「シルバニアファミリー」35周年! 赤い屋根のお家の最新事情やSNS人気の秘密

赤い屋根のお家と、そこで暮らす動物の家族たち。小さいけど精巧で、愛らしくて、大人も夢中になって遊んでしまう。そんな魅力を持つのが、今年で発売から35周年を迎える「シルバニアファミリー」(エポック社)です。今回は、家で過ごす時間を豊かで楽しくしてくれる、動物たちの世界とその進化をご紹介します。
人形の累計出荷数は2億2000万体以上。世界で愛されるおもちゃ発売当初の「赤い屋根の大きなお家」。このログハウス風の住まい、味わいがあっていいですよねえ(写真提供:エポック社)

発売当初の「赤い屋根の大きなお家」。このログハウス風の住まい、味わいがあっていいですよねえ(写真提供:エポック社)

「シルバニアファミリー」と聞いてピンと来ない人でも、この家と人形の写真を見れば、「知ってる!」「友だちの家で遊んだ~」などと懐かしく思い出す人もいるのではないでしょうか。1985年、エポック社から発売された「シルバニアファミリー」は、現在60以上の国・地域で販売されていて、実に人形の累計出荷数は2億2000万体以上、ハウスほか大型商品累計出荷数は3000万棟・個以上にものぼるそう。ちょっと規模がすごすぎてピンときませんが、言われてみれば家とウサギやクマの動物のモチーフって、国境や言語に左右されず、世界共通ですものね。現在では日本のみならず、世界中で愛されているおもちゃなのです。

懐かしの初代の人形たち(写真提供:エポック社)

懐かしの初代の人形たち(写真提供:エポック社)

ちなみに、日本の次に歴史の長いイギリスでは認知度も高く、「英国の玩具」であると認識されているとか。では、あのシンボリックな「赤い家」はどこかモデルがあるのでしょうか。英国というより、どちらかというと米国のカントリー調のように見えますが……?

「赤い屋根の住まいは、1900年代初頭のアーリーアメリカンをイメージしてデザインされたものです。お家、家具、人形のサイズ感は発売当初から変わっていません。お母さんが子どものころに遊んでいたものとミックスして、親子2代で遊ばれる方も増えています」(エポック社)

時代に左右されず、ずっと愛さるのは本物のおもちゃの証ですよね。また、発売当時から現在までいちばん定番で人気なのがあの「赤い屋根の大きなお家」確かにシルバニアファミリーといえばあの赤い屋根のお家のイメージがあります。

カーテンや照明、壁紙もカスタマイズOK! 細部も緻密にできている

SUUMOジャーナル的には、やはり気になるのは家のこと。人形たちにオリジナルの洋服をつくっている人はいるようですが、もしかして、家もリフォームというか、リノベできたりするのでしょうか。

「カーテンや天井付の室内灯を取り付けてアレンジを楽しむことができます。また、シルバニアファミリーの専門店、『シルバニアファミリー森のお家』では、カスタマイズ用の壁紙の取り扱いがあります」(エポック社)

なんと、照明や家具だけでなく、壁紙を張り替えられるとは。やっぱり家ってリフォーム・カスタマイズするとそれだけ愛着がわきますよね。あと、シルバニアファミリーの家は腰壁(床から腰高程度に張る別仕上げの壁)がかわいいし、窓のデザインもドラマチックというかすごく素敵な印象です。

窓まわりや壁・床もリアルで見ていてあきません(写真提供:エポック社)

窓まわりや壁・床もリアルで見ていてあきません(写真提供:エポック社)

「シルバニアのお家は、美しい外観や間取りと、おもちゃとしての遊びやすさや安全性の両立を常に意識して開発に取り組んでいます。また、お子様はもちろん、大人が見ても納得するリアルさを追求しています。例えば、キッチンの流し台や洗面台の下の扉を開くと、本物と同じように配管があります。見えないところにもこだわるシルバニアファミリーの家具の象徴と言えるでしょう」(エポック社)

まさか配管があるとは……。今度、シルバニアのお住まいにお邪魔したら、ぜひ洗面台下をのぞいてみたいと思います。

写真左/製氷機付きから実際に氷が出てくる、切ることができるアップルパイなどもめちゃくちゃリアル(写真提供:エポック社)

写真左/製氷機付きから実際に氷が出てくる、切ることができるアップルパイなどもめちゃくちゃリアル(写真提供:エポック社)

トイレも蛇口も水が出てきたりと自然なリアル感があります(写真提供:エポック社)

トイレも蛇口も水が出てきたりと自然なリアル感があります(写真提供:エポック社)

また、子どもたちが遊んで違和感がないよう、家具や家電は現代風に進化しているそう。

「例えば洗濯機であれば昔は二層式洗濯機でしたが、現在販売されているのは、ドラム式洗濯機です。また、掃除機や冷蔵庫なども、現代の子どもたちが生活の中で触れている仕様に合わせた形になっています」(エポック社)

そりゃあ、今のお子さんたち、二槽式洗濯機なんて見てもなんだか分からないですよね……。小さくても説得力があるよう、たゆまぬ改良を重ねているのが分かります。

SNS人気を支えているのは大人のファン。大人が家遊びしても楽しい!

ちなみに、2020年には35周年を記念してシルバニアファミリー総選挙を実施しています。先日5月1日には中間発表がありましたが、TOP3には筆者の予想を裏切るキャラクターがランクインしていました。定番のショコラウサギファミリーやネコファミリー、カワウソファミリーが強いと思っていたのに……。もちろん最後まで結果は分かりませんが、これだけでもファン層の幅広さが伺えます。

「今回の総選挙はグローバルでの展開となり、各国のSNSアカウントでも告知をしていることもあり、想定以上の反響と投票数をいただいております」というので、エポック社さん自身も予想していなかったのかもしれません。

キャラクターが大集合したところ。パンダ、コアラ、ハリネズミ、リス……。どの家族もかわいい(写真提供:エポック社)

キャラクターが大集合したところ。パンダ、コアラ、ハリネズミ、リス……。どの家族もかわいい(写真提供:エポック社)

また、予想していなかったといえば、SNSでの活躍です。インスタグラムやTwitterでは、日常のあるあるを再現した(はかどらない大掃除とか、お酒を飲んでいるとか)シルバニアファミリーの人形たちの写真・動画がバズっていることもありますよね。エポック社さんはご存じなのでしょうか……?

