子どもがまちづくりに積極的に参加する理由とは? 「SDGs未来都市」長崎県壱岐市の挑戦

長崎県壱岐市で暮らす人々は自分の子どもはもちろん、地域の子どもたちの活動に対してもとても興味関心が高いそうだ。それゆえ「SDGs未来都市」の取り組みの一員として子どもたちをしっかりと迎え入れ、独自性の高い活動を続けている。今回はその壱岐市を訪れて、どのような取り組みを行っているのか、そしてこれからを生きる壱岐市の子どもたちが何を感じ、どう行動しているのかを探ってきた。
可能性と課題が混在する壱岐市は「25年後の日本」の姿長崎空港から飛行機で30分、福岡市から高速船で1時間5分、美しい海、雄大な景色を満喫できる壱岐市(写真撮影/笠井鉄正)

長崎空港から飛行機で30分、福岡市から高速船で1時間5分、美しい海、雄大な景色を満喫できる壱岐市(写真撮影/笠井鉄正)

2015年9月、国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)。その達成へ向けて優れた取り組みを提案し、国から事業として選定された地方自治体が「SDGs未来都市」だ。2021年現在、国内のSDGs未来都市は124都市。2022年~2024年は毎年30都市程度を選定予定で、その数はさらに増加する。

つまり「SDGs未来都市」は国がそれだけ重視している事業なのだ。そのなかで長崎県壱岐市の取り組みは、「自治体SDGsモデル事業(2018年~)」にも選ばれ、SDGsに対して先導的な役割を果たしてきた。

壱岐市役所総務部SDGs未来課篠原一生(しのはら・いっせい)さんによると「壱岐市の人口は現在、約2万6000人です。気候は温暖で過ごしやすく、高速船に乗れば福岡県福岡市へ約1時間でアクセスできる便利な島なんです。全島に光ファイバー(光回線)が張り巡らされているので、今話題のワーケーションや二拠点生活の場にも適しています」。移住者からも注目を集めているそうだ。

ただ、同じくSDGs未来課の中村勇貴(なかむら・ゆうき)さんが「その一方で、少子高齢化が進み、基幹産業である1次産業の担い手は不足しているんですよね」と話すように、課題もある。「日本の25年後の姿」というのも壱岐市の横顔のひとつだ。

壱岐市役所総務部SDGs未来課の篠原一生さん。ワークスペース「フリーウィルスタジオ」の業務も担当している(写真撮影/笠井鉄正)

壱岐市役所総務部SDGs未来課の篠原一生さん。ワークスペース「フリーウィルスタジオ」の業務も担当している(写真撮影/笠井鉄正)

壱岐島内を案内してくださった壱岐市役所総務部SDGs未来課の中村勇貴さん。壱岐生まれの壱岐育ち(写真撮影/笠井鉄正)

壱岐島内を案内してくださった壱岐市役所総務部SDGs未来課の中村勇貴さん。壱岐生まれの壱岐育ち(写真撮影/笠井鉄正)

AIやIoTで壱岐市の課題を解決しながら、経済を発展させる

壱岐市の「自治体SDGsモデル事業」は「壱岐活き対話型社会『壱岐・粋・なSociety5.0』」と名付けられている。この事業には2つの柱があり、そのひとつは「先進技術を取り入れ、少子高齢化などの社会問題解決と、1次産業を中心とした経済発展を両立すること」である。

代表的な例はAIやIoTのチカラで課題を解決するスマート農業だ。壱岐市名産のアスパラ栽培の中で大変な作業の水やりをAIに管理させ、省人化と生産性向上を図っている。また、規格外アスパラをピエトロプロデュースの料理キットと一緒にWEBで販売して収益アップを目指しながら、食品ロスの問題解決にも着手。TOPPANと組んでECサイト用商品の開発を行っている。

ほかにもエネルギーの自給自足、高齢者の島内移動手段など課題は多い。島内の知恵・情報・人材には限りがあるため、外部の企業と手を取り合ってスピード感を高めているのが特長と言える。

「事業としてうまく進まない場合もあるが、行政も柔軟な姿勢を心がけ、めげずにトライ&エラーを続けられるのも壱岐市の強みですね」とSDGs未来課の篠原さん、中村さんは話す。

アスパラ栽培は水やりが命。かん水量・かん水時間・かん水頻度・土壌水分量・日射量・温度湿度などのデータを基にしてAIモデルを作成する(画像提供/壱岐市役所総務部SDGs未来課)

アスパラ栽培は水やりが命。かん水量・かん水時間・かん水頻度・土壌水分量・日射量・温度湿度などのデータを基にしてAIモデルを作成する(画像提供/壱岐市役所総務部SDGs未来課)

低塩分トラフグ陸上養殖事業(株式会社なかはら)では、再生可能エネルギーの活用に取り組む。太陽光発電で得た電力を活用して、水を電気分解し、酸素は水槽へ、水素はタンクに貯蔵。その後、水素と酸素を反応させて燃料電池で発電する仕組み(写真撮影/笠井鉄正)

低塩分トラフグ陸上養殖事業(株式会社なかはら)では、再生可能エネルギーの活用に取り組む。太陽光発電で得た電力を活用して、水を電気分解し、酸素は水槽へ、水素はタンクに貯蔵。その後、水素と酸素を反応させて燃料電池で発電する仕組み(写真撮影/笠井鉄正)

低塩分(地下水)で育てたトラフグは成長が早く、身も上質(写真撮影/笠井鉄正)

低塩分(地下水)で育てたトラフグは成長が早く、身も上質(写真撮影/笠井鉄正)

高校生、壱岐市の人々、島外者がつながり、イノベーションが起きる

「壱岐活き対話型社会『壱岐・粋・なSociety5.0』」のもうひとつの柱は、「現実・仮想においてさまざまな人や情報がつながることで、イノベーションが起こり続け、あらゆる課題に対応できるしなやかな社会をつくり、一人ひとりが快適で活躍できる社会をつくること」。すでにいくつかのプロジェクトが進行している。

そのなかでSUUMOジャーナルが特に注目したのは「壱岐なみらい創りプロジェクト」だ。東京大学OBを中心にイノベーション教育を全国に広げる団体「i.club(アイクラブ)」と壱岐市がタッグを組み、次代を担う高校生に対するイノベーション教育とみらい創りのための対話会を行っている。

その目的は、イノベーション教育を通して高校生やその周囲の人々の「地域に対する誇りや愛着」を醸成すること。それと同時に課題解決につながる高校生の「イノベーションアイデア」を創出することだ。さらに壱岐市内に「コミュニケーション・インフラ」を構築することも図る。

「壱岐なみらい創りプロジェクト」の対話会には高校生も多数参加。大人も高校生の意見に耳を傾けている(画像提供/壱岐市役所総務部SDGs未来課)

「壱岐なみらい創りプロジェクト」の対話会には高校生も多数参加。大人も高校生の意見に耳を傾けている(画像提供/壱岐市役所総務部SDGs未来課)

