所在地:杉並区高円寺南11万3,000円 / 33.19平米
中央線「高円寺」駅 徒歩8分
部屋の目玉は約20畳のルーフバルコニー。夕暮れ空の下、友人を招いてアウトドアダイニングなんていかがでしょう。
まずは、ページ下部にある間取り図をご覧ください。屋外スペースを含めると実に長い間取りです。部屋とルーバルが繋がっていないし、キッチンが玄関廊下にあるし。モダンで便利な作 ... 続き>>>.
圧倒的に不動産情報が多いですが。。。。
所在地:杉並区高円寺南
所在地:世田谷区上用賀
所在地:小平市上水南町兵庫県の南東部に位置し、大阪府と接している尼崎市。「SUUMO住みたい街ランキング2024関西版」では自治体ランキングの総合順位で過去最高の19位にランクイン。特にシングル男性では8位、夫婦のみ世帯では16位と若い世代からの人気が高まっている。その要因を探ってみよう。
大阪駅まで最短で6分、非常に便利な交通アクセスが魅力通称「あま」、電話番号の市外局番は「06」と大阪市と同じで、他地域の人からは「大阪じゃないの?」といわれる尼崎市であるが、れっきとした兵庫県の街。市内は東西に、北から阪急神戸線、JR東海道線、阪神本線の3線が並行して通っている。JR尼崎駅から大阪駅までは一駅6分(新快速)、阪神尼崎駅から大阪梅田駅も一駅7分(直通特急)と大阪とは至近。JR尼崎駅からは東西線を利用すれば北新地や京橋へも直通、阪神尼崎駅から阪神なんば線を利用すれば大阪難波や奈良方面までも直通と、非常に便利な交通アクセスをもつ街でもある。
2023年のプロ野球日本シリーズでは阪神とオリックスが対決し、それぞれの本拠地「阪神甲子園球場」と「京セラドーム大阪」を阪神なんば線が結ぶことから「なんば線シリーズ」とも呼ばれた。尼崎市はその中間に位置しており、市内各地でも非常に盛り上がった。「2024住みたい自治体ランキング」でも尼崎の魅力として「いろいろな場所に電車・バスで移動しやすい」という項目が2位に挙げられているが、通勤・通学やショッピングはもちろん、エンターテインメントや余暇を楽しむためも便利な街であることが評価されているのかもしれない。
また、尼崎は市内全体が平坦で道路網も整備されたコンパクトシティという特徴をもち、自転車の利用にも適している。市も事故防止のルール指導、駐輪場整備、自転車道の整備、盗難防止対策などを実施。積極的に自転車を安全・安心・快適に利用できるまちづくりを進めている。さらに、3路線をタテに結ぶように路線バスが尼崎全体をカバーしているため、南北の交通アクセスも良好だ。

JR尼崎駅は東西線と宝塚線が分岐する交通の要所(写真/PIXTA)
駅周辺の再開発が起爆剤となり、住宅供給も活発に「2024住みたい街ランキング」では、尼崎市の一番の魅力として挙げられているのが「コストパフォーマンスがよく便利なお店や飲食店がある」というポイント。また同ランキングで発表している、交通利便性や生活利便性が高いのに家賃や物件価格が割安なイメージがある駅を選ぶ「穴場だと思う街(駅)ランキング」でも、上位10位までの中に尼崎市にある駅が3駅(4位/阪神本線尼崎駅、7位/JR東海道本線尼崎駅、10位/阪急神戸線塚口駅)もランクインしている。古くからの商店街が残り、人情味溢れるやりとりが楽しめる街である一方、再開発により尼崎市内の主要駅の周辺エリアが整備されていることがこれらの評価に寄与しているといえるだろう。
たとえば、キリンビール尼崎工場の跡地があったJR尼崎駅周辺には、百貨店やあまがさきキューズモールが入る複合施設が整備されており、駅とはペデストリアンデッキで直接繋がっていることもあり非常に便利だ。駅の周辺では高層マンションを中心とした住宅が立ち並び若い子育て世帯の流入につながっている。

JR尼崎駅前、再開発により誕生した複合商業施設。周辺には医療施設なども整備されている(写真撮影:井村幸治)

JR尼崎駅の周辺では分譲マンションも立ち並んでいる(写真撮影:井村幸治)
また市内ではJR塚口駅の駅前で工場敷地の再開発により、都市型のコンパクトシティ「ZUTTOCITY」が整備され、マンションと一戸建てあわせて1200戸以上の住宅と商業施設のほか、道路や公園が誕生している。今後の予定では、阪急神戸線の武庫之荘駅と西宮北口駅間に新駅(武庫川新駅(仮称))設置の計画もある。
こうした駅を核とした再開発が進むことで、市内だけでなく広域からの注目を集めるようになっている。その結果、尼崎市内での住宅は一戸建て・マンションとも安定した供給が続いている。既存ストックを地域の資源として活かし、守り、育てることで都市空間の質の向上を図り、持続可能な都市をめざすという市の都市計画が反映されたまちづくりが行われているといえるだろう。

「尼崎は便利だけど、治安はどうなの?」と思う方もいるだろう。尼崎市では治安の悪いイメージを払拭するための取り組みも積極的に行っている。たとえば、街頭犯罪防止の取り組みとして、ひったくり現場表示板の掲示、「青パト」を使った防犯パトロールの強化、警報器付きロック装置を付けたダミー自転車を活用する盗難対策「Alar-mmy.(アラーミー)」などの施策だ。結果、刑法犯認知件数は、取り組み前の平成24年(2012年)と比べ、9年間で約63%減少している。令和5年度(2023年度)には市内にあった暴力団事務所もゼロになり、安心して暮らすことができる街へと生まれ変わっている。
子ども向けの施設の開発も進んでおり、2022年には関西初のキッズパーク「モーヴィあまがさき」がオープンした。ボートレース尼崎の一部を活用した親子の遊び場で、発達段階に応じて分けられたゾーンで思い切り身体を動かすことができる場所だ。ボーネルンド社や行政が協働し子ども向けのスペースやイベントを開催しており、なかなか予約が取れないほどの人気となっている。

ボートレース尼崎に隣接する水明公園では思い思いに遊ぶ親子連れの姿も(写真撮影:井村幸治)
また、2025年3月には阪神大物駅に近接する小田南公園の整備によって、阪神タイガースのファーム施設を中心とした「ゼロカーボンベースボールパーク」が誕生する予定。ベースボールファンだけでなく、家族で楽しめる憩いの場としても注目を浴びそうだ。
豊富な種類の子育て支援、安心して暮らすことのできる環境その他にも、尼崎市では子育てを世代に向けたさまざまな施策も実施している。たとえば乳幼児等医療費助成制度により、就学前の児童は通院費の自己負担が不要となる。さらに、高校生までは入院費の自己負担も不要だ。また妊娠、出産、育児に関する不安や困りごとなど、すべての妊婦や子育て世帯に寄り添い必要な支援につなぐ「伴走型相談支援」と、出産育児関連用品の購入や子育てサービス等の負担軽減を図る「経済的支援(出産・子育て応援給付金)」を一体的に実施している。他にも市内には「すこやかプラザ」「つどいの広場」が設置されており、子育て中の親子が気軽に集まって仲良く遊んだり、お母さんやお父さんが情報交換や交流を行うことのできる場を提供。アドバイザーによる子育て相談や、子育てに関する講習・イベントも開催されている。
街全体としては高齢化が進んでいるものの、駅周辺の再開発が進みマンション供給も増加したことから若い世代も増えている尼崎。高い利便性とコストパフォーマンスの良さは今後も評価されていくだろう。治安や子育てに対する取り組みも充実してきており、さらに注目度はアップしていく可能性が高い。
東京私大教連が公表した「2023年度 私立大学新入生の家計負担調査」によると、私大生への仕送りの額は低水準にとどまっている一方で、家賃などの住居費の負担は増えているという。入学にかかる費用も上がりつつあるというので、調査結果を詳しく見ていくことにしよう。
【今週の住活トピック】
「2023年度 私立大学新入生の家計負担調査」を公表/東京地区私立大学教職員組合連合(東京私大教連)
東京私大教連の調査の対象は、首都圏(1都3県)の私立大学・短期大学13校に2023年度に入学した新入生の家庭。受験から入学までの費用は、自宅通学者が162万3181円(前年度比で1万901円増額)、自宅外通学者が230万2181円(前年度比で4万6801円増額)となり、いずれも過去最高額となった。
特に自宅外通学者では、物価高による「生活用品費」の支出増が大きく、「家賃」や「敷金・礼金」の住居費も上昇している。一方、「受験費用」は1万1500円減額となり、受験校数を減らすなどで費用を抑えていることがうかがえる。
■受験から入学までの費用(住居別)

(出典:東京私大教連「2023年度 私立大学新入生の家計負担調査」より転載)
仕送りの平均月額は8万9300円、家賃の平均月額は6万9700円自宅外通学の場合、「仕送り額」の平均月額は8万9300円。最近はおおむね横ばいで推移している。(5月は入学直後の新生活や教材の準備で費用がかさむため、6月以降の仕送り額で平均を算出している。)
ところが、「家賃」は上がり続けている。平均月額は6万9700円で、前年より2400円増え、過去最高となった。その結果、年々「仕送り額」と「家賃」の差が縮まり、仕送り額から生活費に充てられる金額が減少する形となっている。平均月額の差額は1万9600円なので、30日で割ると約653円となり、おおむね1日653円で生活することになる。なかなか厳しい状況だ。
■「6月以降の仕送り額(月平均)と「毎月の家賃」の推移 ~月平均の仕送り額は8万9300円

(出典:東京私大教連「2023年度 私立大学新入生の家計負担調査」より転載)
さらに、仕送り額の平均月額に占める家賃の平均月額の割合を見ると、実に78.1%を占め、過去最高の比率になった。
■「6月以降の仕送り額(月平均)に占める「家賃の割合」の推移 ~仕送り額に占める家賃の割合は8割に迫る

(出典:東京私大教連「2023年度 私立大学新入生の家計負担調査」より転載)
筆者はこのコーナーで、2016年にも同じ調査結果を取り上げた(「首都圏の私大生の平均家賃は6万1200円、どんな物件がある?」)が、2015年度の調査結果(70.6%)について書いていたので、「仕送り額に占める割合は初めて7割を超えることとなった。」としている。それからさらに上昇して、2023年度には8割近くにまで達しているのだ。
では、家賃の平均月額6万9700円で東京の賃貸を探すことを考えてみよう。SUUMOで東京都の家賃相場情報を見てみる(2024年4月10日更新情報)と、ワンルームなら23区内でも家賃相場が7万円を切る区があることがわかった。中野区、杉並区、北区、板橋区、練馬区、足立区、葛飾区、江戸川区だ。このほかの区でも、築年数が古かったり駅から距離があったりする物件なら、7万円を切る家賃のものが見つかるかもしれない。1K/1DKの広さで家賃相場が7万円を切るとなると、23区にはなかったが、立川市、武蔵野市、三鷹市、調布市を除いた東京都下の地域が該当した。
都心部から少し離れれば、希望の家賃や広さの賃貸が探せる状況ではあるようだ。ただし、セキュリティーがしっかりしているとか、宅配ボックスが欲しいなどの条件をつけていくと家賃は上がっていく。物件探しには、優先順位をしっかりつける必要があるだろう。
●関連サイト
東京地区私立大学教職員組合連合(東京私大教連)「2023年度 私立大学新入生の家計負担調査」
所在地:八王子市加住町
所在地:港区白金台
所在地:渋谷区桜丘町長野県長野市の善光寺門前エリアは、若い世代を中心に空き家をリノベーションした店が増え、にぎわいを創出しているまちとして、全国的にも注目が集まっています。その立役者として知られるのが、空き家専門不動産会社「MYROOM」の倉石智典さん。事業を始めたい人に空き家を仲介するに至った思い、長年まちを案内している「空き家見学会」のこと、新たな拠点でスタートした“まちづかい”への取り組みについて、お話をうかがいました。
空き家活用で150店舗オープン。空き家専門不動産会社「MYROOM」長野駅からぶらぶら歩けば30分ほど。古い街並みが残る善光寺門前エリアでは、ここ20年ほどの間、空き家を活用した小さな店舗が次々とオープンし、にぎわいを生み出しています。

観光客でにぎわう善光寺表参道(撮影/新井友樹)
この界隈で事業を始めたい人と空き家をつないでいるのは、2010年に創業した「MYROOM」代表の倉石さん。MYROOMはいわゆる通常の新築・中古物件は取り扱わない、空き家専門の不動産会社です。設計事務所と建設業も兼ねていて、リノベーションの設計施工や管理までワンストップで行っています。

「空き家の未来をデザインする」をコンセプトにMYROOMを立ち上げた倉石智典さん(撮影/新井友樹)
これまで倉石さんが事業者と空き家をマッチングした事例は、ゲストハウスに雑貨店、ブックカフェなど、およそ150軒にものぼります。そもそも、なぜ空き家専門の不動産会社を始めようと思ったのでしょうか?
「空き家を専門に扱っている不動産会社がなかったからです。なにも、地域活性化とかまちににぎわいを、と考えたわけではなくて、ビジネスとして、ニッチなところを狙ったというわけです」と、倉石さんは穏やかに話します。
創業当初、空き家は全国的に問題になり始めていました。ご多分に漏れず、長野市中心部の善光寺界隈も、使い手のいない古い空き家が増え続けていたころ。「建物って、地理や産業の成立ちを背景に建てられてきたじゃないですか。今は時代が変わって、ライフスタイルも変わった。人生の中で人は移動するし、人口もどんどん減っている。地理も産業も引継ぐ必要性はなくなりましたよね。どこでも住めて誰でも家が手に入る。このままでは、空き家だらけになっていってしまいます」

倉石さんの仲介で、築70年の建物がカフェと古着屋に生まれ変わった(撮影/塚田真理子)
「一般的な不動産会社では、不動産価値のない古い空き家は取り扱いません。一方で、空き家バンクなどでは、行政が費用を出して無料でサイトに掲載をしています。いわゆる“1円物件”などもそう。でも、これまで大切に引き継いできた土地や家を使わないからといって使い捨ててしまうようで悲しいし、違和感を感じていました」
空き家は決して単体で存在していたわけではなく、古く長く、地域で引き継がれてきたものです。その大切な建物を、使いたい人が楽しく使わせてもらう、それがまちを引き継いでいくことにつながる。そんな思いが倉石さんのなかにはあったのです。

古さが味わいに。カフェも古着店も客層は幅広いという(撮影/塚田真理子)
おもしろいのは、小商いをしてみたい事業者と空き家をマッチングするその手法です。倉石さんは事業者の「やりたいこと」をヒアリングし、倉石さんの頭の中にあるまちの地図や歴史や現在地、人の流れなどをもとに、「ここならうまくいくんじゃないか」という相性のいい物件候補を提案してくれます。
「空き家は歩いて見つけて、所有者を調べて訪ねて行って、貸していただけそうなところはストックしています。でも、所有者がわかっても貸さない、貸せないとか、いろいろな事情がありますよ」と倉石さん。そう、大家さんに頼まれて仲介しているわけではないので、順番が逆なのです。その建物はかつてどう使われていたのか、まちのなかでどんな存在だったのか。この家に合うのはどんな人かな、今ここでどんな商売をやったら地域に溶け込めるかな……そんなことを日々妄想している倉石さんだからこそのマッチング方法なのです。
その妄想をみんなでできたらいいな、という思いで毎月開催しているのが、2011年から続く「空き家見学会」です。
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MYROOMでは空き家の鍵を数十軒分預かっているといいますが、物件情報はウェブサイトなどに公開されていません。このエリアで空き家を活用して店を開きたいと考える人は、まず「空き家見学会」に参加することからスタートします。
空き家見学会とは、2011年、善光寺西之門にある編集企画室「ナノグラフィカ」とともに始めたもの。現在は、倉石さんが2021年に立ち上げた新拠点「R-DEPOT(アールデポ)」が引き継ぎ、毎月1回行っています。R-DEPOTについてはのちほど紹介するとして、まずは空き家見学会に同行させてもらいました。

現在は、「R-DEPOT」の若きスタッフがまちを案内している(撮影/新井友樹)
見学会の参加者は、半数が長野市内、半数は市外または県外の人だそう。多いときは10名、平均5~6名が参加します。予約制で時間は2時間ほど、参加費は無料です。

R-DEPOTに集合したら、まずは案内人、参加者ともに自己紹介(撮影/新井友樹)

観光客はなかなか足を踏み入れない路地へ。昔の地形やかつてこの場所にあったものなど、歩きながら紹介してくれる(写真撮影/新井友樹)
空き家見学会というネーミングですが、いわゆる物件紹介というものとはわけが違います。物件までの道すがら、今駐車場になっているところには昔こういうお店があって、こんなふうににぎわっていて、細い路地にはかつて川が流れていて……といったように、まちの案内も繰り広げられます。建物は3~4件見学するものの、間取りやスペック、家賃の紹介はありません。というか、貸せるかどうかも決まっていないとのこと。
「空き家になる前の暮らしぶりを参加者の方にはお伝えしています。大家さんやご近所さん、大工さんから聞いたエピソードなども交えたりして」(倉石さん)

この日見た建物は3軒。古いガラスのレトロさにグッとくる(撮影/新井友樹)

ここは昔タバコ屋さんだったところ。2階は住居だった模様(撮影/新井友樹)

坂の上に立つだけに、2階の窓を開けると、眺めがいい!(撮影/新井友樹)
100年前にどうしてここに建物が建ったのか。使われなくなったとき、とっくに壊して駐車場にすることもできた、けれど壊さなかった理由ってなんだろう。代々ご先祖様から引き継いでいる建物だから。街並みが壊れるから。ご近所に申し訳ないから。まちのおかげで商売できていたから――その背景を知ることが大切だと思い知ります。
まちを歩き、実際の建物を見ながらそんな話を聞いていると、当時の風景がよみがえるように想像できました。そしてこれからここをどう使ったら楽しいのだろう?と、これからの“まちづかい”のことも想像できた気がします。これは、画面上ではきっとわかりえなかったことで、現場だからこそ感じられた体験なのでしょう。

大通り沿いに立つ建物。昔の記憶やエピソードがその家ごとに詰め込まれている(撮影/新井友樹)

古い農機具のポスターや看板も残されていて、時が止まったかのよう(撮影/新井友樹)
1件目の空き家は築100年くらいで、もともとは篩(ふるい)屋さんだったとか。2軒目は元タバコ屋。玄関横に窓口があって、ここでコーヒースタンドとかやったら楽しいだろうな。3軒目の広い農機具店は、ガラスの掃き出し窓から見える小さな中庭が素敵で、シンボルツリーみたいな木を植えたら映えそう。こんなに広いならシェアハウスがいいかも?と、思わず妄想がふくらんだのも楽しい経験でした。
R-DEPOTに戻ったら、見学会参加者は「門前暮らし相談所」にも参加できます。門前でしたいこと、使いたい空間についてなど、スタッフと個別に相談できます。この日一緒に参加した男性は、学生時代この辺りに通っていたといい、得意な語学を活かして物販の店をやりたいと語っていました。果たして次のステップに進めたのでしょうか。
「同じ場所を見ても、どう受け止めるかは人によって違います。ここを引き継ぎたいと思うかどうか。いい人がいい使い方をしてくれたら、大家さんも、建物も、地域もみんなが喜んでくれます。残したい人と使いたい人の手助けになれればいい。選択肢のひとつを提示できたらいいなと思っています」(倉石さん)
倉石さんがつないだ、若きオーナーと空き家の現在地
カフェ「POLKA DOT CAFE」のオーナー・山田大輔さん(右)と、古着店「COMMA」オーナーの駒込憲秀さん(左)(撮影/塚田真理子)
実際に倉石さんの紹介で空き家を借り、商いを始めた2組のオーナーさんにも話を聞いてきました。
まず1組目は、1階でカフェ、2階で古着屋を営む幼馴染のふたりです。きっかけは、30歳で東京からUターンし、地元で飲食店を始めたいと思った山田さんが、同級生の駒込さんに声をかけたこと。「彼が、いつか自分で古着屋をやりたいと話していたのを思い出したんです。2人でやれたら家賃も安く済むと思いました。善光寺門前エリアは古い建物をリノベしたおしゃれな店が多いから、若い人たちが来てくれるんじゃないかなと」(山田さん)。

古い建物は山田さんが希望していたレトロポップな雰囲気によく合う。倉石さんに相談しながら、自分たちも壁を塗るなどして改装した(撮影/塚田真理子)

残置物のアイスケースが活躍。「床は知り合いの子どもがペンキのついた靴で歩き回っちゃったので、いっそ、それで行こうか、と」(撮影/塚田真理子)
翌月の空き家見学会まで待つ時間が惜しく、MYROOMの倉石さんに直接連絡を取り、このまちでやりたいことを語ったふたり。広くて2店舗を仕切れそうな建物を3件紹介してもらい、最初に見たこの2階建ての建物に決めました。
「築70年以上ですかね。昔はそば屋さんだったようですが、物置状態で。住まいだった2階は床が割れていたりして、正直いうと最初はピンときませんでした。でも、1階と2階で店が分けられるのはいいなと思ったし、原状回復不要で好きなようにリノベーションできるから、自分たちの世界観がつくりやすい。MYROOMさんが手がけたほかのリノベ物件もおしゃれだったので、そのままお願いすることにしました」(山田さん)。
費用を抑えるため、自分たちでタイルを貼ったり壁を塗ったりしたことも、愛着が湧く要因に。ちなみに、上の写真のアイスケースは残置物。「これが使えたのもよかった。店でかき氷を出したかったので、アイスストッカーとして大活躍しています」(山田さん)

カフェを通り、奥の階段で2階へ。天井が低いので頭上に注意(撮影/塚田真理子)

かつて押入れだったところも活用してディスプレイ(撮影/塚田真理子)

「地元の成人式で『自分の店を持ちたい』とスピーチしたのを大ちゃん(山田さん)が覚えていてくれて、声をかけてくれたから独立に踏ん切れました」と駒込さん(写真撮影/塚田真理子)
敷金・礼金は1カ月ずつ、改装費は1階が500万円、2階が100~200万円ほどかかりました。「家賃は1棟で6万円なので、3万円ずつ。コロナ禍には、なにより固定費が低いことのありがたみを痛感しました」とふたりは声をそろえます。
2018年春に2つの店がオープンしてはや5年。その間、同じ通りには革小物の店、美容室、イラストレーターによるTシャツの店など、同様に空き家を活用した店が次々とオープンしています。「昔から商売しているお隣の店主さんに、最近若い人たちが歩くようになってきたねと言われました。歩いてあちこち店をめぐれたら楽しいし、まちもにぎわいますよね」
3階建ての団地の一室がおしゃれな焼き菓子店に
HEIHACHIRO BAKE SHOPオーナーの小渕哲さん。戸隠から車で40分ほどかけて毎日通勤している(撮影/塚田真理子)
2019年、築50年ほどの元NTTの社宅だった団地の一室にオープンしたのが、「HEIHACHIRO BAKE SHOP」です。店主の小渕哲さんは、スキー場がある山のリゾート、長野市戸隠で妻とともに焼き菓子店を営んでいましたが、長野市のまちなかにも出店したいと考え、ネットで情報を収集。
「まちづくりにも興味があって、数年前には空き家見学会にも参加したことがあったんです。そのときから、店というのはまちをつくる大事な要素なんだなと考えていました」
MYROOMの倉石さんとも面識があったことから、事業計画書を持参して相談してみることに。そこで紹介してもらったのが、このCAMPiT本郷団地でした。
「駐車場が6台確保できたことが決め手になりました。ここ長野市三輪は門前エリアから車で6~7分と少し離れた住宅街で、調べてみると市内でもかなり人口が多い。地域のお客さまに日常的に利用してもらえたらと思ったのです」

信州大学とのプロジェクトで既に完成していたというウッドデッキ。天気がいい日はパラソルとベンチを設置。ここで焼き菓子を食べることもできる(撮影/塚田真理子)
もとの間取りは3LDK。「完成させてから入居者を募集するのではなく、住み手や使い手の想いに合わせて自由に使えるようにしたい」という倉石さんの考えから、内装や設備はあえて改装しないまま残されていました。
リノベーションは、雑誌の写真など小渕さんが好きなテイストを提示して、倉石さんやMYROOMの施工担当者と相談しながらつくり上げました。水回りなどは移動させたため、配管工事などに費用がかかったといいます。リノベーションとの総額はおよそ800万円。
現在、この団地にはHEIHACHIRO含め4つの店舗と会社が入っていて、ほかに住宅としても活用されているそうです。

床は工事現場で使っていた足場材を再利用。古道具店で購入した棚に焼き菓子を陳列している。人気はマフィンとスコーン(撮影/塚田真理子)
さらに小渕さんは、HEIHACHIROの経営が軌道に乗ったころ、かねてからやってみたかったドーナツ店の開業に取り掛かります。善光寺門前エリアにより近い立地で空き家がないか倉石さんに相談したところ、ちょうどR-DEPOTを立ち上げるべく、長野市西後町の元NTTのビルを改装中だったタイミング。
「ビルの離れのようなところに、倉庫だったのか、守衛さんがいたところなのか、6.5坪ほどの空間があったのです。この辺りは官公庁に近く人通りもあるうえ、R-DEPOTにはさまざまな企業も誘致していて、集客も望めそう。そこで、テナントのようなかたちで入居させてもらうことにしました」(小渕さん)。

左がR-DEPOT、右が小渕さんのドーナツ店「LAGOM DOUGHNUT & DRINK(ラーゴム ドーナツアンドドリンク)」(撮影/新井友樹)

路地裏感があってなんだかワクワクする店構え(撮影/塚田真理子)
こちらはどこか路地裏風の、趣のあるロケーションが魅力。厨房設備を入れてドーナツを製造、窓越しに販売するスタイルです。
長野駅と善光寺を結ぶ中央通りから1本入ったところですが、中央通りと比べると家賃は1/3くらいに抑えられているとか。平日はサラリーマン、週末は観光客と、客層は違うものの日中は常に人の流れがあり、気軽にドーナツを買い求める人の姿でにぎわっています。
「ここ(NTT)で昔働いていたとか、団地の焼き菓子店の方は昔住んでいたとか、そういうお客様も来てくださって、懐かしがってくださるのがうれしいです」

路地裏感があってなんだかワクワクする店構え(撮影/塚田真理子)
“まちづかい”の拠点、R-DEPOTが始動
R-DEPOTは2022年6月に完成。元電報局で女性の多い職場だったため、1階と3階は女性用トイレのみというのが建物の歴史を物語る(撮影/新井友樹)
最後に、倉石さんが設立した新拠点「R-DEPOT(アールデポ)」について話をうかがいました。R-DEPOTがあるのは、長野駅と善光寺のほぼ中間地点に立つ築50年ほどの3階建てビルで、元NTTの電報局だったところ。5年以上使われていなかったこの建物を一棟丸ごと借り、「移住創業、まちづかいの拠点」というコンセプトのもと活動をスタートしました。
1階は、R-DEPOTが運営する古道具店とカフェ、オフィス。2・3階は、クリエイターやIT企業など10社ほどに転貸しています。なかには長野県庁がサテライトオフィスとして入居して仕事をしていたり、NHK長野放送局がサテライトスタジオとして1階ショップ横で「善光寺monzen studio」と題するテレビ・ラジオの放送も行っていたりしています。

