住まいの中での寒暖差による「寒暖差疲労」や「ヒートショック」に注意

LIXILが、20代~50代の男女4700人を対象に、冬(主に11月~2月)における「住まいの中での寒暖差と住宅の断熱に関する意識調査」を実施した。近年は地球温暖化により「暖冬」になることもあるが、同社によると、暖冬の場合は急激な寒暖差が起こりやすく“寒暖差疲労”に注意が必要なのだという。調査結果を詳しく見ていこう。

【今週の住活トピック】
「住まいの中での寒暖差と住宅の断熱に関する意識調査」を実施/LIXIL

特に「朝起きて布団から出る時」に寒暖差を感じる人が多い

これから本格的な冬の寒さが到来する。「冬、普段生活している自宅の中で過ごしている際に、場所や時間によって寒暖差を感じることがあるか」と尋ねたところ、寒暖差を感じるという回答が74.1%(「感じる」39.4%+「どちらかというと感じる」34.7%)だった。

寒暖差を感じると回答した人に「寒暖差を感じる瞬間」を尋ねると、ダントツで「朝、起床し布団から出る時」(69.5%)となった。2位の「脱衣所で服を脱ぐ時」(48.0%)、3位の「浴室から出た時」(40.8%)と比べてもかなり多い回答だ。

かくいう筆者も、この記事を執筆している日の朝は外の気温が1℃だったので、布団から出るのがつらかった。昼でも10℃なので、ひざ掛けをしてパソコンに向かっているありさまだ。

「寒暖差疲労」と「ヒートショック」に注意

LIXILによると、「一日の温度差が7℃以上あるときに寒暖差疲労は起こりやすいとされている」という。寒暖差疲労とは、「寒暖差による体温調節により多くのエネルギーを使用することで、体に疲労が蓄積し、疲労感やめまいといった症状を引き起こす」もの。

約7割が寒暖差を感じる「起床して布団から出る時」は、「温められた布団から冷えた室内に出ると、体が急激に冷やされることで血圧が上がり、ヒートショックを引き起こす危険がある」というのは、気になる点だ。住まいの断熱リフォームのビフォー/アフターで、起床時の血圧がかなり違うという研究結果(【画像1】)もあるのだ。「手の届く範囲に羽織れるものを用意しておく」、「暖房器具をタイマーセットし、朝方に部屋が暖かくなるようにする」、「寝室だけでも断熱リフォームを行い部屋の気温差を一定に保ちやすくする」などの対策を検討したい。

起床時の血圧の比較

【画像1】
※日本サステナブル建築協会 断熱改修等による居住者の健康への影響調査 中間報告(第3回)資料より
起床時の血圧の比較(出典: LIXIL「住まいの中での寒暖差と住宅の断熱に関する意識調査」プレスリリース)

住宅内で寒さを感じる場所は、ヒートショックの発生リスクが高い

住宅内で「寒さを感じる場所」と「暖かさを感じる場所」を尋ねると、【画像2】のような結果となった。おおむね居室やお湯をたくさん使う場所は暖かく、居室でない場所は寒く感じるようだ。リビングや寝室は暖房器具で暖めるものの、トイレや脱衣所、廊下などは日当たりが悪く、暖房もしないということだろう。

冬の自宅で寒さを感じる場所、暖かさを感じる場所

【画像2】
冬の自宅で寒さを感じる場所、暖かさを感じる場所(出典: LIXIL「住まいの中での寒暖差と住宅の断熱に関する意識調査」プレスリリース)

同社の「住まいStudio」にある、断熱性能の異なる3つの部屋で同じ0℃の環境下で比較したのが【画像3】だ。断熱性能の違いを説明すると専門的になるので、分かりやすく言うと、「左」の昭和55年省エネ基準は「昔の家」、「中央」の平成28年省エネ基準は「今の家」、「右」のHEAT20 G2は「断熱性能のかなり高い家」と考えてよいだろう。外気温0℃はかなり寒い環境なので、暖房のある「居間」でもサーモカメラで見ると昔の家や今の家では青い色が残っている。一方、断熱性能のかなり高い家では、暖房のない廊下やトイレでも居間の暖房が効いて青くなっていない。同じ外気温、同じエアコン設定でも、住宅の断熱性能によってかなり違うことが分かる。

「住まいStudio」の3つ部屋の温度の違い

【画像3】
「住まいStudio」の3つ部屋の温度の違い(出典:LIXIL「住まいの中での寒暖差と住宅の断熱に関する意識調査」プレスリリース)

実は筆者は、住まいStudioを訪問してこの3つの部屋を体験したことがある。窓の断熱性能の違いもあって、暖房のある居間でも窓際にいるとかなり寒さが違ったと記憶している。断熱性能のかなり高い家では、暖房ではなく送風でも十分に暖かった。建築コストも異なるが、住む間の電気代も変わることだろう。

また、昔の家では居間とトイレの温度差は12.1℃、今の家でも温度差は9.6℃だったが、断熱性のかなり高い家では温度差は5.3℃とその差は縮まり、部屋の間を移動する際の身体への負担も小さくなるので、ヒートショックの発症リスクも軽減されるという。

窓まわりの断熱リフォームのススメ

住宅の断熱性能の違いが室温に大きく影響するわけだが、「これまでに断熱リフォームを検討、もしくはしたことがあるか」を尋ねている。「断熱リフォームをしたことがある」が6.7%、「断熱リフォームをしたことがないが、検討したいと思う(検討中である)」が9.5%で多いとはいえないが、昨年の調査結果と比べるとそれぞれ約1.4倍に増えたという。

「今後断熱リフォームを実施したい住まいの箇所」の1位は、56.9%の「断熱性の高い窓を設置/交換」だ。実は筆者も以前、窓の断熱リフォームを行った。冬の朝の窓ガラスの結露がひどかったので、それから解放されたのがうれしかった。工事は一日で終わったので、窓際が寒いという家の場合はぜひ窓の断熱リフォームを検討してはいかがだろう。

家の断熱性能を高めると、エコにつながることや光熱費が抑えられることが言われるが、最も大切なのは家の中にいる時の快適性が上がることだと思う。暑さ寒さの不快感が軽減し、寒暖差疲労やヒートショックのリスクも下げられるのは、日々の生活のなかで重要なことだ。家の断熱性能を高めていくと建築コストもかかるが、先進的窓リノベ事業(2024)などの補助金や減税などの優遇措置もあるので、上手に活用して冬を快適に過ごすことを考えてほしい。

●関連サイト
LIXIL「住まいの断熱と寒暖差に関する調査」

SNSが浸透した今、インテリア提案も新たな局面へ。感性を形にするデザインシステムとは?

積水ハウスが、新デザイン提案システム「life knit design(ライフ ニット デザイン)」を6月30日から全国で始動するという。そのプレス向けの発表会が、6月20日に開催された。併せて、「life knit atelier(ライフ ニット アトリエ)」の内覧会もあり、筆者も参加してみた。

【今週の住活トピック】
「life knit design(ライフニットデザイン)」6月30日始動/積水ハウス

「和・洋・モダン」などから、「静・優・凛・暖・艶・奏」の6分類へ

積水ハウスの説明によると、“感性”を住まいに映し出すのが、新デザイン提案システム「life knit design」だという。“時間と共に愛着を編み込む住まい”といった意味合いがあるそうだ。これまでは、その時々に流行した「和・洋・モダン」などといったテイストをベースにしていたが、より普遍的な“感性”をベースにした空間提案をするのが、ライフ ニット デザインということだ。

その感性とは、これまでの積水ハウスの施工事例などのインテリア画像約6600点から受ける印象を言語化して、日本カラーデザイン研究所の言語イメージスケールを元に3D化した結果、おおらかな6つの感性フィールドを導き出したもの。例えば、静かな、くつろいだ、豊潤な、凛とした、などをプロットして、おおらかな(重なる部分もある)関係性をグループ化した結果、「静・優・凛・暖・艶・奏」の6つの感性フィールドに集約した。

【6つの感性フィールド】
「静 PEACEFUL」:しなやかな空気感…ローコントラスト、同系色
「優 TENDER」 : さわやかな空気感…すっきりナチュラルな木質感
「凛 SPIRIT」: 緊張感のある空気感…上質なシンプルさ
「暖 COZY」: 暖かみのある空気感…暖かみのある木質感
「艶 LUXE」: 贅沢な空気感…ハイコントラスト、重厚感
「奏 PLAYFUL」: 心躍る空気感…ワクワクする色やカタチ

