Yasuko Katsumata

激動の年から読み解くソーシャルメディア2021年の流れ

今までも当たり前に使っていたソーシャルメディアだが、2020年は、グッと必須のコミュニケーションツールになったのではないだろうか。 そこで今回は2020年に追加された各SNSの新機能をおさらいし、ソーシャルメディアがどのような流れになってきているのか、今後どのようなポイントを掴んでおくべきかを紹介する。 2020年振り返り:主要ソーシャルメディアのアップデート全体像 まずは2020年時点での、それぞれの機能の相違や、2020年のソーシャルメディア周りのハイライトを掴んでいただきたい。アメリカでリリースされたものや、アメリカの情勢をまとめたものだが、非常に大きな動きがあったので、異なるケースでも参考にできる場面があれば幸いだ。 ① 多くのSNSの機能が似通ってきた ※ストーリーという機能名は同一ではない 上記の図は、主要ソーシャルメディアの主な機能の有無を比較した表である。基本的に全てのソーシャルメディアで、写真や動画コンテンツの投稿、共有がされるため、加工機能や、3D・360度画像といったようなメディアのタイプも充実してきており、どこも他社に負けないようしのぎを削っている。 後に2020年のアップデートとしても取り上げるが、Twitterがフリートという機能(ここではストーリーに分類)がリリースされた時は、Twitterのインスタグラム化とも言われていた。 また、インスタグラムのReel機能も、TikTokそのものによく似ているため、インスタグラムがまた他社の機能を取り入れたという声が上がった(元々、24時間で消える投稿機能は、スナップチャットのウリであったが、2016年にインスタグラムがストーリーをリリースした過去あり)。 さらに上記に加え、LinkedInまでもが、ストーリーの類の機能を出した。2020年は既視感のある機能が増え、このプラットフォームでこの機能は使うのか?と言いつつも試してみるような年だったのではないだろうか。 ② インフォデミック対策で大忙しだった 何を隠そう、2020年はパンデミックが全世界を襲った。これはインターネット上でも、情報という観点で人々を苦しませた。 「XXすると感染するらしい!」「XXが売り切れているらしい!」「XXすれば大丈夫らしい」といった信憑性が疑わしい情報に踊らされ、コロナ禍初期は本当に混沌としていた。 こういったインフォデミック(正しい情報と不確かな情報が混じり合い、人々の不安や恐怖をあおる形で増幅・拡散され、信頼すべき情報が見つけにくくなるある種の混乱状態)に対し、ソーシャルメディアをはじめとする多くのインターネット企業が素早く対策をとっていたのも2020年のハイライトだろう。 デザインの力で、新しい生活様式に安心と喜びを作るコツ:3事例 例)Facebookの大統領選挙情報センター (画像転載元) 上のような、公式の一次情報を整理した情報センターを設けたり、コロナに関する情報を含むコンテンツは注意喚起をしたりと、ソーシャルメディア上で、ユーザーへの声かけが盛んに行われた。 そして迎えた11月のアメリカ大統領選挙。コロナ禍での開催となり、全てが異例続きで、ソーシャルメディア上でも議論が巻き起こっていた。こういった政治に関連するコンテンツは、印象操作や誤情報による決断を招きかねないため、SNS各社、ユーザー共にかなりセンシティブであった(大統領の投稿が検閲にかかった場面も)。 一方で、SNSを通して投票を呼びかける動きや、大統領選挙にかける想いがシェアされ、投票率は120年ぶり66%に達するとまで予測されるほどとなった。 ③ ソーシャルメディアの力でマイノリティをサポート パンデミックで街がロックダウンする中、黒人への差別行動を反対する動き、Black Lives Matterが一気に広まった。2020年、ここまでの広がりのきっかけとなったは、2020年5月末に、ミネソタ州でおきた、白人警官の不適切な拘束によるジョージ・フロイド氏の死亡事件だ。 この事件自体が、ソーシャルメディアで拡散され、差別被害や、差別を理解し、防ぐためのアクションを起こすための情報が#BlackLivesMatterで発信されていった。 これに対して、各ソーシャルメディアも、BLM関連のコンテンツを集めたページの設置やBLM関連の団体への寄付をするなどのアクションを取っていた。 残念ながら、この問題はまだまだ根深く残っており、ソーシャルメディア側もバッシングを受けては改善していっている。例えば、Twitterでは、投稿内容に含まれる写真が自動で切り取りされる機能があるが、これに人種バイアスがかかっていることが明らかになった。 Geez…any guesses why @Twitter defaulted to show only the right side of the picture on mobile? pic.twitter.com/UYL7N3XG9k — Colin, but at home. (@colinmadland) September 19, 2020 これに対してTwitter側は、切り取り機能の自動化レベルを下げたり、ゆくゆくは投稿者が切り取られ方を選べるようにするなどの対応をしていくことを発表した。 また、インスタグラムでも同様な問題が発見された。プラスサイズモデルの黒人女性が、自分の写真を投稿すると、(同じくらいの露出度の白人女性モデル写真は引っかからないのに)ヌード規定に引っかかり、投稿が削除されるということがあった。インスタグラムは、この誤りを認識し、対処していく方針だ。 2020年振り返り:USトップSNSの追加された主な新機能 その他、各SNS別の主なアップデートをいくつかリストアップする。 Facebook スモールビジネス向け機能が拡充(Facebook Shopsでは、Facebookで商品カタログを作ったり、Facebook上で買い物ができるように。ライブコマース機能もあり) Facebook Groupsの充実(コロナの影響もありグループの月間アクティブユーザーが1年で400万人増加。グループメンバー向けのスポンサー探し、広告表示などの設定が増えたり、グループ内のトピックをハッシュタグ化し、ページのトップにタグをつけることも可能になったりしている) Instagram Reelのリリース(30秒程度の動画投稿機能で、アプリ内でも音楽の挿入、動画編集・加工ができるため、まさにほぼTikok) インスタグラムガイド機能追加(過去の投稿などをキュレートして、まとめて紹介しやすくなった機能) プロダクトタグが投稿だけでなく、広告やReelにも商品情報がつけられるように ライブの機能拡張(配信時間は4時間まで可能に, バッジ機能(投げ銭)も追加) (画像転載元:Instagramのガイド機能) Twitter フリート機能のリリース(24時間で投稿が消えるハイライト機能) 自分の投稿に対して、誰がリプライできるかの設定が可能に 音声ツイート機能テストリリース 他 LinkedInも24時間で消えるハイライト機能、ストーリーズをリリース スナップチャットはSpotlightという、動画コンテストを開始(受賞者には総額100万ドルが授与される) 新機能ではないが、TikTokは2021年に10億ユーザー(MAU)を達成する見込み 2021年、今後のソーシャルメディアまわりの流れ ここでは特に真新しいものの誕生を予測するわけではないが、以下はこれからの拡大に注目をしたい項目である。 ①コミュニティのためのソーシャルメディア x コマース x スモールビジネス/個人 ソーシャルメディアのショッピング機能充実の流れは、2020年のアップデートからもわかるだろう。オンラインショッピング自体が、パンデミックで急速に拡大していることも事実だ。実際に、アメリカ最大の商戦期と言われるブラックフライデーのEコマース売上は、24億ドルになってとShopifyが発表している(グローバル)。これは2019年の売上より75%も増加した数字となる。 パンデミックで被害を受けたスモールビジネスには、Facebook/Instagram Shopのように、ソーシャルメディア上でのビジネスサポートツールが優先的に提供された。また、店舗接客の代替として、ライブ動画で商品を紹介するライブコマースは、オーディエンスも広がり、うまくやればエンゲージメントも高くなる。また、Pinterestなどが一部取り入れているように、アプリ内で、商品のAR試着ができる機能もある。 意図せずEコマースの急速拡大となっているが、今後のソーシャルコマースは、ただの「お店の代わり」ではなく、ソーシャルメディアやインターネット空間のお買い物体験をよりリッチなものにしていくだろう。 また、こういったツールは、スモールビジネスだけでなく、クリエイターなどの個人に向けたものでもある。ソーシャルメディアプラットフォームとしては、ビックブランドよりも、スモールビジネス、ローカルビジネス、個人のクリエイターとその周りのファンといったコミュニティを支えて、自分たちのサービスも良くしていこうという姿勢が見られる。 ブランド拡大に欠かせないソーシャルコマースとは。特徴と海外トレンド紹介 ②これからのUCGはリミックス型が好まれる UGC(ユーザージェネレイテッドコンテンツ)は、ブランド側が依頼しなくても、ファンがオーガニックに商品の写真を撮って投稿してくれているコンテンツのこと。インスタグラムでは、「インスタ映え」によって挙げられるコンテンツがまさにそれである。 UGCは、消費者のリアルな声や口コミが可視化される上に、使っている様子が魅力的に見える。さらには拡散力もあるので、非常に好ましいマーケティング手法とされることが多い。 これは、ユーザーが写真映えするものを撮り、投稿する、というものだったが、昨今のユーザーによるコンテンツは、よりフォーマットが決まったリミックス型が広がりを見せている。 例えば、老舗飲料メーカーのMartinelli’sのリンゴ型のペットボトルのリンゴジュースがTikTokでバズった。これは、リンゴ型のペットボトルをかじると、本物のリンゴをかじったような音がする、という「フォーマット」を多くの人が試しては投稿していたのだ。 @kylehiggnsI got the tiktok apple juice that sounds like an apple #foryou […]

