かつての小学校が“まち”になる! 「那須まちづくり広場」始動

国土交通省、地域づくり活動の優良事例を表彰する「地域づくり表彰」で、廃校となった小学校を再生した「那須まちづくり広場」が最高位の国土交通大臣賞に選出された。これは、市場、カフェ、アート教室等へリノベーションされ、再び地域住民が集う場所へと生まれ変わったプロジェクトで、2022年にはサービス付き高齢者住宅(以下、サ高住)を中心としたリニューアルも予定されている。
今回、計画にあたって重視していること、今後の展開などを、那須まちづくり広場株式会社の近山恵子さんと鏑木孝昭さんにお話を伺った。

かつて学校だった記憶を尊重した改修で、誰もが集う場所に

「那須まちづくり広場」は、2016年に廃校となった旧朝日小学校を再生利用した複合施設で、行政の建物を民間主導で運営する取り組み。2022年の完成を目指し、現在は先行して旧校舎を改修し、地元の食材を中心とした地産地消のマルシェ「あや市場」や、地域の住民たちが腕を振るう「コミュニティカフェ ここ」などを運営。今後は校庭に、サ高住が新築される予定だ。

(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

厳選された地元の新鮮野菜や自然食品が並ぶ「あや市場」。所狭しと商品が並び、宝探しをしているような気分に(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

厳選された地元の新鮮野菜や自然食品が並ぶ「あや市場」。所狭しと商品が並び、宝探しをしているような気分に(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

周辺の農家さんから直売される新鮮な野菜。つくり手自ら加工した食品も。「サ高住が完成した将来は、こうした直売以外にも、提供する食事に使うために地元農家さんと契約していきたいと考えています」(鏑木さん) (写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

周辺の農家さんから直売される新鮮な野菜。つくり手自ら加工した食品も。「サ高住が完成した将来は、こうした直売以外にも、提供する食事に使うために地元農家さんと契約していきたいと考えています」(鏑木さん) (写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「大切にしているのは、学校本来の機能・雰囲気を活かすこと。今でもこの学校は、地域の運動会や敬老会が開催されるなど、地域のみんなが集う場所です。かつての思い出、記憶、継続している活動を尊重したいと考えています」(近山さん)
例えば、カフェのある場所は元家庭科室、鍼灸・マッサージ・整体などができる「こころと体の健康室」は、元は放送室。給食調理室は、今はオリジナルブランドの人気アイスキャンデー工場だ。玄関入ってすぐの下駄箱は、色を塗りなおし、街のチラシあれこれを入れたインフォメーションコーナーに。

本や絵本がずらりと並び図書館機能も持つ「コミュニティカフェ ここ」。Wi-Fi完備でコワーキングスペースにも(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

本や絵本がずらりと並び図書館機能も持つ「コミュニティカフェ ここ」。Wi-Fi完備でコワーキングスペースにも(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

スパイスの利いた特製豆カレーは定番の人気ランチ。サラダ、スープ付きで800円(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

スパイスの利いた特製豆カレーは定番の人気ランチ。サラダ、スープ付きで800円(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

玄関の靴箱には地域のお知らせなどのチラシを置いて。課外活動の一環として見学にくる地元の小学生も多く、子どもたちによるポスターも(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

玄関の靴箱には地域のお知らせなどのチラシを置いて。課外活動の一環として見学にくる地元の小学生も多く、子どもたちによるポスターも(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「リノベーションの過程で、近所の住民の方が小学生のころに書いた“大きくなったら自分の家を継ぎます”と書いた画用紙も見つかりました。かつて自分自身や自分の子どもが何度も足を運んだ場所だからこそ愛着がある。“みんなで作る生涯活躍のまち”事業において、学校を再利用するのはとても意義があると思います」(近山さん)

かつての面影を最も色濃く残している図工室はアート教室に。隣のギャラリーで展覧会を開くことも可能(画像提供/那須まちづくり広場)

かつての面影を最も色濃く残している図工室はアート教室に。隣のギャラリーで展覧会を開くことも可能(画像提供/那須まちづくり広場)

