シングルが住み続けたい街で阿佐ケ谷界隈が席巻中! “じわじわ”良さがわかる街の魅力を探ってみた

リクルートが首都圏在住の20歳以上の男女を対象に調査し、2022年10月に発表した「東京23区シングル家賃8万円以下住み続けたい駅ランキング」(「SUUMO住民実感調査2022首都圏版 家賃水準別住み続けたい駅ランキング」より)が、なかなか面白い結果になっている。
ポイントは「住みたい」ではなく「現在、住んでいる人が今後も住み続けたい」というところ。そうなると、ちょっと事情が違う。決して“派手”ではない駅が上位を独占したのだ。

1位に南阿佐ヶ谷、6位に阿佐ヶ谷がランクイン

まずは、下のTOP10を見てほしい。

住み続けたい街ランキング2022

「SUUMO住民実感調査2022首都圏版 家賃水準別住み続けたい駅ランキング」は、首都圏に住む20歳以上の男女に、現在住んでいる街に住み続けたいかを聞き、その希望度が高い駅・自治体をランキングした「SUUMO住民実感調査2022首都圏版」の上位の中から、賃貸物件の家賃相場が一定の基準以下の駅だけでエリア別にランキングしたもの(出典/リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2022」)

奇しくも杉並区と世田谷区の駅ばかりだが、純粋に23区内の駅でアンケートを取った結果がこれだ。

1位に南阿佐ヶ谷、6位に阿佐ヶ谷がランクイン。阿佐ヶ谷には昨年末のM-1グランプリ2022で優勝したウエストランドが所属する事務所、タイタンもある。

筆者は高円寺に長く住んでいたので、お隣の阿佐ヶ谷も好きな街。馴染みの飲み屋も何軒かある。しかし、この結果は正直、意外だった。決して派手ではなく、都内に住んでいてもどんな街か知らない人も多そうだ。なぜ、住み続けたいのか。人気の理由を探るために街に繰り出した。

目と鼻の先に杉並区役所がある南阿佐ヶ谷駅

まずは、堂々1位の南阿佐ヶ谷駅。

新宿駅から丸ノ内線で10分ちょっとという近さ(撮影/石原たきび)

新宿駅から丸ノ内線で10分ちょっとという近さ(撮影/石原たきび)

ケヤキ並木が美しい中杉通りが青梅街道に突き当たる場所で、目と鼻の先には杉並区役所がある。

さまざまな手続きにも便利なエリア(撮影/石原たきび)

さまざまな手続きにも便利なエリア(撮影/石原たきび)

ここをスタート地点にして、6位に食い込んだJR中央線の阿佐ヶ谷駅周辺までを歩いてみたい。

「パールセンター」は日々の生活に根差した商店街南阿佐ヶ谷と阿佐ヶ谷を結ぶパールセンター商店街(撮影/石原たきび)

南阿佐ヶ谷と阿佐ヶ谷を結ぶパールセンター商店街(撮影/石原たきび)

60年以上の歴史をもち、全長は約700m。常に活気があり、アーケードの商店街なので雨の日ものんびりと買い物ができる。

ほどなくして見えてきたのは、たい焼き専門店の「たいやき ともえ庵」。この場所で営業を始めたのは9年前だが、ひっきりなしにお客さんがやってくる。商店街の中でもかなり大きな存在感を放っているのだ。

店長の安部 翔さん(30歳)にご挨拶。

手にしているのは一番人気の「白玉たいやき」(350円)(撮影/石原たきび)

手にしているのは一番人気の「白玉たいやき」(350円)(撮影/石原たきび)

人の流れを見ていてどんなことを感じますか。

「阿佐ヶ谷の住人は老若男女のバランスが取れています。スーパーや青果店が価格競争をするので、肉も魚も野菜も安いし、日用品の買い物にも事欠きません。1日2万人ぐらいの人通りがありますが、よく見ていると毎日同じ方たちが歩いているんです。この商店街に来るのが日課になっているんでしょうね」

確かに、同じ中央線の中野、高円寺、吉祥寺にもアーケード商店街はあるが、いずれも他から遊びに来る人も多い場所。しかし、パールセンターは地元の住民が毎日のおかずを買いに来る人がほとんどという、生活に根差した商店街なのだ。

自慢のたい焼きは、一匹ずつ焼く「一丁焼き」にこだわる(撮影/石原たきび)

自慢のたい焼きは、一匹ずつ焼く「一丁焼き」にこだわる(撮影/石原たきび)

アーケード商店街の中にトークライブハウス

続いて、すぐ近くのトークライブハウス、「阿佐ヶ谷LOFT A」へ。阿佐ヶ谷はアニメスタジオや映画館、古書店など、エンタメやカルチャーを楽しめるスポットも多い。そんな中でも特に「阿佐ヶ谷LOFT A」は阿佐ヶ谷のエンタメを支えている存在だ。

オープンは2007年。マンガ、アニメ、アイドル、お笑い、映画、などさまざまなジャンルのトークやアコースティック演奏などが楽しめる。

テーマは「コミュニケーションを主体とした空間」(撮影/石原たきび)

テーマは「コミュニケーションを主体とした空間」(撮影/石原たきび)

「新宿ロフト」を中心に各地でライブハウスを運営する「ロフトプロジェクト」の一員だが、それにしても、なぜ阿佐ヶ谷に出店したのだろうか。店長の齋藤 航さん(42歳)に聞いてみた。

「物件を決めるにあたって、にぎやかな商店街の中という立地がよかったんです。自分は一昨年からここの店長になりました。それまでは新宿の歌舞伎町や渋谷の円山町といった夜の繁華街ばかりで働いてきたので、子どもやお年寄りの姿はほとんど見ませんでした。阿佐ヶ谷はそうではなく、安心感というか、人が住んでいる街だなと思います」

「芸人さんがたくさん住んでいるので、お笑いライブもよくやります」と齋藤さん(撮影/石原たきび)

「芸人さんがたくさん住んでいるので、お笑いライブもよくやります」と齋藤さん(撮影/石原たきび)

「スターロード」、「一番街」という2つの飲み屋街

さて、パールセンターを抜けてJR阿佐ヶ谷駅南口に着いた。いつの間にか「スターバックス」や「コメダ珈琲店」ができている。

スタバは2017年、コメダは2021年にオープン(撮影/石原たきび)

スタバは2017年、コメダは2021年にオープン(撮影/石原たきび)

南口には人々が思い思いに休息する広場がある。

街には人も鳩もくつろげる空間が必要なのだ(撮影/石原たきび)

街には人も鳩もくつろげる空間が必要なのだ(撮影/石原たきび)

阿佐ヶ谷駅周辺には「スターロード」、「一番街」という飲み屋街が放射線状に広がっており、いずれも個人店が頑張っている。

「スターロード」のに「立呑風太くん」(撮影/石原たきび)

「スターロード」の「立呑風太くん」(撮影/石原たきび)

ここは筆者が気に入っている立ち飲み屋で、明るいうちから大勢のお客さんでにぎわっている。オーダーごとに「カーン」というゴングを威勢よく鳴らしてくれる趣向も面白い。

新宿ゴールデン街の風情にも似た「一番街」(撮影/石原たきび)

新宿ゴールデン街の風情にも似た「一番街」(撮影/石原たきび)

この2つの通りでは、毎夜さまざまな交流が生まれる。

約1500人を集客する「阿佐ヶ谷飲み屋さん祭り」

とはいえ、よほどの酒好きでもない限り、知らない店にふらっと入るのはハードルが高い。そこで、2019年に誕生したのが立ち飲みスタイルの「アサガヤアンナイジョ」だ。

阿佐ヶ谷の飲み屋事情に詳しい店長が、お客さんにマッチしそうな店をいくつか紹介してくれるというのが売り。いわば、飲み屋のコンシェルジュだ。意外にも、訪れる客の7割が女性だという。

共同オーナーの左・鈴木伸弥さん(39歳)、右・森口剛行さん(46歳)(撮影/石原たきび)

共同オーナーの左・鈴木伸弥さん(39歳)、右・森口剛行さん(46歳)(撮影/石原たきび)

阿佐ヶ谷には飲み屋が数多くあり、店同士の結びつきも強い。この“文化”を広く周知させ、店の扉を開けるのを躊躇していたお客さんとともに街全体を盛り上げていこうという思いから森口さんが立ち上げたのが「阿佐ヶ谷飲み屋さん祭り」。

10年前から始まった、このイベント。回数券を購入すれば、3日間の開催期間に格安料金で飲み歩ける。2022年秋の時点で参加店舗は107軒。コロナ禍で参加者は一時減ったが、昨年11月の開催では約1500人の酒好きを集客した。

祭りの日に「アサガヤアンナイジョ」で乾杯する人々(画像提供/アサガヤアンナイジョ)

祭りの日に「アサガヤアンナイジョ」で乾杯する人々(画像提供/アサガヤアンナイジョ)

ここで、鈴木さんが面白いことを言った。

「住み続けたい街に選ばれる理由ですか? 阿佐ヶ谷は中杉通りのケヤキ並木の空気感も含めて気がいいと思います。街全体のバランスがいいというか。僕、そういうのに敏感なんですよ。帰省後に阿佐ヶ谷に戻ると田舎より落ち着きます」

ジブリ作品『猫の恩返し』の舞台にもなった中杉通りのケヤキ並木(撮影/石原たきび)

ジブリ作品『猫の恩返し』の舞台にもなった中杉通りのケヤキ並木(撮影/石原たきび)

森口さんも言う。

「マイナスの理由で街を出て行く人は少ない印象ですね。同棲したり結婚したりで、2DKの高い家賃が払えないから引越すというケースはあると思います。阿佐ヶ谷で一人暮らしをするなら、物件は5万円台からありますし」

阿佐ヶ谷は「じわじわと良さがわかる街」

さらに向かったのは南口に事務所を構える会社「エヌキューテンゴ」。ここでは、近所や地域とつながりながら暮らす不動産の企画や、街と関わりながら暮らすためのプロジェクトなどを手がけている。