ソーシャルコマースを制するものは売上を制する。特徴とトレンド紹介

ソーシャルコマースとは「ソーシャルメディアのプラットフォーム上でオンラインショッピングができるような機能、状態」 モバイルでのショッピングをミレニアル世代の73%が重要視している Facebook/Instagramの新機能ショップ:没入感のあるショッピング機能 Pinterest:ARや画像検索などによりビジュアルに特化した機能を充実 THE YES:Stitch Fixの元COOが創業したAIレコメンドEコマースモール Shop:Shopifyからリリースされたショッピングアシスタントアプリ ECサイトへの流入獲得のためにSNSを使うのはもう古い。 そうなっていくかもしれない。ポイントはSNSが「流入獲得のため」という点。ブランドとしては究極、売上をたてたいのだから、SNSで売上を獲得できれば流入はいらない。 SNSで売上をたてるというのがまさに、ソーシャルコマースなのだ。 本記事は、ソーシャルコマースとは何か、なぜ注目なのか、Facebook/Instagram/Pinterestといった大手のソーシャルコマース動向、ソーシャルコマース関連最新サービスについて紹介する。 ソーシャルコマースとは ソーシャルコマースとは、ソーシャルメディアのプラットフォーム上でオンラインショッピングができるような機能、状態をさす。 広義には、「ソーシャルメディア上でブランドの商品を探して、商品詳細を確認して、そこからウェブサイトに飛び、購入・決済をする」というソーシャルメディアを起点としたオンラインショッピング体験だ。2005年Yahoo!が最初に使い始めたという説があり、特に新しい言葉ではないが、最近は新しい重要な特徴が定義として付け加えられ始めている。 前述の買い物ルートだと、購入は、ソーシャルメディアを一旦離脱し、ブランドの自社サイトで購入手続きを進める事になる。一方、最近付け加えられたソーシャルコマースの特徴の1つになっているのが、カートに入れてから購入の決済までを、そのソーシャルメディア上で行うことができるという点である。 これにより、顧客にとっては、よりシームレスな購入体験となり、ブランドにとっては、ブランド認知から購入までのファネルが短くすることができるのだ。 これはつまり、ソーシャルメディアの役割が、自社サイトへの流入獲得ツールということではなく、ソーシャルメディア自体がブランドのECサイトになってくるということでもある。 ミレニアル世代 x モバイルのソーシャルコマース需要に注目 オンラインショッピングの拡大についてはよく取り上げられるので皆さんもご存知だろう。グローバルのEC売上額は2019年から2022年の3年で、85%増加の6.54兆ドルになると予測されている。 もちろん、小売全体でみると、オンラインでの売上は14%程度にとどまる(2019年)が、この割合も徐々に増加していくことが期待されている(下図)。これに加え、特にミレニアル世代の73%はモバイルがオンラインショッピングで1番重要なツールだと回答もしている(Z世代63%)。 2015-2023年のグローバルリテール売上におけるECの割合。データ転載元 大手から新サービスまで各社のソーシャルコマース導入実態 こういった需要がある中、コロナによって支出が落ち込んだりはしたものの、ニューノーマルの環境で回復を図るためにバランスを保ちながらもオンラインに注力するブランドは少なくないだろう。 これを追い風にすべく、各企業がソーシャルコマースを中心とするオンラインショッピング体験を盛り上げようとしているのだ。 ソーシャルメディアとして強かった大手テック企業が、コマース機能を充実させ、コマースが得意だった企業や人たちが、ソーシャルにも広がる可能性があるコマースサービスを拡充している。それぞれの特徴を紹介する。 Facebook/Instagram:さらに没入感のあるショッピング機能をリリース 2020年5月、Facebookが新たな機能、Facebook Shopのローンチを発表(日本でも約1ヶ月後にリリース)。説明はFacebook Liveにて、CEOのマーク・ザッカーバーグ直々に。 サービス名はFacebookショップだが、FacebookとInstagramをメインとするモバイルファーストの新しいショッピング体験を提供するサービスだ。まさにコロナ禍における、小売ビジネスやスモールビジネスの売上や広告費が落ち込む中、タイムリーなデビューとなった。大まかに、新しい特徴・機能は以下の通りである(リリース時期は各国で異なるので公式HPを参照されることをお勧めします)。 1. FacebookとInstagramでオンラインストアを無料で簡単に開設できるように 今までは、既存のオンラインストアが、ソーシャルメディアチャネルの1つとしてFacebookやInstagramのアカウントを作り、ECと連携させる、というパターンだったかもしれないが、いきなりFacebookやInstagramでオンラインストアが作れるようになるのだ。 USではチェックアウト登録をしていればApp内決済も可能になる。 もちろん、ただ「箱」を用意したというだけではなく、ブランドページは、コレクションページの設定、おすすめの商品の選択、フォントや色のカスタマイズも可能。オンラインでは特に重要なブランドストーリーの構築ができる。 また、新機能発表のライブで、マークが特に訴えていたのは、スモールビジネスへの支援という側面。Facebookのリサーチによると、コロナウィルスの影響でスモールビジネスの31%が営業停止に追い込まれており、Facebook ショップはまさにスモールビジネスのための機能だと言う。 Instagram上でもショップタブが追加されており、新しいブランド発掘もしやすくなっている。 2. メッセージ機能を通した、リアル店舗のようなパーソナライズされた接客も可能に 顧客からの質問や配送のトラッキングなどのやり取りがWhatsApp、Messenger、Instagram Directでできるようになる。将来的にはメッセージツール上での購入・決済も可能になるという。 ソーシャルコマースにおいても、メッセージ機能を使ったインタラクションやパーソナライズは鍵となる。自動化するなどして、適切なタイミングで適切なコンテンツを適切な人に提供し、効率的かつ効果的に強化したいところ。 3. ライブショッピング 外出自粛期間でお馴染みとなってきたライブ配信。このライブ中に、インフルエンサーやクリエイターが紹介した商品に、商品タグをつけられるようになる。リアルタイムで、商品詳細を見ることができたり、購入ができるようになったりするのだ。2019年6月現在は試験的に一部のビジネスでリリースをしているようだ。 公式サイトより また、Facebookショップ上で買うと、ポイントがつくようなロイヤリティプログラム機能もテストしているという。 これは各ブランドの自社サイトで買うよりもお得になる可能性があるし、いろんなブランドで買い物するようになるとポイントがより早くたまるという、Facebookショップを使い続ける理由になりそうだ。 Facebookは今まで、ヒトやコトを繋げるソーシャルネットワーキングサービスとして、26億人のMAUを抱えるまでに成長してきた。その中でもユーザー同士がマーケットプレイスでモノの売り買いをしていたり、子会社のInstagramではブランドの商品を買ったりする動きが主流になっており、こういった動きをさらに加速させるためにもFacebook Shopをはじめとする今回の新機能追加に至ったようだ。 Pinterest:よりビジュアルに特化した機能を充実 Pinterestは現在アプリ内決済はサポートをしていない(2015年から2018年頃にBuyable Pinsという機能はあったが、現在は商品ページをタグつけられるプロダクトピンのみ)が、Pinterestの情報から買い物を促すための機能はある。 1. ARを使って、コスメのお試しが可能に Pinterestでは口紅の色味を、スマホから簡単に試し塗りができる。いろんなブランドの色を試すことができるので、知らないブランドでも、色ベースで選ぶことができる。また、コスメ関連の検索は、フィルターに自分の肌の色が何であるか選ぶこともできるようになっている。 今後このAR機能は口紅だけでなく、アイウェア、家具、服など色々な可能性がありそうだ。 公式サイトより 2. オフラインで見かけたものの写真検索が簡単 このお店にあるこんなランプが欲しい、これと同じようなものが欲しい、といったような、リアルに目の前にあるものを、Pinterestの画像検索でサクッと調べることできる。使ってみた感じ、かなり処理が早い。 欲しいものが見つかれば、そこから購入に進めるし、類似するピンから新しいイメージを広げていくことも可能だ。 ちなみにPinterestのボードに広告として出てくるピンは、Pinterest上にいながらも画面半分はブランドの自社サイト(しかもロードが早い)といったUIになっていた。 新規サービス系2社 上2つは巨大ソーシャルメディアにコマース要素が強化された例であるが、Eコマースメインのサービスからソーシャル要素を持ちそうな新サービスも出てきている。次の2社どちらもバック(もしくはバックグラウンド的)にはEC巨大企業がついており、デザイン・ブランディングも優れているのでぜひ注目して今後の拡大を見ていきたい。 THE YES:Stitch Fixの元COOが創業した究極にパーソナライズしてくれるEコマースモール THE YESはユーザーの好きなブランド、スタイル、サイズをベースに、AIによるおすすめ商品をフィードに出してくれることが特徴のECショッピングモール。2020年5月にローンチしたばかりだが、すでに3,000万ドルをVCから調達済み。現在はiOSのみで展開。 まずは簡単なYes No質問に答えて、パーソナライズをしてくれる。基本的には希望に1番近いものをランク付けして表示してくれるが、そのランキングにもYes Noを示せるので、好みを学習し続けてくれるのだ。 公式App Storeより また、特許申請中でもある、価格マッチ技術により、Google検索しなくても1番お得なオプションを提示してくれるのだそう。さらに、Yesした商品がセールになっている場合は通知をくれたり、送料・返品無料だったりと、価格面での訴求もある。 現在は150ほどのブランドが登録しており、ハイブランドからD2C系のブランドなど、ファッション感度の高いものが並ぶ。 THE YESはソーシャルコマースの、コマース要素が今は前面に出ている。まずはAIによるスマートショッピングの便利さ、リーズナブルさを感じてもらい信頼を獲得するところに専念をしているようだ。 しかしながら、ユーザーのマイページがあり、どんなアイテム、ブランドを好んでいて、何を買ったか記録されているあたり、シェアしてコミュニティが広がっていくことも想像できる。間違いのないギフト選びもできるようになるかもしれない。 Shop:Shopifyからリリースされたショッピングアシスタントアプリ ECプラットフォーム構築サイトのShopifyが2020年5月にリリースしたモバイルアプリ、Shop。Shopifyを使っているECサイトではShop Payのオプションが追加されており、一度カード情報を登録しておくと、他のShop対応のお店でカード情報を自動入力してくれるようになる。 公式HPより Shopのモバイルアプリをからは注文した商品の、配送状況をトラックできるようになっている(トラッキングはShopで支払いをしていない注文も、メール情報などから一括して見られる)。さらに、ブランドの「フォロー」もできるし、他の商品をShop上で見ることもできる(購入はサイトに飛ぶ)。ShopifyマーチャントになっているブランドをShopから探すこともできるのだ。 ShopもTHE YES同様、ソーシャルメディアとしてリリースしたわけではない。それよりもAmazonと対抗するためという見方がされている。大量のマーチャントを、1つの強力な検索エンジンで探せるように。 一方で、Amazonのようなマーケットプレイスになって終わるのではなく、ブランドがカスタマイズできることが増えたり、カスタマーが新しいブランドを発見したりお気に入りなどできることが増えてくると、Shopにソーシャルの要素が強くなってくるのではないかと思っている。 ちなみにShopはエシカルビジネスにも注力をしており、配送にかかった排気ガスをトラックし、その分を相殺するための森林を保護するのに貢献をするという取り組みをしている ソーシャルとコマースの境目がなくなってくるのかもしれない コロナをきっかけに、購買心理・行動に変化があったと自覚している人もいると察する。本記事で紹介したソーシャルコマースは、今までもくると言われてたけど、これを機にさらに拍車がかかるものの1つであろう。 前みたいに実店舗で売上が立たなくなり、オンラインにシフト・注力するブランド。オンラインやモバイルでの注文の楽さに気づき、習慣として定着し始めてきているカスタマー。そしてソーシャルコマースはソーシャルの延長線上に、コマースが、もしくはコマースの延長線上にソーシャルがあって、少し緊張のとけた今、こういった「楽しいこと」を消費する余裕が出てきているのではないだろうか。 ソーシャルコマースは、コロナ前のショッピングができない「代替」ではなく、より良いショッピング体験になることを期待している。 最後に、本記事で紹介したサービスはどれもUS発、USで使えるものだ。こういった最新の機能、サービスを使えばより良いブランド体験を、グローバルに展開していくことができる。これほどアメリカへのブランド進出のためのツールが揃っている状態はないだろう。 btraxではD2Cビジネスモデルを中心とした、日本ブランドのアメリカ進出をサポートしている。ブランディング、UI/UXデザイン、マーケティングなどユーザー体験を中心としたコンサルティングが強みだ。ご興味のある方はぜひお問い合わせを。 参考 ・Social commerce(Sprout Social) ・Social Commerce Market Report: How social media […]