6つの感性フィールドをプロット

積水ハウス プレゼン資料より転載

この提案システムはインテリアとエクステリアが対象で、エクステリアについても同様に、美しい景観を構成する「明度グラデーション」を特定している。顧客の感性から、インテリアやエクステリアをプランニングするのが新しい提案の手法だ。

好みのインテリア画像から感性を判断して空間を提案

説明を聞いただけでは具体的なイメージがわかないし、家族といえどもそれぞれ感性が異なる場合はどう提案するのだろうと疑問に思った。「SUMUFUMU TERRACE新宿」内に、実際に提案をする場となる「life knit atelier」があり、そちらに移動してさらに詳しく話を聞いた。

SUMUFUMU TERRACE新宿/筆者撮影

SUMUFUMU TERRACE新宿/筆者撮影

まず、同社が開発した「interior communication tool」で顧客の感性を調べる。内覧会では、筆者のいるグループから、夫役・妻役・子ども役の3人で実際に試してみることに。筆者は手を挙げて、子ども役を担当した。家族3人は、別々のタブレットで次々と映し出される36枚のインテリア画像を見て、好き(♡)かそうでもないか(△)をマークをタップして直感的に選ぶ。すべて選び終わると、好きなインテリア画像だけが映し出されるので、その中からベスト5を選ぶ。ベスト5については、その理由(例えば、使ってみたい家具や小物がある、過ごし方のイメージがわいたなど)も入力する。

積水ハウス プレゼン資料より転載

積水ハウス プレゼン資料より転載

入力が終わると、同社のスタッフが家族3人の選んだベスト5を一覧にして出してくれた。今回は、にわか家族なので、好きなインテリアがあまり重ならない。特に夫役の選んだ画像は、重厚感のある画像が多くて他の家族と全く一致しなかったが、妻役と子ども役はナチュラルな印象の画像が多く、数枚重なって選んでいた。「このように家族でも感性は一致しない場合はどうなるのか」という疑問を抱えたまま、次のステップへ移動。

筆者撮影

筆者撮影

インテリアの提案をしてくれるスタッフのいる部屋には、すでに家族の好みの画像が共有されている(写真左のディスプレイ)。そのうえで、好みの画像やその理由などを基に、一つのインテリアイメージをCG動画で提案してくれる(写真右のディスプレイ)。CG動画では、最初に平面の間取りが提示され、その間取りをどう作りこむかのCGが空間や角度を変えて映し出される。床・壁・天井といったシンプルな空間に、家具などを掛け合わせることで感性を表現するということなので、CG動画には家具、照明、ラグなども入っている。また、サンプルも用意してあるので、実際の色味や手触りなども確かめながら、決めていけるという。

今回の家族に提案されたCG動画は全体的にナチュラルな印象だったので、妻役と子ども役で共通する感性が優先されているのだろう。家具が気に入ったなどの理由によっては、誰かの好みの家具も配置されているのかもしれない。実際には、家族が提案されたCG動画を見ながら、床材はこうしたいなどと話し合い、要望に応じて変更された動画で確認しながら決めていくので、家族の感性が異なれば、家族で協議して解決することになるようだ。筆者が念のために、提案されるCG動画の数を聞いてみると、それぞれを組み合わせて提案するので、何万通りにもなるという。

住宅の範疇といえば、インテリアのうち内装や住宅設備になるが、提案されるCG動画には家具やラグなども配置されている。家具などの販売やあっせんもしてもらえるのかを聞いたところ、家具や照明はもちろん、観葉植物や絵画などの相談にも応じているという。その場ですぐに、照明や観葉植物を差し替えたCGを見せてくれた。至れり尽くせりだ。

最後に、マテリアルビュッフェのあるコーナーに移動した。ここでは、床材や壁紙、カーテン等のサンプルが展示してあるほか、6つの感性フィールド別のコラージュボックスが用意されている。コラージュボックスとは、「暖」の感性ならインテリアの内装はこうした組み合わせがオススメといったセットがボックスに収納されているものだ。残念ながら、どの感性に該当するといった判定はしてもらえないが、好みのセットをベースに、素材を触りながら他の感性の素材も取り入れて決めていくということになるのだろう。

マテリアルビュッフェのコーナー/筆者撮影

マテリアルビュッフェのコーナー/筆者撮影

ベースがあるので、家づくりを効率的に検討できるのがメリット

エクステリアに関する体験はできなかったのでよくわからないが、インテリアについては、感性にマッチしたものをトータルに提案してもらえるので、それをスタートラインにして検討できるという点で、決定するまでの時間の短縮が図れるだろう。

またその際に、家族の好みが見える化されるので、互いに話しやすいという利点もあるだろう。最近は、新築やリフォームの際に、好みの画像を用意して希望を伝える人も多いと聞く。この仕組みでは、積水ハウスが用意した画像だけでなく、例えばインスタグラムの好みの画像を提示すれば、それも加味して分析することも可能だという。

一方で、実際の家づくりでは、インテリアだけでなく、決まった広さの中で間取りを固めるため、スペースの取り合いという側面もある。スペースと好みのインテリアを上手に織り込むのが、スタッフの腕の見せ所となるのだろう。

また、インテリアについては至れり尽くせりなので、あれこれとこだわるほどにいろいろなものを新たに買うことになる可能性もあり、コスト管理という側面も欠かせないように思う。

さて、感性を軸として空間を提案するという新しい手法は、画像や動画に親しんでいる今の人たちにマッチしているのだろう。「何となく好き」な画像が、こうした手法でつきつめていくと、床や壁が好みなのか、家具が好みなのか、居住空間が好みなのかといったことが認識できるようになり、言語化されていくのも面白い。

一方でトータル提案されるのがメリットである半面、提案から外れるものを加えた途端、デザインが崩れてしまうので、住む人のインテリアセンスも問われることになるのだろう。

●関連サイト
積水ハウス「life knit design(ライフニットデザイン)」6月30日始動
「life knit design」ウェブサイト

住宅ローン「変動型」利用者が減少傾向に。金利上昇リスクを抑えるには?

住宅金融支援機構が発表した「住宅ローン利用者の実態調査結果(2022年10月調査)」によると、増加していた「変動型」の利用者が減少に転じたという。それでもなお、約7割が変動型を利用している。金利が上昇した場合、変動型を利用していても問題はないのだろうか?

【今週の住活トピック】
「住宅ローン利用者の実態調査結果(2022年10月調査)」を発表/住宅金融支援機構

「変動型」が減少し、「固定期間選択型」と「全期間固定型」が増加

まず、住宅ローンの金利タイプについておさらいしておこう。35年などの返済期間を通して金利が固定される「全期間固定型」、当初の3年や5年、10年などの選択した一定期間だけ金利が固定される「固定期間選択型」、半年ごとに金利が見直される「変動型」の3タイプがある。今のような低金利の局面において、全期間固定型は変動型よりも金利が高く設定されている。

次に、調査対象者や時期を確認しよう。調査対象は、2022年4月~9月の間に住宅ローンを借りた1500件で、調査は2022年10月~11月に実施された。金融緩和策を維持してきた日本銀行が、長期金利の変動許容幅を従来の0.25%程度から0.5%程度に広げ、実質の利上げかといわれたのが、2022年の年末のこと。これにより、いよいよ金利上昇が現実的になってきたと指摘されたのだが、これよりも前に住宅ローンを借りた人に調査を実施したことになる。

では、調査結果を見ていこう。今回の調査で注目されたのは、「変動型」が減少したこと。代わって「固定期間選択型」や「全期間固定型」が増加した。それでも、69.9%が変動型を選んでいる。やはり、変動型の低金利に魅力を感じるということだろう。

利用した金利タイプ

利用した金利タイプ(出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2022年10月調査)」)

低金利のメリットを活かしたい人が多いなか、金利の上昇リスクを抑えたいと考えて、全期間固定型や固定期間選択型を選んだ人が以前より増えたのだろう。

実際に「今後1年間の住宅ローンの金利見通し」を聞いた結果は、「現状より上昇する」が41.7%になり、前回調査(2022年4月調査)の39.2%よりわずかに増えた。特に、全期間固定型を選んだ人では、上昇するという回答が、前回の45.1%から今回の52.7%に増加している。変動型より金利は高く設定されているものの、低金利のいまのうちに全期間の金利を固定してしまおうと考えた人もいたのだろう。

