お支払いはお金じゃなくてモノで! 物々交換ショップに人が集まる訳。赤字でも営業を続ける店長に聞いた 「サルベージSHOPレトロカルチャー」愛知県岡崎市

愛知県岡崎市にある「サルベージSHOP レトロカルチャー」は、不要なモノを持ち込み、それに相当する価値の必要なモノを持って帰ることができるという、物々交換で成り立つショップ。どんな物々交換が行われているのか、筆者も物々交換に参加しがてら、お話を聞いてきた。

廃棄物処分場の廃棄物を見て「なんとかしたい」と考案

岡崎市は愛知県の三河地域に位置し、徳川家康公生誕の地として寺社や史跡が多く残る街。物々交換ショップ「サルベージSHOP レトロカルチャー」は、岡崎市南部ののどかな街にある。

住宅街に立つ2階建ての倉庫が「サルベージSHOP レトロカルチャー」。店の前に3台の車が停められ、大量の持ち込みもOK(写真撮影/倉畑桐子)

住宅街に立つ2階建ての倉庫が「サルベージSHOP レトロカルチャー」。店の前に3台の車が停められ、大量の持ち込みもOK(写真撮影/倉畑桐子)

約50坪あるという2階建ての倉庫に、数千点の衣類や雑貨が並ぶ「サルベージSHOP レトロカルチャー」は目を引き、住宅街の中ですぐに見つけられる。リサイクルショップが好きな人であれば、「何かおもしろいものが見つかりそう」とワクワクすることは間違いない。

ここで「物々交換を楽しんでいってください!」と明るく迎えてくれるのは、代表の古田雄大さんと妻のゆうこさん。「サルベージ」とは“救済”という意味だという。捨てられてしまうモノの救済のために、古田さんが「サルベージSHOP レトロカルチャー」を始めたきっかけは、片付け業をしていた時のことだった。

本業の片付け・不用品回収事業の傍ら、「サルベージSHOP レトロカルチャー」を運営する古田雄大さん(47歳)。古民家改築の経験から地域の空き家の情報にも詳しく、貸主と借主のマッチングのボランティアも検討中(写真撮影/倉畑桐子)

本業の片付け・不用品回収事業の傍ら、「サルベージSHOP レトロカルチャー」を運営する古田雄大さん(47歳)。古民家改築の経験から地域の空き家の情報にも詳しく、貸主と借主のマッチングのボランティアも検討中(写真撮影/倉畑桐子)

海上自衛隊に入隊し、5年間の任期を満了した後、東京のIT企業に就職した古田さん。3年後、地元である愛知県岡崎市に戻り、前職の関連業を立ち上げたものの仕事が増えず、片付けや不用品回収、遺品整理のアルバイトを始めた。地域で信頼を得て整理事業が拡大する中で、市内の廃棄物処分場の様子を目の当たりにする。

「トラックの荷台から、まだ使える大量のモノを処分場に流し捨てる様子を見て、『なんとかできないかな。自分は持ち帰ることができないけど、これを欲しい人もいるよな』と考えたんです」

元々、古民家を購入して自力で改築するなど、古いモノが好きだった古田さん。まずは、捨てられてしまうモノを激安価格で販売するリサイクルショップを始めることにした。

店頭に立つのは、妻のゆうこさん(43歳)がメイン。こちらはパーティーグッズの棚の前(写真撮影/倉畑桐子)

店頭に立つのは、妻のゆうこさん(43歳)がメイン。こちらはパーティーグッズの棚の前(写真撮影/倉畑桐子)

「すると、次第に売り上げが気になるようになり、モノを救うために始めた事業なのに、これでは当初の目的とは違うなと。そして、うちが不要だと判断したものを販売するんじゃなくて、みんなが不要なモノを持ってきて、必要なモノを持って帰る方がいいなとひらめいたんです」

訪れた人が次々に足を止めたアクセサリーコーナー。子どもも大人っぽいアクセサリーに挑戦できる(写真撮影/倉畑桐子)

訪れた人が次々に足を止めたアクセサリーコーナー。子どもも大人っぽいアクセサリーに挑戦できる(写真撮影/倉畑桐子)

おしゃれな色のランドセルが棚に並んでいた(写真撮影/倉畑桐子)

おしゃれな色のランドセルが棚に並んでいた(写真撮影/倉畑桐子)

誰もがいつでも気軽に来られる物々交換スタイルを確立

「当初は入場料や参加費をもらうことも考えました。でも、モノを救うには『誰もがいつでも気軽に』来られなければ意味がないなと考えて、お子さんでもふらりと来られるように、完全に無料にすることにしました」と古田さん。

バトンを持ってポーズする子。子どもが気軽におもちゃや雑貨を選んでいけるのが魅力(写真提供/レトロカルチャー)

バトンを持ってポーズする子。子どもが気軽におもちゃや雑貨を選んでいけるのが魅力(写真提供/レトロカルチャー)

こうして、現在の「自宅の不要品を持ち込み、誰かの不要品を自由に持ち帰ることができる」というスタイルを確立。持ち込んだモノよりも多くもらいたいという場合は、相当額をこの店に募金する。また、何も持ち込まないけれど欲しいモノがある時は、店内にある瓶に500円を募金し、こちらも店の運営資金にするというシステムだ。

持ち込んだモノ以上に欲しいモノがある時は、店内にある瓶へ募金を(写真撮影/倉畑桐子)

持ち込んだモノ以上に欲しいモノがある時は、店内にある瓶へ募金を(写真撮影/倉畑桐子)

「2020年のスタート時は、どのくらいの人が来てくれるか予想もつかず、1カ月のうち1週間だけオープンする形で数カ月続けたのですが、毎回、お客さんが多すぎて、お店の前に大混雑をつくってしまったんです」と古田さん。不要品の物々交換には多くのニーズがあった。
試行錯誤を経て、現在は週4日、午前中に営業する形式に。1日平均20人くらいが、1人当たり約10個の不要なモノを持ち込み、必要なモノを選んで持ち帰る。

不要なモノと必要なモノを交換できると、みんな思わずニッコリ(写真提供/レトロカルチャー)

不要なモノと必要なモノを交換できると、みんな思わずニッコリ(写真提供/レトロカルチャー)

「物々交換をせず、不要なモノを持ち込むだけで帰る人もいますし、何時間も商品を眺めるだけで楽しんでいく年配の方もいます」とゆうこさん。日課のように立ち寄る人もいて、地域の“遊べるコンテンツ”としても浸透しているようだ。

使い終わった語学学習の本などを持ち込んだ人(写真提供/レトロカルチャー)

使い終わった語学学習の本などを持ち込んだ人(写真提供/レトロカルチャー)

「どうしても売れ残り、日にちが経ってしまったものなどは処分場へ持ち込みますが、それは月に1度、軽トラで半分くらいの量だけです」と古田さん。持ち込まれる商品数から考えると、かなりの量のモノを救済できているといえるだろう。

小説や絵本、ビジネス書など、さまざまな書籍が並ぶ本のコーナー。ゆうこさんが定期的に整理整頓している(写真撮影/倉畑桐子)

小説や絵本、ビジネス書など、さまざまな書籍が並ぶ本のコーナー。ゆうこさんが定期的に整理整頓している(写真撮影/倉畑桐子)

商品は持ち込まれ、人件費は夫妻が店頭に立って削減するとしても、家賃や光熱費などがかかるはず。古田さんに運営の費用面について尋ねると、「赤字です、赤字!」と笑う。「サルベージSHOP レトロカルチャー」の現金収入は、1年間約30万円の募金のみ。それに対して2階建ての倉庫の家賃は年間180万円だという。差額は古田さんの自腹で賄い、運営しているという状況だ。

「日々、利益が出る方法を模索していますが、なかなか難しいですね。古着の着物を使ったレンタル事業なども試しましたが、うまくいきませんでした。現在、『サルベージSHOP レトロカルチャー』は完全なボランティアです。でも、お金を稼ぐこと以外で幸せを感じられるのって豊かなことなんですよ」と古田さん。

環境問題に対する身近なアクションを起こすきっかけに

持ち込まれるモノの中で一番多いのは古着や雑貨。人気商品は食品だという。
「お歳暮やお中元の余りの缶詰や食用油を寄付してくれる人や、自宅の家の庭でできた果物を大量に分けてくれる人、近隣の農家の人が規格外の野菜を持ち込んでくれるというケースもあります。朝、持ち込まれて店頭に並べると、すぐになくなります」

すぐに空っぽになってしまうという食品コーナー。筆者の訪問時、野菜や果物はすでになかった(写真撮影/倉畑桐子)

すぐに空っぽになってしまうという食品コーナー。筆者の訪問時、野菜や果物はすでになかった(写真撮影/倉畑桐子)

活動に賛同した企業が化粧品の在庫などを提供してくれることもあり、店内には新品の商品も見られる。「新品の商品は募金につながるのでありがたいですね」と古田さん。他に家電やウエディングドレスなども並び、まさに「なんでもある」という印象だが、珍しいモノでは、バイク販売会社が中古の原付バイクを提供してくれたケースもあったという。「原付バイクは欲しい人が多かったので、SNS経由で入札を実施し、購入権を得た方には入札価格を募金していただきました」

化粧品や医療用ウィッグを企画販売する企業から、使用期限が2カ月後という美容液の提供も。フリープライスで寄付を募って配布(写真提供/レトロカルチャー)

化粧品や医療用ウィッグを企画販売する企業から、使用期限が2カ月後という美容液の提供も。フリープライスで寄付を募って配布(写真提供/レトロカルチャー)

肌のハリをアップする美容液は大人気。期限が過ぎると廃棄物になってしまうところ、2200本が必要な人の元へ届いた(写真提供/レトロカルチャー)

肌のハリをアップする美容液は大人気。期限が過ぎると廃棄物になってしまうところ、2200本が必要な人の元へ届いた(写真提供/レトロカルチャー)

レトロな原付バイクは、入札して購入権を得た必要としている人の元へ(写真提供/レトロカルチャー)

レトロな原付バイクは、入札して購入権を得た必要としている人の元へ(写真提供/レトロカルチャー)

土曜日は小学生が多く訪れるという。
「小さい頃に遊んでいたおもちゃやぬいぐるみ、本を持ち込んでくれて、これから遊びたいおもちゃや文具などを持って帰ります。小学3、4年生の女の子は、アクセサリーやバッグを楽しそうに選んでいきますね」とゆうこさん。

子どもに人気のおもちゃコーナー。遊んで満足したら、また物々交換に持ち込んで循環(写真撮影/倉畑桐子)

子どもに人気のおもちゃコーナー。遊んで満足したら、また物々交換に持ち込んで循環(写真撮影/倉畑桐子)

古田さんは話す。「親御さんから聞いた話ですが、『おもちゃを捨てるよ』というと『絶対イヤ!』という子どもも、『おもちゃを物々交換に持っていって、誰かに使ってもらおうか』というと、自ら持っていくようになるのだと。このお店が、モノを大切に使って、まだ使えるモノを次の人に使ってもらうという循環を、自然と身に付けてくれるきっかけになったらうれしいです。現代の環境問題に対して、身近で楽しく行動を起こせることの一つとして、気軽に物々交換に参加してもらえたらと思っています」

きょうだいで来店しておもちゃを選び、募金していく子どもたち(写真提供/レトロカルチャー)

きょうだいで来店しておもちゃを選び、募金していく子どもたち(写真提供/レトロカルチャー)

いざ物々交換。自分が持ち込んだ不要品の価値とは……?

筆者も物々交換に参加してみた。来店した人は、まず、持ってきた不要品を店先にあるテーブルの上に並べる。大きな家具や5年以上前の家電、布団や枕、壊れているものや汚れているものなど、いくつか持ち込みNGのものがあるので、ホームページで確認を。

筆者は今回、子どもが使い終わった絵本やおもちゃと、使わなかったベビー用品など10点ほどを持ち込んだ。

店先のテーブルで、筆者が持ち込んだ商品を検品してくれるゆうこさん(写真撮影/倉畑桐子)

店先のテーブルで、筆者が持ち込んだ商品を検品してくれるゆうこさん(写真撮影/倉畑桐子)

持ち込まれた品物は、ゆうこさんが検品する。「使えないものを持って来られると、ここでゴミになってしまいますから」

どうしても使えないものは持ち帰ってもらうというが、多くは、検品後ブラシをかけるなどしてきれいにしてから、衣類やおもちゃなど、ジャンルごとのコーナーに並べられる。

人手が足りないため、一気に持ち込まれると検品が間に合わず、良くも悪くも、「こんなモノが持ち込まれたの!? 」と驚くようなモノが混ざることもあるそう。だからこそ、ブランド物などの掘り出し物が見つかる楽しさもあるという。

その後、持ち込んだ人は自由に店内を見て周り、持ち込んだものと「だいたいの価値が合う」と自己判断した必要なものを持ち帰ることができる。持ち帰ったものを転売したり人に配ったりするのは禁止事項だ。

持ち帰る商品やタイミングは自由なので、「中には、消しゴム1個を持ち込んだだけで、大量の商品を持ち帰るような大人もいますが……」と表情を曇らせるゆうこさん。それは明らかにマナー違反だが、「持ち込んだモノに相当する価値の必要なモノを持ち帰る」という自己判断は、なかなか難しい。持ち込むモノを選ぶ時にも悩んだのだけれど、物々交換にはモラルが問われる気がする……。

アイテムごとに仕分けられたファッションのコーナー。物々交換であれば新しいコーディネートにも挑戦しやすい。ただ試着室はないので、「合わなかったらまた持ち込んで」とのこと(写真撮影/倉畑桐子)

アイテムごとに仕分けられたファッションのコーナー。物々交換であれば新しいコーディネートにも挑戦しやすい。ただ試着室はないので、「合わなかったらまた持ち込んで」とのこと(写真撮影/倉畑桐子)

物々交換が成り立つ社会を、いずれは地域の観光資源に

「だから、物々交換が成り立っているということは、すごいことなんです。ここ岡崎市で成立しているということは、地域の人達のモラルが高いということであり、これは自慢できるものと言ってもいいと思う。物々交換の活動が、ゆくゆくは岡崎市の観光資源の一つになればうれしいですね」と古田さん。

実際、他の地域の人からも興味を持たれることが多いといい、東京や静岡、岐阜などから車で乗り付けて、大量の不要品を持ち込むケースもあるそう。ある時は、岡崎市に来た海外からの観光客が、SNSで調べて「レトロカルチャー」に立ち寄り、物々交換をしていったこともあるという。

