所在地:目黒区青葉台8万3,600円(税込) / 16平米
日比谷線・東急東横線「中目黒」駅 徒歩5分
目黒川沿いに建つグレイッシュな外観のレトロビル。1階にはアパレルのセレクトショップとコーヒースタンドが入っており、いつも人が集まるクールなビルです。
今回紹介する部屋は4階、窓は目黒川方向にあるので、春には満開の桜が見えます。エレベーターがないので階段の上り下りが少し大変な点は ... 続き>>>.
圧倒的に不動産情報が多いですが。。。。
所在地:目黒区青葉台
所在地:台東区三筋地震、台風、大雨、大雪……。近くの街が、大切な人が住む街が被災してしまったら。災害ボランティアとして駆けつけたい思いはあっても、「自分が行っても非力では」と、一歩を踏み出せない人がいます。また実際にボランティアを体験し、現場で力不足を痛感したという人も。
そんな人にぜひ注目してほしいのが、平時を楽しみながら有事に備える、日本初の防災アミューズメントパークです。
「栗のまち」として知られる長野県小布施町(おぶせまち)に、2020年10月にオープンした「nuovo(ノーボ)」。浄光寺の副住職である林映寿(はやし・えいじゅ)さんが、東日本大震災を機に立ち上げた一般財団法人「日本笑顔プロジェクト」が運営する、体験型ライフアミューズメントパークです。
創設のきっかけは、2019年10月、台風19号により千曲川が決壊し、小布施町をはじめ近隣市町村が甚大な被害を受けたこと。住宅地や農地に大量の泥が流れ込み、ボランティアによるスコップでの泥かきは途方もない作業で、人力での限界を感じたといいます。一方、重機は各所から確保できたものの、オペレーターが圧倒的に不足していたことから、今後災害現場で即戦力となる人材を育成しなければ、と実感したそうです。
「『ディズニーより楽しく、自衛隊より強く』がnuovoのモットー。楽しんでいたら防災力がアップしていた、そんな施設をめざしています」(林さん)

小布施町の広大な遊休農地を活用したnuovo(写真撮影/塚田真理子)

日本笑顔プロジェクト代表の林さん。全国の支部は現在37カ所にまで拡大(写真撮影/塚田真理子)
農業+防災でノーボ。農エリアは非常時の食料補給に役立つnuovo(ノーボ)というネーミングは、農業+防災=「農防」から付けられました。敷地面積は約4000平米で、そのうち1/4が畑として整備されています。ここでは「災害時こそ栄養あるものを」と、炊き出しに使える野菜を栽培。土の中で保存がきくネギや根菜類を中心に、近所の80代のおばあちゃんが管理してくれているそう。災害時に備えつつ、平時にはイベントで収穫体験も楽しめたりします。
そして敷地の3/4が防災エリア。ふだんは、日本笑顔プロジェクトが災害支援経験で役立ったものを集約して常設しています。例えば、緊急時にスピーディに設営できるエアードームは、天井が高く中はゆったり。連結もでき、折り畳めば段ボール1個分とコンパクトに。また災害支援が中長期的になった際、防災本部として機能するトレーラーハウスもあります。屋上付きのため、ここから被災エリアを偵察したり、大勢のボランティアチームに指示を出したりするのに役立ちます。

畑では地元農家さんの手を借りて、ネギや根菜類を栽培している(写真撮影/塚田真理子)

広大な果物畑に囲まれたのどかな場所(写真撮影/塚田真理子)

イベント時には野菜の収穫体験やBBQも(写真撮影/塚田真理子)

エアードームは重機を収納するスペースにもなる(写真撮影/塚田真理子)

体力を使う災害ボランティアが快適に過ごせるよう、トレーラーハウスはエアコン完備。隣には、水を使わず微生物の力で排泄物を分解・処理するバイオトイレも設置(写真撮影/塚田真理子)
四輪バギーやショベルカーの操縦体験はまるでアトラクションさて、この防災エリアが実は楽しいアトラクションエリアでもあるのです。いきなり重機の資格を、といってもハードルが高いということで、まずはATV四輪バギーに乗ってみたり、重機の初歩的な操縦をしてみたりする「体験コース」が用意されています。
筆者も今回初めて体験させてもらったのですが、アトラクション感覚で楽しんでしまいました! あらゆる地形を縦横無尽に走る四輪バギーの後部座席に乗車すると、クルーの運転で高低差のあるデコボコ道をずんずんと進みます。スピードも出せますが、要救護者を乗せることも多いということで、慎重に運転しますというクルーの気遣いにジーン。
さらにショベルカーの操縦も初体験。アームを操作して土を掘ってみると、そのパワフルさを実感します。笑顔プロジェクトの思惑通り(?)、自然と笑顔になっていました。そして意外と自分でもできるんだ、と感動していたら、「力の弱い女性こそ、重機を扱えるようになってほしい」と林さん。なるほど、納得です! 実際、重機資格を取得する人の3~4割は女性なのだそうです。

人や物資の運搬、ゴミ回収などに活躍するATV四輪バギー。昨年冬に北陸で発生した雪害の際は、高速道路上の滞留車に支援物資を届ける緊急支援車両として出動した(写真撮影/林映寿さん)

体験コースはファミリーでの参加も可能。働く車好きの子どもと楽しんでいたら親がハマってしまった、というケースも多いそう。四輪バギーは資格取得だけでなく、購入に至った人もこれまでに4人いるとか!(写真撮影/塚田真理子)

クルーの手解きで、パワーショベルの操縦も初体験(写真撮影/林映寿さん)

重機資格取得コースの休憩時間には、水陸両用バギーの乗車体験も行われた。テーマパークのアドベンチャーのようなワクワク感!(写真撮影/塚田真理子)

マスクで分かりにくいけれど、体験時には誰もが林さんが描いたロゴのような笑顔に(写真撮影/塚田真理子)
打ちっぱなしならぬ掘りっぱなし!? サブスクで重機トレーニング今回おじゃましたのは、災害現場で役立つ技能を身につける「重機資格取得コース」の2日目。初日の学科を経て、この日は重機を操作し整地や運搬、掘削などを学んでいきます。合間には、クルーの重機隊によるパフォーマンスタイムも。惚れ惚れするような技に、受講者はもれなく動画を撮影。いやぁ、かっこいいです!
ただ、資格を取ったらそれで終わり、ではありません。「いざ災害現場に行ってみると、重機のエンジンすらかけられない人も。資格を取ってもその後使っていなければ忘れてしまうのは当然ですよね」と林さん。そんなペーパードライバーにならないために設けられたのが、日本初の「サブスク会員コース」です。
月額課金制で、月に10日ほどある実施日に重機やバギーのトレーニングが受けられるというもの。「ゴルフの打ちっぱなしならぬ掘りっぱなし」感覚で、休日趣味のように通う人もいれば、小布施観光を兼ねて遠方から受けに来る人も。さまざまな場面での運転、操作の経験を積んで腕を磨くことで、いざというときの即戦力になれるのです。

台風19号の災害ボランティアをきっかけに、介護職から転身し日本笑顔プロジェクトのクルーとなった春原圭太さんによる重機パフォーマンス。華麗な操縦に拍手が湧く(写真撮影/塚田真理子)

災害現場は足場が悪く、泥沼に入ることも。作業後、キャタピラーについた泥の落とし方を伝授(写真撮影/塚田真理子)

重機資格取得コースの講習風景。災害現場での経験豊富なクルーが指導にあたる(写真撮影/塚田真理子)
近隣の倒木現場がサブスクトレーニングの実践の場にnuovoでは、今回見学した重機資格(パワーショベルでの整地・運搬・積み込み及び掘削)に加え、パワーショベル(解体)、チェーンソー、四輪バギー、普通救命講習と、災害時に役立つ計5種類の資格取得コースを用意しています。日程はそれぞれ別で、講習日数は半日~3日間。
資格取得後のサブスクトレーニングでは、災害現場を想定した10段階の検定が設けられています。いざ災害が発生した際には、日本笑顔プロジェクトからサブスク会員や修了生に声がかかる段取りで、それぞれのレベルに合った現場がコーディネートされるそう。「安全性を重視し、初心者からベテランまで、無理のない支援活動を行えるよう心がけています」(林さん)。
nuovo発足後大きな災害は起きていないため、被災地での活動はまだありませんが、長野市戸隠での川の増水による倒木撤去作業に駆けつけるなど、実践経験が積めるのもサブスクのいいところ。また、重機資格を取得した農家の方が自分の畑の木の抜根を行うなど、実務で活用するケースもあるそうです。

資格講習を終えると、修了証が交付される(写真撮影/塚田真理子)

nuovoで資格を取得すると、サブスクコースが利用できる仕組み。サブスクは月額1000円(月に30分のトレーニング無料)~。半年間繰越も可能(写真撮影/塚田真理子)
スキルアップの先は、受講者を指導するクルーへの道も拓けるレベルごとに災害現場で役立つ技術が学べるサブスクコースですが、経験を積んでレベル1に合格すると、nuovoクルーとして受講者を指導する仕事につながることもあります。四児の母という山本真衣子さんもそのひとり。親しみやすい雰囲気もあり、特に女性受講者にとっては憧れの存在です。
「台風19号のときは育児もあり動けずモヤモヤしていました。道に重機があると見惚れて学校に遅れる子どもだったので、昔から興味はあったものの、お金を出して資格を取っても使うことないなって。でもここでちゃんと習得すれば防災の備えになると知って、行動に移せました」。
nuovoでは、重機オペレーター1000人の育成をめざしていて、現在449人を達成(2021年6月18日現在)。「1000人という数字は、資格取得者10人のうち1人がサブスクでトレーニングを積んでくれたらいいなと。そうして災害時に100人規模の即戦力があれば、自衛隊よりも早く動き出せます」と林さんは言います。

資格取得とサブスクでのトレーニングを経て、クルーの一員となった山本さん。現在では受講者を指導する立場に(写真撮影/塚田真理子)

大学を休学し、現在事務局長を務める神戸智基さん(右)、代表の林さん、副代表の春原さんをはじめ、常勤クルーは3名。ほか10名の非常勤クルーがnuovoを支えている(写真撮影/塚田真理子)

飛び出す絵本のような仕掛けが楽しいフライヤー。nuovoは47都道府県に展開する計画も(写真撮影/塚田真理子)
今回、もともと重機に興味があって受講したという女性利用者の言葉が心に残りました。「好きでやっていることが、いざというとき役に立てるならうれしい」。まずは楽しんで、力をつけて備えることで、いつか誰かの助けになれる場所がここにはありました。
コロナ禍もあり、全国から災害ボランティアが集まりにくい時代だからこそ、自分たちの街は自分たちで守る、そんな心構えが必要だと強く感じます。
さらに頼もしいニュースが飛び込んできました。6月28日、長野と同じく台風19号の被害を受けた千葉県成田市と、今年4月に山林火災が発生した長野県飯山市に、「nuovo EX(Experience)」という体験版施設が同時オープン。時間が過ぎるにつれ、薄れていきがちな防災意識を高め、維持していくために。nuovoが全国各地に広がって、楽しい防災拠点が増えることを期待しています!
●取材協力
日本笑顔プロジェクト
所在地:港区海岸
所在地:目黒区柿の木坂
所在地:北区赤羽台
所在地:品川区上大崎
所在地:台東区台東
所在地:目黒区青葉台2027年のリニア中央新幹線の開業へ向け、大規模な再開発が進められている品川エリア。昨年、品川駅と田町駅の間に山手線の49年ぶりの新駅が開業し、大きく変革している地域でもある。そんな、注目の品川駅へアクセスがよく、家賃相場がお手ごろな駅はどこだろうか。シングル向け物件(10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DK)を対象に、最新の家賃相場が安い駅ランキングから探ってみた。
品川駅まで電車で30分以内、家賃相場の安い駅TOP10駅
順位/駅名/家賃相場/(主な沿線名/駅の所在地/品川までの所要時間(乗り換え時間・駅から駅への徒歩移動時間を含む)/乗り換え回数)
1位 羽沢横浜国大 5.30万円(JR東海道本線・相鉄新横浜線/横浜市神奈川区/30分/1回)
2位 保土ヶ谷 5.55万円(JR横須賀線・湘南新宿ライン/横浜市保土ケ谷区/24分/1回)
3位 三ツ沢上町 5.70万円(横浜市営地下鉄ブルーライン/横浜市神奈川区/29分/1回)
4位 安善 5.80万円(JR鶴見線/横浜市鶴見区/27分/2回)
5位 武蔵白石 5.90万円(JR鶴見線/川崎市川崎区/29分/2回)
6位 三ツ沢下町 6.00万円(横浜市営地下鉄ブルーライン/横浜市神奈川区/27分/1回)
6位 浅野 6.00万円(JR鶴見線/横浜市鶴見区/26分/2回)
8位 東白楽 6.05万円(東急東横線/横浜市神奈川区/30分/1回)
9位 弁天橋 6.10万円(JR鶴見線/横浜市鶴見区/24分/2回)
10位 大口 6.30万円(JR横浜線/横浜市神奈川区/28分/2回)
10位 小田栄 6.30万円(JR南武線/川崎市川崎区/24分/2回)
10位 戸塚 6.30万円(JR東海道本線ほか・横浜市営地下鉄ブルーライン/横浜市戸塚区/29分/0回)
ランクインした駅は、所在地がすべて神奈川県。

羽沢横浜国大駅(写真/PIXTA)
1位の羽沢横浜国大駅は横浜市神奈川区に位置している。
2019年11月、JRと相鉄の直通に伴い開業したばかりの新駅で、駅名のとおり横浜国立大学の最寄駅だ。羽沢横浜国大駅周辺は従来、鉄道の整備が不十分な地域だったが、同駅の開業により都心へのアクセスが向上した。新しい駅だけに周囲の商業施設などはさみしい状態だったが、2021年6月に生鮮食品やお弁当なども扱うドラッグストアがオープン。今後は内科や皮膚科などの医院も施設内に開業予定だ。駅前の再開発も順次進められており、2024年の完成を目指したタワーマンションや子育て支援施設などが入った商業施設も建設中。今後の発展が楽しみなエリアだ。
2位の保土ヶ谷駅は横浜市保土ケ谷区に位置している。周辺には閑静な住宅街が広がるが、横浜駅の隣駅であり、駅間距離は約3km。横浜の中心地まで徒歩でも十分移動が可能な立地は魅力だ。品川だけでなく渋谷や新宿などの繁華街へも、湘南新宿ラインを利用すれば乗り換えなしで利用できる。

保土ケ谷公園(写真/PIXTA)
保土ヶ谷はかつて宿場町であり、そうした歴史を記した史跡などを、街並みのあちこちで目にする。駅から少し行けば、横浜市内で最も古いといわれる神社「神明社(しんめいしゃ)」がある。心身のけがれをはらう儀式「人形流し」は、多くの人に親しまれている。また、東京ドーム約7個分の広さの「保土ケ谷公園」は、野球やサッカーなどができる競技場のほか、アスレチックやプールなどの設備がそろう。2002年の日韓ワールドカップではサブグラウンドとして使用されたことでも知られる。横浜の都心の便利さと、のんびりした環境の両立ができるのはうれしいポイント。
6位の浅野駅の周辺は、地元に住まいながら観光気分が味わえる街5位の武蔵白石駅は、JR鶴見線の沿線駅。駅すぐそばに日本鋳造の本社や富士電機の川崎工場などがある工場地帯だが、昔ながらの街並みの住宅街が広がっており、穏やかな雰囲気だ。
周辺にはスーパーなどのほか、レトロな風情が魅力的な喫茶店などの飲食店も点在。また、駅から少し行くと、住宅街の中に桜が名物の「浅田なかよし公園」などの広々した公園もあり、散歩するのも楽しそうだ。
6位の浅野駅も、JR鶴見線の沿線駅。浅野駅のある横浜市鶴見区には、かつて沖縄県から移り住んできた人たちが集まった地域が複数あり、浅野駅の近くもそのひとつ。駅から少し行った「仲通り商店街」は、沖縄料理を提供するお店がいくつもある。また、最近はエスニック料理を提供するお店も増えており、地元にいながらにして観光気分を味わえる心躍る地域だ。

戸塚駅西口の風景(写真/PIXTA)
10位の戸塚駅は、JR東海道本線、JR横須賀線、湘南新宿ライン宇須、湘南新宿ライン高海、横浜市営地下鉄ブルーラインと5路線の利用が可能。ランキング中唯一乗り換えなしで品川まで行ける。
駅付近は再開発を経て、駅直結の商業施設などが充実。周辺にはスーパーや飲食店も数多く、買い物に不便することはないだろう。また、商店街も数多い。一方で、少し行くと広がる住宅街は、かつて宿場町だった名残がどこか感じられ、下町風情が漂う。日常生活の便利さとのどかな雰囲気の双方が満喫できそうだ。
ランクインした駅はすべて神奈川県に位置し、大半が横浜市の駅。しかし同じ横浜市の駅でも、当然ながら駅の特徴はそれぞれ。自分のライフスタイルにあわせて、最適な部屋を探したいものだ。
●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている品川駅まで電車で30分以内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】駅徒歩15分以内、10平米以上~40平米未満、ワンルーム・1K・1DKの物件(定期借家を除く)
【データ抽出期間】2020/2~2021/4
【家賃の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された賃貸物件(アパート/マンション)の管理費を含む月額賃料から中央値を算出(3万円~18万円で設定)
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、朝7時30分~9時の検索結果から算出(2021年5月31日時点)。所要時間は該当時間帯で一番早いものを表示(乗換時間を含む)
※記載の分数は、駅内および、駅間の徒歩移動分数を含む
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が2回までの駅を掲載
所在地:品川区上大崎
所在地:渋谷区代々木
所在地:渋谷区猿楽町最近、「リタイアしたらコンパクトな家に住み替えたい」とか「田舎で暮らしたい」とか、同世代の友人たちから住み替えの相談を受けることが多くなった。私自身も60歳を超えて、趣味の部屋をつくりたいという夢を持っている。その時、問題になるのが資金だ。今までは60歳以上の世代にとって、住宅ローンは大きな関門であり、住み替えやリフォームの希望があっても難しいと言われていた。そんななか、【リ・バース60】というシニア向けの住宅ローンが話題だという。どんな仕組みなのか住宅金融支援機構に取材した。
60歳からの住宅ローン【リ・バース60】とは?
60歳を過ぎると仕事をリタイアしている人も多く、定期的な収入が年金のみという場合が多い。また、新たに住宅ローンを組みたくてもローン完済までの期限が限られており、毎月の返済額が大きくなる場合もある。何より限られた生活費から毎月の返済をするのは難しい。
筆者は、少し前から、自宅を担保に金融機関から融資を受けるリバースモーゲージに興味を持っていた。毎月の支払いは、存命中は利息のみで、元金は債務者が亡くなった後、自宅を売却すること等で一括返済する仕組みだ。筆者は長いフリーランス生活で年金に期待できないという状況で、今後の生活設計に利用できるかと視野に入れていたのだ。しかし、筆者の知る金融機関が提供するリバースモーゲージ商品は、資金使途が「生活資金」「医療・介護用資金」という場合が多く、新しく家を買いたいといった場合には利用が難しい。
そこで新しく満60歳以上の人向けのリバースモーゲージ型の住宅ローン【リ・バース60】が生まれたと聞いた。通常の住宅ローンでは、毎月、元金と利息を返済しなければならないが、【リ・バース60】では、債務者の存命中は、毎月の支払いは利息のみ、元金は、債務者が亡くなったときに担保不動産を売却して返済するか、相続人が現金等で一括返済するかを選ぶことができる。

