賃貸借契約の更新料、全国平均は0.31ヶ月

東急住宅リース(株)とダイヤモンドメディア(株)は、全国の賃貸マンションを対象に、賃貸借契約における更新料の設定月数に関する調査を実施した。調査期間は2018年6月1日~6月30日。調査対象は約174万件。インターネット上で入居者募集中の約800万件のデータの内、更新料の情報を持つデータを集計した。

それによると、全国平均(月額賃料に対する設定月数)は更新料0.31ヶ月で、更新料0物件を除くと0.89ヶ月だった。更新料有物件割合は34.6%、更新料無物件割合は65.4%だった。

更新料の設定月数が最も高い都道府県は、東京都の0.73ヶ月。2位は千葉県の0.68ヶ月。3位は神奈川県の0.64ヶ月。4位は埼玉県で0.59ヶ月、5位は京都府の0.54ヶ月。第4位まで首都圏(1都3県)が占めた。

一方、更新料の設定月合計が最も低い都道府県は北海道の0.02ヶ月で、2位は宮崎県の0.03ヶ月だった。

ニュース情報元:東急住宅リース(株)

賃貸住宅の「更新料」って何のためのお金? 絶対に払わなきゃダメなのか聞いてみた

一つの賃貸住宅に長く住み続けていると、更新料の支払いが意外と家計の負担になります。なかには、更新料を払うのが嫌で引越したという人もいるでしょう。そこで、更新料とは何なのか、絶対に払わなければいけないものなのか、メリットパートナーズ法律事務所の弁護士・木村康紀(きむら・やすのり)さんと、賃貸管理業を展開している住友林業レジデンシャル株式会社の大澤裕次(おおさわ・ゆうじ)さんにお話を聞きました。
更新料の有無は、地域性や個々の物件によっても違う

関東圏で賃貸住宅に暮らしていると、2年ごとに更新料を支払うことが一般的。まず大前提として、更新料が日本全国どこでも共通なのかが気になります。

「実は、更新料には地域性があります。大阪や名古屋では更新料がないケースのほうが多いのですが、京都では更新料があることのほうが多く、しかも関東よりも高額です。関東では賃料の1カ月分が一般的ですが、京都の場合は賃料の2~3カ月分の場合も珍しくありません」(大澤さん)

管理会社の立場で更新料について語っていただいた住友林業レジデンシャル株式会社の大澤さん(写真撮影/福富大介(スパルタデザイン))

管理会社の立場で更新料について語っていただいた住友林業レジデンシャル株式会社の大澤さん(写真撮影/福富大介(スパルタデザイン))

「確かに、10年前の国土交通省の資料によると地域性があることが分かります。ただ、最近は全国展開する仲介会社の影響で、地域に関係なく更新料がある物件も増えてきているようです」(木村さん)

出典:国土交通省「民間賃貸住宅に係る実態調査(不動産業者)」(平成19年6月公表)

出典:国土交通省「民間賃貸住宅に係る実態調査(不動産業者)」(平成19年6月公表)

更新料の有無は、地域性による傾向と、個々の物件によっても違うということですが、更新料がある物件とない物件の違いはどこにあるのでしょうか。

「基本的には大家さんの考え次第です。ただし、当社で管理している物件の場合は、ほとんどの物件に更新料が設定されています。賃貸契約に際して入居者さんが特に気にするのは、毎月の家賃と入居時にかかる初期費用です。一定期間住み続けてはじめて発生する更新料について交渉するのは最後の最後になるため、大家さん側もそこで他の物件と差別化を図っても、あまり入居促進の効果は期待できないと考えています」(大澤さん)

更新料は入居者の毎月の負担を軽くするために生まれた?

地域や物件によって更新料がない場合もあるとすれば、必ずしも更新料を支払う必要はないように思えるのですが、そもそも更新料というのはどういう位置付けのものなのでしょうか?

「個別の事情にもよりますが、平成23年の最高裁では『更新料は、一般に、賃料の補充ないし前払、賃貸借契約を継続するための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものと解するのが相当である。』とされています」(木村さん)

つまり、大家さん目線で更新料を考えると、月々の家賃を低く抑える代わりに頂くもの、継続して住居を提供することに対して頂く謝礼的なもの、という意味合いがあるようです。これは、大澤さんの認識とも合致します。

「部屋を借りる際に、毎月の家賃を低く抑えたいという要望は多いでしょう。更新料は、本来毎月支払う家賃を低く抑えるためにできたものと、業界内では解釈されています。入居した部屋が気に入らず、一定の期間に満たずに退去するなら、更新料はかかりません。毎月家賃として支払うよりは、そのほうが入居者側にもメリットがあると言えます。逆に更新料0円をアピールしながら、入居者サービスの会費等として毎月費用がかかるケースもあるので、注意が必要です」(大澤さん)

結局は、更新料という名目で1~2年に1回の割合で支払うのか、毎月の家賃や別項目として支払うのか、の違いのようです。

更新料の支払いを拒否することは可能? 最高裁ではこうなった!