「壱岐なみらい創りプロジェクト」で対話を重ねることで、参加者たちは年齢を問わず自ら動き出す。そして周囲の壱岐市民、島外からの移住者や長期滞在者、また一周回って行政を巻き込んでいく。SDGsを「自分ごと」と捉えて、実行に移してマインドが少しずつ対話会で育まれていく。

ちなみに壱岐市は、郷ノ浦町・勝本町・芦辺町・石田町の4町が合併して2004年に誕生した。そのため旧4町の間にはまだボーダーラインが存在する。しかし最近、壱岐市にやってきた移住者たちはいい意味でボーダーラインを軽く超えていく。旧4町の潤滑油そして刺激になっているという。

壱岐で仕事を生み出す人や移住者、ワーケーション中の人が集まる「フリーウィルスタジオ」(写真撮影/笠井鉄正)

壱岐で仕事を生み出す人や移住者、ワーケーション中の人が集まる「フリーウィルスタジオ」(写真撮影/笠井鉄正)

「フリーウィルスタジオ」は今から2000年前に栄えた「一支国」の王都の遺跡「原の辻遺跡(国宝・国特別史跡)」の中にある。史跡の国宝の中で働けるのは、日本で唯一、壱岐だけだ(写真撮影/笠井鉄正)

「フリーウィルスタジオ」は今から2000年前に栄えた「一支国」の王都の遺跡「原の辻遺跡(国宝・国特別史跡)」の中にある。史跡の国宝の中で働けるのは、日本で唯一、壱岐だけだ(写真撮影/笠井鉄正)

高校生たちが考えた「食べてほしーる。」で食品ロスを削減したい!

このように進められている「壱岐なみらい創りプロジェクト」のなかの取り組みのひとつ「イノベーション・サマープログラム」で、壱岐高校の生徒と大学生のメンバー計8名で考案したものがある。それは賞味期限が間近の食品の購入を促すシール「食べてほしーる。」だ。

開発のきっかけは壱岐市内にあるスーパーマーケット「スーパーバリューイチヤマ」をメンバーが訪問したこと。賞味期限が切れた食品はまだ食べられる状態でも廃棄せざるを得ないという課題を掘り起こし、少しでも食品ロスを減らすための手段として「食べてほしーる。」を考案した。シールを貼ることで、賞味期限が近い商品から購入してもらうように促すという作戦だ。ただ、促すだけではすぐには浸透につながらなかった。

そこで「スーパーバリューイチヤマ」の店長はメンバーと同学年の生徒の父親でもあったので「子どもたちが頑張っているんだ。なんとか応援してあげたい!」と、「食べてほしーる。」にポイントを付与することを決定。啓蒙だけでなく、ポイント付与で顧客メリットを高めることでシールへの注目度もUPさせた。

壱岐高校の生徒が描いたイラストがかわいい「食べてほしーる。」。シールを貼るだけでなくスーパーのポイントをつけることで、興味を持ってくれるお客さんが増えた(写真撮影/笠井鉄正)

壱岐高校の生徒が描いたイラストがかわいい「食べてほしーる。」。シールを貼るだけでなくスーパーのポイントをつけることで、興味を持ってくれるお客さんが増えた(写真撮影/笠井鉄正)

「スーパーバリューいちやま」の寺田久(てらだ・ひさし)店長は自身の子どもと同級生でもあるメンバーたちの活動を「とにかく応援してあげたかった!」。シール印刷などのコストはかかるが現在も協力を続けている(写真撮影/笠井鉄正)

「スーパーバリューイチヤマ」の寺田久(てらだ・ひさし)店長は自身の子どもと同級生でもあるメンバーたちの活動を「とにかく応援してあげたかった!」。シール印刷などのコストはかかるが現在も協力を続けている(写真撮影/笠井鉄正)

この「食べてほしーる。」の活動は、壱岐高校ヒューマンハート部探求チームの後輩たちに引き継がれ、少しずつ壱岐市民の認知度もあがっている。また「食品ロス削減推進大賞」(消費者庁主催)で内閣府特命担当大臣賞に次ぐ消費者庁長官賞も受賞した。

「食べてほしーる。」は「SDGs未来都市」であり「島」だからできた活動?

2021年現在、「食べてほしーる」のメンバーだった高校生は島外へと進学し、大学生活を送っている。自炊用に自分で食材を購入するようになった今、賞味期限が近い食材に自然と手が伸びるという。

大学で知り合った友達に「食べてほしーる。」の話をするとほぼ全員から「そんな活動は体験したことがない」と言われるそうだ。自分たちの取り組みは「SDGs未来都市」の壱岐市だからできた貴重な機会だったと実感もしている。

2019年度に「食べてほしーる。」を考案した壱岐高校生は大学生となり島外で暮らしている。普段の暮らしのなかでも自然とSDGsを意識した行動をとっている(写真撮影/SUUMOジャーナル)

2019年度に「食べてほしーる。」を考案した壱岐高校生は大学生となり島外で暮らしている。普段の暮らしのなかでも自然とSDGsを意識した行動をとっている(写真撮影/SUUMOジャーナル)

ただ、都市に暮らす今、「壱岐市は『島』だし、のんびりしていて、人々が温かく、顔見知りも多い。それに大人たちは子どもの活動にすごく興味を持ってくれているので『食べてほしーる。』の活動が有効だったのかもしれない」とも感じている。

「スーパーバリューイチヤマ」も地元のスーパーだから、気軽に相談に乗ってくれた。大学生となったメンバーが現在住んでいる島外の街には、大規模なショッピングモールがある。地元のスーパーでなくても実現できるのか?と考える時もあるそうだ。

子どもから大人へ、小さな街から大きな都市へ、SDGsを伝える

だからといって学生たちは「食べてほしーる。」の可能性をあきらめているのではない。

これまで世の中の出来事の多くは、大きな都市から小さな街へと伝えられた。しかしこれからは、小さな街での出来事を大きな都市に発信していくことが、新しい発想や今までなかったアイデアを生み出すと考えている。

「利益にとらわれず、誰かのため、地球のため、行動を起こすこと。これがSDGsの基本にあります。だからむしろ、小さなコミュニティからスタートした方が行動を起こしやすいのかな」と学生たちは前を向いている。

先輩たちから「食べてほしーる。」の活動を引き継いだ4名のチーム。「食べてほしーる。」の認知度をいかに高め、地域の人々に気づいてもらえるかがこれからの課題(写真撮影/長崎県立壱岐高等学校 ヒューマンハート部探求チーム)

先輩たちから「食べてほしーる。」の活動を引き継いだ4名のチーム。「食べてほしーる。」の認知度をいかに高め、地域の人々に気づいてもらえるかがこれからの課題(写真撮影/長崎県立壱岐高等学校 ヒューマンハート部探求チーム)

今、壱岐市では「壱岐なみらい創りプロジェクト」のほかにも、中学校では環境ナッジ「住み続けたいまちづくり運動」、小学校では「海洋教育プロジェクト」、各小学校区で「まちづくり協議会」の設立と、自分たちが暮らす街とSDGsがクロスした学び・活動が繰り広げられている。

そして、子どもたちがその活動を家庭で話題にすることで、大人もSDGsへの興味を高めていることが、大人たちが子どもに高い関心を持つ壱岐市ならではの展開だと言えるだろう。市民全員がSDGsを「知っている」から「興味・関心を持っている」に変わる。それこそが最たるイノベーションだと感じられた。