「今は子どもや親子だけでなく、SNSでの人気を支えているのが特に大人のファン層です。シルバニアファミリーの世界観は、写真映えすることも功を奏し、日々の生活の中での、ちょっとした癒やし効果にもなっているのではないでしょうか」(エポック社坂井さん)

分かります、すごく……。特に連日の新型コロナ騒動で、気分が詰まるというか、情報で疲れていると、SNSに流れてくるシルバニアの人形たちの写真ってすごーく癒やされるというか、ピュア(死語)な気持ちになるのです。

本来、「家で遊ぶ」「家のことを考える」のは、とても豊かなこと。SNSで検索するのも楽しいですが、いろんな端末の電源・スイッチをオフにして、今度は本物のシルバニアのお家で人形たちと遊んできたいと思います。

●取材協力
エポック社

「コミューンときわ」で地域に根ざす自分らしい暮らし。新築賃貸でもDIY可能!

多世代の交流を育み、地域に開かれた“コミュニティ賃貸”として、オーナーの浦和への想いを形にした「コミューンときわ」。中庭が人々の暮らしを繋ぎ、また、令和生まれの新築でも住戸のDIYが可能というのも特徴だ。2020年2月に開かれたお披露目会に参加し、オーナーや入居者に話を伺った。
コンセプトは「夢ある人が集い、コミュニティをつくり、地域と共生する」

JR京浜東北線「北浦和」駅から徒歩10分ほど。活気ある「北浦和西口商店街(ふれあい通り)」を抜けた先の住宅街に「コミューンときわ」は立地している。道路沿いには、NPO法人クッキープロジェクトが運営するカフェや、ガラス張りで街に開かれたSOHO型の住まいが並び、道行く人々の目を引く。

自然にコミュニティが形づくられていくよう、コミュニティデザインを「まめくらし」が監修。「まめくらし」は、「青豆ハウス」や「高円寺アパートメント」など街に開かれた賃貸を手がけてきた会社だ。代表取締役の青木純さんが「子どもだけでなく親も一緒に来られるために目的を限定しない場所を」とアドバイスした中庭をはじめ、ラウンジや水回り常設の屋上菜園など、住民同士の交流やくつろぎの場となる共用部が充実。日々どこかしらで井戸端会議が開かれそうだ。

運営もしっかり考えられている。“ご近所づきあいに興味があって入居しても、どうすればいいか分からない”という住人が出ないよう、平日は、住人同士の間をつなぐ「コミューン・パートナー」が常駐。日常の関係性づくりやより暮らしを楽しむサポートをしてくれる。

芝生が敷かれた中庭。住民が多目的に使用できるほか、イベントスペースとしても運営予定だ(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

芝生が敷かれた中庭。住民が多目的に使用できるほか、イベントスペースとしても運営予定だ(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

ヨーロッパで多く見受けられる中庭を持つ集合住宅。「コミューンときわ」が異なるのは、中庭に面しているのが窓ではなく共用廊下で、アクションを取りやすいことだ。玄関と中庭が接しているため、買い物に出る際に中庭での会話や遊びに参加したり、中庭で会話が弾んだ流れで誰かの家に移動したりと、自然と交流が生まれそうなこのつくりは、長屋のような雰囲気を感じる。

家賃は周辺相場よりもやや高めの設定だ。それでも、多世帯交流などから生まれる豊かなライフスタイルが、「コミューンときわ」ならではの価値につながっていくことだろう。

浦和の文化と人とをつないで地域活性へ

コミュニティづくりは「コミューンときわ」内にとどまらず、地域とも連携していきたいと、オーナーである株式会社エステート常盤・代表取締役の船本義之さんは言う。「commune」はフランス語で共同体という意味。オーナーである株式会社エステート常盤・代表取締役の船本義之さんの「豊かな暮らしを育み、ひとつの街のようなつながりをつくりたい」という想いから名付けられた。

名曲『神田川』の時代から、分譲の住まい自体の質は高くなってはいるものの、賃貸物件をめぐる環境づくりやあり方が時代に追いついていないと感じていた船本さん。賃貸というものの形態は、ライフテージの変化に合わせて暮らしやすいからこそ、もっといい住環境を提供したいと、入居者同士がつながったり、部屋を自分らしくアレンジしたりできるようにした。

お披露目会の様子(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

お披露目会の様子(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

浦和は「鎌倉文士に浦和画家」と称され、古くから文化が根付く街。浦和で20年ほど暮らしてきた船本さんは、「浦和にはいろいろな活動をしている人がいて、文化的なポテンシャルが高い人も多く住んでいる。しかしみんな皆、東京を見ていて、横のつながりがない」と感じていた。周りに多彩な人がいることを知る機会があれば、暮らしがもっと豊かになり、地域が活性化するのではないかと、多世代や地域の交流の場として「コミューンときわ」を計画。文化が産業の“人里資本主義”を掲げ、浦和が持つ人材のネストを目指している。

船本さんは、入居希望者全員と面接を行い、コミュニティづくりへの想いを共有していくという。プライバシーとコミュニティとのバランスをとりながら「ドアに鍵をかけなくてもいいような関係性が築かれていけば」と「コミューンときわ」のこれからに期待を寄せる。

セミオーダーから一点モノへ、サポートを受けながら自分好みの空間に

「コミューンときわ」には、多世代が暮らせるよう、1Rから2LDK、SOHO型まで幅広い55戸の住戸が用意されている。どの住戸も窓が大きく、オープンなつくりで開放的だ。そして特徴的なのが、各住戸の表情が異なること。

内装は空間デザイン会社の夏水組がトータルコーディネートを行った。それぞれ「Urban Vintage(アーバンヴィンテージ)」「Innocent Green(イノセントグリーン)」「Ellison Natural(エリソンナチュラル)」「Casual Taste(カジュアルテイスト)」の4つのテイストが用意されている。

「Ellison Natural(エリソンナチュラル)」の内装で、一人暮らしを想定した住戸(28.12平米)。1階は専用庭付き(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「Ellison Natural(エリソンナチュラル)」の内装で、一人暮らしを想定した住戸(28.12平米)。1階は専用庭付き(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「Urban Vintage(アーバンヴィンテージ)」の内装で、土間が大きく取られたカップル/ファミリー向け住戸(55.08平米)(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「Urban Vintage(アーバンヴィンテージ)」の内装で、土間が大きく取られたカップル/ファミリー向け住戸(55.08平米)(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

共用廊下に面した開口が広いのがコミュニティ賃貸ならでは(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

共用廊下に面した開口が広いのがコミュニティ賃貸ならでは(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

クロスやタイルはデザイン性の高いものから好みの柄を選ぶことができる。ヘリンボーンの床などPanasonicの建材を使用(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

クロスやタイルはデザイン性の高いものから好みの柄を選ぶことができる。ヘリンボーンの床などPanasonicの建材を使用(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

