コロナ影響で民泊の廃止届出が増加!?民泊はどうなっていくのか?

コロナ禍で外国からの観光客が激減している。国内の外出自粛もあって、観光地やビジネス街の宿泊施設は打撃を受けた。一方で、GOTOトラベルで国内の観光客が戻りつつある。そんななか、観光庁が民泊についてある調査をした。その調査結果は……。【今週の住活トピック】
「住宅宿泊事業の廃止理由調査について」を公表/観光庁コロナ禍でも民泊の届け出は継続しているが、廃止届も増加

2018年6月15日に住宅宿泊事業法(いわゆる「民泊新法」)が施行されて以降、住宅宿泊事業者は届け出をすれば、民泊を行えるようになった。では、現状はどうなっているのだろうか?

住宅宿泊事業届出の現状を見る(画像1)と、2020年10月7日時点の届出件数(赤線)は2万7484件。法施行日の約12.4倍にまでになった。コロナ禍においても、民泊を営業する旨の届け出が継続してなされていることが分かる。

その一方で、事業の廃止件数(青線)は新型コロナウイルスの感染拡大のころから増加している。その結果、届出住宅数(緑線)は4月10日の調査数をピークに減少傾向にある。2020年10月7日時点で事業廃止件数は7292件に達し、届出住宅数は2万192件となった。

住宅宿泊事業届出住宅数等推移(出典:観光庁「民泊制度ポータルサイト」より転載)

住宅宿泊事業届出住宅数等推移(出典:観光庁「民泊制度ポータルサイト」より転載)

新型コロナウイルスの影響で「収益が見込めない」が最多

住宅宿泊事業の廃止件数が増加していることを受けて、観光庁では、事業の廃止理由について調査を行った。その結果を見る(画像2)と、廃止の理由で最も多かったのは「収益が見込めないため」の49.1%で、前年調査の7.2%と比べると、大幅に増加したことが分かる。

廃止理由の中でも「新型コロナウイルス関連」(赤色)で見ると、「収益が見込めないため」が最多で、この回答の94.4%を占めるほどだ。

住宅宿泊事業廃止の理由 ※複数回答あり(出典:観光庁「住宅宿泊事業の廃止理由調査」より転載)

住宅宿泊事業廃止の理由 ※複数回答あり(出典:観光庁「住宅宿泊事業の廃止理由調査」より転載)

収益が見込めない理由は、やはり宿泊客の減少だろう。観光客の減少に加え、出張の抑制なども影響して、開店休業状態になったところも多いことだろう。「事業は完全に廃業」の回答が増えていることからも、収益が見込めずに完全に撤退する構図が浮かび上がる。

一方で、何らかの形で事業を継続しようという動きもうかがえる。「旅館業または特区民泊へ転用するため」と「他の用途へ転用するため」に注目したい。

「旅館業または特区民泊へ転用するため」については、これまでは廃止の最大理由だった。今回は、前年と比べると比率は大きく減っているが、実数としては2番目に多いことから、相応の動きがあると見てよいだろう。また、「他の用途へ転用するため」の回答は、今回はコロナの影響もあって増えている。民泊新法による民泊ではなく、特区民泊や旅館業、その他の業態で何らかの事業を継続しようという動きが見て取れる。

一部に業態を変えて事業を継続する動きも?

ここで、民泊について確認しておこう。そもそも「民泊」は、「旅館業」や「特区民泊」とどう違うのだろうか。

民泊新法が施行される前は、旅館業法上の「簡易宿所」の許可を得るか、国家戦略特区で認められた自治体の民泊の条例に則る(いわゆる特区民泊)か、という選択肢しかなかった。旅館業法では宿泊者の安全確保のためなどの建築上の制限が厳しく、一般的な住宅ではハードルが高いうえに、特区民泊も該当する自治体が限られるため、違法に民泊を行う事業者が多かった。

一般的な住宅でも民泊をやりやすいようにと生み出されたのが「民泊新法」だ。ただし、旅館業や賃貸業を脅かさないようにと、年間180日を超える営業はできないという制限が付いた。宿泊客が見込める場合は、この「180日規制」が収益にはマイナスに影響してくる。

住宅を改修することなどで旅館業法が適用されるようになれば、365日営業ができるようになる。特区民泊も自治体ごとの条例に従う必要があるが、365日営業が可能だ。このために、これまでは旅館業や特区民泊への転換を図るために、民泊新法による民泊の廃止届を出す事例が多かった。コロナ禍においても、GOTOトラベルなどで観光客が戻ってきた地域であれば、いつでも営業できるようにしたいと転換に動いたことが推測できる。

かたや、コロナ禍で生活様式が著しく変化した。テレワークが急速に広がり、オフィス以外の場所で仕事をしたり、通勤せざるを得ない業種の働き手が自宅以外で寝泊まりしたりといった事例も見られた。こうした変化のなかで、民泊用の住宅をコワーキングスペースにしたり、家具付きのマンスリー賃貸にしたりといった、業態を転換する動きもあると考えられる。

調査結果の事業廃止は、あくまで民泊新法による民泊を廃止する届け出だ。コロナ禍で、事業自体を完全に止めた場合が多いだろうが、何らかの形で事業を継続しようという事例もあるのだろう。

せっかく日本に根付いた民泊ビジネスなので、日本らしいおもてなしの場として育ってほしいと思うが、新型コロナウイルスの影響で収益が見込めなくなるのは残念でならない。知恵を絞って、何とか頑張ってもらいたいものだ。

住宅展示場の見学予約数が増加!?住宅展示場の賢い活用法

ファジー・アド・オフィスが企画・運営を行う総合住宅展示場「ハウジングステージ」の見学予約申込数で見ると、7月~9月の住宅展示場の見学予約件数が前年同期間で増加しているという。コロナ禍でも、住宅展示場で見学をしようという人が増えているのは、なぜなのだろうか。【今週の住活トピック】
「コロナ禍での住まいづくりに関する意識・実態調査」を公表/ファジー・アド・オフィスコロナ禍の生活の変化で住まいに新しいニーズ

同社の総合住宅展示場の見学予約申込数の場合で見ると、2020年7月~9月の件数が前年同期間とを比較して約4倍にも増えたという。2019年7月~9月という期間は、10月からの消費税増税の直前で駆け込み需要が落ち着いたころに当たるなど住宅を取り巻く環境は大きく異なっているため、単純に比較することはできないが、それでも増加したという点は注目だ。

その理由を考えてみよう。同社が「コロナ禍での住まいづくりに関する意識・実態調査」を実施したところ、外出を控えるようになった(83.2%)り、日常生活における衛生意識が高まった(60.6%)りしている。

また、コロナ禍での働き方の変化については、調査対象が総合住宅展示場「ハウジングステージ」に来場して会員登録をした人に限定される(有効回答327件)が、「自宅でのテレワークが増えた」(男性41.1%、女性21.6%)、「オンラインでの会議が増えた」(男性42.1%、女性13.4%)と回答し、特に男性で在宅ワークが増える変化が目立った。

出典:総合住宅展示場ハウジングステージ「コロナ禍での住まいづくりに関する意識・実態調査」

出典:総合住宅展示場ハウジングステージ「コロナ禍での住まいづくりに関する意識・実態調査」

それを受けて、「家族との時間や在宅勤務について考えるうえで、今後の住まいや暮らしに欲しくなったもの」を聞くと、「(家族がそれぞれの時間を過ごせる)広いリビング」は男性44.2%、女性49.6%と男女ともに多い回答となった。一方で、男性では「(在宅勤務のための)自分専用の個室や間仕切りされたスペース」(52.6%)が、女性では「(外出しなくても)遊べる広い庭・屋上・バルコニー」(52.2%)がそれぞれ最多となった。

37.1%の女性が現在働いていないと回答していることから、働き方の変化による影響が大きい男性で個室ニーズが高まり、女性では在宅家族の時間を充実させる住宅の屋外空間への関心が高まったといえるだろう。

出典:総合住宅展示場ハウジングステージ「コロナ禍での住まいづくりに関する意識・実態調査」

出典:総合住宅展示場ハウジングステージ「コロナ禍での住まいづくりに関する意識・実態調査」

こうして見てきたように、新型コロナの影響による暮らし方の変化が、新たな住宅ニーズを生んで住み替えなどを検討するようになるが、それをきっかけに住宅展示場を訪れようとする人が増えたと考えられるだろう。

住宅展示場を訪れるなら目的を明確に

これから住宅展示場を訪れる人はどんなことに気をつけるのがよいのだろう?訪れる目的はいくつかのパターンがあると思う。

第一に、住み替えを検討しているが、既成の分譲住宅ではなく注文住宅で家を建てたいと考え、ハウスメーカーのモデルハウスを見学するという目的が挙げられる。

第二に、住み替えで一戸建てを検討しているが、工法の違いや最新設備の情報などの基本的な知識を得たくて、モデルハウスを見学するという目的もあるだろう。

ほかにも、住宅展示場ではさまざまなイベントが催されている。例えばこれからなら、ケーキづくりやクリスマスリースづくりなどが想定できる。コロナ禍で遠出を控えていた人が、近くの住宅展示場のイベントに参加してみるといった目的もあるだろう。

住宅展示場を賢く利用する方法とは?

第一と第二の目的の場合でいえば、各ハウスメーカーが力を入れる住宅のモデルハウスが一度に見られる住宅展示場ならではの効率的な見学方法がある。

まず見学する前に、どんな情報を求めて訪れるのかを明確にしておこう。例えば、すでに住宅ポータルサイトで、ハウスメーカーの比較検討をしている場合なら、どのような違いを確認したいのかを考えておきたい。あるいは、基本情報を知りたいなら、工法の違いを知りたいとか、耐震性や省エネ性について知りたいとか、具体的にテーマを絞り込んでおきたい。展示場を漫然と見てしまうと、情報の多さで整理がつかないといったことに陥りやすいからだ。

さて住宅展示場では、まずは展示場全体をぐるりと回って、住宅の違いを確認しよう。ぐるりと回るだけだと住宅の外観を見ることになるが、例えば木材を多用していたり、欧米風の輸入住宅であったり、3階建ての住宅であったりといった違いを見て、各社の特徴を押さえておこう。

気になる住宅があれば、1つのモデルハウスに1時間などと時間を決めて、数社回るようにしたい。数社の説明を聞いて比較検討することで、住宅の基礎的な知識が増えていくし、渡される住宅のカタログには説明にない情報が載っていることも多い。

具体的にハウスメーカーが絞れているなら、自分の希望する条件などを伝えながら、モデルハウスを見学するとよいだろう。モデルハウスは広い土地に建てられることが多いので、間取りにゆとりを感じたり、最新設備が豊富に搭載されているので、どれも便利に見えたりするものだが、実際にはそれぞれ広さや予算が限られるので、あらかじめそれを前提に説明をしてもらうとよいだろう。

もちろん住宅展示場の説明員はセールスが目的なので、自社の住宅を売り込むことになる。断り切れないといったことのないように、あらかじめ訪問目的や見学時間などを決めておくことが大切だ。

住宅展示場では、画像や動画だけでは分からない色味や質感、空間でのサイズ感や印象などが分かるのがメリットだ。一方で、予算以上の住宅がモデルになることもあり、憧れが先行して収集がつかない場合もある。上手に活用すれば欲しい情報が効率的に入手できるので、楽しんで見学するようにしてほしい。

気になるアンチエイジング、住まいの温熱環境が肌の満足度に関係!?

旭化成建材の快適空間研究所は、住まいの温熱環境(あたたかさ、涼しさ)と居住者の「アンチエイジング」意識・満足度の関係性に着目し、アンケート調査を実施した。「住まいの温熱環境」と「アンチエイジング」には関係があるという。どういったことなのだろう?【今週の住活トピック】
「住まいの温熱環境とアンチエイジング意識・満足度」調査結果について/旭化成建材30代から60代の女性は「肌の若々しさ」が最も気になる

「アンチエイジング」と聞くと、筆者などはドキッとしてしまうほど気になるワードだ。
快適空間研究所では、“肉体的・精神的な老化を少しでも抑え、心も身体も健康で、若さ・若々しさを保つこととそのための取り組み”を「アンチエイジング」と定義している。

まず、調査で「どのようなアンチエイジングに興味があるか」を聞いたところ、男女で違いが見られた。男女別のTOP3は次のようになる。
○女性が気になるアンチエイジングTOP3
1:「肌の若々しさ」56.9%
2:「体力の維持」52.8%
3:「気持ちの若々しさ」44.3%
○男性が気になるアンチエイジングTOP3
1:「体力の維持」48.1%
2:「足腰の力の維持」39.6%
3:「脳の力(考える力)の維持」28.7%

男性は全体的に女性よりアンチエイジングへの興味が低く、女性の過半数が気になる「肌の若々しさ」は男性では23.8%しか興味がなかった。

どのようなアンチエイジングに興味があるか(男女別)(出典/旭化成建材「住まいの温熱環境とアンチエイジング意識・満足度」調査結果についてより転載)

どのようなアンチエイジングに興味があるか(男女別)(出典/旭化成建材「住まいの温熱環境とアンチエイジング意識・満足度」調査結果についてより転載)

「肌の若々しさ」は、さらに女性でも年代によって興味の度合いが異なり、30代~60代で高いものの70代では過半数を割る46.8%に下がり、「体力の維持」や「足腰の力の維持」が逆転して上位に上がる。

住まいの温熱環境が「肌の状態」の満足度と関係あり

さて、この調査で旭化成建材らしいのが、住まいの温熱性能別に対象者を分類していることだ。分類方法は、実際の住宅全体の断熱性能と高い相関があるといわれる「窓ガラスの種類」により、シングルガラス:温熱性能「低」、ペアガラス:温熱性能「中」、Low-Eペアガラスまたはトリプルガラス:温熱性能「高」となっている。

この分類で、女性に「冬の肌の状況(乾燥・みずみずしさ)に満足しているか」を聞くと、温熱性能が高い住まいに暮らす女性ほど、「肌の状況」に満足している割合が高いという結果が出た。

冬の「肌の状況(乾燥・みずみずしさ)」に対する満足度(住まいの温熱性能別)(出典/旭化成建材「住まいの温熱環境とアンチエイジング意識・満足度」調査結果についてより転載)

冬の「肌の状況(乾燥・みずみずしさ)」に対する満足度(住まいの温熱性能別)(出典/旭化成建材「住まいの温熱環境とアンチエイジング意識・満足度」調査結果についてより転載)

また、室内の温度・湿度の「満足度」と冬の「肌の状況(乾燥・みずみずしさ)」満足度の関係を調べると、冬の「室内の温度」の満足度と「肌の状態」の満足度の相関係数は0.623、冬の「室内の湿度」の満足度と「肌の状態」の満足度の相関係数は0.705となり、いずれも相関関係にあることが分かったという。相関係数が高い、湿度のほうが肌の状態との関係性がさらに深いようだ。

温熱環境を高めるための、住まい手の行動がアンチエイジングには重要

この調査を担当した、快適空間研究所の主席研究員濱田香織さんに、調査結果について詳しく聞いてみた。
まず、この調査はアンケートによるものなので、実際に肌の状態を測定しているのではなく、回答者の主観として満足しているかどうかを分析している。ただし、これまでの研究論文などで、室内の温度や湿度と肌の水分量には関係性が高いという結果が出ているという。

また、温熱環境を正確に言うと、暑い寒いという体感に影響を与える6つの要素からなる環境のこと。温度、湿度、気流速、室内表面温度の4つの建築側要素と、活動状態(代謝量)と服装(着衣量)の2つの人体側要素からなっているという。アンケートでは、回答者にわかりやすいように「温熱環境(あたたかさ、涼しさ)」と表記して調査している。

こうしたことを踏まえて、再度調査結果を確認しよう。たしかに、住宅の温熱性能が高いほど肌の状態の満足度も高いという関係性が見られる。が、温熱性能の高い家に住めば肌の状態がよくなる、といった単純なものではない。

肌の状態は、特に室内の温度と湿度との相関性が高いが、温熱性能の高い住宅では外気温の影響を受けづらいので、適切な室温を保ちやすい。また、温熱性能が低い住宅では、加湿器などで室内の湿度を上げると窓や壁に触れた空気が冷えやすいので、そこで結露を起こしてしまう。つまり、性能が高い住まいであれば、効率よく適度な温度や湿度を維持しやすいということが、肌の満足度に関係してくるのだろう。

住まい手の生活上の工夫も必要だ。「エアコンを長時間使って空気が乾燥したときに加湿器を使ったり、室内に植物を置いたりなど、室内の温度や湿度に気を配ることも、肌にとっては大切なことでしょう。室内に温湿度計をおいてこまめに室内環境をチェックするのもおすすめです。」と濱田さんは言う。

さて、これからは乾燥した日々が続く季節になる。女性には最も気になる「お肌のうるおい」。筆者自身もこの調査結果を見て、アンチエイジング効果があると言われるクリームを塗るだけでなく、室内の温度や湿度にも気を配ろうと思った次第だ。

コロナ禍で家事や育児時間が増加!夫婦の役割分担にも変化あり

コロナ禍で在宅勤務などを経験して、夫婦ともに自宅にいる時間が長くなったという人も多いだろう。ただでさえ、家庭内のこまごまとした家事で大変なのに、「家族の在宅時間が長くなると新たな家事も増える」ということをリンナイの調査が浮き彫りにした。どういった家事が増えて、誰が担当しているのだろう?【今週の住活トピック】
「夫婦の育児・家事」に関する意識調査を公表/リンナイ家事・育児に積極的に参加する男性が増加!といえども…

まずリンナイの調査で、「コロナウイルスの影響で在宅勤務、在宅時間が増えたか」を聞いたところ、過半数の53.7%が増えた(とても増えた+やや増えた)と回答した。男性に限ってみると、増えたという回答は57.0%に達する。

増えたと回答した男性に、「コロナ前と比べて、育児・家事に対する参加度合いはどのように変化したか」を聞くと、61.1%が「積極的に家事・育児に参加するようになった」と答えた。女性である筆者から見ると、喜ばしいことだ。

で、実際の家事や育児の時間はどうかというと、全体では次のような変化が見られた。

Q.コロナ前後でのあなたの育児時間・家事時間について、1日あたりの平均時間をそれぞれお答えください(出典/リンナイ「『夫婦の育児・家事』に関する意識調査」のリリースより転載)

Q.コロナ前後でのあなたの育児時間・家事時間について、1日あたりの平均時間をそれぞれお答えください(出典/リンナイ「『夫婦の育児・家事』に関する意識調査」のリリースより転載)

男性の家事・育児の時間がコロナ前より長くなっているが、女性もやはり長くなっているので、女性に負担がかかっているという状況は実はさほど変わっていない。とはいえ、意識の変化は今後のカギになるだろう。

「コロナウイルスの影響で在宅勤務、在宅時間が増えた」人を対象に、「コロナ以前よりもパートナーと家事の分担をするようになったか」を聞いたところ、男性では70.3%、女性では48.5%が分担するようになったと感じる(とてもそう感じる+ややそう感じる)と回答した。分担の実感に男女差はあるにせよ、コロナ禍が家事分担を意識するきっかけになったのは確かなようだ。在宅時間が増えたのは男性が多いので、こうした流れや男性の意識が今後も拡大していくことを期待したい。

約4割が、コロナ前と比べて家事の量や頻度が増えた

コロナ禍では、例えば「マスクを毎日手洗い」したり、「手洗い用の石鹸を補充」したり、「消毒液や除菌シートの在庫を確認」したり、ネットで購入した宅配物の「段ボールや箱をつぶして捨てる」といったことが、新たな家事に加わったり、以前より増えたりしたのではないだろうか?

リンナイの調査で、「コロナ禍での家事の量や頻度について」聞いたところ、「コロナ前と比べて家事の量や頻度が増えた」(とても増えたと感じる+やや増えたと感じる)という回答が43.9%に達した。

家事の量や頻度が増えたと回答した人に、増えた家事や育児について聞くと、男女別にやや違いが見られた。

Q. コロナ禍によって育児・家事で時間が増えたと思うものをすべてお選びください(出典/リンナイ「『夫婦の育児・家事』に関する意識調査」のリリースより転載)

Q. コロナ禍によって育児・家事で時間が増えたと思うものをすべてお選びください(出典/リンナイ「『夫婦の育児・家事』に関する意識調査」のリリースより転載)

女性は圧倒的に「料理」が増えたと回答しており、家族が長く在宅することで料理をつくる頻度や量が増えたからだろう。「掃除」「育児」「片付け・収納」は男女ともに増えているが、「食料品・日用品の買い出し」については男性のほうがより増えたようだ。

次に、コロナ禍によって新たに増えた家事や育児を聞くと、「マスクの手洗い・洗濯」と「除菌、手洗いうがいの呼びかけ」は、半数近くの人が新たに増えたと感じていることが分かった。下図を見ると、コロナウイルスから家族を守ろうと、こまめに作業している様子がうかがえる。

Q. コロナ禍によって、新たに増えたと感じる育児・家事は何ですか(複数回答)(出典/リンナイ「『夫婦の育児・家事』に関する意識調査」のリリースより転載)

Q. コロナ禍によって、新たに増えたと感じる育児・家事は何ですか(複数回答)(出典/リンナイ「『夫婦の育児・家事』に関する意識調査」のリリースより転載)

家事・育児の分担や男性の参加で子どもの数は…?

さて、明治安田生命の「子育てに関するアンケート調査」では、「子どもをさらに欲しい」という回答が30.5%になり、過去最多になった。その理由として、幼児教育・保育の無償化による「家計負担の軽減」や、テレワークの普及などによる「子育てと仕事の両立のしやすさの向上」などが影響していると分析している。また、ステイホーム期間中に子どもといる時間が長くなり、子どもの世話をすることで絆が深まるなど、子育てにプラスの影響があったことも要因とみている。

一方で、厚生労働省が発表した全国の妊娠届の件数が5月~7月で前年より下回り、産み控えも懸念されている。妊娠届の件数はこの先の出生数の目安になることから、2021年の出生数が注目される事態となっている。

コロナウイルスという禍の中で、予防に苦慮する日々が続いている。収入が大きく減少したという人もいるだろう。こうしたマイナスな側面も多いが、在宅時間が長くなることで、パートナーや子どもと話す機会が増えて、新たな面に気づいたり、いとおしさが増したりといったこともあったのではないか。

リンナイの調査結果を見ると、いまなお女性の負担が大きいものの、男性の家事・育児の参加が増加したことが分かる。テレワークの普及ともあいまって、仕事と子育てが両立しやすくなるといった変化もあり、この事態が夫婦や親子の関係性について再認識する機会になればよいと願う。

“わが街選び”の基準が変わる!?新型コロナの影響で、お出かけ先は自宅周辺へシフト

国土交通省では、日立東大ラボと共同し、新型コロナ危機を踏まえた今後のまちづくりを検討するために、全国WEBアンケート調査を8月3日~25日に実施した。速報結果によると、「お出かけは宣言解除後も自宅周辺が増加している」ことなどが分かったという。注目ポイントをいくつか紹介しよう。【今週の住活トピック】
全国アンケート調査「新型コロナ生活行動調査(速報版)」を公表/国土交通省緊急事態宣言以降は、自宅での仕事と余暇時間が増加

新型コロナの影響で、外出を控えるようになり、自宅にいる時間が長くなった。では、自宅での活動時間で、どんな時間が増えたのだろうか?

国土交通省が公表した調査結果のうち、特に影響が大きかったと思われる「特定警戒都道府県」の結果を見てみよう(画像1)。緊急事態宣言中では、明らかに外出を控えて、自宅にいたことが分かる。一方、宣言解除後の7月末では、外出率は流行前に近づいているものの流行前と同じまでは戻らず、なおも外出を控える傾向がうかがえる。

自宅にいる時間が長くなったなかでも、自宅の活動時間として増えたのは、「仕事」の時間はもちろんのこと、「余暇」の時間も増えたのが興味深い点だ。

(画像1)自宅での活動時間(平均活動時間)と外出率※特定警戒都道府県を抜粋(出典:国土交通省「新型コロナ生活行動調査(速報版)」)

(画像1)自宅での活動時間(平均活動時間)と外出率※特定警戒都道府県を抜粋(出典:国土交通省「新型コロナ生活行動調査(速報版)」)

外食や趣味・娯楽で訪れる場所は、都心や中心市街地から自宅周辺へシフト

次に活動別の外出頻度を聞くと、流行前と調査時点(2020年8月)を比べると、「勤務先への仕事」への外出が減っていたが、「外食」や「食料品・日用品の買い物」への外出も減っていた(画像2)。では、外食や買い物などで訪れた場所は、どこだったのだろうか?

(画像2)活動別の外出頻度(週あたり外出日数)(出典:国土交通省「新型コロナ生活行動調査(速報版)」)

(画像2)活動別の外出頻度(週あたり外出日数)(出典:国土交通省「新型コロナ生活行動調査(速報版)」)

いずれの外出でも訪れた場所は、自宅から離れた「都心・中心市街地」から「自宅周辺」にシフトしていた(画像3)。なかでも、「外食」と「趣味・娯楽」で、中心部から自宅周辺へと大きくシフトしていたことが分かった。

(画像3)活動別の最も頻繁に訪れた場所(新型コロナ流行前から調査時点(2020年8月)への変化)(出典:国土交通省「新型コロナ生活行動調査(速報版)」)

(画像3)活動別の最も頻繁に訪れた場所(新型コロナ流行前から調査時点(2020年8月)への変化)(出典:国土交通省「新型コロナ生活行動調査(速報版)」)

新型コロナの影響で、自宅にいる時間が長くなり、余暇時間も増えたので、自宅周辺のお店や施設を訪れるようになったという構図だが、これまで以上に自宅周辺地域に関心が高まったと考えてよいだろう。

「ゆとりある屋外空間を充実させてほしい」と半数近くが希望

リモートワークなどで自宅での活動が増えるとした場合、自宅や自宅周辺の居住環境で望むことを聞いたところ、「望む」という回答が多かったのは「自宅のオンライン環境の強化」(強く望む12.3%、やや望む21.5%)と「自宅周辺における余暇や気分転換、運動をするための近場の公園や緑地の充実」(強く望む8.6%、やや望む21.9%)だった。

また、新型コロナの影響で、移動手段の利用に対する意識の変化について聞くと、鉄道やバスなどの公共交通機関については利用を減らしたい意向が強く、徒歩や自転車、自家用車については利用を増やしたい意向が強く出た。

最後に、都市空間でどのような取り組みを充実すべきかを聞いたところ、「公園、広場、テラスなどゆとりある屋外空間の充実」(46%)や「自転車や徒歩で回遊できる空間の充実」(37%)などのニーズが高いことが分かった(画像4)。

(画像4)都市空間に対する意識(充実してほしい空間)(出典:国土交通省「新型コロナ生活行動調査(速報版)」)

(画像4)都市空間に対する意識(充実してほしい空間)(出典:国土交通省「新型コロナ生活行動調査(速報版)」)

こうして見ていくと、キーワードとなるのは、余暇や気分転換、運動をするための「公園などの空間」や「徒歩や自転車で回遊できる空間」だ。商業施設の充実も重視されるが、快適な屋外空間のある街というのも、今後はニーズが高まっていくだろう。

さて、緊急事態宣言中は、本人の運動不足や子どもの外遊びの機会減少などを気にした家庭も多かったと思う。筆者も、それまでしたことがなかった「わが街歩き」をやった。新しい風景に数多く出会えたが、方向音痴であることや蚊に刺されやすいことなどもあって続かなかった。一方で自分には、商店街歩きのほうが合っているということにも気づいた。

働き方や暮らし方、家族構成など、家庭それぞれの事情によって、住まい周辺の“街”に対する考え方も異なるものだ。この機会に、それぞれの“わが街選び”の基準を再確認してはいかがだろう。

団体信用生命保険、住宅ローン契約者の3割近くが「知らない」。どこまで保障?違いはあるの

住宅ローンを借りる際、「団体信用生命保険」という保険に加入するのが条件となっていることが多いのをご存じだろうか?住宅ローンを利用していながら、このことを知らないという人が3割近くもいるという。それで問題はないのだろうか?【今週の住活トピック】
「生命保険に対する消費者意識調査」結果を公開/MFS(モゲチェック)3割近くが住宅ローンに付帯される「団体信用生命保険」を知らない

オンライン住宅ローンサービスを運用するMFSが生命保険について調査を実施した。この「生命保険に対する消費者意識調査」の中で、住宅ローンを利用する際に加入が条件となる「団体信用生命保険」について調査した項目がある。

まず、住宅ローン利用者に対して、「住宅ローンに団体信用生命保険が付帯していることを知っているか」聞くと、知っていて当然であってほしいところだが、「知らない」が26.1%もいた。

次に、「団体信用生命保険の内容を踏まえて住宅ローンを選んだか」聞くと、「選んでいない」が38.8%だった。知らない人はもちろんのこと、知っている人の中にも団体信用生命保険の内容について無関心だった人が多いことが分かる結果だ。

住宅ローンと団体信用生命保険について(出典/MFS「生命保険に対する消費者意識調査」より転載)

住宅ローンと団体信用生命保険について(出典/MFS「生命保険に対する消費者意識調査」より転載)

団体信用生命保険にはさまざまな特約が付帯できる

「団体信用生命保険」とは、住宅ローンを借りた人に万一のことがあったときに、残りのローンの全額を保険で弁済する保障制度。略して「団信」と言われるものだ。借りた人がローンを返せない状態のときに、家族がそのままローンを抱えることのないように、金融機関に保険金が支払われる。その保険料は、一般的に住宅ローンの金利に含まれている。

なお、持病があるなど健康上の理由で団体信用生命保険に加入できない場合には、「ワイド団信」を用意している金融機関もある。一般の団信より加入条件を緩和したものなので、持病などによってはワイド団信に加入できる場合があるが、その際に適用される金利は高くなる。

さて、問題となるのは、この「万一のことがあったとき」とはどういった状況のことか、ということだ。通常の団体信用生命保険では、住宅ローンの契約者が「死亡または高度障害の状態になったとき」が対象となる。高度障害の状態とは、例えば病気やケガによって、両眼の視力を失ったり、精神や臓器に著しい障害が残ったり、両手足を失ったりなどの場合をいう。

「生命保険(死亡保険)」が同じ内容をカバーするので、住宅ローンを借りて団体信用生命保険に加入したら生命保険を見直して、団信と重複する分だけ生命保険を減額するという人は多い。

しかし、団体信用生命保険や一般の生命保険では、高度障害に至らない病気やケガまでは保障されない。特に、日本人の2人に1人がかかるといわれる「がん」の治療では、高額な費用がかかることもある。そこで、別に「がん保険」や「医療保険」に加入して、万一に備える方法がある。

がんのリスクを考慮して、住宅ローンの団体信用生命保険に「がん特約」を付帯できる住宅ローンは多い。最近では、「3大疾病特約」を付帯して、3大疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞)で所定の状態になったときにも、保障できるようにする金融機関も増えてきた。3大疾病特約の人気が高まったので、5大疾病や8大疾病、全疾病などバリエーションが増えてきたというのが、今の実態だ。これらの特約を付帯すると、保険料を支払う必要があるが、金利に一定率が上乗せされる場合と保険料を別途支払う場合がある。

団体信用生命保険の内容を知って、どこまで保障されるか確認

では、特約として多くの疾病を保障するものがよいかというと、そういうわけでもない。その病気にかかれば保障されると思いがちだが、一定期間以上所定の状態が継続したときなどの条件が付いていたり免責期間があったりなど、それぞれの細かい条件を満たす必要がある。

MFSでは、この調査結果を記者向けに発表するオンライン勉強会を実施した。その資料の中に、団体信用生命保険の全体の傾向を分かりやすく整理したものがあったので、それを使って説明しよう。

団体信用生命保険の種類と保険金の支払事由(出典/MFS「『団体信用生命保険』記者勉強会」資料より転載)

団体信用生命保険の種類と保険金の支払事由(出典/MFS「『団体信用生命保険』記者勉強会」資料より転載)

図のように、一般団信やワイド団信のほかに、さまざまな特約を付けられる保険商品がある。3大疾病のうち、脳卒中と急性心筋梗塞では、一定の症状が60日以上継続したり手術を受けたりしないと保障対象にならない。また、その他の疾病を保障するものでは、病気にかかると一年間返済が免除され、働けない状態が長く続いた場合に限ってローン残高が保険金でカバーされるといったものが多い。

ここではおおよその傾向を説明したが、実際には同じような名称でも保障の内容に違いがあることも多い。例えば、一般団信でも【フラット35】に付帯する「新機構団信」では、高度障害保障が身体障害保障に拡大され、介護保障が加わるなどの違いがある。具体的に、どういった場合にどういった保障が受けられるのか、付帯する保険商品の内容をよく調べる必要がある。

団体信用生命保険の特約は本当に必要?

また、団体信用生命保険の保険料の総額は、ローンの借入額や返済年数によって大きく変わる。特約を付帯したときの保険料は、金利に上乗せされることが多いが、例えば金利が0.3%上乗せになった場合に、保険料の総額がいくらになるかを試算しておこう。後から付帯することができないこと、金利上乗せタイプなら途中解約ができないことなども注意点だ。

一方、一般の生命保険や医療保険などは、加入する人の年齢や健康状態などによって保険料が変わり、保険商品の種類も多い。こうしたものと比較して、保障が重ならないように考慮し、支払う保険料と必要な保障のバランスを見て保険商品を選択することが大切だ。

今後の人生で、どんな病気にかかるかを予想することは難しい。だからといって、やみくもに保障の範囲を広げると、高い保険料を支払うことになる。健康状態やライフスタイル、貯蓄の有無などを考慮して、何を保険で備えるのがよいかを検討してほしい。

また、住宅ローンは長期間返済し続けるものなので、まずは、長期固定か変動するかなどの金利タイプと適用される金利を第一に考えて、そのうえで団体信用生命保険に特約を付帯するかどうか考えるのがよいだろう。

“イクメン力“が高いのは九州男児!「イクメン白書」に見る男性の育休取得と家事育児の幸福度の関係

あなた(あるいは、あなたの夫)は、“イクメン”ですか? 積水ハウスが独自の指標を用いて、都道府県の“イクメン”力をランキングした。イクメンの重要な指標に、男性の家事育児参加や育休取得などを挙げているが、どういった関係があるのだろう。【今週の住活トピック】
「イクメン白書 2020」 を公表/積水ハウスイクメンランキングで意外(?)にも九州勢がTOP3を独占

積水ハウスでは、「イクメン力」の指標として (1)妻が評価する夫のイクメン度(2)夫の育休取得日数 (3)夫の家事・育児時間 (4)夫の家事・育児参加幸福感の4つの指標を設け、ポイント算出により都道府県ランキングを作成した。

その結果、1位に佐賀県、2位に熊本県、3位に福岡県と九州勢がTOP3を独占した。東京都は38位、大阪府は44位で、大都市はイクメン力が低い結果となった。また、最下位の47位は、「かかあ天下」で知られる群馬県だった。

九州男児といえば家事育児には保守的なイメージがあるが、佐賀県と熊本県は「妻が評価する夫のイクメン度」指標が、福岡県は「夫の家事・育児時間」指標が特に高いことが、ランキングを押し上げる要因になっている。

男性の育休取得が家事育児の幸福度を上げる?

この調査で全員に、夫が家事や育児を行うことに幸せを感じるかを聞いたところ、男性は 78.4%が「幸せを感じる」、女性は 64.1%が「夫は家事・育児に幸せを感じている」と回答した。妻が思うよりも、夫のほうが家事や育児に幸せを感じているのかもしれない。

家事育児の幸福度は、夫の育児休暇(以下、育休)の取得によっても変わるようだ。育休を取得していない男性は幸福度が69.3%だったのに対して、育休取得ありの男性では幸福度が80.4%まで上がり、さらに1カ月以上育休を取得した男性では90.9%と極めて高い比率にまで上がった。

男性の家事・育児幸福度(育休取得別)  (出典:積水ハウス「イクメン白書 2020」)

男性の家事・育児幸福度(育休取得別)(出典:積水ハウス「イクメン白書 2020」)

育休を取得する男性は増加傾向にあるが、実はこの調査の「夫の育休取得日数」1位は東京都の9.4日(全国平均4.1日)だった。東京都は大企業が多いので、こうした制度が整っている職場が多いと推測できる。

一方で、男性の育休取得の義務化を検討する動きがあるなか、日本・東京商工会議所の「多様な人材の活躍に関する調査」結果を見ると、中小企業では「男性社員の育児休業取得の義務化」に反対との回答(反対:22.3%+どちらかというと反対:48.6%)が70.9%で、特に運輸業(81.5%)、建設業(74.6%)、介護・看護業(74.5%)といった人手不足感の強い業種において反対が多かった。

男性の育休の取得は家族の意向だけでなく、育休制度が整っていたり取得事例が多くて取りやすかったりといった、職場の環境が大きく影響してくる。調査結果では、育休取得によって幸せを感じる比率が高くなっているが、職場の環境によってその育休取得の機会が増えていかないとしたら、なんとも残念なことだ。

男性の家事や育児のスキルの有無も幸福度に影響大

そうはいっても、家事や育児をどうやったらよいか分からない、妻のやり方と違って互いにストレスが溜まるといったこともあるだろう。調査結果でも、男性の家事・育児のスキルの有無が幸福度に大きく影響していることが分かった。

男性には自身の、女性には夫の、家事や育児のスキルの有無を聞いたところ、自身や夫が家事・育児に幸せを感じるかを聞いた項目で、「幸せを感じる」層(6650 人)と「幸せを感じない」層(2750 人)では大きな違いが見られた。

「幸せを感じる層」では、男性の家事スキルありが 57.6%、育児スキルありが58.7%だったのに対して、「幸せを感じない層」では、男性の家事スキルありは 26.9%、育児スキルありは23.3%で、両者には大きな開きがあった。

男性の家事スキルの有無/男性の育児スキルの有無 (出典:積水ハウス「イクメン白書 2020」)

男性の家事スキルの有無/男性の育児スキルの有無 (出典:積水ハウス「イクメン白書 2020」)

夫の家事・育児のスキル向上には、妻の協力も必要だ。どちらかが几帳面すぎたり大雑把すぎたりすると、同じようにやることを難しく感じたり、ストレスを感じたりすることもある。二人でよく話し合って歩み寄り、互いにやりやすい“我が家流スタイル”をつくることで、夫の家事・育児参加率を上げることも大切だろう。

さて、「イクメン」と呼ばれてうれしいのは、そのほうが体裁がよいからではなく、家事育児をすることに幸せを感じられるからだろう。「そのためには、家事育児にできるだけ多く時間を取って、そのスキルを身に着けることが大切だ」と調査結果は語っている。一生に幾度もない子育ての機会だ。家族全員で幸せを感じられる時間を過ごしてほしい。

「MaaS」の社会実装へ、東京都のプロジェクトが始動!IT活用で移動をよりスマートに!

高齢化が急速に進む日本では、人の移動の変革が課題となっており、行政も力を入れている。そこで注目されているのが「MaaS」。東京都では2020年度の「MaaSの社会実装モデルとなる実証実験プロジェクト」を3件選定した。採択事例を見ながら、MaaSとはどういったものか見ていくことにしよう。【今週の住活トピック】
MaaSの社会実装モデルとなる実証実験プロジェクトを選定/東京都最近よく聞く「MaaS」とはなにか?

「MaaS」はMobility as a Serviceの略語で、「マース」と読む。直訳すると「サービスとしての移動」となる。東京都のサイトでは、MaaSを「一連の交通サービスとしてモビリティの最適化を図るため、複数の交通手段を組み合わせ、アプリ等により一括検索・予約・決済を可能とする取組などを指す」としている。うーん、分かりにくい。

平たく言うと、いま誰もが利用できる交通手段には、電車、バス、タクシー、飛行機、シェアサイクルなどがあるが、ITを活用することで、これらの移動手段をひとつにまとめて、効率よく便利に使えるようにするシステムのこと。といったことのようだ。

バリバリの文系人間である筆者には、テクノロジーのことは上手く説明できないので、私たちの生活がどうなるかを見ていこう。

例えばいま、私が移動をしようとするとき、交通機関検索サイトで移動ルートを調べ、例えばJR東日本のサイトで特急指定席と乗車券を予約してクレジットカードで精算し、到着駅では、バス会社のサイトでバスの時間を調べたり、シェアサイクルサイトでレンタサイクルを検索したりして、それに乗って目的地に着いたら精算。こうしてそれぞれを検索・手配や決済していたものを、スマートフォンのアプリを使って、まとめて移動手段の検索や手配から決済までができるようになる。そんな環境をつくろうというもの、らしい。

東京都の採択プロジェクトに見る、MaaSの実証実験事例

東京都が採択したプロジェクトの中で、小田急電鉄とJR東日本の事例を見ていこう。

2020年度の実証実験は、町田市山崎団地周辺エリアで行われる。町田市山崎団地は、1968年~1969年に建設された、総戸数3920戸の大規模団地(賃貸の集合住宅)で、最寄りとなる山崎団地センターバス停までは、町田駅からバスで14分という場所にある。

ここでのMaaSの仕組みは、NTT ドコモの AI 運行バス®システムを用いた“乗合型オンデマンド公共交通サービス”を、小田急電鉄が開発したMaaSアプリ「EMot」から検索・手配できる形で提供するもの。JR東日本の首都圏のほぼ全線および首都圏以外の主要路線と、小田急線全線、神奈川中央交通の路線バスのリアルタイムデータを用いて、遅れを加味した経路案内サービスを「EMot」および「JR 東日本アプリ」で提供する。

小田急電鉄とJR東日本のMaaS実証実験イメージ(出典:小田急電鉄・JR東日本のプレスリリースより転載)実施予定時期は、2021年1月中旬~3月中旬

小田急電鉄とJR東日本のMaaS実証実験イメージ(出典:小田急電鉄・JR東日本のプレスリリースより転載)実施予定時期は、2021年1月中旬~3月中旬

この山崎団地周辺エリアのMaaSの仕組みを使ってアプリ「EMot」でAI運行バスを検索・手配すれば、住まいを出て既存のバス停まで歩くことなく、指定された時間に乗り合い型のAI運行バスを利用して、より便利にJR東日本や小田急電鉄の駅まで行き、駅から電車に乗ったり、駅の商業施設を利用したりできるようになる。乗り合い型AI運行バスは支払いもすべてアプリで決済できる。路線検索にはリアルタイムデータを使うので、その日に限ってバスが遅れて乗りたい電車に乗れなかった、といったよくある事態も避けられるのだろう。

2020年度はほかに、京王電鉄のプロジェクトやナビタイムジャパンとKDDIのプロジェクトも選定された。京王電鉄は東京多摩エリアで、ナビタイムジャパン・KDDIはお台場などの東京臨海副都心エリアで、それぞれMaaSの実証実験を予定している。

MaaSが期待される理由は?

日本ではまだ実証実験の段階だが、フィンランドなど海外では実用化されているという。MaaSが実用化されれば、高齢者や小さな子供のいる家族が最適なルートや時間で、乗り合いなどによって比較的安価な費用で、移動できるようになる。足回りが悪いという理由で外出をためらっていた人たちにとっては、外出の機会が増えるだろう。

外出する人が増えれば消費も拡大するし、高齢者の場合はさらに、健康増進にも役立つかもしれない。また、公共交通機関の利用が増え、各自が自家用車に乗ることで排出するCO2の減少など、環境問題にも効果を発揮する可能性もある。

一方、公共交通機関が発達している都市部と自家用車に依存する地方では、事情も異なるだろう。地域事情に合ったシステムを設計する必要があるし、モバイルアプリを使えない高齢者などにはサービスが行き届かない懸念もある。検討すべき課題が多いのも現実だろう。

東京都の採択を受けたプロジェクト以外にも、MaaSの研究を重ねている企業は多い。こうした研究成果が実って、移動が簡便にかつ効率的にできる社会の到来が待ち遠しいものだ。

○小田急電鉄と JR 東日本の2020年度東京都公募「MaaS の社会実装モデル構築に向けた実証実験」について

マンションもSDGsの時代。旧耐震マンションが、リファイニング建築でよみがえる?

「リファイニング建築」という手法を使うと築44年のマンションでも新築並みによみがえるという。三井不動産と青木茂建築工房が手掛けた完成事例の見学会に参加したのだが、知らされていなければ新築のマンションだと思うほどだ。しかし、before/afterの写真を見ると、確かに骨格は同じだ。どうやって再生するのだろう。

【今週の住活トピック】
リファイニング建築サロン&物件竣工見学会開催/三井不動産「ヴァロータ氷川台」のリファイニング前の外観(画像提供:三井不動産)

「ヴァロータ氷川台」のリファイニング前の外観(画像提供:三井不動産)

リファイニング建築「ヴァロータ氷川台」外観(筆者撮影)

リファイニング建築「ヴァロータ氷川台」外観(筆者撮影)

建て替えでも耐震改修でもない、「リファイニング建築」という選択肢

現行の耐震基準(1981年6月以降に適用)より前の旧耐震基準の建築物は、今後発生すると予測される巨大地震で倒壊のリスクがある。そのうえ、集合住宅であるマンションでは、各戸に水まわりの設備があり、給排水管が縦横に張り巡らされている。こうしたものの老朽化で、日々の生活に困難をきたすようになる。さらに、今の生活にはインターネット環境やセキュリティの強化など、時代に応じて必要とされる設備機器などもある。

こうした課題の解決のため、旧耐震基準のマンションは、「建て替え」をするか「耐震改修を含む大規模な改修工事」をするかになる。ところが、第3の選択肢があるという。それが「リファイニング建築」だ。リファイニング建築は、建築家の青木茂氏が提唱する、旧耐震基準の建物を解体することなく新築同等に再生することが可能な建築手法だ。

一般的な耐震改修工事では、マンションの外壁やバルコニー側にブレースと呼ばれる「四角の中にV字型」などの骨組みを追加する。見た目の外観も悪くなり、部屋からの視界を塞ぐことになるので居住者に不満が生じやすい。一方、リファイニング建築では、外観や眺望を損なわないような耐震補強をする。

加えて、現行の法規制に適合させる再生を行うことで、新たに建築確認の検査済証を再取得する。築年数の古い建築物では、建築当時の法規制に適合していても、法改正によって現行法規に適合しないことが多い(既存不適格という)。すべてを現行法規に適合するように再生して、建築確認を申請することで、増築が可能になってより柔軟な設計プランができるようになる。

具体的には、完成事例を見た方が分かりやすいだろう。

リファイニング建築で室内も新築同様に

冒頭のリファイニング建築の外観写真は、三井不動産が商品企画を手掛け、青木茂建築工房が建築的な再生をした「ヴァロータ氷川台」だ。スタイリッシュな新築のマンションという印象だが、室内の印象も全く違う。
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「ヴァロータ氷川台」のリファイニング前後の内観(画像提供:三井不動産)

「ヴァロータ氷川台」のリファイニング前後の内観(画像提供:三井不動産)

通常のリフォームでも間取りや内装の変更は可能だが、リフォームではできない変更がいくつかある。画像では分かりづらいが、元あったバルコニーの右半分側が室内の居住空間に変わっている。サッシも交換されているが、室内空間を広げたことで右側のサッシは天井までのハイサッシを入れることができ、開放的な室内空間になった。

外から見えないところでは、壁に耐震補強に加え、床や壁に断熱材を入れて断熱性能を引き上げ、隣戸との壁には遮音材を入れるなどして、住宅としての基本性能も引き上げた。

マンション全体のプランについても、屋外廊下を屋内廊下に変えて、エレベーターを増築した。また、エントランスの位置を変更して、元の駐車場の場所を居住空間として有効活用できるようにした。1階部分の平面図を見ると分かりやすいが、容積率に余裕があったことから、共用部の増築(黄緑色部分)や専有部の増築(水色部分)、ウッドデッキの新設(黒色部分)などを行っている。

1階平面図(画像提供:青木茂建築工房)

1階平面図(画像提供:青木茂建築工房)

その結果、1階住戸には専用デッキが設けられ、外から直接扉を開けて、デッキを通って室内に入ることもできる動線を確保した。デッキからの玄関口にあたる部分は、フローリングではなくタイル張りにしている。さらに、床を下げたことで上階の天井高は2400mmのところ、1階は2700mm確保できるようになった。

1階住戸には出入りできる専用デッキが新設された(101号:筆者撮影)

1階住戸には出入りできる専用デッキが新設された(101号:筆者撮影)

また、エントランスの位置を変えたことで、元のエントランス部分は居室空間に変わった。その結果、広いウッドデッキとアイランドキッチンのある魅力的な住戸が誕生した。

元のエントランス部分は居室空間になった(102号:筆者撮影)

元のエントランス部分は居室空間になった(102号:筆者撮影)

建築技術によって新築並みに生まれ変わったものの、検査済証を再取得するには多くの法規制に適合させる必要があった。まず、現行の日影規制に適合させるために、屋上の階段室の塔屋を撤去することで課題をクリアした。さらに、東京都の建築安全条例では、主要な出入口に一定の幅の通路を確保することが求められるという課題があった。この物件では通路幅を3m以上確保する必要があったが、通路幅は2.5mであったため、エントランスに庇(ひさし)を設けることでクリアした。

エントランスに庇を設けることで条例に適合させた(筆者撮影)

エントランスに庇を設けることで条例に適合させた(筆者撮影)

このようなさまざまな制約を工夫して解消しながら、新築並みのマンションとしてよみがえらせることができたわけだ。

分譲マンションでは管理組合の合意形成が高いハードルに

さて、「ヴァロータ氷川台」は19戸の賃貸マンション。三井不動産と青木茂建築工房が提携してリファイニングした物件の5事例目に当たる。5事例はいずれも、不動産オーナーが所有する賃貸マンションだ。実は、賃貸マンションでは、リファイニング建築を活用するメリットが大きいという。

まず、「建て替え」と比べると、建築費を約7割に抑えられ、工期を2年程度から10カ月程度に短縮できる。工事期間は賃借人を入れることができないので、無収入期間をかなり短くできるわけだ。それでいて、賃料は新築の場合の約9割と高めに設定できるので、投資額に対する回収期間も短くできる。耐震改修で耐震性を引き上げても、改修後の賃料を以前の額より上げることは難しいというので、新築の約9割まで上げられるリファイニング建築なら建て替えや耐震改修より賃貸経営上のメリットは大きいといえるだろう。

では、分譲マンションではどうなのだろう?
青木茂建築工房のこれまでのリファイニング建築の実績を聞くと、公共施設や学校、病院、旅館まで幅広く手掛けているが、分譲マンションの実績はわずか2事例だという。相談はあるものの、管理組合の合意形成に至らずに話が先に進まないことが多いのだそうだ。

青木茂氏によると、建築物のほとんどはリファイニング建築による再生が可能だという。構造となる躯体(くたい)そのものがよほど劣化して使用に耐えないなどの事情がない限りは、技術的には再生が可能だという。

建て替えが必要な老朽化した分譲マンションも、建築費を抑えられ、工期短縮によって仮住まい期間を短くできるリファイニング建築のメリットは大きいはずだが、区分所有者が高齢化するなどで建築費の捻出が高いハードルになってしまうのだろう。

SDGsに資するリファイニング建築の普及を目的に協会の設立も

さて、老朽化した建築物の大規模改修では建築費の融資を受ける場合が多いだろうが、これまでは金融機関ごとにそれぞれの事例を審査して融資条件を決めていたため、十分な返済期間が確保できないことが多かった。しかし、リファイニング建築のように新築並みの長期的な融資が一般的になれば、老朽化した建築物の再生も促進されることになる。

他方で、リファイニング建築は躯体の約8割を再利用するので、建て替えに比べると廃棄物もCO2の排出も少ない。持続可能な社会の実現のために、SDGsが注目されているが、SDGsにも貢献する仕組みとして、一層の活用が期待される。

こうした背景を受けて、リファイニング建築の普及促進を目的に「一般社団法人リファイニング建築・都市再生協会」の設立が予定されているという。筆者自身も、老朽化したマンションは建て替えざるを得ないと思っていた。第3の選択肢があることをもっと多くの人が知るようになれば、今後ますます増えていく老朽化マンションの手立てになるだろう。

住宅ローンの返済に困った!自宅を売って住み続ける「不動産リースバック」が選択肢に

コロナ禍で、住宅ローンの返済に困る人が増えていると聞く。借り換えや金融機関の救済措置などでも住宅ローンの返済が難しい場合、不動産のリースバックという手法も考えられる。どういった仕組みなのか、説明していこう。【今週の住活トピック】
「不動産リースバック」利用者に関する総合調査2020年度の調査結果を発表/セイビー
「不動産リースバック」利用者への総合調査2020年度の結果を発表/セイビー住宅ローンの返済が難しいとき、どんな手立てがある?

コロナ禍で住宅ローンの返済が難しくなったら、どういった手立てがあるのだろう。平時であれば、手元の資金に余裕がある場合なら、低い金利の住宅ローンに借り換えたり、繰り上げ返済をしたりして、毎月の返済額を減らすという方法がある。

とはいえ、コロナ禍で収入や雇用に不安があって困っている場合なので、借りている金融機関に相談をして、救済措置の適用を検討してもらうのがよいだろう。金融機関や借りている人の条件にもよるが、返済期間を延ばして月々の返済額を減らしたり、一定期間だけ利息の返済だけにしてもらったりなどの救済措置で、この後も返済し続けられるかどうかを検討することになる。

それでも返済が難しい場合は、残念ながら自宅を手放すことも考えざるを得ないだろう。返済が滞ってから「競売」にかけられる前に、売却して返済する「任意売却」や売却して賃借人となる「不動産リースバック」などの選択肢がある。

なお、60歳以上などのシニア層であれば、死亡時に自宅を売却する条件で融資を受ける「リバースモーゲージ」という選択肢もある。
この記事では、近年注目されている「不動産リースバック」の仕組みについて説明していこう。

「住宅ローンの早期返済」での利用が多い、リースバックとは?

さて、リースバックとは、正式には“sale and leaseback”、つまり賃貸借契約付き売却のこと。
不動産のリースバックの仕組みは次のような流れになる。
(1)自宅などの所有者がその不動産を第三者(投資家や不動産会社など)に売却する
(2)元の所有者が売却先と不動産の賃貸借契約を結ぶ
(3)元の所有者が賃借人としてそのまま住み続ける

セイビーが、「不動産リースバック」利用者に関する総合調査2020年度の結果を発表したが、その結果を見ると利用者の実態がうかがえる。まず、リースバックの利用経験があるのは全体の3.0%とまだわずかだ。

利用経験のある人に、不動産リースバックの資金使途を聞くと、1番多いのは「住宅ローンの早期返済」で43.6%と半数近い割合になった。2番目に多いのは「生活費」(27.4%)、3番目に多いのは「相続対策」(27.0%)だった。自宅等を売却した資金で、住宅ローンを返済してしまうという使われ方が最も多いことが分かる。

出典:セイビー「不動産リースバック」利用者への総合調査2020年度の結果

出典:セイビー「不動産リースバック」利用者への総合調査2020年度の結果

一方、賃借人として賃料を払いながらも自宅等に住み続けたい理由を聞いたところ、1番多いのは「自宅に愛着があるから」(47.3%)で、2番目に多いのが「街に愛着があるから」(38.2%)、3番目に多いのが「引越しをしたくないから」(30.7%)だった。愛着のある自宅や街から離れたくない、という理由が多いことが分かる。

出典:セイビー「不動産リースバック」利用者への総合調査2020年度の結果

出典:セイビー「不動産リースバック」利用者への総合調査2020年度の結果

不動産リースバックを取り扱っている事業者の中には「買い戻し」ができる事業者も多く、一時的な資金調達として利用される場合もある。その結果、リースバックを利用した人の現在の状況は次のようになっている。

出典:セイビー「不動産リースバック」利用者への総合調査2020年度の結果

出典:セイビー「不動産リースバック」利用者への総合調査2020年度の結果

リースバックした自宅に「住み続ける」場合もあれば、現在または将来に「買い戻す」場合、一定期間賃借人として住み続けた後で「退去する」場合の3パターンに分散していることが分かる。

リースバックを利用する場合の注意点は?

調査結果などから、不動産のリースバックは、次のようなメリットがうかがえる。
・売却によって、住宅ローンの完済が可能(売却額がローンの残高より多い場合)
・売却後も慣れ親しんだ自宅にそのまま住み続けられる
・広く販売活動をすることがないので、売却したことを近隣に知られない
・買い戻しできる(事業者による)

だからといって、よいことばかりではない。所有者ではなく「賃借人」となるので、賃料を払い続けたり、売却先の貸主の定めたルールに従って住むことになる。当初の売却先だった貸主が、ほかの第三者に売却することもあれば、市況の変化に応じて賃貸借などの条件を変えることもあるかもしれない。

終身にわたって住み続けられることや、必ず買い戻せることが保証されているわけではない、ということを念頭に置いておこう。

また、リースバックで重要な役割を果たすのが、新たな所有者となる売却先の事業者だ。リースバックによって事業者に利益が出る仕組みでないと成立しないので、投資額に対してそれを超える賃料が入ったり、賃貸借契約終了後に転売して利益が出たりするように、契約条件を設定する。

そのため、リースバックの場合は、「普通に売るよりは売却額は低く」、「普通に借りるよりは賃料は高く」、「買い戻し額は売却額より高く」なる可能性が高い。こうした点に注意が必要だ。

コロナ禍が長期化することで、収入が大幅に減ったり雇用が不安定になったりと、日々の生活に困る人が増えている。住宅ローンの返済があれば、家を失う不安も加わるだろう。まずは金融機関に相談して、どういった選択肢があるのかを把握するのがよいだろう。自宅を手放すという選択肢の中でも、複数の方法があることを覚えておいてほしい。

【賃貸】敷金・礼金ゼロ物件の増加傾向、減少に一転。そもそも敷金と礼金はなぜ必要?

リクルート住まいカンパニーが「2019年度 賃貸契約者動向調査」(2019年度に首都圏で賃貸物件を契約した人が対象)の結果を発表した。近年増加傾向にあった、敷金・礼金ゼロ物件が減少に転じたという。賃貸の部屋探しの現場は、今どうなっているのだろう?【今週の住活トピック】
「2019年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)」を発表/リクルート住まいカンパニー敷金ゼロ・礼金ゼロの物件が増加から減少へ

調査結果から敷金と礼金の2019年度の平均額を確認しよう。
・敷金の平均額: 1.0カ月
・礼金の平均額: 0.7カ月

敷金は、10年前の2009年度では平均額が1.5カ月だったが、前年度(2018年度)には0.9カ月まで減少し、2019年度に1.0カ月となった。2013年度以降は1.1~0.9カ月で推移し、おおむね1カ月という状態が続いている。一方礼金は、10年前の2009年度では平均額が0.8カ月だったが、2017年度以降は0.7カ月が続いており、ここ10年で大きな変化は見られない。

敷金と礼金の平均額に大きな影響を与えているのが、「ゼロ物件」の割合だ。2019年度の結果を確認しよう。
・敷金ゼロ物件の契約割合: 25.5% (前年度28.1%)
・礼金ゼロ物件の契約割合: 40.2% (前年度43.5%)

敷金ゼロ物件の契約割合は、前年度の28.1%から下がったが、それでも4件に1件は敷金ゼロ物件を契約していることになる。一方礼金ゼロ物件の契約割合は、敷金ゼロ物件よりも多い。こちらも前年度の43.5%から下がったが、8年連続で4割超えが続いている。

敷金0カ月物件の契約割合(実数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)」より転載)

敷金0カ月物件の契約割合(実数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)」より転載)

礼金0カ月物件の契約割合(実数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)」より転載)

礼金0カ月物件の契約割合(実数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)」より転載)

つまり、ゼロ物件の比率の違いによって平均額に差が出ているが、ゼロではない場合は、「敷金1カ月、礼金1カ月」がスタンダードと考えてよいのだろう。

敷金・礼金は何に使われる?なぜゼロにできる?

では、敷金・礼金は何に使われるものなのだろうか。

「敷金」は、家賃の滞納や補修などに使われる、いわば保証金のようなもの。保証として貸主が預かるものなので、原則として返還されるものだ。ただし、借主には賃貸住宅の原状回復義務があるので、居住中に損傷した部分の補修費用などをのぞいた額が返金されるのが一般的だ。
注:ただし、地域によっては「敷引き」と言われる商慣習が残っていて、あらかじめ一定額を差し引いて返金するという契約の場合もある。

「礼金」はその名の通り、貸主に謝意を表すものとして差し上げるもの。お礼なので返還されることはない。とはいえ、近年は不動産会社が介在することで、大家さんと入居者との関係性は薄れているので、礼金の意味合いも失われてきている。

敷金については、家賃の滞納発覚からその回収まで2カ月程度かかることから、かつては敷金2カ月、礼金1カ月といった時代もあった。近年では、保証料を払って家賃保証会社に保証してもらうスタイルが増えているので、滞納や補修に関する貸主のリスクも減っている。

一方、借主にとっては、敷金・礼金を含む初期費用が高くなると、住み替え自体が難しくなってしまう。この調査結果でも「部屋探しで決め手となった項目」として、30.9%の人が「初期費用<礼金・敷金・仲介手数料など>」を挙げている。家余りの今は借主が有利な市場なので、敷金・礼金を引き下げる傾向が続いている。その結果、敷金や礼金がゼロの物件が市場に多いというわけだ。

原状回復費用に伴う敷金返還トラブルが多いのはなぜ?

さて、敷金の役割からいって、退去時に何もなければ全額返還されるはずだ。しかし、現実にはそうはいかない。退去後に敷金が戻らないとか、敷金で不足する多額の原状回復費用を請求されたといったトラブルも多い。2020年4月の民法改正では、敷金が定義され、原状回復義務の範囲に関しても明文化された。それだけ、敷金返還のトラブルは多かったということだ。

借主に責任のない、通常の使用による損耗や経年劣化などについては、借主に原状回復義務がない。例えば、長く暮らせば畳が日焼けしたりするが、それは経年劣化なので、次の入居者のために畳を張り替えるのは貸主が負担すべきもの。家具を設置したら床に跡が付くのは通常の使用によるものなので、床の張り替え費用は貸主が負担すべきもの。といったことだ。

こうした費用まで借主に請求することで、トラブルになるケースが多いので、注意が必要だ。詳しくは、国土交通省が「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」を公開しているので、ぜひ確認してほしい。
●国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」

さて、「敷金・礼金がゼロゼロなら初期費用が安くて助かる」と思う人も多いだろう。ただし、敷金の代わりに退去時のハウスクリーニング費用という形で負担を求めていたり、賃料に少しずつ上乗せされていたりする場合もある。広告に大きく表示されている費用だけでなく、最終的にいついくら支払うかの総費用を確認して、そのうえで部屋を決めるようにしてほしい。

ウィズ・コロナでテレワークを意識した新築マンションが続々登場

新型コロナウイルスの感染予防対策として、テレワークが急速に普及している。アフターコロナにおいても、テレワークが定着することが予想されるが、新築のマンションでもテレワークを意識したものが続々と登場している。そのいくつかの事例を紹介しよう。【今週の住活トピック】
入居者専用シェアオフィスルームがある分譲マンション/日鉄興和不動産株式会社

【関連トピック】
ニューノーマル時代のくらしの多様性に応える商品を発表/三井不動産レジデンシャルほか
コワーキングスペースを併設した住まいで、ポスト・コロナ時代の新たなライフスタイルを提供/三菱地所レジデンス
新築分譲マンションの自由な住まいの新提案「DOMA-STYLE」×「 つながROOM」/野村不動産個別ニーズへの対応が難しいマンションでも、テレワークスペースがカギに

コロナ禍の新しい生活様式に対応したプランについては、実は、注文住宅が先行していた。その名の通り注文住宅は、施主の家庭個々のニーズに応じた間取り・設備をプランニングするものだからだ。なので、テレワークに対応した間取り、ウイルスを室内に持ち込まない動線・設備などを各ハウスメーカーが積極的に発信している。

一方マンションでは、デベロッパーが購入想定層向けに、あらかじめ広さや間取り、設備などのプランを決めてから集客をする。個々の家庭のニーズに細かく対応することは、難しいビジネスモデルなのだ。したがって、マンションにおいては、「共用部にテレワークができるスペースを設けるマンションが増えるだろう」と予想していた。

これまでも「スタディルーム」や「ライブラリールーム」などの名称で、書斎として使えるスペースを共用部に設ける新築分譲マンションはあった。しかしテレワークが普及すると、これまで以上に、集中して仕事ができる空間やWEB会議に利用できる音に配慮した空間、プリンターなどPC周辺環境が整った空間などのニーズが高まっている。

こうした状況を受けて、テレワークの環境を整備したコワーキングスペースを設ける、新築のマンションが続々と登場している。

新築のマンションでは、共用部にテレワーク対応のスペース事例が多い

日鉄興和不動産では、共用部に入居者専用シェアオフィスルームを設けた新築分譲マンション「リビオ成増ブライトエア・フォレストエア」を販売する。シェアオフィスルームの特徴は、Wi-Fiやオフィスと同等の照明の明度設定、座席のバリエーション(モニター付きの座席あり)、複合型ネットワークプリンタなどを完備していること。

最も注目したのは「TELECUBE by OKAMURA(テレキューブ by オカムラ)」を採用したことで、分譲マンションでは初の事例だという。テレキューブは、音の反響を減らした防音ブースで、ブース内にはテーブル、イス、電源コンセントなどを備え、換気ファンも設置されている。電話やWEB会議、特に集中したい作業などに効果を発揮する空間だ。

『リビオ成増ブライトエア』シェアオフィスルーム完成予想 CG

「リビオ成増ブライトエア」のシェアオフィスルーム完成予想 CGと「TELECUBE by OKAMURA」(画像提供:日鉄興和不動産)

「リビオ成増ブライトエア」のシェアオフィスルーム完成予想 CGと「TELECUBE by OKAMURA」(画像提供:日鉄興和不動産)

ほかに、三井不動産レジデンシャルほかが分譲する「パークタワー勝どきミッド/サウス」でも、共用部にWi-Fi、コピー機、電話ブース、自動販売機等を設置したリモートワークスペースを設けている。大規模マンションならではの約300平米の広さを確保し、LAN ケーブルや電源、大型モニターを完備した個室ブースのほか、会議室が6部屋も設置されている。

さらに、敷地内の外構エリアにアウトドアテーブルを設置したビッグテーブル、2階のテラスラウンジ、53階のスカイデッキなどの共用施設にもWi-Fi 環境を整備し、ワーケーション(ワークとバケーションを組み合わせた造語)のような感覚でテレワークができるのも特徴だ。

コワーキングスペース全体 完成予想イラスト

「パークタワー勝どきミッド/サウス」のコワーキングスペース全体完成予想イラストとスカイデッキ(画像提供:三井不動産レジデンシャル)

「パークタワー勝どきミッド/サウス」のコワーキングスペース全体完成予想イラストとスカイデッキ(画像提供:三井不動産レジデンシャル)

こうしたプランニングは新築分譲マンションに留まらない。新築の賃貸マンションでも、共用部にコワーキングスペースを併設するのが、三菱地所レジデンスの賃貸マンション「The Parkhabio SOHO 大手町」だ。

賃貸マンションの1階に、専用のインターネットを完備したコワーキングスペース(約60平米)を設置し、オフィス家具等を配置。個室タイプの集中ブースも用意するほか、会議室を設けている。なお、居住者は無料で利用できるが、居住者以外も有料で利用可能としており、地域に開かれたコワーキングスペースになっている。The Parkhabio SOHOシリーズ第一弾となるのが大手町(内神田住所)は、公共交通機関をできるだけ使わない職住融合が可能だという。

「The Parkhabio SOHO 大手町」のコワーキングスペース完成予想 CG(画像提供:三菱地所レジデンス)

「The Parkhabio SOHO 大手町」のコワーキングスペース完成予想 CG(画像提供:三菱地所レジデンス)

マンションの住戸内でもテレワークに対応した間取り事例

マンションの共用部にばかりでなく、住戸内にも積極的にテレワークを意識した提案がなされている。野村不動産は「DOMA-STYLE(ドマスタイル)」×「つながROOM」という間取り提案を新築分譲マンション「プラウド湘南藤沢ガーデン」で導入した。

「DOMA-STYLE」×「つながROOM」の間取りイメージ(画像提供:野村不動産)

「DOMA-STYLE」×「つながROOM」の間取りイメージ(画像提供:野村不動産)

「つながROOM」の特徴は、2つの洋室の間に約2畳の空間を設けて可変性のある間取りを実現していること。約2畳の空間の両側の引き戸を開ければ大きな空間となるが、閉じれば小さな個室として利用することができ、可動棚やコンセント、ダウンライト等を完備しているので、在宅勤務の際に仕事部屋として使うことも可能。もちろん、仕事部屋に限らず、ニーズに応じて趣味の部屋や収納スペースなどにすることもできる。

一方「ドマスタイル」は、玄関の一角には窓付き・タイル貼りの土間スペースを確保したもの。ベビーカーの置き場所、濡れたものの一時的な置き場所になるほか、土間から洗面室へ直接出入りできる間取りなので、部屋に入る前に手洗いや泥汚れを落としたりできる。玄関の使い勝手向上だけでなく、感染予防対策としても効果を発揮するだろう。

「DOMA-STYLE」の間取りイメージ(画像提供:野村不動産)

「DOMA-STYLE」の間取りイメージ(画像提供:野村不動産)

さて、テレワークについては、複数の調査結果を見ても「今後もテレワークを継続したい」という意向率が高い。コロナ禍と頻度は違っても、なんらかの形でテレワークという働き方は今後も続いていくだろう。テレワークに対応した住まいは、子どもたちのオンライン授業などでも利用できる。新築マンションのプランとして、これからもテレワーク対応がキーワードになっていくだろう。

賃貸のほうが持ち家より住宅への不満率が高い!持ち家志向や新築志向は?

