「住宅ローン・教育費・老後資金」家計の3大プロジェクト、どう成功させる? 賢い住まいのマネー術(8)

子育て中の家庭であれば、「住宅ローン・教育費・老後資金」といった家計における3大プロジェクトを同時に走らせなければならないことがあります。

住宅ローンを返済しながら、子どもの教育費や老後資金などの貯金をすることは可能なのでしょうか? その場合、何を優先してどういう順番でお金を準備すれば良いのでしょうか。基本的な考え方をお伝えしたいと思います。

【連載】賢い住まいのマネー術
住まいに関する支出は、家庭の大きな割合を占めるもの。保活から住宅ローン控除まで、住まいに関する家計管理や節約術に定評のあるファイナンシャルプランナー(FP)の花輪陽子さんが解説します。基本は住宅ローン返済を優先しよう

             
まず、教育費や老後資金といった「貯金」よりも、優先すべきは住宅ローンの返済です。ただしその前提として、住宅ローンを抱えている人でも、最低でも200万円程度の預貯金は確保しておきましょう。これは教育費・老後資金とは別に、突然の病気や失業といった人生の不測の事態に備えるためです。

最低限の貯金をつくった後は、さらなる貯金増額よりも、住宅ローンの返済を優先しましょう。返済を進めることで利息の負担を減らすことができるからです。ただし例外として、住宅ローン控除を受けている期間は、ゆっくり返済することも選択肢の一つです。現在は住宅ローン金利が非常に低いために、無理をしてまで返済を進める必要はありません。

住宅ローン控除のキホンをおさらい

住宅ローン控除の仕組みについても、簡単におさらいしておきましょう。

住宅ローン控除とは、購入1年目から10年目までの年末のローン残高の1%が所得税や住民税から控除され、確定申告で戻ってくる制度です(控除限度額あり)。繰り上げ返済を進めると、年末時点のローン残高を減らすことになります。そのため、この期間はあえて繰り上げ返済をせずに貯金をして、住宅ローンの控除期間終了後に、積極的に繰り上げ返済をする方法もある、ということです。

ただし、繰り上げ返済が有利になるか否かについてはケースバイケース。詳しくは税理士などの専門家に相談をすることをお勧めします。

住宅ローンの次は教育費 大学費用はこう貯める!

                                               
住宅ローンの次に優先したいのが、教育費です。月々の住宅ローン返済に加えて、教育費と老後資金の準備を行っている人はどのようにそれぞれを進めれば良いのでしょうか。

教育費のうち、もっとも費用がかかるのは大学の学費。
大学の入学、在学費用に関しては、日本政策金融公庫の「教育費負担の実態調査結果」(平成29年度)によると、国公立大学の場合で合計約503万円、私立大学文系の場合で約738万円、私立大学理系の場合で、平均約807万円がかかっていることが分かります(いずれも端数切り捨て)。

こうした大学資金に関しては、児童手当を全額貯めるのと同時に、子どもが生まれたら子ども1人につき月1万円ずつ貯めましょう。

児童手当を使わずに頑張って全部貯めると、子ども1人当たり約200万円(3歳未満=月額1万5000円、3歳以上小学校修了前=第1子・第2子は月額1万円、第3子以降は月額1万5000円、中学生=月額1万円 所得制限あり)になります。子ども1人当たり月1万円を貯めれば18年間で216万円貯まります。児童手当と合わせれば子ども1人当たり400万円以上になるので大学資金の備えになります。

退職金は老後資金に

住宅ローンを返しながらでも、児童手当と月々の1万円貯金(子ども2人なら月2万円)で大学進学費用はなんとかできるかもしれません。しかし、老後資金はいつ貯めれば良いのでしょうか。出産・育児スタート時の夫と妻の年齢によっては、子どもの独立が退職時期に差し掛かる場合もあります。

まず退職金があれば、それを老後の費用に充当できるとよいでしょう。

総務省の家計調査(2017年)によると、年金世帯の月間の平均支出は、約26万円(年間312万円程度)です。25年間で7800万円程度が必要という計算になります。

一方、年金世帯の平均収入は月額約21万円(年間約252万円)、25年間で約6300万円です。必要総額に対して、年金などの収入だけだと、約1500万円の赤字になってしまいますね。娯楽費や急病時の備えなど、予備費として1000万円程度は欲しいと考えると、夫婦で約2500万円程度の老後資金があると安心です。退職金を確認し、足りない部分は確定拠出年金などを活用しましょう。

