所在地:中央区東日本橋18万1,500円(税込) / 46.94平米
都営浅草線「東日本橋 」駅 徒歩1分
ほどよいサイズ感で、内装がいい感じのオフィスが欲しい!そんな方へオススメしたい、こちらの物件。
東京R不動産では空室が出るたびに紹介している、思い入れのある建物です。
繊維会社の倉庫だったビルを、2003年にR不動産のディレクター馬場正尊率いるOpen Aが一棟丸ごとリノベー ... 続き>>>.
圧倒的に不動産情報が多いですが。。。。
所在地:中央区東日本橋
所在地:川崎市多摩区登戸新町
所在地:台東区蔵前
所在地:世田谷区代田
所在地:世田谷区池尻ご近所づきあいが希薄になりつつある一方で、シェアハウスや定額で多拠点に宿泊可能なサブスクリプション住居など、違う形でのコミュニティが活発化している昨今。京都の八清(ハチセ)が運営するコレクティブハウスは、一人暮らし以外に、子育て世代や高齢者にも注目されている。京都の特性を活かした住まいとはどのようなものか。その住まい方を紹介したい。
コミュニケーションのさじ加減。人との距離感は自分で調整
路地でひと際目立つ2トーンの外観。大きなガラス戸が「ウェルカム」の意思表示に(写真提供/八清)
京都の賀茂川近く、車も通れないような路地を入ると、古い街並みのなかに、板張りの塀に囲まれた、グレーと白の2トーンの外観が目を引く。ガラス戸を開けると、テーブルとキッチンカウンターのあるカフェのようなスペース。隣には中庭が広がり、そのまわりに5つの玄関が並んでいる。ここが、新築コレクティブハウス「coco camo」だ。そもそも、コレクティブハウスって?
「水まわりやLDKを共用するシェアハウスとは違い、それら生活に必要なスペースは専用でありながら、みんなで使ういくつかの共用スペースもある。生活の一部を共同化しながら生活する住まいのことです」と、コレクティブハウスを運営する株式会社八清の小山由美さん。
八清がコレクティブハウスを運営するのは、これで4つ目。これまでの3棟は、既存のワンルームマンションの一部を共用部に改装し、「面白い暮らしがしたい!」という人たちが好んで集まったという。共用部にはソファや広いキッチンを完備。それぞれの生活を送りながら、ひとたび集まれば、仕事が生まれたり、イベントを開催したり、山登りサークルができたり。集まったときのポテンシャルが高く、とにかく楽しそう!
シェアハウスとの一番の違いは、「人との距離感を自分で調整できることではないでしょうか」と小山さんは教えてくれた。「基本的に、コレクティブハウスはそもそも独立した住宅なので、個人の生活が確立しています。その上で、自分のスタンスに応じて、共用部をうまく使いながら、人と交流するイメージです。また、シェアハウスは年齢やライフスタイルの違いによる価値観の違いから起きるトラブルを回避したいと、年齢制限を設けたり、一人暮らしに限定していたりといった制限があることも多いのですが、コレクティブハウスはシェアハウスの楽しいところはそのまま、カップルや子どものいる世帯、高齢者など多様な人が住まえるところにも魅力があります」

自然素材に囲まれた2号室。ステンレス×木のキッチンはミニマルなシンプルデザイン(写真撮影/出合コウ介)

床はオーク、土壁風クロスやシナベニアなどを使って落ち着いた雰囲気に。アンティークな建具を再利用しているあたりは、町家リノベの実績の多い八清ならでは(写真撮影/出合コウ介)
遠方からの移住者とコレクティブハウス。実はとても相性がいい
シンボルツリー「ソヨゴ」があるコモンテラス。このテラスに面して各戸の玄関が配置されている。玄関のライトがコロンとしてかわいい(写真提供/八清)
「coco camo」はワンルームマンションからの発展形。「コレクティブハウス」を目的として建てた、一戸建てのような集合住宅だ。これまでの3棟は、ワンルーム=一人暮らしを想定していたが、「coco camo」の各住戸は初のメゾネットタイプ。一人でも、カップルでも暮らせるフレキシブルさがある。自然素材に囲まれた住戸は落ち着いた雰囲気で、住まう人の色に染められるよう、限りなくシンプルにデザインしている。これまでに手掛けたコレクティブハウスは内部の共用部のみだったが、中庭=コモンテラスという外部にある共用部は、本を読んだりお茶したりと自分の庭として使えるのが最大のメリット。バーベキューなどアウトドアを通してよりオープンに人とつながれる魅力も増えた。

入居者みんなが利用できるコモンリビングには団らんできるようカウンターを設置(写真撮影/出合コウ介)

入居者が飲んだビールの空き瓶もオブジェのようにズラリ。エントランスホールの可動棚とピクチャーレールはみんなと共有したいものを置いて、住まう人たちの情報交換の場に(写真撮影/出合コウ介)
実はこのコロナ禍の影響で、完成前の現地見学会をオンラインで行うことを余儀なくされた「coco camo」だが、逆にそれが功を奏して遠方の方とつながることができ、コレクティブハウスの特徴とマッチした。
「単身でお住まいの60代女性は、埼玉からの移住者です。セカンドライフは京都に住みたいと賃貸から探し始めたところ、八清のHPを発見。オンラインイベントに2回参加し、入居を決められました。知らない土地に住むには不安もあったようですが、コレクティブハウスというスタイルは、入居者同士での交流が大前提。遠方から移住=コレクティブハウスがぴたりとハマりました」と小山さん。
ソーシャルディスタンスを保ちつつ交流できる。時勢にマッチした住まい方
株式会社八清 プロパティマネジメント部の小山由美さん。八清は京町家・中古住宅をリノベーションにより上質な空間へとプロデュースする京都の不動産会社(写真撮影/出合コウ介)
一方、30代のご夫妻は、立地と共用部を見て決めた例。「このご夫婦は、コーヒーを入れるのがお好きなようで、共用部でコーヒーイベントやフリーマーケットなどをやりたいとおっしゃっていました」。入口が共用部というオープンなつくりから、内部との交流はもちろん、外部との交流も可能。住まう人次第で、可能性が広がるのが面白い。
友達以上、家族未満。近所付き合いを大切にする京都では、地蔵盆など地域のコミュニティも活発で、家と家との距離も近く、路地も生活の一部。顔を合わせたら挨拶をし、井戸端会議に花を咲かせる。だけど、互いの「距離感」は大切に。信頼はするけど、パーソナルスペースには踏み込まない。
コレクティブハウスは、そんな京都独特の住まい方の延長線上にある。要は、大人なさじ加減。そしてまた、面白いコミュニティをつくることができるコレクティブハウスは、密なイメージがあるかもしれない。しかし、独立した住居スペース+共用部という生活スタイルは、外出を自粛しがちになる中でソーシャルディスタンスを保ちつつコミュニケーションが図れる、この時勢にぴったりな、次世代の住まい方ではないだろうか。

こちらは広いタイプの5号室。1回は中庭=コモンテラスと大きなガラス戸でつながっている(写真撮影/出合コウ介)

2階は屋根の形状そのままの天井なので、天井高も高く、とても開放的(写真撮影/出合コウ介)
●取材協力
所在地:台東区日本堤
所在地:横浜市神奈川区大口通
所在地:目黒区中目黒1年を代表するリノベーション作品を決める「リノベーション・オブ・ザ・イヤー」。その授賞式が2020年12月10日に開催されました。この1年、新型コロナウイルス感染拡大が暮らしや経済を直撃し、リノベーション業界も多大な影響を受けました。そんな状況下にありながらも、今回の受賞作品からはリノベーションが持つ力、多様性を垣間見ることができました。注目作品とともに今年の傾向を紹介します。
【注目point1】コロナ禍の影響で、職と住の見直しが加速
日本中で人々の行動が制限されるという厄災下で開催されたリノベーション・オブ・ザ・イヤー2020。リノベーション業界でも住まいづくりの全ての過程で大きな制約を受けたため、盛り上がりが心配されましたが、エントリー作品は前年とほぼ同程度をキープし、さまざまな作品が出そろいました。
今回の大きな傾向は、何といっても「コロナ禍が住まいに及ぼした影響」。コロナ禍の影響を受けていない作品も多い中、リモートワーク、職住融合など、近年の潮流が一気に加速されたことで、審査の場では「リノベーションはいかにコロナ禍の影響を受け止めたのか」という観点で見ざるをえなかったそうです。
「毎日会社に出社する」という今まで当たり前だったことが、職場や職種によってそうではなくなりました。働き方改革の一環で以前からリモートワークを推進する企業は増えつつありましたが、半ば強制的に、暮らす場所と働く場所のボーダーレス化が一気に進んだ形となりました。それを最も象徴するのが、総合グランプリ受賞作品です。
職住融合のミニマルな形
総合グランプリ:『リモートワーカーの未来形。木立の中で働く。住まう。』株式会社フレッシュハウス

森の中にたたずむ小さな住まいを、仕事と暮らしの場として再生させました(写真提供/フレッシュハウス)
長年、別荘地で放置されていた60平米に満たない小さな家。オーナーは一人暮らしのプログラマーで、元は祖母の家でした。築50年という建物の耐震・断熱改修を行い、間取りの変更などを施して、自宅兼職場に。シンプルな空間に床の高低差でメリハリを付け、目線の位置を低く抑えることで、森の風景に入り込むような臨場感をもたらしています。
「リモートワークによる職住融合」というウィズコロナ時代のニューノーマルを示すだけではなく、郊外&地方移住、実家の空き家問題、古家の性能向上、お一人様社会といった、「今」を象徴するテーマや、問題解決の手法が詰まっていることが高く評価されて、総合グランプリ受賞となりました。
総合グランプリ受賞作のほかに、「ウィズコロナ時代」を象徴するのが次の作品。「職と住」を見直して、魅力ある場に仕立て上げている作品です。
立地を活かした職住融合
審査員特別賞(ニューノーマル・ライフスタイルデザイン賞):『山と渓谷、エクストリーム賃貸暮らし。』株式会社ブルースタジオ

見せる収納で登山ギアが整然と。室内にいてもアウトドアが身近に感じられるしつらえ(写真提供/ブルースタジオ)
山へのアクセスが比較的便利な地に立つ賃貸住宅。気持ちの良い朝、山に足を運び、自然の力を浴びてパワーチャージしてから仕事に取り組むという「エクストリーム出社」が増えている現状に合わせて、アウトドア派のための部屋として設計されました。住む場所の選択肢が広がる状況に対し、「山が好きなら山の近くに住んでしまえばいい」といった新しいライフスタイルを簡潔に提示している点が評価されました。
アウトドアという“地域ならではのプラス要素”を賃貸住宅に付加することで、オーナーの空室不安を解消する物件にもなっています。
多拠点な職住の場
審査員特別賞(ニューノーマル・ワークスタイルデザイン賞):『働く場所から、自由になろう。』株式会社LIFULL

現在、全国に8拠点。テレワークの浸透で利用者が急増しています(写真提供/LIFULL)
廃校や閉鎖した企業の保養所などの遊休不動産を再生し、多拠点居住&労働の場及びコミュニティの場として定額制で提供するプロジェクト「LivingAnywhere Commons」。近年、多拠点居住という新たなライフスタイルが確立されてきましたが、このプロジェクトは各拠点でのコミュニティづくりにも取り組んでいるのが特徴。滞在者のコミュニティづくりをサポートするマネージャーがいることで、共創型プロジェクトに容易に参画できたり、快適な空間になるよう利用者がDIYやルールづくりをしたりと、手を掛けて育てていくことが可能です。
【注目point2】コロナ禍の影響で「おうち時間」の質向上に注目「おうち時間」が否応なく長時間化することで、暮らしの場の質を高めたいというニーズが高まっています。リノベーションはそもそも家の質を高めるために行われるものなので、「おうち時間の質が高まっている」のはすべてのエントリー作品に当てはまるのでしょうが、そのなかでも、次の作品は充実したライフスタイルが垣間見られるとして、審査の場で注目されていました。
充実の家族時間
1000万円未満部門 最優秀賞:『日曜漁師』株式会社オレンジハウス

勝手口から魚を持ち帰り、食卓にという豊かな暮らしぶりが垣間見えます(写真提供/オレンジハウス)
ダイニングキッチンとリビング、廊下を隔てていた壁を取り払い、勝手口からシンクへダイレクトに魚を持って入れる動線に。日曜大工ならぬ“日曜漁師”の夫が獲ってきた魚を家族で調理するというストーリーが、リノベーション空間の中に見て取れる作品です。「家族時間の一つのあり方を提示している点に好感が持てる」「生活ファーストの穏やかなワークスタイルを自然体なリノベーション空間が演出している」といった観点で評価されました。
2つのワーキングスペース
審査員特別賞(ユーザービリティリノベーション賞):『この先もつづく日常に根差した家』株式会社grooveagent

家の各所に本棚を設け、大量にある本を収納。2つのワーキングスペースを離れた場所に配置しました(写真提供/grooveagent)
夫婦とも在宅での仕事が多いという住まいのリノベーション。2つのワークスペースを離れた場所に配置して、就業中の距離の問題をうまく解いています。「おうち仕事時間」の質を高めた作品です。
【注目point3】「性能向上リノベ」の合理的手法が示される断熱性・耐震性などの性能を高めるのはリノベーションの使命です。ここ数年、「性能向上リノベ」のさまざまな手法が示されてきましたが、昨年来、「性能向上リノベを、合理的で経済性のあるプランにまとめて商品として普及させることが重要」という観点が審査の現場で上がっていました。その流れを受けて今回は、全国の中規模ビル、古民家、中古マンションなどの性能を向上させる、ひとつの指標となるような取り組みが登場しました。
ビルのゼロエネルギー化
審査員特別賞(先進的省エネビルリノベーション賞):『未来への贈り物~地中熱ヒートポンプにより生まれ変わるZEB社屋』棟晶株式会社

自社の中規模オフィスビルをまるごと省エネビルに改修(写真提供/棟晶)
中規模のオフィスビルをZEB(「ゼブ」。ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディングの略称)にリノベーション。NEDO(新エネルギー産業技術総合開発機構)の支援を得て北海道大学工学部と共同開発した地中熱ヒートポンプシステムを採用し、壁面ソーラーパネルと合わせて102%の創エネルギ−を実現。イニシャル・ランニングの両面で誰もが導入しやすい低コスト化に成功しています。全国の中規模ビルのゼロエネルギー化に一つの指針を示した点で高く評価されました。
エリア断熱で性能アップ
1000万円以上部門 最優秀賞:『Old & New 古くて新しい・古民家のカタチ』株式会社ラーバン

風景に溶け込む外観にプラスされた、空間を切り取ったような「縁側」が印象的(写真提供/ラーバン)
築150年という代々受け継がれてきた古民家に、現代のデザイン要素を付加。古家特有の断熱性・省エネ性能の低さについては、断熱パッシブの施工エリアを決めることで、国が定める省エネ等級4を大幅に上回る数値を達成。デザイン、性能の両面をバージョンアップさせる部分改修の手法は、古民家活用のお手本となるのではないでしょうか。
新築以上の断熱性をスタンダードに
審査員特別賞(次世代再販リノベーション賞):『THE NEW STANDARD』株式会社リアル

フレンチシックなリビング。「こんな家に住みたい」と思われるデザインを目指したそう(写真提供/リアル)
「買取再販リノベーション(リノベ会社が購入した中古物件をリノベーション後、販売する手法)のスタンダードにしたい」という意気込みのもと、築38年の中古マンションに新築以上の断熱性能を実現させ、性能とデザインの両面で魅力を高めているプランです。
“今”の時代を表すこんな作品にも注目!今回は、「コロナ禍をリノベーションはどう受け止めたのか」「性能向上リノベの合理的手法」という観点の作品に注目が集まりましたが、他にも“今”という時代性を宿している作品もあります。筆者が注目した2作品を紹介します。
廃棄物を最小まで削減
500万円未満部門 最優秀賞:『サスティナブルにスマートハウス』株式会社シンプルハウス

壁紙を剥がしただけの壁が空間のアクセントに(写真提供/シンプルハウス)
既存の建具や建材を徹底して選別し、リユース、リサイクル。同時に無駄な解体をせず、廃棄物を最小限とする。新しく用いるものも間伐材、地産地消の素材にする。こうすることで、約70平米の住戸のフルリノベーション が税込498万円という低コストで実現した作品です。単なるコストダウンに留めるのではなく、リユース等による廃棄物削減、環境に優しい素材の採用といった、サスティナブル(持続可能性)なリノベーション方法を確立しています。
三密回避の旅行に最適
審査員特別賞(公共空間リノベーション賞):『予約殺到のトレーラーホテル。PFIによるビーチリノベーション。』9株式会社

全室オーシャンビュー。テラス付きの独立型ホテル(写真提供/9)
客室とテラスはともに37.4平米の広さ。テラスにジャグジーとバーベキュー設備が付いており、他の宿泊客と顔を合わせることがないそう。移動可能なトレーラーハウスのため、工期が短くて済み、将来的な移設が可能で、暫定利用地での活用に向いています。
まだある! お手本にしたいこだわり空間リノベや空間伝承リノベほかにも、空間美が光る作品や、古き良き時代を継承したリノベーションも。いくつかご紹介します。
審査員特別賞(エスセティック空間リノベーション賞):『熊本城をのぞむ望楼の住まい。清正に倣う、永く愛される建築の教え。』株式会社ヤマダホームズ

自然素材の経年進化や味わいを活かし、落ち着きある上質な雰囲気に(写真提供/ヤマダホームズ)
審査員特別賞(借景空間リノベーション賞):『心を掴むストック 都住創を継ぐ』株式会社アートアンドクラフト

施主の「美しいと思えるかどうか」という判断基準でつくられた空間(写真提供/アートアンドクラフト)
無差別級部門 最優秀賞:『SWEET AS_スポーツを中心に地域コミュニティが生まれる場所』リノベる株式会社

3100平米のも巨大な鉄工所を、カフェレストランやバー、観覧スペース付きの多目的スポーツコートへコンバージョン。地域の新たな拠点に(写真提供/リノベる)
審査員特別賞(地域創生リノベーション賞):『旧藩医邸を癒しの温泉宿に再生 城下町アルベルゴディフーゾへの挑戦』paak design株式会社

官民一体のプロジェクトとして、伝統ある建物を癒やしの宿に改修(写真提供/paak design)
審査員特別賞(古民家再生リノベーション賞):『「おばあちゃんの家みたい!」が一番の褒め言葉』G-FLAT株式会社

格子の美しい古民家の広い玄関土間が、魅せるガレージに(写真提供/G-FLAT)
審査員特別賞(コンパクトプランニング賞):『団地育ちの原風景』grooveagent

「家族みんながわいわい過ごしている“あの感じ”」と、幼少期の団地暮らしのイメージを再現(写真提供/grooveagent)
変革の時代にリノベーションは力を最大限発揮する2020年はコロナ禍に揺れ、それを抜きには語れない1年となりました。リモートワーク、密を避ける、不要不急の外出を控える、ときにはオンライン会食などが求められる新しい生活様式は、住まいに与える影響も大きく、働き方だけでなく、仕事そのものや暮らす場所までも一気に転換させていく人も少なからず見られました。
コロナ禍でそうした動きが一気に加速したのは事実ですが、そもそも以前から、リモートワークや多拠点居住での田舎暮らし、移住、通勤混雑回避などは社会的なニーズとして存在しており、それらに対してリノベーションは常に、多様な解決策をさまざまな形で示してきました。
今回の受賞作品はコロナ禍に立ち向かう可能性を提示してくれましたが、影響が住宅市場に本格的に出始めたのは下半期以降で、現在も進行中です。そのため、コロナ禍の影響が色濃く抽出されたリノベーション作品が出そろうのは2021年になると予想されます。
社会的・意識的変革が求められる時代に、リノベーションという技術は力を最大限発揮して、新しい暮らし方、住まい方、働き方の可能性を提案してくれるはず。授賞式を終えて、リノベーション業界にはそんな期待を抱かずにはいられませんでした。次回のエントリー作品、受賞作品に出合える日を今から楽しみにしています。

