LGBTQと住まい[2] 同性カップルの住まい探し何が変わった? 影響与えた渋谷区に聞いた

今年3月で「渋谷区パートナーシップ証明」を含む条例が施行され5年目を迎えた。それまでもLGBTQの人権について取り上げた男女共同参画条例は他の自治体でも施行されていたが、日本初の「パートナーシップ証明」を生み出した渋谷区の取り組みは、以後のLGBTQをめぐる動きに大きな影響を与えた。
「渋谷区パートナーシップ証明」に法的な拘束力はない。しかし現在42組のカップルが取得し、現在も区の「にじいろパートナーシップ法律相談(無料)」には、多くのカップルがライフプランニングの相談に訪れている。申請が増え続ける中、この秋から取得費用の助成制度もスタートする。こうした新しい制度を導入した渋谷区で、同性カップルにとっての住宅に関わる実態はどのような状況になっているのか。渋谷区役所で男女平等・ダイバーシティ推進担当課長として働く永田龍太郎さんに詳しい話を聞いた。
同性カップルの住まい探しの壁とは

LGBTQとは、L(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシュアル)、T(トランスジェンダー)、Q(クエッション)に代表される、セクシュアル・マイノリティな人たちの総称だ。そして彼らは、社会的なマイノリティとして、さまざまな問題を抱えている。そのひとつが住まい探しだ。

永田龍太郎さん(写真提供/永田さん)

永田龍太郎さん(写真提供/永田さん)

LGBTを自認している20~59歳の全国の男女に対して行われたアンケート調査(SUUMO『LGBTの住まい・暮らし実態調査2018』)によると、住まい探しで「居心地の悪さを感じた経験がある」人は「賃貸住宅探し」で28.7%、「住宅購入」で31.1%にのぼるという。その背景には、「同性カップルで住まい探しをしていて、同性同士の入居を不審がられた」や「不動産会社や大家に偏見の目で見られた」などの理由がある。

実際、永田さんによると同性カップルから、「他の地域で家を借りられず、渋谷区でようやく住める家が見つかった」と話す声を聞いたことがあるという。永田さんは、「この渋谷区パートナーシップ証明は、区長印のある証明書を発行することで、こうしたハードルを乗り越える後押しをしたいという、渋谷区の思いが詰まったものだ」と続ける。

この渋谷区の条例と証明の発行がきっかけとなり、2020年4月20日現在で、都内8区を含む、国内47の自治体が「同性パートナーシップ証明制度」を導入し、計945組が認知されている(2020年4月20日 虹色ダイバーシティ調べ)。さらに導入を検討している自治体も数多いという。

渋谷区が発行するパートナーシップ証明の取得には、全国にある公証役場で作成できる契約書「公正証書」が必要となる。つまり、日本の法律の制度にのっとってお互いへの愛情と責任を形にできるだけでなく、「後見人」という形でお互いの信頼関係を社会に示すことができるということ。婚姻関係と同様の状態にあるというエビデンス(証拠)づくりに、公正証書を活用しているのだ。

渋谷区パートナーシップ証明書(サンプル)(画像提供/渋谷区役所)

渋谷区パートナーシップ証明書(サンプル)(画像提供/渋谷区役所)

渋谷区は「証明書」を発行している点が他の自治体と大きく異なる。渋谷区のパートナーシップ証明書発行に必要な公正証書が、同性カップルが婚姻関係と同等の状態にあると認めるツールとして多くの民間企業に認められ、冠婚葬祭時の休暇といった福利厚生適用の条件として、利用されたりしているという。

渋谷区では70代のシニアを含めた幅広い年齢層の同性カップルからの申請がある。「(この証明書は)万が一の病気や事故というリスクを想定して、取得を思い立ったカップルが多いという、(法律婚をする異性カップルと比較して)とても切ない側面がある」と永田さんは話す。だが、共同生活を行うタイミングで、お互いの人生に対する考えや姿勢について、公正証書を読み合わせする中で明確化することは、その後の関係をより深いものにし、プラスになっているという声も多く聞かれるという。

東京オリンピック・パラリンピック開催が契機に

永田さんは「渋谷区内に限らず、多くの企業が、この証明書の誕生をきっかけにして、福利厚生などでパートナーに対して『家族扱い』を認める後押しになった」と話す。携帯電話の家族割の適用や、飛行機のマイル共有、保険加入などがその例にあたる。契約にあたって事実婚をしているだけではNGとなるケースでも、渋谷区パートナーシップ証明(相当の公正証書)があればOK、というケースも実際に発生している。

住宅購入関連では、みずほ銀行が他行に先駆けて「住宅ローンの商品改定」を2017年に行っており、渋谷区パートナーシップ証明書及び、同証明書発行に必要な内容を満たした公正証書を持ってすれば、住宅ローンを組めるようになった。

また、多くの企業や行政でもLGBTQの施策を設けるようになっている。その背景にあるのが、「東京2020オリンピック・パラリンピック大会」開催だ。

東京2020大会に関係する、物品やサービスなどを「どこから調達するか」というガイドラインに当たる<調達コード>には、「性的指向による差別の禁止」が明記されている。そのため組織委員会は、性的指向や性自認による差別やハラスメントを禁止している企業を採用する必要があり、すでに同大会のスポンサーであるパナソニックをはじめ、LGBTQの人々に対して、企業として課題解決へ力を入れる企業が増えつつあるという。

日本最大級のLGBTQイベント「東京レインボープライド」に出展したときの写真(画像提供/渋谷区役所)

日本最大級のLGBTQイベント「東京レインボープライド」に出展したときの写真(画像提供/渋谷区役所)

見えないものをどうやって可視化するか

しかし住宅関係においては、いまだにLGBTQは、外国人や高齢者と同様に「住まい弱者」であることに変わりない。「LGBTQの人たちの中には、希望する住まいに住めない人も少なくありません。LGBTQだからといって必ずしも身体的な困難や経済的な困難を抱えているわけではないのに」というのだ。しかしこうした問題が発生する理由は、「渋谷区でさえ、LGBTQの人たちを見たことも、会ったこともないと話す方がいる」という永田さんの言葉に尽きる。本当は隣にいるのに見えていない人の問題を、身近な問題として考えることは確かに難しいことだ。

