「SUUMO住みたい街ランキング2024関西版」ビジネス街・本町にファミリー・シングル層ともに急増で店舗も賑わう! なにわ筋線の整備にも期待

「SUUMO住みたい街ランキング2024関西版」では総合13位、得点ジャンプアップしたランキングでは3位に食い込んだのが地下鉄御堂筋線、四つ橋線、中央線の「本町」駅だ。大阪のビジネスの中心地として多くの企業が進出し、オフィス街として捉えられていた本町だが、近年は住みたい街としても注目を集めている。

関西圏で人口増加率が最も高くなっている大阪市中央区

大阪市中央区に立地する本町駅は、地下鉄御堂筋線や四つ橋線で大阪の中心地・キタやミナミとも直結する一方、交差する地下鉄中央線を利用すれば「2025年大阪・関西万博」のアクセスとなる新駅「夢洲」駅とも一本で結ばれるなど、交通アクセスも抜群のエリア。本町駅周辺はオフィスだけでなく文化・娯楽施設や大規模商業施設も充実、御堂筋沿いには高級車やハイブランドのショップが並んでいる。煌びやかで華やかな街といったイメージが強いが、実は別の顔も持っている街だ。
それが「住まう街」としての顔。大阪市中央区は関西2府4県の中で人口増加率、15歳未満の人口増加率がともにナンバー1となっている。小学校の児童数も2011年の2189人から2023年は3854人と急増している。子供を持つファミリー層が急激に増加しているのだ。

中央区の0~14歳の人口

この人口の増加の背景には、本町駅を囲む西区・中央区での住宅供給増加がある。中央区では2019年から2023年の間に約6000戸の新築分譲マンション供給があった。古いオフィスビルなどが建て替えられマンションに生まれ変わっている姿をあちこちでみることができる。住宅供給に伴い人口増も見込めることから、コンパクトなスーパーやベーカリー、ドラッグストアなど毎日の生活に必要な店舗の出店も相次いでいる。
魅力的な企業が存在し働く場としての魅力を持つ街に、住まう場としての選択肢・住宅が提供されることで、若い世代を含めて多くの人たちから注目を集めているのだ。「2024住みたい街ランキング関西版」で本町を選択した人たちの理由としても「仕事のできる施設がある」、「不動産の資産価値が高そう」、「魅力的な働く場や企業がある」といったポイントが上位に挙げられている。

大阪市中央区一戸建て・分譲マンション戸数

子どもの教育環境整備が進められ、市内には公立小中一貫校を新設

人口が増加、特に15歳以下人口が増えている大阪市中心部では、市による子育て支援施策が行われている。中でも、保育所等を利用したくても利用できない待機児童の解消と小学校活性化に着目したい。
以前の大阪市では待機児童の数が多く、平成24年(2012年)地点で抱えている待機児童の数が600人を超えていた。そこで市は、待機児童を含む利用保留児童の解消を最重要施策として位置づけ、待機児童解消特別チームを立ち上げ、さまざまな施策を組み合わせながら待機児童の解消に取り組んできた。例えば、保育所の入所枠拡大や保育の無償化だ。民間のマンションにも保育所を併設した物件が設置されている。現在も「大阪市こども・子育て支援計画(第2期)」が実施中で、医療費の助成や保育料無償化の年齢層の拡大などが進んでいる。
また急増する児童・生徒対策として本町エリアからも近い北区中之島に「中之島小中一貫校」が2024年4月に開校される。北区中之島と堂島の児童は就学可能で、その他の市内エリアからも抽選ではあるが入学が可能。本町エリアである中央区、西区には小中一貫校はまだ存在していないため、今後の計画に期待したい。

中之島小中一貫校

中之島小中一貫校

建設工事が進められている「中之島小中一貫校」(写真撮影:井村幸治)

人口増加にあわせ、商業施設の営業スタイルも変化

本町周辺は商都・大阪の中心地でもあり、明治時代からのレトロビルや商業施設が残るエリアでもある。例えば、船場センタービル、通称「せんびる」は1970年に大阪万国博覧会の開催に合わせて建設された合計10棟が東西におよそ1000m連なる建物で、地下には地下鉄中央線、地上は中央大通り、上空は市道築港深江線と阪神高速道路が通る特殊な施設だ。平成27年(2015年)の改修工事によって外観を一新し、新たな本町のランドマークとなった。「せんびる」は、オフィスやビジネス来訪者をメインのターゲットとしていたため飲食店街は土日祝は営業しない店が多かった。しかし、住民の増加や集客増加によって飲食ニーズが増えたことで2021年から土日祝日も営業する店鋪がほとんどに。本町周辺のオフィス街の飲食店舗でも、週末営業をする店が増えている。

船場センタービル

船場センタービル

高速道路の高架下にある船場センタービルはファッション関係の小売店や卸売店が多数入居している(写真撮影:井村幸治)

御堂筋沿いでは2019年には大丸心斎橋店がリニューアルオープン、2020年には心斎橋PARCOがオープン。ファッションフロアや日本の伝統やものづくりを感じるフロアだけではなく、ポケモンといった日本のポップカルチャーに特化したフロアを設けることで、老若男女を引き込む場所へと進化を遂げた。さらに、日常的に利用するスーパーやアカチャンホンポの大型店もあるなど、子育てや日常生活にも困ることはないだろう。

中央通り沿いにある「アカチャンホンポ」。商店街は飲食店も多数あり日常生活にも便利な街。すぐそばにはタワーマンションも見える。(写真撮影:井村幸治)

中央通り沿いにある「アカチャンホンポ」。商店街は飲食店も多数あり日常生活にも便利な街。すぐそばにはタワーマンションも見える。(写真撮影:井村幸治)

充実した交通インフラ、なにわ筋線の計画にも注目

現在工事が進められている「なにわ筋線」は、うめきた(大阪)地下駅(2023年春に「大阪駅」として開業)と、JR難波駅および南海本線の新今宮駅をつなぐ新たな鉄道路線。関西高速鉄道が鉄道施設を整備・保有し、JR西日本および南海電鉄が鉄道施設を使用して旅客営業する新路線で2031年春の開業が予定されている。本町エリアには地下鉄中央線と連絡する「西本町駅」が新設予定だ。なにわ筋線の整備により、関西国際空港や新大阪駅へのアクセス性の向上、鉄道ネットワークの強化、大阪の南北都市軸の強化などの効果が図られる。
また、先に述べたように、地下鉄中央線は「2025年大阪・関西万博」会場とも直結する。夢洲はその後、統合型リゾート「大阪IR」が計画されているエリアでもある。こうした交通網の充実により、本町エリアへの注目度はさらに増していく可能性が高いだろう。

本町エリアはすでに住みたい街としての魅力を、充分に高めてきている。これからも、交通網の整備、既存建築物の集約や大規模な再開発によってその集客力や注目度はさらに高まる可能性が高い。今後のランキングの結果にも注目したい。

【梅田駅30分以内】家賃相場が安い駅ランキング2023年。1位は3万円台、兵庫・西宮市の駅

関西随一の繁華街といえば大阪市北区の梅田だろう。大型商業施設が林立し、オフィスビルも多数あるため観光客やビジネスマン、近隣住民など多くの人が日々行き交っている。そんな梅田エリアの中心地、梅田駅周辺のシングル向け賃貸物件(10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DKの物件)の家賃相場は7万2000円。「SUUMO住みたい街ランキング2023 関西版」で2年連続の1位になった人気エリアだけあり、大阪市内でも家賃相場は高額だ。そんな梅田駅までアクセスしやすく、かつ家賃相場がリーズナブルな駅はどこだろう……? 梅田駅まで30分圏内にある、シングル向け賃貸物件の家賃相場が安い駅トップ15を見ていこう。

梅田駅まで電車で30分以内の家賃相場が安い駅TOP15

順位/駅名/家賃相場(主な路線名/駅の所在地/梅田駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 武庫川団地前 3.9万円(阪神武庫川線/兵庫県西宮市/30分/1回)
2位 萱島 4万円(京阪本線/大阪府寝屋川市/21分/1回)
3位 大和田 4.2万円(京阪本線/大阪府門真市/29分/2回)
4位 寝屋川市 4.25万円(京阪本線/大阪府寝屋川市/25分/2回)
5位 四条畷 4.3万円(JR片町線/大阪府大東市/30分/1回)
6位 上新庄 4.5万円(阪急京都本線/大阪府大阪市東淀川区/18分/1回)
6位 瑞光四丁目 4.5万円(大阪メトロ今里筋線/大阪府大阪市東淀川区/29分/1回)
8位 南千里 4.55万円(阪急千里線/大阪府吹田市/30分/2回)
8位 大日 4.55万円(大阪メトロ谷町線/大阪府守口市/24分/0回)
10位 住道 4.6万円(JR片町線/大阪府大東市/26分/1回)
10位 香里園 4.6万円(京阪本線/大阪府寝屋川市/29分/1回)
12位 だいどう豊里 4.7万円(大阪メトロ今里筋線/大阪府大阪市東淀川区/27分/1回)
12位 下新庄 4.7万円(阪急千里線/大阪府大阪市東淀川区/19分/2回)
14位 JR総持寺 4.8万円(JR東海道本線/大阪府茨木市/21分/1回)
15位 相川 4.9万円(阪急京都本線/大阪府大阪市東淀川区/20分/1回)
15位 鴻池新田 4.9万円(JR片町線/大阪府東大阪市/25分/1回)

1位は3万円台! 買い物環境に恵まれた、兵庫県西宮市の駅がランクイン

梅田駅には大阪メトロ御堂筋線が通っているほか、すぐ近くにはJRの大阪駅、阪急電鉄と阪神電鉄の大阪梅田駅、大阪メトロの谷町線・東梅田駅と四つ橋線・西梅田駅、さらにはJR東西線の北新地駅が密集している。今回の調査ではそうした近接駅から梅田駅に徒歩で行くルートも含めて「梅田駅まで30分圏内」にある駅のうち、一人暮らし向け賃貸物件(専有面積10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DK)の家賃相場が安い駅をランキングした。

武庫川団地前駅(写真/PIXTA)

武庫川団地前駅(写真/PIXTA)

調査の結果、1位には阪神武庫川線・武庫川団地前駅が家賃相場3万9000円でランクイン。まず武庫川駅に出てから阪神本線の区間急行に乗り換えて大阪梅田駅まで約26分、そこから徒歩で梅田駅まで約4分なので、所要時間は計約30分だ。武庫川団地前駅は兵庫県西宮市の湾岸部に位置し、駅名通りに駅周辺にはUR賃貸住宅の武庫川団地が広がっている。5000世帯以上が住む大規模団地のため、周辺にはショッピングセンター「メルカードむこがわ」やショッピングモール「ムコダンモール」をはじめ住民の暮らしを支える施設が充実。緑豊かな公園や温泉使用のスーパー銭湯もあり、ご近所で気軽に息抜きできるのも嬉しいところ。駅前からバスに乗れば10分弱で、「ららぽーと甲子園」や「阪神甲子園球場」にも行くことができる。

阪神甲子園球場(写真/PIXTA)

阪神甲子園球場(写真/PIXTA)

2位は大阪府寝屋川市にある京阪本線・萱島(かやしま)駅で、家賃相場は4万円。京阪本線の通勤準急で淀屋橋駅に向かい、大阪メトロ御堂筋線に乗り換えると計約21分で梅田駅に到着する。高架駅である萱島駅は、ホーム床と屋根を突き抜いて樹齢約700年のクスノキの大木がそびえていることで知られている。駅にはお惣菜や持ち帰り握り寿司、こだわりのパンなどを扱う駅ナカ商店「もより市」が併設され、高架下には100円ショップやドラッグストア、飲食店が並ぶ商店街「エル萱島」「エル萱島東」がある。駅前にも飲食店が点在し、徒歩10分圏内にスーパーが複数。また、タイムスリップしたような昭和レトロな雰囲気が残る「京阪トップ商店街」も、住むからには一度は訪問しておきたい。駅から東に自転車で10分ほど進むと、ファッションや家電のショップから飲食店街に映画館まで備えた「イオンモール四條畷」があるのも便利だろう。

3位は大阪府門真市にある京阪本線・大和田駅で、家賃相場は4万2000円。2位にランクインした萱島駅の隣駅だが、大和田駅には通勤準急が停車しないため淀屋橋駅まで最短で行くには京阪本線の普通列車と準急を乗り継ぐ。そこから大阪メトロ御堂筋線に乗るため、梅田駅までは乗り換え2回・所要時間は約29分となる。とはいえ大和田駅から区間急行1本で淀屋橋駅に向かってから大阪メトロ御堂筋線に乗る「乗り換え1回」のルートでも、梅田駅まで計約32分だ。大和田駅の改札内には駅ナカコンビニがあるほか、高架下がドラッグストアや100円ショップ、飲食店が並ぶ商店街「エル大和田」になっている。駅の北側にも南側にも複数のスーパーがあるほか、駅から南へ徒歩13分ほどの国道163号沿いには家電量販店やホームセンターも。映画館を備えた「イオンモール大日」と産直市場やクリニックもある「ベアーズ」という2つのショッピングモールが隣接する8位・大日駅前にも、自転車なら大和田駅から13分ほどでたどり着く。

家賃相場の安さに加え、梅田駅までの所要時間や電車賃もチェック!

6位には家賃相場が同額の4万5000円で2つの駅がランクイン。そのうち阪急京都本線・上新庄駅は梅田駅までの所要時間が、トップ15で最短の約18分だった。まず3駅隣の南方駅に出て、そこから徒歩で西中島南方駅へ。そして大阪メトロ御堂筋線に乗ると2駅目が梅田駅だ。乗り換え駅の西中島南方駅から梅田とは逆方面に進むと、1駅目が東海道新幹線も通る新大阪駅というのも便利なところ。また、上新庄駅から阪急京都本線1本でも大阪梅田駅まで約15分、そこから徒歩約8分の梅田駅までは計約23分で行くことが可能だ。

そんな6位・上新庄駅は大阪市東淀川区に位置し、同じく6位になった大阪メトロ今里筋線・瑞光四丁目駅までは歩いて15分ほど。生活圏がかぶっているので家賃相場が同額なのも納得だろう。上新庄駅は北と南に出口があり、特に駅南側には多くの飲食店が建ち並んでいる。にぎやかな繁華街がある一方で、スーパーや家電量販店、住宅も駅近くにあるので、日常生活圏内であれこれと食べ歩きが楽しめそうだ。

大日駅(写真/PIXTA)

大日駅(写真/PIXTA)

トップ15で唯一、梅田駅まで「乗り換え0回」となったのは、8位にランクインした大阪メトロ谷町線・大日駅だ。乗り換え0回だが大阪メトロ谷町線は梅田駅に乗り入れていないため、大日駅より約19分の東梅田駅で降りてから徒歩約5分の梅田駅に向かうルートを通って、所要時間は計約24分・乗り換え0回との結果になっている。この大日駅は大阪府守口市に位置し、家賃相場は4万5500円。前出の3位・大和田駅の紹介部分で述べたように、駅前には映画館を備えた「イオンモール大日」と産直市場やクリニックもある「ベアーズ」という2つのショッピングモールがある便利な環境。駅西側には市水道局の浄水場やパナソニック系列企業の敷地が広範囲な面積を占めており、住宅地は主に駅の東側に。駅から北に10分少々歩くと淀川の河川敷が広がり、気軽に自然に親しめる環境でもある。

住道駅(写真/PIXTA)

住道駅(写真/PIXTA)

トップ15からもう1駅、10位にランクインしたJR片町線・住道(すみのどう)駅をピックアップしよう。この駅で注目したい点は、梅田駅までの電車賃がトップ15で最安の230円というところ。交通費が支給される会社員だと電車賃はあまり気にならないだろうが、会社は別の場所だけれど梅田に通いやすい場所に住みたい人や交通費も自腹の学生などにとっては電車賃も見逃せないもの。たとえば香里園駅の家賃相場は住道駅と同じ4万6000円だが、所要時間約29分・乗り換え1回で梅田駅に向かうルートの場合の電車賃は540円。住道駅~梅田駅の230円に比べて2倍以上もかかり、何度も梅田駅に通うならばジワジワと懐に響いてくるはず。住まいを探す際に、よく使うルートの交通費にも気を付けたほうがよさそうだ。

さて、10位・住道駅から梅田駅に230円で向かうルートを確認しておこう。まずJR片町線快速で京橋駅に行き、JR大阪環状線(内回り)で大阪駅へ。そこから歩いて梅田駅に向かうと計約26分で到着する。そんな住道駅は大阪府大東市に位置し、大東市役所の最寄り駅でもある。駅周辺には市民会館や、中央図書館と文化ホールを備えた市立総合文化センターも。駅に直結してショッピングセンター「アルビ住道」があり、ベーカリーや惣菜店、スイーツ店やスーパーなどのグルメ関係の店舗をはじめ、ドラッグストアや衣料品店「しまむら」も館内に並ぶ。駅の南側には市立の小中学校や公園があり、その先が住宅街。駅北側は寝屋川と恩智川の合流地点となっており、駅前広場から続く大橋を渡った先には京阪百貨店と約100の専門店からなる「ポップタウン住道オペラパーク」が広がる。敷地内にはファッション関係から生活用品、食品関係の店舗からレストランまで揃っているので、遠出しなくても買い物や食事が楽しめるだろう。

17位~28位

●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている梅田駅まで電車で30分以内の駅(掲載物件が20件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ抽出期間】2022/12~2023/6
【家賃の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンションのうち普通借家契約の物件のみ)の管理費を含む月額賃料から中央値を算出(3万円~18万円で設定)
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、朝7時30分~9時の検索結果から算出(2021年3月31日時点)。所要時間は該当時間帯で一番早いものを表示(乗換時間を含む)
※記載の分数は、駅内および、駅間の徒歩移動分数を含む
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が2回までの駅を掲載

【梅田駅30分以内】中古マンション価格相場が安い駅ランキング2023年。TOP3に2000万円以下で乗り換え0回の駅も!

「SUUMO住みたい街ランキング2023 関西版」で、2年連続で1位に輝いた梅田駅。関西随一のビジネス・商業の拠点といえる繁華街としてだけでなく、近年は“暮らす街”としても注目を高めている。とはいえ梅田駅周辺にあるカップル・ファミリー向け中古マンション(専有面積50平米以上~80平米未満)は、価格相場が5980万円と高額。そこで、便利な梅田にアクセスしやすくて物件価格はリーズナブルな街を調査! 梅田駅まで30分圏内にある、中古マンションの価格相場が安い駅トップ15をチェックしよう。

梅田駅まで電車で30分以内の中古マンション価格相場が安い駅TOP15

順位/駅名/家賃相場(主な路線名/駅の所在地/梅田駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 萱島 1930万円(京阪本線/大阪府寝屋川市/21分/1回)
2位 大和田 1980万円(京阪本線/大阪府門真市/29分/2回)
3位 園田 1989万円(阪急神戸本線/兵庫県尼崎市/19分/0回)
4位 北伊丹 2030万円(JR福知山線/兵庫県伊丹市/26分/1回)
5位 出来島 2080万円(阪神なんば線/大阪府大阪市西淀川区/22分/1回)
5位 加美 2080万円(JR関西本線/大阪府大阪市平野区/28分/1回)
5位 千船 2080万円(阪神本線/大阪府大阪市西淀川区/13分/0回)
8位 福 2120万円(阪神なんば線/大阪府大阪市西淀川区/23分/1回)
9位 岸里 2180万円(大阪メトロ四つ橋線/大阪府大阪市西成区/15分/1回)
10位 花園町 2190万円(大阪メトロ四つ橋線/大阪府大阪市西成区/14分/1回)
11位 七道 2280万円(南海本線/大阪府堺市堺区/30分/1回)
12位 住之江公園 2290万円(大阪メトロ四つ橋線/大阪府大阪市住之江区/23分/1回)
13位 古川橋 2335万円(京阪本線/大阪府門真市/27分/2回)
14位 徳庵 2380万円(JR片町線/大阪府東大阪市/23分/1回)
15位 岸里玉出 2448万円(南海本線/大阪府大阪市西成区/23分/1回)

トップ3は価格相場2000万円以下ながら、梅田まで乗り換え0回の駅も

梅田駅には大阪メトロ御堂筋線が通っているほか、すぐ近くにはJRの大阪駅、阪急電鉄と阪神電鉄の大阪梅田駅、大阪メトロの谷町線・東梅田駅と四つ橋線・西梅田駅、さらにはJR東西線の北新地駅が密集している。今回の調査ではそうした近接駅から梅田駅に徒歩で行くルートも含めて「梅田駅まで30分圏内」にある駅のうち、中古マンション(専有面積50平米以上~80平米未満)の価格相場が安い駅をランキングした。例えば、ランキング3位になった園田駅の場合、阪急神戸本線で大阪梅田駅まで約11分、そこから徒歩で梅田駅まで約8分なので所要時間は約19分(乗り換え0回)としている。

そうして調査した結果、1位には大阪府寝屋川市にある京阪本線・萱島(かやしま)駅が、価格相場1930万円でランクイン。まず京阪本線の通勤準急で淀屋橋駅に向かい、大阪メトロ御堂筋線に乗り継ぐと計約21分で梅田駅にたどり着く。寝屋川をまたぐように立つこの駅は、一見すると普通の駅だけれど大阪方面行きのホームに大きな特徴がある。それは高架駅のホーム床と屋根を突き抜いて、樹齢約700年のクスノキの大木がそびえていること。駅の高架下にたたずむ「萱島神社」のご神木であるクスノキを保存するため、このような変わった造りの駅になったそう。

萱島駅(写真/PIXTA)

萱島駅(写真/PIXTA)

そんな萱島駅は、お惣菜や持ち帰り握り寿司、こだわりのパンなどを扱う駅ナカ商店「もより市」を併設。高架下は商店街「エル萱島」「エル萱島東」となっており、100円ショップやドラッグストア、飲食店が並んでいる。駅前にも飲食店が点在し、徒歩10分圏内にスーパーも複数。また、昭和レトロな商店街があることでも知られ、生活感が感じられる街並みだ。駅から東に自転車で10分ほど進むと、ファッションや家電のショップから飲食店街に映画館まで備えた「イオンモール四條畷」があるのも便利だろう。

2位は大阪府門真市にある京阪本線・大和田駅で、価格相場は1980万円。梅田駅まで乗り換え1回で行ける1位・萱島駅の隣駅だが、こちらは乗り換えが2回で梅田駅まで約29分という結果に。これは萱島駅と違って大和田駅には通勤準急が停車しないため。梅田駅に向かう大阪メトロ御堂筋線に接続する淀屋橋駅まで最速で行くには、京阪本線の普通列車と準急を乗り継ぐ必要があるのだ。とはいえ大和田駅から区間急行1本で淀屋橋駅に向かってから大阪メトロ御堂筋線に乗る「乗り換え1回」のルートでも、梅田駅まで計約32分で行くことができる。

大和田駅の改札内には駅ナカコンビニがあるほか、高架下がドラッグストアや100円ショップ、飲食店が並ぶ商店街「エル大和田」になっている点は萱島駅と造りが似ている。線路を挟んで北側にも南側にも複数のスーパーがあり、それぞれ“激安”と評判だったり24時間営業だったりするのも嬉しいところ。駅から南へ徒歩13分ほど、国道163号沿いに向かうと家電量販店やホームセンターが立っている。また、映画館を備えた「イオンモール大日」と産直市場やクリニックもある「ベアーズ」という2つのショッピングモールが隣接する大日駅前にも、自転車なら大和田駅から13分ほどでたどり着く。

3位は阪急神戸本線・園田駅が価格相場1989万円でランクインし、トップ3は2000万円以下という結果になった。園田駅は大阪府内ではなく兵庫県の尼崎市に位置しているが、梅田駅までは約19分の近さ。この所要時間は冒頭で述べたように、園田駅~大阪梅田駅間の4駅・約11分に、大阪梅田駅から梅田駅までの徒歩約8分をプラスしたものだ。なので園田駅から「梅田エリア」までだと体感としては10分ちょっと、といえる。また、「SUUMO住みたい街ランキング2023 関西版」にて梅田駅に次いで2位に選ばれた西宮北口駅まで、阪急神戸本線1本で約9分という点も魅力的だ。

園田駅には駅ビル「園田阪急プラザ」が併設されているが、現在は耐震工事のため閉鎖中。2023年秋以降にリニューアルオープンの予定だそうなので、楽しみに待ちたい。駅の北側には個人商店が連なる商店街が広がるほか、複数のスーパーも。商店街の途中には小学校や保育園もあり、子どものお迎えついでに買い物ができそうだ。駅の南側には飲食店が豊富。さらに南下し、藻川を越えて自転車を7分も走らせると、関西には希少な「コストコ」に加え、「イオンスタイル尼崎」、ホームセンターなど大型店舗が並ぶエリアへ。さらに、園田駅から車で北に15分ほど、電車なら30分ほどで伊丹空港にアクセス可能。日常生活にも遠出の際にも便利なロケーションだ。

駅ビル「園田阪急プラザ」は現在閉鎖中だが、2023年秋以降にリニューアルオープン予定(写真/PIXTA)

駅ビル「園田阪急プラザ」は現在閉鎖中だが、2023年秋以降にリニューアルオープン予定(写真/PIXTA)

梅田まで3駅の駅や、人気の街・なんばにも高アクセスな駅もトップ15入り

続いて4位以下の駅からもピックアップ。トップ15のうち梅田駅までの所要時間が最短だったのは、価格相場2080万円で5位にランクインした阪神本線・千船(ちぶね)駅。阪神本線の区間急行で大阪梅田駅まで3駅・約9分、そこから梅田駅まで歩いて約4分なので所要時間は計約13分だ。

千船駅前(写真/PIXTA)

千船駅前(写真/PIXTA)

5位・千船駅は大阪市西淀川区佃の地名をもつ、神崎川の中州に位置。江戸時代に徳川将軍家に献魚するため、当地から江戸に移住した漁民が開拓したのが東京の佃島なんだとか。そんな歴史があるこの佃の中州は端から端まで歩いても35分ほど。しかし住宅のほかに小・中学校や幼稚園、公園があり、商店もスーパーや100円ショップにドラッグストア、飲食店などが立ち並んでいる。さらに中州の北側を流れる左門殿川、南側を流れる神崎川を渡った場所にはそれぞれスーパーとホームセンターがあり、どちらも駅から歩いて10分ほど。コンパクトな範囲で日常生活が送れそうな環境だ。

トップ15に並ぶ駅の路線を見てみると、京阪本線が1・2位を含めて計3駅ランクインしたほか、大阪メトロ四つ橋線の駅も3駅ある。9位・岸里(きしのさと)駅(価格相場2180万円)、10位・花園町駅(同2190万円)、12位・住之江公園駅(同2290万円)だ。いずれの駅からも、まず大黒町駅に行ってから大阪メトロ御堂筋線に乗り換えると計約14分~23分で梅田駅にたどり着く。

また、この3駅が位置する大阪メトロ四つ橋線に乗って大国町駅で降りずに次の駅に向かうと、各駅から約7分~14分でなんば駅に到着。大阪メトロ千日前線やJR関西本線、阪神なんば線、近鉄けいはんな線、南海本線に乗り換え可能ななんば駅は、「SUUMO住みたい街ランキング2023 関西版」で4位にランクインした人気の街だ。さらに、なんば駅から4駅先は終点の西梅田駅であり、各駅から約13分~23分。西梅田駅は梅田駅とほぼ同じような場所にあるので、岸里駅・花園町駅・住之江公園駅の3駅は人気の街である梅田エリアにもなんばエリアにも、乗り換えずに行ける。