変動型を選んだ約7割のなかでも、金利上昇に強い人、弱い人がいる

調査時期よりも現時点のほうが、金利上昇が現実的になっている。実際に、全期間固定型の代表となる【フラット35】の最頻金利※は、2023年3月時点で、5カ月連続で上昇した。変動型はまだまだ金利が上昇する気配はないが、長期に金利を固定するものは少し上がっているのだ。
※※最頻金利とは、取扱金融機関が提供する最も多い金利のこと

つまり、これから考えるべきリスクは金利が上昇することで、利息が増え、毎月の返済額(ボーナス時加算も併用していればその返済額も)が増えてしまうことだ。返済額が増えても、家計に支障がない人もいれば、それによって返済が難しくなる人もいるだろう。

まず気になる点、その1は「融資率」だ。住宅価格(注文住宅なら建築費用)の何割を住宅ローンで充当するかで、頭金を1割入れていれば、9割が住宅ローンとなる。調査結果を見ると、変動型を選んだ人が最も多いのが「90%超100%以下」ということだ。さらに「100%超」つまり、住宅価格だけでなく諸費用分まで借りた人でも、変動型を選んだ人が多いのも気になる。

融資率

融資率(出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2022年10月調査)」)

融資率90%超で変動型を選んだ理由が、低金利の変動型でなければそこまで借りられなかったという人は、要注意だ。

例えば、毎月12万円の返済(年間返済額144万円)で住宅ローンを35年返済で借りるとする。変動型(金利0.45%で試算)なら、借入可能額は4662万円だが、全期間固定型(金利1.45%で試算)なら借入可能額は3950万円に下がる。毎月12万円の返済で4500万円を借りたい場合は、変動型などの低金利のものしか選択できないということになる。

もちろん、月々の家計に余力があれば、金利上昇に伴う返済額の増加の影響は少ない。その意味では、気になる点、その2は「返済負担率」となる。返済負担率とは、年収に対して年間の住宅ローンの返済額が何%になるかを表すものだ。

一般的に住宅ローンでは、年収が高くなるほど、高い返済負担率でも借りられるようになる。例えば、先ほどの事例(毎月返済額12万円)では、年収600万円の人なら、返済負担率は24%なので問題はない。これに対して、年収400万円の人だと返済負担率が36%まで上がるので、金融機関側から借入額を減らして毎月の返済額を抑えるように求められることになる。

返済負担率

返済負担率(出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2022年10月調査)」)

調査結果を見ると、多くの人が返済負担率10%超から25%以内の安全圏で借りている。が、年収400万円以下の人で返済負担率25%~30%だったり、高年収でも支出の多い家計で返済負担率が35%超だったりすると、支出の削減が難しい場合もあるので、金利上昇に伴う返済額の増加の影響が大きくなるだろう。

金利上昇リスクに対して具体策をもとう

そして最も気になる点、その3が「金利上昇リスクへの対応を考えていない」場合だ。調査結果を見ると、変動型を借りている人で、金利上昇で返済額が増加した場合の対応について「見当がつかない、わからない」という人が20.7%もいる。

金利上昇に伴う返済額増加への対応

金利上昇に伴う返済額増加への対応(出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2022年10月調査)」)

資金に余力があって、返済を継続できる(31.6%)、全額完済できる(13.6%)なら問題はない。また、「一部繰り上げ返済をする」(24.5%)という人も多いのだが、元金の一部を繰り上げて返済するので、そのための資金が必要になる。「借り換え」(9.0%)も同様で、相応の諸費用がかかる。貯金に余裕がなくて融資率9割超という人には、難しい対応策かもしれない。

また、金利上昇のために変動型から借り換える場合、借り換え先の金利も上昇しているはずだし、一般的に変動型よりも先に長期間金利を固定するタイプが上がっていくので、金利上昇に気づいたときには、すでに借り換え先の金利も上がっていてリスク回避の効果がないという場合もあるだろう。

変動型は金利が上昇しても急激に返済額は増えないけれど…

急激に金利が上昇したバブル期のときに導入されたのが、変動型の5年ルールだ。急激に返済額が増加するのを抑えるために、金利が上昇して利息が増えても、返済額の設定見直しは5年おきとし、返済額を増やす場合でも1.25倍までに制限するというもの。今でもこのルールを適用する金融機関は多い。

したがって変動型で金利が上昇した場合でも、このルールによって、急激に返済額が増える事態にはならない。しかし、返済額が増えないだけで、支払うべき未払い利息は残る。元金も減らないため、トータルの利息はどんどん積み上がることになる。

住宅ローンは35年間などの長期間にわたって返済するものだ。自分や共に住宅ローンを借りたパートナー、あるいは勤務先の事業などによって、収入が想定より減ってしまうリスクもあるので、目いっぱい借りてしまうことに注意したい。さらに、金利上昇リスクが高まる状況なので、これから借りる人はぜひ、金利が上昇したときにどう対応するかを考えて、住宅ローンを選ぶようにしてほしい。

●関連リンク
「住宅ローン利用者の実態調査結果(2022年10月調査)」(住宅金融支援機構)

2022年「住み続けたい街ランキング」が発表!3位日本大通り、2位馬車道、1位は?

毎年、「住みたい街」のランキングを発表しているリクルートが、住民の実感調査による「住み続けたい街」のランキングを発表した。「住みたい街」とは顔ぶれが異なる「住み続けたい街」。どの街が上位になったのだろう。

【今週の住活トピック】
「SUUMO住民実感調査2022 首都圏版」2022年住み続けたい街(自治体/駅)ランキング発表/リクルート

「住みたい」ではなく、今の街に「住み続けたい」をランキング化

首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、茨城県)の街(自治体・駅)について、「お住まいの街に今後も住み続けたいですか?」と聞いた結果をランキング化したのが、「住み続けたい」街(自治体・駅)ランキングだ。2021年に続き、今回が2回目の調査になる。(ただし、「住み続けたい」の回答方法を5段階から11段階に変更したため、前回の結果との比較はしていない。)

「住みたい街」は多くの人が憧れる街なので、ターミナル駅が上位にくる傾向があるが、「住み続けたい街」は住民の居住継続意向によるもの。人によって“住みやすさ”は異なるので、居住の意向もそれぞれとなるが、「街選びのモノサシを多様に提示したい」という。

気になるランキングだが、興味深い結果になった「住み続けたい駅」のランキングから見ていこう。驚いたのは、首都圏外に住んでいる人には全くなじみのない駅名、いや首都圏に住んでいても知らない人が多いかもしれない駅名も上位にランクインしたことだ。

住み続けたい駅ランキングのTOP3は、湘南海岸公園、馬車道、日本大通り出典:リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2022 発表資料」より転載

出典:リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2022 発表資料」より転載。11位以下のランキングはこちら。

1位は、藤沢市の鵠沼・江ノ島エリアの「湘南海岸公園」。同じエリアからは、4位「鵠沼」、7位「石上」、13位「鵠沼海岸」、16位「片瀬江ノ島」、20位「柳小路」などが上位にランクインし、人気の高さがうかがえる。

2位にはみなとみらい線の「馬車道」が入り、3位「日本大通り」、6位「みなとみらい」と合わせて、この沿線の強さがわかる結果になった。

ほかにも、銀座と築地の間にある「東銀座」が5位に入り、25位「人形町」、28位「水天宮前」、29位「月島」など、中央区の駅が入った。中央区のなかでも、日本橋や京橋など山手線に近いエリアではなく、かつて大川といわれた隅田川に近い駅が挙がった。阿部寛主演の「新参者」に登場した街が人形町や水天宮前だ。歌舞伎座のある東銀座やもんじゃ焼きで有名な月島など、江戸庶民に愛された街である。

余談になるが、かつて筆者の同僚が人形町に住んでいたとき、町内の青年会に入会し、地域のお祭りでは中心となって活躍して楽しんでいた。このエリアは、地域ごとにお祭りがあり、盛大に開催されている点も特徴だ。

さらに、10位「代々木八幡」、15位「代々木公園」、19位「原宿」、26位「代々木上原」、27位「北参道」など、代々木公園の周辺の駅も上位に入った。「代々木公園」の公園力がいかに強いかがうかがえる。代々木公園の特徴は、ピクニックもできる樹木や花の多い公園というだけでなく、「ドッグラン」や「サイクリングコース」(大人用と子供用)、「バードサンクチュアリ」、「イベント広場」など、多様な憩い方ができる点にある。さらに周辺には気軽に入れる飲食店も多く、多様な人が集まりやすいという。

