
日に日に洋服が増えていくファション業界人にとって、収納スペースは悩みの種。誰もが自宅に「もう一部屋あれば……」と思うはずだ。そんな悩みをすぐに解決できるのがトランクルームである。トランクルーム市場はこの10年間で倍増。今やファミリーレストランを超える1万2000店舗を突破した。
2001年に創業した「キュラーズ」は、屋内型トランクルームのトップシェアを誇り、現在首都圏を中心に67店舗構えている。ロードサイドの一棟管理で、24時間入退館が可能。忙しいファッション業界人の強い味方になってくれるのだ。
今回、スタイリングやディレクション、ブランドプロデュースなどで活躍する、まさに“フリーランスの鏡”MASAHさんが「キュラーズ」を利用した。自宅で仕事道具を管理し、もちろん、プライベートでも洋服が好き。そんなMASAHさんが、トランクルームがもたらす新しいライフスタイルを体験する。
広く使える部屋を求めて
結婚・出産を機にモノを処分
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MASAHさんは2013年にモデルの今宿麻美さんと結婚。現在は2児の父親でもある。結婚後は、「独身時代の“どの角度から見てもカッコイイ部屋”から、“必要最低限のモノを置いて広く使える部屋”へと嗜好が変わった」とMASAHさん。「僕たちの業種には、仕事や趣味のモノも含めて、なんとなくモノをとっておくカルチャーみたいなのが昔からある。僕も結婚や出産を機に、大量にあったモノを処分してきたけど、今でも捨てられない大切なモノがたくさんある。だけど長男が小学生になって、とうとう来年は次男も小学生。今、洋服で埋まっている部屋を子ども部屋として使うために、またモノを処分しないといけないのかと、とても憂鬱だった」と続ける。
季節ごとに使わないモノを
トランクルームへ
現在は、子ども服関連の仕事も多いMASAHさん。そのため、子ども服も年齢ごとに仕分けして、自宅に保管しているという。「子ども服は宝物だっていうのもあるけど、いつか仕事でサンプルとして使えるんじゃないか?と思うと、全く捨てられない。それに子どもが生まれてからは、季節感をすごく意識するようになった。季節ごとに必要なものもあれば、絶対に使わないものもある。子ども用のプールなんかもそう。僕のダウンジャケットやスノーウエア、スノーボードを管理するためにトランクルームを活用すれば、自宅のスペースが確保できる。『キュラーズ』は24時間出し入れ自由だから、僕だったら仕事よりもプライベートの方が重宝するかも(笑)。例えば雪山には、急に『明日行こう』となることもよくあるので」。
ただの倉庫じゃない!
部屋をデザインする楽しさ
「キュラーズ」は、独自の空調システムを導入しており、快適な収納環境をキープする。床はクロス張りで清潔感があり、一般的なトランクルームのイメージとは真逆だ。「『キュラーズ』は、“倉庫”というよりも一つの“部屋”のような感覚。それって、僕にとっては、部屋を作る楽しさと同じ。部屋を借りた感じで、すごく作り甲斐があるし、こんなにすごいんだってびっくりした」と話す。収納部屋のこだわりを問うと、「例えば、スタイリングの撮影のときに『撮影準備は返却準備』という自分の中での美学があって、返却するのを前提に撮影準備すると返却が楽なわけ。どういう状況に置けば取り出しやすいかとか、色の並べ方なんかを決めておけば、ハンガーラックのどこに何色のダウンジャケットが掛かっているかも覚えておきやすい。僕じゃない人が荷物を取りに来ても分かるようにしておくことが、仕事でトランクルームを活用する際にも大切になると思う」と答えた。
宅配や無料シャトルなど
便利なサービスを用意
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「キュラーズ」は、首都圏の好立地を中心に展開している。駐車場付きで、24時間365日、いつでも荷物の出し入れが可能。申し込みは、24時間WEBからでき、もちろん、現地をじっくり見学してからの申し込みもできる。各店舗には、収納コンシェルジュが在館しているので、収納スペースに迷ったら相談するのがいいだろう。スマホひとつで荷物の“収納+取り出し”が完結する「キュラーズ宅配サポート」や、自家用車がなくても荷物を自宅から無料で運んでくれる「キュラーズ無料シャトル」、簡単に収納棚やハンガーラックになる「レンタルラック」(月額1100円)など、便利なサービスをそろえる。
EDIT & TEXT:YUKI KOIKE(VINYL)
キュラーズ
0120-15-9780
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韓国発「マーティン キム」の日本上陸に100人が並ぶ デザイン室長が見た日本は“ファッションの先進国”
韓国発のファッションブランド「マーティン キム(MATIN KIM)」は、10月29日までの期間、渋谷パルコの3階でポップアップを開催している。ポップアップに先駆けて日本公式オンラインサイトもローンチしており、今後は国内の市場への展開を強化していく。運営とマーケティングはMXN ジャパンが代行する。同ブランドが国外の市場に本格的にアプローチするのは日本が初めてとなる。
入場規制で100人が並ぶ
1万円台のウオレットが人気
「マーティン キム」のポップアップは、渋谷パルコ3階のヌビアン(NUBIAN)前のスペースで開催中だ。初日の10月18日、開店してまもなく入場規制により100人ほどの並びができた。「よく売れているのは、シグネチャーのウオレット(1万1300円)やクロップトップTシャツ(5000円)など」と担当者。
デザイン室長が語る「マーティン キム」
「ミニマルでも裏切りのあるアイデアを」
日本上陸という新しい門出を祝して来日した、キム・ウビン(Kim Woobin)「マーティン キム」デザイン室長に話を聞いた。
同ブランドは、2018年にデビュー。自由なスタイルをミニマルなデザインで表現しており、韓国の若者を中心に人気を集めている。展開はウィメンズがメーンだが、メンズにも愛用者が少なくない。価格帯はジャケットやジャンパーが25〜35万ウォン台(約2万7500〜3万8500円)、Tシャツが4〜20万ウォン台(約4400〜2万2000円)、ドレスが15〜25万ウォン台(約1万6500〜2万7500円)、パンツが10〜25万ウォン台(約1万1000〜2万7500円)、バッグが4〜25万ウォン台(約4400〜2万7500円)など。
「私たちはデザインにおいて要素を盛り込みすぎず、ナチュラルであることを重視している。それでも、想像を裏切るようなアイデアをどこかに入れ込む。少しの工夫であっても、ブランドのファンは気づいてくれている」。
当初はオンラインストアとSNSのみで運営し、トレンドに敏感なファンを着実に取り込んでいった。「消費者から届いた意見を取り入れ、一方通行にならないコミュニケーションを心掛けた」。エッジを効かせたデザインのブーツや小物から、徐々に人気に火がついたという。
21年には、韓国のファッションプラットフォームである専門投資会社、ハゴ L&Fの投資を受け、オフライン領域にも拡大。現在、新世界百貨店などの韓国を代表する百貨店のほか、最先端のファッショントレンドを発信するスポット、聖水洞に構えた旗艦店などで取り扱っている。これまでに、「リーバイス(LEVI'S)」や「アシックス(ASICS)」などのブランドとのコラボレーション商品もリリースした。
SNSを通して世界中にファンが生まれたが、初めて進出する国外の市場には日本を選んだ。「韓国カルチャーのブームもあり、パンデミック以降、両国の距離が近づいた。聖水洞の旗艦店にも多くの日本のファンが訪れるように。この光景を見て、もっと日本のファンとの接点を増やしたいと思った」。
日本では今後、公式オンラインショップのほか、不定期のポップアップストアを通して消費者にアプローチする。「ブランドを愛してくれるファンは、日本も韓国も大きな違いはない。ブランドのそのままのトレンドを見せたい。一方で日本はファッションにおいて、先進国でもある。今後は日本限定アイテムやキャンペーンのローンチも検討中だ。メンズサイズの拡張を望む声にも、ぜひ応えたいと思っている」。
■「マーティン キム」ポップアップ
会期:〜10月29日
場所:渋谷パルコ 3階ポップアップ会場
住所:東京都渋谷区宇田川町15-1
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ENHYPEN特別インタビュー 撮影の合間にはみんなでダンス!? ファッションスタイルや北米ツアーについて語る
昨今のパリおよびミラノ・ファッション・ウイークは、来場するK-POPアーティストと、彼らを一目見ようと会場周辺に集まる大勢のファンが生み出す熱気と興奮を抜きには語れない。9月に開催された2024年春夏ミラノ・ファッション・ウイークでも同様で、データテクノロジー企業ローンチメトリックス(LAUNCHMETRICS)とインフルエンサー分析プラットフォームを運営するウィアリスマ(WEARISMA)の調査によれば、ミラノ・コレクション関連のSNS投稿で最大のメディアインパクトバリューを創出したのは、「プラダ(PRADA)」のショーに来場した韓国のボーイズグループ、ENHYPEN(エンハイフン)だった。その額は700万ドル(約10億円)相当と、340万ドル(約5億円)相当で2位となったモデルのピア・ウォルツバック(Pia Wurtzbach)のおよそ倍となっている。
今年6月に「プラダ」のアンバサダーに就任し、11月に5枚目のミニアルバム「ORANGE BLOOD」のリリースを控えたENHYPEN。ロサンゼルスで行なった今回の特別インタビュー中、メンバーのジョンウォン(JUNGWON)、ヒスン(HEESEUNG)、ジェイ(JAY)、ジェイク(JAKE)、ソンフン(SUNGHOON)、ソヌ(SUNOO)、ニキ(NI-KI)は、全員が平等に発言する機会があるよう互いを気遣い、撮影の合間には好きなアーティストの一人だというポスト・マローン(Post Malone)の楽曲に合わせて踊ったりふざけ合ったりと、終始なごやかな雰囲気だった。ここでは、ファッションや衣装に関する話題をメインに、現在真っ只中だという北米ツアーで彼らが感じていることなどをお届けする。
米「WWD」(以下、WWD):ミラノで「プラダ」のショーに来場したが、どうだった?
ENHYPENのジェイ(以下、ジェイ):「プラダ」のショーを体験したのは2回目でしたが、前回はメンズだったので、ウィメンズは初めてでした。ショーのほかにも展示会などが行われていて、とても興味深かったです。
ENHYPENのソンフン(以下、ソンフン):自由時間も少しあったので楽しかったです。ショーでは、ほかのアーティストや俳優にもたくさん会えましたし。
ENHYPENのニキ(以下、ニキ):人間の頭のようなものが付いたバッグがありましたよね。あれは人形なのかな?
ENHYPENのジェイク(以下、ジェイク):何かのキャラクターじゃない?
ニキ:そうかも。ショーが終わってすぐ、本当に素晴らしかったし面白かったね、ってみんなで話したんです。
WWD:ファッション関連のイベントで楽しいことは?
ジェイク:ヨーロッパのファンに会える機会がなかなかないので、「プラダ」はそれがうれしかったですね。ミラノでは、ファンの皆さんが本当に温かく迎えてくれました。
ENHYPENのヒスン(以下、ヒスン):ファッションショーを間近で見られること自体が、素晴らしい体験だと思います。実際に見るのと、動画で見るのとは全く違うんですね。デザイナーが伝えたいことが、本当にダイレクトに感じられました。
ステージ上で自分を“魅せる”ため
ファッションは重要な要素
WWD:自分のファッションスタイルについて。
ENHYPENのソヌ(以下、ソヌ):エフォートレスなルックにしたくて、最近はフーディーをよく着ています。
ソンフン:僕はドレスアップするのが好きなので、ちょっとした何かを付け加えることが多いです。エフォートレスの反対ですね。しっかりコーディネートして、アクセサリーも着けて、みたいな。
ニキ:僕はヒップな雰囲気や、ビンテージものが好きです。
ENHYPENのジョンウォン(以下、ジョンウォン):僕はオーバーサイズな服が好きですね。デビューしたころから、それは変わっていません。でも、以前は何もかもオーバーサイズなものを着ていましたが、最近はレギュラーサイズのトップスに、オーバーサイズでバギーなボトムスを合わせるようになりました。
ジェイ:好きなスタイルはたくさんありますが、最近はレトロとニュートロ(新たなレトロ)が好きです。1970~80年代のスタイルとか、スタッズとか。
WWD:ファッションがK-POPで重視される理由について。
ジェイク:ステージ上で自分自身を“魅せる”ことはK-POPの大きな要素の一つなので、ファッションや何を着るかについてはじっくり考えますね。また、一般の人もファッションやビジュアル面を気にするからというのもあります。
ヒスン:それと、ファッションは自分をどう見せたいかに大きく関わる部分だからというのもありますね。着る洋服によって見た目や雰囲気が変わるので、どう見られたいかによっていろいろスタイルを変えています。アイドルにとって、それは重要なことなので。
WWD:アルバム「DARK BLOOD」のプロモーションでのファッションについて。
ソヌ:「DARK BLOOD」では、スーツなど、ヴァンパイアが着ていそうな服を着ました。ミュージックビデオではパールのベストも着ましたし、新しいことにもチャレンジしてみました。吸血鬼っぽい感じのものをいろいろ試してみたりとか。
ジョンウォン:職人の方が、僕たちのために衣装をカスタムで作ってくださったんですよ。最初はファンの皆さんも驚いたかもしれませんが、僕たちはあの衣装をとても誇らしく思っています。重かったけど、メンバー全員が気に入っています。
アンコールの衣装はニキのリクエスト
北米ツアーでは声援にびっくり?
WWD:北米ツアーの皮切りとなったロサンゼルスで初めてコンサートを行なった感想は?
ソンフン:ロサンゼルスのスタジアムでのライブは、本当に違う感じがしました。エンジン(ENGENE。ENHYPENのファンの名称)のみんなもすごく楽しんでくれたと思うし、そうして強さをもらったおかげで、ステージ上の僕たちもいつもよりさらにエキサイトできました。本当に楽しかったです。
WWD:セットリストで一番好きな曲とその理由について。
ソヌ:ここ最近は「カルマ(KARMA)」ですね。前は好きじゃなかったという意味ではなく、ほかにも好きな曲がいろいろあるからなんですが、今回はこれをライブの最後の曲にしたんですよ。アメリカの雰囲気によく合うと思うし、最高潮のままライブを終える感じがしていいな、と。
ジェイ:僕は、個人的に「ブロックバスター(Blockbuster)」が好きです。事務所のスタッフと一緒にセットリストを決めているとき、前回のライブとは完全に違う感じにしたいよね、という話になって。それで、大きなインパクトを残すために、最初のほうにこの曲を入れました。ファンの皆さんも楽しんでくれていると思うし、曲自体もとてもいいですよね。うん、僕はこの曲が一番好き。
WWD:ツアー衣装で最もお気に入りは?
ニキ:アンコールの衣装です。ほかの衣装は楽曲に合わせて作られたものですが、アンコールにはTシャツとバギージーンズという自分が好きなものを着たい、と事務所にリクエストしました。着られてうれしかったし、一番好きな衣装ですね。
ソンフン:リクエストしたのは、たぶんニキだけだよね。そんなことができるって知らなかったよ。ちなみに、北米ツアーではアンコールの衣装を変えています。
ジョンウォン:(ツアーの地域や時期で)衣装を変えているんです。
ニキ:グッズも変わっているんですよ。
WWD:今回と前回のツアーで、一番異なることは?
ヒスン:セットリストですね。前回はアンコールを入れて18~19曲だったと思うんですが、今回は24曲ぐらいあります。これはスタミナ面でかなり違ってきます。あと、今回のほうがステージに長くいるし、合間の休憩が短くなっているんじゃないかな。
WWD:ツアーのほかの都市で最も楽しみにしていることは?
ヒスン:都市ごとにカルチャーが違っているんですが、ロサンゼルスでは観客が吠えるような声を上げたり、「ウー、ウー、ウー!」って叫んだりしていましたね。
WWD:アメリカのSNSでトレンドに入っていました。
ソンフン:その声を聞いたヒスンが、「ファンのみんなが突然ブーイングしてるんだけど……」って、ライブ中に僕らのところに言いにきたんですよ。
ヒスン:そういう応援だとは知らなかったんです。エンジンの声は天使のようだといつも言っているんですが、「ウー!ウー!」って聞こえてきて、少し混乱してしまったんですよね。ポジティブな意味の声援だと、後で知りました。
ジョンウォン:(足を踏み鳴らしながら)こんな感じの応援もしてくれたんですよ。
WWD:なるほど。これは驚きますね。
ジョンウォン:地震かと思いました。
ヒスン:各都市で、こうしたいろんな経験ができることを楽しみにしています。
ジェイク:北米ツアーのキックオフとなった、ロサンゼルスでのライブは最高でした。このエネルギーを持って、残りの都市で安全に楽しくライブをやりたいです。
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「サロパ」で来日続々 英発「ミラー ハリス」のトップに聞くニッチフレグランス市場
英発フレグランス「ミラー ハリス(MILLER HARRIS)」のジョン・グラハム最高経営責任者(CEO)が来日した。伊勢丹新宿本店で開催されている「サロン ドゥ パルファン 2023(SALON DE PARFUM 2023」で出展しているため、その視察はじめ、日本市場について知るのが目的だ。「ミラー ハリス」は調香師のリン・ハリスが2000年にロンドンで設立。ボタンカル(植物)にこだわりながらロンドンという町が持つダイバーシティーを反映した香りを提供している。来日したグラハムCEOに話を聞いた。
グラハムCEOは、「『ミラー ハリス』は、クラシックな香水にロンドンのコンテンポラリーなツイストを加えた若い感覚のフレグランスだ」と語る。アートやカルチャー、ファッションなどダイナミックなロンドンの多様性を表現すると同時に、コロナ禍で変わった“ラグジュアリー”の意識にも寄り添う香を提案。「コロナ禍で人々が、日常の小さなことに対して価値を感じるようになった。日々の生活に見られる小さな美しい瞬間を切り取り、ロンドンのツイストを加えて香りに落とし込んでいる」。
ベストセラーは、“スケルツォ”。F.スコット・フィッツジェラルド(F. Scott Fitzgerald)の小説「夜はやさし」の一節からインスパイアされたというユニークなストーリーが人気の理由。同CEOは、「香りはもちろんだが、その背後のストーリーが需要」と言う。来年には、フランス・パリや中国・上海など世界中の4つの都市に合う文学の一節が着想源のフレグランスを発売予定だ。日本のベストセラーは、“ティートニック”。茶畑やロンドンで楽しまれる香り高い紅茶を想起させるフレッシュな香りだ。
環境に優しいニッチフレグランスの入門ブランド
グラハムCEOは、「ニッチフレグランスの市場は飽和している。各ブランド、それぞれの顧客がいるから、競合だとは考えない。われわれは、ロンドンという町をはじめ、日々の美しい瞬間を独自のストーリーで伝えることが大切だと考える」と言う。ニッチフレグランスというと取っ付きにくい印象があるが「ミラー ハリス」は、親しみやすいブランドだと言う。「『ミラー ハリス』はできるだけ多くの人に身近なブランドでありたい。ニッチフレグランスに興味のある人にとっては、入門ブランドとしてぴったり。一度香りを嗅ぐとファンになる人が多い」。そのため、消費者とのコミュニケーションは分かりやすく、コミュニティーを作るように行っているという。
「ミラー ハリス」は、20年にわたり環境に配慮したブランドとして活動している。バラやフィグ、オークなどを可能な限り廃棄を減らして使用したり、水を再利用したりしている。グラハムCEOは、「通常は廃棄される素材も再利用できないか実験を行っている。そうすることにより新たなクリエイションが生まれることもある」と話す。
路面店出店を視野に入れながらECも強化
日本市場における売上高は2022年、前年の2倍を記録した。コロナを機に、特に若い消費者によるニッチフレグランスの需要の高まりを象徴している。日本市場に関してグラハムCEOは、「ストーリーを理解してから購入する消費者が多いため、他の市場よりは時間がかかる。日本で成功すれば、世界で成功できると考える。親和性の高い顧客の元に商品を届けることが大切」と話す。現在、日本の販売拠点は24。海外では、コンセプトショップやホテルなど多岐にわたる販売拠点があるが、日本は百貨店が中心だ。そういう意味でも伸び代はまだまだある。これから、日本国内でもロンドンの“アーバン ネイチャー”をテーマにしたショップコンセプトを導入していくそうだ。「27年までに、全てのラインをそろえ、ブランドの世界観を伝えられるような路面店を出店したい」。また、ECの強化も図る予定だ。「イギリスでは、売上高の5割がECだ。デジタルマーケティングなどを通してディスカバリーセットを購入した2.5人に1人は、フルボトルを購入する。店舗とオンライン両方で顧客と繋がることが大切だ」。
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「サロパ」で来日続々 美貌の調香師によるフレグランス「エラ ケイ」の “引き算”の美学
フランス発ニッチフレグランス「エラ ケイ(ELLA K)」の創業者兼調香師のソニア・コンスタンが新作“ムスク K”の発表会のために来日した。「エラ ケイ」は2017年に設立、“旅”をテーマにしたフレグランスを提案している。同ブランドは、17日まで伊勢丹新宿本店で開催されている「サロン ド パルファン 2023(SALON DE PARFUM 2023)」にも出展し、新作“ムスク K”の先行販売などを行っている。
コンスタンは大手香料会社ジボダン(GIVAUDAN)で唯一女性のマスターパフューマー。「ナルシソ ロドリゲス(NARCISO RODRIGUEZ)」「トム フォード(TOM FORD)」「カルティエ(CARTIER)」などに数多くの名香を調香してきた。来日した彼女に、自身のブランドについて聞いた。
「エラ ケイ」は自分の伝記のようなもの
コンスタンは、「子どもの頃はバレリーナになりたかった。それからデザイナーになりたいと思っていた。人々を魅了する香りをつくる調香師は魔法使いのよう。もともと香りが好きだったので、香りの楽しみとアーティスティックなことが結びついた調香師になろうと思った」と語る。長身でまるでファッション誌から飛び出てきたような彼女だが、調香師としてのキャリアはもう20年。自身のブランドを立ち上げたきっかけは、クリエイション全て自身で手掛けたかったからだという。「自分のブランドは、私自身の伝記のようなもの。1〜10まで、全て本物で嘘がない」。
さまざまなフレグランスを手掛けてきた彼女は、大手メーカーによるフレグランスは、マーケティングが必須なことを熟知している。「自分がオーナーであれば、予算もマーケティングも関係なく、原材料も自分が使いたいと思えば、とめどなく高価なものを使える」と話す。とはいえ、ナルシソ・ロドリゲスやトム・フォードといったデザイナーのフレグランスを手掛けるときは、そのブランドのDNAに組み込まれるように、哲学を理解して香りを調香するという。
夢を実現する女性へのオマージュ
ブランド名は、スイス人の女性冒険家であるエラ・マイヤールの名前と、コンスタンの祖父の名前のイニシャル“K”を組み合わせたもの。マイヤールは、20世紀初頭に女性写真家として、中国やロシアなど世界各地を旅した人物だ。コンスタンにブランド哲学を聞くと、「夢を実現する女性たちへ寄せたオマージュ。夢を実現する女性に、より大胆に、一歩踏み出してほしいという思いを込めた」と話す。「エラ ケイ」は、旅がテーマ。だが、外への旅と自分自身の内への旅を誘うような哲学的なブランドだ。「『エラ ケイ』は、私自身のアバターでもある。クリエイションを通して私自身が歩む道を見つけ、より解放される」。
引き算で表現する知られざる場所へ誘う香り
「エラ ケイ」では、毎年1つのペースで新作が登場する。旅がテーマということもあり、コンスタン自身が旅に出て、その土地の香を選び、香りへ落とし込む。その場所は、カザフスタンのアルタイ、ボツワナのオカバンゴ、ベトナムのサパ・バレー、日本の嵯峨野など、知る人ぞ知る旅先。コンスタンは、「ボードレールの『悪の華』の中にある“音”と“色彩”と“香り”の共鳴を大切にして、香りに落とし込んでいる」と話す。そのプロセスは、印象画の絵のように、旅先の瞬間を切り取り、ボトルに封じ込めることだという。「旅を香りで表現するのに大切にしているのは、できるだけ原材料を少なくしている点。彫刻家のように、引き算で香りを完成させる」。彼女のクリエイションのモットーは、”レス・イズ・モア“だと言う。「フレグランスとは感情。素晴らしい香りは感情を生まれさせることができるはず。『エラ ケイ』でいろいろな場所への旅を誘いたい」。
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「サロパ」で来日続々 美貌の調香師によるフレグランス「エラ ケイ」の “引き算”の美学
フランス発ニッチフレグランス「エラ ケイ(ELLA K)」の創業者兼調香師のソニア・コンスタンが新作“ムスク K”の発表会のために来日した。「エラ ケイ」は2017年に設立、“旅”をテーマにしたフレグランスを提案している。同ブランドは、17日まで伊勢丹新宿本店で開催されている「サロン ド パルファン 2023(SALON DE PARFUM 2023)」にも出展し、新作“ムスク K”の先行販売などを行っている。
コンスタンは大手香料会社ジボダン(GIVAUDAN)で唯一女性のマスターパフューマー。「ナルシソ ロドリゲス(NARCISO RODRIGUEZ)」「トム フォード(TOM FORD)」「カルティエ(CARTIER)」などに数多くの名香を調香してきた。来日した彼女に、自身のブランドについて聞いた。
「エラ ケイ」は自分の伝記のようなもの
コンスタンは、「子どもの頃はバレリーナになりたかった。それからデザイナーになりたいと思っていた。人々を魅了する香りをつくる調香師は魔法使いのよう。もともと香りが好きだったので、香りの楽しみとアーティスティックなことが結びついた調香師になろうと思った」と語る。長身でまるでファッション誌から飛び出てきたような彼女だが、調香師としてのキャリアはもう20年。自身のブランドを立ち上げたきっかけは、クリエイション全て自身で手掛けたかったからだという。「自分のブランドは、私自身の伝記のようなもの。1〜10まで、全て本物で嘘がない」。
さまざまなフレグランスを手掛けてきた彼女は、大手メーカーによるフレグランスは、マーケティングが必須なことを熟知している。「自分がオーナーであれば、予算もマーケティングも関係なく、原材料も自分が使いたいと思えば、とめどなく高価なものを使える」と話す。とはいえ、ナルシソ・ロドリゲスやトム・フォードといったデザイナーのフレグランスを手掛けるときは、そのブランドのDNAに組み込まれるように、哲学を理解して香りを調香するという。
夢を実現する女性へのオマージュ
ブランド名は、スイス人の女性冒険家であるエラ・マイヤールの名前と、コンスタンの祖父の名前のイニシャル“K”を組み合わせたもの。マイヤールは、20世紀初頭に女性写真家として、中国やロシアなど世界各地を旅した人物だ。コンスタンにブランド哲学を聞くと、「夢を実現する女性たちへ寄せたオマージュ。夢を実現する女性に、より大胆に、一歩踏み出してほしいという思いを込めた」と話す。「エラ ケイ」は、旅がテーマ。だが、外への旅と自分自身の内への旅を誘うような哲学的なブランドだ。「『エラ ケイ』は、私自身のアバターでもある。クリエイションを通して私自身が歩む道を見つけ、より解放される」。
引き算で表現する知られざる場所へ誘う香り
「エラ ケイ」では、毎年1つのペースで新作が登場する。旅がテーマということもあり、コンスタン自身が旅に出て、その土地の香を選び、香りへ落とし込む。その場所は、カザフスタンのアルタイ、ボツワナのオカバンゴ、ベトナムのサパ・バレー、日本の嵯峨野など、知る人ぞ知る旅先。コンスタンは、「ボードレールの『悪の華』の中にある“音”と“色彩”と“香り”の共鳴を大切にして、香りに落とし込んでいる」と話す。そのプロセスは、印象画の絵のように、旅先の瞬間を切り取り、ボトルに封じ込めることだという。「旅を香りで表現するのに大切にしているのは、できるだけ原材料を少なくしている点。彫刻家のように、引き算で香りを完成させる」。彼女のクリエイションのモットーは、”レス・イズ・モア“だと言う。「フレグランスとは感情。素晴らしい香りは感情を生まれさせることができるはず。『エラ ケイ』でいろいろな場所への旅を誘いたい」。
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「サロパ」で来日続々 老舗フレグランス「クリード」の創業一族7代目に聞く日本市場の可能性
同イベントのために、創業一族7代目のアーウィン・クリードが来日。「クリード」は8月末に伊勢丹新宿本店内に出店し、整理券を配るほどの人気だという。同店で17日まで開催されている「サロン ドゥ パルファン 2023(SALON DE PARFUM 2023)」では、“カーミーナ”やディスカバリーセットなどを販売中だ。来日したクリードに話を聞いた。
日本のフレグランス市場についてクリードは、「日本人はラグジュアリーに対する感覚がとても繊細。本当に良いものやストーリーのあるものを理解している。だから、『クリード』との相性はとても良い」と語る。欧米などに比べると日本のフレグランス市場はまだまだ未熟だ。だがクリードは、「成熟している市場よりは日本のように、伸び代のある市場の方がチャレンジングで面白い」と話す。ニッチフレグランスに対する関心が高い消費者が増えている日本市場には大きな可能性を感じているようだ。
6月にはケリング傘下に入り、新たなチャプターを迎えた「クリード」。クリードは、「代々受け継がれてきたブランドのDNAを大切にしていくことが最優先。『クリード』の出発点はテーラーだった。だから、ファッションとの親和性も高いし、さまざまな可能性を持っている」と語った。
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NY発「サトミ カワキタ」の“モノが人を選ばない”手の温もりが伝わるジュエリー
米ニューヨーク発ジュエリー「サトミ カワキタ(SATOMI KAWAKITA)」の路面店が6月東京・南青山に登場した。同ブランドは、デザイナーのサトミ・カワキタが2008年にニューヨークで設立。自然の中にある形や素材感をインスピレーション源に、微妙な歪みや不規則性とクラフト感があるジュエリーを提案している。トライベッカの工房で職人が手仕事で仕上げるジュエリーから、手の温もりが伝わってくる。ニューヨークの「スティーブン アラン(STEVEN ALAN)」などのセレクトショップや、英ロンドンの「リバティ(LIBERTY)」などの百貨店を中心に販売。日本では、「トゥモローランド(TOMORROWLAND)」などが取り扱っている。
グレーの濃淡を基調にしたクリーンなデザインの店舗には、木工作家の吉川和人による什器や家具が置かれ、リビングのように居心地の良い空間だ。ブランドを立ち上げて15年、拠点はニューヨークだが、日本にも拠点を持ちたいというカワキタの思いが反映された店舗になっている。子どもの頃からモノ作りが好きで以前はガラス作家に従事していたというカワキタ。彼女に、クリエイションに込める思いについて聞いた。
ニューヨークで出合った彫金
ガラス工房で吹きガラスを制作していたカワキタが、彫金に出合ったのはニューヨークだった。カワキタは、「語学留学で立ち止まってモノ作りについて考えた。ガラス制作はチームワークでスピード感が必要。それよりは、自分がちまちました作業が好きなことに気づいた」と話す。そこで、彼女はニューヨークで彫金学校に入学し、ダイヤモンドの石留め職人の道を歩み始め、7年間働いた。「ガラスは割れたら終わりだが、ジュエリーは長く使える。石留め職人の技術を生かしてジュエリーブランドを立ち上げた」と語る。
ブランドを立ち上げ当時は、素材調達の予算もあまりなく、華奢なリングしか作れなかったが、それが、ブランドのシグニチャーになった。「重ね付けすることにより、個性あふれる幾通りもの表情がある。記念日や思い出と共に増やしたリングを足し引きして楽しめるのも魅力だ」。ダイヤモンドのセッティングができるので、ブライダルラインも始めた。「ブライダルという皆が幸せになるモノ作りをしたいと思った」。ダイヤモンドをセッティングした“ヘキサゴン”はベストセラーの一つ。主張しすぎないデザインが、人と違うエンゲージリングを探している人に支持されている。
“モノが人を選ばない”デザイン
ケースの中には、ずらりとリングが並べられ、そのバリエーションの多さに驚かされる。「アメリカは、さまざまな肌の色の人がいる多様な国。指が細い人もいれば、太い人もいる。私がクリエイションでこだわっているのは、“モノが人を選ばない”ということ。誰もが、何か似合うものを見つけてほしい」とカワキタ。一見、シンプルなリングばかりだが、一つ一つにさりげない表情がある。整いすぎていない“揺らぎ”が味になっている。「リングという小さなスケールでどれだけ個性が表現できるか考えるのが楽しい。つけ心地にもこだわる。指と向き合うと、揺らぎがあるデザインが自然だと感じる。人の証が残るものを作りたい」。
使用している地金にもこだわりがある。18金ゴールドはすべてニューヨークでリサイクルされたものを使用。ホワイトゴールドは、天然ゴールド本来の色を生かし、ホワイトというよりは、シャンパンやグレーがかった優しい色合いだ。使用する宝石もカワキタがアリゾナのツーソンで買い付けたものなどユニークな石が多い。
訪日外国人のカップルが来店した。カワキタが声をかけると「ニューヨークでブランドを知った。来日したので東京でジュエリーを購入するのが目的だ」と言う。このようにニューヨークで「サトミ カワキタ」のジュエリーに出合い、東京の店舗を訪れる外国人も多いようだ。モノ作りに対するカワキタの静かな情熱が表現されているジュエリーのファンには待望の路面店だ。
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NY発「サトミ カワキタ」の“モノが人を選ばない”手の温もりが伝わるジュエリー
米ニューヨーク発ジュエリー「サトミ カワキタ(SATOMI KAWAKITA)」の路面店が6月東京・南青山に登場した。同ブランドは、デザイナーのサトミ・カワキタが2008年にニューヨークで設立。自然の中にある形や素材感をインスピレーション源に、微妙な歪みや不規則性とクラフト感があるジュエリーを提案している。トライベッカの工房で職人が手仕事で仕上げるジュエリーから、手の温もりが伝わってくる。ニューヨークの「スティーブン アラン(STEVEN ALAN)」などのセレクトショップや、英ロンドンの「リバティ(LIBERTY)」などの百貨店を中心に販売。日本では、「トゥモローランド(TOMORROWLAND)」などが取り扱っている。
グレーの濃淡を基調にしたクリーンなデザインの店舗には、木工作家の吉川和人による什器や家具が置かれ、リビングのように居心地の良い空間だ。ブランドを立ち上げて15年、拠点はニューヨークだが、日本にも拠点を持ちたいというカワキタの思いが反映された店舗になっている。子どもの頃からモノ作りが好きで以前はガラス作家に従事していたというカワキタ。彼女に、クリエイションに込める思いについて聞いた。
ニューヨークで出合った彫金
ガラス工房で吹きガラスを制作していたカワキタが、彫金に出合ったのはニューヨークだった。カワキタは、「語学留学で立ち止まってモノ作りについて考えた。ガラス制作はチームワークでスピード感が必要。それよりは、自分がちまちました作業が好きなことに気づいた」と話す。そこで、彼女はニューヨークで彫金学校に入学し、ダイヤモンドの石留め職人の道を歩み始め、7年間働いた。「ガラスは割れたら終わりだが、ジュエリーは長く使える。石留め職人の技術を生かしてジュエリーブランドを立ち上げた」と語る。
ブランドを立ち上げ当時は、素材調達の予算もあまりなく、華奢なリングしか作れなかったが、それが、ブランドのシグニチャーになった。「重ね付けすることにより、個性あふれる幾通りもの表情がある。記念日や思い出と共に増やしたリングを足し引きして楽しめるのも魅力だ」。ダイヤモンドのセッティングができるので、ブライダルラインも始めた。「ブライダルという皆が幸せになるモノ作りをしたいと思った」。ダイヤモンドをセッティングした“ヘキサゴン”はベストセラーの一つ。主張しすぎないデザインが、人と違うエンゲージリングを探している人に支持されている。
“モノが人を選ばない”デザイン
ケースの中には、ずらりとリングが並べられ、そのバリエーションの多さに驚かされる。「アメリカは、さまざまな肌の色の人がいる多様な国。指が細い人もいれば、太い人もいる。私がクリエイションでこだわっているのは、“モノが人を選ばない”ということ。誰もが、何か似合うものを見つけてほしい」とカワキタ。一見、シンプルなリングばかりだが、一つ一つにさりげない表情がある。整いすぎていない“揺らぎ”が味になっている。「リングという小さなスケールでどれだけ個性が表現できるか考えるのが楽しい。つけ心地にもこだわる。指と向き合うと、揺らぎがあるデザインが自然だと感じる。人の証が残るものを作りたい」。
使用している地金にもこだわりがある。18金ゴールドはすべてニューヨークでリサイクルされたものを使用。ホワイトゴールドは、天然ゴールド本来の色を生かし、ホワイトというよりは、シャンパンやグレーがかった優しい色合いだ。使用する宝石もカワキタがアリゾナのツーソンで買い付けたものなどユニークな石が多い。
訪日外国人のカップルが来店した。カワキタが声をかけると「ニューヨークでブランドを知った。来日したので東京でジュエリーを購入するのが目的だ」と言う。このようにニューヨークで「サトミ カワキタ」のジュエリーに出合い、東京の店舗を訪れる外国人も多いようだ。モノ作りに対するカワキタの静かな情熱が表現されているジュエリーのファンには待望の路面店だ。
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ファッションPRによるフレグランス「イエ バンドゥ」 創業者に聞く3カ月で黒字化した“自分軸”のビジネス
細川麻里子 / EMME最高経営責任者、ye22ブランドディレクター プロフィール
香川県出身。東京で育ち、大学卒業。米シアトルに留学し、アート・インスティテュート・オブ・シアトル卒業。ニューヨークに移り、日経商社で営業として勤務後、2008年帰国。アパレルの輸入代理店でファッションPRとして働いた後16年、フリーランスPRとして独立。18年にEMMEを設立し、22年「イエ バンドゥ」をスタート PHOTO:TISCI
「ヴェジャ(VEJA)」や「グローブ トロッター(GLOBE TROTTER)」などのPRを行うEMMEが手掛けるライフスタイルブランド「イエ バンドゥ(YE 22)」がデビュー1周年を迎えた。同ブランドは、細川麻里子EMME最高経営責任者(CEO)が2022年8月に香りに特化したD2Cブランドとして創業。ブランドディレクターとしてコンセプト作りから商品開発、販売まで携わっている。
同ブランドが販売するのは、フレグランスとハーブティー。美容成分入りのフレグランス“パルファムシャワー”が好評で、創業後3カ月で黒字化した。12月にはナチュラル&オーガニックのセレクトショップ「コスメキッチン(COSME KITCHEN)」でエクスクルーシブの香り2種を発売予定だ。細川CEOに、「イエ バンドゥ」に込めた思いについて聞いた。
自分軸のビジネス&女性をサポートするブランド
「イエ バンドゥ」という名前は、聖書の中で“あなた”を意味する“イエ(ye)”とブランドが誕生した年22を掛け合わせたもので、“自分だけのストーリーを生きる”という意味が込められている。ブランドを立ち上げた理由について細川CEOは、「PRは他人任せのビジネス。コロナ禍でクライアントやイベントが減り打撃を受け、人から与えてもらったものはなくなると実感した。会社を継続させるためにも自分軸のビジネスをしたいと思い、ブランドを立ち上げた」と話す。
香りに特化したブランドにした理由は、同CEOが好きな洋服と同じく身にまとうものだから。「直感に訴える香りでポジティブになれるようなブランドにしたい。海外に比べると日本では、経済的・精神的に自立している女性が少ない。私自身にも通じるが、自分軸で物事を捉えて自由に生きる女性を応援するブランドになればと思う」と話す。「イエ バンドゥ」では、香りを通して女性をサポートする商品を開発していく予定だ。現在販売しているハーブティーも女性特有のむくみや更年期障害などの悩みに特化したもので、効能はもちろんだが、飲みやすいように味を研究した。「インナービューティを気にする女性が増えている。朝はハーブティー、日中は“パルファムシャワー”、夜は香水というように香りを通した毎日のリチュアル(儀式)を提案できればと思う」。
実体験から生まれた“パルファムシャワー”
ラグジュアリー・ブランドからニッチブランドまでさまざまあるフレグランス市場で、ゼロからスタートするにあたり、細川CEOが思いついたのが市場にない新しい製品“パルファムシャワー”だ。「香水に美容成分を加えたら面白いと思った。“パルファムシャワー”は美容成分が95%で、スキンケアやヘアケアなどいろいろ使えるし、香りもまとえる。飛行機が苦手で、機内に持ち込めて、スキンケアもでき香りでリフレッシュできるものがあればと思った」。この“パルファムシャワー”がヒット。ブランドをスタートして3カ月後には数千個を販売した。体全体にふんわり香りがまとえるように霧の細かさにこだわり、香水が着けられない医療従事者や飲食店従業員からスタイリストなどから支持されている。使いやすさや価格帯などからギフト需要もあるという。
香りは、“アッパーウエストサイド”“アルキビーチ”“ヴィルフランシュ=シュル=メール”“ル マレ”の4種類。細川CEOが住んだり訪れたりした場所の情景が着想源だ。メード・イン・ジャパンにこだわり、ナチュラルな香料を使って日本人の調香師が仕上げた。「場所の写真などを盛り込みながら、ブログやSNSで発信して香りのイメージを伝えている」。ベストセラーは、“ヴィルフランシュ=シュル=メール”だ。爽やかで男女問わず使える点と、スキンケアとして一番マッチする香りだからだという。
地道に認知度アップを図り海外展開も視野に
D2Cブランドでありながら3カ月で黒字化できたのは、PRで培ったネットワークが大きい。「友人やインフルエンサーにブランドを紹介してSNSで紹介してもらったり、雑誌に掲載してもらったりした。SNS発信やポップアップショップを行い、地道にブランド認知度アップを図った」と細川CEO。ポップアップでの実売はあまりないが、ムエットを渡すことがオンラインの販売につながるという。「インスタライブが売り上げに直結する。霧の細かさを見て興味を持つ人もいて、SNSと相性が良いと思う」。オンライン注文は当日発送というスピーディな対応も顧客満足度に繋がっているようだ。
現在、売り上げの8割がオンラインだが、リステアなどのセレクトショップへ卸販売もしている。「ブランド立ち上げ時から取り扱いのあるリステアでは安定して売れている。ポップアップの話も増えており、卸を増やしたい」。27年までに年商1億円を達成するのが目標だ。同CEOは、「香りを軸に、ブランドとして価値を高めて大切に育てて行きたい。ゆくゆくは、海外での展開も視野に入れている」。
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人気ブランド「epine」が突然のブランド休止宣言、渦中の創業者2人に直撃インタビュー
インスタグラム発の人気ブランド「エピヌ(epine)」が10月12日夜、2人の創業者である山本彩也架(@ayayaka1019)と鈴木舞(@ym14me)のインスタグラムアカウントで突如、1年後の2024年11月21日にブランドを休止すると発表した。同ブランドを運営するepine officialの直近の22年11月期の年商は約10億円。18年12月に法人化以来、売上高はずっと右肩上がりで成長し、23年11月期も過去最高の売り上げが達成確実という人気絶頂のタイミングでの、突然の休止宣言。「epine」に何があったのか。創業者2人に直撃した。
創業以来、二人三脚で決断&作業
「エピヌ」のブランド創業は、2015年11月21日。代表取締役CEOの山本デザイナーと取締役COOの鈴木ディレクターの2人で立ち上げた。「立ち上げたといっても個人事業で私が100万円、鈴木が20万円を出し合ってインスタを利用したECショップをスタートしました」と山本CEO。山本CEOはヴィンテージショップでのバイヤー経験こそあったものの、取り立てて業界にコネがあったわけでもなく、鈴木COOはまだ大学生だった。家賃を節約するために山本CEOは大学生の鈴木の家に転がり込み、当初は売り上げの大半のお金を買い付けにつぎ込んで販売するという、まさに自転車創業だった。「最初の1カ月の売り上げは30万円で、初年度は800万円でした。立ち上げから最初の1年半の給料は5万円、2〜3年目まで10万円でした。私は幸いにも仕送りで家賃を賄っていてお金がかからかったので(笑)、最低限の生活費以外は売り上げの大半を買い付けにほとんど回していました」と鈴木COO。
当初はヴィンテージを買い付けたり、韓国からテイストに合う服を仕入れたりしていたが、あるとき韓国で100枚ほどの発注をした際に「それなら縫製工場で作ったほうがいい」と言われ、オリジナルアイテムの販売をスタート。最大のヒット商品であるトートバッグはシリーズ累計で20万個に達している。ただ、製造委託先は現在も2〜3社で、メーンは最初に生産を委託したOEM企業だ。売上の増加に伴い、19年2月に表参道ヒルズの裏手の一角に路面店をオープンするため、18年12月25日に法人化。21年2月には念願だったルミネ新宿にショップをオープンした。
同社は年商が10億円に達した今でも借り入れすらなく、無借金経営だ。全て2人で決め、業務の多くも実際に2人が手を動かす。山本CEOは「立ち上げて以来、写真1枚だって人任せにせず2人でやってきました。小さなことから大きなことまで、2人で全て決めてきた」と語る。業務は山本CEOがデザインのディレクション、インスタグラムの運用、オンラインショップの運営、スタイリング、鈴木COOがヘアメイク、アートディレクション、デザインディレクション、経理や物流などの間接部門の運営・管理、PRを担当。今でもルックブックなどの「エピヌ」のビジュアル全般を撮影から編集、インスタグラムのアップまで山本CEOが作業している。
実は2人は今でも一緒に住む。「いわゆるパートナーという関係ではありません。立ち上げからそうだったというのもありますが、2人一緒にいることが一番効率がいいというか、『エピヌ』は全部2人で決めるので一緒にいるのが一番いいんです。ちなみに私は家事全般が苦手なので、マイに全部やってもらってます」。新宿にオフィスはあるものの基本的には物流倉庫のようなもので、2人の住む家がアトリエ兼住居兼オフィスのようなもの。2人のインスタグラムにはリサーチや撮影を兼ねた旅行先の投稿も多いが、「撮影こそ一眼レフカメラを使いますが、それ以外の業務の大半はスマホで完結しています」(山本CEO)。まさに2人がいる場所こそがオフィスなのだ。
ブランド休止は3年前のルミネ出店がきっかけ
ブランドの休止について考え始めたのは、21年2月のルミネ出店がきっかけだった。「ルミネに出店したあたりから、ブランド休止について考え始めました。ルミネへの出店は、立ち上げ当初に考えていた夢のひとつでした。それ以外でも夢がどんどん叶って行って、燃え尽き症候群のようになった。とはいえ、支持してくださるお客さま、支えてくれるショップスタッフなどの社員たちや仕入先がいる限り、そんなことは言ってられない。ありがたいことに売り上げはずっと右肩上がりで、常に『今が一番忙しい』という感じ。いまこの時点でもそうです」と山本CEO。
今年3月には渋谷109に出店したが、鈴木COOは「ブランド休止を考えていたし、新宿と渋谷という距離の近さ、もう手が回らないといった理由で当初はずっと断っていたんです。ただ、何度も足を運んでいただき、いろいろな話をする中で、すっと2人の中で腹落ちするような瞬間があって」。45坪と路面店も含めても最大のスペースだが、「渋谷109ならではのコラボレーションなどのおかげで新規顧客も広がった。いわゆる新宿店とのカニバリもなく、そのおかげもあって23年11月期は過去最高の売上になりそうです」(鈴木COO)。
では、なぜ休止なのか。「『エピヌ』のことは本当に全てを2人で決断してきました。小さなことから大きなことまで、決断、決断の毎日でした。1つのデザインだって『あやまい』が判断しなければ絶対に『エピヌ』ではない。それがこの8年間いつの時期の規模感であっても、心底『エピヌ』にとっては当たり前のことだと思ってやってきました』と山本CEOはインスタグラムの投稿で明かしている。そうして悩みに悩んだ末に出した結論が、一旦の「ブランド休止」だった。「もちろん他のやり方があることは分かっていますし、実際、実はこれまでたくさんの買収の話もいただきました。信じられないような金額も話もありました。でも、それも2人の中でどうしてもしっくりこなかった。『エピヌ』というブランドが残ったとしても、街中で自分たちだったらやらないような色やデザインの『エピヌ』を見ることは受け入れられなかった。それにやるんだったら、最後の1日まで燃え尽きたい。それに生まれ変わってもマイと一緒に『エピヌ』をやりたいし、ファンの皆さんに愛されてきたエピヌをできるだけ、そのままの形で残しておく。だから1年前に公表した上での休止。これが私たちの結論でした。これしかないと思ったんです」。
今後は?
来月11月17日の名古屋パルコ店のオープンを皮切りに、来年1月に広島パルコ(1月2〜8日)、2月に伊勢丹新宿本店、3月に静岡パルコ(3月20〜26日)、4月い札幌パルコ(4月12〜18日)&福岡パルコ(4月26日〜5月6日)、5月に阪急うめだ本店と、全国での怒涛のポップアップショップをオープンし、全国を巡回する。年内には宝島社からムック本も出版予定だ。「他にもたくさんのコラボレーションも予定しています。鈴木COOは「この1年はまさにフィナーレ。いわば第一幕の最終章です。最後の1日のために全力でファンの皆様に感謝の気持を伝えたい」。
休止後の予定は「正直言って、まだ何も決めていません。というか考えられないです。ただ、ブランド開始から8年、24時間365日のすべての時間をエピヌに注ぎ込んできました。ずっと2人の世界でやってきたので、写真のこと、デザインのこと、経営のこと、すべてをもっとパワーアップさせたい。そのためにもアパレル業界の人脈ももっと広げたいですし、勉強もしたいと思っています」と山本CEO。鈴木COOは「アヤ(山本CEO)は本当に1日も仕事を休んだことがないんですよ。私もアートをきちんと勉強したり、クリエイティブ全般をもっと突き詰めたい。料理が好きなので料理の勉強もしてみたいし、大好きな韓国のために韓国語を勉強したりもしたいです。あ、それに恋もしたいですね(笑)」。「変わらないのは、マイと一緒だということ。2人が結婚して子どもができてそれぞれの家庭ができても一緒に住みたいね、って話してます」(山本CEO)。「家事は私がやっているんで、服が散らかってるとかくだらないことで喧嘩もしますよ。でもずっと一緒にやってきた。だからこれからライフステージが変わっても、生まれ変わってもずっと一緒です」(鈴木COO)。
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オーパがスタートアップと協業 古着を再エネ原料に
新興企業のバイオテックワークスエイチツー(BIOTECHWOORKS-H2)は このほど、廃棄衣料を水素化するプロジェクト「バイオテックワークスエイチツー」を発表した。イオ ングループの商業施設オーパがパートナーとなり、 両社は2025年をめどに新たな古着回収プロジェクトを開始する。オーパ主要店舗で回収した古着を、 同社のプラントで水素化し、オーパ施設の再生可能エネルギー源として活用する構想だ。
「ファッションの楽しさを失わず、
無理なく循環させたい」
WWDJAPAN(以下、WWD):オーパは過去にも古着の回収を実施しているが、そこで見えていた課題は?
渡邉祐子オーパ社長(以下、渡邉社長):ファッション業界でビジネスを成長させてきた私たちは、ファッションロスに何らかの形で取り組まなければいけないと思い、数年前から、各店舗での衣料回収を実施してきた。従来回収したあとの対応は他社に任せていたが、本質的なサステナビリティを目指すならば、回収した後も自分たちが責任を持って循環させていくべきではないかと思っていた。そこで出合った1つがバイオテックワークスエイチツーだった。
WWD:バイオテックワークスエイチツー創業のきっかけは?
西川明秀バイオテックワークスエイチツー 代表取締役CEO(以下、西川CEO):私はテキスタイルメーカーのやまぎんで、環境配慮型素材の開発に注力してきたが、サステナブルな産業に転換していくためには作る側としてできることには限界がある。作った後に出るゴミを正しく処理する方法も同時に考えていかなければいけないと思ったのが始まりだ。特に繊維商品は、繊維の種類が多く分別ができず廃棄が非常に難しい。ファッションの楽しさを失わず、無理なく循環させる方法を考えたいと思った。
各テナントから出る
ごみ全てを再エネ化
WWD:具体的には?
西川CEO:プロジェクトの参加者には、食品トレーをスーパーに持参する感覚で着なくなった衣類を回収拠点に持ってきてもらう。回収後は当社で仕分けをしたのち、リサイクルが難しいものは専用プラントで水素化する。アパレル商品はボタンやファスナーなど、付属品が多く分解する作業が手間だったが、私たちはそれらをそのまま裁断機にかけて1 0 c m ×10 c m程度の大きさにしたのち、プラントでガス化する。ガス化とは、燃やさずに燻製のような手法で煙を抽出する手法だ。煙は一酸化炭素と水素で構成されるため、そこから水素を取り出すという仕組みだ。水素は再生可能エネル ギーとして協力企業に活用してもらう。一方の一酸化炭素は二酸化炭素にして、ドライアイスなどに使用する。今回であればオーパの飲食テナントにも炭酸ガスとして使ってもらうこともできる。古着の回収量から、どれだけ再エネ化できたか、焼却処分した場合と比較してどれだけ CO 2排出量 に削減したかといったエビデンスも提供で きる。来年の4月からは、プロジェクトの協 力企業に向けて環境貢献度が見える事前サービスを開始する予定だ。
WWD:これまでのゴミ処理のスキームを大きく変える技術だ。
西川CEO:私たちの強みの1つは、どんな商品でも再資源化できること。オーパのお客さまには好きな商品を購入してもらって、あとはオーパを通して私たちに任せてもらえば正しくリサイクルできる。オーパとお客さまの信頼関係構築にもつながるのではないかと思っている。まずは衣類から始めるが、ゆくゆくはオーパの各テナントから出るごみ全てを再エネ化できる。
渡邉社長:初めて聞いたときは、本当にできるの?と思ったのが正直なところだ。それでも、話を聞けば聞くほど興味深い。ファッションの課題を解決していくために一緒に踏み込んでいこうと思わせてくれるパートナーだった。
2025年度に日本での
プラント建設開始を目指す
WWD:今後の展開は?
西川CEO:すでにオーパのインフォメーションカウンターの制服に関してはシーズンの切り替えのタイミングで回収しているが、2025年度に日本でのプラント建設開始を目指しており、建設開始後に回収を本格的に進める。
渡邉社長:主要7店舗で回収を始める。当社の顧客層は若い世代が中心だ。環境に意識の高い彼らとアクションを起こし、実績を積めれば、イオングループや地域全体にも広げられ、業界の未来に貢献できる。
西川CEO:ゆくゆくは、日本全体を変えて いきたいし、日本のファッション企業のカー ボンニュートラル化を後押ししたい。
横浜ビブレの制服から協業始まる
1 / 4
オーパが運営する横浜ビブレでは今年4 月から、インフォメーションカウンターで働く従業員の制服にやまぎんが開発した機能素材「ゼロテックス」を採用している。秋冬の制服のデザインは、ファッションを学ぶ学生から案を募った。従業員とお客さまの投票の中から横浜fカレッジに在籍する長沼綺星(ながぬま・きらら)さん(写真・左)の制服が選ばれた。着なくなった制服は、バイオテックワークスエイチツーの回収スキームに乗せる。
株式会社BIOTECHWORKS-H2
広報担当 仁谷
03-5422-9701
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オーパがスタートアップと協業 古着を再エネ原料に
新興企業のバイオテックワークスエイチツー(BIOTECHWOORKS-H2)は このほど、廃棄衣料を水素化するプロジェクト「バイオテックワークスエイチツー」を発表した。イオ ングループの商業施設オーパがパートナーとなり、 両社は2025年をめどに新たな古着回収プロジェクトを開始する。オーパ主要店舗で回収した古着を、 同社のプラントで水素化し、オーパ施設の再生可能エネルギー源として活用する構想だ。
「ファッションの楽しさを失わず、
無理なく循環させたい」
WWDJAPAN(以下、WWD):オーパは過去にも古着の回収を実施しているが、そこで見えていた課題は?
渡邉祐子オーパ社長(以下、渡邉社長):ファッション業界でビジネスを成長させてきた私たちは、ファッションロスに何らかの形で取り組まなければいけないと思い、数年前から、各店舗での衣料回収を実施してきた。従来回収したあとの対応は他社に任せていたが、本質的なサステナビリティを目指すならば、回収した後も自分たちが責任を持って循環させていくべきではないかと思っていた。そこで出合った1つがバイオテックワークスエイチツーだった。
WWD:バイオテックワークスエイチツー創業のきっかけは?
西川明秀バイオテックワークスエイチツー 代表取締役CEO(以下、西川CEO):私はテキスタイルメーカーのやまぎんで、環境配慮型素材の開発に注力してきたが、サステナブルな産業に転換していくためには作る側としてできることには限界がある。作った後に出るゴミを正しく処理する方法も同時に考えていかなければいけないと思ったのが始まりだ。特に繊維商品は、繊維の種類が多く分別ができず廃棄が非常に難しい。ファッションの楽しさを失わず、無理なく循環させる方法を考えたいと思った。
各テナントから出る
ごみ全てを再エネ化
WWD:具体的には?
西川CEO:プロジェクトの参加者には、食品トレーをスーパーに持参する感覚で着なくなった衣類を回収拠点に持ってきてもらう。回収後は当社で仕分けをしたのち、リサイクルが難しいものは専用プラントで水素化する。アパレル商品はボタンやファスナーなど、付属品が多く分解する作業が手間だったが、私たちはそれらをそのまま裁断機にかけて1 0 c m ×10 c m程度の大きさにしたのち、プラントでガス化する。ガス化とは、燃やさずに燻製のような手法で煙を抽出する手法だ。煙は一酸化炭素と水素で構成されるため、そこから水素を取り出すという仕組みだ。水素は再生可能エネル ギーとして協力企業に活用してもらう。一方の一酸化炭素は二酸化炭素にして、ドライアイスなどに使用する。今回であればオーパの飲食テナントにも炭酸ガスとして使ってもらうこともできる。古着の回収量から、どれだけ再エネ化できたか、焼却処分した場合と比較してどれだけ CO 2排出量 に削減したかといったエビデンスも提供で きる。来年の4月からは、プロジェクトの協 力企業に向けて環境貢献度が見える事前サービスを開始する予定だ。
WWD:これまでのゴミ処理のスキームを大きく変える技術だ。
西川CEO:私たちの強みの1つは、どんな商品でも再資源化できること。オーパのお客さまには好きな商品を購入してもらって、あとはオーパを通して私たちに任せてもらえば正しくリサイクルできる。オーパとお客さまの信頼関係構築にもつながるのではないかと思っている。まずは衣類から始めるが、ゆくゆくはオーパの各テナントから出るごみ全てを再エネ化できる。
渡邉社長:初めて聞いたときは、本当にできるの?と思ったのが正直なところだ。それでも、話を聞けば聞くほど興味深い。ファッションの課題を解決していくために一緒に踏み込んでいこうと思わせてくれるパートナーだった。
2025年度に日本での
プラント建設開始を目指す
WWD:今後の展開は?
西川CEO:すでにオーパのインフォメーションカウンターの制服に関してはシーズンの切り替えのタイミングで回収しているが、2025年度に日本でのプラント建設開始を目指しており、建設開始後に回収を本格的に進める。
渡邉社長:主要7店舗で回収を始める。当社の顧客層は若い世代が中心だ。環境に意識の高い彼らとアクションを起こし、実績を積めれば、イオングループや地域全体にも広げられ、業界の未来に貢献できる。
西川CEO:ゆくゆくは、日本全体を変えて いきたいし、日本のファッション企業のカー ボンニュートラル化を後押ししたい。
横浜ビブレの制服から協業始まる
1 / 4
オーパが運営する横浜ビブレでは今年4 月から、インフォメーションカウンターで働く従業員の制服にやまぎんが開発した機能素材「ゼロテックス」を採用している。秋冬の制服のデザインは、ファッションを学ぶ学生から案を募った。従業員とお客さまの投票の中から横浜fカレッジに在籍する長沼綺星(ながぬま・きらら)さん(写真・左)の制服が選ばれた。着なくなった制服は、バイオテックワークスエイチツーの回収スキームに乗せる。
株式会社BIOTECHWORKS-H2
広報担当 仁谷
03-5422-9701
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キッド・カディに聞く「モーター」誕生秘話 友人NIGO®︎との思い出話も
ラッパーのキッド・カディ(Kid Cudi)が、ファッションブランド「メンバーズ オブ ザ レイジ(MEMBERS OF THE RAGE以下、MOTR)」を立ち上げた。かつて「ア ベイシング エイプ(A BATHING APE)」NY店のスタッフだった彼は、ある日、来店したカニエ・ウェスト(Kanye West)に自分のラップを吹き込んだデモCDを渡し、チャンスをつかんだ。今では、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のランウエイを歩き、「コンプレックスコン(ConplexCon)」の最盛期にライブのヘッドライナーを務め、メットガラにも登場。ラッパーとしてもファッションアイコンとしても世界中に認められ、アメリカンドリームを体現した人物である。「MOTR(モーター)」は、ポップなカラーリングと愛らしくコミカルなグラフィックが特徴。イタリア製で仕立てにもこだわり、随所にファッション好きのカディのDNAが息づいている。デビューコレクションの着想源は“常識に反する人々”。まるで、常識を覆してきたカディ自身の生き方を重ねたようなパワフルなコレクションだ。このほど、「ヌビアン ハラジュク(NUBIAN HARAJUKU)」でポップアップイベントを開催。レセプションパーティーでカディを直撃した。
――なぜ、ファッションブランドを始めようと思ったのか?
キッド・カディ(以下、カディ):俺にはスタイリストがいなくて、衣装も全て自分で用意している。だから、これまでは自分で店に行って買っていた。コンシューマーの立場に近かったんだよ。でも、いつからか自分が本当に欲しいと思うものが減ってきて、好きなものを買うところが少なくなってしまった。だったら自分で好きなものを作ればいいじゃないかと思ったんだ。アイデアはたくさんあったから、ブランドを始めることにした。
――“MEMBERS OF THE RAGE”というネーミングの由来は?
カディ:"MEMBERS OF THE RAGE"は元々、俺が作りたい映画のタイトルだった。このタイトルはファッションだけじゃなく、レコードとか、いろんなプロジェクトで使っている。"THE RAGE"は、"怒り"(直訳すると「怒りを持っているメンバー」という意味)。現状に不満を抱えている人々にも、勇気を出して一歩を踏み出してもらいたい。そういうメッセージを伝えたくて、このタイトルを選んだ。
――今シーズンのコレクションのコンセプトは?
カディ:初めてのコレクションで、アイデアはたくさんあったけど、実際にどんなものが売れるか分からないから、まずは全部のアイデアを出して、その中から今シーズンのムードに合うものを選んだ。今は、1990年代のグランジやヒップホップが面白いと思っている。今回はやりたいことにチャレンジした感じかな。次のシーズンのコレクションを作るタイミングで、今回のコレクションを参考にできればいいね。一過性のブランドではなく、先々のシーズンのことも視野に入れながらデザインしているよ。
――UFOのロゴはプライベートでも親交の深いNIGO®︎さんとのコラボレーションで生まれたと聞いた。NIGO®︎さんとの一番のエピソードは?
カディ:たくさんの思い出があるけど、一番の思い出は、やっぱり「ベイプ(BAPE)」のNY店で働いていたときかな。2007年に、たまたまNIGO®︎さんが店に来たことがあるんだ。スタッフの間では、店にNIGO®︎さんがたまに立ち寄るって噂されていたんだけど、ある日、本当に現れた。初めて本人と会ったときは、すごく興奮したよ。NIGO®︎さんのおかげで、いろんな人に出合うことができている。VERBALさんもその一人だね。俺はTERIYAKI BOYZ®も大好きなんだ。
――「ヌビアン ハラジュク」でポップアップイベントを開催することになったきっかけは?
カディ:チームで世界のどこのお店でコレクションを取り扱ってもらうべきか話し合った。もちろん、東京でもやりたいと思っていて、その中で「ヌビアン」が候補に上がった。ファッションでトップティアの「ヌビアン」で、自分のコレクションを絶対に取り扱いたいと思ったから、実現してとてもうれしいよ。
――日本滞在中に楽しみにしていることは?
カディ:食べ物かな。俺はハンバーガーが好きなんだけど、日本で一番好きな食べ物はカレーだね。日本に来て一番楽しみにしている。「CoCo壱」は最高だよ。
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ショーイチが進める“安全な衣料品リサイクル” グループ内で作業を完結しリスクを低減
余剰在庫の買い取り事業を手掛け、アパレルの大量廃棄問題と向き合ってきたショーイチ(大阪)は今、買い取った衣料品のリサイクル事業も強化している。サステナブル意識の高まりの中で、衣料品リサイクルに関心を持つアパレル関連企業やブランドは増えているが、リサイクル工程にまわしたはずの自社商品が流出してブランド価値が毀損するようなことはないか、不安に感じているケースもあるだろう。ショーイチでは“安全な衣料品リサイクル”を掲げ、そうしたリスクの低減に力を注いでいる。
「外部に商品も情報も漏らさない」
そもそも、ショーイチの言う“安全なリサイクル”とは何か。それは、「外部に商品も情報も漏らさないこと」だと、ショーイチの山本昌一社長は話す。「リサイクル事業をする上で、商品や情報の流出リスクを失くすことを第一に考えている」という。ショーイチのもとに集まった衣料品をリサイクル工程にまわす前には、素材別の仕分けやタグのカット、ボタンなど副資材の分離を行う必要がある。それを外部の業者に依頼したり、作業のために衣料品を別の場所に移したりといったことがあると、その分情報や商品の流出リスクが高まり、ブランド価値の毀損につながりかねない。
その点、ショーイチは自社倉庫内で、自グループで運営する就労支援施設を活用して作業を完結させている。山本社長が自信を持って安全だと言い切るのは、こうした背景を整えているからだ。注意してほしいのは、「外部に商品も情報も漏らさない」と言っても、もちろん依頼主にはリサイクルした商品がどうなったかをしっかり伝えているという点。それにより透明性も担保している。
手作業でタグを確実にカット
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実際に、リサイクル前の作業が行われているショーイチの倉庫を視察した。倉庫の中の一角に、タグカットや副資材を分離する作業のためのコーナーがある。その日は、ショーイチのグループ内で運営する近隣の就労支援施設から、通所者と施設スタッフ合わせて計14人が作業をしに訪れていた。通所者はブランドタグや品質タグの一部をカットし、服から切り離したブランドタグそのものにも細かくハサミを入れてタグの悪用ができないように加工。リサイクル不可能な金属ファスナーやプラスチックボタンなどの副資材も、一つ一つ服から切り離す。作業内容に分かりづらい部分があれば、施設スタッフが通所者に丁寧に指示を出していたのが印象的だ。施設スタッフとショーイチ社員も、数時間ごとにコミュニケーションを取って状況を共有している。
リサイクル完了後には
詳細リストも提出
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タグや副資材を分離した衣料品の中でリサイクル可能なものは、ショーイチと提携する工場で素材として再生させる。ウール混率80%以上の衣料品は愛知・一宮のサンリードでリサイクルウールに。それ以外の繊維は大阪・泉大津の同心工業で反毛加工し、フェルトに変える。リサイクルが完了した証明として、産業廃棄物管理票などを取引先に提出する。さらに細かいデータとして、引き取った衣料品の品番、カラー、サイズごとに、何点をどこでどのようにリサイクル処理したかを明記した詳細リストも、取引先へ提出が可能。透明性を求める取引先に評価されている。
業界が循環型ビジネスに近づく一助に
ショーイチのもとに集まったリサイクル希望の衣料品は、こうした工程を経てしっかり再生されていく。実際に、ショーイチと組んで衣料品リサイクルを行っているブランドからは、「ショーイチのリサイクルは、どの商品が、いつ、どのように処理されたのかが明確で、証明書の対応や処理現場の視察などにも柔軟に対応してくれる。社会のサステナブル意識が高まる中、われわれはリサイクルの取り組みをさらに加速させていくが、ショーイチにはこれからも良きパートナーとして伴走してほしい」といった声が上がっている。「安心安全な衣料品リサイクルをショーイチが提供することで、ファッション業界の廃棄が少しでも減り、業界のビジネスモデルが循環型に近づいていく一助になれればと思っている」と山本社長。
ショーイチ
050-3151-5247
目指すは「アパレル廃棄ゼロ」
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「イザベル マラン」が明かす日本上陸の裏側 青山の新店と日本法人設立への思い
イザベル・マラン/「イザベル マラン」デザイナー
1967年生まれ、フランス・パリ出身。85年にスタジオ・ベルソーを卒業し、ミッシェル・クランやマーク・アルコーリの元で経験を積む。88年に独立してニットとジュエリーのブランドを設立し、94年に「イザベル マラン」に改名。日本での販売も開始した。2000年以降はセカンドラインやキッズウエアもスタートし、ビジネス規模を徐々に拡大。2012年にはトゥモローランドとフランチャイズのパートナーシップ契約を締結し、東京・表参道に日本第1号店となる通称“イエローハウス”をオープンした。18年春夏シーズンにはメンズも立ち上げている
「イザベル マラン(ISABEL MARANT)」は、東京・南青山に新旗艦店「イザベル マラン 青山店」を今夏オープンした。店舗面積200平方メートルの店内には、ウィメンズおよびメンズコレクションとセカンドライン「マラン エトワール(MARANT ETOILE)」に加え、シューズやバッグ、アクセサリーなどをフルラインアップする。
同ブランドは、新店舗オープンに合わせてイザベル マラン ジャパンを設立した。「イザベル マラン」の日本事業はこれまでトゥモローランドが約20年間にわたって担ってきたが、日本法人を立ち上げて運営やプロモーションを本国主導で強化し、日本におけるさらなる認知拡大を目指す。2024年春夏シーズンのパリ・ファッション・ウイークで現地時間9月28日に披露したランウエイショーのフィナーレには、イザベル・マラン=デザイナーと共に、21年に就任したキム・ベッカー(Kim Bekker)=アーティスティック・ディレクターも登場。ブランドの新章を予感させた。日本を「特別な国」と語る創業者のマラン=デザイナーに、新店に込めた思いや今後について聞いた。
イエローにこだわる理由
WWD:旗艦店を表参道から青山に移した理由は?
イザベル・マラン(以下、マラン):表参道のショップは大好きな日本式の木造建築で、フランス人の私にとってすごく特別な場所だった。だからとても愛着はあったのだけど、青山の方がファッションのフィールドとして合う気がしたから、新しく店を構えることにしたの。
WWD:新店は表参道時代よりもイエローを強調したデザインだ。イエローにこだわる背景は?
マラン:元々イエローにするつもりはなかったの。でも表参道のお店が顧客や社内でも「イエローハウス」と呼ばれて愛されていたから、「日本にイエローハウスを残さなくちゃ」と思ったのがきっかけね。みんなからよく「イエローが好きなんですか?」と聞かれるのだけど、実は一番好きな色というわけではないのよ(笑)。
WWD:新店で特に気に入っているところは?
マラン:もう、すでに建物だけで素晴らしいじゃない。まるで道に太陽の光が差したように見えるわ。あとは、遠くからでも見つけやすいところ。知人に素敵なレストランを教えてもらったから探していたんだけど、遠くからでもこのイエローが目立っていてうれしかったわ。
WWD:建物や内観は、日本人アーティストの曽根裕との協業だ。コラボレーションしたのはなぜ?
マラン:本国フランスのカルチャーをただ持ってくることはしたくなかったの。日本の店なのだから、日本人とコラボレーションすることで文化をミックスしたかった。それに、曽根さんの作品には人の温もりを感じて、私が考えるアートやカルチャーに対するビジョンと共通する部分があったのよ。例えば、クラフト感とかね。それでいて先進的でもあるから、とても気に入ったわ。
初年度売り上げの8割は日本
WWD:日本法人を立ち上げた目的は?
マラン:会社が大きく成長していく中で、私たちが考えるブランドのスピリットやエッセンスを、他社と共有するよりも自分たちで表現する方がいいと考えたから。それに、日本上陸から約20年も経つと市場への理解もかなり深まったし、他国と同様に自分たちで運営する道を選んだの。
WWD:日本はあなたにとってどのような国?
マラン:とても大切で、特別な国ね。私がブランドを始めた頃、最初に買い付けてくれたのが日本のお客さんだったの。初年度は、売り上げの80%が日本だったはずよ。日本の人たちが私のクリエイションを信じてくれたことにすごく感謝しているし、日本のマーケットがあったからこそいいスタートが切れたわ。
WWD:「イザベル マラン」は常にポジティブでパワフルなブランドという印象だ。そのエネルギーを保つ秘訣は?
マラン:私たちは人に喜びを与えたり、カルチャーや美しさを共有したりすることを大切にしているの。エネルギーをたくさんの人に分け与えることが、結果的に私自身のクリエイションにつながるから。だから真面目に発信するというよりも、そういうイメージにつながるんじゃないかしら。私は30年間ファッションの仕事のスタンスは全く変わっていないし、風が吹いてもピクリとも動かない石のように頑固な性格なのよ。
WWD:もうすぐブランド30周年を迎える。50周年に向けて、どのようなブランド、デザイナーでありたい?
マラン:まず、これだけ長くブランドを続けてきた自分を誇らしく思う。でも私にとって数字は大きな意味がないから、周年のような記念日は好きじゃないのよ。パーティーは恒例行事でよく開いているけれど、自分の誕生日ですら20代以降は何もやっていないぐらい。だから50周年に向けて、と聞かれると、そんなに長く続けたいのかは自分でもまだ分からないわね。デザイナーはとても消耗する仕事で、デザインすることはものすごくエネルギーを使うの。でも今は素晴らしいアイデアを持った若者が社内にたくさんいるから、私のレガシーを引き継いでもらえるように教育に力を入れているわ。
WWD:30年間で最も大切にし続けてきたことは?
マラン:Honesty(誠実さ)。
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写真家・操上和美が「アイヴァン」をまとった50人の紳士を撮り下ろす 青山・スパイラルで写真展を開催
日本を代表する写真家・操上和美の写真展『50,50 FIFTY GENTLEMEN OF EYEVAN』が、10月5日より青山・スパイラルガーデン(スパイラル1F)にて開催される。今展は、アイウエアブランド「アイヴァン(EYEVAN)」のブランド設立50周年を記念して企画されたもの。雑誌『GOETHE』の連載「男を起動させる眼鏡」にて、「アイヴァン」を掛けた各界の紳士50人を約5年間にわたり撮り下ろした作品が展示される。ここでは、この企画についての思いや、ポートレートに対する考え方などについて操上に話を聞いた。
眼鏡は、キャラクターを
強調する道具になる
87歳になる現在もなお、第一線で活躍し続けている。約60年におよぶキャリアの中で数々のポートレートを撮影してきたが、今回は被写体50人すべてが男性であり、職種は俳優、ミュージシャン、スポーツ選手や実業家など多岐に渡る。そして全員眼鏡を着用しているのが特筆すべき点だ。
「もともと男性のポートレートを撮るのは好きだから、企画をいただいて、これは面白そうだなと思いました。改めて写真を見返してみると、みんなかっこいいなと。それぞれのジャンルで活躍されている方ばかりなので、写真に力があるというか、存在感がありますね」。
躍動的な姿で写る者もいれば、じっとこちらを見据える者もいる。約5年間に及ぶ撮影期間のなかで、様々な個性と対峙してきた。
「事前に決まっているのは、その日誰を撮るかということと、白バックで撮るということだけ。相手をどうリードしていくかは、もう頭で考えるより直感ですよね。最初からこうしようと決めるのではなく、撮りながらその人らしさに近づいていく。相手のバックグラウンドや着ているもの、そして撮影直前に選んだ眼鏡を踏まえて、瞬時に、そして本能的にアレンジしながら仕掛けていきました」。
そうしたなかで、眼鏡というアイテムはどのように作用したのだろうか。
「眼鏡は、すごく大事ですよ。まさにその人の顔になるものでもありますから。なぜ男はサングラスを掛けることが多いかといえば、ちょっと崩した方がダンディーに見えるという安心感があるからでしょう。反対に、素通しの眼鏡を掛けると目の表情が丸見えになる。ポートレートはやっぱり目が大事なので、眼鏡が顔にきちっと合っていればキャラクターを強調する道具になってくれます。それが撮影時の眼鏡選びの難しい点でもあり、楽しみな点でもありました」。
男性のポートレートには
生き様が現れる
これまで操上が手掛けたポートレートといえば、今回同様モノクロ、そして男性を被写体にしたものが印象的だ。
「男性は、その人を形成してきた生き様がより明確に写真に出るんですよね。だから、ちゃんと生きていないといい顔にならない。それを引き出してあげたいと思っているんです。美しさは必要なくて、人柄が出ればいい。人格、悩みとか、そういうものまで。悩みがない男なんて、つまらないでしょう?」
ときには被写体に叫んだり、飛んだりしてもらうことも。そうした動きのなかに相手の内面がふっと現れ、自身が予期しなかった方向に着地することも少なくない。
「だから撮影はセッション、闘いみたいなもの。どう火花を散らすかですね。セッションすることによって僕自身も触発されるし、相手も僕の撮っているシャッター音でだんだん乗ってくるっていうのかな。
現場のノリっていうのは、単に音楽をかけて気分を出すとか、そういうもんじゃない。自分の心臓の鼓動と、相手の心臓の鼓動がうまくリンクするに越したことはなくて。今でも初対面の方を撮るときは、自分がどう反応できるかという怖さもあるんです。その都度その都度が新鮮なセッションなんで、キャリアはまったく関係ありませんね」。
それは被写体も然り。撮影中に「まるで自分のこれまでの生き方を問われているようだ」と漏らした俳優もいたという。
「写真は、やっぱりうそをつけないですから。その時のカタチだけじゃなくて、中まで全部あからさまに出ちゃうんでね。それは僕のセッションのやり方で、自分が相手にぐっと入っていくから怖いと思われる部分もあるのかもしれないけど。でも、それでいいんです。写真には僕が乗っかっていかないと。ただ客観的に眺めて複写するだけでは、意味がないんです。その分、こっちも必死ですよ。立派な人たちとセッションする場合も、あくまでも互角でなくちゃいけない。それは相手が若い俳優でも同じ。どちらが上でも下でもあっちゃいけないから。自分が弱かったら、ちゃんとした写真にならないんです。骨が折れる作業かって? 折れないですよ。それがセッションの良さであり、自分の生き方ですから」。
写真展開催時には
表参道駅ジャックも
スパイラルガーデンで開催される写真展『50,50 FIFTY GENTLEMEN OF EYEVAN』には、これまで撮り下ろした50人全てのポートレートが展示される。また、開催に合わせ、表参道駅では柱や壁面の駅張りポスターやビジョンなどが操上の写真で埋めつくされる“表参道駅ジャック”も実施予定だ。
会期:10月5~11日
会場:スパイラルガーデン(スパイラル1F)
住所: 東京都港区南青山 5 -6-23
発売日:10月6日
価格:5,555円
会期 :10月9~15日
アイヴァン PR
03-6450-5300
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写真家・操上和美が「アイヴァン」をまとった50人の紳士を撮り下ろす 青山・スパイラルで写真展を開催
日本を代表する写真家・操上和美の写真展『50,50 FIFTY GENTLEMEN OF EYEVAN』が、10月5日より青山・スパイラルガーデン(スパイラル1F)にて開催される。今展は、アイウエアブランド「アイヴァン(EYEVAN)」のブランド設立50周年を記念して企画されたもの。雑誌『GOETHE』の連載「男を起動させる眼鏡」にて、「アイヴァン」を掛けた各界の紳士50人を約5年間にわたり撮り下ろした作品が展示される。ここでは、この企画についての思いや、ポートレートに対する考え方などについて操上に話を聞いた。
眼鏡は、キャラクターを
強調する道具になる
87歳になる現在もなお、第一線で活躍し続けている。約60年におよぶキャリアの中で数々のポートレートを撮影してきたが、今回は被写体50人すべてが男性であり、職種は俳優、ミュージシャン、スポーツ選手や実業家など多岐に渡る。そして全員眼鏡を着用しているのが特筆すべき点だ。
「もともと男性のポートレートを撮るのは好きだから、企画をいただいて、これは面白そうだなと思いました。改めて写真を見返してみると、みんなかっこいいなと。それぞれのジャンルで活躍されている方ばかりなので、写真に力があるというか、存在感がありますね」。
躍動的な姿で写る者もいれば、じっとこちらを見据える者もいる。約5年間に及ぶ撮影期間のなかで、様々な個性と対峙してきた。
「事前に決まっているのは、その日誰を撮るかということと、白バックで撮るということだけ。相手をどうリードしていくかは、もう頭で考えるより直感ですよね。最初からこうしようと決めるのではなく、撮りながらその人らしさに近づいていく。相手のバックグラウンドや着ているもの、そして撮影直前に選んだ眼鏡を踏まえて、瞬時に、そして本能的にアレンジしながら仕掛けていきました」。
そうしたなかで、眼鏡というアイテムはどのように作用したのだろうか。
「眼鏡は、すごく大事ですよ。まさにその人の顔になるものでもありますから。なぜ男はサングラスを掛けることが多いかといえば、ちょっと崩した方がダンディーに見えるという安心感があるからでしょう。反対に、素通しの眼鏡を掛けると目の表情が丸見えになる。ポートレートはやっぱり目が大事なので、眼鏡が顔にきちっと合っていればキャラクターを強調する道具になってくれます。それが撮影時の眼鏡選びの難しい点でもあり、楽しみな点でもありました」。
男性のポートレートには
生き様が現れる
これまで操上が手掛けたポートレートといえば、今回同様モノクロ、そして男性を被写体にしたものが印象的だ。
「男性は、その人を形成してきた生き様がより明確に写真に出るんですよね。だから、ちゃんと生きていないといい顔にならない。それを引き出してあげたいと思っているんです。美しさは必要なくて、人柄が出ればいい。人格、悩みとか、そういうものまで。悩みがない男なんて、つまらないでしょう?」
ときには被写体に叫んだり、飛んだりしてもらうことも。そうした動きのなかに相手の内面がふっと現れ、自身が予期しなかった方向に着地することも少なくない。
「だから撮影はセッション、闘いみたいなもの。どう火花を散らすかですね。セッションすることによって僕自身も触発されるし、相手も僕の撮っているシャッター音でだんだん乗ってくるっていうのかな。
現場のノリっていうのは、単に音楽をかけて気分を出すとか、そういうもんじゃない。自分の心臓の鼓動と、相手の心臓の鼓動がうまくリンクするに越したことはなくて。今でも初対面の方を撮るときは、自分がどう反応できるかという怖さもあるんです。その都度その都度が新鮮なセッションなんで、キャリアはまったく関係ありませんね」。
それは被写体も然り。撮影中に「まるで自分のこれまでの生き方を問われているようだ」と漏らした俳優もいたという。
「写真は、やっぱりうそをつけないですから。その時のカタチだけじゃなくて、中まで全部あからさまに出ちゃうんでね。それは僕のセッションのやり方で、自分が相手にぐっと入っていくから怖いと思われる部分もあるのかもしれないけど。でも、それでいいんです。写真には僕が乗っかっていかないと。ただ客観的に眺めて複写するだけでは、意味がないんです。その分、こっちも必死ですよ。立派な人たちとセッションする場合も、あくまでも互角でなくちゃいけない。それは相手が若い俳優でも同じ。どちらが上でも下でもあっちゃいけないから。自分が弱かったら、ちゃんとした写真にならないんです。骨が折れる作業かって? 折れないですよ。それがセッションの良さであり、自分の生き方ですから」。
写真展開催時には
表参道駅ジャックも
スパイラルガーデンで開催される写真展『50,50 FIFTY GENTLEMEN OF EYEVAN』には、これまで撮り下ろした50人全てのポートレートが展示される。また、開催に合わせ、表参道駅では柱や壁面の駅張りポスターやビジョンなどが操上の写真で埋めつくされる“表参道駅ジャック”も実施予定だ。
会期:10月5~11日
会場:スパイラルガーデン(スパイラル1F)
住所: 東京都港区南青山 5 -6-23
発売日:10月6日
価格:5,555円
会期 :10月9~15日
アイヴァン PR
03-6450-5300
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イタリア発香水「メオ・フシューニ」 独学で調香を学んだ化学者による“侘び寂び”を感じる香り
ジュゼッペ・インプレッツァビレ/「メオ・フシューニ」創業者 プロフィール
1977年、イタリア・シチリア島生まれ。幼少期をシチリアの海岸で過ごしたのち、ピアツェンツァで工業化学を学んだ後、パルマ大学薬学部で学ぶ。2010年から現職
イタリア発フレグランス「メオ・フシューニ(MEO FUSCIUNI)」は、大学でハーブを学んだ化学者ジュゼッペ・インプレッツァビレによるニッチなブランドだ。彼は、イタリア・シチリア生まれ。遊牧民の家系に生まれ、大学卒業後は、モロッコやトルコ、中東など、世界各地を旅しながら、植物を始め、ハーブとスパイスの知識を高めた。空間演出のアーティストとして活躍後に独学で調香を学び、同ブランドをスタートした。旅や詩、音楽などを通して得たものを嗅覚の記憶として香りで表現。刺激的でユニークでありながらも素朴さのある香りを提案している。日本では、「ノーズショップ(NOSE SHOP)」が販売。来日したインプレッツァビレに、クリエイションについて聞いた。
WWD:今回の来日の目的は?
ジュゼッペ・インプレッツァビレ「メオ・フシューニ」創業者(以下、インプレッツァビレ):「ノーズショップ」とのコラボレーションがスタートしたので、日本の香水市場について学びたかったのと、われわれのブランドに対してどのような関心があるか知るために来日した。また、日本で訪問したことのない場所に訪問することも目的だ。日本が大好きで、この来日を心待ちにしていた。
WWD:フレグランスブランドを立ち上げようとしたきっかけは?
インプレッツァビレ:私は、化学者で薬草学者。本来であれば、他の道に進むはずが、自然や芳香植物が好きで、科学と芸術を結びつける錬金術へ興味があったから2010年に「メオ・フシューニ」を立ち上げた。私は独学で調香を学び、日々、研究を続けている。
WWD:ブランド哲学は?
インプレッツァビレ:香水を嗅覚の美学として捉えて、感情へ導く香水をつくること。嗅覚の記憶をつくり出すことで、人々に忘れていた人生の記憶を再発見してもらうことが大切だと考える。それぞれの香水は、私たち自身を理解するための物理的な旅を描いた物語のようなもので、精神状態を表現するものでもある。
WWD:「メオ・フシューニ」が他のフレグランスブランドと違う点は?
インプレッツァビレ:このブランドは、自分の人生の物語を伝えるものだと考えるので、ユニークな存在だと考える。このブランドをリアルで本物にすることに集中している。
私にとって香水は画家や作家の作品のようなもの
WWD:ブランドを代表する香りは?
インプレッツァビレ:「ノーズショップ」で扱っているものだと“アンコール・デュ・タン”や“ルーチェ”などが人気だが、特にベストセラーはない。その方がいいと思う。なぜなら、ベストセラーがあれば、人々はその特定の香りに関心を持つだろうから。
コレクションは多様で、香りのファミリーだけでなく、ムードも全く異なる。
WWD:どのように香水をつくるか?香水の特徴は?
インプレッツァビレ:香水のクリエイションは親密で個人的なもの。だから、一人でアトリエで多くの時間を過ごす。インスピレーション源は、旅や物語。それを伝える最高の原料を探す研究を始める。そして、原料やそれを取り巻く自然との親密感やフィーリングを表現する。
WWD:ターゲットは?
インプレッツァビレ:感情にフォーカスした異なる嗅覚体験をしたいと思う人々。ブランドの名前も聞いたこともない人が、通常の香水と違うものを探してわれわれのブランドの世界に足を踏み入れて驚くこともある。
WWD:現在、何ヵ国、何店舗で販売しているか?
インプレッツァビレ:約50カ国、約300店で販売している。主要市場は、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアだ。
WWD:多くのニッチフレグランスがあるが、どのようにそれらと戦うか?日本戦略は?
インプレッツァビレ:競合はいない。市場を意識したことも、商品を売ろうと思ったこともない。日本戦略は、頻繁に来日することだと考える。
WWD:自身にとって香水とは?
インプレッツァビレ:私にとって香水とは、人生の衝動。画家や作家の作品と同様に、世界に私自身を伝える方法だ。香水とは、記憶であり、感情であり、愛であり、苦悩であり、情熱だ。ノスタルジーや幸福でもあり、私の心に語りかけてくる物語を語るための唯一のツール。私たちの影を形作る魂のようなものだ。
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イタリア発香水「メオ・フシューニ」 独学で調香を学んだ化学者による“侘び寂び”を感じる香り
ジュゼッペ・インプレッツァビレ/「メオ・フシューニ」創業者 プロフィール
1977年、イタリア・シチリア島生まれ。幼少期をシチリアの海岸で過ごしたのち、ピアツェンツァで工業化学を学んだ後、パルマ大学薬学部で学ぶ。2010年から現職
イタリア発フレグランス「メオ・フシューニ(MEO FUSCIUNI)」は、大学でハーブを学んだ化学者ジュゼッペ・インプレッツァビレによるニッチなブランドだ。彼は、イタリア・シチリア生まれ。遊牧民の家系に生まれ、大学卒業後は、モロッコやトルコ、中東など、世界各地を旅しながら、植物を始め、ハーブとスパイスの知識を高めた。空間演出のアーティストとして活躍後に独学で調香を学び、同ブランドをスタートした。旅や詩、音楽などを通して得たものを嗅覚の記憶として香りで表現。刺激的でユニークでありながらも素朴さのある香りを提案している。日本では、「ノーズショップ(NOSE SHOP)」が販売。来日したインプレッツァビレに、クリエイションについて聞いた。
WWD:今回の来日の目的は?
ジュゼッペ・インプレッツァビレ「メオ・フシューニ」創業者(以下、インプレッツァビレ):「ノーズショップ」とのコラボレーションがスタートしたので、日本の香水市場について学びたかったのと、われわれのブランドに対してどのような関心があるか知るために来日した。また、日本で訪問したことのない場所に訪問することも目的だ。日本が大好きで、この来日を心待ちにしていた。
WWD:フレグランスブランドを立ち上げようとしたきっかけは?
インプレッツァビレ:私は、化学者で薬草学者。本来であれば、他の道に進むはずが、自然や芳香植物が好きで、科学と芸術を結びつける錬金術へ興味があったから2010年に「メオ・フシューニ」を立ち上げた。私は独学で調香を学び、日々、研究を続けている。
WWD:ブランド哲学は?
インプレッツァビレ:香水を嗅覚の美学として捉えて、感情へ導く香水をつくること。嗅覚の記憶をつくり出すことで、人々に忘れていた人生の記憶を再発見してもらうことが大切だと考える。それぞれの香水は、私たち自身を理解するための物理的な旅を描いた物語のようなもので、精神状態を表現するものでもある。
WWD:「メオ・フシューニ」が他のフレグランスブランドと違う点は?
インプレッツァビレ:このブランドは、自分の人生の物語を伝えるものだと考えるので、ユニークな存在だと考える。このブランドをリアルで本物にすることに集中している。
私にとって香水は画家や作家の作品のようなもの
WWD:ブランドを代表する香りは?
インプレッツァビレ:「ノーズショップ」で扱っているものだと“アンコール・デュ・タン”や“ルーチェ”などが人気だが、特にベストセラーはない。その方がいいと思う。なぜなら、ベストセラーがあれば、人々はその特定の香りに関心を持つだろうから。
コレクションは多様で、香りのファミリーだけでなく、ムードも全く異なる。
WWD:どのように香水をつくるか?香水の特徴は?
インプレッツァビレ:香水のクリエイションは親密で個人的なもの。だから、一人でアトリエで多くの時間を過ごす。インスピレーション源は、旅や物語。それを伝える最高の原料を探す研究を始める。そして、原料やそれを取り巻く自然との親密感やフィーリングを表現する。
WWD:ターゲットは?
インプレッツァビレ:感情にフォーカスした異なる嗅覚体験をしたいと思う人々。ブランドの名前も聞いたこともない人が、通常の香水と違うものを探してわれわれのブランドの世界に足を踏み入れて驚くこともある。
WWD:現在、何ヵ国、何店舗で販売しているか?
インプレッツァビレ:約50カ国、約300店で販売している。主要市場は、ヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアだ。
WWD:多くのニッチフレグランスがあるが、どのようにそれらと戦うか?日本戦略は?
インプレッツァビレ:競合はいない。市場を意識したことも、商品を売ろうと思ったこともない。日本戦略は、頻繁に来日することだと考える。
WWD:自身にとって香水とは?
インプレッツァビレ:私にとって香水とは、人生の衝動。画家や作家の作品と同様に、世界に私自身を伝える方法だ。香水とは、記憶であり、感情であり、愛であり、苦悩であり、情熱だ。ノスタルジーや幸福でもあり、私の心に語りかけてくる物語を語るための唯一のツール。私たちの影を形作る魂のようなものだ。
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ジェイデン・スミスと「ニューバランス」の新作コラボは“学び”と“数学”がキーワード 東京ローンチの真相を聞く
「ニューバランス(NEW BALANCE)」のブランドアンバサダー、ジェイデン・スミス(Jaden Smith)はチェンジメーカーの一人だ。社会・環境活動家としても知られる彼は、「ニューバランス」のブランド哲学“Fearlessly Independent(恐れずに独自性を貫くこと)”を体現するに相応しい人物でもある。そのジェイデンとの2度目のコラボレーションとなる新作“ニューバランス フォー ジェイデン スミス ミスフィッツ ゼロ ポイント ゼロ ワン(NEW BALANCE FOR JADEN SMITH MSFTSREP 0.01)”が10月12日に世界同時発売する。前作同様、動物由来の素材を一切使用せず、“MSFTS(=ピッタリ合わないこと)”、ブラック&ホワイト、シンプルをコンセプトにデザイン。誰もがファッションに取り入れられるシルエットや3つに分割されたソールが特徴的な1足に仕上がっている。その発表の場に、東京を指名したジェイデンが来日し、コラボレーションについて語った。
ファッションと文化の中心地
東京で新作を発表
1 / 3
――新しいシューズの発表の場に、東京(日本)を選んだ理由を教えてください。なぜ、東京で発表することが重要だったのですか?
ジェイデン・スミス(以下、ジェイデン):まず、東京は僕が世界中で一番好きな都市なんです。これまでに10回前後来たことありますが、東京は世界的なファッションと文化の中心地であり、さまざまな人々が新しいアイデアを生み出す際に影響力を持つ場所としても知られています。世界中にはさまざまな影響力を持つ場所が存在しますが、東京はその中でも特に重要な場所の一つですね。今回の「ニューバランス」の新しいモデルはグローバルコミュニティーでもあるので、それをこの場所で発表できることを非常に嬉しく思っています。
――デザインのインスピレーションソースは?
ジェイデン:「ニューバランス」のクラシックなコートモデルからインスピレーションを得ました。かつて、バスケットボールやテニスなど、特定のスポーツ用途に分ける前に、あらゆる目的に適したシューズが存在していたんです。これらは“コートモデル”と呼ばれ、このインスピレーションの基となりました。つまり、全ての人のための、誰もが履ける靴。医師、スケートボーダー、建築家……、さまざまな職業やライフスタイルの人々に履いてもらいたいですね。
「ニューバランス」のモデル名である
“数字”に敬意を表して
1 / 3
――「ミスフィッツ」「ゼロ ポイント ゼロ ワン」のネーミングの意味は?
ジェイデン:「ミスフィッツ」とは、学びの概念を意味します。僕は教育に焦点を当てることで、世界をより良い場所にしたいと考えています。そのためには、アートとサイエンスを駆使して新しいアイデアを生み出し、より良い未来を創造する必要があります。数学も非常に重要。数学はクールであり、さまざまなパターンを作り出すためのツールとして、重要な役割を果たしています。僕は数学が創造的なアプローチを可能にし、未来をより良くする手助けをしてくれると信じているんです。「ゼロ ポイント ゼロ ワン」は、このモデルの新たなスタートを象徴し、ブランドのDNAの一部となることを示しています。数字を用いることは、(モデル名に数字を使う)「ニューバランス」のヘリテージに敬意を表する重要な要素でもあります。“0.01”という小数点以下の数字は、新しい始まりを象徴し、未来への新たな一歩を示しているんです。
――前作の「ビジョンレーサー」に続き、今回も動物由来の素材を使用しないビーガンコンセプトであり、制作の際には「ニューバランス」の製造工場も訪問したとか。「ニューバランス」のトレーサビリティーに関して、感じたことは?
ジェイデン:非常に驚きました。生産工程を目の前で見ることで、新たな知見を得ることができ、製品作りにおいてのさらなる進化が可能になりました。新しい視点で、動物由来の素材を一切使用せず、サステナビリティを重視した製品を作りたいというビジョンがより鮮明になったんです。「ニューバランス」はそのビジョンを実現するために、協力してくれました。そのおかげで、サステナビリティに向けた新しいイノベーションの方法を探り、実現するためのステップを踏むことができました。
自分自身の道を突き進む
“Fearlessly Independent”の精神
――「ニューバランス」がグローバルプラットフォームとして掲げる“Fearlessly Independent(恐れずに独自性を貫くこと)”の精神を、ジェイデンさん自身はグローバルアンバサダーとして、どのように体現していますか?
ジェイデン:自分が本当にやりたいことや自分自身のビジョンに忠実に従い、他人の期待やイメージに左右されず、自分の道を進む姿勢を持つことが大切です。特に僕たちの世代にとっては、自己表現や自己実現が重要。リーダーであろうとフォロワーであろうと、自分自身のビジョンや信念に従い、「Fearlessly Independent」の姿勢を貫くことが成功への鍵だと信じています。ファッション、音楽、ライフスタイル、生き方、さらには靴選びにおいても、自分らしさを大切にし、独自性を尊重することが大切なんです。「ニューバランス」とのコラボレーションを通じて、この価値観を共有し、広める機会を得られていることは非常に意義深いことですね。
――「ニューバランス」の最も革新的なプロジェクトは、日本の「ティーハウス(T-HOUSE、東京デザインスタジオ)」から生まれてきています。「ティーハウス」について、どう思いますか?
ジェイデン:大好きな場所ですね。そこで行われているデザインプロジェクトは、最高のものを生み出しています。その空間自体も非常に魅力的で、古い要素と新しい要素が見事に調和して、歴史的な価値と現代のデザインが見事に融合しています。「ティーハウス」は、そういった価値観を具現化している場所であり、私たちに多くのインスピレーションを提供してくれる場所なのです。
――日本での滞在中に楽しみにしていることは?日本滞在でのこれまでのハイライトを教えてください。
ジェイデン:「ティーハウス」はもちろん、「ニューバランス」のフラッグシップストアや、「ドーバーストリートマーケット」も、僕にとって特別な意味を持つスポットであり、楽しみにしています。あと、大阪で食べたビーガン餃子とビーガン寿司は、お気に入りですね。日本のビーガン料理は本当に美味しい。これまでの滞在で、これらの食べ物を楽しむことができたことは、素晴らしい経験でした。
EDIT & TEXT:YUKI KOIKE(VINYL)
ニューバランスジャパンお客様相談室
0120-85-7120
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ジェイデン・スミスと「ニューバランス」の新作コラボは“学び”と“数学”がキーワード 東京ローンチの真相を聞く
「ニューバランス(NEW BALANCE)」のブランドアンバサダー、ジェイデン・スミス(Jaden Smith)はチェンジメーカーの一人だ。社会・環境活動家としても知られる彼は、「ニューバランス」のブランド哲学“Fearlessly Independent(恐れずに独自性を貫くこと)”を体現するに相応しい人物でもある。そのジェイデンとの2度目のコラボレーションとなる新作“ニューバランス フォー ジェイデン スミス ミスフィッツ ゼロ ポイント ゼロ ワン(NEW BALANCE FOR JADEN SMITH MSFTSREP 0.01)”が10月12日に世界同時発売する。前作同様、動物由来の素材を一切使用せず、“MSFTS(=ピッタリ合わないこと)”、ブラック&ホワイト、シンプルをコンセプトにデザイン。誰もがファッションに取り入れられるシルエットや3つに分割されたソールが特徴的な1足に仕上がっている。その発表の場に、東京を指名したジェイデンが来日し、コラボレーションについて語った。
ファッションと文化の中心地
東京で新作を発表
1 / 3
――新しいシューズの発表の場に、東京(日本)を選んだ理由を教えてください。なぜ、東京で発表することが重要だったのですか?
ジェイデン・スミス(以下、ジェイデン):まず、東京は僕が世界中で一番好きな都市なんです。これまでに10回前後来たことありますが、東京は世界的なファッションと文化の中心地であり、さまざまな人々が新しいアイデアを生み出す際に影響力を持つ場所としても知られています。世界中にはさまざまな影響力を持つ場所が存在しますが、東京はその中でも特に重要な場所の一つですね。今回の「ニューバランス」の新しいモデルはグローバルコミュニティーでもあるので、それをこの場所で発表できることを非常に嬉しく思っています。
――デザインのインスピレーションソースは?
ジェイデン:「ニューバランス」のクラシックなコートモデルからインスピレーションを得ました。かつて、バスケットボールやテニスなど、特定のスポーツ用途に分ける前に、あらゆる目的に適したシューズが存在していたんです。これらは“コートモデル”と呼ばれ、このインスピレーションの基となりました。つまり、全ての人のための、誰もが履ける靴。医師、スケートボーダー、建築家……、さまざまな職業やライフスタイルの人々に履いてもらいたいですね。
「ニューバランス」のモデル名である
“数字”に敬意を表して
1 / 3
――「ミスフィッツ」「ゼロ ポイント ゼロ ワン」のネーミングの意味は?
ジェイデン:「ミスフィッツ」とは、学びの概念を意味します。僕は教育に焦点を当てることで、世界をより良い場所にしたいと考えています。そのためには、アートとサイエンスを駆使して新しいアイデアを生み出し、より良い未来を創造する必要があります。数学も非常に重要。数学はクールであり、さまざまなパターンを作り出すためのツールとして、重要な役割を果たしています。僕は数学が創造的なアプローチを可能にし、未来をより良くする手助けをしてくれると信じているんです。「ゼロ ポイント ゼロ ワン」は、このモデルの新たなスタートを象徴し、ブランドのDNAの一部となることを示しています。数字を用いることは、(モデル名に数字を使う)「ニューバランス」のヘリテージに敬意を表する重要な要素でもあります。“0.01”という小数点以下の数字は、新しい始まりを象徴し、未来への新たな一歩を示しているんです。
――前作の「ビジョンレーサー」に続き、今回も動物由来の素材を使用しないビーガンコンセプトであり、制作の際には「ニューバランス」の製造工場も訪問したとか。「ニューバランス」のトレーサビリティーに関して、感じたことは?
ジェイデン:非常に驚きました。生産工程を目の前で見ることで、新たな知見を得ることができ、製品作りにおいてのさらなる進化が可能になりました。新しい視点で、動物由来の素材を一切使用せず、サステナビリティを重視した製品を作りたいというビジョンがより鮮明になったんです。「ニューバランス」はそのビジョンを実現するために、協力してくれました。そのおかげで、サステナビリティに向けた新しいイノベーションの方法を探り、実現するためのステップを踏むことができました。
自分自身の道を突き進む
“Fearlessly Independent”の精神
――「ニューバランス」がグローバルプラットフォームとして掲げる“Fearlessly Independent(恐れずに独自性を貫くこと)”の精神を、ジェイデンさん自身はグローバルアンバサダーとして、どのように体現していますか?
ジェイデン:自分が本当にやりたいことや自分自身のビジョンに忠実に従い、他人の期待やイメージに左右されず、自分の道を進む姿勢を持つことが大切です。特に僕たちの世代にとっては、自己表現や自己実現が重要。リーダーであろうとフォロワーであろうと、自分自身のビジョンや信念に従い、「Fearlessly Independent」の姿勢を貫くことが成功への鍵だと信じています。ファッション、音楽、ライフスタイル、生き方、さらには靴選びにおいても、自分らしさを大切にし、独自性を尊重することが大切なんです。「ニューバランス」とのコラボレーションを通じて、この価値観を共有し、広める機会を得られていることは非常に意義深いことですね。
――「ニューバランス」の最も革新的なプロジェクトは、日本の「ティーハウス(T-HOUSE、東京デザインスタジオ)」から生まれてきています。「ティーハウス」について、どう思いますか?
ジェイデン:大好きな場所ですね。そこで行われているデザインプロジェクトは、最高のものを生み出しています。その空間自体も非常に魅力的で、古い要素と新しい要素が見事に調和して、歴史的な価値と現代のデザインが見事に融合しています。「ティーハウス」は、そういった価値観を具現化している場所であり、私たちに多くのインスピレーションを提供してくれる場所なのです。
――日本での滞在中に楽しみにしていることは?日本滞在でのこれまでのハイライトを教えてください。
ジェイデン:「ティーハウス」はもちろん、「ニューバランス」のフラッグシップストアや、「ドーバーストリートマーケット」も、僕にとって特別な意味を持つスポットであり、楽しみにしています。あと、大阪で食べたビーガン餃子とビーガン寿司は、お気に入りですね。日本のビーガン料理は本当に美味しい。これまでの滞在で、これらの食べ物を楽しむことができたことは、素晴らしい経験でした。
EDIT & TEXT:YUKI KOIKE(VINYL)
ニューバランスジャパンお客様相談室
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イスラエル発コスメ「ラリン」が日本市場でのさらなる成長に向けて加速
ラリン ジャパンが展開する「ラリン(LALINE)」は、イスラエル特有の死海のミネラルや厳選された植物エキスやオイルを使用したコスメブランドだ。1999年に従姉同士の2人によってイスラエルで誕生し、2011年2月にアジア第1号店を表参道にオープン。16年5月にラリン ジャパンはTSIホールディングス傘下となり、現在、ファッションビルやモールを中心に国内35店舗を展開する。この度、あらためて本国イスラエルと日本の強固なパートナーシツプを築くために、エレズ・マルカ(Erez Malka)ラリンCEOが来日。今年4月に着任した石原教宏ラリン ジャパン社長と共に、現状と新たな成長に向けての戦略について聞いた。
WWD:来日の目的は?
エレズ・マルカ=ラリンCEO(以下、マルカ):コロナが収束してやっと来日することができた。この3年間は非常にタフな期間だったが、今後、日本市場でのさらなる成長に向け、あらためてラリン ジャパン、そしてTSIホールディングスとの関係を築いていきたいと思い、来日した。
石原教宏ラリン ジャパン(以下、石原):コロナ禍の3年間は十分な情報交換も出店もできず、さまざまな戦略が停滞した。ここでもう一度顔を合わせ、戦略を立て直そうと思い、来日してもらった。今、イスラエルは好景気。国の産業としては、テクノロジーが一番。AIやデジタル領域の産業が伸長していて、若い富裕層も多い。現地に出向くと世界の経済は大きく変わり始めていることを実感する。
WWD:アフターコロナの世界のコスメ市場の状況をどのように捉えているか?
マルカ:急激に復活する市場もあれば、まだコロナ禍前のレベルに達していない市場もある。イスラエルは22年1月には回復しており、おおよそ世界のビューティ市場も活況が戻りつつある。その中で日本市場の回復は最後だった印象だ。
イスラエルでは135店舗、全ての店舗が黒字
WWD:本国イスラエルでの「ラリン」の位置付けと現状は?
マルカ:イスラエルの国の大きさは四国程度。そこに135店舗があり、全ての店が黒字で好調だ。ただ、新しい商品を矢継ぎ早に投入しないと飽きられるし、お客さまは魅力を感じない。アフターコロナの市場では、その流れが顕著だと感じており、全体の20%程度は常に新商品に入れ替え、鮮度を保っている。今後は、さらにその入れ替えはスピードアップすることも考えられる。
石原:135店舗展開していて、全店黒字というのはオペレーションが優れていることの証。学ぶべきことも大いにある。「ラリン」はイスラエル一のアパレル会社のフォックスグループの傘下というのも大きい。そのグループの中でも「ラリン」は中核ブランドに位置付けられる。
WWD:強化しているカテゴリーは?
マルカ:フェイスケアだ。「ラリン」は、死海の塩を使用したボディースクラブを中心とするボディーケア商品のイメージが強いかもしれないが、全体の65〜70%を占める程度。他にタオルなどの雑貨類やルームフレグランスなど幅広く展開するライフスタイルブランドだ。その中で、イスラエルに限らず、フェイスケア商品への要望が強く、今後、さらに注力していく。
WWD:「ラリン」の展開国と成長している国は?
マルカ:現在、カナダ、台湾、オーストラリア、グルジア、日本の5カ国に輸出している。
売り上げ構成比はイスラエルが70%、海外が30%(ともに卸しベース)。海外の売り上げの20%を日本が占めている。イスラエルの売り上げは毎年前年比3〜5%増と安定して伸長している一方、4年前に進出したカナダの22年度売上高は、前年比28%増と大きく成長している。今後5年間で、アメリカ、メキシコ、ヨーロッパのスペイン、フランス、イタリア、そしてアジア諸国への輸出拡大を計画している。
日本ではECの売り上げがここ数カ月で急速に伸長
WWD:11年にアジア初の店舗として表参道店をオープンして以降、日本の状況をどう捉えているか?
マルカ:個人的には日本が大好きで、TSIホールディングスはいいパートナー。一緒に仕事ができて幸せだと思っている。今は、イスラエルと日本のお客さまの違いを学んでいる最中だ。例えばパッケージの大きさは、日本はイスラエルに比べ小ぶりなものを好む。
石原:気候の違いも大きく、冬でも気温17〜18度程度で湿気があるイスラエルと日本では、乾燥肌に対する考え方も異なる。
マルカ:それに、日本のお客さまは好奇心が旺盛で非常に賢い。商品の成分や効果などをより詳しく知りたがる傾向が強い。
WWD:16年時に21年で50店舗、売上高30億円を目指していたが、その進捗は?
石原:コロナ禍で経済が停滞してしまった影響は大きく、現在35店舗で、ルクア大阪が1番店。売り上げに関してもまだ未達だ。これからTSIホールディングスが中期経営計画を発表するが、そのタイミングでしっかり達成できるようにしたい。
WWD:そのための仕掛けは?
石原:日本のEC売り上げがここ数カ月で急速に伸びており、本国も全面的に協力してくれていることもあり、ここに大きなチャンスがあると感じている。現在、ECが全体の売り上げの12〜13%を占める。ピューティのスタッフは、SNSに関しての知識も理解度も高く、面白くてパワフル。その能力を生かしてインスタライブなどを積極的に行いSNSでのお客さまとのタッチポイントを増やし、ECの割合をさらに上げていく。また、日本化粧品検定受験などさまざまな面でのスタッフのスキルアップを後押ししている。
「ウーマン エンパワーメント」を体現
WWD:EC強化の戦略は他の国でも同じ?
マルカ:もちろんイスラエルもECは成長しているが、昨今の日本の成長に比べるとスピードは落ちる。なぜならイスラエルのEC売り上げの伸長のピークは日本より早かったからだ。
石原:先日、イスラエルに行った時はデリバリーの速度の改革に入っていた。オーダーして最長2時間、早ければ20分で届くという、まるでフードデリバリーのようなシステムを構築していることに驚いた。四国程度の国土にメインのデリバリーセンターがあり、サポートセンターをどこに作るかや、テクノロジーによるサプライチェーン構築についてのディスカッションをしていて、われわれはまだまだだと思った。
マルカ:フォックスグループは今、1400億円を投資し、中近東で一番大きな物流センターを建設しようとしている。その半分はロボット技術への投資だ。完成すれば「ラリン」もそこから出荷するし、これから輸出する国が増えても十分対応できる体制が整う。
WWD:日本市場はまだ伸び代があると思うか?
マルカ:今回、3日間日本市場を見て、素晴らしい市場だと思ったし、伸びる可能性が大いにあると確信した。イスラエルは約900万人の人口で135店舗あり、97%のブランド認知度を誇る。日本は約1億2000万人の人口で35店舗しかないから、爆発的に成長すると期待している。さらなる成長のためには、一流のロケーションに出店すること、そして、いい商品を提供することが重要だ。日本のような厳しい審美眼を持つ市場では、ベストセラーとなるような商品を提供し、一番いい体制で臨まなければ商機がないことは理解している。その一環として、日本限定の商品もスタートしているし、来年はブランド誕生25周年で、コラボアイテムなど特別な商品も予定している。