そんな便利な3駅のうち、価格相場が最も安いのは大阪市西成区に位置する9位・岸里駅。地下鉄駅から地上へと2番出口を出ると、そこには西成区役所がある。区役所周辺には税務署や郵便局、市立図書館も。また、地上出口から北に6分ほど歩くと、南海電鉄の南海線・高野線と大阪メトロ堺筋線が通る天下茶屋駅へ。この辺りは駅の密集エリアで、岸里駅の徒歩10分圏内には南海汐見橋線・西天下茶屋駅、阪堺電軌阪堺線の北天下茶屋駅と聖天坂駅も。岸里駅周辺に住むと、行き先に応じてさまざまな駅・路線を使い分けられるのだ。岸里駅近くには安さが自慢のスーパーがあるほか、天下茶屋駅前には個人商店が軒を連ねるアーケード商店街が続いている。岸里駅の西側を流れる木津川を目指して歩くとホームセンターやベビー用品店もあり、日常の買い物は近場で済ませられそうだ。

岸里駅(写真/PIXTA)

岸里駅(写真/PIXTA)

16位~30位

●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている梅田駅まで電車で30分圏内の駅(掲載物件が20件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】
駅徒歩15分圏内、物件価格相場3億円以下、築年数35年未満、敷地権利は所有権のみ
専有面積50平米以上80平米未満
【データ抽出期間】2022/12~2023/6
【物件相場の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された中古マンション価格から中央値を算出
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、朝7時30分~9時の検索結果から算出(2023年6月26日時点)。所要時間は該当時間帯で一番早いものを表示(乗換時間を含む。ランキングに表記しているものより乗り換え回数が少ない経路があっても、所要時間が早い場合はそちらを優先)
※記載の分数は、駅内および、駅間の徒歩移動分数を含む
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が2回までの駅を掲載

要介護者を減らす「儲かる”大東元気でまっせ体操”」って? 95歳も躍動する大阪府大東市の自主サークルの輪

お揃いの白いポロシャツに身を包み、元気よく記念写真に収まるお年を召した方々。彼らは大阪府大東市の赤井地区の公民館に集まった老人会。背筋は伸び、血色も良いその姿から、95歳を筆頭に全員が74歳以上の高齢者とは思えない。実は彼らは、大東市が考案した「大東元気でまっせ体操」の愛好者だ。なにも彼らだけが特別なわけではない。大東市では毎週133箇所の拠点で、高齢者が自主的に集い、この体操を行っている。17年以上続くこの取り組みにより、まちに変化が生まれたという。どのように変化を遂げたのか、現地へ足を運んでみた。

体操が生まれたきっかけは、増え続ける高齢者の介護サービス

介護保険制度が始まったのは2000年。その数年後には、大東市でも介護や支援が必要な高齢者が急増した。特に増加したのは介護の必要度が低い「要支援者」。「重度の要介護者の増加率はそれほどでもなかったですが、軽度の要支援者数が急増していることに疑問を感じました」と振り返るのは、当時大東市のリハビリテーション課に勤務していた逢坂伸子さん(現・大東市保健医療部高齢介護室課長)

市役所前で「大東元気でまっせ体操」を披露してくれた逢坂さん。全国に先駆けリハビリ専門員を雇い、誰もが住みやすいまちを目指す大東市の姿勢に共感しこの仕事に就いた(写真/藤川満)

市役所前で「大東元気でまっせ体操」を披露してくれた逢坂さん。全国に先駆けリハビリ専門員を雇い、誰もが住みやすいまちを目指す大東市の姿勢に共感しこの仕事に就いた(写真/藤川満)

2003年ごろ、逢坂さんは増え続ける要支援者の相談を受けるうちに、あることに気付いた。「相談者の身体の不具合の原因は、ほとんどが不活発な生活による筋力低下ということが分かりました」。そこで理学療法士の資格をもつ逢坂さんは、運動指導員と共に、主に下半身の筋力強化に繋がる体操を考案する。2005年、単に負荷を与えるだけでなく、脳のトレーニングにも繋がる動きも加え、「楽しさ」を重視した「大東元気でまっせ体操」が誕生する。

筋力強化に必要なのは、継続して取り組むこと。現在は全国各地で類似の体操はあるものの、大東市のように毎週市内各所で、高齢者のグループが自主的に取り組んでいるところは、少なくほぼない。「年一回程度のイベントなどで体操を教えても続かない、というのは過去の事例からも分かっていました」と逢坂さん。

そこで逢坂さんは、高齢者が集う特殊詐欺防止セミナーやカラオケ大会など、およそ200回の地域の集いに出向き、こう説いた。「今の不活発な生活のままでは、将来必ず介護サービスを受ける。すると年間数十万の出費になります。この体操を続ければその出費がなくなり、浮いた分でハワイ旅行に充てることもできます」。つまり「健康でいること」=「儲かる」と強調したことで、高齢者の目の色が変わった。「皆さんお金には興味があるのです(笑)」と逢坂さんも笑う。この提案が功を奏し、参加団体はみるみる増えていき、2022年の時点で、その数は133にものぼっている。

その効果は統計にも表れた。かつて約1100人いた市内の介護予防サービス利用者は、2018年度末には約300人に激減。現在もその数は減り続けているという。またこの体操に取り組む高齢者は、およそ3000人。大東市の高齢者人口の約10%にものぼっている。

各地域のグループは福祉委員会や老人会が中心になっている。赤井自治会老人会では年に一度市内の体操グループが集まる交流会への参加を機に揃いのポロシャツを作った(写真/藤川満)

各地域のグループは福祉委員会や老人会が中心になっている。赤井自治会老人会では年に一度市内の体操グループが集まる交流会への参加を機に揃いのポロシャツを作った(写真/藤川満)

体操を続けることで交流が生まれ、地域も元気になっていく

大東元気でまっせ体操に、15年前の誕生当時から取り組んでいる赤井自治会の老人会。毎週土曜日10時に公民館に20人以上が集まり、モニターの前で身体を動かす。体操は椅子に座って身体を伸ばす「座位ストレッチ」に始まり、立って行う「立位体操」、床に横になる「臥位体操」など6つのプログラム、約40分の構成だ。実際にやってみると、ぽかぽかと身体が温まり、空腹を覚えるほどカロリー消費を実感する。

出席者はまず血圧を測って記入する。健康状態の観察と出席簿の両方を兼ねている(写真/藤川満)

出席者はまず血圧を測って記入する。健康状態の観察と出席簿の両方を兼ねている(写真/藤川満)

この日の参加者の最高齢者は高橋シナヱさん95歳。「元気でいられるのは、この体操のおかげ」と、かくしゃくたる受け答え。さすがに立って行う体操は難しいものの、椅子に座ってメニューをこなす。「地域の人の輪が広がりました」と肉体的効果以外を語るのはリーダー的存在の田口組子さん75歳。これまで近所に住みながら、話を交わしたことがない間柄でも、この体操を通じて交流が生まれ、地域の仲間意識が高まっているという。

動作はあくまでゆっくりながら、普段あまり使わない筋肉を動かす動きが多い(写真/藤川満)

動作はあくまでゆっくりながら、普段あまり使わない筋肉を動かす動きが多い(写真/藤川満)

片足立ちやカンフーの動きを取り入れたりと、高齢者でなくともよろめきそうになる(写真/藤川満)

片足立ちやカンフーの動きを取り入れたりと、高齢者でなくともよろめきそうになる(写真/藤川満)

発案者である逢坂さんも「体操をして元気になれたからこそ、子ども見守り隊に参加したり、地域の民生委員になったりと、参加者が自然とその地域で活躍するようになっています」と変化を実感している。さらに体操に出向くことで、高齢者同士の健康チェックにも繋がっているという。また欠席者の様子を見に行くなど、一人暮らしの高齢者の支えとなる「見守り」も生まれつつある。

大東元気でまっせ体操のDVDは市内の10人以上の体操継続グループには無料、個人・事業所には300円(市外は1000円)で提供している(写真/藤川満)

大東元気でまっせ体操のDVDは市内の10人以上の体操継続グループには無料、個人・事業所には300円(市外は1000円)で提供している(写真/藤川満)

2007年からは口の筋肉を強化する「健口体操」もスタート。現在、大東元気でまっせ体操の拠点づくりと同様に、この普及にも力を入れている。「筋肉を作る赤身の肉など、良質なタンパク質を摂るには噛む力が必要です。口の健康・栄養・体操のトライアングルを完成させてこそ効果が高まります」と逢坂さんも意気込む。

誰もが安心して暮らせるまちを目指して

「体操の拠点を今の133箇所から250箇所くらいまでに増やして、市内高齢者人口の1割を参加者にするのが目標です」と抱負を語る逢坂さん。実際、市内の僻地では、会場が遠くて通えない高齢者もいるという。拠点を増やせば、その問題を解消する一助となる。「高齢者が通える場所ができることで『見守り』が生まれ、高齢者を含む誰もが安心して暮らせる環境になってほしい」と逢坂さんはこれから先を見据える。

そのひとつのツールとして、大東市の地域包括支援センターが、2022年11月「ドキドキドッキョ指数」なるホームページを開設した。このアンケートに答えることで、特に独居高齢者が「一人で暮らしていく力があるか」の度合いが分かる仕組みになっている。

主に独居の高齢者向けの質問内容だが、一人暮らしの若い世代でも自らの生活改善の指針となる構成となっている(写真/(株)コーミンHPより)

主に独居の高齢者向けの質問内容だが、一人暮らしの若い世代でも自らの生活改善の指針となる構成となっている(写真/(株)コーミンHPより)

質問の内容は「自炊ができる」などの<生活維持力>、「運動をしている」などの<心と身体の健康状態>、「まちのことをよく知っている」などの<住んでいるまちとの関係性>という3つのカテゴリーがあり、本人はもちろん、家族や支援者と共に答えることで、自らの状況を把握し、生活改善に役立てることができる。

「大東元気でまっせ体操に参加している人は、おのずとハイスコアを叩き出すはずです」とこれまでの取り組みに自信をのぞかせる逢坂さん。質問は大東市外の住民にも共通するものなので、高齢者の親族をもつ人はもちろん、自分自身の孤立や孤独の危険度を測ってみてほしい。もし結果が危険水域なら、ご近所の仲間を集めて、体操を始めてみてはいかがだろうか。そうすればこれから将来に渡って、きっと元気でまっせ!?

●参考
ドキドキドッキョ指数

古い市営住宅が街の自慢スポットに変貌! 周辺地価が1.25倍になったその仕掛けとは? 「morineki」大阪府大東市

大阪市中心部から電車でおよそ20分。JR四条畷駅から住宅街を東へ歩くと、飯盛山を背に広がる芝生広場に面して、垢抜けたカフェやショップが並ぶ複合施設に辿り着く。芝生では子どもたちが駆け回り、カフェの客席は若い女性客を中心に埋まっている。よく見れば、周囲に馴染む外観の木造低層住宅も近くに並んでいる。実はここは、大阪府大東市の市営住宅エリア「morineki」の一角だ。ここは今、住民だけでなく市内外からも人が集う画期的な市営住宅として注目を浴びている。

古い市営住宅を民間主導で地域のために開発する

かつてこの一体には昭和40年代に建設された市営住宅「飯盛園第二住宅」があった。しかし2010年代に入り、同団地は老朽化が進み、大東市役所では建て替えが議論されていた。「当時は古びた建物とほとんど使われていない公園があり、活気のある場所とはいえなかった」とその頃の様子を語るのは、現在morinekiを運営する(株)コーミン 代表取締役の入江智子さん。

当時の飯盛園第二住宅の様子(写真提供/(株)コーミン)

当時の飯盛園第二住宅の様子(写真提供/(株)コーミン)

当時、入江さんは大東市役所で建築技師として勤務していたこともあり、市営住宅の建て替えに直接関わることになる。「これまでのような市営住宅ではなく、住民の生活の向上に加え、近隣住民も喜ぶような施設、そしてエリア全体の価値が上がるものにしたい」と入江さんは自らの考えを上司へ訴えた。幸いにしてその考えは当時の部長や市長からも理解を得られ、新たなプロジェクトとして進み出す。

ちょうどその頃、岩手県紫波町では、町が保有する駅前の土地を民間企業が再開発して、年間約80万人が訪れる場所へと変貌させた「オガールプロジェクト」が注目を集めていた。入江さんは、同プロジェクトから再開発のヒントを得るため、2016年に9カ月間現地で研修を受けることにした。

そこにあったのは、かつて塩漬けされていた土地に、体育館・図書館、産直マルシェやカフェ、さらにホテルや住宅分譲地などが並び、多くの人が行き交うまちの賑わいだった。「町有地を公と民が連携して開発し、運用して儲けていくというオガールプロジェクトで学んだ手法を、大東市にも活かすことにしました」と入江さん。

写真(上)は現在のmorinekiの全景。地図(下)を見ると民間事業エリア、公園エリア、住宅エリアの3つに分かれているのがわかる(写真・画像提供/(株)コーミン)

写真(上)は現在のmorinekiの全景。地図(下)を見ると民間事業エリア、公園エリア、住宅エリアの3つに分かれているのがわかる(写真・画像提供/(株)コーミン)

市営住宅借り上げとテナントリーシングで融資元から信頼を得る

2016年、大東市が出資した「大東公民連携まちづくり事業株式会社(現(株)コーミン)」が設立され、入江さんは出向という形で翌年から籍を置き、プロジェクトを推進していく。社長は当時の市長ながら、民間企業事業ゆえ事業資金は税金に頼らず、銀行などの金融機関から融資してもらわねばならない。「住宅を市営住宅として大東市が借り上げること、さらにテナントを先付けすることで、銀行の信用度が上がったと思います」

縁あって、北欧のライフスタイルをテーマにしたアパレル会社「(株)ノースオブジェクト」が、大阪市からの本社移転という形でテナントに決まったのが、大きかった。同社にとっても本社機能だけでなく、ライフスタイルショップ、レストラン、ベーカリーなどの直営店を営業することで、自社をPRするショールーム的な使い方ができるメリットがあった。

テナント入居と融資のメドが立った2018年、入江さんは大東市役所を退職。市長に代わり、大東公民連携まちづくり事業株式会社の代表取締役に就任する。そして2021年3月、「大東に住み、働き、楽しむ、ココロとカラダが健康になれるまち」をコンセプトにした「morineki」がオープン。名前は近くの飯盛山の「森」と河内弁で「近く」を意味する「ねき」をつなぎ合わせた。それには「自然のそばで暮らしを営むことに愛着を感じて欲しい」という思いを込めた。

1階はノースオブジェクト直営のベーカリーなどが入り、2階は本社事務所がある(写真/藤川満)

1階はノースオブジェクト直営のベーカリーなどが入り、2階は本社事務所がある(写真/藤川満)

ノースオブジェクト直営のレストランと(株)ソトアソが運営するアウトドアショップも入居している(写真/藤川満)

ノースオブジェクト直営のレストランと(株)ソトアソが運営するアウトドアショップも入居している(写真/藤川満)

「もりねき住宅」と名付けられた住宅エリア、2~3階建の低層木造住宅だ(写真/藤川満)

「もりねき住宅」と名付けられた住宅エリア、2~3階建の低層木造住宅だ(写真/藤川満)

賑わいが生まれることで住民の意識も変化する

かつての市営住宅は144戸に80世帯が暮らしていた。現在の住宅エリアには1LDK44戸、2LDK30戸の74戸に60世帯がそのまま移り住んだ。新規入居者は14世帯。その後、市外からの転入者も含め5~6戸の入居者が入れ替わったという。

住宅棟はゆとりをもって配置され、広い中庭部分には芝生や木々が植えられ、ゆったりとした散歩道のよう。「以前よりも住民みんなでキレイにしていく意識が高まった」と語るのはとある住民。実際、建物のセミプライベート空間は、住民によって、思い思いの花々が飾られ、景観に彩りを与えている。「パン屋が近くにできて、早速行きつけになりましたよ」とうれしそうに語る高齢女性にも出会った。

また芝生広場で子どもと遊んでいた女性は「以前は暗い感じだったけど、今は子どもとよく遊びに来ます。同世代も多く、この広場で子ども同士が一緒に遊ぶことで交流が生まれました」とも語る。市外から友達を訪ねてmorinekiに食事に来た夫婦は「こんなにおしゃれな住宅が市営住宅と聞いて驚いた。子育て世代にはいい環境だと思う」とうらやましがる。

「かつての住民に加え、子を持つ若い夫婦の姿も増えました。それにより住民同士の緩やかな『見守りあい』も生まれつつあります。子育て世代のステップアップのための舞台にしてほしい」と入江さんは、もりねき住宅の活用方法を示す。

住居前は住民が使い方を考えられるセミプライベート空間(写真/藤川満)

住居前は住民が使い方を考えられるセミプライベート空間(写真/藤川満)

企業とタッグを組むことが新たなまちづくりの一助となる

ノースオブジェクトのスタッフの一人は「大阪市内からさほど遠くない。取引先のお客様も商談だけでなく、ショップやレストランにも足を運ばれ、滞在時間が長くなることで、商品や会社への理解を深めてもらえるようにもなりました。また、ここで月一回のイベントを開催することで、直接お客様の声を聞くことができるようになったのは貴重です」と本社移転による効果を実感しているようだ。

広々としたノースオブジェクトのオフィス。取引先が家族を連れてmorinekiに足を運ぶこともあるという(写真/藤川満)

広々としたノースオブジェクトのオフィス。取引先が家族を連れてmorinekiに足を運ぶこともあるという(写真/藤川満)

「元々この周辺は、住民だけで外からの交流人口がゼロでした。morinekiができたことで、わざわざ訪れる人が増えました。近隣にある中学・高校・大学の学生たちもアルバイトやイベントに足を運んでくれ、新たな人の流れになっています。さらに近隣の既存施設が改装したり、新たなショップが開店したりと、まち全体が活性化しつつあります」と手応えを感じている入江さん。実際、周辺地価はかつてより1.25倍になったという。

月一回のノースオブジェクト主催のイベントのほか、エリア全体でのイベントも開催している(写真提供/(株)コーミン)

月一回のノースオブジェクト主催のイベントのほか、エリア全体でのイベントも開催している(写真提供/(株)コーミン)

高度成長期に次々と建てられた公営団地。それからおよそ50年経ち、各地で建て替えが議論されている。また公営住宅の中に公園がある施設も多いが、誰もが足を運べるような開放感はなく、さらに人が集える地域の場所としても機能していないところが多い。その成功例としてmorinekiにも全国各地から多くの自治体が視察に訪れる。しかしmorinekiのような新たな公営住宅は、なかなか誕生していない。
「自治体によって民間が公営住宅を建てることは、難しさもあると思います。ただ戸数を減らして公園スペースを確保したり、その公園に面してテナントを入居させ収益を上げるなどは、工夫をすればできないことはないはず。morinekiの場合は本社移転がプロジェクトに加わりましたが、ほかにも新業態の出店候補地として提案したり、企業に掛け合ってみれば可能性が見えてくるはず」と入江さんは自らの経験に基づいたアドバイスをする。

公民連携という手法で、公営住宅の新たな姿を示してくれたmorinekiが、今後どのように発展していき、周辺を含めた大東市がどのように変化をしていくのか、興味深く見守っていきたい。

(株)コーミン 代表取締役であり、morineki住宅の大家さんとして住民の声に耳を傾ける入江智子さん(写真/藤川満)

(株)コーミン 代表取締役であり、morineki住宅の大家さんとして住民の声に耳を傾ける入江智子さん(写真/藤川満)

●取材協力
(株)コーミン
(株)ノースオブジェクト

役目終えた造船の地・北加賀屋が「現代アートのまち」に。地元企業、手探りの10年 大阪市

「アートによるまちづくり」で大きな成果をあげている場所があります。それが大阪の北加賀屋(きたかがや)。かつては造船景気に沸いたウオーターフロントの街が、役目を終えて沈滞。この10年でアートという新たな航路へと舵を切り、再び浮上したのです。

アートで街全体を彩る大胆な構想を実践したのは、長く地元に根差してきた、「まちの大家さん」ともいえる不動産会社、千島土地株式会社。手探りでアートとまちづくりに向きあってきた10年を振り返っていただきました。

「造船所が去った街」から「アートの街」へと変身

「弊社は不動産会社で、過去にアートにたずさわった経験がなく、『アートでの街づくり』は手探りで進めてきました」

「千島土地株式会社」(以下、千島土地)地域創生・社会貢献事業部の宇野好美さん、福元貴美子さんは、口をそろえてそう語ります。

千島土地地域創生・社会貢献事業部の宇野好美さん、福元貴美子さんと(写真撮影/出合コウ介)

千島土地地域創生・社会貢献事業部の宇野好美さん、福元貴美子さんと(写真撮影/出合コウ介)

明治45年設立の千島土地は、大阪湾に近い木津川沿いの「北加賀屋」地区に約23万平米もの広大な経営地をいだく賃貸事業主。明治時代から昭和の高度成長期にかけて造船所や関連工場などに土地を賃貸し、日本の近代化を支えてきました。

しかし、1980年代に入って産業構造の変化に伴い造船所の転出が進み、北加賀屋は空き工場や空き家が増えていったのです。なかでもとりわけ大きな空き物件が、1988年に退出した「名村造船所大阪工場」の跡地でした。

かつて造船所でつくった船はここから旅立っていったが、船の大型化により浅瀬の木津川では船づくりが難しくなり、九州などに拠点が移っていったという(写真撮影/出合コウ介)

かつて造船所でつくった船はここから旅立っていったが、船の大型化により浅瀬の木津川では船づくりが難しくなり、九州などに拠点が移っていったという(写真撮影/出合コウ介)

宇野「不動産バブルの時代で、広大な土地が返還されるケースが稀だったこともあり、そのままの姿で返還を受けました。しばらくは個人様や企業が所有するボートなどを預かるドックとして機能していました。けれどもバブルが崩壊し、いよいよ使いみちがなくなってしまったんです」

名村造船所跡地(返還時の様子)(写真提供/千島土地株式会社)

名村造船所跡地(返還時の様子)(写真提供/千島土地株式会社)

そういった重工業の集積地である北加賀屋に「アート旋風」の第一陣が巻き起こったのが2004年。「造船所の跡地を表現の場として再活用しよう」という動きが芽吹き始めたのです。

福元「造船所の跡地をアートイベントにお貸ししたら、これがとても好評で。2005年には『クリエイティブセンター大阪(CCO)』として演劇や作品展などにお貸しするようになり、それに伴い弊社もアートに理解を示すようになっていったんです」

千島土地の代表取締役社長である芝川能一(しばかわ よしかず)さんは「アートには街を変える力がある」と確信。2009年に北加賀屋を創造的エリアへと変えていく「北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ(KCV)構想」を打ち立てました。

さらに2012年に株式会社設立100周年を迎えるにあたり、記念事業の一環として「一般財団法人おおさか創造千島財団」を創設。これらをきっかけに、千島土地の本格的なアート事業がいよいよ幕を開けたのです。

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

Ben Eineによるウォールアート(写真提供/千島土地株式会社 Photo by keiichi yamamura)

Ben Eineによるウォールアート(写真提供/千島土地株式会社 Photo by keiichi yamamura)

宇野「北加賀屋は、なんばから地下鉄で5駅。大阪の繁華街からめちゃめちゃ離れているわけじゃないんです。けれども以前は、『北加賀屋? それどこ?』と場所を認識してもらえませんでした。『精神的距離がある街』なんて呼ばれて(苦笑)。けれどもアートでの街づくりを始めてから、『北加賀屋、カッコいいよね』というお声をいただくようになったんです」

アートによって街の印象を大きく変えたという北加賀屋。では、造船の街だった北加賀屋は、アートによってどのようにイメージチェンジしたのか、宇野さんと福元さんに実際に街をガイドしていただくとしましょう。

アーティストのために「改装自由」で部屋を貸し出した

千島土地が手がける北加賀屋の「アートで街づくり」には、さまざまな事例があります。まず紹介するのが、2020年から貸し出しが始まった通称「半田文化住宅」。

工房「atelier and, so(アトリエ アンド ソー)」が入居する半田文化住宅外装はタイル貼り。1階部分は好みにペイントしたり飾ったり、2階は元のまま、レトロな雰囲気が残る(写真撮影/出合コウ介)

工房「atelier and, so(アトリエ アンド ソー)」が入居する半田文化住宅外装はタイル貼り。1階部分は好みにペイントしたり飾ったり、2階は元のまま、レトロな雰囲気が残る(写真撮影/出合コウ介)

「文化住宅」とは、主に1950年代~1960年代に建てられた2階建て集合住宅を指す関西の言葉、関東では「モクチン」と呼ばれる場合もあります。一般的にいう「木造アパート」で、それまでの時代は共同だった玄関やトイレなどが各住戸に独立してついており、「文化的」な印象からそう呼ばれるようになりました。イメージは「2階建ての長屋」です。

千島土地はこの半田文化住宅をアーティストやクリエイター向けに、なんと! 「改装自由」「原状回復不要」といった格別な条件で賃貸しているのです。

もともとの借家人の苗字からその名で呼ばれる半田文化住宅は、Osaka Metro四つ橋線「北加賀屋」駅から徒歩わずか1分の好立地にあります。1階に2戸、2階に2戸の風呂なし物件。陶芸家や生き物の標本作家など全戸にアーティストが入居し、ものづくりに励んでいるのです。

とりわけ見違えるほどの改装を施したのが、2020年5月にここへやってきた工房「atelier and, so(アトリエ アンド ソー)」の大浦沙智子さん。大浦さんは「撮影用の背景ボード」をつくるデザインペインター。SNSやフリーマーケットアプリの「映え」には欠かせぬ、今の時代にぴったりな仕事です。

専門であるペイントや、DIYのスキルを活かして、見違えるようにおしゃれな空間になった工房「atelier and, so(アトリエ アンド ソー)」(写真撮影/出合コウ介)

専門であるペイントや、DIYのスキルを活かして、見違えるようにおしゃれな空間になった工房「atelier and, so(アトリエ アンド ソー)」(写真撮影/出合コウ介)

居住はせず、アトリエとして部屋を借りている大浦さん。大きな作業台を必要とする仕事柄、壁を大胆にぶち抜き、広さを確保しました。シャビーシックに色変わりしたこの空間は「水まわりと床以外は建具も含め、ほぼ自分で改装した」というから驚き。さらに2階も借り、ワークショップの会場に使用しています。

ワークショップの会場にもなる2階の作業場(写真撮影/出合コウ介)

ワークショップの会場にもなる2階の作業場(写真撮影/出合コウ介)

宇野「私どもも『ここまで生まれ変わらせていただけるとは』と感動しました」

福元「見事なDIYです。『これがビフォーアフターか!』と見とれましたね」

大浦さんが半田文化住宅を選んだ理由は――。

大浦「隣が空き地だったのが決め手の一つです。空き地のおかげで窓から光が入るのが気に入りました。サンプルの写真がとても撮りやすいんです。この部屋を選ぶ以前は住之江区内のガレージを工房の代わりに使っていました。暗いし、冷暖房はない。夏や冬は大変だったんです。私にとって半田文化住宅は天国ですよ」

この仕事を始める前、塗料の会社で経験を重ねていた大浦さん。独立後、半田文化住宅で気に入ったアトリエを持てたことで、仕事が順調になったそう(写真撮影/出合コウ介)

この仕事を始める前、塗料の会社で経験を重ねていた大浦さん。独立後、半田文化住宅で気に入ったアトリエを持てたことで、仕事が順調になったそう(写真撮影/出合コウ介)