選択肢が多いことは、入居者にとってうれしい一方、オーナー視点では施工コストがかさみ、デメリットになりそうだ。夏水組・代表取締役の坂田夏水さんに伺うと「建具や壁紙などモノのコストは変わらず、増えるのは現場管理コストのみ」だそう。その分、夏水組が見積もりを判断し、VE(バリューエンジニアリング=機能を維持しつつ、コストを削減すること)につなげたという。

参考として展示された夏水組セレクションの壁紙のバリエーション。好みの柄を張ってカスタマイズできる(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

参考として展示された夏水組セレクションの壁紙のバリエーション。好みの柄を張ってカスタマイズできる(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

お披露目会に出店した「Decor Interior Tokyo」。この日は、夏水組デザインのタイルや、ニトムズのインテリアマスキングテープなど売れ筋アイテムをそろえた(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

お披露目会に出店した「Decor Interior Tokyo」。この日は、夏水組デザインのタイルや、ニトムズのインテリアマスキングテープなど売れ筋アイテムをそろえた(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

インテリア好きな入居者にとってうれしいのが、夏水組がプロデュースするインテリアショップ「Decor Interior Tokyo」と連携していること。幅広い商品の中から、壁紙やDIYアイテムをスタッフと一緒に選んでもらったり、施工のアドバイスを受けたりすることができるのは心強い。

未知数の「コミューンときわ」入居の決め手は「単純におもしろそう」

お披露目会では、さっそくお手伝いをする入居者の姿があった。「北浦和」駅の近くにあるクラフトビールバー「BEER HUNTING URAWA」オーナーの小林健太さんは、自慢のビールで来客をおもてなし。小林さんが参加する浦和の街をおもしろくしようという活動で開いた「うらわ横串ミーティング」での船本さんや青木さんとのトークイベントをきっかけに「コミューンときわ」に興味を持った。

入居の理由を尋ねると「単純に、おもしろそうだから」と小林さん。このシンプルな答えこそが、“まだよく分からないけど、とにかくおもしろそうな何かが生まれそう”という「コミューンときわ」の魅力を物語っている。

直井薫子さんと小林健太さん(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

直井薫子さんと小林健太さん(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

お披露目会の看板を描いていたのは、「コミューンときわ」のSOHO型住宅でデザインオフィスを構え、職住近接を実践する直井薫子さん。東日本大震災をきっかけに、地元である埼玉のことを考えるようになり、東京から引越してきた。

以前住んでいた東京・葛飾では、ローカルメディアに携わるなど、地域に対してデザインができることは何かを考え、実践してきた。「埼玉でデザイナーといえば直井と言われるように」と、地域に根ざしたデザイナーを目指している。入居して間もないが、すでに映画のイベントを企画。今後は本屋のイベントや、アートやデザインに関連したコミュニティづくりを行っていきたいと語ってくれた。

笑顔が素敵なこのお二人と仲良くなれるだけでも、入居する価値を感じる。ハード面だけでなく、住人やそこから生まれるつながりが核となり、コミュニティの輪が広がっていくことだろう。

直井さんが、お披露目会の看板を描く様子。「コミューンときわ」には入居者それぞれが得意分野を活かせる場がある(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

直井さんが、お披露目会の看板を描く様子。「コミューンときわ」には入居者それぞれが得意分野を活かせる場がある(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

住人同士や地域とのコミュニティづくり、そして部屋のアレンジやのサポート体制が整ったマンション。近年、自分らしい住まいを手に入れようと思ったら、物件を購入してリノベーションをするのが流行りのように思われるが、この新しい賃貸物件では、気軽に住み方のバリエーションを広げられる。

時間を掛けて、じっくり街がつくりあげられていく「コミューンときわ」。興味を持ったら、現地を訪れてみてはいかがだろうか。

●取材協力
・コミューンときわ
・株式会社夏水組
・株式会社まめくらし

DIY可の賃貸物件の先駆け「ジョンソンタウン」レポート。埼玉にある米国の暮らしとは?

白い木壁の家が垣根なく立ち並び、足元には緑の芝生が広がる……。埼玉なのに、まるで米国のようなたたずまいで人気を集めているジョンソンタウン。住まいの合間にはショップも点在し、週末には多くの人が訪れ、今や入間の「名所」にもなっています。現在は約80棟があり、約200人が暮らしていますが、実際の暮らしぶりはどのようなものなのでしょうか。
街並みと建物に一目ぼれ。都内のマンションから入間へ引越し

ジョンソンタウンは西武池袋線・入間市駅から徒歩18分、池袋駅まで電車で40分弱かかり、通勤に便利とは言い難い立地の賃貸物件。それでも「ウェイティングリスト」ができ、ほぼ空室がないほどの人気ぶりです。かつて米軍基地のアメリカ兵とその家族のためにつくられた米軍住居地域跡地にあるジョンソンタウンは、DIYが盛んなアメリカ本国と同様に建物内部はDIYが可能で、どうやらそれも人気の理由になっているよう。

米国のような街並みを形成しているジョンソンタウン。その取り組みは2017年に日本建築学会賞(業績)で表彰された(撮影/嶋崎征弘)

米国のような街並みを形成しているジョンソンタウン。その取り組みは2017年に日本建築学会賞(業績)で表彰された(撮影/嶋崎征弘)

そこで、今回、ジョンソンタウンに引越してきてDIYをするようになったという岩下潤さんにお話を伺いました。職業はブルースギターを奏でるギタリスト。単独ライブも行うほか、週6日、都内のスクールでギターを教えています。現在は平屋づくりやゆったりした間取りなどが特徴の米軍ハウス(アメリカン古民家)に妻と2匹の猫ちゃんとお住まいです。

「引越しのきっかけは、都内にある前の住まいが古くなったから。以前、座間の米軍ハウスでライブをしたことがあって、一度、住んでみたいという憧れがあって、ネットで調べてジョンソンタウンを知り、実際に街並みを見たら一目ぼれでしたね」と振り返ります。

ダイニングでお話をする岩下さん。DIYだけでなく、トークも上手!(撮影/嶋崎征弘)

ダイニングでお話をする岩下さん。DIYだけでなく、トークも上手!(撮影/嶋崎征弘)

リビングでギターを弾く岩下さん。床材はこの建物が完成した1954年当時のもの。数々のキズも岩下さんのお気に入り(撮影/嶋崎征弘)

リビングでギターを弾く岩下さん。床材はこの建物が完成した1954年当時のもの。数々のキズも岩下さんのお気に入り(撮影/嶋崎征弘)