石原:出店にあたり、デベロッパーからは若い層を取り組むことを期待されている。とはいえ、「ラリン」の商品は4000〜5000円が中心価格帯。それを納得して購入する感度の高い若年層がいる場に出店していく。マルカCEOが言う「一流のロケーション」というのはそういう意味だ。そして、「ラリン」の創始者から続くフィロソフィーは「ウーマン エンパワーメント(WOMEN EMPOWERMENT)」。女性が商品を使って幸せな気持ちになり、自信を持って社会に出ていくことを後押しする存在であることを目指してきた。ラリン ジャパンの従業員は約170人でうち男性は4人。あらためてそのフィロソフィーに立ち返り、彼女たちにポジティブに活躍してもらい「ウーマン エンパワーメント」を体現していく。
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イスラエル発コスメ「ラリン」が日本市場でのさらなる成長に向けて加速
ラリン ジャパンが展開する「ラリン(LALINE)」は、イスラエル特有の死海のミネラルや厳選された植物エキスやオイルを使用したコスメブランドだ。1999年に従姉同士の2人によってイスラエルで誕生し、2011年2月にアジア第1号店を表参道にオープン。16年5月にラリン ジャパンはTSIホールディングス傘下となり、現在、ファッションビルやモールを中心に国内35店舗を展開する。この度、あらためて本国イスラエルと日本の強固なパートナーシツプを築くために、エレズ・マルカ(Erez Malka)ラリンCEOが来日。今年4月に着任した石原教宏ラリン ジャパン社長と共に、現状と新たな成長に向けての戦略について聞いた。
WWD:来日の目的は?
エレズ・マルカ=ラリンCEO(以下、マルカ):コロナが収束してやっと来日することができた。この3年間は非常にタフな期間だったが、今後、日本市場でのさらなる成長に向け、あらためてラリン ジャパン、そしてTSIホールディングスとの関係を築いていきたいと思い、来日した。
石原教宏ラリン ジャパン(以下、石原):コロナ禍の3年間は十分な情報交換も出店もできず、さまざまな戦略が停滞した。ここでもう一度顔を合わせ、戦略を立て直そうと思い、来日してもらった。今、イスラエルは好景気。国の産業としては、テクノロジーが一番。AIやデジタル領域の産業が伸長していて、若い富裕層も多い。現地に出向くと世界の経済は大きく変わり始めていることを実感する。
WWD:アフターコロナの世界のコスメ市場の状況をどのように捉えているか?
マルカ:急激に復活する市場もあれば、まだコロナ禍前のレベルに達していない市場もある。イスラエルは22年1月には回復しており、おおよそ世界のビューティ市場も活況が戻りつつある。その中で日本市場の回復は最後だった印象だ。
イスラエルでは135店舗、全ての店舗が黒字
WWD:本国イスラエルでの「ラリン」の位置付けと現状は?
マルカ:イスラエルの国の大きさは四国程度。そこに135店舗があり、全ての店が黒字で好調だ。ただ、新しい商品を矢継ぎ早に投入しないと飽きられるし、お客さまは魅力を感じない。アフターコロナの市場では、その流れが顕著だと感じており、全体の20%程度は常に新商品に入れ替え、鮮度を保っている。今後は、さらにその入れ替えはスピードアップすることも考えられる。
石原:135店舗展開していて、全店黒字というのはオペレーションが優れていることの証。学ぶべきことも大いにある。「ラリン」はイスラエル一のアパレル会社のフォックスグループの傘下というのも大きい。そのグループの中でも「ラリン」は中核ブランドに位置付けられる。
WWD:強化しているカテゴリーは?
マルカ:フェイスケアだ。「ラリン」は、死海の塩を使用したボディースクラブを中心とするボディーケア商品のイメージが強いかもしれないが、全体の65〜70%を占める程度。他にタオルなどの雑貨類やルームフレグランスなど幅広く展開するライフスタイルブランドだ。その中で、イスラエルに限らず、フェイスケア商品への要望が強く、今後、さらに注力していく。
WWD:「ラリン」の展開国と成長している国は?
マルカ:現在、カナダ、台湾、オーストラリア、グルジア、日本の5カ国に輸出している。
売り上げ構成比はイスラエルが70%、海外が30%(ともに卸しベース)。海外の売り上げの20%を日本が占めている。イスラエルの売り上げは毎年前年比3〜5%増と安定して伸長している一方、4年前に進出したカナダの22年度売上高は、前年比28%増と大きく成長している。今後5年間で、アメリカ、メキシコ、ヨーロッパのスペイン、フランス、イタリア、そしてアジア諸国への輸出拡大を計画している。
日本ではECの売り上げがここ数カ月で急速に伸長
WWD:11年にアジア初の店舗として表参道店をオープンして以降、日本の状況をどう捉えているか?
マルカ:個人的には日本が大好きで、TSIホールディングスはいいパートナー。一緒に仕事ができて幸せだと思っている。今は、イスラエルと日本のお客さまの違いを学んでいる最中だ。例えばパッケージの大きさは、日本はイスラエルに比べ小ぶりなものを好む。
石原:気候の違いも大きく、冬でも気温17〜18度程度で湿気があるイスラエルと日本では、乾燥肌に対する考え方も異なる。
マルカ:それに、日本のお客さまは好奇心が旺盛で非常に賢い。商品の成分や効果などをより詳しく知りたがる傾向が強い。
WWD:16年時に21年で50店舗、売上高30億円を目指していたが、その進捗は?
石原:コロナ禍で経済が停滞してしまった影響は大きく、現在35店舗で、ルクア大阪が1番店。売り上げに関してもまだ未達だ。これからTSIホールディングスが中期経営計画を発表するが、そのタイミングでしっかり達成できるようにしたい。
WWD:そのための仕掛けは?
石原:日本のEC売り上げがここ数カ月で急速に伸びており、本国も全面的に協力してくれていることもあり、ここに大きなチャンスがあると感じている。現在、ECが全体の売り上げの12〜13%を占める。ピューティのスタッフは、SNSに関しての知識も理解度も高く、面白くてパワフル。その能力を生かしてインスタライブなどを積極的に行いSNSでのお客さまとのタッチポイントを増やし、ECの割合をさらに上げていく。また、日本化粧品検定受験などさまざまな面でのスタッフのスキルアップを後押ししている。
「ウーマン エンパワーメント」を体現
WWD:EC強化の戦略は他の国でも同じ?
マルカ:もちろんイスラエルもECは成長しているが、昨今の日本の成長に比べるとスピードは落ちる。なぜならイスラエルのEC売り上げの伸長のピークは日本より早かったからだ。
石原:先日、イスラエルに行った時はデリバリーの速度の改革に入っていた。オーダーして最長2時間、早ければ20分で届くという、まるでフードデリバリーのようなシステムを構築していることに驚いた。四国程度の国土にメインのデリバリーセンターがあり、サポートセンターをどこに作るかや、テクノロジーによるサプライチェーン構築についてのディスカッションをしていて、われわれはまだまだだと思った。
マルカ:フォックスグループは今、1400億円を投資し、中近東で一番大きな物流センターを建設しようとしている。その半分はロボット技術への投資だ。完成すれば「ラリン」もそこから出荷するし、これから輸出する国が増えても十分対応できる体制が整う。
WWD:日本市場はまだ伸び代があると思うか?
マルカ:今回、3日間日本市場を見て、素晴らしい市場だと思ったし、伸びる可能性が大いにあると確信した。イスラエルは約900万人の人口で135店舗あり、97%のブランド認知度を誇る。日本は約1億2000万人の人口で35店舗しかないから、爆発的に成長すると期待している。さらなる成長のためには、一流のロケーションに出店すること、そして、いい商品を提供することが重要だ。日本のような厳しい審美眼を持つ市場では、ベストセラーとなるような商品を提供し、一番いい体制で臨まなければ商機がないことは理解している。その一環として、日本限定の商品もスタートしているし、来年はブランド誕生25周年で、コラボアイテムなど特別な商品も予定している。

石原:出店にあたり、デベロッパーからは若い層を取り組むことを期待されている。とはいえ、「ラリン」の商品は4000〜5000円が中心価格帯。それを納得して購入する感度の高い若年層がいる場に出店していく。マルカCEOが言う「一流のロケーション」というのはそういう意味だ。そして、「ラリン」の創始者から続くフィロソフィーは「ウーマン エンパワーメント(WOMEN EMPOWERMENT)」。女性が商品を使って幸せな気持ちになり、自信を持って社会に出ていくことを後押しする存在であることを目指してきた。ラリン ジャパンの従業員は約170人でうち男性は4人。あらためてそのフィロソフィーに立ち返り、彼女たちにポジティブに活躍してもらい「ウーマン エンパワーメント」を体現していく。
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1位は、コーセーがジャニーズ事務所に対する声明を発表|週間アクセスランキング TOP10(9月14日〜9月20日)
「WWDJAPAN」 ウイークリートップ10
1週間でアクセス数の多かった「WWDJAPAN」の記事をランキング形式で毎週金曜日にお届け。
今回は、9月14日(木)〜9月20日(水)に配信した記事のトップ10を紹介します。
- 1位 -
コーセーがジャニーズ事務所に対する声明

コーセーは15日、ジャニーズ事務所の創業者、故ジャニー喜多川氏による性加害問題を受け、十分な改善が認められるまでは同事務所所属タレントの新たな契約や起用を見送ると発表した。現時点で、ウェブサイトの削除や店頭の販促物の撤去などは予定していないが、流通企業の意向などを踏まえ、適応に対応していく方針だ。なお、契約タレントのTVCMの放映は全て終了している。
> 記事の続きはこちら- 2位 -
「ユニクロ:シー」発売日の店頭は? 30代の女性客が中心、ちらほら男性の姿も

ユニクロは9月15日、クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)によるウィメンズの新ライン「ユニクロ:シー(UNIQLO : C)」を発売した。当日朝、東京・銀座のユニクロ トウキョウを訪れると、10時前後から整理券を配布。11時のオープン直前には20人ほどが入り口前で列を作った。
> 記事の続きはこちら- 3位 -
「リモワ」と「ティファニー」が初コラボ ジュエリーボックスやスーツケースを発売

LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン (LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)傘下のドイツのラゲージブランド「リモワ(RIMOWA)」は9月26日、「ティファニー(TIFFANY & CO.)」とのコラボアイテムを発売する。
> 記事の続きはこちら- 4位 -
10日間で3カ月分を完売 「ワコールメン」“レースボクサー”にブリーフタイプが登場

「ワコールメン(WACOAL MEN)」から、美しさと機能性を融合した“レースブリーフ”が登場した。2021年12月に発売した同じレースを使用した“レースボクサー”は、発売から10日間で約3カ月分の販売予定枚数を完売した大ヒット商品。
> 記事の続きはこちら- 5位 -
ケニアで見た「大量廃棄」の現実 鎌田安里紗がリポート

先進国から途上国へ輸出される大量の古着が問題視されている。ファッション産業の透明性を推進するファッションレボリューションジャパンのプロデューサーで、消費者への啓発活動に取り組む鎌田安里紗は8月、古着の行き着く先を見るためケニアを訪れた。「チェンジング・マーケット財団」の調査によれば、2021年はケニアに9億着以上の衣類が輸出されたという。現地の人々は、この現状をどう受け止めているのか。鎌田に8日間の滞在の様子をレポートしてもらった。
> 記事の続きはこちら- 6位 -
阪神梅田本店の優勝セールに2000人行列 早すぎるVで一部商品が間に合わず

阪神タイガースが18年ぶりにセ・リーグ優勝したのを受け、エイチ・ツー・オー リテイリングのグループ各社は15日、「祝・リーグ優勝 阪神タイガースご声援感謝セール」をスタートした。7日間開催する。
> 記事の続きはこちら- 7位 -
新生「エディー・バウアー」出店開始 10月に4店舗

メンズアパレルの水甚(岐阜市、中村好成社長)は、米カジュアルブランド「エディー・バウアー(EDDIE BAUER)」の出店を開始する。10月6日にモラージュ菖蒲(埼玉県)、イオンモール福岡(福岡県)、高槻阪急スクエア(大阪府)、10月13日にららぽーと愛知東郷(愛知県)をそれぞれ開く。
> 記事の続きはこちら- 8位 -
「ルイ・ヴィトン」から青の“モノグラム・キャンバス”を用いたメンズの新作バッグ
- 9位 -
Perfumeが吉田カバンの「POTR」とコラボ オレンジのミニバッグをツアー会場で限定販売

吉田(東京、吉田幸裕社長)が手掛けるブランド「ピー・オー・ティー・アール(POTR)」は、3人組ユニットのPerfume(パフューム)とコラボしたバッグ“ボンサック ミニ”を発売する。
> 記事の続きはこちら- 10位 -
「ランコム」が美容液“ジェニフィック”の世界観を体験できるイベントを開催

「ランコム(LANCOME)」は9月22〜24日の3日間、渋谷スクランブルスクエアで美容液“ジェニフィック アドバンスト N”の世界観を体験できるイベント“ジェニフィック インテンス チャレンジ”を開催する。
> 記事の続きはこちらThe post 1位は、コーセーがジャニーズ事務所に対する声明を発表|週間アクセスランキング TOP10(9月14日〜9月20日) appeared first on WWDJAPAN.
1位は、コーセーがジャニーズ事務所に対する声明を発表|週間アクセスランキング TOP10(9月14日〜9月20日)
「WWDJAPAN」 ウイークリートップ10
1週間でアクセス数の多かった「WWDJAPAN」の記事をランキング形式で毎週金曜日にお届け。
今回は、9月14日(木)〜9月20日(水)に配信した記事のトップ10を紹介します。
- 1位 -
コーセーがジャニーズ事務所に対する声明

コーセーは15日、ジャニーズ事務所の創業者、故ジャニー喜多川氏による性加害問題を受け、十分な改善が認められるまでは同事務所所属タレントの新たな契約や起用を見送ると発表した。現時点で、ウェブサイトの削除や店頭の販促物の撤去などは予定していないが、流通企業の意向などを踏まえ、適応に対応していく方針だ。なお、契約タレントのTVCMの放映は全て終了している。
> 記事の続きはこちら- 2位 -
「ユニクロ:シー」発売日の店頭は? 30代の女性客が中心、ちらほら男性の姿も

ユニクロは9月15日、クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)によるウィメンズの新ライン「ユニクロ:シー(UNIQLO : C)」を発売した。当日朝、東京・銀座のユニクロ トウキョウを訪れると、10時前後から整理券を配布。11時のオープン直前には20人ほどが入り口前で列を作った。
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「リモワ」と「ティファニー」が初コラボ ジュエリーボックスやスーツケースを発売

LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン (LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON以下、LVMH)傘下のドイツのラゲージブランド「リモワ(RIMOWA)」は9月26日、「ティファニー(TIFFANY & CO.)」とのコラボアイテムを発売する。
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10日間で3カ月分を完売 「ワコールメン」“レースボクサー”にブリーフタイプが登場

「ワコールメン(WACOAL MEN)」から、美しさと機能性を融合した“レースブリーフ”が登場した。2021年12月に発売した同じレースを使用した“レースボクサー”は、発売から10日間で約3カ月分の販売予定枚数を完売した大ヒット商品。
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ケニアで見た「大量廃棄」の現実 鎌田安里紗がリポート

先進国から途上国へ輸出される大量の古着が問題視されている。ファッション産業の透明性を推進するファッションレボリューションジャパンのプロデューサーで、消費者への啓発活動に取り組む鎌田安里紗は8月、古着の行き着く先を見るためケニアを訪れた。「チェンジング・マーケット財団」の調査によれば、2021年はケニアに9億着以上の衣類が輸出されたという。現地の人々は、この現状をどう受け止めているのか。鎌田に8日間の滞在の様子をレポートしてもらった。
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阪神梅田本店の優勝セールに2000人行列 早すぎるVで一部商品が間に合わず

阪神タイガースが18年ぶりにセ・リーグ優勝したのを受け、エイチ・ツー・オー リテイリングのグループ各社は15日、「祝・リーグ優勝 阪神タイガースご声援感謝セール」をスタートした。7日間開催する。
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新生「エディー・バウアー」出店開始 10月に4店舗

メンズアパレルの水甚(岐阜市、中村好成社長)は、米カジュアルブランド「エディー・バウアー(EDDIE BAUER)」の出店を開始する。10月6日にモラージュ菖蒲(埼玉県)、イオンモール福岡(福岡県)、高槻阪急スクエア(大阪府)、10月13日にららぽーと愛知東郷(愛知県)をそれぞれ開く。
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「ルイ・ヴィトン」から青の“モノグラム・キャンバス”を用いたメンズの新作バッグ
- 9位 -
Perfumeが吉田カバンの「POTR」とコラボ オレンジのミニバッグをツアー会場で限定販売

吉田(東京、吉田幸裕社長)が手掛けるブランド「ピー・オー・ティー・アール(POTR)」は、3人組ユニットのPerfume(パフューム)とコラボしたバッグ“ボンサック ミニ”を発売する。
> 記事の続きはこちら- 10位 -
「ランコム」が美容液“ジェニフィック”の世界観を体験できるイベントを開催

