PROFILE: エザキヨシタカ/「グリコ(grico)」代表

人気ヘアサロン「グリコ(grico)」は昨年、設立15周年を迎えた。それを機にオープンした新店舗「grico Na ni Yo(グリコ ナ・ニ・ヨ)」は、通常のヘアサロンとして営業しつつも、店舗の一角でヴィンテージ服ブランド「グリコ ヴィンテージ(grico vintage)」の販売も行う新業態だ。ここではエザキヨシタカ「グリコ」代表に、新店舗の狙いと、「グリコ ヴィンテージ」の現在地を聞いた。(この記事は「WWDBEAUTY」2025年2月24日号から抜粋して追記したものです)
WWD:「グリコ ヴィンテージ」を始めたきっかけは?
エザキヨシタカ「グリコ」代表(以下、エザキ):「グリコ ヴィンテージ」は、10年ほど前から取り組み始めたファッションブランド「グリコ クロージング(grico clothing)」の派生系として、昨年にスタートしました。美容の仕事でよく撮影を行うのですが、季節的な兼ね合いで新作を借りられないことも多く、よく古着屋に協力してもらっていました。その中でつながりができていき、自分自身もヴィンテージの魅力にハマっていきました。何より自分に似合う1点ものに出合ったときの喜びは、洋服を好きになった頃の自分を思い出させる感動に通じるものがあり、そうした喜びを美容室のお客さまにも体験してもらいたいと思いスタートしました。
WWD:自身のファッションにも取り入れている?
エザキ:そうですね。以前はハイブランドを着ることが多かったのですが、最近ではヴィンテージのアイテムも取り入れています。「グリコ ヴィンテージ」での提案も、「ファッションをヴィンテージに切り替えましょう」ではなく、「1品でもヴィンテージを取り入れると楽しいですよ」といった提案です。だから全身ハイブランドに身を包んでサロンに来店したお客さまが、「グリコ ヴィンテージ」を購入して着用したため、少し汚くなって帰るケースも多いですね(笑)。
WWD:「グリコ ヴィンテージ」の服はどうそろえている?
エザキ:これが最大の特徴でもあるのですが、大半の服は、僕が海外に行って直接買い付けています。日本の倉庫もチェックしているのですが、テンションがアガらないことが多く……。アメリカ・ロサンゼルスやタイ、シンガポールなどに行き、サロンのおしゃれなお客さまをイメージして「あの人に似合いそう!」といった感じでセレクトしています。ヴィンテージ業界に入って気付いたのですが、この業界では“(レアで)価値のあるもの”を求めているバイヤーが大半です。けれど僕は価値や値段に関係なく、本当にかっこいい服・かわいい服・お客さまに似合いそうな服を買い付けていて、それが美容師である僕が提案するヴィンテージのこだわりです。僕はあくまで美容師なので、価値の追求に過度に深入りすることはせず、適度な距離感で付き合うことが「グリコ ヴィンテージ」のオリジナリティーだと思っています。
WWD:ヴィンテージを購入する顧客は多い?
エザキ:コンスタントに売れています。「グリコ ナ・ニ・ヨ」は「グリコ」のすぐ近くにあるため、「グリコ」のお客さまが、帰りに「グリコ ナ・ニ・ヨ」に立ち寄ってヴィンテージを見ていくパターンも多いです。単価が20〜40万円くらいになるお客さまも結構いるのですが、原価が高いために利益はそれほど高くないです。できる限りお買い得な価格で提供したいのですが、あまり安くしても業界の水準を崩してしまうので、値段決めには気を遣っています。品ぞろえの価格帯は8000円〜35万円くらいで、本当にバラバラですね。
WWD:ポップアップイベントもやっている?
エザキ:2カ月に1回くらい実施しています。1月にも「グリコ」の2フロアを使って2日間に渡って開催し、総額2000万円くらい売り上げました。世界各国からバイヤーが来てくれて盛況でしたね。「東京・原宿のど真ん中でヴィンテージをやっている美容師がいるけど何者?」みたいな感じで、海外でも話題にしてくれているみたいです。
WWD:美容師がヴィンテージをやる意義をどう考える?
エザキ:僕は髪の毛だけではなく、お客さまの人生を潤わすことができるのが美容師だと思っています。そのためにはいろいろな窓口があるのに、誰かが勝手に決めた“美容師像”にとらわれている人が多いですよね。その壁を打ち破るためにも、サロンを“ここに来れば楽しさがいっぱいある場所”“自分自身をまた好きになれる場所”にしたいと思い、その手段の1つとしてヴィンテージに取り組んでいます。あと僕にはお客さまに似合うものを提案し、それがハマったときに興奮する“癖”があるので、毎日楽しくやっています。
WWD:今後、買い付けに行きたい場所は?
エザキ:インドネシアのジャカルタですかね。アジアではタイなどに行ったことがあるのですが、タイは市場が出来上がっている印象でした。けれどジャカルタはそれほどでもないので、掘り出し物が見付かるかなと。あとはヨーロッパの(都市ではなくて)郊外で、ユーロヴィンテージを見たいですね。無骨で男臭いかっこ良さのあるアメリカンヴィンテージと違い、ヨーロッパのワークウエアにはスタイリッシュなイメージがあるので、お客さまに似合う服が見付かりそうなんです。
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