東京の私大新入生の仕送り額、平均額は低水準でも住居費は増加。家賃は8割近く!?

東京私大教連が公表した「2023年度 私立大学新入生の家計負担調査」によると、私大生への仕送りの額は低水準にとどまっている一方で、家賃などの住居費の負担は増えているという。入学にかかる費用も上がりつつあるというので、調査結果を詳しく見ていくことにしよう。

【今週の住活トピック】
「2023年度 私立大学新入生の家計負担調査」を公表/東京地区私立大学教職員組合連合(東京私大教連)

「受験から入学までの費用」は過去最高を更新

東京私大教連の調査の対象は、首都圏(1都3県)の私立大学・短期大学13校に2023年度に入学した新入生の家庭。受験から入学までの費用は、自宅通学者が162万3181円(前年度比で1万901円増額)、自宅外通学者が230万2181円(前年度比で4万6801円増額)となり、いずれも過去最高額となった。

特に自宅外通学者では、物価高による「生活用品費」の支出増が大きく、「家賃」や「敷金・礼金」の住居費も上昇している。一方、「受験費用」は1万1500円減額となり、受験校数を減らすなどで費用を抑えていることがうかがえる。

■受験から入学までの費用(住居別)

受験から入学までの費用(住居別)

(出典:東京私大教連「2023年度 私立大学新入生の家計負担調査」より転載)

仕送りの平均月額は8万9300円、家賃の平均月額は6万9700円

自宅外通学の場合、「仕送り額」の平均月額は8万9300円。最近はおおむね横ばいで推移している。(5月は入学直後の新生活や教材の準備で費用がかさむため、6月以降の仕送り額で平均を算出している。)

ところが、「家賃」は上がり続けている。平均月額は6万9700円で、前年より2400円増え、過去最高となった。その結果、年々「仕送り額」と「家賃」の差が縮まり、仕送り額から生活費に充てられる金額が減少する形となっている。平均月額の差額は1万9600円なので、30日で割ると約653円となり、おおむね1日653円で生活することになる。なかなか厳しい状況だ。

■「6月以降の仕送り額(月平均)と「毎月の家賃」の推移 ~月平均の仕送り額は8万9300円

「6月以降の仕送り額(月平均)と「毎月の家賃」の推移 ~月平均の仕送り額は8万9300円

(出典:東京私大教連「2023年度 私立大学新入生の家計負担調査」より転載)

さらに、仕送り額の平均月額に占める家賃の平均月額の割合を見ると、実に78.1%を占め、過去最高の比率になった。

■「6月以降の仕送り額(月平均)に占める「家賃の割合」の推移 ~仕送り額に占める家賃の割合は8割に迫る

「6月以降の仕送り額(月平均)に占める「家賃の割合」の推移 ~仕送り額に占める家賃の割合は8割に迫る

(出典:東京私大教連「2023年度 私立大学新入生の家計負担調査」より転載)

筆者はこのコーナーで、2016年にも同じ調査結果を取り上げた(「首都圏の私大生の平均家賃は6万1200円、どんな物件がある?」)が、2015年度の調査結果(70.6%)について書いていたので、「仕送り額に占める割合は初めて7割を超えることとなった。」としている。それからさらに上昇して、2023年度には8割近くにまで達しているのだ。

では、家賃の平均月額6万9700円で東京の賃貸を探すことを考えてみよう。SUUMOで東京都の家賃相場情報を見てみる(2024年4月10日更新情報)と、ワンルームなら23区内でも家賃相場が7万円を切る区があることがわかった。中野区、杉並区、北区、板橋区、練馬区、足立区、葛飾区、江戸川区だ。このほかの区でも、築年数が古かったり駅から距離があったりする物件なら、7万円を切る家賃のものが見つかるかもしれない。1K/1DKの広さで家賃相場が7万円を切るとなると、23区にはなかったが、立川市、武蔵野市、三鷹市、調布市を除いた東京都下の地域が該当した。

都心部から少し離れれば、希望の家賃や広さの賃貸が探せる状況ではあるようだ。ただし、セキュリティーがしっかりしているとか、宅配ボックスが欲しいなどの条件をつけていくと家賃は上がっていく。物件探しには、優先順位をしっかりつける必要があるだろう。

●関連サイト
東京地区私立大学教職員組合連合(東京私大教連)「2023年度 私立大学新入生の家計負担調査」

入居者のための食堂、昼・夕食500円、朝食はなんと100円! 「トーコーキッチン」開店から9年目。入居者希望増、書籍化など、さらにすごいことになってた!

手づくりの食事を朝100円、昼・夕500円のワンコインで毎日提供する、賃貸物件の入居者のために不動産会社が運営する食堂「トーコーキッチン」。2015年のオープン以降、「街の一角に自分たち専用の食堂がある」という安心感を味わえる魅力的な仕組みによって、賃貸物件への入居希望者が増えるとともに、多くの注目を集め続けています。食堂「トーコーキッチン」のある淵野辺(神奈川県相模原市)を訪れ、8年間の変化について聞きました。

「きっかけは、ご家族から聞こえてきた食事への心配の声でした」

「トーコーキッチン」は、神奈川県相模原市の不動産会社・東郊住宅社が運営する入居者のための食堂。JR横浜線・淵野辺駅から徒歩2分ほどの商店街に立地しています。東郊住宅社は40年以上にわたりJR横浜線・淵野辺駅周辺にあるアパート、マンションなど賃貸物件を管理している、地域密着型のいわゆる「街の不動産屋さん」。

淵野辺には、3つの大学(青山学院大学、麻布大学、桜美林大学)が点在しており、東郊住宅社の管理する物件では1人暮らし用のワンルームが6、7割を占め、そのうちの8割ほどに学生が入居しています。

淵野辺駅から徒歩2分。トーコーキッチンはこんな商店街の一角にあります(写真撮影/片山貴博)

淵野辺駅から徒歩2分。トーコーキッチンはこんな商店街の一角にあります(写真撮影/片山貴博)

ガラス張りで、通りから店内が見えます(写真撮影/片山貴博)

ガラス張りで、通りから店内が見えます(写真撮影/片山貴博)

トーコーキッチン店内。午後のティータイム。大学は春休みに入り、普段、大勢来店する学生さんたちは数人見かけるだけでした(写真撮影/片山貴博)

トーコーキッチン店内。午後のティータイム。大学は春休みに入り、普段、大勢来店する学生さんたちは数人見かけるだけでした(写真撮影/片山貴博)

そうした学生を始めとする入居者のために、トーコーキッチンでは朝8時から夜8時まで毎日、朝食を100円、昼食・夕食を500円という格安価格で提供しています。朝・昼・夕食はそれぞれ栄養バランスを考えてつくられた日替わり&週替わり定食、カレーライス500円やキッズプレート300円、コーヒー・紅茶・ルイボスティー100円、サイドメニュー50円といったメニューがそろいます。

一番人気は「ハヤシ社長」500円。池田さん考案のハヤシライスです(写真撮影/片山貴博)

一番人気は「ハヤシ社長」500円。池田さん考案のハヤシライスです(写真撮影/片山貴博)

「カレー会長」は東郊住宅社を創業した先代社長がこよなく愛したスープカレー。先代の奥様のレシピだそうです(写真撮影/片山貴博)

「カレー会長」は東郊住宅社を創業した先代社長がこよなく愛したスープカレー。先代の奥様のレシピだそうです(写真撮影/片山貴博)

これが100円の朝食。しかも税込みです。「朝食はさすがに赤字です」と池田さん(写真撮影/片山貴博)

これが100円の朝食。しかも税込みです。「朝食はさすがに赤字です」と池田さん(写真撮影/片山貴博)

日替わり定食500円。この日はプルコギ定食でした。ご飯は白米と五穀米から選べます。特に豚汁が美味!(写真撮影/片山貴博)

日替わり定食500円。この日はプルコギ定食でした。ご飯は白米と五穀米から選べます。特に豚汁が美味!(写真撮影/片山貴博)

注文票を自分で記入してカウンターに渡すシステム(写真撮影/片山貴博)

注文票を自分で記入してカウンターに渡すシステム(写真撮影/片山貴博)

食堂を利用できるのは、東郊住宅社が管理している賃貸物件の入居者およそ3000人、物件オーナー約200人、関係協力者、同社社員など。借りている自分の部屋のカードキーで食堂に入るシステムで、鍵の保有者と同行すれば家族や友人も一緒に入店できます。部屋探し中の人も食堂の利用体験ができるほか、近隣に暮らす人も興味があれば1度は利用することが可能だそうです。

「ここを立ち上げたきっかけは、新たに一人暮らしを始める学生さんのご家族から聞こえてきた、食事に対する心配の声でした」と当時を振り返る東郊住宅社社長の池田峰さん。「初めての一人暮らし。偏らずにしっかり栄養をとれる食生活が送れるのか」という親心に対し、そうした心配や不安を入居者サービスの一つとして解決できないかと考え始めたことが第一歩だったそうです。

トーコーキッチンをつくるに至った経緯や思い、その後の影響、食堂での日常風景については、当サイトの記事(「入居者のための食堂」が魅力的すぎ!朝食100円、昼食・夕食が500円で食べられるワケ(2017年1月25日掲載))に詳しいので、ぜひご参照を。

トーコーキッチンの魅力的な仕組みに、「自分の家の近くにもこうした入居者向け食堂があればいいのに」「こんな不動産屋さんがあるなんて、淵野辺ってすてきな街だな」などと、記事の反響も大きかったことを覚えています。

「おかげさまで入居率99%超に」。8カ月も前に入居予約が入るほど!

トーコーキッチンは、入居希望者や物件オーナー、賃貸不動産業界にとどまらず、マスコミや世の中からも数多くの注目を集めました。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、WEBマガジンなど100を超えるメディアで紹介されたことがあり、目にした人も多いのではないでしょうか。

立ち上げから丸8年が経ち、この間にどんな反響や変化が起こったのか、池田さんに聞きました。

東郊住宅社社長・池田峰さん。東郊住宅社のオフィスから徒歩約10分のトーコーキッチンには1日数回訪れて、入居者との交流を図っています(写真撮影/片山貴博)

東郊住宅社社長・池田峰さん。東郊住宅社のオフィスから徒歩約10分のトーコーキッチンには1日数回訪れて、入居者との交流を図っています(写真撮影/片山貴博)

「トーコーキッチンの存在が物件選びの1つの動機となって、入居希望者が増え、おかげさまで今では入居率が99%を超えるまでになりました」と池田さん。

2018年時点の神奈川県の空室率が20.1%(※1)=入居率79.9%という数字から考えると、驚異的な高さです。
※1:公益社団法人全国賃貸住宅経営者協会連合会「民間賃貸住宅(共同住宅)戸数及び空き戸数並びに空き室率の推計」(2018年算出)より

トーコーキッチン以前から、同社管理物件の入居率は95~96%と他に比べて高かったそうですが、今や100%近い割合に。トーコーキッチンのない2015年以前にも高い入居率を保っていたのは、先代が社長時代に導入した「敷金0」「礼金0」「退去時の修繕義務なし(入居者の過失での修繕を除く)」「水漏れや鍵の紛失などの緊急事態に24時間対応」という、先進的な契約条件があったため。そこに食の提供という入居者サービスが加わったことで、「トーコーキッチンがあるから淵野辺に住みたい」「1人暮らしをする子どものために食事環境が安心な東郊住宅社の物件を選びたい」という人が増えたといいます。

「部屋が空いたらすぐに入居希望が入るというありがたい状況です。空く予定がなくても『空いたら入居したい』という方がたくさんいらっしゃいます。昨年はとうとう、引越しシーズンの8カ月も前の6月に、『大学入学で1人暮らしをするので、今から入居の予約はできますか』という問い合わせまで入ることに。新記録ですね。その時点で進学する大学が決まっていない状況だと思うのですが、実際には、淵野辺から片道1時間以上をかけて通学する学生さんもいらっしゃいます」(池田さん)

「学生の入居者さんに関していうと、以前は淵野辺にある3校が近いことから、その学生さんたちがほぼ10割を占めていました。しかし、トーコーキッチン開設以後は、他エリアの大学の学生さんも入居されるようになり、今では2割ほどを占めるまでになりました」と池田さん。

淵野辺駅は新宿や渋谷など都心へ行くには乗り換えが必要で、停車する電車は各駅停車のみ。決して交通アクセスが便利とはいえない街。「乗り換え必須なのにその2割の学生さんたちが、淵野辺に暮らすことを選んでくれたのは、トーコーキッチンがもたらす食の安心感を評価していただいているからなのでしょう」(池田さん)

淵野辺駅北口から見た駅前商店街の様子(写真撮影/片山貴博)

淵野辺駅北口から見た駅前商店街の様子(写真撮影/片山貴博)

桜美林大学のキャンパスは淵野辺駅に隣接(写真撮影/片山貴博)

桜美林大学のキャンパスは淵野辺駅に隣接(写真撮影/片山貴博)

「社会人の方もご高齢の方も、安心な淵野辺暮らしを選んでくれています」

学生以外の入居者も増えたそうです。
「リモートワークが一般化したことで、別の地域から淵野辺に拠点を移した社会人の方がとても増えました。オンラインでのつながりはあるけれど、やはりリアルなコミュニケーションの場があるのは良いということのようです。

また、ご高齢の親御さんを、淵野辺近辺に暮らす子世帯が自宅近くに呼び寄せて、という方々も増えました。たまに顔を合わせられるくらいの近居なら安心。さらに日々の食事はトーコーキッチンがあるからますます安心、というわけです」(池田さん)

入居希望の大きな動機と考えられるトーコーキッチンですが、すべての入居者が食堂を頻繁に利用するわけではなく、常連さんは3割くらいだそう。常連さんにとっても時々利用する人にとっても、「お茶1杯だけでもずっといていいですよ」という姿勢があることで、入居者にとってのサードプレイス(自宅でも職場でもない、居心地の良い第3の場所)的な場所として活用されています。

また、池田さんは1日数回顔を出して、「味はどう?」「部屋で困ったことはない?」と入居者と交流しています。「日本一『味はどう?』って聞いている不動産屋」と自負する池田さん。そうした日々のコミュニケーションも淵野辺で暮らす安心感につながっているのだと思います。

ランチ中の学生さんに気さくに話しかける池田さん(写真撮影/片山貴博)

ランチ中の学生さんに気さくに話しかける池田さん(写真撮影/片山貴博)

笑顔が素敵な食堂スタッフのみなさん(写真撮影/片山貴博)

笑顔がすてきな食堂スタッフのみなさん(写真撮影/片山貴博)

「賃貸物件はすべて自社管理。だからこそ入居者さんに喜んでいただける」

東郊住宅社は賃貸借契約の仲介に加え、取り扱うすべての物件管理及び入居者管理(家賃の入金管理をはじめ、共用部の清掃や不具合の修繕、植栽の手入れなど)を行っています。仲介だけお願いしたいというオーナーの要望には対応していません。「不動産は管理が重要だと考えています。専任で管理をさせていただくからこそ、入居者さんに喜んでいただける仕事がまっとうできると思っています」と池田さん。

以前は1600室ほどだった物件数が、この8年間で1900室に迫るまでになりました。
「当社の管理手数料は物件によって家賃の5~8%と、他の不動産管理会社に比べると安くはない費用をオーナーさんからいただいています。にもかかわらず、『自分の所有物件もトーコーキッチンが使える物件にしたい』と、今までお取引のなかった近隣の物件オーナーさんから興味や共感を持っていただき、管理のご依頼が増えました。さらに、『トーコーキッチンが使える賃貸物件を所有したい』という物件購入の相談も年々増え、現在30人以上のオーナー希望者さんがいらっしゃいます」

こうした動きは、食の提供サービスの存在によって安定した入居率の維持が保てるという、高い付加価値が得られることも含め、物件オーナーが東郊住宅社の物件管理に対する姿勢に大きな信頼を寄せていることをうかがわせます。

「ただ、対象となるのは当社から車で30分圏内の物件です。小さな不動産会社にとって、何かあれば夜中でも駆けつけられる距離の上限だからです。そのため、ご要望があっても場所によってはお断りせざるをえないこともあります」(池田さん)

入居者に寄り添う姿勢は緊急時だけではありません。
2020年には、入居者の困りごとを解決する家事代行サービス「ゴーヨーキーキー」もスタート。5分100円からという利益度外視の安心サービスです。こちらも当サイトの記事(不動産屋さんが家事代行!? 電球交換、虫駆除などのお悩みに5分100円で)に詳しいので、ご覧ください。

日常的に物件状態を把握し、入居者との交流を保ち、食事や家事のサポートの提供によって暮らしの安心を生み出していく。淵野辺で賃貸ライフを送る人にとって、東郊住宅社そのものが街の頼もしい存在となっている状況がわかります。

「入居者用食堂を導入した不動産会社も新たに登場!」

池田さんは以前の取材で「このビジネスモデルの特許取得を勧めてくださる方もいますが、アイデアで儲けるつもりはありません。皆さんの賃貸ライフを楽しくできたらうれしいので、逆に、どんどんまねして導入してくれる不動産屋があればいいと思いますね」と語っていましたが、その後、トーコーキッチンのような入居者向け食堂を立ち上げた企業は登場したのでしょうか。

「私の知る限りでは1社あります。その不動産会社から、同じシステムを取り入れたいと相談を受け、ノウハウをお伝えしたり食堂研修を受け入れたりとご協力させていただきました。現在、既に入居者専用食堂を運営されています」(池田さん)。

「どんどんまねしてもらえれば」という池田さんの言葉とは裏腹に、わかっている限りで同じサービスを導入した企業は1社だけということに意外な気がしました。他にも「実はわが社も」という会社もあるのかもしれませんが……。

しかし、逆に考えると、ここまで入居者・オーナー双方に喜ばれるサービスを追求し継続するというのは、実はとてもハードルが高いこと。誰もが真似できることではないとも感じます。利益度外視の入居者サービスとしての食堂運営、取り扱い物件はすべて自社で管理するなど、入居者が暮らしやすい環境をつくり出していく徹底した企業姿勢を持つからこそ、こうした全方位的に喜ばれるサービスが維持できているのでしょう。

「トーコーキッチンへようこそ!」

トーコーキッチンへの思いを綴った著書『トーコーキッチンへようこそ!』(虹有社)を昨年2023年10月に上梓した池田さん。「ご縁があってこうして1冊にまとめることができました。著書を手にしてくださることで淵野辺に興味を持っていただく機会もさらに増えました」(池田さん)

「お部屋探し帰りのお客様が手に取ってくださり、有隣堂淵野辺店のビジネス書ランキングで週間1位になったことも!」(写真撮影/片山貴博)

「お部屋探し帰りのお客様が手に取ってくださり、有隣堂淵野辺店のビジネス書ランキングで週間1位になったことも!」(写真撮影/片山貴博)

「以前、部屋探しに来られた大学進学予定のお客様から、『実は高校の進路の先生から、暮らすなら東郊住宅社のある淵野辺がいいと勧められて、今日ここに来ました』とお聞きして驚いたこともありました。遠く離れた地の方々にも広く認知されつつあることが、ものすごくありがたいです」(池田さん)

入居者の増加とともに利用者も増え、トーコーキッチンの売り上げも上がっているそうですが、売り上げが上がればその分の利益は良い食材を購入することに還元させているそう。「前年同月比で110%の売り上げアップを目標にしています。新型コロナが5類に移行した月は130%アップ、昨年著書を上梓した後は140%アップとなった月も。ありがたいことに徐々にお客様は増えています」

利益を追求しない入居者サービスの食堂が、それまで関心のなかった淵野辺に人を呼び寄せ、食堂利用者が増えることで食材やメニューが充実するという好循環。全方位に喜ばれるトーコーキッチンそのものが、ある意味広告としての機能を持ち、「住みたい街ランキング」に一度も登場したことのない街に人を引きつけているのです。

「トーコーキッチンを立ち上げてからずっと、毎日の仕事が楽しくて楽しくて。それに、入居者さんや離れて暮らすご家族、物件オーナーさん、そうした皆さんにこんなにも喜んでいただけるということは、トーコーキッチンをやっていなければわからないままだったでしょうね」と、ニコニコの笑顔で語る池田さん。

住む人の安心や喜びを常に考えている不動産屋さんの存在は、淵野辺という街を輝かせているのではないかと感じました。

8年でだいぶ年季が入りました(写真撮影/片山貴博)

8年でだいぶ年季が入りました(写真撮影/片山貴博)

小さなお客様からの「ごちそうさまでした」「おいしかったよ」の可愛いメッセージが(写真撮影/片山貴博)

小さなお客様からの「ごちそうさまでした」「おいしかったよ」のかわいいメッセージが(写真撮影/片山貴博)

●取材協力
東郊住宅社「トーコーキッチン」
『トーコーキッチンへようこそ!』(虹有社)

【早稲田大学】一人暮らし賃貸の家賃相場ランキング2024年! 早稲田キャンパス周辺のクチコミ&オススメ情報

来春から大学に進学し、初めての一人暮らしをスタートさせる人もいるだろう。そんな新入生や、これから入学を目指す人の参考になるように、今回は早稲田大学・早稲田キャンパス(東京都新宿区)の周辺駅にアクセスしやすく、家賃相場が安い駅を調査。さらに不動産会社「ハウスメイトショップ新宿店」の佐久真正樹さんから、早稲田キャンパスに通う学生が住む街としておすすめの駅を教えてもらった。どんな駅がラインナップされたのか、さっそくご紹介しよう。

早稲田キャンパス最寄駅(高田馬場駅、早稲田駅、西早稲田駅)いずれかまで20分以内の家賃相場が安い駅TOP15

順位/駅名/家賃相場(主な路線名/駅の所在地/所要時間/乗り換え回数/到着駅)
1位 田無 6万円(西武新宿線/東京都西東京市/20分/0回/高田馬場駅)
2位 西武柳沢 6.1万円(西武新宿線/東京都西東京市/19分/0回/高田馬場駅)
3位 上井草 6.6万円(西武新宿線/東京都杉並区/19分/1回/高田馬場駅)
3位 東伏見 6.6万円(西武新宿線/東京都西東京市/17分/0回/高田馬場駅)
5位 井荻 6.9万円(西武新宿線/東京都杉並区/15分/1回/高田馬場駅)
6位 下井草 7万円(西武新宿線/東京都杉並区/14分/1回/高田馬場駅)
6位 上石神井 7万円(西武新宿線/東京都練馬区/13分/0回/高田馬場駅)
6位 成増 7万円(東武東上線/東京都板橋区/19分/1回/高田馬場駅)
9位 野方 7.2万円(西武新宿線/東京都中野区/13分/0回/高田馬場駅)
10位 江古田 7.3万円(西武池袋線/東京都練馬区/18分/1回/高田馬場駅)
10位 鷺ノ宮 7.3万円(西武新宿線/東京都中野区/9分/0回/高田馬場駅)
10位 都立家政 7.3万円(西武新宿線/東京都中野区/15分/0回/高田馬場駅)
13位 小竹向原 7.4万円(東京メトロ副都心線/東京都練馬区/11分/0回/西早稲田駅)
13位 氷川台 7.4万円(東京メトロ有楽町線/東京都練馬区/13分/0回/西早稲田駅)
15位 武蔵関 7.45万円(西武新宿線/東京都練馬区/15分/0回/高田馬場駅)
―――
「ハウスメイトショップ新宿店」佐久真さんおすすめの駅
ランク外 朝霞台 5.95万円(東武東上線/埼玉県朝霞市/29分/1回/高田馬場駅)
ランク外 朝霞 5.95万円(東武東上線/埼玉県朝霞市/27分/1回/高田馬場駅)

複数の駅に囲まれた早稲田キャンパス周辺は学生が集う街

早稲田大学を代表するキャンパスといえば、国の重要文化財に指定された大隈記念講堂が立つ東京都新宿区の早稲田キャンパス。6つの学部生が通うキャンパスでは、2027年度より共用開始を目指す新校舎「新9号館」の建設も計画されている。そんな早稲田キャンパスはJR山手線と西武新宿線、東京メトロ東西線が通る高田馬場駅から東へ歩いて20分ほど。駅から早稲田キャンパスに向かう通りは「早稲田通り」と呼ばれている。数多くの飲食店に加えて古書店も立ち並んでいる点は、さすが大学お膝元の街といった趣だ。またこの一帯には早稲田大学に加えて学習院女子大学もあるほか、高校や専門学校、学習塾も多いので、学生らしい若者の姿もよく見かける。

早稲田キャンパスのすぐ近くにはサークル活動の拠点である学生会館を備えた戸山キャンパスがあり、高田馬場駅から徒歩15分ほどの場所には西早稲田キャンパスも。各キャンパスの近くには東京メトロ東西線・早稲田駅や東京さくらトラム(都電荒川線)早稲田駅、東京メトロ副都心線・西早稲田駅もあり、そちらを利用する学生も少なくない。

高田馬場駅前(写真/PIXTA)

高田馬場駅前(写真/PIXTA)

そこで今回は高田馬場駅をはじめ、早稲田駅、西早稲田駅のいずれかの駅から20分圏内にある駅を調査対象とし、それぞれの駅から徒歩15分圏内にある学生向け賃貸物件(10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DK。以下同)の家賃相場が安い駅を順位付けした。その結果が上記のランキングだ。

ちなみに高田馬場駅の家賃相場は9万1000円、早稲田駅と西早稲田駅は9万3000円。都心部だけあって学生にはハードルが高めの金額だが、早稲田大学の学生たちは実際、どんな場所に住んでいるのだろう。早稲田大学の学生にも利用されている、「ハウスメイトショップ新宿店」の佐久真さんにお話を伺った。

「特に早稲田大学の学生さんは、キャンパスまで歩ける範囲で物件を探していらっしゃる方が多い印象です」と話す佐久真さん。「どこに住むとよいかは人それぞれで、例えば学業に専念したいなら移動時間を極力減らすために早稲田駅周辺、大学以外にもアクセスしやすいほうがよければJR山手線も通る高田馬場駅周辺や、高田馬場駅まで2駅のターミナル駅・新宿駅周辺などがよいでしょう」。早稲田駅の周辺は高田馬場駅ほどの繁華街ではないので、落ち着いて暮らせる住環境のよさを求める人にもおすすめだという。

通学時間を短く、家賃も抑えたい場合はランキング上位の西武新宿線沿線をチェック!