パイプオルガン、チェンバロなど歴史ある楽器が並ぶ「音楽工房LaLaらうむ」。緩和ケアのための音楽を取り入れる試みも(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

パイプオルガン、チェンバロなど歴史ある楽器が並ぶ「音楽工房LaLaらうむ」。緩和ケアのための音楽を取り入れる試みも(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

子育て世代、高齢者、障がい者など多様な人々が1人でもふらりと立ち寄るのもよし、グループで集う場所として利用することもできる(写真提供/那須まちづくり広場)

子育て世代、高齢者、障がい者など多様な人々が1人でもふらりと立ち寄るのもよし、グループで集う場所として利用することもできる(写真提供/那須まちづくり広場)

屋上に太陽光発電設備を設置し、環境共生・防災時の備えにも取り組んでいる(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

屋上に太陽光発電設備を設置し、環境共生・防災時の備えにも取り組んでいる(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

住民自身が担い手になることで、暮らしはもっと豊かになる

さらに重視しているのが、地域住民が当事者であること。
例えば、カフェで料理をしてくれるのは、地域に住む方々。料理自慢が通常営業のほかにも、例えば毎週木曜日はワンプレートで雑穀ごはんと6種の惣菜をのせた木曜ランチの日、月に1回はタイカレーの日と、それぞれその日に料理を担当する人の事情に合わせたメニュー構成に。お菓子づくり名人によるオリジナルケーキはかなりの評判だそう。

「自身の“得意”と“時間”を提供していただいています。こうした“場”があることで、みなさんの才能を掘り起こすことができました。自分のお店をオープンするのはハードルが高いけれど、ここでなら自分のできる範囲で才能を発揮できる。それをマッチングさせるのが私たちの役目ですね」(近山さん)

カフェで働くのは地元の主婦の方々ばかり。「スタッフはすぐに集まって、スタートすることができました」(鏑木さん)(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

カフェで働くのは地元の主婦の方々ばかり。「スタッフはすぐに集まって、スタートすることができました」(鏑木さん)(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

アート、音楽、映像などの多種多様な講座が行われるプログラム「楽校」は、地域の人たちが先生役となることも少なくない(画像提供/那須まちづくり広場)

アート、音楽、映像などの多種多様な講座が行われるプログラム「楽校」は、地域の人たちが先生役となることも少なくない(画像提供/那須まちづくり広場)

住民自ら街づくりに参画する取り組みは、現在進行形の街づくりプロジェクトでも実践中。ワークショップの「人生100年・まちづくりの会」は住民参加型。街にどんな機能が必要か意見交換をしたり、住む、働く、食べるといったテーマ別でアイデア出しをしたり。さらには、自治体や介護の分野で注目されている「誰もが従業員で経営者」という働き方「ワーカーズコープ」の勉強会も開かれている。

「また、これからできるサ高住は暮らしたいと思う人のコミュニティづくりからスタート。中の設計も自由にカスタマイズ可能など、高齢者向けのコーポラティブ住宅のような取り組みをしています」(近山さん)

「人生100年・まちづくりの会」の様子。「参加者には移住された方が多いですね。最近はオンラインによる参加の方もいます」(近山さん)(画像提供/那須まちづくり広場)

「人生100年・まちづくりの会」の様子。「参加者には移住された方が多いですね。最近はオンラインによる参加の方もいます」(近山さん)(画像提供/那須まちづくり広場)

超高齢化社会の受け皿をワンストップで集約させるべく計画中

今後の課題、目標として「那須まちづくり広場」が掲げるのが「地域包括ケアの推進」だ。
自立型のサ高住、通所型のデイケアサービス、24時間対応の訪問介護サービス、看取り対応の高齢者住宅など、あらゆるニーズに対応する機能をワンストップに集約させる計画となっている。
「積極的に治療せず病院からの退院を余儀なくされるケース、病院で死にたくないけれど自宅介護は困難なケースなど、医療難民、介護難民となる人は多い。そうした局面での受け皿となる場所を目指しています」(鏑木さん)
そのためには現状で足りないものを優先。「例えば、今回の計画にはいわゆる通常の保育所はありませんが、障がい者児童向けの放課後デイケアサービスはあります。周辺地域に十分足りている施設については、あえて入れていないんです」(近山さん)