赤絨毯にタキシードが決まっている受賞者のみなさん。2021年も、日本を明るくさせてくれる作品が登場するのを期待しています!(写真提供/リノベーション協議会)
●取材協力
所在地:目黒区碑文谷
所在地:目黒区碑文谷
所在地:渋谷区恵比寿
所在地:渋谷区千駄ヶ谷
所在地:杉並区永福コロナ禍で、静かな生活を送ることになった2020年。2021年には明るい話題に多く触れたいものだが、住宅市場は今後どうなっていくのだろう?いくつかの調査結果を確認しながら、見ていくことにしよう。【今週の住活トピック】
「第2回 生活価値観・住まいに関する意識調査」を実施/カーディフ生命コロナ禍で住まい選びに大きな変化
2020年はコロナ禍で住まい選びに大きな変化が見られた。
●おうち時間が長いから気になる、住宅の基本性能。
●コロナ禍で普及する在宅ワーク、あなたは個室派?LD派?
●駅距離よりも家の広さが欲しい?コロナ禍で変わる住まい選び
●2畳だけでも個室がほしい!コロナ禍で変わる、間取り意識
●新型コロナの影響で、お出かけ先は自宅周辺へシフト
など、筆者も何度か住まい選びの変化について記事にしてきた。
コロナ下の「在宅時間の長期化」と「在宅勤務の普及」が大きな影響を与え、住まい選びが変化しているが、住宅の広さや部屋数へのニーズ、自宅周辺の環境を重視する傾向が強まり、「郊外志向」の増加も指摘されている。
テレワークの頻度によって、郊外か都心かが変わる?では、2021年は、郊外に人気が集中するのだろうか?カーディフ生命が実施した「第2回 生活価値観・住まいに関する意識調査」で分かりやすい結果が出ている。
住宅未購入者全体の住宅購入意向率は35%だったが、テレワーク経験者に限ってみると52%とかなり高くなった。また、購入したい場所は郊外か都心かを聞くと、住宅購入意向者のうち約54%が「郊外派」で、「都心派」は約46%だった。
一方、テレワーク経験者で見ると、テレワークの頻度によって違いがあり、テレワークの頻度が高い「半分以上テレワーク」は「郊外派」が、「テレワーク半分未満」は「都心派」が多いという結果になった。

テレワーク経験者の住宅検討場所(住宅購入意向者)(出典/カーディフ生命「第2回 生活価値観・住まいに関する意識調査」より転載)
逆に言えば、通勤する頻度が高いほど都心を志向し、通勤頻度が低いほど郊外を志向する傾向が見られるといってよいのだろう。
また、郊外志向の高まりは、戸建ての住宅市場には追い風となるだろう。
矢野経済研究所が12月16日にリリースした「戸建て住宅市場に関する調査を実施(2020年)」によると、「従前からの職場や都心へのアクセスの良さといった利便性に対するニーズはある一方、リモートワークの普及による在宅時間の長期化から、広さや快適性を求めるために郊外へ戸建て住宅を求めるニーズも増加しており、特にハウスビルダーが供給する建売住宅は値ごろ感とも相俟って販売増加につながっているなどの傾向もみられる。」と分析している。
新築マンションの供給は都市部に多い?一方、新築マンションの販売動向では、相変わらず都市部への供給が続くと見られている。
不動産経済研究所が12月21日に公表した「首都圏・近畿圏マンション市場予測2021年」を確認しよう。
2021年の新築マンションの供給戸数は、首都圏で3万2000戸、近畿圏で1万8000戸と予測している。2020年はコロナ禍で供給が減ったが、2021年は奈良県を除く全エリアで前年を上回り、コロナ前の2019年並みに回復すると見ている。
エリアについては、首都圏では「引き続き都区部の大規模案件が市場をけん引、近郊エリアも注目タワーが始動」、近畿圏では「大阪市部の超高層物件は2021年も継続の見通し」などと、都市部のタワーマンションの供給が続くとしている。
一方、新築マンションの価格については、2020年(1~11月)の平均価格は、首都圏で6254万円(95.9万円/平米)、近畿圏で4249万円(69.8万円/平米)だった。いずれも2019年の首都圏5980万円(87.9万円/平米)・近畿圏3866万円(68.0万円/平米)を上回る結果となった。
コロナ下で一時的に住宅市場が縮小したが、2021年は従来通り好調維持か?筆者は、2020年上半期の住宅市場について「緊急事態宣言の発令前~解除後、首都圏の住宅市況はどう動いた?」という記事を書いた。この記事では、新型コロナウイルスの感染が拡大し、緊急事態宣言が出された3・4・5月については、住宅の営業を停止した事業者も多かったことから、住宅市場は一時的に大きく縮小したが、6月以降回復基調にあると分析した。
7月以降の東日本不動産流通機構の中古マンションや中古戸建てのデータ(2020年7~11月)を見ると、成約件数は元に戻り、特に10月でいずれも大幅に上昇、成約平均価格も上昇をしている。一方で、新規に売り出される物件数は以前より少ないことから、市場の在庫戸数が減少している。つまり、新築マンションの供給数が減っていた影響もあって、中古住宅市場はこれまで好調に推移していると言えるだろう。
また、コロナ禍による地価への影響については、ホテルやオフィスなどの商業地で大きく下がっているものの、住宅地の下がり方はそれほど大きくはない。住宅購入の意欲も、新しいニーズが発生したこともあって、減退しているわけではない。
こうしたことから、総じて2021年の住宅市場に出回る戸数や価格などに大きな変動はなく、従来通りの傾向が続くと見てよいだろう。
ただし、これまでも二極化が指摘されており、全ての住宅に需要があるのではなく、特長のある住宅に人気が集まる傾向は続くだろう。通勤をする人たちは都心部へのアクセスがよいなど利便性がよい住宅を求め、テレワークが業務の多くを占める人たちは住環境がよく、わが街が充実している、手ごろな価格と広さの郊外の住宅を求めるなど、それぞれに住みやすい条件がそろう住宅が好まれるだろう。
さらに、「住宅ローン減税」が継続され、新たに「グリーン住宅ポイント制度」が設けられるなど、政府は住宅取得を促進する政策をとっている。住宅ローンの金利も低金利が続くと予測される。住宅を購入する環境は整っているので、住み替えを検討している人は不安視せず、自分たちが暮らしやすい住宅を探すとよいだろう。
所在地:港区北青山
所在地:東京都大田区田園調布
所在地:杉並区永福
所在地:大田区南千束賃貸でも分譲でも、住まい探しのときには「共用部のゴミ置き場をチェック」という話を聞いたことはありませんか? その大切さを多分、日本で最も痛感している芸人さんが、マシンガンズの滝沢秀一さんです。今回はゴミ清掃芸人の滝沢さんにコロナ禍のゴミと住まい、街のコミュニティのあり方まで聞いてきました。
ゴミ置き場は“伝染”する? ゴミ収集の目線で見た街と人の関係
お笑いコンビ・マシンガンズで活躍している滝沢秀一さん。2012年、妻の妊娠をきっかけに、「出産費用を稼ぐため」としてゴミ収集会社の仕事に携わり、そこで見た風景・人間模様を『このゴミは収集できません~ゴミ清掃員が見たあり得ない光景~』(白夜書房)にまとめて出版し、これが大ヒット。ゴミ清掃員の日常をつぶやき風にしたり、ゴミからみるお金もち世帯とそうでない世帯の違い、物件の見分けかた、回収できるゴミとそうでないゴミなど、おもしろくてためになる内容がぎっちりとつまっています。現在も芸人活動の傍ら、週2日のゴミ収集の仕事、著作の執筆に大忙しの日々を送っています。

緊急事態宣言下で何が起きたのかをまとめた、滝沢さんの最新の著作『やっぱり、このゴミは収集できません~ゴミ清掃員がやばい現場で考えたこと~』(白夜書房)(写真撮影/片山貴博)
「2020年、コロナ禍で緊急事態宣言が出されたときは、本当にすごい量の家庭ゴミが出されて大変でした。通常、年末年始は大量のゴミが出るんですが、それが2~3カ月続く感じです。ゴミ収集はインフラなので行わないわけにはいきませんし、休めない。キツかったですね」と振り返ります。滝沢さんによると、ゴミ出しには住まいや街、人間の暮らしそのものが反映されるのだといいます。
「ゴミって、人間の本性が出るんですよね。人が見ていないと思うと、人は“なんでもアリ”になるんだなって思います。そうですね、ゴミ置き場のなかでも、目安になるのがペットボトル資源です。ペットボトル資源がキレイに出されている集積場はいつもキレイ。ペットボトル資源が荒れているところは、可燃・不燃ともに汚れています」と驚きの事実を教えてくれます。
たしかにペットボトルは中身を出してゆすぎ、キャップをはずして、ラベルを剥がし、分別すると手間がかかります。「めんどくさいし、ま、いっか」と時には分別もせずに捨てたくなる気持ち、身に覚えがありますよね。また、ゴミ集積所には「ある法則」があるのだとか。
「清掃員同士でよく話題になるんですが、ゴミ置き場の美しさ・汚さって、伝染するんですよ。汚い集積所があるとだんだん汚くなっていくし、反対にキレイな集積所があると周囲もキレイになっていく。これってつまり人の目やコミュニティがあるからなんだと思います」(滝沢さん)


『やっぱり、このゴミは収集できません~ゴミ清掃員がやばい現場で考えたこと~』(白夜書房)より(画像提供/白夜書房)
よい街はみんなでつくる。人とのつながりが街を、地域を変えていく滝沢さんは、ゴミ置き場が荒れているところは、人の目の行き届かないため、街に無関心な人が多くなって乱雑になる。一方、ゴミ置き場がキレイなところはご近所同士が助け合い、美しさを保っているのではないか……と長年の観察から推測します。そのため、ある程度、ご近所付き合い、地域への関心が必要だと考えるようになりました。
「人の目があると、やっぱり『○○班のゴミ』のように特定されるので、あまり乱雑にはできないのが人情ですよね。あと、ゴミの分別は、面倒くさいだけでなく、知らない・分からないという人も多いんです。そのため、自治体もチラシ類をつくってPRしているんですが、やっぱり人同士の会話・コミュニケーションにまさるものってないんですよ。教えてもらえれば、みんな分別するようになりますから。地域によっては清掃員に声をかけてくれる人がいたり、やっぱりよい街はみんなでつくるものだなあと思うようになりました」(滝沢さん)

(写真撮影/片山貴博)
まさかゴミの話から地域コミュニティの話まで行くとは、すごい展開です……。でも、ゴミの分別って分かりにくいですもんね。もちろん、行政からの告知も大事ですが、やはりご近所同士のなかで、聞ける・教えてもらえるのが一番であり、ゆるやかなコミュニティがあるほうが、人は住みやすいのではないでしょうか。
ただ、清掃の仕事をはじめたばかりのころは不燃ゴミのなかにアイスピックや包丁、かみそりが入っていて、怖い思いをしたこともあるそう。
「それに比べたら包丁や刃物をくるんで捨ててくれるなど、今はだいぶよくなりました。分別やゴミがひどいという話をしょっちゅうしているんですが、実は2000年以降、ゴミはゆるやかに減っていて、2001年度には5210万トンあったものが、直近では4272万トンにまで削減されました。分別も浸透し、若い世代は環境教育が浸透しているからだと思います」(滝沢さん)

環境省のゴミ総排出量のグラフの変化。こうして見ると、じわじわとゴミの排出量が減っているのが分かります(出典/環境省)
今、気になるのは食品ロス。分別も家族全員で取り組むようにゴミだけに限りませんが、小さなことだからいいや、1人くらいならいいやと軽く考えがちです。
「いやいや1人ひとりの積み重ねってすごいことですよ。可燃ゴミの中にビン・缶などの不燃ゴミが混ざっていると投入口の燃やす所が詰まってしまい、焼却炉の火を消して、詰まりを解消しなくちゃいけないんです。焼却炉の再点火にはなんと350万円もかかる。再点火の費用は、もちろん税金です! 小さな行動が大きく影響する例ですよね」といいます。今は一人ひとりの行動が街や地域を変えていくんだなと実感しているそうです。
2020年はコロナウィルス感染症、そしてレジ袋有料化と、ゴミ界隈にも大きな変化がありましたが、それ以上に今、滝沢さんが気になっているのが、「食品ロス」の問題です。

(写真撮影/片山貴博)
「お米とか、魚、野菜……。ほんとにびっくりするほど、食べものが捨てられているんです! 食品ロスの46%は家庭からって言われているんですが、その実感はありますね。大型連休明けやお中元やお歳暮の時期に手つかずの食べ物を回収するのはやっぱりつらいです……。足りないから買おうではなく、冷蔵庫にあるものでつくる、賞味期限や消費期限をチェックするなど、まだまだ、家庭でできることはあると思うんです。ぜひ、みなさんには知ってほしいですね」と力説します。
そのため、滝沢さん自身も今では自宅の冷蔵庫を小まめにチェックするようになり、消費期限・賞味期限を確認し、手元にある食材で調理するというスタイルに変わったそう。
「家族はチームなので、冷蔵庫を誰かがチェックすればいいわけです。『今日は○○の料理をつくろう』ではなくて、小松菜とたまごからできるものを考えるほうがよいでしょう。食材がなくても、お味噌汁とごはんだって立派な献立です。あと、子どもって大人や親の姿をよく見ていて、マネをするんですよね。だから、大人が分別していれば、子どもは自然と真似するようになる。うちの子どももしっかり分別できように育ちました(笑)」
「年末年始は、大掃除・片付けしたゴミなどがでると思いますが、家庭から出せるのは1回3~4袋が目安です。それ以上出すなら、有料になる地域もあるので注意してください。ゴミ収集車の回収できる量は決まっているんです! あと、ゴミ袋の口はしっかり縛ってくれるとうれしいです! なぜか、“オレ流”を貫いて閉じてくれない人がいるんですよ……。口を縛ってないと、そこら辺にゴミが散乱して大変なんですよ、ぜひしっかり縛って出してください!」と、ゴミのネタはつきない滝沢さん。
ゴミ問題は教科書のような内容になりがちですが、そこはプロの芸人のトークで「宅配ピザのダンボールは油を吸っているから燃えるゴミです」「ごま油の容器に串を入れて燃えるゴミに捨てている人がいた。あれはさすがだった!」「永久保存版のビデオが捨てられていた。永久保存じゃないんかいっ」と自然と盛り上がります。そして現在、引越しを検討している人は、やっぱりゴミ置き場をチェックしましょう。滝沢さんのアドバイスだと「ペットボトルの日」のゴミがよさそうです。ぜひ、役立ててくださいね!
●取材協力女性の建築家、カミーユ・エチヴァンさんは、パリによくある陽の光があまり入らないアパルトマンに住んでいます。部屋ごとに壁の色や壁紙を変えることで、見事に明るい印象のアパルトマンに変身させました。壁に手を加えることでここまで素敵になるというお手本のようなおうちです。連載【パリの暮らしとインテリア】
パリで暮らすフォトグラファーManabu Matsunagaが、フランスで出会った素敵な暮らしを送る人々のおうちにおじゃまして、こだわりの部屋やインテリアの写真と一緒に、その暮らしぶりや日常の工夫をご紹介します。人気が出ることを予想して20年前に20区に引越し
パリの住宅価格の高騰のため、今では「パリで家が買えるとしたらもうこのあたりしかない!」と注目度のとても高いカルチェ(地区)の19区と20区。カミーユさんのアパルトマンは20区の坂の多いメニールモンタン地区にあります。
パリ中心部へのアクセスはメトロで10分程度、それなのに20年前は、とても静かで、お店もそれほどありませんが、特に物価が安くて住みやすい地域でした。しかしカミーユさんは、きっとここは人気になるだろうと予想してアパルトマンを探し始めたそう。
近くには大きなベルヴィル公園があったり、あまり知られていないパヴィヨン・ボードインという18世紀の美しい石造りの邸宅もあり、散歩をしたり、くつろいだりすることができる場所がたくさんあるのも、この地区でアパルトマンを借りる決め手となったとか。
最初は友人と共同でアパルトマンを借り、今はカミーユさんと11歳と14歳の息子さん、雄の子猫“SUN”という家族構成で暮らしています。

年に3回描き変えられるパヴィヨン・ボードイン邸宅の壁のストリート・アート。壁の向こう側には、公園と、今はミュージアムになっている邸宅がある(写真撮影/Manabu Matsunaga)

20年前は静かだった通りも、色々なお店ができてにぎわっている。このパン屋&サロン・ド・テがカミーユさんのお気に入り(写真撮影/Manabu Matsunaga)
壁紙で部屋を明るい印象に「このあたりに住みたいと漠然と思っていた時、たまたま通りかかった建物の管理員が”アパート貸します”と、張り紙をしていたんです」とカミーユさん。そのころは子どももいなかったので、65平米で寝室2部屋、サロン、ダイニングのあるこのアパルトマンは、友人と2人で住むのにちょうどよかったそうです。
「契約者が2人で連名契約ができる、パリでも珍しい物件でした。何年か後に友達が出ることになったので、通常の1名契約に切り替えて住んでいます」
仕切りなどは入居当時のままで、自分と子どもたちだけになったことを機に大改装をしたそう。フランスでは、賃貸物件でも引越す時に元に戻せば自由に壁に色を塗ったり、壁紙を張ったりしてもいいというのもお国柄。パリではありがちな光のあまり入らないアパルトマンを、建築家の専門知識を活かして明るい雰囲気に仕上げました。

3人暮らしになった事を知人に知らせるポストカード。改装前の部屋の写真を見るとやはり暗いアパルトマンだったことが分かる(写真撮影/Camille Etivant)

「この壁紙を張ったことによって、部屋の雰囲気がガラッと変わりました」とカミーユさん。これによって部屋を変えていくアイデアがつぎつぎと浮かんできたそう(写真撮影/Manabu Matsunaga)
まずはアパルトマンの部屋の中で一番目を引く植物柄の壁、「通路の壁で家具を置くことができなかったところを、植物の雰囲気のある“強い”パターンの壁紙を張りました」とのこと。
ペリカンのクチバシの黄色に合わせて、寝室の扉と壁の一部を黄色にしようと思いついたそう。これによって、ただの白壁だった空間が奥行きのあるものになり、アパルトマンの印象が大きく変わりました。

ハビタ(Habitat)で見つけた籐ランプ。アームチェアはイームズ。チェストの上には植物を欠かさない(写真撮影/Manabu Matsunaga)
ブルーの壁のダイニングはペンキ選びにこだわった「L字型のサロンには大きなテーブルが置けるスペースがあり、ダイニングとしてどうにか活用したかったのです」とカミーユさんは言います。もともと陽の光が入らない間取りだったけれど、この空間を心地よいものにしたかったそう。
そこで一面だけ壁をブルーに塗ることで空間にメリハリが出るのでは?と思いついたそう。自分でペンキを塗ったという壁は、フランスのペンキの高級ブランドRessourceのSarahLavoineという色を選びました。
フランスでは、ペンキの色だけではなくブランドにこだわる人が多いのです。
このブランドのブルーは、微妙な風合いの“強い”色。ブルーは冷たい印象になりがちだけれど、逆に温かみも持ち合わせているそう。それによって開放感も出て、明るいイメージになったようです。
ここに置いたテーブルで、食事をするだけではなく、子どもたちは勉強をしたり、時にはゲームをしたりするそうです。

「ブルーの壁で動植物の宇宙をつくりたかった」とカミーユさん。ドライフラワー、ゼブラの写真、サボテンなどの観葉植物で演出 (写真撮影/Manabu Matsunaga)

