所在地:北区赤羽6万6,000円 / 21.49平米
湘南新宿ライン・京浜東北線・埼京線「赤羽」駅 徒歩6分
■賃料が下がり、洗濯機置き場をキッチン前へ変更予定です!■
赤羽に小さな森があるのを知っていますか?
商店街のアーケードを抜けたディープなエリアに、1カ所だけ異様な雰囲気を漂わせている角地の建物。
バラをはじめとした何種類もの植物が覆うその姿を初めて見たときは、しばらくあっ ... 続き>>>.
圧倒的に不動産情報が多いですが。。。。
所在地:北区赤羽サウナブームと呼ばれて久しいが、なかには自宅にサウナをつくってしまう上級者もいるようだ。建築家・谷尻誠さんもその1人。3年前にサウナに目覚めたという谷尻さんは自宅をはじめ、建築家としてサウナ付きのホテルやテントサウナなども手がけてきた。そして、現在は広島のオフィスにもサウナを作る計画があるという。
今回は「SUUMO」×「じゃらん」のコラボ企画として、そんなサウナをSUUMOでは「おうちサウナ」、じゃらんでは「旅サウナ」、それぞれの視点から楽しみ方を紐解いてみたい。そこで、谷尻さんに、日常でどのようにサウナを楽しんでいるかや、自宅のサウナの話、職場でのサウナの話などについて聞いてみた。
サウナはコミュニケーションの場でもある――谷尻さんがサウナにハマったきっかけを教えてください。
谷尻誠さん(以下、谷尻):サウナに目覚めたのは3年ほど前です。“ととのえ親方”こと、プロサウナーの松尾大さん指導の下、アウトドアサウナを体験したのがきっかけですね。

谷尻誠さん(写真撮影/嶋崎征弘)
――そのときにサウナの気持ちよさを知ったと。
谷尻:はい、めちゃくちゃ気持ち良くて、ハマってしまいましたね。それから週に3~4回はサウナに入るようになり、キャンプに行く時は常にテントサウナを持参し、さらには自宅にもサウナをつくってしまいました。自社のサウナストーブを入れて、スチールの花壇に水を溜めた水風呂を設置した簡易的なものですけれどね。

企業とコラボしたサウナストーブ、火が見える仕様となっている(画像提供/(株)DAICHI)
――自宅サウナ、羨ましいです。どれくらいのペースで入っていますか?
谷尻:週3回くらいですかね。夜のルーティーンとして、ゆっくり入っています。あとは週末に日ごろの疲れを癒やしたり、冬場はスノーボード帰りに入ることが多いですね。時々、事務所のスタッフが入りにくることもありますよ。リラックスしながらコミュニケーションをとるスペースとしても重宝しています。
――今では、ご自宅以外にもホテルやキャンプ場のサウナを設計するなど、もはや趣味の域を超えていますよね。
谷尻:ちなみに、いまは「ととのえベンチ」という外気浴用の水平ベッドを設計しています。温浴施設の外気浴スペースにはリクライニングチェアが設置されていることが多いのですが、僕は仰向けになって空を見上げられる状態のほうが心地いいんです。そこで、専用のベッドをつくってしまおうと。

ととのえベンチ(写真提供/(株)DAICHI)

ととのえベンチ(写真提供/(株)DAICHI)
サウナは「一家に一室」の時代?――サウナブームの影響で、住宅やホテルなどにサウナを導入したいというニーズは増えているのでしょうか?
谷尻:そうですね。住宅やホテルなど「サウナ付きの●●」という依頼は多くなってきました。だから今度、松尾大さんと「サウナに特化したゼネコン」をつくることにしたんです。これまで、ホテルや自宅の設計をする建築家とサウナをつくるメーカーは別々でした。でも、それを一つにして、ホテルの設計もサウナの企画も、さらには工事までワンストップで行える会社があったらいいんじゃないかと。ホテルもサウナも統一されたイメージでつくることができますし、最初からサウナありきで設計すれば、より心地よいものになるはずですから。
――今やサウナで集客ができるようになりましたもんね。今後、谷尻さんのように自宅にサウナをつくる人も増えると思いますか?
谷尻:増えるんじゃないでしょうか。洗濯機や冷蔵庫のように“一家に一室”の時代がきてもおかしくないと思います。じつはそこまでスペースもとらないし、心身ともに健康になれるし、そうなったら素晴らしいと思いますよ。

(写真撮影/嶋崎征弘)
サウナに入ることで、いったん立ち止まる――サウナに目覚めて、一番良かったことは何ですか?
谷尻:「いったん止まること」を覚えたのは大きいです。サウナ室にはスマートフォンも持ち込めないし、いったん立ち止まるような感覚があるんですよ。仕事や生活に忙殺されていると、そういう時間ってなかなか持てませんよね。常に何かしら考えていたり、手を動かしていたりする。「正」という字は、「一に止まる」と書くって言うじゃないですか。あれは本当にその通りで、いっとき止まって考えてみると、いいアイデアが閃いたり、前向きな思考になれたりするんです。
――デジタルデトックスじゃないですけど、脳がリフレッシュされそうですよね。
谷尻:だから今、広島にあるオフィスにもサウナを作る計画を立てています。まだ構想段階ですが、ビル全体を改修して、1階にレストラン、2階にギャラリー、3階にオフィス、そして、5階をサウナにする予定なんですよ。
――それはすごい。どんなコンセプトのサウナになるんですか?
谷尻:都市部にあるビルなので、なかなか理想通りとはいかないのですが、それでも外気浴をしながら自然を感じられるような空間はつくりたいですね。あとは、他で見たこともない、どこにもないようなサウナにしたいです。例えば、5階の窓を全て外してしまうとかね。そうすれば、サウナ室を出た瞬間から外気浴をしているような気分を味わえるんじゃないかと思います。

屋上から穴を開け、日光が植物を照らすようなデザイン(画像提供/SUPPOSE DESIGN OFFICE)

(画像提供/SUPPOSE DESIGN OFFICE)

大きいバルコニーをつくり、水風呂と外気浴スペースを設けるそう。画像は外気浴スペース(画像提供/SUPPOSE DESIGN OFFICE)

水風呂(画像提供/SUPPOSE DESIGN OFFICE)
――オフィスにサウナ。スタッフさんが羨ましいです。
谷尻:もちろん疲れを癒やしてもらったり、コミュニケーションを円滑にしたりする目的はあるのですが、自分自身で体験することでサウナーの気持ちを分かってほしいという思いがあります。
――サウナを設計する上では、とても大事なことですね。
谷尻:そうなんです。あまりサウナに入ったことのない人だと、ただサウナ室を設計すればいいと思ってしまうんですよ。でも、サウナってサウナ室だけでなく、水風呂や外気浴スペースへの動線などもすごく大事です。さらには、サウナ後に何を食べたいのか、どういう環境でくつろぎたいのかなど、本当に気持ちよくなるためのポイントはたくさんあります。だから、スタッフそれぞれが「サウナとは何なのか」を考え、理解してもらいたい。そのために、サウナに“社員旅行”したこともあるんですよ。広島オフィスのサウナも、うちのスタッフはいつでも入れる状態にしようと思っています。(広島事務所の5Fのサウナは近日会員募集予定)
――となると、さらにサウナへの理解が深まりますね。その上で、谷尻さんたちがこれからどんなサウナをつくってくれるか、楽しみです。
谷尻:僕自身も楽しみです。うちに限らず、オフィスにサウナがあると生産性が上がると思うんです。例えば、出社してデスクにつく前、昼食後、仕事が終わった後など、サウナに入ってリフレッシュすることでメリハリがつく。頭がぼーっとした状態でダラダラ働くより、よっぽどいいです。ですから、まずはうちが率先して、そんな働き方を実践していきたいですね。
谷尻さんのようにサウナを「コミュニケーションの場」として楽しむサウナーは少なくない。とはいえ、昨今のご時世ではなかなか難しい。そんなときにサウナが一家に一室の時代がくれば、より快適なサウナライフが送れることだろう。
●取材協力
SUPPOSE DESIGN OFFICE
DAICHI silent river
●関連記事
谷尻誠さんのサ旅については「じゃらんニュース」で
建築家・谷尻誠のサウナ建築と“サ旅”。滝壺や船上、雪風呂など「その土地ならではのサウナ体験をつくりたい」
所在地:武蔵野市境南町
所在地:江東区深川
所在地:稲城市坂浜
所在地:稲城市坂浜
所在地:目黒区中目黒
所在地:渋谷区西原菅政権下で政府は、「2050年カーボンニュートラル」(温室効果ガス実質排出ゼロ)を宣言した。この実現に向けて、政府は今、住宅の省エネルギー性能の向上を目指している。既存の住宅については、省エネリフォームを推進しているが、住宅金融支援機構では、省エネリフォームを資金面から支援する「グリーンリフォームローン」を創設した。どういったローンなのだろうか?
【今週の住活トピック】
2022年10月から「グリーンリフォームローン」の取り扱いを開始/住宅金融支援機構
まず、どういったリフォームローンなのか、商品概要を広報資料で見ていこう。

出典:住宅金融支援機構の「グリーンリフォームローン」に関するプレスリリースより抜粋転載
対象となるのは、住んでいる持ち家の省エネリフォームだけでなく、セカンドハウスや実家などの省エネリフォームも対象となる。年齢的にローンを借りづらい親に代わって実家の省エネリフォームを行う際に、融資を受けることもできる。
融資額は工事額が上限だが、最大500万円(※1)まで。ローンの返済期間は10年以内、全期間固定金利で申し込み時点の金利が適用される。また、融資手数料も不要で、無担保・無保証、団体信用生命保険は利用可能(※2)。住宅ローンを返済中でも利用しやすいなど、条件的には使い勝手がよいローンといえそうだ。
※1:省エネリフォームと併せて行うその他のリフォームも融資対象になるが、その場合は省エネリフォームの工事費の金額までが対象。
※2:住宅金融支援機構の「高齢者向け返済特例」を利用する場合は、有担保、団体信用生命保険の加入不可。
ただし、重要なのは「一定の省エネリフォームが求められる」という点だ。定められたリフォーム工事の実施を証明するために、検査機関による現場検査なども必要になり、その手続きや検査料などの負担が発生する。
「グリーンリフォームローン」の対象となる省エネリフォームの基準とは?「グリーンリフォームローン」の適用金利などの詳しい内容はまだ決まっていないが、省エネの性能の水準によって、「グリーンリフォームローンS」という、さらに低金利なローンも提供される予定だ。

出典:住宅金融支援機構の「グリーンリフォームローン」に関するプレスリリースより抜粋転載
基準について簡単にいうと、住宅の一部でも「省エネ基準を満たす断熱性能を引き上げるリフォームをする」か、「指定の省エネ設備を設置する」かすれば、「グリーンリフォームローン」の対象になり、さらに「ZEH水準を満たす断熱性能を引き上げるリフォームをする」と「グリーンリフォームローンS」の対象になる。といっても、部位や省エネ性能の基準などが細かく定められているので、対象となるかは建築士や施工会社などにきちんと確認する必要がある。
「省エネ基準」、「ZEH水準」、「断熱等性能等級」について解説「省エネ基準」や「ZEH水準」、その基準となる「断熱等性能等級」などの専門用語が多く出てくるので、少し説明を補足しよう。
まず、省エネ基準は国が法律で定めているもので、住宅の省エネ基準は法律の改正などに応じて、段階的に引き上げられている。ここでいう「省エネ基準」は最新の省エネ基準(平成28年基準と呼ばれる)のことで、2025年度までにすべての新築住宅に適合させることが義務化されることになっている。つまり、今ある住宅について現時点では、最新の省エネ基準に適合していない住宅が多いわけだ。
省エネリフォームで課題となるのは、住宅の構造体としての断熱性能だ。夏の暑さや冬の寒さを住宅に伝えにくく、室内の冷暖房による熱を外に逃がしにくくする「断熱性能」を高めることがカギになる。断熱性能のレベルのモノサシとして用いられているのが、「住宅性能表示制度」による「断熱等性能等級」だ。
住宅性能表示制度は、住宅の性能を統一基準で評価しようとするもので、新築の場合で10分野のモノサシがあり、その1分野に省エネ性能がある。その省エネ性能は、外皮(外気に接する建物の壁や天井、床、窓など)のモノサシとなる「断熱等性能等級」と一次エネルギー消費量のモノサシとなる「一次エネルギー消費量等級」に分かれる。
この断熱性能等級は等級1から等級5まであり、最新の省エネ基準は等級4、ZEH水準は等級5に該当する。なお、今後、さらに断熱性能の高い等級6や7が新設されることになっている。
ちなみに、ZEH(ゼッチ)とは、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスの略称で、太陽光発電などで創出したエネルギー量と住宅内で消費するエネルギー量が年間でおおむねゼロになる住宅のこと。ここでいう「ZEH水準」とは、住宅の外気に接する壁や床などの断熱性能に注目したもので、ZEH住宅かどうかを問うているわけではない。

出典:住宅金融支援機構の「グリーンリフォームローン」に関するプレスリリースより転載
「グリーンリフォームローン」の申し込み方法や適用金利などの詳しい内容が決まるのはこれからだが、住宅の構造体の断熱性能を引き上げるリフォームをするには、それなりに費用もかかる。それを支援するために、対象となる省エネ基準のレベルは高いものの、比較的使い勝手のよいリフォームローンを用意しようということだろう。
説明したように、政府は住宅の省エネ性能の引き上げに力を入れている。そのため、最新の省エネ基準を新築の最低レベルとして、今後求める省エネ性能のレベルをZEHやそれ以上に引き上げようとしている。省エネ性能の高い新築住宅が増えれば、省エネ性能の低い既存の住宅へのニーズが薄れる可能性もある。
住宅内の暑さ寒さに対する快適性に加え、住宅市場への流通性なども考えると、リフォームをするなら省エネ性を高めるという選択肢も検討してはいかがだろう。
●関連サイト
住宅金融支援機構/「グリーンリフォームローン」の取り扱いを開始
青池保子、一条ゆかり、庄司陽子、山岸凉子、美内すずえ、いくえみ綾といった少女漫画家の名前を聞いて、「なつかしい!」「夢中で読んだ!」と思う人は多いはず。そんな少女漫画家たちに、住まいを軸に半生を語ってもらったのが『少女漫画家「家」の履歴書』(文藝春秋、週刊文春編)です。レジェンド少女漫画家への取材時のエピソードなど、本が完成するまでの舞台裏を文春新書編集部に聞きました。
庄司陽子先生からの直電も! 読者からも熱いお便りが届く才能あふれる若き漫画家たちが次々と登場し、少女漫画界に新しい風を吹き込んでいた1970年代。『少女漫画家「家」の履歴書』(文藝春秋、週刊文春編)は、そんな70年代にデビューした少女漫画家の半生と住まいを振り返る一冊です。もともとは、2004年から2021年の「週刊文春」に掲載されたものでしたが、この春、新書になって刊行となりました。少女漫画を読んで大きくなった筆者としては、すぐに飛びついてしまいましたが、同じような人は多かったようです。

表紙・裏表紙には不朽の名作12冊の書影が並ぶ『少女漫画家「家」の履歴書』(文藝春秋、週刊文春編)(画像提供/文春新書編集部)
「発売前から書店員さんを中心に『水野英子、青池保子、一条ゆかり、美内すずえ、庄司陽子、山岸凉子、木原敏江、有吉京子、くらもちふさこ、魔夜峰央、池野恋、いくえみ綾と名前が並んでいるだけでワクワクする』とSNSで話題にしていただきましたが、発売後も読者がどんどん書影とともに感想を紹介してくれ、口コミが広がっていくのを実感しました」と話すのは編集を担当した文春新書編集部・池内真由さん。
実際、編集部には3枚以上にわたる長文の手紙が届くこともあるそうで、少女漫画を心の支えにしていた人はたくさんいるようです。しかも本書の発売後には、なんと庄司陽子先生から直接、池内さんにお電話がかかってきたそう。
「1度目は電話をとれず、2度目に『知らない番号だな……』とおそるおそる出てみたら『庄司陽子です』と! にわかに信じられなくて、先生には申し訳ないのですが、お名前を聞き直してしまいました(笑)。『大変いい思い出になりました。どうもありがとう』と仰ってくださって。私にとってはレジェンドの先生が、ただただ感謝を伝えるためだけに電話をしてくださったことに感動してしまいました。それが自分にとっては一番の『反響』かもしれません」
なんでしょう、そのエピソードだけで、なんだか胸がいっぱいになります。

(画像提供/文春新書編集部)
取材OKがもらえるのは3人に1人! 鮮明な記憶に仰天!それにしても、掲載されている少女漫画家の先生方は大御所のみなさまばかり。取材交渉も大変なのではないでしょうか。
「『家』というプライベートな話を扱うので、漫画家に限らず3人に依頼してようやく1人に受けていただけるかという企画なんです。何人もの編集者が関わっているので、それぞれ取材を快諾してもらうまでの難しさはあったと思います。残念ながら私は雑誌連載時の取材には同行していないのですが、取材をしてみると、さすが漫画家の先生方は記憶力バツグンで、次から次へと映像的なイメージが浮かぶように話してくださったと聞いています。一流の漫画家はこんなにも映像的な記憶力が優れているのかと思うほどだったと。青池保子先生はあらかじめ大きな方眼紙に手ずからご生家の間取り図を描いてくださって、担当編集者は家宝にしているそうです(笑)」

(画像提供/文春新書編集部、(c)市川興一)
やはり絵を扱うプロだけあって、間取りや住まいへの解像度、理解度は並外れたものがあるようです。インタビューで衝撃を受けたのは、凉子先生。なんとエプロン姿で表れたといいます。
「山岸先生といえば“天才肌”で“知的”で“クール”。先生の描く『青青の時代』の日女子(卑弥呼)や『馬屋古女王』のようなミステリアスで威厳のある女性の姿を想像していました。ただ、実際には白を基調としたモダンな建築のお家の玄関に、エプロン姿で出迎えてくださって。自らセレクトした美味しいケーキと紅茶を振る舞っていただき、誌面に載せきれないほどの怪奇現象をお伺いしました。特に、幼少期に育った北海道の社宅や初めて建てた洋館での怪奇現象が本当に怖かったです」

(画像提供/文春新書編集部、(c)市川興一)
作品さながらの怪奇現象を聞けるなんて、うらやましい……。ただ、エプロン姿でありながらも、同時代を生きる人たちのはるか先を見据えているような雰囲気があり、まるで“生きている厩戸皇子”だと思ったそう。
一輪のバラにすら書き手の表現力があらわれる本書は表紙だけでなく、随所にバラがあしらわれているのも特徴的です。そうですよね、1970年代の少女漫画といえばバラです。かたい中身が多い新書の装丁では、少し珍しい印象です。
「たくさんの編集者の漫画愛が詰まってできた一冊なので、それが無事に届くようにと思っていました。文藝春秋社の新書の読者層はどちらかというと男性が多いので、少女漫画を読んできた女性は少ないのではないかと思っていたからです。そこで、70年代を想起させるようなバラで表紙を飾ろうと当初から思っていたのですが、たった一輪のバラでも、無料のイラストでは全然70年代の雰囲気が出ないんですよ」(池内さん)
そこで、バラのイラストを笹生那実さん(『薔薇はシュラバで生まれる』(イースト・プレス))に書き下ろしていただいたそう。笹生さんは美内すずえさんや山岸凉子さんのもとでアシスタントをされていた経験の持ち主で、このバラであれば、時代の空気までも伝えられると確信したといいます。

(画像提供/文春新書編集部、(c)笹生那実)※誌面よりトリミング
「バラ一つとってもそうなのですから、一冊の漫画ができ上がるまでに、漫画家、アシスタント、編集者の方々が注ぎ込む労力はハンパなものじゃないですよね。だから人の心を揺さぶることができるんだと思いました」
そうですよね、先人たちが文字通り「心血注いでできた」少女漫画だからこそ、今のように後進が続いているのだと思います。では、先生方からの原稿への赤字(間違いを正す指示書き)も厳しいものがあったのでしょうか。
「漫画家はセリフを書くプロでもありますから、赤字も面白かったです。さらに新たな要素が加わったり言葉のリズムが生き生きとした会話になったり。今回は連載時に加えて近況を『追伸』という形でメッセージをいただいています。どんな内容かは、ぜひ本書で確かめていただきたいです」
たしかに!! 追伸の内容、くすりとさせられました。あれは先生方からの赤字だったんですね……。
それにしても、本書では女性漫画家それぞれの歩みのようで、日本の女性が社会に出て働けるようになった足跡とも重なります。
「そうですね、本書に登場するのは、魔夜峰央先生をのぞく11名が女性です。水野英子先生を皮切りに年齢の違う12人の漫画家の半生を見ていくことによって、『女性が漫画を描く』という道を切り拓き、その姿に憧れて新たな女性漫画家が生まれていったという時代の変遷を感じ取れると思います。結果として女性漫画家は、当時の働く女性の中でも飛び抜けた富を得て経済的に自立し、理想の家を建てるまでになりました」
個人的には新築マンションを購入し、3LDKを1Lにリノベーションしたいくえみ綾先生の話が印象的です。その時なんと20歳(!)。あまりの若さから施工業者に「あなたが買うんじゃないんですよね?」と言われ、お父様が「いえこの子が買うんです」と言い返したとか。伝説ですよね……。その他先生方の家を建てるとき、買うときのエピソードもまた個性があって、痛快すぎます。こだわりをつめこんだ注文住宅を建てるだけでなく、今でいうニ拠点生活をしていたり、ホテルで缶詰になって仕事をしていたり、アシスタントとのシェア生活だったりと、さまざまな住まい方のバリエーションが出てきます。やはり少女漫画家にとって「家」は特別な場所なのでしょうか。
「漫画家の場合、自宅が仕事場であることも多く、仲間たちと切磋琢磨した『戦場』でもあります。取材前は、家は傑作が生まれた『舞台裏」だと思っていました。ただ、山岸凉子先生に『あの頃 わたしは あの家で マンガ家になろうと 足掻(あが)いていた』と帯に書いていただき、随分と狭い考えだったと反省しました。12人のレジェンドたちがまだ何者でもなかった時の原体験。それを与えてくれたのが『家』なのだなと。彼らが何者でもない時に、何をみていたのか。どんな家で、家族とどんな時間を過ごしたのか。つまり、『世界をどのように見てきたか』、その視点こそが漫画家としての根っこになっているんだと気付かされたんです。そんな奥行きのあるコピーをわずか2行で書いてしまうんですから、すごいですよね」

(画像提供/文春新書編集部)
やはり、時代をつくった稀代の少女漫画家は違いますね。もっと他の先生のお話や続編にも期待しているのですが、予定はあるのでしょうか。
「個人的には続編を出せたらいいなと思っています。今後も順調に売れてくれればですが……(笑)。本書が出てから『この漫画家に取材してほしい』というメッセージをいただきましたし、こちらとしても出ていただきたくてアプローチをしている先生方もいらっしゃいます。特に里中満智子さんはぜひご登場いただきたい方の一人です」と語ってくれました。
本書を読んで、久しぶりに少女漫画を読んでいたころのときめきを思い出しました。大人になると家は、広さや家賃、価格、駅徒歩、設備などの情報に目を奪われがちですが、実は住まい探しに大切なのは、「幼き日の憧れ」や「ときめき」かもしれません。
●取材協力
文藝春秋
所在地:荒川区西尾久
所在地:世田谷区野毛
所在地:世田谷区若林硬質でひんやりとしたイメージを覆す、やわらかであたたかみのあるガラス作品。八木麻子さんは、武蔵野美術大学出身のガラス作家です。そんな八木さんは、夫の諒さん、一人娘の夏実ちゃんと一緒に、東京都台東区にある2階建ての賃貸物件に3人で暮らしています。築70年を超えるレトロな物件の1階の土間にはアトリエが。住まいがアトリエでもある作家さんの暮らしを訪ねて、ご自宅に伺いました。
自宅に作品づくりのためのアトリエを持ちたい八木さんの作品は、以前からInstagram等で目にしていました。あるとき、展示へ足を運んだ際にやっぱりいいなぁ、使ってみたい、と購入。それ以来、個展などもチェックしています。