「お店の立ち上げ当初、本当の幸せってなんだろうと考えました。行き着いたのは、地域の人を助けて、感謝が循環するような地域社会をつくり、その中で暮らすことでした。今、お店の存在が地域の人から感謝され、僕たちへの差し入れをいただくこともあります。環境問題に対して行動しながら、感謝が循環する場を自分たちで提供できていることは、とても幸せです」と古田さんは語る。

古着屋感覚で友達と一緒に来ると、ますます楽しい(写真提供/レトロカルチャー)

古着屋感覚で友達と一緒に来ると、ますます楽しい(写真提供/レトロカルチャー)

「実績を積み重ねたら、認可を受けて、いずれは就労継続支援B型事業所の就労対象者や、退職後のシニアが店頭に立てるようにしたいという目標もあります。また、自宅の不要品の整理が難しいシニアのために、高齢者支援団体や老人ホームと提携したいという計画も。レトロカルチャーの物々交換のモデルが、全国に広がっていってほしいと思います」と話してくれた。

元々リサイクルショップが好きで、日頃から寄付や購入をしている筆者にとって、物々交換はとても楽しかった。事前に持ち込むおもちゃをキレイに拭いたり、子どもの幼児期を思い出したりと、準備段階から充実していた。

モノとモノの価値の交換は、寄付とは違った緊張感やワクワク感があると思った。これからもモノを大切に使って、また物々交換に行ってみたいと思う。

筆者が物々交換でゲットしたのは、シャツとキャラクターグッズ計4点。とても気に入っている(写真撮影/倉畑桐子)

筆者が物々交換でゲットしたのは、シャツとキャラクターグッズ計4点。とても気に入っている(写真撮影/倉畑桐子)

●取材協力
一般社団法人レトロカルチャー みんなの物々交換

一般向け3Dプリンター住宅、水回り完備550万円で販売開始! 44時間30分で施工、シニアに大人気の理由は? 50平米1LDK・二人世帯向け「serendix50」

球体の3Dプリンター住宅「serendix10(スフィアモデル)」が話題になっているセレンディクス社(兵庫県西宮市)が、ついに夫婦向け一般住宅となる3Dプリンター住宅「serendix50」・開発コード「フジツボモデル」を完成させた。2023年8月末から6棟限定で販売を開始している。つい先日、商用日本第一号の完成をお伝えしたばかりだが、いよいよ、3Dプリンターの家に住める時代が現実のものになりつつある。今回は、セレンディクス 代表取締役の小間裕康さんのインタビューに加え、「serendix50」がつくられた愛知県小牧市にある住宅施工会社「百年住宅小牧工場」の現場から、現物をレポートする。

壁を3Dプリンターで「印刷」してでき上がる一般住宅「serendix50」!(写真提供/セレンディクス)

(写真提供/セレンディクス)

SUUMOジャーナルが、「家は24時間で創る」を(写真提供/セレンディクス)キャッチフレーズとするセレンディクス社の3Dプリンター住宅を紹介するのは、今回で3回目。既出モデルの「serendix10(スフィアモデル)」(床面積10平米・価格330万円)は、3Dプリンターで出力した場合に最適な形を導入することで、施工時間計24時間以内を実現。さらに、コンクリート単一素材を利用することで、資材のコストが下がり、作業は3Dプリンターが自動で行うため人件費もかからないというメリットもある。「serendix10」は国内外から大きな反響があり、販売されたうちの1棟は現在、長野県にある整骨院のプライベートサロンとして利用が予定されている。

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※長野県にある整骨院のプライベートサロンはこちらで紹介

セレンディクス社はデジタルデータをつくる会社。3Dプリンター住宅の建築手順は、まず設計データをつくり、最先端のロボット工学を駆使した3Dプリンターにデータを送信。提携する工場にある3Dプリンターで出力(抽出)したモルタルの4つのパーツを乾燥させて、プレキャスト素材として輸送し、現場で組み立てて施工する、という流れだ。
「serendix10(スフィアモデル)」では開発と普及のスピードを速めるため、ヨーロッパ、中国、韓国、日本、カナダの3Dプリンターメーカー5社にそれぞれ出力を依頼し、日本に移送するスタイルを採用。5カ国で同一データでの同時出力に世界で初めて成功したことも話題になった。

3Dプリンターでモルタルを抽出して積層し、壁を「印刷」していく(写真撮影/本美安浩)

3Dプリンターでモルタルを抽出して積層し、壁を「印刷」していく(写真撮影/本美安浩)

今回、「serendix50」のモデルハウスが完成したのは、愛知県小牧市にある住宅施工会社「百年住宅」工場敷地内。全国に約213社(8月末時点)あるセレンディクス社の協力会社の1社だ。

ハウスメーカー「百年住宅」工場敷地内に完成した「serendix50」。リビング、寝室、水回りに分かれた50平米の室内に入ってみると、コンパクトながらホテルのスイートルーム並みの十分な広さに感じられた(写真提供/セレンディクス)

ハウスメーカー「百年住宅」工場敷地内に完成した「serendix50」。リビング、寝室、水回りに分かれた50平米の室内に入ってみると、コンパクトながらホテルのスイートルーム並みの十分な広さに感じられた(写真提供/セレンディクス)

この「serendix50」は、3Dプリント技術の第一人者である慶應義塾大学環境情報学部の田中浩也教授率いる慶應義塾大学KGRI環デザイン&デジタルマニュファクチャリング創造センターとの共同プロジェクト。

用途がグランピング施設などに限られていた「serendix10」に対して、「serendix50」は一般住宅仕様。キッチン、バス、トイレといった水回り設備を完備した鉄骨造の50平米の1LDKで、価格は550万円の平屋。完成までにかかった施工時間は44時間30分。

現在は複数台の3Dプリンターでパーツを出力し、それらをトラックで施工場所へ運び、現地の施工会社が組み立てるという「セントラルキッチン」のような方法を採用している。
この「serendix50」へは、すでに6000件(8月末時点)の問い合わせがあるそうだ。

壁には9本の鉄骨の柱が等間隔に入っている。今後は、「百年住宅」をはじめとする協力会社で「印刷」したパーツを、施工場所に運んで組み立てる(写真撮影/本美安浩)

壁には9本の鉄骨の柱が等間隔に入っている。今後は、「百年住宅」をはじめとする協力会社で「印刷」したパーツを、施工場所に運んで組み立てる(写真撮影/本美安浩)

一般住宅向け3Dプリンターの家「serendix50」の断熱性能は、日本国内より厳しいヨーロッパの住宅基準をクリアした断熱性能

グランピングなどのレジャーや、趣味のスペースなどに使うことを想定された「serendix10」に対して、一般住宅としての用途を想定した「serendix50」は、追求される内容も変わる。

セレンディクス 代表取締役の小間裕康さんによると、より居住性や定住性を重視したという。
まず、鉄骨コンクリート造であることは前モデルとの大きな違いだ。

セレンディクス 代表取締役の小間裕康さん(写真提供/セレンディクス)

セレンディクス 代表取締役の小間裕康さん(写真提供/セレンディクス)

「以前の『serendix10』はコンクリートの間に鉄筋を挟むRC造でしたが、今回の『serendix50』は鉄骨の柱を入れた鉄骨コンクリート造です。コンクリート単一素材で現在の建築基準法に準拠し、高い機能性を持たせたことは大きな違いだといえます。壁厚は30cm以上で、耐震面は国内の最先端の耐震技術を採用しています。また、二重構造になっていて、断熱性能は夏と冬の寒暖差が激しいヨーロッパの断熱基準をクリアし、パートナー企業さんと共に特許出願をしました。

『serendix50』では細部まで最新の技術を駆使し、人が快適に住むための工夫を追求しています。断熱性も高いので、猛暑が続いた愛知県内でも、『serendix50』に入ると、クーラーもないのに空気がヒンヤリとしているのが感じられます」

耐震性能をはじめとする強度や安全性などに関しては、これからも実証実験を続けていくという。
「私たちは兵庫県の会社で、私自身も阪神・淡路大震災を経験しているだけに、耐震性能やセシリティ(定住性)のテストには万全を期しています。神戸市には耐震性をチェックする公的機関があるのですが、そこでも実大耐震実験を行う計画をしています。

『serendix50』のシミュレーションは、車の開発の過程と近いものがあります。コンピュータ上では基準の強度に耐えうるというデータが出ていても、車であれば衝突実験をしたり、振動を加えたりしますよね。それが住宅となると、よりさまざまな環境下で、住む方に24時間365日、安全かつ快適に過ごしていただく必要があります。それらを担保するために、最初の6棟で詳細なデータをとることにしています。

一般住宅でも、夫婦お二人の場合と一人暮らしの場合とでは、住まい方や求められる快適性、家にいる時間帯も違うでしょうから、データを取りながら、それぞれの快適性を追求したいと思います」

はじめの6棟はエリアや目的を分けて販売

この1年間は調整期間として、6棟のみの販売に数を絞るという。
「現在は、パートナーである協力会社さんと開発した試作の位置付けになりますので、先行する6棟はエリアや目的を分けて販売し、1年間、実際にお客さまに使っていただきながら実証実験をします。もちろん、シミュレーション上のデータでは問題がないのですが、大量出荷できるようになるのはもう少しお時間をいただくと考えています。現在は、お問い合わせをいただいた中から販売先を選定している段階です。エリアは国内で、協力会社さんがある地域を優先していこうと思います。まだ公表できないのですが……」と小間さん。7月末時点で、すでに1041棟分の具体的な購入希望者がいるというからその注目度合いがわかる。

(写真提供/セレンディクス)

(写真提供/セレンディクス)

課題は2つ、「品質の均一化」と「さまざまな用途への対応」

「目指すのは、住宅産業の完全ロボット化です。そう考えると、現在、我々の中では2つの課題があります。1つ目は、各施工会社さんでの工程や技術のバラつきを抑え、品質を合わせなければならないということ。デジタルデータによる3Dプリンター住宅においては、データの共有が強みなので、同じ品質のものを複数つくれるかどうかが大切です。

全国に協力会社さんが散らばっているからこそ、『このエリアでは完全に施工できるが、このエリアは一部できない』ということがないよう、エリアを分けながら、どこでも同じように施工できるということを、デジタルデータで事実確認し、実証したいと思います。また、現場で施工に関わる職人さんの数は、専門分野の違いを加味しても4人以下が目標です。いずれにしても新たな人員を配備せずに、元からの現場のリソースを活かして、より自動化して、3Dプリンター住宅をつくることが重要だと思っています。

2つ目の課題は、購入された方による用途の違いへの対応です。それはこの1年間、6棟で多様な使い方ができることを実証する中で、クリアしていきたいと思います。ですから、販売先は先着順でも関係先優先でもなく、我々が想定するエリアと用途の方をピックアップさせていただきました。購入者さんや協力会社さんからもフィードバックをいただきながら、経過を見ていきたいと思います」

全国で213社を超えるという協力会社は、オンラインミーティングや施工現場で3Dプリンター住宅づくりを学ぶ。さらに、先行する6棟の施工では、自社の1棟前の家づくりを次の1社に見学に来てもらうことで、現場での技術研修を行うそうだ。

デジタルデータをもとにCNCカッターで切り出した屋根部分のパーツ。44時間30分の施工を24時間に短縮してより高機能にアップデートするため、施工に時間がかかっている屋根部分を取り外して改良中(写真撮影/本美安浩)

デジタルデータをもとにCNCカッターで切り出した屋根部分のパーツ。44時間30分の施工を24時間に短縮してより高機能にアップデートするため、施工に時間がかかっている屋根部分を取り外して改良中(写真撮影/本美安浩)

鉄骨コンクリート造の「serendix50」だが、屋根のみ今回は木造。デジタル+新しいデジタルファブリケーションを実現している(写真提供/セレンディクス)

鉄骨コンクリート造の「serendix50」だが、屋根のみ今回は木造。デジタル+新しいデジタルファブリケーションを実現している(写真提供/セレンディクス)

住宅の“オートクチュール信仰”に一石を投じる

現場でセレンディクス社COOの飯田國大さんにも話を聞いた。「serendix50」で、住宅産業に革命を起こしたいと考えている飯田さんは、いくつかの問題を提起する。

「かつてはオートクチュールだった自動車も、1980年代にロボット化が始まり、多くの人にとって手が届く価格になりました。住宅産業においても、3Dプリンターはまさにその始まり来ているのではないかと思います。まず価格面で、平均73歳まで返済が続くような日本の住宅ローンを見直したい。国内では4割の人が住宅を持っていないというデータがありますが、車を買う値段で家を買う自動車のように、望めば誰でも家を持てる世の中にしたいと思います。

セレンディクス社COOの飯田國大さんは、「自動車産業のように住宅産業も完全ロボット化して、住宅を提供したい」と話す(写真撮影/本美安浩)

セレンディクス社COOの飯田國大さんは、「自動車産業のように住宅産業も完全ロボット化して、住宅を提供したい」と話す(写真撮影/本美安浩)

また、現代の家づくりでは、施主さんが間取りを考え、素材から外装まで一つずつ決めることができます。でも果たしてこれが住宅において、本当に良いことばかりなのでしょうか。プロが一生懸命研究開発をして、これが完璧だと思った間取りをつくっても、カスタマイズできると知ると、施主さんはカスタマイズされます。ですが、住宅専門のメーカーが快適性や安全性を何十年も追求した家と、施主さんが短期間で考えた家とでは、ノウハウの違いが出てしまうかもしれません。

また、日本の木造住宅は、持ち主が退去すると、いったん更地にして新しい家を建てますが、海外ではセカンドハンド(中古)の概念が浸透し、物件をリフォームしながら買い繋いでいくのが普通です。現在国内では建築資材の価格が高騰し、高止まりしています。それなのに建てて20年も経つと、建物の価値は0に近くなってしまう。建物において、日本と海外とで資産性に差があります。こういった問題を鑑みて、『serendix50』のように、プロが企画した品質の良い建物を、スピーディーに低価格で提供して、お客さまの選択肢を増やすべきではないかと考えたのです」

汎用性を考慮し、窓やドアは特別なものではなく、あえて「リクシル」で統一。外壁の塗料は1度塗りでOKの新開発「アミコート」。住む人が自由に色付けできるよう、最初の塗装を白にしている(写真撮影/本美安浩)

汎用性を考慮し、窓やドアは特別なものではなく、あえて「リクシル」で統一。外壁の塗料は1度塗りでOKの新開発「アミコート」。住む人が自由に色付けできるよう、最初の塗装を白にしている(写真撮影/本美安浩)

自動車と同じように、カスタムやオートクチュールを望む人はその商品を選べばいい。ただ一方で、手が届きやすい価格の量産された商品を望む人にも選択肢を提示したいと、飯田さんは展望を語る。