「こうした状況を打破するには、どれだけコミュニティの存在を『可視化』し、LGBTQの隣人が当たり前の意識を地域でつくれるかどうかが、今後問題の解決のカギになる。それにはいろいろな人たちが手を取り合ってコラボレーションしながら、地域というものを、(LGBTQに)もう少し開いていくことで、住まいに関する課題も解決していけるのではないでしょうか」と永田さんは続ける。ただこの可視化は、当事者が地域においてカミングアウトすることが現実的に難しい中、簡単な話ではないとも話す。

「差し迫っている課題としては、今後渋谷区で子育てをする同性カップルが増えたり、トランスジェンダー傾向にある子どもが入園・入学する状況に際して、“地域”がどのように理解し、変われるかがとても大事になっています」と話す永田さん。例えば、「パパママ学級」と言った表記に対して、子育てをする同性カップルが疎外された気持ちになりかねない、といったものをはじめ、さまざまな問題を、地域がどう”自分ごと“として気づいて一つ一つ変えて行けるか、渋谷区という地方自治体に関わる立場として、今一番頭を悩ませているのだという。

「渋谷男女平等・ダイバーシティセンターでは、渋谷区への転入を検討中の性的マイノリティの方など、広くご相談を受け入れています。困りごとがあるときにはお一人で悩まず、まずお気軽にご相談いただければと思います」(永田さん)

(画像/PIXTA)

(画像/PIXTA)

昨年6月、長谷部健 渋谷区長と共に「NYCプライド2019」に視察に行ったという永田さんは、「日本とのあまりもの違いにショックを受けた」という。まちづくりで活躍している人たちの中に、LGBTQの人々や、LGBTQを支援する人々が、当たり前のように存在していた。「日本の取り組みでは、“LGBTQは支援される側”という認識が色濃いのに対して、ニューヨークではまちづくりの担い手としてLGBTQも関わっていたんです。多様な人たちが安心して暮らせる空間をつくろうという取り組みにおいて、担い手の多様性も実現されているというのは、本当に意義深いことだと感じました」と、インクルージョン視点の大切さを改めて感じたのだそうだ。

(画像提供/渋谷区役所)

(画像提供/渋谷区役所)

(画像提供/渋谷区役所)

(画像提供/渋谷区役所)

(画像提供/渋谷区役所)

(画像提供/渋谷区役所)

(画像提供/渋谷区役所)

(画像提供/渋谷区役所)

「見えないものを、どう見えるものにしていくか。見えないと認知も権利の獲得も進まないが、見られたくないという人もいる。そのジレンマの中で、どうやって実現するか。今行政としてクリエイティビティが要求されていると感じています」と話す永田さん。LGBTQへの各自治体の取り組みが広まる一方で、住む場所に関係なく、LGBTQを広く受け入れられる社会になるまで、まだしばらくかかりそうだ。

●取材協力
渋谷男女平等・ダイバーシティセンター<アイリス>●関連記事
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「当たり前の人生」を生きたい トランスジェンダー家を買う

LGBTの当事者は、賃貸の部屋探しや物件購入に関していまだ制約を受けることが多い。
リクルート住まいカンパニーが実施した「SUUMO『不動産オーナーのLGBTに対する意識調査2018』では「LGBTを応援したい」と答えた不動産オーナーは37.0%と、まだまだ業界的に受け入れられているとはいいがたいのが現実だ。しかしLGBT当事者が実際に部屋を借りたり、物件を購入したりする際にどんな言動を受け、どんな思いをしているのか、生の声を知る機会は少ないのではないだろうか。

今回は、関東近郊に住む30代のトランスジェンダー、Aさんにお話を伺った。Aさんは戸籍上は「女」だったが、自分で認識している性別は「男」だった。20代で性別適合手術を受け、戸籍上の性別を「女」から「男」に変更。名前も同時に男性名に変えた。大学時代は賃貸で一人暮らしをしていたが、現在は結婚して一戸建てを購入。一児の父として暮らしている。Aさんはこれまで「住まい」に関してどんな不を感じて、どのように乗り越えてきたのか。当事者の一人称でお伝えする。

性別を書くと、担当者が「えっ?」

僕はいま30代後半だ。いまは注文住宅に住んでいるが、その前は3~4回ほど賃貸を住み替えてきた。なので、まず購入の前に、賃貸の部屋探しで記憶に残っていることを伝えておきたい。ただ、これは10年以上前の話なので、今もまったく同じとは限らない。そのことは心にとめておいてほしい。

まず、トランスジェンダーについて少し説明しておこう。「性的少数者に関する人権啓発リーフレット」(法務省)によると、トランスジェンダーとは「身体の性」と「心の性」が一致せず違和感をもつ人、と紹介されている。僕自身は、自己認識している性別が男性で、戸籍上の性別がかつては女性であった。

ちなみに僕は、20代半ばに戸籍上の性別を変更した。現在の日本では、戸籍の性別変更をするには性別適合手術をした後に、家庭裁判所に申し立てをして認められないと変えることができない。

性別変更をするためには、家庭裁判所に申し立てをして認められる必要がある(画像/家庭裁判所HPより)

性別変更をするためには、家庭裁判所に申し立てをして認められる必要がある(画像/家庭裁判所HPより)

住まいのことを考えるのにあたり、まず、戸籍の性別変更をする前のことを思いだしてみた。残念ながら、当時(約10年ほど前)賃貸の部屋探しで、必ずしも僕のような事情の人をすべての大家さんが認めてくれるわけではなかった。変更前は、見た目と戸籍が違う。当時の僕は、見た目は男。でも戸籍上の性別は「女性」で、名前も女性のものだった。

問い合わせの時点ではウェルカム。しかしいざ店舗に行って、申し込み用紙に性別を書いて名前を書くと、まず不動産仲介の担当者が「えっ?」と怪訝な顔をする。案内をしてくれて、申込をしたとしても、大家さん審査でNG。そんなことが覚えているだけで2回はあった。もちろん、自分がトランスジェンダーだったことが原因とは決めつけられないが、収入面など、他に目立った問題はなかったと記憶している。