通学時間をなるべく短縮するなら、大学の近くに住むのがベストだろう。とはいえ、予算もあるし近さだけを重視して住まいを決めるのは難しいことも。そんな場合は、今回調査した家賃相場が安い駅のランキングを参考にするのもいいだろう。ランキングトップ15の駅は家賃相場が6万円台~7万円台なので、家賃相場が9万円台だった早稲田キャンパスの徒歩圏内と比べるとだいぶ負担を抑えることができる。

最も家賃相場が低かったのは、西武新宿線・田無(たなし)駅で家賃相場は6万円。西東京市に位置し、早稲田キャンパスの最寄駅の一つである高田馬場駅までは急行に乗ると3駅・約20分でたどり着く。田無駅には「エミオ 田無」が併設され、スーパーや飲食店などが3フロアにわたって展開。北口駅前にはショッピングセンター「アスタ」と日用品やファッションの専門店街も備えた総合スーパー「リヴィン田無」もあり、買い物環境が充実している。市役所の田無庁舎がある南口駅前は、大型店舗がある北口側に比べると細い道が入り組んだ街並みだが、駅前広場や幹線道路の整備も計画されているようだ。

■学生時代に田無駅の周辺に住んでいたことがある人のクチコミ
※コメント内容は住んでいた学生当時のモノです(以下、記事内すべて同)
・住んでいてよかったところ
「新宿まで1本!!! 最強すぎ!」(21歳女性)
「急行が止まる、買い物がしやすい、基本的に徒歩5分圏内に何でもある」(26歳女性)
「大型スーパーが駅前にあり、そこで必要なものがすべてそろうので楽だった」(29歳男性)
・住んでいて困った点など
「車通りが多い(27歳女性)
「電車が常に激混み(※)」(29歳女性)
※時間帯による場合あり

田無駅前(写真/PIXTA)

田無駅前(写真/PIXTA)

1位・田無駅をはじめ、トップ15には西武新宿線の駅が11駅もランクインした。高田馬場方面に向かって、田無駅(1位)~西武柳沢駅(2位)~東伏見駅(3位)~武蔵関駅(15位)~上石神井駅(6位)~上井草駅(3位)~井荻駅(5位)~下井草駅(6位)~鷺ノ宮駅(10位)~都立家政駅(10位)~野方駅(9位)と連続する駅が上位を占めている。高田馬場駅の1駅先には西武新宿駅があり、ランクインした中では最も距離がある田無駅からでも急行に乗れば西武新宿駅まで約23分。野方駅からだと西武新宿駅まで各駅停車に乗って約17分で行くことができ、大学キャンパスだけではなく新宿エリアにアクセスしやすい点も西武新宿駅沿線の魅力だろう。

ランクインした西武新宿線の駅のうち、高田馬場駅までの所要時間が最短なのは10位・鷺ノ宮駅。急行で1駅・約9分という近さで、家賃相場は7万3000円だ。中野区に位置する駅の周辺は住宅地で、大型商業施設が立ち並ぶような街並みではないぶん落ち着いて暮らしたい人にはよさそうだ。南口側には「鷺宮八幡神社」を囲むように住宅地が広がる一方、北口側は中杉通り沿いを中心に多彩な店舗が軒を連ねている。飲食店も多彩なジャンルがそろっており、気軽に利用できるテイクアウト可能なお店が多いのも嬉しいところだ。

鷺ノ宮駅(写真/PIXTA)

鷺ノ宮駅(写真/PIXTA)

■学生時代に鷺ノ宮駅の周辺に住んでいたことがある人のクチコミ
・住んでいてよかったところ
「(駅の近くに)『OKストア』が2つもあってとても便利。コンビニやドラッグストアもあるので生活用品には困らない。新宿や池袋など繁華街も近いのですぐ遊び場に行けるし人にも会いやすい」(29歳女性)
「急行が止まる。スーパーが多い」(24歳女性)
・住んでいて困った点など
「(夜は暗いので)街灯はもう少しあったらよかった」(29歳女性)
「最寄りに大きなお店はあまりないので、大きな買い物は電車を乗る必要がある」(29歳女性)

■2位 西武柳沢
・住んでいてよかったところ
「新宿まで乗り換えナシで行ける。下町感にあふれている」(28歳男性)
「美味しいラーメン屋がたくさんある」(27歳女性)
・住んでいて困った点など
「気軽に入れる低価格のレストランが少ない」(21歳女性)
「(小さなスーパーはあるが)大きなスーパーが近くにない」(27歳女性)

■3位 上井草
・住んでいてよかったところ
「騒音等は少なく、個人経営のお店が多いので雰囲気は悪くない。また、『CATS&DOGS』というカラオケが安い上に楽器の練習が可能だったので、スタジオを借りる余裕がない音楽をやっている学生には優しかった」(28歳女性)
「閑静な住宅街であるが、少し移動すればチェーン店などもある」(24歳男性)
・住んでいて困った点など
「駅の近くに普通のスーパーや大きなドラッグストアがない。 急行が止まらない」(28歳女性)
「電車の乗り換えが若干不便だった」(24歳男性)

■3位 東伏見
・住んでいてよかったところ
「落ち着いていて夜も静かでよかった。駅の近くのベーグル屋さんやパン屋さんがおすすめ」(29歳女性)
「街並みが小綺麗で落ち着いている」(21歳女性)
・住んでいて困った点など
「電車が各駅停車しか止まらない」(27歳女性)
「スーパー(の種類)が少なくて不便」(29歳女性)

高田馬場駅まで30分弱の東武東上線沿線なら家賃相場は5万円台に!

トップ15にランクインした駅の家賃相場は早稲田キャンパス周辺に比べるとリーズナブル。しかし、「もっと安さを追求したい、でも通学しやすさも担保したい」という人もいるだろう。そこで「ハウスメイトショップ新宿店」の佐久真さんに、家賃を抑えたい人向けのおすすめの街を聞いてみると……。「東武東上線の朝霞駅や朝霞台駅です」と教えてくれた。

朝霞駅の南口(写真/PIXTA)

朝霞駅の南口(写真/PIXTA)

おすすめ駅の一つ、朝霞駅は埼玉県朝霞市に位置しており家賃相場は5万9500円。2023年3月のダイヤ改正で東武東上線の急行停車駅となり、「急行なら池袋駅まで3駅・最短約16分で到着。東京メトロ副都心線直通の東武東上線に乗れば、乗り換えせずに西早稲田駅まで約29分で行くことができます」。高田馬場駅までは池袋駅でJR山手線に乗り換え、計約27分で行くことができる。朝霞駅には駅ビル「エキア朝霞」が併設され、ラーメン店やハンバーガー店、カフェといった飲食店に、ファッション・雑貨店、ドラッグストアなど約20店が並んでいる。駅前にも複数の飲食店が点在するほか、安さを売りにしたスーパーもあるので自炊派で食費を節約したい人にもいいだろう。

朝霞台駅(北口)駅前広場(写真/PIXTA)

朝霞台駅(北口)駅前広場(写真/PIXTA)

■学生時代に朝霞駅の周辺に住んでいたことがある人のクチコミ
・住んでいてよかったところ
「チェーンのレストランやカフェなどが充実している。また、朝霞駅、朝霞台駅、北朝霞駅の3つを利用できるので、遠出しなくても遊べる場所がある」(29歳女性)
「24時間スーパーがあることはとても心強かった」(25歳女性)
・住んでいて困った点など
「夜道は暗くて人通り少ないので注意が必要」(25歳女性)

朝霞台駅は朝霞駅の1駅隣に位置し、朝霞駅と同じ埼玉県朝霞市内、家賃相場も5万9500円と同額だ。こちらは2023年3月より快速急行の停車駅となっており、「快速急行なら池袋駅まで2駅、最短約17分です」。朝霞駅と同様に池袋駅でJR山手線に乗り換えると、高田馬場駅までは計約29分。東京メトロ副都心線直通の東武東上線に乗ると、西早稲田駅まで乗り換えなし・約32分だ。また、「朝霞台駅の駅前ロータリーをはさんでJR武蔵野線の北朝霞駅があり、2つの路線を利用できる点も便利ですよ」と話す佐久真さん。朝霞台駅は改札前コンコースにファストフード店やベーカリー、書店などがあり、駅前には複数のコンビニや気軽に入れる飲食店も。すぐ近くにスーパーもあるので、日常の買い物には困らない環境だ。

■学生時代に朝霞台駅の周辺に住んでいたことがある人のクチコミ
・住んでいてよかったところ
「近くに大きな公園があり、リフレッシュできる」(30歳女性)
「都内、ディズニーランドなど主要な場所に電車1本で行けて、アクセスがかなり良い」(24歳女性)
・住んでいて困った点など
「夜少し騒がしく、夜道を帰る時は気をつけていた」(30歳女性)
「池袋、新宿、渋谷などのアクセスは便利だが、朝霞台駅自体は駅前にルミネなどのファッションテナントや百均、雑貨屋などがなく不便を感じる」(29歳女性)

さて、2023年3月に相鉄・東急新横浜線が開業したことにともなって、東武東上線~東京メトロ副都心線~東急東横線~東急新横浜線~相鉄新横浜線~相鉄線の直通運転もスタート。つまり東武東上線沿線から東海道新幹線の停車駅でもある新横浜駅まで、ダイレクトアクセスが可能に。また、東武東上線は池袋と逆方面に進むと、川越や東松山といった埼玉県内の駅を通っている。だから、例えば東海道新幹線をたびたび利用したい人、川越方面や東急東横線沿線の渋谷駅や横浜駅によく出かけるという場合は、通学以外の面でも東武東上線沿線に住むと便利だろう。そんなふうに、通学で利用する駅以外に沿線にはどんな街があるのかもチェックしつつ住む街を探すと、より充実した学生生活が送れるかもしれない。

●取材協力
ハウスメイトショップ

●家賃相場ランキングの調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている高田馬場駅、西早稲田駅、早稲田駅(メトロ、都電)まで20分以内の駅(掲載物件が20件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ抽出期間】2023/2~2023/10
【家賃の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の管理費を含む月額賃料から中央値を算出(3万円~18万円で設定)
※早稲田駅については、メトロ、都電を最寄りとする物件両方の中央値を掲載しています
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、朝7時30分~9時の検索結果から算出(2023年11月27日時点)。所要時間は該当時間帯で一番早いものを表示(乗換時間を含む)
※記載の分数は、駅内および、駅間の徒歩移動分数を含む
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が1回までの駅を掲載
【家賃相場の調査】株式会社リクルート

●クチコミの調査概要
●調査実施時期:2024年1月17日~2024年1月22日
●調査対象者:現在東京・神奈川・埼玉にお住いの、学生時代(大学・大学院・専門学校問わず)、家賃相場ランキング記載の駅周辺の賃貸住宅で一人暮らしをしたことがある18~30歳までの男性219名、女性445名
●調査方法:インターネット調査
●有効回答数:664
●調査主体:株式会社リクルート、実査委託先:楽天インサイト株式会社

【明治大学】一人暮らし賃貸の家賃相場ランキング2024年! 和泉キャンパス周辺のクチコミ&オススメ情報

新年度が始まる春は引越しシーズン。進学を機に大学の近くで一人暮らしを始める予定の人も、そろそろ引越し先を探す時期だろう。そんな新入生や、これから入学を目指す人の参考になるように、今回は東京都杉並区にある明治大学・和泉(いずみ)キャンパスの最寄駅である明大前駅にアクセスしやすく、家賃相場が安い駅を調査。さらに不動産会社「ハウスメイトショップ下北沢店」店長・山室貴広さんがおすすめする、和泉キャンパスに通う学生が住む街、ランキング上位の街に住んだことがある人々の口コミもご紹介していきたい。

和泉キャンパス最寄駅(明大前駅)まで15分以内の家賃相場が安い駅TOP15(17駅)

順位/駅名/家賃相場(主な路線名/駅の所在地/所要時間/乗り換え回数)
1位 三鷹台 6.9万円(京王井の頭線/東京都三鷹市/13分/0回)
2位 つつじヶ丘 7万円(京王線/東京都調布市/12分/0回)
2位 久我山 7万円(京王井の頭線/東京都杉並区/9分/0回)
2位 調布 7万円(京王線/東京都調布市/13分/0回)
5位 松原 7.2万円(東急世田谷線/東京都世田谷区/9分/1回)
6位 仙川 7.3万円(京王線/東京都調布市/11分/0回)
7位 井の頭公園 7.4万円(京王井の頭線/東京都三鷹市/15分/0回)
8位 永福町 7.5万円(京王井の頭線/東京都杉並区/2分/0回)
8位 宮の坂 7.5万円(東急世田谷線/東京都世田谷区/13分/1回)
8位 経堂 7.5万円(小田急小田原線/東京都世田谷区/13分/1回)
8位 桜上水 7.5万円(京王線/東京都世田谷区/2分/0回)
8位 西永福 7.5万円(京王井の頭線/東京都杉並区/4分/0回)
13位 豪徳寺 7.6万円(小田急小田原線/東京都世田谷区/14分/1回)
13位 浜田山 7.6万円(京王井の頭線/東京都杉並区/6分/0回)
15位 下高井戸 7.7万円(京王線/東京都世田谷区/1分/0回)
15位 山下 7.7万円(東急世田谷線/東京都世田谷区/11分/1回)
15位 富士見ヶ丘 7.7万円(京王井の頭線/東京都杉並区/9分/0回)
―――
「ハウスメイトショップ下北沢店」山室さんおすすめの駅
ランク外 千歳烏山 7.88万円(京王線/東京都世田谷区/7分/0回)
ランク外 明大前 8.3万円(京王井の頭線/東京都世田谷区/※/※)※起点駅
ランク外 下北沢 8.71万円(京王井の頭線/東京都世田谷区/4分/0回)

大学名を冠した「明大前駅」周辺は生活する街としても魅力的

東京都内を中心に、4キャンパス・10学部を抱える明治大学。東京都杉並区には主に法学部や商学部といった文系学部の1・2年生が通う、和泉キャンパスがある。2022年春には学生の交流スペースも備えた新教育棟「和泉ラーニングスクエア」が誕生している。この和泉キャンパスから徒歩5分ほどの最寄駅はその名も「明大前駅」。明治大学予科(当時)が移転してきたのを機に1935年から、この駅名になったのだとか。

明大前駅(写真/PIXTA)

明大前駅(写真/PIXTA)

京王線と京王井の頭線が通る明大前駅は、新宿駅まで京王線の特急や急行で2駅・最短約7分、渋谷駅まで京王井の頭線の急行で2駅・最短約6分という好立地。駅に直結して、スーパーや書店、飲食店などを備えた「フレンテ明大前」がある点も魅力の一つだ。駅周辺は細い路地に沿ってコンビニや100円ショップ、ファストフード店やラーメン店といったリーズナブルな飲食店が立ち並び、学生にも愛用されている。大型の商業施設はなく、駅前から少し離れると住宅街。また、明治大学以外にも日本女子体育大学の附属高校など学校が点在しており、通学時間帯の駅周辺は学生の姿でにぎわっている。

明大前駅周辺で暮らす学生も多いそうで、「ハウスメイトショップ下北沢店」の山室さんも明大生が住むイチ押しの街として明大前駅を挙げてくれた。

「大学生の住まい探しは、キャンパスまでドア・トゥ・ドアで30分以内、もしくは電車で2~3駅圏内がおすすめ。近年は自転車でも通える距離内でお探しになる方が増えています。また、住む街を選ぶ際はアルバイトや部活動など、授業以外の利便性も考慮するとよいでしょう。その点、明大前駅は2路線利用可能で渋谷駅や新宿駅に乗り換えなしでアクセスできるため非常に便利。駅前商店街に飲食店も多く、コンパクトながら生活に必要な施設はそろっています」

また、明大前駅を含む京王線笹塚駅~仙川駅間では現在、連続立体交差事業が進行中。すでに高架橋が姿を現してはいるものの、事業終了まではまだしばらくかかる様子。明大前駅の高架化にともなって駅舎のリニューアルや駅周辺地区の再開発も計画されているため、完成を楽しみに待ちたい。

■学生時代に明大前駅の周辺に住んでいたことがある人のクチコミ
コメント内容は住んでいた学生当時のモノです(以下、記事内すべて同)

・住んでいてよかったところ
「ご飯屋さんやカフェがたくさんあるので休日も充実」(21歳女性)
「新宿と渋谷へアクセスしやすいので、交通の便が非常によかった」(27歳女性)

・住んでいて困った点など
「学生が多いので騒々しい」(25歳女性)
「大きいスーパーが少し遠い」(28歳男性)

そんな明大前駅から徒歩15分圏内にある、学生向け賃貸物件(10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DK。以下同)の家賃相場は8万3000円。便利な街だけあって、学生の一人暮らしにとって安くはない。もう少し家賃相場がお手ごろで魅力的な街として山室さんがおすすめしてくれたのが、京王線・千歳烏山駅だ。

千歳烏山駅(写真/PIXTA)

千歳烏山駅(写真/PIXTA)

東京都世田谷区に位置する千歳烏山駅の家賃相場は明大前駅より4000円ほど低い7万8800円で、「家賃を抑えたい方におすすめです」とのこと。「親しみやすい風情あふれる商店街があり、ドラッグストアや定食屋さんなど日常使いできる店が多数、立ち並んでいます。また、家具や工具を買いたい場合はホームセンターが隣駅の仙川にありますので、カーシェアなどを利用すれば20分程度で行くことが可能です」と山室さん。駅周辺の商店街にはスーパーから個人商店まで約150軒以上もの店舗がひしめく、活気ある街並み。また、前述した京王線の連続立体交差事業区間に千歳烏山駅も含まれ、将来的には駅の高架化が予定されている。千歳烏山駅から明大前駅までは、京王線の区間急行で2駅・約7分。京王線の特急停車駅でもあるため、新宿駅まで3駅・約17分で行くこともできる。

■学生時代に千歳烏山駅の周辺に住んでいたことがある人のクチコミ

・住んでいてよかったところ
「駅前は何でもそろっていて良かった。チェーンではない美味しいご飯屋さんが多く、週末に新しいお店を開拓するのが楽しかった」(30歳女性)
「駅前に何でもあるので便利。交通の便が良い」(28歳女性)

・住んでいて困った点など
「大きいスーパーがない」(26歳男性)
「駅から離れると暗い」(28歳女性)

明大前駅まで乗り換えなし&15分以内の駅でも家賃相場は1万円以上も安くなる!

