あなたの家の火災報知器は大丈夫? 設置義務化から10年経過で新たな問題

防災の日(9月1日)を中心に、今年は9月5日までが「防災週間」です。近年、多様化する災害に備えた取り組みが全国で展開されています。自宅でも防災グッズを備えるなど意識は高まっていますが、法律で設置を“義務”付けられているのが「住宅用火災警報器」。
実は今、その火災警報器が設置していても機能しないという問題が増加中で、消防庁も注意喚起を促しています。
火災警報器設置率は全国で82.3%。義務化後、被害は半減

2006年、消防法の改正で全国の新築・既築全ての住宅に火災警報器の設置が義務付けられました(東京都は2004年に施行)。今年8月に消防庁から発表された、全国での住宅火災警報器設置率は82.3%(※)。

それを聞き、「あれ?そんなにみんな設置してるんだ!」と焦ったのは筆者だけ?

新築住宅やマンションなどは建築確認もあって必ず設置されているでしょうが、既築の戸建は自分で購入・設置するので未設置なところがまだ多いかも(筆者も築15年の戸建に住んでいます)。

実は筆者、何を隠そう35年前、実家が全焼し自分も煙で死にかけた経験があるにも関わらず(!?)未設置とは、大反省。

未設置に罰則は無いものの、命を守るためには自ら防災意識を高めなければと自戒の念で取材をしました。

住宅火災警報器の有無によって、被害に差が。設置の効果が現れる(資料/消防庁ホームページ)

住宅火災警報器の有無によって、被害に差が。設置の効果が現れる(資料/消防庁ホームページ)

順調に設置住宅数が増える中、ここへ来て新たな課題が出てきたということで、消防庁からも警鐘が鳴らされています。住宅火災警報器を設置しているにも関わらず、機能していない可能性があるというケースが増加しているようです。

正しい場所に設置している?台所よりも重要な部屋とは

以下のデータは、住宅火災警報器の設置義務化が1970年代後半、日本より先に施行された米国の調査結果です。設置により犠牲者の数は減っているものの、設置済み住宅での犠牲者が約2割あるという事実が示されています。

1970年代後半より設置義務化となった米国。義務化以前より犠牲者は半減しているが、義務化後の設置済み住宅でも犠牲者が出ている理由があります(資料/パナソニック)

1970年代後半より設置義務化となった米国。義務化以前より犠牲者は半減しているが、義務化後の設置済み住宅でも犠牲者が出ている理由があります(資料/パナソニック)

火災警報器設置住宅において犠牲者が出る理由の一つに、適切な場所に設置されていないケースがあります。
全国の設置率は82.3%でしたが、条例適合率(市町村の火災予防条例で設置が義務付けられている住宅の部分すべてに設置されている世帯の全世帯に占める割合)は67.9%と低いのです。

条例で義務付けられている設置場所は、基本的には“寝室”と“寝室がある階の階段上部(1階の階段は除く)”。住宅の階数等によっては、その他の箇所も必要になる場合があります。

2階建て住宅の場合の基本的な設置場所は、寝室(図の1)と、寝室のある階の階段上部(図の2)。市町村の火災予防条例により、台所やその他の居室にも設置が必要な地域があるので、管轄の消防本部・消防署へ確認が必要(資料/パナソニック)

2階建て住宅の場合の基本的な設置場所は、寝室(図の1)と、寝室のある階の階段上部(図の2)。市町村の火災予防条例により、台所やその他の居室にも設置が必要な地域があるので、管轄の消防本部・消防署へ確認が必要(資料/パナソニック)

筆者の実家火災のケースは、父が出勤後の早朝、母が弟の弁当を作っていた揚げ物油が発火したという台所からの失火。2階で寝ていた筆者と弟は、1階から母が叫ぶ声で起き、階段に面したドアを開けた瞬間……煙に襲われ、息が詰まりました。

なので、火の元がある台所への設置が優先されるのでは?と思いがちですが、就寝中に起きる火災は気付くのが遅れて死に至る危険性が高いとのこと。義務化の設置場所として“寝室”が優先される理由です。さらに用心するために、台所への設置も推奨されています。

最近の機器は、複数の部屋をワイヤレスで連動できるものがあるので商品をチェックしてみてください。

複数の部屋を連動して警報を発する連動型の火災警報器。最近は警報ブザー音だけでなく「火事です!」と音声で知らせてくれる(資料/消防庁ホームページ)

複数の部屋を連動して警報を発する連動型の火災警報器。最近は警報ブザー音だけでなく「火事です!」と音声で知らせてくれる(資料/消防庁ホームページ)

さらにもう一つ、設置していて機能しないケースで最近増えている問題があります。

まさかの電池切れ!機器の寿命は10年だった!?

