瀬戸内を“かわいい”で広める。瀬戸内デニムでつなぐ地元愛【全国に広がるサードコミュニティ9】

瀬戸内の魅力を発信しようと、岡山在住の有志の声がけからスタートした「瀬戸内かわいい部」。岡山名物であるデニムのB反(生産過程でついたわずかな傷やほつれが原因で市場に流通されない生地) を使ったピクニックシートの開発・販売など、瀬戸内をキーワードに、部活的な活動の枠を超えた広がりを見せています。連載名:全国に広がるサードコミュニティ
自宅や学校、職場でもなく、はたまた自治会や町内会など地域にもともとある団体でもない。加入も退会もしやすくて、地域のしがらみが比較的少ない「第三のコミュニティ」のありかを、『ローカルメディアのつくりかた』などの著書で知られる編集者の影山裕樹さんが探ります。瀬戸内かわいい部とは?

瀬戸内の魅力的な風景やお店、出来事を発信し、内外に瀬戸内のファンを生み出そうとSNS上で始まった瀬戸内かわいい部という活動があります。「かわいい」という切り口を立てることで主に女性から共感を集め、現在 #瀬戸内かわいい部 が付けられたInstagramの投稿は1000を超えます。2年間で開催したリアルイベントで出会った約300名のうち50人程度は県外の人で、瀬戸内かわいい部のイベント目当てに今も頻繁に瀬戸内にやってきます。

特に明確なメンバーの条件があるわけではなく、主にSNS上でハッシュタグ#瀬戸内かわいい部をつけて写真を投稿する参加者もいれば、Slack上のコミュニティ運営やイベントの企画を行うコアメンバーまでその関わり方はさまざまです。

きっかけは2018年の西日本豪雨により、被災地に近い観光地・倉敷美観地区(倉敷市内の町並保存地区・観光地区)への観光客が激減したことにショックを受けた地元在住のデザイナー・やすかさんが、美観地区の魅力を発信する動画を制作し、SNSに投稿したことから。それを見て「観光地の復興支援になれば」と訪ねてきてくれた人たちに、岡山のおすすめスポットを案内して回ったのが、そもそもの始まりでした。

「その時までは正直、地元が好きじゃなかったんですが、外から訪れる人が岡山の桃のジュースの美味しさや、岡山のカフェのゆったりした雰囲気を率直に褒めてくれたのがうれしくて。もっと地元の魅力を発信したいと思って、まずは個人のSNSでハッシュタグをつけて写真をアップしようと考えました。でも、岡山だけだと狭いから、#瀬戸内かわいい部にしようと」(やすかさん)

瀬戸内かわいい部メンバーでシーグラスを探しに(画像提供/瀬戸内かわいい部)

瀬戸内かわいい部メンバーでシーグラスを探しに(画像提供/瀬戸内かわいい部)

SNS発信、リアルイベント、そしてプロジェクト

最初はハッシュタグだけの活動でしたが、次第に仲間どうしでカメラを持って尾道に行ったりとワンデーイベントを不定期で開催するようになります。そんななか、岡山出身で東京在住、現在はフリーランスでPRの仕事をしているみなみさんが参画し、瀬戸内かわいい部のホームページを立ち上げようと提案しました。

瀬戸内かわいい部のメンバー(画像提供/瀬戸内かわいい部)

瀬戸内かわいい部のメンバー(画像提供/瀬戸内かわいい部)

「ホームページをつくるにあたって、活動の柱を三つつくりました。一つはSNS発信。もう一つが撮影会や交流会などリアルイベントの開催。三つ目がプロジェクトです。単発ではなく、長期的に進められるプロジェクトがあったほうがいいんじゃないかと。私が東京にいて、なかなかイベントに参加できないので幽霊部員になっちゃうな……という思いもありました。デザインだったり記事を書いたりなど、離れているメンバーの関わりシロのある場所にしたかった」(みなみさん)

2019年4月開催/和菓子さんぽin倉敷美観地区(画像提供/瀬戸内かわいい部)