ダイニングとサロン。左にあるチェストはバタフライ式で、机を広げるとカミーユさんの仕事場になるこだわりのミッドナイトブルーのペンキで自分で塗り替えた(写真撮影/Manabu Matsunaga)
濃紺なので黒に見えてしまいますが、これがミットナイトブルーのチェストです。
「サロンはこの家で唯一白い壁にしています」とカミーユさん。サロンはくつろぐための部屋であると同時に、飾るための部屋でもあります。壁には絵が飾られ、チェストの上の壁には小さな鏡が数個吊るされています。
カミーユさんはソファからダイニングのブルーの壁を眺めるのが好きなのだとか。ダイニングでも家族は集うけれど、サロンで過ごす時間が一番多く、子どもたちも自分の部屋にいるよりも大好きだそう。
「このサロンで自分の好きなものに囲まれながらくつろいでいると幸せを感じます」と言います。
このサロンも陽の光があまり入らないので、窓際には大きな鏡を置き、光を部屋の中に取り込む工夫をしています。

ソファとローテーブルをグレーで統一。通路の壁紙がインパクトあるので家具は抑えめの色をチョイス(写真撮影/Manabu Matsunaga)

60年代につくられた本棚は、無垢材に丁寧にニスが塗られた良いものをeBay(個人間売買サイト)で購入。
彼女の祖母が使っていたアームチェアをフランスの生地メーカー『ピエール・フレイ』の生地で再装飾(写真撮影/Manabu Matsunaga)

祖母からゆずり受けた鏡はleboncoin(個人売買サイト)で購入したレコード入れの棚の上に(写真撮影/Manabu Matsunaga)

小さい棚も取り付けた。左から、インドの旅で見つけた写真、昔の写真機に使われていた鏡、50年代のビーチの写真、サイン入りのイタリア人作家のリトグラフ、パリの小さいギャラリーで出会った写真。ここでも鏡が効果的に飾られている(写真撮影/Manabu Matsunaga)

フランス人デコレーターのピエール・グアリッシュのキャビネットの上には、3つの鏡のほかにフランス人デザイナーのイオナ・ヴォートリンによるゴールドのランプや、デンマークの家具ブランド「フリッツ・ハンセン」の「IKEBANA JAIMEHAYON(花瓶)」が飾られている(写真撮影/Manabu Matsunaga)
子ども部屋と寝室は壁を2色に塗り分けることで、広々とした印象に子ども部屋にも彼女の職業の知識がふんだんに活かされています。天井が3mくらいと高かったので、メザニン(中二階)をつくって息子たちのベットを配置しました。以前はとても狭かった床が広々としたそう。
「自分で設計して、できるだけお金もかけないようにしたから、木の素材はむきだしのまま。そのかわり、壁はペンキにこだわって自分たちで塗りました」
下の方は明るいブルーに、メザニンの高さより上と天井は白にすることによって、さらに広々と明るい空間を演出しました。

メザニンのベッドは「秘密基地みたいでうれしい」と二人。それぞれのベッドの間は薄い板で仕切られているのでプライバシーを保つことができる(写真撮影/Manabu Matsunaga)

シングルベッドを2台置くと狭いけれど、メザニンをつくってからは子ども部屋が広く使えるようになり、子どもたちも満足している(写真撮影/Manabu Matsunaga)
「私の寝室は白と薄いグレーのツートーンにして落ち着いた雰囲気に仕上げました。壁の2色とカーテンの薄い紫のグラデーションが好きです。季節によってベッドカバーを変えると、部屋の印象が変わるんです」
家具は中古品を個人で売買するwebショップのleboncoin(個人売買サイト)やブロカント市(アンティークまで古くない物を売る露天市)で購入。新しい物よりも古い物の方が味があって、人と違った空間をつくることができるから好きなのだそう。

サロンから見た寝室「この全ての色のバランスが私にとってパーフェクトなんです」と語る(写真撮影/Manabu Matsunaga)

寝室の窓際に置くことによって光が拡散して明るくなる。鏡は古い洋服ダンスから鏡だけを外したもの(写真撮影/Manabu Matsunaga)

サロンに置いてあるバタフライ式の仕事机と同じミッドナイトブルーのペンキを塗ったチェスト。鏡の近くにランプを置くことによって光が広がる(写真撮影/Manabu Matsunaga)
「このアパルトマンにバルコニーがついていたらパーフェクトなんですけどね。でも、このカルチェ(地区)から離れたくないという気持ちの方が今は上です」とカミーユさん。20年間でこの地区が変わっていくのを目の当たりにして、よりいっそう愛着が湧いたと語ります。
カミーユさんのアパルトマンは壁の色使いや、鏡の効果が最大限に活かされていました。部屋に入ったときに暗いとは感じず、むしろ生き生きとした空間が広がっていました。そして、建築家の知恵が散りばめられた一つの作品のようにも思えたのです。
今ではないけれど、引越すとしたら陽の光がたくさん入るアパルトマンを選びたいとのこと。このカルチェを始め、パリが大好きなので田舎や郊外で住むことはないと話していました。
外出制限が続くパリ。だれもが太陽の光を求めています。
(文/松永麻衣子)
イタリア・ルネッサンスの巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチ。彼が晩年を過ごしたクロ・リュセ館がフランス中部の町アンボワーズにあります。現在はカルチャーパークになっていて、生前の暮らしぶりと、天才的な創造力を体感できることができます。連載名:偉人のお宅訪問
長い歴史のなかで、多くの芸術家たちを生み出してきたフランス。この国には、その歴史の分だけ偉人たちが暮らした痕跡がそこかしこに残っています。なかには、彼らが暮らした「住まい」がそのまま残されている場合も少なくありません。この連載では、そんな偉人たちの住まいに訪問し、作品の背景にあった暮らしや人柄に迫ります。外出制限中のルーブル美術館で、ダ・ヴィンチ作品に会いに行った
今、パリは2回目の外出制限中です。劇場や美術館は徐々に開かれていくようですが、12月中旬まで飲食店以外は全て閉鎖が続く予定です。
数カ月前、1回目の外出制限後の6月に、例年は海外からの観光客でにぎわう美術館がすいているというので、ルーブル美術館のへ数回足を運びました。ダ・ヴィンチの<モナ・リザ>をゆっくり鑑賞したかったから。いつも<モナ・リザ>は人だかりで、押し合いながら絵の前にみんなが行こうとし、ごった返していました。しかし、コロナ対策でロープで仕切られた列に並び、先頭まで来ると<モナ・リザ>と自撮りできる距離(2mぐらい)でゆっくりと見ることができるのです。
この他にも、ルーブル美術館には<聖アンナと聖母子><洗礼者聖ヨハネ>が展示されて、映画化もされた小説『ダ・ヴィンチ・コード』や、去年の「ダ・ヴィンチ没後500年記念展」の大盛況も記憶に新しく、ダ・ヴィンチはルーブル美術館になくてはならない画家の代表なのです。

人がまばらなルーブル美術館の館内(写真撮影/Maiko Matsunaga)
パリからダ・ヴィンチ最後の3年間を過ごした王家の館へイタリア・ルネッサンスの巨匠の絵が、しかも代表作中の代表<モナ・リザ>が、なぜフランスにあるのだろう?そういえばダ・ヴィンチの晩年住んだ館があったはず!と思い立ち、ロワール川畔りの街アンボワーズのクロ・リュセを訪ねることにしました。
パリ・オーストリッツ駅からTERという長距離郊外電車に乗ります。フランスの新幹線TGVはサン・ピエール・デ・クロップ駅で乗り換えがあるので、アンボワーズ駅まで直通のTERがオススメです。パリを出発して15分もすると景色は畑ばかりになります。この景色を見るたびに、フランスは農業大国なんだと実感するのです。季節が春ならば一面黄色の菜の花畑が続きます。乗っている時間は2時間あまりですが、TERは運が良ければ客席がコンパートメントタイプ(車内が個室のように仕切られており向かい合わせに席が設置されている)の列車に乗ることができ、昔にタイムトリップしたような錯覚を覚え、ますます気分が盛り上がります。

オーストリッツ駅を出発して数十分で畑一面の景色に(5月春の景色)。延々と続く畑の中を南下してフランスの真ん中に向かう(写真撮影/松永麻衣子)
国王フランソワ一世に迎えられ、過ごした町アンボワーズ
アンボワーズは雄大に流れるロワール川のあたり。この眺めをダ・ヴィンチも見たかと思うと不思議な気持ちになる(写真撮影/松永麻衣子)
アンボワーズ駅に到着し、岩山を見上げると歴代のフランス王が住んでいた「アンボワーズ城」がそびえています。約500年前の1516年、フランソワ1世がダ・ヴィンチを「王の最高の画家、エンジニア、建築家」として迎え入れました。その時のイタリアからの荷物に<モナ・リザ><聖アンナと聖母子><洗礼者聖ヨハネ>今ではルーブル美術館に展示されているその3点が入っていたのです。
その後3年間、ダ・ヴィンチは人生の幕が降りるまで、クロ・リュセで王のために発明などの多くの仕事をしていきます。
そこには、彼から現代の私たちへの問いかけや、生活のヒントがちりばめられていました。
あの名画を描いた巨匠は一体どんな館に住んでいて、どんな偉業を成し遂げたのか?と、ダ・ヴィンチに想いを馳せながら、駅からクロ・リュセへ続く細い坂道を登って行きます。坂の頂上に門があり、そこをくぐって敷地内に入るとなだらかな下り坂の芝生の庭園が広がり、左手にダ・ヴィンチが住んだ館、右手にカフェやミュージアムグッズの売られているショップと自家菜園があります。

駅からレストラン街を抜けると長い塀が現れます。しばらく坂を登るとクロ・リュセの入り口(写真撮影/Manabu Matsunaga)

古いヨーロッパ建築の例にもれず、城塞として使われたこともあるクロ・リュセ。回廊から入り口を見張ることができるようになっている。館内の見学はこの回廊からダ・ヴィンチの寝室に入っていく(写真撮影/Manabu Matsunaga)
当時のルネッサンス様式のインテリアを再現もともと王のお気に入りの料理人のために整えられた館であり、その後王家のサマーハウスとして使われていたクロ・リュセ。その後、迎え入れられたダ・ヴィンチの寝室は2階にあって、その窓からはアンボワーズ城を眺めることができます。部屋の配置一つ取っても、フランソワ1世はダ・ヴィンチを父のように慕っていたという二人の絆の強さを感じることができます。
高い天井や、部屋の壁には冷気を防ぐために掛けられたというタピ(絨毯)も他のシャトーでよく見かける当時の特徴や工夫です。ダ・ヴィンチの寝室は外壁と同じ赤レンガの壁、床や家具も同系色でまとめられ、ルネッサンス様式の天蓋付きベッドやシンメトリーのデザインのチェストなどが置かれています。当時を再現しているそう。
私にとって、ここでダ・ヴィンチを理解することは高貴な娯楽。約500年も前なのに、とてもダ・ヴィンチを近くに感じ、理解することができるこの空間にいると、「最も高貴な娯楽は、理解する喜びである」という言葉が胸に迫ってきます。そして、ここで生活をし息を引き取ったことをリアルに感じることができるのでした。

ダ・ヴィンチの寝室からは、岩山の頂上にそびえる王の住む城が見える(写真撮影/Manabu Matsunaga)

1519年5月2日、この寝室で67年の生涯を閉じた。天蓋付きベッドやシンメトリーの家具などダ・ヴィンチが暮らしていた当時をしのばせるルネッサンス様式の物が置かれている(写真撮影/Manabu Matsunaga)

寝室と同じ2階にはダ・ヴィンチが多方面の多くの作品のアイデアを生んだ部屋もある(写真撮影/Manabu Matsunaga)

1階に降りると子どもを亡くしたアンヌ・ド・ヌーブ(王シャルル8世の妻)のためにつくられた礼拝堂がある。ブルーのアーチの天井にはダ・ヴィンチの弟子による4つのフレスコ画が描かれている。その中の一つが<Virgo Lucis/光の聖母>(写真撮影/Manabu Matsunaga)
現在のBIOブームはダ・ヴィンチの予言だったのか?ベジタリアンだったダ・ヴィンチの言葉<少しの飲酒、健康的な食事、そして適切な睡眠はあなたの健康を保つでしょう>は、まるで現在の空前のBIOブームを予言していたよう。フランスで暮らし、現状目の当たりにしている私も、深く頷くことができる言葉です。
ここ数年、フランスでは健康への意識がものすごく高くなり、BIO食品しか口にしない人、肉や魚を食べないベジタリアンやヴィーガンがとても増えています。外出制限中のパリは、家から半径1km以内、1時間以内の必要な買い物は許されていました。私の家の周りを見回してみたら、半径1km以内にBIOショップが8軒もできていて、増え続けている状態です。
ベジタリアンやヴィーガンは、化学調味料(ブイヨンなどの旨味)や白い砂糖などは使わない代わりに、スパイスをとても上手に使います。ダ・ヴィンチも、コショウやカカオやシナモンといったスパイスを、薬効を考慮しながら食事に使っていたそう。ほかにも、館の庭に畑をつくり、ハチ蜜をつくり、といったふうに、健康や食へのこだわりも相当なものだったようです。
キッチンの大きなテーブルの上にはワインキャラフや香辛料が置かれ、暖炉の横にはイタリアのテラコッタ(素焼き)を連想させるポットがたくさん並べられていて、とっても素敵。私ならこのポットに何を入れるだろう?お米かな?と想像するのも楽しかったです。

1471年に国王ルイ11世の料理人のための館だったため、キッチンがとても広く機能的だったそう。食に対しての意識が高かったレオナルド・ダ・ヴィンチは改装なしでここを使い続けた(写真撮影/Manabu Matsunaga)

香辛料を好んだダ・ヴィンチ、キッチンの物は当時を忠実に復元しいてる。「スープが冷めるから」という理由で、キッチンの暖炉の近くで食事をとることも多かった(写真撮影/Manabu Matsunaga)
発明家としてのダ・ヴィンチを体験できる野外博物館と植物園クロ・リュセの庭では、画家だけではなく発明家、建築家でもあったダ・ヴィンチを知ることができます。彼の発明品の実物大が置かれていて、実際に乗ったり手に取ったりすることができるカルチャー・ランドにもなっています。

植物園の木に吊るされた半透明の布にはレオナルド・ダ・ヴィンチが描いた解剖学デッサンが印刷されている(写真撮影/Manabu Matsunaga)

こちらは建築家と都市工学の設計図。この他にモナ・リザや自画像なども半透明の布に印刷されて木に吊るされている(写真撮影/Manabu Matsunaga)
その横には林と庭園があり、木の枝には彼の世界観を薄布の垂れ幕で飾ってあったり、どこからか彼の格言が音声で聞こえてきたりします。例えば「猫科の一番小さな動物、つまり猫は、最高傑作である」「目は魂の窓である」「質素であることは最も素敵なことだ」「最も高貴な娯楽は、理解する喜びである」「このところずっと、私は生き方を学んでいるつもりだったが、最初からずっと、死に方を学んでいたのだ」など、心に響く言葉がたくさん。その中で最も有名であり、私も好きな彼の格言が「充実した一日が幸せな眠りをもたらすように、充実した一生は幸福な死をもたらす」です。そんなふうに生きてみたいと思いながら、駅までの帰り道、ダ・ヴィンチが眠るチャペルがあるというアンボワーズ城を見上げました。

館の地下室にはダヴィンチが発明した設計図や模型が展示されている。空を飛ぶためのプロペラや戦車の軍事模型や発明など、見れば見るほど精密に設計されている(写真撮影/Manabu Matsunaga)

野外博物館にあるプロペラ機の実物大模型は、ぶら下がってうんていのように回って遊ぶことができる(写真左)軍事関係の実物大模型の戦車。中に入って取っ手を回すと回転する仕組み(写真右)(写真撮影/Manabu Matsunaga)

庭園内の川で足こぎボートも体験できる。後ろ手で舵を取り、水車と同じ原理で設計された足こぎはかなり疲れました(写真撮影/Manabu Matsunaga)

そびえ立った山の上にある村に物資を運ぶための都市開発の発明品。重いものを巻き上げることができ、大きな石も簡単に持ち上げられる(写真撮影/Manabu Matsunaga)

館から野外博物館へ行く途中にある橋。小川の下を船が通るときに橋が移動するような設計(写真撮影/Manabu Matsunaga)

植物園の池に架けられたレオナルド・ダ・ヴィンチ設計の二重橋は、イタリアのペスト流行を受けて発明された。家畜用の通路と人間用の通路と分けて衛生面を強化するためだったとか(写真撮影/Manabu Matsunaga)
(文/松永麻衣子)
Le Château du Clos Lucé シャトー・クロ・リュセ賃貸に住む一人暮らしの人が亡くなった後の遺留品の処分について、親族と連絡が取れず、多額の費用や時間・手間がかかることや相続権によるトラブルなどで撤去が難しいことが問題になっています。実際にどのような問題が起こっているのか、また孤独死の現状や遺留品処分の最適な解決方法とは?
「この問題に対して非常に危機感をもっている」という、単身者の自立や生活支援のサポートなどを行うNPO法人、抱樸(ほうぼく)の奥田知志さんにお話を聞きました。
単身世帯の増加で「孤独死」が年々増えている!長寿化や核家族化の影響で単身世帯が増え、それにともない孤独死の件数も年々増えています。また、一般的に「孤独死」という言葉を聞くと身寄りのない高齢者をイメージしますが、奥田さんによると60歳以下の孤独死も増えているそうです。

東京都福祉保健局東京都監察医務院「東京都23区内における一人暮らしの者の死亡者数の推移」(内閣府の資料より引用)
「東京都の監察医務院の調査では、東京23区で65歳以上の孤独死は2015(平成27)年時点で3127件にのぼります。調査が開始された2003(平成15)年時点で1451件ですから、12年の間で2倍以上になっているのです。
また、全年代の一人暮らしの死亡者数のうち60歳以上の高齢者の割合が6割以上になりますが、逆に言えば、4割に近い割合で60歳未満の人がいるということです」(奥田さん、以下同)

お話を聞かせていただいた抱樸の理事長、奥田知志さん(画像/抱樸)

東京都23区内における一人暮らしの人の自宅での死亡者数と年代別割合(日本少額短期保険協会「第4回孤独死原状レポート」(2019年)より抜粋)
一人で亡くなった人のうち10%程度は40代、15%以上が50代と聞くと、40代の筆者はドキッとしてしまいます。万一、自分が単身になったとき、頼ることができる公的なサポートなどはあるのでしょうか。
「単身者、特に住宅の確保に支援が必要な人をサポートする機関としては居住支援法人があり、その主な仕事は次の3つです。1つ目は住宅と住宅を必要としている人とを”マッチング”すること、2つ目が家賃を滞りなく支払うための”債務保証”、3つ目が”生活支援”です。
マッチングや債務保証はすでに不動産業や賃貸保証会社など、ビジネスとしても社会的な体制が確立していますが、生活支援において、特に”死”にまつわる看取り・葬儀・死後事務などはこれまで“家族の仕事”とされてきました。そのため、身寄りのない人が死に直面したときに家族機能の代わりになるものが十分に整備されていない現状があります」
孤独死で困ることの1つが「遺留品処分」たしかに、もし家族がいないと考えると、自分の看取りや葬儀、死後事務を一体誰に頼んでおけばいいのか、分かりませんね……。住まいについて言えば、大家さんに対応してもらうようなことも生じるのでしょうか。

(写真/PIXTA)

遺留品の処分が大きな問題に(写真提供/抱樸)
「大家さんにとってまず必要なこととして考えられるのが“家賃や共益費の滞納分を誰に払ってもらうのか”ということと“原状回復をどうするのか”の2つだと思います。ご存じの通り住居内で死亡された場合、その住居は”事故物件”として扱われ、しばらくの間、入居者の募集が厳しくなります。
よく孤独死の問題として取り上げられるのはその2つですが、見落とされがちなのが”残置物・遺留品の処分”です」
実際に私も家族のいない人が亡くなった場合、その人が残した物を誰がどのように処理していくのか想像がつきません……。
「日本少額短期保険協会が行った調査では、孤独死の際に大家さんに生じた損害額が明らかになっています。原状回復にかかった費用の平均が約36万円ですが、残置物処理にも平均で約21万円程度かかっているのです」