続いてランキング上位になった駅についても見ていこう。
明大前駅まで電車で15分圏内にある、家賃相場が最も安かった駅は東京都三鷹市にある京王井の頭線・三鷹台駅。家賃相場は6万9000円で、明大前駅よりも1万4000円も低い。明大前駅までは各駅停車で7駅・約13分で行けるほか、明大前駅とは逆方面に進むと若者にも人気の街・吉祥寺駅に2駅・約3分で到着する。

三鷹台駅周辺の様子(写真/PIXTA)

三鷹台駅周辺の様子(写真/PIXTA)

井の頭恩賜公園(写真/PIXTA)

井の頭恩賜公園(写真/PIXTA)

1位・三鷹台駅周辺は線路と沿うように神田川が流れ、川の北側にあるドラッグストアとコンビニの先には立教女学院の敷地と住宅地が広がる。商店が多いのは川と線路の南側。スーパーやコンビニのほか、三鷹台駅前通り沿いの商店街を中心にラーメン店や宅配ピザなどの飲食店も点在している。また、1駅隣の7位・井の頭公園駅(家賃相場7万4000円)に行くと、駅前に緑豊かな「井の頭恩賜公園」が広がっている。三鷹台駅から「も電車や自転車で訪れやすく、気軽にリフレッシュに出かけられる点も魅力だ。

■学生時代に三鷹台駅の周辺に住んでいたことがある人のクチコミ

・住んでいてよかったところ
「閑静な住宅街、吉祥寺や渋谷へのアクセスが良い」(30歳男性)
「自転車で足を延ばせば、星を見るのに適した公園がある(都立野川公園)」(30歳女性)

・住んでいて困った点など
「スーパーが少ない」(28歳女性)
「主要な駅などには少し遠い」(29歳女性)

久我山駅(写真/PIXTA)

久我山駅(写真/PIXTA)

2位には家賃相場が同額の7万円となった、京王線のつつじヶ丘駅と調布駅、京王井の頭線・久我山駅の3駅がランクイン。この3駅のうちでは明大前駅までの所要時間が最も短い、久我山駅について見てみよう。久我山駅は東京都杉並区に位置し、明大前駅までは京王井の頭線の急行で2駅・約9分。明大前とは逆方面に1駅進むと1位・三鷹台駅があり、三鷹台駅前から続く神田川が久我山駅南側を流れている。川に架かる久我山橋は駅前広場のような役割を担っており、その先はスーパーやドラッグストア、飲食店が立ち並ぶ商店街。駅の北側にも多彩な飲食店が軒を連ねるほか、スーパーや100円ショップも。川沿いの遊歩道を西に進むと緑に囲まれた「宮下橋公園」があり、駅から東に10分ほど歩くと2020年開園の広々とした「高井戸公園」に行けるなど、自然を感じながらのんびり過ごすこともできる。

■学生時代に久我山駅の周辺に住んでいたことがある人のクチコミ

・住んでいてよかったところ
「駅前に夜まで営業しているスーパーがあり、商店街やコンビニなども充実していて、規模は大きくないが住みやすかった。吉祥寺に行けば何でもそろうので、不便はなかった。お寺などもあり、散歩もできた」(24歳女性)
「自然がいっぱいで、帰ってくるだけでも都会の喧騒から逃れられる。家賃が比較的周りよりも安く、急行も停まる駅なので住みやすい」(28歳男性)

・住んでいて困った点など
「(駅から少し離れると)周りが畑に囲まれて、夜は暗いところもある」(28歳男性)

■2位 つつじヶ丘

・住んでいてよかったところ
「落ち着いた雰囲気で、スーパーやドラッグストアも近くにあった」(27歳女性)
「生活に必要なものが周りにそろっていて買い物が便利」(28歳女性)

・住んでいて困った点など
「百均がない、スーパーが(駅前に)1つしかない」(21歳男性)
「交通はやや不便」(27歳女性)

■2位 調布

・住んでいてよかったところ
「個人経営のお店が何軒かあり、どこも美味しいし温かい印象」(30歳女性)
「駅前には家電屋さんや商業施設があり、充実している」(29歳男性)

・住んでいて困った点など
「各駅停車しか止まらないため、移動に時間がかかる」(24歳女性)
「特に駅前から離れると街灯が少ない」(25歳女性)

トップ15のうち明大前駅まで最短で行けるのは、15位にランクインした京王線・下高井戸駅だ。東京都世田谷区に位置し、家賃相場は7万7000円。明大前駅までは1駅・約1分という近さで、歩いても15分弱。明治大学・和泉キャンパスにも歩いて約15分、自転車なら約5分で行くことができる。駅周辺は細い道沿いにさまざまな店舗がひしめく商店街。温泉風呂やサウナを備えた銭湯「月見湯温泉」や、名画座「下高井戸シネマ」など、地元の人に長らく愛される商店も多い。日本大学文理学部の最寄駅でもあるため、学生が通いやすいリーズナブルな飲食店が豊富なのも嬉しいところだ。

■学生時代に下高井戸駅の周辺に住んでいたことがある人のクチコミ

・住んでいてよかったところ
「商店街にお店がいろいろあって楽しい」(24歳女性)
「商店街があり、買い物が楽」(25歳男性)

・住んでいて困った点など
「特急が止まらない」(25歳男性)
「交通が不便」(29歳女性)

街歩きを楽しみたい人は、新スポット目白押しの下北沢駅に住むのも◎

さて、明治大学の学生が住む街として「ハウスメイトショップ下北沢店」の山室さんはもう1駅、おすすめしてくれた。それは京王井の頭線・下北沢駅。

下北沢ショッピングストリート(写真/PIXTA)

下北沢ショッピングストリート(写真/PIXTA)

「バンド、サブカル、古着の聖地。駅前商店街はいつも20代の若者でにぎわっており、学生さんにとても人気がある街です。その分少々、家賃は高いですが……」と話す山室さん。家賃相場は8万7100円で、確かに明大前駅よりもアップしてしまう。しかし明大前駅までは京王井の頭線の各駅停車で3駅・約4分、自転車なら10分弱。渋谷駅までは各駅停車で4駅・約7分、急行なら1駅・約3分で行ける。小田急線も乗り入れているので、通勤急行や快速急行に乗って2駅・約9分で新宿駅にも出られるアクセスのよさが魅力だ。

下北沢の街自体も山室さんがおすすめするように若者に人気があり、遠方から遊びに来る人も少なくない。古くから人気のショップや飲食店に加え、小田急線の地下化にともなってここ数年で新スポットも次々とオープン。商業施設「シモキタエキウエ」を併設した新駅舎や、線路跡地が商業ゾーンやホテルに生まれ変わった「下北線路街」、井の頭線高架下を活用した商業空間「ミカン下北」など、新施設が街の魅力を高めている。話題のスポットにふらりと出かけたり人気店の食べ歩きをしたりと、学業以外の時間も充実させたいタイプの人なら下北沢での暮らしを気に入ることだろう。

■学生時代に下北沢駅の周辺に住んでいたことがある人のクチコミ

・住んでいてよかったところ
「カフェ等の飲食店、洋服屋、ネイルサロンや美容室も充実している。休日にブラブラしたいならうってつけ」(23歳女性)
「個人経営の面白い飲み屋が多く、友達を誘いやすかったのはよかった」(30歳男性)
「東京のサブカルチャーの中心の一つだと思っていて、さまざまな人や文化に触れることができるので、そういうのが好きな人にはとてもおすすめできると思う」(28歳男性)

・住んでいて困った点など
「人が多すぎて、落ち着かない」(21歳女性)
「静かなところで暮らしたい人には不向き」(26歳女性)

●関連記事:
「サブカルのシモキタ」開発で再注目。熱気と個性が下北沢に戻ってきた!
シモキタは「奥下北沢」も面白い! トレンドとレトロが共存する 4スポットを「DDDART」オーナー手槌真吾さんとディープに巡る
総勢150名「シモキタ園藝部」が下北沢の植物とまちの新しい関係を育て中。鉢植え、野原など、暮らしと共にあるグリーンがあちこちに

●取材協力
ハウスメイトショップ

●家賃相場ランキングの調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている明大前駅まで15分以内の駅(掲載物件が20件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ抽出期間】2023/2~2023/10
【家賃の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の管理費を含む月額賃料から中央値を算出(3万円~18万円で設定)
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、朝7時30分~9時の検索結果から算出(2023年11月27日時点)。所要時間は該当時間帯で一番早いものを表示(乗換時間を含む)
※記載の分数は、駅内および、駅間の徒歩移動分数を含む
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が1回までの駅を掲載
【家賃相場の調査】株式会社リクルート

●クチコミの調査概要
●調査実施時期:2024年1月17日~2024年1月22日
●調査対象者:現在東京・神奈川・埼玉にお住いの、学生時代(大学・大学院・専門学校問わず)、家賃相場ランキング記載の駅周辺の賃貸住宅で一人暮らしをしたことがある18~30歳までの男性219名、女性445名
●調査方法:インターネット調査
●有効回答数:664
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【早稲田大学】周辺のオススメ賃貸情報&家賃相場ランキング2023年版! 早稲田キャンパス(一人暮らし向け)

来春から大学に進学し、初めての一人暮らしをスタートさせる人もいるだろう。そんな新入生や、これから入学を目指す人の参考になるように、今回は早稲田大学・早稲田キャンパス(東京都新宿区)の周辺駅にアクセスしやすく、家賃相場が安い駅を調査。さらに不動産会社「ハウスメイトショップ新宿店」店長の林宏さんから、早稲田キャンパスに通う学生が住む街としておすすめの駅を教えてもらった。どんな駅がラインナップされたのか、さっそくご紹介しよう。

早稲田キャンパス最寄駅(高田馬場駅、早稲田駅、西早稲田駅)いずれかまで20分以内の家賃相場が安い駅TOP11

順位/駅名/家賃相場(主な路線名/駅の所在地/所要時間/乗り換え回数/到着駅)
1位 東伏見 6.6万円(西武新宿線/東京都西東京市/18分/0回/高田馬場駅)
2位 上井草 6.75万円(西武新宿線/東京都杉並区/19分/1回/高田馬場駅)
3位 上石神井 6.9万円(西武新宿線/東京都練馬区/14分/0回/高田馬場駅)
4位 井荻 6.98万円(西武新宿線/東京都杉並区/15分/1回/高田馬場駅)
5位 江古田 7.0万円(西武池袋線/東京都練馬区/18分/1回/高田馬場駅)
6位 下井草 7.1万円(西武新宿線/東京都杉並区/14分/1回/高田馬場駅)
6位 小竹向原 7.1万円(東京メトロ副都心線/東京都練馬区/11分/0回/西早稲田駅)
8位 武蔵関 7.2万円(西武新宿線/東京都練馬区/16分/0回/高田馬場駅)
8位 野方 7.2万円(西武新宿線/東京都中野区/13分/0回/高田馬場駅)
10位 新江古田 7.3万円(都営大江戸線/東京都中野区/17分/1回/高田馬場駅)
11位 阿佐ケ谷 7.4万円(JR総武線/東京都杉並区/11分/0回/高田馬場駅)
11位 鷺ノ宮 7.4万円(西武新宿線/東京都中野区/9分/0回/高田馬場駅)
11位 成増 7.4万円(東武東上線/東京都板橋区/19分/1回/高田馬場駅)
11位 都立家政 7.4万円(西武新宿線/東京都中野区/14分/0回/高田馬場駅)
11位 南阿佐ケ谷 7.4万円(東京メトロ丸ノ内線/東京都杉並区/20分/1回/高田馬場駅)
11位 氷川台 7.4万円(東京メトロ有楽町線・副都心線/東京都練馬区/13分/0回/西早稲田駅)
―――
「ハウスメイトショップ新宿店」林さんおすすめの駅
ランク対象外 朝霞台 5.7万円(東武東上線/埼玉県朝霞市/28分/1回/高田馬場駅)
ランク対象外 朝霞 5.93万円(東武東上線/埼玉県朝霞市/26分/1回/高田馬場駅)
ランク対象外 和光市 6.6万円(東武東上線/埼玉県和光市/23分/1回/高田馬場駅)

複数の駅に囲まれた早稲田キャンパス周辺は学生が集う街

2022年に創立140周年を迎えた早稲田大学を代表するキャンパスといえば、国の重要文化財に指定された大隈講堂が建つ東京都新宿区の早稲田キャンパス。6つの学部生が通うキャンパスは、JR山手線と西武新宿線、東京メトロ東西線が通る高田馬場駅から東へ歩いて20分ほど。駅から早稲田キャンパスに向かう通りは「早稲田通り」と呼ばれている。数多くの飲食店に加えて古書店も立ち並んでいる点は、さすが大学お膝元の街といった趣だ。またこの一帯には早稲田大学に加えて学習院女子大学もあるほか、高校や専門学校、学習塾も多いので、学生らしき若者の姿もよく見かける。

早稲田通り(写真/PIXTA)

早稲田通り(写真/PIXTA)

早稲田キャンパスのすぐ近くにはサークル活動の拠点である学生会館を備えた戸山キャンパスがあり、高田馬場駅から徒歩15分ほどの場所には西早稲田キャンパスも。各キャンパスの近くには東京メトロ東西線・早稲田駅や東京さくらトラム(都電荒川線)早稲田駅、東京メトロ副都心線・西早稲田駅もあり、そちらを利用する学生も少なくない。

そこで今回は高田馬場駅をはじめ、早稲田駅(東京メトロ・東京さくらトラム(都電荒川線))、西早稲田駅のいずれかの駅から20分圏内にある駅を調査対象とし、それぞれの駅から徒歩15分圏内にある学生向け賃貸物件(10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DK。以下同)の家賃相場が安い駅を順位付けした。その結果が上記のランキングだ。

ちなみに高田馬場駅の家賃相場は9万1000円。同じくキャンパス最寄駅の東京メトロ東西線・早稲田駅は9万2000円、都電荒川線・早稲田駅は9万円で、西早稲田駅は9万3000円。都心部だけあって学生には手ごろとは言いがたい金額だが、早稲田大学の学生たちは実際、どんな場所に住んでいるのだろう。早稲田大学の学生にも利用されている、「ハウスメイトショップ新宿店」店長の林宏さんにお話を伺った。

「特に早稲田大学の学生さんは、キャンパスまで歩ける範囲で物件を探していらっしゃる方が多い印象です」と話す林さん。「どこに住むとよいかは人それぞれで、例えば学業に専念したいなら移動時間を極力減らすために早稲田駅周辺、大学以外にもアクセスしやすいほうがよければJR山手線も通る高田馬場駅周辺や、高田馬場駅まで2駅のターミナル駅・新宿駅周辺などがよいでしょう」。早稲田駅の周辺は高田馬場駅ほどの繁華街ではないので、落ち着いて暮らせる住環境のよさを求める人にもおすすめだという。

高田馬場駅前(写真/PIXTA)

高田馬場駅前(写真/PIXTA)

通学時間を短く、家賃も抑えたい場合はランキングを活用しよう

通学時間をなるべく短縮するなら、大学の近くに住むのがベストだろう。とはいえ、予算もあるし近さだけを重視して住まいを決めるのは難しいことも。そんな場合は、今回調査した家賃相場が安い駅のランキングを参考にするのもいいだろう。ランキングトップ11の駅は家賃相場が6万円台~7万円台なので、家賃相場が9万円台だった早稲田キャンパスの徒歩圏内と比べるとだいぶ負担を抑えることができる。

最も家賃相場が低かったのは、西武新宿線・東伏見駅で家賃相場は6万6000円。西東京市に位置し、早稲田キャンパスの最寄駅の一つである高田馬場駅までは準急で約18分だ。駅名や周辺の地名である東伏見は、駅から徒歩10分少々の場所にある「東伏見稲荷神社」に由来するそう。また、この地は早稲田大学とも縁が深く、南口駅前には東伏見キャンパスが広がっている。早大生が部活動に励む野球場や馬場、サッカー場や体育会系の合宿所や学生寮もあり、大正時代から現在まで多くの学生が汗を流してきたのだ。

東伏見駅(写真/PIXTA)

東伏見駅(写真/PIXTA)

東伏見キャンパスの左右には「都立東伏見公園」「区立武蔵関公園」という緑豊かな2つの公園とアイススケートリンクがあり、その他の駅周辺は静かな住宅地といった趣。スーパーやコンビニ、ドラッグストアは駅の北と南どちらにもあり、駅前通りと交差する新青梅街道の周辺にはファミレスや「ユニクロ」も。また、東伏見駅や2位・上井草駅を含む西武新宿線の井荻駅~西武柳沢駅間では立体交差化事業が進行中。高架化に合わせて東伏見駅前広場の再整備や商業施設の誘致も計画されているので、今後はより暮らしやすい街になると期待されている。

1位・東伏見駅のほかにもトップ10には西武新宿線の駅が多数ランクイン。高田馬場方面に向かって、東伏見駅(1位)~武蔵関駅(8位)~上石神井駅(3位)~上井草駅(2位)~井荻駅(4位)~下井草駅(6位)と連続しており、そこから2駅はさんで野方駅(8位)という位置関係だ。残る駅は5位の西武池袋線・江古田駅、6位の東京メトロ副都心線・小竹向原駅、10位の都営大江戸線・新江古田駅。実はこの3駅は路線こそ違うものの位置としては近く、江古田駅を基点にすると南に徒歩約8分で新江古田駅へ、北に徒歩約12分で小竹向原駅へと行くことができる。この3つの駅のうち中間にある、江古田駅周辺の様子も見てみよう。

5位・江古田駅は練馬区に位置し、家賃相場は7万円。西武池袋線で池袋駅まで約8分、さらにJR山手線に乗り換えて約4分で高田馬場駅にたどり着く。早稲田キャンパスがある高田馬場駅に加え、都内有数の繁華街・池袋にアクセスしやすい点も魅力だろう。そんな江古田駅の近くには日本大学芸術学部と武蔵大学、武蔵野音楽大学のキャンパスがあり、学生の街として知られている。駅の北口側にも南口側にも商店街があり、狭い道沿いに多彩な商店がひしめく活気ある街並みだ。学生街だけありリーズナブルな飲食店も豊富で、早朝から深夜まで時間帯を気にせず買い物できるスーパーやコンビニも。同年代の若者も多く住む江古田の街は、学生の一人暮らしによさそうだ。

高田馬場駅から25分前後の東武東上線沿線なら家賃相場は5万円台~6万円台に

トップ11にランクインした駅の家賃相場は早稲田キャンパス周辺に比べるとリーズナブル。しかし、「もっと安さを追求したい、でも通学しやすさも担保したい」という人もいるだろう。そこで「ハウスメイトショップ新宿店」店長・林さんに、家賃を抑えたい人向けのおすすめの街を聞いてみると……。「東武東上線の和光市駅や朝霞駅、朝霞台駅です」と教えてくれた。

和光市駅(写真/PIXTA)

和光市駅(写真/PIXTA)

おすすめ駅の一つ、和光市駅の家賃相場は6万6000円。東武東上線の準急で池袋駅まで約17分、そこからJR山手線に乗り換えると約4分で高田馬場駅へ。「東武東上線の準急と急行に加えて快速急行の停車駅でもあり、快速急行なら池袋駅まで1駅・最短約12分です。さらに和光市駅は東京メトロの有楽町線・副都心線の始発駅でもあり、副都心線1本で早稲田大学近くの西早稲田駅までも約24分で到着できます」

そんな和光市駅は埼玉県和光市にあり、東京メトロの駅としては最北端かつ最西端。2020年3月に全面開業した駅ナカ施設&駅ビル「エキア プレミエ和光」には、改札階である地下1階から地上3階にかけてレストランや食料品店、「ユニクロ」など多彩な店舗がずらり。4階~7階部分は「和光市東武ホテル」となっている。また、駅南口には書店や飲食店、家電量販店を併設した「イトーヨーカドー和光店」もあるなど、スーパーも点在。駅北口エリアでは再開発が進められており、駅直結型の複合施設の新設も検討されているとか。今後の発展にも期待できる街だ。

さらに家賃を抑えたいなら、埼玉県朝霞市にある朝霞台駅と朝霞駅に注目。朝霞台駅は東武東上線の急行停車駅で、家賃相場は5万7000円。「急行なら池袋駅まで3駅、最短約17分で到着。東京メトロ副都心線直通の東武東上線に乗れば、乗り換えせずに西早稲田駅まで約31分で行くことができます」。また、「朝霞台駅の駅前ロータリーをはさんでJR武蔵野線の北朝霞駅があり、2つの路線を利用できる点も便利ですよ」と話す林さん。高田馬場駅までは池袋駅からJR山手線に乗り換え、計約28分で行ける。朝霞台駅は改札前コンコースにファストフード店やベーカリー、書店などがあり、駅前には複数のコンビニや気軽に入れる飲食店も。すぐ近くにスーパーもあるので、日常の買い物には困らない環境だ。

北朝霞・朝霞台 駅前広場(写真/PIXTA)

北朝霞・朝霞台 駅前広場(写真/PIXTA)

朝霞駅は朝霞台駅の隣に位置しており、家賃相場は5万9300円。「こちらは準急が利用でき、池袋駅まで3駅・最短約16分です」と林さん。朝霞台駅と同様に池袋駅で乗り換えて、高田馬場駅までは約26分。また、副都心線直通の東武東上線に乗ると、西早稲田駅まで約28分だ。朝霞駅には駅ビル「エキア朝霞」が併設され、ラーメン店やハンバーガー店、カフェといった飲食店に、服飾雑貨店、書店やドラッグストアなど20店以上が並んでいる。駅前にも複数の飲食店が点在するほか、安さを売りにしたスーパーもあるので自炊派で食費を節約したい人にもいいだろう。

さて、林さんがおすすめしてくれた和光市駅と朝霞台駅は「Fライナー」の停車駅でもある。このFライナーは東武東上線~東京メトロ副都心線~東急東横線~みなとみらい線を結ぶ急行の一種で、朝霞台駅や和光市駅から池袋駅、渋谷駅、横浜駅、元町・中華街駅などへも1本で行くことが可能だ。また、東武東上線は池袋と逆方面に進むと、川越や東松山といった埼玉県内の駅を通っている。だからたとえば、たびたび通いたいほど横浜が好きだったり、実家が川越にある場合、通学以外の面でも東武東上線沿線に住むと便利だろう。そんなふうに、通学で利用する駅以外に沿線にはどんな街があるのかもチェックしつつ住む街を探すと、より充実した学生生活が送れるかもしれない。

●取材協力
ハウスメイトショップ

●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている高田馬場駅、西早稲田駅、早稲田駅(東京メトロ、都電)まで20分以内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ抽出期間】2022/2~2022/10
【家賃の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の管理費を含む月額賃料から中央値を算出(3万円~18万円で設定)
※早稲田駅については、メトロ、都電を最寄りとする物件両方の中央値を掲載しています
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、朝7時30分~9時の検索結果から算出(2022年11月28日時点)。所要時間は該当時間帯で一番早いものを表示(乗換時間を含む)
※記載の分数は、駅内および、駅間の徒歩移動分数を含む
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が1回までの駅を掲載

【慶應義塾大学】周辺のオススメ賃貸情報&家賃相場ランキング2023年版! 日吉&三田キャンパス(一人暮らし向け)

間もなく訪れる新年度より、大学進学を機に一人暮らしをスタートさせる人も多いはず。そんな人の参考になるように、今回は慶應義塾大学で学部数の多い日吉キャンパス(神奈川県横浜市)と三田キャンパス(東京都港区)に通いやすく、家賃相場が安い駅を調査! 各キャンパスの最寄駅である、日吉駅まで電車で15分圏内、または田町駅・三田駅・赤羽橋駅いずれかまで電車で20分圏内に位置し、家賃相場が安い駅のランキングをご紹介する。さらに不動産会社「ハウスメイトショップ」武蔵小杉店店長の加瀬舞子さん、目黒店店長の山本泰史さんに聞いた、各キャンパス周辺にある学生が住む街としておすすめの駅についても見ていこう。

日吉キャンパス最寄り:日吉駅まで15分以内の家賃相場が安い駅TOP14(15駅)