4棟を見学し、なかでも本来であれば店舗のための場所にある家が気に入ったそう。引越し先は都市部を希望していた妻も現地を見て納得、見学したその日のうちに申し込み、トントン拍子に話が進んだといいます。

「家賃が決して安くないのは分かっています(笑)。ただ、都内まで1本で行けるので不便は感じていないですね」と話します。

人との関係、DIYでの建物への愛着。すべてがちょうどいい

暮らしはじめて大きく変わったのは、玄人はだしの「DIY」と隣人の関係です。

「引越した当初、DIYはやらないつもりだったんです。職業柄、指をけがしたら仕事にならないので。それでも、2~3カ月たったあたりから、庭をいじりはじめたんです。ほぼ砂利だった庭を芝にしたいって思って。ジョンソンタウンのオーナーに相談したら、『どうぞ、やってください』と言われて」

根が凝り性の岩下さん。砂利と土を手作業で選り分け、土壌を改良して、芝の品種も研究。今では自宅だけでなく周囲のお宅の敷地にも芝を植え、手入れするまでに。

「当時ジョンソンタウンに住んでいた人で、DIYの師匠がいてね。はじめ、物干しスペースのところをなんとかしたいって考えていたら、必要な道具を貸してくれただけでなく、『何か問題あったら俺が教えるから』って言ってくれて。その男気がかっこよかった」と振り返ります。今までの人生になかった、隣人との出会い、コミュニティが心地よく、アレもできるかな?これはどうだろう?と研究するうちにDIYにはまっていったそう。現在は防音室やDIYの作業部屋も自作してしまうなど、「もはや素人ではないのでは……」という腕前です。

こちらはリビングの脇につくってしまったDIYの工房。奥の扉を開けると庭へ出られる(撮影/嶋崎征弘)

こちらはリビングの脇につくってしまったDIYの工房。奥の扉を開けると庭へ出られる(撮影/嶋崎征弘)

木に熱を加えて曲げる機械を購入し、使い方をマスター。来年にはついに本業にもかかわるギター制作もしたいそう。本当に意欲的(撮影/嶋崎征弘)

木に熱を加えて曲げる機械を購入し、使い方をマスター。来年にはついに本業にもかかわるギター制作もしたいそう。本当に意欲的(撮影/嶋崎征弘)

「賃貸だから隣人ともほどよい距離の、心地よいお付き合いができる。で、一方でDIYしてきたから住まいにも愛着がある。本当にちょうどいいんだよね」

今でも一日に1つ新しいことを学ぶ、知る、身につける、買うなどをして、「日々、成長している」という思いがあるとか。朝、早起きして庭いじりやDIYをし、その後出勤、帰宅は深夜、というライフスタイルですが、充実感でいっぱいのようです。

DIYで自作した防音室(右手奥)がある仕事部屋。大人の理想がつまっている(撮影/嶋崎征弘)

DIYで自作した防音室(右手奥)がある仕事部屋。大人の理想がつまっている(撮影/嶋崎征弘)

防音室内部。防音室を見た人から問い合わせがあり「6台売れて、その人たちの家までつくりに行ったんだよ」と岩下さん。すごすぎる!(撮影/嶋崎征弘)

防音室内部。防音室を見た人から問い合わせがあり「6台売れて、その人たちの家までつくりに行ったんだよ」と岩下さん。すごすぎる!(撮影/嶋崎征弘)

「人に喜んでもらえる趣味ってほんとにいい。隣人から『アレつくって、こんなことできるかな?』って相談されて、できるよ~って言って。喜んでもらう。こんなに楽しいことはないよね」と言います。

岩下さん宅。玄関から入ってすぐがダイニング。猫が外に出ないようにしつらえた内扉(写真奥)ももちろん、DIYで自作!(撮影/嶋崎征弘)

岩下さん宅。玄関から入ってすぐがダイニング。猫が外に出ないようにしつらえた内扉(写真奥)ももちろん、DIYで自作!(撮影/嶋崎征弘)

猫2匹の名前は「たら」と「ふく」。あわせて「たらふく」。写真は「たら」ちゃん(撮影/嶋崎征弘)

猫2匹の名前は「たら」と「ふく」。あわせて「たらふく」。写真は「たら」ちゃん(撮影/嶋崎征弘)

「お前の手を見せてくれ」。米国のライブで言われたうれしい言葉

土いじり、DIYをするようになり、仕事である音楽面でもいい影響を感じるとか。

「演奏から“土の匂い”がするようになったと感じる。そりゃそうだ。だって、毎日、土いじりしているんだもん(笑)。でも、そもそもブルースって、米国ではキツイ野良仕事の後に演奏していた音楽なんだよ。実はこの前、米国でライブしたときにね、現地の人から『お前の手を見せてくれ』って言われたんだけど、あれは本当にうれしかったなあ」と感慨深い様子。

もともとベランダガーデニングをしていた妻も、建物の表通りは赤で統一、裏庭は青と白というコンセプトで、ガーデニングを満喫しています。

ジョンソンタウンの室内はDIY可だが、外観は基本的に改装不可。街並みを守るための工夫だ(撮影/嶋崎征弘)

ジョンソンタウンの室内はDIY可だが、外観は基本的に改装不可。街並みを守るための工夫だ(撮影/嶋崎征弘)

カエルもギターを持っているなど、庭の小物にも随所に遊び心が(撮影/嶋崎征弘)

カエルもギターを持っているなど、庭の小物にも随所に遊び心が(撮影/嶋崎征弘)

「ここならガーデニングだってやり放題だもん(笑)。日本にいながらにして、米国のライフスタイルができるんだから、本当に理想形だよね。アレもやりたい、コレもできるって、理想をかなえていける」といい、夫婦で日々の暮らしを満喫しています。

また、ジョンソンタウンには、個人店が約50店舗ほどあり、そこも好きなところなのだとか。
「街歩きだって、フラフラしているだけで楽しいし、ちょっとお土産がいるなって思ったら、即、買い物だってできるし、外食もできる。住んでいる人もおもしろい人が多いしね、交流の温度感などもちょうどいい。本当に心地いいんだよ」

写真左/さながらアメリカのようなEAST CONTENTS CAFE。気軽に食事とお酒が楽しめる、岩下さんの行きつけ 写真右/コイガクボのもっちりとした食感が楽しい米粉パンは岩下さんのお気に入り(撮影/嶋崎征弘)

写真左/さながらアメリカのようなEAST CONTENTS CAFE。気軽に食事とお酒が楽しめる、岩下さんの行きつけ 写真右/コイガクボのもっちりとした食感が楽しい米粉パンは岩下さんのお気に入り(撮影/嶋崎征弘)

