建物内保育園の入園を保証! 子育て施設が大充実の、賃貸マンションに行ってみた

つくばエクスプレスの柏の葉キャンパス駅近くに、建物内保育園の入園保証(※)がついた賃貸マンションが誕生した。近年は職場と住まいが近い“職住近接”の重要性が認知されてきたが、共働き家庭の住まい選びにおいては、保育園などの育児施設が近い“育住近接”の視点も注目を集めつつある。マンション建物内保育園という、究極の育住近接を実現できる物件は、賃貸ではめずらしい。詳しく取材した。
※入園には条件があり、保育園の運営事業者・株式会社マザープラネットの入園審査により入園できない場合もあり。別途株式会社マザープラネットとの入園手続きが必要
保育園の距離が10分を超えると、送迎負担が深刻に

共働き家庭にとって、子どもがどの保育園に入れるかは死活問題。家から遠い保育園だと送迎の負担が大きいので、なるべくなら近場の保育園に入れたいのが本音というものだ。筆者が周囲の父母10人ほどに聞いてみたところ、特に保育園までの距離が10分を超える親は、送迎に大きな負担を感じているようだった。

子どもは大人のようには歩けないので、一緒に歩くとなれば徒歩10分の道のりが15分や20分以上になる覚悟が必要。特に雨の日は自転車も使えず、道路の危険も増すので神経がすり減るという声も。また保育園の広さや保育の内容は少し劣ると感じるものの、送迎時間短縮のために、家の近くの保育園に転園した家庭もあった。ただでさえ疲れる通勤に送迎の負担が重なると、仕事や家事を始める以前に疲れ切ってしまうことにもなりかねない。近隣保育園への転園は、現実的な選択だろう。

そんな背景もあって、近年敷地内に保育園を擁するマンションが注目されている。昨年2017年には保育園付き分譲マンションが1都3県で約20棟販売されるなど、供給数も増加している(リクルート住まい領域「2018年トレンド予想」より)。

賃貸マンションに入居すると、建物内保育園の入園保証がついてくる!

しかし保育園を併設している点に惹かれて分譲マンションを購入しても、必ずしも敷地内保育園に入園できるとは限らない。その保育園が国から補助金が出る“認可保育園”であれば、入園の可否の決定権は自治体にある。自治体の基準に照らし合わせた結果、同じ敷地内のマンションに暮らしながらも入園できないことがあるのだ。また認可園でない場合でも、同じ敷地のマンションに住む子どもの数が保育園のキャパシティーを超えた場合、入園できない可能性がある。

この点、2018年2月に新たに誕生した「パークシティ柏の葉キャンパス ザ・ゲートタワー ウエスト」では、そのような懸念が払拭されている。というのも、このマンションでは、入居者の入園を保証する認可外保育園が建物内に併設されているからだ。また、このマンションは全戸賃貸住宅となっているため、子育て期間中のみここで暮らすといった、柔軟な住まい方が可能となっている。

柏の葉キャンパス駅から徒歩3分の491戸の大型マンションだ(写真撮影/蜂谷智子)

柏の葉キャンパス駅から徒歩3分の491戸の大型マンションだ(写真撮影/蜂谷智子)

ホテルのような雰囲気がただようエントランス(写真撮影/蜂谷智子)

ホテルのような雰囲気がただようエントランス(写真撮影/蜂谷智子)

保育施設・温泉・ジム等の充実した共用部

『パークシティ柏の葉キャンパス ザ・ゲートタワー ウエスト』を訪れてみると、保育園などの子育て施設のみならず、温泉やジムも併設するなど、その共用施設の充実ぶりに驚く。このマンションに入居したら、どんな暮らしが待っているのか? 三井不動産柏の葉まちづくり推進部事業グループ担当者に案内してもらった。

子育て施設「チコル」があるのが、マンションの3階。隣接するショッピングセンター「ららぽーと柏の葉」直結の出入り口と居住者専用ゾーンからの出入り口がある。「チコル」は保育園・学童・シェアキッチン・総菜屋・遊具を備えた屋内遊び場・屋内遊び場を見ながら仕事ができる保護者用のワークスペース等。保育園はマンション入居者専用だが、その他の施設は入居者以外も利用が可能だ。

入居者と入居者以外が混在するフロアがマンション内にあることに、不安を感じる人もいるかもしれないが、その点は心配無用だと担当者は言う。「マンションのセキュリティはカードキーの有無だけでなく、フラッパーゲートも採用しているため、居住者がマンションに入る際に第三者がすり抜けて入ってしまう心配もありません」。

保育園は駅前の「ららぽーと柏の葉」から直結している(写真撮影/蜂谷智子)

保育園は駅前の「ららぽーと柏の葉」から直結している(写真撮影/蜂谷智子)

保育園・学童・屋内遊び場――ワンフロアがまるごと、子育て施設に

大きな特徴である、入居者専用保育園は0歳児から入園でき、延長保育は22時まで。子どもが病気になったときは、同マンション1階にある365日対応の小児科医院や、保育園と同じ企業が運営する病児・病後児保育を利用できる。学童保育は保育園とひとつながりの部屋の一角にあり、小学校の1年生から6年生までをあずかる。

シェアキッチンと惣菜店は、昼夜の給食時には保育園や学童に通う子どもたちに食事を提供する場に。惣菜を予約すればテイクアウトが可能。夕食をつくる時間がないときには、ここで食事を購入すればよい。さらに大きな滑り台が特徴的な屋内遊び場は、中2階のワークスペースから見守りができて、子どもを遊ばせながら仕事をしたいという、働く親のニーズにも対応している。

保育園は横長のワンフロアで、保育者の目が届きやすい(写真撮影/蜂谷智子)

保育園は横長のワンフロアで、保育者の目が届きやすい(写真撮影/蜂谷智子)

1階には小児科と病児・病後児保育施設も(写真撮影/蜂谷智子)

1階には小児科と病児・病後児保育施設も(写真撮影/蜂谷智子)

柏の葉スマートシティにフィットする、課題解決型の住まいを目指す

なぜこういったマンションがつくられたのか? 担当者に話しを聞いた。

「柏の葉キャンパスは“環境共生・健康長寿・新産業創造”という3つのまちづくりテーマを設定し、現代社会の課題解決型の街づくりを進めるスマートシティです。三井不動産は民間企業として、2001年7月から街のプラットフォームづくりに携わってきました。柏の葉キャンパスには、すでにいくつもの分譲マンションを開発・運営していますが、今回『パークシティ柏の葉キャンパス ザ・ゲートタワー ウエスト』を子育て施設の充実した賃貸物件にした理由は、この街にふさわしい“課題解決型のマンション”を目指したからです」(担当者)

『パークシティ柏の葉キャンパス ザ・ゲートタワー ウエスト』は、共働き家庭がぶつかる4つの課題を解決することを目指したそうだ。4つの課題とは“待機児童・37.5度の壁(子どもが熱を出すと保育園に預けられないこと)・小1小4の壁(小学生の放課後の預かり先がないこと)・女性の産後復帰”。

建物内保育園の入園保証、敷地内の病児・病後児保育、そして働きながら子どもを遊ばせられる屋内遊び場など、充実した子育て施設は、働く親の困りごとを解決するためのもの。マンションの側からここまで積極的な課題解決を提案している物件は稀ではなかろうか。

子どもの給食がつくられる惣菜店では、家庭用にテイクアウトもできる(写真撮影/蜂谷智子)

子どもの給食がつくられる惣菜店では、家庭用にテイクアウトもできる(写真撮影/蜂谷智子)

保育園の子どもたちは、シェアキッチンで並んで給食を食べる(写真撮影/蜂谷智子)

保育園の子どもたちは、シェアキッチンで並んで給食を食べる(写真撮影/蜂谷智子)

屋内遊び場は、大きな滑り台が特徴的、保護者は中二階から見守りながら仕事もできる(写真撮影/蜂谷智子)

屋内遊び場は、大きな滑り台が特徴的、保護者は中二階から見守りながら仕事もできる(写真撮影/蜂谷智子)

柏の葉キャンパスは、公・民・学が一体的に開発に取り組む将来性のある街

「柏の葉キャンパスを住まいに選んだお客さまが、度々おっしゃるのが『この街には将来性がある』ということ。すでに公・民・学が一体となったさまざまな試みが動いていますし。三井不動産は今後もこの街の開発に積極的に取り組む予定です。そういった地域を選ぶ方は、住まいにもより具体的なコンセプトを求めていらっしゃるのではないかと考えて、ターゲットに合ったソリューションを打ち出しています」(担当者)

柏の葉キャンパスは、東京大学や千葉大学がキャンパスを置く学園都市の一面を持つ。公・民・学によって構成される「柏の葉アーバンデザインセンター」を中心に子ども向けのイベントを開催するなど、先進的な試みが多くなされている。

教育意識の高い家庭にピッタリの土地柄が背景にあり、マンションのターゲットの志向性にも一致する。

地域の子ども向けイベントの様子(写真提供/三井不動産)

地域の子ども向けイベントの様子(写真提供/三井不動産)

地域の子ども向けイベントの様子(写真提供/三井不動産)

地域の子ども向けイベントの様子(写真提供/三井不動産)

先進的な周辺環境と充実した共用施設を賃貸で得るなら、そのお値段は?