順位/駅名/家賃相場(主な路線名/駅の所在地/所要時間/乗り換え回数)
1位 白楽 6.0万円(東急東横線/神奈川県横浜市神奈川区/11分/0回)
2位 高田 6.2万円(横浜市営地下鉄グリーンライン/神奈川県横浜市港北区/5分/0回)
2位 妙蓮寺 6.2万円(東急東横線/神奈川県横浜市港北区/9分/0回)
4位 大口 6.3万円(JR横浜線/神奈川県横浜市神奈川区/12分/1回)
5位 東白楽 6.4万円(東急東横線/神奈川県横浜市神奈川区/13分/0回)
6位 東山田 6.65万円(横浜市営地下鉄グリーンライン/神奈川県横浜市都筑区/7分/0回)
7位 小机 6.7万円(JR横浜線/神奈川県横浜市港北区/14分/1回)
8位 日吉本町 6.8万円(横浜市営地下鉄グリーンライン/神奈川県横浜市港北区/2分/0回)
9位 日吉 6.9万円(東急東横線/神奈川県横浜市港北区/0分/0回)※起点駅
10位 中川 7.0万円(横浜市営地下鉄ブルーライン/神奈川県横浜市都筑区/15分/1回)
11位 菊名 7.1万円(東急東横線/神奈川県横浜市港北区/5分/0回)
11位 大倉山 7.1万円(東急東横線/神奈川県横浜市港北区/4分/0回)
13位 綱島 7.35万円(東急東横線/神奈川県横浜市港北区/1分/0回)
14位 元住吉 7.4万円(東急東横線/神奈川県川崎市中原区/1分/0回)
14位 鹿島田 7.4万円(JR南武線/神奈川県川崎市幸区/13分/1回)
―――
「ハウスメイトショップ武蔵小杉店」加瀬さんおすすめの駅
13位 綱島
14位 元住吉
ランク外 武蔵小杉 8.35万円(東急東横線/神奈川県川崎市中原区/2分/0回)

三田キャンパス最寄り駅(田町駅、三田駅、赤羽橋駅)いずれかまで20分以内の家賃相場が安い駅TOP14(15駅)

順位/駅名/家賃相場(主な路線名/駅の所在地/所要時間/乗り換え回数/到着駅)
1位 流通センター 8.2万円(東京モノレール/東京都大田区/18分/1回/田町駅)
2位 糀谷 8.3万円(京浜急行空港線/東京都大田区/19分/0回/三田駅)
3位 武蔵小杉 8.35万円(東急目黒線/神奈川県川崎市中原区/18分/1回/田町駅)
4位 川崎 8.4万円(JR東海道本線/神奈川県川崎市幸区/16分/1回/田町駅)
5位 大森町 8.45万円(京浜急行本線/東京都大田区/19分/1回/三田駅)
6位 昭和島 8.5万円(東京モノレール/東京都大田区/19分/1回/田町駅)
6位 西馬込 8.5万円(都営浅草線/東京都大田区/15分/0回/三田駅)
6位 田園調布 8.5万円(東急目黒線/東京都大田区/20分/0回/三田駅)
6位 平和島 8.5万円(京浜急行本線/東京都大田区/14分/0回/三田駅)
10位 京急蒲田 8.6万円(京浜急行本線/東京都大田区/17分/0回/三田駅)
10位 大井競馬場前 8.6万円(東京モノレール/東京都品川区/16分/1回/田町駅)
12位 旗の台 8.7万円(東急大井町線/東京都品川区/18分/1回/田町駅)
12位 千駄木 8.7万円(東京メトロ千代田線/東京都文京区/20分/1回/三田駅)
14位 蒲田 8.8万円(JR京浜東北・根岸線/東京都大田区/14分/0回/田町駅)
14位 洗足 8.8万円(東急目黒線/東京都目黒区/17分/0回/三田駅)
―――
「ハウスメイトショップ目黒店」山本さんおすすめの駅
14位 洗足
ランク外 武蔵小山 9.2万円(東急目黒線/東京都品川区/12分/0回/三田駅)
ランク外 中延 9.3万円(都営浅草線/東京都品川区/11分/0回/三田駅)

慶應義塾大学を代表する2つのキャンパス周辺の環境&家賃相場は?

慶應義塾大学のキャンパスは各地にあるが、メインとなるのは多くの学部の1・2年生が通う日吉キャンパスと、同様に複数の学部の2~4年生や大学院生が通う三田キャンパスだ。

日吉キャンパス(写真/PIXTA)

日吉キャンパス(写真/PIXTA)

神奈川県横浜市港北区に位置する日吉キャンパスの最寄駅は、東急東横線と東急目黒線、横浜市営地下鉄グリーンラインが乗り入れる日吉駅。2023年3月に開業予定の東急新横浜線の乗り入れも始まる、注目の駅だ。東口駅前には見事なイチョウ並木が延びており、そこはもう敷地面積約10万坪という広大な日吉キャンパス。駅西口側には食料品街からユニクロなどの服飾・雑貨店、家電量販店までそろう「日吉東急アベニュー」があるほか、リーズナブルな飲食店も豊富な商店街が広がっている。

日吉駅(写真/PIXTA)

日吉駅(写真/PIXTA)

今回お話をうかがった「ハウスメイトショップ武蔵小杉店」店長・加瀬舞子さんは、「日吉キャンパスに通うのは単位取得のため学校に通う機会が多い1・2年生が多数。そのため最寄りの日吉駅や、近隣駅にお住まいになる学生さんが多いですね」と教えてくれた。そんな日吉駅は9位にランクインしており、学生向け賃貸物件の家賃相場(10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DK、駅から徒歩15分圏内。以下同)は6万9000円。さらに家賃を抑えたいなら、ランキング上位の6万円台前半の駅もチェックしたい。加瀬さんからは「近すぎると友人のたまり場になり、遠すぎると通学が面倒になるので、学校から20分ほどの範囲で探すのもいいですよ」とのアドバイスも。その点からも、あえて最寄りの日吉駅ではない街に住むのもアリだろう。

続いて三田キャンパス周辺の様子を見てみよう。東京都港区にある三田キャンパスは慶應義塾の原点といえる地だ。最寄駅である田町駅にはJRの山手線や京浜東北・根岸線が乗り入れ、駅周辺はビジネス街として発展。駅から大学へと向かう通り一帯はリーズナブルな飲食店がひしめく学生街としても愛されている。田町駅のすぐ近くには都営地下鉄の三田線・浅草線が通る三田駅が位置。キャンパスから北へ徒歩8分ほどの場所にある都営大江戸線・赤羽橋駅とあわせて、この3駅が主に大学の最寄駅として利用されている。

(写真/PIXTA)

(写真/PIXTA)

田町駅前の様子(写真/PIXTA)

田町駅前の様子(写真/PIXTA)

田町駅周辺の学生向け賃貸物件の家賃相場は11万6000円、三田駅の家賃相場は11万5500円、赤羽橋駅の家賃相場は12万円。大学への通いやすさなら最寄駅周辺に住むのが一番だろうが、学生にとってこれだけの家賃を払うのは厳しそう……。「ハウスメイトショップ目黒店」の山本泰史さんも、「三田周辺は家賃が高めのため、電車を使ってドア・トゥ・ドアでキャンパスまで30分以内にある物件を探す方が多い印象です」とのこと。上記ランキングで記載している所要時間は「電車の乗車時間(乗り換え時間含む)」であり「物件~駅/駅~大学間の所要時間」は含まないので、その点は物件探しの際に考慮したい。とはいえ家賃相場に注目するとトップ14の駅は8万円台で、田町駅や三田駅、赤羽橋駅の周辺よりもだいぶ費用を抑えることができる。

家賃の安さで住まいを選ぶ際は、上記のランキングをぜひ参考にしてほしい。しかし安さばかりではなく、住みやすい街かどうかも気になるところ。そこで先に登場したお2人に、日吉・三田の各キャンパスに通う学生の住む街としておすすめの駅を教えてもらった。

日吉キャンパスに通う1・2年生が住むなら、東急東横線沿線がおすすめ!

まずは日吉キャンパスに通う学生も利用する、「ハウスメイトショップ武蔵小杉店」店長の加瀬さんにおすすめの街をうかがおう。先述したように、日吉キャンパスに通う学生は日吉駅や近隣駅に住むことが多いのだそう。「日吉駅や日吉近隣の東急東横線沿線は、飲食店をはじめ商業施設が充実している駅も多く、初めての一人暮らしでも安心して住める環境ですよ」と加瀬さん。なかでも特におすすめの駅を3つ、教えてくれた。

元住吉駅前の商店街(写真/PIXTA)

元住吉駅前の商店街(写真/PIXTA)

おすすめ度1位は日吉駅の隣、東急東横線と東急目黒線が通る元住吉駅。上記の日吉キャンパス周辺の家賃相場が安い駅ランキングでは、家賃相場7万4000円で14位に。「駅を挟んで東西2つの商店街があり、チェーン系の店舗や地元の個人商店も含めて約270店舗の商店が立ち並んでいます。主にファミリー層が住むエリアなので、落ち着いた住環境を求められる方には非常におすすめできる駅です」。また、駅から徒歩7分ほどの場所に広大な「川崎市中原平和公園」があったり、駅前を流れる渋川沿いに約2kmにわたる桜並木が続いていたりと、自然を感じられる環境なのも魅力だという。

武蔵小杉駅周辺の様子(写真/PIXTA)

武蔵小杉駅周辺の様子(写真/PIXTA)

次なるおすすめは東急東横線と東急目黒線、JRの南武線など各線が乗り入れる武蔵小杉駅。日吉駅までは東急東横線でも東急目黒線でも2駅・3分前後、家賃相場は8万3500円だ。「家賃の価格帯は少し上がりますが、住みたい街ランキングでも上位に入る、人気が高いエリアです。『ららテラス 武蔵小杉』や『グランツリー武蔵小杉』など大型商業施設も充実。乗り入れ路線も多く、都内への玄関口として非常に利便性が高い駅です」

「SUUMO住みたい街ランキング2022 首都圏版」(リクルート調べ)で14位にランクインした武蔵小杉駅は神奈川県川崎市にあるが、駅東側を流れる多摩川を越えると東京都大田区に。東急東横線の通勤特急に乗れば、自由が丘駅まで1駅・約5分、渋谷駅まで3駅・約16分で行くことができる。日吉キャンパスまでの近さはもちろんのこと、せっかく進学で上京するならば都内までの近さも重視したい人には、うってつけだろう。また、武蔵小杉駅は今回調査した「三田キャンパス」周辺の家賃相場が安い駅ランキングだと3位。1・2年次は日吉キャンパス、3年次以降は三田キャンパスに通う予定の学生なら、進級後も引越しせず住み続けられる点も便利そう。

加瀬さんおすすめの3つ目の駅は、日吉キャンパス周辺の家賃相場が安い駅ランキングで13位の東急東横線・綱島駅。元住吉駅とは逆側、日吉駅から下り方面へ1駅目に位置しており、家賃相場は7万3500円。「スーパーやドラッグストア、飲食店など、駅周辺には幅広いジャンルの店舗がとても豊富。2023年3月には東急新横浜線の新綱島駅が開業予定で、ますます利便性が高まる点も注目です!」と加瀬さん。

新綱島駅のイメージ(写真/PIXTA)

新綱島駅のイメージ(写真/PIXTA)

東急新横浜線は日吉駅~新横浜駅を結ぶ路線として開業予定で、同じく開業準備が進む新横浜駅~羽沢横浜国大駅・西谷駅を結ぶ相鉄新横浜線とともに、相鉄・東急直通線の連絡線としての役割を担う。開業したあかつきには相鉄線と東急線との相互直通運転が可能に。新しく誕生する新綱島駅は綱島駅から100mほどの位置なので、この辺りに住むと2駅2路線が利用できるわけだ。新駅開業にあわせて道路の整備などの再開発も進められ、より住みやすい街へと進化しているところだ。

三田キャンパスに通う学生の住まいとして、おすすめの駅3選

三田キャンパスへの通学にも便利な街は、「ハウスメイトショップ目黒店」山本泰史さんにうかがった。住む街を選ぶ際のポイントは、「交通の利便性が高い駅であること」と話す山本さん。「三田キャンパスを利用する3・4年生は、アルバイトや就職活動など学校外での活動が増えてくる時期。そのため学校への行きやすさをふまえたうえで、別の場所へのアクセスの利便性も高い駅を選ぶのがよいでしょう」

三田キャンパスは最寄駅が多く、どの路線がよいのかも迷うところ。その点をうかがうと、「特におすすめは東急目黒線の沿線。都営三田線と相互直通運転されていてキャンパスがある三田駅まで乗り換えせずに行けること、目黒駅に出れば都内の主要駅に行きやすいJR山手線に乗り換えられる点が魅力です」と教えてくれた。

武蔵小山駅前(写真/PIXTA)

武蔵小山駅前(写真/PIXTA)

なかでも山本さんイチ押しは、急行停車駅でもある東急目黒線・武蔵小山駅。大学最寄りの三田駅までは都営三田線直通の東急目黒線なら約12分で行くことができる。家賃相場は9万2000円と少々高め。「開発が進み、近年は家賃相場が上がった点はネック。ですが、東京で最も長いアーケード商店街があって、買い物や外食にたいへん便利な環境です。にぎわいのある街なだけに適度に人目があり、一人暮らしの学生さんも安心して暮らせるでしょう」。都内最長だというアーケード商店街「武蔵小山商店街パルム」は、全長約800mで店舗数は約250軒にものぼる。商店街の東側駅前エリアには、再開発で2019年に開業したショッピングモール「パークシティ武蔵小山ザモール」や、品川区役所の出張所や商業施設も備える2021年7月竣工の複合施設も。駅周辺の再開発は現在も進行中なので、今まさに街が生まれ変わりゆく様子を見られる点も魅力だ。

武蔵小山商店街パルム(写真/PIXTA)

武蔵小山商店街パルム(写真/PIXTA)

もう少し家賃相場を抑えたいなら、「東急目黒線の東京都区間内では比較的に家賃相場が安い、洗足(せんぞく)駅もおすすめです」と山本さん。洗足駅の家賃相場は8万8000円で、三田キャンパス周辺の家賃相場が安い駅ランキングで14位に。三田駅までは都営三田線直通の東急目黒線に乗ると約17分だ。

「駅前にスーパーやドラッグストアがそろっていて買い物に便利な環境。駅周辺は閑静な住宅街で落ち着いた印象です。ただ、人通りが少ない点が心配なら、住まい探しの際に駅までの道のりチェックも忘れずにしましょう」

この洗足駅前には美しいイチョウ並木が続き、並木通り沿いを中心に商店街が広がっている。日々の食事に役立つ惣菜店や、神保町に本店がある欧風カレーの名店「ボンディ」の支店、自家焙煎にこだわるコーヒーショップなど個性的な店が豊富でめぐり歩くのも楽しそう。また、洗足駅から徒歩10分弱に位置する東急大井町線・北千束駅を利用することも可能だ。

洗足駅前の風景(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

洗足駅前の風景(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

山本さんがもう1駅、おすすめしてくれたのが都営浅草線・中延(なかのぶ)駅。家賃相場は9万3000円で、三田駅までは約11分。

「都営浅草線と東急大井町線が利用できて便利。若者に人気の自由が丘駅までも1本で行くことができます。駅近くには商店街が3つあり、八百屋さんや精肉店などが並んでいるので食費を抑える助けにもなるかも。駅前にユニクロがあるのもうれしいところです」

商店街のなかでも注目は、「なかのぶスキップロード」と呼ばれる中延商店街。中延駅から北に延びており、東急池上線の荏原中延駅まで約330mも続くアーケード商店街だ。買い物に利用できる商店街独自のポイントシステムも用意されているので、ポイントを貯めつつお得に買い物ができる。

なかのぶスキップロード(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

なかのぶスキップロード(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

さて今回はランキング調査に加え、これまで多くの学生を新生活へと送り出してきた不動産会社のお話を参考に、学生におすすめの街をご紹介した。住む街によって生活の充実度は変わってくるし、学生時代に暮らした街は卒業後も大事な思い出の地になるだろう。しっかりと自分の好みにあった街を選び、ぜひ楽しい新生活を送ってほしい。

●取材協力
ハウスメイトショップ

●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている田町駅、三田駅、赤羽橋駅まで20分以内、日吉駅まで電車で15分以内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ抽出期間】2022/2~2022/10
【家賃の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の管理費を含む月額賃料から中央値を算出(3万円~18万円で設定)
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、朝7時30分~9時の検索結果から算出(2022年11月28日時点)。所要時間は該当時間帯で一番早いものを表示(乗換時間を含む)
※記載の分数は、駅内および、駅間の徒歩移動分数を含む
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が1回までの駅を掲載

屋根の上には中央線! 高架下の学生向け賃貸「中央ラインハウス小金井」完成から2年、コロナ禍での住み心地

2020年3月、JR中央線東小金井駅から武蔵小金井駅間の高架下に建設された、学生向け賃貸住宅「中央ラインハウス小金井」。JR中央線の高架下を敷地としていること、3人の有名建築家が各棟を設計、専用カフェテリアでの食事付き、などが話題となった。現在、入居開始から3年目。コロナ禍をまともに受けつつ、どのように学生たちが過ごしているのか、お話を伺った。

中央線の高架下の有効活用が「食事付き学生専用マンション」

「入居開始後、最初の入居者は地方出身の1年生(当時)がほとんどでした。新築の「デザイナーズマンション」であることに加え、管理人がいて学生専用である安心感、朝夕の食事付きであることも親御さんからの支持が大きいです。いわゆる学生寮に比べればプライベートな居住空間はしっかり確保され、門限もない自由さもいいようです」と当物件の管理運営を担っている株式会社学生情報センター 広報室の寺田律子さん。

周辺には商店街も。そもそもここに学生向け賃貸住宅が計画されたのは、中央線の高架化に伴い生まれた土地の有効活用という観点から。多くの大学に通学できる利便性から、法政大学、東京農工大学、国際基督教大学はじめ約30校の学生が暮らしている(写真撮影/桑田瑞穂)

周辺には商店街も。そもそもここに学生向け賃貸住宅が計画されたのは、中央線の高架化に伴い生まれた土地の有効活用という観点から。多くの大学に通学できる利便性から、法政大学、東京農工大学、国際基督教大学はじめ約30校の学生が暮らしている(写真撮影/桑田瑞穂)

高架下かつ第一種低層住居専用地域で、「寄宿舎」カテゴリによる建築確認申請により建設をしているため、共同施設が必要になる。当物件には食堂があり、おのずと目玉は学生専用カフェテリアに。平日の朝と夕に、管理栄養士監修のボリューム感ある食事は「美味しい」と評判だ。さらに、専用カフェテリアが営業しない週末は自炊も。専用部分にキッチンがない学生は共用キッチンで調理をする。

メニューの一例(写真は夕食)。食事は朝食・夕食の提供で1万7600円/月(税込)。提供時間は月~金曜の7時~9時、18時~21時 (画像提供/JR中央線コミュニティデザイン)

メニューの一例(写真は夕食)。食事は朝食・夕食の提供で1万7600円/月(税込)。提供時間は月~金曜の7時~9時、18時~21時 (画像提供/JR中央線コミュニティデザイン)

外から中が見える、開放的なカフェテリアは居住する学生専用。近所の住民の方から「これは何?」と聞かれることも多いとか(写真撮影/桑田瑞穂)

外から中が見える、開放的なカフェテリアは居住する学生専用。近所の住民の方から「これは何?」と聞かれることも多いとか(写真撮影/桑田瑞穂)

高架下ということで騒音や揺れが気になるのでは、とイメージする人は多そうだが、実際はほとんど気にならない。
C棟に住むAさん(大学3年・男性)は、「むしろ、昔から鉄道が好きで、高架下のマンションということでがぜん興味を覚えました。都市学にも興味があり、こんな新しい土地活用は、恰好のネタにもなると思いました。暮らすのは一番の実践です」と話す。

棟は3通り。専用部分はミニマムに。共用スペースをシェア

実際の部屋や共用スペースを案内していただいた。
各部屋専有部は10~15平米とコンパクトだが、机やベッド、収納などが備え付けられ、洗濯機や冷蔵庫など家電も付いている(棟によって内容は異なる)。必要最低限の荷物で生活が始められるとあって、地方から上京する新1年生に人気の物件だ。

共用部を通らず入室でき、2住戸ごとにオートロックがあるなど、最も独立性の高い「C棟」(写真撮影/桑田瑞穂)

共用部を通らず入室でき、2住戸ごとにオートロックがあるなど、最も独立性の高い「C棟」(写真撮影/桑田瑞穂)

C棟の部屋は13.04~15.94平米で、ロフト、キッチン、浴室付きが最も人気が高い(写真撮影/桑田瑞穂)

C棟の部屋は13.04~15.94平米で、ロフト、キッチン、浴室付きが最も人気が高い(写真撮影/桑田瑞穂)

勉強や食事などができるコミュニティスペースを併設している「L棟」(写真撮影/桑田瑞穂)

勉強や食事などができるコミュニティスペースを併設している「L棟」(写真撮影/桑田瑞穂)

L棟の部屋は10.75~11.36平米(写真撮影/桑田瑞穂)

L棟の部屋は10.75~11.36平米(写真撮影/桑田瑞穂)

L棟にある共用キッチン(写真撮影/桑田瑞穂)

L棟にある共用キッチン(写真撮影/桑田瑞穂)

コインランドリー(写真撮影/桑田瑞穂)

コインランドリー(写真撮影/桑田瑞穂)

最も天井の高い「H棟」(10.44~11.59平米)。シャワーユニットとロフト付き。冷蔵庫付き(画像提供/JR中央線コミュニティデザイン)

最も天井の高い「H棟」(10.44~11.59平米)。シャワーユニットとロフト付き。冷蔵庫付き(画像提供/JR中央線コミュニティデザイン)

ロフトから見たH棟の部屋(画像提供/JR中央線コミュニティデザイン)

ロフトから見たH棟の部屋(画像提供/JR中央線コミュニティデザイン)

コロナ禍で交流イベントが白紙に。現在は少しずつ挑戦中

「共用部を充実させることで、付加価値を付けられたらと考えています。当初は、さまざまなイベントを提供することで、自然と交流を生み出す手伝いもできたらと考えていました」と寺田さん。というのも、多くの学生専用マンションを手掛けてきた同社は、これまでウェルカムパーティーやゲーム大会、ハロウィーンイベントなど、さまざまな仕掛けで、入居する学生たちの交流を促してきた実績があったからだ。

しかし、完成と同時にコロナ禍に。当然、さまざまなイベントは白紙になった。新入生も突如すべての授業がオンラインになるなか、実家にも帰れないという状況が続いた。前出のAさんも「最初の3カ月間は、初めての一人暮らしとコロナ禍のダブルで精神的につらかったです」と思い返す。

ただし、この学生向け賃貸住宅なら、会話を通しての交流は難しくても、同じ建物内に人がいる安心感や自分の部屋以外のスペースを使えるメリットがある。
「共用スペースで料理をしていれば、当然他の学生と同じ時間に料理したりすることがあるので、そこで会話をして顔見知りになっていくことができました」とH棟の住民の学生Sさん(大学2年・男性)