味のある家具や食器などが並ぶR-SHOP(撮影/新井友樹)
1階の古道具店「R-SHOP」は、取り壊される建物からレスキューした家具や雑貨などを、次の使い手につなげるための場所。奥には古材のストックルームもあり、リノベーションの際に再利用したりしています。
「たとえば食器も、お祝いのときやお客さんが来たときに使って、またちゃんと保管しておいたような、とっておきのものもあるんです」と倉石さん。代々大切に受け継がれてきたものは、これからも想いを引き継ぎながら使ってほしい。1階は誰でも利用もできるので、ふらりと立ち寄って、気軽に手に取ってみられるのもいいですよね。

この建物と出会ったとき、「新しい拠点にできたらいいな」とインスピレーションがわいたという倉石さん(撮影/新井友樹)

たとえばこの家具のタイトルは「Rがチャーミングなタンス」。どこから、いつレスキューしてここに来たのかも、商品の魅力とともに伝えている(撮影/新井友樹)

カフェも併設。ちなみに、上で紹介した「LAGOM」のドーナツをカフェに持ち込むこともできる(撮影/新井友樹)
一角にはカフェもあります。移住相談をしたい人、新しく事業を始めたい人など、お茶を飲みながらコミュニケーションの入り口になれば、と考えたからです。
R-DEPOTでは移住者交流会も開かれています。既に移住した人、これから移住を考えている人ともに参加でき、先輩移住者からの経験談やアドバイスが聞ける座談会のようなもの。具体的な補助金の話や、移住創業情報、まちのおすすめスポットなども教えてもらえます。

長野駅前で65年ものあいだ営業し、昨年惜しまれつつ閉店した喫茶店の什器なども引き取っている(撮影/新井友樹)

上階にはシェアオフィスやコワーキングスペースも。移住創業を始めた人、地元企業、入居者、R-DEPOTスタッフなどが交流し、仕事につながるきっかけづくりをめざす(撮影/新井友樹)

キャンプを思わせるパブリックエリア。休憩に使うほか、クリエイターがポップアップイベントを行うことも(撮影/新井友樹)
さらに、空き家にまつわるさまざまな取り組みが、R-DEPOTを拠点にスタートしています。長野市の認定事業として始まった「まちの家守(やもり)事業」も、新しい試み。
「空き家を貸したい人と借りたい人をつなぐウェブサイト『まちの掲示板』をつくります」(倉石さん)。まちに引き継ぎたい空き家のストックと、まちで始めたい事業を、サイトでPRできます。
物件については、かつてどのように使われていたか、地域の中の位置付け、改修はいくらくらいかかりそうか、といった話を。事業希望者はどんなマーケットがあって、売り上げはいくらくらい望めそうか、ということを相談できるといいます。
そのなかから、ストック1物件、事業者1組をピックアップして紹介する「まちの寄合会議」を公開開催します。これは、不動産会社、デザイン会社、経営コンサル、金融機関、創業者OBなどがガイドとして参加する、2日間のユニットワーク。
「現地調査やデザインワーク、事業計画など、これまで事業者が自分でやらなくてはならなかったこと、MYROOMが時間をかけてサポートしてきたことを、2日でまとめて、みんなで考えて共有しようという企画です。成約するかどうかは、別の話。お互いにこんなはずじゃなかった、というのを防いで、事業、建物、地域、3つの価値が高まることが狙いです」と倉石さんは話します。
このほかにもR-DEPOTではさまざまなイベント、相談会などが定期的に催されていて、たくさんの交流が生まれています。もちろん、空き家見学会も継続中です。

R-DEPOTの窓も楽しい掲示板。思わず立ち止まって読んでしまう(撮影/新井友樹)
取材を通して、「この取り組みは、お見合いのようなもの」という倉石さんの言葉が印象に残りました。入り口はネットでも、顔を見せあって名乗るところが最初のスタートライン。自分の希望だけではダメで、縁やタイミングもあるでしょう。倉石さんたち経験を持った人が仲人になって、お互いに知る期間を設けることも大切。
物件単体の仲介では決してなく、あくまでも“まちを引き継ぐ関係づくり”に重きを置いていることがわかります。
まちなかにR-DEPOTという拠点があることで、建物とまちの魅力が伝わって、それを引き継ぎたい人にバトンを渡せる。結果として楽しい“まちづかい”が実現していくことに、思わず心が躍るようでした。
●取材協力
MYROOM
R-DEPOT
POLKA DOT CAFE
COMMA
HEIHACHIRO BAKE SHOP
LAGOM DOUGHNUT & DRINK
リクルートが、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県)在住の20歳~49歳の男女9335人を対象に実施した「SUUMO住みたい街ランキング2024」を発表。今回は、世界的人気のエンタメ施設が誕生し、注目度が急上昇している「練馬」にフォーカスし、街の魅力を探ります。
「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 メイキング・オブ・ハリー・ポッター」がオープン前回の63位から過去最高位の48位にランクアップした西武池袋線・都営大江戸線の練馬駅。昨年から「得点がジャンプアップした駅」のランキングでは5位、「穴場な街」ランキングでは4位と、街に対する注目が高まっていることがうかがえます。
性別・年代別・ライフステージ別の内訳では、前年に比べ「男性20代」「女性40代」「シングル世帯」からの支持が伸びました。

練馬
練馬に関心が寄せられている要因として、まず挙げられるのは「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 メイキング・オブ・ハリー・ポッター」の存在。2023年6月16日、アジア初の「ハリー・ポッター」スタジオツアーとして「としまえん」の跡地にオープンしました。ちなみに、ロンドンのスタジオツアーは、オープンから10年以上が経った現在でも予約が困難という人気施設です。
スタジオツアー東京では、ホグワーツ魔法魔術学校の象徴的な大広間、ダイアゴン横丁、禁じられた森といった物語の世界を体感できるほか、魔法動物に遭遇したり、豪華な衣装を鑑賞できます。
地域の人々や国内の観光客のほか、訪日外国人からの関心も高く、国内最大級のインバウンド総合メディア「訪日ラボ」を運営する株式会社movが発表した「インバウンド人気観光地ランキング」では、東京ディズニーランドなどを抑え2位に。街に新たな人の流れを呼び込む起爆剤になっています。

練馬城址公園
また、2023年5月には、同じ「としまえん」の跡地を中心に「練馬城址公園」も一部開園。園内の中心を流れる石神井川沿いの「川辺の散策ゾーン」、四季折々の花が咲き、イベントが開催される「花のふれあいゾーン」、「エントランス交流ゾーン」などが整備されています。今後も段階的に整備され、全面開園は2029年を予定。交流・憩いのスペースとしての魅力はもちろん、広域防災拠点としても、地域住民にとっては頼もしい存在です。
周辺には、「豊島園 庭の湯」や「ユナイテッド・シネマ としまえん」などの人気スポットもあり、一帯は1日過ごせるリゾートエリアに進化中です。

「豊島園 庭の湯」。1200坪の日本庭園を擁する都内最大級のスパ施設。天然温泉、バーデプール、サウナ、食事処などがあり、1日中楽しめる
緑豊かな環境と気軽に農業を体験できる環境練馬区の大きな特色の一つに挙げられるのが、緑豊かな環境です。区域に占める樹木などの割合を示す緑被率は23区でも上位で、区立公園などの面積も年々増加。2014年から2022年までの9年間で、10haも広がっています。
また、東京23区でありながら農地が多いことでも知られています。区民農園など農業を体験できる施設も増加中で、2022年の段階で87施設に。2023年には種まきから収穫まで体験できる「高松みらいのはたけ」も開設されるなど、区民が農業に親しむための取り組みに力を入れています。

「高松みらいのはたけ」
一方で、練馬駅南口には「練馬三角地帯」と呼ばれる飲食店街も。安くて美味しい飲食店が密集しています。人気居酒屋の「春田屋」や、町中華の「小姑娘」など、昼飲みでにぎわうお店も多数あり、レトロな下町的な雰囲気とともにさまざまな世代に愛されています。

練馬三角地帯
手厚い子育て施策も魅力子育て環境に目を向けると、練馬区では直近9年間で保育定員数を8500人拡大。2021年から3年連続で待機児童ゼロを達成しています。2016年には全国初となる区独自の幼保一元化施設「練馬こども園」を創設。現在24園で実施し、定員は1869人(令和5年4月1日時点)。「3歳からは預かり保育のある幼稚園に通わせたい」という保護者のニーズに対応し、共働き家庭などからも利用されています。
同じく2016年には、小学校の放課後に児童が図書室などで読書や自主学習ができる「ひろば事業」と学童運営を一体化した「ねりっこクラブ」もスタート。年々、実施校数と定員枠を増やし、2023年時点で区内の全65校中52校で実施。定員枠は7012人に達するなど、小学生の居場所をしっかりと用意しています。
他にも、新宿から10km圏の駅のなかでは家賃が2番目に安い穴場感、2040年まで人口の増加が見込まれている将来性の高さなど、ポジティブな指標も多い練馬。もともとの住み心地の良さに加え、休日を過ごす街としての魅力が強化されたことで、ますます人気が高まっていくことは間違いなさそうです。

【調査対象物件】駅徒歩15分以内
シングル:築年数35年以内の10平米以上~40平米未満(1R,1K,1DK)の物件(定期借家を除く) ファミリー:築年数35年以内の50平米以上~80平米未満の物件(定期借家を除く)
【データ抽出期間】2023/8/1~2023/10/31
【家賃の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(マンション/アパート)の管理費を含む月額賃料から中央値を算出
●関連サイト
SUUMOリサーチセンター「SUUMO住みたい街ランキング2024 首都圏版」プレスリリース
所在地:中央区日本橋富沢町
所在地:江東区平野
所在地:鎌倉市極楽寺四丁目
所在地:港区白金台
所在地:品川区東品川
所在地:中央区日本橋小舟町「SUUMO住みたい街ランキング2024 関西版」で、3年連続で総合1位を獲得している駅が、「梅田(※)」駅だ。大阪のビジネスの中心地として多くの企業が進出し、複数の商業施設が立ち並び賑わいを見せている梅田周辺だが、近年は再開発により住宅供給も増加。都心に住むことに対する関心が高まっている。
※「SUUMO住みたい街ランキング2024 関西版」では、地下通路や連絡通路で接続している駅は同駅として集計しており、梅田駅には、大阪駅、大阪梅田駅、東梅田駅、西梅田駅、北新地駅の得点も含む
拡大する「うめだ」。遊ぶ・働くだけでなく住む場所としても進化大阪市北区にある梅田駅を中心とする「キタ」は、関西随一の繁華街だ。JR大阪駅をはじめ、阪急、阪神、大阪メトロといった複数路線が乗り入れているターミナル駅でもあり、ビジネスマンや観光客、買い物客で賑わっている。ビジネス・商業の街としてのイメージが先行する梅田だが、近年の開発で住宅供給が増えており、資産価値としての面が注目されつつある。直近10年間でも広い意味で梅田エリアとされる大阪市北区・福島区で約1万5000戸の分譲マンションが供給されている。

高層ビルが立ち並ぶ大阪駅の周辺(撮影:井村幸治)
現在、うめきた2期地区開発事業の要である「グラングリーン大阪」は、オフィス、ホテル、中核機能、商業施設、都市公園、住宅が揃う複合的な場所として工事が進められている。一部は住宅として供給される予定で、分譲マンション「グラングリーン大阪THE NORTH RESIDENCE」は最高価格25億円の住戸が誕生することで話題となった。
実際、大阪市北区の人口はここ数年で特に増加しており、今後も増加が見込まれる。「住みたい街ランキング2024」で梅田を選択した人たちの理由としても「仕事のできる施設がある」、「不動産の資産価値が高そう」、「今後、街が発展しそう」といったポイントが上位に挙げられている。仕事や買い物をする場としてのイメージが強かったが、他の人気上位の駅に比べ若い世代を中心に注目を集めており、都心に住まうことの現実味が増していると考えられる。

グラングリーン大阪の工事現場。話題の分譲マンションも姿を見せ始めている。左側のタワーマンションはグランフロント大阪の街区(撮影:井村幸治)

グラングリーン大阪の工事現場。オフィスやホテルが入居する複合ビル工事が進められている。正面奧のタワーマンション群は福島区に位置する(撮影:井村幸治)
「SUUMO住みたい街ランキング2024関西版」梅田が西宮北口と大差で3年連続1位に! 本町、尼崎も躍進
充実した子育て環境、公立小中一貫校も4月に開校人口増加とともに、ファミリー世帯も増加しているため、大阪市は子育て環境の改革に積極的に取り組んでいる。中でも、待機児童の解消に向けた取り組みに注目だ。大阪市では待機児童数も多く、平成24年時点では600人を超えていた。そこで市は、さまざまな施策を組み合わせながら待機児童の解消に取り組んできた。保育所の入所枠拡大を行う中で、大規模な民間マンションにも保育所の整備が進められている。他にも、子育て世帯の経済的負担を軽減するとともに、子どもたちの学力や学習意欲、個性や才能を伸ばす機会を提供するため、市内在住の小学5年生から中学3年生の約5割を対象として学校外教育にかかる費用を助成する事業などが実施されている。
さらに、「大阪市立中之島小中一貫校」が2024年4月に新たに開校される。景観と調和したデザインの外観で、グラウンドやプール、体育館などを含む学校機能をコンパクトにまとめた校舎となっている。通学対象となるのは梅田に近接する堂島と中之島エリアだが、市内からは入学応募が可能だ(応募多数の場合は抽選となる)。

大阪市立中之島小中一貫校の校舎(撮影:井村幸治)
開発が進む商業施設と、街並みの変貌への期待感が高まる梅田周辺は、従来からオフィスと商業施設が集約された街であったが、近年は再開発やリニューアルが進められており街並みは変化し続けている。うめきたの開発はその最たる例だ。2023年には、大阪駅うめきた新駅(うめきたエリア)として地下ホームが開業。約91,000平米の敷地全体のうち約半分の約45,000平米が公園という緑豊かな空間であるグラングリーン大阪は、うめきた公園を中心にビジネスから観光まで幅広いニーズを担う南街区、イノベーティブなライフデザインを実現する北街区と、3つのエリアに分かれている。

グランフロント大阪は大阪の顔として、すっかりおなじみになった(撮影:井村幸治)
うめきたの先行開発区域であるグランフロント大阪は2013年のまちびらき以来、梅田の新たな顔として多くの市民に親しまれている。周辺にはルクア、大丸、阪急、阪神など百貨店や若者向けの商業施設が揃い、2022年に阪神百貨店が全面リニューアルした。さらに、JR線路をはさんでグラングリーン大阪の南側にある郵便局の再開発JPタワー大阪は2024年3月竣工、7月に開業予定で、KITTE大阪として飲食店や商業施設も多数誘致される予定だ。若年層はもちろん多世代を惹き付ける集客力はさらに高まっていきそうだ。


KITTE大阪は2024年7月に開業予定で主要テナントの顔ぶれも発表されている(撮影:井村幸治)
梅田エリアは、従来のイメージとして確立されていた、働く場・遊ぶ場としてのイメージに加え、大規模なマンションの開発により、住まう場としてのイメージを獲得しつつある。グラングリーン大阪が開業すれば街なかに森のある新しい街が誕生することになる。今後の発展からも目を離せないだろう。
『トッカン』シリーズ(早川書房)などの代表作がある小説家の高殿円さん。最近、伊豆(静岡県)の築75年のリゾートマンションの1室を98万円で購入しました。この体験を、2024年4月に発行した同人誌『98万円で温泉の出る築75年の家を買った』に綴っています。
もともと和室2Kだった部屋を、約200万円かけて40平米1Rへとリノベーションし、DIYにも挑戦しました。築古リゾートマンションのリノベで注意した点やDIYのコツを伺います。
産業廃棄物の処理が必要な部分は、業者へ依頼高殿さんの部屋は、購入した当時、襖で2部屋に区切られた和室だったそう。高殿さんはまずはどこまで工事可能か、同じマンション内でAirbnb(民泊)を借りてシミュレーションすることから始めました。
「古い壁や建材によってはアスベストが混ざっていたり、壁の中に配管が通っていたりすると工事を断られてしまうこともありますから、まず壁や天井をどこまで壊せるのか確認しました」

小説家の高殿円さん
産業廃棄物の処理が必要な和室の天井落としや、土壁部分の取り壊しは、業者へ依頼。張るのが難しい総柄の壁紙の処理も、職人さんに頼みました。
「壁紙と床を替えるだけでも、部屋の雰囲気は変わります。私は一点投資型で、ポイントとなる場所にお金をかけて、ほかは安く仕上げるタイプ。今回は壁紙にポイントを置きました」
鳥が舞う印象的な壁紙はドイツのデザイナーが手掛けた作品。上海でプリントアウトして輸入したもので、日本国内で使用したのは高殿さんが初だったそう。部屋の中のフォーカルポイントになっています。
作業の様子を見て、ほかの壁紙の張り替えも工数的に同じ職人へ頼んだほうがいいと判断し、ほかの箇所の処理も合わせて依頼。全部で約40万円ほどかけて壁紙を替えました。

鳥が舞う壁紙が目を惹く。壁紙は10万円以上した奮発ポイント
床には飲食店などでも使われる硬くて傷がつきにくいサンゲツ(メーカー)の黒いフロアタイルを使用。
「もともと床板は張り替えるつもりだったのですが、部屋の畳を上げたら、木の素材が良くって。そのまま使っても大丈夫だと判断しました。リゾートマンションはもともと超高級マンションですから、築75年経っても使えるほど良い材質のものが使われているのでは、と施工をお願いした職人さんから教えていただきました。張り替え代が浮いた分、フロアタイルにお金をかけました」
キッチンは、木製だったものをすべて取り除き、業務用のステンレスシンクを取り付けました。
「ステンレスって磨けば何年でもピカピカに使えるのでいいですよね。中古品を約2万円で取り付けました。業務用なので、普段の手入れも楽です」

キッチンのガス回りには、名古屋でつくられた燃えにくい素材のステーションタイルを業者に張ってもらいました
■関連記事:
・温泉付きリゾートマンションを98万円で購入してみた! 「別荘じまい」が狙い目、Airbnbで宿泊内見など物件選びのコツ満載 小説家・高殿円さん 伊豆
・大の家好き作家・高殿円の新刊エッセイ『35歳、働き女子よ城を持て!』インタビュー
水回りは配置を動かすとお金がかかるので、今回は現状維持。お風呂やトイレはDIYして、気に入って使えるように工夫しています。
お風呂場の天井部分などの塗装壁は、表面が湿気にやられ、かびやすい部分。漆喰風に見える水性シリコン素材の「STYLE MORUMORU」を自分で塗って仕上げました。
「STYLE MORUMORUを20kgぐらい買って、友人を呼んで天井などを塗装しました。最初はていねいに塗っていたんですけど、思ったよりも時間がかかったので途中から急いで塗り終えました。無事に漆喰風になってほっとしています」

「STYLE MORUMORU」を塗ったお風呂場の天井
お風呂の床は、自分でタイル塗装。浴室全体の色合いを締める紺色を選びました。
「濡れる場所をタイル塗装するのは難しいんですが、『失敗してもいいや』と気楽に挑戦しました。修復方法を知っていれば、多少剥がれても直せます。もちろんプロに頼むほうがキレイですが、先々ちょっとしたことでも費用がかかりますから、長く住むなら少しでも自分で覚えることにメリットを感じました」

シックな色合いの浴室の床

昭和風のお風呂ですが、蛇口を取り替えるなどちょっとした工夫を施して、気に入って使えるようにしています
トイレの扉のガラス部分は、いわゆるレトロガラス。マンション建築当時に使われたものをそのまま活用することにしました。
「細工があるガラスは当時使われていた型がなくなり、現在は製造することができません。せっかくなのでそのまま活かすことにして、縁(フチ)の部分はアイアンペイントを塗りました」

現在は手に入らない細工ガラスの扉

高殿さんがDIYに使った用具の一部
収納場所は少なめに部屋の内装で高殿さんがこだわったのは、クローゼットを設けないこと。天井からアイアンのパイプを吊るし、衣服をかけて陳列しています。
「収納スペースを設けないことで、部屋自体を広く使えます。私はもともと掃除好きで、神戸の自宅にも家具をあまり置いてないんです。収納場所があると、あっという間に物が増えちゃうんですよね。」
天井に近い場所に洋服やタオルやシーツなどを収納する棚を自作。広島県の廿日市市で木製品を製造する「WOODPRO」から足場材を取り寄せてつくりました。
「足場材って建物を作る時に利用されるのでペンキで汚れていたりするんですけど、ガサッとした質感が好みで利用しました」
同じ足場材を使って、ベッドヘッドの制作も行いました。
「ベッド自体はアイリスオーヤマで購入した安価なものですが、動いて壁紙と擦れてしまうので、足場材を使ってベッドヘッドをつくりました」

足場材を使ってつくられた棚とベッドヘッド

ベッド下も収納場所として活用します
食器棚も同じ要領で、足場材を使って制作し、見せる収納。来客が多いため、ワイングラスなどが増えて、天井から吊るす収納方法も取り入れたそう。
「工夫したのは水切りカゴの配置場所。水が滴っても困らないように、洗濯機の上に置きました。収納場所が少ないなかで、どう楽しんで生活するか、チャレンジの場となっています」

調味料なども並ぶ食器棚

洗濯機に置かれた水切りカゴ
高殿さんは神戸との2拠点生活を送るため、月の半分以上はセカンドハウスを空けています。空き巣対策としても、家具類は最低限に揃え、家電や小物もジモティーやYahoo!オークション、メルカリなどで安く購入したそう。
資材高騰直前に滑り込めたこともあり、今回のリノベーションとDIYでかかった総額は約200万円。
「DIYはコストを削減できる分、失敗もしますから、それも含めて楽しめるどうか、自分の性格を見極めて挑戦することが大切だと思います」
Airbnbに宿泊してリノベーション後の自室を想像するのは、なかなか考え付かない妙案です。セカンドハウス利用が多いリゾートマンションだからこそできる技ですが、2拠点生活に憧れたら試してみる価値がありそうです。

●取材協力
高殿円さん
小説家。漫画の原作や脚本なども担う。2000年、『マグダミリア 三つの星』で第4回角川学園小説大賞奨励賞を受賞。2013年、『カミングアウト』で第1回エキナカ書店大賞を受賞。2024年4月には同人誌『98万円で温泉の出る築75年の家を買った』を刊行。X(旧Twitter)
<撮影:曽我美芽 / 構成:結井ゆき江 / 取材・編集小沢あや(ピース株式会社)>
所在地:青梅市千ヶ瀬町
所在地:世田谷区奥沢
所在地:目黒区上目黒
所在地:武蔵野市吉祥寺北町
所在地:豊島区長崎
所在地:中央区新川
所在地:北区王子
所在地:世田谷区若林
所在地:国分寺市西恋ヶ窪
所在地:世田谷区世田谷
所在地:世田谷区池尻『トッカン』シリーズ(早川書房)などの代表作がある小説家の高殿円さん。最近、伊豆(静岡県)の築75年のリゾートマンションの1室を98万円で購入しました。この体験を、2024年4月に発行した同人誌『98万円で温泉の出る築75年の家を買った』に綴っています。
もともと3Kだった物件をリノベーションとDIYで1Rに仕上げ、部屋のお風呂で温泉を楽しんでいます。自宅は神戸にある高殿さんが2拠点生活を始めたきっかけや、リゾートマンションを購入した経緯、物件選びのポイントを伺いました。
自分の人生を支える拠点・温泉付きのセカンドハウス小説家の高殿円さんはコロナ禍で大好きな海外旅行ができず、気持ちが塞ぎ込んでしまったことをきっかけに、自分の人生を支える拠点として温泉付きのセカンドハウスの購入を決めました。
「昔から大の温泉好き。それに、自宅は神戸(兵庫県)なんですけど、東京へ出張する度に小さなストレスが重なっていたんですよね。ホテルに泊まってもドライヤーの風量が気になるし、いつもの美容液やお気に入りのタオルケットとか、荷物が多くなって大変だなと思ったんです」

高殿円さん
伊豆のリゾートマンションから東京までは、特急列車「サフィール踊り子」を使えば約2時間。最寄駅からはタクシー圏内で、観光資源が豊かな土地だけに、買い物もネットスーパーを利用できるそう。
「静岡県の南側はすべて海。視界も抜けがあって気持ちがいいし、太陽の光でどこも暖かく、睡眠の質もよくなりました」
山の上に立つリゾートマンションは海からの照り返しで冬でもエアコンなしの半袖で過ごせるほどの温かさ。箱根の山から海へ向かって風が吹くため、潮風の影響を受けることもほとんどないのだそう。
■関連記事:
大の家好き作家・高殿円の新刊エッセイ『35歳、働き女子よ城を持て!』インタビュー
「物件探しでは、セカンドハウスで自分が叶えたいポイントを整理することから始めました。私はお風呂好きで、1日の3分の1は漬かっていたいタイプです。だから温泉と、海が見える景観の2つを重視して探し始めました」
どの温泉地がいいか、まずは草津温泉や別府温泉、道後温泉、有馬温泉などあらゆる場所を旅しました。
「そのうち自分のなかで『瀬戸内海以外の海が見たい』『神戸からアクセスしやすい場所がいい』と条件が出てきて、最終的に伊豆エリアでセカンドハウスを探すことに決めました」
おおよそのエリアを決めた後は、よりリアルな現地の状況を知るために、近隣のお店を訪ねます。
「情報収集で良かったのは美容院。ご高齢の方が経営する場所ではなく、若い人が働く活気のある美容院で話を聞きたかったので、まずはネット予約できる場所を探しました」
そこでヘアカラーとカットを注文。その間に「最近どうですか?」と話しかけて、地域の良いところやおすすめのお店をヒアリングしていきます。たまたま高殿さんが訪ねた美容院は、東京で修業して、コロナ禍をきっかけに地元で店を構えた美容師だったといいます。

DIYしたこだわりのドレッサースペース 日々のメイクも楽しいのだとか
高殿さんは美容院で情報収集するだけでなく、美容院に来るお客さんにも注目しました。
「白髪染めや子どものヘアカットは、セルフで仕上げるか、美容院へ通うかの二択ですよね。美容院って、実は家計の余裕と切実に結びついているんです。美容院の客層や施術内容を、地域の豊かさを測るポイントにしていました」
特に重視したのは、子どものヘアカット。高殿さんが訪れた美容院では、入れ代わり立ち代わり近所の子どもが一人でやってきて施術していたそう。
「子どもが一人で美容院へ通うのは、母親が忙しく働いている家庭で、周辺の治安が良いからこそできることだと考えました。子育て世代が活気づく地域は少子化が緩やかですし、移住者が増える余地があるとわかりました」
「お部屋で源泉を楽しみたい」温泉好きのマニアックな物件探し情報収集を進める一方、温泉の条件についても整理していきました。実際に物件を見るだけではなくAirbnb(民泊)やマンスリーマンションを利用して、さまざまな温泉付きマンションや一軒家に宿泊。改めて、温泉付き物件を所有する難しさを感じたといいます。
温泉を一軒家などで利用する際は温泉権が必要です。温泉権は新規取得後10年ごとに更新料がかかります。建設当初は温泉権を所有していた物件でも、相続を機に手放してしまうケースや、温泉権を所有していないのに「温泉付き」を謳ってトラックなどで温泉を運び入れるケースもありました。
加えて、温泉は温度が低くても成分を含有していれば認められるため、ガスボイラーで沸かす管理費にコストがかかる場合もあったそう。
「温泉付きマンションの管理費は、高いと約10万円もかかることもあるんです。2拠点生活では維持費が重要。軽視することはできませんでした。また、リゾートマンションで空き部屋が多い物件は、管理費の負担が増えるケースもありますから、その辺りの事情も尋ねるようにしていました」
一方、さまざまな物件と出会うなかで、高殿さん好みの温泉付き物件の条件も見えてきます。
「大浴場付きリゾートマンションは冬は寒いなかを出歩かないといけないし、同じマンションの住民と会ったら挨拶もしなくちゃいけない。それよりは、1人でじっくりお部屋のお風呂に漬かって、好きに過ごしたいなと気付きました」
将来的に売ることも考えて物件購入最初に提示していた条件以外にも、実際に住むとなると細かなところが気になってきます。例えば虫。高殿さんは虫が苦手なので、マンションの下の階や山の中にある一軒家を避けたそう。
「リゾートマンションの1階は虫が出やすいだけでなく、湿気が上がってきやすいので床が傷んでいる可能性もあるんです。でも、庭付きでペット可物件の場合は1階でも人気が出ます。人によって好みは分かれますが、私は上層階を選ぶようにしました」
加えて、将来的に売ったり貸したりすることも考えたといいます。
「住みたい地域のマーケットを見続けると、すぐに売れるマンションとなかなか売れないマンションの違いがわかってくるんです。流動性が高い物件は売りやすいから、まずはそういう物件を探しました」
最初にあげていた高殿さんの条件である海が見える景観は、マリンスポーツ好きなどから変わらない人気があります。加えて温泉が楽しめるとあれば魅力的な物件です。
「リゾートマンションの場合は、Airbnbとして貸し出しているケースも多いので、購入希望のマンションに滞在してみて、人気の理由を探るようにしていました」
宿泊するAirbnbは、ほかの部屋と同じ間取り。どれくらいのリノベーションができるか配管の位置などもチェックしたそうです。