返済方法のイメージ図(画像提供/独立行政法人住宅金融支援機構)
【リ・バース60】は、住宅金融支援機構の住宅融資保険で民間金融機関の住宅ローンを支援する仕組みだ。金利等の融資条件は金融機関によって異なるので、詳細は各金融機関に問い合わせる必要がある。
あくまでも住宅ローンの一種であるため、資金の使い道は住宅の建設・購入、リフォーム、住宅ローンの借換え、セカンドハウスの建設・購入、サービス付き高齢者向け住宅の入居一時金など住宅関連費用に限定されている。融資額の上限は、1.8000万円、2.住宅の建設・購入、リフォーム等の所要金額の100%、3.担保評価額の50%または60%のうち、最も低い金額になっている(※1)。
※1担保とする住宅(セカンドハウスを含む)が長期優良住宅の場合で、債務者の年齢が満60歳以上のときは「担保評価額の55%または65%」となる。また、債務者の年齢が満50歳以上満60歳未満の場合は、一律「担保評価額の30%」となる。

【リ・バース60】の仕組み図(画像提供/独立行政法人住宅金融支援機構)
相続人が困ることのないようにノンリコース型が利用できる債務者が亡くなり、契約が終了したときに、相続人が一括返済するか、自宅の売却代金で借入金を返済するというのが【リ・バース60】の特徴だ。そこで気になるのが地価の下落等により売却代金で借入金を全額返済できなかった場合。リコース型では残金を相続人の方が返済する必要がある。ところがノンリコース型では相続人の方は残金を返済する必要はない。(※2)
2017年からは【リ・バース60】にこのノンリコース型が加わり、さらに安心できるシステムになった。今では債務者の99%がノンリコース型を選択しているようだ。ただし、金融機関によって、ノンリコース型はリコース型に比べて金利が高くなることが多いので頭に入れておこう。
また、相続人が住宅ローンの債務を引き継がないとなった場合、ローンの負債だけでなく、資産もすべて相続しない「相続放棄」を連想してしまう。しかし、ノンリコース型であれば、自宅の売却代金では全額返済できなかった場合であっても、金融機関は相続人に不足分を請求しないといった契約なので、他の相続財産とは切り離して考えることができるのもメリットだ。(※3)
※2死亡以外の理由により延滞等となった場合、売却代金で全額返済できなかったときは契約者に支払請求を行う。
※3相続に関する税金については、税務署へ要確認。
【リ・バース60】にはさまざまな活用例がある。下記を参考にセカンドライフのプランを考えてみてほしい。
■新居への住み替え資金を用意したい
子どもが独立した後、夫妻2人で暮らしやすいコンパクトな家への転居を検討する場合、高齢になってから住宅ローンを借りるのは難しい。しかし今後の生活のために預貯金も一部残しておきたい。
→【リ・バース60】なら、一定の頭金は必要だが、高齢の夫婦でも住み替え資金を借りることができ、毎月の返済負担も小さく済む。

(写真/PIXTA)
■シニア向け分譲マンションを購入したい
これから歳を重ねるにあたって1人暮らしは不安だと感じる。あるいは今の住まいのメンテナンスに手がかかり、今後、自分が病気になったときの対処も考えておきたい。
→【リ・バース60】なら、看護師の常駐や健康管理のための施設が備え付けられているなど、快適な老後を想定したシニア向けの分譲マンションへの住み替えにも利用できる。

(写真/PIXTA)
■老朽化した自宅をリフォームしたい
年齢に合わせて住み心地を良くしたり、健康状態によってはバリアフリー対応のリフォーム工事が必要になったりする場合もある。預貯金からリフォームでまとまったお金を使うことに不安を感じる。
→【リ・バース60】なら、毎月の支払いは利息のみで済むので、月々の負担が少なく、預貯金を残しながらのリフォームが可能。

(写真/PIXTA)
■住宅ローンの借換えで毎月の支払を減らしたい
定年を迎えると収入が減り、住宅ローンの債務が残っていると毎月の返済が苦しくなってくる場合がある。返済が滞ると、最悪の場合は自宅を手放すことになりかねない。
→残債額によっては、【リ・バース60】で住宅ローンの借換えを行うことができる。借換えによって毎月の支払いが利息のみとなるので、月々の負担を軽減できる。

(写真/PIXTA)

【リ・バース60】の資金使途別(画像提供/独立行政法人住宅金融支援機構)
【リ・バース60】で頭に入れておきたいこと【リ・バース60】の活用するにあたって気を付けておきたいことがいくつかある。まず融資限度額は担保評価額の50~60%となっている。そのため、住宅の建設・購入資金の借り入れの場合は物件価格の50%程度の頭金が必要になる。
また、リフォーム資金や住宅ローンの借換えのために、現在の自宅を担保として【リ・バース60】を利用する際は、住宅ローンの残債額と担保不動産の評価額によっては、希望した金額で融資を受けられない可能性がある。
【リ・バース60】は毎月の支払いが利息のみなので、月々の負担は小さくなるが、繰上返済しない限り、利息の支払いはずっと続く。つまり、長生きすればするほど利息の総支払額は増えていくので、借入期間が長期化すれば、利息の総支払額が膨大な金額になってしまう可能性もある。

(写真/PIXTA)
変動金利の場合は、定期的に適用金利が見直される。適用金利が変更されると、毎月の支払額も変わる場合もあるので、今後金利が上昇すれば、月々の支払額が増加し支払いが困難になってしまう可能性もある。【リ・バース60】を変動金利で利用するなら、金利上昇に備えた計画にしておく必要があるのだ。
2020年度の申請戸数は対前年の118%増、さらに2021年の1月~3月の申請戸数は対前年同期比135.6%増という【リ・バース60】。取扱金融機関も70を超え、今後ますます注目される住宅ローンと言えるだろう。本格的な超高齢社会を迎えて、60歳以降のセカンドライフを十二分に楽しむためにも、選択肢の1つとして視野に入れておきたいと思った。
●取材協力
【リ・バース60】:住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)
所在地:大田区大森西
所在地:渋谷区渋谷
所在地:港区南青山住宅ローン比較サービス「モゲチェック」を運営するMFSは、「新型コロナウイルスによる、住宅ローンボーナス返済への影響」に関するアンケート調査を、現在返済中の30~50代に実施した。その結果、ボーナスの支給額減少と住宅ローンの返済に深い関係があることが分かった。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「新型コロナウイルスによる、住宅ローンボーナス返済への影響」について調査/モゲチェック(MFS)
住宅ローンの返済方法には、「毎月の返済のみ」と「毎月の返済+ボーナス時に返済を加算」の選択肢がある。ボーナス時の返済を併用する方法のメリットは、その分だけ毎月の返済額を抑えることができることにある。例えば、3000万円を借りる場合、全額を毎月の返済だけにするよりも、2000万円を毎月の返済に、1000万円をボーナス時の加算に割り振ったほうが、毎月の家計に余裕が持てることになる。ただし、ボーナスの支給額は景気の影響を大きく受けるので、無理のない範囲にとどめることが推奨されている。
今回のMFSの調査によると、住宅ローンの返済でボーナス返済を併用している人は、全国で35.6%だった。ただし、関西ではボーナス返済を併用する人は19.8%と少なくなる。関西のほうがより堅実な家計なのだろうか。
しかし、いまはコロナ下だ。業績が悪化している業種もある。「この夏のボーナスは減る」と予測した人が多い業種は「公務員」(38.2%)、「製造業」(35.2%)、「情報通信業」(31.7%)、「飲食・宿泊を含むサービス業」(31.6%)などが上位に挙がった。また、年代別に見ると、「減る」と予想したのは、「30代」で31.4%、「40代」で28.4%、「50代」で26.6%となり、若い世代のほうが、減ると予測した人が多いという結果になった。

昨年より夏のボーナスは減るか(年代別)(出典/MFS「新型コロナウイルスによる、住宅ローンボーナス返済への影響」より転載)
夏のボーナス支給額が、住宅ローンの返済額より下回る人が多数続出!ボーナス返済を併用している人に、「今年の夏のボーナス支給額は、住宅ローンのボーナス返済額を上回るか(上回ったか)」を聞いたところ、「上回る」つまり、ボーナスの支給額でボーナス返済をしても手元に残る人が半数以上ではあったものの、「返済すべき額より支給額が下回る」人や、「支給額は上回るがその他の返済を考慮するとマイナスになる」人も相当数いる。特に30代では、合わせて48.0%の人がボーナスの支給額を住宅ローンの返済などに充てると赤字になるという、厳しい現実が浮き彫りになった。

今年の夏のボーナス支給額は、住宅ローン返済額を上回るか(出典/MFS「新型コロナウイルスによる、住宅ローンボーナス返済への影響」より転載)
コロナ収束後にはボーナスの支給額が元に戻り、一時的に貯蓄を取り崩すなどで対応できるという場合ならいいが、今後もボーナス返済が家計を圧迫する可能性があるなら、このままにはしておけない。ボーナス返済について何か対策をしているのだろうか?
コロナ下で「ボーナス返済について検討、もしくは実行したことがあるか」を聞くと、「検討・実行した」人は特に30代で多く、37.5%にも達した。若い世代ほど夏のボーナス支給額が減るという人が多く、そのことが住宅ローンの返済にも大きく影響しているがうかがえる。

ボーナス払いについて検討・実行したことがあるか(出典/MFS「新型コロナウイルスによる、住宅ローンボーナス返済への影響」より転載)
ボーナス返済が厳しい…その対策方法は?さて、住宅ローンのボーナス返済の対策をするとしたら、どんなことが考えられるのだろう?
まず、ボーナス返済の額を減らしたり、無くしたりすることが考えられる。割り振りの変更は手続きをすればでき、さほど難しいことではない。例えば、3000万円のうち1000万円分をボーナス返済分にしている場合なら、それを500万円に減らしたり、全額を毎月返済にしたりするわけだが、その分だけ毎月返済分の割合が増えて、毎月の返済額は増えることになる。
つまりこの「ボーナス返済の変更」は、ボーナスの支給額が減っても、毎月の返済には余裕がある場合に効果を発揮する。
ところが、MFSの調査で「毎月の住宅ローン返済が家計の負担になっているか」を聞いたところ、半数近くが負担(とても負担+少し負担)になっていると回答している。毎月の返済も負担になっているのであれば、ボーナス返済分を抑えて毎月の返済に上乗せするという選択肢は、とりづらいことになる。

毎月の住宅ローン返済は家計の負担になっているか(出典/MFS「新型コロナウイルスによる、住宅ローンボーナス返済への影響」より転載)
MFSによると、今回具体的な対策として最も多く挙がったのが「他金融機関への借り換え」で、ほかにも「借り入れ先の金融機関への相談」、「FP や専門家に相談」が挙がったという。
ボーナス返済も毎月の返済も厳しい場合は、まずは「借り入れ先の金融機関に相談」するのがよいだろう。例えば、返済期間を延ばす(30年から35年など)ことで、住宅ローンの返済額を抑える対応策などを用意していることも多い。具体的に何ができるかは、金融機関などによって異なるので、まずは借り入れ先に相談することをお勧めする。ただし、返済期間を延ばすなどの対応策によって利息が増えて、最終的に返済する総額が増えることに留意してほしい。
また、調査で多かったという「他金融機関への借り換え」は、いま適用されている金利よりも、新たに借りるローンの金利のほうが低いことで効果を発揮する。ローン残高が多く、返済年数が長く残っている場合ほどその効果は大きい。ただし、別の金融機関と改めて住宅ローンの契約を結び直すので、当初借りたときと同様にかなりの諸費用がかかることが留意点だ。
対応策がよく分からない、決められないという人は、FP(ファイナンシャルプランナー)などの専門家に相談するとよいだろう。例えば借り換えであれば、異なる金融機関の住宅ローンで返済プランを試算したうえで、それぞれのメリット・デメリットなどの説明をしてくれるので、借り換え後も返済に無理がないか確認して選ぶことができるだろう。
毎月の返済額を抑えたい(あるいは返済額を増やすことで返済期間を短くしたい)という理由で、ボーナス返済に頼ってしまうと、景気の影響で思った通りの支給額が出ないこともある。今回の調査で、「ボーナス返済の併用を選んだことを後悔している」という人が14.0%(30代に限ると22.9%)いた。
ボーナスは、日ごろの生活の赤字をカバーしたり、旅行などのレジャーに充てたり、家具家電の買い替えに充てたりと、使い道が多様にある。ボーナスの額が減る事態も想定して、ボーナス返済についてよく考え、ローン返済中も万一に備えた貯蓄をすることをお勧めしたい。
山手線をはじめとするJR各線に加え京浜急行本線、さらに東海道新幹線も通っている品川駅は、都内屈指のターミナル駅。JR駅では改良工事が進められており、2022年には山手線外回りと京浜東北線(大宮方面)の乗り換えがしやすくなる予定だ。また、現在は高架駅である京浜急行本線・品川駅の地上化計画も進行中で、工事が完了するとJR線と京浜急行線の乗り換えもぐっと楽になるのだとか。
そこで今回は、これからの発展も楽しみな品川駅までアクセスしやすい街にある中古マンションの価格相場を調査した。品川駅まで30分以内かつ、中古マンションの価格相場が安い駅をランキング。シングル向け物件(専有面積20平米以上~50平米未満)とカップル&ファミリー向け物件(専有面積50平米以上~80平米未満)、それぞれのTOP10を見ていこう。
【シングル向け】
順位/駅名/価格相場(主な沿線/所在地/品川駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 関内 1765万円(JR京浜東北・根岸線/神奈川県横浜市中区/28分/1回)
2位 石川町 1850万円(JR京浜東北・根岸線/神奈川県横浜市中区/30分/1回)
3位 鶴見 2235万円(JR京浜東北・根岸線/神奈川県横浜市鶴見区/15分/1回)
4位 京急鶴見 2290万円(京浜急行本線/神奈川県横浜市鶴見区/21分/1回)
5位 新宿御苑前 2470万円(東京メトロ丸ノ内線/東京都新宿区/23分/2回)
6位 尾久 2480万円(JR東北本線/東京都北区/21分/0回)
7位 大森町 2580万円(京浜急行本線/東京都大田区/13分/1回)
8位 馬込 2730万円(都営浅草線/東京都大田区/15分/1回)
9位 三ノ輪 2780万円(東京メトロ日比谷線/東京都台東区/28分/1回)
10位 三河島 2789万円(JR常磐線/東京都荒川区/22分/0回)
10位 住吉 2789万円(都営新宿線/東京都江東区/25分/1回)
【カップル&ファミリー向け】
順位/駅名/価格相場(主な沿線/所在地/品川駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 鶴見小野 2935万円(JR鶴見線/神奈川県横浜市鶴見区/22分/2回)
2位 三ッ沢下町 2980万円(横浜市営地下鉄ブルーライン/神奈川県横浜市神奈川区/27分/1回)
3位 保土ヶ谷 2990万円(JR湘南新宿ライン/神奈川県横浜市保土ケ谷区/24分/1回)
4位 生麦 2999万円(京浜急行本線/神奈川県横浜市鶴見区/26分/2回)
5位 花月総持寺 3080万円(京浜急行本線/神奈川県横浜市鶴見区/24分/2回)
6位 国道 3140万円(JR鶴見線/神奈川県横浜市鶴見区/20分/2回)
7位 大口 3280万円(JR横浜線/神奈川県横浜市神奈川区/28分/2回)
8位 子安 3285万円(京浜急行本線/神奈川県横浜市神奈川区/27分/2回)
9位 小田栄 3300万円(JR南武線/神奈川県川崎市川崎区/24分/2回)
10位 鶴見市場 3385万円(京浜急行本線/神奈川県横浜市鶴見区/20分/1回)
まずはシングル向け中古マンション(専有面積20平米以上~50平米未満)のランキングをチェック。ちなみに調査の基点にした品川駅の価格相場は5480万円! 交通の利便性が高く、都心部にあるため価格相場もやはり高いようだ。しかし品川駅へ30分圏内にまで範囲を広げて探せば、ぐっとリーズナブルな住まいが見つかることがランキングを見ると分かる。

関内駅(写真/PIXTA)
最も価格相場が安かったのはJR京浜東北・根岸線の関内(かんない)駅。2駅先の横浜駅に出て、そこからJR東海道本線に乗り換えれば約28分で品川駅に到着する。価格相場は1765万円で、品川駅よりも3715万円も低いという驚きの結果だ。リーズナブルでありながら、関内駅は横浜市の中心地の一角。駅の東側には横浜スタジアムがあり、南側にはショップが立ち並ぶ伊勢佐木町が広がっている。また、JR京浜東北・根岸線のほかに横浜市営地下鉄ブルーラインも利用可能。この2つの路線の乗り継ぎには改札外を少々歩く必要があるが、ファッションや飲食の店舗が並ぶ地下街「マリナード」を通っても行けるので、雨の日も楽に移動できる。地下街ばかりではなく、駅周辺は地上部分も飲食店やコンビニ、スーパーなど、日常生活に必要な商業施設が軒を連ねている。

