住居専用の賃貸マンションに週末だけ営業の個人店が20も。札幌の個性派スペース「space1-15(スペース イチイチゴ)」って?

北海道札幌市の中心部にある賃貸マンション「シャトー・ル・レェーヴ」。目立った店看板もなく、一見すると普通の居住用マンションですが、入り口のインターホン横には、店名がずらり。改装した各部屋で食堂や雑貨店、レコードショップなど約20店舗が営業しています。

当初3店舗から始まったマンション内の店舗群は「space1-15(スペースイチイチゴ)」と名付けられ、2023年で14年目を迎えました。地元でも知る人ぞ知るスポットである「space1-15」は、どのようにして運営を続けてきたのでしょうか。

来店客は、店主に入り口のオートロックを解除してもらう

街の区画が碁盤の目になっている札幌市の中心部。大通公園のやや西側にあたる、南1条西15丁目にやって来ました。周辺には美術館や大学病院などがあり、比較的大きな建物が点在する静かなエリアです。

市営地下鉄東西線または市電の駅からそれぞれ徒歩数分。大通りから路地に入ると、マンションが立ち並ぶ一角に今回の目的地「シャトー・ル・レェーヴ」が見えてきました。

写真中央のビルが「シャトー・ル・レェーヴ」(写真撮影/森夏紀)

写真中央のビルが「シャトー・ル・レェーヴ」(写真撮影/森夏紀)

外観は特に変わったところのない、8階建ての賃貸マンションです。ただし、正面入り口まで近づくと、木製の立て看板が目にとまります。

インターホンの前で、目的の店の部屋番号を確認できる(写真撮影/森夏紀)

インターホンの前で、目的の店の部屋番号を確認できる(写真撮影/森夏紀)

このマンションでは、42部屋のうち21部屋が居室ではなく店舗やアトリエとして利用されています。営業するのは、週末を中心に木曜から日曜まで。営業日や時間は店ごとに異なります。

初めて来た人は、どうやって中に入ればいいのか戸惑うかもしれません。目的の店が入る部屋のインターホンを押し、店主やスタッフにオートロックを解除してもらいます。一度ビル内に入ってからは、エレベーターか階段でほかの階にある店も訪ねることができる仕組みです。

入居するテナントは、洋菓子や軽食などの飲食店、ヴィンテージアイテムや布雑貨、ジュエリー、器、レコードなどの小売店など。写真や木工の教室も開催されています。

ビル内の共用部の造りは、基本的にどの階も同じ。ところが、各店のドアから先には、思い思いの光景が広がります。

501号室のレコードショップ「Takechas Records(タケチャス・レコーズ)」(写真撮影/森夏紀)

501号室のレコードショップ「Takechas Records(タケチャス・レコーズ)」(写真撮影/森夏紀)

「Takechas Records」店内(写真撮影/森夏紀)

「Takechas Records」店内(写真撮影/森夏紀)

503号室の洋菓子店「CAPSULE MONSTER」(左)と、502号室のエナメルアクセサリー教室「MEDO」(写真撮影/森夏紀)

503号室の洋菓子店「CAPSULE MONSTER」(左)と、502号室のエナメルアクセサリー教室「MEDO」(写真撮影/森夏紀)

「CAPSULE MONSTER」店内(写真撮影/森夏紀)

「CAPSULE MONSTER」店内(写真撮影/森夏紀)

こうしたお店の存在は、マンションの前を通っただけだと気がつかないかもしれません。

観光都市である札幌の中心部にありながら、まさに“知る人ぞ知る”を体現しているspace1-15。なぜこのような営業スタイルをとっているのでしょうか? 同ビルをプロデュースした堤曠龍(つつみ ひろたつ)さんにお話を伺いました。

商業空間デザインの経験値とアイデアを賃貸マンションに

札幌市出身の堤さんは、東京でデザインや広告の仕事をした後、2000年代前半に札幌に戻り、やがて独立。店舗プロデュースの事業会社など5つの会社を経営し、16もの店舗の運営を統括するようになりました。