また、決まった素材を決まった分だけ使用する「serendix50」の場合、建築資材の納期の遅れや大幅な価格の高騰という問題は起こりにくく、一定の工期や価格で家を建てることが叶う。これは結果的に、住宅の資産性や市場価値の向上につながるのではないかと考えているそうだ。

第2の人生での住まいに期待、シニア層から問い合わせが多数

「serendix50」は、どんな層に支持されているのだろうか。小間さんに尋ねると「60歳以上の方からのお問い合わせが多い」といい、これは前モデルの時から続く傾向だという。

「60歳以上になると、一生住むつもりの賃貸住宅が契約更新できなくなったり、新たな賃貸契約をしてもらえなかったりという問題にぶつかることがあるのが現状です。また、持ち家でも『築30年を超えたので夫婦2人用にリフォームしよう』と考えたところ、1000万円近くかかる、という多くの問い合わせもあります。そんな時も『serendix50』なら、自動車を買うくらいの価格で、最新技術を駆使した住みやすい間取りの新築戸建が手に入ります。それに、リタイア後は『自然豊かな地域に住みたい』という人も多いと思いますが、住み替えるにも条件のいい中古物件が見つからない……というケースが多いのです」

シニアの購入希望者の中には、「時間が掛かるのは理解しているから」と、気長に順番を待っている人も。「serendix50」は、新生活の楽しみの一つとして捉えられているのだ。

従来の工法ではコストがかかる曲線構造に対応できるのも、材料を積み重ねて建設する3Dプリンターの得意なところ。ふっくらした見た目だが、触るとかなり重厚感がある(写真撮影/本美安浩)

従来の工法ではコストがかかる曲線構造に対応できるのも、材料を積み重ねて建設する3Dプリンターの得意なところ。ふっくらした見た目だが、触るとかなり重厚感がある(写真撮影/本美安浩)

「ゴールは3Dプリンターで家をつくることではなく、世界最先端の家で人類を豊かにすること」という目的を掲げている同社。常識に捉われない考え方で住宅業界に一石を投じ、若年層からシニア世帯までのマイホームの夢を叶えるための探求は続く。「serendix50」の大量生産が可能になるまで未来の「3Dプリンターの家」が、多くの人の選択肢に並ぶ日が待ち遠しい。

老後の蓄えを切り崩しながらリフォームしたり、「夫婦2人だけだから」と気が乗らない中古物件に住み替えたりすることと、ゆとりを残して「3Dプリンターでつくった未来の家に住む」というチャレンジを比べると、その差は大きい。必要に迫られて家づくりを急ぐ子育て世帯よりも、ワクワクする第2の人生を思い描くシニア世帯から引き合いが多いというのも納得できる。
世帯構成やエリアなどを分けた6棟の購入者の、1年後の感想が楽しみだ。

●取材協力
セレンディクス

愛知「住みたい街ランキング2023年版」不動の1位は名古屋! NHK大河ドラマ『どうする家康』影響で三河エリアに熱視線

2023年、リクルートが3年ぶりに「住みたい街ランキング」の愛知県版を発表。再開発や再整備が盛んで、注目の施設の開業など、都市部を中心に変化が著しい愛知。今年はNHK大河ドラマ「どうする家康」の影響もあり、三河エリアへも熱い視線が注がれている。愛知ではどんな街が上位なのか? 人気の理由も探りながら、愛知県春日井市生まれ、名古屋に住み続けて19年目の筆者と共に見ていこう。

2023年「住みたい街(駅)」1位は、暮らしやすい街へ進化中の「名古屋」

愛知県 住みたい街(駅)ランキング

今回の「住みたい街」(自治体・駅)ランキングは、愛知県内の街(自治体・駅)について、愛知県在住の20~49歳の男女2000人に「住みたい街」についてアンケートを実施した結果をランキングしたもの。
県内居住者から見て、住んでみたいと思われている憧れの街がランクインしていると言える。

「住みたい街」(駅)の1位から3位までは、前回2020年に実施した時と同じ結果に。不動の1位は、2018年のランキングから変わらず「名古屋」!

「名古屋」の高い人気は、2027年のリニア開業を見据え、再開発が進んでいることが挙げられる。また近年、名古屋駅前の再整備計画が発表されており、今後は駅東西に広場を整備予定だ。駅西側駅前広場にはイベントなども行われるスペースをつくる再整備計画があり、期待が高まる。

中央コンコースから地下街で「大名古屋ビルヂング」や「ミッドランドスクエア」に繋がる駅東側は、地上ロータリー交差点の改良や、歩行者空間の整備などが予定されている。ロータリーのランドマークになっていたモニュメント「飛翔」は昨年撤去され、広場開設に向けて整備が進行中だ。

ロータリーのモニュメント「飛翔」は昨年撤去され、現在は広場開設に向けて整備が進んでいる(写真/PIXTA)

ロータリーのモニュメント「飛翔」は昨年撤去され、現在は広場開設に向けて整備が進んでいる(写真/PIXTA)

数年前までは商業的な街という印象が強かった「名古屋」だが、近年変化が著しい。2021年には、名鉄百貨店メンズ館地下1階に、高級スーパー「紀ノ国屋」が中部地区初出店し話題に。また同年、駅徒歩約12分のノリタケ工場跡地に、商業施設と住宅、オフィスからなる複合施設「イオンモールNagoya Noritake Garden」が開業して、食品や日用品の買い物の場が充実した。この「イオンモールNagoya Noritake Garden」は、緑豊かな「ノリタケの森」の敷地内に立ち、1階から2階に繋がる大型書店「TSUTAYA BOOKSTORE」と、3階にある「コニカミノルタ プラネタリウム満天NAOGOYA」が話題に。子連れファミリーが訪れやすい街へと進化している。

3位には、名古屋市外から東三河の中心都市「豊橋」がランクイン

それでは、2位以下のランキング上位の街についても見ていこう。

2位「金山」は「名古屋」の隣の街で、交通利便性の良さに高い支持が集まる。金山駅は、JR2路線と名鉄線、地下鉄2路線が乗り入れる総合駅だ。名鉄線は刈谷市や三河方面へも運行し、豊田や岡崎方面にも通勤がしやすいほか、中部国際空港との直行便「ミュースカイ」も発着する。駅前の商業施設「アスナル金山」は2020年にリニューアルし、市内の人気ベーカリーや回転寿司店などが登場。また、駅直結の「ミュープラット金山」にはカフェや雑貨店が入るほか、駅の北側には地下1階、地上3階建の「イオン金山店」があり、食料品や日用品も手に入れやすく便利だ。

金山駅周辺(写真/PIXTA)

金山駅周辺(写真/PIXTA)

名古屋市外からランクインした3位「豊橋」は、愛知県の南東部に位置する東三河の中心都市で、東海道新幹線が停車する。市内の移動には路面電車が活躍していて、夏の「納涼ビール電車」と、名産のちくわも楽しめる冬の「おでんしゃ」は人気企画だ。2021年、駅前に食・健康・学びをテーマにした複合施設「em CAMPUS(エムキャンパス)」が開業。食材マーケットや飲食店、住居、行政窓口を備えるほか、2・3階にはカフェを併設した「豊橋市まちなか図書館」があり、住民の憩いの場となっている。また、市内には「のんほいパーク」の愛称で知られる豊橋総合動植物公園をはじめ、緑豊かな公園が点在。遠州灘に面した伊古部海岸はサーフィンスポットで、アカウミガメの産卵場所でもある。自然に恵まれ、レジャーや山海の幸を気軽に楽しめるという魅力がある。ちなみに「豊橋」は、「穴場だと思う街(駅)ランキング」では1位に選ばれている。

「のんほいパーク」こと豊橋総合動植物公園(写真/PIXTA)

「のんほいパーク」こと豊橋総合動植物公園(写真/PIXTA)

市内では、都会的な雰囲気と利便性を持ち合わせた東山線沿線の街が人気

4~6位の「栄」「覚王山」「星ヶ丘」は、全て地下鉄東山線沿線の街。東山線は、名古屋市で最初に開業した地下鉄路線であり、市内を東西に横断する。「名古屋」にも直通なので人気が高く、「住みたい沿線ランキング」でも2位にランクインしている。

愛知県 住みたい沿線ランキング

4位「栄」は、「住みたい自治体ランキング」1位の名古屋市中区に位置。2020年、栄~久屋大通駅間に公園と商業施設が一体化した「RAYARD Hisaya-odori Park(レイヤード ヒサヤオオドオリ パーク)」がオープンして、一帯がリニューアル。久屋大通公園沿いに、およそ40軒のグルメやファッションの店舗が集まる。エリア内に5つある「ヒロバ」では度々イベントが行われ、トレンドを発信している。

「RAYARD Hisaya-odori Park(レイヤード ヒサヤオオドオリ パーク)」(写真/PIXTA)

「RAYARD Hisaya-odori Park(レイヤード ヒサヤオオドオリ パーク)」(写真/PIXTA)

同時に地下街の「セントラルパーク」も改装され、スーパーなどが集まる食物販ゾーンが誕生。休日にテイクアウトグルメを楽しんだり、平日の仕事帰りに食材などの買い物を済ませたりと、暮らす街としても選択肢が広がった。2022年には、マルエイ跡地に食に関する商業施設「マルエイガレリア」が開業し、関西発のスーパー「パントリー」や、市内最大級の無印良品が開業して話題に。今後も「中日ビル」の建て替えや「(仮称)錦三丁目25番街区計画」といった大規模複合施設建設の計画が控え、ますますにぎわいそうだ。

「マルエイガレリア」(写真/PIXTA)

「マルエイガレリア」(写真/PIXTA)

5位「覚王山」と6位「星ヶ丘」は、共に「住みたい自治体ランキング」で2位となった名古屋市千種区に所在。

愛知県 住みたい自治体ランキング

「覚王山」は、昨年「SUUMO住み続けたい街ランキング愛知2022」で住民から選ばれ、1位に輝いた街。シンボルは覚王山日泰寺で、駅を出るとすぐに400mほどの参道が続き、商店街が広がる。レトロな雰囲気の食堂などのほか、東海発祥のドーナツ店やパティスリー「シェ・シバタ名古屋」といった人気店も軒を連ね、新旧の良さが合わさる街だ。住民も街の魅力として「雰囲気やセンスのいい、飲食店やお店がある」という項目を上位に挙げている。

6位「星ヶ丘」は、駅前にファッションやグルメが楽しめる商業施設「星が丘テラス」や「星ヶ丘三越」があり、買い物環境が抜群。季節ごとの装飾が美しい「星が丘テラス」は、フォトスポットとしても人気に。また、周辺に大学が多い文教地区でもある。周囲は自然にも恵まれ、東山動植物園星が丘門に近く、休日は家族連れでにぎわう。

・関連記事:愛知「住み続けたい街ランキング2022年版」住民評価1位は名古屋市おさえ長久手市!

順位が上がった街から、「交通利便性」と「職住近接」のニーズが見えてくる

7位「刈谷」、8位「大曽根」、9位「岡崎」は、いずれも2020年から順位がアップ!

愛知県 穴場だと思う街(駅)ランキング

特に「大曽根」は2020年の16位から8位へ、大きく順位を上げた。「愛知県穴場だと思う街(駅)」ランキングでも3位になるなど、注目度が高い。「大曽根」は名古屋市東区と北区にまたがる街で、大曽根駅からはJR、名鉄、地下鉄に加え、ガイドウェイバス「ゆとりーとライン」の4路線を利用可能。名古屋都市部だけでなく、瀬戸市や春日井市方面へもアクセスしやすい。さらに、市バスの路線も充実している。2020年、名鉄瀬戸線の駅構内に商業施設「ミュープラット大曽根」が併設され、「からみそラーメンふくろう食堂」など17店舗がオープンして便利に。また、徒歩圏内にスーパーを含む「メッツ大曽根」や、朝市を開催する商店街「オゾンアベニュー」が集まり、1駅隣には「イオンモールナゴヤドーム前」もあるなど、生活利便性の高さは抜群。一方で、駅南口方面には住宅街が広がり、徒歩約10分の距離に公園を併設した庭園「徳川園」があり、四季や自然も身近に感じられる。

7位「刈谷」、9位「岡崎」は、共に愛知県の三河エリアに位置する市。
デンソーやアイシン、豊田自動織機などトヨタ系企業の本社が多く、関連企業に勤める人からの職住近接ニーズも高い「刈谷」。県内屈指のスポーツタウンで、刈谷市をホームタウンとするスポーツチームは、バスケットボール、バレーボール、ソフトボール、ラグビー…など多岐にわたる。刈谷総合運動公園敷地内にある「ウイングアリーナ刈谷」は、男子バスケットボールチーム「シーホース三河」のホームアリーナ。トラックとフィールドからなる陸上競技場「ウェーブスタジアム刈谷」も併設され、各施設は大会などがない日は一般利用も可能。プロ仕様の本格的なエリアで、老若男女がスポーツを楽しむ姿が見られる。また、全国有数の財政力を誇る街でもあり、駅から市内の公園など主要な施設を回る公共施設連絡バス「かりまる」は、なんと無料で乗ることができる。さらに、「刈谷ハイウェイオアシス」や「刈谷市交通児童遊園」といった遊園地さながらの公園があり、乗り物が100円前後と、格安価格で遊べる。

「刈谷ハイウェイオアシス」(写真/PIXTA)

「刈谷ハイウェイオアシス」(写真/PIXTA)

NHK大河ドラマ「どうする家康」で注目が高まる「岡崎」は、徳川家康の生誕地である岡崎城や、八丁味噌の産地として知られる。「名古屋」まで名鉄とJRで30分の距離で、三菱自動車などの自動車関連工場と、関連企業に従事する人が多い。公共施設が充実し、市内中心部にある図書館交流プラザ「Libra」は、「愛知まちなみ建築賞」を受賞した建物内に豊富な蔵書を収容。館内には岡崎出身のジャズ愛好家、内田修氏が寄贈したジャズコレクション展示室があり、貴重な音源を楽しめる。市内には大きな公園も点在し、遊園地のある「南公園」では、100円以下で楽しめる乗り物が多数。また、「東公園」の動物園ではアジアゾウなどが見られるが、入園料は無料!教育にも注力し、愛知県立岡崎高等学校は、難関大学合格者を多数輩出する公立高校として全国的にも注目を集めている。

近年は名鉄「東岡崎」駅周辺で再開発が進み、2019年には駅直結の複合施設「オト リバーサイドテラス」が誕生。また、2023年度中には南口に地上3階建の駅ビルが竣工し、今後は北口にも商業施設やオフィスを備えた地上8階建のビルを建設予定だ。「東岡崎」は街のランキングも前回20位から15位へとアップしている。

