孤独を癒す地域の食堂、ご近所さんや新顔さんと食卓を囲んでゆるやかにつながり生む 「タノバ食堂」東京都世田谷区

5月は「孤独・孤立対策強化月間」。「孤独ですか?」と聞かれたら、あなたは何と答えるでしょうか。現在、働いていても、家族がいても、友人がいても、内心、孤独を感じている人、将来、孤立するのではという怖れを抱いている人は多いことでしょう。今回はそんな「孤独の解消」を目的に掲げて活動する「タノバ食堂」の講演会と食事会に参加してきました。

地域ですれちがったときに会釈できる。ゆるやかなつながりが孤独を救う

TanoBa(タノバ)合同会社は、「望まない孤独をなくす」を目的に、2023年3月にヤフー・ジャパンの卒業生3名が共同出資してできました。事業の1つ「コミュニティ事業」として毎月、実施しているのが、食事をともにすることでゆるくつながりをつくる「タノバ食堂」です。タノバ食堂が実施されるのは、東京都世田谷区にある野沢龍雲寺の別館・龍雲寺会館。完全予約制で、2023年10月より毎月最終土曜日に行われており、通算5回、約100人の参加があったといいます。料金は参加者が思い思いの金額を支払う自由価格制をとっています。

左から宮本桃子さん、宮本義隆さん、多田大介さん(写真撮影/内海明啓)

左から宮本桃子さん、宮本義隆さん、多田大介さん(写真撮影/内海明啓)

2024年3月30日、TanoBa合同会社の設立を記念して、「望まない孤独を解消するための処方箋~自己責任社会からの脱却~」というイベントが開催されました。
トークイベントに先立ち、まず、TanoBa代表社員である宮本義隆(みやもと・よしたか)さんが、日本の社会の変化や孤独の背景にあるもの、タノバの設立と活動について紹介。誰もが起こり得る身近な問題「孤独」の解決の処方せんになり得ると話すのが「道端ですれ違ったときに会釈できる程度のゆるいつながり」だといいます。そこをつなぐのが、タノバ食堂の役割です。

宮本義隆さんの挨拶(写真撮影/内海明啓)

宮本義隆さんの挨拶(写真撮影/内海明啓)

確かにごはんをいっしょに食べると、「知らない人」から「見たことがある人」「話したことがある人」になります。そうしたゆるいつながりこそが、孤独を癒やし、生きやすい社会をつくってくれる、とのこと。また、この「タノバ食堂」で得た経験値を全国に広げて還元していきたいと話してくれました。

お寺の本堂に約70名の参加者がいます。なかなか見慣れない光景のようにも思えますが、お寺本来の使われ方なのかなとも思います(写真撮影/内海明啓)

お寺の本堂に約70名の参加者がいます。なかなか見慣れない光景のようにも思えますが、お寺本来の使われ方なのかなとも思います(写真撮影/内海明啓)

孤独問題の第一人者と名物編集者の対談は、笑いあり、学びあり、気づきあり

続いて開催されたのが、トークセッションです。登壇者は、24時間365日、無料かつ匿名で相談を受け付けているNPO法人「あなたのいばしょ」の理事長・大空幸星(おおぞら・こうき)さんと新潮社の名物編集者でもあり、出版部部長(現執行役員)中瀬ゆかり(なかせ・ゆかり)さんという異色かつ豪華な2人。会場となった龍雲寺の本堂に老若男女約70名が集まりました。

中瀬ゆかりさん(左)と大空幸星さん(右)(写真撮影/内海明啓)

中瀬ゆかりさん(左)と大空幸星さん(右)(写真撮影/内海明啓)

2020年に相談開始してから、多い時で1日に3000件、累計100万件近く、多くの人の相談に乗ってきた大空さんが、なぜ孤独が問題なのか、その背景にある風潮や思想を紹介します。

「日本では『孤独を愛せ』などというように、孤独が肯定的な文脈で使われることがあります。もちろん望んで孤独になっているという人もいますが、望んでいないのに孤独に陥っている人もいます。問題なのは、この望まない孤独・社会的な孤立です。また、孤独で苦しい、助けて、と言い出せない背景には、新自由主義的な考え方、どこか懲罰的な自己責任論、自業自得的な考え方があるように思います。非正規雇用が増え続けたこの30年間、コロナ禍を経て、ますます人々が置き去りにされ、追い詰められているのではないでしょうか(大空さん)

望まない孤独の背景には、自己責任論、新自由主義的価値観の影響があるという大空さん(写真撮影/内海明啓)

望まない孤独の背景には、自己責任論、新自由主義的価値観の影響があるという大空さん(写真撮影/内海明啓)