札幌市内を中心に展開するコーヒーショップ「森彦」の2号店「ATELIER Morihiko(アトリエ モリヒコ)」をはじめ、日本酒と豆腐料理の店や、チーズケーキと深入り珈琲の店など、お客さんが行きたくなるような仕掛けづくりの経験を重ねていった堤さん。専門学校の講師も務めていたことから「このマンションに住んでくれる生徒を紹介してくれないか?」と話を持ちかけられたのが、「シャトー・ル・レェーヴ」でした。

「シャトー・ル・レェーヴ」はフランス語で「夢の城」という意味(写真撮影/森夏紀)

「シャトー・ル・レェーヴ」はフランス語で「夢の城」という意味(写真撮影/森夏紀)

交通のアクセスはいいものの、物件としては古く、入居者がなかなか集まらない。そんなビルに堤さんが提案したのは、空き部屋を作家のアトリエとして活用することでした。

どの部屋も7坪で、キッチンやユニットバスを備えたワンルーム。「人間が目を配れるのは10坪以内」という経験則があった堤さんは、ちょうどいい広さだと考えたそう。「つくったものは売りたくなる。このマンションの部屋では、作家が販売もすることになると思う」とビルの管理者を説得。ほかの部屋に住民は住んだまま、賃貸マンションながらアトリエ兼店舗として部屋の活用が始まりました。

2009年のオープン時は、3部屋から店舗営業がスタートします。堤さんが開いていた起業塾で知り合った生徒のうち、手づくり石けんを販売する「Siesta Labo.(シエスタラボ)」と、ブーケやリースなども扱う植物の店「losika(ローシカ)」が最初の入居者。堤さんも自身の書庫をつくるようなイメージで、本と雑貨、コーヒーを用意する「書庫・303」を出店しました。

303号室の「書庫・303」(写真撮影/森夏紀)

303号室の「書庫・303」(写真撮影/森夏紀)

「書庫・303」店内(写真提供/書庫・303)

「書庫・303」店内(写真提供/書庫・303)

当初の入居条件は、堤さんが1年以上話したことのある人。

「最近は知り合い以外の人も入居しますが、それでも入居を決めるまでに何度も顔を合わせます。分かりやすく売れる立地ではなく、それを逆手にとった仕掛けをしている場所なんです。だから、このマンションに合う人じゃないと店として成立しない」(堤さん)

「分かりにくい店」を探して来てくれた人は、2度目に誰かを連れて来る開設10周年、2020年当時の「space1-15」入居一覧(写真撮影/森夏紀)

開設10周年、2020年当時の「space1-15」入居一覧(写真撮影/森夏紀)

「あえて分かりやすくしない」ことが、このビルを続けるうえで重要だったと堤さんは話します。

例えば「space1-15」の由来は、このビルの立地が「札幌市中央区南1西15丁目」だから。言われてみればなるほど、とうなずけるシンプルなネーミングですが、ここにも堤さんのこだわりがありました。

「オープン当時、地図アプリなんて普及していなかった。『一体どこに店があるんだろう?』と迷いながら来てくれるお客さんに向けて、ヒントのように名付けました。苦労してたどり着いた店がおもしろい空間であれば、そのことを人に言いたくなるし、今度は人を誘ってまた来たくなる」

また、マンション内は現在も、「space1-15」の店主たちと、住まいとして部屋を借りる住民が共存しています。店舗の運営にあたり「音や匂いなど何か運営ルールはあるのか」と筆者が聞いたところ、「最初にそういうことを聞いてくる人は、そもそも入居できないんです」という答えが。

堤さんが大切にしているのは、この場に一律のルールをつくらないこと。言われなくても周りの人、近所の人のことを考えて過ごせる人であることが入居の条件です。

「近所の人といい関係をつくること。このマンションだけでなく、周辺も住宅地ですから、もし地域の人に嫌われてしまったら、先がない。お客さんだけでなく、地元の人にも『いい場所だな』『人に教えたいな』と思ってもらえれば、そこからも集客の可能性が広がっていきます」

