フォロワー10万超インスタグラマーSmithさんに聞く、32平米・1LDKを花とインテリアで彩るコツ

ピンクと水色を基調としたインテリア。そしてたくさんの花と花瓶に囲まれて暮らすインスタグラマーのSmithさん。壁のライトブルーと個性的な小物のスタイリングが、明るい空気をつくっています。

モノが多いのに開放感があり、空間づくりがユニークなSmithさんの部屋ですが、実は32平米と思ったよりコンパクトな1LDK。さらに、日当たりがあまり良くないのだそう。それでも自分の「好き」が詰まった空間をつくり上げてきた彼女に、部屋づくりのコツと花と暮らす日々について伺います。

ピンクと水色の調和が生み出す部屋づくり

もともとはフレンチアンティークやヴィンテージの家具を中心とした、落ち着いた雰囲気の部屋に住んでいたというSmithさん。この部屋に引越してきた時には家具とコンクリートの壁が馴染まず、倉庫っぽい印象になってしまったと語ります。

「コンクリートの壁がどうしても重く冷たい空気になりますし、手持ちの家具との雰囲気がまとまらず悩んでいたんです。そんな時、ふと、『日照時間が短い北欧の人は、家の中をカラフルにして過ごしている』という情報を思い出しました。それで『色をたくさん取り入れれば、コンクリートの重たい感じが和らぐんじゃないか?』と考えたんです」

そこで部屋の配色を一変。カラフルなアイテムをセレクトするようになったそう。

「引越してからの約2カ月間で大物家具もほとんど買い替え。ソファはligne roset(リーン・ロゼ、フランスのインテリアブランド)を代表するデザインの『TOGO』にしました。Blue Daisyという淡い水色で、汚れにくいウルトラスエードの生地でオーダーしています」

食器棚として使うIKEAの「ファブリコール」。食器もこだわりの「Astier de Villatte」など個性的なアイテムがずらり。(写真提供/Smithさん)

食器棚として使うIKEAの「ファブリコール」。食器もこだわりの「Astier de Villatte」など個性的なアイテムがずらり。(写真提供/Smithさん)

「家具は製作年代やデザイナー家具に限らず、IKEAもうまく活用しています。たとえば食器棚はIKEAのディスプレイ用ラック「ファブリコール」を活用。寝室の棚もIKEAの「PS キャビネット(ホワイト)」を使っています」

寝室にある左の棚がIKEAの「PS キャビネット(ホワイト)」(撮影/ピース)

寝室にある左の棚がIKEAの「PS キャビネット(ホワイト)」(撮影/ピース)

「壁全体のバランスはPhotoshopでシミュレーションしています。我が家はモノが多いので、空間をゾーニングすること、フォーカルポイントをつくること、小物でアクセントをつけることが大切。大物家具はあまり主張しすぎないデザインで無彩色やニュートラルな色を選び、小物で色やエッジを効かせるようにしました」

部屋を彩るポスターやアート作品もバランスを整えるのに一役買っています。とくに、ポスターは気分によって替えられるので重宝しているそうです。

1LDKの部屋のうち、寝室は「配色などを自由に挑戦する場」と位置づけ、自身で壁を塗り替えるのだそう。以前はシーズンごとに温かみのある色、涼しげな色と決めていましたが、現在は季節問わず自分の好きな色を選ぶのだとか。この壁は、なんと塗り替えて8色目なのだそう。

「インテリアはリズム感が出るようにガラスや金属、陶器といったいろんな素材を取り入れています。たとえば、ベッドのシーツがフラットな質感なら、枕はぽこぽこしたワッフル生地にするんです」

寝室とリビングの仕切りには透け感のあるオーガンジーのカーテンで抜け感をつくり、圧迫感のない空間へ仕上げています。

オーガンジーのカーテンは、深いパープルに。花瓶が並ぶ棚は、大阪のヴィンテージショップ「WANT ANTIQUE LIFE STORE」で購入しました(撮影/ピース)

オーガンジーのカーテンは、深いパープルに。花瓶が並ぶ棚は、大阪のヴィンテージショップ「WANT ANTIQUE LIFE STORE」で購入しました(撮影/ピース)