八木さんのInstagramより @yagiasako
もともとガラスという素材には強く惹かれるところがあって、オールドバカラのグラス類も収集していますが、ガラスは硬質なようで繊細さや女性らしさもある、不思議な素材です。八木さんの作品も、やわらかなテクスチャーとほのぼのやさしい質感がチャーミング。そして、ニュアンスのある色づかいも唯一無二です。
八木さんがガラス作品をはじめたきっかけは、美術大学だったといいます。父の仕事であるテレビ製作の影響で、ドラマの美術さんになるため大学で学ぶつもりでしたが、「大学では他のことも学ぶと良い」というアドバイスを予備校の講師からもらい、工芸工業デザイン学科へ進学してガラスと出合いました。

ガラス作家の八木麻子さん(写真撮影/相馬ミナ)
八木さんはガラス作家として活動をはじめて11年。八木さんのガラス作品は、ガラスを削ったパーツを組み合わせて窯で焼き上げて融合させるという手法で生み出されています。この窯で焼き上げる工程を、昼夜を問わず窯の調子を見られるのはメリットということもあり、家族と一緒に過ごしたい八木さんにとっては、自宅にアトリエをつくるということは自然な選択肢でした。
以前は郊外の住宅街で制作していましたが、作業時に出る音が近所の迷惑になるのではと、ずっと気にかかっていたといいます。
結婚を機に、八木さん夫妻は6年前に現在の東京都台東区にある二階建ての一戸建てに引っ越すことにしました。アトリエをつくるためには、土間付き、一戸建て、ものづくりに理解のある環境、などの細かい条件を満たしていてほしいと考えた八木さん。この、ちょっとニッチなニーズにぴったりと合った物件は、たまたま賃貸サイトで見つけたと言いますが、なんと偶然にも、建築家である夫の諒さんが独立前に努めていた設計事務所がリノベーションを手掛けた物件だったのだとか。運命めいたものを感じたこともあって、入居を決めました。

作品は、窯の中でガラスを溶着させた後に加工する「キルンワーク」の技法によるもの(写真撮影/相馬ミナ)

ヘアアクセサリーやうつわなど、暮らしに寄り添うものたち(写真撮影/相馬ミナ)
物件は築70年超の古い賃貸。ですが、古い梁などを残しながらモダンにリノベーションが施されていて、すっきりとシンプルで洗練された雰囲気の空間です。1階部分は八木さんのアトリエのほか、キッチン、お風呂、トイレがあります。そして、2階はダイニングと夫の仕事スペース、寝室になっています。天窓や北側の大きな窓からは自然光がたっぷり入り、階段は広さを感じさせるスケルトン(ストリップ)階段。リノベーションによって随所に抜けを感じる工夫がされています。それもあってか、1フロアあたりの広さは35平米、総床面積70平米ですが、実際の平米数よりもゆったりと感じられます。

(写真撮影/相馬ミナ)

開口部が大きく、やわらかい光が差し込む土間のアトリエ(写真撮影/相馬ミナ)

二階のダイニングには天窓からの光も注ぎ、美しい陰影が(写真撮影/相馬ミナ)

植物もたっぷり光を浴びて、のびのび育っています(写真撮影/相馬ミナ)
大型の機械がずらりと並ぶアトリエ1階の土間部分につくったアトリエには、電気窯をはじめとした大型の機械がいくつも並んでいます。

作業がしやすいように、ものの配置も細やかに考えられています(写真撮影/相馬ミナ)

(写真撮影/相馬ミナ)

作業は、日々ラジオを聞きながら(写真撮影/相馬ミナ)

(写真撮影/相馬ミナ)

フロスト加工によるマットな質感と、ニュアンスのある色合い(写真撮影/相馬ミナ)

板ガラスを重ねて窯で溶着したあとに、削って形を整える(写真撮影/相馬ミナ)
「郊外の住宅街に住んだりもしたけれど、音についてはものづくりの街である下町エリアのほうが理解があるかなと。あと、私はすぐ出かけられる環境が好きで、街の中に住みたいという希望もありました」
その点、現在住んでいる台東区は、行政が街をあげてものづくりを推進しているために周囲も理解があり、多くの才能のあるつくり手がアトリエを構えています。

入口には、台東区によるものづくりアトリエの看板が(写真撮影/相馬ミナ)
取材中も近所の人が顔を出して、頼みごとをしたり、されたり。
例えば隣に住むおばあちゃまが夕飯のおかずを分けてくれたり、反対隣の家のおじいちゃまが毎年ひなまつりの日に娘さんへお餅を持ってきてくれたり。そして八木さん夫妻も、ブレーカーの調子が悪いと言われて見にいったり、小学生の男の子と遊んだり。「ここは近所の人との関係も良くて、住みやすいんですよ」。緩やかでやさしい交流があります。
合羽橋や浅草にほど近く、周辺には古い喫茶店や小さな専門店がたくさん。外出が好きな八木さん、自宅の周りをほんの少し歩くだけでいい気分転換になるようです。
コンパクトなキッチンは工夫がいっぱい土間にあるアトリエを抜けて玄関で靴をぬぐと、キッチンへ。うつわをつくる作家さんは料理上手が多い印象ですが、八木さんもその一人。自身がつくったうつわを実際に日々使っている作家さんは、常に自身の商品の使用感をチェックしているようなものなので信頼できると、常々感じています。

調味料は、すぐ手に取れるコンロ横の棚に(写真撮影/相馬ミナ)
八木さんは「料理が制作活動の気分転換になっている」と話します。そんな八木さん宅のキッチンは、比較的コンパクト。シンクと作業台、冷蔵庫の位置が近いため動きやすいその一方で、シンクとコンロの間の作業台が狭いのが、唯一惜しい点だとか。背の低い食器棚が、作業台とカウンターの役割を兼ねています。

コンロは二口、シンクも小さめ。小さい水切りかごを置いて作業スペースを確保(写真撮影/相馬ミナ)

食器棚には自身のガラス器をはじめ、作家もののうつわが並ぶ(写真撮影/相馬ミナ)
ダイニングは2階にあるので、1階でつくって2階に運ぶという上下の移動がありますが、キッチンとダイニングが離れているために、かえって料理に集中できるという利点もあるそうです。
「すごく住みやすいわけではないけど、この家が好き。それは、今の生活の軸になっている制作活動を、自分のペースで出来る場所があるという安心感です。大切に引き継がれてきた家なので、その跡を感じつつ、明るい光が入る綺麗な空間になっていて、自分たちの選ぶ調度品やアートピースなどもしっくり調和するのが嬉しい。古くから住むご近所の皆さんとも、お互い気遣いながら程よい距離感で交流出来る、そのような環境を含めて心地よいなと感じます」
玄関のかごにマスク、キッチンの柱にはショルダーバッグ。出入りする動線上にさりげなく外出時の必需品が置かれているのも、住みながらの工夫なのでしょう。

二階に忘れ物を取りにいかずにすむよう、外出用のあれこれは玄関に(写真撮影/相馬ミナ)
ダイニングは緩やかに区切って八木さん夫妻は二人ともフリーランスで、自宅が仕事場。家の中にオフィスが2つある状態です。

2階の奥まった一角が夫の諒さんの作業スペース(写真撮影/相馬ミナ)

見せる収納と飾り方のバランスが絶妙です(写真撮影/相馬ミナ)
「仕事柄、物も多いから、職場に住んでいるよう。日中は1階で私、2階で夫、とそれぞれ家で仕事をしていますが、フロアが分かれているからか、互いのことはあまり気にならないです。
料理は主に私がしていて、昼は自分の区切りがいいところで手を止めて、ごはんをつくります。子どもの保育園などのスケジュールに合わせて1日の仕事時間を決めていて、夕方には大きな音が出る作業を終えて、週末もちゃんと休んでいますよ。夜、子どもが寝たあとに下へ行って窯をチェックできるのは、仕事場が家にあるメリットだと感じています」
そして、私が八木さんにいちばん聞きたかったこと。それは、やっぱり自宅での働き方についてです。
この数年間で、家で仕事をするようになった方も増えましたが、「職場=住まい」は通勤もなくて便利な代わりに、オンオフの切り替えがしにくい時もあるのでは。
どうしていますか?
「コロナ前は、旅行でリフレッシュしていました。おうち時間がたくさんあったここ数年は、漁協からお魚を買ったり、美味しいお菓子を取り寄せたり、そういうことで楽しんでいた気がします。
あと最近は、娘のお洋服などを外国から買ったり。サブスクで映画やドラマなども見ますが、やっぱりラジオが気分転換になりますね。あとは、近くの喫茶店に行ったり、かき氷を食べたりかな」

(写真撮影/相馬ミナ)
いくつかの条件を挙げて、気分良く過ごせそうという物件を見つけたら、住みながらそこでの暮らし方を柔軟に探していく。仕事上のものがたくさんあっても、「暮らしやすさ」や「心地よさ」は諦めずにいられます。壁などに飾られたオブジェも、クリエイティブなご家族らしくてとても素敵。また、在宅で仕事をする上での小さなストレスも、空間や時間をゆるやかに区切ることで、さらっと逃がしていて、それもぜひ真似したいなと思いました。
ものづくりをしながらの、家族三人の伸びやかな暮らし。お子さんの成長にともなう変化も、また見せていただきたいです。
●取材協力
八木麻子さん
Instagram
所在地:品川区北品川
所在地:世田谷区尾山台
所在地:世田谷区尾山台
所在地:国分寺市泉町
所在地:世田谷区深沢
所在地:世田谷区下馬
所在地:品川区八潮
所在地:目黒区上目黒
所在地:前橋市下新田町
所在地:大田区大森中住まいを探すときの選択肢として、すっかり定着したシェアハウス。家賃をおさえるため、趣味を共有したい、異文化交流したい、など目的に合わせてさまざまなタイプがありますが、多いのは20代から30代のシングル向けの、大人がほどよい距離を保ちながら暮らすという物件です。ただ、今回はそんな物件とはちょっと趣が異なる、子育てやDIYなど、暮らしを分け合うシェアハウスをご紹介します。
築90年の古民家に子育て中の夫妻、入居者4人が暮らす
階段から玄関を見たところ。建物全体に年を経た味わいがあります(写真撮影/相馬ミナ)
DIYや食事、子育てといった日々の営みを“シェア”する「シェアハウス日日(にちにち)」は、北千住駅から少し歩いた住宅街の一角にあります。長年、空き家となっていましたが、所有者が活用方法を模索するため行政主催の空き家活用コンペにこの物件を提供。Tさんたちの企画が採用され、シェアハウスになることが決まったといいます。現在、暮らしているのは、管理人ご夫妻とそのお子さん、入居者4名の計7名です。管理人のTさん、Kさん夫妻はシェアハウスの運営をしつつ、古民家をリノベーションした日用品と喫茶の店「KiKi北千住」を営んでいます。
「シェアハウスの運営を通じて、暮らし方や建築、不動産のあり方を考えています」(管理人のTさん)といいます。
口コミや紹介などで自然と次の人が決まっているとのことで、「常に満室フル稼働」というよりは、住まいや暮らしの価値観の合う、理解のある人を求めているそう。
建物の築年数は古いものの、基本的な内装とバスやトイレなどの水回り、キッチンはプロの手によって改修されています。間取りは1階にキッチン、リビング、バストイレ、ご夫妻の居室、2階に寝室があり、家賃は5万円、共益費が1万4000円。1階のLDKのほか各部屋もDIY可能で、共有部分にはDIY道具も置いてあります。
基本的に入居者は自炊して暮らしていますが、時間が合う時には食材を持ち寄ってパーティをしたりします。

共有部に置かれたDIY用品。「私達にはDIYスキルがあるので、入居者に経験がない場合でも、教えることも可能だと思ったんです」と妻のKさん。KiKi北千住をセルフリノベーションした経験があるほか、「大工インレジデンス」(大工技術を提供する代わりに家賃や食費を提供してもらえる)という仕組みがある九州のシェアハウスで、住み込み大工をしていたこともあるそう(写真撮影/相馬ミナ)
取材前、シェアハウスで子育て、食事を分け合っていると聞いて、あまりイメージがわかなかったのですが、実際に和やかにランチをともにしている様子を拝見していると、とても自然な様子です。まるで昔からの友人や親戚のようなあたたかさに驚きます。

娘ちゃんを囲んでランチの様子。みんなのアイドルです!(写真撮影/相馬ミナ)
“孤育て”やイライラとは無縁! シェアハウスでの子育てご夫妻で決めた上でシェアハウスで子育てをしているわけですが、まずはその成り立ちから聞いてみました。
妻のKさんはこう言います。「シェアハウスの運営を通じて、子育てを夫婦以外の第三者も巻き込んで、ゆるやかなコミュニティの中でする方が、親にとっても子どもにとってもよい環境なのではないかと思い、試してみたかったんです」
そのため、シェアハウスの企画が立ち上がり、夫のTさんからシェアハウスで子育てしようという話が持ちかけられたとき、ここで子育てをするというのは実に自然な流れだったといいます。

左が妻のKさん、右がTさん。(写真撮影/相馬ミナ)
入居時、建物は未完成の状態でしたが、その後、入居者といっしょに壁を塗ったり、床を貼ったり、棚をつくったりと、DIYを続け、現在のかたちに落ち着いています。夫妻は共働きのため、現在、娘さんは保育園に通っていますが、まだまだ手がかかる年齢です。シェアハウスでの子育ては、まわりに気を使って大変ではないんでしょうか。
「子どもがいることに理解をして入居してもらっているので、寧ろ子ども好きな人が多いですね。ごはんづくりやお風呂、トイレといったちょっとした時間も、入居者のだれかが娘の面倒を見ていてくれることもあります。小さなことかもしれないけど、ストレスがなくて助かっています。親以外の大人が、子どものことを可愛がってくれると、子育ての喜びも増しますし、逆に大変なことも笑いあえる環境というのがとても有難いです」とKさん。

おそうじの当番表。ありがとうと書き込まれているので、はげみになります(写真撮影/相馬ミナ)
娘さんは入居者みんなのアイドル、かわるがわるに遊んでもらったり、抱っこしてもらったりと、可愛がられています。親戚のような、きょうだいのような、「ゆるい親戚」という言葉が実にしっくりきます。
「夫が料理好きで、食いしん坊なんです。ふるまうのが好きで、それで突然、パーティがはじまることも多いですね」とKさん。Tさんが自然と続けます。
「近所に足立市場があるんですが、お刺身にしたり、鍋にしたり。新鮮な魚が近くにあって、市場に行くだけでもイベント感があるので楽しめます」とにこやかです。ほかにも味噌をつくったり、たこ焼きパーティをしたり、誕生日を祝ったりしています。

キッチンのタイルは入居者みんなで貼ったもの(写真撮影/相馬ミナ)

料理をしているといい香りが漂います(写真撮影/相馬ミナ)

この日はみんなが大好きなパスタをつくってくれました(写真撮影/相馬ミナ)

配膳はみんなで分担。カウンターもDIYで造作しました(写真撮影/相馬ミナ)

完成した料理。サラダも盛り付けて、みんなでいただきます(写真撮影/相馬ミナ)
「東京にあるもう一つの実家」。居心地の良さに出たくないほどでは、入居者はどのように感じているのでしょうか。大学生のAさんは、半年ほど前に別のシェアハウスからこのシェアハウスへ引っ越してきた住人です。通学にかかる時間は増えてしまいましたが、居心地のよさから「第二の実家」とまで言い切ります。
「前に暮らしていた知人のデザイナーさんから、お部屋を引き継いで暮らしているのですが、あまりにも居心地良すぎて、大人になってもずっとここに住んでいたいです(笑)」とおっとりと話します。前の住人が壁を白く塗ってくれていた部屋の雰囲気に合わせて、フローリングシートを張ったり、ロフトの壁を塗ったりお部屋をAさんらしくアレンジしています。

Aさんのお部屋の入り口にあるサイン。アートバーで制作したそう(写真撮影/相馬ミナ)

お気に入りのお部屋で。広さもインテリアも「すべてがいい感じ」だそう(写真撮影/相馬ミナ)
「室内の白い壁は前の入居者さんががんばってDIYして、白いまま残してくださりました。インテリアは私の好みのものを揃えたのですが、白い壁の雰囲気とよくマッチしていて、すべてがいい感じなんです」といいます。あまりにも暮らしが快適なため、「欲しい物もあまりないかな」と話すほどで、その満足度の高さが伺えます。Tさん夫妻の娘とも仲良しです。
「年の離れたお姉さんというよりも、純粋に友達という感じでしょうか。いっしょになって遊んでいます。めちゃくちゃかわいくて毎日癒やされてます。」といい、子どものいる暮らしがとても楽しいよう。
意地悪な質問ですが、シェアハウスにありがちな生活音やトラブル、暮らしでいやな経験をしたことはないのでしょうか。
「管理人夫妻がいっしょに住んでいらっしゃるので、何かあっても感情的になるのではなく、冷静に『指摘』してくれるので助かっています。通勤してくる管理人、清掃スタッフだとまた違うのではないでしょうか。トラブルや困りごとはないですね」といいます。このあたり、入居前に顔をあわせていたり、紹介を経由して人が集まったりすることで、「入居者同士の感覚が近い」のもあるのかもしれません。

Aさんの個室。シンプルですが個性が出ていてすてき(写真撮影/相馬ミナ)
もうひとり、1カ月ほど前からここで暮らしはじめたFさんにもお話を伺いました。
「出身は千葉ですが、以前は福岡で一人暮らしをしていました。この春に東京に戻ってくることが決まり、家具家電をそろえる費用がかからないシェアハウスを探していたんです。管理人Tさんが私の大学の先輩というご縁もありましたし、勤務先の近くにあるので、通勤にも便利ということで、入居を決めました」と立地や実用性も重視しての入居となったそう。入居して間もないものの、すでにシェアハウスに馴染んでおり、前出のAさんのことはまるで妹のようと話すなど、気持ちのよい関係が築けています。
「入居前に心得をブログにまとめてくれていたので、共通理解ができているのは大きいと思います。共有部分の掃除や汚れが気になることもないし、分担も自然とできています」。なるほど、管理人夫妻の人柄やシェアハウスでつくりたい「暮らし」のイメージが明確だからこそ、大きくぶれないのかもしれません。

自分の好きな作品をディスプレイ(写真撮影/相馬ミナ)

トイレには、元住人が作った作品の姿も(写真撮影/相馬ミナ)
今後の展望についてTさんに聞いてみました。
「昨今、北千住の人気が出てきてしまったので、なかなかいい物件と出会いにくくなっているというか。ただ、空き家活用や建築のお悩みごとや街への想いは地元のみなさん、お持ちなんですね。物件との出会いは人との出会いでもあるので、不動産や建築を通して、この街にもっと根ざしていけたらいいなと思います」とTさん。
この建物ができた今から90年ほど前の日本では、長屋暮らしが一般的でしたし、家族や親類縁者、住み込みの従業員でいっしょに食事をしたり、建物の普請や手直しをすることが多かったはずです。シェアハウス日日の暮らしがなんとなく懐かしいのは、新しいようでいて、実は古くからある暮らしそのものだからなのかもしれません。

入居者ごとにマステが決められていて、貼っておけば誰のものかわかる仕組み。賢い!(写真撮影/相馬ミナ)

(写真撮影/相馬ミナ)
●取材協力
シェアハウス日日
所在地:渋谷区神宮前
所在地:世田谷区北沢
所在地:調布市入間町東京駅は、東西南北に走るJRの在来線各線に加え、新幹線の始発駅でもあり、東京メトロ丸ノ内線も乗り入れている。駅周辺には多数のオフィスビルが林立し、東京を代表するビジネスの要所でもある。もはや開発の余地もないかに思えたが、東京駅前・八重洲エリアでは現在、大規模再開発が繰り広げられている。今回は、ますますの発展が期待される東京駅まで30分圏内にある駅の価格相場を調査! 専有面積20平米以上~50平米未満の「シングル向け」と専有面積50平米以上~80平米未満の「カップル・ファミリー向け」、それぞれの中古マンションの価格相場が安い街をご紹介しよう。
東京駅まで30分以内の価格相場が安い駅TOP10東京駅まで30分以内の価格相場が安い駅TOP10
【シングル向け】
順位/駅名/価格相場(路線/駅所在地/東京駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 十条 2089万円(JR埼京線/東京都北区/24分/1回)
2位 お花茶屋 2180万円(京成本線/東京都葛飾区/30分/1回)
3位 大森海岸 2355万円(京浜急行本線/東京都品川区/27分/1回)
4位 西馬込 2440万円(都営浅草線/東京都大田区/29分/1回)
5位 西川口 2498万円(JR京浜東北・根岸線/埼玉県川口市/26分/1回)
6位 川口 2580万円(JR京浜東北・根岸線/埼玉県川口市/23分/1回)
6位 鶴見 2580万円(JR京浜東北・根岸線/神奈川県横浜市鶴見区/25分/1回)
8位 新宿御苑前 2590万円(東京メトロ丸ノ内線/東京都新宿区/15分/0回)
9位 大森 2640万円(JR京浜東北・根岸線/東京都大田区/17分/1回)
10位 馬込 2735万円(都営浅草線/東京都大田区/27分/1回)
【カップル・ファミリー向け】
順位/駅名/価格相場(路線/駅所在地/東京駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 足立小台 2799万円(日暮里・舎人ライナー/東京都足立区/27分/2回)
2位 竹ノ塚 2980万円(東武伊勢崎線/東京都足立区/30分/2回)
3位 松戸 2989.5万円(JR常磐線/千葉県松戸市/27分/0回)
4位 青井 3180万円(つくばエクスプレス/東京都足立区/25分/1回)
5位 西船橋 3219.5万円((JR京葉線//千葉県船橋市/29分/0回)
6位 お花茶屋 3300万円(京成本線/東京都葛飾区/30分/1回)
7位 五反野 3380万円(東武伊勢崎線/東京都足立区/27分/1回)
7位 六町 3380万円(つくばエクスプレス/東京都足立区/27分/1回)
7位 西新井 3380万円(東武伊勢崎線/東京都足立区/27分/1回)
10位 堀切菖蒲園 3385万円(京成本線/東京都葛飾区/28分/1回)
駅周辺の再開発で注目が高まる東京駅。駅東側の八重洲エリアに2021年には地上38階建ての商業・オフィスの複合ビル「常盤橋タワー」が竣工し、商業ゾーンがグランドオープンしている。隣接地では2027年度の竣工を目指して日本一の高さとなるシンボルタワービル「Torch Tower」を建設中だ。さらに2022年9月には「東京ミッドタウン八重洲」の一部エリアが先行オープンとなり、2023年3月にはグランドオープンを迎える予定だ。
そんな東京駅まで30分圏内にある駅のうち「シングル向け」中古マンションの価格相場が最も安かったのは、東京都北区にあるJR埼京線・十条駅で価格相場は2089万円。東京駅まで乗り換え1回・約24分で行けるほか、JR埼京線で池袋駅まで2駅、新宿駅まで3駅、渋谷駅まで4駅という便利な立地だ。十条駅の名物といえば、駅北口を中心に広がる「十条銀座商店街」だろう。このアーケード商店街には170店舗以上が軒を連ねており、食料品や日用品の買い出しから食事までここにくればまかなえる。テイクアウトできる総菜やお弁当のお店も充実し、仕事帰りに買って自宅ですぐ夕食を楽しむこともできる。駅周辺にはコンビニも点在しているので、早朝や深夜のちょっとした買い物にも困らない。

十条銀座商店街(写真/PIXTA)
また、十条駅西口では再開発が進行中。住宅・商業・公益一帯の複合施設「J&TERRACE(ジェイトテラス)」「J&MALL(ジェイトモール)」の建設に着工し、2024年度中の完成を目指している。さらに十条駅周辺のJR埼京線を1.5km区間に渡り高架化し、道路と鉄道を立体交差化する工事も進められている。こちらは2030年の完成予定とまだ先だが、これから十条の街は大きく様変わりしていくだろう。
2位は東京都葛飾区の京成本線・お花茶屋駅で価格相場は2180万円。東京駅までは乗り換え1回・約30分で到着する。駅周辺にはドラッグストアや100円ショップ、コンビニが点在し、徒歩10分圏内にスーパーも複数あるので日常の買い物には困らないだろう。駅北側の商店街にはラーメン店や洋食店、魚料理が自慢の食事処やインドカレー店などもあるので、お気に入りの店を探して食べ歩いても楽しそう。ちなみにお花茶屋駅は「カップル・ファミリー向け」ランキングでも6位にランクインしており、シングル向け物件だけでなく広めの中古マンションもリーズナブルな物件がそろっているようだ。