「書庫・303」店内(写真提供/書庫・303)

「書庫・303」店内(写真提供/書庫・303)

例外的にひとつだけ設けているルールは、週末にのみ営業すること。大半の店の営業日は土曜や日曜を中心に、多くて週4日です。

「店主にも休みが必要です。自分の身の周りを整える日、誰かに会いに行く日、家族など自分の大切な人のための日。休みは最低3日いると思うよと、入居する店主には伝えています」

「店を続けていくのは難しいこと」 4度目の誘いで出店

一方、なぜ入居店主はspace1-15に集まるのでしょうか。2014年に入居した「Takechas Records(タケチャス・レコーズ)」店主の井上武志さんにお話を伺いました。

(写真撮影/森夏紀)

(写真撮影/森夏紀)

偶然にも「space1-15」のスタートと同じ2009年に、札幌を拠点にWebショップ「Takechas Records」を始めた井上さん。実店舗を持つことには抵抗があったといいます。

「店をつくることはできても、続けていくのは難しい。自分に店舗はまだ早いと思っていました」

実店舗は持たずとも、レコード店が普通はやらないことをしようと、当時できたばかりのチカホ(札幌駅前地下歩行空間)(※)への出店など、レコードのイメージとは離れた場でのポップアップショップを続けていた同店。そこにプロデューサーの堤さんがやって来るようになります。

「最初は、謎の人だなと(笑)。space1-15への入居を誘われる度に断って、最終的には4度目の誘いをお断りするために、私のほうから手紙を持参して会いに行きました。なのに、何か呪文にかかったように、気づいたら店をやることになったんですよね。『あれ? やることになっちゃった』と思って(笑)。space1-15が、みんなの入りたがっているビルだということは、後から知りました」

マンションの一室であることも、井上さんにとっては戸惑いの一因に。「内装は何をやってもいい」という堤さんの言葉を受け、部屋を改装しながら営業を始めることになりました。

※2011年にオープンした、地下鉄札幌駅と大通駅をつなぐ全長約520m、幅12mの通路。通路脇や複数の広場で1年を通してさまざまなイベントが開催されている。

堤さんに手伝ってもらい、DIYで仕上げた店内(写真撮影/森夏紀)

堤さんに手伝ってもらい、DIYで仕上げた店内(写真撮影/森夏紀)

日々の「異種格闘技」から、若い世代が通う店へ

営業を始めてみると、ここでは否が応でもほかの店を意識してしまったそう。

「最初は、なんというか異種格闘技。これまでも雑貨イベントに出店することはありましたが、店を開いてからは日常的に『いまどきレコード?』と言わんばかりの、好意的じゃないお客さんの波にも揉まれるようになって。レコードを昔のもの扱いされちゃうこともありました」

新しい店では特に、「自分の好みを押し付けず、来てくれた人と共有する」という感覚で接客するようになったという井上さん。年月がたち、段々と店が知られるようになると、お客さんの反応にも変化が。ここ数年はレコードが再評価される動きが広がっており、「Takechas Records」は外国からの観光客が空港から直行してくれることもあるそう。

「今、一番若いお客さんは小学生。お父さんとお母さんに連れられて来るけど、ご両親はレコードに親しんできたわけじゃないんです。本人が好きなんだって。ほかにも、通ってくれている中高生が、ミュージシャンとして活躍するようになりました。うちの店は『初めてレコードを買う』という人がすごく多いから、そういう場に立ち会えると、なんともうれしい気持ちになりますよね。そんな人を増やしていきたいなとも思います」