「ランコム(LANCOME)」は9月22〜24日の3日間、渋谷スクランブルスクエアで美容液“ジェニフィック アドバンスト N”の世界観を体験できるイベント“ジェニフィック インテンス チャレンジ”を開催する。
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パタゴニアの型破りなマーケティング戦略 本国責任者が語る
アイリーン・オッテンウェラー/パタゴニア ブランド&ビジネス・インパクト責任者 プロフィール
米国インディアナ州フォートウエイン生まれ。2019年3月パタゴニアに入社。ブランド・マーケティングを指揮し、キャンペーンの戦略開発、ストーリーや映画制作、草の根の支援活動など、ブランドのあらゆる活動においてパタゴニアの目的を実現するための戦略やチーム、プログラムをマネジメントする。パタゴニア入社以前は、テスラ、ソーラーシティ、イニシアティブ・フォー・グローバル・デベロップメントなど、さまざまなテクノロジー企業や非営利団体に勤務。趣味はサイクリング、水泳、バックカントリースキー、トレイルランニング
パタゴニアのマーケティング戦略は型破りだ。「商品を売るため」ではなく、人々の「行動変容を促す」ことに焦点を当て、本部だけで約200人のスタッフが戦略を練る。「パタゴニアは“100年続く会社”の実験的存在」「いわゆるマーケティングと呼ばれる仕事を覆すことが私の仕事」と語るパタゴニアのブランド及びビジネス・インパクトの責任者、アイリーン・オッテンウェラー氏にマーケティング&コミュニケーション戦略を聞く。
WWD:これまで手掛けたキャンペーンで最も反響が大きかったものとその理由をどう分析する?
アイリーン・オッテンウェラー(以下、アイリーン):リジェネラティブ・オーガニック(環境再生型有機農法)認証と、漁網を再生したリサイクルナイロン「ネットプラス」のローンチキャンペーンです。いずれも私たちが重視する価値観である製品を活用して行動変容を促すものでした。リジェネラティブ・オーガニックのキャンペーンは、オーガニックコットンを支援してきたこれまでの取り組みを土台に、(さらにその理解を深め、環境再生型有機農法への移行に向けて)業界を後押しすることができたと感じています。キャンペーンを通じてより多くのブランドがオーガニックからリジェネラティブ・オーガニックのコットンを使用するようになりました。また、お客さまもコットン栽培の理解を深め、より多くの人が「自分の服はどこから来ているのか」と疑問を持つようになったと感じています。
「ネットプラス」は、ポスト・コンシューマ(使用済製品:ポストは「後の」、コンシューマは「消費者」を意味し、「ポスト・コンシューマ」は、「消費者が使用済の」「使い古した」という意味を持つ)を材料に活用する革新的なプログラムです。アパレル産業に対して、廃棄プラスチックから新しい糸を作るという考えを浸透させた良い例になりました。ブレオ社と共同開発した「ネットプラス」は今後さまざまなブランドでも採用される予定です。
そして、私たちは消費者の多くはプラスチックが作られる背景や問題の裏に石油やガス会社が関わっているかを理解していないことに気付きました。そこでこのキャンペーンをきっかけにプラスチックの背景に大きな問題が隠れていることを暴露したいと考え、ショートフィルム「クローゼットの中の怪物」を制作しました。
WWD:30分足らずの映像の中に情報が整理されていて非常に理解しやすいショートフィルムだった。どのようにストーリーを組み立てたのか。
アイリーン:私が概要を考え、チームメンバーとリサーチを行いました。その後、消費者がどこまで知識があるのか、問題の理解を深めるためにどうすればよいかを考えました。重視したのは、映画を観終わった後に、できることがあると希望を持てるようなものをつくること。(気候危機や社会課題を訴える)多くの取り組みは、問題提起するだけで希望を提供しない。この映画は、私たちのコミュニティに多くの人に参加してもらうために、そして「希望は失われていない」「もっとできることがある」という“始まり”を伝えるために制作しました。行動変容を促すという点で最も成功した映画といえるでしょう。
行動変容を促すために行動科学を学ぶ
WWD:顧客や社会に向けてメッセージを伝えるときに、パタゴニアが重視していることとは?特に今年は50周年という節目の年でもある。
アイリーン:50周年に向けて2年前から検討を始め、マーケティングの観点からは、行動変容を倍化させる必要があると考えました。「地球を救う」ミッションから考えると、気候危機は悪化の一途で私たちの努力は不十分。そのため、2年をかけて行動科学を学び、適切なメッセージとはどういうものか、どの瞬間どのタイミングで伝え、インフレクションポイント(変曲点)は何か、対象レベルに合わせてどうメッセージを発信すべきかなどを学びました。その結果、対象別に何が有効かを考えるためのフレームワークを作ることができました。「クローゼットの中の怪物たち」や「ウォーンウエア(WORN WEAR)」のポップアップストアなどを通じて、テストが始まったところです。ほんの始まりに過ぎませんが、マッピングやマーティングツールは出そろってきています。
WWD:50周年のキャンペーン「次は?」について教えて欲しい。
アイリーン:キャンペーンは、私たち自身の疑問から生まれました。私たちが望むのはどんな未来でしょうか?私たちが問い続けてきた「次はどうする?」という問いを、私たちのコミュニティと共有し、さらにより多くの人に知っていただくためのキャンペーンです。私たちが信じている行動や価値観は、人間として生き残るだけでなく、繁栄することを可能にするものです。50周年のキャンペーンを通じて、人々が可能性を感じ、変化は可能だという希望を持つこと、そして私たちには共通点がたくさんあり、一緒に旅に出ればもっと良くなるということを実感してもらえればと願っています。
WWD:パタゴニアの店舗やオンラインストアを訪れると、商品の魅力を伝えるだけでなく、環境危機とその改善のためのアクションを伝えていることがわかる。それぞれの発信のバランスや、根底にある考え方とは?
アイリーン:透明性を重視し、真実を伝えることを大切にしています。パタゴニアがどのような状況にあり、何を知っていて、何を知らないのかについても正直に話します。伝えること全ては行動によって裏打ちされている点も大切です。そして、ストーリーテリングの本当に重要な部分は、私たちが語るストーリーだけでなく、その背後には人とその人のストーリーがあるということ。
情報で圧倒することは簡単ですが、適切なバランスを見極めることに全力を注いでいます。全てのコミュニケーションにおいて、お客さまの理解度がどれくらいかを考えることから始めています。ショートパンツを買うためにサイトを訪れたのでしょうか?何らかのキャンペーンに興味を持って訪れたのでしょうか?何を起点に訪れたのか、その出発点から私たちの大きなビジョンにつなげるにはどうしたらいいかを考えます。けれど決して完璧にはできません。常に何が必要かを見直し、メッセージを進化し続けることが大切です。
全ての問題は異なり、ゴールも異なります。フレームワークをガイドに、意識的な消費、アクティビズム、スポーツを通じた自然とのつながりなどテーマに応じて、さまざまなツールを組み合わせます。例えば、意識的な消費者になるための旅が始まったばかりの人に対しては、非常に複雑なアパレル産業の現実を知るツールとして映画が効果的です。映画は、複雑な物語を語るのに優れた方法です。アクティビズムについて、例えば特定の請願書や政府の規則など、人々に署名に参加をしてもらおうとアプローチする場合、非常に明確でシンプルな行動喚起のメッセージが最適です。動画は使わず、写真とメッセージだけ。そして、アクションを起こすためのリンクを掲載します。
WWD:人々に関心を持ってもらい、行動を起こしてもらうための発信は容易ではない。コミュニケーション戦略をどのように立てているか。
アイリーン:非常に複雑です。課題によって異なるので、フレームワークを「試してみよう」「反応を見よう」「そこから反復しよう」という道標として使っています。私たちは社内で多くの時間を費やし、今、お客さまが解決しようとしている問題は何かを明確にするようにしています。それは意識の問題なのか、教育の問題なのか。気づいてはいるが行動を変えるための正しい情報にアクセスできていないのか。それとも、抵抗があるのか、行動が伴わないのか、変換行動が起きているのか、などです。
マーケティング費は売上高の5~6%
WWD:映画やストーリー性のあるウェブサイトを作るにはかなりの投資が必要だ。売り上げに対してどの程度の資金をストーリーテリングに充てているか。
アイリーン:競合他社に比べるとわずかです。売り上げの5~6%程度で他社に比べると半分以下です。通常、パタゴニア規模の企業は売り上げに対して8~12%が妥当と言われています。「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」などの競合他社は私たちの40倍くらい投資しているという調査結果もあります。
WWD:ほとんど広告を打たずにフィルムやウェブサイトなどストーリーテリングに徹底している。
アイリーン:広告は、特定の目的を解決するときに打ちます。ですが、新聞の隅にあるディスプレイ広告が行動変容を起こせるとは思っていません。
WWD:チームについて教えて欲しい。科学的根拠に基づいた情報を活用したコミュニケーションが多いが、調査だけでもかなりの費用がかかるのでは?
アイリーン:ストーリーテリングチームは本部だけで約200人います。その中に編集者を擁するクリエイティブチームを設けています。ライターだけでなく、ジャーナリスティックな視点を持つ人材を採用しており、彼らは、活動家や環境、製品やスポーツの専門家になっていきます。ですので、外部の人にお金を払って情報を探してもらわなくても、知識が社内に保持されていきます。社内に知見が貯まっていくことは私たちの仕事で非常に重要です。
WWD:どのように社員の目的意識を醸造していくか。
アイリーン:社員を第一のカスタマーと考えています。自分たちの取り組んでいることを信じなければ、対外的に何をやってもうまくいかないですよね。社員、お客さま、そして人間と自然とのつながりをめぐる行動変容の3つに特化した社内プログラムを用意しています。
例えば、毎月(創業当時からのパタゴニアを知る)ヴィンセント(・スタンレー哲学者)によるフィロソフィーのクラスがあります。コロナ禍はバーチャルでしたが、今は本社の外でコーヒーやお茶を飲みながら行っています。創業の経緯からパタゴニアのコアバリューがどう作られたかなどを語り合います。誰でも参加できて質問もでき、自分を見直す機会にもなっています。価値観や歴史を維持するためのもので、アーカイブも構築しています。
パタゴニアには特別な文化があることは間違いありません。私たちは大きな家族のようです。大企業に比べるとまだまだ小さな存在ですが、自分たちを「小さいけど強い」と思っています。品質と透明性にこだわり、正直であること、型にはまらない方法や新しい挑戦を恐れないこと、現状維持をやめることに抵抗がないこと、新しいミッションステートメントに繋がるマインドを持っています。そして私たちはみなアウトドアを愛しています。私たちはみな異なりますが、同じ価値観を理解しています。共通の価値観を通じてお互いを理解し合っています。
「世の中を良くするために自分のスキルをどう役立てるか」
WWD:電気自動車などさまざまな産業やNPOに関わってきたあなたがなぜアパレルに?
アイリーン:パタゴニアは私と同じ問いを投げかけていると感じた最初の企業でした。幼い頃から「世の中をより良くするために自分のスキルをどう役立てればいいか」を考えていました。その結果、非営利団体やコンサルティングファーム、スタートアップ企業や太陽エネルギー関連、電気自動車などさまざまな企業で働き、どんな産業でどんなビジネス構造が最もポジティブな変化を促進できるのかに取り組んできました。
WWD:パタゴニアのミッションステートメントが変わったことも影響した?
アイリーン:ええ、興味が高まりました。なぜ衣料品メーカーがこんなに高い目標を掲げているのでしょう?「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」というのは、私が知る限り最も野心的なミッションステートメントの一つです。だから、パタゴニアの価値観や原則、プログラムはどんなものかをとても知りたくなりました。
WWD:入社して印象的だったことは?
アイリーン:パタゴニアは真実を求め、製品がもたらすインパクトを全力で少なくする努力をしていること、そしてミッションステートメントを具現化していること。その価値観に日常的に触れている点も印象的でした。これまでの経験を振り返るととても珍しいことでしたから。私たちが直面している気候危機を変える当事者になろうとすることに興奮しています。毎日起きて働くことが楽しみです。私自身もパタゴニアに入社して変わりました。パタゴニアは多くのことを教えてくれました。今度は私が他の人に教えようとしています。
WWD:イヴォン・シュイナード創業者とのやり取りで印象的だったことは?
アイリーン:ありのままの自分でいることにコミットしている点です。彼は、パタゴニアが「お金に左右されない」ことに対してとても熱心で、地球を救うために尽力しています。会社の創業者がこのような人生を歩んできていることも新鮮に感じます。そして、より良い人間でありたいと思わせてくれました。
イヴォンは「死んだ地球にビジネスはない」と言います。私たちが明日ビジネスを止めたら人々は同じ行動を取り続けるでしょう。私たちは人々を、産業を前進させるために存在しています。私たちができることは、道を切り開き、人々に変化が可能だと示すことです。
【エディターズ・チェック】
パタゴニアは、アクションを最大化するためのマーケティングを模索している。パタゴニアは営利企業でありながら、アクティビスト的側面を持ち、これまで環境活動や政策提言、署名運動などで注目を集め、コミュニティを成長させてきた。こうしたパーパス経営は、企業の競争優位性を高めるとして近年注目されており、企業は売る製品やサービスの良さはもちろん、社会でどういう存在でありたいか、社会問題をどう解きたいかといったパーパスを示すことで、より評価が高まるようになった。
今日、企業活動においてマルチ・ステークホルダーの関与は大前提で、マルチ・ステークホルダーが参加できるようなコミュニケーションが重視され始めている。マーケティングは今後、商品の良さを伝える広告からアドボカシー広告(企業の政治・社会・経済的立場を明らかにする広告)が、よりインパクトを与えていくだろう。魅力ある高品質高機能の製品を売るだけでなく、消費者とともに行動する共同体を作り、それを拡張できれば、社会課題の解決を可能にする新しい経済活動につながるのではないだろうか。
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「バウム」「シンピュルテ」「ビュウ」に聞く支持される“香り”の傾向とは?
スキンケアのルーティンに香りを提案するブランドが増えている。香りへの支持も高い「バウム(BAUM)」「シンピュルテ(SINN PURETE)」「ビュウ(BEAW.)」の3社に売れ筋を聞いた。
スキンケアルーティンの中でルームスプレーの活用を提案する「バウム」
「バウム(BAUM)」は森林浴美容と名付け、スキンケアルーティンの中でルームスプレーを使い呼吸を整えて⾹りを感じることを提案している。
22年に1番売れたアイテムは“アロマティック ルームスプレー”(100mL、各3種、各6160円)の“ウッドランドウインズ”の香りだった。“ウッドランドウインズ”は、爽やかなベルガモットやカモミールなど落ち着いたシダーウッドの⾹りで、「湖畔の林に吹く⾵のような」クリーンさが特徴。同ブランドが展開する3つの香りの中で最も人気が高い香りだ。
スキンケアでは、“ハイドロエッセンス ローション”(150mL、7150円)が人気を集める。樹液のようなとろみのあるローションが、肌の⾓層すみずみまで、潤いを与える。森林浴をイメージした⾹りが特徴。星⽥千晴「バウム」ジャパンPR担当は、「「レフィル対応で、⻑く愛⽤いただける⽊製パーツを使⽤したデザインなども支持されている」。
「バウム」はブランドデビューした2020年6月以降の3年間、毎年2ケタ成⻑を続けている。今年の1〜3⽉実績も、前年同期比2ケタ増と伸長した。星⽥千晴「バウム」ジャパンPR担当は、「実店舗とECの双方でブランドの成⻑を支えている」と話す。店舗では、パッケージの木製パーツに使用するオーク(ナラ)の苗木を育成するなど、5感を刺激するブランド体験を提供し、興味関心を喚起する。
「コロナ禍を経て、自宅で快適に過ごすための工夫が増えた。その一つに⾹りを活用することが増えているように感じる。自分のお気に入りの香りを使うことで部屋の雰囲気や気分が変わり、1日の始まりや終わりに、お気に入りの香りとスキンケアでリラックスするニーズが高まっている。アウトドア活動も拡大しており、自然の中でのリラックスを求める顧客にも、森林浴をイメージした『バウム』 の⾹りを評価いただけていると感じる」と述べる。
「シンピュルテ」“トゥーグッドマルチベネフィットオイル”が爆発的人気に
「シンピュルテ(SINN PURUTE)」は、“マインドフルビューティー”と名付け、“マインドフルフレグランス”で心を解きほぐしてから、クレンジングや保湿といったスキンケアを行うことを提案している。その中で人気No.1はクレンジング“ピュアクレンジングクリアa”(120g、3960円)だ。メイクを落とすだけでなくテクスチャーや、マインドフルフレグランスとして販売する“Purification of Mind”の香りなど五感で楽しめるのが特徴。ブランドリニューアル後の売り上げ伸長率1位は、ヒトデ美容液”AGコンセントレイト セラム a”(30mL、8340円)だ。糸を引く粘り気がありながら肌に浸透する美容液で、“Passionate Awakening”の香りを使用している。また、香りが特徴な“トゥーグッドマルチベネフィットオイル”は、5000店舗以上のサロンで取り扱われ、累計30万本を売り上げるなど存在感を放つ。
今春は、マインドフルフレグランスの3つの香りの“トゥーグッドマルチベネフィットオイル”(50mL、3850円)が爆発的に人気を集めた。もやもや落ち込み気味のときに“Purification of mind”、何かに集中したいときの“Stillness and Energy”、ストレスを感じるときの“Passionate Awakening”をラインアップする。上妻善弘アナイスカンパニー代表取締役は、「香りを楽しみながら心を整えてビューティールーティンを楽しむニーズが売れ行きにも反映されている」。
売り上げは、4〜5月の売上平均でみるとブランドリニューアル前となる2年前の同月比で、15倍以上で推移する。「特に、“トゥーグッドマルチベネフィットオイル”が好調で、公式サイトでは2月の発売から、何度も完売・入荷を繰り返している」と人気だ。
「コロナ禍では、不安やストレスにさらされる中、自分に向き合い心を整えるニーズが高まった。これからは、より外向きな『自分のありかたを表現する』という新たなフェーズに入っていくと考えている。今後は、プロフェッショナル市場に向けたさらなる商品展開も検討し、あらゆる場面でマインドフルビューティーを実現したい。最近では、コンシューマー市場とプロフェッショナル市場の両方で成功しているブランドは皆無といえる。双方を行き来しながら体験とバリューを高め、競合ひしめくサロン業界でも『シンピュルテ』らしくプレイフルに、新しい時代のムードを作り上げていきたい」と意気込む。
和漢素材由来のデュアルスキンケア「ビュウ」は
「大和言葉」にインスピレーションを得た5つの香りを展開
竹内太郎ナチュラルテックCEOが2021年に立ち上げた「ビュウ(BEAW.)」は、当初セラムとサプリのセット“スターターボックス”(初回1万1529円、2回目以降は1万4778円)のみを販売してきたが、今年の6月に“フェイスウォッシュ”(80g、通常価格6600円、定期初回特別価格2970円)と“キャンドル”(180g、1万1000円)の一般販売を開始した。
片岡大和 ナチュラルテック取締役COO「ビュウ」事業責任者は、「5月に、ウェスティンホテル東京で先行販売を行い好評を博した。私が大学で国文学を専攻していたので、5つの香りは、大和言葉の情景をイメージソースに開発した。人気の“あらたよ(105)”は、明けるのが惜しい夜という意味で、紅茶にベリーなどをブレンドした香りだ。“なみだあめ(150)”は、はらはらと落ちる涙のような、ほんの少しだけ降る雨という意味で、雨上がりの森や庭園を想起させるジャパニーズグリーン&アースの香り。1人の時間や、信頼できる仲間同士でゆったりと過ごす時におすすめだ」と話す。5月の売り上げは前年同月比10倍と好調だった。「コロナ禍を経て、出社や外出の機会が増えた。外出時に気を遣う一方で、家の中ではリラックスを求める意識が高まり、自然を感じる香りが人気だ」。
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「新商品を出すたびごみを作っている気になる」化粧品業界の闇から抜け、“未来の原料”と出合いサキュレアクト起業

PROFILE:(しおばら・さちこ)広告代理店勤務後、大手化粧品企業に転職。その後2007年からスタートアップの化粧品企業などで商品開発に携わり 、25年化粧品業界で従事する。2023年3月から現職
「化粧品の新商品を出すたびにごみを作っているようで嫌になった」と開口一番印象的な言葉を述べたのは、環境保護につながる未来を創造するサキュレアクトを3月に起業した塩原祥子社長だ。25年携わった化粧品業界を卒業しようと考えた最中に、地球環境を改善する可能性を秘めた微細藻類に出合い、プラスチック商品を使用しない、ごみを出さない工夫をするライフスタイルブランド「530(ファイブサーティ)」を7月に立ち上げた。塩原社長は消費者の意識、行動変容につながるきっかけになることを願い、これまであまり語られてこなかった化粧品業界の裏側を明らかにした。
WWD:長年化粧品業界でモノ作りに携わり、課題に感じていたことは。
塩原祥子サキュレアクト社長(以下、塩原):日本の化粧品市場は約2兆5000億円で、その内の1兆円を大手企業が占めている。残りの1兆5000億円を中小企業が展開するが、チャネルは、百貨店やバラエティーショップ、ドラッグストア、ECと多岐にわたり、それぞれのチャネルを得意とするメーカーがひしめいている。化粧品の年間出荷個数個数は約25億個(2022年経済産業省化粧品出荷統計)で、化粧品使用人口を約5600万人(15歳以上の女性人口約5100万人、男性使用人口約500万人)と想定すると年間41個を消費しないと全ての出荷数を消費することができない。実際には化粧品使用人口が年間18個消費すると仮定すると、製造した時点で約56%が廃棄対象の可能性があるのだ。その状況は決して健全ではない。
WWD:ドラッグストアも同じ状況か。
塩原:前職ではドラッグストアを主力販路とするメーカーに属していたので、むしろ一番環境が良くない気がする。全国にドラッグストアは約2万5000店舗あるが、売れている店舗は1割にも満たない2000店舗といわれている。化粧品の使用期限は未開封で3年(開封後は約1年)で、年2回の棚の入れ替え時に売れ残った商品が3月と9月に大量に返品される。韓国コスメの使用期限は2年と印字されているが、期限が切れたので交換してほしいと普通に言われる。中には一度も店頭に出ないまま返品されることもあった。これらは防犯タグがついたまま戻ってくるものもあるため、再度販売することは難しい。そして、化粧品は液体のものが多いことから分解して処理が難しく、パッケージも単一素材ではなく複数の素材で複雑に構成されているものが多いためリサイクルできない。安売り業者に販売するか、産業廃棄物として処理するしかない。そんな状況を常に見ていると新商品を出すたびにごみを作っているようで嫌気が差し、二度と化粧品業界に関わりたくないと退職した。
WWD:異業種からの参入も多く、化粧品業界に参入しやすい環境もある。
塩原:日本で研究所と自社工場を有している化粧品メーカーは15社程度しかない 。そのほかはOEMで生産している。研究所がなくてもモノ作りができ、200万円あれば化粧品が作れるため参入障壁が低くなっている。化粧品はもうかるという神話があるが、昔ほど小売り店側にブランドを育成する気概もないため、10年継続できるブランドは多くない。返品商品のコスト、卸への手数料を考慮すると、販売価格の10〜20%の商品原価で抑えないとビジネスとして成り立ちにくいのが現状だ。
微細藻類との出合いで、再び化粧品業界で奮起
WWD:化粧品業界の闇に触れ、一度は離れる決意をしたが再び挑戦する
塩原:微細藻類を活用した新規事業を知る機会があり、微細藻類を培養し、石油に変わる代替エネルギーを作るプロジェクトに興味を持った。微細藻類は肉眼では識別困難なサイズだが、二酸化炭素を酸素に変換する光合成生物で、食物連鎖の出発点である生産者といわれている。太陽光と二酸化炭素さえあれば無限に増殖する微細藻類から、将来的にはSAF(持続可能な航空燃料)を生産する予定の企業と協業することで、生産過程で生まれる副産物を抽出・精製し化粧品や容器の原料にできるのではないかと考えている。24年春以降には商用化が実現しそうで、現在はどう商用に落とし込むか模索している最中だ。
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WWD:こうした取り組みを広めるためブランドを立ち上げた。
塩原:7月に「530」が誕生した。ブランド名には“ごみゼロ”という思いをのせており、プラスチック容器を使用しないスキンケアや洗剤、雑貨類を扱う予定だ。第1弾のせっけん“シーデザインソープ”(25g×4、3300円)をマクアケで販売したところ、想定の3倍の売り上げを達成した。 新素材で海の波紋をデザインした九谷焼のソープディッシュ(2200円)も販売する。
WWD:“シーデザインソープ”は、プラスチックごみを含めた海洋汚染が進む海の現状を表した。
塩原:仕込みから乾燥まで最大30日間かけるコールドプロセス製法を採用。全て手作業のため余分なエネルギーは使用しないで作り上げた。ヤシ油やオリーブ果実油、ヒマシ油など天然由来成分99%以上配合し、4種ともお菓子のようなかわいらしいデザインを意識したが、実は一つ一つが海の状態を表現したもの。ブルーの“blue color soap”は「美しい海」、サーモンピンクの“red-orange color soap”は「赤潮の海」、ブルーと白の2層からなる“mix color soap”は「プラスチックの浮かんだ海」、ブラウン系の“brown color soap”は「海底の砂漠化」をそれぞれ表した。海洋汚染問題を生活の中で身近に感じでもらえるものをビジュアル化することでプラスチック商品使用の削減を意識してもらえたら。ビーチクリーン運動の実施やホームページに漫画で読む環境問題などを掲載している。こうして行動や知識を得てもらいごみゼロの地球を実現するための一歩を踏み出してもらえたらうれしい。
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鎌倉サステナビリティ研究所って? 世界的コンペの審査員も務める代表に聞く
ロンドン芸術大学を拠点とするセンター・フォー・サステナブル・ファッション(Centre for Sustainable Fashion.以下、CSF)は、ケリング(KERING)やIBM、「ヴォーグ ビジネス(VOGUE BUSINESS)」とグローバルなファッション・コンペティションの「ファッション・バリュー・チャレンジ(Fashion Values Challenge.以下、FVC)」を共同開発した。日本から唯一審査員を務めた、鎌倉サステナビリティ研究所(以下、KSI)の青沼愛代表に話を聞いた。
青沼愛KSI代表理事 プロフィール
2004年からバングラデシュの教育支援に携わる。SRI投資助言会社を経て、11年からバングラデシュやミャンマーなどの工場を中心に社会監査(ソーシャルオーディット)や労働環境改善業務に携わる。その後、大手アパレル企業のサステナビリティ部にてアジア圏における取引先工場の労働環境改善、工場従業員の教育支援プロジェクトを担当。現在は、幅広い業界の社会監査を国内外で行いながら、サステナビリティ関連コンサルティングも行う。特定非営利活動法人ウォーターエイドジャパン理事も務める

