都市部で混雑率の高い路線・低い路線のランキングは? 2021年度の都市鉄道の混雑率調査結果が発表!

国土交通省では、毎年度通勤通学時間帯における鉄道の混雑状況を調査している。大都市圏での通勤電車といえば、ぎゅうぎゅう詰めで混雑状況はかなり厳しいものがあるが、2021年度はどうだったのだろうか?

【今週の住活トピック】
「都市鉄道の混雑率調査結果(令和3年度実績)」を公表/国土交通省

コロナ禍で三大都市圏の混雑率は大きく減少

まず、三大都市圏の混雑率の推移を見てみよう。いずれの圏域も混雑率は、1975年度は200%前後とかなり混雑していたが、1980年代、90年代まで徐々に下がっていき、2000年以降からはおおむね横ばいとなっていた。ところが、2020年度、2021年度では大幅に混雑率が下がった。

三大都市圏の混雑率の推移

注)混雑率:最混雑時間帯1時間の平均(主に令和3年10月~11月の1日又は複数日の乗車人員データを基に計算したもの)

これは明らかに、コロナ禍における人流抑制が要因だろう。リモートワークや時差出勤が推奨されたことで、混雑率は大きく引き下げられた。2021年度は微増となったが、今後も新型コロナ感染状況の影響を受けそうだ。

さて国土交通省では、混雑率の目安を示している。1975年度の200%というと、体がふれあい相当圧迫感がある状態だ。コロナ前の東京圏の163%では、新聞を広げて何とか読める程度だろう。それが、2021年度には104%~110%の範囲になったので、定員乗車(座席につくか、吊革につかまるか、ドア付近の柱につかまることができる)レベルになっている。これなら通勤時間帯でも苦にはならない混雑具合だろう。

混雑率の目安イラスト

混雑率の目安(出典:国土交通省「資料1:三大都市圏の主要区間の平均混雑率の推移(2021)」)

JR東日本の中央線(快速)は、混雑率が山手線より高く、埼京線より低かった

そうはいっても、筆者が利用する電車は、たまに通勤時間帯に乗車するとけっこう混雑している。もう少し詳しく見ていこう。

資料3「都市部の路線における最混雑区間の混雑率」の中で、筆者が使っている東京圏のJR東日本「中央線(快速)」を見ると、中野→新宿(7:41~8:41)で混雑率は120%になっている。主要区間の平均108%よりはかなり高くなっている。
注)主要区間:国土交通省において継続的に混雑率の統計をとっている区間等

かつてゲキ混みと言われた山手線なら、もっと混雑しているのではないかと思って見てみると、「山手線内回り」新大久保→新宿(7:39~8:39)で103%、「山手線外回り」上野→御徒町(7:40~8:40)で94%だった。なんと中央線(快速)は山手線を上回っていた。山手線はターミナル駅が多いので、乗客の入れ替えが多いことも影響しているかもしれない。上野-御徒町間については、2015年に「上野東京ライン」が開業して、宇都宮線・高崎線・常磐線が東京駅に直接乗り入れることで、山手線の混雑が解消された影響もあるだろう。

では、同じようにゲキ混みと言われる埼京線はどうだろう?「埼京線」板橋→池袋(7:51~8:51)は132%と中央線(快速)を上回っていた。もっと混雑している路線を見つけて、不謹慎ながらちょっと嬉しくなった。

都市部で混雑率の高い路線・低い路線ランキング

では、今回の調査で最も混雑率の高い路線はどこなのだろう?気になったので、混雑率の高い順に紹介しよう。

■混雑率の高い路線ランキング
※都市部の路線における最混雑区間の混雑率(2021)より

1位:144%
東京都交通局「日暮里・舎人ライナー」赤土小学校前→西日暮里(7:20~8:20)
2位:140%
西日本鉄道「貝塚線」名島→貝塚(7:30~8:30)
3位:137%
JR東日本「武蔵野線」東浦和→南浦和(7:05~8:05)
4位:132%
JR東日本「埼京線」板橋→池袋(7:51~8:51)
4位:132%
JR西日本「可部線」可部→広島(7:30~8:30)
6位:131%
都営地下鉄「三田線」西巣鴨→巣鴨(7:30~8:30)
7位:130%
JR東日本「信越線」新津→新潟(7:27~8:27)
8位:128%
東京メトロ「東西線」木場→門前仲町(7:50~8:50)
9位:127%
東京メトロ「日比谷線」三ノ輪→入谷(7:50~8:50)
9位:127%
横浜市交通局「4号線」日吉本町→日吉(7:15~8:15)

全体的に見ると、住宅地から都心に向かう乗換駅のところで混雑しているという印象だ。人口の多い東京圏の路線が多いのも特徴だろう。

となると、今度は混雑率の低い路線も気になってくるではないか。どんな路線だろう?

■混雑率の低い路線ランキング
※都市部の路線における最混雑区間の混雑率(2021)より

1位:14%
関東鉄道「竜ヶ崎線」竜ヶ崎→佐貫(7:00~8:00)
2位:23%
能勢電鉄「日生線」日生中央→山下(6:45~7:45)
3位:29%
東海交通事業「城北線」比良→小田井(7:40~8:40)
4位:31%
阪堺電気軌道「阪堺線」今船→今池(7:30~8:30)
5位:32%
山万「ユーカリが丘線」地区センター→ユーカリが丘(6:30~7:30)

さて、路線別の混雑率に注目して紹介してきたが、コロナ禍で混雑率が下がっているのが実態だ。となると、気になるのはポストコロナ。コロナ感染が落ち着いても、リモートワークがある程度継続すると見られているが、すべての人がリモートワークをできるわけではない。仕事柄、通勤せざるを得ない人も多いので、通勤時の混雑状況というのも、住まい選びには重視したい点だ。

●関連サイト
国土交通省「都市鉄道の混雑率調査結果を公表(令和3年度実績)」

通勤時間1分。「会社のとなりに住む人は幸せか?」を聞いてみた

この世には、「会社のとなりに住む人たち」がいる。

通勤時間を極限まで減らし、空いた時間を生活やさらなる仕事に割り振る。限られた人生の時間を、究極の方法で生み出す者だ。

コロナ禍で、働き方の可能性を大きく広げたリモートワーク。それでも補完しにくい、直接的なコミュニケーションが可能なオフィスの役割も見直されるいま。彼らの生活に迫ってみた。

90万円の部屋に住み、となりの会社へ通う社長

今回はそんな日常生活を送る2人に話を伺った。この両者、家賃は10倍ほど違う。まずは90万円もの高額な家賃を払いながら、会社のとなりに住む1人目の声を聞く。

左はオフィスがあるアークヒルズ、右は住居の泉ガーデンレジデンス。本当にとなりだ(写真撮影/辰井裕紀)

左はオフィスがあるアークヒルズ、右は住居の泉ガーデンレジデンス。本当にとなりだ(写真撮影/辰井裕紀)

位置関係はこの通り(写真撮影/辰井裕紀)

位置関係はこの通り(写真撮影/辰井裕紀)

六本木のアークヒルズサウスタワーに会社を構え、システムエンジニアリングサービス事業とSaaS事業を営む株式会社エージェントグロー。このエリアは完全なる「ビジネス一等地」だが、よりによってとなりにある超高級マンション、泉ガーデンレジデンスに居を構えている人がいる。同社代表取締役の河井智也さんである。

「ウマ娘」にハマる河井社長(撮影時のみマスクを外しています。写真撮影/辰井裕紀)

「ウマ娘」にハマる河井社長(撮影時のみマスクを外しています。写真撮影/辰井裕紀)

会社のとなりへ住むようになったいきさつを語ってくれた。

「実家暮らしが長かったんですけど、27~28歳で一人暮らしを始めてから、ずっと職場の近くに住むようにしています」

そこには理由があった。

「実は私、元引きこもりのニートで。家は貧乏でしたし、学歴もそれほどじゃなくて」

世の中は不平等だ。

「ですがある日、『どんな人にも時間は平等なんだよな』と気付いたんです」

当時住んでいた新横浜の実家から、都心へは通勤に1時間以上かかる。その通勤時間を時給2000円で計算すると「1年でおよそ100万円」になる。

「時間を有効活用して通勤時間を仕事や勉強に費やそうと思い、『会社の近くに住もう』と決めました」

そう一念発起して、18億円を超える売り上げと317名もの従業員を抱える会社を築いた。

かつて河井さんのオフィスがあった溜池交差点(写真撮影/辰井裕紀)

かつて河井さんのオフィスがあった溜池交差点(写真撮影/辰井裕紀)

創業当初のオフィスは溜池山王にあり、赤坂に住んでいた。

「当時は会社から7分くらいのところに住んでいたのですが、会社が移転したのに伴い徒歩10分ぐらいになっちゃって。それを機に『新社屋から一番近い部屋に引っ越そう!』って決めたんです」