マンション内の店主同士の関係については、「緩やかな共同体」だと話します。

「うちに来てくれるお客さんが、隣のケーキ屋さんのお客さんでもある。強い仲間意識はないけど、かといって全く他人とも思っていない感じです。やっぱり皆さんいろんな事情があるから、もっと大きな店に移転する方もいれば、店を辞められる方もいる。顔を合わせる機会が少なくなるのを、寂しく思う気持ちはありますね」

space1-15全体では、新型コロナウイルス感染症の流行前まで「あさいち」というイベントを開催。他店舗同士がコラボして限定商品を販売するなどの取り組みをしていました。

お客さんの熱量が、「分かりにくさ」を超えてくるマンション内の共有スペースに設置されたフロアマップ。詳しい説明は書かれていない

マンション内の共有スペースに設置されたフロアマップ。詳しい説明は書かれていない(写真撮影/森夏紀)

あえて派手な宣伝はせず、マンション前に大きな看板を掲げることもしない。オートロック式の店内で週末営業。こうしたspace1-15のスタイルに、井上さんは慣れたのでしょうか? 

「僕はこのビルのファンで入居したわけじゃないから、やっぱり最初は『どうしてそんなにお客さんを振り落とすんだろう?』って思いました。ただ、お客さんの『来たい』という熱量が上がれば、そこをも越えてくるんだなと。入居時と比べて、このシステムに戸惑う人は減っている気がします。それは、店主の皆がそれぞれ外のイベントに出店する機会などを経て、space1-15を気に入ってくれそうな人に対して、確実に広めていった結果でもあるのかなと」

「堤さんからは『何でもいいから相談してくれ』と言われているので、本当に何でも相談するし、軽口も言えます。なんか変だなと思うことを言い合えるような関係が築けたのは、彼の度量の大きさがあるからだし、ありがたいです」

取材を申し込む数日前に、筆者が個人的に来店したことも覚えていてくださった井上さん。訪れた店で生まれた会話や、見つけたものを大事に持ち帰りたくなる魅力がspace1-15にはあると感じました。

タイミングを大事に、人が場をつないでいく

運営を続けていくうちに客層が広がり、現在は若者から年配の方までが集まるようになったというspace1-15。同ビルから卒業した店舗は、数年で力をつけてスタッフを雇うまでに成長するケースもあるといいます。

取材の最後に、プロデューサーの堤さんは「大事なのは、タイミングと人の縁。タイミングは、つくろうと思ってつくれるものではないから」と話してくれました。

実は筆者がこのビルに初めて足を踏み入れたのは、市内の高校に通っていた2010年ごろ。地元のカフェ店主が常連客を紹介してくださり、さらにその人が「こういう場所には来たことがないでしょう」と案内してくれたのが「space1-15」でした。

それまで駅ビルに入るテナントやチェーン展開のファストフード店に行くばかりだった筆者は、個人店の店構えに緊張しつつ、まったく画一的ではない手づくりの空間で、自分のつくったものや選んだものを売る人たちの姿から、子どもであっても1人の客として接してくれる誠実さを感じました。案内してくれた人に「いいと思った店にはお金を払うのが大切」と教えてもらったことも、自分で働き始めてからのお店選びや生活スタイルに影響しています。こんな風に人の記憶に残る場所が街の起点となり、地域の輪郭がつくられていくのではないでしょうか。

●取材協力
・space1-15
・商業空間プロデューサー 堤曠龍さん
・Takechas Records(タケチャス・レコーズ)

北海道・札幌市「住みたい街ランキング」駅1位は札幌! 新球場開業で注目の北広島も上位にランクイン

リクルートは「SUUMO住みたい街ランキング 2023 北海道版/札幌版」を発表。3年ぶりに発表された今回の「住みたい街ランキング」ではどのような街がランクインしているのか。ランキングの結果と共に、ランクインした街の魅力を見ていこう。

「住みたい街(駅)」は北海道版、札幌版共に「札幌」が1位

今回取り上げる「住みたい街ランキング」は、北海道に居住している20歳~49歳を対象に、今後「住んでみたいと思う街(駅)」などを調査したもの。北海道民、札幌市民が「住んでみたい」と憧れる街のランキングだ。

