高架下スペースに“賃貸住居”や“ホテル”!? 新たな街づくりが加速中

駅を中心とした鉄道高架下スペース「駅下」に、今まで以上に注目が集まっている。これまでにも飲食店などはあったが、賃貸住宅やホテル、保育園などにも利用されるようになり、“街”と言ってもいいほどの充実ぶりだ。なぜ今、高架下なのか。最近の高架下はどんなふうになっているのか。そして、今後はどのような方向へと進んでいくのか。高架下の今とこれからを展望してみた。
JR中央線高架下の学生向け賃貸住宅への入居が始まった

2020年3月、JR中央線東小金井駅―武蔵小金井駅間の高架下に学生向け賃貸住宅「中央ラインハウス小金井」が完成した。JR中央線の高架下を敷地としており、専用カフェテリアでの食事と管理員付き、3人の建築家が各人のコンセプトのもとに各棟の設計を担当するというデザイン性が話題となったこの物件。現在、学生たちが、入居を開始している。

契約者は、近隣や多摩地区にある大学や専門学校の学生で、中央線沿線であることから、都心部に通学する学生も少なくないという。高架下と聞くと、電車の走行に伴う騒音や振動が心配になるが、今の所、入居者からそういった不満の声は上がっていないということだ。

「この物件のように、中央線沿線で新築、かつ食事が付いた賃貸物件は珍しいので、その点に魅力を感じている契約者が多いようです」(JR中央ラインモール開発本部マネージャー関口淳さん)。

高架下に誕生したスタイリッシュな賃貸住宅は周辺に住む人々の目を引き、入居学生専用のカフェテリアには、「入居者以外でも利用できませんか?」という声もあるそうだ。

中央ラインハウス小金井C棟の部屋の一例。専有面積15.94平米、ロフト面積4.93平米で、月額賃料7万円、共益費1.5万円/月。ロフトやワークデスク、本棚に加えて、乾燥機付きのバスルームもある(写真提供/JR中央ラインモール)

中央ラインハウス小金井C棟の部屋の一例。専有面積15.94平米、ロフト面積4.93平米で、月額賃料7万円、共益費1.5万円/月。ロフトやワークデスク、本棚に加えて、乾燥機付きのバスルームもある(写真提供/JR中央ラインモール)

L棟の部屋の一例。キッチンやライブラリー、ランドリーなどのコモンスペースが充実しているL棟では、10平米台というコンパクトな専有スペースに家具を機能的に配置している(写真提供/JR中央ラインモール)

L棟の部屋の一例。キッチンやライブラリー、ランドリーなどのコモンスペースが充実しているL棟では、10平米台というコンパクトな専有スペースに家具を機能的に配置している(写真提供/JR中央ラインモール)

C棟のコモンスペースである「アウトサイド・コモン」。C棟には共用設備として宅配Box、オートロック、防犯カメラ(外部)などもある(写真提供/JR中央ラインモール)

C棟のコモンスペースである「アウトサイド・コモン」。C棟には共用設備として宅配Box、オートロック、防犯カメラ(外部)などもある(写真提供/JR中央ラインモール)

敷地の中心に位置する専用カフェテリアでは、平日の朝・夕2回、入居者に食事が提供される(写真提供/JR中央ラインモール)

敷地の中心に位置する専用カフェテリアでは、平日の朝・夕2回、入居者に食事が提供される(写真提供/JR中央ラインモール)

JR中央線の東小金井駅から徒歩7分、武蔵小金井駅からは徒歩11分と、両駅が利用可能。両駅間の高架下にはすでにショッピングモールや保育園がある(写真提供/JR中央ラインモール)

JR中央線の東小金井駅から徒歩7分、武蔵小金井駅からは徒歩11分と、両駅が利用可能。両駅間の高架下にはすでにショッピングモールや保育園がある(写真提供/JR中央ラインモール)

鉄道の連続立体交差事業が高架下スペースを生み出している

これまで高架下には、飲食店などの店舗はあっても、住宅が建てられることはなかなかなかった。中央ラインハウス小金井のような「高架下住宅」が誕生したのはなぜか。その背景には、敷地の大半が住居専用の用途地域(第一種低層住居専用地域)であったことがある。そして、その敷地は、中央線三鷹駅~立川駅間の線路高架化に伴って生じたものだ。高架化によって、全長9kmにも及ぶ高架下空間が生み出されたのである。

このような鉄道の高架化は、都市部を中心に、全国で進められている。開かずの踏切による交通渋滞の解消、複々線化による鉄道輸送力の増強などを目的とした連続立体交差事業が実施されているからだ。

高架化によって、それまで線路や踏切だった土地が別の用途に転用されるようになったことが、駅周辺の再開発や、高架下スペースの有効活用を促している。ここ最近、高架下が活発に開発されているのは、そうした背景によるものなのだ。

連続立体交差事業の例(東武スカイツリーライン竹ノ塚駅付近)。事業主である足立区は、新たに生まれる高架下スペースの利用方法について、区民にアンケートを実施している(画像/PIXTA)

連続立体交差事業の例(東武スカイツリーライン竹ノ塚駅付近)。事業主である足立区は、新たに生まれる高架下スペースの利用方法について、区民にアンケートを実施している(画像/PIXTA)

沿線ごとの個性を活かした商業施設が次々にオープン

JR東日本グループのディベロッパーである株式会社ジェイアール東日本都市開発では、「高架下から未来のまちづくりを」という理念のもと、高架下を起点に都市開発を行っている。同社が取り組むのは、駅と駅の間の空間の魅力づくりであり、今まで気づかれていなかった沿線の価値を引き出すことを意図して、沿線別にテーマ性を持って高架下の開発を進めている。