自分の好きなものを「見せる」収納

衣服は見えない場所にしっかり片づける一方で、食器や個性的な花瓶たちは、あえて「見せる」収納を選択。

「自分の好きなものを常に視界に入れていたくて、食器も花瓶も見える場所に飾っています。以前から花瓶は20個ほど所有していましたが、コロナ禍のステイホームをきっかけにお花にハマったんです。花瓶も癖のあるデザインが欲しくなって買いそろえるようになり、今は約200個所有しています。今はカラーパレットのように色分けして棚に飾るように収納しています」

花屋や古着屋、ヴィンテージショップ、東急ハンズの植物コーナーなどで購入した花瓶たち。ジェルシートを敷いて地震対策をしています(撮影/ピース)

花屋や古着屋、ヴィンテージショップ、東急ハンズの植物コーナーなどで購入した花瓶たち。ジェルシートを敷いて地震対策をしています(撮影/ピース)

「好きなものをいつでも見ていたい」というSmithさんの思いは留まりません。Smithさんが推すJO1の白岩瑠姫さんのアクリルスタンドを飾る棚や、シルバニアファミリーをデコレーションした一画もつくられています。

推しのアクリルスタンドが並ぶ棚はSmithさんがDIYしたもの(撮影/ピース)

推しのアクリルスタンドが並ぶ棚はSmithさんがDIYしたもの(撮影/ピース)

Smith流インテリア探しの術

Smithさんのインテリア探しは、インテリアショップやヴィンテージショップを地道に巡るほか、Instagramで見つけた素敵なお部屋にタグづけされたブランドをチェックしたり、Yahoo!オークションで検索したりするそう。エーロ・サーリネンがデザインしたチューリップテーブルのリプロダクト品は、フリマアプリ「ジモティー」にて格安で購入したそう。

ネット検索では「ヴィンテージ、テーブル」といったビッグワードをあえて使い、「後はひたすらスクロールしていく」と言います。

ネットサーフィンで出会ったものの一つが、リビングスペースで存在感を放つテレビ台です。大阪のアンティークショップ「WANT ANTIQUE LIFE STORE」で購入したもの。

「石膏に丸太が刺さったデザインで、まるで遺跡のような存在が気に入っています」

ポップな雰囲気の部屋づくりではテレビの存在が浮きがちですが、個性的なテレビ台とテレビの前に置かれたオブジェが調和しています。

ミッシェル・レモンの彫像やヴィンテージの握りこぶしのオブジェ。右端にあるキャンドルホルダーはデンマークのデザイン会社が復刻した「STOFF NAGEL」(撮影/ピース)

ミッシェル・レモンの彫像やヴィンテージの握りこぶしのオブジェ。右端にあるキャンドルホルダーはデンマークのデザイン会社が復刻した「STOFF NAGEL」(撮影/ピース)

「小物は一期一会だと思い、ビビッときたら購入するようにしています。自分の好きなものを集め続ければ、違うテイストの集合体でもいずれ調和すると信じているので、購入時に迷うことはあまりないです」

(写真提供/Smithさん)

(写真提供/Smithさん)

インテリアはDIYすることも。ダイニングスペースにかかるピンク色のキャンバスは、海外の好きなインテリアスタイリストの自宅写真を見て憧れたことから制作。コンクリートの壁一面に色があるだけで印象が変わるそう。

自作したキャンバスの隣には、ギャラリーで一目ぼれして購入したErin D. Garcia(エリン・ディー・ガルシア)のポスター作品が並びます。照明コードは、空間のアクセントになるように赤いものを探したそう(写真提供/Smithさん)

自作したキャンバスの隣には、ギャラリーで一目ぼれして購入したErin D. Garcia(エリン・ディー・ガルシア)のポスター作品が並びます。照明コードは、空間のアクセントになるように赤いものを探したそう(写真提供/Smithさん)

洗面所のタイルもDIYで貼り付けました。表に出すアイテムはパッケージデザインが素敵なものをセレクトして置いています(撮影/ピース)

洗面所のタイルもDIYで貼り付けました。表に出すアイテムはパッケージデザインが素敵なものをセレクトして置いています(撮影/ピース)

花で満たされる部屋の暖かさ

Smithさんの部屋の中で、ひときわ輝くのがたくさんの花。日があまり当たらない部屋は、冬場の玄関がとくに寒いそう。ですが、一般的に切り花が長持ちする温度は5~10℃とされているので、花のある生活にはベストな環境なようです。