――2018年に設立したKSIとは?
青沼愛鎌倉サステナビリティ研究所代表(以下、青沼代表):04年からバングラデシュの働く子どものたちの教育支援に関わり、その後、SRI関連企業を経て、11年からソーシャルオーディター(社会監査人。製品を製造する自社工場や、サプライチェーン上にある取引先工場の労務・人権・環境などをチェックし、問題があればその改善を促す役割を担う)としてバングラデシュやミャンマーの工場の労働環境改善に関わってきました。その後、ファーストリテイリングのサステナビリティ部でアジア圏のサプライチェーンを担当し、18年にKSIを設立しました。KSIの発起人の1人である、青山学院大学の北川哲雄名誉教授と私は鎌倉在住で、鎌倉で定期的にお茶を飲みながらさまざまな業界の動向について情報交換をして、KSIの構想がスタートしました。企業のサステナビリティに関する活動を加速させるには、質の良い情報と信頼できるネットワークが重要であるという思いから、業界を超えて「フラットであること」「中立であること」そして「ファクトをベースとしたディスカッションをすること」を中心として始まりました。
コアな活動として、サステナブル・ファッション、ビジネスと人権などに関する定期的な勉強会や体系的な連続講座を業界の実務者や学生向けに行っています。多くの実務者が参加してくださるのを嬉しく思っていますし、意欲ある学生さんには奨学金制度として受講料を全額または一部免除して応援しています。私自身は、KSI運営をしながらソーシャルオーディターとして、さまざまな業界のサステナビリティ分野に関わっています。
KSIでは、業界やセクター、国を超えて共に議論をすることを大切にしており、面白い化学反応が起きていると感じます。例えば、ファイナンスに関わる方がファッション産業に関心を持ち、学生と一緒に学ぶなど。学生が純粋な問いを投げかけることで、サステナビリティ担当者と本質的な議論に発展する機会も多く、国内外の専門家が新たな事例を紹介してくれることで、担当者の意識や行動に影響を与ることもあります。
――どのような契機でFVCに関わることになった?
青沼代表:FVCは、世界中からサステナブルファッションに関するアイデアを募集しています。学生部門と企業部門があり、それぞれ優勝者は半年間、CSFやケリング、IBM、「ヴォーグ ビジネス」からメンターを受ける機会や、オンラインのプログラムを受講する権利などを得ます。
KSIは、20年からCSFと連携して彼らの教育コンテンツを日本語にし、サステナブル・ファッション講座で受講生に提供しています。その流れから、FVCの初回からグローバル審査員として関わらせて頂いています。
――今年は日本から3組がファイナリストとしてグローバルに推薦された。グローバル審査員からの反応は?
青沼代表:審査会では日本から推薦した3組ともとても高く評価されていました。ファッションを通して想いが循環するエコシステムを届ける「E組 from Enter the E」、埼玉・秩父発の地域で循環するものづくり「レイナ イブカ(REINA IBUKA)」、そしてファッションを通してオール・インクルーシブな社会を目指すアパレルブランド「ソリット!(SOLIT!)」と、今年のテーマである「ファッションはどのように社会を価値づけることができるのか?」に対して、3組がそれぞれ違った個性と、信念を持ったアプローチをされていることも特徴的でした。また日本のカルチャーを背景にしたビジネスプランやモノづくりに対しての評価もとても高かったです。
4月にはCSFのニーナ・スティーブンソン(Nina Stevenson)教育責任者を招いたオンラインイベントを開催し、3組のアイデアについて意見交換をする機会を設けました。ニーナはグローバル審査員の視点でそれぞれのアイデアに対するリスペクトと気づきを共有してくださり、とても良い議論ができました。
――KSIの今後と、KSIがファッション業界に期待することは?
青沼代表:CSFと連携したことで、海外からのサステナブル・ファッションに関する情報に触れる機会がさらに増えています。世界中でどんなアイデアが議論されているのか、どんなアクションが起きているかを日本に紹介していきたいし、同時に、日本にある素晴らしいアクションを海外に届けるニーズも感じています。
最近はサステナブル・ファッションについて発信する方々も増え、関心の高さを感じます。私たちの強みは国内外の専門的な情報を持っていること。色んな方々と連携し、私たちの情報を使って頂き、さらにその先の多くの人たちに知ってもらえたと思います。
ただ、私たちだけではマンパワーが足りないので、今後日本から賛同する方々を集め、FVCも含め、サステナブル・ファッションを一緒に盛り上げていきたいです。さまざまな方が関わることで、ファッション業界が抱える課題を軽やかに解決して、さらに楽しく、ワクワクするアイデアがたくさん生まれることを願っています。
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「プラン C」、ブルーベル・ジャパンと提携で日本市場を強化 デザイナーがビジョンを語る
「マルニ(MARNI)」創業者の娘、カロリーナ・カスティリオーニ(Carolina Castiglioni)が手がける「プラン C(PLAN C)」。カスティリオーニの型にはまらない自由なクリエイティビティーは、2019年春夏シーズンに始動して以来、一貫してポジティブで遊び心のある自立した女性像を描く。同ブランドは8月からブルーベル・ジャパンとパートナーシップを締結し、日本市場を強化していく。このほど東京・銀座のギンザ シックスにオープンした新たな旗艦店を訪れたカスティリオーニに、同店の印象や今後のビジョンについて聞いた。
WWD:新たな旗艦店を訪れた感想は?
カロリーナ・カスティリオーニ(以下、カスティリオーニ):本やアートも楽しめるギンザ シックスは、出店するには最適な場所だと思いました。今回も彫刻家のドゥッチョ・マリア・ガンビ(Duccio Maria Gambi)が、設計に入ってくれました。彼とは2018年に出会い、以来全ての店舗の設計に関わってくれています。私たちは共通点が多いんです。この店では、アクセサリーを陳列する什器やハンガーラックなどを彼が手掛けてくれました。特に気に入っているのは、ステンレススチールやコンクリート、カーペットなど異なる素材が、とても上手くマッチしているところ。色使いも「プラン C」のDNAと共通します。私は毎シーズン、新しい色の組み合わせを生み出すことに挑戦しています。たとえば2023-24年秋冬シーズンでは、アクアやパープル、ビスタチオをメインに採用しましたが、この色のコンビネーションがとても好きなんです。
WWD:「プラン C」は特にポジティブでユーモラスな色使いが魅力だ。独特な色彩感覚は母親から受け継いだもの?
カスティリオーニ:いいえ。ファッション業界で育つなかで自然と身に付いたのだと思います。高校時代からアートを学び、常にデザインやアートに関心が高かったことも理由でしょう。私のアプローチは、ほとんど直感なんです。アート作品から着想を得ることもあれば、素材のリサーチをするなかでカラーチャートから閃くときもあります。
「母が教えてくれたのは、インディペンデントであること」
WWD:では、母親から受け継いだものをあげるとしたら?
カスティリオーニ:母と私のクリエーションには多くの似た部分があると思いますが、母が教えてくれたのは何よりもインディペンデントであること、自分の考えを貫くことです。「プラン C」はまさに私自身の直感を信じて実現したプロジェクトでもあります。母は「プラン C」のクリエーションには関わっていませんが、いつも店1店舗くらいの個人オーダーをしてくれます(笑)。気に入ってくれているということだと思います。私も当時「マルニ」で同じことをしていました。
WWD:ブランドのシグネチャーである“ピリ アンド ビアンカ”のモチーフは、娘が描いたものだと聞いた。あなたのクリエーションは、家族がいろいろな形で影響している。
カスティリオーニ:家族はとても大事な存在です。あのイラストは、私の娘が3歳の時に友人の似顔絵を描いたものなんです。シンプルな線やシルエットがとても可愛くて、ブランドを始める時に、あれをロゴに使ったらいいんじゃないかと思いつきました。今彼女は9歳で、作風も少し変わりましたね。
WWD:コロナ禍を経てクリエーションに変化は?
カスティリオーニ:大きな変化はありません。創業当時からファッションショーは開催せず、年に2回のコレクション発表で、正しいパートナーと手を組んで慎重にビジネスを成長させていこうと考えていましたから、コロナ禍でも何かを大きく変えなければいけないことはありませんでした。シーズンの垣根をこえて着られる高品質かつディテールにこだわったモノ作りも創業時から大事にしています。一つ挙げるとすれば、工場が動かなかったので、すでにストックしている生地を使って制作しなければならず、新素材を使った革新的なことはあまりできませんでした。しかし、喜びに溢れた、明るい未来に向けたクリエーションを作り続けることは常に心がけました。
WWD:日本でブルーベルをパートナーに選んだ理由は?また今後のビジョンは?
カスティリオーニ:ブルーベルは私たちのクリエイティビティーや美学を理解してくれると思ったからです。すでに良いスタートが切れています。この店舗がその証拠で、とてもうれしく思っています。まずはギンザ シックスの店舗を軌道に乗せることに力を入れますが、出店機会は引き続き探します。そして特にレザーバッグなどのアクセサリーも強化し卸売ビジネスを成長させていく計画です。これからもやみくもにマーケットを広げたりせず、正しいパートナーを見極めてブランドを育てていきたい。アートやライフスタイルへのアプローチが好きな私にとって、先日伊勢丹でも開催したポップアップイベント「リトラッティ」プロジェクトは良い出発地点になりました。来週のミラノ・ファッション・ウイークでは、ニューヨークで活動するウクライナの写真家であり画家、映画監督としての顔を持つイェレナ・ヤムチュック(Yelena Yemchuk)との展示も予定しています。ファッション以外の分野にもさらにクリエイティビティを広げていきたいと思っています。
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「トリー バーチ」は混沌の世界にエフォートレスな洋服で「軽やかに受け流す」を提案
「トリー バーチ(TORY BURCH)」は2004年春夏コレクションをニューヨーク現地時間の9月11日の夜に発表した。会場は今年5月にオープンしたばかりのニューヨーク自然史博物館の別館リチャード・ギルダー・センター(Richard Gilder Center)。「トリー バーチ」は同館オープン後、初めてファッションショーを行ったブランドとなった。天高でゴツゴツとしながらもラウンドしたシェイプに覆われた会場はまるで洞窟の中にいるような雰囲気だが、どこかの惑星に迷い込んだ気持ちにもなる。ユマ・サーマン(Uma Thurman)やナオミ・ワッツ(Naomi Watts)らセレブリティも新作コレクションを目にしようと集まったほか、デザイナーの計らいでニューヨーク州立ファッション工科大学(F.I.T.)の学生たちもファッションショーの見学を行った。
今シーズン「トリー バーチ」が発表したのはエフォートレスな服。「混沌とした世の中では日頃から考えることも多く、頭の中がいっぱいになるからこそ、洋服選びはシンプルなものであってほしい」とトリーは語った。軽くてなめらか、モデルがランウエイを歩くと流れるように動くのが現代に必要なエフォートレスな服たち。ダイナミックなレイヤードでもすっきりと見えるように計算されている。
ファーストルックをはじめ、フューチャリスティックなムードを醸し出すラウンドカットの入ったボンディングジャケットが登場。軽やかな素材使いと流れるようなシルエットのナイロンタフタのスカートを合わせている。同じくツイストを加えてなめらかなシェイプを構築したシルクジャージーのミニドレスもスカートや肩を覆ったショルダーライン。胸元を大きくUネックにカットしたロングドレスなど、全体的に角がなく、丸みを帯びている。
コレクションノートに“aerodynamic curve(エアロダイナミック カーブ)”と記述されているように、丸みを帯びたシルエットやカッティングを意図的に取り入れている。混沌とした世界から吹く強風を軽やかにかわすため、角ばっているよりも丸みを帯びたシェイプで風をうまくかわすのが現代の女性。モデルたちが身に着けるゴーグルのようなスポーティなサングラスはまさに風よけにふさわしく、大ぶりのイヤリングやクラッチバッグ、メリージェーンのシューズなど、全てが丸みを帯びている。
カッティングだけでなく、素材でも軽さを出している。ボリューム感のあるスポーティーなフーディー、ジップアップトップスもシアーな素材で軽く、メッシュのドレスもレイヤーを施したスタイリングだが、軽やかだ。モデルが歩くたびにジャラジャラと音が鳴る鈴を装飾したオーガンジーのドレスも流れるような動きに焦点を当てている。メタリックなダブルフェイスサテンや「トリー バーチ」のロゴをあしらったコート、ワイヤーを入れて張りと丸みを出したビスコースジャージードレスなど、要所要所にどこか近未来的な雰囲気も感じさせる。トリーの考えるエフォートレスな服は単純に着心地や楽さにフォーカスしたものではなく、精密なカッティングとパターン、表情豊かな素材使いなど、クリエーションとしてはとても手の込んだものである。
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芸能生活40周年安達祐実が語る「ウンナナクール」とのコラボ 「下着姿になるのに抵抗はなかった」
“女の子の人生を応援する“インナーウエアブランド「ウンナナクール(UNE NANA COOL)」のノンワイヤーブラジャー“364(サンロクヨン)”の新ビジュアルが登場した。“364”とは、“特別な日”以外、364日つけたいノンワイヤーブラで、2019年に登場以来、累計60万枚を販売。
19年、21年に続き、女優の安達祐実が同シリーズのイメージモデルとして登場した。安達は、“364”の新ビジュアルおよび、今年、芸能生活40周年を記念した写真集「YUMI ADACHI 40/42」クリエイターカットを発表。「ウンナナクール」のディレクションを行うアートディレクター兼映画監督の千原徹也が写真集のプロデュースを手掛けた。キャンペーンビジュアルは“日常のふとした思い出”がテーマのため、千原が1960年代のカメラを使って撮影し、昔風の写真で仕上げている。ビジュアルに登場した安達に、ブランドや撮影について聞いた。
居心地の良さを大切にする“364”
WWD:「ウンナナクール」の“364”のイメージモデルに抜擢された時の感想は?
安達祐実(以下、安達):ブランドのことは知っていたし、かわいいと思っていたが、買ったことはなかった。年齢的に下着のイメージモデルの話がくるとは、正直、意外だった。「ウンナナクール」のイメージは若い人向けのブランドだから。ただ、千原さんがアートディレクターなので、面白そうだなと思った。
WWD:「ウンナナクール」とはどんなブランド?
安達:日常に取り入れられるブランドで、シンプルだけどかわいい。見た目がかわいいだけでなく、機能性も高いので、私たちの年代にもフィットすると思う。もっと幅広い年齢層に使ってもらえると嬉しい。”364”は本当に楽ですごくいい。
WWD:新しいキャンペーンビジュアルで表現したかったことは?
安達:“364”が日常の中に溶け込んでいること。そして、楽で自由な気持ちを体現するブラジャーだということ。着用することで、リラックスして日々楽しむことができる。自分の居心地の良さを大切に日々過ごしてほしいという思いを込めた。
WWD:下着姿になることに抵抗はなかったか?
安達:全然なかった。撮影の準備を何もしなかったので、多少すればよかったと思う。40歳になって、そろそろジムに行かなきゃと思って行ってみたけど、あまり続けられなかった。自宅でストレッチや腹筋をする程度。自然体で撮影に臨んだ。
WWD:下着選びのポイントは?
安達:若い頃は、何でも大丈夫だと思っていたが、今は締め付けが気になるし、より重力を感じるので、楽でありつつも、サポートしてくれる下着を選ぶ。楽なだけではなく機能性もある下着をつけておかないと、後のボディーラインが心配。着る服によって、下着は使い分けている。体形のサポートが必要だと思うので、“ラク”なだけの下着はちょっと抵抗がある。かわいい下着を着けるとテンションが上がる。
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芸能生活40周年安達祐実が語る「ウンナナクール」とのコラボ 「下着姿になるのに抵抗はなかった」
“女の子の人生を応援する“インナーウエアブランド「ウンナナクール(UNE NANA COOL)」のノンワイヤーブラジャー“364(サンロクヨン)”の新ビジュアルが登場した。“364”とは、“特別な日”以外、364日つけたいノンワイヤーブラで、2019年に登場以来、累計60万枚を販売。
19年、21年に続き、女優の安達祐実が同シリーズのイメージモデルとして登場した。安達は、“364”の新ビジュアルおよび、今年、芸能生活40周年を記念した写真集「YUMI ADACHI 40/42」クリエイターカットを発表。「ウンナナクール」のディレクションを行うアートディレクター兼映画監督の千原徹也が写真集のプロデュースを手掛けた。キャンペーンビジュアルは“日常のふとした思い出”がテーマのため、千原が1960年代のカメラを使って撮影し、昔風の写真で仕上げている。ビジュアルに登場した安達に、ブランドや撮影について聞いた。
居心地の良さを大切にする“364”
WWD:「ウンナナクール」の“364”のイメージモデルに抜擢された時の感想は?
安達祐実(以下、安達):ブランドのことは知っていたし、かわいいと思っていたが、買ったことはなかった。年齢的に下着のイメージモデルの話がくるとは、正直、意外だった。「ウンナナクール」のイメージは若い人向けのブランドだから。ただ、千原さんがアートディレクターなので、面白そうだなと思った。
WWD:「ウンナナクール」とはどんなブランド?
安達:日常に取り入れられるブランドで、シンプルだけどかわいい。見た目がかわいいだけでなく、機能性も高いので、私たちの年代にもフィットすると思う。もっと幅広い年齢層に使ってもらえると嬉しい。”364”は本当に楽ですごくいい。
WWD:新しいキャンペーンビジュアルで表現したかったことは?
安達:“364”が日常の中に溶け込んでいること。そして、楽で自由な気持ちを体現するブラジャーだということ。着用することで、リラックスして日々楽しむことができる。自分の居心地の良さを大切に日々過ごしてほしいという思いを込めた。
WWD:下着姿になることに抵抗はなかったか?
安達:全然なかった。撮影の準備を何もしなかったので、多少すればよかったと思う。40歳になって、そろそろジムに行かなきゃと思って行ってみたけど、あまり続けられなかった。自宅でストレッチや腹筋をする程度。自然体で撮影に臨んだ。
WWD:下着選びのポイントは?
安達:若い頃は、何でも大丈夫だと思っていたが、今は締め付けが気になるし、より重力を感じるので、楽でありつつも、サポートしてくれる下着を選ぶ。楽なだけではなく機能性もある下着をつけておかないと、後のボディーラインが心配。着る服によって、下着は使い分けている。体形のサポートが必要だと思うので、“ラク”なだけの下着はちょっと抵抗がある。かわいい下着を着けるとテンションが上がる。
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大学院生が手掛けるジュエリー「リメルリック」がデビュー 地球に優しいリファインメタルを使用
ジュエリーブランド「リメルリック(REMELRIC)」が登場した。同ブランドは、“都市鉱山”と呼ばれる廃棄された携帯電話やPCなどから採取した金属を精製した“リファインメタル”を主に使用。使われているストーンもデッドストックのものが中心だ。同ブランドは、ジュエリーブランドの「シャランポワ(SHARONPOI)」や「アドリン ヒュー(ADLINE HUE)」を手掛けるシャランポワの安部真理子代表がジュエリー業界のサステナブル促進のために立ち上げたデザイナー支援事業の第一弾だ。
ブランドのディレクターは、日本大学大学院芸術学研究科在学中のREN。ブランド名は、祖母から母、母から彼へ読まれ伝えられた絵本「メルリック まほうをなくしたまほうつかい」からで、便利になりすぎた世の中に対する警告を意味している。展開するジュエリーは、シルバーとゴールド、ボリュームのあるものと華奢なものを組み合わせて変化させられるスタッキングを意識したデザイン。価格は9680〜14万5200円で、オンラインストアおよび、ジュエリーブランド「シャランポワ」と「アドリン ヒュー」の東京・南青山サロンで販売する。
ディレクターのRENと安部代表に、「リメルリック」について話を聞いた。
アートとビジネス感覚のバランスが重要
安部代表とRENの出合いは、同代表がディレクションを手がけていたD2Cジュエリー「アルティーダ ウード(ARTIDA OUD)」がきっかけだった。彼は、同ブランドのジュエリーのファンで、購入したり、同ブランドが運営する多目的スペース「ジ アナザー ミュージアム」を訪れたりしていたという。安部代表がRENのインスタグラムを見て、ダイレクトメールを送りこのプロジェクトがスタートした。ジュエリーの制作の経験がない学生のRENにアプローチした理由は、「スタイリストとのコラボレーションはよくあるが、(学生とのコラボは)新しいと思った」と安部代表。「ジュエリー作りは、技術的なことよりもセンスが重要。アートとビジネス感覚のバランスが取れていると思ったから声をかけた」と続ける。
エイジレス、タイムレスな長く使えるジュエリー
「リメルリック」のブランドコンセプトは、“温故知新”。RENは、「アートやカルチャー、音楽などにインスピレーションを受ける。長く使えるいいジュエリーを提案したい」と話す。ファーストコレクションは友人につけて欲しいリングやネックレスをデザイン。「デザインは悩まなかったが、ものができる過程での調整に苦労したし、楽しくもあった。『リメルリック』はジェンダーフリーでエイジレスなブランド。タイムレスなデザインなので、幅広い人につけて欲しい」と言う。ルックブックの撮影は、REN自身が写真家の川島小鳥に直談判して行った。男性モデルを使った理由は、「ブランドの世界観に溶け込むニュートラルなモデルがいいと思ったから、知り合いのモデルに頼んだ」とREN。これからは、アニマルシリーズなども作っていくようだ。安部代表は、「私自身はどちらかというと、シンプルなものしか作らない。『リメリック』のアシンメトリーのリングなど複雑なものもすてきだなと思った。『アドリン ヒュー』と重ね付けを楽しんでほしい」とコメント。
日本のジュエリー産業の活性化に一役
安部代表は、「アルティーダ ウード」のときから、インドの職人をサポートしたり、インドへのチャリティ活動を行ったりしている。最近では、メード・イン・インドのホームウエア「スミエレ(SUMIERE)」をスタートした。それと同じく安部代表が情熱を注いでいるのがデッドストックの石などを使用したサステナブルなもの作りだ。「アドリン ヒュー」では、一つ一つ個性の違うデッドストックの石や化石など魅力を引き出したジュエリーを提案。ジュエリー業界でも、ガーデンクオーツ(庭園水晶)や従来は破棄してしまうパールなどを使用する動きが広まりつつある。
同代表は、「『シャランポア』も『アドリン ヒュー』もメード・イン・インド。なぜなら、ダイヤモンドのカッティングやパヴェセッティングなど、インド特有の味があるから。リファインメタルを使う場合は、生産ラインを分けなければならず、日本国内で生産しなければならない。だから、新しいブランドを立ち上げようと思った。今後も、デザイナー支援活動の一環として続けていきたい」と語る。「リメルリック」の目玉である“タンク”リングは第二次世界対戦中にフランスで流行した戦車をモチーフにしたジュエリーをモダンにアップデートしたもの。「かっちりした形や複雑なデザインがメード・イン・ジャパンに向いている」と言う。
一般社団法人日本リファインメタル協会の小西祐子理事・広報は、「品質と販売店でリファインメタルを説明する際のガイドラインを制定した。現在は11ブランドが会員で流通量も増えている。今後は広報活動を強化して、ガイドラインを広めていきたい」と語った。
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「ユニクロ:シー」クレア・ワイト・ケラーが語ったユニクロとラグジュアリーの違い
ユニクロは9月15日、「クロエ(CHLOE)」や「ジバンシィ(GIVENCHY)」を率いてきた英国人デザイナー、クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Kellar)によるウィメンズの新ライン、「ユニクロ:シー(UNIQLO : C)」を国内外で発売する。発売を前にクレアも来日し、柳井正ファーストリテイリング会長兼社長やユニクロのR&D統括責任者である勝田幸宏グループ上席執行役員らと記者会見に登壇。「ユニクロ:シー」に込めた思いやモノ作りへの取り組み方、ユニクロの印象などを率直に語った。ここでは、クレアと勝田上席執行役員が「WWDJAPAN」の個別インタビューで語った内容を公開。記事末尾では、記者会見でのクレアと勝田上席執行役員の発言も紹介する。
WWD:これまでさまざまなメゾンで働いてきたが、今回ユニクロのチームと働いてみて、他のブランドや企業に比べてどんな印象を抱いたか。
クレア・ワイト・ケラー(以下、クレア):ユニクロは第一にオフィスが非常に巨大。これまで働いてきたブランドとはビジネスの規模が全く異なる。そのようにスケールが大きいにもかかわらず、非常に細かい所にまで目を配り、あらゆることに高い精度を求める会社であるということは私にとって嬉しい驚きだった。商品が投入されるまでに、デザインや生産のプロセス全体でチェックにチェックを重ね、本当に精緻にモノ作りをしている。ここまでやるとは想定していなかった。その一例がフィッティングだ。
WWD:「ユニクロ:シー」のデビューコレクションでは5回もフィッティングを行ったと聞いた。
クレア:その通りだ。これまで働いてきたパリのブランドでは、もっと早い周期でコレクションを作る必要があり、フィッティングにそこまで時間をかけることはなかった。「ユニクロ:シー」は年間2シーズンのスケジュールでモノ作りが進んでいるが、パリで仕事をしていた時は年間4シーズンで、12週間で1つのコレクションを仕上げなければならなかった。それに比べると、今は倍以上の時間がかけられる。以前は短時間でコレクションを仕上げていくために、私はデザインに専念し、生産や品質の確認といった部分は担当者に任せていたが、「ユニクロ:シー」では全てのプロセスを私自身がチェックできる。時間はたっぷりあり、忙し過ぎて大変ということはない。
WWD:「ユニクロ:シー」は、以前ディレクションしていた「クロエ」と比較されることも多い。自身でも通じる部分はあると思うか。
クレア:「ユニクロ:シー」は私の美意識に基づくパーソナルなスタイルを、ユニクロのプラットフォームを通して作り上げている。もちろん、以前のブランドでの私の象徴的なスタイルに通じる部分もあるだろうが、私は自分自身のスタイルを表現しようと今回も取り組んでいる。
WWD:「クロエ」時代しかり、長年“リアルウーマン”に向けて服をデザインしてきた。ラグジュアリーブランドを着る女性ももちろんリアルウーマンだが、ユニクロと組むことで、これまでよりももっと幅広い女性たちに向けてモノ作りができる。
クレア:まさにそうだ。作った服をより多くの方に着ていただけるのは、ユニクロというブランドだからこそ。それは「ユニクロ:シー」に取り組む上で大きな喜びになっている。「クロエ」や「ジバンシィ」での仕事においても、私のクリエーションを「すてきだ」と言っていただく機会はあったが、気に入っていても買えなかった人も多い。ユニクロと組むことで、私がデザインした服を多くの人に着ていただける機会があるというのはとても嬉しいことだ。
「リアルな女性を今まで以上に追求」
WWD:「クロエ」や「ジバンシィ」で働いていたころと今を比べると、女性がファッションに対して求めるものは変化しているか。
クレア:どんなときも女性のニーズはその時々で変わっている。直近ではパンデミックもあったし、私自身も3年間ファッションビジネスから離れていたこともあって、以前とは異なる視点でファッションを見つめることができている。これまでもリアリズム、つまり服を着る人のことを重視してデザインをしてきたが、今まで以上にそれを考えるようになった。現代人は常に動いていて、仕事の打ち合わせや食事、出張、オンライン会議、プライベートとさまざまなシーンがある。そういった自分の時間軸に合わせて、パッキングしてどこにでも持っていけて、ケアも簡単で、シーンに合わせてさまざまに着回しができる服が必要になっている。その点を今まで以上に強く考えてデザインしている。
WWD:「ユニクロ:シー」のCに合わせて、今後はシーズンごとにCから始まるさまざまな単語をキーワードにするというアイデアがあると聞いた。「クロエ」時代もバッグにアルファベット順の頭文字で名前をつけるなど、クリエーションにおいて言葉がキーになっているように感じる。
クレア:今シーズンの「ユニクロ:シー」は、Color、City、Communityなど、Cから始まるいくつかの単語で、コレクションの持つさまざまな側面に光を当てた。言葉は人につながっていくものだ。言葉によってコレクションや商品の背景にあるストーリーを伝えていくことで、作り手側の表現したいことが単なる情報としてではなく、自分ごととしてお客さまに届けることができると考えている。
「世界一になるためには、欧米で売ることが重要」
WWD:ユニクロは世界一のファッションブランドを目指しているが、世界一になるために、何が足りていないと思うか。
クレア:欧米のマーケットに広がることが重要だ。私は欧米のファッションマーケットのことはよく分かっているので、私の知識を提供することでユニクロはさらに前進できるのではないか。ファッションの捉え方やファッションに求めるものは、欧米とアジアとでは異なる。それらをうまく融合して、グローバルなスタイルとして出していきたいと思っている。例えば欧米ではシアーな素材が女性らしさもあって好まれるが、ユニクロの世界であるアジアではあまり求められない。どちらにとってもちょうどいいポイントを見つけて、ユニクロでうまく機能する方法で欧米のお客さまにも満足していただく。そのやり方を見つけていきたい。
WWD:ユニクロはテック素材を使った機能性商品に強く、その分繊細なデザインが求められるウィメンズウエアに弱いという課題がある。機能性ドリブンというユニクロのブランドイメージには同意するか。
クレア:確かにそうだ。ただ、テクノロジーやイノベーションがあるからこそユニクロの服が大好きだという人もたくさんいる。そこに私が自分の美意識として培ってきたものを持ち込めば、いいものができると思っている。機能性素材を作り、使用することもとても面白い。これまでのブランドではあまりテクニカルな素材を使ってこなかったが、ファッションにおいて機能性と感性という2つを合わせることは非常に興味深いと感じている。
WWD:ユニクロにとっては、今回の取り組みでの最大の学びは何か。
勝田幸宏ファーストリテイリンググループ上席執行役員ユニクロR&D統括責任者(以下、勝田):クレアさんは自身で緻密なリサーチを重ねており、ファッションの知識や引き出しがものすごい。別のデザイナーと比べるわけではないが、こんなに地道にリサーチを続けているのかと非常に驚いた。だからこそ、(取り組み相手のブランドに対し)「あなたたちならこういった感じがいいんじゃないか」とアイデアを出すことができる。彼女はアトリエに、資料として大量の服のアーカイブを持っている。クレアさんにも登壇いただいた9月12日の社内のコンベンションで、柳井(正ファーストリテイリング会長兼社長)が「過去を知り、今を知らないと未来なんて分からない。過去と今が分かっていないとビジネスなんてできない」といった趣旨のことを話していたが、彼女が服のデザインにおいてやっていることはそれとまさに同じ。そういった姿勢を社内の企画チームのメンバーには是非見習ってほしい。服のデザインに限らず、何事も積み重ねられてきたものに足していくという伸展のあり方を学んでほしいし、自分もそうでないといけない。
WWD:具体的に、どんなアーカイブを持っているのか。
クレア:仕事を始めた1990年代から服は集めており、2000着ほどある。「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」や「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」「ジル サンダー(JIL SANDER)」「プラダ(PRADA)」、挙げ出したらきりがない。もちろん、自分がディレクションしていた「クロエ」や「ジバンシィ」もある。リサーチのために集めているというよりも、単にコレクションしたいという気持ちもある。そのために多くの部屋が必要で大変だ。参考資料の本や写真も中毒じゃないかというくらいたくさん持っており、写真は8万5000点ほどある。スナップ写真で、街行く人のバッグや靴をフォーカスして撮ることもあるし、建物や景色、気に入ったソファの柄、心ひかれた色や形など、自分が面白いと感じたものを撮っている。
「メンズウエアもぜひ作りたい」
WWD:一緒に働いているユニクロのメンバーはどんな人たちか。
クレア:フレンドリーでとても働きやすい人たちだ。距離を隔てて働くため、言葉については心配だったが、皆英語も上手で心配は杞憂だった。そして、ユニクロチームのどんなことに対してもなんとかトライしようとする努力の姿勢には驚かされた。柳井さんは、昨日のコンベンションでのスピーチを聞き、業績などのビジネス面だけでなく関わる人ひとり一人に心を砕き、事業全体に責任を持っているリーダーという印象を持った。だから成功しているんだなと。
WWD:柳井会長は要求が非常に細かいというイメージも一般的には言われるが。
クレア:細かくなければ絶対に成功はできない。私が見てきた限り、(LVMHグループを率いる)アルノーさんもラルフ・ローレン氏も皆非常に細かい。ローレン氏は店頭でマネキンのチェックをしていたし、アルノーさんもアジアに行けば必ず各ブティックを見て回って、何か問題がないかをチェックしている。大きなビジネスのオーナーは、皆共通して非常に細かいものだと思う。
WWD:「ユニクロ:シー」はウィメンズコレクションだが、クレアさんはメンズウエアも作りたいと希望していると聞いた。
勝田:先週、パリで現地メディア向けの展示会などを行ってきたが、そこで僕もクレアさんも一番よく聞かれたのが「メンズはやらないのか?」だった。
クレア:「ぜひメンズもやりましょう」と今勝田さんにプッシュしている。うまく説得して、メンズも企画できればいいなと思っている(笑)。
【以下、記者会見での掛け合いや質疑応答から】
――ユニクロがクレアとタッグを組んだ理由や経緯を教えてほしい。
勝田:クレアさんとは、2年前のちょうど今ごろから話をしていた。「ユニクロ:シー」は一回限りのコラボレーションではなく、ずっと続けていって、お互いに成長できるプロジェクトにしたいとわれわれは考えている。ユニクロはグローバルで店舗網を広げ、世界中のお客さまから支持されているが、課題の1つとして、ウィメンズウエア特有の繊細さを表現できていない点がある。繊細なプロポーションや色、ディテールなどを、普段着の中に持ち込みたい。ユニクロの企画チームとしてももちろん努力するが、そういうデザインに長けた外部のデザイナーと組もうと、いろんな人と話をした。
クレアさんは「クロエ」をけん引したイメージが強いが、キャリアの原点は「ラルフ ローレン」のメンズクロージングラインだ。基礎としてメンズの構築的なデザインを徹底的に学び、その後さまざまなブランドで活躍してきた。当時、自分も前職でバイヤーだったので印象深いが、彼女を起用した「プリングル オブ スコットランド(PRINGLE OF SCOTLAND)」が突然おしゃれに変わったのをよく覚えている。メンズクロージングという基礎があるからこそ幅広いアウトプットができ、“LifeWear”の方向性を分かちあえばわれわれの課題を解決できるのではと思い、彼女と組むことを決めた。
――ユニクロのことを以前から知っていたか。
クレア:10年以上前から知っていた。きっかけはジル・サンダー氏と組んでいた「+J」で、初めて買った商品も「+J」のメンズアイテムだ。サンダーさんのような人があれほどの規模で協業するのだから、きっと面白い会社なんだろうと思っていたし、サンダーさんがユニクロとやってきたようなことが私もできたら楽しいだろうなと感じていた。「ユニクロ:シー」のプロジェクトが始まって以降は、居住地のロンドンと東京を何度も往復している。18カ月の間で、今回が10回目の来日だ。
――「ユニクロ:シー」で大切にしていることは。
クレア:達成したいのはタイムレスなスタイル。それを特に象徴しているアイテムがトレンチコートだ。全体として、私の持ち味である柔らかい感覚やフェミニンな要素があって、長い期間着続けたいと思えるものを目指した。色も非常に重要だ。白、黒、グレーといったニュートラルカラー同士を組み合わせるだけでなく、さまざまな色を取り入れつつも、それが補完しあって響き合い、うまくコーディネートできるということを証明したかった。
勝田:色をはじめ、かなり緻密に計算して作っているという印象を抱いた。
クレア:その通りだ。
――「ユニクロ:シー」というブランドネームに込めた思いは何か。
クレア:クレアのCというのはもちろんだが、City、Color、Combination、Collaborationなど、Cから始まるさまざまな言葉がキーになっている。「+J」や「ユニクロ U」と同様に、「ユニクロ:シー」のCにもユニクロの持つさまざまな考え方や切り口が詰まっている。(ブランドネームを考えてほしいと言われたとき)勝田さんへのメールにCから始まるさまざまな言葉を列挙した。今後のシーズンも、Cから始まるさまざまな言葉をキーワードとしてあげていこうと思っている。
――“エフォートレス(effortless、肩ひじ張らない、といった意味)”という形容詞が「クロエ」時代などにはよく使われ、会見の中で自身も使っていたが、“エフォートレス”とは具体的にどういうあり方やファッションを指すのか。
クレア:それは日常着においてとても重要なことだ。仕事や家族との用事など、現代人はやらなければならないことがたくさんある。肩に力を入れなければならないようなことは極力減らしたい。着るものがラクであるということは非常に大切であり、自分の動きに合わせて服も動いてくれるようなものがいい。シーズンごとに常に新しいものを買わなければならないというあり方も違う。ずっと着られるということも“エフォートレス”だ。繰り返しになるが、タイムレスに、長い期間着てもらえるということはデザインするにあたって非常に重視している。今、求められているのはモダンでありながらタイムレスな商品だ。
――ユニクロの生地や縫製のクオリティーについてはどう感じたか。
クレア:非常に高い水準にある。私が使用にゴーサインを出した素材がユニクロ社内の品質基準に合わず、数週間後にもう一度素材を選び直したこともあった。今までの私の品質に対する基準も高かったが、ユニクロはそれ以上だった。高品質の生地であっても、耐摩耗性など、使っていくとどうなるかという部分にも細かく気を配っている。
――サステナビリティにはどのように取り組むか。
クレア:2つの手法で取り組む。1点目は素材を厳しく選定し、より環境負荷が低いものを選ぶこと。2点目は、ワードローブに長く残るアイテムを作っていくこと。「ユニクロ:シー」のアイテムを、「これさえ持っていれば大丈夫」と長い期間着てもらえたら嬉しい。
――三児の母親でもある。仕事とプライベートの両立において重視していることは何か。
クレア:何事も整理整頓が大事だ。そして、仕事にも子どもにもちゃんと時間を割くこと。大学生の娘もいるが、彼らのロールモデルになることも意識している。こんなふうに仕事とプライベートの両立がちゃんとできると見せることが重要だ。
勝田:すばらしい先輩と仕事をする機会を得て、先日面談をしたユニクロ社内のデザイナーは、「将来は私もクレアさんみたいになりたい」と話していた。ユニクロとクレアさんとがお互いに成長できればと思っているし、最終的には、お客さまにファッションの楽しさが伝わればと思っている。
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「ユニクロ:シー」クレア・ワイト・ケラーが語ったユニクロとラグジュアリーの違い
ユニクロは9月15日、「クロエ(CHLOE)」や「ジバンシィ(GIVENCHY)」を率いてきた英国人デザイナー、クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Kellar)によるウィメンズの新ライン、「ユニクロ:シー(UNIQLO : C)」を国内外で発売する。発売を前にクレアも来日し、柳井正ファーストリテイリング会長兼社長やユニクロのR&D統括責任者である勝田幸宏グループ上席執行役員らと記者会見に登壇。「ユニクロ:シー」に込めた思いやモノ作りへの取り組み方、ユニクロの印象などを率直に語った。ここでは、クレアと勝田上席執行役員が「WWDJAPAN」の個別インタビューで語った内容を公開。記事末尾では、記者会見でのクレアと勝田上席執行役員の発言も紹介する。
WWD:これまでさまざまなメゾンで働いてきたが、今回ユニクロのチームと働いてみて、他のブランドや企業に比べてどんな印象を抱いたか。
クレア・ワイト・ケラー(以下、クレア):ユニクロは第一にオフィスが非常に巨大。これまで働いてきたブランドとはビジネスの規模が全く異なる。そのようにスケールが大きいにもかかわらず、非常に細かい所にまで目を配り、あらゆることに高い精度を求める会社であるということは私にとって嬉しい驚きだった。商品が投入されるまでに、デザインや生産のプロセス全体でチェックにチェックを重ね、本当に精緻にモノ作りをしている。ここまでやるとは想定していなかった。その一例がフィッティングだ。
WWD:「ユニクロ:シー」のデビューコレクションでは5回もフィッティングを行ったと聞いた。
クレア:その通りだ。これまで働いてきたパリのブランドでは、もっと早い周期でコレクションを作る必要があり、フィッティングにそこまで時間をかけることはなかった。「ユニクロ:シー」は年間2シーズンのスケジュールでモノ作りが進んでいるが、パリで仕事をしていた時は年間4シーズンで、12週間で1つのコレクションを仕上げなければならなかった。それに比べると、今は倍以上の時間がかけられる。以前は短時間でコレクションを仕上げていくために、私はデザインに専念し、生産や品質の確認といった部分は担当者に任せていたが、「ユニクロ:シー」では全てのプロセスを私自身がチェックできる。時間はたっぷりあり、忙し過ぎて大変ということはない。
WWD:「ユニクロ:シー」は、以前ディレクションしていた「クロエ」と比較されることも多い。自身でも通じる部分はあると思うか。
クレア:「ユニクロ:シー」は私の美意識に基づくパーソナルなスタイルを、ユニクロのプラットフォームを通して作り上げている。もちろん、以前のブランドでの私の象徴的なスタイルに通じる部分もあるだろうが、私は自分自身のスタイルを表現しようと今回も取り組んでいる。
WWD:「クロエ」時代しかり、長年“リアルウーマン”に向けて服をデザインしてきた。ラグジュアリーブランドを着る女性ももちろんリアルウーマンだが、ユニクロと組むことで、これまでよりももっと幅広い女性たちに向けてモノ作りができる。
クレア:まさにそうだ。作った服をより多くの方に着ていただけるのは、ユニクロというブランドだからこそ。それは「ユニクロ:シー」に取り組む上で大きな喜びになっている。「クロエ」や「ジバンシィ」での仕事においても、私のクリエーションを「すてきだ」と言っていただく機会はあったが、気に入っていても買えなかった人も多い。ユニクロと組むことで、私がデザインした服を多くの人に着ていただける機会があるというのはとても嬉しいことだ。
「リアルな女性を今まで以上に追求」
WWD:「クロエ」や「ジバンシィ」で働いていたころと今を比べると、女性がファッションに対して求めるものは変化しているか。
クレア:どんなときも女性のニーズはその時々で変わっている。直近ではパンデミックもあったし、私自身も3年間ファッションビジネスから離れていたこともあって、以前とは異なる視点でファッションを見つめることができている。これまでもリアリズム、つまり服を着る人のことを重視してデザインをしてきたが、今まで以上にそれを考えるようになった。現代人は常に動いていて、仕事の打ち合わせや食事、出張、オンライン会議、プライベートとさまざまなシーンがある。そういった自分の時間軸に合わせて、パッキングしてどこにでも持っていけて、ケアも簡単で、シーンに合わせてさまざまに着回しができる服が必要になっている。その点を今まで以上に強く考えてデザインしている。
WWD:「ユニクロ:シー」のCに合わせて、今後はシーズンごとにCから始まるさまざまな単語をキーワードにするというアイデアがあると聞いた。「クロエ」時代もバッグにアルファベット順の頭文字で名前をつけるなど、クリエーションにおいて言葉がキーになっているように感じる。
クレア:今シーズンの「ユニクロ:シー」は、Color、City、Communityなど、Cから始まるいくつかの単語で、コレクションの持つさまざまな側面に光を当てた。言葉は人につながっていくものだ。言葉によってコレクションや商品の背景にあるストーリーを伝えていくことで、作り手側の表現したいことが単なる情報としてではなく、自分ごととしてお客さまに届けることができると考えている。
「世界一になるためには、欧米で売ることが重要」
WWD:ユニクロは世界一のファッションブランドを目指しているが、世界一になるために、何が足りていないと思うか。
クレア:欧米のマーケットに広がることが重要だ。私は欧米のファッションマーケットのことはよく分かっているので、私の知識を提供することでユニクロはさらに前進できるのではないか。ファッションの捉え方やファッションに求めるものは、欧米とアジアとでは異なる。それらをうまく融合して、グローバルなスタイルとして出していきたいと思っている。例えば欧米ではシアーな素材が女性らしさもあって好まれるが、ユニクロの世界であるアジアではあまり求められない。どちらにとってもちょうどいいポイントを見つけて、ユニクロでうまく機能する方法で欧米のお客さまにも満足していただく。そのやり方を見つけていきたい。
WWD:ユニクロはテック素材を使った機能性商品に強く、その分繊細なデザインが求められるウィメンズウエアに弱いという課題がある。機能性ドリブンというユニクロのブランドイメージには同意するか。
クレア:確かにそうだ。ただ、テクノロジーやイノベーションがあるからこそユニクロの服が大好きだという人もたくさんいる。そこに私が自分の美意識として培ってきたものを持ち込めば、いいものができると思っている。機能性素材を作り、使用することもとても面白い。これまでのブランドではあまりテクニカルな素材を使ってこなかったが、ファッションにおいて機能性と感性という2つを合わせることは非常に興味深いと感じている。
WWD:ユニクロにとっては、今回の取り組みでの最大の学びは何か。
勝田幸宏ファーストリテイリンググループ上席執行役員ユニクロR&D統括責任者(以下、勝田):クレアさんは自身で緻密なリサーチを重ねており、ファッションの知識や引き出しがものすごい。別のデザイナーと比べるわけではないが、こんなに地道にリサーチを続けているのかと非常に驚いた。だからこそ、(取り組み相手のブランドに対し)「あなたたちならこういった感じがいいんじゃないか」とアイデアを出すことができる。彼女はアトリエに、資料として大量の服のアーカイブを持っている。クレアさんにも登壇いただいた9月12日の社内のコンベンションで、柳井(正ファーストリテイリング会長兼社長)が「過去を知り、今を知らないと未来なんて分からない。過去と今が分かっていないとビジネスなんてできない」といった趣旨のことを話していたが、彼女が服のデザインにおいてやっていることはそれとまさに同じ。そういった姿勢を社内の企画チームのメンバーには是非見習ってほしい。服のデザインに限らず、何事も積み重ねられてきたものに足していくという伸展のあり方を学んでほしいし、自分もそうでないといけない。
WWD:具体的に、どんなアーカイブを持っているのか。
クレア:仕事を始めた1990年代から服は集めており、2000着ほどある。「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」や「ラルフ ローレン(RALPH LAUREN)」「ジル サンダー(JIL SANDER)」「プラダ(PRADA)」、挙げ出したらきりがない。もちろん、自分がディレクションしていた「クロエ」や「ジバンシィ」もある。リサーチのために集めているというよりも、単にコレクションしたいという気持ちもある。そのために多くの部屋が必要で大変だ。参考資料の本や写真も中毒じゃないかというくらいたくさん持っており、写真は8万5000点ほどある。スナップ写真で、街行く人のバッグや靴をフォーカスして撮ることもあるし、建物や景色、気に入ったソファの柄、心ひかれた色や形など、自分が面白いと感じたものを撮っている。
「メンズウエアもぜひ作りたい」
WWD:一緒に働いているユニクロのメンバーはどんな人たちか。
クレア:フレンドリーでとても働きやすい人たちだ。距離を隔てて働くため、言葉については心配だったが、皆英語も上手で心配は杞憂だった。そして、ユニクロチームのどんなことに対してもなんとかトライしようとする努力の姿勢には驚かされた。柳井さんは、昨日のコンベンションでのスピーチを聞き、業績などのビジネス面だけでなく関わる人ひとり一人に心を砕き、事業全体に責任を持っているリーダーという印象を持った。だから成功しているんだなと。
WWD:柳井会長は要求が非常に細かいというイメージも一般的には言われるが。
クレア:細かくなければ絶対に成功はできない。私が見てきた限り、(LVMHグループを率いる)アルノーさんもラルフ・ローレン氏も皆非常に細かい。ローレン氏は店頭でマネキンのチェックをしていたし、アルノーさんもアジアに行けば必ず各ブティックを見て回って、何か問題がないかをチェックしている。大きなビジネスのオーナーは、皆共通して非常に細かいものだと思う。
WWD:「ユニクロ:シー」はウィメンズコレクションだが、クレアさんはメンズウエアも作りたいと希望していると聞いた。
勝田:先週、パリで現地メディア向けの展示会などを行ってきたが、そこで僕もクレアさんも一番よく聞かれたのが「メンズはやらないのか?」だった。
クレア:「ぜひメンズもやりましょう」と今勝田さんにプッシュしている。うまく説得して、メンズも企画できればいいなと思っている(笑)。
【以下、記者会見での掛け合いや質疑応答から】
――ユニクロがクレアとタッグを組んだ理由や経緯を教えてほしい。
勝田:クレアさんとは、2年前のちょうど今ごろから話をしていた。「ユニクロ:シー」は一回限りのコラボレーションではなく、ずっと続けていって、お互いに成長できるプロジェクトにしたいとわれわれは考えている。ユニクロはグローバルで店舗網を広げ、世界中のお客さまから支持されているが、課題の1つとして、ウィメンズウエア特有の繊細さを表現できていない点がある。繊細なプロポーションや色、ディテールなどを、普段着の中に持ち込みたい。ユニクロの企画チームとしてももちろん努力するが、そういうデザインに長けた外部のデザイナーと組もうと、いろんな人と話をした。
クレアさんは「クロエ」をけん引したイメージが強いが、キャリアの原点は「ラルフ ローレン」のメンズクロージングラインだ。基礎としてメンズの構築的なデザインを徹底的に学び、その後さまざまなブランドで活躍してきた。当時、自分も前職でバイヤーだったので印象深いが、彼女を起用した「プリングル オブ スコットランド(PRINGLE OF SCOTLAND)」が突然おしゃれに変わったのをよく覚えている。メンズクロージングという基礎があるからこそ幅広いアウトプットができ、“LifeWear”の方向性を分かちあえばわれわれの課題を解決できるのではと思い、彼女と組むことを決めた。
――ユニクロのことを以前から知っていたか。
クレア:10年以上前から知っていた。きっかけはジル・サンダー氏と組んでいた「+J」で、初めて買った商品も「+J」のメンズアイテムだ。サンダーさんのような人があれほどの規模で協業するのだから、きっと面白い会社なんだろうと思っていたし、サンダーさんがユニクロとやってきたようなことが私もできたら楽しいだろうなと感じていた。「ユニクロ:シー」のプロジェクトが始まって以降は、居住地のロンドンと東京を何度も往復している。18カ月の間で、今回が10回目の来日だ。
――「ユニクロ:シー」で大切にしていることは。
クレア:達成したいのはタイムレスなスタイル。それを特に象徴しているアイテムがトレンチコートだ。全体として、私の持ち味である柔らかい感覚やフェミニンな要素があって、長い期間着続けたいと思えるものを目指した。色も非常に重要だ。白、黒、グレーといったニュートラルカラー同士を組み合わせるだけでなく、さまざまな色を取り入れつつも、それが補完しあって響き合い、うまくコーディネートできるということを証明したかった。
勝田:色をはじめ、かなり緻密に計算して作っているという印象を抱いた。
クレア:その通りだ。
――「ユニクロ:シー」というブランドネームに込めた思いは何か。
クレア:クレアのCというのはもちろんだが、City、Color、Combination、Collaborationなど、Cから始まるさまざまな言葉がキーになっている。「+J」や「ユニクロ U」と同様に、「ユニクロ:シー」のCにもユニクロの持つさまざまな考え方や切り口が詰まっている。(ブランドネームを考えてほしいと言われたとき)勝田さんへのメールにCから始まるさまざまな言葉を列挙した。今後のシーズンも、Cから始まるさまざまな言葉をキーワードとしてあげていこうと思っている。
――“エフォートレス(effortless、肩ひじ張らない、といった意味)”という形容詞が「クロエ」時代などにはよく使われ、会見の中で自身も使っていたが、“エフォートレス”とは具体的にどういうあり方やファッションを指すのか。
クレア:それは日常着においてとても重要なことだ。仕事や家族との用事など、現代人はやらなければならないことがたくさんある。肩に力を入れなければならないようなことは極力減らしたい。着るものがラクであるということは非常に大切であり、自分の動きに合わせて服も動いてくれるようなものがいい。シーズンごとに常に新しいものを買わなければならないというあり方も違う。ずっと着られるということも“エフォートレス”だ。繰り返しになるが、タイムレスに、長い期間着てもらえるということはデザインするにあたって非常に重視している。今、求められているのはモダンでありながらタイムレスな商品だ。
――ユニクロの生地や縫製のクオリティーについてはどう感じたか。
クレア:非常に高い水準にある。私が使用にゴーサインを出した素材がユニクロ社内の品質基準に合わず、数週間後にもう一度素材を選び直したこともあった。今までの私の品質に対する基準も高かったが、ユニクロはそれ以上だった。高品質の生地であっても、耐摩耗性など、使っていくとどうなるかという部分にも細かく気を配っている。
――サステナビリティにはどのように取り組むか。
クレア:2つの手法で取り組む。1点目は素材を厳しく選定し、より環境負荷が低いものを選ぶこと。2点目は、ワードローブに長く残るアイテムを作っていくこと。「ユニクロ:シー」のアイテムを、「これさえ持っていれば大丈夫」と長い期間着てもらえたら嬉しい。
――三児の母親でもある。仕事とプライベートの両立において重視していることは何か。
クレア:何事も整理整頓が大事だ。そして、仕事にも子どもにもちゃんと時間を割くこと。大学生の娘もいるが、彼らのロールモデルになることも意識している。こんなふうに仕事とプライベートの両立がちゃんとできると見せることが重要だ。
勝田:すばらしい先輩と仕事をする機会を得て、先日面談をしたユニクロ社内のデザイナーは、「将来は私もクレアさんみたいになりたい」と話していた。ユニクロとクレアさんとがお互いに成長できればと思っているし、最終的には、お客さまにファッションの楽しさが伝わればと思っている。
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「マイケル・コース」が誘うバケーションという逃避行 60年代のムードのリゾートウエア
「マイケル・コース コレクション(MICHAEL KORS COLLECTION)」が2024年春夏ランウエイショーを9月11日(ニューヨーク現地時間)にブルックリンのウォーターフロントにあるドミノ・パークで行った。マンハッタンの摩天楼がイーストリバー越しに見渡せる絶景に設けられた会場は、突然、南の島のリゾートにでも迷いこんだような異世界のしつらえ。白いウッドデッキの長いランウエイと色鮮やかなブーゲンビリアの花々が、ゲストをバケーションという逃避行へと誘った。会場にはブレイク・ライブリー(Blake Lively)やハル・ベリー(Halle Berry)、ヴァネッサ・ハジェンズ(Vanessa Hudgens)、冨永愛ら多くのセレブの姿もあり、さらなる花を添えた。
「今シーズンは、皆さんをホリデーバケーションへと導きたい」と語ったデザイナーのマイケル・コースの言葉通り、ランウエイに登場したモデルたちがまとうのはオプティミスティックなリゾートウエア。ファーストルックを飾ったのは真っ白のレースで仕立てた軽やかなロングドレス。白で統一したバケットバッグもリゾート感を盛り上げる。フラットシューズとバケットバッグの組み合わせは、今は亡き、ジェーン・バーキン(Jane Birkin)の伝説のスタイルを彷彿とさせる。マイケルのコレクションはいつだって、彼の母親をはじめ、ミューズの女性たちがこよなく愛したスタイルからインスピレーションを得ている。マイケルが好む1960年代のサウンドトラックに合わせて、続々と60年代のムードとミューズたちの面影を取り入れたルックがランウエイを行き交った。
イノセントな雰囲気のピュアホワイトのレースのルックに続くのはブラックレースのロングドレスやスイムスーツに合わせた軽やかに揺れるシフォンのスカート、クロシェレースのシックなドレスなどコントラストが効いている。レースで仕立てたメタリックゴールドのミニドレスやスウイムスーツ、ボタニカル柄のリゾートスタイルのロングドレスなど、南の島のバケーションからニューヨークや都市で過ごすアーバンバケーションまでーー。バケーションという逃避行の行き先はさまざまだ。
「マイケル・コース」らしいキャメルやブラウンのグループはレースやニット、シフォンなど、異素材使いで変化をつけ、上品なリゾートスタイルを完成させている。風になびくマキシドレスからダブルブレストのジャケットとミニスカート、ざっくり編んだニットランジェリーにカーディガンを羽織ったリラックススタイルまでバリエーションは豊富だ。黒のテーラードスタイルやゼブラ柄のセットアップなど、シックなリゾートスタイルを得意とする反面、今シーズンはカラーバリエーションも豊富でオーバーサイズのラベンダーカラーのニットやネオンピンクのスパンコールドレスも登場した。逃避行の旅に持ち込むワードローブの広さを考えると心が高揚する。
コレクション中は終始、マイケルが用意したバケーションへと逃避行してしまったようだ。ブーゲンビリアの花々とオプティミスティックなリゾートウエア。視界に入る大都会ニューヨークとのコントラストが実に印象的だ。シーズン問わずに世界中を飛び回ってバケーションに行くことが叶うニューノーマルな世の中。今後、逃避行へのワードローブのバリエーションも増えそうだ。
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美しい海の底に魅せられた「アナ スイ」のファンタジー 海洋保護への隠されたメッセージも
「アナ スイ(ANNA SUI)は2024年春夏コレクションを9月9日(現地時間)に発表した。会場はクロスビーホテルのスクリーンルーム。ポップコーンが配られ、ファンタジー映画の上映が始まるようなワクワク感が会場を包んだ。
ショーが始まるとスクリーンにはフランス人映画監督のジョルジュ・メリエス(Georges Melies)が手がけた「妖精たちの王国」(1903年)と「海底2万マイル」(1907年)のレトロの映画が映し出され、モデルたちが壇上に現れた。人魚や熱帯魚を思わせるコーラルブルーやグリーンのルックに身を包んだモデルたちは、ボタニカルプリントやイソギンチャクのようなビジューを飾り、クラゲのようにヒラヒラと揺れるローブをまとい、まるで海の底にいる生物たちのよう。「オーバーサイズの魚柄のセーターがお気に入り」とデザイナーのアナ。虹色のカフタンドレスのスタイルは、まるで人魚のような妖艶さも醸し出す。レトロなヘッドドレスやギンガムチェックのホルタードレスなども登場し、ノスタルジックなムードも漂う。
オーストラリアのゴールドコーストを訪れたアナは美しい珊瑚や魚など、目の前に広がる海底の世界に魅了された。「そこで見た海底は今まで見た中で一番と言ってもいいゴージャスな世界だった」と語ったが、昨今の地球温暖化や異常気象によってアナが目にした美しい海底の珊瑚が減少していることに心を痛めたという。事実、ニューヨーク・ファッション・ウイーク期間中のニューヨークは異常な暑さと突然の雷雨に見舞われるなど、皆が地球の悲鳴をひしひしと感じている。アナが思う海の底のファンタジーな世界をコレクションに投影するため海底についてのリサーチを開始し、「オクトパスの神秘:海の賢者は語る」(2020年)からもヒントを得た。コレクションで登場したヒラヒラ、キラキラ、虹色に光る素材やプリントは海の神秘を褒め称えている。
その言葉通り、一つ一つのルックに手の込んだ素材や装飾、カラフルな色使いを用い、アナが海に寄せる思いを宿した。メタリックなアメジスト色のレザージャケットに海底の気泡を思わせるロングドレス、フラミンゴ色のシースルーシャツにスパンコールのビキニトップとミニスカート、パウダーピンクのハンドニットカーディガンにクリスタルが刺繍されたセットアップ。メタリック、ニット、ビジュー使い、シフォンの透け感、虹色に輝くベルベットーー。素材の表情のラインナップは実に豊富で、アナが目にした海底の世界が目の前に広がる。スタイリングに花を添えるジュエリーは「エリクソン ビーモン(ERICKSON BEAMON)」によるもので貝やパールにビジューを掛け合わせ、海底の珊瑚礁を彷彿とさせる。アナはコレクションノートの最後に海洋保護団体の「ミッション ブルー」の情報を掲載し、ここから海底保護のさらなる情報が得られると綴った。ファンタジーな世界観の中に隠された海洋保護への想いをファッションを通じて伝えている。
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美しい海の底に魅せられた「アナ スイ」のファンタジー 海洋保護への隠されたメッセージも
「アナ スイ(ANNA SUI)は2024年春夏コレクションを9月9日(現地時間)に発表した。会場はクロスビーホテルのスクリーンルーム。ポップコーンが配られ、ファンタジー映画の上映が始まるようなワクワク感が会場を包んだ。
ショーが始まるとスクリーンにはフランス人映画監督のジョルジュ・メリエス(Georges Melies)が手がけた「妖精たちの王国」(1903年)と「海底2万マイル」(1907年)のレトロの映画が映し出され、モデルたちが壇上に現れた。人魚や熱帯魚を思わせるコーラルブルーやグリーンのルックに身を包んだモデルたちは、ボタニカルプリントやイソギンチャクのようなビジューを飾り、クラゲのようにヒラヒラと揺れるローブをまとい、まるで海の底にいる生物たちのよう。「オーバーサイズの魚柄のセーターがお気に入り」とデザイナーのアナ。虹色のカフタンドレスのスタイルは、まるで人魚のような妖艶さも醸し出す。レトロなヘッドドレスやギンガムチェックのホルタードレスなども登場し、ノスタルジックなムードも漂う。
オーストラリアのゴールドコーストを訪れたアナは美しい珊瑚や魚など、目の前に広がる海底の世界に魅了された。「そこで見た海底は今まで見た中で一番と言ってもいいゴージャスな世界だった」と語ったが、昨今の地球温暖化や異常気象によってアナが目にした美しい海底の珊瑚が減少していることに心を痛めたという。事実、ニューヨーク・ファッション・ウイーク期間中のニューヨークは異常な暑さと突然の雷雨に見舞われるなど、皆が地球の悲鳴をひしひしと感じている。アナが思う海の底のファンタジーな世界をコレクションに投影するため海底についてのリサーチを開始し、「オクトパスの神秘:海の賢者は語る」(2020年)からもヒントを得た。コレクションで登場したヒラヒラ、キラキラ、虹色に光る素材やプリントは海の神秘を褒め称えている。
その言葉通り、一つ一つのルックに手の込んだ素材や装飾、カラフルな色使いを用い、アナが海に寄せる思いを宿した。メタリックなアメジスト色のレザージャケットに海底の気泡を思わせるロングドレス、フラミンゴ色のシースルーシャツにスパンコールのビキニトップとミニスカート、パウダーピンクのハンドニットカーディガンにクリスタルが刺繍されたセットアップ。メタリック、ニット、ビジュー使い、シフォンの透け感、虹色に輝くベルベットーー。素材の表情のラインナップは実に豊富で、アナが目にした海底の世界が目の前に広がる。スタイリングに花を添えるジュエリーは「エリクソン ビーモン(ERICKSON BEAMON)」によるもので貝やパールにビジューを掛け合わせ、海底の珊瑚礁を彷彿とさせる。アナはコレクションノートの最後に海洋保護団体の「ミッション ブルー」の情報を掲載し、ここから海底保護のさらなる情報が得られると綴った。ファンタジーな世界観の中に隠された海洋保護への想いをファッションを通じて伝えている。
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松屋発ジュエリー「エネイ」が支持される理由 スタイリスト推しとポップアップでファンが拡大
松屋が展開するジュエリーブランド「エネイ(ENEY)」が好調だ。同ブランドは2021年8月にデビューした。日常のファッションの一部としてジュエリーを楽しんでほしいという思いが込められたブランドでラボグロウンダイヤモンドを使用。「セルヴォーク(CELVOKE)」などのビューティーブランドを手掛けた田上陽子がブランディングディレクターを務めており、松屋がブランドコンセプトから生産、販売まで手掛ける。
販売は、松屋銀座本店のコーナーとEC中心で、国内各地でポップアップショップを開催。デビューして約2年で、国内各地のファン層を広げている。「エネイ」を手掛ける島田成一郎・松屋銀座 事業推進部 スタートアップ事業課 課長に話を聞いた。
スタイリスト推しでEC売り上げがアップ
「エネイ」は、ショールームでスタイリストへ貸し出ししながら、インスタグラムなどのSNS発信を行ってきた。島田課長は、「3月〜7月はブランド全体で前年同期比70%増だった。ECは同4倍と伸長し、ファンが着実に増えていると感じる」と語る。現在売り上げの割合は、ECが55%、店頭は45%とEC比率が高いのも特徴だ。「エネイ」はスタイリストに人気が高く、雑誌などへの露出が多い。2月に大草直子が主宰するメディア「アマーク(AMARC)」で「エネイ」を紹介したところ、大きな反響があった。「『エネイ』では、スタイリストやタレントのおすすめが売り上げに大きく反映される。それにより、現物を見ないでECで購入する層が増えており、都内の顧客もいる。消費者がECでジュエリーを購入することに慣れたということだろう」と島田課長。D2Cジュエリーブランドが増え、ジュエリーをECで買うことに抵抗がなくなってきているとはいえ、ブランドの認知がないと、なかなかファンはつかない。
ポップアップで地方のファンを獲得
ブランドの認知度アップに一役買っているのがポップアップだ。「エネイ」は、全国の百貨店中心に年間8回ポップアップを開催する。島田課長は、「デビュー時の発表後すぐに伊勢丹新宿本店(以下、伊勢丹新宿)から、インスタグラムを通してアプローチがあった。ポップアップは、実物を見てもらういいチャンス。地方のファンが増えたし、ブランドの認知度がアップした」と話す。2022年1月に伊勢丹新宿でポップアップを開催後、阪急うめだや京都大丸、名古屋高島屋、阪急博多、ニューマンなどでも行った。「2年が経過し、ブランドが浸透してきた。リピート率が高く、1ヶ月後には別のものを購入するファンもいる」と同課長。百貨店が運営するジュエリーブランドという点で、安心感があるのも一つのポイントだ。
アクセサリーのデザインを本物(地金)で提供
島田課長は、「『エネイ』はコーディネートを楽しむジュエリーだ。多様性がテーマなので、ファッションの一環として楽しみながら個性を表現できる。それが今っぽくて受けているのだと思う」と語る。華奢なデザインとボリュームのあるものやゴールドとシルバーなど地金を自由にミックスするのが「エネイ」のスタイル。コーディネート提案は、店頭やインスタグラムで行う。「デザインは社内のチームで方向性を決めて、フリーのジュエリーデザイナーに依頼する。ファッションとしてジュエリーを提案しているので、季節感も考えながら、年間4〜5つのコレクションを提案する」。
売れ筋は、デビュー時に登場した“ピクセル”シリーズ。18金とプラチナのボールチェーンのジュエリーで、1連リングは1万円台から、ネックレスは7万円程度と値頃感抜群。ずっと売れ続けているという。18金を使用したゴージャスな印象の“ヘリンボーン”も人気で、ブレスレットが5万円、ネックレスが9万円と、18金の割には手に取りやすい価格帯だ。シルバーのコインネックレスも好調で、コインとチェーンのセットで5万〜9万円。この価格が実現できるのは、松屋が独自でデザイン、生産、販売まで行っているから。「ファッション感覚のアクセサリーのようなデザインを、本物(地金)で提供するブランドはなかなかない。社内で運営しているので、価格のコントロールがしやすい」。
ゆくゆくは、海外での展開も視野に
日本では、ポップアップを開催しながら卸を始める検討をしている。島田課長は、「ブランドは流行らせると数年で終わる。だから、地道にファンをつくっていきたい。卸は、大手セレクトや地方のブティックなどセレクティブな販路を考えている」と話す。いい物件があれば、2店舗目出店も考えているという。「欧米やアジアなど、海外での展開も視野に入れ、『エネイ』に興味を持ってくれるところと話をしている」と同課長。日本で着実にファンを増やしつつ、海外のファッション感度の高い層へもアピールするブランドとして育てていくようだ。
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松屋発ジュエリー「エネイ」が支持される理由 スタイリスト推しとポップアップでファンが拡大
松屋が展開するジュエリーブランド「エネイ(ENEY)」が好調だ。同ブランドは2021年8月にデビューした。日常のファッションの一部としてジュエリーを楽しんでほしいという思いが込められたブランドでラボグロウンダイヤモンドを使用。「セルヴォーク(CELVOKE)」などのビューティーブランドを手掛けた田上陽子がブランディングディレクターを務めており、松屋がブランドコンセプトから生産、販売まで手掛ける。
販売は、松屋銀座本店のコーナーとEC中心で、国内各地でポップアップショップを開催。デビューして約2年で、国内各地のファン層を広げている。「エネイ」を手掛ける島田成一郎・松屋銀座 事業推進部 スタートアップ事業課 課長に話を聞いた。
スタイリスト推しでEC売り上げがアップ
「エネイ」は、ショールームでスタイリストへ貸し出ししながら、インスタグラムなどのSNS発信を行ってきた。島田課長は、「3月〜7月はブランド全体で前年同期比70%増だった。ECは同4倍と伸長し、ファンが着実に増えていると感じる」と語る。現在売り上げの割合は、ECが55%、店頭は45%とEC比率が高いのも特徴だ。「エネイ」はスタイリストに人気が高く、雑誌などへの露出が多い。2月に大草直子が主宰するメディア「アマーク(AMARC)」で「エネイ」を紹介したところ、大きな反響があった。「『エネイ』では、スタイリストやタレントのおすすめが売り上げに大きく反映される。それにより、現物を見ないでECで購入する層が増えており、都内の顧客もいる。消費者がECでジュエリーを購入することに慣れたということだろう」と島田課長。D2Cジュエリーブランドが増え、ジュエリーをECで買うことに抵抗がなくなってきているとはいえ、ブランドの認知がないと、なかなかファンはつかない。
ポップアップで地方のファンを獲得
ブランドの認知度アップに一役買っているのがポップアップだ。「エネイ」は、全国の百貨店中心に年間8回ポップアップを開催する。島田課長は、「デビュー時の発表後すぐに伊勢丹新宿本店(以下、伊勢丹新宿)から、インスタグラムを通してアプローチがあった。ポップアップは、実物を見てもらういいチャンス。地方のファンが増えたし、ブランドの認知度がアップした」と話す。2022年1月に伊勢丹新宿でポップアップを開催後、阪急うめだや京都大丸、名古屋高島屋、阪急博多、ニューマンなどでも行った。「2年が経過し、ブランドが浸透してきた。リピート率が高く、1ヶ月後には別のものを購入するファンもいる」と同課長。百貨店が運営するジュエリーブランドという点で、安心感があるのも一つのポイントだ。
アクセサリーのデザインを本物(地金)で提供
島田課長は、「『エネイ』はコーディネートを楽しむジュエリーだ。多様性がテーマなので、ファッションの一環として楽しみながら個性を表現できる。それが今っぽくて受けているのだと思う」と語る。華奢なデザインとボリュームのあるものやゴールドとシルバーなど地金を自由にミックスするのが「エネイ」のスタイル。コーディネート提案は、店頭やインスタグラムで行う。「デザインは社内のチームで方向性を決めて、フリーのジュエリーデザイナーに依頼する。ファッションとしてジュエリーを提案しているので、季節感も考えながら、年間4〜5つのコレクションを提案する」。
売れ筋は、デビュー時に登場した“ピクセル”シリーズ。18金とプラチナのボールチェーンのジュエリーで、1連リングは1万円台から、ネックレスは7万円程度と値頃感抜群。ずっと売れ続けているという。18金を使用したゴージャスな印象の“ヘリンボーン”も人気で、ブレスレットが5万円、ネックレスが9万円と、18金の割には手に取りやすい価格帯だ。シルバーのコインネックレスも好調で、コインとチェーンのセットで5万〜9万円。この価格が実現できるのは、松屋が独自でデザイン、生産、販売まで行っているから。「ファッション感覚のアクセサリーのようなデザインを、本物(地金)で提供するブランドはなかなかない。社内で運営しているので、価格のコントロールがしやすい」。
ゆくゆくは、海外での展開も視野に
日本では、ポップアップを開催しながら卸を始める検討をしている。島田課長は、「ブランドは流行らせると数年で終わる。だから、地道にファンをつくっていきたい。卸は、大手セレクトや地方のブティックなどセレクティブな販路を考えている」と話す。いい物件があれば、2店舗目出店も考えているという。「欧米やアジアなど、海外での展開も視野に入れ、『エネイ』に興味を持ってくれるところと話をしている」と同課長。日本で着実にファンを増やしつつ、海外のファッション感度の高い層へもアピールするブランドとして育てていくようだ。
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ジョゼフのカンポスCEOが語るブランドの変革と展望、そして自身を支えた3人のメンター
コロナ禍によるロックダウンの影響や急激な金利上昇などで苦戦するイギリスのファッション市場だが、オンワードホールディングス傘下の「ジョゼフ(JOSEPH)」は2022年に、15年以来初となる営業利益を計上した。その立役者であるバーバラ・カンポス(Barbara Campos)最高経営責任者(CEO)に注目が集まっている。
フランス出身のカンポスCEOはハーバード・ビジネス・スクール(Harvard Business School)で学んだ後、「ダイアン フォン ファステンバーグ(DIANE VON FURSTENBERG)」や「フルラ(FURLA)」「ヒューゴ ボス(HUGO BOSS)」などでセールスやマーケティング部門の要職を担ってきた。18年にジョゼフに入り、不採算が続いていたブランドの再構築を図った。20年には、デザインチームに所属していたアンナ・ルンドバック(Anna Lundback)と夫で「トミー ヒルフィガー(TOMMY HILFIGER)」でグローバル・クリエイティブ・ディレクターを務めていたフレデリック・デューア(Frederik Dyhr)の2人を共同クリエイティブ・ディレクターに任命。「ジョゼフ」の創設者である故ジョゼフ・エテッドギー(Joseph Ettedgui)氏が掲げた実用的でラグジュアリーな服という当初のミッションを果たすべく、再始動した。
22年度の売上高は前年比30%増の4710万ポンド(約86億円)、営業損益は前年のおよそ900万ポンド(約16億円)の損失から36万6000ポンド(約6697万円)の黒字に転換し、純損失も大幅に縮小した。カンポスCEOは今後5年で、「ジョゼフ」の24店舗と「ネッタポルテ(NET-A-PORTER)」や「マッチズファッション ドットコム(MATCHESFASHION.COM)」「マイテレサ(MYTHERESA)」、ニーマン・マーカス(NEIMAN MARCUS)といった400以上の卸先を通じて、ビジネス規模を倍にしたい考えだ。10月には、ロンドンのリーゼント・ストリート124番地に新世代に向けた店舗をオープンする予定だという。今後の事業再生や展望、これまでのキャリアなどについて聞いた。
ブランドはジョゼフ氏の精神にならって「変化」が必要だった
米「WWD」(以下、WWD):「ジョゼフ」に入社した理由は?またどのように事業再生に取り組んだか。
バーバラ・カンポスCEO(以下、カンポスCEO):入社の理由は「ジョゼフ」の高い評価と自分自身にとって思い入れのあるブランドだったから。入社当初は、何かする必要があると分かっていたが、まだ明確な戦略はなかった。収益性もブランドのポジショニングも低迷する中で、入社後の100日はビジネスの様子を観察し、全従業員と話した。そして、ジョゼフが残した遺産を活用する必要があるという結論に達した。つまり、商品は女性のワードローブに役立つという使命を果たす必要があり、ビジネスは利益を上げ、自立する必要があった。誰か、または何かが正しくないと思えば、変更を加えた。サプライヤーの多くを変え、職人技と品質に対してさらに注意を払い、工程の全てを見直した。
WWD:エデッドギー創業者の妻で、メイフェアにある英国王室御用達の老舗レザーブランド「コノリー(CONNOLLY)」を運営するイザベル・エデッドギー(Isabel Ettedgui)に会ったとか。
カンポスCEO:そう、ジョゼフのことをもっと知りたかったから。イザベルによると彼は変化を楽しむ人で、美容師としてキャリアをスタートし、髪を切ることでその人を変身させたり、人の自宅に招かれた際には承諾を得つつリビングルームの家具や空間をアレンジしたりしていたとか。変化。それこそが私が着手するべきことだった。
WWD:20年には、共同クリエイティブ・ディレクターを起用する型破りな決定をした。その背景は?
カンポスCEO:実際には、アンナが夫のフレデリックを共同デザイナーとして迎えたいと提案したことだったが、面白いと思った。アンナはウィメンズのクリエイティブ力と専門知識を兼ね備え、フレデリックはメンズの専門知識に加え、ビジネスについても詳しく、彼らの右脳と左脳が共生しているようだった。黒と白、ロンドンクールとパリシック、そしてリラックスしたシルエット。2人はブランドの二面性を象徴しつつ、全てを一つにした。
WWD:コロナ禍でもブランド変革を順調に進めた。どのようにしてロックダウンを乗り切った?
カンポスCEO:私たちは迅速に行動し、計画そしてビジネスモデルを見直す必要があった。ビジネス全体をストップし、倉庫を閉鎖したことで、少なくとも2カ月半は出荷できなかった。でもチームとしての働きぶりにはとても満足しているし、いい成果が出せたと思っている。みんな冷静でいられたし、条件反射的な決定を下すこともなかった。疲労困憊だったけれど興味深い時間だった。
ただし、事業のいくつかのカテゴリーでの見直しや進行中のプランの前倒しを強いられ、優先順位を決めなければならず、家主やサプライヤー、卸先と交渉する必要があった。私たちは信用のある企業であり続けたかったし、互いにサポートし合える人々に敬意を払いたかった。そうした意味では、多くの機会があった。
WWD:今はどのような層にアプローチしているか。それは年々変化しているか。
カンポスCEO:私たちのターゲットは特定の女性や年齢層ではなく、何を着ればいいのかとアイデアを求めている全ての女性に向けて、すごくいい気分でない日でも素敵に見せてくれる服をデザインしている。服は心地よさや自信を与えてくれる親友のような、エフォートレスで気を遣う必要がないものであってほしい。そうしたカテゴリーの中で、常にベストなブランドでありたいと考えている。
今後、欧米でのビジネス拡大のチャンスを想定
WWD:10月オープンのロンドン・リーゼントストリート店について。
カンポスCEO:この冬に迎えるブランド40周年に向け、リーゼントストリート店は、今後の店舗拡大の要になる。リーゼントストリートはロンドンでも象徴的な通りで海外観光客なども多く、イギリス国外に向けて「ジョゼフ」を知ってもらえる絶好のチャンスになる。今後数年で全店舗を新しいコンセプトに刷新していく計画だ。
デザインの面でいうと、これまでより温かみがあり、よりオーガニックで、よりナチュラルな素材を使いたいと思っていた。またコンセプトの重要な要素として、店内にはコレクションに似たさまざまなテクスチャーも展開する予定だ。
「ジョゼフ」はイギリス国内だけでなく、ヨーロッパやアメリカでの成長に大きなチャンスを見越している。今後も着実に成長していくことを目指す。
WWD:ロンドン・ファッション・ウイークでのランウエイショー復活は考えているか。
カンポスCEO:現段階では予定していない。2シーズン前からD2Cマーケティングを始め、ビジュアルやウェブサイト、デジタルマーケティングに多く投資してきた。何人かのインフルエンサーと協業もしているが、いい成果につながりそうだ。ブランドのアンバサダー的な存在として、素晴らしい役割を果たしてくれるだろう。
キャリアにおいてのメンターは3人
WWD:これまでヨーロッパやアメリカの大手ファッション企業でキャリアを積んできているが、その経験をどのように仕事に活かしてきたか。
カンポスCEO:これまでに複数の企業でさまざまなスキルを習得してきたが、特に「ダイアン フォン ファステンバーグ」と「フルラ」「ヒューゴ ボス」では、多くのことを学んだ。ニューヨークの「ダイアン フォン ファステンバーグ」では、リスクテイクについて。彼らは“不可能なことはない”というアメリカンドリームな考えから、常に決断を下していた。試してもうまくいかなければ、別のことを試す。そして成功するまで続ける。その機敏性と回復力をジョゼフで活かしている。
「フルラ」では、イタリア人の問題に対してクリエイティブに解決する方法がとても参考になった。彼らは臨機応変に策を見出す力にとても優れていた。ドイツの「ヒューゴ ボス」では、着実に実行することや製品への敬意、文化の重要性について教わった。全てにブランドらしさが息づいていた。
WWD:あなたにとってのメンターは?
カンポスCEO:3人いる。1人は「ヒューゴ ボス」での最初の上司で、今は退職している人物。彼はビジネスの才覚に加えて、アイテムの技術的な部分も熟知していて、例えばジャケットやズボン、コートの作り方など全てを教えてくれた。また、ウールやコットンの編み方についてもよく知っていて、おかげで私は今でも生地を見れば、ウールとシルクの混紡の割合を言うこともできる。
2人目は、「フルラ」時代の上司だったサラ・フェレロ(Sara Ferrero)元ジョゼフCEO。彼女と「フルラ」を創業したフルラネット(Furlanetto)家は、若かった私に大きなチャンスを与えてくれ、信じてくれた。私のキャリアにおいて大きな後押しになった。サラはとても要求の厳しい人だったが、協力的で、細部にまで気を配ることを教えてくれた。
3人目は、デザイナーのダイアン・フォン・ファステンバーグ。彼女は素晴らしい女性で、成功を遂げ、チャーミングでエネルギーに満ち溢れている。さらに正直で率直で、でもすごく協力的。女性であることを誇りに思い、他の女性の功績を誇りに思っている。そしてユーモアのセンスもある。
WWD:採用の際、面接で最初にする質問は?
カンポスCEO:最も興味があるのは、なぜその仕事をしたいのかということ。そもそもなぜ応募したのか?その答えによって、その人がどれほどの意欲と情熱を持っているのかを知ることができる。
WWD:仕事以外の時間には何をしている?
カンポスCEO:屋外で過ごすのが好きで、ボートに乗ったり、ウエイクボードやサーフィンをしたり、泳いだりしている。また昔から動物好きでもあって、若いころは馬術の競技をしていたし、今は飼い犬のドーベルマンをワーキングトライアル(警察犬のように訓練して成果を競う大会)に出場させるために訓練している。そうしたこともあって、動物行動学に興味を持ち、ケンブリッジ・インスティテュート・オブ・ドッグ・トレーニング(Cambridge Institute of Dog Training)でインストラクター兼行動学者になるための勉強をしている。
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「セオリー」は緻密なパターンと上質な素材で究極のユニホームを提案
「セオリー(THEORY)」は2024年春夏コレクションを9月9日(ニューヨーク現地時間)、チェルシーのオフィスで発表した。
ショーの冒頭、同ブランドのジェフリー・カミンスキー(Jeffrey Kalinsky)=チーフマーチャント兼チーフクリエイティブオフィサーは「今日は生地を通してユニホームについて話す」と話し始めた。ユニホームについては、コレクションノートにも書かれていた。最高のユニホームは着る人を引き立てるーー。ユニホームで大切なアイテムは“最高のTシャツ””ボタンダウンシャツ””最高のポロシャツ”“最高のペンシルスカート”ーー。それらを合わせた時に最高のワードローブが生まれるーー。ここで言うユニホームとはそれぞれが袖を通した際に一番心地良く、際立つ服のことで“ユニホーム”は着る人によって異なるものである。
ファーストルックに登場したのは、コットンのボタンダウンシャツとウールのペンシルスカートだ。いたって潔いスタイリングだが、ボクシーなボタンダウンシャツはメンズライクで、リーンなシルエットのペンシルスカートをコーディネートすることでシンプルになりすぎない絶妙なバランスをとっている。ショーの最中、カミンスキーはマイクで一体一体の素材やシルエットを説明。モデルたちは白で統一した空間をゆっくりとキャットウォークし、服をゆっくりと鑑賞する鑑賞会のようでもあった。服を見る、という行為に集中できる演出だ。
ショーの前半は、ウールで仕立てたグレーや黒のペンシルドレスやジャケット&パンツのスタイリングが続く。カラーパレットはネイビー、エクリュ、ピュアホワイト、シルバーと徐々に変化。同じウールのコーディネートもパターンの妙で波打つような流れを生み出し、表情に変化をつける。リネンのシリーズは夏の乾いた避暑地を彷彿とさせ、クレープやメリノウールで仕立てたアイテムはセンシュアルな女性像を引き立てる。メタリックシルクツイルのシリーズは素材の張り感と色合いでフューチャリスティックな雰囲気を演出した。ジャケット&パンツのスタイルは働く女性の一着、スパンコールのペンシルドレスはナイトアウトのお気に入り。女性たちのワードローブに欠かせないアイテムが集約されている。
シンプルな提案はメンズライクなアイテムとエレガントなアイテムを組み合わせることでコントラストを生み出し、同色のコーディネートもスパンコールやプリント、メタリックなシルクを使うことでスパイスを加えた。ウエストを絞った女性らしいジャケット、モデルの体を包み込むように体に沿ったミニドレスなど、削ぎ落とすことで見えてくる「セオリー」の精巧なテクニックを改めて披露した。
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「セオリー」は緻密なパターンと上質な素材で究極のユニホームを提案
「セオリー(THEORY)」は2024年春夏コレクションを9月9日(ニューヨーク現地時間)、チェルシーのオフィスで発表した。
ショーの冒頭、同ブランドのジェフリー・カミンスキー(Jeffrey Kalinsky)=チーフマーチャント兼チーフクリエイティブオフィサーは「今日は生地を通してユニホームについて話す」と話し始めた。ユニホームについては、コレクションノートにも書かれていた。最高のユニホームは着る人を引き立てるーー。ユニホームで大切なアイテムは“最高のTシャツ””ボタンダウンシャツ””最高のポロシャツ”“最高のペンシルスカート”ーー。それらを合わせた時に最高のワードローブが生まれるーー。ここで言うユニホームとはそれぞれが袖を通した際に一番心地良く、際立つ服のことで“ユニホーム”は着る人によって異なるものである。
ファーストルックに登場したのは、コットンのボタンダウンシャツとウールのペンシルスカートだ。いたって潔いスタイリングだが、ボクシーなボタンダウンシャツはメンズライクで、リーンなシルエットのペンシルスカートをコーディネートすることでシンプルになりすぎない絶妙なバランスをとっている。ショーの最中、カミンスキーはマイクで一体一体の素材やシルエットを説明。モデルたちは白で統一した空間をゆっくりとキャットウォークし、服をゆっくりと鑑賞する鑑賞会のようでもあった。服を見る、という行為に集中できる演出だ。
ショーの前半は、ウールで仕立てたグレーや黒のペンシルドレスやジャケット&パンツのスタイリングが続く。カラーパレットはネイビー、エクリュ、ピュアホワイト、シルバーと徐々に変化。同じウールのコーディネートもパターンの妙で波打つような流れを生み出し、表情に変化をつける。リネンのシリーズは夏の乾いた避暑地を彷彿とさせ、クレープやメリノウールで仕立てたアイテムはセンシュアルな女性像を引き立てる。メタリックシルクツイルのシリーズは素材の張り感と色合いでフューチャリスティックな雰囲気を演出した。ジャケット&パンツのスタイルは働く女性の一着、スパンコールのペンシルドレスはナイトアウトのお気に入り。女性たちのワードローブに欠かせないアイテムが集約されている。
シンプルな提案はメンズライクなアイテムとエレガントなアイテムを組み合わせることでコントラストを生み出し、同色のコーディネートもスパンコールやプリント、メタリックなシルクを使うことでスパイスを加えた。ウエストを絞った女性らしいジャケット、モデルの体を包み込むように体に沿ったミニドレスなど、削ぎ落とすことで見えてくる「セオリー」の精巧なテクニックを改めて披露した。
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「セオリー」は緻密なパターンと上質な素材で究極のユニホームを提案
「セオリー(THEORY)」は2024年春夏コレクションを9月9日(ニューヨーク現地時間)、チェルシーのオフィスで発表した。
ショーの冒頭、同ブランドのジェフリー・カミンスキー(Jeffrey Kalinsky)=チーフマーチャント兼チーフクリエイティブオフィサーは「今日は生地を通してユニホームについて話す」と話し始めた。ユニホームについては、コレクションノートにも書かれていた。最高のユニホームは着る人を引き立てるーー。ユニホームで大切なアイテムは“最高のTシャツ””ボタンダウンシャツ””最高のポロシャツ”“最高のペンシルスカート”ーー。それらを合わせた時に最高のワードローブが生まれるーー。ここで言うユニホームとはそれぞれが袖を通した際に一番心地良く、際立つ服のことで“ユニホーム”は着る人によって異なるものである。
ファーストルックに登場したのは、コットンのボタンダウンシャツとウールのペンシルスカートだ。いたって潔いスタイリングだが、ボクシーなボタンダウンシャツはメンズライクで、リーンなシルエットのペンシルスカートをコーディネートすることでシンプルになりすぎない絶妙なバランスをとっている。ショーの最中、カミンスキーはマイクで一体一体の素材やシルエットを説明。モデルたちは白で統一した空間をゆっくりとキャットウォークし、服をゆっくりと鑑賞する鑑賞会のようでもあった。服を見る、という行為に集中できる演出だ。
ショーの前半は、ウールで仕立てたグレーや黒のペンシルドレスやジャケット&パンツのスタイリングが続く。カラーパレットはネイビー、エクリュ、ピュアホワイト、シルバーと徐々に変化。同じウールのコーディネートもパターンの妙で波打つような流れを生み出し、表情に変化をつける。リネンのシリーズは夏の乾いた避暑地を彷彿とさせ、クレープやメリノウールで仕立てたアイテムはセンシュアルな女性像を引き立てる。メタリックシルクツイルのシリーズは素材の張り感と色合いでフューチャリスティックな雰囲気を演出した。ジャケット&パンツのスタイルは働く女性の一着、スパンコールのペンシルドレスはナイトアウトのお気に入り。女性たちのワードローブに欠かせないアイテムが集約されている。
シンプルな提案はメンズライクなアイテムとエレガントなアイテムを組み合わせることでコントラストを生み出し、同色のコーディネートもスパンコールやプリント、メタリックなシルクを使うことでスパイスを加えた。ウエストを絞った女性らしいジャケット、モデルの体を包み込むように体に沿ったミニドレスなど、削ぎ落とすことで見えてくる「セオリー」の精巧なテクニックを改めて披露した。
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世界的コンペの覇者「ソリット!」が目指すオールインクルーシブなファッション
「グッチ(GUCCI)」などを擁するケリング(KERING)やIBM、ロンドン芸術大学、「ヴォーグ ビジネス(VOGUE BUSINESS)」が共同開発したグローバルなファッション・コンペティションの「ファッション・バリュー・チャレンジ(Fashion Values Challenge.以下、FVC)」はこのほど、オールインクルーシブを謳うファッションブランドの「ソリット!(SOLIT!)」にグランプリを授けた。「ソリット!」は、これからの未来に向けて、多様な人々はもちろん、自然や動物も取り残さない社会を目指し、2020年9月に設立。企画段階から商品や環境に課題を感じる当事者を巻き込むインクルーシブ・デザインの手法をもとに、必要とする人に、必要とされるものを、必要な分だけを製造することを目指す。障がいの有無やセクシャリティなどを超えて、自分の好みや体型にあわせて部位ごとに1600通り以上の組み合わせの中からカスタマイズが可能な、自分のために作れるファッションサービスも運営している。田中美咲代表に、コペンハーゲンで開かれた授賞式のあと、話を聞いた。
「ソリット!」は現在2024年4月のバンクーバー・ファッション・ウイークへの参加のためのクラウドファンディングを行っている。返礼品は、オンライン配信のチケットやメイキングのドキュメンタリー映画上映会チケットなど。あわせて今月末まで、新宿マルイにポップアップをオープン中だ。
田中美咲(たなか・みさき)SOLIT代表 プロフィール
社会起業家・ソーシャルデザイナー。1988年生まれ。立命館大学卒業後、東日本大震災をきっかけに福島県における県外避難者向けの情報支援事業を責任担当。2013年「防災をアップデートする」をモットーに「一般社団法人防災ガール」を設立して20年に事業継承。第32回 人間力大賞 経済大臣奨励賞 受賞。18年2月に社会課題解決に特化したPR会社であるmorning after cutting my hairを創設。20年「オール・インクルーシブ経済圏」を実現すべくSOLITを創設。同社が開発したインクルーシブファッションは、世界三大デザインアワード「iF DESIGN AWARD 2022」で最優秀賞GOLDを受賞
――FVCへの参加のきっかけは?グローバルコンペでは、他の地域のファイナリストにどんな印象を抱いた?
田中美咲「ソリット!」代表(以下、田中):FVCはSNSで知っていたのですが、応募するか迷っていました。でも複数の知り合いから「これ『ソリット!』に合っていそう」とのメッセージをもらい、エントリーを決めました。日本のファイナリスト(「ソリット!」を含めて3社)はそれぞれとても魅力的で、グローバルのファイナリストも素敵なデザインのファッションサービスばかりでした。NFTを活用したサービスもあれば、民族・文化的背景からの開発も多く、それぞれが「ファッション」をどのように捉えているのか?がアウトプットに表れていると思いました。
――今回は欧州だけでなく、世界中から数百以上のエントリーがあった。そんな中で勝ち取ったプログラムに期待することは?
田中:これから半年間、ケリングやIBM、「ヴォーグ ビジネス」からのサポートに期待しつつ、こちらからも「これをやりたい」と言いまくろうと思っています。例えば今「ソリット!」ではマーケティングとターゲティングをレビューしていますが、今のコアターゲットは障がいのある方とか、セクシャルマイノリティ、高齢者ら、既存のファッションに「選択肢が少ない」もしくは「選択肢が存在しない」と感じている方々です。今は世の中にサービスは生まれつつあるのに、当事者が選択肢を知らないなどの理由で、マーケットがそもそも生み出されない黎明期にあると思うんです。つまり人数はいるけれど、まだマーケットになっていないのが現状です。私たちがターゲットを変えて、カスタマイズやパーソナライゼーションを楽しんでくれそうな人にシフトする方法もあるけれど、収益のためだけにその意思決定はしたくない。あくまで必要な人のためにモノ作りしたいんです。でもこれって、一社だと市場にならないのでもっとプレイヤーを増やすか、それこそケリングのような先駆的存在が「ここに、ちゃんと市場があるよ」と世の中に発信するなど、光を当てる力のある人たちがもっと注目してくれるといいなと思っていて。今回のプログラムでも、そこを一緒に作っていけるのであれば、とてもありがたいです。
――黎明期のマーケットで起業して、今年で4期目。起業までの経緯は?非営利団体から社会課題解決に特化したPR会社を経て、アパレル業界で起業したのはなぜ?
田中:幼少期から正義感が強く、行動力がありましたが、東日本大震災は大きなトリガーとなりました。自分の人生における時間などのリソースを「社会課題を解決するためにつかう」ことを決めました。まず当時勤めていたサイバーエージェントを辞めて被災地に移住して活動する中で、復興も重要だけど、対処療法的解決ではなく、システムチェンジや根本解決のために「防災」を行うべきと考え、非営利団体の一般社団法人防災ガールを立ち上げ、8年活動しました。
さらに構造的に課題解決をするには、自然災害だけではなく、複合的かつ同時多発的に解決・改善していく必要があると考え、同じく異なる社会課題の解決に挑む社会起業家の仲間たちを支援するため、社会課題解決に特化したPR会社のmorning after cutting my hairを創業しました。
私は、アパレル会社を経営したかったわけでも、ファッションブランドを始めてみたかったわけでもなく、あくまで環境問題や人権侵害などの課題へのソリューションとして「ソリット!」を生み出しています。初めに起業した時から今まで、対象とする課題やアプローチ方法は変わったけれど、いかに本質的に解決をするのかを常に考え、意思決定を続けてきました。大学時代からのバックパッカーで世界を一周するなど、日本の一般的な既存のルールやキャリアパスにあまりとらわれていないことも関係していると思います。
――海外も含め多様性のあるメンバーが参画しているが、普段のコミュニケーションで気をつけていることは?
田中:基本的にはSNSで個別DMが届いたり、知り合いの繋がりで共感してくださった方が「私にも何かできないか?」と連絡をくれたりが多いです。メンバーはみんな気候変動やジェンダー、人権に関して何らか強い意志をもち、アクティビストとは言い切れないまでも自分と社会の距離がとても近いメンバーばかり。1人では解決しきれないので、チームで挑戦したいと考えた人が多いです。
今のメンバーは40人ほどです。できているのかちょっとわかりませんが、私自身結構マメなタイプなので、メンバーとのコミュニケーションは多く取るようにしています。あと私にしかできない業務量をできるだけ減らして分担してもらい、私はみんなに茶々を入れたり「元気?」みたいなことを言ったりして、それぞれが本当にやりたいことをできるように調整することを意識しています。成果が出しやすい・見えやすい環境も作っています。今回のようなアワードを取ったり、ちゃんと売り上げにつなげたり、イベントの参加者を予想以上に伸ばしたり、それぞれに成功体験を経験してもらい、自分達の行動が社会とどうつながっているのかを共有できることがとても嬉しいです。
――今後の展望は?
田中:国内でも少しずつ露出が増えていますが、今回の受賞を機にグローバルにどのように評価されたブランド・会社であることがもっと伝わったり、それがきっかけで私たちのプロダクトが必要とされている方にもっと届いたりするといいなと思っています。
私たちはミッションからスタートしたファッションブランドですが、衣食住や生活環境の中で、よりオールインクルーシブで多様な人にも動植物にも配慮されている選択肢がもっと増えたらいいなと思っています。全てがそんなプロダクトにならなくてもいいけれど、そんな選択肢が50%くらいあると、それぞれ自由に選べて、表現できる幅が増えて、自分がより自分らしくあれる可能性が生み出せる。見たい景色は、ファッショアイテムはもちろんのこと、例えばコンビニで売られているお菓子とか果物、文具も、50%はそういうものから選べる状態です。
まだまだ小さなスタートアップですが、ここからさらにたくさんの企業や自治体の方々と協力しながら、目指す社会を実現していきたいです。
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世界的コンペの覇者「ソリット!」が目指すオールインクルーシブなファッション
「グッチ(GUCCI)」などを擁するケリング(KERING)やIBM、ロンドン芸術大学、「ヴォーグ ビジネス(VOGUE BUSINESS)」が共同開発したグローバルなファッション・コンペティションの「ファッション・バリュー・チャレンジ(Fashion Values Challenge.以下、FVC)」はこのほど、オールインクルーシブを謳うファッションブランドの「ソリット!(SOLIT!)」にグランプリを授けた。「ソリット!」は、これからの未来に向けて、多様な人々はもちろん、自然や動物も取り残さない社会を目指し、2020年9月に設立。企画段階から商品や環境に課題を感じる当事者を巻き込むインクルーシブ・デザインの手法をもとに、必要とする人に、必要とされるものを、必要な分だけを製造することを目指す。障がいの有無やセクシャリティなどを超えて、自分の好みや体型にあわせて部位ごとに1600通り以上の組み合わせの中からカスタマイズが可能な、自分のために作れるファッションサービスも運営している。田中美咲代表に、コペンハーゲンで開かれた授賞式のあと、話を聞いた。
「ソリット!」は現在2024年4月のバンクーバー・ファッション・ウイークへの参加のためのクラウドファンディングを行っている。返礼品は、オンライン配信のチケットやメイキングのドキュメンタリー映画上映会チケットなど。あわせて今月末まで、新宿マルイにポップアップをオープン中だ。
田中美咲(たなか・みさき)SOLIT代表 プロフィール
社会起業家・ソーシャルデザイナー。1988年生まれ。立命館大学卒業後、東日本大震災をきっかけに福島県における県外避難者向けの情報支援事業を責任担当。2013年「防災をアップデートする」をモットーに「一般社団法人防災ガール」を設立して20年に事業継承。第32回 人間力大賞 経済大臣奨励賞 受賞。18年2月に社会課題解決に特化したPR会社であるmorning after cutting my hairを創設。20年「オール・インクルーシブ経済圏」を実現すべくSOLITを創設。同社が開発したインクルーシブファッションは、世界三大デザインアワード「iF DESIGN AWARD 2022」で最優秀賞GOLDを受賞
――FVCへの参加のきっかけは?グローバルコンペでは、他の地域のファイナリストにどんな印象を抱いた?
田中美咲「ソリット!」代表(以下、田中):FVCはSNSで知っていたのですが、応募するか迷っていました。でも複数の知り合いから「これ『ソリット!』に合っていそう」とのメッセージをもらい、エントリーを決めました。日本のファイナリスト(「ソリット!」を含めて3社)はそれぞれとても魅力的で、グローバルのファイナリストも素敵なデザインのファッションサービスばかりでした。NFTを活用したサービスもあれば、民族・文化的背景からの開発も多く、それぞれが「ファッション」をどのように捉えているのか?がアウトプットに表れていると思いました。
――今回は欧州だけでなく、世界中から数百以上のエントリーがあった。そんな中で勝ち取ったプログラムに期待することは?
田中:これから半年間、ケリングやIBM、「ヴォーグ ビジネス」からのサポートに期待しつつ、こちらからも「これをやりたい」と言いまくろうと思っています。例えば今「ソリット!」ではマーケティングとターゲティングをレビューしていますが、今のコアターゲットは障がいのある方とか、セクシャルマイノリティ、高齢者ら、既存のファッションに「選択肢が少ない」もしくは「選択肢が存在しない」と感じている方々です。今は世の中にサービスは生まれつつあるのに、当事者が選択肢を知らないなどの理由で、マーケットがそもそも生み出されない黎明期にあると思うんです。つまり人数はいるけれど、まだマーケットになっていないのが現状です。私たちがターゲットを変えて、カスタマイズやパーソナライゼーションを楽しんでくれそうな人にシフトする方法もあるけれど、収益のためだけにその意思決定はしたくない。あくまで必要な人のためにモノ作りしたいんです。でもこれって、一社だと市場にならないのでもっとプレイヤーを増やすか、それこそケリングのような先駆的存在が「ここに、ちゃんと市場があるよ」と世の中に発信するなど、光を当てる力のある人たちがもっと注目してくれるといいなと思っていて。今回のプログラムでも、そこを一緒に作っていけるのであれば、とてもありがたいです。
――黎明期のマーケットで起業して、今年で4期目。起業までの経緯は?非営利団体から社会課題解決に特化したPR会社を経て、アパレル業界で起業したのはなぜ?
田中:幼少期から正義感が強く、行動力がありましたが、東日本大震災は大きなトリガーとなりました。自分の人生における時間などのリソースを「社会課題を解決するためにつかう」ことを決めました。まず当時勤めていたサイバーエージェントを辞めて被災地に移住して活動する中で、復興も重要だけど、対処療法的解決ではなく、システムチェンジや根本解決のために「防災」を行うべきと考え、非営利団体の一般社団法人防災ガールを立ち上げ、8年活動しました。
さらに構造的に課題解決をするには、自然災害だけではなく、複合的かつ同時多発的に解決・改善していく必要があると考え、同じく異なる社会課題の解決に挑む社会起業家の仲間たちを支援するため、社会課題解決に特化したPR会社のmorning after cutting my hairを創業しました。
私は、アパレル会社を経営したかったわけでも、ファッションブランドを始めてみたかったわけでもなく、あくまで環境問題や人権侵害などの課題へのソリューションとして「ソリット!」を生み出しています。初めに起業した時から今まで、対象とする課題やアプローチ方法は変わったけれど、いかに本質的に解決をするのかを常に考え、意思決定を続けてきました。大学時代からのバックパッカーで世界を一周するなど、日本の一般的な既存のルールやキャリアパスにあまりとらわれていないことも関係していると思います。
――海外も含め多様性のあるメンバーが参画しているが、普段のコミュニケーションで気をつけていることは?
田中:基本的にはSNSで個別DMが届いたり、知り合いの繋がりで共感してくださった方が「私にも何かできないか?」と連絡をくれたりが多いです。メンバーはみんな気候変動やジェンダー、人権に関して何らか強い意志をもち、アクティビストとは言い切れないまでも自分と社会の距離がとても近いメンバーばかり。1人では解決しきれないので、チームで挑戦したいと考えた人が多いです。
今のメンバーは40人ほどです。できているのかちょっとわかりませんが、私自身結構マメなタイプなので、メンバーとのコミュニケーションは多く取るようにしています。あと私にしかできない業務量をできるだけ減らして分担してもらい、私はみんなに茶々を入れたり「元気?」みたいなことを言ったりして、それぞれが本当にやりたいことをできるように調整することを意識しています。成果が出しやすい・見えやすい環境も作っています。今回のようなアワードを取ったり、ちゃんと売り上げにつなげたり、イベントの参加者を予想以上に伸ばしたり、それぞれに成功体験を経験してもらい、自分達の行動が社会とどうつながっているのかを共有できることがとても嬉しいです。
――今後の展望は?
田中:国内でも少しずつ露出が増えていますが、今回の受賞を機にグローバルにどのように評価されたブランド・会社であることがもっと伝わったり、それがきっかけで私たちのプロダクトが必要とされている方にもっと届いたりするといいなと思っています。
私たちはミッションからスタートしたファッションブランドですが、衣食住や生活環境の中で、よりオールインクルーシブで多様な人にも動植物にも配慮されている選択肢がもっと増えたらいいなと思っています。全てがそんなプロダクトにならなくてもいいけれど、そんな選択肢が50%くらいあると、それぞれ自由に選べて、表現できる幅が増えて、自分がより自分らしくあれる可能性が生み出せる。見たい景色は、ファッショアイテムはもちろんのこと、例えばコンビニで売られているお菓子とか果物、文具も、50%はそういうものから選べる状態です。
まだまだ小さなスタートアップですが、ここからさらにたくさんの企業や自治体の方々と協力しながら、目指す社会を実現していきたいです。
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ピーター・ドゥによる新生「ヘルムート・ラング」がデビュー 全盛期のアーカイブを解釈
デザイナーのピーター・ドゥ(Peter Do)が手がける新生「ヘルムート ラング(HELMUT LANG)」のランウエイショーが9月8日(ニューヨーク現地時間)に行われた。ラングと言えばミニマリズムの先駆者として1990年代に隆盛を極めたデザイナーだが、2005年にデザイナーを退任してからはアーティストとして活動し、ファッションの表舞台から姿を消している。ラングの退任後にリンク・セオリー・ホールディングスの傘下となった「ヘルムート ラング」は、18年春夏シーズンに「フッド・バイ・エアー(HOOD BY AIR)」のシェーン・オリバー(Shayne Oliver)とコラボレーションを行いコレクションを発表したが、今回のコレクションはそれ以来の話題を集めることとなった。
会場の床にはドゥの友人でもあり、同じくベトナムにルーツを持つアーティストのオーシャン・ヴィオング(Ocean Vuong)の詩から引用した言葉が綴られていた。ゲストに配ったコレクションノートもヴィオングによるものだ。彼がロードトリップに出た際の回想から始まり、車という存在について語られている。車はどこにでも行ける自由を提供しつつ、時には部屋のようにリラックスできる場所であり、時には周囲から隠れることのできる場所であり、時には泣くことのできる場所でもあるーー。こうした一節やTシャツにプリントした「YOUR CAR WAS MY FIRST ROOM OUR CLOTHES ON THE FLOOR LIKE STEPPED-ON FLOWERS(あなたの車は私の最初の部屋 私たちの服は踏まれた花のように床に落ちている」と言った言葉には性的マイノリティが感じてきた思いが隠されているとともに、ドゥの思いを代弁しているかのようでもある。
ファーストルックではリーンなシルエットの黒のパンツスーツにシートベルトのようなピンクのファブリックテープをボディに巻き付けた。3ルック目までは同じようにボディをクロスするようにピンクのファブリックテープをあしらい、パンツにもサイドラインをデザインした。ピンクのファブリックテープ使いは「ヘルムート ラング」全盛期の1994年秋冬コレクションで発表したコレクションからのオマージュのようだ。
他にもイエローキャブを彷彿とさせるイエローをシートベルトのように斜めにペイントしたコートや、イエローのファブリックテープをボディで交差したパンツスーツのルック、イエローキャブのグラフィックプリントを施したアイコニックなパンツスーツやセットアップが登場した。コレクションのBGMも車のクラクションやニューヨークの地下鉄のプラットホームで流れるアナウンス音など、慌ただしいニューヨークの日常を彷彿とさせる。98年に「ヘルムート ラング」はファッションブランドとして初めてイエローキャブの上部に広告を出し、タクシーや車はブランドにとってアイコニック的な存在と言ってもいい。こうしたディテールからもドゥのラングへのオマージュが感じられる。
後半はレザーを取り入れたスタイリングやドゥが得意とするクリーンでリーンなシルエットのテーラリングが続き、合間にヴィオングのメッセージをプリントしたシャツやTシャツのスタイリングが登場した。他にもアーカイブからの引用を思わせるシフォンをツイストして体を包み込んだカラードレスなど、ドゥ流に「ヘルムート ラング」を解釈している。「ヘルムート ラング」が紡いだ歴史は今後、現代の感覚を体現するドゥによってどう生まれ変わっていくのだろうか?
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「ラルフ ローレン」4年ぶりにNYでショー開催 洗練とロマンスのアメリカンスタイル
「ラルフ ローレン コレクション(RALPH LAUREN COLLECTION)」が2024年春夏ニューヨーク・ファッション・ウィーク(NYFW)の9月8日(現地時間)に2024年春夏コレクションを発表した。ニューヨークでは4年ぶりのランウエイショーで、洗練された新しいロマンスをテーマに時代を超えたアメリカンスタイルを作り上げた。
ショーはブルックリンのネイビーヤード(造船所跡地)で開催した。実際現役の倉庫に脚を踏み入れると、そこには豪奢なシャンデリアと、木材の床にドレープのかかったキャンバス、漆喰の壁など、アーティストのロフトをイメージしたという素朴な内装。対照的な要素が調和した、今回のテーマを象徴する空間がゲストを出迎えた。
ショーは得意とするデニムのスタイルからスタート。ビーズ刺繍やリバースアップリケ、シアーな花柄のカットアウトをクリスタルビーズで縁取ったスーツ、ラインストーンやフェザーを手刺繍で縫い留めたジャケットなど、デニムをロマンティックなイヴニングウエアに昇華した。続くブラックとゴールドを基調としたラグジュアリーなルックは、タキシードジャケットにゴールドメタリックのスキニーパンツ、ダブルブレストのブレザーとボディースーツの組み合わせなど、クラシックなアイテムを現代的な解釈で再構築した。そしてスタイルはノスタルジックなボヘミアンスタイルに変化する。大胆なカラーコードにメタリックな素材、フリンジのドレス、カラフルなビジューのアクセサリーも印象的だ。新作バッグ“RL 888”も今回のコレクションを彩った。
ラルフ・ローレンは「色褪せたデニムや絵画のような花柄の芸術性、ブラックとゴールドで一新したアイコニックなシェイプのモダンな洗練美、あるいは大胆な色や輝き、そしてラグジュアリーな手仕事のディテールのさまざまな組み合わせを通して、自分だけのスタイルを自由に生み出す。私がデザインのモデルとしたのは、個性とアーティスティックな精神というキャンバスの上で自己表現する、こうした女性たちだ」と語る。