国土交通省では、5年ごとに大規模な「住生活総合調査」を実施している。このたび、2018年(平成30年)の詳細な結果(確報)が公表された。そこで今回は、この中から注目したいポイントをいくつか紹介しよう。【今週の住活トピック】
「平成30年住生活総合調査の調査結果」(確報)を公表/国土交通省住宅への不満は減りつつあるものの、賃貸では持ち家より不満率が高い

持ち家、賃貸のそれぞれに住宅に対する評価(満足か不満か)を聞いたところ、いずれも経年(5年)ごとに住宅の満足度が上がっている。しかし、現在の居住形態が賃貸と持ち家の人で違いが見られた。「多少不満」と「非常に不満」を合わせた『不満率』を見ると、持ち家は18.8%であるのに対して、賃貸は33.1%となり、賃貸に居住している人のほうが不満率が高く、その差は意外に大きいことが分かる。

その理由は調査結果では分からないが、一般的に持ち家と賃貸の住宅の性能には差があると言われている。それは、長く住む前提で売買される分譲住宅などでは、住宅の性能を法規制よりも引き上げて販売し、住宅への投資を賃料で回収したうえで収益を上げる賃貸住宅では、性能を法規制通りのレベルにすることが多いからだろう。こうした性能の違いが、不満率などの結果に表れていると考えてよいだろう。

持ち家・借家別の住宅に対する評価(出典:国土交通省「平成30年住生活総合調査の調査結果」(確報))

持ち家・借家別の住宅に対する評価(出典:国土交通省「平成30年住生活総合調査の調査結果」(確報))

では、住宅の評価で『不満率』が高いのは、どういった項目だろう。
不満率の高い上位5項目を見ると、「高齢者への配慮(段差がない等)」が 47.2%と最も高く、「地震時の安全性」(43.6%)、「遮音性」(42.9%)、「台風時の安全性」(38.8%)、「断熱性」(38.6%)の順に続いている。ほとんどの項目で、不満率は経年(5年)ごとにおおむね減少しているが、遮音性などあまり経年変化がない項目もある。

住宅の個別要素に対する不満率(出典:国土交通省「平成30年住生活総合調査の調査結果」(確報))

住宅の個別要素に対する不満率(出典:国土交通省「平成30年住生活総合調査の調査結果」(確報))

なにがなんでも「持ち家」「新築」志向は過去のもの?

賃貸のほうが持ち家より不満率は高かったが、今後の住み替え先として「持ち家への住み替え」を志向する人は、経年(5年)で見ると減っている。現在持ち家の世帯では、「こだわらない」が増えているが、現在借家の世帯では、「借家への住み替え」が増えている。

今後の居住形態(持ち家・借家)に関する意向(出典:国土交通省「平成30年住生活総合調査の調査結果」(確報))

今後の居住形態(持ち家・借家)に関する意向(出典:国土交通省「平成30年住生活総合調査の調査結果」(確報))

持ち家への住み替え後の住宅について「新築か中古か」を聞くと、比率自体は小さいものの「中古住宅」が経年(5年)ごとに増えている点に注目したい。「こだわらない」も平成25年・30年の調査では3割を超えており、「新築住宅」志向にかげりが見られるようだ。

持ち家への住み替え後の居住形態(新築住宅・中古住宅別)(出典:国土交通省「平成30年住生活総合調査の調査結果」(確報))

持ち家への住み替え後の居住形態(新築住宅・中古住宅別)(出典:国土交通省「平成30年住生活総合調査の調査結果」(確報))

親は、親子の住まいの距離感にあまりこだわりはない?

最後に、親世帯が子世帯にどういった住まい方の距離感を望んでいるか、見ていこう。

高齢期になって「子と同居する」ことを希望するのは、経年(5年)ごとに減少傾向にあり、平成30年では11.6%になっている。「子と同じ敷地内の別の住宅に住む、または同じ住棟内の別の住戸に住む」(7.0%)と「徒歩5分程度の場所に住む」(6.6%)の、子世帯のすぐ近くに住むことを希望するのは合わせて13.6%。最も多いのは「特にこだわりはない」の33.5%だった。

高齢期における子との住まい方(距離)の希望(出典:国土交通省「平成30年住生活総合調査の調査結果」(確報))

高齢期における子との住まい方(距離)の希望(出典:国土交通省「平成30年住生活総合調査の調査結果」(確報))

互いに行き来しやすい距離感を望むものの、それぞれのライフスタイルがあるので、親子間の距離感にこだわりはないという人が増えていると見ていいだろう。

さて、「住生活総合調査」は5年ごとに調査を実施しているので、次の実施は2023年(令和5年)になる。近年は甚大な災害が増えていたり、コロナ禍という事態も起きたりしているので、住宅に望むことや親子間の距離についても考え方が変わっていくだろう。次の調査ではどういった結果になるのか、予測するのが難しい社会になっている。

コロナ禍で申請数が減るも金利は上昇。長期固定ローン【フラット35】の利用者実態とは?

住宅ローンの中でも、全期間固定金利型ローンの代表格といわれる【フラット35】。2019年度(2019年4月~2020年3月)の利用者の実態は、わずかながらこれまでとの違いが見られるようだ。具体的に見ていこう。【今週の住活トピック】
「2019年度 フラット35利用者調査」を公表/住宅金融支援機構【フラット35】の金利は7・8月で僅かに上昇

まず、【フラット35】についておさらいしておこう。

住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して、ユーザーに提供している住宅ローンで、35年などの長期間にわたって金利が変わらないのが特徴だ。提携先の民間金融機関によって、実際に借りるときに適用される金利や融資手数料が異なることに留意したい。

2020年8月の金利を見ると、借入期間21年以上35年以下(融資率9割以下)の最頻金利で、1.31%となっている。7月は1.30%、6月は1.29%だったので、2カ月続けて0.01%ずつ上昇したことになる。そうはいっても、ここ5カ月は1.30%前後で推移しているので、超低金利であることに変わりはない。

コロナ禍の影響を受け、【フラット35】も2020年4月~6月の利用申請戸数が2万7501戸、対前年期比89%と減少している。住宅事業者が緊急事態宣言下で営業を自粛したことが大きな要因だろう。

所要資金、年収倍率、住宅面積で【フラット35】利用者にわずかな違い

さて、2019年度の【フラット35】利用者の調査結果が公表された。

【フラット35】を利用したのは、「注文住宅(土地の同時取得ありも含む)」41.9%、「新築分譲建売住宅」24.1%、「中古マンション」13.8%、「新築分譲マンション」10.4%、「中古一戸建て」9.9%の順となっている。利用者の平均年齢は40.2歳、平均世帯年収は607万円だ。

注目したいのは、まず、所要資金※の増加傾向が続いていることだ。
※所要資金:注文住宅は予定建設費、土地付注文住宅は予定建設費+土地取得費、新築および中古住宅は購入価格

所要資金(融資区分別・全国)(出典/住宅金融支援機構「2019年度 フラット35利用者調査」より転載)

所要資金(融資区分別・全国)(出典/住宅金融支援機構「2019年度 フラット35利用者調査」より転載)

【フラット35】利用者の所要資金が最も高いのは、近年の価格上昇の影響を受けた新築マンションで、年々増加を続けている。その新築マンションに引っ張られるように、中古マンションも増加を続け、加えて、土地付注文住宅と注文住宅も増加を続けている。一方、新築の建売住宅の所要資金は、安定しているのが大きな特徴だ。

所要資金が増加しているのに対して、世帯年収の平均額はそれほど上昇していないことから、所要資金に対する世帯年収の割合(年収倍率=所要資金/世帯年収)が上昇している。

年収倍率(融資区分別・全国)(融資区分別・全国)(出典/住宅金融支援機構「2019年度 フラット35利用者調査」より転載)

年収倍率(融資区分別・全国)(融資区分別・全国)(出典/住宅金融支援機構「2019年度 フラット35利用者調査」より転載)

年収倍率が最も高いのは「土地付注文住宅」の7.3倍。次いで、新築マンションの7.1倍となる。所要資金の場合と順位が入れ替わるのは、新築マンションでは都心部での供給が多いこともあって、世帯年収の平均が763万円と最も高いのに対し、土地付注文住宅の平均が628万円と新築マンションより低いことにある。一方、年収倍率が低いのは、中古住宅(マンション・一戸建て)だが、それでも5倍を超える倍率となっている。

所要資金も年収倍率も増加を続けているが、減少しているものもある。それは「住宅面積」だ。

住宅面積(融資区分別・全国)(出典/住宅金融支援機構「2019年度 フラット35利用者調査」より転載)

住宅面積(融資区分別・全国)(出典/住宅金融支援機構「2019年度 フラット35利用者調査」より転載)

全体的に横ばいの傾向にあるが、注文住宅、土地付注文住宅、新築マンションでは前年より住宅面積が縮小している。また、一戸建て系とマンション系で、住宅面積に大きな開きがあることも分かる。

中古住宅の築年数は年々高経年化する傾向

次に、中古住宅に注目して見ていこう。【フラット35】利用者が購入した中古住宅では、平均築年数の高経年化(長期化)が進んでいる。

中古一戸建ての2019年度の平均築年数は19.6年。築21年以上の割合は全体の46.7%を占める。2011年度(平均築年数15.6年)以降9年続けて高経年化している。

中古マンションの平均築年数は中古一戸建てよりさらに長い23.7年。築21年以上の割合は全体の56.3%を占める。こちらも2011年度(平均築年数15.0年)以降9年続けて高経年化している。

マンションに比べると一戸建てのほうが建物の寿命は短いが、住宅の性能が上がっていき、リノベーションの技術も向上していることから、高経年化したものも流通するようになっているので、今後も高経年化が続くのではないかと思われる。

申請戸数の減少に見られるように、コロナ禍は住宅取得においても影を落としている。低金利はまだしばらく続くと思うが、世帯年収の変動が懸念される。無理な住宅ローンを組む時代ではないので、予算や希望条件の見直しなどが行われる可能性もあるだろう。マイホームを取得する人がどういった選択をするのか、注目していきたい。

実態調査で分かった、複数拠点で生活する人たちのそれぞれの事情

不動産流通経営協会(FRK)では、新しい住まい方として注目される「複数拠点生活」について、実施者と意向者の双方に対して調査を行った。複数カ所に拠点を持って生活している人の実態はどんなものか?2拠点生活の課題は何か?について、見ていこう。【今週の住活トピック】
「複数拠点生活に関する基礎調査2020年7月」結果を公表/不動産流通経営協会(FRK)「複数拠点生活」を行っている人は6.6%、行いたい人は7.1%

この調査の「複数拠点生活」とは、「自身の主な住まいとは別に、週末や一年のうちの一定期間を異なる場所で生活すること」をいう。調査結果によると、複数拠点生活を現在行っている人(実施者)は6.6%、複数拠点生活を行いたい人(意向者)は7.1%を占めた。

実施者のサブ拠点の場所を見ると、40.1%は同県内、18.8%が同地方内、41.1%がその他地域となっており、メイン拠点とサブ拠点を同県内または首都圏内や関西圏内といった同地方内に持っている人が多い。メインからサブ拠点までの移動時間は平均で2.3時間、サブ拠点の滞在日数は平均で1年当たり66.7日だが、移動時間は30分以内から5時間以上まで、滞在日数は10日未満から300日以上まで、実に幅広く分布しているのが特徴だ。

つまり、複数拠点を行き来する生活の仕方は、人それぞれでかなり異なるようだ。

やむを得えない事情を抱えた人もいるが、趣味的な理由の人が多い

複数拠点生活を行う理由では、「転勤・単身赴任」、「通勤通学時間の短縮」、「親族の介護」、「子や孫の世話」、「相続・所有物件の管理」など、やむを得ない理由を挙げる人も多く、この調査では消極的理由としている。とはいえ大半は、「避暑避寒や癒やし」、「趣味満喫」、「自然に触れる」などの趣味的な理由や、「仕事の場」、「他地域での交流」などの仕事や地域交流を理由に挙げており、この調査では積極的理由としている。

これを大分類して実施者と意向者で比べてみると、実施者のほうが消極的理由によるものが多く、意向者では特に趣味嗜好による積極的な理由を目的として複数拠点生活を検討する人が多いことが分かる。

目的大分類(最も大きな目的・理由)(出典/不動産流通経営協会「複数拠点生活に関する基礎調査」より)

目的大分類(最も大きな目的・理由)(出典/不動産流通経営協会「複数拠点生活に関する基礎調査」より)

メイン拠点とサブ拠点の物件は、いずれも持ち家が多い

では、サブ拠点の物件は購入したのか、賃貸なのか、どちらだろう?
実施者にサブ拠点は持ち家か賃貸かを聞くと、持ち家が75.3%と圧倒的に多く、なかでも持ち家戸建てが49.9%と全体の半分を占める。ただし、持ち家の中には、相続した実家なども含まれるため、実施者・意向者それぞれにメイン拠点とサブ拠点の住戸種別の組み合わせを見たのが次の表になる。

メイン拠点とサブ拠点の住戸種別パターン(実施者)

メイン拠点とサブ拠点の住戸種別パターン(意向者)

メイン拠点とサブ拠点の住戸種別パターン(出典/不動産流通経営協会「複数拠点生活に関する基礎調査」より)

メイン拠点は持ち家、サブ拠点は実家でない持ち家の組み合わせが最も多く、実施者では32.6%、意向者では38.7%を占める。実施者のほうが意向者より少ないのは、実家に住まざるを得ない消極的な理由の人が多いからだろう。

また、全体として持ち家派はサブ拠点も持ち家、賃貸派はサブ拠点も賃貸という傾向が見られるように思う。となると、持ち家派は2拠点を所有するための取得費用の捻出という課題を抱え、賃貸派は2拠点の賃料を二重で支払うという課題を抱えるわけで、いずれにせよ費用の問題が立ちはだかるだろう。

新たな滞在先の維持費や確保費用がハードルに

「複数拠点生活を実施する上でのハードル」を複数回答で聞いたところ、「新たな滞在先の維持費」が最多となった。次いで、「新たな滞在先の確保にかかる費用」が続き、やはり複数拠点で生活するための維持費や住居費などの資金的な課題が浮かび上がった。

また、積極的な理由による実施者のうち20・30代だけで見ると、「購入にあたり住宅ローンが組めない」が高くなっている。若年層ではメイン拠点を取得した際の住宅ローンがまだかなり残っていて、新たにローンを組むことが難しいということだろう。

一方、消極的な理由による実施者では、移動時間や交通費の負担感が強いことが分かる。親の介護などで頻繁に実家と行き来する人も多いのだろう。

複数拠点生活を実施する上でのハードル(複数回答)(出典/不動産流通経営協会「複数拠点生活に関する基礎調査」より)

複数拠点生活を実施する上でのハードル(複数回答)(出典/不動産流通経営協会「複数拠点生活に関する基礎調査」より)

さて、複数拠点生活というと、悠々自適な家庭がリゾート気分を味わうという姿を思い浮かべる人もいるかもしれない。しかし、積極的な理由による実施者の世帯年収の平均は約680万円、中央値は500万~600万円なので、全般的にやや高めではあるが富裕層というわけでもない。

親や子どものため、仕事や地域交流のため、趣味嗜好のためと、それぞれ異なる理由により複数拠点で生活しているのが実態で、2拠点で重なる維持費や確保費用など資金面にも苦慮しながら、やりくりしているということだろう。

近年はコロナ禍で働き方に変化が見られる。働き方の変化で複数拠点生活がしやすくなり、実施者が増加するという時代が来るのだろうか。大いに注目したい。

「物件は水害ハザードマップのここです。」不動産取引の際に不動産会社による説明を義務化

2020年の梅雨が長引き、7月下旬の4連休にも本州に梅雨前線が停滞した。大規模な水害リスクのある大雨への警戒が長く続いているが、土地や住宅の売買・賃貸の際に、不動産会社が水害ハザードマップについて説明することが義務化されることになった。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化/国土交通省2020年8月28日から契約の際に水害リスクの説明を義務化

国土交通省は、不動産の取引時に、水害ハザードマップを活用して取引対象の所在地を事前に説明することを義務付ける法改正をする。施行日は8月28日。

2019年の梅雨時に九州地方で局地的な大雨による大規模な水害が発生したことを受け、国土交通省は同年7月下旬に、不動産の業界団体に対して、不動産取引時にハザードマップによる水害リスクの説明を行うように依頼をしていた。2020年1月には赤羽大臣が衆議院予算委員会で、この件を義務化する方向でいると示していた。

それを受けた今回の法改正では、「宅地建物取引業者(以下、宅建業者)に対し、水防法に基づき作成された水害(洪水・内水※・高潮)ハザードマップを提示し、対象物件の概ねの位置を示す」ことを義務付ける。
※内水…公共の水域等に雨水を排水できないことによる出水。法律の条文上の用語は「雨水出水」

水防法は2015年に改正され、従来の洪水による浸水想定区域を“想定しうる最大規模”の洪水に拡大すること、内水・高潮についても“想定しうる最大規模”の浸水想定区域を作成することなどが定められた。自治体は住民に対して、ハザードマップなどでこれを周知する必要がある。ハザードマップは、自治体が印刷物を配布したりホームページで掲載したりして、それぞれ公表している。

この水害(洪水・内水・高潮)に関するハザードマップ上で、取引をする対象物件がどこにあるかを示すことが、宅建業者に求められるようになる。ただし、自治体が水害に関するハザードマップを作成していなかったり、公表していなかったりした場合は、提示すべき水害ハザードマップがないことを説明すればよいことになっている。

宅建業者が不動産取引時に説明を義務化される「重要事項説明」とは?

宅地建物取引業法では、宅建業者は不動産の売買契約を締結するまでの間に、購入予定者に対して購入物件にかかわる重要事項の説明をしなければならないと定めている。これが「重要事項説明」といわれるものだ。賃貸借契約の場合も、仲介する不動産会社を通して住まいを借りる場合(貸主である不動産会社と直接契約する場合は除外)は、入居者に対して重要事項説明を行う必要がある。

災害リスクの有無は、契約を結ぶかどうかの判断に大きく影響する。そのため、これまで重要事項として説明する項目を増やしてきた経緯がある。災害関連でいえば、対象となる宅地建物が、「土砂災害警戒区域内か否か」、「津波災害警戒区域内か否か」については説明する項目と定められている。ということは、8月28日以降に契約を結ぶ場合は、重要事項説明として、書面により土砂災害、津波災害、水害(洪水・内水・高潮)の危険性の高い区域内に対象物件があるかどうかの説明がなされることになる。

また、ハザードマップには避難所などの情報も掲載していることから、国土交通省は宅建業者に対して、説明の際に避難所についても場所を示すことが望ましいとし、たとえ想定区域内に対象物件が位置していないとしても、それで災害リスクがないと誤認することのないように配慮することも求めている。

検討段階で自らハザードマップを活用しよう

大きな災害リスクについて契約前に説明がされるからといって、決して安心してはいけない。理由は、契約直前では遅いからだ。

重要事項説明が契約前に行われるとはいえ、そのタイミングは契約直前であることが多い。その場合は、契約をするか止めるかの2択しかない。検討を始めたころに情報を把握しておけば、新築住宅であれば、売主や施工会社に災害リスクを軽減する対策を施すように要求する選択肢もある。中古住宅であれば、リスク軽減の対策費用として売買価格を減額してもらうよう交渉する選択肢もある。つまり、早く情報を把握していれば、「リスクはあるけど希望条件にぴったりなので、リスクが軽減されるなら契約したい」とか、「契約しない」といった選択肢も生まれるわけだ。

加えて、重要事項説明では、地震に関する項目は義務化されていない。地震の災害リスクを予測することが難しいといった事情もあるが、住宅を検討するならば自治体が公表している地震防災・危険度マップなども確認しておく必要があるだろう。つまり、不動産会社任せではなく、自らハザードマップを調べるべきなのだ。

特に宅地建物を購入する場合は、ローンを利用して多額の費用を払うことになるので、不測の事態を想定したうえで購入を決断してほしい。近年は、数十年に一度といったレベルの大規模災害が頻発している。自治体が調査をして公表している情報については、できる限り情報を集めておくべきだろう。

「物件は水害ハザードマップのここです。」不動産取引の際に不動産会社による説明を義務化

2020年の梅雨が長引き、7月下旬の4連休にも本州に梅雨前線が停滞した。大規模な水害リスクのある大雨への警戒が長く続いているが、土地や住宅の売買・賃貸の際に、不動産会社が水害ハザードマップについて説明することが義務化されることになった。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化/国土交通省2020年8月28日から契約の際に水害リスクの説明を義務化

国土交通省は、不動産の取引時に、水害ハザードマップを活用して取引対象の所在地を事前に説明することを義務付ける法改正をする。施行日は8月28日。

2019年の梅雨時に九州地方で局地的な大雨による大規模な水害が発生したことを受け、国土交通省は同年7月下旬に、不動産の業界団体に対して、不動産取引時にハザードマップによる水害リスクの説明を行うように依頼をしていた。2020年1月には赤羽大臣が衆議院予算委員会で、この件を義務化する方向でいると示していた。

それを受けた今回の法改正では、「宅地建物取引業者(以下、宅建業者)に対し、水防法に基づき作成された水害(洪水・内水※・高潮)ハザードマップを提示し、対象物件の概ねの位置を示す」ことを義務付ける。
※内水…公共の水域等に雨水を排水できないことによる出水。法律の条文上の用語は「雨水出水」

水防法は2015年に改正され、従来の洪水による浸水想定区域を“想定しうる最大規模”の洪水に拡大すること、内水・高潮についても“想定しうる最大規模”の浸水想定区域を作成することなどが定められた。自治体は住民に対して、ハザードマップなどでこれを周知する必要がある。ハザードマップは、自治体が印刷物を配布したりホームページで掲載したりして、それぞれ公表している。

この水害(洪水・内水・高潮)に関するハザードマップ上で、取引をする対象物件がどこにあるかを示すことが、宅建業者に求められるようになる。ただし、自治体が水害に関するハザードマップを作成していなかったり、公表していなかったりした場合は、提示すべき水害ハザードマップがないことを説明すればよいことになっている。

宅建業者が不動産取引時に説明を義務化される「重要事項説明」とは?

宅地建物取引業法では、宅建業者は不動産の売買契約を締結するまでの間に、購入予定者に対して購入物件にかかわる重要事項の説明をしなければならないと定めている。これが「重要事項説明」といわれるものだ。賃貸借契約の場合も、仲介する不動産会社を通して住まいを借りる場合(貸主である不動産会社と直接契約する場合は除外)は、入居者に対して重要事項説明を行う必要がある。

災害リスクの有無は、契約を結ぶかどうかの判断に大きく影響する。そのため、これまで重要事項として説明する項目を増やしてきた経緯がある。災害関連でいえば、対象となる宅地建物が、「土砂災害警戒区域内か否か」、「津波災害警戒区域内か否か」については説明する項目と定められている。ということは、8月28日以降に契約を結ぶ場合は、重要事項説明として、書面により土砂災害、津波災害、水害(洪水・内水・高潮)の危険性の高い区域内に対象物件があるかどうかの説明がなされることになる。

また、ハザードマップには避難所などの情報も掲載していることから、国土交通省は宅建業者に対して、説明の際に避難所についても場所を示すことが望ましいとし、たとえ想定区域内に対象物件が位置していないとしても、それで災害リスクがないと誤認することのないように配慮することも求めている。

検討段階で自らハザードマップを活用しよう

大きな災害リスクについて契約前に説明がされるからといって、決して安心してはいけない。理由は、契約直前では遅いからだ。

重要事項説明が契約前に行われるとはいえ、そのタイミングは契約直前であることが多い。その場合は、契約をするか止めるかの2択しかない。検討を始めたころに情報を把握しておけば、新築住宅であれば、売主や施工会社に災害リスクを軽減する対策を施すように要求する選択肢もある。中古住宅であれば、リスク軽減の対策費用として売買価格を減額してもらうよう交渉する選択肢もある。つまり、早く情報を把握していれば、「リスクはあるけど希望条件にぴったりなので、リスクが軽減されるなら契約したい」とか、「契約しない」といった選択肢も生まれるわけだ。

加えて、重要事項説明では、地震に関する項目は義務化されていない。地震の災害リスクを予測することが難しいといった事情もあるが、住宅を検討するならば自治体が公表している地震防災・危険度マップなども確認しておく必要があるだろう。つまり、不動産会社任せではなく、自らハザードマップを調べるべきなのだ。

特に宅地建物を購入する場合は、ローンを利用して多額の費用を払うことになるので、不測の事態を想定したうえで購入を決断してほしい。近年は、数十年に一度といったレベルの大規模災害が頻発している。自治体が調査をして公表している情報については、できる限り情報を集めておくべきだろう。

2畳だけでも個室がほしい!コロナ禍で変わる、間取り意識

ミサワホーム総合研究所が、コロナ禍に在宅勤務を実施したオフィスワーカーに対して意識調査を実施した。この調査結果を見ると、今後の住まいに求めることとして「2畳ほどの最小限の個室」を挙げた人が半数にのぼるなど、住まいの間取りについても意識が変わったことがうかがえる。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「新型コロナウイルス影響下における住まいの意識調査レポート」を発表/ミサワホーム総合研究所在宅勤務の困りごとは、「仕事環境」「運動不足」「家のなかの音」

ミサワホーム総合研究所では、在宅勤務と住まいの課題を抽出するために、新型コロナウイルスの影響で在宅勤務をした一戸建て(618名)・マンション(206名)に居住する既婚者を調査対象として、緊急事態宣言解除後の6月4・5日に意識調査を実施した。

この調査で「在宅勤務での困りごと」を聞いた結果、その課題がいくつか浮かび上がった。

まず、「仕事に適した部屋がない」(28.4%)、「仕事に適した家具・設備がない(デスク、モニタ、椅子など)」(26.3%)など、“仕事環境が整わない”ことへの課題が挙げられる。次に、「運動不足・座りっぱなしによる身体疲労」(27.8%)といった“運動不足”に対して、また「家族からの話しかけ」(20.6%)、「住まいのなかの音(TVの音、調理や掃除の音、家族の話し声、換気音、機械音など)」(19.8%)といった“仕事への集中を妨げる音”に対しての課題が挙げられる。

在宅勤務での困りごと(出典/ミサワホーム総合研究所「新型コロナウイルス影響下における住まいの意識調査レポート」から転載)

在宅勤務での困りごと(出典/ミサワホーム総合研究所「新型コロナウイルス影響下における住まいの意識調査レポート」から転載)

同研究所によると、「在宅勤務した場所別でみると、リビングでは「仕事に適した場所がない」、書斎では「運動不足・座りっぱなしによる身体疲労」が最も多くなるなど、困りごとに違いがある」ことが分かったという。

今後の在宅勤務空間は、「4畳半程度」(62.4%)、「2畳程度」(50.4%)の個室がほしい

さらに「今後住まいで取り入れたい要素について」聞いた結果を見ると、【在宅勤務空間】、【家にウイルスを持ち込まない工夫】、【気分転換できる場所の拡充】それぞれで、間取りに関する興味深いニーズが見られる。

【在宅勤務空間】について見ると、仕事に集中しやすい「個室」ニーズがうかがえる。「取り入れたい」+「やや取り入れたい」の合計で「4畳半程度の個室」が62.4%と最も多いが、「2畳程度の最小限の個室」でも50.4%と過半数に達している。最小限のスペースでもいいから、仕事ができる個室がほしいということだろうか。

個室が無理でも、部屋の間仕切りをしたり、リビングの横などにカウンターを設置したりして、ワークスペースを確保したいというニーズもうかがえる。

今後住まいで取り入れたい要素について  (出典/ミサワホーム総合研究所「新型コロナウイルス影響下における住まいの意識調査レポート」から転載)

今後住まいで取り入れたい要素について (出典/ミサワホーム総合研究所「新型コロナウイルス影響下における住まいの意識調査レポート」から転載)

【家にウイルスを持ち込まない工夫】については、新しい生活様式である「手洗い」の動線確保や「玄関で上着を脱ぐ」ためのコート掛けのニーズが高い。同研究所では「ウイルス対策への意向は全体的に高い傾向だが、単体の設備よりも動線や玄関まわりで外部からの流入を防ぐ計画への意向が高いことが分かった」と分析している。

【気分転換できる場所の拡充】については、住宅の室内より「庭」や「バルコニー、屋上など」の外部スペースにニーズがある点が注目できる。

従来の間取りの考え方では、子ども部屋やリビングの充実が重視される傾向にあり、仕事用の個室や外部スペースの活用などは軽視されがちだった。この調査結果からは、在宅勤務を経験したことで、間取りに対する意識が変わってきていることがうかがえる。

仕事は「書斎」、子どもは「子ども部屋」といった意識からの転換も必要?

同研究所では、在宅型テレワークの課題に対して、次のような提案も行っている。

1:在宅勤務においても複数の仕事場所を使い分ける
2:親子そろっての在宅勤務・学習へ備える

1の「在宅勤務においても複数の仕事場所を使い分ける」については、3つの視点を提案している。
・Web会議や正確さが必要な作業などでは、気になる音や視界に入る情報を避けるよう、 個室や半個室を使う
・発想が必要な業務では、リラックスや気分転換できる良い眺めが望める部屋やバルコニーなどを使う
・情報取得や連絡の確認などの業務では、子どもの見守りや家事と並行できる家族共用ライブラリーなどを使う

そして「今後も仕事を自宅で長時間・長期間行うことが想定される方は、住まいの中でも異なる性質を持つ仕事場を選択できるようにすることが効果的」だと勧めている。

2の「親子そろっての在宅勤務・学習へ備える」については、「親子がそろって仕事や学習などをオンラインで行うシーンが増える」として、子どもの発育段階別に親子のオンラインワークを考えるのが良いと提案している。

また、「子どもの学習の場を親が見守ること、親が仕事をする様子を見せること」のメリットから、「長時間篭って学習するための子ども部屋ではなく、家族それぞれの座席があるライブラリースペースのような学習空間」も提案している。

これから夏休みに向けて、子どものオンライン授業や夏休みの宿題などで、親と子がそろって仕事や学習をする機会が増える人もいることだろう。こうした提案を参考にして、これまでの間取りの使い方から離れ、我が家なりの部屋の使い方を検討してみてはいかがだろうか。

駅距離よりも家の広さが欲しい?コロナ禍で変わる住まい選び

リクルート住まいカンパニーが、緊急事態宣言下の5月(17日~21日)に、緊急事態宣言発令(4月7日)以降に主に住宅の購入・建築・リフォームを検討した人を対象に調査を実施した。この調査によって、コロナ禍による住まい探しへの影響が浮き彫りになった。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査(首都圏)」を公表/リクルート住まいカンパニーコロナ拡大で住まい探しに影響は?住まい探しは促進?抑制?

コロナの拡大によって住まい探しにどういった影響が出たか?
興味深い質問をしたところ、「検討を休止した、いったん様子見にした」(24%)、「モデルルーム・モデルハウス・住宅展示場・不動産店舗・実物物件を見に行くことをやめた」(23%)、「検討を中止した」(7%)と、住まい探しを“抑制”した人がいたことが分かった。

もちろん、外出自粛や密を避けるために外に出るのを避けた、という理由が大きいだろう。中には収入が減って住まい探しを断念した、という人もいるかもしれない。現実的に、モデルルームや住宅展示場などは緊急事態宣言でクローズしたところが多かったし、営業店舗までクローズした不動産会社もあったので、見学したくてもできる環境になかったという状況もあっただろう。

一方で、「住まい探しの後押しになった」(16%)、「住まい探し始めのきっかけになった」(15%)、「契約の後押しになった」(10%)と、むしろ住まい探しが“促進”されたという人もいた。

また、「検討している物件のエリアが変わった」(9%)、「検討している物件の種別が変わった」(8%)と、住まいを選ぶ際の選び方に“変化”があったという人もいたことが分かる。

コロナ拡大の住まい探しへの影響(複数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査(首都圏)」より転載)

コロナ拡大の住まい探しへの影響(複数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査(首都圏)」より転載)

“促進”という観点では、すむたすが2020年6月8日~6月15日に実施した「コロナ禍における『住まい選び』に関する意識調査」にも見られる。コロナの影響を受けて、すでに引越し済み、もしくは引越しを予定・検討している人が16.9%、「リノベーション予定」が6.8%と、2割以上が住み替えやリフォームを検討した結果になっている。

コロナ禍の在宅勤務で、住宅に求めるニーズが変わった?

コロナ禍で住まい探しが促進されたり、選ぶ基準が変化したりするのはなぜだろう?
どうやら、緊急事態宣言下でテレワークが推奨され、在宅勤務を経験した人が多いという背景がうかがえる。

リクルート住まいカンパニーで「住まいの検討のきっかけ」を複数回答で聞いたところ、「結婚」(16%)、「転勤」(13%)、「第一子出生」(13%)、「転職」(9%)といった、ライフステージの変化などがきっかけになるのは、従来と変わらない結果だ。ただし、従来にはない「在宅勤務になった」(8%)が、きっかけ要因の上位に挙がる点に注目したい。

コロナ拡大で住宅に求める条件の変化を聞いたところ、僅差ではあるが「仕事専用スペースがほしくなった」(25%)が最多となった。スペースや広さへのニーズという観点で見ていくと、ほかにも「収納量を増やしたくなった」(22%)、「広いリビングがほしくなった」(22%)、「部屋数がほしくなった」(22%)が上位に挙がる。

在宅勤務で仕事用の空間の確保が必要になったり、日中に家族が多く在宅することで住宅の広さや部屋数を求めるようになったりといったことが考えられる。

同様に、「通風に優れた住宅」や「遮音性に優れた住宅」、「日当たりのよい住宅」、「冷暖房効率に優れた住宅」など、住宅の快適性を上げたいというニーズも高く出ている。これまで日中はほとんど外にいたのに、在宅時間が長くなって、住宅の快適性の重要度が高まったと見てもよいだろう。

コロナ拡大による住宅に求める条件の変化(複数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査(首都圏)」より転載)

コロナ拡大による住宅に求める条件の変化(複数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査(首都圏)」より転載)

コロナ禍で、住まいの物件種別やエリア選びにも影響大!?

次に“変化”を見てみると、一戸建てか集合住宅(マンション)かについては、一戸建て派が増えたという現象が起きている。

一戸建て派(「ぜったい一戸建て」29%+「どちらかといえば一戸建て」34%)が63%で、2019年12月調査より7ポイント増え、集合住宅派(「ぜったい集合住宅」7%+「どちらかといえば集合住宅」15%)が22%で、2019年12月調査より10ポイント減っている。

これは、単純に一戸建てかマンションかというだけではなく、一戸建てのほうが広さや部屋数を確保しやすいこと、マンションの特徴である駅からの近さなどの重視度が変わってきたことも影響しているのだろう。

「広さ」と「駅距離」のどちらを重視するかを聞いたところ、「どちらかといえば広さ」が増えて、「どちらかといえば駅からの距離」が減って、結果として広さ派が52%と過半数を占め、駅距離派が30%にとどまった。2019年12月調査がほぼイーブンだったのと比べると、潮目が変わった感がある。

広さ・駅距離 重視意向(単数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査(首都圏)」より転載)

広さ・駅距離 重視意向(単数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査(首都圏)」より転載)

交通利便性の重視度が下がる傾向は、リノベるの調査にも表れている。2020年1~3月を「コロナ前」、4~5月を「withコロナ」として、来訪客の変化を同社のスタッフに聞いた調査では、エリア選びで最も重視する項目が、「通勤時間」でコロナ前60.3%→withコロナ21.9%、「最寄駅からの距離」で32.9%→21.9%と大幅に減っている。その逆に、「自然が多い場所」で5.5%→27.4%、「郊外志向」で0%→21.9%と大幅に増え、利便立地から住環境立地への転換が見られる。

さて、コロナ禍で新しい生活様式が求められるようになり、家庭によっては家族の在宅時間が長くなっている。それによって、従来の通勤時間や駅からの距離といった交通利便性を重視する傾向が薄れ、テレワークの場合でも家で快適に暮らせる住み心地を重視する傾向が強まったことを調査結果は示している。

コロナ禍の収束時期はまだ見えていないので、それぞれの事情、それぞれの生活スタイルによって、住まい選びの条件はさらに多様化していくだろう。

おしりを洗い続けて40年。日本の誰もが知っているあの方のお名前は?

おしりをひたすら洗い続けてきた、あの方。40年洗い続けた間には、その実力を磨き、見た目も美しく姿を変えてきた。今では、あの方やそのお仲間は、日本の文化とまで言われるようになった。今回は、そんなあの方について、みっちり語ろうと思う。【今週の住活トピック】
「日本のトイレ文化に革命を起こしたウォシュレット発売40周年」について公表/TOTO「おしりだって、洗ってほしい。」で注目を浴びた、あの方

あの方のお名前は、そう、皆さんもよく知っている「ウォシュレット」(「ウォシュレット」はTOTOの登録商標)。
では、なぜ「ウォシュレット」というお名前になったか、ご存じだろうか?

トイレの生活文化を「拭くから洗う」に変えるこの商品のネーミングは難航したというが、「どんどん洗おう」=「レッツ・ウォシュ」、語呂が悪いから逆にして「ウォシュレット」となったという。『ネーミングバラエティー 日本人のおなまえっ!』の司会をしている古舘伊知郎さんでも、ご存じないかもしれない。

「ウォシュレット」は、TOTOの登録商標なので、実は筆者はめったに、“ウォシュレット”とは書かない。記事には基本的に「温水洗浄便座」と書く。これほどたくさん「ウォシュレット」と書けるのは、この記事が「ウォシュレット」発売40周年の話だからだ。

さて、「ウォシュレット」が発売されたのは、1980年6月。その知名度を一気に上げたのは、1982年9月のテレビCMだ。当時のトップコピーライターの一人、仲畑貴志さんのコピー「おしりだって、洗ってほしい。」を個性的キャラだった戸川純さんが表現するCMは、大きな話題となった。筆者もよく覚えている。

制作裏話によれば、「ウォシュレット」の良さを伝えるため、開発担当者の一人が仲畑さんに、手に付けた絵の具を紙で拭いても落ちないが洗えば落ちることを見せて、おしりも同じと説明したところ、そのままコピーにしようとなった。当時「おしり」という言葉はマスメディアで使われることがなかったが、仲畑さんは最初の打ち合わせで社長に「おしり」を使っていいか確認したという。

紙で拭くという長く続いてきたトイレの生活習慣は、簡単に変えるのは難しいもの。特に日本では和式便所が長く使われており、TOTOの和式・洋式便器の出荷比率で洋式が和式を上回ったのが1977年というから、洋式便器が急速に普及しだしたころに、「ウォシュレット」が登場したわけだ。

今ではトイレ事情は様変わりしている。内閣府の消費動向調査によると、2020年3月末時点の一般家庭(二人以上世帯)の温水洗浄便座の普及率は80.2%で、洗髪洗面化粧台の70.4%、システムキッチンの67.7%より広く普及している。温水洗浄便座が、今の生活に深く入り込んでいることが分かる。

40年間で機能を増やし、デザインを変えてきた、あの方

40年の間に、「おしりを洗う」機能の向上はもちろんのこと、新しい機能も増やしてきた、「ウォシュレット」。例えば、使用中から使用後のしばらくの間に臭気を吸い込む「脱臭機能」、使うときだけすばやく便座を温める瞬間暖房便座や使わない時間帯は便座の温度を下げるおまかせ節電などの「節電機能」、ノズルや便器を清潔に保つきれい除菌水(電解除菌水)による「清掃機能」など、さまざまな機能が搭載されてきた。

リリースの「ウォシュレットの歩み」で、その変遷が分かる。

(出典:TOTO「日本のトイレ文化に革命を起こしたウォシュレット発売40周年」リリースより転載)

(出典:TOTO「日本のトイレ文化に革命を起こしたウォシュレット発売40周年」リリースより転載)

またデザインも、便座シート型、一体形それぞれタンクレスに対応し、コンパクトに美しいデザインへと進化を続けている。

(出典:TOTO「日本のトイレ文化に革命を起こしたウォシュレット発売40周年」リリースより転載)

(出典:TOTO「日本のトイレ文化に革命を起こしたウォシュレット発売40周年」リリースより転載)

こうして日本では当たり前になってきた「温水洗浄便座」だが、高級ホテルを中心に海外にも進出している。筆者が海外で宿泊するホテルはほとんどがスタンダードクラスなので、温水洗浄便座に出会う機会がないのが残念だ。成田国際空港の国際便の到着ロビーには、「experience TOTO」という、来日客に体験してもらうIoTを活用した最先端のトイレ空間があるというので、筆者も一度利用してみたいものだ。

さて、かつてトイレは、「ご不浄」や「はばかり」ともいわれた。不浄だったり、人目をはばかる場所だったりしたわけだ。今のトイレは、そんなイメージを払拭するほどの快適さや清潔さがある。一日に何度となく利用するものだけに、今後もさらに進化を遂げていくのだろう。

コロナ禍で普及する在宅ワーク、あなたは個室派?LD派?

旭化成ホームズのくらしノベーション研究所が、在宅ワークにおけるくらしの現状について調査を行った。在宅ワークを行う場所は、一戸建て(持ち家)では個室派が5割強、集合住宅(賃貸)ではLD派が約7割となり、自宅のどこで仕事をするかが分かれたという。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「在宅ワークに関するくらしの変化についての調査結果」を公表/旭化成ホームズくらし方モデルが「令和在宅ワークモデル」へ移行

くらしノベーション研究所では、令和の現在は、新型コロナウイルスの世界的感染拡大への対策として在宅ワークが急速に普及しており、「令和在宅ワークモデル」が求められると見ている。過去の「戦後昭和専業主婦モデル」から「平成共働きモデル」へと移行し、在宅ワークが普及する令和は、「職住融合」の暮らし方に変化を遂げつつあるという。

時代と共に変化してきたくらし方モデル(出典/旭化成ホームズ「在宅ワークに関するくらしの変化についての調査結果」リリースから転載)

時代と共に変化してきたくらし方モデル(出典/旭化成ホームズ「在宅ワークに関するくらしの変化についての調査結果」リリースから転載)

同研究所では、コロナ禍終息後も在宅ワークが一定数定着すると見て、在宅ワークスペースの現状と暮らしの在り方を探る目的で、2020年4月に週7時間以上働く男女で、在宅ワーク実施者・希望者に調査を行った。

「家族時間」や「自分時間」が増加し、子どもとの夕食開始時間が早まった

一般的に「テレワーク」は、自宅のほかに通勤中やサードプレイスで仕事をすることも含むが、この調査では家で仕事をする行為を「在宅ワーク」と定義している。

まず、在宅ワークによる暮らしの変化を聞いたところ、一戸建て(持ち家)では「家族と過ごす時間が増えた」(79%)、「子どもと過ごす時間が増えた」(72%)、「家族とのコミュニケーションが増えた」(64%)と家族との交流に関する項目が上位に挙がった。

次いで、「自分の自由に使える時間が増えた」(51%)、「睡眠時間が増えた」(44%)など、個人の時間の増加も上位に挙がっている。

また、小学生以下の子どもがいる世帯では、オフィス通勤のときと比べると在宅ワークによって夕食(開始)時間が74分も早まり、夕食時間の平均は19時19分となった。ちなみに、就寝時間はあまり変わっていない。

仕事をする場所は、一戸建てで個室派が5割強、集合住宅でLD派が7割

次に、在宅ワークをする場所について、個室派(家族共用個室含む)か、LD派(ダイニングテーブル、LDのカウンターやローテブル等を含む)かの結果を見よう。一戸建て(持ち家)では、個室派が54%と過半数に達し、LD派は41%だった。一方、集合住宅(賃貸)では、LD派が71%に達し、個室派は27%に留まった。

時代と共に変化してきたくらし方モデル(出典/旭化成ホームズ「在宅ワークに関するくらしの変化についての調査結果」リリースから転載)

時代と共に変化してきたくらし方モデル(出典/旭化成ホームズ「在宅ワークに関するくらしの変化についての調査結果」リリースから転載)

この違いは、一戸建てか集合住宅かによるものというより、広さや間取りの影響を受けると考えられる。一般的に広さや部屋数が確保しやすい一戸建て(持ち家)では、間取りを4LDK以下に限るとLD派が増加し、賃貸集合住宅でも、個室数が少ないほどLD派が増加するという。つまり、仕事用に個室が確保しやすいかどうか、確保できる個室で仕事ができるかどうか、がカギになるのだろう。納戸のような窓のない、あるいは窓の小さい個室だと仕事がしづらいといったことがあるだろう。

一方で、個室の確保の有無に限らず、「キッチンなどと近く家事と両立しやすい」「家族とコミュニケーションが取れて育児と両立できる」「開放的な空間だから」といった理由で、LDで仕事をする人もいる。特に、一戸建て(持ち家)で子どもがいる女性に限ると、LD派が72%まで増加するという。

仕事をするためのデスクや椅子、パソコン置場といったことだけでなく、仕事に集中しやすい、生活音が気にならないなどを重視すると有利になる個室か、家族の様子が分かるなどを重視すると有利になるLDかといった選び方もあるようだ。

在宅ワークの困りごとは、日常生活との切り替え

在宅ワークを実施して困ったことを聞くと、最大の困りごとは「日常生活との切り替えがしにくい」になる。家事や育児を担う時間が長いからか、特に女性のほうが切り替えがしにくいと回答している。

在宅ワークの困りごと((出典/旭化成ホームズ「在宅ワークに関するくらしの変化についての調査結果」リリースから転載)

在宅ワークの困りごと((出典/旭化成ホームズ「在宅ワークに関するくらしの変化についての調査結果」リリースから転載)

オンオフの切り替えは、スペースの問題もあるが、気持ちの面での切り替えができるかが大きいだろう。
まずは仕事するスペースを明確に決めて、そこは仕事に専念する場とイメージすること。朝食を食べた流れのままデスクに向かうといったことのないように、着替えをしたり、飲み物や軽い運動などで気持ちを切り替えたり、といった個々人の工夫で乗り切ってほしい。

ちなみに筆者は、朝食後仕事に向かう前にラジオ体操を、昼食後にはヨガなどのエクササイズを、おやつの後には胸を広げる運動をしている。「食べた後に運動をしているだけじゃないか」と思う人も多いだろうが、意外に体を動かした後のほうがすっきりして仕事に集中できるものだ。

さて、在宅ワークは、コロナ禍終息後も普及していくことが予想される。それを見越して、住宅を供給する側も仕事がしやすい家づくりに知恵を絞るだろう。一方で、住む側も仕事がしやすい、あるいは家族時間や自分時間が充実するといった観点で、住まいを選ぶようになるだろう。これからのマイホームの変化にも注目していきたい。

梅雨や大型台風による土砂災害や浸水…我が家の水害リスクについて考えよう

梅雨入りして雨が降る日が多くなるが、近年は異常気象により、集中豪雨や大型台風による土砂災害や浸水の甚大な被害が増加している。最近で言えば、2019年の東日本台風による長野県の千曲川の浸水被害、2018年の豪雨による岡山県小田川の浸水被害などは記憶に新しいところだ。こうした水害に備えるにはどうしたらよいのだろうか?【今週の住活トピック】
「土砂災害警戒区域に関する基礎調査の実施目標」を達成/国土交通省23%の世帯は、土砂災害や浸水被害の想定地域に居住!?

国土交通省は、2014年の豪雨による広島県の土砂災害を受けて、5年程度を目標に土砂災害警戒区域にかかる基礎調査を行うこととし、2020年3月までに目標通り基礎調査が完了したと発表した。この基礎調査は各都道府県のホームぺージなどで公表され、これを基に「土砂災害警戒区域」や「土砂災害特別警戒区域」が指定される。

土砂災害警戒区域などに指定されると、警戒避難体制の整備や土砂災害ハザードマップによる周知などが行われる。加えて、区域内(土砂災害警戒区域や災害危険区域など)の土地や建物の売買では、重要事項説明として宅地建物取引士がその旨を説明することになっている。

一方、国土交通省の社会資本整備審議会住宅宅地分科会で5月28日に開催したオンライン会議の資料によると、「土砂災害警戒区域」などに居住する世帯数は、約157万世帯で総世帯の3.0%を占める。「津波浸水想定地域」に居住する世帯数は約123万世帯で総世帯数の4.6%を占め、「浸水想定地域」に居住する世帯数は約992万世帯で総世帯数の19.1%を占める。

このいずれかの災害リスク地域に居住する世帯数は、約1203万世帯で総世帯数の23.1%に達すると想定した。4世帯に1世帯近くが、土砂災害や浸水などのいずれかのリスクが想定される地域に居住していることになる。

まずはハザードマップを確認。リスクを知って、避難の備えを

水害リスクと地形には、どのような関係があるのだろうか?ジャパンホームシールドが開催した「ハザードマップで学ぶ水害対策~異常気象と浸水する地形条件~」と題するオンラインセミナーに参加してみた。地形図を見ると浸水リスクの有無が分かるという。例えば、長野県の千曲川の浸水被害を見ると、千曲川の川幅は立ヶ花周辺で急激に狭くなり、ボトルネックとなってその上流で水嵩が増すが、微高地が排水の出口を塞ぐように横たわることで、洪水が発生したという。

とはいえ、一般の人が地形図を読み解くのは難しい。そこで、確認したいのが「ハザードマップ」だ。各自治体が公表する各種のハザードマップや国土交通省の「ハザートマップポータルサイト」などで、土砂災害警戒区域や浸水想定区域、洪水ハザードマップなどを調べ、避難経路を確保するために道路冠水想定箇所、事前通行規制区間などを確認しておくことで、リスクの程度や避難経路の想定をしておくことができる。
〇ハザードマップポータルサイト

水害リスクにどう備えるか?

水害リスクなどがある地域だとしたら、どういった対策がとれるのだろう?

対策はハード面とソフト面があり、すでに家が建っている場合は、リスクの程度を事前に把握して、避難場所や経路を確認しておくソフト対策がとれる。

ソフト対策(出典:ジャパンホームシールド「ハザードマップで学ぶ水害対策~異常気象と浸水する地形条件~」セミナー資料より転載)

ソフト対策(出典:ジャパンホームシールド「ハザードマップで学ぶ水害対策~異常気象と浸水する地形条件~」セミナー資料より転載)

前に説明したハザードマップを活用して、リスクの把握だけでなく、実際に避難しようとしたときに道路が冠水して通行ができないということのないように、避難ルートや想定される浸水の高さを確認しておくことがポイントだ。一方で、浸水リスクが高いなら、被災後に備えて保険に加入しておくことも対策になる。建物や家財なら火災保険の「水災補償」、車なら自動車保険でカバーしておきたい。

住宅の建築前なら、被害を抑えるハード対策も可能

建物を建築する前であれば、ハード面の対策がとれる。ジャパンホームシールドによると、おおむね次の5つの対策が考えられるという。

ハード対策(出典:ジャパンホームシールド「ハザードマップで学ぶ水害対策~異常気象と浸水する地形条件~」セミナー資料より転載)

ハード対策(出典:ジャパンホームシールド「ハザードマップで学ぶ水害対策~異常気象と浸水する地形条件~」セミナー資料より転載)

(1)「建物のかさ上げ」は、基礎部分を通常よりも高く構造にして、想定される水位よりも床を高くすること。(2)「地盤のかさ上げ」は、敷地全体に盛り土をして周辺よりも地盤を高くすること。
(3)土嚢は建築後でも設置できるが、かなり重いものを数十個も積み上げていくのはかなりの体力を要するので、人や車が出入りする玄関まわりや車庫まわりに「止水板など」で壁をつくる対策も有効。
(4)浸水した水の浮力で建物が浮き上がらないように、「基礎と杭の接合」を強化する必要も。
(5)住宅の設備機器を守るには、エアコンの室外機や屋内のコンセントをできるだけ高い位置に設置。

水害リスクがある土地であれば、建築費用が増加しても可能な対策を施しておくほうがよいだろう。建築会社などとよく相談して検討したい。

さて、梅雨の長雨や台風が発生する時期になってきた。異常気象による集中豪雨や海水面の上昇により、洪水や土砂災害などの災害リスクも高まる。水害に対しては、事前の備えと早めの避難が基本だ。とはいえ、コロナ禍で3密を避けたいという事情もある。指定された避難所だけでなく、水害リスクの低い親類や知人の家、建物の上階などを避難先とすることも視野に、万一に備えてほしい。

おうち時間が長いから気になる、住宅の基本性能。リフォームには特典も

住まいづくりナビセンターが行ったアンケートによると、3人に1人が「性能向上リフォームを今後実施したい」と回答したという。アンケートの実施時期は昨年の秋なのだが、コロナ禍でステイホームが長く続いた今、住まいの性能向上リフォームの必要性を感じている人も多いのではないだろうか。詳しく説明していこう。【今週の住活トピック】
「性能向上リフォーム等に関するユーザーアンケート」結果を発表/(一財)住まいづくりナビセンター最優先でリフォームするのは不便を感じる箇所?

住まいづくりナビセンターの調査は、同法人が運営する「リフォーム評価ナビ」の利用者でリフォーム検討経験のある人を対象に、リフォームの実施実態やニーズ等についてアンケートを行ったもの。この調査では、「バリアフリーリフォーム」「省エネリフォーム」「耐震リフォーム」を性能向上リフォームと定義している。いずれも、住宅の安全性や快適性に影響を及ぼす基本性能だ。

リフォームの実施実態を見ると、実際にリフォームをする内容は、その多くが住宅の老朽化対策や使い勝手の改善などだ。アンケート調査結果では、「老朽化している設備や機器の交換、グレードアップ」が最多で64.7%を占め、次いで「間取りや水まわりなど、住まいの使い勝手の改善」が42.5%を占めている。暮らしに不便を感じることで、リフォームを思い立つからだろう。

一方、性能向上リフォームの実施状況は、バリアフリーリフォームが12.5%、省エネリフォームが11.6%、耐震が7.2%で、性能向上リフォームのいずれかを行ったのは全体の25.6%だという。

実施したリフォーム内容(出典:住まいづくりナビセンター「性能向上リフォーム等に関するユーザーアンケート」調査結果より転載

実施したリフォーム内容(出典:住まいづくりナビセンター「性能向上リフォーム等に関するユーザーアンケート」調査結果より転載)

性能向上リフォームを実施しない理由は、バリアフリーリフォーム、省エネリフォーム、耐震リフォームのいずれも「現在の生活に支障がなく、問題を感じなかった」が最も多く、過半数を占めている。

性能向上リフォームを実施しなかった人も、その必要性は認識

一方、性能向上リフォームを実施した理由は、リフォーム内容によって少し異なり、バリアフリーリフォームと耐震リフォームでは、「住宅の性能面で、今後の生活に対する不安を感じた」が最も多いが、省エネリフォームでは、「ランニングコストの節約など、経済的メリットがあることが分かった」が最も多くなっている。また、2番目に多い理由はいずれのリフォームも同じで、「自分でリフォーム情報を収集して、必要なリフォームだと思った」だった。生活に不便があるというよりは、将来の不安解消や必要性を認識したという人が多いのが、性能向上リフォームの特徴のようだ。

性能向上リフォームを実施した理由(出典:住まいづくりナビセンター「性能向上リフォーム等に関するユーザーアンケート」調査結果より転載

性能向上リフォームを実施した理由(出典:住まいづくりナビセンター「性能向上リフォーム等に関するユーザーアンケート」調査結果より転載)

性能向上リフォームを行わなかった人に、今後の実施意向を質問したところ、バリアフリーリフォーム、省エネリフォーム、耐震リフォームのいずれも「3年以内に行いたい」(1.3%)と「いずれ行いたい」(37.5%)を合わせると38.8%を占めた。やらなかったものの必要性を認識している、という人は多いのかもしれない。

ステイホームで実感するようになった?マイホームの住み心地

さて、ステイホームでテレワークが進み、自宅で仕事をする日が増えた人も多いことだろう。自宅が仕事場になったことはもちろんだが、これまで以上に自宅で長い時間を過ごすこと、パートナーや子どもたちなど家族と触れ合う時間が増えたことから、これまで気づかなかった不便さや、新たに必要な機能などを感じたこともあるのではないだろうか?

仕事場を兼ねることで求められる機能として、仕事に集中できるスペースの確保と環境の整備などは、よく話題にのぼっている。が、長い時間を過ごすことで建物の断熱性やサッシまわりの省エネ性、防音性が気になったり、子どもと室内で遊ぶことで子どもにとって危険なところに気づいたりということもあるだろう。

終息に至るにはまだ時間がかかることを考えると、自宅で仕事をするテレワークが継続したり、再び緊急事態宣言が出されたりの可能性はある。今すぐリフォームに着手するのは難しいかもしれないが、安全に快適に長く過ごすためにも、マイホームの性能について見直す良いタイミングといえるだろう。

実は多い、性能向上リフォームの優遇制度

巨大地震が懸念されるなか、住宅、なかでも旧耐震基準といわれる1981年5月末日以前に建てられた住宅(※)の耐震性の向上が急務になっている。また、地球温暖化などの対策として、住宅についても省エネ性能の向上が求められている。さらに、日本では高齢化が急速に進んでいることから、住宅についてもバリアフリー化が課題となっている。

つまり、ここでいう性能向上リフォームは、政策としても重要な課題となっているので、リフォームを促進するための優遇制度が多く用意されているわけだ。先ほどの調査の性能向上リフォームを実施した理由の結果でも、「補助金や税制優遇等が受けられることが分かった」が挙がっている。なお、耐震リフォームで優遇制度を理由とする比率が低いのは、旧耐震基準の住宅に限定されていることによるものだろう。

優遇制度についていくつか紹介すると、まずは「減税制度」がある。定められた性能向上リフォームをすると、所得税や固定資産税が減税される。所得税の減税については、返済期間5年以上のローンを利用した場合とローンを利用しなかった場合で、それぞれ減税制度があり、2021年までの最大控除額は次のようになる。

〇ローンを利用せずに、一定の耐震・省エネ・バリアフリーをした場合
※工事費等の10%を所得税額から控除できる特例措置※()内は省エネ改修工事と併せて、太陽光発電装置を設置する場合

※()内は省エネ改修工事と併せて、太陽光発電装置を設置する場合

〇ローンを利用して、一定の省エネ・バリアフリーをした場合
※ローン残高の一定割合を所得税額から控除できる特例措置
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なお、これらの減税制度は、同居対応型リフォームをした場合、長期優良住宅の認定を受けるリフォームをした場合にも利用できる。また、ローンを利用した場合の耐震リフォームは減税対象の工事外となるが、10年以上の住宅ローンを利用して100万円以上の工事をした場合などでは、いわゆる「住宅ローン減税」(10年間にわたって住宅ローンの年末残高の1%を所得税などから控除でき、消費税率10%の工事では3年間延長可能)が利用でき、この場合は旧耐震基準に限定されない。

次に、補助金制度がある。特定の条件を満たせば、国が行う「長期優良住宅化リフォーム推進事業」や「地域型住宅グリーン化事業(省エネ改修型)」などを受けられる場合があるが、むしろバリエーションが多いのは、それぞれの自治体の補助金制度だろう。

自治体ごとにそれぞれ課題があり、独自の補助金制度を多様に設けている。とはいえ、耐震化や省エネ化はどの自治体にとっても共通の課題であるので、補助金制度を用意している自治体が多い。どういった制度があるかは、「地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト」で検索できるので、調べてみるとよいだろう。

ただし、補助金制度の多くは、年度ごとに予算を確保して実施しているもので、2020年度の募集がすでに始まっている。予算枠を消化して受付を終了している場合もあるし、同じ補助金制度が毎年用意されているとも限らない点に注意が必要だ。

一方、バリアフリーリフォームについては、介護保険法にもとづく住宅改修費の支給もある。要介護・要支援と認定された場合に限られるが、20万円まで(一部自己負担あり)支給される。

住宅の性能を向上させることは、耐震化、あるいは高齢者や小さな子どもも動きやすいバリアフリー化による安全の確保、外の暖気や冷気を取り込みにくくして、エアコンのコスト削減もできる省エネ化など、暮らしの安全性や快適性に大きく影響する。家での日々の生活に不便さを感じないからといって、おろそかにすべきではない。在宅時間が長くなった今こそ、見直してみてはいかがだろう?

(※)6月1日より前に建築確認の通知書が発行されている住宅

梅雨時に気になる「カビ対策」、あなたは正しくできている?

梅雨に入ると、住宅内にカビが発生しやすくなることを受けて、リンナイがカビに関する意識調査を行い、合わせて「カビ対策知識テスト」を公開した。カビに悩んでいる人は約8割もいるのに、カビ対策知識テスト合格者は約3割しかいないという結果だったという。早速、テストに挑戦してみよう。【今週の住活トピック】
「『カビ』に関する意識調査」を公表/リンナイあなたも挑戦!カビ専門家による「カビ対策知識テスト」

では、リンナイが公開したテストに挑戦して、あなたのカビ対策知識力を判定してみよう。
次の文で正しいと思うものは〇、間違っていると思うものは×と答えよう。

■「カビ対策知識テスト」(カビ専門家・矢口貴志先生監修)より抜粋
1.湿度と温度の2つの条件がそろうとカビはどこでも生育する
2.浴室のカビ対策として入浴後に水を全てふき取る方が良い
3.浴室のカビ掃除は天井が最も重要である
4.エアコンのカビ対策としてはフィルターを定期的に掃除すれば十分
5.カビは氷点下では生きられないため、冷凍庫では発生しない
6.カビは水分を好むがダニは水分を好まないためカビとダニは同時には発生しない

正解は、「1.×、2.〇、3.○、4.×、5.○、6.×」だ。実際のテストはこの倍の12問あり、9問以上正解が「カビ対策優等生」、5問~8問正解が「合格点」になっている。筆者は合格点だったが、自信をもって回答できた設問は少なかった。意外に難しいという印象だ。

カビの悩みは「掃除」。でも、カビ対策のカギも「掃除」

リンナイの調査によると、「カビに悩まされている」という人は77.5%(「とても悩まされている)13.2%、「やや悩まされている」64.3%)もいた。カビが気になる季節は、「夏(梅雨)」に集中していて、69.6%を占めた。

カビに関する悩みは、「掃除をするのが大変」(80.8%)、「水回りが汚くなる」(60.9%)、「嫌なにおいがする」(43.7%)が上位に。カビは掃除してもなかなか取り切れず、油断するとすぐ発生するので、ストレスが溜まることだろう。

テストの監修をした矢口先生によると、「カビは、湿度(60%以上)、気温(20~30℃が最適)、栄養分(食べカス・人のアカなど)の3つの条件が揃うと発生しやすくなる」という。湿度と気温の条件がそろう梅雨時期に繁殖しやすいカビ対策は、栄養分を取り除くことが重要なので「一層掃除に力を入れ、カビが目についたらすぐにカビ取り剤を使用して、取り除いた方がよい」と助言している。

また、梅雨入り前の比較的乾燥している時期に、「浴室などの水まわりをきちんと掃除しておくと、梅雨時のカビが発生しにくい」ということなので、乾燥した日に水まわりの掃除を頑張ってみてはいかがだろう。

カビ対策は「水を取り除き、乾燥させる」「栄養源のホコリや石鹸カスを取り除く」

カビに悩む場所を聞くと、ダントツで「浴室内」(84.4%)で、4位の「キッチン」(23.7%)、5位の「洗面所」(22.5%)、6位の「トイレ」(17.8%)と水まわりがやはり上位に挙がる。

カビに悩む場所(出典/リンナイ「『カビ』に関する意識調査」のリリースより転載)

カビに悩む場所(出典/リンナイ「『カビ』に関する意識調査」のリリースより転載)

浴室の掃除は、「水を取り除く」のが原則。入浴後に水をふき取る一方、換気扇を長くかけて乾燥させることもポイント。また、いくら床や浴槽を掃除しても、掃除しない天井からカビの胞子が降ってくることでカビは発生するというので、「浴室の天井の掃除」も重要だという。

また、石鹸カスはカビの栄養源になるので、石鹸カスを取り除き、黒カビやピンクの汚れ(ロドトルラというカビ)はカビ取り剤で取り除くようにしよう。矢口先生によると、水回りのゴムパッキンのピンクの汚れをカビと認識しない人が多いが、固いブラシなどでこするとかえってパッキンを傷つけてしまい、その傷にカビが侵入しやすくなるので、カビ取り剤を使うようにということだ。

しまった! 筆者はピンクの汚れをブラシでゴシゴシ取っていた。これからは気を付けるようにしよう。

次に、悩み場所として2番手に上がった「エアコン」(42.6%)だが、フィルターにホコリが溜まらないようにこまめに(矢口先生の推奨は2週間に1度程度)掃除することはもちろんのこと。加えて、エアコンを冷房で使用すると、内部は湿気でカビが生えやすくなるので、送風機能を使って乾燥させる必要がある。冷房の後には送風と、習慣化しておきたい。

カビ対策では、換気・通風も大切。浴室の換気扇も活用を

では、カビ予防として具体的にどんなことを行っているのだろうか? 調査結果では、「こまめに掃除する」(43.5%)を抑えて、「換気をする」(77.0%)、「部屋の通気性をよくする」(54.7%)と換気や通気が上位になった。

カビの予防として行っていること(出典/リンナイ「『カビ』に関する意識調査」のリリースより転載)

カビの予防として行っていること(出典/リンナイ「『カビ』に関する意識調査」のリリースより転載)

浴室の換気扇について聞くと、「入浴後の数時間だけ使う」が半数の49.3%だった。24時間換気で「常につけっぱなしにする」が28.9%いる一方、「浴室の換気扇は使わない」も15.6%いる。どのように使うのがよいのだろう?

浴室換気扇の使い方(出典/リンナイ「『カビ』に関する意識調査」のリリースより転載)

浴室換気扇の使い方(出典/リンナイ「『カビ』に関する意識調査」のリリースより転載)

矢口先生によると、24時間換気機能の付いている換気扇なら、「入浴後は強力に換気し、その後は常につけっぱなしにしておくのがいい」という。排水溝に水が溜まっていたり、外部から湿気が入り込むことがあるからだそうだ。

筆者の家の浴室暖房乾燥機には24時間換気機能は付いていないが、浴室の換気だけでなく、花粉時や梅雨時に衣類の乾燥としても使っている。衣類乾燥を使うと、高温と湿気でカビが増えるのではないかと心配していたが、衣類乾燥機能は浴室内の気温が45℃程度になるので、カビは発生しにくいのだという。

また、「風通しのいい場所はカビが生えにくい」というので、通風は効果があるようだ。湿気のこもりやすい場所は、換気扇や扇風機を活用して空気の流れを起こすことで換気を行い、エアコンや除湿器で湿度を下げるのが効果的だという。

さて、換気については、ダイキン工業が「上手な換気の方法」を公開している。エアコンを使うと除湿はできるが、室内の空気を冷たくして部屋に戻すので、室内の空気を入れ替えることはできない。新型コロナウイルスの感染予防策として室内の換気が重要視されているので、24時間換気機能を使ったり、窓を開けて空気の通り道をつくる必要がある。

〇ダイキン工業「上手な換気の方法」

梅雨時は外の湿気が多いから窓を開けない、エアコンをかけているから窓を開けないといったことは、感染予防としては望ましくない。コロナ下の今は、定期的に窓を開けて風を通すようにしよう。

テレワーク導入率は47%に増加。在宅ワーク継続による住まいのニーズ変化も。

リクルート住まいカンパニーでは、2019年11月に引き続き、今回は「緊急事態宣言」真っただ中の2020年4月(17日~20日)にテレワークの実態調査をWebで実施した。その結果、テレワークの実施者が増加し、住まいの意識についても変化が現れたことが分かった。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「新型コロナ禍を受けたテレワーク×住まいの意識・実態」調査を発表/リクルート住まいカンパニーテレワークとリモートワークは同じ?緊急事態宣言でどう変わった?