阿佐ヶ谷は「じわじわと良さがわかる街」だと代表の齊藤志野歩さん(43歳)は言う。

「派手なものはないけど、日常的に楽しい暮らしはできる街。駅前に人が集まるというよりは、周辺エリアに手づくりのお菓子屋さんや小さいものづくりの工房があるんですよね。あとは、若い店主が多いので、そういう人たちと仲よくなると住み続けたいという気持ちも強くなるでしょう」

JRの協力のもと、駅ビル内に季節ごとのイベント情報を掲示している齊藤さん(撮影/石原たきび)

JRの協力のもと、駅ビル内に季節ごとのイベント情報を掲示している齊藤さん(撮影/石原たきび)

大勢で街を歩きながら齊藤さんがセレクトした物件の内見もできる「ディスカバリーツアー」も企画している。

周辺環境も含めて、住む場所を選んでほしいという趣旨(画像提供/まち暮らし不動産)

周辺環境も含めて、住む場所を選んでほしいという趣旨(画像提供/まち暮らし不動産)

「阿佐ヶ谷は商業地と住宅地がつながっていて、緑も多く、散歩には最適な街。『神社の裏側の道は夏でも涼しい』、『道に迷ったら鉄塔を目印にする』など、知っているとすぐに阿佐ヶ谷民の仲間入りができるようなスポットも案内しています」

阿佐ヶ谷の賃貸物件事情について、齊藤さんはこう言う。

「7万円台とかでちょっと小ぎれいな1R、1Kが多いので、シングルには住みやすい街でしょうね。ただ、5万円代となるとあまりないので、そういう物件を希望する人は西武新宿線沿いの井荻、鷺宮寄りに住む傾向があります。丸ノ内線の南阿佐ヶ谷駅の向こう側、成田エリアも緑が多くて家賃もリーズナブルですね」

さらに、7年前に南阿佐ヶ谷駅から徒歩5分の場所にできた「プラウドシティ阿佐ヶ谷」についても言及する。

「プラウドシティ阿佐ヶ谷」は5街区、全575戸の巨大分譲マンション(撮影/石原たきび)

「プラウドシティ阿佐ヶ谷」は5街区、全575戸の巨大分譲マンション(撮影/石原たきび)

「あの物件ができてから、各媒体が発表する『住みたい街』といわれるランキングで南阿佐ヶ谷が上位に来るようになりました。青梅街道の向こう側にも店が増えています。また、中杉通りが南側に延伸するという計画もあって、それが実現すると街の重心がもう少し変わってくるかもしれません」

青梅街道を右に進むと「プラウドシティ阿佐ヶ谷」に着く(撮影/石原たきび)

青梅街道を右に進むと「プラウドシティ阿佐ヶ谷」に着く(撮影/石原たきび)

お客さんの多くが阿佐ヶ谷在住という喫茶店

お次は北口へ。

まずは、2020年にスターロードの入り口にオープンしたばかりの喫茶店、「喫茶天文図舘」を訪れた。店内は宮沢賢治の世界をイメージしたノスタルジックな空間だ。

喫茶店好きのオーナー、山城隆輝さん(28歳)が言う。

「駅の1日の乗降客数は、荻窪が約24万人、高円寺が約10万人、そして阿佐ヶ谷が9万人なんです。外から入って来る人の数が少ないことが、住みやすさにつながっているのかもしれません。あまりわちゃわちゃしていないし、駅からちょっと離れると夜はめちゃくちゃ静かですよ」

山城さんはお隣の荻窪育ちなので、阿佐ヶ谷にも土地勘がある(撮影/石原たきび)

山城さんはお隣の荻窪育ちなので、阿佐ヶ谷にも土地勘がある(撮影/石原たきび)

お客さんの多くが阿佐ヶ谷在住。店に入って来た瞬間に、地元の人なのか外から来たのかがなんとなくわかるという。

一番人気のクリームソーダ(750円)は空と海の色をイメージしている(撮影/石原たきび)

一番人気のクリームソーダ(750円)は空と海の色をイメージしている(撮影/石原たきび)

「阿佐ヶ谷で好きなお店ですか? たくさんありますよ。喫茶店なら『パーラーエル』や『ヴィオロン』、割烹料理と居酒屋の中間みたいな『將』(はた)の料理もすごく美味しいです」

会社を辞めて日本中をヒッチハイクで周っていた山城さん。第二の人生の舞台に阿佐ヶ谷を選んだ。

国内外の準新作や旧作を上映するアットホームなミニシアター

スターロードを少し北上すると、住宅地の中に2022年7月にオプーンしたミニシアター、「Morc阿佐ヶ谷」が見えてくる。

支配人代行の趙 子男さん(33歳)は中国の遼寧省出身。国際基督教大学(ICU)入学を機に来日した。

「こんなに長く日本にいるつもりじゃなかったんですけど」と趙さん(撮影/石原たきび)

「こんなに長く日本にいるつもりじゃなかったんですけど」と趙さん(撮影/石原たきび)

ここは名画座でかけるような作品を上映する、いわゆる二番館。作品は自分で実際に見て選んでいるという。

「ミニシアターなので自由に実験できるのが利点。持ち込みにもなるべく応えたいと思っています。例えば、女子高生が消費税増税反対を訴える青春ドラマ、『君たちはまだ長いトンネルの中』は予想を超えて満席に。いろんな作品を積極的に受け入れることも重要だなと思いました」

住宅地にあるせいか、午前中は年配の客が多い。作品によっては若い人であふれる。一方で、通りすがりにふらっと入って来る客もいるそうだ。

阿佐ヶ谷の印象について聞いてみた。

「街全体の文化度が高くて、ほかの駅とは違う落ち着いている感じ。駅の近くに豆腐屋さんが3軒あるんですが、そういう街は今あまりないのでは。取引先のところに訪問する際は老舗和菓子店、『うさぎや』さんのどら焼きを持参します。こういう、昔の雰囲気を残す個人経営のお店が愛され続けているのが阿佐ヶ谷の貴重なところではないでしょうか」

客席数は41、1日に4~6本が上映される(撮影/石原たきび)

客席数は41、1日に4~6本が上映される(撮影/石原たきび)

映画館は文化の象徴。「Morc阿佐ヶ谷」の使命は大きい。

レンガ通りの道沿いには個性的な店が並ぶ

ここからは、松山通り(旧中杉通り)を進む。ゆるやかに下る道沿いには、駅周辺とはちょっと毛色が違う個性的な店が立ち並ぶ。

松山通り商店街では特売やフリーマーケットが定期的に開催される(撮影/石原たきび)

松山通り商店街では特売やフリーマーケットが定期的に開催される(撮影/石原たきび)

レンガ敷きの道をのんびり歩いていると、気になる路地が数多く目に入る。

路地を覗くと何かを待っているかのように、その場から動かない野良猫(撮影/石原たきび)

路地を覗くと何かを待っているかのように、その場から動かない野良猫(撮影/石原たきび)

阿佐ヶ谷のカルチャーを支える気鋭の古書店

通りの途中でお邪魔したのは「古書コンコ堂」。店名の由来は「玉石混交」から。音楽、文学、漫画、美術、絵本など、幅広いジャンルの古書を取りそろえる。

2011年にオープンしたコンコ堂(撮影/石原たきび)

2011年にオープンしたコンコ堂(撮影/石原たきび)

「独立するにあたって中央線沿いでいろいろと探していたんですが、阿佐ヶ谷の場合、パールセンターは賃料が高いし、線路沿いは飲み屋街。店を出すなら松山通りだなと。意外と夜遅い時間まで人が歩いているんですよ」

客層は老若男女さまざまで、ほぼ地元の人。古書店にしては平均年齢が低いそうだ。

約20年間住んだ西荻窪から阿佐ヶ谷に引越してきたコンコ堂店主の天野さん(撮影/石原たきび)

約20年間住んだ西荻窪から阿佐ヶ谷に引越してきたコンコ堂店主の天野さん(撮影/石原たきび)

「観光客が来る街じゃないけど、面白い個人店がたくさんあります。ご飯も美味しいし、居心地はいいですね」

取材終わりに天野さんが「そういえば、阿佐ヶ谷はいま古着屋さんが増えているんですよ」と言っていた。

ここ1、2年で急激に増えた古着屋は現在10店舗

阿佐ヶ谷に古着屋のイメージはなかったが、そのまま松山通りを下っていくと古着屋を発見。

ずいぶんと洒落た外観(撮影/石原たきび)

ずいぶんと洒落た外観(撮影/石原たきび)

こちらは、すべて一点物の古着を扱う「JUDEE」。オーナーの高塚草太さん(28歳)に話を聞いた。

「2018年にこの店をオープンしました。高円寺で出すか阿佐ヶ谷で出すか、ずっと迷っていたんですが、激戦区の高円寺よりは、阿佐ヶ谷でもうちょっとゆったり伸び伸びやりたいなと思って」

専門学校を卒業後、高円寺の古着屋で働いたのちに独立した高塚さん(撮影/石原たきび)

専門学校を卒業後、高円寺の古着屋で働いたのちに独立した高塚さん(撮影/石原たきび)

阿佐ヶ谷の古着屋は、以前は2店舗ぐらいしかなかったが、今は10店舗ほど。ここ1、2年で急激に増えたという。

「阿佐ヶ谷はみんなマイペースで、人の流れがゆっくり。個人商店が多いから街歩きが楽しいですね。うちには日が暮れてから食材などの買い物のついでに寄ってくださるお客さんがいます」

お気に入りの焼肉店についても教えてくれた。

「高架下にある『清香苑』という小さなお店で、入り口も目立たない奥まったところにある街の焼肉屋さん。ここは本当に美味しくて雰囲気も好きです」

来たことがなかった阿佐ヶ谷の雰囲気に一目惚れ

松山通りをさらに奥へ。ラストは昨年7月にオープンしたばかりのカフェ、「エムベイクハウス」だ。

オーナーの内田 萌さん(29歳)は総合電機メーカーで働きながら、好きなお菓子の勉強を始めた。現在、店ではこだわりのドリンクと季節の焼き菓子を提供している。

エムベイクハウス内田さん(撮影/石原たきび)

