入居者のための食堂、昼・夕食500円、朝食はなんと100円! 「トーコーキッチン」開店から9年目。入居者希望増、書籍化など、さらにすごいことになってた!

手づくりの食事を朝100円、昼・夕500円のワンコインで毎日提供する、賃貸物件の入居者のために不動産会社が運営する食堂「トーコーキッチン」。2015年のオープン以降、「街の一角に自分たち専用の食堂がある」という安心感を味わえる魅力的な仕組みによって、賃貸物件への入居希望者が増えるとともに、多くの注目を集め続けています。食堂「トーコーキッチン」のある淵野辺(神奈川県相模原市)を訪れ、8年間の変化について聞きました。

「きっかけは、ご家族から聞こえてきた食事への心配の声でした」

「トーコーキッチン」は、神奈川県相模原市の不動産会社・東郊住宅社が運営する入居者のための食堂。JR横浜線・淵野辺駅から徒歩2分ほどの商店街に立地しています。東郊住宅社は40年以上にわたりJR横浜線・淵野辺駅周辺にあるアパート、マンションなど賃貸物件を管理している、地域密着型のいわゆる「街の不動産屋さん」。

淵野辺には、3つの大学(青山学院大学、麻布大学、桜美林大学)が点在しており、東郊住宅社の管理する物件では1人暮らし用のワンルームが6、7割を占め、そのうちの8割ほどに学生が入居しています。

淵野辺駅から徒歩2分。トーコーキッチンはこんな商店街の一角にあります(写真撮影/片山貴博)

淵野辺駅から徒歩2分。トーコーキッチンはこんな商店街の一角にあります(写真撮影/片山貴博)

ガラス張りで、通りから店内が見えます(写真撮影/片山貴博)

ガラス張りで、通りから店内が見えます(写真撮影/片山貴博)

トーコーキッチン店内。午後のティータイム。大学は春休みに入り、普段、大勢来店する学生さんたちは数人見かけるだけでした(写真撮影/片山貴博)

トーコーキッチン店内。午後のティータイム。大学は春休みに入り、普段、大勢来店する学生さんたちは数人見かけるだけでした(写真撮影/片山貴博)

そうした学生を始めとする入居者のために、トーコーキッチンでは朝8時から夜8時まで毎日、朝食を100円、昼食・夕食を500円という格安価格で提供しています。朝・昼・夕食はそれぞれ栄養バランスを考えてつくられた日替わり&週替わり定食、カレーライス500円やキッズプレート300円、コーヒー・紅茶・ルイボスティー100円、サイドメニュー50円といったメニューがそろいます。

一番人気は「ハヤシ社長」500円。池田さん考案のハヤシライスです(写真撮影/片山貴博)

一番人気は「ハヤシ社長」500円。池田さん考案のハヤシライスです(写真撮影/片山貴博)

「カレー会長」は東郊住宅社を創業した先代社長がこよなく愛したスープカレー。先代の奥様のレシピだそうです(写真撮影/片山貴博)

「カレー会長」は東郊住宅社を創業した先代社長がこよなく愛したスープカレー。先代の奥様のレシピだそうです(写真撮影/片山貴博)

これが100円の朝食。しかも税込みです。「朝食はさすがに赤字です」と池田さん(写真撮影/片山貴博)

これが100円の朝食。しかも税込みです。「朝食はさすがに赤字です」と池田さん(写真撮影/片山貴博)

日替わり定食500円。この日はプルコギ定食でした。ご飯は白米と五穀米から選べます。特に豚汁が美味!(写真撮影/片山貴博)

日替わり定食500円。この日はプルコギ定食でした。ご飯は白米と五穀米から選べます。特に豚汁が美味!(写真撮影/片山貴博)

注文票を自分で記入してカウンターに渡すシステム(写真撮影/片山貴博)

注文票を自分で記入してカウンターに渡すシステム(写真撮影/片山貴博)

食堂を利用できるのは、東郊住宅社が管理している賃貸物件の入居者およそ3000人、物件オーナー約200人、関係協力者、同社社員など。借りている自分の部屋のカードキーで食堂に入るシステムで、鍵の保有者と同行すれば家族や友人も一緒に入店できます。部屋探し中の人も食堂の利用体験ができるほか、近隣に暮らす人も興味があれば1度は利用することが可能だそうです。

「ここを立ち上げたきっかけは、新たに一人暮らしを始める学生さんのご家族から聞こえてきた、食事に対する心配の声でした」と当時を振り返る東郊住宅社社長の池田峰さん。「初めての一人暮らし。偏らずにしっかり栄養をとれる食生活が送れるのか」という親心に対し、そうした心配や不安を入居者サービスの一つとして解決できないかと考え始めたことが第一歩だったそうです。

トーコーキッチンをつくるに至った経緯や思い、その後の影響、食堂での日常風景については、当サイトの記事(「入居者のための食堂」が魅力的すぎ!朝食100円、昼食・夕食が500円で食べられるワケ(2017年1月25日掲載))に詳しいので、ぜひご参照を。

トーコーキッチンの魅力的な仕組みに、「自分の家の近くにもこうした入居者向け食堂があればいいのに」「こんな不動産屋さんがあるなんて、淵野辺ってすてきな街だな」などと、記事の反響も大きかったことを覚えています。

「おかげさまで入居率99%超に」。8カ月も前に入居予約が入るほど!