先の米国データにある現象、警報器を設置している住宅での犠牲者が日本でも発生しています。消防庁調査でも作動確認を行った警報器の1%は作動しなかったと言います。義務化の法令施行から13年が経過し、多くの住宅の火災警報器が設置後10年以上となった結果、電池切れと機器の故障が発生しているのです。

昨年あたりで寿命となる警報器は4000万~5000万台にのぼり、電池が切れると一定期間ブザーが鳴り続けるなど、消防やメーカーへ問い合わせが増え、対応に追われているとのこと。あなたのお宅でも慌てることがないように、設置後も点検と性能維持が重要です。

点検の方法は、以下の図のようにして反応を確認することです。

作動確認の仕方は、警報器のボタンを押す/紐を引く。何も音が鳴らなかったら、電池切れか故障(資料/パナソニック)

作動確認の仕方は、警報器のボタンを押す/紐を引く。何も音が鳴らなかったら、電池切れか故障(資料/パナソニック)

設置して5年前後のものであれば電池切れの可能性もあるので、電池を入れ替えてみること。それでも音が鳴らない場合は、機器が劣化して機能していないということになるので交換するべき。設置後10年経っている場合は、ほぼ機器の寿命なので取り替える必要があるそうです。

さっそく、筆者宅でも寝室に火災警報器を設置。製品に同封のネジを天井に2カ所留めるだけ。ボタンを押して作動確認!(写真撮影/藤井繁子)

さっそく、筆者宅でも寝室に火災警報器を設置。製品に同封のネジを天井に2カ所留めるだけ。ボタンを押して作動確認!(写真撮影/藤井繁子)

火災による犠牲者の主な死因は、「一酸化炭素中毒・窒息」と煙を吸って気絶したまま「火傷」するというもの。筆者もあの煙を、もう一呼吸吸っていたら気絶していたのでしょう。火災の煙は、恐ろしく濃いものでした。当時は母も40代、筆者も弟も10代だったので、即座に2階の窓から飛び降りて逃げることができましたが、もし歳をとっていたら、あるいは高齢者と同居していたら助からなかったかもしれません。

火災の犠牲者は減っている中で、高齢者の占める割合は約7割と増加しています。死亡火災は就寝時間帯、ストーブによる出火、逃げ遅れが最も多いケースとなっているそうです。

ぜひ、みなさんも火をつかう機会が増える冬が来る前に、火災警報器を点検し、10年経っているものは迷わず買い替えて用心していただきたいと思います。

ちなみに、設置義務のない消化器ですが、同じく約10年が寿命のようです。(置いているだけで、用心しているつもりの筆者。消化器も買い替えなきゃ!)

※この調査は、消防庁が示した訪問調査を原則とする標本調査の方法に基づき、各消防本部等が実施した結果をとりまとめたものであり、一定の誤差を含む

●取材協力
パナソニック【住宅火災警報器】
●参考
総務省消防庁【住宅防火関係】
あなたの地域の設置基準をチェック!(パナソニック)

あなたの家の火災警報器は大丈夫? 設置義務化から10年経過で新たな問題

防災の日(9月1日)を中心に、今年は9月5日までが「防災週間」です。近年、多様化する災害に備えた取り組みが全国で展開されています。自宅でも防災グッズを備えるなど意識は高まっていますが、法律で設置を“義務”付けられているのが「住宅用火災警報器」。
実は今、その火災警報器が設置していても機能しないというケースが出てきそうなので、消防庁も注意喚起を促しています。
火災警報器設置率は全国で82.3%。義務化後、被害は半減

2006年、消防法の改正で全国の新築・既築全ての住宅に火災警報器の設置が義務付けられました(東京都は2004年に施行)。今年8月に消防庁から発表された、全国での住宅用火災警報器設置率は82.3%(※)。

それを聞き、「あれ?そんなにみんな設置してるんだ!」と焦ったのは筆者だけ?