部屋の中。さまざまな日本画が飾られている(写真提供/河井智也)

部屋の中。さまざまな日本画が飾られている(写真提供/河井智也)

真ん中に見えるのが自宅と会社を行き来する裏道(写真撮影/辰井裕紀)

真ん中に見えるのが自宅と会社を行き来する裏道(写真撮影/辰井裕紀)

新しい住まいは1LDKで66平米ほど。リビングは16.5畳(約30平米)でバルコニーも広々としている。

「赤坂のときは妻と2人暮らしで2LDKに住んでいたんですけど、引っ越し先を決める際に『個室がふたつあるより、リビングの大きいところに住みたいね』と話して。画家の妻が大きな作品を描くにも便利なので、広いリビングのある1LDKに引っ越しました」

始業の10分前に起きても会社へ間に合う

一人暮らし時代の家賃は15万円、赤坂のときは30万円。六本木で48万円と来た。そしてこの記事が出るころには、同じマンションの高層階に引っ越している。床面積は2倍近くに広がるも、家賃はさらに90万円へ跳ね上がった。

「子どもが生まれてから物がすごく増えて手狭になり、リビングがさらに広い2LDKに引っ越しました。物置が大きいので、たくさんある妻の画材もしまえますね」

リビングは19畳と広々している(画像提供/河井智也)

リビングは19畳と広々している(画像提供/河井智也)

90万円もの高額な部屋に住む、決断に至った心中とは。

「環境がよければ、お金を稼げますから。家賃が高くとも、たくさん頑張って成果を出せばいいので」

力強く語る。そのために寝る時間も大切にしている。

「家が会社のとなりにあるおかげで、徒歩1分で帰宅できます。会社を出るのが24時を過ぎても7~8時間は眠れますし、仮に寝坊して8時50分に起きても、定時の9時に間に合いますよ」

エスカレーターを乗り継げば泉ガーデンレジデンスからアークヒルズまで雨に濡れずに移動できる(写真撮影/辰井裕紀)

エスカレーターを乗り継げば泉ガーデンレジデンスからアークヒルズまで雨に濡れずに移動できる(写真撮影/辰井裕紀)

「電車通勤が不要」なのも、会社のとなりに住む利点という。

「なかなか気づかないですけど、電車に乗るのは意外と精神的に削られるんですよ。人とすごく近いとかで。会社に着いた時点でもう、ちょっと疲れちゃうんですよね」

“仕事のパフォーマンスに直結する”との考えから、電車に乗らなくていい家を選んだ。

東京メトロ南北線 六本木一丁目駅も近いがほぼ使わない(写真撮影/辰井裕紀)

東京メトロ南北線 六本木一丁目駅も近いがほぼ使わない(写真撮影/辰井裕紀)

近いから家庭生活も大事にできる

会社の成長にも、「会社のとなり」生活が活きた。

「一番大きいのは、採用面接ですね。面接に来る求職者の方の大半は平日の日中帯に働いていますから、だいたい定時後か土日の面接を希望されるんですよ。コロナ前は対面の面接がメインだったんですが、さまざまな事情で来社できなくなる方もたまにいらっしゃって」

家が遠ければ通勤時間が気になるが、家がとなりにあれば精神的にも余裕ができる。土日の面接でもゆとりを持って対応でき、良い社員が続々と入社してくる好循環が生まれた。そして、「結婚生活」においてもメリットがある。

「1歳にならない子どもがいるんですが、子どもに何かがあって妻からヘルプがあったらすぐ帰れるんですよね。家のベランダから会社の明かりが見えるほど近いので、お互い安心できます」

中央右側が家。バルコニーから合図を送れる距離だ(写真撮影/辰井裕紀)

中央右側が家。バルコニーから合図を送れる距離だ(写真撮影/辰井裕紀)

ちなみに行きつけのお店は?

「自宅近くのお店にはだいたい入ったことがあるので、誰かとごはんを食べるときにいいお店はある程度把握しています」

さすがの網羅ぶりを見せる河井さんに、いくつか店をピックアップしてもらった。

「THE CITY BAKERY BRASSERIE RUBINは、パリのパン屋さんのレストランです。広くて子連れで行きやすいうえにテラス席もありますし、妻も好きなお店です。あとは陳麻婆豆腐とか。辛いのが好きな社員も多いので、みんなでランチによく行きますよ」

陳麻婆豆腐(写真撮影/辰井裕紀)

陳麻婆豆腐(写真撮影/辰井裕紀)

ランチセットは1,100円。ごはんを大盛りにすれば食べごたえもある(写真撮影/辰井裕紀)

ランチセットは1,100円。ごはんを大盛りにすれば食べごたえもある(写真撮影/辰井裕紀)

歩かなくなって30キロ太った(撮影時のみマスクを外しています。写真撮影/辰井裕紀)

(撮影時のみマスクを外しています。写真撮影/辰井裕紀)

メリットは多いが、意外な盲点も。

「会社の近くとなると大都会であることも多いので、まず家賃が跳ね上がります。職場近くにずっといると生活もマンネリ化しがちなので、旅行などでリフレッシュするように心がけます」

近くに住むからこそ、遠出する余裕もできるという。そして河井社長は笑って話す。

「会社のとなりに住むようになって、30キロ太ったんですよ。あまりに太りすぎてみんなから『痩せろ』と言われて。歩くってカロリー消費に大切だったんだなと。あわててジムに通い始めましたね」

老後は、会社を離れて住むことも考えている。

「歳を取って会社の近くに住まなくてよくなったとき、競馬ファンの私は『競馬場の近く』にでも住んでいるかもしれません(笑)。そのとき自分が熱中しているものや、やりたいことを叶えられるところに住むのが一番だと思いますから」

それまでは、仕事がやりやすい「会社のとなり」生活を謳歌する。

「仕事で成果を出したり年収を上げたりしたい人は、絶対会社の近くに住んだ方がいいと思いますね」

(写真撮影/辰井裕紀)

(写真撮影/辰井裕紀)

あの大阪の大手ゲーム社員も「会社のとなりに住む」

もう1人。誰もが知るあの大阪の大手ゲーム会社のとなりに住むのが、キャラクターデザイナーのolorさんだ。

olorさんの近影(画像提供/olor)

olorさんの近影(画像提供/olor)

「会社への距離は……本当に1分くらいですね。距離は50mもないです」

JR吉祥寺駅前 (写真/PIXTA)

JR吉祥寺駅前 (写真/PIXTA)

いったいなぜ会社のとなりに住んだのか。それは東京時代にさかのぼる。

「吉祥寺に住み、渋谷まで通勤していました。会社までは50分かかり、出退勤ラッシュに苦しんでいたんです。人混みに眼鏡を割られたこともありますし、酔ったとなりの人からゲロを吐かれたことも3回あります(笑)」

olorさんが勤めるゲーム会社の社屋(画像提供/olor)

olorさんが勤めるゲーム会社の社屋(画像提供/olor)

電車を逃して会社に何度も泊まったこともあり、通勤の苦労は深く脳裏に刻まれた。そこから3年前に転職し、東京から大阪に移住する。

8年住んだ吉祥寺は気に入っており、「関西の吉祥寺」のようなところを探したが、なかった。そこで目を付けたのが、会社のとなりだったのだ。

「さすがに会社のとなりは、仕事モードのオンオフができなさそうで悩みました。ですがこだわりポイントがすべて集まっていたのも、会社の近くだったんです。川の真ん中にあってオシャレな中之島公園もあるし、10分歩けば大阪城。ショッピングモールもあったので」

そして「通勤・退勤ラッシュにつかまらない」のも理由のひとつだった。

遊覧船が通る中之島公園。イベントも開催されてにぎわう(画像提供/olor)

遊覧船が通る中之島公園。イベントも開催されてにぎわう(画像提供/olor)

関西の物件は東京よりは安いと思っていたが、本社があるのは大阪市でも都会の中央区だ。7万2000円の家賃では広い部屋を借りられなかった。

「吉祥寺時代の6畳から9畳になりましたが、実質キッチンが3畳ほど取っている1Kなので、やっぱり狭いです」

olorさんの部屋。キッチンが部屋のスペースを取っている(画像提供/olor)

olorさんの部屋。キッチンが部屋のスペースを取っている(画像提供/olor)

猛暑や梅雨も関係なく過ごせる

「残業が多い業界で近所に住む社員も多いですが、本当にすぐとなりだと知るとびっくりされましたね」

だからプライベートでもよく同僚と遭遇する。

「気まずくはないですけど、ピザを買って帰るところを目撃されて『今日ピザなんですね』とか言われることはあります(笑)」

行きつけのお店も、やはり近くの店になる。

「いつも同じところばっかりに行ってしまうのが問題です(笑)」

長い行列のできるつけ麺の井手本店や、たっぷりの鶏むねからあげが食べられる万喜鶏などは、olorさんも何十回と通っている。

焼き鳥屋の万喜鶏。「めちゃくちゃなボリュームの鶏のむねからあげが好きで、よく行きます」(画像提供/olor)