では、請求された更新料に納得がいかない場合、更新料の支払いを拒否することはできるのでしょうか?

この点については、入居時の契約書にきちんと更新料の記載があるかどうかが最初の判断ポイントになるとのこと。契約書に記載がなければ、基本的には拒否できると考えて良さそうです。

では、契約書にはっきりと更新料について記載されている場合はどうでしょう? これについて木村さんは、平成23年の最高裁判例が一つの基準になると言います。

「最高裁判例では、更新料の支払特約自体は有効であると判断しています。契約時に合意したのであれば、請求額が過大でない限り、支払ったほうが良いでしょう」(木村さん)

【参考1】最高裁判例 平成23年7月15日
「賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らし高額に過ぎるなどの特段の事情がない限り、消費者契約法10条にいう『民法第1条第2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するもの』には当たらないと解するのが相当である。」【参考2】消費者契約法 (消費者の利益を一方的に害する条項の無効)
第十条 消費者の不作為をもって当該消費者が新たな消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたものとみなす条項その他の法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法第一条第二項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とする。

更新料の請求額が高過ぎなければ、拒否せずに支払ったほうが良いというご意見ですが、いくらなら「高過ぎない」と判断されるのかが気になります。実はこれにも判例があります。

「平成23年の最高裁判例では、1年更新で2カ月分の更新料を適法と判断しています。大阪高裁は、1年で3.12カ月分を適法と判断しています(大阪高判 平成24年7月27日)。つまり更新料の額が、1年更新で賃料の3カ月以下ならば、高過ぎないと言えるでしょう。ただ、その辺りが限界事例となるのではないかと思います」(木村さん)

先の【図1】における更新料の平均が0.1カ月~1.4カ月であることを見ると「この更新料は高過ぎるから違法だ!」と主張するには、なかなか高いハードルのようです。

更新料を払わないと、最終的には契約解除や金利の加算もあり得る!

それでも、もし更新料を支払わなかったらどうなるのでしょうか。実際には更新料以前に家賃の滞納などがあって、更新料も支払われないというケースが多いようですが、ここでは更新料にフォーカスするため、毎月の家賃や管理費についてはきちんと支払ったうえで、更新料だけを支払わなかったと仮定してお聞きしました。

「原則として、賃貸人(大家さん)から賃貸契約を解約するには『正当な事由』が必要です(借地借家法26条、28条)。解約できない場合は、期間が満了しても更新される法定更新になります。法定更新になった場合、賃貸人が更新料を請求できるかどうかは裁判例が分かれていますが、『法定更新の際にも更新料を支払う』と契約書に記載されていたと言えるかが重要となってきます。もし記載されている場合にこれを拒絶すると、解約の『正当な事由』があるとして、契約解除になる可能性もあります」(木村さん)

単純に契約解除・即刻退去というわけではなさそうですが、場合によっては契約解除に至ることもある上、「退去時に過去に遡って、支払われていない更新料の合計に金利も加算されて請求される可能性がある」(大澤さん)とのことです。

お二人の話をお聞きして、更新料については最初が肝心だと痛感しました。賃貸契約を結ぶときには、家賃や敷金・礼金のほうが気になるもの。しかし更新料についても、額や支払い条件を吟味して気になる点があればきちんと説明を求めましょう。

●取材協力
・メリットパートナーズ法律事務所
・住友林業レジデンシャル株式会社

首都圏の4割が賃貸の更新をタイミングに引っ越し、7割が更新料を「仕方がない」と思う

春の引っ越しシーズン到来!今年は人手不足が理由で、引っ越したいのに、引っ越し業者に断られる事例も多いという。そんななか、UR都市機構が賃貸住宅の居住者に引っ越しに関する調査をした。そのなかでも、更新料と保証人に注目して、調査結果を見ていくことにしよう。【今週の住活トピック】
「賃貸住宅居住者に聞く 引っ越しに関する調査」を公表/都市再生機構(UR都市機構)首都圏では「賃貸の契約更新前に引っ越す」人も多い

調査結果でまず面白いと思ったのは、「引っ越しを考えるタイミング」(複数回答)についてだ。

自身や家族の「就職・転職」(20.7%)や「異動・転勤」(14.0%)といった、勤務地がらみのタイミングが多い(合計で34.7%)ことは予想していた。だが、「結婚」(19.8%)や「進学」(9.4%)などのライフステージの変化よりも多いのが、「住んでいる家に不満が出た」(34.0%)や「より良い物件に住み替えたいと思った」(32.9%)といった、家に関することだったのは意外だ。

「勤務地なども変わるし、家も良くしたいし、心機一転引っ越しをするか」というように、複数の条件が重なると行動に移しやすいということなのだろう。

さらに注目したいのは、首都圏の賃貸居住者だけは「住んでいる家の契約更新が近づいた」タイミングで引っ越しを考えた人が40.9%もいることだ。大阪・京都・兵庫では14.9%、愛知では15.4%なのに比べると、突出して多い。

【図1】これまでに引っ越しを考えたタイミングとして、あてはまるものを全て選択ください。(出典:UR都市機構「賃貸住宅居住者に聞く 引っ越しに関する調査」)

【図1】これまでに引っ越しを考えたタイミングとして、あてはまるものを全て選択ください。(出典:UR都市機構「賃貸住宅居住者に聞く 引っ越しに関する調査」)

地域で異なる更新料事情、首都圏の7割は「更新料は仕方がない」と回答

では、「契約更新」とはどういうものなのだろうか?