隣接する空き地は、以前は活用されていなかった場所だったのだそう。北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ構想に共鳴した大浦さんは、フェンスの塗装、芝生の水やりや育成などの空き地の管理にも協力しています。

大浦「部屋の改装はまだ終わってはいません。きっと、これからもずっとどこかをなおし続けていくでしょう。改装というより、『部屋を育てる』感覚なんです」

アーティストが部屋を育て、街の景観を育てる。アートの力で街が育ってゆく。それが北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ構想の本質なのだろうな、そう感じました。

「住宅そのものがアート作品」という驚きの賃貸物件

居住を可能とする事例なら、2016年に誕生した「APartMENT(アパートメント)」もあります。

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

「APartMENT」は、築古の集合住宅を8組のアーティストやクリエイターのプロデュースによってリノベーションし、再生させるプロジェクト。千島土地が、不動産から設計、工務までトータルでおこなう「Arts & Crafts(アートアンドクラフト)」とタッグを組んでおこなう、「住宅そのものがアート作品」という極めて意欲的な取り組みです。

福元「アーティストに限らず、アートに興味がある人々にも北加賀屋で暮らしてほしい。そのためにも住む場所の提供は弊社の課題でした。『北加賀屋らしい、アートに特化した、特徴のある集合住宅にしよう』と考えて始まったのが、このプロジェクトです。ネーミングとロゴにも『AP“art”MENT』と、アートという言葉が入っているんですよ」

「art(アート)」を内包する住宅、それはまさに北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ構想の所信表明といえるでしょう。

「APartMENT」には二つのタイプの部屋があります。一つ目は、北棟1階と南棟を使った「toolbox PROJECT(ツールボックス・プロジェクト)」による部屋。

「ツールボックス」とは、「自分らしい家づくり」に必要なアイテムを販売したり、実際にそれらを使用して施工したりするWebショップ。

福元「改装できるギリギリ寸止め状態まで弊社で施工しておいて、『あとの内装は自由にやっていいですよ』『ツールボックスの商品を使用した改装内容については原状回復もしなくていいですよ』という部屋なんです」

二つ目が、北棟の2階より上で展開する「8 ARTISTS PROJECT(エイトアーティスト・プロジェクト)」の部屋。モダンアート、照明作家、造園家、先鋭的なデザイン事務所などジャンルの垣根を越えた8組のアーティストが、オリジナリティあふれる「45平米のアート作品」を生みだしたのです。

なかでもインパクトが絶大なのが、現代美術作家の松延総司(まつのべそうし)さんがつくりあげた「やすりの部屋」。壁紙の代わりに使用しているのは、なな、なんと「紙やすり」! ざらりとした手触りは、住む人によってはクセになること請け合い。壁に貼られた紙やすりは部屋ごとに種類が異なり、「この部屋のやすりは刺激的だぞ」と、五感が研ぎ澄まされてゆきます。

現代美術作家の松延総司さんによる「やすりの部屋」。茶色く変化した部分は、家具が擦れて自然とついた色だそう(写真撮影/出合コウ介)

現代美術作家の松延総司さんによる「やすりの部屋」。茶色く変化した部分は、家具が擦れて自然とついた色だそう(写真撮影/出合コウ介)

宇野「以前の住民が使っていた掃除機のルンバと紙やすりが格闘した跡を、あえて現状のまま残しています。こういった生活の痕跡が引き継がれていくのがおもしろいと思うんです」

こちらは「スキーマ建築計画」による、「足す」のではなく「引く」デザインの部屋。中央奥の押入れは、引っこ抜いたかのように取り払い、収納スペースは畳の下にしまい込んで隠してしまう。「足しがち」な暮らしの固定観念を覆す、住む人の気持ちが反転していくような部屋(写真撮影/出合コウ介)

こちらは「スキーマ建築計画」による、「足す」のではなく「引く」デザインの部屋。中央奥の押入れは、引っこ抜いたかのように取り払い、収納スペースは畳の下にしまい込んで隠してしまう。「足しがち」な暮らしの固定観念を覆す、住む人の気持ちが反転していくような部屋(写真撮影/出合コウ介)

このように前衛的な部屋が並ぶ「APartMENT」は、アートとリノベーションの融合、住人の創造性の誘発といった点が評価され、2017年、大阪市が実施する顕彰事業「第30回 大阪市ハウジングデザイン賞」において「大阪市ハウジングデザイン賞特別賞」を受賞しました。

もとは1971年築の鉄工所社宅。鉄筋コンクリートによるがっしりした構造が、アーティストたちの自由な発想を受け入れています。その様子は、鉄でものづくりをしてきた先人たちが、次世代を築くアーティストたちを応援し、胸を貸しているように見えました。

「近寄りがたい」といわれていた集合住宅が交流の場として甦った

住宅を提供する場合があれば、かつて住宅だった物件を別のかたちに蘇らせたケースもあります。それが「千鳥(ちどり)文化」。

千鳥文化の外観。中央がメインとなるアトリウム。統一されていないごちゃごちゃ感もこの文化住宅ができ、育ってきた歴史を物語っている(写真撮影/出合コウ介)

千鳥文化の外観。中央がメインとなるアトリウム。統一されていないごちゃごちゃ感もこの文化住宅ができ、育ってきた歴史を物語っている(写真撮影/出合コウ介)

「千鳥文化」とは2017年にオープンした文化複合施設のこと。「クリエイターと地域の人々が緩やかに交流するプラットフォーム」をコンセプトに、食堂、商店、バー、ギャラリー・ホール、テナント区画が一堂に会しています。築60年ほどの文化住宅をリノベーションした話題のスポットなのです。

福元「アートイベントのためだけに訪れるのではなく、北加賀屋に滞在してほしい。そんな想いで始まったプロジェクトです。元々千鳥文化と呼ばれていた建物。名前もそのまま承継しました」

旧・千鳥文化は、現在の法律では住居としてありえないアバンギャルドな姿をしており、「近寄りがたい雰囲気だった」といわれています。

家の改造はお手の物だった船大工たちの作業の跡が残る室内(写真撮影/出合コウ介)

家の改造はお手の物だった船大工たちの作業の跡が残る室内(写真撮影/出合コウ介)

宇野「かつての千鳥文化は、造船業に従事していた住人たちが自らの手で増改築を繰り返していました。『もともと平屋だった建物に住民が2階を増築したのではないか』と推測されています。わかっているだけでも5回、大きな改築がなされていますね。どうやって建っているのかすらわからないほど不思議な構造だったんです」

増築に「船の素材が使われていた」など、住んでいた船大工の手によっていびつに表情を変えていったこの文化住宅は、ある意味でアートの街・北加賀屋にぴったり。とてもクリエイティブな文化遺産といえるでしょう。

旧・千鳥文化はのちに空き家となり、解体も検討されました。しかし、「迷路のように複雑化するほど人々の暮らしの痕跡が刻まれている貴重な建物だ。二度と再現できない。更地にしてしまうのはもったいない」と、北加賀屋を拠点に活動する建築家集団「dot architects(ドットアーキテクツ)」の手によって、A棟とB棟で二期に分けてリノベーションを実施。新時代の千鳥文化プロジェクトがスタートしたのです。

宇野「設計図が存在しない難物です。柱の1本1本を測りなおし、できる限り元の古材を残しながらも耐震対策は現行法に基づきしっかりやるという、気が遠くなるような作業から始まりました。完成するまでに3年もの年月がかかりましたね」

dot architectsは千鳥文化も含めた功績が認められ、2021年に建築のアワード「第2回 小嶋一浩賞」を受賞しました。

印象に残るレトロな「TEA ROOM まき」の装飾テントには手を加えず、玄関はガラス張りに改修。再生した施設内は「アトリウム」と呼ばれる吹き抜けの共有スペースがあり、誰でも出入りできます。1階部分はカフェや、展示などを行える空間として、2階部分にはアート作品が飾られており、自由に見学できるのです。

アトリウム奥のカフェ「千鳥文化」(写真撮影/出合コウ介)

アトリウム奥のカフェ「千鳥文化」(写真撮影/出合コウ介)

吹き抜けの2階部分。建物の構造を見るだけでもおもしろい(写真撮影/出合コウ介)

吹き抜けの2階部分。建物の構造を見るだけでもおもしろい(写真撮影/出合コウ介)

2階部分に常設されているのは金氏徹平「クリーミーな部屋プロジェクト」。手前と奥の部屋合わせて一人のアーティストの世界観でつくられている(写真撮影/出合コウ介)

2階部分に常設されているのは金氏徹平「クリーミーな部屋プロジェクト」。手前と奥の部屋合わせて一人のアーティストの世界観でつくられている(写真撮影/出合コウ介)

壁にあいた舟窓の穴からのぞくと隠れている奥の部屋にも現代アートがある遊び心あふれる空間(写真撮影/出合コウ介)

壁にあいた舟窓の穴からのぞくと隠れている奥の部屋にも現代アートがある遊び心あふれる空間(写真撮影/出合コウ介)

元居室の扉には、住民がいたころの紙をぺたっと貼っただけの表札が(写真撮影/出合コウ介)

元居室の扉には、住民がいたころの紙をぺたっと貼っただけの表札が(写真撮影/出合コウ介)

往時は「近寄りがたい」と言われていた建物に今や新鮮な空気が循環し、陽がさんさんと降り注ぐ。「千鳥文化というアート作品」が60年の時を経て、やっと正当に評価されたのでは。そんなふうに思えました。

現代美術作家の巨大作品がずらり並ぶ「生きている倉庫」

続いて案内されたのは、外観だけを見れば、単なる大きな倉庫。実はこの倉庫こそが、北加賀屋クリエイティブ・ビレッジ構想が成し遂げた重要な功績の一つなのです。

MASK(マスク/MEGA ART STORAGE KITAKAGAYA)(写真撮影/出合コウ介)

MASK(マスク/MEGA ART STORAGE KITAKAGAYA)(写真撮影/出合コウ介)

扉を開けて、びっくりしない人はいないでしょう。目の前に並んでいるのは、世界に名だたる現代美術作家たちの、巨大な造形作品なのですから。

ヤノベケンジ 作品 左「ラッキードラゴン」、右「サン・チャイルド」(写真撮影/出合コウ介)

ヤノベケンジ 作品 左「ラッキードラゴン」、右「サン・チャイルド」(写真撮影/出合コウ介)

名和晃平 作品「N響スペクタクル・コンサート「Tale of the Phoenix」舞台セット」(写真撮影/出合コウ介)

名和晃平 作品「N響スペクタクル・コンサート「Tale of the Phoenix」舞台セット」(写真撮影/出合コウ介)

久保田弘成 作品「大阪廻船」(写真撮影/出合コウ介)

久保田弘成 作品「大阪廻船」(写真撮影/出合コウ介)

床面積 約1,030平米(52.5×19.5m)、高さ 9.25mというとてつもない広さを誇るスペースを使った驚異のプロジェクト、その名は「MASK(マスク/MEGA ART STORAGE KITAKAGAYA)」。

収蔵するアーティストは、宇治野宗輝、金氏徹平、久保田弘成、名和晃平、持田敦子、やなぎみわ、ヤノベケンジといった、国際的に活躍する現代美術の人気作家ばかり。

宇野「近年、芸術祭等で大型作品を制作する機会が増えていますが、会期後の保管はアーティストにとって大きな課題となります。実際、多くの作品が解体されたりしているのです。そのため、弊社では無償で大型作品をお預かりすることにしました」

芸術祭の会期後、「作品をどう残すのか」は、アーティストにとって頭が痛い問題です。維持するにはお金がかかる。そもそも “メガ”(大変な規模の)サイズの作品を保管できる“ストレージ”(領域)がない。実際、置き場に困り、作品が廃棄される悲しい例も多いのです。

このような状況に一石を投じるべく、千島土地が管理する鋼材加工工場の倉庫跡を利用し、2012年からアーティストの大型作品を無償で預かるプロジェクト「MASK」を発起しました。作品の保管のみならず、2014年から、年に1回「Open Storage(オープン ストレージ)」と銘打ち、一般公開をしています。

2022年は10月に「Open Storage(オープン ストレージ)」を実施。鉄の柱が張り巡らされた倉庫でたくさんの現代アートを楽しめる。撮影も可能(写真撮影/出合コウ介)

2022年は10月に「Open Storage(オープン ストレージ)」を実施。鉄の柱が張り巡らされた倉庫でたくさんの現代アートを楽しめる。撮影も可能(写真撮影/出合コウ介)

福元「みなさん『北加賀屋にこんなすごいところがあったんだ』と、とても喜んでくださいます。全国を見渡しても、これほどの量の大型作品が並ぶ場所は他にはないと思います」

宇野「北加賀屋がアートで街づくりをしていると一般の方にも知っていただけた、大きなきっかけとなった場所です。よく『なぜ無償で預かっているの? 利益が出ないでしょう』と聞かれるのですが、弊社では『アラビア数字では表せない価値をもたらしてくれた』と考えています」

収蔵のみならず、持田敦子さんの手によるビッグサイズの回転扉『拓く』は、2021年にMASKで現地制作されました。
また、「大きな作品を預かる」という点では、他の倉庫で、オランダのアーティスト、フロレンティン.ホフマンの、膨らますと高さ9.5メートルにも及ぶパブリックアート『ラバー・ダック』を管理し、各地の水上で展示する拠点にもなっています。

「すみのえアート・ビート2021」開催風景(写真提供/千島土地株式会社)

「すみのえアート・ビート2021」開催風景(写真提供/千島土地株式会社)

千島土地は作品『ラバー・ダッグ』を保有する日本唯一の窓口という意外な一面も。水都大阪2020のイベントや、東日本大震災のチャリティイベントでもおなじみの姿が北加賀屋のまちのマンホールアートでも見られる(写真撮影/出合コウ介)

千島土地は作品『ラバー・ダッグ』を保有する日本唯一の窓口という意外な一面も。水都大阪2020のイベントや、東日本大震災のチャリティイベントでもおなじみの姿が北加賀屋のまちのマンホールアートでも見られる(写真撮影/出合コウ介)

倉庫が収蔵する目的を越え、作品を生み出し発信する場所として新たな命を宿している。脈を打ち始めている。ここはまさに「生きている倉庫」ではないでしょうか。2022年の秋も一般公開が予定されています。謎のヴェールに包まれた倉庫がマスクをはぎ取る瞬間に、ぜひ立ち会ってみてください。

2022年度の一般公開「Open Storage 2022 ―拡張する収蔵庫-」は、10月14日(金)~16日(日)、21日(金)~23日(日)と、「すみのえアート・ビート」に合わせて11月13日(日)に開催予定です。

広大な造船所の跡地が表現の場へと船出した

最後に案内していただいた場所、そこはフィナーレを飾るにふさわしい、素晴らしい別天地でした。それは2007年に、経済産業省「近代化産業遺産」に認定された、木津川河口に位置する「名村造船所大阪工場跡地」。そう、千島土地がアートを手掛ける第一歩となった記念すべき場所です。2005年に跡地の一部を「クリエイティブセンター大阪(Creative Center OSAKA/略称:CCO)」と名づけ、敷地面積が約4万平米という空前の広さを活かした一大アートパラダイスへと変貌を遂げたのです。

湾岸沿いで交通の便がいいとはいえない場所だがイベントでは大勢のファンが足を運ぶ(写真撮影/出合コウ介)

湾岸沿いで交通の便がいいとはいえない場所だがイベントでは大勢のファンが足を運ぶ(写真撮影/出合コウ介)

クリエイティブセンター大阪は、「廃墟のポテンシャル」を存分に楽しめる場所。「建物そのものを楽しみたい」という人のために参加無料の見学ツアーも行われています。

さらにライブや演劇、コスプレイベント、撮影会、映画・ドラマのロケ、サバイバルゲームの舞台としてもレンタルされ、なかには結婚式に使うツウなカップルまでいるのだそうです。

福元「一般に開放した当初は、コスプレイベントのためにカートを引いた若者たちが北加賀屋に集まってくるので、地元の方々は『なんだ? なんだ?』とけげんそうな目で見ていました。けれども現在は、集まる若者たちがこの街を盛り上げてくれているんだと、歓迎してくださっています」

刮目すべきは4階にある、船の製図室の遺構をそのまま活かした無柱の創造スペース。

右奥に人のサイズ感で伝わるだろうか。柱がないこれだけの空間は極めて珍しい。この反対側にもこれと同じくらいの広さがさらに広がる(写真撮影/出合コウ介)

右奥に人のサイズ感で伝わるだろうか。柱がないこれだけの空間は極めて珍しい。この反対側にもこれと同じくらいの広さがさらに広がる(写真撮影/出合コウ介)

宇野「この部屋では以前は、船や部品の原寸図を引いていたんです。床に敷いて這いながら書くため、天井には手元を照らすための蛍光灯がずらっと並んでいます。床を見てください。まだ図面の跡があるんですよ」

まるで幾何学模様のような傷は設計の痕跡(写真撮影/出合コウ介)

まるで幾何学模様のような傷は設計の痕跡(写真撮影/出合コウ介)

本当だ。広々とした床には船の図面の面影が遺っていました。往時の果てしない造船作業、職人さんたちの高い技量と苦労が想い起こされ、胸を打ちます。そしてこの部屋は現在、現代アートの展示やイベント、さらに地下アイドルのフェスであれば物販やチェキタイムなど、ファンとの交流にも利用されているのです。

こういった取り組みが評価され、2011年には文化庁が後援する企業メセナ(企業が芸術文化活動を支援すること)協議会「メセナアワード2011」にて「メセナ大賞」を受賞。千島土地がアートでの街づくりに拍車をかけるきっかけとなりました。

かつて2万人を超える造船労働者で盛況を博した北加賀屋。役目を終えた造船所が、北加賀屋のランドマークとなって眠りから覚めました。そうして可能性を秘めたアーティストの卵たちの船出を、あたたかく見守っているのです。その海は、世界へとつながっています。

アートの力で活性化した街の「次の一手」は

造船所が転出し、一時期は活気を失っていた北加賀屋。千島土地の尽力とアートのパワーにより今や世界からも注目される街となり、息を吹き返しています。タワーマンションの供給が始まるなど具体的な経済効果も表れはじめているようです。今後の展望は。

宇野「ギャラリーの誘致を目指す新しい拠点などを計画中です。アーティストが暮らし、作品をつくり、この街で発表する。その作品に注目が集まる。この流れを生みだしていけたらいいなと考えています」

福元「そして、長く暮らしたくなる、価値が高い街にしていきたいです。アートに触れながら、親子3代にわたって住む。そうやって文化を育んでいければ」

芸術の秋です。ウォールアートやパブリックアートの数々が迎えてくれる北加賀屋を散策してみませんか。なんばから、わずか5駅ですよ。

北加賀屋の街中ではさまざまなオブジェやウォールアートが出迎えてくれる(写真撮影/出合コウ介)

北加賀屋の街中ではさまざまなオブジェやウォールアートが出迎えてくれる(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

●取材協力
「千島土地株式会社」Webサイト
「おおさか創造千島財団」Webサイト
「atelier and, so(アトリエ アンド ソー)」Webサイト
「APartMENT」(アパートメント) Webサイト
「千鳥文化」Instagram
「MASK」(MEGA ART STORAGE KITAKAGAYA)Webサイト
「クリエイティブセンター大阪」Webサイト

梅田駅まで30分以内、家賃相場が安い駅ランキング 2022年版

関西トップのターミナル駅である、大阪府大阪市の梅田駅。仕事や遊びの拠点であると同時に、3月に発表された「SUUMO住みたい街ランキング2022関西版」では西宮北口駅と逆転し首位に輝いた。その梅田駅まで電車で30分以内で行ける、ワンルーム・1K・1DKを対象にした家賃相場が安い駅ランキングの最新版を紹介。気になる駅と、その魅力を探る。

梅田駅まで30分以内の家賃相場が安い駅TOP11

※所要時間は、大阪駅、大阪梅田駅、東梅田駅、西梅田駅、北新地駅など梅田駅と地下通路や連絡通路でつながっている場合には当該駅から梅田駅までの徒歩時間を加算している

順位/駅名/家賃相場(代表的な路線名/駅の所在地/所要時間/乗り換え回数)
1位 寝屋川市 3.70万円(京阪本線/寝屋川市/25分/2回)
1位 萱島 3.70万円(京阪本線/寝屋川市/21分/1回)
3位 大和田 3.80万円(京阪本線/門真市/29分/2回)
3位 武庫川団地前 3.80万円(阪神武庫川線/兵庫県西宮市/30分/1回)
5位 四条畷 3.88万円(JR学研都市線/大東市/30分/1回)
6位 島本 4.00万円(JR京都線/島本町/28分/1回)
7位 大日 4.20万円(大阪メトロ谷町線/守口市/24分/0回)
8位 香里園 4.25万円(京阪本線/寝屋川市/29分/1回)〇
9位 俊徳道 4.30万円(近鉄大阪線/東大阪市/29分/2回)
9位 津守 4.30万円(南海汐見橋線/大阪市西成区/25分/2回)
11位 上新庄 4.40万円(阪急京都線/大阪市東淀川区/18分/1回)
11位 住道 4.40万円(JR学研都市線/大東市/26分/1回)
11位 古川橋 4.40万円(京阪本線/門真市/27分/2回) 

京阪本線は観光地も充実

1~3位までは、京阪本線の駅がしめた。京阪本線は大阪市中央区の淀屋橋駅を基点に、ビジネス街の京橋駅や京都市の繁華街の祇園四条駅などを経由して京都市の三条駅までをつなぐ都市間路線。大阪中心部への通勤・通学路線であるが、沿線には現存する遊園地で最古の「ひらかたパーク」や、京都の伏見稲荷大社や清水寺など有名な観光地も数多い。一方で、大阪の2大ターミナル駅である梅田駅と難波駅には直通しておらず、どちらへ向かうにも乗り換えが必要なことが家賃が割安で上位になった理由の一つだろう。

同率1位になった寝屋川市駅と萱島駅は、ともに京阪本線沿線で寝屋川市に位置する。特に寝屋川市駅は寝屋川市の中心駅で、快速急行や通勤快速も停車する。市役所や警察署などの公共施設が周囲に集まっており、家電量販店やホームセンターなどの大型商業施設も充実している。駅近くにはアーケード街が延び、できたての料理を配達してくれる飲食店や雰囲気の良い喫茶店、各種の小売店などが約250mにわたって軒を連ねる大利(おおとし)商店街や寝屋川一番街商店街、レトロな風情の日之出商店街があり、魅力的な個人経営の店も多い。

寝屋川市駅周辺の風景(写真/PIXTA)

寝屋川市駅周辺の風景(写真/PIXTA)

寝屋川市駅周辺の風景(写真/PIXTA)

寝屋川市駅周辺の風景(写真/PIXTA)

大阪府東部の寝屋川市は古くから穀倉地帯であり、京阪間のベッドタウンとして発展した現在も緑が多く残る。駅と並行して流れる寝屋川沿いでは再開発も行われており、道幅を3倍以上にして歩道を整備し、電線も地中化する都市計画が進行中だ。

大阪電気通信大学と摂南大学の寝屋川キャンパスや、大阪府立大学工業高等専門学校への最寄駅であり、学生街の顔も持つ。そうした学生向けの単身者用物件も充実しているが、教育機関の多さから、ファミリー層からの人気も高い。

阪神タイガースの熱狂的ファンは武庫川団地前駅という選択肢も

ランキングは大阪府内の街がほとんどだが、唯一兵庫県に位置するのが、同率3位の武庫川団地前駅。
所在地の西宮市は、「SUUMO住みたい街ランキング2022関西版」の「[関西]住みたい自治体ランキング」で1位の自治体だ。

阪神武庫川線の終点駅で、周辺は閑静な住宅街。印象的な娯楽施設があるわけではないが、スーパーなどは充実。市立図書館の高須分室も近く、こじゃれた雰囲気の喫茶店なども点在している。また、駅付近には病院が目立つ。

武庫川団地前駅(写真/PIXTA)

武庫川団地前駅(写真/PIXTA)

駅名にもなっている武庫川団地は、5500世帯を超える西日本最大の団地。広大な敷地には4つのエリアがあり、保育所から高校までの教育施設やショッピングセンター、市役所の分室などもある。あちこちに公園も点在しており、野球場やテニスコートなどもそろっている。

武庫川線は武庫川と並走しているが、武庫川団地前駅は武庫川が流れ込む大阪湾が近い。武庫川団地の南側は工業地帯だが、その無骨さよりも自然豊かな印象の方が強く感じられそうだ。大阪湾沿いにある鳴尾浜臨海公園は海が一望できる広大な芝生広場や海づり広場があるほか、近くには天然温泉が楽しめるスーパー銭湯もある。また、プロ野球人気球団の阪神タイガースのファーム拠点である阪神鳴尾浜球場までも約1.7km。趣味を満喫するには穴場かもしれない。

鳴尾浜臨海公園(写真/PIXTA)

鳴尾浜臨海公園(写真/PIXTA)

5位は大東市にある四条畷(しじょうなわて)駅。区間快速や快速も停車する。JR学研都市線は梅田駅に直通はしていないが、沿線上の北新地駅は梅田駅と地下通路でつながっている。実質的には改札の遠い梅田駅、といった存在なので、乗り換えなしでの利用も可能だ。

所在地はぎりぎり大東市だが、同名である四条畷市の中心駅の扱いになる。四条畷市は市内の約3分の2が生駒山地で占められており車利用が多い地域のため、大きな商業施設は少し駅から離れた場所にある。しかし深夜まで営業しているスーパーが周辺にあり、駅を中心に昔ながらの商店街「四條畷商店会」も残る。

四条畷市は市の一部が国定公園の「金剛生駒紀泉国定公園」に指定されており、自然が多く残る。また鎌倉時代末期の武将、楠木正成とゆかりが深く、正成の嫡男の正行が命を落とした「四條畷の戦い」の場所としても知られ、駅から少しいくと、正成らをまつった四條畷神社がある。ほかにも、貝塚跡や古墳など古代の史跡から、2021年には戦国武将の三好長慶が居城とした飯盛城跡が国史跡に指定されるなど、歴史ロマンにあふれた街でもある。

新区間開業で急発展の俊徳道駅、古川橋駅は人気向上が期待

9位の俊徳道駅は近鉄大阪線の駅。普通列車のみの停車駅だが、急行が停車する隣駅の布施駅との距離は約1.2km。物件の立地によっては急行も利用できそうだ。また、俊徳道駅は同名のJRおおさか東線の駅と隣接しており、2路線使用できる。JRおおさか東線は2019年に新区間が開業して、新幹線の停車駅である新大阪駅まで乗り換えなしで行けるようになっており、交通利便性のよさとお手ごろな家賃のバランスがとれたエリアといえそうだ。

おおさか東線 JR俊徳道駅(写真/PIXTA)

おおさか東線 JR俊徳道駅(写真/PIXTA)

周囲は住宅街が広がり、落ち着いた雰囲気が漂う。駅前は最近整備が終わり、JRとの間に屋根のある動線もできて安心感がある。かつてはスーパーに困ることこそなくても飲食店事情のさびしい地域であったが、JRおおさか東線の新区間開業にともない、近年はおしゃれな店などを見かけることも。また所在地である、ものづくりの街としてしられる東大阪市ならではといえそうな、レンズメーカーがカフェも併設するショールームなど、個性的な店舗も点在している。

布施駅と反対方面の隣駅の長瀬駅は、西日本最大級の学生数の近畿大学の最寄駅。駅間距離は約1.1kmで、徒歩圏内だ。進学による初めての一人暮らしの場所の選択肢に、入れてみてもよさそうだろう。