例えば、JR秋葉原駅―御徒町駅間の高架下では、“こだわりの日本”という大きなテーマに沿って、個々の開発が行われている。「CHABARA」は、神田青果市場跡という立地特性に沿った“食へのこだわり”というコンセプトに基づいており、「SEEKBASE」は“日本の技術”、「2k540」は“日本のものづくり”、「御徒町ラーメン横丁」は“日本のソウルフード”といった具合だ。

また、JR阿佐ヶ谷駅-高円寺駅間では、“歩きたくなる高架下”というテーマに沿って、「Beans阿佐ヶ谷」「alːku阿佐ヶ谷」を展開している。

加えて、2020年6月下旬には、JR有楽町駅―新橋駅間に「日比谷OKUROJI」が開業予定。都心立地にふさわしい、大人向けの飲食、ファッション、雑貨などの店舗がそろうことになっている。

JR秋葉原駅と御徒町駅の間の高架下にある「SEEKBASE」の館内。「日本の技術」をテーマに、オーディオやカメラ、模型店などの個性的な店舗がそろっている(写真提供/ジェイアール東日本都市開発)

JR秋葉原駅と御徒町駅の間の高架下にある「SEEKBASE」の館内。「日本の技術」をテーマに、オーディオやカメラ、模型店などの個性的な店舗がそろっている(写真提供/ジェイアール東日本都市開発)

「SEEKBASE」の外観。ホビー系の店舗以外に、飲食店や「UNDER RAILWAY HOTEL AKIHABARA」というホテルもある(写真提供/ジェイアール東日本都市開発)

「SEEKBASE」の外観。ホビー系の店舗以外に、飲食店や「UNDER RAILWAY HOTEL AKIHABARA」というホテルもある(写真提供/ジェイアール東日本都市開発)

学童やプリスクール、体操教室に加えて、カフェなど親子で過ごせるショップが集まる「alːku阿佐ヶ谷」。広々とした中央通路に、「歩きたくなる高架下」というコンセプトが現れている(写真提供/ジェイアール東日本都市開発)

学童やプリスクール、体操教室に加えて、カフェなど親子で過ごせるショップが集まる「alːku阿佐ヶ谷」。広々とした中央通路に、「歩きたくなる高架下」というコンセプトが現れている(写真提供/ジェイアール東日本都市開発)

「日比谷OKUROJI」の完成予想図。東京の中心地である日比谷・銀座の「奥」にあることに加え、高架下通路の秘めたムードを「路地」という言葉に置き換えることで、「オクロジ」と命名されたのだとか(写真提供/ジェイアール東日本都市開発)

「日比谷OKUROJI」の完成予想図。東京の中心地である日比谷・銀座の「奥」にあることに加え、高架下通路の秘めたムードを「路地」という言葉に置き換えることで、「オクロジ」と命名されたのだとか(写真提供/ジェイアール東日本都市開発)

「日比谷OKUROJI」の館内予想図。バーの文化が根付くエリアであることから、さまざまなスタイルのバーもそろう予定(写真提供/ジェイアール東日本都市開発)

「日比谷OKUROJI」の館内予想図。バーの文化が根付くエリアであることから、さまざまなスタイルのバーもそろう予定(写真提供/ジェイアール東日本都市開発)

保育園やホテル、学びの場など多彩な事業も展開

ショッピングモールの開発が目を引く高架下活用だが、その用途は商業施設にとどまらない。前述の中央ラインハウス小金井に加えて、さまざまな事業が展開している。

例えば、保育園。JR東日本による子育て支援事業「HAPPY CHILD PROJECT」の一環として高架下に設けられた保育園は複数あり、駅近という立地も手伝って好評だ。騒音被害を心配した周辺住民からの反対などがない点でも、保育園はある意味、高架下向きなのだろう。

また、前出の「SEEKBASE」内「UNDER RAILWAY HOTEL AKIHABARA」、JR京葉線舞浜駅高架下の「ホテルドリームゲート舞浜」、京浜急行線日の出町駅-黄金町駅高架下のホステル「Tinys Yokohama Hinodecho」など、宿泊施設も登場している。

中央線の高架下では、2019年4月にさまざまなジャンルのワークショップが「nonowaラボ」として企画され、生活をより楽しく豊かにするヒントが詰まった、子どもから大人まで全世代が利用できる学びの場が提供されている。中央線沿線に住む人々を中心として、『「豊かな暮らし」の実現』をコンセプトに、生活をより楽しく豊かにするヒントが詰まったワークショップが選りすぐられているのが特徴だ。

高架下施設の建設については、電車走行時の振動を建物内に伝わりにくくする工法も開発されている。新たな技術によって高架下スペースの居心地が良くなることで、さらなる可能性も開けていきそうだ。

「nonowaラボ」では、中央線沿線にある4つの教室で毎月約10講座を実施中。写真は、その教室のうちのひとつである「プログラボ国立」。中央線国立駅と立川駅の間の高架下に位置している(写真提供/JR中央ラインモール)

「nonowaラボ」では、中央線沿線にある4つの教室で毎月約10講座を実施中。写真は、その教室のうちのひとつである「プログラボ国立」。中央線国立駅と立川駅の間の高架下に位置している(写真提供/JR中央ラインモール)

●参考
中央ラインハウス小金井
日比谷OKUROJI
nonowaラボ

高輪ゲートウェイ駅と周辺を数字で知る。品川からわずか0.9km、乗車数は1日2万人台?