高殿さんが購入したリゾートマンションは0円で売られている部屋もあります。相続したはいいけれど維持費がかかり手放す選択をした場合や、高齢になってから介護付きマンションへ移るために「別荘じまい」をするケースも多いのです。
「0円物件はお値打ち価格ですが、給湯器などの設備が古いと入れ替えに何十万円もかかったりします。また、築年数が古いと、建築素材にアスベストが含まれる可能性がある物件もあります。いざリノベーション工事を依頼したら『請けられません』なんてことも。どこまで内装が変えられるかは、リノベーションを経験した人と一緒に行かないとわからないかもしれません。同じマンション内にリノベ済みの部屋があれば、参考になると思います」
購入意思を固めた後は、マンションの管理組合の議事録も忘れずにチェック。
「まず、新しく入居した人と、元から住んでいた人が仲良く暮らすために建設的な対話ができているかを見ます。例えば『1階はペット可物件じゃなかったけど、空き部屋になるよりは需要が見込める選択をしよう』など、前向きな議論ができているか。壮絶な論争があったマンションには、ご近所トラブルが発生しないか、構えてしまいますよね。入居者同士の話し合いの様子は、長く物件を所有するつもりであればまずチェックしたいポイントです」

60度の源泉が出るリゾートマンションを購入し、現在は月のうち1週間ほどを伊豆で過ごしている高殿さん。高殿さんのSNSでは地魚を使ったおいしそうな料理が見られ、満喫している様子が伝わってきます。
「ひとりで過ごすのはもちろん、滞在中は友達が代わる代わる遊びに来ます。みんなで順番に温泉に入って、絶景を眺めて、伊豆の海鮮を楽しむんです。友達が友達を連れてくることもあります」
大人数で滞在となると光熱費も心配になりそうですが、なんとこの物件、温泉付きだからこそ節約ができているのだとか。
「まず、温泉は沸かす必要がないため、ガス代は月に約980円。その分、熱いお湯を運ぶための配管メンテナンスが必要ですが、私のようなお風呂好きはガス代を気にせずに使いまくれるのでお得な気分です。加えて、温泉代は月額利用料が決まっていて、水道代とは別請求。結果として水道代が抑えらえます」夢の温泉付きリゾートマンション、初期費用は98万円の購入費のほか、リノベーションとDIYに約200万円がかかったそう。物件取得後のDIYやインテリアについても、別記事で詳しく伺います。

●取材協力
高殿円さん
小説家。漫画の原作や脚本なども担う。2000年、『マグダミリア 三つの星』で第4回角川学園小説大賞奨励賞を受賞。2013年、『カミングアウト』で第1回エキナカ書店大賞を受賞。2024年4月には同人誌『98万円で温泉の出る築75年の家を買った』を刊行。X(旧Twitter)
<取材・編集小沢あや(ピース株式会社)/撮影:曽我美芽 / 構成:結井ゆき江 / >
リクルートが、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県)在住の20歳~49歳の男女9335人を対象に実施した「SUUMO住みたい街ランキング2024」を発表。今回は、7年連続で「穴場の街」1位に君臨し、今回は総合順位アップも果たした「北千住」にフォーカスし、人気の秘密を探ります。
「穴場の街」7年連続トップ「穴場な街」ランキング7年連続1位の北千住。「住みたい街」の総合順位も昨年の28位から23位に上昇しました。特に、「20代(18位)」「シングル男性(15位)」「夫婦のみ世帯(15位)」から多くの支持を集め、前回調査に比べて「共働き夫婦世帯」「夫婦+子ども世帯」の得票も増えるなど、幅広い層から推されていることが分かります。

北千住が穴場たる所以は、交通利便性、生活利便性が高いわりに住宅コストを抑えられる点。たとえば、築40年未満のファミリー向け中古マンションの価格相場は4980万円。東京駅から15km圏内の駅では圧倒的に手頃で、住みたい街ランキング上位30位までのなかでは断トツの安さです。

【調査対象物件】駅徒歩15分以内、築40年未満の40平米以上、80平米未満の物件(敷地権利は所有権のみ)
【データ抽出期間】2023年8月1日~10月31日
【家賃の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された中古マンションの物件価格(3億円以下)の中央値を算出
一方、賃貸物件もシングル向けの家賃相場が7万8000円、カップル・ファミリー向けは14万7000円で、こちらも住みたい街ランキング上位50位までで東京駅まで10km圏内で比較してみると、かなり割安です。

【調査対象物件】 駅徒歩 15 分以内 シングル :築年数35年以内の10 平米以上~40 平米未満(1R,1K,1DK)の物件(定期借家を除く) ファミリー:築年数35年以内の50 平米以上~80 平米未満の物件(定期借家を除く)
【データ抽出期間】 2023/8/1~2023/10/31
【家賃の算出方法】上記期間で SUUMO に掲載された賃貸物件(マンション/アパート)の管理費を含む月額賃料から中央値を算出
また、商店街には激安の惣菜店、駅前の飲み屋横丁には、いわゆる「せんべろ」の居酒屋が点在しているほか、駅周辺には日常使いのスーパーも多いなど、あまりお金をかけずに生活できる環境は大きな魅力です。


北千住の街が大きく変わるきっかけになったのが、大学の誘致。足立区では2000年に放送大学が綾瀬から北千住にある「学びピア21」へ移転したのを皮切りに、2006年に「東京藝術大学」の千住キャンパス、2007年に「東京未来大学」、2010年に「帝京科学大学」、2012年に「東京電機大学」と12年間で5つの大学が誕生。現在では、北千住駅周辺で合計1万5000人(※)の学生が通っています。
※谷塚駅が最寄りの文教大学東京あだちキャンパス 学生約2000名を加えると足立区では約1万7000人
実は、現在の東京電機大学がある場所はもともとマンションの建設が検討されていたといいます。しかし、一過性でない人の流入を目指し、計画を変更して大学の誘致へと舵を切りました。その結果、駅周辺には大学生を中心に常に若者たちの活気が生まれ、そこから少し離れた川沿いの自然豊かな環境に住宅が整備されるという、バランスの良いまちづくりがなされています。
大学のチカラを街のチカラに特筆すべきは、大学を誘致して終わりではなく、大学と区が積極的に連携し街の活性化につなげている点。足立区役所のシティプロモーション課では、大学側との窓口になる担当者を複数配置し、6つの大学全てと連携事業を実施しています。たとえば、大学構内で小・中学生向け講座を実施したり、大学生と未就学児、小中学生がコミュニケーションをとれる機会をつくることで、子どもたちの大学や研究への関心を高めたり。他にも、街の人が参加できる大人向けの講座を開いたり、芸大コンサートに地域の人を招待したり、帝京科学大学で高齢者向けの認知症に関する講座を実施したりと、全ての年代にフィットする講座を用意。2023年は153の連携授業を実施しています。
また、東京藝大と足立区、NPOによる「昔まち千住の縁」は、十数年前から続く街中アートプロジェクト。”音”をテーマとした多種多様なプログラムを展開していて、これをきっかけに複数のアートスポットが区内に誕生。「千住=アートの街」をイメージづけると同時に、アーティストと学生、住民同士の交流につながるなど、さまざまな波及効果が生まれています。

【せんつく】……「つくる」と「学ぶ」がテーマの交流拠点。建築家の青木公隆さんを中心に2つの空き家をリノベーションし、飲食店やパン教室、整体、学習塾などが活動するほか、イベントやハンドメイドなどのワークショップも行われている

【仲町の家】……千住大橋の建設に尽力した石出掃部介吉胤(いしでかもんのすけよしたね)の子孫が守ってきた日本家屋と庭を活かした文化サロン。展覧会や音楽イベントなどが行われる
10年以上におよぶ「教育」への取り組みここ10年あまり、足立区が特に力を注いできたのが「教育」への取り組み。全国でも珍しい「学力定着推進課」を設置し、「誰一人取り残さない」をキーワードに子どもたちの学習を手厚くサポートしてきました。個々の学力に合わせたフォローはもちろん、成績上位でありながら家庭の事情等で塾に行けない中学3年生を対象に民間教育事業者を活用した「足立はばたき塾」を開校するなど、子どもが学ぶ機会を失わないための取り組みに注力しています。
その際たるものが、2023年度からスタートした「返さなくていい奨学金」。成績優秀でも家計的に進学が難しい子どもに対し、大学等に在学する期間(正規の修業年限)について、返済不要の奨学金を給付するというものです(40人まで)。他にも、中学1年生を対象にした勉強合宿、放課後や夏休み期間を利用し前年度のつまずきを解消する個別補習なども。
これら、区独自の学力向上支援策は着実に実を結びつつあります。2023年の「学習定着度調査(※前学年における学習内容の定着状況を把握するための調査)」では、中1、中2の英語と中3の数学を除く、ほとんどの学年・科目で全国平均を上回りました。

もともとの住みやすさ、荒川・隅田川沿いの環境の良さに加え、十数年にわたる区の取り組みが実り始めたことで、じわじわと人気が高まってきた北千住。今回の「住みたい街」の総合順位でも23位と、TOP20以内をうかがう位置にまできています。もはや「穴場の街」ではなく、その魅力が多くの人に認知されつつあることの証といえるかもしれません。
●関連サイト
SUUMOリサーチセンター「SUUMO住みたい街ランキング2024 首都圏版」プレスリリース
所在地:世田谷区世田谷
所在地:港区元麻布
所在地:目黒区駒場
所在地:港区白金台
所在地:世田谷区上野毛
所在地:新宿区西新宿2014年からtoCスタートアップによるプレゼンイベント「sprout(スプラウト)」が開催されているが、今回はスピンオフ企画として、建築系学生によるプレゼンイベント「sprout student edition」を行うと聞いた。当初は、学生が建築関係のアイデアをプレゼンする場だと思っていたが、よく調べると単なるアイデアレベルではないようなのだ。プレゼン現場に行って、実際に聞いてみた。
7チームが10枚のスライドを200秒でプレゼンsproutでは、10枚のスライドを20秒ずつ流す形でプレゼンする、という独特の手法をとっている。強制的に切り替わるので、スライドが次に移ってしまったり、説明するスライドが出るのを待ったりといったことも起こるが、200秒で終わるというのがルールだ。それぞれのプレゼン後には、登壇者のテーマ領域に精通する起業家やスタートアップに関わりが深いプロのゲストコメンテーターの感想も聞ける。
今回のゲストコメンテーターは、清水義次さん(株式会社アフタヌーンソサエティ 代表取締役)、冨田阿里さん(株式会社スマートラウンド 取締役チーフエバンジェリスト)、國枝伸行さん(東急株式会社 フューチャー・デザイン・ラボ)の3人。
ではまず、学生7チームのプレゼン内容を登壇順に、簡単に紹介しよう。
1番手は、生成AIを用いた、地域性をもとにしたボトムアップデザインの探求を行うプロジェクトチーム「NESS」だ。実際に地域芸術祭が開かれた墨田区京島(戦火を免れた長屋が多く残る下町)で生成した画像を展示したり、再開発が推進されている赤羽地区で高齢者も巻き込んだワークショップを行うなど、すでに実証実験を実施している。また、ワークショップツールからプラットフォームへ展開し、意思データを介して行政と住民の合意形成の一助を作るという構想も持っている。
プレゼン後は、東急の國枝さんが「ワークショップでは、人の意見に対して意見しづらいなど本音がつかみにくいところがあるが、AIを使うことで本音を引き出しやすくなるだろう」とコメントするなど、3人それぞれが感想を述べた。

登壇者:早稲田大学創造理工学部建築学科中谷研究室 B4 森原正希さん、東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 M2 須藤望さん
2番手は、「Withvac」。センシング(センサーと呼ばれる検知器によって測定の対象を計測し、定量的な情報を取得する技術)によって得られる設備の運転データをAIを用いて高度に解析することで、設備の不具合や非効率な運転を自動で検知し、設備のメンテナンスを効率化・高度化するためのプロジェクト。将来的には運用段階における建築物のあらゆるデータを、ビル単体ではなく周辺を含めて統合的に扱うプラットフォームをつくり、データ連携によって環境問題にアプローチしたいと考えている。

登壇者:東京大学工学部建築学科4年 宮田龍弥さん、東京大学工学部建築学科3年 藤間朋久さん
3番手は、「COLUB」。読書会を開こうと思ったときの最大のハードルが「始まらないこと」と「続かないこと」といった事例から、事前準備のいらない独自の読書会スタイルや簡単にテーマ選定・日程調整ができる「ともに学ぶためのツール」を提供して、すでに70回以上の勉強会を開催している。このツールをさらに、自身の大学の建築系学生や芸大建築系の学生、ゼネコンやシェアオフィスコミュニティなどにも広げることで、都市に集うツールにしたいと考えている。

登壇者:東京大学大学院 新領域創成科学研究科 社会文化環境学専攻 M1 山路湧さん
4番手は、「ReLink」。Re(リユース)×Link(つなぐ)のことで、解体されて残せない建物に、リユースデザインを提供しようというもの。すでに存在する中古建材販売市場のストック情報とデザインアイデアのデータベースを提供することで、中古建材を見つけやすくしたり中古建材の残し方を探しやすくしたりでき、これまで捨てられていた部材と空間デザインのバリューチェーン・サプライチェーン構築をするという考えだ。

登壇者:明治大学大学院理工学研究科建築・都市学専攻構法計画研究室 D1 本多栄亮さん
5番手は、「stitch」。テーマは家具のリメイク。アンティークやブランド家具だけでなく、身近な家具もリメイクする手法を確立することで、どんな家具でもリメイクを楽しめる出会いのある家具ブランドへとつなげていきたいと考えている。

登壇者:多摩美術大学大学院美術研究科 デザイン専攻環境デザイン領域 松澤穣研究室 M1 森田靖之さん
6番手は、「Pochant」。大量生産されてきた無個性の箱型建築は、予定調和な空間になってしまっていることから、室内空間に波風を立てる存在を置いて空間を流動的にしたいと考えた。いろいろな素材の流動物を自室に置いて実験し、不織布をPochantとして箱型空間に置くことで生活がどう変わるかを検証している。

登壇者:東京藝術大学美術学部建築科学部 B4 馬場 悠輔さん
7番手は、「おちば」。寄席の画一的な空間ではなく、落語の演目から高座、木戸、屏風といった舞台空間をデザインし、噺(はなし)の世界観に没入してしまうようなアーティステックな落語会を実現しようとしている。今年のGWに落語「愛宕山」で実施する予定。おちばは、街なかに落ち葉がひらりと舞い落ちるようにして都市に生まれる“落ち”の“場”なのだとか。

登壇者:東京大学大学院 新領域創成科学研究科 社会文化環境学専攻 M1 中山亘さん
以上が、7チームのプレゼンだ。200秒なので、とにかく展開が速く、文系脳の筆者には苦手なAIの話ではついていくのが難しかった……。とりあえず、筆者が理解できた範囲なので、不正確かもしれない点を了解いただきたい。
優勝者はオーディエンスの投票で決定!「sprout」の特徴は、プレゼンの優勝者をイベントに参加したオーディエンスの投票で決めること。投票フォームを見たら、それぞれのプレゼンを5点満点で評価していく形式で、多く得点したチームが優勝ということのようだ。

QRコードで投票をする。ゲストコメンテーターの3人もそれぞれスマホで投票した
まず、イベントを共催する一般社団法人HEAD研究会賞が紹介され、「Pochant」の馬場さんが射止めた。そして、優勝者は、「NESS」の森原さん・須藤さんに決定。前回のスタートアップの優勝者(LIFULL ArchiTech 北川啓介さん)からトロフィーが贈呈された。

優勝したNESSの2人にトロフィーが贈呈された
ゲストコメンテーターの國枝さんは、各プレゼンの感想の際に何度も、東急でできないか、東急沿線でやらないかと話していたので、閉会後にイベントの感想を聞いた。まず、レベルの高さに驚いたという。「マネタイズはこれからだと思うが、自分たちの情熱から純粋に提案しているのが社会人にはない強みだと感じる。使う側の目線に立っていけば、さらに発展すると思う」ということだった。
レベルが高いのは、インキュベーション・プログラムを経た7チームだからプレゼンのレベルが高いのには、実は理由がある。登壇者は、一般社団法人ASIBAの第1期プログラムの卒業生で、2カ月間の都市建築領域に特化したインキュベーション・プログラムを経た7チームだからだ。
では、「ASIBA」(Architecture Studio for Impact Based Action)とはなにものか、代表理事 二瓶雄太さん(東京大学大学院 工学系研究科 建築学専攻修士課程)に聞いた。

一般社団法人ASIBA 代表理事 二瓶雄太さん
二瓶さんは建築の中でも解体の研究をしていたが、解体がテーマとなると扱わなければならない領域は広く、社会に出ていく必要があると感じていた。そんなとき、同じテーマを研究していた早稲田大学の森原さん(NESSの登壇者の一人)と知り合った。建築系学生が思い描く提案を、提案に留まらずに社会に実装するには仲間と環境が必要で、ないなら自分たちでやったらよいとASIBAを立ち上げた。幸いなことに、まだ実績もない中で、清水建設や日建設計といった日本の建築界のビッグ企業がリターンを求めずに応援してくれた。
参加者と伴走しながらそれぞれの提案を実装する力を育てる、ASIBAのインキュベーション・プログラムでは、毎週課題を設けて展開していく。そこにはゲストとして、東京R不動産のディレクターを務める林厚見さんほか、パートナー企業から第一線で活躍する人や東京大学の准教授などが、レクチャーや学生のプレゼンの講評を行っている。それを受けて学生たちは仮説検証を重ねて、最後に最終講評会を行った。と、ここまでやったチームによるプレゼンなので、レベルが高いわけだ。
学生たちのホンキ度もかなりのものだ。閉会後に優勝したNESSの須藤さんに話を聞いた際に、このプロジェクトをライフワークとして取り組んでいきたいと話していた。学生なので、プロジェクトは将来へのステップとしてとらえているのかと思ったのだが、強い信念で始めてなんとかビジネスにつなげたいと考えていることが伝わってきた。NESSが優勝したが、最終講評会から2カ月たって、他のチームがさらにブラッシュアップしているとも言っていた。
ReLinkの本多さんも、震災で壊れた住宅をなんとか一部でも残せないか、解体が決まったが看板だけでも残せないかといった相談が、人づてに来ているという。すでに構想や提案なのではなく、実社会とつながっているようだ。
こうした経緯から、今回の建築系学生によるプレゼンイベント「sprout~プレイスティック student edition~」は、スタートアップを支援し「sprout」を運営するバ・アンド・コー株式会社と、HEAD研究会、ASIBAの3者が共催となっている。プレゼンを聞いた筆者は、学生の情熱に大いに元気をもらった気がする。建築業界の未来が、なんだか楽しみになってきた。
※掲載写真はすべて筆者が撮影したものです。
所在地:目黒区八雲
所在地:世田谷区松原省エネ性能の高い住宅への関心が高まっている。2050年のカーボンニュートラルに向けて、政府が省エネ住宅を推進していることなども、その背景にある。国土交通省では、省エネ住宅を推進する一方で、そうした住宅を住みこなすための25のポイントをまとめ、公開した。そのポイントを詳しく見ていこう。
【今週の住活トピック】
「省エネ性能に優れた断熱性の高い住宅を住みこなす住まい方ガイド ~高機能な住宅の性能を発揮させる25のポイント~」を公開/国土交通省
国土交通省がまとめた住まい方ガイドでは、断熱性能の高い住宅を、日中の日射しなども活用して、効果的に住みこなす工夫をまとめている。その前提となる「断熱性能の高い住宅」については、住宅性能表示制度における「断熱等性能等級6以上」の住宅を対象としている。
「断熱等性能等級」とは、国が定める「住宅の品質確保の促進等に関する法律」にて明示されているもので、住宅の多様な性能のなかで断熱性能を示す指標のことだ。現在は1等級~7等級まであり、等級が高いほど、高い断熱性能を有していることになる。

出典:省エネ性能に優れた断熱性の高い住宅を住みこなす住まい方ガイド
なお、政府が2025年にすべての新築住宅に適合を義務づける「省エネ基準」のレベルは、「断熱等性能等級4」かつ「一次エネルギー消費量等級4」だ。一般的に、省エネ住宅といえば、この「省エネ基準適合住宅」を指す。政府はさらに、この省エネ基準を2030年までに「ZEH水準」に引き上げようとしているが、ZEH水準のレベルは「断熱等性能等級5」かつ「一次エネルギー消費量等級6」だ。
今回のガイドは、それよりもさらに高い断熱性能を有する、「断熱等性能等級6以上」の住宅を前提としている。この等級になると、省エネだけでなく、住宅内に温度差がない健康的で快適な生活が送れるレベルになる。かなり高い断熱性能を前提としていることになるのだが、住まい方の25のポイントは、そこまで高い性能を有していなくても効果はある内容なので、ぜひ知っておいてほしい。
ちなみに、「断熱等性能等級」は住宅そのものの断熱性を測るもので、「一次エネルギー消費量等級」は住宅で使うエアコンや給湯器などの効率性や太陽光発電設備などのエネルギー量を総合的に測るものとなっている。
住まい方の25のポイントを一挙に紹介それでは、ガイドに掲載された25のポイントを紹介しよう。
視点1:熱が逃げない断熱性が高い住宅は季節に応じた日射しのコントロールが大切
①(夏)日射しは冷房の大敵!窓からの日射しをしっかり遮りましょう
②(夏)外出する際は日除けを閉めて熱を入れないようにしましょう
③(冬)日射しは暖房の助っ人!窓からの日射しの熱で家中を暖めましょう
④(春・秋)室温に合わせて窓からの日射しを調整しましょう
視点2:暖冷房機器を適切に運転することで少ない暖冷房エネルギーでも快適に
⑤在宅時、暖冷房設備は風量「自動」で「連続」運転しましょう
⑥断熱性の高い住宅では暖冷房の設定温度を控えめにしましょう
⑦暖冷房機器の定期的なメンテナンスで効率を向上させましょう
⑧冷房運転時に設定温度に到達して除湿機能が働かない場合には除湿モードに切り替えたり除湿機を活用しましょう
⑨外の湿度が高い時には窓を閉めておくようにしましょう
⑩乾燥が気になる場合には適度に加湿しましょう
視点3:断熱性が高い住宅では空間をつなげて気持ち良い空気を家中に
⑪各室の内部ドア等を開けて家中を暖冷房しましょう
⑫扇風機やサーキュレーター等で冷気を家中に回しましょう
⑬サーキュレーターや小さな暖房器具を併用することで家中を暖めましょう
⑭24時間換気設備は常時運転させましょう
⑮外気が快適な場合は窓を開けましょう
⑯室内に熱がこもったら窓を開けましょう
視点4:災害時でも日常生活を維持するために高性能な機能をもしもの備えに
⑰電気・ガスなどのインフラが止まっても在宅避難ができます
⑱太陽光発電の電気を利用しましょう
⑲蓄電池を利用しましょう
⑳エネファーム(家庭用燃料電池)を活用しましょう
㉑給湯機を活用しましょう
断熱性が高い住宅を住みこなすもうひと工夫
㉒室内外の温湿度を確認しましょう
㉓カーテンの設置の仕方、開け閉めで調整しましょう
㉔季節に応じた服装で調整しましょう
㉕植栽で日射しを調整しましょう

出典:省エネ性能に優れた断熱性の高い住宅を住みこなす住まい方ガイド
断熱性能の高さを活用するための4つの視点まず、断熱性能の高い住宅は外への熱の出入りが少ないことから、「季節に応じて日射しをコントロールする」というのが第1の視点だ。特に注目したいのは、窓の内側でカーテンなどによって日射しを遮る(約60%の日射熱が入る)よりも、窓の外側でブラインドなどによって日射しを遮る(約20%の日射熱が入る)ほうが、効果が大きいということ。また、窓の前の地盤面に植栽などを配置して照り返しを防ぐものも、効果があるということも覚えておきたい。

出典:省エネ性能に優れた断熱性の高い住宅を住みこなす住まい方ガイド
第2の視点は、断熱性能の高い住宅では、「暖冷房機器を適切に運転する」というもの。夏や冬になると、エアコンの効果的な使い方について、マスメディアやSNSで多くの情報が流れていることからも、よく知られている工夫といえるだろう。
第3の視点は、断熱性能の高い住宅ならではだろう。少ない台数のエアコンでも、住宅内全体を暖冷房できるからだ。「空間をつなげて気持ち良い空気を家中に」という視点になっている。その際に、サーキュレーターや扇風機(夏)、小さな暖房器具(冬)を使うことも効果的だという。
夏は、エアコンの冷気と同じ風向きにサーキュレーターや扇風機を置くと、室内の下に溜まった冷気を循環させるので、室内全体を冷やすことができるといわれている。冬も、暖気が循環するようにサーキュレーターを置いたり、暖気が回っていない場所に小さな暖房器具を置いたりして、住宅全体を暖めると良いという。