マスクを配るな!デザインを提供しろ!災害・緊急系スタートアップサービス5選

「便利・役立つ」に留まらない、緊急対策系スタートアップ・サービス JUDY:キットだけじゃない!ローカルに合わせた災害時必需品やコンテンツの提供 Preppi:安全とデザインを届ける災害用キット Nextdoor:ご近所さんとのオンラインコミュニケーションハブ WhatsApp:WHOとタッグを組み、チャットボット機能を開始 BioIntelliSense:ウェアラブルデバイスで正確なデータを用いた遠隔治療を提供 必要なモノだけを提供したのではなく、ユーザーとブランドの結びつきを構築し、サービス体験をデザインしている点にぜひ注目を! コロナウィルスの拡大を受け、今こそ、培ってきたテクノロジー、デザイン、クリエイティビティを発揮する必要が問われている。 特に防災や災害時の医療・サポート系のサービスは、緊急度が高く、多くの人が必要と感じるサービスだ。 本記事では、アメリカの緊急時にお役立ちサービス・プロダクトを紹介するが、「ただの便利グッズ」を羅列するわけではない。必要なモノを提供するに留まっていない点にも着目してほしい。詳しい解説はまとめで。 JUDY:キットだけじゃない!ローカルに合わせた災害時必需品やコンテンツの提供 JUDYは、2019年11月にローンチした防災グッズ・サービススタートアップ。アメリカでも山火事や洪水、竜巻などの自然災害が起こるが、6割の人は特にそれらに対して備えをしていないという。 実際に、共同創業者のSimon Huckは、アメリカ国内にいる友人たちが、各地での災害被害にあっている姿を目撃した。このことから(備えや正しい知識がないことからくる)不安や脆弱性はさらなるトラウマを引き起こしてしまう、これを免れる方法を見つけ出したい!と感じ、それがJUDYスタートのきっかけとなったのだ。 JUDYの防災キットはカバーする人数別に4つのパッケージになっている。 (公式HPより) 1番大きいものは、4人家族が緊急時に3日間は生活ができる必要最低限のグッズが含まれる。懐中電灯やラジオ、防寒系グッズ、手袋、ホイッスル、応急処置系キット、食べ物、飲み物など。 キットのケースやカバンは見失いづらいオレンジ(Safety Orange)と、防災セットには使われる色かもしれないが、どこかアウトドアブランドグッズのようなスタイリッシュさすら感じないだろうか。 さらにJUDYは知識や安全といったサービスも提供している。郵便番号と電話番号をJUDYに登録すると、その地域にあった災害系の知識や、災害アラート、災害時の状況連絡などがテキストで届く。 (公式サイトより。テキスト登録画面がポップアップメニューで出てくるが、背景は暗がりになり、マウスカーソルが懐中電灯のようになる:左側) また、テキストでは災害に関する質疑応答をやり取りすることもできる。 JUDYのキットによって、物理的に準備できた感じにするのではなく、情報提供による教育やサポートなどを含む包括的なサービスにより、精神的な準備までをコーディネートしているのだ。 ちなみにJUDYのソーシャルやコンテンツの戦略は、Rifinery29やMuseum of Ice Creamなどでの経験もあるMadison Utendahlが担当している。彼女は、JUDYローンチから数ヶ月(つまり昨今のコロナウィルスがすでに流行し始めていた頃)に、JUDYのストーリーテリングのピボットをした。 コロナウィルスについて執拗に触れて危機感を与えるのではなく、どちらかというと楽観的な人との繋がりをフィーチャーするようなメッセージングにしたのだ。 (JUDY公式Instagramより) 便利な道具を提供するだけでない、その背景にある思いやストーリーが伝わってくるブランドだ。 関連記事:【医療テック×UX】スタートアップが変えた私達のヘルスケア体験 Preppi: 安全とデザインを届ける災害用キット PreppiもJUDY同様、緊急・災害向けキットのスタートアップだ。物置きの奥の方に隠したりする必要のないデザインの優れたプロダクトなのが売りだ。大手高級百貨店、NordStromでポップアップストアをやったり、アメリカのテレビ司会者・実業家のOprah Winfreyが選ぶお気に入り(2019年)にも選ばれたりと、注目のブランド。 (ケースもスタイリッシュ。Preppi公式Instagramより) ただスタイリッシュなだけではなく、キットの中身もアメリカ軍隊で使うレベルのものだ。5年は保存のきく水や食料、マッチ、懐中電灯、マスクなど3日以上は生活ができるセット内容となっている。ラインナップも豊富で、$100ほどの救急箱から、$5,000(約50万円)するフルセットなど。プロダクトはロサンゼルスで作られている。 また、ポッドキャストで災害、緊急関連のコンテンツも発信している。コロナウィルスの影響を受け、医療機関へN95のマスクを寄付しており、安全、コミュニティへのコミットメントが見られるブランドだ。 関連記事:2020年にヒットサービスを生み出す3つの秘訣 Nextdoor:ご近所さんとのオンラインコミュニケーションハブ Nextdoorは、近所の人とのプラットフォーム上で繋がり、それぞれの困りごとや手伝って欲しいことなどを持ち寄り、助け合うことができるサービス。2019年には、BenchmarkやTiger Global Managementなどから$123M調達して、企業評価額が$2.1Bとなり、ユニコーン企業としてサービス拡大中だ。 実際に、Nextdoorの本社はサンフランシスコだが、サービス提供範囲はアメリカだけでなく、イギリス、フランス、ドイツなどのヨーロッパ諸国やオーストラリアなどに広がっている。 Nextdoorを使ってやりとりされる内容は、「ローカルエージェンシーから安全情報を受け取る」「使わなくなったものの販売」「いなくなってしまったペットの情報の拡散」「ただコーヒーチャットする仲間を探す」などがある。 (利用例。公式Google Playページより) 利用するには、名前と住所を登録が必要。認証システムや厳格なプライバシーポリシーのもと情報は管理されるため、信頼できる近所の人と繋がることができる。また、登録した情報も漏洩はもちろん、広告主に共有されることもないという。 昔ほど近所の人と繋がる機会が少なくなった現代で、ちょっとしたことを共有したり、オンラインでも繋がっておいたりすることで、緊急災害時にも助け合う信頼関係の構築が期待できるサービスだ。 Nextdoorはコロナ騒動を受け、3月の2週間で、ユーザーエンゲージメントが80%増加したという。地域によって若干異なる自宅隔離のルールの確認や、その地域にあるお店の情報の入手、買い物に行けない人のサポートや地元レストランの支援などの需要があるようだ。 一方で、間違った予防方法や間違った理解を発信してしまったり、鵜呑みにしてしまったりというケースもSNSなどで問題となってきた。大型インターネットサービス系は公共機関とタッグを組んで、情報の開示をするなどして対策を行ってきたが、Nextdoorもサイト内の情報パトロールは行って対策を打っている。 助け合いのツールではあるが、そこには豊富なユーザーがいるということだけでなく、信頼のもとこれが成り立っていることがわかる。便利なだけでなく、実際に安心・安全で、心理的にも信頼できるということが緊急特需という短期間の利用だけに留まらないサービスの鍵になりそうだ。 WhatsApp:WHOとタッグを組み、チャットボット機能を開始 WhatsAppは言わずと知れた、コミュニケーションツールだ。日本ではあまり使われていないが、デイリーアクティブユーザーは全世界で500万人と言われている巨大チャットアプリ。 そんなWhatsAppも全世界的なコロナ拡大に対して信頼のおける情報の提供、誤情報の取り締まり、最新情報のキュレートなどをするWHO(世界保健機関)の公式チャットボットをローンチした。 これはもちろんWHOの情報に基づいており、メッセージベースで何を知りたいかをリクエストしたり、質問したりすることができる。 FacebookやGoogleは誤情報を投稿させない、表示しないといった制御に取り組んでいるが、WhatsAppは個人間、企業のアカウントと個人間などのメッセージは暗号化されていて、WhatsApp側が制御できる範囲が限られている。 それでも身近なコミュニケーションツールとして使われているため、1度誤情報が流れると影響が大きいことが心配されていた。特にWhatsAppは発展途上国での利用も多いため、今回WHOとタッグを組み、正しいコロナウィルスに関する知識を提供するに至った。 さらにイスラエル、シンガポール、南アフリカなどの公共機関とも協力して、よりその地域にあった情報の提供をしてく方針だという。 ちなみにチャットボット関連では、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)がMicrofsoft AzureのHealthcare botを使って、簡易ヘルスチェックのチャットボットを提供している。 軽い症状がみられる人はここで、確認をしたり、自宅治療のための情報を入手できるのと、チェック項目の結果によって次のアクションをどうするべきかの提示をしてくれる。 ※詳しい情報はリンク先のウェブサイトを参考ください。 世界的パンデミックに見舞われ、チャットボットのような遠隔かつ人工知能で人をサポートしてくれるようなテクノロジーがまさに重宝されているのだ。 BioIntelliSense:ウェアラブルデバイスで正確なデータを用いた遠隔治療を提供 BioIntelliScenseは医療向けモニタリング技術・遠隔治療テクノロジーを開発するコロラドのスタートアップ。Data as a Service(DaaS)プラットフォームとして、正確な症状の把握、遠隔治療の実現に貢献している。 BioIntelliScenseのBioSticker™はアメリカ食品医薬品局(FDA)に認可された初めての医療用バイオモニタリングデバイスだ。 (BioSticker。公式サイトより) BioStickerは万歩計くらいのサイズで、使い捨てのデバイス。1つで30日まで使える。心臓のあたりに貼り付けることで、心拍数、呼吸、皮膚温、病状の兆候、歩き方などをトラッキングできるのだ。 データはBluetoothを使って専用ハブに送信。そこからBioIntelliSenseのバイオクラウド、Remote Patient Monitoring(RPM)に送る。それをドクターが参考にし、診察をする。これで、遠隔ながら予防治療、経過観測、自宅療法などが可能になるのだ。 今や3分の1アメリカ人がフィットネストラッキングデバイス使っていると言われている。ヘルスケア機能のあるウェアラブルデバイスからデータを収集することで、コロナ状況下では以下のような効果が期待される。 より正確な感染率などのトラッキング 体温や心拍数などの正確な情報を持って、遠隔にいるドクターによる診察、治療を受ける 感染してしまったドクターの素早い検知 など 今回のパンデミックでは、医者・床数が一部地域で足りなくなっている。こういった遠隔治療が一役買うだろう。そしてこういったサービスが一般的になれば、特殊なパンデミックの状況下だけでなく、日頃の健康管理ももっと便利でシンプルな体験となる。 関連記事:2020年知らないと恥ずかしい!?米国で注目のIoTサービス5選 まとめ 便利なモノというだけではない、緊急系サービス・プロダクトを紹介した。「マスクがほしいと言われてただのマスクを提供した」のではないということがお分りいただけただろうか。 筆者も調べてみてわかった部分もあったのだが、今回紹介したサービスは緊急災害関連・医療関連でありながら、ユーザーとブランドの結びつき、関わりが高い。 通常、緊急災害関連・医療関連サービスは、人命に関わることでもあるので、正しく、深い専門性や技術が問われることが多々。そのため低関与型と分類されることがしばしばであったと思う(例:防災グッズ、薬など)。 しかしながら、今回紹介したサービスは高関与型に近いものだと捉えることができる。なぜなら専門性、便利さだけじゃないユーザーを考えた付加価値があるからだ。もう少し具体的にしてみると、以下のようなことができていることがポイントになっているのではと、筆者は考える。 今までのやり方、あり方を疑うこと(防災グッズはダサいもの。公共機関はテキストするような身近な存在ではない。治療は医者にあって病院で行うもの) 体験に基づいてサービスを作っていくこと(災害を恐れるくせに備えをあまりしていないという友人。デザイン的に隠さなくてもいいような防災グッズはないのかという問い) ユーザーの心理まで考えたデザインをしていくこと(隣人に頼るための安心感。信頼できる公共機関の情報が身近に分りやすく、その上親しみやすいコミュニケーションで入手できる) モノだけじゃない、コトを提供する(防災グッズ売って終わりではなく、正しい知識を学んで備える。健康状態を測るデバイスだけでなく、データ・遠隔技術を用いてより良いサービスを提供) こういった、高い専門性を備えている上に、高関与なサービスなのであれば、ロイヤルユーザーが長期につく(離れづらい)、まさに最強ブランドになるのではないだろうか。 我々btraxはまさにこのようなユーザーの心を引く、深く刺さるサービス開発・デザインのお手伝いをしている。また、こういったサービス作りに欠かせない、デザイン思考を中心としたマインドセットの布教活動もしている。さらにグローバルを意識したサービス作り、サービス拡大も掛け合わせてデザインできるのもbtraxの強みである。 筆者はマーケターではあるが、デザイン思考を用いたワークショップに参画したり、その考えをマーケティングにも応用したりしてきた。特に便利なもので溢れかえっている日本市場では、関与を作り出せるサービス・ブランドが選ばれるようになると考える。 ぜひ、どの業界・業種の方もこういった考え方や実際のサービス開発、ブランド作りを一緒にしていきましょう! お問い合わせはこちらよりどうぞ。 参考 ・Inside the New Tech-Savvy Emergency Kit JUDY: Everything You Need to Know […]

アメリカに学ぶ、2020年のマーケティング重要な3つのポイント

メディアや動画、音声などのコンテンツ消費、作成・提供の流れ過去最高。1日約6時間は費やす
ソーシャルコマースでさらにオンラインショッピングは進む。それに伴い店舗が提供する体験がより重要になる
幸福を求める「ウェルビーイング」。企業のマーケティング活動もウェルビーイングが長期的に愛される鍵
番外編:多様性を取り込むインクルーシブ・マーケティングはトレンドではなく当たり前に!