今回の「愛知県住みたい街(駅)ランキング」では、名古屋都市部の街に加え、豊かな自然や文化を享受でき、再整備などで利便性が高まった三河エリアの都市もランクインした。「岡崎」と同じく三河の中核都市である「豊田市」も、前回33位から12位にランクアップしている。

特に、ピックアップしたランキング上位の街は、近年暮らしやすさや景観の良さがアップし、トレンド感も加わって、惹かれる魅力がたっぷり。

みんなの声を集めた「住みたい街ランキング」からは、今後の街の進化への期待感と、「忙しい毎日の中、プラスアルファの楽しみがある街で暮らしたい」という現代のニーズが見えてくるようだ。

●関連ページ
・SUUMO住みたい街ランキング2023 愛知県版/名古屋市版

タイニーハウスを庭先に。”+10平米”の小屋で、趣味に、テレワークに、夢ひろがる! 名古屋・ニッカタイニーズパーク

おうち時間が増えたコロナ禍で、テレワーク用の部屋や趣味部屋といった“プラスα”の空間へのニーズが高まった。その選択肢の一つとして注目が集まっているのが、タイニーハウス(小さな小屋)。住む空間としてはハードルが上がるものの、庭の空きスペースなどに建てて“離れ”のような感覚で使うのであれば気軽で、暮らしに変化も生まれ楽しそうだ。愛知県名古屋市にあるタイニーハウス専門の展示場「ニッカタイニーズパーク」で、どんな使い方がトレンドなのかを聞いてきた。

名古屋市内にタイニーハウス専門の展示場が誕生したワケ

SUUMOジャーナルでも注目度が高いタイニーハウス。コロナ禍の2021年、名古屋市内に、全国的にも珍しいタイニーハウス専門の展示場「ニッカタイニーズパーク」がオープンした。ニッカホーム中部の奥園丈博さんに、今誕生させたワケやタイニーハウスへのニーズについて聞いた。

展示場には広さや形、素材が異なるタイニーハウスが並ぶ(写真撮影/本美安浩)

展示場には広さや形、素材が異なるタイニーハウスが並ぶ(写真撮影/本美安浩)

「ニッカタイニーズパーク」には、現在4棟のタイニーハウスが展示されている。「ニッカホーム」は、名古屋市緑区に本社を置くリフォーム会社で、東海地方を中心に全国に支店を展開。リフォーム時の廃材リサイクル事業のほか、東海3県では「すてない!プロジェクト」として、まだ使えるけれど使わなくなった家具や食器、衣類などを無償で回収し、発展途上国への寄付やリユースも行っている、先進的な取り組みをする会社だ。

1番人気のモデルプラン「タイプA ラップサイディングアメリカン」は、外壁が樹脂サイディングで実用性も抜群(写真撮影/本美安浩)

1番人気のモデルプラン「タイプA ラップサイディングアメリカン」は、外壁が樹脂サイディングで実用性も抜群(写真撮影/本美安浩)

「タイプA」は約6帖(9.9平米)。建築確認申請が必要ない範囲(防火・準防火地域でなく10平米未満)で最大の広さ(写真撮影/本美安浩)

「タイプA」は約6帖(9.9平米)。建築確認申請が必要ない範囲(防火・準防火地域でなく10平米未満)で最大の広さ(写真撮影/本美安浩)

「タイニーズパークに関しては、コロナが広がり始めた2020年早春、弊社の榎戸欽治会長から話がありました。会長が、本社と同じ区内に現在の土地を購入した際に、『コロナ禍はテレワークが増加し、自宅に離れをつくりたいという人が増えるのでは。リフォームで培った経験を活かして、小屋専門の展示場をつくろう』と言って始まった事業です」

1番コンパクトな「タイプB モダンスタイルのテレワークルーム」は約2帖分(3.3平米)の広さ(写真撮影/本美安浩)

1番コンパクトな「タイプB モダンスタイルのテレワークルーム」は約2帖分(3.3平米)の広さ(写真撮影/本美安浩)

カウンターをつけて仕事や趣味に使う人が多いという「タイプB」。倉庫の需要もあるサイズ(写真撮影/本美安浩)

カウンターをつけて仕事や趣味に使う人が多いという「タイプB」。倉庫の需要もあるサイズ(写真撮影/本美安浩)

とはいえ、当時はこれほどコロナ禍が長引き、テレワークが浸透するとは誰も予想できなかった。そこで2020年夏、まずは10棟の小屋をバーベキュー施設としてオープン。そして2021年に、新たにニーズに沿った4棟のタイニーハウスと、事務所・平屋のモデルハウスを建てて、展示場として開業した。

新築事業も行うニッカーム。奥園丈博さんは、ニッカタイニーズパークのほかニッカホーム新築事業部の事業部長を務め、新築の部門を担当(写真撮影/本美安浩)

新築事業も行うニッカーム。奥園丈博さんは、ニッカタイニーズパークのほかニッカホーム新築事業部の事業部長を務め、新築の部門を担当(写真撮影/本美安浩)

コロナ禍が続く中、“本気”のニーズが増加

タイニーハウスのニーズに変化は感じられるのだろうか。
「小屋を扱い始めた当初は、興味本位の人が多かった印象です。でも現在は、テレワークや趣味に打ち込むことを見据えて具体的にプランを練り、ご家族の了承を得ているような、本気のお客さまが多いですね」

展示している小屋は、飲食店や雑貨店に貸し出し、マルシェを開いて、実際の使用感やサイズ感を試してもらうこともある。

雑貨店やワークショップなどが出店した2020年のマルシェ。出店者はテナント料無料で、小屋の使い心地を試すことができる(写真提供/ニッカホーム)

雑貨店やワークショップなどが出店した2020年のマルシェ。出店者はテナント料無料で、小屋の使い心地を試すことができる(写真提供/ニッカホーム)

「私たちがつくるタイニーハウスの1番の特徴は、お客さまの敷地に合わせたフルオーダーです。展示場のタイニーハウスは参考程度にお考えいただき、お好みに合わせて、一からデザインします。ですから、規格品の小屋を考えていたものの、『デザインが気に入らない』『調べたら自宅の敷地には搬入できなかった』などの理由で困っていた方が弊社にいらっしゃいます」

一からデザインするフルオーダーで、いくらくらいのものなのか? 最多の価格帯は「テレワークなどができる5~6帖の小屋で、約200万円(工事費・消費税含む、以下同)ですね。これは車1台分ほどの余剰の土地があれば建てることができます。また、倉庫や物置として使う目的の2帖くらいの小屋であれば、130万円からが目安です」とのことだ。

扉が観音開きになる「タイプE 大開口のガレージルーム」は、大型の荷物もラクに搬入できてワイルド(写真撮影/本美安浩)

扉が観音開きになる「タイプE 大開口のガレージルーム」は、大型の荷物もラクに搬入できてワイルド(写真撮影/本美安浩)

開口部が広い「タイプE」は約4.2帖(6.9平米)で、車やバイク、自転車が趣味の人に人気。開放感たっぷり(写真撮影/本美安浩)

開口部が広い「タイプE」は約4.2帖(6.9平米)で、車やバイク、自転車が趣味の人に人気。開放感たっぷり(写真撮影/本美安浩)

名古屋市郊外の一戸建てであれば、夫婦と子ども、または来客用として、車3台分の駐車スペースを確保している家は珍しくない。車1台分の土地と約200万円の資金で手に入るなら、憧れのタイニーハウスがグッと身近に感じられるのでは。

自宅サロンやオシャレな物置としての需要も

「最近増えているのが、エステやネイル、まつ毛エクステのサロンなどを、自宅で開業したいというお客さまからのニーズです。自宅サロンとはいえ、プライベートと仕事のスペースを分けたいという人や、テナントを借りて賃料を支払うよりも、自宅の敷地内にタイニーハウスを建てようと考える人がいます。弊社では新築戸建も手掛けていますが、新築と同時に小屋を建てて、計画的に開業する人も増えていると感じます」

テレワークや趣味に使うタイニーハウスが200万円ほどであるのに対し、水回りの設備を完備するエステサロンなどでは、400万~500万円かける人が多いとのこと。自宅サロンがプライベートスペースから独立していれば、本人や家族だけでなくお客さん目線で考えても、相手に気を遣わなくていいので、よりリラックスできそうだ。

趣味のミシン部屋として使っている一宮市Sさんの小屋。リフォームや新築時に取り扱っているメーカーのドアを使用(写真提供/ニッカホーム)

趣味のミシン部屋として使っている一宮市Sさんの小屋。リフォームや新築時に取り扱っているメーカーのドアを使用(写真提供/ニッカホーム)

大好きなフクロウ柄の壁紙を使ったSさんのミシン部屋。布や糸などの材料を広げたりしまったりするのがラクで、快適だそう(写真提供/ニッカホーム)

大好きなフクロウ柄の壁紙を使ったSさんのミシン部屋。布や糸などの材料を広げたりしまったりするのがラクで、快適だそう(写真提供/ニッカホーム)

一方で倉庫や物置タイプのタイニーハウスも、「大きめの物置が欲しいけれど、景観は崩したくない」という人からの需要があるという。

「果樹園を持っている東郷町のお客さまは、敷地内に果実の出荷準備に使う小屋をつくり、エアコンを完備して休憩所としても使っています。また、ガーデニングがご趣味の名古屋市のお客さま(Sさん)は、手入れされたお庭になじむような小屋を希望され、庭先にログハウス風のタイニーハウスをつくりました」

用途こそ、日本に昔からある「小屋」の典型だが、デザイン性や快適性を高めることで、庭の雰囲気とマッチした現代的な空間をつくることができる。

庭の景観になじませた、名古屋市Sさんのログハウス風の小屋。夜はライトアップにより幻想的になり、毎日がキャンプ場で過ごしている気分に(写真提供/ニッカホーム)

庭の景観になじませた、名古屋市Sさんのログハウス風の小屋。夜はライトアップにより幻想的になり、毎日がキャンプ場で過ごしている気分に(写真提供/ニッカホーム)

インテリアも統一感を出したSさんの小屋。室内も山小屋の雰囲気たっぷり(写真提供/ニッカホーム)

インテリアも統一感を出したSさんの小屋。室内も山小屋の雰囲気たっぷり(写真提供/ニッカホーム)

間口が狭い名古屋の住宅地でフルオーダーが活躍

当初はテレワークのための需要を見込んでいたが、製造業に従事する人も多い愛知エリアでは、完全なテレワークに移行した人は少ない印象だそう。

「お客さまのお話では、出社と自宅勤務のハイブリッド型の方が多いようです。自宅勤務OKという日に、自由に使うことができ、すぐに仕事に取り掛かることができるスペースとしての小屋が望まれているのでしょうね」

在宅ワークが増えたので小屋をつくった名古屋市Hさん。メンテナンスのことを考えて、外壁はガルバリウム鋼板に(写真提供/ニッカホーム)

在宅ワークが増えたので小屋をつくった名古屋市Hさん。メンテナンスのことを考えて、外壁はガルバリウム鋼板に(写真提供/ニッカホーム)

デスクワーク中に外からの視線を気にせず、庭の木々が眺められるように、窓の配置にこだわった(写真提供/ニッカホーム)

デスクワーク中に外からの視線を気にせず、庭の木々が眺められるように、窓の配置にこだわった(写真提供/ニッカホーム)

他にも、地域性が現れるようなニーズはあるのだろうか。
「名古屋市内は特に、敷地や間口が狭い住宅地が多いので、規格化された小屋はうまく建てられず、フルオーダーに需要があるのでは。愛知県内でも郊外部ではなく名古屋市内に小屋専門の展示場があるのは意外かもしれませんが、実際には市内でも市外でも、小屋が欲しい人はつくるものです。これまでどのような土地でも、建蔽率や容積率の許容範囲で、ご要望にお応えできています。現在のところは、一戸建てで土地にゆとりがあるお客さまが多く、県内では名古屋市のほか、日進市や刈谷市、豊田市や常滑市などの方がいらっしゃいます」

「タイプD 採光豊かな明るい小部屋」はトレンドのスクエア型が目を引く約3.1帖(5.1平米)。外壁材は、正面は天然木の板張りでも、残り三方向はサイディングにすることでメンテナンスをラクに(写真撮影/本美安浩)

「タイプD 採光豊かな明るい小部屋」はトレンドのスクエア型が目を引く約3.1帖(5.1平米)。外壁材は、正面は天然木の板張りでも、残り三方向はサイディングにすることでメンテナンスをラクに(写真撮影/本美安浩)

約3.1帖(5.1平米)と小さめの「タイプD」にエアコンなどを整備すれば、個室が必要になった子どもの部屋としてもおすすめだそう。また、大きめの約6帖(9.9平米)にしてショップとして使うケースも(写真撮影/本美安浩)

約 3.1帖(5.1平米)と小さめの「タイプD」にエアコンなどを整備すれば、個室が必要になった子どもの部屋としてもおすすめだそう。また、大きめの約6帖(9.9平米)にしてショップとして使うケースも(写真撮影/本美安浩)

郊外では二世帯や三世帯で住む家庭も多く、タイニーハウスを介護に利用する人も。
「あるお客さまは、親御さんの介護のために、自宅リビングとデッキで繋げた、離れのタイニーハウスをつくりました。普段は介護施設で暮らす親御さんが一時帰宅した際、離れのタイニーハウスで過ごしてもらうことで、リビングと裸足で行き来してもらいながら、お互いのプライバシーも確保できます。『介護のために二世帯住宅へ建て替える』となると大掛かりですが、小屋を建てるのであれば、比較的手軽にスペースを増やすことができますし、親御さんが使わない時はほかの家族も利用しやすいと好評です」

また、両親や祖父母から相続した土地など、自宅から離れた場所にタイニーハウスを建てて活用する事例も増えているという。
「名古屋市に住む人が、祖父母さまから譲り受けた三重県の土地に小屋を建てるなど、ちょっとした別荘感覚で、時々羽を伸ばせる場所を持つというケースが見受けられます」

事例1:仕事に趣味に、「おうち時間」が大きく変化(名古屋市西区・Tさん)

それでは、実際にタイニーハウスを建てた人の事例をご紹介しよう。
名古屋市西区・Tさん
50代・女性 2021年6月完成 工期約1か月 費用約130万円+建築確認申請費用(約5帖8.2平米)

庭の敷地内にある縦長のスペースを活かして設計(写真提供/ニッカホーム)

庭の敷地内にある縦長のスペースを活かして設計(写真提供/ニッカホーム)