写真左/花やリースを扱うブルーメンヒュッテ。庭づくりの相談も可。オーナーは岩下さんのお友達 写真右/イギリスから直輸入した雑貨が並ぶコッツウォルズ。岩下さんはちょっとした手土産をココで買うとか。商品は一点物も多く、見ていて飽きない(撮影/嶋崎征弘)

写真左/花やリースを扱うブルーメンヒュッテ。庭づくりの相談も可。オーナーは岩下さんのお友達 写真右/イギリスから直輸入した雑貨が並ぶコッツウォルズ。岩下さんはちょっとした手土産をココで買うとか。商品は一点物も多く、見ていて飽きない(撮影/嶋崎征弘)

ガーデニング、DIY、そして人との交流と、以前では考えられなかった暮らしを楽しむ岩下さん。引越しがもたらした「思いがけない出会い」が、人生を豊かにしてくれたようです。

●取材協力
ジョンソンタウン
Blumen Hutte
米粉パン専門店 コイガクボ
EAST CONTENTS CAFE
COTSWOLDS●取材協力
岩下潤さん 
日本屈指のブルースギタリスト。ライブだけでなく、ブルースギターに関する著作も多数執筆するほか、講師としても活躍。観客を引き込むブルース演奏に加えて、楽しいMCはさながらお笑いライブのよう。ライブ予定や高田馬場にあるギター教室への問い合わせは以下から。
>ジャグ・サウンズ・ギター・スクール 

ロマン実現!? 賃貸ガレージハウスに潜入

住居を、生活の場というだけでなく、より趣味や嗜好を楽しむ場としてとらえる人が増えています。そうした層に応えるべく出てきた考え方が「コンセプト賃貸」。基本的な居住空間に、好みの生き方や趣味を楽しめる空間を合体させた賃貸住宅です。
この考え方に基づき、木下工務店レジデンスが開発したのが、住居にガレージを組み込んだガレージハウス。 その実態を探ってみましょう。

住居とガレージを一体化したコンセプト賃貸

木下工務店レジデンスはこれまで、施主(土地所有者)の要望に沿って数々の賃貸住宅を開発・供給していますが、数年前から、社長の中村秀雄(なかむら・ひでお)さんの指揮のもと、「コンセプト賃貸」に乗り出しました。

背景には、生き方や趣味を重視して住宅選びをする人が増えてきたことがあります。ニーズが細分化されている今日、標準的な賃貸住宅だけでは限界があります。また駅から遠いなど、賃貸住宅に不利な土地にはそれを解消するだけの魅力が必要になります。

「コンセプト賃貸の皮切りとして立案したのが、ガレージを賃貸住宅に取り入れたガレージハウスです」と、株式会社木下工務店レジデンス建築部設計課の八木橋毅(やぎはし・つよし)さんは語ります。

通常、ガレージといえば戸建住宅のもの。賃貸住宅では、ガレージを借りるとしても住居から離れた場所になってしまうことがほとんどです。「ならば、住居とガレージをパッケージ化して賃貸で提供すれば、クルマの愛好者に喜んでいただけると考えました」(八木橋さん)

ガレージは多目的に使えるため、居住者には四輪車の愛好者だけでなく、バイク、自転車、カヤック、陶芸など、さまざまな趣味の愛好者を想定しました。

「実は5、6年前、ある施主様のご要望で、車庫付き賃貸を開発したことがあります。この経験で、間口が大きく、柱のない大空間の構造強度を高める方法など、設計ノウハウは蓄積されていました」と、同社の建築部 設計課・課長の向原良幸(むこはら・よしゆき)さんは振り返ります。

設計課では、新たなガレージハウスを企画するに当たって、社内の意見を集め、いくつもの案を提出しては検討を重ねました。さらに女性設計者の意見を取り入れるなど、従来のガレージハウスのイメージを超える商品をめざしました。

その結果、生まれたガレージハウスが「Espace」(エスパース)。大きな空間を、ガレージにとどまらず、幅広い用途に利用できることから、商品名には、フランス語の「空間」を意味する言葉を選びました。

夜のエスパース外観(実際には夜間にガレージを開けることはほとんどないが、開けていただいた)。シックな外観やガレージの広さがよくわかる(写真撮影/織田孝一)

夜のエスパース外観(実際には夜間にガレージを開けることはほとんどないが、開けていただいた)。シックな外観やガレージの広さがよくわかる(写真撮影/織田孝一)

ガレージを使う人の気持ちに沿った、心憎い設計

エスパースの特色は次の点です。

1階のガレージ空間は6m×6.6m、自動車を横に2台並べて駐車できる広さがあります(現在は1台置くタイプも提供しています)。「大きな空間を確保する一方、そのために家賃があまり高くならないようにすることも必要で、そのバランスに苦労しました」(向原さん)

最も大変だったのは、居住空間とは違って、車庫(ガレージ)空間は都道府県条例によって規制されるため、それに合わせたサイズなどの調整が必要なことでした。「そのため、基本構造は同じでも仕上げを微妙に変えなくてはなりません」(向原さん)

ガレージには、入口に電動シャッター、大切なクルマやバイクを盗難などから守る防犯カメラ、居住空間に排気ガスや臭気がおよばないようにする換気扇、クルマの手入れなどのとき便利な大型の手洗いなどを装備しました。また、壁には有孔のペグボードを装着、フックで道具などを掛けられるようになっています。居住者に使いやすくするとともに、賃貸なので、壁に穴を開けないですむようにするねらいです。

ガレージの上の居住空間は、広く感じられるように、続き間のようなシンプルなプランとし、視線が遠くまで届くようにしました。居住空間とガレージは内部階段でつながっているので、行き来するときにいちいち外に出る必要はありません。

外観は従来のガレージハウスにあった倉庫的なイメージをなくし、風格を持たせることをめざしました。

「エスパースの顔でもある正面の電動シャッターには、高級感のある木目調の面材を使用し、2階にはガラス調パネルを用いたバルコニーを設けました」(八木橋さん)。落ち着いた外観色には3つのパターンを用意し、周辺環境に応じて提供できるようになっています。

(写真撮影/織田孝一)

(写真撮影/織田孝一)

ガレージと2階の住居部分は内部の階段でつながっているので、移動のときに外に出る手間は不要だ(写真撮影/織田孝一)

ガレージと2階の住居部分は内部の階段でつながっているので、移動のときに外に出る手間は不要だ(写真撮影/織田孝一)

新築物件を探し歩くなかで、エスパースに出合う

実際にエスパースに入居している方に話を聞いてみました。

大手自動車メーカーの技術者であるT・Nさん(37)は、東京・武蔵村山市にあるエスパースに、2018年9月に入居しました。

「以前は賃貸1DKに住んでいましたが、そろそろ家を建てようと思ったのがきっかけです。クルマ通勤を想定し、土地を探しているとき、たまたま武蔵村山市で建築中のエスパースが目に留まりました」(Nさん)