続けて、メディアにもたびたび登場する中瀬ゆかりさんが、文学と孤独、人との関係について話します。

「文学と孤独は切っても切れない関係です。陽気で“ウェーイ!”という人に向けての本はあまりなくて(笑)、なにか人によりそう、生きにくさや孤独を抱えた人によりそうのが本であり、文学なんですね。「人生論ノート」などで知られる哲学者・三木清は『孤独は山にない、街にある。一人の人間にあるのではなく、大勢の人間の「間」にあるのである。』といいましたが、つながっているように見えても誰にでも孤独は訪れます。自己責任論で片付けるにはあまりにも創造力がないし、短絡的だなと思います」(中瀬さん)

自身の体験を交えながら、孤独や食事、文学について話す中瀬さん(写真撮影/内海明啓)

自身の体験を交えながら、孤独や食事、文学について話す中瀬さん(写真撮影/内海明啓)

そのうえで二人は、孤独の解消に必要なのは、ゆるいつながり、おせっかい、聞く力だといいます。

大空さん「孤独は普遍的な問題で、みなが経験するもの。対処法はひとつではないですし、それぞれの立場でできることをすればいいと思います。ただ、やっぱり、おせっかいも大事なんですね。『どうした?困っている?』という地域の人の声がけられるのは、大きいですよね。また、できることでいうと、私達はとにかく相手の話を聞くこと。肯定すること。ほめてあげることを徹底しています。予防という意味では、やはりゆるいつながりをたくさんもっているのがいいですよね。
また、『僕は本気の他人事』という提唱をしていて。とにかく、人を助けたいという人はがんばりすぎて、自分を犠牲にしてしまうことが多いんです。すると自分の人生を大事にできなくなってしまう。自分を大事にして、余白ができたら手を貸す。その姿勢でよいと思います」

中瀬さん「私自身、パートナーの喪失、愛猫の介護などが押し寄せ、地獄のような日々を送っていました。特にパートナーを失ってからの2年間は、毎日、誰かとご飯を食べる約束をしていたんです。誰かと食事をするとその日、1日は生きていくことができる。こうして2年くらい過ごしたら、生きている人同士だけでなく、死者ともつながりをもてるんだなということに気がついて。遺骨をネックレスにしていたんですが、パートナーの好きだった競馬場にこのネックレスを身に着けていき、競馬を見ていたらつながっているなあと実感しました。
あと、下ネタは話題や人にもよりますが、最強なのではないかと(笑)。すごいラクなんですよ、聞いているほうも話しているほうも。笑った分は救われるではないですが、しょーもない話をしていることで、気持ちがラクになる。難しく追い詰めずに笑うのが力になると思います」

時折、笑いも交えたトーク内容に、多くの人がうなずき、そしてメモをとっていました。

住職からみた「寺」とまち、孤独、つながり。普遍的な宗教の役割とは

トークイベントの最後は、タノバ食堂の場所を提供し、サポートしている野沢龍雲寺 の住職・細川晋輔さんの話です。

人へのあたたかくやわらかなまなざしが印象的な細川住職(写真撮影/内海明啓)

人へのあたたかくやわらかなまなざしが印象的な細川住職(写真撮影/内海明啓)

「タノバ食堂の取り組みというのは、寺院や私たち僧侶にとっても、とても大事な問題だと捉えています。孤独で、苦しみのただ中にいると『死』という選択が光・希望に見えるというお話がありました。そうでなくて、タノバ食堂が提供するようなつながり、孤独でないという思いが『光』になれたらいいなと思います。つらく悲しい選択をしなくてよいように、私たちができることからコツコツと笑顔になっていければと思います」とやさしく語りかけます。

実は、このタノバ食堂、創業者の多田大介さんが野沢龍雲寺のご近所に住んでいたこと、多田さんのいとこが細川住職と知り合いだったことから、「場所を提供する」という話がまとまったといいます。トークイベント終了後、その経緯と手応えを細川住職に聞いてみました。

「タノバ食堂のお話を聞いたときに、まず1回やってみようという話になりました。場所は無料でお貸し出ししていますが、お願いしたことはただ一つ、場所を来たとき以上にキレイにしてください、ということだけです。
本日、参加者が通算100人を超えるということでしたが、まず何千人という数の話ではなく、ムリのない範囲で背負わない程度にやっていけたらいいですよね。これを10カ所でやったら1000人になりますし、100カ所でやったら1万人になりますよ。そうしてゆっくりと、孤立の解消につながればいいですね」といい、できるペースで続けていくことが大切だと話します。

そして、寺院を広く開放するようになった背景をこう話してくれました。

「私が京都の修行を終え、お寺に戻ってきた時のことです。雪の日に子どもたちが雪だるまをつくっていたんですが、声をかけようとしたら子どもは怒られると思ったようで、話ができなくて。お寺には入っていけないと言われているし、声がけをしたら怪しまれる。時勢柄、今の社会はよいようで、やはりこれではよくない。そこで境内にベンチを置いて、花見とライトアップ、盆踊り、ヨガや座禅会なども行っています。昔のお寺にあった地域に開かれた場所というのを今、意識的に行っているんです。みなさんもカフェを訪れる感覚で、お寺を訪れてもらえたらうれしいです。東京にもたくさん寺院はありますので」(細川住職)