2019年4月開催/和菓子さんぽin倉敷美観地区(画像提供/瀬戸内かわいい部)

2019年4月開催/和菓子さんぽin倉敷美観地区(画像提供/瀬戸内かわいい部)

EVERY DENIMとの出会い

その後しばらくして、やすかさんは瀬戸内発・兄弟デニムブランドEVERY DENIMの島田舜介さんに出会います。そこで島田さんから「デニムの生地を生産する過程でわずかな傷が入り廃棄されるB反のデニムがある。そういうB反デニムから小物なんかつくったら面白いかもしれない」と言われ、メンバーに報告。するとメンバーから「だったらそれをプロジェクトにしませんか」と提案されます。こうして、瀬戸内かわいい部としてデニム生地を使った小物を企画開発するプロジェクトを立ち上げることがきまりました。

ホームページをつくるため、一度自分たちの活動の方向性を整理したのが功を奏し、第三の柱であるプロジェクトが動き始めます。最初は、瀬戸内が好きな人たちで気軽にハッシュタグを共有するゆるやかなコミュニティだったのが、より積極的な活動を行う集団として踏み出した瞬間でした。

ちなみに、プロジェクトで企画開発した商品は「ピクニックシート」。紆余曲折のうえピクニックシートに落ち着いた理由について、やすかさんはこう語ります。

「まず、瀬戸内と言えば青だよね、と。波の穏やかな海の青さ。次に、どこにでも連れていけて、使えば使うほど自分の色に馴染んでいくデニムの“相棒感”みたいなものを伝えたい。そして、出来上がった商品を持っている人同士が繋がって、瀬戸内好きな人の輪が広がってほしいな、という思い。これらを総合してピクニックシートに落ち着いたんです」(やすかさん)

(画像提供/瀬戸内かわいい部)

(画像提供/瀬戸内かわいい部)

離れたメンバー同士のやりがいをつくるには?

ところが、ここからが大変でした。離れたメンバーもいるコミュニティ内で意思疎通を図るために、主にSlackを使って交流していたのですが、いざ商品を開発しようとなると、納期や定価、販売方法など決めなければいけないことが盛りだくさん。ただ瀬戸内かわいい部は企業じゃなくてコミュニティ。「企業の商品開発ならまず納期や予算から逆算して考えるけれど、そういう条件や制約はいったん抜きにして、まずは自分たちが本当につくりたいものを考えてみてほしい」とスタートしたつもりでしたが、商売となるとメンバーからシビアな長文のコメントがバンバン投稿されて、やすかさんたちが驚くことも。

それもそのはず、瀬戸内かわいい部自体が実社会でそれぞれのスキルを持って活動するフリーランスや仕事人の集まりです。自分が関わるプロジェクトであるならばなおさら、妥協したくないという思いがみんなにあったことに気づかされました。こうしてオンラインのコミュニケーションの限界に気づいた運営メンバーは、可能な限りメンバーに直接会いに行って話すことにしました。

「個人的な話は目的が決まっているオンライングループ上では言い出しづらい。ある日、東京に住む同じ世代の女性メンバーと一回会って話してみたら、瀬戸内に関わりもなく、ものづくりのスキルもないので……と引っ込みがちだったんだけれど、保育士の仕事をされていて、アクティブラーニングに強い関心があり、熱心にお話ししてくれたのが印象的で。この熱量を発揮できるきっかけさえあればもっとおもしろくなる、そのために個人の関心やスキルをもっと活かしてもらえばいいんじゃないか、とその時思ったんです」(みなみさん)

商品のリリースに先立って、一泊二日の合宿を敢行。ここで普段出会えないメンバーの意見をすり合わせたそう(画像提供/瀬戸内かわいい部)

商品のリリースに先立って、一泊二日の合宿を敢行。ここで普段出会えないメンバーの意見をすり合わせたそう(画像提供/瀬戸内かわいい部)

