「かぼちゃの馬車」が経営破綻!国が改定したサブリース契約の標準契約書の中身は?

世間を騒がせた、シェアハウス「かぼちゃの馬車」トラブル。ついに運営会社の民事再生法申請に至った。シェアハウス運営事業のカギを握るのは「サブリース」の賃貸借契約にある。これまでもサブリースには問題点が指摘されてきたが、国土交通省が「賃貸借標準契約書」を改定した。改定ポイントは何か、見ていこう。【今週の住活トピック】
「賃貸住宅標準契約書」等を改定/国土交通省不動産のサブリースとは転貸借のこと。手軽な半面リスクもある

女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズの経営破綻。この事業の仕組みには、「サブリース」という賃貸借契約が利用されている。

サブリースとは、不動産会社が入居者に転貸することを目的に、物件オーナーから建物を借り上げる賃貸借契約(一般的に「サブリース原契約」と呼ばれる)のこと。つまり、物件オーナーが、実質的には不動産会社に入居者の募集(仲介)と管理を一括して任せ、賃料を得る仕組みとなっている。

不動産経営では「空室リスク」が大きな課題となるが、サブリースでは空室期間も不動産会社から安定した賃料を得ることができる。つまり、専門的な知識がなくても、手間をかけずに不動産経営ができるというメリットがある。

一方で、不動産会社との契約期間中に、契約賃料の減額や中途解約を求められる可能性があったり、不動産会社が倒産したりする危険性もある。もちろん契約賃料は、不動産会社が入居者の募集や管理にかかるコストや空室率を見込んで設定するので、オーナーが自ら不動産経営するよりも低くなる。

「かぼちゃの馬車」は、サブリースでなぜトラブルになった?

とはいえ、サブリースが、常に危険性が高いというわけではない。健全にサブリース事業を行っている不動産会社も、数多く存在する。

今回のトラブルの経緯を見ていこう。
2012年に創業したスマートデイズは、首都圏を中心に女性専用のシェアハウスを運営し、事業を急拡大させた。しかし、2017年10月ころからシェアハウスを所有するオーナーに賃料の大幅な減額を通告しはじめ、2018年1月ごろからはオーナーに保証した賃借料の支払いが停止するようになった。

すると、数多くのオーナーがローンを返済できなくなり、各所への相談が急増して、トラブルが大きく報じられるようになった。ついに運営会社は、4月9日に民事再生法の適用を東京地裁に申請し受理されたと発表するに至った。

トラブルの原因は、空室リスクへの対応が不十分なのに高い賃料を保証するなど、健全なサブリース事業を行っていなかったことにある。ビジネスモデルも、資金力が豊富とは言えない会社員などに高額のローンを借りさせて、シェアハウスを高い価格で取得させ、その差額を賃料の支払いに充てるといったゆがんだ構造だった。加えて、金融機関のローン審査についても問題が指摘されている。

国土交通省が「賃貸住宅標準契約書」を改定した理由は?その内容は?

国土交通省が「賃貸住宅標準契約書」を改定した理由は2つある。

1つ目の理由は、2020年4月に施行予定の「民法改正」だ。
賃貸借契約では、以下のような点が改正される。
・退去時の敷金返還や原状回復に関して明文化する
・連帯保証人を保護するために、あらかじめ保証する限度額の合意を必要とする

限度額を記載した連帯保証にはなじみがないこと、連帯保証人を依頼しづらいために保証会社による保証を希望する人が増えていることなども背景にあり、新たに「賃貸住宅標準契約書(家賃債務保証業者型)」を作成し、「賃貸住宅標準契約書(連帯保証人型)」に極度額の記載欄を設けるなどの改定が行われた。

もう1つの理由が、サブリースに関するトラブル対応だ。
これは以前から、「長期間にわたり一括借り上げて家賃保証をするので、安定した賃料が手に入る」と賃貸アパートを建てることを勧誘されて新築したものの、一定期間経過後に賃料相場の下落を理由に賃料の減額を求められ、これに応じないと中途解約されるといったトラブルが生じていたからだ。

特に、2015年からの相続税増税の影響で、節税対策として賃貸アパートの建設に拍車がかかり、トラブルは増加していた。2018年3月27日には、国土交通省が消費者庁と連携し、「サブリース契約に関するトラブル」への注意を呼び掛けたほどだ。

では、具体的に「サブリース住宅原賃貸借標準契約書」で改定された点を見ていこう。
次に示したように、「賃料の改定時期の明確化」や「サブリース業者から契約を解約できない期間の設定」が追加されている。

マーカー部分が追加項目※マーキングは筆者による(出典/国土交通省「サブリース住宅原賃貸借標準契約書(平成30年3月版)」より抜粋転載)

マーカー部分が追加項目※マーキングは筆者による(出典/国土交通省「サブリース住宅原賃貸借標準契約書(平成30年3月版)」より抜粋転載)

つまり、運営会社が勝手に減額を通告したり、短期間で中途解約をしたりできない契約内容になる。ただし、※以降にあるように、周辺の賃貸市場の変化や建物の不具合などに応じて、協議のうえで賃料を改定することは可能だ。

ほかにも、転貸の条件項目への「民泊の可否に関する事項」を追加したり、「個人情報保護法等の遵守」を盛り込んだりといった、最近の変化に応じた改定も行っている。

賃貸借契約書の国土交通省のひな型が変わったからといって、不動産経営を安易に考えるのは禁物だ。不動産会社任せにすることなく、提示された賃料が妥当なものなのか、周辺の賃貸市場に需要はあるのかといった基本的なことを、自分自身でも見極める必要があるだろう。

一人住まいの新居で購入したもの1位、男性は冷蔵庫、女性はカーテン 処分したのは衣類

「この春から新生活をスタートさせた」という人も多いだろう。一人暮らしで新たに購入したものは、男女別で異なるといった調査結果を、FJネクストが発表した。調査対象は、引越し経験のある、首都圏のワンルームに単身入居している20代・30代の男女。彼らの新生活の実態は、どういったものなのだろう?【今週の住活トピック】
「ひとり住まいの『引っ越し事情』アンケート」結果を発表/FJネクスト初めての一人暮らしでは、7割が部屋決めに親の承認

初めての一人暮らしで、「部屋を決める際に親の承認を得たか」を聞いたところ、約7割(70.8%)が親の承認を得たと回答した。男女別でみると、親の承認を得たのは女性(74.5%)のほうが男性(67.0%)よりやや多い傾向にあった。

親の承認を得た理由などは聞いていないようだし、学生や新社会人として一人暮らしを始めるのと、すでに社会人になってから始めるのとでは違いもあるだろう。筆者が思うには、親の承認を得るのは、一人暮らしを始める際の初期費用や賃料などの一部を親が負担しているからではないだろうか? 特に、女性の一人暮らしの場合は、親が防犯面を気にして、援助してでもセキュリティーの高い部屋に住んでほしいと考える、ということもあるのだろう。

一人暮らしを始めるときに新たに購入したもの1位は、男性は冷蔵庫、女性はカーテン

一人暮らしを始めたとき、「部屋に備え付けるもので新たに購入したもの」を複数回答で聞いたところ、購入したものトップ3は、「冷蔵庫」(75.8%)、「カーテン、ブラインド」(74.8%)、炊飯器やレンジ等の「調理家電」(74.5%)となった。

Q.一人暮らしを始めたとき、部屋に備え付けるもので新たに購入したものは何ですか。(複数回答)(出典/FJネクスト「ひとり住まいの『引っ越し事情』アンケート」より転載)

Q.一人暮らしを始めたとき、部屋に備え付けるもので新たに購入したものは何ですか。(複数回答)(出典/FJネクスト「ひとり住まいの『引っ越し事情』アンケート」より転載)

ただし、男女でその順位は入れ替わる。プライバシー対策となるカーテンやブラインドを、女性は1位の84.5%が購入しているのに対し、男性は65.0%しか購入しておらず、その順位は5位まで下がる。光が入ったり出たりするのを遮ったり、中の様子を見えづらくする効用のあるカーテンやブラインドが、なくても問題ないと考える男性がけっこういるということだろう。

また、購入したもののなかでよく使用したもの、あまり使用しなかったものを聞いたところ、「最もよく使用したもの」は冷蔵庫や電子レンジ、「あまり使用しなかったもの」は炊飯器や掃除機、アイロンとなった。