お花茶屋駅(写真/PIXTA)
3位には東京都品川区にある京浜急行本線・大森海岸駅がランクイン。価格相場は2355万円で、東京駅には乗り換え1回・約27分で行くことができる。かつては駅近くにまで海岸が迫っていたため付いた駅名だが、その後に埋立地が形成されて現在は海からは少々離れている。駅東側に広がる平和島や城南島といった埋立地には複数の公園があるほか、「大井競馬場」や「しながわ水族館」がある勝島も埋立地の一つ。水族館は「しながわ区民公園」の一角にあり、緑豊かな園内には海水を引き入れた人工湖や芝生広場も。2021年には水族館がある南側ゾーンの再整備が完了したところなので、きれいな園内で息抜きするのもよいだろう。
商業施設は大森海岸駅の西側に多く、複数のコンビニのほかにショッピングモールのイトーヨーカドーやスーパーの西友も徒歩10分圏内。そのまま西へと歩くと、大森海岸駅から徒歩10分弱で9位にランクインしたJR京浜東北・根岸線の大森駅へ。大森駅には駅ビル「アトレ大森」が併設されており、ここで買い物をすることも可能だ。
また、都営浅草線の4位・西馬込駅と10位・馬込駅は共に9位・大森駅から車で10分ほどの近さ。3位・大森海岸駅、4位・西馬込駅、9位・大森駅、10位・馬込駅はいずれも東京駅から南へ直線距離で11kmほどと大差ない立地なのだ。しかしこの4駅の価格相場には最大380万円の開きがあり、東京駅までの所要時間も約17分~約29分と違いがある。似通ったエリアにあっても価格相場やアクセスの利便性は駅ごとに変わってくるので、今回のようなランキング情報を参考にしながら物件探しをしたほうが後悔のない住まい探しができそうだ。
「カップル・ファミリー向け」には「子育てにやさしいまち」の駅もランクイン「カップル・ファミリー向け」の1位は、東京都足立区にある日暮里・舎人ライナーの足立小台駅。価格相場は2799万円で、東京駅までは乗り換え2回・約27分で到着する。この駅は北に荒川、南に隅田川が流れる立地で、高架の駅を降りると広々とした荒川土手が目の前に広がる。東側の駅前には家電量販店、西側の駅前にはスーパーを併設したホームセンターが建っている。荒川に架かる扇大橋や隅田川に架かる尾久橋を越えた、駅から徒歩15分圏内にはコンビニやスーパーも。川に挟まれた細長い地形のため駅前の土地面積が広くはない足立小台駅周辺で物件を探すなら、駅からの近さにこだわり過ぎず、川を越えたエリアも視野に入れたほうが物件の選択肢も増えそうだ。

足立小台駅(写真/PIXTA)
2位は東京都足立区に位置する、東武伊勢崎線・竹ノ塚駅で価格相場は2980万円。東京駅までは乗り換え2回・約30分で行くことができる。竹ノ塚駅の1駅隣は急行が停車する7位・西新井駅で、3駅先には同額7位・五反野駅があり、さらにそのまま東武伊勢崎線に乗っていると浅草駅にたどり着く。そんな竹ノ塚駅は2022年3月に上下緩行線(普通列車)の高架化が完了し、新駅舎もできたばかりというまだ新しさを感じる駅。この高架化により「開かずの踏切」がなくなり、駅周辺のアクセスの利便性が向上した。駅周辺にはUR賃貸住宅の集合住宅をはじめとした住宅地が広がり、スーパーやコンビニ、ファストフード店などの飲食店もそろっている。また、足立区では「竹ノ塚エリアデザイン」計画に着手。これは駅高架化を「東西一体となった街づくり」の好機だととらえ、将来に向けて街の魅力向上を目指すもの。まだ具体的な実行計画までは立てられていないが、今後の進化を楽しみにしたい。
この足立区による街づくり「エリアデザイン」は、同額7位の六町駅と西新井駅の周辺エリアでも進行中。いずれも民間の協力を得ながら駅前を中心とした街を再整備する計画が、竹ノ塚エリアに先立って策定されている。これからより魅力的な街の実現に向けて取り組んでいくそうで、注目のエリアと言えるだろう。
「カップル・ファミリー向け」トップ10には東京都足立区の駅が6つもランクインしており、京成本線の6位・お花茶屋駅と10位・堀切菖蒲園駅も足立区に隣接する東京都葛飾区にある。この計8駅は直径7kmほどの円内に収まる近い位置関係だ。そんななか3位には千葉県松戸市にある、JR常磐線・松戸駅が価格相場2989万5000円でランクイン。東京都外に位置しながら、東京駅までは乗り換え0回・約27分で行くことができる。これは上野駅~東京駅を途中停車駅なしで結ぶ、JR上野東京ラインに直通運転されるJR常磐線が通っているおかげ。この列車に乗ると6駅目が東京駅という近さなのだ。東京駅を基点に住まい探しをすると都内の駅に目が向きがちだが、路線によっては都外でもアクセスしやすい駅があることも頭に入れておきたい。

松戸駅西口前の様子(写真/PIXTA)
さて松戸駅の様子を見てみると、JR常磐線に加え新京成線も乗り入れており、新京成線では一番の乗降客数を誇るターミナル駅でもある。JR常磐線の各駅停車は東京メトロ千代田線と直通運転されているため、大手町駅や霞ケ関駅、赤坂駅、表参道駅などにも乗り換えなしで行ける点も魅力的だ。また松戸駅は現在、改良工事中で、2027年春の完成を目指して東西通路の拡幅や駅南側の駅ビル建設などが進められている。あわせて西口駅前広場の整備も進行中なので、あと5年ほどで新たな松戸駅の姿が見られそうだ。
そんな松戸駅には駅ビル「アトレ松戸」が併設され、食料品からファッション、雑貨のお店、レストランまで多彩な店舗が揃っている。駅近くには松戸市役所もあるなど市の中心地と言えるエリアで、駅周辺は多くの人が行き交う繁華街。駅西口側に「キテミテマツド」、東口側には「プラーレ松戸」というショッピングモールもあるなど商業施設が充実している。一方で駅から歩いて5分ほどの場所には松戸中央公園や相模台公園といった憩いの場もあり、駅から西に10分も歩くと散策路が整備された江戸川河川敷へ。のびのび遊びたい子どもがいるファミリーも暮らしやすそうな環境だ。
ちなみに松戸市は2017年には市内全23カ所の駅前・駅ナカへの小規模保育施設の整備が完了し、「待機児童6年連続ゼロ」(※2021年4月時点の国の基準)を誇るなど「子育てにやさしいまち」を掲げている。これから育児をする環境として住まい探しをする場合は、こうした市の子育てに関する取り組み・支援も念頭に置きつつ立地選びをするのも大切だろう。
●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている東京駅まで電車で30分圏内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】
駅徒歩15分圏内、物件価格相場3億円以下、築年数35年未満、敷地権利は所有権のみ
シングル向け:専有面積20平米以上50平米未満
カップル・ファミリー向け:専有面積50平米以上80平米未満
【データ抽出期間】2022/2~2022/4
【物件相場の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された中古マンション価格から中央値を算出
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、朝7時30分~9時の検索結果から算出(2022年5月30日時点)。所要時間は該当時間帯で一番早いものを表示(乗換時間を含む)
※記載の分数は、駅内および、駅間の徒歩移動分数を含む
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が2回までの駅を掲載
所在地:千代田区一番町なんと6月中に猛暑が続き、東京電力管内で「電力需給ひっ迫注意報」が連日発令される事態になっている。家庭でも節電が促される一方で、熱中症のリスクも指摘され、適切なエアコンの使用を求めるなど、暑さに振り回される日々がもう始まっている。これから迎える本格的な夏の暮らしが心配このうえないが、どうしたらよいのだろう?
【今週の住活トピック】
「住まいにおける夏の快適性に関する調査(2022年)」結果を公表/積水ハウス 住生活研究所
「『自宅の省エネ意識』に関する実態調査」結果を公表/フリエ住まい総研
積水ハウスの住生活研究所が、「住まいにおける夏場快適性に関する調査(2022年)」の結果を公表した。それによると、「約2人に1人が他の季節と比べ、夏場の日中は自宅にいる時間が増えると回答した」という。詳しく見ていこう。
「夏場の日中、外出したいか、自宅で過ごしたいか」を聞いたところ、「自宅で過ごしたい」という回答がコロナ禍前と比べて、20代では減少(38.0%→33.0%)したが、その他の30~60代では増加(50.8%→57.8%)している。この夏は旅行を促進する動きもあり、外出自粛が緩和されるムードではあるが、約半数が自宅で過ごしたいと考えていることがわかった。その理由は、「夏の暑さ」で、約8割が「暑くて外出したくない」と回答したという。

出典:積水ハウス 住生活研究所「住まいにおける夏場の快適性に関する調査(2022年)」
また、「夏に自宅で長時間過ごす上で、気になることやネックになること」という質問では、「電気代」が64.0%と最多になり、2位の「運動不足」(37.8%)や3位の「室内温度調整」(23.2%)に大差をつけて気にしていることがわかった。これは、在宅勤務の増加などで、自宅にいる時間が長くなったことも影響している。コロナ禍で自宅にいる時間が長くなった人ほど、電気代が上がったと回答していることからもうかがえる。加えて、最近は電気代の値上げが相次ぎ、エアコンの利用による電気代が気になるのは当然のことだろう。
電気代の上昇が夏の省エネ意識を高めている!次に、フリエ住まい総研の「『自宅の省エネ意識』に関する実態調査」を見ていこう。「今年の夏は自宅の省エネを意識するか」を聞いたところ、「はい」という回答は 83.5%にも達した。「以前に比べ省エネ意識に変化はあったか」を聞くと、51.9%の人が「向上した」と回答した。
省エネ意識が向上した人たちに対して、「省エネ意識が上がった要因」を聞いたところ、9割近い87.9%が「電気代の上昇」と回答した。直接的に家計に響く電気代が、省エネのモチベーションになっているというわけだ。

出典:フリエ住まい総研「自宅の省エネ意識」 に関する実態調査
では、具体的にどういった省エネに取り組んでいるかというと、「エアコンの温度設定」「照明をこまめに消す」「エアコンの使用を控える」などが上位に挙がった。

出典:フリエ住まい総研「自宅の省エネ意識」 に関する実態調査
さきほどの積水ハウス 住生活研究所で、「夏の電気代の対策」を聞いた調査結果では、「エアコンの稼働時間を減らす」「家族で一つの部屋に集まってエアコンの稼働台数を減らす」「エアコンとサーキュレーター・扇風機を併用する」など、エアコンの電気代の削減に関する項目が多くなった。

出典:積水ハウス 住生活研究所「住まいにおける夏の快適性に関する調査」
夏の省エネや電気代対策は、やはりエアコンの電気代をいかに削減するかということになるようだ。
夏のエアコンの電気代対策、あなたはどうしている?「エアコンの電気代対策」としては、すでに調査項目に挙がっているものもあるが、一般的に以下のようなものが挙げられる。
・省エネ性の高いエアコンを使用する
・設定温度を上げる
・サーキュレーターや扇風機を併用する
・エアコンのフィルターなどを定期的に掃除する
・短時間の外出ならエアコンをつけっぱなしにする
ほかに効果が大きいのが、「窓の断熱性向上」や「窓の遮熱の工夫」だ。窓は直接外気に触れているので、省エネ性の高い窓(ガラスやサッシ)に変えるリフォームをすると、外気の影響を受けにくくなり、夏・冬共に節電効果が大きい。また、積水ハウスによると、「手軽にできる夏の日射対策としては、窓の外をつる植物などで覆うグリーンカーテンやすだれ、外付けのシェード、遮光・遮熱シート等も効果的」だという。
最後に、住宅設備機器メーカー株式会社コロナの提案を紹介しよう。寝苦しい夜のエアコンは「除湿運転で28度設定」がオススメだという。「除湿運転(弱冷房除湿)」は、弱冷房により除湿をするので、ゆっくり温度を下げることができ、風量も弱いことから喉を痛めにくいというメリットがあるからだ。さらに、寝苦しい夜は、扇風機を併用し、体に風が当たらないように注意しながら部屋の温度ムラをかき混ぜるとより快適に過ごすことができるそうだ。
気になる電気代について、コロナの広報に聞いてみた。
部屋の広さや室温・外気温度などの様々な要因に大きく左右されるので、必ずとは言えないようだが、「冷房運転」が室温を設定温度にできるだけ早く合わせようとする運転を行うのでそれだけ電力がかかるのに対して、「ドライ(除湿)運転」は除湿を重視しながら設定温度に合わせる運転を行うので、設定温度に達する時間はかかるもののそれだけ電力を節約できるという。
6月末から猛暑に悩まされるとは思いもしなかったが、地球温暖化の影響もあるので、今後は長い夏の暑さを覚悟する必要があるのだろう。そのためには、一時的に費用はかかっても長い目で見て、窓の省エネ改修や省エネ性の高いエアコンへの買い替えなどを検討したほうが良いと思う。
7月8月とまだまだ暑い夏は続きそうだ。それぞれの家庭で節電の工夫をして、この夏の暑さを乗り切ってほしい。
●関連サイト
積水ハウス 住生活研究所「住まいにおける夏の快適性に関する調査」
フリエ住まい総研「自宅の省エネ意識」 に関する実態調査
所在地:杉並区和泉
所在地:新宿区五軒町スキーやスノーボードをする人、山を愛する人はもちろん、そうでない人にもおなじみのリゾート地、長野県白馬村。長野五輪も開催されたこの村は、サーキュラーエコノミー(循環経済)に本気で取り組み、2021年にはグッドデザイン賞も受賞しました。人口1万人弱の小さな村で今、何が起きているのでしょうか。現地で取材してきました。
スノーリゾートで人気の街が雪不足の年も。気候変動を体感し、危機感
連休明けの5月、白馬の人たちは「今が一番いい季節」と口をそろえていました(写真撮影/嶋崎征弘)
“白馬村とサーキュラーエコノミー”と聞いて、その関係にすぐにピンとくる人は少ないかもしれません。また、大変お恥ずかしい話ですが、筆者は「サーキュラーエコノミー」を正しく理解しておらず、「環境問題に関することでしょ?」などとぼんやり捉えていましたし、正直に話すと、環境問題に特に意識の高い人達にしかまだ定着していない言葉なのかなと思っておりました。

植えられたばかりの稲が風にそよいでいます。山の近さがおわかりいただけるでしょうか(写真撮影/嶋崎征弘)
サーキュラーエコノミーとは、日本語に直訳すると「循環型経済」で、廃棄されてきた製品や原材料を資源ととらえ、限りなく循環させていく経済の仕組みのことをいいます。今まで製品は生産、消費、廃棄が一方通行で大量生産大量消費を繰り返すことで経済を発展させてきましたが「サーキュラーエコノミー」では、使用が終わった製品を廃棄せずに資源と捉えて循環させ、廃棄物と汚染を発生させずに、環境と経済を両立するという考え方です。
欧州を中心に今、急速に世界中に広まりつつある考え方ですが、では、なぜ日本のリゾート地である白馬村でいち早く取り組んでいるのでしょうか。その背景を聞いてみました。

お話を聞かせてくださった白馬村観光局の福島洋次郎さん。真冬でも日課である犬散歩が大好きな愛犬家です(写真撮影/嶋崎征弘)
「そもそものはじまりは地元の高校生のアクションなんです。この数年、雪不足の年があったと思ったら、ドカ雪の年があったり。『気候変動の影響かね』『スノーリゾートなのに雪がないなんて笑えないよね』なんて私たちも話していたんですが、子どもたちは自分ごととして捉え、2019年、気候変動危機を訴える『グローバル気候マーチ』を起こしたんです」と話してくれたのは、白馬村観光局で働く福島 洋次郎さん。
子どもたちの真剣な意思表示を、白馬村の大人たちは無視しませんでした。2019年、『白馬村気候非常事態宣言』を白馬村の村長が打ち出し、白馬村では持続可能社会のあり方を考える「サーキュラーエコノミー」に取り組むようになったのです。雪の減少による観光客減という背に腹は代えられない面もあったのかもしれませんが、山を愛し、気候変動を肌に感じるからこそのスピード感といえるかもしれません。

5月の白馬の峰々。圧倒的に尊く、「これは次世代に引き継ぐべき宝だ!」という思いに駆られます(写真撮影/嶋崎征弘)
取材で訪れたのはウィンターシーズンが終わり、新緑が眩しい5月でした。大きく美しい空と山に残る雪、緑に圧倒され、「環境問題はファッションやきれいごとではないんだ」と胸に迫ってきます。「意識高い」などと思っていた自分の浅はかさ、愚かさが心底恥ずかしくなりました。

雪解け水が地下を通り、湧水となってできた青木湖。夏のアクティビティとしてサップ体験が人気です(写真撮影/嶋崎征弘)

(写真撮影/嶋崎征弘)

湧水ならではの透明感と美しさ。都会で薄汚れた心を浄化してくれました(写真撮影/嶋崎征弘)

(写真撮影/嶋崎征弘)
断熱改修、自然エネルギー由来の導入など、行動が早いそこからの動きは素早く、2020年夏には白馬村で初めての「GREEN WORK HAKUBA」が開催されました。これは、白馬村の事業者や村外のパートナー企業がカンファレンス、ワークショップを重ねながら、白馬村の課題を掘り出し、持続可能なリゾートへと変化するために、解決法や取り組みを考えるプロジェクトです。広告会社の新東通信内に設置された「CIRCULAR DESGIN STUDIO.」と協力して立ち上げました。

過去の「GREEN WORK HAKUBA」開催時の様子(写真提供/CIRCULAR DESGIN STUDIO.)
「サーキュラーエコノミーを発信する日本のトップ研究者、SDGsに力を入れていて環境保全にも取り組む企業関係者などが白馬村に滞在・宿泊しながら、持続可能な経済、白馬村のあり方について、ディスカッションしたりアイデアを出し合ったりします。山の目の前、大自然・屋外でワークショップするとね、普段は出ないようなアイデア、素直な議論ができるんですよ」と福島さんは続けます。

GREEN WORK HAKUBAのワークショップ会場「白馬岩岳マウンテンリゾート」(写真撮影/嶋崎征弘)

自然に囲まれてワークショップをする「GREEN WORK HAKUBA」、今年も7月に開催予定です(写真撮影/嶋崎征弘)

白馬三山に向かって漕ぎ出すブランコは、ゼロ・カーボンだけど体験したくなるアクティビティ。発想がすごい(写真撮影/嶋崎征弘)
すごいのはアイデアを出して終わりだけではなく、行動まで進めてしまうところ。たとえば、課題としてあげられていたのが、白馬南小学校をはじめとした校舎や建物の断熱性能の低さ。2021年秋には、企業やプロの協力をとりつけ、小学生のDIYによって断熱改修が行われたそう。
「企業に断熱材を提供してもらい、建築士の先生、地元の工務店のプロに手ほどきを受けながら、小学生自身が校舎の断熱改修を実施しました。すると教室が大幅に暖かくなり、今まで昼にはなくなっていた灯油が午後まで残り、驚くほど暖かくなったそうです」(福島さん)

(写真提供/白馬村観光局)
「建物の断熱性を高めてエネルギー消費量を減らし、二酸化炭素の排出量を削減しつつ、教室も暖かくなって健康・快適になる」、そんな経験、お金を払ってでもしてみたいです。しかも小学生のうちから経験できるなんて、うらやましい……。そして何よりすばらしいのが、絵に描いた餅だけでなく、行動をしているところ。すばやい取り組みを見ると、みなさん本気なんですね。

リフトは自然エネルギー由来の電力へ切り替え、照明もLED化するなど、省エネや環境への負荷を低くするための投資・修繕を現在進行形で実施中(写真撮影/嶋崎征弘)

(写真撮影/嶋崎征弘)

岩岳マウンテンリゾートの自動販売機で販売しているのは瓶入りのコーラ!(写真撮影/嶋崎征弘)

瓶のほうが再利用は容易です。そしてなぜでしょう、大変美味しく感じます(写真撮影/嶋崎征弘)
エコなスキー場、ゴミ削減、ゼロ・カーボンの移動など、やりたいこと山積み!とはいえ、サーキュラーエコノミーの取り組みははじまったばかり。やりたいことばかりが出てきて、実現できるものもあれば、追いつかないものもあると、福島さんは苦笑します。

村を見下ろすこの特等席。よい風景があれば実は何もいらないのかもしれません(写真撮影/嶋崎征弘)
「白馬も基本的に車社会なので、旅行者もレンタカーを借りる人が多いんです。でも、サーキュラーエコノミーをうたっているのに、自動車頼みでいいの? という意見があって、『人力車で村をめぐる』というアクティビティがうまれました。しかも引き手は白馬在住のプロ山岳ランナー。白馬でしかできない体験です。ただ、選手なので遠征のときは利用できないんですよ(笑)」と明かします。
また、白馬には約500件の宿泊施設があり、年間250万人が訪れているそう。当然、排出されるゴミの量も半端ではなく、当然、人口約9000人の村では処理しきれないので、周辺自治体と広域で運営する焼却施設に廃棄しています。
「排出ゴミの削減は切実な課題なんです。1つのホテル、1つのスキー場だけは限界があるので、連携してなにかできないかという取り組みもはじまっています。たとえば、ホテルのアメニティを協同のブランドにするなどですね。脱プラを進めるためにも、容器がプラスチックの液体ではなく石鹸のように固体のアメニティにしたいなど、アイデアはたくさんでています」といいます。

白馬ノルウェービレッジのカフェでは、出た食品廃棄物をコンポストで肥料にしています。できた肥料を畑で使い、夏には立派な野菜ができます(写真撮影/嶋崎征弘)

白馬ノルウェービレッジ(写真撮影/嶋崎征弘)

こちらはコンポストでつくった肥料を使って夏野菜を育てている畑。ナス、きゅうり、トマトなどは併設のカフェでも出しているそう(写真撮影/嶋崎征弘)

白馬村は耕作放棄地が少なめ。畑や水田を利用希望者へと受け渡すマッチングも促進しているそう(写真撮影/嶋崎征弘)
また、スキー場の設備の劣化やメンテナンス、季節ごとの閑散期と繁忙期の差や、各施設の収益力アップも課題になっているそう。
「いくら環境にやさしくても雇用を維持できなければ、持続可能とはいえません。白馬のスキー場は高度経済成長期につくられた設備も多いので、当然、メンテナンス・新しい設備投資も必要になる。夏のアクティビティのバリエーションを増やしたり、テレワークの場所としてアピールしたり。リゾートとして注目されるための新規の設備を設けたり、中長期で必要な設備投資をしつつ、暮らしている人の満足度や幸せ度を上げていけたらいいですよね」(福島さん)
将来的には「カーボンニュートラル(二酸化炭素の排出を全体としてゼロにする)」から一歩進んで、「カーボンネガティブ(二酸化炭素を排出せずに、他地域の二酸化炭素を吸収している)」という構想もあるとか。
地球温暖化は世界の問題で、一つの地域で取り組んでも、その効果は限定的かつ、努力した地域に効果が変えるというものでもありません。白馬村のような先進的的取り組みがさらに様々な地域で展開されていく必要があります。環境と地方の観光、経済を両立する。小さな村ではじまった本気の取り組みが、他の町や村にもよい競争として波及し、さらなる好循環(まさにサーキュレーション!)を生み出すことを期待したいです。
●取材協力
白馬村観光局
GREEN WORK HAKUBA
CIRCULAR DESGIN STUDIO.
所在地:中野区南台
所在地:江東区森下
所在地:葉山町堀内
所在地:川崎市幸区南幸町
所在地:東京都世田谷区代田
所在地:渋谷区千駄ヶ谷新型コロナウイルス感染症拡大で、2020年以降大打撃を受けたアメリカ・ニューヨーク。一時はロックダウンで街から人が消え去り、さらにはリモートワーク/テレワークなどの新たな働き方の浸透によって、多くの市民が市外や州外へ転出した。それに伴って、市内の不動産価格や家賃が下落。あれから2年。コロナ禍3年目となった今、感染状況は一進一退だが、不動産価格や家賃相場は再び上昇傾向になっている。そこには全世界から人が集まる大都市ならではの「ある理由」があった。
NYと日本、いま「住みたい街」とは?アメリカの大都市ニューヨークでは、東京や大阪などと同様に、街によってそこを選ぶ人の世代やライフスタイルが異なる。収入が十分でない若年層が注目するのは、マンハッタンの外れの地域や、川を越えたクイーンズだ。タウンハウスという一軒家を借りて何人かでシェアしていることもある。子育てをしているファミリー層はマンハッタンから電車で1時間ほどの郊外にある、広い庭付きの一軒家が好まれる傾向がある。富裕層はマンハッタンのパークアベニューやアップタウン、トライベッカなどに好んで住む傾向だ。個性を求めているアーティストには、クリエイティブで独自の文化があるマンハッタンのダウンタウンや、広いロフトが多いブルックリンなどが人気だ。