「感染状況をみながら、イベントも少しずつ再開しました。例えば、カフェテリアでスタッフが楽器を演奏するイベントなどを試みました」と当物件の事業開発主体であり、沿線のコミュニティを創発する株式会社JR中央線コミュニティデザインの山口剛さん。パーティーは無理だが、音楽を通して自然とそこに居る人たちの一体感が増す仕掛けだ。

6月にカフェテリアで行われた音楽イベント。スタッフがアコースティックギターとバイオリンを奏でて(画像提供/JR中央線コミュニティデザイン)

6月にカフェテリアで行われた音楽イベント。スタッフがアコースティックギターとバイオリンを奏でて(画像提供/JR中央線コミュニティデザイン)

学生自ら企画に参加。東京五輪の観戦イベントも

学生が自ら企画したイベントもある。前出のSさんは、東京五輪のサッカー戦をカフェテリアで一緒に観戦するイベントを担当した。

「せっかく、ただのアパートではなく学生マンションに住んでいるので、他の学生とも気軽に交流できる環境をつくりたいと思ったんです。一緒に企画したり、実際に来てくれた人と話している中で、他の大学の話を聞いたり、北から南まで出身地がバラバラで、故郷の話を聞いたり、すごく面白かったんです。もともとは部屋の美しさと食堂があったことで決めた物件ですが、いろんなバックグラウンドを持つ学生が集まっている良さを実感しました」(Bさん)

シェア工作室で地域にも開かれた場所に

そして、住人の学生だけでなく地域にも開かれた交流の場となっているのが、ナレッジルームだ。さまざまな工具、道具が用意されているため、材料を持ち込んでDIYをしたり、不用品を分解してつくるアートを楽しむこともできる。入居している学生のなかには、壊れていたものを自分で直したり、自分の部屋用にと棚や箱などぴったりサイズのものをDIYする人も。

「何をするかは自分で決める」が基本だが、小さなワークショップを開催することもある。小学生でも、初回のみ保護者の同伴が必要だが、保護者の許可があれば小学生だけで利用することも可能だ。
「ここは高架下で多くの方が“ここは何だろう”と思う場所。その注目度を活かして、学生だけでなく、地域の皆さまにも自然に交流が生まれる場所になったら理想的だなと思っています」と山口さん。

毎週月・火曜13時~18時、日曜10時~15時(不定期)にオープン。クリエイティブ・フィールドVIVISTOPを運営するVIVITA JAPAN(株)のスタッフに相談もできる(写真撮影/桑田瑞穂)

毎週月・火曜13時~18時、日曜10時~15時(不定期)にオープン。クリエイティブ・フィールドVIVISTOPを運営するVIVITA JAPAN(株)のスタッフに相談もできる(写真撮影/桑田瑞穂)

あらゆる工具のほか、ミシンやロックミシン、カッティングマシーン、シルクスクリーンなどが準備されている(写真撮影/桑田瑞穂)

あらゆる工具のほか、ミシンやロックミシン、カッティングマシーン、シルクスクリーンなどが準備されている(写真撮影/桑田瑞穂)

また、ナレッジルームで行われるイベントを学生が手伝うケースもある。
C棟に住むCさん(大学3年)は、「たまたま夏に募集があって、ヒマだったので参加しました。一般の来場者向けに、デイジーの種を空き缶で育てるプラントづくりを考案し、当日たくさんの方にレクチャーしました。緊張しましたがとても楽しくて、やってよかったですね。それきっかけで、スタッフの方と仲良くなり、たまに顔を出しています」と他にはない体験を楽しんだようだ。

正直、コロナ禍で、当初思うような交流の場が設けられていないのは事実だ。
「しかし、こちらの物件ではありませんが、オンラインを使ったe-スポーツ大会、有給のインターシップなど、新しい試みを実施しています。今後は学生さんたちもさまざまなイベントを企画する側から参加していただけたら面白いですね」(寺田さん)

できた当初は“高架下にできた学生寮”という珍しさで注目を集めた「中央ラインハウス小金井」。実は、中央線の高架化に伴い、学生向け賃貸住宅のほかにも、新たな商業施設、コワーキングスペース、保育園、クリニックなどが整備されている。つまり、駅の高架下という立地は、自然と地域住民が目にすることの多いロケーションなのだ。こうした特性を生かし、今後は、地域との交流も加速していくかもしれない。

現時点では、交流が入居の決め手になった学生はそれほど多くないが、今後は変わるかもしれない。就職活動において「自ら考え、自ら動いてきたか」を重視する傾向にある今、自分が暮らす場がその舞台になるのは絶好の機会だ。今後は「交流をしたいから」「イベントを自分で考えてみたいから」入居するという学生が増えるかもしれない。今後にも期待したい。

今回お話を伺った学生情報センター寺田律子さんと、JR中央線コミュニティデザインの山口剛さん(写真撮影/桑田瑞穂)

今回お話を伺った学生情報センター寺田律子さんと、JR中央線コミュニティデザインの山口剛さん(写真撮影/桑田瑞穂)

●取材協力
・中央ラインハウス小金井
・学生情報センター

音楽で生きていくため10代で移住。国立音楽院で学び、宮城県加美町が支援

田んぼに囲まれた宮城県加美町の国立音楽院宮城キャンパスで、他地域から移住してきた若者たちが演奏技術、楽器の製作・リペアや音楽療法などを学んでいる。
「好きな音楽を一生の仕事に活かす」を謳う国立音楽院の本校があるのは、話題のカフェが集まる都会、東京都世田谷区三宿エリア。音楽による地方創生を目指す加美町からの提案が、宮城分校のきっかけだった。

音楽資源を見直した町の創生キャンパス周辺に広がる田畑。冬には雪が降り積もり真っ白な光景となる(写真撮影/フォトスタジオクマ 熊谷寛之)

キャンパス周辺に広がる田畑。冬には雪が降り積もり真っ白な光景となる(写真撮影/フォトスタジオクマ 熊谷寛之)

「この町には、もともと暮らしに音楽が馴染んでいました」と教えてくれたのは加美町ひと・しごと推進課 菅原敏之さん。
東北新幹線仙台駅の隣駅の古川駅から車で20分ほどの加美町中心部には、1981年に開設された中新田バッハホールがある。パイプオルガンを備え、国内外から音響の素晴らしさが評価されている本格的クラシック専用ホールだ。市町村合併などの事情で利用が低迷していた時期もあったが、2011年に猪股洋文加美町長が就任し、中新田バッハホールを核とした音楽によるまちづくりに注力。無料コンサートが毎月開催され、小中学校の音楽活動も支えてきた。中新田バッハホールを拠点とする市民オーケストラも創設されている。

「上多田川小学校の廃校決定と合わせて、地域の方に利用の方法を検討していただきました。その中で教育施設としての提案があり、音楽関連の人材育成ができる機関を誘致して再利用する、という計画が作成されたのも自然な流れでした」(菅原さん)

国立音楽院は学校法人ではなく、音楽に関連する技術や資格への学びを提供する、いわば音楽関連職育成スクール。東京にある本校は50年以上の歴史があり、2021年度は360人ほどが学んでいる。
「国立音楽院はミュージシャン向けのカリキュラムも充実していますが、それ以上に楽器製作者や修繕をするリペアラー、育児教育につながる幼児リトミック指導員、介護を担う音楽療法士を育成している点が魅力でした。移住促進策としても、楽器製作者にふさわしい場所提供など必要な支援をイメージしやすく、また、音楽を用いた育児と介護は、住民の住み心地に直結します」(菅原さん)

町の中心部にある中新田バッハホール。加美町の音楽でのまちづくりは、2017年に地域創造大賞(総務大臣賞)を受賞している(写真撮影/フォトスタジオクマ 熊谷寛之)

町の中心部にある中新田バッハホール。加美町の音楽でのまちづくりは、2017年に地域創造大賞(総務大臣賞)を受賞している(写真撮影/フォトスタジオクマ 熊谷寛之)

国立音楽院東京本校。高校生は通信高校と提携して卒業資格を得られる。音楽大学に通いながらのダブルスクール生、社会人学生も多い。宮城キャンパスのほか鳥取県にも分校がある(写真提供/国立音楽院)

国立音楽院東京本校。高校生は通信高校と提携して卒業資格を得られる。音楽大学に通いながらのダブルスクール生、社会人学生も多い。宮城キャンパスのほか鳥取県にも分校がある(写真提供/国立音楽院)

若い移住者を支援する町と学校のセッション

加美町では、地域再生戦略交付金などを活用して旧校舎のリフォームと机などを準備。国立音楽院は加美町に使用料を支払う形で、2017年4月に宮城キャンパスが開校した。

町外からの移住者に対して、加美町では年間6万円(最長5年、30歳未満)の家賃補助を行なっている。希望者にはアルバイト先を紹介していて、「未成年の学生の代わりに、応募電話をすることもあります」(菅原さん)と、加美町の移住支援は親戚同様の温かさ。
その支援を軸に、国立音楽院も東京校以外の選択肢として宮城キャンパスへの移住を提示している。「音楽を学ぶうえで、生活コストが安いのはいいことです。また、当校はもとより不登校の生徒も受け入れています。都会より自然の中での学びの方が合う子どももいますから」(国立音楽院代表 新納智保さん)

学生の住まいは、町中心部の民間アパートを国立音楽院が紹介しているが、2022年度は中古で購入した社員寮を新たに学生寮としてオープンする予定だ。町の中心部からキャンパスまではバスで20分程度。学生は通学バスに加えて上多田川地区と市街地を結ぶ地域バスも利用できるようになっており、地域が学生の受け入れと応援に力を入れていることがわかる。

2021年度の生徒は61名。新型コロナ感染拡大の影響を受けて前年の80名より減少したが、次年度は増加を見込んでいる。
「生徒のうち約半数、29名は全国各地からの移住者です。国立音楽院のスタッフも含めて、町全体では2015年~2020年累計で244人が移住してくれました。人口減少傾向がすぐに増加に転じるわけではありませんが、移住者に10代が多いのは特筆すべき結果です」(菅原さん)

国立音楽院宮城キャンパス。草刈りなどを地元が協力してくれ、敷地内は綺麗に整備されている。学舎としてだけではなく、地域のコミュニティの場でもある(写真撮影/フォトスタジオクマ 熊谷寛之)

国立音楽院宮城キャンパス。草刈りなどを地元が協力してくれ、敷地内は綺麗に整備されている。学舎としてだけではなく、地域のコミュニティの場でもある(写真撮影/フォトスタジオクマ 熊谷寛之)

旧校舎をそのまま活用したキャンパスで伸びやかに学ぶ

旧上多田川小学校の校舎は1998年に建て替えられた。もともと児童数が少なく、複式学級(児童数が少ない学校で取り入れる2つ以上の学年を一つにした学級)を前提にした校舎だったため教室は3つのみだった。「柱、床、壁の状態はよく、ほとんどそのまま利用できました。学年別授業のための間仕切りも有効活用しています」(菅原さん)

エントランスホール。薪ストーブを設置した以外、建具は元の小学校のまま。エントランスホールで開く「月イチライブ」には地元の聴衆が駆けつける(写真撮影/フォトスタジオクマ 熊谷寛之)

エントランスホール。薪ストーブを設置した以外、建具は元の小学校のまま。エントランスホールで開く「月イチライブ」には地元の聴衆が駆けつける(写真撮影/フォトスタジオクマ 熊谷寛之)

国家資格であるピアノ調律技能士育成のための教室。防音ブースを置いただけだそう。東京本校には防音ブースがないが、宮城キャンパスでは他からの音に干渉されず繊細な音に没頭できる(写真撮影/フォトスタジオクマ 熊谷寛之)

国家資格であるピアノ調律技能士育成のための教室。防音ブースを置いただけだそう。東京本校には防音ブースがないが、宮城キャンパスでは他からの音に干渉されず繊細な音に没頭できる(写真撮影/フォトスタジオクマ 熊谷寛之)

ヴァイオリン製作科ではヴァイオリン、ヴィオラなど擦弦楽器(さつげんがっき)の製作・修理・調整を生徒たちが学んでいる。ヴァイオリン製作を本格的に教える学校は、日本では2校のみとのこと(写真撮影/フォトスタジオクマ 熊谷寛之)

ヴァイオリン製作科ではヴァイオリン、ヴィオラなど擦弦楽器(さつげんがっき)の製作・修理・調整を生徒たちが学んでいる。ヴァイオリン製作を本格的に教える学校は、日本では2校のみとのこと(写真撮影/フォトスタジオクマ 熊谷寛之)

ギターの製作室。各教室の窓外には豊かな自然が広がっている(写真撮影/フォトスタジオクマ 熊谷寛之)

ギターの製作室。各教室の窓外には豊かな自然が広がっている(写真撮影/フォトスタジオクマ 熊谷寛之)

管楽器のリペア室では授業が行われていた。この日はティンパニーが題材。あらゆる楽器をリペアできる人材の育成を目指している(写真撮影/フォトスタジオクマ 熊谷寛之)

管楽器のリペア室では授業が行われていた。この日はティンパニーが題材。あらゆる楽器をリペアできる人材の育成を目指している(写真撮影/フォトスタジオクマ 熊谷寛之)

音楽を身体で表現し感性や表現力を養う「幼児リトミック」の実習は、宮城キャンパス内や町内外の幼稚園・保育所・カルチャーセンターなどで行われている。福祉関係として、高齢者施設での音楽療法士を育成するコースもある(写真提供/国立音楽院)

音楽を身体で表現し感性や表現力を養う「幼児リトミック」の実習は、宮城キャンパス内や町内外の幼稚園・保育所・カルチャーセンターなどで行われている。福祉関係として、高齢者施設での音楽療法士を育成するコースもある(写真提供/国立音楽院)

スタッフも生徒も音楽演奏が大好き。バンド練習室は元校長室だった(写真撮影/フォトスタジオクマ 熊谷寛之)

スタッフも生徒も音楽演奏が大好き。バンド練習室は元校長室だった(写真撮影/フォトスタジオクマ 熊谷寛之)

21歳移住者「学んだ音楽の力で地域への貢献が実感できます」

北川日香里さん(21歳)は高校卒業後、国立音楽院東京校で管楽器のリペアを2年間学んだのち、2020年に加美町へ移住してきた。
「リペアを学び続けながら働きたいと考えていました。東京校で知った加美町の移住セミナーに参加してみて、地域の人と交流できる環境に興味を持ちました」と北川さん。加美町の地域おこし協力隊隊員に採用され、音楽による地域振興活動と、その活動の一環として宮城キャンパスでのリペア作業に携わる日々を送っている。

「地域おこし協力隊」は、国からの地域振興予算をもとに地域振興を担う人材を3年間登用し、給与を支払う制度。楽器の修理事業を根付かせたいという町の期待に対し、リペアラー修業を続けながら地域貢献を目指す北川さんは打ってつけの人材だった。

コロナ禍で苦戦した場面はあったが、北川さんは全世帯に配布される町内広報誌の作成や、「真夏の畑でライブ」を主催。地元の人から声を掛けられることも多いそう。「親しみを込めて話しかけてくれるのが嬉しいです。ライブ演奏も楽しんでもらえたし、自分の活動で音楽でのまちづくりが広がる実感が持てるのも、加美町の規模だからかも」(北川さん)

北川日香里さんは長崎県五島列島出身。中学校・高校の吹奏楽部時代に楽器修理が島内でできず、輸送費と待ち時間に悩まされたのがリペアラーになったきっかけ。ゆくゆくは地元の長崎で開業するのが夢(写真撮影/フォトスタジオクマ 熊谷寛之)

北川日香里さんは長崎県五島列島出身。中学校・高校の吹奏楽部時代に楽器修理が島内でできず、輸送費と待ち時間に悩まされたのがリペアラーになったきっかけ。ゆくゆくは地元の長崎で開業するのが夢(写真撮影/フォトスタジオクマ 熊谷寛之)

「宮城キャンパスでも、東京校と同じレベルの授業を提供しています」と宮城キャンパス長の宮内佳樹さん。「各学科の講師は、専門分野のプロフェッショナルです。東京校講師による出張講義もあり、オンライン授業の仕組みもコロナ禍以前から整備しています。都会では勉強以外の誘惑も多いので、学びに向き合う環境としてはこちらの方がまさっていると思います」(宮内さん)

宮城キャンパス長の宮内さん。さまざまなバンドやライブに参加するギタリストでもある。東京だけが音楽の場ではないと気づき、家族とともに東京から加美町に移住してきた(写真撮影/フォトスタジオクマ 熊谷寛之)

宮城キャンパス長の宮内さん。さまざまなバンドやライブに参加するギタリストでもある。東京だけが音楽の場ではないと気づき、家族とともに東京から加美町に移住してきた(写真撮影/フォトスタジオクマ 熊谷寛之)

「住まいのある町の中心地はスーパーもコンビニもあって、生活にはまったく支障がない」と話すのは管楽器リペア科講師の土生啓由さん。土生さんも東京校からの転勤組だ。「楽器店が身近にないのは残念な点です。高級品も含め完全に整備された楽器に触れる機会が少ないですから。ですが、生徒の数が東京校より少ない分、身近に生徒の成長を感じられるのが嬉しいです」

講師の土生さん。仕事に没頭すると昼食を抜くことも多いそうだが、「月に1回程度、地元の方が主宰してくれる交流ランチ会を生徒もスタッフも楽しみにしています。給食室で調理してくれる地元産の野菜が美味しいです」(写真撮影/フォトスタジオクマ 熊谷寛之)

講師の土生さん。仕事に没頭すると昼食を抜くことも多いそうだが、「月に1回程度、地元の方が主宰してくれる交流ランチ会を生徒もスタッフも楽しみにしています。給食室で調理してくれる地元産の野菜が美味しいです」(写真撮影/フォトスタジオクマ 熊谷寛之)

国立音楽院宮城キャンパスで定期的に行われている幼児リトミック教室は、親同士が子育ての悩みを相談できる大事な場。中高年を対象とした「若返りリトミック®」は楽しみながら運動イベントとして好評で、そのほか「地元とのランチ会」「月イチライブ」「クリスマスコンサート」は地域コミュニケーションの活性に繋がっている。

集客が制限されるなどコロナ禍の打撃は大きかったが、国立音楽院宮城キャンパス開校は、音楽による生き生きとした暮らしを実現しつつある。

加美町の菅原さんは、「これからは、卒業後の就労先を増やして移住を定着させていくことを頑張らなければなりません。楽器のリペア事業者の支援や、介護の音楽療法士・幼児リトミック指導員の活躍の場を広げていきたいです」と語る。

国立音楽院宮城キャンパスは2021年度で5年目を迎え、2022年3月で卒業する生徒(3年コース生)は3期生となる。
おうち時間に楽しむ楽器への需要が増え、2021年はショパンコンクールでの日本人上位入賞が話題となった。音楽に関連する仕事への気運が高まるなか、音楽での地域創生もますます期待していきたい。

●取材協力
・加美町
・国立音楽院宮城キャンパス

学生と地域住民が共助力で災害にそなえる。東京・神田「ワテラス」のエリアマネジメントがすごい!

若い世代、なかでもひとり暮らしだと、「近所にどんな人が住んでいるか知らない」という人は多いのではないでしょうか。しかし、災害時の「共助」という視点では不安ですよね。千代田区神田淡路町では、地域のコミュニティ活動をプロデュースするエリアマネジメント組織があり、学生と住人が一体となって地域活性化をはかっています。事務局の方と学生に話を聞きました。
「淡路エリアマネジメント」が中長期で街づくりに携わる

2013年、東京都千代田区神田淡路町の小学校統跡地を含む一帯が再開発され、区立公園に隣接する2棟構成の「ワテラス( WATERRAS )」が完成しました。テナント40店舗、オフィス入居約20社、分譲住宅333戸に加えて、コミュニティ施設と学生用住戸が36戸あるのが特徴です。ここでは、ワテラスの主要権利者である安田不動産が事務局を務める「淡路エリアマネジメント」が地域活動のプロデュースを担い、その会員として学生用住戸に暮らす学生や活動を支援する地域の法人・個人が参加。自治会などの地域団体や行政と連携してさまざまな活動を行っています。

近年、東京ではあちこちで大規模複合再開発が行われ、竣工後の地域活性化を目的にしたエリアマネジメント(※)が注目を集めています。淡路アリアマネジメントの成り立ちを、エリアマネージャーを務める堂前武さんに聞きました。

※エリアマネジメント/地域における良好な環境や地域の価値を維持・向上させるための、住民・事業主・地権者等による主体的な取り組み(国土交通省の定義)

新御茶ノ水駅と直結。2013年に竣工したワテラスタワー(写真撮影/嘉屋恭子)

新御茶ノ水駅と直結。2013年に竣工したワテラスタワー(写真撮影/嘉屋恭子)

「この再開発事業は1993年、少子化のために小学校が統廃合され、跡地をどう活用していくかからはじまりました。学校が閉校になった地域住民の危機感は強く、単なる開発行為ではなく、開発後の街づくりを見据え、長期的に施策を実施する事が重要であるとの考えのもと、開発段階よりエリアマネジメント組織による活動が構想されておりました」と振り返ります。

淡路エリアマネジメントの活動は、1地域交流活動、2学生居住推進活動、3地域連携活動、4環境共生/美化活動の主に4つにわけられます。2の学生居住については、1の地域活動に参加することが条件で、相場より割安の家賃でワテラスの「ワテラスアネックス」で暮らすことができます。全36戸ありますが、都心の好立地、手ごろな家賃ということもあってか、毎年希望者が殺到し、倍率は4~5倍(!)にもなるといいます。

2013年のワテラス完成以降、マルシェや音楽祭、防災フェア、江戸三大祭りのひとつである「神田祭」などさまざまなイベントに学生が参加することで、街に活気が生まれています。

「ワテラスに学生が住んでいて地域活動しているというのは、周囲の地域や町会の方々にもだいぶ知られるようになり、手を貸してほしいと依頼が来るようになりました。学生たちも受け身で地域活動をするのではなく、主体的に地域住民と交流する機会をつくるなど、方法もアップデートしています」(堂前さん)

地域活動に取り組むと「神田が好きになる」「街への解像度があがる」

学生のみなさんは、勉強に遊びにと、やりたいことが盛りだくさんの年代だと思うのですが、地域活動についてどのように考えているのでしょうか。

「私は現在入居4年目、大学3年次進級にともなって、ワテラスへ引越してきました。もともと子どもと交流するなどボランティア活動をしていたので、地域活動をしみたかったというのが入居理由の一つです。ワテラスに越してきてからも児童館でアルバイトしたり、その活動がワテラスでの地域活動に活きたりと、有意義に過ごせています」と話すのは大学院生の長谷大輔さん。ワテラスで暮らす学生は、長谷さんのように「家賃が安い」という理由だけではなく、明確に「地域活動がしたい」と意欲を抱いている人がほとんどだそう。

学生が企画して2019年から開催しているブックフェスの様子。子どもはもちろん、学生たちも楽しそう(写真提供/淡路エリアマネジメント)

学生が企画して2019年から開催しているブックフェスの様子。子どもはもちろん、学生たちも楽しそう(写真提供/淡路エリアマネジメント)