最近は、「テレワーク」のほかにも、「リモートワーク」や「在宅勤務」など、さまざまな言葉が使われているので、最初にこれらの言葉について、確認しておこう。

一般社団法人日本テレワーク協会によると、テレワークとは「tele = 離れた所」と「work = 働く」をあわせた造語だという。働く場所によって、自宅=「在宅勤務」、顧客先や移動中=「モバイルワーク」、施設=「サテライトオフィス勤務など」の3タイプに分かれる。

一方、リモートワークは、「リモート=遠隔」「work = 働く」なので、テレワークとリモートワークは、ほぼ同じと考えてよいだろう。

リクルート住まいカンパニーでは、テレワークについて、2回の調査(スクリーニング調査・本調査)を行い、その実態を調べた。最初のスクリーニング調査は、関東地方・長野県・山梨県に居住する20~64歳までの会社員・公務員を対象とし、テレワークを少しでも実施していると回答した人を「テレワーク実施者」と定義、さらにテレワーク実施者のうち「実施率が10%以上」の人を「テレワーカー」と定義した。2回目の本調査は、このテレワーカーを対象に行った。これを前提に、調査結果を詳しく見ていくことにしよう。

まず、スクリーニング調査によるテレワーク実施率(対象は会社員・公務員のみ)は、前回の17%に対して、今回は47%と30ポイントも増加した。このテレワーク実施率は、年代別や世帯構成別よりも、企業規模別のほうがその差が大きく、企業の規模が大きくなるほど実施率が高くなっている。しかし、それ以上に差が大きいのが、職種別だ。

「企画/マーケティング」「web/クリエイティブ系」「営業」「エンジニア」など、職場に行かなくても働ける業務が多い職種での実施率が高く、すべての職種で前回調査より増加している。

職種別テレワーク実施率 (スクリーニング調査/会社員・公務員のみ/単数回答)(出典/リクルート住まいカンパニー「新型コロナ禍を受けたテレワーク×住まいの意識・実態」調査)

職種別テレワーク実施率 (スクリーニング調査/会社員・公務員のみ/単数回答)(出典/リクルート住まいカンパニー「新型コロナ禍を受けたテレワーク×住まいの意識・実態」調査)

この傾向は、東京都が実施した「テレワーク導入率緊急調査結果」とも合致している。東京都内の従業員30人以上の企業では、「テレワーク導入率」は3月時点で24.0%だったが、4月時点では62.7%に増加し、特に従業員規模別で企業規模が大きいほど導入率も高くなった。さらに導入率を業種別で見ると、事務・営業職などが中心の業種で約34ポイント増の76.2%に、現場作業・対人サービス業務などが中心の業種で約40ポイント増の55.0%に達し、いずれも3月より4月で増加している。

このことから見ても、テレワークを導入する企業が確実に増加しているのは、間違いないようだ。

次に、リクルート住まいカンパニーの調査結果から、テレワーク実施者の実施時間を見ると、その時間も長くなっている。テレワーク実施者の29%が業務実施時間の90%以上でテレワークを実施しており、前回は実施者の48%が実施時間割合10%未満だったことと比べると、実施している人数だけでなく、実施している人の業務時間内に占める割合も拡大していることが分かる。

テレワーク実施割合 (スクリーニング調査/会社員・公務員かつテレワーク実施者のみ/単数回答)(出典/リクルート住まいカンパニー「新型コロナ禍を受けたテレワーク×住まいの意識・実態」調査)

テレワーク実施割合 (スクリーニング調査/会社員・公務員かつテレワーク実施者のみ/単数回答)(出典/リクルート住まいカンパニー「新型コロナ禍を受けたテレワーク×住まいの意識・実態」調査)

注目したいのは、本調査のテレワーカー(仕事時間の10%以上をテレワークで実施している人)のうち71%が、「コロナの影響でテレワーク(リモートワーク)を始めた」と回答していることだ。「緊急事態宣言」によるテレワークの推進が、働き方を大きく変えていることがうかがえる結果だ。

テレワークの拡大で、マイホームのどこに不満を感じる?

新型コロナウイルスの影響によるテレワークで最も増えているのが、在宅勤務だろう。これまで仕事をする場所ではなかった自宅が、いきなり職場に変わって戸惑っている人も多いことだろう。

本調査でテレワーカーに不満を聞いたところ、不満/不便を感じる項目として最も高いのは、「オンオフの切り替えがしづらい」で35%だった。次いで「仕事専用のスペースがない」「仕事用のデスク/椅子がない」などが続いた。

テレワークに際する不満 (本調査/全体/複数回答)(出典/リクルート住まいカンパニー「新型コロナ禍を受けたテレワーク×住まいの意識・実態」調査)

テレワークに際する不満 (本調査/全体/複数回答)(出典/リクルート住まいカンパニー「新型コロナ禍を受けたテレワーク×住まいの意識・実態」調査)

ただし、家族構成が「既婚で6歳以下の子どもと同居する」人に限定すると、半数近くの46%が「子どもを見つつ仕事可能な環境(部屋・スペース)がない」に不満が集まった。小さい子どもからは目が離せない一方で、仕事にも集中しなくてはならないというジレンマがあるのだろう。

また、テレワークをしている場所を聞くと、過半数の55%が「リビングダイニング(ダイニングテーブル)」と回答しており、家族構成が「既婚で6歳以下の子どもと同居する」人に限定するとその割合は71%にまで上がる。

なお、テレワークをしている場所としては、新型コロナウイルスの影響で、移動や3密が発生する「カフェ」や「コワーキングスペース」「サテライトオフィス」などは前回調査と比べると減っている。

今後もテレワークを継続したい!自宅の間取り変更や住み替えも検討?

では、コロナ禍終息後も、テレワークを続ける意向はあるのだろうか?
「テレワークを継続したい」人の割合は全体で84%と高く、そのうち「働いている時間の10%~70%で実施したい」人が59%(10%~30%で実施したい:19%、30%~50%で実施したい:22%、50%~70%で実施したい:17%)だった。

「今後もテレワークを行う場合、自宅の間取りを変更したいか」を聞くと、「変更したいことはない」が52%を占める反面、「仕事専用の小さな独立空間が欲しい」(31%)、「リビングの一角を間仕切り可能な仕事スペースにしたい」(13%)など、仕事に集中できるような間取り変更を希望する人も多い。

さらに、「今後も引き続きテレワークを行う場合、今の家から住み替えを検討するか」を聞くと、24%に住み替え意向があり、住み替える家の希望条件として、「今より部屋数の多い家に住み替えたい」 (40%)や「今よりリビングは広くしたい、かつ個室数も確保したい(ただし個室は狭くてもよい)」(27%)など、間取りに関する希望が挙がった。また、「通勤利便性より周辺環境重視で住み替えたい」(26%)や「周辺に大きな公園や緑地があるところに住み替えたい」(13%)など、立地に関する希望も挙がっている。

今後住み替えたい住宅への希望 (本調査/住み替え意向あり/複数回答)(出典/リクルート住まいカンパニー「新型コロナ禍を受けたテレワーク×住まいの意識・実態」調査)

今後住み替えたい住宅への希望 (本調査/住み替え意向あり/複数回答)(出典/リクルート住まいカンパニー「新型コロナ禍を受けたテレワーク×住まいの意識・実態」調査)

最後に、SUUMO編集長の池本洋一さんが、「在宅ワークを快適にするための住まいでできる3つの工夫」を紹介している。参考にしてほしい。

在宅ワークを快適にするための住まいでできる3つの工夫(出典/リクルート住まいカンパニー「新型コロナ禍を受けたテレワーク×住まいの意識・実態」調査)

在宅ワークを快適にするための住まいでできる3つの工夫(出典/リクルート住まいカンパニー「新型コロナ禍を受けたテレワーク×住まいの意識・実態」調査)

さて、新型コロナ禍を契機に、終息後もテレワークが拡大することが見込まれる。そうなると、自宅と職場の垣根が薄れる一方、通勤や満員電車から解放されることもあり、立地や間取りなど住まい選びの考え方にも大きな変化が生じそうだ。今後の住まいのあり方に注目していきたい。

在宅時間が長いと不用品が増える?トランクルームの賢い利用法とは?

外出自粛やスティホーム週間によって、自宅にいる時間が長くなったという人は多い。大掃除や部屋の模様替えなどに取り組む人もいると聞く。家の片づけで困るのは収納不足だ。トランクルームや収納に関する調査結果から、収納について考えてみよう。【今週の住活トピック】
「トランクルームや収納に関する調査」結果を公表/加瀬トランクサービス「一定期間しか使わないが、必ず使うもの」を預けるのがおススメ

加瀬トランクサービスの調査によると、トランクルームユーザーに利用する理由やきっかけを聞いたところ、「引越した後、住居が狭くなった」(24.4%)が最多で、「趣味の収集品が増えた」13.2%、「荷物が増えて収納しきれない、不用品を整理したくなった」11.2%、「仕事の書類や仕事関連品が増えた」10.2%が続く結果となった。

では、具体的にトランクルームに何を収納するのだろう?
トランクルームに収納したいもの(複数回答)として挙がったのは、「書籍・雑誌類」(40.7%)が最も多く、2番目に「季節の衣類」(28.4%)、3番目に「季節家電」(23.7%)と続いた。また、「スーツケース」(23.4%)が5番目に食い込んだ。

(出典:株式会社加瀬トランクサービス「トランクルームや収納に関する調査」)

(出典:株式会社加瀬トランクサービス「トランクルームや収納に関する調査」)

たしかに、書籍や雑誌、音楽・映像・ゲームメディアといった「趣味の収集品」が上位に挙がるが、それと同様に目立つのが、「一定期間しか利用しないもの」だ。季節の衣類、季節家電、長期旅行で使うスーツケースなどが該当する。ほかに、布団類(来客用や夏・冬用など)やスキー用品、アウトドアレジャー用品なども該当するだろう。

調査結果のリリースを見ると、トランクルームを利用する理由の質問へのフリーコメントで、「出張時に使用する荷物」「単身赴任時に使用する荷物」「会社帰りのランニングで保管する荷物」などが挙がったというが、それも同じ発想だろう。

このように「一定期間しか使わないが、必ず使うもの」を預けるのが、トランクルームを利用する適切な方法だろう。必要なときに取り出したり、入れ替えたりして使い、不要時には預けるのは、住宅の収納不足を解消する賢い利用方法だと思う。定期的に取り出して使うものでないと、預けたまま忘れてしまいがちだからだ。

増えた荷物を適切に整理するチャンス到来

日本の住宅事情を考えると、収納不足を外部の収納で解消する方法も選択肢ではあるが、反面、「荷物が増えて収納しきれないのでトランクルームを利用する」という利用目的も多い。荷物が増えた理由としては、趣味や仕事の荷物の増加、大掃除や模様替えで出た不用品、同居や結婚・出産など家族が増えたことによる荷物などさまざまなのだが、増えた荷物は整理しなければ減らない。

「たぶん使わない」「使用頻度が低い」のであれば、「いずれ誰かが使うかもしれない」と保管するのではなく、思い切って断捨離することも必要だ。

同じ調査で、収納やモノに関する意識・価値観として、「まだ使える不用品は極力売りたい」(62.9%)、「モノは壊れたら修理するなど、できるだけ長く使いたい」(57.6%)、「不用品は捨てるぐらいなら、人にあげるほうが環境にも良いと思う」(50.7%)などに当てはまると回答した、環境に優しい意識をもつ人は多い。不要なものは、フリーマーケットやリサイクルショップで売る、ボランティアで提供するなど、単に捨てる以外の方法もあるだろう。

また、「家族との思い出の品は大事に保管したい」(75.5%)は4人に3人が、「子どもの作品や教材等、成長の証を大事に保管したい」(51.5%)も2人に1人が当てはまると回答している。家族の思い出や成長の証を大切にすることは、とても素敵なことだ。しかし、仕舞い込んでいたら思い出す機会は減ってしまう。それらを撮影するなどコンパクトな形で保管したり、大切な思い出の品に絞り込んで手元に残したりして、いつでも見られるように収納するのも一つの方法だろう。

さて、在宅時間が長い今、家の中の荷物の整理や不用品の洗い出しをした家庭が多いのだろう。家庭からのゴミの量が増えているという。とはいえ、今は大量にモノを捨てて清掃事業者の負担を増やすのは適切ではない。家にいる時間を使って不用品を洗い出し、処分する方法や時期を決めたうえで、一定期間だけトランクルームに預けるという方法はありだろう。

トランクルームを賢く利用することと、トランクルームになんとなく預けておくこととでは、同じ利用料金を支払ってもその価値は異なると思う。チャンス到来と考えて、増えた荷物の整理を検討してはいかがだろう。

【実家の相続】させたい親は60%、するつもりの子どもは36%。親子間の意識差が明らかに

このGWは、「Stay Home 週間」と名が変わり外出自粛・感染拡大防止で帰省を見送る人も多いことだろう。政府は「オンライン帰省」を勧めている。休みで時間があるときに親子でじっくり話すことは、家族関係を深める機会になるだろう。さて、親子の間で「実家の相続」については、考えが大きく異なることが調査結果で分かった。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「首都圏戸建持家の相続についてのインターネット調査」結果を公表/ランドマーク税理士法人首都圏にある一戸建ての実家、相続させるつもりの親は60.2%、相続するつもりの子は36.1%

ランドマーク税理士法人が、首都圏に一戸建ての持ち家がある親(60代・70代以上)と子ども(30代~50代)に調査をしたところ、実家を「相続させる」側の親のほうは、60.2%が相続させるつもりでいるのに対し、実家を「相続する」側の子どものほうは、36.1%しか相続するつもりがないという結果になった。

また、すでに「相続しない」つもりでいる子どもも20.1%いて、実家の相続については親子間で意識に大きな違いがあることが浮き彫りになった。

(出典:ランドマーク税理士法人「首都圏戸建持家の相続についてのインターネット調査」)

(出典:ランドマーク税理士法人「首都圏戸建持家の相続についてのインターネット調査」)

相続した後の実家をどう活用するかを聞いたところ、親たちは「子どもに住んでほしい」と46.8%が思っており、どう活用するかは「子どもに任せる」が35.1%に達した。

子どものほうでも、「自分たちが住む」つもりが51.2%と最も多いが、「売却」するが17.0%、何らかの形で「賃貸」するが12.1%、「まだ考えていない」が18.4%だった。

さらに相続する子どものほうには、「相続税はどうなるのか」、「兄弟姉妹間でもめないか」、「実家の資産価値はどの程度か」、「維持管理費や税金はどの程度か」など、いろいろな不安があるようだ。

実家の相続について、話し合っていない親子が72.8%。早すぎることはない

では、親子間のギャップはどのように埋めたらよいのだろうか?
仕事上のことであれば、「正確な情報の把握」や「課題の共有」などが考えられるが、親子間ではなかなかそうもいかないようだ。

実家の相続について親子間で話しているかについては、子どもや親の年齢が高くなるほど話し合う割合は高くなるものの、全体平均では27.2%しか話しておらず、72.8%は話をしていないと回答している。

(出典:ランドマーク税理士法人「首都圏戸建持家の相続についてのインターネット調査」)

(出典:ランドマーク税理士法人「首都圏戸建持家の相続についてのインターネット調査」)

親子間で話をしない理由をフリーアンサーで回答してもらったところ、親子ともに、「相続の話はまだ早い」「なんとなく」という声が多かったという。特に、親のほうで時期尚早という声が目立つ。

ところが、実際に相続となった場合、相続する側には、兄弟姉妹間の分割協議や相続税の納税、売却までの維持費の支払い、活用する際のリフォーム費用の捻出など、検討すべきことが山積みだ。しかも、相続税の納付期限は10カ月以内とかなり短い。あらかじめ親の意向を確認できなかったことで、協議が進まないということもあるかもしれない。

そうなってから、もっと早くきちんと話し合っておけばよかったと思っても、後の祭り。たしかに、親には長生きしてほしいものだ。相続の話題は、話しづらいし、切り出すきっかけも見つけづらいだろう。

今のように、何が起きるか予測できないと感じる時期であれば、万一の場合に備えて、「介護が必要になったときにどんな介護を考えているのか」、「自宅はどうしたいのか」などを親子で話し合うチャンスかもしれない。

「外出自粛」、「Stay Home」になってから、家の中の荷物整理をする人が多くなり、ゴミの量が増えているという話がニュースになった。家族が家にいる時間が増えて、家族関係を見直す機会が生まれたという家庭も多いと聞く。家族や家庭の課題整理が進む今こそ、実家の相続問題にも目を向けてはいかがだろう。

2019年の新築マンション購入者、首都圏・関西圏ともに最も高く、最も狭く!?

リクルート住まいカンパニーは、「2019年首都圏新築マンション契約者動向調査」および「2019年関西圏新築マンション契約者動向調査」の結果を発表した。いずれの調査結果でも、調査を開始以降(首都圏は2001年、関西圏は2003年)で平均購入価格は最も高く、平均面積は最も小さくなったことが分かった。その実態について詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「2019年新築マンション契約者動向調査」を発表/リクルート住まいカンパニー
●首都圏
●関西圏平均購入価格は首都圏が5517万円、関西圏が4517万円で、2001年以降最高額に

調査は、新築マンションの購入契約者を対象に、2019年1月~12月に集計した、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県:4931件)と関西圏(大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・和歌山県・滋賀県:1024件)の結果をまとめたもの。

新築マンションの平均購入価格は、首都圏が5517万円で2018年より115万円増加した。また、関西圏は4517万円で2018年より179万円増加した。いずれも5000万円以上のシェアが増えたことによるもので、2001年の調査以降で最も高くなった。

購入価格(実数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年首都圏新築マンション契約者動向調査」「2019年関西圏新築マンション契約者動向調査」)

購入価格(実数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年首都圏新築マンション契約者動向調査」「2019年関西圏新築マンション契約者動向調査」)

平均購入価格が高くなったためか、ローンの借入総額も増加している。首都圏では平均4791万円(前年より98万円増)、関西圏では平均3993万円(前年より233万円増)となり、2005年以降で最も高い額となった。

一方、平均専有面積を見ると、首都圏では68.2平米、関西圏では71.5平米となり、いずれも2001年以降で最も小さくなった。価格の上昇局面では専有面積を小さくして販売価格を抑える傾向が生まれるが、調査結果にもそれが表れている。

共働き比率がこれまでで最高。世帯総年収にも影響

「購入価格の増加」→「住宅ローンの借入総額の増加」を支えているのは、共働き比率の上昇だ。首都圏では、全体に占める共働き世帯の割合は59%、既婚世帯(シングル世帯やその他・不明を除く)で見ると68%に達した。また関西圏では、全体に占める共働き世帯の割合は54%、既婚世帯で見ると65%に達した。いずれも、2001年以降で最も高い割合となっている。

共働き世帯が増えることは、世帯総年収が上がることにつながる。世帯総年収の全体の平均額は、首都圏で988万円、関西圏で814万円であるが、共働き世帯に注目すると平均額は上がる。

○既婚世帯の共働きの有無による平均世帯総年収
首都圏:既婚・共働き世帯 平均1038万円、既婚・共働きでない世帯 平均945万円
関西圏:既婚・共働き世帯 平均849万円、既婚・共働きでない世帯 平均789万円

「価格」と肩を並べた項目は?

夫婦それぞれに収入があることを前提にマンションを購入するとなると、購入後も共働きを継続する意思があるということになる。となると、住まい選びの考え方にも変化が生まれる。

「物件を検討するうえで重視した項目」について聞くと、“ない袖は振れぬ”ので、常に「価格」がTOPに上がるものだ。それが、2019年の調査では「最寄駅からの時間」が「価格」に肩を並べる結果となった。首都圏では、「価格」が89.1%と1位を保っているが、2位の「最寄駅からの時間」が85.7%と肉薄している。関西圏に至っては、「最寄駅からの時間」が86.0%、「価格」が85.8%と、僅差ながら順位が逆転している。

購入重視項目(全体/複数回答)※2019年契約者調査の多い順(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年首都圏新築マンション契約者動向調査」「2019年関西圏新築マンション契約者動向調査」)

購入重視項目(全体/複数回答)※2019年契約者調査の多い順(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年首都圏新築マンション契約者動向調査」「2019年関西圏新築マンション契約者動向調査」)

何を重視してマンションを購入するかは、社会情勢などを反映している。リーマンショック後の2009年契約者調査では、「価格」を重視する比率は、首都圏で95.2%、関西圏で93.5%と極めて高い比率を占めた。企業の業績が悪化し、年収が抑えられた時期ということがあるのだろう。

10年後の2019年の調査では、夫婦が共に通勤することの影響もあるのだろうが、「最寄駅からの時間」も重視するようになった。加えて、駅からの所要時間が短い新築マンションの供給が増えている。東京カンテイの『マンションデータ白書2019』から「新築マンションの徒歩時間別供給シェア(駅徒歩物件のみ集計)」を見ると、首都圏では「3分以内」が22.0%、「4~7分」が35.0%、近畿圏では「3分以内」が28.5%、「4~7分」が34.7%と、6割近くが駅に近い場所で供給されたことが分かる。

さて、調査結果を見てきたように、共働き世帯の増加が新築マンションの購入にも大きな影響を与えている。共働きを前提とした世帯総年収で、マイホームを取得する家庭も多いだろう。そうした家庭では、共働きができないと住宅ローンの返済に影響する。今求められるのは、安心して共働きが続けられる社会環境をつくることだろう。

2019年の新築マンション購入、首都圏・関西圏ともに最も高く、最も狭く!?

リクルート住まいカンパニーは、「2019年首都圏新築マンション契約者動向調査」および「2019年関西圏新築マンション契約者動向調査」の結果を発表した。いずれの調査結果でも、調査を開始以降(首都圏は2001年、関西圏は2003年)で平均購入価格は最も高く、平均面積は最も小さくなったことが分かった。その実態について詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「2019年新築マンション契約者動向調査」を発表/リクルート住まいカンパニー
●首都圏
●関西圏平均購入価格は首都圏が5517万円、関西圏が4517万円で、2001年以降最高額に

調査は、新築マンションの購入契約者を対象に、2019年1月~12月に集計した、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県:4931件)と関西圏(大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・和歌山県・滋賀県:1024件)の結果をまとめたもの。

新築マンションの平均購入価格は、首都圏が5517万円で2018年より115万円増加した。また、関西圏は4517万円で2018年より179万円増加した。いずれも5000万円以上のシェアが増えたことによるもので、2001年の調査以降で最も高くなった。

購入価格(実数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年首都圏新築マンション契約者動向調査」「2019年関西圏新築マンション契約者動向調査」)

購入価格(実数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年首都圏新築マンション契約者動向調査」「2019年関西圏新築マンション契約者動向調査」)

平均購入価格が高くなったためか、ローンの借入総額も増加している。首都圏では平均4791万円(前年より98万円増)、関西圏では平均3993万円(前年より233万円増)となり、2005年以降で最も高い額となった。

一方、平均専有面積を見ると、首都圏では68.2平米、関西圏では71.5平米となり、いずれも2001年以降で最も小さくなった。価格の上昇局面では専有面積を小さくして販売価格を抑える傾向が生まれるが、調査結果にもそれが表れている。

共働き比率がこれまでで最高。世帯総年収にも影響

「購入価格の増加」→「住宅ローンの借入総額の増加」を支えているのは、共働き比率の上昇だ。首都圏では、全体に占める共働き世帯の割合は59%、既婚世帯(シングル世帯やその他・不明を除く)で見ると68%に達した。また関西圏では、全体に占める共働き世帯の割合は54%、既婚世帯で見ると65%に達した。いずれも、2001年以降で最も高い割合となっている。

共働き世帯が増えることは、世帯総年収が上がることにつながる。世帯総年収の全体の平均額は、首都圏で988万円、関西圏で814万円であるが、共働き世帯に注目すると平均額は上がる。

○既婚世帯の共働きの有無による平均世帯総年収
首都圏:既婚・共働き世帯 平均1038万円、既婚・共働きでない世帯 平均945万円
関西圏:既婚・共働き世帯 平均849万円、既婚・共働きでない世帯 平均789万円

「価格」と肩を並べた項目は?

夫婦それぞれに収入があることを前提にマンションを購入するとなると、購入後も共働きを継続する意思があるということになる。となると、住まい選びの考え方にも変化が生まれる。

「物件を検討するうえで重視した項目」について聞くと、“ない袖は振れぬ”ので、常に「価格」がTOPに上がるものだ。それが、2019年の調査では「最寄駅からの時間」が「価格」に肩を並べる結果となった。首都圏では、「価格」が89.1%と1位を保っているが、2位の「最寄駅からの時間」が85.7%と肉薄している。関西圏に至っては、「最寄駅からの時間」が86.0%、「価格」が85.8%と、僅差ながら順位が逆転している。

購入重視項目(全体/複数回答)※2019年契約者調査の多い順(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年首都圏新築マンション契約者動向調査」「2019年関西圏新築マンション契約者動向調査」)

購入重視項目(全体/複数回答)※2019年契約者調査の多い順(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年首都圏新築マンション契約者動向調査」「2019年関西圏新築マンション契約者動向調査」)

何を重視してマンションを購入するかは、社会情勢などを反映している。リーマンショック後の2009年契約者調査では、「価格」を重視する比率は、首都圏で95.2%、関西圏で93.5%と極めて高い比率を占めた。企業の業績が悪化し、年収が抑えられた時期ということがあるのだろう。

10年後の2019年の調査では、夫婦が共に通勤することの影響もあるのだろうが、「最寄駅からの時間」も重視するようになった。加えて、駅からの所要時間が短い新築マンションの供給が増えている。東京カンテイの『マンションデータ白書2019』から「新築マンションの徒歩時間別供給シェア(駅徒歩物件のみ集計)」を見ると、首都圏では「3分以内」が22.0%、「4~7分」が35.0%、近畿圏では「3分以内」が28.5%、「4~7分」が34.7%と、6割近くが駅に近い場所で供給されたことが分かる。

さて、調査結果を見てきたように、共働き世帯の増加が新築マンションの購入にも大きな影響を与えている。共働きを前提とした世帯総年収で、マイホームを取得する家庭も多いだろう。そうした家庭では、共働きができないと住宅ローンの返済に影響する。今求められるのは、安心して共働きが続けられる社会環境をつくることだろう。

新型コロナ対策で未完成の引き渡しが可能に!?何を注意すればよい?

さくら事務所が一戸建てを新築中の施主に対して、「引き渡しチェックリスト」を無償で配布し、注意喚起を促している。その理由は「新型コロナ対策」にあるという。なぜ、新型コロナウイルスが住宅の建設に関係してくるのだろう。その背景と引き渡しに関する注意点を探った。【今週の住活トピック】
住宅設備がないままの完了検査、大丈夫?【無償配布】施主さん向け「お引渡しチェックリスト」/さくら事務所なぜ、新型コロナウイルスが新築一戸建ての完成に影響するのか?

そもそもの発端は、新型コロナウイルスの影響により中国などで工場の稼働状況が悪化していることにある。住宅を建てる際に必ず必要となる、トイレ、システムキッチン、ユニットバス、ドアなどの建材・設備の部品の生産が滞って、日本に供給されていないという状況が生じているのだ。

「新建ハウジング」が全国の工務店などに対して行った緊急アンケート調査(回答72社)によると、81.5%が「新型コロナウイルスの影響を受けている」と回答し、工期の遅れや着工の先延ばしが起きているという。

「一部の住宅設備や建具だけを残して、一戸建てが完成する」という場合、住める状態に仕上がっていないので、当然ながら引き渡しができない。施主にとっては、とても困る事態だ。残念ながら、3月中に引き渡しを受けて4月から新生活を始めようとしていたのに、工期が遅れてしまうという人もいるだろう。

一方、建築を請け負った施工会社は、仕事が終わっている大工などの職人への報酬やすでに使用した資材などの購入費用を支払う必要があるのに、引き渡しができないので残金を受け取れず、支払いができないという事態が起こる。中には、これがもとで倒産の憂き目にあうという施工会社もあるだろう。

国土交通省の対策によって、どんな事態が起こりうる?

こうした事態の対策として、国土交通省が2月27日付で「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う建築設備の部品供給の停止等への対応について」という通知を出した。

その内容は「これらの設備等が未設置の状態で工事を完了させ、完了検査の申請がなされた」場合に、「個別の申請者からの相談に応じて」、「軽微な変更に該当する場合には、完了検査を速やかに実施するとともに、軽微な変更に該当しない場合には、計画変更の手続き及び完了検査を速やかに実施されたい」と建築基準法に基づく完了検査を実施する機関に周知するように求めたもの。

施主にとってどういった影響があるのだろう?この件について、無償配布のチェックリストを監修した、さくら事務所のホームインスペクター田村 啓さんに話を伺った。

軽微な変更とは、例えばトイレだけが未設置な場合など。この場合は未設置なまま完了検査を終えて融資を受け、引き渡し=残金支払いが行われ、引き渡し後にトイレだけ設置して完成するといったことになる。

また、各自治体の判断によるが、換気扇が未設置などの軽微な変更ではない場合は、計画変更の手続きが必要となる。書類の審査や竣工時の完了検査を速やかに行ったとしても、工期がかなり遅れることになる。ただし、この場合でも一部未設置のまま引き渡しとなる事例もありうるという。

「こうした対策は、2014年2月に関東地方を襲った大雪で建材・設備の納期が遅延した際にも実施されました。『施工会社の黒字倒産』を避けることを目的として行われるものですが、工期が遅れることが確実なのに、施主の方が気づかないことが多く、このことについて広く伝えたいと考えました。」(田村さん)

そもそもどの程度の工期遅れが生じているのか、住宅設備が未設置のまま引き渡しを受ける場合でもきちんと施工してもらえるのか、といった施主の不安を解消したいと作成されたのが、さくら事務所が公開したチェックリストだ。

新築一戸建ての引き渡しを受ける際の注意点は?

チェックリストは、施工会社が工期の遅れなどについてしっかり説明し、適切な対応を取っているかを確認するためのもので、次のような内容になっている。

さくら事務所が提供するチェックリストから一部転載

さくら事務所が提供するチェックリストから一部転載

各項目の詳しい説明は、さくら事務所の該当サイトに載っているが、特に重要なポイントは次の2点だ。
・口頭のやり取りで済ませず、「書面」で残すこと
・工期遅れの原因(どの設備機器や建材の納期遅れかなど)を明確にすること

計画変更が生じるなら「計画変更の覚書」などの書面を残すことが大切なのは、言うまでもないだろう。

また、原因が特定商品の遅れであれば、型番を確認して供給メーカーのサイトで情報を確認することなどもしておきたい。新型ウイルスによる影響が原因であれば、不可抗力なので責めることはできないが、そうでない場合の引き渡しの遅れは、「遅延損害金」請求の対象になりうる。そのため、施工会社の人手不足による工期遅れなのに、商品の納期遅れを口実にしてしまう場合もありうるからだ。

さらに、田村さんによると「未設置のまま引き渡しを済ませた場合は、後から住宅設備機器などを設置するときの検査が甘くなる場合もあるので、注意が必要」だという。

特に水まわりのトイレやキッチン、洗面、浴室などで、通水や漏水の確認に漏れがあると、住み始めてから水漏れが生じるなどの被害を受けてしまう。施主として十分目を光らせておく必要がある。

こうした注意点が提示されたチェックリストを、特に活用してほしいのは、「3月末~5月末に新築の一戸建てを引き渡される予定の人」だという。また、さくら事務所では無料の相談窓口も設ける予定ということだ。

新型コロナウイルスの影響は、意外なところにも及んでいる。やむを得ないことではあるが、冷静に状況を判断し、適切な対処をしたいものだ。

中古マンションを売る・買う、築年数でどう変わる?

東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が2019年の「築年数から見た首都圏の不動産流通市場」の結果を公表した。これによると、築20年以内の中古マンションの人気が高いということだ。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2019年」を公表/(公財)東日本不動産流通機構(東日本レインズ)流通市場に出回る中古マンションは、年々年を取る?

結果を見る前に、「指定流通機構/レインズとは何か?」について説明しよう。

指定流通機構は、国土交通大臣指定の組織。各地域の主な不動産会社が会員となり、それぞれの指定流通機構のネットワークシステムに、不動産の情報を登録することで情報を共有している。そのネットワークがREINS(レインズ)と呼ばれている。

東日本地域を管轄するのが、東日本レインズだ。公表されたのは、首都圏の新規登録物件(レインズに新たに情報を登録したデータ)と成約物件(レインズに成約の報告があったデータ)について、2019年一年間の情報を築年数の観点から分析したもの。

まず、平均築年数を見よう。
中古マンションの新規登録物件は25.84年、成約物件は21.64年となり、昨年の発表より、ともに約○年増え、年々築古化している。首都圏は過去に何度か「新築マンションブーム」があり、大量に新築が供給された経緯がある。それらが、中古の流通市場に出回るが、1年経てば築年数も1年増えるので、平均築年数が増加するのは想定されることだ。

ただし、新規登録物件の平均築年数の上昇率に比べると、成約物件の上昇率のほうが鈍い傾向が見られる。

具体的な築年帯別の分布は、図1のようになる。築31年以上の中古マンションは、新規に登録される物件のシェアでは39.8%にまで達するが、成約物件で見ると26.6%にとどまっている。

中古マンション築年帯別構成比率(%)(出典:東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2019年)」)

中古マンション築年帯別構成比率(%)(出典:東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2019年)」)

築年帯別で流通市場での成約しやすさは異なる

次に、築年帯別に新規登録件数に対する成約件数の割合=「対新規登録成約率」を調べた図2を見よう。明らかに、築20年以内と築21年以上で成約状況に違いが見られる。築20年以内のほうが流通市場に出て成約する可能性が高いということだ。

中古マンションの対新規登録成約率(成約件数/新規登録件数)(出典:東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2019年)」)

中古マンションの対新規登録成約率(成約件数/新規登録件数)(出典:東日本レインズ「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2019年)」)

その理由は明確ではないが、2000年に住宅品質確保促進法(品確法)が施行され、統一した客観的な性能を評価して表示する「住宅性能表示制度」ができたことなどにより、この年以降に販売される新築マンションの性能が底上げされたといわれている。築20年以内の中古マンションが一定以上の性能が確保されていることも、理由のひとつにあるだろう。

また、1999年~2005年の間は首都圏で年間8万戸以上が供給される、大量供給の時代だった。中古として流通する戸数が多いことに加え、「都心回帰現象」が起こり、立地の利便性の高いマンションが多いことも理由に挙げられるだろう。

2019年の結果の特徴として、「築6~10年」の対新規登録成約率が突出して高くなっている。これは、新築時の供給戸数が、首都圏で4万~5万戸に減少し、「ミニバブル」といわれるほど価格高騰期に向かったころに供給されたものだ。

10年前の2009年と比べると、新規登録物件の「築0~5年」は14.1%→7.3%に、「築6~10年」は17.3%→8.3%と構成比率が圧縮している。比較的築年の短いものが、流通市場で探しづらいという希少性も成約しやすい背景にあるのだろう。

流通シェアは少ないが手が届く価格帯の「築6~10年」は成約しやすい?

では、「築0~5年」と「築6~10年」の違いはどこあるのだろう?

図3の築年帯別の平均価格を見ると、「築0~5年」の平均価格は、新規登録物件で6179万円、成約物件で5619万円と若い世帯にはまだ手が届きにくい価格にある。「築6~10年以内」になると、いずれの平均価格も4800万円台まで下がる。平米当たりの平均単価を見ても、「築0~5年」から「築6~10年以内」で一段、下がっていることが分かる。

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中古マンションの築年帯別平均価格と平均平米単価 (出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2019年)」)

中古マンションの築年帯別平均価格と平均平米単価 (出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2019年)」)

「築6~10年」の中古マンションは、流通市場に出回るシェアが低いものの、手が届く価格でも探せるということから、2019年のデータでは最も成約しやすい結果になったと考えられる。

一方、築26年以上になると、成約物件の平均価格は1000万円台まで下がり、それ以降は下がらないという状況になっている。

さて、調査結果から中古マンションの築年帯別の市場動向を見てきたが、首都圏全体の市場の平均像と考えてほしい。

中古マンションの実際の売買では、物件のある地域の状況によって事情は異なる。その地域の需要の大小や流通の状況、新築マンションの供給動向などによって、築年数が古くても希望額で売れる場合もあれば、安値でないと買い手がつかない場合もある。全体傾向を理解したうえで、その地域の市場特性を適正に判断することが大切だ。

イマドキの学生の部屋選び、通学時短を重視する傾向に。ほかには…?

学生用マンションでひとり暮らしをする人は、「駅」の近さより通学する「学校」の近くであることが決め手になる。そんな調査結果を学生情報センターが発表した。通学の『時短』を重視する傾向は、学生にも及んでいるようだ。調査結果を詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2020」の結果を発表/学生情報センター学生も通学の『時短』を重視する!?

まず、「今の部屋に決めた理由」(複数回答)を聞いた上位の結果を見よう。
1000人以上の学生が「学校から近い」と「バス・トイレ別」を決め手にしたことが分かる。

1位:「学校から近い」(1170人)
2位:「バス・トイレ別」(1080人)
3位:「駅から近い」(763人)
4位:「セキュリティ」(760人)

立地については、駅から近くても通学するのに学校から遠い、というのは敬遠されるということだろう。通学でも『時短』重視の傾向がうかがえる結果だ。

また、「今の住まいの満足度」(単一回答)を聞くと、72.4%の学生が満足(「大変満足」24.5%+「ある程度満足」47.9%)と回答した。一方、「今の住まいにいつまで住むか」(単一回答)を聞くと、75.0%の学生が「卒業するまで」と回答した。「満足」あるいは「普通」と感じている学生が多いからだろうが、新しい部屋探しには時間も費用もかかることもあって、積極的に住み替えを考えてはいないという状況がうかがえる。

「今の住まいの満足度」(左)と「今の住まいにいつまで住むか」(右)(出典/学生情報センター「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2020」より転載)

「今の住まいの満足度」(左)と「今の住まいにいつまで住むか」(右)(出典/学生情報センター「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2020」より転載)

オススメは駅より学校の近さ。ただし地域差も…

次に、後輩にアドバイスするという想定で「部屋を選ぶときの重視項目」を聞いた結果を見ていこう。

部屋を選ぶときに重視すべき後輩へのアドバイス(複数回答)1.全国(出典/学生情報センター「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2020」より転載)

部屋を選ぶときに重視すべき後輩へのアドバイス(複数回答)1.全国(出典/学生情報センター「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2020」より転載)

後輩に重視すべきとする三大項目は、「学校の近く」(61.3%)、「スーパーの近く」(59.9%)、「駅の近く」(51.9%)だ。「スーパー」のほうが「コンビニ」より品ぞろえが多いから、より重視すべしということか。

ただしこれが地域によって、少し変わってくる。

部屋を選ぶときに重視すべき後輩へのアドバイス(複数回答)2.東京都と東京都を除く全国との比較(出典/学生情報センター「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2020」より転載)

部屋を選ぶときに重視すべき後輩へのアドバイス(複数回答)2.東京都と東京都を除く全国との比較(出典/学生情報センター「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2020」より転載)

同社の本社が京都にあることから、回答した学生が最も多いのは京都府(18.2%)で、次いで東京都(17.4%)になるのだが、東京都の学生とそれ以外の府県の学生で比較すると、順位や重視度が変わってくる。

「学校の近く」が1位であることに違いはないが、2位は東京以外の学生では「スーパーの近く」が僅差で続くのに対し、東京都の学生では「駅の近く」が逆転して2位に上がる。また、東京都の学生は「通学に乗り換えがない」が27.0%で6位に上昇(東京都以外は16.2%で9位)するのも、注目したい点だ。

通勤通学時間帯には、車内の混雑度や駅間移動の混雑度が激しく、ストレスがたまりやすい東京都ならではの観点といってよいだろう。

イマドキの学生は「無料Wi-Fi」「宅配ボックス」「オートロック」が必需品?

次に「家賃が多少高くなっても部屋に欲しい設備・サービス」(複数回答)を見ていこう。

ダントツの「バス・トイレ別」は別格として、「無料Wi-Fi」「宅配ボックス」「オートロック」が上位に来るのがイマドキの学生らしい。

1位:「バス・トイレ別」63.3%
2位:「無料Wi-Fiサービス」40.7%
3位:「宅配ボックス」37.8%
4位:「オートロック」36.3%
5位:「大きな収納スペース」36.2%
6位:「独立洗面化粧台」33.8%

特に、「宅配ボックス」は2年前の同じ調査の6位から3位に浮上しており、2年前に筆者が「無料Wi-Fi」「宅配ボックス」「オートロック」が新三種の神器になると予測した通りになってきた。

さていよいよ、合格発表を受けて学生が新居を探すシーズンになってくる。部屋探しで重視するポイントは人それぞれだろうが、先輩の意見はどれだけ参考になるだろうか?

2019年の首都圏の一戸建て市場動向、平均価格が公表結果によって違うのはなぜ?

2020年に入って、2019年の住宅市場の動向が相次いで公表された。そこで今回は、東日本不動産流通機構(東日本レインズ)と不動産経済研究所が公表した、首都圏の一戸建て市場の動向について見ていくことにしよう。ポイントは、平均価格に開きがあることだ。【今週の住活トピック】
「首都圏不動産流通市場の動向(2019年)」を公表/(公財)東日本不動産流通機構(東日本レインズ)
「首都圏の建売住宅市場動向―2019年のまとめ―」を公表/(株)不動産経済研究所東日本レインズでは首都圏平均成約価格3510万円

レインズ(REINS)とは、「Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)」の略称で、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムのことだ。東日本を担当しているのが東日本不動産流通機構(通称東日本レインズ)だ。不動産を仲介する事業者は、このネットワークを活用して物件の売買を仲介している。

東日本レインズが公表しているのは、2019年の首都圏の中古マンション、中古一戸建て、新築一戸建て、土地の動向だ。この中で、新築一戸建ての動向を取り上げていきたい。

首都圏の新築一戸建てについては、成約件数が前年比11.5%増の5872件。成約価格が首都圏平均3510万円(前年比1.2%上昇)で前年を上回った。地域別に詳しく見ていくと、下表のようになる。

新築一戸建ての成約状況(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2019年)」より転載)

新築一戸建ての成約状況(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2019年)」より転載)

平均価格が最も高いのは、東京都区部で5082万円(平均土地面積:80.34平米、平均建物面積:94.07平米)、次いで横浜市・川崎市の4147万円(平均土地面積:112.75平米、平均建物面積:101.27平米)だ。
一方、土地の平均面積が広いのは、千葉県で平均土地面積:146.10平米、平均建物面積:101.78平米(平均価格:2856万円)、次が埼玉県で平均土地面積:133.17平米、平均建物面積:100.95平米(平均価格:2974万円)となっている。

ちなみに、中古一戸建てを見ると、成約価格は首都圏平均で3115万円(平均土地面積:146.82平米、平均建物面積:104.96平米)と新築一戸建てよりもお手ごろな価格になる。ただし、東京都区部では中古一戸建ての成約平均価格のほうが新築より高くなり、5532万円と逆転する。

その理由は、新築では土地・建物面積が狭くなるからだ。古い建物が建っていた広い土地を2つに分けて2棟の新築一戸建てとして売る、などとしたほうが利益は大きいため、どの地域でも新築のほうが面積は狭くなる。地価の高い東京都区部では、平均価格で新築と中古が逆転するという現象が起きるといったわけだ。

不動産経済研究所では首都圏平均発売価格5130万円

次に、不動産経済研究所が公表した「首都圏の建売住宅市場動向(2019年のまとめ)」を見ていこう。

首都圏の新築建売一戸建てについては、新規発売戸数が前年比5.8%減の4473戸。発売戸数の1戸当たりの平均価格は5130.2万円(前年比0.7ダウン%)で前年を下回った。

都県別に詳しく見ていこう。
○首都圏の新築建売一戸建て(建売住宅)の都県別の概要
平均価格平均敷地面積平均建物面積
・東京都6797.7万円116.82平米96.75平米
・千葉県3826.0万円137.32平米100.59平米
・埼玉県4084.2万円115.36平米97.37平米
・神奈川県5715.3万円126.59平米100.56平米
・首都圏5130.2万円123.95平米98.61平米

さてここで、先ほどの東日本レインズのデータを思い出してほしい。首都圏平均の土地・建物の面積はさほど違いがないのに、平均成約価格は3510万円だった。不動産経済研究所の発売平均価格と比べると1620万円ほどの開きがある。どういうことだろう?

違いは一戸建ての売主、売り方の違いにある!

理由はいろいろある。
東日本レインズは成約価格であり、レインズのネットワークシステムに登録する成約事例が漏れている場合もある。一方、不動産経済研究所は発売平均価格だ。確かにこうした違いはあるが、最も大きな違いは売主や売り方の違いだ。

まず、不動産経済研究所で見ると、調査対象は「分譲物件」で「原則として10戸以上の物件」になる。つまり、デベロッパーや大手のハウスメーカーなどが、10戸以上の分譲住宅地を形成して建てた一戸建てを、直接販売しているものになる。いわゆる大型のニュータウンや都市部のミニタウンなどを、イメージするとよいだろう。

これらは街区としてプランニングするので、一戸建ての外観や植栽を統一して街並みを整えたり、安全に配慮した道路を配置するなどの特徴がある。ゆとりある敷地に仕様の高い建物を建てることもあって、価格も高くなる傾向がある。

ところが、実際に街なかで目にするのは、数戸規模の新築一戸建て現場だろう。2~3戸の場合もあれば、もう少し規模の大きい場合もあるだろう。こうした新築一戸建ては、建てた売主が直接チラシや自社のサイトなどを使って販売する場合もあれば、仲介会社に委託して販売してもらう場合もある。

東日本レインズのデータは、新築一戸建ての中でもレインズのネットワークを活用して買い主を探したいという物件が対象になる。多くの場合は、その地域限定で分譲している小規模な事業者や建築が中心の施工事業者などが売主となる物件と考えられる。

これら数戸単位で販売される一戸建ては、既成の街なかにあるので利便性などが期待できる一方、狭い敷地に建てられることでゆとりあるプランを採用しづらい傾向がある。建物も一般的な仕様のものが多く、価格は比較的リーズナブルなものになる。

このように、新築一戸建ての売り主は多様で、売り方もさまざまなため、全体の実態がつかみづらいという点に留意が必要だ。加えて、一戸建ての工法やプラン、設備仕様などにも違いがあるため、新築一戸建てを探す場合は、データだけでなく、実際に現地を見てその特徴をつかむことが大切だ。

意外に高い平成世代の持ち家志向、住宅ローン選びでは…

カーディフ生命が実施した調査で興味深いのは、生活価値観や住まいについて「平成世代」「ロスジェネ世代」「バブル世代」に世代を区分して比較している点だ。経済・社会的背景が異なる世代の価値観などの違いは、どういった点に表れるのだろうか?【今週の住活トピック】
「世代別の生活価値観・住まいに関する意識調査」を実施/カーディフ生命シェアリングが浸透した平成世代でも、家や車は買う派が8割

まず、世代区分とその特徴を見ていこう。
● 平成世代:平成生まれおよび主にゆとり教育を受けた世代(20~34歳)
● ロスジェネ世代:主にバブル崩壊の影響を受けている世代(35~49歳)
● バブル世代:主にバブル景気時に就職した世代(50~59歳)

ロスジェネとは、ロスト・ジェネレーション=失われた世代ということだ。バブル崩壊後の就職氷河期に新規卒業生となった世代で、いまだにその影響が及んでいると言われている。その後の平成世代は、比較的堅実で、ワークライフバランスを重視する世代と言われている。

まず、持ち家志向を見ると、意外にも世代間であまり変わらないという結果だった。

それぞれに「買う」「どちらかというと買う」「借りる」「どちらかというと借りる」「利用しない・関心がない」を選ぶ形式で、「家」について聞いたところ、買う派は平成世代で78.1%、ロスジェネ世代で78.4%、バブル世代で78.8%と変わりがなかった。

「借りる」にはシェアリングやサブスクリプションを含むとしているが、実は「車」について聞いても、どの世代も8割近くが買う派で、シェアリングに慣れつつある平成世代でも、家や車は買う派が大勢を占めた。

平成世代は家族とつながる場としての価値観を重視

一方、世代間で違いが見られたのは、住宅に関する価値観だ。

平成世代の価値観が特に高いのは、「家は家族が団らんする場所」(平成世代52.5%)、「家族が思い出を刻むもの」(平成世代40.2%)の2項目。「友人や仲間を招いて交流する場」(平成世代19.5%)も他の世代より高いことから、平成世代が家に求めるものは、家族や仲間とつながる場という意味合いが強いということだろう。

住宅に関する価値観(複数回答)(出典/カーディフ生命「世代別の生活価値観・住まいに関する意識調査」より転載)

住宅に関する価値観(複数回答)(出典/カーディフ生命「世代別の生活価値観・住まいに関する意識調査」より転載)

一方、バブル世代が特に高いのは、「老後も暮らせる安心感を持てるようにする」(バブル世代53.4%)。ただしこれは、社会背景というよりも年齢的な影響が強いのだろう。また、世代で共通したのは、「家は仕事の疲れをいやす休息場所」(平成世代51.2%、ロスジェネ世代52.8%、バブル世代54.1%)だった。

平成世代は住宅ローン返済への不安が強く、保障を手厚くしている!

次に、各世代のうち住宅ローンの利用者に限定して調査した結果を見ていこう。

住宅ローン返済への不安は、想定した通り、平成世代で強くなる傾向(「不安を感じた」平成世代74.1%、ロスジェネ世代69.2%、バブル世代57.9%)が見られた。若いほど返済期間が長く残っているうえ、収入の安定性や年々収入が上がる期待をしづらいという背景もあるだろう。

住宅ローン返済への不安(住宅ローン利用者)(出典/カーディフ生命「世代別の生活価値観・住まいに関する意識調査」より転載)

住宅ローン返済への不安(住宅ローン利用者)(出典/カーディフ生命「世代別の生活価値観・住まいに関する意識調査」より転載)

面白いのは、不安の裏返しとして、住宅ローン契約時に加入が求められる団体信用生命保険(以下、団信)で保障を手厚くしている点だ。死亡保障だけの一般的な団信に加え、がん保障などの特約を付けている比率が50.9%とかなり高くなっている。

加入している団信保障の内訳(住宅ローン利用者)(出典/カーディフ生命「世代別の生活価値観・住まいに関する意識調査」より転載)

加入している団信保障の内訳(住宅ローン利用者)(出典/カーディフ生命「世代別の生活価値観・住まいに関する意識調査」より転載)

住宅ローンの団信でプラスできる保障は多様に

団信では、住宅ローンを借りた人が死亡したり、高度障害状態になったりしたときに、住宅ローンの残額を完済する保険金が金融機関に支払われる。その半面、死亡と高度障害ではない理由で返済不能になっても、保険金が下りることはない。

そこで近年は、病気などで返済不能になったときも団信の対象にする特約が多様化している。

代表的なものが、「がん保障」や「三大疾病保障」、「八大疾病保障」など。三大疾病は、死亡率の高い悪性新生物(がん)、脳卒中、急性心筋梗塞が対象で、八大疾病は、三大疾病に生活習慣病といえる五疾患(高血圧症、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性膵炎)を加えたもの。ほかにも、病気やけがで一定の就業不能状態になったときに保険の対象となる「就業不能特約」などもある。

特約を付けて保障を手厚くすれば、別途保険料を支払ったり、保険料分の金利が上乗せになったりするのが一般的だ。不安だからと特約を手厚くするほど、負担も増えることになる。

ただし、金融機関によって用意している特約に違いがある。さらに、同じような名称の特約でも、どういった状態になると対象になるのか、いつ保険金が支払われるのか、保険料の負担はどうなるかが異なっている。特約を付けて該当する疾病になったとしても、所定の条件に合致しなければ保険金が支払われないということもあるので、それぞれの内容をしっかり検討する必要がある。

不安を解消するには、ローン特約を付けるだけでなく、一般的な生命保険や医療保険なども視野に総合的に判断したり、貯蓄で備えたりする選択肢もある。自分はどのリスクに弱いのかなど、よく分析したうえで対策を立てるとよいだろう。

さて、時代背景を受けて、平成世代はいろいろなことへの不安が強く、対策も検討していることがうかがえる結果が目立った。一方、節約生活が苦手なバブル世代は、長寿化によってまだ長い人生を生きることになる。老後に向けて時間をかけられる世代ではないので、今のうちにライフプラン・マネープランをきちんと見直しておく必要もあるだろう。

賃貸住宅の建物や入居者の管理は誰がする?入居者、家主、管理業者とのトラブルは?

賃貸住宅に住んでいる場合、家賃の支払い状況を確認したり、設備機器の故障に対応したりと、入居者や建物を管理する存在が必要だ。ところが、「誰が管理しているか分からない」という入居者が、約1割もいるという。調査結果から、賃貸住宅の管理の実態について詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「賃貸住宅管理業務に関するアンケート」を公表/国土交通省ご存じですか?住んでいる賃貸住宅を誰が管理している?

国土交通省の「賃貸住宅管理業務に関するアンケート」は、賃貸住宅管理業者と家主・入居者とのトラブルなどの実態を調べるために調査したもの。賃貸住宅管理業者、家主、入居者の三者に調査している。

調査結果で驚いたのは、入居者の中には、賃貸住宅を誰が管理しているか知らない人がいるということだ。入居者に「あなたがお住まいの賃貸住宅を管理している管理者(管理業者)をご存知ですか」と聞いたところ、結果は【画像1】のようになった。

「専門業者が賃貸住宅の管理をしており、業者名も知っている」、「家主が自ら賃貸住宅の管理をしている」と、管理者を分かっている入居者は4分の3に達する。かたや、「専門業者が賃貸住宅の管理をしているが、業者名は分からない」が13.5%だったが、業者名が分からないのは、契約書などで調べれば分かるのでまだよいほうだ。「誰が賃貸住宅の管理をしているか分からない」人が9.4%と約1割もおり、「そもそも賃貸住宅の管理の意味が分からない」人も2.3%いた。

居住中の賃貸住宅の管理者の把握状況(対象:入居者)(出典/国土交通省「賃貸住宅管理業務に関するアンケート」より転載)

居住中の賃貸住宅の管理者の把握状況(対象:入居者)(出典/国土交通省「賃貸住宅管理業務に関するアンケート」より転載)

ちなみに、調査では「賃貸住宅の管理とは、家主から委託を受けて家賃や敷金の受領を行うほか、契約の更新、契約終了時の資金の精算や、入居中の設備の修繕や共用部分の清掃、入居者からの相談などにも対応するもの」という説明が添えられている。

賃貸住宅の管理は、家主がする場合も、委託した管理業者がする場合もある

入居者への調査結果【画像1】でも分かるように、賃貸住宅の管理は、家主が自らする場合もあれば、管理業者に委託している場合もある。家主への調査結果から、その状況を見てみよう。

「所有している賃貸住宅の入居者募集や契約、入居中の管理はどのように行っていますか」と家主に聞いた結果が、【画像2】の通りだ。

所有する賃貸住宅の入居者募集や契約、入居中の管理方法(対象:家主)(出典/国土交通省「賃貸住宅管理業務に関するアンケート」より転載)

所有する賃貸住宅の入居者募集や契約、入居中の管理方法(対象:家主)(出典/国土交通省「賃貸住宅管理業務に関するアンケート」より転載)

家主が「全て自ら管理している」(18.5%)のは 2 割近く。「入居者募集から契約までを業者に委託し、それ以外の管理は自ら行っている」が25.5%と、入居中の管理を家主が自ら行っている場合も多い。一方、過半数は、管理の一部または全てを業者に委託していることが分かる。

一般的には「入居者募集から契約まで」は仲介を行う業者が、「入居以降や更新時の契約、退去まで」は管理を行う業者が担当するが、どちらも行っている業者が多いので、家主が「入居者募集と賃貸住宅管理を同一の業者に委託している」割合は92.1%とかなり高くなっている。

では、どういった管理業務を業者に委託しているのだろうか。賃貸住宅(サブリース以外)の管理の実施者を聞いたのが、【画像3】だ。「入居時の契約支援」や「賃貸借契約の更新」、「敷金精算・原状回復」など、契約や退去に関する業務を委託している場合が多いようだ。「家賃督促」、「入居者からの苦情対応」、「建物・設備の維持管理・点検・修繕等」も委託している割合が高い。一方、「修繕積立金の管理」や「賃料等の集金」、「入居者からの苦情対応」、「空室管理」は家主が自ら行う割合が比較的高かった。

管理業務の実施内容と実施者(対象:家主)(出典/国土交通省「賃貸住宅管理業務に関するアンケート」より転載)

管理業務の実施内容と実施者(対象:家主)(出典/国土交通省「賃貸住宅管理業務に関するアンケート」より転載)

入居者、家主、管理業者が感じる不満・トラブルは?

では、不満やトラブルについて見ていこう。

まず、入居者に居住中の管理に関する不満の有無(単一回答)を聞くと、「不満を持ったことがある」は44.5%。不満を持った内容については、以下が特に多いTOP3だった。
「建物の清掃等手入れが不十分」(37.7%)
「そもそも家主や管理業者が何をどこまで対応してくれるのか不明確」(33.3%)
「トラブル発生時の対応が遅い」(30.4%)

次に、入居中や契約更新時、退去時等のトラブルの有無(単一回答)を聞くと、「トラブルを経験したことがある」が 30.3%。経験したトラブルの内容については、以下が特に多いTOP2だった。
「水もれや設備の故障等修繕の必要性が発生した際、対応に著しく時間がかかった」(29.8%)
「入居者同士でのトラブルが発生した」(23.4%)

今度は、家主に入居者とのトラブルの有無(複数回答)を聞くと、半数近くは「特にトラブルはない」(47.9%)と答えた。経験したトラブルでは、以下が特に多いTOP2だった。
「滞納家賃が発生し、家賃が適切に入金されない」(23.6%)
「入居者からの修繕などの要望対応に手間やお金がかかる」(18.9%)

さらに、賃貸住宅の管理業者に「受託管理している賃貸住宅で発生しているトラブルで対応が困難なもの」(複数回答)を聞くと、最も多いのが「借主間・近隣住民との間の苦情対応」(52.3%)だった。入居者相互、あるいは近隣住民との苦情については対応が難しいと考えている事業者が多いようだ。

次いで、「退去時の原状回復の箇所や費用負担に係る家主・借主との協議」(41.9%)、「借主に対する家賃の督促」(32.5%)、「修繕の箇所や費用負担に係る家主・借主との協議」(31.0%)が続き、入居者と家主との間の意見調整や、家主同様に家賃滞納の督促に困難さを感じていることが分かる。

さて、見てきたように、家賃の督促や故障・修繕の対応、他の入居者への苦情、家主との費用分担など、広範囲に重要な問題が生じた場合、誰に相談すればよいのか、どう対処してくれるのか、は賃貸住宅に住むうえで極めて重要なことだ。

賃貸住宅を決める際には、管理者が誰で、どれだけ管理実績があるかなども確認しておくことが必要だ。間違っても、入居している賃貸住宅を誰が管理しているか分からない、といったことのないようにしてほしい。

賃貸住宅の訳あり物件・事故物件については、どこまで知らされる?

日管協(日本賃貸住宅管理協会)総合研究所では、年に2回、賃貸住宅景況感調査を実施している。今回の調査では、「心理的瑕疵物件における重要事項説明」に関する質問項目を新たに追加した。心理的瑕疵のある物件は、いわゆる訳あり物件や事故物件などといわれているが、その実態について見ていこう。【今週の住活トピック】
第22回賃貸住宅景況感調査「日管協短観」(2019年度上期)を発表/日管協総合研究所心理的に嫌悪するような傷のある物件

まず、「心理的瑕疵物件における重要事項説明」に関する調査の背景について説明しておこう。

「重要事項説明」とは、宅地建物取引業法で定められたもので、賃貸住宅の賃貸借契約を結ぶときには、仲介する不動産会社は借りる人に対して、どんな物件をどういった取引条件で借りるかについて、重要な項目を説明する義務がある。中古住宅を売買の場合も同様だ。

説明すべき項目の中に「心理的瑕疵(かし)」が含まれる。瑕疵とは隠れた欠陥のことなので、心理的瑕疵は「心理的に嫌悪するような傷」のことになる。

一般的に該当する事例としては、自殺や他殺、孤独死など人が亡くなったり、暴力団事務所などの嫌悪・迷惑施設が近隣にあったりといったことが挙げられる。仲介会社がそのことを知っていながら、借りる人に告げなった場合は責任を問われることになる。

ただし、どういった場合に心理的瑕疵に該当するのかについては、明確な基準がない。特に、人が亡くなった場合では、老衰や病気で亡くなってすぐに葬儀が執り行われた場合と、孤独死で長期間それに気づかなかった場合では、心理的な抵抗感や部屋に与える影響の度合いも変わってくる。

借りる人によって心理的に嫌悪する程度が異なったり、仲介する不動産会社の判断基準に違いがあったりなどで、どこまで告知されるかはケースバイケースというのが実態だ。心理的瑕疵に明確な基準を設けるべきだ、という声も強くなっている。

室内の自殺や他殺、病死などがあれば告知される場合が多い

さて、日管協の会員会社に調査した結果を見ていこう。人が亡くなった場合の亡くなり方で、どういった場合に心理的瑕疵として重要事項説明を行うかを聞いた結果が、画像1だ。

心理的瑕疵物件(事故物件等)において重要事項説明を行う範囲(出典/日管協総合研究所「日管協短観」(2019年度上期)より転載)

心理的瑕疵物件(事故物件等)において重要事項説明を行う範囲(出典/日管協総合研究所「日管協短観」(2019年度上期)より転載)

「室内で自殺」(74.6%)や「室内で他殺」(64.9%)の場合は、借りる人に告知する割合が高い。「室内で病死や事故死」の場合も59.7%が告知しているが、病死の場合は、それによって部屋が損傷したり臭いが染みついたりした場合に告知する割合(69.4%)のほうが高くなっている。また、室内ではなく共用部などであれば、自殺や他殺の場合でも、告知される割合は半数近くまで下がってくる。

つまり、借りようとする住戸内で自殺や他殺、病死などが起きた場合に、重要事項説明で告知されるケースが多いが、そうした場合でも必ずしも告知されるわけではないというのが実態だ。

入居者の入れ替えがあれば、告知されないケースも

次に問題になるのは、どこまで告知し続けるか、ということだ。こちらも明確な基準はない。
死亡事例があった後に誰かが入居して特段問題がなければ、次の入居者に対しては告知をしない、というのが最も短い期間になるだろう。

この告知期間について聞いた結果が、画像2になる。最も短いと考えられる「入居者1回入れ替え」が最多の35.1%で、「入居者2回入れ替え」(14.9%)や「一定年数」たったら(11.2%)という場合もある。一方で、「半永久的」という回答も14.9%あり、自殺や他殺、孤独死などが大きく報道された場合など「認知度合、インターネットへの閲覧等の要素」で判断するという回答も9.7%あった。

心理的瑕疵物件(事故物件等)において重要事項説明を行う告知期間(出典/日管協総合研究所「日管協短観」(2019年度上期)より転載)

心理的瑕疵物件(事故物件等)において重要事項説明を行う告知期間(出典/日管協総合研究所「日管協短観」(2019年度上期)より転載)

この結果を見ると、入居者が1回または2回入れ替わったり、一定年数がたったりすれば、心理的瑕疵が重要事項説明で告知されないケースも多い実態が分かる。

事故物件、訳あり物件なら入居しない?

心理的に嫌悪する傷のある賃貸には住みたくないと思うのは、今に始まったことではなく、江戸時代にもあったようだ。筆者の連載「連載江戸の知恵に学ぶ街と暮らし」の「お化け長屋」に見る 江戸時代の引越し事情にも書いたが、落語にも「泥棒に殺されたお上さんの幽霊が出る」と嘘をついて、入居希望者を退散させるという「お化け長屋」という噺がある。店賃はいらないと聞いて、それでもかまわないといって押しかけてくる輩が現れ、事態は二転三転という落語だ。

今の時代にも、事故物件なら賃料が安くなるので、あえて探すという人もいる。試しに、不動産情報サイト「SUUMO」で、キーワード検索に「事故物件」と入力してみると、いくつか物件が見つかった。詳細は問い合わせないと分からないが、「事故物件のため、2年間賃料ダウン・敷金礼金ゼロゼロ」という記載がある賃貸もあった。

心理的瑕疵の程度は借りる人によっても異なる。筆者のように霊感があまりなく、賃料が安くて室内がリフォームされているなら気にしないという人もいれば、霊感が強くて、絶対住みたくないという人もいるだろう。住みたくないという人は、仲介する不動産会社に過去に死亡事例などがないか、心理的瑕疵といわれるものがないかを確認して、それを契約書に記載してもらうといった方法で、確実に告知してもらうようにするとよいだろう。

年末大掃除シーズン到来!床拭きの頻度はどの程度?二極化する掃除実態

年末の恒例行事といえば一家総出の「大掃除」か思い浮かぶが、最近では年末に大掃除をしない家庭も増えてきた。しない理由は、年代によって多少異なるようだ。大掃除の実態や二極化している様子を、アイロボットジャパンの調査結果から見ていくことにしよう。【今週の住活トピック】
「年末の大掃除に関する意識調査」結果を公表/アイロボットジャパン恒例ではなくなる!?家族で年末に大掃除をするのは約半数

お宅では、年末に大掃除をするだろうか?

実はこの時期に、年末の大掃除に関する調査結果が公表されることが多い。花王が実施した「『2018年の年末大掃除』に関する調査」では、2018年の年末大掃除の実施率は58%だった。また、ダスキンが実施した「第15回 ダスキン 大掃除に関する意識・実態調査」では、2018年の年末大掃除の実施率は55.9%で、過去3番目に低い実施率だったという。

一方、アイロボットジャパンが「年末に家族で大掃除をしますか?」と聞いたところ、「家族で大掃除をする」が50.3%と半数に達し、「家族では行わないが自身で行う」の28.7%と合わせると、79.0%が年末に大掃除をすると回答している。

Q:年末に家族で大掃除をしますか(出典/アイロボットジャパン「年末の大掃除に関する意識調査」)

Q:年末に家族で大掃除をしますか(出典/アイロボットジャパン「年末の大掃除に関する意識調査」)

さきほどの花王の調査で、「2019年の年末に大掃除をする予定があるか」を聞いたところ、77%が実施予定だと回答していることから考えると、質問の仕方が「昨年に実施したか?」と「年末に大掃除をするか?」とでは、回答が多少異なるのだろう。

ただ、家族で年末に大掃除をする恒例行事的な習慣は、薄れつつあると言えそうだ

大掃除をしない理由は、年代によって異なる?

では、年末に大掃除をしない理由は、どういうものだろう?
アイロボットジャパンの調査結果によると、48.8%が「年末は忙しいので別の時期に掃除をする」と、42.9%が「日常定期的に掃除をしているので大掃除はしない」と回答し、理由は大きく2つに分かれた。「大掃除は業者に頼むので自分ではやらない」は4.8%だった。

2大理由ともいえる、「日常掃除で済ます」と「年末以外に行う」については、年代によって傾向が異なる。20代・30代では「日常掃除で済ます」派が多く、40代・50代では「年末以外に行う」派が多い。

Q:年末に大掃除をしない理由(出典/アイロボットジャパン「年末の大掃除に関する意識調査」)

Q:年末に大掃除をしない理由(出典/アイロボットジャパン「年末の大掃除に関する意識調査」)

実は、最近は「秋掃除」や「春掃除」が効果的だと言われている。理由はいくつかある。
・油汚れなどが緩んで落としやすい
・水が冷たくない、お湯の温度を維持しやすい
・寒くないので窓を開けたままにできる
・洗ったものが乾きやすい
そう考えると「年末以外に行う」派は合理的といえるだろう。

普段おろそかにしている玄関まわりや窓まわり、カビ取りなど、日常の掃除だけでは手が回らないことも多い。日常の掃除に加えて、気になったときに小まめに“小掃除”するのが効果的だ。まとめてやるとなると億劫になるので、小掃除を習慣化することで効率アップを図る人も多いだろう。

「年末に大掃除をしない」背景には、それぞれの年代で、自分たちのライフスタイルに応じた合理的な掃除の仕方を工夫しているから、という見方もできる。

床拭きの頻度に大きな違いがあった!年1回程度VS週1回以上

さて、SUUMOジャーナル編集部と調査結果を見ていて注目したのは、「床拭きの頻度」だ。
この調査でいう床拭きが、水拭きを指すのか、から拭きだけでも床拭きというかは分からないが、床拭きの頻度はかなり二極化していた。

「日常の床拭きの頻度」を聞いたところ、最多は「週1回以上」の33.6%で小まめに床拭きをしている様子がうかがえる。次いで多かったのは、「月に1回程度」の29.1%だった。一方で、「大掃除の時や年に1回程度」が15.3%、「まったくしない」が15.5%と床拭き消極派が約3割もいることが分かった。

Q:日常の床拭き掃除の頻度(出典/アイロボットジャパン「年末の大掃除に関する意識調査」)

Q:日常の床拭き掃除の頻度(出典/アイロボットジャパン「年末の大掃除に関する意識調査」)

また、「自宅内で最も拭き掃除が必要と思われる箇所」を聞くと、1位が「リビング・ダイニング」(38.3%)、2位が「キッチン」(35.9%)だった。

敬遠されることもある床拭きだが、目には見えないホコリや汚れが床には残っているもの。消極派の方には、見直してほしい。掃除機をかけた後に水拭きでしっかり汚れを取り、水分を残さないように乾かすことがポイントだ。

ところで、江戸時代には、大掃除ともいえる“煤払い(すすはらい)”をした後、胴上げをしたということをご存じだろうか?

