東日本大震災の“復興は宮城県最遅”。2年でにぎわい生んだ閖上の軌跡

宮城県名取市の閖上(ゆりあげ)地区は、東日本大震災で甚大な被害を受けたなかで、復興のスタートが遅れた地域。けれども、2018年以降、新しい公共施設、公園が完成し、商業施設「かわまちてらす閖上」がオープン。震災前とは違ったにぎわいが生まれている。住民や応援する人たちが、行政や専門家と協働して粘り強く検討し取り組んできた閖上地区のまちづくりについて話を聞いた。
2018年から復興が加速し2019年5月にまちびらき

仙台市の南に隣接する宮城県名取市の閖上地区は名取川市河口にある港町。東日本大震災前は約5700人、2100世帯が暮らしていたが、東日本大震災の大津波で700人以上の尊い命を失った。近くに高台が少なく、沿岸部の平野に住宅が密集していたため、多くの家や建物が流され広範囲で更地となった。ゼロからつくりなおすような、まちづくり。被害が甚大で、内陸・高台への移転か、現地で再建するか住民の意見がまとまらなかったり、区画整理に時間がかかり3、4年が過ぎ、復興のスピードは宮城県で最も遅いと言われた。

2019年に完成した、名取市震災メモリアル公園の祈りの広場の東日本大震災慰霊碑。空に伸びる「芽生えの塔」の高さは、閖上の津波の高さと同じ8.4メートル(「豊穣の大地」の高さを含む)(撮影/佐藤由紀子)

2019年に完成した、名取市震災メモリアル公園の祈りの広場の東日本大震災慰霊碑。空に伸びる「芽生えの塔」の高さは、閖上の津波の高さと同じ8.4メートル(「豊穣の大地」の高さを含む)(撮影/佐藤由紀子)

2020年3月11日に近い週末、閖上地区を訪ねた。

閖上地区は2018年(平成30年)4月、名取市初の小中一貫教育校の閖上小中学校が開校し、12月に災害公営住宅全655戸が完成。2019年(平成31年)春には名取トレイルセンター、閖上公民館・体育館、中央公園、中央緑道が完成。5月には閖上地区のまちびらきが行われた。

まだ更地や工事中の道路などもあるが、見通しが良く、新しい学校、新しい住宅や新しい施設が目につく。

移転・新築した閖上公民館は約150人収容可能。和室研修室、図書コーナー、じゅうたんを敷いたホールなどがあり、閖上体育館を併設している(撮影/佐藤由紀子)

移転・新築した閖上公民館は約150人収容可能。和室研修室、図書コーナー、じゅうたんを敷いたホールなどがあり、閖上体育館を併設している(撮影/佐藤由紀子)

閖上公民館の南に広がる広場が中央公園。隣接する中央緑道は、市街地を東西に走り、水辺へと通じ閖上小中学校への通学路としても利用されている(撮影/佐藤由紀子)

閖上公民館の南に広がる広場が中央公園。隣接する中央緑道は、市街地を東西に走り、水辺へと通じ閖上小中学校への通学路としても利用されている(撮影/佐藤由紀子)

震災前のイメージを一新、水辺と一体となった魅力ある商業施設

特ににぎわっているのが、閖上公民館の北、名取川沿いにある「かわまちてらす閖上」だ。国の「かわまちづくり計画」と連携して名取市が進める「閖上地区まちなか再生計画区域」の「にぎわい拠点(かわまちづくり地区内)」エリアに2019年4月にオープンした共同商業施設だ。

閖上名物の赤貝、国内北限のしらす、サバなど採れたての新鮮な魚介、地元で加工した笹かまぼこ、宮城県産の食材を使ったカレーやスイーツなど、あわせて26店舗が集まる。集いや飲食の場としてフードコートやにぎわい広場があり、屋外に椅子とテーブルが置かれ、外で食事もできる。

南側駐車場からすぐの「かわまちてらす閖上」。昼食どきとあって、店内から人があふれ、順番を待つ人の姿もあった(撮影/佐藤由紀子)

南側駐車場からすぐの「かわまちてらす閖上」。昼食どきとあって、店内から人があふれ、順番を待つ人の姿もあった(撮影/佐藤由紀子)