ブルックリン(写真/PIXTA)
ちなみに日本では、今コロナ禍による影響も大きな要因となって、都心よりも郊外の人気がやや上昇している。在宅時間が長くなり、人々が利便性に優れた都心だけでなく郊外の住環境などにも目を向けた結果だろう。 今年発表された「SUUMO住みたい街(駅)ランキング2022」でも、横浜駅や吉祥寺駅、恵比寿駅の人気は相変わらずだが、上位に埼玉県の大宮市や浦和市など、郊外の都市がランクインしたのが特徴的だった。
ニューヨークも同様、観光客が多いマンハッタンの繁華街ではなく、中心部から少し離れた場所や郊外などが「住みたい街」として注目されている。
2年前、この街は新型コロナウイルスの感染拡大によって大打撃を受け、経済が壊滅状態となった。感染を避けるため、またはリモートワーク/テレワークの浸透によって、多くの市民が市外や州外へと続々と転出したことが地元メディアでも報じられた。それによって、不動産価格や地価、家賃の下落が起きたのだ。不動産の調査をする「ストリート・イージー」によると、2021年1月~3月期のマンハッタンの月の家賃の中央値はコロナ騒動が勃発した時期の前年同期比17%減の2700ドル(当時の為替で約29万円)だった。これは集計を開始した10年以来で最低の数値だった。
コロナ禍3年目、不動産市場が再び活況にしかしコロナ禍3年目となる今、ニューヨーク市内での不動産価格や地価、家賃の上昇が伝えられている。
「ニューヨークは戻った」という見出しを掲載したビジネス誌『FORTUNE(フォーチュン)』のウェブ版記事は、「アメリカの金融資本の需要はかつてないほど高まっている」とし、マンハッタンの家賃が記録的な金額に達したと報じた。

マンハッタン(写真/PIXTA)
同誌によると、マンハッタンの家賃は昨年に比べて24%も上昇したという。中央値は昨年より705ドル(9万円以上。1ドル128円計算。以下同)も値上がりし、(今年3月時点で)3700ドル(47万円超え)に。家賃の上昇は、オフィス勤務の復活や学校再開に伴い人々が市内に戻り、空室が少なくなったことを意味する。空室率は昨年2月の時点で12%近かったが、今年の同時期は1.32%まで下がっている。
マンハッタン以外でも、ブルックリンで昨年に比べて10.5%上昇し、中央値は2900ドル(37万円超え)、クイーンズで14.5%上昇し中央値は2888ドル(37万円超え)に達するなど、市内の至るところで家賃が上昇している。
地元メディアのニューヨークポストによると、特に中心部や繁華街(マンハッタンのアッパーウェストサイドやダウンタウン、ブルックリン)の駅近くの物件において家賃が上昇傾向にあるという。
NY、エリア別の家賃相場家賃が東京の2倍もしくはそれ以上とも言われるニューヨーク。家賃相場はエリアにより、また間取りやビルの状態などによって異なる。
ニューヨークは全体的に家賃が急上昇しています。特にマンハッタンは前年同月比で30%くらい上がっていると思います。ブルックリンも負けずに上がっています」と話すのは、滝田不動産(Yoshi Takita REALTOR(R))の代表、滝田佳功(たきたよしのり)さん。
Living NY社に勤務する、ニューヨーク州認定の不動産エージェント、木城祐(ひろし)さんも、「特に家賃が上昇しているのはマンハッタンです。アッパーマンハッタン(北部)など一部エリアを除いて、上がり続けています」と話す。

アッパーウエストサイド(写真/PIXTA)
木城さんによると、昨年は入居者を呼び込むための優遇措置で、家賃割引や仲介料なしといった物件もあったが、現在の市場ではそれらの優遇措置はほぼ見られないという。
「日本人留学生などに人気のイーストビレッジ地区やローワー・イーストサイド地区ではパンデミック中、入居者が大量に流出し、多数の空室が出て大家は頭を抱えました。しかし昨年秋に市内の大学が対面授業の再開を発表するや否や、学生が州外や国外から市内に戻り、瞬く間に空室がなくなってしまったのが印象的です」(木城さん)
また前述の「優遇」の恩恵を受けた入居者も1年契約が終わった途端に家賃が大幅に高騰し、住み続けられず慌ててほかのアパートを探すケースもよくあるという。
滝田さんは、学校が再開して学生が戻ってきたあと、学生寮のルームシェアが撤廃されたため、寮以外の一般のアパートを借り始めた学生も多いという情報を聞いており、そんな事情も家賃上昇に拍車をかけている一因になっていそうだ。
学生だけでなく、新しくビジネスを始める人々や一度は郊外や州外に引越しをしたがやはりニューヨーク市内での生活が良いと感じた人などが戻り、市内を拠点にしたことで、家賃の高騰に拍車をかけた。
家賃以外で、暮らしで変化したことニューヨーカーの暮らしを圧迫しているのは家賃だけではない。物価高騰も暮らしを圧迫している。
家賃上昇に加え、最近アメリカでは記録的なインフレが続いている。2021年から加速して39年ぶりの高水準となり、ガソリンや日用品、食費などあらゆる物価が高騰している。特にロシアによるウクライナ侵攻後、ガソリン価格が過去最高値を更新した。
また、物不足も深刻だ。住宅建築需要の増加によって、木材不足・価格高騰(ウッドショック)や半導体などあらゆる不足が連日ニュースとなっている。そして最近は、粉ミルク不足も大きな社会問題となっている。

(写真/PIXTA)
今後、家賃相場の高騰に対するなにか対策がされていくのかまた、インフレとは無関係に、世界を代表する大都市ニューヨークは、世界中から移住者が増え続けており、家賃は恒常的に毎年上昇し続けている。ブルックリンのアパートに住む筆者の家賃も、13年前の引っ越し当初の家賃と比べて、円にして数万円単位で値上がりしている。家賃上昇と物価高騰のWパンチで、ますます大都市は住みにくくなっている。
「この街を一層ユニークで味のあるものにしてきたのは、ここで生まれ育ったニューヨーカーたち。そんな彼らが、物価上昇と家賃の高騰に悲鳴を上げている。以前と同じ住居やエリアに住み続けられないのだとしたら、それはとても残念なことです」と、木城さんは話す。
滝田さんも、以下のように言う。
「ニューヨーク州の条例では、コロナ禍に家賃が払えなくなった住民のために『Eviction Moratorium(強制立ち退き猶予)』が設けられ、今年1月15日まで、大家による強制立ち退きは禁止されていました。またハードシップ手当として、家賃支払いができない人のための補助金も出ていたので、本当に家賃が支払えなくて退去させられた人は少ないと思います。また、生活費に困窮した市民が申請し、審査に通れば、よりリーズナブルな家賃で住める『アフォーダブルハウジングのプログラム』などの措置もあります」
最近物価高騰が報じられる日本だが、それでもコンビニに行けば、数百円単位の美味しいものに出合うことができる。当地でも昔から1ドルピザなるものがあったが、コロナ禍で次々に閉店が報じられている。物価上昇と家賃上昇などで、この大都市はさらに住みにくい街として汚名を着せられていくのか? 人々は戦々恐々としている。
●取材協力
Yoshi Takita REALTOR(R)
Living New York
所在地:千葉市美浜区幸町
所在地:茨城県牛久市ひたち野東
所在地:渋谷区大山町
所在地:杉並区高円寺南
所在地:大田区上池台
所在地:渋谷区神宮前
所在地:台東区東上野
所在地:横浜市港北区日吉本町
所在地:府中市栄町「うだつの上がる町並み」として重要伝統的建造物群保存地区に選定されている岐阜県美濃市は、1300年以上の歴史を誇る美濃和紙で知られる。うだつ(卯建)とは、隣り合った町家の間に、延焼を防ぐ防火壁として造られた、屋根の上の立ち上がり部分のこと。そんな、往時のにぎわいがしのばれる町家が並ぶこの美濃のまちも、空き家問題に悩まされてきた。
衰退した美濃和紙の産業を、空き家対策で盛り上げる世界遺産に登録された本美濃紙の技術や、日本三大清流の一つである長良川を有し、自然や文化資源に恵まれた岐阜県美濃市。町家の延焼を防ぐ防火壁「うだつ」は、紙の問屋が並ぶ美濃市では特に大事な意味があった。これが次第に装飾的な意味を持つようになり、裕福な商家などでは競うように立派なうだつが造られるようになったという。

タイムスリップしたかのような、美濃市のうだつの上がる町並み(写真撮影/本美安浩)
ここ美濃市でも、全国的な課題である空き家問題は例外ではない。美濃市のまちづくりに携わる「みのまちや株式会社」が2021年に行った独自調査によると、文化庁の重要伝統的建造物群保存地区に指定されたうだつの上がる町並みやその付近だけでも、40件以上の空き家があることがわかったという。
「空き家は“歯抜け”状態で現れますから、町並みの美しさが欠けてしまうのです」と説明しながら案内してくれたのは、みのまちや株式会社広報部の平山朝美さんだ。
老朽化した建物は倒壊の危険が出てくるため、例え歴史的な価値がある建物であったとしても、空き家状態のままだと取り壊されてしまうことも珍しくないという。
「だから、空き家対策にはスピード感が必要なのです」と平山さんは話す。

意匠が凝らされた「うだつ」を眺めながら歩くのも趣深い(写真撮影/本美安浩)
みのまちや株式会社は、「美濃の歴史的資源を未来に残す」ことを目的に、2019年に設立された会社。「空き家の数だけ夢がある」と空き家ゼロを目指し、美濃のまちをフィールドに、地域と連携しながらさまざまな事業を展開している。
代表の辻晃一さんは、美濃生まれ美濃育ち、美濃在住の生粋の「美濃の人(じん)」。実家は機械漉きの美濃和紙の製紙会社で、進学を機にこの地を離れ、東京のベンンチャー企業で働いていたが、2008年から稼業を継ぐことに。そこで目の当たりにしたのは、衰退しつつある美濃和紙の産業と、少子高齢化が進み、空き家が増えた故郷だった。

みのまちや株式会社代表であり丸重製紙企業組合の代表理事、懐紙作家としても活動する辻晃一さん(45歳)(写真提供/みのまちや株式会社)
「衰退した産業を再び盛り上げるためには、まちに魅力が必要だ」。そう考えた辻さんは、まず、自分ができることとして空き家対策に取り掛かり、「みのまちや株式会社」を設立した。

後述する「NIPPONIA美濃商家町」の「YAMAJOU棟」は、みのまちや株式会社のプロジェクトで1番はじめに開発された。3室の主屋と3つの蔵からなる「YAMAJOU棟」は、和紙の原料蔵がレセプションの役割を果たしている。棟の名前はもとの屋号から(写真撮影/本美安浩)

2021年に、「YAMAJOU棟」の蔵にレセプションスペースをプラスした。美濃や美濃和紙について現代アートを通して発信するギャラリースペースとカフェを併設し、カフェは美濃市で開業したい人のチャレンジショップとしても活用(写真撮影/本美安浩)

宿泊者は「YAMAJOU棟」に泊まる場合も、少し離れた「YAMASITI棟」に泊まる場合も、まずは蔵のレセプションへ(写真撮影/本美安浩)
美濃市のプロポーザルに採用され名士宅を改修代表の辻さんが最初に行ったのが、美濃市のプロポーザルへの参加だった。そのころ、和紙の主原料である楮(こうぞ)を扱う美濃一の原料屋、松久才治郎氏の別宅が、持ち主により美濃市に寄贈され、民間事業者による活用案とその運営が公募されたのだ。
「別宅といっても、美濃一の名士の家ですから、主人が客人をもてなすための主屋に3部屋と、一軒家ほどもある金庫蔵に原料蔵、道具蔵がありました」と平山さんがスケールの大きさを説明してくれた。
「建物は使わないと朽ちてしまうので、人が出入りして営みがあるということが大事です。だからこそ、この歴史的な建物を、お店やミュージアムではなく、人が住んで使うホテルにしようと考えたのです」

「残月」「満月」「綾錦」の3部屋がある主屋。中庭を囲むように建てられ、部屋ごとに違った景色が楽しめる。部屋名は和紙の名前(写真撮影/本美安浩)
元が商家だったこの辺りの空き家は物件が大きく、個人で手に負えるものではなかった。それでも辻さんは、地道に「和紙で美濃市を元気にしたい」との思いを各方面でアピールした。
一方、美濃一の名士の空き家がプロポーザルに出たタイミングで、兵庫県篠山市のエリア開発会社が動き、この地域でのパートナーを模索していた。すると縁あって辻さんと出会い、共同でプロポーザルにエントリーすることに。無事に採択され、古民家ホテルの改修から運営までを任されることになった。そこで、2者はまちづくり会社「みのまちや株式会社」を設立するに至る。
こうして、主屋にスイートルーム3室と3つの蔵をそれぞれ1棟貸しの客室として、「五感で美濃を感じる宿」として改修するプロジェクトが始まった。

当時のまま残された総柾目の天井が美しい「満月」の部屋。朝は地元の素材をふんだんに使った食事を部屋食で(写真撮影/本美安浩)

「和紙の新しい出口を提案する宿」として、松久才治郎の兄、松久永助によって創業された「松久永助紙店」の美濃和紙タオルや枕カバーを使用(写真撮影/本美安浩)

美濃和紙の紙糸を使った「松久永助紙店」の洗える枕カバーは吸水性が抜群だという(写真撮影/本美安浩)
美濃の伝統文化を感じられるハイクラスな宿として話題に大きな企業や資本が入るのではなく自分たちで国の補助金を活用して、資金調達から行ったのがこのプロジェクトの大きな特徴だ。
「とにかく、予算も人も足りなくて……。私は2019年に入社してすぐに、ホテルの開業を控えていましたから、建物の掃除からメディア対応、地域の方との関係づくり、ワークショップや説明会など、代表を前に立たせるための準備は、なんでもやりました」と広報担当の平山さんは振り返る。
国の補助金には制約も多く、事業の立ち上げの大変さを痛感したという。現在は、パートタイマーを含め30人ほどが働く。

東京から夫妻で移住し、子育て中でもある広報担当の平山朝美さん。建物の関係者から、当時の意匠や時代背景のことをリサーチしたといい、美濃について熱量を持って伝えてくれた(写真撮影/本美安浩)
寂れつつあった美濃の町の空き家をホテルへ改修することへの、街の人達の反応は、当初は半信半疑なものだったという。
「まず『この街に、本当に人が来るの?』という声が多かったですね。また、こういった地方では珍しくハイクラスなホテルとして企画したため、1室が5万円ほど(1泊朝食付き1人1万5400円~)になります。中には、定員4名で1棟が6万円という蔵の客室も。その値段設定にも驚かれ、『良い建物だとは知っているが、場所が場所だし……』などと言われたこともあります」
美濃市周辺にこの層に向けたホテルはなく、潜在的なニーズがあった。みのまちや株式会社の読みは当たり、「和紙の新しい出口を提案する」というコンセプトの第1期開発である「NIPPONIA美濃商家町」YAMAJOU棟(2019年)は人気の宿になった。

「満月」の部屋で出迎える美濃和紙のアート作品「長良川」は、3人の職人による合作(写真撮影/本美安浩)
茶室のある数寄屋造の主屋は、総柾目の天井や涼を取るための無双窓が見られるなど、贅を尽くした造り。「できる限り当時のまま」という和風建築や中庭が目を楽しませる。
客間には美濃和紙を多用。障子や壁紙でさまざまな種類の和紙を見ることができる。作家や職人が手がけた和紙のアートも飾られている。

茶室に飾られていた和紙のインスタレーション。物件のもとの持ち主であった松久才治郎には茶の心得があったという(写真撮影/本美安浩)

1棟貸しの客室「金剛」は2階がある大きな蔵。財産管理のための銀行員が控えていたという前室も付いている(写真撮影/本美安浩)

吹き抜けがある「金剛」はファミリーにも人気。壁面の木棚は金庫として使われていた(写真撮影/本美安浩)
「分散型ホテル」として離れた場所に2棟目を開業2020年の開発である2棟目は、「YAMAJOU棟」から徒歩5分ほどの場所にある「YAMASITI棟」だ。こちらは、紙問屋で大地主となった築100年の須田家邸を改修。ペットと宿泊できるドッグラン付きの蔵の客室もあり、こちらは土間を活かした建物で、質実剛健な印象。
1棟目から少し離れた場所にある建物を選んだのは、「“分散型ホテル”として、美濃のまちを歩いて欲しいという思いがあったから」だという。

土間を活かした「YAMASITI棟」のエントランス。紙問屋のころは従業員が活発に行き来していたのかと思いを馳せる。ラウンジスペースのみの利用も可能で、今夏はかき氷店「SEIRYU GORI」が開業する(写真撮影/本美安浩)

美濃市が拠点のかき氷専門店「SEIRYU GORI」。天然果実を使った非加熱のシロップが名物(写真提供/みのまちや株式会社)

ペットと泊まることができる「YAMASITI棟」の客室「小町」は、ハンモックが吊るされ遊び心が満載(写真撮影/本美安浩)

蔵を改修した「小町」には、専用ドッグランやペットの足洗い場もある。宿泊は中型犬1匹もしくは小型犬2匹までOK(写真撮影/本美安浩)
当初は心配していた周囲の人たちも、「ホテルのおかげで若い世代まで訪れるようになって、街がにぎやかになった」と言ってくれるように。
開業からしばらくは「岐阜県の旅行中、雰囲気のいい日本のホテルに泊まりたい」と考える海外からの宿泊客も訪れていたそうだ。
そこへ襲ったコロナ禍。「やはり大変でしたが、計10室の規模が幸いして、なんとか乗り切ることができました」と平山さん。今年のゴールデンウィークは満室御礼に持ち直した。
今後は新たに宿泊客に向け、美濃和紙を使ったアートパネルづくりや提灯づくり、和紙の糸を使って織り機で半幅帯をつくる体験をスタートする。
宿泊施設併設の“まちごとシェアオフィス”で「働く&暮らす」をサポートそして2021年に行った第3期開発は古民家シェアオフィス「WASITA MINO」。コワーキングスペースとプライベートオフィスのほか、宿泊施設「WASITA HOUSE」を併設し、美濃のまちで働くことと暮らすことをサポートする施設だ。

長屋を改修した「まちごとシェアオフィス WASITA MINO」。芝生の中庭があり、仕事の合間の気分転換もしやすそう(写真撮影/本美安浩)
特徴的なのは“まちごとシェアオフィス”の仕組み。この仕組みの会員は、利用会員特典として社員証代わりに「まちごとワークタンブラー」が付いてくる。これを美濃のまちの提携店舗で提示すると、コーヒー1杯の無料提供と、店舗内での仕事がOKになる。まちを周遊して楽しみながら、気分を変えて仕事ができるというわけだ。

「まちごとワークタンブラー」を紹介してくれた、コミュニティマネージャーの橋元麻美さん。関東から夫妻で美濃市へ移住し、子育て中とのこと(写真撮影/本美安浩)
「WASITA MINO」のコミュニティマネージャーである橋元麻美さんは話す。「シェアオフィスは、美濃に帰省した人の仕事場としても活用されています。“まちごとワークタンブラー”を利用する際には、モバイルWi-Fiもお貸しします。宿泊施設があるので、名古屋などからの企業の研修にも使っていただいています」

1階のおしゃれなコワーキングスペース。他にソロワークブースもある(写真撮影/本美安浩)
シェアオフィスでは、地元の会員同士が再会するという出会いがあったそう。「話したい会員さん同士はおつなぎします。今後はビジネスマッチングも生まれるかもしれません」と橋元さん。
まずは、3300円で2日間(個人・要予約)のお試し利用も可能。美濃のまちが気に入ったら会員になればいい。個人の会員料金は4dayプラン月9900円(曜日指定)、Fullプラン月1万6500円(全営業日)。電源やWi-Fi、給湯室やミニキッチン、プリンター複合機も利用できる。

宿泊施設「WASITA HOUSE」の個室は3室。共用のダイニングキッチンがあり、グループでの合宿にもオススメ。美濃の街を撮影する写真作家が長期滞在したこともあったそう(写真撮影/本美安浩)
美濃のまちの“関係人口”を増やす多彩な取り組みそもそも、空き家改修のプランをホテルにしたのは、「宿を足がかりに、人々に美濃のまちを周遊してもらいたい」という目的があったという。
「分散型ホテル」や「まちごとシェアオフィス」のほかにも、さまざまな仕掛けが、訪れた人にアクションを起こさせる。
「NIPPONIA美濃商家町」の宿泊客に渡す「美濃馴染み符」では、提携各店で「食事したらデザートが無料」などのサービスが受けられる。「現在、提携して私たちを応援してくれているお店は12軒くらい。今後増やしていきたいです」と平山さん。
移住促進やテナント誘致を目的に行っているイベントも2つある。
1つ目は「ミノマチヤマーケット」。美濃市内の空き家を活用して、お試し出店の場を提供する、年に1度の大規模なマルシェイベントだ。

美濃のまち全体を使った、大規模な「ミノマチヤマーケット」(写真提供/みのまちや株式会社)
2つ目は「ミノノイチ」。「ミノマチヤマーケット」の縮小版という位置付けで、メイン会場である「NIPPONIA美濃商家町」に、プラス1軒の空き家や関連施設を会場とした数軒で行う。こちらは偶数月の第2日曜の開催で、今年は6月と8月、10月の開催が決まっている。
どちらも、空き家に出店してみたい人や、美濃市に移住を考えている人に、お試し利用をしてもらう機会だ。

「NIPPONIA美濃商家町」のレセプションの前にキッチンカーが出店しにぎわう「ミノノイチ」(写真提供/みのまちや株式会社)
「私たちは、美濃市の“関係人口”を増やしたいと考えているんです」と平山さん。いきなり移住や転職というのはハードルが高いので、まずは何かしら、“美濃に関わっている人”を増やし、美濃のまちを好きになってもらいたい……という柔らかな考え方だ。
「今後は、宿泊された方をアテンドできるハイエンドなレストランを、今ある空き家に誘致できたら。また、銭湯の物件を復活させる構想もあり、動いているところです」と楽しみな計画は続く。
「空き家がある分だけ、まちに人が集まります。空き家をマイナスイメージじゃなく魅力と捉えて、楽しく利活用していきたいですね」とのこと。
まさに、空き家の数だけ夢があった。