新しいトレンド、マーケティングツール・機能についてくのに必死で、多くのマーケターは「で、結局2020年何をやっておけばいいの…

2020年知らないと恥ずかしい!?米国で注目のIoTサービス5選

IoTは人の生活に密着しているもの。2019年に話題となった注目されているIoTを知ることで人の価値観の変化を探れる PUMAのスマートスニーカー、PUMA Fi:快適・便利なデジタル靴紐 Oculus Quest、Oculus Go:VRはここまで身近なものになってきている CasperのThe Glow Light:良い睡眠のための光を提供 Flic:様々な操作をボタン1個でシンプルに NorthのFocals:おしゃれが当たり前のスマートグラス 2020年を迎えるにあたり、ぜひ最新IoT情報をアップデートしていただきたい。IoTは人の生活により密着しており、ライフスタイルや嗜好、価値観がどのように変わっているかを垣間見ることができる。 さらに、ここ、サンフランシスコ・シリコンバレーにはb8taやTarget Open Houseといった、最新IoTガジェットをキューレートしてショールーム的な展示や販売をしているお店があり、最新IoTと触れ合う機会が多い。 アーリーアダプターも多いので、IoTに限らず常に最新テック系サービスを生み出し、育てていくエコシステムがあるのだ。 関連記事:世界が憧れるサンフランシスコ・シリコンバレーの3つの魅力 そこで今回は、IoTやテック系サービスに関して日本より数年先を行くサンフランシスコ・シリコンバレーを中心に、2019年に話題となったIoTガジェットを紹介する。 PUMAのスマートスニーカー、PUMA Fi PUMA Fiはドイツの大手スポーツメーカー、PUMAが開発したスマートスニーカーだ。独自のFit Intelligence(Fi)技術を活かして、靴紐のない、『デジタル靴紐』なるものを生み出した。 下の動画を見ていただければわかる通り、コードのようなものはあるが、結ぶ必要のある靴紐はない。靴の甲の部分にあるセンサー部分を上下にスワイプすることで、『デジタル靴紐』のきつさを何段階かで調整できる。 また、スマートフォンやスマートウォッチからの調整も可能で、色々なシーンでの活用を想定したデザインになっている。例えば、旅行の際、飛行機に乗っている時は足の浮腫が気になった時、あるいはリラックスしたい時には靴紐は緩め、歩いて移動中の時は靴紐を絞める、といった調整が簡単にできるのだ。 実はPUMAは1986年にもコンピューターを搭載したスニーカーを開発していた。それ以来、テクノロジーを駆使したスマートスニーカーを追求してきた。今回のFit Intelligence技術は、よりスマートで、軽く、もっと一般に向けたものになっているという。 実際に、2019年4月から、応募によるベータ版の販売が地域限定でされており、すでに30,000人の登録があった。販売は2020年の春を予定しており、値段は330ドルとなっている。 こういったスマートスニーカーが出ると、映画バック・トゥー・ザ・フューチャーの世界が現実になっている!と騒がれる。このプロダクトは、映画が公開された1989年に、人々が想像していたということだ。 新しいトレンドの創出は人間の想像があってのことであり、この想像が現実となり、もう数万円でも手に入るような時代になっているということがPUMA Fiの例からもお分かりいただけるだろう。 VRゲームを格段に身近なものにしたOculus Quest、Oculus Go OculusはVRヘッドセットとそのソフトウェアの開発・販売を行うスタートアップだ。 2012年にカリフォルニア州アーバインで創業すると、ゲームコンソール用VRのメジャープレイヤーとして成長を続け、2014年には20億ドルでFacebookの傘下となった。 買収後3年ほどは売上増加に繋がらず、Oculus買収はFacebookの目の上のたんこぶか、とも思われたが、2019年、Oculusが起死回生の一打として貢献することとなる。 2019年第三四半期、Facebookの広告以外による売上が2億6900万ドル(約269億万円)に達し、前年比43%の増加となった。その主な要因がまさに、Oculus Questなのだという。 Oculus Questは、より気軽で、使いやすいVR体験を提供している。今までの本格的なVRゲームは、パソコンやケーブルの接続が必要だったが、Oculus Questはパソコンも、ケーブルも不要になった。しかも価格は399ドル〜。これは、今までのゲームコンソールと比べて大きく変わらないどころか、むしろその技術力の高さを考えると、リーズナブルなのではと思ってしまう。また、スターウォーズシリーズのゲームも人気の理由だ。 さらにQuestは2019年だけで、130万台売り上げるのではないかという予測も出ている。 また、Oculusはゲームだけでなく、映画や動画を楽しむためのVRヘッドセットも開発している。Oculus Goは、映画や動画などの視聴に特化した、より持ち運びがしやすいモデルだ。別のユーザーと同時に、バーチャルでVR視聴することもできるようになっている。価格は199ドル〜なので、VR初心者でも、より手を出しやすくなってきている。 2018年5月に発売してから販売出荷数が約100万を目前にしているという情報まである。 ちなみにOculusは、ソーシャルグッドのためのVR開発にも力を入れていて、車椅子の人がいろんなところに旅行できるようなVRや、アメリカの黒人に関する歴史についてよりリアリティを持って学べるようなVRコンテンツがある。Oculusの活躍の幅はゲームに留まらないようだ。 ところで、VRヘッドセットはIoTという認識はあまりされないのかもしれないが、インターネットに繋がっているもの(ゴークル)と考えれば含まれる、という解釈で追加した。2019年を通して注目のガジェットだったことは間違いない。 睡眠を考え抜いたCasperがデザインしたライト、The Glow Light CasperはマットレスのD2C(Direct-to-Consumer)ブランドのパイオニア的スタートアップだ。年に創業し、累計約3億3970万ドルの資金調達をしてきた。2019年にはユニコーン企業の仲間入りし、IPOも噂されている。 Casperは主力製品であるマットレス以外にも、枕、ベットフレーム、シーツなど商品ラインナップを拡大してきた。そして2019年に、The Glow Lightというポータブルスマートライトをローンチした。価格は129ドル。 The Glow Lightはベッドサイドテーブルなどにも置ける、小型のポータブルLEDライトだ。人の睡眠より快適にするための様々な特徴がある。まず、点灯・消灯はライトを上下にひっくり返すことで可能だ。ライトは眠い時でも簡単にひっくり返せるくらい軽いので、従来のボタンを押したり引いたりする動作よりも簡単だ。 また、リラックスして睡眠に入れるように、The Glow Lightの光は温かみのあるものになっている。光は徐々に弱くなり、眠りに誘ってくれる。 さらに、起床の時間を設定しておけば、その時間に優しい光によるアラーム機能も果たしてくれる。時間の設定は専用アプリからカスタマイズできるようになっており、就寝の時間も入れておけば、睡眠リズムに沿って光によるサポートをしてくれるのだ。 The Glow Lightのデザインも人の睡眠を徹底的に考え抜いたものになっている。どんなインテリアにも馴染むデザインでありながら、Casperの心地よさも感じるフォルム。子供でも持ち運べるサイズ感。 光の強さは、ライトを回して調整できるのがわかりやすく便利。夜中にちょっと起きて何かするときも、ライトを軽く振れば豆電球程度の光がつく。これは、ユーザー観察やプロトタイプを重ねて開発されたようだ。 Casperはただのマットレスブランドではなく、人の睡眠をデザインするブランドだ。また、D2Cビジネスの根幹には、ユーザーとより近い距離で、彼らのフィードバックを得られるというメリットがある。 ユーザー中心でプロダクトをつくってきたCasperだからこそマットレスという主力製品に留まることなく、ここまで考え抜かれたThe Glow Lightが生まれたのではないだろうか。 ボタン1個というデジタルデバイス、Flic Flicはスウェーデン、ストックホルム生まれのスタートアップ。2013年に創業した。累計調達金額は約110万ドル。従業員も100人にも満たない規模ではあるが、今までに20万個のFlicを110以上の国で販売してきた。スマートフォンアプリや家電用のスマートボタンというシンプルなデバイスなのに、ここまで拡大している。 FlicはBluetoothでスマートフォンと連動させて使う。Flicの専用アプリから、ワンクリック、ダブルクリック、長押しといったボタンを押す動作をトリガーに、どのアクションを起こすかのカスタマイズをする。例えば、かかってきた電話をとったり、音楽を再生したりと、設定次第で使い方の幅は様々だ。 Flicは複数個、いろんなところに設置するような使い方も想定されている。つまり部屋の中だけでなく、自転車や車のハンドルなど色々な場所にFlicをつけておけば、ボタンひとつでコントロールできるもの、シーンが増える。 現在は、スマートフォンのコントロールだけでなく、家にあるスマート家電などの操作もできるようになっている。スピーカーや照明、テレビなど、異なるメーカーのデバイスであっても、Flicをリモコンに、操作できるようになるのだ。 実は2019年のCES(Consumer Electronics Show)で、GoogleがスマートボタンによるGoogleアシスタントのデモがお披露目されていた。ボタンによるスマートライフの構想が徐々に拡大・浸透してきているのだ。 関連記事:主要メディアが伝えないCES 2019で感じた5つのポイント Flicにはワンクリック、ダブルクリック、長押しの3つの操作しかない。それをスマートフォンや、スマート家電と接続することで、シンプルでシームレスなスマート体験が生まれる。 ボタンが1つしかないと聞くと、不便さや不十分さを感じるかもしれないが、ユーザーがよく使う操作に絞ることで、リモコンより格段に便利に感じるのだろう。しかもFlicは色々なところに設置できる(設置しても気にならないデザイン)。 これは少し筆者の感覚の話になるが、Flicのボタンは、「今までのボタン」っぽい感じが残っている。押した時の「クリッ」という音と感覚は、どこか無限プチプチのような、「なくても問題はないが、なぜか押したくなる感じ」がある。このような定性的な要素も、昨今のIoTガジェット激戦の中で差別化を図るための特徴となってくれていることだろう。 おしゃれスマートグラス、NorthのFocals ウェアラブルデバイスとして、スマートグラスも開発が進められてきたが、そのほとんどが「技術的にはすごいけど、なんかダサい、サイボーグ感」がなかっただろうか。 NorthのFocalsは、スマートグラスのグラス(メガネ)の部分のデザインにこだわったウェアラブルデバイスである。ぱっと見た感じは、おしゃれなメガネという印象だ。Focalはホログラム技術により、スマートフォンと連動した通知や情報をメガネのガラス部分に映し出してくれる。メガネの度あり度なし、どちらでも可能だ。 Northは2012年にカナダで生まれたスタートアップ。2019年2月には150人の従業員を解雇したり、カナダ政府からの投資が中止となるなどのニュースがあったが、同年5月には4000万ドルの資金調達へと持ち直した。現在はAmazonやIntelからの資金調達を含め、累計額は1億1960万ドルとなっている。 Northのミッションの1つは、テクノロジーやデジタルコンテンツと現実世界の境目を無くすということだ。インターネットを使っていると、現実世界から遮断される。また逆も然り。このような状況に、なるべくグラデーションをもたらそうとしている。Focalはそのためのツールだ。 (ここサンフランシスコでもNorthのショールームトラックが来ていたので筆者も試してみた) 使い方も複雑なものではない。Northのスマートリングと専用アプリと連動させれば、細かい操作や設定も可能となる。スマートリングはコントローラーになり、アプリを開かなくても、レンズに表示された項目の選択が可能になる。 Google Mapのナビ機能、Uberの配車リクエスト、カレンダーやメッセージなどの通知、音声認識によってメッセージへの返信もできるようになっている。 もちろん、耐水性もあり、UV効果やサングラスに切り替えることもできるので、普段使いが前提にデザインされていると言える。 価格は599ドル〜(2019年12月現在生産がストップしている様子)。まだ身近で使っている人を見かけたことはないが(もしかすると普通のメガネっぽすぎて気づいていないだけかもしれない)、Apple Watchのメガネ版と言われているあたり、徐々に浸透してくることが期待されている。 まとめ:IoTを考え、人の価値観を考え、サービスを作ること IoTは私たちの生活に確実に入り込んできていて、IoTに人々の新しい価値観が詰まっている 『IoT』が2017年、2018年ごろ、多用されていたが、2019年は前ほど聞かなくなった。一方でApple Watchやスマートスピーカーなど、多くの商品が世に出て、使っている人も増えてきたと感じていないだろうか。 以下、Google Trendsを見ていただいてもわかる通り、IoTは2017-2018年あたりをピークに、2019年は減少傾向にある。一方で、Apple WatchはAppleの新製品発表会のたびに増加し、通年通しても徐々に増えてきていることがわかる。 つまり、IoTというより、Apple WatchやGoogle Homeといった、より具体的な製品としてIoTが生活に浸透してきていると考えられる。 IoTを考えることは人の価値観を考えること 多くのIoTガジェットは、エンドユーザーに直接接触するものであり、彼らの生活に密着している。スマートスピーカーなどは、声で指示を受けて家事をこなし、生活を豊かにしてきた。IoTは新たな価値観を作り出してきたものだ。それと同時に、注目されているIoTを知ることは、人の価値観がどう変わってきたかを知れるきっかけでもある。 そして、価値の創造や提供に欠かせないのが「体験」だ。今回紹介したブランドはどれもものに留まらないサービス・体験の提供をしている。 ただハイテクな靴を追い求めた訳ではない、ただ機能が優れたライトを作った訳ではない。そのベースに人を考えた考察があるから、人に深く刺さり、イノベーションの創造へと繋がっているのだ。 人を中心にサービスを考える、というのは頭でわかっていても、今まで培ってきた技術力や社内の組織的な課題、時に無意識的な価値観が邪魔して上手く実行できないことも多い。btraxではそのような目的を持ちつつも、自社だけでは解決しづらいという方々を多くサポートしてきた。 […]