2020年3月14日、コロナウイルスで大揺れの日本で船出を迎えた、高輪ゲートウェイ駅。

名前のことばかりがフォーカスされ、意外と知らないこの駅とその周辺。さまざまな「数字」で見てみると、そこから浮かぶ正体があった。

以前の最新駅は1971年にできた西日暮里駅

高輪ゲートウェイ駅の前に山手線で新しい駅はというと、1971年に新設された西日暮里駅だった。さらにその前の駅となると、1925年に生まれた御徒町駅までさかのぼる。

日本ではじめて誕生した駅は1872年に開設された品川駅なので、日本一古い駅と、日本一新しい駅が目と鼻の先に共存することとなった。

ちなみに京浜東北線の駅としては、さいたま新都心駅以来20年ぶりの新駅となる。

長らく山手線で一番新しい駅だった、西日暮里駅(写真撮影/辰井裕紀)

長らく山手線で一番新しい駅だった、西日暮里駅(写真撮影/辰井裕紀)

品川駅からの距離は、たったの0.9km

隣の品川駅からの距離は、たったの0.9kmほどしか離れておらず、高輪口から歩けば10分かからずに行けるぐらいだ。ちなみに田町駅とは約1.3kmの距離がある。

もともと品川駅~田町駅までは2.2km離れており、山手線では最長区間であった。ちなみに山手線の最短区間は西日暮里駅~日暮里駅間の0.5kmだ。

品川駅高輪口。高輪ゲートウェイ駅へは、ここから歩いてサクッと行ける近さ(写真撮影/辰井裕紀)

品川駅高輪口。高輪ゲートウェイ駅へは、ここから歩いてサクッと行ける近さ(写真撮影/辰井裕紀)

駅の西側は坂だらけ。22度の急坂も!

高輪ゲートウェイ駅の西側は、坂が続いている。思わず息が上がるほどの急坂で、お年寄りならくじけるレベルである。中には「22度」という急坂もあった。

歩を進める希望すら失う、泉岳寺裏の勾配22%の急坂(写真撮影/辰井裕紀)

歩を進める希望すら失う、泉岳寺裏の勾配22%の急坂(写真撮影/辰井裕紀)

高輪ゲートウェイ駅のすぐ近くは海抜3m程度しかないが、坂が急であるため、ほんの少し歩いただけで海抜25mほどの高台まで登ることとなる。自転車を買うのであれば、電動にしよう。

ちょっと歩けば、すぐ海抜3m→25m(写真撮影/辰井裕紀)

ちょっと歩けば、すぐ海抜3m→25m(写真撮影/辰井裕紀)

ちなみに東側に駅の出入口はない。ただし2024年度に新駅東側連絡通路が開通予定のため、その後は東側の利便性もアップしそうだ。

高輪ゲートウェイ駅徒歩圏内の、泉岳寺駅の家賃相場は、現時点で12万円

高輪ゲートウェイ駅周辺の家賃相場データはまだ出ていないが、その近くにある、都営地下鉄と京急が乗り入れる泉岳寺駅の家賃相場は12万円(※)と、なかなかの値段となっている。だがワンルームで築年数の経った物件なら月額賃料6~7万円で徒歩15分以内の所もあるようで、是が非でも駅近くで暮らしたい人は、狙う手もあるかもしれない。


【調査対象物件】駅徒歩15分以内、10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ抽出期間】2019/12~2020/2
【家賃の算出⽅法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の管理費を含む⽉額賃料から中央値を算出(3万円~18万円で設定)

230m続く、高さ1.5m制限のトンネルがある

この地域は線路の東西に抜ける道が少ないので、「街が分断されている」と言われてきた。現状で東西を行き来する数少ない道が高輪橋架道橋だ。

タクシーの上につく表示灯を壊す恐れがあるため、タクシー業界では「ちょうちん殺し」と言われる(写真撮影/辰井裕紀)

タクシーの上につく表示灯を壊す恐れがあるため、タクシー業界では「ちょうちん殺し」と言われる(写真撮影/辰井裕紀)

1.5mの高さ制限がかかるほどの恐ろしい低さで、しかも中は暗くずっと続く。頭がぶつからないように、少し低い体勢を取りながら延々と歩いた。さらにトンネル部の長さは約230m。自動車が通ることができ、かつ長さ200mを超えるガード下道路は、日本でもここのみとされている。

ホントに頭をぶつける低さ(写真撮影/辰井裕紀)

ホントに頭をぶつける低さ(写真撮影/辰井裕紀)

なおこちらは2020年4月に自動車が通行止めとなるが、歩行と自転車の押し歩きは可能。別の歩道が2026年に完成し、2031年に自動車が通る道路が完成する。

「高輪ゲートウェイ」の名入り施設、1つしか見つからず

これほど騒がれると、さぞかし現地はフィーバーの最中に違いない……と思う所だが、そもそも商業施設が少ない周辺ではそこまで目立った動きは見られない。ましてや「高輪ゲートウェイ」の名前のついた施設が乱立する様子は見られない。
見つかったのは坂を登ったところにある、「コル 高輪ゲートウェイ ホステル, カフェ&バー」ぐらいだった。

「高輪ゲートウェイ」を付けた数少ない施設「コル 高輪ゲートウェイ ホステル, カフェ&バー」(写真撮影/辰井裕紀)