出典:省エネ性能に優れた断熱性の高い住宅を住みこなす住まい方ガイド
第4は「高性能な機能をもしもの備えに」という視点。つまり、高機能の設備などを設置している場合は、災害時などで在宅避難に役立つ使い方ができるというものだ。太陽光発電設備や蓄電池、エネファーム(家庭用燃料電池)、貯湯ユニットがある給湯器(エコキュートなど)があれば、停電や断水でも一定の電気や水が使えるからだ。
そのほか、「もうひと工夫」として、カーテンの設置方法や服装、植栽などによる工夫と、室内外の温度や湿度を確認することの重要性を紹介している。
たとえ住宅自体の断熱性能が高いとしても、夏の暑い日射しや冬の冷気をそのまま取り込んだり、エアコンの設定温度を適切にしていなかったりすると、無駄なエネルギーを使ってしまうことになりかねない。せっかく備わった住宅の性能なので、住み方を工夫してより省エネ性を高めることを考えたいものだ。ガイドはネットで無料公開されているので、より詳しい情報を知りたい人は、ホームページからダウンロードしてはいかがだろうか。
●関連サイト
国土交通省「断熱性の高い住宅でのオススメの住まい方、紹介します」
令和5年度 国土交通省補助事業「省エネ性能に優れた断熱性の高い住宅を住みこなす住まい方ガイド」
所在地:世田谷区玉川
所在地:大田区大森北
所在地:渋谷区広尾
所在地:渋谷区恵比寿「地方に空家があるなら、移住希望者に住んでもらえばいいんじゃない?」そんな誰もが空想する取り組みを実行に移し、大成功している自治体があります。富山県上市町です。では、どのようにして成功させたのでしょうか。現場を見学してきました。
0円空家バンクに希望者殺到。能登半島地震の被災者も受け入れ富山県上市町は、富山駅から電車で約25分の約2万人の町(令和6年1月31日時点)です。町内の多くは山岳地で、名峰・剱岳があるほか、映画『おおかみこどもの雨と雪』(細田 守監督)の舞台になった町でもあります。以前、SUUMOジャーナルでは、「古民家をイメージした公営住宅が誕生!」という記事でもご紹介しました。
この上市町で2022年にはじまったのが「上市町0円空家バンク」(空家解消特別推進事業)です。仕組みとしてはとてもシンプルで、空家所有者の依頼・要望を受けて、行政が建物や土地の現地調査を行い、0円空家バンクに登録します。0円空家バンクを見て取得を希望する人を募集し、内覧会を実施したうえで、空家所有者が取得希望者を選定し、契約を締結、譲渡という流れになります。

上市町0円空家バンクの仕組み(資料提供:上市町役場)
空家所有者は無償で建物や土地を譲渡できるほか、相続手続き・不用品の処分費用として最大10万円の補助が受けられます。また、取得希望者は住宅が0円で手に入るだけでなく、定額50万円(所有権移転登記費用が発生する場合には贈与税など)の補助があり、さらに該当すれば移住定住の助成金を受け取れます。一方で上市町は空家の指導や特定などに人手を割く必要がなくなり、人口減少どころか定住者の増加、税収増も見込めます。
まさに三方良しの取り組みとあって、2022年度の制度スタートからすぐに人口増へとつながり、その年度のうちで転入者数が前年度より77人、2023年度にはさらに170人まで伸びています。なかでも県外転入者数は、2022年度に前年度の4.4倍となり、2023年度には2021年度の5.9倍まで増加しています。
また、今年1月に発生した能登半島地震の被災者も、2月にこの「0円空家バンク」を利用して移住につながりました。建物の所有者が「被災者の力になりたい」ということで、譲渡が決まったといいます。空き家が住まいという資源として活用できている、好事例といってよいでしょう。
空家を持つと“詰む”!? 所有者にも補助金を出す理由とは「空家バンク」そのものは全国各地にありますが、ここまで成果が出ている自治体はなかなかありません。上市町の取り組みにはどういった特徴があるのでしょうか? 上市町建設課の金盛敬司主幹に話を聞きました。

上市町建設課の金盛敬司主幹(左)と企画課の盛一紗弥子係長(撮影/SUUMO編集部)
「以前は、私は固定資産税を担当する部署にいたのですが、空家の所有者から、実家が空家になっているので手放したいという相談を受けていました。その後、現在の建設課に異動になったところ、できるだけ安く住まいを手に入れたい、空家を紹介してもらいたいというニーズがあることに気づきました。副町長からも大胆な取り組みを、という後押しもあり、不動産業者が取り扱わない『無料』の物件に絞って、町が紹介すればいいんじゃないか、という仕組みを思いつきました」と解説します。

0円空家バンク誕生の経緯(資料提供/上市町建設課)
不動産は売却額が200万円以下の場合、不動産会社が受け取れる仲介手数料の上限は「成約価格× 5%」+消費税と決められています。ただこの手数料では事業として利益を出すことができず、事実上、扱うことはほとんどありません。そのため、「0円でもいいから引き取ってほしい」という要望があっても流通することはなく、空き家として放置されてしまうのです。国は対策として、2023年より「相続土地国庫帰属制度※」をはじめましたが、手放すにも20万円もしくはそれ以上の「負担金」や各種手続きが発生するので、「手放すのにもお金がかかる……」と二の足を踏む人がいるといいます。
※相続土地国庫帰属制度/相続または遺贈(遺言によって特定の相続人に財産の一部または全部を譲ること)によって土地を相続した人が、土地を手放し、国庫に帰属させることを可能にした制度
空家・農地に十分な市場価値がない、売却に必要な図面や書類がない、国庫に帰属させようにもお金がかかる、建物を解体したくても解体費用が出せない、家庭や健康状態によっては家財や荷物の片付けができない。さらに思い入れのある家だからこそ、譲渡する相手は誰でもいいわけではない。経済面はもちろん、感情面も入り交じり、より問題を複雑にしています。「上市町0円空家バンク」では、こうした所有者の事情を考慮して空家所有者にも費用を助成し、譲渡先の決定権も所有者が決める制度です。
「空家所有者には、食器や仏壇、寝具、壊れた家電などは処分していただくことと、権利や担保は整理・抹消と相続してから登録していただくことを説明しています。一方で、タンスなどの大型家具に関しては利活用できることもありますので、そのままでよいですよとお伝えしています。間取図は法務局と固定資産税担当の部署で閲覧し、私が図面を作成します。写真も撮影して、0円空家バンクに登録。複数の応募者のなかから、基本的には直接会っていただき、この人なら、という方に譲渡を決めていただきます」(金盛さん)

空家に残された立派な家財たんす。まだまだ使用可能(撮影/SUUMO編集部)
これは、金盛さんが一級建築士でもあるからこその機動力です。ちなみに前述の映画監督の細田守さんとは中学の同級生で高校進学時に先生がこの2人を呼んで、美術の道を目指すように勧めたとか。出てくるエピソードにまたまたびっくりします。
<「上市町0円空家バンク」の空家所有者のメリット>
・家財の処分費用助成がある
・譲渡相手を見つけてもらえるが、最終決定は自分たちで行う
・譲渡に必要な物件写真撮影や間取図作成、応募者募集は行政が行う
一方で、取得希望者にも安全な住まいを用意するよう、配慮しています。
「どんな建物でも0円空家バンクに登録できるのか、というとそうではありません。われわれが現地調査を行い、損傷度や危険性に応じて1から4ランクまで判定します。居住するには危険がないと判断でき、なおかつ不動産会社が取り扱わないものを0円空家バンクに登録し、希望者を募るのです。一方で100万円~500万円など価格がつきそうなものは、不動産会社を紹介し、扱ってもらっています。逆に不動産会社から行政に相談して、といわれることもあり、お互いに補い合っている関係です」(金盛さん)
また、0円空家バンクで上市町を知り、内見に来て土地を気に入り、中古住宅を購入して引越してくることもあるよう。
「上市町は、富山駅まで富山地方鉄道も利用できますし、行政や病院、学校、商業施設などもまとまっています。建物が0円というのでどんな山奥・へき地かと思ったら、コンパクトで便利そう、気に入ったとのお声を聞きます。0円空家バンクの住宅取得者には50万円が助成されますが、ほかにも若者・子育て世帯定住促進事業などの他の助成制度を使えば、住宅取得補助費用として最大360万円までもらえます」(金盛さん)

上市町移住・定住ポータル「かみスイッチ」(写真提供/上市町建設課)
「上市町0円空家バンク」は、充実した移住定住ポータルサイトをもっているほか、YouTubeでも情報発信をしており、首都圏はもちろん、関西、沖縄、海外からはアメリカやオーストラリア・ドバイなどからも申し込み・反響があったとか。基本は現地で内見しますが、難しい場合はオンラインで建物のルームツアーを行い、紹介しています。こうした「かゆいところに手が届く」あたりも成功の秘訣といえそうです。
こうした情報発信がうまくいき、一時期、不動産会社からは「上市町から売る土地・不動産がなくなった」とまでいわれたほど。もちろん、移住者が来てくれれば、家具や家電、リフォーム、カーテンなどの家財を購入する必要があり、地元企業にも還元されていきます。民間の不動産会社で利益が出せるものは民間で行い、行政にしかできないことに絞って行うというのも大きなポイントのようです。
移住者が近隣コミュニティと打ち解けるため、LINEを活用上市町のこの0円空家バンクでは、今まで17号まで登録され、うち16物件が契約済みとなっています。(令和6年3月18日時点)そのなかには、建物の雑草対策としてヤギの飼育をはじめ、それをきっかけに子どもたちや近所の人とのつながりもでき、地域コミュニティにもすっかりと打ち解けたという移住者もいるそう。

赤ちゃんや動物ってそれだけで打ち解けますよね(写真提供/上市町建設課)

ヤギと飼い主さん。これは人の輪が広がります(写真提供/上市町建設課)
「この制度を利用して移住してきた方からは、可処分所得と時間が増えたということをよく聞きます。通勤時間が短くなったり、テレワークをしたりすることで、家族といっしょに過ごす時間が増えた、また、住宅ローンや家賃に縛られずに使えるお金が増えたという声もありますね。水、お米、魚、野菜がおいしい、山が美しいと、改めて上市町の良さを教えてもらえることも多いですね」(金盛さん)
また、移住者がスムーズに地域コミュニティに打ち解けられるよう、LINEオープンチャット「ウェルカミ」を開設し、地域の情報を発信していて、住民情報交換、交流の場をつくっているとか。年1回にオフ会も行い、リアルとSNSの両方で移住支援を行っています。

上市町オンライン交流コミュニティ「WELKAMI」(写真提供/上市町企画課)
<「上市町0円空家バンク」の移住者側のメリット>
・0円で土地、建物などが入手できる
・国内外の遠方、オンライン内見も可能
・移住後は地域コミュニティに打ち解ける仕組みも
では、0円空家とはどのような物件なのでしょうか。実際に2物件を見学させてもらいました。まず、向かったのは上市駅近くの121平米、1962年(一部1972年)築の建物です。こちらは能登半島地震で被災された方が住むことが決定しています。店舗付き住宅だったようで、道路に面して建物がひらかれているのが特徴で、2階は和室となっています。建物全体に古さは感じるものの、キッチン、バス、トイレといった水回りをリフォームし、窓は二重窓にすれば、ぐっと住みやすくなるのが素人目にもわかります。

上市町駅近くの0円空家(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

玄関を開けるとたたき、その奥に浴室。窓ガラスもレトロかわいい(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

一階の和室は、畳もキレイな状態です。大きな姿見がありかつては美容室だったのかな、と推測できます(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
そして、もう一軒の0円空家を見学させていただきました。こちらは建物内部ではなく、外側から。土地と私道をあわせて約800平米、住宅220平米で間取り10DK、車庫と物置で50平米超になります。建物はいちばん古いもので1971年築、増改築を重ねていますが、まだまだ住めるというか、こんな立派な家が0円!?と驚きを隠せません。これが0円で住めるのであれば、私はなんのために都会で生きているのか、人生の価値基準が揺らぐ音がします。

こちらが220平米・10DKの住まい。晴れていると美しい山々の景色を望めます(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

こちらは離れ。もちろん0円。ここをリノベしてサウナにしたい。眼の前の土地はととのいスペースなどにしたいと、妄想が止まりません(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

電動シャッター付きの車庫。2階は倉庫になっています。っていうかここに住めるのでは?(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
現在も取得希望者・空家登録者を募集中!制度はよりブラッシュアップして継続へこの取り組み、以前から上市町に暮らす住民たちからも好評だとか。
「やはり隣家が空家だと、火事や、動物が住み着く、台風や雪などの自然災害での倒壊の危険など、不安が募るようです。若い世代に住んでもらえてうれしい、ほっとしたという声を聞きます」(金盛さん)
家は人が住んでいないとあっという間に劣化していきます。新しい人が入居し、手入れをしながら住んでもらえたら、これほどに幸せな出会いはありません。また、今回のような震災があった場合、被災者支援にも有効であることがわかりました。
上市町には、誰も居住していない、売買市場にも取引されていない空家が、現在、336戸ほどあるといいます(令和6年1月取材時点)。これを単なる「空家」だと思うと負債になりますが、この仕組みでマッチングが成立していけば、立派な「資源」であり、「伸びしろ」ということになります。金盛さんは、「まずは空家の所有者の方に登録してもらいたい」といい、今ある制度をよりブラッシュアップし、次世代につなげていくと意気込んでいます。
取材をしたあとには、制度そのものもすばらしいですが、「空家を所有する人」「移住を考えている人」のお困りごとを一つずつ解決していく、「ていねいさ」「人柄のよさ」が心に残りました。制度をつくるのも人ですが、運用するのも人。良い町を次世代に残していきたい、そんな思いが「上市町0円空家バンク」成功の秘訣だと思いました。
●取材協力
上市町移住・定住ポータルサイト
富山県上市町公式ホームページ
「地方に空家があるなら、移住希望者に住んでもらえばいいんじゃない?」そんな誰もが空想する取り組みを実行に移し、大成功している自治体があります。富山県上市町です。では、どのようにして成功させたのでしょうか。現場を見学してきました。
0円空家バンクに希望者殺到。能登半島地震の被災者も受け入れ富山県上市町は、富山駅から電車で約25分の約2万人の町(令和6年1月31日時点)です。町内の多くは山岳地で、名峰・剱岳があるほか、映画『おおかみこどもの雨と雪』(細田 守監督)の舞台になった町でもあります。以前、SUUMOジャーナルでは、「古民家をイメージした公営住宅が誕生!」という記事でもご紹介しました。
この上市町で2022年にはじまったのが「上市町0円空家バンク」(空家解消特別推進事業)です。仕組みとしてはとてもシンプルで、空家所有者の依頼・要望を受けて、行政が建物や土地の現地調査を行い、0円空家バンクに登録します。0円空家バンクを見て取得を希望する人を募集し、内覧会を実施したうえで、空家所有者が取得希望者を選定し、契約を締結、譲渡という流れになります。

上市町0円空家バンクの仕組み(資料提供:上市町役場)
空家所有者は無償で建物や土地を譲渡できるほか、相続手続き・不用品の処分費用として最大10万円の補助が受けられます。また、取得希望者は住宅が0円で手に入るだけでなく、定額50万円(所有権移転登記費用が発生する場合には贈与税など)の補助があり、さらに該当すれば移住定住の助成金を受け取れます。一方で上市町は空家の指導や特定などに人手を割く必要がなくなり、人口減少どころか定住者の増加、税収増も見込めます。
まさに三方良しの取り組みとあって、2022年度の制度スタートからすぐに人口増へとつながり、その年度のうちで転入者数が前年度より77人、2023年度にはさらに170人まで伸びています。なかでも県外転入者数は、2022年度に前年度の4.4倍となり、2023年度には2021年度の5.9倍まで増加しています。
また、今年1月に発生した能登半島地震の被災者も、2月にこの「0円空家バンク」を利用して移住につながりました。建物の所有者が「被災者の力になりたい」ということで、譲渡が決まったといいます。空き家が住まいという資源として活用できている、好事例といってよいでしょう。
空家を持つと“詰む”!? 所有者にも補助金を出す理由とは「空家バンク」そのものは全国各地にありますが、ここまで成果が出ている自治体はなかなかありません。上市町の取り組みにはどういった特徴があるのでしょうか? 上市町建設課の金盛敬司主幹に話を聞きました。

上市町建設課の金盛敬司主幹(左)と企画課の盛一紗弥子係長(撮影/SUUMO編集部)
「以前は、私は固定資産税を担当する部署にいたのですが、空家の所有者から、実家が空家になっているので手放したいという相談を受けていました。その後、現在の建設課に異動になったところ、できるだけ安く住まいを手に入れたい、空家を紹介してもらいたいというニーズがあることに気づきました。副町長からも大胆な取り組みを、という後押しもあり、不動産業者が取り扱わない『無料』の物件に絞って、町が紹介すればいいんじゃないか、という仕組みを思いつきました」と解説します。

0円空家バンク誕生の経緯(資料提供/上市町建設課)
不動産は売却額が200万円以下の場合、不動産会社が受け取れる仲介手数料の上限は「成約価格× 5%」+消費税と決められています。ただこの手数料では事業として利益を出すことができず、事実上、扱うことはほとんどありません。そのため、「0円でもいいから引き取ってほしい」という要望があっても流通することはなく、空き家として放置されてしまうのです。国は対策として、2023年より「相続土地国庫帰属制度※」をはじめましたが、手放すにも20万円もしくはそれ以上の「負担金」や各種手続きが発生するので、「手放すのにもお金がかかる……」と二の足を踏む人がいるといいます。
※相続土地国庫帰属制度/相続または遺贈(遺言によって特定の相続人に財産の一部または全部を譲ること)によって土地を相続した人が、土地を手放し、国庫に帰属させることを可能にした制度
空家・農地に十分な市場価値がない、売却に必要な図面や書類がない、国庫に帰属させようにもお金がかかる、建物を解体したくても解体費用が出せない、家庭や健康状態によっては家財や荷物の片付けができない。さらに思い入れのある家だからこそ、譲渡する相手は誰でもいいわけではない。経済面はもちろん、感情面も入り交じり、より問題を複雑にしています。「上市町0円空家バンク」では、こうした所有者の事情を考慮して空家所有者にも費用を助成し、譲渡先の決定権も所有者が決める制度です。
「空家所有者には、食器や仏壇、寝具、壊れた家電などは処分していただくことと、権利や担保は整理・抹消と相続してから登録していただくことを説明しています。一方で、タンスなどの大型家具に関しては利活用できることもありますので、そのままでよいですよとお伝えしています。間取図は法務局と固定資産税担当の部署で閲覧し、私が図面を作成します。写真も撮影して、0円空家バンクに登録。複数の応募者のなかから、基本的には直接会っていただき、この人なら、という方に譲渡を決めていただきます」(金盛さん)

空家に残された立派な家財たんす。まだまだ使用可能(撮影/SUUMO編集部)
これは、金盛さんが一級建築士でもあるからこその機動力です。ちなみに前述の映画監督の細田守さんとは中学の同級生で高校進学時に先生がこの2人を呼んで、美術の道を目指すように勧めたとか。出てくるエピソードにまたまたびっくりします。
<「上市町0円空家バンク」の空家所有者のメリット>
・家財の処分費用助成がある
・譲渡相手を見つけてもらえるが、最終決定は自分たちで行う
・譲渡に必要な物件写真撮影や間取図作成、応募者募集は行政が行う
一方で、取得希望者にも安全な住まいを用意するよう、配慮しています。
「どんな建物でも0円空家バンクに登録できるのか、というとそうではありません。われわれが現地調査を行い、損傷度や危険性に応じて1から4ランクまで判定します。居住するには危険がないと判断でき、なおかつ不動産会社が取り扱わないものを0円空家バンクに登録し、希望者を募るのです。一方で100万円~500万円など価格がつきそうなものは、不動産会社を紹介し、扱ってもらっています。逆に不動産会社から行政に相談して、といわれることもあり、お互いに補い合っている関係です」(金盛さん)
また、0円空家バンクで上市町を知り、内見に来て土地を気に入り、中古住宅を購入して引越してくることもあるよう。
「上市町は、富山駅まで富山地方鉄道も利用できますし、行政や病院、学校、商業施設などもまとまっています。建物が0円というのでどんな山奥・へき地かと思ったら、コンパクトで便利そう、気に入ったとのお声を聞きます。0円空家バンクの住宅取得者には50万円が助成されますが、ほかにも若者・子育て世帯定住促進事業などの他の助成制度を使えば、住宅取得補助費用として最大360万円までもらえます」(金盛さん)

上市町移住・定住ポータル「かみスイッチ」(写真提供/上市町建設課)
「上市町0円空家バンク」は、充実した移住定住ポータルサイトをもっているほか、YouTubeでも情報発信をしており、首都圏はもちろん、関西、沖縄、海外からはアメリカやオーストラリア・ドバイなどからも申し込み・反響があったとか。基本は現地で内見しますが、難しい場合はオンラインで建物のルームツアーを行い、紹介しています。こうした「かゆいところに手が届く」あたりも成功の秘訣といえそうです。
こうした情報発信がうまくいき、一時期、不動産会社からは「上市町から売る土地・不動産がなくなった」とまでいわれたほど。もちろん、移住者が来てくれれば、家具や家電、リフォーム、カーテンなどの家財を購入する必要があり、地元企業にも還元されていきます。民間の不動産会社で利益が出せるものは民間で行い、行政にしかできないことに絞って行うというのも大きなポイントのようです。
移住者が近隣コミュニティと打ち解けるため、LINEを活用上市町のこの0円空家バンクでは、今まで17号まで登録され、うち16物件が契約済みとなっています。(令和6年3月18日時点)そのなかには、建物の雑草対策としてヤギの飼育をはじめ、それをきっかけに子どもたちや近所の人とのつながりもでき、地域コミュニティにもすっかりと打ち解けたという移住者もいるそう。

赤ちゃんや動物ってそれだけで打ち解けますよね(写真提供/上市町建設課)

ヤギと飼い主さん。これは人の輪が広がります(写真提供/上市町建設課)
「この制度を利用して移住してきた方からは、可処分所得と時間が増えたということをよく聞きます。通勤時間が短くなったり、テレワークをしたりすることで、家族といっしょに過ごす時間が増えた、また、住宅ローンや家賃に縛られずに使えるお金が増えたという声もありますね。水、お米、魚、野菜がおいしい、山が美しいと、改めて上市町の良さを教えてもらえることも多いですね」(金盛さん)
また、移住者がスムーズに地域コミュニティに打ち解けられるよう、LINEオープンチャット「ウェルカミ」を開設し、地域の情報を発信していて、住民情報交換、交流の場をつくっているとか。年1回にオフ会も行い、リアルとSNSの両方で移住支援を行っています。

上市町オンライン交流コミュニティ「WELKAMI」(写真提供/上市町企画課)
<「上市町0円空家バンク」の移住者側のメリット>
・0円で土地、建物などが入手できる
・国内外の遠方、オンライン内見も可能
・移住後は地域コミュニティに打ち解ける仕組みも
では、0円空家とはどのような物件なのでしょうか。実際に2物件を見学させてもらいました。まず、向かったのは上市駅近くの121平米、1962年(一部1972年)築の建物です。こちらは能登半島地震で被災された方が住むことが決定しています。店舗付き住宅だったようで、道路に面して建物がひらかれているのが特徴で、2階は和室となっています。建物全体に古さは感じるものの、キッチン、バス、トイレといった水回りをリフォームし、窓は二重窓にすれば、ぐっと住みやすくなるのが素人目にもわかります。

上市町駅近くの0円空家(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

玄関を開けるとたたき、その奥に浴室。窓ガラスもレトロかわいい(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

一階の和室は、畳もキレイな状態です。大きな姿見がありかつては美容室だったのかな、と推測できます(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
そして、もう一軒の0円空家を見学させていただきました。こちらは建物内部ではなく、外側から。土地と私道をあわせて約800平米、住宅220平米で間取り10DK、車庫と物置で50平米超になります。建物はいちばん古いもので1971年築、増改築を重ねていますが、まだまだ住めるというか、こんな立派な家が0円!?と驚きを隠せません。これが0円で住めるのであれば、私はなんのために都会で生きているのか、人生の価値基準が揺らぐ音がします。

こちらが220平米・10DKの住まい。晴れていると美しい山々の景色を望めます(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

こちらは離れ。もちろん0円。ここをリノベしてサウナにしたい。眼の前の土地はととのいスペースなどにしたいと、妄想が止まりません(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

電動シャッター付きの車庫。2階は倉庫になっています。っていうかここに住めるのでは?(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
現在も取得希望者・空家登録者を募集中!制度はよりブラッシュアップして継続へこの取り組み、以前から上市町に暮らす住民たちからも好評だとか。
「やはり隣家が空家だと、火事や、動物が住み着く、台風や雪などの自然災害での倒壊の危険など、不安が募るようです。若い世代に住んでもらえてうれしい、ほっとしたという声を聞きます」(金盛さん)
家は人が住んでいないとあっという間に劣化していきます。新しい人が入居し、手入れをしながら住んでもらえたら、これほどに幸せな出会いはありません。また、今回のような震災があった場合、被災者支援にも有効であることがわかりました。
上市町には、誰も居住していない、売買市場にも取引されていない空家が、現在、336戸ほどあるといいます(令和6年1月取材時点)。これを単なる「空家」だと思うと負債になりますが、この仕組みでマッチングが成立していけば、立派な「資源」であり、「伸びしろ」ということになります。金盛さんは、「まずは空家の所有者の方に登録してもらいたい」といい、今ある制度をよりブラッシュアップし、次世代につなげていくと意気込んでいます。
取材をしたあとには、制度そのものもすばらしいですが、「空家を所有する人」「移住を考えている人」のお困りごとを一つずつ解決していく、「ていねいさ」「人柄のよさ」が心に残りました。制度をつくるのも人ですが、運用するのも人。良い町を次世代に残していきたい、そんな思いが「上市町0円空家バンク」成功の秘訣だと思いました。
●取材協力
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所在地:台東区竜泉
所在地:品川区南品川
所在地:杉並区浜田山
所在地:渋谷区上原
所在地:新宿区横寺町
所在地:杉並区高円寺北福岡県久留米市東櫛原町にある「H&A Apartment(ハンダアパート)」は、半田啓祐さん(兄)と満さん(弟)からなる大家ユニット「H&A brothers」が管理運営する賃貸アパートです。築古ですが、家庭菜園や飲食事業者の誘致、マルシェの開催などの工夫で、入居者と近隣の人との交流を促し、新たな繋がりを地域にもたらしています。従来の「大家さん」のイメージを覆す、「コミュニティデザイナー」とは? 豊かな暮らしができる場づくりを地方都市で行うふたりに話を聞きました。
親が管理するアパートが老朽化、DIYと家庭菜園付きアパートで再起西鉄久留米駅のひとつ隣の小さな櫛原駅前にある「ハンダアパート」。敷地内には、「半田ビル」と「アベニール櫛原」の2棟のほか、菜園広場やデッキがあります。1階にあるパン屋さんやカレー屋さん、コーヒースタンドなどのお店やアパートで開催する駅前マルシェには、近所の人も多く訪れます。

菜園で育てた野菜で近所の人と食事会。そうめん流しの時の写真。「ハンダアパート」を中心に人が緩やかに繋がる(画像提供/H&A brothers)

左から半田啓祐さん(45歳)と満さん(44歳)(画像提供/H&A brothers)
H&A brothersのふたりが、両親の管理していたアパートを引き継いだのは2013年ごろ。10年の月日をかけて、住民参加型のワークショップや地域イベントを通じて入居者さん、ご近所さんが繋がり合う場を育てていきました。現在は、「コミュニティデザイナー」として、職人シェアオフィス「BASE」の運営、リノベーション設計施工、DIYワークショップの企画・運営、空き家対策や移住定住支援など行政や大学と連携した幅広い街づくりプロジェクトに取り組んでいます。

アパート敷地内で、不定期に、マルシェを開催(画像提供/H&A brothers)