エムベイクハウス内田さん(撮影/石原たきび)

「じつは阿佐ヶ谷に来たことがなかったんです。物件は目黒区、大田区あたりで探していました。でも、たまたまこの街を訪れたとき、感覚的に好きだなと思いました。特に北側はざわざわしていないし、落ち着いた雰囲気が好きだなと」

そんな折、この物件に出合って契約する。

「お客さんは地元に住んでいる20代から40代ぐらいの女性が多いですね。あとは、バスの乗り換えが阿佐ヶ谷だからといって帰りに寄ってくれる方や、インスタグラムを見て遠くから来てくれる方もいます」

内田さんオススメのドリンクと焼き菓子もお願いした。

「ロンドンフォグラテ」と「レイヤーキャロットケーキ」(セットで1650円)(撮影/石原たきび)

「ロンドンフォグラテ」と「レイヤーキャロットケーキ」(セットで1650円)(撮影/石原たきび)

冬シーズンの人気ドリンク、「ロンドンフォグラテ」はアールグレイティーをベースに、ラベンダーとバニラで香り付けしている。レイヤーキャロットケーキに入っているクルミもいいアクセントになっていた。

「最近、大田区から阿佐ヶ谷に引越して来ましたが、初めて降り立ったときの感覚と変わりません。チェーン以外のお店が多いのが都心にしては珍しいですよね。安くて美味しい手づくりのお店もたくさん見つけました」

「住み続けたい」理由が判明した気がする

かくして、阿佐ヶ谷に店を構える9人に街の魅力について話を聞いた。印象的だったのは「派手なものはないけど楽しく暮らせる」「落ち着いているから住みやすい」「店同士、店と客の結びつきが強い」といったキーワード。

つまりは、「じわじわと良さがわかる街」。シングルが「住み続けたい」理由は、そこに集約されそうだ。一人暮らしのシングルにとっては、街の人々が家族のように感じるのかもしれない。

これまで阿佐ヶ谷はほとんど飲み屋にしか行かなかったが、今回巡ってみると、さまざまな顔をもつ街だとわかった。しかも、どの店も非常に個性的。「エヌキューテンゴ」の齊藤さんが言っていた「若い店主が多いので、そういう人たちと仲よくなると住み続けたいという気持ちも強くなる」という言葉の意味がよくわかる。もし住んだ場合は店主と親しくなって、じわじわと街に溶け込みたい。

阿佐ヶ谷の住民にとってはおなじみ、区役所前のブロンズ像(撮影/石原たきび)

阿佐ヶ谷の住民にとってはおなじみ、区役所前のブロンズ像(撮影/石原たきび)

●取材協力
たいやき ともえ庵
阿佐ヶ谷LOFT A
アサガヤアンナイジョ
エヌキューテンゴ
喫茶天文図舘
Morc阿佐ヶ谷
古書コンコ堂
JUDEE
エムベイクハウス

住み続けたい街ランキング関西2022発表! 駅1位は夙川おさえ山陽電鉄・人丸前(明石市)。自治体1位は?

リクルートが関西圏(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県、滋賀県、和歌山県)に居住している人を対象にWEBアンケートを実施した「SUUMO住民実感調査2022 関西版」を発表した。この調査は「住んでいる街(駅・自治体)に住み続けたいかどうか」を聞いたもの。住んでいる人に愛され、将来もずっと住み続けたいと思われているのはどんな街なのか。詳細を見てみよう。

「住み続けたい自治体」は芦屋市、西宮市、箕面市がトップ3に

アンケートは「住み続けたい自治体」と「住み続けたい駅」の2つについて尋ねた。それぞれ「子育てに関する自治体サービスが充実している」「今後街が発展しそう」「地域に顔見知りや知り合いができやすい」などさまざまな観点で、魅力項目を点数化した。
毎年発表している「住みたい街ランキング」は“住んでみたい”という憧れの要素が大きいが、「住み続けたい街」は居住者が感じるリアルな声が反映されている点が大きな違いだ。

まず、「住み続けたい自治体ランキング」を見てみよう。
トップ2は兵庫県の芦屋市、西宮市と、全国的なブランド力のある自治体が上位を占めた。

自治体ランキング TOP20

1位の芦屋市は、阪神間の閑静な住宅街として有名だ。魅力項目で「街の住民がその街のことを好きそう」が1位になったのもうなずける。
2位の西宮市も阪神間に位置し、「2022年住みたい街ランキング関西版自治体編」で今年も1位を獲得。年代別調査でも20代から70代以上まで全世代でトップ10入りした。
多くの人が憧れる理由が住んでいる人の実感値にしっかり裏打ちされていることがわかる。

西宮市(写真/PIXTA)

西宮市(写真/PIXTA)

ベスト20には、4位福島区、7位天王寺区、9位北区、13位阿倍野区、18位西区と大阪市内の5区が名を連ねた。いずれもマンション供給が多く、人口が急増している大阪市の中心地域だ。
神戸市では6位灘区、10位東灘区、11位中央区とベスト20位に3区がランクイン。また、京都府では8位京都市中京区、16位長岡京市、17位京都市左京区が入った。
大阪、神戸、京都とも、各都市の中心部やその近くに位置し、利便性の高い自治体が上位に並ぶ結果となった。

恵まれた自然環境や交通アクセスの良さで郊外の自治体も20位以内にランクイン

注目したいのは、中心地から離れた郊外も上位に登場している点。5位の奈良県北葛飾郡、16位の京都府長岡京市などだ。
北葛飾郡は馬見丘陵公園など広い公園や古墳が集まる穏やかな環境ながら、難波・天王寺方面へのアクセスが良い。長岡京市も竹林や筍で知られる自然環境が身近にあり、JR長岡京駅、阪急京都線長岡天神駅が利用できて京都の中心部や大阪方面への利便性が高い。「自然豊かな環境+都心へのアクセスの良さ」が郊外に「住み続けたい」と思わせるキーポイントのようだ。

馬見丘陵公園(写真/PIXTA)

馬見丘陵公園(写真/PIXTA)

新駅誕生や市民目線の施策で箕面市が3位に

ここからは3位以下で注目したい街を紹介しよう。
3位の大阪府箕面市は2023年度に北大阪急行延伸に伴い2つの新駅「箕面船場阪大前」「箕面萱野」駅が誕生する予定。延伸が完了すれば、大阪メトロ「梅田」駅まで約30分以内で結ばれる見通しで、箕面市から大阪市内へのアクセスが良くなることに期待値も高い。「子育てに関する自治体サービスが充実している」、「防犯対策がしっかりしており治安が良い」でも高評価を得た。同市では全ての市立小中学校の通学路及び公園に防犯カメラを設置。市が設置費用の一部を補助して自治会が設置した台数を含めると約2000台(令和4年9月時点)の防犯カメラが運用されており、犯罪抑止効果を高めるとともに、実際に早期の犯人検挙に繋がっているという。また、高齢者や障害者の交通サポートを低負担で提供。高齢者への火災警報器や紙おむつ給付など手厚いサービスも実施しており、「介護や高齢者向けサービスなどが充実している」を高く評価した人も多かった。

箕面萱野駅予定地(写真/PIXTA)

箕面萱野駅予定地(写真/PIXTA)

4位の大阪市福島区はこの10年あまりで新築マンション供給が相次ぎ人口も増加。もともと飲食店などが集積した繁華街のイメージが強いが、イオンをはじめスーパーマーケットが27もあり、生活上の用事を効率的に済ませられるのが評価のポイントになった。隣接する北区で進む「うめきた2期開発」の波及効果があり、発展への期待も大きそうだ。

5位の奈良県北葛飾郡は、“郡”といっても王子駅(JR関西本線、JR和歌山線、近鉄生駒線)を要する交通の要所。難波・天王寺方面へのアクセスが良く、駅周辺に「リーベル王子」など商業施設が充実している。自然環境に恵まれ交通利便性の良いことが、やはり大きな魅力だ。

府県別の自治体ランキングで兵庫県赤穂市や滋賀県守山市がトップ10入り

総合ランキングのほかに府県別ランキングの集計も行った。

居住府県別 住み続けたい自治体ランキング 大阪府

居住府県別 住み続けたい自治体ランキング 兵庫県

居住府県別 住み続けたい自治体ランキング 京都府

居住府県別 住み続けたい自治体ランキング 滋賀県

居住府県別 住み続けたい自治体ランキング 奈良県

居住府県別 住み続けたい自治体ランキング 和歌山県

大阪府では大阪市中心部と箕面市、吹田市、高槻市、豊中市の北摂エリアが上位を占めた。
兵庫県では阪神間と神戸市内が支持を集めたが、7位明石市のほか岡山県との県境に位置する赤穂市が10位に。同市は千種川が瀬戸内海に注ぐ城下町。新快速電車でJR播州赤穂駅から神戸まで直通70分と時間はかかるが、住む人たちは美しい自然や街並み、穏やかな環境に、都会の利便性以上の価値を感じているようだ。
奈良県は難波・天王寺・生駒にアクセスの良い北葛城郡王寺町が1位になり、広陵町も3位にランクイン。どちらも宅地や一戸建ての分譲が多く人口が増え続けているが、公園や古墳などが多く豊かな環境を享受できる点が魅力となっている。
滋賀県の1位、守山市はもりやまエコパーク交流拠点やびわこ地球市民の森、温泉施設ができて人気が復活。和歌山県有田市は結婚する人に住宅関連費用を最大30万円、出産祝金や入学祝金など最大で約200万円の支給で移住を促進している。
魅力的な新施設の創出や市民目線の施策により、県の中心地を抜いて1位を獲得した自治体があるのも興味深い。