「高輪ゲートウェイ」を付けた数少ない施設「コル 高輪ゲートウェイ ホステル, カフェ&バー」(写真撮影/辰井裕紀)

ここではTakanawa Gyozaway(1人前5個500円・税抜、2人前から注文可能)なる、無理に語感を合わせた(?)開業記念の餃子を3月限定で出しており、店主の南祐貴氏によると「餃子のてっぺんのヒダの部分で隈研吾氏が折り紙をモチーフにつくった駅舎の屋根を見立てている」とのことで、開始3日間で60人前を売り上げたとか。

ご祝儀代わりに食べたい(画像提供/コル 高輪ゲートウェイ ホステル, カフェ&バー)

餃子のてっぺんが駅舎の屋根?(画像提供/コル 高輪ゲートウェイ ホステル, カフェ&バー)

駅前2つのコンビニがフル回転?

現状で駅前の商業施設はちょっと少ない。牛丼チェーンのなか卯、海鮮丼・寿司の持ち帰りの丼丸があり、立ち食いそば店など大衆的な個人商店、さらには年季の入った中華料理店や居酒屋が点在しているぐらいだ。駅前のローソンとデイリーヤマザキ、この2つのコンビニにかかる期待が否応なしに高まる。

なか卯とデイリーヤマザキ。普段づかいできる貴重な店舗たち(写真撮影/辰井裕紀)

なか卯とデイリーヤマザキ。普段づかいできる貴重な店舗たち(写真撮影/辰井裕紀)

開業しばらくは乗車数2万人台で閑散?

3月14日に鳴り物入りで暫定開業する高輪ゲートウェイ駅だが、当初の想定乗車人数は1日2万人台と、山手線で最小の鶯谷駅と同じくらいになると見られている。

なお現在は品川駅から田町駅までを一体開発する「品川開発プロジェクト」が進行中であり、そのまちびらきとなる2024年には13万人ほどとなり、五反田駅と同程度の乗車人数になるとしている。

グレイス高輪飲食店街も、いま飲食店は2軒のみ(写真撮影/辰井裕紀)

グレイス高輪飲食店街も、いま飲食店は2軒のみ(写真撮影/辰井裕紀)

タワーマンションが建設された場合に価値が上がると思う街、1位!

ちなみに高輪ゲートウェイ駅は、「今後タワーマンションが建設された場合にそのマンションの価値が上がると思う駅(SBIエステートファイナンス株式会社調べ)」で1位に選ばれた。その理由としては新駅で周辺の再開発が進み、飛行機、リニアモーターカーのアクセスが良いことが挙げられている。

ちなみにタワマンではないが、駅前に「高輪ゲートウェイ マンションギャラリー」があり、ここで紹介されている「ザ・パークハウス高輪フォート」(43戸)は、予定最多販売価格が1億8000万円台と高額だが、問い合わせは多く販売も好調だという。

近隣で1万人の帰宅困難者を収容可

前述の品川開発プロジェクトによってできる高輪ゲートウェイ駅前の都市には、災害が発生した際に、約1万人相当の帰宅困難者を収容できる、一時滞在施設がある。

さらに幅員30m以上の国道15号は「放射第19号線」として、特定緊急輸送道路/帰宅支援対象道路となる。

1万3228 種類中の130位(36票)だった

最後に、あの命名時の話に戻ろう。公募により、応募総数6万4052件から選ばれた高輪ゲートウェイ。1万3228種類もの駅名候補から選ばれ、130位(36票)ながらも「新しい駅が、過去と未来、日本と世界、そして多くの人々をつなぐ結節点として」などという理由で大抜擢された。

なお地名由来のシンプルな漢字名の多い山手線に、得票数の少ない唐突なカタカナ名が選ばれたことなどにより賛否両論が噴出し、能町みね子氏が立ち上げた『「高輪ゲートウェイ」という駅名を撤回してください』との運動には、4万7930人の署名が集まった。

ちなみに36人の投票者がいたことに、一部では「ねつ造では」との声もあがっているが、Twitterをのぞいただけでも数人の投票者の報告があり、少なくともこれに投票した人自体は実際に存在する模様である。

昼間に高輪ゲートウェイ駅をのぞむ(写真撮影/辰井裕紀)

昼間に高輪ゲートウェイ駅を望む(写真撮影/辰井裕紀)

さまざまな「数字」で見えてきた、高輪ゲートウェイ駅と周辺。街が生まれ変わる姿を見守りながら暮らすのもまた一興であると、再開発まっただ中の渋谷の外れに住む筆者も、実感を込めて思うのである。

駅近の定義、平均は「徒歩8.2分」

住まい選びなどで重要視される駅からの所要時間。「駅近」とよく耳にするが、「駅近」に対する定義は特にない。そこで、リビン・テクノロジーズ(株)は、「駅近は徒歩何分までか」についてアンケート調査を行った。

調査は2019年5月16日~6月5日、首都圏在住の20歳以上の男女を対象にインターネットで実施。180人より回答を得た。

「駅近」は駅から徒歩何分までですか?では、最も多いのは「徒歩10分」で31.1%。「徒歩5分」が25.0%で続く。「徒歩16分以上」も10.0%いて、アンケート全体の平均は「徒歩8.2分」だった。

住むなら駅から徒歩何分までが許容範囲ですか?では、「10分」が最も多く40.0%。「15分」(23.9%)、「5分」(12.2%)、「16分以上」(7.8%)と続き、平均は「10.2分」だった。駅近=徒歩圏内と考えている人が多いようだ。