筆者の「連載:江戸の知恵に学ぶ街と暮らし」に執筆したが、江戸時代には電気はないので火を使うために室内に煤がたまり、その煤を払い落とす習慣があった。大掃除というだけでなく、正月を迎えるお清めの儀式でもあったので、大きな商店では煤払いの後に、食事や酒がふるまわれ、時には胴上げをするなどのお祭り騒ぎになった。『東都歳事記』にもそうした絵が描かれている。

年末に大掃除をしないとしても、新年を気持ちよく迎えるために、正月の準備はきちんとしたいものだ。

●取材協力
花王
ダスキン

森林調査、2割が農山村に定住意向あり、7割が木造住宅を選びたい

森林の存在や木材の利用は、私たちの生活に深くかかわっており、その効用にも注目されている。内閣府が「森林と生活に関する世論調査」の令和元年版(全国の18歳以上の3000人を対象に個別面接形式で実施、有効回収率51.5%)を公表した。そのなかから、「農山村での暮らし」や「木造住宅」に関する結果について、詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「森林と生活に関する世論調査(令和元年10月調査)」を公表/内閣府約2割が農山村に定住意向あり。農山村での森林浴や景観は魅力

まず、「農山村に定住してみたいと思いますか」と聞いたところ、「定住してみたい」(定住してみたい8.6%+どちらかといえば定住してみたい12.2%)という回答が20.8%と、約2割が定住の意向があることが分かった。また、「既に定住している」割合は14.1%だった。

定住意向のある人に「定住する場合に就いてみたい職業」を聞いたところ(複数回答)、「農業」を挙げた割合が最も高く56.4%で、次いで「第3次産業(農業以外の小売業、飲食サービス業、医療業など)」の22.1%となった。一方、「就いてみたい職業はない」の割合が15.6%と3番目に多くなった。定住する場合に、どんな仕事をしていくかは課題になりそうだ。

次に、「農山村に滞在して休暇を過ごす場合、どのようなことをして過ごしてみたいと思いますか」(複数回答)と聞いたところ、「森林浴により気分転換する」が43.1%、「森や湖、農山村の家並みなど魅力的な景観を楽しむ」が41.4%となり、4割以上が森林浴や景観に魅力を感じていることが分かった。

農山村に関する企画への参加意向(複数回答)(出典/内閣府「森林と生活に関する世論調査(令和元年10月調査)」)

農山村に関する企画への参加意向(複数回答)(出典/内閣府「森林と生活に関する世論調査(令和元年10月調査)」)

政府は「定住人口」「関係人口」「交流人口」で地域創生を狙う

さて、地域創生を掲げた政府だが、就労などのハードルが高い「定住人口」や観光目的の短期的な「交流人口」の創出に加え、「関係人口」の創出を打ち出している。関係人口とは、地域に関心をもち、地域や地域の人々と多様にかかわっていこうとする人々のことだ。

「農山村に関する企画への参加意向」の調査は、関係人口の可能性につながるものだろう。選択肢にあるような「地域の特産品購入」を定期的に行うことや「自然と触れ合う体験」、「伝統的な文化の体験」などで頻繁に地域を訪れることも、関係人口に該当する。

定住意向の有無にかかわらず、こうした企画に参加意向のある人が多いということが、将来的な関係人口へとつながることを期待したい。

木造住宅を選びたい人が7割超、ただし若年層では約6割に

調査では、木造住宅に関する項目もある。「仮に今後、住宅を建てたり買ったりする場合、どのような住宅を選びたいと思うか」を聞いたところ、「木造住宅(昔から日本にある在来工法のもの)」の割合が47.6%、「木造住宅(ツーバイフォー工法など在来工法以外のもの)」の割合が26.0%で、木造住宅の合計が73.6%になった。「非木造住宅(鉄筋、鉄骨、コンクリート造りのもの)」の23.7%に比べると、木造住宅を選びたいという回答が多いことが分かる。

木造住宅か非木造住宅かの意向(単一回答)(出典/内閣府「森林と生活に関する世論調査(令和元年10月調査)」)

木造住宅か非木造住宅かの意向(単一回答)(出典/内閣府「森林と生活に関する世論調査(令和元年10月調査)」)

前回調査(2011年10月調査※20歳以上に調査)と比べると、「木造住宅(在来工法)」で8.4ポイント減少、「木造住宅(在来工法以外)で1.3ポイント増加という違いが見られたが、依然として木造住宅の意向が高いことが分かる。

ただし年齢別に見ると、若い世代ほど「非木造住宅」を選びたいと回答する割合が高くなり、18~29歳では、「非木造住宅」(39.4%)、「木造住宅(在来工法以外)」(37.9%)、「木造住宅(在来工法)」(21.2%)の順で、木造住宅の合計は約6割だった。マンションなどの非木造住宅がマイホームとして定着し、現在マンションで暮らしている人などが多いという背景もあるのだろう。

では、「様々な建物や製品に木材を利用すべきと思いますか」と聞くと、「利用すべきである」(利用すべきである53.8%+どちらかといえば利用すべきである35.2%)が89.0%と9割近くを占めた。

「利用すべきである」と回答した人に、「木材を利用すべきと思う理由」(複数回答)を聞くと、「触れた時にぬくもりが感じられるため」(62.7%)、「気持ちが落ち着くため」(57.8%)、「日本らしさを感じるため」(49.5%)、「香りが良いため」(40.7%)が上位に挙がった。

一方、「利用すべきない」と回答した人に、「木材を利用すべきではないと思う理由」(複数回答)を聞くと、「森林破壊につながる印象があるため」(63.0%)、「火に弱い印象があるため」(35.3%)、「地震に弱い印象があるため」(30.3%)が上位に挙がった。

また、「どのような施設に木材が利用されることを期待するか」(複数回答)を聞いたところ、「保育園などの保育施設や幼稚園、小・中学校などの教育施設」が75.6%と最多だった。

木材は二酸化炭素を吸収してくれるし、繰り返し生産できる循環型の資源でもある。自然環境に優しいことに加え、調査結果からも分かるように、森林には森林浴や自然美あふれる景観などの魅力があり、木材の利用には木のぬくもりを感じたり、気持ちを落ち着けたりする効果が期待できる。

木材を活用してきた日本社会では、木造住宅を選ぶ意向も高い。半面、火災や地震に弱いことへの懸念もある。最近では、RC造(鉄筋コンクリート造)などと同等の防火性能を有する木造建築物が認められるようになり、設計上の工夫や技術開発などによって、木造建築物の安全性を高められるようになっている。木材活用の可能性が広がることに期待したい。

分譲マンションのシェアリングサービス、ついに傘も登場!

分譲マンション、特に居住者の多い大規模なマンションで、各種のシェアリングサービスが広がっている。そしてついに、身近な「傘」のシェアリングサービスも開始される。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
2つの分譲マンションに新サービス導入/京急電鉄マンションで広がるシェアリングサービス

マンションで最初に広がったシェアリングサービスは、「カーシェアリング」ではないかと思う。土地の狭い都心部でマンションの敷地内に駐車場を確保することが難しかったり、若年層が車を所有しなくなったりといった背景を受けて、車をシェアするサービスが取り入れられるようになった。

同様に、「自転車」のシェアリングサービスも見られるようになった。レンタサイクルシステムを運営する企業が増えたこともあるが、2段式駐輪ラックなどでは上段の利用が面倒で使い勝手が悪いといったことも、背景にあるのだろう。買うには高額な電動アシスト自転車を利用できるのも、魅力のひとつかもしれない。

東日本大震災以降は、マンションの防災対策が強化されるようになり、防災備品を全戸分ストックしたり、炊き出し用のかまどを備えたりするマンションが、特に大規模なもので増えてきた。それにつれて、大型の工具やバーベキューセットなど、各家庭で備えるには場所を取るが、被災時には役立つような「モノ」のシェアリングサービスも見られるようになった。

そして、最新トレンドとして注目されそうなのが、「傘」のシェアだ。

マンション暮らしの筆者は、空を見上げて「まだ大丈夫かな」と思ってエントランスを出たら、パラパラと雨が降りだして、あわてて傘を取りに家に戻り、電車を1本乗り逃がすということがある。70戸程度の一般的なマンションでもそうなのだから、大規模マンションなら自宅まで往復するのにさらに時間がかかりそうだ。乗り逃がすのも2本3本となるだろう。

「傘」シェアリングサービスがマンションで登場!

さて、京急電鉄(京浜急行電鉄)が傘シェアリングサービス 「アイカサ」 とタイアップして、「プライムパークス上大岡 ザ・レジデンス」(全200戸)と「プライムスタイル川崎」(全168戸)の2物件で、マンションと最寄駅の間で傘シェアリングの無料(1時間以内)利用サービスを提供すると発表した。

これには伏線がある。マンションだけでなく、最寄駅にも傘シェアリングサービスが行われていないと実現できないからだ。

利用イメージ図(画像提供:アイカサ)

利用イメージ図(画像提供:アイカサ)

傘シェアリングサービスのアイカサに話を聞くと、鉄道沿線のサービス提供に力を入れていて、現在、JR東日本、京成電鉄、ゆりかもめ、京急電鉄、西武鉄道、小田急電鉄、西日本鉄道、福岡市営地下鉄の8社でサービスの提供をしているという。最も利用件数が多いのが、自宅やオフィスと行き来する「駅」だからだそうだ。

2物件の最寄駅である京急本線「上大岡駅」と「京急川崎駅」には、2019年度内に順次設置し、マンションの入居開始(いずれも2021年3月下旬予定)時の傘シェアリングサービスを実現することになっている。

利用方法は、LINEで場所や在庫本数を確認し、傘の持ち手のQRコードを読み取って、通知される番号でダイヤルロックを解除して傘を取り出すというもの。返却も同様だ。マンションと駅の間で1時間以内の利用なら無料だが、24時間以内の利用も70円でできるようになっている。

設置例(画像提供:アイカサ)

設置例(画像提供:アイカサ)

そもそも、この仕組みでビジネスになるのかをアイカサに聞いてみた。一度利用すると、その便利さからかリピート率が高いので、いろいろなシーンで傘を利用してくれるようになるのだという。

傘立ての中に何本か傘を常備している一般家庭が多いと思うが、急な雨でビニール傘を買い、傘立ての傘が増えていったりビニール傘がゴミと化したりすることも多いだろう。傘シェアリングは、便利なだけでなく、ゴミの減量や街の美化などにもつながると考えられる。

マンションへの傘シェアリング導入は、今後増えるかどうか注目したい。

住宅購入はじっくりと。増税前に購入したいと考えた人は昨年より大幅ダウン

リクルート住まいカンパニーの「2019年注文住宅動向・トレンド調査」によると、消費税率10%への増税の影響で、増税前に家を建てたいという人は少なかったという。一方で、防災については意識が高かったようなのだが、どんな家を建てようとしているのだろうか?【今週の住活トピック】
「2019年 注文住宅動向・トレンド調査」を発表/リクルート住まいカンパニー住宅は「増税に関係なくゆっくり考えるもの」

同社の調査は、注文住宅の建築者(1年以内に注文住宅を建築した1884人)および検討者(今後2年以内に注文住宅の建築を検討している1880人)を調査対象にしている。

まず、注文住宅の建築者の結果を見ると、建築費用の平均は、全国で2902万円(前年より95万円増)、このうち首都圏では3034万円(前年より50万円増)だった。
また、家づくりを考えたきっかけ(複数回答)は、「いつかは一戸建てに住みたいと思っていた」(25.5%)、「子どもが誕生した」(25.2%)、「結婚」(22.4%)がTOP3で、「消費税が上がる前に建てたいと思った」は24番目のわずか3.1%だった。

次に、検討者に消費税増税の影響を聞いた結果を見ると、消費税増税前に建築を「間に合わせたい」と回答した人は30.8%で前年より36.7ポイントも減少していた。

増税前における住宅建築意向(検討者・全国)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

増税前における住宅建築意向(検討者・全国)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

さらに、増税前の住宅建築に「こだわりがない」と回答した51.3%の人に、こだわらない理由(複数回答)を聞いたところ、「増税に関係なくゆっくり考えるもの」という回答が65.3%と圧倒的に多かった。

増税が建築に関係しなかった理由(検討者・全国)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

増税が建築に関係しなかった理由(検討者・全国)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

消費税率が上がる度に注目される「駆け込み行動」ではあるが、今回の調査結果を見ると消費者は比較的冷静に行動したことがうかがえる結果となった。本来住宅は、必要とする時期に、希望の条件にそってきちんと建てるべきものだ。繰り返される増税で、消費者も賢い判断をしているといってよいだろう。

高まる、住宅の防災意識

最近は、地震だけでなく、台風による被害なども続いているが、防災に対する意識はどうなっているのだろう?

注文住宅の建築者に聞いた結果を見ると、建築にあたり防災を「意識していた」という回答は70.1%(「かなり意識していた」23.8%+「意識していた」46.2%の合計)と高く、検討者では83.4%(32.6%+50.9%)とさらに高くなることが分かった。

防災を意識した人に、具体的な対策を聞くと(複数回答)、「地震に強い地盤」や「地震に強い構造」など地震対策が半数を超えた。ただし、調査時期が台風15号による被災を受ける前であることから、水害や風害への意識は調査時期より高まっていることが考えられる。

■防災に関する対策(建築者・検討者)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

■防災に関する対策(建築者・検討者)(出典:リクルート住まいカンパニー「2019年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

パワーカップルは立地へのこだわりも強い?

今回の調査では、近年、住宅取得の層として注目されている共働き世帯についても分析している。「夫・妻のいずれも年収が400万円以上」かつ「世帯年収が1000万円以上」を『パワーカップル』と定義し、そうでない既婚層と比較検討している。

筆者が気になったのは、パワーカップルの高い資金力はどこに向けられるかだ。どうやら、結果を見る限りは「立地へのこだわり」に向かっているようだ。詳しく説明しよう。

■注文住宅を選んだ決め手の上位TOP2(建築者※注文住宅以外の住宅タイプも検討した者・全国)
1位:設備や間取りが好きなように選べるから
パワーカップル(59.0%)VSパワーカップル以外(74.8%)
2位:自分の好きな場所に建てることができるから
パワーカップル(50.2%)VSパワーカップル以外(45.1%)

■パワーカップルが建築エリアでより重視する条件TOP2(建築者※新規土地取得して注文住宅を建てた者・全国)
差分+18.7:保育園に入りやすい自治体である
パワーカップル(30.5%)VSパワーカップル以外(11.8%)
差分+13.3:最寄駅からの距離が近い(自宅から10分圏内)
パワーカップル(41.5%)VSパワーカップル以外(28.2%)
※【差分】=(パワーカップル)-(パワーカップル以外)

注文住宅以外の住宅タイプの検討した結果、最終的に注文住宅を選んだ人で見ると、パワーカップルの場合は注文住宅の特徴である「設備や間取りの自由度」と同じくらいに、「立地の自由度」を重視したことが分かる。また、今ある家を建て替えて注文住宅を建築したのではなく、土地の取得も行った場合は、立地選びをすることになるが、共働きゆえに、「保育園の確保」や「最寄駅から10分以内」などの交通アクセスも重視している点も、パワーカップルの大きな特徴だ。

ほかにも、車の保有管理やペットと暮らすことを決め手にしたり、防犯仕様の充実やZEHなどを重視していたりなどの違いが見られた。こうした付加価値にも資金力が向かうということか。

近年、土地を新たに取得してそのうえで注文住宅を建てる人が増えている。調査結果でも「土地なし」は増加傾向にあり、今回は71.3%に達した。つまり、既成の住宅にはあきたらず、立地も間取りも自由に選びたいという、住宅にこだわりのある人が注文住宅を選んでいると見てよいだろう。

自分のライフスタイルに応じた住まいを手に入れるという本来の目的から考えると、立地にも間取りにもこだわるというのは、理にかなった考え方かもしれない。

女性の7割が冷え性!なのに、間違った入浴法をしている人も…目指せ「入浴優等生」

「足元が冷たくて眠れない!」「手がかじかんで困る!」。冷え性の筆者は、今の季節すでにこうした悩みを抱えている。リンナイによると、冷え性が改善する入浴方法があるという。冷え性に効果的な入浴方法とはどんなものか?冷え性の筆者と一緒に、調べていこう。【今週の住活トピック】
「冷え性と入浴に関する意識調査」を公表/リンナイあなたの入浴知識度をチェックしてみよう

まずは、リンナイの「入浴知識チェックシート」から、冷え性に関係のある5つの項目にチャンレンジしてほしい。

■「入浴知識チェックシート」より抜粋
□ぬるま湯より42℃以上の熱いお湯のほうが体が良く温まり、冷え性に良い
□冷え性の人はお風呂上がりに靴下を履くと良く眠れる
□半身浴より全身浴のほうが汗をたくさんかく
□入浴後、冷えないうちにすぐに布団に入ると良く眠れる
□湯船に浸かる習慣がある日本人より、湯船に浸かる習慣がない欧米人のほうが冷え性に悩む人が多い
(出典/リンナイ「冷え性と入浴に関する意識調査」のリリース)

正解は、「×・×・○・×・×」の順。あなたは正しく答えられただろうか?

筆者は3勝2敗。実際の設問は11問あり、正解9問以上が「入浴優等生」なのだそうだ。筆者は8問だったので、入浴優等生にはなれなかった。中でも、冷え性に関する設問で誤答が多かったのはショックだ。

よくお風呂に入る冷え性の人、実は間違った入浴法をしていることも?

リンナイの「冷え性と入浴に関する意識調査」によると、男性の40.6%、女性の72.0%が冷え性だと回答した。女性のほうが、圧倒的に冷え性が多いのだが、男性も4割は冷えに悩まされている。

冷えを感じる部位を聞くと、1位「足先」(89.0%)、2位「手先」(67.7%)が突出して多く、末端に冷えを感じている方が多いことが分かった。結果は以下、「脚」(19.7%)、「お腹」(19.2%)、「腰」(14.0%)、「二の腕」(7.3%)の順だった。かくいう筆者も“末端”冷え性だ。足先、指先などの「先」の次に、首、足首、手首などの「首」が冷えるので、ぜひ選択肢に入れてほしかった。

さてこの調査結果によると、冷え性の人と冷え性でない人に、入浴方法で違いが見られた。

冬の時期に、湯船に浸かることが多いか、シャワーだけで済ますことが多いか調査したところ、湯船に浸かる人が全体で67.7%と多数を占める結果に。なかでも、冷え性の人は71.2%で、冷え性でない人より湯船に浸かっている人が多いことが分かった。

「あなたは、冬の時期はお風呂に入る(湯船につかる)ことが多いですか?それともシャワーだけで済ますことが多いですか?」(単一回答)(出典/リンナイ「冷え性と入浴に関する意識調査」のリリースより転載)

「あなたは、冬の時期はお風呂に入る(湯船につかる)ことが多いですか?それともシャワーだけで済ますことが多いですか?」(単一回答)(出典/リンナイ「冷え性と入浴に関する意識調査」のリリースより転載)

ただし、「お風呂の温度」には注意点がある。冷え性の人は、41℃以上の熱いお風呂に入る人の割合が高いのだ。「入浴知識チェックシート」を監修した、早坂信哉先生によると「41℃以上の熱い湯は急激に体温を上げてしまい、体は懸命に体温を下げようとし、結果として体の温まりは長く続きません。体の温まりが長く続くのは、むしろぬるめの湯なのです」ということだ。

「半身浴」についても、注意が必要だ。半身浴をしているのは、全体で34.7%。実は、冷え性の人のほうが半身浴をしている割合は高い。

「あなたは、入浴するときに半身浴をしていますか?」(単一回答)(出典/リンナイ「冷え性と入浴に関する意識調査」のリリースより転載)

「あなたは、入浴するときに半身浴をしていますか?」(単一回答)(出典/リンナイ「冷え性と入浴に関する意識調査」のリリースより転載)

早坂先生によると「半身浴は心臓や呼吸器が悪い人にはお勧めですが、40℃の半身浴を10~20分では十分に体が温まらない可能性があります。健康な人は湯温、時間はこのままで全身浴に切り替えてみてください」とうことだ。

冷え性の人におすすめの入浴法とは?

早坂先生によると、冷え性におすすめのお風呂の入り方があるという。

■お風呂に毎日入る
■基本は、40℃のお湯に全身浴で10~15分

冷え性は、手足の末梢の血流が悪くなることで起きるので、体を温めて血流を改善させることがポイント。それには入浴が効果的なので、毎日お風呂に入るのがよいという。それには、熱すぎない40℃のお風呂に肩まで全身浴で10~15分入るのが基本。長く入りすぎるとのぼせ(熱中症)を引き起こすリスクがあるという。

また、「40℃のお風呂に2~3分浸かったあと、シャワーで30℃のちょっとぬるい湯を、冷えの気になる手足へ1分かける“プチ温冷交代浴”がお勧め」だというので、試してみてはいかがだろう?

バスルームの進化は目覚ましい。高い機能を活用したい

さて、ここまでだと入浴方法の紹介に終わってしまうので、筆者の専門領域である住宅について話題を広げ、最新のバスルームについて見ていきたい。

今のバスルームは、システムバスが基本だ。浴室全体が一体となってつくられているので、防水性が高いのが特徴。水はけのよい床材、魔法瓶のような構造で保温性の高い浴槽などがスタンダードになっている。「浴室暖房乾燥機」を付けて、あらかじめ浴室を暖めたり入浴後の湿気を乾燥させたりといった、便利な使い方ができるようにもなっている。

さらに、「ミストサウナ機能」(細かい霧状の温かいミストを発生させ浴室内に噴霧するもの)をプラスすれば、入浴後も体の温まりが持続するなど冷え性にも効果的。また、肩の高さからお湯が流れる“肩湯”ができるなど、新しい機能を持たせたバスルームも登場している。

バスルームの近年の進化は、実に目覚ましいものがある。こういったバスルームの機能をうまく活用することも、冷え性の改善には効果があるだろう。

ところで、「入浴知識チェックシート」の設問にあった、すぐに布団に入ったり、靴下を履いたりするのが良くない理由は、お分かりだろうか?手足から熱が放散して、体温が下がることで眠くなるので、入浴後90分後を目安に布団に入り、靴下は履かないほうが睡眠には良いのだそうだ。

また、冷え性は日本人特有のもので、欧米人にはない症状だというのは、羨ましい限りだ。

4割が住宅ローン選びに後悔!注意点はある?

人生で最大の借金といわれる「住宅ローン」。住宅を担保にすることで多額のローンを利用でき、35年など長期間にわたって、元金と利息を返済していくことになる。どんなローンを選ぶかは、かなり重要だ。であるのに、約4割が「後悔している」のだという。住宅ローン選びについて、深堀りしてみよう。【今週の住活トピック】
「『住宅ローン選びの後悔』に関するアンケート調査」を発表/MFS4割が住宅ローン選びで後悔!原因は「金融機関選び」と「金利タイプ」

MFSが「住宅ローン選びの後悔」に関するアンケート調査を実施したところ、「住宅ローン選びで後悔していることはありますか?」の問いに40.8%が「ある」と回答した。

後悔している理由を聞くと、最も多かったのは「もっと金利の低い金融機関を選べば良かった」(31.7%)、次いで「違う金利タイプを選べば良かった」(20.3%)だった。

住宅ローン選びで後悔していること(複数回答)(出典/MFS「『住宅ローン選びの後悔』に関するアンケート調査」より転載)

住宅ローン選びで後悔していること(複数回答)(出典/MFS「『住宅ローン選びの後悔』に関するアンケート調査」より転載)

住宅ローンは、窓口となる金融機関それぞれで複数の金利タイプのローン商品を用意している。その結果、どの金融機関のどのローン商品を選ぶかによって、当初の金利や借入期間中の金利の動きが変わってくる。加えて、今はほとんどの金融機関で一定の条件に当てはまる人に対して、金利を引き下げる「優遇金利」を用意しているので、同じ金融機関で同じローン商品を選んだとしても、人によって適用される金利が違うということもある。

つまり、金融機関ごとにどういったローン商品を取り扱っていて、自分が適用される金利はどうなるのかといった、情報収集と比較検討をしっかりしないと、自分にとって有利なローン商品、あるいは自分のライフプランに適したローン商品を選ぶことが難しくなる。

不動産会社が紹介する金融機関を選ぶのは、OK?NG?

後悔の原因の3位に挙がった「不動産会社に言われるがままに選んでしまった」についてはどうだろう?

調査結果からはその詳細が分からないが、「言われるがまま」が意味していることは2つ考えられる。1つは、不動産会社の提携先など「紹介された金融機関で借りる」こと。もう1つは、「提案された住宅ローンの組み方で借りる」こと。

まず前者の「紹介された金融機関で借りる」ことについて、見ていこう。

この調査では、不動産会社から紹介された金融機関を選んだ人に、後悔の有無と理由を聞いている。こちらも、41.3%と約4割が「後悔している」と回答した。紹介先の金融機関を選んだ理由について、後悔している人では、「自分の住宅ローン知識に自信がなかった」(54.1%)と「住宅ローン手続きが面倒だった」(42.4%)がかなり多くなっている。

不動産会社から紹介された金融機関を選んだ理由(複数回答)(出典/MFS「『住宅ローン選びの後悔』に関するアンケート調査」より転載)

不動産会社から紹介された金融機関を選んだ理由(複数回答)(出典/MFS「『住宅ローン選びの後悔』に関するアンケート調査」より転載)

住宅ローンを借りるには、金融機関ごとに「購入する物件の審査」と「借りる人に対する審査」が行われ、双方を考慮して、借りられる額が提示される。不動産会社が紹介する、いわゆる「提携ローン」の場合、あらかじめ不動産会社と金融機関で情報を共有しているので、物件の審査に要する時間がかからず、「ローン審査の時間が短い」という特徴がある。不動産会社がローンの手続きの一部を代行する場合もあり、手続きがスムーズということも多い。

また、場合によっては「提携ローン」独自の優遇金利が適用され、ほかで借りるよりも低金利で借りられる場合もある。後悔していない人で「紹介先金融機関の金利が低かったから」(27.3%)が多いのは、そういった理由からだろう。

半面、提携ローンはローン商品が限定される。選べるローン商品が二つか三つということも多いので、多くのローン商品を比較検討して選びづらいのがデメリットだ。その結果、自分の希望するローン商品を見逃すといったことにつながるわけだ。

調査結果を見る限り、住宅ローンに関する情報不足などから不動産会社任せにしてしまった人ほど後悔し、比較検討した結果として提携ローンを選んでいる人ほど後悔していないという傾向がうかがえる。提携ローンを選んで後悔するか否かは、やはり情報収集と比較検討をしたかどうかにかかってくるようだ。

提案された住宅ローンの組み方が、我が家に合っているとは限らない

次に、「提案された住宅ローンの組み方で借りる」ことについて見ていこう。

住宅ローンの金利タイプには、半年ごとに金利が見直される「変動金利型」、返済当初一定期間の金利を固定する「固定期間選択型」、返済中金利が変わらない「全期間固定型」がある。固定期間選択型は、当初固定期間を2年、3年、5年、10年などから選ぶもの。全期間固定型は、住宅金融支援機構と民間金融機関の提携ローン【フラット35】が代表的なものだ。

不動産会社が販売センターなどで資金計画の試算をする場合、適用される当初の金利が最も低い「変動金利型」を利用し、返済期間を最長の「35年」で組むケースが多い。このパターンが最も多く借りられるからだ。ただし、変動金利型などの場合、市場の金利が上昇すると適用される金利も上昇して、返済期間中に返済額が増えてしまう可能性がある。

例えば、これから子どもの教育費の負担が増えていく家庭や、出産後に妻が働き方を変えるので収入が減る見込みの家庭など、5年後10年後に返済額が増えることを避けたい家庭もある。一方、40代50代で家を購入する場合、返済期間をリタイアまでの期間に設定してガンガン返済したい家庭もある。

借入期間中に金利や返済額がどのように変動するのか、返済期間は何年に設定するのが適当か(繰り上げ返済等も考慮しながら判断)、などもよく考えて、自分たちのライフプランに適した金利タイプや返済期間を選ぶ必要がある。

調査結果で「紹介先の金融機関を選ぶのが当然と思ったから」の選択肢が、後悔した人でもしていない人でも意外に多く、どちらも4人に1人がそう思っていることがうかがえる。金融機関にしろ、住宅ローンの組み方にしろ、紹介されたものをそのまま選ぶ必要はない。自分なりの組み方を希望したり、別の金融機関を自分で選んだりしたからと言って、それだけで不動産会社との信頼関係が崩れることもない。「購入する意思は固いが、自分に合ったローンを選びたい」ときちんと伝えておけばよいのだ。

もちろん「自分の住宅ローンの知識に自信がない」という人は多いだろう。だからと言って他人任せにするのではなく、不動産会社や口座のある金融機関の窓口、あるいはそれぞれがサービスとして提供する「ファイナンシャルプランナーの無料相談会」などを利用して、知識を広げていくことも必要だ。

最終的には、自身が長期間返済していくことになる住宅ローンなのだから、自学自習もしよう。もっとも、この記事を読んでいる方々は、すでに知識を広げる努力をされているのだろうから、釈迦に説法かもしれない。

それでいいのか?マンションの理事未経験者の約8割が「理事会役員になりたくない」

実は筆者は、マンションの管理組合の理事長を経験している。仕事柄、マンション管理に関する情報に触れているということもあるが、やはり「快適に暮らし続けたい」「資産価値を下げたくない」と思っているからだ。なのに、にもかかわらず、理事の役員をやりたくないと考えている人がなんと多いことか。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「マンション居住者に対する、理事会運営に関する調査結果」を公表/つなぐネットコミュニケーションズ(マンション・ラボ)マンションの理事会役員未経験者の8割が「役員になりたくない」!?

マンション・ラボの調査結果によると、マンションの管理組合の理事会役員を経験したことがあるのは、58.9%(現在役員8.6%+以前役員経験あり50.3%)で、残りの41.1%が経験したことがないと回答した。

41.1%の役員未経験者(1031名)に、「マンションの理事会は、マンションの資産価値を守り、住民の暮らしをよくするために、さまざまな活動を行っています。あなたは理事会役員になりたい(なってもいい)と思いますか?」と、その意義も記載して質問したところ、なんと81.9%が「思わない」と回答したのだ。

なぜだろう?理事会役員になりたくないと回答した約8割の人(844名)に、理由を尋ねた結果は下図の通りだ。

Q.マンションの理事会役員になりたくない理由を教えてください(複数選択可)(出典:マンション・ラボ「マンション居住者に対する、理事会運営に関する調査結果」より転載)

Q.マンションの理事会役員になりたくない理由を教えてください(複数選択可)(出典:マンション・ラボ「マンション居住者に対する、理事会運営に関する調査結果」より転載)

「拘束されそうだから」「面倒臭いから」「忙しいから」がほぼ4割に達している。
では、現実問題、どのくらい拘束されるのだろうか?

「1カ月に1回、土日の午前か午後に2時間未満」の理事会参加が難しい?

理事会の運営にどの程度時間を取られるかは、マンションによって異なる。築年数が経つほど、建物や設備で修繕や交換が必要な不具合が生じたり、居住者が入れ替わることでマナーに意識差が生じたりで、理事会で検討すべき課題が多くなるからだ。さらに、マンションの規模(戸数)などによっては、役員の輪番頻度や開催頻度なども変わるだろう。

マンション・ラボでは、調査結果の詳細をレポートしている。それを見ると、理事会の運営実態はおおむね次(上位3位まで紹介)のようになる。
■理事会の開催頻度(単一回答)
1.「1カ月に1回程度」(57.6%)、2.「2カ月に1回程度」(22.2%)、3.「3カ月に1回程度」(10.6%)
■理事会の主な開催曜日・時間帯(複数回答)
1.「日曜日の日中(午前)」(40.0%)、2.「土曜日の日中(午前)」(33.3%)、3.「土曜日の日中(午後)」(16.4%)
■理事会の所要時間(単一回答)
1.「1時間以上2時間未満」(60.1%)、2.「1時間未満」(18.3%)、3.「2時間以上3時間未満」(16.1%)

つまり、「1カ月に1回、土日の午前か午後に、2時間未満を理事会の運営に充てる」のが一般的な拘束時間になるようだが、マンションの資産価値を守ることに、この程度の時間を割くことが難しいということなのだろうか?

一方で、役員未経験者に「理事会の役割や取り組みの内容をご存じですか?」と聞いたところ、「知っている」が55.1%、「知らない」が44.9%だった。「知らない」人には、ぜひ、その意義を知っていただきたい。

快適な暮らしや資産価値の維持のために、欠かせない理事会運営

まず、マンション・ラボが、役員経験者に「理事会の主な議題」を聞いた結果を紹介しよう。

■理事会の主な議題(上位10位まで)
1.大規模修繕工事の検討
2.住民トラブル・マナー対策
3.管理費・修繕積立金の見直し
4.マンション管理規約の見直し
5.駐輪場の見直しや改善
6.駐車場の見直しや改善
7.防災対策の向上や改善
8.共用部分の省エネ化対策
9.防犯対策の向上や改善
10.地域の自治会や町会への参加

マンションの管理組合では、マンションの日常の管理やマンションの建物とインフラ設備(電気・ガス・水道やエレベーター、テレビ視聴設備等)の改修、管理規約(ルールブック)の見直しなど、快適に暮らすためのあらゆることを議決していく。

ほとんどのマンションでは、管理会社に業務を委託してその助言の下、理事会で重要なことを決めていき、年に1回開かれる組合の総会で承認をしていく。

なかでも最も重要なのは、お金の使い方だ。なによりもお金がなければ、改修が必要であっても工事ができないので、不具合のあるまま暮らすか、改修費用を全戸追加徴収するかになる。お金があっても、限られたお金のなかで優先順位を決めながら使っていかなければ、どこかで不足してしまうこともある。

そこで、管理費や修繕積立金の見直しをしたり、大規模修繕工事の発注先や工事内容を検討したり、駐車場に空きが増えれば管理組合に入る金額も減るので対応を検討しなければならないし、今の暮らしに合うように防犯性や省エネ性などを引き上げていく必要もあるしで、資産価値を守ることとお金の管理は重要な課題となる。

併せて、マナー違反やトラブル解消の手立てを打ち、必要があればルールを改定し、民泊や個人情報保護などの新たな課題にスピーディーに対処する必要もある。

適切な管理が行われないと、マンションに不具合があるままだったり、マナーが悪いことが明らかだったり、他のマンションと比べて性能が劣っていたりして、いざ売却しようとしたときに、思う金額で売れないということになる。

マンションであれ一戸建てであれ、快適に暮らすためには、マイホームの建物や設備のメンテナンスを行い、近隣住人とトラブルのないようにマナーを守って暮らすように努める必要がある。そのために、管理会社の助言を得ながら、理事会で話し合って決めていくことが、面倒だったり、拘束されると感じたりするのはどうなのだろう。しかも、毎年ではない。マンションによるが、10年に1回など頻度はそう多くはない。

重要性を理解していただき、ぜひ積極的に理事会の役員を担っていただきたい。

モテる人は収納上手? 整理された部屋にお呼ばれすると、ときめく人が続出!

日本ワークスが、東京23区に一人暮らし経験のある20代~30代男女819人を対象に、「理想の物件」に関するアンケート調査を実施した。その結果、異性を呼ぶときに、勝負を分けるカギとなるのが部屋の「収納」であることが分かった。さて、どんな対策をすればよいのだろうか。【今週の住活トピック】
「『理想の物件』に関するアンケート調査」を発表/日本ワークス異性の部屋でときめいたり、がっかりしたポイントは?

調査結果は、意外とシンプルだった。

「異性の部屋」に入って、「ときめいたポイント」を聞くと、ダントツが、「きちんと整理整頓されている」(46.1%)だった。

「異性の部屋でときめいたポイントを教えてください」(出典/日本ワークス「『理想の物件』に関するアンケート調査」より転載)

「異性の部屋でときめいたポイントを教えてください」(出典/日本ワークス「『理想の物件』に関するアンケート調査」より転載)

さらに、「異性の部屋」に入って、「がっかりしたポイント」を聞くと、こちらもTOPが、「収納ができていない」(31.5%)だった。

「異性の部屋でがっかりしたポイントを教えてください」(出典/日本ワークス「『理想の物件』に関するアンケート調査」より転載)

「異性の部屋でがっかりしたポイントを教えてください」(出典/日本ワークス「『理想の物件』に関するアンケート調査」より転載)

つまり、異性の部屋でモノがきちんと収納されていない様子を見ると、異性そのものへの印象が悪くなり、きちんと収納できていると好感度がアップして「ときめく」というわけだ。

基本は「確認」・「処分」→「仕分け」→「収める」の繰り返し

ならば、「異性を部屋に招く際には、きちんとモノを収納すればよい」ことになる。
が、この収納が案外厄介なものなのだ。

かく言う筆者も収納下手だ。「収納ができてない」状態をつくるのが、むしろ上手だからだ。どういうことかというと、次の2つのことをいつもしてしまう。
(1)床にモノを広げる
(2)なんとなく分けて置いたモノの周辺に似たモノを溜める
だから、仕事部屋の床は足の踏み場が少なく、仕事場やリビングの机の上はモノであふれかえることになる。

そこで週に1回、散らばったパートごとに何の書類かを「確認」し、不要なものがあれば「処分」し、自分の分類ルールに沿ってそれらを「仕分け」、定めた場所に分類したものを「収める」ことをしている。「確認」と「処分」→「仕分け」→「収める」の繰り返しが、収納の基本だからだ。

その前提として、次のことを決めておく必要がある。
・分類ルールを決めておく
・分類したものを収める場所を決めておく

筆者の場合は、書類の整理が中心なので、ルールや収納場所を決めるのはそれほど難易度が高くないが、衣類や雑貨、家事道具などはどんどん増えていき、かさばって収納スペースが不足するので、難易度が高くなる。厄介なことだ。

「見せる収納」と「隠す収納」の使い分け

収納の専門家に取材してよく指摘されるのが、「見せる収納」と「隠す収納」だ。

マイホーム購入者のお宅を訪問した際にも、モノを見せるように収納している家庭、収納スペースにしまって見せないようにしている家庭に大きく分かれるように感じる。これは部屋や空間によっても変わり、見せたり隠したり、それぞれに工夫が感じられる。

ところで筆者は断然、「隠す派」だ。そのほうが掃除は楽だし、すっきり見える。ただし、しまえるだけの収納スペースが必要となるので、もともと収納の多い家を選ぶか居室に収納スペースを設けるかになる。

一方、「見せる派」は、住む人のセンスが光る。以前マイホームを購入したシングル女性を取材したが、家選びの条件に「趣味でつくった帽子を壁に飾れる」ことを挙げていた。大好きな帽子を常に視界に入れて、生活を楽しむことができる上、訪ねてきた知人は彼女の趣味やセンスを知ることができる。

筆者の知人にも「見せる収納」が上手な女性が多い。ある人は、リビングはヨーロッパの家具や小物で、和室は和風家具と小物で統一していた。「気に入る家具が見つかるまでは無理に収納を意識せずダンボールに入れたままでよい。妥協して収納家具を買ってしまうと、結局そのまま気に入っていない家具を使い続けてしまうから」 というほどの徹底ぶりだった。

「どのように見せてモノを置くか」「どのように収納スペースにしまって隠すか」を使い分けることができれば、異性が部屋を訪れたときに「ときめいてくれる」ような収納された部屋になるだろう。

とはいえ、筆者が拝見した収納が上手な部屋は、間違いなくモノが少なかった。「本当に必要なモノしか買わない」、「使わなくなったらどんどん処分する」ということが、実は収納が上手になる秘訣なのかもしれない。筆者の自戒も込めて、モノは増やさないようにしよう。

イマドキの引越し事情!節約の方法、近隣への挨拶、お祝いに贈るものなどご紹介

10月と4月は引越しが多いシーズンだ。そこで、引越しの2大お悩み「費用の節約」、「近隣挨拶」について、リクルート住まいカンパニーが調査した。その結果に加えて、知り合いの引越しで「お祝いを贈るときの相場」についても紹介していこう。【今週の住活トピック】
「引越しに関するアンケート」結果を発表/リクルート住まいカンパニー
・引越し費用を格安で! みんなに聞いた節約テクニック
・引越しの挨拶、みんなどうしてる? アンケートから分析&マナー講師が解説
・引越し祝い・新築祝いの品物と相場 アンケートで見るイマドキのマナー【マナー講師監修】「繁忙期を避ける」「不用品を捨てる」で引越し費用の節約

引越し費用については、引越し経験者の55.9%の人が「もっと安くするためにできることがあった」と回答した。費用を安くするために、複数の引越し会社の見積もりを比較することはもちろんのこと、「引越しコース」の選び方にも工夫があるようだ。

節約するためにどんな「引越しコース」を選んだかを聞いたところ、「繁忙期や土日を避けた」(53.5%)が一番多い結果になった。引越しが多い日にちを避けることで、節約しようということだ。加えて、「午前便・午後便・フリー便(時間指定なし)にした」(39.0%)が2番目に多く、引越し業者の比較的空いている時間帯に利用することで、節約しようとしていることも分かった。

Q.節約するためにどんな「引越しコース」を選びましたか?(複数回答)(出典/リクルート住まいカンパニー「引越しに関するアンケート」より転載)

Q.節約するためにどんな「引越しコース」を選びましたか?(複数回答)(出典/リクルート住まいカンパニー「引越しに関するアンケート」より転載)

さらに費用を抑えるために、「自分で行ったこと」を聞くと、「引越し前に不用品を捨てる」が54.2%、「引越し前に不用品を売却」が32.1%となり、不用品を捨てたり売ったりして“荷物を減らす”ことで費用を節約した人が多いことが分かった。

また、できることは“自分でする”ことで節約している人も多い。「運べるものは、自力で運んだ」(48.0%)、「自分で荷造り・荷ほどき」(44.5%)、「段ボールを自分で用意」(22.8%)とコツコツ努力している姿が見えてくる。

71.8%が「引越しの挨拶をした」。手土産予算は「500円以上1000円未満」が最多

「引越しをしたら、近隣に挨拶する」のは、かつての常識か?

調査結果によると、約3割(28.2%)が「挨拶をしていない」と回答した。残りの約7割(71.8%)の内訳は、「新居のみ挨拶」(40.4%)、「旧居のみ挨拶」(15.7%)、「新旧両方に挨拶」(15.7%)となった。

「立つ鳥跡を濁さず」の例えで、“旧居”にはお世話になりましたと感謝の気持ちで挨拶するのだろう。一方、“新居”の挨拶はこれからよろしくお願いしますと、良好な人間関係をつくろうという意図のものだ。

筆者などは、出ていった跡よりこれから先の生活が良好になるようにと、新居への挨拶を重視するのだが、挨拶をしないと旧居のみを足した43.9%は、新居に挨拶をしていないことになる。過去に「誰が住んでいるのかを知られたくない」という理由で、新居で挨拶をしないという調査結果もあった。今回の調査でも、「一人暮らしのほうが挨拶率は低い」というので、プライバシー保護という観点もあるのだろう。

さて、手土産の予算はいくらだったのだろう?
一番多かったのは、「500円以上1000円未満」の39.1%、次いで「1000円以上1500円未満」の27.5%などとなった。「気兼ねせず受け取れて、お返しが不要と思える価格帯がベスト」ということなので、引越した人の年齢などにもよるだろうが、妥当な額で手土産を選んでいるといえるだろう。

また、具体的なものとしては、「タオルやふきん」(38.5%)、「スイーツ」(30.2%)、「ティッシュペーパー・キッチンペーパー」(27.2%)が上位に挙がった。

Q.引越し挨拶の手土産・粗品は、ひとつあたりいくらの予算を組みましたか?(複数回答)(出典/リクルート住まいカンパニー「引越しに関するアンケート」より転載)

Q.引越し挨拶の手土産・粗品は、ひとつあたりいくらの予算を組みましたか?(複数回答)(出典/リクルート住まいカンパニー「引越しに関するアンケート」より転載)

引越し祝いの相場は相手との関係性によって変わる

落語に「家見舞い」という噺がある。仲良し二人組がお金もないのに、兄貴分が一軒家に引越したので「引越し祝い=家見舞い」を持っていこうと考えて、とんでもないことをするというものだが、江戸時代にはこうした風習があったのだろう。冠婚葬祭の付き合いが重視されたころまでは、引越し祝いを贈ることも多かった。

せっかくなら喜んでもらえるものを贈りたいものだが、「引越し祝いでもらってうれしかったもの」を聞いたところ、「現金」(31.3%)、「ギフト券・ビール券などの金券」(28.0%)、「カタログギフト」(25.1%)が上位に挙がった。新居に合わせて自分で用意したものもあるので、自分が欲しいものを選べるという点が喜ばれる理由だろう。

Q.引越し祝いで、もらってうれしかったものはなんですか?(5つまで回答)(出典/リクルート住まいカンパニー「引越しに関するアンケート」より転載)

Q.引越し祝いで、もらってうれしかったものはなんですか?(5つまで回答)(出典/リクルート住まいカンパニー「引越しに関するアンケート」より転載)

ちなみに、江戸の二人組も兄貴分の家に行って、何が欲しいかを聞いてから買いに行っている。希望した水瓶にはお金が足りなかったので、代替品を用意したのだが、その代替品がこともあろうに……ということで笑わせる落語だ。

さて、SUUMOの記事では、引越し祝いに関するマナーについて、マナー講師監修の下で解説しているので、それをいくつか紹介しよう。

■引越し祝いの名目
・家を建てた&新築マンションなら「新築祝い」
・栄転による引越しは「栄転祝い」か「引越し祝い」
・退職や転職での引越しなら「餞別(せんべつ)」とすることも

■引越し祝いの相場
相手との関係性で決まる
・友人・職場の同僚の場合: 5000~1万円
※職場の仲間と連名で贈る場合には、1人当たり1000~3000円が目安
・兄弟姉妹・親戚の場合:兄弟姉妹へは1万~3万円、親戚へは5000~3万円程度
・目上・上司の方の場合:1万円程度の商品を選ぶのが一般的(どの程度お世話になっているかで変わる)

なお、「一般的に引越し祝いを受け取る側は、半額~1/3程度の内祝い(返礼)を用意する」というので、受け取る方もそれなりの出費が必要だ。

引越しをする理由は、進学や就職、結婚、マイホーム取得など、次のステージに進むものであることが多い。もちろん、前の住まいに不満があるという場合もあるだろう。いずれにせよ引越しは、生活環境を変えて、新しい気持ちで生活をスタートさせる機会でもある。この機会を上手に使って、次の生活に踏み出してほしいものだ。

マンション売却は「3か月以内で」その理由とは?

マンションの住み替えの実態について、すむたすが住み替えによるマンション売却経験がある30代以上の男女312名を対象とした調査を実施した。その結果、売却金額に不満を感じた人が多いことが分かった。詳しい結果とマンションを売るときのポイントについて、考えていこう。【今週の住活トピック】
「マンションの住み替えに関する実態調査」を発表/(株)すむたす

マンションの売却活動の不満は金額の低さ

「住み替えの売却活動で不満を感じた点」を聞いたところ、約70%が何かしら不満を持っており、最も多かったのは「最終的な成約金額が想定よりも低くなった」(26.0%)、次いで「見積もり時の査定金額が低かった」(19.9%)だった。

いずれも、「成約価格」や「査定価格」など、住まいの売却金額に関する不満で、「査定価格と最終的な成約金額が大きく乖離していた」も11.2%あった。

ご自身の住み替えにおける売却活動で、不満を感じた点を教えてください(出典:すむたす「マンションの住み替えに関する実態調査」より転載)

ご自身の住み替えにおける売却活動で、不満を感じた点を教えてください(出典:すむたす「マンションの住み替えに関する実態調査」より転載)

売却期間が長いほうが、成約価格が査定価格より下がる傾向に

売却活動において、売り出し価格を決めるときに参考にするのが、不動産会社が見積もる「査定価格」だ。査定価格は、周辺の類似物件の過去の成約価格やその時点の相場の動きなどを基にして、不動産会社がマニュアルに沿って算出する。査定価格を参考に、もっと高く売れるのではないかとか、早く売りたいので査定価格でよいなど、売主の意向を受けて「売り出し価格」を決める。

売り出し価格ですぐに売れる場合もあれば、なかなか売れずに売り出し価格を下げていく場合もある。最終的な「成約価格」は、買いたいという希望者と売主との間の条件交渉などを経て決まる。

では、成約価格は査定価格と比べてどうなったのだろう?
査定価格と成約価格の差分割合を聞いたところ、覚えていないという人も多いのだが、最も多かったのは「0%(ほぼ同じ)」の24.7%だった。査定価格が参考になることが分かる結果だ。

一方、査定価格と成約価格で差が出た人では、上がった人より下がった人の方が多く、10%程度下がった人が多いことを考えると、「査定価格と同程度~1割ダウンで売れた」事例が多かったということになる。

実は、査定価格との開きは、売却期間によっても変わる。詳しく見てみよう。

初期見積もりと成約価格の差分割合はいくらでしたか(売却期間別)(出典:すむたす「マンションの住み替えに関する実態調査」より転載)

初期見積もりと成約価格の差分割合はいくらでしたか(売却期間別)(出典:すむたす「マンションの住み替えに関する実態調査」より転載)

売却期間を3カ月未満と以上で分けたところ、3カ月未満で売却できた場合よりも、3カ月以上かかった場合のほうが成約価格の下落が大きいことが分かる。時間をかけたほうが高く売れるわけではなく、むしろ下がる可能性が高いということだ。

複数の不動産会社に査定を依頼し、信頼できる会社と相談しながら売却活動を

さて、「3カ月」が分かれ目になるのはなぜだろう?

前提として、不動産会社に売却を依頼する「媒介契約」の契約期間が一般的に「3カ月」になるという点が挙げられる。つまり、不動産会社が提示する査定価格も、3カ月以内に成約させるという想定で算出されている。

また、売り出し価格の設定の問題もある。高く売りたいと査定価格よりかなり高い価格を設定してしまうと、相場より高めに見えてなかなか買い手が見つからないということがある。その場合は、じりじりと価格を下げることになり、むしろ値下げを続ける物件と見えてしまうリスクが生じる。

やはり、査定価格を参考にあまり相場からはずれない価格で売り出し、3カ月以内の成約を目指す、のがよいということになる。
しかし、あくまで査定価格が信頼できるという前提だ。まれに、売却を依頼してほしいからと相場より高い価格で査定価格を提示する不動産会社もある。

そこで筆者は「必ず複数の不動産会社に査定を依頼し、査定価格の根拠を説明してもらい、その説明を聞いて信頼のおけると思える不動産会社を選んで、よく相談しながら売却活動を進める」ということをオススメしている。

今は簡単にインターネットで査定価格を出してもらうことができるが、提示された価格だけではなく、説明を聞いた上で「納得のいく説明をしてくれるか」「地元の相場に詳しいか」を決め手に、不動産会社を選ぶのがよいだろう。

さて、売却活動の不満を聞いた調査結果では、金額にかかわること以外にも、売却活動の期間が長期化すること、最終的にいくらで売れるかなかなか確定しないことなどの不満も多くあった。

売却した額を次の住み替え先の資金に充てたり、次の住み替え先の売買契約の時期が迫っていたりと、それぞれに事情があるので、売却時期や金額が確定しない不満や不安を感じる人も多いのだろう。そうした事情をきちんと理解した上で、適切なアドバイスができる不動産会社を選びたいものだ。

戸建て注文住宅、2018年度は贈与額が増加。非課税枠拡大で今後はどうなる?

住宅生産団体連合会(以下、住団連)の「2018年度戸建注文住宅の顧客実態調査」の結果が公表された。それによると、昨年度より住宅ローンの贈与額が上昇したという。それには、ある制度が関係しているのだが……、詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「2018年度戸建注文住宅の顧客実態調査」結果を報告/(一社)住宅生産団体連合会注文住宅の建築費は平均で3605万円、土地代と合わせると4918万円

この調査は、三大都市圏と地方都市圏に注文住宅を建てた人を対象に住団連が毎年行っているもので、2018年度で第19回目となる。

まず、注文住宅を建てた人の最新の平均像を見ていこう。

■2018年度の戸建注文住宅の平均顧客像(4都市圏全体)
※( )内は2017年度
世帯主年齢40.9歳(40.5歳)
世帯人数3.32人(3.40人)
世帯年収 874万円(895万円)
住宅の延床面積 128.1平米(128.6平米)
住宅取得費 4,918万円(4,889万円)※建築費と土地代の合計
建築費 3,605万円(3,535万円)※建て替えの場合4,033万円
自己資金 1,356万円(1,372万円) ※自己資金比率26.4%
贈与額 1,174万円(1,145万円) ※「贈与あり」のみ
借入金4,069万円(4,031万円) ※「借入あり」のみ

昨年度と比べると、建築費が増加(建築費の1平米単価は 28.1 万円、昨年度から 0.6 万円増加)するなどで、費用が増加する分を、住宅ローンの借入金や贈与の額を増やすことで対応していると考えられる。

また、平均像は地域によっても異なる。住宅の延床面積が最も広い大阪圏では、世帯年収も最も高くなっているが、建築費が最も高いのは東京圏だ。

戸建注文住宅の平均顧客像 (都市圏別比較)(出典:住団連「2018年度戸建注文住宅の顧客実態調査」)

戸建注文住宅の平均顧客像 (都市圏別比較)(出典:住団連「2018年度戸建注文住宅の顧客実態調査」)

住宅資金の贈与を受けた人は15.9%、その平均額は1174万円

次に、贈与について詳しく見ていこう。

住宅取得資金における「贈与あり」の割合は 15.9%で、昨年度の18.0%より2.1 ポイント低下している。一方で、「贈与あり」の人の贈与額は、1174万円(昨年度1145万円)と昨年より増加している。世帯主の年齢別で見ると、「30~35歳未満」が26.8%、「35~40歳未満」が26.1%なので、30代を中心に贈与を受けている人が多いことが分かる。

さて、住宅の取得で贈与が注目されるのは、親や祖父母から子や孫への贈与では、「住宅取得資金の贈与の非課税特例」が使えるからだ。贈与を受けた人の実に70.5%が、この制度の適用を受けている。次いで「基礎控除と非課税特例の併用」(12.6%)、「基礎控除」(11.2%)の順で多くなっている。

贈与に係る特例制度の適用(出典:住団連「2018年度戸建注文住宅の顧客実態調査」)

贈与に係る特例制度の適用(出典:住団連「2018年度戸建注文住宅の顧客実態調査」)

贈与税の「基礎控除」とは、贈与を受けたとしても年間110万円以内なら、控除して課税対象にしないというもの。誰でも毎年、適用を受けることができる。

「住宅取得資金の贈与の非課税特例」は、「親や祖父母が子や孫に」、「住宅取得のための資金」として「贈与」した場合に限り、「2021年12月末まで」の特例として、一定額を非課税にするもの。この非課税特例は基礎控除と組み合わせることができるので、併用という回答もあるわけだ。

多くの人が、「基礎控除」と「住宅取得資金の贈与の非課税特例」といった非課税制度を利用した、ということが分かる結果だ。

消費税率10%適用で「住宅取得資金の贈与の非課税特例」の非課税枠が3000万円に拡大

実は、「住宅取得資金の贈与の非課税特例」については、消費税率が10%の場合に、非課税の限度額が拡大する。10月以降に新たに注文住宅の建築などの契約書を締結した場合なら、下表のような限度額になる。一度引き上げられた限度額は、2020年4月以降から順次減っていく仕組みだ。

消費税の税率が10%である場合の非課税限度額

一般の住宅の限度額は2500万円、それより省エネ性や耐震性などの高い住宅を建てた場合、限度額は3000万円になる。親から3000万円贈与してもらった場合で、この特例を使わなければ、贈与税は1000万円を超えてしまうので、非課税の効果がいかに大きいことが分かるだろう。

さて、住宅については、消費税増税による駆け込みはあまり見られなかった。「住宅ローン控除」の拡充などの支援策が効果を発揮したからだろう。一方で、多額の贈与を検討していた家庭が、非課税限度額の拡大を待っていたという可能性もないわけではない。多額の贈与ができるのは一部の富裕層に限られるが、次の調査で贈与の額がこれまでより増える可能性もあるだろう。

実家の方が賃貸より良かった!10代・20代に何が起きている?

リクルート住まいカンパニーが「2018年度 賃貸契約者動向調査」を発表した。2018年度に賃貸住宅に入居した18歳以上の男女を対象に調査したものなのだが、若い世代は賃貸住宅より実家のほうが、住み心地が良かったと考えているようだ。詳しく見ていくことにしよう。【今週の住活トピック】
「2018年度 賃貸契約者動向調査」を公表/リクルート住まいカンパニー

10代・20代では新居の賃貸より実家のほうが、住み心地が良い?

調査は全国を対象に実施されているが、リリースでは首都圏の結果を分析した項目と全国の結果を分析した項目を紹介している。

まず、首都圏で、住んでいる賃貸住宅で実際に利用している設備の満足度を見ると、画像1のようになった。

設備に対する満足度 上位20項目(首都圏の各設備利用者/単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2018年度 賃貸契約者動向調査」より転載)

設備に対する満足度 上位20項目(首都圏の各設備利用者/単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2018年度 賃貸契約者動向調査」より転載)

2018年度については、「24時間出せるゴミ置き場」(68.3%)を筆頭に、賃貸住宅の設備に関する満足度は高いようだ。特に、「室内干し」(62.9%)は前年・前々年より大きく上昇しており、共働きで日中に家にいないからだろうが、2人世帯に満足度が高いのが特徴だ。

ただし、実際に利用している人に満足度を聞いているので、満足度が高い設備が賃貸住宅で普及しているというわけではない。設備ごとで利用者が多いのは「エアコン付き」「独立洗面台」「都市ガス」「TVモニター付インターフォン」「インターネット接続可(有料の個別契約が必要)」「温水洗浄便座」「追い焚き機能付きの風呂」などだ。
満足度が上位でも、「二重サッシ」「遮音性能の高い窓」「断熱・遮熱性能の高い窓」「アクセントクロス」「スマートキー」などでは、利用者は少なくなる。

次に、全国で、「今回契約した賃貸物件と以前住んでいた実家の満足度」を比較した結果(画像2)を見よう。

年代別 今回契約した物件への満足度合い(単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2018年度 賃貸契約者動向調査」より転載)

年代別 今回契約した物件への満足度合い(単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2018年度 賃貸契約者動向調査」より転載)

注目したいのは、10代・20代の若い世代では、今回契約した新居(賃貸)より実家の方が、満足度が高い点だ。

もちろん、40代以上のほうが高い家賃を負担できるので、性能の高い賃貸住宅を選べるということもあるのだろう。一方で、実家の建築時期で見ると、2001年以降に建築された持ち家の実家で満足度が高いことから、実家の性能の違いの影響が大きいことがうかがえる。

建築時期を2000年前後で区分けしているのは、耐震性や省エネ性、遮音性などを共通のルールで表示する「住宅性能表示制度※」が、2000年10月から本格的に運用開始されたからだ。この表示制度は任意の制度なので、必ず新築時に表示しなければならないというものではないのだが、住宅の性能に対する関心が高まって、新築住宅の性能のレベルを引き上げたといわれている。
※既存(中古)住宅は2002年12月から運用開始

なお、実家が引越しをしている場合は、主に小中学生のっときに住んでいた住宅について調査しているということなので、10代・20代の若い世代の実家ほど、2001年以降建築された性能の高い住宅である可能性が高いわけだ。性能の高い実家に住んでいた経験を持つ若い世代に、賃貸住宅の性能に不満を感じる人が多いと考えてよいだろう。

居室の広さ、バストイレ別、クローゼットの有無……あなたはどっちを選ぶ?

再び首都圏の分析結果に戻るが、今回、間取りや仕様などのプランの違うものを「二者択一」で選択させる調査をしていて、その結果がイマドキなので紹介したい。

まず、部屋探しの決め手になるのは、ダントツで「家賃」、次に「路線・駅やエリア」「最寄駅からの時間」といった立地条件となる。今回の調査結果でも、同じ結果が出ている。となると、家賃の制約条件のなかで、広さや設備をどう比較検討するかということになる。

他方、最近のひとり暮らしの部屋選びでは、バス・トイレ別が好まれ、トイレ・バス・洗面一体の3点ユニットは嫌われる傾向にある。そこで、今回の調査では画像3のような比較でどちらをより選びたいか聞いている。

【広い居室+バストイレ一緒】VS【狭い居室+トイレ独立】(首都圏のひとり暮らし/単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2018年度 賃貸契約者動向調査」より転載)

【広い居室+バストイレ一緒】VS【狭い居室+トイレ独立】(首都圏のひとり暮らし/単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2018年度 賃貸契約者動向調査」より転載)

この結果を見ると、ひとり暮らし全体では、バストイレ一緒でも居室の広い【A】6畳+3点ユニットのほうが選ばれているが、学生に絞ってみるとその差は僅差になり、【B】3畳+ロフト+バストイレ別を「必ず選びたい」という人が多くなった。バストイレ別が決め手なのか、物を持たないミニマムライフを好むために狭い部屋を許容しているのか、というのは不明だが、社会人とは選択基準が異なる点が興味深い。
ほかには、クローゼットありに軍配が上がる結果も出ている。
→【A】6畳+トイレと洗面台が一体+クローゼットあり>【B】6畳+トイレと独立洗面台+クローゼットなし

また、2人家族については、居室の広さが選ばれる傾向があった。
→【A】6畳+LDK(10.5畳)>【B】4.5畳+LDK(12畳)
最近はLDKに広さを求める傾向にあるが、さすがに4.5畳の居室は狭すぎるということだろう。

意外に居室の広さの影響が大きいという印象を持ったが、居室が3畳や4.5畳は狭すぎるということもあるのか、長くいる居室の重視度が強いということなのか、いろいろと考えさせられる結果だ。

さて、住まい選びは総合的に評価するものなので、予算、希望の広さ、立地、プランなどを相対的に比較検討することになる。暮らし方や好みが反映されることもあるだろう。一方、住宅の性能は住み心地に大きく影響する。住んでみてからその違いを実感することが多いが、性能が高い住宅は建築費用もかかる。となると、家賃に影響する。

このように、総合的に評価することは意外に難しい。無理のない予算はいくらか、そこでどういった暮らし方をするか、その住まいは何を備えているか、広さや立地、仕様などの何を重視すべきか、といったことを冷静に見極めることが大切だ。

住宅でも高まる「スマートロック」人気。どんな鍵?なぜ人気がある?

「スマートロック」が普及し、進化している。それはさまざまなメリットがあるからだ。スマートロックとはどんなものか、なぜ普及しているのかについて見ていこう。【今週の住活トピック】
近づくだけで解錠できる最強のスマートロック発売/エナスピレーション

鍵を使わずに鍵を開ける?スマートなロックとは?

「スマートロック」とは、鍵(キー)を使わずに玄関の解錠や施錠をする仕組みのこと。従来は、鍵を錠前に差し込んで、錠前の形状と鍵ヤマが一致することで解錠するのだが、スマートロックはITを使って一致することを認証する。認証の方法はいろいろあるが、最近では、スマートフォン(スマホ)を使う方法が一般的になっている。

そのメリットは利便性にある。帰宅したときに、鍵を探して取り出し、ダブルロックなら2回差し込んで解錠するという工程が不要になる。なかにはスマホを近づけるだけで解錠できるものもあり、両手に荷物を持っていても解錠がラクにできる。

(画像提供:エナスピレーション)

(画像提供:エナスピレーション)

また、スマートロックの多くは、一定時間を過ぎると自動で施錠するオートロック機能が備わっているので、鍵のかけ忘れの心配がない、という防犯上のメリットも。

「ファミリーキー」や「ゲストキー」の合鍵を発行することも可能で、不在時に一定時間だけ解錠できるゲストキーを使って知人を入室させることも可能だ。

その一方で、スマホを持たずに外に出て自動施錠で締め出されることもあれば、システムトラブルや電池切れなどで認証が行われないというリスクもある。そうした場合の対応方法をあらかじめ用意しておく必要もある。

今回リリースを紹介した、エナスピレーションのスマートロックは、スマホアプリに加え、指紋、カード、暗証番号などさまざまな解錠方法に対応することで、締め出しにも対応し、開き戸だけでなく引き戸にも使える製品だという。

こうした多様な製品が登場することで、スマートロックの利用者が増えているのが現状だ。

住宅を仲介する現場では、「セルフ内見」のニーズが高かった!

そもそも筆者が、住宅のスマートロックを知るようになったのは、住宅を仲介する現場で使われるようになったことからだ。

賃貸住宅や中古住宅を仲介する場合、部屋の内見のために、借り手や買い手側の不動産会社の営業担当者が大家や売り手側の不動産会社から鍵を受け取り、現地に行って鍵を開ける必要があった。あるいは、内見する家のどこかに設置されたキーボックスの暗証番号を聞いて、営業担当者がキーボックスから鍵を取り出して解錠するかになり、いずれの方法でも営業担当者が必ず現地に行かなければならない。

案内する側にとっては、住み替えのオンシーズンになると、平日の夕方や週末に内見者が増えて手が回らないという課題があり、内見する側にとっては、好きな時間に見たい、営業担当者なしでじっくり見たいという要望があった。

この課題を解決したのが、スマートロックだ。スマートロックを使うことで、営業担当者不在でも「セルフ内見」ができるようになった。

また、賃貸住宅では、入居者が入れ替わるとその都度、防犯上の理由から鍵を交換するのが一般的だ。所有する貸室の鍵をスマートロックに切り替えれば、鍵自体(キーシリンダー)を交換する必要がなくなるため、手間も費用も掛からない。こういったこともあって、特に賃貸住宅でスマートロックが普及していった。

さて、不動産会社や大家側の課題は別として、利用する側の利便性も認知されるようになった。特にITの利用に慣れている若い世代にとっては、スマートロックの認証方法を理解し、上手な活用も検討できるので、より利便性を感じることができる。

住宅にスマートロックが搭載されていない場合でも、既存の鍵にカバーをかぶせる後付けの製品を使って、個人単位で利用することもできる。こうした環境を受けて、今後もスマートロックの普及と進化が続くことだろう。

睡眠が生活の満足度に影響する?現代人が重視する睡眠の時間と質

コロナが、全国の20代~60代の男女1000人を対象にした、「暮らし」と「暖房」に関する意識調査を実施したところ、多くの人が睡眠を重視していることがうかがえる結果になったという。体が資本のフリーランスである筆者も、睡眠には気をつけている。住まいでできる工夫も含めて、睡眠について考えてみよう。【今週の住活トピック】
「『暮らし』と『暖房』に関する意識調査」を実施/コロナ「睡眠」はリラックスできるだけでなく、生活の満足度を高める効果も大!?

この調査では、最初に「現在の生活に点数をつける」質問をしている。その結果、平均点は65.5点となった。

次に「100点になるためには何が必要か」を聞いたところ、最も多い答えは「旅行に出かける」(47.1%)で、次が「身体を動かす」(36.2%)となり、アクティブな行動が加われば、点数が上がるという人が多かった。その一方、「住んでいる家/場所を変える」などの変化を求めたり、「睡眠時間を増やす」などのリラックスできる行動を求めたりする人も多く、不足していると感じるものは人それぞれということだろう。

Q.あなたの生活が100点になるためには、どういったことが変わったり、必要だったりしますか。(複数回答)(出典:コロナ「暮らし」と「暖房」に関する意識調査)

Q.あなたの生活が100点になるためには、どういったことが変わったり、必要だったりしますか。(複数回答)(出典:コロナ「暮らし」と「暖房」に関する意識調査)

「家にいるときに、どのようなシチュエーションが安心・リラックスできるか」を聞くと、半数近い45%の人が「睡眠しているとき」と回答した。

「睡眠」は、リラックスできる手段ではあるが、現在の生活に不足しがちで、生活の満足度を下げる要因にもなっているとみてよいのだろう。

Q.あなたは家にいるとき、どのようなシチュエーションが一番安心・リラックスできますか。(複数回答)(出典:コロナ「暮らし」と「暖房」に関する意識調査)

Q.あなたは家にいるとき、どのようなシチュエーションが一番安心・リラックスできますか。(複数回答)(出典:コロナ「暮らし」と「暖房」に関する意識調査)

快適な温度と湿度を保ち、光や音を遮る工夫で眠りやすい寝室を

この調査では、自宅の冬の生活について、「部屋が寒くて起きられない」「部屋が寒いと寝付けない」「寒さで目が覚める」などの不満を感じる人が多いことも分かった。夏の生活でも同様に、暑さが睡眠の弊害になることがある。「睡眠」の時間と質を上げるには、「寝室の室温」がカギになるわけだ。

ほかにも、「部屋の湿度」や「光」、「音」が睡眠を妨げることがある。つまり、快適な室温と湿度を保ち、光や音を遮るように工夫することで、睡眠の時間と質を上げることができる。

それには、冷暖房機器を上手に使ったり、窓を複層ガラスにすることで断熱性を高めたりといったことが効果的だ。複層ガラスは冬の結露を防止する効果もあるし、防音効果が高いタイプもある。カーテンや雨戸などを上手に利用するのも手だろう。

複数の部屋があれば、風通しが良く、音や光を入れにくい部屋を選ぶといった工夫も考えられる。窓の位置や音が伝わる壁との距離などを考慮して、ベッドを配置するのもよいだろう。室内を落ち着いたカラーにするなど、内装や照明の工夫、寝具の工夫なども考えたい。

こうして、住まいの設備、内装、インテリアなどを工夫することで、睡眠の時間や質を向上させる効果が期待できるようになる。

とはいえ、寝室の条件を整えたからといって、それだけで長くぐっすりと眠れるわけではない。規則的な生活を送り、睡眠のコアタイムと呼ばれる「0時~6時」を睡眠時間に充てられるようにするなど、眠る人のほうの工夫も必要だ。

マンション派・一戸建て派でどこが違う?何を重視して選ぶ?

