所在地:文京区湯島15万5,000円 / 43.28平米
都営大江戸線「本郷三丁目」駅 徒歩5分
湯島天神の隣にそびえたつ、コンクリートのツインタワー。今回はその最上階である8階の部屋をご紹介。三角屋根の高い天井と大きな窓のおかげで、パーンと開放感のある空間。なんだか、城の一番上にいるような優越感に浸れそうです。
間取りについては、約15畳の洋室をはじめ、キッチンや水まわり ... 続き>>>.
圧倒的に不動産情報が多いですが。。。。
所在地:文京区湯島
所在地:文京区湯島
所在地:渋谷区広尾
所在地:世田谷区桜
所在地:文京区根津
所在地:文京区弥生
所在地:渋谷区神宮前3万人の来場者が、全国から集う「RENEW(リニュー)」。2015年から福井県で毎年秋に開催されてきた、年に一度の工房一斉開放イベントです。
イベントの舞台である「丹南エリア」とは、鯖江市・越前市・越前町のこと。全国屈指のものづくりが盛んなエリアとして知られています。RENEWでは、それぞれの工房・企業を一斉に開放。来場者は職人と直接話したりワークショップに参加したりしながら、ものづくりを体感できます。
RENEWのイメージ・赤丸が目をひくポスター(写真撮影/Tsutomu Ogino(TOMART:PhotoWorks)
2020年、新型コロナウイルスによって多くのイベントが中止に追い込まれるなか、RENEWは7月に現地開催を決定。
「くたばってたまるか」
このステートメントを掲げ、現地では感染対策に留意し、オンラインで楽しめるコンテンツも用意。出展者76社(現地64社・オンライン12社)が参加し、2020年10月9日(金)から11日(日)の3日間、予定どおり開催を実現したのでした。

総合案内所である「うるしの里会館」周辺には、多くの人が集まる(写真撮影/Tsutomu Ogino(TOMART:PhotoWorks)
直前には台風の影響が心配されながらも、来場者は前年を上回る延べ約3万2000人にのぼり、オンラインからも延べ約1万4000人が参加。1出展者あたりの売上も前年より大幅に上昇し、ものづくりのまちは、いつにも増してエネルギーに溢れていました。
今年のRENEWが掲げたコンセプトは、「共につくろう、変わり続けるものづくりのまちを」。2020年のRENEWが見せてくれた、変わり続けるまちの新たな「景色」をお届けします。
※ 開催までの道のりはこちら
受け継がれてきたものづくりを「体感」するRENEWの会場である福井県の丹南エリアには、多くの産業が集中しています。伝統的につくられてきた漆器、和紙、刃物、箪笥(たんす)、焼物、そして地場産業である眼鏡、繊維など。この土地にものづくりの技術が蓄積され、継承されてきました。

車で約45分ほどの圏内に点在する工房・企業を思い思いにめぐりながら、それぞれの出展者が提供するワークショップへの参加も可能(画像提供/RENEW実行委員会)
総合案内所がある「越前漆器&眼鏡エリア」は、徒歩圏内に最も出展者が集中。工房に併設された直営ショップが続々と増加している熱いエリアです。5年間RENEWを続けてきたことで、エリア外からの移住者が増加。ものづくりを継承しようと移住してきた若き職人たちが、率先して説明してくれるため、「工房」や「職人」の存在がグッと身近になります。

77歳の伝統工芸士に学んだ若き職人たちが、蒔絵(まきえ)を施したアクセサリーを販売する/駒本蒔絵工房 / KOMAYA(写真撮影/Tsutomu Ogino(TOMART:PhotoWorks)
駒本蒔絵工房では、漆塗りのパーツに蒔絵(まきえ)を描いて、オリジナルアクセサリーをつくるワークショップへ。

参加者が漆で蒔絵を描いた後は、仕上げに職人が金箔や銀箔を施す(写真撮影/Tsutomu Ogino(TOMART:PhotoWorks)
職人さんによる熟練の技を間近で見られるのは、RENEWならではの醍醐味です。蒔絵職人さんと和やかにお話しできたおかげで、「また、ここに来たいな」と思うひとときを過ごしました。

越前和紙が受け継がれてきたエリアで、伝統的な紙すきからアート作品の制作まで「紙」を軸に幅広い制作を手がける/長田製紙所(写真撮影/Tsutomu Ogino(TOMART:PhotoWorks)
「ほら、光の当たり具合によって紙の見え方が違うでしょう」
普段見ない角度から眺めてみたり、おそるおそる触らせてもらったり。越前和紙を製造する長田製紙所で、紙すきの工場に差し込む淡い光と職人さんの言葉を頼りに、ふすまサイズの紙と向き合います。

「手のおもむくままに」下書きなしでふすまの柄が描かれていく/長田製紙所(写真撮影/Tsutomu Ogino(TOMART:PhotoWorks)
ふすまが一番美しく映えるように光がおさえられた工房で、身近な存在だったはずの「紙」が、はっと驚くほどに美しい姿を見せてくれます。紙すきの営みが、1500年以上続いてきたことを実感する瞬間です。

打刃物のハンドル「柄(え)」を製作する山謙木工所が、2020年に直売するショップをオープン/柄と繪(etoe)(写真撮影/Tsutomu Ogino(TOMART:PhotoWorks)
越前打刃物エリアでは、国内外から高い評価を受けている刃物を集めたファクトリーショップ「柄と繪(etoe)」へ。1カ月前にオープンしたばかりの建物に、作り手によって特色の異なる刃物がずらりと並びます。
「この刃物はご高齢の職人さんがつくっていて、製造できる数に限界があります。だからもう値段がつけられないんです。でも、その方しか持っていない素晴らしい技術でつくられているので、ここに置かせていただいています」
ものづくりの新たな発信基地に置かれたその刃物に、受け継がれていく歴史を感じずにはいられませんでした。
「これまでどおり」を支えた、適切な対策の積み重ね
総合案内所の横には、「ローカルフード」として鯖江や福井にちなんだ食事を提供するキッチンカーが並んだ(写真撮影/Tsutomu Ogino(TOMART:PhotoWorks)
現地開催を実現するために、運営方法の変容が必要になった今年のRENEW。しかし昨年までに何度も訪れたことがある来場者は「いい意味で、例年と変わっていなくてよかった」と思ったんだとか。これまでと変わらずに職人さんと話して工房を見学でき、RENEWの空気を満喫できたといいます。
「現地開催することがゴールではなく、一人の感染者も出さないことが最低条件」
実行委員会はこの軸をぶらすことなく、コロナ禍で「これまでどおり」を実現する仕組みづくりに奔走しました。

受付で配布されるリストバンドで、参加者の行動経路を把握できる仕組みに(写真撮影/Tsutomu Ogino(TOMART:PhotoWorks)
昨年までは受付がなく、来場者は気ままに好きな箇所をめぐっていましたが、今年は受付を必須に。毎日検温した後、工房見学やワークショップで必須になるリストバンドが配布されます。それぞれの工房・企業でリストバンドの番号を記録するので、万が一の場合でも感染者の追跡が可能です。

参加者は地図が掲載されたパンフレットを持ち歩き、思い思いに気になる場所をめぐる(写真撮影/Tsutomu Ogino(TOMART:PhotoWorks)
新型コロナウイルスが現れて以来、対策をしていてもどこか後ろめたさがあった「移動」。その後ろめたさには、「移動した先で受け入れてもらえるのだろうか」という不安もありました。
しかしRENEWでは、適切な対策を用意した上で「ぜひ来てください」と受け入れる姿勢を発信してくれたことで、去年までと同じように安心して楽しめたように思います。県外からの来場者も多く、久しぶりの再会を喜ぶ場面もありました。
来場者を歓迎してくれたのは、工房を案内してくれた職人さんも同じ。「RENEWのおかげで、遠くから工房に来てくれる人がいるんだ、と知ることができました。だから今年も変わらず、たくさんの人が来てくれてうれしいです」と話してくれました。

3密を避け、RENEWのシンボル・赤丸マークの上に並ぶ来場者(写真撮影/Tsutomu Ogino(TOMART:PhotoWorks)
「開催できるか、できないか。いつもどおりに開催できない環境なら、何ならできて、何ならできないのか。工夫できることはないのか」
現地開催の決断に向けて、RENEW実行委員長の谷口康彦さんはこう考えたと言います。
この言葉のとおり、適切な対策を重ねて地元や行政の理解を得れば、多くの人が安心して楽しめるイベントを実現できるかもしれない。2020年のRENEWは、コロナ禍でのイベント開催への希望も見せてくれました。
ものづくりのまちを「共につくる」ための、新たな挑戦2020年、RENEWは3年間掲げてきたコンセプト「来たれ若人、ものづくりのまちへ」を初めて変更。
「共につくろう、変わり続けるものづくりのまちを」
掲げたコンセプトを体現するために、新たな企画を複数立ち上げていました。

越前市にある和紙問屋「杉原商店」の和紙ソムリエによるセミナー。「RENEW TV」としてオンラインコンテンツを数多く配信した(写真撮影/Tsutomu Ogino(TOMART:PhotoWorks)
現地開催と並行して、今年はオンラインでもRENEWを開催。ゲストによるトークから現場レポート、動画による工房見学まで、さまざまなコンテンツを配信しました。
今年初の取り組みのなかでもRENEWらしさが際立ったのが、産地の新たな可能性を探究する「RENEW LABORATORY」。各地で活躍する新進気鋭のデザイナーと、ものづくりを受け継ぐ5社がタッグを組み、120日間かけてオンラインで商品開発に取り組むプロジェクトです。普段使いできる漆のお弁当箱から、眼鏡づくりを解説する絵本まで、このプロジェクトによって完成した5つの商品が、初めてお披露目されました。
タッグを組んだデザイナーと出展者は、全員RENEWに関わったことがある作り手たち。RENEWが積み重ねてきた信頼関係があったからこそ、コロナ禍でもリモートで商品を完成させられたのでしょう。

デザイナーと出展者が1組ずつ手を携え、5チームが同時に商品を開発。デザイナー自らブースに立ち、ものづくりに込めた思い、職人へのリスペクトを熱く語るため、来場者も興味津々(写真撮影/Tsutomu Ogino(TOMART:PhotoWorks)
足を止めてデザイナーとじっくり話し込む来場者が多く、「デザイナーの仕事ぶりや発想に触れられて、おもしろかった」と話す来場者も。時代に合わせて手段を変えながら、産地として真摯にものづくりと向き合い、柔軟に挑戦していく姿勢を感じました。

作り手、伝え手、使い手をつなぐために開催されている「ててて往来市 TeTeTe All Right Market」は、今年初めてRENEWに登場(写真撮影/Tsutomu Ogino(TOMART:PhotoWorks)
RENEWの会場にて同日開催されたのは、マーケットイベント「ててて往来市 TeTeTe All Right Market」です。福井県内だけでなく、近隣県含めて19組の作り手が出店。RENEWと開催時間をずらすことで作り手どうしの交流が実現し、ものづくりの可能性を拡げる新たなつながりが生まれていました。
誰もが自分に言い聞かせた「くたばってたまるか」「コロナ禍でイベントを開催するには、誰かがリスクを引き受ける必要があります。1番目が出てこなければ、2番目、3番目が続かない。民間有志で運営しているRENEWが、1番目を引き受けることが望ましい、と考えました」
開催に至った経緯をこのように話してくれた、RENEW実行委員長の谷口さん。当日は予想以上に来場者が集い、満車になった駐車場の対応に追われながらも、「今年RENEWが担うべき役割は果たせたんじゃないでしょうか」と穏やかな表情で語ります。
2015年からの5年間で、RENEWに関わるお金も人も一気に増えました。名前が知られるようになったRENEWで万が一のことがあれば、他のイベントの開催判断にも大きくマイナスの影響が出てしまうでしょう。それでも現地開催を決断した背景には、「役割」を担う覚悟があったのです。
「RENEWに求められる役割は、かなり大きくなっています。5年前はいわば村おこしのサイズでしたが、今やすでに『自分たちの』という大きさではありません。時代のなかで必要とされている役割を常に考えながら動いています」

RENEW開催直前には、RENEW実行委員会が国土交通省の「地域づくり表彰」にて、国土交通大臣賞を受賞(写真撮影/Tsutomu Ogino(TOMART:PhotoWorks)
初開催から5年の歳月を経て、RENEWは各地の工芸祭がベンチマークする最先端の事例となりました。役割が大きくなっている──その強い実感の先に実現されたのが、今年のRENEWだったのです。
「うーん、正直……『わー、しんどいなぁ』と思うときもありますよ、1ミリくらいね。でも、少し無理をしてでも、そのしんどさを『糧』と言わなきゃいかんでしょう。そういう何もかもを凝縮したのが、今年掲げた『くたばってたまるか』でした。
この言葉もね、実行委員会の誰が言い始めたのか、もう覚えていないんですよ。でも、誰が言っても同じ気持ちでした。外側に発信するだけでなく、自分たちに言い聞かせていたんですよ。くたばってたまるか、と」
その決断を行政が支え、賛同した工房・企業が今年もRENEWへの出展を決め、思いに共鳴した参加者がRENEWに参加する。
「前を向く」「自分がやる」と決めた一人ひとりの思いが共鳴しあい、覚悟を後押しする土壌が、今年のRENEWを支える柱になっていました。

今年から結成された、RENEWと産地のサポーターチーム「あかまる隊」。ワークショップの企画や当日運営、取材などを担当し、県内外から約30名が集まった(写真撮影/Tsutomu Ogino(TOMART:PhotoWorks)
時代に応え、時代を切り拓く「ものづくりのまち」谷口さんは最後に、「最近よく聞かれること」について話してくれました。
「これからRENEWはどうするんですか、と何度も聞かれます。現段階で言えるのは、答えは今出すものではないということ。一年後の社会が抱える課題、RENEWに求められる役割は当然読めませんから、その答えを今の時点で出すものではない。変化に対応しましょう、それが答えですね。
そもそも私たちは、RENEWが時代の先頭で戦っている、なんて意識を持っていないんですよ。時代に応えようとしている、というのかな。うん、みなさんと一緒に時代を『つくっていく』ような感じかもしれない。それぞれの役割を担うみなさんと一緒にね」
コロナ禍であろうと3万2000人の来場者を受け入れられる産地のあり方、伝統産業が試みたことのない新しいものづくりの方法があること、そして開催を決断したRENEWにこれだけ多くの人が集まって、一緒にこの街の変化を見届けられたこと。今年のRENEWは、新しい景色をたくさん見せてくれました。
新型コロナウイルスの影響でさまざまな変更を余儀なくされた今年だけでなく、これまでも、そして来年も。
常にその瞬間の社会を捉え、変化に対応し自分たちで時代をつくっていく。未来への志を共有し、自らを更新し続ける産地の意志を感じました。
共につくろう、変わり続けるものづくりのまちを。共につくろう、変わり続ける「未来」を。

(画像提供/RENEW実行委員会)
●撮影
所在地:目黒区上目黒
所在地:渋谷区上原
所在地:港区赤坂
所在地:江東区塩浜旭化成建材の快適空間研究所は、住まいの温熱環境(あたたかさ、涼しさ)と居住者の「アンチエイジング」意識・満足度の関係性に着目し、アンケート調査を実施した。「住まいの温熱環境」と「アンチエイジング」には関係があるという。どういったことなのだろう?【今週の住活トピック】
「住まいの温熱環境とアンチエイジング意識・満足度」調査結果について/旭化成建材30代から60代の女性は「肌の若々しさ」が最も気になる
「アンチエイジング」と聞くと、筆者などはドキッとしてしまうほど気になるワードだ。
快適空間研究所では、“肉体的・精神的な老化を少しでも抑え、心も身体も健康で、若さ・若々しさを保つこととそのための取り組み”を「アンチエイジング」と定義している。
まず、調査で「どのようなアンチエイジングに興味があるか」を聞いたところ、男女で違いが見られた。男女別のTOP3は次のようになる。
○女性が気になるアンチエイジングTOP3
1:「肌の若々しさ」56.9%
2:「体力の維持」52.8%
3:「気持ちの若々しさ」44.3%
○男性が気になるアンチエイジングTOP3
1:「体力の維持」48.1%
2:「足腰の力の維持」39.6%
3:「脳の力(考える力)の維持」28.7%
男性は全体的に女性よりアンチエイジングへの興味が低く、女性の過半数が気になる「肌の若々しさ」は男性では23.8%しか興味がなかった。

どのようなアンチエイジングに興味があるか(男女別)(出典/旭化成建材「住まいの温熱環境とアンチエイジング意識・満足度」調査結果についてより転載)
「肌の若々しさ」は、さらに女性でも年代によって興味の度合いが異なり、30代~60代で高いものの70代では過半数を割る46.8%に下がり、「体力の維持」や「足腰の力の維持」が逆転して上位に上がる。
住まいの温熱環境が「肌の状態」の満足度と関係ありさて、この調査で旭化成建材らしいのが、住まいの温熱性能別に対象者を分類していることだ。分類方法は、実際の住宅全体の断熱性能と高い相関があるといわれる「窓ガラスの種類」により、シングルガラス:温熱性能「低」、ペアガラス:温熱性能「中」、Low-Eペアガラスまたはトリプルガラス:温熱性能「高」となっている。
この分類で、女性に「冬の肌の状況(乾燥・みずみずしさ)に満足しているか」を聞くと、温熱性能が高い住まいに暮らす女性ほど、「肌の状況」に満足している割合が高いという結果が出た。