もちろん、住民票どおりの女性を「演じること」はできなくはないが、当事者としては苦しいことだし、見た目が「男」であればそれも難しい。パートナーができれば、パートナーも一緒に好奇の目にさらされる。賃貸契約のたびに、心理的ストレスがかかることになる。

性別変更で経験した「根掘り葉掘り」

僕が戸籍上の性別を変更した当時は、賃貸マンションに住んでいた。つまり借りている途中で、自分の名前と性別が変わる。管理会社に連絡したら、契約変更に来てほしいとのこと。管理会社に伺うと担当者だけではなく、大家さんもいらっしゃった。大家さんは女性で40代後半から50代前半、管理会社の担当者も女性で、当時の僕と同年代(20代半ば)だったと思う。

(イラスト/tokico)

(イラスト/tokico)

彼女たちは大変理解がある人たちで、僕を温かく応援してくれ非常に感謝したのを覚えている。一方で(おそらく初めて見る)トランスジェンダーの僕に、とても好奇心を持っていた。「病気を自覚したのはいつ?」「手術はどういった内容なの?」「痛みはあるの?」――。普通、入居者にそのようなことを聞くだろうか?という疑問も湧いた。

追い出されるかと思っていたから、本心からありがたかったし、彼女たちに悪気がないことも十分に伝わっている。しかし好奇心ゆえの「根掘り葉掘り」をされないか、それ以来少し身構えてしまう。

性別変更という“告知事項”

そうして何回か部屋を住み替えた後、僕は結婚して一戸建てを買うことにした。家は注文住宅。ロフトに、暖炉もつくりたい。理想の家を創るのはすごくクリエイティブで、わくわくした。

Aさん宅の1F間取図。ウッドデッキやトイレを開けると目に入る薪ストーブなど、クリエイティブな仕掛けがたくさん(イラスト/tokico)

Aさん宅の1F間取図。ウッドデッキやトイレを開けると目に入る薪ストーブなど、クリエイティブな仕掛けがたくさん(イラスト/tokico)

Aさん宅の2F間取図。納戸はDIYで作成。天窓の位置にもこだわった(イラスト/tokico)

Aさん宅の2F間取図。納戸はDIYで作成。天窓の位置にもこだわった(イラスト/tokico)

しかし、トランスジェンダーの住宅購入には、ある難関がある。もし住宅ローンを組む3年以内に、性別適合手術をしていたとしよう。これはほかの病気と同じ「告知事項」に該当する。そして告知した後、住宅ローンを組む銀行側にどう判断されるのか分からない。

例えば生命保険の場合は、圧倒的に不利に働く。結婚したとき、僕自身、生命保険に加入したくて何社にも問い合わせをした。しかし性別適合手術を「告知事項」として記載したことで、いずれの会社からも「前例がない」と加入を断られてしまった。

告知事項ではなくても、住宅ローンを組む際に戸籍謄本を提出する場合、銀行側に戸籍の性別変更の事実も当然伝わる。僕の場合は、社会人として働きはじめたころから長年お付き合いしているメインバンクの担当者が、20代半ばの性別変更時も親身になって相談に乗ってくれた。なので、住宅ローンについてもあらかじめその担当者に相談をすることができ、無事に住宅ローンを組むことができた。ただ、某銀行の【フラット35】の担当者からは「そういう事情(戸籍変更をしたこと)については、告知しなくていいです」とアドバイスをもらった。人により事情もさまざまだろうから、自分自身が信頼できる複数の銀行や機関に相談して納得して決めることが大切だと思う。

とらわれずに「住まう」

先人が努力してくれたおかげで、日本でもLGBTをはじめとした多様性が理解されつつある。声を上げて道をつくっていくことも一つの方法だ。ただそれができる人ばかりではないし、他にも道のつくり方はあると思っている。「衣食住」の一つである「家」を借りる、買う、そこに対して社会とのコンセンサスをとれていないならば、LGBTの当事者が取り組んでいくことも今後につながるはずだ。

家も、今は購入することが全てではない。今は住まいのあり方が多様化している。住宅ローン審査のハードルが高いなら、その時その時で住みたい家に住まう賃貸の選択肢や、今払える金額で中古物件を購入しリフォームするなどしてみても楽しいかもしれない。

トランスジェンダーに限らず、世の中にはいろいろな障害や病気があるし、人それぞれに過去がある。そんな中でどう生きたいか。どんな家に、なぜ住みたいのか。それをひとつひとつ自問自答していけばいいと思っている。

僕自身の家は、開かれた家にしたい。近所の人も気軽に遊びにきてほしいし、近所の人の庭仕事を手伝ったり、冬には暖炉の周りに集まって焼き芋を焼いたり。

自宅暖炉のイメージ(写真提供/Aさん)

自宅暖炉のイメージ(写真提供/Aさん)

今も壁を塗ったり、ビスを打ったりとDIYしていると、近所の人が話しかけてきてくれるのがすごく楽しい。ご近所も社会の関係のひとつだ。家を建てて、周囲との関係性も一緒に育てていきたいと思っている。

DIYで収納棚をつくっている様子(写真提供/Aさん)

DIYで収納棚をつくっている様子(写真提供/Aさん)

家ができたとき、自分の両親はとても喜んでくれた。それ自体はいいのだが、同時に僕は、そのことに違和感もあった。両親を含め、なぜか「結婚も就職もできない。家も買えない」つまり「人並み」に生きられないと決めつける人が多い気がする。ほかの障害を持つ人に対してもそうかもしれないけれど、僕としては、それ自体も差別だと思うのだ。

普通の、当たり前の人生を生きたい。就職、結婚、家を買うことも、子どもを持つことも。「できないことなんてなかった。なーんだ、普通の人生だったじゃん」いつかそう呟けるように。トランスジェンダーにとらわれることなく、自然に生きてやりたいのだ。

LGBTの住まい探し、不動産オーナーの理解はまだまだ 実態は ?