松久才治郎の兄、松久永助によって1876年に創業された和紙問屋「松久永助紙店」が現在も佇む(写真撮影/本美安浩)
店舗が増え、平日でも若者が歩くようになった美濃のまち。数年ぶりに訪れた筆者は変化を実感した。
空き家の利活用の中でも、今回は行政も関わるスケールの大きな事例。それが、もともとは、辻代表をはじめ住民の若いパワーが結集して立ち上がり、その後も仲間を増やしつつ順調に運営しているのはすごいことだ。
貴重な文化財でもある日本家屋や蔵に宿泊したら、心が豊かになりそう。そして、こういった歴史の積み重ねを感じられる空間が失われていくのは悲しい。「空き家対策はスピード感が大事」という平山さんの言葉が胸に響いた。
●取材協力
・みのまちや株式会社
・NIPPONIA美濃商家町
・WASITA MINO
所在地:武蔵野市境南町
所在地:渋谷区千駄ヶ谷
所在地:三鷹市下連雀
所在地:渋谷区神宮前東京駅は、日本を代表するターミナル駅。仕事や遊びにかかわらず、すべての移動の起点となる東京駅へのアクセスは、部屋探しの際に気になる人は多いだろう。東京駅へ電車で30分以内に到着するシングル向け物件(10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DK)を対象にした最新の家賃相場ランキングから、ねらい目の駅を探してみたい。
東京駅まで30分以内の家賃相場が安い駅TOP16駅順位/駅名/家賃相場/(沿線名/駅の所在地/東京駅までの所要時間(乗り換え時間・駅から駅への徒歩移動時間を含む)/乗り換え回数)
1位 蕨6.00万円(JR京浜東北線/埼玉県蕨市/29分/1回)
2位 一之江 6.18万円(都営新宿線/東京都江戸川区/27分/1回)
3位 南船橋 6.20万円(JR京葉線など/千葉県船橋市/30分/0回)
4位 津田沼 6.35万円(JR総武線/千葉県習志野市/30分/0回)
5位 竹ノ塚 6.45万円(東武伊勢崎線/東京都足立区/30分/2回)
6位 堀切菖蒲園6.50万円(京成本線/東京都葛飾区/28分/1回)
6位 小菅 6.50万円(東武伊勢崎線/東京都足立区/25分/1回)
6位 新子安 6.50万円(JR京浜東北線/横浜市神奈川区/30分/1回)
6位 瑞江 6.50万円(都営新宿線/東京都江戸川区/30分/1回)
6位 船堀 6.50万円(都営新宿線/東京都江戸川区/25分/1回)
11位 小岩 6.55万円(JR総武線/東京都江戸川区/19分/1回)
12位 下総中山 6.60万円(JR総武線/千葉県船橋市/26分/1回)
13位 五反野 6.70万円(東武伊勢崎線/東京都足立区/27分/1回)
13位 国道 6.70万円(JR鶴見線/横浜市鶴見区/30分/2回)
13位 舞浜 6.70万円(JR京葉線/千葉県浦安市/16分/0回)
16位 小竹向原 6.80万円(東京メトロ副都心線/東京都練馬区/27分/1回)
16位 新浦安 6.80万円(JR京葉線/千葉県浦安市/20分/0回)
16位 松戸 6.80万円(JR常磐線・新京成線/千葉県松戸市/27分/0回)
16位 梅島 6.80万円(東武伊勢崎線/東京都足立区/29分/1回)
16位 青井 6.80万円(つくばエクスプレス/東京都足立区/25分/1回)
トップ3には、埼玉県、都内、千葉県がバランスよく分散した。1位は、埼玉県蕨市にある蕨駅だ。

蕨駅前(写真/PIXTA)
蕨市は面積が5.11平方kmと、全国で一番小さな市として知られている。端から端までは約4kmのコンパクトさで、蕨駅は市の玄関口であるとともに唯一の駅でもある。東京駅までの所要時間短縮のためには乗り換えが効果的ではあるが、路線のJR京浜東北線は首都の大動脈のひとつであり、乗り換えなしでの利用も可能だ。
近年は、都市機能の活性化をかかげた「コンパクトシティー」構想が推奨されていて、蕨市は小さな市域の中に40以上の医療機関や保育園児童館、商業施設などがぎゅっと凝縮している。駅周辺を核に、駅前広場や商業施設、公共複合施設の整備などの再開発も進めている。そうした機能の要となる市役所は耐震化などのため建て替え中で、現在は駅から少し離れた場所にあるが、今後はいざというときの災害拠点にもなる機能をもたせるという。
また蕨市といえば、外国人の住民が増えており、なかでも在住クルド人が多いことでも知られる。彼らによるお祭りや、地元住民も一緒に参加できる料理教室が開催されるなど、地に足の着いた国際交流も盛んだ。海外の珍しい食材を扱う商店を見かけることも少なくなく、ダイバーシティを体現している街ともいえる。
そういた“時代の先端”をいく一方で、市内にはいくつもの人情味あふれる商店街も残る。蕨市は江戸時代、中山道の「蕨宿」として栄え、また江戸から昭和にかけては織物の生産地としても名をはせていた。市内には今でも、かつての風情を感じさせる歴史ある建物が点在。商店街の中を散策していて、そんな歴史の息吹を思わせる店舗にふらっと出合うこともある。
商業施設が充実の南船橋駅は、大規模施設の開業控える3位は千葉県船橋市の南船橋駅。京葉線の快速列車の停車駅で、スウェーデン発の人気家具店IKEAの日本1号店「IKEA Tokyo-Bay」や大型商業施設の「ららぽーとTOKYO-BAY」のほか、深夜まで営業しているスーパーなどもあり、必要なものはなんでも近場でそろいそうな便利さが魅力だ。

ららぽーと(写真/PIXTA)
2020年末には通年型のアイススケートリンク「三井不動産アイスパーク船橋」がオープン。国際スケート連盟基準を満たしたリンクで、競技大会なども開かれている。また2024年には、船橋市を拠点にする男子プロバスケットボールBリーグの「千葉ジェッツふなばし」のホームアリーナ「LaLa arena TOKYO-BAY(仮称)」が完成予定。1万人規模が収容でき、スポーツだけでなくコンサートや企業イベントなどにも対応する予定とのこと。スポーツファンだけでなく、足を運ぶ機会が増えそうだ。
同率6位の新子安駅、船堀駅、瑞江駅、ライフスタイル別でどこを選ぶ?同率6位には5駅がランクインしている。そのうちの一つの新子安駅は神奈川県の駅でランキング最上位、JR京浜東北線で、蕨駅同様に、東京駅まで乗り換えなしでも利用できる。

新子安駅(写真/PIXTA)
横浜駅、川崎駅へはともに2駅で、10分以内で行くことができる。また京急本線沿線の京急新子安駅がすぐそばにあるため、羽田空港などへのアクセスもいいほか、少し行けばJR横浜線の大口駅があり、新幹線が停車する新横浜駅へも直通で利用できる。遠隔地への出張が多いビジネスパーソンには心強い穴場スポットかもしれない。
駅北側の丘陵地にかけて、閑静な雰囲気の住宅街が広がっている。駅前にはスーパーやファミリーレストラン、郵便局などが入った商業施設「オルトヨコハマ」や、深夜1時半まで営業しているスーパーがあり、日常の買い物に不自由することはなさそうだ。少し足を延ばせば、映画やドラマの撮影地などにもなっている、横浜の名物のひとつの六角橋商店街もある。

六角橋商店街(写真/PIXTA)
駅の南側、港湾部は京浜工業地帯の工場や倉庫が集まっており、やや無骨な印象もあったが、近年は再開発で高層マンションも建てられている。周辺住民も利用できる広場や、防災対策にも活用できる空き地が整備されたマンションなどもある。
駅から近いキリンビールの横浜工場や日産自動車の横浜工場は、大人にも人気の高い工場見学も受け付けている。なかでもキリンビールは敷地内に芝生広場やレストランなども併設し、限定グッズも販売しており、散策だけでも楽しめる。工業地帯の偏ったイメージだけでは見逃すにはもったいないかもしれない。
同じく6位の船堀駅と瑞江駅は、都営新宿線の沿線駅。間に2位の一之江駅をはさんだ隣駅になる。都営新宿線は日中、新宿―本八幡間で急行運転しているが、船堀駅は急行が停車。そのため新宿駅までは約20分で行くことができる。
船堀駅は駅すぐに24時間営業のスーパーがあり、低価格が売り物の大型スーパーなども目に付く。チェーン系の飲食店も多いので、自炊したくない日などにはありがたいところだ。ファミリー層も多いため駅前はにぎやかだが、少し行けば一戸建て住宅の目立つ住宅街が広がる。
駅そばには、所在地である江戸川区が水資源に恵まれていることにちなみ「区民の乗合船」をコンセプトに建てられた「タワーホール船堀(江戸川区総合区民ホール)」がある。著名アーティストのコンサートも開催されるほか、こだわりのアート作品からハリウッド大作映画まで上映される映画館「船堀シネパル」などが入っており、知的好奇心を満たしてくれそう。一般公開されている展望台からは、江戸川区花火大会も望むことができる(2022年は中止された)。

江戸川区花火大会(写真/PIXTA)
瑞江駅は各駅停車のみの駅ながら、駅付近の施設は船堀駅よりも充実している。すぐ近くにはディスカウントストアの「ドン・キホーテ」や業務スーパー、深夜まで営業しているスーパーなどと豊富で、家計の賢いやりくりのためには選択肢の上位にあがりそうだ。書店も駅すぐそばにあり、夜10時まで営業している。
駅周辺は再開発されているため、雰囲気自体はすっきりしておりチェーン系飲食店が目立つ。少し行くと、おしゃれな飲食店も点在。江戸川区は50年以上にわたって緑化運動をすすめており、親水公園や親水緑道の整備をしている。瑞江駅周辺も親水緑道を見かけることが多く、公園もあちこちにあり、近場で自然を感じることができる。
また、江戸川区役所へは区内のあちこちの駅からバスが主な経路になるが、瑞江駅は分所の東部事務所の最寄駅。公的手続きの手間を少し省けるのはありがたい。ファミリー層の人気も高いエリアだ。
16位も同率で5駅がランクインしている。このうちの松戸駅はJR常磐線の沿線だが、同線は東京メトロ千代田線と乗り入れているため、東京駅だけでなく大手町や赤坂などのビジネス街や、表参道や原宿などの繁華街へも乗り換えなしで行くことができる。また新京成線も利用できる。

松戸駅周辺(写真/PIXTA)
駅に直結した商業施設や大きなスーパーなどが多く、非常に栄えているが、駅周辺は再開発が進行中で、2027年までには新しい駅ビルもできる予定。生活する上ではとても便利なことは間違いないだろう。また、松戸はラーメン激戦区としても知られており、頑固店や知る人ぞ知る名店まで充実している。“おひとりさま”の生活も楽しめそうだ。
大都会・東京の真ん中へのアクセスと考えると、都心を連想しがちだが、東京駅は乗り込む路線が多いだけに、部屋探しの選択肢も多種多様。ライフスタイルにあわせた部屋も、きっと見つかることだろう。
●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている東京駅まで電車で30分以内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ抽出期間】2022/2~2022/4
【家賃の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の管理費を含む月額賃料から中央値を算出(3万円~18万円で設定)
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、朝7時30分~9時の検索結果から算出(2022年5月30日時点)。所要時間は該当時間帯で一番早いものを表示(乗換時間を含む)
※記載の分数は、駅内および、駅間の徒歩移動分数を含む
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が2回までの駅を掲載
所在地:座間市相武台
所在地:目黒区下目黒
所在地:川崎市中原区丸子通
所在地:横浜市神奈川区子安通(一社)住宅リフォーム推進協議会では、住宅のリフォームをする際に、リフォームの種類や進め方、リフォームの支援制度などについて、消費者にわかりやすく解説したガイドブックを発行している。このたび(一社)住宅リフォーム推進協議会から発行された令和4年度版「リフォームガイドブック」を参考にして、リフォームの支援制度を中心に紹介していこう。
【今週の住活トピック】
令和4年版「住宅リフォームガイドブック」を発行/(一社)住宅リフォーム推進協議会
実は、リフォームの減税制度については、2022年度から大きな制度変更があった。以前の減税制度については知っているという人も、減税制度について全く知らないという人も、まずは基本原則を知っておこう。
まず、住宅を買ったり建てたりした場合で住宅ローン(返済期間10年以上)を利用した場合に減税となる「住宅ローン減税」(住宅借入金等特別控除)については、リフォームをした場合でも適用対象になる。リフォームの工事費用が100万円を超える、対象となるリフォーム工事を行うなどの条件はあるが、耐震や省エネなどの特定のリフォームに限定されない点が大きな特徴だ。
次に、大規模な地震や高齢化社会への備えなどを目的として、住宅の性能を向上させるリフォーム工事を対象にした減税制度がある。ここでは「リフォーム促進税制」と呼んでいるが、具体的には、「耐震」「バリアフリー」「省エネ」「同居対応」「長期優良住宅化(耐震や省エネ、耐久性向上などを複合的に行うリフォーム)」の5つのリフォームが対象になる。
実はここまでの基本的な考え方は、2021年度までと大きく変わっていない。変わったのは、減税制度の種類が整理されたことだ。2021年度までは「投資型」と「ローン型」と呼ばれる複数の制度があったが、2022年度からは下表の2つの制度になっている。

(一社)住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームガイドブック(令和4年度版)」p.36より転載
性能を向上させるリフォームを支援する「リフォーム促進税制」先ほど挙げた5つの性能を向上させるリフォーム「耐震」「バリアフリー」「省エネ」「同居対応」「長期優良住宅化」については、それぞれどういった工事が減税制度の対象になるかが、細かく定められている。所定の要件を満たす場合には、リフォーム工事をしたその年分だけ、工事費用の一定額が控除される。
具体的には、次の手順で控除額が決まる。
A:対象となる工事費用(注)の限度額 × 控除率10%
(注)対象となる工事費用は、国がリフォーム工事内容ごとに定めた「標準的な工事費用相当額」から国や地方公共団体からの補助金等を差し引いた額であり、実際にかかった費用とは異なる。
なお、対象となる工事費用の限度額は、「耐震」250万円、「バリアフリー」200万円、「省エネ」250万円(太陽光発電設備設置の場合は350万円)、「同居対応」250万円、「長期優良住宅化」250~600万円(工事内容によって異なる)となる。
加えて、定められた工事の費用が限度額を超えたり、これらの工事以外の対象となるリフォーム工事を同時に行った場合は、その分についても5%が控除される。
B:〔対象となる工事のAの限度額超過分 + (その他のリフォーム工事費用-補助金等)(注)〕 × 控除率5%
(注)Bの工事費用は、Aの対象となる工事費用と同額までで、最大限度額はAの工事費用と合計して1000万円まで。
控除額は、AとBの合計額が控除されるという仕組みになる。
対象が広い「住宅ローン減税」、リフォーム促進税制と併用できない場合もリフォームで「住宅ローン減税」の適用を受ける場合は、控除期間10年間、控除率0.7%、控除対象のローン限度額は2000万円となり、所得税で控除しきれない場合は一部住民税からも控除される。
なお、国や地方公共団体から補助金や給付金などの交付を受けている場合は、対象となる工事費用から補助金等が差し引かれる。
上の表で○がついている「耐震」「バリアフリー」「省エネ」の条件を満たす工事については、住宅ローン減税の対象にもなる。△がついている「同居対応」「長期優良住宅化」は定められたリフォーム工事の条件を満たせば、それぞれ住宅ローン減税の対象になる。
では、どの減税制度を使えばいいのだろう?
住宅ローン減税は、耐震を除いてリフォーム促進税制とは併用できない。このように、減税制度によって併用できる場合、できない場合があるのが注意点だ。併用の有無も考えて、どの減税制度が最も効果があるかを検討するのがよいだろう。
なお、ガイドブックによると、リフォーム促進税制の最大控除額は1年で105万円(複数の対象となる工事を行った場合)、住宅ローン減税の最大控除額は10年で140万円だという。
固定資産税の減額が適用されるリフォームもある「耐震」「バリアフリー」「省エネ」「長期優良住宅化」のリフォームについては、家屋にかかる固定資産税の減額の対象にもなる。「工事完了後3カ月以内」に市区町村等に申告手続きを行う必要があるが、工事完了後の翌年度分で次のような減額を受けられる。

(一社)住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームガイドブック(令和4年度版)」p.37より転載
なお、所得税の控除と固定資産税の減額に適用される要件は同じではないので、それぞれに細かく確認する必要がある。ガイドブックには、それぞれの主な適用要件が記載されているので、詳しく知りたい場合はガイドブックを参照されたい。
リフォームにはさまざまな補助制度もある!このガイドブックが優れているのは、リフォームの基本的な知識だけでなく、リフォームの減税制度や補助制度などのお得な情報も得られることだ。
補助制度は、国が行うものと地方公共団体が独自に行うものなど、さまざまにある。リフォーム工事を依頼した事業者が全てを把握しているわけではないので、使える補助金があるかどうか、自分でも調べるのがよいだろう。
さて、ガイドブックでは国土交通省「省エネ」リフォームの補助制度について、どういったものがあるかチャートを掲載している。こちらを紹介しよう。

(一社)住宅リフォーム推進協議会「住宅リフォームガイドブック(令和4年度版)」p.46より転載
国土交通省の省エネリフォームの補助事業だけでも、これだけあるわけだ。それぞれの補助事業については、その概要と事業の詳細情報が掲載されたHPのURLがガイドブックに掲載されているので、そちらで確認されたい。
リフォームに関する減税や補助制度などは、それぞれに、リフォーム工事の内容や費用、住宅などに細かい要件がある。使えると思っていたのに、使えなかったということもあるので、事前に十分に調べたり、リフォーム工事の施工会社に相談したりすることが重要だ。また、所得税の減税では納めた所得税額が限度になるので、計算上の額が全額控除されるとも限らない。面倒ではあるが、情報を正確に集めた者勝ちとも言えるので、こうしたガイドブックを利用するとよいだろう。
●関連サイト
(一社)住宅リフォーム推進協議会:「住宅リフォームガイドブック(令和4年度版)」
所在地:目黒区目黒
所在地:新宿区四谷
所在地:中野区沼袋
所在地:埼玉県蕨市中央
所在地:中央区日本橋小網町
所在地:中央区日本橋馬喰町2021年前後からクライマーが一気に増えて話題となっている場所がある。埼玉県秩父郡小鹿野町にある二子山だ。そのきっかけは「世界の平山ユージ」と呼ばれるプロクライマーが、クライミングによる町おこしを提案したことだった。
10代から海外で修行、日本クライミング界をリードしてきた平山ユージさん平山ユージさんは1969年生まれ。15歳でクライミングを始めてから瞬く間に頭角を現し、高校生にして国内トップクライマーの地位についた。17歳になるとアメリカで半年間のトレーニングを経験し、19歳でクライミングの本場に身を置くべく単身渡仏、マルセイユを拠点にヨーロッパやアメリカの難関ルートを制覇。
人口壁で行われる競技会に参加するようになると、1998年に日本人として初のワールドカップ総合優勝を果たし、2000年には2度目の総合優勝。53歳となった今も難関ルートを制し続け、国内外のクライマーから尊敬を集める現役のプロクライマーだ。

平山ユージさん。現役であり続けるとともに、後輩の育成とクライミングの普及にも余念がない。2010年に株式会社Base Campを立ち上げ埼玉県と東京都でクライミングジム3店舗を経営している。世界選手権など重要大会でのテレビ解説もわかりやすく大好評(写真撮影/前田雅章)

入間市に本店を構えるClimb Park Base Camp。ボルダリング壁とロープを使うルートクライミング壁を備え、国内でも最大級の規模を誇る。初心者からオリンピック選手まで多くのクライマーが通い、周辺の店舗にもにぎわいを与えている (写真撮影/前田雅章)
「二子山の岩場は、世界に比するポテンシャルがある」「小鹿野町に二子山を中心としたクライミングによる町おこしを提案したのが2008年。当時は形にならずすっかり忘れていたのですが、2018年に町会議員さんから突然電話をいただきました」と平山さん。
平山さんと二子山との出合いは1989年。渡仏中にクライミング仲間から「いい岩場がある」と教えてもらい、一時帰国して登ったときだった。クライミングできるルートは限られていたが、東岳と西岳からなる二子山の雄大さに、整備すれば海外の有名な岩場にも匹敵する場所となる可能性を感じたのだという。
しかし、クライミングルートの整備や開拓は、勝手にできるものではない。
「二子山の所有者の理解や、町の協力がないと成り立ちません。最初はクライミングエリアとして二子山のポテンシャルに引かれたのが大きかったですが、クライマーが訪れたり移住したりする経済効果や、クライミングというスポーツによる住民の健康やコミュニティ促進は、町の発展にも貢献できると確信して企画を提出しました。埼玉の郊外にある秩父、小鹿野町はどうしても少子高齢化が進んでいきますが、都心部からほど近い広大な自然は、町の貴重な資源。クライミングならその資源を十分活用できますから」(平山さん)

四季の道小鹿野展望台からの小鹿野町。晴れた日には百名山・両神山を望む。小鹿野町は日本の滝百選・丸神の滝、平成の名水百選・毘沙門水も有する自然豊かな町 (写真撮影/前田雅章)
町への提案から10年、「クライミングで町おこし」がスタート提案から10年ほどたった2018年、平山さんは小鹿野町観光大使を委嘱された。
「町会議員に当選したばかりの高橋耕也さんが、過去の企画書を見つけて電話をくれました。少子高齢化問題が明らかになってきたこと、東京オリンピック競技種目にスポーツクライミングが選ばれたこと、町の再生を志す若い世代の議員が当選したこと、いろいろな事柄がうまくはまったのがこのときだったのでしょうね」(平山さん)
そして、平山さんたちクライマーが町に通い続けていたということ。
「企画を提出したことをすっかり忘れていましたが、頻繁にクライミングには来ていました。顔なじみになった、『ようかみ食堂』の店主が高橋議員とつないでくれました」(平山さん)
平山さんは、早速二子山でクライミングエリアの整備を進めるため、クライミング仲間と地元住民による小鹿野町クライミング委員会を2019年に発足。2020年には一般社団法人小鹿野クライミング協会とし、2022年現在は会長職を務めている。

一般社団法人小鹿野クライミング協会(撮影時・小鹿野クライミング委員会)メンバーを中心にしたボランティアが、草木をはらい、古くさびたボルトの打ち替えなど根気がいる地道な作業を重ねて、二子山に魅力的なクライミングルートを再生・開拓している(2020年5月)(写真提供/平山ユージInstagram @yuji_hirayama_stonerider)
また、同時期に町営クライミングジムのオープンにも、平山さんは深く携わることになる。
小鹿野町役場の宮本さんにお話を伺うと、「閉館が決定した県営施設の埼玉県山西省友好記念館を残してほしいとの地元の声を受け、町では再利用方法を検討していました。『クライミングで町おこし』を実行するタイミングと重なり、平山さんの全面協力のもと、初心者にも上級者にも楽しんでもらえる本格的クライミング施設が誕生しました」とのこと。
「両神山や二子山といった町自慢の観光資源は、天候に左右されやすい弱点があります。充実した室内施設があれば、国内外のクライマーが長期滞在をプランニングしてくれるきっかけになると考えています」(宮本さん)

唐代の寺院をモデルにした豪奢な記念館をリノベーションした「クライミングパーク神怡舘(しんいかん)」。取り壊すのはもったいない、と埼玉県から町が譲り受けて2020年7月オープン(写真撮影/前田雅章)

傾斜80度~130度のボルダリング壁8面を備える神怡舘。ロープクライミング用のスペースも用意して、二子山など外岩でのクライミングに向けた安全技術の講習も行う(写真撮影/前田雅章)
神怡舘の運営を任命された宮本さんの所属は「小鹿野町おもてなし課 山岳クライミング推進室」。「クライミングで町おこしをする」町の本気度が垣間見える部署名だ。クライミング経験なしだった宮本さんにとっては若干無茶振り人事だったものの、2年でインストラクターも務められるようになったそう。
「クライミングは小中学校の体育の授業にも採用されていて、ハマって通う生徒も多いですよ。職場のクラブ活動としての利用も盛んです」と宮本さん。「クライミングは老若男女が楽しめる素晴らしいスポーツ。ルートごとにレベルが設定されているので目標を決めやすく、お年寄りでも無理なく続けられます。小学生と大人がここで友達になって、競い合い励まし合う姿も日常の光景。神怡舘は住民の健康増進とコミュニティづくりに、とても大切な場所になっています」(宮本さん)

「国内でも有数の規模で、ルートセットも一流です」(平山さん)。学校の授業をきっかけに、将来の活躍を期待されるスーパーキッズも出てきている。取材当日もスーパーキッズが、「ここで友達になった」という20代の社会人らとグループでルートの攻略を研究していた(写真撮影/前田雅章)
二子山への入山者が1.7倍に。コロナ禍で増加の事故にもクライマーの知見を活かす2019年に約4000名だった二子山の入山者数は、2021年に約6800名と急増した。コロナ禍によるアウトドアブームの影響もあるが「2018年までも4000~5000人程度でした。入山者全員がクライマーとは限りませんが、クライミング専門誌に二子山新ルートが紹介された途端、一気にクライマーが増えた実感があります」(宮本さん)
2022年のゴールデンウイーク前後は「びっくりするほど多くのクライマーが二子山に来てくれました」と平山さん。「クライマーの飲食店や温泉の利用も増えて、喜んでいます」(宮本さん)
一方で、一般登山者による事故の増加も顕著になった。
「コロナ禍でアウトドアを始める人が増え、さらに接触を避けての単独行動も増えたことが大きな要因です。上級者と安全確保しながら登るクライミングよりも、ハイキングや登山での事故が圧倒的に多いのです」(宮本さん)
その対策として、町の消防署と小鹿野クライミング協会による情報交換会が開かれている。
「山をよく知るクライマーと救助のプロ、それぞれの立場から危険な場所やヘリコプター救助時の誘導方法などについて、実りある情報交換ができました。両神山や二子山などの大自然を、多くの人に安全に楽しんでもらいたいですね」(宮本さん)
平山さんたちクライマーの町おこし活動は、クライミングの枠をはみ出し始めている。
「今年の尾ノ内氷柱づくりには平山さんたちに協力してもらいました」(宮本さん)
尾ノ内氷柱は、尾ノ内渓谷の沢から水をパイプで引き上げてつくられる人工の氷柱群。高さ60m、周囲250mに及ぶ氷柱群がライトアップされた幻想的な風景は、冬の一大観光スポットだ。
「高所での作業は大変危険ですが、クライマーにはお手のものです。地元に恩返しできるいい機会でしたし、作業を任せてもらえるのもクライミングが町になじんできたからかと思うと、うれしかったですね」(平山さん)
「企画の打ち合わせやイベントの出演や、クライミング以外でもしょっちゅう町に来ています」(平山さん)