トーコーキッチンは、入居希望者や物件オーナー、賃貸不動産業界にとどまらず、マスコミや世の中からも数多くの注目を集めました。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、WEBマガジンなど100を超えるメディアで紹介されたことがあり、目にした人も多いのではないでしょうか。

立ち上げから丸8年が経ち、この間にどんな反響や変化が起こったのか、池田さんに聞きました。

東郊住宅社社長・池田峰さん。東郊住宅社のオフィスから徒歩約10分のトーコーキッチンには1日数回訪れて、入居者との交流を図っています(写真撮影/片山貴博)

東郊住宅社社長・池田峰さん。東郊住宅社のオフィスから徒歩約10分のトーコーキッチンには1日数回訪れて、入居者との交流を図っています(写真撮影/片山貴博)

「トーコーキッチンの存在が物件選びの1つの動機となって、入居希望者が増え、おかげさまで今では入居率が99%を超えるまでになりました」と池田さん。

2018年時点の神奈川県の空室率が20.1%(※1)=入居率79.9%という数字から考えると、驚異的な高さです。
※1:公益社団法人全国賃貸住宅経営者協会連合会「民間賃貸住宅(共同住宅)戸数及び空き戸数並びに空き室率の推計」(2018年算出)より

トーコーキッチン以前から、同社管理物件の入居率は95~96%と他に比べて高かったそうですが、今や100%近い割合に。トーコーキッチンのない2015年以前にも高い入居率を保っていたのは、先代が社長時代に導入した「敷金0」「礼金0」「退去時の修繕義務なし(入居者の過失での修繕を除く)」「水漏れや鍵の紛失などの緊急事態に24時間対応」という、先進的な契約条件があったため。そこに食の提供という入居者サービスが加わったことで、「トーコーキッチンがあるから淵野辺に住みたい」「1人暮らしをする子どものために食事環境が安心な東郊住宅社の物件を選びたい」という人が増えたといいます。

「部屋が空いたらすぐに入居希望が入るというありがたい状況です。空く予定がなくても『空いたら入居したい』という方がたくさんいらっしゃいます。昨年はとうとう、引越しシーズンの8カ月も前の6月に、『大学入学で1人暮らしをするので、今から入居の予約はできますか』という問い合わせまで入ることに。新記録ですね。その時点で進学する大学が決まっていない状況だと思うのですが、実際には、淵野辺から片道1時間以上をかけて通学する学生さんもいらっしゃいます」(池田さん)

「学生の入居者さんに関していうと、以前は淵野辺にある3校が近いことから、その学生さんたちがほぼ10割を占めていました。しかし、トーコーキッチン開設以後は、他エリアの大学の学生さんも入居されるようになり、今では2割ほどを占めるまでになりました」と池田さん。

淵野辺駅は新宿や渋谷など都心へ行くには乗り換えが必要で、停車する電車は各駅停車のみ。決して交通アクセスが便利とはいえない街。「乗り換え必須なのにその2割の学生さんたちが、淵野辺に暮らすことを選んでくれたのは、トーコーキッチンがもたらす食の安心感を評価していただいているからなのでしょう」(池田さん)

淵野辺駅北口から見た駅前商店街の様子(写真撮影/片山貴博)

淵野辺駅北口から見た駅前商店街の様子(写真撮影/片山貴博)

桜美林大学のキャンパスは淵野辺駅に隣接(写真撮影/片山貴博)

桜美林大学のキャンパスは淵野辺駅に隣接(写真撮影/片山貴博)

「社会人の方もご高齢の方も、安心な淵野辺暮らしを選んでくれています」

学生以外の入居者も増えたそうです。
「リモートワークが一般化したことで、別の地域から淵野辺に拠点を移した社会人の方がとても増えました。オンラインでのつながりはあるけれど、やはりリアルなコミュニケーションの場があるのは良いということのようです。

また、ご高齢の親御さんを、淵野辺近辺に暮らす子世帯が自宅近くに呼び寄せて、という方々も増えました。たまに顔を合わせられるくらいの近居なら安心。さらに日々の食事はトーコーキッチンがあるからますます安心、というわけです」(池田さん)

入居希望の大きな動機と考えられるトーコーキッチンですが、すべての入居者が食堂を頻繁に利用するわけではなく、常連さんは3割くらいだそう。常連さんにとっても時々利用する人にとっても、「お茶1杯だけでもずっといていいですよ」という姿勢があることで、入居者にとってのサードプレイス(自宅でも職場でもない、居心地の良い第3の場所)的な場所として活用されています。

また、池田さんは1日数回顔を出して、「味はどう?」「部屋で困ったことはない?」と入居者と交流しています。「日本一『味はどう?』って聞いている不動産屋」と自負する池田さん。そうした日々のコミュニケーションも淵野辺で暮らす安心感につながっているのだと思います。

ランチ中の学生さんに気さくに話しかける池田さん(写真撮影/片山貴博)

ランチ中の学生さんに気さくに話しかける池田さん(写真撮影/片山貴博)

笑顔が素敵な食堂スタッフのみなさん(写真撮影/片山貴博)

笑顔がすてきな食堂スタッフのみなさん(写真撮影/片山貴博)

「賃貸物件はすべて自社管理。だからこそ入居者さんに喜んでいただける」

東郊住宅社は賃貸借契約の仲介に加え、取り扱うすべての物件管理及び入居者管理(家賃の入金管理をはじめ、共用部の清掃や不具合の修繕、植栽の手入れなど)を行っています。仲介だけお願いしたいというオーナーの要望には対応していません。「不動産は管理が重要だと考えています。専任で管理をさせていただくからこそ、入居者さんに喜んでいただける仕事がまっとうできると思っています」と池田さん。