賃貸住宅を借りるときには、大家さんと賃貸借契約を結ぶ。契約期間は2年間としている場合が多く、2年経った後も継続して住む場合は、同じ条件で契約を更新するというのが一般的。このときに、更新料を大家さんに払ったり、更新の手続きをするための手数料を管理会社に払ったりする場合がある。

ならば、「更新料がある賃貸住宅には住まない」と思う人も多いだろう。
調査結果では、そう考える人は24.5%いた。しかし、首都圏に限って見ると10.6%に減ってしまい、「更新料を払うのは嫌だが、仕方ないことだと思う」人が70.7%もいる。

【図2】賃貸住宅の契約更新料についてどのように思いますか?最もお気持ちに近いものをお選びください。(出典:UR都市機構「賃貸住宅居住者に聞く 引っ越しに関する調査」)

【図2】賃貸住宅の契約更新料についてどのように思いますか?最もお気持ちに近いものをお選びください。(出典:UR都市機構「賃貸住宅居住者に聞く 引っ越しに関する調査」)

なぜかというと、この更新料を払う仕組みは、首都圏で多い商慣習だからだ。国土交通省が実施した「平成28年度住宅市場動向調査」によると、「更新料有り」は首都圏では過半数の55.8%だが、近畿圏は19.1%、中京圏は15.6%となっている。加えて、更新料の金額は、「家賃の1カ月分」(首都圏86.0%、近畿圏、51.9%、中部圏50.0%)というのが最も多い。

つまり、首都圏では更新料がない賃貸住宅を探すことが難しい状況にあり、更新料を仕方がないと受け入れるか、更新を機に引っ越しをするかという発想になると考えられる。

このように、更新料の有無やその金額は地域や物件ごとに異なるが、双方の合意によるというのが根拠となるので、賃貸借契約書に必ず更新料について記載されているはず。契約時には必ず確認しておきたい。

7割が「保証人を頼みにくい」と感じている

UR賃貸住宅の調査結果では「保証人制度」についても質問している。

賃貸住宅を借りる場合、借りた人が家賃を払えなくなった場合に、代わりに払ってくれる保証人を立てるように求めるのが一般的だ。多くの場合は、借りた人と同じだけの責任を負う「連帯保証人」が求められるので、保証人を頼める人を探すのに苦労するということにもなる。

実際に調査結果では、「保証人を頼みにくい」(69.5%)、「頼める人がいない」(37.0%)といった回答が多くなっている。

最近は、保証人の役割を「保証会社」に依頼する事例も多くなっている。この場合は、契約時に家賃の5割程度を払うことが多いようだが、実際にはケースバイケースで、賃貸住宅ごとに保証会社が利用できるか(保証会社の利用が必須という場合もある)、費用はいくらかなどは異なる。

なお、UR賃貸住宅の場合は保証人が不要となっているが、どんな人でも保証会社が利用できたり、保証人不要となったりするわけではない。「自分の収入に見合った賃料の物件を選ぶ」ことがカギになる。

引っ越しのときに使えるカシコイ工夫は?

調査では、「初めて部屋を借りる人に対して、引っ越し費用を抑えるためにオススメしたい工夫」を聞いている。1位は「自分で荷造りを行う」(36.3%)、2位は「複数社に見積もりを依頼」(30.4%)、3位は「不用品を捨てる・売る」(26.6%)だった。

引っ越しで行った「不用品の処分方法」については、「普通ゴミとして出した」(50.0%)が最多。ところが、普通ゴミ以外の処分方法が年代によって少し異なるのが面白い。50-60代では「自治体に粗大ゴミなどとして依頼」が2番目に多いのに対し、40代以下では「リサイクルショップ・古着屋・古本屋に売る」が2番目に多くなり、少しでも換金したいという思いが伝わってくる。

さらに、20代では「フリマアプリで売る・譲る」や「家族や友人・知人に譲る」も多くなり、誰かに使ってもらおうという姿勢もうかがえる。

さて、契約更新の際には、更新料を払う可能性があるほか、保証会社を利用した場合の保証料や火災保険料なども新たに払うことになる。となると更新時にはかなりの費用がかかるので、住んでいる賃貸住宅に不満があるなら、もっと良い物件を探そうということになるわけだ。

この春、契約更新をきっかけに引っ越しを決めた人もいるのではないだろうか。