日本少額短期保険協会「第4回孤独死原状レポート」より抜粋
大家さんの管理次第で、遺族から訴えられることも21万円! それは大家さんにとっても大きな負担です。さらに奥田さんは、残置物処理については費用の問題だけではなく、相続の権利が最もトラブルになる原因だといいます。
「相続人がはっきりしない場合でも、第三者である大家さんが亡くなった人の物を勝手に処分をすることはできません。それは使い古した家財道具など財産としての値打ちがほとんどないものでも同じです。そのため、相続人が見つからない場合、大家さんが家庭裁判所に申し立てをすることで相続財産管理人を選任する制度があります。ところが、この制度を利用するには、与納金として80万~100万円が必要です。また最終的に遺留品を国庫に引き継ぐまで平均で10カ月程度を要するため、その間の残置物の保管や管理・運搬費用も、大家さんにとっては大変な負担となります」

相続財産管理人選任のフロー。予納金が必要なうえ、国庫に引き継ぐまで10カ月程度かかるなど、大家さんの負担は重い(画像提供/三好不動産)
さらに奥田さんによると、実際に、ある不動産会社がオーナーの物件で、遺族に残された相続権がもとでトラブルになった事例などがあるといいます。
「一人暮らしの人が亡くなり、会社の倉庫で残置物を管理していたのですが、遺族が見つからず半年ほど経過したタイミングで処分をしたそうです。ところが、その後に現れた遺族が、財産を無断で遺棄したとして不動産会社に対して訴訟を起こしました。残置物の中には、思い出の品など値段を決めにくいものもあり、賠償金の請求は500万円近くにもなったそうです」
現在の法律では、本人が亡くなる前に死後の処分を承諾していただけでは財産の相続権はなくなりません。奥田さんは「一定の期間をもって公的な管理に移行することが法改正等によって認められない限り、残置物処理の問題は解決しないだろう」と言います。
法や政治が行き届かない部分を埋める、NPOの取り組みこのように現在、残置物処理の問題は本質的な解決が非常に難しい状況にあります。国会では既に遺留金について質疑がなされていたり、2017年1月には国土交通省が全国の都道府県に対して公営住宅で亡くなった単身者の残置物への対応方針を策定するよう通知したりしています。けれども、民間賃貸住宅について実行力のある法改正が行われるにはまだまだ時間がかかりそうです。
そうした国や自治体の法制度が行き届かない“穴”を埋めるべく、抱樸では独自で自立のサポートや互助の仕組みを設けています。
「抱樸の自立生活サポートセンターでは、ホームレスの方を中心に自立、介護、そして最後の看取りまでサポートしています。

抱樸では、自立支援住宅の提供などを通じて、「ハウス=経済的貧困」と「ホーム=社会的孤立」の両面から支援をしている。写真はお弁当配布時の様子(画像/抱樸)
また、亡くなった後にお葬式をやってくれる家族がいない人のために、月500円で入会することができる互助会も運営しています。万一のことがあったときには、互助会が家族の代わりにお葬式を執り行うのです。家の片付けや遺留品の処分は、ボランティアの人たちで行います。それでもやはり、処分後に遺族が現れて相続権を主張されるようなことがあれば、トラブルになりかねないでしょうね」

身寄りのない人を家族に代わって葬儀を行ったりする活動もしている(写真/抱樸)
単身者でも安心して住み続けられる未来のためにこれらの問題を解決して、単身者の人でも安心して住み続けるためにはどのようにすればいいのでしょうか。改めて奥田さんの考えを聞きました。
「現在、行政で行われている空き家の撤去や休眠預金の活用等は本来、個人の財産であるものを公共性の観点から行政が手を入れられるように法制度を改定したものです。同様に残置物についても同じような手続きが取れるようにしないと、関連するさまざまな問題が放置されたままの状態になります。
多くの人にとって他人事ではなく、この問題に関心をもってもらい、国や自治体の具体的な施策につながることを望みます」
たしかに奥田さんのいう通り、訴訟リスクや処理費用の負担を大家さんだけに委ねている現状では、単身者に家を貸したくないと考える大家さんは少なくないでしょう。この状態が続けば、現在でも住宅の確保が難しい身寄りのない人や高齢者、障がい者、外国人などの人たちが一層困窮する可能性があります。
特に家族のいない単身者であれば、住む場所を失ってさらに孤立を深めることになりかねません。残置物の問題は単体の問題だけではなく、住宅確保や生活保護の問題にも、影響していく可能性があるのですね。
単身者、つまり「ひとり暮らし」になる可能性は誰にとっても無縁ではないでしょう。実際に私も将来、親がどちらか亡くなってしまったら、兄弟や子どもと疎遠になってしまったら、と考えると自分や家族のことが不安になります。
将来の不安を払しょくするために私たちができることは、まずは現在起こっている問題に興味をもち、市民として有権者として積極的に声を上げることかもしれません。
●取材協力
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所在地:横浜市中区山手町
所在地:横浜市南区山谷
所在地:中央区日本橋富沢町
所在地:杉並区阿佐ヶ谷南
所在地:港区北青山社会福祉法人「佛子園(ぶっしえん)」が手掛けるまちづくりの特徴は、温泉やカフェ、レストラン、農園など、地域住民が集える場所をつくり、高齢者、障がい者が地域と自然に交われるよう、多様性に富んでいること。なかでも、既存の空き家や空き地を再利用した「輪島KABULET(わじまかぶーれ)」は、全国どの地方でも直面する人口減に対する解決策のひとつとして注目されている。
今回は、「佛子園」理事長の雄谷良成さんに、その経緯や開発の裏側、今後の展開についてお話を伺った。
「輪島KABULET」が展開するエリアは、室町時代からの歴史がある石川県輪島市の中心部。かつてから漆器の輪島塗を生業としていた家も多い街だ。輪島塗の小売店や漆ギャラリー、輪島朝市など観光名所も多い。しかし郊外の大型ショッピンモールに車で出掛ける生活スタイルの増加から、最盛期に比べると人口は2万人弱が減少。かつてはにぎわいのあった街の中心部でも増加する空き家が課題となっていた。

伝統的な街並みが美しい輪島市街。朝の連続ドラマ小説『まれ』の舞台にも(写真撮影/イマデラガク)
そこで、雄谷さんがアプローチしたのは、ハブとして新たに大型の施設をつくるのではなく、既存の建物を活かして福祉施設+地域住民が集う場を街なかにいくつもつくりだす手法。具体的には、大正から昭和にかけてつくられた既存の木造住宅を改修し、高齢者ケアハウス、障がい者グループホーム、ママカフェ、温泉、蕎麦屋さん、ゲストハウスへと次々と生まれ変わらせた。
費用は復興庁の交付金、国土交通省の空き家対策の交付金などを活用。「高齢者、障がい者、子育て世代、若者、観光客、誰もが行き交う、ごちゃまぜの街にする」という社会福祉法人「佛子園」のコンセプトはそのままに、既存の街を生まれ変わらせるプロジェクトに。2018年には、内閣府による「生涯活躍のまち」モデルの先駆けとして全国に紹介され注目を浴びている。

温泉、食事処、住民自治室、生活介護、放課後等デイサービスが入っている拠点施設「B’s WAJIMA」。中庭を挟んだ向かい側には高齢者デイサービスと訪問介護ステーションもあり、街の中心になっている(写真撮影/イマデラガク)

「GUEST HOUSEうめのや」は、築70年余りの町家をリノベーションしたもの。漆や白漆喰などを活かしたノスタルジックな空間に(写真撮影/イマデラガク)

(写真撮影/イマデラガク)

空き地だった場所に、温泉・レストランを開設。写真は近隣住民が自由に使える住民自治室での「肌に優しい洗い方」教室の一コマ(写真撮影/イマデラガク)
既存の街だからこそ、「街の記憶」を尊重したまちづくりにちなみに社会福祉法人「佛子園」といえば、この「輪島KABULET」以前から、「生涯活躍のまち」政府認定モデルとして、1万坪超の敷地にイチからダイナミックな街づくりをした金沢市の「シェア金沢」が有名だ。では「輪島KABULET」のような既存の街の枠組みを活かしたまちづくりとの違いは何だろうか?
「シェア金沢のような大掛かりなものをつくるのは、土地の確保や資金面などクリアする課題は多く、どこでもできるわけではありません。一方、すでに街にあるものを再利用し、福祉の施設だけでなく地域の人に求められる場所を点在させる手法なら、少しずつ手掛けることができ、その取り組みを街全体に拡大させられます」(雄谷さん)

社会福祉法人「佛子園」理事長の雄谷良成(おおや・りょうせい)さん。住職という一面も持つ(写真提供/佛子園)
ただし、金銭面でのメリットがある一方、すでに地域住民がいて「街が変わること」に誰もが賛成ではない難しさもある。街の開発には賛成でも、自分の家を貸す、改修することには抵抗感のある人も少なくない。
そんな時、雄谷さんが実践しているのは、一軒一軒、1人1人の話に耳を傾けること。
「例えば、空き家でも事情はそれぞれ。息子さん夫婦が年に数回帰省するための家だったり、今は使っていないけれど思い入れがあったり。この路地、あの家で昔はよく遊んだもんだと話してくれる住民の方がいたり……。既存の街の再開発は、街の在りようがすでに自分事で、当事者意識がある。実は、それは強みでもあるんです。だから、当初は一番反対していた住民の方が、のちに一番の応援団になってくださることも多いですよ。反対しているということは、自分に暮らす街に思い入れがあるということですから。当初は空き家を貸すことを断られた方も、時とともに承諾してくださることもあります」
既存の街だからこその苦労もある一方、うれしさもある。
例えば、現在はカフェとなった建物は、元は診療所。「ここを訪れた若いママさんが“私が子どものころ熱を出して夜遅くに駆け込んだんです”という思い出を話してくれました。ひと言で“空き家”といっても、その土地、家には歴史があり、街の人の想いがあるということ。そのひとつひとつが宝物。その街の記憶を継承していく大切さを実感しました」

ママカフェ『カフェ・カブーレ』。「“生涯活躍のまち”というと、どうしても高齢者向けの施設と思いがちですが、意外と子育て世代も多く、こうした施設が必要と考えました」(写真撮影/イマデラガク)

親子で楽しめるクッキング教室やパパ・ママ同士が集まるイベントも実施している(画像提供/佛子園)

子どもからお年寄り、障がいの有無に関わらず利用できる「ゴッチャ!ウェルネス輪島」。地域に密着し、誰もが顔見知りだからこそ、一般的なジムに比べて退会する人が少ない、地域のたまり場のひとつに(写真撮影/イマデラガク)
街は現在進行形。ガレージの改修が“気軽なリノベ”のモデルケースに事業がスタートして2年。蔵を改造したコワーキングスペースや、軒先で無添加の中華そばを食せるお店も開業。さらに、佛子園が手掛ける施設以外にも、体験や見学のできる輪島塗の工房ができるなど、相乗効果が生まれている。「輪島周辺は小さなゲストハウスが増えたので、シーツの洗濯を一気に引き受けるクリーニング店があってもいいねという話から事業化につながったり、拠点の近所の割烹のご主人が食事を終わった後、お客さんをまとめてうちの温泉に連れてきてくださったり、街全体でいい影響をもらいあっています」

ゲストハウス「umenoya」内にあるコワーキングスペース。ワーケーションに利用する人も多いそう(写真撮影/イマデラガク)

空き家になっていた民家を活かした「蕎麦やぶかぶれ」。みんなが気軽に集える場所で、蕎麦はフェアトレードによってブータン蕎麦を輸入したもの(写真撮影/イマデラガク)
そして、最近新しく加わったのが、空き店舗を改修したオートバイや自転車専用のガレージだ。「このあたりはツーリングをする人が多いので、自分の愛車をとことんメンテナンスできる場所があってもいいのでは、というアイデアから生まれました。工事期間は2週間ほど。無理のない範囲で新しいことができるという、モデルケースになったと思います。基本は無人で、鍵は隣のゲストハウスが管理しているので、ランニングコストもさほどかからない。今後は、せっかくなら、愛車を眺めながらお酒でも飲みたいねって、お洒落な冷蔵庫を置く計画も話しています。お金をかけてカフェバーをつくらなくても、これなら気軽にできるでしょう」

輪島市は、2019年「ライダーを笑顔で歓迎する都市」を宣言。この「うめのやガレージハウス」は能登へのツーリング客の拠点のひとつに(写真撮影/イマデラガク)

(写真撮影/イマデラガク)
働く場としての多様性も。そこにあるのは原始的な幸せもちろん、福祉の街としての役割もある。「障がい者のなかには突発的に声を上げたりする人もいます。それにはひとつひとつ理由があるわけなのですが、街の人は慣れていて、振り返りもしないくらいです。認知症、障がい者が身近に自然にすごしていることで、懐の広い街になっていると思います。毎日のやり取りの中で化学反応が起こり始めています」

障がい者も、ウェルネスの受付、インストラクター、機器の清掃、点検など多岐にわたって活躍している(写真撮影/イマデラガク)
頼りになるのは、“かぶれ人”という何でも屋のスタッフ。福祉事業に携わりながら、それぞれの得意分野を活かして、まちづくりをサポート。雄谷さんが会長を勤める青年海外協力協会のOB・OGたち「JOCA」のメンバーも多い。「まちづくりは想定外、問題発生の連続。常に手探り状態。そんなとき、JOCAの面々は、発展途上国に赴き、それこそ”なんでも屋”であったわけで、なんでもやるマルチタスクに慣れています。そのうち、地域の人たちに頼りにされたり、彼らが頼りにしたり、つながりが生まれ、街を盛り上げてくれています」

“かぶれ人”と呼ばれるスタッフたち。青年海外協力隊を経験したメンバーや輪島出身メンバーなどさまざま。それぞれ専門分野もありつつ、フレキシブルに働いている(写真撮影/イマデラガク)
「多様性に満ちた自主的なまちづくり。理想的ですね」という筆者の感想に、「いえいえ理想じゃないですよ。喧嘩もするし、大変なことも多いですから」と雄谷さん。「まちづくりには、そもそもゴールも100点満点も完成品もないんです。それでも、誰かに相談事をしていると、人が人をつなげれてくれたりするし、こんな角度の考えがあるんだと気づくことも多いです。最初から完成品を目指すわけじゃなくて、想定外の出会いが想定外のものをつくり出していくための“場”を提供するのが我々の役目です」
いろんな人を巻き込みながら、変化し続ける「輪島KABULET」。「蔵に眠ったままの輪島塗を使ってみようとか、輪島移住を考えている女優の中尾ミエさんとなにかできないだろうかとか、実はたくらみもまだまだあるんです」と雄谷さんは楽しそう。既存の空き家などを利用しながら取り組みを拡大していくというスタイルは、同様の状況にある自治体は多く、横展開もしやすい。今後の展開が楽しみだ。
●取材協力
所在地:港区南麻布
所在地:目黒区中目黒夜空を見上げればいつもそこにある月。古来より信仰の対象で、宇宙飛行士たちが探索に挑み続けてきた、人類にとって身近であり、“憧れ”の存在でもあります。しかし、人間を月面に着陸させることに成功したのは、2020年現在、1969年のNASAのアポロ計画のみで、それ以降、人類は月に立っていません。その月に、近い未来、人類の住める街をつくろうという壮大なプロジェクトが、「月面都市ムーンバレー構想」です。プロジェクトに取り組む宇宙スタートアップ企業、株式会社アイスペースに話を聞き、月に人が住む未来の世界と宇宙開発の最前線を伝えます。
住民1000人、訪問者1万人! ムーンバレー構想とは
ロケット打ち上げコストの大幅な低減を可能にしたテクノロジーの進歩や、宇宙船、着陸船、ロボット等の技術発展により、近年、世界各国の宇宙活動が活発になっています。
例えば、アメリカのNASA が、2024年には宇宙飛行士を月面に送り込もうと進めている有人月探査計画「アルテミス計画」で月面固定式住居を含む月面でのインフラについて明らかにしたほか、2019年にロケット打ち上げ数1位となった中国は、国際月面研究ステーションの構想を進めています。さらに、日本でも、JAXAとミサワホームが宇宙の極限環境下での住宅システム構築の実証実験を南極の昭和基地で行っています。スイスの銀行UBSは、現在約40兆円の宇宙産業規模が2030年には倍増すると試算しており、宇宙産業の中心として、宇宙資源開発が注目されているのです。

(写真/PIXTA)
2023年に民間として日本初の月探査機を送り込もうと開発を進めているのが、アイスペースです。月資源開発の先に、月に人類が住める街をつくろうという壮大なビジョンを掲げています。月面都市ムーンバレー構想が生まれたきっかけを取締役COO中村貴裕さんに聞きました。
「そもそも、月資源開発が活発化しているのは、近年の研究で、月に貴重な鉱物資源だけでなく、およそ60億トンもの水が存在していると分かったためです。水は水素と酸素に分解できます。人類の活動に必要なのはもちろん、ロケットの燃料になるため、将来の宇宙開発に欠かせない資源として注目されています。当社で月面資源開発に取り組むにあたり、未来像を明確に持つことが重要であると考えました。2016年ごろ、社外の識者を集め、2040年に世界がどうなっているか、会議を重ねていたんです。月資源開発を進めれば、住民1000人、年間1万人が訪れる街を月につくることは可能だと考えました。まず、氷が地下にある可能性が高い月の南極に研究者らがムーンバレーをつくり、そこに新婚旅行などで地球から人々が往来する世界です」(中村さん)

(写真/PIXTA)
月に実際に住むとしたら、どんな生活ができるのでしょうか。
「いちばんの魅力は、宇宙空間が近いので、星が大変美しく観測できることでしょう。とくに月から地球の眺めは素晴らしいはずです。実は、月は人類にとって、住むには過酷な環境なんです。放射線量は地球の数百倍、寒暖差は280度もあり、マイナス170度の極寒と110度の凄まじい暑さが交互に訪れます。マイクロメテオライトという隕石も降り注ぎます。そのため、未来の月面住居は、耐熱、断熱でつくられたドーム型になるかもしれませんね。月には地下に空洞があるので、放射線や隕石を避けられる地下都市になる可能性もあるでしょう」(中村さん)

「開発当初は、代表の袴田武史さんと二人だけだった」と話すCOOの中村さん(画像提供/アイスペース)
2022年に派遣する月面探査機は宇宙資源開発への第一歩中村さんは、月面都市実現に向けた月資源開発のためには、次の3つのステップがあるといいます。
1.ロケットを使って、地球から脱出する。
2.ロケットから切り離した月着陸船(ランダー)を降行させ、月面に着陸する。
3.月面探査機(ローバー)で探査する。

クレーターや縦孔など、将来、有人基地の候補となる探査を行う(画像提供/アイスペース)
「ロケットについては、イーロン・マスク氏のスペースX等が安定供給されていますが、着陸船に関しては、民間による月面探査一番乗りを各チームが競い合っている状況です。当社では、月面着陸、月面探査の2つのミッションを行うプログラム『HAKUTO-R』を発表し、2022年月面着陸、2023年月面探査に向け、開発を進めています。2021年中にも、月着陸船の組み立てに着手する予定です」(中村さん)
アイスペースが運営していたチームHAKUTOは、月面探査レースGoogle Lunar XPRIZEに、日本から唯一参加していました。HAKUTOは、日本で古くから月を象徴する動物とされている白いうさぎ(白兔)という意味です。HAKUTO-RのR(Reboot)には、道半ばで終えたGoogle Lunar XPRIZEの挑戦を継承し、民間として初めての月面探査を「再起動」するという想いが込められています。
最終的な目標は、地球~月間の輸送サービス構築です。着陸船または探査機に顧客のペイロード(荷物)を搭載し、月へ輸送するほか、要望に応じて、月面のデータを取得する等のミッションを行っていく予定です。
現在、ペイロードを月へ輸送する商業サービスを民間企業などから公募するNASAのCLPS(クリプス)プログラムのコンペに日本で唯一参加しており、JAXAやルクセンブルク政府とも月資源開発で連携して、日本、ルクセンブルク、アメリカの3拠点で活動しています。

