住宅購入者の関心が高いワードはやはり【フラット35】、「住宅ローン減税」!購入時に知るべき制度も解説

リクルートが「『住宅購入・建築検討者』調査(2022年)」を公表した。この調査では、住宅の購入や建築を検討するうえで、知っておきたい制度などについての理解・関心度も聞いている。その結果、理解・関心度の高いワードの多くが、住宅ローンや減税に関するものだということが分かった。

【今週の住活トピック】
「住宅購入・建築検討者」調査(2022年度)公表/リクルート

住宅購入・建築検討者は一戸建て派が多数を占める

調査は、首都圏、東海圏、関西圏の三大都市圏と政令指定都市のうち札幌市、仙台市、広島市、福岡市に住む、20歳から69歳の男女で、過去1年以内に住宅の購入・建築、リフォームについて具体的に検討した人を対象に行われた。

検討している住宅の種別(複数回答)は、「注文住宅」が過半数の56%で、「新築一戸建て」32%、「中古一戸建て」29%、「新築マンション」32%、「中古マンション」26%、「(現在住む家の)リフォーム」15%となっている。「一戸建てか、マンションか」を聞く(単一回答)と、「ぜったい」と「どちらかといえば」の合計で、「一戸建て派」が63%、「マンション派」が22%と、一戸建て派が多数を占める結果となった。

また、検討している物件に、「永住する」と考えているのは45%、「将来的に売却を検討している」のは24%、「将来的に賃借を検討している」のは5%だった。

過半数が名前も内容も知っている、【フラット35】、「リノベーション」、「住宅ローン減税」

この調査では、「税制・優遇制度などへの理解・関心」について、詳しく聞いている。聞いた税制・優遇制度は、「今後創設予定の税制・優遇制度」、「住宅購入に関する税制・優遇制度」、「住宅購入に関する金利・補助金」、「物件の構造・仕様、取引、他に関するもの」に大別され、それぞれ複数項目を聞いている。

その項目の中で、「言葉も内容も知っている」と回答した割合(以降は、「認知度」と表記)の多いものを挙げてみよう。

■認知度の高い項目(上位10項目)

順位制度名等認知度1【フラット35】75%2リノベーション63%3住宅ローン減税※56%4【フラット35 S】46%4空き家バンク46%6固定資産税の減額措置45%6スマートハウス45%8贈与税の特例42%9認定長期優良住宅41%10住宅リフォームの減税制度40%※住宅ローン減税については、さらに細かく聞いているが、順位としては省略した。
リクルート『住宅購入・建築検討者』調査(2022年度)を基に筆者が作成

認知度の上位には、住宅ローンと減税に関するものが多く入っているのが目立つ。ローンと税金は多くの人に関係するだけに、認知度が高くなっているのだろう。ちなみに、認知度が低かったのは、「BELS」(23%)や「安心R住宅」(25%)だった。

【フラット35】と「住宅ローン減税」のどこまで知っている?

この調査では、回答者に対して言葉とその内容について説明文を提示し、そのうえで、知っているかどうか聞いている。その説明について、紹介しておこう。

まず、1位の【フラット35】と4位の【フラット35 S】。

【フラット35】全期間固定金利の住宅ローンである【フラット35】において、2023年4月よりすべての住宅について、省エネ基準への適合を求める制度の見直しが行われる。【フラット35 S】一定の基準を満たした住宅を取得する場合、一般の住宅より金利を引き下げる制度。

住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して提供する【フラット35】だが、ポイントは、2023年4月以降は省エネ基準に適合していないと利用できないことだ。金利を引き下げる優遇制度である【フラット35 S】は、すでにZEHなど省エネ性の高い住宅ほど金利が優遇される仕組みに変わっている。

2位の「住宅ローン減税」については、「返済期間10年以上の住宅ローンを利用して住宅を購入した場合に、住宅ローン残高の0.7%を所得税等から控除」と概要を説明しており、認知度は56%になっている。実は、調査ではさらに細かく聞いている。

【住宅ローン減税×環境性能】環境性能の優れた住宅では、減税の対象となる借入限度額が上乗せになる。【住宅ローン減税×中古OK】新耐震基準適合住宅(1982年以降に建築された住宅と定義)であれば、住宅ローン減税が適用される。【住宅ローン減税×増改築OK】自宅の増改築でも基準を満たせば、住宅ローン減税が適用される。【住宅ローン減税×新築床面積】2023年末までに建築確認を受けた新築住宅であれば、床面積が40平米以上50平米未満でも適用される。(それより以前は床面積50平米以上で適用対象)【住宅ローン減税×耐震改修】新耐震基準を満たさない中古でも、取得後一定期間内に耐震改修して基準を満たせば、住宅ローンが適用される。