柏の葉キャンパスは、教育施設だけでなくショッピングやレジャーの施設も充実。駅前に大型ショッピングモールの「ららぽーと」があり、また駅から徒歩7分の場所に蔦屋書店を中心とした「柏の葉 T-SITE 」がある。東京大学に隣接した広大な柏の葉公園をはじめ、自然も豊か。マンションの共用施設も子育て向けにとどまらず、大人向けのスタディルームやパーティールーム、ジムや天然温泉まで併設されているのだ。

帰り道に買い物を済ませ、マンションの敷地内の保育園で子どもをピックアップ、夜は大浴場の温泉に浸かる。休日は公園で遊んだり、子どもを地域のアクティビティに連れ出したり……。快適な暮らしをイメージできる恵まれた環境だ。柏の葉キャンパス駅は東京駅まで34分、銀座駅まで36分と、東京方面に通勤するのに便利な点も見逃せない。

このマンションのおおよその月々の賃料は、1Kが9万円代から、2LDKが17万円代から3LDKが21万円代からだという。

夫婦と小さな子どものいる家庭を想定した2LDK(写真撮影/蜂谷朋子)

夫婦と小さな子どものいる家庭を想定した2LDK(写真撮影/蜂谷朋子)

近年は待機児童の問題のみならず、病児保育施設の不足や、片親が育児を一身に担う“ワンオペ育児”の大変さなどが問題視されている。夫婦共働きが一般化したことで育児の課題があらわになり、解決方法を社会全体で模索している時代だといえるだろう。そんななか、育児の課題解決のためのソリューションを備えた賃貸マンションができたというのは新しい選択肢として心強い。

賃貸ならではの強みという点では、豪華な共用施設の将来的な維持管理費を考えなくて済むということがあげられる。「購入した住まいに生涯住み、不都合があっても我慢する」のではなく、「自分が今抱えている課題を解決する物件を住み替えていく」というライフスタイルは、先々の見通しが立ちにくい現代にフィットしているのかもしれない。

●取材協力
・三井不動産株式会社

「ワークライフバランスを支える住まい」が、今後の住宅のキーワードになる!?

公表された「平成29年度国土交通白書」によると、20~30代の子育て世代を中心に「ワークライフバランス」を支える住まいに対するニーズが高いことが分かった。今後の住まい選びのキーワードになりそうな「ワークライフバランスを支える住まい」とは、どういったものだろうか、詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「平成29年度国土交通白書」を公表/国土交通省ワークライフバランスとは、仕事と生活の調和?

「ワークライフバランス」とは何か?

これは政府の働き方改革の中で使われるようになった言葉で、直訳すると「仕事と生活の調和」ということになる。

そこで筆者は、内閣府の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」を見てみたが、正直言って概念的すぎてよく分からなかった。

「仕事と、子育てや介護といった生活との両立が難しい」「安定した仕事に就けない、一方で、長時間労働を強いられる」といった現実があり、多様な働き方や生き方が可能な社会にする必要がある。ということが語られているが、労働環境についてが主で、住まいや地域に関する具体的な言及はなかった。

職育近接、職住近接、三世代同居などがキーワード

そこで、白書ではどういった調査結果を基に、「ワークライフバランスを支える住まい」というキーワードを導き出したのか、見ていくことにしたい。

まず、ワークライフバランスについて、白書の第2章「第1節働き方に対する意識と求められるすがた」を見ていこう。
「働く上で重視すること」を聞いた調査結果(図表2-1-5)によると、20代~70代までの年代によりバラツキはあるものの「給与・賃金」や「仕事のやりがい」が多数を占める。ただし、20代・30代に注目すると「ワークライフバランス(子育て・介護などとの両立)」の重視度が高くなる。

「働けるうちはできるだけ働きたい」というニーズが高いこともあって、20代・30代には、長く仕事を続けながらも、家事・育児などのための時間を確保できる「ワークライフバランス」の実現へのニーズがある。このことから、白書では「在宅勤務」などの勤務場所の多様化や、「フレックスタイム制」などの労働時間の多様化といった、場所や時間に制約の少ない働き方に対する取り組みが求められていると指摘している。

働く上で重視すること(年代別)(出典/「平成29年度国土交通白書」)

働く上で重視すること(年代別)(出典/「平成29年度国土交通白書」)

次に、白書の第2章「第3節住まい方に対する意識と求められるすがた」を見ると、各世代に「今後求められる住まい方」を聞いた調査結果(図表2-3-4)がある。最も多い回答は、全世代で「介護が必要になっても年金の範囲内で安心して暮らし続けられる住まいの整備」で、次いで年代を問わず「親世帯、子ども世帯との同居や近居の推進」が多いという結果だった。

一方で、20代・30代の若年層に注目してみると、「職場内や近隣への子育て支援施設整備による職育近接の推進」という回答がともに多く、20代では「田舎暮らしなど地方移住の推進」も多いという結果だった。

今後求められる住まい方(年代別)(出典/「平成29年度国土交通白書」)

今後求められる住まい方(年代別)(出典/「平成29年度国土交通白書」)

こうした結果を受けて、国土交通省では、「職育近接、職住近接、三世代同居の推進等、ワークライフバランスを支える住まい方の支援が求められる」と見ているわけだ。

働き方が変われば住まい選びの基準も変わる?

図表2-1-5の「働く上で重視すること」の調査結果を見ると、「勤務地・勤務場所までの距離」の重視度は必ずしも高いわけではない。一方、図表2-3-4の「今後求められる住まい方」の結果では、20代・30代が「職場内や近隣への子育て支援施設整備による職育近接」を重視している。

つまり、自宅と職場の距離の近さよりも、例えば企業内保育所や駅前保育所のような通勤上で立ち寄れる、あるいは自宅に近いといった子育て支援施設を求めていることが分かる。

また、「親世帯との同居や近居」を望むのは、20代・30代は子育てのサポートを親世帯に期待して、50代・60代では親の介護を視野に、70代では自身の介護を考えているからだろう。

となると、子育ての時間が欲しい20代・30代、仕事の責任が重くなる40代、親の介護が視野に入る50代以降などではワークライフバランスの考え方も変わってくるわけで、「状況に応じて住み替えしやすい住宅市場」ということも求められているのだろう。

白書では「新たな兆し」の一例として「ワーケーション」を挙げている。国内外のリゾート地や帰省先など休暇中の旅先で仕事をする“テレワーク”のことだという。

今後働き方改革が進み、子どものお迎えの前後に自宅で在宅勤務をしたり、旅先の田舎などでも勤務できるようになると、住まい選びの基準もどんどん変わっていくことだろう。

共働きママに聞いた!家を買うとき、子育て面で重視したことは? マイホーム購入調査[3]

子育て世代にとって、マイホームの購入の際に悩むポイントはたくさんあります。今回は、共働き子育てママに購入のタイミングをはじめ、購入の際に重視したこと、住んでから分かった意外とよかったことなどをヒアリングしました。これからマイホーム購入を考えている子育て世代には要チェックな内容です。
子育て世代がチェックするポイントは、「教育施設までの距離」や「周辺の治安」が上位

