2019年度与党税制改正大綱まとまる 消費増税時に住宅ローン控除を3年延長

2019年度の与党税制改正大綱がまとまった。消費増税に伴う住宅取得支援策としては、住宅ローン控除の3年延長が盛り込まれた。

2019年10月1日に消費税が10%に引き上げられると、建物価格に消費税がかかる新築住宅などはその分負担が重くなる。そこで住宅ローン控除を延長して負担を軽減することで、増税後の住宅需要の落ち込みを防ごうという狙いだ。
建物価格の2%が3年分の所得税などから控除される

住宅ローン控除は年末の住宅ローン残高の1%を所得税や住民税から10年間にわたり控除する制度。対象となるローン残高の上限は4000万円(認定長期優良住宅、認定低炭素住宅の場合は5000万円)なので、年間で最大40万円(同50万円)、10年間では最大400万円(同500万円)が減税される。

大綱で示された内容は、この控除期間を3年延長して13年にするというもの。ただし延長されるのは2019年10月1日~2020年12月31日に入居した場合で、建物の消費税が10%となるケース。2019年3月31日までに契約して消費税が8%となるケースや、そもそも建物に消費税がかからない中古住宅などは現行の控除期間のままだ。

11年目から3年間の各年の控除額は、以下のいずれか小さい額となる。
(1)住宅ローン残高×1%
(2)建物購入価格(4000万円を限度)×2%÷3

(2)の控除額は、建物価格の2%を3年間かけて控除するというもの。つまり消費税アップによる負担増を住宅ローン控除で取り戻せる仕立てだ。ただし住宅ローン残高の1%の額が小さかったり、所得税や住民税の納税額が少なかったりすると、戻ってくる控除額も少なくなる。

すまい給付金と合わせると増税後にトクするケースが多い

そこで所得税や住民税が少ない人向けとして、消費税率が8%に引き上げられた際に導入されたのが「すまい給付金」だ。これは住宅購入時に収入に応じて現金がもらえる制度だが、税率10%への増税に伴い給付額の上限が30万円から50万円にアップし、対象者の収入要件も拡大される。これは前回の増税時にすでに決められていた内容だ。

国土交通省の試算によると、年収600万円の人が住宅を購入する場合に住宅ローン控除の延長とすまい給付金の拡充でメリットが出る、つまり消費税増税後のほうがトクする金額は以下のようになるという。

【年収600万円(住宅購入時点)の人が住宅を購入するケース】

ケース(1)所有している土地に家を建てるケース(土地購入なし)
建物購入価格(税抜き)/3200万円、借入額/2800万円
A:消費増税分(建物価格の2%)/64万円
B:住宅ローン控除延長分/57万円+すまい給付金拡充分/30万円=計87万円
C:トクする金額(B-A)/23万円

ケース(2)土地を取得して住宅を購入するケース(借り入れ分に土地代あり)
建物購入価格(税抜き)/2600万円、借入額/3700万円
A:消費増税分(建物価格の2%)/52万円
B:住宅ローン控除延長分/52万円+すまい給付金拡充分/30万円=計82万円
C:トクする金額(B-A)/30万円

※返済期間30年、金利1.34%、住宅購入時点で35歳、夫婦子2人世帯で試算。11年目(45歳)には住宅購入時点より一定程度収入が増え、所得税額等も増えていると想定

ケース(1)は建物価格より借入額が小さいので、住宅ローン控除の延長だけでは消費増税分をカバーできないが、すまい給付金が30万円もらえるので増税後のほうがトクになる。またケース(2)は借入額が大きいので住宅ローン控除の延長で消費増税分が取り戻せるうえ、すまい給付金でもらえる30万円がまるまるトクになる計算だ。

贈与税の非課税枠拡大や住宅ポイント制度の導入も実施

なお、今回の税制改正大綱には盛り込まれていないが、親などから住宅資金の贈与を受けたときの贈与税の非課税枠も、現行の700万円(一定の省エネ、耐震、バリアフリー性能を満たす住宅は1200万円)から、消費増税後1年間は2500万円(同3000万円)に拡大されることが決まっている。