いずれについても、認知度は46%~51%と高く、住宅ローン減税については細かい適用条件まで理解している人が多いことがわかる。

リノベーションなど認知度の高いワードを再確認

以下、上位に挙がった項目について、説明していこう。

リノベーション既存の建物に大規模な改修工事を行い、用途や機能を変更して性能を向上させたり付加価値を与えること。空き家バンク地方自治体が、空き家の賃貸・売却を希望する所有者から提供された情報を集約し、空き家をこれから利用・活用したい方に紹介する制度。空き家対策の一つとして注目されている。固定資産税の減額措置2024年3月末までに新築住宅を取得した場合、固定資産税が3年間(マンション等の場合は5年間)、2分の1に減額される。スマートハウス太陽光発電システムや蓄電池などのエネルギー機器、家電、住宅機器などをコントロールし、エネルギーマネジメントを行うことで、家庭内におけるエネルギー消費を最適化する住宅。贈与税の特例住宅取得等資金として、子や孫が親や祖父母から贈与を受ける場合、通常の住宅で500万円、省エネ等住宅で1000万円まで贈与税が非課税になる。認定長期優良住宅耐震、省エネ、耐久性などに優れた住宅である長期優良住宅と認定されると、所得税、登録免許税、不動産取得税、固定資産税が軽減される。(住宅ローン減税では借入限度額が上乗せされる)住宅リフォームの減税制度耐震改修、バリアフリー対応、省エネ対応、三世代同居対応、長期優良住宅化対応の工事を行うと所得税等の控除がある。リクルート『住宅購入・建築検討者』調査(2022年度)を基に筆者が作成

少し補足説明をしておこう。
「リノベーション」については明確な定義がないのだが、住宅業界では一般的に、劣化した部分を建築当時の水準に改修するだけでなく、今の生活に合うように機能を引き上げる改修を行うことをいう。そのため、大規模な改修工事になることが多い。

「空き家バンク」は、かつては自治体ごとに公開しているホームページを見に行くしかなく、使いづらいものだったが、いまは民間の不動産ポータルサイトによって統一した内容で全国の空き家が探せるようになっている。

「スマートハウス」は、一般的にHEMS (home energy management system) と呼ばれる住宅のエネルギー管理システムで、家庭の電気などのエネルギーを一元的に管理する住宅のこと。IT技術を活用した住宅としてはほかに、IoT住宅(アイオーティー住宅。インターネットで住宅設備や家電などをつなげてコントロールできる住宅)などもある。IT技術によって、今後も多くのものがホームネットワークでつながり、安心安全や健康などの住生活の向上も期待されている。

ほかは、主に減税に関する項目が上位に挙がった。いずれも期限付きの減税制度となっている。期限がくると延長されるか、縮小されるか、終了するかになるので、注意が必要だ。

知っておきたい「新築住宅の省エネ基準適合義務化」と「インスペクション」

最後に、認知度が高くはなかったが、知っておきたい項目について紹介したい。それは「2025年新築住宅の省エネ基準適合義務化」(26%)と「インスペクション(建物状況調査)」(32%)だ。

新築住宅、特に一戸建てのような小規模な建築物にも、省エネ基準への適合が義務化されることになっている。適合義務化は、2030年までにZEH水準まで引き上げる予定となっている。こうした新築住宅への義務化によって、既存の住宅と省エネ性能に開きができる点も押さえておきたい。

「インスペクション」(32%)はもっと認知度が高いと思っていたので、少し意外に思った。中古住宅の売買において、宅地建物取引業者は、建物状況調査の事業者をあっせんするかどうかや、対象の住宅が建物状況調査を行っているかどうかなどを伝えることになっている。建物の状態はしっかり把握しておきたいものなので、認知度が上がることを期待したい。

さて、説明文が簡単に記載されていたとしても、「言葉も内容も知っている」というレベルは人それぞれだろう。何となく分かっているというレベルから、適用条件や期限まで正確に把握しているレベルまでさまざまある。実際に制度を利用しようとするときには、正確に理解していることが求められるので、この機会にぜひ各制度への理解を深めてほしい。

●関連サイト
リクルート「住宅購入・建築検討者」調査(2022年度)

首都圏の住宅流通市場、昨年は価格は上昇&成約は減少と硬直気味。2023年はどうなる?

