Mana Hashimoto

日本食革命:ローカライゼーションがアメリカ市場を席巻する理由

近年、北米における日本食の存在感は急速に高まっています。 新しい抹茶ドリンクや、行列が絶えないそば専門店、仕事帰りの人々で賑わう寿司バーのハッピーアワー、そして「手頃なオマカセ」といった新業態まで、SNS上には日々日本食 […]

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Google VenturesのUXリサーチの極意:Michael Margolisから学んだこと

先日、Google VenturesのUXリサーチパートナーである、Michael Margolisさんがゲスト出演したLenny’s Podcastのエピソードを聞く機会がありました。このエピソードでは、UXリサーチを迅速かつ効果的に行うための具体的な方法論が紹介されており、btraxのプロジェクトで実践している方法と非常に重なる内容でした。
Michaelさんと彼のチームは、ハンドブック:「Learn More Faster」にUXリサーチの極意をまとめており、実践的なアドバイスが多く記載されて…

クリエイティブエージェンシーの独自性:コンサルティングファームとの違い

「ユーザー中心デザインって、私たちが日々やっていることと同じじゃない?単に見せ方が違うだけでしょう?」 私はbtrax Inc.のビジネスプロデューサー/アカウントマネージャーです。 この仕事につく前は東京の大手外資コンサルファームで「人・組織」のコンサルタントとして働いていました。 現在、シリコンバレーで定期的に日本企業さまの社員に対してデザイン思考のワークショップを実施しています。   あるクライアントさんとは毎年2回サンフランシスコで10週間に渡り開催していますが、 そのワークショップで必ず1回はこのような質問が出ます: 「デザイン思考って、私たちが日々の業務で当たり前に行っていることと何が違うの? 私達も日々顧客にヒアリングを行いニーズを理解し、 解決策を提供するけれども?」   確かに表面的な類似点は否定できません。 しかし、私たちクリエイティブエージェンシーとの違いにはより深いレイヤーがあり、それを求めて我々の顧客とお仕事させていただいています。 特にコンサルタントの仕事を経験している私から言える違いをこの記事で紹介できればと思います。   核心的な違い:柔軟性と創造性 クリエイティブエイジェンシーと他のビジネスアドバイザリーを行う会社との核心的な違いとは何でしょう。 我々は固定されたサービス提供を持つ企業とは異なり、私たちのようなクリエイティブエージェンシーは自由でオリジナルな発想が可能です。 特定の製品に縛られることなく、高度な創造力をうまく活用して問題に寄り添うことができ、ユーザーのニーズに合わせて本当に革新的な解決策を提供します。 では、クリエイティブエージェンシーの考え方や文化とは具体的にはどのようなものでしょうか? ここでは3つの重要な要素を紹介します:   1. 深い共感と感情的洞察 従来のビジネスが単に問題解決に焦点を当てるのに対し、クリエイティブエージェンシーは共感と感情の共鳴を重視しています。 解決策を出す前に、問題を細かく分析し、その感情的な核心を探求し、ユーザーの根本的なニーズを理解します。 例えば、btraxのクライアントには日本の大手飲料メーカーやアメリカの健康サプリメントメーカー等がいます。このようなクライアントと実施するプロジェクトでは、製品の機能的側面だけでなく、消費者に喚起される感情的なつながりを理解することが目標とします。 感情の機微を理解することは、ターゲットオーディエンスと本当に共感する戦略を開発するのに役立ちます。   私は、コンサルティング業界では主に人事コンサルティングの領域に従事していました。 具体的には、クライアント組織のカルチャー改革を目的とした戦略案件に携わっていました。 通常、これらのプロジェクトでは、わずか3人程度のコンサルタントが割り当てられ、数千人規模のクライアント組織について、限られた情報に基づき戦略が提案されていました。 熟練したコンサルタントが考案した戦略は論理的には優れていましたが、実際の組織文化や従業員の声を反映できず、教科書のような形になることがしばしばでした。 2年半にわたるコンサルタントとしての経験で、現場の人々と直接話す機会がほとんどない立場にいることに大きな違和感を覚えました。 すべてのコンサルタントがこのように働いているわけではありませんが、私が所属していた大手コンサルティング会社では、クライアントの従業員と協力して何かを共同で作るよりも、解決策を提供することが重視されていました。 その反面、btraxは、ユーザーを中心に据えたクリエイティブエージェンシーとして、クライアントとの契約段階でユーザーリサーチを前提としたアプローチを定めます。 