駅からどのくらい離れると遠くて住めないと思いますか?では、最も多かったのは「20分」で29.4%。「15分」(17.8%)、「26~30分」(12.8%)、「31~35分」(9.4%)、「10分」(7.2%)と続き、全体の平均は「23.5分」だった。

ニュース情報元:リビン・テクノロジーズ(株)

関西住みたい沿線3位の「JR東海道本線」、家賃相場が安い駅トップ20を発表!【沿線調査 関西版】

リクルート住まいカンパニーでは、関西(大阪府・京都府・兵庫県・滋賀県・奈良県・和歌山県)に居住している20歳~49歳の4600人を対象に実施した「みんなが選んだ住みたい街ランキング2018 関西版」を発表した。住みたい沿線ランキングで3位になったのは、JR東海道本線。1位の阪急神戸線、2位の大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)御堂筋線に続き、その特徴や、駅周辺情報を調査してみた。
自然豊かな環境で子育てしつつ、都市圏へ通勤……地に足の着いたJR東海道本線

東京駅から兵庫県の神戸駅まで結ぶJRの東海道本線は、東日本旅客鉄道(JR東日本)、東海旅客鉄道(JR東海)、西日本旅客鉄道(JR西日本)の3社が管轄する長い路線。JR西日本の区間は米原駅から神戸駅までで、沿線はそれぞれ米原駅から京都駅間がJR琵琶湖線、京都駅から大阪駅までがJR京都線、大阪駅から神戸駅間がJR神戸線の愛称で親しまれている。

快速や新快速などの特急列車が数多く設定されているため、地理的には少し距離があるように感じられる駅でも、大阪市を中心とする関西の都市部への通勤圏内。特にJR琵琶湖線の沿線は田園地帯が多いが、自然豊かな環境でゆったりとした子育てを行えるためか、住みたい沿線ランキングでJR東海道本線を選んだ回答者は30代と40代の割合が大きかった。強固なブランドイメージの阪急神戸線や、交通利便性が突出した地下鉄御堂筋線と比べると、日常生活により密接した、地に足の着いた人気といえるかもしれない。

●JR東海道本線・家賃相場が安い駅ランキング(TOP20)
順位/駅名/家賃相場(中央値 賃料_管理費込)/所在地
1位 河瀬 4.0万円(滋賀県彦根市)
2位 JR総持寺 4.2万円(大阪府茨木市)
3位 南彦根 4.3万円(滋賀県彦根市)
4位 瀬田 4.4万円(滋賀県大津市)
4位 稲枝 4.4万円(滋賀県彦根市)
6位 篠原 4.5万円(滋賀県近江八幡市)
7位 山崎 4.6万円(京都府乙訓郡大山崎町)
8位 栗東 4.7万円(滋賀県栗東市)
8位 能登川 4.7万円(滋賀県東近江市)
10位 向日町 4.8万円(京都府向日市)
11位 米原 4.9万円(滋賀県米原市)
11位 彦根 4.9万円(滋賀県彦根市)
11位 石山 4.9万円(滋賀県大津市)
11位 膳所 4.9万円(滋賀県大津市)
15位 千里丘 5.0万円(大阪府摂津市)
15位 岸辺 5.0万円(大阪府吹田市)
17位 草津 5.2万円(滋賀県草津市)
17位 摂津富田 5.2万円(大阪府高槻市)
17位 長岡京 5.2万円(京都府長岡京市)
20位 大津 5.3万円(滋賀県大津市)
20位 山科 5.3万円(京都府京都市)
20位 摂津本山 5.3万円(兵庫県神戸市)
20位 甲子園口 5.3万円(兵庫県西宮市)

上位には琵琶湖線の駅が多くランクイン。滋賀県民の住みたい街1位の草津市の人気の理由とは

家賃相場は都市から離れるほど低くなるため、上位20位のピックアップでは、大半を琵琶湖線の駅が占めた。

滋賀県民が選ぶ「住みたい自治体ランキング」でトップになった「草津市」の玄関口、草津駅は、JR京都線の摂津富田と同率で17位。草津駅は新快速の停車駅で、大阪駅まで1時間以内、京都駅まで30分以内で直通と、乗り換えの手間なく都市部まで移動できる交通の便の良さが魅力だ。三重県方面からくるJR草津線の終点駅でもある。

百貨店や商業施設などの充実ぶりが滋賀県のなかで屈指であるのが、草津市の人気の大きな理由だ。駅前などではタワーマンションも増えているが、少し歩けば一戸建ての住宅地が広がる。便利だけれど都会過ぎないほどよさも、人々を惹きつける理由なのだろう。滋賀県は日常の足は車が一般的だが、草津市には新名神高速道路の草津田上インターチェンジがある。小さな子どもがいるファミリー世帯にとっては、行楽での車移動の利用しやすさはうれしいところだ。

草津駅前ロータリー(写真/PIXTA)

草津駅前ロータリー(写真/PIXTA)

また、滋賀県は冬になると、降雪で新幹線が県内で止まるというニュースを耳にすることがあるが、草津市は南に位置するため、北部に比べると雪が比較的少ない。一年のうちの数カ月のこととはいえ、住む上では大いに利点といえるだろう。

滋賀県の県庁所在地である大津市の代表駅、大津駅は20位。商業施設のほか、大津地方裁判所や滋賀県警察本部などの行政施設が集中しており、京都や大阪への所要時間は草津よりさらに短い。名神高速の大津インターチェンジのそばであり、草津同様に車でのお出かけが便利だ。また、やはり同じく県南部に位置するため、雪の不安も軽減される。