玄関の靴箱の上に飾られた花と花瓶たち。夏はエアコンの効いた室内に花を飾るそう(撮影/ピース)

玄関の靴箱の上に飾られた花と花瓶たち。夏はエアコンの効いた室内に花を飾るそう(撮影/ピース)

花の購入場所は、青山フラワーマーケットや、梅ヶ丘のduft、中目黒のSTAYFLOWERがほとんど。

「店舗によってセレクトが全く異なるので、時間がある日は何軒もはしごします」

「最初はかなり試行錯誤していました。三角形に配置するディスプレイの基本は守りつつ、好きな花屋さんが発信する結婚式の高砂のスタイリングを参考にして、自分なりの生け方を身に付けました。それに色の組み合わせでは補色や反対色を意識して、花と花瓶が互いに引き立つよう工夫しています」

「花の入荷日(基本的には月・水・金)に合わせて花屋へ行き、『かわいい』と感じた花を本数は決めずに購入しています。購入費は1回およそ2000円~5000円。立ち寄る頻度が高いため、花屋の店員さんとお話しすることも自然と増えてきました」

完成した「美」を感じるSmithさんの部屋ですが、今後はどのような進化を遂げるのでしょうか。

「寝室の壁は以前よりも高頻度で塗り替えるつもりです。タイルはどうしても目地が汚れるので、そろそろ玄関のタイルを張り替えようと海外のタイルを取り寄せて考えています。アートなラグも増やしたいですね」

他にも、JO1がデビュー4周年を迎える3月4日には、メンバー11人になぞらえた11色の花を飾る予定だそう。Smithさんの「好き」で、部屋はさらに成長しそうです。

「自分の好きなものを集め続ければ、違うテイストのモノでもいずれ調和する」。Smithさんの哲学が生きた部屋づくりには、まず自分の「好き」を信じて、貫く姿勢が必要になりそうです。

●取材協力
Smith
フォロワー10万人を超えるインスタグラマー。花と個性的な花瓶、カラフルな配色のインテリアコーディネートが人気。近年は自身がキュレーションするポップアップストアの開催もしている。
Instagram:@shimihome

<取材・編集 小沢あや(ピース株式会社)/ 構成 結井ゆき江>

スニーカー600足が部屋にズラリ! 業界30年の高見薫さんに聞く美しい収納術とストリートファッションの奥深き歴史

床から天井まで壁面いっぱいに、ずらりと並べられたスニーカー。色とりどりの600足に囲まれた空間は、美術館のようでもある。その部屋の主は、ナイキやデッカーズなどで30年にわたりスニーカーのセールスに従事してきた高見薫さん。高見さんの仕事の履歴、そしてスニーカーの歴史が詰まった「スニーカー部屋」を拝見しながら、美しく収納するためのポイントやこだわりを伺った。

ファッションアイテムとしてのスニーカー史

高見薫さんは1991年にナイキジャパンに新卒入社。96年にはナイキショップの立ち上げなどにも携わった。2018年からはデッカーズジャパンに転職し、同社が取り扱う「UGG(R)」のスニーカーのセールスを担当している。

千葉県にある高見さんの自宅の一室には、三面の壁に600足が並ぶ「スニーカー部屋」がある。1990年代から現在までのスニーカーの歴史、高見さんの仕事履歴が詰まった、圧巻の空間だ。

床から天井まで全面を使った壁面棚に、美しく並ぶ600足。これでも全部ではないという。ここに収まらないぶんは玄関などに収納されている(写真撮影/小野奈那子)

床から天井まで全面を使った壁面棚に、美しく並ぶ600足。これでも全部ではないという。ここに収まらないぶんは玄関などに収納されている(写真撮影/小野奈那子)

高見薫さん。ナイキ時代は新モデルやコラボ商品の販売戦略の企画など、さまざまなプロジェクトに従事。現在はデッカーズジャパンに所属し、同社のスニーカー戦略を推進している(写真撮影/小野奈那子)

高見薫さん。ナイキ時代は新モデルやコラボ商品の販売戦略の企画など、さまざまなプロジェクトに従事。現在はデッカーズジャパンに所属し、同社のスニーカー戦略を推進している(写真撮影/小野奈那子)

――ものすごい数ですね。これだけのスニーカーをコレクションするようになったきっかけは何だったのでしょうか?