2020年7月に最終デザインが完成した月着陸船(ランダー)。着陸脚を広げた状態で、幅約2.6m、高さ約2.3m、重さは約340kg。ランダーの上部に約30kgの重さのペイロード(貨物)が搭載できる(画像提供/アイスペース)
民間の参入で拡大する宇宙産業アイスペースが、NASAのCLSPプログラムに採択された2018年末は、これまで国主導だった月探査が国際協力をベースに民間主導に切り替わる分岐点になりました。NASAが大きく舵を切ったことは、日本をはじめ各国に大きな影響を与えています。日本政府は、2020年6月に今後10年間の宇宙政策をまとめた新たな「宇宙基本計画」を閣議決定。現状で約1兆2000億円ある国内の宇宙産業の規模を2030年代早期に倍増させること、官主導だった宇宙開発への民間参入や宇宙ビジネスの拡大方針を打ち出しました。
高まる宇宙産業への期待が追い風となり、アイスペースでは、企業とのパートナーシップの締結が多くなっているそう。民間の力を活かした新しい宇宙ビジネスが注目を集めており、その背景を中村さんはこう語ります。
「官主導は、税金を使うため国民への説明責任があり、リスクを最小限にすることが優先されます。民間は、無駄を削いだ上で、制約なくルールをつくれますし、ビジネス的な観点から、企業に対してマーケティングやブランディングの提案ができます。今回のプロジェクトに、航空、通信、放送、自動車、建設、広告代理店、印刷などさまざまな業種の企業がパートナーシップにご賛同いただきました。これから20年の挑戦を共にしていだだきたいとの思いから、技術協力を積極的に行っています」(中村さん)
将来、月に住む未来が、夢物語ではなく、リアリティのある世界として近づいてきているのを感じます。

360度の視野を持つ高画質カメラを搭載した探査機(ローバー)。機体には、パートナーシップ企業名が記されている(画像提供/アイスペース)
宇宙開発で広がる人類の生活圏現在、地球での豊かな生活は、通信、農業、交通、金融、環境維持に至るまで、さまざまな産業が人工衛星を中心とした宇宙インフラにより、成り立っています。インターネットや自動運転が発展すれば、ますます、インフラの重要性は高まり、宇宙資源開発が今後の鍵となっていきます。ポテンシャルマーケットとして注目されている月面探査ですが、「月をゴールとは考えていない」と中村さん。
「住みやすさでいえば、月より、大気のある火星の方が良いとされています。しかし、地球から火星に直接行くには輸送コストが高い。月でロケット等の燃料である水素を補給すれば、10分の1のコストで済むのです。月は宇宙開発のハブ(中継地点)となり、人類の生活圏はますます広がっていくでしょう」(中村さん)
コロナ禍により、地球上がさまざまな困難に直面した2020年。一方で、宇宙をステージに、さまざまな企業が全く想像もつかない未来を描き、計画を進めています。これから人類の夢がかなっていくのか、注目していきたいです。
●取材協力首都圏屈指の観光地で、ロマンチックな港町のイメージのある横浜。リクルート住まいカンパニーによる「住みたい街(駅)ランキング関東版」の調査では3年連続で住みたい街の1位に輝く、住みたい場所としても人気の街だ。そこで、ワンルーム・1K・1DKの物件を対象に、横浜駅まで30分以内で行ける家賃相場の安い駅ランキングを紹介する。横浜駅まで電車で30分以内、家賃相場の安い駅TOP10駅
順位/駅名/家賃相場/(沿線名/駅の所在地/横浜駅までの所要時間(乗り換え時間を含む)/乗り換え回数)
1位 かしわ台 4.10万円(相鉄本線/神奈川県海老名市/29分/1回)
2位 安針塚 4.25万円(京急本線/横須賀市/30分/1回)
3位 桜ヶ丘 4.50万円(小田急江ノ島線/神奈川県大和市/26分/1回)
3位 羽沢横浜国大 4.50万円(JR東海道線・相鉄新横浜線/横浜市神奈川区/13分/1回)
5位 三ツ境 4.55万円(相鉄本線/横浜市瀬谷区/19分/0回)
6位 京急田浦4.75万円(京急本線/横須賀市/27分/1回)
7位 鶴間 4.80万円(小田急江ノ島線/神奈川県大和市/28分/1回)
8位 舞岡 4.90万円(ブルーライン/横浜市戸塚区/16分/1回)
9位 成瀬 5.00万円(JR横浜線/東京都町田市/30分/0回)
10位 さがみ野5.10万円(相鉄本線/神奈川県海老名市/26分/1回)
1位は相鉄本線のかしわ台駅。駅の所在地は神奈川県海老名市だが、駅周辺は綾瀬市や座間市と入り組んでいるベッドタウンだ。
閑静な住宅街で、一戸建て住宅も目立つ。緑が多く、公園も充実。駅から少し行くと、体育館や屋内プール、テニスコートなどを備えた北部公園などがあり、アクティビティーが好きな人には静かな暮らしと趣味との両立がかないそう。また、国道246号線の大和厚木バイパスが通っており、圏央厚木インターチェンジや海老名インターチェンジも近いため、車で遠出が好きな人にとっても生活しやすそうだ。
3位の桜ヶ丘駅は、小田急江ノ島線の各駅列車の停車駅。のどかな住宅地で、ノスタルジックな雰囲気も漂う。
大きな商業施設はないが、生活に必要なスーパーのほか、個人商店が豊富。駅から少し離れると公園施設も充実している。引地台公園は、アスレチック施設や芝生広場、温水プールなどの設備もあり、小さな子どもがいる世帯には心強い。大和ゆとりの森は、広大な敷地に大規模な遊具施設やバーベキュー設備があるほか、地元のプロサッカーチーム、横浜F・マリノスによるフットサル教室などの企画も開催。また厚木航空基地に近いため、飛行機の離発着が間近で見られるスポットとしても知られている。

大和ゆとりの森(写真/PIXTA)
桜ヶ丘駅と同じく3位の羽沢横浜国大は、2019年11月30日にできたばかりの新駅。従来は鉄道の整備が不十分な鉄道空白地帯だったが、JRと相鉄の直通に伴った整備で、周辺の交通利便性は大幅に向上した。横浜駅までの所要時間も、ランキング中で最短。品川駅など都心の主要駅までの時間も短い。
駅の開業にあわせ、周辺は横浜国立大学の研究チームや自治体などによる開発が進められている。同大学の最寄駅であり、学生向けの単身者住宅が多いこともランクインの一因にもなっているが、開発計画では商業施設や子育て支援施設などの建設も予定されているとのこと。結婚や出産などでライフステージが変化しても長く住める街になる期待が持てそうだ。
相鉄沿線は買い物にも便利5位の三ツ境駅は、相鉄の急行、通勤急行、快速、各駅停車の停車駅。乗り換えなしで所要時間20分以内と、横浜駅へのアクセス利便性なら1位と言えるかもしれない。緑豊かな環境のほか、天気に恵まれれば富士山が見えることでも知られる。

三ツ境駅(写真/PIXTA)
駅ビルの「相鉄ライフ 三ツ境」はスーパーのほか、スターバックスや「WIRED CAFE with フタバフルーツパーラー」などのカフェがある。周辺にも大きなスーパーや家電量販店、安売り店などが点在するほか、駅の所在地である瀬谷区の区役所が駅徒歩圏内なのも便利だ。区役所と隣接する公会堂では、モノづくり体験やスポーツ講座なども随時開かれている。
10位のさがみ野駅も、相鉄本線沿線で、同じく急行、通勤急行、快速、各駅停車の停車駅。駅ビルも三ツ境駅と同じように「相鉄ライフ さがみ野」がある。
駅周辺に大きなスーパーが充実している点も同様だが、さがみ野は人気の大規模小売店舗「コストコ」があるのが大きな魅力かもしれない。同店の特徴である大ボリュームの商品は単身者には使い勝手が難しいかもしれないが、アメリカのスーパーのような雰囲気もまたコストコの楽しさの一つ。好きな人にはたまらないだろう。
例年、年末年始のイベントで、横浜にひときわ魅せられる人は多いだろう。残念ながら遠出して遊びに、とは難しい昨今だが、地元民なら話は少し違ってくる。緑豊かな環境と、少し出かけるだけで洗練された都会の雰囲気の双方を楽しめるような部屋探しができるのも、横浜エリアの魅力といえそうだ。
●調査概要
所在地:世田谷区瀬田
所在地:世田谷区上馬今年は新型コロナウイルスの影響でテレワークが増え、1日3回の調理と後片付けがどれだけ大変か痛感した人も多かったことでしょう。そんな「おうちごはん」のお悩みを解消しようとはじまっているのが、マンションの敷地に「キッチンカー」を誘致する試みです。その背景や現在の手ごたえ、今後の展開などを聞いてみました。
負担の大きい日々の食事づくりをキッチンカーがお助け!
朝昼晩と1日3回あり、家族がいるとなかなか適当に済ませることができない「食事づくり」。限られた時間と予算のなかで、家族の健康に留意しつつ、好みにあわせて、毎日3回つくるというのは、相当な負担です。しかも日本はお母さんの手料理こそ最高という神話もあり、特に母親にとっては苦しい呪いになっています(断言!)。
近年では、この日々の食事づくりの負担をできるだけ軽くしようと、スーパーやコンビニ、デパ地下などのお惣菜、いわゆる中食の商品も多数登場していますし、加熱調理するだけのミールキットが販売されていたりと、さまざまなサービスが出ていますが、ここにきて、もう一つの選択肢として普及しそうなのが、「キッチンカー」です。
「キッチンカー」は「フードトラック」「移動販売車」などとさまざまな呼び方をされていますが(今回はキッチンカーで統一します)、お祭りやイベント会場、はたまたオフィスビル街のランチなどで、その姿を見かけたことがある人も多いことでしょう。このキッチンカーが、最近、マンションの一角に出店し、多くの住民の支持を集めているといいます。

Mellowは今年10月より三菱地所コミュニティが管理するマンションでもサービスの本格展開をはじめた(写真提供/Mellow)

(写真提供/Mellow)
そう言われてみれば、オフィスビルの近くにはキッチンカーはたくさん出店していますよね。コロナ禍で出社が減ったのであれば、人のいる場所=マンションに行くというのは、自然な発想ともいえます。なにせ車なので、人のいるところに「移動」できるのが強みなわけですから。
出店するキッチンカーの事業者と場所をマッチングする「SHOP STOP」を展開する株式会社Mellow(メロウ)の森口 拓也さんによると、今年に入り、キッチンカーの出店問い合わせ、キッチンカーを誘致したい事業者からの問い合わせは、ともに急増しているといいます。
「現在、弊社に登録しているキッチンカー事業者は1000事業者を超えました。すでに店舗がある飲食店さまからも、今回の新型コロナウイルスの影響もあってショップモビリティに進出したいという問い合わせが増え、メニューの多様性が広がっています。今後もまだまだ伸びる分野だと考えています」とのこと。
あわせて、キッチンカーが並ぶ場所もオフィスビル近くや、大規模イベントだけでなく、マンションや公園などと日常生活のエリアに増えており、現在、知見を積んでいるところだとか。
「当社のSHOP STOPには、福岡などの地方都市からもフードトラックを誘致したいという問い合わせが増えており、地方展開も進めています。現在、コロナ対策で人のいる場所が変わっていますが、ニーズはもちろん、出店できる場所も増えている。チャレンジのフィールドが広がっていると考えています」(森口さん)
もう一方で、マンションデベロッパーが住民向けサービスとして、マンションの敷地にキッチンカーを誘致する試みもはじまっています。こちらは2020年のグッドデザイン賞も受賞するなど、注目度の高さがうかがえます。このサービスをはじめた三井不動産レジデンシャル、三井不動産レジデンシャルサービスの担当者に開始のきっかけについて伺いました。

利用者からは「美味しい」「楽しい」といった声が聞かれるといいます(写真提供/RIS Design and Management株式会社)
「弊社の『月夜キッチン』は、2019年にはじめた取り組みです。現在、新築マンション購入者の多くは夫婦共働き世帯ですが、その家族の悩みに対して、弊社の共働きの女性社員でなにかを新しい試みを、ということではじまりました」と話すのは、このプロジェクトを担当した三井不動産レジデンシャルの久保絢子さん。女性社員からは、「平日夜のごはんづくりが負担」という声が大きく、キッチンカーを誘致しようという話になったとか。ただ、社内からはネガティブな声も聞こえてきたそうです。
「『世の中にはすでに時短グッズ、調理キットも豊富にあって、自宅にキッチンがある人が、今さらキッチンカーで買わないのでは?』という声もありました。ただ、手づくり感がある・できたて・プロの味を、自宅ですぐ食べられるのは、ぜったいに受けるという確信に近い意見があり、2019年2月~3月にトライアルすることに。すると読みどおり大変好評で、アンケート結果では今後も利用したいという意向が99%にもなり、本格的に展開することとなりました」(久保さん)
そこへ2020年に入って、新型コロナウイルスの感染が拡大し、思わぬ追い風となったといいます。
「新型コロナウイルス感染拡大前の本年 2 月と比較し、1 店舗あたりの売上金額は約 2 倍に増加しました。窯焼きの本格的なピッツア、各国のエスニック料理、ラムを使ったメニューなど、普段家庭ではつくれない料理が大変好評です。家事負担の軽減ということもありますが、自粛ムードのなかで、リフレッシュの一環、楽しみになっているというお声をいただいています」と話すのは、三井不動産レジデンシャルサービスの恩田顕徳さん。現在、「月夜キッチン」のサービスの展開を担っている一人です。

国産小麦を使い、石窯で焼き上げる「UNCLE KEN」のピザ。焼き立てを自宅で食べられるとあって幅広い世代に人気だそう(写真提供/RIS Design and Management株式会社)

ナシゴレンとはインドネシアの焼き飯料理。本格エスニックって、おうちでつくるにはハードルが高いので、人気なのも納得。写真は「es.tokyo」のもの(写真提供/RIS Design and Management株式会社)
「現在は、東京都と神奈川県の大規模マンション(500戸以上)の10棟程度で展開しています。弊社からお声がけした物件もあれば、管理組合からお声がけいただいた物件もあります。弊社分譲の物件だけでなく、近隣にお住まいの方も立ち寄りいただくなどしています」(恩田さん)
なるほど、人のいる場所に移動できるキッチンカーでも、人の集まっている場所=大規模マンションのほうが展開しやすいのは間違いないようです。
共働きだけでなく、シニアやシングルも。利用者の幅は広い!ちなみに、「月夜キッチン」は平日5時~8時で、2~3店が出店しているそうです。利用者層は夫婦共働きだけでなく、シニア世代、カップル、シングルまでと、想定以上に幅広い世代が購入しているそう。価格帯もランチよりも割高になるため、出店する事業者にとってもメリットは大きいようです。
ちなみに、前述のMellowの森口さんが手掛けているケースだと「マンションなのか、オフィスなのか、公園なのか、場所にもよりますが、弊社の場合は日替わりで2~3店舗が並んでいることが多いですね」といいます。森口さんによると、最近ではまちづくりを手掛けるデベロッパー様から声をかけられることも多く、店舗を誘致するよりも、キッチンカーを誘致する前提でまちづくりをすることも増えていくかもしれません。

馬事公苑で出店したときの様子(写真提供/Mellow)
新型コロナウイルスの影響がどこまで続くかは未知ですが、夫婦共働きやテレワークのようなライフスタイルが一般化した今、こうしたキッチンカーが住まいの近くにあるというのはすごく合理的なように思えます。
三井不動産レジデンシャルの久保さんは、今までの利用者のコメントで一番印象に残っているのは、一見シンプルにも思える「助かっています」というものだとか。確かに、キッチンカーがあると、「毎日、食事づくりどうしよう」という悩みから、「今日はどれを選ぼうかな」という楽しみになります。毎日、キッチンカーを使わなくても、火曜と金曜日はキッチンカーにするなどの「オプション」が増えるだけで悩みが楽しみに転換できるのは、とても大きいはず。毎日の食事を助けてくれるサービス、もっと普及して、家族の時間がもっと豊かになればいいのになあと願っています。
●取材協力(※50音順)令和2年度3次補正予算案が閣議決定したのを受けて、国土交通省は、新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ経済の回復を図るため、一定の省エネ性能のある住宅などに対して、「グリーン住宅ポイント制度」の創設を決めた。今まさに、住宅の取得やリフォームを検討している人には、見逃せない制度になるだろう。【今週の住活トピック】
「グリーン住宅ポイント制度」を創設/国土交通省住宅の取得は30万、リフォームは上限30万が基本の「グリーン住宅ポイント制度」
コロナ禍で落ち込んだ経済の回復を目的に、かつて申し込みが殺到した「住宅エコポイント」や、消費税増税緩和策だった「次世代住宅ポイント制度」のような、ポイント制度が創設されることになった。
受け取れるポイント(1ポイント=1円相当)は、マイホームの新築、購入の場合で30万ポイント、住宅のリフォーム(貸家を含む)の場合で上限30万ポイントがベースとなり、特定の条件を満たす場合に上限が引き上げられる。
では、どんな条件を満たせばポイントが受け取れるのか?
まず、契約(売買契約または工事請負契約)の時期に関して、次のような条件がある。
○補正予算案が閣議決定した12月15日以降2021年10月31日までに契約を締結する
次に、住宅については、一定の省エネ性能を有するなどの条件がある。ただし、新築住宅か、中古住宅か、リフォームかで条件は異なる。
○新築住宅(建築または購入)
(1)省エネ基準に適合する住宅 30万ポイント
ただし、「東京圏から移住するための住宅※」「18歳未満の子ども3人以上の世帯が取得する住宅」「三世代同居仕様である住宅」「災害リスクが高い区域から移住するための住宅」のいずれかの場合は、「特例」として30万ポイント加算される(計60万ポイント)。
(2)高い省エネ基準に適合する住宅 40万ポイント
長期優良住宅や低炭素住宅などの認定住宅やZEHなどの高い省エネ性能を有する場合は、基本が40万ポイントになり、(1)に記載した4つの特例のいずれかに該当する場合は60万ポイント加算される(計100万ポイント)。
○中古住宅
(1)空き家バンク登録住宅 30万ポイント
(2)東京圏から移住するための住宅※ 30万ポイント
(3)災害リスクが高い区域から移住するための住宅 30万ポイント
(4)住宅の除却に伴い購入する中古住宅 15万ポイント
なお、(1)~(3)で住宅の除却を伴う場合は計45万ポイントになる。
※東京圏からの移住とは、一定期間、東京23区内に居住、または東京圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県※一部地域を除く)に居住して東京23区内に通勤している人が、東京圏外に移住することをいう
○住宅のリフォーム
断熱改修かエコ設備の設置のいずれかは必須工事。これに併せて耐震改修やバリアフリー改修を行う場合はポイントの対象となり、工事部位ごとに決められたポイント(0.2~15万ポイント)が設定され、該当するごとに加算される仕組み。上限は1戸当たり30万ポイントまで。ただし、加算したポイントの合計が5万ポイント未満の場合は制度の対象外。
また、この加算ポイントは、中古住宅を購入してリフォーム(売買契約から3カ月以内にリフォーム工事請負契約を締結)をする場合は、ポイントがそれぞれ2倍でカウントされる。
なお、次の場合は、特例として上限が45万ポイントまで引き上げられる。
(特例1)若者・子育て世帯がリフォームを行う場合
(中古住宅を購入してリフォームを行う場合は、さらに60万ポイントまで引き上げ)
(特例2)若者・子育て世帯以外の世帯が、「安心R住宅」を購入してリフォームを行う場合
新築住宅と中古住宅については、自ら居住する「持ち家」に限られるが、住宅のリフォームについては「貸家」も対象になる。一方、賃貸住宅を新築する場合は、一定の条件を満たせば1戸当たり10万ポイントが与えられる。
与えられたポイントは、これから公募で選定される商品と交換できる。加えて、ワークスペースの設置工事や防音工事、菌・ウイルス拡散防止工事などの「新たな日常」に資する追加工事、防災に資する追加工事の代金に充当することもできる。
既存の住宅の性能向上や移住促進、「新たな日常」リフォームを促進する効果も?さて、ポイント制度の内容を見ていくと条件がかなりバラバラという印象を受ける。これは、政府がどういった住宅を後押ししたいのかが強く影響しているからだ。
国際的に関心の高い省エネについて、住宅の省エネ化を推進したいということが第一。耐震性や断熱性の低い住宅のリフォーム、特に中古住宅を購入して入居する際のリフォームによって、性能を引き上げたいということが第二。さらに、空き家対策や地方移住などの課題に加え、甚大化する災害対策として災害リスクの高い地域からの移住も促進したい狙いだ。
加えて、コロナ禍でテレワークが普及したり在宅時間が長期化したりして、住まいに対するニーズが変化したが、そうした新しいニーズに対応する工事の代金にポイントを充当可能とすることで、促進したいと考えているわけだ。
こういった背景から、適用されるそれぞれの条件には細かいルールがある。ポイントをもらいたいのであれば、詳しいルールを確認する必要があるだろう。一方で、ポイントをもらうために、必要のないリフォームをしたり、希望条件を変更したりといったことをすべきかどうかは、よく考えた方がよいだろう。あくまで、自分が希望する条件に合致するならポイントを利用しよう、というスタンスがよいと思う。
さて、「グリーン住宅ポイント制度」は、これからの国会で予算案が成立することが前提になる。まだ正式に制度が認められる前ではあるが、今のうちから情報を収集して検討しておこう。とはいえ、国土交通省はさまざまな施策をしている。グリーン住宅ポイント制度には、「省エネ基準」「三世代同居仕様」「空き家バンク」「安心R住宅」など、一般の方には耳慣れない専門用語も多く見られる。
分からないことがあれば、住宅を分譲や仲介する不動産会社、建築やリフォームをする施工会社などに相談して、どういったことを言っているのか、具体的にどんな条件があるのか、詳しく説明を聞くのがおススメだ。逆に、こうしたことを説明できない不動産会社や施工会社であれば、信頼できるかどうかを見直す要因になるだろう。
所在地:目黒区中目黒
所在地:港区西麻布
所在地:文京区千石先日、飲みの席で興味深い話を聞いた。
「友だちが千葉県の船橋市に引越したんだけど、毎月第2土曜日に『無事です』と書かれたタオルを家の外に掲げるというルールがあるんだって」
町中に住人の無事を告げるタオルがはためく光景。見てみたい。さっそく、現地に行ってこの目で確かめてきた。
「掲げる地区」に入ったが一向に現れない
調べてみると、同じ船橋市でもこれを実践しているのは咲が丘地区だけらしい。
1丁目から4丁目まである
新宿駅から電車を乗り継いで、約1時間。最寄りの新京成線二和向台駅に到着した。