リクルート住まいカンパニーが「『住宅購入・建築検討者』調査」を発表した。この調査は、住宅の購入・建築を検討している人を対象に、検討する物件の種別や重視する条件などを聞いたものだ。マンションか一戸建てかなど、物件の種別を検討している人にとって、参考になるにちがいない!?【今週の住活トピック】
「住宅購入・建築検討者」調査(2018年度)公表/リクルート住まいカンパニーそんなに多いの?一戸建て派が約7割

調査は、首都圏、東海圏、関西圏の三大都市圏と政令指定都市の中でもマンションの多い札幌市、仙台市、広島市、福岡市に住む、20歳から69歳の男女。つまり、住宅に占めるマンションの割合が高く、マイホーム=マンションという人が多い地域だ。
それでも、一戸建て派かマンション派かを聞くと、「一戸建て派」は69.3%と調査開始以来最高の割合になり、「マンション派」は21.4%にすぎなかった。特に「一戸建て派」が多いのは東海圏で84.4%にまで増える。逆に「マンション派」が多いのは福岡市で32.6%に増加し、一戸建て派は56.0%にまで減る。

一戸建て・マンション意向(単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー『住宅購入・建築検討者』調査(2018年度)より転載)

一戸建て・マンション意向(単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー『住宅購入・建築検討者』調査(2018年度)より転載)

筆者は、利便性重視で虫嫌いでもあるので「マンション派」なのだが、マンションのストック数がここまで増えてもなお「一戸建て派」が多いことに驚いた。

「あっちもいいけど、こっちもね」並行検討が多いのが特徴

だからといって、みんなが一戸建てだけを検討しているのではない。その背景を見ていこう。

まず、複数回答になるが、検討している種別を聞くと、「注文住宅」が65.8%と圧倒的に多い。一戸建てというだけでなく、自分で間取りや内装を決められる点も魅力に映るのだろう。次いで、「新築分譲マンション」の38.8%、「新築分譲一戸建て」の37.1%が僅差で並び、「中古一戸建て」の26.9%、「中古マンション」の26.2%となる。

次に、検討種別をクロスして見ると、「注文住宅」検討者は他の物件種も検討している割合が低く、“注文一本やり”の傾向が強いことが分かる。また、マンション検討者は「新築」と「中古」との並行検討者が多い(新築分譲マンション検討者の44.1%が中古マンションも検討、中古マンション検討者の51.1%が新築も検討)のが特徴。

「新築分譲一戸建て」検討者は、「注文住宅」(47.7%)も「新築分譲マンション」(41.5%)も「中古一戸建て」(35.9%)も多いので、“移り気”の傾向が見られるということか。

いずれにせよ、一戸建て・マンションや新築・中古を並行検討している人が多いということが分かる。

メイン検討種別ごとの並行検討状況(複数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー『住宅購入・建築検討者』調査(2018年度)より転載)

メイン検討種別ごとの並行検討状況(複数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー『住宅購入・建築検討者』調査(2018年度)より転載)

「駅からの距離」強し、されど「耐震性能」は最優先

次に、検討する際の重視条件について見ていこう。

今どきの住まい選びの条件では、「利便性重視」がますます強まっている。では、「駅からの距離」と比べて何を重視するか一戸建て・マンションそれぞれの検討者で違いを見ていこう。

住み替え時に優先する特徴【VS駅からの距離】(メイン検討種別/単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー『住宅購入・建築検討者』調査(2018年度)より転載)

住み替え時に優先する特徴【VS駅からの距離】(メイン検討種別/単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー『住宅購入・建築検討者』調査(2018年度)より転載)

一戸建て検討者では、「駅からの距離」=A:青よりB:オレンジが多いのは、「耐震性能」と「エコ性能」だ。デザイン性や設備仕様、間取りに対しては「駅からの距離」の方が優勢で、「遮音性」が最も拮抗するという結果だ。

一方、マンション検討者では、「駅からの距離」より優先されるのは「耐震性能」のみ。それ以外の条件では「駅からの距離」が優先される。これは、マンション検討者は筆者のような利便性重視の人が多く、したがって駅から近いという利便性の優先度が高いということだろう。

それでも、巨大地震発生の確率が高まる昨今、「耐震性能」が重視されるということが分かった。

ちなみに、「駅からの距離」の優先度については、実は男女差がある。男性は「駅からの距離」を優先する度合いが高く、駅からの距離より優先された「耐震性能」でも拮抗する状況にある。が、これに対して女性は「耐震性能」や「エコ性能」を「駅からの距離」より優先する度合いが高く、それ以外の条件でも比較的拮抗する状況にある。

つまり、女性の方が家にいる時間を大切にする傾向があり、「駅からの距離」も重視するものの、住まいの居住性への関心も高いということだろう。

こう見ていくと、住まいという箱の形が一戸建てであれマンションであれ、その中でどういった暮らしをしたいのかを家族でよく考えて、住まい選びの条件を挙げるということが大切なのだと思う。

「お地蔵男子」を求める20代パワフル女子を応援するには?

筆者が高校時代に「お地蔵さん」と呼ばれる男子がいた。見た目からそう呼ばれたのだろうが、20代パワフル女子が求める「お地蔵男子」は、もちろん見た目ではない。とはいえ、今は大学教授をしているその「お地蔵さん」は、性格も温和で寛容で、今でいうお地蔵男子でもあったようだ。お地蔵男子が人気になる理由を探ってみよう。【今週の住活トピック】
都市生活レポート【20代『コミュ食世代』のライフスタイル】を発行/東京ガス都市生活研究所20代が『コミュ食世代』と呼ばれる理由とは?

まず、「コミュ食世代」とは何かについて説明しよう。

都市生活研究所では、昭和元年~平成7年生まれの人を「食」を切り口にして、世代の特徴を定義している。世代の分類は次のとおり。

■各世代の「食の特徴」(東京ガス都市生活研究所による食を切り口にした世代定義)
コミュ食世代:1989年~1995年(平成元年~平成7年)生まれ
ゆる食世代: 1982年~1988年(昭和57年~昭和63年)生まれ
装食世代:1977年~1981年(昭和52年~昭和56年)生まれ
選食世代:1972年~1976年(昭和47年~昭和51年)生まれ
遊食世代:1965年~1971年(昭和40年~昭和46年)生まれ
宴食世代:1958年~1964年(昭和33年~昭和39年)生まれ
街食世代:1951年~1957年(昭和26年~昭和32年)生まれ
創食世代:1946年~1950年(昭和21年~昭和25年)生まれ
整食世代:1936年~1945年(昭和11年~昭和20年)生まれ
粗食世代:1926年~1935年(昭和元年~昭和10年)生まれ

食べることだけでも大変だった時代から次第に街の中で外食ができるようになったり、バブル期には贅沢な食事ができるようになったりといった時代を経て、食の安全性を気にするようになり、食をオシャレ化する文化が形成され……と、食生活は目覚ましく変わっている。

「ゆる食世代」になると、いわゆる弁当男子の登場などで男女の垣根がゆるくなった。そして、平成生まれの「コミュ食世代」とは、SNSがコミュニケーションの中心共通言語となり、食を軸に付き合いの輪を広げていく世代だと定義している。

なぜコミュ食世代の女性は、お地蔵男子を求めるのか?

では、コミュ食世代(24~30歳)の特徴を見ていこう。
同研究所の調査では、男女ともに「キャリアアップのため語学や資格取得の勉強をしている」と回答した割合が、男性で33.2%、女性で26.1%になり、他の世代(ゆる食世代(31~37歳):男性26.9%、女性15.5%など)に比べて高いことが分かった。

さらに、「会社でえらくなりたい・出世したい」と回答(有職者のみ)した割合を見ると、特にコミュ食世代の女性で高いことが分かった。ただし、「他人と競争して勝ちたいのではなく、あくまでも自分自身が向上したいという上昇志向であることがこの世代の特徴」だと同研究所では分析している。

「会社でえらくなりたい・出世したい」(出典:東京ガス都市生活研究所「20代『コミュ食世代』のライフスタイル」)

「会社でえらくなりたい・出世したい」(出典:東京ガス都市生活研究所「20代『コミュ食世代』のライフスタイル」)

キャリア志向の強い、つまりパワフルな女子になった理由について、同研究所ではいくつかの要因を挙げている。

・自分らしさを重視するゆとり教育で、相対評価ではなく絶対評価を受けてきたこと
・男女雇用機会均等法第1世代の女性たちが管理職として活躍したり、出産後も働き続ける女性が多い社会になったこと

こうした環境の中で、働き続けることを前提に自身の将来を考え、漠然とした不安を少しでも減らすため、パワフル女子となったというのだ。

一方で、コミュ食世代の女性は、仕事のストレスを感じる割合(あてはまる+ややあてはまる)が78.1%と極めて高く、ゆる食世代(31~37歳)~宴食世代(55~61歳)の他の5世代の男女の中で最も高く、働き盛りの選食世代の男性よりも高くなった 。

こうしたストレスフルのコミュ食世代の女性にとって、「配偶者はどのような存在か」を聞く(既婚女性のみ)と、「落ち着く」「受けとめてくれる」「癒される」が他の世代より高いことから「“お地蔵男子”的存在を求める」と同研究所では分析している。

「配偶者はどのような存在か」(出典:東京ガス都市生活研究所「20代『コミュ食世代』のライフスタイル」)

「配偶者はどのような存在か」(出典:東京ガス都市生活研究所「20代『コミュ食世代』のライフスタイル」)

コミュ食世代の女性が癒やされる住まいの空間とは?

ストレスフルな女性にとって、プライベートタイムでは“お地蔵男子”が受け止めてくれることで癒やされるのだろうが、筆者の専門の住まい領域ではどうだろう?

お地蔵男子を住まいに標準装備できないので、癒やしの空間を設けるということになる。同研究所でもストレス解消の手段として「ひとりになる場所の充実」を挙げている。

さて、癒やしの空間として注目されるのは「バスルーム」だ。一時期「半身浴」がはやったが、ひとりで入れば誰にも邪魔されず、お湯につかってボーっとできる。防水の音楽プレーヤーやスピーカーを活用するという手もある。ただし、カラスの行水という人もいるだろう。

風呂上がりで大切なのはお肌の手入れだ。最近は狭い洗面所ではなく、リビングでお肌の手入れをするという人も多い。風呂上がりのくつろぎ空間をリビング内に工夫して設ける、というのもいいだろう。

寝室も重要だ。ぐっすり眠ることで疲れを取って、明日の活力を生み出したい。熟睡できるように寝具を工夫することも大切だが、温度や音、光の影響にも考慮したい。エアコンが直接当たらないようにしたり、カーテンを選んだり、ベッドの位置を工夫したりといったことのほか、照明の工夫もポイントになる。

居室で間接照明を上手に活用したり、寝室や浴室に調光機能のある照明を設置したりして、明るい光だけでなく、柔らかな光が広がる空間を作るといったことも考えられる。

どこの空間が落ち着けるか、どんな環境が落ち着けるかは人それぞれ。自分なりに居心地の良い、癒やしの空間をつくってみてはいかがだろう。

ところで、最近では、女性が結婚相手に望む男性像は「4低」だという。かつては、高学歴・高収入・高身長の「3高」だったが、「4低」とは「コトバンク」よると、「低姿勢」(女性に対して威圧的な態度を取らない)、「低依存」(家事や子育てを分担して妻に依存しない)、「低リスク」(堅実な仕事に就きリストラに遭うリスクが少ない)、「低燃費」(節約志向で浪費をしない)だという。

時代の変化は、食生活も結婚相手の条件も変えていく。住まい選びの条件も同じように、変わっていくのだろう。

●参考サイト
都市生活レポートのサイトからダウンロード可能

インフラツーリズムってどんなもの? 夏休みに体験してみよう

国土交通省が「インフラツーリズム」に力を入れている。ポータルサイトの開設や手引きの作成などを行って、さらに見学者数を倍増させるプロジェクトを始動させた。これによって、インフラツーリズムの件数の増加や内容面の充実が期待できる。夏休みには、涼しげなインフラ施設を見に行くというのはいかがだろう?【今週の住活トピック】
「インフラツーリズム魅力倍増プロジェクト」始動/国土交通省インフラツーリズムとは、ダムや治水施設などを見たり体験したりすること

そもそも「インフラ」とは、インフラストラクチャー(infrastructure)の略で、「産業や生活の基盤として整備される施設」をいう。国土交通省でいうインフラとは、国や地方自治体が管理している道路や橋、トンネル、ダム、下水道、港湾、空港などの施設。ツーリズムとは、地域の風景やイベント、観光施設を見たり体験したりすることなので、「インフラツーリズム」とは、橋やダム、下水道などの施設を見たり体験したりすることだ。

見学者にとっては、普段見られない施設の内部を見学でき、防災や治水、交通システムなどを学べるという魅力がある。かたや国土交通省の狙いは、インフラを観光資源として活用することで、地域経済の活性化や雇用機会の増大につなげられるという点にある。

国土交通省では、2016年にインフラツーリズムを紹介するポータルサイトを開設し、情報発信を行ってきた。インフラの管理者と旅行会社などが調整して実施する民間ツアーも増えつつある。

国土交通省の「インフラツーリズムポータルサイト」

国土交通省の「インフラツーリズムポータルサイト」

実際に、インフラツーリズムで見学者を多く集めている施設もある。埼玉県春日部市の「首都圏外郭放水路」がその事例だ。治水施設として地下に巨大な調圧水槽を擁するが、その荘厳さから「防災地下神殿」と呼ばれている。地下神殿のブランディングを強化する一方、見学会の運営を民間会社に委託し、コースを増やしたり土日祝日にも開催したりして見学者枠を増やした。映画やテレビのロケ地としても使われ、海外からの見学者も多いと話題になっている。

「防災地下神殿」と呼ばれる首都圏外郭放水路(出典/国土交通省「インフラツーリズム有識者懇談会」の資料より転載)

「防災地下神殿」と呼ばれる首都圏外郭放水路(出典/国土交通省「インフラツーリズム有識者懇談会」の資料より転載)

こうした人気のインフラ施設がある一方で、魅力を活かせていない施設も多くあることから、国土交通省では2018年11月に「インフラツーリズム有識者懇談会」を設置し、さらなる拡大に向けて議論を重ね、「インフラツーリズム拡大の手引き(試行版)」を作成するなどの活動を行ってきた。

さらに、2020年に向けた「インフラツーリズムの魅力倍増プロジェクト」の一環として、5カ所のモデル地区を選び、地域との連携や国内外への広報などの社会実験を行うと発表した。

インフラツーリズム魅力倍増プロジェクトのモデル地区(出典/国土交通省)

インフラツーリズム魅力倍増プロジェクトのモデル地区(出典/国土交通省)

夏休みにはインフラツーリズムが数多く開催される!

見逃せないのが、この夏開催される旬のインフラツアー全437件を「インフラツーリズムポータルサイト」に掲載していることだ。

具体的にどんなツアーがあるか、筆者が住む関東地方を例に見てみよう。
まず、施設管理者が行う「現地見学」を見ると、東京都の「国営東京臨海広域防災公園」(江東区)の防災体験施設の見学に始まり、各県の各地のダムのほか、運河・水路、河口堰、治水施設、下水処理場、灯台といった施設が見学できることが分かる。普段は公開されていない内部に入れるのは、興味深いだろう。

さらに「民間主催ツアー」(有料)を見ると、湯西川ダム・川治ダム、川俣ダム、八ッ場ダム、浦山ダムの見学ツアー(カヌーや遊覧船に乗るツアーもある)、首都圏外郭放水路や東京湾アクアライン・海ほたるの海底トンネル、成田国際空港、羽田空港、ネクスコ東日本、第ニ海堡などの見学ツアーが紹介されている。

また、ダム見学では、「ダムカード」(表はダムの写真、裏はダムの形式や貯水池の容量などの基本情報を掲載したカード)を集めるといった楽しみもあるようだ。

ほかの地域にもそれぞれツアーが用意されているので、掲載されているURLなどから詳しい内容を確認するとよいだろう。

ダムといって最も有名なのは、関西電力の黒部ダムだ。筆者も2017年の夏に訪れた。観光・見学をかなり意識しているのだろうが、観光用の放水ではその水量の迫力や虹の美しさは圧巻だった。展望台や遊歩道、観覧船も整備され、観光しやすい環境が整っているのも黒部ダムの特徴だ。周辺の観光スポットと組み合わせて、宿泊しながらの旅行としても楽しめた。

暑い夏こそ、地下やトンネル、水辺などの涼を求めて、家族でインフラツーリズムへの参加を考えてみてはいかがだろう。

●参考
国土交通省「インフラツーリズムポータルサイト」

住宅ローン返済中の我が家を担保にお金が借りられる?

住宅ローンは、取得する不動産を担保にしてお金を借りるローンだ。今回取り上げる「不動産担保ローン」は、住宅ローンではなく、所有している自宅を担保にお金を借りるローンのことだ。実は、不動産担保ローンの中には、住宅ローンを返済中の自宅でも融資対象になるものがある。どういったローンなのか、詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「不動産担保ローン」利用者に関する総合調査の結果を発表/セイビー「不動産担保ローン」利用者の約4割弱が担保となる不動産のローン返済中

セイビーが、全国1万1018人から「不動産担保ローンを利用した経験がある」330人をスクリーニングし、インターネット調査を実施した。

まず、不動産担保ローン(住宅ローンを除く)の資金使途を聞いたところ、一番多いのは「生活費」(33.7%)で、以降は「事業性資金」(26.1%)、「借り換え」(23.8%)、「おまとめ(複数の債務のおまとめ)」(18.8%)、「車関連費」(16.5%)が上位に挙がった。

不動産担保ローン(住宅ローンを除く)の資金使途(出典/セイビー「『不動産担保ローン』利用者に関する総合調査」)

不動産担保ローン(住宅ローンを除く)の資金使途(出典/セイビー「『不動産担保ローン』利用者に関する総合調査」)

不動産担保ローン(住宅ローンを除く)を利用したことのある金融機関の種類については、「都市銀行」(42.6%)、「地方銀行」(24.4%)、「ネット銀行」(18.2%)が上位に。具体的な金融機関については、「みずほ銀行」(16.2%)、「楽天銀行」(15.8%)、「住信SBIネット銀行」(11.9%)がTOP3だった。ただし、具体的な金融機関名を「答えたくない」が31.7%と最も多かった。

担保にした不動産の種類を聞いたところ、一番多いのは「一戸建て」の46.2%で、次いで「区分所有マンション」(23.4%)、「土地」(12.9%)が多く、1棟アパートや1棟マンション、駐車場、事務所など事業用の不動産の場合もあった。

さて、担保にした不動産を取得したときの住宅ローンなどのローンの返済についてはどうだろう。「ローン完済済み」が47.2%で、「ローン返済中」が36.6%だったので、完済済みのほうが多いという結果だった。

みずほ銀行と楽天銀行の不動産担保ローンを比較してみた

では、「不動産担保ローン」を借りるには、どういった条件があるのだろう?
調査結果で利用者が多かった、都市銀行系の「みずほ銀行」とネット銀行系の「楽天銀行」の不動産担保ローンで見ていこう。下表で両行の商品の主な特徴を比較してみた。

金融機関の不動産担保ローンの主な特徴(両行のサイトを基に筆者が作成)

金融機関の不動産担保ローンの主な特徴(両行のサイトを基に筆者が作成)

借りたお金の使い道は原則自由となっているが、事業性資金などのリスクを伴うものなどはどちらも除外している。

ローンの額の上限では、1000万円と1億円でかなり開きがある。ただしいずれの場合も、担保価値と返済能力を加味して上限が決まるので、誰もが上限額まで借りられるというわけではない。ローンの期間については、借りる人の年齢にもよるが、どちらもかなり長く借りられるようだ。

ローンの金利タイプは変動金利と5年ごとに見直される固定金利といった違いがある。2019年7月時点で適用される金利を見ると、みずほ銀行は「短期プライムレート+1.5%」で2.975%となり、楽天銀行は2.83%~9.43%となっているので、個別の条件によって適用される金利がかなり変わるようだ。

住宅ローン返済中でも利用できるかどうかは、両者で異なる。これは、抵当権の順位による違いだ。

一般的に、住宅ローンでは担保に第一順位の抵当権の設定を求める。第一順位であれば、返済不能になったときに優先的に資金を回収できるからだ。みずほ銀行の場合は不動産担保ローンでも、原則として第一順位を求めるため、すでに住宅ローンで第一順位の抵当権が設定されていれば利用できないことになる。一方、楽天銀行は第一順位に限っていないので、住宅ローンを返済中でも利用できるという違いとなる。

不動産担保ローンのメリット・デメリットは?

このように見ていくと、不動産を担保に借りるという共通点のある住宅ローンとは、似た性格を持っていることが分かる。

つまり、不動産担保ローンのメリットとしては、マイホームのための住宅ローンほどではないが、無担保のローンと比べると、「低金利」で「多額の借入ができる」こと、「返済期間を長期に設定できる」ことなどが挙げられ、繰り上げ返済ができる点も住宅ローンと似ている。

一方、デメリットとしては、当然ながら「返済できないと不動産を失う」。また、事前に担保価値を評価したり返済能力を審査したりするので、「借りられるまでに時間がかかる」こと、事務手数料や保証料、登記などの「諸費用がかかる」ことも、住宅ローンと同様だ。

不動産担保ローンを用意している金融機関は多いので、上記の両行では対象外だった事業性資金を利用できる法人向けのローンなどもあるだろう。それだけ多様なローン商品となるので、商品の違いなどをよく調べたうえで、自分に合うものを選ぶようにしたい。借りるときの条件だけでなく、返済中の条件(遅延損害金、繰り上げ返済の有無、中途解約違約金の有無等)の確認も忘れないように。

ただし、マイホームを失うリスクが常にある、ということも忘れてはいけない。特に住宅ローンを返済中でさらに借りようとする場合は、それだけ債務が大きくなって、不動産を失うリスクも高くなる。後悔することのないように、上手にローンを活用することが重要だ。

「老後に2000万円必要」、報道で始めたのは「節約」。でも住居費はなかなか節約できない?

最近話題になっている「老後2000万円」問題。この報道後に、エアトリが調査したところ、7割以上が特に「何もしていない」ことが分かった。行動に移した人では、「節約」に向かった人が多いのだが、「老後の2000万円」に向けて、何を始めると良いのだろう。【今週の住活トピック】
「『老後の貯金』に関するアンケート調査」を公表/エアトリ「老後に2000万円の貯金」報道後、7割超が何もしていない

以前にもSUUMOジャーナルの記事でこの件を取り上げ、この報道に対して筆者は驚かなかったと書いた。老後を年金だけで暮らせるとは思っていないからだ。

エアトリが10代~70代の男女959名に調査したところ、過半数の56.2%が「老後に2000万円の貯金」報道について「以前からそうなると思っていた」と回答した。やはり、老後資金の蓄えが必要と予想していたことが分かる。一方で、「焦りを感じた」という回答も23.1%あった。

次に、この報道後に何かを始めたかどうか聞いたところ、74.2%が「何もしていない」と回答した。前項目で「焦りを感じた」と回答した人に絞っても、68.0%は「何もしていない」と回答している。逆に何かを始めた人では、「節約」という回答が最も多く、全体で14.2%、焦りを感じた人で19.4%だった。

報道を聞いて何かを始めましたか?【複数回答】(出典:エアトリ「『老後の貯金』に関するアンケート調査」)

報道を聞いて何かを始めましたか?【複数回答】(出典:エアトリ「『老後の貯金』に関するアンケート調査」)

報道後に何かした人の多くは「節約」、でも住居費は削れない?

「節約」を始めた人の節約方法を聞くと、男女で違いが出る結果となった。男性では、「趣味に利用するお金の削減」64.6%、「日用品に掛かる費用の削減」59.5%、「旅行回数の削減」48.1%の順だったが、女性では、「食事に掛かる費用の削減」73.7%、「日用品に掛かる費用の削減」68.4%、「休暇中の外出を控える」54.4%の順となった。どうやら、女性は回数の多いものをこまめに節約し、男性はお金の掛かるものをドンと節約する傾向が見られるようだ。

どんな方法で節約していますか?【複数回答】(出典:エアトリ「『老後の貯金』に関するアンケート調査」)

どんな方法で節約していますか?【複数回答】(出典:エアトリ「『老後の貯金』に関するアンケート調査」)

では、節約できないものはあるだろうか?
節約を始めた人に、どうしても節約できないものを聞いたところ、男女ともに「住居」(男性:35.4%、女性:38.6%)を挙げた人が最多だった。一方で、それ以降は男女で違いが出て、節約意識については男女差があることが浮き彫りになった。

どうしてもこれは節約できないものがあれば教えてください【複数回答】(出典:エアトリ「『老後の貯金』に関するアンケート調査」)

どうしてもこれは節約できないものがあれば教えてください。【複数回答】(出典:エアトリ「『老後の貯金』に関するアンケート調査」)

たしかに、持ち家であれ賃貸であれ、住居費用は必ずかかる。住居費用を抑えるということは、例えば家の広さが狭くなったり、通勤先から遠くなったりといった影響を受けるので、節約しづらいものになるのだろう。ただ、住宅ローンを払い続けている人で、借りたときより金利が低くなっている場合は、借り換えや繰り上げ返済をして金利を削減することはできる。住宅ローンの見直しは、常に頭に入れておいてほしい。

老後の貯蓄に向けて何を始めるべき?効果があるのは?

さて、「報道後に何かを始めたか」の調査結果を見ると、何かを始めた人では「節約」→「経済やお金に関する勉強」→「投資(資金運用)」→「副業」の順に多かった。

公表された調査結果では回答者の年代が不明なので、年代別の傾向は分からないが、「節約」や「投資」で効果を出すには時間がかかる。若い世代であれば、少しずつでも時間をかけることで、まとまった金額を生み出すことができるだろう。一方、中高年で既にまとまった資金がある場合は、投資による効果が小さくても元金が大きければ増える金額も大きくなる。とはいえ、投資にはリスクが付き物。年代が高い人ほど安定運用の割合を増やす必要があるので、利回りの良いものにつぎ込むのはNGだ。

また、既に年金を受け取る年代になっていて、貯蓄が不足している場合は、節約や投資よりも働くことで「収入を得る」ことが貯蓄を増やす近道になる。また、若い世代でも、家計に貯蓄ができる余裕がないなら、副業などで「収入を得る」必要があるだろう。最近では、副業を認める企業も増え、仕事をシェアする仕組みなども整ってきた。何より、副業を通じて多様なスキルを身に着けることが、その後のキャリアアップにも影響するだろう。

年齢や現在の家計の状況、受け取れる年金(見込)額などによって、「老後の貯蓄」に向けて始める効果的な準備が変わってくるのだが、年金制度もたびたび変わるし、投資商品や労働環境も変わっていく。つまりは、いくつであっても「経済やお金に関する勉強」を始める必要があり、かつ、常にし続けることが前提となるだろう。

賃貸住宅のオーナーってどんな人?大家さん は身近な存在?

民間賃貸住宅(1棟全体)を経営しているオーナー、借り手からいうと大家さんの実態について、日本住宅総合センターが調査した。オーナー調査はあまり事例がないので、この結果からどういった大家さんが多いのか、ひも解いていくことにしよう。【今週の住活トピック】
「民間賃貸住宅の供給実態調査」を公表/(公財)日本住宅総合センター低層で小規模な賃貸住宅、賃貸経営専業ではない個人経営のオーナーが多い

調査対象は、三大都市圏で賃貸住宅(1棟全体)の経営をしているオーナー。このオーナーたちがどういった賃貸住宅を所有しているかを見ていこう。

・住宅の階数は、「1~2階」の低層住宅が最多の58.3%を占め、平均は3.03階。
・住戸数は、最多が「5戸以下」の27.7%、次いで「6~9戸」の33.3%と、全体の6割が9戸以下の小規模な賃貸住宅で占め、平均は11.89戸。

次に、賃貸経営の組織や経営規模を見ていこう。
・回答した賃貸住宅以外に、「他に賃貸住宅を経営している」が 51.7%、「この賃貸住宅のみ」が48.3%。
・経営組織は、「個人経営」が 82.3%、「法人経営」が 17.3%で、個人経営が8割を超える。

あなたは、どのような職業(業種)をお持ちですか(出典:日本住宅総合センター「民間賃貸住宅の供給実態調査」)

あなたは、どのような職業(業種)をお持ちですか(個人経営の内訳)(出典:日本住宅総合センター「民間賃貸住宅の供給実態調査」)

個人経営では、専業より兼業が多く、低層で小規模な賃貸住宅を経営している事例が多いことが分かる。

賃貸住宅の管理形態で変わる、大家さんとの距離感

さて、賃貸住宅を経営するには、建物や設備の管理も必要だし、入居者の管理、契約の管理、経営の管理なども必要だ。これらをオーナー自身が管理するのが「自主管理」、賃貸住宅管理業者に全部または一部を委託する「委託管理」(調査項目では「管理委託」)。この調査では、これに「一括借り上げによる管理」を加えた三択で、管理形態を聞いている。

その結果は、「管理委託」が 54.7%と最多で、「すべて自主管理」が25.0%、「一括借上げにより管理(サブリース等)」が 20.3%となった。

賃貸住宅の管理形態についてお答えください(出典:日本住宅総合センター「民間賃貸住宅の供給実態調査」)

賃貸住宅の管理形態についてお答えください(出典:日本住宅総合センター「民間賃貸住宅の供給実態調査」)

「一括借り上げ」とは、不動産会社がオーナーから建物を一括して賃借し、運営・管理を行う形態をいう。つまり、実質的に賃貸経営をするのは不動産会社ということになる。オーナーから賃借した建物を不動産会社が実際の入居者に転貸(また貸し)することを「サブリース」という。一般的にサブリースでは、サブリース会社からオーナーに支払われる賃料は相場より低額になるが、空室があっても取り決めた賃料が安定して受け取れる形になる。 ただし、賃料は一定期間ごとに見直しをするため、当初の賃料が全期間にわたって保証されるものではない。

では、管理の違いについて、借りる側から見てみよう。
「自主管理の賃貸住宅」では、賃料の支払いから建物の不具合、近隣とのトラブルなどについては大家さんに直接交渉する。どう対応してくれるかは、大家さん個人の対応力がものをいうわけだ。
「委託管理の賃貸住宅」では、委託された範囲については専門の管理業者が対応するので、一定の対応がなされることが多い。管理業者は大家さんに管理の内容を定期的に報告するので、大家さんが状況を把握しているのが基本だが、管理業者にお任せという場合もあるだろう。
「一括借り上げの賃貸住宅」では、大家さんは入居者と全くかかわりをもたない。

このように、管理形態によって入居者と大家さんの距離感はかなり違ってくる。

賃貸住宅を所有するだけで収益が上がるわけではない、大家さんの創意工夫に期待

この調査では、賃貸経営を始めたきっかけも聞いている。

「今後の安定した収入を得るため」(52.7%)、「事業として収益を上げるため」(37.0%)、「資産運用に関心があったため」(28.3%)といった、賃料収入を目的にしているオーナーが多い。一方で、「一括借上げによる管理」に限定してみると、「今後の安定した収入を得るため」(63.9%)、「将来の相続税対策のため」(34.4%)の順になったという。

賃貸経営をはじめたきっかけについて、主なものを3つまでお答えください(出典:日本住宅総合センター「民間賃貸住宅の供給実態調査」)

賃貸経営をはじめたきっかけについて、主なものを3つまでお答えください(出典:日本住宅総合センター「民間賃貸住宅の供給実態調査」)

家余りの今は、賃貸住宅さえ所有していれば収益が上がるものではない。老朽化したり、駅から遠かったりする賃貸住宅の場合、空室が続いて賃料を下げざるを得ない、賃料を下げても借り手がいないといったリスクも高くなる。

法人であれば収益が出るように計画的に賃貸経営をしていくだろうが、問題は8割を占める個人オーナーの場合だ。個人経営でも、積極的に魅力的な賃貸住宅にするために創意工夫をしている大家さんもいる一方で、相続などで賃貸住宅を譲り受けたり、相続税対策として不動産会社に勧められたりして、お任せで賃貸経営に深くかかわっていない大家さんもいる。

最近では、大家業をしっかり学ぼうという大家さんも増えている。SUUMOジャーナルの記事でも、「大家の学校」の取り組みを紹介している(→賃貸住宅を楽しい暮らしの舞台に! 「大家の学校」で伝えたいこと【前編】【後編】)。大家さんが創意工夫をしている賃貸住宅の入居者は、満足度も高く長く住む傾向がみられる。

同じ住むなら、暮らしが楽しくなる住宅がよいだろう。賃貸住宅を選ぶときには、立地と広さと賃料だけでなく、管理や大家さんとの距離感も確かめてはいかがだろうか?

50代の9割近くが金銭面に不安!マイホームを持って老後2000万円を用意するには?

マイスター60が50代の会社員夫婦に調査したところ、定年後の暮らしで金銭面に不安を感じる人が85.8%もいたことが分かった。折しも、年金以外に2000万円必要という「2000万円問題」がクローズアップされているが、マイホームを持った上で老後資金2000万円をどうやって貯めればいいのだろうか?【今週の住活トピック】
「50代会社員夫婦の定年対策 実態調査(第2弾)」を公表/マイスター6050代夫婦、特に女性が定年退職後の暮らしで金銭的に不安を感じている

調査結果を見ると、老後の暮らしに金銭面で不安がある人は85.8%(とても不安40.4%+どちらかというと不安45.4%)と多数を占めた。特に不安を強く感じているのは、男性より女性に多いようだ。

老後の暮らしに金銭面での不安はあるか(出典:マイスター60「50代会社員夫婦の定年対策 実態調査(第2弾)」)

老後の暮らしに金銭面での不安はあるか(出典:マイスター60「50代会社員夫婦の定年対策 実態調査(第2弾)」)

一方で、年金が実際にいつどれくらい支給されるか、を正しく把握できている人は少ない。「しっかり把握できている」のは、わずか10.3%で、把握できていない人は46.7%(「全く把握していない」9.7%+「ほとんど把握できていない」37.0%)と半数近くに達する。

年金が実際にいつどれくらい支給されるか把握できているか(出典:マイスター60「50代会社員夫婦の定年対策 実態調査(第2弾)」)

年金が実際にいつどれくらい支給されるか把握できているか(出典:マイスター60「50代会社員夫婦の定年対策 実態調査(第2弾)」)

金銭面で将来に不安を感じる反面、年金で受け取れる額や老後の家計などについてはあまり検討されていないというのが現状のようだ。

本当に必要なのは3000万円以上!?退職金を全額充当が原則

折しも今、「2000万円問題」が注目を集めている。「95歳まで生きるには年金以外に約2000万円が必要」という金融庁の報告書。筆者は特に驚かなかった。

これまでもファイナンシャルプランナーなどの専門家が、総務省の家計調査や厚生労働省のモデル世帯の年金支給額などから、老後のために必要な資金を試算している。筆者が取材した経験からいうと、老後資金として3000万円以上は貯めたいという試算が多かった。95歳のように平均寿命より長く生きるなら、その金額はさらに増えるだろう。

では、マイホームを取得したうえで老後資金を貯めるには、どんなマネープランを立てればよいのだろう。

人生の三大支出といわれるものに「住宅資金」「教育資金」「老後資金」がある。子どもの教育資金と自分の老後資金が重なることはめったにないが、住宅資金は常にかかわってくる。このバランスをどう取るかがカギになる。

教育資金は、子どもが生まれたときから一人当たり毎月1万円貯蓄し続ければ、最も多額な教育資金が必要になる「大学や短大への入学時に備える」ことができる。

老後資金は、「退職金を全額充当」して、不足分は子どもが卒業してから定年退職までに貯蓄をするということになる。

住宅資金は、賃貸かマイホームかで大きな違いがある。老後も賃貸暮らしを続けるなら賃料を払い続けることになるので、それを見込んだ老後資金を確保する必要がある。

マイホームの場合は、ローン完済後は住宅のメンテナンス費用の支出だけになるので、老後資金を抑えることができる。ただし、退職金を住宅ローンの返済に充てるような資金計画を立ててしまうと、老後資金に影響してしまうので、定年退職前にローンを完済することが原則だ。

こうした基本的な考え方でしっかり家計をやりくりすれば、老後資金の確保も見通しが立つと思う。

もちろん、教育費のかけ方や老後の暮らし方、所得の額や年金の額、実際に生きる年数などによって、家庭の収支は実にさまざまだ。2000万円問題をきっかけにして、それぞれの家庭の収支について、真剣に考えてみるとよいだろう。

若い人は老後までの時間を上手く活用して、シニア層は働き方を検討して、子育て層は教育費と教育方針を連動させて、自分の老後の暮らしを守れるように、それぞれ家庭のマネープランを見直してはいかがだろう。

じめじめする梅雨の時期。部屋干しに困っていませんか?

ダイキン工業の調査結果によると、住宅内の空気で最も不快度が高い季節は、暑い夏や寒い冬よりも「梅雨」だったという。調査ではさらに、「部屋干し」について詳しく聞いている。部屋干しの実態や上手な干し方について見ていくことにしよう。【今週の住活トピック】
「住宅内の空気の困りごとと部屋干しに関する実態調査」を公表/ダイキン工業雨の日などには「部屋干し」をする人が多数派

ダイキン工業が、洗濯物の部屋干しの実施状況を聞いたところ、「毎回部屋干ししている」は22.8%、「状況に応じて部屋干しすることがある」は62.0%と、部屋干しを実施する人が8割を超える結果となった。

この調査の対象が首都圏の共働き世帯男女400人であることから、勤務日の日中は家にいない共働き世帯では、「部屋干し」がよく行われているということだろう。

共働き世帯における部屋干し実施率(出典/ダイキン工業「住宅内の空気の困りごとと部屋干しに関する実態調査」より転載)

共働き世帯における部屋干し実施率(出典/ダイキン工業「住宅内の空気の困りごとと部屋干しに関する実態調査」より転載)

また、リンナイの「【熱と暮らし通信】『洗濯』に関する意識調査」でも、洗濯物の干し方について聞いている。こちらの調査対象は全国の男女1000人で、「日常で最も多く行っている干し方」と「雨の日の干し方」に分けて聞いている。結果は、「日常の干し方」で「外干し」が66.1%、「部屋干し」は29.7%と外干しが多いが、「雨の日の干し方」では「部屋干し」が70.0%、「乾燥機」が17.4%と部屋干しが多数を占めた。共働き世帯に限らず、雨の日は部屋干しという人が多数なのだ。

「部屋干し」のお困りごとは、場所を取る、乾かない、臭くなる

実は筆者についていえば、部屋干しを最もよく行う時期は3~4月、花粉症で外干しができないからだ。
部屋干しには、花粉やPM2.5、排気ガスなどの付着や紫外線による劣化を避けられるというメリットもある。

一方で、部屋干し特有のお困りごとも多い。ダイキン工業の調査で「部屋干しで困ること」を聞いたところ、「場所を取る」(41.6%)、「カラッと乾かない」(41.3%)、「洗濯物が臭くなる」(38.3%)、「時間がかかる」(37.5%)、「部屋がジメジメする」(32.4%)が上位に挙がった。

部屋干しにおける困りごと(出典/ダイキン工業「住宅内の空気の困りごとと部屋干しに関する実態調査」より転載)

部屋干しにおける困りごと(出典/ダイキン工業「住宅内の空気の困りごとと部屋干しに関する実態調査」より転載)

さらに「部屋干しで工夫していること」を聞いたところ、7割以上の人が洗濯物の間をあけたり、エアコンや扇風機の風を当てたりと、なんらかの工夫をしている一方で、2割以上の人が「何もしていない」と回答した。

部屋干しで工夫していること(出典/ダイキン工業「住宅内の空気の困りごとと部屋干しに関する実態調査」より転載)

部屋干しで工夫していること(出典/ダイキン工業「住宅内の空気の困りごとと部屋干しに関する実態調査」より転載)

部屋干しの工夫、プロが助言する効果的な方法とは?

では、具体的にどういった工夫が効果的なのだろうか?

ダイキン工業のリリースでは、家事アドバイザーの矢野きくのさんが次のポイントを挙げている。
・臭いは乾くのに時間がかかって菌が繁殖することによるので、エアコンの除湿機能を使って素早く乾かす。
・エアコンの除湿機能は干す30分くらい前から使うとより早く乾燥できる。
・エアコンの吸い込み口の近くに干すほうが湿気を素早くとれる。
・風の通りをよくするために、洗濯物同士はできるだけ離し、風の当たる面積を広くする。

また、リンナイのリリースでは、洗濯家の中村祐一さんが次のポイントを挙げている。
・臭いの原因菌は汚れがあって湿っている状態が続くと増殖するので、こまめに洗う。
・お湯を使うことで繊維や皮脂汚れが緩んで汚れが落ちやすくなる。
・衣類が乾くポイントは「服の表面積を広げる」「空気の流れをつくる」ことなので、洗濯物を広げた状態で換気扇をつけたり、扇風機や除湿器と併用したりするとよい。

さらに、干す場所については、リクルート住まいカンパニーのリリースで、「部屋物干しスペース」や「ランドリールーム」を紹介している。部屋干しのスペースを確保することで、時間や天気を気にせず干せるだけでなく、洗って干してたたむなどの「洗濯動線」が短くなるメリットもある。

ランドリールームを設置する際の注意点として、次のポイントを挙げている。
(1)エアコンを設置したり、自然の風が抜けるようにして「風通しの良い場所」にする。
(2)浴室や洗濯機置場との位置関係を考慮する。
(3)収納まで一気にできるようにファミリークロゼットを設置する。
(4)着脱や昇降が可能な物干しを選ぶ(使わないときに邪魔にならない)。

筆者の部屋干しの場所は、主に浴室だ。浴室乾燥機が使えるし、狭い空間なので短時間で乾く。加えて、人の目につかない場所という利点もある。ただし、洗濯物の数が多いとそれぞれが重なってしまうので、こまめに洗うことで解消している。電気代などの光熱費を気にする人もいるだろうが、プロの助言を参考にして、それぞれの家庭のライフスタイルに合う工夫をしたい。

●参考サイト
・リンナイ「【熱と暮らし通信】『洗濯』に関する意識調査」
・リクルート住まいカンパニー「梅雨の時期でも困らない!家事効率もアップ?室内物干しスペース、メリットと注意点」

次世代住宅ポイント制度の発行申請がスタート!ところで、どんなポイントだっけ?

国土交通省によると、2019年6月3日から「次世代住宅ポイント制度」のポイント発行申請の受付を開始したという。この制度は、消費税率10%への引き上げ後の住宅購入などを支援するためのものなのだが、まだ消費税率は上がっていない。ポイント発行申請の受付とはどういったことか、そもそもどういった制度か、詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
次世代住宅ポイント制度のポイント発行申請を受付開始/国土交通省消費税率10%のマイホームの新築やリフォームに与えられるポイント

住宅の新築やリフォームの費用は、消費する商品の中でも高額なものだ。消費税率が8%から10%へ引き上げられる影響も大きい。住宅の購入などの需要が落ちないように、政府はさまざまな優遇策を用意している。

そのひとつが「次世代住宅ポイント制度」で、一定の性能を満たす住宅の新築やリフォームに対して、商品と交換できるポイント(1ポイント=1円相当)を与えるもの。対象となるのは、消費税率10%が適用されるマイホームの新築(注文住宅の新築、新築分譲住宅の購入)とリフォームだ。

新築の場合は、一定の省エネ性、耐久性、耐震性、バリアフリー性能を満たす住宅に対して30万ポイントが与えられ、さらに性能を引き上げるなどの条件を満たせば最大35万ポイントまで引き上げられる。

一方、リフォームの場合は、断熱改修、エコ設備の設置、耐震改修、バリアフリー改修に加え、家事負担を軽減する設備の設置やインスペクションの実施などについて、それぞれ決められたポイントが設定され、該当する工事の内容ごとに加算され、上限で1戸当たり30万ポイントまでが与えられる。さらに、若者・子育て世帯がリフォームを行う場合などの条件を満たせば、ポイントの上限が引き上げられる特例が適用され、最大で45万または60万ポイントが与えられる可能性がある。

工事完了前ポイント発行申請とポイント予約申請の受付を開始

消費税率10%が適用されるということは、予定どおり10月1日から増税されれば、新築した住宅やリフォームの工事が終わって「10月1日以降に引き渡される」ことが基本的な条件だ。したがって、6月3日時点では、まだ工事が完了していないことになる(ただし、完成済みの新築分譲住宅の購入の場合を除く)。

実は、ポイントを申請するタイミングは、「工事完了後」、「工事完了前」、「分譲予約」がある。工事が完了して引き渡しを受け、入居してから申請する「工事完了後」だけでなく、工事請負契約や売買契約の締結後に申請する「工事完了前」のタイミングでも可能だ。ただし、リフォームの場合は、工事金額が1000万円を超える工事に限り「工事完了前」の申請ができる。

また、分譲住宅の場合はまとまった戸数が対象になるので、デベロッパーなどの分譲事業者が建築事業者と工事請負契約を締結した後にポイント発行申請の予約をする「分譲予約」を行うことも可能にしている。この場合は、住宅の購入者と売買契約を締結した後に各戸のポイントの発行申請を行うことができる。

つまり、6月3日から受付を開始したのは、「工事完了前」及び「分譲予約」の場合についてだけなのだ。

省エネ家電、健康家電、キッチン家電、子ども用品などの商品と交換可能

さて、気になるのは、与えられたポイントでどんな商品と交換できるかだろう。
6月3日から、交換できる商品の検索もできるようになった。

現時点で検索してみると、パソコンやテレビなどの省エネ家電、扇風機や空気清浄機などの健康家電、家事負担を軽減するキッチン・掃除・洗濯家電、ランドセルや子ども用自転車などの子育て商品、地域の食料品、防災用品など多岐にわたる。交換対象商品は今後も追加される予定だが、参考に検索してみるのもいいだろう。

ポイント制度の詳細や交換商品の検索については、「次世代住宅ポイント事務局」のサイトを参照してほしい。
<次世代住宅ポイント事務局HP>

せっかくの住宅購入などの支援策だが、次世代住宅ポイント制度の認知度はあまり広がっていないように感じる。でも、まだ消費税率が10%に上がっていないので、イメージがしづらいということもあるのだろう。とはいえ、ポイント発行の申請などが始まっている。例えばリフォームでは、工事前後や工事中の写真を提出する必要があるなど、実際にポイントが発行されるには細かい条件もある。知らなかったのでポイントがもらえなかったということのないよう、情報だけは事前に集めておくとよいだろう。

人口の減少や偏在、単独世帯の増加……、人の動きは住まいにどう影響する?

国土交通省の専門委員会である「企画・モニタリング専門委員会」で、日本の人口の長期的な動向や東京圏への転入超過などを分析した結果などが報告された。人口の減少や偏在など、人の動きの課題が浮き彫りになったが、今後の住まいにどういった影響があるのだろうか?【今週の住活トピック】
「企画・モニタリング専門委員会調査審議経過報告(案)」を公表/国土交通省急速な人口減少と高齢化、単独世帯の増加が予想される日本の将来

日本の総人口は、明治時代以降急速に増加し、2008年にピークとなる1億2808万人(高齢化率22.1%)に達した。しかし、今後100年間で100年前の明治時代後半の水準にまで戻る可能性があるという。報告書によると、2100年の総人口は中位推計で5972万人(高齢化率38.3%)、低位推計4906万人~高位推計7285万人の範囲になると予測している。

また、世帯の構成については、「夫婦と子」の核家族の減少と「単独」世帯の増加が顕著だ。1980年に42.1%を占めた「夫婦と子」世帯が2040年には23.3%に減少するのに対し、「単独」世帯は19.8%から39.3%にまで増えるという予測だ。

さて、そうなるとすでに住宅の数は充足しているので、「家余り」がさらに加速することになる。かつては夫婦に子ども2人が標準世帯とされ、4人家族で暮らす住宅が数多く供給されてきたが、家の広さや部屋数の多さよりも、利便性の高い立地に適度な広さの住宅の需要が、今後ますます高まるということになる。

東京圏への人口偏在化、仕事を求めて移動?

人口が減るからといって、どこでも一律に減るわけではない。東京一極集中が指摘されるなか、東京圏への転入超過数を調べると、10代後半~20代が極めて多いことが分かる。2018年では、「20歳から24歳」の転入超過数は7万4996人で、全体の過半数を占めるほどだ。

東京圏の年齢階層別転入超過数(2010~2018年)(出典/国土交通省「企画・モニタリング専門委員会調査審議経過報告(案)」)

東京圏の年齢階層別転入超過数(2010~2018年)(出典/国土交通省「企画・モニタリング専門委員会調査審議経過報告(案)」)

20代だけで見ると、最も転入超過が目立つのは「20~24歳の女性」だ。「25~29歳」では、男女ともに転出数が年々抑えられる傾向にある。一方「20~24歳の女性」では、転出数が横ばいであるのに対して転入数が最も増加している点が特徴だ。男性だけでなく、女性も仕事を求めて東京圏に移動しているということだろう。

大都市圏への人口偏在で、地方圏の家余りがますます加速し、大都市圏では通勤通学に便利な立地に新たな住宅の需要が生まれるという構図が見えてくる。

東京圏への転入・転出状況(出典/国土交通省「企画・モニタリング専門委員会調査審議経過報告(案)」)

東京圏への転入・転出状況(出典/国土交通省「企画・モニタリング専門委員会調査審議経過報告(案)」)

外国人の在留がカギを握る時代に?

さて、地方の人口減少や空き家の増加、住宅のストックと居住者ニーズのミスマッチなど、住宅に関する課題は多い。そして今注目されるのが、外国人の居住だ。

在留外国人(中長期在留者および特別永住者)は、2008年前後の世界金融危機の影響を受けたものの、1990年代以降増加傾向で推移している。

これを受けて、国土交通省では、外国人の民間賃貸住宅への円滑な入居のために、「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」を公表したり、「外国人向け部屋探しのガイドブック」を作成したりしている。

在留外国人の推移(出典/国土交通省「企画・モニタリング専門委員会調査審議経過報告(案)」)

在留外国人の推移(出典/国土交通省「企画・モニタリング専門委員会調査審議経過報告(案)」)

実は在留外国人が居住しているのも、三大都市圏が70.4%(2017年12月時点で)と多く、特に東京圏では41.2%を占めている。その一方、地方圏には29.6%が居住しているという実態がある。

「星野リゾート トマム」がある北海道勇払郡占冠(しむかっぷ)村は、2014年~2018年の住民増加数に対する外国人寄与度※が18.69%と全国でトップだという。「キロロリゾート」のある北海道余市郡赤井川村(外国人寄与度11.65%)や「ルスツリゾート」のある北海道虻田郡留寿都村(同8.78%)などが続く。一部ではあるが、外国人の増加で人口の減少をカバーする市町村もあるということだ。
※外国人寄与度:2014~2018年の外国人住民増加数/2018年総住民数

最近は、外部から人を受け入れるために、空き家を活用したり、インターネット環境を整備したり、移住定住のサポート体制を充実させたりなどの努力をしている地方の市町村も出現している。合わせて、二地域間を行き来して暮らす「デュアルライフ」の事例が増えたり、自然豊かな田園地方に「サテライトオフィス」を設ける企業が増えたりと、“田園回帰”の現象も見られるようになっている。

人口の偏在化や高齢化、世帯の縮小化などの動向に応じた住宅の供給を検討する一方で、さまざまな価値観の人を呼び込める地域や住まいの魅力度アップにより、人の流れも多様になるということに期待したい。

災害時に困るのはライフラインの遮断。住宅の機能でどこまで備える?

地震や豪雨、川の氾濫などの災害が、近年は甚大化する傾向が見られる。住環境研究所が“被災経験”のある人に調査したところ、被災したときに困ったのは、「停電」や「断水」などライフラインがストップしたことだと分かった。調査結果を詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「防災・災害意識と住まい調査」を発表/住環境研究所電気や水道などのライフラインの遮断が災害の課題

「地震」「水害」「台風」の被災経験のある25歳以上の既婚者に調査したところ、「停電」を経験した人は70%とかなり多く、「断水」を経験した人も43%もいることが分かった。これを災害別に見ると、「地震」被害の場合で、停電も断水も経験した割合が最も多くなっている。

■停電を経験した人の割合(全体:70%)
・地震被害:85%
・水害被害:69%
・台風被害:69%
■断水を経験した人の割合(全体:43%)
・地震被害:64%
・水害被害:43%
・台風被害:29%

断水が意外に多いように思うかもしれないが、巨大地震が起きれば、水源の水が枯れたり濁ったり、取水・浄水処理施設などの機能が損なわれたり、水道管が破裂したりといったさまざまな被害によって、断水を引き起こす可能性が高くなるという背景がある。

さらに断水は、水源から建物に給水するまでの異常だけでなく、実は停電とも関係がある。マンションなどの共同住宅の場合、各戸に水道を給水する方法はいくつかあるが、その多くは電気で動くポンプで水を送っているため、停電になると断水してしまうからだ。

ちなみに、ガス機器のなかには電源を必要とするものもあるので、ガスの使用も停電の影響を受ける場合がある。

災害時に困るのは、「家の片付け」「停電」「食料の入手」「飲み水の入手」「水洗トイレ」

次に「災害時に困ったこと」を聞くと、「家の片付け、掃除」26.6%、「停電、計画停電などで自宅の電気が使えない」25.7%、「食料の入手」25.0%、「飲み水の入手」23.3%、「自宅の水洗トイレが使えない」23.2%の順で、困った経験のある人が多いことが分かった。

また、断水経験のある人は、「自宅の水洗トイレが使えない」(38.5%)、「飲み水の入手」(37.4%)など、水に関して困った経験のある人が約4割にまで上がり、生活するうえでかなり困る様子がうかがえる。加えて、停電経験のある人は、「停電、計画停電」(31.2%)がお困り度ナンバーワンになるなど、ライフラインがストップすることの影響が大きいことが分かる。

災害時に困ったこと(出典/住環境研究所「防災・災害意識と住まい調査」より転載)

災害時に困ったこと(出典/住環境研究所「防災・災害意識と住まい調査」より転載)

住宅の機能で災害に備えるという方法もある

住宅の機能によって、災害に備えるという考え方もあるだろう。

災害に対応する住まい(建物、設備)への配慮の要望を聞いたところ、建物への要望では、地震対策として「倒壊しない強固な構造」75.3%「揺れによる室内の被害を抑える配慮」67.0%、台風対策として「飛来物に対する配慮がある(窓にシャッター等)」59.3%、「飛散に対する配慮がある(屋根の固定方法等)」55.2%などとなった。

設備への要望では、停電対策として「太陽光や蓄電池などにより最小限の生活が行える」46.1%、「電気のみに頼らない、ガスも併用した設備」36.5%、「大容量蓄電池などにより普段通りの生活が行える」34.9%などとなった。住環境研究所では、災害への住まいの対応として、台風対策や停電対策への要望も高いことに注目している。

また、被災経験のある人のなかでも住宅取得計画のある人に絞ると、要望の傾向は同じだが、要望の度合いがいずれも高まることも分かった。

災害に対応する住まい(建物、設備)への配慮の要望(出典:住環境研究所「防災・災害意識と住まい調査」より転載)

災害に対応する住まい(建物、設備)への配慮の要望(出典:住環境研究所「防災・災害意識と住まい調査」より転載)

最新の技術や設備によって、災害に備える機能を住宅に設けることは可能だ。もちろん、高い機能を付加すればそれだけ、コスト面もかかってくる。予算との兼ね合いでどこまで備えるかの優先順位をつけることになるが、住宅でも特に建物については、命や財産を守る箱にもなるので、あらゆる災害に備えられる機能をもたせることを強くお勧めしたい。

甚大な災害が増えるなか、災害への備えをする家庭も多くなっている。飲料水や食料品を備蓄したり、携帯の充電器を用意したり、懐中電灯を用意したり、風呂の水をためておいたり(水洗トイレで使用)と、万一に備えて家庭で用意できるものは怠らないようにすべきだ。

合わせて、建物や設備で災害に備えられる機能についても、新たに住宅を取得する際に考慮したり、必要に応じて居住中の住宅で耐震改修などのリフォームを行ったりといったことも検討してほしい。

マンション総合調査から分かる、マンション選びのポイントとは?

国土交通省は、5年ごとに実施しているマンション管理の実態に関する「マンション総合調査」について、平成30(2018)年度調査の結果を公表した。住活トピックでは、そのなかでも区分所有者に対して調査した項目を取り上げ、マンション選びのチェックポイントについて考えてみたい。【今週の住活トピック】
「平成30年度マンション総合調査結果」を公表/国土交通省マンション選びはなにより立地重視?

調査は、管理組合と区分所有者に対してそれぞれ行っているが、区分所有者に対して調査した項目をピックアップしながら、マンションを選ぶ際に何を考慮したのか見ていこう。

まず、マンション購入時に考慮した項目について聞く(複数回答)と、「駅からの距離など交通利便性」が72.6%で最多だった。ほかに上位に挙がった項目を見ると、3番目の「日常の買い物環境」(52.8%)、4番目の「周辺の医療・福祉・教育等の公共公益施設の立地状況」(39.4%)、6番目の「周辺の自然環境」(28.5%)と、立地に関する項目が上位に多いことが分かる。

住宅の基本性能より立地条件を重視して、マンションを選んだ人が多いことがうかがえる。

一方、2番目の「間取り」(63.7%)についてだが、広さは変えられないが、間取りはリフォームすれば変えることができるし、家具などで空間を上手く仕切って暮らすなどの工夫もできる。後から変えるには補強工事などが必要になる「建物の耐震性能」への考慮が、もっと多くてもよいのではないかと思う。

マンション購入の際に考慮した項目(複数回答)※新規調査項目(出典/国土交通省「平成30年度マンション総合調査」より転載)

マンション購入の際に考慮した項目(複数回答)※新規調査項目(出典/国土交通省「平成30年度マンション総合調査」より転載)

マンションの管理面では「管理会社」「管理規約」「管理費・修繕積立金の額」

マンションの維持管理で考慮した事項を聞く(複数回答)と、上位に挙がった項目は「優良なマンション管理業者であること」50.0%(前回=平成25年度調査41.7%)、「管理規約の内容が妥当であること」43.0%(前回33.4%)、「管理費及び修繕積立金の額が十分であること」41.8%(前回41.2%)となった。

維持管理で考慮した事項(複数回答)(出典/国土交通省「平成30年度マンション総合調査」より転載)

維持管理で考慮した事項(複数回答)(出典/国土交通省「平成30年度マンション総合調査」より転載)

マンションのルールブックと言える「管理規約」の内容の妥当性については、「考慮する」という回答が、前回の33.4%から43.0%へとこの5年でかなり上がっている。実は、マンションで民泊を可能とするのか否かを規約に明示するように、2017年(平成29年)に国土交通省が推奨するマンション標準管理規約が改正された。これを受けて、新築マンションはもちろん、既存のマンションでも管理規約を見直して民泊に関する記載を追加するなどの改訂をする事例が多かった。おそらく、こうした時代に応じた管理規約の内容になっているかどうか、関心が高まったことなどが背景にあるのだろう。

一方、大規模修繕工事の重要性は広く知られているので、そのために必要な修繕積立金の額についても、多くの人が考慮したことがうかがえる。

ちなみに、月額の修繕積立金の額の平均は1万1243円、駐車場使用料等からの充当分を含む修繕積立金の額の平均は1万2268円で、前回調査(1万783円、1万1800円)より増加している。

「特にトラブルがない」マンションが減少!?

マンション内のトラブルの発生状況を聞く(複数回答)と、「特にトラブルがない」という回答が23.2%になり、前回調査の26.9%より減る結果となった。

一方、トラブルが発生した内容については、「居住者間のマナー」が55.9%と最も多く、次いで「建物の不具合」が31.1%、「費用負担」が25.5%となった。また、前回調査より大きく増加したのは「その他」の項目だけだった。

トラブルの発生状況(複数回答)(出典/国土交通省「平成30年度マンション総合調査」より転載)

トラブルの発生状況(複数回答)(出典/国土交通省「平成30年度マンション総合調査」より転載)

トラブルとして過半数の「居住者間のマナー」については、カギを握るのが「管理規約」とそれに付随する「使用細則」だ。そのマンションでどういった暮らし方をすることになっているか、ルールブックの内容が重要になる。さらに、マナーを守らない居住者がいる場合、管理組合が注意を促すことになるが、それをサポートする「管理会社」のノウハウや助言が欠かせない。「費用負担」のトラブルも同様なので、管理会社や管理規約は、トラブル防止の観点でも考慮すべきポイントと言えるだろう。

調査結果を見ていくと、マンション選びでは「立地」や管理面の「管理会社」「管理規約」「管理費・修繕積立金の額」が重視されていることが分かった。

実は、チェックポイントとして、後から変えられない、変えるのが容易ではないことを重視するのが鉄則だ。例えば、管理規約や管理会社を変える場合、管理組合で審議をして、総会の場で規定数による多数決で決議する必要がある。管理組合が活発に運営されていないと、こうした合意形成を図ることが難しいのが実態だ。そういう意味では、マンションに住むなら管理組合の活動に関心をもって、積極的に関わっていってほしい。

理想の一戸建てに求めるのは、日当たりやLDの広さ?

中央住宅は、SUUMOが戸建住宅の検討者と購入者1030人を対象に実施したアンケートの結果を通して、様々な意見を取り入れた新しい住まいの形『「理想の家」 レシピプロジェクト第2弾』をスタートさせた。戸建住宅ならでは理想が浮き彫りになったようだが、どういった結果になったのだろう?【今週の住活トピック】
SUUMOが戸建住宅検討者と購入者1030人にアンケートを実施(理想の家に関する1030人のアンケート結果)/中央住宅

戸建住宅では「日当たり」を重視する人が多い?

戸建住宅といっても、実は様々なタイプがある。ハウスメーカーに建築を依頼する「注文住宅」もあれば、分譲会社が一定の戸数の住宅地を開発してまとまった戸数の家を建て、販売する「分譲住宅」もある。

まず、分譲の戸建住宅に魅力を感じる理由を聞いたところ、「各家の日当たりが配慮されていること」が503人と最多となった。加えて、「街並みがきれいなこと」414人、「隣家の視線が被らないように間取りが配慮されていること」406人が続いた。

まとまった戸数の住宅地を開発する分譲住宅の場合、日当たりや居住者間の視線などを考慮して、敷地内の住宅の配置や間取りを工夫するのが一般的だ。外壁や屋根などの外観を同じテイストに統一するので、街並みが形成されるのも特徴だ。こうした点を魅力と感じる人が多いことが分かる。

部屋数より居室の広さ、なかでもリビングを重視する傾向

次に、居室について見ていこう。

まず、「住み替えるとしたら、広さで妥協したくないもの・妥協できるもの」を聞くと、「リビング・ダイニングの広さ」、「収納の広さ」、「キッチンの広さ」は妥協したくないという人が圧倒的に多かった。

一方、妥協できるもので多かったのは「個室の部屋数」、「主寝室の広さ」、「子ども部屋の広さ」だ。つまり、部屋の数よりも広さを重視し、なかでも利用頻度の高いリビング・ダイニングや収納、キッチンの広さは妥協しがたいと考えていることがうかがえる。

例えば、寝室は机などを置かずに機能を寝ることに絞る、子ども部屋は勉強する場所としてくつろぐ場所をリビング・ダイニングで代用する、といったことも可能なので、妥協しやすいということだろう。

住み替えるとしたら、広さで妥協したくないもの・妥協できるもの(複数回答)(出典:中央住宅「SUUMOの戸建住宅検討者と購入者1030人アンケート」より転載)

住み替えるとしたら、広さで妥協したくないもの・妥協できるもの(複数回答)(出典:中央住宅「SUUMOの戸建住宅検討者と購入者1030人アンケート」より転載)

また、広さにこだわる「リビング」について、「リビングに求める暮らし方・過ごし方」を聞いたところ、「リラックスできること」や「家族と会話しやすいこと」が上位に挙がった。リビングではのんびりと長居したり、家族と団らんできることなどが重要な条件となっていることが分かる。

リビングに求める暮らし方・過ごし方(複数回答)(出典:中央住宅「SUUMOの戸建住宅検討者と購入者1030人アンケート」より転載)

リビングに求める暮らし方・過ごし方(複数回答)(出典:中央住宅「SUUMOの戸建住宅検討者と購入者1030人アンケート」より転載)

住む人の暮らし方が変わると、住宅の間取りも変わっていく

家族の人数が減少傾向にあることも一端だが、広い空間を上手にゾーニングして、機能分けをして暮らす人が増加していることも背景にあるだろう。

特に、リビング・ダイニングは、団らんや食事の場としてだけでなく、子どもの遊び場になったり、家事コーナーや書斎コーナーを設けることで、アイロンがけをしたりパソコンを使ったりといった場にもなる。

使用頻度が高くなることを受けて、戸建住宅ではリビング・ダイニングを日当たりのよい2階に設ける間取りも多くなっている。

また、居室の広さだけでなく、開放感が得られるように吹抜けやロフトを設けるなどで居室を高くする工夫も見られる。リビング・ダイニングに隣接するキッチンは、作業をしながら会話ができる「対面式キッチン」が圧倒的に多い。

収納についても、玄関横の収納や食料品をストックできるパントリーなど、私用する場所に付けるケースや、あえて家族ごとに分けずに大型のファミリークロゼットなどを設ける間取りも増えてきている。

このように、住む人の暮らし方が変われば、戸建住宅の間取りも変わってくる。マイホームの間取りを選ぶ際には、それぞれがどのように暮らすのかをイメージして、優先順位をつけて選ぶとよいだろう。

マイホームの取得、財布と住まいで近づく親子の距離感

インタースペースが同社のママ向け情報サイト『ママスタジアム』で、「マイホームに対する意識」調査を実施したところ、マイホームに際して、親世帯と子世帯の距離の縮まりを感じさせる結果が多いことが分かった。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「マイホームに対する意識」調査を実施/インタースペース ママスタジアムいずれかの親との同居や近居、イマドキのママは意外に多い

親世帯と子世帯の距離の縮まりという点で、まずは、「同居」「二世帯」」「近居」についての状況を見ていこう。

なお、この調査では、両親や兄弟と同じ家に住むことを「同居」、両親と住む家に別玄関があるなどで生活圏が区切られていることを「二世帯」、として区別しており、約30分以内で行き来できる距離に両親が住んでいることを「近居」、と定義している。

さて、調査時点で、同居・二世帯・近居をすでに実施しているママは21.3%(同居7.4%・二世帯2.6%・近居11.3%)。意外に多いという印象だ。さらに、同居や近居をしていないママに「将来的に、両親との同居や二世帯・近居について考えているか」を聞いたところ、24.5%がいずれかを「考えている」と回答した。

「将来的に、両親との同居や二世帯・近居について考えていますか(単一回答)(出典:インタースペース「マイホームに対する意識」調査より転載)

「将来的に、両親との同居や二世帯・近居について考えていますか(単一回答)(出典:インタースペース「マイホームに対する意識」調査より転載)

若いママほど、同居や二世帯、近居を考える意向が強く、親世帯との同居や近居にメリットを感じていることがうかがえる結果だ。

この傾向は、リクルート住まいカンパニーの「『住宅購入・建築検討者』調査(2017年度)」にも表れている。いずれかの親がいるマイホーム検討者の21.9%に同居意向があり、38.3%に近居意向があった。特に20代では「近居」意向が45.1%と高い傾向がみられた。

4割超のママがいずれかの親の援助を受けたと回答

親世帯との距離の近さは、住まいの距離だけではない。

「住宅購入にあたり、両親からの援助の有無」を聞いたところ、「援助は受けていない」が57.8%と過半数を占めたが、「パパの両親から援助を受けた」17.9%、「ママの両親から援助を受けた」13.9%、「どちらの両親からも援助を受けた」10.4%と、親からの援助があった世帯は42.2%にも達したことが分かった。

親世帯のお財布の距離も、近いというわけだ。

「住宅購入にあたり、両親からの援助がありましたか」(単一回答)(出典:インタースペース「マイホームに対する意識」調査より転載)

「住宅購入にあたり、両親からの援助がありましたか」(単一回答)(出典:インタースペース「マイホームに対する意識」調査より転載)

マイホーム取得に関する調査結果などを多く見ている筆者からすると、4割を超える世帯で親から援助を受けているというのは、かなり多い結果だ。どちらの親からも援助を受けている世帯も1割いるので、マイホームの頭金や中古住宅購入時のリフォーム費用など、さまざまに活用されたことだろう。

この背景には、「住宅取得等資金の特例」という税制優遇措置がある。
親や祖父母などの直系尊属から住宅取得の資金の贈与を受けた場合に、一定額が非課税になる制度で、2019年4月時点では、省エネ等の性能を満たす住宅の場合は1200万円、それ以外の住宅の場合は700万円までが非課税になる。

仮に、1200万円を非課税制度のない用途で子どもに生前贈与した場合、子どもに246万円もの贈与税がかかってしまう。贈与税の税率は、親子間といえども極めて高いので、住宅取得資金であれば非課税になるこの制度のメリットは大きい。

この非課税制度は、消費税率が10%になると、景気浮揚策として非課税枠がさらに上乗せされる。省エネ等の性能を満たす住宅の場合なら最大で3000万円まで非課税になるので、親からの贈与が今後はさらに増えるかもしれない。

近年は「仲良し親子」が増えるなど、親子間の心理的な距離が近づいている。マイホームについては、たとえ配偶者の方の親であっても、一緒あるいは近くに住めば、いざという時のサポートを依頼できるなどのメリットを感じている。加えて、マイホームにあたって資金援助も期待できる。

心理的にも、資金的にも、生活の上でも、親と子の世帯間の距離は、どんどん近づいていくようだ。

健康や浪費が心配?「一人暮らし」を始める子どもに親の不安は尽きない

4月は新社会人や新学生が数多く誕生する。その中には、実家を離れて一人暮らしを始めるという人もいるだろう。ビザ・ワールドワイド・ジャパンが、この春に一人暮らしを始める子どもの親1200人に調査したところ、7割以上が子どもの一人暮らしに不安を感じているという。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「『子どもの一人暮らし』に関する実態調査」を実施/ビザ・ワールドワイド・ジャパン健康、食事、お金の管理…と心配の種は尽きない

子どもの一人暮らしについて、不安を感じている親は72.4%(あてはまる30.5%+ややあてはまる41.9%)もいる。親の目から見れば、いくつになっても子どもへの不安は尽きないものだろう。

では、どんなことに不安を感じているのかというと、半数以上の親が「健康管理」(74.8%)、「食事」(62.6%)、「お金の管理」(57.7%)だと答えた。

一人暮らしをするにあたり、不安に感じること(複数回答)(出典:ビザ・ワールドワイド・ジャパン「『子どもの一人暮らし』に関する実態調査」より転載)

一人暮らしをするにあたり、不安に感じること(複数回答)(出典:ビザ・ワールドワイド・ジャパン「『子どもの一人暮らし』に関する実態調査」より転載)

さらに、親として、「一人暮らしをする子どものために協力をしてあげたいこと」を聞くと、半数以上が「健康管理」(55.5%)、「お金の管理」(50.2%)と答えた。「食事の管理」については、自炊できなくても外食や弁当など多様な手段があるからだろうか、41.6%に下がった。

親の目の届かないところで生活を始める子どもが心配でならない親たちは、健康面やお金面で手助けしたいと考えるようで、まさに「親心」の一語に尽きる。

お金の浪費や詐欺が心配。自立を手助けするには?