このように河口の堤防に建物が位置する商業施設は全国でも珍しいそうだ。閖上地区は、江戸時代から名取川や貞山運河を使って仙台城下に物資を運び、舟運事業の町として発展した街で、川沿いに商店があったという。
「名取市のまちづくり計画(閖上地区まちなか再生計画)の中で、ここににぎわいの拠点をつくろうということで、仙台市・名取市を支援していた私たちに声がかかりました」と話すのは、「かわまちてらす閖上」を運営する株式会社かわまちてらす閖上・常務取締役の松野水緒さん。

震災の翌年の2012年10月、「閖上地区まちなか再生計画」が策定され、閖上らしい商業地区整備の方針を検討するために「閖上地区商業エリア復興協議会」が設立された。そこに出店予定事業者等が加わり「にぎわいエリア検討部会」を設立。「閖上地区まちづくり会社設立準備会」を経て、2017年にまちづくり会社「かわまちてらす閖上」が設立された。

「いろいろなプランがありましたが、何度も話し合いを重ねて、河川堤防と一体となった閖上らしい場所に集まって拠点をつくることになりました。会社にしたのは、地域への貢献という任務も含め、行政ではなく完全に民間主体で運営したいと思ったから。自立して運営していかなければ発展はないと思ったからです」と話す。

株式会社かわまちてらす閖上の常務取締役・松野水緒さん。かわまちてらす閖上の「ももや」、ゆり唐揚げ「tobiume」を出店する株式会社飛梅の代表取締役でもある(撮影/佐藤由紀子)

株式会社かわまちてらす閖上の常務取締役・松野水緒さん。かわまちてらす閖上の「ももや」、ゆり唐揚げ「tobiume」を出店する株式会社飛梅の代表取締役でもある(撮影/佐藤由紀子)

株式会社かわまちてらす閖上を構成するのは、三分の一がもとからの閖上の住民で、三分の二は閖上出身以外(宮城県民と震災後福島県から宮城県に移住した方)で、閖上を応援しようという志を共通でもつ。土曜・日曜の天気がいい日は観光客を含め1日約1500人、イベント開催時は1日約5000人が訪れる。子ども連れや愛犬を連れた家族、カップルが多い。「ここに来るのが楽しみ」と、毎日通う地元住民もいて触れ合いの場になっているそう。川辺の憩いのテラスになるように、まちを“照らす”ようにとの思いを込めて名づけた「てらす」が、閖上地区ににぎわいを提供し始めている。

2つで500円(税込)の特別セール品の海鮮丼を購入し、味噌汁などを注文してフードコートで食べた。新鮮で美味しい地元産の魚介、この値段でこの満足感(撮影/佐藤由紀子)

2つで500円(税込)の特別セール品の海鮮丼を購入し、味噌汁などを注文してフードコートで食べた。新鮮で美味しい地元産の魚介、この値段でこの満足感(撮影/佐藤由紀子)

「会社の設立前から4,5年かけて計画を立てました。行政ができることも限られていて、途中で担当の変更もあり、みんなで試行錯誤しながらいろいろな問題を乗り越え、ようやくオープンしましたが、またたくさんの問題が出てきました。それでも、やはり商売人なので、目の前にお客様がいる環境ができたことが大切で、これ以上のものはない」と、松野さん。閖上の味、おしゃれなカフェ、目の前に広がる水辺の景色が自慢だ。

オープンして約1年、どのような変化があったのか。「オープン前は、震災前の閖上のイメージで期待値が低かった部分もありましたが、ふたを開けてみたら次から次とお客さんが訪れてくれる場所になって、最初はびっくりしました。オープンからしばらくは手が回らないほどの忙しさで、たくさんの方が応援、支持してくださっていることを本当にうれしく思います」(松野さん)。

震災から9年が経過し、3月末には「復興達成宣言」が行われ、ハード面の復興事業はひと区切りを迎える予定だ。「自分は支援させていただく側、支援していただく側の両方の立場になりますが、支援していただいて当然と思わないようにしています。今年度いっぱいで行政の支援が切れた後に続けていけるのか。オープンしたときに話題になっても、にぎわいが継続し、自立できなければ意味がない。100万都市の仙台の隣でアクセスもいいので、地の利を活かして自立可能なまちづくりをしていかなければならないと思います」と、松野さんは今後に向けて気を引き締める。