コアメンバーを務める久留米移住計画のオンラインイベント。うきは市・大川市・大木町・小郡市・久留米市・大刀洗町の6市町が集まり、筑後エリアの魅力や移住のリアルを発信(画像提供/久留米移住計画)
もともと東京の飲食チェーン店で働いていた啓祐さんが、不動産業界に関わりはじめたキッカケは、両親が管理していた古い貸家を取り壊した後に、新築アパートを建てるタイミングでした。ところが、建築会社が倒産し、数百万の資金が戻らない事態に。「このまま何も知らないで不動産業に関わるのは怖い」と考えた啓祐さんは、地元の不動産会社に転職して経験を積みました。
家業であるアパート経営に関わりはじめたのは、2010年ごろ。当時、両親が管理していた半田ビル(1981年築9戸)が老朽化し、空室が増加。苦労するふたりを見て、空室対策や入居者募集に取り組むことになったのです。
「何か手を打たなければと焦る気持ちでしたが、長年アパート経営をしていた家族の危機感は薄く、父の賛同を得られず、予算もありませんでした。業者に頼めないなら自分でやるしかないと、ぼろぼろの外観を修繕するため、ひとりで、外壁を塗ったり、花壇をつくることからはじめました」(啓祐さん)
そのころ、大学で建築を学んだあと、東京のディベロッパーで働いていた満さん。遠隔で啓祐さんの相談に乗っていましたが、ある日、父から連絡が入りました。
「『啓祐が壁を塗っているから止めてほしい』と(笑)。久留米に戻って兄に話を聞くと、お金をかけられない現状がよくわかったんです。家賃が4万円まで落ちていて、何百万円もかけてリフォームしても、せいぜい5万円に上げられるかどうか。資金を全然回収できないんですね。それだったらもう自分たちでやろうって、DIYを手伝うようになりました」(満さん)
満さんは、仕事を辞め、ディベロッパーでのプランニングや設計の経験を活かし、3部屋をリフォーム。啓祐さんは、「アパートの敷地内に家庭菜園をつくってみよう」と思いつきます。
「敷地にあった古い木造アパートを取り壊した空き地がありました。家庭菜園は自分も興味があったし、入居者さんに聞いてみたら、やりたいという子育て世代の方がいました。そこで、土を入れ替えて、区画をつくり、小規模に期間限定のお試しでやってみることにしました」(啓祐さん)
そうして、菜園付き賃貸アパートが誕生。啓祐さんが内覧に立会い、入居希望者に説明すると好評で、次第に入居者が増え、家賃もアップし、経営が上向きに。入居率は、約60%から90%に、家賃は4万円から5万円になりました。築古のぼろぼろだった半田ビルとアベニール櫛原の2棟は、「ハンダアパート」として息を吹き返したのです。

手づくりで始めた「家庭菜園」から”アパート再生物語”は始まった(画像提供/H&A brothers)

現在の菜園と広場。入居者の子どもさんの要望でチャボを飼うことに。応援する入居者が交代でお世話(画像提供/H&A brothers)
パン屋さん誘致や駅前マルシェ開催で、街に開いたアパートへ「ハンダアパート」の経営が回復したころ、意外にもふたりは、転職を考えていました。「当時は地元への思い入れはそんなに強くなかった」といいます。
「中学・高校と県外の学校に進学したので、地元の友人との繋がりも薄くて。改めて久留米を知ろうと、観光プログラムや街歩きに参加してみると、同世代の人たちが面白いことをやっていることがわかったんです。久留米市内の交流会などにも参加し、久留米絣(がすり)の伝統工芸を活かして着物のプロデュースを行っている人など街で活動する人達と繋がることができました」(啓祐さん)
一方、「経営も良くなったし、好きな仕事をしよう」と、東京で転職活動をしていた満さんは、面接の際、思いがけない言葉をかけてもらいました。
「家庭菜園付きアパートの話をすると興味を持ってもらえて、『自分でやってみたら』と言われることが結構ありまして。電話で兄に、こういった評価があると伝えました。東京で、ビンテージビルをプロデュースしている(株)スペースRデザインの吉原勝己さんや、住民同士が交流する賃貸住宅などを手掛ける青木純さんが登壇した勉強会に参加したことで、どんどん街を意識するようになっていったんです」(満さん)
「新しいことをやれる可能性が地方にはあるんじゃないか」と考えたふたり。転職活動をやめ、2014年から、本格的に、「ハンダアパート」の経営に乗り出します。家庭菜園の次に手掛けたのは、「DIYできる賃貸」でした。

壁を好きな色に塗装したり、好きな壁紙を張れるDIY賃貸は、店舗や事務所としても入居可能(画像提供/H&A brothers)

新住民の入居前のDIYには、入居者もお手伝い。子どもたちはすぐに仲良しに(画像提供/H&A brothers)
「東京では、リノベーションして家賃を上げていきますが、久留米でやろうとしたとき、ぼくたちには当初、かけられるお金がなかった。かけたとしても家賃は2万円も上げられない。最初は費用対効果の面から始めたDIYでしたが、自分たちでつくった部屋に愛着が湧くようになり、入居者さんにも壁に色を塗ったり、棚をつけたりとお部屋作りに参加してもらうようにしました。費用に関しては、部屋の状態で違いますが、基本改修工事や原状回復程度は大家負担。それ以上超える部分は入居者さん負担です。DIYに参加することで入居者さんも愛着のある好きな空間で暮らせます」(満さん)
また、大家さんの交流会や勉強会で、「社会課題をビジネスで解決するソーシャルビジネス」について学んだことで、「自分たちのビルを使って地域の課題解決ができないか? 自分たちの敷地や建物だけじゃなくて、エリアで見るとどうか?」と考えるように。「家庭菜園付きアパート」から「街と繋がるアパート」への転換点になりました。

通りに面した駐車場のフェンスに設けた掲示板。近所の小学校の卒業式の日に六年生へお祝いのメッセージを書く子ども達(画像提供/H&A brothers)

アートイベントで遊具を置いた菜園広場。ドッジボールやシーソー、ブランコで遊び放題(画像提供/H&A brothers)
「2014年から街の人が参加できるイベントをはじめました。DIYした部屋の見学会や、アパートに置くベンチづくりなどのワークショップを開催したり、以前から入居者の交流のために開いていた食事会にご近所さんを招いたり。アパート前で行っていた小さなマルシェを「くしわら駅前マーケット」と名付け、『こんな駅前になったら良いな』という思いで続けています」(満さん)
アパート1階に店舗出店者を募り、今では、カレー屋さん、パン屋さん、コーヒースタンド2つ、料理教室の5店舗ができました。居住者、店舗経営者、近所の人の参加を通じて、「自分たちの暮らしをつくる」コミュニティが生まれています。
「入居者同士が仲良くなったとしても、いずれ引越していなくなってしまうんですよね。イベントの核になっていた入居者さんがいなくなると途絶えてしまう。近所の方に参加してもらうことで、活動や人の繋がりが維持できるのだと思います」(啓祐さん)

店舗のお客さん、入居者さん、ご近所さん、さまざまな人が行き交うアパート1階の日常の風景(画像提供/H&A brothers)

近所にファンも多いコーヒーショップやカレー屋さん(画像提供/H&A brothers)

2020年にアパート1階にオープンしたパン屋さん(画像提供/H&A brothers)
DIYワークショップなどで地域の職人さんや住民が繋がる「コーポ江戸屋敷」次に、H&A brothersが手掛けたのは、西鉄久留米駅から約2km半ほど南下した住宅地にあるコーポ江戸屋敷です。約1000坪の広い敷地に3棟があり、昭和の団地のような雰囲気でした。現在は、スペースRデザインとH&A brothersが協働で建物管理をしています。
2016年に団地再生プロジェクトに加わったH&A brothersは、当初、3室のリノベーションを担当しました。
「入居者がDIYで完成させる、『育てる』をコンセプトにした部屋と、棚などを設けて、好きなものを『飾る』お部屋、2タイプつくりました。入居者はすぐ決まったのですが、家賃が思ったほど上がらなかったり、全部で48室あるので、このままリノベーションをするとものすごくお金がかかることがわかり、違うやり方を探すことになりました」(満さん)

鉄筋コンクリート造4階建の「コーポ江戸屋敷」リノベーション前(画像提供/ビンテージのまち株式会社)

H&A brothersが手掛けた232号室「ほんのりサクラ~飾る暮らし~」(画像提供/ビンテージのまち株式会社)
転機となったのは、建物や敷地の特徴や周辺環境を活かしたコミュニティデザインを学ぶビンテージ団地カレッジの開催でした。
「プロにお金を払って管理していくのではなく、コミュニティで維持管理する方向にしないと続かないだろうと。最終的には入居者が自発的に動いてくれて、隣人同士ちょっとしたお世話をし合うようなコミュニティにしたいねと話し合いました。それから、花の種まきのワークショップなど入居者さんを巻き込んだDIYイベントを開催。とても好評で、楽しみながら積極的に参加してくれる人が増えていきました」(啓祐さん)
また、団地の一室に、ビンテージ団地カレッジに参加したメンバーを中心に、久留米の職人さんのシェアオフィス「BASE」が完成しました。
「職人同士が交流して新しいことを始めたり、若い世代の人が職人の仕事に興味を持ってもらえる場をつくろうと。現在参加しているのは13人で、大工、電気、水道、塗装、クロス、鉄工、硝子、造園など幅広い職種の職人が集まっています」(満さん)

入居者さんと一緒にゴーヤの苗植えワークショップ(中央)(画像提供/ビンテージのまち株式会社)

BASEの完成見学会で行った餅まき。入居者さんが集まって一緒に盛り上がった(画像提供/ビンテージのまち株式会社)
「BASEは、住民の食事会の会場にもなっていて、入居者さんとの繋がりが生まれています。そうめん流しのイベントがあったときは、職人さんが竹を割って、そうめん流しの台をつくってくれたことも。入居者さんから相談があった部屋の修理や建物のメンテナンスもBASEの職人さんが対応してくれています。入居者さんも顔見知りの職人さんが工事に入ってくれる安心感があるそうです」(啓祐さん)
2019年には、1階に大きなウッドデッキが完成し、パン屋「江戸やしきパン工房」がオープン。2020年には、カフェ「ツキシマコーヒー」が出店し、入居者や近隣の人の憩いの場になっています。

共用部のウッドデッキから直接店内へ入れるためご近所さんも利用しやすい(画像提供/ビンテージのまち株式会社)

2016年に発行を開始したニュースレター「コーポ江戸屋敷だより」。現在の編集者は啓祐さん(画像提供/ビンテージのまち株式会社)
「場ありき」ではなく「やりたいこと」を応援する場をつくりたいアパートから街への活動を続け、関係人口を生み出し、人と人を繋いできたH&A brothers。現在は、移住定住支援など行政や大学と連携した取り組みにも参加。今年は久留米大学そばで空き家を活用した学生シェアハウスの開業準備を進めています。
「ハンダアパートもコーポ江戸屋敷も、自分たちが関わらなくても、つながりが自然に増えていけるようにしたいですね。例えば、入居者に動画クリエイターの方がいて、入居している店舗のプロモーションムービーをつくるなどお互いの仕事に繋がるようなことが起きています。このように自発的な動きがどんどん起こる場所にしたいです」(啓祐さん)

コモンルームで、毎週末に営業中の「半畳コーヒーさん」。同じくコモンルームを利用している「満月としょかん」とのコラボ企画も開催(画像提供/H&A brothers)

2023年11月に開催した「くしわら駅前リトルマーケット」は、近所の公園や神社のイベントと同日に開催し、3カ所をつなぐスタンプラリーとまち歩きツアーを実施(画像提供/H&A brothers)
「ますますアパートから街に広がる活動が増えています。ハンダアパートでは、お店をやってみたい人に、コモンルームという共用スペースをレンタルしてきました。行政と行っている空き家調査も、周辺にお店を出したい人に繋げたいという思いで取り組んでいます。空き家があるから何かするのではなく、何かしたい人を応援する場所をつくっていきたいと思っています」(満さん)
入居者同士からご近所さん、地元の職人さん、移住者……ハンダアパートやコーポ江戸屋敷から、コミュニティの輪が、波紋のように街じゅうに広がっています。手探りで始まったH&A brothersの物語は、「地方だからできること」がまだまだあると気づかせてくれました。
●取材協力
・H&A brothers
・H&A Apartment
・久留米移住計画
所在地:港区西麻布
所在地:長野県北佐久郡軽井沢町大字茂沢字海付
所在地:調布市深大寺東町
所在地:杉並区久我山
所在地:東京都渋谷区千駄ヶ谷
所在地:港区高輪
所在地:杉並区成田東
所在地:新宿区新宿
所在地:中央区日本橋横山町このところ編集部では家を建てるメンバーがあらわれ、プランや設備についてさまざまな相談が上がっています。その中で注目されているのが、「ハイドア」。注文住宅では、室内に設置する床から天井まで2mを超えるドアが人気を集めているといいます。「ハイドア」そのものは珍しくありませんが、なぜ、今、注目を集めているのでしょうか。室内建具専業メーカー「フルハイトドア®」を製造する神谷コーポレーションで話を伺いました。
室内ドアは空間を大きく、広く、明るく見せる重要パーツだった家探しをするときに、「室内ドア」の形状やデザインを意識したことがないという人がほとんどでしょう。
下の写真は、ごく一般的な日本の建物で、天井高が2m40cm、室内ドアの高さは2mほどで上部に壁(下がり壁といいます)があることがほとんどです。

2mの一般的な室内ドア。ドア上部に下がり壁があります(写真提供/神谷コーポレーション)

床から天井まで高さのあるハイドア。ドアの高さが違うだけですが、室内の雰囲気が異なる(写真提供/神谷コーポレーション)
対して上の写真はハイドアといい、床から天井の高さまである大型のドアです。高さは天井にもよりますが2m40cm、大きいものだと2m70cm近くなります。こうした大型のハイドア、近年、より人気が高まっているといいますが、どのようなメリットがあるのでしょうか。
「ひと言でいうなら、ハイドアは部屋を広く開放的に、明るく見せてくれるんです。ドアが大きくなることでスタイリッシュに見せる効果があります。また、下がり壁がなくなるためドアを開けると光が部屋いっぱいに広がり、自然光で部屋を明るくしてくれるのです」と話すのは神谷コーポレーション、ハイドアに特化した会社で営業部長を務める長尾謙介さんです。

こちらは別の角度から見たドアの比較。下がり壁があるドアに対し、ハイドアのほうが採光にすぐれ室内を明るく見せる効果がある(写真提供/神谷コーポレーション)
同社では、通常の「ハイドア」と違い、目に見えるドア枠がなく、クロスの中に埋め込まれているため「枠レス」と認識されているそう。ほかにも、室内の自動ドア、引き手やハンドルのないタイプ、天然レザー張りなど、実に個性的な室内ドアをそろえています。室内建具は枠が大きいほど立派だといわれてきましたが、今や「ほぼ見えない」のもトレンドになっています。確かにないと洗練されているように見えます。

こちらもハイドアですが、上下左右にドア枠がありません。すっきりとした見た目で、海外の家のような仕上がりに(写真提供/神谷コーポレーション)
SNSで家づくりが当たり前。だからこそ室内ドアの存在感が高まる現在、神谷コーポレーションでは売上推移の詳細は明らかにしていませんが、ハイドアをリリースしてからの売上は10年間で7倍にも伸びているといいます。新築住宅着工数そのものには大きな変化がないなかで、施主から「わざわざ」選ばれるようになっているといってもいいでしょう。でも、なぜ今、ハイドアなのでしょうか。
「ひとつはSNSです。通常、友人や知人以外の家は、なかなか見学することはないですよね。でも、インスタやルームツアー動画などで、気軽によそのお住まいのインテリアを見られるようになりました。そうして家づくりの実例をたくさん見ていくうちに、なんかかっこいいなという家がハイドアだった、当社のフルハイトドア®だった、という流れで採用されています」と長尾さん。
なるほど、SNSで家づくりやインテリアの勉強をする→タグを見る→ハイドアを知るという流れのようです。そのため、長尾さんのチームの日課は「エゴサーチ」。#ハイドアと#フルハイトドア®とタグのついた投稿を探し、自社の商品がどのように採用されているか、日々、見てまわっているそう。
「今から20年前、家づくりをした人に『自宅でこだわったパーツ30アイテム』を調査したところ、室内ドアはなんと27番目でした。それくらい『室内ドアは優先順位の低いパーツ』だったのですが、今ではハイドアやフルハイトドア®とタグをつけて投稿してもらえるように。特にコロナ禍で、家への意識、プライオリティは高まっているのを感じます」(長尾さん)
また、先日、「注文住宅トレンド2024! 注目は、平屋・ヌック・タイパ・省エネ・ランドリールームなど7キーワード」という記事で解説されていましたが、建物面積を抑える傾向にある今、ハイドアでできるだけ室内を広く、大きく、明るく見せたいというトレンドにもマッチしています。こうしてみると、ハイドアが採用されるのは時代の流れに沿っているんですね。

引き戸タイプのハイドア。枠がほとんどなくすっきりとおさまり、空間の広さと高さを感じられる(写真提供/神谷コーポレーション)
室内ドアが「厚い」とどんなメリットがあるの?一方で、神谷コーポレーションでは単なる室内ドアの高さだけなく、「厚み」も大切だといいます。
「日本の室内ドアは3cm台であることがほとんどですが、当社の室内ドアは厚さ4cmです。数ミリ程度と思うかもしれませんが、実物を見るとかなり違います。そもそも室内ドアは西洋の文化で、欧州では厚さは4cm以上あることが一般的。厚みがあることのメリットは、やはり重厚感と高級感、安心感ですね。欧州では室内ドアが、命と財産を守る最後のパーツという位置づけなのです」と長尾さん。
ただ、室内ドアは木製。大きくなるほどに必然的に「ソリ」が生まれてしまうそう。すると開閉がスムーズに行えずに音がする、閉まらないなどの「立て付けが悪い」という状態になってしまうわけです。それを防ぐべく、建材メーカー各社は試験設備で性能試験を繰り返しています。ただ、加熱しての耐久試験はクリアが難しく、実施しているのは神谷コーポレーションのみだといいます。ちなみに神谷コーポレーションの伊勢原工場ではこうした試験の様子などを「KI-LABO」として限定公開しており、施主の方や契約しているビルダーの人が希望すれば見学できます(要予約)。

室内ドアの厚さ見本。ショールームで実際に見てみると、厚みのある安心感を体感できる(写真提供/神谷コーポレーション)
よく外国の家と日本の家を比較して「すべてが小さく、軽い」といわれますが、こうした「天井高や厚み」の差にあるような気がします。
一方でハイドアを採用するうえでの、注意点、デメリットはないのでしょうか。
「ひとつは価格ですね。一般的な高さの室内ドアと比較すると、どうしても価格は高くなってしまう。目安としては1.5倍とお伝えしています。本当は全室採用したかったけれど、リビングのみフルハイトドア®にしたというお声はよく頂戴します。ただ、メーカーが製造しているドアであれば、多くがソフトクローズ機能がついており、他の室内ドアと比較して重い、操作しにくい、歪みやすいといったことありません」(長尾さん)
一方で、建築士や工務店が設計してハイドアを造作してもらうとやや重かったり、経年にともなってやソリ、歪みがうまれてしまうこともあるとか。そのあたりは注意して選ぶとよいでしょう。

こちらは引き戸タイプのハイドア。横幅110cm~135cmでオーダーできるとか。通称「動く壁」(写真提供/神谷コーポレーション)
室内ドアで日本の家はまだまだかっこよくなる!?神谷コーポレーションによると、ハイトドアで一番人気の色は白だそう。ほかにもグレーやグレージュ、天然木、鏡、デニム張りなど、さまざまな色やバリエーションがあり、幅広いインテリアの好みに対応しています。白やベージュが中心だった壁紙は、今はさまざまな色が選ばれているのと同様、ドアとの組み合わせも楽しめそうです。

こちらも引き戸タイプで空間を広く使える。天井のおさまりの美しさに注目。金具もなく、スリットに手をいれて開閉する。用の美の極地(写真提供/神谷コーポレーション)
「家に求める価値観が多様化しているなか、インテリアのトレンドも年々、変化していますし、居室の天井高もより高くなっていて、海外のような抜け感、スタイリッシュさを求める人は年々増えているように思います。当社のドアの枠がない、完全な壁面化はこうした時代のニーズに即していると自負しています。また現在、ドアの高さは最大3mまで対応していますが、まだ一部のシリーズのみなので今後すべてが3m対応になるよう挑戦したい」と意欲的です。
また、「KI-LABO」では、商品開発時に行う試験の様子を見学できるのですが、その内容がスゴイ! 前述の通り、室内ドアは「ソリ」が問題になるといいましたが、その「ソリ」を抑えるために、徹底して商品試験を行っており、その様子を見学できるのです。

限定公開されているKI-LABO(写真提供/神谷コーポレーション)

照射加熱試験の様子。初めて見るテストに興奮します(写真提供/神谷コーポレーション)
(1)照射加熱試験…8時間ほど熱を加えて強制的に曲げたあとに、16時間ほど冷まし、これを5回繰り返す試験。一般的には外壁材で行われる。
(2)二室反狂環境試験…部屋間の湿度差による変化を試験する。湿度90%の部屋と50%の部屋を用意し、曲がらないか試験する。
(3)開閉繰り返し試験…10万回の開閉に耐えられるか。機械が実際に動かし、ドアだけでなく金物が壊れないかも試験する。
(4)衝撃剥離試験…30キロの袋をぶつけてドアが壊れないか試験する。子どもやモノがぶつかることを想定している。動画で最終的にバールでガラスを破壊する様子も視聴できる。
他にも、塗装とシートの違い、新商品の遮音ドアによる生活音の聞こえの「差」なども体験できます。個人的には、印象に残っているのは色や素材の違いや美しさ! 引き手のデザインの豊富さ、白の違いの美しささ、ベージュやグレージュとの違いなどに感動します。マニアックな施設だと思われがちですが、ここを見学したいと、関東だけでなく日本全国から見学希望があるとか。ハイドアは、大変失礼ながら見た目の美しさ、かっこよさ重視でここまで流行しているのかと思っていましたが、機能面や安全面でもすぐれていますし、ここまで広く公開しているのは、専業メーカーとしての自信があるからなのでしょう。
取材を終え、日本の室内ドアはこんなにかっこよくなるんだ……と一人で感激に打ち震えていました。よく考えてみれば、日本の室内建具といえば、基本的には障子と襖だったわけで、日本のドア、室内ドアの歴史はまだはじまったばかり。西洋のものを取り入れて、改良するのは日本の十八番です。「室内ドア」から、日本の住まいがもっと美しく快適で、安全になっていけばいいなと思います。
●取材協力
神谷コーポレーション
所在地:台東区今戸
所在地:中野区上高田
所在地:練馬区富士見台
所在地:杉並区浜田山
所在地:墨田区京島
所在地:北区中里
所在地:北区中里
所在地:千代田区岩本町
所在地:千代田区岩本町テレワークが進み、都内中心部に暮らしていた若いファミリーが郊外に移り住み始めており、埼玉県の「所沢」にもその流れが訪れています。背景の一つとして、街の活性化も影響しているようです。近年、市内では再開発が進み、駅前に大型商業施設や、アミューズメント施設が次々オープン。そして、長年の住民たちは、街を愛する人たちを増やすために、シビックプライド(地域への誇りと親しみ)を醸成するイベントを行ってきました。その流れを加速させるのが「TOKOROZAWA STREET PLACE」。いったいどのような試みなのか、関係者のみなさんに話を聞きながら、実際に街を歩いてみました。
埼玉の玄関口・所沢に、シビックプライドを生み出す埼玉県の南西部に位置する所沢市。市内には西武池袋線、西武新宿線、JR武蔵野線が走り、人口も約34万人と一大規模の街です。古くは鎌倉街道の宿場町で、商店や市場などが集う、商慣習の強い街並み。とはいえ、後継不足による地場商店の衰退や、人口減少も影響して、街の様子は様変わり。2000年以降は、複合再開発に踏み出し、駅前に高層マンションが続々と建設されます。さらに商業施設の開発が続き、この20年近くをかけて見違えるような変化を遂げました。変化に合わせて新しい住民も増えていったのです。

商店街の一角に残る、古き良き飲食店街「盃横丁」(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
そこで市は、「新旧関わらず、多くの人が共感できる街づくりのビジョン」として「所沢駅周辺グランドデザイン」を策定。古くから地域で暮らす住民や商店街の店主をはじめ、市内で個性的な取り組みをする人々が意見交換を行いました。

昔ながらの一戸建てや低層住宅と、新たに建つタワーマンションのコントラストが印象的(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
こうして理想的な街づくりの実現に向けた社会実験は、まず2022年度に「TOKOROZAWA STREET PLACE」としてスタート。「歩きたくなる、過ごしたくなる、住み続けたくなる」エリアを創り出すための実験が行われました。市内に点在する個性的なお店などを歩きながら、居心地の良い空間づくりや、歩きたくなる街なかづくりとはどんなものか、を考える試みです。実際に歩いてみることで、それまで知らなかった街の風景を知ることができるきっかけにもなりました。
「こんな所沢にしたい!」を形にして、街歩きしながら社会実験2年目である2023年度は、晩秋にさしかかった2023年11月18日・19日に、所沢駅周辺エリアのパブリック空間を活用して開催されました。こちらを導くのは、所沢のまちづくりに想いをはせたRFA・公共R不動産・ハートビートプランの3社。市民と共に、グランドデザインをベースに、この日までプログラムをつくり上げてきました。

実験を牽引する公共R不動産の飯石 藍さん(写真左)RFA主宰の藤村 龍至さん(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
東京藝術大学准教授であり建築設計事務所・RFAを主宰する建築家、藤村 龍至(ふじむら・りゅうじ)さんは、「私たちは、まず第一として住民がこの街の原石を発掘し、暮らしを楽しむことを大切にしています。さらに、眠ったパブリック空間を生かすことと、街中のプレイヤーを発掘するというのも大きな目的です。地域でこの街をよくしていきたいと思うプレイヤー同士が手を組み、連携していくことは、今後大きな意味があるのではと思っています」と話します。
当日はグランドデザインで設定した重点エリアの10箇所のうち、タワーマンション街の一角にある「元町コミュニティ広場」、昔ながらの街並みエリアにある「旧市役所前」、街の守神である「所澤神明社」を中心会場にして、マーケットやワークショップ等のプログラムを実施しました。

元町コミュニティ広場で開催されていた、マーケットの様子。若手のクラフト作家さん、農家さんが出店、にぎわいをつくり出していました(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
フラワーアーティストや、野菜生産者、小さな書店や、クラフト作家など、所沢周辺エリアで活動する魅力的なお店やマーケットが各所に構えていました。

飯能を拠点にしたクラフト作家さんの作品(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
また、重点エリアでは、サウンドインスタレーションによる空間演出を実施。道ばたやパブリックスペースには、歩いたら休むことができるストリートファニチャーも設置し、歩き・休み・憩いを順繰り味わうことができる仕掛けが出来上がっていました。

所澤神明社には印象的なモニュメントも。歩き回る人たちの目印になっていた(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
コーヒーやおやつを片手に、家族や友人と語らう人もいれば、時にはその場でワークショップを行う人も。ローカルの作家やアーティストの方と商品を片手に会話や笑顔がそこかしこに飛び交う姿は、日ごろの街中からはみてとれないほどの熱気でした。

地元、狭山茶の生産者さんと会話を交わすお客さん。生産者さんにとっても、こうした試みへの出店は新たな取り組みだったようです(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
公共R不動産の飯石 藍(いいし・あい)さんは「新しく住みはじめた方は、街のことを知る機会がなかなかないんです。地元で生産されたり、地元の作家さんのものを知ることができたら買いたいという思いがある。こういった熱意をローカルで循環できるような、きっかけをつくりたいと思いながら実験を積み重ねていますね」とこれまでの思いを話してくれました。