高見:確かにすごい数なんですけど、私はコレクターっていうわけじゃないんですよ。

――どういうことでしょうか?

高見:好きで集めている方には失礼かもしれないですけど、私の場合は集めているというより「集まっちゃった」というほうが正しくて。30年間、ずっとスニーカーに近い仕事をしてきたので、必然的にこれだけの数になってしまいました。セールスの仕事をやっていると、その時々で会社が推していく商品のことを知っておかないといけないじゃないですか。だから自分でも買って履いてみたりしているうちに、どんどん増えていったんです。

「集まっちゃった」とはいえ、一足一足に対する思い入れは強いという(写真撮影/小野奈那子)

「集まっちゃった」とはいえ、一足一足に対する思い入れは強いという(写真撮影/小野奈那子)

――そのスタンスは少し意外でした。

高見:みんなに不思議って言われますね。ただ、そもそも私がナイキジャパンに新卒入社した1991年って、スニーカーをファッションで履くという感覚がなかったんですよ。当然、今のようにコレクションする人も少なくて。当時はいわゆるスニーカーブームがくる前で、会社もあくまでスポーツシューズとして売っていました。

高見さんがナイキに入社した1991年に発売された「エア マックスBW」(写真は復刻)。入社年度に出た最高峰モデルの一つということで、高見さんにとって思い入れの深い一足だという(写真撮影/小野奈那子)

高見さんがナイキに入社した1991年に発売された「エア マックスBW」(写真は復刻)。入社年度に出た最高峰モデルの一つということで、高見さんにとって思い入れの深い一足だという(写真撮影/小野奈那子)

――1996年に「エア マックス95」が大ブレイクし、スニーカーブームが起こる少し前あたりから、何となくスニーカーがストリートファッション系の雑誌にも取り上げられるようになったと記憶しています。

高見:そうですね。大きなきっかけの一つが1992年のバルセロナオリンピックです。アメリカの男子バスケットボール代表が「ドリームチーム」と呼ばれる最強チームを結成し、そこから「バッシュブーム」が起こります。そうした動きと、アメリカのファッションやヒップホップなどの文脈も相まって、スニーカーがファッション誌に掲載されるようになりました。

――そこからスポーツシーン以外でもスニーカーを普段履きするカルチャーがじわじわ広がって、「エア マックス95」の登場によって一気にブレイクすると。

高見:「エア マックス」というのはナイキのスニーカーの最高峰のシリーズとして、1987年から新作が毎年のように発売されていました。そのなかで、たまたまブームになったのが95年モデル。スタイリストさんが気に入ったのか、当時、芸能人の方がテレビなどでよく95マックスを履いていたんですよ。それを見た視聴者の間で「あの靴はなんだ!」となり、1996年に大ヒットするという。

じつは同じ96年にナイキショップがオープンするんですけど、開店と同時に95マックスを求めるお客様が殺到しました。なかにはオープン予定日の1カ月前から並ぶ人もいたりして。

左側の棚に並んでいるのが「エア マックス95」。発売当初の貴重なモデルもある(写真撮影/小野奈那子)

左側の棚に並んでいるのが「エア マックス95」。発売当初の貴重なモデルもある(写真撮影/小野奈那子)

――当時の熱狂ぶりはよく覚えています。「エアマックス狩り」なんて事件も起こるほどの社会現象になりましたよね。

高見:ただ、当時はブームが加熱しすぎて「ナイキだったら何でもいい」みたいな人も増えたんですよ。それで、ひと通り商品がお客様に行き渡るとブームが一気に萎(しぼ)んでしまいます。1998年あたりから急激に失速しましたね。

それからは会社も「もう一度しっかりスポーツシューズとしてアプローチしていこう」という方向に向かうんですけど、一方で「せっかく新しいお客様を獲得できたのだから、本格的にファッションアイテムとして仕掛けていこう」という声もあって、2000年前後くらいからスニーカーをスポーツとファッションの両輪で展開していく動きが出てきます。その後、2010年くらいになると、他社ブランドでもスポーツ仕様と普段履きのスニーカーをはっきり区別して売るようになっていきましたね。