「ここに来る前ひとり暮らしをしていたころは、家は寝に帰るためのハコで、どの街に誰と暮らしているという意識は持ちづらかったです。でも、ここでの地域活動が楽しくて、街に対して、人に対して愛着がもてました。『神田に住んでいる』という実感が湧いて、一住民として街への解像度が上がり、日々、気づいた魅力や課題をエリアマネジメント活動に還元できています」と話すのは、赤尾将希さん。

若い世代でも、「街と関わりたい、でもきっかけがない」と思っている人は、実は多いのかもしれません。今年度、リーダーとして中心的に学生会員をまとめる井戸川茉央さんも、同じように感じていました。

「私も入居して4年目で、高校卒業後、大学進学にともなって上京し、初めてのひとり暮らしがココでした。勉強だけでなく、地域活動がしてみたい、他大学の人と交流したいというのが入居のきっかけです。1~2年生のときは楽しく活動に参加していましたが、年次が上がるにつれて関わり方も深いものとなりました。ここで暮らすみんなに神田を好きになってもらいたいと思いますし、私自身、ぐっと地域の人との距離が縮まったように思います」

ワテラスコモンでの打ち合わせの様子。学生たちもアイデア出し、企画から参加できるよう、進め方を変えたそう(写真提供/淡路エリアマネジメント)

ワテラスコモンでの打ち合わせの様子。学生たちもアイデア出し、企画から参加できるよう、進め方を変えたそう(写真提供/淡路エリアマネジメント)

属性も立場も異なる。だからこそ「防災に巻き込む」仕掛けが大切

ワテラスでは、年2回の防災訓練のほか、千代田区の帰宅困難者対応訓練も秋葉原協力会の一員として実施。災害時の共助の拠点として大きな役割を担っています。
もちろん学生会員も参加し、分譲マンション住人の避難誘導や安否確認訓練、広場でのトイレ設置訓練などを行います。

「複合施設なので、マンション住人、オフィスワーカー、管理組合、管理会社、行政とさまざまな人が関わっていますし、属性も違い、当然、温度差もあります。土日と平日では、滞在している人も異なりますし、防災への意識も異なります。ですから、神田消防署とも連携して、より多くの人が参加しやすいように遊び心を加えて、『防災フェア』『防災ワークショップ』などを開催し、「火の話(紙芝居)」や防災サバイバル術を紹介するなど工夫しています。こうした地道な活動が、帰宅困難者対応訓練のような、大規模な防災訓練の土台となっています」と堂前さん。

消防訓練に学生会員も参加。いざというときに備えます(写真提供/安田不動産)

消防訓練に学生会員も参加。いざというときに備えます(写真提供/安田不動産)

消防訓練の様子。平日昼間に行われているので、オフィスワーカーが中心になります(写真提供/安田不動産)

消防訓練の様子。平日昼間に行われているので、オフィスワーカーが中心になります(写真提供/安田不動産)

なるほど、関係者も規模も大きいだけに、「共助」のハードルが高いのは事実のようです。ただ、そこでいきてくるのが日ごろの活動、信頼関係です。

「地域住民の高齢化は進んでいて、青年会では50代が若手になっていることも(笑)。そこに20歳前後の学生が入ることで、潤滑油になっている側面もあります。今はコロナ禍で活動ができないですが、例えば飲み会に参加して顔をあわせているだけでかわいがってもらえる。地域の人から『スマホの使い方教えてよ』と盛り上がることだってあるんですよ」(堂前さん)というと、「自分たちには当たり前のことも、相手にとっては価値があることだったりする。そのギャップがおもしろいですよね」と赤尾さん。

こうした日々の活動を通し、学生たちには「神田が特別な街」という思いが育まれていくのでしょう。

普段からともに活動している仲間がいるから、助けにいける

学生住戸のあるフロアには共有ラウンジがあり、普段から共に地域活動に取り組んでいるため、単なる友人というよりも、「仲間」という結束・連帯感があるようです。

「例えば、災害発生時に自分ひとりで動くのは勇気がいる。1人だったら助けにはいけないと思う。でも、ここには日ごろからいっしょに活動している仲間がいる。仲間がいれば、一緒に地域の人を助けにいけると思う」と長谷さん。

その言葉通り、コロナ禍でコミュニティ活動が休止した昨年、街のために何か行動を起こしたいとリレームービーを企画。ワテラスに入居する企業や店舗で働く従業員、自治会長や住民など総勢60名に出演を依頼し、撮影から編集まで全工程を学生が行いました。動画サイトで公開されたムービーには、「会えなくてもつながっている」「思いはひとつ」というメッセージが込められています。それぞれの得意を活かして地域をつなぐ、学生ならではの活動といえるでしょう。

昨年作成した動画の一部。みなさん、自由に会える日を待ちわびています(写真提供/安田不動産)

昨年作成した動画の一部。みなさん、自由に会える日を待ちわびています(写真提供/安田不動産)

「お祭りができなくなり、飲食店が大変ななか、神田を元気づけたい、活性化したいという思いで動画製作をしました。コロナ禍で中止になったこと、できなかったことも多かったのですが、反対に動画はコロナ禍があったからできた。作業はすごく大変だったんですが……やってよかったです」と井戸川さん。

新型コロナという感染症の流行も、見方を変えれば、一種の災害のようなものです。そんななかで、人々を元気づけたいと仲間と一緒に行動できたのは、やはり今までの「淡路エリアマネジメント」の活動があってこそ。また、卒業していった学生会員のOB/OGのメンバーは、2021年時点ですでに100名近くいて、OB/OG会も年1回ほど実施しているとか。

「学生はそれぞれの大学を卒業して就職し、北海道から鹿児島まで幅広い場所で活躍していますが、年に1度『神田っ子』として集まり、思い出を語らっています。将来、またこの街にもどってきてくれたらうれしいですね」と堂前さん。

人と人の絆は一朝一夕にはできず、年々、紡がれて豊かになっていくものでしょう。若い世代が地域のエリアマネジメントに自主的に参加できる仕組みは、災害時の街全体の共助力を底上げしてくれるはず。この神田の取り組みは、他の街でもきっと参考になるのではないのでしょうか。

◆ワテラス
◆ワテラス ライン会員

15歳で広島県・大崎上島の高校へ。「帰りたかったことも…でも頑張ったから今の自分になれた」

都道府県の枠を超えて地域の高校に入学する「地域みらい留学」という制度。今回は、瀬戸内海の島にある広島県立大崎海星高校の県外留学生1期生となり、今年3月に卒業したばかりの榮ことねさんにインタビュー。「いいことばかりじゃないけれど、この高校に入って本当に良かった! 」と振り返る彼女に入学した理由、学校生活や寮生活など、リアルな話をあれこれ聞いてみた。
中学の修学旅行で訪れた島に感動。親に反対されても「行きたい!」榮ことねさん(画像提供/伊達綾子さん)

榮ことねさん(画像提供/伊達綾子さん)

ことねさんと広島の大崎上島(おおさきかみじま)の出合いは、中学3年生のときに修学旅行で訪れた民泊。広い海と空に囲まれた島の風景と優しい島の人たちに心奪われたのだ。「地元は大阪。車が走る音が聞こえる環境で育ったので、島では鳥や虫の鳴き声があちこちでして、感動したんです。とにかく新鮮でした」(ことねさん)

そして、この大崎上島では、県外から高校へ入学できる制度があることを知る。「だから、思い切って、親に”大崎上島に行きたい”とお願いしたんです。でも、最初は却下。そのあとは、地元の大阪の高校に進学するつもりで学校見学をしていましたがどこもピンとこなくて……。どうしてもあきらめきれず、親と一緒に11月に個人的に学校見学をさせてもらったところ、”そんなに行きたいなら”とOKしてくれました」

中学時代に修学旅行で訪れた民泊にて。高校ではオーナーご夫妻が島親に(画像提供/榮ことねさん)

中学時代に修学旅行で訪れた民泊にて。高校ではオーナーご夫妻が島親に(画像提供/榮ことねさん)

島の伝統的な行事を学校の学習に取り組む独特な取り組みも、ことねさんが惹かれた要因のひとつ。なかでも、原爆ドーム、宮島の厳島神社へ大崎海星高校生たちが自分で船を漕いでいく「旅する櫂伝馬(かいでんま)」が目玉行事(画像提供/伊達綾子さん)

島の伝統的な行事を学校の学習に取り組む独特な取り組みも、ことねさんが惹かれた要因のひとつ。なかでも、原爆ドーム、宮島の厳島神社へ大崎海星高校生たちが自分で船を漕いでいく「旅する櫂伝馬(かいでんま)」が目玉行事(画像提供/伊達綾子さん)

寮生活は大変。人見知りも発動。慣れるまでには時間が必要

そして晴れて入学。しかし、親元を離れての寮生活は不慣れなことも多かった。掃除、洗濯、整理整頓、これまで親任せだったことも、すべて自分たちがやらなければいけない。食事や風呂の時間、門限など、集団生活ゆえのルールも多い。
「一番は、時間に縛られることがしんどかったですね。食事も食べたいときに食べるわけじゃない。1人部屋だったので、ある程度プライバシーは守られますが、やっぱり家族と過ごすのとはまったく違います。入学前はワクワクしていて、不安なんてなかったのに、5月にはホームシックになってしまいました」(ことねさん)

また、人見知りで自分から話しかけるのが苦手だったことねさんにとって、生まれたときからずっと一緒という島の子たちの輪に入るのは、なかなかハードルの高いことだった。
「そこはもう、腹をくくるしかないって。席の近かった子に勇気を振り絞って話しかけたりしました。でも島の子たちは島の子たちで大阪出身の私が珍しかったみたいです。寮生とはずっと一緒なので、自然と共通の話題も増えてきました」

集団生活の息苦しさも、友達づくりの難しさも、特別な出来事があったわけではなく、「自然と」「慣れた」ということねさん。
「中学生の時は親に朝起こしてもらっていたけど、ここでは時間を管理するのも自分でやらなければならないんですよね。朝5時に起きて朝ごはんの前に勉強の時間をつくったり。自分で考えて生活スタイルを考えるようになりました」

1学年10人、全部で30人ほどの寮(画像提供/伊達綾子さん)

1学年10人、全部で30人ほどの寮(画像提供/伊達綾子さん)

寮生の誕生日会はみんなが顔を合わせる機会(画像提供/伊達綾子さん)

寮生の誕生日会はみんなが顔を合わせる機会(画像提供/伊達綾子さん)

「学校PR動画をつくりたい!」同級生や大人を巻き込んで完成へ

そしてことねさんが学生時代に取り組んだのが「みりょくゆうびん局」での活動だ。これは、もともと大人たちが地域活性化の一つとして行っている「高校魅力化プロジェクト」に、当事者の高校生も参加してみませんか? という試み。「せっかく地元を離れてきているんだし、やってみようかな」と考えたのだが、もともと引っ込み思案だった彼女にとっては大きな挑戦だった。

(画像提供/伊達綾子さん)

(画像提供/伊達綾子さん)

当初はPR担当として、顧問の先生たちがアレンジした活動に参加することが多かったが、そのうち、自分でも“なにかやってみたい”と思うように。それがPR動画だ。
「島根の津和野高校で高校生が自らつくったPR動画を見て、”こんなのをつくってみたい”と思うようになりました」

制作期間は2年生の冬~3年生の夏。一緒に考えてくれるメンバーを募集したり、顧問の先生を通して”瀬戸内ドローン推進協議会”に全面的な協力を得ることができた。完成したのが以下の動画。始業式で流したところ、大反響だったそう。

学校紹介ムービーをYouTubeで公開。煌めく青春と島の美しさは必見! 「塾の先生が自腹でGoProを買ってくれて、それで撮影したり、大人たちもたくさん巻き込みました」(ことねさん)

ただ、道のりは平たんではなかったそう。ことねさんは、自称”リーダーには向かない性格”。会議を進行させたり、意見をまとめたりするのは大の苦手で、他人にお願いするくらいなら、自分で無理をして背負い込んでしまう方だった。
「でも、1人でできることには限界があると痛感。考えも煮詰まってしまう。みんなで案を出し合ったり、方向性を整理することを学びました。なにかお願いするときも、声かけひとつで相手の気持ちが違ってくるんですよね」

人数が多いとできることも増えるが、意見をまとめるのもひと苦労。ディレクターとして自分の想いを伝える難しさも実感した。「でもいずれ社会になったら必要になることばかり。いい経験をさせてもらいました」(ことねさん)(画像提供/榮ことねさん)

人数が多いとできることも増えるが、意見をまとめるのもひと苦労。ディレクターとして自分の想いを伝える難しさも実感した。「でもいずれ社会になったら必要になることばかり。いい経験をさせてもらいました」(ことねさん)(画像提供/榮ことねさん)

(画像提供/伊達綾子さん)

(画像提供/伊達綾子さん)

(画像提供/榮ことねさん)

(画像提供/榮ことねさん)

本音をいうと、学校を辞めようと思ったこともあった

豊かな自然に囲まれた中で、高校生活を満喫したことねさん。しかし、実は「もうだめだ。大阪に戻ろう」と思ったこともあったそう。自分で望んだとはいえ、15歳で親元を離れ、新たな人間関係の輪に入ろうとすることは想定以上のストレスだったのだ。ささいなことでも気になったり、常に緊張を強いられる生活に限界を感じた。
「私はその日にあったことを全部家族に話すのが習慣だったので、やっぱりさみしかった。私にとっての家族は“絶対的な味方”。そんな味方でいる人たちのもとに帰りたいと何度も思いました」

(画像提供/榮ことねさん)

(画像提供/榮ことねさん)

しかし、大好きな家族が送り出そうとしてくれたのだからこそ、「ここが頑張りどころだ」と踏ん張ったのだ。

そんなときに頼りになったのは「ハウスマスター」という、寮で高校生と一緒に生活をしながら、相談に乗ってくれるお兄さん、お姉さん的な大人の存在。大島海星高校のハウスマスターである伊達綾子さんにもお話を伺った。
「集団生活は楽しいことばかりじゃないし、生活習慣も価値観も全く違う子どもたちが一緒に生活するわけですから、当然、あつれきも生まれます。そんなときに、それぞれ話を聞いたり、寮生同士ができるだけ誤解なく関わり合えるようにサポートするのが、私たちの役目。ことねさんも最初のころはネガティブに考え込むことが多かったですが、”島でも、あなたにとって大事な人からは、家族と同じくらい大事に思ってもらえているよ”とということが伝わるように、見守りました」(伊達さん)

大事な人から大事にされているーーーその筆頭格は”島親さん”だ。海星高校では、寮生1人につき「島親さん」がつく。中学時代、民泊させてもらったご夫婦が、ことねさんの島親だ。「今ではもうひとつの実家のよう。”いつでも帰っておいで”とおしゃってくださるので、卒業しても年に1回帰ろうと決めています」(ことねさん)

ハウスマスターは、寮生のサポートとともに、地域との繋がりをつくるコーディネーターとしてイベントも企画(画像提供/伊達綾子さん)

ハウスマスターは、寮生のサポートとともに、地域との繋がりをつくるコーディネーターとしてイベントも企画(画像提供/伊達綾子さん)

島親さんとことねさん(画像提供/榮ことねさん)

島親さんとことねさん(画像提供/榮ことねさん)

そして、ことねさんの頼れる味方は、公営塾「神峰学舎」の先生たち。大崎海星高校たちのための塾で、なんと無料。放課後もしくは部活動が終わった後など、各自好きな時間に訪れ、夜の20時まで宿題や受験勉強のサポートをしてくれる。人数が少ない分、距離感が近い。情報が少なく、ともすれば勉強のモチベーションを保つのは難しい島生活だからこそ、生徒一人一人の意思を尊重して、進学・キャリアの相談をしてくれる神峰学舎の先生たちは、島の高校生たちの力強いサポーターだ。「塾通いは1年のときから、私のほぼルーティン。3年になってからは毎日、放課後から20時まで通っていました。先生たちの助けがなかったら、受験を乗り切れなかったと思います」(ことねさん)

3年間で180度変わった自分。未来へ大きく前進

今年の3月に大島海星高校を卒業し、春からは関西学院大学に入学が決まっていることねさん。この3年間で自分はどんなふうに変わったと感じているのだろうか?
「中学校までは本当に自分に自信がなくて、“私なんか”が口ぐせ。でも、高校3年間で、自分って意外とできることあるんじゃないって思えるようになりました。昔ならきっと目指さない大学を挑戦しようと思ったこともそのひとつ。正直、受験は大変でした。一般受験する子が周囲には少なくて、前なら”もう無理だ”って諦めちゃったと思いますが、今回、勉強を頑張ったことも自信につながりました」(ことねさん)

また、人前に立つこと、目立つことが“超苦手”で、中学のころは後ろに隠れてばかりだったというが、今ではプレゼンも得意に。
「島では生徒数が少ないので、後ろに隠れられない(笑)。人前に立つ機会が自然と多くなるので、鍛えられました。こうした取材を受ける機会も多いです」(ことねさん)
ハウスマスターの伊達さんも「今まで3年間頑張ってくらいついてきたことが、彼女の力になって、全部結果として返ってきたと思います」と証言。

何より、その変化を一番実感しているのは親御さんだ。
「母に”私って変わった?”と聞いたら、”すっごく変わったよ”と即答されました。“昔は、学校では大人しくて言いたいことを言えないから、けっこう家でストレスを発散してたけど、それがなくなったね”って言われたんです。寮生活のなかで、自分の感情を上手くコントロールできるようになったのかなと思いました」(ことねさん)

今では初対面の人に話しかけたり、人前で話すことも平気に。もしかしたら、潜在的な能力が花開いたのかも(画像提供/伊達綾子さん)

今では初対面の人に話しかけたり、人前で話すことも平気に。もしかしたら、潜在的な能力が花開いたのかも(画像提供/伊達綾子さん)

これからは実家のある大阪での大学生活が始まるが、広島での高校3年間が今の自分を大きく変えたという、ことねさん。
「あのとき、親にも反対されたのに、どうしても行きたくて、地域みらい留学のパンフレットの言葉を暗記するほど読み込んだんです。いつも消極的な私からすれば、考えられないほど前のめりだった。どうしてだろう。ここだって直感的に思ったんです。あのとき、決断してよかったと本当に思います」(ことねさん)

楽しかった。でも楽しいばかりじゃなかった。そしてすごく頑張った。
そんなことねさんが、どんな未来を描くのか、これからの挑戦が楽しみだ。

(画像提供/榮ことねさん)

(画像提供/榮ことねさん)

(画像提供/榮ことねさん)

(画像提供/榮ことねさん)

●取材協力
地域みらい留学

「地域みらい留学」って? 新しい土地の高校で学び・暮らす“15歳の決断”で得るものは

前回、都会から親元を離れ、島根県の高校に入学、2019年に東大生となった鈴木元太さんにインタビューした。鈴木さんが活用したのが、都道府県の枠を超えて地域の高校に入学する「地域みらい留学」という制度。
今回は、運営団体である一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォームに、立ち上げた背景、実績や反響、気になるあれこれをインタビューした。

進学する側・受け入れる側、双方の交差ニーズから生まれたプロジェクト

「地域みらい留学」とは、北海道から沖縄まで地域の公立高校に入学し、充実した高校3年間を送る制度のこと。「留学」と名はついているが、短期ではない。多くは新しい土地で寮生活などを送ることになり、高校進学の新たな選択肢として注目を浴びている。 都会にはない自然、その地域独自の文化、地元と全国から集まる同級生、地域の大人たち。まさに「世代を超えた多様な仲間」との「実践的な学びの場」となっている。

そもそも、この制度が立ち上がった背景とは?
「ひとつは、急激な社会変化や大学入試改革などを受け、”これからの社会を生き抜く力を身に着けてもらいたい”と考える親御さんたちが増えていることです。従来の一方通行な詰め込み型の教育に違和感を覚える子どもたちもいます。また、受け入れる地域の側でも、生徒数が少なくなりつつある高校に、異文化や多様性を取り込み高校に活力と刺激をもたらしたい、という強い思いがありました。地域みらい留学は、子どもを留学させる側、受け入れる側、両方向からニーズが交差した事業です」(一般財団法人 地域・教育魅力化プラットフォーム 地域みらい留学 広報責任者 安井早紀さん)

都会では得られない3年間の体験で大きく変化する子どもたち

実際、この3年間を通して、子どもたちにはどんな変化があるのだろうか。
「”この3年間で自分の人生が変わった””留学をしていなかったらまったく違う人生だった”と話してくれる子はとても多いです。
例えば、北海道奥尻島にある奥尻高校に留学した女子生徒は、『部活の遠征費を生み出すための部活オクシリイノベーション事業部での活動』『寮運営の中心的役割』『生徒会活動』などさまざまなことに挑戦しています。全校生徒数60名余りと活躍のチャンスが多いこと、彼女の旺盛な好奇心をかき立てるような町の課題が近くにあること、そして地域社会との距離が近くチャレンジできる舞台があることが、彼女の挑戦を加速させます。

奥尻高校に留学した女子生徒が「部活の遠征費を生み出すための部活オクシリイノベーション事業部」での活動の一環で行った「奥尻マルシェ」。奥尻の名産品や自分たちでデザインしたオリジナルグッズの販売などを行った(写真提供/一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム)

奥尻高校に留学した女子生徒が「部活の遠征費を生み出すための部活オクシリイノベーション事業部」での活動の一環で行った「奥尻マルシェ」。奥尻の名産品や自分たちでデザインしたオリジナルグッズの販売などを行った(写真提供/一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム)

また、島根県立津和野高校では女子生徒が、高校生と地域の大人たちとつなげて進路や将来を考える座談会を企画・運営まで自分たちで行う『アスギミック』というプロジェクトを立ち上げました。地域で暮らす大人たちと進路の悩みについて話したり、多様な年代の大人たちに”やってみなさい”と挑戦を応援され、助けられ、育っていく日々、自然豊かな環境と余白の時間で自分と向き合う時間は教科書以上の学びにつながっています。

見知らぬ土地で暮らす3年間は一筋縄ではいかないこともあります。しかし、その葛藤も含めて、感じていることに素直になって向き合い、自分なりに行動し、自分らしい進路を見つけています。これは、普通に受験し、都会の高校に進学していたら、なかなか得られない経験だと思います」

3年間の体験をきっかけに「地域」を学び続ける卒業生は多い

そうした貴重な経験をした生徒たちが、どういう進路、どんな分野で活動をしていているのか気になるところ。現在、「地域みらい留学」「しまね留学」の卒業生では、地域での活動が評価され、推薦・AO入試などで、東京大学、慶應義塾大学、上智大学、立教大学、立命館大学に進学した学生がいるほか、「地域」を切り口にした学びを大学でも続けるため、観光学部、地域協働学部、地域創生学部といった分野に進学した学生もいる。