大津市は大津駅以外にも、瀬田駅、石山駅、膳所(ぜぜ)駅と計4駅が上位20位入りしている。県庁所在地という都市部でありながら、大津市は自然が豊かに残っており、市内には世界文化遺産の比叡山延暦寺などの文化財や風光明媚(めいび)な観光地が数多い。

前述の4駅のうち、新快速が停車するのは大津駅と石山駅だ。新快速は利用できないとはいえ瀬田駅は、日本三名橋のひとつである瀬田の唐橋があり、古い民家が並ぶ街並みがどこかホッとさせるたたずまいで、膳所駅は進学校である滋賀大学教育学部附属中学校の最寄駅。電車の利用は少し不自由になるが、知識欲の探求や子どもの教育に、あえて選んでみても、楽しい生活が送れそうだ。

大阪駅から30分で、自然豊かな名水の里「山崎駅」

7位の山崎駅はJR京都線。大阪までは快速を利用すれば直通で約30分、京都までは約15分で到着する。サントリーの山崎蒸溜所があることで知られており、良質な湧き水に恵まれた地域で、かつては水道水にも井戸水が使われていたほど。

山崎蒸溜所(写真/PIXTA)

山崎蒸溜所(写真/PIXTA)

水資源の質から分かるように、都市部へのアクセスの良さからは意外なほどの豊かな自然が残る静かな環境は、都市部での通勤や通学と、豊かな住空間を両立させうるといえそう。とはいえ、日常生活では車は必須になることは注意が必要かもしれない。

居住地を決めるとき、交通アクセスの良さは大切な要素だ。目的地への乗車時間は短いに越したことはないが、家は、充実した生活の拠点となるべきもの。予算や家族の事情によっては、少し郊外へと目を向けてみたら、乗車時間の長短よりも、もっと大きな物を得られるかもしれない。

●調査概要
【調査対象駅】JR東海道本線の柏原駅~神戸駅(関西圏にある駅)
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、広さ10~40平米以内、築年数40年以内、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ算出期間】2018年1⽉1⽇~2018年3⽉31⽇
【家賃の算出⽅法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の管理費を含む⽉額賃料から中央値を算出
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している

住みたい沿線2位の「御堂筋線」を調査! 全20駅の家賃相場や特徴は?【沿線調査 関西版】

リクルート住まいカンパニーでは、関西(大阪府・京都府・兵庫県・滋賀県・奈良県・和歌山県)に居住している20歳~49歳の4600人を対象に実施した「みんなが選んだ住みたい街ランキング2018 関西版」を発表した。住みたい沿線ランキングで2位になったのは、大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)御堂筋線。1位の阪急神戸線に続き、その特徴や、駅周辺情報を調査してみた。
大阪の繁華街を総ナメ、実は穴場の駅がズラリの地下鉄御堂筋線

今年の4月に民営化され、大阪市営地下鉄から大阪メトロとなった地下鉄御堂筋線は、吹田市の江坂駅から堺市のなかもず駅までを通る路線。大阪市の二大ターミナルである梅田駅となんば駅や、新幹線の停車する新大阪駅、大阪市役所や大阪地方裁判所など行政機関の集中する淀屋橋駅など、大阪市の主要な繁華街のほとんどをほぼ直線的に結ぶ大阪の主要幹線だ。

江坂駅からは北大阪急行線と直通運転をしているが、梅田駅では阪急電鉄と阪神電鉄、淀屋橋駅で京阪電鉄、なんば駅で南海電鉄と近畿日本鉄道(大阪難波駅)など、関西の主な私鉄の本線や幹線と連絡。交通利便性の突出した路線だが、繁華街の印象が強いだけに、「住む」というイメージがわきづらい沿線でもある。しかし、「みんなが選んだ住みたい街ランキング2018 関西版」の「穴場だと思う街(駅)ランキング」では、東三国、梅田、江坂、天王寺、新大阪、中津、あびこと最多の7駅がランクインしており、住んでみることも十分検討可能な沿線であるといえそうだ。

●御堂筋線・家賃相場が安い駅ランキング

順位/駅名/家賃相場(中央値 賃料_管理費込)/所在地
1位 長居 5.0万円(大阪市住吉区)
1位 動物園前 5.0万円(大阪市西成区)
3位 西田辺 5.1万円(大阪市阿倍野区)
4位 あびこ 5.3万円(大阪市住吉区)
5位 新金岡 5.4万円(大阪府堺市)
6位 なかもず 5.5万円(大阪府堺市)
6位 昭和町 5.5万円(大阪市阿倍野区)
8位 北花田 5.6万円(大阪府堺市)
9位 天王寺 6.2万円(大阪市天王寺区)
9位 東三国 6.2万円(大阪市淀川区)
11位 新大阪 6.5万円(大阪市淀川区)
12位 西中島南方 6.6万円(大阪市淀川区)
12位 大国町 6.6万円(大阪市浪速区)
12位 中津 6.6万円(大阪市北区)
15位 なんば 6.7万円(大阪市中央区)
16位 心斎橋 7.0万円(大阪市中央区)
16位 梅田 7.0万円(大阪市北区)
18位 江坂 7.3万円(大阪府吹田市)
19位 本町 7.5万円(大阪市中央区)
20位 淀屋橋 7.6万円(大阪市中央区)