訪れる人たちが、自分のお気に入りスポットを付箋でマーキング。知らない店、知っている店、気になるスポットがマップ上に点在しています(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
マーケットに訪れた住民に聞いてみると「今日、マーケットをやっていると知って街中を歩いてみたのですが、初めて知ったお店もあって楽しかった。また買ってみようかなと思いました。こうして地元のつくり手を知ることができるのは嬉しいです」と新鮮な気持ちを抱いていたよう。
故郷が西埼玉エリアで、旧来の街並みを知る筆者にとっても、じっくり歩き回ってみると、これまで知っていた所沢とはまた違う姿を目にすることができ、新しい風が吹いているな、と心くすぐられました。
新旧の地元プレーヤーが集う試みはそれだけにとどまりません。同日開催された7つの実験との連携も、今回の注目ポイント「TOKOROZAWA DESIGN WALK」です。「思わず”歩きたくなる”ストリートに!」を合言葉に、参加者が所沢市内をぐるっと一周できる仕掛けを用意。所沢駅周辺に限らず、市内主要駅各地周辺で、地域プレイヤーの主催による実験も同時に開催されました。

市内7箇所で実験が同時開催(画像引用元/所沢市ホームページ)
「そもそもこの実験の発起は、街のプレーヤーたちです」
藤村さんはそう話します。
2015年より航空公園エリアで開催している、地元若手クリエイターや作家たちが集う「暮らすトコロマーケット」。主催する岡田一(おかだ・はじめ)さんは「いつか、長野・松本のクラフトフェアのように、来場者がマーケットのみならず、街中をゆっくり歩きつくす、あの感じを再現したい」と、当初から「TOKOROZAWA DESIGN WALK(以下「TDW」)」のイメージを描いていたそうです。地元のプレーヤーが集まる席で胸の内を話すと、各々が”いいね”と共感しあい立ち上がったのが、今回実施した同時開催の実験なのです。

市内をはじめ、近郊エリアのクラフト作家 やアーティストなど、104件の出店(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

出店者の選定は岡田さんを中心に実施。今年は新たに18件の新規出店者が発掘された (写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
これまで9回にわたってマーケットを開催してきた岡田さんは、
「暮らしや生き方、街のデザインとひとのつながりをモザイク模様のように紡ぎあげたいと思ってこれまで開催してきましたが、ここ数年で作家も、来場者もずいぶん若い方が発掘されているように思います。さらに、今回、試みを同時開催したことで、ぐるりと周回してきた人も感じられました。街を歩くことで何かを考え感じているようにも思います。暮らし方を問い直している方が増えているのではないでしょうか」と思いを話してくれました。

「暮らすトコロマーケット」主催者の岡田 一さん(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
同時開催にあたっては、岡田さんが話すように、若手のプレーヤーの活躍が目立ちました。これまで市内ではあまり注目されなかったエリアでも、新たな活動家やクリエイターによる試みが開催されてきているのです。
所沢駅周辺西新井エリアには、「理想的な公共トイレ」を具現化した、インフラスタンドを囲む「KAWAYA市」や、西所沢エリアでは地域のクリエイターが中心となって開催したアートや音楽のイベント「西とこ文化祭」が開催されました。

「西とこ文化祭」実行委員のまえはら あさよさん(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

およそ公共トイレには見えない美しいフォルムのインフラスタンド(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)

「トイレの概念を覆していきたい」と、理想の公共トイレの姿を追求する、有限会社石和設備工業の小澤 大悟(おざわ・だいご)さん(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
若手の活躍の場が広がったことは、「地元・西所沢の不動産会社である吉祥建設の岡川拓之社長との出会いが大きい」と、西所沢で古書店「サタデーブックス」&「西埼玉暮らしの編集社」を運営する大竹 悠介(おおたけ・ゆうすけ)さんは話します。

古書店サタデーブックス&西埼玉暮らしの編集社の大竹 悠介さん。小さなスペースにぎゅうぎゅうになるほど人が訪れていました(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
「岡川さんは、お金も実績もないけれど、熱意とビジョンのある若者の声に、耳を傾けてくださいます。この場所も、吉祥建設さんの所有する物件を貸していただいています。先輩方が耕した土壌があってこの街で活動ができていますし、私もまた次の世代が活躍できる文化的な土壌を作っていきたいですね」(大竹さん)

サタデーブックスなどが入る「きちじょう荘」。蔦のからまる雰囲気たっぷりな木造建築。吉祥建設さんからの紹介で入居した(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
個人も企業も。力を合わせて街をつくり上げるそして特筆すべきことは、地元企業である西武鉄道やKADOKAWAの2社が参加をしたことです。現在彼らは街のプレーヤーと目線もあゆみもともにそろえて活動をしています。それまでは、「何かをしたい」と思っていても、きっかけがつくれなかったようです。
2020年に東所沢エリアに移転したKADOKAWA。本社の横には、アミューズメント施設「角川武蔵野ミュージアム」が併設され、一体の街「ところざわさくらタウン」としてにぎわいを見せています。これまでは倉庫街、住宅街としての印象が強かった東所沢エリアに、多くの人が訪れるようになりました。しかし、地元の住民とのつながりを持つ機会がなかなか見出せず、いつか地域と手を組んで街を盛り上げたいと思っていたようです。そんな中で出会ったのが地元のオーガナイザーである角田テルノさん。彼をきっかけに、同社はTDWに参加することになります。

特徴的なフォルムをした「角川武蔵野ミュージアム」(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
この2日間、ところざわさくらタウンでは、KADOKAWA主催で、「武蔵野回廊文化祭」を実施。そのうちの一つのコンテンツ「奇天烈縁日」は角田さんがプロデューサーとして関わるというコラボレーションが生まれました。また、現地ではコスプレイベントも開催。アニメの聖地ここにありを印象付ける催しとなり、所沢に多くの若者が足を延ばしたのです。

この日はコスプレイヤーが集うイベントが開催され、タウン内の各所でお気に入りのコスチュームを身につけ撮影を楽しむ姿が見られた(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
これら7箇所の回遊を生み出すために力を貸したのが西武鉄道。各地を歩き回る仕掛けの一つとして、西武線アプリスタンプラリーを実施しました。西武鉄道株式会社 事業創造部 沿線深耕担当の今成瞬(いまなり・しゅん)さんは、これまで街のキーパーソンやプレーヤーのことはずっと知っていたけれど、つながるきっかけがなかったことに、もどかしさを感じていたそうです。

東所沢公園内にある武蔵野樹林パークのライトアップ(写真撮影/SUUMOジャーナル編集部)
「駅を中心としてまちを活性化するため、行政やまちのプレイヤーの方々と連携し、一体感を持って駅やまちの特徴を表出していきたい。規模や組織は関係なく、互いにフラットな思いで街をよくしていきたいと行動しています」(今成さん)
社会実験はまだまだ続くこうして街を挙げて壮大な仕掛けをつくり上げた社会実験。私たちが地域のプレーヤーの話に耳を傾け、市内を歩き尽くした時には、とっぷり日もくれていました。これほどに所沢の街を歩き尽くしたことは未だかつてないというほど。30代前後の若いプレーヤーたちが新たに街を動かし始めていることに驚きを感じ、すっかりイメージは一新されたのでした。
若い世代がゆるくつながり合いながら街を盛り上げている姿っていいですね。新しい街のつくり方だと体感した1日でした。
●取材協力
・RFA
・公共R不動産
・西武鉄道
・暮らすトコロマーケット
・西とこ文化祭
・KAWAYA市
・武蔵野回廊祭
所在地:渋谷区神宮前
所在地:目黒区青葉台パナソニックホームズが、一般社団法人移住・住みかえ支援機構が開発した長期優良住宅対象の残価設定型住宅ローンについて、楽天銀行との提携を経て、返済期間が最長40年の「楽天銀行オプション付加型残価設定住宅ローン」の取り扱いを開始すると公表した。残価設定の住宅ローンとは、一体どんなものなのだろう?
【今週の住活トピック】
楽天銀行と返済期間最長40年の残価設定型提携住宅ローン取り扱いを開始/パナソニック ホームズ
住宅ローンでは耳慣れないローンだが、カーローンではよく耳にする「残価設定型ローン」。車の購入の際に、あらかじめ将来の下取り価格を設定して、車両価格から下取り価格(残価)を差し引いた金額に対してローンを組む方法のことだ。
では、住宅版ではどうなるのか?
パナソニックホームズの残価設定型住宅ローンは、移住・住みかえ支援機構(以下「JTI」)が提供する「残価設定型住宅ローン」を利用するもので、通常の住宅ローンに、「返済額軽減オプション」と「買取オプション」という二つのオプションを付ける形になる。
大雑把に言うと、通常のローン返済をする途中で、あらかじめ決められたオプションが行使できる時点で、返済額は大幅に減るが終身でローン返済を続けるか、住宅ローンの残高と同額で買い取ってもらうかを選べる、といったものだ。残価設定時期などはJTIが決める。
したがって、JTIが大きな役割を果たすことになるので、JTIが残価設定型住宅ローンの仕組みを提供する背景について見ていこう。
JTIが残価設定型住宅ローンを提供する背景は?JTIは国土交通省の支援を受けて設立した、持ち家を長く活用してもらうことを目的とした一般社団法人。シニア層が使わなくなった住宅を子育て世代に向けて転貸する「マイホーム借上げ制度」などを提供している。
2021年に住生活基本計画の見直しが行われた際に、「ライフスタイルに合わせた柔軟な住替えを可能とする既存住宅流通の活性化」のため、残価設定ローンを含む多様な金融商品を活用することが盛り込まれた。これを契機に、JTIが、維持管理体制の充実した事業者が施工する認定長期優良住宅について、将来の残価を保証する仕組みを開発した。これが、残価設定型住宅ローンだ。
したがって、残価設定型住宅ローン対象となるのは、国の認定を受けた「長期優良住宅」で、施行する事業者も指定されたハウスメーカーに限られるので、対象は一戸建てになる。また、取り扱いができる金融機関も、現時点で指定されているのは、日本住宅ローン、三菱UFJ銀行、楽天銀行だ。
※長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた優良な住宅。長期に使用するための構造及び設備を有していること、維持保全の期間や方法を定めていることなどが求められる。
残価設定型住宅ローンの仕組みをもっと詳しく残価設定型住宅ローンについて、下の概念図でもう少し詳しく見ていこう。
例えばJTIが残価設定月を20年後に設定した場合、通常の住宅ローンの返済をしていくが、30歳で借りて50歳で残価設定月に達したら、リバースモーゲージ(死亡時に担保不動産を処分して残債を返済する住宅ローン)の仕組みを使った「返済額軽減オプション」を選ぶ(左側)か、その時点のローン残高の額で買い取ってもらう「買取オプション」を選ぶ。また、「返済額軽減オプション」を選んだ場合でも、途中で「買取オプション」を行使することもできる(右側)。

出典:パナソニック ホームズのリリースより
まず、「返済額軽減オプション」について見ていこう。「1」では通常の住宅ローンの返済となるが、残価設定月以降にオプションを行使すると、元金の返済額をJTIの保証する残価に合わせることで返済額を大幅に軽減する「新型リバースモーゲージ」に切り替わる。借り入れから50年経つと元金の返済がなくなり、51年目以降は利息のみの返済となる。そのため、「2」、「3」と段階的に返済額が減る形になる。
次に、「買取オプション」について。残価設定月に行使した場合は、その時点の住宅ローン残高と同額で、また返済額軽減オプション選択後に行使した場合は、新型リバースモーゲージの残高と同額で、JTIが買い取る形となる。
残価設定型住宅ローンのメリットやデメリットは?残価設定型住宅ローンのメリットは、長期間返済する中でいくつかのリスクを回避できることにある。例えば定年後に想定したよりも収入が減ってしまった場合でも、「返済額軽減オプション」によって、返済額を抑えることができる。
また、一定期間住んでから売却しようとしたとき、住宅市況が悪化して売却額では住宅ローンの残債を返せないといったときでも、残債と同額で売却できるので、ローンから解放される。住宅市況が良好で高く売れるときは、自身で売却した額で住宅ローンを完済すればよい。
このように、住宅ローンによって自由な住替えを妨げられることがなくなるのだが、注意点もある。
「返済額軽減オプション」を行使した場合、当初の住宅ローンに付帯した団体信用生命保険は終了し、以降は団体信用生命保険に加入できない。また、終身で返済することになり、当初の住宅ローンよりも利息を多く払う場合もある。
なお、認定長期優良住宅は、長期使用ができるように認定計画に沿ったメンテナンスを継続的に行うことが求められる。そのため、一般的な住宅よりも点検や補修費用などがかかってしまうことも、理解しておきたい。
社会的に見ると、残価設定型住宅ローンを利用した住宅は、いずれのオプションでも、最終的にはJTIに帰属するので、良質な住宅が空き家になることはない。こうしたメリットもある残価設定型住宅ローンだが、利用できる住宅(事業者)や金融機関が限られるので、どの住宅でも利用できるわけではない。とはいえ、ローンを利用する側にとって、多様な選択肢の一つになるので、こうした住宅ローンがあることを知っておいてほしい。
●関連サイト
パナソニック ホームズ「楽天銀行と返済期間最長40年の残価設定型提携住宅ローン取り扱いを開始」
移住・住みかえ支援機構「残価設定型住宅ローン利用者フォーラム」
所在地:山梨県北杜市高根町東井出字上手原
所在地:世田谷区太子堂
所在地:大田区上池台京都市が取り組む「おせっかい型支援」が注目を集めています。劣化が進むマンションを見つけだし、飛び込みで訪問する独特な後方支援ゆえに「よけいなお世話だ」と門前払いされる場合もしばしば。ハードルが高いこの支援、どのように運営しているのでしょう。京都市都市計画局住宅室住宅政策課に話を聞きました。
マンションの老朽化は周辺住民の命にかかわる問題「『おせっかい』という言葉は、『もう、こちらから押しかけていこう』という気持ちの表れなんです」
「おせっかい型支援」の陣頭指揮を執る京都市都市計画局住宅室住宅政策課の企画担当課長、神谷宗宏(じんや ・むねひろ)さんはそう語ります。リーダーの神谷さんは、建築の技術職です。そして神谷さんをはじめ、同課係長の鈴木裕隆さん、武田あゆみさん、野上智也さんの計4名と、NPO法人「マンションサポートネット」から「おせっかい型支援」は成り立っています。
では、「おせっかい型支援」は、どのようないきさつでスタートしたのでしょう。

京都市都市計画局住宅室住宅政策課の企画担当課長、神谷宗宏(じんや むねひろ)さん(写真撮影/吉村智樹)

「外壁が崩壊等した事例(滋賀県野洲市)」(写真提供/京都市役所)
発足のきっかけは、国の「マンション管理適正化法」の制定を受け、2000(平成12)年から始めたマンションの実態調査にあります。
マンション管理に問題が生じていると、築年が古くなるにつれて、居室の賃貸化など非居住化が進みやすく、管理組合の高齢化も相まって、組合活動自体が難しくなり、行政に助けを求めることも難しくなる場合もあります。ひとたび管理不全に陥ると居住者の努力だけでは機能回復が難しくなるため、老朽化がさらに深刻になる実態が幾度の調査から浮き彫りになりました。
神谷「マンションの廃墟化は、京都の景観への影響も大きく、もはや私有財産の問題ではないことにいち早く気づいたのです。当初はマンションの管理に行政が踏み込む法的な根拠はありませんでした。しかし、廃墟化を待つわけにはいかない。マンションに長く快適に住み続けてほしい。だから頼まれてもないのに管理組合の支援を始めたのです。これが京都発“おせっかい型”支援の所以です」
全国でマンションの管理不全に注目が集まるきっかけとなったのが、かつて滋賀県野洲市に存在した「廃墟化マンション」です。このマンションは2010年(平成22年)に建築基準法に基づく外装材の落下防止措置などが勧告されたにもかかわらず放置状態が続き、2020(令和2)年、遂に行政代執行による解体工事が着工。その費用はなんと1.18億円にものぼりました。このように管理組合が正常に機能していない場合、問題を抱えたマンションは放置され、解体費用などで財政を圧迫してしまうケースがあるのです。
神谷「野洲の廃墟化マンションの行政代執行の件は、京都も関心を持っていました。行政代執行にかかった金額は相当ですが、何より危険です。マンションは私有財産ですが、管理不全に陥って老朽化したときに、景観だけではなく周辺の住環境やコミュニティに与える影響がひじょうに大きい。放っておくと住民の命にかかわるんです」
2020(令和2)年に国が「マンション管理適正化法」を改正し、同法に基づく指針のなかで、マンションは民間資産であり社会的資産でもあると初めて位置づけられました。行政のマンション管理への関与が位置づけられたことを機会に、近年京都の“おせっかい型支援”が注目され、全国にも広がっています。
それにしても「おせっかい型支援」とは、わかりやすい、大胆なネーミングです。
神谷「いきなり“要支援”と言葉にすると、どうしてもネガティブイメージを払拭できない。いやがる人もいるでしょう。そこで『おせっかい』という、くだけた表現を使いました」

老朽化したマンションの外壁のイメージ(画像/PIXTA)
建築のプロの目視で発見する「要支援マンション」では、「おせっかい」が必要なマンションは、どのように発見するのでしょう。
神谷「第一歩は、各マンションの管理組合へのアンケート調査です。アンケートの回答を参考にしますが、組合活動がしっかり行われていない場合、回答をいただけないことが多い。 回答がないことが、管理不全に陥っている可能性を示唆しているんです」
アンケートの回答がないのも、一つの調査結果です。管理不全状態に陥っている可能性をより明確化するため、新たに加わったもう一つの方法が、専門家による外観目視の調査。視察するのはマンション管理士、建築士、弁護士など複数業種のエキスパート約15名によって運営されているNPO法人「マンションサポートネット」。築20年以上が経ったマンションの外壁の剥がれ具合、金属製の柵が錆びた様子などから異常がないかどうかを彼らが判断し、要支援マンションの候補とします。
ヒアリングと外観調査の双方向に指標も設け、基準7項目のうち4項目に該当していると、要支援の対象に。NPO法人「マンションサポートネット」のメンバーと、神谷さんを筆頭とした京都市都市計画局住宅室住宅政策課4名による「おせっかい」が始まるのです。マンションサポートネットはマンション管理組合が「主体的によいマンション管理ができる」ように現地へ赴き、「建物や設備の点検」「大規模修繕工事」「長期修繕計画の作成や見直し」「管理規約の改正」「委託管理の見直し」などのコンサルタント業務を行う、言わば実行部隊なのです。

要支援マンションなどの判断基準(表1)と定義(表2)(京都市役所資料を基にSUUMO編集部作成)
神谷「外観から『もしや?』と感じた場所へ実際に出向き、棟内や部屋を視察すると、配管設備がボロボロだったり、ひどく漏水していたりする場合もあります。外観に傷みが見受けられると、内部もかなり劣化が進んでいると考えられるので、一刻も早い対策が必要です」
建築の技術職である神谷さん。街を歩いていても、マンションを見て「ピンとくる」場合があるのだそうです。

京都市の街のイメージ(画像/PIXTA)
投資型マンションに多く見られる「管理不全」要支援マンションが現れる背景には「管理不全」があります。「マンションを維持する母体となるはずの管理組合がうまく機能してない」「管理組合の実態が確認できない」など、管理責任の在り処があいまいなのです。そのようなケースでは、「おせっかい型支援」として、「管理組合の規約を立ち上げる」という根源的な部分から介入するといいます。
その管理不全に陥る一つの大きな要因に、「非居住化が進んでいる」という傾向が挙げられます。
神谷「例えば区分所有者が投資や事業を目的としてマンションを購入している場合、ご自身は住んでおられないことが多いんです。部屋を賃貸されている場合、借主である居住者には管理組合に参加する義務がない。賃貸されていなくても区分所有者が倉庫や事務所として利用されている場合もある。つまり、区分所有者は現地に住んではおられない。建物に少々の不具合があってもご自身がお住まいになっているわけじゃないので、お金を出してまで修繕するかというと、どうしても無関心になってしまうんですよね」
マンションの利用形態が複雑多様化するなか、区分所有者と居住者が異なるため、管理に関する合意形成ができず不行き届きになってしまう。非居住化が進んでいるマンションの支援は難航し、長期化します。今後の「おせっかい型支援」の大きな課題の一つです。

投資系マンションが管理不全に陥るという傾向があるという(画像/PIXTA)
「いらぬお世話だ」と追い返されるケースもマンションの管理体制を立て直し、より長く使ってもらおうと立ち上がった「おせっかい型支援」。とはいえ、誰しもがやすやすとは受け入れてくれません。おせっかいと銘打つわけですから、「いらぬお世話だ」と追い返されるケースもあるのです。
神谷「話を聞いてくださる方にたどり着くのが大変ですし、たどり着けても、まずは警戒されます。いきなり押しかけてこられて、自分たちの私有財産、台所事情を探られるわけですから。たとえマンションの関係者が話を聞いてくれたとしても、管理組合が機能していない内情を簡単には明かしてくれません。根気のいる作業なんです」

「おせっかい型支援」のイメージ図(画像/PIXTA)
このように、サポートに辿り着くまでに幾つもの壁があるといいます。
神谷「マンションサポートネットはその点、さすが経験豊富な専門家の集団です。さまざまなパターンに対して、対応のノウハウを蓄積されておられます。大きな声で怒鳴られるなど、危険な目に遭う可能性もあるわけですから、誰でもできるわけではない。豊富な経験に裏付けられた知見を持っている彼らは頼りになる存在です」
そうして幾度かの説得の末、申し出を受け入れたマンションと、やっと話し合いへと駒を進めることができるのです。
マンションと住民の「二つの老い」マンションが抱える問題は、大きく二つあるといいます。一つは「マンション自体の高経年化」。二つ目が「区分所有者の高齢化」です。そしてこの二つの問題は、セットでもあるのです。
神谷「“二つの老い”と呼ばれています。昔はマンションに永住するという考え方は、あまりなかったようです。一時期はマンションに住んで、ゆくゆくは戸建てに移住する。それが一般的な暮らし方とされていました。しかし近年はマンションを終の棲家とする人たちも増えてきた。しかし管理費が計画的に積み立てられていない場合、マンションが高経年化すると修繕箇所が増えるにもかかわらず積立金が不足しているために適切な対応ができない。積立金額を上げたくても高齢化が進み、上げられない。そうしていっそう管理不全化が進んでしまうんです」

マンションの高経年化の進行(京都市役所作成)
マンションの修繕積立金は、年数が経つにつれてだんだんと金額が上がっていく「段階積立方式」をとっている場合が多い。しかし計画的な管理ができていない場合、必要な積立金額がわからず、必要額がわかったとしても「時すでに遅し」なのです。そういった事態をできるだけ避けるため、京都市では積立方式について議論している検討会に参加しています。
京都のマンションは6割が小型京都のマンションには、一つの顕著な特徴があります。それは「小規模マンションが多いこと」。50戸以下の小さなマンションが全数の約6割を占め、さらに21~30戸のマンションは350棟を数えます(2020年調べ)。京都市は小規模な土地が多いことや、厳しい景観政策を実行しており、建築物の高さに制限が設けられている地区があります。それゆえに高層マンションが建ちにくく、小規模化するのです。そして小さなマンションほど「支援を要する場合が多い」のだとか。

京都市住戸別マンション数(京都市役所作成)

老朽化の兆候が見られるマンション(京都市役所作成)
神谷「大きなマンションには、管理会社が入っていることが多いです。小規模な高経年マンションも管理会社が入っていたり、管理会社を入れずに自主管理されていたりするところは少なくありませんが、大中規模以上に比べて人材面、資金面ともに脆弱になってしまう傾向がありますね」
国土交通省も注目する「おせっかい型支援」の成功事例では「おせっかい型支援」は、どのような実績があるのでしょう。成功事例を二つ、紹介します。
一つ目は1974(昭和49)年竣工、築50年 の「真如堂マンション」。左京区岡崎地域の静かな住宅地に立つ13 戸の小型マンションです。


真如堂マンションの「おせっかい型支援」介入前(写真提供/京都市役所)


真如堂マンションの「おせっかい型支援」介入後(写真提供/京都市役所)
真如堂マンションは理事長と居住区分所有者の数名で自主管理を行ってきたものの、建物の老朽化が進みました。そこでマンションサポートネットの協力のもと、2013(平成 25 )年度に外壁塗装、鉄部の塗り替えなどの維持工事、受水槽の撤去、遮音や断熱性能の高い玄関ドアへの交換、水道管直結などを着工。資産価値のアップを図ったのです。
工事が始まる前にはマンションサポートネットのメンバーのアドバイスを仰ぎながら管理組合を立ち上げ、規約改正を行いました。そうして長期修繕計画に基づく資金計画を検討した後、修繕積立金を適正に値上げし、工事費に充てました。それでも足りない分は住宅金融支援機構の融資を活用。専門家の助言を受け、帳簿を作成し、融資の条件を満たすことができたのです。
このように多角度的な支援の甲斐があり、築50年を経ながら現在も特段に古びた様子は見受けられません。
もう一つが1971(昭和46)年竣工、築53年 の「京都グランドハイツ」。平安神宮や琵琶湖疎水など京都の歴史的建造物に囲まれた左京区聖護院にあります。7階建、総戸数91戸という中型マンションです。


京都グランドハイツ「おせっかい型支援」介入前(写真提供/京都市役所)

京都グランドハイツ「おせっかい型支援」介入後(写真提供/京都市役所)
昭和のオイルショックのさなか、管理会社から委託費用の大幅値上げを要求され、これをきっかけに1976(昭和51)年には自主管理へと移行。外壁塗装、屋上防水ほか小修繕を実施し、活発な管理が行われてきました。
しかし高経年マンション実態調査において、建物の劣化が進行していると判明。役員の高齢化が進んだなどの理由で必要な改修ができていなかったのです。京都市役所は2013(平成25)年よりマンションサポートネットを派遣。専門家の助言を契機に役員が熱心に管理業務に取り組むようになり、規約の改正、資金の調達のうえ、2018(平成30)年、遂に大規模修繕工事の実施にこぎつけました。
現在は建物の劣化や管理不全の問題が解消され、良好なマンション組合の運営が行われています。2023(令和5)年10月の国交省主催の事例報告会では好例として取り上げられたほどの事例なのです。
なかには『維持していくことすらも非現実』という物件も管理不全に陥ったマンションのなかには、管理体制の見直しという観念ではもはや収束できない、危険な状態にある例もあるのだとか。
神谷「この建物を安心安全な状態まで修繕するには何千万、いや何億かかる。たとえ修繕積立金等を切り崩して修繕しても、老朽化は進行するので次の修繕が必要になる。重なる修繕に多額の費用がかかるであろうが修繕積立金の目途が立たない。そのように『維持していくことすらも非現実』という物件も実は幾つか見つかっています。そうなるともう、『売却すれば、今ならこれぐらいのお金は戻ってきますよ』という方向にしか話を持っていきようがない。言わば“マンションの終活”ですね。今後マンションはどんどん高経年化が進みますから、マンションの終わり方を考える支援はこれから増えていくでしょう」
マンションを支援する形も、今後は除却も視野に入れて提示するなど、選択肢が増えていくようです。
要支援状態から脱しても油断はできないこうして京都市都市計画局住宅室住宅政策課とマンションサポートネットの尽力により、マンションにしっかりした管理組合が設立されたり、大規模修繕工事が実施されたり、長期修繕計画ができたり、管理費や修繕積立金の適切な徴収が可能となったりし、47棟あった要支援マンションは、半数がその状態を脱することに成功しました。
しかし、「そこで終わりではない」と神谷さんは言います。
神谷「専門家が入っているあいだは支援がうまくいっていたけれども、いったん専門家が外れてしまうと元に戻るケースもありました。『やっぱり、どうしていいかわからない』『うまく回せない』という例があるんです。そのためにも、支援を要しなくなったあとも、常に状況を把握しておくことが大事だと考えます」