Q.一人暮らしを始めたときに購入したものの中で、最もよく使用したもの、あまり使用しなかったものは何ですか。(自由回答)(出典/FJネクスト「ひとり住まいの『引っ越し事情』アンケート」より転載)

Q.一人暮らしを始めたときに購入したものの中で、最もよく使用したもの、あまり使用しなかったものは何ですか。(自由回答)(出典/FJネクスト「ひとり住まいの『引っ越し事情』アンケート」より転載)

その理由についての自由記述を見てみよう。
「冷蔵庫」をよく使用したのは『食料を安い時に買いだめすることができる』から。「電子レンジ」をよく使用したのは、『コンビニ飯に欠かせない』から。

一方、「炊飯器」をあまり使用しなったのは『ごはんを炊く機会があまりない』から。「掃除機」は『部屋が狭いのでいらなかった』から。「アイロン」は『かけるのが面倒、クリーニングに出す方が早い』から。などが挙がった。

通勤や通学をしながら、家で食事をつくるのか、洗濯や掃除はいつどのようにするのか、といったことを具体的にイメージしたうえで、家電製品を購入するのがよいようだ。

加えて、一般的な住まいには冷蔵庫や洗濯機の置き場所が用意されているが、炊飯器や掃除機などはどこに収納するか自分で考えないといけない。奥にしまってしまい、そのたびに出すのが面倒ということにもなりかねない。「購入したけどあまり使わないお荷物」にならないようにしたいものだ。

引越しのときには「衣類」を処分。処分方法はゴミに出す

「引っ越しの際、処分したもの」については、「衣服」「書籍」「靴」がトップ3となった。ためこむと意外にかさばるものばかりだ。特に、女性の場合は男性と比べて、衣類と靴の処分が多いのはもっともな点だろう。一方で、「処分したものはない」という物持ち派も約3割(29.8%)いた。

Q.引っ越しの際、処分したものは何ですか。(複数回答)(出典/FJネクスト「ひとり住まいの『引っ越し事情』アンケート」より転載)

Q.引っ越しの際、処分したものは何ですか。(複数回答)(出典/FJネクスト「ひとり住まいの『引っ越し事情』アンケート」より転載)

その処分方法については、「ゴミに出す」が83.6%と圧倒的に多いが、「人に譲る」ほかに、出張買取を利用したり、ネットオークションやフリーマーケットに出したりといった、“換金方法”を選択した人もいた。

さて、新居に引越して新鮮な気持ちで新生活をスタートする人も多いだろうが、「新鮮な気持ち」が続くのは、どのくらいまでだろう?調査結果では、約3割(28.1%)が1週間程度まで、大半(76.1%)は長くもって1カ月程度まで(1週間程度までを含む)と回答している。

今の新鮮な気持ちをこれからも忘れないようにして、新生活をがんばってほしい。

働く女性のホンネ、3人に1人は 「結婚後に夫が専業主夫になってもいい」!?

NPO法人日本FP協会は、全国の20代~50代の働く女性を対象に、ホンネや暮らしとマネープランについて調査を実施した。調査結果を見ると、働く女性の3人に1人が「結婚後に夫が専業主夫になってもいい」と回答するなど、そのホンネが見え隠れする状況が浮かび上がった。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「働く女性のくらしとお金に関する調査2018」を公表/日本FP協会20代の働く女性は、意外にも「家庭に注力したい」が過半数!?

まず、働く女性の意識について、「【P】外に出て働いていたい」と「【Q】家庭のことに注力していたい」のどちらが近いかを聞いたところ、「【P】に近い」が 60.0%、「【Q】に近い」が 40.0%となった。

【画像1】働くことについての意識として、「【P】外に出て働いていたい」と「【Q】家庭のことに注力していたい」のどちらにあてはまるか (単一回答)(出典/日本FP協会「働く女性のくらしとお金に関する調査2018」)

【画像1】働くことについての意識として、「【P】外に出て働いていたい」と「【Q】家庭のことに注力していたい」のどちらにあてはまるか (単一回答)(出典/日本FP協会「働く女性のくらしとお金に関する調査2018」)

「【Q】家庭のことに注力したい」は、年代が若くなるにしたがって増加し、20代では半数を上回る52.3%に達するなど、興味深い結果となった。一方、子どもの有無でみると、子どものいる女性のほうが「【P】外に出て働いていたい」が 66.8%と高くなり、子どもの教育費などを自分の収入で補おうとする背景もうかがえる。

また、仕事と子育ての両立について、「現在の仕事を続けていると、子育てとの両立は無理だと思うか」どうか聞いたところ、「そう思う」が54.7%(「非常にそう思う」18.3%+「ややそう思う」36.4%)と過半数となり、両立の難しさを感じている女性が多いことが分かった。

ほかにも、「(将来)夫が転勤になったら、今の職場を退職すると思う」(67.4%)、「(将来)出産するときは、今の職場を退職すると思う」(49.0%)など、働く女性が仕事を続けるうえでハードルになることが多いことも分かった。

働く女性の3人に1人が、夫の「専業主夫化」に肯定的

では、働く女性は、家庭における夫の存在についてどう思っているのだろうか?

「結婚後に(夫が望むなら)夫が専業主夫になってもいいと思うか」どうかを聞いたところ、なんと「そう思う」が32.2%、つまり3人に1人は夫が家事に専念する専業主夫化を肯定する結果となった。

さらに、専業主夫肯定派に、その理由を聞いたところ、「いろいろな家庭があってもいいと思うから」(54.7%)、「家事・育児も立派な仕事だと思うから」(28.0%)、「夫は仕事・妻は家庭という時代ではないと思うから」(27.7%)が上位に挙がった。働く女性は、家庭内の役割分担についても柔軟に考えているようだ。

さすがに「専業主夫」とまではいかなくても、夫にもっと家庭で頑張ってほしいと思う働く女性も多いだろう。

既婚の働く女性に「夫にもっと家庭で頑張って欲しいと思うこと」を聞いたところ、上位は「食事の片づけ(流しに運ぶ・洗う・しまう)」(35.8%)、「整理整頓(小物の片づけ・服や物をちらかさないなど)」(31.5%)、「お風呂の準備(お風呂掃除・お湯張り)」(30.9%)、「ゴミ出し(収集・分別・ゴミ捨て)」(30.1%)の順となった。

【画像2】夫にもっと家庭で頑張って欲しいと思うこと(既婚者対象、複数回答)(出典/日本FP協会「働く女性のくらしとお金に関する調査2018」)

【画像2】夫にもっと家庭で頑張って欲しいと思うこと(既婚者対象、複数回答)(出典/日本FP協会「働く女性のくらしとお金に関する調査2018」)

家事の王道である料理や掃除、洗濯も頑張ってほしいけど、せめて後片づけや準備などはもっと頑張ってほしいと思う女性が多いということだろう。

夫もだけど、住まいや設備にも頑張ってもらおう

働く女性は、仕事に家事にと大忙しだ。
家事負担を軽減するには、
・住まいや設備で負担を軽減する
・家族が家事参加しやすいように工夫する
などが必要だ。

例えばわが家は、キッチン脇に洗濯機があり、廊下をはさんで洗面・浴室があって、一直線の動線で行き来できる。台所仕事をしながら洗濯の進捗状況を確認できるうえ、今のような花粉のシーズンには、身につける洗濯物を浴室に運んで干して浴室乾燥機で乾かしているが、その動線も短くて済む。動線の短さは繰り返す作業が多いほど効いてくる。浴室乾燥機のほかにも、キッチンには食器洗い機がビルトインされている。

このように、住まいの工夫で家事負担を軽減することも考えたい。今後「IoT(Internet of Things)」住宅が普及して、家電や住宅設備がインターネットにつながるようになったら、さらに家事効率を手助けできるようになるだろう。負担が少ないほど、家事参加もしやすくなるという効果もある。

また、キッチンが狭かったり、作業スペースが小さく高さも合わなかったりすると、家事参加したくてもしづらいということになる。分別できる機能的な収納がないと、整理整頓もしづらくなる。住まい選びの際に「家事参加のしやすさ」なども考慮しておくのがベストだろう。

「#うちのインティライミ」というハッシュタグをご存じだろうか?夫の家事参加に対する不満をぶちまけるSNS投稿に、このハッシュタグをつけるのだ。それは、テレビドラマ「コウノドリ」でナオト・インティライミさんが演じる夫が、本来夫婦で主体的に取り組むはずの子育てを「手伝う」と言ったり、仕事を優先してしまったりするシーンがあったからで、「うちの夫も」という投稿が盛んになったのだとか。