山下公園など(写真/PIXTA)
2位はJR京浜東北・根岸線の石川町駅。関内駅の1駅隣なので、価格相場も関内駅から大きくは変わらない1850万円だった。駅の北東側には日本最大の中華街である横浜中華街が広がり、中国料理店の老舗からリーズナブルなテイクアウトグルメ店、雑貨店までがひしめいている。中華街を抜けてさらに進むと、横浜港に面した山下公園へ。公園の周辺には動く実物大ガンダムを2022年3月までの期間限定で展示中の「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」をはじめ、観光客に人気の施設が点在。横浜中華街の周辺と聞くと観光地というイメージだが、石川町駅前にはスーパーがあり、大通り沿いにはマンションも。また駅南側の元町・山手エリアは「フェリス女学院」をはじめ学校が多く、閑静な住宅地としても知られている。駅南口(元町口)から横浜港方面に伸びる元町商店街には、地元の人に愛される老舗も数多い。そして商店街の先には、みなとみらい線の元町・中華街駅がある。石川町駅からは徒歩10分ほどだ。

鶴見駅東口(写真/PIXTA)
3位はJR京浜東北・根岸線の鶴見駅で価格相場は2235万円。1位、2位と同じJR京浜東北・根岸線だが両駅よりもだいぶ東京方面に位置しており、川崎駅でJR東海道本線に乗り換えれば品川駅までは約15分だ。しかし乗り換えずにJR京浜東北・根岸線に乗ったままでも、20分前後で品川駅まで行くことが可能だ。そんな鶴見駅の周辺は商業施設が充実。駅西口にはスーパーも備えた「鶴見フーガ」や、飲食店や書店が並ぶ「ミナール鶴見」といったショッピングビルがある。東口に直結する駅ビル「シァル鶴見」には、食料品店からファッション・雑貨店、レストランまでがそろう便利な環境。また、東口のロータリーをはさんだ向かい側には4位にランクインした京浜急行本線・京急鶴見駅があり、周辺住民は2路線を利用できる。駅の東口、西口ともに個人商店が並ぶ商店街もあり、暮らしやすそうな街並みだ。
トップ4は横浜市の駅だったが、5位~10位には東京都の駅がランクインした。なかでも最も品川駅までの所要時間が短かったのは、7位の京浜急行本線・大森町駅だ。京浜急行本線の普通列車で1駅隣の平和島駅に出て、そこからエアポート急行に乗り換えると約13分。普通列車1本でも、8駅・約22分で品川駅に到着する。駅周辺は住宅地なだけあって、生活に欠かせないスーパーが駅の東西南北いずれにもある。駅西側には惣菜店に飲食店、100円ショップなどが約700mにわたってひしめく商店街「大森町共栄会」も。また、駅から東へ15分ほど歩くと京浜運河に面した「大森ふるさとの浜辺公園」へ。園内には白砂の浜辺が広がっており、日常を忘れてほっとひと息つけそうだ。
「カップル&ファミリー向け」を探すなら横浜市鶴見区を要チェック
鶴見小野駅(写真/PIXTA)
カップル&ファミリー向け中古マンション(専有面積50平米以上~80平米未満)のランキング1位は、JR鶴見線・鶴見小野駅で価格相場は2935万円。2駅先の鶴見駅へ出て、そこから品川駅までは「シングル向け」3位の鶴見駅で紹介したのと同じ経路。すると乗り換え2回・計約22分で到着する。ちなみに鶴見小野駅の隣が6位の国道駅、その次が鶴見駅という並び順だ。さて、鶴見小野駅は基本的に駅員が不在の無人駅で、駅ビルなどはない。駅の南側は工業エリアで、さらにその先には東京湾が広がっている。駅西側には鶴見川が流れているので、住宅地は主に駅の北東方面。駅前には個人経営の飲食店やおむすび店、コンビニなどがあり、5分ほど歩くと鮮魚店や精肉店も。商店街というほどには商店が集中していないが、あれこれまとめて買うなら駅から10分弱のスーパーを利用してもいい。
2位は横浜市営地下鉄ブルーライン・三ッ沢下町(みつざわしもちょう)駅。1駅隣の横浜駅でJR東海道本線に乗り換えると、品川駅までは計約27分だ。横浜駅まで1駅で行ける立地ながら、価格相場は2980万円と抑えめ。横浜駅は4480万円だったので、だいぶリーズナブルに思える。駅の北側一帯は「ガーデン山」と呼ばれる丘陵地。大正時代にこの一帯を所有していた資産家が、私邸に隣接して大規模な植物園を開いたことが名前の由来だとか。戦火を経て広大な土地の大半は売りに出され、現在はマンションや一戸建て住宅が建ち並ぶ住宅地になっている。商店は駅前に飲食店のほかコンビニやミニスーパー、精肉店や青果店が点在しており、ガーデン山一帯の住宅の合間にもスーパーやドラッグストアがある。
3位はJR湘南新宿ライン・保土ヶ谷駅で価格相場は2990万円。1駅・約3分の横浜駅からJR東海道本線に乗り換えると、川崎駅の次が品川駅だ。品川駅まで約24分で行けるうえ、商業施設が豊富な横浜駅や川崎駅にアクセスしやすい点も魅力だろう。保土ヶ谷駅からJR横須賀線1本でも、5駅・約30分で品川駅に到着する。保土ヶ谷駅自体も買い物に便利な環境で、「ビーンズ保土ヶ谷」と「シァル保土ヶ谷」が駅に直結。この駅ビルでは100円ショップやドラッグストア、レストラン、スーパーなどが営業中だ。駅周辺にもスーパーがあるほか、学習塾も点在しているところが子育て世代が住む住宅地らしさを漂わせている。
さて、「シングル向け」ランキングでは神奈川県と東京都の駅がトップ10入りしていたが、「カップル&ファミリー向け」のトップ10はいずれも神奈川県の駅だった。東京都内の駅はランキング最上位が20位(JR京葉線・潮見駅、価格相場3780万円)で、トップ30内でも5駅しかランクインしなかった。品川駅周辺で住まいに広さとリーズナブルさを求めるならば、東京都外で探したほうがよさそうだ。ちなみに調査の基点にした品川駅の「カップル&ファミリー向け」価格相場は7130万円! こう聞くとランクインした駅のリーズナブルさが引き立ち、より魅力的に思えてくるようだ。
「カップル&ファミリー向け」でトップ10入りした駅を改めて見てみると、神奈川県のなかでも横浜市鶴見区の駅が半数を占めていた。区の中心地である鶴見駅の価格相場は3790万円と少し高くなってしまうが、中心部にこだわらず鶴見区内に的を絞って探すと、効率よくリーズナブルな物件が見つけられるかもしれない。
●調査概要
【調査対象駅】SUUMOに掲載されている品川駅まで電車で30分圏内の駅(掲載物件が11件以上ある駅に限る)
【調査対象物件】
駅徒歩15分圏内、物件価格相場3億円以下、築年数35年未満、敷地権利は所有権のみ
シングル向け:専有面積20平米以上50平米未満
カップル・ファミリー向け:専有面積50平米以上80平米未満
【データ抽出期間】2021/2~2021/4
【物件相場の算出方法】上記期間でSUUMOに掲載された中古マンション価格から中央値を算出
【所要時間の算出方法】株式会社駅探の「駅探」サービスを使用し、朝7時30分~9時の検索結果から算出(2021年5月31日時点)。所要時間は該当時間帯で一番早いものを表示(乗換時間を含む)
※記載の分数は、駅内および、駅間の徒歩移動分数を含む
※駅名および沿線名は、SUUMO物件検索サイトで使用する名称を記載している
※ダイヤ改正等により、結果が変動する場合がある
※乗換回数が2回までの駅を掲載
所在地:港区赤坂
所在地:新宿区中落合
所在地:中央区東日本橋2011年の東日本大震災を契機に、全国各地の自治体ではさまざまな防災対策を講じてきた。なかでも高知県黒潮町では、その取り組みで全国にも先進的な「防災のまち」として知られる。「防災」をキーワードに、地域のコミュニティづくりから地域産業の振興へと繋げ、新しい形のまちづくりを推進している同町を訪ねた。
大津波の憂慮を糧に「犠牲者ゼロ」を目指して
高知県の南西部に位置し、太平洋の美しい海岸線には全国屈指のカツオの一本釣りの漁港を有する黒潮町。人口は10,782人(2021年4月現在)、そのうち約40%が65歳以上という、高齢化が進むまちのひとつだ。
東日本大震災後の2012年、そんなまちに衝撃なニュースが飛び込んできた。内閣府の発表で、震度7の地震が起きた場合、最大で34.4mの大津波が押し寄せるというのだ。その規模は日本最大と言われ、太平洋沿岸に主な居住地域が広がる同町は、壊滅的な被害を受けることになる。
また、町外への転出増加も懸念された。これまで出生数を死亡数が上回る自然減が、住民が他地域へ転出することで人口が減る社会減を上回る状態だった同町は、2013年には社会減が自然減を上回り、過疎化が進んでいる町に追い打ちをかけ、住民たちに大きなショックを与えた。それにより町のあちらこちらで「逃げても無理、逃げない」という声が聞こえ、あきらめムードすら漂い始めた。
状況を重く見た同町は、さっそく対策に乗り出すことになる。それは日本最大の津波が襲うまちで「犠牲者ゼロを目指す」という取り組み。その旗振り役を担うのが、2012年に新設された黒潮町役場情報防災課だ。「2021年現在、ハード面の整備はほぼ完了し、防災を通じたコミュニティの活性化など、ソフト面の充実に取り組んでいます」と語るのは、同課南海地震対策係長の宮上昌人さん。

海抜26mの高台に3年前完成した庁舎の前に立つ宮上さん(写真/藤川満)
3つのステップで防災活動を「文化」に育てる古くは684年の白鳳南海地震にさかのぼり、およそ100年に一回のペースで地震に襲われてきた黒潮町。防災に対する意識は低くなかったものの、東日本大震災以前まで同役場には、総務課に消防防災係が存在するのみだった。
「ステップ1として、『避難空間の検証と計画』と『組織体制の整備』を行いました。その一環が、私の所属する情報防災課の立ち上げです」と宮上さん。情報防災課は来たる南海トラフ地震への対策の本丸・南海地震対策係、情報発信をする情報推進係、それ以外の防災を担う消防防災係の3つの係で組織される。
しかし10人にも満たない情報防災課だけでは、十分な対応ができないこともある。そこで役場職員約180人が通常業務に加え、町内の61地区へ赴き、地域の問題の洗い出しや住民とのパイプ役を担う「職員地域担当制」も導入。「黒潮町の防災対策が大きく進捗したのは、この職員地域担当制の導入が大きな役割を果たしました」
この制度を通じて、各地域で住民とワークショップを実施。これが同じステップ1の「避難空間の検証と計画」だ。ワークショップでは「近くに高台がない」「高台は近いが斜面が険しい」など避難場所や避難道の見直しや点検を行い、避難城の地形・物理的課題を図面に整理していった。

住民を交えたワークショップでは、地域の地図を囲み、周辺の避難上の問題点を書き込んでいった(写真提供/黒潮町)
ハード面の整備と具体的な対策で意識の変化を促すワークショップを通じて表面化した避難上の問題点を、より具体的な対策として構築していくのがステップ2。ハード面では「避難空間の整備」、ソフト面では「課題の対策をカルテや処方箋で具体化」をすることだ。
避難空間の整備では、ワークショップで提案され、後に計画された避難道が実際に整備され、2019年度には全ての路線が完成。さらに津波到達予測時間内に高台まで避難できない地区(避難困難区域)の解消を目的に、町内6カ所に津波避難タワーを建設した。

新たに整備された避難道は213路線にも及ぶ(写真提供/黒潮町)

黒潮町で最も高い佐賀地区津波避難タワーは海抜25.4m、収容人数230人を誇る(写真/藤川満)
ほかにも約120カ所の備蓄倉庫や約900カ所の津波避難誘導標識の設置など、住民では補いきれないハード面での整備を黒潮町が主体となって実施してきた。一方で住民が主体となった取り組みがカルテづくりだ。
ステップ1で表面化した避難上の課題に対するカルテや処方箋とは、家族や個人にあわせた具体的な避難計画づくり。そのために津波浸水が予想される全世帯の避難行動調査が行われた。「世帯別津波避難行動記入シート」を制作し、家族構成や連絡先はもちろん自力で避難できるかどうか、徒歩や自動車などの避難方法などを、まさにカルテのように細部にわたって目に見える形にしていった。
集まったカルテは、津波浸水の可能性がある40集落の全世帯3791世帯分。これらをもとに、地域の人たちによる地区防災計画をつくることで、『我がこととして感じられる手づくりの防災計画』として意識してもらうのが狙いだ。
処方箋である地区防災計画には、屋内での避難訓練、地区一斉での家具固定、世帯ごとの避難場所への備蓄、学校と連携した防災お年寄り訪問なども検討され、地域の特性に合わせた計画が盛り込まれていった。

地元の学校と連携したお年寄り訪問なども行い、コミュニティの世代間の交流を生んでいる(写真提供/黒潮町)
住民の主体性を喚起し、防災活動を日常に「現在はステップ3の段階です。ステップ2を契機に、徐々に行政主体から住民主体の取り組みへとシフトチェンジをしているところです」と宮上さんは現状を語る。これまで行政の呼びかけによって実施されてきた取り組みを、住民が自主的に行っていくことがステップ3の最終目標だ。
今後も引き続き防災教育や訓練を徹底し、さらに住民主体の防災活動の活発化を促すことで、地域にタテとヨコの連携が生まれる。「現在すでにこれまでの防災活動を通じて、コミュニティが目に見えて活性化してきているようです。あきらめムードだった雰囲気が変化してきています」と宮上さんも手応えを感じている。
現在黒潮町では、認知症や障がいのある人、つまり要配慮者の避難支援に向けての対策にも乗り出している。宮上さんは「住民にお願いするだけでなく、福祉・防災・まちづくりという部署の枠を越えた、支援のあり方を検討しています」と次の課題に向かって日々汗を流す。
防災を通じたまちづくりに取り組む黒潮町。それは新たな産業を生み出すことにも繋がっている。次に足を運んだのは、同町の防災対策の取り組みのなかで生まれた黒潮町缶詰製作所だ。
人口減少を食い止める一助としての新産業過疎が深刻化していく黒潮町では、2012年、前町長肝いりで「WE CAN PROJECT」が立ち上がった。その立ち上げメンバーのひとりが、当時同町職員で、現在黒潮町缶詰製作所で営業・広報を担当する友永公生さんだ。友永さんは東日本大震災発生の1週間後に現地へ足を運んだ経験を持つ。「これまでの日本の防災対策がいかに甘かったかを痛感した」と、その風景を目の当たりにした時を振り返る。
同プロジェクトは、「34.4mの大津波来襲予想」のニュースを機に、あきらめムードが蔓延していた町内で、その考えを改め「自分たちがやるんだ」という思いを込めて、さらに事業の実現性を高めるため、町長と担当職員に加え、食や地域おこしの専門家を交えてプロジェクトチームを組織化。「もしもの防災時に役立つもの」をつくることで産業と雇用を生み出し、人口減少を少しでも食い止めることが命題だ。

黒潮町缶詰製作所の青い看板には、「34m」と書かれた旗がシンボルマークになっている(写真撮影/藤川満)
商品として白羽の矢が立ったのが缶詰。防災食品で安定して保存・保管できることが決め手となった。2013年には前町長が社長となり第三セクター方式で同製作所を設立。フードプロデューサーや小売りのプロなどのアドバイスをもとに商品の開発を目指した。「アドバイザーの方以外は、全員が素人。なにもかもが手探りでした」と設立当時の様子を語る友永さん。
試行錯誤を繰り返していた商品開発は、被災地での食物アレルギー対応の難しさを東日本大震災の現地で耳にしたことで、「7大アレルゲン(食品表示法で表示が義務付けられている「特定原材料7品目」。乳・卵・小麦・そば・落花生・えび・かに)不使用」へと舵を切ることになる。しかも美味しさも求めるというハードルの高さ。
大学の機関とも連携し生み出された缶詰は、前町長のトップセールスで高知県内全自治体へ売り込みをかけた。備蓄食でありながら、日常でも楽しめるそれらは400円以上するものが中心。「『高い』という批判はありましたよ」と苦笑する友永さん。とはいえ、味の良さ、洒落たラベルデザインで話題となり、メディア露出も増え、売上げは右肩上がりに。

右から「土佐はちきん地鶏ゆず塩仕立て」(650円、以下すべて税込)、「トマトで煮込んだカツオとキノコ」(475円)「カツオの和だし生姜煮こごり風」(475円)(写真/藤川満)
例えば人気商品の一つ「土佐はちきん地鶏ゆず塩仕立て」は、缶詰めでありながら、しっかりとした地鶏の歯応えがあり、噛むほどに旨みが広がる。さらにユズの爽やかさがほんのり後を引く。そんな手の込んだ味わいが成城石井、無印良品などの有名量販店の目にもとまり、現在は全国100店舗以上で販売されるほどになった。

商品の缶詰を前にする友永さん。現在は黒糖など地元特産品を使ったスイーツの缶詰にも取り組む(写真/藤川満)
当初4人だった従業員は現在17人まで増え、直近の生産量は年間25万個を達成。「ある程度の雇用は生み出せた。次はメーカーとしてさらにお客様をワクワクさせるような取り組みをして行きたい」と抱負を語る友永さん。安心安全はもちろん、美味しさまで兼ね備えた新しい備蓄食の答えの一つがここにあるようだ。
引き続き少子高齢化による緩やかな人口減は進んでいるものの、2018年には転入者が転出者を上回る社会増を達成した黒潮町。防災対策だけでなく、「防災」を媒体として地域の活性化を成し遂げつつある。逆境を見事に逆手に取った成功例として、今後も取り組みに注目していきたい。
●取材協力
黒潮町
黒潮町缶詰製作所
所在地:杉並区高井戸東
所在地:杉並区高井戸東2021年7月10日からスタートする「東京ビエンナーレ2020/2021」で進行中の「災害対応力向上プロジェクト」。一見、アートから遠いように思える防災に国際芸術祭が取り組むと言います。その理由などを建築家でこのプロジェクトチームの一色ヒロタカさんに伺いました。
江戸の町火消しに着目、アートで地域コミュニティを創出したい
東京を舞台に開催する国際芸術祭、東京ビエンナーレ(開催期間:2021年7月10日~9月5日)。世界中から60組を超える幅広いジャンルの作家やクリエイターが東京に集結し、市民と一緒につくり上げていく芸術祭です。