以前は1600室ほどだった物件数が、この8年間で1900室に迫るまでになりました。
「当社の管理手数料は物件によって家賃の5~8%と、他の不動産管理会社に比べると安くはない費用をオーナーさんからいただいています。にもかかわらず、『自分の所有物件もトーコーキッチンが使える物件にしたい』と、今までお取引のなかった近隣の物件オーナーさんから興味や共感を持っていただき、管理のご依頼が増えました。さらに、『トーコーキッチンが使える賃貸物件を所有したい』という物件購入の相談も年々増え、現在30人以上のオーナー希望者さんがいらっしゃいます」

こうした動きは、食の提供サービスの存在によって安定した入居率の維持が保てるという、高い付加価値が得られることも含め、物件オーナーが東郊住宅社の物件管理に対する姿勢に大きな信頼を寄せていることをうかがわせます。

「ただ、対象となるのは当社から車で30分圏内の物件です。小さな不動産会社にとって、何かあれば夜中でも駆けつけられる距離の上限だからです。そのため、ご要望があっても場所によってはお断りせざるをえないこともあります」(池田さん)

入居者に寄り添う姿勢は緊急時だけではありません。
2020年には、入居者の困りごとを解決する家事代行サービス「ゴーヨーキーキー」もスタート。5分100円からという利益度外視の安心サービスです。こちらも当サイトの記事(不動産屋さんが家事代行!? 電球交換、虫駆除などのお悩みに5分100円で)に詳しいので、ご覧ください。

日常的に物件状態を把握し、入居者との交流を保ち、食事や家事のサポートの提供によって暮らしの安心を生み出していく。淵野辺で賃貸ライフを送る人にとって、東郊住宅社そのものが街の頼もしい存在となっている状況がわかります。

「入居者用食堂を導入した不動産会社も新たに登場!」

池田さんは以前の取材で「このビジネスモデルの特許取得を勧めてくださる方もいますが、アイデアで儲けるつもりはありません。皆さんの賃貸ライフを楽しくできたらうれしいので、逆に、どんどんまねして導入してくれる不動産屋があればいいと思いますね」と語っていましたが、その後、トーコーキッチンのような入居者向け食堂を立ち上げた企業は登場したのでしょうか。

「私の知る限りでは1社あります。その不動産会社から、同じシステムを取り入れたいと相談を受け、ノウハウをお伝えしたり食堂研修を受け入れたりとご協力させていただきました。現在、既に入居者専用食堂を運営されています」(池田さん)。

「どんどんまねしてもらえれば」という池田さんの言葉とは裏腹に、わかっている限りで同じサービスを導入した企業は1社だけということに意外な気がしました。他にも「実はわが社も」という会社もあるのかもしれませんが……。

しかし、逆に考えると、ここまで入居者・オーナー双方に喜ばれるサービスを追求し継続するというのは、実はとてもハードルが高いこと。誰もが真似できることではないとも感じます。利益度外視の入居者サービスとしての食堂運営、取り扱い物件はすべて自社で管理するなど、入居者が暮らしやすい環境をつくり出していく徹底した企業姿勢を持つからこそ、こうした全方位的に喜ばれるサービスが維持できているのでしょう。

「トーコーキッチンへようこそ!」

トーコーキッチンへの思いを綴った著書『トーコーキッチンへようこそ!』(虹有社)を昨年2023年10月に上梓した池田さん。「ご縁があってこうして1冊にまとめることができました。著書を手にしてくださることで淵野辺に興味を持っていただく機会もさらに増えました」(池田さん)

「お部屋探し帰りのお客様が手に取ってくださり、有隣堂淵野辺店のビジネス書ランキングで週間1位になったことも!」(写真撮影/片山貴博)

「お部屋探し帰りのお客様が手に取ってくださり、有隣堂淵野辺店のビジネス書ランキングで週間1位になったことも!」(写真撮影/片山貴博)

「以前、部屋探しに来られた大学進学予定のお客様から、『実は高校の進路の先生から、暮らすなら東郊住宅社のある淵野辺がいいと勧められて、今日ここに来ました』とお聞きして驚いたこともありました。遠く離れた地の方々にも広く認知されつつあることが、ものすごくありがたいです」(池田さん)

入居者の増加とともに利用者も増え、トーコーキッチンの売り上げも上がっているそうですが、売り上げが上がればその分の利益は良い食材を購入することに還元させているそう。「前年同月比で110%の売り上げアップを目標にしています。新型コロナが5類に移行した月は130%アップ、昨年著書を上梓した後は140%アップとなった月も。ありがたいことに徐々にお客様は増えています」

利益を追求しない入居者サービスの食堂が、それまで関心のなかった淵野辺に人を呼び寄せ、食堂利用者が増えることで食材やメニューが充実するという好循環。全方位に喜ばれるトーコーキッチンそのものが、ある意味広告としての機能を持ち、「住みたい街ランキング」に一度も登場したことのない街に人を引きつけているのです。

「トーコーキッチンを立ち上げてからずっと、毎日の仕事が楽しくて楽しくて。それに、入居者さんや離れて暮らすご家族、物件オーナーさん、そうした皆さんにこんなにも喜んでいただけるということは、トーコーキッチンをやっていなければわからないままだったでしょうね」と、ニコニコの笑顔で語る池田さん。

住む人の安心や喜びを常に考えている不動産屋さんの存在は、淵野辺という街を輝かせているのではないかと感じました。

8年でだいぶ年季が入りました(写真撮影/片山貴博)

8年でだいぶ年季が入りました(写真撮影/片山貴博)

小さなお客様からの「ごちそうさまでした」「おいしかったよ」の可愛いメッセージが(写真撮影/片山貴博)

小さなお客様からの「ごちそうさまでした」「おいしかったよ」のかわいいメッセージが(写真撮影/片山貴博)

●取材協力
東郊住宅社「トーコーキッチン」
『トーコーキッチンへようこそ!』(虹有社)

賃貸住宅の管理業者に初の立入検査、97社うち59社に是正指導。入居する時の注意点は?