メンバーそれぞれの想いが乗ったデニムプロジェクト。ピクニックシートを複数つなげるというコンセプトはみんなで共有していたけれど、デザイン一つとっても、例えばフリンジをつけたいとか、中綿を入れたいとか、角にはハトメかリボンか……などさまざまな意見がありました。そこで、サンプルお披露目会の直前に一泊二日の合宿を敢行。バチバチとした空気も流れたそうですが、徹底的に話し合うことで方向性が一つにまとまり、ようやく販売に踏み切ることができました。

スキルを活かしたギルド的集団に

2019年に香川県高松市に家族でUターンしてきたまみこさんは現在、瀬戸内かわいい部の「スポ根」担当。お二人のお子さんを抱えながら、フリーランスでWebコンテンツのディレクションやデザインをしています。ちょうど移住したころに瀬戸内かわいい部に参画しました。

「もともと、つまらないと思って地元を離れた自分が瀬戸内を知れる場所を探していたんです。入ってみれば、結婚しても、子どもがいても、仕事があっても、挑戦していいんだと思える場所でした。絶対的に強いパワーを持った人がいなくて、みんな平等という感覚が共有されていたのも大きくて。私にも協力できることがある、それを認めて受け入れてくれるのはとてもうれしかったです」(まみこさん)

まみこさんはピクニックシートをつくるにあたって広報スケジュールを設定したり、ターゲットは誰なのか?を決めるペルソナ会議をファシリテートしたりとプロジェクトが前進するためにご自身の経験やスキルを存分に活かすことができたと言います。デザイナーなので、急遽つくらなければならないWEB用バナー広告などのデザインも担当しました。

(画像提供/瀬戸内かわいい部)

(画像提供/瀬戸内かわいい部)

一方、やすかさんも本業はデザイナーなのでオンラインイベント用の動画 の制作はやすかさんが。他にもアパレルの仕事をしていて工場とのやりとり経験のあるメンバーがいて、仕様書をつくったり、実際の発注作業はその人が担当することに。情報発信が得意なメンバーは、瀬戸内かわいい部のnote担当、LINE @担当と、それぞれの役割が増えていき、さながらギルドのような集団になってきました。ただ、瀬戸内かわいい部はあくまで部活。商品をつくるのが目的ではなく、みんなで合宿したり、お互いのことを知ったり、瀬戸内を好きになっていくプロセスこそが重要、とやすかさんは語ります。

「みんなの居心地のいい場所にしたい、というのが一番。利益を追求するような活動でもないし、商品を完売させなければというミッションもない。一緒につくる過程そのものが楽しい時間であってほしいし、コミュニティに参加していることが誇りになるような、そんな場所にしていきたいです」(やすかさん)

移住フェアの様子(画像提供/瀬戸内かわいい部)

移住フェアの様子(画像提供/瀬戸内かわいい部)

(画像提供/瀬戸内かわいい部)

(画像提供/瀬戸内かわいい部)

瀬戸内かわいい部は、大人の文化祭

仕事とプライベートの中間に、部活的な活動が一つある生活ってわくわくしませんか? 三人が口をそろえて言うのが「文化祭」というキーワード。デニムプロジェクトは瀬戸内かわいい部にとって、いわば「大人の文化祭」でした。年に一度ガッと集中してものづくりに打ち込む。メンバーそれぞれがそれぞれの道のプロであるからこそ、つくるもののクオリティに妥協はしません。

「でも、最初に疲れちゃったらダメだよってアドバイスされて。その人は別のコミュニティを運営していて、デザインも頑張って、noteでの発信も頑張って、すごくクオリティ高いコミュニティだったんだけれど、疲れて辞めちゃったそうです。みんなお仕事や家庭がある中で、毎日大量のSlackが続くとさすがに辛い。楽しい気持ちを維持しながら全力を注げるようにしたいです」(みなみさん)