焼き鳥屋の万喜鶏。「めちゃくちゃなボリュームの鶏のむねからあげが好きで、よく行きます」(画像提供/olor)

+200円で倍近くからあげが増える(画像提供/olor)

+200円で倍近くからあげが増える(画像提供/olor)

住んでみると徒歩1分もかからず出勤できるし、電車のラッシュとは無縁で、まるで体力を消耗しなかった。猛暑や梅雨も苦にならないし、自分の時間が増えた。

「家と会社への往復があまりにもカンタンですから、家のPCの調子が悪くなったときも、出勤して会社のPCでやり過ごせました。退社後には『olorさんがデータを確認しないと進めない』などの連絡もたまに来るんですが、パジャマのまま会社に行ってすぐ解決できますよ」

「ついでに」の行動ができない

だが、デメリットもある。olorさんが勤めるような大企業は都会にあるため、「都市のノイズがうるさい」

「働くならいいんですが、住むのは大変です。そばに片側5~6車線くらいあるすごく大きい道路があり、緊急車両のサイレンが毎日のように鳴るし、バイクの暴走族もいます。休日にはデモまで」

さらにまわりには高い建物が多く、日当たりも微妙だという。

「会社と家の往復では仕事のオンオフができません。インドア派の私でも、変化がなくて息苦しさを感じます」

関西に来て3年経つが、その実感も薄いという。会社もデスクワークのため、1日10分も歩かない。

「あと、通勤に距離があるとお店や公園に寄ったり、映画を観たりできます。家が近すぎると、意識してアクションを起こさないと外での行動ができません。お家に入ったら『もう出たくない』となるので」

物も増えて手狭になり、引っ越しを計画中(画像提供/olor)

物も増えて手狭になり、引っ越しを計画中(画像提供/olor)

「会社から離れる幸せ」も見えてきた

なので、次は会社から離れたところへのマイホーム購入を考えている。

「大阪は東京ほど電車が混まないっていうし、30分以上離れてもいいかなと。物も増えましたし、関西で落ち着いてもいいと思ったので」

探しているのは交通の便のよさとともに、自然豊かな街だ。

「京都と大阪の真ん中にある高槻市とか、大阪・枚方市の樟葉とか。老後も考えたら、京都の宇治市もいいかなって。通勤は1時間かかりますが、電車1本ですぐ京都市内には出られるので。趣味のバイクで琵琶湖にもすぐ行けますから」

宇治市御蔵山から見渡す秋晴れの山科方面の景色      (写真/PIXTA)

宇治市御蔵山から見渡す秋晴れの山科方面の景色 (写真/PIXTA)

そうやって引っ越しを考える日々だが、それでも「会社のとなり生活」は、メリットの方が多いと語る。

「移動がない分、自分の時間は明らかに増えます。仕事が生活のメインの人か、完全にインドアの人にはいいと思いますし、都会生活が好きな人には最適だと思いますよ」

会社のとなりに住みたくなった人には。

「単調な毎日になりやすいので、帰宅後や週末のプランを意図的に組み込んで、気分のオンオフをしたほうがいいですね」

夕日が沈む琵琶湖(写真撮影/辰井裕紀)

夕日が沈む琵琶湖(写真撮影/辰井裕紀)

テレワークで、時間と距離の自由を得た現代人。しかし、もし行き詰まりを感じているようであれば、「会社のとなりに住む」のも選択肢の一つだ。多くのメリットとともに、デメリットも確実にある。そこを見きわめて納得できたら、こう生きるのもいいだろう。

会社のとなりに住むメリットと、離れて住むメリット。一緒に見つめられるはずだ。

●取材協力
株式会社エージェントグロー
olorさん

「ワークライフバランスを支える住まい」が、今後の住宅のキーワードになる!?

公表された「平成29年度国土交通白書」によると、20~30代の子育て世代を中心に「ワークライフバランス」を支える住まいに対するニーズが高いことが分かった。今後の住まい選びのキーワードになりそうな「ワークライフバランスを支える住まい」とは、どういったものだろうか、詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「平成29年度国土交通白書」を公表/国土交通省ワークライフバランスとは、仕事と生活の調和?

「ワークライフバランス」とは何か?

これは政府の働き方改革の中で使われるようになった言葉で、直訳すると「仕事と生活の調和」ということになる。

そこで筆者は、内閣府の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」を見てみたが、正直言って概念的すぎてよく分からなかった。

「仕事と、子育てや介護といった生活との両立が難しい」「安定した仕事に就けない、一方で、長時間労働を強いられる」といった現実があり、多様な働き方や生き方が可能な社会にする必要がある。ということが語られているが、労働環境についてが主で、住まいや地域に関する具体的な言及はなかった。

職育近接、職住近接、三世代同居などがキーワード

そこで、白書ではどういった調査結果を基に、「ワークライフバランスを支える住まい」というキーワードを導き出したのか、見ていくことにしたい。

まず、ワークライフバランスについて、白書の第2章「第1節働き方に対する意識と求められるすがた」を見ていこう。
「働く上で重視すること」を聞いた調査結果(図表2-1-5)によると、20代~70代までの年代によりバラツキはあるものの「給与・賃金」や「仕事のやりがい」が多数を占める。ただし、20代・30代に注目すると「ワークライフバランス(子育て・介護などとの両立)」の重視度が高くなる。

「働けるうちはできるだけ働きたい」というニーズが高いこともあって、20代・30代には、長く仕事を続けながらも、家事・育児などのための時間を確保できる「ワークライフバランス」の実現へのニーズがある。このことから、白書では「在宅勤務」などの勤務場所の多様化や、「フレックスタイム制」などの労働時間の多様化といった、場所や時間に制約の少ない働き方に対する取り組みが求められていると指摘している。

働く上で重視すること(年代別)(出典/「平成29年度国土交通白書」)

働く上で重視すること(年代別)(出典/「平成29年度国土交通白書」)

次に、白書の第2章「第3節住まい方に対する意識と求められるすがた」を見ると、各世代に「今後求められる住まい方」を聞いた調査結果(図表2-3-4)がある。最も多い回答は、全世代で「介護が必要になっても年金の範囲内で安心して暮らし続けられる住まいの整備」で、次いで年代を問わず「親世帯、子ども世帯との同居や近居の推進」が多いという結果だった。

一方で、20代・30代の若年層に注目してみると、「職場内や近隣への子育て支援施設整備による職育近接の推進」という回答がともに多く、20代では「田舎暮らしなど地方移住の推進」も多いという結果だった。

今後求められる住まい方(年代別)(出典/「平成29年度国土交通白書」)

今後求められる住まい方(年代別)(出典/「平成29年度国土交通白書」)

こうした結果を受けて、国土交通省では、「職育近接、職住近接、三世代同居の推進等、ワークライフバランスを支える住まい方の支援が求められる」と見ているわけだ。

働き方が変われば住まい選びの基準も変わる?

図表2-1-5の「働く上で重視すること」の調査結果を見ると、「勤務地・勤務場所までの距離」の重視度は必ずしも高いわけではない。一方、図表2-3-4の「今後求められる住まい方」の結果では、20代・30代が「職場内や近隣への子育て支援施設整備による職育近接」を重視している。

つまり、自宅と職場の距離の近さよりも、例えば企業内保育所や駅前保育所のような通勤上で立ち寄れる、あるいは自宅に近いといった子育て支援施設を求めていることが分かる。

また、「親世帯との同居や近居」を望むのは、20代・30代は子育てのサポートを親世帯に期待して、50代・60代では親の介護を視野に、70代では自身の介護を考えているからだろう。

となると、子育ての時間が欲しい20代・30代、仕事の責任が重くなる40代、親の介護が視野に入る50代以降などではワークライフバランスの考え方も変わってくるわけで、「状況に応じて住み替えしやすい住宅市場」ということも求められているのだろう。

白書では「新たな兆し」の一例として「ワーケーション」を挙げている。国内外のリゾート地や帰省先など休暇中の旅先で仕事をする“テレワーク”のことだという。

今後働き方改革が進み、子どものお迎えの前後に自宅で在宅勤務をしたり、旅先の田舎などでも勤務できるようになると、住まい選びの基準もどんどん変わっていくことだろう。

関西住みたい沿線3位の「JR東海道本線」、家賃相場が安い駅トップ20を発表!【沿線調査 関西版】

リクルート住まいカンパニーでは、関西(大阪府・京都府・兵庫県・滋賀県・奈良県・和歌山県)に居住している20歳~49歳の4600人を対象に実施した「みんなが選んだ住みたい街ランキング2018 関西版」を発表した。住みたい沿線ランキングで3位になったのは、JR東海道本線。1位の阪急神戸線、2位の大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)御堂筋線に続き、その特徴や、駅周辺情報を調査してみた。
自然豊かな環境で子育てしつつ、都市圏へ通勤……地に足の着いたJR東海道本線