つり橋とライトアップの景観が美しい尾ノ内氷柱。鑑賞時期は例年1月~2月(写真提供/小鹿野町)
「小鹿野町の将来像は、ヨーロッパの有名クライミングタウン」(平山さん)10代から世界の名だたる岩場を登ってきた平山さん。「小鹿野町を世界中からクライマーが集まる場所にしていきたい」と語る小鹿野町の将来像は、ヨーロッパの街。例えば「イタリアにあるアルコ。100を超える岩場に数千のルートがあり、クライマーなら一度は訪れたい憧れの街です。滞在中はクライミングだけでなく、中世の街並みでの散歩や、おいしい食事やお酒も楽しめる。住民のクライミングへの関心も高いので、すぐに仲良くなれます」(平山さん)
「二子山の開発から数年たって、小鹿野町にもクライミングが浸透してきたように感じています。日本の小鹿野町が、欧米に並ぶクライミングスポットになる、未来へのルートが見えてきました」(平山さん)

「イタリアのアルコのレストランの壁にはトップクライマーの写真が飾られていて、僕も“ユージ!”と地元の人から声をかけられていました」(平山さん)。今は小鹿野町の小学生クライマーからも「ユージさん」と親しみを込めて呼ばれている(写真撮影/前田雅章)
アウトドア以外でも、小鹿野町には古き良き日本の姿がある。有名なのは江戸時代から続く庶民の歌舞伎。農家直売所には新鮮な野菜が並び、商店街では地酒・地ワインも手に入る。疲れた身体を癒やす温泉と、おもてなしが温かい飲食店も点在している。

江戸時代から庶民による歌舞伎が広まった小鹿野町。小鹿野歌舞伎として町内に6カ所ある舞台での上演のほか、各地で訪問公演も行っている(写真提供/小鹿野町)

昭和の面影を残す小鹿野町の商店街(写真撮影/前田雅章)
二子山は世界にも誇れるクライミングスポットとして成熟中だが、「町に宿泊施設がもっと必要」と平山さんの先への課題は明確だ。欧米のようにキャンプ場や自炊できる民泊、コンドミニアムが増えれば、長期滞在も気軽になってくる。
ほんの数年で進化を見せている小鹿野町のクライミングシーン。さらに注目が集まることで宿泊の整備も進み、滞在者や移住者が増え、小鹿野町出身のクライマーが世界で活躍していく、そんな未来もすぐそこなのかもしれない。
●取材協力
・小鹿野町
・Climb Park Base Camp
※訂正:22年7月1日、読者のご指摘により一部修正をいたしました。
小鹿町→小鹿野町
2021年前後からクライマーが一気に増えて話題となっている場所がある。埼玉県秩父郡小鹿野町にある二子山だ。そのきっかけは「世界の平山ユージ」と呼ばれるプロクライマーが、クライミングによる町おこしを提案したことだった。
10代から海外で修行、日本クライミング界をリードしてきた平山ユージさん平山ユージさんは1969年生まれ。15歳でクライミングを始めてから瞬く間に頭角を現し、高校生にして国内トップクライマーの地位についた。17歳になるとアメリカで半年間のトレーニングを経験し、19歳でクライミングの本場に身を置くべく単身渡仏、マルセイユを拠点にヨーロッパやアメリカの難関ルートを制覇。
人口壁で行われる競技会に参加するようになると、1998年に日本人として初のワールドカップ総合優勝を果たし、2000年には2度目の総合優勝。53歳となった今も難関ルートを制し続け、国内外のクライマーから尊敬を集める現役のプロクライマーだ。

平山ユージさん。現役であり続けるとともに、後輩の育成とクライミングの普及にも余念がない。2010年に株式会社Base Campを立ち上げ埼玉県と東京都でクライミングジム3店舗を経営している。世界選手権など重要大会でのテレビ解説もわかりやすく大好評(写真撮影/前田雅章)

入間市に本店を構えるClimb Park Base Camp。ボルダリング壁とロープを使うルートクライミング壁を備え、国内でも最大級の規模を誇る。初心者からオリンピック選手まで多くのクライマーが通い、周辺の店舗にもにぎわいを与えている (写真撮影/前田雅章)
「二子山の岩場は、世界に比するポテンシャルがある」「小鹿野町に二子山を中心としたクライミングによる町おこしを提案したのが2008年。当時は形にならずすっかり忘れていたのですが、2018年に町会議員さんから突然電話をいただきました」と平山さん。
平山さんと二子山との出合いは1989年。渡仏中にクライミング仲間から「いい岩場がある」と教えてもらい、一時帰国して登ったときだった。クライミングできるルートは限られていたが、東岳と西岳からなる二子山の雄大さに、整備すれば海外の有名な岩場にも匹敵する場所となる可能性を感じたのだという。
しかし、クライミングルートの整備や開拓は、勝手にできるものではない。
「二子山の所有者の理解や、町の協力がないと成り立ちません。最初はクライミングエリアとして二子山のポテンシャルに引かれたのが大きかったですが、クライマーが訪れたり移住したりする経済効果や、クライミングというスポーツによる住民の健康やコミュニティ促進は、町の発展にも貢献できると確信して企画を提出しました。埼玉の郊外にある秩父、小鹿野町はどうしても少子高齢化が進んでいきますが、都心部からほど近い広大な自然は、町の貴重な資源。クライミングならその資源を十分活用できますから」(平山さん)

四季の道小鹿野展望台からの小鹿野町。晴れた日には百名山・両神山を望む。小鹿野町は日本の滝百選・丸神の滝、平成の名水百選・毘沙門水も有する自然豊かな町 (写真撮影/前田雅章)
町への提案から10年、「クライミングで町おこし」がスタート提案から10年ほどたった2018年、平山さんは小鹿野町観光大使を委嘱された。
「町会議員に当選したばかりの高橋耕也さんが、過去の企画書を見つけて電話をくれました。少子高齢化問題が明らかになってきたこと、東京オリンピック競技種目にスポーツクライミングが選ばれたこと、町の再生を志す若い世代の議員が当選したこと、いろいろな事柄がうまくはまったのがこのときだったのでしょうね」(平山さん)
そして、平山さんたちクライマーが町に通い続けていたということ。
「企画を提出したことをすっかり忘れていましたが、頻繁にクライミングには来ていました。顔なじみになった、『ようかみ食堂』の店主が高橋議員とつないでくれました」(平山さん)
平山さんは、早速二子山でクライミングエリアの整備を進めるため、クライミング仲間と地元住民による小鹿野町クライミング委員会を2019年に発足。2020年には一般社団法人小鹿野クライミング協会とし、2022年現在は会長職を務めている。

一般社団法人小鹿野クライミング協会(撮影時・小鹿野クライミング委員会)メンバーを中心にしたボランティアが、草木をはらい、古くさびたボルトの打ち替えなど根気がいる地道な作業を重ねて、二子山に魅力的なクライミングルートを再生・開拓している(2020年5月)(写真提供/平山ユージInstagram @yuji_hirayama_stonerider)
また、同時期に町営クライミングジムのオープンにも、平山さんは深く携わることになる。
小鹿野町役場の宮本さんにお話を伺うと、「閉館が決定した県営施設の埼玉県山西省友好記念館を残してほしいとの地元の声を受け、町では再利用方法を検討していました。『クライミングで町おこし』を実行するタイミングと重なり、平山さんの全面協力のもと、初心者にも上級者にも楽しんでもらえる本格的クライミング施設が誕生しました」とのこと。
「両神山や二子山といった町自慢の観光資源は、天候に左右されやすい弱点があります。充実した室内施設があれば、国内外のクライマーが長期滞在をプランニングしてくれるきっかけになると考えています」(宮本さん)

唐代の寺院をモデルにした豪奢な記念館をリノベーションした「クライミングパーク神怡舘(しんいかん)」。取り壊すのはもったいない、と埼玉県から町が譲り受けて2020年7月オープン(写真撮影/前田雅章)

傾斜80度~130度のボルダリング壁8面を備える神怡舘。ロープクライミング用のスペースも用意して、二子山など外岩でのクライミングに向けた安全技術の講習も行う(写真撮影/前田雅章)
神怡舘の運営を任命された宮本さんの所属は「小鹿野町おもてなし課 山岳クライミング推進室」。「クライミングで町おこしをする」町の本気度が垣間見える部署名だ。クライミング経験なしだった宮本さんにとっては若干無茶振り人事だったものの、2年でインストラクターも務められるようになったそう。
「クライミングは小中学校の体育の授業にも採用されていて、ハマって通う生徒も多いですよ。職場のクラブ活動としての利用も盛んです」と宮本さん。「クライミングは老若男女が楽しめる素晴らしいスポーツ。ルートごとにレベルが設定されているので目標を決めやすく、お年寄りでも無理なく続けられます。小学生と大人がここで友達になって、競い合い励まし合う姿も日常の光景。神怡舘は住民の健康増進とコミュニティづくりに、とても大切な場所になっています」(宮本さん)

「国内でも有数の規模で、ルートセットも一流です」(平山さん)。学校の授業をきっかけに、将来の活躍を期待されるスーパーキッズも出てきている。取材当日もスーパーキッズが、「ここで友達になった」という20代の社会人らとグループでルートの攻略を研究していた(写真撮影/前田雅章)
二子山への入山者が1.7倍に。コロナ禍で増加の事故にもクライマーの知見を活かす2019年に約4000名だった二子山の入山者数は、2021年に約6800名と急増した。コロナ禍によるアウトドアブームの影響もあるが「2018年までも4000~5000人程度でした。入山者全員がクライマーとは限りませんが、クライミング専門誌に二子山新ルートが紹介された途端、一気にクライマーが増えた実感があります」(宮本さん)
2022年のゴールデンウイーク前後は「びっくりするほど多くのクライマーが二子山に来てくれました」と平山さん。「クライマーの飲食店や温泉の利用も増えて、喜んでいます」(宮本さん)
一方で、一般登山者による事故の増加も顕著になった。
「コロナ禍でアウトドアを始める人が増え、さらに接触を避けての単独行動も増えたことが大きな要因です。上級者と安全確保しながら登るクライミングよりも、ハイキングや登山での事故が圧倒的に多いのです」(宮本さん)
その対策として、町の消防署と小鹿野クライミング協会による情報交換会が開かれている。
「山をよく知るクライマーと救助のプロ、それぞれの立場から危険な場所やヘリコプター救助時の誘導方法などについて、実りある情報交換ができました。両神山や二子山などの大自然を、多くの人に安全に楽しんでもらいたいですね」(宮本さん)
平山さんたちクライマーの町おこし活動は、クライミングの枠をはみ出し始めている。
「今年の尾ノ内氷柱づくりには平山さんたちに協力してもらいました」(宮本さん)
尾ノ内氷柱は、尾ノ内渓谷の沢から水をパイプで引き上げてつくられる人工の氷柱群。高さ60m、周囲250mに及ぶ氷柱群がライトアップされた幻想的な風景は、冬の一大観光スポットだ。
「高所での作業は大変危険ですが、クライマーにはお手のものです。地元に恩返しできるいい機会でしたし、作業を任せてもらえるのもクライミングが町になじんできたからかと思うと、うれしかったですね」(平山さん)
「企画の打ち合わせやイベントの出演や、クライミング以外でもしょっちゅう町に来ています」(平山さん)

つり橋とライトアップの景観が美しい尾ノ内氷柱。鑑賞時期は例年1月~2月(写真提供/小鹿野町)
「小鹿野町の将来像は、ヨーロッパの有名クライミングタウン」(平山さん)10代から世界の名だたる岩場を登ってきた平山さん。「小鹿野町を世界中からクライマーが集まる場所にしていきたい」と語る小鹿野町の将来像は、ヨーロッパの街。例えば「イタリアにあるアルコ。100を超える岩場に数千のルートがあり、クライマーなら一度は訪れたい憧れの街です。滞在中はクライミングだけでなく、中世の街並みでの散歩や、おいしい食事やお酒も楽しめる。住民のクライミングへの関心も高いので、すぐに仲良くなれます」(平山さん)
「二子山の開発から数年たって、小鹿野町にもクライミングが浸透してきたように感じています。日本の小鹿野町が、欧米に並ぶクライミングスポットになる、未来へのルートが見えてきました」(平山さん)

「イタリアのアルコのレストランの壁にはトップクライマーの写真が飾られていて、僕も“ユージ!”と地元の人から声をかけられていました」(平山さん)。今は小鹿野町の小学生クライマーからも「ユージさん」と親しみを込めて呼ばれている(写真撮影/前田雅章)
アウトドア以外でも、小鹿野町には古き良き日本の姿がある。有名なのは江戸時代から続く庶民の歌舞伎。農家直売所には新鮮な野菜が並び、商店街では地酒・地ワインも手に入る。疲れた身体を癒やす温泉と、おもてなしが温かい飲食店も点在している。

江戸時代から庶民による歌舞伎が広まった小鹿野町。小鹿野歌舞伎として町内に6カ所ある舞台での上演のほか、各地で訪問公演も行っている(写真提供/小鹿野町)

昭和の面影を残す小鹿野町の商店街(写真撮影/前田雅章)
二子山は世界にも誇れるクライミングスポットとして成熟中だが、「町に宿泊施設がもっと必要」と平山さんの先への課題は明確だ。欧米のようにキャンプ場や自炊できる民泊、コンドミニアムが増えれば、長期滞在も気軽になってくる。
ほんの数年で進化を見せている小鹿野町のクライミングシーン。さらに注目が集まることで宿泊の整備も進み、滞在者や移住者が増え、小鹿野町出身のクライマーが世界で活躍していく、そんな未来もすぐそこなのかもしれない。
●取材協力
・小鹿野町
・Climb Park Base Camp
所在地:世田谷区下馬
所在地:世田谷区代沢
所在地:世田谷区世田谷ワークとバケーションを組み合わせた「ワーケーション」、多くの人が興味を寄せていて、旅行サイトやホテルなどの宿泊施設でもさまざまなプランを目にするように。そんななか、あえて大自然など仕事をするには厳しい環境下でワーケーションをする「エクストリームワーケーション」を実践している人がいます。その“極限の仕事ぶり”を現地からお伝えします。
パソコンさえあれば、極限状態でも仕事はできる!エクストリームワーケーションを実践しているのは、株式会社ニットで会社員をしている西出裕貴さん。定額全国住み放題のサービス「ADDress」を利用し、その利用者仲間で「エクストリームワーケーション部」を結成、現在、部長を務めています。仕事はフルリモートということもあり、全国の複数の拠点で暮らしていますが、今回はエクストリームワーケーションの場所として長野県白馬村の河川敷で仕事をするというので、さっそくお邪魔してきました。

ほんとにここで仕事……? この日は白馬のコーヒー屋さん「 HAKUBA COFFEE STAND」の大石学さんも、コラボ動画をつくるために同席していました。プロにコーヒーを淹れてもらうとか、ちょっと何がなんだかわからない状況です(写真撮影/嶋崎征弘)
ワーケーションといっても、滞在先のホテルに缶詰になり、子どもたちや家族が遊んでいて、大人は都会と同様にPC前で作業に追われる――なんていう様子をイメージする人も多いはず。もともと、エクストリームとは「極限の」「過激な」という意味で、「エクストリームワーケーション」は直訳すれば、「過激な・極端なワーケーション」になります。単にワーケーションをするのではなく、ありえない限界の環境で働くということでしょうか。ちょっと過去の写真を拝見するだけでも、これで仕事になるの……? と疑問はつきません。

(写真提供/西出さん)

(写真提供/西出さん)

(写真提供/西出さん)
取材日、山の稜線は美しく、川のせせらぎは耳に心地よい、最高な環境でした。いくらPCとネット環境が整えば働けるとはいえ、これで働けるのでしょうか。西出さんとともにエクストリームワーケーション活動をする仲間のヒョンさんにも話を聞いてみました。

澄み渡った青空と眩しい太陽。心躍る環境です(写真撮影/嶋崎征弘)

会社員でありながら、多拠点生活を送る西出裕貴さん(写真撮影/嶋崎征弘)
「大自然のなかにいると、それだけで幸福度が上がるという研究もあるほどですし、景色や環境からインスピレーションを得られることも。例えば、一般財団法人たらぎまちづくり推進機構(熊本県多良木町)と『ADDress』が連携して3日間にわたってさまざまな講座を行う『たらぎつながるDAYS』という関係人口創出プロジェクトを行ったときに僕も講師を務めたのですが、そのなかで『楽しく働けるワーケーションマップを作ろう』というコンテンツのアイデアにつながりました。こんな環境下だからこそ、仕事の考え事やアイデア出しが捗るし、展開や構想を練ることができると思っています」(西出さん)
ヒョンさんも、「自然の環境のなかだと、考えごとや何気ない会話がよい仕事、企画につながる気がしますね。ただ、メールの返信やオンライン会議などの、『作業』的なものは近くの屋内のワークスペースを利用しています」と続けます。
「『エクストリームワーケーション』と聞くと、“極限状態で働くワーケーション”という印象を持つ方が多くいますが、極限状態でなくても大丈夫です。エクストリームワーケーションとは、自分の好きな 、あるいは心地良いワークスタイルを探究していくこと。“極限”は人によって異なります。今までやっていないこと、あるいは普段の働き方を一段深めてみることも一種の“極限状態”です。なので普段の働き方と異なるワークスタイルをすることはもちろん、ガジェットや音楽、コーヒーなど働く中で自分の好きなもの・これなら楽しく働けそうと思うものを取り入れてみることも、立派なエクストリームワーケーションです。ぜひ、できるところから、楽しみながらワクワクするワークスタイルを探究してもらえたら嬉しいですね」(西出さん)
1回あたりのエクストリームワーケーションは1時間から2時間程度で終えて移動し、屋内のワークスペースに移動することが多いそう。ワクワクする、気持ちが晴れやかになる環境やアクティビティを選ぶことが多いといいます。そのため、アウトプットの質が大切になる「クリエイティブ」「思考型」の仕事がより向いていると解説します。

左のヒョンさんは、IT企画職・マーケティング職で現在はフリーランス(写真撮影/嶋崎征弘)
父の余命宣告で考えた、働くことと場所、移動の意味今でこそアクティブにストレスなく仕事をしている西出さんですが、もともとは多くの人と同様に、仕事漬けの日々だったといいます。
「都内のシングル向け物件に暮らして、朝出社して深夜の日付が変わるころに帰宅、土日は眠って夕方にぼんやり家事して夜は遊びに行って……そんな生活を送っていまいた。転機になったのは、父の余命宣告です。大病を患い、あと1年と宣告されたんです。僕は関西出身なので、年に2回帰省していたんですが、単純に考えれば会えるのはあと2回。そのとき今のこの働き方でいいのか、自分は幸せなのか、すごく考えて、考え抜いて、フルリモートワークの会社に転職したんです」(西出さん)

眼下に流れる川のせせらぎが心地よく、日ごろのイライラ、モヤモヤを洗い流してくれるよう(写真撮影/嶋崎征弘)
お父様の余命宣告をうけ、転職という大きな決断をした西出さん、さっそく大阪と東京の2拠点生活をはじめ、ワーケーションにもチャレンジしていたそう。そんなさなかの2020年、新型コロナウィルスの流行に伴い、移動が制限される状況になってしまいます。
「移動できなくなってしまって、狭い空間で仕事することが増えました。ここであらためて、働き方はもちろん、自分は行動を制限されることがつらいのだな、と痛感しました。家族であっても、いつも同じ空間にいなくてはいけないのはストレスも大きい。同時に仕事のパフォーマンスも落ちることを痛感しました」(西出さん)
転職のきっかけとなったお父様を無事に見送り、現在では全国の感染状況を鑑みつつ、さまざまな場所で多拠点生活を送っています。
「スーツケースとリュックに荷物を詰めて、移動して暮らしています。大阪の実家に帰るのは衣替えのときくらいですね(笑)」
一方のヒョンさんは、現在、夫と二人暮らし。コロナ禍をきっかけに完全在宅勤務となりましたが、家以外のくつろぎの場所を求めて、2021年から「ADDress」で多拠点生活をスタート。そして「エクストリームワーケーション」を体験するなかで、なんと会社を退職することを決断し、現在はフリーランスになりました。

大自然を背景に記念に一枚。繰り返しますが仕事中の1枚です(写真撮影/嶋崎征弘)

ちゃんと仕事にも集中します(写真撮影/嶋崎征弘)
「会社はフルリモートOKで、お給料の不安もなく、安定・安心なのはわかっていたんですが、ぜんぶ守られているでしょう。そこから一度、飛び出してみたくて(笑)」と決断した理由を話します。
なんでしょう、一度、「エクストリームな状態」で働いてしまうと、オフィスビルに通って仕事をするというスタイルに戻れなくなるのでしょうか。「どこでもできる!」というのが大きな自信につながり、変化を恐れない人になれる、そんな魅力があるようです。
パフォーマンスアップ、ストレス減、プライベート充実……といいことづくめエクストリームワーケーションを通して西出さんが実感したのは、「自分の好きな、あるいは心地良いワークスタイルを自ら主体的に選べることが働く上で最も豊かな気持ちになること」

(画像提供/西出さん)
「決められた時間に決められた場所に行って、時間になったら帰るのが当たり前になっていますが、でも、本来、人って心地よく働ける時間も場所も違うでしょう。朝型の人もいれば、超夜型の人もいる。別に都会の高層ビルで働かなくてもいい。好きな場所で好きなように働くことができれば、もっと多くの人が幸せになれると思うんです」と話します。
ほかにも、エクストリームワーケーションの良さとして、「ボーダレスなので、一緒にエクストリームワーケーションをするメンバーは社外の人でもOK。他の会社の方・職業が異なる方・あるいは実際にその地域に住む人としてもよいので、地域の人とのつながりができること」を挙げてくれました。
「今回のエクストリームワーケーションの極限ポイントは、“コーヒー”と“リモートワーカーと働くスタイルが正反対の白馬のコーヒー屋さんとコラボをすること”でした。『HAKUBA COFFEE STAND』学さんは、ADDressで白馬を訪れるようになったことで繋がった友人で、コーヒーに対するこだわりや新しいものをどんどん取り入れて追求し、継続していく姿にいつも尊敬の念が尽きません。この絶景の中、尊敬する学さんがセレクトしたコーヒーを飲んで仕事をしたら絶対楽しいだろうなぁと思ったし、学さんもYouTube配信でいろんな人とコラボしたいと話していたので、もしかしたらWin-Winの関係になるかもと思って、今回コラボ打診しました。そしたら『いいね!やろう!』と二つ返事でOKをもらえたので、嬉しかったですね」(西出さん)

「HAKUBA COFFEE STAND」の大石さんが淹れてくれたコーヒーでひと息(写真撮影/嶋崎征弘)
ヒョンさんは、大きなストレスにもなる人間関係のあつれきが減ることも挙げます。
「この環境だとノーストレスなんです。出社している時のように会社の人に気を使ったりすることもなく、ストレスを感じそうな時も自然が緩和してくれます。また、複数の拠点で働くので、複数のコミュニティとつながっていられる。何か嫌なことがあっても、別のコミュニティの人と話してると、大した悩みじゃなかったなと、気にならなくなるんですよ」と朗らかです。

豆を挽いて挽きたてコーヒーを淹れてもらう。この日、大石さんはYouTubeでライブ配信をしていました(写真撮影/嶋崎征弘)

静岡県出身の大石さん。白馬の環境に惹かれ、移住してきた一人です(写真撮影/嶋崎征弘)

地方ならではの出会いがある多拠点生活。多数の人と接点ができることで、人間関係のストレスが減るといいます(写真撮影/嶋崎征弘)