早速ネットで調べ、間取りなどを確認してみると、趣味のクルマを楽しむ生活ができることが分かり、すぐに問い合わせ、契約に至りました。
「前の住まいではクルマは青空駐車していたので、新築するならガレージ付きと考えていました。しかし新築は長期的に考えなければならない事項が多く、やり直しもむずかしく、迷いました。そんなときにこのガレージハウスに出合って、ゆくゆくは物件を購入するにしても、ここに賃貸で住みたいと思いました。ほぼ即決でしたね」(Nさん)

電動シャッターのあるガレージ入口。上の黒い部分に扉が巻き取られるため、開けたときに照明が隠れるようなことがない。奥に見える作り付けの棚は非常に便利(写真撮影/織田孝一)

電動シャッターのあるガレージ入口。上の黒い部分に扉が巻き取られるため、開けたときに照明が隠れるようなことがない。奥に見える作り付けの棚は非常に便利(写真撮影/織田孝一)

壁に取り付けられた有孔のペグポードは「これから利用するのが楽しみ。使い方を思案中」(Nさん)とのこと(写真撮影/織田孝一)

壁に取り付けられた有孔のペグポードは「これから利用するのが楽しみ。使い方を思案中」(Nさん))とのこと(写真撮影/織田孝一)

水栓二つを持つ大型の手洗いも使いやすい(写真撮影/織田孝一)

水栓二つを持つ大型の手洗いも使いやすい(写真撮影/織田孝一)

2階のリビングルーム。隣接して手前にキッチン、バス、トイレがある(写真撮影/織田孝一)

2階のリビングルーム。隣接して手前にキッチン、バス、トイレがある(写真撮影/織田孝一)

ガレージハウスが変えた週末の生活

Nさんは設備にも満足しています。「電動シャッターは扉を回転させて巻き取るタイプなのが気に入っています。オーバースライダータイプだと、扉の開放時に照明が使えないからです。また換気扇に強弱の二つのモードがあること、二つの水栓と大きめの受けボウルがある手洗いも便利。つくり付けの棚も非常に役立っています」。

Nさんの愛車はキャデラックCTS-V。キャデラックの中でも最もパワフルなエンジンを持つ高級スポーツセダンです。このほか、スバル・レヴォーグを所有しています。

「この家に住むようになってから、週末が楽しみになりました。ガレージで音楽をかけたり、クルマの手入れをしたりと、週末をゆっくり過ごすことが増えました」(Nさん)

部屋の位置にもよりますが、Nさんの選んだ部屋は棟の端に位置し、ガレージ前にかなり広いスペースがあるため、ガレージからクルマを出して動かしやすく、クルマで来る友人を呼ぶときに便利であることにも満足しています。

木下工務店レジデンスではエスパースを、東京、埼玉、千葉、神奈川のほか、大阪、兵庫、名古屋でも展開しています。働き方改革が潮流となり、日本人の個人の時間の充実に注目が集まっています。そうした中で、エスパースからは賃貸住宅の新しい可能性が見えてくるようです。

ガレージに置かれたチェアもお気に入り。週末ここに座り、音楽を聴いたり、クルマの手入れをするのが至福のとき(写真撮影/織田孝一)

ガレージに置かれたチェアもお気に入り。週末ここに座り、音楽を聴いたり、クルマの手入れをするのが至福の時(写真撮影/織田孝一)

チェアから愛車キャデラックCTS-Vを眺める(写真撮影/織田孝一)

チェアから愛車キャデラックCTS-Vを眺める(写真撮影/織田孝一)

大人の段ボールハウス&家具をつくる!「部屋に小屋」を30分で

無印良品やスノーピークなどの人気ブランドも販売している「小屋」が話題だ。まさに大人の秘密基地。ワクワクする。とはいえ、これらはお金も場所もそれなりに必要だ。小屋をもっと手軽に楽しみたい。そうだ、童心に返って段ボール箱で工作するのはどうか。ただし大人クオリティで。
家具からアートまで! 段ボールの驚くべきポテンシャル

段ボールといえば、日常生活のなかで手に入りやすい素材の一つだが、そのポテンシャルはいかに? 改めて段ボールの最新事情や段ボールハウスのつくり方を知るべく、段ボールニュースを紹介しているWebメディア「段ペディア」管理人の小寺誠さんに話を聞いた。

――段ボールの魅力はどんなところですか?

段ボールはとても完成された素材です。低価格でどこでも手軽に入手可能、それでいて軽くて丈夫! また加工も簡単で、ハサミやカッターでのカット作業や、木工用の接着剤での貼り付け作業が簡単にできる点も魅力です。

小寺さんがつくった段ボール銃(ちゃんとゴムが飛ぶ仕組み!)(画像提供/段ペディア)

小寺さんが作った段ボール銃(ちゃんとゴムが飛ぶ仕組み!)(画像提供/段ペディア)

小寺さんがつくった段ボール機関車(ちゃんと走る!)(画像提供/段ペディア)

小寺さんが作った段ボール機関車(ちゃんと走る!)(画像提供/段ペディア)

――段ボールの最新事情を教えてください。

段ボールは今、2つの流れでとても注目されています。
1つ目は、家具や遊具、防災用品など向けの需要です。避難所にいる人の整理タンスとして段ボールが使われていたのをテレビなどで目にしたことがある方もいるかもしれません。素材自体のポテンシャルも高く、設計次第で車が乗っても大丈夫なぐらいの強度があるので、大変使い勝手がいいんです。
2つ目は、アートとしてです。あの段ボールにこんな使い道が!? なんて作品がたくさん出てきています。最近では、段ボールアーティストのオドンガー大佐さんの作品がとても話題になっています。尾長鶏、龍神などは段ボールの表現の限界に挑戦されているように感じます。

「尾長鶏」(画像提供/オドンガー大佐さん)

「尾長鶏」(画像提供/オドンガー大佐さん)

「龍神」(画像提供/オドンガー大佐さん)

「龍神」(画像提供/オドンガー大佐さん)

――家具としての需要があるとのことですが、具体的にはどのような?

整理タンスや子ども用の机、シューズラックや収納ボックス、本棚など、なんでもありますよ! 同じサイズのものを複数集めてブロックのように積み上げるだけでも、仕切りや間仕切り、壁のように使うことができ、ちょっとした個室スペースもつくれます。

――メンテナンス方法は?