東京駅から兵庫県の神戸駅まで結ぶJRの東海道本線は、東日本旅客鉄道(JR東日本)、東海旅客鉄道(JR東海)、西日本旅客鉄道(JR西日本)の3社が管轄する長い路線。JR西日本の区間は米原駅から神戸駅までで、沿線はそれぞれ米原駅から京都駅間がJR琵琶湖線、京都駅から大阪駅までがJR京都線、大阪駅から神戸駅間がJR神戸線の愛称で親しまれている。

快速や新快速などの特急列車が数多く設定されているため、地理的には少し距離があるように感じられる駅でも、大阪市を中心とする関西の都市部への通勤圏内。特にJR琵琶湖線の沿線は田園地帯が多いが、自然豊かな環境でゆったりとした子育てを行えるためか、住みたい沿線ランキングでJR東海道本線を選んだ回答者は30代と40代の割合が大きかった。強固なブランドイメージの阪急神戸線や、交通利便性が突出した地下鉄御堂筋線と比べると、日常生活により密接した、地に足の着いた人気といえるかもしれない。

●JR東海道本線・家賃相場が安い駅ランキング(TOP20)
順位/駅名/家賃相場(中央値 賃料_管理費込)/所在地
1位 河瀬 4.0万円(滋賀県彦根市)
2位 JR総持寺 4.2万円(大阪府茨木市)
3位 南彦根 4.3万円(滋賀県彦根市)
4位 瀬田 4.4万円(滋賀県大津市)
4位 稲枝 4.4万円(滋賀県彦根市)
6位 篠原 4.5万円(滋賀県近江八幡市)
7位 山崎 4.6万円(京都府乙訓郡大山崎町)
8位 栗東 4.7万円(滋賀県栗東市)
8位 能登川 4.7万円(滋賀県東近江市)
10位 向日町 4.8万円(京都府向日市)
11位 米原 4.9万円(滋賀県米原市)
11位 彦根 4.9万円(滋賀県彦根市)
11位 石山 4.9万円(滋賀県大津市)
11位 膳所 4.9万円(滋賀県大津市)
15位 千里丘 5.0万円(大阪府摂津市)
15位 岸辺 5.0万円(大阪府吹田市)
17位 草津 5.2万円(滋賀県草津市)
17位 摂津富田 5.2万円(大阪府高槻市)
17位 長岡京 5.2万円(京都府長岡京市)
20位 大津 5.3万円(滋賀県大津市)
20位 山科 5.3万円(京都府京都市)
20位 摂津本山 5.3万円(兵庫県神戸市)
20位 甲子園口 5.3万円(兵庫県西宮市)

上位には琵琶湖線の駅が多くランクイン。滋賀県民の住みたい街1位の草津市の人気の理由とは

家賃相場は都市から離れるほど低くなるため、上位20位のピックアップでは、大半を琵琶湖線の駅が占めた。

滋賀県民が選ぶ「住みたい自治体ランキング」でトップになった「草津市」の玄関口、草津駅は、JR京都線の摂津富田と同率で17位。草津駅は新快速の停車駅で、大阪駅まで1時間以内、京都駅まで30分以内で直通と、乗り換えの手間なく都市部まで移動できる交通の便の良さが魅力だ。三重県方面からくるJR草津線の終点駅でもある。

百貨店や商業施設などの充実ぶりが滋賀県のなかで屈指であるのが、草津市の人気の大きな理由だ。駅前などではタワーマンションも増えているが、少し歩けば一戸建ての住宅地が広がる。便利だけれど都会過ぎないほどよさも、人々を惹きつける理由なのだろう。滋賀県は日常の足は車が一般的だが、草津市には新名神高速道路の草津田上インターチェンジがある。小さな子どもがいるファミリー世帯にとっては、行楽での車移動の利用しやすさはうれしいところだ。

草津駅前ロータリー(写真/PIXTA)

草津駅前ロータリー(写真/PIXTA)

また、滋賀県は冬になると、降雪で新幹線が県内で止まるというニュースを耳にすることがあるが、草津市は南に位置するため、北部に比べると雪が比較的少ない。一年のうちの数カ月のこととはいえ、住む上では大いに利点といえるだろう。

滋賀県の県庁所在地である大津市の代表駅、大津駅は20位。商業施設のほか、大津地方裁判所や滋賀県警察本部などの行政施設が集中しており、京都や大阪への所要時間は草津よりさらに短い。名神高速の大津インターチェンジのそばであり、草津同様に車でのお出かけが便利だ。また、やはり同じく県南部に位置するため、雪の不安も軽減される。

大津市は大津駅以外にも、瀬田駅、石山駅、膳所(ぜぜ)駅と計4駅が上位20位入りしている。県庁所在地という都市部でありながら、大津市は自然が豊かに残っており、市内には世界文化遺産の比叡山延暦寺などの文化財や風光明媚(めいび)な観光地が数多い。

前述の4駅のうち、新快速が停車するのは大津駅と石山駅だ。新快速は利用できないとはいえ瀬田駅は、日本三名橋のひとつである瀬田の唐橋があり、古い民家が並ぶ街並みがどこかホッとさせるたたずまいで、膳所駅は進学校である滋賀大学教育学部附属中学校の最寄駅。電車の利用は少し不自由になるが、知識欲の探求や子どもの教育に、あえて選んでみても、楽しい生活が送れそうだ。

大阪駅から30分で、自然豊かな名水の里「山崎駅」

7位の山崎駅はJR京都線。大阪までは快速を利用すれば直通で約30分、京都までは約15分で到着する。サントリーの山崎蒸溜所があることで知られており、良質な湧き水に恵まれた地域で、かつては水道水にも井戸水が使われていたほど。

山崎蒸溜所(写真/PIXTA)

山崎蒸溜所(写真/PIXTA)

水資源の質から分かるように、都市部へのアクセスの良さからは意外なほどの豊かな自然が残る静かな環境は、都市部での通勤や通学と、豊かな住空間を両立させうるといえそう。とはいえ、日常生活では車は必須になることは注意が必要かもしれない。

居住地を決めるとき、交通アクセスの良さは大切な要素だ。目的地への乗車時間は短いに越したことはないが、家は、充実した生活の拠点となるべきもの。予算や家族の事情によっては、少し郊外へと目を向けてみたら、乗車時間の長短よりも、もっと大きな物を得られるかもしれない。

●調査概要
【調査対象駅】JR東海道本線の柏原駅~神戸駅(関西圏にある駅)
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、広さ10~40平米以内、築年数40年以内、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ算出期間】2018年1⽉1⽇~2018年3⽉31⽇
【家賃の算出⽅法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の管理費を含む⽉額賃料から中央値を算出
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している

住みたい沿線2位の「御堂筋線」を調査! 全20駅の家賃相場や特徴は?【沿線調査 関西版】

リクルート住まいカンパニーでは、関西(大阪府・京都府・兵庫県・滋賀県・奈良県・和歌山県)に居住している20歳~49歳の4600人を対象に実施した「みんなが選んだ住みたい街ランキング2018 関西版」を発表した。住みたい沿線ランキングで2位になったのは、大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)御堂筋線。1位の阪急神戸線に続き、その特徴や、駅周辺情報を調査してみた。
大阪の繁華街を総ナメ、実は穴場の駅がズラリの地下鉄御堂筋線

今年の4月に民営化され、大阪市営地下鉄から大阪メトロとなった地下鉄御堂筋線は、吹田市の江坂駅から堺市のなかもず駅までを通る路線。大阪市の二大ターミナルである梅田駅となんば駅や、新幹線の停車する新大阪駅、大阪市役所や大阪地方裁判所など行政機関の集中する淀屋橋駅など、大阪市の主要な繁華街のほとんどをほぼ直線的に結ぶ大阪の主要幹線だ。

江坂駅からは北大阪急行線と直通運転をしているが、梅田駅では阪急電鉄と阪神電鉄、淀屋橋駅で京阪電鉄、なんば駅で南海電鉄と近畿日本鉄道(大阪難波駅)など、関西の主な私鉄の本線や幹線と連絡。交通利便性の突出した路線だが、繁華街の印象が強いだけに、「住む」というイメージがわきづらい沿線でもある。しかし、「みんなが選んだ住みたい街ランキング2018 関西版」の「穴場だと思う街(駅)ランキング」では、東三国、梅田、江坂、天王寺、新大阪、中津、あびこと最多の7駅がランクインしており、住んでみることも十分検討可能な沿線であるといえそうだ。