「住み続けたい」理由は、上位グループでも大きく異なる

上位グループが選ばれた理由を見ていこう。実は、「鵠沼・江ノ島エリア」と「馬車道・みなとみらいエリア」とでは、「街の魅力」に対する回答が少し異なる。

■ランキング1位 湘南海岸公園駅の魅力

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

出典:リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2022 発表資料」より転載

出典:リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2022 発表資料」より転載

まず、ランキング1位の湘南海岸公園駅の「街の魅力」で高いものを見ていこう。「自然が豊富」な街であることは間違いないが、「地域に顔見知りができやすい」、「街の住民がその街のことを好きそう」といった地域のコミュニティの強さが特徴だ。地域に溶け込みやすいイベントも多く、もともと漁師町であったことから地域で支えあう風土があるという。

■ランキング2位 馬車道駅の魅力

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

出典:リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2022 発表資料」より転載

出典:リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2022 発表資料」より転載

一方、ランキング2位の馬車道の「街の魅力」は、「周囲の目を気にせず自由な生活ができる」や「文化・娯楽施設が充実している」、「魅力的な働く場や企業がある」、「雰囲気やセンスのいい、飲食店やお店がある」など。インフラが充実しているのが特徴だ。SUUMO編集長の池本洋一さんによれば、馬車道では商店振興会主導で歴史景観を残す「ホンモノ思考」があり、シビックプライドが醸成されていること、再開発によるみなとみらいのオフィス、日本大通りのハマスタ、飲食店の多い野毛地域などが融合して多様な人を受け入れていることなどが、沿線エリアの魅力をつくり出しているのだという。

地域への愛着を感じる特色こそが、「住み続けたい」と思う理由に

「住みたい街」と「住み続けたい街」では、共通する高い項目がある。「人からうらやましがられそう」、「街ににぎわいがある」、「雰囲気やセンスのいい店がある」、「文化・娯楽施設が充実」などだ。その街に付加価値があるという点では共通しているわけだ。しかし、「住みたい街」では、「大型の商業施設が充実」、「交通利便性が高い」などの項目が高いのに対して、「住み続けたい街」では、「住民が街のことを好き」、「人目を気にせず自由な生活ができる」など、街への愛着や街が住人の多様性を容認する雰囲気が重視される。

池本さんによれば、住み続けたい街になるには、その街の交通アクセスの良さが不可欠ではあるが、そのほかに共通する大きな要素があるという。第1に、地域に参加しやすいイベントや場所があったり、子育てしやすい環境があったりして、「街の住民がその街のことを好きそう」という要素だ。住民が街を好きであると、街の教育や防災などのインフラが整備される傾向もある。第2には、多様な人を容認する文化があり、「周囲の目を気にせず自由な生活ができる」という要素が、大きく影響している。

「鵠沼・江ノ島エリア」は特に第1の要素が強く、「馬車道・みなとみらいエリア」は特に第2の要素が強いという代表だろう。こうした要素ができるには、それを醸成する仕掛けや持続させる仕組みがあるのだと、池本さんは指摘した。

出典:リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2022 発表資料」より転載

出典:リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2022 発表資料」より転載

「住み続けたい自治体」ランキングのTOP3は、武蔵野市、目黒区、葉山町

最後に、「住み続けたい自治体」のランキング上位を紹介しておこう。

出典:リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2022 発表資料」より転載

出典:リクルート「SUUMO住み続けたい街ランキング2022 発表資料」より転載。11位以下のランキングはこちら。

1位は「武蔵野市」。2位「目黒区」、4位「中央区」、5位「渋谷区」、8位「港区」、10位「文京区」と東京都の自治体では、23区が多数ランクインしている。3位「葉山町」、7位「逗子市」、11位「藤沢市」、12位「茅ヶ崎市」、14位「鎌倉市」と神奈川県の『湘南・三浦エリア』が上位にランクインしている。

埼玉県では13位「さいたま市浦和区」、15位「さいたま市大宮区」など、さいたま市中心エリアが上位に入り、千葉県では、9位「浦安市」、23位「千葉市美浜区」など湾岸を含むエリアが上位に入った。

さて、ランキングの結果を見て、あなたはどう思っただろう?人気エリアは住居費用が高いと思った人もいるかもしれない。池本さんによれば、手ごろな家賃(シングルで家賃8万円以内)で住み続けたい23区内の街もあり、「南阿佐ヶ谷・阿佐ヶ谷エリア」や「東急世田谷線エリア」などが挙げられるという(同日に発表した「SUUMO住民実感調査2022首都圏 都県(地域)×家賃水準別住み続けたい駅ランキング」に掲載)。

人それぞれで“住みやすさ”を感じる点は異なるので、納得のいく結果も意外な結果もあったかもしれない。集客力のある知名度の高い大きな街だけでなく、自分好みの暮らしができる特色のある街をぜひ探してほしい。

●関連サイト
「SUUMO住民実感調査2022 首都圏版」2022年住み続けたい街(自治体/駅)ランキング

賃貸のほうが持ち家より住宅への不満率が高い!持ち家志向や新築志向は?

国土交通省では、5年ごとに大規模な「住生活総合調査」を実施している。このたび、2018年(平成30年)の詳細な結果(確報)が公表された。そこで今回は、この中から注目したいポイントをいくつか紹介しよう。【今週の住活トピック】
「平成30年住生活総合調査の調査結果」(確報)を公表/国土交通省住宅への不満は減りつつあるものの、賃貸では持ち家より不満率が高い

持ち家、賃貸のそれぞれに住宅に対する評価(満足か不満か)を聞いたところ、いずれも経年(5年)ごとに住宅の満足度が上がっている。しかし、現在の居住形態が賃貸と持ち家の人で違いが見られた。「多少不満」と「非常に不満」を合わせた『不満率』を見ると、持ち家は18.8%であるのに対して、賃貸は33.1%となり、賃貸に居住している人のほうが不満率が高く、その差は意外に大きいことが分かる。

その理由は調査結果では分からないが、一般的に持ち家と賃貸の住宅の性能には差があると言われている。それは、長く住む前提で売買される分譲住宅などでは、住宅の性能を法規制よりも引き上げて販売し、住宅への投資を賃料で回収したうえで収益を上げる賃貸住宅では、性能を法規制通りのレベルにすることが多いからだろう。こうした性能の違いが、不満率などの結果に表れていると考えてよいだろう。

持ち家・借家別の住宅に対する評価(出典:国土交通省「平成30年住生活総合調査の調査結果」(確報))

持ち家・借家別の住宅に対する評価(出典:国土交通省「平成30年住生活総合調査の調査結果」(確報))

では、住宅の評価で『不満率』が高いのは、どういった項目だろう。
不満率の高い上位5項目を見ると、「高齢者への配慮(段差がない等)」が 47.2%と最も高く、「地震時の安全性」(43.6%)、「遮音性」(42.9%)、「台風時の安全性」(38.8%)、「断熱性」(38.6%)の順に続いている。ほとんどの項目で、不満率は経年(5年)ごとにおおむね減少しているが、遮音性などあまり経年変化がない項目もある。

住宅の個別要素に対する不満率(出典:国土交通省「平成30年住生活総合調査の調査結果」(確報))

住宅の個別要素に対する不満率(出典:国土交通省「平成30年住生活総合調査の調査結果」(確報))

なにがなんでも「持ち家」「新築」志向は過去のもの?

賃貸のほうが持ち家より不満率は高かったが、今後の住み替え先として「持ち家への住み替え」を志向する人は、経年(5年)で見ると減っている。現在持ち家の世帯では、「こだわらない」が増えているが、現在借家の世帯では、「借家への住み替え」が増えている。

今後の居住形態(持ち家・借家)に関する意向(出典:国土交通省「平成30年住生活総合調査の調査結果」(確報))

今後の居住形態(持ち家・借家)に関する意向(出典:国土交通省「平成30年住生活総合調査の調査結果」(確報))

持ち家への住み替え後の住宅について「新築か中古か」を聞くと、比率自体は小さいものの「中古住宅」が経年(5年)ごとに増えている点に注目したい。「こだわらない」も平成25年・30年の調査では3割を超えており、「新築住宅」志向にかげりが見られるようだ。

持ち家への住み替え後の居住形態(新築住宅・中古住宅別)(出典:国土交通省「平成30年住生活総合調査の調査結果」(確報))

持ち家への住み替え後の居住形態(新築住宅・中古住宅別)(出典:国土交通省「平成30年住生活総合調査の調査結果」(確報))

親は、親子の住まいの距離感にあまりこだわりはない?