今回、取材に加わったSUUMO編集長とリモートで対話する高校生たち。「壱岐のきれいな海を残したい」「ジェンダー差別について気になる」「動物の殺処分を減らしたい」など興味のある課題をそれぞれが持っていた(写真撮影/長崎県立壱岐高等学校 ヒューマンハート部探求チーム)

今回、取材に加わったSUUMO編集長とリモートで対話する高校生たち。「壱岐のきれいな海を残したい」「ジェンダー差別について気になる」「動物の殺処分を減らしたい」など興味のある課題をそれぞれが持っていた(写真撮影/長崎県立壱岐高等学校 ヒューマンハート部探求チーム)

高校生・大学生へのインタビューでは「親や祖父母はSDGsという名称は知っているけれど、その中身には興味がなさそう」「SDGsはみんなのためにあるものなのに、壱岐市にとってのメリットが基準になっている大人もいる」などのジレンマともいえる言葉も聞こえた。裏を返せばこれは未来の主役でありSDGsの担い手である子どもたちが、想像以上にしっかりとSDGsを見つめているということ。壱岐市の子どもたちは、高校卒業後に島を離れる割合が高いが、どこにいようとも壱岐市で体感したSDGsを伝える存在になってくれることだろう。

●取材協力
・長崎県 壱岐市役所総務部SDGs未来課
・一般社団法人 壱岐みらい創りサイト
・長崎県壱岐市 壱岐-粋-なSociety 5.0パビリオン(welcomeページ公開中/2021年8月27日本公開予定)

既存家電もIoT化で快適に。週休3日で働く社長のスマートリモコン活用術とは?

「グーグルホーム」「アマゾンエコー(アレクサ)」等が日本に上陸したことで、自宅にある家電がネットワークにつながる「スマートホーム」化が進んでいます。ただ、「対応の専用家電を買わないとダメなんでしょ?」という声もあるのではないでしょうか。最近では、既存の家電を買い換えることなくスマートホーム化し、スマートフォンやスマートスピーカーと連携させて家電の操作ができるようになる「スマートリモコン」が登場しています。実際にこのアイテムを、週休3日・週30時間のワークスタイルに活かしているという効率化のプロ・越川慎司さんに、導入した理由やその暮らしぶりを聞いてみました。
スマートリモコンでかなえる「余裕のある生活」

働き方改革の支援会社である株式会社クロスリバー代表・越川慎司さんは、東京に住まいながら、世界中の拠点とつながって働いています。近著『働きアリからの脱出: 個人で始める働き方改革』(集英社)などを上梓しつつ、自身も週休3日、週30時間というワークスタイルを実践。事務所はテレビにDVD、照明、賃貸の備え付けエアコンなどの既存家電をスマートリモコンでネットワーク化し、スマートホームにしています。テレビなどもアレクサを使って口頭で操作するほか、外出先からスマートフォンを使ってエアコンを操作・設定することも少なくないそう。

柔和な笑顔が印象的な越川慎司さん(写真撮影/片山貴博)

柔和な笑顔が印象的な越川慎司さん(写真撮影/片山貴博)

スマートリモコンは、赤外線でつながるものであれば、既存の家電を買い替えずに対応できるのが魅力です。モノを極力置かないようにしているという越川さん、導入した「スマート家電リモコン」のサイズそのものが小さく、リビングに置いても違和感がないのも良いところ、と言います。

今までは複数あるリモコン(エアコン・テレビ・照明・DVD)を使い分けていたけれど……(写真撮影/片山貴博)

今までは複数あるリモコン(エアコン・テレビ・照明・DVD)を使い分けていたけれど……(写真撮影/片山貴博)

複数のリモコンの操作を、スマート家電リモコン(写真右下)一台で操作できるように。既存家電を買い替えなくてもいいのが魅力的! スマートスピーカーを使えばより快適に(写真撮影/片山貴博)

複数のリモコンの操作を、スマート家電リモコン(写真右下)一台で操作できるように。既存家電を買い替えなくてもいいのが魅力的! スマートスピーカーを使えばより快適に(写真撮影/片山貴博)

1月下旬に発売されたスマートリモコン「スマート家電リモコン」(ラトックシステム)を操作するときのスマートフォンの画面の例。赤外線で既存家電とつながり、スマートホーム化を進めることができる(画像提供/SB C&S)

1月下旬に発売されたスマートリモコン「スマート家電リモコン」(ラトックシステム)を操作するときのスマートフォンの画面の例。赤外線で既存家電とつながり、スマートホーム化を進めることができる(画像提供/SB C&S)

「週休3日を実現するためには、仕事中に眠いな、不快だなと思っている余裕がないんです。だから事務所のエアコンを外から設定できるようにし、帰社・帰宅したらすぐに次の仕事に手をつけられるようにしておく必要があるんです」と越川さん。

ただ、ちょっと接続・設定は分かりにくいものもあり、慣れていないと苦戦するかもしれません(筆者のことです)。

「確かにスマートリモコンの設定は慣れないと戸惑うかもしれませんね。僕もうまく接続できないと、3回くらい試したものもあったかな」

効率化のプロでさえも、設定に試行錯誤していると聞き、少しほっとした人も多いことでしょう。ただ、設定にひと手間はかかっても「効率化」することで得られるメリットが大きいといいます。

「ここまで効率化をするのは、しっかり働いて、オフの時間を好きなように過ごしたいから(笑)。『エアコンや照明のオン・オフなどの操作』は機械にまかせたほうがいいですよね」

音声で家電を操作し、家事も自宅も快適化させていく(写真撮影/片山貴博)

音声で家電を操作し、家事も自宅も快適化させていく(写真撮影/片山貴博)

個人的に「人生のキングオブ無駄な時間」は「捜し物の時間」だと思っているのですが、スマートリモコンであればこうした無駄な時間&ストレスもなくなるもの(筆者は子どもがいるのでなおさらです!)。それでダラダラできるのであれば、まさに理想の生活です!