破損箇所はテープやボンドで補強! ボロボロになったら廃棄してしまっていいと思います。廃棄してもまた新しい段ボールに生まれ変わるので、資源の無駄使いにもならず、地球にも優しいんです。

段ボールで個室を簡単に。段ボールブロック壁のつくり方

段ボールの魅力を知ったところで、実際に段ボールでの個室のつくり方を教えてもらった。「ベッドを隠せる安眠空間をつくります」と小寺さん。段ボールは、スーパーマーケットやホームセンターなどで無料で集められる。ポイントは同じサイズ(特に高さ)のものを集めることで、小寺さんのオススメは2L飲料水用のもの。強度もあり、同じようなサイズの箱も集めやすいとのこと。無地の段ボール箱を使いたい場合は、段ボール箱の通販会社から購入することも可能。

小寺さんと段ボール個室(画像提供/段ペディア)

小寺さんと段ボール個室(画像提供/段ペディア)

<つくるもの>
段ボールブロック壁

<所要時間>
30分

<用意するもの>
・段ボール箱(必要に応じて増減。今回は29箱)
・クラフトテープ、OPPテープ
・木工用の接着剤
・水入り2Lペットボトル(必要に応じて)

今回使用するのは、材質:Aフルート(厚さ5mm)、サイズ:幅32cm×奥行19cm×高さ33cmの段ボール(画像提供/段ペディア)

今回使用するのは、材質:Aフルート(厚さ5mm)、サイズ:幅32cm×奥行19cm×高さ33cmの段ボール(画像提供/段ペディア)

<つくり方>
(1)「用意した箱を図のように重ねていきます。今回はベッドを隠すようにつくるため、段ボール箱を29個使用しました。壁が倒れやすい場合は、一番下の段の段ボールに、水を入れた2Lペットボトルなどの重りになるようなものを入れておくと安定感が増します」

基本的には積み上げるだけ。仕上がりをきれいにするために使用することもあるが、ハサミやカッターも不要

基本的には積み上げるだけ。仕上がりをきれいにするために使用することもあるが、ハサミやカッターも不要

(2)「重ねるだけでは転倒するので、接着剤やテープなどを使用して固定しましょう。今回はクラフトテープと透明なOPPテープを使用しています」

(画像提供/段ペディア)

(画像提供/段ペディア)

(3)「完成! 難しいポイントは特にありません。箱の表面をカッターやハサミなどでデコレーションすると、よりイイ感じになります。好みに合わせてレイアウトをアレンジしてもいいですし、自由な発想で楽しんでつくりあげてみてください」

組み合わせ次第で可能性が広がる! あなたは何をつくってみる?

「段ボール箱の組み合わせ方を変えると、こんな感じの机もできちゃいます。軽いノートパソコンぐらいなら十分置いて作業できますので、部屋に机が用意できていないときなどは試してみてください」

アレンジすれば机もつくれる! 天板は段ボールを解体して板状にしたものを2枚重ねているそう。(画像提供/段ペディア)

アレンジすれば机も作れる! 天板はダンボールを解体して板状にしたものを2枚重ねているそう(画像提供/段ペディア)

段ボール工作=箱を解体して使うもの、というイメージがあったが、箱を積み上げるだけとは盲点! 刃物がなくてもつくれてしまう点は、小さい子どもと一緒に楽しむのにも良さそうだ。アレンジ次第で可能性が広がる点もワクワクする。童心とクリエイティビティをかなえてくれる段ボール、ますます目が離せない存在だ。

●取材協力
小寺誠さん
兵庫県西宮市で約300種類以上の商品を取り扱う段ボールのクラフト雑貨店「クラフトマンエッセンス」を経営しながら、段ボールの魅力を伝えるべくWebニュースサイト「段ペディア」を運営。段ボール工作イベントなども主催する。
段ペディア
オドンガー大佐さんのHP●撮影協力
住める・泊まれる・遊べるシェア古民家「里山ベース ハナビ」

続・賃貸住宅でのDIY、どうやったらできる? 賃貸管理のプロに聞く[12]

前回は、賃貸住宅でDIYをしたいと思っている入居者さんが、なかなか踏み出せない理由について考えてきました。賃貸住宅でのDIYは、夢のまた夢なのでしょうか? 賃貸住宅でもDIYを可能にする方法があるのかを、一緒に考えてみましょう。【連載】賃貸管理のプロに聞く
賃貸仲介・管理の現場に20年以上携わっているプロが、賃貸物件に住む人から相談の多い事例と解決方法をご紹介する連載ですDIYは禁止されていないかも!? 賃貸借契約書をチェックしよう

お部屋を借りている方は、契約のときに賃貸借契約書を交わしていると思います。この賃貸借契約書には、引越してから退去するまでに起こる、いろいろな事柄についての決まりごとが書いてあります。

「賃貸住宅に手を入れる」ことに関して関係ありそうな条文には、どんなものがあるのでしょうか。全国で約20万8000戸の物件を管理しているハウスメイトグループの賃貸借契約書を見てみましょう。

第13条3.乙(賃借人)は、甲(賃貸人)の書面による承諾を得ないで、次に揚げる行為をしてはなりません。[1]本物件の増築・改築・改造又は室内の修理・塗替え・工作を伴う模様替え、…(以下略)第19条4.乙は、甲の承諾を得て行った造作等であっても原状に復する義務を負い、同造作物等を甲に対して買取り請求する事ができません。但し、原状回復に付き甲がこれを希望しない場合は、前段に定める造作等の収去並びに原状に復する義務については免責するものとします。

これを見てみると、「大家さんに書面で承諾を取ればDIYは可能で、大家さんがOKであれば原状回復もしなくて良い」と解釈することもできそうですよね。

少なくとも、「DIYなんて絶対ダメ!」と言うわけではないように思えます。ハウスメイトグループの契約書だけが特殊なのではなく、ほかの不動産会社で使用している契約書にも同じような条文があると思います。賃貸住宅に住んでいる方は、お手元の賃貸借契約書の該当箇所を確認してみてください。

そして、実は国土交通省も、2016年にDIY型賃貸借の契約書式例及びガイドブックを公表しています。これは、賃貸住宅でのDIYを推進するにあたっての大家さんや管理会社の不安や、今の契約書の条文のままでは不足している部分を補完するものでもあるのです。

特にガイドブックは図や写真が豊富で分かりやすくまとまっているので、DIYをやってみたい入居者さんは、国交省のホームページから一度ご覧になっておくと良いでしょう。

大家さん、管理会社の承諾を取るにはどうすればいい?