北海道 住みたい街(駅)ランキング

※→2020年より特典を合算しはじめた/合算方法が変わった駅の集計結果

札幌市 住みたい街(駅)ランキング

※→2020年より特典を合算しはじめた/合算方法が変わった駅の集計結果
**→名称が同じ複数の駅を2020年より別の駅として集計した結果

前回2020年の調査結果に引き続き、2023年の「住みたい街(駅)ランキング」では、北海道版、札幌版共に北海道最大のターミナル駅「札幌」が1位に選ばれた。3位も北海道版、札幌版共に「大通」がランクインしているが、札幌や大通といえば、言わずと知れた札幌都心。都心ならではの高い交通利便性、生活利便性はもとより、大通公園などが身近で、暮らしの中に緑も感じられるという住環境も“住む街”として魅力的なポイントだ。

それに加え、札幌から大通、すすきのといった都心部では2030年度末の北海道新幹線延伸開業に向け、再開発やビルの建て替えなど複数のプロジェクトが進行中で、狸小路に今年7月にオープンした「moyuk SAPPORO」に続き、今秋にはすすきのに「COCONO SUSUKINO」も開業予定だ。

札幌都心部では再開発やビルの建て替えなど複数のプロジェクトが進行中(画像/PIXTA)

札幌都心部では再開発やビルの建て替えなど複数のプロジェクトが進行中(画像/PIXTA)

札幌駅周辺も、北口では「さつきた8・1」が2024年春のグランドオープンを控え、南口ではエスタ跡地に超高層複合ビルが2028年度竣工を予定している。札幌都心部はもともと「住みたい街」として圧倒的な人気を誇るエリアだが、今後の街の進化は、訪れる人だけでなく住む人からも期待や注目を集めている。

北海道全体のランキングでは「新札幌」「桑園」「北広島」がランクアップ

そのほかのトップ10に選ばれた街を見てみると、「北海道 住みたい街(駅)ランキング」では、札幌市内の街だけでなく、過去のランキングでも上位に選ばれていた2位の「函館」、6位の「旭川」、10位の「五稜郭」など、道内外から広く人が訪れる知名度の高い街が安定のランクイン。札幌市内についても、成熟した住宅地として人気の「円山公園」が5位に選ばれた。

一方で、前回のランキングでは5位の「新札幌」が4位に、9位の「桑園」が7位にランクアップし、圏外だった「北広島」は今回8位と、トップ10入りを果たしている。

今回4位の「新札幌」は2018年からスタートした再開発で、大学や専門学校、医療施設やホテル、タワーマンションなどが誕生。2023年11月には商業施設「BiVi」が開業予定で、ついに新しい街「マールク新さっぽろ」がまちびらきを迎える。大規模な再開発で街の魅力も注目度もアップした。

7位の「桑園」は札幌駅の1駅隣の駅で、終電後もタクシーや自転車などで帰宅しやすい都心との距離感。札幌競馬場の最寄駅で北海道大学も近いため、にぎわいのある駅ではあるが、街自体は比較的閑静な住宅街の雰囲気だ。

桑園駅(画像/PIXTA)

桑園駅(画像/PIXTA)

駅のそばにはイオンやホーマックなどがあり、日常の買い物をしやすい住環境。駅から徒歩圏の札幌市中央卸売市場場外市場では新鮮な食材が手に入るのもうれしい。さらに、駅近くに市立札幌病院がある点も、暮らす街として安心感につながるポイントだ。

最近では駅周辺におしゃれな雑貨店や飲食店、スイーツ店などが増えてきているという街の変化も、住みたい街としてランクアップした理由の一つとして挙げられるだろう。

そして今回8位にランクインした「北広島」はもともとベッドタウンとして発展してきた街だが、2023年3月に「北海道ボールパークFビレッジ」が開業し一気に注目度が高まった。「北海道ボールパークFビレッジ」には北海道日本ハムファイターズの新たな本拠地となる新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」をはじめ、宿泊施設やショッピング・飲食施設などが集結。施設開業による注目度アップに伴い、公示地価や基準地価でも変動率トップとなり話題になっている。今後北広島駅前では再開発も予定されており、引き続き、街の盛り上がりから目が離せない。