そのためにも、住宅ローンは遅くとも退職前には完済をしましょう。教育費も、退職金をあてにせずとも貯め終わっていることが望ましいですね。専業主婦の妻であれば、子どもに手がかからなくなった後は働きに出て、その収入の何割かを老後資金のための貯金に回したいところです。

また、最近は就業規則も以前に比べると緩やかになってきました。社内規定を確認する必要はありますが、会社員として就業されている方がサイドビジネスを検討し、そのぶんを貯蓄に回すのも選択肢の一つです。

仮想通貨や株式…不確実な投資はおすすめできない

最後に、「投資で増やす」という考え方もありますが、不確実な投資はあまりお勧めできません。株式や仮想通貨などへの投資は、大きく儲かる可能性もありますが、多額の損失が出る可能性もあります。投資をする余裕があるならば、まず住宅ローンの繰り上げ返済優先で、確実に利息を減らすところから取り組んでいきましょう。
            
同時に3つのプロジェクトを達成させるのは至難の技ですが、緊急度に応じて優先順位を決めて、一つずつ攻略をしていくしかありません。特に子育て(進学)や住宅購入の時期が遅くなったカップルは、退職前後にローンの完済や子どもの大学資金問題が出てきます。家計の管理には、くれぐれも要注意です。

失敗すると、人生を左右しかねないお金の問題。迷ったときはファイナンシャルプランナーなどのプロに相談をするのも一つの手段ですので、ぜひ頭に入れておいてくださいね。    

花輪陽子phpto2花輪 陽子(ファイナンシャルプランナー)
CFP認定者、1級FP技能士。外資系投資銀行を経てFPに。「夫婦で貯める1億円!」「貯金ゼロ 借金200万円!ダメダメOLが資産1500万円を作るまで」などの著書やテレビ出演、雑誌監修など多数。

        

変動金利で借り過ぎた!?住宅ローン“低金利時代”の注意点 賢い住まいのマネー術(7)

住宅ローンの変動金利が0.5%を切る時代。目先の金利の低さに飛びついて契約しがちですが、ちょっと待って。変動金利はその名の通り、市場金利の変化によって変動するもの。半年ごとに金利の見直しがあるのが一般的なのです。つまり、いまはたまたま低金利でも、それをずっと保証するものではありません。変動金利の落とし穴にも注意して、賢く住宅ローンを選べるようになりましょう。【連載】賢い住まいのマネー術
住まいに関する支出は、家庭の大きな割合を占めるもの。保活から住宅ローン控除まで、住まいに関する家計管理や節約術に定評のあるファイナンシャルプランナー(FP)の花輪陽子さんが解説します。住宅ローンの基本の3タイプの特徴を押さえよう!

では、いったいどうやって住宅ローンの金利タイプを選んだらよいのでしょうか。

まず、住宅ローンの基本の3種類の特徴を押さえましょう。それぞれメリット・デメリットがあります。金利落下局面では変動金利型が有利になりますが、これから金利が上昇するかもしれないというときには固定金利型のほうが有利になります。

【変動金利型】
特徴:市場金利の変化によって住宅ローン金利も変動する。半年ごとに金利の見直しがあるのが一般的
メリット:固定金利型より金利が低い
デメリット:住宅ローン返済額の見直しは通常5年ごとのため、金利上昇局面では金利の変化に気付きにくい

【全期間固定金利型】
特徴:借りている間ずっと金利が一定
メリット:あらかじめ金利が決まっているために将来の資金繰りを見通しやすい。金利上昇局面では金利上昇リスクを防ぐ効果がある
デメリット:金利は変動金利型よりやや高め

【固定金利選択型】
特徴:一定期間(3年、5年、7年、10年、15年など)は固定金利で、固定期間終了後は変動金利にするか固定金利にするか選択できるのが一般的
メリット:住宅ローンを借り入れた当初の残債が多いときに、一定期間金利を固定にすることができる
デメリット: 3年や5年など期間が短い固定金利選択型を選択する場合、残債が思うように減らないこともある