子育て世代が土地や購入物件を探すときに「子育て」に関することで重視したことはどんなことでしょうか。
1位は「保育園、幼稚園、小学校までの距離」(38.0%)、2位は「周辺の治安が良いかどうか」(30.5%)、3位が「実家との距離」(30.0%)でした。教育施設はもちろんですが、保育園や幼稚園を卒園後に小学校に上がると、子ども一人での行動も増えるため、周辺の治安は気になるポイント。また、特に共働きの場合には、普段の生活に加えて、子どもが熱を出したけれど会社は休めない、急な残業でお迎えに行けないなど、親に協力を頼みたい場面がどうしても出てきます。そんなときに、近くに親がいると助かるという人は多いようです。
4位以降は「公園など、周辺に子どもを遊ばせる施設があるか」(28.5%)、「部屋数や広さが十分かどうか」(28.0%)と続きます。

また、「子育て補助、医療補助などの支援が充実している自治体かどうか」(15.5%)などは、事前に調べておくと生活する上で助かるので、チェックしておきたいポイントです。

周辺環境、教育機関、医療機関など、さまざまな視点で選んでいることが分かる(出典/SUUMOジャーナル編集部)

周辺環境、教育機関、医療機関など、さまざまな視点で選んでいることが分かる(出典/SUUMOジャーナル編集部)

それぞれを重視した理由は以下のとおり。
【保育園、幼稚園、小学校までの距離】
・登下校の距離が長いと、心配事が増えるから(38歳・秋田市)
・私自身、小さいころに小学校が遠くて嫌だったので、ある程度小学校に近い家を選びたかった(36歳・茨城県守谷市)
・子どもはまだいなかったけれど、将来的に環境の良い幼稚園に入れたいと思ったので(34歳・北海道苫小牧市)

【実家との距離】
・共働きなので、子育てする上で実家の援助は不可欠だから(43歳・岡山県早島町)
・1人目を妊娠していて家族がこれから増える。義理の母が1人暮らしで、できるだけ近くに住みたかった(41歳・仙台市青葉区)
・両方の実家からほどほどに近い所(40歳・川崎市高津区)

【周辺の治安が良いかどうか】
・安心して子どもを遊ばせたいから(37歳・岐阜県各務原市)
・小学校までの距離や道が危なくないか、地元ではないので詳しく分からず、治安の良さが心配で友人にいろいろと聞いた(31歳・名古屋市)

【公園など、周辺に子どもを遊ばせる施設があるか】
・男の子二人だったため、外でしっかり遊べる場所が欲しかった(41歳・横浜市神奈川区)
・田舎育ちなので自然がある場所で育てたかった。公園が近くにある場所を検討した(39歳・大阪府富田林市)

【子育て補助、医療補助などの支援が充実している自治体かどうか】
・子育て支援にも力を入れている自治体なので、経済的にも助かると感じた(36歳・福岡県那珂川町)
・医療助成が充実していると助かるので(43歳・秋田県大仙市)

購入タイミングは、「第一子が0歳~2歳のとき」がトップ

次に、先輩たちが実際に物件を購入したタイミングを教えてもらいました。
1位は「第一子が0歳~2歳のとき」(27.5%)。これは保育園に通い出すタイミングで購入を決意したのではと予想できます。2位は「第一子が3歳~5歳のとき」(19.0%)。こちらは小学校に上がる前に引越しを済ませてしまおうという計画なのかもしれません。
このように、第一子が生まれてから購入に至る人が多いですが、第一子妊娠前、第一子妊娠中という人も合わせると28.0%いました。

第一子妊娠前、妊娠中という人は3割弱(出典/SUUMOジャーナル編集部)

第一子妊娠前、妊娠中という人は3割弱(出典/SUUMOジャーナル編集部)

購入後に後悔した点は、「通学路の交通量」や「保育園激戦区かどうか」など

また、住んでから気が付いた、子育ての面で「もっと重視しておけばよかった」ということを聞いたところ、以下のようなコメントがありました。

・家の前の道が意外と交通量が多かった(43歳・神奈川県大和市)
・こんなにも保育園に空きがないとは思わず、安易に考えていたので後悔した(42歳・千葉県市川市)
・小学校は近いけど中学校が遠いので、中間位の位置にしておけばよかった(41歳・大田区)
・歩道が狭く、ガードレールもないため、もう少し考慮すれば良かった(34歳・北九州市)
・最寄りの小学校は学区外で、実際に通う小学校のほうが遠く、交通量の多い道の近くだった(39歳・埼玉県越谷市)
・部屋の広さが不十分。子どもの洋服や勉強道具などが増えるので、もっと部屋数があればよかった(40歳・新潟県新発田市)

家の間取りや設備のことはもちろんですが、立地や近隣の道路の安全性、教育・医療施設の問題などは住んでみないと分からないことも多く、「もっと調べておけばよかった」と後悔することもあるようです。
また、近い将来の生活を視野に入れておくことも大事です。例えば、今はまだ子どもが小さいからと幼稚園や保育園のことだけを調べるのではなく、将来通うかもしれない小学校、中学校もチェックしておくと、後悔がない生活を送れそうです。

意外とよかった点は、「同世代の子どもが多い」「児童館、図書館などが近い」など

逆に、住んでから気が付いた、子育ての面で「意外とよかった」点はどうでしょうか。
コメントは以下のようになりました。

・町の子育てに関しての取り組みが盛ん。子どもも増えてきたので周りの人たちと交流ができること(47歳・香川県三木町)
・小学校の預かり保育が無料である。隣の県は学童でお金が1万円ほどかかると聞いた(35歳・川崎市宮前区)
・児童館、図書館など子どもが使える施設が市内に多く、イベントも多数だった(39歳・埼玉県越谷市)
・近所は高齢者が多く、同世代の友達は少ないが、おばあちゃんたちが子どもたちを孫のように可愛がって接してくれる(36歳・福岡県那珂川町)
・同じ学年や近い世代の子が多く、子ども同士が仲良くなった。それで親も仲良くなったりする(41歳・大田区)
・近くに地区センターがあり、絵本も借りやすいし未就学児が遊べる広場もある。子育てサロンも近い。地区センターは子どものイベントがたくさん催されている。自然がたくさんあり、自然公園がふたつも近くにあり散歩コースがたくさんある(30歳・横浜市)
・子どもが見える範囲にいつもいるような間取りになっているので、安心して家事ができる(36歳・富山県入善町)

間取りなど家のこともありましたが、同世代の子どもが多かった、教育施設のイベントが多い、町内の人たちとの触れ合いがあるなど、周辺の環境のことを挙げる人が多数いました。

子育て中のママにとって、住まいの暮らしやすさはもちろんですが、周辺環境が整っているかどうかは重要です。家を買うということは、終の棲家(ついのすみか)とはいかずとも、長い期間その場所に住むということ。気になることを事前に調べたり、実際に見たりして、不安はなくしておきたいもの。今回の調査で挙がっていた点で気になることがあれば、物件購入を決める前にチェックしてみてくださいね。

●調査概要
・[マイホーム購入調査]より
・調査期間:2018年3月27日~29日
・調査方法:インターネット調査(ネオマーケティング)
・対象:10年以内に購入した持ち家にお住まいの20歳~49歳の既婚共働き女性
・有効回答数:200名(子どもありの世帯のみ)

子どもたちのサードプレイスに 民間の学童保育「キッズベースキャンプ」の取り組み【育住近接(4)】

共働きの夫婦にとって、小学校入学後に放課後どう過ごさせるかは悩みのタネだ。公立の学童保育だけでなく、最近では民間の学童保育施設も多くみられるようになった。東急グループの「キッズベースキャンプ」はそのひとつ。多種多様なプログラムを通じて、子どもたちに学びを提供している。「キッズベースキャンプ豊洲・東雲」を例に、その活動内容を紹介しよう。育住近接
近年、保育園や学童保育施設などをマンションや団地内に設置する「育住近接」というトレンドが生まれています。「育住近接」を実現させた物件や団体の取り組み事例を紹介する企画です。民間ならでは 22時まで預けられる学童保育