――小屋をつくったきっかけは?
会社でテレワークがOKになったものの、新築の際、自分の書斎をつくっていませんでした。それまでは寝室にあるデスクで仕事をしていたのですが、生活にメリハリがつけにくく、机が小さいこともストレスだったので、思い切って、縦長にスペースが空いていた自宅の庭に、小屋を施工することにしました。

室内は、北欧などの小部屋をイメージして水色の塗装を採用(写真提供/ニッカホーム)

室内は、北欧などの小部屋をイメージして水色の塗装を採用(写真提供/ニッカホーム)

自宅の空き地を利用して、自由な設計の小屋ができそうだったので、お願いしました。また、展示場があり実際の小屋の仕上がりを現地で確認できることで、完成のイメージに近づけやすいと思ったからです。

――何を意識してデザインしましたか
この別棟は自分の空間なので好きにやろうと、アート作家のアトリエや、海外の雑誌にでてくる部屋などの自由な色使いを意識しました。北欧、あるいはスペインの小部屋を意識して、デザイナーさんにその旨を伝えました。採光とアクセントを兼ねた横長の窓をご提案いただき、採用しました。
 
――工夫したところは?
天井に傾斜をつけて、より広く感じられるようにしました。また、収納スペースがないので、壁に棚を付けて利用しています。

――現在、どのように使用していますか?
今は在宅ワークがほぼなくなったので、オンラインで始めたヨガなどに週に2、3回は使っています。やはり自分だけの空間は落ち着くので、読書をしたり、好きな音楽を聴いたりするのもここで。友人から頼まれる仕事もあるので、それに打ち込むこともあります。

仕事や趣味に打ち込むTさん。造作デスクの前におしゃれな有孔ボードを設置(写真提供/ニッカホーム)

仕事や趣味に打ち込むTさん。造作デスクの前におしゃれな有孔ボードを設置(写真提供/ニッカホーム)

――タイニーハウスができてから、一番生活が変わった点は?
仕事や趣味に集中しやすくなり、あまりカフェに行かなくなりました。好きな小物を配置するなど、おうち時間を楽しめるようになったと思います。すごく近い別荘みたいな感覚です。

窓際などに好みの小物をディスプレイしている(写真提供/ニッカホーム)

窓際などに好みの小物をディスプレイしている(写真提供/ニッカホーム)

――今後はどのように使用したいですか?
自分専用のオフィスとして充実させたいです。立地の条件が合えば小さなショップを開いても面白いなと思います。

入り口ドアのそばにグリーンを飾って可愛らしく(写真提供/ニッカホーム)

入り口ドアのそばにグリーンを飾って可愛らしく(写真提供/ニッカホーム)

事例2:アウトドアライフが日常になる、庭のシンボル(名古屋市名東区・Sさん)

名古屋市名東区・Sさん
50代・夫婦 2021年9月完成 工期約1か月(約4.2帖6.9平米)

――小屋をつくったきっかけは?
自宅の広い庭をきれいにしたいという気持ちがあり、そのシンボルになるような小屋を建てたいと思っていました。

外観と、広めのウッドデッキはSさんが自身で塗装。プロ顔負けの仕上がりに(写真提供/ニッカホーム)

外観と、広めのウッドデッキはSさんが自身で塗装。プロ顔負けの仕上がりに(写真提供/ニッカホーム)

二ッカタイニーズパークを見学した時に、展示してあった小屋に山小屋風のものがあり、イメージにピッタリだったので、そちらを参考にしました。希望通り、山小屋風で4.2帖のL字型の小屋ができました。

断熱材を入れなかったものの、ストーブがあれば冬もそれほど寒くないという(写真提供/ニッカホーム)

断熱材を入れなかったものの、ストーブがあれば冬もそれほど寒くないという(写真提供/ニッカホーム)

――デザインのポイントは?
外装は杉板張りで、天然の杉板を一枚一枚、鎧張りにしてもらったこと。内装の仕上げ材も杉板で、とても気に入っています。また、自宅にしまったままになっていたステンドグラスを使ってもらいました。

自宅に保管していたステンドグラスを活用。自由設計のいいところ(写真提供/ニッカホーム)

自宅に保管していたステンドグラスを活用。自由設計のいいところ(写真提供/ニッカホーム)

――大変だったところは?
外観と、大きめのウッドデッキの塗装を自分でやってみました。高いところは気を付けながら作業しました。

――現在、どのように使用していますか?
仕事から帰宅後、夕飯までの間をここで過ごしています。音楽を聴きながら読書をしたり、お茶を飲んだりと、ゆったり過ごしています。

――タイニーハウスができてから、一番生活が変わった点は?
夫婦で庭の手入れをする時間が増えました。

玄関・廊下・居室で構成されたL字型の小屋。玄関にはタイルを配した(写真提供/ニッカホーム)

玄関・廊下・居室で構成されたL字型の小屋。玄関にはタイルを配した(写真提供/ニッカホーム)

――今後はどのように使用したいですか?
キャンプ用品を置けるように、少しずつ手を加えていきたいです。

小物選びに、自然を愛するSさんのセンスが光る(写真提供/ニッカホーム)

小物選びに、自然を愛するSさんのセンスが光る(写真提供/ニッカホーム)

確かに最近、住宅の敷地内の小屋で開業したヘアサロンや焼菓子店などを見かける。

「今後も、自宅で自分らしいお店を開業したいという人は増えるのでは。自由設計で低コスト、工期も早いタイニーハウスの存在が、そういった方たちをサポートできるのではないかと思います」と奥園さんは話した。

お店を持つ以外でも、ワークスペースや趣味のスペースにと、タイニーハウスの活用方法はアイデア次第で自由自在に。タイニーハウス(小屋)を自宅の1室や離れのように考えると、住まい方への可能性もグッと広がっていきそうだ。

●取材協力
ニッカタイニーズパーク

賃貸の中に店や路地のユニーク長屋! 中国福建省伝統の”朱紫坊”インスパイア系 「ドラゴンコートビレッジ」愛知県岡崎市

愛知県岡崎市にあるスタイリッシュな「Dragon Court Village(ドラゴンコートビレッジ)」は、竜美丘コートビレジという賃貸住宅です。2014年の開業以来、居住者に、敷地の一部を地域の人とのつながりの場に開放したり、小商いしたりできる環境を提供してきました。これらの賃貸住宅における店舗兼住宅化は、コロナ禍で人とのつながりが見直されて以降、特に注目されていますが、当時はまだ珍しいものでした。最先端の住まいの先駆けともいえるこの物件は、住む人の暮らしにどのような影響を与えているのでしょうか。設計者で、一級建築士事務所 Eurekaを共同主宰する稲垣淳哉さんに取材しました。

居住者は「自宅でお店を開く」夢がかない、カフェやネイルサロンに地域の人が訪れる軒下や中庭でかつて月1回のペースで催されていたマルシェ「スミビラキ」は、たくさんの人でにぎわっていた(画像提供/Eureka)

軒下や中庭でかつて月1回のペースで催されていたマルシェ「スミビラキ」は、たくさんの人でにぎわっていた(画像提供/Eureka)

小商いという生活形態が話題になったのは2012年ごろ。コロナ禍では、テレワークや副業を始めたいという人が増えました。店舗付き住宅や自宅に店舗機能をもたせた物件が人気を集め、『小商い建築』『商い暮らし』という言葉が注目されています。2010年ごろから設計が始まった「Dragon Court Village」は、小商いできる賃貸集合住宅の先駆けといえるものでした。

「30年ほど前まで、職住近接は身近にありました。例えば、駄菓子屋さんの奥が畳敷きになっていて家族が住んでいたり、八百屋さんの2階部分を賃貸アパートにしていたり。かつての日本では珍しくなかったんですね。設計の早い段階から、一般的な2階建てのアパートと差別化を図るため、アネックス(離れ)、軒下、中庭などを取り入れた集合住宅を構想していました」(稲垣さん)

通路に面して、さまざまなタイプのアネックスがあり、小商いができる(画像提供/Eureka)

通路に面して、さまざまなタイプのアネックスがあり、小商いができる(画像提供/Eureka)

「住みながら商う」暮らしが、新しい生き方につながる

「Dragon Court Village」は、特徴的な外壁をもつ「箱」型の住戸で構成されており、スタイリッシュな印象を与えます。シンプルなデザインですが、路地や中庭で住戸とアネックスをつないだ複雑な構成の建物です。

縦格子や板張り、モルタルを組み合わせた外壁が印象的な外観(画像提供/Eureka)

縦格子や板張り、モルタルを組み合わせた外壁が印象的な外観(画像提供/Eureka)

長手断面図。住戸やアネックスは、「箱」の集合体で、随所に軒下空間を取り入れている(画像提供/Eureka)

長手断面図。住戸やアネックスは、「箱」の集合体で、随所に軒下空間を取り入れている(画像提供/Eureka)

敷地の配置図(向かって上が北、右が東)。駐車スペースは、東にある道路(グレー)側ではなく、敷地境界線に沿って縦列に配置。車路兼通路(茶色)で敷地内を回遊できる(画像提供/Eureka)

敷地の配置図(向かって上が北、右が東)。駐車スペースは、東にある道路(グレー)側ではなく、敷地境界線に沿って縦列に配置。車路兼通路(茶色)で敷地内を回遊できる(画像提供/Eureka)

住宅街に佇む「Dragon Court Village」(画像提供/Eureka)

住宅街に佇む「Dragon Court Village」(画像提供/Eureka)

敷地の境界線に沿ってアパートを囲むように駐車スペースが設けられ車路兼通路で、敷地内を歩いて回遊できます。住戸と住戸の間は、路地や中庭になっています。車路兼通路に面した住居の軒下とアネックス(離れ)が、小商いのために活用できるスペース。9戸ある住居の広さは、40平米から60平米位の差があり、シングルからファミリーが選択して住めるつくりです。希望する居住者は、デザインの異なる5つのアネックスから選んで借り増しができます。

向かって右側が居住者の駐車スペースで、軒下が小商いできるスペース。中央のグレーの砂利敷きの車路兼通路には、イベント時キッチンカーが出店したこともある(画像提供/Eureka)

向かって右側が居住者の駐車スペースで、軒下が小商いできるスペース。中央のグレーの砂利敷きの車路兼通路には、イベント時キッチンカーが出店したこともある(画像提供/Eureka)

「賃貸収入を得るだけなら、高容積で建てれば効率的です。しかし、何十年と住みつないでもらうためには、ほかの賃貸集合住宅にはない魅力が必要です。職住近接といっても、ただ単に昔の住まいに戻ろうというのではありません。私が子ども時代には、自宅のリビングで塾などを開いている例もありましたが、現代にはそぐわないでしょう。住戸から独立し、開放的なアネックス(離れ)が、新しい暮らしの提案になると考えたのです」(稲垣さん)

アネックス(離れ)では、八百屋さんや花屋さん、カフェなどが開業し、月に1度開催されていたマルシェは、地域の人でにぎわいを見せていました。現在、主催していた居住者が転居したためマルシェは中止されていますが、ネイルサロンや英会話教室、エステルーム、オフィスの打ち合わせスペースとして使われています。

左側のモルタル部分がアネックスで、デザイン事務所の打合せスペースとして使われている(画像提供/Eureka)

左側のモルタル部分がアネックスで、デザイン事務所の打ち合わせスペースとして使われている(画像提供/Eureka)

設計の基になったのは中国福建省の伝統的住居

「Dragon Court Village」は、一般的な2階建てアパートにある共用の廊下や階段などがなく、通路や路地から直接住戸へ出入りできる長屋住宅です。江戸の庶民のイメージがある長屋ですが、意外にも稲垣さんが参考にしたのは、中国の伝統住宅地でした。「Dragon Court Village」を設計していたころ、稲垣さんは、一級建築士事務所Eurekaの活動をしながら、大学の研究員として、東・東南アジアの集落や都市空間の調査に携わっていました。

視察時に撮影した朱紫坊の様子。日本の坪庭より広い中庭がある(画像提供/Eureka)

視察時に撮影した朱紫坊の様子。日本の坪庭より広い中庭がある(画像提供/Eureka)

「2011年の東日本大震災を境に、住宅のサステナビリティ(持続可能性)やレジリエンス(回復力※)が、重要なテーマになっていました。日本では、近代化に伴い、住宅の個々に完結したプロダクト(製品)としての性能が重視されました。その結果、コミュニティを育む力が弱まり、子どもの教育、高齢者の介護など皆で助け合っていた場もなくしてしまったのです。研究は、昔の暮らしにノスタルジックに憧れるのではなく、近代化で失われてしまった叡智、例えば、自然と融合したような暮らしがもつ災害に対する備えなどを学ぼうとするものでした」(稲垣さん)

※レジリエンス:「弾力」「回復力」「強靭」という意味。ここでは、ハード(フィジカル)な住宅のレジリエンスだけでなく、自然環境(ランドスケープ)や地域・近隣コミュニティを含んだ「地域防災力」を備える住宅のレジリエンスを指している。

稲垣さんが、特に感銘を受けたのは、中国福建省福洲市内にある朱紫坊という都市部の伝統的住居でした。道路の一辺に敷地が接しており、建物が奥に延びていく京都の町家のようなつくりで、中庭を備えていました。

「朱紫坊の中庭は、ひとりだけのものではなく、みんなが使える空間で、イベントを催したり、ゲストを招いたりする社交の場として機能していました。外部や自然環境につながっている中庭には、風が流れて、おおらかな暮らしぶりがうかがえました。建物が出来上がったときが快適性のピークではなく、ある場所をシェアして皆でより快適な場所につくり上げていくスタイルは、大きな学びとなりました」(稲垣さん)

車路兼通路から見る中庭と路地(画像提供/Eureka)

車路兼通路から見る中庭と路地(画像提供/Eureka)

賃貸集合住宅に設けた中庭や路地という「余白」。居住者で耕しつくり上げる空間に

研究で得た成果を日本での集合住宅設計に応用したいと考えた稲垣さん。「Dragon Court Village」では、建物と建物の間に中庭や路地を設け、軒下空間で緩やかに住戸をつないでいます。中国の伝統的住居のようなシェアスペースを賃貸集合住宅の中にもたせ、豊かなコミュニティを生み出せるように設計しました。

路地の風景。路地に面したデッキやテラスで家族や友人と食事を楽しむ居住者も(画像提供/Eureka)

路地の風景。路地に面したデッキやテラスで家族や友人と食事を楽しむ居住者も(画像提供/Eureka)

難しかったのは、風をデザインすること。風のシミュレーションをして、季節ごとの風の流れを検証するなど試行錯誤し、時には設計をやり直すことも。一見、アトランダムに見える住戸やアネックスの配置は、それらシミュレーション結果を反映した入念な設計で、風が通り抜ける心地よい軒下空間が生まれました。

シミュレーションで、夏場の風の流れを確認。南北に風が流れる設計に(画像提供/Eureka)

シミュレーションで、夏場の風の流れを確認。南北に風が流れる設計に(画像提供/Eureka)

住戸やアネックスは、路地や中庭につながっている(画像提供/Eureka)

住戸やアネックスは、路地や中庭につながっている(画像提供/Eureka)

「家族構成や社会情勢が変わったときに、余白があれば、使い方を工夫しながら、快適性を持続することができます。最初は与えられたものであっても、居住者が耕していき、自分たちでつくり上げた空間になればという思いです」(稲垣さん)

当初は、「アネックスなんて借りる人がいるのだろうか」とオーナーも心配したと言いますが、「Dragon Court Village」が認知されるにつれ、「やりたいことをかなえるならここに住みたい!」という人が集まるようになりました。コロナ禍では、「息が抜ける空間があり、テレワークも快適」「軒下で食事をするのが楽しみ」という声が寄せられているそうです。完成品に住むのではなく、住みながら暮らしをつくり上げていく。8年がたってもなお「Dragon Court Village」は、新しい人生が始まる場所であり続けています。

●取材協力
・一級建築士事務所 Eureka
・「Dragon Court Village」(竜美丘コートビレジ)

愛知「住み続けたい街ランキング2022年版」住民評価1位は名古屋おさえ長久手市!