国土交通省は、2023年1月~2月に全国97社の賃貸住宅管理業者などに立入検査を実施した。「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」の施行後、初めての立入検査となった。検査を実施した背景やその結果などについて見ていこう。

【今週の住活トピック】
賃貸管理業者などへの初の立入検査を実施/国土交通省

「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」とは?

まず、この法律が制定された背景について説明しよう。

賃貸住宅はオーナー(大家)が管理する場合もあるが、近年は管理業者に委託するケースが大半だ。管理業者は、家賃や敷金などの受け取りや賃貸借契約の更新、退去時の立ち会い、敷金の返還などの一連の業務を行うほか、建物の点検や補修、清掃なども行っている。賃貸暮らしにおいては、きわめて重要な役割を担っているのだ。さらに、サブリースと呼ばれる、管理業者がオーナーから借りて、それを管理業者がエンドユーザーに又貸しする形式も増えている。

出典/国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」より転載

出典/国土交通省「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」より転載

一方で、宅地建物取引業者やマンション管理業者の場合は法規制があり、国土交通省の監督下にあるが、賃貸住宅管理業者には法規制がなかった。そこで、オーナー・入居者と管理業者の間のトラブル防止を目的に、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が制定され、2021年6月に施行された。

その内容は、「賃貸住宅管理業者の登録制度の創設」(管理戸数200戸未満は任意)と、主に次のようなことを義務づけたもの。
・管理受託契約を締結する際に重要事項を説明する
・受託した業務の実施内容を定期的に報告する
・家賃などの財産を自身の財産と分別して管理する
・業務管理者を配置する

賃貸住宅管理業者などへの立入検査の結果は?

登録制度への賃貸住宅管理業者の登録数は、2023年3月末時点で8943社、管理戸数は合計で約790万戸となっている。今回、法律に則り適正に事業が営まれているかどうかについて、全国97社に対して立入検査を実施した。

国土交通省は検査を実施した結果、97社のうち59社に対して是正指導などを行った。かなりの割合だが、気になる指導内容を見てみよう。

指導の対象(重複あり)について、件数が多いものには次のようなものがあった。
・28件「管理受託契約締結時の書面交付義務違反」
→ 書面に記載すべき項目に不備があるなど
・18件「書類の備え置き及び閲覧義務違反」
→ 業務状況調書を作成しない、電子保存のみで書面化していないなど
・17件「管理受託契約締結前の重要事項説明義務違反」
→ 重要事項説明書に記載すべき項目に不備があるなど

国交省「【概要版】賃貸住宅管理業者等への全国一斉立入検査結果(令和4年度)」より転載

出典/国交省「【概要版】賃貸住宅管理業者等への全国一斉立入検査結果(令和4年度)」より転載

国土交通省では、一部の賃貸住宅管理業者などに法律の内容について理解不足が見られたが、指導した結果、59 社すべてで是正がなされたことを確認している、と公表した。

賃貸住宅に入居する場合の注意点

賃貸住宅に入居する場合は、賃貸住宅の管理は誰が行うのかを確認しよう。管理を管理業者が受託している場合は、管理業者が登録制度に登録しているかどうかも確認しておきたい。登録事業者かどうかは、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」の「賃貸住宅管理業者」タブで検索できる。

また、国土交通省では、「貸主が建物の所有者ではない場合」には、次の3点を確認するように入居者に注意を促している。

■「貸主が建物の所有者ではない場合」の注意点
(1)入居する部屋はサブリース住宅かどうか
(2)賃貸借契約書に、貸主が建物のオーナーに変わった場合に住み続けられる旨の記載があるか
(3)サブリース業者から維持保全の内容や連絡先の通知を受けているか
(出典:「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」のサブリース住宅の入居者への注意喚起リーフレットより)

サブリース住宅の場合、オーナー(所有者)はサブリース業者と賃貸借契約を結び、サブリース業者は入居者に又貸しして転貸借契約を結ぶ。この場合の転貸借契約には、オーナーが誰であるかも記載するように、国土交通省では指導している。また、オーナーとサブリース業者の間の賃貸借契約が終了した後も、入居者がそのまま住み続けられることが契約書に記載されていれば、万一のときも安心だ。

また、維持保全とは、賃貸住宅の建物や設備などの清掃や点検、補修などを行うことで、入居者の生活に支障がないように適切に管理されることが望まれる。サブリース住宅の場合はサブリース業者が行うので、具体的にどんなことをするのか、不具合があった場合などにどこに連絡すればいいかが通知されていることが必要だ。

スマホを耳に当て微笑む女性

(写真/PIXTA)

さて、いまの賃貸住宅は、その多くが管理業者によって管理されている。入居者にとっては、家賃の督促や故障・修繕の対応、他の入居者への苦情対応などについて、誰に相談してどう対処してくれるかは、日々の生活に大きく影響する。賃貸住宅に入居する際には、管理についてもしっかりと確認してほしい。

●関連サイト
国土交通省「賃貸住宅管理業者及び特定転貸事業者59社に是正指導~全国一斉立入検査結果(令和4年度)~」
国土交通省の賃貸管理業者検索サイト
●参考サイト
国土交通省の賃貸住宅管理業法ポータルサイト
「賃貸住宅管理業法ポータルサイト」のサブリース住宅の入居者への注意喚起リーフレット

管理会社への不満、トップは「入居付けが弱い」

(株)アルティメット総研(東京都新宿区)はこのほど、管理会社に対する意識調査を行った。調査は同社運営サイト『ウチコミ!』の登録大家会員7,803名を対象に、2018年11月21日~12月10日に実施。304名から回答を得た。
それによると、物件の管理を管理会社に依頼していますか?では、「はい」63%、「いいえ」37%と、大家さんの半数以上が管理会社を利用している。