漠然と「家事や育児をやるよ」という話し合いだけでなく、具体的に事前にすり合わせるコミュニケーションも重要だろう。そういう意味では、住まい選びのときこそ、具体的にどの家事は誰がどのようにやるのかをきちんと話し合っておき、そのうえで住まいを選ぶことで、住まいにも夫にも満足度が上がるのではないかと思う。

【2017年新築マンション】平均購入価格は首都圏が5452万円で過去最高、関西圏が4060万円で微減

リクルート住まいカンパニーでは、「2017年首都圏新築マンション契約者動向調査」及び「2017年関西圏新築マンション契約者動向調査」の結果を発表した。新築マンションの平均購入価格は、首都圏では上昇、関西圏では微減するものの、ローンの借入額はいずれも過去最高になる結果となった。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「2017年新築マンション契約者動向調査」を発表/リクルート住まいカンパニー
●首都圏
●関西圏平均購入価格は首都圏が5452万円で過去最高、関西圏が4060万円で微減

調査は、新築マンションの購入契約者を対象に、2017年1月~12月に集計した、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県:4768件)と関西圏(大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・和歌山県・滋賀県:1160件)の結果をまとめたもの。

新築マンションの平均購入価格は、首都圏が5452万円となり、2001年の調査開始以来の最高額になった。これに対して、関西圏は4060万円で前年より34万円低下となった。首都圏と関西圏で動向に違いが出た理由は、マンション価格が高額となる都心部の占めるシェアの違いだ。

首都圏では、購入価格「6000万円以上」が30.5%となり、前年(23.2%)より大きく拡大したが、これが平均額を引き上げる要因となっている。購入した物件の所在地を見ると、「東京23区」のシェアは43.2%となり、前年(40.3%)より拡大した。「東京23区」のシェアが広がっていることと、6000万円以上の購入者が増えていることとは関係性があるだろう。

一方、関西圏では購入価格「5000万円以上」の14.2%(前年16.8%)と「3500万~4000万円未満」の23.1%(前年27.0%)の縮小が目立つ。購入した物件の所在地でも「大阪市」のシェアが35.5%となり、前年(40.2%)より縮小した。こちらも、大阪市などの高額都心部の購入者が減ったことの影響があると見てよいだろう。

【画像1】購入価格(全体/実数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2017年首都圏新築マンション契約者動向調査」「2017年関西圏新築マンション契約者動向調査」)

【画像1】購入価格(全体/実数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2017年首都圏新築マンション契約者動向調査」「2017年関西圏新築マンション契約者動向調査」)

では、供給サイドの状況を見てみよう。不動産経済研究所の首都圏および近畿圏の「マンション市場動向2017(年間まとめ)」によると、東京都区部の首都圏におけるシェアは44.6%で、対前年で8.5%増、大阪市部の近畿圏におけるシェアは48.5%で、対前年で15.4%増となっている。

購入物件所在地の結果を見ると、大阪市内のシェアはむしろ前年より減少しているので、供給量の増減とは必ずしも一致しないことが分かる。購入者にとって手の届きやすい価格か、魅力的なマンションかなどの影響もあるのだろう。

ローンの借入総額は首都圏・関西圏ともに2005年以降の最高額 返済は大丈夫?

さて今回の調査結果で注目したいのは、ローン借入総額の平均額だ。

首都圏が平均4568万円で2005年以降の最高額。借入額「5000万円以上」という人が前年(28.0%)より大きく増えて35.0%になった。関西圏は平均3512万円で同じく2005年以降の最高額。借入総額「4000万~5000万円未満」という人が前年(17.7%)より増えて22.1%になった。

【画像2】ローン借入総額(ローン借入者/実数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2017年首都圏新築マンション契約者動向調査」「2017年関西圏新築マンション契約者動向調査」)

【画像2】ローン借入総額(ローン借入者/実数回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「2017年首都圏新築マンション契約者動向調査」「2017年関西圏新築マンション契約者動向調査」)

超低金利が続くとはいえ、こんなに借りて、返済は大丈夫なのだろうか?

平均世帯総年収を見ると、首都圏で944万円、関西圏で776万円だ。
世帯総年収がこれだけあれば、返済負担もさほど重たくはないだろう。ただし、注意したい点がある。

既婚世帯のうちの共働き比率を見ると、首都圏で64.9%、関西圏で60.4%とかなり高い。例えば、夫だけの年収が900万円の場合も、夫の年収が500万円・妻の年収が400万円の場合も、世帯総年収は900万円になる。ただし、共働きの場合は夫婦ともに働き続けないと年収900万円を維持できない。子育てや介護などの理由でどちらかが働けなくなったとしたら、年収が一気に下がるというリスクなどにも配慮したい。

購入理由として「金利が低く買い時」が大きく減少!

最後に、購入理由を見ていこう。

首都圏・関西圏ともに、住まいの購入を思い立った理由は、「子供や家族のため、家を持ちたいと思ったから」が最多で、「現在の住居費が高くてもったいないから」、「金利が低く買い時だと思ったから」と続く。
2017年の特徴として、前年では2番目に多かった「金利が低く買い時」の理由が大幅に下がった点に注目したい。

アベノミクスによる超低金利が長く続いてきたことで、購入理由としての影響力が下がっているのだろう。代わりに上昇したのが、関西圏では「子供や家族のため」や「住居費がもったいない」であるが、首都圏では「資産を持ちたい、資産として有利」であるという点も興味深い。首都圏では、新築マンションを住まいより資産として見る傾向が高まっているのだろうか。

筆者は、「マイホームは欲しいと思ったときが買い時」と考えている。まず、マイホームで日々暮らしたいと思う「理由」があってのことと思うので、その人なりのタイミングは大きな決め手になる。加えて、購入には時間とパワーもかかるので、欲しいと思った情熱でやり抜くことも重要だからだ。さらに今なら、低金利のメリットも活かせるだろう。

だからといって、無理な借り入れをするのは禁物だ。金利が上昇したときに返済に無理はないか、いつまで共働きを続けられる見通しがあるか、ほかに大きな出費の予定はないか、などをきちんと考慮した上で、自分らしいマイホームを見つけてほしいと願う。

首都圏の4割が賃貸の更新をタイミングに引っ越し、7割が更新料を「仕方がない」と思う

春の引っ越しシーズン到来!今年は人手不足が理由で、引っ越したいのに、引っ越し業者に断られる事例も多いという。そんななか、UR都市機構が賃貸住宅の居住者に引っ越しに関する調査をした。そのなかでも、更新料と保証人に注目して、調査結果を見ていくことにしよう。【今週の住活トピック】
「賃貸住宅居住者に聞く 引っ越しに関する調査」を公表/都市再生機構(UR都市機構)首都圏では「賃貸の契約更新前に引っ越す」人も多い

調査結果でまず面白いと思ったのは、「引っ越しを考えるタイミング」(複数回答)についてだ。

自身や家族の「就職・転職」(20.7%)や「異動・転勤」(14.0%)といった、勤務地がらみのタイミングが多い(合計で34.7%)ことは予想していた。だが、「結婚」(19.8%)や「進学」(9.4%)などのライフステージの変化よりも多いのが、「住んでいる家に不満が出た」(34.0%)や「より良い物件に住み替えたいと思った」(32.9%)といった、家に関することだったのは意外だ。

「勤務地なども変わるし、家も良くしたいし、心機一転引っ越しをするか」というように、複数の条件が重なると行動に移しやすいということなのだろう。

さらに注目したいのは、首都圏の賃貸居住者だけは「住んでいる家の契約更新が近づいた」タイミングで引っ越しを考えた人が40.9%もいることだ。大阪・京都・兵庫では14.9%、愛知では15.4%なのに比べると、突出して多い。

【図1】これまでに引っ越しを考えたタイミングとして、あてはまるものを全て選択ください。(出典:UR都市機構「賃貸住宅居住者に聞く 引っ越しに関する調査」)

【図1】これまでに引っ越しを考えたタイミングとして、あてはまるものを全て選択ください。(出典:UR都市機構「賃貸住宅居住者に聞く 引っ越しに関する調査」)

地域で異なる更新料事情、首都圏の7割は「更新料は仕方がない」と回答

では、「契約更新」とはどういうものなのだろうか?