「住み続けたい駅ランキング」では人丸前が1位に。子育て項目では明石市の駅が上位を占める

住み続けたい駅ランキング TOP20

次に「住み続けたい駅ランキング」を見ていこう。
驚くのは、阪神間の夙川や苦楽園口、京都の烏丸御池など人気の高い駅を抑えて明石市の人丸前が1位を獲得したこと。
人丸前は山陽電鉄本線の駅で、北には日本標準子午線で知られる明石市立天文科学館、南方面には海水浴場や芝生の広場などのある大蔵海岸公園が広がるのどかな駅だ。明石市といえば、おむつ定期便や第2子以降の保育料の完全無料化など手厚い子育て支援で注目され、「子育てに関する自治体サービスが充実している自治体ランキング」で1位を獲得している。人丸前は「公共施設が充実している」でも7位。明石海浜プールや天文科学館、文化博物館などは年齢によって無料となり、身近に利用できる施設が多いのも魅力だ。
「子育て環境が充実している駅ランキング」ではほかにも同じ山陽電鉄の東二見が3位、西新町が4位、魚住が7位、大久保が8位、明石が10位と、明石市内の6駅がトップ10に並び、子育ての項目で圧倒的な強さを見せている。

2位の「さくら夙川」、3位の「夙川」、4位の「苦楽園口」は「住み続けたい自治体」2位の西宮市内にある駅。いずれも徒歩10分程度で行けるほど近接し、生活圏はほぼ同じだ。桜並木が美しい夙川公園があり、人気の阪急西宮ガーデンズも普段使いできる。大阪・神戸どちらにも電車で20分程度。魅力がバランス良く満たされている。
上位20位までに西宮市から8駅がランクインし、同市の強さも顕著となった。

5位の「姫松」は大阪市阿倍野区南西部の阪堺電気軌道上町線の駅で、大阪市住吉区北西部にかけて帝塚山と呼ばれる古い住宅地が広がる。学校が多い文教地区で、街の魅力項目の「教育環境が充実している」でも5位にランクインするなど、子育て層に人気が高い。

ターミナル駅の隣駅+再開発で阪急電鉄今津線の阪神国道がトップ10入り

人丸前と並び、これまで注目度が高くなかったがトップ10入りしたのが9位の阪急電鉄今津線阪神国道。西宮北口駅の1駅南にあり、人気の商業施設阪急西宮ガーデンズにも約1kmと徒歩圏。駅の東側の元アサヒビール工場跡地では公園を核とした大規模な再開発が予定され、新病院の建設も計画。「ターミナル駅の隣駅」「再開発による発展の期待」で高評価につながったようだ。

阪神国道駅(写真/PIXTA)

阪神国道駅(写真/PIXTA)

リクルートが毎年発表している「関西 住みたい街(駅)ランキング」の2022年版で1位を獲得した梅田は、今回の「住み続けたい駅ランキング」では50位以内に入っていない。「住みたい……」で2位だった西宮北口も「住み続けたい駅……」では13位と意外な結果だった。
梅田も西宮北口も交通アクセス、買い物利便性が高いターミナル駅。多くの人が「住んでみたい」と思う街だが、ずっと住み続けたいと思わせるには、子育て環境や高齢者サービス、静かで落ち着いた住環境など違った魅力が不可欠なのかもしれない。
住んでみなければ分からない実感を反映したこのランキングを参考に、本当の住みやすさとは何かを考えてみたい。

●関連サイト
「SUUMO住民実感調査2022 関西版」2022年住み続けたい街(自治体/駅)ランキング

2022年「住み続けたい街ランキング」が発表!3位日本大通り、2位馬車道、1位は?

毎年、「住みたい街」のランキングを発表しているリクルートが、住民の実感調査による「住み続けたい街」のランキングを発表した。「住みたい街」とは顔ぶれが異なる「住み続けたい街」。どの街が上位になったのだろう。

【今週の住活トピック】
「SUUMO住民実感調査2022 首都圏版」2022年住み続けたい街(自治体/駅)ランキング発表/リクルート

「住みたい」ではなく、今の街に「住み続けたい」をランキング化

首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県)の街(自治体・駅)について、「お住まいの街に今後も住み続けたいですか?」と聞いた結果をランキング化したのが、「住み続けたい」街(自治体・駅)ランキングだ。2021年に続き、今回が2回目の調査になる。(ただし、「住み続けたい」の回答方法を5段階から11段階に変更したため、前回の結果との比較はしていない。)

「住みたい街」は多くの人が憧れる街なので、ターミナル駅が上位にくる傾向があるが、「住み続けたい街」は住民の居住継続意向によるもの。人によって“住みやすさ”は異なるので、居住の意向もそれぞれとなるが、「街選びのモノサシを多様に提示したい」という。

気になるランキングだが、興味深い結果になった「住み続けたい駅」のランキングから見ていこう。驚いたのは、首都圏外に住んでいる人には全くなじみのない駅名、いや首都圏に住んでいても知らない人が多いかもしれない駅名も上位にランクインしたことだ。

住み続けたい駅ランキングのTOP3は、湘南海岸公園、馬車道、日本大通り出典:リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2022 発表資料」より転載

出典:リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2022 発表資料」より転載。11位以下のランキングはこちら。

1位は、藤沢市の鵠沼・江ノ島エリアの「湘南海岸公園」。同じエリアからは、4位「鵠沼」、7位「石上」、13位「鵠沼海岸」、16位「片瀬江ノ島」、20位「柳小路」などが上位にランクインし、人気の高さがうかがえる。

2位にはみなとみらい線の「馬車道」が入り、3位「日本大通り」、6位「みなとみらい」と合わせて、この沿線の強さがわかる結果になった。

ほかにも、銀座と築地の間にある「東銀座」が5位に入り、25位「人形町」、28位「水天宮前」、29位「月島」など、中央区の駅が入った。中央区のなかでも、日本橋や京橋など山手線に近いエリアではなく、かつて大川といわれた隅田川に近い駅が挙がった。阿部寛主演の「新参者」に登場した街が人形町や水天宮前だ。歌舞伎座のある東銀座やもんじゃ焼きで有名な月島など、江戸庶民に愛された街である。

余談になるが、かつて筆者の同僚が人形町に住んでいたとき、町内の青年会に入会し、地域のお祭りでは中心となって活躍して楽しんでいた。このエリアは、地域ごとにお祭りがあり、盛大に開催されている点も特徴だ。

さらに、10位「代々木八幡」、15位「代々木公園」、19位「原宿」、26位「代々木上原」、27位「北参道」など、代々木公園の周辺の駅も上位に入った。「代々木公園」の公園力がいかに強いかがうかがえる。代々木公園の特徴は、ピクニックもできる樹木や花の多い公園というだけでなく、「ドッグラン」や「サイクリングコース」(大人用と子供用)、「バードサンクチュアリ」、「イベント広場」など、多様な憩い方ができる点にある。さらに周辺には気軽に入れる飲食店も多く、多様な人が集まりやすいという。

「住み続けたい」理由は、上位グループでも大きく異なる

上位グループが選ばれた理由を見ていこう。実は、「鵠沼・江ノ島エリア」と「馬車道・みなとみらいエリア」とでは、「街の魅力」に対する回答が少し異なる。

■ランキング1位 湘南海岸公園駅の魅力

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

出典:リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2022 発表資料」より転載

出典:リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2022 発表資料」より転載

まず、ランキング1位の湘南海岸公園駅の「街の魅力」で高いものを見ていこう。「自然が豊富」な街であることは間違いないが、「地域に顔見知りができやすい」、「街の住民がその街のことを好きそう」といった地域のコミュニティの強さが特徴だ。地域に溶け込みやすいイベントも多く、もともと漁師町であったことから地域で支えあう風土があるという。

■ランキング2位 馬車道駅の魅力

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

出典:リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2022 発表資料」より転載

出典:リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2022 発表資料」より転載

一方、ランキング2位の馬車道の「街の魅力」は、「周囲の目を気にせず自由な生活ができる」や「文化・娯楽施設が充実している」、「魅力的な働く場や企業がある」、「雰囲気やセンスのいい、飲食店やお店がある」など。インフラが充実しているのが特徴だ。SUUMO編集長の池本洋一さんによれば、馬車道では商店振興会主導で歴史景観を残す「ホンモノ思考」があり、シビックプライドが醸成されていること、再開発によるみなとみらいのオフィス、日本大通りのハマスタ、飲食店の多い野毛地域などが融合して多様な人を受け入れていることなどが、沿線エリアの魅力をつくり出しているのだという。

地域への愛着を感じる特色こそが、「住み続けたい」と思う理由に

「住みたい街」と「住み続けたい街」では、共通する高い項目がある。「人からうらやましがられそう」、「街ににぎわいがある」、「雰囲気やセンスのいい店がある」、「文化・娯楽施設が充実」などだ。その街に付加価値があるという点では共通しているわけだ。しかし、「住みたい街」では、「大型の商業施設が充実」、「交通利便性が高い」などの項目が高いのに対して、「住み続けたい街」では、「住民が街のことを好き」、「人目を気にせず自由な生活ができる」など、街への愛着や街が住人の多様性を容認する雰囲気が重視される。

池本さんによれば、住み続けたい街になるには、その街の交通アクセスの良さが不可欠ではあるが、そのほかに共通する大きな要素があるという。第1に、地域に参加しやすいイベントや場所があったり、子育てしやすい環境があったりして、「街の住民がその街のことを好きそう」という要素だ。住民が街を好きであると、街の教育や防災などのインフラが整備される傾向もある。第2には、多様な人を容認する文化があり、「周囲の目を気にせず自由な生活ができる」という要素が、大きく影響している。

「鵠沼・江ノ島エリア」は特に第1の要素が強く、「馬車道・みなとみらいエリア」は特に第2の要素が強いという代表だろう。こうした要素ができるには、それを醸成する仕掛けや持続させる仕組みがあるのだと、池本さんは指摘した。

出典:リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2022 発表資料」より転載

出典:リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2022 発表資料」より転載

「住み続けたい自治体」ランキングのTOP3は、武蔵野市、目黒区、葉山町

最後に、「住み続けたい自治体」のランキング上位を紹介しておこう。

出典:リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2022 発表資料」より転載

出典:リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2022 発表資料」より転載。11位以下のランキングはこちら。