那須まちづくり広場2022年の完成予想パース。校舎やプールを改修、校庭に新たにサ高住を供給。全体で事業化することでコスト課題を解消する予定(画像提供/那須まちづくり広場)

那須まちづくり広場2022年の完成予想パース。校舎やプールを改修、校庭に新たにサ高住を供給。全体で事業化することでコスト課題を解消する予定(画像提供/那須まちづくり広場)

さらに「福祉の産直」も狙っている。
「サ高住含め、住戸100戸を供給予定。そのスケールメリットを活かして、地域の雇用を生み出すことができ、経済を活性化させていくことも目標です」(鏑木さん)
合わせて住宅の確保が困難な方向けのセーフティネット住宅や低価格の簡易宿泊所も併設。ここで暮らしながら、介護を勉強、資格を取得し、生活を立て直すこともできる。
「例えば、簡易宿泊所に泊まりながら、質のいいリハビリやヘルパーの研修プログラムに参加することも。目指すのは、福祉の産直と地消地産。社会的弱者と呼ばれる人たちの経済的、精神的自立を図ることも大きな目標のひとつです」(近山さん)

フロアマップ予想図。セーフティネット住宅には、住宅の確保が困難な高齢者、障がい者、子育て世代、外国人向けの住宅。また、移住、定住前のお試し住居として利用できる予定。サ高住の居室は1坪当たり約110万円で検討中(画像提供/那須まちづくり広場)

フロアマップ予想図。セーフティネット住宅には、住宅の確保が困難な高齢者、障がい者、子育て世代、外国人向けの住宅。また、移住、定住前のお試し住居として利用できる予定。サ高住の居室は1坪当たり約110万円で検討中(画像提供/那須まちづくり広場)

那須まちづくり代表の近山さん(左)と鏑木さん(右)。「我々が目指すのは地産地消ならぬ、地消地産。地域で消費するものをなるべく自分たちで生み出していくことが目標。理念を可視化するために、実践しながら共有していく。そのための”場”がここなんです」(近山さん)(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

那須まちづくり代表の近山さん(左)と鏑木さん(右)。「我々が目指すのは地産地消ならぬ、地消地産。地域で消費するものをなるべく自分たちで生み出していくことが目標。理念を可視化するために、実践しながら共有していく。そのための”場”がここなんです」(近山さん)(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

生きる、働く、そして死ぬことーーあらゆる局面で必要となる場を含んだまちづくりは、高齢化社会が加速する日本においては急務の課題。その舞台として、かつてコミュニティの場であった学校の跡地を利用するのは他の自治体でも挑戦可能な手段といえる。今後の「那須まちづくり広場」の挑戦をウォッチしていきたい。

●取材協力
那須まちづくり広場
MINSURU[みんする] :那須まちづくり広場・事業構想プロジェクト

テレワークが変えた暮らし【10】理想を求めて葉山へ。社会活動「スポーツを止めるな」もスタート

東京都新宿区から神奈川県葉山町に3年前に家族で引越した会社員の最上紘太さん。ライフシフトの見直しをきっかけに移住を決意。そして、このコロナ禍でテレワーク中心となり、生活スタイルにさらに変化が訪れた。コロナで苦しむ学生アスリートを支援するため、一般社団法人「スポーツを止めるな」を仲間と立ち上げるなど活動を広げている。移住、テレワークで最上さんの暮らしはどう変わったのだろうか。
葉山でネットと波を乗りこなすダブルサーフィン生活を手に入れた

「老後に葉山を拠点にして生活することは、学生時代から思い描いていました」と語る最上さん。最上さんの高祖父にあたる明治の文化人、陸 羯南(くが かつなん)氏が葉山に移り住んで以降、そこは最上さんや、親戚みんなの憧れの地となる。小さいころから訪れていた葉山は、中学時代からラグビーに打ち込んできたスポーツマンの最上さんにとって、都会から遠くないのに、自然の中でワークアウトをしたり、スポーツを楽しめたりする理想の場所という印象が強かった。