同率11位の古川橋駅は門真市に位置する。京阪本線の区間急行の停車駅だ。駅すぐそばにはイオンなどの大型スーパーも充実。チェーン系から落ち着いた雰囲気のカフェまで飲食店も多く、日常生活にはなにかと便利な地域だ。門真運転免許試験場の最寄駅でもある。

市名を冠する隣駅の門真市駅との距離は約800mで、徒歩圏内。門真市駅は伊丹空港こと大阪国際空港へ向かう大阪モノレールの乗り換え駅で、遠隔地への出張の多いビジネス―パーソンにも心強いだろう。門真市駅付近には、2023年にららぽーととコストコの開業も控えている。

近場な便利な大型施設が多い一方で、駅周辺にはレトロな小さい商店街など昔ながらの街並みも残る。そうしたエリアや駅北側の廃校跡の再開発が決定し、地域に開放された交流スペースなどの設置も予定された門真市初のタワーマンションや商業棟、憩いの場づくりが計画。市の玄関口にふさわしい、複合的な都市機能の集積を目指すという。竣工は2026年の予定で少し先だが、今からチェックしておいてもいいかもしれない。

梅田駅は、JR大阪駅北側の再開発「うめきた2期地区開発プロジェクト」が進み、2023年には関西国際空港に直結するJRの新駅が開業予定。閉塞感の否めない昨今だからこその、将来への期待感の高まりも感じられた。期待があれば、部屋探しも楽しくなる。楽しい将来のためにも、ねらい目の部屋を見落とさず、自分にフィットする部屋を見つけたいものだ。

●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている梅田駅まで電車で30分以内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ抽出期間】2022/2~2022/4
【家賃の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の管理費を含む月額賃料から中央値を算出(3万円~18万円で設定)
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、朝7時30分~9時の検索結果から算出(2022年4月25日時点)。所要時間は該当時間帯で一番早いものを表示(乗換時間を含む)
※記載の分数は、駅内および、駅間の徒歩移動分数を含む
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が2回までの駅を掲載

「梅田駅」まで30分以内、中古マンション価格相場が安い駅ランキング 2022年版

関西イチの繁華街と言えば大阪の梅田だろう。梅田駅の周辺には大型商業施設からオフィスまでが集結し、遊びに仕事にと多くの人が昼夜問わず行き交っている。便利で楽しい街だけあって、この春に発表された「SUUMO住みたい街ランキング2022 関西版」では、住みたい街1位に輝いた。今回はそんな梅田駅から30分圏内にある、中古マンションの価格相場が安い駅を調査した。専有面積20平米以上~50平米未満の「シングル向け」と専有面積50平米以上~80平米未満の「カップル・ファミリー向け」、それぞれの価格相場が安い駅トップ10を見ていこう。

梅田駅まで30分以内の価格相場が安い駅TOP10

※大阪駅、大阪梅田駅、東梅田、西梅田駅、北新地駅など梅田駅と地下通路や連絡通路でつながっている場合には当該駅から梅田駅までの徒歩時間を加算している

【シングル向け】
順位/駅名/価格相場(路線/駅所在地/梅田駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 谷町四丁目 1570万円(大阪メトロ谷町線/大阪府大阪市中央区/12分/0回)
2位 日本橋 1735万円(大阪メトロ千日前線 /大阪府大阪市中央区/13分/1回)
3位 南森町 1795万円(大阪メトロ谷町線/大阪府大阪市北区/7分/0回)
4位 松屋町 1800万円(大阪メトロ長堀鶴見緑地線/大阪府大阪市中央区/13分/1回)
5位 九条 1885万円(阪神なんば線/大阪府大阪市西区/19分/1回)
6位 三ノ宮 1935万円(JR東海道本線/兵庫県神戸市中央区/29分/0回)
7位 大阪天満宮 1960万円(JR東西線/大阪府大阪市北区/13分/0回)
8位 長堀橋 2035万円(大阪メトロ長堀鶴見緑地線/大阪府大阪市中央区/12分/1回)
9位 大国町 2065万円(大阪メトロ御堂筋線/大阪府大阪市浪速区/11分/0回)
10位 中之島 2115万円(京阪中之島線/大阪府大阪市北区/15分/1回)

【カップル・ファミリー向け】
順位/駅名/価格相場(路線/駅所在地/梅田駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 出来島 1580万円(阪神なんば線/大阪府大阪市西淀川区/20分/1回)
2位 北伊丹 1780万円(JR福知山線/兵庫県伊丹市/26分/1回)
2位 福 1780万円(阪神なんば線/大阪府大阪市西淀川区/22分/1回)
4位 尼崎センタープール前 1880万円(阪神本線/兵庫県尼崎市/21分/1回)
5位 大和田 1980万円(京阪本線/大阪府門真市/29分/2回)
6位 寝屋川市 2000万円(京阪本線/大阪府寝屋川市/25分/2回)
7位 大物 2050万円(阪神本線/兵庫県尼崎市/19分/0回)
8位 加美 2130万円(JR関西本線/大阪府大阪市平野区/28分/1回)
9位 千船 2139万円(阪神本線/大阪府大阪市西淀川区/13分/0回)
10位 園田 2280万円(阪急神戸本線/兵庫県尼崎市/19分/0回)

「シングル向け」には「住みたい街3位」の駅もランクイン

梅田駅には大阪メトロ御堂筋線が通っているほか、すぐ近くにはJRの大阪駅、阪急電鉄と阪神電鉄の大阪梅田駅、大阪メトロの谷町線・東梅田駅と四つ橋線・西梅田駅、さらにはJR東西線の北新地駅が密集。今回の調査ではそうした近接駅から梅田駅に徒歩で行くルートも含めて「梅田駅まで30分圏内」にある駅のうち、中古マンションの価格相場が安い駅をランキングした。たとえば「シングル向け」1位になった大阪メトロ谷町線・谷町四丁目駅の場合、同路線で東梅田駅まで約7分、そこから梅田駅まで徒歩約5分なので所要時間は約12分(乗り換え0回)としている。

谷町四丁目駅(写真/PIXTA)

谷町四丁目駅(写真/PIXTA)

さて改めて「シングル向け」のランキングを見ていこう。1位は大阪メトロ谷町線・谷町四丁目駅。梅田駅まで約12分・乗り換え0回と便利な立地ながら価格相場は1570万円で、2位以下よりも頭一つ飛び抜けてリーズナブル。駅の東側には整然とした官公庁街が広がり、大阪府警察本部の最寄り駅でもあるので、街の治安のよさはピカイチと言えそう。周辺にはコンベンションセンターやオフィスも多く、働く人を支えるコンビニもあちこちに点在。徒歩10分圏内に複数のスーパーとディスカウントストア「ドン・キホーテ」もあり、日常の買い物には困らないだろう。「大阪城公園」や「難波宮跡公園」など、緑を感じて息抜きできるスポットまで近い点も魅力だ。

2位は大阪メトロ千日前線・日本橋駅で価格相場は1735万円。1駅隣のなんば駅で大阪メトロ御堂筋線に乗り換えると、梅田駅まで約13分で到着する。地下に位置する日本橋駅は「なんばウォーク」という地下街に続いており、グルメやファッション、雑貨など多彩なショップをのぞきつつ歩いていくと、なんば駅や近鉄・阪神の大阪難波駅に行くこともできる。日本橋駅から地上に出ると、「ミナミ」と呼ばれる繁華街。難波、道頓堀、心斎橋といった観光客にもおなじみのエリアが広がり、食事に買い物、エンタメ系まで多彩な施設がずらりと立ち並ぶ。また、日本橋エリアは西日本屈指の電気街とも言われ、近年はアニメやゲーム、ホビー関連のショップも増加している。休日ごとにマニアックなショップをめぐっても楽しそうだ。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

3位には1位と同じ大阪メトロ谷町線の、南森町駅が価格相場1795万円でランクイン。1位・谷町四丁目駅から梅田駅方面に向かって2駅目に位置し、さらに1駅進むと梅田駅まで歩いてアクセスできる東梅田駅に到着する。南森町駅は大阪メトロ堺筋線も乗り入れているほか、連絡通路を通って7位にランクインしたJR東西線・大阪天満宮駅に乗り換えることも可能だ。駅近くには「大阪天満宮」が佇んでおり、京都の祇園祭、東京の神田祭と並ぶ日本三大祭とされる天神祭が開催される7月24日~25日は大にぎわいに。ここ2年間は残念ながら花火や船渡御は行われておらず、今年の行方も気になるところだ。駅前を通る天神橋筋は大阪天満宮の表参道として江戸時代から栄えており、現在は天神橋筋1丁目から6丁目にかけて「天神橋筋商店街」が続いている。こちらは南北約870mにわたる長いアーケード商店街で、季節ごとにさまざまな催しも企画。近所に住んだ際はぜひ活用したい。

天神橋筋商店街(写真/PIXTA)

天神橋筋商店街(写真/PIXTA)

ここまで見てきたトップ3を含め、トップ10にランクインしたのは梅田駅から電車で15分圏内にある大阪市内の駅がほとんど。安く住むならなるべく中心地から離れる必要がある東京と違って、一大都市のすぐ近くにベッドタウン機能を兼ね備えた大阪ならではの調査結果と言えそうだ。唯一、府外である兵庫県神戸市から6位にランクインした三ノ宮駅もチェックしてみよう。

6位・三ノ宮駅はJR東海道本線の駅で、大阪駅まで乗り換えせずに行ける。そこから徒歩で梅田駅に向かえば、所要時間は計約29分だ。この駅も梅田同様に少々複雑で、阪神本線と阪急神戸本線の「神戸三宮駅」、神戸市営地下鉄西神・山手線と神戸新交通ポートアイランド線の「三宮駅」、さらに神戸市営地下鉄海岸線の「三宮・花時計前駅」に乗り換えることができる。

こうした多数の路線が集中することからもわかる通り、三ノ宮駅周辺は神戸の中心市街地。大型商業施設に飲食店、オフィスから市役所などの公的機関までさまざまな施設が林立している。梅田駅が1位に輝いた「SUUMO住みたい街ランキング2022 関西版」では、三ノ宮(同ランキングでは神戸三宮で表記)駅は3位にランクインしており、住む街としても人気が高い。また、同エリアを中心にして官民協働プロジェクト「都心・三宮再整備」が進行中。調査時点の価格相場は1935万円だったが、今後はさらなる発展が見込まれるため人気とともに物件価格も上昇していく可能性もある。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

「カップル・ファミリー向け」トップ10は梅田の西方にある駅が多数

「カップル・ファミリー向け」の1位は阪神なんば線・出来島駅で価格相場は1580万円。そこから7位・大物駅を通り過ぎつつ2駅先の尼崎駅で阪神本線に乗り換え、大阪梅田駅下車後に歩いて梅田駅に向かうと所要時間は計約20分だ。ちなみに阪神なんば線で尼崎駅と逆方面に1駅目には2位・福駅があり、尼崎駅から阪神本線で阪神梅田駅と逆方面に1駅進むと4位の尼崎センタープール前駅がある。さらに9位の阪神本線・千船駅は尼崎駅から阪神梅田駅に向かう途中に位置し、出来島駅からは歩いても15分少々。1位・出来島駅、2位・福駅、4位・尼崎センタープール前駅、7位・大物駅、9位・千船駅は半径2.5kmほどの円内に収まる位置関係にあるのだ。

出来島駅(写真/PIXTA)

出来島駅(写真/PIXTA)

1位・出来島駅のすぐ北側には神崎川が流れ、2位の福駅を横目に歩いて20分ほど南下すると淀川にぶつかる。そして駅西方には大阪湾が広がる、水辺に囲まれたロケーションだ。駅の西側は物流倉庫や工場が大きな面積を占めているが、駅の近くや東側には住宅も多い。駅前の業務スーパーをはじめ徒歩15分圏内に複数のスーパーやディスカウントストアがあるほか、お隣の福駅の駅前には100円均一ショップやドラッグストアなどを併設したスーパーや総合病院もあり、遠出しなくても日常の用は済ませられそうだ。それでいて中古マンションの価格相場は2位以下よりも200万円以上低い。築年数がわりと経っていても、リノベーションされた物件もあるので条件を広げて探してみたい。

福駅と同率2位はJR福知山線・北伊丹駅で、価格相場1780万円。大阪駅までは1本で行くことができ、途中の伊丹駅で快速に乗り換えればより早く到着できる。そして大阪駅から梅田駅まで歩くと、所要時間は計約26分だ。駅周辺には工場が多く、住宅地は駅北側に広がっている。駅の西側には「兵庫県立西猪名公園」があり、夏季はスライダーも備えた水遊びゾーンがオープン。3歳以下は無料、4歳以上でも200円~300円で遊べるので、夏は家族でたびたび通いたくなりそうだ。家電量販店が点在しているのも特徴的で、大型店舗が2軒、ホームセンター併設の店舗が1軒ある。一方でスーパーは駅から少々離れた立地なので、車があると便利かもしれない。

兵庫県立西猪名公園(写真/PIXTA)

兵庫県立西猪名公園(写真/PIXTA)

「カップル・ファミリー向け」のトップ10は「シングル向け」と違い、大阪市以外のエリアが半数以上を占めており、梅田駅までの所要時間も20分以上かかる駅が大半だった。ある程度の広さを求めるなら、大阪市から離れたほうがリーズナブルな物件が探しやすいのだろう。そうしたなかでも梅田駅まで約13分、乗り換えせずに行けるのが9位にランクインした阪神本線・千船駅だ。

9位・千船駅は前述したように1位・出来島駅から歩いて15分少々の立地。しかし価格相場は出来島駅よりも559万円もアップしており、平日の朝ラッシュ時に運行される区間急行が停車するなど、梅田までのアクセスのよさが価格帯に反映されているのかもしれない。駅は北に左門殿川、南に神崎川が流れる中洲に位置している。中洲内には市営の集合住宅をはじめとした住宅地が広がり、市立の小・中学校や幼稚園、保育園も。駅の高架下2階部分にドラッグストアがあり、交番や郵便局が点在する駅前ではスーパーや100円均一ショップも営業中。駅から徒歩15分ほどの左門殿川対岸にはホームセンターや家電量販店もあるので、コンパクトな範囲で日常生活が送れそうだ。

ちなみに今回調査の基点にした梅田駅の、「カップル・ファミリー向け」中古マンションの価格相場は6340万円。ランキングトップ10は梅田駅まで20分以上かかる駅が大半だという点が少々残念にも感じたが、価格相場が4060万円~4760万円も下がると聞いた後だと、この程度の通勤時間なら費やしても惜しくないと思えてくる。

「カップル・ファミリー向け」のトップ10は「シングル向け」と違い、大阪市以外のエリアが半数以上を占めており、梅田駅までの所要時間も20分以上かかる駅が大半だった。ある程度の広さを求めるなら、大阪市から離れたほうがリーズナブルな物件が探しやすいのだろう。そうしたなかでも梅田駅まで約13分、乗り換えせずに行けるのが9位にランクインした阪神本線・千船駅だ。

9位・千船駅は前述したように1位・出来島駅から歩いて15分少々の立地。しかし価格相場は出来島駅よりも559万円もアップしており、平日の朝ラッシュ時に運行される区間急行が停車するなど、梅田までのアクセスのよさが価格帯に反映されているのかもしれない。駅は北に左門殿川、南に神崎川が流れる中洲に位置している。中洲内には市営の集合住宅をはじめとした住宅地が広がり、市立の小・中学校や幼稚園、保育園も。駅の高架下2階部分にドラッグストアがあり、交番や郵便局が点在する駅前ではスーパーや100円均一ショップも営業中。駅から徒歩15分ほどの左門殿川対岸にはホームセンターや家電量販店もあるので、コンパクトな範囲で日常生活が送れそうだ。

ちなみに今回調査の基点にした梅田駅の、「カップル・ファミリー向け」中古マンションの価格相場は6340万円。ランキングトップ10は梅田駅まで20分以上かかる駅が大半だという点が少々残念にも感じたが、価格相場が4060万円~4760万円も下がると聞いた後だと、この程度の通勤時間なら費やしても惜しくないと思えてくる。

●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている梅田駅まで電車で30分圏内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】
駅徒歩15分圏内、物件価格相場3億円以下、築年数35年未満、敷地権利は所有権のみ
シングル向け:専有面積20平米以上50平米未満
カップル・ファミリー向け:専有面積50平米以上80平米未満
【データ抽出期間】2022/2~2022/4
【物件相場の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された中古マンション価格から中央値を算出
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、朝7時30分~9時の検索結果から算出(2022年4月25日時点)。所要時間は該当時間帯で一番早いものを表示(乗換時間を含む)
※記載の分数は、駅内および、駅間の徒歩移動分数を含む
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が2回までの駅を掲載

地味だった大阪の下町・昭和町、“長屋の活用”で人口増!「どこやねん」から「おもろい街」へ

建物の老朽化、空き家問題、高齢化、人口流出。都市の多くが頭を抱える問題です。そのようななか大阪の下町「昭和町」では、長い歴史を誇る長屋をローコストで再活用し、街に活気をもたらしています。成功に導いたのは、代々続く地元の不動産会社。三代目社長の「気づき」がきっかけでした。「長屋の保存活動ではない。やっているのは長屋の“活用”だ」。そう語る三代目社長に、奏功の秘訣をおうかがいしました。

「私は長屋の保存活動はしていない」

「誤解されるのですが、私は長屋の保存活動はしていないんです」

「丸順不動産」代表取締役、小山隆輝さん(57)はそう言います。

「丸順不動産」三代目、小山隆輝さん。電動アシスト自転車と首からさげたカメラがトレードマーク(写真撮影/出合コウ介)

「丸順不動産」三代目、小山隆輝さん。電動アシスト自転車と首からさげたカメラがトレードマーク(写真撮影/出合コウ介)

大阪府大阪市阿倍野区(あべのく)「昭和町」。大阪メトロ御堂筋線の巨大ターミナル駅「天王寺」から南へ一駅くだった場所にある細長いエリアです。

「昭和町」はその名のとおり昭和時代の面影を感じさせてくれる、のんびりした雰囲気に包まれた街。あべのハルカスがそびえる大都会、天王寺のそばだとは信じがたい印象。近年はテレビをはじめとしたメディアがこぞって「下町レトロ散歩」特集の舞台に昭和町を選ぶようになりました。

昭和町のゆったりムードに大きく貢献しているのが「長屋」。現在ではあまり見かけない長屋ですが、昭和町には築100年前後という貴重な長屋が奇跡的に数多くのこっています。

昭和町の随所にのこる長屋。古風で落ち着いた雰囲気を活かし、ヨガサロンを開く例もある(写真撮影/出合コウ介)

昭和町の随所にのこる長屋。古風で落ち着いた雰囲気を活かし、ヨガサロンを開く例もある(写真撮影/出合コウ介)

なかでもおしゃれなお店が6軒ずらり並ぶ「桃ケ池長屋」は昭和町エリアのランドマーク的存在。桃ケ池長屋をはじめ古い家屋のリノベーション計画が功を奏し、国勢調査によると1995年(平成7年)から2020年(令和2年)までのあいだに965人(大阪市における住民基本台帳人口数)が増加しました。大阪市の多くの街が人口流出や高齢化による人口減にあえぐなか、これは快挙です。

昭和町の長屋に新たな命を吹き込んだエキスパートが、大正13年(1924年)創業の「丸順不動産」三代目、小山隆輝さん。

小山「昭和町5丁目で生まれ、昭和町4丁目で育ちました。57年の人生を昭和町の徒歩5分圏内で過ごしています」

小山さんは生粋の昭和町っ子。先述の「桃ケ池長屋」や、大正14年築という長屋をリノベーションして大阪古民家カフェブームの先鞭をつけた「金魚カフェ」など、数々の物件をブレイクさせた立役者です。電動アシスト自転車をこぎながら日々、昭和町の風景を撮影しSNSで発信し続ける。そんな不動産界のインフルエンサーとしても知られています。

金魚カフェ(写真提供/小山さん)

金魚カフェ(写真提供/小山さん)

金魚カフェ(写真提供/小山さん)

金魚カフェ(写真提供/小山さん)

金魚カフェ(写真提供/小山さん)

金魚カフェ(写真提供/小山さん)

ただ、活躍ゆえに“誤解”が生じている様子。

小山「ときどき“長屋再生人”と紹介されます。いいえ、違うんです。長屋を文化財として保存したいわけじゃない。元通りにしたいわけでもない。やりたいことは“長屋の活用”です。だって、長屋だけきれいになってもしゃあないやないですか。そうではなく、長屋など既存の建物を活用し、エリアの価値を向上させたいんです。目指すは“上質な下町”。そのためにも、いいプレイヤーを昭和町に集めたい。それが私のメインテーマですわ」

長屋の保存ではなく、再生でもない。メインテーマは「長屋の活用」と「エリアの価値向上」。その言葉の真意をさぐるべく、先ずは小山さんが手がけ、いまや大阪の人気スポットとなった「桃ケ池長屋」を案内していただくことにしましょう。

「昭和町ってどこやねん」と言われた知名度の低さ

「桃ケ池長屋」へ向かう道すがら、長屋が注目される以前の昭和町の姿はどんなものだったのかを、小山さんは語ってくれました。

小山「とにかく街の知名度が低かった。こんな話があるんです。昭和町でBarをやっていた男性がミナミやキタにいる友達のところへ遊びに行った。友達に『昭和町で店をやってるから、遊びに来てな』と言ってショップカードを渡した。するとそのカードを見た友達が、こう言ったんです。『昭和町って、どこやねん』。同じ大阪市内、同じ御堂筋線沿線にもかかわらずですよ。それくらい地味で目立たない街でした」

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

現在ではメディアの人気コンテンツとなり、憧れの気持ちを抱いて訪れる若者も多い昭和町にも、そんな無名時代があったのです。

小山「私が二十代のころは少子高齢化が進み、人口は減少。『昔はにぎやかな商店街やったのに誰一人として歩いていない』。そんな寒々とした風景でした。このままではあかん。昭和町をなんとかしなければならない。最初にそう思ったのが25年くらい前。子どものころから通っていた散髪屋さんのおっちゃんが私に、『あんたら不動産屋ががんばらなんだら、街がようならへんやんか。人もお店も増えへんやないか』と言ったんです。それ以来、“不動産屋ができる、街をよくする方法”を考えるようになりました」

街の人が危機感を抱くほどさびれていた昭和町。それを解決する糸口の一つが、長屋だったのです。

「上質な下町」のシンボルとなった「桃ケ池長屋」

やってきた「桃ケ池長屋」。「昭和4年(1929)の資料が残っている」という、大正時代と昭和のはざまに誕生した4軒長屋と近隣の2軒の計6軒。「焼き菓子カフェ」「洋裁工房」「おばんざい(お惣菜)」など6つのお店が並んでいます。年に1、2回、不定期で長屋総出のイベントを行い、その日はたくさんのお客さんでにぎわいます。小山さんが目指す「上質な下町」と呼べる空間づくりに大いに貢献しています。

桃ケ池長屋(写真撮影/出合コウ介)

桃ケ池長屋(写真撮影/出合コウ介)

かつての桃ケ池長屋(2003年撮影)(写真提供/小山さん)

かつての桃ケ池長屋(2003年撮影)(写真提供/小山さん)

そのうちの一軒、平成23年(2011年)に入居した「カタルテ」は器と雑貨のお店。注目すべき作家の一点ものをはじめ、店主の宮倉さんが焼き物の産地である信楽や丹波立杭などに足を運んで選んだ逸品が並びます。

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

実は「桃ケ池長屋」という名称は、「昔からあったものではない」のだとか。

宮倉「桃ケ池長屋という名前は長屋のみんなでつけました。勝手にね(笑)。『長屋でイベントをするときに呼び名をつけたいね』『じゃあ近くに桃ケ池公園があるし、桃ケ池長屋にしようか』って。そうして勝手に名前を呼んでいたら、だんだん定着してきたんです」

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

店舗兼住居のこの「カタルテ」、梁など昭和の趣を残しながらも無理やりな懐古趣味はなく、見事に現代と調和しています。

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

宮倉「アルミサッシなど、古い長屋と雰囲気が合わない建具は入れたくなかったので、大家さんによい方法はないかと相談しました。大家さんがとても理解がある方で、ご自身がお持ちの取り壊す古い建物から『要るものがあるなら持っていっていいよ』と言ってくださって。大工さんと一緒にメジャーを持って計りに行き、使えそうな建具を運んできました」

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

「カタルテ」は、古い長屋に別の古い建具を継ぐという、ありそうで意外とない方法で新しいスペースをデザインしていたのです。

小山「この物件は家主さん、借主さん、大工さん、三者の美意識が合致した好例です。私が長屋に着手しはじめた当時はまだ大工さんは“きれいにするのが当たり前”でした。『あそこを残して。ここを残して』と言っても理解してもらえなかった。ひたすら、闘いでしたね」

「桃ケ池長屋」が好評を博した秘訣、それは小山さんのトータルプロデュース力にありました。

宮倉「小山さんが、世代が近い人を横並びでつないでくださったんです。世代が近いから相談できるし、『イベントを一緒にやろうよ』という動きになっていきました。長屋が一つのカラーをもっているおかげで続けられているのかな。小山さんのはからいがなかったら、何年かで店を辞めちゃっていたかもしれない」

小山「一軒一軒で考えるのではなく、世代をできるだけ合わせていく。いいプレイヤーを揃える。それが『長屋が街を変える』第一歩やと思うんです。ぜんぜん違うテイストのものを並べても、街としておもろくないですから。そやから僕はしっかりとお話をして人となりを見ます。『どんな人か』が大事やから」

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

お話を聞くにつけ、いいこと尽くしのように感じる長屋のリノベーション。とはいえ、およそ100年も前の建物の再利用です。不便はないのでしょうか。

宮倉「気になる点は物音でしたね。壁が共有なので。お隣さんの会話の内容がわかっちゃうくらい筒抜け。『こちらが出した音も向こうに聞こえているんだろうな』と思って、電話する場合はわざわざお風呂場で話をしていました」

決して厚くない壁。しかも共有。長屋は言わば一つの大きな家。共同体だからこそ両隣との関係性が重要になってきます。

宮倉「お互いにお店をしていて、一緒にイベントをする仲間。人柄がわかっているから許容できました。『お互い様だよね』って。ときにはお隣の物音に安心感をおぼえる日もありました。まったく見知らぬ人だったら『うるさいよ』ってなっていたかもしれません」

一軒一軒ではなく、長屋全体をどうするかをトータルで考える。小山さんの発想と手腕はトラブル回避にも活かされていたのです。さらに、長屋での商いは物音などのリスクを超えた大きなメリットがあると宮倉さんは言います。

宮倉「広さに対する家賃の安さは魅力ですね。プラス、この雰囲気。ピカピカじゃなくって、歴史があるものにしか出せない温かな雰囲気が得られるのはとてもありがたいです」

タウン誌などにもたびたび採りあげられる桃ケ池長屋。「やりたいことは長屋の保存や再生ではなく“活用”」「長屋の活用によるエリアの価値向上」。小山さんの信条は、「桃ケ池長屋」というかたちではっきりと可視化されていたのです。

長屋の雰囲気になじんでいる看板猫のエモンちゃん(写真撮影/出合コウ介)

長屋の雰囲気になじんでいる看板猫のエモンちゃん(写真撮影/出合コウ介)

「長屋が文化財なら、昭和町はお宝だらけや」

そもそも、なぜ昭和町には昭和初期の長屋が多く残っているのでしょう。理由は大正時代にさかのぼります。

小山「大正時代から昭和のはじめにかけて大阪市は経済が大きく発展しました。“大大阪”“東洋のマンチェスター”と呼ばれるほどだったんです。そのため人口が急増した。かつての東京市(1943年/昭和18年に廃止)よりも多かった。結果、たちまち住宅難が起きました。各地から続々と転入してくるため、住む人を吸収できなくなってきたんです」