新築住宅やマンションなどは建築確認もあって必ず設置されているでしょうが、既築の一戸建ては自分で購入・設置するので未設置なところがまだ多いかも(筆者も築15年の一戸建てに住んでいます)。

実は筆者、何を隠そう35年前、実家が全焼し自分も煙で死にかけた経験があるにも関わらず(!?)未設置とは、大反省。

未設置に罰則は無いものの、命を守るためには自ら防災意識を高めなければと自戒の念で取材をしました。

住宅用火災警報器の有無によって、被害に差が。設置の効果が現れる(資料/消防庁ホームページ)

住宅用火災警報器の有無によって、被害に差が。設置の効果が現れる(資料/消防庁ホームページ)

順調に設置住宅数が増える中、ここへ来て新たな課題が出てきたということで、消防庁からも警鐘が鳴らされています。

正しい場所に設置している?台所よりも重要な部屋とは

以下のデータは、住宅用火災警報器の設置義務化が1970年代後半、日本より先に施行された米国の調査結果です。設置により犠牲者の数は減っているものの、設置済み住宅での犠牲者が約2割あるという事実が示されています。

1970年代後半より設置義務化となった米国。義務化以前より犠牲者は半減しているが、義務化後の設置済み住宅でも犠牲者が出ているのには理由があります(資料/米国防火協会)

1970年代後半より設置義務化となった米国。義務化以前より犠牲者は半減しているが、義務化後の設置済み住宅でも犠牲者が出ているのには理由があります(資料/米国防火協会)

火災警報器設置住宅において犠牲者が出る理由の一つに、適切な場所に設置されていないケースがあります。
全国の設置率は82.3%でしたが、条例適合率(市町村の火災予防条例で設置が義務付けられている住宅の部分すべてに設置されている世帯の全世帯に占める割合)は67.9%と低いのです。

条例で義務付けられている設置場所は、基本的には“寝室”と“寝室がある階の階段上部(1階の階段は除く)”。住宅の階数等によっては、その他の箇所も必要になる場合があります。

2階建て住宅の場合の基本的な設置場所は、寝室(図の1)と、寝室のある階の階段上部(図の2)。市町村の火災予防条例により、台所やその他の居室にも設置が必要な地域があるので、管轄の消防本部・消防署へ確認が必要(資料/パナソニック)

2階建て住宅の場合の基本的な設置場所は、寝室(図の1)と、寝室のある階の階段上部(図の2)。市町村の火災予防条例により、台所やその他の居室にも設置が必要な地域があるので、管轄の消防本部・消防署へ確認が必要(資料/パナソニック)

筆者の実家火災のケースは、父が出勤後の早朝、母が弟の弁当をつくっていた揚げ物油が発火したという台所からの失火。2階で寝ていた筆者と弟は、1階から母が叫ぶ声で起き、階段に面したドアを開けた瞬間……煙に襲われ、息が詰まりました。

なので、火の元がある台所への設置が優先されるのでは?と思いがちですが、就寝中に起きる火災は気付くのが遅れて死に至る危険性が高いとのこと。義務化の設置場所として“寝室”が優先される理由です。さらに用心するために、台所への設置も推奨されています。

最近の機器は、複数の部屋をワイヤレスで連動できるものがあるので商品をチェックしてみてください。

複数の部屋を連動して警報を発する連動型の火災警報器。最近は警報ブザー音だけでなく「火事です!」と音声で知らせてくれる(資料/消防庁ホームページ)

複数の部屋を連動して警報を発する連動型の火災警報器。最近は警報ブザー音だけでなく「火事です!」と音声で知らせてくれる(資料/消防庁ホームページ)

さらにもう一つ、設置していて機能しないケースで最近増えている問題があります。

まさかの電池切れ!機器の寿命は10年だった!?