「東京での仕事が忙しくなる一方、世間では働き方の見直しが議論を呼び、“人生100年時代”が叫ばれるようになりました。都会のド真ん中に住んで、マンションと会社を往復する生活がベストな生き方なのか、4年ほど前から真剣に考え始めたんです」と話す。

幼少期からの憧れの地・葉山への移住を自然と考えるようになっていくうちに、富士山も海も見える今の家が立つ土地を見つけ、迷わず購入。地の利を最大限に活かし、環境にも配慮した理想の家を1年かけて建てた。以来、休みの日には海でスタンドアップパドル(SUP)を楽しんだり、家族で磯遊びをしたりと、海の側での生活を満喫しているという。

最上さん宅から望む富士山(画像撮影・提供/最上紘太)

最上さん宅から望む富士山(画像撮影・提供/最上紘太)

コロナ禍で、理想のテレワークのある暮らしを実現

家を建てたころは、仕事は都内のオフィス勤務がメインだった。勤務先では、テレワークは今ほど浸透していなかったというが、最上さんはすでに「将来的にはテレワークを基本とした暮らしをすること」を理想に、日当たりもいい、お気に入りのスポットに書斎をつくっていた。

そんな最上さんのテレワークが本格的に始まったのは、新型コロナウイルスによる自粛生活が始まったこの3月。毎日都内へ通勤する生活からフルリモート生活に一変した。

以前は休日の朝5時から海に走りに行っていたが、出勤時間がなくなった分、始業時間前を利用した毎日の習慣に。地元のランニングコースを開拓する余裕もでき、葉山は海だけでなく山々やハイキングコースが充実していることにも気がつけたという。

こうして毎日気分に合わせて海や山などさまざまなコースを走ることで、「コロナ禍でも気分転換と健康維持が可能になりました」と続ける。さらに、家族で山登りに行ったり、海で朝食や夕食をピクニックで楽しんだりと、バケーション気分を日常に取り入れられるようになった。このことで、仕事における集中力も格段に高まったという。

「地元で過ごす時間が圧倒的に増えたことで、これまで以上に家事に関わり、自分時間も確保できています。ご近所付き合いも増え、葉山への愛着が一層深まりました」

葉山に点在するハイキングコースは、うっそうと繁る木々に囲まれ、清々しい空気が漂う。早朝はほぼ人がいないので集中して走り込めるという(画像撮影・提供/寺町幸枝)

葉山に点在するハイキングコースは、うっそうと繁る木々に囲まれ、清々しい空気が漂う。早朝はほぼ人がいないので集中して走り込めるという(画像撮影・提供/寺町幸枝)

地産地消の食卓がかなうのが三浦半島の魅力

最上さんにとって、葉山生活の魅力の一つは食だ。「朝採れ野菜をはじめとする食が豊か」と最上さん。

特に「葉山しらす」は、初めて食べて以来、冷蔵庫に欠かせなくなった。朝に漁港にあがる釜揚げしらすは、新鮮かつ手ごろな値段で手に入れられる。佐島や横須賀などへ少し車を走らせればその日に水揚げされたばかりの旬の魚が手に入る。漁港まで行かなくても、地元の魚屋には朝獲れ鮮魚がたくさん並ぶ。

葉山しらすを使ったピザ(画像撮影・提供/最上紘太)

葉山しらすを使ったピザ(画像撮影・提供/最上紘太)

ほかにも、野菜や、養鶏場や養豚場で育てられた肉、ブランドの「葉山牛」など、三浦半島にいるだけで、豊かな食を手軽に得られるようになった。「都内に住んでいたころより、ずっと質の良い食材を手ごろに入手できるようになりました。おかげで、子どもに旬のものを感じて食事を楽しむことを教えられるし、これまで料理をしたことがなかった自分が庭でバーベキューするようになり、料理にも興味を持つようになりました」と話す。自粛期間で外食もしづらくなり、時間の余裕もできてからは、おいしいと耳にした調理法を試して、おつまみをつくり、オンライン飲み会で披露するということもできるようになったとのこと。