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「ラルフ ローレン」4年ぶりにNYでショー開催 洗練とロマンスのアメリカンスタイル
「ラルフ ローレン コレクション(RALPH LAUREN COLLECTION)」が2024年春夏ニューヨーク・ファッション・ウィーク(NYFW)の9月8日(現地時間)に2024年春夏コレクションを発表した。ニューヨークでは4年ぶりのランウエイショーで、洗練された新しいロマンスをテーマに時代を超えたアメリカンスタイルを作り上げた。
ショーはブルックリンのネイビーヤード(造船所跡地)で開催した。実際現役の倉庫に脚を踏み入れると、そこには豪奢なシャンデリアと、木材の床にドレープのかかったキャンバス、漆喰の壁など、アーティストのロフトをイメージしたという素朴な内装。対照的な要素が調和した、今回のテーマを象徴する空間がゲストを出迎えた。
ショーは得意とするデニムのスタイルからスタート。ビーズ刺繍やリバースアップリケ、シアーな花柄のカットアウトをクリスタルビーズで縁取ったスーツ、ラインストーンやフェザーを手刺繍で縫い留めたジャケットなど、デニムをロマンティックなイヴニングウエアに昇華した。続くブラックとゴールドを基調としたラグジュアリーなルックは、タキシードジャケットにゴールドメタリックのスキニーパンツ、ダブルブレストのブレザーとボディースーツの組み合わせなど、クラシックなアイテムを現代的な解釈で再構築した。そしてスタイルはノスタルジックなボヘミアンスタイルに変化する。大胆なカラーコードにメタリックな素材、フリンジのドレス、カラフルなビジューのアクセサリーも印象的だ。新作バッグ“RL 888”も今回のコレクションを彩った。
ラルフ・ローレンは「色褪せたデニムや絵画のような花柄の芸術性、ブラックとゴールドで一新したアイコニックなシェイプのモダンな洗練美、あるいは大胆な色や輝き、そしてラグジュアリーな手仕事のディテールのさまざまな組み合わせを通して、自分だけのスタイルを自由に生み出す。私がデザインのモデルとしたのは、個性とアーティスティックな精神というキャンバスの上で自己表現する、こうした女性たちだ」と語る。

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若返りを図る「ケイト・スペード」は花が開くポジティブなパワーを表現
「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」が2024年春夏ニューヨーク・ファッション・ウィーク(NYFW)の初日となる9月8日(現地時間)に2024年春夏コレクションを発表した。会場はニューヨークの街並みを見渡せる空中庭園の「ハイライン」だ。まだまだ残暑が厳しいニューヨークだが、プレゼンテーション会場に飾られたいくつもの大きな白い花のオブジェは、生命が芽吹く春の象徴。花が開くパワーとエネルギーは、これから待ち構えるニューヨークの長い冬を飛び越えて春を迎える高揚感のようだ。
グリーンの芝生の上に並んだモデルたちが身にまとうのはペールブルーやフレッシュなライムイエロー、ピュアホワイトなど、春を感じさせる若々しい色合い。スパンコールのセットアップやミニドレスも冬のワードローブを脱ぎ捨てた瞬間の前向きな感情を表しているかのようだ。「今シーズンはマンハッタンで初めて春を垣間見る瞬間というアイデアから始まった。春の訪れで活気づいた街には、開放感と興奮、これから起こることへの希望をかき立てる感覚がある。そんな普遍的な感覚と喜びを祝福している」とトム・モーラ(Tom Mora)=シニア・バイス・プレジデント兼RTW&ライフスタイル部門デザイン責任者とジェニファー・リュウ(Jennifer Lyu)=シニア・バイス・プレジデント兼レザーグッズ&アクセサリー部門デザイン責任者。
コレクションは「ケイト・スペード」らしいプリーツスカートやAラインのミニドレス、ツイード風ジャケットなど、ガーリーなニューヨークの子女を彷彿とさせるルックに、パールのアクセサリーやコサージュ使いが優しい春の装いを強調している。ガーリーなルックの対局としてスポーティーなライトコートやキャップ、リラックスしたパンツスタイルも登場した。「ケイト・スペード」は近年、ブランドのDNAを継承しながらも若返りを図っている。今季のコレクションでは1999年にケイト・スペードとアンディ・スペードが発表した名作「ノエル」プリントをトム・モーラとジェニファー・リュウがモダンに再構築した。
ブランドの核となるレザーグッズもアイコニックなアイテムで溢れた。今シーズンの象徴とも言える白い花はレザーバッグに大胆に使用し、ポインテッドトゥのパンプスにも大きくあしらった。スタイリングのアクセントとして加えたコサージュも今季らしい。フラワーコサージュのついたミニバッグは店頭でも人気のアイテムとなりそうだ。
今季のコレクションはプレゼンテーション終了後に一般公開したほか、モデルのアオキ・リー・シモンズ(Aoki Lee Simmons)とパートナーシップを組み、SNSを通じてプレゼンテーションの舞台裏を紹介している。会場は女優のクリスティーナ・リッチ(Christina Ricci)などのセレブの他に、ポップなカラーとガーリーなスタイリングに身を包んだ“ケイト・スペードガール”たちで溢れかえった。
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「コーチ」はスチュアート・ヴィヴァース就任10周年の節目のショー NYでの軌跡に想いを馳せる
「コーチ(COACH)」は、2024年春夏ニューヨーク・ファッション・ウィーク公式スケジュール前となる9月7日(現地時間)に24年春夏コレクションのショーを開催した。
クリエイティブ・ディレクターのスチュアート・ヴィヴァース(Stuart Vevers)就任10周年目となる今季のコレクションはニューヨーク公共図書館を会場に、ショーの後には多くのゲストを招いてカクテルとディナーを開いた。ディナーではスチュアート本人がこの10年を振り返るスピーチで謝辞を述べる場面もあり、節目を祝うシーズンとなった。
イギリス人のスチュアートがアメリカに拠点を移したのは90年代。コレクションではニューヨークと共に歩んできたキャリアやプライベートの記憶を辿り、彼なりの解釈をオリジナリティーあるデザインに落とし込んでいる。「ヴィンテージのコピーはしたくなかった。今まで生活してきたニューヨークのムードや私の記憶からソースを切り取っている」とスチュアート・ヴィヴァース。
ファーストルックは、黒いレザーのキャミソールドレスにエンジニアブーツのシンプルなスタイル。「オリジナル・アメリカン・ハウス・オブ・レザー」ブランドとしてのレガシーを回顧するとともに、アップサイクルレザーの素材使いやテクニック、スタイリングでスチュワートのモダンさを加えている。ビッグシルエットのレザーのライダーズジャケットにハート型のサングラス、PVCのポップなフラットシューズのスタイリング、ヴィンテージ風のデッドストックを使用したレースのドレスにレザーのランジェリーを合わせるなど、スチュアートが踊り明かした伝説のナイトクラブ「ピラミッドクラブ」のムードを彷彿とさせる。リサイクルコットンを使用したオーバーサイズのボクシーなジャケットは90年代に自立し始めた女性たちのパワフルさを象徴。表面が色褪せたヴィンテージ風のバルマカーンコートなど、スチュアートの記憶からヴィンテージのピースを取り出したようだ。ルックに差し込んだポップなカラーのハイカットスニーカーやバッグなど、今すぐ手に取りたくなるアイテムも多い。
「コーチ」の象徴となるレザーバッグについては、「アーカイブは見ず、自分の解釈を元に『コーチ』のバッグとは何か?と考えた時、タイムレスなデザインでこの先80年は使っていけるものだろうという結論に至った」。スチュアートらしいウィットの効いたカラフルな犬の骨をモチーフにしたバッグやビッグトート、アイコニックなショルダーバッグも登場し、レザーブランドとしての存在感を改めてアピールした。スタイリングのアクセントにもなる“バッグの2個持ち”も印象的だ。
素材や技術面では先シーズンからの継承も見受けられるとともに、さらなる進化を印象付けた。デッドストックレースなどの生地は過去のコレクションのものを引用し、レザーやデニム、恐竜のポップなチャームなどは基本的に再生素材を使用している。ほつれそうに繊細なニットドレスやボタニカル染めのテクニックは先シーズンからさらなる進化を遂げているようだ。今年デビューした「コーチ」のセカンドブランド「コーチトピア」ではストイックなまでにサステナビリティを追求したものづくりをしているが、コレクションラインでもシーズンごとに先進的な環境配慮を行っている。
フィナーレに現れたスチュアート・ヴィヴァースは駆け寄ってきた我が子を抱きかかえ、ゲストに挨拶をして回った。ニューヨークとともに歩んできた10年、これからの10年の進化を予感させるコレクションとなった。
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ビヨンセやリアーナが出資するフランス発の「デストレー」 創業者がビジョンを語る
フランス発の「デストレー(DESTREE)」は、ジェラルディーヌ・ギヨ(Geraldine Guyot)とラティシア・ロンブローゾ(Laetitia Lumbroso)が2016年に立ち上げたブランドだ。商品デザインを手掛けるギヨは、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)のベルナール・アルノー(Bernard Arnault)会長兼最高経営責任者の次男アレクサンドル・アルノー(Alexandre Arnault)の妻としても知られる。
フランスの伝統的な装飾技術パスマントリーを用いた“ギュンターバッグ”(11万9900円)や、奈良美智の作品に着想を得たジャケット(7万5900円)とパンツ(6万4900円)のセットアップなど、アートに造詣の深いギヨが生み出す商品は、これまでにないデザインを求める女性たちから支持を集める。日本では、グルッポタナカが国内市場における独占販売権を取得し、卸売やポップアップ、公式ECサイトで販売する。
22年には、シリーズAラウンドにおいてベンチャーキャピタル「セコイア・キャピタル (Sequoia Capital)」および女性の個人投資家を引受先とする資金調達を行なった。投資家には、ビヨンセ(Beyonce)やリアーナ(Rihanna)、ジゼル・ブンチェン(Gisele Bundchen)、ガブリエラ・ハースト(Gabriela Hearst)らが名を連ねる。女性経営者として確固たるビジョンを軸に、グローバルにビジネスを広げるギヨに話を聞いた。
WWD:ロンドンの名門セント・マーチン美術大学(CENTRAL SAINT MARTINS)では、美術史を学んだ。アーティストを目指していた?
ジェラルディーヌ・ギヨ=デストレー共同創業者兼チーフ・ブランド・オフィサー(以下、ギヨ):いいえ。昔からアート作品が好きで、ギャラリーや美術館などアーティストを支える仕事に憧れていました。アート批評を学んだ学歴は、ファッションデザイナーとしては珍しいのではないでしょうか。でも、この経験がブランドをユニークなものにしてくれていると思います。
WWD:ブランド立ち上げの動機は?
ギヨ:卒業後フランスに戻り、24歳で共同創業者のラティシア・ロンブローゾと一緒に「デストレー」を立ち上げました。ジュエリーやバッグのカテゴリーはすでに飽和状態で、ビジネス的に苦しんでいるブランドも多く知っていましたから、まずは大好きな帽子を軸にスタートしました。小さい頃から、ファッションは身近な存在で、美しい服で溢れていた母のクローゼットを覗いて、いろんな服を試してみるのが好きでした。思い返せばその頃から、いつか自分のブランドを持ちたいと夢見ていたと思います。
スタートは、フランスのモノづくりにこだわる手頃な価格帯の帽子ブランド
WWD:当時ほかの帽子ブランドには何が欠けていた?
ギヨ:一方に「ザラ(ZARA)」や「トップショップ(TOPSHOP)」のような巨大なブランドがあり、他方で「メゾン・ミッシェル(MAISON MICHEL)」のようなラグジュアリーブランドはありますが、その間のプレイヤーは少ない。私はそこを埋める、高品質で手頃な価格帯のメード・イン・フランスのブランドを立ち上げたいと思いました。帽子のモノづくりは非常に複雑で、真のサヴォアフェールが求められます。情熱を持って作られる長い過程にも感銘を受けました。私たちにとって、地元の経済を支えることもとても大事な視点で、今でもほとんどの商品は、メード・イン・フランスにこだわっています。
WWD:立ち上げ当初から、すでにモノづくりのネットワークを持っていた?
ギヨ:いいえ、全く。グーグルで地元のハットメーカーを検索するところから始めました。片っ端から電話をかけて、「すみません、ハット100個を作りたいのですが………」と頼むんですが、最初は「たった100個?」と笑われました。それでも、「すぐに100万個にしてみせるから」と説得し続けてチャンスを掴むことができました。手頃な価格で実現することも私たちのビジョンでしたから、メーカーと話し合いを重ね、お互いが納得する価格に落とし込むことができました。
WWD:発売当初の反響は?
ギヨ:とてもよく売れました。そこから手応えを感じて、バッグやジュエリー、レディ・トゥ・ウエアにカテゴリーを広げました。今レディ・トゥ・ウエアは特に好調で、ハットの売り上げを超えました。今ではレディ・トゥ・ウエアとハットが私たちのビジネスの2大カテゴリーです。
WWD:デザインの着想源は?
ギヨ:アート作品からヒントを得ることも多いですし、ビンテージ品の場合もあります。どこに旅行しても、現地のビンテージショップは必ずチェックします。服や食器、家具、きっと家にあるものの95%くらいがビンテージ品です。ベッドのシーツでさえも、ビンテージ品なんです(笑)。
新鮮なデザインを求める幅広い女性たちが支持
WWD:憧れている人物は?
ギヨ:父です。父は不動産で起業しました。ジャンルは違いますが、一から会社を立ち上げ、大企業に育て上げた父にはとても影響を受けています。同じ女性起業家としては、トリー・バーチ(Tory Burch)。その両者には、夢を描くことの大切さ、同時にそれを実現するために一生懸命努力し続けることを学びました。まだ「トリー バーチ」には届かないけれど、夢を実現できると思わせてくれる素晴らしいチームがいます。
WWD:現在の顧客層は?
ギヨ:30〜60代まで幅広い年齢層の方に支持されています。彼女たちに共通しているのは、何かこれまでとは違ったデザインを探しているという点。アイコニックな色使いやアシンメトリックで遊び心のあるデザインは、プレス関係者やバイヤーからもユニークだと評価されています。主要マーケットは、米国、フランス、韓国、イギリスがトップ4。9月にはロンドンの百貨店ハロッズでも取り扱いが始まるので、期待しています。特に韓国での伸びは顕著です。大きなマーケティング戦略をするわけでもなく広がっていきましたが、韓国の実業家の李富真が結婚式で、私のバッグを着用してくれたときには、問い合わせが殺到しました。先日友人である、ブラックピンク(BLACKPINK)のロゼ(ROSE)がインスタグラムに上げてくれたので、さらに知名度が上がるはずです。彼女は素晴らしい人物で、ブランドのことも応援してくれています。
WWD:資金調達には、ビヨンセやリアーナらが参加している。
ギヨ:女性の投資家を募ることも、私が自分に課した挑戦の1つでした。女性だけでビジネスを成長させることができると世界に証明したいと思ったから。それを成し遂げた自分たちを誇りに思います。彼女たちには定期的にアドバイスをもらっています。ちょうど先日は、ビヨンセからの依頼で彼女のツアー用にハットを作りましたよ。
WWD:日本では、どのようにブランドを成長させていく?
ギヨ:日本は、世界のトレンドセッターです。流行に敏感で、アヴァンギャルドな商品を好む日本の消費者には、「デストレー」が受け入れられる土壌が十分にあると思っています。まずは卸売に注力しますが、来年をめどに出店もできたらうれしい。
WWD:今後のビジョンは?
ギヨ:今後は世界で出店を加速したい。ちょうど1年前にパリに初めて店舗を出店しましたが、とても好調です。個人的には、大きな夢を描くこと、それに向かって諦めずに努力する素晴らしさを多くの人に伝えていきたいです。
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「メルヴィータ」本国グローバルPRが語る「地球や人に優しいモノづくりを加速」する狙い
ディディエ・テブナン/メルヴィータ グローバルPR&トレーニングディレクター プロフィール
1963 年生まれ。18 歳まで南米、アジアなど海外で過ごす。インテリアデザイナーの PR を経て、98 年ロクシタングループに入社し、ヨーロッパ地区のトレーニングディレクターを務める。2009 年に「メルヴィータ」に参加。 トレーニング部門を立ち上げ、新しい市場の開拓をサポートした後、現職
仏発オーガニックコスメブランド「メルヴィータ(MELVITA)」は、今年創立40周年を迎えた。それを機にWWFフランスが行うウミガメの保全活動をサポートを開始するなど、地球や人に優しいモノづくりをさらに加速する。また技術革新も進み、それを具現化した商品の一つであるネイチャーとサイエンスを融合した化粧水“ソルスデローズ エッセンスローション”(150mL、4400円)を9月6日に発売する。このほど、来日したディディエ・テブナン(Didier Thevenin)=メルヴィータ グローバルPR&トレーニングディレクターがブランドや商品に対する思いを語った。
WWD:来日の目的は?
ディディエ・テブナン=メルヴィータ グローバルPR&トレーニングディレクター(以下、テブナン):日本の年間スケジュールの確認と、新商品のローンチ、日本スタッフとのミーティングを予定する。特にスタッフとは今後の事業戦略や来年に予定する新ロゴ・パッケージの計画などを伝えた。
WWD:日本は2011年から展開するが、日本市場をどうとらえているのか。
テブナン:一言でいうと現在の状況に満足している。スタッフの多くが「メルヴィータ」の根幹を理解して、化粧品だけでなく、本物のライフスタイルを提供するブランドであると広めてくれている。小売り店でも「メルヴィータ」の商品を見かけることが多い。12年前に想定した位置づけと比較すると、さらにライフスタイルを変容できるブランドとして貢献できるし、上を目指せるだろう。現在10カ国で本格展開するが、フランスと日本が常に売り上げ上位を占める。2年以内にアメリカへの進出を計画している。
WWD:本物のライフスタイルとは?
テブナン:健康と環境に配慮した商品を提供することだ。「メルヴィータ」を訴求する際のインスピレーションを与えてくれたハチドリの物語がある。アマゾンで森林火事が発生し、多くの野生動物が森から逃げていたが、ハチドリが川に向かい口に水を含み消化活動をしていた。それを見たある動物がハチドリに「一滴の水で山火事が消せるのか?」と聞くと、ハチドリは「たとえ消せなくても自分にできることをしている。一羽では不可能なことも、みんなが一緒にやれば流れを変えることができる」と応えたという。この話は「メルヴィータ」のことでもあると思っている。「メルヴィータ」を消費者に紹介し、使用してもらうことで環境や人に好循環が生まれることにつながる。
スタッフをブランドアンバサダーに任命
WWD:グローバルPR担当のほか兼務するトレーニングディレクターとして日本で多くのスタッフと対話した。
テブナン:本部のスタッフとはもちろん、3日間で150人の販売スタッフと対話した。その中で重視したのはパッションと教育だ。私は25年前にロクシタングループに入社したが、当時は小さな企業で日本にも進出していなかった。ただ、上記の物語のように巨大なポテンシャルがあるブランドだと思っていたので、「メルヴィータ」を買収した際、「メルヴィータ」で仕事をしたいと手を上げた。新たな市場開拓ができ、好奇心を持って取り組んでいる。こうしたパッションは人に伝わると信じている。
WWD:スタッフの中からブランドの思いを伝えるアンバサダーになるべく人を探している。
テブナン:アンバサダーは役職ではなく、それぞれの職務を果たしながらブランドを体言する人物だ。マーケテイング担当に指南できるほどの知識が深い人、その国にマッチした考えを発信できる人、オプティミスト(楽天的)な考えをしている人、誠実で目的を忘れない人、私が伝えることを自国の言葉で伝えられる人をブランドアンバサダーに任命する。現在、イタリアとスロベニア、マレーシアにアンバサダーがおり、日本でも候補者がいて見極めるタイミングだ。
ブランドが発展するための商品誕生
WWD:“ソルスデローズ エッセンスローション”は「メルヴィータ」が発展していくための期待値の高い商品と聞く。
テブナン:オーガニックスキンケアの概念を覆す、ネイチャーとサイエンスを融合した商品だ。ブランド初のマイクロオイルフラクションテクノロジーを採用し、ピンクの小さな粒が視覚的にも華やかさを演出する。肌を潤すだけでなくふっくらとした健康的な肌へ導く新感覚な化粧水でスペシャルな逸品が完成した。
地球環境・従業員にも優しい取り組みを推進
WWD:ブランド誕生40周年で大地から海への環境保全も強化する。
テブナン:自然を尊重する取り組みを推進する中で、生分解性の高い商品を展開する。ビューティ業界はプラスチック廃棄量が多い産業のため、「メルヴィータ」は海洋成分を採用してきた。その中で絶滅の危機から海洋生物を救う取り組むを行うべきと、WWFフランスとスポンサーシップを結んだ。海洋生物多様性の保全プロジェクトを財政面で支援し、23年から3年にわたって、ウミガメの生育と沿岸漁業の調和を図ったり、保護に活用したりする資金として年間10万ユーロ(約1500万円)を寄付する。
WWD:生産工場も環境に配慮する。
テブナン:創業地であるフランス・アルデッシュ地方に構える生産工場は、使用電力の28%を太陽光発電で賄う。25年までに95%まで引き上げる計画だ。18年から原料の保管庫を半地下に設けた。それにより1年中、冷暖房を使用せずに一定温度を保てている。また、冬に降った水を保管し、雨が少ない夏に植物の散水用に活用する。
工場のスタッフには、乗り合い車で出社を推進する。入り口近くの駐車場は乗り合い車を優先するほか、毎月抽選でガソリンのプレゼントも行う。工場に勤務するスタッフも環境保全の意識が高まり、9月になると夏時期に観光客が多く訪れゴミが増えることから、岸辺のゴミ拾いを労働時間外に自発的に実施するようになった。
若い世代と未来を作る
WWD:若い世代へもアプローチする。
テブナン:未来を作るのは若い世代だ。「メルヴィータ」も若返りを図りたいと思っている。その一つが店舗だ。廃棄物の削減や生物多様性などを訴求すると共に、効果実感のあるスキンケアをそろえていることも伝えていく。現在、フランスに2店舗ほど新コンセプトの店舗を開設しているが、近い将来、日本でも新コンセプトの店舗を構える予定だ。これまでブランドを象徴するアイテムがアルガンオイルだったが、幅広いラインアップを改めて紹介できるだろう。日本においても「メルヴィータ」はさらなる高みを目指していく。
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「メルヴィータ」本国グローバルPRが語る「地球や人に優しいモノづくりを加速」する狙い
ディディエ・テブナン/メルヴィータ グローバルPR&トレーニングディレクター プロフィール
1963 年生まれ。18 歳まで南米、アジアなど海外で過ごす。インテリアデザイナーの PR を経て、98 年ロクシタングループに入社し、ヨーロッパ地区のトレーニングディレクターを務める。2009 年に「メルヴィータ」に参加。 トレーニング部門を立ち上げ、新しい市場の開拓をサポートした後、現職
仏発オーガニックコスメブランド「メルヴィータ(MELVITA)」は、今年創立40周年を迎えた。それを機にWWFフランスが行うウミガメの保全活動をサポートを開始するなど、地球や人に優しいモノづくりをさらに加速する。また技術革新も進み、それを具現化した商品の一つであるネイチャーとサイエンスを融合した化粧水“ソルスデローズ エッセンスローション”(150mL、4400円)を9月6日に発売する。このほど、来日したディディエ・テブナン(Didier Thevenin)=メルヴィータ グローバルPR&トレーニングディレクターがブランドや商品に対する思いを語った。
WWD:来日の目的は?
ディディエ・テブナン=メルヴィータ グローバルPR&トレーニングディレクター(以下、テブナン):日本の年間スケジュールの確認と、新商品のローンチ、日本スタッフとのミーティングを予定する。特にスタッフとは今後の事業戦略や来年に予定する新ロゴ・パッケージの計画などを伝えた。
WWD:日本は2011年から展開するが、日本市場をどうとらえているのか。
テブナン:一言でいうと現在の状況に満足している。スタッフの多くが「メルヴィータ」の根幹を理解して、化粧品だけでなく、本物のライフスタイルを提供するブランドであると広めてくれている。小売り店でも「メルヴィータ」の商品を見かけることが多い。12年前に想定した位置づけと比較すると、さらにライフスタイルを変容できるブランドとして貢献できるし、上を目指せるだろう。現在10カ国で本格展開するが、フランスと日本が常に売り上げ上位を占める。2年以内にアメリカへの進出を計画している。
WWD:本物のライフスタイルとは?
テブナン:健康と環境に配慮した商品を提供することだ。「メルヴィータ」を訴求する際のインスピレーションを与えてくれたハチドリの物語がある。アマゾンで森林火事が発生し、多くの野生動物が森から逃げていたが、ハチドリが川に向かい口に水を含み消化活動をしていた。それを見たある動物がハチドリに「一滴の水で山火事が消せるのか?」と聞くと、ハチドリは「たとえ消せなくても自分にできることをしている。一羽では不可能なことも、みんなが一緒にやれば流れを変えることができる」と応えたという。この話は「メルヴィータ」のことでもあると思っている。「メルヴィータ」を消費者に紹介し、使用してもらうことで環境や人に好循環が生まれることにつながる。
スタッフをブランドアンバサダーに任命
WWD:グローバルPR担当のほか兼務するトレーニングディレクターとして日本で多くのスタッフと対話した。
テブナン:本部のスタッフとはもちろん、3日間で150人の販売スタッフと対話した。その中で重視したのはパッションと教育だ。私は25年前にロクシタングループに入社したが、当時は小さな企業で日本にも進出していなかった。ただ、上記の物語のように巨大なポテンシャルがあるブランドだと思っていたので、「メルヴィータ」を買収した際、「メルヴィータ」で仕事をしたいと手を上げた。新たな市場開拓ができ、好奇心を持って取り組んでいる。こうしたパッションは人に伝わると信じている。
WWD:スタッフの中からブランドの思いを伝えるアンバサダーになるべく人を探している。
テブナン:アンバサダーは役職ではなく、それぞれの職務を果たしながらブランドを体言する人物だ。マーケテイング担当に指南できるほどの知識が深い人、その国にマッチした考えを発信できる人、オプティミスト(楽天的)な考えをしている人、誠実で目的を忘れない人、私が伝えることを自国の言葉で伝えられる人をブランドアンバサダーに任命する。現在、イタリアとスロベニア、マレーシアにアンバサダーがおり、日本でも候補者がいて見極めるタイミングだ。
ブランドが発展するための商品誕生
WWD:“ソルスデローズ エッセンスローション”は「メルヴィータ」が発展していくための期待値の高い商品と聞く。
テブナン:オーガニックスキンケアの概念を覆す、ネイチャーとサイエンスを融合した商品だ。ブランド初のマイクロオイルフラクションテクノロジーを採用し、ピンクの小さな粒が視覚的にも華やかさを演出する。肌を潤すだけでなくふっくらとした健康的な肌へ導く新感覚な化粧水でスペシャルな逸品が完成した。
地球環境・従業員にも優しい取り組みを推進
WWD:ブランド誕生40周年で大地から海への環境保全も強化する。
テブナン:自然を尊重する取り組みを推進する中で、生分解性の高い商品を展開する。ビューティ業界はプラスチック廃棄量が多い産業のため、「メルヴィータ」は海洋成分を採用してきた。その中で絶滅の危機から海洋生物を救う取り組むを行うべきと、WWFフランスとスポンサーシップを結んだ。海洋生物多様性の保全プロジェクトを財政面で支援し、23年から3年にわたって、ウミガメの生育と沿岸漁業の調和を図ったり、保護に活用したりする資金として年間10万ユーロ(約1500万円)を寄付する。
WWD:生産工場も環境に配慮する。
テブナン:創業地であるフランス・アルデッシュ地方に構える生産工場は、使用電力の28%を太陽光発電で賄う。25年までに95%まで引き上げる計画だ。18年から原料の保管庫を半地下に設けた。それにより1年中、冷暖房を使用せずに一定温度を保てている。また、冬に降った水を保管し、雨が少ない夏に植物の散水用に活用する。
工場のスタッフには、乗り合い車で出社を推進する。入り口近くの駐車場は乗り合い車を優先するほか、毎月抽選でガソリンのプレゼントも行う。工場に勤務するスタッフも環境保全の意識が高まり、9月になると夏時期に観光客が多く訪れゴミが増えることから、岸辺のゴミ拾いを労働時間外に自発的に実施するようになった。
若い世代と未来を作る
WWD:若い世代へもアプローチする。
テブナン:未来を作るのは若い世代だ。「メルヴィータ」も若返りを図りたいと思っている。その一つが店舗だ。廃棄物の削減や生物多様性などを訴求すると共に、効果実感のあるスキンケアをそろえていることも伝えていく。現在、フランスに2店舗ほど新コンセプトの店舗を開設しているが、近い将来、日本でも新コンセプトの店舗を構える予定だ。これまでブランドを象徴するアイテムがアルガンオイルだったが、幅広いラインアップを改めて紹介できるだろう。日本においても「メルヴィータ」はさらなる高みを目指していく。
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「Qoo10」ビューティ担当がプレゼン!“メガ割”でチェックすべきアイテム7選
総合ECモールの「キューテン(Qoo10)」は現在、四半期に1回開催しているビッグセール“メガ割”を9月12日まで開催している。運営会社イーベイジャパンの米川由満ビューティ営業部長から、メイクからスキンケアまで“メガ割”対象の注目のアイテムを7つ教えてもらった。
コスメ部門
「エチュード」“ドローイング アイブロウ ペンシル”
価格:各352円
カラー:全7色
韓国コスメブランド「エチュード(ETUDE)」のアイブロウペンシルは、カラー展開が全7色と豊富なラインアップを用意している。「芯の硬さがちょうど良く、非常に描きやすいのが特徴のアイブロウペンシル。352円という気軽に購入できる価格で、コストパフォーマンスも良い」(米川)。
「ジョンセンムル」“エッセンシャル スキン ヌーダー クッション”
価格:各5830円
カラー:全7色
韓国のメイクアップアーティスト、ジョンセンムル(Jung Saem Mool)が手掛けるメイクアップブランド「ジョンセンムル(JUNG SAEM MOOL)」のクッションファンデーションは同ブランドのスターアイテム。自然なカバーとマットな仕上がりを好む日本の消費者から高い支持を得る。「カバー力があって崩れにくい。リピート率が高いクッションファンデーション」(米川)。
「リリミュウ」“トーンアップカラープライマー”
価格:各1760円
カラー:全4色
タレントの指原莉乃がプロデュースするコスメブランド「リリミュウ(RIRIMEW)」の定番アイテムである化粧下地“トーンアップカラープライマー”。「若年層に支持されているブランド『リリミュウ』。化粧下地のカラーは4色あるが、中でも肌の色むらをカバーするイエローが人気」(米川)。
「ハオミー」“メルティーフラワーリップティント”
価格:各1870円
カラー:全7色
インフルエンサーの橋下美好がプロデュースするメイクアップブランド「ハオミー(HAOMII)」のティントリップ。オリーブ果実油やアルガンオイル、ローズヒップエキスなど植物由来の保湿成分を配合し、唇に滑らかにフィットしながら長時間付けたての色をキープする。「皮むけや乾燥の心配がいらないティントリップで、ユーザーからは『色持ちが良く、マスクを着用していても使える』などのレビューが多数投稿されている」(米川)。
「ティルティル」“マスクフィットメイクアップフィクサー”
価格:1650円
容量:80mL
「ティルティル(TIRTIR)」のメイクキープミストは、メイクアップの最後に吹きかけることで長時間メイクをキープする。「クッションファンデーションが人気の『ティルティル』だが、同商品も大変好調の売れ行き。メイクが崩れにくいのはもちろん、潤いも与えられる。霧状の細かいミストで、まんべんなく吹きかけられる」(米川)。
スキンケア部門
「ラゴム」“ラゴム ジェルトゥウォーター クレンザー”
価格:2310円
容量:220mL
「ラゴム(LAGOM)」の朝用洗顔料。顔を濡らさずにそのまま塗布すると、ジェルがウォーターテクスチャーに変化する。皮脂や汚れを優しく洗い流す。「珍しいジェルタイプの朝用洗顔料。スッキリするがツッパリ感がなく、潤いを取り去りすぎない。刺激も少なくて気持ちの良い使い心地」(米川)。
「ファンケル」“ディープクリア洗顔パウダー”
価格:1980円
容量:30個入り
「ファンケル(FANCEL)」の“ディープクリア洗顔パウダー”は、角栓などを浮かして落とし、滑らかな肌に導く酵素洗顔料。「ロングセラーの洗顔料。鼻の黒ずみや毛穴が目立つときに使用すると、つるっとした肌に仕上がる。『ファンケル』の公式ストアで同商品を購入すると“マイルドクレンジングオイル”のミニボトルが付いてくる“メガ割”限定の施策を行なっている。数量限定なので、早めにチェックすると良い」(米川)。
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「Qoo10」ビューティ担当がプレゼン!“メガ割”でチェックすべきアイテム7選
総合ECモールの「キューテン(Qoo10)」は現在、四半期に1回開催しているビッグセール“メガ割”を9月12日まで開催している。運営会社イーベイジャパンの米川由満ビューティ営業部長から、メイクからスキンケアまで“メガ割”対象の注目のアイテムを7つ教えてもらった。
コスメ部門
「エチュード」“ドローイング アイブロウ ペンシル”
価格:各352円
カラー:全7色
韓国コスメブランド「エチュード(ETUDE)」のアイブロウペンシルは、カラー展開が全7色と豊富なラインアップを用意している。「芯の硬さがちょうど良く、非常に描きやすいのが特徴のアイブロウペンシル。352円という気軽に購入できる価格で、コストパフォーマンスも良い」(米川)。
「ジョンセンムル」“エッセンシャル スキン ヌーダー クッション”
価格:各5830円
カラー:全7色
韓国のメイクアップアーティスト、ジョンセンムル(Jung Saem Mool)が手掛けるメイクアップブランド「ジョンセンムル(JUNG SAEM MOOL)」のクッションファンデーションは同ブランドのスターアイテム。自然なカバーとマットな仕上がりを好む日本の消費者から高い支持を得る。「カバー力があって崩れにくい。リピート率が高いクッションファンデーション」(米川)。
「リリミュウ」“トーンアップカラープライマー”
価格:各1760円
カラー:全4色
タレントの指原莉乃がプロデュースするコスメブランド「リリミュウ(RIRIMEW)」の定番アイテムである化粧下地“トーンアップカラープライマー”。「若年層に支持されているブランド『リリミュウ』。化粧下地のカラーは4色あるが、中でも肌の色むらをカバーするイエローが人気」(米川)。
「ハオミー」“メルティーフラワーリップティント”
価格:各1870円
カラー:全7色
インフルエンサーの橋下美好がプロデュースするメイクアップブランド「ハオミー(HAOMII)」のティントリップ。オリーブ果実油やアルガンオイル、ローズヒップエキスなど植物由来の保湿成分を配合し、唇に滑らかにフィットしながら長時間付けたての色をキープする。「皮むけや乾燥の心配がいらないティントリップで、ユーザーからは『色持ちが良く、マスクを着用していても使える』などのレビューが多数投稿されている」(米川)。
「ティルティル」“マスクフィットメイクアップフィクサー”
価格:1650円
容量:80mL
「ティルティル(TIRTIR)」のメイクキープミストは、メイクアップの最後に吹きかけることで長時間メイクをキープする。「クッションファンデーションが人気の『ティルティル』だが、同商品も大変好調の売れ行き。メイクが崩れにくいのはもちろん、潤いも与えられる。霧状の細かいミストで、まんべんなく吹きかけられる」(米川)。
スキンケア部門
「ラゴム」“ラゴム ジェルトゥウォーター クレンザー”
価格:2310円
容量:220mL
「ラゴム(LAGOM)」の朝用洗顔料。顔を濡らさずにそのまま塗布すると、ジェルがウォーターテクスチャーに変化する。皮脂や汚れを優しく洗い流す。「珍しいジェルタイプの朝用洗顔料。スッキリするがツッパリ感がなく、潤いを取り去りすぎない。刺激も少なくて気持ちの良い使い心地」(米川)。
「ファンケル」“ディープクリア洗顔パウダー”
価格:1980円
容量:30個入り
「ファンケル(FANCEL)」の“ディープクリア洗顔パウダー”は、角栓などを浮かして落とし、滑らかな肌に導く酵素洗顔料。「ロングセラーの洗顔料。鼻の黒ずみや毛穴が目立つときに使用すると、つるっとした肌に仕上がる。『ファンケル』の公式ストアで同商品を購入すると“マイルドクレンジングオイル”のミニボトルが付いてくる“メガ割”限定の施策を行なっている。数量限定なので、早めにチェックすると良い」(米川)。
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「Qoo10」ビューティ担当がプレゼン!“メガ割”でチェックすべきアイテム7選
総合ECモールの「キューテン(Qoo10)」は現在、四半期に1回開催しているビッグセール“メガ割”を9月12日まで開催している。運営会社イーベイジャパンの米川由満ビューティ営業部長から、メイクからスキンケアまで“メガ割”対象の注目のアイテムを7つ教えてもらった。
コスメ部門
「エチュード」“ドローイング アイブロウ ペンシル”
価格:各352円
カラー:全7色
韓国コスメブランド「エチュード(ETUDE)」のアイブロウペンシルは、カラー展開が全7色と豊富なラインアップを用意している。「芯の硬さがちょうど良く、非常に描きやすいのが特徴のアイブロウペンシル。352円という気軽に購入できる価格で、コストパフォーマンスも良い」(米川)。
「ジョンセンムル」“エッセンシャル スキン ヌーダー クッション”
価格:各5830円
カラー:全7色
韓国のメイクアップアーティスト、ジョンセンムル(Jung Saem Mool)が手掛けるメイクアップブランド「ジョンセンムル(JUNG SAEM MOOL)」のクッションファンデーションは同ブランドのスターアイテム。自然なカバーとマットな仕上がりを好む日本の消費者から高い支持を得る。「カバー力があって崩れにくい。リピート率が高いクッションファンデーション」(米川)。
「リリミュウ」“トーンアップカラープライマー”
価格:各1760円
カラー:全4色
タレントの指原莉乃がプロデュースするコスメブランド「リリミュウ(RIRIMEW)」の定番アイテムである化粧下地“トーンアップカラープライマー”。「若年層に支持されているブランド『リリミュウ』。化粧下地のカラーは4色あるが、中でも肌の色むらをカバーするイエローが人気」(米川)。
「ハオミー」“メルティーフラワーリップティント”
価格:各1870円
カラー:全7色
インフルエンサーの橋下美好がプロデュースするメイクアップブランド「ハオミー(HAOMII)」のティントリップ。オリーブ果実油やアルガンオイル、ローズヒップエキスなど植物由来の保湿成分を配合し、唇に滑らかにフィットしながら長時間付けたての色をキープする。「皮むけや乾燥の心配がいらないティントリップで、ユーザーからは『色持ちが良く、マスクを着用していても使える』などのレビューが多数投稿されている」(米川)。
「ティルティル」“マスクフィットメイクアップフィクサー”
価格:1650円
容量:80mL
「ティルティル(TIRTIR)」のメイクキープミストは、メイクアップの最後に吹きかけることで長時間メイクをキープする。「クッションファンデーションが人気の『ティルティル』だが、同商品も大変好調の売れ行き。メイクが崩れにくいのはもちろん、潤いも与えられる。霧状の細かいミストで、まんべんなく吹きかけられる」(米川)。
スキンケア部門
「ラゴム」“ラゴム ジェルトゥウォーター クレンザー”
価格:2310円
容量:220mL
「ラゴム(LAGOM)」の朝用洗顔料。顔を濡らさずにそのまま塗布すると、ジェルがウォーターテクスチャーに変化する。皮脂や汚れを優しく洗い流す。「珍しいジェルタイプの朝用洗顔料。スッキリするがツッパリ感がなく、潤いを取り去りすぎない。刺激も少なくて気持ちの良い使い心地」(米川)。
「ファンケル」“ディープクリア洗顔パウダー”
価格:1980円
容量:30個入り
「ファンケル(FANCEL)」の“ディープクリア洗顔パウダー”は、角栓などを浮かして落とし、滑らかな肌に導く酵素洗顔料。「ロングセラーの洗顔料。鼻の黒ずみや毛穴が目立つときに使用すると、つるっとした肌に仕上がる。『ファンケル』の公式ストアで同商品を購入すると“マイルドクレンジングオイル”のミニボトルが付いてくる“メガ割”限定の施策を行なっている。数量限定なので、早めにチェックすると良い」(米川)。
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1位は、「フェティコ」は女性を解放する服 「自由に生きる女性の邪魔をしないで」|週間アクセスランキング TOP10(8月24〜30日)
「WWDJAPAN」 ウイークリートップ10
1週間でアクセス数の多かった「WWDJAPAN」の記事をランキング形式で毎週金曜日にお届け。
今回は、8月24日(木)〜8月30日(水)に配信した記事のトップ10を紹介します。
- 1位 -
「フェティコ」は女性を解放する服 「自由に生きる女性の邪魔をしないで」

舟山瑛美デザイナーによる「フェティコ(FETICO)」が28日、2024年春夏コレクションのランウエイショーを「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」で行った。過去2シーズンのショーはアワード受賞による支援での開催だったが、今回はブランド独自でショーを実施。公式会場の渋谷ヒカリエを離れ、東京・品川の寺田倉庫へとキャパシティーを拡大した。
> 記事の続きはこちら- 2位 -
「ケイト」初のクッションファンデ誕生 “リップモンスター”の独自技術を応用

「ケイト(KATE)」は10月21日、ブランド初のクッションファンデーション“カラー&カバークッション”(各2035円※編集部調べ、以下同)を発売する。専用のケース(605円)は別売りとなる。
> 記事の続きはこちら- 3位 -
ユニクロ社長兼COOに塚越大介グローバル事業CEOが就任 柳井氏は会長兼CEOに

ユニクロは9月1日付で、現在グローバル事業のCEOを務める塚越大介取締役が、代表取締役社長兼COOに昇格する人事を発表した。現在、ユニクロの代表取締役会長兼社長を務める柳井正ファーストリテイリング会長兼社長は、引き続き代表取締役会長兼CEOとしてユニクロやグループ全体の経営上の意思決定や事業拡大をリードしていく。
> 記事の続きはこちら- 4位 -
9月1日発売「ユニクロ × マメ クロゴウチ」2023年秋冬ラストコレクション モデル・ヨガインストラクターの池田莉子がリアルに役立つ肌見せコーデを提案!

ファッションラバーに絶大な支持を得る、ユニクロと「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI)」とのコラボレーションコレクション「ユニクロ アンド マメ クロゴウチ(UNIQLO AND MAME KUROGOUCHI以下、マメクロ)」が、ついに今シーズンでラストを迎える。“下着と洋服の境界線を越える、新しいインナーウエア”をコンセプトに掲げ、身体のラインを美しく見せるデザインを追求してきた「マメクロ」。その集大成となる2023年秋冬コレクションの魅力を、肌見せコーデにこだわりのあるモデル・ヨガインストラクターの池田莉子がセルフスタイリングとともにお届け。
> 記事の続きはこちら- 5位 -
「ニューバランス」と「ダブルタップス」の第3弾コラボスニーカー“990v6” 9月1日発売

「ニューバランス(NEW BALANCE)」は、西山徹が手掛ける「ダブルタップス(WTAPS)」とコラボレーションした第3弾スニーカー“990v6”を発表した。価格は4万4000円で、9月1日に「ニューバランス」の公式オンラインストアをはじめ、東京・日本橋浜町のティーハウス ニューバランス(T-HOUSE New Balance)やニューバランス 六本木 19:06、一部店舗などで取り扱う。
> 記事の続きはこちら- 6位 -
「オニツカタイガー」から秋の新作スニーカー ぷくっと膨れたフォームがかわいい

「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」は9月1日、新作スニーカー“デンティグレ パフ”を発売する。グレー、デザート、ブラックの3色展開で、価格は各2万4200円。
> 記事の続きはこちら- 7位 -
「ジェラピケ」×ポケモンが9月28日に発売 ピカチュウやカビゴンがモチーフの全47型

「ジェラートピケ(GELATO PIQUE)」は睡眠ゲームアプリ「ポケモン スリープ」とのコラボコレクションを9月28日に発売する。全国の直営店と公式オンラインストア、ECデパートメントストア「ウサギ オンライン」とポケモンセンターで取り扱う(ポケモンセンターは本コレクションの一部を販売する)。各オンラインサイトとアプリでは同日12時に発売を開始する。また、特設ページを9月13日12時からジェラートピケ公式オンラインストア、「ウサギ オンライン」で公開する。
> 記事の続きはこちら- 8位 -
デパートで「ダイソー」コスメ異例の完売 企画担当者に聞く“いい意味で100均に見えない”モノづくり

100円均一ショップ「ダイソー(DAISO)」のコスメが盛り上がりを見せている。ビューティブランドが軒並み値上げを図る昨今、ワンコイン価格でコスメが手に入るとあれば、注目度が高まるのも必然だ。アフターコロナの中でマスクを外す人が増加したことも相まって、売り上げが大幅に伸びている。特に韓国風コスメブランド「コーウ(COOU)」は今年2月の発売開始から欠品が続き、一時は「売っているところを見たことがない」と嘆く声がSNSにあふれた。商品開発の旗振り役は、コスメ部門の企画責任者であるチーフバイヤーに、2021年12月に就任した小林 奈穂氏(32)だ。
> 記事の続きはこちら- 9位 -
「ルイ・ヴィトン」が腕時計“タンブール”の新作を9月に発売 ウオッチの高級路線化で現行モデルの約80%を廃番に

「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は、アイコニックなウオッチ“タンブール(TAMBOUR)”をシックかつスポーティーに再解釈した新作を9月に発売する。また、ウオッチの高級路線化を進めるため、今回の新作発売を前に現行モデルの80%程度を順次廃番とする。新作は、直径40mmで厚さ8.3mmの薄型ケースとメタルブレスレットを一体化したユニセックスモデルで、ステンレススティール製を2型、ゴールドを2型、ステンレススティールとゴールドを組み合わせたものを1型の計5型を用意した。価格は“タンブール オトマティック スティール(Tambour Automatic Stainless Steel)”のブルーとシルバーがそれぞれ261万8000円で、ほかのモデルについては近日中に発表する。
> 記事の続きはこちら- 10位 -
「ワコール」から服と下着の境界を超える服「アワワコール」がデビュー クリエイティブディレクターに一ツ山佳子

ワコールのファッションブランド「アワワコール(OUR WACOAL)」が8月24日、デビューした。同ブランドのクリエイティブディレクターにはスタイリストの一ツ山佳子、デザイナーには酒寄順子を起用。ワコールの人体計測データや下着の開発技術をファッションのスペシャリストの知見を融合した高い実用性とファッション性を兼ね備えたウエアを提案する。
> 記事の続きはこちらThe post 1位は、「フェティコ」は女性を解放する服 「自由に生きる女性の邪魔をしないで」|週間アクセスランキング TOP10(8月24〜30日) appeared first on WWDJAPAN.
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- 1位 -
「フェティコ」は女性を解放する服 「自由に生きる女性の邪魔をしないで」

舟山瑛美デザイナーによる「フェティコ(FETICO)」が28日、2024年春夏コレクションのランウエイショーを「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」で行った。過去2シーズンのショーはアワード受賞による支援での開催だったが、今回はブランド独自でショーを実施。公式会場の渋谷ヒカリエを離れ、東京・品川の寺田倉庫へとキャパシティーを拡大した。
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「ケイト(KATE)」は10月21日、ブランド初のクッションファンデーション“カラー&カバークッション”(各2035円※編集部調べ、以下同)を発売する。専用のケース(605円)は別売りとなる。
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ユニクロ社長兼COOに塚越大介グローバル事業CEOが就任 柳井氏は会長兼CEOに

ユニクロは9月1日付で、現在グローバル事業のCEOを務める塚越大介取締役が、代表取締役社長兼COOに昇格する人事を発表した。現在、ユニクロの代表取締役会長兼社長を務める柳井正ファーストリテイリング会長兼社長は、引き続き代表取締役会長兼CEOとしてユニクロやグループ全体の経営上の意思決定や事業拡大をリードしていく。
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9月1日発売「ユニクロ × マメ クロゴウチ」2023年秋冬ラストコレクション モデル・ヨガインストラクターの池田莉子がリアルに役立つ肌見せコーデを提案!

ファッションラバーに絶大な支持を得る、ユニクロと「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI)」とのコラボレーションコレクション「ユニクロ アンド マメ クロゴウチ(UNIQLO AND MAME KUROGOUCHI以下、マメクロ)」が、ついに今シーズンでラストを迎える。“下着と洋服の境界線を越える、新しいインナーウエア”をコンセプトに掲げ、身体のラインを美しく見せるデザインを追求してきた「マメクロ」。その集大成となる2023年秋冬コレクションの魅力を、肌見せコーデにこだわりのあるモデル・ヨガインストラクターの池田莉子がセルフスタイリングとともにお届け。
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「ニューバランス」と「ダブルタップス」の第3弾コラボスニーカー“990v6” 9月1日発売

「ニューバランス(NEW BALANCE)」は、西山徹が手掛ける「ダブルタップス(WTAPS)」とコラボレーションした第3弾スニーカー“990v6”を発表した。価格は4万4000円で、9月1日に「ニューバランス」の公式オンラインストアをはじめ、東京・日本橋浜町のティーハウス ニューバランス(T-HOUSE New Balance)やニューバランス 六本木 19:06、一部店舗などで取り扱う。
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「オニツカタイガー」から秋の新作スニーカー ぷくっと膨れたフォームがかわいい

「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」は9月1日、新作スニーカー“デンティグレ パフ”を発売する。グレー、デザート、ブラックの3色展開で、価格は各2万4200円。
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「ジェラピケ」×ポケモンが9月28日に発売 ピカチュウやカビゴンがモチーフの全47型

「ジェラートピケ(GELATO PIQUE)」は睡眠ゲームアプリ「ポケモン スリープ」とのコラボコレクションを9月28日に発売する。全国の直営店と公式オンラインストア、ECデパートメントストア「ウサギ オンライン」とポケモンセンターで取り扱う(ポケモンセンターは本コレクションの一部を販売する)。各オンラインサイトとアプリでは同日12時に発売を開始する。また、特設ページを9月13日12時からジェラートピケ公式オンラインストア、「ウサギ オンライン」で公開する。
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デパートで「ダイソー」コスメ異例の完売 企画担当者に聞く“いい意味で100均に見えない”モノづくり

100円均一ショップ「ダイソー(DAISO)」のコスメが盛り上がりを見せている。ビューティブランドが軒並み値上げを図る昨今、ワンコイン価格でコスメが手に入るとあれば、注目度が高まるのも必然だ。アフターコロナの中でマスクを外す人が増加したことも相まって、売り上げが大幅に伸びている。特に韓国風コスメブランド「コーウ(COOU)」は今年2月の発売開始から欠品が続き、一時は「売っているところを見たことがない」と嘆く声がSNSにあふれた。商品開発の旗振り役は、コスメ部門の企画責任者であるチーフバイヤーに、2021年12月に就任した小林 奈穂氏(32)だ。
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「ルイ・ヴィトン」が腕時計“タンブール”の新作を9月に発売 ウオッチの高級路線化で現行モデルの約80%を廃番に

「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は、アイコニックなウオッチ“タンブール(TAMBOUR)”をシックかつスポーティーに再解釈した新作を9月に発売する。また、ウオッチの高級路線化を進めるため、今回の新作発売を前に現行モデルの80%程度を順次廃番とする。新作は、直径40mmで厚さ8.3mmの薄型ケースとメタルブレスレットを一体化したユニセックスモデルで、ステンレススティール製を2型、ゴールドを2型、ステンレススティールとゴールドを組み合わせたものを1型の計5型を用意した。価格は“タンブール オトマティック スティール(Tambour Automatic Stainless Steel)”のブルーとシルバーがそれぞれ261万8000円で、ほかのモデルについては近日中に発表する。
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「ワコール」から服と下着の境界を超える服「アワワコール」がデビュー クリエイティブディレクターに一ツ山佳子

ワコールのファッションブランド「アワワコール(OUR WACOAL)」が8月24日、デビューした。同ブランドのクリエイティブディレクターにはスタイリストの一ツ山佳子、デザイナーには酒寄順子を起用。ワコールの人体計測データや下着の開発技術をファッションのスペシャリストの知見を融合した高い実用性とファッション性を兼ね備えたウエアを提案する。
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「ここのがっこう」が10代向けにサマースクール開講 「ファッションの深さを伝えたい」
ファッションスクール「ここのがっこう」を主宰する山縣良和デザイナーは8月29日、自身がディレクターを務める10代に向けたクリエイティブ教育のためのスペース「GAKU」で、「ここのがっこう」のサマースクールを開催した。
「ここのがっこう」は、毎年入門編としてのサマースクールを実施する。今回は、中高校生ら10代を中心に13人が参加。最年少は10歳の小学生だった。前半はファッションの概念を学ぶ講義を行い、後半は“変身”をテーマに、着なくなった服や資材を持ち寄って作品を製作するワークショップを実施した。「変身するなら風になりたいと思った」とオーガンジーでドレスを製作した人や、「変身と聞くと変わらなきゃいけない気がしたけど、自分をさらけ出すことも解釈の1つ」と透明なビニールでドレスを製作した人など、山縣デザイナーの講義からヒントを得た多様なクリエーションが発表された。
講義最後に山縣デザイナーから、「これからの時代にファッションができることは何か?」と問いかけられると、参加者からは「ファッションは、自分の意思表示をする手段だと思う。服を選ぶという自己決定の習慣は、政治や環境活動など他の場でも応用できるようになるのではないか」といった意見が出るなど、ファッションと自分、社会の関係性を考える議論が活発に行われた。講義を終えた山縣デザイナーに話を聞いた。
「ファッションは楽しくもあり、深さもある」
WWD:前半の講義では、山縣さんからの「ファッションとは何か?」という投げかけから始まり、「自分とは?」といった議題に発展した。10代には難しいのではと思われる哲学的な投げかけにも、熱心に回答する参加者の様子が印象的だった。
山縣良和デザイナー(以下、山縣):僕自身も参加者の熱量に驚いた。専門的な教育を受けないかぎり10代でファッションの概念を学べる場はほとんどないからなのか、サマースクールには毎年とてもモチベーションが高い子たちが集まる。
WWD:講義の後半は、「変身」をテーマにワークショップを行ったが、なぜそのテーマに?
山縣:変われる、という体験をしてもらいたかった。何かに悩んだときに、その価値観自体が変幻自在であると理解してもらうために有効だと思った。
WWD:今後、業界全体でサステナビリティを推進していくためにもファッション教育が要になる。「ここのがっこう」では、サステナビリティの概念をどう伝えている?
山縣:以前の方が、「サステナビリティ」という言葉をよく使っていたが、今は少し減ったように思う。今日の講義でも最後に「プラネタリーヘルス」(地球の健康と人間の健康が相互依存的に関係しているという概念)の考え方を紹介したが、自分と社会、環境のつながりを意識してもう少し自発的な問題意識の立ち上がりを大事にしている。
WWD:今回の講義を通して特に持ち帰って欲しかったメッセージは?
山縣:ファッションは楽しくもあり、深さもあるということ。僕の10代は、カッコいいものを探して着飾ることに夢中だった。気候変動しかり、さまざまな社会問題に向き合わざるを得ない時代を生きている世代だからこそ、ファッションの深みに気付くことは重要だと思う。「ここのがっこう」でも、「装いとは何か?」といった概念から講義をする。僕がやるべきことは、本質を理解する手助けをすることで、間口を広げること。あえてファッション表現はこれだと言い切らないことを大事にしている。ファッションを学んで最終的には、それぞれがやりたいことを実現してほしい。
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サロン専売品からニキビケアクレンジングまで注目高まる「シコンエキス」とは?
成分を重視して、スキンケアやヘアケアを選ぶ人が増えている。今回、注目するのは、「シコン(紫根)エキス」。多年草ムラサキの根を乾燥させたもので、赤紫色が美しくポリフェノールが豊富。一見すると、新しい成分のようにも思えるがその歴史は古い。江戸時代に、外科医・華岡清洲が紫根の粉末と豚の脂を混ぜた軟膏「紫雲膏(しうんこう)」を考案。湿疹、ニキビ、火傷などに使える万能外用薬として活用されてきた。各メーカーに、シコンエキスを配合した経緯やヒット商品の売れ行きを聞いた。
ニキビに悩む人の「クレンジング」にも
ランクアップは、2021年5月に発売した皮脂と毛穴の専門ブランド「アクナル(ACNAL)」の“アクナル ピンクハーブクレンジング”(120mL、3190円)にシコンエキスを配合している。ニキビに悩む人のクレンジング・洗顔中は、肌に触れる時間が長く負担がかかりやすいという理由から。佐々木春佳ランクアップ 製品開発部担当は、「繰り返すにきびの原因は、『毛穴の炎症』と『皮脂の酸化』であり、ニキビを繰り返さないために対策が必要だと考えた。クレンジング・洗顔中は、肌に触れる時間が長く負担がかかりやすいが、洗っている間も肌に負担をかけずニキビケアをできたらという発想から、抗炎症・抗菌作用に優れたシコンエキスを選んだ。“アクナル ピンクハーブクレンジング”は、3月の時点で、定期便での契約者数ベースが前年同月比236%増、売り上げは同220%増と好調に推移しており、にきびや毛穴の詰まりに悩む方から高い支持を得ている」。
毎日使える、スカルプケアシャンプーにも
「ウルオッテ(URUOTTE)」のリンス不要シャンプー“ナチュラルシャンプーエキゾチックフラワー”(250mL、3300円)にも、シコンエキスが配合されている。クィーン代表笹川直子は「スカルプケアを習慣化したいと顧客から支持されている。頭皮の小さな炎症によるかゆみやフケが気になる方からも好評で支持を得ている。特に、20〜30代で頭皮ケアを始める女性から人気」とコメント。
水を一滴も使わず日本原種の薔薇ハマナスを使用した美容クリーム
「アムリターラ(AMRITARA)」は、シコンエキスを配合したアイテムを数多く展開する。“ローズエナジークリーム”(30mL、7480円)、“マイルドベールクリーム”(35mL、6710円)、“ピュア トリートメント リップグロス(ボタニカルピンク)”(10g、2640円)など、幅広い。勝田小百合アムリターラ代表兼商品開発は、「紫根の持つ有効成分『シコニン』の効果を、肌や唇にも活かしたいと考えている。また海外産ではなく、在来の日本産の紫根を使いたいという強い思いがあり、北海道産の農薬不使用で栽培した紫根を使用している」。特に“ローズエナジークリーム”の人気が高く、22年3月から23年3月までの累計販売数は1742個にのぼる。
アリミノは新ラインのキー成分に選定。毛髪の酸化抑制に期待
「アリミノ(ARIMINO)」は、美容室専売ブランド「スプリナージュ(SPRINAGE)」より、新ライン・モイストヴェールを発売する。“スプリナージュ シャンプー モイストヴェール”<医薬部外品>(280mL、3300円)、“スプリナージュ トリートメント モイストヴェール”(230g、3300円)、“スプリナージュ モイストヴェール ミスト”(120mL、3300円)、“スプリナージュ モイストヴェール バーム”(25g、3300円)の共通成分として選んだのがシコンエキスだ。津田真希アリミノ商品開発部担当は、「植物は特有の色を持つものが多くあり、その色味成分に有効性が確認できる。色素を持つ植物の検討を行ってきたが、ピンク色を呈することができるシコンをキー成分として選定した。ピンクは心を穏やかにし、女性ホルモンを活性化するなどの心理的効果も報告されており、情緒的価値を創出できると考えた。研究では、肌への新しい有効性や毛髪の酸化抑制へのアプローチも認められた」と話す。
――― 今後、盛り上がりが期待される注目成分は?
佐々木春佳ランクアップ 製品開発部担当:40代以降に肌のハリ不足に着目して開発された、3種の植物の混合成分『ハリスチャー』だ。肌の土台を整え、セラミドを合成するなど、みずからのうるおいを作り出す力をサポートする働きがある。近年、注目されているゾンビ細胞の増殖を抑制する働きも。ハリスチャーの研究結果は日本抗加齢医学会総会にて発表し、2つの特許を申請している。
笹川直子クィーン代表取締役:2020年11月のリニューアル時から米や茶など、日本の土地に根差した植物に着目している。耕作放棄地の茶の実オイルを配合した“ナチュラルシャンプー 無香料”(250mL、2750円)は、サスティナブルコスメアワード2021を受賞した。
津田真希アリミノ商品開発部担当:ルイボスエキス。ルイボスは、南アフリカに自生する落葉亜低木でハーブの一種だ。ルイボスエキスは、体内のたんぱく質と余分な糖がくっつく「AGEs」をブロックする働きがあるといわれている。髪と地肌の糖化を防ぎ、エイジングに有効な植物由来成分として注目している。
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メルローズ50周年記念スペシャル対談 トップランナーに聞く「ファッション半世紀」

右:重松理/ユナイテッドアローズ名誉会長:(しげまつ・おさむ) 1973年に婦人服メーカーのダック入社。76年ビームスの創業に携わり、 1号店店長に就任。89年に退社し、ユナイテッドアローズを設立して社長に就 く。2004年に会長に。14年に取締役を退任し、名誉会長に。日本の高い精神性と美意識の継承を理念とする「順理庵」をプロデュースするほか、公益財団法人「日本服飾文化振興財団」の代表理事としても活動する
PHOTO:TAMEKI OSHIRO
メルローズ50周年記念の連載企画「メルローズと私」のスタートに先立ち、メルローズ前社長の武内一志ビギホールディングス社長と、日本のファッションを50年間見つめてきたユナイテッドアローズ創業者の重松理名誉会長の対談を企画した。
「洋服は着るのではなく、着こなす」
WWD:お二人の出会いは?
重松理ユナイテッドアローズ名誉会長(以下、重松):共通の知人を介してお会いしたのが最初です。その後プライベートでも食事にいくようになりました。私の妻が「マルティニーク」が好きでお店での買い物に付き合っていたこともあったので、お会いする以前から武内さんのことは知っていました。「マルティニーク」は、武内さんが立ち上げられたセレクトショップですね。
武内一志ビギホールディングス社長(以下、武内):はい。メルローズの母体であるビギは1970年代から80年代のDCブランドの火付け役で、デザイナーの世界観の強い服を仕掛けてきました。しかし80年代後半から90年代になるとブームは下火となり、海外のブランドやライフスタイルを提案するセレクトショップが若者の人気を集めます。そのトップランナーがユナイテッドアローズでした。初期のユナイテッドアローズのことをよく覚えていますが、店内には“大人のおもちゃ箱”のような高揚感がありました。スタッフさんにもオーラがあり、何よりも知識豊富で洋服のことを何でも教えてくれた。「洋服は着るのではなく、着こなすんだ」と、強く影響を受けました。自分もいつかセレクトショップを作ることが夢になり、2000年に立ち上げたのが「マルティニーク」でした。
東京の風俗と文化が変わる瞬間を演出した
WWD:創立当時のビギやメルローズについて、お二人の印象を教えてください。
重松:私は73年に社会人となり、今年でメルローズと同じく、ファッションの仕事を始めてちょうど50年になります。70年代初頭は、洗練されたブランドといえばインポートでした。そんな中、パルコや西武百貨店の「カプセル」が日本の最先端のブランドを取り上げ、中でも(メルローズの前身である)ビギはひときわ輝いていました。
当時、アパレルメーカーの多くは神田や日本橋の繊維問屋街に事務所を構え、百貨店や専門店に卸売りしていました。その時代に、ビギやメルローズはすでに表参道にブティックを出店していたのです。表参道がファッションの街になったのも、ビギやメルローズの力が大きい。表参道沿いにあった石垣造りの「ビギ」の1号店は、60年代のロンドンの影響も受けていてとてもかっこ良かった。同潤会青山アパートメントにあったニット専門の「メルローズ」の1号店にも行ったことがあると思います。今振り返れば、東京の風俗と文化が変わる瞬間でした。「日本のブランドがかっこいい」ということが新鮮だったのです。
武内:僕は重松さんより年下なのでまだ学生でしたが、テレビドラマ「傷だらけの天使」(74~75年)で「ビギ」を知りました。菊池武夫先生がデザインを手がけていた頃の「ビギ」が衣装提供をしており、ブランドがドラマに衣装提供をすることもそうですが、主演のショーケン(萩原健一)の洗練されたファッションに衝撃を受けました。
学生時代には親に「参考書を買う」と嘘をついておこづかいをもらい、「ビギ」に買い物に行きました(笑)。同潤会の「メルローズ」でも、面白いニットが売っていたので購入していました。
DCブランドからセレクトショップの時代へ
重松:その頃はちょうどビギやメルローズを代表に、日本にも社名を冠したブランドが出てきた時代。私は最初の3年は婦人アパレルメーカーで働いていましたが、社名がブランド名になることに驚きを覚えました。武内さんは、最初はビギに入社したのですよね。
武内:はい。85年にビギに入社し、最初はメンズデザイナーとして働いていました。ようやく仕事に慣れてきた92年、ビギの創業者の大楠(祐二)に「ウィメンズデザインもやってみないか」と背中を押され、グループのメルローズに移籍したのが転機になりました。
DCブランドの後にインポートブランド、セレクトショップと次々と新しい潮流が出てきて、ファッション業界は混沌としていました。僕はビンテージアイテムを中心に、オリジナルとセレクトアイテムを取り扱うウィメンズのセレクトショップ「マルティニーク」と「ティアラ」を立ち上げました。それまでメルローズの出店先は百貨店が多かったのですが、路面店やファッションビルへも販路を広げたのです。重松さんやユナイテッドアローズからも、もちろん影響を受けてのことでした。
重松:メルローズとユナイテッドアローズでの協業はありませんが、私とメルローズとのつながりは、英ブランド「ジョンスメドレー」にもあります(メルローズは18年にジョンスメドレーを輸入販売するリーミルズエージェンシーを子会社化)。セレクトショップに欠かせないブランドで、買い付けもしていました。私自身も大好きで、今は見ない古いタグの時代からのニットを何枚も持っています。
互いに刺激し合い、高めていく
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武内:そうですね。235周年を迎えた際の「ジョンスメドレー」のホームページでは、重松さんに愛好家としてご登場いただきました。昨年のピンクハウスの50周年記念展にも多忙の合間を縫ってお越しいただき、メルローズの歴史をいつもしっかり見てくださることに心から感謝しています。
WWD:ビギやメルローズとユナイテッドアローズは、互いに刺激し合い、発展しているのが面白いですね。メルローズには「服―それはあくまで着る人のためにある」というフィロソフィーがあります。これは半世紀の歴史で根付いたのでしょうか。長くビジネスを続けるために大切にすることはありますか。
武内:昔からビギはデザイナーによる個性の際立ったブランドがそろっていました。一方、メルローズはより広い市場を意識し、柔らかい感じのテイストで、多くの方々に愛される服を作る。手に取ったときの気持ちの高まり、袖を通したときのワクワクやドキドキ。長くアパレルビジネスを存続させていくために「まだ見ぬ景色を、お客様にどれだけ見せることができるか」を大切にしてきました。僕はメルローズの経営からは退きましたが、今も脈々と受け継がれていると思います。
WWD:重松さんは昨年、自身が立ち上げられた日本服飾文化振興財団の書籍「日本現代服飾文化史 ジャパンファッション クロニクル インサイトガイド1945~2021」でも、日本のファッションの変遷をまとめられています。ビギやメルローズがけん引したDCブームをはじめさまざまな過去のファッションを記録されていますね。
重松:日本のファッション史は本当に豊かでバラエティに富んでいます。「こんなにも豊かだったのだ」ということを広く伝えたかったのが、出版のきっかけでした。一方でファッションは年々ミニマル化して、引き算になっています。新しい人たちにもっと足し算のファッションを楽しんでほしいと思っています。ファッションは不滅ですから。
メルローズ
03-3464-3310(代表)
ファッションの「これまで」と「これから」
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「ジョー マローン」のアイコン、イングリッシュ ペアーの香りが進化 ジュース製造過程の廃棄水分を活用
セリーヌ・ルー/「ジョー マローン ロンドン」フレグランス開発責任者 プロフィール
フレグランスとビューティ業界で長年キャリアを積む。クリエイティブスタジオのリーダーとして、専門知識や芸術的な感性、と科学的な知識を組み合わせて唯一無二のブランドを体現する香りをつくり続けている
「ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON以下、ジョー マローン)」のアイコニックな香りである“イングリッシュ ペアー&フリージア(以下、ペアー&フリージア)”が生まれ変わった。洋梨のジュースの製造過程で廃棄される水分から抽出された天然原料の洋梨のエッセンスを使用し、独自の製法で作られるようになったのだ。また、新たに“イングリッシ ペアー&スイート ピー(以下、ペアー&スイート ピー)”が登場。来日したセリーヌ・ルー「ジョー マローン」フレグランス開発責任者にイングリッシュ ペアーや新たな香りなどについて聞いた。
WWD:今回の来日の目的は?
セリーヌ・ルー=「ジョー マローン」フレグランス開発責任者:来日するのはロックダウン後初めて。日本にはたくさんインスピレーション源がある。今回は、イングリッシュ ペアーについて紹介するために来日した。
WWD:ペアーを天然香料にした理由と目的は?
ルー:“ペアー&フリージア”のインスピレーションは果樹園。イギリスで梨の木は日本における桜のようなもので、身近で象徴的な存在。ペアーに天然香料はなく、それがフラストレーションでもあった。天然の果物をフレグランスに使いたいと思ったから、それに挑戦するべきだと思った。この天然香料は、「ジョー マローン」のエクスクルーシブだ。
WWD:洋梨の廃棄物のアップサイクルはどのように行うか?
ルー:ジュースメーカーがジュースを製造する際に廃棄する水分を生かしている。その水分に熱を加えて水蒸気にすると、それに梨の成分が濃縮されている。それを香料として使用する。フレグランス1本につき、約1個の梨の抽出物を使用している。