例年、「住みたい街」のランキングを発表しているリクルートが、2022年は住民の実感調査による「住み続けたい街」のランキングを発表。再開発や再整備、注目の施設の開業など、変化が著しい愛知。今住んでいる住民が「住み続けたい」街とは……?! どんな街が上位なのか、評価されたポイントなど、愛知県春日井市生まれ、現在名古屋市に住み続けて18年の筆者と一緒に見ていこう。

2022年「住み続けたい街(駅)」は、2020年「住みたい街(駅)」とは大きく違う顔ぶれに!

今回の「住み続けたい」街(自治体・駅)ランキングは、愛知県内の街(自治体・駅)について、居住者に「今後もお住まいの街に住み続けたいですか?」と聞いた結果をランキングしたもの

「住みたい街」は、住んでみたいと思われている憧れの街だといえるが、「住み続けたい街」は、住民の居住継続意向によるもの。住み替えの際に参考となる多様な視点を提供することが、この調査の目的になっている。

[愛知県]住み続けたい駅ランキング

「住み続けたい駅」TOP10は、長久手市の駅である3位「はなみずき通」と、一宮市の駅である9位「観音寺」以外、すべて名古屋市内にある駅となった。

前回2020年には、「SUUMO住んでいる街実感調査」として「住民に愛されている街(駅)」ランキングを発表しており、こちらは1位「いりなか」、2位「御器所」、3位「覚王山」で、「荒畑」と「はなみずき通」も8位と9位にランクイン。今年の「住み続けたい街」と似た顔ぶれとも言える。

ところが、同じく前回の2020年発表の「住みたい街(駅)」ランキングでは、1位「名古屋」、2位「金山」、3位「豊橋」という大きく違った結果だった。こちらは7位に繁華街の「栄」もランクインしている。

これらのランキングから、「住んでみたい」と思われている街は、リニア中央新幹線開業への期待感なども込めて、再開発が進む都市部の街。一方で、実際に今住んでいる住民から愛され、「住み続けたい」と思われている街は、利便性のほかに住宅街としての顔を持った、下町らしさや自然が残る街という印象だ。

「住み続けたい街」(駅)1位は、歴史と新しさが共存する「覚王山」!

それでは、「住み続けたい街」(駅)ランキング上位の街について見ていこう。

1位「覚王山」は、オフィスや商業施設が集まる「名古屋」や「栄」にも直通の地下鉄東山線沿線の駅で、名古屋市千種区に所在。シンボルは覚王山日泰寺で、駅を出るとすぐに400mほどの参道が続き、商店街が広がる。レトロな雰囲気の食堂などのほか、東海発祥のドーナツ店やパティスリーといった人気店も軒を連ね、新旧の良さが合わさる街だ。住民も街の魅力として「雰囲気やセンスのいい、飲食店やお店がある」という項目を上位に挙げている。

覚王山日泰寺(写真/PIXTA)

覚王山日泰寺(写真/PIXTA)

春夏秋に開催される「覚王山祭り」など地域の行事も盛んなので、世代を問わず楽しめる。また、一帯は古くからの住宅地で、特に本山方面にかけて広がる丘陵地は、閑静な住宅街として知られる。

2位「御器所」、4位「いりなか」、5位「荒畑」、8位「八事日赤」の4つは名古屋市昭和区の駅。一体は大学や高校が集まる文教地区で、それぞれの街の住民が、街の魅力の上位に「教育環境が充実している」ことを挙げた。

なかでも、2位「御器所」は駅徒歩圏内に名古屋柳城短期大学、名古屋国際高校・中学校などがある。また、女子バスケットボールの強豪校として全国に知られる桜花学園高校も。

御器所駅は昭和区役所や保健所とエレベーターで直結し、各種手続きや健診に便利。広路通沿いには24時間営業のスーパーや飲食店が並び、生活利便性も高い。地下鉄は市内中心部を南北に走る桜通線と、東西に走る鶴舞線の2路線が乗り入れ、通勤や通学に便利だ。鶴舞線は名鉄豊田線とも直通であるため、豊田市駅へも好アクセスだ。

注目なのは、住民による街の魅力として挙がった項目に「周囲の目を気にせず自由な生活ができる」が入っていること。目立つ施設がある街ではないけれど、交通利便性が高く必要なものがそろうので、充実した毎日が過ごせそうだ。

同じく名古屋市昭和区内にあり、教育環境が注目を集める4位「いりなか」は、南山学園(私立)の小中高・大学までの最寄駅。南山学園には名古屋都市景観重要建築物等に指定された建物があり、景観も美しい。また、駅からすぐにある隼人池公園では、季節ごとに花見や紅葉が楽しめるなど自然と触れ合える魅力も。人気の駅「八事」と「川名」の間に位置し、「八事」の興正寺は参道でのマルシェが好評だ。「川名」は複合遊具がある「川名公園」がファミリーに人気で、遠出しなくても地元で楽しみが見つかりそう。

川名公園(写真/PIXTA)

川名公園(写真/PIXTA)

千種区「本山」から昭和区「八事」方面へ南北に走る四谷通は、山手通や山手グリーンロードとも呼ばれ、周辺は「四谷・山手通都市景観形成地区」に指定されている。丘陵地帯である八事山のなだらかな坂やカーブはドライブするのも楽しい。道沿いには名古屋大学や南山大学をはじめ大学が集中し、キャンパスタウンとしても知られる。

古くは実業家の保養地としても発展した丘陵地帯であることから、周辺にはゆとりある区画割の住宅街が広がる。8位「八事日赤」までの八事エリア一帯は、緑を残しつつ洗練された雰囲気を醸し出す、憧れのエリアだ。

3位「はなみずき通」は、長久手市にある愛知高速交通東部丘陵線リニモの駅。名古屋市の東端にある「藤が丘」の隣駅で、名古屋市とも行き来しやすい。市のランドマークでもある長久手市中央図書館の最寄駅でもあり、図書館のほか長久手市文化の家に繋がる道は、図書館通りと呼ばれて親しまれている。周辺にはベーカリーやカフェなどのほか、遊具が豊富な後山(うしろやま)公園があるなど、駅周辺に施設が充実しているのも生活のしやすさにつながっているのだろう。

住民による街の魅力項目1位が「街の住民がその街のことを好きそう」、2位が「人からうらやましがられそう」、3位が「子育て環境が充実している」というのも納得。

「住み続けたい自治体」の第1位は、今秋「ジブリパーク」が第1期開業する長久手市!

[愛知県]住み続けたい自治体ランキング

次に、「住み続けたい自治体」についても見ていこう。TOP10の自治体のうち、7つは名古屋市の行政区。一方で名古屋市に隣接の市もランクインしていて、名古屋市中心部へのアクセスの良さと住環境が両立したエリアも高評価だった。

そんな、「住み続けたい自治体」ランキングの1位は、名古屋市16区を抑えて市外の長久手市!「住み続けたい駅(街)」3位の「はなみずき通」駅を擁する市だ。

街の魅力の評価で、「子育てに関する自治体サービスが充実している」をはじめ、多くの項目で自治体ランキング1位と、住民から高い評価を得た長久手市は、名古屋市名東区や日進市に隣接。名東区の駅「藤が丘」から豊田方面に延びるリニモ沿線の街だ。人口1人当たりの都市公園面積が県内1位で、緑が多いことが特徴。

人口は増加傾向で、市民の平均年齢が40.2歳(2020年国勢調査)という「日本一若い」街としても知られる。市内には愛知県立大学をはじめ大学が点在し、子育てファミリーも多い。

リニモ「長久手古戦場」駅前に映画館を併設するイオンモール長久手があり、「公園西」駅前にはIKEA長久手があるなど、商業施設が充実。そして2022年11月1日には、自然と共存し里山の景観を維持した愛・地球博記念公園内に、「ジブリパーク」が第1期開業予定! 「ジブリの大倉庫」「青春の丘」「どんどこ森」の3エリアが先行オープンとのことで、今から楽しみだ。

長久手市(写真/PIXTA)

長久手市(写真/PIXTA)

同じく名古屋市外から5位にランクインした「大府市」にも注目したい。名古屋市緑区に隣接しているこの街は、魅力偏差値では「子育て環境が充実している」で1位、「子育てに関する自治体サービスが充実している」で2位に。

大府市は市民の健康づくりに注力。市南部には健康・医療・福祉・介護関連の施設が集中する地区があり、ウェルネスバレーと名付けられている。その中には約100haの総合施設「あいち健康の森」があり、アスレチックやターザンロープが楽しめる公園で、多世代が体を動かせる。また、県内唯一の小児保健医療専門施設「あいち小児保健医療総合センター」があるなど、子育てファミリーに手厚い環境だ。

「住み続けたい自治体」ランキング2位の「名古屋市昭和区」は、「住み続けたい駅」TOP10にランクインした「御器所」「いりなか」「荒畑」「八事日赤」の4駅が所在する区。文教地区であるだけに、街の魅力項目でも「教育環境が充実している」で1位だった。

3位の「名古屋市東区」は、「住み続けたい街(駅)」7位の駅「高岳」がある。「高岳」は久屋大通や栄エリアまで2km圏内でありながら、公園や幼稚園、保育園と商店が点在する住宅街の一面も。地下鉄の駅だけでなく、JR大曽根駅や名鉄瀬戸線の駅も利用でき、バスレーンも通ることから、街の魅力項目でも交通利便性が高く評価された。「いろいろな場所に電車・バス移動で行きやすい」「職場など決まった場所に行くなら電車・バス移動が便利だ」の2項目で、「名古屋市中区」に次いで2位に。

4位の「名古屋市千種区」は「住み続けたい駅」1位の「覚王山」駅がある区。地下鉄東山線沿線の街で、「今池」「池下」「星ヶ丘」「東山公園」の駅周辺にも商業施設が集まる。

名古屋市郊外に位置する8位「緑区」は、名鉄「左京山」駅徒歩圏内に106haの広大な敷地を持つ公園「大高緑地」があり、1人100円でゴーカートが楽しめる。また、JR「南大高」駅はイオンモール大高と南生協病院に隣接していて便利で、世代を問わず住み心地が良さそうだ。

魅力項目別のランキングからも、注目の街が見えてくる

続いて、「街の魅力項目駅ランキング」からも、注目の街をピックアップしてみよう。

歩ける範囲で日常のもの(食料品/日用品など)はひととおり揃う 駅ランキング TOP10

「歩ける範囲で日常のもの(食料品/日用品など)がひととおり揃う」駅ランキングTOP10には、大須商店街を形成する「上前津」と「大須観音」、栄エリアと大須エリアの間に位置する「矢場町」がランクイン。そのほか、2位はイオンモールナゴヤドーム前がある街。4位「東別院」は、駅名にもなっているお寺で毎月8が付く日に開かれる朝市が評判だ。8位「いりなか」や9位「鶴舞」は大学が近いことから学生も多く、スーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストアなどが充実している。

子育て環境が充実している 駅ランキング TOP10

「子育て環境が充実している」駅ランキング2位は「東山公園」。中学生以下は入園無料の東山動植物園があり、花見や写生大会、ナイトZOOなどのイベントでも自然や生物と触れ合える。5位の「瑞穂区役所」の周囲には名古屋市博物館があるほか、高校や大学が点在。春には山崎川沿いの桜並木が楽しめる。また現在、2026年アジア競技大会のメイン会場になる瑞穂公園陸上競技場を建て替え中で、竣工後はより市民に開かれた施設になる予定だ。

今後、街が発展しそう 自治体ランキング TOP10

ラストは「街の魅力項目自治体ランキング」から、「今後、街が発展しそう」と思われている街をご紹介。第1位は再び「長久手市」。ジブリパークの第1期開業を今年11月に控え、愛・地球博記念公園内で、新たな移動手段や移動体験の実現に向け、自動運転などの実証実験も始まっている。

2位の「名古屋市中区」は、今年3月、「栄」の丸栄跡地にマルエイガレリアがオープン。名古屋初出店のスーパーマーケット、パントリーが入居して話題に。今後も2024年に中日ビルが建て替え、2026年に錦三丁目に高層ビルが誕生予定など、大型開発が控えている。

3位の「刈谷市」は、周辺にトヨタ系部品メーカーであるデンソーやアイシン精機などの本社がある財政力豊かな街。名鉄線「刈谷市」駅北西側では2028年度まで市街地の整備が続く予定で、より魅力ある街へ進化しそうだ。

長く「住み続けたい街」とは、ライフスタイルが変わっても、その時々で暮らしやすく、楽しみが見つかる街ではないかと思う。

筆者が住んでいる街もTOP10入りしていた。確かに、近くに公園や商業施設があって、今は働きながら子育てしやすいし、自然や文化に触れられるスポットも徒歩圏内だから、将来はのんびり散歩できそう……。

住民のリアルな声を集めた「住み続けたい街」ランキングからは、街の新たな魅力が見えてくる。

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SUUMO住民実感調査2022 愛知県版

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「住みたい街」は、住んでみたいと思われている憧れの街だといえるが、「住み続けたい街」は、住民の居住継続意向によるもの。住み替えの際に参考となる多様な視点を提供することが、この調査の目的になっている。

[愛知県]住み続けたい駅ランキング

「住み続けたい駅」TOP10は、長久手市の駅である3位「はなみずき通」と、一宮市の駅である9位「観音寺」以外、すべて名古屋市内にある駅となった。

前回2020年には、「SUUMO住んでいる街実感調査」として「住民に愛されている街(駅)」ランキングを発表しており、こちらは1位「いりなか」、2位「御器所」、3位「覚王山」で、「荒畑」と「はなみずき通」も8位と9位にランクイン。今年の「住み続けたい街」と似た顔ぶれとも言える。

ところが、同じく前回の2020年発表の「住みたい街(駅)」ランキングでは、1位「名古屋」、2位「金山」、3位「豊橋」という大きく違った結果だった。こちらは7位に繁華街の「栄」もランクインしている。

これらのランキングから、「住んでみたい」と思われている街は、リニア中央新幹線開業への期待感なども込めて、再開発が進む都市部の街。一方で、実際に今住んでいる住民から愛され、「住み続けたい」と思われている街は、利便性のほかに住宅街としての顔を持った、下町らしさや自然が残る街という印象だ。

「住み続けたい街」(駅)1位は、歴史と新しさが共存する「覚王山」!