最後に、親世帯が子世帯にどういった住まい方の距離感を望んでいるか、見ていこう。

高齢期になって「子と同居する」ことを希望するのは、経年(5年)ごとに減少傾向にあり、平成30年では11.6%になっている。「子と同じ敷地内の別の住宅に住む、または同じ住棟内の別の住戸に住む」(7.0%)と「徒歩5分程度の場所に住む」(6.6%)の、子世帯のすぐ近くに住むことを希望するのは合わせて13.6%。最も多いのは「特にこだわりはない」の33.5%だった。

高齢期における子との住まい方(距離)の希望(出典:国土交通省「平成30年住生活総合調査の調査結果」(確報))

高齢期における子との住まい方(距離)の希望(出典:国土交通省「平成30年住生活総合調査の調査結果」(確報))

互いに行き来しやすい距離感を望むものの、それぞれのライフスタイルがあるので、親子間の距離感にこだわりはないという人が増えていると見ていいだろう。

さて、「住生活総合調査」は5年ごとに調査を実施しているので、次の実施は2023年(令和5年)になる。近年は甚大な災害が増えていたり、コロナ禍という事態も起きたりしているので、住宅に望むことや親子間の距離についても考え方が変わっていくだろう。次の調査ではどういった結果になるのか、予測するのが難しい社会になっている。

「物件は水害ハザードマップのここです。」不動産取引の際に不動産会社による説明を義務化

2020年の梅雨が長引き、7月下旬の4連休にも本州に梅雨前線が停滞した。大規模な水害リスクのある大雨への警戒が長く続いているが、土地や住宅の売買・賃貸の際に、不動産会社が水害ハザードマップについて説明することが義務化されることになった。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化/国土交通省2020年8月28日から契約の際に水害リスクの説明を義務化

国土交通省は、不動産の取引時に、水害ハザードマップを活用して取引対象の所在地を事前に説明することを義務付ける法改正をする。施行日は8月28日。

2019年の梅雨時に九州地方で局地的な大雨による大規模な水害が発生したことを受け、国土交通省は同年7月下旬に、不動産の業界団体に対して、不動産取引時にハザードマップによる水害リスクの説明を行うように依頼をしていた。2020年1月には赤羽大臣が衆議院予算委員会で、この件を義務化する方向でいると示していた。

それを受けた今回の法改正では、「宅地建物取引業者(以下、宅建業者)に対し、水防法に基づき作成された水害(洪水・内水※・高潮)ハザードマップを提示し、対象物件の概ねの位置を示す」ことを義務付ける。
※内水…公共の水域等に雨水を排水できないことによる出水。法律の条文上の用語は「雨水出水」

水防法は2015年に改正され、従来の洪水による浸水想定区域を“想定しうる最大規模”の洪水に拡大すること、内水・高潮についても“想定しうる最大規模”の浸水想定区域を作成することなどが定められた。自治体は住民に対して、ハザードマップなどでこれを周知する必要がある。ハザードマップは、自治体が印刷物を配布したりホームページで掲載したりして、それぞれ公表している。

この水害(洪水・内水・高潮)に関するハザードマップ上で、取引をする対象物件がどこにあるかを示すことが、宅建業者に求められるようになる。ただし、自治体が水害に関するハザードマップを作成していなかったり、公表していなかったりした場合は、提示すべき水害ハザードマップがないことを説明すればよいことになっている。

宅建業者が不動産取引時に説明を義務化される「重要事項説明」とは?

宅地建物取引業法では、宅建業者は不動産の売買契約を締結するまでの間に、購入予定者に対して購入物件にかかわる重要事項の説明をしなければならないと定めている。これが「重要事項説明」といわれるものだ。賃貸借契約の場合も、仲介する不動産会社を通して住まいを借りる場合(貸主である不動産会社と直接契約する場合は除外)は、入居者に対して重要事項説明を行う必要がある。

災害リスクの有無は、契約を結ぶかどうかの判断に大きく影響する。そのため、これまで重要事項として説明する項目を増やしてきた経緯がある。災害関連でいえば、対象となる宅地建物が、「土砂災害警戒区域内か否か」、「津波災害警戒区域内か否か」については説明する項目と定められている。ということは、8月28日以降に契約を結ぶ場合は、重要事項説明として、書面により土砂災害、津波災害、水害(洪水・内水・高潮)の危険性の高い区域内に対象物件があるかどうかの説明がなされることになる。

また、ハザードマップには避難所などの情報も掲載していることから、国土交通省は宅建業者に対して、説明の際に避難所についても場所を示すことが望ましいとし、たとえ想定区域内に対象物件が位置していないとしても、それで災害リスクがないと誤認することのないように配慮することも求めている。

検討段階で自らハザードマップを活用しよう

大きな災害リスクについて契約前に説明がされるからといって、決して安心してはいけない。理由は、契約直前では遅いからだ。

重要事項説明が契約前に行われるとはいえ、そのタイミングは契約直前であることが多い。その場合は、契約をするか止めるかの2択しかない。検討を始めたころに情報を把握しておけば、新築住宅であれば、売主や施工会社に災害リスクを軽減する対策を施すように要求する選択肢もある。中古住宅であれば、リスク軽減の対策費用として売買価格を減額してもらうよう交渉する選択肢もある。つまり、早く情報を把握していれば、「リスクはあるけど希望条件にぴったりなので、リスクが軽減されるなら契約したい」とか、「契約しない」といった選択肢も生まれるわけだ。

加えて、重要事項説明では、地震に関する項目は義務化されていない。地震の災害リスクを予測することが難しいといった事情もあるが、住宅を検討するならば自治体が公表している地震防災・危険度マップなども確認しておく必要があるだろう。つまり、不動産会社任せではなく、自らハザードマップを調べるべきなのだ。

特に宅地建物を購入する場合は、ローンを利用して多額の費用を払うことになるので、不測の事態を想定したうえで購入を決断してほしい。近年は、数十年に一度といったレベルの大規模災害が頻発している。自治体が調査をして公表している情報については、できる限り情報を集めておくべきだろう。

「物件は水害ハザードマップのここです。」不動産取引の際に不動産会社による説明を義務化

2020年の梅雨が長引き、7月下旬の4連休にも本州に梅雨前線が停滞した。大規模な水害リスクのある大雨への警戒が長く続いているが、土地や住宅の売買・賃貸の際に、不動産会社が水害ハザードマップについて説明することが義務化されることになった。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
不動産取引時において、水害ハザードマップにおける対象物件の所在地の説明を義務化/国土交通省2020年8月28日から契約の際に水害リスクの説明を義務化

国土交通省は、不動産の取引時に、水害ハザードマップを活用して取引対象の所在地を事前に説明することを義務付ける法改正をする。施行日は8月28日。

2019年の梅雨時に九州地方で局地的な大雨による大規模な水害が発生したことを受け、国土交通省は同年7月下旬に、不動産の業界団体に対して、不動産取引時にハザードマップによる水害リスクの説明を行うように依頼をしていた。2020年1月には赤羽大臣が衆議院予算委員会で、この件を義務化する方向でいると示していた。

それを受けた今回の法改正では、「宅地建物取引業者(以下、宅建業者)に対し、水防法に基づき作成された水害(洪水・内水※・高潮)ハザードマップを提示し、対象物件の概ねの位置を示す」ことを義務付ける。
※内水…公共の水域等に雨水を排水できないことによる出水。法律の条文上の用語は「雨水出水」

水防法は2015年に改正され、従来の洪水による浸水想定区域を“想定しうる最大規模”の洪水に拡大すること、内水・高潮についても“想定しうる最大規模”の浸水想定区域を作成することなどが定められた。自治体は住民に対して、ハザードマップなどでこれを周知する必要がある。ハザードマップは、自治体が印刷物を配布したりホームページで掲載したりして、それぞれ公表している。

この水害(洪水・内水・高潮)に関するハザードマップ上で、取引をする対象物件がどこにあるかを示すことが、宅建業者に求められるようになる。ただし、自治体が水害に関するハザードマップを作成していなかったり、公表していなかったりした場合は、提示すべき水害ハザードマップがないことを説明すればよいことになっている。

宅建業者が不動産取引時に説明を義務化される「重要事項説明」とは?