クライアントが契約時にすでにユーザー理解の難しさとその重要性を理解していることが多いため、我々も時間とエネルギーをリサーチに充てることができます。 リサーチは主にインタビュー形式で行われますが、場合によっては実際に参加者が日常生活を送っている場所を訪れ、エスノグラフィー調査も行うことがあります。 その後、リサーチから得られたインサイトを熟考し、次の段階であるブランド戦略やマーケティング戦略の構築に取り掛かります。 リサーチによって、純粋な論理では気づけない人々の感情やその時々の状況の影響など、貴重な情報を得ることができます。 これにより、高品質で豊かな情報をもとに、ユニークで他に類を見ない戦略を構築することが可能となります。   2. 失敗をチャンスと捉える 日本企業は他の世界の企業と比較して、失敗を恐れる文化が根強いです。 しかし、どれだけ入念に準備しても、一度試してみたら全然違う結果が出たことはありませんか。 リスクを回避して保守的になりがちな一般的な企業とは異なり、btraxのようなクリエイティブエージェンシーは、失敗や試行錯誤を革新の一部として受け入れます。 積極的にフィードバックを求め、アイデアを改善し、必要に応じて軌道修正を行い、真にユーザーのニーズに合う解決策を提供します。 このアプローチは、完璧を追求することに慣れているクライアントにとって初めは衝撃的かもしれませんが、最終的には継続的な改善と革新のカルチャーを理解し、btraxと共に一緒に実現します。 また、btraxの案件の進め方やbtraxを選んでいただくクライアントには、コンサルティング会社で実施する案件の場合とは大きく違う特徴があります。 大手コンサルティングファームの案件では、クライアントとコンサルタントが共同で作業するというよりも、クライアントが自社の内部で不足している部分をコンサルティング会社に委託するという形式が一般的でした。 クライアントは日常業務に忙殺されている間にコンサルタントが最終的な完成品を提供してくれることを期待していました。このような関係性では、コンサルタント側から提案する失敗や挑戦のための余裕があまりありませんでした。     一方、btraxでは、クライアントとの共創を前提にし、また、積極的にユーザーテスト実施を提案します。 例えば、あるプロジェクトでは、ユーザーリサーチからサービスのプロトタイプを作成し、さらに、サービス構築後、ユーザーテストまでサポートしました。 どのビジネスでも仮説検証は当たり前ですが、btraxの強みは、社内のUI・UXデザイナーが簡単にプロトタイプを作成できることです。 この簡易的なプロトタイプを使って迅速にテストを行うことで、クライアントやサービス提供者が予想していなかった結果を早い段階で把握し、最終的なサービスや製品に反映させることができるのです。   3. 画期的な思考 クリエイティブエージェンシーは特定の製品に拘束されることなく幅広い可能性を探求する自由があります。 私たちは従来の枠組みを超えたところにフォーカスを定め、斬新な戦略を追求します。 視野を広げ、多様な視点を取り入れることで、従来のビジネスモデルでは見過ごされていたアプローチを導き出し、ユーザーの真のニーズをもとにソリューションを定義します。 さらに、その実現のために社内外の幅広いネットワークから最高のチームを作り上げます。そうすることで、ユーザーのニーズにあったソルーションを最高のクオリティで提供することができます。 コンサルティング業界では、仕事が忙しく、1分1秒も無駄にすることができませんでした。 また、コンサルタントの文化として、ロジカルに話すことが重視され、必要ない余談をゆっくりすることは難しい環境でした。 このような仕事形態では、「余白の時間」を取ることが難しく、自分の知識の限界を感じました。 一方、クリエイティブエージェンシーで働く人々は、この「余白の時間」を心から信じています。 我々はアジェンダのない1on1やチームビルディングなど、日常的に業務以外の趣味を共有する機会を作っています。 例えば、CEOのBrandonはTechnology DirectorのTakaとお酒を飲みながら、1−2時間未来を妄想する時間を毎週のように設けています。 また、現在支援させていただいているヤンマー社とのアニメ制作の少しぶっ飛んだアイデアも、机に向かって黙々と仕事しているだけでは実現しなかったでしょう。 日々の情報交換や会話によって、このような奇抜なアイデアが実現しています。   まとめ クリエイティブエージェンシーは共感、柔軟性、創造性をブレンドさせ、従来のコンサルティングファームとの違いを際立たせています。 ユーザーのニーズに深く立ち入り、試行錯誤を受け入れ、制限ない思考をはぐくませることで、問題を解決するだけでなく、ターゲットオーディエンスとの深いつながりを築き上げます。 今後もし、複雑な課題に対する革新的な解決策を求める際は、我々のようなクリエイティブエージェンシーとの協業をぜひ検討してみてください。 我々と一緒に顧客が心を深く響かせる体験を創造しましょう。    