日本発・完全栄養麺のベースフードがアメリカに進出!グローバル展開について【COOマイケル氏インタビュー】

健康をあたりまえにする   2016年に日本から始まったベースフードが、その思いをアメリカへと広げようとしている。 ベースフードは1食で1日に必要な栄養素の3分の1が全て取れるという、”完全栄養食”ヌードルとパンを開発、販売している日本のスタートアップだ。元DeNA出身のCEO橋下舜氏が、会社員時代に「忙しくでも栄養バランスを満たせる美味しい食事が欲しい」と言う実体験からベースフードが誕生した。 創業以来、Amazonの食品人気度ランキングでも1位を獲得し、すでに累計50万食以上売り上げてきた。さらに2019年5月にはシリーズAラウンドで、総額約4億円を調達するなど、超注目のフードテックスタートアップなのだ。 そんな彼らが、創業当初から視野に入れていたグローバル展開が、ここサンフランシスコ・シリコンバレーからついに始まる。オンラインをベースとした販売をするD2Cモデルを採用する彼らは、まずはウェブサイトからの販売がメインとなるようだ。 (パロアルトにあるラーメン凪にて関係者向けにプレオープンパーティーを開催。ベースフードとのコラボラーメン、The Base Veggie King Bowlは店頭で期間限定販売中) 今回は、ベースフードUSのCOOである、Michael Rosenzweig氏(以下マイケル氏)にアメリカ進出における戦略や思いをインタビューする機会をいただいた。なぜアメリカなのか、どのような展望をお持ちか、ローカライズした点などを聞いた。 マイケル・ロセンズワグ (Michael Rosenzweig) – COO of BASE FOOD U.S., Inc. 日本で6年間コンサルタントとして働いた後、University of Pennsylvania、Wharton校でMBAを取得。卒業後にベースフードCEOや社員と知り合い、BASE FOOD USに入社。日本に関係のあることや起業家精神のある環境を求めていたので、ベースフードとの出会いはパーフェクトマッチだったと言う。 決して夢物語ではない初海外となるアメリカ進出 ベースフードのアメリカ(グローバル)進出は、創業当時から代表の橋本氏が構想していたことだ。 最初の海外進出国をアメリカにした理由を伺うと、その市場規模の大きさや、健康について改善を求める消費者が多いことも理由の一つだという。 さらに、2019年2月に行われたイベントでは、橋本氏が、アメリカ市場においては追い風を期待することを言及していた。というのも、Soylentといった「完全栄養食」や、「D2C(Direct to Consumer)」に対する親和性の高さ、空前のラーメンブームなど、日本にはないニーズがすでに存在しているからだ。 イノベーションxフードのハブ、サンフランシスコから拡大を狙う また、アメリカの中でもサンフランシスコにオフィスを構えたのは、ここがイノベーションのハブスポットであるからだとマイケル氏はいう。まさに、「主食をイノベーションし、健康をあたりまえに」をミッションにしているベースフードには欠かせない要素がここ、サンフランシスコにありそうである。 サンフランシスコの食に関する考え方が多様であることもベースフードにとっては勝機となりそうだ。ここでは、動物性食材を一切食べないビーガンや完全菜食主義のベジタリアンに加え、フレキシタリアン(基本的には菜食主義だが、たまに肉や魚も食べる人のこと)と呼ばれる、普段はお肉・お魚を食べないけど、たまには食べるというスタンスの人も多い。 ビーガンの人はもちろん、フレキシタリアンたちは、実際の動物の肉を食べなくても肉を楽しめる代用肉など新しいものを積極的に探している人たちでもある。このような人たちにもベースフードは受け入れられるのでは、とマイケル氏はいう。 「ラーメンブーム」については、人は美味しくて、遊び心があって、楽しいと思える食べ物と触れ合う傾向があるとみる。例えばベースフードがコラボレーションしているラーメン凪にもそのようなカスタマーが多い。そしてベースフードもまた、美味しくて、楽しい食事体験を提供することを目指している。 そして、サンフランシスコには様々なスキルや知識を持った優秀な人材が多く、採用面でも有利な点があるとマイケル氏はいう。 アメリカにおいても「主食のイノベーション」を目指しているベースフード。まずはここカリフォルニアを中心とした認知、人気を狙い、ベースヌードルという麺の商品で勝負する意気込みだ。 美味しい、ヘルシー、手軽なベースフードを全ての人に アメリカではドリンクタイプの完全栄養食が広がりつつあるが、ベースフードはあくまでも食事(飲み物ではなく、食べるもの)であり、調理によってアレンジができるため、よりサステイナブルな方法で健康に貢献できるのだ。また、素材には自然のものを使っている。 また、一流のシェフからお墨付きをもらっているというのもベースフードの特徴だ。シェフに認められるくらい良いものをカスタマーに届けたいという想いがあるそう。 今回のアメリカ展開でも、日本で以前からパートナーとしてコラボをしているラーメン凪のパロアルト、サンタクララ店にて、プレローンチパーティやベースヌードルの期間限定販売をしている。 シェフによって品質を保ちながらも、D2Cの「ブランドがカスタマーと直接話せる」というメリットを活かし、フィードバックを商品開発に役立てていく方向性のようだ。 (Ramen Nagiは地元でも大人気。待つこと45分、筆者もパロアルトにあるラーメン凪にてThe Base Veggie King Bowlを実食。) あくまで全ての人に届けるという想いが商品に込められている 日本ではベースヌードルに加え、ベースブレッドという完全栄養食のパンも販売しているが、アメリカではまずベースヌードルの展開となる。 (左:ベースブレッド、中心:ベースヌードル。ベースフードのウェブサイトより転載 麺商品は創業当時からベースフードが開発をしてきた商品だ。アメリカでも麺は色々な食べ方で人気のある食べ物であり、麺好きの人たちも多く、ベースフードも受け入れてもらいやすいのではとマイケル氏は期待。 ゆえに、届けたいカスタマーは全ての人となる。日本のマーケットをみたときも、アスリートから、IT系のワーカー、料理好きの食通の人など様々だ。 (特にサンフランシスコ、ベイエリアではラーメンだけでなく、アジア系の麺料理やイタリアンパスタなどが点在し、受け入れられている) アメリカも同様で、全ての人に届けたい、美味しさと栄養は両立しないと考えている人に届けたいという思いから、カスタマーを絞ることで潜在的なターゲットを排除してしまうことがないようにしているようだ。 国が違っても、美味しい食べ物が好きであるという根本はどの国の人でも変わらないと考える。 グローバルメンバーで、ローカライズを目指す もちろん、日本での成果をそのままアメリカで再現できることもあろうが、考慮しなくてはいけない日米間の違いに関しては、ローカライズなしで成功はないとマイケル氏はいう。 言わずもがな、アメリカは市場規模も文化も日本とは大きく異なる。ベースフードUSのメンバーは、アメリカ出身であっても、全員日英バイリンガルで、日本に住んだ経験があることなどからも文化的違いを理解しているため、表面的な情報からだけではわからない背景や人の特徴、文化、トレンドを考慮してビジネス展開に取り組んでいく必要があると話す。 もちろん会社全体でみても、男女比もほぼ均等、グローバルな経験が豊富で、お互いの文化や違いをリスペクトする社内カルチャーがある。 さらに、日米オフィス間で密にコミュニケーションを図ることで、それぞれの知識・スキルを共有をする。これが会社全体の拡大にテコ入れしており、ベースフードがグローバルスタートアップとして成長していく重要な鍵を握っているようだ。 コミュニティーとカスタマーと一緒にベースフードを作っていく ベースフードはラーメン凪やハンバーガーレストランとコラボレーションしてきた。アメリカでもラーメン凪から始まり、今後も積極的にコラボレーションをしていきたいと、マイケル氏は述べる。 また、上記でも述べたとおり、D2Cモデルの利点を活かし、カスタマーから直接フィードバックをもらい、コミュニケーションし、もっとカスタマーについて理解を深めてプロダクト・サービスの質を高めていく予定だ。 最後にマイケル氏より、メッセージをいただいた。 「アメリカ進出を非常に楽しみにしていました。ベースフードは品質の高い、栄養バランスの取れた自信作ですので、ぜひお試しください」。 ※英語版インタビュー記事も近日公開予定! ユーザー中心のサービスは全世界へ広まるべき 代表である橋本氏の好奇心や健康への探究心から始まり、開発が進められたベースフード。この度、創業当時意識していたというグローバルへの挑戦が始まる。 最近では3ヶ月に1回は、カスタマーのフィードバックに基づく商品改善や新商品が出ているという超・ユーザー中心のサービスだ。世界に目を向け、直向きにカスタマーと向き合う。そんなスタイルが根付いている彼らなら、アメリカでの今後の活躍にも期待大である。 btraxも、このようにグローバルを視野に、サービス開発、ビジネス展開をしてきたいというみなさんの支援をしていきたい。デザイン思考をベースとしたマインドセットの研修や、サービスを生み出す・育てるためのワークショップ、さらにサービスを展開するためのマーケティングコンサルティングを行っている。疑問、ご興味をお持ちの方はぜひお問い合わせください。

15周年を迎えるbtraxについて知っておくべき15のこと

日頃よりbtraxのオウンドメディアであるfreshtraxをご愛読いただき誠にありがとうございます! 我々btraxは2019年8月9日をもって、創立15周年となりました!シリコンバレー・サンフランシスコという、多くのスタートアップやビジネスが苦戦を強いられている環境で、15年という間、ビジネスをやってこれたのはいうまでもなく、日頃よりご支援をいただいているみなさまのおかげでございます。 感謝申し上げると共に、これからも日本とアメリカというグローバルな舞台で、みなさまのイノベーション創出やグローバルへの進出サポートに尽力してまいります! さて、今回はこんな節目の時ですから、「15周年を迎えるbtraxについて知っておくべき15のこと」と題して、btraxのあんなことやこんなことについてご紹介いたします。 1. 創業当時のウェブサイトはこんな見た目 btraxの記念すべき最初のウェブサイトは2004年に公開されました。当時流行りのフルFlashのサイトです。UIはシンプルですが、スムーズなインタラクションを実現するために、その裏には複雑なプログラミングが書かれていました。 ぜひ現在のbtrax会社HPと比較してみてください。 2. btraxでの勤続年数がCEOの次に長い社員は、犬! 実はCEO ブランドンの愛犬、クーパーはbtrax創業時から社員(犬?)として参画しているメンバーです。エイプリルフールの時は、CEOに抜擢されたこともありました。 3. btrax東京オフィスは2013年に開設 btraxはアメリカ、サンフランシスコで創業した会社です。日本法人はそのあと、2013年にスタートしました。現在は青山にオフィスを構えております。 (東京オフィスには素敵なルーフトップも!) 4. btraxという会社名はCEOブランドンの音楽好きから 意外と知られていないbtraxという名前の由来。これは、ブランドンの音楽好きからきています。実際に彼は、デザインを勉強する前に音楽を勉強していたこともあるくらいです。 btraxのtraxは音楽のトラックから。bはレコードの「B面」に由来しています。A面がbtraxのクライアント、B面がそれを引き立てるbtraxを表しており、創立以来ずっとbtraxです!ロゴもレコードっぽくなっているのにお気づきいただけたでしょうか。 5. btrax卒業生の4名がスタートアップを始めている btraxは、決して大きい会社ではありません。なので社員全員が責任感と権限をもち、スタートアップ的スピード感を持ってビジネスを行っています。また、サンフランシスコ・シリコンバレーというお土地柄もあってか、btraxの元社員が、卒業後に起業するパターンも少なくないのです。 起業されたbtrax卒業生の方々には、過去、freshtraxでインタビューさせていただいたこともあります。これまでに少なくとも5名の元スタッフ/インターンが起業しています。今後もこんな”btraxマフィア”がどんどん増えていく予定です。 (右から現IN FOCUS CEO 井口忠正氏、ブランドン、現Goodpatch CEO 土屋尚史氏) 関連記事:デザイナーに必要なのはセンスか努力か – 井口忠正×Brandon 2人のデザイン会社CEOが語るデザイナーに必要な才能 関連記事: レールを外れた僕らは自分たちのレールをデザインした 関連記事:2人のインターン生が与えてくれた事 6. 100名以上の海外アントレプレナーたちをサンフランシスコへと誘致 btraxは2010年より、Japan NightやAsian Nightといったスタートアップピッチイベントを企画、開催してきました。その主たる目的は、海外のアントレプレナーたちを、ここサンフランシスコへ誘致し、よりグローバルを意識したスタートアップの成長を支援するためです。 さらに、2016年からは福岡市とパートナーシップを組み、起業家育成プログラムを実施。日本での研修に加え、サンフランシスコでも現地でデザイン思考やピッチなどに関する理解を深めていただき、グローバルアントレプレナーへの道を支援しています。 詳しくは事例紹介もご覧ください。 7. freshtraxは日米通算1,263の記事を公開 2009年から始まったbtraxのオウンドメディアfreshtrax。お陰様で、freshtraxを通してbtraxを知っていただくことも非常に多いです。これからもみなさんに愛読していただけるように、サンフランシスコ・シリコンバレーから新鮮かつユニークな情報を発信し続けます! btraxのTwitterやFacebookアカウントではfreshtraxの最新情報をいち早くお届けしております。 8. btraxがこの1年で使ったポストイットの枚数は約43,720枚 btraxが提供するイノベーション・ブースタープログラム(グローバルイノベーション創出を習得することを目的とした、デザイン思考に基づくワークショップ型プログラム)では、ブレインストーミングやアイディエーションといった、ポストイットを使ってアウトプットをだすシーンが多々あります。 気がつけば約43,720枚のアイデアを出していました! 9. btraxの会議室にはフォントの名前がついている サンフランシスコ本社はサンフランシスコ市内でもスタートアップが軒を連ねるSOMA(ソーマ)と呼ばれるエリアにあります。執務エリアに加えて、6つの会議室があるのですが、その全てにタイポグラフィーの名前がついています。 その理由は「btraxはデザイン会社だから」。タイポグラフィーはデザインにおけるもっとも重要な要素の1つであります。また、btraxは「全ての社員が皆、デザイナーである」というフィロソフィーを持っています。会議室の名前からも、そのことを思い起こさせてくれるのです。 10. btraxのハロウィンは毎年ガチ度が増している btraxには非常にクリエイティブなメンバーがいます。そのスキルは仕事だけでなく、社内イベントでも発揮されており、恒例行事であるハロウィンパーティではコスチューム大会が激戦になっています。 11. 毎週カルチャーリーダーへの表彰がある btraxでは毎週、会社のコア・バリューに貢献した社員を表彰しています。これはCEOや人事が選ぶといったものではなく、社員が社員を選びます。もちろん、社員からCEO、人事が選ばれることもあります。 (btraxのコアバリューである「Empowered by Creativity」「Take Ownership」「Communicate and Collaaborate」「Be Playful」の観点で選ばれ、社員同士、上のカルチャーカードを送り合う。) 12. btraxはビジネスの軸を3度大きく変えてきた btraxはもともと、ウェブデザインの会社として創業しました。そのあと、よりグローバルを意識した、マーケティングやブランディングを行うようになります。そして、現在、デザインはより広義なもの になり、UXデザインを中心としたビジネスへと転換しました。 現在は、シリコンバレーと東京のネットワークを活かし、グローバルを意識したイノベーション創出への貢献を強みとするデザイン会社へと成長してまいりました! 13. 2014年からイノベーション・ブースターサービスを開始 btraxの中核サービスである、イノベーション・ブースターサービスは、3日間から2ヶ月でグローバル・イノベーションの創出プロセスを習得することを目的としたサンフランシスコで行うワークショップ型プログラムです。参加者は累計200名以上。 現在も株式会社野村総合研究所(NRI)様やSOMPOホールディングス株式会社様など、多くの企業様から参加いただいています。 詳しくは過去事例もご覧ください。 14. 2018年からデザインスプリントサービスを開始 Google Venturesが、サービス開発の高速手法として発表したデザインスプリント。btraxでも、デザイン思考をベースとした、デザインスプリントサービスを提供しています。 1〜2週間という短時間でプロダクトアイデアの検証やプロトタイプ作成、リサーチ、課題整理、ソリューション決定、プロトタイプ構築、ユーザーテスト等を実施していきます。 関連記事:【デザインスプリント入門】話題の高速サービス開発法とは 15. そして15周年の年、CEOブランドンの抱負はbtraxのビジョンステートメントを一新 15周年という節目の年に、btraxのビジョンステートメントもアップデートいたします! ビジョン:“Provide inspiring experiences” – ワクワクする体験を提供する ミッション:“Inspire innovation through the power of design” – デザインの力でイノベーション創出に貢献する タグライン: “Design to Inspire” これからもbtraxをどうぞよろしくお願いいたします!! btraxのサービスを詳しく知りたい方、サービスにご興味をお持ちの方、お気軽にこちらまでお問い合わせください。 また、btraxでは現在、一緒にイノベーション創出を担ってくれる仲間も募集しております♪