住まいも仕事も、効率化の目的は「ハッピーに暮らすこと」

業務効率化のプロは「スマートリモコンは、気楽に導入してみるといい」とアドバイスします。

「スマートリモコン自体は複数ありますし、数千円から買えるようになっています。それに、半年に一度のペースで大きな技術革新が起きている。リモコン自身がネットとつながっているから学習して、どんどん賢くなっている。これで室内が快適化できるのであれば、買ってソンはないと思いますよ」

大切なのはいきなり「ベスト」を目指さず、「トライ&エラー」で自分に必要な機能を見極めていくことだといいます。

「目新しさだけで導入しても、すぐに飽きちゃうので。自分にとって必要な機能/効率化を考えつつ、新しいことにチャレンジしていくと、快適に暮らせるのではないでしょうか」

また、スマートリモコンで操作可能なのは、赤外線リモコンが付いている家電のみ。

「家の中を見回すと、実はリモコンがついていない家電のほうが多いんです。例えば(リモコン非対応の)加湿器。これもスマートフォンで操作できるようになれば、より快適になりますよね」

電源アダプターに設置し、スマホや音声操作で、電源オン・オフができるようになるアイテムも発売されている。これで自宅にある家電をスマホで一元管理できるようになる(写真撮影/片山貴博)

電源アダプターに設置し、スマホや音声操作で、電源オン・オフができるようになるアイテムも発売されている。これで自宅にある家電をスマホで一元管理できるようになる(写真撮影/片山貴博)

越川さんが言うように、赤外線非対応の家電も少なくありません。そうした家電は、タップ操作を可能にするアイテム、または電源アダプターに設置するアイテムが複数登場しているため、一緒に使うことでより高いレベルでスマートホーム化できそうです。

こう聞くと家も仕事もまだまだ「効率化」できるように思います。でも、「効率化」というと「徹底的に無駄を排除」と感じてしまうのですが……。

「本来、効率化はしっかり休むときは休み、すべき判断に集中するというのが理想です。『時短』という言葉に代表されるように、義務感があり、時短そのものが目的になると、負担になりますよね。労働時間を短くし、効率をあげる目的は会社の業績をあげること、働く人の幸せ感を高めること、なんです。例えば、朝起きたあとに、すぐにベッドでスマホをメールチェックするのが、効率化だと思っていませんか? でもメールを見たことでストレスを感じ、イライラしながら朝を過ごしている人もいると思いますが、あれは業務にとっても、人にとっても不幸な状態なんです」と、越川さん。

理想の暮らしは、朝、起きたときに室温・湿度・照明がほどよい状況になるよう設定しておき、ヨガや塗り絵などで自律神経を整え、脳や気持ちがすっきりした状態で仕事にのぞむのがいいそう。なるほど、業務の生産性が高まるだけでなく、暮らしの満足度を高めていくのが大事ということですね。

スマートリモコンの魅力は、音声操作が可能なので、高齢者・子どもなどでも家電操作をしやすくなることでしょう。加えて、スマートリモコンが「人の生活の気配」を感知し、万一の際に救助・発見を手助けする日もくるかもしれません。

個人的には「テレビのリモコン、どこだっけ」というイライラ時間をなくすためにも、まずは面倒くさがらずに設定からはじめてみたいと思います!

●取材協力
越川慎司
株式会社クロスリバー代表。元マイクロソフト役員でOfficeビジネスの責任者。「リモートワークを当たり前にする」というミッションを掲げる株式会社キャスターの執行役員も務める。クロスリバーでは全メンバーが複業をしており、これまで500社以上の働き方改革を支援してきた。自著 『新しい働き方』(講談社)、『働きアリからの脱出』(集英社)。
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IoT賃貸住宅に「住んでみたい」46.8%

(株)レオパレス21(東京都中野区)は、このたび「若手社会人のひとり暮らし」に関する意識・実態調査を行った。調査対象は、ひとり暮らしをしている入社5年目までの社会人の男女(未婚)。調査時期は2018年5月14日(月)~5月16日(水)。調査方法はインターネット。サンプル数は600。

ひとり暮らしを始めてから親に対する意識はどのように変わりましたか?では、「感謝の気持ちを持つようになった」(47.0%)や「親の苦労がわかるようになった」(44.8%)との回答が40%を超えた。親との距離感については、「ちょうど良い距離感を保てるようになった」(37.5%)との回答がある一方、「自分が“親離れ”できていないことがわかった」(17.2%)、「親が“子離れ”できていないことがわかった」(9.8%)との回答もあった。

ひとり暮らしで困ったことは、「食事」(46.5%)、「掃除」(29.5%)、「体調管理」(29.2%)が上位を占めた。「孤独」(19.0%)を挙げた方も5人に1人いた。

身の回りのものがインターネットでつながる「IoT賃貸住宅」に住んでみたいですか?では、「ぜひ住んでみたい」(17.3%)、「住んでみたい」(29.5%)を合わせて、約半数(46.8%)が「住んでみたい」と回答した。「IoT賃貸住宅」のために現在の家賃にプラスしていくら払ってもよいですか?では、「1,000円以下」(22.8%)、「5,000円」(22.4%)、「3,000円」(21.7%)との回答が上位を占めた。

AIスピーカーの音声アシスタントをお願いしたい異性の有名人は誰ですか?では、男性は「高橋一生さん」、「玉木宏さん」、「福山雅治さん」が同票で1位。3名ともに「声が印象的」「低音ボイスに惹かれる」との理由が多く挙がっている。4位には「斎藤工さん」がランクインした。

女性では「広瀬すずさん」が1位。理由としては「(声で)部屋の居心地がよくなりそう」「かわいらしい声だから」等が挙がっている。2位は「石原さとみさん」で、「癒されるから」「好きな女優、ファンだから」との理由。3位は「新垣結衣さん」、「有村架純さん」の2名が同票でランクイン。「毎日が楽しくなりそう」「声が柔らかくて癒される」等の回答があった。

ニュース情報元:(株)レオパレス21

対策していますか? 新入学を迎える約8割のお母さんは事件・事故が心配

この4月から、小学生になるお子さんをもつ方もいらっしゃるのでは? 新生活に向けてドキドキわくわく、期待に胸がふくらみますね! その一方で、生活が変わることで、子どもの環境にどんな変化が訪れるのか不安だというのも正直な親心ではないでしょうか。
IoTを活用した見守りサービス『おうちの安心プラン』を提供する東京電力エナジーパートナー株式会社(以下東京電力エナジーパートナー)は、30歳~49歳の300人の男女に「新入学に関するアンケート調査」を実施しました。それによると、多くの保護者が小学校入学に関して、なんらかの心配を抱えているようです。一体、新1年生の保護者はどのようなことに不安を感じているのでしょうか。
約8割の保護者は小学校入学に不安を感じている

アンケートによると、「お子さまが小学校に入学することに対して、不安を感じること(感じていたこと)はありますか?」という問いに対して、全体の77%が「あてはまる」もしくは「どちらかといえばあてはまる」と回答しています。約8割の保護者は小学校入学に対して、なんらかの不安な気持ちをもっているようです。

(画像提供/東京電力エナジーパートナー株式会社)

(画像提供/東京電力エナジーパートナー株式会社)

不安の具体的な内容としては、女性の回答の1位は「友達と仲良くできるかということ(86.5%)」、2位が「通学時に事故・事件に巻き込まれること(77.7%)」、男性では1位が「通学時に事故・事件に巻き込まれること(77.7%)」、2位が「友達と仲良くできるかということ(75.2%)」だったそうです。お子さまの入学後の交友関係、通学路での事故や通学中に事件に巻き込まれることへの不安は両親ともに大きいのですね。

働き続けたいけど、子どもが1人で過ごす時間が心配

近年は共働き家庭の間で、「小1の壁」という言葉がよく知られるようになってきました。保育園時代は、延長保育などのオプションのお陰で、ある程度遅い時間まで子どもを預かってもらえた家庭が直面する問題です。小学校になると親よりも子どもが早く帰ってくることも多く、保育園時代よりも子どもが家で1人になってしまいがちです。
仕事と安全な子育ての両立の前に立ちふさがる「小1の壁」ですが、それでも約94%の母親が「子どもが小学校に入学しても、今まで通りの働き方を続けたい」と希望しているそうです。子どもの生活も不安ですが、仕事もしっかり続けていきたい意向が垣間見られます。