冬の「肌の状況(乾燥・みずみずしさ)」に対する満足度(住まいの温熱性能別)(出典/旭化成建材「住まいの温熱環境とアンチエイジング意識・満足度」調査結果についてより転載)
また、室内の温度・湿度の「満足度」と冬の「肌の状況(乾燥・みずみずしさ)」満足度の関係を調べると、冬の「室内の温度」の満足度と「肌の状態」の満足度の相関係数は0.623、冬の「室内の湿度」の満足度と「肌の状態」の満足度の相関係数は0.705となり、いずれも相関関係にあることが分かったという。相関係数が高い、湿度のほうが肌の状態との関係性がさらに深いようだ。
温熱環境を高めるための、住まい手の行動がアンチエイジングには重要この調査を担当した、快適空間研究所の主席研究員濱田香織さんに、調査結果について詳しく聞いてみた。
まず、この調査はアンケートによるものなので、実際に肌の状態を測定しているのではなく、回答者の主観として満足しているかどうかを分析している。ただし、これまでの研究論文などで、室内の温度や湿度と肌の水分量には関係性が高いという結果が出ているという。
また、温熱環境を正確に言うと、暑い寒いという体感に影響を与える6つの要素からなる環境のこと。温度、湿度、気流速、室内表面温度の4つの建築側要素と、活動状態(代謝量)と服装(着衣量)の2つの人体側要素からなっているという。アンケートでは、回答者にわかりやすいように「温熱環境(あたたかさ、涼しさ)」と表記して調査している。
こうしたことを踏まえて、再度調査結果を確認しよう。たしかに、住宅の温熱性能が高いほど肌の状態の満足度も高いという関係性が見られる。が、温熱性能の高い家に住めば肌の状態がよくなる、といった単純なものではない。
肌の状態は、特に室内の温度と湿度との相関性が高いが、温熱性能の高い住宅では外気温の影響を受けづらいので、適切な室温を保ちやすい。また、温熱性能が低い住宅では、加湿器などで室内の湿度を上げると窓や壁に触れた空気が冷えやすいので、そこで結露を起こしてしまう。つまり、性能が高い住まいであれば、効率よく適度な温度や湿度を維持しやすいということが、肌の満足度に関係してくるのだろう。
住まい手の生活上の工夫も必要だ。「エアコンを長時間使って空気が乾燥したときに加湿器を使ったり、室内に植物を置いたりなど、室内の温度や湿度に気を配ることも、肌にとっては大切なことでしょう。室内に温湿度計をおいてこまめに室内環境をチェックするのもおすすめです。」と濱田さんは言う。
さて、これからは乾燥した日々が続く季節になる。女性には最も気になる「お肌のうるおい」。筆者自身もこの調査結果を見て、アンチエイジング効果があると言われるクリームを塗るだけでなく、室内の温度や湿度にも気を配ろうと思った次第だ。
所在地:杉並区成田西
所在地:大田区田園調布
所在地:目黒区東山
所在地:神奈川県横浜市中区麦田町駅から遠く不便、街の印象が薄い、などのイメージを持たれがちだった竹芝。浜松町駅周辺の開発とあわせて、「WATERS takeshiba(ウォーターズ竹芝)」として生まれ変わっています。この開発を通して浜松町~竹芝エリアはどのように変わっていくのか。また“住む場所””暮らす場所“としてはどうなのか?
ウォーターズ竹芝の開発を手がけたJR東日本の大野一聡さんに、まちづくりの狙いとこれからの水辺活用についてお話を聞きました。
ウォーターズ竹芝がオープンし、素敵な場所になったと聞いて現地に向かった筆者。訪れたのが土曜日のお昼ごろだったこともあり、水辺に抜けるウォーターズ竹芝のテラスには小さな子どもを連れた家族の憩いの姿が。なんとも絵になる風景です。
「ウォーターズ竹芝では、水辺のワークライフスタイルと文化・芸術を提案できるまちづくりを目指しています。商業施設やホテル、劇場、オフィスのほかに船着場や干潟があるので、近隣にお住まいの方がよくお子さまを連れてお越しくださっていますね。コロナ収束後には、東京観光にいらっしゃる国内外のお客さまにもぜひ訪れていただきたいです」(大野さん、以下同)

ウォーターズ竹芝のテラス。空に抜ける芝生と水辺が開放的で気持ちがいい(画像提供/JR東日本)

船着場からの船に乗れば、美しい東京の水辺観光を楽しめる

ウォーターズ竹芝の空撮写真。水辺と緑の豊かなロケーションであることがよく分かる(画像提供/JR東日本)
ひと足、施設の中に入ると、外の開放感とはまた異なるラグジュアリーな雰囲気も感じられます。入っているお店も、都会的な海を目の前に、高級感漂うスタイリッシュな空間で音楽を楽しみながら飲食できる「BANK30」、レンタルスペースやキッチンにカラオケ設備を備える「SHAKOBA」など、大人が夜を楽しむためのコンテンツがそろっています。

施設のひとつ「アトレ竹芝」タワー棟のレストスペース。ゴージャスでラグジュアリーな大人の雰囲気(画像/アトレ竹芝)

浜離宮恩賜庭園や東京スカイツリーなど東京の眺望が楽しめる「メズム東京」のロビー(画像提供/メズム東京)

レストラン「シェフズ・シアター」では、東京に集まる食材をつかった本格的なフレンチを「ビストロノミー」スタイルで楽しめます。オープンキッチンでライブ感も満点(画像提供/メズム東京)

40平米からある客室には、全室デジタルピアノや猿田彦珈琲のドリップコーヒーなど、五感を魅了する体験が用意されています。浜離宮恩賜庭園に面している客室は全室バルコニー付き(画像提供/メズム東京)
![劇団四季の上演が行われる「JR東日本四季劇場[秋]」撮影/下坂敦俊)](https://suumo.jp/journal/wp/wp-content/uploads/2020/10/17596_sub08.jpg)
劇団四季の上演が行われる「JR東日本四季劇場[秋]」(撮影/下坂敦俊)

アトレ竹芝の中にある劇場型コミュニティスペース「SHAKOBA(シャコウバ)」。レンタルスペース、キッチン、カラオケ設備などを備える(画像提供/JR東日本)
気軽に友人や家族と観劇やショッピングを楽しみながら、また記念日など、シーンに合わせて活用できそうです。
「『感性に遊び場を。』をコンセプトに、成熟した大人の方に楽しんでいただけるよう、多彩なお店がそろっています。新しい体験や学び、出会いを求める多くの方に満足してもらえる豊かな場所になればと思っています」
こんなに駅から近かった!? 水辺のアクセスに驚きこのウォーターズ竹芝、施設も本当に素敵なのですが、今回訪れて思ったのは「海までこんなに近かったっけ?」ということです。JR浜松町駅より徒歩6分の山手線内で一番東京の水辺に近い場所ですが、歩いていくとより近くに感じられることでしょう。さらに陸のアクセスだけでなく、海からもアクセスできるのがすごいところです。

海側をパノラマ画像で撮影。右奥が竹芝ふ頭、手前の高架はゆりかもめ。左奥の水色に反射する窓の建物がウォーターズ竹芝の施設のひとつ「メズム東京」が入るタワー棟(撮影/唐松奈津子)
「ウォーターズ竹芝前の竹芝地区船着場からは浅草・両国・お台場・豊洲・葛西などとを結ぶ定期航路船を運行しています。加えて7月からは羽田空港と竹芝を結ぶ羽田空港アクセス船の実証実験を始めています。11月からはナイトクルーズ船の運航も開始予定です。東京の水辺観光と日常の交通を支える場所になればと考えています」
浅草からの船! 筆者も乗りもの好きの息子とパパと一緒に、以前、日の出桟橋までホタルナに乗ったことがあります。「銀河鉄道999」の松本零士氏のデザイン、本当に格好いいんですよね。それがウォーターズ竹芝の船着場にも停泊している姿に興奮しました!

ウォーターズ竹芝の船着場に停泊するホタルナを発見!(撮影/唐松奈津子)
全国的に広がる「ミズベリング」の活動そして今、観光や水運だけではなく、空間設計においても「水辺」が見直されつつあります。今回のウォーターズ竹芝のように近年、水辺を活用した心地のいい場所が増えてきたように感じるのは筆者だけではないでしょう。これには国土交通省が推進する「ミズベリング」の取り組みが全国の水辺活用を後押ししているようです。
「河川利用の規制緩和と合わせて、昔からのにぎわいを失ってしまった日本の水辺の新しい活用の可能性を創造していくプロジェクトが『ミズベリング』です。各地で『ミズベリング◯◯(地名)』として、水辺活性化に向けた活動が始まっています。
ミズベリング竹芝は、このミズベリングの枠組みを活かしてJR東日本が2017年3月に立ち上げました。竹芝エリアの水辺活性化に向けて、水辺総研、東京海洋大学、ココペリプラスなど、さまざまな団体と連携をして社会実験を進めています。
例えば干潟では、ハゼなど東京都の絶滅危惧種をはじめとする水生物調査やフィールドワーク、豊かな東京湾再生に向けた活動を行っているんですよ」

シアター棟の奥の階段を降りたところには干潟が。江戸前の海であった東京湾の再生に向けた環境づくりが行われている(画像提供/JR東日本)

干潟のイメージ。クロダイ、スズキ、ハゼ、エビ、カニなどのほか、東京都の絶滅危惧種に指定されているミミズハゼなど多様な生物が存在する(画像提供/JR東日本)
浜松町~竹芝エリア全体が変わりつつある!オフィスや商業施設だけではなく、芸術・文化、交通、そして教育まで! 大野さんによると、そもそもこの浜松町~竹芝エリアは東京を代表する歴史とさまざまな可能性を持つエリアだったと言います。
「もともと増上寺や浜離宮など、江戸時代から続く歴史資産を有するエリアです。さらに1964年の東京オリンピックへ向けてモノレールや東京タワー、世界貿易センタービルなど、東京を代表する多くの施設が整備され、浜松町はまさに日本最先端の場所だったと言っても過言ではありません」

ウォーターズ竹芝のビジュアル・マップ。このエリアの見どころの多さがよく分かる(画像提供/JR東日本)
そして今また、このエリアは大きな開発計画の最中にあります。今回、浜松町駅を降りて、まず目の当たりにしたのも、駅周辺の至るところで大規模な工事が行われている様子でした。

工事が行われている浜松町駅の南側、浜松町二丁目付近の様子(撮影/唐松奈津子)
筆者が訪れたのは9月上旬。ペデストリアンデッキはまだ完成しておらず、工事中の様子を仰ぎ見ながら歩きました。9月14日に開業した東京ポートシティ竹芝などの新しい建物はもちろん、きれいに舗装された歩道に「あれ、浜松町とか竹芝ってこんなにきれいな街だったっけ?」と印象を新たにしました。

浜松町駅から竹芝ふ頭へは建設中のペデストリアンデッキが伸びる。駅の向こうには東京タワーが!(撮影/唐松奈津子)

東京ポートシティ竹芝脇の歩道を歩くと、船の舵輪をモチーフにした時計に出会う(撮影/唐松奈津子)
“住む場所”“暮らす場所”としての可能性は?それでは“住む場所”“暮らす場所”としてのポテンシャルはどうでしょうか。“働く場所”としてのオフィス街、また海辺は“遊びに行く場所”というイメージが強く、マンションなどの住宅はあまり見たことがないように思います。けれども、考えてみれば通勤が必要なオフィスワーカーにとってアクセス利便性はもちろん、ウォーターズ竹芝の風景は、筆者のように子どもがいるファミリーにとても魅力的に映ります。
「近隣で開業した東京ポートシティ竹芝以外にも、現在の周辺エリアでの開発が進んでおります。浜松町、竹芝、近隣の芝浦地区も含めて、今後10年で住む場所、暮らす場所としての機能も充実していくでしょう。私たちも水辺や文化、芸術を核にしたまちづくりを進め、訪れる人にも住む人にも居心地のいい場所となることを目指しています」
たしかに隣駅の田町駅周辺もここ数年で開発が進み、商業施設やマンションがかなり増えてきました。住むにも便利で、気持ちのいい水辺がある場所として、大きな可能性を秘めていますね。

アトレの2階から芝浦方面を望む。これからも開発が進み、水辺エリア全体がより住みやすく暮らしやすいエリアとなるだろう(撮影/唐松奈津子)
ウォーターズ竹芝では、10月24日に劇団四季の『オペラ座の怪人』の公演が始まり、まちびらきが行われました。「これからも浜松町~竹芝エリアにはしばらく目が離せないな」――そんな予感と期待を膨らませながら、筆者も母として「今度は生きもの・乗りものが大好きな6歳の息子を連れて来よう」と思いながら竹芝を後にしました。
●取材協力
所在地:渋谷区神宮前
所在地:世田谷区経堂
所在地:渋谷区代々木
所在地:渋谷区元代々木町
所在地:目黒区上目黒
所在地:世田谷区松原
所在地:静岡県熱海市伊豆山
所在地:世田谷区代田
所在地:東久留米市小山
所在地:渋谷区神宮前
所在地:神奈川県横浜市栄区飯島町
所在地:江戸川区西瑞江
所在地:横浜市西区伊勢町
所在地:武蔵野市吉祥寺北町
所在地:大田区山王
所在地:千代田区神田小川町
所在地:杉並区上荻
所在地:目黒区鷹番
所在地:世田谷区野沢
所在地:目黒区中町
所在地:台東区蔵前人口減少や高齢化によって、地方の公共交通機関が危機に瀕しているのは周知の事実。当然、さまざまな施策で「住民の足の確保」に取り組んでいるのですが、そんななかで今、富山県朝日町の実証実験に注目が集まっています。一体どんな仕組みなのでしょう? 同町の寺崎壮さんに話を伺いました。
よくある地方の課題に、新しい乗合サービスで挑む
新潟県との境にある富山県朝日町。東京23区の面積の約1/3ほどに、ヒスイの取れる海岸から北アルプスの標高3000m級の山々まである町です。現在約1万1200人が美しい自然に囲まれて暮らしていますが、ご多分に漏れず、人口の減少や高齢化によって公共交通の維持管理が難しい局面に立たされています。そこで同町は2020年8月3日から「ノッカルあさひまち」という新しい公共交通の実証実験を開始しました。

市街地から離れた里山の風景(写真提供/富山県朝日町)

街の中の様子(写真提供/富山県朝日町)
その仕組みは、分かりやすくいえばUberやグラブなどに代表されるようなライドシェアに似ています。ライドシェアとは車を持っている人が移動する際に、他の人を乗せてあげるというサービスのこと。日本では規制があり、あまり普及していませんが、既に欧米や中国、東南アジアなど海外では多くの人々に利用されています。
「ノッカルあさひまち」がUberやグラブと大きく異なるのは、民間企業ではなく同町が運営主体だということ。つまりちょっとした自治体が運営する乗合サービス、というわけです。サービスの開発にあたっての実証実験は、朝日町・スズキ株式会社・株式会社博報堂が参画する協議会のもと運営されています。「町では公共交通についてさまざまな角度で検討していたのですが、その折に地方の移動問題の解決に取り組んでいる博報堂さんとスズキさんに、今回ご協力を頂く機会を得たのです」(寺崎さん)。博報堂とスズキは日本各地の地方部で地域活性化に貢献したいという思いを共有しており、このサービスを今後ほかの地域でも活用したいと考えているとのことです。特に、地方部においては自動車の販売台数全体に占める軽自動車の割合が高く、軽自動車やコンパクトカーを主に販売しているスズキ株式会社にとって地方部が元気であることは非常に重要です。

「ノッカルあさひまち」の仕組み(画像提供/富山県朝日町)
「ノッカルあさひまち」が行われる以前から、そして現在も町のコミュニティバスが1日40便運行されています。それでも“住民の足の確保”という観点からすれば、多くの課題を抱えていました。例えば地区によっては次のバスまで4~5時間空いてしまいます。
だからといってバスの本数を増やそうとなると、車両もドライバーも必要になりますが、30人乗りなら1台につき購入費が約2000万円、8人程度が乗れるワンボックスタイプでも約500万円が必要になります。またドライバーなどの人件費や燃料費、整備費用等維持費は1台あたり年間でざっと1000万円という計算です。
ほかにも、高齢者にとっては自宅や目的地からのバス停までの距離があり、歩くのが大変というケースもあります。また山間部の道路は通常のバスはもちろん、ワンボックスタイプ(実際に導入済み)でも通行が難しい場所もあり、ルート設定にも制限があります。