「ウォーター・フロント」として開発が始まった湾岸エリアの豊洲や東雲は、タワーマンションが林立していることで知られている。

豊洲駅と東雲駅の真ん中あたりに位置する「東雲キャナルコートCODAN」の敷地内には、塾や医療関係の施設など、生活に便利なショップなどが立ち並んでいる。今回訪ねたのは、その中にある「キッズベースキャンプ豊洲・東雲」。東急グループの株式会社キッズベースキャンプが運営する、民間の学童保育施設だ。同社の三沢敦子(みさわ・あつこ)さんに、施設の概要や学童保育のあり方について伺った。

「田植え」イベントの様子(画像提供/キッズベースキャンプ)

「田植え」イベントの様子(画像提供/キッズベースキャンプ)

「キッズベースキャンプ」の始まりは2008年。公設の学童保育施設では預かり時間が遅くても19時までというところがほとんどだが、ここでは、22時まで預けられるようになっている。残業が発生しても、子どもを安全に預かってもらえるのはうれしい点だ。また、スタッフが指定の小学校から施設までの送迎を行ってくれるのもありがたい。子どもだけで移動しなくてよいのは、保護者としてとても安心だろう。

キッズコーチは、7~10人に1人の割合で配置される。子どもに対してキッズコーチがこれだけいれば、それぞれの子どもの特徴を理解してコミュニケーションをとることもできるし、なにより子どもたちに目が届きやすいだろう。ちなみに、キッズコーチは20代が多い。正社員の採用倍率約30倍の難関を突破し、しっかりと研修を受けたプロフェッショナルがそろっている。

施設内には、木製のテーブルが並んでいる。「学校から帰ってきたらまず宿題の時間を設けています。勉強を習慣づけさせるのがねらいです。その後、おやつタイム、イベントもしくは自由時間というのがだいたいの流れです。おやつや食事はもちろん子どものアレルギーに対応することができます」と三沢さん。

その言葉どおり、部屋の隅っこでは、市販のお菓子の成分表示を見ながら仕訳をしているスタッフがいた。これだけでも頭が下がるが、念には念を入れ、ダブルチェック、あるいはトリプルチェックを行っているという。

また、施設が用意する夕食「キッズミール」をオプションで利用することもできるので、忙しいときには安心だ。

キッズベースキャンプといえば、「豊富なイベント」が特徴!

施設の特徴は何と言ってもイベントが充実していること。

「イベントは子どもへの投資になると思っており、遠足やお泊まりなどにもでかけます。スキーなど、保護者だけでは連れて行くのが難しい場所も訪れています」(三沢さん)

イベントは、週1回くらいの頻度で開催している。参加するかどうかは、子どもと保護者が話し合って決めることができる。イベントは実にさまざまで、料理や工作、スポーツや社会科見学など、子どもたちの知的好奇心をくすぐるものばかり。

「普段は入れないところに行ける、動物園や劇場のバックヤードツアーは特に人気です」(三沢さん)

また、夏休みや冬休み、春休みなど、長期休みだけ施設を利用することも可能。日曜日に登校した次の日の「代休」などは、朝から対応しているそうだ。

「利用者は1、2年生が多いですね。それ以上になると塾などに通い始め、だんだん通う日数が減ってきます。ですから、通う日数に応じた料金プランを設定しています」(三沢さん)

このように、キッズベースキャンプは、保護者や子どもの役に立ちたいという一心で活動をしてきたそうだ。

「10年続けてきたことで、理解を得られるようになったと感じています。時代の流れもありますし、続けてきたことで信頼度が高まったのだと思います」(三沢さん)

 全員でゲーム(画像提供/キッズベースキャンプ)

全員でゲーム(画像提供/キッズベースキャンプ)

「ただいま!」 サードプレイスでの体験が子どもを成長させる

取材をはじめて数十分、お話を聞いていると、子どもたちがスタッフに連れられて帰ってきた。「こんにちは」ではなく「ただいま!」と元気な声で、施設に次々とやってくる。そのまま思い思いの席につき、ランドセルから取り出した宿題を始めた。

その日勤務していたキッズコーチに、保護者たちの反応を聞いてみた。

「保護者のみなさんからは、日々感謝の言葉をいただきます。特に印象的だったのは、子どものトラブルを仲介して、仲直りさせたとき。子ども同士のトラブルは、親が介入しにくいこともあるので、とても喜んでいただけました。そのほかにも、乱暴な言葉づかいなどをしている子どもには注意するのですが、親以外の大人から指摘されたほうが効果的な場合もあるようで、感謝されたことがあります」(キッズコーチ)

「キッズベースキャンプは、保護者が働き続けるための役割はもちろんですが、子どもの居場所にもなることもあるのです。事情があって学校に行けなくなってしまってもキッズベースキャンプには来てくれるなど、子どもたちの受け皿になってあげられると考えています」(三沢さん)

アート工作イベント(画像提供/キッズベースキャンプ)

アート工作イベント(画像提供/キッズベースキャンプ)

ただ、施設の需要は増えつづけ、現在はキャンセル待ちが多くなってきたようだ。そのため、「プレキッズクラブ」という未就学児登録制度をはじめたという。この制度は、子どもが小学校に入学する前から学童保育へ入会できる権利を確保できるというもの。この制度は有料だが、「どこの学童も満員で入れない」という事態を防げるため、将来の安心材料として保護者たちは申し込みをするのだという。

この施設に限ったことではないが、「小1の壁」の問題は、なんとかならないものかと考えさせられた。

子どもたちの「やりたい!」を取り入れ、保護者たちの「体験させてほしい!」をかなえるキッズベースキャンプ。今後も独自のプログラムを通じて子どもたちを成長させ、保護者に安心を提供しつづけていくだろう。

●取材協力
・キッズベースキャンプ

なかなか増えない保育園併設マンション、その理由を探ってみた

保育園に入りたいけれども、入れない「待機児童問題」。その解決策のひとつとして、2017年秋、国土交通省・厚生労働省が「大規模マンション建設における保育施設の設置を促進します」を発表しました。では、「保育園併設マンション」がなかなか増えない理由とはどこにあるのでしょうか。行政とデベロッパーに取材してきました。
保育園併設マンション、メリットが薄い購入者も?

保育園の待機児童の問題が話題になると、「大規模マンションに保育園を併設すれば、待機児童も解消できるしマンションも売りやすいんじゃないの?」そう考えたことがある人が、いるのではないでしょうか。

筆者が記憶する限り、大規模マンションが多数登場した2000年代前半には認証/認可保育園併設のマンションが登場していたように思います。しかし、「保育園併設のマンション」の供給戸数やエリア、ニーズなどを網羅したデータはなく、まだまだ一般的になったとは言い難い状況です。

写真/PIXTA

写真/PIXTA

最も大きなポイントとなるのは、認可保育園の場合、マンションの購入者・住人だからといって、優先的に入れるわけではないところでしょう。認可外や認証であればマンション住人優先枠を設けているところもあるようですが、人気が高く、多くの親が利用したいと考えている認可保育園の場合であれば、地域住民と同じように審査されるわけで、マンションに住んでいるのに「落ちた……」という可能性は十分にあるのです。

また、マンションの規模が大きければ大きいほど、シニアカップルやDINKS、シングルなど、多彩な世帯が購入します。子育て世帯向けに利用が限られていて、しかも入れるどうかが不透明というのであれば、「保育園併設マンション」のデメリットに目が向いてしまうのも、ムリはないかもしれません。

保育園の運営会社に携わる、デベロッパー側の思いとは?