寺院、お寺、宗教というと、閉ざされた神聖な場所をイメージしますが、もともとは行政や病院、学校、裁判のような多数の人に開かれた場所でもありました。細川住職が理想として思い描くのは、やはり開かれて、ゆるくつながる場所としての「寺院」の存在です。

トークイベント終了後には参加者と記念撮影(写真撮影/内海明啓)

トークイベント終了後には参加者と記念撮影(写真撮影/内海明啓)

「タノバ食堂さんが目指すように、やはりご近所さんとは会ったら挨拶できる関係がよいかなと思います。散歩している人には結構、喋りかけることも多いですね。もちろん返してくれない人、嫌がる人もいますけど(笑)。この根底にあるのは、『まわりに迷惑をかけていけない』という考え方なんでしょう。でも、いいんです、迷惑をかけて。生きるっていうことは迷惑をかけることなんです。迷惑をかけてもいいと思えば、みなさん少しラクになるのではないでしょうか」と、細川住職。

私たちの多くは、小さなころから何度も「まわりに迷惑をかけるな」といわれて育ちます。だからこそ、迷惑をかけずにひっそりと暮らさなくてはいけない、苦しくても助けてといえない、「静かな圧力」になっている側面もあるのでしょう。ご住職の「そもそも人は迷惑をかけるもの」という捉え方に、肩の力が抜ける思いがします。

老若男女が食事を楽しむ。会話が苦手な参加者も自然になじむ

トークイベント終了後、場所を「龍雲寺会館」に移し、「タノバ食堂」が17時30分から開店しました。今回は常連さんから初参加者に加え、大空さんと中瀬さんを含め、老若男女で食卓を囲みます。メニューはちらし寿司など春を感じさせるもので、今回はアルコールはなしですが、アルコールが飲めることもあります。

ボランティアの料理人さんを紹介。海外出身の方もおり、会場からは驚きの声が上がっていました(写真撮影/内海明啓)

ボランティアの料理人さんを紹介。海外出身の方もおり、会場からは驚きの声が上がっていました(写真撮影/内海明啓)

タノバ食堂の約束をまとめた「タノバ食堂の憲章」。9番目の「来た時よりも美しく、残すものは感謝のみ」は、会場を提供する細川住職の唯一のお願い(写真撮影/内海明啓)

タノバ食堂の約束をまとめた「タノバ食堂の憲章」。9番目の「来た時よりも美しく、残すものは感謝のみ」は、会場を提供する細川住職の唯一のお願い(写真撮影/内海明啓)

今回の献立は、ちらし寿司に筑前煮など。「取り分け」があるので、コミュニケーションのきっかけにもなります(写真撮影/内海明啓)

今回の献立は、ちらし寿司に筑前煮など。「取り分け」があるので、コミュニケーションのきっかけにもなります(写真撮影/内海明啓)

「いただきます!」の挨拶をしたら、参加者は思い思いの会話をし、盛り上がっていました。参加していたのは40人ほどで、年齢性別、属性も異なり、講演会に参加していた人からさらにバラエティー豊かな顔ぶれに。その様子はまるで古くからの友人のよう。初対面の人に話しかけたり、名前と顔を覚えたりするのが苦手な筆者からすると、「みなさん、コミュニケーション能力高すぎでは?」と思っていました。ただ、食事会にも参加した大空さんによると、そうでもないようです。

食事会の様子。年齢・性別もばらばらですが、会話が弾んでいます(写真撮影/内海明啓)

食事会の様子。年齢・性別もばらばらですが、会話が弾んでいます(写真撮影/内海明啓)

発起人である多田さんも、もちろん参加します(写真撮影/内海明啓)

発起人である多田さんも、もちろん参加します(写真撮影/内海明啓)

食事会にも参加した大空さん。箸を進めつつ、会話をしていきます(写真撮影/内海明啓)

食事会にも参加した大空さん。箸を進めつつ、会話をしていきます(写真撮影/内海明啓)

「僕と同じテーブルになった方は、実はコミュニケーションが苦手で今日、ここに来るかどうかもすごい迷ったらしいんです。ただ、ここは食べるのがメインだから、あんまり重く受け止めなくていいと言っていました」と大空さん。会話が苦手な人はおかずを取り分けたり、会話の聞き役にまわったりとなじんでいるよう。みなさん会話が得意な人というわけではなく、あくまでも「食事メインだから」というのがよいようです。