新球場の「エスコンフィールドHOKKAIDO」。野球ファンだけでなく、多くの人が集まる憩いの場となっている(画像/PIXTA)

新球場の「エスコンフィールドHOKKAIDO」。野球ファンだけでなく、多くの人が集まる憩いの場となっている(画像/PIXTA)

札幌市のランキングでは「北24条」が2018年以降で最高位の8位に。「平岸」もトップ10入り

「札幌市 住みたい街(駅)ランキング」は、全体的に前回のランキングの顔ぶれから大きな変化はないが、「北24条」は2018年以降で最高位の8位にランクアップ。前回12位だった「平岸」は10位という結果となった。

8位の地下鉄南北線「北24条」駅にはバスターミナルが併設されており、札幌都心部だけでなく、空港などへのアクセスも便利。駅周辺には飲食店が充実しており、にぎやかな繁華街の一面を持つ一方、周辺には落ち着いた住宅地が広がる。札幌市北区役所や区民センターをはじめ、官公署や公共機関も集中しており、日常に必要なものが身近に整う暮らしやすさは魅力的だ。

そして、10位にランクインした同じ地下鉄南北線の「平岸」駅も札幌や大通まで地下鉄で直通。駅近くの総合病院「KKR札幌医療センター」は救急などいざという時に心強い存在だ。豊平川も身近で、周辺には大小の公園が点在しており、子育てファミリーにも人気が高い。

ちなみに、「北24条」駅が位置する「札幌市北区」は、実は「住みたい自治体ランキング」で、北海道版、札幌市版共に2位にランクイン。圧倒的1位は「住みたい街(駅)ランキング」上位の「札幌」「円山公園」「大通」などが位置する「札幌市中央区」だが、「平岸」駅がある「札幌市豊平区」も北海道版のランキングでは3位、札幌市版では4位と上位に選ばれている。

北海道 住みたい自治体ランキング

札幌市 住みたい自治体ランキング

住みたい沿線ランキングでは天候の影響を受けにくい地下鉄が人気

ここまでは住みたい街(駅)や自治体のランキングを見てきたが、「住みたい沿線」のランキングに目を移してみよう。

北海道 住みたい沿線ランキング

「住みたい沿線ランキング」では1位「地下鉄東西線」、2位「地下鉄南北線」と、雨や雪など天候の影響を受けにくい地下鉄が上位に選ばれた。

札幌市内を走る地下鉄は東西線、南北線、東豊線の3路線あるが、1位の「地下鉄東西線」は西区に位置する宮の沢駅から厚別区の新さっぽろ駅までを結ぶ路線だ。東西線沿線の街というと、憧れの住宅街として知名度の高い「円山公園」や西区の中心的な街である「琴似」などがあり、「北海道 住みたい街(駅)ランキング」の上位にもランクインしている。

そして2位の「地下鉄南北線」は北区の麻生駅から南区の真駒内駅を結んでおり、さっぽろ、大通、すすきのといった都心の主要駅をすべて通る路線。沿線の街では、「大通」に加え、始発駅の「麻生」や、前述した「北24条」、「平岸」などが「札幌市 住みたい街(駅)ランキング」トップ10に選ばれている。

なお、もう1本の地下鉄路線、地下鉄東豊線をおさえ上位にランクインしたのは「JR函館本線」と「JR千歳線」だ。どちらのJR線も札幌駅を通り、3位の「JR函館本線」は今回住みたい街ランキングで上位に入る「函館」や「旭川」、「五稜郭」なども結ぶ路線。4位の「JR千歳線」は新千歳空港駅へのスムーズなアクセスが魅力だ。