「釣り好きが高じて島根県立隠岐島前高等学校に進学した前田陽汰さんは、在学中、寮長として寮改革に取り組み、休日は地域に出て島民と交流を深めていました。現在は慶應義塾大学総合政策学部に在籍しつつ、NPO法人ムラツムギを立ち上げ、地域活性化以外の選択肢として“まちの終活”を提唱。家のお葬式”家オクリ”や寺おさめ”寺オクリ”等の取り組みを通じて、第二の故郷・島根にも関わっています。ほかにも、フリーランスのフォトグラファーや、大学卒業後に自身が地域みらい留学生の寮生活を支えるコーディネーターとなった卒業生もいます」

前田陽汰さんの寮長時代の写真。寮生と一緒に(写真提供/前田陽汰さん)

前田陽汰さんの寮長時代の写真。寮生と一緒に(写真提供/前田陽汰さん)

大学進学した後は、地域活性化ではなく、“まちの終活”に着目して活動を続けている(写真提供/前田陽汰さん)

大学進学した後は、地域活性化ではなく、“まちの終活”に着目して活動を続けている(写真提供/前田陽汰さん)

話を聞いていると、「意識の高い子」「自分の好きなことがはっきりしたい子」が多いようにも思う。ただし、実際の中学生たちの留学前は「目的意識のはっきりしていない子のほうが多数派です」と言う。

「例えば、今いる学校への違和感、新しい形の学びを求めているなど多様な動機、状況があります。ただ、共通するのは“いまの延長線上の未来を変えたい”という気持ちです。そんな子たちも、3年間で、自分の性格も世界の捉え方も変わった、将来の夢ができた、人の温かみと繋がりを知った、自信がついて自分らしくいられるようになった、帰りたい場所ができたと話してくれます。まだ見ぬ土地に踏み出す勇気から始まった3年間では、みんな、自分に対して小さくても大きくても、何らかのチャレンジをし、成長しています」

都会からの留学生が、地元の高校生の未来を変えた

大きな変化があるのは、都会からやってきた留学生だけではない。地元の高校生たちにも、都会からやってきた同級生は大きな影響を与えている。
「地元の子たちは、幼少期から同じ顔触れで育っていますから、外からまったく違うバックグラウンドを持つ高校生が入ってくることで、多様な価値観を知ります。また、都会から来た子から見える地元の魅力を聞くことで、見慣れた地元の魅力を再発見する機会に。県外から生徒を受け入れることで、地元の子どもたちの未来が変わったり、意欲的な生徒が地域に飛び出すことで学校と地域の関係性を紡ぐきっかけになっています」
卒業したら家業を継ぐ、そもそも大学進学を考えていない地元の高校生が、外から刺激を受け、学ぶ楽しさを知り、自分自身の将来を考えるきっかけにもなっているそう。
例えば、島の仲間はみんな顔見知りという環境だった男子生徒は、全国からはもちろん、海外からの帰国子女の留学生の存在が大きな刺激に。進学した東京の大学では、少子高齢化が進む団地での地域拠点を創出するサークル活動を行っている。

また、以前は家業を継ごうと考えていた畜産農家の高校生は、畜産農家や留学生との交流が転機となって慶應義塾大学へ進学し、卒業後はJAに就職して畜産の後継者不足問題に取り組んでいる。

現地のオープンスクールで行きたくなる子も

最近では、都市部で全国の地域の学校が一同に集まる地域みらい留学の合同説明会「地域みらい留学フェスタ」の参加者人数が、この2年間で1000名→2000名と大幅に増えるなど、注目を浴びているという。

「オルタナティブな教育のあり方に興味関心を抱いている保護者の方が増えていることを感じています。なかには、小学生のお子さんをお持ちの親御さんが、”私立の中学受験をさせるか、中学は地元の公立・高校は地域みらい留学するか、で検討している”とおっしゃっていました。実際に地域みらい留学をさせている保護者の方々から評判を聞いたという来場者の方が多いです」
 
一方で、注目を浴びるにつれ、親が前のめりだけれど、本人は消極的といったケースも増えているのでは?「たしかに地域みらい留学フェスタに来るきっかけの7割は保護者の方になります。来場する中学生は説明会で地域の学校と出逢い、在校生や卒業生などのロールモデルの声を聞いて『楽しそう!』『自分もこうなりたい!』と意欲が高まり、7、8月の夏休みのオープンスクールで現地に親子で赴きます。そして、本当に挑戦するかどうかは中学生自身が最後に決めるケースがほとんどです」

現在、3年間で13道県34校→25道県55校と受け入れ高校も増え、取り組みが北海道から沖縄まで広がっている。今後「地域みらい留学を当たり前の選択肢に」と、高校生のチャレンジの選択肢として海外留学と同じくらいに地域留学も広めていけたらと考えている。

「多様で複雑で変化の激しい、正解のない社会を生きていくために、ローカルでの濃い3年間の原経験は、とても貴重なものになるでしょう。それぞれがつくりたい未来を、それぞれの形でつくって行ってほしいと思っています」

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地域みらい留学

イマドキの学生の部屋選び、通学時短を重視する傾向に。ほかには…?

学生用マンションでひとり暮らしをする人は、「駅」の近さより通学する「学校」の近くであることが決め手になる。そんな調査結果を学生情報センターが発表した。通学の『時短』を重視する傾向は、学生にも及んでいるようだ。調査結果を詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2020」の結果を発表/学生情報センター学生も通学の『時短』を重視する!?

まず、「今の部屋に決めた理由」(複数回答)を聞いた上位の結果を見よう。
1000人以上の学生が「学校から近い」と「バス・トイレ別」を決め手にしたことが分かる。

1位:「学校から近い」(1170人)
2位:「バス・トイレ別」(1080人)
3位:「駅から近い」(763人)
4位:「セキュリティ」(760人)

立地については、駅から近くても通学するのに学校から遠い、というのは敬遠されるということだろう。通学でも『時短』重視の傾向がうかがえる結果だ。

また、「今の住まいの満足度」(単一回答)を聞くと、72.4%の学生が満足(「大変満足」24.5%+「ある程度満足」47.9%)と回答した。一方、「今の住まいにいつまで住むか」(単一回答)を聞くと、75.0%の学生が「卒業するまで」と回答した。「満足」あるいは「普通」と感じている学生が多いからだろうが、新しい部屋探しには時間も費用もかかることもあって、積極的に住み替えを考えてはいないという状況がうかがえる。

「今の住まいの満足度」(左)と「今の住まいにいつまで住むか」(右)(出典/学生情報センター「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2020」より転載)

「今の住まいの満足度」(左)と「今の住まいにいつまで住むか」(右)(出典/学生情報センター「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2020」より転載)

オススメは駅より学校の近さ。ただし地域差も…

次に、後輩にアドバイスするという想定で「部屋を選ぶときの重視項目」を聞いた結果を見ていこう。

部屋を選ぶときに重視すべき後輩へのアドバイス(複数回答)1.全国(出典/学生情報センター「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2020」より転載)

部屋を選ぶときに重視すべき後輩へのアドバイス(複数回答)1.全国(出典/学生情報センター「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2020」より転載)

後輩に重視すべきとする三大項目は、「学校の近く」(61.3%)、「スーパーの近く」(59.9%)、「駅の近く」(51.9%)だ。「スーパー」のほうが「コンビニ」より品ぞろえが多いから、より重視すべしということか。

ただしこれが地域によって、少し変わってくる。

部屋を選ぶときに重視すべき後輩へのアドバイス(複数回答)2.東京都と東京都を除く全国との比較(出典/学生情報センター「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2020」より転載)

部屋を選ぶときに重視すべき後輩へのアドバイス(複数回答)2.東京都と東京都を除く全国との比較(出典/学生情報センター「ナジックひとり暮らし学生 実態調査2020」より転載)

同社の本社が京都にあることから、回答した学生が最も多いのは京都府(18.2%)で、次いで東京都(17.4%)になるのだが、東京都の学生とそれ以外の府県の学生で比較すると、順位や重視度が変わってくる。

「学校の近く」が1位であることに違いはないが、2位は東京以外の学生では「スーパーの近く」が僅差で続くのに対し、東京都の学生では「駅の近く」が逆転して2位に上がる。また、東京都の学生は「通学に乗り換えがない」が27.0%で6位に上昇(東京都以外は16.2%で9位)するのも、注目したい点だ。

通勤通学時間帯には、車内の混雑度や駅間移動の混雑度が激しく、ストレスがたまりやすい東京都ならではの観点といってよいだろう。

イマドキの学生は「無料Wi-Fi」「宅配ボックス」「オートロック」が必需品?

次に「家賃が多少高くなっても部屋に欲しい設備・サービス」(複数回答)を見ていこう。

ダントツの「バス・トイレ別」は別格として、「無料Wi-Fi」「宅配ボックス」「オートロック」が上位に来るのがイマドキの学生らしい。

1位:「バス・トイレ別」63.3%
2位:「無料Wi-Fiサービス」40.7%
3位:「宅配ボックス」37.8%
4位:「オートロック」36.3%
5位:「大きな収納スペース」36.2%
6位:「独立洗面化粧台」33.8%

特に、「宅配ボックス」は2年前の同じ調査の6位から3位に浮上しており、2年前に筆者が「無料Wi-Fi」「宅配ボックス」「オートロック」が新三種の神器になると予測した通りになってきた。

さていよいよ、合格発表を受けて学生が新居を探すシーズンになってくる。部屋探しで重視するポイントは人それぞれだろうが、先輩の意見はどれだけ参考になるだろうか?

”デザイナーズ学生寮” JR中央線高架下に来春登場!ここまで進んだ遊休地活用

幅400mという超横長の敷地の食事付き賃貸住宅が2020年春に完成を予定している。学生を対象としていて、食事と管理人付きなところは、さながら“学生寮”。横長なのは、JR中央線の高架下を敷地としているためだ。騒音や振動も気になりそうなこの立地にJR東日本が住宅をつくるのはなぜなのか? 初の高架下賃貸住宅「中央ラインハウス小金井」の詳細を探ってみた。
商業空間や保育園…高架下スペースは、もはや”遊休地“ではない

「高架下」と聞いてすぐにガード下の居酒屋を連想してしまった私だが、最近の高架下は、とてもそんな枠に収まる空間ではないらしい。

例えば、東急東横線中目黒駅と祐天寺駅の間に2016年11月にオープンした商業施設はその名も「中目黒高架下」。おしゃれなショップやレストランが軒を連ね、行列のできる人気店もあるというし、JR御徒町駅と秋葉原駅の間の高架下に展開する「2k540 アキオカ アルチザン」には、「ものづくり」をテーマに工房やショップ、カフェなどがそろっている。2020年初夏には、JR有楽町駅~新橋駅間の高架下に「日比谷OKUROJI」がオープンを予定。さまざまなスタイルのバーなどが充実した新しい商業空間が誕生することになる。

また、JR東日本が進める「HAPPY CHILD PROJECT」では、子育て支援を通じた沿線活性化事業に取り組んでおり、駅型保育園のバリエーションとして、すでに高架下に複数の保育園を誕生させている。高架下は、すでに鉄道アクセスの良い商業空間やコミュニティ空間としての地位を確立しているのだ。

住居専用の用途地域だったことが高架下住宅誕生につながった

そんな高架下スペースに、今度は学生向け賃貸住宅「中央ラインハウス小金井」が建設される。東京都による三鷹・立川間の連続立体交差事業で生じた長大な高架下スペース。中央ラインハウス小金井は、その一部であるJR東小金井駅とJR武蔵小金井駅間のスペースを利用する予定だ。

JR武蔵小金井駅とJR東小金井駅の間の高架下には、すでに「nonowa東小金井」「nonowa武蔵小金井」という商業施設や保育園があるが、住宅はなかった。なぜ、今回、住宅が誕生することになったのだろうか。JR中央線三鷹~立川間エリアの開発を行う株式会社JR中央ラインモール開発本部の関口淳さんに聞いた。

「これまで、中央線三鷹駅~立川駅間の線路高架化にあわせ、当社では、駅周辺部を中心に商業展開を行うほか、子育て支援施設や福祉・医療施設、地域交流を促す施設、広場・公園など沿線にお住まいの方々に対し、日々の暮らしをサポートするさまざまな施設の設置を進めてきました。そのような背景がある中、今回の建設予定地に関しては、大半が住居専用の用途地域(第一種低層住居専用地域)であったことから、都市計画との整合性と当社の使命とする中央線沿線の価値向上につながる計画を検討してきました。その結果、学生向けの住宅という切り口に至ったのです」(関口さん)

住宅を学生向けとしたのは、中央線沿線に大学キャンパスが多く、住んでいる学生も多いこと、また駅からの道が分かりやすく夜道が明るいことで、学生寮に求められる立地条件を満たしているととらえたからだとか。

東京都による三鷹・立川間の連続立体交差事業が行われ、2010年11月に約9kmに及ぶ長大な高架下スペースが生まれたJR中央線。武蔵小金井駅と東小金井駅の間にはすでにショッピングモールや保育園がある(画像提供/JR中央ラインモール)

東京都による三鷹・立川間の連続立体交差事業が行われ、2010年11月に約9kmに及ぶ長大な高架下スペースが生まれたJR中央線。武蔵小金井駅と東小金井駅の間にはすでにショッピングモールや保育園がある(画像提供/JR中央ラインモール)

高架下での生活に問題がないことは保育園が実証済み?!

ただ、高架下となると、ついつい気になってしまうのが振動や騒音。果たして住宅にふさわしいものなのだろうか…?

「振動や騒音については、現地を確認した上、高架下で開発した別の物件の状況を踏まえ、日常生活に支障がないと考え計画いたしました。また、今回の計画地の隣地(高架下)には保育園が既に設置されており、問題なく運営されています」(関口さん)

なるほど。住宅として初の試みではあるものの、すでに保育園の園児たちが高架下の空間で生活しているという実績があるわけだ。園児たちは、午後にはお昼寝だってしているはず。赤ちゃんも安眠できる環境と考えると、納得がいく。

なお、この物件の特色は、高架下という立地だけにとどまらない。北山恒、谷内田章夫、木下道郎という3人の建築家がL棟、C棟、H棟、それぞれの設計を担当することで、共用空間と居室のつながりやバランスについてコンセプトの異なるプランを展開。住み手である学生が、他学生とどのようにかかわるか、プライバシーにどの程度こだわるかといった志向に応じて、自分にふさわしいプランを選べるようになっている。

また、中央に位置する専用カフェテリアでは、平日の朝・夕の2回、食事を提供。栄養バランスのとれた食生活をサポートするとともに、異なる棟の学生との交流も促す。カフェテリアに隣接する多目的ホールは、地域住民との交流も視野に入れた運営が予定されている。

L棟のコモンスペース(共用スペース)として、1階にはキッチン、2階にはライブラリーが。それぞれを経由して居室に入るつくりになっており、居室はごくごくコンパクトな空間となっている(画像提供/JR中央ラインモール)

L棟のコモンスペース(共用スペース)として、1階にはキッチン、2階にはライブラリーが。それぞれを経由して居室に入るつくりになっており、居室はごくごくコンパクトな空間となっている(画像提供/JR中央ラインモール)

C棟は、外部テラス(アウトサイド・コモン)を共用スペースとすることで、各居室の独立性を確保。居室内には、キッチン、バス(乾燥機付き)、洗濯機、電子レンジなどが備え付けられている(画像提供/JR中央ラインモール)

C棟は、外部テラス(アウトサイド・コモン)を共用スペースとすることで、各居室の独立性を確保。居室内には、キッチン、バス(乾燥機付き)、洗濯機、電子レンジなどが備え付けられている(画像提供/JR中央ラインモール)

H棟は、大型ダイニングテーブルのあるラウンジ・コモン、ライブラリーのあるキッチン・コモンをvペースとして、中央のキッチン・コモンにつながる廊下から各居室に入るつくり。天井の高さを活かしたロフトも設けられている(画像提供/JR中央ラインモール)

H棟は、大型ダイニングテーブルのあるラウンジ・コモン、ライブラリーのあるキッチン・コモンを共用スペースとして、中央のキッチン・コモンにつながる廊下から各居室に入るつくり。天井の高さを活かしたロフトも設けられている(画像提供/JR中央ラインモール)

中央に設けられた専用カフェテリアで、朝食と夕食を提供(食事代1万6000円/月・税別)。多目的ホールは地域との交流にも利用される予定だ(画像提供/JR中央ラインモール)

中央に設けられた専用カフェテリアで、朝食と夕食を提供(食事代1万6000円/月・税別)。多目的ホールは地域との交流にも利用される予定だ(画像提供/JR中央ラインモール)

管理人付きの安心感と新築の希少価値、リーズナブルな家賃設定が好評

受付を開始した9月は、問い合わせも基本情報の確認といったものが多かったが、それでも9月21日~23日の3連休だけで15件の問い合わせがあったそう。

「大学入学を控えた学生さんの部屋探しが本格化するのは、入試の結果が出る春がピークなので、今は、推薦の合格者や専門学校に入学する学生さんと親御さんが部屋探しに動き出している時期。他物件と比べてびっくりするほどの反応があるわけではないのですが、それでもすでに予約済みの学生さんがいます」(株式会社学生情報センター経営企画部広報室・寺田律子さん)

一番人気は、L棟のAタイプ。10平米強というコンパクトな間取りではあるが、新築で5万円台(共益費別)であることが決め手になっているのではないかとのこと。

「中央線沿線には新築物件が少ないので、新築という点は大いに魅力があるようです。加えて、日勤の管理人が居て安心という面も。自転車で通学できる距離に大学や学校が多い上に、離れた学校に通う学生さんにも、中央線沿線ならではの広域アクセスの良さが評価されています」(寺田さん)

なお、学生も親も、高架下の騒音や振動はさほど気にしていないのだとか。

「『それなりにうるさいんだろうなあ』ぐらいには思っていらっしゃるようですが、それがネックになるということはないようです」(寺田さん)

電車の本数が多い日中、学生は大学に行っていて部屋には居ないという理由もあるのだろう。隣に保育園があるという点で安心する親や学生もいるのではないだろうか。

L棟 Aタイプは、10平米台の空間に家具を効率よく配置。月額賃料5.2万円~5.3万円、共益費1.5万円/月と、周辺よりリーズナブルな家賃設定だ(設備維持費400円/月、入館料[再契約料]12万円/年も必要・以下同様)(画像提供/JR中央ラインモール)

L棟 Aタイプは、10平米台の空間に家具を効率よく配置。月額賃料5.2万円~5.3万円、共益費1.5万円/月と、周辺よりリーズナブルな家賃設定だ(設備維持費400円/月、入館料[再契約料]12万円/年も必要・以下同様)(画像提供/JR中央ラインモール)

C棟 e4・e'4タイプは、専有面積15.94平米、ロフト面積4.93平米。月額賃料が7万円で、共益費1.5万円/月。最大3.5mの天井高を活かしたロフトがあり、大きめのワークデスクや収納力のある本棚、乾燥機付きのバスルームが特徴(画像提供/JR中央ラインモール)

C棟 e4・e’4タイプは、専有面積15.94平米、ロフト面積4.93平米。月額賃料が7万円で、共益費1.5万円/月。最大3.5mの天井高を活かしたロフトがあり、大きめのワークデスクや収納力のある本棚、乾燥機付きのバスルームが特徴(画像提供/JR中央ラインモール)

H棟Aタイプは、10.44平米という専有面積ながらも、4.35平米のロフトを設けたことで、ワークデスクの空間などゆとりを確保。月額賃料5.9万円 ~ 6.2万円、共益費1.5万円/月という設定になっている(画像提供/JR中央ラインモール)

H棟Aタイプは、10.44平米という専有面積ながらも、4.35平米のロフトを設けたことで、ワークデスクの空間などゆとりを確保。月額賃料5.9万円 ~ 6.2万円、共益費1.5万円/月という設定になっている(画像提供/JR中央ラインモール)

鰻の寝床とは真逆の超横長な敷地という点だけでもユニークな上に、間口が広くて明るい空間は、学生用賃貸住宅の新しい形を提示しているように思える。ここに入居すれば、カフェテリアで朝晩、栄養バランスの整った食事ができるし、ライブラリーにある本を読み漁ったり、ラウンジでほかの学生たちと語らったり、多目的ホールでイベントを開いたりと、実に楽しい学生生活が送れそうな気がする。ああ、あとウン十年、若かったら私も……!