2023年に入って、2022年の住宅市場の動向が相次いで公表された。そこで今回は、東日本不動産流通機構(通称:東日本レインズ)の首都圏の流通市場の動向について見ていくことにしよう。ポイントは、価格の上昇と成約件数の減少だ。

【今週の住活トピック】
「首都圏不動産流通市場の動向(2022年)」を発表/(公財)東日本不動産流通機構

住宅の流通市場が分かるレインズとは?

住宅の流通市場を見るのによく利用されるのが、レインズだ。レインズ(REINS)とは、「Real Estate Information Network System(不動産流通標準情報システム)」の略称で、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムのことだ。一定の媒介契約を結んで不動産を仲介する事業者は、このネットワークを通じて、物件情報を共有することが義務づけられている。

不動産流通機構は、現在全国で4つ(東日本地区、中部圏、近畿圏、西日本地区)あり、不動産の売買物件と賃貸物件を扱っている。今回は、売買物件について動向を見ていこう。なお、東日本を担当しているのが東日本不動産流通機構で、主に首都圏の不動産取引の情報を公開している。

首都圏の2022年の流通市場、前年より成約件数が減少し、価格は上昇

では、2022年の首都圏の流通市場の動向を見ていこう。ここでいう「成約物件」とは、指定流通機構に契約が成立したと報告された物件(いわゆる、契約済み物件)のことで、「新規登録物件」とは、新たに指定流通機構に登録された物件(いわゆる、新規売り出し物件)のことだ。

東日本不動産流通機構が公表した、中古マンションの成約物件の状況を見ると、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年には、外出自粛が求められたこともあって一時的に取引が縮小したものの、底固い住宅需要があり、成約件数が2019年より微減にとどまった。2021年には、コロナ禍でリモートワークが普及した影響を受けるなどで、住宅需要が拡大し、成約件数はコロナ前の2019年より増加した。withコロナが続く2022年には住宅需要が落ち着きを見せ、成約件数は2020年同様となった。

一方で、平米単価や価格は年々上昇し、2022年には上昇幅が大きくなっている。平均の専有面積が若干小さくなり、築年数がより古くなっているにもかかわらずだ。

中古一戸建ても、似たような傾向が見られる。成約件数は、2020年で落ち込みはないものの、2021年で増加し、2022年には元に戻る動きを見せている。土地や建物の面積や築年数に大きな変化はないものの、価格は上昇を続けている。

首都圏の流通市場の動向(2022年)

*2021年より、戸建住宅・土地の用途地域が未設定・無指定の物件について集計対象から除外する等の集計条件の変更を行っている。
出典:東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2022年)」より抜粋

コロナ禍で新規登録件数は減少するが、中古マンションでは2022年に上場に転じる

次に、首都圏の新規登録物件の動向を見ていこう。新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年以降、売却活動のために自宅に人を入れたくないからか、コロナ禍なので住宅の売り時でないと判断したからか、自宅を売りに出す人が減ったことで、新規登録件数が減少している。ただし、中古マンションでは、2022年に新規登録件数が増加に転じている。

一方、売り出し価格は、2021年・2022年でかなり強気の値付けをしている。これは、今売る理由がある人だけでなく、中古マンションの価格が上昇していることが報じられたことから、高く売れるなら売ろうという人が多くいたと考えられる。

首都圏の流通市場の動向(2022年)

**2022年より、新規登録の集計範囲を変更(媒介契約更新や登録期間延長を除く新たな登録のみに絞って計上)している。
なお、これまでと同じ基準での比較が困難であるため、前年比を「-」と記載している。
出典:東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2022年)」より抜粋

住宅を買う人の数は安定しているのに、売る人が少ないとなると、市場全体で流通する物件数が減っていく。実際に、東日本不動産流通機構の「月例マーケットウォッチ」で各年の12月末の在庫物件数の推移を追ってみると、次のようになった。

■中古マンションの在庫物件数(首都圏)
2019年末   2020年末   2021年末   2022年末
47,051戸 → 38,173戸 → 35,718戸 → 41,665戸
■中古一戸建ての在庫物件数(首都圏)
2019年末   2020年末   2021年末   2022年末
22,764戸 → 17,921戸 → 13,157戸 → 14,754戸

2021年12月末時点までは急速に市場の在庫物件数が減少してしまったが、2022年に新規登録物件数が増えたり、在庫がだぶついたりして、在庫物件数が増加に転じる形となった。特に、中古マンションでは2022年に在庫物件数が急激に増えている。

では、2023年の住宅流通市場はどうなる?