北米の事例に見るファンマーケティング② ファンを巻き込むサブカルチャー・エンタメの成功事例

今回の記事では、これからのエンタメ業界のマーケティングの可能性を、海外でのファンマーケティングの観点から考察していく。 前編に引き続き、btraxのマーケターのAyaka、ビジネスプロデューサーのManaの2人の対談形式でお届けする。(前編の記事はこちらから) アメリカの最近の「ファンづくり」のトレンドに注目しながら、日本と北米のどちらの文化にも精通した、Dual CultureのbtraxビジネスプロデューサーのManaの解説と併せてご共有する。 マーケティングにおける「ファン」や「推し活」の可能性 MANA: マーケティング施策ではよく「ファンづくり」のための施策が多いですが、また、「ファンであること」や「推し活」はそのファンベースが出来上がってからの次のアクションのことを指しています。 すでに出来上がっているファンコミュニティに対してプロモーションを行うことで新しいサービスを知ってもらい、そのサービスのユーザーになってもらう可能性があると思います。 AYAKA: そうなんですよ。このように、人の「これが好き」という感情をうまくサービスやプロダクトのプロモーションに結びつけて、新たな顧客を開拓する事例がありますよね。 例えば最近、世界的に有名な高級ブランドのLOEWEがスタジオジブリのアニメとコラボしたり、BURBERRYが漫画の「ブルーピリオド」とコラボしています。 また、フードデリバリーサービスの出前館が、ゲームのFINAL FANTASY内で使えるアイテムを提供するなどと、ファンベースとサービスの意外な組み合わせを見かけます。 これは、日本にサブカルチャーやオタクのカルチャーが昔から根付いているからだと思うのですが、日本とカナダで生活されたことのあるManaさんから見て、北米の傾向を教えていただけますか? 北米でのサブカルチャーのトレンド動向 MANA: そうですね。面白いことに、このエンタメやサブカルチャー領域でのファンとの新しいエンゲージメント方法は北米で特に最近強まっている傾向であると感じます。 少し北米での今までのファンエンゲージメントやファン活動は、大きく「スポーツ」と「エンタメ」という2つの業界で分かれていると考えています。 アメリカはスポーツ大国なので、スポーツファンに対するエンゲージメントのためには昔から大きな額が投資されてきていました。 例えばSuper Bowlなどの大きなスポーツイベントに向けてのキャンペーンやバーゲンだったり、豪華なパフォーマーによるハーフタイムショーなどが印象的です。 その反面、エンタメやサブカルチャーへの投資や盛り上がりは比較的少ない印象でした。 一昔前には、特にアジア人の印象が強い日本のアニメやアジア出身のボーイズバンドはマス向けのメディアに出演することはとても想像しにくい状況でした。 しかし、社会学のバックグランドを持つ私の個人的な視点からすると、昨今のダイバーシティの文脈で、エンタメやサブカルチャーへの注目が増しているのではないかと感じています。 データからもその実績が示されており、2020年から2021年の間ではアジア人のUSメディアへの露出が約2倍になっているというデータ(参考)もあります。 アメリカの人口の人種の多様性を鑑みて、アジア人をはじめとしたさまざまな国の人種や文化をモデルに起用することで、白人以外の消費者にもブランドへの親近感を感じてもらうことが狙いと言われています。 サブカルチャーのファンを取り込む、北米でのマーケティング・ブランディング事例 その社会的背景からか、最近はエンタメやサブカルチャーにフォーカスしたマーケティングやブランディング施策が目立つと感じています。 例えば、K-POPアーティストのBTSは、アメリカでの爆発的なK-POPの人気に伴って、様々な大企業や団体とのコラボが目立ちます。 企業の例だと、アメリカ発のファストフードチェーンであるMcDonald’sがパッケージや商品をBTSとのコラボを実施しました。 その時に、コラボ仕様になった、使用済みの紙のパッケージがeBayで売られたりしてSNS上でもとても話題になりました。 企業の他、国際機関も、このファンの原動力を活用しながら、組織の目的を達成しようとしています。その事例として、BTSが国連でSDGsについて若者に呼びかけを行いましたことは記憶に新しいですよね。 国境を渡った、カナダでもとても似たような事例で、カナダでの国民的に愛されている、有名ドーナッツチェーン店Tim Hortonsと、アーティストのJustin Bieberがコラボし、話題を呼びました。 