●参考
・中央ラインハウス小金井
・ナジック学生マンション

学生と高齢者、互いの「距離感」を大切に。次世代下宿「京都ソリデール」の暮らし

高齢者世帯が増加するなか、高齢者宅の空き室を低家賃で大学生に賃貸し交流する下宿サービス「京都ソリデール」が注目を集めている。高齢者の住まいには、高齢者が集うシェアハウス、シングルマザーとシニアによるシェアハウスなどシニアの知恵袋を次世代につなげる、シニア同士の生きがいを育んでいる、シニアの見守りを兼ねたさまざまな住まいの形が登場しています。京都府が2015年度から取り組む、下宿サービス「京都ソリデール」の住み心地とは? 実際の生活を高齢者、学生の両方にインタビューしました。
親でもなければ親戚でもない。だから、「口を出さないという気遣い」

ケース1/Yさんと谷口洋将くん(佛教大学・社会福祉学部2年生)
昭和45年に建てられた京都の趣のある住まいを15年前に購入したYさん。縁側に腰掛けて美しい日本庭園を谷口くんと一緒に眺める(写真撮影/中島光行)

昭和45年に建てられた京都の趣のある住まいを15年前に購入したYさん。縁側に腰掛けて美しい日本庭園を谷口くんと一緒に眺める(写真撮影/中島光行)

賀茂川近くにお住まいのYさんと谷口洋将くん。Yさん宅の2階の一室を谷口くんが使い、家賃は光熱費込みで3万円。キッチンや冷蔵庫、トイレ、お風呂は共同、キッチンが空いていたら谷口くんはたまに自炊もするという。「月に一度くらい、一緒にご飯を食べることもあります」(谷口くん)

2階の1室を使う谷口くん。隣の部屋にも下宿人がひとり。個室以外はすべて共用になっている(写真撮影/中島光行)

2階の1室を使う谷口くん。隣の部屋にも下宿人がひとり。個室以外はすべて共用になっている(写真撮影/中島光行)

Yさんが「京都ソリデール」を知ったのは、通っていた古典クラブ(京都府SKYセンター)の機関紙に掲載された広告だった。「説明会で話を聞いて、2階に部屋が2つも空いてることやし、使ってくれるんやったらいいわと思って。行政がやってるから、変な子は来ないやろ」と笑った。寂しかったわけでも、若い子が好きなわけでもなく、Yさんはすんなりとこの制度を受け止めた。「でも、友達は『私はできへん』ゆうてたなあ(笑)」(Yさん)

キッチンも共有で、冷蔵庫は上段が他の下宿生、中段が谷口くん、下段がYさんと分けている(写真撮影/中島光行)

キッチンも共有で、冷蔵庫は上段が他の下宿生、中段が谷口くん、下段がYさんと分けている(写真撮影/中島光行)

ステキな中庭でお茶するYさん(写真撮影/中島光行)

ステキな中庭でお茶するYさん(写真撮影/中島光行)

佛教大学の社会福祉学部に通う谷口くんは、兵庫県明石の実家から2時間かけて通っていたが通勤ラッシュに心が折れて、一人暮らしを模索。そんなとき、1年生のゼミの授業の一環で「京都ソリデール」を紹介された。「大学の近くはマンションの相場が高くて6万円オーバー。ソリデールは、学校に近いところに住めて、家賃が安いと飛びつきました。社会福祉学部ということもあり、高齢者の方と触れ合うことは、自分の見聞を広げるのにも役立つし、何より面白そう!」

通常の「募集」「応募」という不動産や下宿と違うのが「京都ソリデール」。京都府から依頼されたマッチング事業者が間に立ち、学生、高齢者それぞれと面談し、「この人たちなら大丈夫」という方同士の面接を重ねて、双方が合意してから下宿スタート、というプロセスを踏む。お互い、誰でもいいわけではない。Yさんと谷口くんの場合、マッチング事業者の京都高齢者生協くらしコープがマッチングを担当。Yさん宅で面接後、谷口くんは両親とも訪れ、その場で決めたという。「Yさんの印象が自分がイメージしていた高齢者=お年寄りという感じでもなく、厳しい規則があったら無理!と思っていたらそれもなく、ラクな感じでしたね。近くに賀茂川のケヤキ並木もあり、すごくいい場所。両親もやりたかったらやればいいと後押ししてくれました」。一方、Yさんは「今回で3人目。たぶんいい人に決まってるやろ」と、笑顔で谷口くんを受け入れた。現在、Yさん宅には谷口くんとは別に、もうひとり下宿生がいる。

ルールは「うちに帰らないときは連絡する、勝手に出て帰って、寝る」ことだけ。「生活しながらルール考えよ」というフレキシブルさで、お風呂は閉まっていたら使わない、ご飯は炊きたい人が炊いて、誰でも食べてよし。「なんか珍しいカブトムシとか飼っているみたい(笑)。といっても観察するほど熱心でもないなあ。若い男の子はいっぱい食べるのかと思ったら、なんやカロリー計算とかしよる(笑)。最初は他人と暮らして自分の暮らしを乱されたくない、深入りしたくないと思っていたけど、一緒にいてたら不安がなくなってるなあ」とYさんが言えば、谷口くんも、「何かあったら助け合う安心感はある。世代が違う人と暮らしたことなかったので、いい経験になります。友達は『よーやるわ』と言いますが、友達が思うほどハードルは高くなく、窮屈さ、不便さは感じません」。谷口くんは、2時間の通学時間から開放された分、土日のゼミ活動で地域の高齢者宅を訪問したり、介護福祉士の実務経験にカウントされる特別養護老人ホームでアルバイトをしたりと、専門の福祉に邁進中。「高齢者の方に話を聞いてニッコリ笑って、僕はやっぱり人が好きなのかなーと思っているところです」

実家ではご飯を炊いた経験がなかったが、今は炊いているという谷口くん。Yさんがつくってくれた和菓子を食べることも。「僕はナッツがダメで洋菓子アレルギー。これ、特養(特別養護老人ホーム)ではウケがいいです(笑)」(写真撮影/中島光行)

実家ではご飯を炊いた経験がなかったが、今は炊いているという谷口くん。Yさんがつくってくれた和菓子を食べることも。「僕はナッツがダメで洋菓子アレルギー。これ、特養(特別養護老人ホーム)ではウケがいいです(笑)」(写真撮影/中島光行)

下宿との大きな違いは距離感。「子どもや孫じゃないから、『ちゃんと勉強している』とか言わなくてもいい、聞かなくてもいい。ニッコリ笑ってくれる。それだけで、いい」とYさん。谷口くんも「親戚ではないけれど、知っている人という感じ。あれこれ聞かれないし、いい距離感だと思います。誰でもいいわけじゃなくて、Yさんだから大丈夫だったんだと思います」。近くに住むYさんのお子さんも「見てくれて、ありがとうございますと言いたい。一人暮らしで何かあったら谷口くんから連絡してもらえるのがうれしいです」と安心されているようだ。

(写真撮影/中島光行)

(写真撮影/中島光行)

格子戸に趣のある庭園と、京都らしいステキな日本家屋(写真撮影/中島光行)

格子戸に趣のある庭園と、京都らしいステキな日本家屋(写真撮影/中島光行)

「高齢者に何かあったときは、自分が対応するという覚悟」も込みで

ケース2/岩井さん夫妻と藤本慎介くん(同志社大学大学院・総合政策科学研究科)
庭の「ふじばかま」や「ほととぎす」は岩井さん(夫)が丹精こめてつくったミニ里山(写真撮影/出合コウ介)

庭の「ふじばかま」や「ほととぎす」は岩井さん(夫)が丹精こめてつくったミニ里山(写真撮影/出合コウ介)

岩井さん夫妻と藤本くんの場合、お互いに決めるまでに、1週間のお試し期間を設けた。「藤本くんの前に来られた女子学生の方は、ご両親と一緒に面接させていただいたのですが、どうも料理や門限まで面倒を見る昔ながらの下宿と思ってらっしゃるようで、そこまではできないからとお断りして。しっかり話をしないとダメだと思い、藤本くんの場合は1週間の期間を設けました」。藤本くんは、「1週間は気を使いすぎず、僕の悪い部分、例えば掃除しないところなどもしっかり見せました(笑)。玄関やキッチン、トイレも別々だし、お互い生活のリズムを崩したくない。たまに時間が合うときにしゃべるくらいの距離感がいいね、と話が落ち着きました」。岩井さん(妻)は「あまりにも掃除していないときは、私がたまに藤本くんの部屋を掃除してるけどね」と笑って教えてくれた。

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

玄関とキッチン、トイレは別々とかなり恵まれた環境。「最初は自炊していたけど、今はあまりしてないですね(笑)。DIYが得意な岩井さん(夫)は、キッチンスペースを広げてくれたり、生活に不便なところを直してくれます」(藤本くん)。岩井さんの祖父の代は金襴の織り屋さんで、もともと母屋、中庭、離れ、工場が建ててあったという。「昔は機の音がしてたんですよ」(写真撮影/出合コウ介)

玄関とキッチン、トイレは別々とかなり恵まれた環境。「最初は自炊していたけど、今はあまりしてないですね(笑)。DIYが得意な岩井さん(夫)は、キッチンスペースを広げてくれたり、生活に不便なところを直してくれます」(藤本くん)。岩井さんの祖父の代は金襴の織り屋さんで、もともと母屋、中庭、離れ、工場が建ててあったという。「昔は機の音がしてたんですよ」(写真撮影/出合コウ介)

このあたりは織物の職人の町で、岩井さんの家系も、もともと織り屋さん。自身はリフォーム会社を経営しており、それを辞めたときに事務所だった場所を改装。「玄関や水まわりが住まいとは別にあったので、民泊や民宿なども考えていました」。そんなとき、情報紙「リビング京都」に掲載されていた「京都ソリデール」に興味を示し、京都府から説明を受けた。「別々に生活できるので、決まればいいし、決まらなければ民泊や民宿にしてもいいかなって思って」と気軽な感じだったという。

ふたりの朝は早く、朝7時半におばあちゃんをデイサービスに送り出し、その後仕事に出かける。「お風呂だけ共有なので、藤本くんの『ただいまー』、私たちの『お風呂どうぞ』が日常会話になっています。台風のときなど何かあるときは、みんなで集まりましたね」(岩井さん(妻))(写真撮影/出合コウ介)

ふたりの朝は早く、朝7時半におばあちゃんをデイサービスに送り出し、その後仕事に出かける。「お風呂だけ共有なので、藤本くんの『ただいまー』、私たちの『お風呂どうぞ』が日常会話になっています。台風のときなど何かあるときは、みんなで集まりましたね」(岩井さん(妻))(写真撮影/出合コウ介)

藤本くんは、総合政策科学研究科でまちづくりや地域の関係性などについて学んでおり、大学院のNPOと行政等の協働実践演習の授業で、「京都ソリデール」を担当する京都府の職員・椋平芳智さん(京都府建設交通部住宅課)と知り合い、今では「京都ソリデール」を推進する学生メンバーだ。「最初は高齢者と住むことにイメージがつかなかったのですが、大学に近いところに住みたいと思って。光熱費込みで2万5千円と家賃が安いのも魅力ですし、この新しい体験が何かしら研究につながっていくだろうと。何より話のネタになる(笑)。もう勢いです!」

朝早い岩井さん夫妻、夜遅い藤本くんと「生活のリズムがまったく違うんです」と藤本くん。まちづくりプロジェクトで家庭菜園を地域に根付かせる活動をしているので、「自分でもやらないと」と、岩井さんの庭の片隅で家庭菜園にチャレンジし、岩井さんから手ほどきを受けるなど、普段から交流しているよう。「一番最初につくった小松菜とラディッシュは、知識もなくやったものだから大失敗」と藤本くん。「少し採れておひたしにしたけど、小松菜の『こ』くらい。めちゃ小さかった」と岩井さん(妻)は笑う。また、町内会にも参加し、地蔵盆もお手伝い。「僕はマンション暮らしだったので、回覧板も新鮮で。地域の和に入れてもらえるのもうれしいですね。自治会という組織のあり方も勉強させてもらってます」。地域の人とかかわってみた感想は?「世代ならではのノリみたいなものがあって、それを習得してスムーズにコミュニケーションが取れるようになりました。思ったより人間同士というか、ちゃんと人を見てくれてるな、って思います。若いとか高齢者とか、枠組みをつくっているのは自分たちで、それをとっぱらってみると基本的な人づきあいができる、ということが分かったのも収穫です」

(写真撮影/出合コウ介)

(写真撮影/出合コウ介)

ほうれん草やサラダ菜を育てる藤本くん。「間引き方、育て方などを教えてもらってます。帰ったら野菜をのぞきに行き、よく岩井さんとしゃべってますね」。岩井さんの里山にはチョウチョもよくやってくる(写真撮影/出合コウ介)

ほうれん草やサラダ菜を育てる藤本くん。「間引き方、育て方などを教えてもらってます。帰ったら野菜をのぞきに行き、よく岩井さんとしゃべってますね」。岩井さんの里山にはチョウチョもよくやってくる(写真撮影/出合コウ介)

スマホで情報交換!岩井さん(夫)は丹精込めた里山の花やチョウチョを写真におさめてコラージュしている(写真撮影/出合コウ介)

スマホで情報交換!岩井さん(夫)は丹精込めた里山の花やチョウチョを写真におさめてコラージュしている(写真撮影/出合コウ介)

岩井さん夫妻のお宅には要介護5のおばあちゃんがいらっしゃる。「以前、母が『あーーー』と叫んだことがありました。これは介護をしていたらよくある話で、藤本くんがどう思ったのか不安でした」と岩井さん(妻)。藤本くんは一瞬びっくりしたようで「どうしていいか分からず、あとで『大丈夫ですか?』と声をかけました。あれでよかったんですかね」と問うと、岩井さん(夫)は「あとで声をかけてくれたのがよかった」とおっしゃったのが印象的だった。「高齢者と暮らすと、こういうこともある」という現実と経験、一緒に暮らす高齢者が何かあったときには、自分が対応しないといけないという覚悟。これも込みで、「京都ソリデール」なのだ。

2016年度から事業開始した「京都ソリデール」。「住む」+αを生み出す制度への成長に期待左から、京都ソリデールの活動をする学生メンバーの和田さん、マッチング事業者の片木さん、学生メンバーの西原さん、京都府職員の戸川さん、岩井さん夫妻、藤本くん、京都府職員の椋平さん(写真撮影/出合コウ介)

左から、京都ソリデールの活動をする学生メンバーの和田さん、マッチング事業者の片木さん、学生メンバーの西原さん、京都府職員の戸川さん、岩井さん夫妻、藤本くん、京都府職員の椋平さん(写真撮影/出合コウ介)

京都府の少子化・人口減少対策の総合的戦略として策定した京都府地域創生戦略に基づく新しい住宅施策として、高齢者宅の空き室に低廉な負担で若者が同居・交流する次世代下宿「京都ソリデール」事業が創設されたのが、2015年度。「2015年度に国内外の先行事例を調査し、2016年度から京都市内で事業開始。マッチング事業者へ業務委託、京都の地域メディアを使った広報や公民館や大学での説明会などから高齢者、大学生の希望者を募集しました」(京都府職員の椋平さん)

その後、2017年度に北部、南部地域へ、2018年度には中部地域へと拡大した。2019年9月30日の時点で、27組(2017年3月末:4組→2018年3月末:8組→2019年3月末:21組→令和元年9月末:27組)マッチング、応募は2016年度:高齢者11世帯 大学生等17人、2017年度:高齢者22世帯 大学生等30人、2018年度:高齢者32世帯 大学生等31人となっている。その反響は?

「希望する高齢者や大学生の同居成立が、少しずつ、そして着実に増加傾向にあります。作業療法学(認知症分野)の教授、高齢者福祉学(社会的孤立対策分野)の准教授からも評価いただき、テレビ・新聞・業界紙等などの取材も増えていますね。(2018年でテレビ5回、新聞5回、業界紙2回)。高齢者と学生の間にマッチング事業者が入りますが、同居成立が今後増えていくことを考えると、それに対応できるマッチングシステムが必要になる。事業者間の交流促進も今以上に必要になってきますね。また、将来的には民間が主体となり、業務を実施するカタチへの移行を検討しています」(京都府職員の椋平さん)

マッチング事業者の応用芸術研究所の片木さんは、「高校を卒業したての大学生にソリデール制度の活用は難しいかもしれません」と語る。岩井さんが最初に断った女子学生のように、下宿や里親をイメージしているとうまくいかない。ある程度「自立」して初めて成り立つシステムなのだ。「マッチングするポイントは立地や条件はもちろんですが、高齢者の得意とすること、学生が学んでいることをしっかりとヒアリングすることが大切です。岩井さん(夫)はリフォーム会社を経営していただけに、DIYが得意で庭いじりが大好き。藤本くんは街の生活に入り込むことが専門学だし、家庭菜園を地域に根付かせるプロジェクトをやりたいと思っていたからこそ、岩井さんと藤本くんはマッチングできたと思います」

空室を活かしたい高齢者と、一人暮らしの高齢者を案ずるその子どもたち、経済的に厳しく、かつ経験を積みたい学生。そんな人々を、事業者が十分なヒアリングを行って繊細にマッチングする「京都ソリデール」。行政主導から学生自身も「京都ソリデール」を広める活動に参加し、大学近くに住みながら、高齢者と交流しながら、地域や学業にコミットする。次世代下宿とは、「ひとつ屋根の下に住む」から、「住む」+αの効果を生み出す制度への発展ではないだろうか。そんな志が感じられる「京都ソリデール」、今後の動向にも注目したい。

●取材協力
京都府

「第5回 学生住宅デザインコンテスト」作品募集スタート

毎日新聞社が主催する「第5回 学生住宅デザインコンテスト」の作品募集が始まった。このコンテストは、建築業界を目指す学生を対象に行っているもの。建築界の未来を担う人材の育成・支援を目的としている。

第5回目の開催となる今回のテーマは、「やわらかい木造の住まい」。木がなんであるかということを肌で感じられるような、新しい木造住宅のアイデアを募集する。

審査は、東京都市大学教授・手塚貴晴氏、青山学院大学教授・黒石いずみ氏など、有識者が行い、グランプリ(1点、賞金30万円)、準グランプリ(1点、賞金15万円)などを決定する。一部受賞作品は、商品化も検討されるという。

締切は2019年9月2日(月)。結果発表は同年10月中旬の予定。

ニュース情報元:毎日新聞社

学生のひとり暮らし、「宅配ボックス」希望者が約3割

東急不動産ホールディングスグループの(株)学生情報センター(京都市下京区)は、このたび、同社が管理運営するマンションの入居学生を対象に、ひとり暮らしに関する実態調査を行った。調査時期は2018年6月。調査方法はインターネット。回答数は316名。
それによると、ひとり暮らしをして良かったこととしては「時間を自由に使える」が87.0%でトップ。「生活力がついた」が61.7%で続く。また、34.2%が「同居する家族に気を遣わなくてもよい」と親離れをしつつも、58.2%が「両親に感謝するようになった」と、親のありがたみを感じるようになった人が多い様子がうかがえる。「自分で洗濯するようになった」56.0%、「自分で掃除するようになった」46.2%、「自分で料理するようになった」41.1%と、約半数が家事を体験している。

ひとり暮らしで困ることのトップは「病気になったとき」で68.4%。「栄養のバランスが悪くなる」54.4%、「外食が多くなる」30.1%、「料理」18.7%など、食事に関する心配事が多い。「虫が出たとき」との回答が31.3%あった。

部屋を選ぶとき重視したほうが良いと思うのは「スーパーが近くにある」が最多で76.9%。「駅の近く」(67.4%)、「学校の近く」(54.7%)、「コンビニが近くにある」(54.1%)が続く。利便性を重視して部屋を選ぶ傾向がみてとれる。

家賃が多少高くなっても部屋に欲しい設備・サービスとしては、「バス・トイレ別」(63.3%)を希望する学生が3人に2人と最多。次いで、「無料Wi-Fiサービス」(44.9%)、「大きな収納スペース」(39.9%)、「オートロック」(37.0%)の順。「独立洗面台」(36.7%)、「室内洗濯機置き場」(27.8%)など、水回りの環境にこだわる学生も多い。また、「宅配ボックス」を希望する学生が約3割(31.0%)。ネットショップの利用や親元からの差し入れなど、宅配便の利用が増えている様子がうかがえる。

ニュース情報元:(株)学生情報センター

選択肢から外すのはもったいない?! 最新の「学生寮」事情を聞いてみた

大学への入学を機に、親元を離れる大学生も少なくありません。日本学生支援機構が公表している平成24年度の学生生活調査によると、大学進学者(昼間部)が自宅以外に居住する学生の割合は43.2%。そのうち、学生寮を選んだ人は5.6%と少数にとどまっています。しかし、そんな学生寮も最近は個性的で魅力あふれるものに変化しつつある模様。そこで、大学と学生寮を運営する企業、それぞれに昨今の学生寮事情について聞きました。
募集から3カ月で満室に。特色を打ち出したニュータイプの学生寮も登場

まず話を聞いたのは、青山学院大学。相模原と武蔵小杉、それぞれに学生寮を設けています。

「相模原については、相模原キャンパスに隣接した便利な立地にあります。例年12月中旬から募集を開始して、4月時点で全94室が満室になります。『全室南向き』『エアコン』『シャワー・トイレ完備の完全個室』のほか、館内には、洗濯機・乾燥機、共用システムキッチンなどの設備も充実しています。寮費は水道光熱費含めて月額3万9000円と比較的安価なのも人気の理由かもしれません」

相模原は在校生の男女が入居できる、いわゆるスタンダードな学生寮。かたや武蔵小杉は、2017年4月から全128室の「国際学生寮」として運営。日本全国から集まった学生だけではなく留学生も入居しています。

「将来、留学を目指す学生にとって貴重な経験になるだけでなく、留学したいけれども難しいという学生も、外国人留学生と交流する機会を得ることができます。寮内の共有リビングやキッチン等で交わされる日常の会話から、お互いの文化を紹介し合い、異文化理解を深めることができるのが魅力ですね。国内外に卒業後もつながることのできる友人を作ることができ、学生の将来にとっても大きな強みになると考えます」

なお、寮には大学が選抜した在学生のうち、リーダーとしてレジデント・アシスタント(RA)が男女各3名住み、交流イベントの企画をはじめ、区役所などで留学生の手続きをサポートするなど、寮生がより充実した生活を送れるよう主体的に協力できる仕組みを取り入れているそうです。

「交流イベントは毎月1回程度開催しており、共有キッチンで日本のスイーツをつくるイベント、七夕、書道教室、水引アクセサリーづくりなどが実施されています」

食事は、1階のカフェテリアで平日朝・夕2食提供。夕食は毎日数種類のなかから選択することができ、栄養バランスや季節感にも配慮したメニューとなっているとのこと。また、24時間有人管理で、カードキーによる入退館管理システムを導入しており、セキュリティにも万全を期しているといいます。

気になる毎月の寮費は10万4440円。学生寮としては割高ですが、武蔵小杉という立地や留学生との交流、食事代といった付加価値を考えれば、十分に見合うものがありそうです。

この青山学院大学の国際学生寮のように、大学によって特色あるスタイルの学生寮はほかにも増えている模様。例えば、大型テレビを備えた「シアタールーム」、同人誌をつくれるパソコンやコピー機がある「クリエーターズルーム」、露天ジャグジーやサウナ、スポーツジムがあるなど、共用部が充実しているタイプの寮もあるようです。

写真/PIXTA

写真/PIXTA

実家と一人暮らしの中間にあたる「学生寮」、時代を問わず人気

こうした、新しいタイプの学生寮が増えているのはなぜなのでしょうか? 伊藤忠グループの住生活領域を担う総合デベロッパーである伊藤忠都市開発で学生寮開発を担当する片岡賢治さんに聞きました。

「首都圏における学生寮は、築年数が古いものが大多数を占めており、需要があるにもかかわらず、良質な設備や環境、セキュリティもしっかりしている寮は少数でした。また、現在、日本に来る留学生が増加していて、大学としても国際化に対応する方向にあるということも相まって、留学生向けの学生寮をつくる動きも加速しています。留学生にも対応できる寮をつくる必要性も高まり、新しい寮の整備が進んでいるとも言えると思います」

国際交流ができる物件は評価も高く、コミュニティースペースの充実も推し進められているそう。

「今も昔もですが、やはり親御さんの不安を払しょくできるのは、学生寮の強みではないでしょうか。食事の提供はかなり重要視されています。管理栄養士がメニューを監修しているなど、健康を意識したようなメニューを出す寮もあります。ほかにも自習室がある寮も、親御さんの評価が高いようです。また、留学生はジムの利用頻度が高いので、ジムを完備する学生寮もこれから先増えてくるかもしれません」

ちなみに、問い合わせが増えるのは推薦で合格が決まる10月くらいから。ほとんどの場合、住む本人ではなく親が探しているようです。

良質な環境が整った学生寮が増えれば、ますます利用者は増えるだろうと予想する片岡さん。一生に幾度もない学生時代。限られた時間だからこそ、より充実した環境で過ごしたいもの。

では、実際に寮で暮らしてきた学生は、生活をどのように感じているのでしょうか。大学4年間を通して入寮していたという上智大学の女子学生は次のように話します。

「学生寮に暮らして良かったのは、朝と夜のご飯で友達と会えることです。学校にいる友達よりも、長い時間を過ごすことになるので、より深いコミュニケーションが取れると思います。あとは、就職活動のときに『寮に住んでいます』と伝えると、面接官から割と質問をされました。個人的な感想ですが、寮に住んでいるというのは、ある意味集団行動の中で生きていて、規則を守れるところが評価をされるのではないかなと。実際、寮生活を通して協調性も身につきました」

寮生活では一人暮らしとはまた違う経験が得られるようです。共同生活が苦ではない学生にとって、寮という選択肢は有力かもしれません。

●取材協力
・青山学院大学
・伊藤忠都市開発株式会社