賃貸住宅を借りるときには、大家さんと賃貸借契約を結ぶ。契約期間は2年間としている場合が多く、2年経った後も継続して住む場合は、同じ条件で契約を更新するというのが一般的。このときに、更新料を大家さんに払ったり、更新の手続きをするための手数料を管理会社に払ったりする場合がある。

ならば、「更新料がある賃貸住宅には住まない」と思う人も多いだろう。
調査結果では、そう考える人は24.5%いた。しかし、首都圏に限って見ると10.6%に減ってしまい、「更新料を払うのは嫌だが、仕方ないことだと思う」人が70.7%もいる。

【図2】賃貸住宅の契約更新料についてどのように思いますか?最もお気持ちに近いものをお選びください。(出典:UR都市機構「賃貸住宅居住者に聞く 引っ越しに関する調査」)

【図2】賃貸住宅の契約更新料についてどのように思いますか?最もお気持ちに近いものをお選びください。(出典:UR都市機構「賃貸住宅居住者に聞く 引っ越しに関する調査」)

なぜかというと、この更新料を払う仕組みは、首都圏で多い商慣習だからだ。国土交通省が実施した「平成28年度住宅市場動向調査」によると、「更新料有り」は首都圏では過半数の55.8%だが、近畿圏は19.1%、中京圏は15.6%となっている。加えて、更新料の金額は、「家賃の1カ月分」(首都圏86.0%、近畿圏、51.9%、中部圏50.0%)というのが最も多い。

つまり、首都圏では更新料がない賃貸住宅を探すことが難しい状況にあり、更新料を仕方がないと受け入れるか、更新を機に引っ越しをするかという発想になると考えられる。

このように、更新料の有無やその金額は地域や物件ごとに異なるが、双方の合意によるというのが根拠となるので、賃貸借契約書に必ず更新料について記載されているはず。契約時には必ず確認しておきたい。

7割が「保証人を頼みにくい」と感じている

UR賃貸住宅の調査結果では「保証人制度」についても質問している。

賃貸住宅を借りる場合、借りた人が家賃を払えなくなった場合に、代わりに払ってくれる保証人を立てるように求めるのが一般的だ。多くの場合は、借りた人と同じだけの責任を負う「連帯保証人」が求められるので、保証人を頼める人を探すのに苦労するということにもなる。

実際に調査結果では、「保証人を頼みにくい」(69.5%)、「頼める人がいない」(37.0%)といった回答が多くなっている。

最近は、保証人の役割を「保証会社」に依頼する事例も多くなっている。この場合は、契約時に家賃の5割程度を払うことが多いようだが、実際にはケースバイケースで、賃貸住宅ごとに保証会社が利用できるか(保証会社の利用が必須という場合もある)、費用はいくらかなどは異なる。

なお、UR賃貸住宅の場合は保証人が不要となっているが、どんな人でも保証会社が利用できたり、保証人不要となったりするわけではない。「自分の収入に見合った賃料の物件を選ぶ」ことがカギになる。

引っ越しのときに使えるカシコイ工夫は?

調査では、「初めて部屋を借りる人に対して、引っ越し費用を抑えるためにオススメしたい工夫」を聞いている。1位は「自分で荷造りを行う」(36.3%)、2位は「複数社に見積もりを依頼」(30.4%)、3位は「不用品を捨てる・売る」(26.6%)だった。

引っ越しで行った「不用品の処分方法」については、「普通ゴミとして出した」(50.0%)が最多。ところが、普通ゴミ以外の処分方法が年代によって少し異なるのが面白い。50-60代では「自治体に粗大ゴミなどとして依頼」が2番目に多いのに対し、40代以下では「リサイクルショップ・古着屋・古本屋に売る」が2番目に多くなり、少しでも換金したいという思いが伝わってくる。

さらに、20代では「フリマアプリで売る・譲る」や「家族や友人・知人に譲る」も多くなり、誰かに使ってもらおうという姿勢もうかがえる。

さて、契約更新の際には、更新料を払う可能性があるほか、保証会社を利用した場合の保証料や火災保険料なども新たに払うことになる。となると更新時にはかなりの費用がかかるので、住んでいる賃貸住宅に不満があるなら、もっと良い物件を探そうということになるわけだ。

この春、契約更新をきっかけに引っ越しを決めた人もいるのではないだろうか。

アラ30世代のパパは家事参加に積極的! 子どもも一緒に家事をするには?

積⽔ハウス 総合住宅研究所が「男性の家事参加(パパ家事)」の実態を調査したところ、特に25~34歳(アラ30)の男性が家事参加に積極的であることが分かった。子どもも一緒に、家族で家事をするために、住まいでどんな工夫をしたらよいだろう?【今週の住活トピック】
「家事参加についてのアンケート調査」を公表/積水ハウスアラ30パパは家事参加に積極的

調査対象は、⼦どものいるフルタイム勤務の既婚男性(20~60代)。炊事・洗濯・掃除といった王道の家事を「自分が行う」と答えたパパは、25~34歳(アラ30 )が半数近くに達し、35~44歳(アラ40)、45~54歳(アラ50)、55~64歳(アラ60)に比べて実施率に⼤きな差があり、家事参加に積極的であることが分かる。

【画像1】子どものいる男性の家事実施率(出典/積水ハウス「家事参加についてのアンケート調査」より転載)

【画像1】子どものいる男性の家事実施率(出典/積水ハウス「家事参加についてのアンケート調査」より転載)

パパが参加する定番家事は、「ゴミ出し」「⾵呂掃除」「⾷器洗い」がトップ3。なかでも、アラ30世代はすべての項目で実施率がトップとなり、幅広い家事に参加していることが分かる。
一方、配偶者(妻)の家事実施率が高いものは、「朝食・昼食・夕食を作る」や「洗濯物を干す・取り込む・たたむ・しまう」など、技術や経験が必要で、時間もかかる家事だった。

【画像2】自分(男性)が行う家事の内容(出典/積水ハウス「家事参加についてのアンケート調査」より転載)

【画像2】自分(男性)が行う家事の内容(出典/積水ハウス「家事参加についてのアンケート調査」より転載)

「家族みんなで家事参加」のために、住まいで工夫できる?

「家事を週に3回以上⾏う」家事積極パパと「家事をほとんどしない・まったくしない」消極パパに、「子どもも家事に参加させたい」かどうか聞くと、YES(そう思う・まあそう思う)の回答は、積極パパ(68.5%)のほうが消極パパ(61.8%)より高いものの、いずれも子どもの家事参加には肯定的だ。

ならば、子どもも一緒に家族で家事参加をするために、住まいの工夫も必要だ。

例えば、キッチンの高さは、女性の背の高さに合わせていることが多い。男性には低かったり、子どもには高かったりするので、踏み台などを使ったり、作業スペースを別に設けるなどの工夫をしたい。狭いキッチンに家族が入ると動線がぶつかって動きづらいといったこともある。広めのキッチンを選んだり、出入り口が1つではなく回遊できるようなものを選ぶと、「イライラ」も軽減されるだろう。

動線がシンプルなこともポイントだ。「ごみ箱に捨てる、ごみをまとめる、ごみを出す」とか、「洗濯物を洗う、干す、取り込む、たたんでしまう」など、家事は一連の作業が続くことが多い。家事コーナーなどがあって、作業を集中的に行えたり、動線がスムーズだと家族も参加しやすいだろう。

収納についても、しまう場所をそれぞれに決めておけば「ママしか分からないから、家族はできない」といったことが避けられる。「ルールが守られないから、自分でやったほうが早い」とママも思わないで、我慢して見守ることも大切だ。

調査結果では、家事積極パパほど、「頑張っていることを分かってほしい」と思っていることも浮かび上がった。パパや子どもが少しでも家事に携わったときには、それを認めてあげることが、最も効果があることは間違いないだろう。

新築と中古のマンション市場、2017年首都圏の市況はどうだった?

