英国発ラグジュアリーオーガニックブランド「バンフォード(BAMFORD)」が日本上陸10周年を迎えた。これを機に、ブランド創業者であるキャロル・バンフォード(Carol Bamford)氏が2006年の創業時を振り返ると共に、4月下旬に六本木の東京ミッドタウンから東京・表参道の新商業施設「グリーンテラス 表参道」に移転した旗艦店や、日本市場に期待することなどを語った。
WWD:あらためて2006年にサステナブルなライフスタイルを提案し、「バンフォード」を立ち上げた経緯は?
キャロル・バンフォード「バンフォード」創業者(以下、キャロル): 「バンフォード」は、私の人生で起きたいくつかの“出会い”がきっかけで生まれました。はじまりは1976年に新生児だった娘をベビーカーに乗せて散歩していたときのこと。庭のバラがしおれていた原因が、隣家で使われていた除草剤“ラウンドアップ”だったと知った瞬間でした。その強い毒性に衝撃を受けました。その後、農業や家畜、関連産業の総合展示会「ロイヤル・アグリカルチャー・ショー」に訪れ、有機農業の考え方に出合いました。自然との調和を重んじ、農薬や抗生物質を使わずに作物を育てる——それが、私の人生を変える大きな転機になりました。
キャロル・バンフォード「バンフォード」創業者
WWD:1988年に英国・コッツウォルズで有機農業をはじめた頃の印象的な出来事は?
キャロル: 忘れられないのは、夫に「従来型の農業はやめる」と伝えた日のことです。当時の農場マネージャーは私を“狂っている”と思ったでしょう(笑)。実際、多くの人から理解を得られませんでした。有機農業は、今も昔も簡単な道ではありません。それでも、私は地球と未来の世代のために、この道を歩み続けています。
食から肌へ、ライフスタイル全体への展開
WWD:2002年にライフスタイルブランド「デイルスフォード(DAYLESFORD)」を開始。「バンフォード」はどう派生して誕生したのか。
キャロル: 「デイルスフォード」は“食”の選択を見直す中で、同じ意識をライフスタイル全体に広げたいとはじめました。皮膚は体の中で最大の器官であり、体に取り入れる物に注目するなら、スキンケアも同じくらい重要です。肌に触れるもの全てに理由があるのです。そういった考えの中で化学物質を含まないナチュラルな製品作りを始めたのが「バンフォード」です。食品で避けている化学物質を含まない自然由来の製品を自分で作り、ボディーケアラインが生まれました。その後、アパレルやスキンケア、ホームフレグランスとラインアップを拡大しています。
WWD:スタート時と今では、消費者の意識も大きく変わった。
キャロル: オーガニックやウエルネスがメインストリームになり、市場も大きく拡大しました。私たちは製品をシンプル化し、環境への影響を抑えるために技術革新を取り入れています。たとえば、最近では植物幹細胞を活用した有効成分「ステムセルセラム」を開発しました。これは、自然資源への負荷を最小限にしながら、高品質な有効成分を抽出できる新たな試みです。
WWD:「バンフォード」の転機は?
キャロル: 明確な転機はありませんね。直感に従ってきた結果、自然と事業が広がっていったんです。私たちの原則「自然とのつながりと癒やしの力を大切にする姿勢」を貫くことが、ブランドの成長につながったのだと思います。
日本市場を前向きに捉える
WWD:「バンフォード」が日本に進出してから10年が経過。現在の販売規模と店舗展開について、どう感じているのか。
キャロル: 期待していたほどのスピードではありませんが、表参道に新店舗をオープンできたこと、そして今秋にはパートナーホテルである「ワンホテルトーキョー(1 HOTEL TOKYO)」が開業する予定で、非常に前向きに捉えています。さらに、キャセイパシフィック航空のファーストクラスおよびビジネスクラスでのアメニティー提供も続いており、日本市場でのブランド認知と売り上げは今後数年で大きく伸びると見ています。また、アパレルコレクションは三喜商事とのパートナーシップを継続中。最新作のアクティブウエアは、日本の消費者にも高く評価されると確信しています。
「グリーンテラス 表参道」に移転した旗艦店の外観
旗艦店の店内
VIP向けスパルーム
スパルーム
WWD:新しいフラッグシップストアに期待することは?