途中、今回が2回目の参加という30代女性に話を聞きました。
「前回が楽しかったので、2回目の参加です。1カ月に一度というペースもちょうどよいですし、孤独というテーマにも興味があって。手づくりの食事を食べて盛り上がるだけなので、がんばらずに参加できるのがいいなと。リアルのつながりと、オンラインのつながり、どちらも大切。居場所があるといいなと思います」と感想を教えてくれました。

にこやかな中瀬さん。昔からの友人かのように盛り上がっていました(写真撮影/内海明啓)

にこやかな中瀬さん。昔からの友人かのように盛り上がっていました(写真撮影/内海明啓)

会話が苦手という人もいて、勇気をふりしぼって参加したという方も。みんながみんな会話上手、盛り上げ上手というわけではないようです(写真撮影/内海明啓)

会話が苦手という人もいて、勇気をふりしぼって参加したという方も。みんながみんな会話上手、盛り上げ上手というわけではないようです(写真撮影/内海明啓)

また、地元町内会で、毎回、「タノバ食堂」に参加しているという70代女性によると、この世田谷区野沢という地域は「まだつながりが残っている」とのこと。

「ご住職さんともつながりがあるし、近隣での声がけもまだ残っている地域です。ただ、この数年、コロナ禍で人と会えなくなり、だいぶ寂しかったですね。高齢だと人と会わず、話さなかったことで、気持ちも足腰も弱まり、元気を失ってしまった人もたくさんいるんです。タノバ食堂のように、地域の人、そして普段会わない人が集えるのはとてもいい。いつものメンバーだと会話もあきてしまうでしょ(笑)。新鮮な気持ちになるし、元気をもらえる。続けて参加して応援できたらと思います」といい、地域の協力・理解も得られているようです。

第二次世界大戦後から高度経済成長期、バブル経済崩壊などを経て、家族のあり方、ご近所付き合い、親戚づきあい、自治会や町内会、学校やPTA、会社の社員同士など、今まであったつながりも急速に衰えてしまいました。助けて、と言えない「孤独」「孤立」は、まさに誰もが陥るのだと思います。ただ、一方で、「ご近所と仲良くなりましょう」「助け合い」「絆」といわれてしまうと、「合わない人がいるかも」と気が引けてしまいます。「月1度、ご飯を食べるだけ」そんな気楽な会であれば、きっとつながれる人もいることでしょう。

仏教に由来する言葉のひとつに、「袖振り合うも多生の縁」という言葉があります。「多生」は仏教語で前世を意味し、袖が触れ合うようなちょっとした出会いも、過去の縁によって起きるという考え方です。自分も大事にしながら、人や人との縁を大事にしていけたら。そう考えれば、未来は今より少しだけ生きやすいものに変えていけるのかもしれません。

●取材協力
タノバ食堂

自社物件の孤独死で社会的孤独の課題を痛感。賃貸空室の無料貸出など居住支援活動を大家に広める活動も 岡野不動産合同会社

大学の博士課程で学生として「空き家と居住支援」について研究をしている岡野傑(おかの・すぐる)さんは、アパートやマンション、倉庫を所有するオーナーでもあります。その研究から、高齢者や外国人、低所得者など住まいの確保に配慮が必要な人たちへの支援の必要性を感じ、所有する物件を無料で貸し出すこともあるそうです。ただ、そのようなボランティア的な精神で続けているだけでは世の中にムーブメントは起きないと、同じ志の大家さんを集めるための啓蒙活動も行っているとのこと。

岡野さんがなぜ大家として配慮が必要な人たちの支援に携わるようになったのか、その活動と志についてお話を聞きました。

収益のために始めた大家業。孤独死が発生したことが転機に

岡野さんが初めて大家になったのは2010年のこと。当時はまだ企業に勤めており、自身の成長のためにFP(ファイナンシャルプランナー)の資格を取得しました。ある日、参加しているFPサークルで、財務省が国有地を売却するという話を聞きます。大家をしている友人の影響もあり、貸家業に興味を持った岡野さんは、自己資金で格安の土地と建物を購入。自分でリフォームしながら貸し出し、大家としての第一歩を踏み出したのでした。

転機は、所有物件が100室を超えるくらいまで大家業が軌道に乗ってきたころです。岡野さんは44歳で会社を退職し、専業大家となりました。さらにその翌年から三重大学大学院地域イノベーション学研究科博士前期課程に入学することに。大家として今後の収益を確保していくため「空き家問題」の研究を始めていました。ところが入学してすぐ、岡野さんが貸している物件で立て続けに2件の孤独死が発生したそうです。うち1件は死後1カ月以上も発見されなかったため、片付けに入った岡野さんはゴミ屋敷のようになった部屋や強烈な臭いに衝撃を受けました。

岡野さんの所有するアパートで孤独死が発生したときの部屋の中。孤独死の現場は想像を絶するもので、岡野さんの関心は「空き家」から「住まいに困っている人」へと移っていった(画像提供/岡野さん)