宅地建物取引業法では、宅建業者は不動産の売買契約を締結するまでの間に、購入予定者に対して購入物件にかかわる重要事項の説明をしなければならないと定めている。これが「重要事項説明」といわれるものだ。賃貸借契約の場合も、仲介する不動産会社を通して住まいを借りる場合(貸主である不動産会社と直接契約する場合は除外)は、入居者に対して重要事項説明を行う必要がある。

災害リスクの有無は、契約を結ぶかどうかの判断に大きく影響する。そのため、これまで重要事項として説明する項目を増やしてきた経緯がある。災害関連でいえば、対象となる宅地建物が、「土砂災害警戒区域内か否か」、「津波災害警戒区域内か否か」については説明する項目と定められている。ということは、8月28日以降に契約を結ぶ場合は、重要事項説明として、書面により土砂災害、津波災害、水害(洪水・内水・高潮)の危険性の高い区域内に対象物件があるかどうかの説明がなされることになる。

また、ハザードマップには避難所などの情報も掲載していることから、国土交通省は宅建業者に対して、説明の際に避難所についても場所を示すことが望ましいとし、たとえ想定区域内に対象物件が位置していないとしても、それで災害リスクがないと誤認することのないように配慮することも求めている。

検討段階で自らハザードマップを活用しよう

大きな災害リスクについて契約前に説明がされるからといって、決して安心してはいけない。理由は、契約直前では遅いからだ。

重要事項説明が契約前に行われるとはいえ、そのタイミングは契約直前であることが多い。その場合は、契約をするか止めるかの2択しかない。検討を始めたころに情報を把握しておけば、新築住宅であれば、売主や施工会社に災害リスクを軽減する対策を施すように要求する選択肢もある。中古住宅であれば、リスク軽減の対策費用として売買価格を減額してもらうよう交渉する選択肢もある。つまり、早く情報を把握していれば、「リスクはあるけど希望条件にぴったりなので、リスクが軽減されるなら契約したい」とか、「契約しない」といった選択肢も生まれるわけだ。

加えて、重要事項説明では、地震に関する項目は義務化されていない。地震の災害リスクを予測することが難しいといった事情もあるが、住宅を検討するならば自治体が公表している地震防災・危険度マップなども確認しておく必要があるだろう。つまり、不動産会社任せではなく、自らハザードマップを調べるべきなのだ。

特に宅地建物を購入する場合は、ローンを利用して多額の費用を払うことになるので、不測の事態を想定したうえで購入を決断してほしい。近年は、数十年に一度といったレベルの大規模災害が頻発している。自治体が調査をして公表している情報については、できる限り情報を集めておくべきだろう。

おうち時間が長いから気になる、住宅の基本性能。リフォームには特典も

住まいづくりナビセンターが行ったアンケートによると、3人に1人が「性能向上リフォームを今後実施したい」と回答したという。アンケートの実施時期は昨年の秋なのだが、コロナ禍でステイホームが長く続いた今、住まいの性能向上リフォームの必要性を感じている人も多いのではないだろうか。詳しく説明していこう。【今週の住活トピック】
「性能向上リフォーム等に関するユーザーアンケート」結果を発表/(一財)住まいづくりナビセンター最優先でリフォームするのは不便を感じる箇所?

住まいづくりナビセンターの調査は、同法人が運営する「リフォーム評価ナビ」の利用者でリフォーム検討経験のある人を対象に、リフォームの実施実態やニーズ等についてアンケートを行ったもの。この調査では、「バリアフリーリフォーム」「省エネリフォーム」「耐震リフォーム」を性能向上リフォームと定義している。いずれも、住宅の安全性や快適性に影響を及ぼす基本性能だ。

リフォームの実施実態を見ると、実際にリフォームをする内容は、その多くが住宅の老朽化対策や使い勝手の改善などだ。アンケート調査結果では、「老朽化している設備や機器の交換、グレードアップ」が最多で64.7%を占め、次いで「間取りや水まわりなど、住まいの使い勝手の改善」が42.5%を占めている。暮らしに不便を感じることで、リフォームを思い立つからだろう。

一方、性能向上リフォームの実施状況は、バリアフリーリフォームが12.5%、省エネリフォームが11.6%、耐震が7.2%で、性能向上リフォームのいずれかを行ったのは全体の25.6%だという。

実施したリフォーム内容(出典:住まいづくりナビセンター「性能向上リフォーム等に関するユーザーアンケート」調査結果より転載

実施したリフォーム内容(出典:住まいづくりナビセンター「性能向上リフォーム等に関するユーザーアンケート」調査結果より転載)

性能向上リフォームを実施しない理由は、バリアフリーリフォーム、省エネリフォーム、耐震リフォームのいずれも「現在の生活に支障がなく、問題を感じなかった」が最も多く、過半数を占めている。

性能向上リフォームを実施しなかった人も、その必要性は認識

一方、性能向上リフォームを実施した理由は、リフォーム内容によって少し異なり、バリアフリーリフォームと耐震リフォームでは、「住宅の性能面で、今後の生活に対する不安を感じた」が最も多いが、省エネリフォームでは、「ランニングコストの節約など、経済的メリットがあることが分かった」が最も多くなっている。また、2番目に多い理由はいずれのリフォームも同じで、「自分でリフォーム情報を収集して、必要なリフォームだと思った」だった。生活に不便があるというよりは、将来の不安解消や必要性を認識したという人が多いのが、性能向上リフォームの特徴のようだ。

性能向上リフォームを実施した理由(出典:住まいづくりナビセンター「性能向上リフォーム等に関するユーザーアンケート」調査結果より転載

性能向上リフォームを実施した理由(出典:住まいづくりナビセンター「性能向上リフォーム等に関するユーザーアンケート」調査結果より転載)

性能向上リフォームを行わなかった人に、今後の実施意向を質問したところ、バリアフリーリフォーム、省エネリフォーム、耐震リフォームのいずれも「3年以内に行いたい」(1.3%)と「いずれ行いたい」(37.5%)を合わせると38.8%を占めた。やらなかったものの必要性を認識している、という人は多いのかもしれない。

ステイホームで実感するようになった?マイホームの住み心地

さて、ステイホームでテレワークが進み、自宅で仕事をする日が増えた人も多いことだろう。自宅が仕事場になったことはもちろんだが、これまで以上に自宅で長い時間を過ごすこと、パートナーや子どもたちなど家族と触れ合う時間が増えたことから、これまで気づかなかった不便さや、新たに必要な機能などを感じたこともあるのではないだろうか?

仕事場を兼ねることで求められる機能として、仕事に集中できるスペースの確保と環境の整備などは、よく話題にのぼっている。が、長い時間を過ごすことで建物の断熱性やサッシまわりの省エネ性、防音性が気になったり、子どもと室内で遊ぶことで子どもにとって危険なところに気づいたりということもあるだろう。

終息に至るにはまだ時間がかかることを考えると、自宅で仕事をするテレワークが継続したり、再び緊急事態宣言が出されたりの可能性はある。今すぐリフォームに着手するのは難しいかもしれないが、安全に快適に長く過ごすためにも、マイホームの性能について見直す良いタイミングといえるだろう。

実は多い、性能向上リフォームの優遇制度

巨大地震が懸念されるなか、住宅、なかでも旧耐震基準といわれる1981年5月末日以前に建てられた住宅(※)の耐震性の向上が急務になっている。また、地球温暖化などの対策として、住宅についても省エネ性能の向上が求められている。さらに、日本では高齢化が急速に進んでいることから、住宅についてもバリアフリー化が課題となっている。

つまり、ここでいう性能向上リフォームは、政策としても重要な課題となっているので、リフォームを促進するための優遇制度が多く用意されているわけだ。先ほどの調査の性能向上リフォームを実施した理由の結果でも、「補助金や税制優遇等が受けられることが分かった」が挙がっている。なお、耐震リフォームで優遇制度を理由とする比率が低いのは、旧耐震基準の住宅に限定されていることによるものだろう。

優遇制度についていくつか紹介すると、まずは「減税制度」がある。定められた性能向上リフォームをすると、所得税や固定資産税が減税される。所得税の減税については、返済期間5年以上のローンを利用した場合とローンを利用しなかった場合で、それぞれ減税制度があり、2021年までの最大控除額は次のようになる。

〇ローンを利用せずに、一定の耐震・省エネ・バリアフリーをした場合
※工事費等の10%を所得税額から控除できる特例措置※()内は省エネ改修工事と併せて、太陽光発電装置を設置する場合