先の米国データにある現象、警報器を設置している住宅での犠牲者が日本でも発生する恐れがあります。消防庁調査でも作動確認を行った警報器の1%は作動しなかったと言います。義務化の法令施行から13年が経過し、多くの住宅の火災警報器が設置後10年以上となった結果、電池切れと機器の故障が発生しているのです。

昨年あたりで寿命となる警報器は4000万~5000万台にのぼり、電池が切れると一定期間ブザーが鳴り続けるなど、消防やメーカーへ問い合わせが増え対応に追われているとのこと。あなたのお宅でも慌てることがないように、設置後も点検と性能維持が重要です。

点検の方法は、以下の図のようにして反応を確認することです。

作動確認の仕方は、警報器のボタンを押す/紐を引く。何も音が鳴らなかったら、電池切れか故障(資料/パナソニック)

作動確認の仕方は、警報器のボタンを押す/紐を引く。何も音が鳴らなかったら、電池切れか故障(資料/パナソニック)

設置して5年前後のものであれば電池切れの可能性もあるので、電池を入れ替えてみること。それでも音が鳴らない場合は、機器が劣化して機能していないということになるので交換するべき。設置後10年経っている場合は、ほぼ機器の寿命なので取り替える必要があるそうです。

さっそく、筆者宅でも寝室に火災警報器を設置。製品に同封のネジを天井に2カ所留めるだけ。ボタンを押して作動確認!(写真撮影/藤井繁子)

さっそく、筆者宅でも寝室に火災警報器を設置。製品に同封のネジを天井に2カ所留めるだけ。ボタンを押して作動確認!(写真撮影/藤井繁子)

火災による犠牲者の主な死因は、「一酸化炭素中毒・窒息」と煙を吸って気絶したまま「火傷」するというもの。筆者もあの煙を、もう一呼吸吸っていたら気絶していたのでしょう。火災の煙は、恐ろしく濃いものでした。当時は母も40代、筆者も弟も10代だったので、即座に2階の窓から飛び降りて逃げることができましたが、もし年をとっていたら、あるいは高齢者と同居していたら助からなかったかもしれません。

火災の犠牲者は減っている中で、高齢者の占める割合は約7割と増加しています。死亡火災は就寝時間帯、ストーブによる出火、逃げ遅れが最も多いケースとなっているそうです。

ぜひ、みなさんも火を使う機会が増える冬が来る前に、火災警報器を点検し、10年経っているものは迷わず買い替えて用心していただきたいと思います。

ちなみに、設置義務のない消火器ですが、同じく約10年が寿命のようです。(置いているだけで、用心しているつもりの筆者。消火器も買い替えなきゃ!)

※この調査は、消防庁が示した訪問調査を原則とする標本調査の方法に基づき、各消防本部等が実施した結果をとりまとめたものであり、一定の誤差を含む

●取材協力
パナソニック【住宅用火災警報器】
●参考
総務省消防庁【住宅防火関係】
あなたの地域の設置基準をチェック!(パナソニック)

防災をライフスタイルにする「+maffs(マフス)」の住宅用消火器。“防災は愛情”をデザインに

“防災用品”と聞いて思い浮かべるものは、水や食料、非常用トイレ、防寒グッズなどさまざま。消火器は火事に備えるために必要なアイテムだが、赤くて目立つ、場所をとるなどの理由で生活空間に置くことを躊躇(ちゅうちょ)している人も少なくないだろう。そんなイメージを覆すのが、2019年1月に発売された「+maffs(マフス)」の「+住宅用消火器」。白と黒のマットな質感のボディが美しい、インテリアに溶け込む“ジャケ買い”したくなるようなデザインだ。実用性重視の商品が多かった防災用品にデザイン性を与えたのはなぜか。そして、防災メーカーの社員が行っている暮らしで実践できる防災とは? 企画・開発チームに話を聞いた。
防災をライフスタイルに。防災と日常の距離を縮めたい(左から)モリタ宮田工業 清水範子さん、北里憲さん(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

(左から)モリタ宮田工業 清水範子さん、北里憲さん(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

この消火器を開発したのは、消火器や消火設備の製造・販売・施工を行う国内防災メーカーのトップブランドであるモリタ宮田工業。「+maffs」は、企画・開発を担当した北里憲さんが入社時から思い描いていたプロジェクトなのだとか。