テーマの「見なれぬ景色へ」は、「アートの力で都市の街並みに変化を起こしたい」という思いが込められている。栗原良彰《大きい人》2020 千代田区丸の内 Photo by ただ(YUKAI)(画像提供/東京ビエンナーレ)

アーティストの力で、「あ、この景色は何だ?」と思わせる。セカイ+一條、村上、アキナイガーデン《東京型家》完成イメージ図 2019 ©セカイ(画像提供/東京ビエンナーレ)

ビルの壁一面に描かれた絵画。古いオフィス街に出現した巨大なアートへの違和感は、街に対する意識の変化につながる。Hogalee《Landmark Art Girl》2020 神田小川町宝ビル Photo by YUKAI ©東京ビエンナーレ(画像提供/東京ビエンナーレ)
そのコンテンツのひとつ、「災害対応力向上プロジェクト」は、アートから災害にアプローチする新たな取組み。芸術祭で災害や防災をテーマしたのはなぜでしょうか。
「アートを通じて、新しい地域コミュニティを生み出すことが目的です。地域コミュニティは、災害時の コミュニティにつながります。『火事と喧嘩は江戸の華』と謳われたように、江戸の町は火事がとても多かったんです。火事の被害を食い止める消防組織である町火消しは、町人が自主的に設けたもの。江戸の防災は、地域コミュニティと深く関わっていたのです」(一色さん)

上左から時計回りに、一色ヒロタカさん、村田百合さん、渡邉莉奈さん、内藤あさひさん。2年間、街のフィールドワークや催事に参加し、住民の声を集めながら、プロジェクトに携わってきた(画像提供/オンデザイン)
東京都が区ごとに作成しているハザードマップを見ると、地震だけでなく、洪水・浸水・土砂災害などさまざまな災害が予想されています。
さらに、2019年12月には新型コロナウイルスが発生し、東京ビエンナーレは2020年夏の開催が延期に。2018年の発足時から掲げてきた東京ビエンナーレのコンセプトのひとつである「回復力」が、より切実なテーマとしてアーティストに突き付けられたのです。
「地震・雷・火事・水害等を対象にしてきましたが、コロナという大災害をふまえて、現在もプロジェクトをアップデートしようと模索を続けています。コロナ禍で自分と向き合う時間が増え、リモートワークなどで生活環境も大きく変わりました。災害が起きたとき、住んでいる街で、自分がどう行動するのか意識されるようになったのです。ところが、街全体の防災計画はあっても、個人レベルの細かい対策は、分からないことが多いんですね。そこで住民一人ひとりの悩みや不安に向き合ったアプローチをしようと考えました」(一色さん)
アーティストの視点で、街の課題・関係性を「見える化」このプロジェクトを統括する事務局は、一色さん、村田百合さん、渡邉莉奈さん、内藤あさひさんによるチームで企画・運営しています。4人は東京ビエンナーレの全会場計画を担当している設計事務所オンデザインに所属する建築家です。オンデザインでは、住宅や各種施設の設計のほか、街づくりにも積極的に取り組んできました。
なかでも3.11のあと宮城県石巻市のまちづくり団体ISHINOMAKI2.0の立ち上げに関わった経験は、今回のプロジェクトに活かされています。

ISHINOMAKI2.0は、2011年5月に設立。震災前より今より街をバージョンアップしようと活動を続けている(画像提供/オンデザイン)
「震災前の元の街に戻すのではなく、石巻を世界でいちばん面白くて新しい街にしよう! という思いで会社として取り組んでいます。地域住民と対話しながら、津波で閉じてしまったシャッター街を、新しい街につくり変えるなど10年間拠点づくりをしてきました。街は地域住民の生活の器です。建築物をつくるだけでなく、地域の課題や関係性をふまえて街全体を設計するのも建築家の役割だと考えています。地域住民の不安を発掘し、課題を『見える化』するプロセスは、アートを手掛かりに街の課題を考えていく今回のプロジェクトに通じます」(一色さん)
そこで、災害対応力向上プロジェクトでは、災害対策ではなく、「災害を受け止められる地域のコミュニティをつくる」ことを最終目標に挙げています。
2019年8月に、フィールドサーベイを神田エリアで実施し、地域住民とフィールドワークをしながら、災害につながる危険な場所をリサーチ。リスクを『見える化』する取組みがスタートしました。

一色さんほかプロジェクトメンバーが同行して行われた神田エリアフィールドサーベイの様子 2019年8月実施(画像提供/オンデザイン)
「わたし」の不安に「わたしたち」が答えるVOICE 模型東京ビエンナーレは千代田区・中央区・文京区・台東区を中心に、周辺の区へも滲み出しながら開催されますが、災害対応力向上プロジェクトは、千代田区を中心に展開します。住民やこのエリアを活動拠点としている方々から、ヒアリングによって拾い上げた声を視覚化した「VOICE模型&MAP」を展示の軸として制作が進んでいます。

VOICE模型&MAPには、ヒアリングから得られた課題を「 VOICE」として表出させ、展示を見に来たさまざまな方々からの「アンサー」により、参加型で課題解決を図るアプローチを試みる(画像提供/オンデザイン)
「今はヒアリングの段階で、千代田区の社会福祉協議会や五軒町の町内会など、地域のさまざまな人から声を集めている最中です。個人の不安・課題(VOICE)に、地域の資産(人・スキル・物)を集め、シェアできる場になれば。どこにどんな声があるかMAPで分かるようにして、具体的な解決を模型で表現しています。例えば、『庭を囲んでいる塀が倒れたら?』という不安には、『避難路に崩れたブロックをどかす軍手が必要だ』『前回の地震で、夜間の避難は、懐中電灯があって助かった』というアドバイスが集まります。家の模型やグッズで示し、具体的に解決する手段を伝える試みです」(渡邉さん)

「地震で塀が壊れたらどうしよう」という一人の不安に対し、「歩行者を守る修繕なら区からの補助金で直せるよ」「もしもの時、足元が悪いから懐中電灯を備えておくと安全だよ」など皆からアドバイスが集まる(画像提供/オンデザイン)
無印良品計画とのコラボ「いつものもしも、市ヶ谷」開催中、神田五軒町と市ヶ谷に2カ所の仮設防災センターを設置する予定です。「いつものもしも、神田五軒町エリア」は、民設民営のアートセンター3331Arts Chiyoda前のビル1階のテナントスペースに期間限定の仮設拠点として設けられ、VOICE模型&MAPの展示や防災の知識を学ぶワークショップ等が行われる予定です。

「いつものもしも、神田五軒町エリア」は、空きテナントを利用し、会期中に設置される予定(画像提供/オンデザイン)

神田五軒町と市ヶ谷の2拠点で開催(画像提供/オンデザイン)
「いつものもしも、市ヶ谷エリア」は、MUJI com武蔵野美術大学市ヶ谷キャンパス店内に特設します。 良品計画では、毎月11日から17日までを『くらしの備え。いつものもしも。』期間とし、防災に役立つ商品をコラムと共に紹介しています。そのノウハウを活かし、東京ビエンナーレと良品計画のコラボした防災セットの展示や販売を行います。

人によって必要な防災グッズは異なる。東京ビエンナーレと良品計画のコラボした防災セットの販売のほか、それぞれに合った防災セットのつくり方を提案する予定(画像提供/良品計画)

「いつものもしも、市ヶ谷エリア」は、良品計画の店舗内に設置が予定されている。市ヶ谷には、学校やオフィスが多い。店舗を訪れる様々な年齢層が参加できる場をつくろうと企画中(画像提供/良品計画)
「個人の声にとことん向き合うことで、街を変えていきたい。マンションに住んでいて地域コミュニティへの参加が難しいなど、自分と同じような声と出会い、『わたし』から『わたしたち』へ街を見る目が変わっていきます。東京ビエンナーレのキャッチフレーズは、『見なれぬ景色へ』。当たり前だった街の景色を変えられたとしたら、それはアートの力です。関係性によって生まれる街の魅力は、不動産価値だけではかれない街の価値です。建築家としての視点で、人や都市にアプローチして、見えないものを表出していきたいと思っています」(一色さん)

オンデザインの自主メディア「BEYOND ARCHITECTURE」では、プロジェクトに携わる人へのインタビューなど活動内容を発信している(画像提供/オンデザイン)
東京ビエンナーレは、今後、2年に1度開催される予定です。アートで復元・出現した地域コミュニティに関わることで、新たな「わたし」を発見できる。アートのための催事に終わることなく、市民レベルの体験を生み出そうとチャレンジが続いています。
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無印良品の“日常”にある防災、「いつものもしも」とは
●取材協力
・東京ビエンナーレ
・オンデザイン
・BEYOND ARCHITECTURE
所在地:目黒区八雲
所在地:中央区勝どき
所在地:渋谷区広尾
所在地:大田区矢口
所在地:港区芝公園
所在地:新宿区須賀町コロナの影響でテレワークが当たり前となり、「都会で暮らす意味ってなんだっけ……?」と思っていませんか? 現に、二拠点居住や移住を考える人も増えているようです。そんな人たちに参考になりそうなのが、都会生まれ都会育ちの漫画編集者が田舎という異世界で暮らす様子を赤裸々に描く実録マンガ『漫画編集者が会社を辞めて田舎暮らしをしたら異世界だった件』(講談社)です。原作者のクマガエさんに田んぼとお住まいで話を聞いてきました。
深夜も土日も仕事。朝まで新宿ゴールデン街で飲み歩いていた漫画編集者時代
『漫画編集者が会社を辞めて田舎暮らしをしたら異世界だった件』(講談社 (c)クマガエ/宮澤ひしを 講談社)
本作は、主人公・佐熊陽平が激務の漫画編集者時代を振り返るところから物語がはじまります。主人公のモデルはクマガエさん自身で、自身の移住体験をもとに話は展開していきます。

『漫画編集者が会社を辞めて田舎暮らしをしたら異世界だった件』の冒頭。明け方までの激務(画像提供/講談社 (c) クマガエ/宮澤ひしを 講談社)

誰が言ったか、「田舎暮らしは異世界暮らし」(画像提供/講談社 (c) クマガエ/宮澤ひしを 講談社)
「編集者時代は終電後に飲みに行って、朝5~6時まで飲んで、さらにもう1軒……なんてこともざらでした。土日も関係なく働いていましたし、だいたい朝に寝てお昼に出社できればいい方という日々です」とクマガエさんは振り返ります。妻のルキノさんと出会ったのも新宿ゴールデン街がきっかけだといい、二人はかつての暮らしを「なぜあんなに飲んでいたのか分からない」と笑うほど。
その多忙な生活に疲れ、“異世界”である田舎で稲作をはじめたのは、今から6年前。コロナ禍のさなか、今年4月、『漫画編集者が会社を辞めて田舎暮らしをしたら異世界だった件』単行本1巻が発売となり、田舎暮らし・郊外暮らしを描いているということで注目を集め、メディアからの取材も続いているといいます。

クマガエさん(写真撮影/土屋比呂夫)
「読者で多いのは、私がそうだったように30代前半から半ばでしょうか。多忙な都会の日々に限界を感じている、特に最近では仕事がテレワークになったことで移住や二拠点生活ができるのではないか、と考えはじめるようです。あとは、大学生なども読んでくれていて、働き方や生き方について考えさせられましたといった声が届いています」(クマガエさん)
給料は伸びなくても、都市部の家賃や住宅ローンの負担はずしりと重くのしかかります。日々、忙しく働いているのに、「手元にお金も残らず、家も狭いし、これって幸せなんだっけ?」と思う気持ち、よく分かります。

漫画編集者を辞めようと悩むものの……(画像提供/講談社 (c) クマガエ/宮澤ひしを 講談社)

会社員を辞めて「田舎暮らし」という異世界へ踏み出します(画像提供/講談社 (c) クマガエ/宮澤ひしを 講談社)
田舎+古民家ライフができるのはバーサーカー(狂戦士)だけ!?現在、クマガエさんがしているのは、いわゆる「ど田舎にある古民家・自然派暮らし」ではありません。1話目冒頭で紹介されている通り、住まいは築浅の賃貸アパート、近くにはカフェもあり、東京にも電車で1時間半ほどでアクセスできるなど、都内に出社できないこともない、田舎と郊外の狭間での暮らしです。
「マンガで描いているように、私自身も米づくり体験→会社を辞めることを検討→田舎で空き家探し→移住の流れです。空き家探しは、会社を辞める前提で家賃を抑えられたらいいな~と、気楽に考えていたんですが、まさに異世界体験となりました。修繕しないですぐ住める家はないし、前の住人の荷物で ゴミ屋敷と化していたり。都会の賃貸物件を内見する感覚でいたので、めちゃくちゃびっくりしました。でも、地方や田舎出身の人に話を聞くと、よくある話みたいですよ(笑)」といいます。

異世界・田舎での家探しがスタート(画像提供/講談社 (c) クマガエ/宮澤ひしを 講談社)

しかし思ったようにいかず……(画像提供/講談社 (c) クマガエ/宮澤ひしを 講談社)
家探しの前提条件が違うのは衝撃ですよね。同じ時代の同じ国、同じ言葉を話すのに「言葉や感覚が違う」というのはまさには、異世界転生。なんか……バグっていく感覚です。
妻のルキノさんは、もともと引越しが大好きで、賃貸の更新をせずに引越したいと思うタイプ。ただ、夫妻二人ともに都市部育ちということもあり、便利な東京23区外で暮らせるのかという不安はあったそう。
「結局、いい空き家が見つからず、知人の古民家に間借りというかたちで田舎暮らしが始まりました。実際に古民家で暮らしてみて、家の修繕を自分でできて、暑さ寒さや湿気、虫の多さも気にしない、過酷な環境にも対応できるバーサーカー(狂戦士)じゃないと、あの生活はできないだろうと痛感して。それで今の賃貸に落ち着きました。SUUMOで探した気がします(笑)。今の家は家賃7万円台、広さ60平米弱の2LDKで、駐車場1台付きです。東京時代は夫婦二人で渋谷区のワンルーム暮らしで30平米未満、家賃は10万円超でしたからねえ」としみじみと振り返ります。

夫妻が暮らす賃貸アパートのリビング。陽がたっぷりと入り、のびのびとした空間(写真撮影/土屋比呂夫)

ベランダでは収穫した玉ねぎを乾燥させています(写真撮影/土屋比呂夫)

デスクを並べて夫妻でお仕事。奥の壁は原状回復できる色付きの壁紙で明るくし、画の額縁も自作。DIYスキルも上がっています(写真撮影/土屋比呂夫)
稲作6年目、そろそろレベルアップ!? 海の近くへ引越しも検討中「今は米づくりのほかに、畑で野菜を育てるほか、ぬか漬け、梅仕事、味噌づくりなど、田舎暮らしの経験値もぐっと溜まってきました。半農半X、つまり米づくりや畑や農作業のほか、今までもっているスキルをかけあわせて、農作業のほかに、フリーランスのマンガ編集者、漫画原作などを並行して暮らしています」

自宅でとれた稲の糠をつかってのぬか漬け(左)と梅干しづくり(右)にも挑戦中。手仕事って見ているだけでも楽しい(写真/土屋比呂夫)
田んぼ作業がある日は朝6~7時ごろに起きてお弁当を持って田んぼへ行き、夜には自宅で食事。23時には就寝と、夫妻二人、東京にいたころに比べれば“人間らしい”暮らしを送っています。「田んぼ仕事って、年中、忙しいわけではなくて、5月半ばの田植えのあとは、週1回程度の草引きを2カ月ほどやれば大丈夫なんです。今の田んぼは4家族でシェアして使っていますが、去年は夫婦二人で食べきれないほどのお米(110kg程度)が収穫できました」(クマガエさん)

東京から電車で2時間弱。広い空と水田に心和みます。日本人の原風景なんでしょうね、きっと(写真/土屋比呂夫)

(写真撮影/土屋比呂夫)

草取りは“ニルヴァーナ(涅槃)“だったのです。解脱も近い?(画像提供/講談社 (c) クマガエ/宮澤ひしを 講談社)
この生活をすることで、物欲も減り、飲み会も行かなくてもいいかな、と思うようになりました。友人と集まって一緒に味噌づくりをしたり、味噌の完成お披露目会をしたり、そんなことが楽しいですね。今はどこでも味噌が売っていて、買えますよね。一見、すごく便利なようだけど、実はみんなでわいわい味噌をつくるような楽しい機会を奪われているんじゃないか……って思うようにもなりました。あと家事の大切さ、家仕事の価値がすごく低く見積もられている気がします」(クマガエさん)
確かに家事って生きる日々の営みですものね。おろそかにしていいことではない気がします。今、二人は、賃貸で快適な暮らしをキープしつつ、農作業と仕事をする「ちょうどよい暮らし」をしているように見えますが、実はレベルアップ(?)も間近だとか。
「一度、東京都心の塀のなかから飛び出したことで、『あ、私たち、郊外でも暮らせるんだ』って、自信がついた感じでしょうか。もう都会暮らしは無理かもしれませんが、もうちょい不便でも暮らしていけるかも」とルキノさん。今、引越し先として考えているのは海の近くで、農作業ができるエリアだとか。

(写真撮影/土屋比呂夫)