海では、バーベキューだけでなく、ホットサンドやホットドックをつくって朝食にしたり、近くのレストランのテイクアウトを利用して、海ディナーを楽しむこともあるという(画像撮影・提供/寺町幸枝)

海では、バーベキューだけでなく、ホットサンドやホットドックをつくって朝食にしたり、近くのレストランのテイクアウトを利用して、海ディナーを楽しむこともあるという(画像撮影・提供/寺町幸枝)

(画像撮影・提供/寺町幸枝)

(画像撮影・提供/寺町幸枝)

テレワークだからこそできた、スピード感ある動き

テレワークで生まれた時間は、ボランティア活動にも活かされている。最上さんが一般社団法人「スポーツを止めるな」の共同代表理事に就任したのも、コロナ禍の最中のことだ。大学卒業後も、学生時代のラグビー仲間たちと公私共に交流が深い最上さんは、本業で培ったスポーツ分野での広報活動への造詣の深さから、コミュニケーションプロデューサーとして、立ち上げから組織運営に関わってきた。

同組織は、新型コロナによるさまざまな自粛で進学や就職問題に直面している学生たちを、トップアスリートたちが協力して支援する活動だ。その活動は、社会貢献と期待され、多くのメディアや企業から注目を集めている。

引退試合を逃した中高生ラガーマンたちのために、日本ラグビーフットボール選手会に所属するトップアスリートによる過去の試合への「解説」をつけたビデオ制作を行う「青春の宝」プロジェクトはその一つの活動だ。プロジェクト運営に必要な人選や手配、重要となるメディアへのPRなど、代表理事の3人がスピード感を持って手分けしてこなす必要が求められているというこの活動。共同理事全員が本業を持つ中で、「テレワークなくしては、この組織運営は実現しなかったと思います」と最上さんは話す。

「以前なら、全国を視野に入れた活動となると、“東京”を拠点にせざるを得なかったと思いますし、専業である必要もあったでしょう。しかし多くの動きがリモートでこなせるようになった今、世界を飛び回るトップアスリートから、全国各地で活躍するスポーツ関係者たちとパッとオンラインで繋がり、必要に応じた動きをするというやり方で、十分に日本全国を巻き込む活動は可能だと感じています」と続ける。

グッズ活用で仕事の効率もアップ

本業に、ボランティアにと多忙極める最上さんが、仕事をこなす上で役立っているのが、テレワークのために購入したパソコン周辺機器やガジェットだ。

「毎日少なくとも、5、6本のオンラインミーティングをこなしているのですが、ノートパソコンとひたすら向き合っていると、思った以上に疲れることに気がつきました」と3月以来、少しずつテレワークグッズを取り入れるようになった。

例えば大型のパソコンワイドモニターとワイヤレスキーボード。オンラインミーティングで複数の資料を確認しながら打ち合わせを進めることも多く、ノートパソコンの画面ではとても管理しきれない。ノートパソコンと同期させた巨大モニターを持つことで、より効率的にミーティングをこなせるようになったという。長い日は1日10時間以上パソコンの前に座りっぱなしになる最上さんにとって、ノートパソコンスタンドやタブレットスタンド、グリーンスクリーンなどは、今や手放せないアイテムだ。

テレワークのお役立ちグッズが充実する、最上さんのデスク周り(画像撮影・提供/最上紘太)

テレワークのお役立ちグッズが充実する、最上さんのデスク周り(画像撮影・提供/最上紘太)

最上さんはテレワークが始まったことで、多くの地元の仲間との繋がりが強固になり、葉山生活が充実したと感じている。その様子は東京の仲間にも伝わり、都心から引越ししたいと相談を受けることも増えているのだとか。

「コロナ禍では、いろいろなものが分断されたと言われていますが、地域のまとまりや、新たな繋がりが生まれつつあると実感しています」(最上さん)

このコロナ禍を通じてテレワークが定着した人も多い。今後このような人たちがプライベートを充実させ、仕事でもさらに活躍することで、その魅力はどんどん波及していくに違いない。一瞬欲張りに映る生活だが、これからの「ニューノーマル」になる、取材を通じてそんな期待が思わず膨らんだ。

●取材協力
・一般社団法人スポーツを止めるな