そこで、デニムプロジェクトが1年間の活動期間を終えてひと段落したことを機に、少しのあいだ充電期間をとることにしました。デニムプロジェクトの広まりを受けて、自治体が主催する移住フェアにも呼ばれるようになった瀬戸内かわいい部。瀬戸内内外のメンバーがいるコミュニティ自体に興味を持ってもらい、コミュニティ運営に関するトークショーに呼ばれることも増えてきました。しかし、周囲の期待に過度に応えすぎないことも重要です。次のプロジェクトに全力で取り掛かるため、休めるときはしっかり休む。それくらい緩急があったほうが、コミュニティは持続しやすいのかもしれません。

(画像提供/瀬戸内かわいい部)

(画像提供/瀬戸内かわいい部)

地域の魅力を発信するためのコミュニティというと、コミュニティビジネスとはどう違うの? という疑問も湧いてきます。NPO法人コミュニティビジネスサポートセンターのホームページによると、コミュニティビジネスとは「市民が主体となって、地域が抱える課題をビジネスの手法により解決する事業」と定義づけられています。コミュニティビジネスはあくまでビジネスであって、地域の経済的課題を解決することに重点が置かれています。

瀬戸内かわいい部はビジネスというよりは親睦団体であり、メンバー各々の自己実現、楽しいことをしたいという自発性が最も大事なポイントです。でも、地域を元気にしたり、盛り上げるのは必ずしもお金だけではないと思うんですよね。楽しそうにしている人たちのところには自然とモノ・コト・人が集まってくる。スタートして3年、まだまだ始まったばかりのコミュニティですが、瀬戸内かわいい部から地域の課題をあっと驚く方法で解決するアイデアや商品が生まれるのも、そんなに遠い未来の話ではないかもしれません。

●取材協力
瀬戸内かわいい部

お家での日常をおしゃれに撮るコツは? 人気インスタグラマーに聞いてみた

若者を中心に人気の写真投稿SNS「Instagram(インスタグラム)」。お部屋や日常の風景をアップしている人も多いけれど、上手に撮影するのは難しそう。そこで、人気インスタグラマーであるSakieさんとkyoooko.aさんに、暮らしをすてきに見せる撮影術を聞きました。
特別「カメラ女子」というわけではなかった

Sakieさんはフォロワー数6905人。札幌の「大きなワンルームのような一軒家」に夫と高校2年生と中学3年生の2人の娘さん、そして3歳のトイプードルという4人と1匹で暮らしています。時々顔を出すトイプードルの写真がキュートなアカウントです。

【画像1】明るく優しく、光にあふれる暮らしぶりがまぶしいSakieさんのInstagram(画像提供/Sakieさん)

【画像1】明るく優しく、光にあふれる暮らしぶりがまぶしいSakieさんのInstagram(画像提供/Sakieさん)

kyoooko.aさんはフォロワー数約1万8000人。東京都内の1Kの部屋に一人で暮らしています。一度一人暮らしをしたあと実家に戻り、二度目の一人暮らしをはじめてちょうど1年が経過したところ。家具などは以前実家に帰るときほとんど捨てて、いまは物をほとんど持っていないというミニマリスト。大好きな本は近所の図書館で借りることが多いそうです。

【画像2】ナチュラルなテイストのお部屋を撮影しているkyoooko.aさんのInstagram(画像提供/kyoooko.aさん)

【画像2】ナチュラルなテイストのお部屋を撮影しているkyoooko.aさんのInstagram(画像提供/kyoooko.aさん)

お二人にいつからInstagramを利用しているかをうかがってみると、Sakieさんは2年半前から、kyoooko.aさんは1年前からと、案外インスタ歴が長くないことが判明。そのわりにはお二人とも「インスタ映え」する写真を多く投稿されていて、コメントも上手です。

そこで、Instagramを始める以前にも写真を撮っていたり、何かに投稿したりしていたのかを聞いてみました。Sakieさんは「『365日1日1枚』というアプリと『Facebook』に投稿していました」とのこと。「写真撮影は好きでしたが、高いカメラは買えないのでトイカメラを使っていたこともあります」と、以前から興味をお持ちだったようです。

一方、kyoooko.aさんは「普段はまったく写真を撮りません。SNSによくある食事風景や、料理の写真も撮らないくらいなんですよ」と教えてくださいました。

日光の出ている時間がシャッターチャンス!?