一方で、デベロッパーはどんな思いを抱いているのでしょうか。大手デベロッパーの東京建物は、2016年、保育園開設 ・運営を行う「東京建物キッズ」を立ち上げました。デベロッパー側から見て、保育園併設マンションを建設するうえで課題はあるのでしょうか。

「マンション企画・開発と保育園の企画・開発などは似ているところが多く、建物をつくるところまではほぼ一緒です」と話すのは、マンション開発の経験をもちながら、保育事業部でエリアマネージャーを務める猪俣章信さん。建築法規などを順守しつつ、行政との協議を行い、建物やコミュニティつくっていくのは、デベロッパーの得意とするところだといいます。

つまり、保育園のための「ハコ」や「建物」そのものをつくるのは、あまり難しいことではないというのです。ただ、肝心の保育園はその性質上、運営に関しての参入障壁が高いのだといいます。

「乳幼児を預かるわけですし、行政からの補助金で運営するので、保育園運営はどこの誰でもOKというわけにはいきません。参入障壁があるのは当たり前ではないでしょうか」と、解説してくれたのは、事業企画部部長の田所照代さん。そのため、保育園開設に際しての審査も多く、その度に確認、調整、書類作成が必要になるといいます。

また、デベロッパー側からみれば、保育園が不足する都市部の土地は、マンション・商業施設・ホテルなどとの争奪戦で仕入れた土地です。一住戸でも販売住戸を増やして利益を出したいという「事業性」の観点からみても厳しい側面があるそうです。

「デベロッパーは用地買収の際に、事業計画を立案し、どの程度の収益を見込むかを勘案しています。ですから、用地買収後に自治体から保育園を要望されても難しいのも事実です。一企業の使命感やCSRというだけではなかなか増えないでしょう。どの企業が土地を購入するとしても、フェアな競争になるよう、自治体側で要綱・条例が整備されることによって、状況は変わるのではないでしょうか」と田所さんは解説します。

写真/PIXTA

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保育施設促進の通知を出した国交省の考えは?

では、2017年秋に「大規模マンション建設における保育施設の設置を促進します」という通知を出した、国土交通省はどう考えているのでしょうか。あらためて通知を出した背景について聞いてみました。

「ご存じのとおり、待機児童問題の解消は喫緊の課題です。ただ、保育園の開園は行政だけの力では難しく、民間事業者に広く呼びかける必要があり、通知にいたりました。しかし、今回の通知だけで、待機児童の問題が解消されるとは考えていません」と担当者は話します。

今までタテ割りだった行政(マンション建設担当部署・保育担当部署)の情報共有が活発になることや、「保育園併設マンション」の成功事例が周知されることが、待機児童問題解消の一助になると考えているようです。

また、保育園併設マンションがなかなか増えない要因としては、次の2つをあげてくれました。
「保育園併設マンションについては、(1)保育園は商業施設などと比べた場合、事業性が低いこと(2)将来的に住人のニーズがなくなってしまう などの懸念があると聞いています。そのため、今回の通知では将来の用途変更についても配慮した内容となっています」

ちなみに、すべての大規模マンションに保育園開設を義務づけることは、デベロッパーの財産権の侵害になる可能性があり、難しいといいます。そのため、今後も地域の保育需要にもとづき、行政とデベロッパーの話し合いで建設が協議されていくことになる、と教えてくれました。

写真/PIXTA

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ここまでまとめると、マンション購入者にとっても、デベロッパーにとっても「直接的なメリットが薄い」、行政にとっては「デベロッパーと協議し、お願いしていくしかない」というのが保育園併設マンションの実情のようです。

働く母親でもある筆者は、今回、子どもの預け先がなく5カ月の娘とともに取材にのぞみました。幸い、春からの保育園入園が決まっていますが、多くのママたちが今まさに「保育園に入りたい!」と叫んでいるのをみると、第一子のときの保育園落選を思い出し、心が痛くなります。課題はあるかもしれませんが、保育園併設マンションは待機児童問題の解決策のひとつになると思うのです。

現状でも「開設当初は認可外保育施設(例:企業型保育所など)で立ち上げ、マンション住人に優先権を付与し、10年後に認可保育園に移行させてもらう」といった条件で建設するなど、保育園併設マンションを増やす工夫の余地があるといいます。

地道ではありますが、みんなで「保育園併設マンションがもっと増えてほしい!」という声をあげていくことが大切だと思っています。

●取材協力
・東京建物キッズ
・国土交通省

「時短」で子育てをサポート コンパクトシティがかなえる育児環境とは【育住近接(3)】

共働きの夫婦が増えた今、子育てと仕事の両立の難しさに直面している人は多いだろう。野村不動産は、そんな子育て世帯向けにマンションを建設、昨年の3月から入居が始まった。その物件「プラウドシティ大田六郷」は、どのように育児をサポートするのだろうか。入居者の声を交えながら紹介したい。育住近接
近年、保育園や学童保育施設などをマンションや団地内に設置する「育住近接」というトレンドが生まれています。「育住近接」を実現させた物件や団体の取り組み事例を紹介する企画です。子育てに必要な施設がそろう「コンパクトシティ」

政府が取り組む「少子化対策」と「女性活躍」。産休、育休を取得しやすくする企業が増えてきたが、保育園不足による「待機児童」問題など、子育て環境はまだまだ整ってはいないのが現状だろう。そんななか供給されたのが、野村不動産が手がける「プラウドシティ大田六郷」。一体どんな特徴があるのだろうか。

物件は、京急本線・雑色駅から徒歩約10分の場所に位置する。多摩川緑地にほど近く、品川や川崎方面にも通勤が便利な場所で、昔から町工場が多いエリアだ。

【画像1】スカイデッキからは多摩川が望め、自然環境もよい(画像提供/野村不動産)

【画像1】スカイデッキからは多摩川が望め、自然環境もよい(画像提供/野村不動産)

マンションの敷地内には、保育施設、学童、医療、ショップなどの子育て世帯にうれしい施設を内包している。また、大型コインランドリーやカーシェア、宅配レンタカーなど、便利な設備は実に豊富だ。

物件の周辺は、徒歩7分圏内に幼稚園、小学校、中学校、児童館がそろい、家の近くで子どもが成長することができる。公園や自然、病院もあるのも魅力的で、「コンパクトシティ」という呼び名にふさわしい場所であることがうかがえる。

野村不動産の高橋和也(たかはし・かずや ※「高」は正式には「はしごだか」)さんによると、このマンションの開発の背景には「時短を図り、子育て世帯をサポートしたい」という思いがあったという。というのも、働きながら子育てをする際に問題になるのは、「とにかく時間が足りない」ということだからだ。遠くの保育園に連れて行ってからの出勤、遠くの保育園に寄ってからの帰宅。あるいは日々の買い物をするためのスーパーが遠いこと……。

そうしたことが原因で発生する時間のロスを解決するのが、マンション内に設置された施設と街の利便性だと考えたそう。

この記事の作成にあたって行った居住者アンケートで寄せられた、「すべての生活動線が1つにつながっている」(Hさん)という意見に、このマンションの特徴「時短」が集約されているように感じられる。

「昨年3月より入居を開始したばかり。入居者には子育て世代が多く、6歳未満の未就学児のいる家庭が多いですね」と高橋さん。購入者層も20代~30代と比較的若い。また、共働き世帯が多く、「通勤しやすいので選んだ」という声が多く見受けられた。同じように多かった意見が「子どもが生まれ、子育てをしやすい環境を求めていました」(Kさん)といった声。

つくり手の思いは、たしかに入居者に届いているようだ。

キッズラウンジで育つのは、子どもだけでなく、大人たちのコミュニティ【画像2】敷地内にはひろびろとした場所があり、外遊びもできる(画像提供/野村不動産株式会社)

【画像2】敷地内にはひろびろとした場所があり、外遊びもできる(画像提供/野村不動産株式会社)

これまで生活の利便性について述べてきたが、敷地内の共用施設にも注目したい。

子ども向けの共用施設として、よく利用されているのが「キッズラウンジ」。キッズラウンジは、絵本や遊具が豊富にそろった子ども向けの遊び場で、世界の優れたあそび道具を販売する玩具メーカー、ボーネルンドがプロデュース。その存在感はラウンジというよりもむしろ屋内型の公園のようだ。雨が降っても家の外に出て遊ぶことができるのは大きな魅力といえるだろう。

【画像3】カラフルで色彩豊かなキッズラウンジ(画像提供/野村不動産株式会社)

【画像3】カラフルで色彩豊かなキッズラウンジ(画像提供/野村不動産株式会社)

高橋さんによれば、だいたいいつも6~7組の親子が遊んでいる姿を目にするという。アンケートでも「キッズラウンジや中庭など、マンション敷地内で遊ぶスペースがあることはよいと思う」(Tさん)など、キッズラウンジに好感をもつ声が目立った。一人っ子だとしても、同じマンション内に同世代の子どもがいることで、「きょうだい感覚」を得ることができるかもしれない。

また、キッズラウンジには父親の姿も見かけるそう。「父親がスムーズに入り込める感じで、休日の育児が楽しくなりました」(Iさん)や、「子育て世帯が多くいて、話がしやすい」(Hさん)といった声があがった。こういう交流の積み重ねが、マンションコミュニティを形成していくのだろう。

施設内の子育て施設 利用状況はいかほど?

