プレゼンテーション

米国有名テック企業 CEOがこぞってスライドを嫌う6つの理由

2022年4月にTwitterを買収して話題になったイーロン・マスク。そんな彼の他に、ジェフ・ベゾス、スティーブ・ジョブスなどの米国有名テック企業CEOがこぞって嫌うものがある。 それが、会議におけるスライドのプレゼンだ。 ジョブズは 「“とりあえず” スライドを用いてプレゼンをすることは嫌いだ。 人はプレゼンを作り発表することで問題に立ち向かおうとするが、私はスライドを何枚も見せるのではなくテーブルに意見を全て出した状態で議論してほしい。 自分の考えていることと伝えたいことがクリアであればスライドなんていらないのだから。」 とまで言い切っている。(参照) スティーブ・ジョブズに学ぶ7つのメディアPR戦略 今回はなぜ米国有名テック企業のCEOたちがそれほどまでに会議でのスライドを用いてのプレゼンを嫌うのか、その理由を6つにまとめてお伝えする。 もちろんプレゼンをすべきではないとお伝えするつもりはない。それよりは、ビジネスにおいて相手に意見を伝える手段はたくさんあることを、改めてご認識いただけたらと思う。 米国有名テック企業CEOたちがスライドを用いたプレゼンを嫌う6つの理由 1. プレゼンが時に視聴者の望むスピードで進まないから 3ページ程度の正式な文章であれば、少し時間をとれば一通り読んで理解することができるだろう。 しかし、同じ情報をプレゼンテーションとして提供する場合、プレゼンターの話のスピード次第で自分が読んで理解するよりも時間がかかるかもしれない。 さらに、自分が理解できているところでも、視聴者の他の人が初見だった場合、逐一説明が入ることになる。 ゆえに、聴衆一人一人の議題に対しての理解度が異なる場合は、初めて会議に参加する人にとっては新たな情報をインプットするための必要な時間かもしれない。 しかし、一方で理解できている人にとっては、他の業務の時間を削って、すでに知っていることを繰り返す時間となり、非効率的になってしまう可能性がある。 Google, Apple, Teslaなどの世界トップ経営者が行う9つの会議の秘訣 2. 図式と最低限の文章だけで構成されているプレゼンは、後から自分で見直すことが難しいから プレゼンテーションは、発表者の口頭での発言なしには成立しない。 プレゼンテーションを見直すには、レコーディングなどをしておいて聞き直すか、議事録を取るしかない。 ミーティングなどに出ない人にも共有する内容の場合、プレゼンスライドではなく内容を記載した文書を見直す方が、改めて説明をする手間もかからないし、齟齬がないだろう。 また、別の人に内容を聞かなければいけないということは、時間も人的なリソースも余分にかかってしまうということ。 経営者としても、スタッフの効率を低下させているという意味で、プレゼンスライドの使用を避けたい意図があるのかもしれない。 3. プレゼンスライドには不確実性の高いアイディアも含まれていることがあるから プレゼンスライドは図を多く入れ、できるだけ文字を少なくした方が良いというセオリーもあったりすることから、時にアウトラインのような未完成の思考が書かれていることもある。 特に重要な意思決定をする場合には、ポイントだけでなく前後の文脈まで明示されていた方が、聴衆も安心して聴ける場合もある。その際にはプレゼンの形式以外を用いた方が良いかもしれない。 Ideas for Ideas – アイディアのためのアイディア Design Sprintのファシリテーターとしての学び 4. プレゼンススライドに用いられる図式は、ときに誤解を招いてしまうから 前述した通り、プレゼンスライドではいうまでもなく文書よりも図を多く用いる。 しかし、理解を助けるための図式のはずが、そもそも図の色や形によって誤解を招く場合がある。 特に多国籍のチームでコンテクストが異なる場合はなおさらだ。正しく伝えるべきことを伝えられなくなってしまう可能性がある。 例えば、筆者は良い結果となった数字を強調すべく、赤色で記載してプレゼンした際、弊社のアメリカ人のスタッフから「これは悪い傾向なのか?」と聞かれたことがある。 これは、アメリカにおいては赤色は良くない結果を表すことに用い、良い結果の場合は青色や緑色を用いるからである。 このように、文化間でコンテクストが異なるため、図式が誤解を招く可能性もある。 発表者の意見、意図を伝わりやすくするはずのプレゼンが、逆効果になってしまうことがあるのだ。 【こんなにも凄い】色が人の心理と行動に与える影響とは 5. プレゼンテーションでは核心をつかない議論に終始する可能性があるから 多くのスライドには要点しか書かれていないことが多く、そのためプレゼンターはその場その場で話すことを変更できる。 しかし、臨機応変に対応できることは良い点ではあるが、一方で核心をつかない議論に終始してしまう可能性も孕んでいる。 この記事を書くにあたって参考にした原文の記事には、“You can’t pin Jell-O to the wall.” (ゼリーを壁に貼り付けることはできない)という例え話が使われていた。 これは、「何かをしても何の手ごたえもない、まったく効き目がないこと」の例えとなるアメリカの諺だが、まさに議題の核心をつかずに、物事が前に進んだ「手応えのない」時間になってしまう危険性があるということだ。 