Instagramを利用していて気になるのは、どんな写真をアップすれば「いいね」をもらえるのかということ。お二人は、どんなとき、どんなシーンを投稿しようと思うのでしょうか。

「暮らしのヒントを見つけたときや暮らしのこと、季節の変わり目、北海道らしさ、すてきなお店、トイプードルとの暮らし」など、Sakieさんは生活の折々に写真を撮ってみようと思うそうです。

「写真を撮ろう!と思っていると、Instagramに追いかけられる生活になってしまって大変なので、特に決めてはいません。なんとなく撮りたくなったときに撮ります」(kyoooko.aさん)

写真撮影時に気をつけていることやこだわりについては、二人とも一致しており、「なるべく日光の出ている時間帯に撮影します」と教えてくれました。スマホにつける小さな照明などのグッズもありますが、お部屋を自然に明るくきれいに写してくれるのは、やはり明るいお日さまだと分かります。

また、お二人は特別なカメラや、カメラのスペックが高いスマホを使っているわけではありません。Sakieさんは2015年冬に発売された「Xperia Z5」、kyoooko.aさんは「『iPhoneX』のカメラがすごいという話も聞きますが、まだ『iPhone5s』なんです。でもこれで十分きれいに撮れますよ」と笑って話します。

これだけでも驚きですが、お二人とも特別なアプリなども使わないというのです。加工はするとしても、インスタに最初から備わっているものを使う程度。Sakieさんはフィルターなしで、明るさは70から80にして、いつもトーンがおなじくらいの数値になるようにしているそうです。「そういえば、正面から取るのが好きなので、ななめからの写真がほとんどない気がします」(Sakieさん)。

kyoooko.aさんは「こまごまとした作業が面倒で、いやになってしまうので加工はしないことにしています。明るさも日光しだい」といいます。

【画像3】Sakieさんお気に入りの1枚(その1)、2017年10月19日撮影されたもので、札幌で初雪が降った翌日のお部屋の様子だそう(画像提供/Sakieさん)

【画像3】Sakieさんお気に入りの1枚(その1)、2017年10月19日撮影されたもので、札幌で初雪が降った翌日のお部屋の様子だそう(画像提供/Sakieさん)

【画像4】kyoooko.aさんお気に入りの1枚(その1)愛読している西加奈子さんの本が置かれた場所で、プロフィール画像にも使っている(画像提供/kyoooko.aさん)

【画像4】kyoooko.aさんお気に入りの1枚(その1)愛読している西加奈子さんの本が置かれた場所で、プロフィール画像にも使っている(画像提供/kyoooko.aさん)

大切なのは技術より心。思いがあれば上手に撮れる!?

最後に、上手に撮りたいと思っているかたへのメッセージを伺いました。

「上手に撮りたいという気持ちが大切です。日常の見え方が変わってきて、日が当たってすてきだなとか、窓の向こうの景色や、部屋を整えたくなる気持ちが生まれますし、撮って載せることから始まる想像力や緊張感、自分への厳しさも芽生えてくるでしょう。自分らしさも見つかると思います」(Sakieさん)

「いつも定位置から、定点観測的に撮影しています。最初はバリエーションが多いほうが、見てくれる人が楽しくてよいのかなと思っていましたが、気にしなくなりました。同じところで撮影することで、自分のパターンが出てきて記録になっていくのが楽しいですよ」(kyoooko.aさん)

奇をてらわず、自分らしいありのままの暮らしを正直に伝えること。そうした姿勢のりりしさが、写真の美しさを生むようです。

【画像5】Sakieさんお気に入りの1枚(その2)、大切な家族の愛くるしい姿(画像提供/Sakieさん)

【画像5】Sakieさんお気に入りの1枚(その2)、大切な家族の愛くるしい姿(画像提供/Sakieさん)

【画像6】kyoooko.aさんお気に入りの1枚(その2)撮影を続けるうち、自然に定点になったこの場所をいつも撮影している。明るい日差しがさし込む窓辺のベッドが印象的(画像提供/kyoooko.aさん)