9割超のお母さんが「子どもの入学に際して不安はいっぱいだが、今まで通り働き続けたい!」と思っている一方で、「お子さまが小学校に入学することへの不安に対して、何か対策をしていますか」という質問に、「対策をしている」と答えたのはわずか20%程度。一番多かった回答は「必要だと思うが、対策はしていない」の45.7%でした。新入学に際しての対策の必要性は感じていても、ついつい先延ばしにしているようです。どのような対策を打てばいいのか分からないのかもしれませんね。

回答数=300(画像提供/東京電力エナジーパートナー株式会社)

回答数=300(画像提供/東京電力エナジーパートナー株式会社)

このアンケートを実施した東京電力エナジーパートナーの担当者にとっても、この結果は意外だったよう。

「お子さまの新入学にあたって、多くの方が不安に思っていることがあるだろうというのは想定していました。しかしその対策をしている方が約20%だったのは予想外でした。新入学期では準備しなければならないことが多く、漠然とした不安だけではどうしても対策が後手にまわってしまうということでしょうか」(東京電力エナジーパートナー)

近年は高齢者や幼児の見守りに、IoTを活用する動きが盛んです。例えば、高齢者の見守りを目的にしたセコムのサービスや、福岡市が九州工業大学や保育園と協力して始めた保育園児見守りの実証実験など。今回調査を実施した東京電力エナジーパートナーのIoT見守りサービス『おうちの安心プラン』は、自宅に規定のレンタル機器を設置することにより、子どもの外出・帰宅などをスマートフォンに知らせる仕組み。スマートタグを身に着けた子どもが外出・帰宅すると、その通知が保護者のスマートフォンに届くようになっています。
何かが起こる前に、それぞれのご家庭に合った見守り方法を導入できたらいいですね。特に最近はIoT機器の普及がぐっと進んでいますから、この機会にいろいろと調べてみてはいかがでしょうか。

未来の住宅ではIoTが大活躍? 一足早くホステルで体験!

IoTとは「Internet of Things(モノのインターネット)」の略。つまり、モノをインターネットに接続して便利に使おうという技術のこと。最近では、外出先からスマートフォンのアプリで自宅のインターフォンで録画された映像をチェックするといった活用例もありますね。
近未来のホステル空間は、宿泊者同士のコミュニケーションも楽しめる

IoTは日常生活に取り入れられつつありますが、まだまだ使いこなせていないという人も多いのでは? そこでおすすめなのはホテルで最先端のIoTを体験してみること。近ごろはIoTを活用したホテルもお目見えしているのだそう。

例えばand factory株式会社が運営する「&AND HOSTEL」は、最先端のIoTデバイスがそろった体験型宿泊施設。近未来のIoT空間を存分に満喫できるのはもちろん、宿泊者同士のコミュニケーションも盛んなので、ホステルならではの出会いや集まりも楽しむことができるそう。5店舗目となる「&AND HOSTEL KANDA」が、2018年2月20日にオープンしたそうです。

どんな体験ができるのか見ていきましょう!

スマートフォン&スピーカーで、ドア開閉からアロマまで

[1]スマートフォンとアプリを利用したスマートステイ

画像提供/and factory株式会社

画像提供/and factory株式会社

「&AND HOSTEL KANDA」では、IoTルームに宿泊する場合、チェックイン時に鍵ではなくスマートフォンが貸し出されます。このスマートフォンには、独自に開発されたIoTプラットフォームアプリ「&IoT」がインストールされています。このアプリを使うと、ホテルの部屋の鍵を開け閉めするときはもちろん、テレビやエアコンといった部屋のなかのさまざまな家電を、スマートフォン1つで操作できるのです。

[2]声をかけるだけで素早く快適な環境を整備できるスマートスピーカー

「&AND HOSTEL KANDA」に用意されているスマートスピーカーに宿泊者が話しかけると、部屋のなかのIoTデバイスが作動し、利用シーンにふさわしい快適な環境を整えてくれます。ホテルにあるスマートスピーカーは、「外出」「リラックス」「集中」「おはよう」「おやすみ」「シアター」の6つのシーンに対応しており、例えば、寝るときにスマートスピーカーに「おやすみ」と声をかけると、照明の光やエアコンが調節されたり、アロマ空間になったり、カーテンが閉まったりするなど、寝るときにピッタリの環境を整えてくれます。

画像提供/and factory株式会社

画像提供/and factory株式会社

まるでSFの世界のようですね!「&AND HOSTEL」を運営するand factory株式会社によると、このスマートスピーカーによるシーン提案は、特に好評を得ているそうです。IoTプラットフォームアプリ「&IoT」でも1回のタップで同じ操作が可能ですが、やはりここは最先端のスマートスピーカーを体験してみたいですね。

[3]スマートスピーカーが案内役に

「変換プラグがほしい」「チェックアウトの時間は?」など、ホテルの設備や利用環境を知りたいことは多いはず。そのようなときにもスマートスピーカーが活躍します。これらの希望や質問をスマートスピーカーに話しかけるだけで、しっかり案内してくれます。

[4]リアルタイムの情報を提供

ホテルで貸し出されたスマートフォンや、部屋に備え付けられたスマートスピーカーは、センシング技術やクラウドデータと連携しています。これによって、天気や防災情報などのほか、「ラウンジに人が集まって来たようです。ちょっとのぞいてみませんか?」といったオススメ情報も知らせてくれます。

画像提供/and factory株式会社

画像提供/and factory株式会社


「&AND HOSTEL KANDA」で提供されるこれらのサービスは、大崎電気工業株式会社のスマートホーム向けIoTサービス「ホームウォッチ」や、ヤフー株式会社のIoTプラットフォーム「myThings Developers」などの最新テクノロジーによって支えられています。宿泊者にとっては最新のIoTに触れる絶好の機会でもありますが、これらの企業にはデバイスの利用状況や利用者の声を集めて分析するマーケティングプレイスとしても「&AND HOSTEL」は活用されています。

「&AND HOSTEL」を運営するand factory株式会社によると、IoTルームに泊まった人のなかには、「未来の家・スマートホームの体験ができた」「スマートフォン1つで部屋のなかのデバイスをすべて操作できる」というプラスの印象をもった人もいれば、「スマートスピーカーに慣れるまでは、手探りでできることを探していった」など、最初は少し戸惑った人もいるようです。このような意見を反映して、どんどん新しいIoTがつくり出されていくのですね。

「&AND HOSTEL KANDA」は、未来の家・スマートハウスのモデルハウスでもあります。実際に宿泊して、近未来の住宅環境を体験してみるのはいかがでしょう?

●参照
・PR TIMES

AIスピーカーで暮らしが便利に 住宅展示場で試してみた

Google HomeやAmazon EchoなどAIスピーカーが最近話題になっている。テレビCMを見ると、言葉だけで家電が作動するなど暮らしが楽しくなりそうだが、実際AIスピーカーで住まいはどう変わるのか? 2018年1月からGoogle Homeを使った「コネクテッドホーム」の提案を開始した大和ハウス工業の住宅展示場で体験してみた。
共働き世帯や高齢者世帯の暮らしを家が助けてくれる!?