物件の管理を管理会社に依頼している方の満足度では、「満足」が31.1%で最多。次いで「どちらともいえない」(28.3%)、「不満」(20.8%)、「やや不満」(15.1%)、「とても満足」(4.7%)と続く。満足している大家さんが35.8%いる一方で、同じくらいの割合の大家さんが不満を感じているようだ。

管理会社への不満として最も多かったのは「入居付けが弱い」で25.2%。「対応が遅い・悪い」(16.5%)、「入居者募集に対して積極的ではない」(15.1%)、「AD(広告費)が高い」(12.2%)、「物件の維持・管理に不満」(9.4%)などが続く。約70%の大家さんが管理会社の入居者募集に対して不満を持っていることがわかる結果となった。

管理会社に対して求めることとしては、「入居付けに力を入れてほしい」が最も多く31.1%。「素早い対応」(22.8%)、「物件の維持・管理に積極的になってほしい」(15.1%)、「管理費を安くしてほしい」(13.5%)、「AD(広告費)を安くしてほしい」(13.1%)なども求められている。

ニュース情報元:(株)アルティメット総研

管理会社への不満、トップは「入居付けが弱い」

(株)アルティメット総研(東京都新宿区)はこのほど、管理会社に対する意識調査を行った。調査は同社運営サイト『ウチコミ!』の登録大家会員7,803名を対象に、2018年11月21日~12月10日に実施。304名から回答を得た。
それによると、物件の管理を管理会社に依頼していますか?では、「はい」63%、「いいえ」37%と、大家さんの半数以上が管理会社を利用している。

物件の管理を管理会社に依頼している方の満足度では、「満足」が31.1%で最多。次いで「どちらともいえない」(28.3%)、「不満」(20.8%)、「やや不満」(15.1%)、「とても満足」(4.7%)と続く。満足している大家さんが35.8%いる一方で、同じくらいの割合の大家さんが不満を感じているようだ。

管理会社への不満として最も多かったのは「入居付けが弱い」で25.2%。「対応が遅い・悪い」(16.5%)、「入居者募集に対して積極的ではない」(15.1%)、「AD(広告費)が高い」(12.2%)、「物件の維持・管理に不満」(9.4%)などが続く。約70%の大家さんが管理会社の入居者募集に対して不満を持っていることがわかる結果となった。

管理会社に対して求めることとしては、「入居付けに力を入れてほしい」が最も多く31.1%。「素早い対応」(22.8%)、「物件の維持・管理に積極的になってほしい」(15.1%)、「管理費を安くしてほしい」(13.5%)、「AD(広告費)を安くしてほしい」(13.1%)なども求められている。

ニュース情報元:(株)アルティメット総研

「SUUMO AWARD」発表、「デベロッパーの部」総合評価トップは三井不動産レジデンシャル

(株)リクルート住まいカンパニーはこのほど、首都圏の新築マンション購入者が選んだデベロッパーと管理会社の顧客満足度ランキングを「SUUMO AWARD」として初めて発表した。「SUUMO AWARD」は、首都圏で2014年以降に新築マンションを購入した人を対象に、マンションデベロッパーや管理会社の品質や価格、取り組み内容などの満足度について尋ねたものをランキングにしたもの。「デベロッパーの部」の調査期間は2017年9月7日~2017年10月23日、回答者数は3,796名。「管理会社の部」の調査期間は2018年2月15日~2018年3月5日、回答者数は5,495名。

それによると、「デベロッパーの部」のにおいて、総合評価で最優秀賞を獲得したのは「三井不動産レジデンシャル」だった。購入者から「他社より多少高くても買いたい」「マンションを探している人に勧めたい」と思われている。優秀賞には「野村不動産」「三菱地所レジデンス」「住友不動産」「積水ハウス」が選ばれた。

品質と価格のバランスで最優秀賞を獲得したのは「エフ・ジェー・ネクスト」。優秀賞は「大成有楽不動産」「オープンハウス・ディベロップメント」「東レ建設」「グローバル・エルシード」。「高級感」で最優秀賞に選ばれたのは「野村不動産」。優秀賞は「三菱地所レジデンス」「住友不動産」「東京建物」「ゴールドクレスト」。

また、「マンション管理会社(100戸以上)の部」において、「管理サービスの総合満足度」で最も高い評価を得たのは「住友建物サービス」だった。優秀賞には「野村不動産パートナーズ」「大和ライフネクスト」が選ばれた。

ニュース情報元:(株)リクルート住まいカンパニー

公営住宅の管理戸数、最多は東急コミュニティー

(株)不動産経済研究所(東京都新宿区)はこのたび、公営住宅の管理に関して、大手民間管理会社各社に管理の状況、およびその戸数についてヒアリングを行い、その結果を発表した。それによると、全国で公営住宅の管理戸数が最多だった民間管理会社は東急コミュニティー。戸数は21万611戸に上った。次いで日本管財が10万3,456戸と、この上位2社が10万戸を上回っている。以下、3万7,155戸の神鋼不動産ジークレフサービス、3万2,800戸の第一ビルサービス、1万5,000戸の近鉄住宅管理、8,667戸の大成有楽不動産と続く。

トップの東急コミュニティーと2位の日本管財は公営住宅の管理を全国的に展開しており、東急コミュニティーは神奈川県県営住宅(横浜等地域)、大阪府営住宅(泉州地区)、大阪府営住宅(中・南河内、大阪市地区)などを手掛けている。

日本管財は尼崎市(南部地区)、熊本市(東区南区地区)、松山市、神戸市(東部地区)などで展開。また神鋼不動産ジークレフサービスは阪神エリア、第一ビルサービスは中国・四国エリア、近鉄住宅管理は近畿圏や広島県、大成有楽不動産は首都圏や新潟県などを中心に管理している。

ニュース情報元:(株)不動産経済研究所

部屋にお化けが出た! 管理会社は対応してくれるの?