それでは、「住み続けたい街」(駅)ランキング上位の街について見ていこう。

1位「覚王山」は、オフィスや商業施設が集まる「名古屋」や「栄」にも直通の地下鉄東山線沿線の駅で、名古屋市千種区に所在。シンボルは覚王山日泰寺で、駅を出るとすぐに400mほどの参道が続き、商店街が広がる。レトロな雰囲気の食堂などのほか、東海発祥のドーナツ店やパティスリーといった人気店も軒を連ね、新旧の良さが合わさる街だ。住民も街の魅力として「雰囲気やセンスのいい、飲食店やお店がある」という項目を上位に挙げている。

覚王山日泰寺(写真/PIXTA)

覚王山日泰寺(写真/PIXTA)

春夏秋に開催される「覚王山祭り」など地域の行事も盛んなので、世代を問わず楽しめる。また、一帯は古くからの住宅地で、特に本山方面にかけて広がる丘陵地は、閑静な住宅街として知られる。

2位「御器所」、4位「いりなか」、5位「荒畑」、8位「八事日赤」の4つは名古屋市昭和区の駅。一体は大学や高校が集まる文教地区で、それぞれの街の住民が、街の魅力の上位に「教育環境が充実している」ことを挙げた。

なかでも、2位「御器所」は駅徒歩圏内に名古屋柳城短期大学、名古屋国際高校・中学校などがある。また、女子バスケットボールの強豪校として全国に知られる桜花学園高校も。

御器所駅は昭和区役所や保健所とエレベーターで直結し、各種手続きや健診に便利。広路通沿いには24時間営業のスーパーや飲食店が並び、生活利便性も高い。地下鉄は市内中心部を南北に走る桜通線と、東西に走る鶴舞線の2路線が乗り入れ、通勤や通学に便利だ。鶴舞線は名鉄豊田線とも直通であるため、豊田市駅へも好アクセスだ。

注目なのは、住民による街の魅力として挙がった項目に「周囲の目を気にせず自由な生活ができる」が入っていること。目立つ施設がある街ではないけれど、交通利便性が高く必要なものがそろうので、充実した毎日が過ごせそうだ。

同じく名古屋市昭和区内にあり、教育環境が注目を集める4位「いりなか」は、南山学園(私立)の小中高・大学までの最寄駅。南山学園には名古屋都市景観重要建築物等に指定された建物があり、景観も美しい。また、駅からすぐにある隼人池公園では、季節ごとに花見や紅葉が楽しめるなど自然と触れ合える魅力も。人気の駅「八事」と「川名」の間に位置し、「八事」の興正寺は参道でのマルシェが好評だ。「川名」は複合遊具がある「川名公園」がファミリーに人気で、遠出しなくても地元で楽しみが見つかりそう。

川名公園(写真/PIXTA)

川名公園(写真/PIXTA)

千種区「本山」から昭和区「八事」方面へ南北に走る四谷通は、山手通や山手グリーンロードとも呼ばれ、周辺は「四谷・山手通都市景観形成地区」に指定されている。丘陵地帯である八事山のなだらかな坂やカーブはドライブするのも楽しい。道沿いには名古屋大学や南山大学をはじめ大学が集中し、キャンパスタウンとしても知られる。

古くは実業家の保養地としても発展した丘陵地帯であることから、周辺にはゆとりある区画割の住宅街が広がる。8位「八事日赤」までの八事エリア一帯は、緑を残しつつ洗練された雰囲気を醸し出す、憧れのエリアだ。

3位「はなみずき通」は、長久手市にある愛知高速交通東部丘陵線リニモの駅。名古屋市の東端にある「藤が丘」の隣駅で、名古屋市とも行き来しやすい。市のランドマークでもある長久手市中央図書館の最寄駅でもあり、図書館のほか長久手市文化の家に繋がる道は、図書館通りと呼ばれて親しまれている。周辺にはベーカリーやカフェなどのほか、遊具が豊富な後山(うしろやま)公園があるなど、駅周辺に施設が充実しているのも生活のしやすさにつながっているのだろう。

住民による街の魅力項目1位が「街の住民がその街のことを好きそう」、2位が「人からうらやましがられそう」、3位が「子育て環境が充実している」というのも納得。

「住み続けたい自治体」の第1位は、今秋「ジブリパーク」が第1期開業する長久手市!

[愛知県]住み続けたい自治体ランキング

次に、「住み続けたい自治体」についても見ていこう。TOP10の自治体のうち、7つは名古屋市の行政区。一方で名古屋市に隣接の市もランクインしていて、名古屋市中心部へのアクセスの良さと住環境が両立したエリアも高評価だった。

そんな、「住み続けたい自治体」ランキングの1位は、名古屋市16区を抑えて市外の長久手市!「住み続けたい駅(街)」3位の「はなみずき通」駅を擁する市だ。

街の魅力の評価で、「子育てに関する自治体サービスが充実している」をはじめ、多くの項目で自治体ランキング1位と、住民から高い評価を得た長久手市は、名古屋市名東区や日進市に隣接。名東区の駅「藤が丘」から豊田方面に延びるリニモ沿線の街だ。人口1人当たりの都市公園面積が県内1位で、緑が多いことが特徴。

人口は増加傾向で、市民の平均年齢が40.2歳(2020年国勢調査)という「日本一若い」街としても知られる。市内には愛知県立大学をはじめ大学が点在し、子育てファミリーも多い。

リニモ「長久手古戦場」駅前に映画館を併設するイオンモール長久手があり、「公園西」駅前にはIKEA長久手があるなど、商業施設が充実。そして2022年11月1日には、自然と共存し里山の景観を維持した愛・地球博記念公園内に、「ジブリパーク」が第1期開業予定! 「ジブリの大倉庫」「青春の丘」「どんどこ森」の3エリアが先行オープンとのことで、今から楽しみだ。

長久手市(写真/PIXTA)

長久手市(写真/PIXTA)

同じく名古屋市外から5位にランクインした「大府市」にも注目したい。名古屋市緑区に隣接しているこの街は、魅力偏差値では「子育て環境が充実している」で1位、「子育てに関する自治体サービスが充実している」で2位に。

大府市は市民の健康づくりに注力。市南部には健康・医療・福祉・介護関連の施設が集中する地区があり、ウェルネスバレーと名付けられている。その中には約100haの総合施設「あいち健康の森」があり、アスレチックやターザンロープが楽しめる公園で、多世代が体を動かせる。また、県内唯一の小児保健医療専門施設「あいち小児保健医療総合センター」があるなど、子育てファミリーに手厚い環境だ。

「住み続けたい自治体」ランキング2位の「名古屋市昭和区」は、「住み続けたい駅」TOP10にランクインした「御器所」「いりなか」「荒畑」「八事日赤」の4駅が所在する区。文教地区であるだけに、街の魅力項目でも「教育環境が充実している」で1位だった。

3位の「名古屋市東区」は、「住み続けたい街(駅)」7位の駅「高岳」がある。「高岳」は久屋大通や栄エリアまで2km圏内でありながら、公園や幼稚園、保育園と商店が点在する住宅街の一面も。地下鉄の駅だけでなく、JR大曽根駅や名鉄瀬戸線の駅も利用でき、バスレーンも通ることから、街の魅力項目でも交通利便性が高く評価された。「いろいろな場所に電車・バス移動で行きやすい」「職場など決まった場所に行くなら電車・バス移動が便利だ」の2項目で、「名古屋市中区」に次いで2位に。

4位の「名古屋市千種区」は「住み続けたい駅」1位の「覚王山」駅がある区。地下鉄東山線沿線の街で、「今池」「池下」「星ヶ丘」「東山公園」の駅周辺にも商業施設が集まる。

名古屋市郊外に位置する8位「緑区」は、名鉄「左京山」駅徒歩圏内に106haの広大な敷地を持つ公園「大高緑地」があり、1人100円でゴーカートが楽しめる。また、JR「南大高」駅はイオンモール大高と南生協病院に隣接していて便利で、世代を問わず住み心地が良さそうだ。

魅力項目別のランキングからも、注目の街が見えてくる

続いて、「街の魅力項目駅ランキング」からも、注目の街をピックアップしてみよう。

歩ける範囲で日常のもの(食料品/日用品など)はひととおり揃う 駅ランキング TOP10

「歩ける範囲で日常のもの(食料品/日用品など)がひととおり揃う」駅ランキングTOP10には、大須商店街を形成する「上前津」と「大須観音」、栄エリアと大須エリアの間に位置する「矢場町」がランクイン。そのほか、2位はイオンモールナゴヤドーム前がある街。4位「東別院」は、駅名にもなっているお寺で毎月8が付く日に開かれる朝市が評判だ。8位「いりなか」や9位「鶴舞」は大学が近いことから学生も多く、スーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストアなどが充実している。

子育て環境が充実している 駅ランキング TOP10

「子育て環境が充実している」駅ランキング2位は「東山公園」。中学生以下は入園無料の東山動植物園があり、花見や写生大会、ナイトZOOなどのイベントでも自然や生物と触れ合える。5位の「瑞穂区役所」の周囲には名古屋市博物館があるほか、高校や大学が点在。春には山崎川沿いの桜並木が楽しめる。また現在、2026年アジア競技大会のメイン会場になる瑞穂公園陸上競技場を建て替え中で、竣工後はより市民に開かれた施設になる予定だ。

今後、街が発展しそう 自治体ランキング TOP10

ラストは「街の魅力項目自治体ランキング」から、「今後、街が発展しそう」と思われている街をご紹介。第1位は再び「長久手市」。ジブリパークの第1期開業を今年11月に控え、愛・地球博記念公園内で、新たな移動手段や移動体験の実現に向け、自動運転などの実証実験も始まっている。

2位の「名古屋市中区」は、今年3月、「栄」の丸栄跡地にマルエイガレリアがオープン。名古屋初出店のスーパーマーケット、パントリーが入居して話題に。今後も2024年に中日ビルが建て替え、2026年に錦三丁目に高層ビルが誕生予定など、大型開発が控えている。

3位の「刈谷市」は、周辺にトヨタ系部品メーカーであるデンソーやアイシン精機などの本社がある財政力豊かな街。名鉄線「刈谷市」駅北西側では2028年度まで市街地の整備が続く予定で、より魅力ある街へ進化しそうだ。

長く「住み続けたい街」とは、ライフスタイルが変わっても、その時々で暮らしやすく、楽しみが見つかる街ではないかと思う。

筆者が住んでいる街もTOP10入りしていた。確かに、近くに公園や商業施設があって、今は働きながら子育てしやすいし、自然や文化に触れられるスポットも徒歩圏内だから、将来はのんびり散歩できそう……。

住民のリアルな声を集めた「住み続けたい街」ランキングからは、街の新たな魅力が見えてくる。

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SUUMO住民実感調査2022 愛知県版

名古屋「栄駅」まで電車で15分以内、家賃相場が安い駅ランキング! 2021年版

東海圏最大の大都市である愛知県名古屋市において、最大の商業地であり繁華街といえば、栄エリア。中心地である錦三丁目での百貨店やホテルが入居するシンボル的な複合施設の建設計画のほか、久屋大通公園の「RAYARD Hisaya-odori Park」誕生など再開発が進み、ますます魅力を増している。そんな栄駅へのアクセスが良い、狙い目の駅はどこだろうか。シングル向け物件(10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DK)を対象に、最新の家賃相場が安い駅ランキングを見ていこう。
栄駅まで電車で15分以内、家賃相場の安い駅TOP10

順位/駅名/家賃相場/(主な路線名/駅の所在地/栄駅までの所要時間(乗り換え時間・駅から駅への徒歩移動時間を含む)/乗り換え回数)
1位 小幡 4.65万円(名鉄瀬戸線/名古屋市守山区/15分/0回)
2位 新守山 4.75万円(JR中央本線/名古屋市守山区/13分/1回)
3位 枇杷島 4.80万円(JR東海道本線/清須市/15分/1回)
4位 黄金 5.10万円(近鉄名古屋線/名古屋市中村区/15分/1回)
5位 勝川 5.15万円(JR中央本線/春日井市/14分/1回)
5位 東海通 5.15万円(名古屋市営地下鉄名港線/名古屋市港区/15分/0回)
7位 伝馬町 5.20万円(名古屋市営地下鉄名城線/名古屋市熱田区/14分/0回)
7位 岩塚 5.20万円(名古屋市営地下鉄東山線/名古屋市中村区/14分/0回)
9位 庄内通 5.28万円(名古屋市営地下鉄鶴舞線/名古屋市西区/13分/1回)
10位 六番町 5.30万円(名古屋市営地下鉄名港線/名古屋市熱田区/13分/0回)
10位 御器所 5.30万円(名古屋市営地下鉄鶴舞線・桜通線/名古屋市昭和区/14分/1回)

1位の小幡駅は緑豊かでのどかな環境と生活の便利さが両立

1位は小幡駅で、家賃相場は4.65万円。小幡駅は名鉄瀬戸線の開業と同時に設置された駅で、古くから交通の要衝であった地域だ。駅周辺には瀬戸街道や県道15号線、千代田街道など幹線道路も多い。

愛知県営小幡緑地のアウトドア施設「オバッタベッタ」(写真/PIXTA)

愛知県営小幡緑地のアウトドア施設「オバッタベッタ」(写真/PIXTA)

所在地である守山区は名古屋市の北東部に位置し、区の面積に対する緑地面積の割合である緑被率は16区中でトップと、自然が豊富に残る。付近には県営の都市公園「小幡緑地」も。野球場などの運動施設や広い芝生広場などがあり、住民の癒やしの場になっている。