「健康管理」や「お金の管理」をどのように協力してあげたいのかは、残念ながら調査結果にはない。まめに連絡を取り合って、健康やお金で困っていることがないか確かめて対処するといったところだろうか。

子どもが無理をして身体を壊したり、ストレスをため込んだり、我慢して病気を見逃したり、偏った食事で栄養バランスを崩したりしないか……、心配は尽きないだろう。

お金の使い方については、「使い過ぎ」「無駄使い」のほかに、「詐欺」などにも不安を感じているようだ。

子どもが一人暮らしをする際、子どものお金の使い方で心配なこと(複数回答)(出典:ビザ・ワールドワイド・ジャパン「『子どもの一人暮らし』に関する実態調査」より転載)

子どもが一人暮らしをする際、子どものお金の使い方で心配なこと(複数回答)(出典:ビザ・ワールドワイド・ジャパン「『子どもの一人暮らし』に関する実態調査」より転載)

浪費や詐欺被害でお金が不足して、借金返済のために犯罪に手を染めるといったことは、最も心配していることだろう。

一方で、「一人暮らしを通じで子どもに期待すること」について聞いたところ、「自分の生活に責任を持てるようになってほしい」(69.8%)、「学校や仕事をきちんとこなしてほしい」(60.7%)、「お金の管理ができるようになってほしい」(57.5%)、「健康管理ができるようになってほしい」(56.5%)など、期待している面も大きいことが分かる。

そうであるなら、自分が育てた子どもの判断力を信じて、責任をもって仕事や勉学、生活、家計の管理をしてもらうしかないだろう。相談をされた場合の助言は惜しみなくしてほしいが、お金が不足する都度、穴埋めをしてあげるといったことは賛成しかねる。

余談になるが、お金の管理では、特に賃貸住宅の家賃の負担が大きくなる。毎月使えるお金のうち、3分の1程度が家賃の目安とされている。

新社会人の給料や新学生の仕送りの額などは、人それぞれで違うだろう。「友達と同じ額」という基準ではなく、使えるお金の額に応じて、計画的に配分してお金を使えるように、親子でよく話し合ってほしいと願うものだ。

新築マンションの購入者は「既婚世帯の共働きが6割超」! その実態は ?

リクルート住まいカンパニーは、「2018年首都圏新築マンション契約者動向調査」及び「2018年関西圏新築マンション契約者動向調査」の結果を発表した。いずれの調査結果でも、新築マンション契約者の6割超が、既婚世帯の共働きという結果となった。実態について詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「2018年新築マンション契約者動向調査」を発表/リクルート住まいカンパニー
●首都圏
●関西圏平均購入価格は首都圏が5402万円で低下した一方、関西圏が4338万円で最高額に

調査は、2018年1月から12月の新築マンションの購入契約をした人についてアンケートを行い、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県:3760件)と関西圏(大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・和歌山県・滋賀県:1125件)の結果をまとめたもの。

新築マンションの平均購入価格は、首都圏が5402万円で、2017年より50万円低下した。これに対して、関西圏は4338万円で、2001年以来最高額となった。首都圏と関西圏で逆の結果となったのは、各圏域でシェアの高い東京23区が前年より84万円低下する一方、大阪市内が2001年以来の最高額にまで上昇した影響が大きい。これまで上昇を続けてきた東京23区に歯止めがかかる一方、首都圏の神奈川県や東京都下、関西圏では上昇が続くという構図になった。

既婚世帯の共働き比率がこれまでで最高。世帯年収やローンの借入額にも影響!?

購入者(世帯主)の平均年齢は、首都圏では38.3歳、関西圏では38.9歳。既婚世帯の共働き比率は、首都圏で66%、関西圏で62%に達し、おおむね既婚の3世帯に2世帯が共働きという状況だった。

その影響を受けたと思われるが、購入者の平均世帯年収は増加している。首都圏では960万円、関西圏では821万円で、それぞれこれまでで最も高くなった。ボリュームゾーンはどちらも「600~800万円未満」であるが、「1000~1200万円未満」が増加するなど、1000万円以上の世帯が増える傾向にある。

世帯年収の増加に伴い、住宅ローンの平均借入総額も増加した。首都圏では4693万円、関西圏では3760万円と、いずれも2005年以降で最も高くなった。

共働き世帯の増加で、暮らしに求めるものも変わる!?

さて、新築マンション購入者において共働き比率が上昇したことで、暮らしに対するニーズも変わってくると考えられる。

「住まい探しにあたって求めた暮らし方のイメージ」を聞いたところ、その順位は首都圏と関西圏でやや違いが見られた。首都圏では、上位3つが「仕事や通勤に便利(37%)、「子育て・教育がしやすい」「日々の生活がしやすい」(ともに35%)となったが、関西圏では「日々の生活がしやすい」(35%)、「仕事や通勤に便利」(33%)、「子育て・教育がしやすい」(32%)となった。

上位3つの項目は同じものだが、首都圏では特に通勤時間の長さが課題となることから、夫も妻もともに通勤をする共働き世帯の意向が反映されたという見方もできるだろう。10年前の2008年の調査結果と比べてニーズが強くなっているのは、いずれも交通利便性や生活利便性、子育て・教育のしやすさなど、共働き世帯が住宅を購入する際に重視するものへのニーズが強まっているようだ。

暮らし方のイメージ(全体/5つまでの限定回答)※50項目中上位15項目を表示(出典:リクルート住まいカンパニー「2018年首都圏新築マンション契約者動向調査」「2018年関西圏新築マンション契約者動向調査」)

暮らし方のイメージ(全体/5つまでの限定回答)※50項目中上位15項目を表示(出典:リクルート住まいカンパニー「2018年首都圏新築マンション契約者動向調査」「2018年関西圏新築マンション契約者動向調査」)

既婚世帯でみると、シニアカップルを除く夫婦二人のみ世帯では、共働き比率はさらに高い(首都圏83.8%、関西圏83.1%)。労働環境や若年世帯の所得の変化などの背景はいろいろあるが、仕事を持つ女性はさらに増加していくだろう。共に働き共に子育てをする世代のニーズで、これからの住まい選びの視点は、どのように変わっていくのだろう?

お宅は大丈夫? 「大事です お父さんより 不動産」土地家屋調査士会の川柳で入賞!

東京都に事務所を置く「土地家屋調査士」が所属する団体である、東京土地家屋調査士会が川柳を募集し、入賞作品を発表した。なかなか辛辣な川柳、奥深い川柳もあって、興味深いものになっている。そこで、入賞作品のいくつかを紹介しながら、土地家屋の何を調査するのかについても説明していこう。【今週の住活トピック】
「わが子に一言」「親に一言」をテーマにした川柳募集企画の審査結果発表/東京土地家屋調査士会川柳を募集したのは、東京土地家屋調査士会。その理由とは?

◆ 大事です お父さんより 不動産
入賞作の中で筆者がまず注目したのはこの川柳。誰しもこうは言われたくないものだが、なぜかこうした場合にお母さんはあまり登場せず、お父さんばかりが劣勢になるものだ。「さん」と「産」が韻を踏んでいる点もよいと思う。

さて、同会が川柳を募集した背景には、「相続した土地の境界線があいまいで近隣トラブルで困っている」といった相談があるからだという。川柳を通して、普段話すことのない親子間の本音を伝えてもらおうと、「わが子に一言」または「親に一言」をテーマにした川柳を募集したところ、2236句集まった。その中から20句を入賞作品に選んでいる。

そのため、以下のような入賞作品もある。
◆ 遺さない 隣家トラブル わだかまり
◆ 遺す土地 調査と税は 子の仕事

相続した家が空き家になる場合の川柳もある。
◆ 我が空き家 昔は財産 今負債

近隣トラブルの原因となる「土地の境界」の川柳も

ところで、「土地家屋調査士」とは、何をする専門家かご存じだろうか?

土地家屋調査士とは、調査や測量をし、不動産の登記を行う資格を持つ。登記を行う専門家には、ほかに司法書士もいる。司法書士は、不動産の売買や相続の際に所有権などの「権利に関する登記」を行う。

これに対し、土地家屋調査士は、その前提となる「表示に関する登記」を行う。土地や家屋の場所を特定し、用途や規模、広さなどの詳細を登記するほか、建物の新築・増築や解体、土地の一部を分割した場合にも登記簿に反映させる手続きをする。そのため、正確な境界を調査したり、測量をしたりする業務も伴うわけだ。

土地の境界の重要性を指摘する川柳もある。
◆ LINEより 土地のラインを 気にしなよ
◆ 変わる世に 変わらぬ杭の ありがたみ

土地の境界を示すためには、目印となる境界標が必要だ。境界線の折れる点に境界標を設置することで、点と点を結んだライン(線)の中が自分の土地だとわかる仕組みになっている。この境界標として、コンクリートや御影石、金属、プラスチックなどの杭が打ち込まれる。この杭には境界の点が分かるように十字などの刻印がされている。

この杭が変わらないことで、境界のトラブルが解消されるわけだ。杭がない、あるいは意図的に動かされたといった場合には、トラブル解消のために土地家屋調査士さんにご登場いただくことになる。

「相続税増税」に関する川柳にも座布団1枚

◆ 初笑い 我が家は課税 対象外

さて、この川柳では、どうして我が家が課税対象外になるのだろう?
不動産を所有していると「固定資産税」や「都市計画税」がかかる。土地の評価額が低いほど、家屋が古くなるほど、税額は低くなる。しかし、基本的に課税されるものなので、固定資産税などを指しているのではないだろう。

とすると、このお宅で課税されないのは、「相続税」だと考えられる。
相続税には相続人の基礎控除があり、その範囲内なら課税対象外となる。ところが、2015年に相続税が増税になった。基礎控除の額が「5000万円+法定相続人の数×1000万円」から「3000万円+法定相続人の数×600万円」に引き下げられたことで、課税対象者が倍増したと言われている。といっても、以前は相続全体の4%程度が課税対象だったので、倍といっても対象は限定される。しかし、大都市である程度の広さの土地を持っていると、評価額が基礎控除額を上回ってしまうケースが多くなる。

つまり、このお宅では、相続税が増税されても、課税対象になる懸念はないという、うれしいような悲しいような状態ということだろう。座布団を1枚差し上げたいところだ。

毎年発表されるサラリーマン川柳も、上手い川柳が多いなあと思うが、今回の川柳もなかなかのものだ。市井の人たちの視線のするどさには、驚かされるばかりだ。

消費税の増税前に「駆け込み」購入、住宅はどうなる?

2019年10月から予定されている消費税の増税。消費税率が3%になったときも、5%、8%と上昇したときも、話題になったのが「駆け込み」購入だ。さて、10%に上昇する今回も、駆け込みは起こるのだろうか?そして、住宅はどうなるのか……?【今週の住活トピック】
10月の消費増税に向けて「全国1万人意識調査」を実施/電通全国1万人の7割は、増税時になんらかの駆け込み購入を検討

電通の消費増税対策ユニットが昨年の12月21日~25日に実施した、10月の消費増税に向けての「全国 1 万人意識調査」によると、10%への消費税増税を「はっきりと知っている」のは80.7%。時期が定かでないが知っている(「来年からだとは知らなかった」「何月からかは知らなかった」)15.7%と合わせると、96.4%が認識していることが分かる。

消費増税までの間に、「事前に購入する/買い置きする」などの対策を、何かしら検討している(=「ほとんどしない/全くしない」、「わからない」を除いたもの)人は67.1%で、これは8%に引き上げられた前回調査(2013 年 6 月調査)の60.2%より増加する結果となった。

今から来年(2019 年)10 月の消費税率引き上げまでの間に、「事前に購入する/買い置きする」などの対策を、あなたは検討していますか。(複数回答)(出典/株式会社電通 消費増税対策ユニット 「全国1万人意識調査」)

今から来年(2019 年)10 月の消費税率引き上げまでの間に、「事前に購入する/買い置きする」などの対策を、あなたは検討していますか。(複数回答)(出典/株式会社電通 消費増税対策ユニット 「全国1万人意識調査」)

「日用品」や「保存食品」などの買い置きの利くものは前回調査より比率が上がっているが、駆け込み購入予定者にさらに突っ込んで聞いてみたところ、「シャンプーや洗剤などの日用品」「ティッシュ、トイレットペーパー」「缶ビール」「缶チューハイ」「タバコ」といった軽減税率対象外品目で、数カ月分程度をまとめ買いをするという声が多かったという。

その一方で、「住宅や車などの高額商品」の駆け込み購入の検討は、前回調査よりも減少している。では高額な住宅についてはどうなのか、考えていこう。

住宅の駆け込み購入はむしろ前回より抑制される?

消費税率が引き上げられる前に住宅の駆け込み購入が生じると、引き上げ後に住宅が売れずに市場が冷え込むことになる。住宅市況が悪化すると、経済に与える影響が大きいので、政府は需要の平準化のために、増税後の優遇措置を用意する状態が続いている。

10%への引き上げについても、次の4つの優遇措置を設けている。
 ○住宅ローン減税の控除期間を3年延長
 ○すまい給付金の拡充
 ○次世代住宅ポイント制度
 ○贈与税の非課税枠の拡充

住宅の場合は、土地は消費税が非課税なので、建物部分の取得価格(購入費用の建物分、建築費用、リフォーム費用)に消費税が課税される。税率が8%→10%になると、2%分の負担増になる。

この建物の2%分の負担増は、住宅ローン減税の3年延長により、所得税と住民税の還付で取り戻せる仕組みになっている。

実は住宅ローン減税の3年延長では、単純に3年延長した額と建物の2%の増額分の低い方が適用されることになっている。筆者が年収に応じた住宅を、ローンを利用して取得するという前提で試算したところ、おおむね建物の2%の増額分のほうが単純延長より低い額になるケースが多い。加えて、所得税や住民税の納税額が少ない一定の年収以下の世帯には、「すまい給付金」がもらえる。すまい給付金についても拡充されたので、給付対象になればその分だけ負担が減ることになる。

このように、建物の消費増税分は基本的には取り戻せることになるが、消費税は事務手数料などの諸費用にもかかってくるので、その分の負担は多少増えることになる。

一方で、一定の住宅を取得する場合は「次世代住宅ポイント」(上限35万ポイント)がもらえる。以前の省エネ住宅ポイントとは違って、ビルトイン食器洗機やビルトイン自動調理対応コンロ、浴室乾燥機、掃除しやすいトイレなどの「家事負担軽減に資する設備を設置」する場合でも、設備の種類ごとに9000~1万8000ポイントがもらえる(ただし、最低2万ポイントから申請可能)。最近の住宅の多くで採用されている設備が対象になっているので、このポイントだけでも諸費用分の増税を取り戻せる可能性は高いだろう。

つまり「消費税率が10%になる前に何が何でも駆け込もう」とは、あまり考えなくてもよいということだ。

どんな住宅をどうやって購入/建築するかによって優遇措置は変わる

しかし、売主が個人の中古住宅を購入する場合は、もともと消費税の課税対象外なので、住宅ローン減税の延長やすまい給付金の対象にはならない。建物分の負担増がないからだが、それでも、仲介手数料などの諸費用で消費増税の影響を受ける。

この場合でも、中古住宅をリフォームして住もうと考えているなら、リフォームに対する次世代住宅ポイントがもらえる可能性がある。ポイント数はリフォームの内容によって変わるが、40歳未満の世帯や子育て中の世帯が中古住宅を購入して一定規模以上のリフォームする場合は、ポイントが加算になるので、どういったリフォームなら対象になるのか確認しておくとよいだろう。

また、住宅ローンを利用せずに住宅を取得する場合は、住宅ローン減税の効果が全くないわけだが、すまい給付金の対象(50歳以上で一定年収以下などの条件がある)になる場合がある。

親や祖父母から1200万円(質の高い住宅の場合)または700万円(それ以外の住宅)を超える額の贈与を受けて住宅を取得する場合であれば、非課税枠が拡充される消費税率10%になってからのほうがメリットは大きい。

このように、どんな住宅をどうやって取得するかによって、優遇措置の効果が変わってくるが、「増税前に買った方が得だ」といったセールストークにあわてることなく、冷静に検討してほしい。それよりも、同じ住宅は2つとないので、気に入った住宅に出会えるどうかのほうが重要だろう。一時的な損得で、住みたいと思える住宅を逃すことのないようにしてほしいものだ。

転勤時に4割が持ち家を賃貸に! 貸すときに注意すべきこととは…?

“マイホームあるある”に、「家を買ったら、転勤の辞令が下りる」というものがある。万一そうなったら、マイホームはどうするのだろう? 東急住宅リースが転勤経験のある男女に調査したところ、転勤時に住まなくなった持ち家の対処方法として、約4割が第三者に「貸した」と回答した。実は、転勤で自宅を貸すときに、注意したいことがいろいろあるのだが、それは……。【今週の住活トピック】
「ビジネスパーソンの転勤事情に関する調査」を発表/東急住宅リース望ましいのは「家族一緒に引っ越し」だが、現実は「単身赴任」

ビジネスパーソンであれば、転勤を経験することもあるだろう。
この調査結果によると、転勤の際に「家族も一緒に引っ越しする」のが望ましいと考える人が多数派(転勤経験のある既婚男性で66.8%)だった。

それにもかかわらず、現実では「単身赴任」が多い(転勤経験のある既婚男性で67.2%)という結果だ。子どもがいるほうが少しだけ「家族一緒」が多いものの、圧倒的に「単身赴任」ということに変わりはない。

直近の転勤経験では家族も一緒に引越しをしたか、単身赴任だったか(出典:東急住宅リース「ビジネスパーソンの転勤事情に関する調査」より抜粋転載)

直近の転勤経験では家族も一緒に引越しをしたか、単身赴任だったか(出典:東急住宅リース「ビジネスパーソンの転勤事情に関する調査」より抜粋転載)

家族一緒に引っ越したときの持ち家、約4割が第三者に賃貸

次に、持ち家で転勤を経験した人の調査結果を見ていこう。「家族一緒」に転勤先に引っ越した場合、持ち家の対処に困ることになる。

これについては、「賃貸物件として第三者に貸した」が 37.1%で最も高くなり、「空き家の状態で保有した」(27.6%)、「売却した」(22.4%)、「親戚など身内に貸した」(10.3%)という結果になった。

転勤の際、持ち家についてどう対処したか(出典:東急住宅リース「ビジネスパーソンの転勤事情に関する調査」)

転勤の際、持ち家についてどう対処したか(出典:東急住宅リース「ビジネスパーソンの転勤事情に関する調査」)

こうした場合の選択肢は、「貸す」か「売る」か「そのまま保有する」かになる。いずれを選ぶかは、転勤の期間や元の職場に戻る可能性、持ち家の売却想定価格とローン残高のバランス、代わりに住む親戚や知人の有無など、諸条件によって変わるだろう。

そのまま保有する場合は、放置しておくと急速に家が劣化する。誰かに使ってもらって人の出入りがある状態にするか、管理を委託するなどして、持ち家のコンディションを維持することが大切だ。

住宅ローン減税は?ローンの返済は? 貸すときの注意点

さて、マイホームを買うときに、住宅ローンを利用する人が大半だ。加えて、年末のローン残高の1%が10年間控除される「住宅ローン減税」の適用を受けている人も多いだろう。

そもそも住宅ローンが低金利であるのも、減税が適用されるのも、マイホームだからこそだ。居住するための家なので、優遇しようというわけだ。

「単身赴任」の場合、住宅ローンを借りた人がその家に住まなくなった場合でも、家族が引き続き住んでいれば、住宅ローンの返済や減税はそのままとなる。

ところが、「家族一緒」に引っ越して持ち家を貸す場合は、居住する家ではなく、賃貸事業を行う家になる。住宅ローンがそのまま利用できない場合もあるので、借りている金融機関に相談したほうがよいだろう。

住宅ローン減税も、家族が居住しなくなった年からは適用が受けられなくなる。ただし、再び持ち家に住むようになったら、居住していない期間を除いて残りの控除期間があれば、その年からは適用が受けられるようになる。

また、貸す場合の収支は、「住宅ローンの返済額=賃料」ならトントンというわけではない。不動産会社への委託料や固定資産税などの納税が生じるので、その支出についても考慮しておく必要がある。

勤務先が転勤の多い会社であれば、持ち家の対処法などについてもサポートが受けられる場合があるだろう。また、こうした場合のノウハウのある不動産会社に、売却額や賃料の査定をしてもらったり、収支計算をしてもらったり、手続きに関する情報を得たりということで、選択肢の判断材料を求めることもできるだろう。

いずれにしても、しっかり情報を集めて、冷静に判断できるようにしたいものだ。

新築分譲のマンションと一戸建て、供給のされ方に大きな違い?

東京カンテイが2018年版の「マンション・一戸建て住宅データ白書」を発表した。そのデータを見ていくと、マンションと一戸建てでは供給のされ方などに大きな違いがあるということが分かる。どういう違いなのか、詳しく見ていくことにしよう。【今週の住活トピック】
「マンション・一戸建て住宅データ白書2018」を発表/東京カンテイ新築より中古のほうがマンション価格は上昇!

まず、東京カンテイが分析しているデータについて確認しておこう。

マンションはワンルームなども含む区分所有権の住宅用建築物、一戸建ては土地面積50平米以上300平米以下、最寄駅からの所要時間が徒歩30分かバス便20分以内、土地・建物ともに所有権の木造住宅。価格は新築が分譲価格、中古が売り希望価格となっている。

次に三大都市圏の2018年の市場動向について、マンション、一戸建ての順に見ていこう。

新築マンションの分譲戸数は、首都圏が4万9884戸で前年比+5.0%、近畿圏が2万1089戸で前年比+3.0%、中部圏が5701 戸で前年比+22.8%となった。中部圏の増加率が高いのは、名古屋市でタワーマンションやワンルームマンションの供給が多かったことが影響したということだ。
新築マンションの価格について(画像1)は、三大都市圏ともに上昇しているが、これまでの動きに比べるとかなり安定してきた感がある。中部圏の平均坪(3.3平米)単価の上昇はワンルームマンションの供給増の影響によるものだということなので、全体的に高止まりの状態といってよいだろう。

一方、中古マンションの価格(画像1)は、これまで新築マンションの価格が上昇してきた影響を受けて、前年より上昇している。三大都市圏ともに、これまで新築のタワーマンションが供給され続けてきたこともあって、高額帯の中古マンションが市場に流通している影響もあるようだ。

三大都市圏の新築・中古マンションの動向(出典/東京カンテイ「マンション・一戸建て住宅データ白書2018」)

三大都市圏の新築・中古マンションの動向(出典/東京カンテイ「マンション・一戸建て住宅データ白書2018」)

マンションより一戸建てで目立つ価格の上昇!

では、これまで価格はおおむね横ばいで安定傾向にあった、一戸建ての市況はどうだろう?

新築一戸建ては2018年に全国で11万7712戸が分譲され、前年比+1.2%と安定傾向が続いている。興味深いのは、首都圏の占めるシェアが55.6%とかなり高いことだ。新築マンションでも首都圏のシェアが高いが、その51.6%よりもさらに高いシェアになっている。

これは、全国展開しているものの主戦場を首都圏に置く「パワービルダー」(効率化を追求することで、比較的リーズナブルな価格で、年間、1000棟を超える大量供給を行う一戸建ての建売分譲会社)に勢いがあることも、影響しているのではないだろうか。新築一戸建ての供給元は、全国展開の大手デベロッパーやハウスメーカーがまとまった戸数を分譲する住宅地もあれば、地元ビルダーが地元の土地を買って数戸の一戸建てを建築し、不動産会社が仲介して販売する一戸建てもある。これに展開の早いパワービルダーの供給が加わって市場を形成するので、エリアごとの供給元の顔ぶれの違いが市場のカギを握ることになる。

さて、新築一戸建ての価格について(画像2)は、三大都市圏ともに、土地や建物の面積があまり変わらないのに上昇していることが分かる。特に近畿圏で上昇率の高さが目立つ。

一方、中古一戸建ての価格(画像2)は、同様に面積はあまり変わらないのに上昇している。その上昇率は、三大都市圏いずれも新築一戸建てよりも大きく、価格上昇傾向が目立つ。

三大都市圏の新築・中古一戸建ての動向(出典/東京カンテイ「マンション・一戸建て住宅データ白書2018」)

三大都市圏の新築・中古一戸建ての動向(出典/東京カンテイ「マンション・一戸建て住宅データ白書2018」)

新築のマンションと一戸建ての大きな違いは?

東京カンテイでは、新築一戸建てと新築マンションの違いについても分析している。その違いは供給エリアにある。

例えば、新築一戸建てで最も分譲戸数が多かった市区は、首都圏では埼玉県川口市、近畿圏では兵庫県姫路市、中部圏では愛知県春日井市だ。新築マンションが多く分譲される市区とは、かなり違う顔ぶれとなる。

さらに、データで明らかになったのは、最寄駅からの徒歩時間の違いだ。三大都市圏では同じような傾向にあるので、ここでは首都圏のデータを見ていこう。

画像3のように、新築マンションは最寄駅から10分以内に集中しており、なかでも徒歩5分以内が突出して多い。一方で、新築一戸建ては徒歩15分を中心に山なりに分布している。

新築マンションが利便性重視のニーズに応えるように「駅近」で供給されるのに対し、「住環境や子育て環境」へのニーズが強まる一戸建ては、徒歩で移動しやすい15分以内にも供給されるし、車移動が想定される15分以上にも供給されていることがうかがえる。

首都圏 新築一戸建てと新築マンションの徒歩時間別分譲戸数分布((出典/東京カンテイ「マンション・一戸建て住宅データ白書2018」)

首都圏 新築一戸建てと新築マンションの徒歩時間別分譲戸数分布((出典/東京カンテイ「マンション・一戸建て住宅データ白書2018」)

もちろん、住宅選びのニーズというだけでなく、市街地の街づくりの観点から自治体で定めている「用途地域」が異なることも要因だ。駅周辺では利便施設を誘導する「商業系地域」に定められるのが基本なので、大型の商業施設が入れるような高い建物が多く建てられる。これに対して、一戸建てで構成される住宅地は「住居系地域」の中でも『低層住居専用地域』に定められるので、大型の商業施設などは建てることができない地域になり、駅から離れた場所に定められることが多くなる。

こうした用途地域の区分けの中で、住む人が駅まで歩ける時間、例えば5分や10分、15分などを考慮して、マンションや一戸建てが供給されていくことになる。

また、駅周辺に多く供給されるマンションでは、商業施設やオフィスなどと土地の取得を争うことになるが、一戸建ては住宅供給元だけの争いになるので、こうした違いも価格に反映されていく。

マイホームを探す人は、マンションにするか一戸建てにするか、そのうえで新築か中古かなどと悩みながら絞り込んでいく。供給量や価格が安定傾向にあった一戸建ての市場も、マンションの市場の最近の変化に強く影響を受けて、価格が上昇したということになるだろう。

薄れる中古住宅への抵抗感! でも“認知度が低い”中古住宅キーワードとは?

全宅連・全宅保証協会では、毎年9月23日を「不動産の日」と定め、消費者向けに不動産に関する意識調査を実施している。2018年の調査結果を見ると、中古住宅への抵抗感が薄れている傾向が見られたという。その一方、中古住宅流通のカギを握るキーワードについての認知度は低かった。具体的に見ていこう。【今週の住活トピック】
「2018年『不動産の日』アンケート結果」公表/全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連)・全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証協会)中古住宅に対する抵抗感が薄れている!

まず「既存住宅(中古住宅)に抵抗はあるか」を聞いた結果では、「まったく抵抗がない」と「どんな状態であろうと抵抗がある」という真逆の選択肢の回答が、同率の13.5%だった。また、最も多い回答は「きれいであれば抵抗はない」の39.8%で、次いで「売買金額と状態のバランスを見て判断する」の33.2%となった。

Q.既存住宅(中古住宅)に抵抗はあるか(出典:全宅連・全宅保証協会「2018年『不動産の日』アンケート結果」より転載)

Q.既存住宅(中古住宅)に抵抗はあるか(出典:全宅連・全宅保証協会「2018年『不動産の日』アンケート結果」より転載)

「中古住宅である」というだけで抵抗を感じる人が13.5%いる反面、「中古でもきれいであれば」「売買金額が見合えば」といった条件をクリアすれば抵抗を感じない人が7割超いることになる。加えて、「中古住宅にまったく抵抗がない」人も13.5%いるなど、筆者が思っていたよりも中古住宅への抵抗感が薄れていることが分かった。

近年、特にマンション市場では、新築の価格が上昇して一般消費者には手が届きにくい価格帯になっている。この市場を受けて、中古マンションの取引が活発になり、2016年からは売買される件数が新築と中古で同程度の規模になっている。

また、1990年後半~2000年前半までの新築マンションブームで大量供給されたものが、近年の中古マンション市場に出回ることで、「新築に近くて価格が手ごろなもの」から「築年がかなり古くて低価格のもの」まで、幅広い中古マンションから選択できるということも、抵抗感を薄める要因になっているのだろう。

「安心R住宅」「瑕疵保険(かしほけん)」「インスペクション」の認知度は低い

中古住宅への抵抗感が薄れているにもかかわらず、中古住宅の品質を見極めるカギとなる重要な仕組みについては、あまり知られていないことも分かった。

この調査では、「安心R住宅」「瑕疵保険」「インスペクション」を知っているか聞いているが、それぞれの認知度(=「知っている」)は「安心R住宅」6.4%、「瑕疵保険」16.3%、「インスペクション」7.7%とかなり低かった。

「安心R住宅」「瑕疵保険」「インスペクション」の認知度(出典:全宅連・全宅保証協会「2018年『不動産の日』アンケート結果」より転載)

「安心R住宅」「瑕疵保険」「インスペクション」の認知度(出典:全宅連・全宅保証協会「2018年『不動産の日』アンケート結果」より転載)

この中でも特に、「インスペクション」の認知度が低いことに驚いた。
インスペクションとは、建築士などの専門家が住宅の劣化や不具合の状況について調査を行い、報告をするもので、「建物検査」や「建物状況調査」などとも呼ばれている。

2009年にNPO法人日本ホームインスペクターズ協会が誕生し、ホームインスペクションの普及やインスペクターの育成に努めてきた。政府も宅地建物取引業法(宅建業法)を改正して、2018年4月からは中古住宅の売買の際にその住宅のインスペクション(「建物状況調査」という名称を使っている)を行うかなどの確認をするように仕組みを整えている。

具体的には、住宅を仲介する不動産会社に中古住宅の売買を依頼するときに「媒介契約」を結ぶ際には、契約書にインスペクション事業者のあっせんを望むかどうか確認して記載したり、中古住宅を購入する際に「重要事項説明」として、インスペクションの実施の有無などを書面に記載し、実施している場合は報告結果の概要を説明するといったことだ。

「瑕疵保険」は、この中では最も認知度が高い。
中古住宅の瑕疵保険は、正しくは「既存住宅売買瑕疵保険」といい、個人が保険に加入するには、検査機関に対して「住宅の構造耐力上主要な部分、雨水の浸入を防止する部分など」の検査と保証を依頼するもので、これら重要な構造部分の欠陥が見つかった場合には補修費用などについて保険金が支払われる仕組みだ。

また、「安心R住宅」は、国が定めた品質基準を満たす中古住宅について、物件を広告するときに「安心R住宅」のマークを表示できる制度だ。安心R住宅の基準を満たすためには、インスペクションを実施した結果、構造上の不具合や雨漏りが認められず、「既存住宅売買瑕疵保険」に加入できる用意がなされているなどの条件がある。

ただし、不動産会社を束ねる事業者団体がそれぞれで「安心R住宅」のマークを使用する際のルールなどを決めて徹底させる必要があり、この団体の登録に時間がかかっているという状況もあって、実際にマークを目にする機会はまだそれほど多くはない。

とはいえ、いずれも中古住宅の品質を専門家が客観的に調査をして、その結果を明らかにしたり、保証をしたりするものだ。一般消費者にはわかりにくい品質のチェックのためには、積極的に活用してほしい仕組みなだけに、もっと認知度を高めてほしいところだ。

もっともこの調査の対象は、住宅を探している人に限定しておらず、7割近くがすでに持ち家に住んでいるということから考えると、現実的に住まいを探している人ではもっと認知度が高いのだろうと期待している。

中古住宅への抵抗感が薄れていることは喜ばしいことだ。新築ばかりが本当に住む人にとって最適な住宅とは限らない。ただし、中古住宅は玉石混交の市場なので、品質の高いものを選んだり、購入後にリフォームをしたりすることが欠かせない。どういった仕組みがあるのか、しっかりと把握してほしいものだ。

●関連サイト
「2018年『不動産の日』アンケート結果」詳細

首都圏の2018年の中古マンション動向、件数は横ばい、価格は上昇。新築と比較すると…

東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が2018年の「首都圏不動産流通市場の動向」を公表した。これによると、首都圏の中古マンションの成約件数は3万7000件強とほぼ横ばい、価格は6年連続で上昇したことが分かった。2018年のマンション市況について振り返ってみよう。【今週の住活トピック】
「首都圏不動産流通市場の動向(2018年)」を公表/(公財)東日本不動産流通機構(東日本レインズ)中古マンションの成約件数は前年から微減ながら横ばい、価格は6年連続で上昇

東日本レインズの2018年のデータによると、首都圏で売買が成立した中古マンションの成約件数は、3万7217件で4年ぶりに前年をわずかに下回った(0.3%減)ものの、3年連続で3万7千件台前半の高水準を維持している。

一方、成約物件の1平米当たり単価は首都圏平均で51.61万円(前年比3.2%上昇)で、6年連続で上昇した。成約物件の首都圏平均価格は3333万円(前年比4.3%上昇)で、こちらも6年連続で上昇した。平均面積は64.6平米、平均築年数は21.0年だった。

中古マンションの成約件状況(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2018年)」より抜粋転載)

中古マンションの成約件状況(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2018年)」より抜粋転載)

価格についてさらに詳しく見ていこう。
中古マンションの価格帯別成約件数の推移を見ると、3000万円以下の成約件数や成約シェアが減っているのに対して、3000万円を超える価格帯では、5000万円以下、7000万円以下、1億以下、1億超のいずれもが成約件数、シェアともに増えている。

中古マンションの価格帯別成約件数(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2018年)」より転載)

中古マンションの価格帯別成約件数(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2018年)」より転載)

中古マンションの平均単価の上昇については、中古市場の活況を受けて、市場に出回るマンションの値付けを上げているという見方もできるが、同時に、価格の高い(条件のよい)中古マンションの成約が増えているという見方もできそうだ。

首都圏の中古マンション市況は、新築マンションと比べてどうだった?

<本文※必須>(400文字程度)※120文字目安で段落設定
では、同じ首都圏の2018年について、新築マンションの市況はどうだったのだろうか?
調査方法も調査対象も大きく異なるのだが、不動産経済研究所が公表した「首都圏マンション市場動向2018年(年間のまとめ)」を見てみよう。

このデータによると、2018年の供給戸数は前年より3.4%増の3万7132戸。首都圏では、中古マンションと同じ程度の供給があったことになる。
一方、1平米当たりの単価は86.9万円(1.2%増)、平均価格は5871万円(0.6%減)。中古マンションの価格が上昇トレンドだったことと比べると、新築は横ばいだったことが分かる。

価格については増減の状況だけを見ると、首都圏では、中古マンションが上昇、新築マンションが横ばいということなるが、果たしてそう単純に見てよいのだろうか?

首都圏のマンション市況の「平米単価」の推移を比べてみよう。
○首都圏の中古マンションと新築マンションの平米単価(万円)の推移
中古(※1)新築(※2)
・2014年 42.50 71.1
・2015年 45.25 77.9
・2016年 47.92 79.3
・2017年 50.00 85.9
・2018年 51.61 86.9
※1:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2018年)」
※2:不動産経済研究所「首都圏マンション市場動向2018年(年間のまとめ)」

2014年から2018年の5年間の上昇率を見ると、中古マンションで21%、新築マンションで22%と同じような上昇率を示している。半面、平均平米単価の差を見ると、2014年では28.6万円だったものが、2018年では35.3万円と差が開き、中古マンションの価格は上昇しているものの、新築との比較で割安な感じを受ける市況だったと言えるだろう。

調査手法が異なるので、このように単純に比較するのは適切ではないのだが、新築マンションの価格は高止まりの状態に入り、一般的なサラリーマンが購入するには手が届きにくい価格帯にある。そのため、4000万円台以上などの予算の高い層が、立地や広さなどの条件を考慮して、中古マンションを購入したという状況だったと見てよいだろう。

さて、2019年については、新築マンションの供給量や価格などの市況は、2018年とあまり変わらないと見られている。一方で、10月に消費税率10%への引き上げが予定されている。政府は、消費税の増税の影響を緩和する住宅ローン減税の拡充や次世代住宅ポイント制度の創設など、住宅購入に関する優遇策を打ち出している。

一方、宅建業者がリフォームした上で販売する中古マンションを除き、個人が売り主となる中古マンションは消費税の課税対象外なので、こうした優遇策は受けられない(性能を引き上げるリフォームをする場合は適用される場合がある)。

こうした違いもあるので、増税の前後でマンション購入層がどう動くかによって、市況も大きく変わってくるだろう。目が離せない一年になりそうだ。

○関連記事
「次世代住宅ポイント制度」創設! 消費増税の前と後、どちらで買うべき?
消費増税の負担を軽減する4つの支援策。どんな場合にどのくらい効果がある?

赤ちゃんのいる家庭は、災害時の備えにどんなものを用意している?

阪神・淡路⼤震災から24年。被災を知らない世代も増えているが、ベビーカレンダーが「災害・防災」に関する意識調査の結果をリリースした。非常用食品や飲料水を備蓄している家庭が多いものの、赤ちゃんのいる家庭では、災害時の備えも異なるようだ。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「『災害・防災』に関する意識調査」を実施/ベビーカレンダー災害への備え、命を守る住まいの対策を重視しよう

この調査結果を見ると、災害に対する意識が高まったきっかけで多いのは、大規模地震などの甚大な被災だ。1番多いのが「東日本大震災」の69.2%で、3番の「西日本豪雨」(41.8%)や5番の「大阪府北部地震」(26.0%)などが続く。

そんな中で、2番目に多かったのが「妊娠や出産」の51.5%だ。子どもの誕生によって守るべき命を授かることが、災害への意識が高まるきっかけになるという点は興味深い。

災害への備えや対策をしているかどうかでは、「備えている」が58.9%と約6割。逆に言うと、「備えていない」家庭が4割もいることになる。

「備えている」という6割が実践している備えや対策としては、「⾮常⽤⾷品・飲料⽔を備蓄している」(82.8%)、「非常用に携帯ラジオ・懐中電灯・医薬品などを準備している」(61.9%)、「非常用持ち出しバッグを準備している」(53.6%)がTOP3となった。

災害に備えた対策(出典:ベビーカレンダー「『災害・防災』に関する意識調査」より転載)

災害に備えた対策(出典:ベビーカレンダー「『災害・防災』に関する意識調査」より転載)

しかし、よく考えてほしい。避難生活で必要なものも大切ではあるが、地震によって命が助かってこそ必要になってくるものだ。命を守るためには、「耐震性のある住居に住んでいる」(35.5%)や「家具・家電などを固定し、転落・落下を防⽌している」(27.7%)が大切なので、もっと実施率を上げてほしいと思う。

また、甚大な災害の場合は生活を再建するのも大変だ。「地震保険に加入している」(38.5%)もまだ低いことも気になる。自分の住む住宅が損壊する可能性は高くはないが、遭遇した場合の被害は極めて大きい。そのための備えは、お金をかけてでもしておきたいものだ。

赤ちゃんのいる家庭が特に備えるべきこととは?

さて、赤ちゃんのいる家庭は、特別な備えが必要なのだろうか?

もちろん、ベビーベッドなど赤ちゃんがいるところに、物が倒れたり落ちてきたりしないような場所を選んだり、倒壊・落下防止策を取ったりすることが重要だ。赤ちゃんの場合は、ちょっとした物の倒壊・落下が命取りになる。

合わせて、避難生活で赤ちゃんのためのライフラインを確保することも大切だろう。
災害時の持ち出し用として特別に準備しているものとしては、「紙おむつ/パンツ」(58.1%)、「おしりふき」(54.1%)、「粉ミルク」(30.6%)が上位に上がった。一方、「特に用意していない」も33.3%と多いが、上位に挙がったものは普段から持ち歩くものなので、常にセットしているという背景もあるようだ。

赤ちゃんのために災害に持ち出し用として特別に準備しているもの(出典:ベビーカレンダー「『災害・防災』に関する意識調査」より転載)

赤ちゃんのために災害に持ち出し用として特別に準備しているもの(出典:ベビーカレンダー「『災害・防災』に関する意識調査」より転載)

妊娠・育児中に被災した経験のあるママ・パパに「災害時にあって良かったもの、あったら良かったもの」を聞いたところ、基本的な食料や飲料の備蓄のほかに、「カセットコンロ」「自家発電機」「赤ちゃん用の水」「液体ミルク」などが挙がったという。

被災した場合、電気やガス、水道などのライフラインが途絶えることが問題になる。水を沸騰させて湯冷ましにすることができないので、赤ちゃんのライフラインと言える授乳が難しいという背景があるのだろう。

筆者は「液体ミルク」というものがあることを初めて知ったが、常温で保存ができ、哺乳瓶に入れてそのまま飲ませることができるのだという。

ベビーカレンダーでは「ママたちの乳児用液体ミルクに関する意識調査」も実施しているが、液体ミルクを使ったことがあるのは、まだわずか4%。液体ミルクを使ってみたいのは、「災害用の備蓄、避難グッズとして」が58.8%と最多だったということだ。

甚大な災害が起きる確率が高まっている。必ずしも自分の家が被害に遭うとは限らないが、被害に遭ってしまった場合は命や財産を奪われる危険性がある。後悔することのないように、日ごろから備えを怠らないでいてほしい。

消費増税の負担を軽減する4つの支援策。どんな場合にどのくらい効果がある?

2019年10月から予定されている消費増税。住宅に関しては増税の影響が大きいだけに、影響を緩和するための支援策が出そろった。住宅生産団体連合会(住団連)では、その支援策を分かりやすくまとめたリーフレットを作成し、普及に努めている。その内容を確認しながら、どういった場合に支援されるのかを見ていこう。【今週の住活トピック】
リーフレット「消費税率引上げに伴う住宅取得・リフォーム支援策」を掲載/住宅生産団体連合会消費税率引き上げで上昇する住宅取得費用に対する支援策が出そろった

住宅に関する消費税では、土地の取得は非課税なので、住宅の建物部分の取得費用や住宅を建築したりリフォームしたりする工事費用に消費税が課される。8%から10%に税率が引き上げられると、その費用の2%分、支払額が上昇することになる。

8%のうちに、と駆け込みが発生すると需要の先取りになって、増税後の住宅市場が冷え込むことになる。そこで駆け込みが生じないように、増税後の支援策を充実させるというわけだ。具体的な支援策は次の4つ。

 ○住宅ローン減税の控除期間を3年延長
 ○すまい給付金の拡充
 ○次世代住宅ポイント制度
 ○贈与税の非課税枠の拡充

この支援策を広めようということで、住団連ではホームページに制度を紹介したリーフレットを掲載している。

どんな場合にどの程度の恩恵が受けられる制度?

どういった場合にどの程度の支援がされるのか、もう少し具体的に見ていこう。

(1)住宅ローン減税の控除期間を3年延長
「住宅ローン減税」は、住宅ローンの年末残高(上限4000万円※)の1%を10年間控除するもの。これを3年間延長して、A. 住宅ローンの年末残高(上限4000万円※)の1%、B.建物価格(上限4000万円※)の2%(3分割して1年ずつ控除)のいずれか小さい額が控除されるようになる。
※ただし、認定住宅の場合は上限5000万円

理論的には、消費税率10%が適用されて負担が増える建物価格の2%分を控除する(現行の住宅ローン減税を3年延長するほうが額が小さければ、単純に延長される)ことになる。ただし、住宅ローンの借入額によって控除される金額が変わり、納めている所得税などが上限となる点に注意が必要だ。

(2)すまい給付金の拡充
住宅ローンを利用しなかったり、所得が低くて所得税の額が少なかったりする人は、住宅ローン減税の効果が小さくなる。そこで、そうした人を対象に支援するのが「すまい給付金」だ。

税率8%では、年収の目安として510万円以下(実際には、住民税の所得割額が9.38万円以下)が給付対象で、年収が低いほど給付額が増えて最大給付額は30万円となる。これが、税率10%になると、給付対象の年収の目安が775万円以下(実際には、住民税の所得割額が17.26万円以下)に拡充され、最大給付額は50万円に引き上げられる。

ただし、あくまで住宅ローン減税の効果が小さい人向けの、補完的な位置づけである点に留意したい。

(3)次世代住宅ポイント制度
住宅における消費増税分の緩和策は、(1)と(2)がメインであるが、増税による消費減退ムードに弾みをつけようというのが「次世代住宅ポイント制度」だ。エコ住宅などの良質な住宅に対して、購入や新築の場合で最大35万円相当、リフォームの場合で最大30万円相当※のポイントがもらえる。
※一定の条件を満たせばポイントが加算される

ただし、条件が細かく設定されているので、条件を満たすかどうかを販売や施工する会社に確認する必要がある。

(4)贈与税の非課税枠の拡充
父母や祖父母から子や孫に、住宅取得の資金として贈与した場合、一定の額までが非課税となる制度。現行の非課税枠は700万円または1200万円(良質な住宅の場合)で2021年まで段階的に非課税枠が小さくなる。
税率10%が適用された場合では、非課税枠は2500万円または3000万円(良質な住宅の場合)に引き上げられ、2021年まで段階的に非課税枠が小さくなる。

つまり、親などから多額の贈与を受ける人にとっては、大きな恩恵を受けられる拡充策となる。

なお、それぞれの制度については、SUUMOジャーナルの以下の記事も参考にしてほしい。
・2019年度与党税制改正大綱まとまる 消費増税時に住宅ローン控除を3年延長
・住宅購入時の増税緩和策「すまい給付金」ってなんだ?
・「次世代住宅ポイント制度」創設! 消費増税の前と後、どちらで買うべき?

消費税率10%でどの程度効果があるかは人それぞれ

消費税率10%が適用されたからといって、すべての事例で支援が受けられるわけではない。制度ごとに住宅の広さや性能、年収などの細かい条件があるので、対象となるかをそれぞれ確認する必要がある。

たとえ支援策を受けられる場合でも、その人の住宅ローンの額や贈与の額、納めている所得税の額などによって、効果の大きさが変わってくる。そのため、8%の場合と10%の場合で、増税による負担の増加と支援策による軽減のどちらが大きくなるかは、それぞれの場合で試算するなどして見極める必要があるだろう。

国土交通省の「すまい給付金」サイトには、すまい給付金と住宅ローン減税の額が試算できる「すまい給付金シミュレーション」が用意されているので、試算してみるとよいだろう。

また、そもそも個人が売り主の中古住宅のような個人間売買については、消費税が課税されないために支援策の対象外(宅地建物取引業者が売り主のリフォーム済み住宅などは対象)だ。

住宅に関する消費税については、引き渡しが2019年10月1日以降で税率が10%となる場合でも、2019年3月末日までに契約をすれば8%が適用される「経過措置」がある。今のうちから、支援策のそれぞれの制度についてしっかり情報を入手して、後悔しないように検討をしてほしい。

「次世代住宅ポイント制度」創設! 消費増税の前と後、どちらで買うべき?

平成31年度予算案が閣議決定したことを受けて、国土交通省は消費税率引き上げを踏まえた住宅取得対策の目玉となる「次世代住宅ポイント制度」の概要を公表した。今まさに、住宅の建築や購入を検討している人には見逃せない制度になるだろう。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「次世代住宅ポイント制度を創設」を公表/国土交通省最大で新築は35万、リフォームは30万ポイント

新しく住宅のポイント制度が創設されるのは、消費税率引き上げによる駆け込みの緩和が目的だ。

かつて申し込みが殺到した「住宅エコポイント」のような制度を検討していると報道されていたが、エコ住宅に限らずに、対象となる範囲を広げた「次世代住宅ポイント制度」を創設することになった。

受け取れるポイント(1ポイント=1円相当)は、マイホームの新築、購入の場合で最大35万ポイント、住宅のリフォーム(貸家を含む)の場合で最大30万ポイントになる。

では、次世代住宅とはどういった住宅か?どんな条件を満たせばポイントが受け取れるのか?

基本的には、「環境」や「安全安心」、「高齢者対応」、「子育て支援」などについて性能の高い住宅ということになるのだが、新築や購入の場合とリフォームでは大きく異なる。

●マイホームの新築・購入の場合
基本的な条件は、⼀定の省エネ性、耐久性、耐震性、バリアフリー性能を満たす住宅であること。目安になるのは、住宅金融支援機構と民間金融機関が提携する【フラット35】で、当初一定期間金利を引き下げる【フラット35S】が適用される住宅と考えればよいだろう。この条件を満たせば30万ポイントが受け取れる。

さらに性能を引き上げたり、家事負担を軽減する設備を設置したり、耐震性のない住宅を建て替えたりした場合はポイントが加算されるが、上限は1戸当たり35万ポイントまでとなる。

●住宅のリフォームの場合
断熱改修、エコ設備の設置、耐震改修、バリアフリー改修に加え、家事負担を軽減する設備の設置やインスペクションの実施などについて、それぞれ決められたポイント(0.2~15万ポイント)が設定され、該当するごとに加算される。上限は1戸当たり30万ポイントまでだ。

ただし、若者・子育て世帯がリフォームを行う場合などの条件を満たせば、ポイントの上限が引き上げられる特例がある。特例が適用されると最大で上限が60万ポイントになる。

もちろん消費税増税の影響を緩和するための対策なので、税率10%が適用される「2019年10月1日以降に引き渡される住宅」が前提条件だ。ただし、住宅の場合は「経過措置」が設けられている。半年前の2019年3月31日までに建築請負契約を結んだ場合は、引き渡しが2019年10月1日以降でも旧税率の8%が適用されることになっている。

したがって、新築やリフォームの場合は、経過措置の対象外となる「2019年4月1日以降に請負契約をする」といった条件が加わる。かつ、期限付きの措置なので、2020年3月31日までに建築請負や売買の契約を締結するという条件もある。

消費増税の影響を緩和する4つの支援策

さて、新制度の創設により、消費税率10%引き上げの際に、その影響を緩和する支援策が出そろった。

「住宅の建物の取得価格」や「リフォーム工事」で2%上乗せされる消費税の増税分を、以下の4つの制度を組み合わせることで、どれだけお得になるかを判断して、増税対策を考えるとよいだろう。

今回の制度のポイントを、改めて簡単におさらいしておこう。

 ○住宅ローン減税の控除期間を3年延長(建物購入価格の消費税2%分の範囲で減税)
 ○すまい給付金の拡充:対象となる所得階層を拡充、給付額も最大50万円に引き上げ
 ○次世代住宅ポイント制度:新築は最大35万円、リフォームは最大30万円相当のポイントを付与
 ○贈与税の非課税枠の拡充:非課税枠を最大1200万円から最大3000万円に引き上げ
 
どの制度が適用されるかは、取得する人や住宅の条件によって異なる。例えば、取得する人の年収や住宅ローンの有無とその額、親からの贈与の有無、取得する住宅の性能のレベルなどだ。

なお、「次世代住宅ポイント制度」は、これからの国会で、予算案が成立することが前提になる。まだ正式に制度が認められる前ではあるが、経過措置の対象となる期限が3月末までと迫っているので、支援策のそれぞれの制度についてしっかり情報を入手して、今のうちから検討しておくべきだ。

2019年トレンド予測、住まいは「デュアラー」 リクルートホールディングスが発表

毎年恒例となった、リクルートホールディングスの「2019年のトレンド予測」が発表された。これは、住まい・美容・人材派遣・飲食などリクルートが展開する事業の「新たな兆し」を見出して、2019年のトレンドを予測したキーワードで発表するもの。10回目となる今年は8事業から発表された。筆者が専門とする「住まい領域」のトレンド予測は、『デュアラー』だ! ところで『デュアラー』とは?【今週の住活トピック】
「2019年のトレンド予測」を発表/リクルートホールディングスデュアラーとは、都心と田舎の2つの生活=デュアルライフ(二拠点生活)を楽しむ人

DUAL(デュアル)とは、「二重の」「二通りの」という意味。

住まい領域で言うデュアラーとは、デュアルライフを実践する人、具体的には「都心と田舎の2つの生活=デュアルライフ(二拠点生活)を楽しむ人」のことだ。

なぜ、新たなトレンドになっているかというと、かつては富裕層やリタイア層がデュアルライフを実践する代表だったが、近年では20~30代のビジネスパーソンやファミリーなどに広がりを見せているからだ。

リクルート住まいカンパニーが、首都圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)に住み、デュアルライフを実施している20~60代に調査をしたところ、「20~30代」や「世帯年収800万未満」が過半数を占めた。

「2019年トレンド予測 住まい領域」資料より転載

「2019年トレンド予測 住まい領域」資料より転載

かつてのデュアルライフは、二地域に拠点を構える=住まいを2つ所有したうえで、行ったり来たりして異なる環境で暮らしを楽しむものだった。そのため、自宅のほかに自然豊かな場所に豪華な別荘を購入できる富裕層や時間とお金に余裕があるリタイア層が中心だった。

筆者も当時、二拠点生活の事例を数多く取材した。その多くは、団塊世代がリタイアする前後に、子どもの家と3時間程度で行き来できる自然豊かなエリア、例えば高原に暖炉付きの別荘を建てたり、海辺に菜園付きの住まいを買ったりしていた。

それが近年は大きく変わり、若いビジネスパーソンが増えたことで、二拠点目への距離は近くなり、「移動時間は2時間未満」、「滞在日数は月平均で2~5日」が主流だ。

「2019年トレンド予測 住まい領域」資料より転載

「2019年トレンド予測 住まい領域」資料より転載

20~30代の若い世代が二拠点生活できる社会に変わった!?

若いデュアラーが登場して、近場で気軽に二拠点生活を楽しめるようになった背景を見ていこう。

まずは、東京一極集中・都心回帰による田舎暮らしへのニーズの高まりがある。
今の若い人は都市部で生まれ育った人が多い。その影響で「ふるさと」や「田舎暮らし」への憧れもあれば、子育てを重視して「多様な経験をさせたい」と考える人も多い。働き方改革で、職場が固定されない人が増えつつあるという影響も大きい。

加えて、二拠点目の住まいの持ち方が多様化している。
シェアなどで、低額に泊まることができるほか、コワーキングスペースを兼ねた宿泊先もある。空き家が増えて、低額だったり形態が多様な賃貸が借りられたりするようにもなった。親戚の空き家を譲り受ける可能性もあれば、安く買って使わないときに「民泊」として活用することもできるようになった。

若い世代の田舎暮らしへの憧れが、手軽に実現できるような社会になってきたということだ。

デュアラーは目的別に6分類、実践者も続々登場!

リクルート住まいカンパニーでは、目的の違いによって、デュアラーを次の6つに分類している。

「2019年トレンド予測 住まい領域」資料より転載

「2019年トレンド予測 住まい領域」資料より転載

SUUMO編集長の池本洋一さんが紹介した事例を見ていこう。

まずは、「のびのび子育てデュアラー」の事例だ。
東京のIT系企業に勤務するKさんは、横浜市の自宅に妻と子ども2人の4人家族で住んでいる。自然やキャンプが好きなので、東京近郊の空き家を安く買って、自分たちで改修して住もうと思い立った。まずは改修のスキルを習得しようと、千葉県南房総市のワークショップに参加したのがきっかけで、田舎暮らしを楽しめる「ヤマナハウス」に毎週末通うようになる。そこでコミュニティができたことによって、近所に賃貸物件を借り、月に1回は子どもたちも連れてきて、コミュニティのなかで自然に触れられる暮らしを楽しんでいるという。住まいの家賃は都内の駐車場代程度だ。

次は、「地域貢献デュアラー」の事例だ。
田舎暮らしを考えていなかったMさんの場合、デュアルライフの入り口は「地域の町づくり」への関心だった。「小布施若者会議」というイベントに参加したことがきっかけで、町営施設をコワーキングスペースに改修するプロジェクトのメンバーになり、生まれ変わる施設でデザイナーとしてのスキルを活かすこともできた。現在も継続して施設の企画運営にかかわっているので、東京の職場、川崎市の自宅と小布施町を行き来している。施設が宿泊施設も兼ねているので、そこに1泊3500円で泊まっている。

ちなみに、小布施町の施設は「ハウスホクサイ」という。小布施町の豪商で文化人であった高井鴻山に招かれた葛飾北斎が、長期間滞在して岩松院というお寺の天井に「大鳳凰図」を描いた、ということは浮世絵好きの筆者もよく知っている。

ほかにもデュアラーの事例は、このサイトの「これからの住まい・暮らし」内に「デュアルライフ・二拠点生活」シリーズとして順次紹介していくというので、興味のある方はぜひ。

デュアルライフは、地方自治体でも推進している。交流都市との間で、子どもたちの相互訪問や文化・スポーツ交流などを行っている。さらに徳島県では、首都圏など3大都市圏の公立小中学校に通う子どもが希望する一定期間、徳島の小中学校に通うことができる「デュアルスクール」を実施しているという。

都心でこそ得られる多様な働き方、多様な教育プログラムなどをベースに、もう一つの拠点では豊かな自然を満喫したり、人と多様につながれたり、自分のスキルを活用できたりといった、住んでいる地域だけでは得られない豊かさを手に入れられるデュアルライフ。今後は当たり前の暮らし方になっていくのかもしれない。

○2019年のトレンド予測キーワード
「就域」(新卒採用領域)
「職場スカウト採用」(中途採用領域)
「留Biz大学生」(人材派遣領域)
「学び場イト」(アルバイト・パート領域)
「サロ友」(美容領域)
「もしもCAR電」(自動車領域)
「ポータグルメ」(飲食領域)

62.8%が「土地はないけど注文住宅を建てたい」 その方法は?

リクルート住まいカンパニーの「2018年注文住宅動向・トレンド調査」によると、注文住宅の建築を検討している人の6割以上が土地を持っていないことが分かった。所有する土地に注文住宅を建てるというのが、従来の考え方だったが、どういった状況になっているのだろうか?【今週の住活トピック】
「2018年 注文住宅動向・トレンド調査」を発表/リクルート住まいカンパニー6割以上が新たに土地を取得して注文住宅を建てる

同社の調査は、注文住宅の建築者(1845件)及び検討者(建築予定者1839件)を対象にしている。

全国で1年以内に注文住宅を建築した人の建築費用は平均2807万円。このうち首都圏では2984万円だった。
また、親や自分たちが住んでいた住居を建て替えたのは14.2%、住んではいないが所有していた土地に新築したのは17.5%、新たに土地を取得して新築したのは67.2%という内訳になっている。

新規建築と建て替え(建築者・全国)(出典:リクルート住まいカンパニー「「2018年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

新規建築と建て替え(建築者・全国)(出典:リクルート住まいカンパニー「2018年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

一方、今後2年以内に注文住宅の建築を検討している人で見ると、62.8%が「土地なし」となっている。

建築者で見ても、検討者で見ても、土地を所有しないで注文住宅を建てようとしている人が多いことが分かる。

注文住宅検討時の土地の有無(検討者・全国)(出典:リクルート住まいカンパニー「2018年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

注文住宅検討時の土地の有無(検討者・全国)(出典:リクルート住まいカンパニー「2018年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

注文住宅を建てるために、新たに土地を取得する方法とは?

注文住宅ではなく、分譲一戸建てであれば、土地を持っていなくても一戸建てが手に入る。土地がないのに、それでも「注文住宅を建てたい」ということは、それだけ自分好みの住まいにしたいということだろう。

注文住宅を建てるために土地を新たに取得するとしたら、どういった方法があるだろう?

まず思い浮かぶのは、「更地」を探すことだろう。ただ、一戸建てなどの建物を建てて土地ごと売ろうという事業者も更地を探しているので、競合も多いということになる。解体費用はかかるが、「古家付き土地」を探す方法もある。

次に、「建築条件付きの土地」を探すことが考えられる。どういった条件が付いている土地なのかというと、土地の売買契約をする上で、土地の売主または売主が指定した建築事業者と一定期間内に建築請負契約を結ぶことが条件となっている。したがって、自由に建築事業者を選ぶことはできない。さらに、建築プランを決める時期に期限があり、指定の建築事業者が得意とする工法に制約がある場合に自由に工法を選べないということも押さえておきたい点だ。

また、土地を所有するのではなく、借りるという方法もある。一般的な借地権(普通借地権)に加え、「定期借地権」付き土地(50年などの期限がきたら住宅を取り壊して土地を返却するもの)なども選択肢になる。

希望の地域に希望の住まいに適した土地を探すには、こうした多様な選択肢を検討する必要があるだろう。
さきほどの建築者で新たに土地を取得した人の内訳は、「古家付き・借地権付き土地を含む土地の取得」が45.8%、「建築条件付き土地の取得」が16.6%となっていて、「建築条件付き土地」の存在感が増している。

では、土地を取得するのに、誰に相談しているのだろうか?
建築者の場合で見ると、「建築会社に相談した」が55.9%で最も高く、次いで「不動産会社に相談した」が28.9%となっている。一方で、SUUMOなどの「ポータルサイトを見た」が28.3%となるなど、自分で情報を集めている実態もうかがえる。

土地取得の相談先(建築者・全国ほか)(出典:リクルート住まいカンパニー「2018年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

土地取得の相談先(建築者・全国ほか)(出典:リクルート住まいカンパニー「2018年注文住宅動向・トレンド調査」より転載)

最後に、イマドキの結果だと感じた項目を紹介しよう。
検討者のうち共働き世帯では、子どもの出産を機に検討を開始し、「保育園」入園までに入居したいと考えており、そのうち新たに土地を取得しようとする人では、「保育園」に入りやすい自治体であることも重視しているという結果が出ている。すんなりと認可保育園に入れない昨今、「保育園」というキーワードも見逃せないようだ。

住まい選びの三種の神器は「モデルルーム・VR内覧・間取図」!?

3D対応のゴーグルをのぞいてVR(仮想現実)を体験するというシーンは、エンターテインメントが先行している。しかし、最近では“マンションの内覧”で使われることが増えてきた。そんな「VR内覧」について、スタイルポートが調査をしたのだが、面白い結果が出ている。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「VRを活用した住まい選びに関する消費者意識調査」を実施/スタイルポート住まい領域のVR内覧ってどんなこと?

SUUMOでも、VR内覧には早くから取り組んできた。2015年には「SUUMOスコープ」という名称の3D-VRゴーグルを配布して、新築マンションのモデルルームをバーチャルに内覧できるコンテンツを提供する試みをしている。筆者もそのときにVR内覧を体験しているが、その当時はまだ、話題性やトライアルといった側面が先行していたように思う。

ところが、最近では、新築マンションにとどまらず、賃貸住宅や中古住宅の室内をVRで確認したり、CGで家具を配置した室内を見せたりするVRステージングなどの取り組みも広がっている。VRの技術が向上したことなどもあるのだろうが、住まい領域でもVRが活用されるシーンが増えていきそうだ。

参考になるツールは「モデルルーム」「VR内覧コンテンツ」「間取図」

同社の調査では、3年以内に新築マンションを購⼊または検討した1030⼈を対象に、実際にVR 内覧(3Dのコンピュータグラフィック画像による疑似内覧)を体験したうえで、調査に回答してもらっている。

VR内覧ができれば、【A】モデルルームに行く必要はない、【B】モデルルームに行きたい気持ちになる、いずれが近いかを聞いたところ、【A】25%、【B】75%という結果だった。モデルルームに行きたい気持ちになる理由については、「VRの⾯⽩さから興味が湧き、素材や質感などより詳しく知りたくなる」「VRで感じたイメージを、モデルルームでも追体験したくなる」といったコメントが挙がったという。

また、モデルルームで部屋選びの際に参考になると思われるツールを聞いたところ、「モデルルーム」「VR内覧コンテンツ」「間取図」の3つが、突出して高いことが分かった。近い将来、住まい選びの“三種の神器”になるかもしれない。

部屋選びの際に参考になると思われるもの(出典:スタイルポート「VRを活用した住まい選びに関する消費者意識調査」)

部屋選びの際に参考になると思われるもの(出典:スタイルポート「VRを活用した住まい選びに関する消費者意識調査」)

ツールの特徴をそれぞれ活かして、住まい選びに役立てる

興味深いのは、それぞれのツールで役割が違う点だ。

「マンションの質感を確認するとき」には、リアルなモデルルームが役立つという回答が段違いに多いが、「購入したい部屋の窓から見える外の景観をイメージするとき」には、モデルルームを抑えてVR内覧のほうが役立つという回答が多くなる。また、「購入したい複数の部屋タイプを⽐較検討するとき」には、間取図がほかのツールより多くなる。

つまり、部屋を選ぶシーンによって、ツールの役立ち感が変わるという結果になっている。

購⼊する部屋を選ぶ際に、最も役に⽴つと思われるコンテンツ(出典:スタイルポート「VRを活用した住まい選びに関する消費者意識調査」)

購⼊する部屋を選ぶ際に、最も役に⽴つと思われるコンテンツ(出典:スタイルポート「VRを活用した住まい選びに関する消費者意識調査」)

これには、ユーザーのツールに対する慣れなどの影響もあるのだろうが、やはりツールそれぞれの特徴による影響が大きいと言えるだろう。

実際の質感は実物で確かめられるモデルルームが分かりやすいが、逆に目に見えるものの影響を受けやすい。色の変更などはVR内覧で比較検討したうえで、実物のサイズや質感と重ね合わせて判断するのが間違いないだろう。窓の外の景観はVRの得意とする領域だし、間取りを確かめるなら見慣れた間取図が欠かせない。

リアルと仮想CG映像と平面図。それぞれのツールの特徴を上手に活かして、住まい選びの参考にするというのが、これからのやり方になっていくのだろう。

そうはいっても、住まいを選ぶということは、建物の外観や室内の様子だけでなく、周辺環境を含めた立地やさまざまな住み心地まで含めて選択することになる。実際に現地に足を運ぶことは必須条件だ。そのうえで、さまざまなツールを使って集めた情報を参考に、「こんなはずじゃなかった」ということのないように、「選んで正解」と思える住まい選びにつなげてほしい。

住宅ローン選びに変化?ネット専用の住宅ローンの利用率が急増

FRKが公表した最新の「不動産流通業に関する消費者動向調査」によると、住宅を購入した人の銀行やローンの選び方に変化が見られたという。イマドキの購入者像について、調査結果を分析していこう。【今週の住活トピック】
「第23回(2018年度)不動産流通業に関する消費者動向調査」結果を公表/不動産流通経営協会(FRK)ネットで住宅ローンの手続きをする人が急増中!?