BTSやJustin Bieberの事例から、これだけ、このファン層の投資による経済効果や発信力が期待されているということだと思います。 BTSの事例は特に、幼少期に北米で過ごした私からすると、北米の価値観の大きな変化を感じています。 アジア人が行っている活動に対して、これだけのマーケティング予算がつくのは、20年前だと想像もつかないことでしたので、世の中がかなり変化したと感じています。 AYAKA: 確かにそうですね!また、これだけの拡散がされていることも今までの歴史的にも珍しいですよね。 MANA: 少し話題が変わってきてしまいますが、最近このファン文化を活用したサービスで「なるほど!」と思わされた事例を、もう1つ事例紹介していいですか? 私は動画配信サービスNetflixの「ストレンジャー・シングス」というドラマの大ファンなのですが、先日サンフランシスコに出張に行った際に、なんとストレンジャーシングズの世界観を体験できる期間限定のアトラクション(参考)を体験することができました。 ネタバレになるので、具体的な内容は共有できないのですが、最後には写真撮影とグッズが購入できるものすごく充実したエリアが用意されていました。 また、90年代に流行った「フレンズ」というドラマの体験アトラクション(参考)も発表されました。 現在流行っているからではなく、昔からのファンへのアプローチと考えると、これもまた、ファンの熱量を活用して、サービス化に成功した事例として考えられるのではないでしょうか。 サブカルチャーをマーケティングに活用する相乗効果とは AYAKA: コラボのキャンペーンをすることで、ブランド側とアーティスト側双方にメリットがあることも注目すべきポイントですよね。 MANA: 確かにそうですね。詳しく教えてもらってもいいですか? AYAKA: まずブランド側のメリットは、やはり新規顧客拡大が大きいと思います。 宣伝する商品が、目新しいものやまだ使ったことのないものだったとしても、「好きなアーティストとコラボしているから」という理由で商品を手に取ってもらえたり、ブランド名を覚えてもらえたりすることが起こるからです。 また、有名人が起用されているキャンペーン自体は話題性もありますので、消費者間での口コミやSNSなどでの拡散も期待できると思います。 MANA: 確かに、そうですね!また違う側面でいうと、消費者に親近感を感じてもらうことにより、距離を縮める、または共感してもらえることを期待できますよね。 例えば、今回注目しているアニメやK-POPの話は、アメリカでは特にサブカルチャー扱いとされ、マスメディアに蔑ろにされてきましたが、有名なブランドがその文化を取り上げることは、文化を受容することと同義だと思います。 その文化が好きな人からすると、そのブランドがさらに「センスがあるブランド」という印象を持つことにつながります。 また、ブランドのメッセージや起用するアニメやインフルエンサーに親近感や共感できることは、近年の消費者にとってとても重要な価値となっているので、ここを押さえることができるブランドは利益拡大も見込めそうですね。 Z世代の心を掴むインクルーシブ・サステナブルブランドとそのコミュニケーション事例3選 まとめ 前編・後編に渡り、世の中の「ファン」たちに秘められた、マーケティングとブランディングにおける可能性をお伝えしてきた。その中で今回は特に北米圏でのファンマーケティングのトレンドや活用事例をご紹介した。 btraxは日米にオフィスを構え、アメリカ市場への展開を目指す日本の企業さまに対し、北米ターゲットへのユーザーインタビューや市場調査を行い、今後のビジネスへ活用していたくためのマーケティングやブランドストラテジー立案をサポートさせていただいている。 弊社の提供するサービスに関してより詳細を知りたい方は是非、弊社サービスサイトをご覧ください。

北米の事例から理解するファンマーケティングの現状と可能性① ユーザーリサーチから見えた、これからの企業が取り組むべき「ファンづくり」の重要性とは

btraxでは、北米のターゲットへのユーザーインタビューを通してニーズを可視化しサービスの最適化を導くユーザーインタビューを実施している。 今回は北米でのユーザーインタビューからマーケティング戦略を行ったプロジェクトの事例を取り上げ、異なる文化背景の地域でのリサーチがサービスもたらすメリットを、プロジェクトに携わったビジネスプロデューサーと、マーケターの視点からご紹介する。 マーケットリサーチだけでは分からない、ユーザーインタビューを行う価値とは MANA(ビジネスプロデューサー): btraxでは今年、ある日本のエンタメ企業さまからの案件で、アメリカでのユーザーリサーチを実施しました。その支援の内容を可能な範囲で具体的に教えていただけますか?