「一度介入して終わりではなく、継続的な支援が必要だ」と語る神谷さん(写真撮影/吉村智樹)
次に取り組むのが「マンションの管理状態の“見える化”」改正マンション管理適正化法は2022(令和4)年4月に施行されました。この法律は、マンション管理業者の業務を規定する内容が主でしたが、今回の改正で、管理組合に向けた内容が追加されました。行政が管理組合に対し、助言や指導を行うといったことも盛り込まれています。「行政もマンションの管理をしっかりやらなければならない」と国ぐるみの議論が加速化するなか、京都市役所の先進的な取り組みは他都市からも注目されています。
神谷「他の自治体さんからも高い評価をいただき、『おせっかい型支援の方法論を教えてほしい』『どのように実態を把握するのか』という問い合わせをけっこういただいています。プッシュ型支援という言い方で、全国に取り組みが広がっているんです。京都市としてはとても喜ばしいことと受け取っています」
高経年マンションが増え、新しい支援のスタイルとして全国のモデルケースとなった京都市役所。そんな京都市役所はさらに未来へ向け、次の一手を打とうとしていました。

マンションの管理の見える化のイメージ図(画像/PIXTA)
神谷「現在、取り組んでいるのがマンションの管理状態の“見える化”です。2022(令和4)年に改正されたマンション管理適正化法のなかに『管理計画認定制度』という、マンションの管理状態を行政が認定する制度が作られたんです。この制度の最大の意義は、マンションの管理状態を図る物差しができたことだと考えています。マンションの広告などに『法律に基づく行政機関の認定を受けました』などと記載していただく。そうすると市民のマンション購入の目安になり、中古マンションであっても『しっかりしたマンションなんだな』と考えてもらえるでしょう。金融機関も認定によって管理状態を推し量ることができるので、『長期修繕計画もしっかりしているし融資をつけてみようか』という展開に持っていきたい。そうなると、マンション側も『うちも、どうせなら認定を取ろうか』という発想になっていきますよね。認定マンションを増やすことによって、管理に対する意識がどんどん高くなっていくと思うんです」
経過年数が長いマンションは不安視されがちです。しかし、管理計画認定がされているのならば購入を検討するなかでの安心材料となります。昨今、若い子育て世帯の流出が問題になっている京都市。マンションの認定制度が普及し、マンション全体の管理水準を上げることが、流出を食い止めるカギの一つになるでしょう。
国土交通省の発表によると、2022(令和4)年末の段階で、築40年以上のマンションは日本に約125.7万戸が存在し、20年後(2042年末)には445万戸にまで増加するのだそうです。
人間ともに高齢化するマンション。高経年による事故や悲劇を防ぐのは、どんなに時代が進んでも、「おせっかい」という古きよき人情なのだと、取材を通じて感じました。
●取材協力
京都市都市計画局住宅室住宅政策課
所在地:武蔵野市吉祥寺北町
所在地:目黒区大岡山「夏暑く、冬寒い」「結露ができて不快」、こうした住まいの問題を解決するには、どうやら「窓」の改修がいいらしい、ということが知られるようになりました。とはいえ、どのくらい効果があるの?DIYで手軽にできない?などの疑問はつきないはず。そうした疑問や悩みを解消してくれる「断熱改修はじめの一歩」ワークショップが長野県で開催されました。子どもも参加OK、ホームセンターで買える簡易的な内窓キットと最低限の工具だけを使って内窓のDIYをしよう! という一見お手軽な内容にも関わらず完成した内窓をつけたところ、なんと10度も表面の温度差が生まれるという驚きの結果に。その様子をレポートします。
内窓をDIYで自作してみたい!長野県全域から希望者殺到!「断熱改修はじめの一歩」という講演会とDIYワークショップが開催されたのは、長野県上田市。二部構成で、一部は断熱推進イニシアチブ合同会社の木下史朗さんによる講演、現役の建具職人でもある有限会社クボケイの窪田智文さんのミニレクチャー、二部は市販されている内窓キットを使ってのDIYワークショップというもの。主催は長野県上田地域振興局で、運営にあたるのがNPO法人上田市民エネルギーです。
近年、内窓をDIYで作成できる「内窓キット」がホームセンターなどで購入できるようになっています。今回のワークショップではこの「内窓キット」を用いて、建具職人を講師に招いて、内窓を実際につくるという試みです。ちなみに、必要な道具は差し金や鉛筆、カッターなどの身近なものばかり。DIYの心得がなくとも誰でもできるといいます。
一部の講演会には上田市在住の方だけでなく、長野県内各地から約60名が参加し、二部のワークショップの定員20名はわずか数日で満員になったとか。想像以上の関心の高さに圧倒されますが、長野県上田市は冬の寒さはもちろん、夏はびっくりするほど暑くなるそう。
「全国的に暑かった2023年ですが、上田では全国最高の38.4度を記録したこともあるほど。とにかく夏は暑いんです。さらに冬は寒いため、二酸化炭素削減にも健康面でも、建物の省エネ性能向上が必須なんです」と話すのは上田市民エネルギーで理事長を務める藤川まゆみさん。
長野県はこうした自然の厳しさを背景に、住まいや建物の省エネルギー性向上を推進しており、上田高校や白馬高校など複数の県立高校で高校生が企画運営する断熱ワークショップを支援しています。また、こうした学生の断熱に関する取り組みがニュースになることも多く、それを見聞きした保護者をはじめ、一般世帯にも関心が広がっているようです。すばらしい流れですね。
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まず一部は「断熱改修はじめの一歩」と題して、断熱推進イニシアチブの木下史朗さんが、自宅のサーモグラフィ画像をあげつつ、自宅や軽井沢の高性能賃貸「六花荘」を建てたこと、軽井沢の空き家を性能向上リノベさせたエピソードを紹介。

木下さんが断熱に目覚めるきっかけとなった家の寒さ。室内だが窓枠の表面温度は1度(画像提供/断熱推進イニシアチブ)

高性能賃貸「六花荘」をサーモグラフィカメラで撮影。もっとも冷たいのは牛乳。室温は20度程度に保たれており、裸足でも大丈夫な暖かさに(画像提供/断熱推進イニシアチブ)

木下さんが実際に性能向上リノベをした物件。改修前はUa値0.94でしたが改修後は Ua値0.28と大幅に性能向上(画像提供/断熱推進イニシアチブ)
加えて、日本の既存住宅のうち、1999年の省エネ基準(2025年義務化予定)に達しているのがわずか1割程度しかないこと、建築物が断熱されていないため多くのエネルギーを無駄にしていること、断熱性能をあげるにはまず「窓」が大切であることを説明していきます。実体験+データを交えての話はリアリティがあるうえ、建築士ではなく、ひとりの住まい手としての体験から得た話となっており、非常にわかりやすいものとなっていました。
また、現在は「先進的窓リノベ事業」「長期優良住宅リフォーム推進事業」「信州健康ゼロエネ住宅(リフォーム)」といった助成制度があること、省エネ性能が高いものほど補助額が高いこと、今ある窓の内側にもう一枚窓をつくる工法、今ある窓枠を壊さず新しい窓に交換する工法があることなども紹介されていました。


上田高校の断熱改修ワークショップの施工前と施工後(画像提供/断熱推進イニシアチブ)

断熱材を入れたところはオレンジで15度になっているが、入っていないところは紫色で7.6度。表面の温度差7.4度!(画像提供/断熱推進イニシアチブ)
参加者には子育て世帯が多いのかと思いきや、年配世代も多数参加していました。築年数が経過した住まいは無断熱、または断熱性の低い住まいが多いので、当たり前といえば当たり前かもしれません。講演のあとには、断熱材の主な材質とその特徴の違いについての質問が飛び出すなど、講演者・参加者のみなさんの本気度合いに圧倒されます。
建具職人によるDIYのコツ。成否の鍵を握るのは採寸と裁断その後、二部でも登場する現役の建具職人・窪田智文さんが登壇し、ホームセンターで販売されている内窓キットを使って内窓を作成するコツを話してくれました。窪田さんは2012年の技能五輪全国大会家具部門で銅メダルに輝き、現在でも建具と家具を担当する現役の建具職人です。今までも上田高校などの断熱ワークショップを手伝っているそうですが、地元にこうしたトップクラスの職人さんがいて、協力を得られるのは大変貴重です。

窪田さんによるDIYのミニレクチャー。みなさん熱心にメモをとっていらっしゃいます(写真撮影/嘉屋恭子)
窪田さんによると、ホームセンターでも内窓のDIYキットの取り扱いは増えているとのこと。DIYキットの内容は(1)窓枠に貼るレール、(2)サッシにあたるフレームのセットで、価格は2000~4000円程度。これに加えて、窓ガラスに相当するポリカーボネートを購入し、1窓約1万円程度でできるそう。
既存の窓に加えて、内窓を1枚つけると空気層ができます。空気は熱を伝えにくい性質をもっているため、冬は暖かく、夏は涼しくなる、これが内窓での断熱性が向上する理由です。
内窓のDIYを成功させるにはいくつかコツがあるそうですが、要約すると以下になります。
(1)既存の窓枠をしっかり採寸する
・定規はしっかりした材質で、まっすぐ良いものを使う
・レーザー計測器もあるが、自分でもしっかり確認を
・幅や高さだけでなく、真ん中の高さ、斜めもしっかり測る
(築年数が経過した物件はたわんでいることがあるため、たわんでいたら要補正)
(2)窓にあたるポリカーボネート板をまっすぐ裁断する
・ポリカーボネート板を、計測したサイズどおりに、まっすぐ切ること
・一度に切ろうとするのではなく、表面に筋をつけていき、徐々に裁ち落とす
・自分で切るのが難しい人はホームセンターのカットコーナーで依頼するとよい(ホームセンターにもよるが、1カット100円以内)
また、窓が大きいほど採寸・裁断が難しくなるため、まずは小さな窓からはじめてみて、成功したら次の窓をすすめるとよい、とアドバイスしていました。
温度差10度! 部屋の体感はぐっと暖かくなったそしていよいよ二部のワークショップへ。今回は上田地域振興局が入る上田合同庁舎3階の会議室の内窓合計14枚を作り、その後も使っていく計画です。市民参加で公共建築物の断熱性が向上できるのは、とても有意義な取り組みですよね。何しろ(1)ワークショップの場として活用でき、(2)設計施工費用を抑えることができる、(3)建物の省エネ性能が高まる、(4)内窓を知らなかった人も目にすることができ、興味が湧く、など一石四鳥にもなるからです。
講師となる窪田さんに加え、木下さん、小さなお子さんはもちろん、高校生、大人など幅広い世代の参加者がいっしょに作業をしていきます。まずは安全のためにラジオ体操を行いますが、同じ空間で体操をするとぐっと気持ちの距離が縮まり、和やかな雰囲気になります。
また、SUUMOジャーナル編集部員も人生初のDIY体験で参加しましたが、「取材じゃなければ、人生で一度もDIYをしないと思う」というタイプだそう。興味はあるものの、なかなか腰が重い。これは、多くの人が同じ気持ちになるのではないでしょうか。
そんなDIYスキルも事情も異なる参加者が力を合わせ、完成したのが14枚の内窓です。まずは完成したところからご覧ください。下の写真でいうと、右の白枠が設置した内窓、左の結露しているのが既存の窓です。

窓にさわって温度の違い感じるお子さん。既存の窓は冷たく結露していますが、内窓はひんやりとせず温かい!(写真撮影/嘉屋恭子)

完成した14枚の内窓をはめこんだ様子。内窓と既存の窓、その表面温度差10度にも(写真撮影/嘉屋恭子)

内窓をつけたところ。サーモグラフィカメラで撮影すると17度と温かくなっています(写真撮影/嘉屋恭子)

既存窓を撮影するとなんと7度。そばによるとひんやりとした冷気を感じます(写真撮影/嘉屋恭子)
取材日は最高気温5度、外はみぞれ交じりの天気でしたが、内窓はつけるとその表面温度は17度に。手のひらでさわるとより温かさを実感します。約2時間でここまででき、さらに直後で冷やされていないとはいえ表面温度にこんな変化があるとは。まさに感動!のひとことです。
内窓DIYするなら、ホームセンターのカットサービスを活用すると簡単に!ここであらためて、どのようなプロセスで進められていったのか紹介します。
<使う道具>
内窓キット 14枚分
ポリカーボネート板 14枚分
軍手、差し金、鉛筆、カッターなど
<ワークショップの流れ>
(1)窓レールにあたるパーツの切り落とし
(2)窓レールにあたるパーツを貼る
(3)フレームパーツを切り落とし
(4)ポリカーボネート板を切り落とす
(5)フレームをはめ、フィルムを剥がす
(6)完成した窓を窓枠にはめる
こうしてみると、特別な道具は使わず、材料を切断して貼ったり、枠にはめていったりと、難しい作業はしていません。ただ、やっぱりそこは初対面の人との共同作業になるので、談笑しつつ手探りで作業を進めていきます。

(1)指示にしたがって窓枠になるパーツを指定のサイズに裁ち落とす(写真撮影/嘉屋恭子)

(2)カットした窓枠を両面テープで貼って固定しているところ(写真撮影/嘉屋恭子)

既存の窓枠の手前、白い樹脂が貼り付けた内窓のレール部分になります(写真撮影/嘉屋恭子)

(4)ポリカーボネート板を規定のサイズに裁断していきます(写真撮影/嘉屋恭子)

カットできたポリカーボネート板にフレームをはめこんでいきます(写真撮影/嘉屋恭子)

最後にフィルムを剥がして完成(写真撮影/嘉屋恭子)

白いフレームがDIYで作った内窓です。1面ですが、達成感と充実感が湧き上がります(写真撮影/嘉屋恭子)
参加されたみなさんに感想を聞きましたが、「実際にできるか不安だったが、楽しかった」「プロの技がすごいなと思った」などの感想が。なかには「DIYはあきらめてプロに依頼しようと思いました」「ホームセンターで切断してもらって、はめるだけならできるかも」との声も。確かにホームセンターで「裁断」までしてもらえていれば、ぐっと家庭でも取り入れやすいと思いました。
筆者は窪田さんのキズをつけないコツ、四隅のサイズを少しずつ調整していく仕事の確かさ、身のこなしなどが印象に残りました。なかなか見られない建具職人の仕事ぶりは、まさに眼福です。
さらに今回、DIY初体験だった編集部員はDIYに開眼したらしく、黙々とポリカーボネート板を切り落としていました。「無心になれていい。モノをつくる達成感がふつふつと湧いてくる」とのこと。DIYは無縁と思っていても、目の前で一つの形になっていく、クリエイトする喜びはやっぱり人の心に訴えかけるものがあるようです。
主催した長野県上田地域振興局環境課の上原さんによると、企画の背景を「地球温暖化対策として、やはり窓がよいということを聞いて、今回のワークショップを企画しました。想像以上に反響があり、関心の高さを実感しました。また、実際に手を動かすなかで得られたものは大きいですし、何よりみなさん進むとにこにこしてらして。身近なところから環境負荷を減らすとともに、住まいが快適になればうれしいですね」と話していました。
今回の講演とワークショップ、大きな反響もあったようなので今後、上田だけでなく、長野県全域に広がっていくかもしれません。こうした「断熱改修」の流れが、日本全国の津々浦々に広がっていったらいいのに、そう願わずにはいられません。
●取材協力
・長野県上田地域振興局環境課
・NPO法人上田市民エネルギー
・断熱推進イニシアチブ
・有限会社クボケイ
所在地:目黒区祐天寺
所在地:渋谷区千駄ヶ谷
所在地:渋谷区本町
所在地:東京都大田区西馬込
所在地:港区南青山
所在地:世田谷区代沢
所在地:目黒区東山
所在地:台東区上野
所在地:世田谷区桜丘
所在地:川崎市高津区二子
所在地:豊島区目白
所在地:中央区日本橋茅場町
所在地:港区南青山手づくりの食事を朝100円、昼・夕500円のワンコインで毎日提供する、賃貸物件の入居者のために不動産会社が運営する食堂「トーコーキッチン」。2015年のオープン以降、「街の一角に自分たち専用の食堂がある」という安心感を味わえる魅力的な仕組みによって、賃貸物件への入居希望者が増えるとともに、多くの注目を集め続けています。食堂「トーコーキッチン」のある淵野辺(神奈川県相模原市)を訪れ、8年間の変化について聞きました。
「きっかけは、ご家族から聞こえてきた食事への心配の声でした」「トーコーキッチン」は、神奈川県相模原市の不動産会社・東郊住宅社が運営する入居者のための食堂。JR横浜線・淵野辺駅から徒歩2分ほどの商店街に立地しています。東郊住宅社は40年以上にわたりJR横浜線・淵野辺駅周辺にあるアパート、マンションなど賃貸物件を管理している、地域密着型のいわゆる「街の不動産屋さん」。
淵野辺には、3つの大学(青山学院大学、麻布大学、桜美林大学)が点在しており、東郊住宅社の管理する物件では1人暮らし用のワンルームが6、7割を占め、そのうちの8割ほどに学生が入居しています。

淵野辺駅から徒歩2分。トーコーキッチンはこんな商店街の一角にあります(写真撮影/片山貴博)

ガラス張りで、通りから店内が見えます(写真撮影/片山貴博)

トーコーキッチン店内。午後のティータイム。大学は春休みに入り、普段、大勢来店する学生さんたちは数人見かけるだけでした(写真撮影/片山貴博)
そうした学生を始めとする入居者のために、トーコーキッチンでは朝8時から夜8時まで毎日、朝食を100円、昼食・夕食を500円という格安価格で提供しています。朝・昼・夕食はそれぞれ栄養バランスを考えてつくられた日替わり&週替わり定食、カレーライス500円やキッズプレート300円、コーヒー・紅茶・ルイボスティー100円、サイドメニュー50円といったメニューがそろいます。

一番人気は「ハヤシ社長」500円。池田さん考案のハヤシライスです(写真撮影/片山貴博)

「カレー会長」は東郊住宅社を創業した先代社長がこよなく愛したスープカレー。先代の奥様のレシピだそうです(写真撮影/片山貴博)

これが100円の朝食。しかも税込みです。「朝食はさすがに赤字です」と池田さん(写真撮影/片山貴博)

日替わり定食500円。この日はプルコギ定食でした。ご飯は白米と五穀米から選べます。特に豚汁が美味!(写真撮影/片山貴博)

注文票を自分で記入してカウンターに渡すシステム(写真撮影/片山貴博)
食堂を利用できるのは、東郊住宅社が管理している賃貸物件の入居者およそ3000人、物件オーナー約200人、関係協力者、同社社員など。借りている自分の部屋のカードキーで食堂に入るシステムで、鍵の保有者と同行すれば家族や友人も一緒に入店できます。部屋探し中の人も食堂の利用体験ができるほか、近隣に暮らす人も興味があれば1度は利用することが可能だそうです。
「ここを立ち上げたきっかけは、新たに一人暮らしを始める学生さんのご家族から聞こえてきた、食事に対する心配の声でした」と当時を振り返る東郊住宅社社長の池田峰さん。「初めての一人暮らし。偏らずにしっかり栄養をとれる食生活が送れるのか」という親心に対し、そうした心配や不安を入居者サービスの一つとして解決できないかと考え始めたことが第一歩だったそうです。
トーコーキッチンをつくるに至った経緯や思い、その後の影響、食堂での日常風景については、当サイトの記事(「入居者のための食堂」が魅力的すぎ!朝食100円、昼食・夕食が500円で食べられるワケ(2017年1月25日掲載))に詳しいので、ぜひご参照を。
トーコーキッチンの魅力的な仕組みに、「自分の家の近くにもこうした入居者向け食堂があればいいのに」「こんな不動産屋さんがあるなんて、淵野辺ってすてきな街だな」などと、記事の反響も大きかったことを覚えています。
「おかげさまで入居率99%超に」。8カ月も前に入居予約が入るほど!トーコーキッチンは、入居希望者や物件オーナー、賃貸不動産業界にとどまらず、マスコミや世の中からも数多くの注目を集めました。テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、WEBマガジンなど100を超えるメディアで紹介されたことがあり、目にした人も多いのではないでしょうか。
立ち上げから丸8年が経ち、この間にどんな反響や変化が起こったのか、池田さんに聞きました。

東郊住宅社社長・池田峰さん。東郊住宅社のオフィスから徒歩約10分のトーコーキッチンには1日数回訪れて、入居者との交流を図っています(写真撮影/片山貴博)
「トーコーキッチンの存在が物件選びの1つの動機となって、入居希望者が増え、おかげさまで今では入居率が99%を超えるまでになりました」と池田さん。
2018年時点の神奈川県の空室率が20.1%(※1)=入居率79.9%という数字から考えると、驚異的な高さです。
※1:公益社団法人全国賃貸住宅経営者協会連合会「民間賃貸住宅(共同住宅)戸数及び空き戸数並びに空き室率の推計」(2018年算出)より
トーコーキッチン以前から、同社管理物件の入居率は95~96%と他に比べて高かったそうですが、今や100%近い割合に。トーコーキッチンのない2015年以前にも高い入居率を保っていたのは、先代が社長時代に導入した「敷金0」「礼金0」「退去時の修繕義務なし(入居者の過失での修繕を除く)」「水漏れや鍵の紛失などの緊急事態に24時間対応」という、先進的な契約条件があったため。そこに食の提供という入居者サービスが加わったことで、「トーコーキッチンがあるから淵野辺に住みたい」「1人暮らしをする子どものために食事環境が安心な東郊住宅社の物件を選びたい」という人が増えたといいます。
「部屋が空いたらすぐに入居希望が入るというありがたい状況です。空く予定がなくても『空いたら入居したい』という方がたくさんいらっしゃいます。昨年はとうとう、引越しシーズンの8カ月も前の6月に、『大学入学で1人暮らしをするので、今から入居の予約はできますか』という問い合わせまで入ることに。新記録ですね。その時点で進学する大学が決まっていない状況だと思うのですが、実際には、淵野辺から片道1時間以上をかけて通学する学生さんもいらっしゃいます」(池田さん)
「学生の入居者さんに関していうと、以前は淵野辺にある3校が近いことから、その学生さんたちがほぼ10割を占めていました。しかし、トーコーキッチン開設以後は、他エリアの大学の学生さんも入居されるようになり、今では2割ほどを占めるまでになりました」と池田さん。
淵野辺駅は新宿や渋谷など都心へ行くには乗り換えが必要で、停車する電車は各駅停車のみ。決して交通アクセスが便利とはいえない街。「乗り換え必須なのにその2割の学生さんたちが、淵野辺に暮らすことを選んでくれたのは、トーコーキッチンがもたらす食の安心感を評価していただいているからなのでしょう」(池田さん)

淵野辺駅北口から見た駅前商店街の様子(写真撮影/片山貴博)

桜美林大学のキャンパスは淵野辺駅に隣接(写真撮影/片山貴博)
「社会人の方もご高齢の方も、安心な淵野辺暮らしを選んでくれています」学生以外の入居者も増えたそうです。
「リモートワークが一般化したことで、別の地域から淵野辺に拠点を移した社会人の方がとても増えました。オンラインでのつながりはあるけれど、やはりリアルなコミュニケーションの場があるのは良いということのようです。
また、ご高齢の親御さんを、淵野辺近辺に暮らす子世帯が自宅近くに呼び寄せて、という方々も増えました。たまに顔を合わせられるくらいの近居なら安心。さらに日々の食事はトーコーキッチンがあるからますます安心、というわけです」(池田さん)
入居希望の大きな動機と考えられるトーコーキッチンですが、すべての入居者が食堂を頻繁に利用するわけではなく、常連さんは3割くらいだそう。常連さんにとっても時々利用する人にとっても、「お茶1杯だけでもずっといていいですよ」という姿勢があることで、入居者にとってのサードプレイス(自宅でも職場でもない、居心地の良い第3の場所)的な場所として活用されています。
また、池田さんは1日数回顔を出して、「味はどう?」「部屋で困ったことはない?」と入居者と交流しています。「日本一『味はどう?』って聞いている不動産屋」と自負する池田さん。そうした日々のコミュニケーションも淵野辺で暮らす安心感につながっているのだと思います。

ランチ中の学生さんに気さくに話しかける池田さん(写真撮影/片山貴博)

笑顔がすてきな食堂スタッフのみなさん(写真撮影/片山貴博)
「賃貸物件はすべて自社管理。だからこそ入居者さんに喜んでいただける」東郊住宅社は賃貸借契約の仲介に加え、取り扱うすべての物件管理及び入居者管理(家賃の入金管理をはじめ、共用部の清掃や不具合の修繕、植栽の手入れなど)を行っています。仲介だけお願いしたいというオーナーの要望には対応していません。「不動産は管理が重要だと考えています。専任で管理をさせていただくからこそ、入居者さんに喜んでいただける仕事がまっとうできると思っています」と池田さん。
以前は1600室ほどだった物件数が、この8年間で1900室に迫るまでになりました。
「当社の管理手数料は物件によって家賃の5~8%と、他の不動産管理会社に比べると安くはない費用をオーナーさんからいただいています。にもかかわらず、『自分の所有物件もトーコーキッチンが使える物件にしたい』と、今までお取引のなかった近隣の物件オーナーさんから興味や共感を持っていただき、管理のご依頼が増えました。さらに、『トーコーキッチンが使える賃貸物件を所有したい』という物件購入の相談も年々増え、現在30人以上のオーナー希望者さんがいらっしゃいます」
こうした動きは、食の提供サービスの存在によって安定した入居率の維持が保てるという、高い付加価値が得られることも含め、物件オーナーが東郊住宅社の物件管理に対する姿勢に大きな信頼を寄せていることをうかがわせます。
「ただ、対象となるのは当社から車で30分圏内の物件です。小さな不動産会社にとって、何かあれば夜中でも駆けつけられる距離の上限だからです。そのため、ご要望があっても場所によってはお断りせざるをえないこともあります」(池田さん)
入居者に寄り添う姿勢は緊急時だけではありません。
2020年には、入居者の困りごとを解決する家事代行サービス「ゴーヨーキーキー」もスタート。5分100円からという利益度外視の安心サービスです。こちらも当サイトの記事(不動産屋さんが家事代行!? 電球交換、虫駆除などのお悩みに5分100円で)に詳しいので、ご覧ください。
日常的に物件状態を把握し、入居者との交流を保ち、食事や家事のサポートの提供によって暮らしの安心を生み出していく。淵野辺で賃貸ライフを送る人にとって、東郊住宅社そのものが街の頼もしい存在となっている状況がわかります。
「入居者用食堂を導入した不動産会社も新たに登場!」池田さんは以前の取材で「このビジネスモデルの特許取得を勧めてくださる方もいますが、アイデアで儲けるつもりはありません。皆さんの賃貸ライフを楽しくできたらうれしいので、逆に、どんどんまねして導入してくれる不動産屋があればいいと思いますね」と語っていましたが、その後、トーコーキッチンのような入居者向け食堂を立ち上げた企業は登場したのでしょうか。
「私の知る限りでは1社あります。その不動産会社から、同じシステムを取り入れたいと相談を受け、ノウハウをお伝えしたり食堂研修を受け入れたりとご協力させていただきました。現在、既に入居者専用食堂を運営されています」(池田さん)。
「どんどんまねしてもらえれば」という池田さんの言葉とは裏腹に、わかっている限りで同じサービスを導入した企業は1社だけということに意外な気がしました。他にも「実はわが社も」という会社もあるのかもしれませんが……。
しかし、逆に考えると、ここまで入居者・オーナー双方に喜ばれるサービスを追求し継続するというのは、実はとてもハードルが高いこと。誰もが真似できることではないとも感じます。利益度外視の入居者サービスとしての食堂運営、取り扱い物件はすべて自社で管理するなど、入居者が暮らしやすい環境をつくり出していく徹底した企業姿勢を持つからこそ、こうした全方位的に喜ばれるサービスが維持できているのでしょう。
「トーコーキッチンへようこそ!」トーコーキッチンへの思いを綴った著書『トーコーキッチンへようこそ!』(虹有社)を昨年2023年10月に上梓した池田さん。「ご縁があってこうして1冊にまとめることができました。著書を手にしてくださることで淵野辺に興味を持っていただく機会もさらに増えました」(池田さん)