では契約書の規定どおり、書面で申請すれば簡単に承諾がもらえるのかというとそうではなく、ここに大きなハードルがいくつかあります。

一つ目のハードルは、大家さんや管理会社の年代問題です。大家さんの平均年齢は入居者さんよりかなり高めなので、DIYがブームになっていても、それを全く知らない方が多いと感じます。そもそもDIYとは何なのかを理解してもらえていないのであれば、話しはなかなか進みませんよね。

そして、大家さんと入居者さんの間を取り持つ役割の私たち管理会社も、大家さんと同じとまでは行かなくとも、DIYをやりたい入居者さんよりは年代が高めなことが多いです。管理会社に相談したとしても、「DIY? 入居者さんが壁に穴を開けるなんてダメですよ」と、大家さんに伝わる前に話しが終わってしまう可能性も十分に考えられます。

二つ目のハードルは、管理会社や大家さんの知識不足です。賃貸住宅を借りている方はあまりご存じないかもしれませんが、実は管理会社は建築・工事にさほど詳しくない場合が多いのです。なぜかと言うと、建物を建てる仕事と建物を管理・仲介していく仕事は全くの別物だからです。退去時にリフォーム工事をするのは管理会社の仕事ですが、われわれが長年行って来たのは「原状回復工事=元に戻す工事」です。

私たち管理会社は、汚れた壁紙を新しく張り替えたり傷ついたフローリングを補修したりするのは得意ですが、普段完成した建物を管理しているため、例えば壁の中の構造については詳しくありません。所有者である大家さんも詳しくない人が多いように感じますが、日ごろから物件管理をしている私たちですらそんな状態ですから、それは仕方がないことだと思います。

(イラスト/藤井昌子)

(イラスト/藤井昌子)

賃貸住宅でのDIYを認めてもらうには

われわれ管理会社が壁の内部構造に詳しくないとどういうことが起こるでしょうか。

入居者さんから「リビングの壁にDIYで棚を取り付けたい」と申請が来た場合、その部分の壁は穴を開けても大丈夫なのか、どういうことに気を付けてもらわなければならないのかが分からないと言うことになります。そうなると、大家さんに代わって承諾もできなければ、大家さんに「承諾しても問題ないと思いますよ」と承諾してもらえるように後押しすることもできません。

ただ、裏を返せば、DIYをやりたい入居者さんは、それらが分かりやすくなるように申請をすれば、承諾される確率が上がるのではないかと思います。

例に挙げたリビングに棚をつけるケースで考えると、
・どんなメーカーのどんな棚を付けたいかを写真等で示す
・棚をどこにつけたいかを間取図や室内写真で示す
・DIYショップに相談済みで、棚の重みに耐えられるような施工方法をきちんと行うことを示す
・万一原状回復する場合にはどんな工事が必要かを示す
というような感じで申請すれば、承諾される確率が上がりそうです。

管理会社経由で大家さんに申請をする場合なら、管理会社が大家さんにそのまま渡せて、簡単に要点を説明できるような形にまとめておくことも大切です。

さすがに新築や築浅では難しいかもしれませんが、築古物件の場合、DIYを承諾することで入居者さんに長く大切にお部屋を使ってもらえるならば、承諾しても良いと考える大家さんや管理会社は少なくないと思います。

実は、既に長く住んでくださっている方や、「長く住むつもりです」という方には、大家さんも管理会社も弱いのです。もし長く住む可能性が低くても、その棚の形やデザインが今のお部屋の雰囲気に合っていて、次の入居者さんにも喜ばれそうだとなれば、原状回復しないで残してもらえるほうが大家さんや管理会社にとってプラスになるかもしれません。要は、大家さんや管理会社がメリットに感じる部分があれば、申請は通りやすくなるのだと思います。

以前入居者の方から「洗面台が古いのでシャンプードレッサー付きに交換したい。半額自己負担するので大家さんに相談してもらえないか?」と言われたことがあります。その方は長く住んでいらしたので、結局大家さんが交換してくださいました。

実はこういう類の話は時々あり、物件×大家さん×入居者さんの組み合わせごとにケースバイケースですが、何かが壊れて機能を失っているという理由以外でも、入居者さんの工事の希望が通る場合があるのです。

この話とDIYが大きく違うのは、専門業者以外の人が施工するという点。どんな施工をするのか、そして、入居者が問題なく施工できるのか、をきちんと伝えることが大切です。お部屋は大切な財産だと認識している管理会社や大家さんに、いかに安心感を抱いてもらえるか。それが賃貸住宅でのDIYを承諾してもらえるポイントのような気がします。

自由で豊かな賃貸住まいをサポートできるように、私たち管理会社も少しずつ建築や工事の勉強を始めています。入居者のみなさんも「こういう住まい方をしたい」という意見をどんどん発信してほしいと思います。賃貸住宅でもDIYできるのがあたりまえになる未来を、一緒につくっていきましょう。

谷 尚子谷 尚子 賃貸住宅での暮らし応援団
独立系の賃貸管理会社ハウスメイトパートナーズに勤務。仲介・管理の現場で働くこと20年超のキャリアで、賃貸住宅に住まう皆さんのお悩みを解決し、快適な暮らしをお手伝い。金融機関・業界団体・大家さんの会等での講演多数。大家さん・入居者さん・不動産会社の3方良しを目指して今日も現場で働いています。●「賃貸管理のプロに聞く」記事一覧
・賃貸管理のプロに聞く[1] 入居後のトラブルで一番多い「騒音」問題の解決方法とは
・賃貸管理のプロに聞く[2] 一人暮らしの女性必見!「のぞき・ストーカー・痴漢被害」を防ぐ方法とは
・賃貸管理のプロに聞く[3] 意外と多い「漏水」被害。被害者、加害者になったらどうする?
・賃貸管理のプロに聞く[4] こっそり飼育は必ずバレる! ペットクレームあるある&解決法
・賃貸管理のプロに聞く[5] 火事になってからでは遅い! 賃貸暮らしの人に必要な防災の知識とは
・賃貸管理のプロに聞く[6] 誰もが避けたい「ご近所トラブル」。発生にはお決まりのタイミングが!?
・賃貸管理のプロに聞く[7] 住人の“暗黙ルール”を見極めよ! 駐輪場でのトラブルを防ぐコツとは
・賃貸管理のプロに聞く[8] 他人にとっては非常識!? 「バルコニー」はトラブルの種だらけ
・賃貸管理のプロに聞く[9] 私物を放置していない? 「共用廊下」でクレームが起こるメカニズム
・賃貸管理のプロに聞く[10]自治体によって違う! 「ごみ出しのルール違反」はトラブルの元
・賃貸管理のプロに聞く[11]賃貸住宅でのDIY、どうやったらできる?