サラリーマン家庭の住居の用意に急を要した大阪市。そこで建てられたのが、長屋でした。大阪市は特有の土地区画整理計画「長屋建築規則」を制定。長屋という名のニュータウン開発事業に乗り出したのです。

小山「大正時代までこのあたりは畑やったんですけれども、区画整理をして、長屋の寸法に街割をしたんです。そやから当時は長屋がザーッと並んでいました。言わば元祖ベッドタウンです。区画整理がスタートしたのが昭和のあたま頃やったんで、“昭和町”という地名になったんです」

なんと、昭和町という地名自体が、長屋の開発が由来だったとは。そんな深い縁がある長屋に再びスポットが当たる出来事がありました。それが「寺西家阿倍野長屋の再評価」。

「寺西家阿倍野長屋」とは昭和7年(1932年)に建築された近代的な4軒長屋。戦前の庶民の都市住宅としての様式を今に残す貴重な建築であることが評価され、平成15年(2003年)、長屋としては全国初となる「登録有形文化財」に指定されたのです。

寺西家阿倍野長屋(写真提供/丸順不動産)

寺西家阿倍野長屋(写真提供/丸順不動産)

小山「登録文化財になったという新聞記事を見て、『そんな文化財になるような長屋なんかあったか?』と探しに行ったところ、そこにあったのはどこにでもある普通の長屋。『これが文化財になるんやったら町中が文化財だらけや。これを使わない手はないやろ』と思いました」

現場へ行って寺西家阿倍野長屋を見上げた小山さん。そのとき「散髪屋のおっちゃん」から言われた「あんたら不動産屋ががんばらへんかったら、街がようならへん」のひと言が蘇ってきたのだそう。

小山「昭和町の長屋は、確かに質が高い。『京都では町家のリノベーションを当たり前にやっている。だったら昭和町は、長屋でそれができるんやないか』。そうひらめいたんです。意識して素敵なテナントを誘致したり、古い建物のよさを残したりすれば、街が元気になるんじゃないかと。散髪屋のおっちゃんのあの一言と長屋が頭の中でピタッとくっついた瞬間でしたね」

日本建築の粋を集めた「お屋敷長屋」

このように長屋や既存の古い建物およそ30軒を蘇らせてきた小山さんに、もう一軒のケースを見せていただきました。「水回り以外は昭和初期の雰囲気のまま」という、5戸が連なる長屋です。

2019年より家族3人で居住している建築士、城田研吾さんはこう言います。

城田「物件を見る前は、『長屋をDIYしたい』と考えていました。部屋を自由に改造できる条件で物件を探していたんです。けれどもこの長屋を初めて内見したとき、『このまま住みたい』と思いました。手を入れる必要がない、理想の住まいだったんです」

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

屋内は丸窓の「灯りとり」、欄間、土壁、漆喰など、惚れ惚れとするほど昭和の意匠が遺されています。特に立派な床の間が印象的。

玄関(写真撮影/出合コウ介)

玄関(写真撮影/出合コウ介)

キッチンとリビングをつないで広々とした空間をつくりだしている。段差を考慮したテーブルをオーダーメイドし、二間をまたぐように設置した(写真撮影/出合コウ介)

キッチンとリビングをつないで広々とした空間をつくりだしている。段差を考慮したテーブルをオーダーメイドし、二間をまたぐように設置した(写真撮影/出合コウ介)

小山「フルサイズの床の間が、この長屋の特徴です。床の間は無駄と言えば無駄なんですけれども、当時は『床の間のない家なんて家やない』という文化があり、必須の設えだったんでしょう。ほかにも門があり、庭があり、燈籠が建てられている。大きなお屋敷の様式を全部きゅっと詰め込んである。だから“お屋敷長屋”と呼ばれる場合もあります。しっかりした邸宅で、落語に出てくる、八っつあん熊さんがいるような庶民の長屋とはずいぶん違いますね」

寝室(写真撮影/出合コウ介)

寝室(写真撮影/出合コウ介)

書斎(写真撮影/出合コウ介)

書斎(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

棚は城田さん自身が造作(写真撮影/出合コウ介)

棚は城田さん自身が造作(写真撮影/出合コウ介)

取材時、中庭には赤い桃の花が咲いていました。城田さんはこの家を「もものきながや」と名づけ、風流な景色を楽しんでいます。いやあ、若くしてこの長屋を気に入るとは、シブいご趣味ですね。

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

城田「僕らの世代は原体験がないぶん、逆に昔の趣が残っている家って好きなんじゃないですかね」

小山「新車に乗りたい人がいれば旧車に乗りたい人もいる。新しいジーンズが好きな人がいれば、リーバイスのヴィンテージを好む人もいる。それと同じとちゃいますか」

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

長屋はジーンズに例えるならばヴィンテージ。長屋の魅力がさらに鮮明になってきました。

昭和町の住民と店とをつなぐ「バイローカル」活動

小山さんの取り組みで刮目(かつもく)すべきもう一つの軸、それが昭和町の住民と地元の商売人との縁をつなぐ「buy-local(バイローカル)」という活動。具体的には昭和町にある素敵な商店およそ80軒が掲載されたマップつきの小冊子を年に一回発行し、PRしてゆく行いです。小山さんは2013年4月から、街の有志とともにバイローカル活動をはじめました。

小山「バイローカルとは、そもそもはアメリカのコロラド州で生まれた『小さな商店の雇用を守ろう』という運動でした。コロラド州のバイローカルは大資本に立ち向かう抗議活動やけど、昭和町はそこまで好戦的やない。志だけを継いで、街の“よき商い”を昭和町に住む人にもっと知ってほしい、そんな気持ちでやっています。理想は“内発的発展”。地域の人たちが自分の街にある店を選択し、守り、昭和町の中で365日、経済が循環する環境を整えていきたいんです」

小冊子のほか、使いやすいMAPも配布している

小冊子のほか、使いやすいMAPも配布している

マップを見ていると、新旧の魅力的な個人商店が満載。「少し歩くとこんなにたくさんのオリジナリティと出会えるのか。昭和町カルチャーすごい!」と驚かされます。

バイローカルマップを配布する大事なイベントが、長池公園にて開催される年に一度のマーケット。出店数は50店舗前後。あまりの人手に昨年は平日開催にせざるをえなかったというから、いかにバイローカルという理念が昭和町に根付いたかがうかがい知れます。

小山「人を寄せて儲けるのが目的ではない。マーケットを開くことで、地元の人とお店の人とでコミュニケーションをとってもらいたいんですよ。『あんたんとこのお店、どこやの? 今度遊びに行くわ』『あんたのお店、前から知ってたんやけど、どんなお兄ちゃんがやってるかわからへんかったから、行くん怖かってん。なんや~、あんたかいな~。ほんならこれから行くわ~』みたいな。バイローカルのマーケットを通じて知らないお店と出会ってほしいんです。ゆっくり話をしてほしいから、本音は、あんまりたくさんの人に来てほしくない(笑)」

2020年開催時の様子(写真提供/小山さん)

2020年開催時の様子(写真提供/小山さん)

自分が住む街にどんなお店があるのか、意外と知らないものです。バイローカルは住民と店とのマッチングの機会をつくり、街がよい商いを支える地盤をつくりました。おかげで、こんな利点があったのだそうです。

小山「2020年の夏はコロナでしんどい時期でしたけれども、街の人がテイクアウトでお店を支えた。お店も必死やけど、街の人たちも必死でした。『この店がつぶれたら絶対に困る』ってね」

昭和町なら駅から離れていても商売が成立する。それが理想

「長屋なんて更地にしてアパートを建てましょう」「コインパーキングにしてしまいましょう」が当たり前ななか、あえて古い建物の活用で街を衰退から救った小山さん。今後の展望は。

小山「これまでの経験で得た知見を活かし、おもろいエリアをさらに広げていきたい。街のはずれにも素敵なお店があって、周遊しながら楽しめる。そういうふうにならんと街ってしまいに廃れると思うんですよ。駅前でないと商売が成り立たん、そんなんではあかん。『昭和町なら住宅地でも商売が成立するんですよ』と伝えていかなければ。駅前一極集中ではなく、歩いて行ける場所、あるいは自転車でまわれるエリアに、自分の暮らしを豊かにしてくれるお店がいくつも点在している。それが街の理想形かなって思うんです」

確かに、バイローカルのマップを見ていると、点々とあるすべてのお店をぐるりと回遊したくなります。そうしてきょろきょろしているうちに、きっとさらに街が好きになる。

バイローカル会議の様子(写真提供/小山さん)

バイローカル会議の様子(写真提供/小山さん)

小山「象徴的な出来事がありました。駅前のいい場所に店舗が空いたので、お客さんをご案内したんです。けれども、そのお客さんが言うには、『すっごいええ場所やねんけれども、ここだと家賃を払うために仕事をせなあかん。ちゃんとていねいに商いをしたいから、もっとさびしい場所でいいです』と。その感覚なんです、昭和町は」

昭和町を訪れないと出会えない素敵な個性がある。希少となった長屋も、現代でいえば個性的な存在です。小山さんは今日も電動アシスト自転車で街を駆け抜けながらええもんを見つけ、昭和町をさらに「おもろい街」にすべく奮闘しています。

「私はただの不動産屋さん。けれども、街のことを考える不動産屋さんです。そやから、なんでもします。街の不動産屋はなんでもやりますよ」

●取材協力
丸順不動産株式会社
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「SUUMO住みたい街ランキング2022関西版」、大阪市中心部人気が高まる。郊外は明石などが再開発+子育て施策で人気アップ

リクルートは関西圏(大阪府・兵庫県・京都府・奈良県・滋賀県・和歌山県)に居住している20歳~49歳の4600人を対象に実施した「SUUMO住みたい街ランキング2022関西版」を発表した。今年はどんな順位になったのだろう。

昨年から順位逆転。1位は「梅田」、2位は「西宮北口」

まず「2022年の住みたい街(駅)」ランキングの結果を紹介しよう。
TOP3では4年連続1位を堅守していた「西宮北口」と2位の「梅田」が逆転。トップになったのは関西ナンバーワンの大都市「梅田」だった。
神戸市の中心地「神戸三宮」は今年も3位に。

住みたい街(駅)ランキング1位~20位

本年度より、集計方法を変更しており、上記の表の見方および、注意点については本記事末に表示。

4年ぶりに1位となった「梅田」。周辺ではJR大阪駅北側「うめきた2期地区開発プロジェクト」が進み、関空に直結するJR新駅が2023年に誕生予定など、再開発とともに将来への期待感の高まりが感じられる。

梅田駅周辺の風景(写真/PIXTA)

梅田駅周辺の風景(写真/PIXTA)

一方、盤石の人気を誇ってきた「西宮北口」だが、約10年ほど前から駅周辺の人口増加が落ち着いていた。対して梅田駅のある大阪市北区は5年で1割増程度のペースで人口増加を続けている。そのことからも人気の逆転現象がうかがえる。

若い世代の支持を集め、大阪市内中心部の人気が顕著に

TOP20に注目すると、「本町」「心斎橋」が初トップ20入りを果たした。
得点を見ても、「なんば」(+90点)「梅田」(+79点)「福島(22位)」(+66点)「本町」(+41点)など大阪市の中心部が昨年より急上昇。都心人気の高まりが顕著な結果となった。
ちなみに「梅田」は男女ともに20代で1位。「本町」は20代女性でベスト10に入るなど、若い世代からの支持が高いことがわかる。

梅田エリアに隣接する「福島」は「うめきた2期」の波及効果で人気が上昇。初トップ20入りした「本町」は、西区と中央区のほぼ境目。両区ともタワーマンションの相次ぐ誕生や靭(うつぼ)公園、大坂城公園など都心部でも緑豊かな環境とあって、子育て層が流入。このため「本町」のある中央区は15歳未満人口が大幅に増加している。

本町の街並み(写真/PIXTA)

本町の街並み(写真/PIXTA)

一方、「岡本」(8位→12位)「芦屋川」(13位→19位)などブランドイメージの強い阪神間の住宅地がやや順位を下げている。
共働き世帯率が上がり、新築マンションを中心とする大阪市内の住宅供給が増えたことから、大阪市内中心部の居住ニーズが高まった結果だろう。

関西圏はコロナ禍でも郊外より都市部

2年前から続くコロナ禍で、郊外への注目度が上がったことは報道でも伝えられている。首都圏の住みたい街ランキングは郊外人気が顕著な結果となった。
ところが、関西では逆に都市部への注目度が一層増す結果に。なぜか。
関西は首都圏に比べてテレワーク率が低いことが理由のひとつにあげられる。また、生まれ育った地域に住み続けている人が多いことや、通勤時間が首都圏ほど長くないことなどから、コロナ禍でも生活スタイルを変える人が少なかったためではないだろうか。

「明石」がランクアップした理由とは?

一方、都心部以外で大きくランクアップし、初のベスト20入りしたのが「明石」(27位→16位)。
「住みたい自治体」でも明石市は過去最高の6位となり、関西全体で最も得点を伸ばした(+123点)。

住みたい自治体ランキング(1位~20位

明石がこれほどランクアップしたのはなぜだろう。
明石市は神戸市など周辺エリアからファミリー層が流入し、2020年の国勢調査では人口増加率が全国62中核市で1位になっている。
明石駅周辺で長年進められていた再開発が完成し、大型商業施設や子育て支援などの公共施設、タワーマンションが整備されたことに加え、子ども医療費の無料化、第2子以降の保育料無料化、中学校の給食の無償化など市が子育て支援の施策を次々に打ち出し、ファミリー層を引きつけているようだ。
投票した理由として、駅周辺のショッピングモールや商店街の利便性、緑豊かな明石公園など、派手ではないが暮らしやすさを評価する人が多かった。
また、明石市に投票した人のうち、神戸市・明石市以外の兵庫県に住む人が半数近くを占めた。子育て支援の取り組みなど、市民目線の自治体の施策が、他都市から新住民を呼び込む大きな要因となっていることがわかる。

明石市(写真/PIXTA)

明石市(写真/PIXTA)

「住みたい自治体」では、草津市(+43点)、姫路市(+58点)も得点が急上昇した。
草津市の中心部である「草津」や「南草津」は、再開発により大型商業施設を整備。両駅を核とする地域発展への期待に加えて、琵琶湖畔の景観に恵まれた住宅地の美しさや、JRで大阪と直結する交通アクセスの良さなどにより、不動産価値上昇への期待などが高支持の理由だろう。
「姫路市」も駅周辺の再整備で駅前に大型商業施設が整備。大ホールのある姫路市文化コンベンションセンターやはりま姫路総合医療センターなどの大型施設のオープンが相次ぎ、駅周辺が目覚ましい発展を見せている。

明石市、草津市、姫路市はいずれも再開発・大型整備が完成したことで街が美しく整備され、生活の利便性を増した。さらにJR新快速電車の停車駅で大阪や神戸、京都への通勤が可能なことなどが、共通した魅力といえる。

再開発で変化した姫路駅前(写真/PIXTA)

再開発で変化した姫路駅前(写真/PIXTA)

ブランドより実利性が重視される傾向

住みたい街2022を見ると、若い世代の都心部人気の高まりとともに、郊外でも子育てしやすい住環境や自治体の施策が評価に影響していることを感じた。
明石市がその典型だが、高槻市(+40点)も医療施設や教育環境の充実が支持を集めており、姫路市も文化・娯楽施設や学びの施設充実で評価を高めている。
従来からのイメージやブランド力だけでなく、実利面でも住みやすさに注目が集まっている印象をもつ。今後、西宮北口のような住みたい街ランキング上位の常連となる街が新たに登場するかもしれない。今後の結果が楽しみだ。

■関連ページ
>「SUUMO住みたい街ランキング2022 関西版」
>住みたい街ランキング トップページ

■記事中に紹介しているランキング表について
・調査対象は関西2府4県(大阪府・兵庫県・京都府・滋賀県・奈良県・和歌山県)に住む20代~40代の男女4600人。調査は2022年1月に実施。最も住みたい街(駅・自治体)から3位までを投票し、最も住みたい街を3点、2番目に住みたい街を2点、3番目に住みたい街を1点として集計している。
・本年度より、集計方法を「※注」のように変更している。
※注:本年度より、「駅すぱあと路線図」において、複数の駅が、地下通路や連絡通路でつながっている場合には同じ駅として集計している。表中の※印は本年度より得点を合算している駅で、先頭に表記している駅を代表して表示している。以下が合算している対象駅
※1:梅田 大阪 大阪梅田 東梅田 西梅田 北新地
※2:神戸三宮 三ノ宮 三宮 三宮・花時計前
※3:なんば 難波 大阪難波 JR難波
※4:天王寺 天王寺駅前
※5:神戸 高速神戸 ハーバーランド
※6:烏丸 四条
※7:明石 山陽明石
※8:心斎橋 四ツ橋

空き家だらけの下町に2000世帯も転入! 大阪・蒲生四丁目がオシャレなまちに「がもよんモデル」

「がもよん」の愛称で親しまれる大阪の下町が、2021年度グッドデザイン賞「グッドデザイン・ベスト100」に選出されました。昭和の風情が今なお息づく庶民的な街がいったいなぜ、ここにきて注目を集めているのでしょう。それはこの街が日本中の市区町村が頭を抱える「空き家問題」「古民家再生」に対し先鋭的な取り組みをしてきたからなのです。

「がもよんモデル」と呼ばれる、その方法とは? 実際に「がもよん」の街を歩き、キーパーソンをはじめ関わった人々にお話を伺いました。

街をむしばむ「空き家問題」に悩まされた「がもよん」

「がもよん」。まるでドジな怪獣のような愛らしい語感ですが、これは大阪府大阪市城東区の蒲生(がもう)四丁目ならびにその周辺の愛称。「がもう・よんちょうめ」略して「がもよん」なのです。

大阪城の北東に位置する「がもよん」には住宅がひしめいています。蒲生四丁目交差点を中心として半径2kmに広がるエリアに約7万もの人が暮らしているのです。かつては大坂冬の陣・夏の陣の激戦地。現在は大阪きっての住宅密集地となっています。

住宅が軒を連ねる蒲生四丁目。通称「がもよん」(写真撮影/吉村智樹)

住宅が軒を連ねる蒲生四丁目。通称「がもよん」(写真撮影/吉村智樹)

大阪メトロ長堀鶴見緑地線と同・今里筋線が乗り入れる「がもよん」は、副都心「京橋」まで地下鉄でわずか3分で着く交通利便性が高い場所。それでいて昭和30年(1955年)ごろに発足した城東商店街や入りくんだ路地など、のんびりした下町の風情がいまなお薫るレトロタウンなのです。

味わい深い小路が縦横に延びる「がもよん」(写真撮影/吉村智樹)

味わい深い小路が縦横に延びる「がもよん」(写真撮影/吉村智樹)

そんな「がもよん」は下町ゆえの問題もはらんでいました。旧街道に沿う蒲生四丁目は第二次世界大戦の空襲を逃れたため戦前に建てられた木造の古民家や長屋、蔵が多く残っていたのです。住民の少子高齢化とともに築古の空き家が増加し、住む人がいない建物は日に日に朽ちてゆきます。街は次第に寂れたムードが漂い始めていました。

2000世帯以上の流入を成し遂げた「がもよんにぎわいプロジェクト」

そんな下町「がもよん」が2021年10月20日、グッドデザイン賞2021「グッドデザイン・ベスト100」に選出されました。

グッドデザイン賞2021「グッドデザイン・ベスト100」に選出された「がもよんにぎわいプロジェクト」(画像提供/がもよんにぎわいプロジェクト)

グッドデザイン賞2021「グッドデザイン・ベスト100」に選出された「がもよんにぎわいプロジェクト」(画像提供/がもよんにぎわいプロジェクト)

約5800件から選ばれたのは、一般社団法人「がもよんにぎわいプロジェクト」の事業。「がもよんにぎわいプロジェクト」とは閉業した昭和生まれの商店や老朽化した古民家などの空き家を事業用店舗に再生する取り組みのこと。これが「住民が地域活性化に参加できる“エリア全体のリノベーション”を実現した」と高く評価されたのです。

「“がもよんにぎわいプロジェクト”を始めて13年。今回の受賞が全国で増加する空き家問題を解決する一手となり、活動を支えてくれた地域の人が、街を誇りに感じてもらえたらうれしいですね」

そう語るのは「がもよんにぎわいプロジェクト」代表理事であり、建設・不動産業を営む会社R-Play(アールプレイ)の代表取締役、和田欣也さん(56)。

「がもよんにぎわいプロジェクト」代表理事、和田欣也さん(写真撮影/吉村智樹)

「がもよんにぎわいプロジェクト」代表理事、和田欣也さん(写真撮影/吉村智樹)

和田さんは無人物件の所有者と事業オーナーとのマッチングによって空き家問題を解決し、「貸す人も借りる人も地域も喜ぶ」三方よしの新たなビジネスモデルを打ち立てています。しかも公的な補助金はいっさい受け取らず、民間の力だけで。「経済自立したエリアマネジメント」を成立させたのです。

「この5年間で、がもよんは2030世帯も住民が増えたんです(令和2年 国勢調査)。『にぎわう』という当初の目標は達成できているんじゃないかな」

「がもよんにぎわいプロジェクト(GAMO4)」のラッピングバスが大阪市内を走る。知名度がアップし、さらににぎわいをもたらす(画像提供/がもよんにぎわいプロジェクト)

「がもよんにぎわいプロジェクト(GAMO4)」のラッピングバスが大阪市内を走る。知名度がアップし、さらににぎわいをもたらす(画像提供/がもよんにぎわいプロジェクト)

地道な「街歩き」で人々と接してきた効果は絶大

和田さんがこの10余年に「がもよん」内にて手掛けた空き家再生の物件は40軒以上。そのうち店舗は33軒。刮目すべきは、再生した物件のほぼすべてがしっかり収益を上げ、成功していること。家庭の事情で閉業した一例を除き、業績の不振によって撤退したケースはなんと「ゼロ」なのだそう。コロナ禍の渦中ですら一軒も潰れることなく営業していたのだから感心するばかり。

成功の秘訣は、自らの足で街を巡り、路地に立ち、街の空気を感じること。和田さんが「がもよん」を歩くと、皆が声をかけてくる。いわば「街の顔」なのです。

「僕の顔、み~んな知っています。街を歩けば、近所のおばちゃんから『あそこに新しい店ができたなー。こんど連れて行ってーや』と声をかけられる。サービス券を渡したら、『孫も連れて行くから、もう一枚ちょうだい』って」

和田さんは「がもよん」エリア内にある40軒以上の空き家を再生してきた(写真撮影/吉村智樹)

和田さんは「がもよん」エリア内にある40軒以上の空き家を再生してきた(写真撮影/吉村智樹)

「ここは“がもよん”や。梅田とちゃうぞ」と敬遠された

そんな和田さんには他のまちおこしプランナーにはない大きな特徴があります。それは「耐震診断士の資格」を取得していること。過去に「あいち耐震設計コンペ最優秀賞」「兵庫県耐震設計コンペ兵庫県議長賞」を受賞している和田さん。実はこの耐震診断士資格こそが「がもよんにぎわいプロジェクト」の発端といえるのです。

「がもよんにぎわいプロジェクト」が誕生したきっかけは、2008年6月、築120年以上の米蔵をリノベーションしたイタリアンレストラン「リストランテ・ジャルディーノ蒲生」(現:リストランテ イル コンティヌオ)の開業でした。

再生物件の第一号。古い米蔵をイタリアンの店に蘇らせた「リストランテ イル コンティヌオ」(旧:リストランテ・ジャルディーノ蒲生)(画像提供/がもよんにぎわいプロジェクト)

再生物件の第一号。古い米蔵をイタリアンの店に蘇らせた「リストランテ イル コンティヌオ」(旧:リストランテ・ジャルディーノ蒲生)(画像提供/がもよんにぎわいプロジェクト)

老朽化したまま放置された米蔵の扱いに悩んでいた現スギタハウジング株式会社の代表取締役、杦田(すぎた)勘一郎さん。「古い米蔵が醸し出す温かな雰囲気を残したい」と、当初は「そば屋」をイメージしてテナントを募集しました。しかしながら、反応がありません。「先代から引き継いだ古い建物を守りつつ、次の世代へ良い形で残したい」と願うものの、和食という固定観念にとらわれていた様子。

そこで杦田さんは、耐震のエキスパートである和田さんに参加を呼びかけ、古民家再生プロジェクトがスタートしました。そして和田さんは「蔵だから和食、では当たり前すぎる」と、「柱や梁を残し、蔵の装いをそのまま活かしたイタリアンレストラン」への転用を提言したのです。

「フルコースでイタリアン。一番安いコースを3000円くらいで食べられる。そういうタイプの予約制の店は、がもよんにはなかった。ないからこそ、やりたかったんです」

しかし、蔵の所有者は「そんなワケのわからんものにするくらいなら更地にせえ」と猛反対。周囲からも「がもよんでイタリアンなんか流行るわけがない」と奇異な目で見られ、理解が得られませんでした。

「めちゃくちゃ敬遠されました。13年前はまだ外食の際に予約を取る習慣ががもよんにはなかったんです。ジャージにつっかけ履きのままで、ふらりとメシ屋の暖簾をくぐるのが当たり前やったから。『予約がないと入れない? はぁ? なにスカシとんねん。ここをどこやと思っとんのじゃ。がもよんやぞ。梅田ちゃうで』と、訪れた客から捨て台詞まで吐かれる。梅田に比べて破格に安い値段設定にしたのですが、それでも受け入れてもらえませんでした」

「高級レストランへの再生をなかなか理解してもらえず、ナンギした」と当時を振り返る和田さん(写真撮影/吉村智樹)

「高級レストランへの再生をなかなか理解してもらえず、ナンギした」と当時を振り返る和田さん(写真撮影/吉村智樹)

和田さんは「失敗したらギャラはいらん」と覚悟の姿勢を見せて所有者を説得。建築のみならず腕利きの料理人のスカウトまで担ったのです。

古い物件ゆえに耐震や断熱の工事に時間がかかります。蔵は天井が低く、地面を掘り下げる必要が生じるなど工事は困難を極めました。周囲は「失敗を確信していた」といいます。

ところが結果は……オープンと同時にテレビをはじめマスコミが「下町に不似合いなイタリアンの店が誕生」と報じ、噂を聞きつけて他都市からわざわざ訪れる客やカップル、家族連れなどで予約が取れぬほどの盛況に。街のランドマークとなり、がもよんの外食需要が掘り起こされたのでした。

このイタリアンの件を機にタッグを組んだ和田さんと杦田さん。杦田さんは「自分は空き家を数多く所持している。一軒の店の再生という“点”で終わらず、地域という“面”で活性化に取り組まないか」と提案し、これが「がもよんにぎわいプロジェクト」へと発展していったのです。

目の当たりにした阪神淡路大震災の悲劇

和田さんが古民家を再生するにあたり、もっとも重要視するのが「耐震」。

「耐震にはうるさいので、疎ましがられます。『和田さんはさー、耐震野郎なんだよ』とよくからかわれました。喜ばしいことですよ。それくらい耐震を考えて街づくりをしている人が少ないということです」

和田さんが耐震に重きを置く背景には1995年に発生した阪神・淡路大震災がありました。

「震災でお亡くなりになった約7000人のうち、圧死したのはおよそ3000人。多くの人が自分の家につぶされて亡くなっている。最も安心できるはずのわが家に殺されるって、なんて悲しいんだろうと」