1位は「武蔵野市」。2位「目黒区」、4位「中央区」、5位「渋谷区」、8位「港区」、10位「文京区」と東京都の自治体では、23区が多数ランクインしている。3位「葉山町」、7位「逗子市」、11位「藤沢市」、12位「茅ヶ崎市」、14位「鎌倉市」と神奈川県の『湘南・三浦エリア』が上位にランクインしている。

埼玉県では13位「さいたま市浦和区」、15位「さいたま市大宮区」など、さいたま市中心エリアが上位に入り、千葉県では、9位「浦安市」、23位「千葉市美浜区」など湾岸を含むエリアが上位に入った。

さて、ランキングの結果を見て、あなたはどう思っただろう?人気エリアは住居費用が高いと思った人もいるかもしれない。池本さんによれば、手ごろな家賃(シングルで家賃8万円以内)で住み続けたい23区内の街もあり、「南阿佐ヶ谷・阿佐ヶ谷エリア」や「東急世田谷線エリア」などが挙げられるという(同日に発表した「SUUMO住民実感調査2022首都圏 都県(地域)×家賃水準別住み続けたい駅ランキング」に掲載)。

人それぞれで“住みやすさ”を感じる点は異なるので、納得のいく結果も意外な結果もあったかもしれない。集客力のある知名度の高い大きな街だけでなく、自分好みの暮らしができる特色のある街をぜひ探してほしい。

●関連サイト
「SUUMO住民実感調査2022 首都圏版」2022年住み続けたい街(自治体/駅)ランキング

北海道「住み続けたい街ランキング2022年版」1位札幌市中央区、2位厚別区、続く3位は意外な“町”?!

リクルートは北海道に居住している人を対象に実施した「SUUMO住民実感調査2022 北海道版」を発表。札幌市内の駅を対象に実施された2022年「住み続けたい駅ランキング札幌版」の結果と併せて見ていこう。

「住み続けたい街(自治体)」と居住者が評価するポイントは?

「SUUMO住民実感調査2022 北海道版」は道内居住者に、“その街に住み続けたいかどうか”を聞いたアンケートをもとにした街ランキング。リクルートが例年発表している「住みたい街ランキング」とは異なるランキングだ。

今回の調査は、住んでみたいと憧れる街などではなく、すでにその街に住んでいる人が、今後も継続して住みたいとその街を評価するかどうかがポイントとなる。つまり、居住者の実感値が大きく反映された街ランキングといえるだろう。

〔北海道〕住み続けたい自治体ランキングTOP20

住み続けたい自治体ランキングの1位は「札幌市中央区」。そのほか、TOP20には、札幌市の全ての区がランクインする一方、3位「河東郡音更町」や6位「上川郡東神楽町」、10位「中川郡幕別町」、17位「河西郡芽室町」、18位「新冠郡新冠町」など、道内各地の“町”も多数ランクイン。

また、北海道ボールパークFビレッジの開業を控える「北広島市」は13位、札幌へも新千歳空港へもアクセスの良い「恵庭市」は19位に入ったほか、北海道新幹線の終点、新函館北斗駅のある「北斗市」は16位。道外からも広く観光客が訪れる「帯広市」や「函館市」はそれぞれ11位、13位という結果となった。

住み続けたい街として上位に選ばれた顔ぶれを見ていると、便利でにぎわいのあるエリアが多数ランクインしているのはもちろんだが、1位「札幌市中央区」、2位「札幌市厚別区」、5位「札幌市豊平区」、13位「北広島市」など、大規模な再開発が行われ、今後の街の姿に期待が高まるような街も支持を集めている。また、ランクインした郊外の街については空港へのアクセスや車移動がしやすく、観光資源も豊富な街が多い。

札幌市内およびその近郊都市の居住者が住み続けたいと評価するポイントとしては、電車やバスなどの利便性や買い物施設の充実、街のにぎわい、今後の街の発展性などが挙げられるが、札幌から離れた郊外の自治体に住む人にとっては、それらの項目よりも、自治体のサービスや生活にかかるコスト、子育て環境などが評価される傾向があるようだ。

それでは、ランキング上位のそれぞれの街について詳しく見ていこう。

「住み続けたい自治体」1位は札幌市中央区、2位は札幌市厚別区、3位は河東郡音更町

今回1位にランクインした「札幌市中央区」は、周知の通り、交通面でも生活面でも抜群の利便性があり、魅力的なスポットも豊富。都心ながら大通公園や円山公園など、豊かな緑も身近に感じられる街だ。住民も街の魅力として、「文化・娯楽施設が充実している」「いろいろな場所に電車・バスで行きやすい」「街にぎわいがある」などの項目を上位に挙げている。

札幌駅(写真/PIXTA)

札幌駅(写真/PIXTA)

さらに、道内最大のターミナル駅である札幌駅が位置する同区は、北海道新幹線の延伸や札幌オリンピック誘致などを控え、区内では続々と大規模な再開発計画が進められている。今後2030年に向けて札幌駅は南口周辺が再開発で大きく生まれ変わる予定だ。

2位の「札幌市厚別区」は札幌市内の中では郊外の住宅エリアとしてのイメージが強いが、交通利便性も高い街。新札幌副都心にはJR「新札幌」駅、地下鉄東西線「新さっぽろ」駅のほか、バスターミナルもあり、市内各地のほか、新千歳空港へのアクセスもスムーズだ。また、幹線道路や高速道路が近く、車移動もしやすい。

また、今回のランキングでは総合ランキングのほかにも、街の魅力項目別のランキングも集計しているが、札幌市厚別区は「ショッピングモールやデパートなどの大規模商業施設がある」という魅力項目のランキングでは、札幌市中央区や、市内最大級のショッピングセンターであるアリオ札幌が立地する札幌市東区を押さえ、1位にランクイン。新さっぽろ駅周辺は複数の大型商業施設が集積しており、今後も再開発により新たな商業施設やホテルなどが誕生予定で、さらににぎわいのある街へと進化していきそうだ。

ショッピングモールやデパートなどの大規模商業施設がある 自治体ランキング TOP10

総合ランキング3位の「河東郡音更町」は十勝平野のほぼ中央に位置する自治体で、JR帯広駅から市街地まで車で約15分。とかち帯広空港も車で約50分と、車や鉄道で道内各地へ移動しやすいことに加え、飛行機で本州へのアクセスも良好だ。

道内の町村の中では最多の人口を誇る音更町では農業や酪農が盛んで、地元の食材は地域の小中学校の給食にも使われている。また、観光スポットとしても広く知られるモール温泉が湧き出す十勝川温泉があり、足まわりの良さに加え、大自然の恵みを日常的に享受できる点も住む人にとっては大きな魅力だ。

十勝川温泉付近(写真/PIXTA)

十勝川温泉付近(写真/PIXTA)

今回のアンケートでは、「車での移動が便利」という点に加え、「ゴミ収集に関する自治体サービスが充実している」「物価が安い」などの項目も居住者からは高く評価されており、都心部とは一味違う住み心地の良さを感じられる街だといえそうだ。

「子育てに関する自治体サービスが充実している自治体ランキング」1位は白糠郡白糠町

今回の調査では、街の魅力項目別のランキングも集計したと前述したが、子育て世代が住まい選びをする際に気になる、子育てに関する自治体サービスについてのランキングも紹介しよう。

子育てに関する自治体サービスが充実している  自治体ランキング TOP10

1位にランクインした、道東、釧路市の西隣に位置する「白糠郡白糠町」は“子育て応援日本一の町”を掲げ、子育て世代に手厚い経済的な支援を行う自治体。町内の太陽光発電施設による収入を財源として、出産祝い金の支給、18歳までの医療費・保育料・学校給食費の無料化、新入学児童・生徒入学支援金の支給などを行っている。

次に、旭川空港が立地する2位「上川郡東神楽町」は総合ランキングでも6位にランクイン。アンケートで居住者が街の魅力の上位に挙げた項目を順に見てみると、「公共料金が安い」「治安が良い」「車での移動が便利」「住居費が安い」「物価が安い」などが挙げられ、それに続いて「子育てに関する自治体サービスが充実している」という項目が挙げられている。これらの評価ポイントからは、暮らしにかかわる経済的な負担が比較的軽いと感じている居住者が多いということがうかがえるのではないだろうか。道内で5番目に面積が小さい自治体ながら、人口に占める子どもの割合が比較的高いというのも納得だ。

3位の「北斗市」は函館市に隣接し、北海道の中では雪が少なく温暖な地域。新幹線最北端の駅である新函館北斗駅を有し、陸の玄関口ともいえる街だ。育児支援制度にも力を入れており、高校卒業までの医療費無料制度や市内小・中学生の給食費軽減制度などの経済的支援を行っている。また、保育所、幼稚園、認定こども園、放課後児童クラブなどの施設の数も充実しており、働き盛りの子育て世代も暮らしやすい環境が整っているようだ。

2022年「住み続けたい駅ランキング札幌版」では、札幌市電の駅が多数ランクイン

最後に、札幌市内に限定した「住み続けたい駅ランキング」を紹介したい。

〔札幌〕住み続けたい駅ランキングTOP20

ここまで見てきた北海道全域の住み続けたい自治体ランキングは今回初めて集計されたものだが、札幌市内に限定した住み続けたい駅ランキングは2020年にもリクルートは発表している。

前回のランキングでは、上位10駅は全て札幌市中央区という結果だったが、今回のランキングでも上位の駅のほとんどが札幌市中央区に位置し、上位20位の内9駅が札幌市電の駅という結果となった。

札幌市電(写真/PIXTA)

札幌市電(写真/PIXTA)

札幌市中央区の駅が軒並みランクインする中、それ以外のエリアから上位に入ったのは札幌市西区に位置する6位と15位の「琴似」(6位がJR函館本線、15位が地下鉄東西線)と、札幌市厚別区に位置する14位の「新札幌」(JR千歳線)だ。