その時の支援の内容のゴールも併せて教えてもらえると嬉しいです。 AYAKA(マーケター): そうですね、このプロジェクトのゴールは北米での新たなユーザーの獲得でした。 そのために、btraxとしては現状の北米でのユーザー層とサービスの強みを把握することと、北米でのさらなるユーザー獲得のため、将来のマーケティング施策の足がかりをご提案しました。 背景として、この企業さまが世界に向けに展開しているサービスが、北米で爆発的に流行していたのですが、なぜ北米のユーザー間で流行っているのか、そして、北米でこのサービスを使っているユーザーはどんな人かということがあまり見えていないという課題をお持ちでした。 そのために北米ユーザーへのユーザーインタビューと、インタビューに基づいたペルソナの策定、そして、それぞれのペルソナへ向けたマーケティング施策のご提案をしました。 「北米ユーザー」も一括りにするのではなく、今回の調査のゴールに合わせて、セグメントを分けて、質問を各セグメントの人に最適化しながらインタビューを行いました。 インタビューの中では、そのサービスのユーザーの日常生活の中での位置づけや、そのサービスがユーザーにとってどんな存在であったかということを聞き、サービスに対する印象から、ユーザー像を明確にしていくよう努めました。 MANA: そのインタビューからペルソナを設定したのですね。インタビューする中で見えた特徴をどのようにペルソナに落とし込んだのですか? AYAKA: はい。ユーザーリサーチを行う中で、ペルソナを作成するにあたってどんな切り口が良いかいくつか検討していたのですが、チームで議論を重ねる中で、何のためにこのサービスを利用したいかと、このサービスを利用するモチベーションに相関関係があることを発見しました。 曖昧な表現になってしまいますが、Aという目的のために利用したいと考えている人は利用するモチベーションがそれほど高くないけれど、Bという目的のために利用したいと考えている人は、利用するモチベーションがすごく高い、といったようにです。 この相関関係をもとに、それぞれのユーザーがこのサービスをどんな目的で利用したいかによってペルソナを作成しました。 それぞれのペルソナには、今後ターゲティングするために押さえるべきポイントやヒントをできるだけ入れるように意識しました。 具体的には、最初の認知獲得のタッチポイントとなりうるSNSや口コミ含め、サービスを知る情報源はどこか。 サービスを知ったとして、何がトリガーになってサービスを利用しようと思うのか、利用を始めたとしたら、何があったら継続して利用しようと思ってくれるのか、という観点を念頭に置いていました。 できるだけユーザーの生活の中にそのサービスが自然に入り込むなら?という視点を常に意識して考えました。 インタビューをする中で印象的だったのは、インタビュイーのほぼ全員が、サービスに対して口をそろえて同じ感想を述べていたことです。それが北米で人気になり、拡大している理由だとはっきりとわかるようになったので、インタビューを行った大きな収穫だったと思っています。 予想外の発見ができることもユーザーインタビューの価値 AYAKA: また、SNSの使い方にも顕著な特徴がありました。 北米圏では、コミュニティへの参加やコミュニティでのコミュニケーションのためにDiscord(オンラインコミュニティツール)が主に活用されており、一方で情報を収集するのはTwitterなどの公式アカウントで行っている、という特徴です。 実はチームでは当初、10-20代のユーザーはTikTokを利用してサービスを認知しているのではないか?と仮説を立てていたのですが、全くTikTokは出てこずでした笑 こういったバイアスが解けることも、ユーザーインタビューをする大きな価値だと思いました。 ペルソナを作成した後は、そのペルソナにとって響くメッセージは何か、そのペルソナにとって、他の競合サービスと比較して強みといえるポイントをどのように訴求したらより魅力的に見えるのかを探りました。 具体的には、今回調査の対象になったサービスとユーザーインタビューで言及された競合サービスとをマッピングし、どのペルソナに属している人がどのサービスに惹かれていたかを洗い出しました。その発見をもとに、マーケティング施策を立案しました。 MANA: ありがとうございます。色々と日本のユーザーとは傾向が違いそうで、興味深いですね。 AYAKAさんは特に日本市場やユーザーにお詳しいと思いますが、今回米国ユーザー向けの施策となりましたよね。その場合は何か工夫されたことなどありましたか? AYAKA: そうですね、自分のカルチャーや考え方と異なるユーザーに対しての施策を考えるのはぐっと難易度が上がるなと感じています。 