不動産経済研究所が首都圏と近畿圏における2017年の新築マンション市場動向を、東日本不動産流通機構(東日本レインズ)が2017年の「首都圏不動産流通市場の動向」を、それぞれ発表した。さて、2017年首都圏の新築と中古のマンション市場は、どんな市況だったのだろう?【今週の住活トピック】
「首都圏マンション市場動向(2017年まとめ)」を発表/不動産経済研究所
「首都圏不動産流通市場の動向(2017年)」を発表/(公財)東日本不動産流通機構(東日本レインズ)首都圏の新築マンションは4年ぶりの増加、中古マンションは3年連続の増加で過去最高に

まず、不動産経済研究所によると、新築マンションの2017年の新規供給戸数は3万5898戸で、前年比0.4%増だった。2013年から供給減が続いていたが、4年ぶりの増加となった。ただし地域別で違いがあり、東京都下と神奈川県、千葉県では減少、東京都区部と埼玉県で増加した。

これに対して、東日本レインズによると、中古マンションの2017年の成約件数は3万7329件で、前年比0.4%増と伸び率は新築マンションと同様。成約件数は3年連続で増加となり、過去最高を更新した。地域別では、埼玉県と神奈川県では減少、東京都と千葉県では増加した。

【画像1】新築マンションの新規供給戸数の推移(出典:不動産経済研究所「首都圏マンション市場動向(2017年まとめ)」)と中古マンションの成約件数の推移(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2017年)」)

【画像1】新築マンションの新規供給戸数の推移(出典:不動産経済研究所「首都圏マンション市場動向(2017年まとめ)」)と中古マンションの成約件数の推移(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2017年)」)

注意したいのは、不動産経済研究所の市場動向では、ファミリータイプの民間の新規分譲マンションだけが対象となっている点だ。加えて、数値は供給戸数、つまり新規に販売された戸数なので、すべてが契約に至ったわけではない。ちなみに、累積契約率は83.2%となっている。

一方、東日本レインズの市場動向では対象が幅広く、ワンルームやリゾートマンションなども含まれる。加えて、数値は成約件数、つまり契約に至ったと東日本レインズに報告があった件数(件数は戸数と同じ)となっている。

したがって、単純に数値だけで比較することはできないが、2017年の首都圏のマンション市場では新築と中古で同じくらいの成約があったと推測できる。

新築も中古も、首都圏のすべての地域で価格は上昇

次に、マンションの価格について見ていこう。

新築マンションの1戸当たりの平均価格は5908万円で、前年より418万円・7.6%上昇した。地域別では、東京都区部7089万円(6.9%上昇)、東京都下5054万円(1.4%上昇)、神奈川県5524万円(9.6%上昇)、埼玉県4365万円(2.6%上昇)、千葉県4099万円(0.3%上昇)とすべてで上昇となった。

中古マンションの1戸当たりの平均成約価格は3195万円で、前年より56万円・4.8%上昇し、5年連続の上昇となった。地域別では、東京都区部4238万円(5.0%上昇)、東京都下2635万円(0.8%上昇)、神奈川県2805万円(5.1%上昇)、埼玉県2016万円(3.5%上昇)、千葉県1969万円(2.2%上昇)と、こちらもすべてで上昇した。

次に、各戸の面積の違いによる影響を排除するために、1m2当たりの平均単価を比べてみよう。

新築マンションの1m2当たりの平均単価は85.9万円で、前年より8.3%上昇した。地域別では、東京都区部108.3万円(7.8%上昇)、東京都下71.2万円(2.7%上昇)、神奈川県77.1万円(8.3%上昇)、埼玉県61.1万円(2.0%上昇)、千葉県57.0万円(1.8%上昇)と、やはりすべてで上昇となった。

【画像2】新築マンションの平均価格の推移(出典:不動産経済研究所「首都圏マンション市場動向(2017年まとめ)」)と中古マンションの平均価格の推移(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2017年)」)

【画像2】新築マンションの平均価格の推移(出典:不動産経済研究所「首都圏マンション市場動向(2017年まとめ)」)と中古マンションの平均価格の推移(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2017年)」)

中古マンションの1m2当たりの平均単価は50.00万円で、前年より4.4%上昇し、5年連続で上昇し23年ぶりに50万円台に達した。地域別では、東京都区部73.78万円(4.1%上昇)、東京都下39.03万円(1.1%上昇)、神奈川県41.88万円(4.3%上昇)、埼玉県29.68万円(3.3%上昇)、千葉県26.90万円(2.1%上昇)とすべてで上昇した。ただし、平均築年数は20.70年となり、経年化が年々進んでいる。

【画像3】新築マンションのm2単価の推移(出典:不動産経済研究所「首都圏マンション市場動向(2017年まとめ)」)と中古マンションのm2単価の推移(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2017年)」)

【画像3】新築マンションのm2単価の推移(出典:不動産経済研究所「首都圏マンション市場動向(2017年まとめ)」)と中古マンションのm2単価の推移(出典:東日本レインズ「首都圏不動産流通市場の動向(2017年)」)

新築マンションの価格は2013年、2015年、2017年で高騰しているのに対して、中古マンションは2013年からじりじりと上昇している点が特徴だ。

新築マンションの価格はさまざまな要因で変動し、新築の動きにつれて中古も変動する

新築マンションの市場動向は、経済情勢などの影響を強く受ける。例えば、リーマンショックや東日本大震災が起こったときには市場は縮小した。縮小期は確実に売れる人気エリアに新築マンションの供給が集中し、そのため価格が上昇する傾向が見られる。

また、東京オリンピックの開催が決まると、オリンピック需要でマンションの建築資材が高騰し、震災復興需要や地価が上昇に転じたことも加わって、マンションの原価といえる部分が値上がりした。こうしたことが、近年の新築マンションの価格上昇の理由となっている。

中古マンションは、新築マンション市場の影響を受ける。新築マンションの供給が少ないエリアでは、中古マンションに目が向けられるようになるし、新築の価格高騰、特に都心部などでは一般の人の手が届かない価格で販売されるようになると、中古マンションの需要が強くなる。その結果、成約件数が増えて、成約価格も新築ほど急激ではないがじりじりと上昇しているというのが、首都圏のマンション市場の実態だ。

これまで新築と中古を比較してマンション市場を見てきたが、マンション選びをする際に、当初から新築か中古かを決めてしまうのはどうかと思う。本来はどんな街に住みたいか、どんな暮らしがしたいかを考えて、それが実現するマンションを選ぶべきだろう。その結果として選んだマンションが、新築だったり中古だったりするという選び方が、スタンダードになることを期待している。

住宅ローン、変動金利型を選ぶ人が減っている!? 自分に合った金利タイプの選び方とは

住宅ローンには主に、変動金利型や固定期間選択型、全期間固定型の3タイプがある。2016年度に最も多く貸し出されたのは変動金利型なのだが、実は前年度より大幅に減少したという。その背景と金利タイプによる違いについて説明していこう。【今週の住活トピック】
2017年度「民間住宅ローンの貸出動向調査」の結果公表/住宅金融支援機構金利タイプは3つ。変動金利型が半数を占めるが大幅に減少

住宅ローンの金利タイプには、半年ごとに金利が見直される「変動金利型」、当初一定期間の金利を固定する「固定期間選択型」、返済中金利が変わらない「全期間固定型」があり、「固定期間選択型」で当初金利が固定される期間は、2年、3年、5年、10年などがある。

住宅金融支援機構が2017年7~9月に実施した「民間住宅ローンの貸出動向調査」によると、金融機関が2016年度に新たに貸し出した(借り換え含む)民間住宅ローンの額の構成比は、「変動金利型」が49.9%と半数を占めたが、2015年度の61.8%に比べて大幅に減少した。

一方、「固定期間選択型」は増加し、特に当初10年金利を固定する「10年固定」は2015年度の18.2%から28.8%と大幅に増加する結果となった。

【画像1】金利タイプ別の貸出実績(出典/住宅金融支援機構「民間住宅ローンの貸出動向調査(2017年度)」)

【画像1】金利タイプ別の貸出実績(出典/住宅金融支援機構「民間住宅ローンの貸出動向調査(2017年度)」)

住宅ローンを利用した人を対象とした調査結果のなかには、変動金利型が増えたという結果が出たものもあるが、全国の金融機関311件の貸出額の調査結果なので、全体の傾向を表していると見てよいだろう。

ただし、この調査には民間金融機関と住宅金融支援機構が提携する全期間固定型ローンの【フラット35】は含まれていない。そのため実際には、【フラット35】の貸出額が加わることで、「全期間固定型」は調査結果より多くなると考えられる。

今後の金利動向にも注意!金利タイプはどう選ぶ?

さて、住宅ローンを借りる際に、どう考えて金利タイプを選んでいるのだろう?