船橋市の北西部に位置し、次の駅は鎌ケ谷市になる(写真撮影/石原たきび)
さっそく歩き出す。

皆さん無事かな(写真撮影/石原たきび)
すぐに咲が丘地区に入ったが、「無事ですタオル」は一向に現れない。あれ?

無事じゃないの?(写真撮影/石原たきび)
タオルを掲げるスタイルは多種多様歩くこと数分。あった。「無事ですタオル」。無事だった。

無事です(写真撮影/石原たきび)

無事です(写真撮影/石原たきび)

無事です(写真撮影/石原たきび)

無事です(写真撮影/石原たきび)
ハンガーにかけて玄関に掲げるスタイルが主流のようだが、それ以外のバリエーションもあった。

前面に押し出すパターン(写真撮影/石原たきび)

高さで勝負するパターン(写真撮影/石原たきび)
発案者は防災部会会長の内田さん「無事ですタオル」がある風景を堪能したのちにお会いしたのは、咲が丘中央自治会防災部会会長で、この試みの発案者・内田祐至さん(82歳)。
なんと、同地区中央自治会町会長の門倉忠克さん(66歳)と防災部会副部会長の小林雅人さん(59歳)も呼んでくれていた。

左から小林さん、内田さん、門倉さん(写真撮影/石原たきび)
内田さんが言う。
「防災を意識した一番最初のきっかけは1995年に起きた阪神・淡路大震災。私、川崎重工で働いていて、あっちには工場がいくつもある。東京から何度も救援に行きましたよ」
その後、咲が丘中央自治会の中に防災部会を立ち上げ、2017年から防災用品会社の案内書で知った「無事ですタオル」を導入する。

自治会費で製作し、185世帯すべてに配布した(写真撮影/石原たきび)
「茨城県常総市では市全体で採用しており、NHKで大々的に放映されました。この取り組みを始めるか否かは、ひとえに防災部会長の熱意によって決まります」
この活動は咲が丘地区の中央自治会のみそういえば、内田さん。咲が丘エリアに入っても「無事ですタオル」になかなかお目にかかれなかったんですが。
「咲が丘にはいくつかの自治会があるけど、これをやってるのは中央自治会だけだから(笑)」
なるほど、そういうことか。

消火訓練で各自治会が集合した際の写真(写真提供/咲が丘中央自治会)
なお、この試みは有事の際に備える“訓練”だ。実際に震度5弱以上の地震が起きた際、「無事ですタオル」を掲げることによって外部から安否確認がしやすくなり、救出作業もスムーズに行える。

内田さんが作成したマニュアル(写真撮影/石原たきび)
「もともと、狭い町内だから顔を知らない人はいないけど、この活動を始めたことで助け合いの精神がさらに強くなったと思う」

内田さんは防災リーダーの全国大会に千葉県代表で出場したことも(写真撮影/石原たきび)
「命の笛」は800m先まで聞こえるらしい昨年の台風で風害に見舞われると、すぐに防災マニュアルをつくって配布した。

風で吹き飛ばされた物置(写真提供/咲が丘中央自治会)
「今年は建物の下敷きになったり、閉じ込められたときに自分の存在を知らせる『命の笛』も配布しました。アメリカの沿岸警備隊が使っているモデルで800m先まで聞こえるんだよ」

船橋北エリアの地域新聞に掲載された(写真提供/咲が丘中央自治会)
地区内には小学校がひとつあるが、その学校だよりに載っている情報も共有する。

船橋市立八木が谷小学校の学校だより(写真提供/咲が丘中央自治会)
今年はコロナの影響で開催されなかったが、地域には昔から続くお祭りもある。例えば、自治会主催の夏祭り盆踊り大会では船橋市の現市長・松戸徹さんも太鼓を叩いた。

子どもたちに混じって太鼓を叩く市長(写真提供/咲が丘中央自治会)
カレンダーに印を付けているから出し忘れはないその後、内田さんらはふだん第4土曜日に行っている防犯パトロールに出発。以前は年に数回、ひったくり事件などが起きたが、今はまったくないそうだ。

我ら「無事です3銃士」(写真撮影/石原たきび)
小林さんが言った。
「親の代からこの辺に住んでいるから、やっぱり愛着はありますよ。内田さんは80歳を超えても一生懸命やっているでしょ。その姿を見て、私ぐらいの世代がこういう活動をちゃんと引き継がないと、と思っています」
3人は1軒の家の前で立ち止まった。あ、「前面に押し出すパターン」の家だ。インターホン越しに呼びかけると、ご主人が出てきた。
「おお、皆さんおそろいで(笑)。『無事ですタオル』? カレンダーに印を付けているから出すのを忘れることはないですよ。僕は朝6時に出すんだけど、それを見た他の家がぽつぽつ出し始める感じですね」

中央自治会では避難誘導班長を担当する長島さん(写真撮影/石原たきび)
空き巣狙いから住民を守るため、タオルは16時に取り込む。帰宅がそれより遅くなる家は掲示しないことになっているそうだ。
門倉さんが「ここ、ウチです」(笑)再び歩き始めると、またもや「前面に押し出すパターン」の家を発見。すると、門倉さんが「ここ、ウチです(笑)」

さすが、意識が高い(写真撮影/石原たきび)
そんな門倉さんが、とある建物を紹介してくれた。
「私らを含む3つの自治会の役員や班長が会議をする咲が丘三稜会館です。決まったことは回覧板に記して回す。この建物は私が引越してきた昭和50年代半ばに建ったものだから、かなり古いです」

40年ほど前に建てられたようだ(写真撮影/石原たきび)
この訓練が無駄になるのが一番というわけで、船橋市の一画には毎月第2土曜日に「無事ですタオル」をいっせいに掲げるエリアがあった。
最後に小林さんが、「一番いいのは、何も起こらなくてこの訓練が無駄になることです」と言った。

今日も無事です(写真撮影/石原たきび)
リクルート住まいカンパニーが2020年3月に発表した「SUUMO住みたい街ランキング2020 関東版」では、見事1位に輝いた横浜駅。来春に発表予定の2021年版ランキングの順位も気になるところではあるが、便利で人気の街であることに変わりはない。JR各線をはじめ、京浜急行線、東急東横線にみなとみらい線、相鉄線や横浜市営地下鉄ブルーラインが乗り入れており、駅周辺には大型商業施設が建ち並んでいる。そんな横浜駅まで30分圏内にある、中古マンションの価格相場を調査してみた。専有面積20平米以上~50平米未満のシングル向けと、専有面積50平米以上~80平米未満のカップル・ファミリー向けそれぞれの、価格相場が安い駅トップ10はこちら!●横浜駅まで30分以内の価格相場が安い駅TOP10
【シングル向け】
順位/駅名/価格相場(沿線/所在地/横浜駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 京急鶴見 1580万円(京急本線/神奈川県横浜市鶴見区/7分/0回)
1位 鶴見 1580万円(JR京浜東北・根岸線/神奈川県横浜市鶴見区/9分/0回)
3位 阪東橋 1980万円(横浜市営地下鉄ブルーライン/神奈川県横浜市中区/8分/0回)
4位 綱島 2015万円(東急東横線/神奈川県横浜市港北区/10分/0回)
5位 黄金町 2035万円(京急本線/神奈川県横浜市南区/6分/0回)
6位 吉野町 2220万円(横浜市営地下鉄ブルーライン/神奈川県横浜市南区/10分/0回)
7位 伊勢佐木長者町 2280万円(横浜市営地下鉄ブルーライン/神奈川県横浜市中区/7分/0回)
7位 天王町 2280万円(相鉄本線/神奈川県横浜市保土ケ谷区/5分/0回)
7位 石川町 2280万円(JR京浜東北・根岸線/神奈川県横浜市中区/7分/0回)
7位 関内 2280万円(横浜市営地下鉄ブルーライン/神奈川県横浜市中区/4分/0回)
【カップル・ファミリー向け】
順位/駅名/価格相場(沿線/所在地/横浜駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 京急田浦 1539.5万円(京急本線/神奈川県横須賀市/27分/1回)
2位 桜ヶ丘 1580万円(小田急江ノ島線/神奈川県大和市/26分/1回)
3位 かしわ台 1680万円(相鉄本線/神奈川県海老名市/29分/1回)
4位 高座渋谷 1690万円(小田急江ノ島線/神奈川県大和市/28分/1回)
5位 六浦 1985万円(京急逗子線/神奈川県横浜市金沢区/22分/0回)
6位 京急富岡 2000万円(京急本線/神奈川県横浜市金沢区/17分/1回)
7位 藤沢本町 2020万円(小田急江ノ島線/神奈川県藤沢市/30分/1回)
8位 さがみ野 2080万円(相鉄本線/神奈川県海老名市/26分/1回)
9位 小机 2180万円(JR横浜線/神奈川県横浜市港北区/16分/0回)
9位 相模大塚 2180万円(相鉄本線/神奈川県大和市/25分/1回)
まずはシングル向け中古マンション(専有面積20平米以上~50平米未満)のランキングをチェック。1位には価格相場が同額の1580万円となった、京急本線・京急鶴見駅とJR京浜東北・根岸線の鶴見駅の2駅が並んだ。この2駅は駅舎が異なるものの駅前広場を挟んで向かい合っている。JR京浜東北・根岸線で鶴見駅から3駅、京急本線だとエアポート急行で京急鶴見駅から3駅で横浜駅にたどり着く。また、JR京浜東北・根岸線、京急本線(エアポート急行)ともに横浜駅とは反対方面に1駅進むと、さまざまな商業施設がそろっている川崎駅へ行くこともできる。
JR鶴見駅には駅ビル「CIAL鶴見」が、京急鶴見駅にはショッピングモール「ウィングキッチン京急鶴見」が併設されているので買い物も楽ちん。駅周辺には飲食店も豊富なので、仕事帰りや休日に一人で食事を楽しむにも困らないだろう。かつての鶴見エリアは工業地帯というイメージが強く、現在も駅南方の臨海エリアには工場が建ち並んでいる。しかし近年の再開発により駅周辺には大型マンションや大型商業施設が誕生し、生活の場としての機能も高まっている。交通の便のよさ、価格相場の安さを考えると、住む街の候補地に入れるのはアリだろう。

京急鶴見駅・鶴見駅の街並み(写真/PIXTA)
3位は横浜市営地下鉄ブルーライン・阪東橋駅がランクイン。価格相場は1位から400万円アップし、1980万円だった。横浜市営地下鉄ブルーラインは神奈川県藤沢市の湘南台駅から横浜市青葉区のあざみ野駅まで32駅を結ぶ路線。吉野町駅(6位)~阪東橋駅(3位)~伊勢佐木長者町駅(同額7位)~関内駅(同額7位)という並び順で連続しており、関内駅からさらに3駅進むと横浜駅へ。また、阪東橋駅から北西に5分ほども歩けば、5位の京急本線・黄金町駅に到着する。
3位・阪東橋駅の周辺環境に目を向けよう。地下の駅から地上に出ると2駅先の関内駅まで帯状の公園「大通り公園」が続いている。石畳の広場や芝生、花壇などが整備され、途中には彫像も点在する細長い公園の全長は約1200m。散歩がてらのんびり歩き、商店が豊富な関内駅周辺に向かうのもいいだろう。また、阪東橋駅から大通り公園を2分ほど歩いて横浜橋交差点を右折すると、100軒以上の店舗が並ぶ「横浜橋商店街」がある。アーケードの下に地元民に愛される商店が軒を連ねており、下町情緒を感じながら歩くだけでも楽しそうだ。

大通り公園(写真/PIXTA)
さて、今回の調査の基点にした横浜駅のシングル向け中古マンションの価格相場は2630万円で、これはランキングでいうと13位の相鉄本線・平沼橋駅(神奈川県横浜市西区)と同じ価格だった。ちなみに11位は京急本線・八丁畷駅で価格相場2380万円、12位は京急本線・大森町駅で価格相場は2605万円という結果。つまり「横浜駅まで近く、かつ横浜駅より安い」ことを目的に物件を探すなら、12位以上を基準に選ぶのがベターと言えそう。目的に適う候補地が12駅しかないと考えると、驚きの結果と言えるだろう。
ランキングトップ10の駅はいずれも横浜駅まで所要時間10分以内だったが、「もっと離れたら安い駅があるんじゃないの……?」という気もする。しかし横浜駅から離れると今度は東京都内に入るため価格相場が上昇傾向に。また、東京とは違う方向に離れた場合も、例えばカップル・ファミリー編にランクインしたエリアには、シングル向けの物件数が調査条件(SUUMO掲載が11件以上)に満たないほど少ないため、ランク外となってしまう。こうしたことから、「横浜駅まで近く、かつ横浜駅より安い」シングル向けの中古マンションを探す際の候補地は限られてくるようだ。
カップル・ファミリー向けトップ10にも横浜まで1本の駅が多数続いてカップル・ファミリー向け中古マンション(専有面積50平米以上~80平米未満)のランキングを見ていこう。1位は京急本線・京急田浦駅で価格相場は1539.5万円。京急本線の普通列車(各駅停車)しか停まらないが、2駅先の金沢八景駅で特急または快特に乗り換えると3駅目が横浜駅だ。
京急田浦駅の周辺は緑が多く残された丘陵地の住宅街で、東へ10分ほど歩くと長浦港に出る。臨海エリアは海上自衛隊の基地や工場の敷地が大半を占めており、遊べるビーチというわけではないものの、山も海も身近に感じて暮らせるのは魅力の一つ。駅前には小学校と警察署、少し離れると市立保育園や中学校も。買い物は駅前の商店街やスーパーを利用できるが、大型商業施設はない静かな環境。マイカーがあると横浜や横須賀にも出やすく、さらに便利かもしれない。
2位は小田急江ノ島線・桜ケ丘駅で価格相場は1580万円。このあたりは江戸時代から桜の名所として知られていたそうで、現在も桜名所が豊富。駅の西側を流れる引地川の両岸には約1.5kmにわたって千本桜と称される桜並木が続き、例年の見ごろには桜まつりも開催される。桜のアーチを眺めつつ散歩道を進むと、4位の高座渋谷駅にたどり着く。桜ケ丘駅周辺には23時間営業のスーパーをはじめ、複数のスーパーやドラッグストアがある。幼稚園や保育園、小中学校も点在し、学習塾や子ども用品店「西松屋」もあることから、子育て世代も多く住む街なのだろう。

千本桜(写真/PIXTA)
3位は相鉄本線・かしわ台駅で価格相場は1680万円だった。駅周辺には静かな住宅街が広がり、合間に公園が多く点在するため子どもの遊び場も充実。駅の南側にはスーパーやドラッグストア、100円ショップや衣料品店が集まっており、一気に買い物を済ませられて便利だろう。また、横浜とは逆方面に1駅進んだ海老名駅に行けば、駅と直結した「ららぽーと海老名」や、映画館も備えた「ビナウォーク」といった大型商業施設も利用できる。
かしわ台駅から横浜駅に向かうには、相鉄本線の快速で大和駅へ行き、そこから特急に乗り換えると約29分で到着する。トップ10にはかしわ台駅を含め相鉄本線の駅が3駅ランクインしている。この3駅は横浜方面に向かってかしわ台駅(3位)~さがみ野駅(8位)~相模大塚駅(9位)の順で連続しており、いずれも特急は停まらない急行停車駅。最短時間を目指して横浜駅に向かうなら、大和駅で特急に乗り換えるとよい。しかしそれぞれの駅から急行に乗車すると、ランキング表の記載より所要時間が増えるものの、乗り換えせずに横浜駅まで行くことも可能だ。
カップル・ファミリー向けランキングのトップ10を見ると、シングル向けに比べて横浜駅までの所要時間が長めになっている。そんな中でも最も所要時間が短かったのは横浜駅まで約16分という、9位の小机駅。JR京浜東北・根岸線直通のJR横浜線に乗ると、乗り換えせずに横浜駅に行くことができる。駅西側には小机城の跡地がある。小高い丘は現在「小机城址市民の森」として整備され、緑に親しめるエリアとなっている。また、駅の北東部には「日産スタジアム」や「新横浜公園」が広がっており、子どもとのびのび遊ぶ場所には困らない環境だ。駅周辺には大型の商業施設はないものの、そのおかげで横浜駅に近い割には住宅街まで大勢の観光客が来ないため静かに暮らしやすいと言えるだろう。

竹林の小径ライトアップ(小机城址市民の森)(写真/PIXTA)
ちなみに今回の基点駅にした横浜駅の、カップル・ファミリー向け中古マンションの価格相場は4390万円。9位の小机駅や相模大塚駅でも価格相場は横浜駅の半額以下! シングル向けよりは所要時間がかかる駅がランクインしたとはいえ、それでも30分圏内でこれほど価格相場が下がるならば、住まいの候補地として検討に値するのではなかろうか。
●調査概要
所在地:目黒区下目黒
所在地:世田谷区下馬
所在地:神奈川県横須賀市秋谷三丁目
所在地:目黒区自由が丘
所在地:目黒区三田
所在地:国分寺市東元町
所在地:港区赤坂年の瀬が迫り、2020年を振り返る時期になりました。新型コロナウイルスに翻弄された1年。来年こそは心穏やかに過ごせることを祈りつつも、まだまだ落ち着ける日は遠そうです。SUUMOジャーナルで11月に公開した記事では、「団地にできた1000冊の本がある『シェアハウス』。暮らしをのぞいてみた!」「保護猫と暮らす三軒茶屋の『サンチャコ』。地域と人とを結ぶ新しい暮らし方」などが人気TOP10入りしました。詳しく紹介します。
2020年11月の人気記事ランキングTOP10はこちら!
1位 月収2万円で「山奥ニート」歴7年。自分の価値や感情を生まれて初めて知った
2位 団地にできた1000冊の本がある「シェアハウス」。暮らしをのぞいてみた!
3位 コロナ禍で50万円以下プチリフォームが増加! 換気、テレワーク、おうち時間の見直しで
4位 保護猫と暮らす三軒茶屋の「サンチャコ」。地域と人とを結ぶ新しい暮らし方
5位 パリの暮らしとインテリア[7]18世紀築のアパルトマンを大改装! 2度目の外出禁止令のお家時間
6位 “タイニーハウス”が災害時の避難場所に!? 山梨県小菅村で「ルースターハウス」誕生
7位 大田区「池上」が進化中!リノベで街の魅力を再発掘
8位 タダ同然の空き家も引く手あまた!? 「家いちば」から空き家問題の新提案
9位 「新宿駅」まで30分以内、中古マンション価格相場が安い駅ランキング 2020年版
10位 ふるさと納税で“体験型”返礼品が増加中!ウィズコロナ時代の地域応援
※対象記事:2020年11月01日~2020年11月30日までに公開された記事
※集計期間:2020年11月01日~2020年11月30日のPV数の多い順
1位 月収2万円で「山奥ニート」歴7年。自分の価値や感情を生まれて初めて知った

(写真提供/石井あらたさん)
生きづらさを抱える若者たちが共同生活を送る、廃校になった小学校を利用したシェアハウスNPO共生舎の理事である石井あらたさんは、自身も元引きこもり。徒歩圏内の住民は5人という地域で“山奥ニート”生活を送る彼らの生活やシェアハウスを始めたきっかけなどを聞きました。
2位 団地にできた1000冊の本がある「シェアハウス」。暮らしをのぞいてみた!