その上で、今回工夫したことを挙げるとするならば、できるだけ現地に住む人の意見を参考にすることと、ユーザー像に近い人から施策のフィードバックをもらうことです。 その点、btraxは日米のオフィスが完全にシームレスに連携しながら業務を行なっているので、チーム内のアメリカ人メンバーに、アメリカ向けの施策の壁打ちやメッセージングのアドバイスをいただくよう相談したり、実際に似たようなサービスを使っているデザインチームのメンバーに、使う側としてフィードバックを求めたりということを徹底し、施策を随時ブラッシュアップしていきました。 この連携の強みは、ユーザーインタビューの時も感じていましたね。特に今回は北米ユーザーがインタビューの対象だったので、日米どちらのオフィスのスタッフもいながらユーザーインタビューができたことは大変心強かったです。 MANA: なるほど。それはbtraxならではの強みですね。先程では、以外とTikTokを使っていないなど、仮説外の気づきがあったかと思いますが、今回のプロジェクトで予想外の気づきは他にありましたか? 今後一層企業が注力したい「ファンづくり」の重要性 AYAKA: 今回のサービスは実はアニメのファンがユーザーに多いサービスだったのですが、人を「ファン」にさせることがビジネスにとっていかにポジティブに働くかを痛感しました。特に今回のユーザーインタビューを通してたくさん意見を聞き、感じたことが2点あります。 1つ目はこのアニメを見て感動したから、このキャラクターが大好きだから自分も二次創作をする、といった、認知拡大となる施策を消費者側が自ら行っていることです。 二次創作は日本のアニメだと少しグレーゾーンですが、ファンの間で(消費者側で)作成されたコンテンツは、消費者の理想だったり、「こうあったらいいな」が体現されているものも多く、他のファンにとっても有益なコンテンツになると思います。 企業へのエンゲージメントを高める上でも、より広く認知拡大される上でもプラスなのではと思います。 先ほど二次創作は著作権的にグレーゾーンと言いましたが、SPY×FAMILYは逆に二次創作(ファンアート)をむしろ促して、さらなる認知拡大やファンの定着に成功しているように思えます。 アニメのキャラクターの塗り絵をTwitter上で配布してファンに作ってもらうようにしていたり、公式に二次創作物のコンテストを行っていたりしました。(参考) / 夏休み企画実施中🏖️🎆 \ 8月31日(水)までの間、毎日WEBコンテンツをSNSで公開🎉👏 本日はアーニャの塗り絵企画です🖍🖍ぜひ塗って遊んでくださいね🎊 DLはこちら🔽https://t.co/xYrdPIh6FA#SPY_FAMILY #スパイファミリー pic.twitter.com/W6abkcVBJP — 『SPY×FAMILY(スパイファミリー)』アニメ公式 (@spyfamily_anime) August 3, 2022 日本のアニメがアメリカで爆発的な人気を集める理由と事例3選 2点目は、その対象が好きであるがゆえ、思わず投資をしたくなる点です。 「好きだから」「応援したいから」という気持ちはとてもポジティブで、何かに投資するときの抑制を解放するような感情だと思います。アニメだけでなく、アイドルの「推し活」でも似たものを感じます。 コロナ禍で、新たに家にいながら楽しめる趣味として推し活市場は拡大を見せているようで、中でも特に20代の40%が、アニメやアイドルの中で新たな「推し」を発見したというデータもあります(2020年4月時点)。 上記のビジネス的な側面やトレンドから見ても、企業にとっては「ファン」を作ることが今後ますます強みになりうるなということを痛感しました。 それらのファンと企業がどのようにコミュニケーションをとっていくかが、情報網の発達した現代で、より重要になっていくのかなと思います。 まとめ 今回はアメリカのユーザーを対象としたユーザーインタビューとマーケティング施策立案の実際の事例をご紹介した。 btraxは上記の例に挙げているように、日米にオフィスを持ち、日本からアメリカ市場への展開を目指す企業さまに対し、北米のターゲットへのユーザーインタビューを通してニーズを可視化しサービスの最適化を導くユーザーインタビューを実施している。 さらにそのターゲットに対しての最適なコミュニケーション方法を実現するため、マーケティング戦略立案から実行までを担当するコミュニケーションデザインを提供している。 弊社の提供するサービスに関してより詳細を知りたい方は是非、弊社サービスサイトをご覧ください。 後編では、日米市場における「ファンづくり」にフォーカスしてお伝えする。後編の記事も是非お楽しみに。

Ideas for Ideas – アイディアのためのアイディア ~Design Sprintのファシリテーターとしての学び~