LGBTプライド月間に知っておきたいインクルーシブマーケティング

時代の変化とともにマーケティングに求められる効果とその内容に大きな変化が生まれてきている。 例えば、あなたが家庭用食器洗剤ブランドの広告ビジュアルを考えていたとして、どのようなシーンをイメージして作るだろうか。 もし台所にいる女性を想定していたら、あなたのマーケティング手法は時代にあっていない可能性がある。なぜなら、現代において台所に立つのは必ずしも女性とは限らないからである。 (あなたのマーケティングは時代遅れかもしれない。画像転載元) ダイバーシティー実現にはマイノリティへの配慮を ダイバーシティという言葉が様々なところで使われるようになった一方で、マイノリティへの配慮が足りていない制度やコンテンツ、発言をいまだによく見かけるのではないだろうか。 著名人による差別的発言、企業と従業員の間で起こる性的蔑視、人種について嘲笑する動画など、これらの問題や報道を他人事のように感じている人さえ、無意識的に排他的な発言や行動をしているかも知れないのである。 企業にとっても必須事項 現状がどうであれ、ダイバーシティを受け入れることは、企業にとって「オプション」ではなく「マスト」であるということだけは言える。企業としてマイノリティーを考慮できていないと、信頼や評判は落ち、消費者や従業員、ステークホルダーはみるみる離れ、企業存続を揺るがせかねない。 ここアメリカでは、日本よりもダイバーシティが一般的であり複雑だ。ゆえに先進的な取り組みが多いのも事実。そしてこのような多様性を受け入れる姿勢・理解を自社のマーケティング活動に反映させようというインクルーシブマーケティングがすでに広がりつつある。 上の写真はサンフランシスコのプライドパレードの様子。毎年6月はLGBT(レズビアン、ゲイ、バイ、トランスジェンダーの頭文字からなる造語。最近ではクエスチョニングやクィアのQが最後につくことも)を啓発するプライド月間となっている。ここサンフランシスコは主要都市の1つとして、6月はLGBTQを表すレインボーの旗がメインストリートに掲げられる。(写真転載元) 流行と捉えるべきではない、インクルーシブマーケティングとは インクルーシブマーケティングとはダイバーシティ(多様性)を受け入れ、それを考慮し、マーケティング活動へ反映させることだ。ダイバーシティーがインクルードされている(含まれている、受容されている)マーケティングである。 これにより、マイノリティとされる人たちが、自分たちも企業のサービス対象に含まれているという自覚を持てるようになるのだ。 そもそもインクルーシブマーケティングを理解するにはダイバーシティを理解する必要がある。 「【2019年】絶対おさえておくべき、4つのマーケティングトレンド」でも説明している通り、ダイバーシティとは人種、性別、年齢に限ったことではない。宗教や障害、性自認、食習慣(ビーガン、ベジタリアンなど)、体型など、個人を成形するあらゆる点が含まれる。 (Airbnbが2017年のアメフト決勝戦で流した広告キャンペーン。画像転載元) これは当たり前のことのように聞こえるかも知れないが、人口の98%を日本国籍保持者が占める日本では、なかなか身近には感じにくいことだと思う。日本が相当ダイバーシティの低い国であるということを自覚しておく必要がある。さもなくば、無意識に排他的なマーケティングをしかねない。 次に、今までの固定概念を疑っていく必要がある。先に質問した、家庭用食器洗剤を使うのが女性だ、というような固定概念だ。現在では働き方や性に関して多様化しているため、「家庭用食器洗剤ユーザー=女性」と強く押し出してしまうのは排他的ともなる。 顧客管理アプリケーションを開発・販売するセールスフォースは職場におけるダイバーシティやインクルージョンの価値についてオンライン学習ツールを提供している(日本語での受講も可能で、単元ごとに受けやすくなっているのぜひ社内で受けてみてほしい)。 ここでは受講者のダイバーシティに関する固定観念に問いかけるようなコンテンツもある。 (これらを改めて想像すると、ステレオタイプに気づくことができる。転載・加工した画像はこちらのサイトから) インクルーシブマーケティングを取り入れているアメリカ企業 アメリカでは、既存企業が自分たちの社風やマーケティング活動にダイバーシティを反映していこうとする動きも盛んだが、最近ではダイバーシティをメインのミッションにあげるブランドも出てきており、インクルーシブマーケティングやインクルーシブな商品開発のお手本となっている。 以下は該当するブランドの一例だ。 1. 世界の歌姫リアーナが始めたコスメブランド:Fenty Beauty Fenty Beautyは世界的R&Bシンガーのリアーナが2017年に創業したコスメブランド。インクルーシブな商品展開が売りで、ファンデーションのカラーバリエーションは50以上にもなる。 既存のコスメブランドのファンデーションなどのカラーラインアップ対応範囲が、実際のユーザーである有色人種を含む全ての女性層とギャップがあることを感じ、Fenty Beautyの立ち上げに至ったという。Fentyはリアーナの苗字からきている。 リアーナはコスメブランドのMACとも過去にコラボしており、業界への関心を示してきたが、今回は初のソロでのブランドだ。ルイヴィトンやディオールを運営するLVMHの傘下であるKendo Holdingsという美容ブランドインキュベーターと共同で商品開発などを行っている。 なんとブランドローンチの1ヶ月目から7,200万ドル(約72億円)の売上があったという。 もちろん、彼女の歌手としての知名度があったことも影響しているが、インクルーシビティへの徹底ぶりも人気の理由だ。以下のウェブサイト商品ページを見ていただければわかる通り、カラーバリエーションの数が非常に幅広い。色を表す言葉もLightからDeep(Lightの反対Darkではなく)にしている点も考えられている。 メイクで顔に凹凸を作るためのハイライトと呼ばれる化粧品もカラーバリエーション豊富だ。 もちろん、ソーシャルメディアやビデオコンテンツもインクルーシブマーケティングを意識したものとなっている。 リアーナはコスメブランド以外にもSavage X Fentyというランジェリーブランドも展開しており、こちらも様々な体型にあった商品が揃う。さらに2019年にはファッションブランドも開始すると発表されており、インクルーシブマーケティングにおいて彼女の動向は今後も注目だ。 2. ユーザーの声に耳を傾けるコスメブランド:Glossier こちらもミレニアルを中心に人気が高い、コスメD2C(Direct to Consumer)ブランドだ。ユーザーのフィードバックを積極的に商品に反映してきたことも人気の理由だ。ファンデーションのカラーバリエーションも豊富で、ウェブサイトに載せている試し塗りサンプルの様子も様々な肌の色で表現されている。 またGlossierのインスタグラムには度々男性のユーザーの写真が投稿される。必ずしも化粧をしている訳ではなく、日焼け止めやスキンケアなどGlossierの商品を使っているユーザーの写真だ。 ブランドカラーがピンクなだけに女性感が強いGlossierだが、そんな彼らが積極的に男性ユーザーのコンテンツを発信しているのは非常に興味深い。ユーザーの声を聞いている彼らだからこそ、素早くこのような発信ができたのではないだろうか。化粧品は女性だけが使うもの、という考え方は過去のものになりつつある。 3. ファッションのさらなる可能性を見せたアパレルD2C:Tread by Everlane Tread by Everlaneはサステイナビリティとトランスペアレンシーを追求するアパレルD2CのEverlaneがローンチしたスニーカーブランドだ。2019年春に発売が開始されると、瞬く間に話題になり、Everlaneの実店舗には長蛇の列ができた。 究極のエコスニーカーを目指しており、ソールの部分に使われている素材は94%リサイクルプラスチックを採用している。もちろん価格についてもその内訳を公開し、透明性を高めている。 そんなTread by Everlaneの広告に、先進的とも言えるインクルーシブマーケティングを見かけた。それが以下の広告だ。 ただでさえ義足のモデルというのは珍しいのに、義足がブランドのスタイルとマッチしていて驚いた。マイノリティを無理やり起用するのではなく、むしろクールにファッションやビジュアルに落とし込んでいて非常に参考になる。 筆者がこれを見かけたのはソーシャルメディア広告であった。自社の顔ともなる広告にインクルーシブマーケティングを取り入れているあたり、Everlaneがどれほどインクルーシビティを重視しているかがわかる。 4. 子供にこそインクルーシビティを伝えたい:バービー(マテル) 玩具メーカーのマテルは、2019年車椅子や義足のバービー人形の発売を発表した。以前から肌の色や体型などは多様性を受け入れた商品展開をしていたが、今回は身体障害者も含まれている。 マテルはバービー人形が創業から提供してきた美やファッションの多角的な視点を見せていきたいとしている。人形用の車椅子デザインはUCLA Mattel子供病院と協同してデザインされたものというこだわりぶり。 さらにマテルは2015年、女性であろうがどの職種にでもなれるというメッセージを謳った「Imagine The Possibilities(可能性を創造しよう)」というタイトルのバービー動画広告を公開し、話題になった。 大学教授、獣医、アメリカンフットボールのコーチなど、小さな女の子たちがその職業に扮して大人たちに支持・指導している(大人たちのリアクションは全てノンフィクション)。 バービー人形を使って遊んだどんな業界、職業も、性別関係なく誰もがなることができる、そんなメッセージがある。 玩具は小さい頃から触れるものだから、ダイバーシティへの理解や感覚を教えるのに非常に重要な接点だ。マテルは先陣を切って、インクルーシブマーケティングを行っている企業の一つだ。 5. デートの形一つとっても様々:Dating Around(邦題:5ファースト・デート) 動画ストリーミングサービスのNetfixオリジナルコンテンツである。これはマーケティング活動ではない(もしかしたらマーケティング活動かもしれない)が、非常に多様性が盛り込まれている内容だ。 これは「6人の独身男女がそれぞれ5度のブラインド・デートに挑戦し、ときめきや気まずさを体験しながら、初めて会った5人のうち、2回目のデートの相手を1人だけ選ぶ」というリアリティー番組だ。 初回2エピソードは1人の男性が5人の女性とデートをするというものと、1人の女性が5人の男性とデートするというものだった。しかしながら3エピソード目からは同性同士のデートや結婚経験もあるシニアのデートなど、非常に多様な角度でそれぞれのストーリーが展開された。 正直筆者も番組タイトルからは想像していなかった展開もあり、自分にも無意識の偏見があったのかもしれないという思いはあった。また、全てのセッティングに自分が置き換えられる訳ではないが、色々な形のデートがあるということは非常に興味深いし、コンテンツとして非常に見応えのあるものだった。 Netflixは社会問題に対する動画コンテンツも多く制作、配信しており、ダイバーシティを意識した番組はこれが初めてではない。インクルーシブマーケティングは商品そのものがインクルーシブでないことには始まらない。 その点、Netflixの商品(コンテンツ)はインクルーシブであり、社会への問題提起をしており、なおかつエンターテイメントとして楽しめるものを生み出していくことに非常に長けていると言える。 6. btrax事例(大手靴下ブランド) btraxの過去クライアントでもインクルーシブマーケティングはアメリカ市場で成功するための重要項目だという位置付けだ。 例えばアメリカ市場向け、バレンタインキャンペーンでは必ずしも「男性から女性にプレゼントをあげる」訳ではないという点を考慮してターゲット、メッセージ、ビジュアルを作っていった。アメリカのバレンタインは男性から女性にプレゼントを送るという習慣はあるものの、カップルのあり方が、女性同士の場合もあるし、男性同士の場合もあるからだ。 ゆえに女性だけが好むと思われる、女性しか使えないもの、ガーリーすぎるもの、をプレゼントの提案として取り扱うのも注意である。 また、ウェブサイトやソーシャルメディアなどで使うモデルは、一般的に日本企業が海外のモデルと聞いて想像する「細身、白人、金髪」に偏らないように様々な人種を採用した。 まとめ このような新しい概念はマーケティング活動に反映させることがゴールではない。それよりも、今までのステレオタイプが染み付いた思考を変えることに意味がある。その思考がインクルーシブマーケティングとなって世に広がっていくというのが理想だ。 現在皆さんのビジネスが海外向けに展開している・いないに関わらず、日本でも働き方といった面で多様になっていたり、海外からの人が増えていたりと、インクルーシブマーケティングの重要性は間違いなく高まっている(もっとも今後のビジネス拡大をしていく場合、海外は無視できない)。 会社としての歴史が長く、日本的・保守的・伝統的だという点に当てはまる企業は特に自分たちだけで変わろうというのは難しくなるが、変われない訳ではない。ぜひ先進的なインクルーシブマーケティングを行っているアメリカ市場に注目していただきたい。 そしてbtraxオフィスのあるサンフランシスコではダイバーシティやインクルーシブなブランドが特に進み、受け入れられている。btraxではこのようなトレンドのリサーチと発信だけでなく、トレンドを踏まえたサービス開発からマーケティング支援まで包括的なグローバルビジネス支援を行っている。ご興味がある方はこちらよりぜひお気軽にお問い合わせください。 参考: FENTY BEAUTY BY RIHANNA (HARBEY NICHOLS)