どの金利タイプを選ぶか決めるには、適用される金利や予定している返済期間、今後の金利変動をどう予測するか、金利上昇による利息増加への対応力などによって変わる。

金利は低いほど利息が少なくて済むが、長期的に返済を続ける住宅ローンの場合、金利が変動するリスクを読み込んでおく必要がある。ローンを借りる際に金利を固定した期間は、市場の金利が変動しても固定される。

一般的に、今のような市場が低金利のときには、「変動金利型」のほうが適用される金利が低く、長く金利が固定される「全期間固定型」のほうが金利は高くなる傾向にある。

もし「今後は市場の金利が上がる」と予測するなら、適用される金利が変動金利型より少し高くても、今の低金利を長く固定できる「全期間固定型」などを選ぶほうがよいとされる。逆に「市場の金利はまだ下がる」と予測するなら、「変動金利型」を選ぶほうがよいとされる。

また、「今後も市場の金利が変わらない」と予測するなら、適用金利が低い「変動金利型」や変わらないと思う期間の「固定期間選択型」(2年くらいは変わらないと思うなら2年固定を選ぶなど)を選ぶとよいだろう。

調査結果で変動金利型が減少しているのは、すでに最低水準の低金利になっているのでもう大きく下がることはないという予測が増えているという見方もできる。さらに、10年固定が増加しているのは、そうはいっても10年程度は今の低金利が続くという予測が多いとも考えられる。

返済期間や金利上昇への備えによっても選択肢は変わる

ただし、返済期間によって考え方は変わる。借り換えで返済期間が短くなっている場合などはなおさらだ。

最長の35年返済では、35年間にわたって金利が上乗せされるが、例えば10年返済なら金利は10年間にかかるだけだ。5年後に市場の金利が上昇を始めたとすると、残りの30年間も金利上昇の影響を受ける場合と残りの5年間しか影響を受けない場合では大違いだ。

金利は借入額の元金にかかる点も見逃せない。同じ額を借りた場合でも返済期間が短いほど、毎月の返済額は増えるが借入額の元金の減り方も早い。元金の減り方が早いほど、金利上昇による利息増加の影響を小さくできるというわけだ。

ほかにも、めいっぱいローンを借りて家計に余裕がない場合は、金利が上昇して毎月の返済額が増えると家計を圧迫するが、余裕が十分ある場合なら毎月返済額の上昇への対応策もいろいろ考えられる。

今後は金利が上昇すると予測した場合でも、返済期間が短い場合、金利上昇への備えがある場合などでは、適用される金利が低い金利タイプを選ぶという選択肢もある。

どの金利タイプを選ぶかは、こうしたことを総合的に考えて判断するのがベストだ。

そうはいっても、目先の適用金利の低いものを選ぶ人が多いのが現実だろう。長く返済する不安から、毎月の返済額を減らしたい気持ちも分からないではない。
でも、長く返し続けるからこそ、借入額や返済期間、金利タイプは慎重に判断したいもの。多くの人が選ぶ金利タイプではなく、自分の家計や将来プランに合った金利タイプを選ぶようにしてほしいものだ。

AIによるマンション推定価格「必要だと思う」が7割。そもそもAIとリアル査定はどう違う?

医療や犯罪捜査、将棋の世界に至るまでAI(人工知能)が活躍する昨今。大京穴吹不動産が、分譲マンションオーナーに対して、「AI推定価格に関する意識調査」を実施した。結果を詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「AI推定価格に関する意識調査」を実施/大京穴吹不動産AI推定価格の公開サービスは、「迅速で容易に価格を把握できるので必要」が大勢

「AI推定価格」とは、“地域特性や経済指標、最新の不動産市場情報を含む売買履歴情報や賃貸情報などをベースにしたビッグデータを、AIが日々学習し、既存マンションの現在の市場価格をリアルタイムに算出するもの”。

AIが売買価格などを推定するサービスを「知っていた」(よく知っている5%+知っている19%)のは24%。知っている人で「利用したことがある」のは16%だった。調査対象は、千代田区、中央区、港区、江東区などマンションの売買や賃貸が活発な10区にマンションを所有している人なのだが、それでもAI推定価格の認知度はまだ高いとはいえない。

ただし、「AI推定価格をインターネットで公開するようなサービス」は必要だと思う(とても思う23%+思う48%)人は71%もいた。必要だと思う理由として最も多かったのは、「迅速かつ容易に価格を把握したいから」だ(画像1)。

【画像1】「AI推定価格」のインターネット公開サービスが必要であると「思う」と回答した人の理由(出典:大京穴吹不動産「AI推定価格に関する意識調査」より転載)

【画像1】「AI推定価格」のインターネット公開サービスが必要であると「思う」と回答した人の理由(出典:大京穴吹不動産「AI推定価格に関する意識調査」より転載)

たしかに、自分のマンションがいくらで売れそうか、いくらで貸せそうかといった価格価値をインターネットで簡単に把握できるなら便利だろう。売るのと貸すのとどちらがよいか、売るならいつがよいかを検討する判断材料にもなる。

一方で、必要だと思わない(全く思わない1%+あまり思わない3%)人の理由はと言えば、「AIによる推定価格と実際の取り引き価格の差があると思うから」や「AIによる推定価格に信憑性があると思えないから」と推定価格の信ぴょう性を指摘している(画像2)。

【画像2】「AI推定価格」のインターネット公開サービスが必要であると「思わない」と回答した人の理由(出典:大京穴吹不動産「AI推定価格に関する意識調査」より転載)

【画像2】「AI推定価格」のインターネット公開サービスが必要であると「思わない」と回答した人の理由(出典:大京穴吹不動産「AI推定価格に関する意識調査」より転載)

AIとリアルなマンションの価格査定では、どこが違う?

では、実際のマンションの価格査定はどうやって行われているのだろうか?

実は、査定には主に2種類ある。まず、「簡易査定」とか「机上査定」とか呼ばれるものがあり、公示地価などの公的データや周辺の取引事例などを基におおよその価格を推定する。つまり、実際の建物の状況などは見ずに、データ上で算出するものだ。

次に、「詳細査定」とか「訪問査定」とか呼ばれるものがある。売却目的で不動産会社に査定を依頼すると、担当者が物件の状態を細かく調査し、法的な条件なども加味して、実際に売却できる価格などを算出する。

一般的にマンションの場合は、周辺の取引事例が多いこと、一戸建てのように敷地の形や道路に接している部分がそれぞれ異なるといった個別性が高くないことなどから、周辺の類似した取引事例を参考に算出する方法が採られる。したがって、データ上で価格を想定するだけなら、限られた時間で人がやるより、AIが大量のデータから分析したほうが早くて精度が高いといえそうだ。

とはいえ、不動産は一つとして同じものがない。幅広いエリアで同じようなものが買われる商品ではなく、一定のエリアで需要がある個別性の高い商品だ。

同じ住戸でも、修繕やリフォームなどきちんとメンテナンスされた場合と何もしていない場合では、その価値は違ってくる。また、そのエリアで該当するマンションを欲しいという人がたまっている時期とそうではない時期など、タイミングによっても売れる価格は違うだろう。

つまり、物件の詳しい状態を把握して、待ち客の有無などその時点のマーケットを加味して、売れる価格を推定する人の技も、不可欠ということになる。

だからといって、AIの査定価格を否定するわけではない。AIにどこまでのデータを分析させるかにもよるが、大量のデータを分析した査定価格が容易に手に入るなら、自分のマンションをどうするかの判断材料になるし、売却のタイミングを計る指標にもなる。

AIの査定価格を目安や参考価格として上手に活用しながら、最終的にはマーケットに精通した人の技による査定価格も確認するというのがよいだろう。ただ、マーケットに精通した人かどうかという問題は残るので、不動産の取引の際には担当者の実力を見極めることが常に求められる。

駅より保育園・学童保育を重視!? リクルート2018年の住まいトレンドは「育住近接」

リクルートホールディングスが、恒例の「2018年のトレンド予測」を発表した。これは、「住まい・美容・人材派遣・飲食など8領域の新たな兆し」として、2018年のトレンド予測をキーワードで発表するもの。筆者専門の住まい領域のトレンド予測は、『職住』ならぬ「『育住』近接」。うーん、それほど新味がないかなと思ったのだが、どうやら単なる距離の問題ではないようだ。【今週の住活トピック】
「2018年のトレンド予測」を発表/リクルートホールディングス駅からの距離より、保育園や学童を重視する傾向が増えていく