賃貸を借りるときに、気になる人は気になってしまうのが「心霊現象」。内見をして気に入った部屋に引越した矢先、万が一心霊現象に遭遇してしまったら、どうしたらいいの? 賃貸物件を多数管理するハウスメイトパートナーズ東京営業部の谷 尚子さんと矢富 絵理さんに教えてもらいました。
ポイントは「心霊現象の“実態”」が証明できるかどうか

心霊現象とひとことで言っても、感じ方は人それぞれ。まずはその“実態”を明らかにすることが重要になるようです。

「お化けが出る・出ないは人によって見え方も感じ方も違いますし、そもそも本当に心霊現象なのかも分からないので対応が難しいですが、もしその部屋で過去に自殺や殺人、事故死や病死があれば話は別。お化けが出る、出ないにかかわらず、お部屋でそういうことがあったこと自体“気味が悪い”と感じる人も多いでしょうから、ある程度の期間は当然その旨告知しますし、賃貸料を減額してお貸出しすることもあります」(谷さん、以下同)

この告知は法律上の決まりではないそうですが、不動産業界ではそれらの“事故”が起こった後、どのくらいの期間告知すべきかについて各社で自主的なルールを設けているそう。“ある程度の期間”なので過去を遡って起きた事件・事故全てを告知するわけではないそうですが、ルールで決められた期間内であれば、必ず事前に「心理的瑕疵物件」などとして告知するといいます。

「きちんと告知を受けて入居された後に心霊現象に遭って退去したい、という場合だと、通常通りの手続きで解約していただくことになると思います」

ただし、なかには“例外”もあるといいます。

「最近は不動産売買も活発で、中古物件を買ったオーナーから依頼を受け、途中から私たちが管理することも少なくありません。その場合、『その物件で人が亡くなった』という話を、オーナーも私たちも後から知ることがあります。また、オーナー自身あまり気にしない人で、物件の管理を依頼するときに、そのことをお伝えしてくださらないということもありえます。

入居者様から心霊現象のご相談を受けて調べてみて、後からそのことが発覚し、それを告知しなかったことに相応の過失があるとなれば、それに伴うお引越しの際に引越し費用を負担したり、違約金の対象外になったりする可能性もあるでしょう」

対応はケースバイケース。まずは管理会社に相談を

では、事前に何の告知も受けていない物件で、心霊現象など”異変“を感じた場合はどうすればいいのでしょうか。

「もし、心霊現象などが気になるという人は、まずは管理会社に尋ねてみてはどうでしょうか? その物件で過去に何か原因となるようなことがあったのかどうか、オーナーさんなどに聞き込みするなど分かる範囲で調べて、お伝えすることはできます」

また、相談があった際は、原因を調べるために管理会社や仲介会社が現地調査をする場合もあるそう。

「たとえば心霊現象で音がするという場合、もしかしたら建て付けや土地の地盤など、ほかの原因も考えられますから、現地調査などをさせていただくことがあります。私も以前、『部屋の仏壇が夜になるとカタカタ揺れる』というご相談を受け、現地調査に伺ったことがあります」(矢富さん)

矢富さんいわく、「対応は案件によってもケースバイケース」だそうですが、何かしら借りた部屋に不安がある場合は、一度相談してみるといいかもしれませんね。

心霊物件を避けたければ「ワンオーナー」で「家賃が妙に安くない」物件に!

そもそも、心霊物件に好んで入居する人はごくわずか。なかには、内見に “霊感の強い友人”を連れてくる人もいるそうですが、霊感がない人でも、心霊物件を避けるためにできることはあるそうです。

「お化けが出る・出ないは分かりかねますが、心霊現象が起こる“原因”が少ないお部屋を探すコツはあります。例えば、新築のころから同じオーナーさんや管理会社が管理している物件は、過去にそこで何が起こったのかを把握しやすいです。そこで『心霊現象が怖いんですけど、過去に何かありましたか?』と尋ねてもらえれば、知っていることはお伝えしますし、分かる範囲で調べてお伝えすることもできます。

まれに、新築からずっとそういった事故が無いにもかかわらず、お化けが出ると言ううわさがある物件も存在します。事故の事実が無いので告知はしませんが、もしお客様から聞かれてそういううわさを聞いたことがあれば、そのことはお伝えします」(谷さん)

また、“価格”にも注目すべきだと矢富さん。

「これは心霊現象にかぎったことではないですが、相場より明らかに安い物件には“何か”があると思ったほうが良いでしょう。基本、賃貸不動産に“目玉商品”はないので、周辺相場と比較して妙に安い物件には心霊現象に限らず何か事情があるということ。部屋で心霊現象に遭いたくない、という方は相場にあった賃料のお部屋を選んだほうが良いでしょう」(矢富さん)

“招かれざる客”の来訪で、新生活スタートの出鼻をくじかれるのは嫌なもの。お化けが怖いという方は、これらのポイントを参考にしつつ、お気に入りの物件を探してみてくださいね。

●取材協力
・ハウスメイトパートナーズ

賃貸トラブル誰に言う? 意外と知らないマンション管理

賃貸マンションを選ぶとき、あなたはその部屋を“管理”している人が誰か、意識していますか? 入居した後で水道の故障や騒音などのトラブルがあった場合、賃貸している人に代わって対応するのが、その部屋の管理担当者。では誰が管理を担当しているのかというと、さまざまなケースがあるようです。
仲介会社に入居後のトラブルを伝えても、対応できない!?