(写真撮影/土屋比呂夫)
「こうやって取材を受けるなかで、そろそろ次のレベルにいってもいいかもな、と思うようになりました。今の場所を見て、『田舎じゃない』っていう人もいるんですけれど、田舎って言ってもグラデーションになっていて、いろんな人がいて、場所がある。もしハードルが高いと感じるなら、いきなり移住・引越ししなくたっていい。まずは農作業経験とかに参加してみたり、軽い気持ちでチャレンジしてもいいと思うんですよね」とクマガエさん。
コロナ禍を経て、私たちの働き方、暮らし方は大きく変わろうとしています。郊外や地方での暮らしのハードルはぐっと下がっている今、農作業と仕事を自分らしく楽しむ「半農半X」という方法で、無理せずやりたいことを実現するのは、決して夢物語ではありません。もしかしたらクマガエさんのように異世界に踏み出す勇者は、続々と現れるのではないでしょうか。
●取材協力
『漫画編集者が会社を辞めて田舎暮らしをしたら異世界だった件』公式Twitter
1話試し読み
作画担当 宮澤ひしを先生Twitter
所在地:杉並区高円寺南
所在地:杉並区久我山
所在地:渋谷区恵比寿2021年4月、セーフティネット登録住宅の基準に新たにひとり親世帯向けシェアハウスの基準が設けられました。これにより、ひとり親世帯の住まいの選択肢として「シェアハウス」が増えることが期待されています。
今回の基準新設は、物件のオーナーさんや自治体、そしてひとり親世帯にどのような影響を与えるのでしょうか。専門家、自治体、そして実際に制度を活用したシェアハウスのオーナーさんに話を聞きました。
ひとり親向けのシェアハウスが抱えてきた“問題”とは?今回の基準新設は「セーフティネット住宅」の制度についてなされたもの。低額所得者や高齢者、被災者、子育て世帯など、住宅の確保が難しい人に対して“入居を拒まない住宅”として、登録している住宅のことを言います(制度と基準新設についての詳細)。一定の収入以下の世帯が入居できる公営住宅だけではカバーしきれない、さまざまな立場の住宅弱者のために2017年、新たな住宅セーフティネット制度が施行され、その中にはシェアハウスの基準もあるのですが、実はそれはこれまで“単身者向け”のシェアハウスを対象としたものだったのです。近年、ひとり親世帯向けのシェアハウスのニーズが高まっていることにともない、今回の基準新設に至りました。
これまでの公的な住宅施策は住居しての“ハード”を提供するものでしたが、育児、家事、仕事を全てひとりで行わなければならないひとり親の生活には、“ソフト”であるサービスの存在も欠かせません。保育や家事代行などのサービスを付帯する住まいとして、また、ひとり親の「孤立」を防ぎ、「自立」を促す住まいとしてシェアハウスが注目されてきたのです。さらに新型コロナウイルスの影響によって、特に低所得のひとり親世帯が失業や減収などで生活に困窮する状況も、この基準新設を後押ししたことでしょう。

ひとり親向けシェアハウスの基準新設について国土交通省から出された通知(資料/国土交通省)
ひとり親向けシェアハウスの基準新設について国土交通省から出された通知(資料/国土交通省)
母子世帯の貧困と居住福祉について研究を深め、今回の基準新設においても尽力をし続けてきた追手門学院大学准教授の葛西リサさんは、「この基準ができるのには6年くらいかかったが、コロナ禍もあって昨年一気に実現へ向けて協議が進んだ」と言います。
「私がひとり親向けシェアハウスの研究に着手をしたのは、2008年ごろからです。ひとり親世帯は所得の低い世帯が多く、入居しやすい住宅を提供しようとすれば家賃を低めの価格帯に設定する必要があります。そのため、これまでひとり親世帯をサポートしたい、という想いを強く持ちながらも、採算が取れずに廃業・撤退したシェアハウスの運営者の方も多く見てきました」(葛西さん)

研究者としてこれまでひとり親向けシェアハウスの基準新設に尽力をしてきた追手門学院大学の葛西リサさん(写真撮影/唐松奈津子)
いち早く制度を活用したシェアハウスは?この“採算性が取れない”問題を解決し、想いを持つシェアハウス運営者の後押しをするために、「住宅セーフティネット制度にひとり親向けシェアハウスの基準を設けることが必要だった」と葛西さんは言います。
「自治体が制度を設けている地域の物件をセーフティネット専用住宅として登録すれば、オーナーさんが家賃低廉化や改修のための補助を得ることができます。特に家賃低廉化補助、つまりオーナーさんに支給される家賃補助にあたるものは、国と自治体の負担分をあわせると最大で月4万円。その分、賃料を下げることができるので、入居するひとり親世帯の負担が軽くなります」(葛西さん)

(写真/PIXTA)
実際にこの制度を導入した横浜市で、ひとり親向けのシェアハウスを営むYOROZUYAの小林剛さんは「セーフティネット住宅として登録しただけでも、問い合わせが増えた」と言います。
「ひとり親、特に母子世帯のなかには、DVなどの問題を抱えてまだ離婚ができていない人もいます。そのようなケースでは、一般の賃貸住宅では入居が難しいことが多いので、こちらに入居できないか、という相談が来るのです。
入居できる住まいを求めてインターネットでシェアハウスを検索するひとり親の中には、さまざまな公的なサポートの存在を知らない人も多くいます。結果的にうちの物件に入居にならなくても、ほかに活用できる制度について確認するよう話したり、ただ相談に乗ったりするだけでも不安が和らいだ、と言ってもらえることがたくさんあります」(小林さん)

今回、取材に協力してくれたYOROZUYAの小林剛さん。2020年10月にセーフティネット専用住宅としての登録が完了し、今年の3月に家賃低廉化補助金の受給が決まった(写真撮影/唐松奈津子)
自治体にとっても居住支援制度への導入がしやすくYOROZUYAが所在する神奈川県横浜市は、今回の基準新設よりも先駆けて、2019年からひとり親向けのシェアハウスの基準を独自で設けてきました。この背景について横浜市建築局の石津啓介さんと小島類さんに話を聞いたところ、実際にひとり親世帯向けシェアハウスの運営者などから「独自で基準を設けてくれないと、運営の実態と登録基準とが合っておらず、制度を活用できない」という要望が出ていたと言います。
「横浜市では、独自基準を設けるまでに市民の方々の声を拾うほか、他の自治体の事例調査やアンケート調査など、さまざまな調査・検討を行う必要がありました。今回、国が明確な基準を示したことによって、全国の地方自治体で制度を設けやすくなったことは間違いありません」(石津さん)

横浜市建築局住宅部住宅政策課の石津啓介さん(右)と小島類さん(左)(写真撮影/唐松奈津子)
横浜市では、2018年度からの4カ年計画の中で、2021年度末までに家賃補助付きセーフティネット住宅の供給目標として700戸を掲げていますが、まだ1割程度しか達成できていないそう。「空き家、空室に悩むオーナーさんにも積極的にこの制度を活用してほしい」と言います。
「オーナーさんが家賃低廉化の補助を受けるには、セーフティネット “専用住宅”として登録する必要があります。1棟物件を所有されている場合は、その中の1戸から専用住宅として登録することが可能です。セーフティネット住宅となったことで問い合わせが増えたという話も聞きますので、空き家や空室にお困りのオーナーさんには、一つの選択肢として検討していただきたいと思います」(小島さん)
住宅セーフティネット制度の活用を広げるためにこのように、オーナーさんが専用住宅とすることに不安を感じる以外にも、この制度の活用においては、まだ、さまざまな課題があるようです。小林さんは「まず、十分な周知がされているのかが心配」と不安を漏らします。
「私は全国ひとり親居住支援機構というNPOに所属しているので、この制度のことを知っていましたが、制度の存在自体を知らないオーナーさんも多いのではないでしょうか。
また、セーフティネット住宅に登録する手続きと家賃低廉化の補助を受けるための手続きが別で、申請先が異なることも私は登録後に気づきました。セーフティネット住宅に登録すれば、自動的に家賃低廉化の補助を受けられると思っていたのです。このような手続きの煩雑さも登録への障害になっているかもしれません」(小林さん)

小林さんが運営するシェアハウスYOROZUYA(写真提供/YOROZUYA)

家賃は6万円~8.95万円だが、家賃低廉化補助の4万円を活用すれば、2万円~4.95万円で入居できる(写真提供/YOROZUYA)
加えて、制度の運用は各地方自治体によって異なるため、セーフティネット住宅に登録しても、家賃低廉化補助の制度がない自治体もあるそうです。
「シェアハウスの運営事業者にとっては、家賃補助がなければ物件登録のメリットは感じづらくなります。コロナ対策などでの自治体の財政難も理解できますが、コロナの影響を受けた人へのサポートとしても、また空き家や子どもの貧困などの社会問題解決のためにも、セーフティネット住宅の拡大は重要です。
その一つとして、これらの問題解決に有効なひとり親向けシェアハウス普及へ向け、各自治体には家賃補助付きでの制度設計を積極的に行ってほしいと願います」(葛西さん)
これからのひとり親の住まいにはどんな選択肢が?横浜市では、現在、約8000戸のセーフティネット住宅が登録されていますが、その中で家賃低廉化の補助を受けられるひとり親向けのシェアハウスはわずか10戸だと言います(2021年6月20日現在)。今回の基準新設により、ひとり親向けシェアハウスをはじめとするセーフティネット専用住宅の登録が増えれば、一般賃貸住宅や公営住宅とあわせて、住宅の確保が難しい人にとって有効な住まいの選択肢の一つとなりうることでしょう。
住宅セーフティネット制度に登録されている住宅は、国土交通省の運営する「セーフティネット住宅情報提供システム」のサイトから探すことができます。また、入居を検討している人の相談に乗り、入居の支援をしてくれる窓口として各地方自治体には「居住支援協議会」の設置や「居住支援法人」の登録がなされています。

新たな住宅セーフティネット制度の3つの柱(資料/国土交通省)
今回取材した皆さんが声をそろえて言うように、困っているときには、これらの窓口に相談しながら、サポートが受けられる制度を活用したいものです。また、このような取り組みを多くの人に知ってもらい、困っている人がいたときには「こんな制度があるから相談してみたら」と声をかけられるといいですね。
●参考
・ひとり親世帯向けシェアハウスの基準を新設/国土交通省
登録住宅について:セーフティネット住宅情報提供システム
住宅確保要配慮者居住支援法人について:国土交通省
●取材協力
・追手門学院大学 地域創造学部 准教授 葛西リサさん
・シェアハウス YOROZUYA
・横浜市 建築局住宅部 住宅政策課「家賃補助付きセーフティネット住宅」
所在地:目黒区中目黒
所在地:文京区大塚
所在地:三鷹市上連雀
所在地:世田谷区代田
所在地:板橋区赤塚
所在地:中野区本町65歳からの部屋探しを支援するR65が、全国の「65歳以上」と「20~30代」を対象に、65歳以上が住宅難民になりやすいことについて調査したところ、意識にギャップがある実態が浮かび上がった。詳しく見ていこう。【今週の住活トピック】
「65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題」に関する調査結果を公表/R65
実は、高齢者は賃貸住宅を借りづらいという現実がある。年金収入だけで貯蓄を取り崩すなどにより家賃が払えなくなるリスクに加え、高齢になると火の不始末による火災などのリスクが高くなり、さらに単身者の場合は孤独死のリスクも生じるなど、貸主が高齢者に貸すことを敬遠するといったことがあるからだ。
内閣府の「高齢者の住宅と生活環境に関する調査」(平成30年度)によると、「住まいに関して不安と感じていることがあるか」と聞いたところ、60歳以上の持ち家層では24.9%が「ある」と回答したのに対し、60歳以上の賃貸住宅層では36.5%が「ある」と回答した。賃貸住宅層のほうが不安を感じている人が多いのだ。
調査で住まいに関して不安を感じている賃貸住宅層に、具体的にどのような点を不安に感じているかを聞くと、「高齢期の賃貸を断られる」(19.5%)、「家賃等を払い続けられない」(18.2%)を挙げている。このことからも、高齢期に賃貸住宅を借り続けることが難しいと感じている人が多いことが分かる。
その実態を具体的に調べたのがR65の調査だ。実際に「不動産会社に入居を断られた経験があるか」を聞くと、全国では23.6%が「はい」と回答した。関東圏に限ると断られた経験がある人は27.9%にまで上がる。さらに、断られた経験の回数を聞くと、「1回」という人が半数近くになるが、「5回以上」という人も13.4%(関東では17.6%)もいた。

出典:R65「『65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題』に関する調査」より転載
20~30代では、高齢者が賃貸住宅を借りづらい現状を知らない人のほうが多い次に、20~30代に、こうした「65歳以上がほとんどの賃貸住宅を借りられない現状を知っているか」聞いたところ、「はい」という回答が65歳以上では64.2%だったのに対して、30代では41.4%、20代では35.6%とその差がかなりあるという結果になった。

出典:R65「『65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題』に関する調査」より転載
こうした現状を知った20~30代は、「高齢者の受け入れはリスクが伴うのでしょうがない」53.8%(とてもそう思う16.2%+まあそう思う37.6%)と思うと回答する一方で、「年齢を理由に住まいを選択できないことはおかしい」(63.0%)、「将来のことを不安に思う」(67.8%)、「社会課題としてもっと周知されるべき」(72.7%)などの問題意識も高めている。

出典:R65「『65歳以上が賃貸住宅を借りにくい問題』に関する調査」より転載
高齢者向きの賃貸住宅を探すには?高齢者が住みやすい賃貸住宅は、貸主が入居を拒まないだけではなく、立地のアクセスのよさや段差などがないバリアフリーな建物であることが求められる。となると、部屋探しはなかなか大変だ。
公的な住宅としては、UR都市機構のUR賃貸住宅の高齢者向けの賃貸がある。また、国土交通省では、住宅確保要配慮者(高齢者や障がい者、低額所得者など)の入居を拒まない賃貸住宅(=セーフティネット住宅)を登録し、「セーフティネット住宅情報提供システム」によって物件を検索できるようにしている。しかし、数は十分ではない。
民間の不動産会社やポータルサイトなどでも、高齢者向けの賃貸住宅を探しやすいようにしている事例は多い。さらに、貸主の不安を払しょくするような仕組みを提案したり、貸主の意識を変えるように啓蒙したりという活動をしている事例もある。子ども世帯が親世帯の部屋探しを支援することによって、高齢者がこうしたサイトに出会えるようにサポートすることも大切だろう。
そうはいっても、高齢者の希望条件に合う賃貸住宅は、まだまだ少ない。これからは高齢化がさらに進み、多様性を受け入れる社会にもなっていくはずだ。それに対応した仕組みづくりや意識改革がますます求められる。部屋探しに苦労する人を、少しでも減らせるようになっていってほしいと切に願う。
所在地:品川区上大崎
所在地:文京区本郷
所在地:横浜市神奈川区子安通
所在地:横浜市港北区篠原台町
所在地:新宿区横寺町
所在地:大田区山王「海洋プラスチックごみ」問題の国際的な動向に合わせ、2020年7月からレジ袋の有料化がスタート。SDGsにも「海の豊かさを守ろう」の目標があり、ここ数年特に関心が高まっています。
そもそも、海洋プラスチックごみをめぐる問題や、レジ袋有料化から1年たった現在の現状、日本での取り組みは、どうなっているのでしょうか。海のごみ問題の解決に向けて活動する一般社団法人JEAN(ジーン)の小島あずささんと吉野美子さんに話を伺いました。
「海洋プラスチックごみ」とは、地上から海に流れ出たプラスチックのごみのこと。「G7エルマウ・サミット」(2015年6月)でG7サミットとして初めて世界中で向き合うべき課題として取り上げられ、その後、実効的なアクションを取らなければ2050年までに魚の量を上回ると警鐘を鳴らした「世界経済フォーラム」(2016年1月)、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにすることを共有した「G20大阪・サミット」(2019年6月)など、近年、国際枠組みへの議論が高まっています。
「こうして聞くと最近の問題のようですが、決してそうではありません。プラスチックが生まれた100年以上前から始まっていたのです」と話すのは、30年以上、海洋ごみ問題の解決のためにさまざまな取り組みを行ってきた一般社団法人JEANの小島あずささんと吉野美子さんです。

小島あずささん(左)と吉野美子さん(右)。小島さんは友人と日本で初めてのエコバッグをつくったのを機に本格的に活動をスタート。吉野さんは川の環境に関する活動をしていたことがきっかけでこの仕事を始めました(写真提供/一般社団法人JEAN )
「プラスチックに関係なく、『海のごみ』問題は昔からあったのですが、『海岸の景色を台無しにしている』『拾えばなんとかなる』としか見られていませんでした。その傍らで1900年代のはじめに世界初のプラスチック『フェノール樹脂』が誕生。安価で成形しやすい夢の物質として先進国を筆頭に技術開発がされ、たくさんの種類と量が市場に出回るように。人々が使い捨てることで、ごみが一気に増えていきました。そんななか、約10年前から『マイクロプラスチック』が人体や環境に影響があるのではと懸念されるようになり、研究者たちが注目し始めたんです」(小島さん)
生活の場から意図せず海に流出するプラスチックの現状マイクロプラスチックとは直径5mm以下の微小なプラスチックのことで、もとから小さくつくられ、洗顔料や歯磨き・化粧品・柔軟剤などに含まれる「一次マイクロプラスチック」のほか、プラスチックごみが劣化して砕けた「二次マイクロプラスチック」があります。プラスチックは自然に還ることはないため、いったん、処理されずに環境中に出ると、空気中や海洋中に漂い、半永久的に蓄積するといわれています。

「マイクロプラスチック」は北極や南極でも観測されていて、2020年、オーストラリアの研究者が「世界の深海の底に推定1400万トン以上、堆積している」と発表しました(写真/PIXTA)
「グラウンドやショッピングモール、玄関マットなどで使われる『人工芝』は、足でこすれて千切れてしまうと、雨風で移動してごみになっていきます。靴底や自動車のタイヤなどは摩耗すると『マイクロプラスチック』に。駐車場などに置きっぱなしになったカラーコーンの欠片が雨風にさらされて川に流出することもあります。
また、区市町村のルールを守ってごみを出しても、カラスに散らかされることがあるでしょう。道で前を歩いている人が、ポケットやバッグから何かを取り出すときに一緒にしまってあった飴の空き袋などを落とすのを見たことはありませんか。
このように、私たちの暮らしから意図しないプラスチック散乱ごみが生まれているんです。
1人が出す量は少なくても、これが10人・1000人・日本・世界まで広がり、さらに何十年も続いてきたのを考えれば、とてつもなく大量だと分かるはずです」(吉野さん)
私たちが日常で“燃えるごみ”“燃えないごみ”等と仕分けて集積場に出すものについては各自治体で処理されます。しかし、ごみとなるプラスチックが存在する限り、どうしても“意図しない散乱ごみ”は生まれてしまいます。
「道路の排水用の側溝には、タバコの吸い殻など道端のごみも雨に流されて入り込みますが、下水道の方式によっては処理場を通らずそのまま川に放流されます。汚水と合流して下水処理場を通る方式でも、流量が増える大雨のときには、処理場の能力を超える分の下水は手前でオーバーフローさせて直接川に流す仕組みになっていますので、ごみも一緒に川から海へということになります」(吉野さん)