敷地内にある学童施設「ポピンズアフタースクール西六郷」は、放課後や長期休暇に小学生を預けることができる。小学校入学後、保護者が勤務から帰宅する夜間の時間に起こる「小一の壁」問題に対応することが目的のようだ。未就学児童が多いこともあり、まだマンション住人の利用は少ないそうだが、機能を発揮する日も遠くないだろう。

また、開設準備中の医療施設も、子どもたちの「かかりつけ医」として活躍しそう。そして、4月にはいよいよ認可保育園が開園予定。マンションを購入したからといって優先的に入れるわけではないのだが、実際に入居者の多くが入園を希望している。

どの施設もまだまだマンション入居者の利用は少ないが、今後の発展に期待したい。

コンパクトシティに建てられた「プラウドシティ大田六郷」。共働き夫婦が、育児と子育てを両立するための環境が十分に整っていることが分かった。入居が始まったばかりだが、今後「育住近接」のお手本となってくれそうだ。

●取材協力
・プラウドシティ大田六郷(野村不動産株式会社)

先輩ママたちの座談会! 保活前に知っておきたかったこと

認可保育園の発表が始まる季節ですが、まだまだ保活は続く、というご家庭も多いのではないではないでしょうか。保活を成功させたいママが事前に知っておくべきことは? 用意周到に保活をして希望の園に入園させることができたAさん、保活に失敗して会社を退職せざるを得なかったBさん、保活のために新しい仕事を始めたCさんの3人を集め、ママ座談会を実施。保活前に知っておきたかったことを聞きました。<今回の参加者>
Aさん:フルタイム正社員として出版社に勤務する3歳児ママ。第3希望だった駅近の小規模保育施設への入園が決まり、子どもが1歳のころに復職した

Bさん:正社員として勤務していたが、保活に失敗し、退職。子どもの幼稚園入園時からフリーのマーケティングプランナーとして働いている5歳児ママ。2人目妊娠中

Cさん:1人目の保活は途中で断念。2人目の妊娠を機に、もっていた資格を活かして無認可保育園の保育士に。3歳と2歳の年子を同時に第1希望の認可園に入園させた

スタートダッシュと役所からのアドバイスが成功のカギ!?

――みなさんがどんな保活をしたのか教えていただけますか?

Aさん「子どもが1月生まれだったため、0歳から預けるという選択肢はなく、激戦だと聞いていた1歳クラスへの入園にかけるしかありませんでした。とにかく復職したかったのと、子どもの預け先にはこだわりたかったので、産休中から保活を開始し、区役所でもらった冊子を片手に徒歩20分以内、もしくは電車で5駅以内の保育園を認可・無認可問わず片っ端から見学に行きました」

Bさん「産休中からってすごいですね! 産前勤めていた会社は私が初の産休取得者だったので『いろいろ大変だよ』とは聞いていたものの、生の声が入ってこない状況でした。うちの子は11月生まれなのですが、保活をスタートさせたのは0歳の夏ごろから。完全に乗り遅れてしまっていたと思います。ネットで情報収集しようにも、あまりまとまっているサイトってないんですよね……」

Cさん「私は区役所に頼りました。1人目のときに、自分たちで保活対策したつもりが入れなかったんです。それで区役所に通い詰め、担当の方にアドバイスをもらっていました」

――どんなアドバイスを?

Cさん「要は『要項が書かれた冊子をよく読む』ということなんですけど、こちらが見落としていた利用調整(※)に有利になるポイントを指摘してもらえたのは助かりました」
※利用調整……保育園に入園できるかどうかの選考のこと。定員数がオーバーした場合は、保育が必要な程度に応じて入園の可否が決められる

【画像1】「親身になってアドバイスをしてくれる役所の方と出会えたことが幸運でした。担当者によって対応が変わるので、何度か足を運んでみることをお勧めします」とCさん(写真撮影/はしもとゆふこ)

【画像1】「親身になってアドバイスをしてくれる役所の方と出会えたことが幸運でした。担当者によって対応が変わるので、何度か足を運んでみることをお勧めします」とCさん(写真撮影/はしもとゆふこ)

予約はすぐ満員に。見学会のスケジュール管理も一苦労

――なるほど。利用調整の基準や優先順位は複雑で、一見分かりづらい部分がありますもんね。保活で最も大変だったことはどんなことですか?

Aさん「私は利用調整の優先順位を上げることと保育枠を確実に確保するために、生後半年のころから5駅離れた無認可保育園に預けていたんです。最寄りの無認可園も見学したのですが、納得できるような保育環境ではなくて。預けていた園自体は駅近だったのですが、毎日離乳食のお弁当をつくって通わせるのは大変でした。その段階から保育園に預けながら働く姿をリアルに想像できたのはよかったんですけど……」

Bさん「私は情報の少なさに戸惑いました。息子は甘えん坊なので、自宅からの通いやすさに加え、アットホームな園を希望していたのですが、見極めようにも材料がなかったんです。1回の見学会だけでは『何となくよさそう』止まりで、『ここなら!』と思える園にあまり出合えなかったんですよね」

Cさん「人気のある園ほど情報公開しているなと思います。どんな園なのか分かって安心できるから、申し込みが殺到する。私、見学会の順番待ちや再予約のスケジュールに疲れ、1人目のときは途中で保活を断念しました。2回目の保活がうまくいったのは、無認可園の保育士といった立場で多くの保活ママさんとお会いし、情報がたくさん入ってきたことも一つの要因かと思います」

Aさん「確かに見学会の申し込みをしても、電話がつながらなかったり、『定員になったので、また後日かけてください』と言われたりした記憶があります。実は、今通わせている保育園は事前見学のスケジュールが合わず、見学なしで入園させた園なんです。結果として良い保育園でよかったんですけど、通ってみるまで不安でしたね」

【画像2】Bさんの保活当時のメモには、無認可園の保育料やキャンセル待ち人数などが残されている。 「預けたいと思う無認可園の保育料は10万円~15万円で、到底預けられる費用ではありませんでした」(写真撮影/はしもとゆふこ)

【画像2】Bさんの保活当時のメモには、無認可園の保育料やキャンセル待ち人数などが残されている。「預けたいと思う無認可園の保育料は10万円~15万円で、到底預けられる費用ではありませんでした」(写真撮影/はしもとゆふこ)

周辺の保育施設の数や生活環境を考慮した住まい選びを

――保活に力を注いでいたAさんが見学なしでお子さんを預けていたとは驚きです!

Aさん「実は、子どもが0歳の夏ごろから、当時住んでいた賃貸と同地域内での住宅購入を検討し始めていたんです。復職までに引越しを済ませて、住まいを整えておきたいなと思って。11月初旬の保育園申し込み時には購入物件が決まっておらず、どこに住むことになっても不便がない駅近の園しか候補にできなくて」

――保活は住まう地域とも密接にかかわってきますもんね。BさんとCさんは住まいにおいて「こうしておけばよかった」といったことはありましたか?

Bさん「私が当時住んでいたのは、東京の某区の端っこだったんです。自宅の近くに保育園はあったのですが、隣の区の管轄園だったので、申し込めたとしてもその区内の人より優先順位は下がります。自宅の周囲にいかに多くの預けられる保育施設があるかも大切だなと思いました」

Cさん「保育園もそうですが、子連れで生活しやすい環境かどうかをもっと意識すればよかったなと思います。妊娠中は出産が、産後は保活に成功することがゴールになりがちですが、保育園入園後も子どもとの生活は日々続いていくので。うちは年子だということもあり、小児科やスーパーに行くのも一苦労。近場にあると便利だなと思います」

【画像3】保活と購入物件選びを並行して行っていたAさん。「もっと早い段階でパートナーと長期的なライフプランを立てておくべきだったと思います。妊娠前や妊娠中に購入しておけば、もっと違った形になったかも」(写真撮影/はしもとゆふこ)

【画像3】保活と購入物件選びを並行して行っていたAさん。「もっと早い段階でパートナーと長期的なライフプランを立てておくべきだったと思います。妊娠前や妊娠中に購入しておけば、もっと違った形になったかも」(写真撮影/はしもとゆふこ)

ママネットワークに勝る情報源なし。つながりに出かけよう!