ムダだらけの会議 – 海外から見た日本式ミーティングの謎 6. アイディアの良し悪しがプレゼンターの話の上手さやプレゼンスライドの作成能力に依存する可能性があるから 話し手のプレゼン力や、プレゼンスライドの作成能力によって、悪いアイディアであっても、良いアイデアのように見えて高く評価されたり、反対に素晴らしいアイディアが悪いアイディアのように見えて、そぐわない評価をされる可能性がある。 もちろん話の上手さやプレゼンスライドの完成度も含めて、プレゼン全が評価されるべきであることは言うまでもない。 しかし、純粋にアイディアそのものの良し悪しを判断する際には、プレゼンテーションではなく、ドキュメントを読む方が、よりフラットにアイデアの比較ができる場合もあるだろう。 英語でのプレゼンをクオリティを格段にアップさせる8つの方法 スライドを使うメリットは? もちろん、スライドを使ったプレゼンテーションは必ずしも悪いことではない。 事実、意見をわかりやすく伝達することを目的に、多くの人がスライドを使っているし、それがずっと続いているということは、メリットも間違いなくあるはずだ。 1. プレゼンテーションは、その場の状況に合わせて、使う言葉を変更できる 主語述語の完全な文章は、一度作成しドキュメントに載ったら、書いてあるその通りにしか読み取れない。 しかし一方、スライドを用いたプレゼンテーションの場合は、聴衆の態度を見極め、表現を変えたり、聴衆が理解ができていそうであれば基本を説明するスライドを飛ばしたりして、途中で軌道修正することができる。 2. プレゼンのほうが「完璧な文章を書く」工程は少ない 文章は文法的に正しく、読みやすいことが理想で、そのような文章を書くには言うまでもなく文章力が必要とされる。 代わりに、プレゼンスライドでは、スライドに文字を多くしすぎないために、キーワードを含めた上で、言いたいことを絞って記載することが求められる。 ゆえに、完全な文章を書くこととは違うベクトルの文章力が必要だ。 しかし、言いたいことを要約して考え、伝えることが得意な方にとっては、プレゼンスライドの文章を作成してプレゼンの練習をする方が、完全な文章を書くよりも時間がかからないだろう。 シーン別 スライドを使わない際の代替案3つ では最後に、有名テック企業のCEOたちは、プレゼンスライドの代わりにどのようにして相手に意見を伝えるのが良いと考えているのだろうか。「プレゼンスライドの代替案」に関して、場合に分けて3つ紹介する。 1. 議論して意思決定をする場合:「認識合わせ」のための情報は会議の前に共有する。 認識の齟齬があってはならない場面、例えば、意思決定や合意形成の場面では、会議に入る前に理解しておいてほしい事項まで、端的な文章にまとめ、会議に参加するメンバーに、読んでもらってから議論に入る。 この場合は認識の齟齬がないようにするため、要点をまとめたスライドよりも、完全な文章のドキュメントを作成する方が良いだろう。 そうすることで、会議において認識の確認のための時間を削減することができる。 その結果、全員の時間を使って行う、会議の限りある時間を「前提の共有」より重要な「意思決定」や「今後の方針の議論」といったことに割くことができるだろう。 例えばAmazonでは、会議の議論の密度を高めるため、プレゼンスライドの代わりに「6ページのメモ」を用意し、議論する前に黙読しているという。 また、LinkedInのCEOであるJeff Weinerは次のように述べている。 「もし、プレゼンテーションをするのであれば、ミーティング前に、現状の立ち位置 、目標到達地点、そこにたどり着く方法、そのためのネクストアクションというシンプルな内容で1枚のドキュメントを用意しておくと、セールスに成功する可能性が高くなる。」 社内へのプレゼンだけでなく、顧客に自分たちのプロダクトを理解してもらうことが商談成功の鍵となる、セールスでも役に立つテクニックだ。 どんな場合でも「いかにしたら相手に伝わりやすくなるか」を考えて、工夫することが、成功の鍵となるだろう。 シェアサイクル事業問題から見るサンフランシスコ市の意思決定の速さ 2. 指導やトレーニングの場合:一方的なプレゼンをするのではなく、参加者とインタラクティブに交流する 研修の場合は、一方的に話し手が話すプレゼンではなく、聴衆が参加できるような体験を作ることに注力すべきだ。 プレゼンテーションはどうしても受け身で聞いて理解する形式になりがちだ。 聴衆が発言したり、メモを取らない限り、ほとんどの人の話は耳で聞いて理解することになるが、ただ話を聞いているだけでは、後になってほとんど何も覚えていないのが人間というもの。 研修の内容を覚えてもらうためには、聴衆を受動的な視聴者にするのではなく、聴衆に能動的に参加してもらう必要がある。 話し手は「伝える」工夫も大切だが、いかに「伝わる」、そして「覚えてもらう」ようにするかに注意を払い、状況に応じて使うツールを工夫する必要がある。 ワークショップをするべきか?会議をするべきか? […]

新設! 「SAPジャパン株式会社 2020 Partner最優秀個人賞」 募集のお知らせ

SAPパートナー様向けに新設されたアワード「2020 Partner 最優秀個人賞」 は、SAP ソリューションの仮想案件に対してご提案資料およびプレゼンテーションを行っていただくプログラムで、SAP のイノベーションをお客様にご提案いただけるパートナー様を毎年各ソリューションから1名、プリセールスエキスパートの証として表彰いたします。…