岡野さんの所有するアパートで孤独死が発生したときの部屋の中。孤独死の現場は想像を絶するもので、岡野さんの関心は「空き家」から「住まいに困っている人」へと移っていった(画像提供/岡野さん)

「社会的孤立という現実を目の当たりにして、関心が『空き家』から『人』へと移りました。社会には困っている人が大勢いるということを認識したのは、この時からです。さらに福祉関係の仕事をしている同じ社会人のゼミ生から、精神障がいのある人を支援する中で家を探したところ、全ての物件で入居を断られてしまったという話を聞きました。ゼミ生は、その人のために自ら中古住宅を購入して大家になったそうです。

私はそれまで収益を上げることを目的として大家業をやっていたので、大きな刺激を受けました。そこから『空き家問題』と『住宅に困っている人の問題』を組み合わせた問題解決が、私のライフワークとなったのです」(岡野さん、以下同)

空室を「無料」で貸し出し。論文として発表することで、問題提起も

岡野さんが入った大学院の指導教官は、資源循環やごみ問題などを研究しており、フードロスやフードバンクなどの事例を授業で扱っていました。フードバンクを実際に見てみようと思った岡野さんは、三重県にあるフードバンクを見学した際に、フードバンクと一緒に活動していた市民団体から話を聞くことになります。

当時、その市民団体の事務所はワンルーム。支援のための食料がいっぱいでスペースがないほどでしたが、どこにも行き場のない外国人がそこで寝泊りしたり、付近の川に入って魚を取って生活しているなど、外国人の悲惨な状況を知ることになりました。

「そこで『タダでうちのアパートの空室を1部屋使ってみてください』と提案してみたのです。空室は放っておいてもタダで、貸さなくても収益は0円。物件数100戸程度にまで事業が成長すれば、その1%=1戸を無料で貸し出しても収益に大きな影響はありません。もともと空き家問題の関心から大学院に入ったので、自分の空き家活用の研究にもなると考えました。

市民団体は最初は遠慮されていましたが、いざ借りてもらうと住まいが必要な人が何人も出てきて大助かりだったということでした。さらに食料支援や生活支援の活動から、住居という支援ができるようになって外国人を助けられる幅が広がった、という言葉をもらいました」

岡野さんが行った空き家の無料貸し出しの仕組み。住居の提供は大家である岡野さんが行い、それ以外の生活支援を市民団体が行った(画像提供/岡野さん)

岡野さんが行った空き家の無料貸し出しの仕組み。住居の提供は大家である岡野さんが行い、それ以外の生活支援を市民団体が行った(画像提供/岡野さん)

岡野さんはこの取り組みを論文「民間大家による住宅確保要配慮者に対する家賃無料住宅についての考察」として発表。不動産投資メディアなどでも紹介され、多くの人が知ることになったわけです。

「事業が成長してこそできる」岡野さん流、住まいに困っている人への関わり方

これらの経験を経ながら大家業を始めて13年以上が経ちました。現在、岡野さんが大家として注力している活動は3つあります。

「ひとつは『住まい探しに困っている人の入居申込を断らない』こと。人が暮らしていくには最低限、家が必要です。家賃債務保証会社の審査を通ることが前提ではありますが、基本的に入居を希望する人を断りません。

2つ目は引き続き市民団体と協力し、空室を緊急で住むところを必要とする人のためのシェルターとして活用してもらうこと。現在、私の所有する物件215室のうち、アパートの4室を提供しています。特に外国人は見知らぬ土地で頼る人もいないうえ、ここ三重県では工場で働いている非正規労働者が多く、会社都合で短期に職を失うことも日常茶飯事です。言葉の壁や必要な手続きがわからず、十分な社会保障も受けられていないので、住まいの確保ができません。かなり危機的状況にあるといえるでしょう。

そして3つ目として、高齢者の多い物件で交流会を実施して、住民同士のつながりをつくっています。同じ敷地内に住んでいるにもかかわらず、住人間の関係は希薄でした。時にそれは孤立を生み、孤独死にもつながります。そこで住民同士が仲良く話し合えるきっかけを提供することで、自分たちで協力しあってお隣同士で助け合う関係をつくろうとしています」

定期的に入居者同士の交流会を開催。交流を持つことで入居者の孤立を防ぎ、孤独死や近隣とのトラブル防止にもなる(画像提供/岡野さん)

定期的に入居者同士の交流会を開催。交流を持つことで入居者の孤立を防ぎ、孤独死や近隣とのトラブル防止にもなる(画像提供/岡野さん)

住まいに困る人の受け入れは「不安」「リスク」よりも「メリット」が大きい

当然ながら、高齢者や外国人など、入居に配慮が必要な人たちに物件を貸し出すには、家賃滞納や孤独死など、大家にとってのリスクも考えなくてはなりません。しかし、岡野さんは自身の事業を「住宅セーフティネット業」と位置づけ、困っている人を助けることが仕事だと考えています。このように考えられるようになったのは、所有物件が100戸を超えたころから。収入的にも時間的にも余裕を持てるようになったことも大きいといいます。