1996年に発売された「エア リフト」。つま先部分が足袋のように分かれているのが特徴。高見さんは2000年ごろ、よくこれを履いて出社していたそう。「靴下なしで履けてラクなので愛用していましたね。社割で安かったのもあって、たくさん買いました(笑)」(写真撮影/小野奈那子)

1996年に発売された「エア リフト」。つま先部分が足袋のように分かれているのが特徴。高見さんは2000年ごろ、よくこれを履いて出社していたそう。「靴下なしで履けてラクなので愛用していましたね。社割で安かったのもあって、たくさん買いました(笑)」(写真撮影/小野奈那子)

――確かに、ある時期からシューズ専門店でも、スポーツ用とファッション用のスニーカーのコーナーが分かれるようになりました。

高見:そうですよね。それが2010年代までの動きです。ちなみに、最近では小規模なブランドもスニーカーやスポーツシューズに参入するようになりました。ひと昔前まではナイキやアディダスといった、いくつかの大手しかやっていなかったんですけど、今はそれこそ私が所属するデッカーズジャパンが取り扱う「UGG(R)(アグ)」や「HOKA(R)(ホカ)」だったり、「Salomon(サロモン)」「On(オン)」など、さまざまなブランドがスニーカーやランニングシューズを手掛けるようになっています。

「UGG CA805 Zip」。それまでブーツのイメージが強かったUGG(R)が、本腰を入れて開発したスニーカー。2018年にデッカーズジャパンに入社した高見さんがセールスを担当し、一時期はこればかり履いていたのだとか(写真撮影/小野奈那子)

「UGG CA805 Zip」。それまでブーツのイメージが強かったUGG(R)が、本腰を入れて開発したスニーカー。2018年にデッカーズジャパンに入社した高見さんがセールスを担当し、一時期はこればかり履いていたのだとか(写真撮影/小野奈那子)

高見:多様なブランドの参入と技術の進化により、デザインのバリエーションも広がっています。よりファッショナブルになっていて、洋服に合わせる楽しみも広がっていると思いますよ。

UGGの最新スニーカー「CA805V2 Remix」。スリッポンのように軽やかな履き心地が特徴。初代モデルから5年でデザインも大幅に進化している(写真撮影/小野奈那子)

UGGの最新スニーカー「CA805V2 Remix」。スリッポンのように軽やかな履き心地が特徴。初代モデルから5年でデザインも大幅に進化している(写真撮影/小野奈那子)

600足を収納する「スニーカー部屋」のつくり方

――この家に引越してくる前は、どのようにスニーカーを保管していましたか?

高見:以前は実家近くの団地で一人暮らしをしていたんですけど、スニーカーは箱に入れて天井の高さまで積んでいました。少し大きめの地震がくると一気に倒れて悲惨なことになっていましたね。それに加えて、トランクルームも2つ借りていました。ですから、今みたいにすぐに取り出せる状態ではなかったです。

ただ、この家を買ったのはスニーカーのためというわけではありません。結婚して夫が私の部屋に越してきて、夫婦ともに物が多いから生活スペースが激狭になってしまったんです。通路も片側通行でしか通れないくらい狭くて……。

そんな生活から抜け出したくて引越しを考えていた時に、たまたまこの一戸建てが売りに出ているのを見つけました。それで、せっかく買うならスニーカーをちゃんと保管できるように、一部をリフォームしようと考えたんです。建築士さんに相談したところ、元のオーナーが2人の息子さんの部屋として使っていたスペースを、スニーカー部屋に変更しようということになりました。

もともとは壁で仕切られていたスペースを一つの空間にリフォーム。3つの壁全面に、新たにスニーカー専用棚を設けた(写真撮影/小野奈那子)

もともとは壁で仕切られていたスペースを一つの空間にリフォーム。3つの壁全面に、新たにスニーカー専用棚を設けた(写真撮影/小野奈那子)

――壁面棚をつくるにあたって、建築士さんに要望したことはありますか?