「日常的に防災を意識している人って、少ないと思うんです。災害が起こると一時的に防災用品がよく売れますが、熱が冷めるのがすごく早い。継続的に取り組んでもらえる選択肢として考えたのが『防災をライフスタイルに。』というコンセプトです。

防災は不安や恐怖心から考えることが多いと思いますが、それだとどうしても自分ごとにしづらいですよね。ただ、誰かを守るため・自分の身を守るため・大切な人を守るためというポジティブな感情に従って備えることだと伝えることで、自分ごとになると思っています。例えば、キャンプやDIYなどのように、自分たちが興味のあるものが防災につながっているという伝え方をするだけで、防災とライフスタイルの距離感が近くなるのではないかと考えました」

左がモリタ宮田工業製の業務用消火器で約3.9kg、右が「+maffs」の「+住宅用消火器」。「+住宅用消火器」は約2.2kgとコンパクトで、部屋に置いても圧迫感がない(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

左がモリタ宮田工業製の業務用消火器で約3.9kg、右が「+maffs」の「+住宅用消火器」。「+住宅用消火器」は約2.2kgとコンパクトで、部屋に置いても圧迫感がない(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

デザインは機能のひとつ。見えるところに置けば初期消火に対応できる

住宅用消火器が備えられている家庭は一般家庭の41%程度だと言われているそう。しかし、使用期限切れなどで実際は火災発生時にすぐ使える消火器がある家庭は少ないようだ。

「近年では、ガスコンロにセンサーがついたり住宅の火災警報器が義務化されたりと防災に関する法整備は進んでいますが、一方でタコ足配線などの電気器具を起因にした火災が増えています。

火災は、発生してから2・3分以内で初期消火を行うと、70%程度消火が成功するというデータがあります。だからこそ消火器を家庭の目立つところに置いてほしいのですが、邪魔だからと隅に追いやられてしまったり、物置にしまってしまったりすることがあるんですよね。実際に、僕の実家でもそうなってしまっていました。それだと初期消火が難しくなってしまう。だからこそ、インテリアに調和するデザインであるということはひとつの機能だと思っているんです」(北里さん)

「+住宅用消火器」はお酢の成分と食品原料からつくられた中性液体薬剤を使用しているため、人と環境にやさしく安全。また、一般的な粉末消火器のように粉が飛散せず、後片付けが簡単なのも特徴だ(画像提供/モリタ宮田工業)

「+住宅用消火器」はお酢の成分と食品原料からつくられた中性液体薬剤を使用しているため、人と環境にやさしく安全。また、一般的な粉末消火器のように粉が飛散せず、後片付けが簡単なのも特徴だ(画像提供/モリタ宮田工業)

では、実際に購入した場合、どこに置くのがベストなのだろうか。

「消火器は火を扱うキッチンに置くというイメージがあると思うのですが、避けたほうがいいのはコンロの真横。熱がずっと当たってしまうと製品劣化の原因になる等の理由もありますが、それよりも、実際に火災が起こったときに火が邪魔をして消火器に手が届かなくなってしまうのが問題なんです。あとは、高温多湿、常時濡れるような場所は避けたほうがいいです。

消火器を置くのに適した場所とよく言われているのが、キッチン・リビング・玄関。多くの家庭がリビングとキッチンは近い場所にあると思うので、リビングのような家族がよく集まる場所に置いて、消火器の存在をしっかりと認知・共有できる場所が一番望ましいですね」(北里さん)

「+ 住宅用消火器」の設置例。消火器をキッチンに置く場合は、左右前後などを確認し、実際に火災が起きたときも手が届く場所がいいとのこと(画像提供/モリタ宮田工業)

「+ 住宅用消火器」の設置例。消火器をキッチンに置く場合は、左右前後などを確認し、実際に火災が起きたときも手が届く場所がいいとのこと(画像提供/モリタ宮田工業)

防災は、大切な人への愛情の形

モリタ宮田工業は防災メーカーだというだけあって、社員で家庭に消火器や防災用品を置いている割合が高いという。マーケティング担当の清水範子さんは、3回分の非常用トイレをはじめ、食べるものや水、マスク、ウェットティッシュなどを常にカバンに入れて持ち歩いているという。清水さんは、小さいころから防災が身近にある暮らしをしてきたのだとか。