和田さんは震災の後、ブルーシートや水を車に積んで被災地へボランティアへ出かけました。そこで見た光景は「忘れることができない」悲壮なものだったのです。

「雪がちらつく寒い夜、公園に被災した人が集まっている。けれども誰も眠っていないんです。『襲われるんじゃないか』と不安になって眠ることができない。みんな殺気立っていました」

生き残った人たちまで疑心暗鬼に駆られる悲劇を二度と繰り返したくない。そのため耐震の重要性を説くものの、当初はなかなか理解してもらえませんでした。

「古民家改修の耐震設計は一から行うより大変なんです。どうしてもお金と時間がかかる。そのわりに目に見えた効果がない。お店に入って『耐震がしっかりしているか』なんて、わからないじゃないですか。そもそも地震が来るかどうかすらわからない。耐震を軽んじれば時間も予算も削減できる。なので、所有者の説得には何度も心が折れそうになりましたよ」

阪神・淡路大震災の経験から、耐震工事の重要性を痛感した和田さん(写真撮影/吉村智樹)

阪神・淡路大震災の経験から、耐震工事の重要性を痛感した和田さん(写真撮影/吉村智樹)

「ちょっと背伸びして」味わえるフードタウンへ

イタリアンの店「ジャルディーノ蒲生」のヒットをきっかけに旗揚げされた「がもよんにぎわいプロジェクト」。このプロジェクトはいったい、なにをテーマとするのか。これが和田さんに課せられた最初の命題でした。

同じころ、大阪の各所では「古い街を活性化させようとする動き」が起こっていました。先駆事例を挙げるなら、北区の中崎町は「雑貨」、天王寺区の空堀(からほり)町は「アート」といったように。

そこで和田さんが選んだプロジェクトのテーマは「ごはん」。

「雑貨はお客さんが『店に入っても何も買わない』選択ができてしまう。アートは『自分には縁がない』と考える人がいる。けれども誰しも必ず食事はする。月に一度は外食をするでしょう。なので、人口密度が高くファミリーが多いがもよんを『フードタウンにしようやないか』と」

食べ物でのまちおこし。下町なら「B級グルメ」が定番。しかし和田さんは、あえてB級を選びませんでした。

「がもよんでB級グルメって、そのまんまでしょう。ギャップがない。目指したのは“地元の高級店”。お祝いごととか、正月に娘や息子が帰ってくるとか。そういうときに『ちょっと、ごはんを食べに行こうや』となりますよね。でもファミレスでは『ざんない』(しのびない)。とはいえオータニはさすがに高い。そのあいだくらいの、“ちょい背伸びする料金”でおいしいものが食べられる街にしましょうよ、と提案しました」

こうして古民家の趣を大切に残しつつ、一店舗一店舗オリジナリティに溢れる飲食店の誘致が始まったのです。

「古民家再生」の気概に触れ、腕のいい料理人が集結

「和田さんと杦田さんから、『がもよんには本格的な和食割烹がない。店をやっていただけませんか』とお誘いをいただいて」

そう語るのは、オープン5年目を迎えるカウンター割烹『かもん』店主、多羅尾光時さん。

カウンター割烹『かもん』店主、多羅尾光時さん(写真撮影/吉村智樹)

カウンター割烹『かもん』店主、多羅尾光時さん(写真撮影/吉村智樹)

和田さんたちからの出店の依頼を引き受けた最も大きな理由は「古民家の再生プロジェクト」という点が琴線に触れたから、なのだそう。

「空き家って、どの街でも大きな問題になっているじゃないですか。私も微力ながら問題解消のために協力できるのでは、と思いまして」

紹介された空き家は「93年前までの資料しか残っていない」という、築100年越えの可能性がある四軒長屋の一棟。もともとは大きな邸宅で、一軒を四軒に分離させた異色の建築です。恐るべきことに、工事前はなんと「耐震措置ゼロ」というつくりでした。

もともとは築100年を超えるとみられる古民家だった(写真撮影/吉村智樹)

もともとは築100年を超えるとみられる古民家だった(写真撮影/吉村智樹)

「和田さんにしっかり耐震工事をやっていただきました。それでいて、できるかぎり元の建物の情緒を残してもらって。なので、とても気に入っています。欄間は当時の家のまま。ガラスも今ではつくる職人さんがいない、割れたら終わりという貴重なものなんです」

風情ある欄間は当時の家のまま。カウンター中央にはしっかりとした太い柱が設えられ、耐震対策は万全(写真撮影/吉村智樹)

風情ある欄間は当時の家のまま。カウンター中央にはしっかりとした太い柱が設えられ、耐震対策は万全(写真撮影/吉村智樹)

「割れると再現できない」という貴重なガラス戸(写真撮影/吉村智樹)

「割れると再現できない」という貴重なガラス戸(写真撮影/吉村智樹)

再生した古民家に「満足している」という多羅尾さん。さらに気に入ったのは「がもよんにぎわいプロジェクト」に加盟している店同士の「仲の良さ」でした。

「ミナミや北新地って各店がライバル関係なんです。けれども、がもよんは店舗さん同士の仲が良くて。一緒に飲みに行ったり、ご飯を食べに行ったり。皆さんで協力し合ってまちおこしをしている。『自分もその輪に入って力になれたら』という気持ちが湧いてきましたね」

古民家に惹かれUターンする人も

かつての「がもよん」の住人が、古民家再生の取り組みに惹かれ、再びこの街へ転入してきた例もあります。

そのうちの一軒が2021年6月にオープンしたイタリアンカフェ『amaretto(アマレット)』。エスプレッソのみならず抹茶やほうじ茶のティラミスなど絶品のイタリアンスイーツが楽しめるお店です。

ほろ苦い「ほうじ茶のティラミス」が人気(写真撮影/吉村智樹)

ほろ苦い「ほうじ茶のティラミス」が人気(写真撮影/吉村智樹)

店主の脇裕一朗さんは他都市でさまざまな飲食関係の業務を経験したのち独立。故郷であるがもよんへ帰ってきました。そうして初めての個人店を開いたのです。

イタリアンカフェ「amaretto(アマレット)」のオーナーシェフ、脇裕一朗さん。古民家再生の取り組みに関心を寄せ、がもよんへUターンした(写真撮影/吉村智樹)

イタリアンカフェ「amaretto(アマレット)」のオーナーシェフ、脇裕一朗さん。古民家再生の取り組みに関心を寄せ、がもよんへUターンした(写真撮影/吉村智樹)

「イタリアの田舎町にある雰囲気の店にしたかったので、古民家を探していたんです。そんなときに以前に住んでいたがもよんが古民家再生でまちおこしをしていると知り、『それはちょうどいいな』と思って和田さんにお願いしました」

吹抜けに建て替えた古民家は、天井はそのまま。梁も玄関戸があった位置も往時の姿を今に残しています。

たっぷりとした広さがあるアプローチも古民家時代のまま。「このスペースが気に入ったんです」と脇さんは語る(写真撮影/吉村智樹)

たっぷりとした広さがあるアプローチも古民家時代のまま。「このスペースが気に入ったんです」と脇さんは語る(写真撮影/吉村智樹)

さらに脇さんが気に入ったのは、街を包む活気でした。

「がもよんは、いい意味で雰囲気は昔っからの下町のまんま。けれども人口が増え、『新しいお店がいっぱいできているな』という印象です」

プロジェクトが生みだす店同士の連帯感

「がもよんにぎわいプロジェクト」は店舗物件の保守管理にとどまらず、マネジメントの一環として、店舗同士が集うコミュニティも運営しているのが特徴。割烹『かもん』の多羅尾さんがプロジェクトに関心を抱いたのも、この点にありました。

コミュニティの本拠地は元・空き家だったスペース「久楽庵(くらくあん)」。ここで毎週木曜日に店主ミーティングが開かれているのです。

元・空き家だったスペース「久楽庵(くらくあん)」。定期的に店主が集まりミーティングが開かれる(画像提供/がもよんにぎわいプロジェクト)

元・空き家だったスペース「久楽庵(くらくあん)」。定期的に店主が集まりミーティングが開かれる(画像提供/がもよんにぎわいプロジェクト)

「がもよんにぎわいプロジェクトは加盟金などない非営利団体。鬼ごっこと同じです。『入りたい』と思ったら入っていい。『もういやや』って感じたら抜けていい。ミーティングも任意参加。そんな気楽な関係やけど、参加してくださる方はとても多いんですよ」(和田さん)

ミーティングではハード面での相談はもちろん、経営ノウハウの共有、情報交換や共同イベント企画など、店主さんたちが腹を割って話し合います。そうすることで店同士が経営動向を把握し、悩みを解消し合い、連帯感を生む。支え合い、ひいては、がもよん一帯の魅力を押し上げているのです。

「お店の周年記念には、花を贈り合う。そんな温かな習慣が生まれています。お店同士の仲がいいと、お客さんにもそれが伝わる。常連客が『あっちの店にも行ってみるわ』と他店へも顔を出すようになり、経済が回るんです」

店主同士、仲がいい。この良好な関係を築くため、和田さんには決めている原則があります。それは「同じ業態の店舗はエリア内で一つだけ」というルール。

「例えばラーメン屋さんやったら一軒だけ。同業者がお客さんを奪い合って共倒れになったらプロジェクトが持続できない。それに大家さんも、店子と店子がライバルになったら悲しいでしょう」

「競争ではなく共闘できる環境づくり」。それが和田さんのモットーなのです。

「空き家の活用は普通、物件の契約が済んだら関係は終わる。でも、がもよんにぎわいプロジェクトは“契約からがスタート”なんです。『がもよんに店を開いて良かった』と思ってほしいですから。そのために、やれるサポートはやっていくつもりです」

「まちおこしは“店同士の仲の良さ”が大事」と和田さんは語る(写真撮影/吉村智樹)

「まちおこしは“店同士の仲の良さ”が大事」と和田さんは語る(写真撮影/吉村智樹)

こうして和田さんたちの取り組みは「売り上げ」という目に見える形で効果を表し、いつしか「がもよんモデル」と呼ばれ、評価され始めました。

赤と黒が織りなす戦乱のゲストハウス

成功のノウハウを蓄積し、発起から10年を過ぎて地域密着型まちづくりモデルとして成熟してきた「がもよんにぎわいプロジェクト」。その手法は次第に飲食店というワクを超え、他分野へ応用されるようになってきました。

例えば2018年に「戦国の世」をイメージしてオープンしたゲストハウス「宿本陣 幸村/蒲生」。

がもよんが戦国武将「真田幸村」ゆかりの地であることから、幸村のイメージカラーである赤と黒を基調として内装。寝室には人気アニメ『ワンピース』とのコラボでも話題の墨絵師・御歌頭氏が描く大坂・冬の陣が壁全面に広がっており、大迫力。

ゲストハウス「宿本陣 幸村/蒲生」。かつて「大坂・冬・夏の陣」の合戦場だったがもよん。真田幸村の激闘を描いた真っ赤な寝室が話題に(写真撮影/吉村智樹)

ゲストハウス「宿本陣 幸村/蒲生」。かつて「大坂・冬・夏の陣」の合戦場だったがもよん。真田幸村の激闘を描いた真っ赤な寝室が話題に(写真撮影/吉村智樹)

「『民泊ブームの逆路線を行こう』。そんな発想から生まれた宿です」

そう語るのは、和田さんの右腕として働くアールプレイ株式会社の宅建士、田中創大(そうた)さん。

和田さんの右腕として働く宅建士、田中創大さん(写真撮影/吉村智樹)

和田さんの右腕として働く宅建士、田中創大さん(写真撮影/吉村智樹)

確かに、野点を再現した居間、黒で囲まれた和の浴室など、民泊ではありえない非日常感があります。

「もともとは大きな住宅でした。『せっかく広々とした場所があるのだから、旧来のホテルや旅館とは違う、がもよんに来ないと体験できないエンタテインメントを感じてもらおう』。そのような気持ちから、見てのとおりの設えになりました」

ブッ飛んだ発想は海を越えて口コミで広がり、コロナ禍以前は英語圏や中華圏から宿泊予約が殺到したのだそう。

改修不能な空き家が「農園」に生まれ変わった

古民家の再生によりまちおこしを図る「がもよんにぎわいプロジェクト」。とはいえ古民家のなかには改修不能な状態に陥った物件もあります。そこで和田さんたちが始めたのが貸農園「がもよんファーム」。

住宅地に突如現れる貸農園「がもよんファーム」(写真撮影/吉村智樹)

住宅地に突如現れる貸農園「がもよんファーム」(写真撮影/吉村智樹)

2018年、平成最後の年に大阪に甚大な被害をもたらした「平成30年台風第21号」。風雨にさいなまれた空き家4棟は屋根瓦が崩れ落ちるなど倒壊の危険性をはらんでいました。

「がもよんファーム」は、そんな空き家が連なっていた住宅密集地にあります。「え! ここに農園が?」と驚くこと必至な、意外な立地です。

案内してくれた田中さんは、こう言います。

「台風の被害に遭った空き家を修復しようにも、当時は大阪全体の業者さんが多忙で、工事のスケジュールが押さえられない状況でした。『このまま放置はできない』と、仕方なく解体し、更地にしたんです」

台風により大きな被害を受けた古民家の跡地に貸農園を開いた(画像提供/がもよんにぎわいプロジェクト)

台風により大きな被害を受けた古民家の跡地に貸農園を開いた(画像提供/がもよんにぎわいプロジェクト)

台風の被害が大きかった建物を解体撤去して拓いた貸農園「がもよんファーム」。令和元年(2019)5月、新元号の発表とともに開園。全29区画。1区画が5平米(約2.5平方m)。1 区画/月に4000円という手ごろな賃料。

開園に先立ち、設置したのが農機具を預けられるロッカー。

「住宅街なので鍬(くわ)を持参するのはハードルが高い。『手ぶらで来られる農園』をアピールしました」

農器具を預けられるロッカー。手ぶらで往き来できる(写真撮影/吉村智樹)

農器具を預けられるロッカー。手ぶらで往き来できる(写真撮影/吉村智樹)

それにしても、いったいなぜ「農園」だったのでしょう。

「街の空き地はコインパーキングにするのが一般的です。けれども、夜中にエンジンの音が聴こえたり、狭路なので事故につながったり。『駐車場では、近隣の人々に喜んでもらえないだろう』と。それで地域のかたが利用できる農園を開きました。これまで農園という発想がなかったです。なんせ畑がぜんぜんない地域だったので。初めての経験で、手探りでしたね」

反応が予想できず、恐る恐る始めた「がもよんファーム」。ところが開園後1カ月で全区画が埋まる人気に。しかも8割以上のユーザーが開園当時から現在まで利用を継続しているというから驚き。いかに貸農園のニーズが潜在していて「待望の空間」だったかがうかがい知れます。

前例がないため不安だった貸農園の開園。しかし、またたく間に予約で全区画が埋まった(写真撮影/吉村智樹)

前例がないため不安だった貸農園の開園。しかし、またたく間に予約で全区画が埋まった(写真撮影/吉村智樹)

さらに幸運だったのが、がもよん在住歴13年という元・農業高校の教師、加藤秀樹さんが退職直後に区画の借主になってくれたこと。加藤さんが他の利用者に栽培のアドバイスをするなどし、おかげで世代間交流が盛んに。農園から新たなコミュニティが生まれたのです。

「がもよんファーム」の救世主と呼んでも大げさではない元・農業高校の教師、加藤秀樹さん(写真撮影/吉村智樹)

「がもよんファーム」の救世主と呼んでも大げさではない元・農業高校の教師、加藤秀樹さん(写真撮影/吉村智樹)

「週に3回、夏は週に4回は『がもよんファーム』へ来ます。自宅から歩いて13~14分なので近いですし。『がもよんファーム』の存在はホームページで知りました。この辺で『がもよんバル』(※)というのをやっていて、『今年もあるのかな』と思ってホームページを見てみたら、たまたま農園が開かれるニュースを見つけたので」(加藤さん)

※がもよんバル……和田さんたちが開催する飲食イベント。店と地域の人をつなぐ取り組み

「加藤さんは一般の人ではわかりにくい病気を発見してくれて、『気をつけたほうがいいですよ』とアドバイスをしてくださるので助かります」(田中さん)

加藤さんの助言によりキュウリがたくさん実り「ご近所に配って喜ばれたのよ」とほほ笑むご婦人も。

さらに『がもよんファーム』は新たなニーズを開拓しました。

「趣味で園芸を楽しんでいる利用者だけではなく、アロマのお店がハーブを育てていたり、クラフトビールの工房がホップを育てていたりします」(田中さん)

ゆくゆくは、がもよん生まれの地ビールがこの街の名物になるかもしれません。住宅密集地に誕生した貸農園が商業利用の需要を発掘したのです。これもまた、街全体を活気づけるエリアリノベーションであり、「古民家再生」の姿といえるでしょう。

「がもよんモデル」を世界へ

こうして文字通り「にぎわい」を創出し、「グッドデザイン・ベスト100」に選出された「がもよん」。和田さんが考える今後は?

「喫茶店でお茶を飲んでいたらね、後ろの席で女性が『昔はな、がもよんに住んでるって言うのが恥ずかしかった。なので、京橋に住んでるねんって言ってた。でも今は『がもよんに住んでるって自慢してるねん』と話していたんです。思わず『よしっ!』って小さくガッツポーズしましたよ。自分が住む街を誇りに思えるって、素敵じゃないですか。こんな気持ちを日本中、世界中の人に感じてほしい。がもよんモデルには、それができる力があると思うんです。なので、ほかの街でも展開していきたいですね」

「がもよんモデルを全国、全世界へと広げてゆきたい」。和田さんの夢は大きい(写真撮影/吉村智樹)

「がもよんモデルを全国、全世界へと広げてゆきたい」。和田さんの夢は大きい(写真撮影/吉村智樹)

空き家問題への対策から誕生した新たなビジネスモデル「がもよんモデル」。地域のお荷物だった空き家が収益を生み、「わが街の自慢」にイメージチェンジする。和田さんはその方法論を全国に広げたいと考えています。

これからますます深刻になってゆく空き家問題。しかしながら、空っぽだからこそ、新しい価値観を芽生えさせるチャンスでもある。がもよんが、それを教えてくれた気がします。

●取材協力
がもよんにぎわいプロジェクト

今「ローカル飲食チェーン」が熱い。元 『秘密のケンミンSHOW』リサーチャーが注目する7社

全国的な知名度はないけれど、局地的に絶大な支持を受ける「ローカル飲食チェーン」が今、注目されています。その理由とは? 元『秘密のケンミンSHOW』 リサーチャーであり、全国7都市を取材した新刊『強くてうまい! ローカル飲食チェーン』の著者・辰井裕紀さんに、愛される秘訣を伺いました。

なぜ今「ローカル飲食チェーン」が注目されるのか

このところ、「ローカル飲食チェーン」がアツい盛り上がりを見せています。「ローカル飲食チェーン」とは、全国展開をせず限定したエリアのなかだけで支店を広げる飲食店のこと。マクドナルドや吉野家のように全国的な知名度はありません。けれども反面「地元では知らぬ者なし」なカリスマ的人気を誇ります。

この局地的なフィーバーぶりは人気テレビ番組『秘密のケンミンSHOW 極』(読売テレビ・日本テレビ系)でたびたびとりあげられ、紹介されたチェーン店はもれなくSNSでトレンド入り。さらに注目度が高まり、雑誌はこぞって「全国ローカル飲食チェーンガイド」を特集するほど。

(画像/イラストAC)

(画像/イラストAC)

そのような中、ついに決定打とおえる書籍が発売されました。それが『強くてうまい! ローカル飲食チェーン』(PHPビジネス新書)。豚まんやカレーライス、おにぎりなどなど、創意工夫を積み重ねた味とサービスで地元の期待に応え、コロナや震災などの逆境にも耐え抜いた全国7社の経営の秘密を明らかにした注目の一冊です。

地元に愛される7社を解剖した話題の新刊『強くてうまい! ローカル飲食チェーン』(PHPビジネス新書)(写真撮影/吉村智樹)

地元に愛される7社を解剖した話題の新刊『強くてうまい! ローカル飲食チェーン』(PHPビジネス新書)(写真撮影/吉村智樹)

著者はライターであり、かつてテレビ番組「秘密のケンミンSHOW」のリサーチャーとして全国各地のネタを集めた千葉出身の辰井裕紀さん(40)。

話題の新刊『強くてうまい! ローカル飲食チェーン』著者、辰井裕紀さん(写真撮影/吉村智樹)

話題の新刊『強くてうまい! ローカル飲食チェーン』著者、辰井裕紀さん(写真撮影/吉村智樹)

夢かうつつか幻か。わが街にはいたるところにあるのに、一歩エリア外へ出れば誰も知らない。反対に自分の県には一軒もないのに、お隣の県へ行けば頻繁に出くわす、不思議なローカル飲食チェーン。この謎多き業態の魅力とは? 地元に愛される秘訣とは? 著者の辰井さんにお話をうかがいました。

前代未聞。 「ローカル飲食チェーン」の研究書が登場

――辰井さんが初めて上梓した新刊『強くてうまい! ローカル飲食チェーン』は実際に自らの足で全国を巡って取材した労作ですね。この書籍の企画が生まれたいきさつを教えてください。

辰井裕紀(以下、辰井):「以前からTwitterで“飲食チェーンに関するツイート”をよくしていたんです。『こんなにおいしいものが、こんなに安く食べられるなんて』など、外食にまつわる喜びをたびたびつぶやいていました。それをPHP研究所の編集者である大隅元氏がよく見ていて、『ローカル飲食チェーンの本を出さないか』と声をかけてもらったんです」

――Twitterで食べ物についてつぶやいたら書籍の書き下ろしの依頼があったのですか。夢がありますね。しかし全国に点在する飲食チェーンですから、実際の取材や執筆は大変だったのでは。

辰井:「大変でした。資料を参考にしようにも、ローカル飲食チェーンについて考察された本が、過去にほぼ出版されていなかったんです。あるとすればサイゼリヤや吉野家のような全国チェーンにまつわる本ばかり。類書どころか先行研究そのものが少ないので引用ができず、苦労しました」

――確かに全国のローカル飲食チェーンだけに絞って俯瞰した書籍は、私も読んだ経験がありません。では、どのように事前調査を行ったのですか。

辰井:「国会図書館やインターネットで文献や社史にあたったり、取り寄せたり。地元でしか得られない文献は現地まで行って入手しました」

一次資料を得るためにわざわざ全国各地へ足を運んだという辰井さん(写真撮影/吉村智樹)

一次資料を得るためにわざわざ全国各地へ足を運んだという辰井さん(写真撮影/吉村智樹)

――現地まで行って……。ほぼ探偵じゃないですか。骨が折れる作業ですね。

辰井:「調べられる限り、ぜんぶ調べています」

自ら選んだ「強くてうまい!」7大チェーン

――新刊『強くてうまい! ローカル飲食チェーン』では北海道の『カレーショップインデアン』 、岩手『福田パン』、茨城『ばんどう太郎』、埼玉『ぎょうざの満洲』、三重『おにぎりの桃太郎』、大阪『551HORAI』、熊本『おべんとうのヒライ』の計7社にスポットライトがあたっています。この7社はどなたが選出なさったのですか。

 『強くてうまい! ローカル飲食チェーン』に選ばれた全国7社(写真撮影/辰井裕紀)

『強くてうまい! ローカル飲食チェーン』に選ばれた全国7社(写真撮影/辰井裕紀)

辰井:「自分で選びました。【お店として魅力があるか】【行けばテンションが上がるか】【独自のサービスを受けてみたいか】、そういった『秘密のケンミンSHOW』で取り上げるようなポップな面と、ビジネス的に注目できる面とがうまく両輪で展開している点で、『この7社だ』と」

――メニューやサービスのユニークさと経営の成功を兼ね備えた、まさに「強くてうまい!」企業が選ばれたのですね。

辰井:「その通りです」

客が鍋持参。 「車社会」が生みだした独特な食習慣北海道・十勝でチェーン展開する『カレーショップインデアン』(写真撮影/辰井裕紀)

北海道・十勝でチェーン展開する『カレーショップインデアン』(写真撮影/辰井裕紀)

――この本を読んで私が特にビックリしたのが、北海道・十勝を拠点とする『カレーショップインデアン』(以下、インデアン)が実施している「鍋を持ってくればカレーのルー※1が持ち帰られる」サービスでした。どういういきさつで生まれたサービスなのですか。

※1……インデアンではカレーソースのことを「ルー」と呼ぶ

『カレーショップインデアン』のカレー。年間およそ280万食が出るほどの人気(写真撮影/辰井裕紀)

『カレーショップインデアン』のカレー。年間およそ280万食が出るほどの人気(写真撮影/辰井裕紀)

鍋を持参すればカレーのルーをテイクアウトできる(写真撮影/辰井裕紀)

鍋を持参すればカレーのルーをテイクアウトできる(写真撮影/辰井裕紀)

辰井:「鍋持参のテイクアウトは約30年前から始まったサービスです。お客さんから『容器にくっついたカレーのルーがもったいないから鍋を持参してもいいか』と要望があったのがきっかけだとか。加えて当時はダイオキシンが社会問題となり、なるべくプラスチック容器を使わない動きがありました。そこで誕生したのが、インデアンの鍋持参システムです」

――鍋持参のテイクアウトは30年近くも歴史があるんですか。十勝にそんな個性的な習慣があったとは。

辰井:「おそらく、十勝が鍋を持っていきやすい車社会だから、定着したサービスなのでしょうね」

農地が広がる十勝は車社会。だからこそ「鍋持参」の習慣が定着したと考えられる(写真撮影/辰井裕紀)

農地が広がる十勝は車社会。だからこそ「鍋持参」の習慣が定着したと考えられる(写真撮影/辰井裕紀)

――なるほど。さすがに電車やバスで鍋を持ってくる人は少ないでしょうね。そういう点でも都会では実践が難しい、ローカルならではの温かい歓待ですね。

辰井:「インデアンはほかにも『食べやすいようにカツを小さくして』と言われたカツカレーが、極小のひとくちサイズになって定番化するなど、お客さんの声を吟味して取り入れます。ローカル飲食チェーンは商圏が狭いからこそ、お客さんに近い存在ですから」

総工費1億5000万円の屋敷で非日常体験お屋敷のような造りの『ばんどう太郎』。駐車場も広々(写真撮影/辰井裕紀)

お屋敷のような造りの『ばんどう太郎』。駐車場も広々(写真撮影/辰井裕紀)

店内にはなんと精米処があり、炊きあげるぶんだけ毎日精米している(写真撮影/辰井裕紀)

店内にはなんと精米処があり、炊きあげるぶんだけ毎日精米している(写真撮影/辰井裕紀)

――車社会といえば、茨城の『ばんどう太郎』にはド肝を抜かれました。ロードサイドに忽然と巨大なお屋敷が現れ、それが和食のファミレスだとは。

辰井:「『ばんどう太郎』の建物は車の運転席からも目立つ造りになっています。総工費は一般的なファミレスの倍、およそ1億5000万円もの巨費を投じているのだそうです。さらに店の中に精米処があり、新鮮なごはんを食べられますよ」

――夢の御殿じゃないですか。

具だくさんな看板商品「坂東みそ煮込みうどん」(画像提供/ばんどう太郎 坂東太郎グループ)

具だくさんな看板商品「坂東みそ煮込みうどん」(画像提供/ばんどう太郎 坂東太郎グループ)