東京・渋谷区にある大和ハウス工業の住宅展示場のリビング。「OK Google、家を出る準備をお願い」と言うと、AIスピーカーのGoogle Homeが「はい、行ってらっしゃい。お気をつけて」と応え、同時にカーテンが閉まり、照明が消え、エアコンが止まり、お掃除ロボットが動き出した。

【動画1】「朝の準備をお願い」と言えばカーテンが開き、照明が点灯し、エアコンが作動する(撮影/SUUMOジャーナル編集部)

何かとバタつく朝の出勤前にすべてのカーテンを閉めて、照明を消して、エアコンのリモコンを探してオフにして、お掃除ロボットのスイッチを入れる……という作業が、たったひと言発声するだけで完了する。「共働きで忙しい方はもちろん、ご高齢で動くことが大変という方にも便利です」と大和ハウス工業の事業戦略グループ主任の古賀英晃さん。

このほかにも主寝室では「シアターモードにして」と言えばカーテンが閉じて天井から映写用スクリーンが下り、プロジェクターが動き出す。またインターネットで動画を楽しむ際、「○○の第5話を再生して」と言えば、スクリーンに希望のドラマが写し出される。

大和ハウス工業は “さまざまな住宅設備や家電をつなげて、利便性の高い豊かな暮らしの提供を目指す”プロジェクトである「Daiwa Connect(ダイワコネクト)」に取り組んでいる。2018年の1月からその第1弾として、AIスピーカーのGoogle Homeと、東急グループのイッツ・コミュニケーションズの「インテリジェントホーム(※)」を活用した「コネクテッドホーム」の提案を全国で開始した。

※インターネットに接続されたホームコントローラーを介し、設置したセンサーの信号を検知して指定のアドレスに通知したり、さまざまな機器を外出先からコントロールできるサービス

「ご来場いただいた方からはおおむね便利だという声をいただいています」(古賀さん、以下同)。とはいえ私もそうだったが、お父さん世代は「OK、 Google~」と人前で言うことが照れくさくて、少し抵抗感を示すという。しかし、子どもたちはむしろ面白がってAIスピーカーにいろんなことを話しかけるそうだ。

なにしろパソコンのキーボードを打つよりもスマートフォンを指先で操作するのが当たり前の彼らだ。彼らが建てる家は、いずれ声ですべての家電や設備を操作できるようになるのだろう。

こう言うと、最近話題のAIスピーカーについ注目が集まりがちだが、重要なのはそのAIスピーカーとさまざまな住宅設備や家電がつながることで、複数の動作を同時に機械が行ってくれることにある。

これは住宅内の家電などがIoT化(モノのインターネット化、モノがインターネットを通じて相互に接続され、自動制御などが可能になること)するからこそ実現する。冒頭はそんな暮らしのほんの一例に過ぎず、例えばスマートフォンのGPS機能を利用して帰宅前に自動で家のエアコンを作動させたり、住宅の躯体内のセンサーを通じてメンテナンス時期を把握できたり、トイレの排せつ物から健康状態を分析したり……など、IoT住宅はまさに無数の可能性を秘めている。

大和ハウスがプロジェクトをいち早く開始した理由とは

もちろん「IoT住宅はまだまだ過渡期です」。それでも、電機メーカーでもない大和ハウス工業が「Daiwa Connect(ダイワコネクト)」プロジェクトをいち早く開始した理由はどこにあるのか。

もともとIoTという言葉が生まれる前、1996年から住まいにおけるITの活用について研究してきた同社。「暮らしの困り事をIoTで解決する可能性を探り、いち早くお客様に提供するためです。AIスピーカーだけでなく、今後もさまざまな新しいデバイスがでてくるでしょう。そのときにお客様がニーズに合わせて好きなデバイスを組み合わせて使うことのできる環境(コネクト環境)を、従来お付き合いのなかったさまざまな業種の企業と、連携しながら整備していく必要があります」

現時点ではインターネットと直接つながる家電や住宅設備が少ないため、Google HomeをはじめとしたAIスピーカーが直接動かせるものは多くない。そのため家電や設備を動かす専用のコントローラーが室内に必要なのだが、家電や設備が直接インターネットとつながれば、専用コントローラーがなくても作動させられるし、さまざまな動作がより簡単に、同時にしやすくなる。

こうした環境整備のためには企業間の連携だけでなく、例えば冒頭の例のように、出かける前はどんな家電や設備が連動するといいのかなど、ユーザーの声も重要だ。日ごろからユーザーと接している同社がいち早く参入したことで環境整備が進み、結果的に他社に先駆けて商品の価値を高めるチャンスにもなる。さらにインターネットにつながることによる情報漏洩リスクなど、あらゆるリスクへの対策にも取り組んでいくという。

「そもそも『コネクテッドホーム』のご提案は、家事をラクにする家事動線のご提案と基本は同じです。暮らしに対する顧客の不満点やご要望に対して、従来は間取りや住設機器でのご提案が主流でしたが、これに加えてIoTという手段を使って、課題解決を図るということが重要になってきます。決してIoTありきではありません」

【画像1】複数のIoT機器がつながり、AIを活用することで得られるデータから、さらに新しいサービスが生まれる可能性もある(写真提供/大和ハウス工業)

【画像1】複数のIoT機器がつながり、AIを活用することで得られるデータから、さらに新しいサービスが生まれる可能性もある(写真提供/大和ハウス工業)

社会的な課題や変化に対応する住宅づくりが始まった

「共働き世帯の家事を効率化する住宅や、今後増加する高齢者世帯が安心・快適に暮らせる住宅はもちろん、在宅介護が楽になる住宅、通勤しなくても自宅で仕事がスムーズにできる住宅……IoTやAIの活用によって、これからの社会の変化にも対応した多彩な住宅をご提案できたらいいなと思います」。

「Daiwa Connect(ダイワコネクト)」のニュースリリースのタイトルには「プロジェクト始動」とある。つまり現状のAIスピーカーやIoT機器との組み合わせがゴールではなく、今まさに始まったばかり。今後登場するさまざまなデバイスによって、私たちの暮らしはさらに豊かなものへと変わっていくはずだ。

●取材協力
・大和ハウス工業

「勝ち組・負け組」はっきりと? 2018年の不動産市場を5つのキーワードで予測

明けましておめでとうございます。2017年の不動産市場を振り返ると、一時、新築マンションの発売戸数や契約率が伸び悩んだものの、「供給調整」「価格調整」によって適温状態にまで回復した感があります。

こうした流れを受けて2018年の不動産市場はどうなるでしょうか? 注目すべき5つのキーワードを元に予測してみましょう。

キーワード1「金利動向」:不動産価格を左右も大きくは動かない?写真/PIXTA

写真/PIXTA

まず気になるのは「金利動向」。金利が上がれば不動産価格は下がり、金利が下がれば不動産価格は下がります。例えば月々10万円の住宅ローン支払いで金利1.5パーセントなら3270万円借りられますが、仮に3パーセントに上昇すると、借入額は2600万円と、670万円も減ってしまい、それだけ不動産取得能力が減退してしまうためです。