住民の声を本当に活かすための住民主体のまちづくり組織を設立

名取市閖上地区のまちづくりを進める核となったのが、住民主体の「閖上地区まちづくり協議会」だ。震災後は名取市(行政)が「まちづくり推進協議会」を立ち上げ、委員を集めて土地利用や公共施設について協議していた。しかし、行政が選んだ委員だけでは、住民の声が活かせないのではないかという課題感から「まちづくり推進協議会」はいったん解散。2014年5月に住民主体の組織「閖上地区まちづくり協議会」を設立した。

会の規約を決め、「どんな閖上にするか」というまちづくりのテーマを決め、週1回、18時半から2時間以上に渡る会議「世話役会」を開催。閖上で計画されていたハード面、公民館、公園、道路、学校、商業施設の位置などを話し合った。その「世話役会」は180回以上開催され、議事録をホームページで公開。ほとんどの施設ができた現在も、世話役会は月2回行われている。

閖上地区まちづくり協議会の代表世話役の針生勉さん。生まれも育ちも宮城県だが、閖上地区に住むようになったのは社会人になってから(撮影/佐藤由紀子)

閖上地区まちづくり協議会の代表世話役の針生勉さん。生まれも育ちも宮城県だが、閖上地区に住むようになったのは社会人になってから(撮影/佐藤由紀子)

世話役会は、住民だけでなく、行政の担当者、コンサルティング会社、仙台高等専門学校の教授・学生らによる専門家も一堂に会した。「普通は、まず住民だけで話し合い、まとめた内容を行政に提案書として提出して、却下されて意見が通らないという話を聞きます。閖上は他の被災地に比べて復興が遅れたので、遅れを取り戻すために、住民も行政も専門家もみんなで話をして一緒に決めていきました。そこで決まったことを、まちづくり協議会が提案書として行政に出すと、8~9割がスムーズに通り、徐々に遅れを取り戻していくことができました」と、閖上地区まちづくり協議会の代表世話役の針生勉さん。

「住民と自治体と専門家で一緒に協議を行うのは結論が早く、設立後2年後には災害復興住宅第一弾の完成もあって、復興が一気に進みました。行政には、できないことはできないとその場で言ってほしいとお願いしました。できる・できない・分からない、できないなら理由を教えてほしい、分からないなら調べてくださいと要望しました。住民はまちづくりの素人なので、コンサルタント会社、事務局が行政との間に入って話を整理したり、分かりやすく話してくれました」。

また、閖上地区まちづくり協議会は、周りの被災地域のまちづくりを視察し、いいところを採り入れた。また、仮設集会所などに足を運んで話し合う「移動会議キャラバン」や、提案箱やアンケートを行い、情報網を広げて住民の意見や声を吸い上げた。足を使って汗をかくことで世話役が増えたのも収穫だった。

ハード面が整い、これからは自立して住民が参加してつくるまちへ閖上まちびらきは地区内9つの会場で行われ、メイン会場、閖上公民館前広場でのステージ、開会式では希望を込めて青空にバルーンを飛ばした(画像提供/閖上地区まちづくり協議会)

閖上まちびらきは地区内9つの会場で行われ、メイン会場、閖上公民館前広場でのステージ、開会式では希望を込めて青空にバルーンを飛ばした(画像提供/閖上地区まちづくり協議会)

2019年5月の閖上まちびらきは名取市を主体に、約1年前から準備を行った。どんな催し物をしたいか、一般公募したアイディアをメインにイベントを開催し、2万人もの人が訪れた。施設や道路が整い、まちの顔となる商業施設が誕生し、2020年度はスーパーイトーチェーンの開業や、天然温泉浴場を備えたサイクルスポーツセンターの開業などが予定されている。