JR「琴似」駅は札幌駅まで快速で1駅。駅周辺は計画的な整備が進められ、商業施設をはじめ、公共施設や医療施設、金融機関など、生活に必要なさまざまな施設がそろう。居住者が評価する項目の最上位には「利用しやすい商店街がある」が挙げられているが、JRと東西線の駅間に位置する琴似栄町通は西区随一の繁華街としても知られており、特にこの買い物利便性の高さが、街への評価へとつながっているようだ。

JR琴似駅(写真/PIXTA)

JR琴似駅(写真/PIXTA)

また、閑静な住宅地として知名度の高い円山公園を押さえ、今回1位にランクインしたのは「西線14条」(札幌市電)。前回ランキングの集計結果5位からの大幅ランクアップだ。居住者の評価する項目としては「街の住民がその街のことを好きそう」「人からうらやましがられそう」「歩ける範囲で日常のものはひととおりそろう」などが挙げられているが、大きな繁華街などはないエリアながら、ドラッグストアやスーパーなどの買い物施設は十分にそろい、落ち着いた生活を送ることができる住環境への満足度の高さがうかがえる結果となった。

今回のランキングでは、北海道版、札幌版共に札幌都心部が強く支持される結果となった印象もあるが、項目別ランキングなどを見てみると、街の大小にかかわらず、実にさまざまな街がランクインしているのは興味深い。住み続けたいと思う街に求めるものは人それぞれだと思うが、住んでいる人の実感値を反映したこのランキングは、住みやすさとは何かを考えるヒントにもなりそうだ。

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SUUMO住民実感調査2022 北海道版

広島「住み続けたい街ランキング2022年版」1位は広島市おさえ府中町! 子育て環境や街の将来性などで高評価

リクルートでは、広島県に住んでいる人を対象にWEB調査を行い、「SUUMO住民実感調査2022 広島県版」を発表した。今住んでいる街(駅・自治体)について、住み続けたいかどうかを聞いたところ、駅では広島電鉄の「皆実町六丁目」(広島市)が、自治体では「安芸郡府中町」がそれぞれ第1位に。住んでいる人に愛されているのはどんな街なのか、詳細を覗いてみよう。

「住み続けたい駅」は広島電鉄の駅に集中 [広島県]住み続けたい駅ランキング2022 TOP20(リクルート調べ)

[広島県]住み続けたい駅ランキング2022 TOP20(リクルート調べ)

まず、「住み続けたい駅」のランキングを見てみると、ズラリと並ぶのは広島電鉄沿線の駅。
広島電鉄は、主に広島市内中心部を走る路面電車だ。駅間隔はJRに比べて狭く、より居住エリアに密着した駅と言うこともできる。ちなみに、同じくリクルートで広島県在住者を対象に実施した「住みたい街ランキング」(2020年同社)は、住んでいる街(駅・自治体)以外にも投票可能なのだが、そちらではJRの再開発や観光地として注目を集める駅や、複数路線を利用できるターミナル駅が中心にランクイン。それを考えると、よりリアルな暮らしに密着したエリアが支持を集めたことが見て取れる。
また、広島市は6本の川がつくる中州地帯に広がる街だ。JRは街の北寄りを東西に走り、広島の玄関口である広島駅と、いわゆる繁華街である紙屋町や八丁堀、オフィス街の大手町なども少し離れた場所に存在する。紙屋町や八丁堀を通る路線は広島電鉄やバスがメインで、この中心部エリアから、中州エリアに街が広がっていることも、広島電鉄の駅が多くランクインした理由のひとつだろう。

自治体では1位・安芸郡府中町、2位・広島市南区という結果に[広島県]住み続けたい自治体ランキング2022 TOP20(リクルート調べ)

[広島県]住み続けたい自治体ランキング2022 TOP20(リクルート調べ)

「住み続けたい自治体」のランキングを見てみると、「住み続けたい駅」のランクイン駅が多く所在する広島市南区が2位。それを押さえて1位となったのは、自動車メーカー・マツダ本社のある安芸郡府中町だ。駅ランキング10位の天神川駅も、所在地は南区だが、府中町の主要駅のひとつ。
ランキング上位の自治体の評価ポイントを見てみると、「ショッピングモールやデパートなどの大規模商業施設がある」「医療施設が充実している(病院や診療所など)」「魅力的な働く場や企業がある」といった日常生活に直結した利便性が評価されているのが分かる。
府中町では、「イオンモール広島府中」や「マツダ病院」、何よりマツダ本社の存在も大きいようだ。しかし、2位との大きな違いは、それに加えて、子育てや介護などのサービスや公共施設の充実などの項目について高い評価を得ていること。子育てについては、自宅から小学校までの距離1km以内率が広島県内第1位(府中町ホームページより)だったり、児童センターや子育て支援センターなどの施設が充実していたりなどのポイントが評価されているのではないかと思われる。
また、いずれの項目も住民評価の偏差値が非常に高いことにも注目だ。ほかの自治体に比べて、多くの項目について満足している人の割合が高い=街の魅力を実感している人が多いと言えるだろう。

学校や医療機関などが充実した皆実町周辺エリア

ここからはランキング上位の駅について少し細かく見ていこう。

まずは1位・皆実町六丁目と、その周辺エリアに存在する駅。2位の広大附属学校前や、5位の御幸橋もかなり近いエリアの駅だ。この街を選んだ人が魅力として挙げている項目には、「学びや趣味の施設がある(稽古事・カルチャースクールなど)」「医療施設が充実している(病院や診療所など)」が共通している。
学びという点で挙げるならばやはり広島大学附属の小学校と中高一貫校があること。学習塾なども多くあるほか、合格すれば近いところに引越すというケースがあることからも、教育に対して熱意のある人が多い傾向も頷ける。また、最寄駅ではないものの、「広島赤十字・原爆病院」や「県立広島病院」、「広島大学病院」などが近隣にそろっていることも、医療についての安心感を高めているのかもしれない。
5位の御幸橋については、近くに大規模な公園である「千田公園」や「中区スポーツセンター」、「広島市健康づくりセンター 健康科学館」などがそろうことも魅力項目に表れている。
また、魅力項目5位までには入っていないものの、「ゆめタウン広島」という大型ショッピングモールがあることも、皆実町周辺のベースポイントとしては高そうだ。

何でもそろう本通りと、古い商店街と新商業地区が混在する宇品エリア

3位の本通はアストラムラインの駅。アストラムラインは2017年の新白島駅開業でJRにも接続し、利便性が格段にアップした。「本通」という駅名は、広島の最中心部ともいえる商店街「広島本通商店街」が由来。商店街の周辺にも多くの商業施設がひしめき合い、ショッピング自体を楽しむことができるエリアだ。
歩いてすぐの紙屋町にはデパートやカルチャーセンター、徒歩圏内には県庁もあるほか、本通りを突き抜ければ、元安川と、緑豊かな平和記念公園へとつながる。住宅自体が多いわけではないが、暮らしている人の充実した毎日は想像に難くない。

紙屋町にあるそごう広島店・パセーラ(写真/PIXTA)

紙屋町にあるそごう広島店・パセーラ(写真/PIXTA)

4位には宇品四丁目、9位には宇品五丁目がランクイン。宇品は、皆実町からさらに南へ下ったところにあり、明治の宇品港開発以降、埋め立てられ拡大してきたエリアだ。広島電鉄宇品線も終点は広島港(宇品)となる。
電車通り沿いには古い商店などが多く、戦後の青空市の名残を残す、年季の入った商店街もある。「ゆめタウンみゆき」や「イオン宇品店」等のショッピングセンターがそろうほか、ベイエリアや宇品港寄りの新たな商業エリアには、「ドン・キホーテ」や「コーナン」、「フタバ図書」等の比較的規模の大きい路面店も多い。コンビニも点在し、日常の生活には非常に便利なエリアといえるだろう。

街からほど近い閑静な住宅街や、川沿いの緑道が整備されたエリアも

6位の銀山町と8位の的場町はいずれも広島駅の周辺エリア。広島駅まで徒歩5~15分ほどで、ターミナルとしての広島駅の利便性を活かしやすい街だ。京橋川や猿猴川といった川沿いの街でもあり、緑道も整備されている。
また、銀山町は「雰囲気やセンスのいい、飲食店やお店がある」という項目では1位となっている。京橋川沿いに整備されたオープンカフェのほか、大通りから入った路地にもおしゃれな飲食店が点在。「RCC文化センター」もあるので、習い事も充実しそうだ。

7位の白島は、「人にうらやましがられそう」という項目で堂々の1位。広島城の北東に位置し、交通量の多い大通りから一歩入れば閑静な住宅地が広がるエリアだ。近年、エリア内に複数のスーパーが開業し、エリアの西側にJR新白島駅が開業。日常の買い物の利便性とともに、広島駅方面へのアクセスが向上したことも魅力のひとつといえるだろう。

川岸の緑道の緑が美しい京橋川(写真/PIXTA)

川岸の緑道の緑が美しい京橋川(写真/PIXTA)

広島市内中心部へのアクセスのよい市区町が人気

住み続けたい自治体についてみてみると、先に紹介した安芸郡府中町、広島市南区に次ぐのは、3位・広島市中区。広島市の中心部にあたり、交通でも商業施設の面でも利便性の高いエリアで人気も頷ける。

続く同率4位の広島市西区と広島市佐伯区、6位の廿日市市は、同じJR・広電宮島線の路線に並ぶ市区だ。西区にあるJR西広島駅から宮島口駅まではJRと広電が並走。2線利用できるうえ、JRなら、広島駅から五日市駅(佐伯区)まで約15分、廿日市駅(廿日市市)まで約20分と十分通勤圏内。西区のアルパークやLECT、佐伯区のジ・アウトレット広島、廿日市のゆめタウン廿日市と、各エリアに大型のショッピングモールが存在し、旧国道2号線沿いを中心に、飲食店や各種の商業施設も豊富。住んでいる街で日々の買い物が完結できる。西に行くほど住宅価格のお手ごろ感も増し、マイホームの選択肢が広がることも人気の理由の一つかもしれない。

7位の安芸郡海田町にある海田市駅は、広島駅から3駅約10分。JR山陽本線とJR呉線の2路線利用ができる駅だ。また、広島駅方面から呉方面へと続く国道31号線沿いには飲食店やドラッグストア、スーパーなどがそろい、日常の買い物にも便利。さらには町のシルバー人材センターが運営する託児所があったり、七夕まつりなど町独自のイベントがあったりと、街ならではの特徴もある。

唯一広島市から離れていながらランクインしたのが8位の尾道市だ。尾道は尾道水道を見下ろす坂の町で、映画の町、最近では猫の町としても人気の観光地。さらに、しまなみ海道を渡るサイクリストの拠点としても知られる。

移住支援にも力を入れており、住宅支援のほか就職支援や創業支援、東京圏からの移住者には移住支援金の制度もある。子どもの医療費助成で中学生まで通院費用の助成があるのも魅力だ(広島県内では小学校6年生までが多数)。

尾道の街並みと尾道水道を見渡す、千光寺からの眺め(写真/PIXTA)

尾道の街並みと尾道水道を見渡す、千光寺からの眺め(写真/PIXTA)

住む人が「住み続けたい」と感じる街は、交通機関や商業施設はもちろん、子育てや学び、さらには医療に関する充実度など、共通する項目がいくつもあった。「暮らしやすさ」をベースにしつつ、「おしゃれな店が多い」「公園が充実している」「人からうらやましがられそう」といった、それぞれの街の特色にプラスアルファの魅力を感じ、「住み続けたい」という思いにつながっているのではないか。
「暮らしやすい街」をベースに、あなたに響く魅力ポイントのある街を探してみてはどうだろうか?