日本の海辺で多いのは、国内のごみ。日本のごみが海流に乗って北西ハワイなどを経て北米西海岸の方へと流れていき、数年後に南太平洋の島に流れ着くということも(写真/PIXTA)
便利な生活の果てに出たプラスチックごみが、たくさんの生物を傷つけている2019年3月、フィリピンの海岸にクジラが打ち上げられ、胃から40キロものビニール袋が見つかったニュースが記憶に残っている人もいると思います。「日常生活から出た意図しないごみが『海洋プラスチックごみ』になっていることを考えると、遠く海外のクジラのお腹から見つかったプラスチックの破片が、自分に関係あるものではないと誰も言えない」と吉野さんは話します。
ある研究者の推計によると海洋に出るプラスチックごみは年間800万~1300万tともいわれていて、汚染は深刻。前述のクジラの事例だけでなく、海鳥がエサと間違えてライターやペットボトルのフタを飲み込んだり、漁網にウミガメが絡まったり、魚のお腹から「マイクロプラスチック」が見つかったりしています。

(写真/PIXTA)
「ウミガメが漁網に絡まって死んでしまうこともあるんです。海で使う道具類もすっかり天然材料からプラスチックに置きかわりました。一度、絡まると簡単には外れません。アザラシも海洋プラスチックごみが原因で死んでしまうこともあります。実は1960年代から一部の研究者の間でこうした被害の報告があったんです。注目されなかった月日を『失われた50年』と受け止めています」(小島さん)
「海洋プラスチック」は私たちの健康にも悪影響を及ぼす可能性があるといいます。プラスチックにはもともと化学物質が添加されていることもありますし、後から吸着する性質もあり、マイクロプラスチックを誤飲した生き物を経て、化学物質も人体にめぐってくることになるといわれています。
大切なのは無駄な消費を減らし、長く使えるものを熟考して買うことお二人は「レジ袋有料化は海外に比べれば遅まきの政策でしたが、人々の意識を変えるきっかけをつくった一面はあるのでは」と言います。この“意図しないプラスチックごみの散乱”が日常にあふれている状況を変えるには「シンプルにプラスチックの“消費”を減らすことが大切」と小島さんが言うように、レジ袋の有料化はプラスチックの絶対数を減らし、プラスチックの使い方への関心を高めていく意味では、長い目で見たときに有効な効果を発揮していくように思えます。有料化から4カ月経った11月時点では、環境省や経産省が行ったWEB調査で「1週間、レジ袋をつかわない人」が3割から7割に増加したというデータも。

(写真/PIXTA)
レジ袋に限らず、「便利だからと使い捨てしないことも必要です。長く大切にできるものを選びたいですね」と小島さんは続けます。
また、プラスチック製品といえば、「竹ストロー」や「蜜蝋ラップ」といった代替品もありますが、小島さんと吉野さんは、そもそも「使わない派」なのだそう。なるほど、代替品を探すのではなく、使わないというのも選択肢です。
「飲みものはストローなしで飲める場合も結構ありますし、残った食べものはフタつきの耐熱ガラス容器に入れておくと温めなおしてそのまま食卓にも出せますし、食べ切ってしまえばラップをかけてしまう必要はありません。完ぺきを目指すと窮屈になるので、『こうすれば必要なくなる』というのをゲーム感覚で探すと面白いのではと思います」(吉野さん)
日本と海外の意識の違いに目を向け、これからのあり方を考える日本は世界に類を見ない“プラスチック大国”。
「街の至るところに自動販売機やコンビニがあるのは日本ぐらい。袋の中でわざわざ個包装されたお菓子は、そうした習慣のない海外の人からは不思議な光景にさえ見えるでしょう」(吉野さん)
「『海洋プラスチックごみ』問題は世界共通ですが、日本は新しい素材によってどれほどごみが生まれ、どう処理していくかを、予防原則にのっとって考えてこなかったのではと思います。
このような状況で、日本は年間約150万トンもの廃プラスチックを再生材料として海外に輸出していましたが、2017年に主な輸出先だった中国が輸入制限を打ち出し、廃プラスチックの行き先が大きく狭まりました。急ぎ対応を迫られるなか、同じように廃プラスチックを輸出していた先進各国の中で、EUがいち早く『サーキュラー・エコノミー(循環型経済)におけるEUプラスチック戦略』を発表しました」(小島さん)

アメリカの環境NGOが主宰する活動を契機に始まったJEAN。世界中で一斉に展開される国際海岸クリーンアップを日本で取りまとめています。海のごみには食品の包装・容器類がとても多いそう(写真提供/一般社団法人JEAN)
EUでは企業が製品開発をする際にそもそも地球に負荷をかけないという視点で開発が行われており、消費者も、商品が環境配慮がされているものであるという点に魅力を感じるといいます。
「日本でも企業はほとんどが何らかの形で海外との接点をもっていますので、プラスチックに関しては企業活動の基準を国際基準にシフトすることはいまや必然です。使用量の削減、品質を低下させない水平リサイクル、使い捨てにしないことと温室効果ガス排出削減とを両立させるリサイクルの実用化など、今まで脇に置いてきたことに対し、企業は枠を超えた挑戦を始めています」(吉野さん)
「JEANが行う講義やワークショップにも、『自分たちの問題』と石油・プラスチック系の企業から申し込みをいただくこともあります。最近では、同業他社が連携してSDGsに取り組むことも増えています。産業界全体でSDGsの気運が高まっていて、旧来のあり方から脱却しはじめているといえそうです」(小島さん)

JEANでは小中高の学校や大学のほか、自治体や企業から依頼を受けて海洋ごみ問題についての講義・ワークショップ・海辺のクリーンアップを実施。とくに子どもからは活発な意見が聞かれます。写真は国際海岸クリーンアップのごみ調査(写真提供/一般社団法人JEAN)
レジ袋有料化、環境に配慮した商品開発、SDGsの気運の高まり……少しずつ海洋プラスチックごみをめぐる状況は変化しつつあります。そうしたなかで吉野さんは、プラスチックの代替品として注目を浴びている多種多様な「生分解性プラスチック」は、何に使うかを注意深く見極める必要がありそうだと言います。「分解までの間の環境負荷はなくならないのに、分解するからポイ捨て可になってしまった失敗例もありますし、リサイクル可能な分解しないプラスチックとの混在は双方に不利になります。ごみになってからの分別や、種別の回収処理ルートは誰が担うのでしょう。何より根本の問題が解決しないまま『使い捨て』に頼り続けるのは、本末転倒だと思うのです」。対策として打ち出したものが、新たな環境汚染につながる可能性を秘めている。一つ一つ、慎重に選択肢を選び取っていく必要がありそうです。
先のことまで考えてものを買うこと・無駄に使っているものを見直すことは、少し面倒に見えますが、日本が便利さに甘え忘れていた本来のあり方といえるでしょう。小島さんと吉野さんのお話は、私たちが見過ごしてきたことへの戒めと、シンプルで心地よい暮らしへのメッセージのようでした。
●取材協力
一般社団法人 JEAN
所在地:三鷹市井の頭
所在地:三鷹市井の頭
所在地:北区赤羽
所在地:北区赤羽
所在地:渋谷区本町
所在地:目黒区大橋
所在地:練馬区関町南
所在地:横浜市中区山下町
所在地:武蔵野市西久保
所在地:世田谷区玉川
所在地:杉並区上荻環境問題に関心が高いヨーロッパ、食品ロスは日本よりもずっと以前から問題視されてきましたが、コロナ禍でさらに関心が高まっています。外出規制やマスク着用という不自由で不安な生活がすでに1年3カ月続いているなかで、自分の生き方や地球環境に目を向ける時間が増えたからです。そんななか、ヨーロッパ全土で食品レスキューアプリ「Too Good To Go」が大流行中。筆者が暮らすフランスから、食品ロス対策の最前線をお伝えします。
地球温暖化を身をもって体験したパリジャン&パリジェンヌが動き始めた!
10年前、パリの住宅にはクーラーはほとんどありませんでした。毎年夏でも寝苦しい日は数日、日差しは強くても日陰は涼しく心地が良かったのです。しかし、数年前から30度以上の暑い日が続き、扇風機の売り上げがグッと伸び、冷風機(水を機械に入れて冷風を出す仕組みで、エアコン・クーラーのように室外機を設置しなくて良いタイプ)というものまで販売されるようになりました。さらに、去年の冬は雪がほとんど降らなくなり、12月になってもダウンジャケットを着なくても過ごせるように。パリの人々も身をもって地球温暖化を体験しています。
そんな危機感を募らせるフランスの人々が起こした行動が、本来食べられる食品が捨てられてしまう「食品ロス問題」に立ち向かうこと。現在、生産された食品の3分の1が廃棄されているといわれ、これは世界規模で膨大なコストがかかるだけでなく、気候変動にも大きな影響を与えているのです。自分たちの毎日の生活に深く結びついている「食」からならなんとかしていけるかも!と考えたのです。
2016 年 2 月、フランス政府は世界でいち早くスーパーマーケットの食品廃棄を禁止する法律をつくりました。スーパーマーケットはこれらの食品を慈善団体やフードバンクに提供をすることで、食べることに苦労している人々に毎年さらに何百万もの無料の食事を提供できるようになりました。SDGs(持続可能な開発目標)の「目標2:飢餓をゼロに」にも効果を発揮しています。

本来ならスーパーマーケットの食品は賞味期限が切れたら次の日には捨てられてしまう(写真撮影/松永麻衣子)
ほかにも、こんなことも行われています。
■国連気候変動会議COP 21は、約 100 のレストランに 対して100,000 個の「持ち帰り用」ボックスを配布し、客が食事の残り物を持ち帰ることができるように。SDGsの「目標12:つくる責任、つかう責任」を推進
■フランスでは、学校の食堂で準備された食事の 3 分の 1 は食べられないままです(フランスの給食はビュッフェスタイルなため、子どもたちは好きなものだけをよそいます)。この無駄をなくすためにパリ市では学校に対して、「学校それぞれでドレッシングを手づくりにすることでサラダをもっと美味しく食べられるようにしたり、果物を切り分けて食べやすくしたりするなど、子どもたちに給食を好きになってもらう努力が必要」と食品管理を呼びかけています。
■パリ市は、家庭での食品廃棄物をリサイクルすることを推奨しています。リサイクルボックスを配布するなどし、分別ゴミとして収集された後は、肥料に変換されるか、熱と電気、またはバス用のバイオ燃料に変換されます。
フランスのスーパーマーケットやマルシェでは、以前からエコマインドがあった日本ではレジ袋が有料化したのは昨年7月からですが、フランスは数年前からすでに取り組んでおり、スーパーオリジナルのエコバッグの販売に力を入れています。特に、「MONOPRIX」のエコバッグは、定期的に新作を出しており、コレクターアイテムにもなっています。

1~1.5ユーロのMONOPRIXのエコバッグ。日本でも大人気。お土産にも喜ばれています(写真撮影/松永麻衣子)
食品ロスが話題になる前から日常的に行われていたことも、食品ロスを減らすのに効果的だと見直されるようになりました。
例えば、パリのマルシェでは1ユーロプレートをよく目にします。屋台の端に、まだ美味しく食べられるけれど鮮度がこれから落ちてしまう野菜や果物が1ユーロプレートに並べられています。例えば、ラディッシュ2束1ユーロ/葉は枯れてしまっているけれど、実はまだまだ美味しい。ライム6個1ユーロ/皮の部分がちょっとしぼんできているけれど、果汁は十分美味しい。キウイ8個1ユーロ/熟して柔らかいけれど、ジャムにしたりジュースにするには美味しい。などなど。

店頭でも食品ロス削減運動。見た目は悪いけれど、まだまだ美味しく食べられる食品の“福袋“(写真撮影/松永麻衣子)
フランスの食品を量り売りするシステムは、パックやブーケなどとは違って余分に買いすぎてしまうことを避けられます。フランスの値札はほとんどが<1kgいくらか>と表示されていますし、マルシェではもちろんスーパーでもバナナ1本から買うことができます。
ヨーロッパで食品レスキューアプリ「Too good To Go」が大流行! 使ってみましたフランス政府がスーパーマーケットの食品廃棄を禁止する法律をつくった2016年と同年3月、「too bood to go」 というフードレスキューのアプリがリリースされました。2015年にデンマークで創業、現在15カ国で展開され、3900万人以上のユーザーを抱えています。2016年から今までに7650万食がレスキューされました。
レストランやスーパーマーケットなどで賞味期限切れ間近だったり、パッケージが破損してしまったりといった“捨てるにはもったいない食品/食べるには問題ない食品”が元の販売価格の3分の1程度で手に入ります。

食品レスキュー・アプリ「Too good To Go」の画面(写真/アプリ画面より)
アプリをインストールしたら、国を選び、自分がいる場所から加盟店を表示し、食品ロスのある店舗を探します。半径3km以内、5~30kmなど範囲を指定して検索できます。筆者は徒歩圏内で利用したいということで、3km半径に設定しました。
レスキューして欲しい食品があると“緑の●”、残り1袋だと“黄色い●”、ないときは”グレーの●”と一目瞭然。お気に入りのお店をまとめて見られたり、アプリがオススメしてくれたり、とても使いやすいです。
予約をした後はネット支払い、指定時間に店で受け取り、アプリで受け取り確認をして終了。“食品ロス福袋”は何が入っているか分からないので、サプライズ感もあって楽しかったです。
ただ、中身はヨーグルト4個パックなど一人暮らしでは食べきるのが難しいものもあり、食品ロスにつながってしまう可能性がある点は注意が必要です。筆者は5人家族、食べ盛りの子どもが3人いるので3分の1の価格で食品が手に入るのはとてもありがたいです。何が入っているか分からなくても、週に1回の利用なら、さまざまなメニューに工夫して使ってみることができ、楽しみながら食品ロス削減に貢献できそうだと思いました。

お気に入りのお店の”今日のレスキュー”のオファー画面。12ユーロ相当の食品が3.99ユーロだったり、とにかくオトク。決められた時間帯に取りに行きます(写真撮影/松永麻衣子)

この様に”●”でお店が表示されます。高齢者も多く使っているそう(写真撮影/松永麻衣子)
4店舗で“食品レスキュー”した結果は?加盟店には大型スーパーの「カルフール」や「モノプリ」、人気パン屋の「ポール」や「エリックカイザー」、Bioショップの「ナチュラリア」などのチェーン店が多いのも魅力です。
今回はスーパーを2軒、新しいスタイルのデリバリー専門スーパー1軒、Bioショップ1軒の計4軒で“食品レスキュー”を試してみました。
まずは食品レスキューを率先して行っている「カルフール」。我が家から徒歩圏内になんと5軒もあるので、使い勝手も抜群です。

レジに並ぶことなくレジでスマホを見せると担当者が奥へ。5分ほど待ち、福袋をゲットしました(写真撮影/松永麻衣子)

(写真撮影/松永麻衣子)
15ユーロ相当の食品を3.99ユーロで購入できました。
中身は、賞味期限ギリギリのお菓子、鶏ささみ(下味をつけて次の日に調理)、マーシュ(サラダにするとおいしい野菜・次の日に完食)、食パン、クロワッサン、パン・オ・ショコラ、ブレッツェル(全て次の日に完食)。ちょっと乾いたフヌイユ(野菜・冷蔵庫で保管して1週間以内に完食)、傷のあるりんご(当日美味しく食べました)、ちょっと傷んだメロン(当日食べましたが美味しくなかった)という結果でした。
次は我が家のお気に入りのスーパー「SUPERU」。行くたびに、店員がレスキュー商品らしきものをマジックバッグにかなりの品目を詰めているのが気になっていました!