黒田日銀総裁の任期が18年4月8日に満了するのに伴い「後継は誰か」「再任はあるか」などが話題になっていますが、いずれにしても2017年衆議院選挙で信任を得た安倍政権の路線を、大きく転換するような事態にはならず、このことで金利が大きく動く可能性は考えにくいでしょう。

景気動向を見れば、世界景気の同時回復にも支えられ、上場企業の業績は拡大しており、18年3月期の純利益は前期に続いて過去最高を更新する見通し。18年には世界経済もやや鈍化する可能性があるものの、アメリカは段階的な金利上げ、EUも金融緩和引き締め方向へ動くと見られ、緩和を継続する日本との金利差が拡大すれば円安になり、輸出企業を中心に株価は上がります。

日経平均株価はかつてより随分上昇した感がありますが、それでもPER(株価収益率)は15倍程度と、欧米の20倍程度に比して相対的な割安感があり、現行水準の2万2000~2万3000円のラインを超えるようだと不動産市場には思い切り追い風。一定の株式売却益が不動産市場に流れる可能性があります。

ただ、気になるのは「地政学リスク」。北朝鮮が今後どのような動きに出るか。複数のシナリオのうち、政権維持を条件として北朝鮮が核を手放すことになれば安心感が増しプラスの影響、米軍が先制攻撃を行った場合、多少の動揺はあるものの短期で収束すれば大きな影響はなく、国内の米軍基地が攻撃にさらされるようだと株価にも景気にも大マイナスで先が見通しにくくなる、といったところでしょう。

キーワード2「三極化」:価値が上がり続ける物件も写真/PIXTA

写真/PIXTA

いずれにせよ長期的な不動産市場は「三極化」に向かいます。国内の多くの不動産価格は下がり続け、価値ゼロないしはマイナス価値に向かう物件が出てくる中で、一部の不動産は価格維持、ないしは上昇の余地が残されています。

 その内訳はざっと、
「価値維持あるいは上昇する 10~15%」
「徐々に価値を下げ続ける 70%」
「無価値あるいはマイナス価値に向かう 15~20%」
 といった具合です。

このことは、どのタイミングで、どんな場所に、どのような不動産を買うかで、天地ほどの格差が生まれることを意味します。資産化する「富動産」からマイナス資産となる「負動産」まで、「勝ち組不動産」と「負け組不動産」がはっきりする時代が到来したのです。「不動産は、1にも2にも3にも「立地」です。その地域の人口動態が不動産価値にどのような影響を与えそうか、よく見極めましょう。

キーワード3「立地適正化計画」:「活かす街」と「そうでない街」が決まる写真/PIXTA

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不動産価格の「価値維持ないしは上昇」といえば、都心の一等立地をイメージしがちですが、都市郊外や地方にもこうした立地は存在します。

本格的な人口減少社会の到来を踏まえ「活かす街」と「そうでない街」を決める「立地適正化計画」の取り組みが全国357の自治体で行われていますが(2017年7月末時点)、昨年に引き続き、2018年も多くの自治体で続々とこの計画が公表されます。今後、誘導区域の内側か外側かで地価水準が大きく分かれ、地価維持できるのは区域内だけになりそう。不動産業者や金融機関が資産価値を維持しやすい区域への投資を優先するためです。

埼玉県毛呂山町は作成中の立地適正化計画のなかで「20年後に公示地価を10%以上、上昇させる」といった目標を掲げています。町の人口は同期間に18%程度減る見通しですが、居住区域に住宅を誘導して人口密度を保ち、投資を呼び込むことで地価上昇につなげるとしています。こうした自治体の姿勢が長期的には、暮らしやすさはもちろん、不動産価値にも大きな影響を与えるのは必至ですので、自治体のHPなどで確認しましょう。

キーワード4「中古市場活性化策」:インスペクション説明義務化、経験不足のインスペクターに注意

国は2025年までに「中古住宅市場」「リフォーム市場」を倍増させる方策を掲げており、2018年は具体的な活性化策が目白押し。

まずは「インスペクション説明義務化」。もう少し詳しくいえば「媒介契約」「重要事項説明」「売買契約」の各段階で、ホームインスペクション(住宅診断)の存在やその内容について、宅建業者に説明を義務付けるものです。住宅診断そのものが義務付けられたわけではないことにご注意ください。いずれにせよこれで、中古住宅の「よくわからないから不安」といった懸念が一定程度解消され、日本でも爆発的にインスペクション(住宅診断)が普及するものとみられます。

ただし懸念もあります。国は、インスペクションを行う「既存住宅状況調査技術者」を養成し、年度末には2万4600人になる見込みですが、半日程度の講習を受けるだけの比較的簡単なものであるため、経験不足のインスペクターが市場に多数出ることになります。そうなると必然的にトラブルが予想され、ユーザーがインスペクターの「実績」や「経験」、また「不動産業者と癒着がないか」などのフィルターを持つことが重要となるでしょう。

キーワード5「テック元年」:AIやVR、IoTでワクワクの未来写真/PIXTA

写真/PIXTA

昨年あたりから萌芽が見え始めた各種の新技術。AI(人工知能)で物件情報の提供などを行う不動産会社が今後も増加。現在はごく簡単な対応しかできませんが、データの蓄積とディープラーニング(情報の蓄積)によって大きく機能向上を果たすでしょう。「AIに提案されたマンションを買った」という事例も増えるかもしれません。

VR(バーチャルリアリティー)は、ゴーグルなどをかけると内外装のリフォーム後の映像、インテリアコーディネートの例などが見られるというもの。ゴーグル不要の技術などもで始めており、中古活性化には大きく寄与しそうです。

IoT(Internet of Things)は住宅とインテリア・家電などをつなげ、生活を一変させるかもしれません。朝起きれば自動でカーテンが開き、冷暖房は自動調整、コーヒーも勝手に沸かしてくれ、カギの開け閉めはスマホでなんてことはあたりまえに。冷蔵庫の在庫確認やお年寄りの見守り、空き家のセキュリティー対策なども容易になるでしょう。

更なる先に「自動運転」が可能になれば、やはり街のあり方や暮らしは激変。「ブロックチェーン」といった技術は不動産取引を根本的に変える可能性を秘めています。やや専門的になりますが、米国内の複数の州はすでに、不動産取引において仮想通貨の使用を認める法整備を進めています。例えばバーモント州は、ブロックチェーン技術による取引記録が、証拠の観点から許容されるとの前提を認めた法律を制定しました。こうなると不動産業者を介さずとも、より安全に不動産取引を行うことが理論的には可能です。

技術の進展が変える不動産の世界。なんだかワクワクしますね。

s-長嶋修_正方形.jpg長嶋 修  さくら事務所創業者・会長
業界初の個人向け不動産コンサルティング・ホームインスペクション(住宅診断)を行う「さくら事務所」を創業、現会長。不動産購入ノウハウの他、業界・政策提言や社会問題全般にも言及。著書・マスコミ掲載やテレビ出演、セミナー・講演等実績多数。【株式会社さくら事務所】