開校した閖上小中学校には転入する生徒が増え、かさ上げにより再建した市有地や建売住宅を売り出すと、市内外からの応募が殺到し、新しい住民が増え始めている。

「まちびらきは行政、住民、商売する人、商工会議所、自治会、学校など、みんなで考え、みんなで企画して実行しつくり上げました。まちづくり協議会では、閖上を良くしていく“TEAM閖上”をつくりたい、と話をしています。ハード的なものはだんだん整ってきたので、住民のコミュニケーションを深めて、自治活動を充実させていければ。そして、震災のときに支えたもらった方々にありがとう、ここまで来ましたというのを見てもらいたい」と針生さん。まちづくり協議会の取り組みはこれからも続く。

被害が大きく、被災した住民が多かった分、復興の大方針に合意するのに時間がかかった閖上地区は、住民主体の組織を立ち上げ、「住民・行政・専門家」が三位一体で話し合いを進めることで、課題に対し、スピードアップして結論を出していくことができた。かわまちてらす閖上、閖上まちづくり協議会ともに、行政だけに頼らない姿勢も奏功したのだろう。共通していたのは「何もしてくれない」といった他力本願な考えではなく「自ら取り組む」大切さ。未来のため、それは自分のためにも、自ら意識を変えていく必要があると感じた。

●取材協力
かわまちてらす閖上
閖上まちづくり協議会

3Dプリンターで家をつくる時代に! 日本での導入は?

大型の3Dプリンターを使って、家の形は自由自在で低価格、しかも1日で建てられる――そんな夢のような世界がもう現実になってきた。この分野に詳しい建設ITジャーナリストの家入龍太さんに、海外の事例や日本の状況について詳しい話を聞いた。
これまでにない家が、簡単にできる

3Dプリンター住宅には3つの建設方法がある。1つめは巨大な3Dプリンターを住宅の建設予定の場所に設置し、そこで材料を積み上げる方法、2つめは砂のような素材に凝固剤をかけて固めたものを、掘り出していく方法、3つめは3Dプリンターを設置してある工場でパーツを生産し、現地で組み合わせていく方法だ。使用する素材によっても建設方法は変わってくると言うが、強度の関係などで、最近では積み上げ式や工場生産方式が主流になっているという。

後述で登場する3Dプリンターハウス「GAIA」。3Dプリンターが得意とする曲線を描いたこの家は、巨大なクレーンを現地に設置して素材を積み上げてつくられている(©WASP)

後述で登場する3Dプリンターハウス「GAIA」。3Dプリンターが得意とする曲線を描いたこの家は、巨大なクレーンを現地に設置して素材を積み上げてつくられている(©WASP)

3Dプリンターハウス「GAIA」が通称ライス・ハウスと呼ばれるのは、断熱材として米のもみ殻を使っているから(©WASP)

3Dプリンターハウス「GAIA」が通称ライス・ハウスと呼ばれるのは、断熱材として米のもみ殻を使っているから(©WASP)

いずれの手法でも、この3Dプリンター住居の最大のメリットは、「曲線も描けること」と家入さんは話す。これまで、直線でしか描けなかった家づくりの世界に、曲線が入り込む余地ができたため、狭い土地でもデザインや機能を考え、丸みを帯びた家をつくりあげることも可能になった。今後、さらに自由度の高い住宅が建設できるようになると言われている。

家入さんは、「こうしたユニークな構造の家は、家というものに対する新しい価値を生む。さらに3Dプリンターの躯体だけをつくる専門家が登場するなど、新たな専門職も生まれるかもしれない」と話す。

防水シートで覆われたスラム街をなくすために始まった3Dプリンター住宅

そもそも3Dプリンターの住宅は、新興国における住宅や、災害や事故によって必要になった仮設住宅を建設するために発展してきた。「現地の材料で、一定以上のクオリティで家を素早くつくることが目的だった」と家入さんは語る。不衛生な上、雨風もしのぎづらい防水シートに覆われたスラム街が形成されるのを防ぐために、人口の多いエリアで骨組みが1日(24時間)で完成する3Dプリンター住宅は、非常に重宝されるのだ。

防水シートに覆われたインドのスラム街の様子(写真提供/PIXTA)

防水シートに覆われたインドのスラム街の様子(写真提供/PIXTA)