「お部屋探し帰りのお客様が手に取ってくださり、有隣堂淵野辺店のビジネス書ランキングで週間1位になったことも!」(写真撮影/片山貴博)
「以前、部屋探しに来られた大学進学予定のお客様から、『実は高校の進路の先生から、暮らすなら東郊住宅社のある淵野辺がいいと勧められて、今日ここに来ました』とお聞きして驚いたこともありました。遠く離れた地の方々にも広く認知されつつあることが、ものすごくありがたいです」(池田さん)
入居者の増加とともに利用者も増え、トーコーキッチンの売り上げも上がっているそうですが、売り上げが上がればその分の利益は良い食材を購入することに還元させているそう。「前年同月比で110%の売り上げアップを目標にしています。新型コロナが5類に移行した月は130%アップ、昨年著書を上梓した後は140%アップとなった月も。ありがたいことに徐々にお客様は増えています」
利益を追求しない入居者サービスの食堂が、それまで関心のなかった淵野辺に人を呼び寄せ、食堂利用者が増えることで食材やメニューが充実するという好循環。全方位に喜ばれるトーコーキッチンそのものが、ある意味広告としての機能を持ち、「住みたい街ランキング」に一度も登場したことのない街に人を引きつけているのです。
「トーコーキッチンを立ち上げてからずっと、毎日の仕事が楽しくて楽しくて。それに、入居者さんや離れて暮らすご家族、物件オーナーさん、そうした皆さんにこんなにも喜んでいただけるということは、トーコーキッチンをやっていなければわからないままだったでしょうね」と、ニコニコの笑顔で語る池田さん。
住む人の安心や喜びを常に考えている不動産屋さんの存在は、淵野辺という街を輝かせているのではないかと感じました。

8年でだいぶ年季が入りました(写真撮影/片山貴博)

小さなお客様からの「ごちそうさまでした」「おいしかったよ」のかわいいメッセージが(写真撮影/片山貴博)
●取材協力
東郊住宅社「トーコーキッチン」
『トーコーキッチンへようこそ!』(虹有社)
春分の日も過ぎ、春が近づいてきた今日このごろ。SUUMOジャーナルで2月に公開した記事では、「『住みたい街ランキング』2024、東京勢弱体!? 1位、2位は東京外、吉祥寺はまさかの3位に退く」「『下関って何にもない、ダサい』我が子のひと言に奮起。空き家再生で駅前ににぎわいを 山口県・上原不動産」などが人気TOP10に入りました。さっそく、どんな記事なのかご紹介していきましょう。
2月の人気記事ランキングTOP10はこちら!第1位:「住みたい街ランキング」2024、東京勢弱体!? 1位、2位は東京外、吉祥寺はまさかの3位に退く
第2位:「下関って何にもない、ダサい」我が子のひと言に奮起。空き家再生で駅前ににぎわいを 山口県・上原不動産
第3位:最高水準の省エネ住宅をDIY! 光熱費4分の1以下、ZEH水準超えの断熱等級6の住みごこちを聞いてみた
第4位:台湾のまちづくりから日本は何を学べるか。都市計画のキーワードは「夜市」「流動」? 三文字昌也さんインタビュー
第5位:人口減エリアの図書館なのに県外からのファンも。既成概念くつがえす「小さな街のような空間」の工夫がすごすぎた! 静岡県牧之原市
第6位:【早稲田大学】一人暮らし賃貸の家賃相場ランキング2024年! 早稲田キャンパス周辺のクチコミ&オススメ情報
第7位:築40年超も2000万円リノベで耐震等級3相当・断熱等級6以上と国内最高レベルにできた! 実家も新築並に性能向上
第8位:あの選手村跡地のHARUMI FLAGにシェアハウス登場!共用施設の充実ぶりに驚き!?見学会へ潜入
第9位:2023年の一戸建て市場を総括。新築の一戸建ての価格は上昇するも面積は縮小気味?
第10位:2023年のマンション市場を総括。新築・中古マンションの価格推移と供給戸数を徹底解説!
※対象記事とランキング集計:2024年2月1~29日に公開された記事のうち、PV数の多い順
第1位:「住みたい街ランキング」2024、東京勢弱体!? 1位、2位は東京外、吉祥寺はまさかの3位に退く

(写真/PIXTA)
リクルートが、首都圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県・茨城県)在住の20歳~49歳の男女9335人を対象に実施した「SUUMO住みたい街ランキング2024」を発表しました。ランキング上位は常連が顔をそろえるなか、なんと今回、1位と2位には東京都以外の街がランクイン! さらに、例年人気の街、吉祥寺が3位に。ランキングがアップした街を中心に、その背景を探ってみました。
第2位:「下関って何にもない、ダサい」我が子のひと言に奮起。空き家再生で駅前ににぎわいを 山口県・上原不動産

(画像提供/ARCH)
山口県下関市にある上原不動産は、下関市で賃貸住宅の仲介・管理業務などを主に行っている不動産会社です。住宅を確保することが難しい人たちへの支援を、会社設立当初から行ってきた上原不動産。代表の長女であり、上原不動産の常務取締役である橋本千嘉子さんは、空き家再生事業「ARCH」を立ち上げ、街づくりや再生にも力を入れています。きっかけになったのは、5児の母でもある橋本さんが、中学2年生の子どもから言われた「下関って何にもない、ダサい」という言葉。それをきっかけに奮起した橋本さんの「下関の街の再生」にかける想いや、活動について、話を聞きました。
第3位:最高水準の省エネ住宅をDIY! 光熱費4分の1以下、ZEH水準超えの断熱等級6の住みごこちを聞いてみた

(写真撮影/桑田瑞穂)
住まいの省エネ性能に関心が高まる昨今、ハーフビルドで高い省エネ性能のハイスペックな家づくりにチャレンジした夫妻がいます。神奈川県の山間で2人のお子さんと共に暮らしている森川さん夫妻。住まいは平屋建て、間取りは大きな1LDK、建物面積は約60平米、上部にロフトが30平米です。完成した省エネ住宅の等級はなんと6で、これは等級7と合わせて2022年に新たに設定された最高水準クラス。ではその住み心地とは? 得られたものと、その幸せな暮らしぶりをご紹介します。
第4位:台湾のまちづくりから日本は何を学べるか。都市計画のキーワードは「夜市」「流動」? 三文字昌也さんインタビュー

(画像提供/三文字昌也さん)
台湾は、日本からも飛行機で近く、人気の旅行先です。台湾は、中国大陸ルーツの漢人による統治のほか、1895年から1945年までの50年間にわたって日本が統治するなど、複雑な歴史を有し、街には、それぞれの時代の名残があります。東京大学大学院で、台湾の都市計画を研究している都市デザイナーの三文字昌也(さんもんじ・まさや)さんは19歳で初めて台湾を訪れ、清朝以前の古い建物や路地がある街並みに日本統治時代につくられた近代的な道路があるなど、都市の中に各時代の痕跡が重なり合って残されていることに、興味を惹かれたといいます。1年間の台湾留学を経て、台湾の都市計画やまちづくりの研究に携わることになった三文字さん。台湾の街のどういうところに面白さを感じているのでしょうか。
第5位:人口減エリアの図書館なのに県外からのファンも。既成概念くつがえす「小さな街のような空間」の工夫がすごすぎた! 静岡県牧之原市

(写真撮影/片山貴博)
“最寄駅がない”静岡県牧之原市にある図書交流館「いこっと」。人口減に悩まされるこの街の小さな図書館が、複合施設内にテナントとして移転し、拡大オープンしたのは2021年のこと。2年後には累計来館者数が25万人を突破し、市内はもとより、市外や県外などの遠方から足を延ばす人がいるほどの人気になりました。「いこっと」を手掛けた牧之原市役所 企画政策部の本間 直樹さんは「このエリアにはナショナルチェーン店(全国展開のチェーン店)がないんです。ゆえにコンパクトで独自の商習慣と住空間になっています。そのため新たな居住者や人口の流入を見込みたかったのです。市内を活性化するために、きっかけが必要でした」と話します。人口減少エリアの図書館がなぜこれほどにぎわいを創出し、街の中心地に変化をもたらしたのか探りました。
第6位:【早稲田大学】一人暮らし賃貸の家賃相場ランキング2024年! 早稲田キャンパス周辺のクチコミ&オススメ情報

(写真/PIXTA)
大学に進学し、初めての一人暮らしをスタートさせる人も多いこの時期。早稲田大学・早稲田キャンパス(東京都新宿区)の周辺駅にアクセスしやすく、家賃相場が安い駅を調査しました。今回は高田馬場駅をはじめ、早稲田駅、西早稲田駅のいずれかの駅から20分圏内にある駅を調査対象とし、それぞれの駅から徒歩15分圏内にある学生向け賃貸物件(10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DK)の家賃相場が安い駅を順位付け。さらに不動産会社「ハウスメイトショップ新宿店」の佐久真正樹さんから、早稲田キャンパスに通う学生が住む街としておすすめの駅を教えてもらうことに。どんな駅がラインナップされたのか、紹介しています。
第7位:築40年超も2000万円リノベで耐震等級3相当・断熱等級6以上と国内最高レベルにできた! 実家も新築並に性能向上

(写真提供/YKK AP)
リノベーションブームを受けて、実家を、あるいは中古一戸建てを購入してリフォームすることを視野に入れている人も多いのではないでしょうか。しかし、気をつけてほしいことがあります。それは住宅の性能向上です。特に中古一戸建てのリフォーム/リノベーションで注意したいのが、「耐震」と「断熱」性能の向上。特に1981年5月以前に建てられた旧耐震基準時代の一戸建てについては、自治体が補助金制度を設けてまで耐震診断を促すほど、耐震性能に不安があるそうです。その名も「性能向上リノベの会」を立ち上げた、YKK AP 住宅本部 リノベーション事業部の西宮貴央さんにお話を伺いながら、詳細な理由や対策について紐解いてみました。
第8位:あの選手村跡地のHARUMI FLAGにシェアハウス登場!共用施設の充実ぶりに驚き!?見学会へ潜入

(提供/リビタ)
選手村跡地のビッグプロジェクトとして話題の「HARUMI FLAG(晴海フラッグ)」。先行して分譲マンションの販売が行われましたが、賃貸住宅街区にある賃貸住宅の募集も始まりました。なんと通常の賃貸に加えて、シェアハウスもあるといいます。リビタのシェア型賃貸住宅で、共用施設が充実しているのが特徴。8階と9階に2層吹き抜けの共用施設が設けられ、この2層はそれぞれ階段で行き来でき、大きなキッチンのあるシェアラウンジが2カ所とシアタールーム、海を臨むバルコニーに出ることもできるとか。他にも大浴場やフィットネスルームなど充実の設備も! いったいどんなシェアハウスなのか、プレス向け見学会に参加してみました。
第9位:2023年の一戸建て市場を総括。新築の一戸建ての価格は上昇するも面積は縮小気味?

(写真/PIXTA)
東京カンテイが公表した「マンション・一戸建て住宅データ白書 2023」から、三大都市圏の新築・中古一戸建て市場ついて紹介していきます。2023年、三大都市圏の新築・中古一戸建ての平均価格は総じて前年より上昇しました。新築マンションの価格高騰と共に中古マンションの価格も上昇していますが、一戸建ての市場はどうなっているのでしょうか。
第10位:2023年のマンション市場を総括。新築・中古マンションの価格推移と供給戸数を徹底解説!

(写真/PIXTA)
2024年に入り、2023年の住宅市場の動向が相次いで公表されました。2023年の新築マンション市場では、東京23区の平均価格が1億円を超えたというニュースも。やはり、マンション価格は上がり続けているのでしょうか。不動産経済研究所が公表した首都圏の新築マンションの平均価格は、前年(2022年)の6288万円より28.8%アップの8101万円。まだまだ大きく上昇している。と、本当に見てよいのでしょうか。実は、詳しく見ていくと、必ずしもそうではないのです。3年間の首都圏と近畿圏の平均価格の推移を紹介しながら、首都圏及び近畿圏の新築・中古マンションの価格動向について見ていきましょう。
2月の人気記事ランキングでは、2023年の新築や戸建ての市況を総括する記事や、住みたい街ランキングなど、市況全体の状況が伝わるような記事のランクインが目立ちました。4月からは新しい生活を迎える人も多いことでしょう。新生活にも役立つような住まいに関する記事を、これからも発信していきます。お楽しみに!
一見華やかな大都会、ニューヨークでの暮らし。しかし、生活にはお金がかかる!
生活を維持するために多くの移民が働く場所、それは飲食店。
単身やってきたニューヨークで飛び込んだ先は大衆酒場。愉快な同僚と寿司との出会い、そして別れ。
仕事って、生活って、幸せってなんだろう?そんなことを考えながら寿司を巻く日々のこと。









最近、生活用品の買い物は仕事場のあるGreenpointで済ませています。何せ安いし、Greenpointでしか買えないものがとても多いため。ポーランド系アメリカ人のコミュニティとして知られていて、特に最近ホットな街です。
東欧のお菓子には当たり外れも多いけれど、その分見たことがないようなものを試す楽しさがあります。そして、記事でも紹介したように一番おすすめなのは加工肉(ハムやソーセージ)です。カウンターに行って、係の人に肉塊をスライスしてもらう方法がポピュラーです。
アメリカで売っているパッケージの生ハムは高い上においしくもないのですが、Greenpointで買う肉屋の生ハムは感動するほどおいしいのでぜひ試してみてください!
買い方については、重量買いになるのですが、0.25lb(ポンド)で約二人分。二人分が欲しい場合、店員さんに”Can I have a quarter pound of 〇〇(ハムの名称) sliced please?”(キャナイ・ハブ・ア・クオーター・パウンド・オブ・〇〇・スライスド・プリーズ)と言えばOK。最初は戸惑うけど、慣れたらこれ以外のハムが食べられなくなりますよ!
ちなみに私が好きなのはPoledwica Lososiowa(ポレドヴィカ・ロゾシオワで合っている
のか?)で、これはスモークされた豚のハムという意味らしいです。言えるかよ!




みんなの弟ポジション、ホセは本当に可愛らしい21歳の男の子。粗野で口も悪いルイスと真逆のキャラクターかと思いきや、やっぱり親族なのもあってヤンチャな一面もあり、そこもまた可愛かったです。
アメリカのOmakaseは店員さんやお客さんとのコミュニケーションが楽しみで来る人も多いのですが、私はこのコミュニケーションが大の苦手!しかし、ホセはお客さんからも大人気で、ルイス曰く「ホセがシフトに入っている時の方がお客さんたちはチップをはずむ」ということでした。
アメリカのレストランではチップ制度があり、戸惑う人も多いですが、飲食店で働く人の給与は基本の時給にチップが上乗せされるため、これは労働者にとってはとても大切な制度なのです。レストランに行って素晴らしいサーバーに出会ったら、チップを多めに払うと喜ばれますよ!

作者:ヤマモトレミ
89年生まれ。福岡県出身。2017年、勤めていた会社の転勤でニューヨークに移住。仕事の傍ら、趣味でインスタグラムを中心に漫画を描いて発表していたところ、思った以上に楽しくなってしまい、2021年に脱サラし本格的に漫画家としての活動を開始。2022年にアメリカで起業し個人事業主になりました。アメリカで食っていくために寿司をやっていくことを決意し、週4ブルックリンで寿司をつくっています。
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ニューヨーク人情酒場 酒場の終わりは意外と静かに……「5年続けば奇跡」のNY飲食業界で奮闘した酒場の最後の1日
所在地:草加市氷川町近ごろ話題になることの多い空き家問題。福岡県大牟田市では、住宅系部門管轄の空き家を活用するために、福祉系部門の民生委員が調査を行いました。空き家の状態を調査し、住宅を必要とする人とのマッチング、他の支援団体と連携して包括的な生活の支援を目指しています。
他の自治体のお手本になりそうなこの取り組み、大牟田市都市整備部建築住宅課の今福信幸さん、西山妙佳さん、NPO法人大牟田ライフサポートセンターの牧嶋誠吾さん、三浦雅善さんにお話を聞きました。
大牟田市の空き家問題と住宅要確保配慮者の実情とは福岡県大牟田市は、かつては炭坑節でも知られる三池炭鉱が栄え、1960年代には20万人以上の人でにぎわう、日本の高度経済成長を象徴する街でした。しかし閉山と共に人口は減り、現在では多くの自治体と同様に、人口減少や高齢化などの問題を抱えています。
増え続ける空き家問題も深刻です。
大牟田市の今福さんによると、2019年に実施した調査では2912件の空き家が存在し、2016年からわずか3年で1138件も新たに空き家が増えているとのこと。現状のまま利用できる空き家が減少し、修繕が必要だったり利用が困難だったりする建物が増えていることがわかります。

大牟田市では、人口の減少とともに空き家の増加も問題になっている(資料提供/大牟田市)
一方、何らかの事情で住まい探しに困っている高齢者、障がい者、ひとり親世帯、外国人など「住宅確保要配慮者」と呼ばれる人たちも増え続けています。
これらの問題を解決しようと、大牟田市では、2012年から行動を起こし始めました。同年、住まい探しが困難な人たちの入居や生活をサポートする団体としてNPO法人大牟田ライフサポートセンターが誕生。翌2013年には、不動産関係団体や医療・福祉関係団体らと情報を共有し、円滑に居住支援を行うための場として「大牟田市居住支援協議会」が立ち上がりました。現在、協議会の事務局は大牟田市の建築住宅課と大牟田ライフサポートセンターが共同で担っています。

大牟田市では全国の取り組みと比べてもかなり早い時期から見守りや、空き家を居住支援に利活用するためのワークショップを行い、関係者間で問題を共有することが居住支援協議会立ち上げの素地となっていった(資料提供/大牟田ライフサポートセンター)
空き家の実態を調査するために、民生委員と学生が活躍!現在は大牟田ライフサポートセンターの事務局長であり、当時は大牟田市の職員だった牧嶋さんは、増え続ける空き家を住まいの問題を抱える人たちの受け入れ先として利活用できないか、と考えました。そのためには、まず空き家が「市内のどこに、どれくらいあるのか」の把握と「空き家の老朽状態の確認」をする必要がありますが、市の財政は厳しく、予算もなければ人も足りません。

大牟田ライフサポートの牧嶋さん(右)。かつては大牟田市職員として、住宅部局と福祉部局両方の仕事を経験したため、双方の仕事や考え方も理解した上で「居住支援とは暮らしの基盤を整えることで、決して箱だけを提供するものではない」と話す(写真撮影/りんかく)
そこで牧嶋さんたちは300人の民生委員(※)に協力を求めることを思いつきました。ところが、当初は相談しても「厚生労働大臣から委嘱され活動している民生委員は、自治体職員の下請けではない」「なぜ私たちがやらなくてはならないのか」と反対意見も多かったのだとか。
「日ごろから築いてきた人間関係を武器に『空き家利活用は地域の問題でもある』ということを何度も説明し、最終的には24校区の内、23校区に協力してもらうことができました。地域で支える認知症の取り組みなど、長期にわたる行政と民間(民生委員)の協働という土壌があったからできたのだと思います」(牧嶋さん)
※民生委員/厚生労働大臣から委嘱された非常勤の地方公務員で、地域住民の立場から生活や福祉全般に関する相談・援助活動を行う。地域社会のつながりが薄くなっている現在、子育てや介護の悩みを抱える人や、障害のある方・高齢者などが孤立し、必要な支援を受けられないケースがある中、身近な相談相手となって、支援を必要とする住民と行政や専門機関をつなぐパイプ役を務めている

民生委員たちは地域に精通しているので、地図を見ただけでどこに空き家があるかを把握していることも多い。この空き家調査でデータだけではわからなかった、市内の空き家の位置や数が明らかに(画像提供/大牟田市)
さらには、市内の高等専門学校の建築学科の先生に相談し、学生たちに空き家の老朽度調査を実施してもらえないかを相談。結果、かかった費用は民生委員に渡した蛍光ペン代と学生たちのアルバイト代を合わせて、約90万円でした。
空き家と、住まいに困っている人たちをつなぐ仕組みこの調査で得られた情報をもとに、牧嶋さんたちは本格的な空き家を利活用した居住支援に踏み出します。
2014年には、住宅確保要配慮者向けWEB情報システム「住みよかネット」を立ち上げました。入居を希望する人と空き家のオーナーをマッチングするだけではなく、入居してからの暮らしも見据えた「居住支援」の相談窓口へとつなげるものです。

「住みよかネット」では、空き家の所有者などから許可を得た物件情報を掲載。借りたい人や購入したい人が物件を探せるだけでなく、問い合わせることで居住支援の窓口につながる(画像提供/大牟田市居住支援協議会)
大牟田市の居住支援では、住宅の確保から入居支援まで、大牟田市居住支援協議会が窓口となりつつ、入居後の生活支援に関しては居住支援法人であるNPO法人大牟田ライフサポートセンターなどの支援団体が主となって支援していく体制をとっています。ここまでが住宅施策、と区切ってしまうのではなく、互いに連携をとり、必要なところを補い合いながら業務を分担しているところが特徴的でしょう。
「私たち大牟田市居住支援協議会は、空き家所有者と入居希望者を結びつける『仲人』です。オーナーに行政や福祉の窓口に相談にきた相談者の人となりを紹介しながら、現場でお見合いをしてもらいます。この、第三者が間に入るトライアングルの関係と運用の仕組みづくりが重要なんです」(牧嶋さん)
入居後も支援団体が間に入ることで、オーナーが直接対峙するのを避け、入居者に起こっている問題解決のための相談に乗ることができるわけです。

住宅確保の相談から生活支援までの流れ。「居住支援とは、ただ家を紹介するのではなく、空き家物件の確保から、入居サポート、さらには入居後の生活の支援まで、住宅と福祉、両方の支援が必要」だと、牧嶋さんは言う(画像提供/大牟田市)
住宅の確保には、空き家を提供するオーナーさんを継続して募集しています。
空き家を貸し出すことができれば、オーナーさんはその収入を建物の維持管理に充てることが可能。空き家のまま放置して劣化が進み、倒壊の恐れや相続の際のトラブルの原因になったりするリスクも減らせるので、オーナーさんにとってもメリットです。
オーナーさんから相談が入ると、市役所の建築住宅課の職員と大牟田ライフサポートセンターのスタッフとが一緒に現地に空き家調査に赴きます。
「大牟田市に空き家の相談が寄せられる件数は年間約80件ほど。オーナーさんの希望を聞きながら利用が可能か、取り壊さないと危険なのか建物状況を調査し、使用可能な場合は利活用の道をオーナーさんと共に相談していきます。行政職員が一緒に同行することでオーナーさんも安心して活用を検討できます」(大牟田ライフサポートセンター 三浦さん)
「調査に伺うと、家財道具の処分などを希望されることもあります。市としては特定の会社を紹介することができませんが、NPO法人である大牟田ライフサポートセンターなら直に紹介できるので、オーナーさんも、市としても助かります」(大牟田市 西山さん)

大牟田市職員の西山さん(左)と大牟田ライフサポートセンターの三浦さん(右)(撮影/りんかく)
困っている人たちにとって「本当に必要な支援は何か」を見極める大牟田市では、居住支援を行う際、相談に来る人たちに必ずお願いしていることがあります。それは、居住支援協議会の事務局である大牟田市の職員と大牟田ライフサポートのスタッフ以外に、メインとなる支援者をつけること。最初の相談時点で支援者が誰もいない場合は、支援団体への紹介も行っているそうです。
また、大牟田市においては近年、ひとり親世帯、特に母子家庭の困窮者が目立つと言いますが、住まいに困っている人の事情はさまざま。単純に高齢者の問題、低所得者の問題、といったように分類して区切れるものではありません。
「住まい探しだけに困っているケースはごくわずかです。多くの場合、仕事やそれに伴う収入、医療・介護の必要性など、さまざまな問題が複雑に絡み合っているため、よくよく話を聞くと、その人に必要なのは住まいではなく、生活に紐づく複数の問題だったりします。
現場でメインとなる支援者とは別に、私たち大牟田ライフサポートでは、面談を通じた適切なアセスメント(その人自身や周りの人、環境に及ぼす影響を把握すること)によって、相談内容の本質はどこにあるのか、必要な支援は何かを見極めるのです」(牧嶋さん)

住まい探しの相談にくる人は、住まいだけでなく、さまざまな問題を抱えている場合が多い。相談者ごとに本当に必要な支援をしていくため、居住支援協議会以外にメインとなって支援をしていく団体をつけるようにしている(資料提供/大牟田ライフサポートセンター)
居住支援を継続していくためのポイントや課題は?大牟田市の住宅部局と福祉が連携をとって、居住支援を押し進める事ができるのは、以前から協働の土壌があったことが大きいでしょう。さまざまな分野の人が集まって福祉的視点からの空き家利活用などについて話し合うワークショップを開催するなど、コミュニケーションを重ねてきました。
「民生委員だったり、地域の住民だったり、民間の企業とも関わっていく必要があります。居住支援を広げたいと考えるときも、最初の一歩は現場で属人的な関わりをきっかけに動いていくことが大事です」(牧嶋さん)
そして、今後改善すべき点を聞いたところ、間髪を入れずに「運営費です!」との答えが返ってきました。
「基本的に、お金にゆとりのない人を支援の対象者にしています。既にある制度に則った支援には補助金がつきますが、NPO職員の人件費など、運営費を確保していくのも大変だということを基礎自治体にもっと知っていただきたい。居住支援は行政サービスの一環だという認識がもっと広まってほしいと思います」(牧嶋さん)
居住支援だけで事業を成り立たせるのは至難の業。継続的な支援のための運営費を確保していくことが大牟田市のみならず、居住支援の現場の課題といえそうです。

大牟田市都市整備部建築住宅課課長の今福さん。牧嶋さんと一緒に長年大牟田市の住宅施策、居住支援を推し進めている(撮影/りんかく)
空き家をセーフティネット住宅として活用していくことは、国としても目指しているところです。しかし、うまく推し進められている自治体はまだまだ多くはありません。そんな中で、大牟田市は非常にうまく、住宅と福祉が連携している例と言えます。
300人もの民生委員が空き家調査に動いたり、市の職員とNPO法人が常に一緒に活動を行う大牟田市の居住支援は、常日頃から良好な人間関係を築いてきたからこそ。大牟田市の協働の姿勢は、他の地域にも参考となるヒントがいろいろとあるのではないでしょうか。
●取材協力
・大牟田市居住支援協議会
・住みよかネット
・大牟田市
・大牟田ライフサポートセンター
所在地:中野区上鷺宮
所在地:杉並区宮前
所在地:渋谷区西原