「このプロジェクトに関わることになったとき、『世の中、こんなにも備えていないのか!』『自分に防災は関係ないと思っている人って結構いるんだな』と非常に驚いたんですね。というのも、防災というのはわが家では普通のことだったんです。祖父母からは関東大震災や戦争の話を幼いころから聞いていたし、親は防災用品を3日間分は常に用意していました。備蓄食料から何かを食べてしまったら申告して買い足すというローリングストックのようなものも自然とできていましたね。

清水さんが常に携帯している防災グッズ(写真提供/清水範子さん)

清水さんが常に携帯している防災グッズ(写真提供/清水範子さん)

清水さんのお宅のキッチンにも「+ 住宅用消火器」が(写真提供/清水範子さん)

清水さんのお宅のキッチンにも「+ 住宅用消火器」が(写真提供/清水範子さん)

毎年、年末の大掃除の際に、水・備蓄食料・非常用トイレなどの防災用品をすべてチェックするんです。そして、お正月料理に飽きたら賞味期限が近い缶詰などを消費していくというのがわが家のスタイル。“大掃除=家のダメな部分の見直し”なので家のメンテナンスもするし、今年修繕が必要そうな箇所の洗い出しもしていました。そういう家庭で育ててもらって、いまでは“防災=愛情”なんだと実感しています。何かあったときに絶対大切な人に辛い思いをさせないんだという親の思いが常にあったし、私もそれを実感していました」(清水さん)

重要なのは、防災意識を高める教育

「+住宅用消火器」が発売されて約2カ月。清水さんは印象的な出来事があったという。

「この間、『+ 住宅用消火器』を購入してくれた友人の家に遊びに行ったら、玄関のシューズクローゼットに『+住宅用消火器』を置いてくれていたんです。しかも、友人の子どもがこの消火器をすごく気にいってくれて。ちゃんとメモリータグにも購入日と使用期限を記入していて『ちゃんと家族で書いたよ!』と教えてくれたり、消火器の使い方を聞くと『火元から消すんだ』としっかりと受け答えしたりしていたんです。

そのとき、やはり防災は愛情だなと思って。こういう製品が接点となって家族の防災意識が上がるということは絶対的にあり得ると実感したので、『防災をライフスタイルに。』というコンセプトをきちんと伝える活動をしっかりとやっていきたいと思っています」(清水さん)

「+ 住宅用消火器」についているメモリータグには、購入日と使用期限を記入できる。このタグには、自分自身、家族で記入することで、消火器の5年という使用期限の周知と、防災への意識を高めてほしいという想いが込められている(画像提供/モリタ宮田工業)

「+ 住宅用消火器」についているメモリータグには、購入日と使用期限を記入できる。このタグには、自分自身、家族で記入することで、消火器の5年という使用期限の周知と、防災への意識を高めてほしいという想いが込められている(画像提供/モリタ宮田工業)

「防災への意識を高める教育がとても重要だと思うんです。日常に起こりうる被害想定ができないと、消火器や非常用トイレを買おうとは思わないんですよね。防災メーカーの責務として、災害が起こったときの被害がイメージできるようなストーリーを伝えることは今後も意識したいなと思っています」(清水さん)

「まずは、家庭の中で消火に携わるものをアップデートして新しくリニューアル・拡充していきたい。その後には、家具やインテリアなどライフスタイルにまつわる商品をつくっている人と一緒にものづくりをしたり、ライフスタイル文脈のイベントなどを企画したりしていきたいと思っています。防災を学ぶために行くのではなくて、自分の興味のあるライフスタイルのイベントを学び・体験しに行って、実はこういうところに防災との接点があるんだ、と気付けるような。日常の防災を少しずつ重ねて提案していきたいですね」(北里さん)

災害が起こったとき、家ではどのようなことが起きて、なにが必要になるのか。それを想像するのが、防災をライフスタイルにする第一歩だ。イメージすることは、大切な人と生きる未来へつながっていく。はじめの第一歩として、防災との接点を見出すことから始めてみては。

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