高見:とにかくできるだけ多くの靴を並べられるようにしてくださいと。最初は箱ごと棚に収納する案もあったんですけど、そうするとお店のストックルームみたいになっちゃって全然面白くないじゃないですか。だから裸のまま並べちゃおうと。剥き出しだと埃が溜まったりもするんですけど、私はコレクターではないからか、あまりそのへんは気にならなくて。

一つひとつの棚板の高さを変えることも可能。高見さんは一番高い靴の縦幅に合わせて棚板の位置を統一している(写真撮影/小野奈那子)

一つひとつの棚板の高さを変えることも可能。高見さんは一番高い靴の縦幅に合わせて棚板の位置を統一している(写真撮影/小野奈那子)

壁面棚の両サイドには鏡を設置し、無限にスニーカーが並んでいるように見せる遊び心も(写真撮影/小野奈那子)

壁面棚の両サイドには鏡を設置し、無限にスニーカーが並んでいるように見せる遊び心も(写真撮影/小野奈那子)

高見:あと、これは建築士さんから勧められたんですけど、棚の材料は北海道のチーク材を使っています。とても綺麗な木材ですし、スニーカーも映えるだろうということで。北海道から輸送しなきゃいけないので高いんですけどね。

――スニーカーのコンディションを保つという点でも、やはり天然木を使った棚のほうがいいのでしょうか?

高見:そうですね。スチールラックなどに置いている人も多いと思いますが、金属は錆びる可能性があるので、靴にとってはあまりよくありません。

それから、スニーカーのコンディションを保つためには、部屋の空気の状態にも気を配る必要があります。なるべく空気を循環させることと、湿度が高くなりすぎないこと。空気が湿っていると、靴がどんどんベタベタになってくるんです。この部屋では、空調でなるべく一定のコンディションをキープできるようにしています。

――ちなみに、ずっと置いておくよりも、たまには履いたほうがよかったりしますか?

高見:はい。履かないと逆に駄目になりやすいです。置きっぱなしにしていると空気中の水分がスニーカーに溜まっていき、ミッドソール部分の素材が加水分解を起こしてしまうんです。すると、靴底からボロボロと崩れてしまう。それを防ぐにはたまに履いてあげて、身体の重力を利用して水分を抜くことが必要です。私もここにあるスニーカーはただ飾るだけじゃなくて、なるべく履くようにしていますよ。

(写真撮影/小野奈那子)

(写真撮影/小野奈那子)

グループ分けで美しく。思わず眺めたくなる棚に

――上から下まで、とても美しくスニーカーが並んでいますが、飾る時のコツやポイントがあれば教えてください。

高見:私の場合は、持っているスニーカーをグループ分けするところから始めました。まずは「ランニングシューズ」「バスケットシューズ」といった感じで大まかに分類し、そこからさらに細かく種類を分けます。あとは年代別だったり、シンプル系・派手系みたいな形でグループを分けていきました。そのうえで、エクセルで作った棚の図面に、何をどこに入れるか入力しながらシミュレーションしましたね。

実際に棚に置く時には、薄い色から濃い色の順番に並べたり、背が低い順から並べたりと、なるべく美しく見えるように意識しました。このあたりはナイキで学んだ陳列の法則みたいなものを取り入れています。

靴の種類ごとに分けた上で、デザインが派手なコーナー、シンプルなコーナーなど、なんとなくグループをつくるだけでも見栄えがよくなる(写真撮影/小野奈那子)

靴の種類ごとに分けた上で、デザインが派手なコーナー、シンプルなコーナーなど、なんとなくグループをつくるだけでも見栄えがよくなる(写真撮影/小野奈那子)

――ここまで美しく飾られていると、もはやスニーカーというよりインテリアのようです。眺めているだけで楽しくなりますね。

高見:私自身はあまりインテリアという感覚はないのですが、眺めるのは楽しいですね。やはり、一つひとつに思い入れがあるので。「これは、あそこに行った時に買ったよな」とか、「これを履いていた時、仕事大変だったな」とか、いろんなことを思い出します。

――この部屋は、高見さんの歴史そのものなんですね。

高見:そうですね。ですから、一般的なコレクターの方とは違う感覚なんでしょうけど、全てのスニーカーに愛着があります。もともとは狭い空間から逃げるために家を買い、やむにやまれずリフォームした部屋ですが、今となっては懐かしい思い出にひたれる大切な場所になりましたね。

●取材協力
UGG(R)/デッカーズジャパン