LGBTという用語が世の中に浸透しつつあるが、いまだマイノリティゆえの偏見や行動への制約を受けることもあるだろう。リクルート住まいカンパニーは、LGBTの当事者にその実態を調査するとともに、不動産オーナーに対してLGBTへの意識調査を実施した。実態を紹介しよう 。【今週の住活トピック】
リクルート住まいカンパニー/
「LGBTの住まい・暮らし実態調査2018」
「不動産オーナーのLGBTに対する意識調査2018」LGBT当事者のほぼ3割が、住まい探しで困難や居心地の悪さを経験

「LGBT」とは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの総称で、セクシャルマイノリティを表すひとつとされる。

本調査でLGBT当事者に「学校、会社など集団生活の中で、偏見や差別的な言動を受けたことや、差別的な言動に不快感を持ったことはあるか?」を聞いたところ、全体で41.2%が「ある」と回答した。中でも、ゲイの55.1%が最も高かった 。

さらに「住まい探し」について困難や居心地の悪さを経験したことがあるかを、住まい探しを経験した人に聞いたところ、「賃貸住宅探し」で28.7%、「住宅購入」で31.1%が「ある」と回答した。

ちなみに、「現在の住まい」については、「賃貸アパート・マンション」が36.7%で最も多く、持ち家の比率は31.2%(一戸建て22.1%+マンション9.1%)だった。

現在のお住まい(単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「LGBTの住まい・暮らし実態調査2018」)

現在のお住まい(単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「LGBTの住まい・暮らし実態調査2018」)

LGBTに向けた自治体の施策や住宅ローン商品も出始めた

LGBTが住まい探しで困難になる理由はいくつかある。

「賃貸住宅」では、貸主と賃貸借契約を結ぶ際にあらかじめ同居人を認めてもらう必要があるが、家族として同性パートナーが認められるケースは少ない。認められる賃貸住宅を探すか、ルームシェア可の物件を探すか、といったことになってしまう。

また、「住宅購入」に関しては、異性のパートナーであれば、二人の収入を合わせて一緒に住宅ローンを組むか、二人それぞれでローンを組む「ペアローン」が可能だ。しかし同性パートナー同士で住宅を購入しようとした場合には、いずれの組み方も認められないケースが多いのが現状。かといって1人でローンを組んでしまうと「万が一のときに残されたパートナーが住み続けられるのか」といった不安もつきまとう。

こうした不平等を無くしていこうと、同性カップルのパートナーシップを証明する自治体も現れた。
筆者は2015年4月8日のSUUMOジャーナルの記事で「渋谷区の同性カップル条例が成立。なぜ賃貸住宅が借りづらい?」を執筆した。渋谷区の「同性カップル条例」が成立し、手続きを取ればいわゆる「パートナーシップ証明」が発行されるようになり、賃貸住宅を探す際に、同性カップルの同居を認めやすくなると注目されたからだ。

これ以降も、世田谷区、三重県伊賀市、兵庫県宝塚市、沖縄県那覇市、札幌市などの自治体で「パートナーシップ証明書」や「パートナーシップ宣誓書受領証」などを発行するようになった。こうして、一部の自治体でセクシャルマイノリティへの不平等を無くしていこうと動き出している。

また、三井住友信託銀行や住信SBIネット銀行、ソニー銀行などの銀行で、住宅ローンでペアローンや収入合算(同居親族の収入を借入者の収入と合算すること)、担保提供などができる “配偶者”の定義に、同性パートナーを加えるなどの商品改定を行った。銀行によって細かい条件などが異なるので、詳細は個別に確認をしてほしい。

LGBT当事者にこうした状況の認知度を聞いたところ、「同性カップルのパートナーシップ登録や証明書発行を行う自治体があること」の認知度が53.6%と過半数を超えたが、「同性カップルが共同で組める住宅ローン商品があること」への認知度は26.8%だった。

LGBTを応援したいという不動産オーナーは4割弱

このように、一部の自治体や金融機関では多様なパートナーシップのあり方を認めていこうという動きがあるものの、不動産の現場ではどこまで浸透しているのだろうか。

賃貸住宅の貸主である、不動産オーナーにLGBTへの意識について調査した結果を見ていこう。
同性カップルの入居を断った経験があるかどうか(入居希望を受けたことがあるオーナーが対象)については、「男性同士の同性カップル」の場合で8.3%、「女性同士の同性カップル」の場合で5.7%だった。なお、入居を断った割合が高かったのは、「ルームシェア(男性同士)」の8.2%、「同性愛者(女性)」の7.8%など。同性カップルに限らず、賃貸住宅の入居に困難が伴う実態を浮き彫りにしている。

これまでの入居希望者への対応(入居希望を受けたことがある人を対象・単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「不動産オーナーのLGBTに対する意識調査2018」)

これまでの入居希望者への対応(入居希望を受けたことがある人を対象・単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「不動産オーナーのLGBTに対する意識調査2018」)

また、不動産オーナー全員に今後の入居希望者の対応意向を聞いたところ、「男性同士」の同性カップルの入居希望に対して「特に気にせず入居を許可する」という回答は36.7%、「女性同士」の同性カップルの入居希望に対して「特に気にせず入居を許可する」という回答は39.3%などと、厳しい結果となった。

今後の入居希望者への対応意向(単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「不動産オーナーのLGBTに対する意識調査2018」)

今後の入居希望者への対応意向(単一回答)(出典:リクルート住まいカンパニー「不動産オーナーのLGBTに対する意識調査2018」)

調査結果を見ていくと、生活の拠点となる大切な住まい選びにおいて、LGBTへの偏見や差別的な行動がまだ多いことが分かる。とはいえ、不動産オーナーの中でも30代など若い世代ほど「応援したい」と回答するなど、認識が変わっていく状況も見られた。まずは、LGBTに対して適切な認識を持つことが重要だ。