「JR函館本線」「JR千歳線」沿線の駅が、穴場だと思う街(駅)ランキングの上位を独占

「JR函館本線」と「JR千歳線」については、住みたい街ランキングと同時に集計した「北海道 穴場だと思う街(駅)ランキング」のトップ5を独占するという結果になっているのも興味深い。

北海道 穴場だと思う街(駅)ランキング

この「穴場だと思う街(駅)ランキング」は交通利便性や生活利便性が高いのに、家賃や物件価格が割安なイメージがある駅を調査したもの。

上位5位はすべてJR函館本線、JR千歳線沿線の駅で、1位の「札幌」、2位の「新札幌」、3位の「北広島」、4位の「桑園」は前述した通り、どの街も「住みたい街ランキング」で上位にランクインし、再開発や、新施設・新店舗の誕生などで注目を集める街ばかりだ。

そんな中、「住みたい街ランキング」では23位の「手稲」が「穴場だと思う街(駅)ランキング」では4位に選ばれているが、「手稲」は札幌市手稲区に位置する街。札幌駅まで直通で、快速エアポートも停車し、都心部や空港へのアクセスがスムーズだ。また、手稲山に近く大自然を身近に感じられる住環境で、隣接する小樽市に足を延ばせば、海のレジャーも気軽に楽しむことができる。さらに、札幌市内という立地ながら、比較的家賃相場も抑えられており、交通利便性の高さや恵まれた住環境を考えると、まさに穴場の街と感じる人も多いだろう。

札幌市手稲区の前田森林公園(画像/PIXTA)

札幌市手稲区の前田森林公園(画像/PIXTA)

今回紹介したどのランキングも、「札幌」の圧倒的な人気の高さをあらためて思い知らされる結果となっていたが、そのほかにも、「円山公園」や「函館」など、知名度やブランド力のある街が安定的に高く支持されているという点も目を引いた。

そして同時に、今回のランキングからは「北広島」「新札幌」「平岸」など、再開発で進化する街への期待値の高さも伺えた。年月をかけて確立された街の個性が人を惹きつけるということもあるが、街の変化、変容というものも、この街で暮らしてみたいと思わせる重要なファクターになっているようだ。

今後は人気の札幌都心部で再開発が加速していくが、都心部の進化と共に、北海道民、札幌市民の「住みたい街」がどのように変化していくのか、引き続き注目していきたい。

●関連ページ
SUUMO住みたい街ランキング2023 北海道版/札幌市版

「新さっぽろ駅」周辺地区で大規模複合開発プロジェクト

大和ハウス工業(株)、大和リース(株)、新さっぽろ脳神経外科病院、札幌学院大学などからなるコンソーシアムは、「市営住宅下野幌団地」跡地(札幌市厚別区)などにおけるG街区及びI街区(合計約49,000m2)を取得。「(仮称)新さっぽろ駅周辺地区G・I街区開発プロジェクト」として共同開発に着手する。

「新さっぽろ駅」周辺地区は、札幌市の一点集中型の都市構造から、多核心的都市構造へ誘導するための「副都心」として位置付けられており、JR・地下鉄・バスターミナルなどによる一大交通結節点として、公共施設や商業・業務機能が集積している。

同プロジェクトでは、G街区に大学と専門学校、I街区に分譲マンションやホテル、商業施設のほか医療施設4棟を計画。開発総敷地面積は約55,700m2(札幌ドーム約1個分)の大規模複合開発プロジェクトとなる。

分譲マンションは地上30階建て・総戸数約210戸、工期は2020年3月~2022年11月の予定。ホテルは地下1階・地上12階建て・約220室、開業は2023年4月以降。商業施設(地上5階建て)の開業も2023年4月以降を予定している。

またI街区では、各施設を「アクティブリンク(空中歩廊)」で接続し、JR「新札幌駅」北側とも空中歩廊でつなげることにより、歩行者の利便性を向上させる計画だ。

ニュース情報元:大和ハウス工業(株)