btraxではサンフランシスコオフィスにて10週間かけてデザイン思考を学ぶ研修サービスを提供している。 筆者は2022年1月〜3月までその研修のファシリテーターとして参加し、クライアントと共にグローバルにも通用するサービスの案のアイディエーションをサポートしてきた。 当研修に参加したクライアントは、日系企業に向けてIT業務コンサルティングを遂行する方々だった。 今回の研修では、普段の業務とは異なり、ベイエリア在住ユーザーと共に普段の思考方法と異なるデザイン思考をベースとして課題発見とサービス案を考えていただいた。 研修を遂行していく中で「ピンとした案が出てこない」などと、クライアントの議論が煮詰まって、会話がループする瞬間を度々目撃した。 真新しいサービスや社内で新しい施策を考えようとする時、こういった「アイディアが思い浮かばない!」という状況はみなさまも経験したことがあるのではないだろうか。 そこで、今回はその10週間の研修中で、筆者がファシリテーターとして活用した、いくつかのツールや手法を「アイディアのためのアイディア」として4つ共有する。 業務をパソコン一台で実現できるようになったこの世の中では色々なメリットがある。例えば、文章やチャートを作成して業務を管理し、利便性が大幅に上がった。 その一方で、パソコン上の曲線に制限され、実は自由な発想がしづらくなっていることや創造性の表現を規制してしまっているところもある。 創造性を語る時に、英語の表現で、”Thinking Outside the Box”とあるが、これに則り、もし用意されている定義を超えたことが「創造性」として求められるのであれば、よりパソコンでは実現できない、より柔軟なツールが必要なのではないかと感じる。 それを可能とするのが、紙と鉛筆である。シンプルではあるが、究極のツールがこの2つである。 これを使って何をするか。それが、マインドマッピングとグラフィックレコーディングである。 1. マインドマッピング アイディアを生み出すにはまず明確な課題設定が必要だったりする。目の前の現状を深ぼって、課題を整理できた段階で、本当に解決するべき課題が見えてくる。 実際に向き合う課題は複雑で、1つの観点や切り口だけでは解決の糸口が見えないこともしばしばある。 そういった時に、さまざまな切り口で整理し、共通点や関連性を全体像を把握するために便利なのが、マインドマップである。 マインドマップの作成方法は簡単だ。 まず、用紙の中央にメインとなるテーマを記載する。そして、そこからテーマやデータが枝分かれしていくように情報を細分化させて書いていく。 メインテーマに関連する情報を全て記載したタイミングでマインドマップが完成する。 ここから、さらに課題の深堀をするためにおすすめするのが、サブテーマとサブテーマの関連性を表現することである。 一般的に我々は普段、上から下、右から左と情報を捉えているが、斜めの関係や粒度の違う情報の関連性を考えることがないが、マインドマップではこれが可能となる。 網羅的に情報をまとめながら、新しい発見を見つけることができるのが、マインドマップの特徴とメリットである。 問題解決に役立つ“思考の可視化”とは – ビジュアルファシリテーションのすすめ Part 2 – 2. グラフィックレコーディング、グラフィックファシリテーション また、紙と鉛筆の別の使い方として挙げられるのが、グラフィックレコーディング(グラレコ)・グラフィックファシリテーションである。 例えば、チームと課題に関して議論しているなかで、「なんだか議論が噛み合っていないかも?」という違和感を持ったことはないだろうか。 そういった場面で活躍するのがグラレコである。 グラレコやグラフィックファシリテーションとは、議論の内容をテキストではなく、絵を書きながら記録していく手法である。 状況を打開するために、互いの意見を口頭で共有し続けるのではなく、紙に脳内に想像している通りに描いてみて、まず互いの世界観を知ってみることから始めるのがおすすめだ。 また、グラレコが最も活用できるのは、抽象度の高い議論の内容を、様々なステークホルダーと目線合わせする場である。 上記の動画のように、瞬時に議論の内容を美しい絵に起こすことを本業とする人もいるが、非デザイナーにとってはこれは非常にハードルが高い。 だが、グラレコとグラフィックファシリテーションの入門文献を読むと、非デザイナーでも、棒人間などの簡単な図で問題ない、と記載されており、基礎的なメソッドは真似できるところがある。 絵に全く自信がない著者も、過去にこのようなグラレコで、どの課題に対して議論しているのか目線合わせを行った。 具体的なシーンを用いてご説明しよう。全体の状況としては、大人の友達作りにおけるサービス作成の課題整理をしていた。 それまでの議論で、自然な友達作りに欠かせないのは、あるグループやコミュニティに所属すること、また、それが鉄則であるとわかっていても、さまざまな理由でコミュニティへの所属ができていない大人たちがいることが現状であることもわかっていた。 