今の社会の中で、LGBTであるとカミングアウトすることは勇気のいることだろう。カミングアウトした当事者をフレンドリーに受け入れる社会であってほしいと望む。

同性カップル調査[3] 「周りの理解が得られたら…」LGBT当事者が住まい探しや日常生活に望むこと

同性カップル調査第3回は、同性カップルにとってうれしいサービスや、住みたい場所などをとりあげます。また、彼ら彼女らにとって、住まい探しや日常生活のなかで「こうあってほしい」ことはどんなことなのかを具体的に聞いてみました。
同性カップル調査第1回:同居してよかったこと・同居のストレス
同性カップル調査第2回:家探しの実態

あったらいいなと思う対応やサービスは、「公的なパートナー制度」「理解や認知」など

第3回では、家探しをするにあたり、あったらいいなと思う対応やサービスを聞いてみました。

1位は「同性での婚姻制度や、公的に認められたパートナーシップ制度」(30.8%)。僅差で「入居者がLGBTに対して認知・理解が浸透した集合住宅や街」(28.3%)、「LGBTに対して認知・理解が浸透した不動産会社」(27.5%)、「万一のときに同性パートナーに物件を相続できる法制度」(26.9%)と続きます。

「特にない」も4分の1ほどいたが、全体的にはスムーズな部屋探しや暮らしができる制度やサービスに対して、あったらよいと回答する人が多く、相対的に、「LGBTに対してのみ提供される特別なサービス」などは低い数値となった(出典/SUUMOジャーナル編集部)

「特にない」も4分の1ほどいたが、全体的にはスムーズな部屋探しや暮らしができる制度やサービスに対して、あったらよいと回答する人が多く、相対的に、「LGBTに対してのみ提供される特別なサービス」などは低い数値となった(出典/SUUMOジャーナル編集部)

女性同士のカップルで、男性同士カップルとの差が大きかった項目としては、「同性パートナーとペアで組める住宅ローン」(32.8%)、「同性での婚姻制度や、公的に認められたパートナーシップ制度」(35.8%)、「万一のときに同性パートナーに物件を相続できる法制度」(32.1%)などで、制度面での希望が目立ちます。
一方、男性同士のカップルで、上位項目、かつ女性同士カップルより数値が高い項目は「入居者がLGBTに対して認知・理解が浸透した集合住宅や街」(29.5%)、「特にない」(28.2%)、「LGBTであることを理由に入居を断らないと積極的に表明した物件」(24.2%)などがありました。

下位項目ではあるものの、「LGBTが入居条件(入居者がLGBT当事者の)集合住宅や住宅地」に関しては、女性同士カップルより男性カップル同士の方が、8.7ポイント高い結果となりました。第2回で紹介したように、男性同士カップルの方が家探しに対して「非常に苦労した」を選択する人が多かったことからも、男性同士の家探しが難しい現状が垣間見えます。

みなさんの声を集めてみました。
【制度や仕組みに関して】
・パートナーであることを公的に証明してもらうことがうれしい(34歳・女性・バイセクシュアル)
・LGBT専用の住宅などがあるといいなと思う(57歳・ゲイ)
・フリーペーパーなどの情報紙があったら良い(35歳・女性・バイセクシュアル)
・LGBTの当事者であることを明かさなくても、さまざまな詮索をされることなく、自然な対応で同性同士のルームシェア物件を探せるような窓口や不動産、物件サイトが増えるといいなと感じています(26歳・レズビアン)
・ほとんど全てにおいて法律上異性パートナーと同じ扱いが受けられれば(54歳・ゲイ)
・共同でローンを組めたら、将来に不安のない住環境になれそう(38歳・女性・バイセクシュアル)
・同性婚をしても保険年金の扶養などは認められていないため、共働きをせざるをえなくなる。そういう点も異性婚と同様に扱ってほしい(44歳・女性・バイセクシュアル)

【周りの意識に関して】
・周りの理解が得られたら良いと思う。自分は親にも友達にも恵まれたので変に思われたことはないが、理解が得られないことで辛い思いをしている人がいるなら、不動産でも役場でも、自然に生活できるようにしてほしい(30歳・女性・バイセクシュアル)
・特別に何かをしてもらうより、広く理解してもらいたい。「特別ではなく少し違うだけ」くらいに、すんなりと受け入れてくれるようになったらうれしい(38歳・女性・バイセクシュアル)
・そっとしてほしい(49歳・ゲイ)
・理解のある大家が多くなってほしい(44歳・男性・バイセクシュアル)
・入居者の理解(レインボーマーク掲示)(46歳・ゲイ)
・とにかく普通に接してほしい(41歳・男性・バイセクシュアル)

渋谷区に住みたい理由は「公的なサポートが受けられそう」「周りの理解を得られそう」など

渋谷区のような、LGBTに対して公的なサービスを提供する行政区に住んでみたいかについては、「条件が合うなら住みたい」(24.5%)、「多少、条件に合わなくても積極的に住みたい(13.5%)」を合わせると、4割近くが「住みたい」と回答しました。

男性は「多少、条件に合わなくても積極的に住みたい」人が多い(出典/SUUMOジャーナル編集部)

男性は「多少、条件に合わなくても積極的に住みたい」人が多い(出典/SUUMOジャーナル編集部)

特に、男性同士カップルの場合、「多少、条件に合わなくても積極的に住みたい」という回答が、女性同士カップルよりも多かったです。
住みたい理由としては、「公的なサポートが受けられそう(32歳・レズビアン)」「周りの理解を得られそう(35歳・女性・バイセクシュアル)」「新しい家でも簡単に契約できそう(28歳・女性・バイセクシュアル)」「結婚は日本の法律ではできないので、せめて病院の面会など、公的な場面での家族に準じた権利を認めてほしいと思っている(45歳・ゲイ)」「老後や相続のことで法的に認められたい(56歳・ゲイ)」などがありました。

住みたい街は「渋谷」のほか「新宿」や「中野」など

具体的に住みたい街を自由記述で回答してもらったところ、「特にない」も多かったのですが、「渋谷」「渋谷区」をはじめ、札幌市や世田谷区、三重県伊賀市、沖縄県那覇市などさまざまな地名があがりました。
※以下、( )内の地名は現在お住まいの都道府県

