中古マンションの1平米当たり管理費は全年度比2.1%上昇、修繕積立金は3.1%も!その背景とチェックポイントを徹底解説

東日本不動産流通機構が、2023年度に成約した首都圏中古マンションの管理費や修繕積立金について、分析した結果を発表した。それによると、管理費も修繕積立金も前年度より上昇しているという。なぜ上昇しているか、その理由も含めて考えてみたい。

【今週の住活トピック】
「首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2023年度)」を発表/東日本不動産流通機構

1平米当たり管理費は前年度比2.1%、修繕積立金は3.1%上昇

東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は、不動産会社間で不動産情報を共有するシステムなどを運用する指定流通機構で、東日本を担当している。それを通じて成約に至った中古マンションについて、年度ごとの管理費や修繕積立金などのランニングコストを分析している。

2023年度の首都圏中古マンション月額平均額は、1戸当たりで管理費が平均1万2831円、修繕積立金が1万1907円だった。これを1平米当たりに換算すると、管理費は平均201円(前年度比2.1%上昇)、修繕積立金は187円 (同3.1%上昇)となった。いずれも、前年より上昇したことが分かる。

首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金の月額(平均額と1平米当たり)(出典:東日本不動産流通機構「首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2023年度)」より抜粋転載)

首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金の月額(平均額と1平米当たり)(出典:東日本不動産流通機構「首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2023年度)」より抜粋転載)

マンションの管理費は、日常の管理を円滑に進めるためのもので、管理会社への委託費、共用部の清掃費や水道光熱費、共用設備の点検などに使われる。また、修繕積立金は、計画的に行われる大規模修繕工事を実施するために積み立てられる。

まず管理費については、地域では東京都区部で高く、築年では築10年以内や築11~20年など、新しいものほど高くなっている。また、総戸数50戸未満、200戸以上でも高くなっている。

一般的に、高額なマンションほど、その設備仕様や管理サービスの水準が高くなり、維持管理の費用も高くなる傾向がある。また、大規模なマンションには、共用施設が多いため、その維持管理の費用もかかってくる。一方で、大規模なマンションは発生する固定費を多くの戸数で分担できるが、50戸未満の小規模なマンションでは分担できる戸数が少ないため割高になる場合もある。

こうした要因が管理費に影響するわけだが、近年新築マンションの価格高騰により高額なマンションが増えていること、なかでも東京都区部でその傾向が顕著であることから、管理費を引き上げる要因になっているといえるだろう。

次に修繕積立金を見ると、管理費ほどの金額差はないが、50戸未満の小規模なものは1戸当たりの平均額が高くなっており、規模感の影響が出ている。目立つのは、築10年以内で低くなっていることだが、これには別の理由もある。

築年数が新しいほど管理費が高く、修繕積立金が低い理由とは?

管理費と修繕積立金の1平米当たりの月額の推移を築年別に見ていこう。

建築年別の1平米当たり管理費・修繕積立金(月額)(出典:東日本不動産流通機構「首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2023年度)」より転載)

建築年別の1平米当たり管理費・修繕積立金(月額)(出典:東日本不動産流通機構「首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2023年度)」より転載)

管理費は、1967年~1977年など築年の古いものでは月額150円前後で推移しているが、以降は200円近くに上がり、バブル期で豪華なマンションが多かった1988年~1993年では200円を超えるものの、おおむね横ばいに推移していた。しかし、2013年以降は右肩上がりの上昇トレンドになり、2023年に建築されたマンションではついに300円を超える結果となった。

これには、管理員の人件費の高騰が大きく影響している。政府が2013年に施行した『高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)』による定年延長や再雇用などにより、定年後の仕事の選択肢が広がった。管理員の仕事は、かつては定年退職後の雇用の受け皿になっていたこともあり、採用が難しくなった結果、近年は人手不足に陥っているのだ。そのため、報酬を引き上げるなど人件費が上昇し、それが管理費にも影響しているというわけだ。

また、近年は共用部で使う水道光熱費などさまざまなものが値上がりしているので、管理費が上がる要因が多くなっている。築年の新しいマンションほど管理費が高くなるのには、こういった要因もあるのだ。

一方、修繕積立金はおおむね横ばいで推移してきたものが、ここ10年程度を境に下降トレンドになっている。これを見ると、修繕積立金の負担が軽減されてきたように見えるが、けっしてそういうわけではない。建設工事の費用が上昇しているなかで、大規模修繕工事の費用も上昇しないはずはない。

「均等積立方式」か「段階増額積立方式」か?