廃棄物のアップサイクルだけでなく、生産者サポートも
WWD:「ジョー マローン」で使用している天然香料の割合は?
ルー:フレグランスごとに違う。天然のものがあればそれを使うのがルールだ。例えば、ジャスミンやローズには天然香料があるがスイート ピーにはないので、アコードをつくった。また、バランスを考えて天然香料を使うようにしている。
WWD:廃棄物をアップサイクルした香料を使用することにより、どのような効果がどのくらい見込めるか?
ルー:今後、もっと廃棄物をアップサイクルした素材を使っていきたい。自然環境に目を向けて、廃棄物の削減をすることで生産者の支援ができる。廃棄物の利用だけでなく、水の使用量を減らすこともできる。バニラの原料は、マダガスカルの生産者から長年調達している。同じ生産者から調達することで、現地の生産コミュニティーをサポートすることができる。
WWD:“ペアー&スイート ピー”を開発した理由は?
ルー:天然香料のペアーを他のフレグランスに使ってみたいと思ったから。パステルカラーのスイート ピーの花の色を香りで表現した。花のイメージ同様、甘美でロマンティックな香りになっている。“ペアー&フリージア”とレイヤードして楽しむこともできる。
WWD:「ジョー マローン」が他のフレグランスブランドと違う点は?
ルー:英国がインスピレーション源でフレグランスの名前が原材料名であること。また、意外性がある自然な香りで、まといやすい。フレグランスのストーリーには感情的なコネクションが感じられ、香りと共に旅路を歩むような親しみやすい存在であること。
WWD:フレグランス開発におけるこだわりは?
ルー:時間をかけて、自分の直感を信じる。誰にでもアピールする香りだと個性がなくなるから、直感を信じて判断する。
WWD:自分自身にとってフレグランスとは?
ルー:笑顔になるもの。ムードによりフレグランスは変わるが、心地よさや喜びを与えてくれる存在だ。
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返品率11%削減 「アンダーアーマー」とタッグ、バーチャサイズが初の「シューズ のオンライン試着」実装
どの業界でもリアル店舗と同様にECに力を入れているが、特にファッション分野では、試着ができない点をいかに解決するかが長年の課題となってきた。スポーツ用品ブランドである「アンダーアーマー(UNDER ARMOUR)」は4月、シューズのオンライン試着の導入に踏み切った。フィット感を求められるスポーツシューズを主力商材とする「アンダーアーマー」は、なぜシューズのオンライン試着を導入したのか?またその成果は?同サービスを提供したのは、服のオンライン試着サービスを、日本だけでなく世界中のアパレル企業に提供してきたバーチャサイズ(Virtusize)だ。同社にとってもシューズのオンライン試着サービスの提供は世界初。ドームでECを担当する伊藤直樹Eコマース部 開発・運用チーム Head of Teamと、バーチャサイズでヘッドオブウエストを務める野村奈緒バーチャサイズ シニアカスタマーサクセスマネージャーに聞いた。
ECではリアル店舗の
接客に代わる施策を重視

WWDJAPAN(以下、WWD):「アンダーアーマー」のECに対する考え方、運営方針は。
伊藤直樹 ドームEコマース部 開発・運用チーム Head of Team(以下、伊藤):現在「アンダーアーマー」は国内で直営店が4店舗、アウトレットを含めると35店舗です。専門店への卸が中心となっており、自社ECサイトは顧客とのダイレクトな接点という面で非常に重要です。ECは年間2000万セッションほどあり、より顧客とのエンゲージを高めるため、4月にアプリのリニューアルを実施しています。さらに新たな会員制プログラム「UAリワード」を作り、今後は会員限定のアイテム販売やイベントを強化する方針です。豪華なアスリートによる「ハウツー動画」などアプリ限定のコンテンツなども充実させており、アプリやECの強化を図っている真っ最中です。
アンダーアーマーが
バーチャサイズと組んだワケ

WWD:バーチャサイズにとっては世界初となるシューズのオンライン試着サービスを「アンダーアーマー」に導入した経緯は。
野村奈緒バーチャサイズ ヘッドオブウエスト/シニアカスタマーサクセスマネージャー(以下、野村):当社側からシューズサービスの開発のご相談をさせていただいたことがきっかけです。日本で「アンダーアーマー」を展開するドームには、昨年の秋にウエア版の「バーチャサイズ」をすでに導入してもらっており、実績も出ていたので、提案自体には非常に前向きに受け止めてもらえました。ただ、当社にとってもシューズ版のオンライン試着は世界でも実績がない初めての取り組みになります。多くの面でドーム側の協力を受ける必要がありました。その面でウエア版の導入時に、スポーツに対して本気度の高い顧客が多い「アンダーアーマー」のために細かなサイズデータと弊社のノウハウをかけあわせ、かなりのカスタマイズを実施し、成功していたことが評価されました。
WWD:ドーム側は、シューズのオンライン試着をどう考えていたのか?
伊藤:シューズはウエアよりサイズのレンジが細かく、加えて「アンダーアーマー」の顧客はフィット感によりシビアになります。これまでは店舗での試着なしにEC単体ではなかなか買ってもらえないという悩みがありました。また、4月に販売を開始した“UAフロー ベロシティ エリート”というレーシングシューズが少し独特なサイズ感の商品で、店頭で接客していると1サイズか2サイズ下げて買われる方が多くいらっしゃいます。そういった商品ごとのフィット感の違いに対しても、「いつも履いているサイズ」ではなく、きちんとロジックを立てて、ユーザー一人ひとりに合ったサイズを提案できる仕組みが欲しいと考えていました。「バーチャサイズ」はウエアでの取り組みでCVR(コンバージョンレート)の向上や返品率の低下が実際に数字として出ていたので、シューズについても前向きに検討しました。
野村:シューズのオンライン試着サービスは、2021年5月にパートナー企業と共同開発を発表するなど、ずっと事業化の道を探ってきました。シューズの形をAIに読み込ませたり、UI/UXの改善、導入後のサービスのあり方などは、当社も長い間研究開発に取り組んでいました。ただ、最終的にはやはり導入企業の協力が不可欠でした。これは企業文化だと思いますが、ドーム側の「まずはやってみましょう」という姿勢に大変助けられました。
返品率が11%削減!?
シューズのオンライン試着の可能性
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WWD:実際に導入してみての感触はどうか。
野村:試験導入段階の数字ですが、バーチャサイズのサイズ比較を使用しない場合と比べ、使用した場合のCVRは4~4.5倍程度向上しました。もちろんバーチャサイズに情報を登録している時点で購買意欲が高いユーザーという点もありますが、返品率も約11%低下しています。あくまで試験導入の数字なので、もう少し長期で数字を見ていかないといけないのですが、かなりの手応えを感じています。今後は返品理由のアンケートなども含めてロジックに反映していく予定です。バーチャサイズのレコメンドしたサイズ通りに買って小さかった/大きかったのか、違うサイズを買って小さかったのかなど、データの細かい部分も含めてデータサイエンスチームが精査します。
伊藤:当社としても期待通りの結果です。課題は、レコメンドの精度ですね。まだ、若干のばらつきがあります。ただ、これはデータを蓄積していくことで解決できるメドは立っています。もう一つは顧客により「バーチャサイズ」を信頼してもらう必要がある点です。実は返品データと照らし合わせると、ウエアよりシューズの方が正しいサイズをレコメンドしていることが分かっているのですが、それでもバーチャサイズが提案したものと違うサイズを買ってしまって返品につながる現象が起きています。
WWD:どう解決する?
伊藤:顧客に繰り返し使っていただいて信頼を積み上げつつ、当社側でも機能や、シューズのオンライン試着への説明を丁寧に行っていこうと思っています。
野村:もちろんこれは当社の課題でもあります。精度を上げる点に関してはデータに基づき、データサイエンスチームとディスカッションして改善していくのですが、現在は「あなたにはこのサイズです」といったシンプルな提案しかしていません。例えば「この靴のサイズは少し小さめです」や「こういったロジックで計算してこのサイズを提案しています」など、データはあるので、もう少し信頼をしてもらいやすくなるインターフェースをデザインチームと相談しているところです。顧客とのコミュニケーションについても、「アンダーアーマー」と相談しながらできることはどんどんやっていこうと考えています。
シューズのオンライン試着の今後
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WWD:今後は?
野村:他のパートナー企業も含めたこれまでの実績ですが、バーチャサイズを利用した場合にCVRは約8倍アップ、リピート率は約44%アップという結果が出ています。この実績のあるウエア版では、気になる商品を他の商品とイラスト上で比較したり、どの部分が大きめ、小さめかなどの細かいフィット感を知ることもできるようになっており、シューズ版よりも機能が充実しています。シューズ版では現在、足先の幅や形、よく履いているブランド情報などを活用したシンプルなロジックでサイズをおすすめしています。こちらはデータがたまればたまるほど、精度が上げられますが、これに加え、ユーザーの詳細な身体データ、例えば甲や膝より下の高さなどのデータを取り込むことで、レコメンドのロジックの軸を新たに作れることが分かっています。ウエア版ではユーザー自身が詳細なサイズを入力して精度を上げられる機能がかなり使用されており、シューズ版でも実装すれば活用してもらえるのではと思っています。
伊藤:実は当社でもこれまで店頭などで足形測定ができるイベントを時々やっていましたが、会員データとひもづけられていませんでした。測定したデータをこうしたサービスやEC上での施策に反映することができたら、「アンダーアーマー」ブランドの姿勢である「アスリートに寄り添う」の観点からもとても有効だと考えています。
野村:シューズのオンライン試着も今後は「アンダーアーマー」以外の取り組みを予定していますが、最初に顧客のロイヤルティが高く、かつフィット感などの機能を重視するドーム/「アンダーアーマー」とタッグを組めたことは非常に大きな第一歩になりました。シューズのオンライン試着のポテンシャルはウエアと同等か、それ以上とも考えています。多くのデータを蓄積することで精度を高められるのが、SaaSならではの特徴です。バーチャサイズは4000万のユーザーと1000以上のブランドで利用いただくことができるようになっています。シューズ版のオンライン試着も広げていくことで、ドームをはじめとした導入企業により貢献したいと考えています。
PHOTO:KOHEY KANNO
バーチャサイズ
「アパレル産業をデジタルでアップデートする方法」
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「SK-II」グローバルCEOが描く成長戦略 「ピテラ™️の奇跡をあらゆる手段で伝えたい」

PROFILE:韓国・延世大学で英文学学士、経営学修士を取得。 1994年4月、P&Gコリアに入社。P&Gアジアパシフィック ヘアケア リージョナルマーケティングディレクターなどを歴任した後、 2012年7月にP&GコリアCEO・ジェネラルマネージャー、16年1月にAPACスキン&パーソナルケア・セーフガード シニアバイスプレジデント、18年6月に中国スキン&パーソナルケア・セーフガード シニアバイスプレジデントを経て、22年2月から現職 PHOTO:KOHEY KANNO
「SK-Ⅱ」は日本市場が復調の兆しを 見せており勢いを取り戻しつつある。昨年2月、P&Gコリア出身のスーキョ ン・リー氏がグローバルCEO(最高経営責任者)に就任した。7月末に東京・表参道で開催した「SK-Ⅱ」商品と独自成分ピテラ™️、美肌の秘密を解き明かす一般向け体験型イベント「シークレットキーハウス」 に合わせて来日したリーCEOに、直近の商況と今後の成長戦略について聞いた。
「消費者は品質の重要性を感じている」
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WWD:2022年2月の就任から1年半が過ぎたが、「SK-Ⅱ」を取り巻く環境にどんな変化があったか。
スーキョン・リーSK-ⅡグローバルCEO(以下、リー):世界的にポストコロナ時代となり社会情勢は変わってきている。私たちの日常生活においてはマスクを外せるようになったのが大きな変化だ。コロナ禍の3年間を経て、消費者は自然環境や体の健康、体に取り入れるものの品質の重要性を感じている。肌を露出することでスキンケアの品質にこだわりたい人が増え、「SK-Ⅱ」にとって大きなチャンスになっている。
WWD:変化に対してどうアプローチしたか。
リー:奇跡的な出合いで誕生した「SK-Ⅱ」の独自成分ピテラ™️を知ってもらうことに努めた。ピテラ™️は特別な酵母の株から独自のプロセスで発酵させ生み出した天然由来成分で、長年の研究でさまざまな肌への便益が明らかになっている。昨年開催したブランド初のメディアとインフルエンサー向けグローバルイベント「ワールド ピテラ™️ デー」は大変好評を博し、今年は 「ワールド ピテラ™️ マンス」として規模を拡大。7月には一般向け体験イベント「シークレットキーハウス」を実施し、ピテラ™️の科学や研究の結果得られた発見について改めて伝えている。ソーシャルメディア上でも、消費者が知りたい情報を適切なタイミングとプラットフォームで発信する努力をしている。また、スキンケアブランドに期待されているのは商品イノベーションだ。これらを徹底的に追求している。
消費者の声を聞くことを何より重視
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WWD:足元の商況は?
リー:日本市場は春以降、インバウンドが急激に回復し、日本人客の消費意欲も上向き良い結果が出ている。その影響がシンガポールや香港にも波及しグローバルでも好調に推移している。日本は成熟した市場ではあるが、特にハイエンドのスキンケアブランドが伸びており「SK-Ⅱ」にはまだまだポテンシャルがある。消費者はより良い体験や商品、イノベーションとエンゲージしたいと思っている。私たちにはチャンスがたくさんある。
WWD:社内に対してはどのような働きかけを行ったか。
リー:元々の風土として備わっていたが、 改めて「より消費者の声を聞こう」「消費者のことをもっと知ろう」という点に徹底的にこだわるよう求めた。私たちはお客さまがどんなことに関心を持ち、どんな気持ちで毎日を送っているのかを考えることに多くの時間を費やすようになった。その結果、「もっとこんなことができるのではないか」など活発な議論が起きるようになった。ピテラ™️に対しても社内の理解を促進したいと考えている。本当に優れた成分なので深く知ろうと思うと終わりがない。その魅力を徹底的に周知し、イノベーションや新しい商品、サービスにつなげたい。
目指すのは優れた商品と体験の提供
WWD:中長期的な目標と、今年後半から来年にかけて実施する施策は?
リー:今「SK-Ⅱ」商品を愛用いただいているお客さまにより優れた商品を提供するのが一つの目標だ。そして、まだ出会えていない多くのお客さまにも「SK-Ⅱ」、そしてピテラ™️のことを知っていただきたい。お手入れの手応えを感じていただけるようどのようなサポートができるか、分かりやすい提案を考え抜く。私たちは肌に対しても高い情熱を持ちコミットしている。肌測定マシン「マジックスキャン」 はビューティ業界で最も進化しているツールの一つだ。画像解析により非接触で短時間のうちに今と今後の肌の状態について情報を得られる。自分の肌を理解するのに非常に役立つので周知していきたい。
「SK-Ⅱ」の“秋田10年肌研究”とは?

「SK-Ⅱ」は1999年、美しい肌を持つ女性が多いといわれる秋田県で、女性の肌の変化を追跡する調査 “秋田10年肌研究 ”をスタートした。5〜64歳までの108人の女性の肌を、ハリ、艶、シミ、シワ、キメなど10の項目で測定した。同一人物で加齢による肌の変化を追跡する調査は化粧品業界でも珍しく、その知見は今なお商品開発に生かされている。同研究を行った医学博士の宮本久喜三P&Gイノベーション リサーチ フェローは、「研究のきっかけは日本の南部と北部で肌の状態の違いを調べる調査。そこで秋田の人の肌が美しいことが分かり、10年肌研究につながった」という。
10年にわたる追跡調査の後、「SK-Ⅱ」商品を使用してもらい、さらに1年間肌の変化を追った。 研究に参加した佐々木志保さんは「10年は特別なスキンケアをしなかった。『SK-Ⅱ』を使ってからは手放せない存在になった」と振り返る。秋田とのつながりを強くするため今年、日本の美を発信する秋田川反の舞妓・芸妓との取り組みをスタート。「SK-Ⅱ」を使い始めて3カ月というまめ佳さんは「肌の調子が良くなった。 白塗りのノリも良く、気持ちも上向きになる」と話した。
SK-II お客さま相談室
0120-02-1325
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デパートで「ダイソー」コスメ異例の完売 企画担当者に聞く“いい意味で100均に見えない”モノづくり
100円均一ショップ「ダイソー(DAISO)」のコスメが盛り上がりを見せている。ビューティブランドが軒並み値上げを図る昨今、ワンコイン価格でコスメが手に入るとあれば、注目度が高まるのも必然だ。アフターコロナの中でマスクを外す人が増加したことも相まって、売り上げが大幅に伸びている。特に韓国風コスメブランド「コーウ(COOU)」は今年2月の発売開始から欠品が続き、一時は「売っているところを見たことがない」と嘆く声がSNSにあふれた。商品開発の旗振り役は、コスメ部門の企画責任者であるチーフバイヤーに、2021年12月に就任した小林 奈穂氏(32)だ。
「ダイソー」きってのヒットメーカー
小林氏は大創産業に新卒入社後、「ダイソー」の店舗配属を経てキッチン用品やキャンプ用品のバイヤーを歴任。“ちょこっとまな板”や“メスティン”(※キャンプグッズの一つ。アルミ製の飯ごう)などの人気商品を次々と企画・開発し、社長賞や「グッドデザイン賞」を多数受賞した社内きってのヒットメーカーだ。現在担当するコスメ部門でも1400以上のSKUを1人で担当し、そのすべてに目を通すという徹底ぶり。自他ともに認める“コスメオタク”なのかと思いきや、小林氏は「コスメは人並みに好き」と控えめ。コスメバイヤーになって初めて使用するアイテムも多かったため、日々自分自身で試し学びを新商品の開発に生かしているという。
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100均コスメの勝ち筋
「消費者目線」と「売価に対する価値」を常に意識するという小林氏。彼女が企画したコスメは、どれもいい意味で100円には見えない。例えば、冒頭に挙げた韓国風コスメブランド「コーウ」のアイシャドウ(200円)には11種類もの色が入っているし、クッションファンデ(300円)にはパフだけでなく鏡も付いている。容器デザインやブランドの書体を洗練させたり、そもそもプチプラコスメでは入手しづらい大粒のラメパレットやクッションファンデを商品化させたりした。その結果、「コーウ」は1ヶ月分がわずか1週間で売り切れるほどの人気商品となった。「ダイソー」が2月にテナントに入った東武百貨店池袋店では、オープン日に商品を探すため走って店を訪れた客が続出したという。百貨店で100均コスメが完売する異例の事態だった。
「ダイソー」コスメ購入者の属性は多種多様だ。試しやすい価格から、コスメ初心者のエントリーアイテムになりやすい。「100均なら買ってみよう」「失敗しても100円なら許せる」という心理が働く。 “ついで買い”も発生しやすい。日用品を購入する目的で来店した客が、コスメ売り場へ足を伸ばすケースも多い。それゆえ、安価なコスメを求める若年層以上に、実は「ダイソー」のメイン顧客である30〜40代の女性との親和性が高い。最近では男性客も散見され、その理由について小林氏は「百貨店やバラエティーショップよりもハードルが低いのではないか」と推測する。
ユーザーのメイクに関する知識やスキルも千差万別。初心者でも使いやすいようにと、商品の使用方法をパッケージに記載している。ドラッグストアやバラエティーショップのようなテスター設置をせず、百貨店のようなビューティアドバイザーを店頭に配置しない。そのため、アイメイクのグラデーションやハイライトを使った陰影メイクの作り方などを、いかにわかりやすく説明できるかがキモになる。
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一方、課題はベースメイクや基礎化粧品をどう売るか。目元や口元周りのポイントメイクには顧客の抵抗感が少ない一方で、より広い肌面積に塗布するアイテムは「100円だから大丈夫なのか?」と品質面で不安を抱かれやすい。小林氏は、「プチプラだからといって、商品の使用感や処方を犠牲にすることはない」と話す。コストカットは梱包資材などの工夫が大きい。パッケージを紙製にしたり説明書きをモノクロ印字にしたりすることで価格を抑える。「ダイソー」は物流も自社でまかなっており、そこで浮いたコストをさらに価格に還元できる。加えて同社は、基本的にはPB商品の協業先は非公開だが、コスメ商品だけは唯一メーカー名を開示し、透明性を強調する。「多くの人に使っていただくために、お客さまの抵抗感をなくしたい」。
小林氏の夢は、フルメイク可能な品揃えのブランドを「ダイソー」に並べること。種まきは少しずつ花開き、今や“ダイソーコスメ”のハッシュタグがSNSに誕生するまでとなった。「私の新作を待ってくれる人がいる」と大きなやりがいを感じている。
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伝説のランジェリーショップ「リュー・ドゥ・リュー」 龍多美子オーナーが40年貫く下着道
WWD JAPAN(WWD):下着に興味を持ったきっかけは?
「リュー・ドゥ・リュー」龍多美子オーナー(以下、龍):青山学院大学の高等部に通っていた16歳の頃、青山学院大学に通っていた5歳年上の恋人がいた。彼がランジェリー好きで、当時、創刊間もない「月刊プレイボーイ」のグラビアを広げて一緒に見ていた。彼が特に好んだのがガーターベルトとストッキングを着けたスタイルで、私は東京の下着屋を探し回ってフランスのエタコ社のガーターベルトを見つけた。それを身に着けた瞬間、「女になった」快感を自覚したのがきっかけだ。その彼とは5年の交際の後、結婚したが、残念ながら2年で離婚した。
WWD:5歳年上の恋人が、下着屋となる龍多美子の生みの親?
龍:そうだが、父が貿易の仕事をしており、渡米する度に母と3人の娘にネグリジェのお土産を買ってきてくれていた。末っ子である小学生の私にも。60年代、母親は海外ブランドの下着をアメ横に買いに行っていたし、2人の姉達も輸入下着を着けていて、私のファーストブラは米国ブランドの「バニティフェア(VANTY FAIR)」だった。それを考えると、その恋人と出会う前から下着屋になる素地はあったのだと思う。
WWD:そこから、インポートランジェリーに魅了されていく。
龍:高校時代は制服姿で下着専門店をめぐる日々だった。学校帰りに恵比寿の「ニャーゴ」へ寄った際、顔見知りのマダムが見せてくれたのが、入荷したばかりの「シモーヌ・ベレール(SIMONE PERELE)」のブラジャーとショーツ。繊細な総リバーレースのワイヤー入りブラで、美しいペパーミントグリーンだった。この下着に出合ったときの感動は忘れられず、品番まで覚えている。このランジェリーとの出合いにより、漠然とした“下着好き”から、“下着屋になりたい”と意識するようになった。短大に進むとすぐに青山にあった下着屋の「ジベ」でアルバイトを始めた。同店に勤めて6年目、23歳のときに店長になったが独立を決めた。
WWD: 「リュー・ドゥ・リュー」のコンセプトは?
龍:その人が持って生まれた肉体に戻るお手伝いをする、というのがコンセプト。最近、やっと“ボディーポジティブ”などの言葉でそれが認知されるようになったが、その核になる部分は40年前から変わらない。黄金比になるとか、新しい体になるとかではなく、その人本来の姿に合う下着を選ぶサポートをすることだ。
WWD:その人が持って生まれた美しさを引き出すということか?
龍:私は「引き出す」というより「戻す」という言い方の方が好きだ。その人本来の姿は、その人自身が知っていて、そこに近づける。“理想のからだ”みたいなものに惑わされるのはやめようということだ。
WWD:龍オーナーの採寸接客はメジャーを使わないことで知られているが?
龍:下着を売る上で大切なのは、感覚を研ぎ澄まし、いかにお客さまの体にフォーカスするかということ。それは、お客さまの体に触れて感じ取ることであり、メジャーで測った数字ではわからない。私だけでなく、当店のスタッフ全員が同じスタイルで接客している。
急激な売り上げ減から脱却できたPBのブラジャー
WWD:独立してから今まで、40年もの間には山も谷もあったはずだが?
龍:出店後、バブルの好景気と共に売り上げは右肩上がりで伸び、92〜93年にピークを迎えた。世の中はバブルが弾けていたが、売り上げは絶好調で年商2億4000万円を記録した。その後、急激に売り上げが下がり、96年には家賃が高すぎた代官山の店から恵比寿へ引っ越した。売り上げの落ち込みはひどく、2000年まで資金繰りが本当に大変だった。なんとか持ち堪え、下着屋のスタートを切った地に戻りたいと思い03年に青山に移った。青山の店は、商品の陳列するのではなく収納するスタイルに変えた。新作を並べて選んでもらうのではなく、まずカウンセリングして、お客さまに合うものを出して提案するという販売に切り替えた。その頃発刊した著書の反響もあって客数が伸び、売り上げも徐々に回復した。そして、13年に現在の吉祥寺に移転した。
WWD:経営が安定した理由は?
龍:完全カウンセリングの店舗にしたことと、出張販売をスタートしたことも大きい。知り合いから「うちのエリアでも販売して欲しい」と言われたのがきっかけで大阪と静岡で始めた。要望があれば売りに行くというパターンができた。当店が主催する販売会は当初7都市だったが、ネイルサロンやヘアサロンなどを経営している全国のお客さまから声がかかり、現在は全国17カ所で開始。週末を中心に年間約4カ月は地方に行っている。
龍:03年にPBを始めたこと。きっかけは、当時世界の下着業界を牽引していたブランドによるモールドブラ(1枚の生地を鋳型に入れてカップを形成するブラ)。モールドカップブラでは私が求めるフィッティングは叶えられないと判断して、PBを作ることにした。今、振り返ればそれは大正解だった。下着は、定番商品がないと厳しい。1980〜90年代はインポートにもそういう商品があったが、2000年以降は少なくなり、PBを作ることは必然だった。現在、売り上げの6割以上を占めるPBを始めていなければ、今の「リュー・ドゥ・リュー」はない。
WWD:それでも輸入下着を販売し続ける理由は?
龍:インポートランジェリーじゃないと伝わらないエッセンスがあるから。ディテールが繊細であるだけでなく、極限まで肉体を誇
り、女を楽しむ要素は国産のランジェリーにはなかなか見られない。とはいえ、納得のいくパターンでないと仕入れないのでセレクトするブランドも商品も少ない。今は、PBを含む国産ブランドが7割、インポートブランドが3割の構成比だ。
WWD:個人で簡単に輸入できるし、円安により日本のディストリビューターには厳しい時代だが?
龍:ヨーロッパのランジェリーブランドも日本のディストリビューターも減っている。インポートランジェリーが市場で生き残るためには、ディストリビューターが消費を喚起するような流れを作らなければ難しい。全て小売店任せでは、輸入下着に未来はない。
ECでの販売はしない。合わないものを売っても意味がないから
WWD:ECで販売したほうが効率がいいのでは?
龍:ECでの販売はしない。体に合わないものを売っても意味がないから。同じブランドでもコレクションが違えばフィッティングが違う。人が手で縫っている以上、1つ1つのブラに微妙な差がある。フィッティングなしの販売は基本しないが、「どうしても」と言われる場合は、オンラインでフィッティングを行ってサイズを見極めるのが当店のやり方だ。地方での販売会は、新作の販売だけでなく、過去に買ったブラジャーを持参してもらい再度フィッティングして、必要であればお直しにも対応している。新品を売ったほうが利益率は高いが、PBは長持ちするからメンテナンスの機会は必須だ。
WWD:下着業界に残したい事は?
龍:メジャーで採寸しない独自のフィッティング法も含め、私がやっていることを広めたい。不定期だが、下着業界の人材育成のため、講座「龍美術」も行っている。日本ではプロダクトアウトの商品ばかりが売られ、その結果が、消費者のブラジャー離れにつながっていると思う。私は、ブラジャーの役割は姿勢を起こすことだと考える。長年着物を着ていた日本人は、DNA的に着物により体を支えることに慣れている。帯が体を支え衣紋を抜くのが、着物のシステムだ。ブラジャーにより胸の下を支えて姿勢を起こすことができる。
WWD:今後の展望は?
龍:他人の目線を気にしてそれに反応する女性が多いと思う。女性が自分の体と向き合い、ブラジャーを通して主体性を取り戻せるように後押しするのが、私のミッションだと思っている。地方での販売会が増えて点が面になりつつある。私がその旗を振るのではなく、お客さま同士がつながり、発信者となって「リュー・ドゥ・リュー」の思想を広めて欲しい。下着は、もっと奥深く、もっと大事なものだと伝えていきたい。
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米津玄師、藤井風、King Gnuらの衣装を手がける スタイリスト・Remi Takenouchiって誰だ?
米津玄師や藤井風、King Gnu、水曜日のカンパネラらアーティストのスタイリングを手がけるスタイリスト・Remi Takenouchi(レミ タケノウチ)。ミュージックビデオやライブ、CMに登場するアーティストのコーディネート提案を行うだけでなく、しばしば衣装制作も行なってきた。業界で華々しく活躍する彼女ではあるものの、その姿や経歴について詳細はほとんど公にされていない。「Remi Takenouchi」とは一体何者なのか?「これまであまりメディアに露出してこなかった」と話す彼女に、「WWDJAPAN」はインタビューを実施した。
人付き合いに苦手意識
WWDJAPAN(以下、WWD):スタイリストを目指したきっかけは?
Remi Takenouchi(以下、Takenouchi):私は日本で服飾の専門学校に通っていたわけではありません。高校卒業後、イギリスのロンドンに一時滞在していたことがあります。ダークで退廃的な街の魅力に取り憑かれ、「ここにもっといたい」と思ったんです。そのためにどこかの学校に通おうと決めたのが21歳のころ。料理か服飾のどちらかを専攻しようと軽く考えていたのですが、自分のこれまでを振り返ったときに、“ご飯を我慢してまで服を買う”ことはしてきたけど、その逆はしたことがないと気づきました。ただ、自分にデザインはできないだろうし、ビジネスに関われるほどの英語力もない。そう考えて“消去法”で残ったのがスタイリストコース。当時は「スタイリストになろう!」と強く意識していたわけではありませんでした。
WWD:もともと服が好きだった?
Takenouchi:大好きでしたし、かわいい服に対する憧れが強かったです。(現在は休刊している雑誌)「キューティ(CUTIE)」や「オリーブ(OLIVE)」の読者だったのですが、服のクレジットに”ラフォーレ原宿“と書いてあるのを多く見かけて。「このおしゃれスポットに行ってみなければ!」と高校1年生のときに意を決して出かけ、「スーパーラバーズ(SUPER LOVERS)」の洋服を買ったこともありました。
WWD:現在に至るまでのキャリア形成は?
Takenouchi:イギリス時代にスタイリストのアシスタントをしていましたが、何度か仕事をしたのちに、結局ケンカ別れをしてフリーランスになりまして(笑)。ただ、私は人付き合いが全く得意ではないので、自分の売り込みができず…。頂いた仕事を引き受けるという“待ちぼうけシステム”をとるしか方法がなかった。ポートフォリオを人に見せることすら怖く、「(ポートフォリオを)持っていますか?」と関係者に聞かれても、「今は他に送ってしまって手元にありません」などと言って切り抜けていました。だから仕事が全くない時期もありましたね。アーティストのスタイリングをするようになったのも、来た仕事がそうだったから、というのが理由です。自分がキャリアをイギリスでスタートさせたので、海外誌やランウエイ、広告の案件を頂いて働いていました。
WWD:転機は。
Takenouchi:The fin.というバンドのミュージックビデオ(以下、MV)でスタイリングをしたことです。ロンドンから帰国して序盤のころに受けた仕事でした。MV撮影の数日前に、美術セットの写真を見て「自分が考えていた衣装のままではダメだ」と思ってしまって。「申し訳ないけど作り直したい」「私を信じてほしい」と頼み込み、美術との相性を再考しながら衣装の準備をし始めたんです。汚し作業(※あえて汚れたように衣装を着色する作業)の担当者に連絡し、撮影日の天候に合わせて汚しの程度も大幅に変更しました。元々人にものを言えない性格だったので、私自身にとっては物申すことを覚えた“事件”でした。
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“衣装っぽくない”衣装を追求
WWD:アーティストのスタイリングに関してこだわりはあるか。
Takenouchi:基本的には“いかにステージで映えるか”を考えます。例えばライティング1つとっても、色調によって衣装の見え方が変わってしまう。青色のライトに、寒色系の衣装は合わないですし。衣装の色がどの程度飛んでしまうのか、そして衣装がどの程度透けてしまうのかなど、全て念頭においてスタイリングをします。ライブでダンサーさんがいる場合には、踊ったときに身体や動きをきれいに見せられるかということが重要です。振り付け映像も確認して、ダンサーさんが衣装さばきを考えられるようにしていますね。
私は衣装制作もすることがあるんですが、“衣装すぎる衣装”は作りたくないと思っていて。アーティストの雰囲気とギャップが生まれないように、本人になじむリアルさを意識しています。そうすると、私自身スタイリングしていて気持ちがいいんですよね(笑)。大変身させたい気持ちと同時に、アーティスト本人の素材を生かしたい気持ちが湧いてくる。どれだけ尖った衣装でも、“着せられている感”が出ないようにしています。本人が好きな要素を入れたり、身体のラインを生かしたりすることがその秘けつですかね。ルーズシルエットが好きな方であればその意見を衣装に反映するとか、意見を聞きつつもスタイルがよく見えるデザインを取り入れるとか。
WWD:アーティスト本人の素材に注目し始めたのはいつ?
Takenouchi:アイドルグループのスタイリングが契機かもしれません。それまではモデルの方々を相手にスタイリングすることが多かったので、クライアントが要望するテーマを私なりに解釈し、“一枚絵”を描くように衣装を組んでいました。モデルは衣服を見せることがお仕事なので、私が何を着せても違和感が生まれづらい。一方、アイドルの方々の場合は本人を「魅せる」ことが重要になってきます。本人の素材を無視して“やりすぎた”衣装を着せると、彼らの個性を殺しかねない。だから、衣装デザインを考えることも好きではありますが、それよりも正確なサイジングにこだわりました。リースした大きな衣装をそのまま着せるのではなく、サイズの合うものを着せることに重要性を見出した経験です。
スタイリスト職への思い
WWD:スタイリストとして活動し続ける原動力は。
Takenouchi:自分を救ってくれている仕事でもあるからです。この仕事に私は「生きていても良いんだよ」と言ってもらえている気がします。私は“怠け者”で、領収書の作成やスケジューリングは不得手。さらに、毎日同じ時間に起床して通勤することのできない極度の飽き性です。スタイリストは勤務時間や仕事内容、会う人など全てがいつもバラバラなので、自分の性に合っています。この仕事がなくなったら私は人として終わってしまう。だから必ず成功させなくてはならないんです。
そして、絶対に嫌いになることがない仕事だから、というのも原動力になっています。私は人よりモノに思い入れが強い人間で、その対象が全て服に振り切っている。仕事のネガティブな面を見たとしても嫌いにならないからこそ、うまくやっていけていると思います。“好きな仕事”とあえて表現しないのは、“好き”は“嫌い”になってしまう可能性がある感覚だから。自分の中でしっくりこないんです。ただ、ずっと頭が休まらない職業でもあるので疲れてしまい、「もういつ辞めても後悔しない!」と思うこともしょっちゅうですけどね。そういうときは趣味のゲームをしています(笑)。
WWD:ご自身にとって服は“嫌いになることがない”大事なモノだと。
Takenouchi:大事ですね。スタイリストをしているなかでも、ずっと服に感動してきましたし、コロナ禍を経て服の重要さを再認識しました。私は普段、本当にパジャマばかり着ているんですが、パジャマで過ごすのと、外着を着るのとでは高揚感が全く違う。自分のような人間を変身させてくれる“鎧”です。
WWD:今後目指していくスタイリスト像は。
Takenouchi:実は私、ゲームの国内大会に出場するほどゲームをやり込んできました。だからスタイリストとして「ファミ通」(※KADOKAWAが発行するゲーム雑誌)で連載を持つのが夢。もうこれはずっと言っていますね。人生第一事項です!ゲームのレビューを書くためには本業の休みを増やさなきゃいけないなぁ。あとは、真面目な話ですけど“地球に優しいスタイリスト”になることですね。せっかくこの世界に生まれたから、そろそろ地球に恩返しがしたい。まだ具体的な案はまとまっていませんが、地球環境のための継続できるシステムを業界に作りたいと思っています。「これやりました、でも一瞬で終了しました」では意味がないですから。
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米津玄師、藤井風、King Gnuらの衣装を手がける スタイリスト・Remi Takenouchiって誰だ?
米津玄師や藤井風、King Gnu、水曜日のカンパネラらアーティストのスタイリングを手がけるスタイリスト・Remi Takenouchi(レミ タケノウチ)。ミュージックビデオやライブ、CMに登場するアーティストのコーディネート提案を行うだけでなく、しばしば衣装制作も行なってきた。業界で華々しく活躍する彼女ではあるものの、その姿や経歴について詳細はほとんど公にされていない。「Remi Takenouchi」とは一体何者なのか?「これまであまりメディアに露出してこなかった」と話す彼女に、「WWDJAPAN」はインタビューを実施した。
人付き合いに苦手意識
WWDJAPAN(以下、WWD):スタイリストを目指したきっかけは?
Remi Takenouchi(以下、Takenouchi):私は日本で服飾の専門学校に通っていたわけではありません。高校卒業後、イギリスのロンドンに一時滞在していたことがあります。ダークで退廃的な街の魅力に取り憑かれ、「ここにもっといたい」と思ったんです。そのためにどこかの学校に通おうと決めたのが21歳のころ。料理か服飾のどちらかを専攻しようと軽く考えていたのですが、自分のこれまでを振り返ったときに、“ご飯を我慢してまで服を買う”ことはしてきたけど、その逆はしたことがないと気づきました。ただ、自分にデザインはできないだろうし、ビジネスに関われるほどの英語力もない。そう考えて“消去法”で残ったのがスタイリストコース。当時は「スタイリストになろう!」と強く意識していたわけではありませんでした。
WWD:もともと服が好きだった?
Takenouchi:大好きでしたし、かわいい服に対する憧れが強かったです。(現在は休刊している雑誌)「キューティ(CUTIE)」や「オリーブ(OLIVE)」の読者だったのですが、服のクレジットに”ラフォーレ原宿“と書いてあるのを多く見かけて。「このおしゃれスポットに行ってみなければ!」と高校1年生のときに意を決して出かけ、「スーパーラバーズ(SUPER LOVERS)」の洋服を買ったこともありました。
WWD:現在に至るまでのキャリア形成は?
Takenouchi:イギリス時代にスタイリストのアシスタントをしていましたが、何度か仕事をしたのちに、結局ケンカ別れをしてフリーランスになりまして(笑)。ただ、私は人付き合いが全く得意ではないので、自分の売り込みができず…。頂いた仕事を引き受けるという“待ちぼうけシステム”をとるしか方法がなかった。ポートフォリオを人に見せることすら怖く、「(ポートフォリオを)持っていますか?」と関係者に聞かれても、「今は他に送ってしまって手元にありません」などと言って切り抜けていました。だから仕事が全くない時期もありましたね。アーティストのスタイリングをするようになったのも、来た仕事がそうだったから、というのが理由です。自分がキャリアをイギリスでスタートさせたので、海外誌やランウエイ、広告の案件を頂いて働いていました。
WWD:転機は。
Takenouchi:The fin.というバンドのミュージックビデオ(以下、MV)でスタイリングをしたことです。ロンドンから帰国して序盤のころに受けた仕事でした。MV撮影の数日前に、美術セットの写真を見て「自分が考えていた衣装のままではダメだ」と思ってしまって。「申し訳ないけど作り直したい」「私を信じてほしい」と頼み込み、美術との相性を再考しながら衣装の準備をし始めたんです。汚し作業(※あえて汚れたように衣装を着色する作業)の担当者に連絡し、撮影日の天候に合わせて汚しの程度も大幅に変更しました。元々人にものを言えない性格だったので、私自身にとっては物申すことを覚えた“事件”でした。
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“衣装っぽくない”衣装を追求
WWD:アーティストのスタイリングに関してこだわりはあるか。
Takenouchi:基本的には“いかにステージで映えるか”を考えます。例えばライティング1つとっても、色調によって衣装の見え方が変わってしまう。青色のライトに、寒色系の衣装は合わないですし。衣装の色がどの程度飛んでしまうのか、そして衣装がどの程度透けてしまうのかなど、全て念頭においてスタイリングをします。ライブでダンサーさんがいる場合には、踊ったときに身体や動きをきれいに見せられるかということが重要です。振り付け映像も確認して、ダンサーさんが衣装さばきを考えられるようにしていますね。
私は衣装制作もすることがあるんですが、“衣装すぎる衣装”は作りたくないと思っていて。アーティストの雰囲気とギャップが生まれないように、本人になじむリアルさを意識しています。そうすると、私自身スタイリングしていて気持ちがいいんですよね(笑)。大変身させたい気持ちと同時に、アーティスト本人の素材を生かしたい気持ちが湧いてくる。どれだけ尖った衣装でも、“着せられている感”が出ないようにしています。本人が好きな要素を入れたり、身体のラインを生かしたりすることがその秘けつですかね。ルーズシルエットが好きな方であればその意見を衣装に反映するとか、意見を聞きつつもスタイルがよく見えるデザインを取り入れるとか。
WWD:アーティスト本人の素材に注目し始めたのはいつ?
Takenouchi:アイドルグループのスタイリングが契機かもしれません。それまではモデルの方々を相手にスタイリングすることが多かったので、クライアントが要望するテーマを私なりに解釈し、“一枚絵”を描くように衣装を組んでいました。モデルは衣服を見せることがお仕事なので、私が何を着せても違和感が生まれづらい。一方、アイドルの方々の場合は本人を「魅せる」ことが重要になってきます。本人の素材を無視して“やりすぎた”衣装を着せると、彼らの個性を殺しかねない。だから、衣装デザインを考えることも好きではありますが、それよりも正確なサイジングにこだわりました。リースした大きな衣装をそのまま着せるのではなく、サイズの合うものを着せることに重要性を見出した経験です。
スタイリスト職への思い
WWD:スタイリストとして活動し続ける原動力は。
Takenouchi:自分を救ってくれている仕事でもあるからです。この仕事に私は「生きていても良いんだよ」と言ってもらえている気がします。私は“怠け者”で、領収書の作成やスケジューリングは不得手。さらに、毎日同じ時間に起床して通勤することのできない極度の飽き性です。スタイリストは勤務時間や仕事内容、会う人など全てがいつもバラバラなので、自分の性に合っています。この仕事がなくなったら私は人として終わってしまう。だから必ず成功させなくてはならないんです。
そして、絶対に嫌いになることがない仕事だから、というのも原動力になっています。私は人よりモノに思い入れが強い人間で、その対象が全て服に振り切っている。仕事のネガティブな面を見たとしても嫌いにならないからこそ、うまくやっていけていると思います。“好きな仕事”とあえて表現しないのは、“好き”は“嫌い”になってしまう可能性がある感覚だから。自分の中でしっくりこないんです。ただ、ずっと頭が休まらない職業でもあるので疲れてしまい、「もういつ辞めても後悔しない!」と思うこともしょっちゅうですけどね。そういうときは趣味のゲームをしています(笑)。
WWD:ご自身にとって服は“嫌いになることがない”大事なモノだと。
Takenouchi:大事ですね。スタイリストをしているなかでも、ずっと服に感動してきましたし、コロナ禍を経て服の重要さを再認識しました。私は普段、本当にパジャマばかり着ているんですが、パジャマで過ごすのと、外着を着るのとでは高揚感が全く違う。自分のような人間を変身させてくれる“鎧”です。
WWD:今後目指していくスタイリスト像は。
Takenouchi:実は私、ゲームの国内大会に出場するほどゲームをやり込んできました。だからスタイリストとして「ファミ通」(※KADOKAWAが発行するゲーム雑誌)で連載を持つのが夢。もうこれはずっと言っていますね。人生第一事項です!ゲームのレビューを書くためには本業の休みを増やさなきゃいけないなぁ。あとは、真面目な話ですけど“地球に優しいスタイリスト”になることですね。せっかくこの世界に生まれたから、そろそろ地球に恩返しがしたい。まだ具体的な案はまとまっていませんが、地球環境のための継続できるシステムを業界に作りたいと思っています。「これやりました、でも一瞬で終了しました」では意味がないですから。
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英国発「プラム&アシュビー」が上陸 創設者が語る“音楽のように”人生を豊かにする香り
英国発ホームフレグランス「プラム&アシュビー(PLUM & ASHBY)」が、日本に上陸した。同ブランドは2014年、ヴィッキー・ホワイトとフレヤ・ニコルソンが創業。イギリスの田園風景からインスピレーションを得たホームフレグランスで、キャンドルやリードディフューザー、バスソルトなどを提案している。自国では、“ベスト・オブ・ブリティッシュ・ビジネス”賞に選ばれるなど、ビジネス的にも注目を浴びている。日本では、フレグランスなどを輸入販売するイー・エフ・インターナショナルが販売を手掛け、8月30日まで、渋谷ヒカリエ1階でポップアップショップを開催する。上陸を機に来日したニコルソン創業者兼コマーシャル・ディレクターに話を聞いた。
WWD:今回、来日の目的は?
フレヤ・ニコルソン=プラム&アシュビー創業者兼コマーシャル・ディレクター(以下、ニコルソン):ブランドを直接に紹介するために来日した。
WWD:「プラム&アシュビー」のブランド哲学は?
ニコルソン:香りを通して人々のライフスタイルを豊かにすること。香りがあることで、朝の支度や読書、お風呂の時間が豊かになるはず。
WWD:ブランド名はどこから?
ニコルソン:ブランド名は、ヴィッキーが子どものときにつけられたニックネームの“ヴィクトリア プラム”と彼女が幼少期を過ごしたノーザンプシャーの村、キャッスル・アシュビーを組み合わせたもの。
WWD:他のフレグランスと違う点は?
ニコルソン:休暇など特別なひとときを思い出させるようなパワフルでユニークな香りである点。例えば、ベストセラーの一つ“シーウィード&サンファイア”は、ヴィッキーの別荘がイメージソースで、海の休暇を想起させる香り。香りは、まるで音楽のように、人々にすてきなひとときを思い出させたり、喜びを与えたりすることができる。パッケージには、アーティストである私の祖母による手書きのタイポグラフィーを用いている。フローラル、ウッディなどと香り別にカラー分けをして、直感的にナビゲートするニュートラルなパッケージも多くの人にアピールしていると思う。
WWD:ベストセラーの香りは?
ニコルソン:ユニセックスな香りの“シーウィード&サンファイア”、もう少しソフトで繭に包まれたようにソフトな“ワイルドフィグ&サフラン”、若年層や女性にはフレッシュで生き生きした“ネロリ&ベルガモット”の人気が高い
探さないと出合えないニッチなブランド
WWD:現在何カ国、何店舗で販売しているか?
ニコルソン:英国、ノルウェー、ドバイ首長国連邦、台湾、日本の5カ国、約400店舗で販売している。イギリスでは百貨店のハロッズ(HARRODS)やハーヴェイ・ニコルス(HARVEY NICHOLS)、フォートナム&メイソン(FORTNUM & MASON)などでも展開しているが、販路の多くは、知る人ぞ知る小さな専門店を選んでいる。「プラム&アシュビー」には、ギフトとして贈るのに相応しい特別感が大切だと思うから、販売店舗を選ぶのには気を使っている。
WWD:トップ3の市場は?欧州の主要国で販売していない理由は?
ニコルソン:1位がイギリス、2位が台湾、3位がノルウェー。ノルウェーは、イギリス文化が好きで、デザイン重視の国だから受けている。フランスやイタリアなどで販売していないのは、ブレキジットが大きな理由。送料などの費用がとても高いので参入するには困難だ。
WWD:日本に進出した理由と目的は?
ニコルソン:日本にはクオリティーとクラフツマンシップを理解できる土壌があり、強いコネクションを感じている。日本人は、高品質なものの値打ちが分かり、じっくり時間をかけて楽しむ国民性を持っているし、シンプルなデザインを好むので相性が良いと思った。われわれの製品を気に入ってもらえると嬉しい。また、日本ほど、競争の厳しい市場はないと思う。ここで成功できたらどこでも成功できるはずだ。
WWD:日本市場における戦略は?
ニコルソン:メディアやインフルエンサーを通して、消費者にブランドを知ってもらいたい。また、ECだけでなく、ポップアップショップなども開催していく。商品的には、日本市場限定の香りをつくりたい。イギリスと日本を足して2で割ったような香りがイメージ。5年後には「プラム&アシュビー」の世界観を体感できるような路面店を出店したい。
WWD:競合ブランドは?それらとどのように戦うか?
ニコルソン:「ディプティック(DYPTIQUE)」や「ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON)」。彼らは確立されたブランドだけど、「プラム&アシュビー」は新しいワクワクするブランド。どこにでもあるわけでなく、探さないと出合えないニッチな立ち位置だ。また、毎日使って欲しいから、高品質の商品を手に取りやすい価格帯で提供している。ブランドのイメージを消費者に伝えるために写真は大切。だから、ムードボードを使って再現したい記憶に残る瞬間を捉えたイメージを使うようにしている。
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勢いづく「クレージュ」 ニコラス・デ・フェリーチェの改革
ニコラス・デ・フェリーチェ/「クレージュ」アーティスティック・ディレクター プロフィール
1983年生まれ、ベルギー出身。学生時代は音楽に没頭し、ミュージックビデオがきっかけでファッションに興味を持つ。ブリュッセルの有名校ラ・カンブルに進学すると、2008年にニコラ・ジェスキエールが率いる「バレンシアガ」のデザインチームに加入。在籍6年間でウィメンズのメイン・コレクションのシニア・デザイナー兼プレ・コレクションのヘッド・デザイナーを務めた。その後ラフ・シモンズ時代の「ディオール」を経て、15年に「ルイ・ヴィトン」に入社し、ジェスキエールと再び協働する。20年9月から現職
「クレージュ(COURREGES)」が好調だ。現アーティスティック・ディレクターのニコラス・デ・フェリーチェ(Nicolas Di Felice)が2020年9月に就任以降、パンデミックの逆風をものともせず、年間売上高は2年連続で3桁成長を続けている。
デ・フェリーチェ=アーティスティック・ディレクターは現職に就任当初、同ブランドのDNAやヘリテージを大切にしながら「ロマンチックな要素や若い頃に通っていたナイトクラブを感じさせるようなラディカルなムードを加えていきたい」と語っていた。その言葉通り、若々しさを手に入れた新生「クレージュ」はY2Kブームの後押しもあってZ世代の新規顧客も着々と獲得しており、21年から22年にかけての15〜30歳のシェアはグローバルで120%増を達成。また韓国では、BLACKPINKやaespa(エスパ)といったK-POPスターの着用効果などが後押しし、主要卸先の大手ECでは同400%増という伸長率で存在感を急速に強めている。
日本でも、東京・銀座のドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA 以下、DSMG)4階に常設スペースを4月にオープンするなど、アジア市場攻略に向けて着々と進んでいる。デ・フェリーチェ=アーティスティック・ディレクターは、1961年創業の「クレージュ」を約3年間でどう変えたのだろうか。本人に思いを聞いた。
「これはまだ始まりにすぎない」
WWDJAPAN(以下、WWD):現職に就いてからの約3年をどう振り返る?
ニコラス・デ・フェリーチェ(以下、デ・フェリーチェ):実は、ブランドのクリエイティブのトップとして仕事をするのは初めてだったので、就任当初はとても不安だった。サポートをする立場が多かったからね。でも、いざスタートすると余計な雑念はなくなり、満たされた感覚で仕事に取り組めた。そのおかげで、私たちは短期間で素晴らしい結果を残せている。私が就任した2020年ごろの「クレージュ」は低迷期で、世間からの興味関心は薄く、ストリートでも着ている人は少なかった。でも、今は違う。就任当初掲げていた「ブランドを立て直す」という目標はすでに達成できたし、次のフェーズに向けていろいろなアクションを起こしている。私は過去は振り返らないし、立ち止まるのが苦手だから、これはまだ始まりにすぎないよ。
WWD:好調要因の一つが、Z世代のファンを獲得したことだと思う。
デ・フェリーチェ:Z世代だけをターゲットにしていたわけではないから分からないけれど、K-POPスターが「クレージュ」を着てくれていることが、Z世代に影響を与えているのは間違いない。私は昔から音楽やライブが好きで熱中していたので、もしかすると無意識のうちのアーティストが好むような、ステージ映えするデザインになっているのかもしれないね。
WWD:日本市場でも韓国の成功例を応用できる?
デ・フェリーチェ:韓国での急成長は戦略なんて大それたものはなくて、全て自然に起こったこと。テクノロジーの発達で世界中の人々が交流しやすくなり、遠く離れた国に向けても、自分のデザインが愛されるきっかけを作れるようになった。でも、ブランド的にはそこを狙ってマーケティング戦略を打つ段階にはまだなくて、現時点では全てが自然に起こることが一番美しいと考えている。だから日本でも「クレージュ」が自然に浸透していけばうれしいし、そうなる可能性は十分ある。
「ブランドの核は人と人との一体感」
WWD:DSMGにオープンした常設スペースは、「クレージュ」が日本でさらに浸透していくための後押しになりそうだ。
デ・フェリーチェ:これまで多くのブランドがドーバー ストリート マーケットのサポートのおかげで知名度を広げてきたので、常設スペースができてとても光栄に思っている。初めて来日したときはお金がなく、DSMGで何も買えなかったのを覚えているから、なおさら感慨深いよ。売り場に置いた什具は、屋根の上にある白いアンテナをイメージしていて、2023-24年秋冬シーズンのショーに着想したもの。ショーで使った6メートルのアンテナを売り場用に小さくしてはどうかとDSMG側が提案してくれた。
WWD:23-24年秋冬シーズンのショーは、モデルがスマートフォンをタイピングしながら歩く姿が印象的だった。この演出やコレクションで伝えたかったことは?
デ・フェリーチェ:23-24年秋冬のショーは、AIやデジタルについて考えていた際に思いついたアイデアだった。AIは素晴らしい発明かもしれないけれど、私は少し怖れてもいるんだ。テクノロジーの進化はコミュニケーションを活性化し、人類の進化に貢献している一方で、中毒性があり、現代人はスマートフォンを触ることが癖になっている。まるでテクノロジーに監視されているような気分だ。私も恋人と過ごしているのに、一緒にいる感覚になれないことがあった。ショー会場では、スモークをたいて2メートル先が見えないようにすることで、スマートフォンに夢中で近くにいるはずの人の存在を感じない様子を表現した。
WWD:演出だけでなく、前傾姿勢のシルエットでもテーマを表現していた。
デ・フェリーチェ:私は常に新しいシルエットを探求している。23-24年秋冬シーズンでは、スマホ中毒の人たちの曲がった背中をイメージするうちに、私自身がその姿勢になってしまっていることに気付き、それをシルエットにするアイデアを思いついた。
WWD:シルエットのほかに、「クレージュ」ではどのようなクリエイションにこだわってきた?
デ・フェリーチェ:明日には古くなってしまう服を作らないこと。私が現職に就いたころのファッション業界は、デザインや個性よりもサステナビリティが先行しすぎて“目的”になってしまっており、ファッション性が失われているような感覚があった。今は、当時ほど多くの人がサステナビリティに関心を持っていないようにもみえる。持続可能性について考えるのは当然だが、服づくりにおいてはすぐ古いと思われないデザインを考え続けることが最もサステナブルであり、就任以降こだわってきたことだ。
WWD:今後チャレンジしたいことは?
デ・フェリーチェ:つい最近まで、「クレージュ」はフランスでは有名だが、アメリカでは発展途上で、若い人にはあまり知られていない状況だった。今後はまだ開拓できていないエリアに注力しながらブランドを成長させ、世界中のみんなが「クレージュ」を知っている状況を作り出すのが私の夢だ。
WWD:その夢の実現ために必要なものは?
デ・フェリーチェ:私が「クレージュ」で働き始めたころは物理的な交流が一番難しかった時期だったので、人と人との一体感を自然と求めるようになっていた。みんなをつなぐきっかけになることが、私たちが目指すゴール。コロナ禍で感じた一体感の価値は、日常が戻りつつある現在でも考えるテーマだ。全てが元通りになりつつあっても、人々の心はまだ離れたままだと感じることがある。だからこそ、私たちはこれからもクリエイションを通じて一体感のある未来を目指し続けたい。
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勢いづく「クレージュ」 ニコラス・デ・フェリーチェの改革
ニコラス・デ・フェリーチェ/「クレージュ」アーティスティック・ディレクター プロフィール
1983年生まれ、ベルギー出身。学生時代は音楽に没頭し、ミュージックビデオがきっかけでファッションに興味を持つ。ブリュッセルの有名校ラ・カンブルに進学すると、2008年にニコラ・ジェスキエールが率いる「バレンシアガ」のデザインチームに加入。在籍6年間でウィメンズのメイン・コレクションのシニア・デザイナー兼プレ・コレクションのヘッド・デザイナーを務めた。その後ラフ・シモンズ時代の「ディオール」を経て、15年に「ルイ・ヴィトン」に入社し、ジェスキエールと再び協働する。20年9月から現職
「クレージュ(COURREGES)」が好調だ。現アーティスティック・ディレクターのニコラス・デ・フェリーチェ(Nicolas Di Felice)が2020年9月に就任以降、パンデミックの逆風をものともせず、年間売上高は2年連続で3桁成長を続けている。
デ・フェリーチェ=アーティスティック・ディレクターは現職に就任当初、同ブランドのDNAやヘリテージを大切にしながら「ロマンチックな要素や若い頃に通っていたナイトクラブを感じさせるようなラディカルなムードを加えていきたい」と語っていた。その言葉通り、若々しさを手に入れた新生「クレージュ」はY2Kブームの後押しもあってZ世代の新規顧客も着々と獲得しており、21年から22年にかけての15〜30歳のシェアはグローバルで120%増を達成。また韓国では、BLACKPINKやaespa(エスパ)といったK-POPスターの着用効果などが後押しし、主要卸先の大手ECでは同400%増という伸長率で存在感を急速に強めている。
日本でも、東京・銀座のドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA 以下、DSMG)4階に常設スペースを4月にオープンするなど、アジア市場攻略に向けて着々と進んでいる。デ・フェリーチェ=アーティスティック・ディレクターは、1961年創業の「クレージュ」を約3年間でどう変えたのだろうか。本人に思いを聞いた。
「これはまだ始まりにすぎない」
WWDJAPAN(以下、WWD):現職に就いてからの約3年をどう振り返る?
ニコラス・デ・フェリーチェ(以下、デ・フェリーチェ):実は、ブランドのクリエイティブのトップとして仕事をするのは初めてだったので、就任当初はとても不安だった。サポートをする立場が多かったからね。でも、いざスタートすると余計な雑念はなくなり、満たされた感覚で仕事に取り組めた。そのおかげで、私たちは短期間で素晴らしい結果を残せている。私が就任した2020年ごろの「クレージュ」は低迷期で、世間からの興味関心は薄く、ストリートでも着ている人は少なかった。でも、今は違う。就任当初掲げていた「ブランドを立て直す」という目標はすでに達成できたし、次のフェーズに向けていろいろなアクションを起こしている。私は過去は振り返らないし、立ち止まるのが苦手だから、これはまだ始まりにすぎないよ。
WWD:好調要因の一つが、Z世代のファンを獲得したことだと思う。
デ・フェリーチェ:Z世代だけをターゲットにしていたわけではないから分からないけれど、K-POPスターが「クレージュ」を着てくれていることが、Z世代に影響を与えているのは間違いない。私は昔から音楽やライブが好きで熱中していたので、もしかすると無意識のうちのアーティストが好むような、ステージ映えするデザインになっているのかもしれないね。
WWD:日本市場でも韓国の成功例を応用できる?
デ・フェリーチェ:韓国での急成長は戦略なんて大それたものはなくて、全て自然に起こったこと。テクノロジーの発達で世界中の人々が交流しやすくなり、遠く離れた国に向けても、自分のデザインが愛されるきっかけを作れるようになった。でも、ブランド的にはそこを狙ってマーケティング戦略を打つ段階にはまだなくて、現時点では全てが自然に起こることが一番美しいと考えている。だから日本でも「クレージュ」が自然に浸透していけばうれしいし、そうなる可能性は十分ある。
「ブランドの核は人と人との一体感」
WWD:DSMGにオープンした常設スペースは、「クレージュ」が日本でさらに浸透していくための後押しになりそうだ。
デ・フェリーチェ:これまで多くのブランドがドーバー ストリート マーケットのサポートのおかげで知名度を広げてきたので、常設スペースができてとても光栄に思っている。初めて来日したときはお金がなく、DSMGで何も買えなかったのを覚えているから、なおさら感慨深いよ。売り場に置いた什具は、屋根の上にある白いアンテナをイメージしていて、2023-24年秋冬シーズンのショーに着想したもの。ショーで使った6メートルのアンテナを売り場用に小さくしてはどうかとDSMG側が提案してくれた。
WWD:23-24年秋冬シーズンのショーは、モデルがスマートフォンをタイピングしながら歩く姿が印象的だった。この演出やコレクションで伝えたかったことは?
デ・フェリーチェ:23-24年秋冬のショーは、AIやデジタルについて考えていた際に思いついたアイデアだった。AIは素晴らしい発明かもしれないけれど、私は少し怖れてもいるんだ。テクノロジーの進化はコミュニケーションを活性化し、人類の進化に貢献している一方で、中毒性があり、現代人はスマートフォンを触ることが癖になっている。まるでテクノロジーに監視されているような気分だ。私も恋人と過ごしているのに、一緒にいる感覚になれないことがあった。ショー会場では、スモークをたいて2メートル先が見えないようにすることで、スマートフォンに夢中で近くにいるはずの人の存在を感じない様子を表現した。
WWD:演出だけでなく、前傾姿勢のシルエットでもテーマを表現していた。
デ・フェリーチェ:私は常に新しいシルエットを探求している。23-24年秋冬シーズンでは、スマホ中毒の人たちの曲がった背中をイメージするうちに、私自身がその姿勢になってしまっていることに気付き、それをシルエットにするアイデアを思いついた。
WWD:シルエットのほかに、「クレージュ」ではどのようなクリエイションにこだわってきた?
デ・フェリーチェ:明日には古くなってしまう服を作らないこと。私が現職に就いたころのファッション業界は、デザインや個性よりもサステナビリティが先行しすぎて“目的”になってしまっており、ファッション性が失われているような感覚があった。今は、当時ほど多くの人がサステナビリティに関心を持っていないようにもみえる。持続可能性について考えるのは当然だが、服づくりにおいてはすぐ古いと思われないデザインを考え続けることが最もサステナブルであり、就任以降こだわってきたことだ。
WWD:今後チャレンジしたいことは?
デ・フェリーチェ:つい最近まで、「クレージュ」はフランスでは有名だが、アメリカでは発展途上で、若い人にはあまり知られていない状況だった。今後はまだ開拓できていないエリアに注力しながらブランドを成長させ、世界中のみんなが「クレージュ」を知っている状況を作り出すのが私の夢だ。
WWD:その夢の実現ために必要なものは?
デ・フェリーチェ:私が「クレージュ」で働き始めたころは物理的な交流が一番難しかった時期だったので、人と人との一体感を自然と求めるようになっていた。みんなをつなぐきっかけになることが、私たちが目指すゴール。コロナ禍で感じた一体感の価値は、日常が戻りつつある現在でも考えるテーマだ。全てが元通りになりつつあっても、人々の心はまだ離れたままだと感じることがある。だからこそ、私たちはこれからもクリエイションを通じて一体感のある未来を目指し続けたい。
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スターモデル美佳が輝き続ける理由 デビューから今後の夢までを語る
美佳/モデル プロフィール
(みか):2001年8月30日生まれ、フランス・パリ出身で身長178cm。フランス人の父と日本人の母の間に生まれ、フランスや日本、ロシア、インドの4カ国で育ち、仏英日の3カ国語を話す。日本ではモデル事務所のイマージュに所属。ニューヨークはザ・ソサエティ マネジメント、パリ、ミラノ、バルセロナではエリートと契約
美佳は、日本とフランスを代表するスターモデルだ。2019年9月に「プラダ(PRADA)」2020年春夏コレクションでランウエイデビューを果たすと、「サンローラン(SAINT LAURENT)」や「エルメス(HERMES)」のキャンペーンビジュアルをはじめ、米「ヴォーグ」をはじめとするモード誌の表紙にも登場。22年春夏シーズンのショー出演数は30本で、ウィメンズモデルで世界1位になるなど、約4年で大躍進を遂げている。
22歳を迎える美佳は、向上心が高く、好奇心旺盛だ。今年6月にパリの大学を卒業し、いよいよモデルの仕事に専念できる状況になったものの、DJや演技にも興味があり、今後は活躍の場を広げていきたいのだという。天真爛漫な一面と、上品で丁寧な振る舞いが魅力の彼女に、これまでのキャリアや今後の夢について語ってもらった。
——日本に戻ってきたのはいつぶりですか?
美佳:コロナ禍でなかなか日本に帰れなかったのですが、昨年12月に約3年ぶりにプライベートで戻って来られました。その後、今年3月に「シャネル(CHANEL)」の撮影が東京であり、また「シャネル」の2022-23年メティエダール コレクションのショーで6月に帰ってくることができてうれしかったです。
——ショーや撮影でいろいろな国を訪れると思いますが、プライベートの時間はありますか?
美佳:仕事で訪れた国では、少しでも自由に散策できる時間を見つけるようにしています。マネジャーに相談して、1日長く滞在できるようにお願いすることもあります。現地の人と話したり、市場でローカルフードに挑戦したりするのが大好きなんです。「シャネル」のショーで訪れたダカールは、私にとってアフリカ初上陸の国でした。カレーや魚、フルーツなど食べ物もおいしくて、街の人がとても優しかったのがいい思い出です。
4年間で最も忘れられない
「サンローラン」でのパリデビュー
——この4年間でたくさんのファッションショーに出演してきた中で印象深かったブランドは?
美佳:初めてのパリコレで歩いた「サンローラン」です。洋服も音楽もかっこよく、当時18歳だった私にとって何もかもが刺激的でした。雨上がりのエッフェル塔の下で行われた素晴らしいショーだったのですが、慣れないヒールで滑らないようにと内心ヒヤヒヤでした。終了後には緊張が解けて、震えて泣いてしまい、モデルとして成長させてもらえたショーだったと思います。
今年1月に歩いた「アライア(ALAIA)」23年夏秋コレクションも印象深かったです。会場はクリエイティブ・ディレクターのピーター・ミュリエ(Pieter Mulier)さんの自宅で、クローゼットやシャワールーム、キッチン、ベッドルームを通り抜けるショーは楽しくて貴重な体験でした。
1 / 4
——毎シーズン出演しているブランドはありますか?
美佳:決まったブランドはありませんが、「シャネル」「サカイ(SACAI)」「コペルニ(COPERNI)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「ヴェルサーチェ(VERSACE)」などのショーはよく歩いています。ブランドと契約をしているわけではないので必ず呼んでもらえるとは限らないのですが、どんなブランドを歩けるのかは毎シーズン楽しみにしています。
——ショーを歩いてみたいブランドは?
美佳:個人的には「アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)」「ジル サンダー(JIL SANDER)」「ブルマリン(BLUMARINE)」のランウエイを歩いてみたいですね。また「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」のショーにも出てみたい。以前「フェンディ(FENDI)」とコラボレーションしたときに起用してもらいました。
——思い出に残っている撮影は?
美佳:フォトグラファーデュオのルイージ&イアンゴ(Luigi & Iango)さんのニューヨークの自宅で行った、香港版「ヴォーグ」の撮影です。アパートに1日中滞在し、朝と昼ご飯を作っていただきました。プライベートな空間でインティメートな雰囲気もあり、リラックスしながらいい撮影ができましたね。
美容はインナーケアが大事
腸活や枕カバーも取り入れる
——モデルをやっていて、達成感を感じる瞬間は?
美佳:仕事から家に帰ってきてシャワーを浴び、ショーの画像や映像を見返して、「頑張ったな」と思いながら感謝するときです。
——逆に大変だと感じることは?
美佳:移動と時差ですかね。体内時計が狂ってしまうのは辛いんです。1ヵ月で7都市を移動することもあるので、友達やパートナーが恋しくなり、ビデオ通話をしたり、手紙を書いたりしますね。
——美容で気をつけていることはありますか?
美佳:内側からのケアが大事だと思っています。水を飲んで、漢方も取り入れています。あとはコーヒーを飲みすぎず、アルコールは控えること。腸活もしていて、コンブチャとサプリで善玉菌を増やすようにしていますね。スキンケアは決まったプロダクトを3つ程度に絞っていて、つけすぎず肌を休ませることを大切にしています。高いスキンケア用品を買っても睡眠不足だと肌の質が落ちてしまうので、1日8時間は寝るように心掛けているんです。シルクのピローケースがおすすめで、ヘアケアのために買ったのですが肌荒れにも効果が感じられました。
——個人的に好きなファッションは?
美佳:普段はビンテージショップで買い物をしています。この仕事をしているとファッションアイテムや素材について学ぶことも多いので、とても影響を受けています。例えば「ルイ・ヴィトン」の撮影でスカーフの巻き方を教えてもらったり、アトリエで働く方に「この素材はなんですか?」と聞いて詳しく説明してもらったりと、よく質問をするようにしています。
——最近、大学を卒業されましたね。おめでとうございます。コロナ禍で仕事と両立しながらの学業はいかがでしたか?
美佳:パリの大学で3年間、日本語と日本の歴史、国際経済を学びました。私はフランス人学校に通っていたので、日本の歴史について詳しくなかったんです。1年目は講義をオンラインで受けられたのですが、2年目からは実際に通わなければならなくなり、大学に相談して期末試験だけで済むようにしてもらいました。その分、移動中は教科書を読んで、仕事現場でも勉強していましたね。日本語の作文が苦手なので、丁寧語や敬語、歴史は今も学んでいます。
モデルを志す人にアドバイス
“ルックスだけでなく内面も磨いて”
——モデル業に専念できる状況になりましたが、今後のキャリアの目標は?
美佳:今後もプロフェッショナルモデルとしてキャリアを重ねて、自分を確立させたいです。「美佳がいい」と指名されるような、ユニークな存在になりたい。また演劇のスタイルで発表した「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」22年“アーティザナル”コレクションのショーに出演してから、演技にも興味が湧きました。それと今は家でDJの練習もしていて、いつかイベントで回してみたいです。
——モデルを目指す人にアドバイスはありますか?
美佳:グローバルに活動することを目指すなら、語学は勉強した方がいいですね。指示が理解できるので、仕事はしやすいはず。そして内面も磨き続けて、礼儀正しく、人に優しく接することを忘れないこと。モデルはルックスだけでなく、性格の美しさも大切です。
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元「マーガレット・ハウエル」のデザイナーが民藝をテーマにパリコレを目指す ノウハウ×職人技が生きる服
日下は、「海外デザイナーのブランドを多く手掛けてきて、現地のデザイナーから評価してもらい、アトリエで一緒に働かないかと声をかけてもらったこともある。ただ、欧米のブランドでは、日本人がいくら頑張っても欧米のデザイナーには敵わず、負け試合になる。だから、日本文化をベースにしたブランドを始めたいと思った」と語る。彼は、米ニューヨークの「トッド スナイダー(TOD SNYDER)」の下でも働いたことがある。スナイダーにデザイナーとしての腕を認められたものの、ニューヨークで働くアジア人の待遇は欧米人と比べると悪く、渡米を諦めたという。
彼は、20世紀初頭にイギリス・ロンドンの中心部にあった知識人のサークルである“ブルームズベリー グループ”のプリミティブな生活様式に関心があった。彼が日本で似たようなものとして出合ったのが民藝だった。「日本民藝館に行き、民藝に使われている色柄のセンスや、色合いに感動した。焼き物に描かれた宇宙や空のニュアンスを洋服で表現したいと思った」と日下。そして、彼は萩原の本に出合い、年齢の近い萩原に「S.O.L.A」の企画を持ち込んだ。萩原は、「民藝とは、伝統を後世に伝えるのが使命。現場を見てきて、それが厳しいことはよくわかっている。そこで民藝がファッションに発展するのは面白いと思った」と語る。彼は、民藝を表現する過程における柄の提案を始め、ブランディングや戦略まで関わるようだ。
世界的ハイブランドのメーカーとオリジナルで素材を製作
最初のコレクションは、柄が5つ、雑貨、ウエア共に8型。全てのアイテムは京都でプリントを行っている。「京都には、深いプリントの文化が根付いている。モノ作りも分業性なので、柄やドレープなど細かい表情がつけやすい」と日下。「S.O.L.A」では、京都で世界的なハイブランドの素材を手掛けるメーカーと素材作りを行っている。彼は、「チームの中に、メーカーとの間に入ってくれるプリンティングディレクターがいる。陶器を持参して色と色の重なり具合などを相談する」と話す。民藝的な一つ一つ違う表情をプリントでどのように表現するか細部までこだわっているという。「陶器の滲みを表現するために一晩寝かせたり、版をわざとずらしてニュアンスを描いたり、全て日本民藝館でスケッチしたものを元にプリントし、敢えて無地はつくらなかった」と言う。
コミュニケーションが生まれる服でパリコレへ
「S.O.L.A」は、日下が得意とするミリタリーウエアなどオーセンティックなアイテムをアレンジしたメンズが中心のユニセックスブランド。ビジネス的な意図もあり、ラゲージや帽子などの雑貨も作った。日下は、「長く、いつでも着られるものをと思った。まずは、着たいと思ってもらい、その先に民藝があるのが理想だ。インテリアや民藝が好きな人にも手に取ってほしいし、インバウンドのお土産としても販売したい」と話す。価格はウエアが2万〜7万円、雑貨が6000~1万8000円程度。販売先は、百貨店やセレクトショップ、専門店などのウエアと雑貨売り場を視野に入れている。
デザイナー歴が長い日下は、フィット感をはじめアパレルブランドのノウハウを熟知している。「S.O.L.A」が目指すのはパリコレだ。「『その柄、何?』とコミュニケーションが生まれる服にしたい。ファッションとはコミュニケーション力があるもので、優位性を競うものではない。興味を持つ人で盛り上がり、仲間をつくって5年後パリコレに出るのが目標だ」。
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「エルメス」や「マルジェラ」のビンテージを豊富に揃える隠れ名店「アンダンテアンダンテ」
「アンダンテアンダンテ」は、千葉駅から徒歩5分の立地に構えるビンテージショップだ。店名は“歩くような速度で“という意味の音楽用語を重ねたもので、“時代の移り変わりの速さで人々が見落としてきたものを再発見する”という思いを込めている。商品は、フランスやドイツなどで買い付けたヨーロッパ各国のビンテージやコレクションブランド、インテリア雑貨を扱っている。今回は同店のコウイチオーナーに、ショップのこだわりやおすすめのコーディネートを教えてもらった。
新旧問わず価値を見出すオーナーがそろえる名品
自身の感覚を大切にして買い付けを行うコウイチ「アンダンテアンダンテ」オーナーがセレクトするのは、マルタン・マルジェラ(Martin Margiela)本人が手掛けていた時期の「エルメス(HERMES)」のシャツ“ヴァルーズ”や「ストーンアイランド(STONE ISLAND)」のアイスジャケット、「メゾン マルタン マルジェラ(MAISON MARTIN MARGIELA)」の時期のトロンプルイユ(だまし絵)Tシャツなど玄人もうなる名品ばかりだ。さらに同ブランドの手仕事を発揮した“アーティザナル”コレクションのアーカイブは類を見ないほど充実。他にも仏百貨店の100年前のセットアップや、当時の労働者がつぎはぎしながら使用していたリネンパンツなど、歴史の古いアイテムも扱う。
コウイチオーナーが買い付けする頻度は半年ごとで、ヨーロッパ出張で仕入れを行う。「アントワープに出張に行っていたときに、ブランド『ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)』が終了するニュースを知り、現地で多く買い付けてしまった」と笑う。トレンドにアンテナを張りながら、新旧問わずアイテムの価値を見出すオーナーのセンスが、同店に名品がそろう理由なのだろう。
また“「エルメス」のジュエリーオタク”を自称するコウイチオーナーだけあり、シルバージュエリーの豊富さにも注目だ。船のいかりのチェーンを元に1938年に発表した「エルメス」初のシルバーブレスレット“シェーヌダンクル”や、1コマ1コマ違うピースで構成した“アレア”、馬具から着想を得たダブルバックルの“ブックルセリエ”など、希少価値の高い商品をラインアップする。「エルメス」のジュエリー目当てで来店する客も多いという。大都会の喧騒を離れた地方都市らしいゆったりとしたロケーションの店に、わざわざ足を運ぶ価値は十分だ。
おすすめのコーディネート
LOOK1
「エルメス」のシルバージュエリーを目立たせるためのオールブラック
1 / 4
TOPS:「メゾン マルタン マルジェラ」
PANTS:「メゾン マルタン マルジェラ」
JEWELRY:「メゾン マルタン マルジェラ」
SHOES:「メゾン マルタン マルジェラ」
LOOK 2
「コム デ ギャルソン」のPVCパンツで一癖つけたオールホワイト
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JACKET:「ストーンアイランド」
T-SHIRT:「メゾン マルタン マルジェラ」
PANTS:「エルメス」
SHORT PANTS:「コム デ ギャルソン」
SHOES:「メゾン マルタン マルジェラ」
LOOK 3
ビンテージ×デザイナーズのMIXコーデ
1 / 3
JACKET:フランスの50年代のブラックモールスキンジャケット
SHIRT:「メゾン マルタン マルジェラ」
PANTS:フランスの50年代のビンテージ
SHOES:「メゾン マルタン マルジェラ」
■アンダンテアンダンテ
住所:千葉県千葉市中央区新田町17-4A
時間:11:00〜21:00
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下着からプロテインまで顧客の買い周りで成長 年商50億円を目指す「バンビウォーター」
2012年にスタートした「バンビウォーター(BAMBI WATER)」は“自分らしく、理想の自分を叶える”をコンセプトとするボディーメイクブランドだ。ボディーケア(ボディ用コスメ)、フェイスケア(フェイス用コスメ)、インナーケア(プロテインやスムージーなどの食品)、スタイルアップ(下着やレギンスなどのウエア)の4つのカテゴリーがあり、ブランド内の買い周りとリピートで着々と売り上げを伸ばしてきた。現在、自社EC、大手通販モール、バラエティーショップで販売。今年、越境ECもスタートして海外進出を加速させ、来期は50億円の売り上げを目指す。
コスメ、食品、下着などを総合的に扱うボディーメイクブランドとして成長した経緯は、「バンビウォーター」を展開するラングレーの栗原淳徳社長の経歴に深く関係する。栗原社長は大学在学時に営業代行の会社を起業し、父親が経営者だったこともあり、「起業したいという思いが強かった」と当時を振り返る。
月一回のエステより、意味のあるボディーメイクを
ECセレクトショップとして順調だったものの、将来を見据えて立ち上げたのがプライベートブランド「バンビウォーター」だ。同ブランドでは、商品を仕入れて販売していたが、2〜3年かけて自社商品を販売するようになった。立ち上げ当時は、ボディークリームとボディージェルのボディーケアカテゴリーからスタート。栗原社長は、「会社は運営できていたが、この商品数と規模感では企業理念である『1人でも多くの笑顔を増やす』を実現できないと思った」と栗原社長。社内の主要メンバーとミーティングを重ねた結果、“ボディーメイクブランド”というコンセプトにたどり着き、18年にリブランディングした。「市場にボディーメイクという概念はあったものの、サービスの提供がメインでプロダクトはなく、お手本になるビジネスモデルがない状況だった。“プロダクトにおけるボディーメイク”について考え、“月一回のエステより、意味のあるデイリーボディーメイクを”という思いをもとに商品開発に挑んだ」。
その結果、18年にインナーケア、19年にスタイルアップ、21年にフェイスケアと展開カテゴリーを徐々に増やしていった。現在の売り上げ構成比はスタイルアップが5割、インナーケアが4割、ボディケアとフェイスケアが合わせて1割で、ビジネス規模も大きく成長した。
ブランドの顔は6サイズ17色展開のナイトブラ
売り上げの5割を占めるスタイルアップの中で最も販売額が大きく、同ブランドの顔となっているのが“スタイルナイトブラ”だ。24時間美胸キープを謳う成形編みのブラで、XSから3Lまでの6サイズで17色展開。発売後から徐々に支持を伸ばし、「楽天年間ランキング2022 インナー・下着・ナイトウェア部門」を受賞、続いて23年上半期も同賞を受賞している。
各カテゴリーで同じような商品を扱うブランドは存在する。しかし、栗原社長は「商品開発、マーケティングも含めすべて“ボディーメイク”を切り口にしているため、どこも競合だとは思わない」と言う。マーケティングに偏らず、工場と二人三脚でものづくりに挑む姿勢がその人気を支える。例えば、主力商品の“スタイルナイトブラ”も、特徴である脇高パーツの高さや角度を調節したり、素材を変えたりなど、細部に至るまでこだわった。「ミリ単位の修正は、工場からは『誤差の範囲』と言われ嫌がられてしまうが、それが着け心地の違いにつながると説明を重ねて理解してもらった」。昨年、マイナーチェンジしたパッドも、工場からは「メール便に入る高さに抑えながら、着け心地を良くするのは難しい」と言われたが説得して1年半をかけて完成させた。消費者は、このように開発された商品の中から見つけた1品をきっかけにECサイトに入り、その後、他の商品を買い周り、気に入ってリピート。その循環で、ビジネスを成長させてきた。
2年後に国内7割、海外3割を目指す
来期は年商50億円を目指すという栗原社長は、3つの目標を掲げる。1つ目は、商品数の拡充。現在の20点を来期は倍の40点にすることを目指している。それに向けて、社員も年内に20人から30人に増員予定で、組織を強化する。2つ目は、ECからの脱却。ECでの販売がメインであることに変わりはないが、ブランド認知度を上げるため、ECに偏ることなくオフラインでの展開も強化する。3つ目は、海外展開。7月にはシンガポールのECモールに出店し、年内に台湾での販売もスタートする予定。2年後に国内7割、海外3割の売り上げ構成を目指すという。「創業時からコツコツと他にはないもの、いいものを作って、顧客を増やしてきた。それが一番の強みだ」。
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菊池武夫84歳、古着の山にワクワク 遊び心あふれる厳選100点を「ラグタグ」で販売
ワールドのメンズブランド「タケオキクチ(TAKEO KIKUCHI)」のクリエイティブディレクターを務める菊池武夫は、グループ企業のティンパンアレイが運営する古着チェーン「ラグタグ(RAGTAG)」と協業する。菊池が倉庫からセレクトした古着100点を、11月にワールド北青山ビルで開催するポップアップイベント「246st マーケット」で販売する。ポップアップにはスタイリストの三田真一、ファッションジャーナリストのシトウレイらも参加する。
7月下旬、菊池は都内のラグタグ倉庫に足を運び、ポップアップで販売する商品をピックアップした。「こりゃあすごいね」。約30万点の古着の山を前に目を輝かせた。「最近はテーラードが気分」と言い、かっちりとしたセットアップスーツを中心にスパンコールのブルゾンやパッチワークのミリタリージャケットもセレクトし、遊び心を忘れない。
衰えぬファッションへの情熱
「過去」を今の感覚でアップデート
「スーツはドレスアップのイメージだけど、自由に楽しんでもらいたい」と菊池。「今はモノも情報も増えたから、皆服をじっくり吟味して選ぶだろう。でも“冒険”はしづらくなっているんじゃないだろうか。着たいものを好きに着るのが一番楽しいんだ」と話す。ピックアップに要したのは1時間余り。「久々にワクワクした。あんなにたくさんの中から、自分が好きな服を選べることは中々ないからね」。
ファッションへの情熱は衰えない。毎朝、自分の服のコーディネートを選ぶのが何よりの楽しみと言う。自身が設立した「タケオキクチ」は来年40周年を迎えるが、今も毎日のようにアトリエに顔を出す。「僕は60年以上も業界にいる。どうしても頭でっかちになって、新鮮に感じられることも少なくなってくる。でも昔の服を今の感覚で着たら、当時とは全く違う気付きがあるものだ。だからファッションは面白い。今日選んだアンティーク(古着)を手にとる若者は、いったいどんな風に着こなしてくれるだろうか。すごく楽しみになった」。
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ベイクル元取締役が新会社立ち上げ 「ビジネスを知らない若手も、喫茶店を始めたい70歳も手伝いたい」
ベイクルーズ出身の森秀人がこのほど独立し、ブランドコンサルティング会社のフェーヴ(FEVE)を立ち上げた。前職では、40歳で取締役に就任しファッション、フード、フィットネス、インテリアなどの多岐にわたる領域で、70以上のブランドディレクションを手掛けた。そこで培った知見を武器に「時流を捉えたクリエイティブソリューションを包括的に提案していく」という。森に立ち上げ経緯を聞いた。