「大家は、入居する人たちが暮らし続けるためにしっかりと修繕を行い、税金を払い、金融機関に借りたお金を返済していかなくてはなりません。そうやって成長することで、さらに多くの住まいを求める人たちを受け入れられるのです」

加えて、住まいに困っている人を受け入れることは、社会的な意義だけではなく、オーナーとしての利益につながるとも。

「三重県では空き家率が20%を超える地域もあり、今後も人口減少や新築アパートの増加を考えると賃貸業を継続していくのも難しくなる一方です。ところが、私の所有する物件では入居する人の約20%がいわゆる『住宅確保要配慮者』といわれる住まいに困っている人たち。積極的に受け入れることで、入居率はほぼ95%を維持しており、リスクを考慮しても空室にするより貸し出す方がメリットは大きいと考えています。

さらに物件周辺の整備を含めた地域貢献は、結果的に『入居率が上がり、業績が良くなる』ことにつながり、『融資を受けやすくなって物件を増やすことができる』という好循環をもたらします。そして何よりも、住まいに困っている人たちに住居を提供して社会問題に取り組むことで、社会に役立っているという幸福感を得られるのです」

「空室にしておくなら無料で貸しても収益は変わらない。市民団体にシェルターとして貸し出すことで銀行の非財務項目評価がアップして融資に有利に働くこともある。何より、社会に役立っているという幸福感を得られる」と岡野さんはいう(画像提供/岡野さん)

「空室にしておくなら無料で貸しても収益は変わらない。市民団体にシェルターとして貸し出すことで銀行の非財務項目評価がアップして融資に有利に働くこともある。何より、社会に役立っているという幸福感を得られる」と岡野さんはいう(画像提供/岡野さん)

目指すのは江戸時代の大家さんと店子(たなこ)の関係。同志を増やすための活動も

しかし、岡野さんが行っているような居住支援の活動に興味を持つオーナーは、10人に1人いれば良い方だといいます。

「支援の輪を広げていくためには、社会貢献に興味がないオーナーに『収益アップ』『空室の減少』『空室が少ないことで高く売れる』といったメリットを強調する必要があると思います。そして、管理や滞納などトラブルのデメリットを克服できる方法があることを伝えるべきでしょう」

実際に岡野さんが気をつけていることは「管理をしっかりと行って問題を減らす」ことです。例えば、ゴミの分別がわからない外国人入居者のために日本語と母国語でゴミの出し方を貼り付け、分別できていない入居者を特定できる場合は、直接指導もするのだそう。頻繁に物件に通い、清掃をして入居者に挨拶したり、道路の草を刈ってゴミ拾いをしたりして入居者との間に関係をつくりあげると、トラブルが減り、何かあったときにも対応しやすくなると岡野さんは実感しています。

「私が参考にしているのは、江戸時代の大家さんです。喧嘩の仲裁や仕事や結婚の斡旋など、昔の大家さんは入居者と深く関わり合っていました。現代は業務の細分化や効率化が進み、管理会社に任せっきりなど、経営もドライになりがちです。しかし大家が直接働きかけることで、入居者に寄り添った経営ができると考えています」

週に2回、自ら建物の周りを清掃して、道路のゴミを拾い、入居者に挨拶をする。大家が直接働きかけることで入居者との距離が縮まり、建物や周辺環境が整えば入居が増えるという好循環に(画像/PIXTA)

週に2回、自ら建物の周りを清掃して、道路のゴミを拾い、入居者に挨拶をする。大家が直接働きかけることで入居者との距離が縮まり、建物や周辺環境が整えば入居が増えるという好循環に(画像/PIXTA)

さらに岡野さんのライフワークは、同じような考えを持った大家仲間を増やしていくことにも及びます。敷地内で実施する交流会やパーティーに大家仲間やその家族を呼び、自分の活動を見てもらったり、講演会に呼ばれれば話をしにいくとのこと。これから貸家業をやってみたいと考えている人には、決算対策や運営方法などについて無料で相談に乗ることもあるのだそうです。

海外の大学で発表をしたときの様子。講演会に呼ばれると、岡野さんは時間の許す限り話をしにいくという(画像提供/岡野さん)

海外の大学で発表をしたときの様子。講演会に呼ばれると、岡野さんは時間の許す限り話をしにいくという(画像提供/岡野さん)

いずれの取り組みも「困っている人に住まいを提供するかどうか、最終的に決められるのは物件を持っている『大家』であって、その母数を増やすためにアプローチすることが居住支援の取り組みを広げる近道」だとの思いから。