気に入ったお部屋を見つけて借りたけれど、水まわりの故障や住環境の悪化など、住んでから問題がでてきた……。こんな場合、あなたはどこに相談しますか? 仲介会社に連絡するという人も多いかもしれませんね。しかし実は、仲介会社には入居後のトラブルを解決する責任がない場合も多いのです。では誰に相談したらよいのでしょうか? プリンシプル住まい総研の所長でAll About「賃貸・部屋探し」ガイドの上野典行(うえの のりゆき)さんに伺いました。

「入居後のトラブル対応の責任は、その物件の管理をしている人がもっています。物件を紹介する“仲介”と入居後の“管理”は、必ずしも同じ会社が担当しているとは限りません。なかには仲介会社が管理も一括して行っている場合もあります。そういった物件を業界的には『管理物件』といいます。この場合は仲介業者に連絡すれば、同じ会社や系列会社の管理部門につないでくれるでしょう。

一方で、管理を仲介とは別の会社や個人が行っていることもあり、そういった物件を『一般物件』といいます。名称については業界内部のものなので、入居する方は端的に“管理の責任者は誰か”を確かめればよいでしょう」(上野さん)

もしも住んだ部屋にトラブルがあった場合、管理者に速やかに対処してほしいもの。しっかりと物件管理をしてくれるかどうか、事前に見分ける方法はあるのでしょうか。

大家さんが管理している場合と、企業が管理している場合がある

上野さんによると、管理に関しては大別すると「仲介会社と同じ系列の管理会社が担当する場合」「仲介会社とは別の管理会社が担当する場合」「個人の大家さんが管理する場合」の3つがあるそう。

「それぞれにメリット、デメリットがあります。仲介と同系列の管理会社であれば仲介担当者との連携がスムーズな場合が多いですし、個人の大家さんが管理している場合は、もしかしたら漫画『めぞん一刻』のような、人情味あふれるやりとりが期待できるかもしれません。

とはいえ私は、特に今なら個人よりは企業の管理する物件をお勧めします。なぜなら住宅宿泊事業法(民泊新法)の改正があったり、民法の改正があったりと、直近で集合住宅にまつわる法改正が多いからです。個人の大家さんがそういった変化に追いつくのは、なかなか大変だと思います」(上野さん)

住宅宿泊事業法(民泊新法)の改正によって2018年6月から、マンションやアパートの管理規約で禁止されている場合を除いて、申請すればどこでも民泊が営業できるようになります。また、民法改正後には賃貸した部屋を元どおりにする「原状回復」に関して、経年劣化に関しては入居者が修復費用を負担する必要がないと明記されます(ただし、ハウスクリーニング代などがかかるといった特約がある場合は、特約が有効になります)。

例えばお部屋の隣が民泊で、毎晩パーティーが開かれていたら、夜間は静かにするように伝えてほしいですよね。そういったことに関して、もしも管理側に民泊についての知識や経験がなければ、上手に対応してもらえないかもしれません。そして住み替える際、管理側が民法の改正を知らなければ、経年劣化分の原状回復費用まで請求されてしまう可能性もあるでしょう。もちろん個人の大家さんでも法律に詳しく、管理会社よりも経験豊富な人もいますが、管理会社の場合は、人と人との相性を超えた交渉ができるメリットがありそうです。

部屋の快適さは間取りやインテリアだけでなく、管理の良さもポイント。いざというときにちゃんと対応してもらうためにも、賃貸でお部屋を決める際には、「管理トラブルの際は誰に連絡すればよいのか」を仲介業者に確かめておきましょう。個人の大家さんの場合は、すぐに連絡がつく人なのかどうかなど、その人となりを仲介担当者に聞いてみるのもよいでしょう。

●取材協力
・プリンシプル住まい総研

マンションって、誰がどうやって管理してるの?マンションの「管理」を担う人たちに聞いてきた

「戸建て住宅と違って、マンションに住んでいれば自分以外の第三者が管理してくれる」という認識で分譲マンションを購入する人が結構いるようだ。しかし、いったいどこの誰が、いつ、どのように管理してくれているかについて、きちんと把握できているだろうか。分譲マンション購入を検討するなら、知っておきたい、マンションの管理の仕組みのイロハを取材してきた。
管理組合、管理者、理事会、管理会社、管理員…それぞれの役割とは?

「マンション管理」の構成員として、管理組合、管理者、理事会、管理会社、管理員と似たような言葉が羅列され分かりづらい。それぞれの立場や役割が違うので、それをまとめておこう。

【画像1】マンション管理の仕組み(画像提供/一般社団法人マンション管理業協会)

【画像1】マンション管理の仕組み(画像提供/一般社団法人マンション管理業協会)

まず管理組合とは「区分所有者が全員で建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体(区分所有法第3条)」のことで、マンションを購入した人が構成員となる組織だ。つまり区分所有者による区分所有者のための団体である。ここで大切なことは、区分所有者は本人の意思に関係なく管理組合には必ず加入しなければならないということだ。「区分所有者=管理組合」ということである。「面倒なので管理組合には加入しない」といった選択の余地はない。

「一棟の建物全てを所有するオーナーが賃借人に貸している賃貸マンションは区分所有法の適用になりませんし、管理組合は存在しません。所有者が1人のオーナーだけなので建物の管理もオーナーの責任になります。分譲マンションの場合は専有部の管理は区分所有者が各々管理し、共用部は区分所有者全員で管理する責任があります」と、今回取材を受けていただいたマンション管理業協会、業務部の 山崎有恒さん。