ブランド拡大に役立つシェアリング小売スペースという新しい選択肢

昨今、AmazonやShopify、ソーシャルメディアなどオンラインで商品を売るビジネスのためのツールが充実し、D2C(Direct to Consumer)をはじめ多くのデジタルネイティブブランドが勢いを増している。
そしてこれらのデジタルブランドはオンラインでのビジネスがある程度軌道に乗り始めると、オフライン・実店舗にも進出をする。実際、AWAY、Everlane、Warby Parkerなど多くのD2Cブランドが店舗拡大をしている。
こういったスタートアップD2Cは何百万ドルもの資金調達に成功…

ミッションを売れ! 薄利多売から抜け出すためのD2C戦略とは

D2C(Direct to Consumer。直販型)ブランドは小売業界からだけでなく、スタートアップ界隈からも注目を集め続けてきた。彼らは独自のビジネスモデルを採用しているという点だけでなく、その商品やブランディングについても注目されており、freshtraxでも幾度となく紹介してきた。
このような注目を集める一方で、D2Cブランドは既存のマーケットから集客獲得と増え続ける振興D2Cブランドとの競争も激化している為、D2Cとして成功し続けることは簡単な道のりではない。商品の改善、ブランディングの確…

生き残りをかけた小売の挑戦〜メイシーズ、ダンキン、ウォルマート〜

インターネットやモバイルの普及、高速回線の登場などにより、消費者の購買行動は大きく変化してきたが、その変化の速度自体も早くなってきている。 例えば読者の皆さんは5年前、どのようにブランドを知り、購入まで至っただろうか。おそらく今のようにインスタグラムでブランドを知り、ショッパブルボタンから購入をしたという人はほぼいないだろう(そもそもショッパブル機能自体が2016年にリリースされたものだ)。 また、オンラインでの買い物が企業やユーザーにとってどれだけ標準になったかを考えることからもその変化を実感することができるのではないだろうか。 AmazonやeBayなどEコマースを中心としたサービスが台頭してくると、老舗の大手小売企業もビジネスをEコマースへと広げてきた。その結果、かつて実店舗を利用していた客がEコマースへ流れていくと、多くの実店舗が閉店へと追い込まれるようになった。 実際に、実店舗の閉店計画は以下の通り発表されている。 大手ラグジュアリーデパートのNeiman Marcusは2017年、アウトレットラインのthe Last Call38店舗のうち10店舗を閉店した。2018年時点で50億ドルの負債を抱えている。 創業100年以上の大手小売Searsは2019年に全国80の店舗を閉めることを発表している。2018年には経営破綻。2013年から2018年までの間に店舗数は2,000から700へ激減。 2017年経営破綻を発表した子供服Gymboreeは2019年に最高900となる店舗の閉鎖を計画している。 大手デパートのメイシーズも2019年に8店舗閉める計画がある。 この一方で、残った実店舗の買い物体験をよりよくするための新しい積極的な取り組みが見られるのも事実だ。特に大手小売企業は実店舗というチャネルの最適化のため試行錯誤を繰り返している。 そのチャレンジぶりはアマゾンやeBayといったデジタルネイティブ企業の勢いに追いつくためではなく、追い越そうという、どこか「スタートアップ」的な動きをしているようにも見える。 そこで今回は、店舗数を最小限にした大手小売企業が行っている、ユーザー志向の新しい購買体験を提供するための取り組みを紹介する。 関連記事:ミレニアルにはブランドネームではなく体験を売れ!ー 炭酸飲料大手企業の挑戦 小売大手の新しい取り組み 1. メイシーズ: 社員をインフルエンサーにするプログラム 1858年から続く大手デパートのメイシーズも先に述べた通り、実店舗を中心とした経営に苦しんでいる小売企業の1つだ。 そんなメイシーズは昨今主流となってきたインフルエンサーを活用したマーケティングを独自の方法で取り入れるため、社内インフルエンサープログラムを開始した。 Style Crewと呼ばれるこのプログラムはレジ担当から幹部まで誰でも申し込むことができる。申し込みをしたインフルエンサーたちは、事前に受け取った制作費用予算から写真や動画などのコンテンツ作りを行う。 作成したコンテンツはインフルエンサーのSNS及びメイシーズStyle Crewの専用ページに投稿され、これらの活動が売上に繋がるとインセンティブが入るという仕組みだという。 (それぞれの従業員兼インフルエンサーのフォロワー数は1万〜千くらいで、いわゆるマイクロインフルエンサーが多い。インフルエンサーのひとりであるMichelle Kunzのインスラグラムより転載) インフルエンサー達はメイシーズで販売している商品を取り扱ったビデオコンテンツや写真コンテンツを作成し、インスタグラムやYouTubeに投稿している(下記ビデオリンク参照)。もちろんメイシーズのソーシャルアカウントやウェブサイトにも掲載されている。 もちろん投稿から商品情報を確認したり、メイシーズの販売ページへの導線も確保されている。インフルエンサーはデジタルでコンテンツを配信することで、ユーザーとのエンゲージメントやより親近感のあるコンテンツによるアピールにより、ファン拡大やEコマースへの流入も狙っていると考えられる。 さらに、デジタルだけでなく、実店舗への来店促進にも役立っているようだ。 インフルエンサーの中には店舗でスタイリストをしている人もいたり、働いている店舗を写していたりする人もいるので、本人に実際に会うことができたり、写っている商品を確実にお店で試すことができたりと、オンラインとオフライン融合の可能性が広がっている。 (インフルエンサープログラムのメンバーはメイシーズで買える商品を自分の興味や知識を活かして紹介する。公式サイトより転載) さらに企業としては、ソーシャルで活躍したい従業員(インフルエンサー)をサポートし、ブランドをさらに理解してもらうことで企業対従業員の良い関係作りにもなると前向きだ。 またそのコンテンツを通して、メイシーズはファッションとトレンドを押さえた小売であるという認知向上を狙っている。 このプログラムに参加しているインフルエンサーの数は、開始時2018年に約20人規模で始まってから、現在では400名ほどに増えている。 現在はアパレル商品や化粧品を中心に取り上げているが、2019年は家具や日用品など、メイシーズが扱う全てのカテゴリーに拡大する計画をしている。幅広いジャンルのインフルエンサーを育てる狙いだ。 関連記事:小売業界の敵はAmazonではない? これからの小売が知っておくべき課題 2. ダンキンドーナツ:リブランドと未来型店舗によるUX改善計画 ドーナツで有名なファストフード小売チェーンのダンキンドーナツ、改めダンキンは未来型店舗に向けた計画を2018年に発表した。名前の変更も今回のコンセプトにあったリブランディングの一部なのである。 ダンキンはこれらのコンセプトを店頭で試す前に、イノベーションラボでそのテクノロジーと体験を再現している。イノベーションラボでテストされている取り組みの一例は以下の通り。 従来のお店の窓に貼られた広告の代わりとして、ホログラムにより投影された広告。広告を掲載するのに壁、紙媒体はいらなくなる。 自動コーヒーマシンも試しているが、ラテアートを楽しめるコーヒーマシンの開発もしている(彼らはセルフィーニトロコーヒーと呼んでいる)。 他にも注文したものを受け取れる無人ロッカーや性別、年齢、気分を分析してそれに基づいたオススメメニューを提案してくれるAIシステムなどを開発している。 イノベーションラボを訪問した記事によるとまた精度が高くなかったり具体的な活用事例がまだなかったりするようだ。しかしながら、ダンキンのイノベーションラボには、昨今の競争の激しい小売業界で生き残るためにもとりあえず試してみて失敗からも学ぶといった姿勢があるのではないだろうか。 3. ウォルマート:小売最大手の最新テクノロジーを使った取り組み ウォルマートは日本の西友を子会社にもつ、売上額で世界最大の小売企業だ。そんなウォルマートも1位の座にあぐらをかくことなく、挑戦をし続けている。 彼らが2018年に発表した取り組みに、Flippy(フリッピー)というAIを搭載した揚げ物調理ロボットがある。このロボットは受けた注文数と揚げ時間を考慮して、最適なタイミングで出来立ての揚げ物を作ることができる。 フリッピーは揚げ物全ての調理をするわけではなく、人と手分けしながら作業の効率化やサービスの向上を目指す、協働ロボットだ。フリッピー自身が油に溜まったカスを掃除するのも可愛らしい。 (フリッピーを開発しているはMiso Roboticsというスタートアップ) また、ウォルマートもWalmart Labsと呼ばれるラボチームを持っており、ここでも様々な実験を行なっている。 例えば店舗を徘徊して管理する棚ロボット。店内を歩き回り、店内の不具合(ラベル・値札の間違いや陳列場所違いなど)や在庫をチェックしている。認識したデータを従業員に共有し、のちに従業員が直すことができるようになることを目指しているという。 現在はまだ開発段階で、まだフル活用には至っていない。今後、ウォルマートが開発しているツールとの連携ができれば、繰り返しのマニュアル作業をロボットが行い、人は顧客の対応に集中できるようになるというのが狙いという。 関連記事:Amazon Go型の無人レジ店舗の普及を目指す2つのスタートアップ企業 まとめ ここサンフランシスコも、都市部とはいえ、実店舗が閉店しているところを見かけるし、デパートなどは閑散としていることも多々ある。実際の数字もお見せした通り、決して好調とは言えない状態だ。しかしながら、実店舗を”絞り”ながら、新しい体験の創出に注力している。そして店舗に新しい役割を持たせようとしている。 今回紹介した大手小売企業も逆境の中、もしかしたら失敗かもしれないけどやってみている姿が感じられるではないだろうか。やはりアジャイル的に試していくのが成功に導く道なのかもしれない。 ただ焦って立ち止まるのではなく、最高の体験イノベーションを創り出すために試行錯誤する小売業界はこれからも注目だ。そしてぜひ、彼らのようにできることからやり始めてみるのはどうだろうか。 参考: ・E-commerce share of total retail sales in United States from 2013 to 2021 ・Will There Be A Physical Retail Store In 10-20 Years? ・Inside Macy’s 300-employee influencer program ・How Macy’s is using its store employees and stylists as Instagram influencers to drive sales ・See […]