集落のなかにはバスが運行できないところも(画像提供/富山県朝日町)

朝日町のコミュニティバス(写真提供/富山県朝日町)

ワンボックスタイプのバス(写真提供/富山県朝日町)
こうした状況もあって同町では、近隣同士で「よかったら乗っていく?」「ありがとう、じゃあお願い」と乗り合いをすること自体、以前から珍しくはなかったそう。そこで「町が仕組みをつくることで『乗せてもいい』『乗りたい』を顕在化させ、公共交通の補足として活用できないかと考えたのです」
安心して『乗せてもいい』『乗りたい』といえる仕組みにノッカルあさひまちは、海外にあるような既存のライドシェアサービスとは運用面で異なる点がたくさんあります。
まずは町民が町民のために運行するということ。ドライバーを町民に担ってもらい、町民の移動の手助けをしてもらう、助け合いの精神が前提になっています。

一般ドライバー運行時の車両イメージ(写真提供/富山県朝日町)
しかし、町民なら誰でもドライバーになれるのかと言えば、そうではありません。「海外のライドシェアサービスと違い、無料の実証実験を経た後は、われわれは『自家用有償旅客運送』という道路輸送法に基づいた制度を活用して、有料で運行することを目指しています」
自家用有償旅客運送とは「既存のバス・タクシー事業者による輸送サービスの提供が困難な場合」に自治体やNPO法人などが、自家用車を用いて提供する運送サービスのこと。そのためドライバーも、タクシードライバーのように第二種免許を持っている人か、国の定めた講習を受講した人に限られます。これなら運転に不安のあるような人がドライバーとなることがなくなります(ただし「有償」の文字の通り、サービスが有料の場合。無料の実証実験等は除く)。
さらに海外のライドシェアでは、ドライバーと利用者とのトラブル(暴力や強盗など)という話もよく耳にしますが、例えば協議会が問題のある人物だと判断したら、採用時にふるいにかけて落とすこともできます。万が一トラブルが起こったとしたら、ドライバーと利用者とで直接解決するのではなく、朝日町が主体となってトラブル解決に当たります。このように利用者は安心して利用することができます。
もう一つ「ノッカルあさひまち」ならではの、既存サービスとの違いがあります。それは地元タクシー会社とタッグを組んで行うサービスだということ。実証実験段階では地元のタクシー会社に「ノッカルあさひまち」の予約受付や配車の実務が委託されていますが、町では将来的に運営サービスそのものを委託しようと考えています。

実証実験の様子(写真提供/富山県朝日町)
国は、交通事業者が実施主体に参画し、運行業務の委託を受けることで地域の交通事業者の合意形成手続きを簡素化することを目的とした「交通事業者協力型自家用有償旅客運送制度」を含む法律を2020年5月27日に成立させ、2020年6月3日に公布しました。
朝日町は、この制度をいち早く活用し、地元のタクシー会社と協力し地域一体となって自家用有償旅客運送を行うこととしたのです。
ライドシェアサービスは、タクシーと乗客を取り合いになるとして海外では問題になっています。日本でもそのような意見もあり、自家用車を活用した乗合サービスがなかなか普及しない理由のひとつになっていますが、なぜ朝日町ではタクシー会社が協力してくれるのでしょうか。
「もともと朝日町にはタクシー会社は1社しかなく、人口減の問題は、タクシー会社としても町と同じ危機感を持っています」。このまま町の人口が減り、交通網が少なくなっていくのを黙って見ているのではなく、町の人が気軽に乗れる新しい交通サービスをつくり出して、町に貢献するとともに、新しい仕事に進出することで企業の存続を図ろうと「ノッカルあさひまち」に協力しているというわけです。
実際、先述した町のコミュニティバスの運営は、既に同じタクシー会社が請け負っています。またヒスイの取れる美しい海岸や北アルプス登山など観光資源のある朝日町は、北陸新幹線の黒部宇奈月温泉駅から予約制のバスを運行していますが、このバスも同社が業務委託されています。

春の朝日町の風景(写真提供/富山県朝日町)
実証実験の第一段階で見えて来たいくつかの課題こうしてみると、既存のライドシェアサービスよりも安心して利用でき、タクシー会社とも協力的なため、万事が上手くいきそうな「ノッカルあさひまち」なのですが、やはりそうは簡単にいかないようです。
2020年8月3日から9月末にかけて、まずスズキが提供してくれた3台の軽自動車を使い、町の職員がドライバーになって実証実験が行われました。同年10月26日からは、町民ドライバー+自家用車による運行という無料の実証実験で、より本来のサービスに近い内容で第二段階の実験がスタートしました。さらに来年2021年1月からは第三段階として有料による実証実験を行うことを想定しています。

(写真提供/富山県朝日町)
これらのスケジュールは今のところ予定通りですが、9月末までの実証実験ですでにいくつかの課題が見つかりました。
「まず予約の取り方です。当初はインターネットを活用してスマートフォンによる予約を主に想定していましたが、高齢者の方ほどスマートフォンの操作に不慣れなため、結局は電話による予約が大半を占めました」
電話による予約となると、車両手配のオペレーション上、どうしても利用前日の午前中までに予約しないとなりません。「利用者からはそれが面倒、不便というご意見をいただきました」。特に通院の場合、行きはまだいいのですが、帰りは診療次第で時間が変わるので予約できない=利用できないのです。

「ノッカルあさひまち」実証実験で使用されている車両。実証実験後は各家庭の自家用車が使用される予定(写真提供/富山県朝日町)

予約ページとドライバー紹介ページ
これはドライバー側も同じで、「車で通院するから誰か乗りますか?」という場合、何月何日はこの時間・ルートでと、事前に登録できますが、帰りの時間を事前登録できません。
また現在は12月までは無料サービスによる実証実験ですが「有料の場合、いくらが適正なのかを決めないとなりません。現在アンケート集計も合わせて行っていて、おそらくバスよりも高く、タクシーより安いというレベルになるとは思いますが……」
寺崎さんの歯切れが悪いのは、「どのような仕組みにすれば事業の持続性が保てるのか」という点です。自家用車で町民を乗せてくれるドライバーにも報酬は必要か、その場合いくらが適切で、そのためには料金をどうすればいいか。さらに保険など運用するための経費も考慮する必要があります。
こうした予約・ドライバーの事前登録のあり方や、料金設定が今のところ見えてきた主な課題です。
商業の活性化や旅行者、移住者の増加に繋がれ!一方、9月末までの実証実験(ドライバーは町の職員)における利用者、つまり乗る側の反応はどうでしょうか。第一段階での利用者数は1週間で5~6人。「バスだとあちこちのバス停を回ってから、ようやく目的地に着くけれど、これならまっすぐ向かえるので助かる」「タクシーより安い料金なら利用したい」という声のほか「ドライバーとおしゃべりをしながら外へ出掛けられるのは楽しい」、高齢者から「久しぶりに外出するきっかけになった」という声もあったそう。利便性の向上とは別の、うれしい成果も見つかりました。

協議会メンバーによる仕組みづくり会議の様子(写真提供/富山県朝日町)
また、先述の通り通院ニーズに対しては課題が浮かび上がりましたが、ドライバー・利用者とも買い物ニーズについては概ね好評で、今後は「ノッカルあさひまちのドライバーや利用者がお買い物の際におトクになるような仕組みを考え、それによる町の商業施設や商店街などが潤う施策も考えられます」
このように「ノッカルあさひまち」は、全国の高齢化や過疎化に悩む地方に先駆けて、自治体が主導する自家用車を活用した乗合サービスを公共交通の補足として使えないかと、船出をしたばかり。今後の実証実験の第二、第三段階で、さらに課題が見つかることもあるでしょうが、そもそもライドシェアサービスは、世界中で利用されているほど成功しているビジネスモデル。しかも以前から近隣同士では「よかったら乗っていく?」「ありがとう、じゃあお願い」という土壌のあった朝日町です。そうした地方ならではの強いコミュニティが存在しているのですから、自治体が主導する乗合サービスが成功する可能性は大いにありそうです。
また冒頭でお話したように観光資源の豊かな朝日町ですから、「ノッカルあさひまち」による観光事業の活用も考えられます。さらに昨今のコロナ禍で、地方への移住が注目されていますが“高齢になっても移動の自由が見込める朝日町”になれば、移住先の候補に入っても不思議ではありません。こうした旅行者や移住者の増加は、もちろん町の活性化に繋がります。そんな可能性を秘めた「ノッカルあさひまち」。今後も目が離せません。
●取材協力
所在地:横浜市西区北幸
所在地:横浜市青葉区新石川
所在地:目黒区上目黒
所在地:中央区銀座
所在地:目黒区目黒新型コロナウイルスの影響で、「ベランピング」「おうちキャンプ」などの言葉が普及し、実際に暮らしにキャンプのエッセンスを取り入れた人も多いのではないでしょうか。今、住まいとアウトドアがかつてなく近づいているようです。それでは、どんな住まいや住まい方が登場しているのでしょうか、アウトドアブランドとハウスメーカーに聞いてみました。
暮らしにアウトドアを取り入れる人が急増!
このところキャンプブームが続いていましたが、住まいの世界でも「キャンプのようなインテリア」「アウトドアっぽい暮らし」は、ひとつのトレンドとなっていました。ところが今年に入り、新型コロナウイルスの影響でその流れは一気に加速。外出自粛しながらも家でも外遊びがしたいと、「おうちキャンプ」「ベランピング」などを取り入れる人がぐっと増えているようです。
アウトドア総合メーカーのスノーピークのアーバンアウトドア事業担当・王治菜穂子さんによると、「世間では『メスティン』レシピが話題になっていますが、同社でも、1~2人を対象にしたミニサイズのダッチオーブン『コロダッチ』や、コンパクトに収納できて家使いでも重宝する『HOME&CAMPクッカー』、チタン製のマグカップといったテーブルウェアの売れ行きが大変好調です」といいます。

「HOME&CAMPクッカー」は2020年度グッドデザイン賞で「グッドデザイン・ベスト100」にも選出(写真提供/スノーピーク)
「外出自粛期間中は店舗を閉めておりましたが、その後営業再開してからは、かなりのスピードで売上が回復。キャンプビギナーから、根っからのキャンパーまで、おうちのなかでもキャンプを楽しみたい! という動きを肌で感じています」(王治さん)と話します。
ハウスメーカーとアウトドアのコラボは反響大!ハウスメーカーでも同様の手応えがあるようです。ヘーベルハウス(旭化成ホームズ)では、アウトドアな暮らしを提案していますが、資料請求数が前年同期比5割増になっているといいます。キャンプ道具はインテリアアイテムとしても優秀なので、今、流行している「男前インテリア」の影響もあるかもしれません。

バルコニーを有効活用する暮らし方を提案(写真提供/ヘーベルハウス(旭化成ホームズ))

(写真提供/ヘーベルハウス(旭化成ホームズ))
注文住宅に留まらず、新築の完成物件でもアウトドアを取り入れた住まいは好調のようです。例えば、中央住宅とアウトドア家具ブランド「INOUT(イナウト)」とコラボしたモデルハウスは、新型コロナウイルスの影響が深刻だった今年5月に販売を開始しましたが、全14棟完売したそう。

(写真提供/中央住宅)
写真を見ても分かる通り、リビングとデッキがひとつづきになっていて、家の中と外がゆるくつながっています。シェードがあるので、いつでもキャンプ気分が楽しめる住まいと言えるでしょう。
実はスノーピークも2018年、地元・新潟の工務店などとコラボした「天野エルカール」という住宅街の開発に取り組んでいて、当時も大変好調だったといいます。
「地元工務店、ハウスメーカー、全10社とコラボした企画でしたが、計画中はどこまで反響があるか分からず、手探りだったのです。3週連続、週末に住宅展を開催したときは計7日間で1200組以上の方にご来場をいただき、関心の高さに驚かされました」(王治さん)と話します。
コロナ前からあったアウトドアな住まいですが、ブームで終わるとは考えにくく、今後、加速して一大ムーブメントとなっていくかもしれません。
家でもキャンプの楽しさを! アウトドアな住まいの良さとはでは、アウトドアな住まいの特徴や魅力は、どこにあるのでしょうか。
「うちと外がゆるやかにつながり、自然を感じられる工夫がされている点でしょうか。『天野エルカール』では、キッチン・リビングにつづいた土間やデッキをマストで設置しました。すると、窓をあければすぐに外の空気が感じられるのです。また、住まいにシェードを張りつけました。これだとすぐにシェードを張ることができ、さっと設営して、すぐにキャンプ気分が楽しめます」と王治さん。

スノーピーク 企画開発エグゼクティブクリエイター佐藤さんの自宅にもウッドデッキが。「自宅でのテレワークの際、晴れて気持ちいい天気のときは、ウッドデッキにさっとテーブルとチェアを持ち出します。休憩中はアウトドアギアを使ってコーヒーを豆から挽いて気分転換しています」(佐藤さん)

シェードを張ると、キャンプ気分がアップ(写真提供/スノーピーク)
とはいえ、家づくりからというと、なかなかハードルが高くなるもの。今すぐにできる「おうちキャンプの楽しみ方」を教えてもらいました。
「アウトドアグッズの良さは、収納してコンパクトに持ち運べ、使わないときにはしまっておける点があります。例えば、テレワークだと気分転換が難しいですが、アウトドアグッズがあると気分転換も自宅でも容易にできます。弊社の社員では、おうちのバルコニーに机と椅子を置いて、テレワークする人もいます。リビングで仕事をするより、気分も変わって良いですよ」といいます。
なるほど、おうちアウトドアをチェアと机からはじめられるというのは、手軽ですね。

スノーピークビジネスソリューションズ HRS事業部オフィスディレクションチーム 神原さんのご自宅。「在宅ワークでは気分転換が重要。集中したいときはリビングで、Webミーティングはテラスのお気に入りローチェアで。家の中でも場所を変えるだけで、気分も変わって生産性をアップできます」(神原さん)(写真提供/スノーピーク)
もう一つ、アウトドアな住まいの良さとして、王治さんが教えてくれたのは、コミュニティを円滑にしてくれる点です。
「焚き火や火の匂いを敬遠する人もいるなか、やっぱりキャンプに憧れる人たち、してみたいなという人たちは一定数いるのだと思います。弊社では都心の新築マンションに住まわれる方でも、気軽に野遊びやキャンプを楽しめるための提案を行ってきましたが、実際にイベントをしてみると、やはりみなさんとてもうれしそうなんですね。焚き火を囲んで、会話がはずみ、打ち解けるきっかけになります」と王治さん。
住んでいる場所は大都会でも郊外でも、風や光、緑を感じたい、というのはいつも変わらぬ願いかもしれません。アウトドアな暮らし、これからはブームではなく、定番となっていくのではないでしょうか。
●取材協力
所在地:神奈川県横浜市中区麦田町
所在地:豊島区雑司が谷コロナ禍で在宅勤務などを経験して、夫婦ともに自宅にいる時間が長くなったという人も多いだろう。ただでさえ、家庭内のこまごまとした家事で大変なのに、「家族の在宅時間が長くなると新たな家事も増える」ということをリンナイの調査が浮き彫りにした。どういった家事が増えて、誰が担当しているのだろう?【今週の住活トピック】
「夫婦の育児・家事」に関する意識調査を公表/リンナイ家事・育児に積極的に参加する男性が増加!といえども…
まずリンナイの調査で、「コロナウイルスの影響で在宅勤務、在宅時間が増えたか」を聞いたところ、過半数の53.7%が増えた(とても増えた+やや増えた)と回答した。男性に限ってみると、増えたという回答は57.0%に達する。
増えたと回答した男性に、「コロナ前と比べて、育児・家事に対する参加度合いはどのように変化したか」を聞くと、61.1%が「積極的に家事・育児に参加するようになった」と答えた。女性である筆者から見ると、喜ばしいことだ。
で、実際の家事や育児の時間はどうかというと、全体では次のような変化が見られた。

Q.コロナ前後でのあなたの育児時間・家事時間について、1日あたりの平均時間をそれぞれお答えください(出典/リンナイ「『夫婦の育児・家事』に関する意識調査」のリリースより転載)
男性の家事・育児の時間がコロナ前より長くなっているが、女性もやはり長くなっているので、女性に負担がかかっているという状況は実はさほど変わっていない。とはいえ、意識の変化は今後のカギになるだろう。
「コロナウイルスの影響で在宅勤務、在宅時間が増えた」人を対象に、「コロナ以前よりもパートナーと家事の分担をするようになったか」を聞いたところ、男性では70.3%、女性では48.5%が分担するようになったと感じる(とてもそう感じる+ややそう感じる)と回答した。分担の実感に男女差はあるにせよ、コロナ禍が家事分担を意識するきっかけになったのは確かなようだ。在宅時間が増えたのは男性が多いので、こうした流れや男性の意識が今後も拡大していくことを期待したい。
約4割が、コロナ前と比べて家事の量や頻度が増えたコロナ禍では、例えば「マスクを毎日手洗い」したり、「手洗い用の石鹸を補充」したり、「消毒液や除菌シートの在庫を確認」したり、ネットで購入した宅配物の「段ボールや箱をつぶして捨てる」といったことが、新たな家事に加わったり、以前より増えたりしたのではないだろうか?
リンナイの調査で、「コロナ禍での家事の量や頻度について」聞いたところ、「コロナ前と比べて家事の量や頻度が増えた」(とても増えたと感じる+やや増えたと感じる)という回答が43.9%に達した。
家事の量や頻度が増えたと回答した人に、増えた家事や育児について聞くと、男女別にやや違いが見られた。

