革は会社の中が前提で、暮らしは関与していませんでした。新しい価値を創出する場が、生活者の体験に広がっていったという点が大きな違いでしょう」と、池本さんは「今回取材した方々は、自らがこうした暮らし方をしたいと会社に働きかけて実現していました。主権が移動したというと言いすぎかもしれませんが、会社側でなく自らが自己裁量権を拡大させているという点が違いだと思います」と回答した。

さて、筆者が見る限り、「コロナ禍でさまざまな行動変容が生じている」ことを示す調査結果は多い。テレワークを急速に導入した企業もあり、「仕事は勤務先に通勤して行う」という、これまでの常識が打ち破られる事態が起きた。この影響は大きく、自宅で仕事をする場所を確保するようになったり、通勤時間が無くなって生まれた時間を活用しようと考えるようになったりして、どこにどんな家に住むかを考え直す人も増えてきた。

加えて、コロナ禍で働き方改革が加速された。柔軟な働き方を可能にする企業が好まれるようになり、企業に勤務して安定した収入を得ながらも、働く場所や住む場所を変えようという人も出てきた。加えて、住まいの定額制などの新しいサービスが利用できるようになったり、都心の生活者を受け入れようとする地方自治体や企業があったりして、やりたいことが実現できる環境が整ってきた。

こう見ていくと、コロナによってできなくなったこともある一方で、新たに実現できるようになったこともある。これを機会に自分らしい生き方を考え直すのもよいと思う。