●御堂筋線・家賃相場が安い駅ランキング

順位/駅名/家賃相場(中央値 賃料_管理費込)/所在地
1位 長居 5.0万円(大阪市住吉区)
1位 動物園前 5.0万円(大阪市西成区)
3位 西田辺 5.1万円(大阪市阿倍野区)
4位 あびこ 5.3万円(大阪市住吉区)
5位 新金岡 5.4万円(大阪府堺市)
6位 なかもず 5.5万円(大阪府堺市)
6位 昭和町 5.5万円(大阪市阿倍野区)
8位 北花田 5.6万円(大阪府堺市)
9位 天王寺 6.2万円(大阪市天王寺区)
9位 東三国 6.2万円(大阪市淀川区)
11位 新大阪 6.5万円(大阪市淀川区)
12位 西中島南方 6.6万円(大阪市淀川区)
12位 大国町 6.6万円(大阪市浪速区)
12位 中津 6.6万円(大阪市北区)
15位 なんば 6.7万円(大阪市中央区)
16位 心斎橋 7.0万円(大阪市中央区)
16位 梅田 7.0万円(大阪市北区)
18位 江坂 7.3万円(大阪府吹田市)
19位 本町 7.5万円(大阪市中央区)
20位 淀屋橋 7.6万円(大阪市中央区)

1位の長居は、老若男女の趣味を満足させる街

ランキング1位の長居駅は、梅田駅からは20分強、なんばからは15分弱で到着し、JR阪和線とも接続している駅。駅周辺はややざわつきはあるものの、ごく一般的な住宅街といった風情だ。

そんな長居のいちばんの魅力は、長居公園の最寄駅であることだろう。プロサッカーチーム「セレッソ大阪」のホームスタジアムであるヤンマースタジアム長居や、大阪市立自然史博物館などがある総合公園で、休日ともなれば散策やスポーツする親子連れやカップルでにぎわう。

ヤンマースタジアム長居(写真/PIXTA)

ヤンマースタジアム長居(写真/PIXTA)

低年齢の子どもがいる家庭にとって、近所に大きな公園があることはそれだけでもポイントが高いものだが、特に大阪市立自然史博物館は、自分で動物をはく製にする「なにわホネホネ団」などユニークな活動を行っている複数の団体が拠点を置いており、子どもに個性的な教育を行いたい親にとっては気になるところ。年齢を問わず、幅広い趣味のひとたちを満足させる街といえるかもしれない。

15位のなんば駅は、住みたい街(駅)ランキングでも20代と30代で3位、40代で8位に入っている。「ミナミ」の愛称で知られるなんばは、吉本新喜劇が行われる「なんばグランド花月」や道頓堀、心斎橋筋商店街など大阪らしいにぎやかなイメージと観光地的な遊び場のあふれる街だ。

高島屋などの百貨店や複合施設「なんばパークス」など、買い物の便利さも抜群だが、やはり遊びに行く場所というイメージは強いかもしれない。だが駅から少し外れれば、マンションが立ち並ぶ、落ち着いた住宅街が広がっている。また「大阪でいちばんおしゃれなエリア」といわれる堀江地域は、なんば駅の圏内。オトナも楽しめるカフェや雑貨店も多く、遊びを満喫したい若者だけでなくファミリー層も満足して住めるだろう。

実は穴場、再開発が進む天王寺の魅力はあべのハルカスだけじゃない

9位の天王寺は、穴場だと思う街(駅)ランキングで8位に入っている。地下鉄谷町線や近鉄南大阪線の大阪阿部野橋駅と接続するほか、JR天王寺駅は関西空港方面へ向かう路線が通るターミナル駅でもある。近年は日本一高いビルで知られる商業施設「あべのハルカス」の開業が注目を集めているが、大規模施設の間にひっそりと昔ながらの飲食店もみかけることができ、どこか下町情緒も残る。

天王寺駅前(写真/PIXTA)

天王寺駅前(写真/PIXTA)

天王寺周辺は1970年代から再開発事業が進められており、2018年3月に事業が完了。かつて老朽住宅が密集していた地域が整備され、住宅戸数が増加した。また、大阪星光学院や四天王寺学園など、関西屈指の進学校である中高一貫校の最寄駅でもあることも、学齢期の子どもがいる家庭にとっては魅力だろう。

11位の新大阪駅は、同じく穴場だと思う街(駅)ランキングで13位。新幹線の停車駅だけに、駅のすぐ近くはホテルやオフィスビルなどが目立つが、御堂筋線沿線で調査条件に該当する物件数がいちばん多いのは、実は新大阪駅だ(2017年11⽉~2018年1⽉時点)。駅から10分ほど歩くと住宅街。駐車場完備で24時まで営業しているスーパーや、ホームセンターも、駅から徒歩10~15分ほどの場所にあり、日常の生活に不自由することはないだろう。

交通の利便性は、高いに越したことはない。穴場、というと「地味だけど実は……」という沿線を想像してしまうものだが、物でもお店でも、最も利用するものにこそ気づかない一面がある、というのは普遍的なもの。路線も同様だ。自分のライフスタイルに沿って探してみたら、最高に便利な“穴場”の部屋も、見つかるかもしれない。

●調査概要
【調査対象駅】御堂筋線の駅
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、広さ10~40平米以内、築年数40年以内、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ算出期間】2017年11⽉1⽇~2018年1⽉31⽇
【家賃の算出⽅法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の管理費を含む⽉額賃料から中央値を算出
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している

住みたい沿線1位の「阪急神戸線」を調査! 全15駅の家賃相場や特徴は?【沿線調査 関西版】

リクルート住まいカンパニーでは、関西(大阪府・京都府・兵庫県・滋賀県・奈良県・和歌山県)に居住している20歳~49歳の4600人を対象に実施した「みんなが選んだ住みたい街ランキング2018 関西版」を発表した。住みたい沿線ランキングで1位になったのは、阪急神戸線。その特徴や、駅周辺情報を調査してみた。
都市部へのアクセスも良い! 緑豊かで閑静な住宅街が多い阪急神戸線

大阪の中心地である北区・梅田駅から兵庫県神戸市の神戸三宮駅までを結ぶ、阪急神戸線。同じく梅田から神戸の中心地へ向かう阪神電鉄・阪神本線やJR神戸線(東海道本線)とは、西宮駅から西へはほぼ並走するものの、より内陸部を通っているため、沿線は緑豊かで閑静な住宅街が多い。

都市部へのアクセスの良さも人気の大きな理由だが、阪急電鉄は住宅開発とともに発展してきたという背景から、阪急各線の沿線は住環境の整備が進んでいる。なかでも阪急神戸線はブランドイメージが強く、著名人や富裕層の住民が多いことで知られる芦屋も同線の芦屋川駅付近を指すことが一般的だ。

子育てをする環境としての安心感があるためか、住みたいと回答した人を年代別にみると40代の支持が約4割と最も高かった。20代~40代までの年代別に住みたい街ランキングをみると、各年代で1位、2位に西宮北口と梅田がランクインしているほか、40代ではトップ10に神戸三宮、岡本、夙川(しゅくがわ)、御影(みかげ)がランクイン。阪急神戸線の駅がトップ10の過半数を占めている。また、関西在住者だけでなく、転勤などで他地域から引越してきた土地勘のないひとが、前任者からお墨付きがあったから住んでみる、というケースもある。

●阪急神戸線・家賃相場が安い駅ランキング

順位/駅名/家賃相場(中央値 賃料_管理費込)/所在地
1位 武庫之荘 4.8万円(兵庫県尼崎市)
2位 塚口 5.0万円(兵庫県尼崎市)
3位 岡本 5.2万円(兵庫県神戸市東灘区)
4位 園田 5.3万円(兵庫県尼崎市)
4位 王子公園 5.3万円(兵庫県神戸市灘区)
4位 御影 5.3万円(兵庫県神戸市東灘区)
7位 夙川 5.5万円(兵庫県西宮市)
8位 神崎川 5.8万円(大阪府大阪市淀川区)
8位 六甲 5.8万円(兵庫県神戸市灘区)
10位 西宮北口 5.9万円(兵庫県西宮市)
11位 芦屋川 6.2万円(兵庫県芦屋市)
12位 十三 6.3万円(大阪府大阪市淀川区)
12位 春日野道 6.3万円(兵庫県神戸市中央区)
14位 中津 6.6万円(大阪府大阪市北区)
15位 神戸三宮 7.0万円(兵庫県神戸市中央区)
15位 梅田 7.0万円(大阪府大阪市北区)

西宮北口駅は年齢問わず住みたい街の1位 駅前は商業施設が充実西宮北口駅(写真/PIXTA)