Q. コロナ禍によって育児・家事で時間が増えたと思うものをすべてお選びください(出典/リンナイ「『夫婦の育児・家事』に関する意識調査」のリリースより転載)
女性は圧倒的に「料理」が増えたと回答しており、家族が長く在宅することで料理をつくる頻度や量が増えたからだろう。「掃除」「育児」「片付け・収納」は男女ともに増えているが、「食料品・日用品の買い出し」については男性のほうがより増えたようだ。
次に、コロナ禍によって新たに増えた家事や育児を聞くと、「マスクの手洗い・洗濯」と「除菌、手洗いうがいの呼びかけ」は、半数近くの人が新たに増えたと感じていることが分かった。下図を見ると、コロナウイルスから家族を守ろうと、こまめに作業している様子がうかがえる。

Q. コロナ禍によって、新たに増えたと感じる育児・家事は何ですか(複数回答)(出典/リンナイ「『夫婦の育児・家事』に関する意識調査」のリリースより転載)
家事・育児の分担や男性の参加で子どもの数は…?さて、明治安田生命の「子育てに関するアンケート調査」では、「子どもをさらに欲しい」という回答が30.5%になり、過去最多になった。その理由として、幼児教育・保育の無償化による「家計負担の軽減」や、テレワークの普及などによる「子育てと仕事の両立のしやすさの向上」などが影響していると分析している。また、ステイホーム期間中に子どもといる時間が長くなり、子どもの世話をすることで絆が深まるなど、子育てにプラスの影響があったことも要因とみている。
一方で、厚生労働省が発表した全国の妊娠届の件数が5月~7月で前年より下回り、産み控えも懸念されている。妊娠届の件数はこの先の出生数の目安になることから、2021年の出生数が注目される事態となっている。
コロナウイルスという禍の中で、予防に苦慮する日々が続いている。収入が大きく減少したという人もいるだろう。こうしたマイナスな側面も多いが、在宅時間が長くなることで、パートナーや子どもと話す機会が増えて、新たな面に気づいたり、いとおしさが増したりといったこともあったのではないか。
リンナイの調査結果を見ると、いまなお女性の負担が大きいものの、男性の家事・育児の参加が増加したことが分かる。テレワークの普及ともあいまって、仕事と子育てが両立しやすくなるといった変化もあり、この事態が夫婦や親子の関係性について再認識する機会になればよいと願う。
所在地:墨田区業平
所在地:墨田区業平
所在地:墨田区業平
所在地:墨田区業平
所在地:中央区日本橋小舟町
所在地:目黒区中目黒
所在地:渋谷区本町
所在地:杉並区高井戸
所在地:港区南麻布
所在地:港区赤坂空き家増加が日本の社会問題として取り上げられる一方、高齢者、障がい者、低額所得者など、住宅の確保が困難な人たちが増加しています。これら2つの問題を一緒に解決する方策として豊島区で市民有志が立ち上げたのが「としま・まちごと福祉支援プロジェクト」です。
一体どんなプロジェクトなのか、企画・運営する一般社団法人コミュニティネットワーク協会の理事長、渥美京子さんにお話を聞きました。
コロナで高齢者の居場所がなくなった!2020年4月の緊急事態宣言以降、休校・休園、自宅待機、店舗の営業自粛など、多くの人が行動制限されました。それは若い世代、子育て世代のみならず、高齢者や障がいをもつ人も一緒です。渥美さんによると「それまで高齢者のお出かけ先となっていた百貨店や大型電機店などの商業施設、地域センターなどの公共施設に行きづらくなり、自宅に引きこもる高齢者が増えた」と言います。

池袋駅前の大型電器店などは、豊島区の高齢者にとって憩いの場でもあった(画像/PIXTA)
「特に定年退社まで仕事一筋で頑張ってきた男性は、仕事以外に趣味がない、会社関係以外の人づき合いが少なく、歳をとると同時に引きこもりがちになる傾向があります。
そうでなくても高齢者の多くの人、特に一人暮らしをしている人は『将来介護が必要になったらどうしよう』『孤独死したらどうしよう』という不安を抱えています。それでも『住み慣れた街を離れたくない』『都心は家賃が高いが住み続けたい』という人が多いのです」(渥美さん、以下同)

一般社団法人コミュニティネットワーク協会の渥美京子さん(撮影/片山貴博)
空き家を福祉に活用「としま・まちごと福祉支援プロジェクト」そのような高齢者や障がいをもつ人、生活困窮者に住まいと居場所、就労できる場所を提供する目的で始められたのが「としま・まちごと福祉支援プロジェクト」です。
「豊島区の空き家率は2018年で13.3%と23区内で最も高い数字です。一方で高齢者等への大家さんの入居拒否感は根強く、日本賃貸住宅管理協会の調査では、高齢者世帯の入居に拒否感がある大家さんが70.2%、障がい者がいる世帯の入居に対しては74.2%にものぼります。空き家と住宅確保が困難な人びとをマッチングすることで、双方が抱える問題を一緒に解決できないかと考えたのです」

豊島区の空き家率は2018年で13.3%と23区内で最も高く、約9割が賃貸用(画像提供/豊島区住宅課)

「としま・まちごと福祉支援プロジェクト」は空き家を活用したセーフティーネット住宅を中心に、見守り拠点・交流拠点を通じて地域住民と福祉支援を行う(画像提供/一般社団法人コミュニティネットワーク協会)
プロジェクトのポイントの1つ、空き家を活用した共生ハウス西池袋では、2017年にできた住宅セーフティーネット制度をもとにした豊島区の家賃補助制度が利用できます。家賃補助を受けることで家賃月額4万9000円で住むことも可能です(水道・光熱費等を含む共益費は別途1万円)。
「加えて共生ハウスから徒歩圏内に『共生サロン南池袋』という地域交流・見守り拠点を設けています。新型コロナウイルスの感染防止対策をしながら、日がわりで健康講座やスマホ・パソコン講座、卓球、麻雀カフェなどを企画運営することで、入居者や地域の人々が交流・相談・学習できる居場所づくりを目指しています。お酒がないとなかなか外に出ない男性たちが交流できるようにお酒や料理を持ち寄って『おたがいさま酒場』なども開催しているんですよ」

「共生サロン南池袋」で行われるスマホ・パソコン講座の様子(画像提供/一般社団法人コミュニティネットワーク協会)

夜には地域の人びとが日がわり店長として「おたがいさまサロン」や「おたがいさま酒場」を開催(画像提供/一般社団法人コミュニティネットワーク協会)

「共生ハウス西池袋」から徒歩圏内に、「共生サロン南池袋」がある(画像提供/一般社団法人コミュニティネットワーク協会)
人と人とのつながりが、不可能を可能に空き家の福祉への活用は、全国のさまざまな自治体で試みられていますが、まだまだ本当に成功事例といえるものが少なく、採算性をはじめとして多くの問題を抱えているようです。共生ハウス西池袋ができるまでにも、いろいろな困難があったのではないでしょうか。
「最も難関だったのが、空き家を貸してくださる方と出会えるかということでした。実は今回のプロジェクトは物件が決まるより前に国土交通省の令和元年度・住まい環境整備モデル事業に認定されたのですが、事業モデルをつくったものの、実際に活用できる空き家がなかなか見つからずに困っていたとき、力を貸してくださったのが民間の不動産会社の人たちでした」

空き家を見つけるのに苦労していたとき、協力して物件を探してくれたのが地域の不動産業界の人々だった(画像提供/一般社団法人コミュニティネットワーク協会)
協会の主催するセミナーに講師として登壇した不動産会社の人が、地元の不動産会社に声をかけて見つかった空き家が今回の物件でした。
「もともとは夫をなくされてお一人になった高齢者女性のご自宅でした。ご本人が介護施設に入居されてからは甥御さんが管理をされ、ファミリー向けに賃貸に出す方向で検討されていたそうです。その矢先に今回の『高齢になっても住み慣れた池袋で安心して暮らし続けられるようにする』というプロジェクトの趣旨に共感し、ぜひ協力したいと言ってくださったのです」

築35年の空き家が『共生ハウス西池袋』としてシェアハウスに生まれ変わった(撮影/片山貴博)
高齢者や障がいをもつ人にも配慮してリフォーム7年間、住む人がいなかった空き家がリフォームを経て、シェアハウス型のセーフティネット専用住宅(高齢者、障がい者、低額所得者など、住宅確保が困難な人の入居を拒まない賃貸住宅)に生まれ変わりました。高齢者や障がいをもつ人が住むことを想定しているので、リフォームをするときも細やかに配慮されたそうです。
「前回の介護保険の改正で、要支援1、2は介護給付から予防給付に代わり、住民による自助努力が強化されました。また、介護認定は厳しくなる方向にあり、今後も介護予防に比重がおかれていくといわれています。『共生ハウス西池袋』では、そのような人が入居できるように配慮してリフォームを行いました。例えば、居室の入口は開け閉めがしやすいようにすべて引き戸に。1階と2階を行き来する階段やお風呂、トイレには手すりを取り付けています」

「共生ハウス西池袋」はシェアハウス型で居室は4つ。豊島区の家賃低廉化補助制度の対象者は、家賃4万8000円~4万9000円で入居できる(画像提供/一般社団法人コミュニティネットワーク協会)

4つある居室の入口はすべて、出入りがしやすくプライバシーを守る鍵付きの引き戸になっている(撮影/片山貴博)

階段やお風呂、トイレには入居者の安全を守る手すりが取り付けられている(撮影/片山貴博)
実際に筆者も「共生ハウス西池袋」の中を見学させてもらいました! 新築同様にリフォームされた各居室はすべて二面採光でとても明るい雰囲気、クローゼットやベッドの下などに収納もしっかり確保されています。高齢者や障がいのある人だけではなく、若い単身世帯にもこの家賃は十分に魅力的です。
「家賃低廉化補助制度は、豊島区に引き続き1年以上居住、月額所得15万8000円以下などの条件を満たせば、若い単身世帯の人も活用できます。特定の人たちだけではなく、健康な若い世代も共生ハウスに入居することで、多世代交流など多くの区民に開かれた場所になれば、と考えています」

各居室はすべて二面採光で明るく清潔な印象。収納付きのベッドが既に備え付けられている(撮影/片山貴博)

住民の交流の場にもなる共用部、キッチン・ダイニング(撮影/片山貴博)
地域包括ケアと「福祉×福祉」の取り組みへ住まい(セーフティネット住宅)と地域交流拠点(共生サロン)の整備がセットになったこのプロジェクト。ところが、渥美さんたちの構想はそれだけにとどまりません。
「これから先、少子高齢化が“待ったなし”で進み、介護保険財政は厳しくなると言われています。障がい者事業には民間の株式会社などの参入が相次いでおり、補助金頼みの展開は厳しくなることが予想されます。
こうしたなかで、持続可能な仕組みをつくるために考えているのが、『福×福』連携です。具体的には、介護事業と障がい者の就労支援事業を組み合わせます。例えば『農福連携』は『農産物の加工を施設を利用する障がい者が担う』ことですが、『介護保険事業(福祉)』と『障がい者の就労支援事業(福祉)』を掛け合わせたのが『福福連携』です。例えば、デイサービスの利用者が共生サロンのプログラムを楽しむときに、就労支援B型の利用者が準備や掃除、ときには卓球コーチなどをする。これによって、賃金を得るシステムを新たに取り入れたいと考えています。福祉の問題を本質的に解決していくためには、このようないくつもの横の連携が必須なはずです」

高齢者や障がいをもつ人が安心・安全に住み続けるためには、住まいそのものだけではなく、医療・介護などの付帯サービスが欠かせない(写真/PIXTA)
これまでサービス付き高齢者向け住宅である「ゆいま~る」シリーズの展開をはじめ、全国で高齢者や障がい者の支援を行ってきた協会だからこそできたこともあるのでしょう。渥美さんたちは現在、栃木県那須町でも廃校を活用し、高齢者の居住・介護・交流を目的とした複数の施設を有するまちづくりを行っているそうです。

一般社団法人コミュニティネットワーク協会の那須支所が取り組む「小学校校舎を活用した、那須まちづくり広場プロジェクト」(画像提供/那須まちづくり株式会社)
自身の親のことや、また自分が歳をとって1人になったり、障がいをもったりする可能性を考えたときに、住み慣れた地域で、地域の人とともに住み続けられる支援策があればとても心強く感じることでしょう。
このプロジェクトでは、資金調達においても多くの市民の力を借りようと11月27日までクラウドファンディングを行っているそうです(「共生サロン南池袋」のキッチン設置が資金の用途)。サロンや酒場の名前の通り「おたがいさま」の気持ちで地域の人びとが支え合い、つながり続ける社会のモデルとして、このプロジェクトの成功を願わずにいられません。
●取材協力
所在地:横浜市西区高島
所在地:渋谷区猿楽町
所在地:新宿区高田馬場
所在地:港区白金
所在地:神奈川県相模原市中央区淵野辺本町
所在地:大田区石川町
所在地:目黒区八雲
所在地:新宿区山吹町
所在地:新宿区高田馬場風が冷たくなり、気候の急激な変化を感じる季節。新型コロナウイルスの影響による強制的な自粛ではなく、家で過ごす暖かな時間が愛しく感じられるようになってきました。SUUMOジャーナルで9月に公開した記事では、「ウィズ・コロナでテレワークを意識した新築マンションが続々登場」「【賃貸】敷金・礼金ゼロ物件の増加傾向、減少に一転。そもそも敷金と礼金はなぜ必要?」などが人気TOP10入りしました。詳しく紹介します。
2020年9月の人気記事ランキングTOP10はこちら!
1位 ウィズ・コロナでテレワークを意識した新築マンションが続々登場
2位 【賃貸】敷金・礼金ゼロ物件の増加傾向、減少に一転。そもそも敷金と礼金はなぜ必要?
3位 空室化進む“賃貸アパート”でまちづくり?「モクチン企画」の取り組み
4位 無印良品の“日常”にある防災、「いつものもしも」とは
5位 無人駅で地域活性! グランピング施設、カフェ、クラフト工房などへ
6位 宮下公園が生まれ変わった! 進化する渋谷の新たな魅力を探ってみた
7位 漫画の聖地「トキワ荘」復活! “ 消滅可能性都市” 豊島区がカルチャーなまちへ
8位 移住や二拠点生活は“コワーキングスペース”がカギ! 地域コミュニティづくりの拠点に
9位 エコな移動が地域を救う? グリーンスローモビリティ全国で広まる
10位 マンションもSDGsの時代。旧耐震マンションが、リファイニング建築でよみがえる?
※対象記事:2020年9月1日~2020年9月30日までに公開された記事
※集計期間:2020年9月1日~2020年9月30日のPV数の多い順
1位 ウィズ・コロナでテレワークを意識した新築マンションが続々登場

(画像提供:PIXTA)
テレワークに対応した建築は注文住宅で先行していましたが、新築マンションにも広がってきました。音の反響を減らす防音設備を取り入れた入居者専用シェアオフィスルームなど、共用部にテレワーク環境を整備したコワーキングスペースを備えた建物が増えています。
2位 【賃貸】敷金・礼金ゼロ物件の増加傾向、減少に一転。そもそも敷金と礼金はなぜ必要?