実際、すでに米国カリフォルニア州サンフランシスコに拠点を置くNPO団体、New Storyは、コンクリート造形の3Dプリンター住宅を、ハイチ共和国やエルサルバドルなど4カ国で2000棟以上建設しており、その費用は1棟わずか6500ドル(約69万円)だという。現在では、技術改革が進み、4000ドル(約42万円)でも建設できるようになったようだ。

米国NPO団体New Storyが2000棟以上開発途上国で建設してきた、3Dプリンター住宅(©Business Wire)

米国NPO団体New Storyが2000棟以上開発途上国で建設してきた、3Dプリンター住宅(©Business Wire)

オランダでは3Dプリンターの橋づくりが盛ん

最近では、住宅だけでなく、研究所やオフィスなどの施設でも、3Dプリンターを使って世界中で建造物がつくられ始めている。

特にオランダは、政府が積極的に3Dプリンター技術を採用しようと資金面の補助も行っているという。例えば、3Dプリンターでつくられたパーツを組み合わせた橋は、3Dプリンターの研究を進めるアイントホーフェン工科大学と、民間企業(建設会社のBAM Infra)による合同プロジェクト。

PCケーブルが通された3Dプリンターでつくられた橋(BAM InfraのYouTube動画より)

PCケーブルが通された3Dプリンターでつくられた橋(BAM InfraのYouTube動画より)

橋の強度を保つため、3Dプリンターから積み上げられるコンクリートの間には、配力筋としてワイヤーケーブルが織り込まれた。8の字を書いたようなユニークなデザインの理由は、空洞にPCケーブルを通すことで、引っ張りを利用して橋桁を完成させたという。強度の面など従来の建設に求められる基準もすべて満たしているという。オランダでは、この他に世界最長となる全長29mの3Dプリンターでできたコンクリートの橋も完成間近とのこと。

日本のゼネコンも3Dプリンター住宅の取り組みを本格化

こうした新しい技術は、既存の業界から脅威と見られているのだろうか。「もともとミリ単位の建築を行う日本では、精度の管理が難しい3Dプリンターはあまり適していなかった。しかし、型枠なしでコンクリートの建造物を建てられるその生産性の高さから、今では各社が注目し、開発を進めている」と家入さんは話す。

アメリカやオランダに後れを取っていた日本だが、ここにきてゼネコン各社がかねてから開発を水面下で進めていたことを公表しているという。特に日本ではその「材料」にこだわった技術が目立つ。例えば、速乾力や鉄筋が不要な強度を兼ね備えたセメント系の材料など。日本独自の開発力で、これからの飛躍が期待できる技術が続々と登場している。

「3Dプリンター建築の現場では、機械が主役。人間は機械の補佐役になっている。今慢性的な人手不足に悩む日本の建築現場では、事故を防止したり、単純作業をロボット化したりすることは、まさに業界の求めるところ。職人の仕事がなくなる前に、現場で考え行動できる人間の価値はこれまで以上に上がると思う」と家入さん。

建設ITジャーナリスト、家入龍太さん(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

建設ITジャーナリスト、家入龍太さん(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

3Dプリンターは、建築現場における人の働き方を大きく変えそうだ。家入さんは、国土交通省が進める「i-Construction(i-コンストラクション)」という取り組みを通じて、日本の建築業界の環境がさらに変わっていくだろうと話す。この取り組みによって、どんどん民間の意見を反映した建物の設計基準が採用され、時代にあった内容へとアップデートしているのだという。

「基準内容が変われば、生産性は一気に向上していく」と家入さんは言う。災害の多い日本の基準をクリアした強度を確保しつつ、従来同等以上に快適な家を早く建てることができる技術が、3Dプリンターを用いることで可能になる日も近いかもしれない。

※記事中の3Dプリンター住宅の価格(日本円)は2019年9月5日時点のレートで計算しています

●取材協力
家入龍太さん
株式会社イエイリ・ラボ代表。3Dプリンターをはじめ、建築業界にまつわる最新技術から、生産性向上、地球環境保全、国際化といった業界が抱える経営課題を解決するための情報を、「一歩先の視点」で発信し続ける建設ITジャーナリスト。