外で飲むコーヒーはまた格別です!(写真撮影/嶋崎征弘)

エクストリームな環境下でも仕事ってできるんですね(写真撮影/嶋崎征弘)
もちろん、現在の世の中で「エクストリームワーケーション」ができる業種・業態は限られています。ただ、テレワークをできる人が、「エクストリームワーケーション」や「ワーケーション」を導入することで、渋滞や混雑が緩和できたり、繁忙期の負荷が軽減され、結果としてすべての働く人の幸せ度があがるのかもしれないなと思えました。
かつてない感染症を経験した今、「定時出社」「満員電車に揺られる」「都会のビルで長時間労働」のようなかつてのノーマルには戻らないかもしれません。働く場所や暮らしはもっと自由でいい。なんなら、自分達で好きな心地良いワークスタイルをつくってもいい。だとしたら、西出さん、ヒョンさんのように、変化を楽しんだもの勝ち、なのかもしれません。

(写真撮影/嶋崎征弘)
●取材協力
エクストリームワーケーション
西出 裕貴さん(note)
ヒョン さん
HAKUBA COFFEE STAND
所在地:鎌倉市坂ノ下
所在地:鎌倉市坂ノ下
所在地:横浜市神奈川区入江
所在地:川崎市宮前区鷺沼
所在地:東京都豊島区高田
所在地:世田谷区成城
所在地:渋谷区松濤近年、世界的にも注目を高めている“禅”。精神を統一して真理を追求する仏教・禅宗の教えが広まったことで、日常生活にも取り込まれていきました。高尚で精神的なものをイメージしてしまいがちですが、禅の教えを楽しみながら、五感で体験できるミュージアムがあることをご存知でしょうか? 広島県福山市にある「神勝寺 禅と庭のミュージアム」では、広大な境内に点在する建築物を巡りながら、禅の教えに触れる体験ができると聞き、実際に体験した様子をレポートしたいと思います。
あの有名建築家の建築も! 建物自体が展示作品
境内全体図(提供:神勝寺)
緑豊かな山道を登った先に見えてくる総門をくぐると、建築史家・建築家 藤森照信氏が設計した寺務所、「松堂」が出迎えてくれます。
屋根に植えられた松の木は、藤森氏が「禅と縁の深い」木として選んだもの。もちろん、勝手に生えてきてしまったのではなく、デザインされた外観なんです。
藤森氏といえば、屋根にタンポポを植えた自邸の「タンポポハウス」や故・赤瀬川原平邸「ニラハウス」をはじめ、建築に直接植物を植えるデザインに繰り返し挑戦しています。

「松堂」外観。
面で構成された外観は現代的でありながら、屋根比率の大きなデザインなど古建築の要素も随所に見られる(写真撮影/ロンロ・ボナペティ)

松が屋根に植えられている(写真撮影/ロンロ・ボナペティ)
一見すると突拍子もないおふざけのようにも見えてしまいますが、実は「芝棟」と呼ばれる屋根から植物を生やした日本古来の住宅形式に着想を得たもの。それもそのはずで、藤森氏は建築家でありながら、建築史家として長年古建築の研究に携わってこられました。
松堂に植えられた松は、自然と共に生きてきた日本人の知恵を、現代に蘇らせたデザインなんです。
軒下の天井と壁を一体化させた継ぎ目のない漆喰による面のつくり方も、日本古来の手法を現代的に再解釈したデザイン。新しくもありどこか懐かしい温かみを感じる藤森氏の建築は、温故知新を体現するミュージアムに来訪者を招き入れるゲートの役割に、これ以外ないと思わせるバランスで応えていました。

軒を支える列柱も、一本一本形状の異なる木材を用いる伝統的な手法(写真撮影/ロンロ・ボナペティ)
自然と共にある庭も禅への入口松堂の眼前に広がる「賞心庭」は、作庭家・中根史郎氏が手掛けたもの。池の周りを巡り楽しむ回遊式の庭園で、四季折々の草花を愛でることができる見どころが随所に施されています。
この池を挟んで松堂と正対するように立っているのが茶房「含空院」。こちらはもともと滋賀県にある永源寺より移築されたもので、築350年以上の歴史をもった茅葺きの建築です。維持管理の手間がかかる茅葺きですが、美しく保たれているのが印象的です。含空院では庭園を眺めながらお茶や甘味をいただくことができます。
神勝寺には含空院のほかにも、年代も様式も用途もバラバラな多くの建物が各地から移築され境内に点在しています。「神勝寺 禅と庭のミュージアム」は、もともと臨済宗の寺院として築かれていた境内に、含空院をはじめいくつかの建築を移築し、また新たな建造物を建ててオープンしました。
寺院建築では他の寺院から建造物を譲り受け、移築すること自体は昔から行われてきましたが、これだけたくさんの建築物を移築し、また新築して境内全体を刷新するのはあまり例のない試みといえるでしょう。庭や美術作品のほか、建築物も含めて禅の体験を提供する「ミュージアム」というコンセプトだからこそ、建物自体もミュージアムを構成する作品の一部として、様式や宗派といった個々の建築が有する背景と矛盾なく同居させることが可能なのかもしれませんね。

自然そのものと、デザインされた植栽・建築が見事に調和した「賞心庭」(写真撮影/ロンロ・ボナペティ)

含空院の縁側からは、賞心庭の全景を見通すことができる(写真撮影/ロンロ・ボナペティ)

永源寺では歴代の住持の住まいだった含空院は茶房に用途を変えて来訪者を迎える(写真撮影/ロンロ・ボナペティ)
25分のインスタレーション作品で禅を体験賞心庭から松堂の脇を抜け坂を登っていくと、多宝塔が見えてきます。そこからさらに歩を進めると、神勝寺最大の目玉ともいえるアートパビリオン《洸庭》が出迎えてくれます。
彫刻家・名和晃平氏率いるクリエイティブ・プラットフォーム、Sandwichが制作した《洸庭》では、約25分間の禅をテーマにしたプログラムが用意されています。

右手に見える多宝塔の屋根からは相輪が延びる。宗教建築のパターンを踏襲したデザイン(写真撮影/ロンロ・ボナペティ)

洸庭の周囲にも広大な庭園が設えられている(写真撮影/ロンロ・ボナペティ)
係員の誘導に従って一連のプログラムを体験することで、誰でも禅のエッセンスに触れることができるアート作品です。このように作品として体験する空間や場所はインスタレーションと呼ばれ、現代アートの表現ジャンルとして発展してきました。
お寺にアート作品? と意外な気もしましたが、よくよく考えてみると、古くからお寺は芸術が生まれ、人々の目に触れる場として機能してきました。博物館で観ることのできる美術品にも、お寺でつくられ、使われていたものが多く展示されています。いまの時代であれば現代アートがお寺に展示制作されることは、むしろ自然な流れといえそうです。
《洸庭》は内部のインスタレーションはもちろん、建築としても見応え十分。広い庭に舟形の建物が浮かぶように立つ様子からは、浮世離れした印象を受けますね。建物全体を包むように、伝統建築の屋根に多用されてきたこけら葺きと呼ばれる技法で木材が施されており、全体のプロポーションとも相まって巨大なお堂のようにも見えます。船を模した造形は、ミュージアムの運営母体である造船会社から着想を得たデザインで、インスタレーションの内容とも連動しているんです。

船底に潜り込むように作品の中へ(Photo :Nobutada OMOTE | SANDWICH)
特定の用途のために建てられる建築も、多様な使われ方を想定してある程度融通の利くように設計されるのが一般的です。ここでは、一つのインスタレーション作品の体験の場を創出する目的のみに特化することで、独創的なデザインを実現しています。
うどんをすする禅体験? 修行僧のごちそうをいただきますお昼時には「五観堂」に立ち寄りましょう。ここでは、普段は食事も修行の一環として厳しく制限されている修行僧・雲水にとって一番のごちそうである、湯だめのうどんをいただくことができます。
ただうどんを食べるだけではないのが神勝寺の面白さです。ここにもまた禅の教えに触れる工夫が。
配膳を前に、食事の作法を教えてくれます。本来であれば食事中ですら音を立ててはいけない雲水も、うどんを食べるときだけは豪快にうどんをすすり音を立てて食べることが許されているのだそうです。
厳しい修行における束の間の解放感、その疑似体験を通じて、雲水の修行に思いをはせることが禅を体感する足掛かりになるなんて不思議ですね。

うどんがゆで上がるのを待つ間、雲水の食事作法を聞かせてもらう(写真撮影/ロンロ・ボナペティ)

太くコシの強い神勝寺うどん(写真撮影/ロンロ・ボナペティ)
五観堂からさらに先へ進むと、「秀路軒」、その先には「一来亭」が見えてきます。どちらも茶室・数寄屋研究の泰斗である中村昌生氏が携わり再現/復元された茶室。いずれも千利休に縁のある建築で、合わせて見学することで利休の追求した美の一端に触れることができます。

表千家を代表する書院「残月亭」、茶室「不審菴」を、古図を手掛かりに中村昌生氏の設計で再現した(写真撮影/ロンロ・ボナペティ)

一来亭の奥には一頭のロバが飼育されています。その名も一休。禅宗において門弟のことを目の見えないロバ、瞎驢(かつろ)と呼ぶことからロバは禅宗と縁の深い動物なのだとか(写真撮影/ロンロ・ボナペティ)
庭園にも美術品にも潜む禅の思想それらを後にしてさらに登っていくと一気に視界が開け、広大な枯山水庭園が広がる頂上へと到達します。この庭園は「足立美術館」の庭園作庭などで知られる中根金作氏によるもの。総門からここへたどり着くまでに仕掛けられたさまざまな工夫と対比されるように、要素が限定され白い砂利が一面に広がる空間に身を置くと、邪念が吹き飛び心が洗われるよう。「禅と庭」をテーマにしたミュージアムのクライマックスにふさわしい庭園空間です。賞心庭を手掛けた中根史郎氏は息子でもあり、境内を上下に挟むように親子共演を楽しむことができるようになっています。

枯山水庭園「阿弥陀三尊の庭」と鉄筋コンクリート造の「荘厳堂」が美しく調和する(写真撮影/ロンロ・ボナペティ)

自然との調和を図る賞心庭とは対照的に、人為的な印象を強く受ける(写真撮影/ロンロ・ボナペティ)
また荘厳堂に展示される禅画・墨跡は《洸庭》と並ぶミュージアムのもう一つの目玉。その中心は江戸時代中期に臨済宗を中興した禅師白隠のコレクションで、ユーモアも交えた魅力的で多彩な作品が展示されています。誰もがその写真を見たことのあるような有名な作品を、その思想の発信基地である臨済宗の寺院で鑑賞できる貴重な体験です。

約200点にのぼるコレクションから定期的に展示が入れ替えられる(写真撮影/ロンロ・ボナペティ)
全身で体感し、持ち帰る禅体験本堂から階段を下りる視線の先には、建物一つ見えない自然豊かな景色が広がっています。人里離れた静かな境内で、草木に囲まれて自然の声に耳を澄ますのもまた禅との接点になっているんです。
こうして建物を見て歩き、境内を巡るだけでも、禅の思想を頭ではなく、楽しみながら体で体験することができるのがこのミュージアムのすごいところ。ほかにも写経や坐禅体験のプログラムも用意されていて、訪問者の時間に合わせた禅体験ができるようになっています。
ひと通り回った後は、浴室で汗を流しましょう。ここでは入浴中に口に含むための飴玉が配られます。口内の飴玉に意識を集中させることで雑念を振り払う、瞑想の訓練としての飴玉なんです。

「阿弥陀三尊の庭」からの見下ろし。緑豊かな自然に包まれるだけでも心身ともにリフレッシュできる(写真撮影/ロンロ・ボナペティ)

内省を促すように照明が抑えられた浴室(写真撮影/ロンロ・ボナペティ)
「神勝寺 禅と庭のミュージアム」では、大掛かりなインスタレーションアートから、うどんの食事や入浴といった日常生活と地続きのものまで、さまざまな場面を通じて禅の思想に触れることができます。
それは単にこの場所で禅の体験をするにとどまらず、日々の暮らしの中で禅を意識し、暮らしを見つめ直す第一歩となることを意図したもの。
禅の思想は最近ではビジネスの世界でも注目が集まっていますが、それ自体は臨済宗の教えからエッセンスを抜き出して、ビジネスへの活用を考えようとする動きです。素人目には、仏教の思想をそんなふうに都合よく扱って良いものだろうか? と思ってしまいますが、時代が変われば宗教の存在価値もまた変わっていくもの。むしろ積極的に日々の暮らしに役立ててほしいと、多様なプログラムが用意されていることに驚きました。
そしてそのプログラムを伝える媒体となる建築もまた、求められるニーズに合わせてアップデートされ、新しいデザインの可能性を切り開いていました。
禅と庭、そして美術と建築、これらが一体となった神勝寺は、建築好きあるいは美術好きでなくとも、新しい発見を得ることができる、皆に開かれたミュージアムでした。
●取材協力
神勝寺
所在地:練馬区桜台
所在地:練馬区桜台
所在地:荒川区荒川国土交通省はタクシーの「相乗りサービス」制度を2021年11月から導入した。その仕組みやメリットとは? 今後「相乗りサービス」はどこに住んでいても使えるようになるのだろうか? 先陣を切って参入し、実際に同サービスを2022年2月24日から開始した、タクシーの相乗りサービスを手がけるNearMe(ニアミー)の髙原幸一郎社長と、事業開発担当の真弓聖悟さんに話を伺い、今後の展開を探った。
アプリなどを使い同乗者をマッチングするサービス国土交通省が2021年11月から導入したタクシーの「相乗りサービス」制度とは、配車アプリなどを使い、目的地が近い利用者同士をマッチングして、タクシーに相乗りできるようにする制度。従来は客同士が事前に相談して相乗りするケースはあっても、システムとして運用されるのは初めてとなる。国としては、このサービスによってタクシー事業者の生産性向上を図るのが狙いだ。

(写真提供/NearMe)

(画像提供/NearMe)
原則として乗車距離に応じて利用者ごとに料金が案分される(下図参照)。そのため利用者としては割安にタクシーを利用できる。これまでタクシーの相乗りといえば、多くは同じ方面を利用する知り合い同士での利用に限られていたうえ、先に降りる人が最後まで乗る人に「なんとなく案分」して支払っていたが、このサービスを利用すれば明朗会計できるというわけだ。

(画像提供/国土交通省)
さらに「自宅から勤務先など、相乗りタクシーによるドアツードアが普及すれば、朝晩などの需要の多いときに配車ができない状況を減らすことができ、相乗りをすることで環境負荷の削減になります。また電車やバスなど公共交通機関の混雑の解消にもつながりますし、東日本大震災の時のように災害等で公共交通機関が止まってしまった場合、『自由に移動できる車』をシェアすることで、たくさんの人が恩恵を受けやすくなります」とNearMe(ニアミー)の髙原社長。
同社はタクシーの相乗りサービス解禁を受けて、いち早く2022年2月24日から「nearMe.Town(ニアミータウン)」を開始した。サービスエリアは東京都の中央区・千代田区・港区・江東区の4区だ。同社は従来から自宅やホテルと空港をドアツードアで送迎する「nearMe.Airport(ニアミーエアポート)」サービスなどを展開している交通関連サービス事業者だ。
タクシーの相乗りサービス「ニアミータウン」を利用するには、まず専用アプリやウェブサイトからの会員登録が必要だ。その後アプリやウェブサイト上で利用したい日時と乗降場所を設定する。すると24時間以内に配車可否のメールが届くので、あとはそれを見て利用する。支払は登録しておいたクレジットカードで乗車後に決済されるので、誰一人タクシー内で財布を出す必要はない。

(写真提供/NearMe)

(画像提供/NearMe)
電車やバスよりも同乗者を特定しやすいので安心実際どんな人が利用しているのだろう。同社の真弓さんによれば「ニアミータウンの利用者の約40%は通勤や通学に利用される方です。また買い物や子どもの塾への送迎など、昼間の利用も意外と多いようです」という。
利用者からは「一人でタクシーを使うより安く使えて便利」という声だけでなく、「通勤時のストレスが緩和された」「乗り替えをしなくていいから便利」「コロナ禍で混雑を避けたいが、これなら安心」といった声が上がっているそうだ。

(写真提供/NearMe)
一方で「どれくらいの金額や時間で利用できるのかわからない」「相乗りはなんだか不安」といった声もあるという。これに対して同社では「申し込み画面に『このくらいの距離なら料金はこれくらい』といった事例を挙げるなど、利用イメージが湧きやすいよう随時改善しています」(真弓さん)。さらにサイトには問い合わせ用のチャットも用意されている。
また、見知らぬ人とのタクシーの相乗りは、確かに不安に思う人も多いかもしれない。しかし「会員登録は2段階認証ですし、いつ誰がどこで乗ったか把握できます。電車やバスも、広い意味で『相乗り』ですが、それらよりも追跡しやすいサービスです」(真弓さん)。決済とつながっていることからも、素性のわからない人が利用することがなく、万が一の際でも、相手を特定することが容易というわけだ。
「実際ニアミータウンより先に、私たちは約2年前から空港と自宅やホテルを結ぶ同様の相乗りサービス『ニアミーエアポート』を運用していますが、これまでにトラブルは起きていません」(真弓さん)
公共交通機関のほかに「割安に乗れるタクシー」が加わったタクシーの相乗りサービス制度がもたらす恩恵を考えるためにも、既存の交通機関との相違点をもう少し細かく見てみよう。まず従来のタクシーとの違いは先述の通り「安く利用できる」という点だ。一方複数人で利用するため、一人で乗るよりも多少到着時間は読みにくくなる。ただし「ニアミータウン」のAIが、何人かいる利用者の中から最適なマッチングと、それによる最適なルートを提示するので、それほど心配する必要はないだろう。
また電車やバスといった公共交通機関よりも時間や乗降場所の融通が効き、混雑した車内とも無縁であることは言うまでもない。

(写真/PIXTA)
一方で最近流行の「ラストワンマイル」の乗り物、例えばシェアリングの自転車や電動キックボードなどと比べると、長距離を移動できるという違いがある。現状「ニアミータウン」の利用者は5km前後の移動にこのサービスを使うことが多いという。電動キックボード等で移動するにはハードな距離だし、特に雨の日はタクシーのほうが楽だ。そもそも「ラストワンマイル」とは駅や停留所からの「あとワンマイル」なのだから。
「今はサービスエリアが4区のみですが、今後エリアが拡大すればもっと利用距離が延びる可能性はあります」(真弓さん)
ちなみに以前紹介したシェアリングのタクシー利用サービス「mobi」も、特定エリアの半径2km以内が基本のラストワンマイルサービスだ。そのため同じタクシーでも、自宅と勤務先のドアツードアで利用できる「ニアミータウン」とは自然と利用目的が異なる。
またカーシェアリングと違い、車を取りに行ったり、行き先で駐車場を探したり、そもそも自分で運転する必要がないのもタクシーの相乗りサービスの特徴だ。
つまり「タクシーの相乗りサービス」は我々利用者にとって、文字どおりタクシーの利便性をそのまま享受でき、多少時間は読みにくくなる可能性はあるが、利用料金が安くなるというサービス。ラストワンマイルの乗り物とは距離がまったく違うため、公共交通機関とは違う新たな移動の選択肢が増えた、あるいはタクシーの新しい利用方法が生まれた、と捉えるとわかりやすいだろう。

(写真提供/NearMe)
新しい街づくりに欠かせない!?タクシー相乗り先述の通り、現在は中央区・千代田区・港区・江東区の4区でサービスが展開されている「ニアミータウン」だが、今後は「なるべく早い時期に東京都の23区にサービスエリアを広げていき、将来的には全国各地で展開したいと考えています」(髙原社長)という。
「ただし人口密度が低く、シェアする人が少ないエリアでは現状のビジネスモデルでは成り立ちません。過疎地での高齢者の通院など、顕在化している社会問題をこのサービスを使って解決したいと考えていますが、そういったエリアでは行政とタッグを組むなど、プラスアルファの施策を考える必要があります」(髙原社長)
一方で「これから生まれる新しい街」には、最初から「ニアミータウン」が利用できる可能性があるかもしれないという。現在「ニアミータウン」は三井不動産とShareTomorrowが提供しているモビリティサービス「&MOVE」と連携しているが、実はこうした不動産ディベロッパーとのタッグが、「移動が便利な新しい街づくり」にひと役買いそうなのだ。

(写真提供/NearMe)
三井不動産とShareTomorrowの「&MOVE」は三井不動産が手がけたホテルやマンション、商業施設等の利用者に提供されているもので、例えば自宅マンションから商業施設へ行く際に、これまで専用アプリを使ってタクシーやカーシェアリング、シェアリングサイクルといった「移動手段」を提供していたのだが、その選択肢の1つに「ニアミータウン」が加えられた。
ここから見えてきたのが、駅から多少離れているマンションでも、タクシー相乗りサービスがあれば移動の不安が解消されるというメリットだ。例えば「眺望はいいけれど駅から少し離れたエリア」にも、マンションが建てられる可能性があるというわけだ。そうなると『徒歩何分』という従来のマンションの価値の1つが希薄になる。
しかも大規模なマンションほどシェアする人が増える、つまり人口密度が高くなるので、タクシー相乗りサービスはその利便性を発揮しやすい。また大規模なマンションができれば、近くにレストランやスーパーをはじめ、様々な商業施設もできるだろうし、そうなればちょっとした街が1つ出来上がる。そんな「これから生まれる新しい街」づくりに、タクシー相乗りサービスがひと役買う可能性があるというわけだ。
タクシーの新しい乗り方は、単に利用料金を安く抑えられるというメリットがあるだけでなく、新しい街を作る可能性も秘めている。今後どんな場所に「移動が便利な新しい街」が生まれるのか、注目してみたい。
●取材協力
株式会社NearMe
nearMe.Airportサービスサイト
nearMe.Townサービスサイト
所在地:港区赤坂改札口から出ると、鎌倉や辻堂、藤沢に代表されるようないわゆる「湘南」の華やかさとは異なるゆるりとした空気が流れる二宮駅。「湘南新宿ラインで大磯と国府津の間」といえば、何となく海沿いのまちを想像いただけるだろうか。神奈川県二宮町(にのみやまち)は、5年ほど前から少しずつ「ものづくり」を好む人たちに支持されて移住者が増え、転入人口が転出人口を上回る年が増えているという。今、二宮で何が起きているのか。小さなまちの中で暮らす人とその営みを、美しい海と里山の風景とともにお届けする。
「幸福の本質が二宮にある」と気づいた、不動産会社の2代目
吾妻山の中腹から二宮駅と相模湾を望む。自然と人の営みとが美しく調和している(写真撮影/相馬ミナ)
“二宮”といえば最初に名前が挙がる人、それがまちの人が「プリンス・ジュン」と呼ぶ太平洋不動産の宮戸淳さんだ。宮戸さんは父が創業した不動産会社の店長として、日々、二宮の住まいやまちの魅力をブログで発信し、イベントがあればプリンス・ジュンとして参加し、場を盛り上げてきた。

太平洋不動産の宮戸淳さん。父が創業した不動産会社の店長をしている(写真撮影/相馬ミナ)

町内のイベントなどの際には「プリンス・ジュン」として登場し、場をわかせる(写真/唐松奈津子)
宮戸さんは生まれも育ちも二宮。高校を卒業してから千葉の大学に進学し、東京の不動産会社に就職した。「10年間、二宮を離れたことで地元の良さを再認識した」と言う。
「僕は、都心ではお金を使うこと、つまり消費によって心を満たしていたと思います。ところが、二宮に戻ってきて、日常生活の中で目に入る風景に癒やされていることに気づいて。自然を身近に感じて心が満たされる、幸福の本質はここにあると思いました」(宮戸さん)

町の南側は海。ちょっとした街角にも海の気配を感じることができる(写真撮影/相馬ミナ)
一つのパン屋の存在で「人の流れが変わった」しばらくは東京にいたころと同じ感覚で不動産の仕事をしていた宮戸さん。その意識を大きく変えたのが、今や二宮を代表するお店となった小さなパン屋「ブーランジェリー・ヤマシタ」の店主、山下雄作さんとの出会いだった。
「もともと山下さんは会社員をされていて、静かな場所で暮らしたいと10年前に茅ヶ崎から二宮に移住してきた方。お住まいを私が紹介したんです。その2年後、8年ほど前に山下さんが誰も見向きもしないような放置された空き家を見つけて『ここでパン屋をやりたい、所有者さんに当たってほしい』と相談されました」(宮戸さん)
山下さんはその空き家をたくさんの人の力を借りながらもできる範囲で自分の手でリノベーションした。出来上がった店舗を見たときのことを思い出し、宮戸さんは「こんなオシャレなお店が二宮にできるなんて衝撃だった」と言う。