また一定の省エネ、耐震、バリアフリー性能を満たす住宅や、家事負担が軽減される住宅の新築やリフォームに対し、商品と交換できるポイントがもらえる「住宅ポイント」制度も導入される予定となっており、年末にまとまる政府予算案に盛り込まれる見込みだ。

住宅ローン控除の延長や住宅ポイント制度の導入は今後の国会で予算案や関連税制法案が成立することが前提だが、消費増税後の住宅取得に対する支援策は手厚い内容となっており、増税前に慌てて買わなくてもおトクな状況が続きそうだ。

2018年度の税制改正、ポイントを解説 住宅購入に関わる減税措置や特例の延長など

自民・公明両党が2018年度の税制改正大綱を決定した。目玉となった所得税改革では、基礎控除の引き上げと給与所得控除の減額により、2020年から年収850万円を超える会社員が増税となる。そのほか、住宅購入などに関係する改正も含まれているので見ていこう。
新築住宅の固定資産税の減額措置を2年間延長

今回の大綱に盛り込まれた住宅関連の税制改正は、既存の特例などの期限延長がほとんどだ。

まず新築住宅向けの固定資産税の減額措置は2年間延長される。この措置は新築住宅の建物分の固定資産税を、一戸建ては3年間、マンションは5年間、2分の1に減額するというもの。国土交通省の試算によると、2000万円の一戸建てを新築した場合の固定資産税が、減額措置によって3年間で約26万円軽減されるという。措置の期限が2018年3月31日までとなっているが、これを2020年3月31日まで延長する。

長期優良住宅に対する特例措置も2年間延長される。長期優良住宅とは、良質な住宅を長期にわたって良好な状態で住み続けるために、耐久性や耐震性、維持管理のしやすさなどの基準を満たす住宅を認定する制度。認定された住宅は購入時の登録免許税や不動産取得税、新築時から一定期間(一戸建ては5年間、マンションは7年間)の固定資産税が軽減される。この特例措置の期限を2020年3月31日まで延長するという内容だ。

土地を購入する場合の不動産取得税については、税額を計算する際の評価額を2分の1にしたり、税率を本則の4%から3%に軽減する特例措置がとられている。この特例の期限を3年間延長し、2021年3月31日までとする。

不動産会社が中古住宅を買い取ってリフォームをした上で販売する「買取再販」について、耐震や省エネ、バリアフリーなど一定のリフォームを行った住宅を買うと建物分の登録免許税が通常の3分の1に軽減される特例措置がある。この特例の期限も、2020年3月31日まで2年間延長される。

マイホームの買い替えなどに関する特例を2年間延長

不動産を売って売却益(譲渡所得)が出た場合、所得税や住民税がかかるが、自宅を買い替えた場合は各種特例が受けられる。売却益がなかったものとして次に買い替えるまで課税を繰り延べられる「買換え特例」や、売却損が出た場合に最長4年間の所得から繰り越して相殺できる「譲渡損失の繰越控除」だ。これらの特例の期限を2019年12月31日まで2年間延長する。

一定の性能向上リフォームを行った場合の固定資産税の特例措置も2年間延長となる。この特例は耐震改修の場合は2分の1が、バリアフリー改修や省エネ改修の場合は3分の1が、長期優良住宅化改修の場合は3分の2が、それぞれ工事の翌年度の固定資産税から減額されるというもの。改正により特例の期限が2020年3月31日まで延長される。

不動産を買うときの売買契約書や、住宅を建てるときの工事請負契約書に貼る印紙税は、特例措置により軽減されている。例えば契約金額が1000万円超5000万円以下の場合の印紙税は本則では2万円だが、現行では1万円だ。この特例の期限を2年間延長し、2020年3月31日までとする。

税制改正大綱はあくまで与党による税制改正“案”だが、ほぼ大綱の内容どおりに改正されるのが通例となっている。今後は2018年1月からの通常国会に関連法案が提出され、3月末までに確定する見通しだ。

●参考
・平成30年度税制改正大綱