そこで、その「さまざまな課題」に対してサービスを提供するにあたり、チーム内でもどこの課題に着目しているのかを明確にする必要があった。 話が抽象的に飛び交う中で、どの課題に着目し、サービス内容を深めていくのかを議論するために作成した絵が以下になる。 特にサービスのアイディエーションを進める中で、着目する課題によっては、個人の先入観から、同じことに関して話していると思ったら、実は違ったといった場面がある。 そういった齟齬を避けるためにも、このようにグラレコを通じて、どこに着目するのかを可視化させ、チームの目線合わせを行うことは効果的である。 ファシリテーションとは?議論を前進させる基本のメソッド 3. 五感の刺激 アイディアとは、目の前のパソコンの画面を見ているだけではなかなか生まれないものだ。 集中して一つのことに向かう時間も必要だが、その作り上げたものを客観的に見て、また別の角度で見て、別の可能性を考えることで斬新なアイディアが生まれることが多い。 ただ、「別の角度で見る」と簡単に言うが、実際に行うのはそう簡単ではない。 周りの環境は変わっていないのに、別の「角度」で物事を見るのは実はかなり難しい。 そういった時には、実際に体を動かし、五感を刺激しながら体現してみるのが効果的だ。 例えば、ランニングしている時やお風呂やシャワーに入った時に、今まで曇っていた考えが急に晴れて、ひらめきが起こったという経験をしたことはあるのではないだろうか。 また、休憩の一時の際に飲むコーヒーの匂いを嗅ぐことで、一気に肩の力が抜け、心が落ち着いた状態で考えを進めることができるという方もいるかもしれない。 違う環境に自身を置き、客観的に今までのアイディアを振り返ることで、今まで積み上げてきた考えやアイディアの活かし方などが思いつくかもしれない。 実際、五感を刺激するためにオフィスにさまざまな仕掛けを施す企業も多い。 例えばあのGoogleでは、食堂やビリヤードテーブルなど、オフィスデスク以外のアメニティを用意している。 それは、デスクに向かっている以外の時間で浮かんださまざまなアイディアを、オフィスにいる社内のメンバーにすぐに共有できるようにするためだ。 同僚とご飯食べている時、ちょっとしたビリヤードゲームをしてリラックスした瞬間に浮かび上がったアイディアがすぐにその場にいる同僚やチームに共有できるよう、そしてそれが会社の新しいイノベーションとして育てられるように会社がその環境を提供している。 著者も実際にファシリテーターとしてアイディエーションに携わった時には、クライアントにソファーやクッションが多い部屋を使うように提案した。 それまで机と椅子と座っていたチームだったが、靴を脱ぎ、体制を崩しながら議論を進めていく中で、より腹を割った議論ができたように見受けられた。着用している洋服や姿勢などで議論の質が変わったことを実感した。 コロナ疲れを克服!心身共にケアするウェルビーイング系サービス5選 4. 自分のスタイルに合った時間管理 これまで、さまざまなツールや方法を紹介したが、最後の方法として、その中で筆者が強調したいのは、自分に合ったタイミングで、かつその状況に合うツールと使うタイミングをよく理解することである。 例えば、自分は朝型なのであれば、重要な作業は朝に行う時間を事前に押さえておく。 また、その内容がさまざまな新しい案を考え出すような「発散系」の内容の場合は、自身のスケジュールにランニングをする時間も予定として設定しておく。 反対に、もし夜型なのであれば、無理して朝起きずに、自身の集中が最も保たれる時間を考慮して夜に進める、などだ。 自分のスタイルと、それゆえ自分では変えられないところを理解しておき、スケジュールに組み込んでおくと良い。 ちなみに、研究によると、右脳寄りの人間と左脳寄りの人間で、朝型か夜型かが異なることも証明されているそうだ。 選んだ時間にその時の集中したい業務に応じて、これまでご紹介してきた紙や鉛筆を使ったアイディアの可視化、五感を刺激するために場所を変えるなど、柔軟に対応していくスキルは欠かせないだろう。 まとめ Design Thinkingという言葉が聞かれて久しいが、実はその本質は考えること以上に、実践することにある。 btraxでも、アイディアを考えるだけでなく、手を動かし、実践や実装まで行うことで今までにない発想やクリエイティブなアウトプットが形にされていくことの重要性を強調している。 実際に研修やその中で行ったワークショップに参加して、筆者は、とにかく実践してみることがまた新たなアイディアや可能性を見出してくれるのではないかと考え、上記の4つの「アイディアのためのアイディア」を紹介した。 これを読むみなさんにもアイディアに煮詰まった時に、是非いつもとは違うやり方で課題に向き合ってみていただきたい。