「私はきっかけをつくるだけ。こういう世界もあるよ、と全国の大家さんの世界を広げることができればいいと考えています」

岡野さんは「今は、賃貸運営で収益を得るよりも『大家さん、ありがとう』の言葉が嬉しい、住まいがなくて困っている人の役に立てることが喜び」だと言います。しかし、岡野さんのように、居住支援を継続できる状態まで、事業を成長させることは、簡単ではありません。そのためには「まずはきちんと貸家業を軌道に乗せ、入口の動機は収益であっても、このような取り組みが必要なことを知ってもらうことが大事」だという岡野さんの考えが、全国の大家さんにも届くことを願います。

●取材協力
岡野不動産合同会社 代表社員 岡野 傑さん

「高齢者が賃貸を借りづらい問題」に解決策はあるか? R65代表取締役に聞いた!

「65歳以上の高齢者は賃貸住宅を借りづらい」ということは、近年報道などを通じて知られるようになってきた。山本 遼さんが代表取締役を務めるR65では、65歳からの部屋探しを支援し、専用サイト「R65不動産」で高齢者が入居できる物件を紹介している。また、高齢者の賃貸入居を難しくする課題を解消する取り組みも積極的に行っている。高齢者の部屋探しの実態について、山本さんに話を聞いた。

65歳以上の4人に1人が経験する“入居拒否”の実態

筆者は2年前に「65歳以上の“入居拒否”4人に1人。知られざる賃貸の「高齢者差別」」という記事を書いた。この記事で、全国の65歳以上の23.6%が「不動産会社に入居を断られた経験がある」と回答し、断られた経験の回数は「1回」という人が半数近くになるが、「5回以上」という人も13.4%いたという、R65の調査結果を紹介したものだ。

筆者が気になったのは、65歳以上の4人に1人は入居拒否に遭う一方、4人に3人は問題なく入居できているのか?その場合、どんな高齢者なら入居を断られないのだろうか?高齢者の入居拒否の実態に詳しいR65の山本さんに質問をぶつけてみた。

R65代表取締役の山本遼さん(筆者撮影)

R65代表取締役の山本遼さん(筆者撮影)

「高齢者の4人に3人は入居できる状態と思わないでほしい」と山本さん。収入があって保証人もいる高齢者でも、賃貸住宅を見つけるのに時間がかかっている。むしろ、4人に1人は時間をかけても物件が見つからない状態と見るべきだというのだ。R65の調査結果でも、年収200万円未満とそれ以上(年金以外に仕事をして収入を得ていると想定)で比較しても、入居拒否の経験の有無や断られた回数に違いはなかった。

出典:R65「『65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題』に関する調査」

出典:R65「『65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題』に関する調査」

後期高齢期(75歳以上)の年齢になったり障害があったりすれば、さらにハードルが高くなるだけで、入居については、まず「65歳以上という年齢」が大きなハードルになるのだという。

65歳以上が入居しづらい要因はあるが、ケアする手立てもある

ではなぜ、65歳以上で入居が難しくなるのだろうか?山本さんによれば、最も大きな要因は、貸主(オーナー)側に高齢者に貸した経験が少ないことで、理解が不足しているからだという。

一般的な賃貸住宅では、貸主側にやむを得ない事情がない限り、入居者が希望すればそのまま住み続けることができる。住み続ければ入居者が高齢化して、孤独死や死後の残置物の問題が生じるなど、若年層に貸すのとは異なるトラブルが起きると考え、それを懸念して年齢だけで入居を拒む貸主が多いようなのだ。

(公財)日本賃貸住宅管理協会による調査では、「高齢者世帯の入居に拒否感がある」と回答した貸主は全体の70.2%を占める。この拒否感を解消するには、貸主のリスクをケアする手立てを講じて、安心して貸せる環境を整備していくことが必要だと、山本さんは考えている。以降は、どんな課題があるか、それに対するどんな手立てがあるかを整理していこう。

●孤独死
貸主にとって孤独死は大きな問題だ。発見が遅れると、臭いや床面の損傷などが発生して、その部屋を特殊清掃したり改修したりする必要がある。かつ、その間は入居者募集もできないので、貸主の損失も大きくなる。だから、孤独死は早期発見がカギになるのだ。これについては、「見守りサービス」を活用することで、異常な状態を検知することができる。

●身元保証
賃貸借契約では連帯保証人などの身元保証を求められるが、保証人がいない高齢者も多い。身元保証で求められるのは主に家賃の滞納だが、これは高齢者に限らず、「家賃債務保証会社」と契約するのが一般的になっている。このほか、入院時や死亡時にまで対応する「身元保証サービス」の利用も考えられる。