――最後に、これから保活を始める人に、保活で後悔しないためのアドバイスをいただけますか?

Cさん「保活のカギを握るのは情報だと思います。例えば地域の児童館や子育て支援センターなどには、同じように保活をしているママたちが集まっていて、情報をシェアし合っています。一人で黙々と保活をするよりはるかに楽しく、公開されていない情報が得られることもあります。園庭開放などにも出かけてみるといいと思いますよ」

Aさん「お住まいの地域によるかもしれませんが、私が通わせている小規模保育施設には、3歳クラス以降優先的に転園できる提携の認可園があることを、2歳クラスの途中で知りました。このことを知らず、2歳クラスへの進級時に『3歳でどこにも入れなかったら困るから』と転園していったお子さんがいました。こうした情報もママ友ネットワークがあれば入ってきやすいかもしれません。面倒でも外に出て、つながりをつくっておくことをオススメします」

Bさん「まさに私の保活メモに、『小規模保育は3歳児以降の預け先が確保できない』って書いてあります(笑)。Aさんがおっしゃったことを知っていれば、小規模保育園も検討内でした。先輩ママからの情報は侮れないですね。私の敗因は、スタートの遅さと粘りだったのだと改めて気づきました。母子手帳をもらうと同時に役所にある保育園情報を入手するといいのかもしれません。今お腹にいる2人目では仕事を続けられるよう、私も今から準備しています。保活に早すぎることはないと知ったので」

【画像4】「勤めていた企業の定時は10~19時。時短勤務が2歳までしか認められていなかったこともネックになりました。もし会社の制度が整っていなければ、事前に人事などと相談しておくと良いかもしれません」とBさん(写真撮影/はしもとゆふこ)

【画像4】「勤めていた企業の定時は10~19時。時短勤務が2歳までしか認められていなかったこともネックになりました。もし会社の制度が整っていなければ、事前に人事などと相談しておくと良いかもしれません」とBさん(写真撮影/はしもとゆふこ)

「妊娠したら、地域とのつながりをつくろう!」これが、先輩ママたちの結論でした。地域の役所や子育て支援センターに出かけ、こまめに情報収集をしたり、園庭開放や地域のイベントなどに参加し、生の声を集めたりすることが、保活を成功に導くポイントになりそうです。

敷地内に認可保育園 子育てしやすい住まいをつくる【育住近接(2)】

昨今の保育所探しの大変さに、自治体もさまざまな取り組みを始めている。板橋区大山で建設中のマンション“Brillia大山 Park Front”でも敷地内に認可保育園が計画されている。しかもこのマンションには、働く女性が提案する住まいの共創プロジェクト “Bloomoi(ブルーモワ)”が参画していると聞いた。今回は自身が働くママでもあるメンバーに話を聞いて、仕事と子育てを両立する住まいについて考えてみた。育住近接
近年、保育園や学童保育施設などをマンションや団地内に設置する「育住近接」というトレンドが生まれています。「育住近接」を実現させた物件や団体の取り組み事例を紹介する企画です。駅からの距離より、自宅~保育所~駅への動線が大事

夫婦共働きはとにかく忙しい。特に小さな子どもがいると保育園探しが大変だ。できればマンション内に保育園があればベストだろう。最近では自治体の取り組みも積極的で、大規模なマンションが建設される場合は保育園をつくってほしいと要請することも多いようだ。

“Brillia大山 Park Front”は、敷地内に小規模認可保育園が開園予定されている。もちろん住人がそのまま入園できるわけではないが、もし入園できたら「育住近接」として、ほぼ理想的。保育園を併設するマンションということで、より子育て世代が集まりやすいようだ。

自分自身が1歳と2歳の子どもを育てている鈴木さんはBloomoiメンバーの1人。「駅の近くに保育園があるよりも自宅の近くにあるほうがずっと便利です。大人と違って子どもは歩くのに時間がかかるので、とにかく自宅の近くにあってほしい。雨の日は特にそう思います」

また6歳と7歳の2人の子育て中の稲富さんは「子どもにはいくつかの習い事をさせていますが、送り迎えや一人で通えることなどを考慮して家の近くに通わせています。何を習わせるかを考えると同時に家からの通いやすさもかなり重視しますね」

話を聞いてみると、自宅から保育園(習い事)、そして駅への動線が大切なようだ。自宅が駅から多少遠くなっても、この動線がスムーズであれば毎朝の負担が少なくなる。自分たち自身が産休を取った後に仕事復帰しただけに、説得力のある意見だ。

【画像1】Brillia大山 Park Front外観完成予想図(写真提供/東京建物株式会社)

【画像1】Brillia大山 Park Front外観完成予想図(写真提供/東京建物株式会社)

共創をテーマに2012年から活動しているプロジェクト

Bloomoiは、働く女性が提案する住まいの共創プロジェクトがテーマだ。2012年から東京建物株式会社の中で、女性社員による住まいづくりを提案していこうと始動した。「Bloomoi」は、「Bloom(咲く)」と「moi(私)」からなる造語で、働く女性の笑顔や才能が咲き誇るという意味が込められている。それぞれが暮らしの“幸せ密度を高めること”を目指している。

「『つくり手側の思い込みで住まいを提供しているのではないか?』という疑問に立ち戻って考えることからスタートしました。そのためにアンケートなどのデータはもちろん、働く女性一人ひとりのホンネを知ることから始めました」とスタート時からプロジェクトのプロモーション担当として参加している岩谷さん。

まず自分たちの1週間の行動をさらけ出して実際のリアルな生活を探ってみたり、グループワークやSNSなどで対話を積み重ねたりしてきた。加え他の企業で働くさまざまな女性たちとのミーティングも続けている。

「ライフスタイルが多様になり、女性の価値観が決してワンパターンではなくなっている今だからこそ、 常にホンネに耳をかたむけることが大切だと実感しています」と岩谷さん。そこで出会った意見から、次々に商品化を続けている。

Bloomoiスペースと名付けた空間は、『季節家電や水などのストック品をたっぷり収納する』という目的や『海外のテレビドラマのような服や靴を飾りながら収納できるクロゼット』という目的が選べるようになっている。またキッチンも対面式が人気だと思っていたが、働く女性のなかには片付けに手が抜ける・料理に集中できる独立型を好む人も多いことに気付いた。

さらに朝は洗面室が家族の順番待ちで困っているという声に、洗面ボウルを片寄せにして2人並んで使えるよう工夫したプランも用意。2015年には一般公募により選ばれた女性10人と一緒に、“理想のリビングダイニング”をつくり上げるプロジェクトを実施。Bloomoiライブラリーと名付けた空間は、家事の合間にちょっとした作業をしたいという声から、キッチンのそばにワークスペースを開発している。

【画像2】Brillia大山ザ・レジデンス Bloomoiスペース(スタイルクロゼット) (写真提供/東京建物株式会社)

【画像2】Brillia大山ザ・レジデンス Bloomoiスペース(スタイルクロゼット) (写真提供/東京建物株式会社)

【画像3】Brillia文京江戸川橋 コダワリキッチン(写真提供/東京建物株式会社)

【画像3】Brillia文京江戸川橋 コダワリキッチン(写真提供/東京建物株式会社)

プロジェクトに参加することで仕事へのスタンスが変わった

このプロジェクトは部署横断でメンバーが集まっており、自分の担当業務とは別のプロジェクトチームとして活動している。活動を続けて6年、メンバー自身もさまざまなライフステージの変化を体験しているそうだ。

「私は去年の10月から参加しています。実は子どもを産んで仕事を続けるのは周りに迷惑をかける存在になるのではないかと悩んだこともあります。復職してBloomoiに参加し、同じような立場のメンバーのなかで、迷惑をかけることを気にするのではなく、どう成果を出して貢献するかを大事にしようと自分の目線が変わりました」と鈴木さん。