修繕積立金については、かつては規制がなかったため、マンション分譲時に長期修繕計画を作成しているものの、それを確実に行えるだけの修繕積立金の額を設定していない事例が多かった。それでは実際の大規模修繕工事を実施するのに支障があるということで、長期修繕計画通りに工事が行えるように修繕積立金の金額を設定するようになった。

とはいえ、マンションを販売する際には管理費・修繕積立金・駐輪駐車場代などの合計月額が低い方が売りやすいこともあって、それまで主流だった均等に積み立てる「均等積立方式」から、あらかじめ段階的に増額する「段階増額積立方式」を採用する事例が多くなった。

「段階増額積立方式」では、当初の修繕積立金の額は抑えられているが、5年ごとなどに一定割合で上がっていく形になる。修繕積立金の値上げは、管理組合の総会で承認される必要があり、否決されると値上げができなくなる。

修繕積立金で築年の新しいマンションの月額が低いのは、値上げされる前の金額の事例が多いという事情もあるのだ。修繕積立金については、さらに注意点がある。

長期修繕計画は適宜見直すことになっているが、近年、大規模修繕工事にかかる費用が上がっている。建築資材や水道光熱費などの上昇に加え、建設業界や物流業界では残業時間を規制する2024年問題が拍車をかけて人手不足が深刻化している。そして人件費の高騰は大規模修繕工事の費用に大きく影響する。となると、以前の長期修繕計画上の費用と現実の費用にズレが生じる可能性も高い。不足しない計画だったとしても、不足する可能性もあるのだ。

毎月払うランニングコストは安い方がよいのだが、管理費も修繕積立金も上がる可能性はある。特に、「段階増額積立方式」では、負担すべき費用を順繰りに送る形なので、上がることが前提となっている。

新築マンションを購入する場合は、ランニングコストが上がる可能性を考慮する必要があるし、中古マンションを購入する場合は、修繕積立金の積立方式がどうなっているか、長期修繕計画はいつ見直されたものかなども、しっかり確認する必要がある。事前に把握できることをスルーしてしまうと、将来家計に大きな影響が出るということもあるので、忘れずに確認してほしい。

●関連サイト
東日本不動産流通機構「首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金(2023年度)」

首都圏中古マンション、月額管理費は平均12,138円

(公財)東日本不動産流通機構(東日本レインズ)はこのたび、2018年度「首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金」に関する調査結果を公表した。それによると、2018年度に同機構を通して成約した首都圏中古マンションの月額管理費は、1m2当たり平均で188円(1戸当たり12,138円)、修繕積立金は161円(同10,392円)、合計は349円(同22,529円)だった。

1m2当たりの年間管理費は、成約m2単価の0.43%、年間修繕積立金は0.37%で、両者の合計は0.81%。また、1戸当たり月額管理費は経年化するにつれて下落傾向。

都県別でみると、東京都の月額管理費は、1m2当たり平均で216円(1戸当たり13,055円)、修繕積立金は167円(同10,058円)。神奈川県の月額管理費は、1m2当たり平均175円(1戸当たり11,713円)、修繕積立金は162円(同10,854円)。

ニュース情報元:東日本レインズ

マンション修繕積立金、首都圏平均は1万13円

(公財)東日本不動産流通機構(東日本レインズ)は6月25日、2017年度「首都圏中古マンションの管理費・修繕積立金」についての調査結果を公表した。それによると、2017年度に東日本レインズを通して成約した首都圏中古マンションの月額管理費は、1m2当たりの平均で188円(1戸当たり12,086円)、修繕積立金は156円(同10,013円)、合計すると344円(同22,099円)だった。

都県別でみると、1m2当たりの月額管理費は、東京都217円(1戸当たり12,961円)、神奈川県174円(同11,661円)、千葉県146円(同10,744円)、埼玉県154円(同10,487円)。月額修繕積立金は、東京都160円(同9,570円)、神奈川県158円(同10,610円)、千葉県147円(同10,827円)、埼玉県145円(同9,872円)となっている。

ニュース情報元:東日本レインズ

マンション管理費市場、2020年には7,825億円まで拡大と予測、矢野経済研究所

(株)矢野経済研究所はこのたび、国内のマンション管理市場の調査を行った。調査期間は2017年10月~12月。同調査におけるマンション管理市場とは、分譲マンションを対象とし、マンション管理費市場、および共用部修繕工事市場により構成される。それによると、2017年の国内マンション管理費市場規模(管理費ベース)は7,235億円(前年比2.7%増)の見込み。また同社は、2018年は7,447億円(同2.9%増)、2019年は7,656億円(同2.8%増)、2020年には7,825億円(同2.2%増)まで拡大すると予測した。

さらに、2025年までのマンション管理費市場をみると、マンション管理市場はストックビジネスであるため、新築分譲マンションが供給され続ける限り市場規模は伸び続け、2025年の同市場規模は8,655億円に拡大すると予測。一方で、人口・世帯数の減少に伴う新築ニーズの減少等を背景に伸び率は鈍化していくと考察した。

2017年の国内マンション共用部修繕工事市場規模(工事金額ベース)においては、前年比4.3%減の6,207億円を見込んだ。また、2018年は同7.8%増の6,693億円、2019年は同0.5%減の6,660億円、2020年には同2.0%増の6,793億円になると予測。さらに、2025年までの共用部修繕工事市場をみると、2021年以降はリーマンショックの影響によりマンション供給戸数が絞られた築年のマンションの1回目の大規模修繕工事の実施時期に当たることなどを背景に、2022~2023年頃まで低調に推移するものと予測している。

ニュース情報元:(株)矢野経済研究所