・「渋谷区」区で認可されてるから(49歳・男性・バイセクシュアル・東京都)
・「渋谷・新宿」同じ悩みを抱えている仲間がたくさんいるから(41歳・女性・バイセクシュアル・埼玉県)
・「新宿」色々なセクシャリティを抱えた者たちが集う街だし、大都会だから(37歳・女性・バイセクシュアル・愛知県)
・「中野」ゲイが多いから(39歳・ゲイ・神奈川県)
・「東京都。新宿区や世田谷区など」やはり、LGBTの人口が多く、互いの親交が図れるから(49歳・ゲイ・三重県)
・「世田谷区」友人も何人かいて理解がある人がいることと、先日ドラマ「隣の家族は青く見える」内で、パートナーシップ申請をしていたこと(45歳・ゲイ・東京都)
・「札幌市」性的少数者に対する街頭運動が行われたから(33歳・女性・バイセクシュアル・和歌山県)

LGBTに特化したサービスに関しては、同性パートナーとペアで組める住宅ローンや公的パートナーシップ制度、同性パートナーでも相続ができる法制度など、制度面の充実を望むのはもちろん、LGBTに対する認知や理解を求める人が多いようです。住みたい場所としてはやはり渋谷区という回答が目立ちましたが、新宿や中野、世田谷など、さまざまな地名が挙がりました。大きく「東京」という人も多く、地方在住者にとっては東京が意味のある場所になっているのかもしれません。

今回、同性カップルの住まいや暮らしのニーズを調査してみると、部屋の探しにくさの解消や、2人で住む住まいの購入に対しての制度の拡充への期待の声が目に付きました。
誰もが自由に、住まいを選べる世の中になるよう、期待していきたいですね。

●調査概要
・[同性カップル調査]より
・調査期間:2018年3月26日~30日
・調査方法:インターネット調査(ネオマーケティング)
・対象:LGBTに該当し、かつ同性のパートナーがいたことがある18歳~59歳の全国の男女
・有効回答数: 364名(うち、男性カップル227名・女性カップル137名)

同性カップル調査[2] 家探しをする際、不動産会社にカミングアウトをする人は約3割

同性カップル調査第2回は、家探しの実態を紹介します。第1回目は「同居してよかったこと・同居のストレス」について紹介しました。今回は、家を探す際に重視した条件や、家探しの契約段階などでカミングアウトをしたのか、LGBTならではの苦労はあったのかなど、経験者に実際のところを聞いてみました。

(※)L)レズビアン:女性同性愛者 G)ゲイ:男性同性愛者  B)バイセクシュアル:両性愛者 T)トランスジェンダー:生まれたときの身体の性と、自認する心の性が不一致な人たち
同居を始めるにあたり、約半数が新たに家を探している

付き合いはじめ、そろそろ同居を始めようとなったとき、住まいはどうしているのでしょうか。
調査結果を見ると、新たに家探しをした人は、賃貸(42.3%)、購入(12.6%)を合わせると半数を超え(54.9%)ました。家探しはせず、どちらかが住んでいた家で同居を始めた人は賃貸(36.0%)、購入(9.0%)を合わせると45.0 %という結果でした。

男性同士のカップルでは、賃貸物件を探した割合は女性同士のカップルより少ないが、購入物件で探した割合は女性カップルを上回った(出典/SUUMOジャーナル編集部)

男性同士のカップルでは、賃貸物件を探した割合は女性同士のカップルより少ないが、購入物件で探した割合は女性カップルを上回った(出典/SUUMOジャーナル編集部)

新たに家探しをした(賃貸)のは女性同士のカップルのほうが多く、どちらかの家で同居をはじめたのは男性同士のカップルのほうが多いことがわかります。

それぞれの理由やきっかけは、
【新たに家探しをした(賃貸)】
・私がワンルームに住んでおり、パートナーは実家に住んでいたので、2人で住める広めの部屋を探した(35歳・レズビアン)
・2人で一緒の家に住んで生活がしたかった。より一緒の時間を過ごしたかった(28歳・女性・バイセクシュアル)
【新たに家探しをした(購入)】
・パートナーと同居できる部屋を探したが物件が少なく、結局、パートナーが新居を建て、そこに一緒に住むことになった(53歳・ゲイ)
・当初は私の部屋で同居していたが、2人で生活するには狭い(51歳・ゲイ)
【どちらかの家で同居を始めた】
・二人の関係を大家さんに説明するのが面倒だった(54歳・女性・バイセクシュアル)
・家さがしが面倒だった(53歳・男性・バイセクシュアル)
などでした。

家探しの条件は「家賃」「通勤・通学時間」「間取り」などが上位に

次に、新たに家を探す際(賃貸)に重視した条件を聞いてみました。
1位は「家賃」(45.7%)で、「通勤・通学時間」(36.2%)、「立地・周辺環境」(36.2%)、「間取り」(35.1%)、「二人入居可」(31.9%)が続きます。「LGBTフレンドリーな物件である」は約10人に1人が選択していました。

男女で差がある項目上位は家賃、セキュリティ、構造(耐震性、耐火性など)(出典/SUUMOジャーナル編集部)

男女で差がある項目上位は家賃、セキュリティ、構造(耐震性、耐火性など)(出典/SUUMOジャーナル編集部)

女性同士のカップルでは「家賃」のほかに「セキュリティ」(39.0%)も重視しており、男性同士のカップルと22ポイント違いがありました。また、「構造(耐震性、耐火性など)」(24.4%)や「家賃」(53.7%)、「築年数」(29.3%)も女性同士カップルの方のほうが気にする傾向があるようです。

一方、男性同士カップルが女性同士カップルより気にする項目は「初期費用(敷金・礼金・仲介手数料など)」(32.1%)で、12.6ポイント差をつけました。「LGBTフレンドリーな物件である」(13.2%)も、8.3ポイント高い結果に。男性2名だと関係性や同居の理由などの説明を求められることも多いようで、LGBTフレンドリーな物件から部屋探しをできることは、説明のハードルが下がるメリットがあります。続いて「通勤・通学時間」(39.6%)も女性同士のカップルより7.9ポイント高い結果となりました。