西宮北口駅(写真/PIXTA)

住みたい街ランキングは今年から調査方法の一部を変更したとのことだが、調査方法を変更する前の5年間も、今年も関西版の1位は西宮北口駅となっている。阪神大震災の被災後の再開発や、阪急西宮スタジアム跡地の活用などで、駅前には大規模商業施設が充実している。赤ちゃん用品店や図書館がある「ACTA西宮」は低年齢の子どものいる家庭にも人気があり、「阪急西宮ガーデンズ」は映画館のほか、阪急沿線ならではの阪急百貨店や、高級志向のセレクトショップもそろっているため、わざわざ梅田まで出なくても買い物には困らないだろう。

デザイン性の高い大規模マンションも多数増えているため、こだわりを持った家探しに応えてくれることも人気の理由だ。

また、阪急ならではといえば、宝塚歌劇団。西宮北口駅は阪急今津線も利用することができるが、今津線は宝塚大劇場の最寄駅である宝塚駅や宝塚南口駅まで約15分。ヅカファンにとって大変便利な街であるが、実はタカラジェンヌにとっても買い物やお茶によく利用する人気の駅。美を売り物にする彼女たちに愛されているという点でも、街の魅力がうかがえるだろう。

3位の岡本駅は、阪急神戸線のブランドを代表するともいえる駅。駅から少し離れると大きな邸宅が目立つが、駅周辺には若者や女性向けのおしゃれなお店や有名なカフェなども多い。甲南大学や甲南女子大学などの最寄駅でもあり、住むだけでなくデートなどで遊びにきても楽しい街だ。

特急が止まるため、梅田まで30分以内、神戸三宮までは10分以内という交通の良さも特徴。駅から約300mの位置にJR神戸線(東海道本線)の摂津本山駅があるため、2路線利用できるのも利便性が高い。

閑静だけじゃない 十三駅は飲食店や映画館など大阪らしい魅力も十三駅(写真/PIXTA)

十三駅(写真/PIXTA)

交通アクセスが一番良いのは、12位の十三(じゅうそう)駅だろう。阪急宝塚線や京都線とのハブ駅で、特急や快速などすべての電車が止まる。

駅周辺は、立ち飲み居酒屋がつらなるような少し猥雑な雰囲気もあり、いわゆる神戸線のイメージとは少し異なるかもしれない。しかし、小規模でも良質な映画や珍しい海外作品の上映で知られる映画館、第七藝術劇場や、大阪府で屈指の進学校として知られる大阪府立北野高校の最寄駅でもある。多少クセはあるが大阪らしい魅力があり、ハマるひとはどっぷりハマってしまう街だ。

2位の塚口駅は、住みたい街ランキングの穴場だと思うランキングでトップを獲得している。特急は止まらないが、ラッシュ時には通勤特急などが停車している。駅前の大型スーパー「塚口さんさんタウン」は、日常の買い物だけでなく公共サービスセンターや映画館も入っているため、子育てに忙しい家庭には強い味方だろう。また、庶民的な飲食店も多い点も魅力だ。

せっかく住むのなら、ブランド力のある路線に住みたいというのは当然の心理だろう。ハイソなイメージのある阪急神戸線だが、同じ沿線とはいえ、さまざまな特徴や魅力がある。イメージに先行されず、家族構成やそれぞれの趣味など、本当に自分たちにあう街を見つけるのも、家を探す楽しみのひとつだろう。

●調査概要
【調査対象駅】阪急神戸線沿線の駅
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、広さ10~40平米以内、築年数40年以内、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ算出期間】2017年11⽉1⽇~2018年1⽉31⽇
【家賃の算出⽅法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の管理費を含む⽉額賃料から中央値を算出
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している

再開発のすすむ二俣川駅前に、新スポットがオープン! 都心へのアクセス向上も

相鉄線の二俣川駅周辺が、現在注目されているのをご存じですか? 実は、二俣川駅から都心への相互直通運転を2019年下期から順次予定していることから、駅舎のリニューアルと同駅南口の再開発の真っ最中なのです。それに先がけ、駅前にファッションとグルメの新スポットのオープンが予定されているのだそうです。 相鉄グループの担当者に相互直通運転が始まることのメリットも教えてもらいました。
「ジョイナス テラス二俣川」がグランドオープン

2018年4月27日(金)に、相鉄グループの(株)相鉄アーバンクリエイツと(株)相鉄ビルマネジメントによる新しい商業施設「JOINUS TERRACE(ジョイナス テラス)二俣川」がグランドオープンします。場所は、再開発が進み新しく生まれ変わる「相鉄線二俣川駅」南口です。

画像提供/相鉄ビジネスサービス株式会社

画像提供/相鉄ビジネスサービス株式会社

「エリア最大の集積となる食料品ゾーンを中心に、カフェやレストラン・衣料品・生活雑貨・服飾雑貨など多彩なテナントラインナップの施設です」(相鉄グループ担当者)。建物は2カ所に分かれていて、「ジョイナス テラス2」2階のみ2018年秋のオープンを予定しているそう。

「都心直通プロジェクト」で二俣川がもっと便利に

更に気になる相鉄線の「都心直通プロジェクト」についても聞いてみました。いったいどんな変化がおこるのでしょうか?

「相鉄・JR直通線、相鉄・東急直通線が完成すると横浜市西部および神奈川県央部と東京都心部への 所要時間の短縮や乗換回数の減少、新幹線へのアクセス向上など利便性 が向上します。また、地域の活性化など に寄与し、相鉄線沿線のさらなる発展にも貢献することで沿線価値の向上に繋がると考えます」(相鉄グループ担当者)

開業後の所要時間の例を挙げると、「二俣川駅から新宿駅までの相鉄・JR直通線の所要時間(予測)」は約44分。横浜駅乗換えJR湘南新宿ライン利用と比較すると、15分程度短縮される見込みなのだとか。
通勤・通学時間帯の15分短縮は大きいです! 朝の支度に余裕が生まれるのではないでしょうか。

ちなみに、「相鉄・JR直通線」のスタート予定は2019年度下期で、相鉄・東急直通線は2022年度下期の開業を予定しているのだとか。相鉄線の沿線でお部屋探しをされる場合は、より便利になる二俣川周辺にも注目してみてはいかがでしょうか。

新幹線通勤って実際どうなの?熊谷~都内に通う「新幹線補助」利用者に本音を聞いてみた

一戸建ての購入を検討するとき、予算や通勤の利便性は優先順位が高いという人が多いのではないでしょうか。そんなとき、「できるだけ安く家を購入×できるだけ快適な通勤を」と考えてみると、東京23区内で条件に見合う物件を探すのは至難の業。しかし最近は、新幹線で通勤できる郊外で住宅購入した人を対象に新幹線通勤補助を行う自治体が増え始め、にわかに注目を集めています。そこで今回は「郊外で家を買って新幹線通勤」は本当におトクなのか、検証してみました。
そもそも新幹線通勤補助って何?熊谷市役所へ突撃リポート

新幹線通勤補助とは、自治体が通勤に新幹線を利用している住民に補助金を支給する制度のこと。長野県の佐久市や新潟県の湯沢町など、近年、この制度を導入する自治体が増えているのです。埼玉県の熊谷市もそのひとつ。そこで今回は熊谷市役所を訪ね、企画課の松本さん、市原さんに新幹線通勤補助について聞いてきました。

【画像1】写真左:熊谷市役所。写真右:熊谷市総合政策部 企画課の松本里実さん(左)、市原倫子さん(右)(写真撮影/宮崎林太郎)

【画像1】写真左:熊谷市役所。写真右:熊谷市総合政策部 企画課の松本里実さん(左)、市原倫子さん(右)(写真撮影/宮崎林太郎)

――熊谷市では新幹線通勤にどれくらいの補助が出るのでしょうか?

松本さん 当市では、移住促進の一環として住宅購入に対するさまざまな助成を行っています。新幹線通勤補助もそのひとつで、2016年4月1日から2019年3月31日までに、当市内に住宅を購入および転入し、新幹線を使って通勤する方を対象に、定期券の有効期間の初日から2年間、月額最大2万円までの補助金を支給しています。

市原さん 新幹線通勤補助を受ける条件に5年以上居住する意思があることと定めているので、2年間という期間は短いと思われるかもしれませんが、これは当市に移住された方が新しい生活に慣れるまでの期間と捉えています。新幹線通勤で長距離移動の負担を軽減することで、少しでも当市での暮らしになじんでいただく助けになるとうれしいですね。補助がある間は新幹線通勤をして、生活スタイルに応じて在来線に切り替えるという選択肢もアリですよ。

【画像2】熊谷市の新幹線通勤補助概要

【画像2】熊谷市の新幹線通勤補助概要

――新幹線通勤補助制度への反響はどうですか?