1位の長居は、老若男女の趣味を満足させる街

ランキング1位の長居駅は、梅田駅からは20分強、なんばからは15分弱で到着し、JR阪和線とも接続している駅。駅周辺はややざわつきはあるものの、ごく一般的な住宅街といった風情だ。

そんな長居のいちばんの魅力は、長居公園の最寄駅であることだろう。プロサッカーチーム「セレッソ大阪」のホームスタジアムであるヤンマースタジアム長居や、大阪市立自然史博物館などがある総合公園で、休日ともなれば散策やスポーツする親子連れやカップルでにぎわう。

ヤンマースタジアム長居(写真/PIXTA)

ヤンマースタジアム長居(写真/PIXTA)

低年齢の子どもがいる家庭にとって、近所に大きな公園があることはそれだけでもポイントが高いものだが、特に大阪市立自然史博物館は、自分で動物をはく製にする「なにわホネホネ団」などユニークな活動を行っている複数の団体が拠点を置いており、子どもに個性的な教育を行いたい親にとっては気になるところ。年齢を問わず、幅広い趣味のひとたちを満足させる街といえるかもしれない。

15位のなんば駅は、住みたい街(駅)ランキングでも20代と30代で3位、40代で8位に入っている。「ミナミ」の愛称で知られるなんばは、吉本新喜劇が行われる「なんばグランド花月」や道頓堀、心斎橋筋商店街など大阪らしいにぎやかなイメージと観光地的な遊び場のあふれる街だ。

高島屋などの百貨店や複合施設「なんばパークス」など、買い物の便利さも抜群だが、やはり遊びに行く場所というイメージは強いかもしれない。だが駅から少し外れれば、マンションが立ち並ぶ、落ち着いた住宅街が広がっている。また「大阪でいちばんおしゃれなエリア」といわれる堀江地域は、なんば駅の圏内。オトナも楽しめるカフェや雑貨店も多く、遊びを満喫したい若者だけでなくファミリー層も満足して住めるだろう。

実は穴場、再開発が進む天王寺の魅力はあべのハルカスだけじゃない

9位の天王寺は、穴場だと思う街(駅)ランキングで8位に入っている。地下鉄谷町線や近鉄南大阪線の大阪阿部野橋駅と接続するほか、JR天王寺駅は関西空港方面へ向かう路線が通るターミナル駅でもある。近年は日本一高いビルで知られる商業施設「あべのハルカス」の開業が注目を集めているが、大規模施設の間にひっそりと昔ながらの飲食店もみかけることができ、どこか下町情緒も残る。

天王寺駅前(写真/PIXTA)

天王寺駅前(写真/PIXTA)

天王寺周辺は1970年代から再開発事業が進められており、2018年3月に事業が完了。かつて老朽住宅が密集していた地域が整備され、住宅戸数が増加した。また、大阪星光学院や四天王寺学園など、関西屈指の進学校である中高一貫校の最寄駅でもあることも、学齢期の子どもがいる家庭にとっては魅力だろう。

11位の新大阪駅は、同じく穴場だと思う街(駅)ランキングで13位。新幹線の停車駅だけに、駅のすぐ近くはホテルやオフィスビルなどが目立つが、御堂筋線沿線で調査条件に該当する物件数がいちばん多いのは、実は新大阪駅だ(2017年11⽉~2018年1⽉時点)。駅から10分ほど歩くと住宅街。駐車場完備で24時まで営業しているスーパーや、ホームセンターも、駅から徒歩10~15分ほどの場所にあり、日常の生活に不自由することはないだろう。

交通の利便性は、高いに越したことはない。穴場、というと「地味だけど実は……」という沿線を想像してしまうものだが、物でもお店でも、最も利用するものにこそ気づかない一面がある、というのは普遍的なもの。路線も同様だ。自分のライフスタイルに沿って探してみたら、最高に便利な“穴場”の部屋も、見つかるかもしれない。

●調査概要
【調査対象駅】御堂筋線の駅
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、広さ10~40平米以内、築年数40年以内、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ算出期間】2017年11⽉1⽇~2018年1⽉31⽇
【家賃の算出⽅法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の管理費を含む⽉額賃料から中央値を算出
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している

住みたい沿線1位の「阪急神戸線」を調査! 全15駅の家賃相場や特徴は?【沿線調査 関西版】

リクルート住まいカンパニーでは、関西(大阪府・京都府・兵庫県・滋賀県・奈良県・和歌山県)に居住している20歳~49歳の4600人を対象に実施した「みんなが選んだ住みたい街ランキング2018 関西版」を発表した。住みたい沿線ランキングで1位になったのは、阪急神戸線。その特徴や、駅周辺情報を調査してみた。
都市部へのアクセスも良い! 緑豊かで閑静な住宅街が多い阪急神戸線

大阪の中心地である北区・梅田駅から兵庫県神戸市の神戸三宮駅までを結ぶ、阪急神戸線。同じく梅田から神戸の中心地へ向かう阪神電鉄・阪神本線やJR神戸線(東海道本線)とは、西宮駅から西へはほぼ並走するものの、より内陸部を通っているため、沿線は緑豊かで閑静な住宅街が多い。

都市部へのアクセスの良さも人気の大きな理由だが、阪急電鉄は住宅開発とともに発展してきたという背景から、阪急各線の沿線は住環境の整備が進んでいる。なかでも阪急神戸線はブランドイメージが強く、著名人や富裕層の住民が多いことで知られる芦屋も同線の芦屋川駅付近を指すことが一般的だ。