(写真:PIXTA)
リクルート住まいカンパニーによる「2019年度 賃貸契約者動向調査」によると、敷金ゼロ物件の契約割合は25.5%、同礼金ゼロ物件は40.2%で、前年度より減っています。敷金、礼金が何に使われるかの解説とともに、原状回復費用に伴う敷金返還トラブルの注意点も説明します。
3位 空室化進む“賃貸アパート”でまちづくり?「モクチン企画」の取り組み

(写真提供/モクチン企画)
空き家の増加が問題化している築古賃貸物件の改修やリフォームに取り組むNPO法人モクチン企画。人口減による物件供給過多には、さまざまな用途に対応可能な空間や物件を提供していく必要がありますが、築古賃貸アパートは、NPOやスタートアップなどが新しいことを始めるのにぴったりだと話しています。
4位 無印良品の“日常”にある防災、「いつものもしも」とは

(写真撮影/飯田照明)
9月1日の防災の日にあわせて防災セットを発売した無印良品。特別なものを用意するのではなく、普段使っているものをそのまま防災用品とする提案から、防災意識の向上を呼び掛けています。広範囲の品ぞろえを持つ無印良品ならではの、日常に軸足を置いた取り組みを伺いました。
5位 無人駅で地域活性! グランピング施設、カフェ、クラフト工房などへ

(写真提供/JR東日本スタートアップ)
JR東日本は、管内の約4割を占める無人駅を活用した地域活性化に取り組んでいます。ベンチャー企業などと協同し、地場産業を見学できる工房や、地元企業との連携などを行っている4例を紹介。地域住民にとっても、電車の乗り降りだけでない意味が生まれているようです。
6位 宮下公園が生まれ変わった! 進化する渋谷の新たな魅力を探ってみた

(画像提供/MIYASHITA PARK)
再開発が進む渋谷に新しくオープンした「ミヤシタパーク」は、公園と商業施設、ホテルが一体になったカルチャースポット。日本初出店となるブランドやプレイスポットを備えており、渋谷のイメージでもある若者だけでなく、幅広い層を街に呼び込むようイメージが一新されています。
7位 漫画の聖地「トキワ荘」復活! “ 消滅可能性都市” 豊島区がカルチャーなまちへ

2020年7月にオープンした「トキワ荘マンガミュージアム」(撮影/西村まさゆき)
マンガ家の手塚治虫氏らが暮らした「トキワ荘」を再現し、話題の施設「トキワ荘マンガミュージアム」の内部と、トキワ荘の歴史を紹介。マンガ文化をフックにした街づくりに取り組む豊島区は、こうした活動の目的には「文化継承の拠点」もあると話しています。
8位 移住や二拠点生活は“コワーキングスペース”がカギ! 地域コミュニティづくりの拠点に

(画像提供/津田賀央さん)
コロナ禍での生活で注目を集めるコワーキングスペース。地方では、働く場所としてだけでなく、地域コミュニティの拠点や移住相談の場としての側面もあるようです。地方は「働く場と生活の場が同じ」だからこそ、関係性が育ちやすいよう。長野県にある「富士見 森のオフィス」の例を紹介します。
9位 エコな移動が地域を救う? グリーンスローモビリティ全国で広まる

(写真提供/岡山県笠岡市)
国土交通省が2018年度から行っている、特定の電気自動車を使った自治体への支援事業。環境に優しく、自動車より低速のため万が一の際にも大きな事故になりにくいうえ、多人数で乗車できるため、高齢者らの移動の足だけでなく、地域の活性化にも成果を出しています。
10位 マンションもSDGsの時代。旧耐震マンションが、リファイニング建築でよみがえる?

リファイニング建築「ヴァロータ氷川台」外観(筆者撮影)
旧耐震物件でも解体することなく、新築なみに再生できる「リファイニング建築」。三井不動産と青木茂建築工房が手掛けた完成事例の見学会のもようから、建て替えでも大規模改修でもない、持続可能な建築物の再生について考えます。
宮下公園やトキワ荘など、その街の文化を象徴する側面をもつ施設の紹介に注目が集まった9月のランキング。新しい施設は内容そのものも気になるものですが、時にはその存在により街の雰囲気にも影響を与えうるもの。渋谷や池袋がどのように変化するかも、楽しみになりそうです。
所在地:世田谷区若林
所在地:横浜市鶴見区東寺尾
所在地:世田谷区上馬「サラリーマンの聖地」のフレーズでおなじみの新橋は、日本有数のビジネス街であるとともに、リーズナブルな飲食店が連なり、ビジネスパーソンにとっては親しみのあるエリア。近年は、JR九州が運営するホテル「THE BLOSSOM HIBIYA.」などの入った複合施設「アーバンネット内幸町ビル」が新しくオープンするなど、再開発も進んでいる。そんな新橋駅へ電車で30分以内で行ける、ワンルーム・1K・1DKを対象にした家賃相場が安い駅ランキングを紹介。狙い目の場所を探してみよう。●新橋駅まで電車で30分以内、家賃相場の安い駅TOP13駅
順位/駅名/家賃相場/(沿線名/駅の所在地/新橋駅までの所要時間(乗り換え時間を含む)/乗り換え回数)
1位 葛西臨海公園 6万円(JR京葉線/東京都江戸川区/26分/1回)
2位 弁天橋 6.05万円(JR鶴見線/神奈川県横浜市鶴見区/29分/2回)
3位 お花茶屋 6.4万円(京成本線/東京都葛飾区/29分/1回)
4位 京急新子安 6.5万円(京急本線/神奈川県横浜市神奈川区/30分/1回)
4位 小菅 6.5万円(東武伊勢崎線/東京都足立区/29分/1回)
4位 新子安 6.5万円(JR京浜東北線/神奈川県横浜市神奈川区/25分/1回)
4位 小岩 6. 5万円(JR総武線/東京都江戸川区/24分/1回)
8位 四ツ木 6.6万円(京成押上線/東京都葛飾区/24分/0回)
8位 鶴見小野 6.6万円(JR鶴見線/神奈川県横浜市鶴見区/29分/2回)
8位 鹿島田 6.6万円(JR南武線/神奈川県川崎市幸区/25分/1回)
11位 六町 6.7万円(つくばエクスプレス/東京都足立区/30分/1回)
11位 青井 6.7万円(つくばエクスプレス/東京都足立区/28分/1回)
11位 新川崎 6.7万円(JR横須賀線・湘南新宿ライン/神奈川県川崎市幸区/18分/0回)
日本の鉄道の発祥の地は新橋駅。駅のシンボルであり、待ち合わせの目印としても親しまれるSLはその象徴だ。現在も交通の要所であるが、ランキング入りしたのは東京23区内と神奈川県の駅が占めた。
1位の葛西臨海公園駅は、JR京葉線の沿線駅。京葉線は東京駅か八丁堀駅で乗り換えが必要になるが、東京駅で乗り換える場合、同線は東京駅の中でもプラットホームへの移動に少し距離があり、所要時間26分のうち、乗り換えのための移動時間が10分以上かかる。乗り換え時間にはその考慮と注意が必要だ。

葛西臨海公園(写真/PIXTA)
葛西臨海公園駅のすぐそばには、駅と同名の大きな公園がある。緑と水と人とのふれあいがテーマになっており、鳥類園や水族園ゾーンでは、小動物とふれあえるほか、観覧車なども備えている。葛西海浜公園にも隣接しており、湾岸リゾートの雰囲気があふれる。ほかにも公園が多く、緑と身近にふれあえる地域だ。
2位は横浜市鶴見区の弁天橋駅。横浜市は坂道が多いことで知られ、自転車での移動が大変、などと言われるが、弁天橋付近は比較的平坦な場所が多い。
沿線であるJR鶴見線は京浜工業地帯を走る路線であり、弁天橋駅もすぐ目の前にJFEエンジニアリングの鶴見製作所などがあるが、駅から少し行くと住宅街が広がる。徒歩10分ほどにある「仲通り商店街」は、沖縄料理店や食材店が充実しており、「沖縄タウン」として知られている。立ち飲み屋やブラジル料理店などもあり、自炊の手間を省きたい単身者や、さまざまな食を楽しみたい人にとっては、楽しくも心強い味方だろう。
レトロな下町の雰囲気を満喫しつつ、再開発に期待同率4位には4駅がランクイン。所要時間の一番短い小岩駅は総武線の各駅停車駅だが、東京駅まで約17分、新宿へも約30分で、交通利便性は十分高い。
駅前には昭和レトロな風情のある「フラワーロード」「昭和通り商店街」「サンロード」の3つの大きな商店街があり、それぞれをつなぐ形で小さな商店街も数多く展開。なかでも「フラワーロード」は約1.7kmもの長さに、名前の通り愛らしい花壇が並び、地域の人たちのうるおいになっている。

小岩駅の駅前の風景(写真/PIXTA)
やや雑多なイメージもある小岩だが、現在再開発が進行中で、道路幅の拡張や整備、無電柱化などに加え、商業施設などの開業が予定されている。「フラワーロード」をはじめとする商店街も、店舗の移転はありつつも、敷地内の整備が行われる予定だ。。人情味あふれる商店街が存在する魅力はそのままに、より快適な生活を送れるようになりそう。今後への期待も込めて注目したいエリアだ。
同率8位には3駅がランクインしている。その中で所要時間が最短なのは、四ツ木駅だ。
普通列車のみの停車駅だが、京成線の沿線だけに、羽田空港と成田空港に乗り換えなしでも行くことができる。全国各地への出張が多い人や、旅行が趣味の人にとっては、大きな利点だろう。駅前は落ち着いた下町の住宅街で、戸建て住宅も多い。飲食店などは多いとはいえないが、少し移動すれば大型スーパーもあり、日用品には困らなさそう。
四ツ木は人気サッカー漫画『キャプテン翼』の作者、高橋陽一氏の出身地。そのため、駅構内などで同漫画のキャラクターとコラボレーションしていたり、近辺の公園にキャラクターの銅像が立てられていたりもする。日本の漫画には海外のファンも多いが、四ツ木でも海を越えてキャプテン翼ファンが遊びにきている姿を目にすることも度々だ。
ランキング中、唯一所要時間が20分を切るのは、同率11位の新川崎駅。横浜駅とは隣駅で、東京駅まで約20分、品川駅へも約15分で乗り換えなしで行くことができる。

新川崎駅前(写真/PIXTA)
駅と直結の大型商業施設「新川崎スクエア」があり、買い物に困ることはない。歩行者用デッキでJR南武線の鹿島田駅とつながっており、川崎や立川方面へ行く際には同線も利用できる。
時代は令和になったとはいえ、日本のビジネスシーンではいまだに「飲みニケーション」は有効で、大切な親睦手段。新型コロナ禍ではしばし縁遠くなってはいるものの、新橋駅は、そんな飲みニケーションと切り離せない場所でもある。本格的に楽しむのはコロナ禍が去った後になってはしまうが、楽しく飲んだ余韻を満喫するためにも、帰りの“足”の身軽さを確保するのは有効な手段といえるかもしれない。
●調査概要
所在地:中央区築地国土交通省では、日立東大ラボと共同し、新型コロナ危機を踏まえた今後のまちづくりを検討するために、全国WEBアンケート調査を8月3日~25日に実施した。速報結果によると、「お出かけは宣言解除後も自宅周辺が増加している」ことなどが分かったという。注目ポイントをいくつか紹介しよう。【今週の住活トピック】
全国アンケート調査「新型コロナ生活行動調査(速報版)」を公表/国土交通省緊急事態宣言以降は、自宅での仕事と余暇時間が増加
新型コロナの影響で、外出を控えるようになり、自宅にいる時間が長くなった。では、自宅での活動時間で、どんな時間が増えたのだろうか?
国土交通省が公表した調査結果のうち、特に影響が大きかったと思われる「特定警戒都道府県」の結果を見てみよう(画像1)。緊急事態宣言中では、明らかに外出を控えて、自宅にいたことが分かる。一方、宣言解除後の7月末では、外出率は流行前に近づいているものの流行前と同じまでは戻らず、なおも外出を控える傾向がうかがえる。
自宅にいる時間が長くなったなかでも、自宅の活動時間として増えたのは、「仕事」の時間はもちろんのこと、「余暇」の時間も増えたのが興味深い点だ。

(画像1)自宅での活動時間(平均活動時間)と外出率※特定警戒都道府県を抜粋(出典:国土交通省「新型コロナ生活行動調査(速報版)」)
外食や趣味・娯楽で訪れる場所は、都心や中心市街地から自宅周辺へシフト次に活動別の外出頻度を聞くと、流行前と調査時点(2020年8月)を比べると、「勤務先への仕事」への外出が減っていたが、「外食」や「食料品・日用品の買い物」への外出も減っていた(画像2)。では、外食や買い物などで訪れた場所は、どこだったのだろうか?

(画像2)活動別の外出頻度(週あたり外出日数)(出典:国土交通省「新型コロナ生活行動調査(速報版)」)
いずれの外出でも訪れた場所は、自宅から離れた「都心・中心市街地」から「自宅周辺」にシフトしていた(画像3)。なかでも、「外食」と「趣味・娯楽」で、中心部から自宅周辺へと大きくシフトしていたことが分かった。

(画像3)活動別の最も頻繁に訪れた場所(新型コロナ流行前から調査時点(2020年8月)への変化)(出典:国土交通省「新型コロナ生活行動調査(速報版)」)
新型コロナの影響で、自宅にいる時間が長くなり、余暇時間も増えたので、自宅周辺のお店や施設を訪れるようになったという構図だが、これまで以上に自宅周辺地域に関心が高まったと考えてよいだろう。
「ゆとりある屋外空間を充実させてほしい」と半数近くが希望リモートワークなどで自宅での活動が増えるとした場合、自宅や自宅周辺の居住環境で望むことを聞いたところ、「望む」という回答が多かったのは「自宅のオンライン環境の強化」(強く望む12.3%、やや望む21.5%)と「自宅周辺における余暇や気分転換、運動をするための近場の公園や緑地の充実」(強く望む8.6%、やや望む21.9%)だった。
また、新型コロナの影響で、移動手段の利用に対する意識の変化について聞くと、鉄道やバスなどの公共交通機関については利用を減らしたい意向が強く、徒歩や自転車、自家用車については利用を増やしたい意向が強く出た。
最後に、都市空間でどのような取り組みを充実すべきかを聞いたところ、「公園、広場、テラスなどゆとりある屋外空間の充実」(46%)や「自転車や徒歩で回遊できる空間の充実」(37%)などのニーズが高いことが分かった(画像4)。

(画像4)都市空間に対する意識(充実してほしい空間)(出典:国土交通省「新型コロナ生活行動調査(速報版)」)
こうして見ていくと、キーワードとなるのは、余暇や気分転換、運動をするための「公園などの空間」や「徒歩や自転車で回遊できる空間」だ。商業施設の充実も重視されるが、快適な屋外空間のある街というのも、今後はニーズが高まっていくだろう。
さて、緊急事態宣言中は、本人の運動不足や子どもの外遊びの機会減少などを気にした家庭も多かったと思う。筆者も、それまでしたことがなかった「わが街歩き」をやった。新しい風景に数多く出会えたが、方向音痴であることや蚊に刺されやすいことなどもあって続かなかった。一方で自分には、商店街歩きのほうが合っているということにも気づいた。
働き方や暮らし方、家族構成など、家庭それぞれの事情によって、住まい周辺の“街”に対する考え方も異なるものだ。この機会に、それぞれの“わが街選び”の基準を再確認してはいかがだろう。
所在地:世田谷区上馬
所在地:世田谷区上馬
所在地:世田谷区自由が丘
所在地:世田谷区羽根木
所在地:世田谷区上馬
所在地:台東区千束
所在地:千代田区神田神保町瀬戸内の魅力を発信しようと、岡山在住の有志の声がけからスタートした「瀬戸内かわいい部」。岡山名物であるデニムのB反(生産過程でついたわずかな傷やほつれが原因で市場に流通されない生地) を使ったピクニックシートの開発・販売など、瀬戸内をキーワードに、部活的な活動の枠を超えた広がりを見せています。連載名:全国に広がるサードコミュニティ
自宅や学校、職場でもなく、はたまた自治会や町内会など地域にもともとある団体でもない。加入も退会もしやすくて、地域のしがらみが比較的少ない「第三のコミュニティ」のありかを、『ローカルメディアのつくりかた』などの著書で知られる編集者の影山裕樹さんが探ります。瀬戸内かわいい部とは?
瀬戸内の魅力的な風景やお店、出来事を発信し、内外に瀬戸内のファンを生み出そうとSNS上で始まった瀬戸内かわいい部という活動があります。「かわいい」という切り口を立てることで主に女性から共感を集め、現在 #瀬戸内かわいい部 が付けられたInstagramの投稿は1000を超えます。2年間で開催したリアルイベントで出会った約300名のうち50人程度は県外の人で、瀬戸内かわいい部のイベント目当てに今も頻繁に瀬戸内にやってきます。
特に明確なメンバーの条件があるわけではなく、主にSNS上でハッシュタグ#瀬戸内かわいい部をつけて写真を投稿する参加者もいれば、Slack上のコミュニティ運営やイベントの企画を行うコアメンバーまでその関わり方はさまざまです。
きっかけは2018年の西日本豪雨により、被災地に近い観光地・倉敷美観地区(倉敷市内の町並保存地区・観光地区)への観光客が激減したことにショックを受けた地元在住のデザイナー・やすかさんが、美観地区の魅力を発信する動画を制作し、SNSに投稿したことから。それを見て「観光地の復興支援になれば」と訪ねてきてくれた人たちに、岡山のおすすめスポットを案内して回ったのが、そもそもの始まりでした。
「その時までは正直、地元が好きじゃなかったんですが、外から訪れる人が岡山の桃のジュースの美味しさや、岡山のカフェのゆったりした雰囲気を率直に褒めてくれたのがうれしくて。もっと地元の魅力を発信したいと思って、まずは個人のSNSでハッシュタグをつけて写真をアップしようと考えました。でも、岡山だけだと狭いから、#瀬戸内かわいい部にしようと」(やすかさん)