建物等の管理は「区分所有法の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、管理者を置くという方法によって行われる(同法3条)」と決められている。

そしてここでの「管理者」とは区分所有者全体の集まりである管理組合の代表者にあたる。その管理業務を全員で行うことは難しいので、「集会(総会)の決議により管理者を選任し、選任された管理者が管理業務を実行すること(同法25条~29条)」となっている。多くのマンションではこれが「理事会」にあたり、その目的は、管理組合がするべき業務を執行する機関として機能することだ。会社で言えば取締役会に似たような役割になるだろう。

管理の具体的な業務については専門的・技術的な知識が必要なことも多く、管理組合と理事会だけで行うのは実際には難しい。管理業務を管理会社に一括して委託、あるいは一部を委託して行うのが通常だ。

つまり管理会社は、管理の主体である管理組合と締結した管理委託契約に基づいて管理業務を委託されているという立場だ。あくまでも管理に関する主役は管理組合であり、その意思決定に沿った「業務」を依頼されて実施するのが管理会社というわけだ。

国土交通省作成の「マンション標準管理委託契約書」では、下記のように管理業務を類型化している。

■事務管理業務
管理組合の会計の収入及び支出の調定、出納、当該マンションの維持又は修繕に関する企画又は実施の調整を期間事務というが、管理会社はこの3つを一括しての外部に再委託することは禁止されている。この業務に関連して、管理費、修繕積立金の収納があり、管理に管理業者が関与するため、財産の分別管理について、詳細な規定が設けられている。

■基幹事務以外の事務管理業務(理事会支援業務、総会支援業務、その他)
・管理員業務
一般的には通勤方式が多く、受付等の業務、点検業務、立会業務、報告連絡業務に細分化される。
・清掃業務
日常清掃(床の掃き拭きやちりはらい等を中心とした清掃)と特別清掃(定期的に床の清掃やワックス仕上げ等を行うことをいう)に細分化され、いずれも清掃員が作業を行う。
・建物・設備管理業務
建物点検、検査、エレベーター設備、浄化槽、排水設備、消防用設備、機械式駐車場設備が掲載されている。

「管理会社は、管理組合と『管理業務委託契約』を締結し、管理業務を委託される立場です。その管理業務のうち、『基幹事務』の会計面については管理会社の会計部が、マンションの実務的な運営面は一般的に『フロントマン』と呼ばれる担当者が対応する例が多いですね。そして管理業務のうち最も日常的な業務を担当しているのが一般に管理員と呼ばれる人たちです」と山崎さん。管理と言っても、その仕事内容は幅が広い。

「管理員室」の管理員さんは、毎日何をしているの?

管理員さんは、どのような立場なのかも聞いてみた。
「各管理員は管理会社と雇用契約を結んで各マンションに派遣されている場合が多いです。業務内容もあらかじめ管理会社と管理組合が決めた内容に沿って仕事の範囲が決められています。ごく稀に自主管理をしているマンションの場合は管理組合が直接管理員を雇っている場合がありますが、ほとんどの場合は管理会社の社員もしくは派遣です」とのこと。

次に管理員さんは一体どんな仕事をしているか、疑問に思ったことを聞いてみた。
「実際の仕事は大きく分けて受付業務、点検・巡回業務、立会業務、報告連絡業務等です。居住者や来訪者からの問い合わせ・ご相談の対応や集会室等共用施設の予約管理が『受付業務』。建物・設備の目視点検、無断駐車等の確認が『点検・巡回業務』。外注業者の業務履行やゴミ搬出時に立ち会う『立会業務』です。中には日常の清掃やゴミ出し等の『清掃業務』を管理員がかねている場合もあります」
マンションの規模によっては、各担当者が別々にいる場合もあるようだ。

住民から「自分の部屋(専有部)の電球交換をしてほしい」といった要望もあるらしいが、基本的には共用部の管理が中心だ。あくまでも「管理委託契約書」で決められていて、必ず年1回(契約期間1年の場合)は管理会社から区分所有者にその内容の説明が行われてから契約することになっている。つまりプラスαの要望があれば住民は管理組合・理事会に要望して、それが管理組合全体の要望であれば管理会社と協議して契約条項に入れる必要がある。管理員に直接交渉しても契約外の業務は依頼できないというのが通常だ。

つい、あれもこれもお願いしたくなるが、その業務が契約に沿っているかどうかは「管理委託契約書」で確認しておく必要がある。

あくまでも「管理組合」が管理の主役である

「マンションの管理」はめんどうなので他人事と思っていても、購入して区分所有者となった人は、同時に管理組合員になり、主体的に取り組む責任が生まれるのだと思う。それはマンションを購入する前から頭に入れておきたい。

「管理のいい悪い」が取りざたされることが多いが、実はそれを決めるのは区分所有者であり、その集合である管理組合だ。マンションの「管理規約」にしても、「管理委託契約書」にしても、個々のマンションにあったものに総会の決議で変更はできる。またマンション管理会社や管理員を信頼して、存分に働いてもらうようにするのも、管理組合の能力にかかっている。快適なマンション生活のために知恵を出し合って工夫していくと、自ずと「管理のいいマンション」にたどり着けることが可能であり、強いては自分たちの財産を守ることにつながる。

最近では、マンションの管理を自分ごとと捉え、積極的に参加している理事たちの話題も耳にする。マンションの理事の情報交換の場も生まれつつある。しかし一般的にはまだその意識は低い。自分自身の資産運用の1つとしても、もっと区分所有者一人ひとりが主体的に「マンション管理」にかかわる必要がある。

●取材協力
・マンション管理業協会