この調査は、FRKの会員会社の協力により、首都圏で2017年度に住宅を取得した人を対象にWEBアンケートを実施したもの。当然ながらといっていいのか、不動産情報の収集はインターネットによるという回答は92.1%に達した。

さて、問題のネット専用の住宅ローンの利用状況を見ていこう。

住宅ローンを提供する金融機関のなかには、対面型の店舗がなく、インターネット上での取引を中心に営業している「ネット銀行」も増えている。加えて、対面型の店舗を中心に営業する一般的な銀行のなかにも、インターネットだけで審査申込から契約、融資までのほとんどを行う「ネット専用の住宅ローン」を提供する事例が増えつつある。

まず、「ネット銀行」の住宅ローンを利用している割合を見ると、17.5%に達した。特に、新築住宅購入者では22.5%と高く、前年度調査の15.7%からの増加が目立っている。さらに、「一般の銀行で提供されるネット専用の住宅ローン」を利用している割合は15.4%と、前年度調査の5.8%から急増。新築住宅でも既存住宅でも、いずれの購入者でも大きく伸びているのが特徴だ。

その結果、「両方を利用している」を合わせると、住宅ローン利用経験者全体のうち34.0%がネット専用の住宅ローンを利用したことになり、存在感を増していることがうかがえる。

新築・既存別  住宅ローンのネット利用状況(出典/不動産流通経営協会「50平米未満の住宅の居住満足度・住宅がライフスタイルに与える影響に関する調査」より転載)

新築・既存別 住宅ローンのネット利用状況(出典/不動産流通経営協会「第23回不動産流通業に関する消費者動向調査」より転載)

このようにネット専用の住宅ローンの利用者が増えているのは、金利が低いからだろう。人を介さないことでコストを削減できることに加え、対面型の店舗を持たないネット銀行ではさらなるコスト削減が可能だ。それを金利に反映しているので、より低金利なローンを求めた人が多いという結果ではないかと思う。

ミックスプランで金利上昇のリスクを分散?

次に、住宅ローンの金利タイプの選び方を見ると、民間ローンでは相変わらず「変動金利型」が多く、2018年度調査では59.3%だった。注目したいのは、「ミックスプラン」(9.5%)だ。最近では1割程度の人が常に利用するようになっている。ミックスプランとは、異なる金利タイプを組み合わせて借り入れるもの。どういった組み合わせが多かったかを見ると、「全期間固定金利型と変動金利型」が最多の47.4%、次いで「固定金利期間選択型と変動金利型」が42.1%だった。

金融機関によってはミックスプランを提供していなかったり、提供していても選択できる金利タイプが決まっていたりする場合もある。そのため一概には言えないが、超低金利ではあるが金利上昇リスクが大きい「変動金利型」に、当初の金利をできるだけ長く固定する金利タイプを組み合わせることで、金利上昇リスクの分散を図った人が多いのではないだろうか。

利用した民間ローンの金利タイプ(出典/不動産流通経営協会「第23回不動産流通業に関する消費者動向調査」より転載)

利用した民間ローンの金利タイプ(出典/不動産流通経営協会「第23回不動産流通業に関する消費者動向調査」より転載)

60代以上では、「大きすぎない家」や「子の近くに住む」が動機に

では、住まいに対する意識も変わっているのだろうか?

今回の住宅購入を決めた動機を聞いたところ、世帯主の年代によって異なる住まい観を見せた。
まず、30代では「もっと広い家に住みたかった」(58.6%)や「資産として家をもちたかった」(50.7%)が多くなっているが、40代・50代・60代以上では「老後のことなどを考えて家をもちたかった」(40代:41.1%・50代:50.8%・60代:40.6%)が多くなり、さらに60代では「住まい方に合わせて大きすぎない家に住みたかった」(31.7%)が多くなるなど、顕著な違いが見られた。

ライフイベント要因で見ると、20代では「結婚を機に家をもちたかった」(43.2%)、30代では「子どもの誕生や成長で住まいが手狭になった」(50.1%)、60代以上では「子どもの独立などで家族が減った」(17.8%)が多いという想定どおりの結果となっているが、60代以上で「子の近くに住むことになった(住みたかった)」が16.8%にも達した点に注目したい。最近話題となっている「近居」についても、調査結果に表れたということだ。

さて、ネット専用の住宅ローンが普及していることを強く印象付けた調査結果だったが、ローンを選ぶ際に低金利ということだけで選んでよいのだろうか?

ネット専用住宅ローンは、好きな時にインターネットで手続きができるといっても、審査を受けるための必要書類をそろえて郵送するなどの手間が発生するし、審査結果が出るまでの時間もそれだけかかる。また、対面で相談したり、直接商品の違いについて詳しい説明を聞いたりといったことが難しい側面もある。ほかにも、提供される住宅ローン商品の種類や事務手数料などの諸費用に違いがあるなどトータルに考えて、“自分に適した住宅ローン”を選ぶという観点を忘れずにいてほしい。

自然災害でも「一時返済が免除」される住宅ローンがあるってホント?

大地震に台風、豪雨、土砂崩れ……。近年大きな災害が日本を襲っている。住宅への被害も甚大だ。被災した場合に住宅ローンの返済はどうなるのか、心配する人も多いだろう。そんななか、増えてきているのが、自然災害に遭った時に返済の一部を免除する住宅ローンだ。どういったものだろうか?
災害への備えの基本は火災保険と地震保険

近年、テレビや動画で災害の映像が流れ、胸が痛む機会が多くなった気がする。地球温暖化の影響もあるのだろうが、日本はもともと地震や台風などの被災リスクが高い。そんな日本に住むからには、災害への備えは必須だ。

住宅ローンの災害への備えは、基本は「火災保険」と「地震保険」だ。
住宅ローンを借りる際に、「火災保険」に必ず入らなければならない。ただ、火災保険と言っても、基本となる火災や落雷、爆発、風災、雪やひょうによる損害を補償するだけでなく、水災(台風や豪雨などによる洪水、土砂崩れなど)を補償するタイプもある。補償範囲をどこまで広げるかは加入者が決めることになる。

また、火災保険では補償されない、地震や噴火、津波を補償する「地震保険」は、火災保険に付帯されるもので任意に加入するもの。ただし、地震保険は、被災者の生活の安定を目的とした保険なので、震災後の生活に困らない程度の補償内容となっている。地震による被害を再建できるほどのものではない。

大災害に遭って幸い命は助かったとしても、ローン返済中にマイホームが損壊した場合は、住宅ローンの返済に加えて、家の補修や避難先の確保などさまざまな支出が増える。火災保険・地震保険だけでは補償に限度があるので、それ以外にも備えておく必要がある。

自然災害に被災したときに返済の一部を免除する特約付きの住宅ローンが登場

甚大な被害が増えるなか、被災直後に、被災の程度に応じて一定期間にわたり、住宅ローンの返済を免除する特約を付けた住宅ローンが次々と登場している。

2つの事例を見ていこう。
三井住友銀行の「自然災害時返済一部免除特約付住宅ローン(約定返済保障型)」では、半壊で6回分、大規模半壊で12回分、全壊で24回分の住宅ローンの返済が免除され、罹災証明書提出後に引き落とされた分をまとめて払い戻す仕組みとなっている。この特約を付ける場合は、住宅ローンの金利が0.1%上乗せされる。

三井住友銀行「自然災害時返済一部免除特約付住宅ローン(約定返済保障型)」(三井住友銀行のホームページより一部転載)

三井住友銀行「自然災害時返済一部免除特約付住宅ローン(約定返済保障型)」(三井住友銀行のホームページより一部転載)

新生銀行の「安心パックS」の場合は、「自然災害時債務免除特約」と「コントロール返済」、介護リスクに備える「安心保障付団信」がセットになっている。自然災害時債務免除特約では、三井住友銀行と同様に半壊で6回分、大規模半壊で12回分、全壊で24回分の住宅ローンの返済が免除されるが、銀行に連絡した直後から引き落としが止まり、罹災証明書はそのあとで提出すればよい仕組みとなっている。安心パックSをつける場合は16万2000円の事務取扱手数料が必要だが、金利は変わらない。

いずれの銀行も、新規に住宅ローンを借りる場合に特約をつけることができ、ローン返済中の被災に対して1度限りの免除となる。

また、三井住友銀行では、「自然災害時返済一部免除特約付住宅ローン」で、金利に0.5%上乗せで、地震や噴火、津波で全壊した建物のローン残高の50%相当が免除される「残高保障型」のタイプを選ぶこともできる。

これ以外にも類似の特約を用意している金融機関はあるが、対象となる災害や免除内容、コストなどがそれぞれで異なるので、条件などを詳しく確認してほしい。

自然災害への備えを厚くしたい人は、こうした特約の付けられる住宅ローンを選ぶという選択肢ができたことになる。

なお、もし大規模災害に被災して住宅ローンを抱えて生活に困窮するようなことになった場合は、自己破産を回避し、金融機関に「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」(2016年4月より運用)に基づく住宅ローンの免除・減額などを申し出る道もある。

何事もなければ問題なく返済できる住宅ローンであっても、自然災害など自分ではどうしようもない原因で、返済が難しくなる可能性もある。そうしたことにあらかじめ備えておくことが、自然災害の多い日本でマイホームを買う心得だろう。

巨大地震の発生確率が高い現状ではあるが、甚大な自然災害が起きないことを願うばかりだ。

●取材協力
○三井住友銀行「自然災害時返済一部免除特約付住宅ローン」
○新生銀行「安心パックシリーズ/自然災害時債務免除特約」
○自然災害債務整理ガイドライン (政府広報オンライン)

「子どもは自立」「今よりコンパクトな住まい」を支持する、イマドキの中高年

住環境研究所が既婚の50代以上の中高年に調査したところ、家族と常に一緒にいるより、それぞれの自立を期待する声の方が大きいことが分かった。夫婦や子どもとの関係はどうありたいと見ているのか、どんな住まいがよいと思っているのか、イマドキの中高年の意識を詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「中高年の生活・住まいに関する意識調査」を発表/住環境研究所イマドキの中高年は家族のまとまりより“個々を尊重”する傾向に

既婚で50代以上というと、夫婦だけの生活がこれから長く続くことが想定される。夫婦の関係について聞いたところ、【A】「夫婦といえども一人の時間がほしい、それでこそ仲良く暮らせる」のほうが、【B】「会話があってこそ分かり合える、共有の時間を多く持ちたい」より多く支持されたことが分かった。

この傾向は、年代別では定年前後の「55~59歳」と「60~64歳」、性別では「女性」に顕著に見られたという。仕事中心の夫が定年後に自宅に長くいるようになると、生活スタイルが変わってしまうことから、互いの自立を望む声が多くなるのだろう。特に女性にその傾向が強いわけだ。

自立を期待する人が多いことは、夫婦にとどまらず、子どもとの関係にも影響する。【A】「子どもは社会人になったら自立すべきだ(家を出るべきだ)」と【B】「子どもが結婚してもできればいっしょに(近くで)暮らしたい」のどちらかを聞くと、やはり子どもの自立を望む声が多かった。

子どもに関する意識(出典:住環境研究所「中高年の生活・住まいに関する意識調査」より転載)

子どもに関する意識(出典:住環境研究所「中高年の生活・住まいに関する意識調査」より転載)

ちなみに、筆者の知人の事例だが、同居している社会人の娘に自立をするようにと、一定期間の家賃補助を条件に促したところ、その期間が過ぎて家賃補助を打ち切ったら自宅に帰ってきてしまったという。なんということか!

モノへのこだわりは減少、シンプル・コンパクトな住まいに

夫婦でも親子でも自立を望む声が多数の中高年は、まだまだ働きたい、生きがいをつくったり体力をつけたりしたいという人が多く、元気そのもののようだ。そんな中高年の暮らしや住まい感については、どうだろう?

まず、モノについては【A】「すっきりシンプルに生活したい、不必要なものはどんどん処分する」が【B】「将来使う可能性のあるものは、スペースの許す限り処分せずとっておく」を上回っている。特に【B】は、2000年の58%(ほとんどB40%+Bに近い18%)から2018年の22%(同19%+3%)へと大きく下がっている。モノや過去の思い出へのこだわりが減っているということだろう。

その結果、住まいの広さについても、【A】「今の家は大きすぎる、もっとコンパクトな家に住みたい」と【B】「今の家は狭すぎる、もっと広い家に住みたい」では、わずかに【A】のほうが多く選択された。住居形態別で若干の違いがあり、持ち家一戸建てでは【A】が、賃貸では【B】が多い傾向があったという。

上:モノに関する意識、下:住まいの広さ(出典:住環境研究所「中高年の生活・住まいに関する意識調査」より転載)

上:モノに関する意識、下:住まいの広さ(出典:住環境研究所「中高年の生活・住まいに関する意識調査」より転載)

住まいの広さについては、「どちらともいえない」人が大半で、必ずしも中高年がコンパクトな住まいを好むとは言えないだろう。かつて取材したあるシニア層は、一戸建てからマンションに住み替えたのだが、狭くて困ると言っていた。そのマンションの専有面積は80平米台だったのだが……。“今より”コンパクトな住まいというのが、実際にどの程度の広さを指しているのかは、それぞれで異なるのだろう。

とはいえ、筆者はシニア層の方にはコンパクトな暮らしを勧めている。子どもが泊まるかもしれない部屋は不要だし、過去の思い出の品も断捨離して、掃除などの家事負担を減らして、体力が落ちても快適に暮らせるような住まいを選ぶほうが良いと思うからだ。はたして、皆さんはどうお考えだろうか?

あなたは「ヒートショック予備軍」? 予防する方法は?

リンナイが、入浴習慣の実態について調べるために、「ヒートショック危険度チェックシート」を用意した。このチェックシートで、自分はヒートショック予備軍かどうかが分かるという。あなたは危険度の高い“予備軍”に当てはまらないだろうか?【今週の住活トピック】
「入浴」に関する意識調査を公表/リンナイ危険度を判定!あなたはヒートショックを起こしやすい?

まずは、次のチェックシートに挑戦して、あなたのヒートショック危険度を判定してみよう。

ヒートショック危険度 簡易チェックシート
□ メタボ、肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症、心臓・肺や気管が悪い等と言われた事がある
□ 自宅の浴室に暖房設備がない
□ 自宅の脱衣室に暖房設備がない
□ 一番風呂に入ることが多いほうだ
□ 42度以上の熱い風呂が大好きだ
□ 飲酒後に入浴することがある
□ 浴槽に入る前のかけ湯をしない、または簡単にすませる
□ シャワーやかけ湯は肩や体の中心からかける
□ 入浴前に水やお茶など水分をとらない
□ 1人暮らしである、または家族に何も言わずにお風呂に入る
リンナイが公開した、入浴科学者・早坂先生監修 ヒートショック危険度チェックシート(出典/リンナイ「入浴」に関する意識調査のリリースより転載)

チェック数が5個以上ある方はヒートショックになる可能性が高い『ヒートショック予備軍』だという。
筆者はチェック数が3つだったが、1つでも当てはまればヒートショックの可能性はあるのだそうだ。油断大敵ということか。

ちなみに、全国の2350人のチェック結果は以下のようなものだった。脱衣室や浴室に暖房設備のない家庭がとても多いことが分かる。

危険度チェックシートの回答結果(出典/リンナイ「入浴」に関する意識調査のリリースより転載)

危険度チェックシートの回答結果(出典/リンナイ「入浴」に関する意識調査のリリースより転載)

ヒートショック対策で、どんなことをすればいい?

この調査で「ヒートショック対策について何か習慣化していることがあるか」を聞いたところ、習慣化している人は18.3%と2割に満たなかった。

また、習慣化していると回答した人の具体的な対策としては、次のような結果になった。
入浴前に脱衣所や浴室を暖かくしておくほかに、入浴前後に水分をとったり、湯船につかる前にかけ湯などで体を温めたり、ぬるめのお湯にして長湯を避けたりといった予防対策が取られている。

ヒートショック対策の回答(出典/リンナイ「入浴」に関する意識調査のリリースより転載)

ヒートショック対策の回答(出典/リンナイ「入浴」に関する意識調査のリリースより転載)

ちなみに、筆者の家の浴室には「浴室乾燥機」がある。「乾燥」「換気」「暖房」「涼風」の機能があるので、浴室内を冬には暖房機能で暖めたり、夏には涼風機能で涼しくしたり、入浴後は換気機能で湿気を排出したりといったことができるので重宝している。

浴室乾燥機がない場合でも、入浴前にシャワーで温水を浴室の壁にかけるなどして、浴室を暖めておくという方法もある。脱衣所に小型のヒーターなどを設置して暖めたり、脱衣所の扉を開けておいて近くのエアコンを使って居室間の室温差を無くしておいたりなどの方法も有効だろう。

また、リンナイのリリースには、ヒートショックを予防する「入浴前準備呼吸」を紹介しているので、試してみるのも良いだろう。 

なお、全国健康保険協会によると、国土交通省はヒートショックを防ぐための住宅環境として、部屋の温度は15℃以上28℃以下、洗面所・浴室・トイレの温度は冬季で20℃以上といった温度条件を紹介しているという。

入浴中だけでなく、住まいの中で急激な温度差にさらされることで起きる可能性もあるのがヒートショックだ。起きて布団から出たときや寒い廊下に出たときにもリスクはつきまとう。住まい全体の暖房器具を上手に活用したり、断熱対策グッズを利用したり、住まいの断熱改修を実施したりといった、住まいの工夫でヒートショック対策を取ることも大切だ。

普段の何気ない生活行動で急激な温度差を感じ、それが命を脅かすヒートショックを生み出すこともあるのだから。

売買や賃貸で、問い合わせから契約までの期間が長期化! その理由は?

不動産情報サイト事業者連絡協議会(以下、RSC)が不動産情報サイト利用者にアンケートを行ったところ、問い合わせをしてから契約までにかかった期間が長期化していることが分かった。売買と賃貸では違いもあるが、いずれも長期化している。その背景として、どういったことが考えられるのだろう?【今週の住活トピック】
「不動産情報サイト利用者意識アンケート」調査結果を発表/不動産情報サイト事業者連絡協議会(RSC)問い合わせ物件数が増加。売買・賃貸ともに1物件が減少

不動産情報を探すときには、多くの情報を比較検討する必要があることから、以前はスマホよりPCの利用が多かった。最近はスマホ利用者がPCより多くなってきたが、2018年の結果を見るとPC利用が多かった60代以上を含めて、いずれの年代もスマホ利用が大幅に増加した。

問い合わせた物件数は平均5.5物件で、前年の2017年の4.9物件より増加した。賃貸を契約した人では、前年の4.9物件から5.1物件とわずかに増加し、売買で契約した人では前年の5.1物件から6.0物件と大幅に増加した。

全体では「1物件」「2物件」が減少し、「6物件以上」が大幅に増加した点が特徴だが、これは売買を契約した人の動向が大きく影響している。「賃貸」でも「1物件」という割合が減少しているので、じっくり比較検討している様子がうかがえる。

問い合わせた物件数(出典:RSC「不動産情報サイト利用者意識アンケート」より転載)

問い合わせた物件数(出典:RSC「不動産情報サイト利用者意識アンケート」より転載)

問い合わせから契約までの期間は長期化が顕著

次に、問い合わせをしてから契約までにかかった期間を見ると、全体的に長期化している結果となった。売買と賃貸ではかかる期間が異なるが、売買では最多の「1か月~3か月未満」(前年48.4%→35.5%)、賃貸では最多の「1週間~1か月未満」(前年64.5%→42.6%)が、いずれも前年より大幅に減少している。一方で、売買では「6か月以上」(前年4.8%→24.6%)、賃貸では「1か月~3か月未満」(前年16.3%→34.4%)が大幅に増加するなど、長期化が顕著に見られる。

物件の検討から契約までの期間(出典:RSC「不動産情報サイト利用者意識アンケート」より転載)

物件の検討から契約までの期間(出典:RSC「不動産情報サイト利用者意識アンケート」より転載)

なぜ長期化する?長期化するのは望ましいこと?

問い合わせから契約まで、つまり住まい探しをスタートしてから契約する物件を決めるまでの期間が長期化するということは、どういうことだろうか?

それは「契約を急がない」「慎重に物件を比較検討する」ということだろう。

まず賃貸住宅市場だが、賃貸の空室率を示す、タス空室インデックスの過去2年の推移を見ると、関西圏・中京圏・福岡県はおおむね横ばい、埼玉県を除く首都圏はじりじりと上昇している。借り手が有利な市場といえるので、焦る必要はなくじっくり検討できる状況だ。

また売買では、新築マンションの価格が上昇し、中古マンションもつられるように上昇といった市況にある。複数物件を比較しながら無理なく買える価格かなど、価格と希望条件を慎重に見極めていることがうかがえる。

住宅はモノではなく生活の拠点となるものなので、焦らずじっくり比較検討するという状況は望ましいことだ。

だが一方で、新築マンションの価格が高止まりしている状況などから、いずれ価格が下がるのではないかと様子見をしている人も多いと聞く。そうなると、住まい探しを始めながらもなかなか物件を決めることができないので、今後さらに長期化するといったことも考えられる。

日本不動産研究所が東京23区のマンション価格の中期予測を発表しているが、「新築マンション価格は、2018年まで上昇、以降ほぼ横ばいで推移し、2020年には消費増税の影響でやや下落、以降2025年までは微減」と見て、2017年のm2単価98.9万円に対し、2025年は95.0万円になると予測している。

価格が微減したとしても、その間に住宅ローンの金利が上がってしまえば、利息増加分で相殺されてしまう可能性もある。不確かなものに振り回されて長期化するというのは、望ましいことではないだろう。自分が本当に住みたいと思えるものに出合った時が、決め時だと思う。

あなたの都道府県のマンション、平均年収の何倍で買える ?

東京カンテイの調査結果によると、2017年のマンションの年収倍率(全国平均)は、新築マンションで7.81倍、中古マンションで5.30倍になり、いずれも前年度より拡大したという。とはいえ、エリアによって年収倍率は異なる。あなたが今住んでいる、住みたいと思っている都道府県のマンションは、その地域の平均年収の何倍で買えるのだろう?【今週の住活トピック】
「新築・中古マンション価格の年収倍率 2018【改訂版】」公表/東京カンテイ年収倍率の全国平均は、新築で7.47→7.81倍、中古で5.16→5.30倍

東京カンテイが都道府県別に算出したマンション価格の平均年収倍率は、“マンションの買いやすさ”を検証するためのもの。都道府県ごとに「2017年に分譲された新築マンションの平均価格(70平米換算)」と「2017年における築10年の中古マンションの平均価格(70平米換算)」が、平均年収※の何倍に相当するかを割り出している。
※内閣府発表の「県民経済計算」を基に都道府県ごとの平均年収を予測した数値

まず全国平均では、新築マンションの年収倍率は7.81倍となり、前年から0.34拡大した。

次に都道府県別に見てみると、最も倍率が高いのは東京都の13.26倍、最も低いのは山口県の5.87倍だった。年収倍率が9倍を超えているのは、首都圏の4県と近畿圏の京都府、大阪府、兵庫県と宮城県の8都府県。特に、東日本大震災からの復興が進む宮城県は前回調査の8.07から9.03倍と大きく上昇した。

また、石川県は4.85→8.37倍、長野県も6.15→8.69倍と大幅に上昇したが、これらの大幅な変動は、それぞれ金沢と軽井沢で高額物件が供給されたという特殊事情が原因のようだ。

●新築マンション
全国 7.81倍
首都圏 11.01倍(埼玉県10.13倍、千葉県9.02倍、東京都13.26倍、神奈川県11.16倍)
中部圏 7.96倍(岐阜県7.06倍、静岡県8.45倍、愛知県8.26倍、三重県8.02倍)
近畿圏 8.26倍(滋賀県7.89倍、京都府9.06倍、大阪府9.07倍、兵庫県9.67倍、奈良県7.26倍、和歌山県6.48倍)
2017年のマンション価格(70平米換算)の年収倍率(出典:東京カンテイ「新築・中古マンション価格の年収倍率 2018【改訂版】」より抜粋)

一方、築10年の中古マンションの年収倍率は、全国平均で5.30倍。前年より0.24拡大したが、新築の年収倍率との差は2.51と広がり、割安感が続く結果となった。最も倍率が高いのは東京都の10.46倍、最も低いのは山口県の3.76倍だった。

中古マンションの年収倍率で7倍を超えたのは、東京都に続き、沖縄県(8.09倍)、神奈川県(7.32倍)の3都県。観光地として人気が高い京都府が新築・中古ともに年収倍率を下げたのに対して、沖縄県は新築・中古とも上昇が続き、新築で8.60倍、中古で8.09倍と買いやすさにあまり差がないことが注目点だ。

●築10年中古マンション
全国 5.30倍
首都圏 7.42倍(埼玉県5.90倍、千葉県5.43倍、東京都10.46倍、神奈川県7.32倍)
中部圏 4.73倍(岐阜県4.46倍、静岡県5.05倍、愛知県4.95倍、三重県4.43倍)
近畿圏 5.59倍(滋賀県4.86倍、京都府6.57倍、大阪府6.78倍、兵庫県6.03倍、奈良県4.23倍、和歌山県4.98倍)
2017年のマンション価格(70平米換算)の年収倍率(出典:東京カンテイ「新築・中古マンション価格の年収倍率 2018【改訂版】」より抜粋)

年収倍率は高くても、返済額の家計に占める負担は少ないのが現実?

「住宅を購入する年収倍率は5倍までなら無理がない」と一般的に言われている。中古マンションでも全国平均で5倍を超えるという結果を見ると、マンション購入が難しい状況にあるのではないか、と思ってしまう人もいるだろう。

この結果はあくまで、平均値を基にして算出したものである。
参考までに、住宅金融支援機構の「2017年度フラット35利用者調査」の年収倍率を見てみよう。
【フラット35】を利用して住宅を取得した人に限定されるが、次のような結果が出ている。

新築マンション(全国平均):年収倍率6.9倍、毎月の予定返済額11万8800円、総返済負担率21.3%
中古マンション(全国平均):年収倍率5.6倍、毎月の予定返済額8万1900円、総返済負担率18.7%
※年収倍率は、各利用者の所要資金を世帯年収で除したものの総和をサンプル数で除したもの

こちらの年収倍率も上昇傾向にあるのだが、数値の違いは東京カンテイの算定した世帯年収(448万円)より実際に【フラット35】を利用した購入者の世帯年収(新築マンション775.7万円・中古マンション595.6万円)の方が高い、という影響があるだろう。

また、総返済負担率(住宅ローンの年間返済額を年収で割ったもの)は安全圏とされる25%を下回っている。首都圏で見ても、新築マンションで22.6%、中古マンションで19.8%に収まっているのは、今の超低金利が効果を発揮したということだ。

年収倍率5倍という目安は現実的には難しいかもしれないが、低金利の恩恵もあって、それぞれの世帯で年収に見合う無理のないマンションを購入した結果と見てよいだろう。

さて、“買いやすさ”の指標である年収倍率は上昇傾向が続くが、中心部など利便性の高い立地や富裕層向けの高額な新築マンションの供給量などによって、年収倍率は変わってくる。近畿圏の京都府や首都圏の神奈川県など年収倍率の拡大に歯止めがかかった府県も見られるので、エリアごとの事情をよく見ていく必要があるだろう。

いずれにせよ、自分が買いたいエリアで世帯年収に見合う、長期的に無理なくローンを返済できるマンションを探すというのが、物件選びの基本だ。

●参考
住宅金融支援機構「2017年度フラット35利用者調査」

ZEH-M(ゼッチ・マンション)が続々登場! ZEHって何?なぜ増えている?

平成30年度になってから、「ZEH(ゼッチ)マンション」なるものが続々と登場している。ZEHとは?ZEHマンションとは?について、経済産業省の事業に認定されたマンションを事例に見ていくことにしよう。【今週の住活トピック】
経済産業省「平成30年度 高層 ZEH-M(ゼッチ・マンション)実証事業」
「Brillia 弦巻」が東京都内初の事業として採択決定/東京建物
大京グループ 10 事業が採択決定/大京グループ
当社の分譲マンション「(仮称)プレミスト稲川三丁目」が採択されました/大和ハウスZEH(ゼッチ)とはネット・ゼロ・エネルギー・ハウスのこと

まず、ZEH(ゼッチ)とは何かについて、説明しよう。
ZEHとは、Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を略した呼び方だ。住宅で消費するエネルギーをゼロにしようというものだが、全くエネルギーを使わないわけにはいかない。住宅の断熱性・省エネ性能を上げることに加え、太陽光発電などによってエネルギーを創り、年間の「1次エネルギー消費量」をプラスマイナスでおおむねゼロ以下にしようというもの。

なお、1次エネルギー消費量の対象となるのは、「暖冷房・換気・給湯・照明」で、テレビや冷蔵庫などの家電製品は対象外だ。

ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の仕組み(出典:経済産業省の資料より転載)

ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)の仕組み(出典:経済産業省の資料より転載)

補助金で高層のZEHマンションを後押しする仕組み

住宅のエネルギー消費量を削減したい政府は、ZEHを普及させようとしているが、ZEHでは、住宅に太陽光発電設備などを備えつけてエネルギーを創り出す必要がある。マンションは戸数が多いわりに、太陽光発電設備を設置できる屋上の面積が広くないなどの制約がある。

そこで、政府はZEH普及の2030年までのロードマップを作成し、まずは注文住宅での普及に力を入れてきが、次第に分譲の新築一戸建て、賃貸・分譲のマンションへと普及対象を拡大してきている。

マンションについては、あいまいだったZEHマンションの定義を明確にし、補助金を交付する事業によって普及を加速させようというのが、経済産業省の「平成30年度 高層 ZEH-M(ゼッチ・マンション)実証事業」だ。

この事業は、住宅部分が6階以上のZEHの集合住宅が対象となる。住宅部分が5階以下のZEHマンションについては、別途「低・中層ZEH-M支援事業」がある。

では、国が定めたZEH-M(ゼッチ・マンション)の定義を確認しよう。
図にあるように、『ZEH-M』、Nearly ZEH-M、ZEH-M Ready、ZEH-M Orientedの4タイプがある。マンションの制約上、太陽光発電設備などによる再生エネルギーを期待しづらいことから、階数が高くなるほど再生エネルギーによる削減の基準を緩めている。

また、マンションのばあいは、従来から共用部分を含む住棟と購入対象となる住戸のそれぞれで、省エネ性能を評価してきた経緯もあり、住棟単位(専有部及び共用部の両方を考慮)と住戸単位(各々の専有部のみを考慮)の両方について、ZEH の評価方法を定めている点も特徴だ。

「平成30年度 高層 ZEH-M(ゼッチ・マンション)実証事業」公募要項より筆者が作成

「平成30年度 高層 ZEH-M(ゼッチ・マンション)実証事業」公募要項より筆者が作成

平成30年度は、15の事業(分譲マンション14・賃貸マンション1)で補助金の交付が決定している。「ZEH-M Oriented」という定義の導入と補助金が、ZEHマンションを後押しする仕組みとなったわけだ。

で、ZEH-M(ゼッチ・マンション)って、どんなマンション?

今回の国の定義によると、年間の1次エネルギー消費量がプラスマイナスゼロになるのは「ZEH-M」のみだ。「ZEH-M Oriented」の基準を満たすZEHマンションの場合では、地域ごとに設定された外皮基準をクリアし、年間の1次エネルギー消費量を20%以上削減すればよいわけだ。

「平成30年度 高層 ZEH-M(ゼッチ・マンション)実証事業」に採択された事業を見ると、おおむね次のようなマンションになる。

・住棟の外壁や屋根、住戸の床や天井の断熱性能を従来より引き上げる
・サッシのフレームに熱を伝えにくい樹脂材(従来はアルミ)を入れ 、省エネ性の高い複層ガラスを入れる。または二重サッシにして、内窓に樹脂サッシと複層ガラスを入れる
・給湯器にエネルギー消費効率の良いエコジョーズやエコキュート、エネファーム(燃料電池)を採用する
・床暖房やエネルギー消費効率の良いエアコンを採用する

大京グループのプレスリリースより転載

大京グループのプレスリリースより転載

ZEHマンションは、室内にいるときに夏の猛暑や冬の寒さといった外気の変化の影響を受けにくくなり、室内空間の快適性がアップする。さらに、室内の温度調節については、エアコンをガンガン使うことも抑えられ、光熱費も削減できる。エアコン嫌いの筆者にとっては、なかなか魅力的だ。

一方、ZEHマンションは、省エネ性能を引き上げるので、その分の建築コストは上がる。マンションの購入者が何を重視するか、どんな生活をしたいかによって、ZEHの価値も変わってくるのだろう。

部屋探しで最も決め手になる家賃、ただしあきらめ度も高い!?

リクルート住まいカンパニーが「2017年度の賃貸契約者動向調査」(首都圏版)結果を発表した。部屋探しにおいて、最も決め手となるのは「家賃」、最もあきらめた人が多いのは「築年数」だという。ある意味分かりやすい気もするのだが、どうやらそう簡単な話でもないようだ。詳しく結果を見ていこう。【今週の住活トピック】
「2017年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)を発表/リクルート住まいカンパニー見逃せないのは、立地条件の影響

調査は、2017年4月~2018年3月に賃貸に入居し、物件選びに関与した人を対象に、2018年5月に行ったもの。
今回注目したいのは、部屋探しの際に「決め手となった項目」と「やむを得ずあきらめた項目」についてだ。

画像を見てほしい。図の縦軸が「決め手」度合い、横軸が「あきらめ」度合いで、上に行くほど決め手になり、右へ行くほどあきらめたことになる。

決め手となった項目×やむを得ずあきらめた項目(出典:リクルート住まいカンパニー「2017年度の賃貸契約者動向調査」(首都圏版)より転載)

決め手となった項目×やむを得ずあきらめた項目(出典:リクルート住まいカンパニー「2017年度の賃貸契約者動向調査」(首都圏版)より転載)

突出して上に飛び出ているのが「家賃」だ。かなり強く決め手になったことが分かる。次に上に位置するのが、「路線・駅やエリア」、その次が「最寄り駅からの時間」、僅差で「通勤・通学時間」が続く。つまり、立地条件については、かなり重視していることが分かる。

次に、あきらめた項目を見ていくと、最も右に位置しているのが「築年数」だが、次には「家賃」が来る。その次が「面積」、僅差で「最寄り駅からの時間」となる。つまり、「築年数は」もともと重視度が高くはなく、あきらめるのも早いが、「家賃」はかなり決め手になる一方で、あきらめた度合いも高くなっているのだ。

家賃(の高さ)をあきらめる理由として考えられるのは、立地条件だろう。中でも「最寄り駅からの時間」はある程度妥協できたとして、「路線・駅やエリア」や「通勤・通学時間」へのこだわりは強く、家賃を予算より上げざるを得なかった人が多くいたと推測できる。

また、「広さ」や「間取り」もある程度重視するが、家賃との見合いで希望より狭いものを選んだという動きも見て取れる。

「初期費用」については、高額になるが入居時だけ発生するものなので、家賃ほどは重視せずあきらめも早いということだろう。

エアコンは必須アイテム?24時間可のゴミ置き場は「あったらうれしい」

さて、賃貸物件で重視する設備に目を移してみよう。

「次に引越すときは(も)絶対欲しい」(「できれば欲しい」を除く)設備のTOP3は、「エアコン」「独立洗面台」「TVモニター付きインターフォン」となり、昨年と同じだった。また、「24時間出せるゴミ置き場」「浴室乾燥機」が昨年から大きく伸びたという(画像)。

次引越す際に欲しい設備 上位20項目(全体/複数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2017年度の賃貸契約者動向調査」(首都圏版)より転載)

次引越す際に欲しい設備 上位20項目(全体/複数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2017年度の賃貸契約者動向調査」(首都圏版)より転載)

設備の重視度は、無かったから次は欲しいのか、あったから次も欲しいのか、無かったから欲しいかどうか分からないのかなどの違いがあるので、単純に数値だけを見て分析するのは難しい。

調査では、設備を利用した人に満足度(「満足している」の比率で「やや満足」を除く)を聞いているので、資料から利用した人の数が分かる。利用者が多い=賃貸で普及していると類推してみよう。利用したことのある設備で多い順に、「エアコン」「都市ガス」「独立洗面台」「TVモニター付インターフォン」「インターネット接続可(有料の個別契約要)」「温水洗浄便座」「追い焚き機能付き風呂」となる。

利用者数の最も多い「エアコン」は、設備の満足度は58.2%(12位)だが、次も絶対欲しいと74.7%(1位)が考えている。つまり必須アイテムということだろう。「独立洗面台」(満足度58.0%/13位)や「TVモニター付きインターフォン」(満足度61.3%/7位)も同じ流れだ。

一方、「24時間出せるゴミ置き場」は、利用者数はそこそこだが満足度は1位(71.1%)。絶対欲しい優先順位は少し下がるものの、あると便利なので「けっこう欲しいかも」となるのだろう。満足度3位(66.5%)の「宅配ボックス」も同じ傾向が見られる。

「遮音性能の高い窓」(67.8%/2位)と「無料インターネット完備」(65.6%/4位)は、満足度はかなり高いが、利用者数がまだ少ないので「絶対欲しい」のスコアが上がってこないと推測できる。

立地や広さVS家賃、設備の充実度VS家賃など、互いに関係性が深いのが賃貸住宅市場だ。部屋探しの際には、「何を重視すれば毎日快適に過ごせるのか」をよく考えて、優先順位をきちんとつけるのが良いだろう。イメージがよいとか、あったら便利そうといった観点で選ぶのは後悔の元になりかねない。

戸建注文住宅の建築費や土地代が上昇! その理由は?どう対処した?

住宅生産団体連合会(以下、住団連)の「2017年度戸建注文住宅の顧客実態調査」の結果が公表された。それによると、建築費や土地代を加えた住宅取得費が昨年度より上昇したという。これから建てる人には、コスト増は気になるところ。なぜ建築費が上昇したのか、コスト増にどう対処したのかについて、詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「2017年度戸建注文住宅の顧客実態調査」結果を報告/(一社)住宅生産団体連合会建築費が増加し、平均の建築費単価は1万円アップの27.5万円/平米

この調査は、三大都市圏と地方都市圏に注文住宅を建てた人を対象に住団連が毎年行っているもので、2017年度で第18回目となる。

まず、注文住宅を建てた人の最新の平均像を見ていこう。
世帯主年齢の平均は40.5歳で、平均世帯人数は3.4人。ここ数年、「25~29 歳」や「30~34歳」の世帯主の比率が増加傾向を示しているという。

平均延べ床面積は129平米で狭くなる傾向にある。一方で、平均建築費(3535万円)は昨年度より81万円増加し、土地代を加えた平均住宅取得費(4889万円) も昨年度より134万円増加するなど、コストは増加傾向にある。また、世帯年収が伸び悩むなか、住宅取得費の年収倍率は6.5倍、借入金年収倍率は4.5倍にそれぞれ上昇した。

このように、建物の面積が狭くなるのに建築費は増加しているので、平均の建築費単価も上昇し、昨年度より1万円アップの27.5万円/平米となった。

平均建築費単価の推移(出典:住団連「2017年度戸建注文住宅の顧客実態調査」)

平均建築費単価の推移(出典:住団連「2017年度戸建注文住宅の顧客実態調査」)

「長期優良住宅」や「低炭素住宅」の認定住宅が増加し、8割以上に

では、建築費単価が上昇するのは、どういった理由からだろう?

もちろん、大工などの職人不足による人件費の高騰などで、純粋に建築費自体が上がった部分もあるだろう。が、求められる性能の要因も見て取れる。

調査結果で、「長期優良住宅」(81.1%)や「低炭素住宅」(1.6%)の割合が増加し、一般住宅(15.8%)が減少していることに注目したい。

「長期優良住宅」「低炭素住宅」の適用((出典:住団連「2017年度戸建注文住宅の顧客実態調査」)

「長期優良住宅」「低炭素住宅」の適用((出典:住団連「2017年度戸建注文住宅の顧客実態調査」)

「長期優良住宅」とは、長期にわたって良好な状態を保てるようなさまざまな基準をクリアした住宅、「低炭素住宅」とは、二酸化炭素排出の削減ができる省エネ性の高い構造や設備を備えた住宅のことだ。いずれも国が定めた認定基準を満たす必要があり、高い性能を求められるがゆえに建築費も高くなる。

そのため、これらの認定を受けた住宅については、「住宅ローン減税(住宅ローン残高の1%を10年間にわたって所得税などから控除する制度)」の最大控除額が400万円→500万円に拡大し、「登録免許税」も減税されるなどのメリットを受けられる。「長期優良住宅」の場合はさらに、新築住宅の場合に「固定資産税(家屋)を1/2に減額」する措置が、一戸建ての場合で3年間→5年間に延長されるなどのメリットもある。

つまり性能の高い住宅が増えることで、建築費が上昇するという理由が考えられるわけだ。

なお、コスト増に対しては、自己資金(平均1372万円)と借入金(借入ありのみ平均4031万円)を増やすことで対処していると見られ、親などから贈与を受けた比率(18.0%)や贈与を受けた人の平均贈与額(1145万円)は下がっている。

土地なしで注文住宅を建てる人が増加傾向、過半数が新たに土地を購入

さて、コスト面で次に注目したいのは、土地の取得方法だ。

昔は注文住宅と言えば、元の家を建て替えて注文住宅を建てる「建て替え」が主体だった。ところが、「建て替え」比率(28.5%)は減少トレンドにあり、今は、新たに土地を購入して注文住宅を建てる「土地購入・新築」の比率(51.4%)が上がり、過半数を占めている。

「建て替え」では、建築費が住宅取得費総額のほぼ全てを占めるが、その平均建築費は4026万円と最も高くなる。これに対し、建築費に加えて土地代が別途必要となる「土地購入・新築」の平均建築費は3223万円だ。「建て替え」は土地代が必要ない分、建築費にシフトできるというわけだ。

昨年度からの変化を見ると、「建て替え」の建築費は50万円増加したが、「土地購入・新築」の建築費は78万円増加し、さらに新たに取得した土地代は昨年度より95万円増加して2160万円になった。「土地購入・新築」のほうが、建築費も土地代も負担が増えたことになる。

建築費と土地代の構成と合計金額のうち、「建て替え」と「土地購入・新築」のみ抜粋((出典:住団連「2017年度戸建注文住宅の顧客実態調査」)

建築費と土地代の構成と合計金額のうち、「建て替え」と「土地購入・新築」のみ抜粋((出典:住団連「2017年度戸建注文住宅の顧客実態調査」)

さて、注文住宅を建てる人の過半数は別途土地を取得しているが、土地の取得は難しい環境になっている。

利便立地の大きな土地は、商業ビル、オフィスビル、ホテル、マンションで競合していることから、住宅の分譲業者の一部は一戸建ての建売販売に手を広げている。そこで、一戸建てが数棟建てられる小さな土地にも、もともとの一戸建て販売業者に加え、これまでより多くの不動産業者で競争することになり、なかなか一般の市場に出回ってこない。こうした状況で、これからの戸建注文住宅の動向はどうなっていくのか気になるところだ。

駅よりスーパー、無料Wi-Fiと宅配ボックスを重視 今どきの学生ひとり暮らし事情

学生用マンションでひとり暮らしをする人は、「『駅』より『スーパー』が近くに欲しい」と思っている。そんな調査結果を学生情報センターが発表した。「毎日利用する駅より、スーパーなのか…」と個人的に意外に思ったので、調査結果を詳しく見ていくことにした。【今週の住活トピック】
「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2018」の結果を発表/学生情報センターひとり暮らしの学生は、素直に両親に感謝している!?

まず、「ひとり暮らしをしてよかったこと」(複数回答)を聞いた結果を見よう。

1位は「時間を自由に使える」(87.0%)だ。親の目の届かない場所で時間を自由に使える半面、自分で家事(「洗濯」56.0%、「掃除」46.2%、「料理」41.1%、「家計管理」24.1%)をするようになったという回答も多く、結果的に2位の「生活力がついた」(61.7%)と感じているわけだ。何でも自分でやるようになったからこそ、3位の「両親に感謝するようになった」(58.2%)につながっているのだろう。

逆に「ひとり暮らしで困ること」(複数回答)の1位は「病気になったとき」(68.4%)。身体もつらいし心細いしで、さぞかし不安なことだろう。日々の食事は弁当や総菜で済ませたり外食が増えたりして、2位の「栄養のバランスが悪くなる」(54.4%)とも感じている。

駅より、学校より、コンビニより、スーパーが近くに欲しい

次に、部屋選びについて見ていこう。

「重視したほうが良い利便性」(複数回答)の1位は、なんと「スーパーが近くにある」(76.9%)だった。2位の毎日利用する「駅」(67.4%)より、3位の通学する「学校」(54.7%)より、4位の「コンビニ」(54.1%)より「スーパー」が近くに欲しいというのだ。

部屋を選ぶとき、重視したほうが良い利便性(複数回答)(出典/学生情報センター「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2018」より転載)

部屋を選ぶとき、重視したほうが良い利便性(複数回答)(出典/学生情報センター「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2018」より転載)

スーパーが選ばれる理由については調査結果では分からないが、今どきの若者世代は「コスパ=経済合理性」を重視する傾向が強いと聞く。ネット社会で育ち通販で買い物をする彼らは、買い物も合理的に時間をかけずにしたいと思うのだろう。そういう点でスーパーは、コスパがよく、品ぞろえが豊富なのでいろいろな店を回る時間も省ける。学生にとっては、筆者が思うよりスーパーの存在価値は高いのかもしれない。

「無料Wi-Fi」「オートロック」「宅配ボックス」が三種の神器になる日が来る?

「家賃が多少高くなっても部屋に欲しい設備・サービス」(複数回答)を見ていこう。

家賃が多少高くなっても部屋に欲しい設備・サービス(複数回答)(出典/学生情報センター「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2018」より転載)

家賃が多少高くなっても部屋に欲しい設備・サービス(複数回答)(出典/学生情報センター「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2018」より転載)

この質問をする調査結果はこれまでも多くあり、1位の「バス・トイレ別」(63.3%)と5位の「独立洗面台」(36.7%)は常に上位に来る項目だ。バス・トイレ一体型のユニットタイプは好まれないということだ。

そこで、注目したいのが2位の「無料Wi-Fiサービス」(44.9%)だ。3位の「大きな収納スペース」(39.9%)や4位の「オートロック」(37.0%)、6位の「宅配ボックス」(31.0%)も常に上位に来る項目だが、無料Wi-Fiは急上昇しているという印象がある。片時もスマホを離さない、今の若者世代らしい結果か。

今後は、無料Wi-Fi、オートロック、宅配ボックスが部屋選びの三種の神器になるのかもしれない。部屋を提供する大家さんたちも、こうした学生ニーズに応えていく必要があるだろう。

今回の調査結果で面白いと思った結果がもう一つある。ひとり暮らしで困ることの7位に「虫が出たとき」(31.3%)が挙がったこと。かくいう筆者もゴキブリが大の苦手。親の世代になった今でも、ゴキブリと目が合うとフリーズしてしまう。たかが虫、されど虫。なんとなく気持ちは分かる。

住宅ローンの借り換えはより低金利が原則! でも15.2%は毎月返済額が増える?

住宅金融支援機構が2017年度中に借り換えをした945人に調査をした「民間住宅ローン借換の実態調査」が公表された。住宅ローンは超低金利が長く続いているが、こうしたなか、どういった借り換えが行われているのだろう?今回は、住宅ローンの借り換えについて考えてみたい【今週の住活トピック】
「2017年度 民間住宅ローン借換の実態調査」/住宅金融支援機構/東京都住宅ローンの借り換えは、より低金利なローンに切り替えるのが原則

住宅ローンの借り換えとは、今借りている住宅ローンの残高分を、新しい住宅ローンで借りて完済することだ。新しい住宅ローンに切り替えることで、低金利などの条件がよいローンを借りることができるが、完済するローンと新たに借りるローンについて、それぞれ手数料などがかかるので、数十万円の諸費用がかかる。

借り換えの目的は、一般的には、より低金利ローンに切り替えて利息を減らすことにより、
・毎月返済額を少なくする(借り換え前のローンの返済期間のままで)
・毎月返済額は維持しつつ、返済期間を短くする
といった効果にある。
ちなみに、総返済額の利息削減効果は、期間短期化の方が大きいと言われている。

ところで、まとまった諸費用を払ってまで借り換えをするには、利息削減効果が大きいという前提が必要だ。ある程度のローン残高や返済期間が残っていて、借り換え前後で適用される金利差が大きいことが条件となる。

しかし、超低金利がこれだけ長く続いている今、どういった借り換えが行われているのだろう?

10年の固定期間選択型が借り換え後の受け皿に

住宅ローンの金利タイプには、半年ごとに金利が見直される「変動型」、返済当初一定期間の金利を固定する「固定期間選択型」、返済中金利が変わらない「全期間固定型」がある。固定期間選択型は、当初固定期間を2年、3年、5年、10年などから選ぶもの。全期間固定型は、住宅金融支援機構と民間金融機関の提携ローン【フラット35】が代表的なものだ。

今回の調査結果によると、借り換え前後では、利用する金利タイプのシェアが、次のように変化していた。
〇借り換え前→借り換え後
変動型 36.2%→42.0%
固定期間選択型 43.9%→46.3%
全期間固定型 19.9%→11.6%

低金利時代には、金利を固定する期間が長いほど金利は高く設定される。したがって、借り換えでより低金利なローンを狙うなら、全期間固定型から金利が変動するものに、固定期間選択型の長いものからより短いものへといった借り換えが行われるのがセオリーだ。

とはいえ、借り換え前後で選んだ金利タイプの変化を見ると、同じ金利タイプを選んだ人(変動型→変動型25.7%、固定期間選択型→固定期間選択型31.3%、全期間固定型→全期間固定型7.6%)がそれぞれで最も多いことが分かる。

金利タイプによって、将来金利が上昇したときに適用される金利が上昇し、返済額も増えるものがある。同じ金利タイプを選ぶ人が多いということは、返済中に金利が上がったり、返済額が増えたりすることへの基本的な姿勢が変わらないということだろう。

借り換えによる金利タイプの変化(全体に占める割合)(出典/住宅金融支援機構「2017年度民間住宅ローン借換の実態調査」)

借り換えによる金利タイプの変化(全体に占める割合)(出典/住宅金融支援機構「2017年度民間住宅ローン借換の実態調査」)

さらに、「固定期間選択型」の内訳を見ていくと、「固定期間が10年」のローンを選んだ人の割合が高い。
○借り換え後に固定期間選択型を選んだ人の10年固定の割合
・変動型→固定期間選択型(8.4%)のうち3.4%が10年
・固定期間選択型→固定期間選択型(31.3%)のうち13.2%が10年
・全期間固定型→固定期間選択型(6.7%)のうち3.6%が10年

低金利を狙って全期間固定型から固定期間選択型を選ぶ場合でも、「金利をできるだけ長く固定したい」と考えて10年固定を選ぶ人が多い一方で、低金利ではなく「金利上昇に備えて」、変動型などから10年固定や全期間固定型などに借り換えて「金利をできるだけ長く固定したい」と考える人がいることが推測される。

毎月返済額が上昇した人が15.2%もいる!? 金利上昇リスクも視野に

では、借り換えによってどんな効果を得たのだろうか?調査結果を見ていこう。

○借り換えによる変化
・金利が低下した人の割合は88.1%、金利が上昇した人の割合は6.3%
・返済期間が短期化した人の割合は72.1%、長期化した人の割合は6.3%
・毎月返済額が減少した人の割合は64.7%、増加した人の割合は15.2%

注目したいのは、毎月返済額が増加した人が15.2%と意外に多いことだ。おそらく、毎月返済額を増やして「返済期間を短くする」借り方を選んだり、金利が高く(返済額は増える)なっても「金利を長期間固定する」ローンを選んだ結果だろう。

日銀の政策の副作用が指摘され、低金利政策を緩和する動きも一部に見られるが、将来的な金利上昇リスクに備えて、低金利なうちに「全期間固定型」や「固定期間選択型」の中で10年など、金利を長期間固定するものに借り換えるという動きが生じるのもうなずけるものだ。

なお、多くの金融機関では、借り換えによるローンの返済期間は、前の住宅ローンで残っている返済期間と同じとするケースがほとんど。借り換えで返済期間を長くしようというのは、実際には難しいことを覚えておいてほしい。

さて、金利差が生じやすいという点で、今借り換えを検討してもよいのは、固定期間選択型の10年固定を借りている人や【フラット35】S(優良な住宅について当初5年または10年金利を引き下げるもの)を借りている人で、10年目を迎えて適用される金利が変わる人だ。住宅ローンの残高の1%の税金が10年間戻る「住宅ローン減税」も終わるタイミングなので、一度検討してみるとよいだろう。

とはいえ、住宅ローンの借り換えでは、新たに住宅ローンを借りる際に、返済能力を見られたり団体信用生命保険への加入の可否を判断されたりするので、借り換えができない場合もある。借り換えで適用される金利も、住宅購入などで新規に借りるローンと異なる場合も多い。希望通りの借り換えができるとは限らない点に留意してほしい。

若者の住まいの満足度は、賃貸と持ち家、広さ、ライフステージでどう変わる?

FRKの「50平米未満の住宅の居住満足度・住宅がライフスタイルに与える影響に関する調査」は、ライフスタイルの違いや住宅の面積が50平米未満か以上か、賃貸か持ち家かなど、対象をグループ化して多岐にわたって調べている。このなかで、若者に注目した結果を詳しく見ていきたい。8~9割の若者には結婚や出産願望があって、住宅の購入が結婚や出産と関係が深いという。また、それぞれのグループで「住まいの満足度」はどう変わるについても掘り下げていこう。【今週の住活トピック】
「50m2未満の住宅の居住満足度・住宅がライフスタイルに与える影響に関する調査」結果を公表/不動産流通経営協会(FRK)今どきの若者は、結婚や育児願望があり、持ち家志向も強い

この調査でいう「若者」は、25歳~35歳のシングル、カップル、子育てファミリーと定義している。また、36歳~49歳を「中年」として、若者と数値の比較をしている。

若者のうち、すでに結婚したことがある割合は58.9%、今後結婚の意向がある(予定の有無含む)割合は31.1%で、合わせて90.0%が結婚をした・したいと考えている。また、出産・育児をしたことがあるのは38.1%、今後意向がある(予定の有無含む)割合は45.4%で、合わせて83.5%が出産・育児をした・したいと考えている。つまり、8~9割の若者は、結婚や育児を望んでいるという結果だ。

若者に「住まいの優先度」を聞いた調査項目を見ると、「子どもがいるなら賃貸よりも持ち家の方が良い」(48.6%)、「結婚しているなら賃貸よりも持ち家の方が良い」(38.6%)が上位に来るなど、結婚や出産・育児が住宅の購入に少なからず影響していることもうかがえる。

住まいの優先度(出典/不動産流通経営協会「50平米未満の住宅の居住満足度・住宅がライフスタイルに与える影響に関する調査」より転載)

住まいの優先度(出典/不動産流通経営協会「50平米未満の住宅の居住満足度・住宅がライフスタイルに与える影響に関する調査」より転載)

次に、「住まい・ライフイベントに対する意識」を聞いた調査項目を見ると、「毎月の支払いが『家賃と同じ』で『広さが同じ、または広くなる』なら持ち家のほうがよい」、「持ち家なら安心して老後が送れる」などが上位になった。一方「賃貸で良い」は下位であることから、賃貸派よりも持ち家派のほうが多いことがうかがえる。

また、半数近くが「家は一生に一度しか買わないと思う」と答える一方で、3割近くが「持ち家でも家族状況や経済状況によって買い替えていく」と答えるなど、買い替えについては考え方の違う若者がそれぞれいることも分かった。

このほか、「近居=どちらかの親の近くに住む」の意向が見られるなども注目したい点だ。

住まい・ライフイベントに対する意識(出典/不動産流通経営協会「50平米未満の住宅の居住満足度・住宅がライフスタイルに与える影響に関する調査」より転載)

住まい・ライフイベントに対する意識(出典/不動産流通経営協会「50平米未満の住宅の居住満足度・住宅がライフスタイルに与える影響に関する調査」より転載)

住まいの満足度は持ち家、カップルやファミリーがより高い

若者の「住まいに対する満足度(高いほど満足度が高い)」は、平均6.5点。これは中年と同じ平均点だった。全体傾向を見ると、賃貸(50平米未満6.0点/50平米以上6.4点)より持ち家(50平米未満6.9点/50平米以上7.3点)のほうが、シングル(6.1点)よりカップル(6.7点)や子ありファミリー(6.6点)のほうが満足度は高い結果となった。

さらに若者の満足度が高い項目を見ると、部屋の満足度で「日当たり」(6.7点)と「通風」(6.7点)、住んでいる地域の満足度で「スーパーやコンビニ等の生活利便性」(7.0点)、「通勤や通学などの交通利便性」(6.7点)、「閑静さや公園などの住環境・治安の良さ」(6.6点)で点数が高かった。

逆に満足度が低い項目は、部屋の満足度で「セキュリティや宅配ボックス等の付加設備」(5.5点)、「遮音性」(5.6点)、住んでいる地域の満足度で「おしゃれ・高級感といったイメージの良さ」(5.4点)で点数が低かった。

住まいに対する満足度【部屋の満足度】(住まい・ライフイベントに対する意識(出典/不動産流通経営協会「50平米未満の住宅の居住満足度・住宅がライフスタイルに与える影響に関する調査」より転載)

住まいに対する満足度【部屋の満足度】(住まい・ライフイベントに対する意識(出典/不動産流通経営協会「50平米未満の住宅の居住満足度・住宅がライフスタイルに与える影響に関する調査」より転載)

住まいに対する満足度【地域の満足度】(住まい・ライフイベントに対する意識(出典/不動産流通経営協会「50平米未満の住宅の居住満足度・住宅がライフスタイルに与える影響に関する調査」より転載)

住まいに対する満足度【地域の満足度】(住まい・ライフイベントに対する意識(出典/不動産流通経営協会「50平米未満の住宅の居住満足度・住宅がライフスタイルに与える影響に関する調査」より転載)

今回の調査結果を見ていくと、今どきの若者は家庭ができた場合(結婚より子どもが生まれた場合により強く)、引っ越しせずに同じ場所にある程度住み続け、利便性だけでなく住環境も重視したうえで、住宅を購入するという考えを持つ人が多いと感じた。

購入する場合は、「家賃と同じ支払いで今より広く、または同じなら購入する」という考え方なので、今の超低金利ならそれも可能だろう。ただし、金利は同じ水準が続くとは限らない。景気が回復したり、金利が上昇したりしたときに、若者はどんな住まい感を持つのだろうか。

半数は掃除嫌い!掃除のしにくさに不満大! 今どきの住まいはどうなっている?

マーシュが自宅の掃除を主に行っている男性250人、女性500人に「住環境と掃除に関するアンケート調査」を実施したところ、掃除が面倒などの理由で掃除嫌いの人が多いことが分かった。とはいえ、掃除のしやすさを改善する方法はあるのだろうか。【今週の住活トピック】
「住環境と掃除に関するアンケート調査」結果を発表/マーシュ半数が掃除嫌い。面倒、時間がかかる、疲れるなどがその理由

調査結果によると、「掃除の好き嫌い」を聞いたところ、「掃除が好き」と回答した人が27.2%であるのに対して、「掃除が嫌い」と回答した人は50.0%に至った。また、「現状の掃除後の仕上がり」については、満足:24.3%・不満:39.9%であるのに対して、「現在の掃除のしやすさ」については、満足:19.7%・不満:45.6%となり、圧倒的に掃除のしやすさへの不満が強いことが分かった。

Q.各項目について、あてはまるものをお選びください。(単一回答)(出典/マーシュ「住環境と掃除に関するアンケート調査」)

Q.各項目について、あてはまるものをお選びください。(単一回答)(出典/マーシュ「住環境と掃除に関するアンケート調査」)

いったい「掃除嫌い」の理由はなんだろう?
掃除嫌いと回答したうち、半数以上の人が次の理由を挙げた。

・面倒だから(66.9%)
・疲れるから(61.3%)
・キレイにしてもすぐに汚れるから(61.3%)
・時間がかかるから(59.2%)

どうやら、掃除がしやすくないことが、「面倒」に感じ、「時間がかかる」ので「疲れ」てしまい、またすぐ「汚れる」ことが不満につながるという構図になっているようだ。

リビングとキッチンが、ゴミが溜まって掃除が大変な2大スポット

では、掃除に不満を感じる場所は、家の中のどこだろう?
調査結果によると、「ゴミがよく溜まる場所」も「最も掃除が大変な場所」も、「リビング」、「キッチン」、「家具と壁のすき間」の順に多かった。特に、リビングとキッチンは、半数以上がゴミがよく溜まると回答するなど、掃除のしやすさに不満を感じる2大スポットと考えてよいだろう。

Q.ゴミがよく溜まっていると感じる場所を全て選択してください。(複数回答)また、最も掃除が大変と感じている場所を選択してください。(単一回答)(出典/マーシュ「住環境と掃除に関するアンケート調査」)

Q.ゴミがよく溜まっていると感じる場所を全て選択してください。(複数回答)また、最も掃除が大変と感じている場所を選択してください。(単一回答)(出典/マーシュ「住環境と掃除に関するアンケート調査」)

掃除道具と住まいの仕様・設備が、「掃除のしやすさ」の不満を解消

そうはいっても、大半の人が週に1日以上は、床に掃除機をかけたり、キッチンのシンクやコンロまわりを掃除したりしていて、たまには換気扇の掃除もしている。不満を解消する方法はあるのだろうか?

床の掃除については、「壁際のゴミが掃除機で吸い込みにくい」、「家具や家電と壁とすき間に掃除機のヘッドが入らない」、「使用可能時間の長いコードレス掃除がない」などの不満が挙がっていることから、掃除機などの掃除道具の機能が向上すれば、不満が解消される点も多いと考えられる。

ちなみに、筆者は掃除機だけは比較的高額なものを買うようにしている。性能が高いので、ヘッドの動きがスムーズでゴミも絡みにくいなど、ストレスが少なくて済むからだ。「リビング」の不満は掃除道具の機能向上がカギになるのではないか。

一方、キッチンについては最新のシステムキッチンを選ぶということになるだろう。
新築マンションのモデルルームの事例で説明すると、レンジフード、キッチンパネル、コンロの掃除がしやすくなっている。

最新のシステムキッチンならここまで掃除がラクになる(写真提供/三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス 相模大野」モデルルームのシステムキッチン)

最新のシステムキッチンならここまで掃除がラクになる(写真提供/三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス 相模大野」モデルルームのシステムキッチン)

「フィルターレスレンジフード」とは、油がこびりついて掃除が面倒だったフィルターをなくし、整流板で油煙を吸引して、油煙を自動で空気と油に分離して、油をオイルトレーに回収するもの。フードや整流板を拭き掃除したり、オイルトレーの油を拭き取って洗ったりする必要があるが、掃除はかなりラクになる。ベタベタ汚れがなかなか落ちないという絶望感も解消されるだろう。

ガスコンロの主流になっている、天板が強化ガラスの「ガラストップコンロ」も汚れがつきにくく、掃除がしやすい住宅設備のひとつだ。一方、最近増えているのが、壁の汚れが水拭きで落とせるキッチンパネルだ。なかでも、ホーローパネルは掃除のしやすさに加え、マグネットが付くので使い勝手がよいと言われている。

ほかにも、汚れが付きにくいシンクなど掃除がラクになる商品が開発されているので、キッチンの掃除のしやすさは、最新機器でかなり改善されるようになったと言えるだろう。

かく言う筆者も掃除嫌いだ。その大きな理由は、普段から新聞やダイレクトメール、送ってもらった資料類などを散らかして、整理整頓を怠っているからだ。仕分けてからしまうべき場所に置くなどの作業に時間がかかり、掃除を始める前にすでに疲れてしまう。こればっかりは、掃除道具や住宅設備などでは、解消されそうにない。

18%が自宅や近所で空き巣被害に! 夏休みの防犯対策は大丈夫?

いよいよ夏休みシーズンに入った。ところが、留守宅が多くなる夏休みは、空き巣にとっては稼ぎ時だという。ALSOKの調査によると、自宅や近所で空き巣の被害に遭ったことがある人が約18%もいることが分かった。「空き巣」は誰にとっても身近な犯罪なのだ。きちんと防犯対策はされているのだろうか?【今週の住活トピック】
「空き巣被害に関する意識調査」を発表/ALSOK約18%の人が自宅や近所の家で空き巣の被害を経験、空き巣は身近な犯罪

ALSOKの「空き巣被害に関する意識調査」で、「あなたの自宅もしくは近所の家が、空き巣に入られたことはありますか」と聞いたところ、1回以上あると回答した人が17.7%もいた。

自宅もしくは近所の家が空き巣に入られた経験の有無(単数回答)(出典/ALSOK「空き巣被害に関する意識調査」より転載)

自宅もしくは近所の家が空き巣に入られた経験の有無(単数回答)(出典/ALSOK「空き巣被害に関する意識調査」より転載)

では、空き巣被害を知った後で、空き巣対策をしたかどうかを聞いたところ、52.8%が対策をしたと回答。具体的な防犯対策としては、「鍵を交換した」、「鍵の数を増やした」、「転居した」、「防犯ガラスに変更した」、「防犯カメラを設置した」などが挙がった。

自宅もしくは近所の家が空き巣に入られた後、実施した空き巣対策(複数回答)(出典/ALSOK「空き巣被害に関する意識調査」より転載)

自宅もしくは近所の家が空き巣に入られた後、実施した空き巣対策(複数回答)(出典/ALSOK「空き巣被害に関する意識調査」より転載)

この調査では、20代~60代600人に調査を実施しているが、自宅が持ち家か借家か、一戸建てか共同住宅かは不明だ。実際にはそれによって、防犯対策の選択肢は変わってくる。

借家の場合で考えると、自分でできるのは、補助錠を付けるなどで鍵を増やすか(この調査結果にはないが、防犯フィルムをガラスに貼る対策は可能)、それでも不安ならば転居も選択肢の一つになるだろう。基本は大家に依頼して、防犯対策を強化してもらうことになる。

持ち家で一戸建ての場合なら、個人の判断で防犯対策を強化できるのだが、マンションの場合は、一般的には鍵の交換やガラスの変更は共用部分に該当するので、管理組合と相談して対応策を取ることになる。

侵入を防ぐには、鍵と窓ガラスの防犯性がまさしくカギになる

ALSOKの調査では「空き巣」が対象だが、警察庁によると、住宅に侵入して金品を盗む「侵入窃盗」には、家人の留守を狙う「空き巣」、家人の就寝中に盗みを働く「忍び込み」、家人が在宅中に侵入する「居空(いあ)き」の3種類の手口があるという。

警察庁のサイト「住まいる防犯110番」によると、侵入するのは圧倒的に『窓』から(一戸建て57.6%、3階建以下の共同住宅56.9%、4階建以上の共同住宅34.9%)で、4階建以上の共同住宅だけは『表出入口』(52.4%)が多くなっている。

侵入する手段は、「無施錠」と「ガラス破り」が大半。まさしく「鍵」と「ガラス」がカギになるようだ。

防犯対策としては、可能な限り防犯性の高い鍵や窓ガラスに交換することが挙げられるが、そもそも「無施錠」であればその効果は期待できない。
では、なぜ鍵をかけないのだろうか?

LIXILの「防犯意識と実態調査」結果では、5分以内の外出なら鍵をかけない人が約48%もいた。「すぐ戻るつもりだから」、「これまで空き巣に入られたことがないから」、「安全な地域に住んでいると思うから」などの理由で、鍵をかけずに外出するというのだ。

つまり、「油断や思い込み」が無施錠につながって、窃盗犯に狙われることになる。

窃盗犯に侵入されることで、金品が盗まれるのも困るが、家の中に侵入されたことの不安や恐怖は堪えがたいものだろう。

一方、窃盗犯もプロなので、必ず下見をして侵入しやすい家を物色すると聞く。夕方になっても照明が付かないなど留守の時間帯を調べたり、外から見て窓が開いているか確認したりして、侵入する家をあらかじめ決めているわけだ。

マンションにオートロックがあるから、防犯カメラがあるから、上層階だからと油断していると、ほかの人と一緒に入ったり、防犯カメラの死角を探したり、壁をよじ登ったり屋上から降りたりして、無施錠の窓から侵入されることもある。

かくいう筆者もエアコンが苦手なので、就寝中に窓を少し開けておくことがある。窃盗犯に狙われないように、これからは気をつけるようにしようと思う次第だ。

鍵や窓ガラスの強化に加え、音や光、カメラの目などを活用

では、具体的にどういった防犯対策が効果的だろう。

ALSOKの調査で「具体的な空き巣対策」を聞いたところ、対策をしている37.9%では、「玄関扉・勝手口の扉の鍵を二重にする」(64.9%)が最も多く、「窓ガラスに補助錠をつける」(31.5%)、「窓ガラスを強化ガラスにしたり、防犯フィルムを貼る」(22.0%)と鍵や窓ガラスの防犯性強化を実施している人が多かった。

実際に行っている扉や窓を施錠する以外の防犯対策(複数回答)(出典/ALSOK「空き巣被害に関する意識調査」より転載)

実際に行っている扉や窓を施錠する以外の防犯対策(複数回答)(出典/ALSOK「空き巣被害に関する意識調査」より転載)

ほかにも、「防犯砂利」を敷くなど音による対策や「防犯カメラ」などカメラの目による対策なども見られた。加えて、人を感知すると照明が点灯する「人感センサー照明」など光による防犯対策も効果的だろう。

8番目の「キーカバー/キーケース」に鍵を入れるという対策は、管理会社と名乗り確認のためと鍵を出させ、鍵に刻印された鍵番号から合鍵をつくって侵入した事件をきっかけにしているのだろう。特に女性の一人暮らしでは、鍵番号を知らせないような対策にも気をつけたいものだ。

最近では、TwitterやFacebookなどのSNSで「これから海外です」など長期不在の情報を得て、発信時の位置情報などから自宅を探り当てる窃盗犯もいると聞く。

夏休みシーズンに入り、長期間自宅を留守にする人も増えるだろう。留守情報をオープンにするなどは慎んで、出かける際には近所の人や管理会社に声をかけたり、郵便物や新聞の配達を止めたりといった対応も考えて、空き巣に備えるようにしてほしい。

●参考
・警察庁のサイト「住まいる防犯110番」
・LIXILの「防犯意識と実態調査」

最近よく耳にする「リースバック」って、どんな仕組み?どんなメリットがある?