買い物施設や飲食店も充実しているほか、守山区役所の最寄駅であり、クラシックコンサートや映画の上映会などが開かれる「守山文化小劇場」もすぐそば。緑豊かでのどかな環境と生活の便利さを両立できそうだ。

2位は新守山駅。1位の小幡駅と同じく守山区に位置する。JR中央本線の普通列車の停車駅で、周辺は落ち着いた印象を受ける住宅街。駅周辺は、専門店も多数入っている総合スーパー「アピタ新守山店」やホームセンターなど、大型の商業施設も多く、買い物も非常に便利だ。

東海圏で熱狂的な人気のプロ野球球団「中日ドラゴンズ」の本拠地であり、今年「ナゴヤドーム」から改称されたばかりの「バンテリンドーム ナゴヤ」のJRの最寄駅は、新守山駅の隣駅である大曽根駅だが、新守山駅からドームまでの距離は3km弱。バスも運行しているが、野球好きにとっては、散歩がてら趣味も満喫できるエリアといえそうだ。

3位の枇杷島駅は清須市にあるが、東海圏の玄関口である名古屋駅とは隣駅で、駅間距離は約4km。名古屋駅は栄駅と同じく再開発が進められており、どちらへのアクセスも抜群なのは大きな利点だろう。

清須城(写真/PIXTA)

清須城(写真/PIXTA)

清須市は、愛知県が誇る戦国大名、織田信長が若いころに本拠地とした清須城があり、その信長の後継問題をめぐる清須会議も行われた場所。2005年に西枇杷島町、清洲町、新川町、その後09年に春日町を合併して誕生した新しい市で、ベッドタウンとして発展し続けている。

駅の周辺は企業の工場なども集まるが、市内は庄内川や五条川、新川などの河川が多く、河川敷などを活用した施設が充実している。新川沿いにある浄化センターの敷地を使った緑地公園「新川西部浄化センター緑地」の園内通路は、のどかな自然を楽しめるランニングコースとしても最適だ。

ちなみに、ランキングは栄駅から15分以内で算出しているが、20分以内に範囲を広げると、同じく清須市にある須ケ口駅(4.35万円)と二ツ杁駅(4.50万円)が、上位にランクインしている。須ケ口駅は名鉄名古屋本線と津島線、二ツ杁駅は名鉄名古屋本線の沿線駅で、やはりどちらも名古屋駅へのアクセスも非常に便利。名古屋市外であってもこの利便性は注目したいところだ。

“名古屋らしさ”を満喫できるエリア、活気ある住宅街もランクイン

7位の伝馬町駅は、名古屋市営地下鉄名城線の沿線駅。三種の神器の1つである「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」をまつる「熱田神宮」は、名鉄の神宮前駅が最寄駅であるが、熱田神宮の正門になる南口と東門の最寄駅は伝馬町駅だ。そのため、熱田神宮への案内効果を高める目的で、2022年度中に「熱田神宮伝馬町」駅への改名が予定されている。

熱田神宮(写真/PIXTA)

熱田神宮(写真/PIXTA)

その立地から観光地の印象を受けるが、周辺は住宅街としての面も持ち、ホームセンターなどの買い物施設にも困らない。一方で、史跡や老舗の飲食店なども数多い。旧東海道の唯一の海路であった「七里の渡し」の船着き場跡、常夜灯や鐘楼、桟橋を備えた「宮の渡し公園」のほか、熱田神宮と縁が深く、毎年12月に勇壮な火渡り神事が行われる「圓通寺」などがある。また、名古屋名物であるひつまぶしの登録商標を保持している「あつた蓬莱軒」など、“名古屋めし”を満喫できるエリアでもある。

9位の庄内通駅は、活気ある住宅街。周辺には、24時間営業の大型スーパーなどが入る商業施設「イオンタウン名西」やホームセンターなどがあり、買い物する場所には事欠かない。また、県の災害拠点病院や地域周産期母子医療センターの認定などを受けている「名古屋市立大学医学部附属西部医療センター」があり、いざというときも安心できるだろう。

通勤にしても遊ぶにしても、繁華街へのアクセスの良さは引越しに際に必ず気になるもの。繁華街の“近場”は同じく繁華街、と思いがちだが、そうとは限らないのが部屋探しの面白いところでもある。自分のライフスタイルは何を重視するかよく見極めれば、最適の部屋がきっと見つかるはずだ。

●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている栄駅まで電車で30分以内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ抽出期間】2021/3~2021/5
【家賃の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の管理費を含む月額賃料から中央値を算出(3万円~18万円で設定)
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、朝7時30分~9時の検索結果から算出(2021年6月30日時点)。所要時間は該当時間帯で一番早いものを表示(乗換時間を含む)
※記載の分数は、駅内および、駅間の徒歩移動分数を含む
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が1回までの駅を掲載

名古屋市初、民間による分譲マンション建替え事業

関電不動産開発(株)、野村不動産(株)および(株)長谷工不動産は、8月1日より、名古屋市内初となる民間による区分所有建物の建替え事業に着手した。今回建替えるのは、名古屋市営地下鉄東山線「本郷」駅徒歩1分に立地する「本郷センターハイツ」。同物件は、複合型(商業・住宅)の区分所有建物であり、古くから「本郷」駅前の顔として機能していた。しかし築後42年が経過し、老朽化が進んでいたことから、2014年8月より建替えを含めた将来計画の検討を開始。2015年5月に管理組合において「建替え推進決議」が可決された。

2018年5月には関電不動産開発が店舗部分の区分所有権を買い取り、区分所有者の立場からも建替えを推進、同年8月に管理組合総会において建替え決議が可決され、事業パートナーとして野村不動産、長谷工不動産が加わった。

建替え後は地上15階建てになり、1階部分に商業施設、2階以上に94戸の住宅を導入する。完成は2022年11月の予定。

ニュース情報元:関電不動産開発(株)

名古屋市西区にオフィス複合型商業施設、イオンモール

イオンモール(株)は、オフィス複合型商業施設の1号店「(仮称)ノリタケの森プロジェクト」を、愛知県名古屋市西区に出店すると発表した。同社がこれまで取り組んできた商業施設開発とは異なる、新たなビジネスフォーマットを構築。都市部に不足しがちな暮らし機能の充実を図ることで、単身生活者にとっても使いやすい商業施設を目指す。また、併設されるオフィスワーカーの昼食ニーズや健康サポートにも対応する。

計画地は名古屋駅北東1km、年間約31万人が来場する「ノリタケの森」や「トヨタ産業技術記念館」が近接する産業文化エリアに位置する。

開店は2021年秋の予定。都市型モールとしての文化性・利便性に加え、ビジネス拠点集約・移転需要も取り込むことで、新たなランドマークとして名古屋の魅力度向上に寄与できる複合型施設を目指す。

ニュース情報元:イオンモール(株)

名古屋市東桜一丁目に複合施設を開発、NTT都市開発

NTT都市開発(株)による「『(仮称)東桜一丁目1番地区建設事業』の計画提案に係る都市計画素案」が、3月15日付で都市計画決定の告示を受けた。この計画は、同社が都市再生特別措置法第37条の規定に基づき、名古屋市へ提案していたもの。

計画地は、久屋大通公園及び桜通に面した、同社保有「アーバンネット名古屋ビル」の北西に隣接。開発敷地面積は約1,934m2、延床面積は約30,900m2。地上20階、地下1階、塔屋1階の建物を建設する。

ICTを活用した最新鋭のワークスペースとオフィスサポート機能、オープンスペースににぎわいを与える商業施設を配置。久屋大通公園や地下街とつながりのあるオープンスペースや歩行者ネットワークの効果的な整備、土地の合理的かつ健全な高度利用を図ることで、同地区にふさわしい業務・商業・交流拠点の形成を目指す。

今後の計画としては、2019年9月に準備工事に着手、2022年1月に建物竣工、同年2月に開業予定。

ニュース情報元:NTT都市開発(株)

名古屋・錦二丁目再開発事業が着工

野村不動産(株)、旭化成不動産レジデンス(株)、NTT都市開発(株)及び(株)長谷工コーポレーションは、3月6日、「錦二丁目7番第一種市街地再開発事業」の新築工事に着手した。同地区は名古屋駅より東方向に約1.5km、名古屋市中区錦二丁目7番地内に位置する。錦二丁目地区は、かつて日本三大繊維問屋街に数えられるほどの発展を遂げたが、産業・流通構造の変化等により、現在は空きビルや駐車場が増加している。

このような状況の下、新たなまちづくりとして「これからの錦二丁目長者町まちづくり構想2011~2030」が策定され、複合市街地としてのまちづくりが期待されている。今回の再開発事業は、錦二丁目地区の再生・活性化をめざすリーディングプロジェクトとして位置づけられている。

開発はA地区(A棟、延べ面積:約45,050m2)とB地区(B棟、延べ面積:約4,900m2)に分けて行い、A地区には地上30階・地下1階の複合施設(住宅360戸、店舗、高齢者向け住宅42戸、駐車場)を、B地区には地上5階の駐車場・店舗を建設する。

また、かつて人々の交流の場となっていた「会所」や「路地空間」を再生・創出し、低層部の連続的な賑わいと交流、回遊性を向上させるほか、帰宅困難者のための一時避難スペースや防災備蓄倉庫等の防災支援機能も導入する。建物の竣工は2021年度の予定。

ニュース情報元:野村不動産(株)

愛知・春日井駅前の再開発事業が着工

野村不動産(株)、矢作建設工業(株)、岡谷鋼機(株)の3社が推進する「JR春日井駅南東地区第一種市街地再開発事業」(愛知県春日井市)の新築工事が着工した。JR中央本線「春日井駅」は名古屋市の北東部に位置する。駅周辺は商業機能が低下し細分化した低未利用地が多く存在するなど、駅前にふさわしい土地利用が図られていない点などが課題として挙げられていた。再開発事業では、都市機能が集約されたコンパクトシティの実現を目指す。

事業地はJR中央本線「春日井」駅徒歩1分、建築敷地面積約3,900m2。住宅、子育て施設、商業施設などの多様な都市機能によって賑わいを創出するため、地上23階建の複合施設(主要用途:住宅132戸、商業、駐車場)を建設する。竣工は2021年度を予定している。

ニュース情報元:野村不動産(株)

愛知県中部エリア最大級の「ららぽーと」、2020年秋に開業

三井不動産(株)は、愛知県中部エリア最大級となるリージョナル型ショッピングセンター「(仮称)ららぽーと愛知東郷町」の開発を推進しており、3月1日(金)に着工する。同施設は、愛知県愛知郡東郷町に立地。昨年9月にオープンした「ららぽーと名古屋みなとアクルス」に続き、東海3県2店舗目のららぽーととなる。施設は延床面積約190,200m2、店舗面積約63,900m2の4階建て。ファッション、雑貨、飲食、エンターテインメント、サービスなど、話題性の高い店舗を約230店揃える。

敷地内には約4,000m2の緑地を整備し、屋外イベントスペースを設ける。また、バスやタクシーの発着場となる交通広場も整備する。竣工・開業は2020年秋の予定。

ニュース情報元:三井不動産(株)

愛知県民が選ぶ住みたい街、トップは再開発が進む「名古屋」

(株)リクルート住まいカンパニーは、愛知県に居住している人を対象に、アンケート調査「SUUMO住みたい街ランキング2018 愛知県版/名古屋市版」を行った。調査期間は2018年1月31日(水)~2018年2月8日(木)。有効回答数は1,599人(うち名古屋市441人)。愛知県民が選ぶ住みたい街(駅)トップには、近年急ピッチで再開発が進み、2027年のリニア開業への期待が高まる愛知県の玄関口「名古屋」がランクインした。

住みたい理由には、「都会的な感じで、おしゃれなデパートや飲食店が多い。新幹線、近鉄、名鉄、地下鉄などが全て乗り入れているので、各所に出かける場合も便利。」(女性28歳)や、「笹島地区の開発が進み、にぎやかで飽きがこない感じがする。飲食店が充実している。」(男性42歳)などがあった。

続く2位には「金山」がランクイン。「名古屋駅に近く、JRに名鉄、地下鉄と路線も多い。市バスも各方面にある。買い物や飲食店、遊ぶところも多い。」(男性39歳)、「電車とバスが乗り入れる総合駅で、ショッピングモール、病院などの施設もそろっている。高齢になったときに便利そう。」(女性42歳)などが理由に挙げられた。

3位は「星ヶ丘」、4位「覚王山」、5位「豊橋」と、交通利便性の良い街や、以前から住宅街として人気の高い街がランクインする結果となった。

ニュース情報元:(株)リクルート住まいカンパニー

三井不動産、名古屋駅前に新たなランドマーク

三井不動産(株)は6月22日、「(仮称)名古屋三井ビルディング北館」を着工した。同計画は、名古屋最大のビジネス地区である名駅地区、名古屋駅とも地下街直結で徒歩4分以内という立地に、地上20階・地下2階、延床面積29,000m2の建物を建設。地下1階から地上3階までの商業施設と、最先端の設備を備えた5~19階までのオフィスを計画している。

商業施設はラグジュアリーブランドが軒を連ねる名駅通りのハイエンドなブランドストリートに面するだけでなく、地下街とも直結しエスカレーターでのスムーズな導線を実現。建物屋上にはオフィスワーカー専用のリフレッシュガーデンを用意する。オフィスでもなく自宅でもない「サードプレイス」と呼ばれる空間で、テナント企業の「働き方改革」の取り組みに貢献していく。竣工は2021年1月末の予定。

ニュース情報元:三井不動産(株)

東海3県で初のららぽーと、9月28日グランドオープン

三井不動産(株)は、本年9月28日(金)、大型商業施設「三井ショッピングパーク ららぽーと名古屋みなとアクルス」(愛知県名古屋市港区)をグランドオープンする。国内14施設目、東海3県(愛知県、岐阜県、三重県)としては初の「ららぽーと」となる。名古屋市営地下鉄名港線「港区役所駅」から徒歩2分に立地。「ヒトを繋ぎ、トキを紡ぐ“コネクトモール”」をコンセプトに、名古屋市の港エリアにできる新たなまち「みなとアクルス」の中核を担い、新たな地域交流・発信の場を目指す。

テーマが“WITH FAMILY”の「蔦屋書店」、“ポジティブなエネルギーと笑顔に溢れたお店”をコンセプトとした「RHC ロンハーマン」など、東京で人気のショップが東海エリア初出店。高感度ファッションや話題の飲食店等、幅広い世代のニーズに応える全217店が集結する。グランドオープンに先立ち、9月25日(火)に同施設が立地する「みなとアクルス」がまちびらきとなる。

ニュース情報元:三井不動産(株)