(写真提供/日本総合住生活株式会社)
東京都足立区に誕生した「ジェイヴェルデ大谷田」は、大規模団地の1階をリノベーションしてシェアハウスにし、共同リビングには1000冊以上の本を配置した「読む団地」。多くの入居者がすでに生活し、イベントなどを通して地域住民との交流も進んでいます。
3位 コロナ禍で50万円以下プチリフォームが増加! 換気、テレワーク、おうち時間の見直しで

(写真提供/静鉄リフォーム)
不動産市場のなかで、今最も活況といわれているのがリフォーム。「換気」や「抗ウイルス対応壁紙」「除菌水」のリフォームが急増しています。収入減を見越し総額50万円ほどの依頼が増えており、予算内で収まるリフォーム例とともに紹介しています。
4位 保護猫と暮らす三軒茶屋の「サンチャコ」。地域と人とを結ぶ新しい暮らし方

(写真撮影/片山貴博)
東京・三軒茶屋にある賃貸住宅などの複合施設「サンチャコ」は、飼い主が亡くなるなどで保護した猫たちをハブにした「ネコファースト」。イベントスペースでは、猫好きがきっかけになった地域のひとたちのとの交流や、保護猫たちの譲渡が行われています。
5位 パリの暮らしとインテリア[7]18世紀築のアパルトマンを大改装! 2度目の外出禁止令のお家時間
![パリの暮らしとインテリア[7]18世紀築のアパルトマンを大改装! 2度目の外出禁止令のお家時間とは?](https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/11/176262_main.jpg)
(写真撮影/Manabu Matsunaga)
パリ在住の写真家がこだわりの生活を送る人たちを紹介する連載。今回はパリ在住の日本人女性が住む、“ブルジョワ・ボヘミアン”なエリアに18世紀に建てられた130平米のアパルトマンを紹介。外出禁止令が出てからのお家時間についても伺いました。
6位 “タイニーハウス”が災害時の避難場所に!? 山梨県小菅村で「ルースターハウス」誕生

(写真提供/小菅村)
小さな小屋が充実した「タイニーハウス村」山梨県小菅村で、災害発生時に避難場所になる「ルースターハウス」がお披露目されました。見た目はかわいらしくても、家族4人程度がプライバシーを保ちながら仮住まいが可能。しかも軽トラックで持ち運べて1時間程度で組み立てられるという頼れる味方の誕生です。
7位 大田区「池上」が進化中!リノベで街の魅力を再発掘

(写真撮影/相馬ミナ)
歴史ある門前町の東京都大田区池上が、街全体のリノベーションで新たな魅力を放ちつつあります。場所をつくって終了でなはく、街づくりに取り組む人たちをサポートし、開業希望者たちのマッチングや子ども連れで楽しめるイベントを企画するなど、街の資源を活かした取り組みを探りました。
8位 タダ同然の空き家も引く手あまた!? 「家いちば」から空き家問題の新提案

(画像/家いちば)
社会問題化している空き家の解決に、専門知識は不要!? 売り主が自身で物件情報を掲示するサイト「家いちば」が注目したのは、物件にストーリーを与えることでした。代表取締役・藤木哲也さんにお話を伺いました。
9位 「新宿駅」まで30分以内、中古マンション価格相場が安い駅ランキング 2020年版

(写真/PIXTA)
新宿駅まで30分圏内のシングル向け、カップル・ファミリー向けの中古マンション価格相場ランキング最新版。シングル向けの1位は西川口駅の2080万円で、東京都北区や板橋区などの近接したエリアが上位に集中。カップル・ファミリー向けは生田駅の2485万円で、川崎市に所在する駅がトップ3を占めました。
10位 ふるさと納税で“体験型”返礼品が増加中!ウィズコロナ時代の地域応援

(画像/PIXTA)
ふるさと納税に、アミューズメント施設の入場券や、スポーツなどのアクティビティ、「1日町長体験」などのユニークなものを含めた“体験型“の返礼品が増え、地域活性につながっています。その背景や実態などについて、ふるさと納税サイト「さとふる」広報と、自治体担当者に聞きました。
12月14日、2020年を表す漢字が「密」と発表されました。1位になった「月収2万円で“山奥ニート”歴7年。自分の価値や感情を生まれて初めて知った」は、いわば「疎」環境だからこそ、心が「密」になれたとも言えるのは、興味深く感じます。3密環境の回避に従いながらも、ランキングからは、人と人との交流を求め、その大切さが再認識されている様子がうかがえるように思いました。
生まれ故郷である静岡で地域おこし協力隊の活動をしながら、クリエイティブディレクターとしてフリーランスで活躍する小林大輝さん。「いつかはUターン」という漠然とした思いが現実化したきっかけは、1歳半になる長男の子育て環境を考えてのこと。ふるさと副業を経て、現在の東京と静岡に分かれての二拠点生活、そして将来の家族3人完全移住計画。そんなステップで着々と基盤固めを進める小林さんに、二拠点生活の実態、お仕事感、移住への率直な思いなどを伺った。連載名:私のクラシゴト改革
テレワークや副業の普及など働き方の変化により、「暮らし」や「働き方(仕事)」を柔軟に変え、より豊かな生き方を選ぶ人が増えています。職場へのアクセスの良さではなく趣味や社会活動など、自分のやりたいことにあわせて住む場所や仕事を選んだり、時間の使い方を変えたりなど、無理せず自分らしい選択。今私たちはそれを「クラシゴト改革」と名付けました。この連載では、クラシゴト改革の実践者をご紹介します。東京で働きながら、ボランティア、副業、地域おこし協力隊と段階的に静岡比重を高める
地域おこし協力隊として、2020年10月から「静岡市のテレワーク推進」をミッションに取り組んでいる小林大輝さんは、現在32歳。同時に、勤務していた東京の会社を退職してフリーランスのクリエイティブディレクターとなり、静岡と家族が住む東京を行き来する二拠点ライフを実践中だ。

静岡での仕事は、主にコワーキングスペースを利用。個人ワークするだけでなく、地元ネットワークづくりができるのも魅力。写真はお気に入りの静鉄のコワーキングスペース「=ODEN(イコールオデン)」で(画像提供/小林さん)
静岡で生まれ育ち、東京の大学に進学してからも両親や大好きな祖父母に会うために頻繁に帰省していたという小林さん。一年間の海外留学後は東京の企業に就職し、クリエイティブディレクター・アートディレクターとして企業のブランディングやデザインなどを幅広く手がけ、寝る暇も惜しんで働いた。「競争も激しい世界で、スピート感やクオリティの高さが刺激的でした」
一方で漠然といつかは地元に戻って暮らしたいという思いもあり、静岡での基盤固めも少しずつステップを踏んで進めていた。帰省のタイミングを利用して、友人や知人からの紹介でプロモーションの相談に乗ったり、依頼されたデザインの仕事を「将来の種まき」と考えて請け負ったりして、静岡のネットワークを広げてきた。
静岡県内企業の生産性向上サービスに取り組む「いちぼし堂」も、代表である北川氏と中学・高校の先輩という縁。静岡での人脈づくりに少しずつ手ごたえや実績も現れ始め、静岡に関わる頻度が高くなってくると、時間的に本業との両立が厳しくなってきた。そこで、小林さんは2018年に勤務先企業と退職も視野に交渉し、給料・勤務時間・ノルマ全て7割という条件で副業認定第一号に。「いちぼし堂」が行うふるさと副業支援にも参加して、静岡Uターンへの一歩を踏み出した。

「いちぼし堂」の施設。1階は子どもを預けて働ける保育園、2階はコワーキングスペース、3階は県内外企業向けのレジデンス付きテレワーク拠点。レジデンスはワンルーム6室で、小林さんのほか東京の企業やインターン生が入居中(画像提供/いちぼし堂)
本業7割、副業3割ということで、静岡には週2~3回新幹線を利用して通う生活に。地元企業の抱えている課題をヒアリング、比較的年代の近い事業承継した若手経営者との仕事など、とにかく地元での実績づくりに励んだ。運よく関わった新規事業コンペの提案が通ると、そこから新たな顧客を紹介してもらえるなど具体的な成果や拡がりもあり、副業をメインにする実感がわいてきた。
地域おこし協力隊の話があったのは、ちょうどそんなタイミング。地域おこしというと、山間部に入って木を切ったりする地域貢献のイメージが強いが、「テレワーク推進」という得意分野のミッションだった。任期は一年単位で最長三年、これはとても副業の範囲では実現しないと判断し、ついに2020年10月末付けで本業であった東京の企業を退社。静岡の地域おこし協力隊を本業として活動しながら、副業でフリーランスのクリエイティブディレクターとして働く、という新たなステップを踏んだのだ。
子育てはのんびりした環境で。家族のいる東京のマンションとのお試し二拠点生活プライベートでは、2017年に結婚し、2019年夏には長男も誕生して3人家族に。結婚当初は新宿から少し西の街、東中野に住んでいたが、フルタイムで働く妻の妊娠をきっかけに、品川駅から山手線で一駅の大崎のマンションに転居する。共働きの二人の職場に通勤しやすく、静岡にも行きやすい大崎は絶好の立地。立地がいい分家賃も高くつくため、思い切って2019年2月に中古マンションを購入した。内装のリノベーションは、建築学科卒業で空間デザインなども仕事にしている小林さんはお手のもの。小林さんがデザイン、設計し、建築学科時代の同期の大工に工事を手伝ってもらい、自分たちの手でセルフリノベーション。こうして愛着ある、明るく広々した東京の新居が完成し、長男を迎えて3人の暮らしがスタートした。

一般的な2LDKの間取りの中古マンションを購入(工事前)(画像提供/小林さん)

窓右手の隣の部屋との壁を取り払うという個人のDIYを超えた大胆な工事を自ら行えるのは建築学科卒業ならでは(工事中)(画像提供/小林さん)

完成したLDKは、便利なキッチンのカウンターを新設、ガラスを通じて隣の部屋からも日差しと風が入る開放感ある個性的な空間に(工事後)(画像提供/小林さん)
この時、すでに小林さんは副業で静岡に通う日々を送っていた。「子どもができると、子育ては自分が育ったような自然豊かでのんびりした環境でしたい、と思いました。満員電車に乗って学校に通わせるなんて、嫌で」。いつかは、と考えていた静岡へのUターンが、一気に現実味を帯びたのだ。
東京クオリティの仕事をゆったりとした環境で。完全移住で仕事と暮らしの理想を追求
静岡の実家近くの海で長男と。「子育ては自分が育ったようなのんびりした環境でしたい」と小林さん(画像提供/小林さん)
共働きの妻も、出産後の現在は職場復帰。仕事にもやりがいを感じていて今後も働き続ける予定だが、「住む場所にはこだわらない」と静岡移住にも前向き。コロナ禍で完全リモートワークのタイミングを利用して、3カ月間の親子3人静岡お試し移住も体験済みだ。
現在は子育てサポートもあるため、東京6割、静岡4割くらいの滞在比率で小林さんが週2回往復する二拠点生活中。静岡での小林さんの拠点は、副業支援で関わった「いちぼし堂」の施設のほか、実家も利用。「どうしても移動時間が多いので、いずれは家族で完全移住するつもりです。いまは東京での子どもの世話に時間をとられますが、徐々に静岡の比率を高めていきたいですね」

ふるさと副業を支援する「いちぼし堂」のコワーキングでのワークショップ風景。小林さんはここの3階にあるワンルームを借りて静岡での拠点にしている(画像提供/小林さん)
漠然と故郷に戻りたいと思っていながら、地元の企業に入って働くイメージがなかったという小林さん。小林さんの話を聞いていると、静岡の企業の課題を聞き、企業ブランディングやプロモーション戦略など「出来ること」を活かしながら「求められること」を増やし、新しい仕事を自ら創り出しているのが印象的だ。地域おこし協力隊として、静岡市のテレワークを推進するという本業にたどり着いたのも、まさにその象徴だ。
「東京は、案件や競争の多さからくる仕事のスピード感、質の高さで刺激になります。一方静岡の魅力は、高い建物も少なく自然豊かで、人も気分もゆったりしているところ。東京でできることは基本的に静岡でもできるので、東京の仕事もしているからこその第三者の目線を持って、東京クオリティの仕事を愛着あり競合少ない静岡で提供できたら最強ですからね」
段階的に静岡比率を高め、最終的には完全移住を考えているという小林さん。「地域おこし協力隊は1年契約、最長で3年。そのころには、完全移住していたいですね。アウトドアも好きなので、山間部にゲストハウスを建てるのも面白そうだな、と」

「いちぼし堂」近くのお気に入りの老舗おでん屋さん。メニューはおでんと大学いものみというシンプルさ(画像提供/小林さん)
東京でのクリエイティブディレクターとしての仕事、妻の静岡での仕事、静岡での家族の住まい、東京のマンションを貸すか売るか、実家で子どもをみてもらえるか……完全移住に向けて沢山課題はあると話す小林さん。暮らしも仕事も無理なく着実にチャレンジとステップを重ね、いままでにない理想の形をつくり上げていっている小林さんの3年後が、実に楽しみだ。
●取材協力2000年ごろに脚光を浴びた「地域通貨」が、コロナ禍で再び注目されている。どのように活用され、地域に新しい動きをもたらしているのか、専修大学デジタルコミュニティ通貨コンソーシアムラボラトリー(通称、グッドマネーラボ)代表理事の西部忠さんに話を伺った。
地域通貨とは、そもそもどんなもの?
地域通貨とは、限定した地域(ローカルな場所として市町村、地元商店街など)やコミュニティ(価値や関心を共有するコミュニティとしてのNPO、SNS、人の集まりなど)の中で流通する通貨のこと。紙幣を流通させる「紙幣(発行)型」、利用者同士が通帳を持ち記入して管理する「通帳(記入)型」、小切手を印刷して発行する「小切手型」、ICカードを発行する「電子カード型」などがある。
「かつての地域通貨は円に換えることはできませんでしたが、2000年代以降の地域通貨は地域商品券のように事業者のみ換金できるものが増えてきました。そのため地域通貨は、地域の中で、贈与や支援、サービスとの交換、地域内の経済圏の活性化、さらに地域コミュニティづくりなどに使われています」と西部さんは説明する。
地域通貨は2000年代に一気に全国で広まったが、当時は行政やNPO法人が始めて、助成金の終了や管理の手間などから持続できずに終了するケースも少なくなかった。しかし5年ほど前から、スマートフォンやネットの普及によって管理や運営の手間が軽減したこともあって、民間発の地域通貨が増えてきている状況だ。
今の地域通貨の代表格は「さるぼぼコイン」と「アクアコイン」では、現在の地域通貨の最新事情はどうなっているのだろうか。
「デジタルを活用したことで、地域へ浸透させることに成功した事例としてぜひ注目したいのが、『さるぼぼコイン』(岐阜県高山市)と『アクアコイン』(千葉県木更津市)です」と西部さん。ともに電子地域通貨で、スマホ決済アプリと同様、QRコード(2次元コード)決済が可能だ。

さるぼぼコインの使い方についての画像。2020年11月13日現在、ユーザー数 約17000名、加盟店数約1500店舗と、地域の生活に浸透している(画像提供/飛騨信用組合)
「『さるぼぼコイン』は、金融機関が発行母体となる電子地域通貨の草分けとして、2017年からスタートしました。さるぼぼコインで決済することで、電気料金の9%が還元されるのが特徴で、現金をチャージしたり、イベントに参加したりすることでポイントがもらえます。電気代のほか水道料金などの公共料金、国民健康保険料、税金の納入などの支払いにも使用可能です。もちろん地域の店舗でも使えます」(西部さん)
12月4日には、飛騨・高山の事業者と連携して開発した「裏メニュー(新商品・新サービス)」を購入できる情報サイト「さるぼぼコインタウン」をオープン。掲載の裏メニューは、すべてさるぼぼコインでのみ購入できる。
例えば、飛騨高山の山が購入できる「山、売ります!」(1座/300000さるぼぼコイン)や、職人から建築技法が聞ける「大工が『古代の建築技法』のひみつ、教えます!」(1ひみつ/2500さるぼぼコイン)などの、ユニークな裏メニューがある。
現在さるぼぼコインは、高山市民の約20%が使用する地域の新しい決済環境として定着しつつあると、「さるぼぼコイン」を運営する飛騨信用組合も声をそろえる。クローズドな地域でここまでの密度でキャッシュレス環境が浸透している地域は極めて珍しく、全国から注目されている地域通貨だ。

アクアコインのステッカー。2020年11月3日現在、インストール件数 13276件、加盟店 617店舗とこちらも地域への浸透率の高さがうかがえる(画像提供/君津信用組合)
『アクアコイン』は、君津信用組合、木更津市、木更津商工会議所が連携し、2018年10月から取り組んでいる電子地域通貨だ。官民一体となり、「アクアコイン」を通して地域経済の活性化やコミュニティの活性化を図っている。