取材に訪れた日も、店の前には「何を買おうか」とパンを楽しみに待つ人の行列ができていた(写真/唐松奈津子)

「食堂」と呼ぶイートインスペースは、信頼できる大工さんとともに倉庫だった場所をリノベーションして雰囲気のあるすてきな店舗に改装(写真撮影/相馬ミナ)

ハード系のパンが中心に並ぶ店内。午後早めの時間には売り切れていることもしばしば(写真撮影/相馬ミナ)
「ブーランジェリー・ヤマシタはおいしいパン、オシャレなお店というだけでなく、二宮の人の流れそのものを変えました。店内では展示会や演奏会などが開催され、日々の暮らしにアートや音楽を取り入れながら、心豊かに暮らそうとする人たちが集まるようになったんです。お店一つで地域の価値が変わった、と感じた瞬間でした」(宮戸さん)
空き家の入居者をプレゼン方式で募集山下さんのような人が増えれば、まちの価値自体がどんどん上がっていく。町内には、まだ放置されている空き家がいっぱいある。そのことに気づいた宮戸さんは「自分のまちの見方、不動産との関わり方自体が変わっていった」と話す。
まず、町内に点在する空き家について、プレゼン形式で入居者を募集することにした。現在、諏訪麻衣子さんと養鶏も営む農家が一緒に営業しているお店「のうてんき」も、その一つ。当初は、宮戸さんが空室になった平屋をコミュニティスペースにする目的で地域の人たちと一緒にリノベーションし、「ハジマリ」という屋号でお店を開いてみたい人たちに貸したり、ワークショップを開催したりしてきた。今はとれたての卵やオーガニック野菜などを農家が直接販売できる場所としてオープン。「二宮の農家さんを応援したい」と活動している諏訪さんと仲間たちがお店番をやりながら、その野菜と卵を使った料理を振る舞っている。

古い平屋を町内のアーティストがペイント。カラフルなガーランドとともに訪れる人を温かく迎えてくれる(写真撮影/相馬ミナ)

古い平屋を改装した「のうてんき」の店内(写真撮影/相馬ミナ)

外のテラスでも食事ができる(写真撮影/相馬ミナ)

二宮の農家がつくった、採れたて野菜が諏訪さんの手で美しく、体に優しい料理に。この日のランチメニューは2種類(お豆と野菜)のカレー(写真撮影/相馬ミナ)
以後、町内のさまざまな場所でマルシェが開催されるようになった。2016年、町と地域と神奈川県住宅供給公社が連携し、二宮団地の再編プロジェクトが始まったころから「二宮が面白いよ」という声が口コミで広がる。まさに転入が転出を超過し始めた5年ほど前から、宮戸さんも肌でまちの盛り上がりを感じられるようになってきたそう。それまでは何か面白いことがあれば首を突っ込んでは追いかけ、ブログで紹介してきた宮戸さんだが「町内の各所で自発的に面白い活動が展開・拡散し続けた今は、もはや自分の手に負えない」と笑う。
月に1つのペースで増えて続ける「壁画アート」で彩られるまちそんな宮戸さんが今、準備を進めているのが、2022年10月に開催予定のアートイベント「二宮フェス」だ。このイベント開催の背景には2年半前から「Area8.5(エリア・ハッテンゴ)」としてこの地域を盛り上げようという動きの中で、Eastside Transitionのアーティストである乙部遊さんと、ディレクターの野崎良太さんによる壁画アート活動がある。
彼らには「アートでこのエリアに彩りを与え、活性化し、他のエリアからも注目されたい。この活動を通じて、このエリアに住む若い世代に地元への誇りや愛着を持ってもらいたい」という想いがあった。そして、想いに共感したEDOYAガレージの江戸理さんが手始めに自宅の外壁に絵を描いてもらうことにしたのだ。

乙部さんがNYから二宮に移り住む前から、作品のファンだったという江戸さん(写真撮影/相馬ミナ)

自宅ガレージのシャッターと壁に乙部さんに絵を描いてもらったのがArea8.5内のアート活動の始まり(写真撮影/相馬ミナ)
このカッコ良さに注目をする人が増え、2人のもとには壁画制作の依頼が相次ぐようになった。創業109年を迎える地元の印刷会社、フルサワ印刷の真下美紀さんもその活動に魅せられた一人だ。壁画の完成後、若い人はもちろん、近隣に住む年配の人も会社の前を訪れては「よくぞ描いてくれた」と褒めてくれるのだと言う。

大正時代から続く老舗、フルサワ印刷の外壁。Eastside Transitionの作品が町内を彩る(写真撮影/相馬ミナ)

アメリカン雑貨を扱う「D-BOX」の看板(写真撮影/相馬ミナ)
町内の壁画は今も月に1カ所のペースで増え続けており、野崎さんによれば、2022年5月末時点で「既に18カ所目の壁画制作の予定まで決まっている」らしい。

Eastside Transitionが経営するアートギャラリー「8.5HOUSE」(写真撮影/相馬ミナ)

店内ではさまざまなアート作品やTシャツを扱う(写真撮影/相馬ミナ)
「オーガニック」「エコ」の流れは二宮のまちにとっての「必然」もう一つの新しい波として、宮戸さんは「オーガニック」「エコ」の流れが二宮に来ていることを挙げる。
「アーティストや編集者、映像製作などのクリエイターやものづくりに興味のある人、この景色に魅力を感じる人が集まってきました。二宮の自然が好きで集まった人たちなのでオーガニック志向やエコ意識が高いことは、ある種の必然と言えるかもしれません」(宮戸さん)
先に紹介した「のうてんき」で提供される料理も体に優しいごはんだった。さらに、そのテラスから畑と空き地を挟んだ向かいには、植物で囲われた独特のオーラを放つ古家がある。この家も宮戸さんがプレゼン形式で入居者の募集を行った物件だ。今はオーガニック製品の量り売りを行う「ふたは」の店舗として、天然素材の優しさと、手仕事のぬくもりや喜びに満ちた空間になっている。

ツタに覆われた「ふたは」の外観(写真撮影/相馬ミナ)

店のドアは植物に埋もれて、異世界への入口のよう!(写真撮影/相馬ミナ)

店内には量り売りの天然素材や食料品が並び、外観からは想像できないほど明るくて心地のいい空間になっている(写真撮影/相馬ミナ)
豊かな自然と東海道にはじまる新旧の営みが、未来をはぐくむ町を見下ろすことができる吾妻山、湘南の海を望む梅沢海岸などの美しい風景も、昔から変わらない二宮の代表的なスポット。50年以上前から町の北側を中心に28棟856戸(うち、10棟276戸は2021年3月時点で賃貸終了)を展開してきた神奈川県住宅供給公社の「二宮団地」では、再編プロジェクトによって町の魅力づくりや小田原杉を使った部屋のリノベーションを行うなど、新しい風も吹いている。自然と親しみの深い土地は、このまちで育つ子どもたちにも温かいまなざしを向けてきたことだろう。

約87haもの里山に開発された「二宮団地」。50年以上の時を経て、里山の美しい景色に溶け込んでいる(写真提供/神奈川県住宅供給公社)
近年の子どもたちや親子の居場所として注目したいのが、「みらいはらっぱ」だ。東京大学果樹園跡地の活用を町が計画し、2021年から地元企業が運営。貸し出しスペースを利用して、さまざまな企業・団体や個人がそれぞれのアイデアで参加・活用をしている。
「みらはらSTAND」では、平日に(一社)あそびの庭が子どもたちのサードプレイスを提供。土日はイベントやワークショップも開催されている。かわいいルーメット(キャンピングトレーラー)は、テレワークをはじめ多用途に使える子連れOKのシェアスペースとして運用を始めようというところだ。

毎週月・水・金曜日の10時~17時には、「はらっぱベース」として子どもたちの居場所事業を行う(写真撮影/相馬ミナ)

ルーメットがテレワークなどに使えるシェアスペースに改装され、子どもたちも興味津々(写真撮影/相馬ミナ)
二宮を訪れて出会う誰もが「人が優しい」と口にする。「ずっと住んでいた人も、移住して来た人も優しくて、新しい取り組みをみんなが応援してくれる」と。
江戸日本橋から、京都三条大橋までの東海道、その53の宿場を指す東海道五十三次で「8」大磯と「9」小田原の間にあるまち。Area「8.5」の由来はここにある。昔から多くの人が行き交い、交流してきた土地柄だからこそ、できた空気感なのかもしれない。その空気と自然をまとう二宮のまちに心地よさを感じた人たちが、日々の暮らしを営みながら、これからも新しい何かをつくり続けていくのだろう。
●取材協力
・太平洋不動産
・ブーランジェリー・ヤマシタ(Facebook)
・のうてんき
・8.5 House(Eastside Transition)
・EDOYAガレージ(Facebook)
・フルサワ印刷
・D-BOX
・ふたは
・みらいはらっぱ
・あそびの庭
・二宮団地(神奈川県住宅供給公社)
アスカネットが、過去5年以内に親などの家長を亡くした40代以上(465名)に「葬儀・相続に関する調査」を実施した。相続する財産の有無はわからないが、相続が発生した人が対象と考えられる。そんな相続を経験した人でも、6割以上が「相続登記の義務化」を知らないという。詳しく見ていこう。
【今週の住活トピック】
「葬儀・相続に関するアンケート調査」結果を公表/アスカネット
2024年4月1日から施行予定の「土地・建物の相続登記の申請義務化」とは、相続により不動産を取得したときには、名義人の変更をする不動産の登記をしなければならないということ。アスカネットの調査結果によると、2024年4月から相続登記が義務化されることについて、65.2%が「全く知らない」と回答した。一方「知っている」という回答は15.7%だった。

出典:アスカネット「葬儀・相続に関するアンケート調査」
相続については、法律で定められた相続分の割合に従って相続する「法定相続」があるが、生前に「遺言」などでどのように相続してほしいか伝えておくこともできる。また、相続する人が全員で遺産の分割について協議して合意する「遺産分割協議」というやり方で、法定相続分や遺言の内容と異なる割合で相続分を決めることもできる。
特に、主要な相続財産が不動産の場合は、不動産を売却した額を分け合うのか、誰かが不動産を相続して金融資産を別の相続人で分け合うのかなど、具体的に決めておかないと相続が難航することもある。
また、どんな相続財産があるかを明確にしておかないと、遺された家族が知らない、親族で代々相続してきた地方の不動産があったといったこともある。
そのためには、親が生きているうちから、相続財産の内容やどのように相続させるかを親族で話し合っておくことが望ましい。調査結果を見ると、こうした話し合いについて「全くなかった」という回答が57.4%になるなど、準備のないまま相続が発生したこともうかがえる。

出典:アスカネット「葬儀・相続に関するアンケート調査」
なぜ、土地・建物の相続登記が義務化されるのか?ではなぜ、2024年4月1日から土地・建物の相続登記が義務化されるのだろう?その背景には、「所有者不明土地」の問題がある。国土交通省が2022年6月10日に公表した「令和4年版土地白書」でも、所有者不明土地に対する取組状況が大きく取り上げられている。
所有者不明の土地問題が浮き彫りになると、2018年に「所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議」が立ち上がり、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が制定され、土地の所有者を合理的に探す仕組みなどが作られた。相続登記は任意だったので、利用していない土地の登記が滞り、登記がされないまま相続が何代も行われた結果、多くの所有者がいるはずなのに登記情報から所有者を探せないという事態が起きていたからだ。
2020年には30年ぶりに「土地基本法」が改正され、土地の所有者に土地を適正に管理する責務を課した。2021年には、民法や不動産登記法の改正が行われ、相続登記等の申請を義務化することなどが定められたほか、所有者不明の土地や管理不全の土地について、裁判所が管理人を選任して管理を命ずることができる制度なども創設された。さらに、相続などにより土地所有権を取得した者が一定の要件の下で、その土地の所有権を国庫に帰属させることができる「相続土地国庫帰属法」が創設された。
こうして、所有者不明土地の対策の一環として、土地・建物の相続登記の義務化を定める不動産登記法の改正が成立したわけだ。これが施行されるのが、2024年4月1日とされている。
相続登記はいつまでにする?罰則はある?では、相続登記の義務化とは、具体的にどういったことだろう?
不動産を取得した相続人は、そのことを知った日から3年以内に相続登記を行うことが義務づけられる。正当な理由がないのにこれを怠った場合は罰則(過料10万円以下)がある。あわせて、相続人1人からでも登記ができる「相続人申告登記」という新たな登記方法を導入するなど、登記手続きの手間や費用を軽減するなどの措置も取られる。
問題になるのは、遺産分割協議の話し合いがまとまらない場合だ。この場合は、法定相続どおりにいったん登記をして、協議がまとまってから相続状況に応じた登記を申請することになる。この場合も遺産分割が成立した日から3年以内の登記が求められる。
登記の義務化は2024年4月からなので、それ以前に相続した場合は対象外というわけではない。相続後に未登記のままであれば、施行日から3年以内に登記する義務が生じる。また、施行後に家族の知らない相続財産があると分かった場合も、それを知ってから3年以内に登記しなければならない。
したがって、相続が発生する前から登記について確認しておくなど、家族でよく話し合う必要があるだろう。場合によっては、登記にかかわる土地や住宅についてこれまでの経緯を知っている人から情報を集める必要もあるかもしれない。
次に施行されるのが、住所等変更登記の義務化だ義務化は相続時だけではない。登記簿上の所有者の住所や氏名が変更になった場合も、変更日から2年以内に変更登記の申請が義務化される。これは、転居などによって所有者がわからなくなることを予防するためだ。こちらも正当な理由がないのに義務に違反した場合は、5万円以下の過料の対象となる。
住所などの変更登記は、他の公的機関との情報連携がなされれば手続きが簡素化される。例えば個人であれば、本人の了解を得て登記官が住基ネットの情報に基づいて登記を行うといった仕組みも導入されることになっている。住所等変更登記の義務化やこの簡素化の仕組みについては、2026年4月までに施行されることになっている(施行日は未定)。
本来は、土地や建物の所有権を主張できる決め手となるのが不動産登記だ。それなのに、利用されない土地が生じたことで登記をしない事例が増え、それが何代も繰り返されることで、所有者を特定するのに時間も手間もかかるという事態になっている。これからは、原則通り、後に遺された人たちが困らないように、きちんと登記しよう。
●関連サイト
アスカネット「葬儀・相続に関するアンケート調査」
国土交通省「令和4年版『土地白書』の公表について」
法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)」
所在地:渋谷区千駄ヶ谷
所在地:品川区東品川
所在地:文京区小石川
所在地:世田谷区成城
所在地:渋谷区鶯谷町
所在地:渋谷区鶯谷町
所在地:埼玉県戸田市下戸田
所在地:渋谷区松濤
所在地:練馬区東大泉
所在地:中央区日本橋大伝馬町
所在地:港区海岸
所在地:港区南青山
所在地:目黒区目黒本町「小屋」「タイニーハウス」「バンライフ」などのコンパクトな暮らしは、この10年ですっかりおなじみの存在となった。特にこの数年は、新型コロナウィルスの影響で「働く場所」「移動できる暮らし」としての拠点としても注目を集めています。いま、小屋やタイニーハウス事情はどうなっているのでしょうか。現在地を取材しました。
無印良品やスノーピークも参入! 小屋やタイニーハウスは憧れのライフスタイルに「やはりコロナ禍の影響で、小屋の存在感、注目度は増しているように思います」と話すのは、約10年前から日本の小屋・タイニーハウス(小さな家)文化を牽引してきたYADOKARI株式会社の遠藤美智子さん。アメリカでは、タイニーハウスは2008年のリーマンショック以降にライフスタイルを見直した人が中心となって広まってきましたが、日本では東日本大震災を経験した2011年以降、徐々に広まってきました。特に2020年以降、リモートワークやテレワークが普及し、インターネット環境が整っていればどこでも働ける人が増えたため、「都会にいる必要はない」「自然のなかで暮らしたい」という声が増加、「小屋を郊外や地方に構えて2拠点生活をしてみたい」というニーズをよく聞くようになったそう。

YADOKARIが運営する「タイニーズ 横浜日ノ出町」では、鉄道の高架下に3種類のタイニーハウスを並べている。小屋ライフのお試しにぴったりだ(写真撮影/桑田瑞穂)
「小さな家全般のことをタイニーハウスといい、弊社でも複数取り扱っていますが、先日もトレーラーを改造したトレーラーハウスのお引渡しがありました。土地代と中古トレーラーハウス代合わせて600万円以内で収まりました。都内に拠点を持ちながら、週末は愛犬といっしょに小屋で暮らしたい。今の暮らしにちょうどよい『選択肢』として定着しているように思います」と遠藤さんは続けます。
「先日、弊社で扱う小屋を一堂に展示する一般向けのイベントを湘南で開催したのですが、非常に多くのお客さまがいらっしゃいました。子どもたちも来場していて、とても和やかな雰囲気でした。今まで対企業として小屋を扱うことが多かったので、小屋への関心の高さ、広がりに私たちが驚いたほどです」と話すのは、同じくYADOKARIの齊藤佑飛さん。

イベント時の様子。次回は展示場の見学予約を開催予定(7月3日(日)、6日(水)予約制)(写真提供/YADOKARI)
こうした小屋人気の背景には、無印良品やスノーピーク(建築家の隈研吾氏デザイン)、カインズホームなど、さまざまな業種からの参入が続いたことも大きく影響しているそう。
「デザイン性や価格など、さまざまな特徴を持つ小屋が増えました。バリエーションも豊かになり、ますます個人の好みに合った小屋が選べるようになっています」と遠藤さん。

YADOKARIの遠藤美智子さん(左)と齊藤佑飛さん(右)(写真撮影/桑田瑞穂)
移動と定住、インドアとアウトドア。小屋にも派閥がある!?固定の場所で暮らすタイプの小屋に加えて、今では、バンや軽自動車などを改造して移動しながら暮らす「バンライフ」や「モバイル小屋」も増えています。そこにはユーザーの志向やタイプに少し違いがあるそう。現在よく耳にするようになった「小屋」の種類とタイプを解説してもらいました。
■スモールハウス(小屋)、タイニーハウス
広さ10~20平米弱の小さな住まい。住まいになるため、基礎の上に建てます。移動させずに1カ所に定着するため、周囲で畑を耕したり地元の人と交流したりする人もいます。無印良品やスノーピークから販売されている商品のほか、組み立てキットなど、さまざま商品が登場しています。今後は3Dプリンターの家も登場するといわれています。

(写真提供/加藤甫)
■コンテナハウス、トレーラーハウス
貨物コンテナを小屋として改造したものが「コンテナハウス」、さらに自動車で牽引できる家が「トレーラーハウス」です。「タイニーズ 横浜日ノ出町」の小屋は「トレーラーハウス」にあたります。バス・トイレがあり、人が暮らしを営めますが、法律上は車両です。移動もできるのが特徴です。

YADOKARI株式会社が運営する「タイニーズ 横浜日ノ出町」のカフェ部分は、コンテナを改造した「コンテナハウス」です。コンテナらしい無骨な風合いが、独特の味わいを醸し出しています(写真撮影/桑田瑞穂)

「タイニーズ 横浜日ノ出町」にある小屋は「トレーラーハウス」。建物のそのものは、住宅を手掛ける大工さんに施工してもらったといいます(写真撮影/桑田瑞穂)

タイニーハウス「Wonder」の前で。小屋といいつつも、ゆとりがあるのがおわかりいただけますでしょうか(写真撮影/桑田瑞穂)

「Wonder」のお部屋。4人まで宿泊できますが、狭さを感じません(写真撮影/桑田瑞穂)

シャワーやトイレもあります。トイレは水洗。工具を使わずに着脱できる配管を使用し、下水道につなげている。すぐ移動ができるよう、土地には固定していないとのこと(写真撮影/桑田瑞穂)

「Wonder」のシャワーブース。こうして見ると小屋といっても案外、広さがあることがわかります(写真撮影/桑田瑞穂)

「タイニーハウスに興味がある人に加え、友達と個室に宿泊したい、個性的な部屋に泊まりたいという需要で利用する人も増えてきました(齋藤さん)」(写真撮影/桑田瑞穂)
■キャンピングカー・バン
自動車の居住性を高めたのが「キャンピングカー」や「バン」です。基本的には車の延長上にあるため、居住面積は小さめです。アウトドア好きな人が多く、旅をしながら暮らしたい、いろいろなところに行きたいという、「移動」したい人“バンライファー”に向いている形態です。お風呂やトイレがついていないこと、また車中泊の場所には注意が必要です。

(写真提供/加藤甫)
★番外編
■サウナトレーラー
サウナの本場・フィンランドでは、自動車で牽引できる「サウナトレーラー」があるそう。バカンスの時期になると自宅の車につないで別荘に持っていき、好きな場所でサウナを楽しむといった使い方です。きれいな川、湖がある場所に移動すれば、最高の水風呂で“ととのう”ことは間違いなさそう。YADOKARIで販売をはじめたので、これから一気に盛り上がりそうです。

(写真提供/YADOKARI)
なるほど、移動を重視するアクティブ派は「バン」「キャンピングカー」、好みの場所に定住したい派は「小屋(タイニーハウス)」、「コンテナハウス」(移動はできるけれど、基本は1カ所で過ごす)といえるのかもしれません。「生き方」や「好きな暮らしのタイプ」にあわせて小屋が選べるようになっているあたり、小屋・タイニーハウス文化の広がりを感じます。
オフグリッドにコミュニティ、まだまだ可能性は広がる「今まで弊社では、主に企業と組んで、小屋のプロデュースや土地の活用法をご紹介・提案してきました。シェアオフィス、コワーキングスペース、最近ではビジネスの側面からトレーラーハウスの引き合いがとても多いですね。ただ、このコロナ禍で大きく価値観が変わり、都会で暮らす意味を問い直す人や、住宅ローンや家賃にしばられない暮らしがしたい、という人がさらに増えたように思います。広さや駅からの距離、家賃などといった今までの物件の選び方とは異なる価値観を提案していけたらいいですね」と遠藤さん。

(写真提供/加藤甫)
「もともと住まいって、広さよりも、どう過ごすかのほうが大事なはず。僕自身も今は小さな家に暮らしていて、広い家にあまり興味はありません(笑)。自分の身の丈にあったサイズの家が心地よいと思うんです。必要なら拡張したり、縮小したりする。柔軟な暮らし方ができるんだよと伝えていけたらいいですね」と齊藤さん。“うさぎ小屋”のようだと揶揄されてきた日本では、「広さこそ、豊かさ」と考えていた時代が続いていたわけですが、その価値観は今、大きく変わったようです。
では、今後小屋がさらに普及するうえで課題となっているもの、次の展開などについて聞いてみました。
「現状の課題のひとつは、ローンが組みにくいことがあります。小屋は住宅ローンのような超低金利ローンは利用できないのです。お金を借りるにしても金利が高くなってしまうのは、悩ましいですね。今後の展開や展望でいうと、やりたいことが多くて。自然エネルギーを活用したオフグリッドハウス(外部の電力と切り離され、独立した住まい)や、小屋で暮らす人が集まるコミュニティ、災害発生時の仮設住宅など、アイデアはたくさんあるので、ひとつずつ実現していけたらいいですね」(遠藤さん)
以前、YADOKARIが提唱する「ゼロハウス構想」(住宅ローンや家賃などの金銭的負荷を減らして可処分所得や時間を人、文化の醸成に再投資する)という考え方を聞いたとき、正直、筆者は「理想はわかるけれど、実際にはね……?」と疑っていました。ただ、小屋の価格が手ごろになり、空き家や活用しにくい土地が増えてきたこと、どこでも仕事ができるようになっているなどの時代の変化を考えたときに、「ゼロハウス、無理じゃないかも」と思うようになりました。
暮らし方も働き方も大きく転換している今なら、好きな場所で、小さく豊かに暮らすが、「リアル」な選択肢になりつつあります。小屋暮らしに興味があるのであれば、今が恰好のタイミングかもしれません。
●取材協力
ヤドカリ
タイニーズ 横浜日ノ出町
所在地:三鷹市中原
所在地:練馬区向山
所在地:沖縄県那覇市壺屋