マンションを購入する層で共働き世帯が増えているので、「駅からの距離」を重視する傾向はますます強まっている。リクルート住まいカンパニーの2016年の調査結果では、「駅からの距離」を重視する割合が過去最高だったという(画像1)。

一方で、「教育環境」を重視する傾向も強まっていて、こちらの割合も2016年で過去最高に達した。
以前取材した子育て世帯は、子どもが私立の小学校に合格したので、その小学校の近くで家を探したと言っていた。小学校への道のりの安全性も気になるようで、できるだけ短くしたいと考えたという。子育て世帯ならではの発想だ。

また、最近の待機児童問題は、保育園から学童保育へと広がっている。働くママにとって、子どもを預けることができる場所の確保は大きな問題だ。リクルート住まいカンパニーが子育て世帯に調査したところ、「保育園や学童保育が設置されているマンション」なら、駅からの距離は許容できるという回答は約35%あったという。

「通勤より子どもを預けられる場所のほうを優先」という子育て世帯が増えて、「育住近接」重視へということは、当然の流れだろう。ここまでの話なら、特に新しい兆しということでもないように思えたのだが、面白い事例が増えているというのだ。

【画像1】「2018年トレンド予測 住まい領域」資料より転載

【画像1】「2018年トレンド予測 住まい領域」資料より転載

近くにあるだけではなく、ハード+ソフトの両輪で子育て支援

そこで、新しい兆しが感じられるとして紹介された、いくつかの事例を見ていこう。

まず、「子育てママの助け合い」を促す賃貸の共同住宅の事例(へーベルメゾン母力)。中庭に子どもが遊べる場とそれを見守るママが集える「お母さんステーション」を設置し、各住戸から中庭に出入りしやすいように設計されている。入居には、住民憲章「子育てクレド」への賛同が前提で、先輩ママが定期訪問して相談にも応じてくれる仕組みを整えた。互いに助け合いができるハードとソフトを備えた、江戸時代の長屋のような住宅だ。

次に、分譲マンション内に施設として民間学童を誘致する事例(ザ・パークハウス国分寺四季の森)。預かるだけでなく、英語や音楽、芸術など豊富なプログラムで充実した学び・体験ができるようにしたもの。同じような事例として、UR賃貸の団地の敷地内に、多彩な学び・体験ができる民間学童を誘致したもの(東雲キャナルコートCODAN)もある。

顔見知り同士で子どもの送迎や託児の頼り合いができるネットの仕組み「子育てシェア」(有料、謝礼1時間当たり500円~700円)を導入した事例(イニシア大井町)もある。交流イベントなども開催し、顔見知りを増やす工夫もしている。こうした手法なら、既存の規模の小さいマンションでも実現可能だ。

いずれも、単に居住空間に子育て施設があるという利便性だけでなく、ママたちの精神的・時間的な負担も軽減し、豊かな子育てができるソフトを提供することが大きな特徴だ。

【画像2】「子育てママの助け合い」を促す賃貸の共同住宅の事例(写真提供/旭化成ホームズ株式会社)

【画像2】「子育てママの助け合い」を促す賃貸の共同住宅の事例(写真提供/旭化成ホームズ株式会社)

保育園不足が指摘されるなか、国土交通省と厚生労働省は、保育園不足が見込まれるエリアに大規模マンションを新築する場合は、保育施設などの設置をするように要請する通達を出した。今後は、マンションや団地内に子育て施設が併設される事例が増えると見込まれている。

ただし、子育て施設をつくるというだけでなく、子育て支援でどういった付加価値を備えていくか、ソフトの工夫も同時に求められる。

在宅勤務やテレワークの推進、高齢者の子育て参加など、社会は大きく変わりつつある。居住する人たちのライフスタイルやニーズに応じた、それぞれ独自の「育住近接」が実現されることに期待したい。

その他の領域については、次の通り。いずれも、「人生100年時代」「働き方改革」「役割と価値観の多面化」といった社会のメガトレンドを受けているといえるようだ。

【2018年のトレンド予測キーワード】
 ●「来るスマ美容師」(美容領域)
 ●「年功助力」(アルバイト・パート領域)
 ●「熟戦力」(人材派遣領域)
 ●「まなミドル」(社会人学習領域)
 ●「ボス充」(人材マネジメント領域)
 ●「ピット飲食」(飲食領域)
 ●「お見せ合い婚」(婚活領域)

参考にしたい「理想の新婚部屋」はどれ? ライフスタイルに合わせた4つの間取りを紹介

結婚情報誌「ゼクシィ」編集部とデベロッパーの伊藤忠都市開発が共同で、新婚夫婦向けの「理想の新婚部屋」を4タイプ提案している。新婚といっても、人それぞれ新婚生活の過ごし方が異なるため、理想の部屋も変わるのだという。実際にどんな間取りが提案されているのか?詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「ゼクシィ」と「伊藤忠都市開発」の共同企画『理想の新婚部屋』4タイプの人気投票を受付開始/リクルートマーケティングパートナーズ・伊藤忠都市開発どの「理想の新婚部屋」が好み?ライフスタイルで間取り・内装は大違い!

「理想の新婚部屋」を4タイプ用意したのは、ゼクシィ編集部が花嫁285人に調査し、新婚夫婦のライフスタイルを分析した結果、大きく4タイプあることが分かったから。伊藤忠都市開発のマンションのモデルルームなども参考にして、両者で検討してそれぞれの理想の空間を具体化していったという。

新婚部屋の基本は、バルコニー付きの50m2の空間だ。ライフスタイルに応じて、間取りや内装を大胆に変えて次のような図面で表現している。詳しい間取り説明は、『ゼクシィ』首都圏版 1 月号や「理想の新婚部屋投票サイト」に掲載されているが、ここでは筆者の各間取りに対する印象を述べてみたい。

●Aタイプ
【画像1】いつだってラブラブでいたい『恋人夫婦のルームロマンス』(出典/リクルートマーケティングパートナーズ・伊藤忠都市開発のプレスリリースから転載)

【画像1】いつだってラブラブでいたい『恋人夫婦のルームロマンス』(出典/リクルートマーケティングパートナーズ・伊藤忠都市開発のプレスリリースから転載)

Aタイプは、いつでも二人でいたい、互いの存在を感じていたい夫婦向けの間取りだ。メインルームは大きなベッドを置いたリビング兼寝室。ソファに座ったりベッドの上でごろごろしながらテレビや映画の視聴ができる。バスルームが大きいのも特徴で、これなら二人一緒に入ることも可能だ。玄関に2人の思い出を飾れるメモリアルコーナーを用意するといった工夫も。

この間取りの場合、来訪者の居場所があまりないので、基本的に二人だけの時間を楽しみたい夫婦向きだろう。独立したダイニングスペースがなく、リビングのソファがそれを兼ねるので、普段は互いに仕事が忙しくて一緒にじっくり食事をする機会が少ない夫婦という想定だろうか。

互いが視界に入ることの多い間取りなので、違うことをしていても相手の存在を感じられるが、一方で室内から気持ちを解放したいと思うことも。そのとき生きてくるのが、中央のガラス張りの中庭空間なのだろう。非日常世界がどこにいても見えることで、気持ちがリセットできるのかもしれない。

●Bタイプ
【画像2】程よい距離感で、ゆる~く一つが心地よい『猫っぽカップルの気まま暮らし』(出典/リクルートマーケティングパートナーズ・伊藤忠都市開発のプレスリリースから転載)

【画像2】程よい距離感で、ゆる~く一つが心地よい『猫っぽカップルの気まま暮らし』(出典/リクルートマーケティングパートナーズ・伊藤忠都市開発のプレスリリースから転載)

Bタイプは、間仕切りのない開放的な空間で、室内での行き来がしやすい。相手がどこにいるか自然と感じられるようになっているが、壁に向いた読書や趣味のための小さなカウンターも複数用意されているので、一人で集中作業をする場所も確保できている。

この間取りの大きな特徴は、平面の図面では分かりにくいのだが、室内空間の高低差を活用している点だ。ダイニングと一体のキッチンは、土台を下に敷いてここだけ高くしている。周囲が見渡せる工夫だ。ベッドはロフトに配置(ハシゴで移動)していて、その下は収納などの閉じた空間として使えるようになっている。ただし、高低差を活用するには天井の高さが必要。天井が低いと逆に圧迫感が生じてしまうからだ。