※()内は省エネ改修工事と併せて、太陽光発電装置を設置する場合

〇ローンを利用して、一定の省エネ・バリアフリーをした場合
※ローン残高の一定割合を所得税額から控除できる特例措置
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なお、これらの減税制度は、同居対応型リフォームをした場合、長期優良住宅の認定を受けるリフォームをした場合にも利用できる。また、ローンを利用した場合の耐震リフォームは減税対象の工事外となるが、10年以上の住宅ローンを利用して100万円以上の工事をした場合などでは、いわゆる「住宅ローン減税」(10年間にわたって住宅ローンの年末残高の1%を所得税などから控除でき、消費税率10%の工事では3年間延長可能)が利用でき、この場合は旧耐震基準に限定されない。

次に、補助金制度がある。特定の条件を満たせば、国が行う「長期優良住宅化リフォーム推進事業」や「地域型住宅グリーン化事業(省エネ改修型)」などを受けられる場合があるが、むしろバリエーションが多いのは、それぞれの自治体の補助金制度だろう。

自治体ごとにそれぞれ課題があり、独自の補助金制度を多様に設けている。とはいえ、耐震化や省エネ化はどの自治体にとっても共通の課題であるので、補助金制度を用意している自治体が多い。どういった制度があるかは、「地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト」で検索できるので、調べてみるとよいだろう。

ただし、補助金制度の多くは、年度ごとに予算を確保して実施しているもので、2020年度の募集がすでに始まっている。予算枠を消化して受付を終了している場合もあるし、同じ補助金制度が毎年用意されているとも限らない点に注意が必要だ。

一方、バリアフリーリフォームについては、介護保険法にもとづく住宅改修費の支給もある。要介護・要支援と認定された場合に限られるが、20万円まで(一部自己負担あり)支給される。

住宅の性能を向上させることは、耐震化、あるいは高齢者や小さな子どもも動きやすいバリアフリー化による安全の確保、外の暖気や冷気を取り込みにくくして、エアコンのコスト削減もできる省エネ化など、暮らしの安全性や快適性に大きく影響する。家での日々の生活に不便さを感じないからといって、おろそかにすべきではない。在宅時間が長くなった今こそ、見直してみてはいかがだろう?

(※)6月1日より前に建築確認の通知書が発行されている住宅

在宅時間が長いと不用品が増える?トランクルームの賢い利用法とは?

外出自粛やスティホーム週間によって、自宅にいる時間が長くなったという人は多い。大掃除や部屋の模様替えなどに取り組む人もいると聞く。家の片づけで困るのは収納不足だ。トランクルームや収納に関する調査結果から、収納について考えてみよう。【今週の住活トピック】
「トランクルームや収納に関する調査」結果を公表/加瀬トランクサービス「一定期間しか使わないが、必ず使うもの」を預けるのがおススメ

加瀬トランクサービスの調査によると、トランクルームユーザーに利用する理由やきっかけを聞いたところ、「引越した後、住居が狭くなった」(24.4%)が最多で、「趣味の収集品が増えた」13.2%、「荷物が増えて収納しきれない、不用品を整理したくなった」11.2%、「仕事の書類や仕事関連品が増えた」10.2%が続く結果となった。

では、具体的にトランクルームに何を収納するのだろう?
トランクルームに収納したいもの(複数回答)として挙がったのは、「書籍・雑誌類」(40.7%)が最も多く、2番目に「季節の衣類」(28.4%)、3番目に「季節家電」(23.7%)と続いた。また、「スーツケース」(23.4%)が5番目に食い込んだ。

(出典:株式会社加瀬トランクサービス「トランクルームや収納に関する調査」)

(出典:株式会社加瀬トランクサービス「トランクルームや収納に関する調査」)

たしかに、書籍や雑誌、音楽・映像・ゲームメディアといった「趣味の収集品」が上位に挙がるが、それと同様に目立つのが、「一定期間しか利用しないもの」だ。季節の衣類、季節家電、長期旅行で使うスーツケースなどが該当する。ほかに、布団類(来客用や夏・冬用など)やスキー用品、アウトドアレジャー用品なども該当するだろう。

調査結果のリリースを見ると、トランクルームを利用する理由の質問へのフリーコメントで、「出張時に使用する荷物」「単身赴任時に使用する荷物」「会社帰りのランニングで保管する荷物」などが挙がったというが、それも同じ発想だろう。

このように「一定期間しか使わないが、必ず使うもの」を預けるのが、トランクルームを利用する適切な方法だろう。必要なときに取り出したり、入れ替えたりして使い、不要時には預けるのは、住宅の収納不足を解消する賢い利用方法だと思う。定期的に取り出して使うものでないと、預けたまま忘れてしまいがちだからだ。

増えた荷物を適切に整理するチャンス到来

日本の住宅事情を考えると、収納不足を外部の収納で解消する方法も選択肢ではあるが、反面、「荷物が増えて収納しきれないのでトランクルームを利用する」という利用目的も多い。荷物が増えた理由としては、趣味や仕事の荷物の増加、大掃除や模様替えで出た不用品、同居や結婚・出産など家族が増えたことによる荷物などさまざまなのだが、増えた荷物は整理しなければ減らない。

「たぶん使わない」「使用頻度が低い」のであれば、「いずれ誰かが使うかもしれない」と保管するのではなく、思い切って断捨離することも必要だ。

同じ調査で、収納やモノに関する意識・価値観として、「まだ使える不用品は極力売りたい」(62.9%)、「モノは壊れたら修理するなど、できるだけ長く使いたい」(57.6%)、「不用品は捨てるぐらいなら、人にあげるほうが環境にも良いと思う」(50.7%)などに当てはまると回答した、環境に優しい意識をもつ人は多い。不要なものは、フリーマーケットやリサイクルショップで売る、ボランティアで提供するなど、単に捨てる以外の方法もあるだろう。

また、「家族との思い出の品は大事に保管したい」(75.5%)は4人に3人が、「子どもの作品や教材等、成長の証を大事に保管したい」(51.5%)も2人に1人が当てはまると回答している。家族の思い出や成長の証を大切にすることは、とても素敵なことだ。しかし、仕舞い込んでいたら思い出す機会は減ってしまう。それらを撮影するなどコンパクトな形で保管したり、大切な思い出の品に絞り込んで手元に残したりして、いつでも見られるように収納するのも一つの方法だろう。

さて、在宅時間が長い今、家の中の荷物の整理や不用品の洗い出しをした家庭が多いのだろう。家庭からのゴミの量が増えているという。とはいえ、今は大量にモノを捨てて清掃事業者の負担を増やすのは適切ではない。家にいる時間を使って不用品を洗い出し、処分する方法や時期を決めたうえで、一定期間だけトランクルームに預けるという方法はありだろう。

トランクルームを賢く利用することと、トランクルームになんとなく預けておくこととでは、同じ利用料金を支払ってもその価値は異なると思う。チャンス到来と考えて、増えた荷物の整理を検討してはいかがだろう。

【実家の相続】させたい親は60%、するつもりの子どもは36%。親子間の意識差が明らかに

このGWは、「Stay Home 週間」と名が変わり外出自粛・感染拡大防止で帰省を見送る人も多いことだろう。政府は「オンライン帰省」を勧めている。休みで時間があるときに親子でじっくり話すことは、家族関係を深める機会になるだろう。さて、親子の間で「実家の相続」については、考えが大きく異なることが調査結果で分かった。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「首都圏戸建持家の相続についてのインターネット調査」結果を公表/ランドマーク税理士法人首都圏にある一戸建ての実家、相続させるつもりの親は60.2%、相続するつもりの子は36.1%

ランドマーク税理士法人が、首都圏に一戸建ての持ち家がある親(60代・70代以上)と子ども(30代~50代)に調査をしたところ、実家を「相続させる」側の親のほうは、60.2%が相続させるつもりでいるのに対し、実家を「相続する」側の子どものほうは、36.1%しか相続するつもりがないという結果になった。

また、すでに「相続しない」つもりでいる子どもも20.1%いて、実家の相続については親子間で意識に大きな違いがあることが浮き彫りになった。

(出典:ランドマーク税理士法人「首都圏戸建持家の相続についてのインターネット調査」)

(出典:ランドマーク税理士法人「首都圏戸建持家の相続についてのインターネット調査」)

相続した後の実家をどう活用するかを聞いたところ、親たちは「子どもに住んでほしい」と46.8%が思っており、どう活用するかは「子どもに任せる」が35.1%に達した。

子どものほうでも、「自分たちが住む」つもりが51.2%と最も多いが、「売却」するが17.0%、何らかの形で「賃貸」するが12.1%、「まだ考えていない」が18.4%だった。