松本さん イベントやホームページなどで制度を周知していますが、それに加えて、いろいろなメディアで取り上げていただく機会も増え、多くのお問い合わせをいただいています。残念ながら条件に合わないという方もいらっしゃいますが、たくさんの方に興味をもっていただけていると実感しています。現在、熊谷市内から東京に通勤されている方が7000人くらい(※1)いて、そのうち2000人ほど(※2)が新幹線を利用しているというデータもあります。交通費を余分に払っても、通勤時間をゆったり快適に過ごしたいという希望をもつ人は、意外と多いのかもしれませんね。

市原さん 熊谷市だけでなく、埼玉県北部全体で人口減少や少子高齢化が進んでいます。その対応として7市町(熊谷市・本庄市・深谷市・美里町・神川町・上里町・寄居町)共同で埼玉県北部地域地方創生推進協議会を立ち上げ、「埼北移住」という移住促進のプロモーションなどを行っています。埼玉県北部というのは東京からは遠くて不便という印象をお持ちの方も多いと思います。しかし熊谷から東京まで新幹線なら40分ほどですから、実際に通ってみると思ったよりラクだったという声もいただいています。興味をもたれた方はぜひ一度、熊谷まで足を運んでみてください。

※1.総務省「平成27年度国勢調査」より
※2.JR東日本「新幹線駅別乗車人員(2015年度)」より

【画像3】写真左:企画課では住民目線で熊谷の暮らしを紹介する情報誌「熊谷で暮らす」を発行するなど、積極的に情報発信を行っている。写真右:定住促進パンフレット「熊谷で暮らす」vol.1、vol.2 (写真撮影/宮崎林太郎)

【画像3】写真左:企画課では住民目線で熊谷の暮らしを紹介する情報誌「熊谷で暮らす」を発行するなど、積極的に情報発信を行っている。写真右:定住促進パンフレット「熊谷で暮らす」vol.1、vol.2 (写真撮影/宮崎林太郎)

通勤時間はフリータイム?実践者に聞く新幹線通勤のホンネ

満員電車で延々揺られるより新幹線通勤が快適なのは何となく想像がつきますよね。でも自腹で毎月数万円と言われたら、ちょっと腰が引ける気もします。そこで熊谷で家を買って東京まで通勤しているSさんに、新幹線通勤のほんとのところを聞いてみました。

【画像4】熊谷市在住のSさん(37歳)。家族構成:夫婦+長男+次男、通勤区間:熊谷駅‐品川駅、住居形態:新築一戸建て(注文住宅)(写真撮影/宮崎林太郎)

【画像4】熊谷市在住のSさん(37歳)。家族構成:夫婦+長男+次男、通勤区間:熊谷駅‐品川駅、住居形態:新築一戸建て(注文住宅)(写真撮影/宮崎林太郎)

――新幹線通勤ってそんなに快適なんですか?

快適ですね。自由席が少なくなる休日の出勤を除けば、これまで通勤で座れなかったことはないですし、シートがゆったりしているので全然疲れません。私は本を読むことが多いですが、パソコンで作業をしたり、食事をする人もいます。仕事が忙しくて疲れているときなどは寝て過ごすこともあります。行きは終点の東京までなので、寝過ごす心配もないですしね。新幹線に乗っている間はいわばフリータイムです。

それに天候が悪くてもほとんどダイヤが乱れないんです。雪の多い地域を通過する北陸新幹線を利用しているからかもしれませんが、とにかく悪天候に強い印象ですね。これを経験してしまうと、私はもう在来線通勤には戻れないです。

――とはいえ不満だってありますよね?

本音を言うと、一番はお金ですね。新幹線の定期代と、在来線の定期代の差額が4万円弱。私の場合は会社が差額の半分まで支給してくれるので、新幹線通勤補助を加えると自己負担額は毎月1万円程度で済んでいます。これがもし、市からの補助がなくなる3年目以降が2万円ではなく4万円の自己負担だったとしたら、おそらく妻を説得できなくて在来線通勤になっていたと思います。

実は勤務先が品川なので、東京駅から山手線に乗り換えなければなりません。5駅程度なので、乗ってしまえばそれほど苦痛ではありませんが、品川駅のホームの大混雑を抜けるのは苦手ですね。

それから仕事が終わってから飲みに行く機会も減りました。新幹線の最終は23時ですし、在来線もあるので熊谷までなら意外と遅くでも帰れますが、それでもうっかり終電を逃したら目も当てられませんから。楽しいとついつい長居してしまいがちなので、飲みに行くときは「明日も仕事だから早めに解散」という流れになりやすい、火曜や水曜を選んでいます。

あともうひとつ、帰りは終着駅じゃないので、うっかり寝過ごすと、折り返せたとしても乗車料金がかかりますし、終電だったりしたら始発を待たないと帰れなくなるので寝られません。だから眠いときには座席に座らず、デッキで過ごすようにしています。それでもいざというときにはドアの脇に格納されている補助いすに座れるので、満員電車に揺られるよりはマシだと思っています。

――熊谷で家を買うことに不安はなかったですか?

私は実家が熊谷なので、通勤の問題さえクリアできれば不安はなかったですね。実際に通勤時間はドアドアで1時間少々なので、以前住んでいた川崎と大差はないんです。むしろひどいときは足が浮くくらい超満員で、遅延も少なくない在来線通勤だったころに比べたら、格段に快適と言えますね。

それに妻の実家も川越なので、もともと埼玉県内で東京に通勤しやすいエリアに絞って家を探していたんです。実際に浦和や大宮などの家も検討したのですが、やっぱり高いんですよね。わが家は子どもが男の子ふたりということもあり、予算を考えるとどうしても手狭感が否めませんでした。それならいっそと熊谷で土地を買って家を建てることにしたんです。

熊谷はのびのび子育てしたい人には向いていると思いますよ。保育園も比較的多いので、特定の保育園にこだわったりしなければ入れないということはまずないと思います。ただ、子どもが小学校に上がったら働きに出たいママさんたちは注意が必要かもしれません。私の妻も仕事に復帰する際、学童保育に申し込んだのですが入れませんでした。幸い私の実家が近くなので、放課後は両親に預かってもらえますが、地縁のない人は困るかもしれませんね。

新幹線通勤を始めてから帰宅時間が早くなったこともあり、夜ランニングをするようになったんです。荒川の河川敷は対岸にゴルフ施設等の明かりなどが灯っていて、夜でも真っ暗にはなりませんし、散歩をしている人も多いんですよ。もともとジムに通ったりしていなかったのですが、心地よい自然環境が身近にあると、体を動かしたくなりますよね。

東京のほうが交通手段も、商業施設や娯楽施設も圧倒的に豊富で便利です。とはいえ何でも買える分、ついついお金を使ってしまう気もするので、浪費癖がある人なら新幹線代を払っても郊外に住むほうが、案外お財布には優しいかもしれませんね。

【画像5】新幹線で帰っていくSさん (写真撮影/宮崎林太郎)

【画像5】新幹線で帰っていくSさん (写真撮影/宮崎林太郎)

仕事の後にもかかわらず、終始にこやかに質問に答えてくださったSさん。この日も新幹線で熊谷へと帰るべく、さっそうと改札をくぐっていきました。

東京と郊外エリア。家を買うならどっちがお得?【画像6】試算・監修/ファイナンシャル・プランナー(CFP) 菱田雅生氏

【画像6】試算・監修/ファイナンシャル・プランナー(CFP) 菱田雅生氏

※1.新築分譲一戸建ての平均価格を基に算出。住宅ローン金利は1.36%(25年固定)、ボーナス払いなし、自己資金は物件価格の10%とする
※2熊谷市の通勤定期券の自己負担額は、1カ月の新幹線定期の額を69,960円(東京-熊谷間の新幹線定期券の額)、勤務先などから支給される通勤手当の額を30,610円(東京-熊谷間の在来線のみの定期券の額)として算出

新築分譲一戸建ての平均価格を比較すると、東京23区は熊谷市の2倍以上。これなら新幹線通勤費用を加えても東京23区で家を買うよりお得な気がします。しかし郊外で家を買い、東京に通勤する対価として、お金には表れないリスクも考えなければなりません。

「都心は移動や通勤が便利だけど、住宅も物価も高い。郊外は移動や通勤が大変だけど、住宅も物価も安い。仕事を重視すると都心で、子育てや休日を重視すると郊外、といった考え方もありますが、価値観は人それぞれ。老後の生活をどこでどのように送りたいかも考えて、住まいの地域を決めることも重要です。お金では計れない精神的な満足度の高さなども考慮しましょう」と、ファイナンシャル・プランナーの菱田氏も語るように、損得を考える前に、まずは自身のライフスタイルと向き合うことが大切ということですね。

家が安い、通勤が快適という価値の大きさは個々人の性格やライフスタイルによって変わるものですから、何に時間を使いたいのか、そのためにどれくらいの労力や費用負担なら許容できるのかということをしっかりと考える必要があります。その上で通勤電車が快適になるならリスクに目をつむってもOKという人であれば、新幹線通勤が可能な郊外で家を買うという選択にも検討の余地はあるでしょう。例えば気になるエリアでひと月部屋を借りて、新幹線通勤ライフを試してみるのもアリかもしれませんね。

●取材協力
・埼玉県熊谷市

品川勤務者が朝快適に通勤できる路線はどこ? 路線の「混雑率」と「遅延状況」から探ってみた

日々、ビジネスパーソンのストレスとなる朝の通勤ラッシュ。もう少し快適に通勤したい……と考える人も多いだろう。では、どの路線が快適に通勤できるのか。勤務地によって答えは変わってくるが、今回は新駅開設やリニア中央新幹線のターミナル駅として注目を集め、周辺の開発も進む「品川駅」に通うビジネスパーソンを想定して、路線の「混雑率」と「遅延状況」から快適に通勤できる路線を探ってみたい。
品川駅へ快適に通勤できる路線はどこか?