IoT活用、地域ぐるみで高齢者の健康見守り 泉北ニュータウン

家電などのモノがネットにつながることでその機能を増す“IoT”。近年さまざまな分野でクローズアップされているが、12月下旬から地域ぐるみで高齢者の健康維持に活用する自治体がある。大阪府南部の泉北ニュータウンで、小型センサーで日ごろの運動量を把握し、専門家が健康指導する試みが始動する。ソフト開発のヴァイタル・インフォメーション社と、堺市で高齢者向けに健康支援を手掛ける一般社団法人ひと・まちプロジェクト、大阪経済大学がタッグを組む。

【画像1】泉北ニュータウンは自然あふれる立地だが坂が多く、高齢者が出歩くのを控える傾向にあった(画像提供/ヴァイタル・インフォメーション社)

【画像1】泉北ニュータウンは自然あふれる立地だが坂が多く、高齢者が出歩くのを控える傾向にあった(画像提供/ヴァイタル・インフォメーション社)

IoTを使った高齢者の健康管理はすでに個人単位で行われている一方で、地域ぐるみでの取り組みは珍しい。泉北ニュータウンは2017年「まちびらき50周年」になるが、高齢化が進み、特に駅から遠いエリアでは高齢化率が40%以上になっている。全国的に高齢化が進む大規模団地の、先進的な取り組みといえる。

利用する高齢者にはヴァイタル社が開発したネットにつながる小型の身体運動センサーが貸し出される。大きさはマッチ箱程度で重さは17グラム。センサーをポケットに入れて生活し、家事や散歩での運動量を測り、どの日の何時にどれほど負荷がかかる運動をしていたかを運動強度で表す「メッツ」という値で示す。スマートフォン(スマホ)のほか、地域で住民が月1回開く体操教室の会場で記録をチェックできる。センサーのレンタルと体操教室への参加、体力測定、運動指導を各サービス毎に月額500円で提供する。今年度は補助金事業で専門家派遣費用や機器代など補填している。まずは泉北ニュータウン南部から運営を始めて、運用方法などを関係者と検証する。

【画像2】システムの概要(画像提供/ヴァイタル・インフォメーション社)

【画像2】システムの概要(画像提供/ヴァイタル・インフォメーション社)

ヴァイタル社の担当者によれば同社のIoT活動量計では、座位時間と中強度の運動強度時間を測定しできるとのこと。「家の中で立って行う家事など、通常の万歩計では正確に運動量を測れないような行動も計測することができます。また、最近の論文では座位時間が『たばこを吸っているのど同じ位、不健康である』といわれているので、この時間も計測します」とのこと。測定したデータはスマホやPCのブラウザで“見える化”する。これなら出歩くことが少ない高齢者でも、家のなかでの運動量を把握し、日々をアクティブに過ごすための指針にできそうだ。

併せて近隣の自治会館や、コミュニティカフェで開催される健康体操教室に通ったり、専門家(理学療法士、管理栄養士)から個人データに基づいた運動面、食事面のアドバイスを受けたりすることで、老人が要介護状態になりにくい地域づくりを目指す。

今後は大手通信会社と連携し、自宅にいてもセンサーの情報を発信するシステムを実現する構想もある。離れて暮らす家族のスマホでも運動の記録をリアルタイムで参照でき、一人暮らしの高齢者の見守りにもつなげる。

少子高齢化によって医療費の財政圧迫が懸念されるなか、IoTを活用し地域ぐるみで高齢者の健康維持を目指す泉北ニュータウンの取り組みには多くのヒントがありそうだ。

IoT活用、地域ぐるみで高齢者の健康見守り 泉北ニュータウン

家電などのモノがネットにつながることでその機能を増す“IoT”。近年さまざまな分野でクローズアップされているが、12月下旬から地域ぐるみで高齢者の健康維持に活用する自治体がある。大阪府南部の泉北ニュータウンで、小型センサーで日ごろの運動量を把握し、専門家が健康指導する試みが始動する。ソフト開発のヴァイタル・インフォメーション社と、堺市で高齢者向けに健康支援を手掛ける一般社団法人ひと・まちプロジェクト、大阪経済大学がタッグを組む。

【画像1】泉北ニュータウンは自然あふれる立地だが坂が多く、高齢者が出歩くのを控える傾向にあった(画像提供/ヴァイタル・インフォメーション社)

【画像1】泉北ニュータウンは自然あふれる立地だが坂が多く、高齢者が出歩くのを控える傾向にあった(画像提供/ヴァイタル・インフォメーション社)

IoTを使った高齢者の健康管理はすでに個人単位で行われている一方で、地域ぐるみでの取り組みは珍しい。泉北ニュータウンは2017年「まちびらき50周年」になるが、高齢化が進み、特に駅から遠いエリアでは高齢化率が40%以上になっている。全国的に高齢化が進む大規模団地の、先進的な取り組みといえる。

利用する高齢者にはヴァイタル社が開発したネットにつながる小型の身体運動センサーが貸し出される。大きさはマッチ箱程度で重さは17グラム。センサーをポケットに入れて生活し、家事や散歩での運動量を測り、どの日の何時にどれほど負荷がかかる運動をしていたかを運動強度で表す「メッツ」という値で示す。スマートフォン(スマホ)のほか、地域で住民が月1回開く体操教室の会場で記録をチェックできる。センサーのレンタルと体操教室への参加、体力測定、運動指導を各サービス毎に月額500円で提供する。今年度は補助金事業で専門家派遣費用や機器代など補填している。まずは泉北ニュータウン南部から運営を始めて、運用方法などを関係者と検証する。

【画像2】システムの概要(画像提供/ヴァイタル・インフォメーション社)

【画像2】システムの概要(画像提供/ヴァイタル・インフォメーション社)

ヴァイタル社の担当者によれば同社のIoT活動量計では、座位時間と中強度の運動強度時間を測定しできるとのこと。「家の中で立って行う家事など、通常の万歩計では正確に運動量を測れないような行動も計測することができます。また、最近の論文では座位時間が『たばこを吸っているのど同じ位、不健康である』といわれているので、この時間も計測します」とのこと。測定したデータはスマホやPCのブラウザで“見える化”する。これなら出歩くことが少ない高齢者でも、家のなかでの運動量を把握し、日々をアクティブに過ごすための指針にできそうだ。

併せて近隣の自治会館や、コミュニティカフェで開催される健康体操教室に通ったり、専門家(理学療法士、管理栄養士)から個人データに基づいた運動面、食事面のアドバイスを受けたりすることで、老人が要介護状態になりにくい地域づくりを目指す。

今後は大手通信会社と連携し、自宅にいてもセンサーの情報を発信するシステムを実現する構想もある。離れて暮らす家族のスマホでも運動の記録をリアルタイムで参照でき、一人暮らしの高齢者の見守りにもつなげる。

少子高齢化によって医療費の財政圧迫が懸念されるなか、IoTを活用し地域ぐるみで高齢者の健康維持を目指す泉北ニュータウンの取り組みには多くのヒントがありそうだ。