さらに相続する子どものほうには、「相続税はどうなるのか」、「兄弟姉妹間でもめないか」、「実家の資産価値はどの程度か」、「維持管理費や税金はどの程度か」など、いろいろな不安があるようだ。

実家の相続について、話し合っていない親子が72.8%。早すぎることはない

では、親子間のギャップはどのように埋めたらよいのだろうか?
仕事上のことであれば、「正確な情報の把握」や「課題の共有」などが考えられるが、親子間ではなかなかそうもいかないようだ。

実家の相続について親子間で話しているかについては、子どもや親の年齢が高くなるほど話し合う割合は高くなるものの、全体平均では27.2%しか話しておらず、72.8%は話をしていないと回答している。

(出典:ランドマーク税理士法人「首都圏戸建持家の相続についてのインターネット調査」)

(出典:ランドマーク税理士法人「首都圏戸建持家の相続についてのインターネット調査」)

親子間で話をしない理由をフリーアンサーで回答してもらったところ、親子ともに、「相続の話はまだ早い」「なんとなく」という声が多かったという。特に、親のほうで時期尚早という声が目立つ。

ところが、実際に相続となった場合、相続する側には、兄弟姉妹間の分割協議や相続税の納税、売却までの維持費の支払い、活用する際のリフォーム費用の捻出など、検討すべきことが山積みだ。しかも、相続税の納付期限は10カ月以内とかなり短い。あらかじめ親の意向を確認できなかったことで、協議が進まないということもあるかもしれない。

そうなってから、もっと早くきちんと話し合っておけばよかったと思っても、後の祭り。たしかに、親には長生きしてほしいものだ。相続の話題は、話しづらいし、切り出すきっかけも見つけづらいだろう。

今のように、何が起きるか予測できないと感じる時期であれば、万一の場合に備えて、「介護が必要になったときにどんな介護を考えているのか」、「自宅はどうしたいのか」などを親子で話し合うチャンスかもしれない。

「外出自粛」、「Stay Home」になってから、家の中の荷物整理をする人が多くなり、ゴミの量が増えているという話がニュースになった。家族が家にいる時間が増えて、家族関係を見直す機会が生まれたという家庭も多いと聞く。家族や家庭の課題整理が進む今こそ、実家の相続問題にも目を向けてはいかがだろう。

100万円台は高い?耐震補強工事を阻む費用の壁!

自然災害のリスクが高まるなか、特に木造一戸建ての耐震性などが注目される。そんななか、木耐協の調査で、耐震補強工事を阻む要因として、工事金額の高さが挙がった。工事費用はいくらかかるのか、予算イメージと違いはあるのか、詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「木耐協 耐震診断結果 調査データ(令和元年10月発表)」を公表/日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(木耐協)2000年までの木造一戸建ての9割が耐震性を満たしていない

まず、木造一戸建て(在来工法・2階建て以下)の耐震性はどうなっているか確認しよう。

木耐協は、1950年~2000年5月までに着工された木造一戸建てについて、2006年4月~2019年7月までに耐震診断を実施した結果をまとめている。耐震基準は建築確認が1981年6月の前か後かで大きく異なり、「旧耐震基準」と「新耐震基準」に分かれる。

耐震診断結果

その結果、全体で9割を超える((3)+(4)=91.38%)住宅が、今の耐震基準を満たしておらず、旧耐震基準の住宅ではその割合(97.25%)が高まるという結果になった。

なお、新耐震基準の住宅でも85.76%が今の耐震基準を満たしていない。
実は、木造住宅の場合は、2000年6月以降(建築確認)にも、耐震基準に変更があった。耐力壁をバランスよく配置したり、構造部分の柱などの端を接合する部分をしっかり固定できる金物を使うようにしたり、といった改定が行われたので、「2000年基準」より前の新耐震基準住宅には、今の基準より耐震性に弱い部分があるのだ。

では、耐震補強工事の費用はどのくらいになるのだろう?

さきほどの調査結果では、耐震補強工事の費用は次のようになった。
・旧耐震基準(平均築年数45.69年) :平均金額189万315円・施工金額中央値160万円
・新耐震基準※(平均築年数28.86年):平均金額152万4351円・施工金額中央値125万円
 ※2000年基準以前

耐震補強工事をしないのは、工事費用が高いから?

木耐協では、耐震診断の実施終了後にアンケート調査を実施している。
「今後、耐震補強工事をお考えですか?」の問いに「いいえ」と回答した人に、「耐震補強工事を考えにくい理由」を聞いたところ、半数近くが「補強費用が高い」と回答した。

耐震補強工事を考えにくい理由(出典/「木耐協 耐震診断結果 調査データ(令和元年10月発表)」より転載)

耐震補強工事を考えにくい理由(出典/「木耐協 耐震診断結果 調査データ(令和元年10月発表)」より転載)

「耐震性が十分だった」のであれば必ずしも耐震補強工事をする必要はないし、「建て替え」によって耐震性の高い家に住むつもりであれば工事は不要だ。ただし、「地震が来たら仕方が無い」というのは、いかがなものか。巨大な地震が生じたときに、家が倒壊して家族の命が奪われたり、助かった後の生活を支える一切のものを失ったりする可能性が考えられるのに、100万円台の補強工事の費用を惜しんでよいのだろうか。

予算は200万円までに抑えたい!実際の工事金額は……?

木耐協の調査では、耐震補強工事を検討している人に、「耐震補強工事の予算感」を聞いている。
予算感としては「50万円未満」(19.33%)、「50万~100万円未満」(33.19%)、「100万~200万円未満」(26.47%)となり、おおむね200万円未満を想定している人が多いことが分かる。

一方、実際に補強工事を行った金額を集計し、予算感の割合と比較したところ、予算感よりも「50万円未満」や「50万~100万円未満」が減少し、「100万~200万円未満」以降が増加する結果となった。

補強工事検討者の予算感と工事実施者の工事金額の差(出典/「木耐協 耐震診断結果 調査データ(令和元年10月発表)」より転載) ※集計の工事検討者と実施者は同一人物ではない

補強工事検討者の予算感と工事実施者の工事金額の差(出典/「木耐協 耐震診断結果 調査データ(令和元年10月発表)」より転載)
※集計の工事検討者と実施者は同一人物ではない

調査結果を見る限りは、全体的に予想した金額より工事費用が高くなる傾向が見られる。「補強工事費用が高い」と感じるのは、費用そのものの額もあれば、予想額より高いといったこともあるのだろうか。

予算に応じた補強工事を検討して、リスクを軽減しよう

これに対して、木耐協は「予算に応じた補強工事を行う」ことも勧めている。

耐震診断の「(1)倒壊しない」に引き上げるまで補強工事をするのが理想だが、そこまで費用を捻出できないと断念するのではなく、捻出できる費用でできるだけ補強することのほうが、リスク軽減には有効だ。

例えば、耐震補強で効果が大きい工事はいくつかある。
・構造上の柱などの接合部に金物を取り付ける
・耐力壁を追加したり、筋交いなどを補強したりする
・腐朽や蟻害で弱くなった柱や土台を強化する
・土瓦の屋根を軽量なものに葺き替える

まず、建物の構造自体を強くすることで建物を揺れに強くすることが大切だ。ほかにも、重たい屋根を支えるには強固な構造が必要だが、屋根を軽量化することで負担を減らすことができる。これらをすべて実施するだけの費用を負担できないとしたら、優先順位の高いものから実施するという発想も必要だ。ちなみに、先に挙げた方法(金物の設置→屋根の軽量化)ほど費用が安くなる傾向にある。

また、住宅の耐震性向上は国策でもあるので、耐震診断や耐震補強工事に補助金を出す自治体も多い。特に、旧耐震基準の住宅への助成制度は手厚くなっている。しかしなかには、新耐震の住宅でも一定の耐震補強をすれば補助金を出す自治体もある。補助金などの制度を利用して、費用負担を減らすということも、ぜひ検討してほしい。

最近は、地球温暖化の影響で台風による水害も増えている。もし、台風が通過する地域に住まいがあるなら、それも踏まえて屋根の補強を検討するなど、総合的に住まいの安全性を考えることも求められる。

重要なのは、ハザードマップなどで自分の住まいがどんな災害リスクの可能性があるかを把握し、それに対して自分の住まいがどういった状態かを専門家に見てもらい、予算内でどこまでリスクを軽減するための対策ができるかを検討することだろう。命や財産を守るために。