在庫不足が価格を押し上げる要因になったという側面もあるが、流通市場の在庫物件数は戻りつつある。一方で、成約件数は減少している。これは、コロナ禍で生じた住宅需要による住み替え、たとえばより広い住宅へまたは遮音性や省エネ性などのより性能の高い住宅へという住み替えが、一段落したという見方もできれば、買う側と売る側の希望条件や希望価格が折り合っていないという見方もできるだろう。

特に中古マンションでは、価格の上昇が長く続き、好条件の中古マンションに手が出にくいという市況にもなっている。2023年は在庫も増えていることから、価格調整局面に入ると考えられる。中古マンションの価格に落ち着きが見えれば、中古一戸建ての価格も落ち着いていくだろう。

気になるのは、住宅ローンの金利動向だ。日本銀行が長期金利の上限を0.25%程度から0.5%程度に引き上げる金融緩和策の修正をして以降、金融市場の長期金利に連動する【フラット35】や長期間金利を固定する住宅ローンの金利がじわじわと上がっている。

住宅ローンの金利が上昇すると、ローンの借入可能額が減ってしまったり、毎月の返済額が多くなったりするので、買う側に大きな影響を与える。国際的に不動産投資市場を見ると日本の住宅は割安に見えるので、マンションはまだ影響が小さいものの、マイホームとして買われる一戸建てはローンの金利動向の影響を受けやすい。

今はまだ住宅ローンの金利に大きな変動はないが、今後の景気動向や日本銀行の方針変更などによって、金利が大きく動き出すと、駆け込み需要が起きて価格がさらに上昇したり、急速に市場が冷え込んだりといった事態も想定できる。

2023年は、住宅ローンは超低金利、住宅価格は上昇トレンドといった、これまで通りの状況が続くと考えない方がよいだろう。2023年に住宅を買うなら、あわてないように希望条件を明確にしておき、金利上昇を踏まえた無理のない資金計画を立てることが大切だ。2023年に売る気なら、流通市場の相場をデータなどでよく理解して、適正な価格で売り出すことが大切だ。

●関連サイト
(公財)東日本不動産流通機構「首都圏不動産流通市場の動向(2022年)」

コロナ禍で住まい選びのオンライン化進む。売買・賃貸契約、住宅購入はどう変わる?

新型コロナウイルスの影響によって仕事や買い物など、さまざまな場面で「新しい生活様式」が広がりつつある。バーチャル画面を使ったモデルルーム見学やオンラインによる住まい選びセミナーなど、住まい選びにもそうした新しい動きが出始めているようだ。国や業界の対応、各企業の現状を取材した。
賃貸取引に続き売買取引でもIT重説の社会実験スタート

不動産業界では国が音頭をとり、コロナ以前から「重説のIT化」が進められていた。重説とは重要事項説明のことで、宅地建物取引業法では賃貸や売買の契約時に宅地建物取引士による説明が義務付けられている。

これまでは重要事項説明書という書面を使い、借主や買主に対して対面で重説が行われてきた。それがコロナ禍をきっかけに、IT化、つまりオンラインによるリモート化が一気に進みそうな状況なのだ。

重説のIT化はまず、賃貸取引で始まった。2015年8月から2017年1月まで、賃貸取引と法人間売買取引について社会実験が行われ、事前に登録した不動産会社が実際の業務でテレビ会議システムなどによる重説を実施。2017年10月からは賃貸取引での本格運用がスタートし、すべての不動産会社がIT重説を実施できるようになっている。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

さらに2019年10月からは、個人を含む売買取引についても社会実験が開始された。賃貸取引と同様に事前登録した不動産会社が実験に参加する形で、2020年9月30日まで実施される予定だ。参加事業者の募集は当初は2020年5月中旬までの予定だったが、コロナ禍を受けて門戸を広げる意味で当面の間延長されることとなった。

売買取引でのIT重説では、事前に不動産会社が売主と買主の双方に同意を得る必要がある。買主には重要事項説明書などの資料が郵便などで送付されるので、事前に目を通しておくことが可能だ。IT重説を実施するときには通常の重説と同様に不動産会社側から宅地建物取引士証が提示され、説明の様子が録画・録音される。また説明後は買主にもアンケート調査が行われ、国土交通省に提出することになっている。

社会実験に参加している不動産会社は売主の同意があれば、物件広告にIT重説が可能なことをPRでき、国が指定したロゴマークも表示できる。IT重説が受けられる物件かどうか知りたい場合は、ロゴマークで確認するといいだろう。

売買取引の社会実験に登録している不動産会社は、2020年5月29日時点で475社となっており、今後も増えることが予測される。また賃貸取引については重要事項説明書などの書面を電子化する社会実験も2019年に実施された。今後も重説のIT化が進めば、自宅に居ながら簡単に住まいの契約がしやすくなりそうだ。