【画像6】kyoooko.aさんお気に入りの1枚(その2)撮影を続けるうち、自然に定点になったこの場所をいつも撮影している。明るい日差しがさし込む窓辺のベッドが印象的(画像提供/kyoooko.aさん)

「インスタ映え」が流行語になりノミネートされ、たくさんのインスタ用アプリや機材が世の中にはあふれています。けれども、素敵な写真を撮れる人には、それらを超える「心の眼」があるように思います。部屋を少しだけ片づけて日光を招きい入れ、1枚写真を撮ってみてください。あなたの素直な暮らしが、そこに現れるかもしれません。

●取材協力
・sakie06さん
・kyoooko.aさん

お家での日常をおしゃれに撮るコツは? 人気インスタグラマーに聞いてみた

若者を中心に人気の写真投稿SNS「Instagram(インスタグラム)」。お部屋や日常の風景をアップしている人も多いけれど、上手に撮影するのは難しそう。そこで、人気インスタグラマーであるSakieさんとkyoooko.aさんに、暮らしをすてきに見せる撮影術を聞きました。
特別「カメラ女子」というわけではなかった

Sakieさんはフォロワー数6905人。札幌の「大きなワンルームのような一軒家」に夫と高校2年生と中学3年生の2人の娘さん、そして3歳のトイプードルという4人と1匹で暮らしています。時々顔を出すトイプードルの写真がキュートなアカウントです。

【画像1】明るく優しく、光にあふれる暮らしぶりがまぶしいSakieさんのInstagram(画像提供/Sakieさん)

【画像1】明るく優しく、光にあふれる暮らしぶりがまぶしいSakieさんのInstagram(画像提供/Sakieさん)

kyoooko.aさんはフォロワー数約1万8000人。東京都内の1Kの部屋に一人で暮らしています。一度一人暮らしをしたあと実家に戻り、二度目の一人暮らしをはじめてちょうど1年が経過したところ。家具などは以前実家に帰るときほとんど捨てて、いまは物をほとんど持っていないというミニマリスト。大好きな本は近所の図書館で借りることが多いそうです。

【画像2】ナチュラルなテイストのお部屋を撮影しているkyoooko.aさんのInstagram(画像提供/kyoooko.aさん)

【画像2】ナチュラルなテイストのお部屋を撮影しているkyoooko.aさんのInstagram(画像提供/kyoooko.aさん)

お二人にいつからInstagramを利用しているかをうかがってみると、Sakieさんは2年半前から、kyoooko.aさんは1年前からと、案外インスタ歴が長くないことが判明。そのわりにはお二人とも「インスタ映え」する写真を多く投稿されていて、コメントも上手です。

そこで、Instagramを始める以前にも写真を撮っていたり、何かに投稿したりしていたのかを聞いてみました。Sakieさんは「『365日1日1枚』というアプリと『Facebook』に投稿していました」とのこと。「写真撮影は好きでしたが、高いカメラは買えないのでトイカメラを使っていたこともあります」と、以前から興味をお持ちだったようです。

一方、kyoooko.aさんは「普段はまったく写真を撮りません。SNSによくある食事風景や、料理の写真も撮らないくらいなんですよ」と教えてくださいました。

日光の出ている時間がシャッターチャンス!?

Instagramを利用していて気になるのは、どんな写真をアップすれば「いいね」をもらえるのかということ。お二人は、どんなとき、どんなシーンを投稿しようと思うのでしょうか。

「暮らしのヒントを見つけたときや暮らしのこと、季節の変わり目、北海道らしさ、すてきなお店、トイプードルとの暮らし」など、Sakieさんは生活の折々に写真を撮ってみようと思うそうです。

「写真を撮ろう!と思っていると、Instagramに追いかけられる生活になってしまって大変なので、特に決めてはいません。なんとなく撮りたくなったときに撮ります」(kyoooko.aさん)