シンプルな袋は、持つとずっしり重かった(写真撮影/松永麻衣子)

(写真撮影/松永麻衣子)
15ユーロ相当の食品が3.99ユーロ。25ユーロ分あるのでは?と思う充実の内容でした。
全てが賞味期限ギリギリで、ハム2パック(次の日に完食)、七面鳥(当日スープに)、生ソーセージの盛り合わせ(冷凍して3日後に白いんげんと煮込みました)、キッシュ(冷凍して後日完食)、ムサカ(東地中海沿岸の伝統的な野菜料理・当日完食)、サンドイッチ(次の日に完食)、ヨーグルト類(次の日完食)。肉類が多かったのでとても満足でした。
3軒目は、新しいスタイルのデリバリー専門スーパー「Dija(ディジャ)」。通常は商品を購入すると配達人が商品を届けてくれますが、食品レスキュー商品は消費者が特定の場所に取りに行きます。倉庫のようなところに自転車が数台、配達人が待機していました。

紙袋にはあらかじめパンドゥカンパーニュと食パンが入っていて、お客が来るとそこに冷蔵食品を詰めて渡してくれます。受け渡しがとてもスピーディーです!(写真撮影/松永麻衣子)

(写真撮影/松永麻衣子)
こちらも15ユーロ相当の食品が3.99ユーロ。賞味期限当日だったリヨンソーセージ(冷凍庫で保管し、週末のバーベキューで完食)とフムス(ひよこ豆のペースト状の中東の料理・3日間ぐらいで完食)、と前述のパンが入っていました。パンは賞味期限ギリギリということもありかなり硬く、手を加えないと食べられない状態でした。
ラスト4軒目は、食への意識が高いBioショップ「ナチュラリア」です。Bioショップは全体的にアプリと提携しているお店が多いようです。また、以前からレジ袋や野菜の包みに再生紙を使ったり、ジュースなどの瓶を返却すると瓶代が返金されたりと、食品ロス削減とゴミを減らす呼びかけがされていました。ドライフルーツの量り売りのために入れ物を持参するお客さんも多く、カルチャーが根付いているように感じます。

再生紙のバッグにズッシリと入っていました。買い物客と同じように列に並び、順番が来たらレジでスマホを見せます。“福袋”はレジの横の冷蔵庫に保管してありました(写真撮影/松永麻衣子)

(写真撮影/松永麻衣子)
15ユーロ相当の食品が3.99ユーロ。エシャロット(まだまだ美味しく食べられる状態)、パン(硬くて食べるのを諦めました)、バナナ(ケーキに使いました)のほか、賞味期限切れ当日の鶏肉(次の日にオーブン焼きにして完食)、カマンベールチーズ(1週間ぐらいで完食)、フルーツ入りヨーグルト(2日間で完食)、プリン(次の日に完食)が入っていました。Bio食品は価格が高いので、これだけのものが入っていたら週に1回ぐらいの割合でレスキューしたいと思いました。
デリバリーショップも食品食品レスキューは、デリバリー業界にも浸透しつつあります。
今パリは、コロナ禍による外出制限解除の2段階目の状態です(6月4日現在)。夜の帰宅は19時から21時に伸び、商店と映画館や美術館は全て開き(入場制限があります)、カフェとレストランはテラスのみ営業可能になりました。
コロナ禍でUber Eatsの利用がうなぎ上り、個人事業主登録したドライバーが街にあふれました。しかし、人気レストランの前ではUber Eatsのドライバーがたむろしている雰囲気だったり、ヘルメットをかぶらずに事故を起こしたり、保冷バッグが使い古されて汚かったりと、なんとも雑なイメージが定着してしまっています。
そんな中、「gorillas(ゴリラ)」は“オーダーしてから10分以内でお届け!”を謳い文句にした新しいスタイルのデリバリー専門スーパーです。オーダーが入ったら倉庫で待機している職員が商品を袋詰めし、オールブラックの制服(転んだときのための膝などのプロテクト付き)にヘルメットをかぶり自転車でデリバリーします。
筆者がオーダーしてみると、4分後に商品が届きました。23時までやっているので、21時の外出制限のときに買い忘れなどあっても安心。一人暮らしで病気のとき、ご老人の買い物、などこれからも需要は伸びそうです。
そんな「ゴリラ」の食品ロス削減へのアプローチは、ただ賞味期限切れや鮮度が少々落ちた野菜や果物を安く販売するのでなく、福袋にしたり、素敵なおまけにしてみたりと、ちょっとした工夫で食品ロス削減に楽しく参加できる、というものです。
今回は、バナナとりんご(ゴリラにちなんで(?))でした。

手書きの「ご注文ありがとうございます」カードとエコバッグが付いてきました。こんなスタイルもかっこいいのです(写真撮影/松永麻衣子)
このように、フランス内で食品ロスをめぐる対策はどんどん広がってきています。我が家では、子どもたちと話し合った結果、週に一度はこのアプリを利用して食品ロスを無くすことに貢献しようということになりました。日本でも、食品ロスアプリが登場してきています。みなさんもぜひ使ってみてください!
所在地:杉並区和泉
所在地:杉並区高円寺南
所在地:文京区根津
所在地:新宿区二十騎町
所在地:東京都大田区西馬込
所在地:中央区勝どき
所在地:足立区東綾瀬
所在地:台東区北上野
所在地:横浜市青葉区美しが丘徳島県徳島市から車で約40分。勝浦川沿いの山間部に広がる上勝町は、「ゼロ・ウェイスト(ごみゼロ)宣言」や「葉っぱビジネス」など、ユニークな取り組みで注目を集めているまちだ。2020年5月、このまちにゴミステーションと宿泊棟等が併設された環境型複合施設「上勝町ゼロ・ウェイストセンター(WHY)」がオープンした。ごみゼロを体感できるホテルとは、果たしてどんな施設なのだろうか?
「ゼロ・ウェイスト」を発信して、人の交流を生む
上勝町を貫く県道16号沿いにベンガラ色の建物が目を引く「上勝町ゼロ・ウェイストセンター(WHY)」が突如現れる。上空から見ると「?」マークの形状。「WHY?(なぜ?)」という疑問符を持って、ごみから学び、ごみのない社会を目指す、いわばこの施設の理念を表現しているのだ。「?」の上部はごみの分別所やフロント機能、交流ホール等になっていて、「・」の部分が宿泊施設「HOTEL WHY」だ。

画像提供/上勝町ゼロ・ウェイストセンター
2003年に国内の自治体として初めて「ゼロ・ウェイスト宣言」を行った上勝町。それ以来、ごみ収集を行わず、生ごみは各家庭がごみ処理機で堆肥化、そのほかのごみは45種類以上に分別して、ごみステーションに持ち寄っていた。2018年、その取り組みによりリサイクル率は80%を達成した。
「ここは残りの20%を解決するための拠点としての役割も担っています」と語るのは、同施設の運営・管理を行う株式会社BIG EYE COMPANY CEOの大塚桃奈さん。その20%には、オムツ、使い捨てカイロ、靴など、リサイクルの難しいごみが多数含まれている。「そのためには生産者にもアプローチが必要です。例えば花王とタッグを組んで、詰め替え用パウチから遊具用ブロックをつくったのもその一つです」
「この取り組みを通じて、生産者と消費者、県内外の人々の交流の場としての機能も充実させていきたい」ともう一つの目的を語る大塚さん。他の自治体同様に過疎が進む上勝町では、この地域に関わる交流人口の増加が、活性化の必須条件だ。「オープンして間もないですが、教育の一環として福島の高校生の宿泊研修を始め、関東や関西から環境問題に敏感なファミリーなどに利用していただいています」

ごみの分別所に掲げられたパネルで、上勝町の取り組みや施設の紹介をしてくれる大塚さん(写真撮影/藤川満)
施設案内ツアーを通じて取り組みを学ぶそれでは宿泊利用者同様にチェックインから始めていこう。フロントには、町民が中古品を持ち込み、町内外の訪問者が持ち帰り可能な物品が並ぶ「くるくるショップ」が併設されている。持ち帰りは無料だが、ぜひカンパをしておきたい。ここでは年間約9トンもの品々が持ち帰られ、新たな持ち主のもとで再利用されている。

フロントに併設されたくるくるショップ。床にはここに集まった古い陶器の破片が敷き詰められている(写真撮影/藤川満)
一升瓶のケースを積み上げたフロントでは、必要に応じて無添加の石鹸の切り分け、プラスチックを使用していない竹歯ブラシの販売も行う。またウェルカムドリンクとして、循環型能栽培に取り組む農園の豆をローストしたコーヒーも提供してくれる。

フロントにはくるくるショップで前月に持ち帰られた中古品のキロ数が掲げられている。取材時(2021年5月)は4月に491kgの実績があった(写真撮影/藤川満)

使い残しがないように石鹸は必要な量だけ切り分けて提供される。石鹸は無添加で昔ながらの釜焚き製法でつくる神戸の「無添加石鹸本舗」のもの(写真撮影/藤川満)
受付が終わると、施設案内を通じて上勝町の「ゼロ・ウェイスト宣言」の取り組みを学べる「STUDY WHY」ツアー。普段は町民のみに開放されているごみ分別所から順番に施設を巡っていく。
ごみ分別所に回収用のコンテナがずらりと並ぶ姿は壮観だ。各コンテナにはごみの種類がイラストと共に表示され、分別方法を正確に記憶せずとも分かりやすい。またそれぞれに「1kg○○円」と書かれているのも興味を引く。「リサイクル業者が買い取ってくれるものはその入金額、処理に費用がかかるものは出費額として表示しています」と大塚さん。入出金額を表示することで、意識に変化をもたらしそうだ。

「?」の上部にあたるごみ分別所。ごみの種類により区画され、車でも移動しやすい動線になっている(写真提供/Transit General Office Inc. SATOSHI MATSUO)

町民自ら持ち込み45種類に細かく分別されるごみ(写真撮影/藤川満)
町内外の人たちの交流の場となるラーニングセンター&交流センターは、上勝町産の杉の温もりと両側から差し込む温かい日差しが印象的なスペース。杉の柱は「太鼓落とし」と呼ばれる工法で、丸太を二つの材に切り離し、一本のボルトで接合している。つまり余計な材料を使用せず、端材の発生も少なくて済む。しかもメンテナンスもしやすい。
「窓は町内から集まった廃材の窓枠540枚を利用しています。過疎化が進み窓に映る光が少なくなったこの地域を、再び明るく照らす意味も込めています」と大塚さんはその狙いを語る。

ラーニングセンター&交流ホールをはじめ、施設内の構造は廃材が出ない無駄のない工法がとられている(写真撮影/藤川満)

ラーニングセンター&交流ホールにある遊具のブロックは、花王とのコラボで、詰め替え用プラスチック容器をリサイクルして生まれた(写真撮影/藤川満)

コラボレーティブラボラトリーの壁一面にある本棚はシイタケを詰めるコンテナを再利用している(写真撮影/藤川満)

取材時はあいにくの雨。しかしあえて雨樋(あまどい)を設けず、雨のカーテンと雨音を楽しむ仕掛けを体験することができた(写真撮影/藤川満)
リユースの工夫が詰まった客室でゆったり過ごす
宿泊体験施設の外観。「HOTEL」の看板も、廃材の農機具などが利用されている(写真提供/Transit General Office Inc. SATOSHI MATSUO)
宿泊体験施設「HOTEL WHY」は全4室で最大16人収容のコンパクトな造り。環境教育プログラムや研修など団体の一棟貸しにも対応してくれる。室内はメゾネットタイプで、窓からは上勝町の山並みやダム湖などを望むことができる。
リビングにあるソファは、かつて上勝町役場が使用していたもの。クッションにはカーテン生地をカバーにしてリユースしている。窓に掛かるカーテンも端切れをつなぎ合わせたもの。説明を受けなければ新品と見間違う出来映えだ。

メゾネットタイプの室内。ウッドデッキが設けられ、外でお茶を楽しむこともできる。テレビはない(写真撮影/藤川満)

端切れをつなぎ合わせたカーテンは、独特の風合いを醸し出している(写真撮影/藤川満)
夕食は「ゼロ・ウェイスト」を実践している町内のマイクロブルワリー「RISE & WIN Brewing Co. 」やそのほかの飲食店へ出向いて楽しむのが基本。ただしお酒を伴う場合は、公共交通機関がほぼないため、「白タク特区」でもある同町の有償ボランティアタクシーを利用したい。
朝食は「RISE & WIN Brewing Co. 」から運ばれてくるベーグルまたはイングリッシュマフィンのセット。パティとなるフィッシュカツは徳島名物で、ほんのりカレー味がする魚のすり身。これにネパールのスパイス・アチャールと上勝名産・柚香(ゆこう)を加えたマヨネーズで味わおう。

徳島名物「フィッシュカツ」をベーグルに挟んで楽しむ朝食例(写真提供/Transit General Office Inc. SATOSHI MATSUO)

各部屋に置かれているごみ分別ボックス。チェックアウトの際に利用者自ら分別を行う(写真撮影/藤川満)
環境教育の場として確立を目指していく「ここでの宿泊体験をさらに充実するべく、さまざまなプログラムの開発にも取り組んでいます」と大塚さん。例えば目の前に広がるダム湖でのSUP体験、ブナ原生林の散策などは、上勝町の自然を手軽に楽しめ、ここを訪れる人の間口を拡げるプログラムだ。
また、大塚さんが「このまちの取り組みの解像度がさらに高まる」と語るプログラムとして、「ゼロ・ウェイスト」に詳しい有償ボランティアタクシードライバーによるガイドツアーなども実施している(3時間7200円)。「このまちには100~700mの間に55の集落があります。なかには日本の里山百選に選ばれた棚田もあり、その保全活動の体験なども考えています」
「ゼロ・ウェイスト」達成と同時に、プログラムの充実によってさらに関係人口の増加を目指す「上勝町ゼロ・ウェイストセンターWHY」。「広島と長崎が『平和教育の場』なら、上勝は『環境教育の場』として、ごみを通じた多様なコミュニケーションを育み、ゼロ・ウェイストに向けたアイデアを上勝に集めていきたい」と大塚さんは意気込んでいる。
●取材協力
上勝町ゼロ・ウェイストセンター
有償ボランティアタクシー
所在地:世田谷区奥沢
所在地:世田谷区玉川台
所在地:世田谷区宮坂以前、3Dプリンターの家づくりが進んでいるという記事をご紹介した。あれから2年。今年4月にオランダで世界初の3Dプリンターハウスの賃貸住宅が登場し、入居者が決まったというニュースが飛び込んできた。手掛けたのはオランダの不動産管理会社Vesteda(ヴェステダ)で、94平米、2LDKの平屋の家賃は、月800ユーロ(約10万円)から。
ほかにも、米国では3Dプリンターで建設した建売住宅が登場したり、コミュニティ(複数戸の住宅から成る小さな共同体)が続々と登場したりしているという。Vestedaの担当者と、この分野に詳しい建設ITジャーナリストの家入龍太さんにも3Dプリンターハウスの最新事情を聞いた。
オランダといえば、3Dプリンター先進国のひとつ。前回は政府が積極的に3Dプリンター技術を採用しようと資金面の補助を行い、橋づくりが盛んに行われていることに触れた。
今回ご紹介する3Dプリンターの賃貸住宅を手掛けた不動産管理会社Vestedaは、公的資金である年金貯蓄や保険料を、サステナブル(持続可能)なオランダの住宅用不動産に投資している民間企業。

SUUMOジャーナルの取材にオランダから応じてくれたVesteda社のステファン・デ・ビーさん(撮影/寺町幸枝)
「オランダの先進技術で、サステナブルで、手ごろに提供できる住宅環境を世界に提案していきたいと考えています。私たちが目指すのは、最新技術により、廃棄物を減らし、より手ごろな価格の住宅を実現することです。その住宅の完成形として、全5戸から成る3Dプリンターハウスのコミュニティづくりをつくることにしました。今回完成したのは記念すべき第1戸目です。この『プロジェクト・マイルストーン』では、自治体や大学、民間企業などと連携して取り組んでいきます」と話すのは、この共同イノベーションプロジェクトの旗振り役である、同社のサステナビリティ担当者のステファン・デ・ビーさん。
プロジェクトメンバーは、今回の3Dプリンターハウスが建てられたMunicipality of Eindhoven(アイントホーフェン市)、先端技術を研究するEindhoven University of Technology(アイントホーフェン工科大学)、建設会社のVan Wijnen(ヴァンウィーネン)、材料会社のSaint-Gobain Weber Beamix(サンゴバン・ウェーバー・ビーミックス)、エンジニアリング会社のWitteveen + Bos(ウィットヴェーン+ボス)。
3Dプリンターハウスは多くのSDGsの可能性を秘めている今回完成した1戸目は、全てのパーツを工場でつくり、建築現場で組み立て作業を行った。しかし今後は少しずつ「オンサイト(現場)」での作業へシフトし、最終的な5戸目の家は、必要な機材を持ち込み、パーツの作成から組み立てまですべての工程を“現場で”建てる予定だという。

未来を感じさせる3Dプリンターハウスのフォルム。今回完成した住宅は94平米、2LDKの平屋で、月800ユーロ(約10万円)から(画像提供/Vestas、写真撮影/Bart van Overbeeke Fotografie)
「3Dプリンターを使って家のパーツをつくるためにかかる時間は、合計で120時間(5日間)ほどです。3Dプリンターハウスの魅力は、曲線を描けるなどのデザイン面での<自由度>と、材料の無駄が出にくいことです。サステナビリティを追求した住宅として、3Dプリンターハウスにはたくさんの新しい可能性が秘められています」(デ・ビーさん)
さらに今回使用されたセメントは、3Dプリンターハウスのために特別に開発されたもので、従来のセメントよりもCO2排出量を削減することができるという。
建築基準が厳しい“オランダクオリティ”、海外輸出も視野たった5日ほどの建築期間だが、耐久面や快適性、機能性はどうなのだろうか。
「オランダの建築基準は世界的に見ても非常に厳しい。この3Dプリンターハウスも、もちろん全ての基準を満たしています」とデ・ビーさん。

たった5日でできあがったとは思えないほど美しい仕上がり。オランダの厳しい建築基準もクリアしている(画像提供/Vestas、写真撮影/Bart van Overbeeke Fotografie)
今回完成した家は、今年8月から賃貸住宅として6カ月間の試住が始まる。一般公募から選ばれたのはリタイアしたカップルで、一戸建てやマンションなどいろんなタイプの住宅に住んできた経験をふまえ、住み心地のフィードバックが期待されている。その結果を、今後の3Dプリンターハウスに反映していくとのことだ。ちなみに4月下旬にすでに渡されているカギは“アプリ”だという。
来年5月までに2戸、2025年までに全5戸の建築を目指す。2戸目は2階建てになる予定。今後、さらに価格を抑えるための素材や技術の研究が続けられ、プロジェクトを通して確立された技術とノウハウは、オランダ国内だけでなく、特に住環境の厳しい日本やシンガポールといった海外への輸出も視野に入れているそうだ。
基礎工事を行ったあと、あらかじめ作成したいくつかのパーツを現場に持ち込んで3Dプリンターで溶接するように接合し、家をつくりあげていく。5日間で本体工事まで終了。あとは電気工事や内装工事などを加えれば、すぐに住むことができる
日本でもコロナ禍で実用化が加速一方、建設ITジャーナリストの家入龍太さんによれば、日本でも3Dプリンターを利用した建築物の実用例が続々と登場しているという。
例えば、北海道札幌市では市の基準に沿って建設された公共トイレが、オランダ製の大型3Dプリンターを用いてつくられた。またインド輸出用として3Dプリンターならではの曲線美を利用した「ハイテク型トイレ」の生産も進んでいるという。

家入さんは、「コロナ禍で、ますます3Dプリンターのニーズが高まり、導入が進むだろう」と話す(写真提供/株式会社建設ITワールド)
さらに、ゼネコン各社は本格的に建造物への3Dプリンター製のパーツの導入を進めている。清水建設が都内の「(仮称)豊洲六丁目4-2・3街区プロジェクト」で使用した埋設型の枠はその一例だ。家入さんは「建築業界では、より人手不足が厳しくなるうえ、このコロナ禍で“3密を避ける”必要が出てきました。そのため、現場作業のテレワーク化や、機械による部品生産というイノベーションが進んでいるのです」と話す。
3Dプリンターをオートメーション部品として組み合わせた工場用のロボットの導入も進んでいる。例えば、溶接アームにコンクリートノズルをつけるだけで、3Dプリンター機能を持つロボが完成するのだ。「(設備投資の面で)導入しやすい価格のものが出てきたうえ、質も担保できる製品がつくれるようになった」と家入さん。日本の建築業界における3Dプリンター研究もいよいよ加速度を増し、実用化はさらに進みそうだ。
また、日本で始めての国内の住宅基準を満たした3Dプリンター製の住宅づくりに取り組む企業も登場している。2021年12月には日本初の3Dプリンター住宅が完成する計画で、2022年には30坪300万円で2階建ての住宅デザインも既に意匠出願済とのこと。