瀬戸内かわいい部メンバーでシーグラスを探しに(画像提供/瀬戸内かわいい部)
最初はハッシュタグだけの活動でしたが、次第に仲間どうしでカメラを持って尾道に行ったりとワンデーイベントを不定期で開催するようになります。そんななか、岡山出身で東京在住、現在はフリーランスでPRの仕事をしているみなみさんが参画し、瀬戸内かわいい部のホームページを立ち上げようと提案しました。

瀬戸内かわいい部のメンバー(画像提供/瀬戸内かわいい部)
「ホームページをつくるにあたって、活動の柱を三つつくりました。一つはSNS発信。もう一つが撮影会や交流会などリアルイベントの開催。三つ目がプロジェクトです。単発ではなく、長期的に進められるプロジェクトがあったほうがいいんじゃないかと。私が東京にいて、なかなかイベントに参加できないので幽霊部員になっちゃうな……という思いもありました。デザインだったり記事を書いたりなど、離れているメンバーの関わりシロのある場所にしたかった」(みなみさん)


2019年4月開催/和菓子さんぽin倉敷美観地区(画像提供/瀬戸内かわいい部)
EVERY DENIMとの出会いその後しばらくして、やすかさんは瀬戸内発・兄弟デニムブランドEVERY DENIMの島田舜介さんに出会います。そこで島田さんから「デニムの生地を生産する過程でわずかな傷が入り廃棄されるB反のデニムがある。そういうB反デニムから小物なんかつくったら面白いかもしれない」と言われ、メンバーに報告。するとメンバーから「だったらそれをプロジェクトにしませんか」と提案されます。こうして、瀬戸内かわいい部としてデニム生地を使った小物を企画開発するプロジェクトを立ち上げることがきまりました。
ホームページをつくるため、一度自分たちの活動の方向性を整理したのが功を奏し、第三の柱であるプロジェクトが動き始めます。最初は、瀬戸内が好きな人たちで気軽にハッシュタグを共有するゆるやかなコミュニティだったのが、より積極的な活動を行う集団として踏み出した瞬間でした。
ちなみに、プロジェクトで企画開発した商品は「ピクニックシート」。紆余曲折のうえピクニックシートに落ち着いた理由について、やすかさんはこう語ります。
「まず、瀬戸内と言えば青だよね、と。波の穏やかな海の青さ。次に、どこにでも連れていけて、使えば使うほど自分の色に馴染んでいくデニムの“相棒感”みたいなものを伝えたい。そして、出来上がった商品を持っている人同士が繋がって、瀬戸内好きな人の輪が広がってほしいな、という思い。これらを総合してピクニックシートに落ち着いたんです」(やすかさん)

(画像提供/瀬戸内かわいい部)
離れたメンバー同士のやりがいをつくるには?ところが、ここからが大変でした。離れたメンバーもいるコミュニティ内で意思疎通を図るために、主にSlackを使って交流していたのですが、いざ商品を開発しようとなると、納期や定価、販売方法など決めなければいけないことが盛りだくさん。ただ瀬戸内かわいい部は企業じゃなくてコミュニティ。「企業の商品開発ならまず納期や予算から逆算して考えるけれど、そういう条件や制約はいったん抜きにして、まずは自分たちが本当につくりたいものを考えてみてほしい」とスタートしたつもりでしたが、商売となるとメンバーからシビアな長文のコメントがバンバン投稿されて、やすかさんたちが驚くことも。
それもそのはず、瀬戸内かわいい部自体が実社会でそれぞれのスキルを持って活動するフリーランスや仕事人の集まりです。自分が関わるプロジェクトであるならばなおさら、妥協したくないという思いがみんなにあったことに気づかされました。こうしてオンラインのコミュニケーションの限界に気づいた運営メンバーは、可能な限りメンバーに直接会いに行って話すことにしました。
「個人的な話は目的が決まっているオンライングループ上では言い出しづらい。ある日、東京に住む同じ世代の女性メンバーと一回会って話してみたら、瀬戸内に関わりもなく、ものづくりのスキルもないので……と引っ込みがちだったんだけれど、保育士の仕事をされていて、アクティブラーニングに強い関心があり、熱心にお話ししてくれたのが印象的で。この熱量を発揮できるきっかけさえあればもっとおもしろくなる、そのために個人の関心やスキルをもっと活かしてもらえばいいんじゃないか、とその時思ったんです」(みなみさん)

商品のリリースに先立って、一泊二日の合宿を敢行。ここで普段出会えないメンバーの意見をすり合わせたそう(画像提供/瀬戸内かわいい部)
メンバーそれぞれの想いが乗ったデニムプロジェクト。ピクニックシートを複数つなげるというコンセプトはみんなで共有していたけれど、デザイン一つとっても、例えばフリンジをつけたいとか、中綿を入れたいとか、角にはハトメかリボンか……などさまざまな意見がありました。そこで、サンプルお披露目会の直前に一泊二日の合宿を敢行。バチバチとした空気も流れたそうですが、徹底的に話し合うことで方向性が一つにまとまり、ようやく販売に踏み切ることができました。
スキルを活かしたギルド的集団に2019年に香川県高松市に家族でUターンしてきたまみこさんは現在、瀬戸内かわいい部の「スポ根」担当。お二人のお子さんを抱えながら、フリーランスでWebコンテンツのディレクションやデザインをしています。ちょうど移住したころに瀬戸内かわいい部に参画しました。
「もともと、つまらないと思って地元を離れた自分が瀬戸内を知れる場所を探していたんです。入ってみれば、結婚しても、子どもがいても、仕事があっても、挑戦していいんだと思える場所でした。絶対的に強いパワーを持った人がいなくて、みんな平等という感覚が共有されていたのも大きくて。私にも協力できることがある、それを認めて受け入れてくれるのはとてもうれしかったです」(まみこさん)
まみこさんはピクニックシートをつくるにあたって広報スケジュールを設定したり、ターゲットは誰なのか?を決めるペルソナ会議をファシリテートしたりとプロジェクトが前進するためにご自身の経験やスキルを存分に活かすことができたと言います。デザイナーなので、急遽つくらなければならないWEB用バナー広告などのデザインも担当しました。

(画像提供/瀬戸内かわいい部)
一方、やすかさんも本業はデザイナーなのでオンラインイベント用の動画 の制作はやすかさんが。他にもアパレルの仕事をしていて工場とのやりとり経験のあるメンバーがいて、仕様書をつくったり、実際の発注作業はその人が担当することに。情報発信が得意なメンバーは、瀬戸内かわいい部のnote担当、LINE @担当と、それぞれの役割が増えていき、さながらギルドのような集団になってきました。ただ、瀬戸内かわいい部はあくまで部活。商品をつくるのが目的ではなく、みんなで合宿したり、お互いのことを知ったり、瀬戸内を好きになっていくプロセスこそが重要、とやすかさんは語ります。
「みんなの居心地のいい場所にしたい、というのが一番。利益を追求するような活動でもないし、商品を完売させなければというミッションもない。一緒につくる過程そのものが楽しい時間であってほしいし、コミュニティに参加していることが誇りになるような、そんな場所にしていきたいです」(やすかさん)

移住フェアの様子(画像提供/瀬戸内かわいい部)

(画像提供/瀬戸内かわいい部)
瀬戸内かわいい部は、大人の文化祭仕事とプライベートの中間に、部活的な活動が一つある生活ってわくわくしませんか? 三人が口をそろえて言うのが「文化祭」というキーワード。デニムプロジェクトは瀬戸内かわいい部にとって、いわば「大人の文化祭」でした。年に一度ガッと集中してものづくりに打ち込む。メンバーそれぞれがそれぞれの道のプロであるからこそ、つくるもののクオリティに妥協はしません。
「でも、最初に疲れちゃったらダメだよってアドバイスされて。その人は別のコミュニティを運営していて、デザインも頑張って、noteでの発信も頑張って、すごくクオリティ高いコミュニティだったんだけれど、疲れて辞めちゃったそうです。みんなお仕事や家庭がある中で、毎日大量のSlackが続くとさすがに辛い。楽しい気持ちを維持しながら全力を注げるようにしたいです」(みなみさん)
そこで、デニムプロジェクトが1年間の活動期間を終えてひと段落したことを機に、少しのあいだ充電期間をとることにしました。デニムプロジェクトの広まりを受けて、自治体が主催する移住フェアにも呼ばれるようになった瀬戸内かわいい部。瀬戸内内外のメンバーがいるコミュニティ自体に興味を持ってもらい、コミュニティ運営に関するトークショーに呼ばれることも増えてきました。しかし、周囲の期待に過度に応えすぎないことも重要です。次のプロジェクトに全力で取り掛かるため、休めるときはしっかり休む。それくらい緩急があったほうが、コミュニティは持続しやすいのかもしれません。

(画像提供/瀬戸内かわいい部)
地域の魅力を発信するためのコミュニティというと、コミュニティビジネスとはどう違うの? という疑問も湧いてきます。NPO法人コミュニティビジネスサポートセンターのホームページによると、コミュニティビジネスとは「市民が主体となって、地域が抱える課題をビジネスの手法により解決する事業」と定義づけられています。コミュニティビジネスはあくまでビジネスであって、地域の経済的課題を解決することに重点が置かれています。
瀬戸内かわいい部はビジネスというよりは親睦団体であり、メンバー各々の自己実現、楽しいことをしたいという自発性が最も大事なポイントです。でも、地域を元気にしたり、盛り上げるのは必ずしもお金だけではないと思うんですよね。楽しそうにしている人たちのところには自然とモノ・コト・人が集まってくる。スタートして3年、まだまだ始まったばかりのコミュニティですが、瀬戸内かわいい部から地域の課題をあっと驚く方法で解決するアイデアや商品が生まれるのも、そんなに遠い未来の話ではないかもしれません。
●取材協力
所在地:調布市菊野台
所在地:横浜市港北区錦が丘東京都新宿区から神奈川県葉山町に3年前に家族で引越した会社員の最上紘太さん。ライフシフトの見直しをきっかけに移住を決意。そして、このコロナ禍でテレワーク中心となり、生活スタイルにさらに変化が訪れた。コロナで苦しむ学生アスリートを支援するため、一般社団法人「スポーツを止めるな」を仲間と立ち上げるなど活動を広げている。移住、テレワークで最上さんの暮らしはどう変わったのだろうか。
葉山でネットと波を乗りこなすダブルサーフィン生活を手に入れた
「老後に葉山を拠点にして生活することは、学生時代から思い描いていました」と語る最上さん。最上さんの高祖父にあたる明治の文化人、陸 羯南(くが かつなん)氏が葉山に移り住んで以降、そこは最上さんや、親戚みんなの憧れの地となる。小さいころから訪れていた葉山は、中学時代からラグビーに打ち込んできたスポーツマンの最上さんにとって、都会から遠くないのに、自然の中でワークアウトをしたり、スポーツを楽しめたりする理想の場所という印象が強かった。
「東京での仕事が忙しくなる一方、世間では働き方の見直しが議論を呼び、“人生100年時代”が叫ばれるようになりました。都会のド真ん中に住んで、マンションと会社を往復する生活がベストな生き方なのか、4年ほど前から真剣に考え始めたんです」と話す。
幼少期からの憧れの地・葉山への移住を自然と考えるようになっていくうちに、富士山も海も見える今の家が立つ土地を見つけ、迷わず購入。地の利を最大限に活かし、環境にも配慮した理想の家を1年かけて建てた。以来、休みの日には海でスタンドアップパドル(SUP)を楽しんだり、家族で磯遊びをしたりと、海の側での生活を満喫しているという。

最上さん宅から望む富士山(画像撮影・提供/最上紘太)
コロナ禍で、理想のテレワークのある暮らしを実現家を建てたころは、仕事は都内のオフィス勤務がメインだった。勤務先では、テレワークは今ほど浸透していなかったというが、最上さんはすでに「将来的にはテレワークを基本とした暮らしをすること」を理想に、日当たりもいい、お気に入りのスポットに書斎をつくっていた。
そんな最上さんのテレワークが本格的に始まったのは、新型コロナウイルスによる自粛生活が始まったこの3月。毎日都内へ通勤する生活からフルリモート生活に一変した。
以前は休日の朝5時から海に走りに行っていたが、出勤時間がなくなった分、始業時間前を利用した毎日の習慣に。地元のランニングコースを開拓する余裕もでき、葉山は海だけでなく山々やハイキングコースが充実していることにも気がつけたという。
こうして毎日気分に合わせて海や山などさまざまなコースを走ることで、「コロナ禍でも気分転換と健康維持が可能になりました」と続ける。さらに、家族で山登りに行ったり、海で朝食や夕食をピクニックで楽しんだりと、バケーション気分を日常に取り入れられるようになった。このことで、仕事における集中力も格段に高まったという。
「地元で過ごす時間が圧倒的に増えたことで、これまで以上に家事に関わり、自分時間も確保できています。ご近所付き合いも増え、葉山への愛着が一層深まりました」

葉山に点在するハイキングコースは、うっそうと繁る木々に囲まれ、清々しい空気が漂う。早朝はほぼ人がいないので集中して走り込めるという(画像撮影・提供/寺町幸枝)
地産地消の食卓がかなうのが三浦半島の魅力最上さんにとって、葉山生活の魅力の一つは食だ。「朝採れ野菜をはじめとする食が豊か」と最上さん。
特に「葉山しらす」は、初めて食べて以来、冷蔵庫に欠かせなくなった。朝に漁港にあがる釜揚げしらすは、新鮮かつ手ごろな値段で手に入れられる。佐島や横須賀などへ少し車を走らせればその日に水揚げされたばかりの旬の魚が手に入る。漁港まで行かなくても、地元の魚屋には朝獲れ鮮魚がたくさん並ぶ。

葉山しらすを使ったピザ(画像撮影・提供/最上紘太)
ほかにも、野菜や、養鶏場や養豚場で育てられた肉、ブランドの「葉山牛」など、三浦半島にいるだけで、豊かな食を手軽に得られるようになった。「都内に住んでいたころより、ずっと質の良い食材を手ごろに入手できるようになりました。おかげで、子どもに旬のものを感じて食事を楽しむことを教えられるし、これまで料理をしたことがなかった自分が庭でバーベキューするようになり、料理にも興味を持つようになりました」と話す。自粛期間で外食もしづらくなり、時間の余裕もできてからは、おいしいと耳にした調理法を試して、おつまみをつくり、オンライン飲み会で披露するということもできるようになったとのこと。

海では、バーベキューだけでなく、ホットサンドやホットドックをつくって朝食にしたり、近くのレストランのテイクアウトを利用して、海ディナーを楽しむこともあるという(画像撮影・提供/寺町幸枝)

(画像撮影・提供/寺町幸枝)
テレワークだからこそできた、スピード感ある動きテレワークで生まれた時間は、ボランティア活動にも活かされている。最上さんが一般社団法人「スポーツを止めるな」の共同代表理事に就任したのも、コロナ禍の最中のことだ。大学卒業後も、学生時代のラグビー仲間たちと公私共に交流が深い最上さんは、本業で培ったスポーツ分野での広報活動への造詣の深さから、コミュニケーションプロデューサーとして、立ち上げから組織運営に関わってきた。
同組織は、新型コロナによるさまざまな自粛で進学や就職問題に直面している学生たちを、トップアスリートたちが協力して支援する活動だ。その活動は、社会貢献と期待され、多くのメディアや企業から注目を集めている。
引退試合を逃した中高生ラガーマンたちのために、日本ラグビーフットボール選手会に所属するトップアスリートによる過去の試合への「解説」をつけたビデオ制作を行う「青春の宝」プロジェクトはその一つの活動だ。プロジェクト運営に必要な人選や手配、重要となるメディアへのPRなど、代表理事の3人がスピード感を持って手分けしてこなす必要が求められているというこの活動。共同理事全員が本業を持つ中で、「テレワークなくしては、この組織運営は実現しなかったと思います」と最上さんは話す。
「以前なら、全国を視野に入れた活動となると、“東京”を拠点にせざるを得なかったと思いますし、専業である必要もあったでしょう。しかし多くの動きがリモートでこなせるようになった今、世界を飛び回るトップアスリートから、全国各地で活躍するスポーツ関係者たちとパッとオンラインで繋がり、必要に応じた動きをするというやり方で、十分に日本全国を巻き込む活動は可能だと感じています」と続ける。
グッズ活用で仕事の効率もアップ本業に、ボランティアにと多忙極める最上さんが、仕事をこなす上で役立っているのが、テレワークのために購入したパソコン周辺機器やガジェットだ。
「毎日少なくとも、5、6本のオンラインミーティングをこなしているのですが、ノートパソコンとひたすら向き合っていると、思った以上に疲れることに気がつきました」と3月以来、少しずつテレワークグッズを取り入れるようになった。
例えば大型のパソコンワイドモニターとワイヤレスキーボード。オンラインミーティングで複数の資料を確認しながら打ち合わせを進めることも多く、ノートパソコンの画面ではとても管理しきれない。ノートパソコンと同期させた巨大モニターを持つことで、より効率的にミーティングをこなせるようになったという。長い日は1日10時間以上パソコンの前に座りっぱなしになる最上さんにとって、ノートパソコンスタンドやタブレットスタンド、グリーンスクリーンなどは、今や手放せないアイテムだ。