辰井:「看板商品の『坂東みそ煮込みうどん』は旅館のように固形燃料で温められた一品です。生たまごを入れ、黄身や卵白に火が通ってゆく過程を楽しみながら味わえます。旬の野菜から肉、キノコまでたっぷりの具材が入っていて、褐色のスープですから『鍋の底にはなにがあるんだろう?』と、闇鍋のように掘り出す楽しさまであります」

――ファミレスというより、非日常を体感できるテーマパークのようですね。

辰井:「駐車場が広くて停めやすく、店内のレイアウトがゆったりしていますし、接客のリーダー『女将さん』がいるのもプレミアム感があります。広々と土地を使えるロードサイド型のローカル飲食チェーンならではのお店ですね」

割烹着姿の「女将さん」と呼ばれる接客のリーダーが客に安心感を与える(写真撮影/辰井裕紀)

割烹着姿の「女将さん」と呼ばれる接客のリーダーが客に安心感を与える(写真撮影/辰井裕紀)

――『ばんどう太郎』で食事する経験自体がドライブ観光になっているのですね。楽しそう。ぜひ訪れてみたいです。

辰井:「坂東みそ煮込みうどんは関東人に合わせた絶妙な味わいで、私は何度でも食べたいです」

お弁当屋さんの概念をくつがえす店内の広さ

――ロードサイド展開といえば、熊本『おべんとうのヒライ』にも驚きました。お弁当屋さんとは思えない、大きなコンビニくらいに広い店舗で、スーパーマーケットに迫る品ぞろえがあるという。この業態は駐車場があるロードサイド型店舗でないと無理ですよね。

コンビニなみに品ぞろえ豊富な『おべんとうのヒライ』(写真撮影/辰井裕紀)

コンビニなみに品ぞろえ豊富な『おべんとうのヒライ』(写真撮影/辰井裕紀)

辰井:「自家用車での移動がひじょうに多い街に位置し、広いお総菜コーナーがあります。なので、『ついでに買っていくか』の買い物需要に応えられるんです。さらに店内にはその場で調理したものが食べられる食堂もあります。地方には実はこんな中食(なかしょく)※2・外食・コンビニが三位一体となった飲食チェーンが点在しているんです」

※2中食(なかしょく)……家庭外で調理された食品を、購入して持ち帰る、あるいは配達等によって、家庭内で食べる食事の形態。

――お弁当屋さんの中で食事もできるんですか。グルメパラダイスじゃないですか。

辰井:「特に『おべんとうのヒライ』の食事は安くてうまいんですよ。なかでも“大江戸カツ丼”がいいですね。一般的なカツを煮た丼と違い、揚げたてのカツの上に玉子とじをのせるカツ丼で。衣がサクサク、玉子はトロトロで食べられます。『この価格で、こんなにもハイクオリティな丼が食べられるのか』と驚きました。たったの500円ですから」

カツを煮込まず玉子とじをのせる独特な「大江戸カツ丼」(写真撮影/辰井裕紀)

カツを煮込まず玉子とじをのせる独特な「大江戸カツ丼」(写真撮影/辰井裕紀)

――安さのみならず、独特な調理法で食べられるのが魅力ですね。

辰井:「そうなんです。小さなカルチャーショックに出会えるのがローカル飲食チェーンの醍醐味ですね。どこへ行っても同じ食べ物しかないよりも、『あの県へ行ったら、これが食べられる』ほうが、おもしろいですから」

「あの県へ行ったら、これが食べられる」。このエリア限定感がローカル飲食チェーンの醍醐味だと語る辰井さん(写真撮影/吉村智樹)

「あの県へ行ったら、これが食べられる」。このエリア限定感がローカル飲食チェーンの醍醐味だと語る辰井さん(写真撮影/吉村智樹)

旅先で出会える「小さなカルチャーショック」が魅力愛らしい桃太郎のキャラクターが迎えてくれる『おにぎりの桃太郎』。ただいまマスク着用中(写真撮影/辰井裕紀)

愛らしい桃太郎のキャラクターが迎えてくれる『おにぎりの桃太郎』。ただいまマスク着用中(写真撮影/辰井裕紀)

混ぜごはんのおにぎり、その名も「味」(写真撮影/辰井裕紀)

混ぜごはんのおにぎり、その名も「味」(写真撮影/辰井裕紀)

――カルチャーショックを受けた例はほかにもありますか。

辰井:「ありますね。たとえば三重県四日市の飲食チェーン『おにぎりの桃太郎』には『味』という名の一番人気のおにぎりがあります。『味』は当地で“混ぜごはん”を意味しますが、そのネーミングがまず興味深いですし、地元独特の味わいが楽しめました」

――おにぎりの名前が「味」ですか。もうその時点で全国チェーンとは大きな感覚の違いがありますね。

辰井:「ほかにも『しぐれ』という、三重県北勢地区に伝わるあさりの佃煮を具にしたおにぎりも、香ばしくて海を感じました」

ご当地の味「あさりのしぐれ煮」のおにぎり(写真撮影/辰井裕紀)

ご当地の味「あさりのしぐれ煮」のおにぎり(写真撮影/辰井裕紀)

――ローカル飲食チェーンが「地元の食文化を支えている」とすらいえますね。

辰井:「そんな側面があると思います」

ローカル飲食チェーンに学ぶ持続可能な社会

――カルチャーショックといえば『おべんとうのヒライ』の、ちくわにポテトサラダを詰めて揚げた「ちくわサラダ」は衝撃でした。

ちくわの穴にポテトサラダを詰めた「ちくわサラダ」(写真撮影/辰井裕紀)

ちくわの穴にポテトサラダを詰めた「ちくわサラダ」(写真撮影/辰井裕紀)

辰井:「もともとはポテトサラダの廃棄を減らす目的で生まれた商品ですが、いまでは熊本で愛されるローカルフードになりましたね。ワンハンドで食べやすく、一本でも充分満足感があります」

――おいしそう! 自分でもつくれそうですが、それでもやはり熊本で食べたいです。食品の廃棄を減らすため、一つの店舗のなかで再利用してゆくって、ローカル飲食チェーンはSDGsという視点からも学びがありますね。

辰井:「ありますね。たとえば大阪の『551HORAI』ではテイクアウトで売れる約65%が豚まん、約15%が焼売なんです。どちらも“豚肉”と“玉ねぎ”からつくるので、2つの食材があれば合計およそ80%の商品ができます。一度に大量の食材を仕入れられるからコストが抑えられる上に、ずっと同じ商品をつくっているので食材を余らせません」

『551HORAI』の看板商品「豚まん」(写真撮影/辰井裕紀)

『551HORAI』の看板商品「豚まん」(写真撮影/辰井裕紀)

「豚まん」に続く人気の「焼売」(写真撮影/辰井裕紀)

「豚まん」に続く人気の「焼売」(写真撮影/辰井裕紀)

――永久機関のように無駄がないですね。

辰井:「一番人気の豚まんがとにかく強い。『強い看板商品』の存在が、多くの人気ローカル飲食チェーンに共通します。看板商品が強いと供給体制がよりシンプルになり、食品ロスも減る。質のいいものをさらに安定して提供できる。いい循環が生まれるんです」

地元が店を育て、人を育てる

――ローカル飲食チェーンには「全国展開しない」「販路を拡げない」と決めている企業が少なくないようですね。コッペパンサンドで知られる岩手の『福田パン』もかたくなに岩手から手を広げようとしないようですね。

多彩なコッペパンサンドが味わえる『福田パン』(写真撮影/辰井裕紀)

多彩なコッペパンサンドが味わえる『福田パン』(写真撮影/辰井裕紀)

辰井:「『福田パン』は岩手のなかでは買える場所が増えていますが、他県まで出店するつもりはないようです。これ以上お店を増やすと製造する量が増え、『機械や粉を替え変えなきゃならない』など、リスクも増えますから」

――全国進出をねらって失敗する例は実際にありますものね。

辰井:「とある丼チェーン店は短期間に全国へ出店したものの、閉店が相次ぎました。調理技術が行き渡る前にお店を増やしすぎたのが原因だといわれています。地元から着実にチェーン展開していった店は、本部の目が行き届くぶん、地肩が強いですね」

――『福田パン』のコッペパンサンド、とてもおいしそう。食べてみたいです。けれども、基本的に岩手へ行かないと買えないんですね。それが「身の丈に合ったチェーン展開」なのでしょうね。

『福田パン』は眼の前で具材を手塗りしてくれる(写真撮影/辰井裕紀)

『福田パン』は眼の前で具材を手塗りしてくれる(写真撮影/辰井裕紀)

ズラリ一斗缶に入って並んだコッペパンサンドの具材(写真撮影/辰井裕紀)

ズラリ一斗缶に入って並んだコッペパンサンドの具材(写真撮影/辰井裕紀)

辰井:「社長の福田潔氏には、『その場でしか食べられないものにこそ価値がある』というポリシーがあるんです。福田パンは一般的なコッペパンより少し大きく、口に含んだときに塩気と甘さが広がる。とてもおいしいのですが、目の前でクリームをだくだくにはさんでくれるコッペパンは現地へ行かないと食べられない。やっぱり岩手で食べると味わいが違います」

――ますます岩手へコッペパンを食べに行きたくなりました。反面、埼玉の『ぎょうざの満洲』は関西進出を成功させていますね。京都在住である私は『ぎょうざの満洲』の餃子が大好物でよくいただくのですが、他都市進出に成功した秘訣はあったのでしょうか。

「3割うまい!!」のキャッチフレーズで知られる『ぎょうざの満洲』(写真撮影/辰井裕紀)

「3割うまい!!」のキャッチフレーズで知られる『ぎょうざの満洲』(写真撮影/辰井裕紀)

餃子のテイクアウトにも力を入れる(写真撮影/辰井裕紀)

餃子のテイクアウトにも力を入れる(写真撮影/辰井裕紀)

辰井:「関西進出はやはり初めは苦戦したそうです。『ぎょうざの満洲』は関東に生餃子のテイクアウトを根付かせた大きな功績があるのですが、関西ではまだ浸透していなかった。加えて店員と会話せずスムーズに買えるシステムを構築したものの、その接客が関西では『冷たい』と受け取られ、なじまなかった。そこで、できる限り地元の人を雇用し、店の雰囲気を関西風に改めたそうです」

――やはり地元が店や人を育てるという答に行きつくのですね。いやあ、ローカル飲食チェーンって本当に業態が多種多彩で、かつ柔軟で勉強になります。

辰井:「企業ごとにいろんな考え方がありますから、それぞれから学びたいですね」

――そうですよね。私も学びたいです。では最後に、全国のローカル飲食チェーンの取材を終えられて、感じたことを教えてください。

辰井:「ローカル飲食チェーンは地元の人たちにとって、地域を形作る屋台骨であり、アイデンティティなんだと思い知らされました。私は千葉出身なんですが、私が愛した中華料理チェーン『ドラゴン珍來』を褒められたら、やっぱりうれしいですよ。もっと地元のローカル飲食チェーンを誇っていいんだって、ホームタウンをかえりみる、いい機会になりました。読んでくださった方にも、地元を再評価してもらえたらうれしいです」

――ありがとうございました。

「ローカル飲食チェーンを通じて、地元を再評価してもらえたらうれしい」と語る辰井さん(写真撮影/吉村智樹)

「ローカル飲食チェーンを通じて、地元を再評価してもらえたらうれしい」と語る辰井さん(写真撮影/吉村智樹)

辰井裕紀さんが全国を行脚し、自分の眼と舌で確かめた「ローカル飲食チェーン」の数々。それぞれの企業、それぞれの店舗が、その土地その土地の地形や風習、地元の人々の想いに添いながらひたむきに営まれているのだと知りました。そこで運ばれてくる料理は「現代の郷土料理」と呼んで大げさではないほど地元LOVEの気持ちが込められています。

ビジネス書でありながら、故郷やわが街を改めて愛したくなる、あたたかな一冊。ページを閉じたとたん、当たり前に存在すると思っていたローカル飲食チェーンに、きっと飛び込みたくなるでしょう。

強くてうまい! ローカル飲食チェーン』(PHPビジネス新書)●書籍情報
強くてうまい! ローカル飲食チェーン
辰井裕紀 著
1,210円(本体価格1,100円)
PHPビジネス新書

商店街やスナックに泊まる!? ホテルが懐かしのまちの風景を守る

古き良き街の景色が惜しまれつつもなくなる一方、空家化やシャッター街化が問題になっている昨今。そんな問題を解決し、新たな価値を生み出す試みが、あちこちで始まっている。商店街にある空家やスナック街にあるビルをホテルとしてリノベーション、そこから地域を元気にしたい。大阪と青森に始まった、そんなムーブメントを紹介しよう。
コンセプトは「旅先の日常に飛び込もう」。コミュニケーションを楽しむ「SEKAI HOTEL」

布施駅(大阪府東大阪市)から商店街を歩きながら、「SEKAI HOTEL」を探していた。「あれ、このへんのハズだけど」と一度スルー。そして、来た道を戻ると、開口部がどーんと広がったカフェのようなホテルを発見した。でも、上の看板はリノベーションする前の「Ladies shop キヨシマ」のまま。だから、見逃したのか!

「そう。ここは以前、婦人服店だったんです。『SEKAI HOTEL』は、看板は昔のまま、店舗部分だけリノベーションしています」と、「SEKAI HOTEL」を経営するクジラ株式会社の三谷昂輝さん。

「地域とつながりたいから」と、大きな開口部を設けた「SEKAI HOTEL」のフロント。町工場をコンセプトに、照明など東大阪のプロダクトを採用し、インダストリアルな雰囲気に。カフェ&バーの営業時間は13~22時(写真撮影/出合コウ介)

「地域とつながりたいから」と、大きな開口部を設けた「SEKAI HOTEL」のフロント。町工場をコンセプトに、照明など東大阪のプロダクトを採用し、インダストリアルな雰囲気に。カフェ&バーの営業時間は13~22時(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

「SEKAI HOTEL」は、大阪の下町・布施商店街のいくつかの空家をリノベーション。フロントをベースに、商店街のアチコチに6棟の宿泊施設が点在する「まちごとホテル」だ。まずゲストはフロントでチェックイン(現在は3密回避のため、客室にてチェックイン)。ガイドが商店街を案内しながら、宿泊棟へと案内してくれる。宿泊時に渡される「食べ歩きチケット」を使えば、商店街のお店で商品と交換(食べ歩きチケット付きのプランでの予約が必要)。「ああ、SEKAI HOTELに泊まっているのね」と気さくに声をかけてくれるので、会話も弾む。そう。このホテルの「宿泊」はサイドメニュー。メインディッシュは「コミュニケーションを楽しむ」なのだ。

商店街の中に、宿泊棟N2~5が連なる。ちなみに、NとはNext doors(隣の家)のN。N4はもともと整骨院だったが空き地になっていたのでここだけ新築。川田菓子店がN3、喫茶店モアの1階がN2、2階がN5となっている。看板は昔のママ、店舗部分だけリノベーション。商店街に馴染んでいる(写真撮影/出合コウ介)

商店街の中に、宿泊棟N2~5が連なる。ちなみに、NとはNext doors(隣の家)のN。N4はもともと整骨院だったが空き地になっていたのでここだけ新築。川田菓子店がN3、喫茶店モアの1階がN2、2階がN5となっている。看板は昔のママ、店舗部分だけリノベーション。商店街に馴染んでいる(写真撮影/出合コウ介)

取材当日、徳島出身の女性2人組がちょうど宿泊棟に案内されているところに遭遇!「社員さんのSNSでこのホテルを知りました。ローカルディープが魅力で、人とか食べ物とか行けば楽しい事がいっぱいありそうだと思って予約しました。大阪はいつも日帰りだったのに、泊まるのは今回が初めて!」とその魅力を語ってくれた。

「『SEKAI HOTEL』は西九条(大阪市)に続き、布施が2拠点目となります。西九条の時点ではまだコンセプトが固まっていなかったのですが、ゲストが来て地元を案内すると宿泊客が喜ぶ。朝食が出せないデメリットも、近くの喫茶店で食べていただくと、これまた宿泊客が喜ぶ。そこで、地元との交流が観光資源として有効だと学びました」

黒門市場といった観光地化した商店街がある一方、布施の商店街は大阪の下町の良さが残っていた。シャッター街化が進んでいるからこそ、布施に「SEKAI HOTEL」をつくることで、地域を活性化したい。そんな想いからのスタートだ。

「ホテルのフロントを立ち上げると同時に、宿泊施設として使える空店舗を探しましたが、なかなか見つかりませんでした」と三谷さん。地域外からいきなり参入したため、すんなり借りる事ができず、どうしても時間がかかった。だが、地道に地域とのつながりを深めることで交渉も進み、宿泊棟も最初の1棟から6棟に拡大。「立ち話も業務」との言葉どおり、商店街の方々ととにかくコミュニケーションをとることで、協力してもらえるようなってきた。現在では、スタッフの努力も実り、優待割引のある「SEKAI PASS」に10店舗、「朝食銭湯プラン」に2店舗+1軒、「食べ歩きプラン」に6店舗と、提携店も増えつつある。

「SEKAI HOTEL」に勤務するクジラ株式会社の三谷昂輝さん。当初は遠くに住んでいたが、「地域の人々とのつながりを大切にしたいから」と近くに引越したそう(写真撮影/出合コウ介)

「SEKAI HOTEL」に勤務するクジラ株式会社の三谷昂輝さん。当初は遠くに住んでいたが、「地域の人々とのつながりを大切にしたいから」と近くに引越したそう(写真撮影/出合コウ介)

スタッフはみな、布施マスター。「布施のことなら、私たちに聞いてください!」

「SEKAI HOTEL」に宿泊すると、付いてくるのが食べ歩きチケット(6店舗5枚)。各店舗で100円相当の商品と交換できるシステムだ。その提携店を紹介しよう。まずは、「三ツ矢蒲鉾本舗」の井上美鈴さん。「SEKAI HOTEL」オープン当初からのおつきあいだ。

レトロな雰囲気のある布施の商店街。看板に歴史を感じる(写真撮影/出合コウ介)

レトロな雰囲気のある布施の商店街。看板に歴史を感じる(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

「SEKAI HOTELさんが来て2年、街が一体化して活気が出て来ました。若い学生さんや外国の方も増えましたね。そうそう。私はよくSEKAI HOTELさんに遊びに行くんですよ。スタッフさん、みんな若くていい人ばかり。お茶したり、おしゃべりしたり。ネットのこと教えてもらったり、外国人スタッフのアンネさんに英語教えてって頼んだり。すごく刺激をもらってますし、これからが楽しみです」とニコリ。

「三ツ矢蒲鉾本舗」の井上美鈴さん(写真撮影/出合コウ介)

「三ツ矢蒲鉾本舗」の井上美鈴さん(写真撮影/出合コウ介)

名物の玉ねぎ天。玉ねぎの甘さがたまらなく美味しい!一盛7個で440円がチケットなら玉ねぎ天2個と交換できる(写真撮影/出合コウ介)

名物の玉ねぎ天。玉ねぎの甘さがたまらなく美味しい!一盛7個で440円がチケットなら玉ねぎ天2個と交換できる(写真撮影/出合コウ介)

ドイツから留学で日本にやって来たアンネさん。「求人を見て応募しました。地域創生、社会に貢献しているのが気に入って。新しい試みも面白い!」と流暢な日本語で話してくれた(写真撮影/出合コウ介)

ドイツから留学で日本にやって来たアンネさん。「求人を見て応募しました。地域創生、社会に貢献しているのが気に入って。新しい試みも面白い!」と流暢な日本語で話してくれた(写真撮影/出合コウ介)

次にうかがった、鳥からあげ店「Kitchen friend怜」は、「店の名前は僕の名前から取りました(笑)」という店長・山尾怜司さん。実はお母様が30年前ここで総菜店を営んでいたという地元の方。そのお母様がつくる家庭の味・からあげが近所でも評判で、からあげのお店を開く決心をしたという。

「地元の商店街がどんどん活気を失って、このままじゃいかん、地元活性化の手助けになればという想いから、お店をオープンしました。実はSEKAI HOTELさんと提携すると、ホテルに一泊宿泊体験させていただけるのですが、扉を開けると、外観からは想像できない世界感が広がっていてびっくり。地元材を使っているのもいいなあと思いました。SEKAI HOTELさんのお客さまは、目新しさを求めてやってくる、若くてフレンドリーで明るい人が多いですね。商店街もまとまれば観光力があがる。SEKAI HOTELさんが起爆剤になってくれればと思います」

「Kitchen friend怜」の店長・山尾怜司さん(写真撮影/出合コウ介)

「Kitchen friend怜」の店長・山尾怜司さん(写真撮影/出合コウ介)

チケットを鶏皮チップスor鳥のからあげと交換。「ハーフ&ハーフも人気です。多めにサービスしておきますよ」(写真撮影/出合コウ介)

チケットを鶏皮チップスor鳥のからあげと交換。「ハーフ&ハーフも人気です。多めにサービスしておきますよ」(写真撮影/出合コウ介)

現在は、コロナの影響でゲストは少ない分、スタッフは「何かできないか」と地域の方とのコミュニケーションに軸足を置き、子ども連れに人気の「和菓子づくりプラン」、地元の人たちと仲良くなれる「飲み歩きプラン」など、商店街の方と相談しながらプランをつくっていく。最初は「布施にしては、カッコよすぎ」と敬遠されていたフロントにも、商店街の人が遊びにくるようになり、「隣のスナックのママさんがそうめんとか差し入れしてくれるんです」とスタッフもうれしそう。今後の目標は?

「地元の人がゲストに対して明るく接してくれるから、『SEKAI HOTEL』を通じて会話が広がるのがうれしい。宿泊棟数を増やしていく、というよりは、『SEKAI HOTEL』と関わる提携店をどんどん増やし、ますます活気が出てくるといいですね。最終目的は、布施の人口を増やすこと。観光地ではない布施のローカルな魅力を、もっと多くの方に知ってもらいたいです」と三谷さん。

布施の暑苦しさ(笑)=コミュニケーション、人情、そして粋な人々。そんな地域独特のオーディナリー(日常)をゲストに届けるのが、ここ布施の役目。そして、「SEKAI HOTEL」の3拠点目に予定されているのが、富山県高岡市。高岡市のどんなオーディナリー(日常)をゲストに届けるか、「SEKAI HOTEL」から目が離せない。

N3などの宿泊棟は「町工場」をコンセプトに、グレー・黒・シルバーを基調に、剥き出しの床はそのまま、無機質な素材でインダストリアルな雰囲気を演出 (写真撮影/出合コウ介)

N3などの宿泊棟は「町工場」をコンセプトに、グレー・黒・シルバーを基調に、剥き出しの床はそのまま、無機質な素材でインダストリアルな雰囲気を演出(写真撮影/出合コウ介)

ベッドとの間仕切り壁のエキスパンドメタルや照明は地元・東大阪の工場でオーダーメイドしたもの(写真撮影/出合コウ介)

ベッドとの間仕切り壁のエキスパンドメタルや照明は地元・東大阪の工場でオーダーメイドしたもの(写真撮影/出合コウ介)

ノスタルジックな泊まれるスナック街「GOOD OLD HOTEL」看板が建ち並ぶスナック。これがホテルなんて!夜は看板にライトがついて妖艶な雰囲気(写真提供/GOOD OLD HOTEL)

看板が建ち並ぶスナック。これがホテルなんて!夜は看板にライトがついて妖艶な雰囲気(写真提供/GOOD OLD HOTEL)

一方、青森の「GOOD OLD HOTEL」は、スナックをリノベーションした、非接触型ホテル(コロナ対応で非対面チェックインに対応)。昭和40年代の弘前市・鍛冶町に誕生したグランドパレス。バブル時代に若者が集ったこの場所も、時代とともにすっかり寂しいビルに。

「うちは大阪の不動産会社なのですが、自社で競売落札したのが、このグランドパレス。最初は使えるかどうかもわからず、ネガティブな印象しかなかったのですが、現地に行ってみると、鍛冶町は弘前市屈指の歓楽街。近くには歴史のある大正レトロなビルも立ち並び、弘前城や現代美術館『弘前れんが倉庫美術館』(2020年オープン)もすぐそば。街のポテンシャルが高い。当時民泊が盛んだった事もあり、『街に泊まる』をコンセプトに、スナックを活かしたホテルにしたら面白いんじゃないかと」(キンキエステート野村昇平さん)

「地元の人たちにも懐かしんでもらいたい」と、当時の古き良きたたずまいはそのままに、泊まれるスナック街にリノベーションした。「想い出映えする、というかノスタルジック×映える=ノスタルジェニックな時間を過ごしていただきたいと思いました」とコンセプトワークを担当した、有限会社odoru取締役中田トモエさん。外装やドア、看板はそのまま(一部除く)。青森の雰囲気が感じられる「ニューうさぎ」や「プードル」、スナック感の強い「DEN」「スナックターゲット」など、コンセプトが異なるレトロなお部屋を11室用意している。「もう文化遺産です」と中田さんは笑う。

「ニューうさぎ」(写真提供/GOOD OLD HOTEL)

「ニューうさぎ」(写真提供/GOOD OLD HOTEL)

「ニューうさぎ」は青森の特産品であるリンゴをイメージした内装。外観がリンゴの木っぽいような緑色なところからインスピレーションを受け、部屋の中はリンゴの実の色である赤・黄色・茶でまとめた(ツイン)(写真提供/GOOD OLD HOTEL)

「ニューうさぎ」は青森の特産品であるリンゴをイメージした内装。外観がリンゴの木っぽいような緑色なところからインスピレーションを受け、部屋の中はリンゴの実の色である赤・黄色・茶でまとめた(ツイン)(写真提供/GOOD OLD HOTEL)

「オープンは2020年7月。コロナの影響もあり、客足はまだまだ。地元の方の認知度もこれからだと思います」と、運営スタッフの木村深雪さん。今後の展望は?