変動で借りて、金利が上がってきたら固定に切り替えればいいのではという意見もよく聞きます。ですが、景気動向が金利に反映されるのは固定金利のほうが早いのです。金利が上がってきたのでは?と思ってから切り替えても、すでに固定金利が上がっている可能性もあるので注意が必要です。金利が低い時期に、最初から10年以上の長期の固定金利選択型にしておけば安心です。

変動金利の場合、金利上昇リスクを考えて

2007年末から2009年ごろにアメリカでサブプライム住宅ローン危機が起こりました。この危機は金利が上昇し、住宅価格が下落を始めたことが発端でした。金利が上昇した結果、負担が大きくなり、返済が滞る家庭が増えました。

住宅価格が下落した際に、多額のローンが残っているとローンの借り換えも厳しくなります。サブプライム住宅ローン危機は今や一昔前のことなので、知らない人や忘れてしまった人もいるかもしれませんが、他人事ではありません。歴史からしっかりと学ぶようにしたいですね。

全期間固定金利型に抵抗がある場合は、10年固定金利などにするのも一つの手です。借入額の大きい10年間、固定金利にしておけば仮に市場金利が上がってしまった場合でもその期間は返済額が変わらないからです。10年の間に一生懸命返して住宅ローンを小さくしてしまえば、借り換えのときにたとえ金利が上がったとしてもそれほど怖くはなくなります。

低金利ゆえの“借り過ぎ”に要注意!

一番よくないのは低金利だからと、返済できるギリギリまで借り過ぎることです。住宅ローンの返済額は手取り月収の30%程度までに留めましょう。そうしなければ、教育費や老後資金を貯めながら他の支出のやりくりをするのが難しくなるからです。一定額の貯金があり、いざというときには繰上げ返済ができる人を除いては全額を変動金利で借りないことをお勧めします。なぜなら、将来的に金利が上昇したら、返済額が増える可能性もあるからです。変動金利だけではなく、3年などの短期間の固定金利選択型も同じことが言えます。

現在は金利が低いので住宅ローンのハードルが低いように錯覚してしまい、大きな額を借りがちです。しかし、金利が上がった場合、返済が厳しくなるので借り過ぎない。リスクヘッジのためには、変動金利型と固定金利選択型を組み合わせる技も身に付けることが大切です。住宅ローンを選ぶ際には、目先の金利の低さだけではなく、「低い金利が何年続くのか」が大切。長期的な視点をもちましょう。

花輪陽子phpto2花輪 陽子(ファイナンシャルプランナー)
CFP認定者、1級FP技能士。外資系投資銀行を経てFPに。「夫婦で貯める1億円!」「貯金ゼロ 借金200万円!ダメダメOLが資産1500万円を作るまで」などの著書やテレビ出演、雑誌監修など多数。

車、家電、家具…増税されてもされなくても「いま買ってよいもの」は? 賢い住まいのマネー術(6)

森友学園問題で揺れる自民党政権ですが、いまのところ2019年10月には、消費税率が10%に引き上げられる予定です。2%の差は大きいので、大きな買い物はなるべく早くから準備して、安いうちに買っておきたいと思っている人もいるでしょう。
でも、ちょっと待って。8%に上がるときも起こった駆け込み消費ですが、増税後にセールになる品物もありましたよね。「早まった!」もしくは「買っておけばよかった」といった後悔をしないためにも、何をいつ買うべきなのか。もし増税がされなかった場合にも参考になる、基本的な考え方をご紹介します。

【連載】賢い住まいのマネー術
住まいに関する支出は、家庭の大きな割合を占めるもの。保活から住宅ローン控除まで、住まいに関する家計管理や節約術に定評のあるファイナンシャルプランナー(FP)の花輪陽子さんが解説します。家電や家具などは買っておくほうがよい?