子育てをする環境としての安心感があるためか、住みたいと回答した人を年代別にみると40代の支持が約4割と最も高かった。20代~40代までの年代別に住みたい街ランキングをみると、各年代で1位、2位に西宮北口と梅田がランクインしているほか、40代ではトップ10に神戸三宮、岡本、夙川(しゅくがわ)、御影(みかげ)がランクイン。阪急神戸線の駅がトップ10の過半数を占めている。また、関西在住者だけでなく、転勤などで他地域から引越してきた土地勘のないひとが、前任者からお墨付きがあったから住んでみる、というケースもある。

●阪急神戸線・家賃相場が安い駅ランキング

順位/駅名/家賃相場(中央値 賃料_管理費込)/所在地
1位 武庫之荘 4.8万円(兵庫県尼崎市)
2位 塚口 5.0万円(兵庫県尼崎市)
3位 岡本 5.2万円(兵庫県神戸市東灘区)
4位 園田 5.3万円(兵庫県尼崎市)
4位 王子公園 5.3万円(兵庫県神戸市灘区)
4位 御影 5.3万円(兵庫県神戸市東灘区)
7位 夙川 5.5万円(兵庫県西宮市)
8位 神崎川 5.8万円(大阪府大阪市淀川区)
8位 六甲 5.8万円(兵庫県神戸市灘区)
10位 西宮北口 5.9万円(兵庫県西宮市)
11位 芦屋川 6.2万円(兵庫県芦屋市)
12位 十三 6.3万円(大阪府大阪市淀川区)
12位 春日野道 6.3万円(兵庫県神戸市中央区)
14位 中津 6.6万円(大阪府大阪市北区)
15位 神戸三宮 7.0万円(兵庫県神戸市中央区)
15位 梅田 7.0万円(大阪府大阪市北区)

西宮北口駅は年齢問わず住みたい街の1位 駅前は商業施設が充実西宮北口駅(写真/PIXTA)

西宮北口駅(写真/PIXTA)

住みたい街ランキングは今年から調査方法の一部を変更したとのことだが、調査方法を変更する前の5年間も、今年も関西版の1位は西宮北口駅となっている。阪神大震災の被災後の再開発や、阪急西宮スタジアム跡地の活用などで、駅前には大規模商業施設が充実している。赤ちゃん用品店や図書館がある「ACTA西宮」は低年齢の子どものいる家庭にも人気があり、「阪急西宮ガーデンズ」は映画館のほか、阪急沿線ならではの阪急百貨店や、高級志向のセレクトショップもそろっているため、わざわざ梅田まで出なくても買い物には困らないだろう。

デザイン性の高い大規模マンションも多数増えているため、こだわりを持った家探しに応えてくれることも人気の理由だ。

また、阪急ならではといえば、宝塚歌劇団。西宮北口駅は阪急今津線も利用することができるが、今津線は宝塚大劇場の最寄駅である宝塚駅や宝塚南口駅まで約15分。ヅカファンにとって大変便利な街であるが、実はタカラジェンヌにとっても買い物やお茶によく利用する人気の駅。美を売り物にする彼女たちに愛されているという点でも、街の魅力がうかがえるだろう。

3位の岡本駅は、阪急神戸線のブランドを代表するともいえる駅。駅から少し離れると大きな邸宅が目立つが、駅周辺には若者や女性向けのおしゃれなお店や有名なカフェなども多い。甲南大学や甲南女子大学などの最寄駅でもあり、住むだけでなくデートなどで遊びにきても楽しい街だ。

特急が止まるため、梅田まで30分以内、神戸三宮までは10分以内という交通の良さも特徴。駅から約300mの位置にJR神戸線(東海道本線)の摂津本山駅があるため、2路線利用できるのも利便性が高い。

閑静だけじゃない 十三駅は飲食店や映画館など大阪らしい魅力も十三駅(写真/PIXTA)

十三駅(写真/PIXTA)

交通アクセスが一番良いのは、12位の十三(じゅうそう)駅だろう。阪急宝塚線や京都線とのハブ駅で、特急や快速などすべての電車が止まる。

駅周辺は、立ち飲み居酒屋がつらなるような少し猥雑な雰囲気もあり、いわゆる神戸線のイメージとは少し異なるかもしれない。しかし、小規模でも良質な映画や珍しい海外作品の上映で知られる映画館、第七藝術劇場や、大阪府で屈指の進学校として知られる大阪府立北野高校の最寄駅でもある。多少クセはあるが大阪らしい魅力があり、ハマるひとはどっぷりハマってしまう街だ。

2位の塚口駅は、住みたい街ランキングの穴場だと思うランキングでトップを獲得している。特急は止まらないが、ラッシュ時には通勤特急などが停車している。駅前の大型スーパー「塚口さんさんタウン」は、日常の買い物だけでなく公共サービスセンターや映画館も入っているため、子育てに忙しい家庭には強い味方だろう。また、庶民的な飲食店も多い点も魅力だ。

せっかく住むのなら、ブランド力のある路線に住みたいというのは当然の心理だろう。ハイソなイメージのある阪急神戸線だが、同じ沿線とはいえ、さまざまな特徴や魅力がある。イメージに先行されず、家族構成やそれぞれの趣味など、本当に自分たちにあう街を見つけるのも、家を探す楽しみのひとつだろう。

●調査概要
【調査対象駅】阪急神戸線沿線の駅
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、広さ10~40平米以内、築年数40年以内、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ算出期間】2017年11⽉1⽇~2018年1⽉31⽇
【家賃の算出⽅法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の管理費を含む⽉額賃料から中央値を算出
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している