住んでいる家を活用して現金を得る手段として、最近よく耳にするのが「リースバック」だ。「ハウス・リースバック」というサービスを展開している(株)ハウスドゥでは、9000件を超えるほど年間の問い合わせが増加したという。いったいどんな仕組みなのだろうか?【今週の住活トピック】
「ハウス・リースバック 年間問い合わせ件数9,000件突破!」 /(株)ハウスドゥリースバックってどんなもの?

一般的に「リースバック」とは、正式には“sale and leaseback”、つまり賃貸借契約付き売却のことをいう。
ここでいうリースバックとは、自宅などの所有不動産を第三者(投資家や不動産会社など)に売却し、売却先と賃貸借契約を結んで、元の所有者がそのまま住み続けるという仕組みだ。

この仕組みが実現する前提となるのは、購入した新たな所有者となる売却先と、元の所有者がお互いを信頼したうえで契約を交わすことだ。そうでないと、新たな所有者が立ち退きを求めたために住み続けられないとか、新たな所有者が別の第三者に転売してしまうということも起こり得るからだ。

こうしたリースバックサービスを(株)ハウスドゥでは2013年10月から開始しているが、リースバックへの年間(いずれも前年7月~6月の一年間)問い合わせ件数は、2016年の3384件、2017年の6907件と増加し続け、2018年には9000件を超えたという。

同社のサービスは、同社自身が不動産を購入して、大家となってあらかじめ決めた期間で元の所有者に賃貸(リース)するという仕組みだ。後から元の所有者が再度購入することも可能にしていて、契約の際にも再購入時の買い取り額をあらかじめ明示しているという。

「ハウス・リースバック」の仕組み(株ハウスドゥ提供)

「ハウス・リースバック」の仕組み(株ハウスドゥ提供)

リースバックのメリット・デメリットは?

一般的な「リースバック」のメリットとデメリットについて考えてみよう。
〇メリット
・売却によって、まとまった現金を手にできる。
・売却後も慣れ親しんだ自宅にそのまま住み続けられる。
・広く販売活動をすることがないので、売却したことを近隣に知られない。
〇デメリット
・所有ではなく賃貸となるので、賃料を払うなどルールを守る必要がある。
・終身住み続けたり、必ず買い戻せることが保証されているわけではない。

もちろん、契約で合意した期間中ずっと賃料を払い続けられる安定した収入があること、住宅ローンが残っている場合は金融機関の抵当権がはずせるように売却代金がローンの残高を上回ることなど、利用するには一定の条件が求められる。

また、リースバックで重要な役割を果たすのが、新たな所有者だ。当然ながら新たな所有者に利益が生じないと、この仕組みは成立しない。投資額(購入額)に対して、それを超える賃料が入ったり、賃貸借契約終了後に転売して利益が出たりすることが求められる。

そのため、リースバックの場合は、「普通に売るよりは売却額は低い」とか、「普通に借りるよりは賃料は高い」とか、「買い戻し額は売却額より高い」といった可能性もある。

したがって、「だれもが簡単に住みながら現金を手にできる」方法とは思わないほうがよいだろう。

リバースモーゲージとはどう違う?どんな人に向いている?

住みながらまとまった現金を手にできる方法として「リバースモーゲージ」という手法もある。

リバースモーゲージについては筆者も何度か記事にしているが、こちらは自宅を担保にお金を借りることで現金を手にする仕組みだ。したがって、「所有権を持ち続ける」、「借りたお金を返済していく」という点が根本的に異なる。

→リバースモーゲージについては筆者の記事「住みながら自宅を現金にする方法がある!?“リバースモーゲージ”の利用件数が増加」「住み続けながら家を現金化できる“リバースモーゲージ”。老後の資産活用の選択肢になる?」を参照

またリバースモーゲージは、死亡などによって契約が終了した時に相続人が売却するなどでローンを一括返済する仕組みなので、60歳以上などシニア層に限定して自宅を現金化するために利用されることが多い。

一方、リースバックのほうは、売却してしまうので自分のものではなくなるが、再度購入することで買い戻せる可能性はある。年齢制限なども特にないことから、例えば、次のような人に向いていると考えられる。

・学区の関係など一定期間自宅に住み続ける理由はあるが、今まとまった現金が必要な人(定めた期間を過ぎたら住み替える)
・一定期間後に確実にまとまった現金が手に入るが、今は必要な現金が手元にない人(まとまった現金が入った段階で買い戻す)

覚えておいてほしいことは、住み続けられると言っても「定期借家」による賃貸借契約になるので、定めた期間が来たら賃貸借契約は終了するのが原則だ。契約終了時に定期借家を再契約することは可能なので、希望する期間だけ再契約を繰り返すことで住み続けられる場合もあるが、どこかの段階で転居する計画でいたほうがよいだろう。

自宅に住み続けながら、「売却によって現金化」するリースバックも、「担保にしてお金を借りて現金化」するリバースモーゲージも、取り扱う機関もまだ少ない。サービスの内容もそれぞれで異なるため、利用する際には契約条件などを細かく調べる必要がある。

自宅を活用して現金化する必要がある場合には、その方法を幅広く検討してほしいが、選択肢の一つとしてこうしたサービスがあることも覚えておくとよいだろう。

〇SUUMOジャーナル関連サイト
住みながら自宅を現金にする方法がある!? 「リバースモーゲージ」の利用件数が増加
住み続けながら家を現金化できる“リバースモーゲージ”。老後の資産活用の選択肢になる?

「ワークライフバランスを支える住まい」が、今後の住宅のキーワードになる!?

公表された「平成29年度国土交通白書」によると、20~30代の子育て世代を中心に「ワークライフバランス」を支える住まいに対するニーズが高いことが分かった。今後の住まい選びのキーワードになりそうな「ワークライフバランスを支える住まい」とは、どういったものだろうか、詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「平成29年度国土交通白書」を公表/国土交通省ワークライフバランスとは、仕事と生活の調和?

「ワークライフバランス」とは何か?

これは政府の働き方改革の中で使われるようになった言葉で、直訳すると「仕事と生活の調和」ということになる。

そこで筆者は、内閣府の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」を見てみたが、正直言って概念的すぎてよく分からなかった。

「仕事と、子育てや介護といった生活との両立が難しい」「安定した仕事に就けない、一方で、長時間労働を強いられる」といった現実があり、多様な働き方や生き方が可能な社会にする必要がある。ということが語られているが、労働環境についてが主で、住まいや地域に関する具体的な言及はなかった。

職育近接、職住近接、三世代同居などがキーワード

そこで、白書ではどういった調査結果を基に、「ワークライフバランスを支える住まい」というキーワードを導き出したのか、見ていくことにしたい。

まず、ワークライフバランスについて、白書の第2章「第1節働き方に対する意識と求められるすがた」を見ていこう。
「働く上で重視すること」を聞いた調査結果(図表2-1-5)によると、20代~70代までの年代によりバラツキはあるものの「給与・賃金」や「仕事のやりがい」が多数を占める。ただし、20代・30代に注目すると「ワークライフバランス(子育て・介護などとの両立)」の重視度が高くなる。

「働けるうちはできるだけ働きたい」というニーズが高いこともあって、20代・30代には、長く仕事を続けながらも、家事・育児などのための時間を確保できる「ワークライフバランス」の実現へのニーズがある。このことから、白書では「在宅勤務」などの勤務場所の多様化や、「フレックスタイム制」などの労働時間の多様化といった、場所や時間に制約の少ない働き方に対する取り組みが求められていると指摘している。

働く上で重視すること(年代別)(出典/「平成29年度国土交通白書」)

働く上で重視すること(年代別)(出典/「平成29年度国土交通白書」)

次に、白書の第2章「第3節住まい方に対する意識と求められるすがた」を見ると、各世代に「今後求められる住まい方」を聞いた調査結果(図表2-3-4)がある。最も多い回答は、全世代で「介護が必要になっても年金の範囲内で安心して暮らし続けられる住まいの整備」で、次いで年代を問わず「親世帯、子ども世帯との同居や近居の推進」が多いという結果だった。

一方で、20代・30代の若年層に注目してみると、「職場内や近隣への子育て支援施設整備による職育近接の推進」という回答がともに多く、20代では「田舎暮らしなど地方移住の推進」も多いという結果だった。

今後求められる住まい方(年代別)(出典/「平成29年度国土交通白書」)

今後求められる住まい方(年代別)(出典/「平成29年度国土交通白書」)

こうした結果を受けて、国土交通省では、「職育近接、職住近接、三世代同居の推進等、ワークライフバランスを支える住まい方の支援が求められる」と見ているわけだ。

働き方が変われば住まい選びの基準も変わる?

図表2-1-5の「働く上で重視すること」の調査結果を見ると、「勤務地・勤務場所までの距離」の重視度は必ずしも高いわけではない。一方、図表2-3-4の「今後求められる住まい方」の結果では、20代・30代が「職場内や近隣への子育て支援施設整備による職育近接」を重視している。

つまり、自宅と職場の距離の近さよりも、例えば企業内保育所や駅前保育所のような通勤上で立ち寄れる、あるいは自宅に近いといった子育て支援施設を求めていることが分かる。

また、「親世帯との同居や近居」を望むのは、20代・30代は子育てのサポートを親世帯に期待して、50代・60代では親の介護を視野に、70代では自身の介護を考えているからだろう。

となると、子育ての時間が欲しい20代・30代、仕事の責任が重くなる40代、親の介護が視野に入る50代以降などではワークライフバランスの考え方も変わってくるわけで、「状況に応じて住み替えしやすい住宅市場」ということも求められているのだろう。

白書では「新たな兆し」の一例として「ワーケーション」を挙げている。国内外のリゾート地や帰省先など休暇中の旅先で仕事をする“テレワーク”のことだという。

今後働き方改革が進み、子どものお迎えの前後に自宅で在宅勤務をしたり、旅先の田舎などでも勤務できるようになると、住まい選びの基準もどんどん変わっていくことだろう。

家事分担はせめて3:7に 家事シェアが進めば夫婦仲も円満! 夫たちよ、もう少しだけ努力しよう

やれ「“名もなき家事”は妻が一手に引き受けている」とか、やれ「夫の家事参加は上から目線だ」とか言う女性たちの何と多いことよ。
でも、調査結果はそれを裏付けている。妻と夫の家事に関する調査結果が次々と公表されているが、どうやら家事を妻と夫で半分前後ずつ分担している「家事シェア夫婦」では互いの満足度が高いようなのだ。【今週の住活トピック】
「夫婦における家事のシェアをテーマに実施したアンケート調査」を公表/大和ハウス工業家事のシェア率が低いと、夫はいてもいなくてもいい存在になってしまう!?

大和ハウス工業の調査で興味深い点は、妻と夫が家事をシェアしているかどうかに分類して、調査結果を分析していることだ。

まず、30代~40代の既婚者男女9700人に調査したところ、妻が7割以上の家事を負担している家庭が80%を超えていた。ただし、妻の家事負担が7割以上という回答は、妻側で91.3%、夫側で76.1%となり、ズレが生じている。

家事シェアの現状を妻と夫に聞くと、平均で「妻8割:夫2割」だが、こちらも妻と夫でズレがある。妻側は「妻8.6:夫1.4」だが、夫側は「妻7.5:夫2.5」という認識だ。一方で、理想の家事シェアを聞くと、妻側の理想は「妻7.0:夫3.0」、夫側の理想は「妻6.7:夫3.3」と、意外に妻と夫で差が小さい。半分とまではいかなくても、せめて夫が3割を超えるまで頑張れば、理想に近づくのだ。頑張れそうな目標値ではないか。

平均家事比率「現在」と「理想」(出典/大和ハウス工業「夫婦における家事のシェアをテーマに実施したアンケート調査」より転載)

平均家事比率「現在」と「理想」(出典/大和ハウス工業「夫婦における家事のシェアをテーマに実施したアンケート調査」より転載)

次に、家事をシェアしている「家事シェア夫婦」(200人)と「非家事シェア夫婦」(200人)を抽出して、アンケートを実施した。この調査で「家事シェア夫婦」とは、家事負担の比率がほぼ半分程度、具体的には、妻6~4割:夫4~6割としている。この比率以外が、「非家事シェア夫婦」だ。

「あなたにとって配偶者はどんな存在か?」と、「家事シェア夫婦」の夫と妻 、「非家事シェア夫婦」の夫と妻の計4タイプに聞 いたところ、 「家事シェア夫婦」の妻は、配偶者は家族や自分を支えてくれる存在、家族や自分を楽しませてくれる存在など、配偶者への評価が他の3タイプより最も高かった。 一方で、「非家事シェア夫婦」の妻が他のタイプと比べて最も高くなったのは 、配偶者は子どものためだけにいる存在、いてもいなくてもいい存在というものだった。

では、いてもいなくてもいい存在にならないようにするには、どうしたらよいのだろう?

あなたにとって配偶者はどのような存在ですか(出典/大和ハウス工業「夫婦における家事のシェアをテーマに実施したアンケート調査」より転載)

あなたにとって配偶者はどのような存在ですか(出典/大和ハウス工業「夫婦における家事のシェアをテーマに実施したアンケート調査」より転載)

妻がやりたい家事は夫もやりたい? どうする、このバッティング

ライオンが実施した「夫婦の家事に関する調査」では、夫がしたい家事と妻が自分でやりたい家事がバッティングしているという結果になった。具体的に見ると、次のようになった。

〇(妻が)夫にしてほしい家事ランキング
  1位:ゴミ捨て(69.6%) 2位:風呂掃除(64.8%) 3位:食器洗い(40.8%)
〇妻が自分でやりたい家事ランキング
  1位:日用品などの買い出し(46.0%) 2位:洗濯(41.2%) 3位:料理(37.6%)
〇夫がしたい家事ランキング
  1位:ゴミ捨て(56.4%) 2位:洗濯(45.2%) 3位:日用品などの買い出し(40.0%)

「ゴミ捨て」は、妻もやってほしいし、夫もやりたい家事なのだが、妻がやりたい「日用品などの買い物」や「洗濯」は、実は夫もやりたい家事だというのだ。これでは、家事の分担はうまくいかないだろう。

また、大和ハウス工業の調査では、「非家事シェア夫婦」の妻は、自分でやったほうが早い、夫と家事のやり方が違うといった声を挙げていた。

日用品で買う銘柄に好みのものがあるとか、洗濯の仕方に自分なりのルールがあるとかで、妻が自分でやりたいということもあるだろう。

さらに、妻の逆鱗に触れるのが、「気遣っているフリ」だろう。ライオンの調査では、48.4%の夫が「家事をしたくもないのに『やろうか』などと、妻を気遣うフリをしたことがある」と回答している。

今は共働きが当たり前になっている。男女間で収入に違いがないという夫婦も多いことだろう。仕事も家事も子育ても、夫婦で協力してやっていくという時代なのだ。

まず夫側は、家事は「手伝うもの」という意識を改めて、「協力して行うもの」と考えるようにしよう。
妻側は、自分のやり方を押し付けたり、夫に完璧さを求めたりしないようにしよう。
そのうえで、どんな家事なら分担しやすいのか、互いにストレスのないやり方はどういったやり方か、などをきちんと話し合うことが大切だ。

「家事シェア夫婦」が互いに配偶者を尊重できるのは、十分なコミュニケーションを取っているからだ。

さて、ジブラルタ生命の「夫婦の通信簿2018<家事編>」では、夫の90.9%が妻の家事に合格点(「よくできる」「できる」)をつけているのに対し、妻の41.5%は夫の家事に「努力しよう」と評価している。

世の夫どもよ、「ボーっと生きてんじゃねえよ!」と叱られないように、得意な家事を見つけて妻に尊重されるようになろう。

●参考サイト
〇ライオン/「夫婦の家事に関する調査」
〇ジブラルタ生命保険/「夫婦の通信簿2018」

進む空き家対策―「自分が空き家を相続」「近所に空き家が…」そんなときどうすればいい?

「空家等対策の推進に関する特別措置法(空家法)」が施行されて3年。国土交通省は市区町村の取り組み状況について調査した結果を公表した。徐々にではあるが、進展している空き家対策。自分が空き家の所有者になったら、近所に問題となりそうな空き家があったら、どうしたらいいのか考えてみよう。【今週の住活トピック】
「空き家対策に取り組む市区町村の状況について」を公表/国土交通省徐々に進む地方自治体の空き家対策への取り組み

まず、「空家法」についておさらいしておこう。
近隣トラブルになるほどの空き家が増え始め、所有者が分からないなどの問題も表面化したため、個人の資産である住宅について、行政が踏み込んだ対応を取れるように法整備をしたものだ。

まず、自治体が「空き家であることを確認」したり「所有者を特定」したりしやすくしたうえで、所有者に適切な管理をするように求めるためのルールを定めている。また、すでに地域で問題となっている空き家を「特定空家」に指定したうえで、立木伐採や住宅の除却などの助言・指導・勧告・命令をしたり、行政代執行(強制執行)できるようにした。

具体的には、各自治体で「空家等対策計画」を策定して、自治体独自のやり方で空き家を減らしていくことが求められている。その対策計画の策定状況を見ると、2017年3月末時点では全市区町村の約21%だったものが、2018年3月末時点では約45%となり、2019年3月末時点には6割超に達する予定だ。

この計画に基づいて2018年3月末までに、自治体が空き家に対して「助言」・「指導」を行ったのは1万676件。助言・指導に従わない場合は、より強い「勧告」(552件)や「命令」(70件)に至り、それでも従わない場合は行政が立木の伐採や空き家の解体・撤去を行う、「代執行」(23件)の措置を取る場合もある。また、所有者不明による「略式代執行」は75件あった。

近所に迷惑な空き家があったら、自治体に連絡

立木が道路にはみ出していたり、ブロック塀が壊れかかっていたり、建物が崩れ落ちそうだったり、ゴミの放置場所になっていたりなど、明らかに迷惑な空き家と思われるものが近所にあった場合、どうしたらよいのだろう?

空き家の所有者を知っている場合は、直接所有者に対処を求めたり、自治会などに相談する方法がある。だが、所有者とトラブルになる可能性があったり、所有者が分からないといった場合などは、空き家のある自治体に連絡しよう。その自治体が、空家等対策計画を策定している場合は、その手順に従った対応が取られるので、スピーディーに進むことが期待できる。策定されていなくても、空家法の指針に沿って対応方法を検討してくれるだろう。

ただし、自治体が空き家の状況を改善するわけではなく、所有者を探して適切に維持管理をするように求めるのが原則だ。所有者に関する情報があれば、併せて提供するとよいだろう。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

まずは登記、そのうえで適切な処分や維持管理を

一方、これから空き家を相続するなどで所有者になる場合は、どうしたらよいのだろう。

相続後に空き家の売却や建て替えなどの活用を考えている場合、権利関係を明確にしておくことが大切だ。まずは不動産登記の内容を確認しておこう。

登記しないまま相続を繰り返すなどで、権利関係があいまいになっている場合、きちんと登記するために法定相続人をさかのぼって探すといった事態にもなりかねない。きちんと登記しないと相続の手続きや空き家の売却などの妨げになる。

また、隣地との境界があいまいな場合、境界を確定させる必要があり、登記手続きに時間がかかるといったこともある。祖父母や親が亡くなった後に、相続や隣地関係などの経緯を調べるのは大変なので、存命中に話を聞いておくのも手だろう。

そのうえで、将来は空き家に誰かが住むのか、売却するのか、などの利用方法を検討しておきたい。誰も住み手がいないし、売ってもわずかな額でしか売れないといった場合でも、空き家の活用を促進している地方自治体は増えているので、放置しないで自治体に相談してほしい。

空き家は今後もさらに増加すると予測されている。住宅は人が住まなくなると急速に老朽化が進むので、とりあえず放置しているうちに老朽化が進み、利活用の選択肢が狭まるということも起こり得る。空き家を管理するサービスも増えているし、空き家の活用を提案するコーディネーターや起業家なども登場している。「空き家を所有したら放置しない」という心構えで、いろいろな窓口に相談しよう。

東京都では、平成30年度から「起業家による空き家活用モデル事業」を開始した。起業家が具体的に空き家を利活用する事業プランを提案し、優れた事業プランには補助金(起業家に最大300万円、空き家所有者に固定資産税等の額)を出して支援するという事業だ。

また政府は、空き家問題の原因にもなっている「所有者不明の土地」対策として、現在は任意となっている相続登記を義務づける法改正などを検討している。

空き家対策については今後もいろいろな手が打たれていくので、不動産を“負動産”にしないためにきちんと対応したいものだ。

「民泊新法」が6月15日に施行、これからの民泊はどう変わる?

2018年6月15日に住宅宿泊事業法(いわゆる「民泊新法」)が施行され、住宅宿泊事業者は届け出をすれば、民泊を行えるようになった。民泊新法が施行されて、民泊は今後どうなるのだろう?【今週の住活トピック】
「住宅宿泊事業届出住宅のための外国人観光旅客向け多言語文例集」を作成/東京都民泊新法で義務付けた「多言語による利用者向けの説明」の手引きに

民泊新法では、施設の利用案内や生活環境を守るためのルールを外国語で適切に案内することを義務付けていることから、東京都では、民泊利用の外国人観光客向けの文例集を作成して、後押しをしている。東京都が作成した、多言語文例集の内容を見てみよう。

●多言語文例集の一部
多言語文例集の一部(出典:東京都「住宅宿泊事業届出住宅のための外国人観光旅客向け多言語文例集」より)

多言語文例集の一部(出典:東京都「住宅宿泊事業届出住宅のための外国人観光旅客向け多言語文例集」より)

このように具体的な文例が日本語、英語、中国語、韓国語で紹介されている。なお、「繁体字」は台湾、香港、マカオで、「簡体字」は中国やシンガポール、マレーシアで使われている言語のようだ。

文例の内容は多岐にわたり、次のような事項に分けて文例が紹介されている。
•届出住宅の設備の使用方法に関する案内
•最寄り駅等の利便施設への経路と利用可能な交通機関に関する情報
•騒音の防止のために配慮すべき事項
•ごみの処理に関し配慮すべき事項
•火災防止のために配慮すべき事項
•避難経路
•火災、地震その他の災害が発生した場合における通報連絡先に関する案内

民泊新法のルールは?どんな規制がある?

2020年の東京五輪で観光客の宿泊施設不足の対策として、国や東京都では民泊を促進したいと考えている。

政府は以前から民泊促進のために、旅館業法の規制緩和や国家戦略特区の活用などを行ってきた。しかし、旅館業法(簡易宿所)では住宅地での営業ができない、特区民泊では原則1室25平方メートル以上が必要などのほか、衛生面や安全確保面での厳しい条件などもあり、ハードルが高いとして違法な民泊運営が後を絶たなかった。

違法民泊が騒音やゴミ出しなどの近隣トラブルにつながるとして、健全な民泊を促進するために施行されたのが民泊新法だ。民泊新法の特徴は、民泊に関わる3つの事業者(「住宅宿泊事業者」「住宅宿泊仲介業者」「住宅宿泊管理業者」)に対してそれぞれ届け出や登録を義務付けて、監督できるようにしていることだ。特にトラブルの多い「家主不在型」の住宅宿泊事業者には、住宅の管理を住宅宿泊管理業者に委託することを義務付けることで、仲介業者と管理業者の双方からもチェックできるようにしている。

民泊新法の対象となる事業者(出典:国土交通省「民泊制度ポータルサイト」より転載)

民泊新法の対象となる事業者(出典:国土交通省「民泊制度ポータルサイト」より転載)

民泊新法では、旅館業法(簡易宿所)や特区民泊に比べると条件が緩くなっていて、特に宿泊室の面積が小さい「家主同居型」の場合は、過度な条件を付けないようにしている。それでも、住宅宿泊事業(民泊)の届け出を行っていることがわかる標識を掲げること、本人確認や宿泊者名簿を管理すること、周辺住民からの苦情などに常時対応すること、2カ月ごとに届け出先に定期報告をすることなどの必要がある。

写真/PIXTA

写真/PIXTA

一方で、旅館業界や賃貸住宅業界では事業を圧迫するとして、民泊新法には一定の規制を求めてきた。その結果、民泊として提供できる日数を180日以内とするなどのルールも設けられた。ただし、地方自治体が独自の条例を制定することで、ルールを変えることができるとしている。

地方自治体のほうでは、地域トラブルを避けるために、規制緩和ではなく規制強化に乗り出す動きが目立った。複数の自治体では住宅地での民泊営業を禁止したり、180日以内の制限をさらに短縮したりなどの条例を制定した。また、分譲マンションの場合は、それぞれの管理規約に民泊禁止を盛り込む動きも加速している。

民泊の普及にはまだ時間がかかる?

民泊新法の施行に合わせて、次のような民泊に関する調査も実施されている。

リビン・テクノロジーズの調査によると、民泊の制度には63.0%が賛成するも、57.8%は「民泊を利用したいと思っていない」という結果だった。

クレアスライフの調査によると、不動産投資オーナーで「所有物件を民泊にしたいとは思わない」人は77%だった。

楽天コミュニケーションズの調査によると、民泊運営事業者に「今後も運営物件を増やしたいか」について聞いたところ、大幅に増やすが11.3%、増やすが36.0%、現状維持が35.7%、減らすが7.0%、大幅に減らすが3.0%、やめるが7.0%だった。

民泊自体は一定の評価を得ているものの、民泊に消極的な人の理由を見ると、総じて近隣や他の居住者などとのトラブルや住宅の劣化が進むことなどを懸念していることがうかがえる。また、賃貸経営をする不動産投資オーナーと民泊運営事業者では、民泊に対する考え方が大きく異なる点も注目したい。

すでに民泊を運営したり利用したりする一定の層については民泊に積極的であるが、すそ野が広がるにはまだ時間がかかると考えてよいのだろう。

民泊新法の施行で、健全な民泊は増える?

さて、民泊新法による届け出は順調に進んでいるのだろうか?
2018年3月15日から届け出の受付が始まったが、届け出は伸び悩んでいる。6月になって駆け込みの届け出もあったようだが、さまざまな規制にハードルの高さを感じたり、煩雑な届け出の手続きを嫌って、届け出を断念した民泊オーナーも多いようだ。

他方で、観光庁は民泊物件をインターネットなどに掲載する仲介業者に対して、無許可民泊物件を掲載しないように求めている。民泊仲介大手のエアビーアンドビーが、無許可や届け出予定のない民泊物件の掲載をやめたために掲載数が大幅に減少したり、6月15日以降の予約のキャンセルを直前で行ったことで利用者が混乱したりといった報道が話題にもなった。

このように、施行直後の現状は、民泊新法による民泊の届け出が低調なうえ、民泊仲介サイトの掲載物件も減少している。健全な民泊の促進が目的だから規制が厳しいということだろうが、健全な民泊として運営しやすい工夫やサポートを充実させていくことも求められる。

とはいえ、民泊に注目した新たなサービスも増加している。民泊事業者向けのセキュリティサービスや保険の提供がも始まった。さらに、チェックインや鍵の受け渡しの負担軽減のために、ホテルのフロントで代行したり、コンビニに専用機器を設置したりといったサービスも始まった。

健全な民泊の普及には、個人が運営事業者となる場合の負担軽減のサポートや、ホテルや賃貸住宅とは異なる付加価値の提供なども必要で、まだ課題も多いようだ。民泊はまだ新しい宿泊サービスなので、ルールの見直しやバックアップ体制の強化などを図りつつ、日本らしい成熟したサービスへと育ってほしい。

●参考:民泊に関する情報提供サイト
・国土交通省「民泊制度ポータルサイト」
・東京都産業労働局「住宅宿泊事業(民泊)」サイト

「リフォーム」理由に変化の兆し?「長持ちさせるため」「よい住宅にする」が上昇

国土交通省の平成29年度の「住宅市場動向調査」によると、住宅をリフォームする動機として、「家を長持ちさせるため」が長期的に見て増加傾向にあることが分かった。リフォームへの取り組みが変わっていくのだろうか、詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「平成29年度住宅市場動向調査」を発表/国土交通省リフォームの動機は「住宅の老朽化」。ただし、「長持ちさせるため」が長期的に上昇

調査は、平成28年度中(平成28年4月~29年3月)に住み替えや建て替え、リフォームを行った世帯を対象に行ったもの。今回は、リフォームに関する調査結果に注目したい。

三大都市圏でリフォームを行った世帯に、リフォームの動機を複数回答で聞いたところ、「住宅がいたんだり汚れたりしていた」が46.5%と断トツ1位となった。これは過去の調査でも同様だった。

一方で、2位になったのは「家を長持ちさせるため」(29.8%)で、平成27年度まで2位につけていた「台所・浴室・給湯器などの設備が不十分だった」(27.3%)を平成28年度に引き続いて上回った。また、「不満はなかったがよい住宅にしたかった」は14.4%となり、前年度までと比べて大きく伸びる結果となった。

リフォームの動機(主なもの)(複数回答)(出典:国土交通省「平成29年度住宅市場動向調査」よりSUUMOジャーナル編集部にて作成)

リフォームの動機(主なもの)(複数回答)(出典:国土交通省「平成29年度住宅市場動向調査」よりSUUMOジャーナル編集部にて作成)

では、具体的にどんなところをリフォームしたのだろうか。

まず「住宅内設備」を見ると、「台所・便所・浴室等の設備を改善した」が85.2%と抜きん出て多い。大半が水まわりの交換などを行っているようだ。次に「住宅の構造」を見ると、「断熱工事・結露防止工事等を行った」が67.7%で、次いで「基礎・構造の補強を行った」の45.2%となった。いずれも住宅を長持ちさせるには欠かせない工事といえるだろう。

住宅内設備の改善・変更の内容(複数回答)(出典:国土交通省「平成29年度住宅市場動向調査」)

住宅内設備の改善・変更の内容(複数回答)(出典:国土交通省「平成29年度住宅市場動向調査」)

住宅構造の改善・変更の内容(複数回答)(出典:国土交通省「平成29年度住宅市場動向調査」)

住宅構造の改善・変更の内容(複数回答)(出典:国土交通省「平成29年度住宅市場動向調査」)

リフォームの目的は「不満の解消」から「積極的な改良」へと変わる!?

さて、筆者は住宅に関する多くの調査結果に目を通しているが、リフォームをする理由として「住宅や設備の老朽化」などを挙げる調査結果は多い。

住宅リフォーム推進協議会の「平成29年度住宅リフォーム実例調査」を見ても、リフォーム工事の目的には、「住宅、設備の老朽化や壊れたため」(60.9%)が「使い勝手の改善、自分の好みに変更するため」(64.2%)と並んで、6割を超える多さとなっている。つまり、古くなったり不具合が起きたりして、生活に支障が出るという理由からリフォームに至ることが多いのが実態だ。

しかし、徐々にではあるが、「家を長持ちさせるため」や「不満はなかったがよい住宅にしたかった」が増加傾向にあることから、リフォームの目的が「不満を解消する」から「積極的に改良を図る」というものへ広がっていく兆しと見てもよいだろう。

特に若い世代では、中古住宅を購入してリフォームすることで、「自分好み」の家にしたい、「快適に暮らせる」家にしたいという発想が広がっている。限られた資金を自分たちなりに効果的に使って、住まいの満足度を上げるという流れだ。

一方で、子どもが独立した年配の夫婦が、快適なセカンドライフのために住み替えをしたり、リフォームをしたりする「積極的」な住まいへの投資も見られるようになってきた。人生100年と言われる時代だからこそ、住まいの果たす役割は大きいものになる。

これからのリフォームは、「新築として提供された家を手直ししながら住む」という旧来型の考え方ではなく、「手をかけて自分らしく快適に暮らせる家にしていく」という考え方がスタンダードになっていくのだろう。

家庭科“男女必修世代”の夫婦は、家事分担上手! ポイントは家事のすり合わせ?

花王の生活者研究センターが家庭科男女必修世代にあたる20~30代の夫婦を対象に、暮らし方や家事スタイルについて調査した。それによると、夫の家事参加が増え、妻の満足度も高くなっていることが分かった。ただし、それにはヒケツがあるようで、そのヒケツを探っていこう。【今週の住活トピック】
「くらしの現場レポート」を公表/花王 生活者研究センター若い世代ほど夫は家事参加に積極的、家庭科男女必修の影響はある?

筆者はこれまでも、夫婦間の家事分担に関するテーマを記事に取り上げてきた。

2017年5月に、大和ハウス工業が20~40代の共働き夫婦を対象とした調査で浮き彫りになった「夫が家事と思っていない『名もなき家事』が存在。やっているのは9割が妻」を書いた。この記事では、夫が見落としがちな「名もなき家事」が多く存在し、夫婦間の認識にズレがあることを紹介した。

一方で2018年2月には、積⽔ハウスの総合住宅研究所が、25~34歳(アラ30)の男性が家事参加に積極的という調査結果を紹介した「アラ30世代のパパは家事参加に積極的! 子どもも一緒に家事をするには?」を書いた。

若い世代になるほど、夫の家事参加が増加していく傾向にあるのだが、今回紹介する花王の生活者研究センターの調査では「家庭科男女必修世代」(20~30代の夫婦)といった、子どものころからの教育環境の違いに着目している。

例えば、夫が担当する家事についてみてみると、2016年9月の調査では、10年前に比べてすべての調査項目の家事で、担当する割合が上昇しており、40~50代の夫と比べても家事全般に参加していることが分かる。この10年で特に上昇幅が大きかった家事を見ていくと、「トイレ掃除」(13%→37%)、「食事の後片付け」(14%→36%)、「部屋の掃除」(13%→32%)や洗濯関連(「洗濯物を洗う」、「洗濯物を干す」、「洗濯物を取り込む」)となり、王道の家事にも積極的に参加していることがうかがえる。

家事別・夫が主に担当している割合(出典/花王・生活者研究センター「生活者の暮らしに関わる意識と行動について」)

家事別・夫が主に担当している割合(出典/花王・生活者研究センター「生活者の暮らしに関わる意識と行動について」)

夫婦の家事スタイルが「臨機応変型」ほど満足度が高い?

生活者研究センターでは、20~30代の子どものいる共働き夫婦10世帯への家庭訪問インタビューも実施しているが、家事を「大切な仕事」ととらえ、家事に対する夫婦間の意識の共有が図られているなどの特徴が見られたという。

2017年4月の調査では、夫婦それぞれに「家事は妻がほとんどしている」、「家事は『分担』を決めている」、「家事は明確な分担は決めずに『臨機応変』にできる方がしている」といった選択肢に回答してもらい、グループ分けして分析したところ、特に「臨機応変型」で夫の家事に対する妻の満足度が高いことが分かった。

その理由は、「臨機応変型」ほど、夫は家事に対して自信があり、妻も安心して任せられる状態にあるからのようだ。

夫の家事に対する妻の気持ち(家事シェアの状況別)(出典/花王・生活者研究センター「家事の意識実態について」)

夫の家事に対する妻の気持ち(家事シェアの状況別)(出典/花王・生活者研究センター「家事の意識実態について」)

夫が自信を持ってできる家事、妻が安心して夫に任せられると思う家事(出典/花王・生活者研究センター「家事の意識実態について」)

夫が自信を持ってできる家事、妻が安心して夫に任せられると思う家事(出典/花王・生活者研究センター「家事の意識実態について」)

「家事は大切な仕事」なので、やり方をすり合わせることがポイント

家事を「臨機応変」に行うということは、具体的にどういったことなのだろうか?

生活者研究センターによると、「家事の明確な分担を決めず、できる方ができるときに行い、手が空いているときは一緒に行うという、さりげなくフォローし合う臨機応変なスタイル」だという。それにはまず、家事や育児について夫婦で意識を共有し、互いの家事のやり方をすり合わせて最適な方法を選ぶことが前提となる。

例えば、「子育てを重視したいので家事は無理のない範囲でよい」とか、「家事をサポートする家電を使ったり、家事を外注したりして、家事負担はできるだけ減らす」とか、家庭における方針を夫婦間で共有したうえで、家事のやり方をすり合わせて最適なやり方を決めておくなどだ。

そうすれば、どちらがやっても不満が残らないし、急な用事で途中から交代しても問題なく終わることができる。また、臨機応変のスタイルが確立すれば、担当だからと相手に押し付けたり、できていないことにイラ立ったりすることも少ない。

なるほど、たしかにかつて夫の家事についての妻の不満は「自分でやったほうが早い」だった。やり方が違うのでけっきょくやり直すからだというのだが、家庭内の家事の最適化ができていれば不満にはならないだろう。

ただし、「臨機応変型」は上手くいくときはよいだろうが、相手にフォローを期待しすぎたり、どちらも時間がなかったりしたりして、家事の空白ができるというリスクもあるだろう。つまり、夫婦それぞれが互いの状況を理解して、無理なくできる範囲を割り出して、カバーしあうという課題解決能力が備わっていることが求められるように思う。

つまりは、分担する家事をある程度決めたり、未完成になってもよい家事を想定しておいたりなど、夫婦それぞれのスタイルや考え方に応じて、やり方を工夫するのがよいのだろう。

さて調査結果を見て、家庭科男女必修世代の男性の家事能力が高いことに驚いた。これは教育の影響もあるだろうが、親世帯に共働きが増えたことで父や自分も家事参加をした経験が多いといったことも関係しているのだろう。

ルールを決めるだけでなく、住まいの中のそれぞれの収納場所を用意したり、作業場所を決めたりといった工夫も効果があると思う。そしてなにより、互いに家事を行ったことに対する感謝の気持ちを表現することなど、思いやりの気持ちを持つことが重要だろう。

住みながら自宅を現金にする方法がある!? 「リバースモーゲージ」の利用件数が増加

「リバースモーゲージ」というワード、「聞いたことはあるけど、詳しいことはよく分からない」という人も多いのではないか。持ち家を担保にしてローンを借り、死亡時に清算する方法で、高齢者の持ち家活用に効果的と言われている。
このたび、住宅金融支援機構の住宅融資保険を活用したリバースモーゲージである、【リ・バース60】の利用実績が公表された。どういう制度で、誰がどういった目的で利用しているのだろうか?【今週の住活トピック】
「【リ・バース60】の利用実績等の公表について」/住宅金融支援機構リバースモーゲージってどんなもの?どんなメリットがある?

リバースモーゲージを直訳すると、「逆抵当融資」となる。持ち家を担保にお金を借り、長期間にわたって元金と利息を返し続けて完済に至るのが、一般の住宅ローンだ。これに対し、持ち家を担保にお金を借りる点は同じだが、お金を一括して受け取って利息だけを返し続けたり、お金を年金のように分割して受け取ったりして(利息は元本に加算)、最終的には死亡時に持ち家を売却して完済するのが、リバースモーゲージだ。

リバースモーゲージを取り扱っている金融機関はまだ少ないが、商品設計、つまり担保の条件や借りたお金の受け取り方、返し方などはそれぞれで異なる。融資限度額は、おおむね土地の評価額の50%~70%程度とする事例が多く、利用するには相続人の同意なども必要となる。

リバースモーゲージの最大のメリットは、持ち家を所有し続けることができる点だ。年金暮らしで収入は限られるが、貯蓄を使ってしまうのは不安なので、持ち家を活用したいと考える人も多い。持ち家を相続で残すことはできないが、住み続けながらまとまった現金を手にできるというメリットがある。

【リ・バース60】とは、どんなリバースモーゲージ?

【リ・バース60】は、60歳以上を対象として、住宅金融支援機構の住宅融資保険を活用したリバースモーゲージで、提携している一部の金融機関で取り扱っているもの。毎月の返済は利息のみで、元金は死亡時に住宅や土地の売却代金などで一括返済する。

【リ・バース60】と一般的な住宅ローンの違い(出典/住宅金融支援機構のホームページより転載)

【リ・バース60】と一般的な住宅ローンの違い(出典/住宅金融支援機構のホームページより転載)

【リ・バース60】の仕組み(出典/住宅金融支援機構のホームページより転載)

【リ・バース60】の仕組み(出典/住宅金融支援機構のホームページより転載)

特徴は、住宅のリフォーム費用や本人または子ども世帯が居住する住宅の購入資金、住宅ローンの借り換え資金、サービス付き高齢者向け住宅の入居一時金など、住宅に関する融資に限定されていること。融資限度額は、担保評価額の50%または60%までで、購入資金や建設資金の場合は5000万円、リフォーム資金や入居一時金の場合は1500万円などとなっている。

【リ・バース60】はどんな利用をされている?

さて、住宅金融支援機構が公表した【リ・バース60】の平成29年度の利用実績だが、金融機関から住宅金融支援機構に住宅融資保険を付保するために申請があったのは174戸、付保されて融資が実行されたのは68戸で、いずれも対前年度で400%を超える伸びを見せている。取扱金融機関は38機関で、実行された融資額は8.5億円にのぼる。

利用申込者の属性を見ると、平均年齢は72歳、平均年収は330万円、60%が年金受給者で、神奈川県(16%)・千葉県(12%)・東京都(8%)が上位を占めるなど首都圏での利用が圧倒的に多い。

筆者が注目している「資金の使い道」を見ると、想定していたのは、長く住むための建て替えやリフォームだったのだが、結果は次のようなものだった。
・新築マンション購入(40%)
・新築一戸建て建設(31%)
・一戸建てリフォーム(13%)
・借り換え(8%)
・その他(8%)

「新築マンション」を自分が住むために購入したものなのか、子ども世帯の購入を支援したものなのかは不明だが、利便性のよい新築のマンションを買って一戸建てから住み替えるという人は多いのだろう。その場合、担保となる持ち家の方は貸すのだろうか、なども気になるところだ。

「一戸建ての建設」は、建て替えが多いと見てよいだろう。老朽化してきた一戸建てを建て替えたり、リフォームをしたりという使い方をした人も、やはり相当数いたようだ。

購入や建設などに必要な額は3391万円、借りた額は1691万円、毎月返済額は3.5万円というのが、利用者の平均像だった。

また、【リ・バース60】のもう一つの特徴が、「ノンリコース型」を用意していることだ。

リバースモーゲージのリスクとして、「金利上昇」や「不動産価格の下落」のほか、「長生き」のリスクがある。これらによって、死亡時に売却した代金よりローンの残債のほうが多くなる可能性が生じる。この場合に、相続人が残債を一括返済する「リコース型」と、売却代金で清算されて相続人に請求が生じない「ノンリコース型」がある。

【リ・バース60】では、住宅金融支援機構の住宅融資保険を利用することで、金融機関が残債を回収できない事態を回避することができるために、「ノンリコース型」の用意ができるようになる。利用実績では、ノンリコース型が61%、リコース型が39%となっていた。

高齢化が進み、親世帯が老後資金を十分に用意する必要がある一方で、相続時にはすでに子ども世帯がマイホームを構えていることが多くなる。そうだとしたら、持ち家は自分のために利用すると割り切って、リバースモーゲージの活用を検討してもよいだろう。

最近では「リースバック」と呼ばれる商品も登場している。リースバックとは、持ち家を売却して買主とリース契約を結び、買主に賃料を払いながら自宅に住み続ける方法だ。

いずれの場合も持ち家に住みながら現金を手にできる方法だが、どんな家でも利用できるわけではない。取り扱い先が限られるうえ、思っているよりも条件は厳しいと考えたほうがよいだろう。人生100歳の時代を迎える今こそ、持ち家の価値を見直して、老後の資産設計を考えてほしいと思う。

住みながら自宅を現金にする方法がある!? 「リバースモーゲージ」の利用件数が増加

「リバースモーゲージ」というワード、「聞いたことはあるけど、詳しいことはよく分からない」という人も多いのではないか。持ち家を担保にしてローンを借り、死亡時に清算する方法で、高齢者の持ち家活用に効果的と言われている。
このたび、住宅金融支援機構の住宅融資保険を活用したリバースモーゲージである、【リ・バース60】の利用実績が公表された。どういう制度で、誰がどういった目的で利用しているのだろうか?【今週の住活トピック】
「【リ・バース60】の利用実績等の公表について」/住宅金融支援機構リバースモーゲージってどんなもの?どんなメリットがある?

リバースモーゲージを直訳すると、「逆抵当融資」となる。持ち家を担保にお金を借り、長期間にわたって元金と利息を返し続けて完済に至るのが、一般の住宅ローンだ。これに対し、持ち家を担保にお金を借りる点は同じだが、お金を一括して受け取って利息だけを返し続けたり、お金を年金のように分割して受け取ったりして(利息は元本に加算)、最終的には死亡時に持ち家を売却して完済するのが、リバースモーゲージだ。

リバースモーゲージを取り扱っている金融機関はまだ少ないが、商品設計、つまり担保の条件や借りたお金の受け取り方、返し方などはそれぞれで異なる。融資限度額は、おおむね土地の評価額の50%~70%程度とする事例が多く、利用するには相続人の同意なども必要となる。

リバースモーゲージの最大のメリットは、持ち家を所有し続けることができる点だ。年金暮らしで収入は限られるが、貯蓄を使ってしまうのは不安なので、持ち家を活用したいと考える人も多い。持ち家を相続で残すことはできないが、住み続けながらまとまった現金を手にできるというメリットがある。

【リ・バース60】とは、どんなリバースモーゲージ?

【リ・バース60】は、60歳以上を対象として、住宅金融支援機構の住宅融資保険を活用したリバースモーゲージで、提携している一部の金融機関で取り扱っているもの。毎月の返済は利息のみで、元金は死亡時に住宅や土地の売却代金などで一括返済する。

【リ・バース60】と一般的な住宅ローンの違い(出典/住宅金融支援機構のホームページより転載)

【リ・バース60】と一般的な住宅ローンの違い(出典/住宅金融支援機構のホームページより転載)

【リ・バース60】の仕組み(出典/住宅金融支援機構のホームページより転載)

【リ・バース60】の仕組み(出典/住宅金融支援機構のホームページより転載)

特徴は、住宅のリフォーム費用や本人または子ども世帯が居住する住宅の購入資金、住宅ローンの借り換え資金、サービス付き高齢者向け住宅の入居一時金など、住宅に関する融資に限定されていること。融資限度額は、担保評価額の50%または60%までで、購入資金や建設資金の場合は5000万円、リフォーム資金や入居一時金の場合は1500万円などとなっている。

【リ・バース60】はどんな利用をされている?

さて、住宅金融支援機構が公表した【リ・バース60】の平成29年度の利用実績だが、金融機関から住宅金融支援機構に住宅融資保険を付保するために申請があったのは174戸、付保されて融資が実行されたのは68戸で、いずれも対前年度で400%を超える伸びを見せている。取扱金融機関は38機関で、実行された融資額は8.5億円にのぼる。

利用申込者の属性を見ると、平均年齢は72歳、平均年収は330万円、60%が年金受給者で、神奈川県(16%)・千葉県(12%)・東京都(8%)が上位を占めるなど首都圏での利用が圧倒的に多い。

筆者が注目している「資金の使い道」を見ると、想定していたのは、長く住むための建て替えやリフォームだったのだが、結果は次のようなものだった。
・新築マンション購入(40%)
・新築一戸建て建設(31%)
・一戸建てリフォーム(13%)
・借り換え(8%)
・その他(8%)

「新築マンション」を自分が住むために購入したものなのか、子ども世帯の購入を支援したものなのかは不明だが、利便性のよい新築のマンションを買って一戸建てから住み替えるという人は多いのだろう。その場合、担保となる持ち家の方は貸すのだろうか、なども気になるところだ。

「一戸建ての建設」は、建て替えが多いと見てよいだろう。老朽化してきた一戸建てを建て替えたり、リフォームをしたりという使い方をした人も、やはり相当数いたようだ。

購入や建設などに必要な額は3391万円、借りた額は1691万円、毎月返済額は3.5万円というのが、利用者の平均像だった。

また、【リ・バース60】のもう一つの特徴が、「ノンリコース型」を用意していることだ。

リバースモーゲージのリスクとして、「金利上昇」や「不動産価格の下落」のほか、「長生き」のリスクがある。これらによって、死亡時に売却した代金よりローンの残債のほうが多くなる可能性が生じる。この場合に、相続人が残債を一括返済する「リコース型」と、売却代金で清算されて相続人に請求が生じない「ノンリコース型」がある。

【リ・バース60】では、住宅金融支援機構の住宅融資保険を利用することで、金融機関が残債を回収できない事態を回避することができるために、「ノンリコース型」の用意ができるようになる。利用実績では、ノンリコース型が61%、リコース型が39%となっていた。

高齢化が進み、親世帯が老後資金を十分に用意する必要がある一方で、相続時にはすでに子ども世帯がマイホームを構えていることが多くなる。そうだとしたら、持ち家は自分のために利用すると割り切って、リバースモーゲージの活用を検討してもよいだろう。

最近では「リースバック」と呼ばれる商品も登場している。リースバックとは、持ち家を売却して買主とリース契約を結び、買主に賃料を払いながら自宅に住み続ける方法だ。

いずれの場合も持ち家に住みながら現金を手にできる方法だが、どんな家でも利用できるわけではない。取り扱い先が限られるうえ、思っているよりも条件は厳しいと考えたほうがよいだろう。人生100歳の時代を迎える今こそ、持ち家の価値を見直して、老後の資産設計を考えてほしいと思う。

住宅購入で親子の距離が縮まる!?「親の面倒をみたい」が過去最高に

リクルート住まいカンパニーが「『住宅購入・建築検討者』調査(2017年度)」の結果を発表した。住宅の購入・建築やリフォームを検討している人(1239人)を対象にした調査なのだが、住宅購入をきっかけに親子の距離感が縮まっていることを表す結果が多く見られた。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「『住宅購入・建築検討者』調査(2017年度)」を発表/リクルート住まいカンパニー「親の面倒をみたい」が過去最高、同居や近居の意向は?

この調査では、住宅への意識を聞くほかに、親子関係にかかわる質問もしている。

・「20~40代」には、「親(自分の親または配偶者の親)が年をとったら、親(自分の親または配偶者の親)の面倒をみてあげたい」かどうか
・「50~60代」には、「自分が年をとったら、子どもに面倒をみてもらいたい」かどうか

その結果は、「親の面倒をみたい」が83.1%で、前回より5.3ポイント増の過去最高に、「子どもに面倒をみてもらいたい」が38.8%で、前回より0.6ポイント増の過去最高になった。

そこで、「同居・近居」の意向を聞いたところ、「同居意向あり」が16.0%、「近居意向あり」が45.2%と極めて高いことが分かった。

親との同居・近居意向(出典/リクルート住まいカンパニー「『住宅購入・建築検討者』調査(2017年度)」)

親との同居・近居意向(出典/リクルート住まいカンパニー「『住宅購入・建築検討者』調査(2017年度)」)

これには男女差も見られ、「同居」意向は男性(夫)が21.5%と女性(妻)の10.1%より高く、「近居」意向は女性(妻)が51.8%と男性(夫)の39.1%より高い結果となった。キッチンなどを共有する可能性があるので、女性(妻)のほうが同居よりも近居を望むということだろう。

「親からの援助」を期待する意向は調査開始以来最高に高い44.8%

住み替えにあたって「親や親族からの援助」について、それを「期待する」か、「援助してもらえる」かを聞いているが、いずれも調査開始以来最高価になった。

内訳は以下の通り。
「援助してもらいたいし、援助してもらえると思う」25.9%
「援助してもらいたいが、援助してもらえないと思う」18.9%
「援助してもらうつもりはないが、援助してもらえると思う」17.0%
「援助してもらうつもりはないし、援助してもらえないと思う」38.2%

親や親族からの援助に対して(出典/リクルート住まいカンパニー(出典/リクルート住まいカンパニー「『住宅購入・建築検討者』調査(2017年度)」)

親や親族からの援助に対して(出典/リクルート住まいカンパニー(出典/リクルート住まいカンパニー「『住宅購入・建築検討者』調査(2017年度)」)


※「援助期待・計」は「援助してもらいたいし、援助してもらえると思う」+「援助してもらいたいが、援助してもらえないと思う」
※「援助実現見込・計」は「援助してもらいたいし、援助してもらえると思う」+「援助してもらうつもりはないが、援助してもらえると思う」

「援助してもらいたいし、援助してもらえると思う」の割合が伸びたことが、「援助期待」(44.8%)も「援助実現見込み」(42.9%)も引き上げる要因となっている。

また、20代、30代の若年層ほど「援助期待」や「援助実現見込み」が高く、20代では半数以上が期待もして、実現見込みも高いと考えていることが分かる。

一方、いくら援助をしてほしいかの「援助希望額」を聞くと、「1000万円以上~1500万円未満」が28.2%で最多で、次いで「500万円以上~750万円未満」の24.7%となった。「500万円以上」の援助を希望する人は68.8%を占め、こちらも過去最高値になった。

ただし、20代、30代の若年層ほど、希望額は下がる傾向にある点に、注目したい。

親や親族からの援助を期待している人の援助希望額(出典/リクルート住まいカンパニー(出典/リクルート住まいカンパニー「『住宅購入・建築検討者』調査(2017年度)」)

親や親族からの援助を期待している人の援助希望額(出典/リクルート住まいカンパニー(出典/リクルート住まいカンパニー「『住宅購入・建築検討者』調査(2017年度)」)

住宅取得に関わる贈与は最大1200万円まで非課税。消費税率が10%になるとさらに拡大

さて、親からの援助については、筆者は「できるものなら援助してもらうのがよい」と考えている。
というのは、今なら「直系尊属」つまり親や祖父母が子や孫に、「住宅取得などの資金」について贈与した場合は最大1200万円の「非課税枠」があるからだ。

ちなみに非課税枠は、消費税率が10%になった場合は最大3000万円(2020年3月末までの贈与で、一定基準を満たす住宅を取得する場合の非課税枠)に拡大される。

親からまとまった額の贈与を受けることができれば、その分だけ住宅ローンの借入額を減らすことができるし、相続税に対する節税対策になるなどの効果を生む可能性もある。反面、特定の子だけに贈与が行われる場合は、兄弟姉妹間でトラブルとなる可能性もある。トラブルなく贈与できるのであれば、メリットの多い制度なので、期限内に活用するとよいだろう。

さて今回の調査結果からは、多額の支出となる住宅の購入・建築などをきっかけに、親と子の世帯間の距離が縮まる傾向が見えてきた。親子の距離は、住まいはもちろん、家計や介護などさまざまな領域に影響を与える。住宅の購入・建築を考える際には、それをきっかけに親子の関係を見直してみてはいかがだろう。

プロ(FP)の6割が平成30年度は買い時と回答 その理由とは?

「今は買い時か」を問う調査結果は複数あるが、一般消費者だけでなく、ファイナンシャルプランナーや住宅事業者も調査対象としているのが、住宅金融支援機構の「平成30年度における住宅市場動向について」の調査(2018年2月~3月実施)だ。ファイナンシャルプランナーの買い時感を中心に、詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「平成30年度における住宅市場動向について」を公表/住宅金融支援機構ファイナンシャルプランナーの「買い時」は64.5%で、一般消費者の50.6%を上回る

まず、マネーのプロである「ファイナンシャルプランナー(セミナー等の同機構業務協力者62名)」の買い時感を見てみよう。

「平成30年度は29年度と比べて買い時か」を聞くと、「買い時」(64.5%)、「どちらとも言えない」(27.4%)、「買い時ではない」(8.1%)になり、買い時との回答が最多となった。住宅取得を検討中の消費者に「これから1年(平成30年4月~平成31年3月)は買い時と思うか」を聞いており、「買い時」の回答は50.6%だったので、これを上回る結果となった。

前年同時期の調査と比べると、「どちらとも言えない」が増加(20.7%→27.4%)しているが、「買い時」(67.2%→64.5%)と「買い時ではない」(12.1%→8.1%)はともに減少している。特に「買い時ではない」という回答は実数では5人だけという結果だった。

【画像1】平成30年度の住宅市場(出典/「平成30年度における住宅市場動向について」住宅金融支援機構)

【画像1】平成30年度の住宅市場(出典/「平成30年度における住宅市場動向について」住宅金融支援機構)

買い時の要因は、第1に住宅ローンの低金利、第2に消費税率引き上げの駆け込み

では、「買い時」と思う要因について見ていこう。

ファイナンシャルプランナーが「買い時」と思う要因として第1に挙げたのは、超がつくほどの「住宅ローンの低金利」(85.0%)だ。次いで平成31年10月に予定されている「消費税率引き上げ」(62.5%)だ。この2つの要因は、前年の前回調査より大幅に増加している。

【画像2】ファイナンシャルプランナーの「買い時」と思う要因(出典/「平成30年度における住宅市場動向について」住宅金融支援機構)

【画像2】ファイナンシャルプランナーの「買い時」と思う要因(出典/「平成30年度における住宅市場動向について」住宅金融支援機構)

減少はしたものの、3番目に多い「金利先高感」(45.0%)の要因も見逃せない。景気は不透明であるが、先々の金利上昇懸念があるので、今の超低金利を活用できる平成30年度は買い時と考えるファイナンシャルプランナーが多いということだろう。

なお、大半の住宅ローンでは適用される金利は「融資実行時」だ。つまり、契約した後、融資を受けて住宅の代金をすべて支払う時点の金利が適用される。契約時と融資実行時では月をまたいだり、新築住宅の場合に数カ月や数年先になったりする場合もある。したがって、融資実行時の金利が、購入を思い立ったときの金利より高くなっている可能性もあるという背景があるわけだ。

また、引き上げ延期を繰り返した消費税率10%についても、駆け込み効果があると見ている。

消費税が課税されるのは、住宅の「引き渡し時」だ。住宅については、半年前の前日(平成31年3月31日)までに契約したものについては、引き渡しが10月1日以降になったとしても、8%の税率が適用されるという経過措置がある。つまり、平成31年3月末までに契約をしようという動きが起きるのが「駆け込み」だ。

過去に消費税率が引き上げられたときにも、一定の駆け込み行為が見られたので、今回も駆け込み効果があると見ているのだろう。

ちなみにこの調査では、住宅事業者(【フラット35】の利用があった733事業者)に、「平成30年度の受注・販売等の見込みは29年度と比べて増えるか?」を聞いている。「増加する見込み」という回答は59.4%だったが、増加する要因として第1に挙がったのは「消費税率引き上げ前の駆け込み効果」(64.3%)だった。

住宅事業者は、消費税増税の駆け込み需要に期待する傾向もうかがえるが、筆者としては、ファイナンシャルプランナーが買い時要因として、消費税より低金利を多く挙げた点に注目したい。

金利は35年などの長期間にわたって多額の元金にかかってくるので、影響が非常に大きい。一方、消費税は住宅価格全体に課税されるのではなく、建物価格のみにかかる(土地は非課税)。また、「個人」が売主の中古住宅の売買には、消費税は課税されない。引き上げられる2%の影響が具体的にどの程度になるのか、試算するなどしてきちんと把握し、安易に「駆け込む」ことのないようにしてほしいと思う。

首都圏の中古住宅で続く価格上昇、2017年度はどの地域が上昇した??

東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が2017年度の「首都圏不動産流通市場の動向」を公表した。これによると、中古マンション、中古一戸建てともに、前年度より成約件数は増えていないのだが、成約価格は上昇している。東京23区や横浜・川崎の状況など、地域別に詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「首都圏不動産流通市場の動向(2017年度)」を公表/(公財)東日本不動産流通機構(東日本レインズ)2017年度の首都圏の中古マンション・中古一戸建ての動向は?

まずは、東日本レインズの2017年度のデータから、首都圏全体の中古住宅の市場傾向を見ていこう。

【図1】成約動向(ベクトル表)より首都圏の中古住宅市場の動向※太い矢印は上昇幅が大きいことを示している(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2017年度)」)

【図1】成約動向(ベクトル表)より首都圏の中古住宅市場の動向※太い矢印は上昇幅が大きいことを示している(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2017年度)」)

首都圏の中古マンションの成約件数は3万7172件(前年度比0.7%減)で、前年度を下回ったものの過去最高だった前年度に続いて3万7000件台となり、横ばいという状況だった。一方で、平均成約価格(3253万円)と平均平米単価(50.63万円)は5年連続で大きく上昇した。

かたや、首都圏の中古一戸建て住宅の成約件数は、1万2560件(前年度比3.7%減)で前年度を下回り、平均成約価格(3111万円)は4年連続で上昇する結果となった。

中古マンションは、成約価格で過去最高を更新。23区と横浜・川崎がけん引

では、中古マンション市場を地域別に詳しく見ていこう。

【図2】都県・地域別の中古マンションの成約状況(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2017年度)」)

【図2】都県・地域別の中古マンションの成約状況(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2017年度)」)

首都圏全体の成約価格は、前年度の3078万円から3253万円に上昇し、平米単価も前年度の48.43万円から50.63万円に上昇してついに50万円台に乗った。価格上昇をけん引しているのは、高い上昇率を示す「東京23区」と「横浜・川崎」だ。

マンション市場では、特に交通や生活の利便性が重視されるので、その影響があるのだろう。さらに、近年はこうした利便立地で新築マンションの供給が集中しており、比較的築年数の浅い中古が市場に出回っている影響も考えられる。東京23区と横浜・川崎で平均築年数が他の地域より若干短いことからも、それがうかがえる。

一方で、首都圏の平均住戸面積は2013年度以降縮小してきたが、2017年度は「東京都下」を除きすべての地域で前年度より拡大し、64.24平米になった。広めの住戸を希望する傾向が強まったように見えるが、広めの住戸なら千葉県や埼玉県で探しやすいといえるだろう。

中古一戸建ては、東京都下や横浜・川崎以外の神奈川県に注目が集まった?

次に、中古一戸建て市場を地域別に詳しく見ていこう。

【図3】中古一戸建ての成約状況(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2017年度)」)より編集部にて作成

【図3】中古一戸建ての成約状況(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2017年度)」)より編集部にて作成

10年前(2007年度)と比べると、マンション市場は成約件数が2万8667件→3万7172件、成約価格が2545万円→3253万円と大きく市場が変わっているのだが、一戸建て市場は比較的安定している。10年前と比較すると、成約件数が9533件→1万2560件、成約価格が3305万円→3111万円といった違いしかない。

それでも、例えば東京23区を見ると、土地・建物面積を小さくしながらも成約件数が伸びているのは、新築・中古のマンション価格が急上昇したために中古一戸建てが注目されたといったことが考えられる。また、成約価格の上昇率が高いのは東京都下や横浜・川崎以外の神奈川県だが、新築マンションの供給が抑制されているなか、中古のマンションや一戸建てへの関心が高まったという見方もできるだろう。

一方、一戸建てらしい広さを求めるなら、ダントツで千葉県ということになる。

一戸建て市場は新築・中古ともに、上がり下がりはありながらも市場は安定している。しかし、マンション市場、特に新築マンションの供給量や価格の変動が激しく、中古マンションはもちろん、一戸建て市場にも影響を及ぼす可能性がある。

首都圏の2018年の新築マンション市場は、2017年と同程度と見られているが、地域ごとにそれぞれに及ぼす影響が違うため、希望する地域の住宅市場全体を把握していく必要があるだろう。

全期間固定金利型ローン【フラット35】、2018年4月から何が変わった?

全期間固定金利型ローンの代表格【フラット35】。実は、年度ごとに、制度の見直しなどを行っている。これまでと同じと思っていると条件が変わっていて、自分にとってプラスになったりマイナスになったりする場合もある。2018年度からの変更点を見ていこう。【今週の住活トピック】
「【フラット35】2018年4月の主な制度変更事項のお知らせ」を発表/住宅金融支援機構【フラット35】の借入対象となる費用が拡充される

まず、【フラット35】の基本的な特徴をおさらいしておこう。

住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して、ユーザーに提供している住宅ローンで、35年などの長期間にわたって金利が変わらないのが特徴だ。提携先の民間金融機関によって、実際に借りるときに適用される金利や融資手数料が異なる点が注意点だ。また、【フラット35】の技術基準に適合している住宅でないと、借りることはできない。ただし、保証人が不要なので、保証会社に支払う保証料がかからない。2017年10月以降に申し込む場合は、団体信用生命保険が付帯される(団体信用生命保険の加入の有無や加入する種類によって金利は異なる)。

これが【フラット35】の基本的な特徴だが、実は意外に種類が多い。融資対象や返済期間などによって、金利が異なるので、ベースとなる種類を見ていこう。

返済期間が21年以上35年以下で利用できるのが【フラット35】だ。金利は、融資率(借入額/住宅の建設費・購入価額)で異なり、2018年4月時点の金利で見ると次のようになる。提携先の金融機関によって金利や融資手数料が異なるので、適用される金利に幅ができる。

【フラット35】 借入期間:21年以上35年以下

【フラット35】 借入期間:21年以上35年以下

年齢が高い、借入額が少ないなどの理由で返済期間を短くする場合は、さらに金利が下がる。これを【フラット20】と呼び、金利は次のようになる。

【フラット20】 借入期間:15年以上20年以下

【フラット20】 借入期間:15年以上20年以下

「長期優良住宅」などの品質が優れた住宅の場合であれば、35年を超えた返済期間(最長50年)を設定できる。ただし、金利は高くなる。これを【フラット50】と呼び、金利は次のようになる。

【フラット50】 借入期間:36年以上50年以下

【フラット50】 借入期間:36年以上50年以下

中古住宅を購入してリフォームしてから居住するという場合には、リフォーム費用も借りられる【フラット35(リフォーム一体型)】も利用できる。リフォーム前の住宅が【フラット35】の技術基準を満たさない場合でも、リフォームすることで【フラット35】の技術基準を満たせば利用できるようになる。金利は【フラット35】(返済期間が20年以下の場合は【フラット20】)と同じだ。

ただし、【フラット50】や【フラット35(リフォーム一体型)】は、取り扱っていない金融機関もあるので、注意が必要だ。

以上が基本的な【フラット35】の種類だ。適用される金利は、毎月見直される。
で、2018年4月以降の変更点は、借入対象費用が拡充されることだ。

具体的には、印紙代や仲介手数料、火災保険料、ホームインスペクション(住宅診断)にかかる費用、登記に関する司法書士報酬・土地家屋調査士報酬、融資手数料などが融資対象となる。頭金を1割入れて融資率9割以下にしたいが、もう少し借りたいという場合には朗報だろう。ただし、住宅価額も諸費用も借りられるだけ借りようとすることは、借り過ぎで返済が困難になる危険性もあるので、あまりお勧めできない。

金利引き下げタイプの【フラット35】の変更点は?

【フラット35】は、その技術基準を満たさない住宅やワンルームマンションのような狭い住宅には利用できない。一方で、性能の高い住宅には、金利の引き下げなどの優遇措置を設けて、良質な住宅を増やそうとしている。

【フラット35】Sは、省エネ性や耐震性の高い新築住宅や中古住宅を取得する場合に、当初一定期間金利を引き下げる制度。2018年度(3月31日までの申込受付分)も継続され、【フラット35】、【フラット20】、【フラット50】、【フラット35(リフォーム一体型)】の適用金利から一定期間0.25%金利が引き下げられる。

【フラット35】S  ※金利Aプランは、長期優良住宅などのより高い性能を実現した場合に適用されるもので、金利引き下げ期間が10年間になる。

【フラット35】S ※金利Aプランは、長期優良住宅などのより高い性能を実現した場合に適用されるもので、金利引き下げ期間が10年間になる。

同様に、【フラット35】リノベと【フラット35】子育て支援型・地域活性化型も継続されるが、いくつか変更点がある。

【フラット35】リノベは、中古住宅を購入して一定の性能向上リフォームを行う場合(住宅事業者が性能向上リフォームを行った中古住宅を購入する場合も対象)に、当初一定期間金利を引き下げる制度。2018年4月1日~2019年3月31日申込受付分については、金利引き下げ幅が「▲0.5%」に縮小された。一方で、金利Bプランの省エネ基準に「開口部の断熱改修」などが加わり、利用対象が広がった。

【フラット35】子育て支援型・地域活性化型は、地方公共団体と住宅金融支援機構が連携して実施する住宅ローンで、地方公共団体による補助金交付などの財政的支援とあわせて、【フラット35】の金利を引き下げる制度。2018年度は、金利引き下げ幅はこれまでと同じ「▲0.25%」で、【フラット35】Sとの併用が可能。ただし、【フラット35】地域活性化型で「空き家活用」が加わった。いずれにせよ、対象となる地方公共団体が限られるので、「【フラット35】子育て支援型・地域活性化型を連携している地方公共団体」で、あらかじめ確認する必要がある。

金利引き下げタイプの【フラット35】は、それぞれに予算金額があるので早期に達する見込みとなった場合は受付が終了する可能性がある。また、【フラット35】リノベは取り扱っていない金融機関もある。などが注意点だ。

こうして見ていくと、【フラット35】を借りるにはいろいろな条件があって面倒、と思う人もいるかもしれない。でも、「今後支出が増える可能性があるので、金利を固定=毎月返済額を固定したい人」や「金利の上昇を気にせずにいたい人」などには、全期間固定金利型のメリットは大きい。

また、住宅の技術基準を確認する検査が入るので、住宅の品質を重視する人には安心材料になるし、借りる人の条件がオープンになっているので、勤務年数や形態、年収などに不安がある人にも借りやすい側面がある。詳しいことは不動産会社や金融機関に相談するとよいだろう。