「カミングアウトする必要がなかったのでしなかった」は、女性同士カップルは52.0%、男性同士カップルは41.7%

家探しや賃貸、購入、ローン契約などにあたり、自身のセクシュアリティやパートナーとの関係性を不動産会社などにカミングアウトしたかについては、「カミングアウトする必要がなかったのでしなかった」(45.9%)がトップでしたが、「自分から積極的にカミングアウトした」という方が25.4%という結果でした。

男性同士のカップルのほうがカミングアウト率は高いのは、部屋探し、契約の段階でそうしたほうがスムーズだったからか(出典/SUUMOジャーナル編集部)

男性同士のカップルのほうがカミングアウト率は高いのは、部屋探し、契約の段階でそうしたほうがスムーズだったからか(出典/SUUMOジャーナル編集部)

セクシュアリティ別に見ると、「カミングアウトする必要がなかったのでしなかった」は、女性同士カップルのほうが10.3ポイント高い結果に。
理由としては、女性は「女性2人でのシェアハウスですがいいですかと聞いたらOKだったので、特に話す必要がなかった(44歳・女性・バイセクシュアル)」といった声が多く見られました。一方、男性は「同性パートナーだというと物件を探してもらえなくなると思った(53歳・ゲイ)「カミングアウトすることが怖かった(52歳・ゲイ)」など、カミングアウトしたあとの反応に対してネガティブなイメージを抱いている人が多いように感じました。

「自分から積極的にカミングアウトした」は、男性同士カップルが2.4ポイント上まわりました。
理由としては、「自分から打ち明けることで、その後のやり取りにおいて信頼をもってもらうため(25歳・ゲイ)」「カミングアウトしたほうが、あとから露呈してトラブルになるより得策だと感じた(50歳・男性・バイセクシュアル)」など。

家探しで苦労した人は4割。男性同士カップルのほうが苦労した人が多い

家探しの苦労については、「あまり苦労していない」「まったく苦労していない」を合わせると半数を超えましたが、「やや苦労した」「非常に苦労した」も、全体の4割で、苦労した人も多いことが分かります。

男性同士カップルは部屋探しに苦労したと回答した人が約半数に上る(出典/SUUMOジャーナル編集部)

男性同士カップルは部屋探しに苦労したと回答した人が約半数に上る(出典/SUUMOジャーナル編集部)

細かくみていくと、男性同士カップルのほうが「非常に苦労した」の比率が14.2ポイント高く、「まったく苦労していない」は女性同士カップルのほうが11.2ポイント高い結果となりました。

それぞれのコメントは以下のとおり。
【やや苦労した】
・「ええっ」って顔をされた(58歳・ゲイ)
・女性同士の入居に不信がられてしまった(33歳・女性・バイセクシュアル)
【非常に苦労した】
・断られた(29歳・ゲイ)
・同性同士の同居に対して、不動産会社の人たちから偏見の目で見られた(53歳・ゲイ)
「あまり苦労していない」
・友達同士のふりをした。お互いに同居したほうが安くすむからと言った(38歳・女性・バイセクシュアル)
・LGBTへの配慮がある行政区に相談し、 円滑に住居を見つけられた(36歳・ゲイ)
「まったく苦労していない」
・購入なので身元調査はされなかった(52歳・ゲイ)
・パートナーとは歳が離れていたので、見た目で何とでもごまかせた。聞かれたときは親戚や姪などと答えていた(35歳・レズビアン)

今回は、同居を初める際の部屋探しについて紹介しました。賃貸物件への入居の際、事前に大家さんや管理会社の審査がありますが、貸す側としては同性同士での入居の場合には、その理由や関係性を把握しておきたいと思うのは当然です。しかし、男性同士カップル・女性同士カップルにとっては、それを伝えることは自分のセクシュアリティをカミングアウトするということ。大家さんや管理会社、仲介会社の担当者に理解があるかどうか不安に思うことでしょう。

LGBTフレンドリーであることを表明している人を「LGBTアライ」と呼ぶそうですが、大家さんや不動産会社さんから、LGBTアライであることを表明してみると、そんな”すれ違い”も徐々に解消できるかもしれませんね。

●調査概要
・[同性カップル調査]より
・調査期間:2018年3月26日~30日
・調査方法:インターネット調査(ネオマーケティング)
・対象:LGBTに該当し、かつ同性のパートナーがいたことがある18歳~59歳の全国の男女
・有効回答数:364名(うち、男性カップル227名・女性カップル137名)

同性カップル調査[1] 同居してよかったこと、同居のストレスは?

SUUMOジャーナルでは、以前に「同棲カップル」の住まい調査を行いましたが、男性同士・女性同士などの「同性」のカップルの住まいや暮らしはどんな感じなのでしょうか? 最近はLGBT(※)向けの住まい探しサービスなども少しずつ充実してきています。そこで今回は、同性のパートナーがいる方・いたことがある方を対象に調査を行い、住まい探しや暮らし方についてまとめてみました。

(※)L)レズビアン:女性同性愛者 G)ゲイ:男性同性愛者  B)バイセクシュアル:両性愛者 T)トランスジェンダー:生まれたときの身体の性と、自認する心の性が不一致な人たち
同居してよかったことNO.1は「気持ちが安らぐ場所ができた」こと

今回の調査では、LGBTに該当する方、かつ同性のパートナーとお付き合いしたことがある方にご回答いただきました。

はじめに、同居経験について聞いたところ、「現在同居している」(22.8%)、「現在同居していないが、過去に同居したことがある」(38.2%)を合わせると約6割(61.0%)で、5人に3人が同居を経験したことがあることが分かりました。

今までに同居したことがない人は全体の約4割(出典/SUUMOジャーナル編集部)

今までに同居したことがない人は全体の約4割(出典/SUUMOジャーナル編集部)

一方で、同居したことがない人の中では、「同居しようと思ったことがない」(64.1%)人もいますが、「同居しようと思ったができなかった」人は35.9%で、何らかの理由により同居に踏み切れない人が一定数いることが分かります。