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SUUMO住民実感調査2022 広島県版

宮城「住み続けたい街ランキング2022年版」仙台市内をおさえ、隣接の街が1位・2位に!

リクルートが、 宮城県に居住している20歳~49歳の1万4883人を対象に実施した「SUUMO住み続けたい街ランキング2022宮城版」を発表した。「住み続けたい駅」「住み続けたい自治体」「街の魅力ランキング」から見えてくる住民の本音とは?ランキング上位の駅と自治体、それぞれにどんな魅力を感じているのかを見ていこう。

「住み続けたい街」(駅)上位5位は仙台駅に近い、利便性と潤いを兼ね備えた街

2022年2月、国土交通省が公表した公示地価(1月1日時点)によると、宮城県の住宅地の上昇率は全国3位、しかも10年連続で上昇している。「住みたい街(駅)」と直接関係ないが、宮城県が住みたい場所としてのニーズが高い表れではないだろうか。

そんな宮城県の中の「住み続けたい街(駅)ランキング2022」の上位20位を見ていこう。

宮城県  住み続けたい駅ランキングTOP20

上位10位まではすべて仙台市内の駅で、うち6駅が「仙台市青葉区」にある。「榴ケ岡」駅、「太子堂」以外は、仙台市地下鉄が利用できる(仙台駅、長町駅はJRのほかに地下鉄も乗り入れ)。また、11位から20位は、仙台駅にほど近い都心近接の駅、または副都心の駅で、仙台市以外では名取市から「美田園」駅、「名取」駅、「館腰」駅がランクイン、「仙台」駅とダイレクトに結ばれている駅が評価を集めたようだ。

上位5つの駅(「勾当台公園」「北四番丁」「榴ケ岡」「大町西公園」「青葉通一番町」)はいずれもJR「仙台」駅から2km以内に位置する。「榴ケ岡」駅はJR東北本線で「仙台」駅から1駅、ほかの4つの駅は仙台市地下鉄で1駅~3駅、徒歩で20分以内とアクセス至便。車を使わなくても「電車・バスでいろいろな場所に電車・バスで行きやすい」アクセスと、「歩ける範囲で日常のものは一通りそろう」など、生活利便性の面でも住民にも支持されている。

さらに、いずれの駅も仙台の中心部を代表する3つの広大な公園(勾当台公園、西公園、榴岡公園)が身近にあり、「公園の充実」「散歩・ジョギングがしやすい」という点も評価されている。利便性も潤いも兼ね備えた街が上位にランクインしたと言えるだろう。

「榴ケ岡」駅近くの榴岡公園は11.2ha、歴史あるサクラの名所で季節ごとの花木が美しい。ランニングコースが設置されランニングの練習や芝生でヨガをするグループも見られる(画像提供/PIXTA)

「榴ケ岡」駅近くの榴岡公園は11.2ha、歴史あるサクラの名所で季節ごとの花木が美しい。ランニングコースが設置されランニングの練習や芝生でヨガをするグループも見られる(画像提供/PIXTA)

国土交通省による「新型コロナ生活行動調査(2020年)」において、コロナ後の都市空間に対する調査で充実してほしい空間として「公園、広場、テラスなどゆとりある屋外空間」が最も高く、次が「自転車や徒歩で回遊できる空間の充実」だった。

今回、上位10位までに入った駅では、「仕事のできる施設がある(コワーキングスペースやカフェなど)」を街の魅力として挙げる声も多く見られるが、仙台市内は「仙台」駅周辺を中心に、コワーキングスペースが増えており、ますます便利に。さらに、在宅ワーク、テレワークの導入が増えるなか、身近に運動不足の解消や気分転換、リフレッシュができる大きな公園や広場があることはコロナ前以上に、魅力的な街の要素になってくるだろう。

「住み続けたい街」(駅)1位は「勾当台公園」

「住み続けたい街(駅)」1位の「勾当台公園」駅は、官公庁やオフィスが集まるビジネス街にありながら、『仙台三越』や東北髄一のショッピングゾーン『一番町四丁目買物公園』、繁華街『国分町』が生活圏にあるエリアだ。

街の魅力項目では「利用しやすい商店街がある」のランキングで1位を獲得しているほか、「学びや、趣味の施設がある(稽古事、カルチャースクールなど)」「文化・娯楽施設が充実している(映画館、劇場、美術館、博物館など)」でも1位を獲得。買い物の利便性に加えて、学ぶ、楽しむなど、余暇の過ごし方も充実できる面での評価が高い。「周囲の目を気にせず自由な生活ができる」が街の魅力の上位にあるのは、ほかの上位10位までの街と異なる特徴だが、仙台駅から少しだけ離れていて、静かで落ち着いた雰囲気があるからではないだろうか。

地下鉄「勾当台公園」駅に隣接する勾当台公園。背後に宮城県庁が見えるが、官公庁やオフィス街にある市民の憩いの場で昼どきはのんびりお弁当を広げる人も。イベントや催しも多く行われる(画像提供/PIXTA)

地下鉄「勾当台公園」駅に隣接する勾当台公園。背後に宮城県庁が見えるが、官公庁やオフィス街にある市民の憩いの場で昼どきはのんびりお弁当を広げる人も。イベントや催しも多く行われる(画像提供/PIXTA)

また、勾当台公園に隣接する『定禅寺通』はケヤキ並木とイチョウ並木が続く杜の都のシンボルストリートで、『仙台七夕まつり』『SENDAI光のページェント』など杜の都の大きなイベントが開催される(近年はコロナ禍でイベントの中止が続いている)ほか、『せんだいメディアテーク』の周囲にはハイセンスなカフェ、雑貨店なども点在する。

定禅寺通に面した『せんだいメディアテーク』。仙台市民図書館、映像音響ライブラリー、スタジオなどの施設が入る複合施設で、美術や映像といった文化活動や生涯学習の場(画像提供/PIXTA)

定禅寺通に面した『せんだいメディアテーク』。仙台市民図書館、映像音響ライブラリー、スタジオなどの施設が入る複合施設で、美術や映像といった文化活動や生涯学習の場(画像提供/PIXTA)

2位の「北四番丁」駅は、地下鉄南北線で「勾当台公園」駅の隣の駅だ。「勾当台公園」駅が、政治・ビジネスの中枢機能を担う都心とすれば「北四番丁」駅は、藩政時代からのお屋敷町・上杉地区を中心とした邸宅地。歴史の古い学校も多いことから、都心の便利さや華やかさよりは、「教育施設の充実、医療施設の充実、学びや趣味の施設、文化・娯楽施設の充実」が魅力項目の上位に上がった。

都心再構築計画など再開発の将来性も住み続けたい理由

「住み続けたい街(駅)」1位~6位は、「イノベーションが生まれる都心、新たなにぎわいを創り出す都心、個性が活きる都心」を目指し、令和2年に開始された「せんだい都心再構築プロジェクト」の重点ゾーンで、同プロジェクトの「緑と交流・賑わい軸(回遊軸)」に位置付け、東北大学農学部跡地開発、仙台市役所の建て替え、勾当台公園の再整備計画など、さまざまな計画が目白押しだ。

3位の「榴ケ岡」駅、6位の「宮城野通」駅周辺でも、ヨドバシ仙台第1ビル計画、防災の拠点となる宮城県広域防災拠点、宮城県民会館・みやぎNPOプラザを合わせた複合施設の移転・新築計画などが進められている。

4位の「大町西公園」は、華やかさ、買い物の利便性より「散歩・ジョギングがしやすい」「仕事ができる施設がある(コワーキングスペースやカフェなど)、「公園が充実している」が主な魅力として挙げられており、公園、運動施設、公共施設、文化・娯楽施設など、休日をのびのびと過ごせる施設が充実し、落ち着いた潤いがある暮らしができることが評価されているようだ。

5位の「青葉通一番町」は4位の「大町西公園」から東に1駅、かつ仙台駅から地下鉄東西線で西へ1駅で徒歩圏内でもある。目の前にハイセンスな地元の老舗デパート『藤崎』やオフィスビル、金融機関などが路面に続く。「いろいろな場所に電車・バスで行きやすい」「職場など決まった所に行くなら電車・バスが便利だ」「歩ける範囲で日常のものがひと通り揃う」「生活上の用事を効率的に済ませることができる」の4項目において、駅ランキング1位にランクイン。アクセス・生活利便性の高さが住民に評価されている。

「青葉通一番町」駅界隈は、老舗の藤崎百貨店やアーケードを中心とした商業エリアで、ファッション・カルチャー・情報が集まる街だが、ノスタルジックな横丁もある(画像提供/PIXTA)