PROFILE:1975年埼玉県生まれ。2001年にベイクルーズに入社。「エディフィス」の販売員からスタートし、VMDを経てクリエイティブ部門のトップに就任。10年に執行役員に。15年からは取締役兼チーフクリエイティブオフィサーとして、ファッション・インテリア・フード・フィットネスでロゴデザインや内装デザイン、VMD、ディスプレーデザイン、空間演出など、全クリエイティブ領域において70ブランド以上をディレクションした。22年10月に独立し、23年5月にフェーヴを設立。高感度な消費者層に向けた事業会社に対し、時流を捉えたクリエイティブソリューションを提供するブランド・コンサルティング・サービスを8月から開始 PHOTO:SHUHEI SHINE
WWD:立ち上げの背景は?
森秀人フェーヴCEO兼クリエイティブ・プロデューサー(以下、森):「エディフィス(EDIFICE)」に憧れて2001年にベイクルーズに入社してから、ほぼ全ブランドのクリエイティブ全般にまつわるディレクションを任せてもらい、さまざまな領域で経験を積ませてもらいました。その中で、20年で一区切りつけようというビジョンをぼんやりと描いていました。20年たち、ある程度の達成感も得ることができ独立を決めました。
WWD:フェーヴとはどんな会社?
森:経営層がモヤモヤしている内容を言語化する仕事から、具体的な店作りや商品作り、SNS運用などの枝葉の業務まで全てを請け負います。「コンサルティングファーム」と名乗っていますが、僕がやりたいのは「何でも屋」。20年間、小売りの現場にいた経験を基に、クライアントの事業成長をお手伝いします。
WWD:強みは?
森:圧倒的な現場主義です。ベイクルーズの窪田(祐)会長には、何をするにも現場に行って、顧客視点を持つことをたたき込まれました。店作りも事業運営も、とにかく店に行って考えろと。そして、常にもっと何かできるかもしれないと批判の目を持つこと。前職では、毎シーズン修正を加えて、サグラダファミリアと呼ばれていた店もありましたね。でも、あえて「完成」を決めない意義も前職で学んだ大事なことです。
1ミリにこだわるディレクションで個性を引き出す
WWD:前職では70以上のブランドのディレクションを手掛けた。それぞれのブランドの個性を引き出すコツは?
森:ベイクルーズは狭いターゲット層の中で、あれだけのブランドを両立させている結構異質な事例だと思います。ディレクションする際はいつも、1ミリずれたら違うブランドだという感覚で、その1ミリにこだわってブランド同士をチューニングする作業を長年やってきました。例えば、同じフレンチシックがテーマの「イエナ(IENA)」と「スローブ イエナ(SLOBE IENA)」でも、彼の両親に会うなら前者、2人で湘南にデートに行くなら後者という具合に、一定の感度を担保してあげられれば1人のお客さまが回遊してくれるようになるわけです。新規のブランドを立ち上げるときには、コンセプトにまつわるインスピレーションを得るために、チームのみんなと一緒にブランドの雰囲気に合う海外に出張したりもしました。「〇〇っぽい天気」「〇〇っぽい海」という具合に、チームで共通言語を築いていく作業はとても楽しかったです。
WWD:「時流を捉えたクリエイティブソリューション」を掲げているが、今求められているブランドの共通点は?
森:メゾンブランドや個人ブランドが売れている背景には、信頼感があると思います。なので、僕がコンサルする際は、ブレない部分をどれだけ持てているかが大事とお伝えします。ブランドのアイデンティティーもそうですし、無駄な在庫を持っていないかどうかといった売り方も含めたうそのないコミュニケーションを取れるかがすごく大事な時代です。
WWD:今後のビジョンは?
森:強みのライフスタイル以外にも、これまで関わることができなかったような領域のお客さまでも経営支援をしていきたい。マーケティング的には、領域を絞った方が勝ち筋なんですが、僕はあえてその逆を行きます。センスはあるけど形にする方法が分からないビジネス未経験の若手も、喫茶店を始めたい70代のおじいちゃんも、「何でも屋」としてサポートしていきたいです。挑戦したいのは、地方活性化の事業です。地方を回ると、イベントを開催しているその部分は盛り上がっていても、周りは閑散としているような風景をよく見かけました。クリエイティブの力で、街全体を盛り上げるような仕掛けをしてみたい。アイデアはいくらでもあります。
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「社会全体で子どもを見る未来をつくりたい」 子育てアドバイザー・河西景翔 が考えるコスメがつなぐ未来とは<後編>
河西景翔/子育てアドバイザー プロフィール
(かわにし・けいと):小学生の頃から保育士を志し、中学生からは保育園でのボランティア活動に参加。2002年に保育士・幼稚園教諭の資格を取得。保育士・幼稚園教諭として15年以上保育の現場で働く。現在は、子育てアドバイザー・保育環境アドバイザーとして保育の現場とも関わりながら、子どものみならず、保護者支援にも注力。“育児も保育もファッションも男女の境はない、ジェンダーレスな社会づくり”を目指し、SNSやウエブなどで日々発信をする
前編では、使われないまま廃棄されるコスメ業界の現状と、その余剰コスメを通じた児童養護施設出身者のアフターケア事業への支援とコスメの可能性を、ビューティ業界特化型PR代理店である千田尚美プレッセ取締役、一般社団法人コンパスナビで児童養護施設退所者のアフターケア事業(クローバーハウス)に携わるブローハン聡氏、子育てアドバイザーの河西景翔氏の鼎談から探った。後編は、保育士として子どもたちやその保護者と関わってきた河西氏に、子育てにおける現状と課題、取り組むコスメやファッションを介した支援活動に耳を傾ける。
保護者の心のケアも必要だと感じた保育士時代
WWD:保育士時代はどんな先生だったのか?
河西:当時から、こんな見た目でしたよ(笑)。2007年くらいは髪も真っ赤で。生徒たちは今でも覚えているそうです。保育園では保育士がその日の過ごし方を決めるのですが、子どもたちと一緒にコスメごっこもしていました。セロハンテープを爪に貼って色を塗ったりとか、スズランテープでエクステをつけたりして。「今日コスメやる?」って言うと、「やるやる!」と目を輝かせるので、本当に楽しい時間でしたね。身だしなみを整えたり、輝けるものに触れたりすることは、子どもだからこそ純粋に感じるのだと思いました。
WWD:そんな河西さんが保育園の枠を超えて保育全体に関わろうと思ったのはなぜ?
河西:子育てにおいて支援するべきは子どもだけでなく、保護者へ目を向ける必要性を感じたからです。保育士時代、4歳児・28人の担任になったある朝、園児を送ってきた母親に「実は子育てで悩んでいる」と相談を受けたんです。朝の受け入れで忙しい時間帯だった自分は、思わず「保育園では元気だし大丈夫、大丈夫!」と言ってしまった。その1カ月後に、園児が足を引きずって登園してきた。聞くと、掃除機の柄で脚を思いっきり叩いてしまったと。「先生が大丈夫って言ってくれたけど、私、全然大丈夫じゃなかった」と言われた時、自分は保護者を全く見れていなかったことにがくぜんとしました。
WWD:その経験から保護者のケアも必要だと考えた。
河西:はい。自分は専門知識を持って保育に向き合っていると思っていたけれど、子どもしか見ていなかったのだと気付かされました。その後、2歳児の担任をしながら休日は学校へ通って、保護者の支援の仕方や話を聞く力を勉強し、保育心理士という資格を取りました。
WWD:学んだ後に保育と向き合ったことで変化は。
河西:保護者の話を聞くことにも注力しました。特に2歳児の保護者は、子どもの発達について悩んでいる方がとても多かった。心が発達し、個人差もある時期なので不安や悩みが出てくるのも当然ですよね。多くの保護者と話す中で、世の中にはきっと同じことで悩んでいるお母さんたちがたくさんいると思ったんです。ならば、自分がここで学んできた専門性と経験を生かして、保育園の中だけでなくいろんな人へ届けたいと思い始めました。その後退職し、子育てアドバイザーになりました。

みんなが子どもの代弁者となる未来に
WWD:どのような活動から始めた?
河西:子育ての現状を知ってもらうために、どうしてもファッション系の雑誌で発信をしたかったので、出版社を周りました。雑誌は美容室に必ず置いてあるから、子育て世代だけでなく、むしろ子育てに関係のない人の目に留まるかもしれないと思ったんです。
WWD:結果、マガジンハウス「Hanako Mama」の連載につながった。
河西:編集長が「面白そう!やろう!」と言ってくださり、「ママのためのカウンセリングルーム」という連載がスタートしました。これから注力したいと思っていたお母さんたちの力になれたことがうれしかったし、同じ悩みを持つお母さんたちの情報共有の場となれたことも良かったです。
WWD:以来、他誌やウエブでの連載が始まり、当初の目標だった“子育て世代以外の目に触れる機会”が増えた。
河西:そうですね。子育て中の人や保育に関わる人にとって当たり前のことも、そうでない人からすれば理解ができないことがたくさんあります。子どもってこういうものなんだ、親ってこんなことが大変なんだということを第三者が知っていれば、社会全体で子どもを見る未来につながると思います。みんなが子どもの代弁者になっていたら世界は変わるのですが、自分だけの世代を生きている人があまりに多い。子どもたちから学べることは本当に沢山ありますから、視野を広く持ってほしい。
子どもたちに、希望や期待を捨ててほしくない
WWD:コスメに興味を持ったきっかけは?
河西:一つは母が資生堂の美容部員だったこと。もう一つは、高校時代に吹き出物ができて人前に出るのも嫌だった自分が、コスメでカバーすることで自信が持てたこと。コスメには人に前を向かせる力があることを、その時身をもって知りました。
WWD:コスメを介して、母親を支援しようと思った理由は?
河西:保育に関わり始めてから、何か子育てにつなげることはできないかと考えていた頃、子ども2人を育てる友人に久しぶりに会ったんです。が、待ち合わせ場所で彼女に気付けなかった。聞けば、年子の子どもたちを平日はワンオペで、自分の時間はなく手間をかけられない、と。そこで自分がコスメをいくつか送ったところ、久しぶりのメイクや香りがリフレッシュになったみたいで、子育てにもちょっとだけ前向きになれたと話してくれました。その時に、自分だったらこういう支援ができるのかもって思ったんです。“自分”があってこそ、子どもに向き合えると思うので。
WWD:先日は子ども食堂でメイクレッスンも主催した。
河西:このイベントはお母さんたちのために開いたものでした。子ども食堂のお手伝いをしていた不登校の子が、お母さんに眉毛を描いてあげる姿を目にしました。きっと勇気が必要だったと思うけれど、彼女がコスメに興味を持てた瞬間だったんでしょうね。
WWD:母親だけでなく子どもたちの可能性を広げている。
河西:そうですね。先日“トー横キッズ”だった子と話す機会があったのですが、現実とは思えない話ばかりでした。小学5年生から体を売ってお金を稼ぐことを覚えてしまった子どももいます。こういう子たちを救い出すのも、親以外の周りの大人なんだと思います。子ども食堂にいた子どもたちも、もしかしたら吸い寄せられてしまうかもしれない。でも今回のようにコスメに触れて、面白い、他の人もきれいにしてあげたいと心が動けば、違う道になっていくじゃないですか。だから、大人たちが楽しそうに働く姿をたくさん見せてあげられる機会をつくりたいんです。
共感する支援活動をシェアすることは、今すぐできる
WWD:シングルマザーへのコスメ提供支援も行っている。シングルマザーはどのようなニーズを抱えていると感じるか。
河西:あくまで僕が関わっている方たちの場合ですが、金銭的に余裕がないことで、子どもにも影響が及んでしまっているのが辛い、という話を耳にします。例えば今の中学生はみんなコスメを持っていて、買えないことで仲間外れにされる。でも自分の収入に余裕がないから、買ってあげることができない、と。金銭的な支援は国が行うべきですが、必要な人にきちんと行き届く物の支援は誰でもすることができる。プレッセが行っているようなコスメを提供する活動は、もっと業界全体で広がっていくべきだと思います。
また、もっと簡単に今すぐにでもできるのは、“情報をシェアすること”だと思います。自分が共感する支援活動をシェアすること。僕がSNSで発信する理由も、支援の輪を広げるためです。100、200人と投稿を見ている中で、一人でも心が動いてくれる人がいたらいい。
WWD:今後はどのような活動をしていきたいか。
河西:子育てや支援について発信している人たちの支えとなる活動をしていきたいです。今はいろいろな考えに柔軟な若い人たちが、SNSをうまく使って発信をしている。これまでは自分が目立つことで表に立ってきたけれど、そこを退いて、“支援する側を支援”したい。例えば、イベントしたいという声があったときに金銭面や協賛などは自分に任せて、参加者のために使える時間を増やせた方がより意味のあるイベントになると思うんです。支援する側が疲弊せず、実現したいことをサポートできたらと考えています。
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PR会社プレッセが余剰コスメを児童養護施設出身者に提供 コスメがつなぐ未来とは<前編>
千田尚美/プレッセ取締役 プロフィール
(せんだ・なおみ):経営に関わりながらオーガニックコスメやドクターズコスメ、美容機器までさまざまな人気ブランドのPRを担当。近年は社会福祉イベントへの協賛や今回紹介する支援など、メディアコミュニケーション以外の視点からも、コスメを介した活動に積極的に参加する
ブローハン聡/一般社団法人コンパスナビ事務局長・支援事業部 部長代理 プロフィール
(ぶろーはん・さとし):フィリピン人の母、日本人の父の間に婚外子として生まれる。4歳から母の結婚相手(義父)から虐待を受け、11歳のときに保護され児童養護施設へ。施設卒園後は病院の看護助手、携帯電話販売ショップなどで働く一方、フリーのモデル・タレントとして活動。現在は埼玉県の一般社団法人コンパスナビで児童養護施設退所者のアフターケア事業(クローバーハウス)に携わる。また児童養護施設出身者として、講演やYoutubeの配信など当事者活動を行う
河西景翔/子育てアドバイザー プロフィール
(かわにし・けいと):小学生の頃から保育士を志し、中学生からは保育園でのボランティア活動に参加。2002年に保育士・幼稚園教諭の資格を取得。保育士・幼稚園教諭として15年以上保育の現場で働く。現在は、子育てアドバイザー・保育環境アドバイザーとして保育の現場とも関わりながら、子どものみならず、保護者支援にも注力。“育児も保育もファッションも男女の境はない、ジェンダーレスな社会づくり”を目指し、SNSやウエブなどで日々発信をする
コスメブランドのマーケティング、ブランディング、宣伝を担うPR会社には、各ブランドからPR用のコスメサンプルが届く。それらは主にメディアへの貸し出しや美容業界関係者へ配布されるが、消費しきれないまま新品のまま残ってしまう現状がある。美容業界特化型のPR会社プレッセは、今春からそれら余剰のPR用サンプルを児童養護施設出身者への支援へつなげている。今回は千田尚美プレッセ取締役、余剰コスメの届け先で児童養護施設出身者のアフターケア事業「クローバーハウス」運営に携わるブローハン聡氏、ジェンダーレスな社会を目指す子育てアドバイザーであり両社の架け橋となった河西景翔氏による鼎談を行った。業界の現状を知るとともに、コスメの可能性について探る。
20代の若手社員たちが声を上げ、支援事業が動き出した
WWD:プレッセにおける余剰サンプルの現状は?
千田尚美プレッセ取締役(以下、千田):弊社は約30社のPRを担当しているので、ヘアケア、スキンケア、ファンデーション、カラーメイクなどメディアへの貸し出しから戻った商品は1カ月間で段ボール何箱分にもなります。各ブランドが一度倉庫から出庫した商品は市場へは出せないため、弊社が預かるのです。ブランドのご好意でわれわれが実際に使わせてもらうことで商品探求へ生かしていますがそれでもかなりの量が残ってしまうのが現状。最終的に破棄することが20年ほど続いていましたが、昨年ようやく社内で具体的な話し合いが始まりました。
WWD:昨年動き出したのは、何かきっかけがあった?
千田:“寄付してどなたかに使ってもらいたい”思いはあったものの、支援先に当てがなく、ブランド側のリスクとしては転売問題がありました。弊社もこの問題を解決する手立てがなく長年破棄せざるを得ませんでした。しかし昨年、20代の社員たちが「どうにかしたい」という声を改めて上げてくれ、今動かなければと。そこで今年1月にイベントでお会いした河西さんに、余剰サンプルをどこかへ寄付できないかと相談しました。
河西景翔・保育アドバイザー(以下、河西):そうでしたね。大阪の育児放棄事件が題材となった映画「子宮に沈める」の公開から10年が経ち、改めて作品と向き合おうというイベントが行われたんです。プレッセはこのイベントに協賛してくださり、ちょうど参加していたブローハンさんを紹介しました。彼が支援しているのは、主に児童養護施設を出た18歳以上の人たちなので、コスメが必要な機会が訪れるはずだと思って。
千田:中学生や高校生にメイクを推奨しないブランドもある中で、全ての条件がぴたりとはまりました。早速ブローハンさんに、サンプルを受け取ってもらえないか聞いたところ、ぜひ受け取らせてください!と。その後すぐにヘアケア、スキンケア、カラーコスメなど約20人分の量を詰めてクローバーハウスへお送りしたんです。
ブローハン聡コンパスナビ事務局長・支援事業部 部長代理(以下、ブローハン):コスメが届いた時の喜びといったらなかったですね。事務所に支援が届くと、利用者登録をしているみなさんにオフィシャルラインで共有するのですが、その日は平日にもかかわらずたくさんの人が来てくれました。
WWD:各ブランドへはどう説明し、どのような反応があったのか?
千田:実は初回は、相談レベルでお話できるブランドのみを送りました。何より受け取られる方の反応を知りたかったんです。結果、懸念していた転売はありませんでしたし、当然SNSに投稿されることもなかった。これは本当に使ってくださっているんだと思っていたところに、「こんなにかわいい化粧品は今まで使ったことがなかったからうれしい」とお礼の手紙をいただいて。お送りしてよかったと思うと同時に、活動を続けなければと思いました。手紙を持って各ブランドへ支援活動の説明に伺うと、ネガティブな声はほぼなく、ぜひ活動に生かしてくださいと言ってくださいました。それから平均して月に1度、余剰のPRサンプルをお送りしています。
WWD:支援活動を始めて半年。感じている課題は?
千田:現在はクローバーハウスと直接のやりとりですし、ブローハンさんが来所者と信頼関係性を築いているのを見ているので、安心して商品をお渡しできます。けれど今後、支援活動が広がったときに、万が一転売サイトへ出されたとしても追うことはできません。また、大量に送りすぎると迷惑をかけてしまうのではという懸念もある。いずれの場合も、コミュニケーションを怠らずに最適な方法を都度考えたいです。活動が広がることはわれわれの願いでもあります。社内できちんと担当化して活動の大きな柱として構えられたら、弊社の担当外のブランドさんへもお声がけしたいですね。そして何より、PRサンプルで行っている活動なので旬なアイテムをお送りしたい。楽しんで使ってもらえたら、これほどうれしいことはありません。
無関心を関心へ。他人事から自分ごとへ。
WWD:河西さんとブローハンさんはどのようにつながったのか?
河西:2020年に、ブローハンさんの新聞記事を読んで僕からコンタクトを取ったんです。児童養護施設についてもっと知りたいと思っていた時に、彼の存在と活動を知って。自分の志ともすごく似ていたので、すぐに意気投合しました。
ブローハン:景翔さんは、オレンジのモコモコしたコートを着ていましたね(笑)。何者なんだろうと思いながら会いに行きました。僕は人と会うのが好きで、呼ばれたら行くというスタンス。福祉の枠を超えた形で、“無関心を関心に変えていきたい”という思いがあるので、景翔さんにはいつも背中を押されています。僕の経験はたしかに辛いものでしたが、悲しいもので終わらせたくありません。Youtubeで自分の経験や活動を発信しているのも、一見無関係な人たちにも、半径5メートルの日常の世界に目を向けてほしいからなんです。
河西:都会はなかなかSOSを出せない人も多いのと同じように、われ関せずと見守ってしまう人も多いですよね。先日、電車で “子どもを助けたいので困っていたら声をかけてください”と書いたバッジを身に付けた18歳前後の女性を見かけました。そういうものがないと動けない社会ってどうなの?という人もいるかもしれませんが、都会においては有効かもしれない、と。この支援の仕方、いいなって思いました。
「人生をリスタートするタイミングに立ち会っている」
WWD:クローバーハウスには主にどのような人が訪れている?
ブローハン:クローバーハウスは埼玉県の児童福祉事業の一つで、児童養護施設(里親、児童自立施設なども含む)を退所した18歳〜30歳前後の人が利用しています。退所後にスムーズに社会に溶け込める人ばかりではなく、施設出身者がシングルマザーとなり子どもをまた施設に預けることになってしまった、妊娠をした、ホームレスになったなどさまざまな事情があり、児童養護施設を介してここへたどり着きます。また、クローバーハウスを拠り所としてくれ、社会へ出たあとも定期的に顔を見せに来てくれる人もいます。利用者が似た状況で困っている友人を紹介してくれるケースもありますね。
WWD:具体的にどのような支援を行っているのか?
ブローハン:スーツや食料、生活必需品、普通運転免許取得のほか、自立支援や就職支援、居住支援など生活全般の支援を行っています。今ではプレッセのように応援してくださる人が増え、支援の輪が広がっています。コスメは初めていただきましたが、施設退所後に就職活動に向かう際にも、心を満たす意味でも大切なものなのだと実感しました。
WWD:18歳で児童養護施設を退所した後に、苦労する人も多いという話も耳にする。
ブローハン:その理由に、高齢児保護が増えてきていることがあると思います。以前は乳幼児期に児童養護施設で預かり、長い年月をかけて職員さんと信頼関係を築きながら成長していくケースがほとんどでしたが、最近は16、17歳でようやく保護されるケースが増えています。心がズタボロの状態で施設へやってきて、初めて衣食住が整う空間で暮らすことができても、18歳までには出なければなりません。虐待を受けた子たちが回復するには、その年月の6倍の時間を要すると言われている中で、時間があまりにも足りない。それまで普通のことを普通に体験してこられなかった子たちが、18歳になってすぐ社会に順応できないことは想像にあまりあると思います。隣の人の手が上がるだけでも反応してしまう、男性を見るだけでも震える、人の顔色を伺ってしまうなど、つまずき方は人それぞれ。僕はクローバーハウスにたどり着いた人と少しずつ会話を深めて、SOSにつながる瞬間を見ています.
WWD:ブローハンさんは、どのような思いを大切に皆さんと向き合っているのか?
ブローハン:いつでも戻ってこられる“居場所である”と伝えたい。クローバーハウスを自分の居場所として利用する人、ここを出発点に次の場所へ進む人、彼氏ができて失敗して戻ってくる人……。どんな状況であれ、自分の人生をリスタートしようとしている子たちと一緒に並走したいと思っています。そして、洋服やコスメを自分で選び、受け取ることは、生まれ変わる瞬間に立ち会えるということ。18歳、19歳というのは、大人になりきれない中途半端さと共にいる難しい時期です。本人たちにとってはじれったい時間かもしれませんが、揺れていた気持ちが自信に変わる瞬間を僕は何度も見ています。コスメは、そのリスタートの大きなきっかけになっていることを今回お伝えしたいと思いました。
WWD:今後、必要なことは?
ブローハン: 細く長く付き合う関係性をたくさん増やしたい。その中で、可能性と選択肢を増やしていきたいんです。先日、プレッセの皆さんがクローバーハウスへ来てくれました。利用者の皆は初めて、届く物にも誰かの思いが乗っていることに触れられたと思います。僕が向き合っている若者たちにとって、選択肢はとても大切です。自分たちを見てくれている人がちゃんと居るんだ、ということを実感できる機会をこれからもつくりたい。その安心感は、自分の人生を主人公として生きることにつながっていくと思います。
WWD:将来、化粧品に携わる仕事をしたいという人がいるかもしれない。
千田:それほどうれしいことはないですね。
ブローハン:それこそ仕事している姿を見てほしいです。家庭から出たことがない子どもたちも多いので、いろんな大人を見るという意味では、仕事をして社会で生きていくこと、人と人の掛け算で仕事が成り立つこと、その姿を見られるというのは視野を広げてくれるはずです。
パフォーマンスではなく、本当に必要な人に届けるべき
WWD:コスメにはどんな力があると感じる?
ブローハン:着の身着のまま沖縄から逃げて来た女の子が、クローバーハウスで洋服やコスメに触れる中で、こんなに人って変わるんだと驚きました。自分の瞳を隠していたカラコンを外して素顔に近づき、自分らしくなれたというか。コスメについては全く無知でしたが、この半年間で変わる力を実感しています。
千田:笑顔にさせることができるんだと改めて感じます。私自身、日々ビジネスとして当たり前のように触れていたので、お手紙から溢れる“使えてうれしい”という純粋な気持ちを知り、この支援を続けたいと強く思いました。
河西:先日、子ども食堂で母親向けのメイクレッスンイベントを行なったんです。その時に一番すごいと感じたのは、コスメのホスピタリティ。子ども食堂では、不登校の子たちがスタッフとして手伝ってくれているのですが、今回のイベントにお母さんと一緒に参加してくれた子がいました。メイクでお母さんがきれいになっていく様子を見て、初めは部屋のすみっこの方にいた子が前へ出てきて、お母さんの眉毛を描いてあげたんですね。それを施設長が見て、「あの子はここへ来ても影に隠れていたけれど、今日は自分が出せたんだと思う。自分がメイクをするんじゃなくて、お母さんをきれいにしてあげようという、その気持ちがうれしい」という言葉を聞いたときに、コスメには人を癒す力があると思いました。
WWD:コロナ禍以前に比べて、支援を必要とする人が増え、ボランティアで活動を行う支援する側が疲弊してしまうという現状もあると聞く。
河西:企業の協賛が多い富裕層へ向けたエシカルイベントはたくさんあるんです。ブローハンさんの言葉を借りると、関心を無関心に変えるきっかけになるので、素晴らしい取り組みだとは思います。けれど、みんなで一緒に育つ社会を目指すのであれば、貧困で悩む人たちにも手を差し伸べることが必要ですよね。例えば、コスメを絵の具に変えてアートを描くという取り組みは、いい思い出にはなる。けれど、使えるコスメを必要な方へ提供したらコスメとしてちゃんと使ってもらえます。提供してもらった人たちにとっては、その時の喜びだけでなく、未来への可能性へつながっていくわけです。誰かが手を差し伸べて助けてくれたという事実があるだけで、未来が全然違うと思うんです。
WWD:エコ、エシカル、SDGs……全て、継続していくべき命題。コスメ業界で考えると、“作ること”全体の話にもなっていくかもしれない。
河西:ファッションイベントでそれらのテーマを掲げていても、裏を返すと何も行われていないこともあります。ジュンから今秋ローンチされる「リ アッシュ」は面白いですよ。循環型ファッションプロジェクトで、リメイクを通して捨てられてしまう洋服に価値を生みながら社会問題にも取り組む試み。貧困層の子どもたちは服を買えない現状がありますが、リメイクすれば洋服は着られる、足した丈だってむしろおしゃれという新たな価値観を作ってくれると思います。コスメもゼロからイチを生み出すばかりではなく、今あるものに“本来の役割”を残した上で使うことを業界全体で考えていけたら、本当に必要な人たちへの支援になると僕は思います。
The post PR会社プレッセが余剰コスメを児童養護施設出身者に提供 コスメがつなぐ未来とは<前編> appeared first on WWDJAPAN.
PR会社プレッセが余剰コスメを児童養護施設出身者に提供 コスメがつなぐ未来とは<前編>
千田尚美/プレッセ取締役 プロフィール
(せんだ・なおみ):経営に関わりながらオーガニックコスメやドクターズコスメ、美容機器までさまざまな人気ブランドのPRを担当。近年は社会福祉イベントへの協賛や今回紹介する支援など、メディアコミュニケーション以外の視点からも、コスメを介した活動に積極的に参加する
ブローハン聡/一般社団法人コンパスナビ事務局長・支援事業部 部長代理 プロフィール
(ぶろーはん・さとし):フィリピン人の母、日本人の父の間に婚外子として生まれる。4歳から母の結婚相手(義父)から虐待を受け、11歳のときに保護され児童養護施設へ。施設卒園後は病院の看護助手、携帯電話販売ショップなどで働く一方、フリーのモデル・タレントとして活動。現在は埼玉県の一般社団法人コンパスナビで児童養護施設退所者のアフターケア事業(クローバーハウス)に携わる。また児童養護施設出身者として、講演やYoutubeの配信など当事者活動を行う
河西景翔/子育てアドバイザー プロフィール
(かわにし・けいと):小学生の頃から保育士を志し、中学生からは保育園でのボランティア活動に参加。2002年に保育士・幼稚園教諭の資格を取得。保育士・幼稚園教諭として15年以上保育の現場で働く。現在は、子育てアドバイザー・保育環境アドバイザーとして保育の現場とも関わりながら、子どものみならず、保護者支援にも注力。“育児も保育もファッションも男女の境はない、ジェンダーレスな社会づくり”を目指し、SNSやウエブなどで日々発信をする
コスメブランドのマーケティング、ブランディング、宣伝を担うPR会社には、各ブランドからPR用のコスメサンプルが届く。それらは主にメディアへの貸し出しや美容業界関係者へ配布されるが、消費しきれないまま新品のまま残ってしまう現状がある。美容業界特化型のPR会社プレッセは、今春からそれら余剰のPR用サンプルを児童養護施設出身者への支援へつなげている。今回は千田尚美プレッセ取締役、余剰コスメの届け先で児童養護施設出身者のアフターケア事業「クローバーハウス」運営に携わるブローハン聡氏、ジェンダーレスな社会を目指す子育てアドバイザーであり両社の架け橋となった河西景翔氏による鼎談を行った。業界の現状を知るとともに、コスメの可能性について探る。
20代の若手社員たちが声を上げ、支援事業が動き出した
WWD:プレッセにおける余剰サンプルの現状は?
千田尚美プレッセ取締役(以下、千田):弊社は約30社のPRを担当しているので、ヘアケア、スキンケア、ファンデーション、カラーメイクなどメディアへの貸し出しから戻った商品は1カ月間で段ボール何箱分にもなります。各ブランドが一度倉庫から出庫した商品は市場へは出せないため、弊社が預かるのです。ブランドのご好意でわれわれが実際に使わせてもらうことで商品探求へ生かしていますがそれでもかなりの量が残ってしまうのが現状。最終的に破棄することが20年ほど続いていましたが、昨年ようやく社内で具体的な話し合いが始まりました。
WWD:昨年動き出したのは、何かきっかけがあった?
千田:“寄付してどなたかに使ってもらいたい”思いはあったものの、支援先に当てがなく、ブランド側のリスクとしては転売問題がありました。弊社もこの問題を解決する手立てがなく長年破棄せざるを得ませんでした。しかし昨年、20代の社員たちが「どうにかしたい」という声を改めて上げてくれ、今動かなければと。そこで今年1月にイベントでお会いした河西さんに、余剰サンプルをどこかへ寄付できないかと相談しました。
河西景翔・保育アドバイザー(以下、河西):そうでしたね。大阪の育児放棄事件が題材となった映画「子宮に沈める」の公開から10年が経ち、改めて作品と向き合おうというイベントが行われたんです。プレッセはこのイベントに協賛してくださり、ちょうど参加していたブローハンさんを紹介しました。彼が支援しているのは、主に児童養護施設を出た18歳以上の人たちなので、コスメが必要な機会が訪れるはずだと思って。
千田:中学生や高校生にメイクを推奨しないブランドもある中で、全ての条件がぴたりとはまりました。早速ブローハンさんに、サンプルを受け取ってもらえないか聞いたところ、ぜひ受け取らせてください!と。その後すぐにヘアケア、スキンケア、カラーコスメなど約20人分の量を詰めてクローバーハウスへお送りしたんです。
ブローハン聡コンパスナビ事務局長・支援事業部 部長代理(以下、ブローハン):コスメが届いた時の喜びといったらなかったですね。事務所に支援が届くと、利用者登録をしているみなさんにオフィシャルラインで共有するのですが、その日は平日にもかかわらずたくさんの人が来てくれました。
WWD:各ブランドへはどう説明し、どのような反応があったのか?
千田:実は初回は、相談レベルでお話できるブランドのみを送りました。何より受け取られる方の反応を知りたかったんです。結果、懸念していた転売はありませんでしたし、当然SNSに投稿されることもなかった。これは本当に使ってくださっているんだと思っていたところに、「こんなにかわいい化粧品は今まで使ったことがなかったからうれしい」とお礼の手紙をいただいて。お送りしてよかったと思うと同時に、活動を続けなければと思いました。手紙を持って各ブランドへ支援活動の説明に伺うと、ネガティブな声はほぼなく、ぜひ活動に生かしてくださいと言ってくださいました。それから平均して月に1度、余剰のPRサンプルをお送りしています。
WWD:支援活動を始めて半年。感じている課題は?
千田:現在はクローバーハウスと直接のやりとりですし、ブローハンさんが来所者と信頼関係性を築いているのを見ているので、安心して商品をお渡しできます。けれど今後、支援活動が広がったときに、万が一転売サイトへ出されたとしても追うことはできません。また、大量に送りすぎると迷惑をかけてしまうのではという懸念もある。いずれの場合も、コミュニケーションを怠らずに最適な方法を都度考えたいです。活動が広がることはわれわれの願いでもあります。社内できちんと担当化して活動の大きな柱として構えられたら、弊社の担当外のブランドさんへもお声がけしたいですね。そして何より、PRサンプルで行っている活動なので旬なアイテムをお送りしたい。楽しんで使ってもらえたら、これほどうれしいことはありません。
無関心を関心へ。他人事から自分ごとへ。
WWD:河西さんとブローハンさんはどのようにつながったのか?
河西:2020年に、ブローハンさんの新聞記事を読んで僕からコンタクトを取ったんです。児童養護施設についてもっと知りたいと思っていた時に、彼の存在と活動を知って。自分の志ともすごく似ていたので、すぐに意気投合しました。
ブローハン:景翔さんは、オレンジのモコモコしたコートを着ていましたね(笑)。何者なんだろうと思いながら会いに行きました。僕は人と会うのが好きで、呼ばれたら行くというスタンス。福祉の枠を超えた形で、“無関心を関心に変えていきたい”という思いがあるので、景翔さんにはいつも背中を押されています。僕の経験はたしかに辛いものでしたが、悲しいもので終わらせたくありません。Youtubeで自分の経験や活動を発信しているのも、一見無関係な人たちにも、半径5メートルの日常の世界に目を向けてほしいからなんです。
河西:都会はなかなかSOSを出せない人も多いのと同じように、われ関せずと見守ってしまう人も多いですよね。先日、電車で “子どもを助けたいので困っていたら声をかけてください”と書いたバッジを身に付けた18歳前後の女性を見かけました。そういうものがないと動けない社会ってどうなの?という人もいるかもしれませんが、都会においては有効かもしれない、と。この支援の仕方、いいなって思いました。
「人生をリスタートするタイミングに立ち会っている」
WWD:クローバーハウスには主にどのような人が訪れている?
ブローハン:クローバーハウスは埼玉県の児童福祉事業の一つで、児童養護施設(里親、児童自立施設なども含む)を退所した18歳〜30歳前後の人が利用しています。退所後にスムーズに社会に溶け込める人ばかりではなく、施設出身者がシングルマザーとなり子どもをまた施設に預けることになってしまった、妊娠をした、ホームレスになったなどさまざまな事情があり、児童養護施設を介してここへたどり着きます。また、クローバーハウスを拠り所としてくれ、社会へ出たあとも定期的に顔を見せに来てくれる人もいます。利用者が似た状況で困っている友人を紹介してくれるケースもありますね。
WWD:具体的にどのような支援を行っているのか?
ブローハン:スーツや食料、生活必需品、普通運転免許取得のほか、自立支援や就職支援、居住支援など生活全般の支援を行っています。今ではプレッセのように応援してくださる人が増え、支援の輪が広がっています。コスメは初めていただきましたが、施設退所後に就職活動に向かう際にも、心を満たす意味でも大切なものなのだと実感しました。
WWD:18歳で児童養護施設を退所した後に、苦労する人も多いという話も耳にする。
ブローハン:その理由に、高齢児保護が増えてきていることがあると思います。以前は乳幼児期に児童養護施設で預かり、長い年月をかけて職員さんと信頼関係を築きながら成長していくケースがほとんどでしたが、最近は16、17歳でようやく保護されるケースが増えています。心がズタボロの状態で施設へやってきて、初めて衣食住が整う空間で暮らすことができても、18歳までには出なければなりません。虐待を受けた子たちが回復するには、その年月の6倍の時間を要すると言われている中で、時間があまりにも足りない。それまで普通のことを普通に体験してこられなかった子たちが、18歳になってすぐ社会に順応できないことは想像にあまりあると思います。隣の人の手が上がるだけでも反応してしまう、男性を見るだけでも震える、人の顔色を伺ってしまうなど、つまずき方は人それぞれ。僕はクローバーハウスにたどり着いた人と少しずつ会話を深めて、SOSにつながる瞬間を見ています.
WWD:ブローハンさんは、どのような思いを大切に皆さんと向き合っているのか?
ブローハン:いつでも戻ってこられる“居場所である”と伝えたい。クローバーハウスを自分の居場所として利用する人、ここを出発点に次の場所へ進む人、彼氏ができて失敗して戻ってくる人……。どんな状況であれ、自分の人生をリスタートしようとしている子たちと一緒に並走したいと思っています。そして、洋服やコスメを自分で選び、受け取ることは、生まれ変わる瞬間に立ち会えるということ。18歳、19歳というのは、大人になりきれない中途半端さと共にいる難しい時期です。本人たちにとってはじれったい時間かもしれませんが、揺れていた気持ちが自信に変わる瞬間を僕は何度も見ています。コスメは、そのリスタートの大きなきっかけになっていることを今回お伝えしたいと思いました。
WWD:今後、必要なことは?
ブローハン: 細く長く付き合う関係性をたくさん増やしたい。その中で、可能性と選択肢を増やしていきたいんです。先日、プレッセの皆さんがクローバーハウスへ来てくれました。利用者の皆は初めて、届く物にも誰かの思いが乗っていることに触れられたと思います。僕が向き合っている若者たちにとって、選択肢はとても大切です。自分たちを見てくれている人がちゃんと居るんだ、ということを実感できる機会をこれからもつくりたい。その安心感は、自分の人生を主人公として生きることにつながっていくと思います。
WWD:将来、化粧品に携わる仕事をしたいという人がいるかもしれない。
千田:それほどうれしいことはないですね。
ブローハン:それこそ仕事している姿を見てほしいです。家庭から出たことがない子どもたちも多いので、いろんな大人を見るという意味では、仕事をして社会で生きていくこと、人と人の掛け算で仕事が成り立つこと、その姿を見られるというのは視野を広げてくれるはずです。
パフォーマンスではなく、本当に必要な人に届けるべき
WWD:コスメにはどんな力があると感じる?
ブローハン:着の身着のまま沖縄から逃げて来た女の子が、クローバーハウスで洋服やコスメに触れる中で、こんなに人って変わるんだと驚きました。自分の瞳を隠していたカラコンを外して素顔に近づき、自分らしくなれたというか。コスメについては全く無知でしたが、この半年間で変わる力を実感しています。
千田:笑顔にさせることができるんだと改めて感じます。私自身、日々ビジネスとして当たり前のように触れていたので、お手紙から溢れる“使えてうれしい”という純粋な気持ちを知り、この支援を続けたいと強く思いました。
河西:先日、子ども食堂で母親向けのメイクレッスンイベントを行なったんです。その時に一番すごいと感じたのは、コスメのホスピタリティ。子ども食堂では、不登校の子たちがスタッフとして手伝ってくれているのですが、今回のイベントにお母さんと一緒に参加してくれた子がいました。メイクでお母さんがきれいになっていく様子を見て、初めは部屋のすみっこの方にいた子が前へ出てきて、お母さんの眉毛を描いてあげたんですね。それを施設長が見て、「あの子はここへ来ても影に隠れていたけれど、今日は自分が出せたんだと思う。自分がメイクをするんじゃなくて、お母さんをきれいにしてあげようという、その気持ちがうれしい」という言葉を聞いたときに、コスメには人を癒す力があると思いました。
WWD:コロナ禍以前に比べて、支援を必要とする人が増え、ボランティアで活動を行う支援する側が疲弊してしまうという現状もあると聞く。
河西:企業の協賛が多い富裕層へ向けたエシカルイベントはたくさんあるんです。ブローハンさんの言葉を借りると、関心を無関心に変えるきっかけになるので、素晴らしい取り組みだとは思います。けれど、みんなで一緒に育つ社会を目指すのであれば、貧困で悩む人たちにも手を差し伸べることが必要ですよね。例えば、コスメを絵の具に変えてアートを描くという取り組みは、いい思い出にはなる。けれど、使えるコスメを必要な方へ提供したらコスメとしてちゃんと使ってもらえます。提供してもらった人たちにとっては、その時の喜びだけでなく、未来への可能性へつながっていくわけです。誰かが手を差し伸べて助けてくれたという事実があるだけで、未来が全然違うと思うんです。
WWD:エコ、エシカル、SDGs……全て、継続していくべき命題。コスメ業界で考えると、“作ること”全体の話にもなっていくかもしれない。
河西:ファッションイベントでそれらのテーマを掲げていても、裏を返すと何も行われていないこともあります。ジュンから今秋ローンチされる「リ アッシュ」は面白いですよ。循環型ファッションプロジェクトで、リメイクを通して捨てられてしまう洋服に価値を生みながら社会問題にも取り組む試み。貧困層の子どもたちは服を買えない現状がありますが、リメイクすれば洋服は着られる、足した丈だってむしろおしゃれという新たな価値観を作ってくれると思います。コスメもゼロからイチを生み出すばかりではなく、今あるものに“本来の役割”を残した上で使うことを業界全体で考えていけたら、本当に必要な人たちへの支援になると僕は思います。
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PR会社プレッセが余剰コスメを児童養護施設出身者に提供 コスメがつなぐ未来とは<前編>
千田尚美/プレッセ取締役 プロフィール
(せんだ・なおみ):経営に関わりながらオーガニックコスメやドクターズコスメ、美容機器までさまざまな人気ブランドのPRを担当。近年は社会福祉イベントへの協賛や今回紹介する支援など、メディアコミュニケーション以外の視点からも、コスメを介した活動に積極的に参加する
ブローハン聡/一般社団法人コンパスナビ事務局長・支援事業部 部長代理 プロフィール
(ぶろーはん・さとし):フィリピン人の母、日本人の父の間に婚外子として生まれる。4歳から母の結婚相手(義父)から虐待を受け、11歳のときに保護され児童養護施設へ。施設卒園後は病院の看護助手、携帯電話販売ショップなどで働く一方、フリーのモデル・タレントとして活動。現在は埼玉県の一般社団法人コンパスナビで児童養護施設退所者のアフターケア事業(クローバーハウス)に携わる。また児童養護施設出身者として、講演やYoutubeの配信など当事者活動を行う
河西景翔/子育てアドバイザー プロフィール
(かわにし・けいと):小学生の頃から保育士を志し、中学生からは保育園でのボランティア活動に参加。2002年に保育士・幼稚園教諭の資格を取得。保育士・幼稚園教諭として15年以上保育の現場で働く。現在は、子育てアドバイザー・保育環境アドバイザーとして保育の現場とも関わりながら、子どものみならず、保護者支援にも注力。“育児も保育もファッションも男女の境はない、ジェンダーレスな社会づくり”を目指し、SNSやウエブなどで日々発信をする
コスメブランドのマーケティング、ブランディング、宣伝を担うPR会社には、各ブランドからPR用のコスメサンプルが届く。それらは主にメディアへの貸し出しや美容業界関係者へ配布されるが、消費しきれないまま新品のまま残ってしまう現状がある。美容業界特化型のPR会社プレッセは、今春からそれら余剰のPR用サンプルを児童養護施設出身者への支援へつなげている。今回は千田尚美プレッセ取締役、余剰コスメの届け先で児童養護施設出身者のアフターケア事業「クローバーハウス」運営に携わるブローハン聡氏、ジェンダーレスな社会を目指す子育てアドバイザーであり両社の架け橋となった河西景翔氏による鼎談を行った。業界の現状を知るとともに、コスメの可能性について探る。
20代の若手社員たちが声を上げ、支援事業が動き出した
WWD:プレッセにおける余剰サンプルの現状は?
千田尚美プレッセ取締役(以下、千田):弊社は約30社のPRを担当しているので、ヘアケア、スキンケア、ファンデーション、カラーメイクなどメディアへの貸し出しから戻った商品は1カ月間で段ボール何箱分にもなります。各ブランドが一度倉庫から出庫した商品は市場へは出せないため、弊社が預かるのです。ブランドのご好意でわれわれが実際に使わせてもらうことで商品探求へ生かしていますがそれでもかなりの量が残ってしまうのが現状。最終的に破棄することが20年ほど続いていましたが、昨年ようやく社内で具体的な話し合いが始まりました。
WWD:昨年動き出したのは、何かきっかけがあった?
千田:“寄付してどなたかに使ってもらいたい”思いはあったものの、支援先に当てがなく、ブランド側のリスクとしては転売問題がありました。弊社もこの問題を解決する手立てがなく長年破棄せざるを得ませんでした。しかし昨年、20代の社員たちが「どうにかしたい」という声を改めて上げてくれ、今動かなければと。そこで今年1月にイベントでお会いした河西さんに、余剰サンプルをどこかへ寄付できないかと相談しました。
河西景翔・保育アドバイザー(以下、河西):そうでしたね。大阪の育児放棄事件が題材となった映画「子宮に沈める」の公開から10年が経ち、改めて作品と向き合おうというイベントが行われたんです。プレッセはこのイベントに協賛してくださり、ちょうど参加していたブローハンさんを紹介しました。彼が支援しているのは、主に児童養護施設を出た18歳以上の人たちなので、コスメが必要な機会が訪れるはずだと思って。
千田:中学生や高校生にメイクを推奨しないブランドもある中で、全ての条件がぴたりとはまりました。早速ブローハンさんに、サンプルを受け取ってもらえないか聞いたところ、ぜひ受け取らせてください!と。その後すぐにヘアケア、スキンケア、カラーコスメなど約20人分の量を詰めてクローバーハウスへお送りしたんです。
ブローハン聡コンパスナビ事務局長・支援事業部 部長代理(以下、ブローハン):コスメが届いた時の喜びといったらなかったですね。事務所に支援が届くと、利用者登録をしているみなさんにオフィシャルラインで共有するのですが、その日は平日にもかかわらずたくさんの人が来てくれました。
WWD:各ブランドへはどう説明し、どのような反応があったのか?
千田:実は初回は、相談レベルでお話できるブランドのみを送りました。何より受け取られる方の反応を知りたかったんです。結果、懸念していた転売はありませんでしたし、当然SNSに投稿されることもなかった。これは本当に使ってくださっているんだと思っていたところに、「こんなにかわいい化粧品は今まで使ったことがなかったからうれしい」とお礼の手紙をいただいて。お送りしてよかったと思うと同時に、活動を続けなければと思いました。手紙を持って各ブランドへ支援活動の説明に伺うと、ネガティブな声はほぼなく、ぜひ活動に生かしてくださいと言ってくださいました。それから平均して月に1度、余剰のPRサンプルをお送りしています。
WWD:支援活動を始めて半年。感じている課題は?
千田:現在はクローバーハウスと直接のやりとりですし、ブローハンさんが来所者と信頼関係性を築いているのを見ているので、安心して商品をお渡しできます。けれど今後、支援活動が広がったときに、万が一転売サイトへ出されたとしても追うことはできません。また、大量に送りすぎると迷惑をかけてしまうのではという懸念もある。いずれの場合も、コミュニケーションを怠らずに最適な方法を都度考えたいです。活動が広がることはわれわれの願いでもあります。社内できちんと担当化して活動の大きな柱として構えられたら、弊社の担当外のブランドさんへもお声がけしたいですね。そして何より、PRサンプルで行っている活動なので旬なアイテムをお送りしたい。楽しんで使ってもらえたら、これほどうれしいことはありません。
無関心を関心へ。他人事から自分ごとへ。
WWD:河西さんとブローハンさんはどのようにつながったのか?
河西:2020年に、ブローハンさんの新聞記事を読んで僕からコンタクトを取ったんです。児童養護施設についてもっと知りたいと思っていた時に、彼の存在と活動を知って。自分の志ともすごく似ていたので、すぐに意気投合しました。
ブローハン:景翔さんは、オレンジのモコモコしたコートを着ていましたね(笑)。何者なんだろうと思いながら会いに行きました。僕は人と会うのが好きで、呼ばれたら行くというスタンス。福祉の枠を超えた形で、“無関心を関心に変えていきたい”という思いがあるので、景翔さんにはいつも背中を押されています。僕の経験はたしかに辛いものでしたが、悲しいもので終わらせたくありません。Youtubeで自分の経験や活動を発信しているのも、一見無関係な人たちにも、半径5メートルの日常の世界に目を向けてほしいからなんです。
河西:都会はなかなかSOSを出せない人も多いのと同じように、われ関せずと見守ってしまう人も多いですよね。先日、電車で “子どもを助けたいので困っていたら声をかけてください”と書いたバッジを身に付けた18歳前後の女性を見かけました。そういうものがないと動けない社会ってどうなの?という人もいるかもしれませんが、都会においては有効かもしれない、と。この支援の仕方、いいなって思いました。
「人生をリスタートするタイミングに立ち会っている」
WWD:クローバーハウスには主にどのような人が訪れている?
ブローハン:クローバーハウスは埼玉県の児童福祉事業の一つで、児童養護施設(里親、児童自立施設なども含む)を退所した18歳〜30歳前後の人が利用しています。退所後にスムーズに社会に溶け込める人ばかりではなく、施設出身者がシングルマザーとなり子どもをまた施設に預けることになってしまった、妊娠をした、ホームレスになったなどさまざまな事情があり、児童養護施設を介してここへたどり着きます。また、クローバーハウスを拠り所としてくれ、社会へ出たあとも定期的に顔を見せに来てくれる人もいます。利用者が似た状況で困っている友人を紹介してくれるケースもありますね。
WWD:具体的にどのような支援を行っているのか?
ブローハン:スーツや食料、生活必需品、普通運転免許取得のほか、自立支援や就職支援、居住支援など生活全般の支援を行っています。今ではプレッセのように応援してくださる人が増え、支援の輪が広がっています。コスメは初めていただきましたが、施設退所後に就職活動に向かう際にも、心を満たす意味でも大切なものなのだと実感しました。
WWD:18歳で児童養護施設を退所した後に、苦労する人も多いという話も耳にする。
ブローハン:その理由に、高齢児保護が増えてきていることがあると思います。以前は乳幼児期に児童養護施設で預かり、長い年月をかけて職員さんと信頼関係を築きながら成長していくケースがほとんどでしたが、最近は16、17歳でようやく保護されるケースが増えています。心がズタボロの状態で施設へやってきて、初めて衣食住が整う空間で暮らすことができても、18歳までには出なければなりません。虐待を受けた子たちが回復するには、その年月の6倍の時間を要すると言われている中で、時間があまりにも足りない。それまで普通のことを普通に体験してこられなかった子たちが、18歳になってすぐ社会に順応できないことは想像にあまりあると思います。隣の人の手が上がるだけでも反応してしまう、男性を見るだけでも震える、人の顔色を伺ってしまうなど、つまずき方は人それぞれ。僕はクローバーハウスにたどり着いた人と少しずつ会話を深めて、SOSにつながる瞬間を見ています.
WWD:ブローハンさんは、どのような思いを大切に皆さんと向き合っているのか?
ブローハン:いつでも戻ってこられる“居場所である”と伝えたい。クローバーハウスを自分の居場所として利用する人、ここを出発点に次の場所へ進む人、彼氏ができて失敗して戻ってくる人……。どんな状況であれ、自分の人生をリスタートしようとしている子たちと一緒に並走したいと思っています。そして、洋服やコスメを自分で選び、受け取ることは、生まれ変わる瞬間に立ち会えるということ。18歳、19歳というのは、大人になりきれない中途半端さと共にいる難しい時期です。本人たちにとってはじれったい時間かもしれませんが、揺れていた気持ちが自信に変わる瞬間を僕は何度も見ています。コスメは、そのリスタートの大きなきっかけになっていることを今回お伝えしたいと思いました。
WWD:今後、必要なことは?
ブローハン: 細く長く付き合う関係性をたくさん増やしたい。その中で、可能性と選択肢を増やしていきたいんです。先日、プレッセの皆さんがクローバーハウスへ来てくれました。利用者の皆は初めて、届く物にも誰かの思いが乗っていることに触れられたと思います。僕が向き合っている若者たちにとって、選択肢はとても大切です。自分たちを見てくれている人がちゃんと居るんだ、ということを実感できる機会をこれからもつくりたい。その安心感は、自分の人生を主人公として生きることにつながっていくと思います。
WWD:将来、化粧品に携わる仕事をしたいという人がいるかもしれない。
千田:それほどうれしいことはないですね。
ブローハン:それこそ仕事している姿を見てほしいです。家庭から出たことがない子どもたちも多いので、いろんな大人を見るという意味では、仕事をして社会で生きていくこと、人と人の掛け算で仕事が成り立つこと、その姿を見られるというのは視野を広げてくれるはずです。
パフォーマンスではなく、本当に必要な人に届けるべき
WWD:コスメにはどんな力があると感じる?
ブローハン:着の身着のまま沖縄から逃げて来た女の子が、クローバーハウスで洋服やコスメに触れる中で、こんなに人って変わるんだと驚きました。自分の瞳を隠していたカラコンを外して素顔に近づき、自分らしくなれたというか。コスメについては全く無知でしたが、この半年間で変わる力を実感しています。
千田:笑顔にさせることができるんだと改めて感じます。私自身、日々ビジネスとして当たり前のように触れていたので、お手紙から溢れる“使えてうれしい”という純粋な気持ちを知り、この支援を続けたいと強く思いました。
河西:先日、子ども食堂で母親向けのメイクレッスンイベントを行なったんです。その時に一番すごいと感じたのは、コスメのホスピタリティ。子ども食堂では、不登校の子たちがスタッフとして手伝ってくれているのですが、今回のイベントにお母さんと一緒に参加してくれた子がいました。メイクでお母さんがきれいになっていく様子を見て、初めは部屋のすみっこの方にいた子が前へ出てきて、お母さんの眉毛を描いてあげたんですね。それを施設長が見て、「あの子はここへ来ても影に隠れていたけれど、今日は自分が出せたんだと思う。自分がメイクをするんじゃなくて、お母さんをきれいにしてあげようという、その気持ちがうれしい」という言葉を聞いたときに、コスメには人を癒す力があると思いました。
WWD:コロナ禍以前に比べて、支援を必要とする人が増え、ボランティアで活動を行う支援する側が疲弊してしまうという現状もあると聞く。
河西:企業の協賛が多い富裕層へ向けたエシカルイベントはたくさんあるんです。ブローハンさんの言葉を借りると、関心を無関心に変えるきっかけになるので、素晴らしい取り組みだとは思います。けれど、みんなで一緒に育つ社会を目指すのであれば、貧困で悩む人たちにも手を差し伸べることが必要ですよね。例えば、コスメを絵の具に変えてアートを描くという取り組みは、いい思い出にはなる。けれど、使えるコスメを必要な方へ提供したらコスメとしてちゃんと使ってもらえます。提供してもらった人たちにとっては、その時の喜びだけでなく、未来への可能性へつながっていくわけです。誰かが手を差し伸べて助けてくれたという事実があるだけで、未来が全然違うと思うんです。
WWD:エコ、エシカル、SDGs……全て、継続していくべき命題。コスメ業界で考えると、“作ること”全体の話にもなっていくかもしれない。
河西:ファッションイベントでそれらのテーマを掲げていても、裏を返すと何も行われていないこともあります。ジュンから今秋ローンチされる「リ アッシュ」は面白いですよ。循環型ファッションプロジェクトで、リメイクを通して捨てられてしまう洋服に価値を生みながら社会問題にも取り組む試み。貧困層の子どもたちは服を買えない現状がありますが、リメイクすれば洋服は着られる、足した丈だってむしろおしゃれという新たな価値観を作ってくれると思います。コスメもゼロからイチを生み出すばかりではなく、今あるものに“本来の役割”を残した上で使うことを業界全体で考えていけたら、本当に必要な人たちへの支援になると僕は思います。
The post PR会社プレッセが余剰コスメを児童養護施設出身者に提供 コスメがつなぐ未来とは<前編> appeared first on WWDJAPAN.
山の日直前! 日本発アウトドアブランド「ティートンブロス」に聞く徹底現場主義なモノ作り