テレワークのお役立ちグッズが充実する、最上さんのデスク周り(画像撮影・提供/最上紘太)
最上さんはテレワークが始まったことで、多くの地元の仲間との繋がりが強固になり、葉山生活が充実したと感じている。その様子は東京の仲間にも伝わり、都心から引越ししたいと相談を受けることも増えているのだとか。
「コロナ禍では、いろいろなものが分断されたと言われていますが、地域のまとまりや、新たな繋がりが生まれつつあると実感しています」(最上さん)
このコロナ禍を通じてテレワークが定着した人も多い。今後このような人たちがプライベートを充実させ、仕事でもさらに活躍することで、その魅力はどんどん波及していくに違いない。一瞬欲張りに映る生活だが、これからの「ニューノーマル」になる、取材を通じてそんな期待が思わず膨らんだ。
●取材協力
所在地:台東区鳥越
所在地:品川区荏原
所在地:川崎市中原区上小田中
所在地:江東区亀戸
所在地:豊島区雑司が谷新型コロナウイルス禍により、旅行に少し躊躇してしまう日々が続いています。それならば、この機会に地元の街をめぐってみましょう。「う~ん。うちのジモト、面白い場所がないんだよな~」。そんなふうに嘆いているあなた、いま話題のミニコミ誌「金沢民景(かなざわ・みんけい)」を読んでみませんか。街の見方が変わって、フレッシュな気持ちでジモト旅を楽しめますよ。
なんと1冊わずか100円。街の見方が変わるミニコミ誌が話題
「金沢民景」とは、石川県金沢市の住民がつくりだした風景を撮影し、テーマごとに一冊にまとめたミニコミ誌のこと。

金沢の風景をテーマごとに一冊にまとめた「金沢民景」(撮影/吉村智樹)
2017年9月に第一号が発行され、現在までに17号を数えます。カラー16ページ。一冊なんと100円(税込)! という驚きのお値打ち価格。手のひらにすっぽりおさまる愛らしいA6サイズ(105×148ミリ)。街歩きのお供にピッタリです。

ポケットに入れて街歩きしやすいハンディサイズ(撮影/吉村智樹)
この「金沢民景」は、一冊ごとに「たぬき」「バス待合所」など、ひとつの視点に絞って編集されているのが特徴。

「金沢民景」……石川県金沢市の住民がつくり出した風景を収集し、テーマごとに一冊にまとめたミニコミ誌。「言われてみれば確かに不思議な光景」が豊富に収められ、物件の持ち主に取材をし、なぜこのような状態になったのか解説している(撮影/吉村智樹)

かつて陶器店の軒先に立っていた看板「たぬき」が現在は警察署に集められたという何ともユニークな光景(「たぬき」の巻より、画像提供/金沢民景)
どのテーマも暮らしに根を張っており、地元の人には見慣れた風景。それゆえに気にしなければ通り過ぎてしまうものばかりです。「妻壁(つまかべ)」「ひな壇造成」など耳慣れぬ建築用語がテーマの号があるかと思えば、「バーティカル屋根」などページを開くまで「それがなにを指しているのか分からない」謎めいた物件まで、多種多彩。

建物の短辺部分が屋根によって三角形に切り取られた外壁を「妻壁」と呼ぶ(「妻壁」の巻より画像提供/金沢民景)

金沢の地形は起伏に富んでおり斜面に沿うよう町が形成されている「ひな壇造成」と呼ばれるもの(「ひな壇造成」の巻より、画像提供/金沢民景さん)
発行しているのは金沢で設計事務所を営んでいる建築士の山本周さん(35)。
ほかにも金沢に住んでいたり、お勤めだったり、なおかつ街歩きが好きな人たちが集まって編集しているのです。
「民景」って、いったいなに? 私たちが住む街でも民景は見つけることができるの? そして民景が私たちに語りかけてくるものとは? 代表の山本周さんにお話をうかがいました。

「金沢民景」発行人の山本周さん(写真撮影/吉村智樹)
暮らしのなかから生まれたデザイン、それが「民景」――「金沢民景」をとても楽しく拝読しました。巻数の多さと、観察力に圧倒されました。金沢の街への愛情が伝わってきます。「民景」は、もともとある言葉なのですか。
山本:「 “民景”は造語です。『住民がつくった風景』の略なんです。街に住んでいる人が、暮らしのなかで必要になって生まれたデザイン、それを民景と呼んでいます。実用性と街の人々の美意識が重なってつくられた風景を誰かが評価しなければ、という気持ちで、この言葉をつくりました」

まるで用水路の上を浮かんでいるように見えるロッカー。山本さんは暮らしが生んだデザインを「民景」と呼び採集している(写真撮影/吉村智樹)
――「金沢民景」に掲載された画像を観ていると、確かに暮らしから生まれたデザインだと感じます。やむにやまれず生まれたアートというか。
山本:「いろんな格闘の跡が見えますよね。そこが人間らしくていいなと感じたんです」

強風から家を守るために玄関に設置された「風除室」(「風除室」の巻より、画像提供/金沢民景)
「金沢の街並みが大好き」――「金沢民景」の発行人である山本さんは、ご出身も金沢なのですか。
山本:「実は生まれは新潟なんです。その後、日本の各地を転々としました。幼少期は埼玉。小学校から高校時代までを神戸で過ごし、金沢美術工芸大学への進学のために金沢にやってきました。大学・大学院と、金沢には計6年いました。それから関東で就職したんですが、4年前に金沢に戻ってきました。金沢の街並みが好きで、自分に合うんです」
さまざまな時代の建物が混在する金沢――「民景」を意識するようになったのは、いつからですか。
山本:「やっぱり大学進学のために金沢に来てからですね。金沢の景色や建物を初めて見て、びっくりしたんです。金沢は戦災に遭いませんでした。なので、100年以上も前の建物がたくさん遺っています。しかも有名な建築だけじゃなくて、一般のお宅も。現在も誰かがちゃんと住んでいるんです。明治、大正、昭和、いろんな時代の建物がごっちゃに混ざっている。そのなかで生活が営まれているのが面白かったですね」

柵が取り払われたため「門柱」だけが残った。時代の経過を感じられて味わい深い(画像提供/金沢民景)

雪から車を守るため家を建てたあとに設置された「カーポート」。猫除けネットや所せましと並ぶ植木鉢など時間の経過とともに生活色に彩られていった(画像提供/金沢民景)

古民家の一階部分を鉄骨で補強し、大胆に「ピロティ」(一階に壁がなく開放空間とした建築形式)に変えてしまった(画像提供/金沢民景)
――確かにこちらのオフィスへうかがう途中の風景は、古い建物と新しい建物が混在していました。バラエティに富んでいて、きょろきょろしてしまいました。
山本:「ここ(オフィス)のまわりは武家屋敷が並んでいます。江戸時代からの風景が残っているんです。そのすぐ隣には、昭和な雰囲気の通りがあります。さらにその向こうは平成生まれのオフィス街。歩いているだけで、いろんな時代を通り過ぎることができます」

さまざまな時代の建物が混在する金沢の街をバルコニーから眺めるのが好きだという山本さん(写真撮影/吉村智樹)
――金沢はやっぱり素敵な街ですね。とはいえ山本さんは関東で就職していたんですよね。そこを捨ててまで、金沢への転居を決めたきっかけはなんですか。
山本:「北陸新幹線の長野~金沢間が開業したのが2015年。新幹線が初めて金沢に停車した日が僕の誕生日だったんです。それで勝手に金沢にご縁を感じて。『こりゃ戻らなきゃいけない』って。大学時代に『いいな』と思っていた街なみや、古くていい感じの通りが新幹線の開通とともに整備されて公園になっていたのはとても残念でしたが、時代の変わり目に立ち会えたのは貴重な経験だったと思います」

新幹線開通とともに整備された金沢駅周辺(写真撮影/吉村智樹)
「金沢民景」はサークルではなく“町内会”――「金沢民景」は山本さんひとりではなく同好の人たちが集まってつくっているそうですね。メンバーはどういう方々なのですか。
山本:「メンバーのほとんどが金沢在住です。現在は7~8人でやっています。年齢も職業もバラバラです。僕はサークルというより、町内会だと思っています。町内会って会員の世代がさまざまだし、メンバーがしょっちゅう会わないじゃないですか。けれども、なにかをつくるときには一致団結する。そういう点で町内会に近いですね。そして民景の画像は町内会の共有財産という感覚です」
――「共有財産」! 景色が財産とは、いい言葉ですね。どうやってメンバーから「あそこにいい民景がある」という情報を集めているんですか。
山本:「金沢民景のグループLINEがあるんです。それぞれ自分が撮った画像をLINE上のざっくりしたフォルダへ納めていく。そうやって情報を共有しています。みんな生活がありますから、リアルではほとんど会えません」

まるで帯を巻いているかのような見事な「腰壁」。山本さん曰く「町内会」のメンバーから情報が届く(画像提供/金沢民景さん)
――あちこちから新情報が届いて、楽しそうですね。「金沢民景」はテーマごとに一冊にまとめておられますが、最初から毎号ひとつの視点でミニコミ誌にまとめる計画だったのですか。
山本:「いやあ、はじめのころは、そこまで強い気持ちはなかったですね。ミニコミ誌にする予定すらなかったんです。特にテーマは設けず面白い物件があったらカメラにおさめ、みんなでコメントをしあっていただけでした。『この屋根、いいよね』『この柱、味があるね』って。そのうち、例えばカーポートの写真が溜まってくるなど自然に“分野分け”ができだしたんです。メンバーにひとり、ミニコミ誌制作や製本に詳しい人がいたので、『では分野ごとに一冊にまとめましょう』と。そういうふうに進んでいきました」

「曲線が美しいカーポートがある」など情報が集まってくる(画像提供/金沢民景さん)
夫が編集し、妻がデザイン。一冊ずつ手づくりで発刊――どうやって次号のテーマを決めているのですか。
山本:「傾向が近い風景がLINEグループのフォルダのなかにおよそ50枚~100枚が集まって、『この分野、おもしろそうだな』と思ったら、ですね。いい情報がたくさん集まったら一冊にまとめる、そんな流れです。ですので発行は完全に不定期です。発行しなきゃいけない日はあんまり決めずに、気が向いたら」
――ゆるそうに聞こえますが、「気が向いたら」で、3年で17冊はすごいです。そして判型が小さくて、かわいいです。
山本:「学生のころからカラーブックス(※)が好きだったんです。種類がたくさんあって、集めていくうちにひとつの世界ができあがる、あの感じが好きでした。『カラーブックスのような小さなサイズの図鑑をつくりたい』、そんな気持ちはずっとありました」

※カラーブックス……出版社「保育社」から発売されていたカラーページが豊富な文庫本のシリーズ。1962年に創刊。37年に亘り909点が刊行され、コレクターズアイテムとなっている(写真撮影/吉村智樹)
――それに温かな手づくり感が伝わってきます。
山本:「装丁はデザイナーの妻がやっていて、一冊ずつがハンドメイドなんです。なので、あんまり大量にはつくれません」
「民景」を見つけると街の特徴が浮かび上がってくる――それにしても、路上観察系のミニコミ誌で、ここまで細かくテーマ分けされたものは初めて見ました。
山本:「分野で分けると、地域の特徴が見えてきます。例えば“バルコニー”。歩いているうちに、なぜか広いバルコニーを設けている家がたくさん集まっているエリアに出くわしました。調べてみると町割(まちわり/一定範囲の土地に複数の街路や水路を整備し、それによって土地を区画整備すること)が細かくて、お庭が造りにくいのだとわかったんです。なので皆さん、バルコニーをお庭のように使って楽しんでいる。バルコニーという視点から街の特徴が分かってくる。そういう逆の発見があるんだって気がついたんです」
我が町の当たり前が通用しない。地域によって「民景」は異なる――街の景色がテーマごとに一冊にまとまると、こんなにクリエイティブな世界だったんだと驚かされます。例えば街で石臼がこんなにも再利用されているって、気がつきませんでした。
山本:「自宅で蕎麦やうどんを打っていたり、大豆をすりつぶしていたり、石臼は、かつてはどこのご家庭にもありました。生活習慣が変わって石臼を使わなくなり、捨てるわけにもいかず、再利用しているようなんです。地域によっては石臼を供養する塚があるんですよ」

植木鉢の台座になっている石臼。蕎麦を打つ習慣があった街では石臼の再利用(?)が見受けられる(「石臼」の巻より、画像提供/金沢民景さん)
――読んでいて「これはまさに金沢民景だな」と感じるテーマもありました。とりわけ「風除室(ふうじょしつ)」は、私が住む京都市内では見たことがないです。
山本:「風除室は、海風を遮ったり、山の方だと雪で玄関の開け閉めができなくなるのを防いだりするために設けてあるんです。『雪吊り』も北陸や新潟にあります。雪が少ない地方だと、ないかもしれませんね」

玄関の前にもう一室が誕生する「風除室」(「風除室」の巻より、画像提供/金沢民景)

北陸特有の水分が多く重い雪から木の枝を守るために吊るされた「雪吊り」は雪深い地方ならではの民景(「雪吊り」の巻より、画像提供/金沢民景)
民景は「境目」をつなぐ工夫のなかから生まれる――民景を見つけるコツはありますか。
山本:「“境目”ですね。なにかとなにかの変わり目を見ていく。すると、そこにいいデザインが現れる場合が多いです。川と住宅地の境目、お家とお家の境目、道路と家の境目、時代と時代の境目。そういった境界線付近を見ていくと、そこにはなにかしらの工夫がされている」
――つまり、工夫を見つけるのが大事なんですね。
山本:「 “工夫”に感心する、それが民景の面白さのひとつだと思います。斜面と平地の境目には、きっと困っている人がいる。そして、そこには悩みを解消するための工夫が生まれる」
――先ほどおっしゃった「いろんな格闘の跡」ですね。でも民景って、どこにあるのかが、分からないですよね。「ここに注目」って地図に載っているわけではないですものね。
山本:「地図に載っていれば見つけるのがラクですよね。ただ、それでも地図は見たほうがいいんです。地図を見ていると、新しい街はだいたいグリット(罫線)のようにきれいに整備されています。ところがときどき、なかにごちゃごちゃっとして整理されていない、細い路地が集まっている場所があるんです。『ん? ここはなんかあるぞ』とピンとくるんですよ。そういう場所を実際に歩いてみると、いい民景がたくさん見つかる場合が多いです」

「民景」を発見すると「なぜ、こうなったのか。理由を知りたくなる」という(写真撮影/吉村智樹)
掲載する際は撮影許可を取る。そこにドラマがある――一冊にまとめる際は、LINEグループのフォルダに集まった画像を掲載しているのですか。
山本:「いいえ。集まった情報をもとに物件がある場所を訪れ、掲載許可の取得を兼ねて、可能な限りインタビューしています。そして、どういう経緯でこの物件ができたのか、誰がなぜこの色にしたのか、風除室はなぜつくったのかなど、お話をうかがいます。そして一眼レフで撮りなおして掲載しています。残念ながら許可が取れず載せられない物件もありました。やっぱり気持ち悪いじゃないですか。突然『この屋根は何のためにあるんですか?』って訊いてこられたら。『わ、やべーやつ来た!』って思いますよね」
――取材をする側の度胸が必要ですね。
山本:「そうですね。でも、掲載許可をいただくために物件の持ち主を取材する、その行為自体はとても楽しいんですよ。例えば屋根の上に、手すりがまるで蛇のような形状のバルコニーがあったんです。それが気になって、勇気を出してバルコニーがあるお宅のインターフォンを押してみました。すると、お母さんが対応してくれて。それから2時間くらい、ずっとお母さんといろんな話をして、最後には人生相談にまで発展しました(笑)。その体験がすごく楽しくて」
――民景にはドラマがあるんですね。
山本:「お母さんは植物を育てるのが大好きだったんです。そしてお父さんが、たまたま日曜大工が趣味でした。そんなお父さんが屋根の上に陽(ひ)がよくあたっているのに気がついて。それでお父さんがお母さんのために植物を育てられるバルコニーをどんどんどんどんつくっていったそうなんです。つまり、お母さんのためだったんです。謎のバルコニーには、そういうストーリーが背景にあるんだって分かって。その分かっていく過程が面白くて。『民景には物語があるんだ。逸話をみんな聞いてやろう』と思って、それからインターフォンを押すようになりました」

手すりがうねるようなバルコニー。そこには夫婦の情愛の物語があった(画像提供/金沢民景)
今後一冊にまとめたいテーマは「雪除け屋根」――今後、刊行したいテーマはありますか。
山本:「いま気になっているのが、『雪除け屋根』。冬になるとお寺の境内に現れる三角形の屋根です。お寺の屋根に雪が積もると、塊になって下にばーっと落ちてきて危ないじゃないですか。手を合わせている人に雪の塊が当たると怪我をしかねない。そういった事故を防ぐために、三角形のトンネルのようなものを設置します。落ちてきた雪が三角屋根に当たると左右に飛び散るんです」