「青葉通一番町」駅界隈は、老舗の藤崎百貨店やアーケードを中心とした商業エリアで、ファッション・カルチャー・情報が集まる街だが、ノスタルジックな横丁もある(画像提供/PIXTA)

「住み続けたい街」(自治体)1位は「子育てに関する自治体サービスが充実の自治体1位」の富谷市

「住み続けたい街」(自治体)のランキングの上位を見ていこう。仙台市の5つの区のほかに仙台市に隣接する市や町がランクインしている。

宮城県  住み続けたい自治体ランキングTOP20

1位の「富谷市」は、仙台市の北、宮城県のほぼ中央に位置し、1970年代から仙台都市圏の居住機能を担うベッドタウンとして、道路を整備し、次々と大型団地が開発・分譲されてきた。地区内に富谷高校があり、企業の誘致や、イオンモール富谷が誕生するなど、目覚ましい発展を続けてきた。1963年の町政施行時は人口が5000人余りの町だったが、1970年から2010年の40年間で約9.7倍に人口が増加。市政の要件の「人口が5万人以上」という条件を満たす見込みが出てきたことから市制移行へ向けて準備を開始、2016年に人口5万人都市となり市政がスタートした。

子育てに関する自治体サービスが充実している自治体ランキング TOP10

富谷市は「子育てに関する自治体サービスが充実している」「介護や高齢者向けサービスなどが充実している」など、自治体サービスに関する2項目で自治体ランキング1位。「魅力的な働く場や企業がある」でも、1位と評価が高かった。

また「子ども医療費助成制度」は、2015年10月から助成対象年齢を高校卒業にあたる18歳年度末までに拡大、2020年10月からは所得制限を撤廃している(小学校4年生以上の子どもの通院分)。また、2020年度から産婦検診と産後うつの予防として出産間もない母子をサポートする「富谷市産後ケア事業」を開始するなど、子育て支援に力を入れている。

新興住宅地に住む、子育て世代が多い若い街で、日本ユニセフ協会の子どもにやさしいまちづくり事業委員会に参加し、「富谷市子どもにやさしいまちづくり宣言」を進め、行政のみならず、地域住民の理解と協力を得ながら「子どもにやさしいまちづくり」を推進している。

また、2021年には政府の「GIGAスクール構想の実現」にいち早く対応し、高速大容量ネットワークの整備と児童生徒1人1台端末配備を宮城県内で最も早く完了するなど、学校教育の情報化推進計画にも力を入れているなど意欲的だ。

「住み続けたい街」(自治体)2位は「教育施設が充実している自治体ランキング」1位の利府町

住み続けたい自治体2位の「宮城郡利府町」は、JR東北本線で仙台駅から約20分、町内に2つのJR駅、路線バス4路線と路線バスを補完する町内バス(大人一律100年)が運行、4つのインターチェンジが存在する交通の要所だ。「運動施設が充実している」「教育環境が充実している」「ショッピングモールやデパートなどの大規模商業施設がある」「子育てに関する自治体サービスが充実している」のランキングで1位。さらに、「公園が充実している」「公共施設が充実している」「介護や高齢者向けサービスが充実している」「魅力的な働く場や企業がある」といった項目も、2位・3位にランクインした。

実際、利府町は自然が豊かな一方、さまざまな施設に恵まれている。買い物施設は、2棟から成り、店舗面積としては東北最大級のイオンモール新利府で生活に必要なものはほぼそろう。買い物利用客を対象に送迎バスを運行といったサービスもある。また、屋内温水プール、子ども向けのアスレチック広場、東北楽天イーグルスの二軍の本拠地の一つである利府町中央公園野球場などを擁する『十符の里パーク(利府町中央公園)』、総合体育館、サブアリーナ、総合プール、宮城スタジアムなどを擁する総合運動施設では大規模なコンサートが開催され県外からも多くの人が訪れる『宮城県総合運動公園(グランディ・21)』など、自然に囲まれた運動施設が町内に集中し、オフに子ども連れで遊びに出かけるのに最適だ。さらに2021年7月には「利府町文化交流センター リフノス」が開館。音楽コンサートや演劇など多目的に利用できる文化会館、公民館、学習室、さらに7万7000冊の蔵書を管理する利府町図書館の複合施設となっている。それらの施設を活かした、さまざまなイベントも行われており、多様な経験を得ることができる。

宮城県総合運動公園、集いの広場周辺(画像提供/PIXTA)

宮城県総合運動公園、集いの広場周辺(画像提供/PIXTA)

利府町は、「教育施設が充実している自治体ランキングTOP10」で1位を獲得。「町はひとつの学校」を理念に、小・中学校が密に連携し、町を挙げて子どもたちの健全な育成を目指す『志(こころざし)教育』を推進していることも評価につながった。

2020年に『利府町総合計画(2021年-2030年)』を策定。2020年以降の人口増加とともに、2030年の目標人口を3万8800人、県内の町で1位になることを目指し、将来の市政への移行を目標にしている。利府町オリジナルの「協働のまちづくり」に楽しんで取り組む活動団体が多数あること、きめ細かな行政施策などにより、住み続けたいという評価につながったのだろう。「今後、街が発展しそう駅ランキング」でも1位となっていることからも、将来への期待がうかがえる。

JR利府駅(画像提供/PIXTA)

JR利府駅(画像提供/PIXTA)

「住み続けたい街」(自治体)4位の「名取市」をはじめ上位は子育て施設や子ども医療費助成の充実が際だつ

4位の「名取市」は『イオンモール名取』が仙台空港アクセス鉄道駅と直結し、「ショッピングモールやデパートなどの大規模商業施設がある」の自治体ランキングで2位を獲得するなど、商業利便性の高さが評価された。名取市のイオンモール名取には、子育て経験豊富なスタッフが常駐し0歳児から小学校入学前の乳幼児親子が気軽に遊びに行ける「名取市子育て支援拠点施設 cocoI’ll(ここいる)」(利用料無料)が2019年4月にオープン、買い物のついでに子育ての悩み相談や情報交換ができる親子のお友達づくりの場として人気が高く、2年間で5万人以上が来館している。2005年度から「名取市次世代育成支援行動計画(後期行動計画)」「名取市子ども・子育て支援事業計画」と子ども・子育て支援施策を推進。現在は、2020年度から2024度を計画期間とし、障がい者福祉計画や食育プランなど「第2期 名取市子ども・子育て支援事業計画」を進めている。

また、「住み続けたい街」(自治体)上位10位のうち、仙台市以外でランクインしているのは紹介した「富谷市」「利府町」「名取市」のほか、9位の「多賀城市」と10位の「宮城郡七ヶ浜町」だ。富谷市、宮城郡利府町、名取市に共通するのは、大規模な商業施設のイオンがあることだ。住宅地が広がり、大規模な商業施設ができて、周辺施設や人の流れが刻々と変わり発展してきた街だが、いずれも、「子育てに関する自治体サービスが充実している自治体ランキング TOP10」にランクインしており、子育てのしやすさがイコールファミリーの住みやすさと直結しているのも特筆すべき点だ。

9位の「多賀城市」は、JR仙台駅から仙石線で約20分、車で約30分というアクセスの良さに加え「公共施設の充実(図書館、コミュニティセンター、公民館など)」の評価が高かった。JR仙石線「多賀城」駅前には、2016年にリニューアルオープンした「多賀城市立図書館」、キッズライブラリーや学習スペース、ギャラリー、民間の書店やカフェなども併設している、0歳児から未就学児が親子で遊べる「多賀城市子育てサポートセンターすくっぴーひろば」があり、利用しやすい。

近代的な多賀城市立図書館(画像提供/PIXTA)

近代的な多賀城市立図書館(画像提供/PIXTA)

10位の「七ヶ浜町」は、名前のとおり七つの海に囲まれ、宮城県有数の菖蒲田浜(しょうぶたはま)海水浴場があり、日本三景・松島に面し、町内の「多聞山展望広場公園・毘沙門堂」からは松島を一望できるなど、風光明媚な地でもあり「街の住民がその街のことを好きそう」の魅力項目では、自治体ランキング1位を獲得している。
「運動施設が充実している(フィットネスジム、プール、テニスコートや体育館など)自治体ランキング」では利府町に続き2位にランクインしている。

七ヶ浜町内には入浴施設、アリーナ、トレーニングルーム、フィットネススタジオなどを備えた「七ヶ浜健康スポーツセンター・アクアリーナ」やサッカースタジアム、テニスコート、フットサルコート、野球場、町民プールなどのスポーツ施設が集まり、さまざまなスポーツが楽しめる。

七ヶ浜健康スポーツセンター・アクアリーナ(画像提供/PIXTA)

七ヶ浜健康スポーツセンター・アクアリーナ(画像提供/PIXTA)

また、宮城県は、全国的に見ても「子ども医療費助成事業」が充実している。「子育てに関する自治体サービスが充実している自治体ランキング TOP10」の富谷市、利府町、大和町、栗原市、東松島市、岩沼市、七ヶ浜町は、対象年齢が、高校3年生までの子どもで、所得制限なし。仙台市・名取市は所得制限があるものの、中学3年生までを対象とするなど、年齢の上限が高い。

「子育てに関する自治体サービスが充実している自治体ランキング」で11位の東松島市は、市内に住所をもつ全ての子ども(18歳到達年度末まで)に対して医療費が無料で所得制限を設けていない。ケガや風邪、高熱などで病院にかかるときもこのような医療費の助成があれば安心して病院に行くことができる。「子育てに関する自治体サービスが充実している自治体ランキング」で5位にランクインしているのも納得の結果だ。

2022年の宮城県の住み続けたい街(駅)と(自治体)のランキングを見てきた。「住みたい街」は、憧れといった側面が強いが、「住み続けたい街」は、実際に住んで満足し、将来にも期待している、リアルな「住み心地の良さ」の証明だ。

実際に住んでみなければ分からない部分にお墨付きをいただいたようなランキングを参考に、「住みたい街」「住み替えたい街」を検討するときのひとつの指針にしてはいかがだろう。

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