セレンディクスパートナーズ株式会社が、兵庫県を拠点に3Dプリンターで30坪300万円の住宅をつくる「Sphere(スフィア)プロジェクト」が2019年12月からスタート(写真/セレンディクスパートナーズ © Clouds Architecture Office)
「私たちは住み心地の良い家を追求しています。それを3Dプリンターでつくっただけ」というデ・ビーさんの言葉が印象に残っている。
特に災害の多い日本では、現状では3Dプリンターの家に対して耐久面や機能面を不安視する声も少なくない。しかし、それらを担保できるだけの技術が進歩した暁には、「住み心地さ」や「自分らしい暮らしのデザインができる」家として、3Dプリンターハウスが積極的に選ばれていく時代が訪れるかもしれない。
3Dプリンターハウスの未来への期待は増すばかりだ。
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●取材協力
・Vesteda
・セレンディクスパートナーズ
建築ITジャーナリスト・家入龍太(いえいり・りゅうた)
BIM/CIMやロボット、AIなどの導入により、生産性向上、地球環境保全、国際化といった建設業が抱える経営課題を解決するための情報を「一歩先の視点」で発信し続ける建設ITジャーナリスト。新しいことへのチャレンジを「ほめて伸ばす」のがモットー。公式サイト「建設ITワールド」を中心に積極的に情報発信を行っている。「年中無休・24時間受付」の精神で、建設・IT・経営に関する記事の執筆や講演、コンサルティングなどを行っている。
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所在地:世田谷区松原ジュピターテレコム(J:COM)のグループ会社であるジェイコム少額短期保険が、ミドル世代(30~40 代)の持ち家世帯を対象に「災害、生活への備えに関する実態調査」を実施したところ、災害への備えが不十分という結果が出た。あなたは大丈夫だろうか?【今週の住活トピック】
「災害生活への備えの関する実態調査」を発表/ジュピターテレコム(J:COM)
近年、災害リスクが急速に高まっている。巨大地震が発生する確率は高く、豪雨や台風による浸水被害も甚大化している。これまでの予想をはるかに上回る災害に対して、備えは十分にできているだろうか?
今回の調査で「災害への備えは十分だと思うか」と聞いたところ、「そう思う」つまり備えは十分と思っている人はわずか1.3%しかいなかった。備えが不十分(「全くそう思わない」16.1%+「あまりそう思わない」38.3%)という回答が過半数を占め、「どちらともいえない」が32.1%だった。
さらに、「災害に遭った時の備え」として対策していることを複数回答で聞くと、半数前後の人が「食料、飲料、水の備蓄」や「生活必需品の備蓄」と回答した。いずれも、被災後に命が助かって生活インフラが整うまでの当面の生活のためのものだ。

災害にあった時の備えとして、実際に対策していることを教えてください(回答者 523/複数回答)
(出典:J:COM「災害生活への備えの関する実態調査」より転載)
一方、「転倒防止などの家具の配置」や「避難経路などの確認」といった、命を守るための対策を行っているのは4人に1人程度。被災後の「生活再建のための費用」を保険や貯蓄でねん出する対策をしている人は4~5人に1人程度という結果となった。
命を守れてこそ当面使う備蓄が生かされるわけだし、万一の時に生活再建をするには多額の費用がかかる。こうした備えをするのも重要な災害対策だ。
建物の火災保険に加入している人は8割超えだが、家財は半数以下次に、保険の加入について見ていこう。今回の調査は持ち家世帯が対象ということだが、住宅ローンを借りて家を買った場合、建物の火災保険に加入することが求められる。そのため、建物の「火災保険」への加入率は、84.3%と高くなっている。
生活再建のためには、建物に加えて家の中の家財に保険をかけることも検討したい。その場合は「家財保険」になるが、加入率は44.6%と半数に満たない。もちろん家財は貯蓄で備え、高額となる建物には保険を掛けるという人もいるだろうから、一概にはいえないが、家財保険の認知度が低いという可能性も考えられる。

(出典:J:COM「災害生活への備えの関する実態調査」より転載)
また、「家財保険の対象に含まれるものはどれか」を聞いたところ、「テレビ」(59.7%)、「冷蔵庫」(57.9%)、「洗濯機」(54.9%)などの価格のはる家電を対象と思う人が過半数となる一方、「くつ」(19.3%)、「めがね」(17.6%)、「本」(17.4%)などの日用品などは対象にならないと思っている人が多いことが分かった。
実際は、家具や衣服などの日常生活に使用している動産はほとんど「家財」として扱われるため、くつや眼鏡、本なども家財保険の補償対象となる。
筆者の場合は、眼鏡に意外とお金をかけているので、対象になるのだと改めて認識した。ただし、保険の加入時期によっては対象とならない場合もあるようなので、いずれにせよ家財の対象の範囲については事前によく確認しておきたい。
災害への備え、どうしたらよい?さて、災害への備えはやろうと思えばきりがないほど広範囲に及ぶ。家庭それぞれの事情に応じて、優先順位をつけるのがよいだろう。ただし、まずは命を守ることを優先してほしい。家具の固定やガラスの飛散防止など、できることから始めたい。
また、災害による損失を貯蓄で備えるのか、保険で備えるのか迷うところだ。一般的には、ライフイベントなど予想ができるものは貯蓄で、頻繁に起こらないが起きたら多額の費用が必要になるものは保険で備えるのがよいといわれている。
そういう意味では、災害の備えは保険である程度カバーしておくのがよいだろう。ただし、建物の火災保険では地震による火災は補償されないので、地震に備えるには火災保険に付帯する地震保険への加入が必要だ。また、火災保険でも補償範囲がセットになっているものもあれば、選べるものもある。これから災害が起きる可能性のある「水害」も補償されるかなど、加入する火災保険でどこまで補償されるのか、内容をきちんと確認しておくことが必要だ。
同じ水の被害でも、台風によるもの、地震後の津波によるもの、上階からの水漏れによるものなど、加入している保険によって補償対象が分かれる。保険に入ってさえいれば、すべて補償されるものではないので、上手に活用するようにしたい。
災害への備えをするには、まずはマイホームの災害リスクの程度を知ることが大切だ。そのためにはハザードマップでリスクの程度を確認したり、過去の災害の状況を確認したりしてほしい。災害に対する家庭での備えについては、首相官邸のサイトに詳しい情報があるので、こうしたものを参考にするとよいだろう。「備えあれば憂いなし」だから。
〇首相官邸:災害に対するご家庭での備え~これだけは準備しておこう!~
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所在地:中央区日本橋小伝馬町
所在地:さいたま市⼤宮区桜⽊町
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所在地:さいたま市⼤宮区桜⽊町自分の暮らすまちには本屋がない。「それがこんなにつらいことだったとは」と話すのは、絵ノ本桃子さん。自ら千葉県松戸市の八柱にシェア本屋「せんぱくBookbase」を開いたのも、近くに本屋が増えたらいいなとの思いからだった。本ならネット通販で買えばいいじゃない、という人もいるだろう。でもオンラインとは違って、本屋に足を運ぶことで思いもよらない世界との出会いがあったり、子どもにとっては自分の好きなことを見つけるきっかけになったり。本屋は可能性を秘めた場所でもある。「暮らしの延長上で本に出会えるように」という、絵ノ本さんに話を聞いた。■連載【生活圏内で豊かに暮らす】
どこにいても安定した同じものが手に入る今、「豊かな暮らし」とは何でしょうか。どこかの知らない誰かがつくるもの・売るものを、ただ消費するだけではなく、日常で会いに行ける人とモノ・ゴトを通じて共有する時間や感情。自分の生活圏で得られる豊かさを大切に感じるようになってきていませんか。ローカルをテーマに活動するライター・ジャーナリストの甲斐かおりさんが、地方、都市部に関わらず「自分の生活圏内を自分達の手で豊かにしている」取り組みをご紹介します。
芝生の上に大きく「本」と一文字書かれた看板が置かれている。そっとガラスの戸を開くと、こぢんまりとした、でも愛情をたっぷりそそがれていることが伝わってくる本屋さんだった。絵本あり、文芸あり、実用書あり。古本だけでなく、新刊も扱っている。
8名の「店守(たなもり)さん」と呼ばれる店主が本箱を共有しているシェア型の本屋である。海外童話ばかりを置く棚や、絵本の専門店、こだわりの出版社の本だけを扱う棚など、特徴ある本棚が並ぶ。全体を切り盛りしているのが、店長の絵ノ本さんだ。
「本屋をやることに興味のある人たちにここで経験を積んでもらって、新京成沿線に新しく本屋が増えたらいいなと思って始めたんです。実際この店を卒業した方が、新京成線沿いの初富と新鎌ヶ谷の間に新しい本屋さんをオープンされました。私もゆくゆくは自分の本屋をやれたらいいなと思っています」

せんぱくBookbase店長の絵ノ本桃子さん(写真撮影/甲斐かおり)
それぞれの店守さんが月2回、シフト制でお店に入る。これまでに学生、販売員、学校図書館勤務、ミュージシャン、デザイナーと幅広い年齢や職業の人たちが携わってきた。中には現役の書店員もいて、本業では叶わない、自分の好きな本を思い切り紹介しているという。店守の日は、告知も含めて自分のお店のように自由にやってくださいというのが店の方針。そのためルールは最小限に。

さまざまな店守さんの本棚が並んでいる様子(写真提供/せんぱくBookbase)
絵ノ本さんが本屋を始めた理由はいくつかあるが、一番の動機は、冒頭に書いたように自分の暮らすまちに本屋がなかったこと。
「大人一人なら隣町にも行けるし、いろいろ選択肢があると思うんですけど、子育て中は、子どもを抱えてベビーカー押しながらとか、雨の日なんかきつくて。本屋さんって思っていたより自分にとって大きな存在だったんだなと気づきました。たまたま手にした本からモヤモヤ悩んでいたことのヒントをもらったり、刺激を受けたり。子どもにとっても、徒歩圏内に一人で寄れる本屋があるかは大きいなと。親から離れて自分で本を選ぶ力を得ることにもなったり。図書館とはちょっと違います。そう思う人ってほかにもいるんじゃないかなって」

(写真提供/omusubi不動産)
探し始めて出会った、一風変わった不動産会社「せんぱくBookbase」は新京成線の八柱駅から歩いて10分ほどの場所にある。はじめは絵ノ本さん自身が暮らす二和向台付近で物件を探していたが、同じ沿線の八柱に「せんぱく工舎」というシェアアトリエ&店舗があることを知って、「まずはここで始めてみよう」と決めた。
せんぱく工舎がほかにない面白い物件だったからだ。八柱、常盤平エリアの物件を中心に扱うomusubi不動産という一風変わった不動産会社があり、DIYできる賃貸物件やユニークな企画の賃貸物件を扱っている。せんぱく工舎もomusubi不動産のサブリース物件だった。入居者には個性的なお店やクリエイターが多く、自転車屋、スコーンの店、スペインバルなどのお店や工房が入居している。
「表が芝生なので子どもがばっと飛び出していっても安心ですし、入居者同士のイベントがあったり、omusubiさん主催の田植えに参加したり。お隣の店でコーヒーなど買ってうちの店に持ち込んでいただいてもOKにしているんです。今年でオープンから丸3年経つんですけど、子ども連れの若いお母さんや年配の方までいろんな方に来ていただいています」
開店資金は、クラウドファンディングで97人から100万円近くが集まった。

せんぱく工舎の入り口(写真撮影/加藤甫、川島彩水)

せんぱくBookbaseがある八柱エリアには、近年個性的な店が増えている(写真撮影/甲斐かおり)
じわじわと、まちの人たちとつながって手づくりの木製の棚には、ほどよく空間を交えながら多彩な本が並んでいる。各店主の棚以外は、店長の絵ノ本さんの選書がメイン。装丁の美しい本、定番の絵本。店の奥には和室があり、小さな子どももベビーカーから降りてくつろぐことができる。
店守のコースは月に5000円と7000円。店主の中には、会社勤めで新刊の取り扱いにまで手がまわらない人も多いため、7000円のコースでは、絵ノ本さんがリクエストを受けて新刊の手配を代行する。さらには企画展やフェアなど、店守さんの企画を実施するまでをサポートしたり、絵ノ本さんが各店横断型のフェアを開催したりもする。

「喫茶と読書ひとつぶ」のカードとともに陳列されている(撮影/甲斐かおり)
「喫茶と読書ひとつぶ」と書かれたカードに目がとまった。ひとつぶは、常盤平の駅近くにある喫茶店。
「本好きな人が好みそうな本がたくさん置いてある素敵な喫茶店で、私も大好きなんですけど、そこで本を買えるわけではないので、この店で買えたらいいなと思って置いています。うちの店でひとつぶさんを知る人もいるかもしれないですし」

(写真撮影/甲斐かおり)
大型書店では扱っていないリトルプレス(少部数の出版物)を「この店なら取り寄せてくれるのでは」と訪ねてくるお客さんもいる。実際、そのシリーズ全巻を注文したところ反響があった。今年1月には店守さんの発案で『老犬たちの涙』という犬の殺処分をテーマにした写真展を開催。各店主から推薦書を出してもらい「卒業・入学フェア」も行った。最近は、大学生のボランティア7~8人がイベントの際の店内装飾を手伝ってくれるようにもなった。近くの聖徳大学の学生さんによる取材が縁で、この店で卒業作品の展示を行ったこともある。

「卒業・入学フェア」の様子(写真提供/せんぱくBookbase)
そんな風に、お客さんのリクエストに応えながら、近所の人や店と連携し、新たな企画が持ち上がるような動きが生まれている。この地域のシンボリックな建物である「せんぱく」を店名に入れたのも、「せんぱくの本屋さん」と覚えてもらえれば十分だと思ったから。そんな風にして「せんぱくBookbase」はじわじわ地域に根付いてきた。

絵ノ本さんが伝えたイメージを、学生さんが描いてくれた手書きのフェアの装飾案(写真提供/せんぱくBookbase)
大型書店では、その時売れている本、話題の本を眺めて世の中のトレンド、情勢を知ることができる。一方「せんぱくBookbase」のような小さなまちの本屋では、新旧ランダムに置かれた中から、これはと思う本を見つけて、こっそり自分だけの本を見つけたような気持になる。その時の自分の関心事に気付いたり、思わぬところではっとしたり、知らなかった世界を知ってワクワクしたり。
いまオンライン書店や大規模書店におされて、まちの本屋はどんどんなくなっている。全国の書店数は、20年前に比べて半分になった。ただ、けして数は多くないけれど、パン屋や喫茶店と同じように、小さな個性ある本屋が各地に誕生し始めているのも事実だ。
近所のことを何も知らない絵ノ本さんが本屋をつくろうと思ったのには、もうひとつ理由があった。いま暮らす二和向台は、結婚して初めて暮らすことになったまち。知り合いがほとんど居なかった。
「家で子育てしているだけでは、町につながりができなくて。家の前の八百屋さんで毎日のように買い物したり、娘が店の座敷で遊ばせてもらったりしていたんですけど、ある日、品物がなくなっていて、明日には閉店するんだって知ったんです。目の前の店なのに、何も知らなかったことに愕然として。でも年配の方たちの中にはネットワークがあったらしくみんな知っていたんですよね。その時すごく孤独を感じて。知らない人だらけのまちで子育てしていることが怖くなったんです」

絵ノ本さんの家の前にあった八百屋さん。今は更地になっている(写真提供/せんぱくBookbase)
まちの人たちともっとつながりたい。そういう場所がほしいと思った。さらに、絵ノ本さんと娘さんが気に入っていたもう一つのお店、近所のせんべい屋も閉店したことが背中を押した。
「いつも女将さんや近所の年配の皆さんが座っておしゃべりしていて。このおせんべい屋さんと八百屋さんが、私たちがこの町で暮らしていると感じられる数少ない、まちとのつながりだったんです」
子どもを排除しない働き方絵ノ本さんは、以前、本を流通する取次の会社で働いていた。書店や本のつくり手を応援したい気持で就いた仕事だったけれど、既存の取次のしくみには融通が効かないルールも多く、出版社や書店を困らせることも少なくなかった。個人の力ではどうすることもできず、仕事に疑問と違和感を感じ、辞めた後も図書館に勤めたり、ライターの仕事をするなど本との関わり方を模索してきた。
今は、オンラインで小中学生の学習支援の仕事をしながら、シェア本屋をライフワークとして続けている。
「もちろんしっかり売上は立てていきたいんですが、お金を稼ぐ手段としてだけではなく、ここで私が働いている姿を子どもにも見せたい思いもあったんです。在宅でネットを活用して働くのは便利ですが、仕事している間、どうしても子どもを排除することになっちゃう。でも、ここに居れば子どもも一緒にお客さんや店と関わっていけるのがいいなって。いろんな大人と関わる機会になるし、地域の人たちと関係性ができていく過程を見てもらえる。家にこもって仕事しているだけでは広がらないので」

(写真提供/せんぱくBookbase)
都市に暮らし、絵ノ本さんと同じように感じる人は多いのではないだろうか。それでも心の声に正直に、一歩を踏み出すのは案外難しい。絵ノ本さんはお店を立ち上げ、子育てをしながら店守のみんなと店を運営してきた。いいことばかりだったわけでなく、店主にもいろんな考え方の人がいて、時には意見が食い違うこともある。それでも続けてきた跡に、ご近所さんとのゆるやかなつながりが数多く生まれている。
●取材協力
せんぱくbookbase
所在地:狛江市和泉本町
所在地:狛江市和泉本町
所在地:渋谷区東
所在地:目黒区柿の木坂
所在地:港区三田
所在地:世田谷区北沢
所在地:調布市下石原
所在地:目黒区下目黒
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所在地:栃木県那須郡那須町大字高久乙