「私は約10年間、販売現場で働いていました。出産を経て今は別の部署に所属していますが、自分自身のライフスタイルの変化に応じた視点と共に販売現場で培った販売センターに来訪されるお客様の声を商品企画で活かせることなどもやりがいになっています」と稲富さん。

「実際は試行錯誤を続けながら6年続けてきました。まず東京建物の中でも、Bloomoiの活動を理解してもらうのに時間がかかりました。最近では実績に納得してもらい、参画できることが多くなりました」と岩谷さん。着々と新たなメンバーが加わり、プロジェクトの活動はさらに広がっている。

建物というハード面に加えてソフトについても考えていきたい

マンションという建物を整えても、住む人たちがどんな暮らしを続けていけるかというソフト面での目配りも大切なことだ。

「私たち親がどうしても無理なときに、近所のおじいちゃんが子どもの送迎してくれたり、遊ばせながら私の帰りを待っていてくれることがあります。保育園でお知り合いになった方なのですが、その方も子どもたちとかかわることを生きがいに感じてくださっているようです。そんな見守りのシステムがマンション内でできたらいいなと思うことがあります」と稲富さん。

「働いているとマンション内のコミュニティに参加しづらい面もあります。入居前の交流会など、自然に参加できるシステムを考えていきたいと思っています」と鈴木さん。

自分たちが悩んだこと、立ち止まったことを、等身大で解決していくという姿勢は、働く女性たちの共感を呼ぶだろう。

世界144カ国を対象にした男女の差を数値化した「ジェンダーギャップ指数」ランキング(世界経済フォーラム2017年)で、日本は114位という状態だ。働く女性たちの置かれている状況はまだまだ厳しい。こういった民間企業の活動と行政の積極的な取組に、今後も期待したいところだ。

●取材協力 
・東京建物株式会社 Brillia Bloomoiプロジェクト 

大切なのはハート 集合住宅「母力」が仕掛ける”つながる育児”【育住近接(1)】

育児中は体力も神経も使うもの。核家族化が進んだ現代、全てをお母さんが抱え込み、つらくなってしまうケースもあるようです。そこで最近注目されているのが、育児を支える仕組みを備えた住まい。今回は子育て世代の”つながり”をつくることをコンセプトにしたへーベルメゾン「母力」をご紹介します。育住近接
近年、保育園や学童保育施設などをマンションや団地内に設置する「育住近接」というトレンドが生まれています。「育住近接」を実現させた物件や団体の取り組み事例を紹介する企画です。お母さんが本当に求めているのは、ハートで育児ができる住まい

核家族化や共働き世代の増加を背景に、育児環境の孤立が問題になっています。両親が忙しく、子どもと過ごす時間が少ないうえに、祖父母が遠方に住んでいたり仕事をしていたりして、頼れない。そんな問題を解決する育児環境を備えたマンションが注目されているのです。

今回は子育て世代の”つながり”をつくることをコンセプトにし、2012年10月に1棟目が完成したへーベルメゾン「母力」。現在は各地に10棟の規模に拡大している同ブランドのマンションを、企画開発する旭化成ホームズの玉光祥子(たまみつ しょうこ)さんにお話を伺いました。

「ファミリー賃貸というコンセプトの住宅を企画する際に、私たちは子育て中のお母さんたちから、しっかりとヒアリングをしました。ハウスメーカー主導で企画すると、一般的には子育てに適した間取りや設備など、スペックを整えることを先に考えてしまいがちです。でも生の声に耳を傾けると、実は皆さんが一様に求めていらしたのはハートの部分、つまり人と人との関係性だということが分かったのです」(玉光さん)

例えば子どもの足音や夜泣きを気にしたり、また知っている人が誰もいない環境で子育てすることに不安を感じたり。そんなストレスや孤立感を解消するには、スペックを整えるだけでは不十分と考え、旭化成はお母さんが自ら発信し、学び合うコミュニティ「お母さん大学」とコラボレーションすることになりました。

「『お母さん大学』とのコラボレーションから生まれた企画として、母力には母力サポーターという気軽に相談できる先輩お母さん的な立ち位置のスタッフがいます。入居しているお母さん方のお話を伺ったりアドバイスを伝えたりして、不安を軽減してもらうサポートを行っています」(玉光さん)

その他にも、入居の際に近所付き合いがある前提を承諾してもらう、先に入居している住人への紹介を行うなどの、コミュニケーションのきっかけづくりをしているそう。

【画像1】お母さんたちとのディスカッション風景(写真提供/旭化成ホームズ)

【画像1】お母さんたちとのディスカッション風景(写真提供/旭化成ホームズ)

始動から5年たち、入居者主導の暮らしづくりが進行中

1棟目の物件である「母力むさしの」が完成してから5年、入居者同士のコミュニティはどのように育ってきているのでしょうか。

「思った以上に入居者さんが住まいの管理やコミュニティづくりに自主的にかかわってくれています。実は当初は私たち主導で年に何回かイベントを開催するなどの働きかけをすることを考えていたのですが、フタを開けてみると入居者のコミュニティは顔合わせのきっかけがあれば、自然にできあがってくることが分かりました。ですから私たちは入居者さん同士の自立したコミュニティを見守りサポートするスタンスに変わってきています」(玉光さん)

実際に入居者の方に話を聞いてみると、5歳と3歳のお子さんがいるKさんは「庭で子どもたちが遊んでいるときに『ちょっと夕食の準備をしたいので』といって、他のママに子どもたちを見てもらい、その間に夕食の準備をすることがあります」とのこと。

また、4歳と2歳のお子さんをもつHさんは、夫の転勤で大阪から東京に引越してきたそう。母力に入居する前は、知り合いがいなくて孤独を感じることがあり、仕事で疲れて帰ってきた夫に当たったり、話を聞いてほしくてしゃべり倒したりすることもあったそうです。「今は日中、いろんなママさんと話ができているので夫に当たることも、しゃべりかけ攻撃もしなくなりました」と話してくれました。

さらに、住宅内のイベントや、建物の管理なども入居者からの提案が増えてきたそうです。「母力」の場合、共有部分のちょっとした掃除をしたり、また近所づきあいをすることが前提であったりと、一般の賃貸住宅に比べて手間や気遣いが必要なシーンがあるといいます。それにもかかわらず入居希望者が引きも切らず、場所ではなく「母力」を指名で問い合わせをする人もいるそうです。

「入居者にはいろいろな方がいらっしゃいますが、共働きのご家庭や、転勤で遠方から転居されてきたご家庭などが典型的ですね。つながりをつくりやすいコミュニティが醸成されていることが評価されています。また『母力』という名前から、お母さん主体と思われがちですが、お父さん方も子育てへの意識が高いですよ」(玉光さん)

「母力」のような住宅を選ぶ家族は、父母ともにそのコンセプトに共感しているわけですから、お父さんも子育てに協力的な場合が多いのです。入居者が皆子育てに関心があるという点で、共感が得られやすく、協力して育児がしやすい環境をつくる自治が生まれるのかもしれません。

「『母力』ブランドは物件オーナーさんの満足度も高いのです。社会に貢献している実感があり、やりがいがもてるとの声をいただいております。私どものこれからの課題は、永続的なコミュニティづくり。賃貸は入居者が入れ替わるのが特徴なので、いまの『母力』コミュニティが時を経てトーンダウンすることがないように、サポートをしていきたいと思っています」(玉光さん)

【画像2】母力のイベント風景(写真提供/旭化成ホームズ)

【画像2】母力のイベント風景(写真提供/旭化成ホームズ)

現代は相手のプライバシーを尊重する気持ちが働き、なかなか人と人との距離を詰められないこともしばしば。その点、入居者が皆つながりをつくることに肯定的だとすれば、声がかけやすいメリットがありそうです。「子育ては孤独に行うよりも、助け合いながら行うほうが楽しい」。そう考える方には、子育てを通じてつながる「母力」のような住まいがフィットするかもしれません。

●取材協力
・ヘーベルメゾン母力(BORIKI)