キャロル: より多くの人たちに「バンフォード」を体験していただきたいですね。オーガニックコスメブランドが多く集まる表参道に位置し、3つのトリートメントルームを備えた新店舗では、多くの新しい日本のお客さまに、英国のサステナブルでラグジュリーなブランドを体験していただけることを願っています。
WWD:日本市場への期待感は?
キャロル: 日本の小売り業者から、当社の総合的なウエルネス製品(バス&ボディー、スキンケア、ホームフレグランス、BGDメンズコレクション、マザー&ベビーライン、アパレルコレクションなど)に関するお問い合わせを多くいただいています。旗艦店では、「バンフォード」の全ての要素を一カ所で体験いただけるよう展示しています。これにより、日本全国での事業拡大につなげたいですね。また、パレスホテル東京を含む日本全国の高級ホテルでの展開もこの取り組みを後押ししてくれています。
WWD:2023年に日本国内のディストリビューターがB Youに変わった。今後の期待することは?
キャロル: B Youは、塗料など流体の供給システムを手がける技術商社、IECのポートフォリオの一員であり、同社のサステナビリティへの情熱とラグジュアリー市場への深い理解には非常に感銘を受けています。これまでにも「バンフォード」のブランドプロモーションにおいて素晴らしい成果を上げており、さらなる成長に向けて強力なチームを構築しています。表参道の新店舗への取り組みと支援も彼らの本気度の表れ。今後数カ月の間に、ブランドがさらに大きく飛躍することを期待しています。
サステナビリティと革新性を追求するブランドへ深化
左から2番目の製品がキャロル創設者がお気に入りの“ナリシングマスク”( 50mL、1万8700円)
WWD:個人的にお気に入りの製品は?
キャロル: お気に入りを選ぶのは難しいですが、“ナリシングマスク”( 50mL、1万8700円)は特に大好き。乾燥やくすみが気になる夜に薄く塗って眠ると、翌朝にはふっくら明るい肌に。まるで栄養をたっぷり補給したような感覚です。“ビーサイレント ピローミスト”(10mL、1650円)もお気に入りの一つ。睡眠はウエルネスの鍵。ラベンダーやフランキンセンスの香りが心と体を自然にリラックスさせてくれて、毎晩、そして旅先でも手放せません。
WWD:今後の「バンフォード」製品開発について。
キャロル: “ゼラニウム コレクション”は「バンフォード」のシグネチャーコレクションで、今年後半に20周年を記念してラインアップを拡大する予定です。新製品は、自宅の温室で育てているゼラニウムの多くの品種からインスパイアされたもので、私にとって非常に思い入れのある製品群。アパレルでは自社で育てたメリノウールを使用した第2弾のコレクションも開発中です。25年秋にイギリス国内で一貫して製造されたメリノウールのニットウエアとアクセサリーを発売する予定です。このコレクションは原料から製品化まで完全に追跡可能で、ウールはコッツウォルズの農場での飼育・刈り取りから、イギリスで最も才能あるテキスタイル職人による紡績・編み立てまで一貫して行われています。メリノウールのサプライチェーンを平均1万8000マイルから400マイルに短縮できたことは、大きな成果だと感じています。
WWD:「バンフォード」のビジネスをどう発展させるのか。
キャロル: 常により持続可能なビジネスモデルを模索しています。循環型経済はバンフォードの理念と深く結びついており、他の事業との協業も促進しています。たとえば、「デイルスフォード」のカフェで出た有機コーヒーの残渣を“ビー バイブラント トニファイング ボディ ポリッシュ”(日本未発売)に再生。また、南仏レウブのブドウ収穫で出る副産物を、レスベラトロール配合のセラムやベジタブルレザーに転換するプロジェクトも進行中です。今後も革新的で環境に配慮した製品開発を追求していきます。
WWD:2025年に進出を予定している国や、新たな取り組みについては?
キャロル: オーストラリアのお客さまから、キャセイパシフィック航空や香港の店舗、日本各地の店舗を通じて「バンフォード」を知ったという多くのリクエストをいただいたので、 5月にオーストラリアの大手小売りメッカ・ブランズ(MECCA BRANDS)と共同で製品の販売を開始しました。彼らが自国で当社の製品を購入できるようになったことは、私にとっても非常に興奮するニュースです。現在、「バンフォード」は25カ国で事業を展開しており、今年中にさらに10カ国に進出し、グローバルな存在感を拡大する予定です。
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