●死亡後の残置物の処理
死後に賃貸住宅に残された物は、貸主が勝手に処分することはできない。相続人に残置物の処分や部屋の明け渡しなどの対応を依頼するのが基本だ。一人暮らしで相続人が不明の場合、貸主は推定相続人を探し出して交渉することになり、それにかなりの時間を要する場合がある。これについては、国土交通省と法務省が「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を策定した。入居者の推定相続人か、それが難しいときは居住支援法人※などの第三者が入居者と委任契約を結び、それによって代理権を得た者が賃貸借契約の解除や残置物の処理を行うというものだ。
※居住支援法人とは、住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律(住宅セーフティネット法)に基づき、都道府県が指定する、要配慮者の居住支援を行う法人。

R65でも独自に高齢者のリスクケア商品を用意

こうした高齢者ならではのリスクについては、行政が対応すべき課題もある。このなかで不動産会社が考えるべきことは、賃貸経営で重要となる、物件の資産価値を下げず、空室期間を長期化させないことに絞られると山本さん。

そこで、R65でも高齢者の入居リスクをケアする商品を用意している。まず、孤独死の問題については、「あんしんみまもりパック」(月額980円~)を提供している。これは、電気の使用量をチェックして見守るもので、貸主の原状回復費用や家賃を補償する保険もセットにしている。比較的安価で見守りと補償をセットにすることで、貸主が利用しやすいようにしているのが特徴だ。

残置物の処理については、R65のパートナー不動産会社に対しては、居住支援法人でもあるR65が残置物処理に関する委任契約を受ける契約書を用意しているほか、他の不動産会社などが使える賃貸借契約の解除と残置物処理に関する契約書(推定相続人が受託する想定)を一般公開している。

なお、家賃の滞納については、実は高齢者だからといって多いわけではないという。たしかに、家賃債務保証会社を利用することで滞納のリスクは解消されるし、年金のなかでやりくりできる賃料であれば問題はあまり発生しないはずだ。

難しいのは認知症を発症して、賃貸住宅での生活が難しくなる場合だ。特に身寄りのない単身高齢者の場合、認知症が進んでしまうと意思能力がないと判断されてしまうので、まだ軽症のうちに地域包括支援センター※などと連携して、グループホームなどの環境が整った場所に移ってもらうのがよいという。
※地域包括支援センターは、地域の高齢者を支えるために市町村が設置するもので、「介護予防ケアマネジメント」「総合相談支援」「包括的・継続的ケアマネジメント支援」「権利擁護」の業務を行う。

高齢者が賃貸住宅を探しやすくするためには?

高齢者がもっと賃貸住宅を探しやすくするためには、不動産情報サイトの充実が挙げられる。現状でも、掲載物件数の豊富な大手ポータルサイトで、「高齢者歓迎」などの項目で検索して、高齢者の入居を拒まない物件を探すことはできる。さらに、高齢者対象の賃貸住宅に特化したR65不動産のサイトでは、エリア検索のほかに、二人入居可、駅徒歩5分、保証人不要相談、庭付き、ペット可、1階またはエレベータなどのテーマ別検索ができるようにしている。これらは、高齢者が部屋探しをする際に主要な条件として挙げる場合が多いからだ。ただし現状では、必ずしも、高齢者のニーズと掲載物件がマッチするとは限らない。

そこで、山本さんがもう一つの課題として挙げるのが、不動産流通の問題だ。高齢者の入居を拒まない物件自体を増やす必要があるからだ。

貸主が高齢者に賃貸住宅を貸すことに拒否感がない場合でも、不動産会社のほうで手間がかかるなどの理由で、積極的でない場合もある。そこで、高齢者の部屋探しに積極的なR65のパートナー不動産会社を増やし、R65不動産の掲載物件を増やそうと考えている。パートナー不動産会社に高齢者に関する仲介や賃貸管理のノウハウがないという場合は、ノウハウの提供を惜しまないという。

次に、貸主の理解を深めること。「高齢者世帯の入居に拒否感がある」という貸主が70.2%いたが、拒否感を示していない残りの3割にしっかりと、見守りサービスなどのリスクをケアする手立てを紹介することで、高齢者に多くの賃貸住宅を提供してもらいたいという。

山本さんの高齢者のイメージには、亡くなる2年前まで薬局で長く働き続けた祖母の姿がある。高齢者が暮らす場としては、介護が受けられる施設やサービス付き高齢者向け住宅などもあるが、自立して自分らしい生活を送るには、街の中に数多くある賃貸住宅が適していると思っている。それを実現するために、R65不動産を拡充させたいという考えだ。

今後、日本の高齢化はますます進んでいく。政府も、「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」や「残置物の処理等に関するモデル契約条項」を策定し、高齢者などの住宅確保要配慮者の支援を拡充するための検討会を立ち上げるなどの取り組みも行っている。

こうした後押しも必要だが、困っている高齢者の部屋探しを支援しようという、山本さんのような情熱も必要だ。「高齢者に賃貸住宅を貸すのが当たり前の社会になったときには、R65不動産はなくなってよい」という、山本さんの発言が印象に残っている。