国や業界団体が感染予防対策のガイドラインを策定

重説のIT化が進められる一方で、不動産・住宅業界ではコロナ禍に対応した新しい接客方法などを模索する動きも出ている。緊急事態宣言の期間中は営業を自粛する店舗やモデルルームも多かったが、宣言が解除されたことで徐々に営業が再開され、客足も戻りつつあるようだ。

そんななか、国土交通省は不動産業界向けに感染予防対策ガイドラインを作成した。従業員の健康確保やテレワーク・時差出勤などの検討、勤務中のマスク着用の推奨といった基本的な対策をまとめたものだ。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

店舗などでの接客については、来店やモデルルームへの来場はできる限り予約制とし、少人数での来店・来場を依頼するとしている。また仲介時の売買活動に関する報告は、対面ではなく電話などでも可能とするといった内容だ。

住宅業界の団体である住宅生産団体連合会も同様に、住宅業界向けの感染予防ガイドラインを策定。顧客との打ち合わせや商談はできる限り電話やメール、オンラインで行い、対面で行う場合はできる限り2m(最低1m)の間隔をとり、お茶などはペットボトルや紙コップで出すといったきめ細かな対策をまとめている。

不動産・住宅業界では感染予防に注意を払いつつ、早期の景気回復や市場活性化に向けた経済対策を自治体や国に要望しているところだ。

VRでの住まいづくりが体験できるセットが好評

住宅メーカーやリフォーム会社など、個々の企業でもオンラインを活用した対応が進んでいる。どのような対策に取り組んでいるのか、具体例を紹介しよう。

在宅で住まいづくりの相談ができる「おうちで住まいづくり」を4月から展開しているのが積水ハウスだ。希望の日時を予約すると、間取りや土地探し、資金などについて電話やWEBで担当者と相談できる。またVR(バーチャル・リアリティ)を使ってプランニング例などを体験できる「住まいづくり」体験セットを、希望者に無料で送付するサービスも行っている。

「おうちで住まいづくり」(写真提供/積水ハウス)

「おうちで住まいづくり」(写真提供/積水ハウス)

同社によると、住まいづくり体験セットは特に好評で、4月の資料請求は前年比で約2倍、5月はエリアによって5倍以上の引き合いがあったという。またリモートによる相談は当初は申し込みが少なかったが、企業でのリモートワークなどが普及するにつれて徐々に増えてきているそうだ。さらに6月には同社社員の自邸を動画で紹介するコンテンツをHP上で公開したり、今後は営業が分譲地や建売物件をライブ配信するなど、オンラインを活用したサービスを予定している。

リフォームのオンラインセミナー・相談会で集客増

東京・横浜を拠点にリフォームを手がけるスタイル工房では、以前からセミナーや相談会を行っていたが、コロナ禍を受けてオンラインでの対応に力をいれている。これまでは月2回の店舗セミナーでそれぞれ3~4組程度の参加だったが、オンライン化によって月に十数組の申し込みが入っているという。またオンライン相談会も新規の申し込みが月に30件程度と好調だ。

オンライン相談会のイメージ(写真提供/スタイル工房)

オンライン相談会のイメージ(写真提供/スタイル工房)

「オンラインでの打ち合わせやセミナーはお互いに時間調整がしやすく、進めやすいと言えます。また事前に質問事項や要望を整理するなど、しっかり準備して参加されるお客様が多く、こちらからのプラン提案などもスムーズです。ただ、工事の詳細を決める打ち合わせなどは、対面のほうが素材感などを直接感じられてよいという感想も聞かれました」と、同社の担当者は話している。

また現状ならではの要望として、オンライン授業用に子ども部屋をリフォームしたいといった相談もあったという。同社では今後もオンライン化を進め、モデルルームのライブ見学会なども検討しているそうだ。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

このほか、新築マンションでもモデルルーム見学や商談などをオンラインで可能にする取り組みが広がっている。なかには情報収集や見学、契約から引き渡しまで、マンション購入のほぼすべての手続きをオンラインや郵送などでリモート化できるケースもある。

国や業界団体、各企業の取り組みが進むことにより、極力外出しなくても住まい選びが完結できるようになるかもしれない。不動産会社とオンラインで相談や打ち合わせをすれば、対面よりも効率的で内容の濃い話ができる場合もあるだろう。とはいえ、採光や眺望、室内空間や内装の素材、周辺環境などは、実物を見ないとイメージしにくい面はある。アフターコロナ時代には、手続きなど可能な部分はオンラインを活用しつつ、必要に応じて現地を確認することで、間違いのない住まい選びを実現するようにしたい。

●取材協力
積水ハウス
スタイル工房