「SNSでは、一夜で2万件のいいね、ツイートの反響も400件あり、若い人もレトロなスナック文化に興味を持っていることが分かりました。鍛冶町といえばスナック文化。それこそ、『SEKAI HOTEL』さんみたいに、もっと街ぐるみで連携して、このホテルに泊まる=コミュニケーションと、ハシゴ酒などをしながら、街を楽しんでもらえたらいいなと思います」(キンキエステート野村さん)

「プードル」(写真提供/GOOD OLD HOTEL)

「プードル」(写真提供/GOOD OLD HOTEL)

もともとの造作が木っぽいつくりだったのと、照明が土器っぽかったので、青森にある三内丸山遺跡をイメージしたお部屋(ツイン)(写真提供/GOOD OLD HOTEL)

もともとの造作が木っぽいつくりだったのと、照明が土器っぽかったので、青森にある三内丸山遺跡をイメージしたお部屋(ツイン)(写真提供/GOOD OLD HOTEL)

「Den」(写真提供/GOOD OLD HOTEL)

「Den」(写真提供/GOOD OLD HOTEL)

スナック感が強い部屋。タバコのヤニで琥珀色になったシャンデリアがポイント(ツイン)(写真提供/GOOD OLD HOTEL)

スナック感が強い部屋。タバコのヤニで琥珀色になったシャンデリアがポイント(ツイン)(写真提供/GOOD OLD HOTEL)

今回紹介した、「SEKAI HOTEL」と「OLD GOOD HOTEL」は、商店街の空家やスナック街のビルをリノベーションしてホテルとして再出発。ただ、ハードの整備ももちろんだが、それ以上にスタッフとゲスト、ゲストと地域の人々、地域の人々とスタッフといった3者の「コミュニケーション」がうまくいって初めて、魅力ある街に、活気ある街へと変化していく。ハードの魅力<ソフトの魅力。その努力こそが、街の風景を守る、有効な方法ではないだろうか。

●取材協力
SEKAI HOTEL
OLD GOOD HOTEL

大阪「淀屋橋駅」直結にランドマークビル

「淀屋橋駅東地区都市再生事業」(大阪市中央区)に係る都市計画案が、7月23日、大阪市の都市計画審議会において、都市再生特別措置法に定める都市再生特別地区として審議・可決された。同計画は、日本土地建物(株)と京阪ホールディングス(株)がかねてより検討を進めてきたもの。日本土地建物が所有する「日土地淀屋橋ビル」、および京阪ホールディングスが所有する「京阪御堂筋ビル」の両敷地を一体化し、共同で建て替えを行う。

計画地は、大阪市中央区北浜3丁目1番1他。京阪電車・Osaka Metro御堂筋線「淀屋橋駅」に直結。業務集積地区である御堂筋の玄関口に、地下4階・地上28階の複合ビルを建設する。

施設にはオフィス、商業施設に加え、新たなビジネス創造を目的とした交流施設を設ける。また、4層吹き抜けの多目的広場(淀屋橋広場)の整備や、淀屋橋駅コンコースの歩行者空間の拡幅・リニューアルを通じ、ターミナルにふさわしい交通拠点機能を整備していく。

既存建物解体開始は2020年、2022年に新築建物着工、竣工は2025年。施設は淀屋橋地区では最高となる、建物高さ約150mのランドマークビルとなる予定。

ニュース情報元:日本土地建物(株)

「大丸心斎橋店 本館」、9月20日グランドオープン

大丸松坂屋百貨店はこのたび、「大丸心斎橋店 本館」(大阪市中央区)のグランドオープンを2019年9月20日(金)に決定した。アメリカ村や南船場・堀江など、特徴的街区を持つ世界有数の商業集積地「心斎橋」。この街で開業してから約300年の歴史を持つ「大丸心斎橋店」を建て替え、「大丸心斎橋店 本館」として生まれ変わる。個性溢れる専門店は計370店舗(2019年6月11日現在)出店する予定。

また、同プロジェクトは、本館(地下2階~10階)・北館(パルコ:地下2階~7階、専門店街:8階~14階)・南館の3館体制で2021年まで続く複合開発のさきがけとなるもの。本館と北館をつなぐ大宝寺通りの上空部に増築を行い、両館の2階~10階のフロアが接続され一体化する。

本館は、Osaka Metro御堂筋線「心斎橋」駅4番出口・地下道直結。B2・B1・10Fは、食物販・レストランフロア。1F~6Fのメインは物販フロア。7Fにはテラスを設け、緑溢れる都会のオアシス空間を提供。9Fには海外顧客に対応する“インバウンドセンター”を構築する。

なお、今回の本館建て替えプロジェクトでは、日本の近代建築に大きな足跡を残した米国の建築家「ウィリアム・メレル・ヴォーリズ」の名建築を最新の技術で再現。旧本館の採取可能な部材は現物による再利用を行い、困難な部材は原型の型取りの上、最新技術により再現。継承すべき空間の再構築に挑んだという。

ニュース情報元:(株)大丸松坂屋百貨店

大阪梅田ツインタワーズ・サウス、II期部分を着工

阪神電気鉄道(株)と阪急電鉄(株)は、6月1日(土)より「大阪梅田ツインタワーズ・サウス」II期部分の新築工事に着手した。同事業は、大阪市北区梅田1丁目に整備中の地下3階・地上38階の超高層複合ビル。「大阪神ビルディング」と「新阪急ビル」間の道路上空を活用した建替と、周辺公共施設の整備を一体的に行うことで、都市機能の高度化や防災機能を強化し、質の高いまちづくりを目指している。I期部分は2018年4月27日に竣工、同年6月1日から「阪神百貨店(阪神梅田本店)」が部分開業した。

今回着工したII期部分では、2021年秋に全面開業する予定の百貨店ゾーンや、1フロア当たりの貸室面積が西日本最大規模(約3,500m2)となるオフィスゾーン(地上11階~38階)のほか、大小2つのホールを備えるカンファレンスゾーンを整備する。

新しくなる「阪神百貨店(阪神梅田本店)」は、解体工事前と同規模(延床面積約100,000m2)で、フロア数は11層(地下2階から地上9階まで)を計画。店舗づくりにおいては、品揃えの充実を図り快適な売場環境を整備、様々なイベントを通じてライフスタイルの提案を行っていく施設を目指す。なお、全体開業は2022年春の予定。

ニュース情報元:阪神電気鉄道(株)

大阪・堺市に地域密着型の商業施設、4/26グランドオープン

(株)日本エスコンは、同社グループが大阪府堺市で開発中の商業施設「tonarie 栂・美木多」を、4月26日(金)にグランドオープンすると発表した。同施設は、泉北高速鉄道「栂・美木多」駅徒歩1分に立地。駅前で46年間営業を続けてきた「ガーデンシティ栂」(2017年7月31日閉鎖)の跡地にオープンする。

施設は地上3階建、延床面積約3,768坪、約30店舗を導入。食品スーパーのダイエー「AEON FOOD STYLE」ほか、クリニックモール、銀行、郵便局などを集めた。ベーカリーや書籍、ドラッグストア、総合衣料品なども入り、地域の方が利用しやすく、コミュニティの場としても利用できる施設としている。

ニュース情報元:(株)日本エスコン

「大阪駅」まで電車で30分以内の家賃相場が安い駅ランキング! 2019年版

関西で最も大きなターミナルJR大阪駅。交通アクセスの良さは、家選びの際に外せない重要ポイントだ。そこで、大阪駅まで電車で30分以内で行ける、ワンルーム・1K・1DKを対象にした家賃相場が安い駅TOP20をピックアップ。それぞれの街の特徴を紹介する。
(※大阪駅までの電車で30分以内:乗り換え時間や梅田駅からの徒歩分数を含む)
大阪駅まで電車で30分以内、家賃相場の安い駅TOP20駅

ランキングの見方:順位/駅名/家賃相場/(沿線名/駅の所在地)

1位 野崎 3.5万円(JR片町線/大東市)
2位 四条畷3.6万円(JR片町線/大東市)
2位 萱島 3.6万円(京阪本線/寝屋川市)
4位 大和田4万円(京阪本線/門真市)
4位 寝屋川市 4万円(京阪本線/寝屋川市)
6位 平野 4.22万円(JR関西本線/大阪市平野区)
7位 上新庄 4.3万円(阪急京都線/大阪市東淀川区)
7位 下新庄4.3万円(阪急千里線/大阪市東淀川区 )
7位 大日 4.3万円(地下鉄谷町線/守口市)
7位 長瀬 4.3万円(近鉄大阪線/東大阪市)
11位 淡路 4.4万円(阪急京都線/大阪市東淀川区)
12位 新森古市 4.45万円(地下鉄今里筋線/大阪市旭区)
13位 千林大宮 4.5万円(地下鉄谷町線/大阪市旭区)
13位 古川橋4.5万円(京阪本線/門真市)
13位 武庫之荘 4.5万円(阪急神戸線/兵庫県尼崎市)
13位 関目 4.5万円(京阪本線/大阪市城東区)
13位 関目成育 4.5万円(地下鉄今里筋線/大阪市城東区)
18位 星田 4.54万円(JR片町線/交野市)
19位 加美 4.55万円(JR関西本線/大阪市平野区)
20位 大阪港 4.6万円(地下鉄中央線/大阪市港区)

のどかさが残る野崎駅が1位に

1位は、大東市の野崎駅。JR片町線の普通列車のみの停車駅で、駅の近くには室町時代に築城されたといわれる野崎城の跡などがあり、自然も残るのんびりした環境の地域だ。

大きな商業施設などはないが、国道170号線が近いため、車での外出の多い人には便利といえそう。また、周辺には大阪産業大学など大学も複数ある。

大阪市内の駅でランキングトップなのは、6位の平野駅。駅周辺は深夜まで営業している飲食店もあるが、昔ながらの下町の雰囲気の残る住宅地だ。ノスタルジックな風情の平野本町通商店街などがある一方で、スーパーも充実している。また、勇壮なだんじり祭りで知られる杭全(くまた)神社などがあり、買い物以外でも、下町情緒や大阪らしさあふれるアツい地元愛を体感することができそうだ。

毎年行われる杭全神社のだんじり祭り(写真提供/PIXTA)

毎年行われる杭全神社のだんじり祭り(写真提供/PIXTA)

地下鉄谷町線の同名駅があるが、約1.2kmと距離は少し離れている。どちらも大阪市内の繁華街天王寺駅まで1本で行くことができるが、JRからのほうが所要時間は短い。近くにはスーパーグローバルハイスクール指定校で進学校である大阪教育大学附属高校平野校舎や同附属平野中学校、附属小学校、附属幼稚園があり、学齢期の子どものいる家庭にとっては気になるところだが、こちらの最寄りは谷町線のほうの平野駅になる。

7位の上新庄駅は、対象物件が4000件を超えており、ランキング中、他を圧倒して多かった。快速、準急の停車駅で特急は通過するが、阪急京都線は地下鉄堺筋線との直通路線。ビジネス街である北浜へ乗り換えなしで行ける。同率7位の下新庄駅とは同じ阪急でも異なる千里線だが、こちらも同じく堺筋線と直通している

上新庄駅近年はマンション建設も進んでいる。駅周辺は、深夜1時まで営業しているスーパーがあり、少し行けばホームセンターもあるため、買い物にも便利だ。

繁華街へ約20分。利便性の良さが魅力の長瀬駅

同じく7位の長瀬駅は、マグロの養殖やオリンピックのメダリストを輩出するなど話題が多く志願者数を増やしている近畿大学の本部がある。

近畿大学は学生数の多さでも知られるが、長瀬は普通列車のみの停車駅。駅周辺も大学までの道の周囲も、落ち着いた住宅地だ。大学生が多いため、飲食店が充実しており、また夜遅くても比較的人通りが多い。

大阪駅と同じく大きな繁華街がある難波駅までも、約20分で行くことができる。また、徒歩圏内にJRおおさか東線の長瀬駅があり、新大阪駅まで乗り換えなしで利用できるため、学生だけでなく新幹線での出張の多いビジネスパーソンにも利点は大きそうだ。

13位の武庫之荘駅は、関西屈指の人気路線、阪急神戸線で唯一のランクイン。「関西の住みたい街ランキング2019」では48位、「穴場だと思う街」でも12位に入っている。

周辺は比較的戸建て住宅が多く、駅東側には桜並木が広がる、閑静な住宅街。阪急車両の特徴として愛されるマルーンカラーと桜のコントラストは、ちょうど開花を迎えるこの季節にはインスタ映えもしそうだ。神戸方面へのアクセスも便利。もっとも特急は通過するので急ぐなら乗り換えが必要だが、通勤急行は利用できる。

神戸線と桜(写真提供/PIXTA)

神戸線と桜(写真提供/PIXTA)

大阪駅周辺は北口を中心に再開発が進んでいる。遊びにもビジネスにも魅力が増し、訪れたくなることもより増えそうだ。春は、ライフイベントの変化を迎える季節でもある。大阪らしさあふれる街から人気路線の穴場まで、自分の生活に合わせた素敵な住まいを、見つけたいものだ。

●調査概要
【調査対象駅】大阪駅まで電車で30分以内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ抽出期間】2018/12~2019/2
【家賃の算出⽅法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の管理費を含む⽉額賃料から中央値を算出(2万円~12万円で設定)

大阪市に水辺の賑わい空間、「大正リバービレッジプロジェクト」認定

国土交通省はこのたび、都市再生特別措置法の規定に基づき、(株)TUGBOAT TAISHOから申請のあった民間都市再生整備事業計画「大正リバービレッジプロジェクト」を認定した。同事業は、大阪市大正区尻無川の河川敷地に、フードホールをはじめとする飲食店、オフィス、水上ホテル及び水辺と親和性の高い広場を整備するもの。また、船着場を整備することで、舟運事業を展開。水上交通としての移動手段を提供するとともに、水都大阪・水の回廊における水辺拠点間連携の結節点を形成する。

事業区域面積は3,841.96m2。飲食店2棟と事務所2棟を整備する。施行期間は、2019年2月18日~2020年1月15日までの予定。

なお、同事業は、市民や企業、地方公共団体等の行政が連携し、水辺の新しい活用の可能性を創造していく「ミズベリング」の一環として行われるプロジェクトとして、初の認定となる。

ニュース情報元:国土交通省

大阪・吹田市の健康医療都市に商業施設、11月17日グランドオープン

JR西日本グループが開発を推進してきた商業施設「VIERRA岸辺健都」が、11月17日(土)、北大阪健康医療都市(愛称:健都)にグランドオープンする。健都では、国内外の健康寿命の延伸をリードするモデル都市となることを目指している。「VIERRA岸辺健都」は健都の中核施設となるもの。健康・医療のまちづくりに即した「健康増進機能」と地域の方々のための「生活利便機能」をコンセプトとしており、特に健康増進機能に資する店舗構成にこだわった。

施設は大阪府吹田市岸部新町5番45号に立地。鉄骨造地上9階。店舗数30店舗。2Fには商業施設内では全国初の「かるしお認定定食」を提供できる健康食レストランを導入。かるしおとは、国立循環器病研究センターが推奨する「塩をかるく使って美味しさを引き出す」減塩の新しい考え方。彩り豊かな野菜をたくさん使ったメニューなど、ヘルシーをテーマにした様々な料理が楽しめる。

5Fにはフィットネスクラブ「グンゼスポーツ吹田健都」や地域の健康づくりに貢献するデイサービスを設置する。9Fにはおもてなしホテル「カンデオホテルズ大阪岸辺」が入居。カゴメ(株)と共同開発した、1日に必要な野菜の1/2相当量を使用したビュッフェ朝食「朝ベジスタイル」を提供する。

また、「VIERRA岸辺健都」では、健康への関心が薄れてしまっている方に対し、買い物の合間や通勤のスキマ時間などに受診できる無料健康チェックを提供していくという。

ニュース情報元:西日本旅客鉄道(株)

うめきた2期地区、三菱地所・大阪ガス都市開発など9社が開発

(独)都市再生機構(UR)はこのたび、「うめきた2期地区開発事業」における開発事業者を決定した。

選定されたのは、三菱地所(株)(代表企業)、大阪ガス都市開発(株)、オリックス不動産(株)、関電不動産開発(株)、積水ハウス(株)、(株)竹中工務店、阪急電鉄(株)、三菱地所レジデンス(株)、うめきた開発特定目的会社の計9社。

JR大阪駅から徒歩4分に立地する「南街区」と、JR大阪駅から徒歩7分、阪急中津駅から徒歩3分に立地する「北街区」を整備していく。「北街区」には、地上28階地下2階・高さ150m、地上47階地下2階・高さ176mの建物を建設。ホテル、イノベーション施設、プラットフォーム施設、オフィス、商業施設、分譲住宅、駐車場などで構成される。

「南街区」には、地上39階地下3階・高さ182m、地上51階地下2階・高さ185mの建物を建設。オフィス、ホテル、商業施設、都市型スパ、MICE施設、イノベーション施設、分譲住宅、駐車場などで構成される。

また、プロジェクトでは「みどりとイノベーションの融合」というまちづくり方針の理念をふまえ、10,000人規模のイベントに対応する「リフレクション広場」、都心で自然を感じられる憩いの空間「うめきたの森」、道路と公園が一体となった広場「ステッププラザ」なども整備していく。
都市公園(南公園)の「リフレクション広場」。画像:UR

都市公園(南公園)の「リフレクション広場」。画像:UR


都市公園(北公園)の「うめきたの森」。画像:UR

都市公園(北公園)の「うめきたの森」。画像:UR


2020年9月以降順次土地を引渡し、同年10月以降順次民間宅地工事を着工。民間宅地施設一部開業、都市公園一部開園は2024年夏頃を予定している。

ニュース情報元:UR

大阪市中心部に地上56階建て大規模複合タワー、住友不動産

住友不動産(株)は7月4日、大阪市北区曽根崎二丁目で開発を推進してきた「(仮称)梅田曽根崎計画」の建築工事に着手した。計画地は、大阪市の中心部である梅田地区に所在。地下鉄谷町線「東梅田」駅、御堂筋線「梅田」駅、阪神「梅田」駅、阪急「梅田」駅など、各駅とは徒歩5分圏内かつ現地直近まで地下街アクセスが可能な位置にある。

昼夜にぎわう「お初天神通り商店街」に面する立地特性を活かした施設計画として、高層部に“都心型住宅”、中層部には国内外のビジネス・観光客の利用が見込まれる“ホテル”、低層部に商店街と連続した賑わい空間を演出する“物販・飲食店舗”と“文化・交流施設”を導入する。

建物は地上56階、地下1階、塔屋2階。高さは191m、延床面積約10万7,560m2。竣工は2022年3月下旬を予定している。

ニュース情報元:住友不動産(株)

平成30年第1四半期の地価動向、上昇地区は約9割

国土交通省は6月1日、平成30年第1四半期(H30.1.1~H30.4.1)主要都市の高度利用地地価動向報告(地価LOOKレポート)を発表した。調査対象地区は、東京圏43地区、大阪圏25地区、名古屋圏9地区、地方圏23地区の計100地区。うち、住宅系地区は32地区、商業系地区は68地区。

それによると、平成30年第1四半期の地価動向は、上昇が91地区(前回89)、横ばいが9地区(同11)、下落が0地区(同0)となり、上昇地区が全体の約9割(同約9割)となった。

上昇している91地区のうち、0-3%の上昇が76地区。3-6%の上昇が15地区(住宅系1地区(「福島」(大阪市))及び商業系14地区(「駅前通」(札幌市)、「渋谷」「表参道」(以上 東京都)、「横浜駅西口」(横浜市)、「名駅駅前」「太閤口」「伏見」「金山」(以上 名古屋市)、「心斎橋」「なんば」(以上 大阪市)、「三宮駅前」(神戸市)、「紙屋町」(広島市)、「博多駅周辺」(福岡市)、「下通周辺」(熊本市))。

圏域別では、三大都市圏(77地区)のうち、東京圏(43)では、上昇が36地区(前回35)、横ばいが7地区(同8)となり、約8割の地区が上昇となった。大阪圏(25)では、平成19年度第4四半期以来はじめてすべての地区で上昇となった。名古屋圏(9)では、平成25年第2四半期から20期連続ですべての地区で上昇。地方圏(23地区)では、上昇が21地区(前回21)、横ばいが2地区(同2)となり、約9割の地区が上昇した。

用途別でみると、住宅系地区(32)では、上昇が26地区(前回24)、横ばいが6地区(同8)となり、約8割の地区が上昇。横ばいから上昇へ転じた地区は2地区(「柏の葉」(柏市)、「下鴨」(京都市))で0-3%の上昇となった。商業系地区(68)では、上昇が65地区(前回65)、横ばいが3地区(同3)となり、ほぼすべての地区が上昇。横ばいから上昇へ転じた地区は1地区(「青海・台場」(東京都))で0-3%の上昇となり、上昇から横ばいへ転じた地区は1地区(「元町」(横浜市))だった。

ニュース情報元:国土交通省

大阪府、密集市街地の解消に向け「まちの防災性マップ」など公表

大阪府は、「地震時等に著しく危険な密集市街地」の解消に向け、「大阪府密集市街地整備方針」を改定、さらに取組みを強化すると発表した。密集市街地の各地区において、みどりを活用した魅力あるまちの将来像などを盛り込んだ「整備アクションプログラム」や、「密集市街地まちの防災性マップ」を公表し、公民一体となり密集市街地対策のスピードアップを図る。

「密集市街地まちの防災性マップ」は、各地区の「燃え広がりにくさ」や「逃げやすさ」を示したもので、府ホームページで順次公表していくという。また、地域住民への防災講座やワークショップにおいても活用し、住民に対する防災意識の啓発や、地権者の事業協力意欲を喚起する。

ニュース情報元:大阪府

大阪府、5月は「宅地防災月間」、安全なまちづくりに寄与

大阪府は5月を「宅地防災月間」と定め、さまざまな事業を実施する。この取り組みは、梅雨期に備え、宅地造成及び土砂採取等によって生じるがけ崩れや、土砂の流出に伴う宅地の災害発生を未然に防止し、災害のない安全なまちづくりに寄与することを目的とする。

法令に基づき、担当職員が宅地造成の現場のパトロールを行う。5月1日(火)から5月31日(木)の期間は、大阪府咲洲庁舎(さきしまコスモタワー)1階正面玄関側にて、宅地防災写真パネルの展示を実施。

5月23日(水)には、エル・おおさか(大阪府立労働センター)本館6階にて、開発事業者、宅地造成事業者、造園事業者などを対象に「宅地防災技術研修会」を開催する。研修会では、宅地造成の施工方法、防災工法など、宅地防災に関する留意事項についての講義や、有識者による宅地防災に関する講演を行う予定(定員90名、参加費無料)。

ニュース情報元:大阪府

住みたい沿線1位の「阪急神戸線」を調査! 全15駅の家賃相場や特徴は?【沿線調査 関西版】

リクルート住まいカンパニーでは、関西(大阪府・京都府・兵庫県・滋賀県・奈良県・和歌山県)に居住している20歳~49歳の4600人を対象に実施した「みんなが選んだ住みたい街ランキング2018 関西版」を発表した。住みたい沿線ランキングで1位になったのは、阪急神戸線。その特徴や、駅周辺情報を調査してみた。
都市部へのアクセスも良い! 緑豊かで閑静な住宅街が多い阪急神戸線

大阪の中心地である北区・梅田駅から兵庫県神戸市の神戸三宮駅までを結ぶ、阪急神戸線。同じく梅田から神戸の中心地へ向かう阪神電鉄・阪神本線やJR神戸線(東海道本線)とは、西宮駅から西へはほぼ並走するものの、より内陸部を通っているため、沿線は緑豊かで閑静な住宅街が多い。

都市部へのアクセスの良さも人気の大きな理由だが、阪急電鉄は住宅開発とともに発展してきたという背景から、阪急各線の沿線は住環境の整備が進んでいる。なかでも阪急神戸線はブランドイメージが強く、著名人や富裕層の住民が多いことで知られる芦屋も同線の芦屋川駅付近を指すことが一般的だ。

子育てをする環境としての安心感があるためか、住みたいと回答した人を年代別にみると40代の支持が約4割と最も高かった。20代~40代までの年代別に住みたい街ランキングをみると、各年代で1位、2位に西宮北口と梅田がランクインしているほか、40代ではトップ10に神戸三宮、岡本、夙川(しゅくがわ)、御影(みかげ)がランクイン。阪急神戸線の駅がトップ10の過半数を占めている。また、関西在住者だけでなく、転勤などで他地域から引越してきた土地勘のないひとが、前任者からお墨付きがあったから住んでみる、というケースもある。

●阪急神戸線・家賃相場が安い駅ランキング

順位/駅名/家賃相場(中央値 賃料_管理費込)/所在地
1位 武庫之荘 4.8万円(兵庫県尼崎市)
2位 塚口 5.0万円(兵庫県尼崎市)
3位 岡本 5.2万円(兵庫県神戸市東灘区)
4位 園田 5.3万円(兵庫県尼崎市)
4位 王子公園 5.3万円(兵庫県神戸市灘区)
4位 御影 5.3万円(兵庫県神戸市東灘区)
7位 夙川 5.5万円(兵庫県西宮市)
8位 神崎川 5.8万円(大阪府大阪市淀川区)
8位 六甲 5.8万円(兵庫県神戸市灘区)
10位 西宮北口 5.9万円(兵庫県西宮市)
11位 芦屋川 6.2万円(兵庫県芦屋市)
12位 十三 6.3万円(大阪府大阪市淀川区)
12位 春日野道 6.3万円(兵庫県神戸市中央区)
14位 中津 6.6万円(大阪府大阪市北区)
15位 神戸三宮 7.0万円(兵庫県神戸市中央区)
15位 梅田 7.0万円(大阪府大阪市北区)

西宮北口駅は年齢問わず住みたい街の1位 駅前は商業施設が充実西宮北口駅(写真/PIXTA)

西宮北口駅(写真/PIXTA)

住みたい街ランキングは今年から調査方法の一部を変更したとのことだが、調査方法を変更する前の5年間も、今年も関西版の1位は西宮北口駅となっている。阪神大震災の被災後の再開発や、阪急西宮スタジアム跡地の活用などで、駅前には大規模商業施設が充実している。赤ちゃん用品店や図書館がある「ACTA西宮」は低年齢の子どものいる家庭にも人気があり、「阪急西宮ガーデンズ」は映画館のほか、阪急沿線ならではの阪急百貨店や、高級志向のセレクトショップもそろっているため、わざわざ梅田まで出なくても買い物には困らないだろう。

デザイン性の高い大規模マンションも多数増えているため、こだわりを持った家探しに応えてくれることも人気の理由だ。

また、阪急ならではといえば、宝塚歌劇団。西宮北口駅は阪急今津線も利用することができるが、今津線は宝塚大劇場の最寄駅である宝塚駅や宝塚南口駅まで約15分。ヅカファンにとって大変便利な街であるが、実はタカラジェンヌにとっても買い物やお茶によく利用する人気の駅。美を売り物にする彼女たちに愛されているという点でも、街の魅力がうかがえるだろう。

3位の岡本駅は、阪急神戸線のブランドを代表するともいえる駅。駅から少し離れると大きな邸宅が目立つが、駅周辺には若者や女性向けのおしゃれなお店や有名なカフェなども多い。甲南大学や甲南女子大学などの最寄駅でもあり、住むだけでなくデートなどで遊びにきても楽しい街だ。

特急が止まるため、梅田まで30分以内、神戸三宮までは10分以内という交通の良さも特徴。駅から約300mの位置にJR神戸線(東海道本線)の摂津本山駅があるため、2路線利用できるのも利便性が高い。

閑静だけじゃない 十三駅は飲食店や映画館など大阪らしい魅力も十三駅(写真/PIXTA)

十三駅(写真/PIXTA)

交通アクセスが一番良いのは、12位の十三(じゅうそう)駅だろう。阪急宝塚線や京都線とのハブ駅で、特急や快速などすべての電車が止まる。

駅周辺は、立ち飲み居酒屋がつらなるような少し猥雑な雰囲気もあり、いわゆる神戸線のイメージとは少し異なるかもしれない。しかし、小規模でも良質な映画や珍しい海外作品の上映で知られる映画館、第七藝術劇場や、大阪府で屈指の進学校として知られる大阪府立北野高校の最寄駅でもある。多少クセはあるが大阪らしい魅力があり、ハマるひとはどっぷりハマってしまう街だ。

2位の塚口駅は、住みたい街ランキングの穴場だと思うランキングでトップを獲得している。特急は止まらないが、ラッシュ時には通勤特急などが停車している。駅前の大型スーパー「塚口さんさんタウン」は、日常の買い物だけでなく公共サービスセンターや映画館も入っているため、子育てに忙しい家庭には強い味方だろう。また、庶民的な飲食店も多い点も魅力だ。

せっかく住むのなら、ブランド力のある路線に住みたいというのは当然の心理だろう。ハイソなイメージのある阪急神戸線だが、同じ沿線とはいえ、さまざまな特徴や魅力がある。イメージに先行されず、家族構成やそれぞれの趣味など、本当に自分たちにあう街を見つけるのも、家を探す楽しみのひとつだろう。

●調査概要
【調査対象駅】阪急神戸線沿線の駅
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、広さ10~40平米以内、築年数40年以内、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ算出期間】2017年11⽉1⽇~2018年1⽉31⽇
【家賃の算出⽅法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の管理費を含む⽉額賃料から中央値を算出
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している