アクアコインのチャージ機。「アクアコイン」のチャージ方法は、君津信用組合窓口のほか、全国のセブン銀行ATM、プリペイドカード、市内5カ所にあるチャージ機など、さまざまな方法がある(画像提供/君津信用組合)
観光案内所にあるチャージ機でチャージができるため、地域住民だけではなく、観光客でも「アクアコイン」が利用しやすくすることで、地域経済の活性化を目指している。
「アクアコイン」の取り組みとして、ボランティア活動などに対し、市から行政ポイント『らづポイント』を付与し、地域における支え合いなどを促進することにより、地域コミュニティの活性化。そのほか、1日8000歩で1ポイントが付与される歩数連動ヘルスケア機能「らづFit」、連携している3社職員の給料支払いの一部をアクアコインで支給(本人の申し出による)、住民票等の手数料の支払い、公民館施設等の使用料の支払い、アクアコインで電気料金を支払える「アクアコインでんき」サービスの運用などを行っている。
君津信用組合によると、給料の支払いを地域通貨にすることで、「定期的にアクアコインのチャージがされ、利便性が向上するとともに、利用できる地域を限定することで、地元で利用している実感・地域愛が生まれてくる」のだという。
コロナ禍で新たに生まれた地域通貨も。地域コミュニティづくりに大活躍地域通貨が再び広がりを見せているのは、デジタル化によって管理や運用がしやすくなったからだけではない。先程、西部さんが触れた「地域通貨の地域コミュニティづくり」の側面に大きな動きがあるためだ。
それは、「このコロナ禍で地域コミュニティが見直されていることと無関係ではない」と西部さんは言う。
コロナ禍で地元で過ごす時間が増え、人とのつながりを感じることが難しい状況下で、地域通貨が持つ「地域コミュニティづくり」の特徴を活かそうという流れは自然なことなのだろう。
そこで西部さんに、地域コミュニティづくりに重きを置いた興味深い3つの事例を伺った。注目すべきは、3つのうち2つはアナログな地域通貨が選択されている点だ。コミュニティづくりに重きを置いた地域通貨にはデジタルではなくアナログなものが多いところも、人と人の繋がりもオンライン化している今、人のぬくもりを感じられる要素になっているように感じる。

サンセットコインの会員カード。カード型とアプリ型から選べる(画像提供/静岡県西伊豆町役場)
「例えば今年10月には、提携する釣り船で釣った魚を、地域通貨『サンセットコイン』と交換できる『ツッテ西伊豆』という制度が、西伊豆町(静岡県)で始まりました。
受け取った地域通貨は、お店や旅館などでも使えますし、釣った魚は町内外へ流通する商品として活用され、うまく循環する仕組みになっています。
地域通貨で商品が購入できても、そのお店が円で商品を仕入れている以上、地域通貨の循環は滞ります。そのため、地域通貨がお店で買い物をするときだけではなく、店側が商品の仕入れ時にも使えると、地域通貨がまわりやすくなる。漁師不足を解消すると同時に、観光客と地域住民との交流を促しているのです」(西部さん)

「コロナ禍で菌のイメージがすっかり悪くなってしまいましたが、私たちの身体や自然界は菌によって活性化されていくという側面もあります。“菌”という名前には、地域の文化を発酵させていくという願いのほか、私たちにできることをしつつ、新型コロナウイルスに立ち向かっていこう、という思いも込めています」(運営のCafe & Bar「麻心」森下さん)(画像提供/相模湾地域通貨「菌」)
「相模湾地域通貨『菌』は、今年6月4日に鎌倉市(神奈川県)で生まれた紙幣型の地域通貨です。こちらも民間人が中心となって運営され、お店やバー、イベントなどで使用できます。各地で開催される説明会に参加して会員になると、10000菌を受け取れます(入会金3000円)。Webサイト上に会員のみがやりとりできる掲示板があって、困りごとを相談することで地域通貨がもらえるという、おもしろい仕組みです」

掲示板では、「衣、食、住、農、暮らし、海、山……」と多岐にわたる項目に関する困りごとを投稿ができるようになっている(画像引用元/相模湾地域通貨『菌』)
あえてアナログの良さを活かした地域通貨も再注目既存の地域通貨だが、西部さんが「ぜひ知ってほしい」と最後に紹介してくれたのが、2012年に生まれた東京都国分寺市の地域通貨「ぶんじ」。カフェ『クルミドコーヒー』『胡桃堂喫茶店』の店主である影山知明さんなど20人ほどのメンバーが中心となって運営。国分寺エリアのさまざまなお店の他、個人間でもメッセージカード代わりに使える地域通貨で、お店で買い物をしたときにおつりとしてもらったり、イベントやボランティアに参加したりすると受け取れるものだ。

「国分寺地域通貨 ぶんじ」表面(画像提供/影山知明さん)

「国分寺地域通貨 ぶんじ」裏面(画像提供/影山知明さん)
「紙幣の裏にメッセージを書く欄があって、贈り手のことを想像してメッセージを記していくという、コミュニケーションを重視した地域通貨です。
この地域通貨のすごいところは、多くの人を巻き込む力の強さ。例えば、2018年から始まった地域通貨だけでも利用できる「ぶんじ食堂」は、最初の2年半は常設ではなく、まちのいろいろな場所で開催され、その会場も料理や片づけをする人も食材も、まちの人々の持ち寄りで運営されています。影山さんもキッチンに立つし、まちの子どもたちも料理を手伝うんです。年齢の垣根を越えた交流が、地域通貨によって生まれているんですね」(西部さん)
さらに2020年11月からは、家賃の一部を地域通貨「ぶんじ」で支払える“まちの寮”「ぶんじ寮」がオープン。旧社員寮を改修した建物を利用しており、入居者が畑仕事や掃除、ごはんづくりなどを行うことで、家賃は3万円(試算額)に。ぶんじ寮のキッチン/食堂は、「ぶんじ食堂」としても運営する予定だ。
「人とのつながりを感じられる場所で暮らすことを考えたときに、地域通貨があることで、新しく入った人も、地域の一員として溶け込みやすいのではないでしょうか」と西部さんは語る。
このコロナ禍で移住や多拠点生活への興味関心が高まっている。一方で、「うまく地域に溶け込めるだろうか」という心配は誰もが抱くこと。だからこそ、これらのような人のつながりをつくり、促してくれる地域通貨があれば、自然と地元の人と交流が生まれやすくなりそうだ。
●取材協力・さるぼぼコイン
・アクアコイン
・サンセットコイン
・国分寺地域通貨ぶんじ
・相模湾地域通貨「菌」
所在地:大田区田園調布
所在地:港区六本木
所在地:渋谷区恵比寿南
所在地:横浜市中区竹之丸
所在地:横浜市保土ケ谷区宮田町
所在地:板橋区大山東町
所在地:府中市押立町
所在地:目黒区青葉台
所在地:台東区根岸
所在地:新宿区市谷砂土原町
所在地:杉並区阿佐谷南
所在地:江東区高橋
所在地:江戸川区北小岩
所在地:世田谷区下馬
所在地:狛江市岩戸北
所在地:川崎市高津区末長
所在地:横浜市港北区菊名グッドデザイン賞を受賞した建築物は数多くあるが、今回はキッズデザイン賞とW受賞した建築物があると聞いて取材した。「コミュニティの中に子育てが当たり前にある新たな暮らし方」というが、どんな暮らしができる賃貸住宅なのだろうか?
キッズデザイン賞受賞の賃貸住宅「まちのもり本町田」
「まちのもり本町田」は、2020年のキッズデザイン賞を受賞。しかも、少子化対策担当大臣賞だ。「子どもたちを産み育てやすいデザイン」地域・社会部門の優秀賞として評価された。
まずは、賃貸住宅としての概要を紹介しておこう。
築27年の企業の社宅をリノベーションしたもので、総戸数73戸(25平米×61戸、50平米×12戸)と賃貸住宅としては戸数が多い。そのため、「コモン付き賃貸」と「コレクティブハウス」という2タイプの賃貸形態を用意している。といっても、どちらも馴染みの薄い賃貸形態かもしれない。賃貸住宅としての大きな特徴は、ラウンジや多目的ルーム、大型キッチンなどの共用スペースが豊富に設けられていることだ。
「コモン付き賃貸」は、こうした豊富な共用スペースをシェアして利用できる。一般的な賃貸住宅に比べ、コミュニティのきっかけが生まれやすいのが特徴だ。一方、「コレクティブハウス」は、コレクティブハウスの居住者全員が「居住者組合」に加入し、自分たちでこれらの豊富な共用スペースの運用方法などを決めていく。コミュニティの場があるだけでなく、話し合って決めていくことで多様性を受け入れられるしなやかなコミュニティが形成されるのが特徴だ。
ハード面では人目が届き、コミュニティが形成しやすいデザインさて、キッズデザイン賞の受賞理由を見ると、「コミュニティを醸成する生活者同士が子育てに参加する仕組みを、集合住宅のモデルからアプローチした斬新な試み」とある。生活者同士が子育てに参加する仕組みとはどういったものか?
まず、まちのもり本町田にどういった共用スペースがあるのか、企画・事業主であるコプラスの久保有美さんに案内してもらった。

まちのもり本町田の外観。森をイメージした装飾や緑・黄・茶のカラーがポイントとして使われている(撮影:片山貴博)
まず、エントランスを抜けるとそこには「アトリウム」と名付けた、屋根付きの吹抜け空間が広がる。居住者への連絡事項などの掲示板もあるので、自然とそこで立ち止まることになる。アトリウムの奥には、「パティオ」と名付けた、人工芝を敷いた中庭がある(冒頭の写真参照)。アトリウムの奥、パティオの横に居住者全員が利用できる「ラウンジ」がある。ラウンジは全面ガラス張りなので、アトリウムを通る人やパティオで遊ぶ子どもたちの姿が自然と目に入ってくる。

「アトリウム」。屋根付きなので雨天でも利用できる。奥のパティオも含めて、オートロックの内側にあるので、子どもたちと遊ばせていても安心できる(撮影:片山貴博)

「ラウンジ」。居住者が利用できるので、コモン付き賃貸とコレクティブハウスの居住者相互の交流の場にもなる。Wi-Fiも完備しているので、気分転換にここでテレワークをする人もいるという(撮影:片山貴博)

ラウンジに隣接する「コレクティブコモン・キッチン」。ここはコレクティブハウス居住者専用。業務用の厨房機器が備え付けられているので、大人数の料理をつくったり本格的な料理をつくったりできる。プロパンガスを使っているので、災害時には炊き出しができ、地域住民への防災対策にも配慮している(撮影:片山貴博)
実際にラウンジの椅子に座ってみると、かなり視界が広いので、アトリウムを通る人やパティオにいる人たちと目線が合う。コプラスでは、挨拶をすることを奨励しているというので、こうした空間があることで、あるいはそれまでに互いに居住者だと認識するようになるのだろう。
ほかの施設を見学していると、建物の外でなにやら作業をしている人がいた。現在、コレクティブハウスに居住している人たちで、今年の夏の日差しを遮るために、ヘチマやゴーヤを植えて緑のカーテンをつくったが、いまはスナップエンドウとルッコラ、大麦の種をまいているという。緑のカーテンがかかった場所は、1階がコモンバス、2階がコレクティブコモン、3階がコモンルームといずれも共用スペースに当たる。共用スペースを快適にしようという、居住者ならではの工夫だ。

来春の収穫に向けてスナップエンドウなどの種まきをするコレクティブハウスの居住者(撮影:片山貴博)
1階のコモンバス(有料)とは、大型の浴室付きの部屋だ。水まわりが3点ユニットの部屋も多いので大きな浴槽につかりたいという人もいるだろうし、他のコレクティブハウスの事例では、仲良くなった子どもたちだけで風呂に入ることも多く、そうしたニーズに応えてのことだという。子どもたちは浴室まわりを水浸しにしてしまうので、どこかのお宅の浴室を使うというよりもこうした共用の場所があると使い勝手がよい。共用のリビングも隣接しているので、親たちがリビングで浴室の子どもたちを見守ることもできる。
2階のコレクティブコモンはコレクティブハウスの居住者用、3階のコモンルームはコモン付き賃貸の居住者用の共用スペース(無料)だ。それぞれWi-Fi完備で、ミニキッチン付き。
ほかにも、1階と3階にコイン式のランドリーがあり、1階にゲストルームと多目的ルームがある。1階の部屋はいずれも予約して貸し切る(有料)こともできる。

2階のコレクティブコモン。夏に収穫したヘチマを干すためか、テーブルの上に並べられていた(撮影:片山貴博)

1階のオートロックの外側に扉がある「多目的ルーム」(有料)。入居者が応接や教室などに利用できるだけでなく、地域の住民にも貸し出しできるようにしている(撮影:片山貴博)
ソフト面では、共用スペースで共通の体験ができる仕組み次に「生活者同士が子育てに参加する仕組み」の具体例を紹介したいのだが、まちのもり本町田では、募集時期が新型コロナウイルスの感染拡大期と重なったため、特にコレクティブハウスの入居者がまだ少なく、試験的なイベント程度しか実施できていない。というのも、コレクティブハウスでは居住者組合をつくって自主運営するため、募集の際にオリエンテーションを行い、居住者組合の定例会を体験してもらうなど、一連の手続きを経ている。いまはこうしたことが難しい時期だからだ。
そこで、まちのもり本町田の運営を共同で手掛けているNPOコレクティブハウジング社が運営支援する別の物件、コレクティブハウスとして10年を経た「コレクティブハウス聖蹟」を取材することにした。コレクティブハウス全20戸のコレクティブハウス聖蹟には、赤ちゃんから高齢者まで大人23人、子ども11人が居住している。「居住者組合」では月1回の定例会を開き、暮らし方に関するさまざまなことを決めている。もっともコロナ禍のいま、定例会はオンライン会議で行っているという。
さて、案内や説明をしてくれたのは、NPOコレクティブハウジング社の狩野三枝さん。取材当日は、午前中にオンラインによる定例会があり、午後からは居住者による「みどりの活動」(月1回の庭の手入れ)が行われていた。専門家の指導の下、枯れたトチノキを切る人、擁壁を圧迫している芙蓉を切る人、落ち葉を集めたり雑草を取ったりする人など、それぞれに分かれて作業をしていた。

建物東側の庭には、食べられる実がなる木を植えている。右奥のトチノキは枯れたので伐採するが、ユスラウメやイチジクなどの実は、みんなで収穫して食べているという(撮影:片山貴博)

子どもたちは大人たちの周りで遊んでばかりだが、たまにお手伝いをしてくれる(撮影:片山貴博)
そして、この日は夕食のコモンミールをする日でもあった。コモンミールとは、居住者が月それぞれ1回程度の頻度で交代して食事をつくり、つくってもらった食事を食べたい人は事前に予約をするという取り組みだ。食べたい人は大人400円、子ども200円を払う。なかには腕をふるってグルジア料理やハンガリー料理に挑戦する人もいるのだとか。筆者は料理が得意ではないのでちょっと引いてしまったが、毎回牛丼ばかりつくる人もいるので、得意料理が一品あれば大丈夫なのだとか。
本日のコモンミールの担当は矢田智美さん。庭仕事の後なので、特別に鰻(鰻の場合は大人800円、子ども400円)にした。鹿児島に住む矢田さんの知り合いから直接鰻を買って、コストを抑える工夫もしている。16時半ごろから準備を始めていたが、時間が経つにつれ、一人、また一人と料理を手伝う居住者が増えていった。つくる数は多くても手伝ってくれる人がいるので、18時半ごろには人数分が出来上がった。
食べる時間はそれぞれでいいので、後から食べる人もいればすぐに食べる人もいる。コロナ禍で部屋に持ち帰って食べる人が多いというが、感染対策をしながらその場で食べる人も多かった。

コレクティブハウス聖蹟では月に10~14日のコモンミールがある。子どもがコモンミールをつくりたいと言って、食事づくりに参加することもあるのだとか(撮影:片山貴博)

コモンキッチンにつながるコモンスペースでソーシャルディスタンスを保って食べたり、部屋に持ち帰って食べたりする(撮影:片山貴博)
さて、居住者組合の活動は実に多岐にわたる。居住者が快適に暮らしをシェアするためには、共用スペースの管理運営方法を決めたりする必要があるからだ。そのため、全員が何らかの担当を受け持っている。
まず、居住者組合の運営にかかわる役員や運営委員。運営委員は、地域や大家、見学者などへの対応も担当する。ほかにも、日常のコモンミールやみどりの活動、ハウスの清掃活動などのマネジメントを担当する各グループ、コモンスペースの快適な使い方やイベントの企画運営を担当する各グループなどがある。イベントはコロナ禍では開催しづらいが、例年は餅つきや花見、夏の流しソーメン、クリスマスパーティーなどが行われてきた。有志を中心に、地域の住民に参加を呼び掛けるイベントも定期的に開催してきた。
また、ハウスそれぞれで定めたルールに従って、共用部の清掃当番や庭の水やり当番、共用スペースの鍵が閉まっていることを確認する当番などが交代で回ってくる。掲示板で誰が当番かを分かるようにしているうえ、当番の名札を担当のお宅の扉にかけるなどの工夫がなされている。

このお宅が金曜日の鍵当番(撮影:片山貴博)
子育て世帯も単身世帯も、それぞれの形で子どものいる生活を体験できるみどりの活動の後に、居住者にインタビューさせてもらった。まず子育て中の方に話を聞いた。コモンミールをつくった矢田さんも子育て中の母親だ。お子さんが小学校低学年のころ、遊びに来た友達は矢田家が豪邸だと思ったという。お子さんが自宅内だけでなく、建物全体を遊び場として使うので、遊びに来た友達が、コレクティブハウス全体が矢田さんの家だと勘違いしたからだそうだ。面白いエピソードだと思う。
子育て中の父親の三浦健さんは、子どものいる世帯が多いので、子ども向けのイベントがあるのがうれしいという。子どもが、同じ年の子どもばかりではなく、違う年齢の子どもとも遊ぶようになるのが、ここならではだという。
同じく子育て中の父親であるJ・Yさんは、コレクティブハウスなら安心安全に子育てできるという。例えば、下の子が入院したときに、実家に頼れず困っていたが、上の子の送り迎えを助けてもらったりして、親がいなくても何とかなるという安心感があるのだと。
また、災害時にもコミュニティに助けられるという。東日本大震災のときには、帰宅できた大人がいくつも保育園を回って子どもたちを連れて帰ってきたり、昨年の大きな台風の時などには同じ部屋に子どもたちを集めてゲームをしたりして怖い思いをさせずに済んだし、親もパニックにならずに済んだ。
たしかに子育て中の家庭は、子育てを助け合えるので住みやすいかもしれない。しかし、単身者などはどう感じているのだろう?
俵山知子さんは2020年2月に入居した単身者だ。ここで開催されたイベントに参加して、この人たちと一緒に暮らしてみたいと思って決めたという。江藤由貴子さんも2020年7月に入居したばかりの単身者だ。東日本大震災がトラウマとなって、誰かと一緒に住みたいと思うようになり、ここにたどり着いた。
この二人には同じ体験がある。みどりの活動中にワンパクぶりを発揮していた男の子二人が、「お手紙でーす」などと言って、突然部屋を訪れるのだ。部屋の中で遊んでから帰っていくのだが、どうやら子どもたちはこの二人を“大人のお友達”と思っているようなのだ。
J・Yさんは、子どもは大人たちをちゃんと見ているという。親と仲の良い大人には、子どもも近づいていくのだと。また、矢田さんは、多様な世代と一緒に暮らしていると、子どもは子どもなりに、家庭ではここまで、知り合いとはここまで、知らない人とはここまでと、やっていいことをちゃんと見極めるようになるのだという。
チビッ子たちの急襲を受ける二人はどう思っているのだろう?俵山さんは「体験を共有できる暮らし」に満足しているといい、江藤さんは「想定外のギフト」だと思うという。子育て中ではない居住者も、子どもと暮らす生活を体験できることを高く評価しているわけだ。
もちろん、人とつながりたいと思う人がコレクティブハウスという形態を選ぶので、こうした生活に向かないという人もいるだろう。しかし、つながりを持ちたい人には、交流する空間としての場があり、交流する機会が数多くあり、多様な世帯と出会えるので、好ましいと思う交流を深めることができる。
こういうことが、「居住者同士が子育てに参加する仕組み」であり、「コミュニティの中に子育てが当たり前にある新たな暮らし方」であるのだろう。
所在地:新宿区市谷加賀町
所在地:港区南青山
所在地:杉並区浜田山
所在地:中野区中野