品川駅に快適に通勤できる路線はどこか? まずは電車の「混雑率」から探ってみたい。「混雑率」については、国土交通省が毎年データを公表しており、そこからどの路線が混雑しているのか知ることができる。品川駅に乗り入れている路線は、JRの東海道線、山手線、京浜東北線、横須賀線(総武線快速線)と、京浜急行電鉄。(今回は特別急行列車である成田エクスプレスと、新幹線は除外)
それぞれの路線の混雑率は以下のとおり。

【JR】
・東海道線 川崎 → 品川 混雑率 184%(7:39~8:39)
・山手線
-外回り 上野 → 御徒町 混雑率 159%(7:40~8:40)
-内回り 新大久保 → 新宿 混雑率 165%(7:40~8:40)
・京浜東北線 大井町 → 品川 混雑率 182%(7:34~8:34)
・横須賀線(総武快速線)武蔵小杉 → 西大井 混雑率 191%( 7:26~8:26)

【大手民鉄】
・京浜急行電鉄 戸部 → 横浜 混雑率 145%(7:30~8:30)

※混雑率は最混雑時間帯1時間の平均
平成28年 国土交通省発表 混雑率データ より引用

このデータを見ると、品川駅に乗り入れる路線のうち、最も混雑率が少ないのは「京浜急行電鉄」ということが分かる。しかも、最も混雑するのは戸部駅から横浜駅の区間。すなわち、横浜駅から品川駅の最混雑時間帯の混雑率は、145%よりも低いということだ。ちなみに、混雑率の目安は

・100% 定員乗車(座席につくか、吊革につかまるか、ドア付近の柱につかまることができる)。
・150% 広げて楽に新聞を読める。
・180% 折りたたむなど無理をすれば新聞を読める。
・200% 体がふれあい相当圧迫感があるが、週刊誌程度なら何とか読める。
・250% 電車がゆれるたびに体が斜めになって身動きができず、手も動かせない。

と定められており、145%であればある程度快適に通勤できそうだ。

各路線の「遅延状況」はどうか?

快適に通勤するために、混雑率とともに見ておきたいのが、「遅延状況」。通常は快適に通勤することができても、頻繁に遅延するようであれば快適とはいえない。遅延によって突発的な混雑も発生し、ストレスとなる。
この「遅延状況」についても、国土交通省が2016年4月に公開した「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について(案)」内の、「遅延対策ワーキング・グループ最終取りまとめ」において、首都圏11事業者51路線の平成25年11月の平日20日間における遅延証明書の発行状況が公表されている。

各路線の遅延証明書の発行状況は以下のとおり。

【JR】
・東海道線 東京~湯河原 80%
・山手線 全線 90%
・京浜東北線 大宮~大船 85%
・横須賀線・総武快速線(大船~東京~稲毛) 85%

【大手民鉄】
・京浜急行電鉄 品川~横浜 10%

国土交通省 遅延対策ワーキング・グループ報告資料より。

JRの各路線が全て80%を超えているのに対して、京浜急行電鉄は10%と大幅に低い。この遅延証明書の発行状況から見ても、混雑率同様に「京浜急行電鉄」が最も快適な路線といえそうだ。

実際どうなのか? 朝の京浜急行に乗ってみた

「混雑率」と「遅延状況」、それぞれデータ上では品川勤務者が品川駅まで快適に通勤できそうなのが「京浜急行電鉄」という結果になったが、実際のところはどうなのだろう? 「遅延状況」について体感するのは難しいが、混雑率については、実際に確かめることができるだろう。ということで、今回は、普段JRの逗子駅から東京駅まで通勤をしている編集部員に、朝のラッシュの時間帯に逗子駅から徒歩5分程度のところにある、京浜急行電鉄の新逗子駅から品川駅まで電車に乗ってもらい、混雑の状況について聞いてみた。

「毎朝逗子駅からJR横須賀線で東京駅まで通勤する際に、品川駅も通過するのですが、その時の混み具合に比べると余裕があるように感じました。混雑率のデータでも、武蔵小杉から西大井が191%とあるように、本当にぎゅうぎゅう詰めで隣の人と密着するくらいなのですが、京浜急行電鉄ではさすがにラッシュ時なので人は多いものの、隣の人と触れることなく、スマートフォンでニュースのチェックも快適にすることもできました」

とのこと。実際の声を聞いてみても、品川まで通勤する場合、京浜急行電鉄を使うとある程度は快適に通うことができそうだ。

「住みたい街ランキング」にランクインする京浜急行電鉄の街と相場

品川駅へ行くには、京浜急行電鉄が他の路線と比較して快適に通勤できそうだということが分かったところで、路線内では、どの街(駅)が人気なのだろうか。SUUMOが毎年発表している「住みたい街ランキング2017(関東版)」で上位100位にランクインした駅を見てみた。

・横浜駅(3位)
・京急蒲田(※蒲田駅が75位。京急蒲田までは歩いて約12分と徒歩圏内のため含んだ)
・上大岡(88位)
※品川駅(5位)は除く

住みたい街ランキングのトップ100位にランクインした駅のなかで、京浜急行電鉄を使えるのは「横浜駅(3位)」、「京急蒲田(※蒲田駅が75位)」、「上大岡(88位)」の3駅。気になる家賃相場について、SUUMOの家賃相場で確認した。
検索条件を「アパート」「駅徒歩1分~5分」「築年数0年~5年」を指定したところ、ワンルームでは横浜が「6.6万円」、京急蒲田が「7.3万円」、上大岡駅が「6.3万」。都内の物件と比較して割安な6万円台から物件があるというのはうれしい。しかも、通勤は比較的快適。気になった品川勤務の方は一度街に行って雰囲気を見てみるのもいいかもしれない。

【画像1】横浜駅の家賃相場(条件は「アパート」、「駅徒歩1分~5分」、「築年数0年~5年」を指定)画像は2017年10月11日時点のSUUMOの家賃相場データのスクリーンショットより

【画像1】横浜駅の家賃相場(条件は「アパート」、「駅徒歩1分~5分」、「築年数0年~5年」を指定)画像は2017年10月11日時点のSUUMOの家賃相場データのスクリーンショットより

【画像2】京急蒲田駅の家賃相場(条件は「アパート」、「駅徒歩1分~5分」、「築年数0年~5年」を指定)画像は2017年10月11日時点のSUUMOの家賃相場データのスクリーンショットより

【画像2】京急蒲田駅の家賃相場(条件は「アパート」、「駅徒歩1分~5分」、「築年数0年~5年」を指定)画像は2017年10月11日時点のSUUMOの家賃相場データのスクリーンショットより

【画像3】上大岡駅の家賃相場(条件は「アパート」、「駅徒歩1分~5分」、「築年数0年~5年」を指定)画像は2017年11月16日時点のSUUMOの家賃相場データのスクリーンショットより

【画像3】上大岡駅の家賃相場(条件は「アパート」、「駅徒歩1分~5分」、「築年数0年~5年」を指定)画像は2017年11月16日時点のSUUMOの家賃相場データのスクリーンショットより

今回は「品川」に通うビジネスパーソンを想定して、快適な路線を「混雑率」と「遅延状況」から見た結果、「京浜急行電鉄」が最も快適に通勤できそうだという結果になった。毎朝の通勤ラッシュはかなりのストレスだが、ここが快適になれば、日々の生活の満足度もかなり高まるかもしれない。引越し前には、住む街の雰囲気とともにこういった「混雑率」などのデータを確認したり、実際に通勤に使う電車に乗ってみたりすることで、混み具合を確認しておくのがよいだろう。