写真撮影時に気をつけていることやこだわりについては、二人とも一致しており、「なるべく日光の出ている時間帯に撮影します」と教えてくれました。スマホにつける小さな照明などのグッズもありますが、お部屋を自然に明るくきれいに写してくれるのは、やはり明るいお日さまだと分かります。

また、お二人は特別なカメラや、カメラのスペックが高いスマホを使っているわけではありません。Sakieさんは2015年冬に発売された「Xperia Z5」、kyoooko.aさんは「『iPhoneX』のカメラがすごいという話も聞きますが、まだ『iPhone5s』なんです。でもこれで十分きれいに撮れますよ」と笑って話します。

これだけでも驚きですが、お二人とも特別なアプリなども使わないというのです。加工はするとしても、インスタに最初から備わっているものを使う程度。Sakieさんはフィルターなしで、明るさは70から80にして、いつもトーンがおなじくらいの数値になるようにしているそうです。「そういえば、正面から取るのが好きなので、ななめからの写真がほとんどない気がします」(Sakieさん)。

kyoooko.aさんは「こまごまとした作業が面倒で、いやになってしまうので加工はしないことにしています。明るさも日光しだい」といいます。

【画像3】Sakieさんお気に入りの1枚(その1)、2017年10月19日撮影されたもので、札幌で初雪が降った翌日のお部屋の様子だそう(画像提供/Sakieさん)

【画像3】Sakieさんお気に入りの1枚(その1)、2017年10月19日撮影されたもので、札幌で初雪が降った翌日のお部屋の様子だそう(画像提供/Sakieさん)

【画像4】kyoooko.aさんお気に入りの1枚(その1)愛読している西加奈子さんの本が置かれた場所で、プロフィール画像にも使っている(画像提供/kyoooko.aさん)

【画像4】kyoooko.aさんお気に入りの1枚(その1)愛読している西加奈子さんの本が置かれた場所で、プロフィール画像にも使っている(画像提供/kyoooko.aさん)

大切なのは技術より心。思いがあれば上手に撮れる!?

最後に、上手に撮りたいと思っているかたへのメッセージを伺いました。

「上手に撮りたいという気持ちが大切です。日常の見え方が変わってきて、日が当たってすてきだなとか、窓の向こうの景色や、部屋を整えたくなる気持ちが生まれますし、撮って載せることから始まる想像力や緊張感、自分への厳しさも芽生えてくるでしょう。自分らしさも見つかると思います」(Sakieさん)

「いつも定位置から、定点観測的に撮影しています。最初はバリエーションが多いほうが、見てくれる人が楽しくてよいのかなと思っていましたが、気にしなくなりました。同じところで撮影することで、自分のパターンが出てきて記録になっていくのが楽しいですよ」(kyoooko.aさん)

奇をてらわず、自分らしいありのままの暮らしを正直に伝えること。そうした姿勢のりりしさが、写真の美しさを生むようです。

【画像5】Sakieさんお気に入りの1枚(その2)、大切な家族の愛くるしい姿(画像提供/Sakieさん)

【画像5】Sakieさんお気に入りの1枚(その2)、大切な家族の愛くるしい姿(画像提供/Sakieさん)

【画像6】kyoooko.aさんお気に入りの1枚(その2)撮影を続けるうち、自然に定点になったこの場所をいつも撮影している。明るい日差しがさし込む窓辺のベッドが印象的(画像提供/kyoooko.aさん)

【画像6】kyoooko.aさんお気に入りの1枚(その2)撮影を続けるうち、自然に定点になったこの場所をいつも撮影している。明るい日差しがさし込む窓辺のベッドが印象的(画像提供/kyoooko.aさん)

「インスタ映え」が流行語になりノミネートされ、たくさんのインスタ用アプリや機材が世の中にはあふれています。けれども、素敵な写真を撮れる人には、それらを超える「心の眼」があるように思います。部屋を少しだけ片づけて日光を招きい入れ、1枚写真を撮ってみてください。あなたの素直な暮らしが、そこに現れるかもしれません。

●取材協力
・sakie06さん
・kyoooko.aさん