【2018年】注目を浴びた4つのテック分野とスタートアップまとめ

2018年も多くの方にfreshtraxの記事を読んでいただいた。これまでは様々な業界に関するスタートアップやUX、デザイン、マーケティングのトレンドを紹介してきたが、その中でも特に多く読まれた記事や話題になった記事など、注目を集めた分野があった。 それがフィンテック、小売テック、医療テック、アグリテックの4つで、これらの分野が日本でも徐々に浸透してきたことの表れではないだろうか。 そこで今回は2018年記事総集編として、2018年に多く読まれた記事の分野と、その中で注目されたスタートアップを改めて紹介する。 関連記事:【2018年】btraxが注目する10のスタートアップ 注目分野① フィンテック フィンテックは金融(ファイナンス)とテクノロジーの領域のことである。大手銀行や政府の金融機関など、長く存在してきた企業や組織、規制など、かなり複雑性と困難が強いられる分野とも言われる。 しかしながらユーザーが抱えている問題の多くは共通しており、サービスがスタートすると爆発的に広がっていく例も多い。 iPhoneやiPadにレジ機能を持たせるデバイス(ソフトウェア)であるSquareや個人間送金サービスのVenmoなどが代表例ではないだろうか。 freshtraxで今年取り上げた記事では新たな個人間送金サービスが注目を浴びた。2017年6月にスタートしたばかりのZelleというスタートアップである。 セキュリティ面が安心の個人送金アプリZelle Zelleはサービス開始当初から30以上のアメリカ国内金融機関とパートナーを結んだことで話題を呼んだ。世界的に広がりつつあるキャッシュレス決済の中、それをさらに後押しする勢いだ。 また、Zelle独自のアプリからだけではなく、各銀行が運営する口座管理アプリやWebサービスを通してアカウントの設定と送金サービスの利用ができる。 筆者も使ったことがあるが、新たにアプリのダウンロードをする必要はなく、あくまでも既に持っている自分の銀行のアプリの延長でZelleに登録して使用するといった流れであった。 たとえばアメリカの大手銀行であるバンク・オブ・アメリカの利用者のうち、すでに300万人がZelleを利用しており、未だに利用者は増え続けている。 既存の個人間送金サービスであるVenmoやCash Appなどとの違いは2つある。1つは送金処理が即座にされること、もう1つは大手銀行ともパートナーシップを結んでいるというセキュリティー面での安心感だ。 (ZelleのUI。公式サイトより転載) 特に後者に関しては今までのサービスに関するトラブルなどからユーザーが敏感になっている点だ。日本も金銭に関わるセキュリティーへの関心は特に高い。こういった理由からもこの記事に注目が集まったのではないだろうか。 サンフランシスコで生活しているとVenmoは欠かせないアプリの一つになっており、「I’ll Venmo you(Venmoするね=Venmoで送金するね)」といったようにVenmoが動詞化しているほどだが、近いうちにZelleも同じように使われるかもしれない。 取り上げた記事:アメリカで話題の個人間送金サービス Zelle(ゼル)とは 注目分野② 小売テック サンフランシスコにもとうとうAmazon Goがオープンしたように、2018年はAI導入のレジレスストアなど小売テックが盛り上がった1年だったと言える。 freshtraxでも、AmazonといったEコマース小売からウォルマートやクローガーといった大手小売など小売業界の変革について紹介した「小売業界の敵はAmazonではない? これからの小売が知っておくべき課題」記事が多く読まれたが、その中でも注目されたのはリアルタイム商品棚管理のtraxだ。 リアルタイム在庫管理や商品分析を行うtrax traxはAI技術とカメラを駆使して、陳列した商品の状態や商品ブランドシェア率、品切れ、一度手に取ったが戻した商品のデータなどの情報を把握して分析する技術を扱う。 これにより在庫管理プロセスの改善だけでなく、分析の結果を効果的な商品陳列や商品のパッケージデザインの改善に役立てることができるのだ。 実際に同社のツールを導入したCoca-Cola Hellenic社では在庫を63%削減することに成功。他にも、P&Gやネスレなどの大手商品ブランド会社を顧客にしている。 お店の商品陳列用の棚をスマートフォンやタブレット端末で写真を取るだけで、そのデータをクラウドからレポートとして小売業者やメーカーにリアルタイム配信することができる。 Eコマースでの買い物が広がる一方で、新しい技術を取り入れた実店舗を拡大する小売ブランドが増えてきた。このようなユーザーにとって必要なテクノロジーを駆使した新しい買い物体験で勝負する動きは今後も注目である。 注目分野③ 医療テック 今年はユーザーの医療体験を変える様々なスタートアップや、フェムテックと呼ばれる女性に特化したヘルスケアテックを紹介した。その中でも話題になったのは唾液からDNA検査をし、自分の先祖やルーツを調べることができるサービスだ。 戸籍制度がなく、移民も多いアメリカにおいて、ニーズの多いサービスなのだ。入国記録や移民記録、婚姻記録に兵役記録に至るまで様々なデータを活用し、家系を辿っていく。 自分の先祖やルーツを調べてくれる23andMeとAncestory 23andMeも同様のサービスで、btraxスタッフや筆者の知人も試したくらい身近なサービスだ。アメリカには移民や混血の人が多いため、自分が一体どこの国にルーツがありそれがどのくらい割合を占めているのか気になることはよくあるようだ。 また、健康面や体の特徴などの情報もわかるので医者に見せて健康管理に役立てることもできるのだ。 (サンプルレポートより転載) Ancestryも同様のサービスを行っている。彼らは会社として「自分たちのルーツなどを知ることが人とのつながりを大切にすることにつながる」ということを謳っている。 彼らのこのような思いはオフィスにも反映されていて、オフィスの壁にはAncestryの検査によって判明した先祖の写真と社員の写真が飾られているという。 取り上げた記事:ブランド戦略 × オフィスデザイン ー 成功事例に見る企業ブランド構築手法 注目分野④ アグリテック 世界的な人口増加に伴い、今後より多くの食料が必要になると言われている中、農業とテクノロジーの分野であるアグリテックへの注目が高まっている。 アグリテックには作物や酪農の管理システムや農業の自動化、アーバンファーミングなど多岐に渡ったサービスが存在する。 その中でもインドア・ファーミングとして過去最大の投資額を調達し、ソフトバンクの孫正義会長も2億ドルの投資をしたことでも知られるPlentyはアグリテック業界内でもすでに有名だ。 健康的で十分な食の供給実現を目指すPlenty Plentyは生産性の高い水耕栽培を実現させたバーティカル・ファーミングを行うスタートアップ。多くのバーティカル・ファーミングの取り組みでは、水平に設置されたトレーを使用して栽培を行うが、Plentyでは独自に設計されたポール状のタワーで栽培を行う。 (こちらのウェブサイトより転載) このタワーが壁のように並べられ、今までの農業のやり方と比較すると同じ面積で350倍の生産ができるようになったのだ。 ちなみにPlentyの技術で作られた野菜はサンフランシスコにオープンしたばかりのロボットハンバーガーレストランであるCreatorで販売されている。 アグリテックと食品ロボットという業界の異なるスタートアップがコラボレーションして食体験を豊かにしていくというのはシリコンバレーのマインドセットと通じるものがあるように思う。 番外編:ペットテック!? まだ馴染みは少ないもの注目されつつある分野 番外編では先に紹介したテック業界ほど浸透はまだしてないもの、注目を集めつつあるペットテックを勝手に取り上げる。 付け加えておくと 2018年のCESでも紹介され、freshtraxの「2018年のIT動向を読み解く7つのキーワード」記事でも注目された分野である。 アメリカのペット市場は大きい。2017年、ペット関連商品市場はアメリカだけで690億ドルの支出があったという(世界全体で約1090億ドル)。 ペットテック分野だけでみても、2017年には約3億ドルの投資があり、5年前よりも3倍以増えている。 ペット用の肥満問題に挑むPetrics 米国では自宅で飼われている犬や猫の数は8,000万匹ほどいるとされているが、犬においては約6割が肥満というデータがある。肥満の問題は人間だけではなかったのだ。 この事態の解決に挑むのがペット用スマートベッド・ウェアラブルデバイスのスタートアップ、Petricsだ。Petricsのスマートベッドは、ペットがベッドの上に乗ると運動量や体重といった健康状態を把握することができる。 また、ウェアラブルデバイスもペットの首輪などにつけてそれぞれアプリと連動して使用すると健康状態に合った食事量や運動量を知ることができる。効果的なダイエットが可能になるというわけだ。 (Petricsのベッドとウェアラブルデバイス。こちらのウェブサイトより転載。) このサービスはペットテックとくくってみたが、飼い主にとってはペットの医療テックと思えるくらい重要なのではないだろうか。 ちなみにミレニアル世代はペットを所有する割合が一番多い世代だ。実際サンフランシスコでは20-30代とみられる人がペットを連れている姿をよく見かけるし、ペットOKのオフィスも少なくない。スタートアップが生み出すペットテックを必要としている人、犬、猫は確かに多そうである。 まとめ 様々な業界がテクノロジーと掛け合わされて〇〇テックと呼ばれるようになって久しい。バスワードになって有名になり、最新鋭のテクノロジーが注目されることも多いが、それを使うユーザーがいてここで紹介したスタートアップのように広まっていくことを忘れないでほしい。 どのスタートアップもただ技術を作って売り出した訳ではない。ユーザーの問題があったからそこに最新テクノロジーを使って解決策、より良い体験を提供していったのだ。 2019年はどのような〇〇テックが出てくるか、今から楽しみである。ユーザーの抱えている問題をみていくとその予測のヒントが隠されているかもしれない。 参考: Should You Use Venmo, Zelle or Cash App? Everything You Need to Know About the Hottest Mobile Payment Apps Trax raises $125 million to bring computer vision insights to retailers’ shelves Billionaires make […]

イノベーションが生まれ続けるサンフランシスコの生活とは

皆さんはサンフランシスコに住む人々の生活を明確に描けるだろうか?どのように生活し、どのように仕事しているか、想像できるだろうか。今回は、我々サンフランシスコで働く人の生活の中に浸透しているテクノロジーを、衣食住(仕事)という切り口で紹介し、サンフランシスコがイノベーションを生み出し続ける街である所以をお伝えしたいと思う。

衣:便利なだけではないオンラインファッションブランドの魅力
食:オンラインサービスを使った方がより便利でお得という価値が確実に広まりつつある
住(働く):サンフラン…

イノベーションの力でアメリカを健康に!フード系スタートアップの活躍

「スタートアップ」という言葉がだいぶ浸透し、日本でもアントレプレナー向けのミートアップや起業家を育成するようなプログラムや施設が増えてきた。そんな今だからこそ改めて触れておきたい点がある。

それは成功している多くのスタートアップは問題を解決するために生まれてきたということだ。ユーザーの理解から始まり、問題を特定をし、新しい価値のあるソリューションを提供し続けることで急成長を成し遂げてきたのである。

関連記事:今さら聞けないリーンスタートアップの基本

こういったスタートアップのなか…