まず、すべての買い物に共通する基本的な考え方としては、「購入予定があって値崩れしにくい商品は『現在(税率8%)』のうちに買っておくとよい」ということです。必要のないものまで買ってしまえば支出は増えますし、値崩れする商品を先に買っても消費税の増税分より値段が下がってしまう可能性もあるからです。

家電に関しては、一般に値段が安定している白物家電(洗濯機や冷蔵庫、電子レンジなど日常生活に使う家電)は「買い」で、値動きしやすい黒物家電(音楽機器やゲーム機など、趣味や娯楽用途の家電)は「待ち」です。白物家電は生活をする上で欠かせませんし、値段が大きく崩れることも少ないからです。

では、白物家電はそれぞれいつ買えばよいのでしょうか。新居やリフォーム後のお部屋ができたタイミングですべてを新しくしたいと思うかもしれませんが、市場の値段が安くなるのと、自分が欲しいタイミングがずれる場合もしばしば。場合によっては今まで使っていた家具・家電をひとまず新居に持って行き、落ち着いたら探し始めるというのも一つです。一度に買うのに比べると、予算面からも融通を利かせやすいでしょう。

冷蔵庫は秋に新商品が出る場合が多く、発売からしばらくした年末ごろから値段が下がり始めるのが一般的なパターンです。さらに、ひとつ古い型の商品をアウトレット店やインターネットで探せば、安価な金額で手に入れることができます。

家電の値段変動サイクルは商品によって異なり、エアコンの場合は年明けごろに新商品が投入されることが多いです。エアコンの需要が減る4~5月になると値段が安くなります。家電の価格の推移は「価格.com」などでも検索が可能です。自分が欲しい家電で検索し、人気商品の値動きを2~3点調べてみることをおすすめします。

例えば、そろそろ冷蔵庫の買い替えを考えている方なら、2018年の年末ごろにアウトレット店などに冷蔵庫を探しにいくというイメージです。エアコンの場合は2019年の4月ごろから探し始めるとよいでしょう。増税は2019年10月なので、まだ先のように感じますが、増税前でもお得なタイミングで購入したいとなると、意外にも早くから準備をしたほうがよいことが分かります。

大手量販店では、古い家電を処分し、新しい商品に買い替える人向けのキャンペーンを行う場合もあるので、そうしたキャンペーンを活用したり、配送のタイミングなども相談するとよいでしょう。原則、引き渡し日の税率になることが多いため、増税直前に駆け込む場合は要注意です。

家具に関しては、ブランド家具などで値崩れしにくい物は増税前に探し始めてもよいでしょう。ただし、催事場などで行われる家具セールや中古品を活用する方法もあるので、必ずしも駆け込み購入しなくてもよいと思います。

自動車は増税前に買うべき? その他、住まいまわりで検討したい物は?

また、購入のタイミングを考えておきたいのは自動車です。車を購入する際に適用される税率が決まるのは、「登録時」になっていますが、ナンバープレートの登録には時間がかかります。増税直前の2019年9月に選んでいるとギリギリになってしまうので、買う予定があるならゆとりのあるスケジュールを組むべきでしょう。

できれば早い時期から準備して、3月や9月などの決算期前にディーラーと交渉して有利な条件で購入したいものです。決算期の1カ月半前くらいから動き出し、複数の見積もりを取るとよいでしょう。2019年2月ごろから動き始めて、3月決算を狙って購入するのも手です。

増税されるとなれば、直前の2019年9月決算は、同じように駆け込み購入しようとする人が多くなることが予想されます。となるとあまり値下げされないことも考えられますね。もし出遅れたら、需要が低迷するであろう増税後に、オプションなどで値引き・サービスを受けられないか交渉してみるのもよいと思います。

その他、リフォームも値段が下がりにくいので、リフォームをする予定がある人は増税前に検討をしてもよいでしょう。「床暖房にリフォームしたい」など小さなリフォームも含めて検討してみてもよいかもしれません。

浄水器のカートリッジや空気清浄機のフィルターなど、既に本体を購入している商品の「交換品」は値引きしなくても売れるので、値崩れしにくい商品です。消費増税前に購入準備しておいてもよいでしょう。

値崩れしにくい物などは消費増税前、いますぐに購入してもよいのです。その反面、値崩れが予想される物は駆け込む必要はありません。慌てて買わないで、必要性に応じて吟味できる目を養いましょう。

花輪陽子phpto2花輪 陽子(ファイナンシャルプランナー)
CFP認定者、1級FP技能士。外資系投資銀行を経てFPに。「夫婦で貯める1億円!」「貯金ゼロ 借金200万円!ダメダメOLが資産1500万円を作るまで」などの著書やテレビ出演、雑誌監修など多数。