ほとんどの時間は相手の行動を見ながら、離れたり一緒に行動したりといった選択ができる間取りなので、ゆる~くつながっていたい夫婦向き、あるいは開放的な間取りが好きな夫婦向きといえるだろう。

●Cタイプ
【画像3】ふたりもいいけど、ひとり時間も大事『七夕カップルの愛ある家庭内週末婚』(出典/リクルートマーケティングパートナーズ・伊藤忠都市開発のプレスリリースから転載)

【画像3】ふたりもいいけど、ひとり時間も大事『七夕カップルの愛ある家庭内週末婚』(出典/リクルートマーケティングパートナーズ・伊藤忠都市開発のプレスリリースから転載)

Cタイプは、玄関から入るとまずそれぞれの収納付き個室に入る間取りだ。夫婦といえども自分の時間を大事にしたい、睡眠をしっかりとりたいといった夫婦向きだろう。

来訪者の動線も、必ずどちらかの個室を通ることになる。一方で、LDKのスペースもしっかり確保している。くつろぎ空間として、そのままソファとしてもベッドとしても使える「デイベッド」を据え、ごろごろしたりうたたねしたりしながら夫婦二人の時間を楽しむこともできる。

「七夕カップル」とはうまく名付けたものだ。互いが個室にいる時間が長くならないように、夫婦一緒の時間はラブラブでいたいという愛の強さがあってこそ生きる間取りか?

●Dタイプ
【画像4】みんな集まれ!カップルから家族になっていく『カジュアル夫婦のお家フェス』(出典/リクルートマーケティングパートナーズ・伊藤忠都市開発のプレスリリースから転載)

【画像4】みんな集まれ!カップルから家族になっていく『カジュアル夫婦のお家フェス』(出典/リクルートマーケティングパートナーズ・伊藤忠都市開発のプレスリリースから転載)

Dタイプは、必要なプライベート空間をコンパクトに集約し、バルコニーと一体にしてLDK空間を活用できるようにした間取りだ。

大きなキッチンカウンターを囲むダイニング空間とグニャグニャソファを置いた「ふわモコスペース」と名付けたリビング空間を独立して確保している。機能分けをしたLDKは来訪者を迎えるハレの時間も、夫婦で過ごす日常のケの時間も、常に使われる空間となる。

玄関からLDKへの動線も兼ねる広い廊下的な空間は、子どもの遊び場になる「キッズランド」として提案されている。子どもと大人のパブリック空間を分けるという発想のようだが、来訪者の荷物置き場や夫婦の収納置き場になってしまう危険性も感じる。

ホームパーティー好きの夫婦、あるいはパブリックとプライベートなど機能をしっかり分けたい夫婦向きと言えるだろう。

人気投票の結果で理想の新婚部屋が実現する?

通常のマンションでは、できるだけ多くの人に買ってもらうために、万人受けする間取りや内装が採用されることが多い。今回提案された4タイプの間取りは、新婚夫婦に限らず、ライフスタイルが確立している夫婦に合うように、かなり大胆な間取りとなっている。

50m2という制約があるので、LDKも寝室も収納も水まわりも広く……ということはできない。どこを重視してどこを妥協するかメリハリをつけた結果が、個性的な間取りを生んでいる。こうした間取りの考え方は、これからリフォームする人や家を建てる人にも、参考になる点があるだろう。

提案する4タイプについて、人気投票が2018年1月31日まで行われている。その結果を受けて、実際にその間取りが伊藤忠都市開発の新築マンションで採用されるという。実現した部屋も見てみたいものだ。

●理想の新婚部屋人気投票サイト
https://www.e-uketsuke.jp/itochu-shinkon/

30秒後に地震が起こるなら何をする? 震災経験者と非経験者ではこんなに違った!

東急コミュニティーが11月16日に発表した防災アンケートでは、過去の震災で被害に遭った経験者とそうでない非経験者の、家庭で行っている災害対策を比較している。回答結果を分析すると、経験者ならではの違いも見られたという。どういった点が違うのか?詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「災害対策の実態や防災意識に関するアンケート調査」結果を発表/東急コミュニティー災害対策は3つのリスクへの備え、とりわけ「命のリスク」を重視すべし

まず、震災被害経験者と非経験者で違いが見られた項目について、カテゴリー分けをしたところ、対策をすべき3つのリスクが浮かび上がったという。

●命のリスク
●ライフラインのリスク
●生活必需品のリスク
以上の3つのリスクに対して、皆さんはどの程度の対策を行っているだろうか?

【画像1】Q.あなたがご家庭で災害に備えて準備しているもの、対策していること(複数回答)(出典/東急コミュニティー「災害対策の実態や防災意識に関するアンケート調査」より転載)

【画像1】Q.あなたがご家庭で災害に備えて準備しているもの、対策していること(複数回答)(出典/東急コミュニティー「災害対策の実態や防災意識に関するアンケート調査」より転載)

同社は、過去の大きな震災で最も多かった被害が「家具や家電製品の転倒」だったことから、3つのリスクの中でも「命のリスク」を優先させる対策を行うことが重要だと指摘している。生き延びるための被災後の対策は、生き残ることが前提だからだ。

事前に災害発生を想定して、どういった行動をとるか確認すべし

次に、被災経験者と非経験者で違いが見られた行動としては、家族との話し合いや確認が挙げられる。
特に「家族で災害発生時の想定や行動を話し合った」、「家族と災害時の集合場所や連絡方法を確認した」で差が大きく、経験者のほうが災害時の対策について家族と確認していることが分かる。

【画像2】Q.あなたが災害を想定して行ったこと(複数回答)(出典/東急コミュニティー「災害対策の実態や防災意識に関するアンケート調査」より転載)

【画像2】Q.あなたが災害を想定して行ったこと(複数回答)(出典/東急コミュニティー「災害対策の実態や防災意識に関するアンケート調査」より転載)

また、「在宅の際、もし今から30秒後に震度6弱以上の地震が起きるとしたら何をするか?」(自由回答)を聞いたところ、「わからない」「何もできない」など、行動を起こさない回答が、非経験者では経験者の1.6倍(経験者12.0%:非経験者19.4%)もあり、「安全確保」や「避難準備」などの具体的な行動を想定できていないことも分かった。

マンション内の「共助」体制も整えるのがよし

調査結果では、マンション内で近隣世帯を助けようとする「共助」意識は高く、特に総戸数500戸以上の大規模マンションでは「災害時の飲食の備蓄」や「災害マニュアルの策定」などの取り組みを行っているという認知率が高いことも報告している。

災害時には、自分や家族を守る「自助」、マンション内や近隣住人と互いに助け合う「共助」、自治体などによる「公助」の3つの役割分担が重視される。特に大規模な災害になると公助に限界があることから、自助、共助による備えが重要とされている。

会社などでは、共助の体制が急速に整いつつあるが、会社に勤めていない人や勤務時間外などには、地域社会の共助がカギになる。地域コミュニティーがいかに形成されているかが問われるところだ。

ところで、東日本大震災のとき仙台で被災した、ある人にこんな話を聞いた。「管理組合の活動が円滑でマンションのコミュニティーが良好だと思っていたが、実際に被災すると役割分担ができていなかったので、共助が働かなかった」というのだ。

つまり共助が機能するには、「助けたい」という意識だけではダメで、具体的に被災時に誰が何をどのように実行するかをあらかじめ決めておかないと何もできないということだ。

振り返って調査結果を見ると、「近隣世帯に声をかけ、困っている人を助けたい」という意識は78.6%と高いものの、管理組合の防災・避難訓練への参加は38.5%と4割にも満たない。一方、500戸以上の大規模マンションでは規模が大きいだけに、管理組合で積極的に行事やイベントを開催したり、防災用品の備蓄や災害対策マニュアルを策定したりといった具体的な対策に力を入れている事例が多いので、それが結果にも表れている。

災害対策としてどれだけ“具体的な準備”をしているかが、自助であれ、共助であれ、決め手になるということだ。

調査結果を受けて、同社は「震災体験の有無にかかわらず防災に対する意識や備えが不足している」と警鐘を鳴らしている。家具の固定や転倒防止策を施している割合は、被災経験者であっても28.5%とまだまだ低い。大きな災害が起きたときだけでなく、日ごろから万一に備えた防災対策をしっかりとるようにしてほしい。