屋根から落ちてきた雪から通路を保護する「雪除け屋根」(画像提供/金沢民景)
――雪国特有の造形物でしょうか。初めて見ました。見た目のインパクトが強いですね。
山本:「パワーが集まってきそうですよね(笑)。この三角屋根の物件は僕も金沢に来て初めて見ました。金沢のいろんな場所にあります。ただ冬にしか登場しないのが難点で。いつか一冊にまとめたいのですが、かなり時間がかかるだろうなと思います」
――民景を見つけて画像や冊子にして保存する行為は、郷土史という観点でも民俗学としても重要なことだと感じました。
山本:「ぜひ、『民景』という言葉も皆さんに使っていただいて、ご自身の街をみていただければ」
民景とは、人々がそこで暮らした証しなんですね。取材を終えて金沢駅へ向かう道すがらの光景は、行きがけよりもさらに尊い輝きを放って見えました。
新型コロナウイルスの影響で遠出がしづらい今だからこそ、ご近所を散歩してみませんか。歩いた経験がない路地をめぐってみましょう。自宅周辺の民景をさがすことで地域の再評価へもつながります。日本各地からさまざまな表情を見せる民景が見つかれば、通り過ぎていた価値が見直され、街への愛情が生まれ、日本が元気を取り戻せる。そんな気がした一日でした。
山本周金沢民景 Webサイト/Instagram/Twitter
所在地:横浜市青葉区藤が丘
所在地:横浜市栄区笠間明治維新後、東京と横浜を結ぶ日本初の鉄道の基点駅として生まれた新橋駅。当時から場所が移動した現在も東京を代表する駅であることは変わらず、周囲にビジネス街が広がるサラリーマンの街としても知られている。今年9月には新橋駅~有楽町駅間の高架下に、明治期に建設されたレンガアーチを活かした商業エリア「日比谷OKUROJI」が誕生するなど、いまなお進化し続けている街だ。交通面ではJR各線に加え、東京メトロ銀座線、都営地下鉄浅草線、そしてお台場方面へ向かうゆりかもめ線が乗り入れている。
そんな新橋駅の30分圏内にある駅の、中古マンションの価格相場を調査。専有面積20平米以上~50平米未満の「シングル向け」と、専有面積50平米以上~80平米未満の「カップル・ファミリー向け」、それぞれの価格相場が安い駅トップ10を紹介しよう。
●新橋駅まで30分以内の価格相場が安い駅TOP10
【シングル向け】
順位/駅名/価格相場(沿線/所在地/新橋駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 鶴見 1530万円(JR京浜東北・根岸線/神奈川県横浜市鶴見区/21分/1回)
2位 京急鶴見 1580万円(京浜急行本線/神奈川県横浜市鶴見区/27分/1回)
3位 西川口 2215万円(JR京浜東北・根岸線/埼玉県川口市/30分/1回)
4位 京急川崎 2230万円(京浜急行本線/神奈川県川崎市川崎区/25分/1回)
5位 川口 2305万円(JR京浜東北・根岸線/埼玉県川口市/27分/1回)
6位 川崎 2360万円(JR東海道本線/神奈川県川崎市川崎区/15分/0回)
7位 大森町 2424.5万円(京浜急行本線/東京都大田区/23分/1回)
8位 十条 2440万円(JR埼京線/東京都北区/27分/1回)
9位 馬込 2480万円(都営浅草線/東京都大田区/17分/0回)
9位 町屋 2480万円(京成本線/東京都荒川区/23分/1回)
【カップル・ファミリー向け】
順位/駅名/価格相場(沿線/所在地/新橋駅までの所要時間/乗り換え回数)
1位 鶴見小野 2230万円(JR鶴見線/神奈川県横浜市鶴見区/29分/2回)
2位 小菅 2550万円(東武伊勢崎線/東京都足立区/29分/1回)
3位 京成高砂 2780万円(京成本線/東京都葛飾区/26分/0回)
3位 四ツ木 2780万円(京成押上線/東京都葛飾区/24分/0回)
5位 青井 2855万円(つくばエクスプレス/東京都足立区/28分/1回)
6位 国道 2930万円(JR鶴見線/神奈川県横浜市鶴見区/27分/2回)
7位 京成立石 2935万円(京成押上線/東京都葛飾区/26分/0回)
8位 六町 2980万円(つくばエクスプレス/東京都足立区/30分/1回)
8位 お花茶屋 2980万円(京成本線/東京都葛飾区/29分/1回)
8位 西川口 2980万円(JR京浜東北・根岸線/埼玉県川口市/30分/1回)
まずはシングル向けランキングを見ていこう。1位にはJR京浜東北・根岸線の鶴見駅、2位には京浜急行本線・京急鶴見駅がランクイン。この2つの駅は駅前広場をはさんで位置しており、路線こそ違えどほぼ同じ場所にある。JRの駅に直結して駅ビル「CIAL鶴見」が、京浜急行の駅にはショッピングモール「ウィングキッチン京急鶴見」がある。どちらも食品や雑貨のショップからレストランまでそろい、仕事で疲れた帰り道も電車を降りてすぐに買い物や飲食ができるのがうれしい。1位・鶴見駅からJR京浜東北・根岸線に乗れば約10分で横浜駅に行くこともできる。

鶴見駅前(写真/PIXTA)
3位はJR京浜東北・根岸線の西川口駅。駅を出ると、東口のロータリーに面して5階建ての「西川口フェスト」が見える。この商業ビルには居酒屋やネットカフェ、カラオケ店などが入っており、仕事帰りや休日の憩いの場として活躍しそう。食品や日用品の買い出しには、東口から真っすぐ伸びる通りを中心にさまざまな店舗が集まる「合格通り商店会」が役に立つ。駅西口側も多彩な商店が並び、居酒屋も多く夜までにぎやかだ。そんな西川口駅から電車で約3分、1駅ぶん東京方面へ進むと埼玉県を代表する駅の一つと言える5位・川口駅に到着する。
4位は京浜急行本線・京急川崎駅。この駅と6位のJR東海道本線・川崎駅は、1位・鶴見駅と2位・京急鶴見駅の関係性に似ている。京急川崎駅と川崎駅は、地上または地下通路を10分も歩けば乗り換えられる位置にあるのだ。川崎市を代表する駅の周辺は以前からにぎわっていたが、2000年代に入り再開発が進んでさらに発展。東急ハンズや映画館などがある「川崎DICE」、複合商業施設「ラ チッタデッラ」「ラゾーナ川崎プラザ」など大型商業施設が林立している。
また2021年春には、JR川崎駅西口側の再開発エリアに「KAWASAKI DELTA」が全体完成を迎える。同エリアには「ホテルメトロポリタン 川崎」が今年5月に先行開業したほか、来年4月には地上29階・地下2階建のオフィス棟、地上5階・地下1階にカフェレストランやフィットネス施設が入る商業棟が誕生予定だ。

川崎駅前(写真/PIXTA)
カップル・ファミリー向けトップ10には都内の駅も多数ランクイン続いてカップル・ファミリー向けランキングをチェック。1位はJR鶴見線・鶴見小野駅。駅員がいない小さな駅で、駅の西側~南側は横浜市立の高校・中学や工場が大きな面積を占めており、さらに南に行くと鶴見川が流れ込む東京湾が広がる。住宅街があるのは北側~東側。駅から直線距離で約500m圏内にスーパーやドラッグストア、コンビニ、飲食店もあるが、商業施設はあまり多くない。本格的な買い物は、2駅離れたシングル向け1位の鶴見駅まで足を延ばすといいだろう。
シングル向けランキングはトップ6まで神奈川県や埼玉県の駅だったが、カップル・ファミリー向けランキングは東京の駅も上位にランクインしている。2位は東京都足立区にある東武伊勢崎線・小菅駅、3位は東京都葛飾区の京成本線・京成高砂駅という結果になった。
3位の京成高砂駅は京成電鉄の本線のほかに金町線と成田線、そして北総電鉄が乗り入れている。いずれの路線も今回の基点駅とした新橋駅を通っていないものの、乗り換え回数「0回」で新橋駅に行くことができる。それは新橋駅を通る都営浅草線と、京成電鉄が直通運転を行っているため。京成高砂駅から京成本線に乗車すると、そのまま京成押上線~都営浅草線といつの間にか路線を変えつつ新橋駅まで1本で到着するのだ。そんな京成高砂駅は、北側に「リブレ京成 セルカ高砂」、南側には「イトーヨーカドー高砂店」と、駅両サイドにスーパーがある便利な環境。
直通運転のおかげで乗り換えせずに新橋駅まで行けるのは、京成立石駅と同額3位だった四ツ木駅と、7位の京成立石駅も同様。この2駅は隣接しており、新橋駅に停車する都営浅草線との直通運転がある京成押上線が通っている。
7位・京成立石駅の周辺は「立石仲見世商店街」や「呑んべ横丁」がかもし出す昭和レトロな風情が魅力。コンビニやスーパーもあるけれど、好きな刺身を組み合わせて買う「お刺身バイキング」が人気の鮮魚店や、餃子や揚げ物などの惣菜店、多彩な居酒屋といった個性豊かな個人商店をめぐるのも楽しいだろう。また現在、2023年春の完成を目指して駅の高架化工事が進められており、完成後は高架下の有効活用も図られる予定だとか。工事にともなってすでに街並みが変化しており、今後の発展にも期待が高まる。

呑んべ横丁(写真/PIXTA)
今回のランキングを振り返ると、新橋駅までのアクセスのよさと価格のリーズナブルさを兼ね備えた中古マンションを探す場合、シングル向けはまず神奈川県の横浜市「鶴見駅(京急鶴見駅)」か川崎市「京急川崎駅(川崎駅)」、埼玉県川口市の「西川口駅」「川口駅」という大別して3つのエリアをチェックするとよいことが判明。一方で同じ条件を希望していてもカップル・ファミリー向け物件なら、都内の足立区や葛飾区でも見つかるもよう。「どうせ都内は高いだろう」と最初からあきらめないほうがよさそうだ。
また、「新橋駅まで30分以内で、乗り換えなし」という条件で探す際、新橋駅を沿線に持つ路線に限定してしまうのはもったいないことも今回の調査から分かる。カップル・ファミリー向けランキングで紹介した京成本線や京成押上線のように、新橋駅を通る路線と直通運転が行われている路線の沿線駅も「新橋駅まで乗り換えなし」と言えるからだ。
新橋駅への直通運転がある路線を自力で探すのも楽しいけれど、さらにそこから価格相場が安い駅を探すのはなかなか困難でもある。新橋駅へのアクセス重視で物件探しを検討している人は、ぜひ今回のランキングも参考にしてほしい。
●調査概要
所在地:品川区南品川
所在地:横浜市神奈川区大口通
所在地:横浜市神奈川区大口通
所在地:横浜市西区北幸
所在地:目黒区鷹番
所在地:目黒区上目黒
所在地:千代田区岩本町住宅ローンを借りる際、「団体信用生命保険」という保険に加入するのが条件となっていることが多いのをご存じだろうか?住宅ローンを利用していながら、このことを知らないという人が3割近くもいるという。それで問題はないのだろうか?【今週の住活トピック】
「生命保険に対する消費者意識調査」結果を公開/MFS(モゲチェック)3割近くが住宅ローンに付帯される「団体信用生命保険」を知らない
オンライン住宅ローンサービスを運用するMFSが生命保険について調査を実施した。この「生命保険に対する消費者意識調査」の中で、住宅ローンを利用する際に加入が条件となる「団体信用生命保険」について調査した項目がある。
まず、住宅ローン利用者に対して、「住宅ローンに団体信用生命保険が付帯していることを知っているか」聞くと、知っていて当然であってほしいところだが、「知らない」が26.1%もいた。
次に、「団体信用生命保険の内容を踏まえて住宅ローンを選んだか」聞くと、「選んでいない」が38.8%だった。知らない人はもちろんのこと、知っている人の中にも団体信用生命保険の内容について無関心だった人が多いことが分かる結果だ。

住宅ローンと団体信用生命保険について(出典/MFS「生命保険に対する消費者意識調査」より転載)
団体信用生命保険にはさまざまな特約が付帯できる「団体信用生命保険」とは、住宅ローンを借りた人に万一のことがあったときに、残りのローンの全額を保険で弁済する保障制度。略して「団信」と言われるものだ。借りた人がローンを返せない状態のときに、家族がそのままローンを抱えることのないように、金融機関に保険金が支払われる。その保険料は、一般的に住宅ローンの金利に含まれている。
なお、持病があるなど健康上の理由で団体信用生命保険に加入できない場合には、「ワイド団信」を用意している金融機関もある。一般の団信より加入条件を緩和したものなので、持病などによってはワイド団信に加入できる場合があるが、その際に適用される金利は高くなる。
さて、問題となるのは、この「万一のことがあったとき」とはどういった状況のことか、ということだ。通常の団体信用生命保険では、住宅ローンの契約者が「死亡または高度障害の状態になったとき」が対象となる。高度障害の状態とは、例えば病気やケガによって、両眼の視力を失ったり、精神や臓器に著しい障害が残ったり、両手足を失ったりなどの場合をいう。
「生命保険(死亡保険)」が同じ内容をカバーするので、住宅ローンを借りて団体信用生命保険に加入したら生命保険を見直して、団信と重複する分だけ生命保険を減額するという人は多い。
しかし、団体信用生命保険や一般の生命保険では、高度障害に至らない病気やケガまでは保障されない。特に、日本人の2人に1人がかかるといわれる「がん」の治療では、高額な費用がかかることもある。そこで、別に「がん保険」や「医療保険」に加入して、万一に備える方法がある。
がんのリスクを考慮して、住宅ローンの団体信用生命保険に「がん特約」を付帯できる住宅ローンは多い。最近では、「3大疾病特約」を付帯して、3大疾病(がん、脳卒中、急性心筋梗塞)で所定の状態になったときにも、保障できるようにする金融機関も増えてきた。3大疾病特約の人気が高まったので、5大疾病や8大疾病、全疾病などバリエーションが増えてきたというのが、今の実態だ。これらの特約を付帯すると、保険料を支払う必要があるが、金利に一定率が上乗せされる場合と保険料を別途支払う場合がある。
団体信用生命保険の内容を知って、どこまで保障されるか確認では、特約として多くの疾病を保障するものがよいかというと、そういうわけでもない。その病気にかかれば保障されると思いがちだが、一定期間以上所定の状態が継続したときなどの条件が付いていたり免責期間があったりなど、それぞれの細かい条件を満たす必要がある。
MFSでは、この調査結果を記者向けに発表するオンライン勉強会を実施した。その資料の中に、団体信用生命保険の全体の傾向を分かりやすく整理したものがあったので、それを使って説明しよう。

団体信用生命保険の種類と保険金の支払事由(出典/MFS「『団体信用生命保険』記者勉強会」資料より転載)
図のように、一般団信やワイド団信のほかに、さまざまな特約を付けられる保険商品がある。3大疾病のうち、脳卒中と急性心筋梗塞では、一定の症状が60日以上継続したり手術を受けたりしないと保障対象にならない。また、その他の疾病を保障するものでは、病気にかかると一年間返済が免除され、働けない状態が長く続いた場合に限ってローン残高が保険金でカバーされるといったものが多い。
ここではおおよその傾向を説明したが、実際には同じような名称でも保障の内容に違いがあることも多い。例えば、一般団信でも【フラット35】に付帯する「新機構団信」では、高度障害保障が身体障害保障に拡大され、介護保障が加わるなどの違いがある。具体的に、どういった場合にどういった保障が受けられるのか、付帯する保険商品の内容をよく調べる必要がある。
団体信用生命保険の特約は本当に必要?また、団体信用生命保険の保険料の総額は、ローンの借入額や返済年数によって大きく変わる。特約を付帯したときの保険料は、金利に上乗せされることが多いが、例えば金利が0.3%上乗せになった場合に、保険料の総額がいくらになるかを試算しておこう。後から付帯することができないこと、金利上乗せタイプなら途中解約ができないことなども注意点だ。
一方、一般の生命保険や医療保険などは、加入する人の年齢や健康状態などによって保険料が変わり、保険商品の種類も多い。こうしたものと比較して、保障が重ならないように考慮し、支払う保険料と必要な保障のバランスを見て保険商品を選択することが大切だ。
今後の人生で、どんな病気にかかるかを予想することは難しい。だからといって、やみくもに保障の範囲を広げると、高い保険料を支払うことになる。健康状態やライフスタイル、貯蓄の有無などを考慮して、何を保険で備えるのがよいかを検討してほしい。
また、住宅ローンは長期間返済し続けるものなので、まずは、長期固定か変動するかなどの金利タイプと適用される金利を第一に考えて、そのうえで団体信用生命保険に特約を付帯するかどうか考えるのがよいだろう。