3人に1人の割合で「同居しようと思ったができなかった」と回答(出典/SUUMOジャーナル編集部)

3人に1人の割合で「同居しようと思ったができなかった」と回答(出典/SUUMOジャーナル編集部)

同居経験のある人に、同居してよかったことを聞いたところ、一番多かったのは「気持ちが安らぐ場所ができた」(52.7%)という項目。続いて「互いの価値観を知ることができた」(49.1%)で、全体として安らぐ気持ちや価値観の共有などが支持されました。

セクシュアリティ別に見ると、女性同士のカップルは、「一緒に過ごせる時間が増えた」(53.6%)で11.6ポイント、「相手の新たな一面が見えた」(48.8%)で約9.0ポイント、それぞれ男性同士のカップルより高い結果に。レズビアンカップルは精神的な面での充実を感じる人が多いようです。
一方、男性同士のカップルは「家事が楽になった」で7.6ポイント、「家賃や生活費が節約できた」で6.9ポイント、それぞれ女性同士のカップルより高く、ゲイカップルは精神的充実よりもより現実的なメリットを感じることが多いのかもしれません。

全体では「気持ちが安らぐ場所ができた」の支持率が高い。男性カップルは家賃や家事の分担などにも同居のメリットを感じている様子(出典/SUUMOジャーナル編集部)

全体では「気持ちが安らぐ場所ができた」の支持率が高い。男性カップルは家賃や家事の分担などにも同居のメリットを感じている様子(出典/SUUMOジャーナル編集部)

よかったことに関するコメントは、
・生活を共にしている充実感がある。家事を分担できる。お互い病気のときに心強い(53歳・ゲイ)
・自分がマイノリティーであることを忘れられる(31歳・ゲイ)
・家事と家賃がすごく楽になった(44歳・男性・バイセクシュアル)
・心が安らぐ性的関係をもてた(38歳・レズビアン)
・同性だからこその悩みや愚痴を打ち明けることができた。また、周囲から何も思われず同棲することができる。恋人としても友達としても大切であることを再認識できた(25歳・女性・バイセクシュアル)
・幸せな気分を味わえた(37歳・女性・バイセクシュアル)
などがありました。

ストレスに思うことは「一人で過ごす時間が減った」こと

同居してみてのストレスは、トップが「一人で過ごす時間が減った」(23.4%)。そして「友人との付き合い方について」(23.0%)、「金銭感覚が合わない」(17.6%)と続きます。

セクシュアリティ別に見ると、男性同士のカップルは「金銭感覚が合わない」「食事の好みや料理の味付けが合わない」「性格が合わない」が女性同士のカップルよりもポイントが高め。一方、女性同士のカップルは「掃除の頻度・方法が合わない」という項目が男性同士のカップルより6.8ポイントも高い結果に。

全体的にゲイカップルのほうがレズビアンカップルより高い項目が多く、同居にストレスを感じることが多いようだ。「ストレスを感じたことがない」人も22.1%(出典/SUUMOジャーナル編集部)

全体的にゲイカップルのほうがレズビアンカップルより高い項目が多く、同居にストレスを感じることが多いようだ。「ストレスを感じたことがない」人も22.1%(出典/SUUMOジャーナル編集部)

ストレスに関するコメントは、
・トイレのドアを閉めずに用を足す(31歳・ゲイ)
・味の好き嫌いで、つくった料理に対して喧嘩がしばしば起こるのは残念(25歳・ゲイ)
・光熱費の無駄遣いなどが多いとストレスになる。あと思いやりのない言動など(44歳・男性・バイセクシュアル)
・洗い物の仕方が違う。相手がおおざっぱ(54歳・女性・バイセクシュアル)
・相手が掃除しなくてもあまり気にしない性格だから、掃除するのが気まずい。自分がやりたいだけ掃除できないとストレスがたまります(28歳・女性・バイセクシュアル)
などがありました。

同居できなかった理由は「お金がなかった」「世間の目が気になる」など

同居したことがない人に、どんな理由で同居しなかったのかを聞いてみました。

【同居しようと思ったことがない】
・世間の目があるから(29歳・ゲイ)
・今年から社会人として生活を始めるため、お互いに資金がない(22歳・ゲイ)
・交際はしたいけど生活はしたくない(52歳・男性・バイセクシュアル)
・自分自身に同居している子どもが居るので(56歳・女性・レズビアン)

【同居しようと思ったができなかった】
・賃貸契約の書類上の問題(32歳・ゲイ)
・世間から変な目で見られるのが嫌だから(31歳・女性・バイセクシュアル)
・当時はまだお互いに学生で金銭的にも不安があり、互いの家族にもカミングアウトできなかった(26歳・女性・バイセクシュアル)
・経済的に厳しかった(41歳・女性・バイセクシュアル)

世間の目を気にする人、経済的な理由の2つが目立ちました。また、「交際はしたいが一緒に生活はしたくない」という人が男性に多かったのが印象的でした。

今回の調査で、同居経験がある人は6割を超えました。同居によって気持ちが安らいだり、充実感や幸福感が得られたりする人も多いようです。
詳細を見ていくと、男性同士のカップルが家賃や家事の分担などにも同居のメリットを感じていたり、女性同士のカップルのほうが掃除の仕方でストレスを感じることが多いなど、男性同士、女性同士のカップルで違いがある結果となりました。

一方で、同居したい気持ちはあるけれど、「世間の目が気になる」「賃貸契約の書類上の問題」など、LGBTに対する偏見や、受け入れ体制がまだ整っていないことによって思いきれないという声もありました。誰でも、住みたい場所で自由に住まいが選べる、そんな世の中になってほしいと思います。

●調査概要
・[同性カップル調査]より
・調査期間:2018年3月26日~30日
・調査方法:インターネット調査(ネオマーケティング)
・対象:LGBTに該当し、かつ同性のパートナーがいたことがある18歳~59歳の全国の男女
・有効回答数:364名(うち、男性同士カップル227名・女性同士カップル137名)