PROFILE:(すずき・のりゆき)1966年生まれ、埼玉県出身。大学卒業後に渡米し、超上級者向けスキーエリアとして知られるワイオミング州ジャクソンホールでスキーやアウトドアのインストラクターを務める。帰国後は米スキーウエアブランド「スパイダー」の輸入総代理業などを経て、2007年に自身で「ティートンブロス」を立ち上げ。現在、社員は自身を含め5人。夏は山だけでなくサーフィンも楽しむ PHOTO:SHUHEI SHINE
明日8月11日は「山の日」。台風上陸前を狙って、登山予定を立てている人も多いのでは?登山はゴルフと同様にコロナ禍中に若返りが進み、若い登山客を中心に支持を集める新興アウトドアブランドが増えている。「WWDJAPAN」5月8日号の“登山特集”で取り上げた「山と道」が代表格だが、こちらも頻繁に山で着用者を見かけるのが、日本発の「ティートンブロス(TETON BROS.)」だ。山好きなら、フロントファスナーが斜めに走るシェル“ツルギジャケット”のブランドだと聞けば分かるはず。同ブランドの鈴木紀行社長に話を聞いた。
WWD:夏山で「ティートンブロス」の“ツルギライトジャケット”やウィンドブレーカーの着用者を見かける機会が増えている。ブランドのオリジンは冬山だが、そもそもどんな経緯でブランドを始めたのか。
鈴木紀行ティートンブロス社長(以下、鈴木):サッカーの実業団選手を目指して体育大学に進学しましたが、ケガもあって卒業後は体育教師になろうと思っていました。でも教育実習に行ってみると、日本の教え方にはどうにも納得ができない。それで、たまたま米国のワイオミング州の会社がアウトドアインストラクターを募集しているのを見つけて、行ってみたのが全ての始まりです。ワイオミング州のジャクソンホールは、世界一急な斜面があるスキーエリア。英語も得意じゃなかったし、スキーも未経験でしたが、そこでスキーを覚えました。
米国には約3年いて、帰国後もアウトドアガイドなどとして働いていました。そんな中、ジャクソンホールで出会った五輪金メダリストスキーヤーTommy Moeを通じて、米国のスキー代表チームのサプライヤーでもあったスキーウエアブランド「スパイダー(SPYDER)」の日本代理店を務めることになったんです。10年間やって、ディストリビューションだけでなくアウトドアカテゴリー(ゲレンデではなく自然の山の中を滑るバックカントリースキー用ウエアなど)の企画も担当させてもらいましたが、ある年、アウトドアカテゴリーが本国の判断で休止しちゃった。情熱を持って打ち込んでいたものを失って、悩んだ末に「だったら自分たちでやろう」と立ち上げたのが「ティートンブロス」です。それが2007年でした。
東レと組んで素材開発
WWD:アウトドアブランドの運営ノウハウは、「スパイダー」の代理店時代に既に身につけていた?
鈴木:「スパイダー」では販売だけでなく商品企画、モノ作りもさせてもらっていたので、ある程度の土台はできていました。ですが、そうは言っても素人です。作りたい製品の最終形は見えていても、どうパターンに落とし込んだらいいのかといったことは分からない。支えてくれたのは仲間たちです。「スパイダー」時代につながっていた北海道のニセコなど、各地のスキー場パトロールやバックカントリーガイドといった山のプロたちが製品開発をサポートしてくれました。「スパイダー」時代の卸先は、実物の製品を見る前からオーダーを入れてくれました。
07年に製品第1弾であるバックカントリー用シェル“TBジャケット”“TBパンツ”を発売しようと思っていましたが、台湾の素材メーカーと組んで開発していた素材が思った通りに仕上がらず、どうしても納得がいかなかった。その年はドロップすることに決め、オーダーしてくれていた店にはおわび行脚です。その次の年から、東レとタッグを組んでの素材開発をスタートしました。
WWD:ポーラテックと組んでいた期間を経て、現行の“TBジャケット”“TBパンツ”には、東レと組んで開発した防風通気素材「タズマ」を採用している。東レというと、「ユニクロ(UNIQLO)」をはじめとした大手ブランドと組んで素材開発をしているイメージが強いが、何の実績もなかったブランド立ち上げの時点で、どうやって東レを説得したのか。
鈴木:東レがなぜうちと組んで素材開発をしてくれているのかは、今も不思議です(笑)。サンプルをキャリーケースに詰めて東レの本社を飛び込みで訪ねて、1階の受付から電話をして「相談に乗ってほしい」と掛け合いました。ブランドや作りたい製品のことを説明したら、「とりあえず少量でもいいので一緒にやってみましょう」と言ってくれた。これは僕の推測ですが、日本発のアウトドアブランドって、規模が大きくて本格的なものは「モンベル(MONT-BELL)」以降出ていません。一方で、海外にオリジンのあるアウトドアブランドは今非常に人気があるし、そういったブランドには東レをはじめとする日本の大手素材メーカーがみな供給している。日本発のアウトドアブランドを応援しようという気持ちなのかもしれません。
あともう1点、これは僕らの強みですが、「ティートンブロス」は製品のフィールドテストを年中行っています。秋冬製品についても、日本が夏の間は南半球にいる仲間に頼んでテストを続けているので、文字通り1年を通して製品についての生の声を集めることができる。現場からのフィードバックを豊富に提供できることは、東レのR&Dにとってもメリットになっているんだと思います。もちろん、(気温や湿度などを人工的に再現・管理した)研究室の中での数値は東レとしても集めていますが、実際に人が山で製品を使ってみて、初めて分かることもある。例えば、マイナス20度まで耐えられる素材だと研究室では出ていても、実際にマイナス20度で着てみたら硬くなりすぎて動きが制限されてしまうといったこともある。僕自身、冬は仲間たちと頻繁に山に入っています。一緒にいると、わざわざメールや電話で伝えてはこないであろうフィードバックもその場で見聞きできる。そんなふうに、自分が現場にいられる体力やスキルは最低限持っていないといけないなと感じています。
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WWD:アウトドアブランドにとって、素材は生死にもかかわる重要なもの。話を聞いていても、素材へのこだわりを強く感じるが、「タズマ」は具体的にどんな機能を持っているのか。
鈴木:「タズマ」は防水通気素材です。一般的にシェルジャケットでは透湿防水といった機能をよく耳にすると思いますが、僕らが一番求めているのは透湿性ではなく通気性。透湿性というのは、ある程度生地の内側と外側で湿度に差が出て初めて蒸気を外側に逃すことができますが、通気性は着た瞬間から換気が始まる。“TBジャケット”で想定しているバックカントリースキーやスノーボードでは、山を自分の足で登るので汗をかく。通気性がなければ汗冷えしてしまいます。
「タズマ」は基布もメンブレン(防水通気フィルムのこと)も東レと組んで開発しています。最終的にわれわれが求める素材のスペックは既に東レに伝えていて、それは現段階では到底達成できない耐水圧と通気性のバランスです。日本の素材メーカーはアイデアの引き出しがたくさんあって、「こうしたい」と要望すると、「じゃあこうしましょう」と違う角度からも提案をくれる。海外メーカーと違って新幹線ですぐ見に行けますし、話がすごく早いのは助かっています。
WWD:冬山の話が続いてきたが、“TBジャケット”と共にブランドの看板になっているのが、夏山でも着用者が多いシェルの“ツルギジャケット”(夏用は“ツルギライトジャケット”)だ。販売枚数としては“ツルギジャケット”がブランドで一番多い。
鈴木:“ツルギジャケット”はアイスクライマーである元NATO山岳部隊所属の友人らと、「“TBジャケット”よりももっと軽いシェルがほしい」という考えで開発を始めました。服のパーツで一番重いのはファスナーなので、ファスナーはできるだけ短くしてプルオーバー型にしたい。でも、ファスナーをセンターに配したままで短くすると、着脱に必要な長さが取れない。それで、ベンチレーションも兼ねて斜めに配置することにしました。センターにファスナーがないので、クライミングをしているときに足元がよく見えて動かしやすい。裾のドローコードストッパーはセンターに設置して、クライミングハーネスに干渉しないようにしています。開発過程では、フィールドテストとして友人たちにモンゴルの未踏峰にも“ツルギジャケット”を着て行ってもらいました。ファスナーが斜めに走っていることで、体を捻った姿勢で滑るスノーボーダーからも体が動かしやすいと支持されています。(アイスクライマーというコアな山のプロのために作った製品が、今では一般登山者にも広く着用されているが)どんな製品も多くの人のことを考えて開発するというよりは、われわれがサポートしている山のプロを第一に想定して作っています。F1カーを先に作れば、一般乗用車を作るのは簡単ですから。
「今の規模感がちょうどいい」
WWD:ブランド立ち上げから15年。卸先店舗数は国内270店、海外12店に広がっている。
鈴木:海外は国や地域別にディストリビューターと組んでいて、韓国、台湾、米国、ドイツ、ニュージーランド、オーストラリア、スイス、ノルウェーなどで販売しています。スキーブームの中国からも問い合わせは多いですが、長く組めるパートナーを見つけて、しっかり準備をしてから臨みたい。ブランドとして売上高は公表していませんが、素材メーカーに迷惑をかけない数量を発注できる規模にはなっています。コロナ禍で急激に伸びて今その反動に苦しんでいるアウトドアブランドもありますが、われわれは流動層に向けたブランドでもないし、ここ3年間の売り上げは毎年前年の1.2〜1.3倍と安定しています。
WWD:ブランドとして、今後どう成長していくことを目指しているか。
鈴木:今、春夏と秋冬で各100型前後企画しています。既にさまざまなアウトドアアクティビティーに対応できるラインアップになっているので、型数をさらに増やすよりは、1つ1つクオリティーをさらに高めていきたい。売ることよりも作ることを重視した、ラボのようなあり方がブランドとしては理想です。(新進ブランドに対し、ガレージブランドという表現がアウトドア界隈ではよく使われるが)米国では元々ガレージブランドとして成功したブランドも、一定以上の規模になるとそう呼ばれることを非常に嫌がります。それは、始めた当初とブランドのフィロソフィーは変わらなくても、ある程度の規模に育つとスケールメリットが出せて、昔は使えなかった素材が使えるようになり、適正な価格で販売できるようになったことに誇りを持っているから。ブランドの規模は大きくなりすぎても身動きが取りづらくなりますが、小さいままでは使いたい素材が使えない。僕たちは今、ブランドとしてそのどちらでもない、ちょうどいいポジション。このポジションを維持するためには、少しずつでも、常に製品を進化させていく必要があると思っています。
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「ゲラン」のキーパーソンが語る 「ラグジュアリーはサステナビリティを否定していた」
LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON、以下LVMH)傘下の化粧品ブランド「ゲラン(GUERLAIN)」は、同グループ内でサステナビリティの取り組みをけん引する。5月には、原材料の産地からリサイクルまでを閲覧できるトレーサビリティプラットフォーム「ビーリスペクト(BEE RESPECT)」の提供を日本でも開始し、LVMH傘下のラグジュアリービューティブランドとして初となる取り組みを実現した。
「ゲラン」のセシル・ロシャール(Cecile Lochard)チーフ・サステナビリティ・オフィサーは、その活動をリードする存在だ。金融界からキャリアをスタートし、環境系NGOの世界自然保護基金(以下、WWF)やコンサルティング会社の設立を経て、2015年にLVMH傘下のスキンケアブランド「チャリン(CHA LING)」のサステナブル・ディベロップメント&コミュニケーション・ディレクターに就任し化粧品業界へ。ラグジュアリーとサステナビリティの世界を融合させたいとの思いを持つ彼女に、ラグジュアリー産業の課題や「ゲラン」の取り組みの背景を聞いた。
セシル・ロシャール/ゲラン チーフ・サステナビリティ・オフィサー プロフィール
パリ・ドフィーヌ大学でサステナブル・ディベロップメント(持続可能な開発)、エセック・ビジネススクールで営利及び非営利におけるプロジェクトマネジメントのダブルマスターを取得し、金融界でキャリアをスタートする。8年にわたりWWFで企業とのプライベートパートナーシップを管理した後、コンサルティング会社を設立しラグジュアリーブランドのCSR戦略策定に携わる。2015年、LVMH傘下のスキンケアブランド「チャリン」のサステナブル・ディベロップメント&コミュニケーション・ディレクターに就任。19年、生物多様性プログラム&サステナブル・コミュニケーション・マネージャーとしてゲランに入社し、20年9月から現職
ラグジュアリーブランドだけがサステナビリティを拒否していた
WWD:金融会社の投資部門から環境系NGO、ラグジュアリー化粧品などこれまでのキャリアは多岐にわたる。11年にはラグジュアリー産業とCSR(企業の社会的責任)に関する本「ラグジュアリーとサステナビリティ 新たなる同盟(Luxe et Dévelop-pement Durable : La Nouvelle Alliance)」を執筆した。サステナビリティの重要性が今ほど注目されていない時期に、両者を紐づけたきっかけは?
セシル・ロシャール=ゲラン チーフ・サステナビリティ・オフィサー(以下、セシル):WWFでさまざまな業界と仕事をしていたが、ラグジュアリーブランドだけがサステナビリティと向き合うことを拒否していた。環境や人権に配慮した活動をしていなかったわけではなく、取り組んでいるにも関わらず公表を避けていたのだ。ラグジュアリー産業の根本には、製造の詳細は秘められるべきで、商品は完璧でなくてはならないという思想があった。当時新しい分野だったサステナビリティは「透明性」や「不完全性」が求められた。経済界や社会からの要求も刻一刻と変化し、常に進化することが必要とされる。両者は対極にあった。
本を執筆するにあたり、ラグジュアリー産業におけるサステナビリティはどうあるべきかさまざまな専門家に意見を聞いた。CSR関連の大企業のトップや社会学者、民俗学者、鉱物学者のほか、ファッションではカシミアの専門家、ビューティでは植物学者らに、インタビューを50件ほど行った。産業によってサステナビリティへの感度や対応するスピード感、進捗が全く違っていた
WWD:ビューティ業界はどのように映った?
セシル:ビューティ業界で扱う商材は非常にデリケートで複雑。例えば化粧品のクリーム一つをとっても、当時は90種類以上の原材料を使っていた。成分や処方、パッケージなど要素が多岐にわたるため、持続可能な商品開発はファッションよりも難しい。ラグジュアリーの中でも化粧品は特にサステナビリティの実現が難しいと感じたが、本を出版後に起業したコンサルティング会社が「ゲラン」と契約していた期間があり、「ゲラン」が自然やミツバチと関係が深いことに引かれた。一つの企業の中でもやるべきことがたくさんあると可能性を感じて入社した。
「ゲラン」を他のブランドが追随できないレベルにしたい
WWD:「ゲラン」に入社して最初に取り組んだことは?
セシル:フレグランスの原材料の80%を占めるアルコールを、オーガニックアルコールに変えた。当時はてんさいを使用していたが、農薬を使うことでミツバチを殺してしまう可能性があった。ミツバチはフレグランスの原料となる花だけでなく、野菜や果物、アーモンドなどさまざまな食物の受粉を担う。ミツバチがいないと人間も存在できないほど、生態系にとって重要な存在だ。
次に、「ゲラン」のサステナビリティ戦略を強化した。他のブランドが追随できないレベルを目指し、第三者機関の認証を取得した。パッケージにたくさんのマークがついているのはセクシーではないかもしれないが、厳しい基準をクリアしていることをお客さまに表明したかった。これは「ゲラン」が他社に先駆けて行い、社会に変化を起こしたと言ってもいいだろう。顧客や市場に後押しされたのではなく、われわれからスタートしたことが、先駆者として認められている自負がある。
WWD: 19年の入社当時から現在まで、「ゲラン」やラグジュアリー化粧品を取り巻く環境はどのように変わった?
セシル:一番大きく感じたのは、人の意識の変化だ。それからビューティ業界、ラグジュアリー業界ではさらに「透明性」が求められるようになった。特にヨーロッパでは顕著で、持続可能性に関する法規制が強化された。消費者もスマートフォンで簡単に情報にアクセスできる。
WWD:日本でもトレーサビリティプラットフォーム「ビーリスペクト」がローンチした。公式サイトからアクセスでき、商品の原材料の産地から輸送、販売、使用後にリサイクルされる場所まで追跡できる。顧客の反応は?
セシル:フランスでプラットフォームを立ち上げたのが5年前。スキンケアから始まってメイクアップ、フレグランスまで広がり、日本では今年5月に正式に開始した。使用状況などもトラッキングしているが、お客さまは一度「ビーリスペクト」を閲覧すると、トレーサビリティツールを繰り返し使うことはあまりないことがわかった。「ゲランは透明性を持った会社だ」と安心している。当初の意図とは異なるが、重要な顧客とのコミュニケーションになっている。
ラグジュアリーは市民社会に対して開かなければならない
WWD:「ゲラン」はラグジュアリーブランドとして初めて「サステナビリティボード」を設立した。13人の著名な専門家で構成し、ブランドの戦略をサポートしている。設立の経緯は?
セシル:ラグジュアリーブランドは市民社会に対してもっと外へ開かなければならない、という強い気持ちがあった。城壁の中にいて、都合のいいことばかりを聞くのではなく、耳が痛いと感じる声も傾聴するべきだ。サステナビリティボードには大学関係者や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の地域議長、ミツバチ保護の専門家、アプリ開発のスタートアップ企業など多様な分野の専門家が名を連ねている。彼らは市民社会を代表するメンバーだ。
「ゲラン」はサステナビリティ戦略の3カ年計画を提出して助言をもらっている。そのフィードバックのおかげで、これまでタブーとされていたPR分野でも持続可能な方法に挑戦できた。昨年、サステナブルなフレグランスシリーズ“アクア アレゴリア ハーベスト”のキャンペーンで、サステナビリティーボードのメンバーであり、写真家でレポーター、映画監督のヤン・アルテュス=ベルトラン(Yann Arthus-Bertrand)と低炭素の撮影に取り組んだ。制作におけるカーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)を抑えるため、彼の過去の作品集のビジュアルを用いたほか、撮影は全てフランス国内で行い、国内で育てられたスローフラワーを使用した。
WWD:日本では容器回収が進まず莫大な廃棄量が問題となっている。欧州での状況は?
セシル:一番大きい変化は法整備がなされたこと。フランスではリサイクルや再利用を促進し、プラスチックの消費を削減することを目的とした「循環型経済のための廃棄物対策法」が22年に発表された。以前から「ゲラン」はリサイクルや容器回収に取り組んでいたが、各社がリサイクルせざるを得ない状況になった。また、LVMHグループが投資するリサイクルセンターがある。売れ残った商品をセンターに集め、リサイクル・再利用している。アルミニウムやアルコールなど、化粧品産業だけでリサイクルできないものは他の産業でリサイクルする。今後は国がリサイクル・回収に関する規制をさらに強化したり、企業としては回収業者のパートナーを見つけたりすることが重要な点になってくる。
WWD:CSR戦略では“4つの柱”を掲げている。その中で特に喫緊の課題とその理由は?
セシル:われわれが掲げる4つの柱は、1.生物多様性の保全とミツバチの保護 2.完全な透明性のもとでのサステナブルイノベーション 3.気候変動に対する行動と、カーボンフットプリントの削減 4.素晴らしい自然を守りながら、社会にポジティブなインパクトを生み出す。これらは全てつながっておりどれも重要だが、カーボンニュートラルの達成を重要視している。スコープ1(直接排出の温室効果ガス)、2(間接排出の温室効果ガス)に関してはすでに達成しているが、スコープ3はまだ困難な状況にある。「ゲラン」はアジア、アメリカ、ヨーロッパなど世界26カ国で販売しており、空輸に依存している点が課題だ。
Bコープの取得も時間はかかるが検討している。10年前にISO14001の取り組みを始め、本社と生産拠点、子会社の80%が認証を受けた。今後は100%に向けて、さらなる取り組みを進める。
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「サマソニ’23」出演のシンガーソングライターUMI 日米にルーツを持つ歌姫の素顔
UMI/シンガーソングライター
PROFILE:1999年生まれ、アメリカ・シアトル出身。日米にルーツを持ち、R&Bやソウル、ヒップホップなどの要素を取り入れたヒーリング効果の高い楽曲を特徴とし、2018年に自主制作した「Remember Me」でブレイク。20年にEP「Introspection」でメジャーデビューし、22年5月にはデビューアルバム「Forest In The City」をリリースした。なお、8月11日に最新シングル「happy im」をリリースし、直後の19~20日に開催される「サマーソニック 2023」に出演予定
シンガーソングライターのUMIは、1999年にアメリカ・シアトルで日本人の母とアメリカ人の父の間に生まれ、現在はロサンゼルスを拠点に活動している。UMIというアーティストネームは、日本語の“海”から名付けられたミドルネームが由来だ。日本では古くから伝わる“名は体を表す”という言葉通り、彼女の歌声は母なる海のように力強さの中に透明感や優しさも兼ね備え、波のように心に響いてくる。
UMIは世界ですでに高い評価を得ており、ブレイクのきっかけになった2018年発表の楽曲「Remember Me」は「スポティファイ(Spotify)」で1億4000万回以上再生されている。さらに「コーチェラ 2023(Coachella 2023)」をはじめ、ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)やハー(H.E.R.)が主催する音楽フェスにも出演し、8月19~20日開催の「サマーソニック 2023(SUMMER SONIC 2023)」のステージにも立つ予定だ。
次世代の音楽シーンをリードする歌姫が先日来日し、気になるあれこれを根掘り葉掘り聞いた。そのチャーミングな性格と天真爛漫な人柄に隠れた、音楽とファッションへのこだわりとは。
ーーまずは、アーティストを志したきっかけから教えてください。
UMI:自分でもなぜだか分からないんだけど、幼い頃から喋ることや食べること、読むことと同じように、歌うことも自然な動作の一つだったの。歌手になって大勢の前で歌うことがずーっと夢で、2人の妹に床に座ってもらって、私がベッドをステージに見立ててよくパフォーマンスをしていたことを覚えているわ(笑)。あと、お医者さんになりたかったの。でも、私は今音楽で聴く人の心を癒していると思うから、それも音楽を使った一種のお医者さんかなって。
ーーそれは、家庭環境も影響しているのでしょうか?
UMI:そうだと思う。お父さんが教会でドラムを叩いていて、お母さんはピアノを弾いていたから、2人の影響は強いし、何かと教えてもらっていたわ。それから、ギターも弾きたくてレッスンを受けたり、ユーチューブで独学で学んだりしたよ。
ーー影響を受けたアーティストはいますか?
UMI:フランク・オーシャン(Frank Ocean)とエリカ・バドゥ(Erykah Badu)、ディアンジェロ(D'Angelo)、シャーデー(Sade)、松田聖子、あと最近はロザリア(Rosalia)かな。家でお母さんが松田聖子をよく聴いていたから、今も曲を書いていると「あれ、このメロディーなんか松田聖子っぽいな」とか思うこともあるわ(笑)。
ーー楽曲を自ら制作するようになったのは、いつ頃からですか?
UMI:4~5歳くらいから曲自体は書いていたんだけど、大勢の人の前で歌うことは恥ずかしくて緊張しちゃうから発表はしていなくて。でも、やっぱりみんなに歌を聴いてほしかったから、2014年の15歳の時にユーチューブに投稿し始めて、そのリンクをみんなにシェアしていたの。
ーーユーチューブにはどのような映像を?
UMI:当時はK-POPをよく聴いていたから、BIGBANGやBTSの曲を英訳したアコースティックカバーが多かったわ。今は結構非公開にしちゃったけど、フランク・オーシャンの「Self Control」のカバーや、お気に入りのいくつかはユーチューブにまだ残してるよ。
投稿を続けていたら登録者が段々と増えていったから、大学に進学するためにロサンゼルスに引っ越したタイミングで、人前で歌うことのトレーニングも始めたの。オープンマイク(注:ライブハウスなどで行われる飛び入り参加型のライブ)にも毎週参加したわ。最初は人前に立つことが怖かったからずっと目を閉じたままでしか歌えなかったけど、ちょっとずつ目を開きながら歌えるようになって、1年ぐらい練習してから自分のライブを開催するようになったの。
ーー楽曲制作におけるインスピレーション源はありますか?
UMI:普段から残しているメモを曲作りに生かすこともあれば、メロディーを聴いて「青色の曲だな」って感じたら青色の感情やストーリーを考えて書いていくかな。私は、物を食べたり触ったり、話を聞いたりすると頭の中に色が浮かぶから、それをメロディーに重ねていく感覚ね。
ーーファレル・ウィリアムスやカニエ・ウェストも持っている共感覚(注:特定の刺激に対して、通常の感覚に加えて別の感覚も生じる特殊な知覚現象)ですね。
UMI:でも、これって特別な能力じゃなくて、みんなもできることだと思っているの。難しいかもしれないけど、感覚に対して素直になることが大事だから、練習してみてほしいな。
ーー以前、UMIさんが思い付いたメロディーをiPhoneのボイスメモにタイトルを付けて保存しているのをSNSで見ました。メモを残しているというのは、そのことですか?
UMI:そうそう!私って、思い出も写真よりボイスメモに残すことが多くて、例えば日本の電車に乗っている時に車内の音を録音して、それをアメリカに戻って聞いたら、写真を見返すよりも鮮明に記憶が蘇ってくる気がするの。あと、曲の中にも日常のボイスメモを取り入れることがあって、そうすることによって雲の上の世界に住んでいると思われがちなアーティストでも、みんなと同じ世界に住んでいることを音を通して伝えられるかなって。iPhoneには14年から録り溜めた3000以上のボイスメモがあるから、アーティスト活動において最も大事なことはiPhoneのストレージを最大容量にすること(笑)。
ーー17年から本格的な音楽活動を始めたきっかけは?
UMI:高校の友達に「やれやれ」って言われ続けたから。1年くらい拒否していたんだけど、今はすごくその子に感謝しているわ。とにかく音楽に詳しくて、学校が終わったら一緒に家に帰って、寝るまでいろいろなアーティストのMVを観続けた関係だったの。2人でストリーミングサービスの配信の仕方を調べたり、「スポティファイ(Spotify)」で人気のプレイリストを作っている人にDMしたり、DIYな活動を2~3年ぐらい続けて20年にレーベルに入ったわ。
ーーミドルネームのUMIをアーティスト名にした理由は?
UMI:ファーストネームがティエラなんだけど、UMIは学校でも呼ばれていた名前で、日常の自分の一面な気がするから。UMIはアーティスティックな自分をエクスプレス(注:感情や意見を表現する)できる名前だと思っていて、名乗る名前で自分が変わる気がするんだよね。
ーーフランク・オーシャンの“Ocean”も由来の一つだと思っていました。
UMI:ワオ!考えたことがなかったけど、言われてみればそうじゃん!気付かせてくれてありがとう!
ーー自分の音楽を一言で定義するなら?
UMI:ヒーリングミュージックだね。いつ聴いてもハッピーでヘルシーになれる曲を作ること、これを常に意識しているかな。私は食べるものも、見るものも、聴くものも、全てが体を構成すると思っているの。だから、自分の体が気持ちいいと感じられない音は聴かないようにしていて、ヘルシーじゃないものを食べたくない感覚と一緒だね。
ーーアルバムに収録されていない「Remember Me」が「スポティファイ」とユーチューブで最も再生されています。ヒットの背景はあるのでしょうか?
UMI:リリースしてから1年後くらいに、ユーチューブのレコメンド機能に突然ピックアップされるようになったからなの。その理由はなぜだか私にも分かっていなくて、とてもラッキーだったわ。それに、MVにもアートワークにも私が映っていなくて、曲の魅力だけで広まったのがさらにうれしかったね。
ーー日本では、初めて日本語のタイトルを採用した19年の「Sukidakara」が広く知られるきっかけでした。
UMI:インターネットサーフィンをしている時にビートを見つけて、かわいらしかったから「あ、日本語が合うかもしれない」って直感的に思ったの。歌詞は、自分ではなく他の人をイメージして書いているね。私自身K-POPが好きだけど何を言っているか分からなくて、英語圏の人もメロディーさえ気に入ってくれれば大丈夫だと思ったらその通りだったね。たまに、「正しい日本語の使い方じゃないよ」って指摘されるけど、私は日本語でも英語でも正しい使い方はないと考えていて、正しいか正しくないかだけでジャッジしてしまったら、本当の気持ちを伝えることも受け取ることもできなくなってしまう。それよりも、「『Sukidakara』を聴いて日本に行きたくなった」とか、「意味を理解したくて日本語を勉強した」って英語圏のファンに言ってもらえてうれしかったな。
ーーデビューアルバム「Forest in the City」を昨年リリースしました。タイトルに込めた思いを教えてください。
UMI:グリフィスパーク(注:ハリウッドサインのあるリー山も含むロサンゼルス中心部の広大な公園)にいる時、鳥の鳴き声や車のクラクション、ヘリコプターの飛ぶ音が全部混ざって聞こえて、「あぁ、私は都会の森にいるんだな」って思ったの。森の中にいると、何もしなくてもピースフルな気持ちになれるけど、街中でそういった場所は探さないと見つからない。だから、聴くだけでヒーリング効果があってピースフルになれるようなアルバムを作りたくて、「Forest in the City」って名付けたの。
ーーということは、先にタイトルが決めてから曲作りがスタートしたのでしょうか?
UMI:未発表曲を50曲くらい完成させたタイミングで、ある日、自分の中で何かが変わる気がしたから、その前にアルバムを1枚完成させたくなった感じ。それで、グリフィスパークに出かけたら「Forest in the City」って言葉が生まれて、収録曲が決まっていったの。
ーーヒーリング効果を意識したアルバムをはじめ、ライブでは途中にメディテーションの時間を取り入れるなど、メンタルヘルスに力を入れていますね。
UMI:朝起きてまず自分と向き合う時間を作らなければ、その日は本当の自分じゃない気がしてしまって。だから、朝起きたらスマートフォンを開いたりパソコンでメールチェックしたりする前に、メディテーションをすることにしているの。内容は日ごとに変わるから走ることあるし、とにかく自分でメンタルケアすることはとても大事。メディテーションの仕方は、人によっても日によっても違うから、自分に合ってるものを探して欲しいな。
ーー現段階で、次回作などについて話せることがあれば教えてください。
UMI:「サマーソニック」前の8月11日に「happy im」ってシングルをリリース予定よ。日本語も入ってる曲だからみんな聴いてくれるとうれしいな。
ーーファッションについても聞きたいのですが、マイルールはありますか?
UMI:ルールがないことがルールだけど、あえて言うなら感情をファッションで表現すること。だから、毎日人が変わったようにファッションも変わるの。あとは……遊ぶこと?かな。今日だったら、ネックレスをベルトとして使ってみたり、タイダイ染めしたストッキングをインナーとして着てみたり、こうやって着るのは好きだね。
ーーSNSを見ていると、古着を着ることが多いんですね。
UMI:持っている洋服はほとんど古着よ。人と同じスタイリングをしたくないから、新作を買うことはあまりないかも。それに、古着は環境に優しいからね。今、世界で着られていない洋服を全部集めたらすごい量になると思わない?だから、新しい洋服はあまり買わないで、前に誰かが着ていた服を着て、洋服の歴史をアップデートするような感覚で購入する方が楽しいはず!
ーー古着を好きになったきっかけなど、忘れられないファッション体験談はありますか?
UMI:高校の最後の夏に、地元でハイウエストデニムが超はやっていたから、友達と古着屋で買ってみたの。その写真を撮っていたら、「あれ、ファッションって楽しいかも」って思えるようになって、ファッションが好きになったかな。
ーーアイブロウピアスやタトゥーもファッションのポイントですよね。
UMI:ツアーでオランダのアムステルダムに訪れた時、朝起きたらなんだかアイブロウピアスを開けたい気分で、散歩してたらたまたま専門店を見つけたからそのまま開けちゃった(笑)。セプタム(注:鼻ピアスの一種)もツアーの前日に思い付きで開けたり、タトゥーも気分で急に入れたりすることが多いわ。
ーーマーチャンダイズではどのようなことを意識していますか?
UMI:作品のイメージに合わせることを意識していて、インスタグラムで見つけたアーティストにDMして依頼したこともあるし、自分で描いた絵をプリントしたマーチャンダイズを作ったこともあるよ。今後は、自分の作品を使ったマーチャンダイズを増やしたいね。
ーー最後に、中高生時代は陸上選手としても活躍していたと耳にしたことがあります。
UMI:中学と高校で短距離走をしていて、高校の時に2人の妹と400メートル・リレーのワシントン州記録(46秒07)をレコードしたことがあるし、ジュニアオリンピックにも出たことがあるよ。地元では“ウィルソン・シスターズ”って有名だったの!今からみんなで走る?(笑)。
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荻原桃子「鎌倉が私を変えた」 新ブランド「OMMO」や家族、新生活について語る
荻原桃子(おぎはら・ももこ)/OMMO代表取締役兼「オーエムエムオー」クリエイティブ・ディレクター プロフィール
1984年1月3日生まれ、大阪府出身。2002年からアパレル業界で販売、企画、バイイングを経験し、マークスタイラーに入社。06年、22歳の若さで「ムルーア」を立ち上げ、クリエイティブ・ディレクターとして9年間、トータルディレクションを行う。16-17年秋冬から「アンスリード」を始動し、デザイナー兼クリエイティブ・ディレクターを務める。20年に和食器の「オーエム」、21年にコスメブランド「ユーエヌディーオー」のプロデュースをスタート。23-24年秋冬から自身のブランド「オーエムエムオー」をスタート。プライベートでは小学1年生男児の母
「オーエムエムオー」 ブランドプロフィール
マークスタイラーで「ムルーア」と「アンスリード」のクリエイティブトップとしてブランドを手掛けてきた荻原桃子が2023-24年秋冬にスタート。自身初のブランドとして、新たな拠点とする鎌倉でのライフスタイルを背景に30〜40代女性に向けた機能的でデザイン性のあるデイリーユースのウエアを発表する
マークスタイラーの「ムルーア(MURUA)」や「アンスリード(UN3D.)」でクリエイティブ・ディレクターなどを歴任した荻原桃子がこの秋、アパレルブランド「オーエムエムオー(OMMO)」をスタートする。荻原はガールズ&ウィメンズ市場をけん引してきたブランドを立て続けに成功させ、独自のクリエイティブ力を磨いてきた。今年春に長男の進学を機に、家族で鎌倉へ移住。新生活を充実させる中、40歳を目前にした彼女の新たなステージに迫る。
新ブランドはこれまでの都会的なスタイルとは違う
――あらためて、「オーエムエムオー」はどんなブランド?
荻原桃子(以下、荻原):30〜40代女性に向けて、カットソーやニット、ワンピースなど、着やすい素材感を追求したアイテムをメーンに構成していきます。私自身家族でアウトドアを楽しむことも増えて、鎌倉で生活し始めてからは動きやすさや着心地を重視したウエアを好むように。これまではジャケットやシャツ、パンプスといった都会的なスタイルを多く提案してきましたが、あらためて“今の自分が着たい服”を作りたいと思い始めたんです。それも「オーエムエムオー」立ち上げのきっかけの一つです。
アウトドアシーンでも最適なはっ水ナイロン素材や伸縮性のあるやわらかいカットソー素材など、アクティブに動きやすいストレスフリーなテキスタイルを多く採用しています。ボトムスは、スニーカーやビーチサンダルにも合う丈感や自転車や車を乗り降りしやすいボリューム感にもこだわりました。また、特徴としてきたカラーパレットは、アウトドアシーンで馴染みやすい色をセレクト。これまで使ってこなかったベージュ系は私自身もとても新鮮に感じています。ビジネスとしては大きく成長させたいとは考えてなくて、卸しなどせず、自社ECのみで販売。自分で育てられるスケールの中で展開していく予定です。毎月3つのコーディネートを提案できるよう、10型程度を新しく発表します。
――鎌倉での生活が新ブランドのスタイルの背景にある。
荻原:ウエアの構想も移住後に膨らんでいって、「自然あふれるここでのライフスタイルにはこんなスタイルが合うな」って自分の体験や街の人たちを見て考えていきました。これまでのクリエイティブの経験や得意とする素材や色使い、EC販売のノウハウなどを活かしながら、どんなスタイルや提案がマッチするか。私自身も車を運転するようになったり、山や海で過ごす時間が増えたり、都内での暮らしとは違うシーンが増えましたね。そうしたライフスタイルを背景にしたくて、ファーストシーズンのルックは鎌倉の建長寺で撮影しました。
――移住の理由は? 独立以外に、鎌倉移住の転機はあったか?
荻原:以前から鎌倉を訪れる機会があり、いつか越してこようと話はしていたんですが、私自身東京での暮らしが長かったので、はじめはなかなか乗り気ではありませんでした。息子も生まれ育った東京とお友だちから離れるのを嫌がっていたんですが、今ではウグイスの鳴き声で朝を迎えながら、海や山のたくさんの自然に触れる環境にとても喜んでいます。
家族との時間が増えたことは私にとってとても大きいです。若い時から仕事を優先する生活だったので、息子が幼いときもシッターに頼ることも多く、仕事をしながらの子育てに葛藤する時期もありました。そのうちに、東京のど真ん中、公園も少ない環境での子育てや仕事を優先しながらの子育てについての悩みが増えていき、コロナ禍でさらにワークライフバランスについて考え、仕事のことや家族のこと、将来のことに向き合うように。すると、「その時に自分がいいと思ったことをしたい」「先々のことは決めない」と自分の思いのままに服作りをしたいという考えがクリアになったんです。鎌倉という地が私を変えてくれたんだと思います。移住に3年悩んだ鎌倉は、人も環境もとても心地よくて、家族の時間を深めることもできて大正解の選択でした。
40歳に向けて、新しいことにチャレンジしたいと思った
――新生活を始めて、あらためて家族の存在とは?
荻原:将来の自分に対して悩んでいる私の背中を押ししてくれたのは主人でした。主人はじっくり考える私とは逆で、何事にも前向きに挑戦するタイプ。新ブランドも移住も主人の提案から決められたことでした。息子も私の仕事のことは理解してくれて、今では一緒にいる時間が増えたことがとても嬉しそうです。好きな仕事の時間と家族との時間をきちんと決めて行動できるようになったのは家族の存在が大きいと思っています。
――ブランド名の「OMMO」は自身の名前“MOMOKO”が由来?
荻原:そうです。40歳になるまでに、新しいことにチャレンジしたいと考えていたし、ゼロからブランドを始める新しい自分のステージに思いを込めて。それと、子どもの名前にかかる数字の“8”にもオマージュしてロゴを作成しました。想いの詰まった名前とデザインです。
毎日の生活の中で本当に必要なものだけを
――ファッションだけじゃなく、和食器「オーエム(OM)」やコスメブランド「ユーエヌディーオー(UNDO)」を立ち上げ、プロデュースの幅を広げている。
荻原:「オーエム」は食卓が楽しくなるものをと1年構想で立ち上げました。ただ、ファッションの経験しかなかった私にとっては、パントーンを使って色を提案するなど服作りの感覚で説明するしかできず、はじめは職人さんを困らせていました(笑)。でもやっていくうちにそんな私のやり方を面白く思ってくれて、瀬戸焼や笠間焼など幅広い表情と形の器を作ることができています。一点一点違う色の化学反応が面白くて、奥深い陶器の世界にどんどんハマっています。
「ユーエヌディーオー」の美容液はオイル好きの私の敏感肌に、またスキンケアにあまり時間をかけずとも使いやすいものをと考案しました。子どもと一緒だと毎日時間はかけられません。これまでたくさんの化粧品を試してきたけれど、あらためて、毎日の生活の中で本当に必要なものだけを選ぶことで、肌や生活スタイルに寄り添えるものが作れているかなと思っています。新しいアイテムを発表していく予定です。
――今後について。
荻原:鎌倉での家族との楽しく心地いい時間とともに、充実したワークライフバランスを送っていきたいです。アトリエは一旦茅ヶ崎に構えましたが、ゆくゆくは鎌倉にスペースを持ちたいと思っています。社会も人のライフスタイルも同じように、服も進化していける。そう信じて、生活に順応した、ペースにあった服作りをしていきたいと思っています。
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次世代ジュエリーブランドを支援 新井恵里那も参加する“ザ ネクスト ジュエリー”とは
ジュエリーブランドの立ち上げ支援プロジェクト“ザ ネクスト ジュエリー”によるポップアップショップが8月8日まで、高島屋新宿店で開催中だ。同プロジェクトは、高島屋と阪急阪神百貨店(以下、阪急阪神)、ジュエリーメーカーのラッキーアンドカンパニー(以下、ラッキー)3社共同企画で昨年9月にスタート。約100件の応募から選ばれた6人のメンバーが3社の支援を受けて約40種類のジュエリーを制作し、ポップアップで販売する。
参加ブランドは、タレントの新井恵里那による「アンディーマ(ANDIIMA)」、池滝祥子による「プウィンク(PWINK)」、土田あやこによる「ビーチェ(BEACE)」、出路加奈子による「マヴォア(MA VOIE)」、野依祐月による「オワリ(OWALI)」、森友里恵による「ユリモリ(YURIMORI)」。同プロジェクトを担当した高島屋MD本部 婦人服・婦人雑貨・子ども・ホビー部のマーチャンダイザーである高橋由紀恵担当部長とバイヤーの木谷文香課長に話を聞いた。
百貨店クオリティーとOEMメーカーの技術力による安心感
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ジュエリー業界の活性化を目的にしたこのプロジェクトは、高島屋から業務提携をしている阪急阪神やラッキーへアプローチしたことからスタートした。木谷課長は、「新しいジュエリーブランドが育たないという業界の課題を認識し、百貨店クオリティーの安心感とノウハウ、そしてOEMメーカーの技術を融合させ、ブランドの立ち上げを支援をしたいとはじめた」と語る。ジュエリー業界では、コロナの影響をはじめ、地金やダイヤモンド価格の高騰により、新しいブランドが参入しにくい状況だ。売り場の話題作りのために、各百貨店、ポップアップで目新しいブランドを紹介しているが、常設売り場を設けるほど安定したブランドは少ない。ブランドを立ち上げて継続していくには資金力とノウハウが必要。それらを提供するのがこのプロジェクトだ。
高橋部長は、「百貨店は、売れ筋の商品や価格帯の知識があり、のれん(場所)も提供できる。埋もれている才能を育てたいという思いがあった。ノウハウを提供するのは百貨店の役割だ。高島屋が認めた品質の素敵なブランドの発展に寄与できたら嬉しい」と述べる。百貨店2社共同にした理由は、「東西それぞれに基盤がある百貨店2社が組むことで、注目度もアップするし、応募者へのメリットが高まると考えた。安心感と本気度も高まるはずだ」と続ける。
ブランドの立ち上げ支援で売り場もリフレッシュ
このプロジェクトの選考をするにあたり、カラーストーンやクラフト感、ファッション性などキーワードを設けて、テイストが分かれるようにした。第一期生には、ジュエリー作りのベースがある人もない人もいる。木谷課長は「応募者の熱意が大切。そして、プロジェクトを進めるためのコミュニケーション力も重要だ」と言う。第一期生の一人である野依は伝統工芸品「尾張仏具」の錺金具師(かざりかなぐし)で、通常は百貨店の催事などに参加している。彼女は、「若い世代が来る場所でポップアップができてうれしい。立体的に彫金を施したのは初めてで、メーカーに技術的な部分で助けてもらい完成させた。今後も(ブランド)を継続していきたい」と語った。
6つのブランドは、今回のポップアップでの反応を見つつ、ラッキーのECでも商品を販売する。8月に第一期が終了し、6人がどのようにブランドを続けていくか3社を交えて検討していくという。高橋部長は、「第二期、第三期とこのプロジェクトを継続し、個人事業主が多いジュエリー業界における活躍の場を広げたい。そうすることで百貨店の売り場もリフレッシュさせたい」と話した。
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次世代ジュエリーブランドを支援 新井恵里那も参加する“ザ ネクスト ジュエリー”とは
ジュエリーブランドの立ち上げ支援プロジェクト“ザ ネクスト ジュエリー”によるポップアップショップが8月8日まで、高島屋新宿店で開催中だ。同プロジェクトは、高島屋と阪急阪神百貨店(以下、阪急阪神)、ジュエリーメーカーのラッキーアンドカンパニー(以下、ラッキー)3社共同企画で昨年9月にスタート。約100件の応募から選ばれた6人のメンバーが3社の支援を受けて約40種類のジュエリーを制作し、ポップアップで販売する。
参加ブランドは、タレントの新井恵里那による「アンディーマ(ANDIIMA)」、池滝祥子による「プウィンク(PWINK)」、土田あやこによる「ビーチェ(BEACE)」、出路加奈子による「マヴォア(MA VOIE)」、野依祐月による「オワリ(OWALI)」、森友里恵による「ユリモリ(YURIMORI)」。同プロジェクトを担当した高島屋MD本部 婦人服・婦人雑貨・子ども・ホビー部のマーチャンダイザーである高橋由紀恵担当部長とバイヤーの木谷文香課長に話を聞いた。
百貨店クオリティーとOEMメーカーの技術力による安心感
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ジュエリー業界の活性化を目的にしたこのプロジェクトは、高島屋から業務提携をしている阪急阪神やラッキーへアプローチしたことからスタートした。木谷課長は、「新しいジュエリーブランドが育たないという業界の課題を認識し、百貨店クオリティーの安心感とノウハウ、そしてOEMメーカーの技術を融合させ、ブランドの立ち上げを支援をしたいとはじめた」と語る。ジュエリー業界では、コロナの影響をはじめ、地金やダイヤモンド価格の高騰により、新しいブランドが参入しにくい状況だ。売り場の話題作りのために、各百貨店、ポップアップで目新しいブランドを紹介しているが、常設売り場を設けるほど安定したブランドは少ない。ブランドを立ち上げて継続していくには資金力とノウハウが必要。それらを提供するのがこのプロジェクトだ。
高橋部長は、「百貨店は、売れ筋の商品や価格帯の知識があり、のれん(場所)も提供できる。埋もれている才能を育てたいという思いがあった。ノウハウを提供するのは百貨店の役割だ。高島屋が認めた品質の素敵なブランドの発展に寄与できたら嬉しい」と述べる。百貨店2社共同にした理由は、「東西それぞれに基盤がある百貨店2社が組むことで、注目度もアップするし、応募者へのメリットが高まると考えた。安心感と本気度も高まるはずだ」と続ける。
ブランドの立ち上げ支援で売り場もリフレッシュ
このプロジェクトの選考をするにあたり、カラーストーンやクラフト感、ファッション性などキーワードを設けて、テイストが分かれるようにした。第一期生には、ジュエリー作りのベースがある人もない人もいる。木谷課長は「応募者の熱意が大切。そして、プロジェクトを進めるためのコミュニケーション力も重要だ」と言う。第一期生の一人である野依は伝統工芸品「尾張仏具」の錺金具師(かざりかなぐし)で、通常は百貨店の催事などに参加している。彼女は、「若い世代が来る場所でポップアップができてうれしい。立体的に彫金を施したのは初めてで、メーカーに技術的な部分で助けてもらい完成させた。今後も(ブランド)を継続していきたい」と語った。
6つのブランドは、今回のポップアップでの反応を見つつ、ラッキーのECでも商品を販売する。8月に第一期が終了し、6人がどのようにブランドを続けていくか3社を交えて検討していくという。高橋部長は、「第二期、第三期とこのプロジェクトを継続し、個人事業主が多いジュエリー業界における活躍の場を広げたい。そうすることで百貨店の売り場もリフレッシュさせたい」と話した。
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「リーバイス」の日本トップに聞く 150周年を迎えたブランドの好調要因と課題
「リーバイス(LEVI’S)」の日本市場は現在、韓国のトップも務めるデビッド・ハマティ(David Hamaty)北アジア担当ゼネラル・マネジャーが率いている。ブランドは今年、“501”の誕生から150周年というアニバーサリーイヤーを迎え、ここ数年で再度ブームになったプレミアムデニムの勢いも加わって小売が順調。一方、「ライトオン(RIGHT ON)」や「ジーンズメイト(JEAN’S MATE)」に代表される小売店の卸は、量販店の低迷という構造的な課題を抱えている。ハマティ=ゼネラル・マネジャーは、現状をどのように捉えているのか?
デビッド・ハマティ リーバイ ストラウス 北アジア担当ゼネラル・マネジャー プロフィール
ジョージ・ワシントン大学で国際ビジネスを専攻して修士号を取得。コンサルティング業界に20年以上携わり、マーチャンダイジングからサプライチェーン、小売、ストアオペレーションまでのノウハウを提供した。VFコーポレーションでAPACエリアを担当するなど、25年以上にわたり、アジアで仕事をしている。リーバイ ストラウスでは、アジアや中東、アフリカのオムニチャネル戦略を担当。今年、現職に就任した
「WWDJAPAN」(以下、「WWD」):“501”の誕生から150周年というアニバーサリーイヤーに、日韓のトップに就任した率直な心境は?
デビッド・ハマティ=リーバイ ストラウス北アジア担当ゼネラル・マネジャー(以下、ハマティ=ゼネラル・マネジャー):歴史と逸話が数多い、ジーンズのパイオニアに携わることができて、とても嬉しく思っている。今年は、そんな歴史と逸話を知っているマニアのみならず、新たなファンを獲得しようとさまざまなアクションを仕掛けた。“501”の150周年関連では、ヒップホップ界最高峰のグローバルフェス「ローリング・ラウド」とタッグを組んだクラブナイトショーを開催。原宿の旗艦店ではアート&ミュージックのスペシャルライブのほか、“501”をステンシルやカリグラフィ、シルクスクリーンなどでカスタマイズができるワークショップを開催した。今年一番の瞬間を、皆で祝うことができたと思う。
「WWD」:改めて「リーバイス」の強みとは?
ハマティ=ゼネラル・マネジャー:市況や組織による紆余曲折はあったが、「リーバイス」というブランドは、創業当時から変わらず、ずっと強い。1920〜50年代にアメリカを代表するブランドとなって、以降は世界的なブランドに成長。ジェームズ・ディーン(James Dean)からスティーブ・ジョブス(Steve Jobs)まで、世界中の人々を魅了し続けている。今後も「リーバイス」のコミュニティに加わりたいというモチベーションを掻き立て、セールなどに依存しないプレミアムブランドとしての道を歩んでいきたい。
「WWD」:新しいファンの、コミュニティへのモチベーションを掻き立てる方法は?
ハマティ=ゼネラル・マネジャー:150年続く「リーバイス」の魅力の土台となった、過去の名作を忠実に再現する“リーバイスビンテージクロージング”はもちろん、若い世代にはリサイクルデニムや、バギーなどの90年代のスタイルが琴線に触れるかもしれない。60年代後半から70年代、アメリカ西海岸の若者は古着のデニムをリメイクしてウッドストックなどの音楽祭に繰り出した。リサイクルデニムに身を包み野外フェスに出かける今の若者の原型は、あの頃、当時の若者と「リーバイス」が形作ったものだ。Y2Kなスタイルが生まれた90年代も、「リーバイス」は知っている。私たちの「オーセンティシティ(信ぴょう性)」は、ライバルには真似できないものだ。150周年キャンペーンの「Greatest Story Ever Worn(最高の物語を穿こう)」は、逸話を現代に蘇らせ、再度活性化するものだ。「最高の物語を穿こう」は、個人の生活に即した「リーバイス」の楽しみ方、「リーバイス」との付き合い方も表現している。「リーバイス」は、個人の生活をユニークなものにしてくれる。そんな経験を提供し続けることができたら、望まれるブランドであり続けられるだろう。特に今は、いろんなことが起こっている世の中。まずは「自分のことを語っていいんだ」というムードを醸成することも大事だ。そのためには「リーバイス」も大胆に、スタンスを表明し続ける。ただ、これも新たな挑戦ではない。「リーバイス」のレガシーの一部だ。
「WWD」:ハマティ=ゼネラル・マネジャーにとっての、「最高の物語を穿こう」は?
ハマティ=ゼネラル・マネジャー:私は70年代、兄から“501”を譲り受けた。大学生だった80年代、ボン・ジョヴィ(Bon Jovi)を聴いていた時はいつも「リーバイス」だった。コミュニティーに加わりたいという渇望感を高めるには、当時から音楽も大事なパートナーだ。今年、「リーバイス」はK-POPガールズグループのニュージーンズ(NewJeans)をグローバルアンバサダーに指名している。ユースカルチャーとのつながりもまた、「リーバイス」が本家本元だ。
「WWD」:市場全体で見れば、長らく低迷していたデニムがここ数年で復調している。
ハマティ=ゼネラル・マネジャー:コロナ禍に伴う“おうち時間”の増加と、サステナビリティへの意識の高まりは大きな影響を与えただろう。日本でも再び通勤・通学する人が増えているが、カジュアル化は進んでいる。仕事の後、すぐに友達に会えるジーンズへの支持は高い。水の使用量を大幅に削減する技術革新のおかげで、そもそも耐久性の高いジーンズは「一度買えば、長く使える」洋服と捉えられるようにもなってきた。ビンテージ市場も盛り上がっている。二次流通には積極的に関与していないが、一方で私たちもビンテージだけを集めたポップアップなどを検討している。課題は、女性マーケットの拡大だ。日本市場では、「リーバイス」は今なお70%以上がメンズ。デニムのトップスやニット、トラッカージャケットなど商材は進化しているが、シンプルでも女性らしくファッショナブルなアイテムがもっと必要だ。同時に、女性に改めて「リーバイス」の魅力を伝える努力も必要だろう。
「WWD」:大事なビジネスパートナーである量販店の復調も課題では?
ハマティ=ゼネラル・マネジャー:まずは関係を密にしたい。量販店は、他のブランドも取り扱う中で「リーバイス」を売っている。改めて、「リーバイス」のストーリーや商品について、彼らに伝え、理解・代弁してもらうことが必要だ。ヒアリングして、足りない商品を開発することも大事だろう。現状、量販店でも女性向けの商材が足りないのは、私たちの責任だ。
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注目の絵描きリーイズミダとの初コラボ “共感”から生まれた「サラナル」限定パッケージ

1986年、北海道生まれ。幼少期から絵を描き始める。アメリカ留学時に絵を学ぶ。2015年から東京に拠点を移し、19年に本格的に絵描きとしての活動をスタート。アクリル画の作品を中心に、看板や宣伝美術、ウィンドウに用いられる絵や文字を描く PHOTO:YUTA KATO
“共感がなければ描けない”
「サラナル」のコンセプト
WWD:「サラナル」からパッケージ制作の依頼を受けた時の率直な感想を教えてください。
リーイズミダ(以下、イズミダ):正直に言うと、これまで使ったことはなかったんです。ですが、個展などで忙しい毎日を過ごしている私にとって、感触が心地よくて素早くメイクオフできるこのアイテムは、自分の生活や今のムードにマッチしていると思いました。「まっさらから、はじめよう」という「サラナル」のコンセプトの通り、嫌なことや大変なこと、気分が乗らないことがあっても、1日の終わりに顔をすっきりさせると少しだけ気持ちが晴れますよね。そんなブランドの思いに共感できたから描けました。そうでないと、器用じゃないから描けないんです。誰にとってもクレンジング=顔を洗うことは当たり前のことですが、実は、今年の私の目標は「顔をきちんと洗うこと」でした。疲れてそのまま寝てしまうことが多くて……。今のところ、洗顔しないままの寝落ちはまだ数回です(笑)。
WWD:今回のコラボにはどのような価値を感じますか。
イズミダ:もちろん個展をベースに活動しているので、実際に原画を見てもらいたいという思いはぶれませんが、自分の作品が多くの人の目に触れる機会になるのはうれしいです。
「サラナル」はドラッグストアなど販売店舗が多く、ローカルでも買おうと思った時にすぐに購入できるし、値段も手ごろですよね。地元の北海道でも、実際に手に取れるのはすてきなこと。絵が好きな人が手に取った時にうれしい気持ちになってもらえたらいいなと思います。
「変化がなければ愛着がわかない」
リーイズミダの
エイジングとの向き合い方
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WWD:「サラナル」には、女性のエイジングに対する漠然とした不安や葛藤に、前向きになれる手伝いをしたいという思いもあるそう。イズミダさんは、エイジングに対してどのようなマインドで向き合っていますか。
イズミダ:エイジングだって、すてきな変化です。忙しく、毎日頑張っているんだから、老いていくのは当たり前のこと。変化がないと、愛着が湧かないと思いませんか。きれいの定義は人それぞれですし、年齢を重ねるうちに目元のシワがかわいく見えることだってあるでしょう。自分がどういうふうに年を重ねていきたいのか、どうありたいのか次第ですよね。私は健康で、ツルッとしたお肌で元気に絵を描いていたいですね。
WWD:「サラナル」の使い心地や、お気に入りのポイントを教えてください。
イズミダ:どちらも使っていますが、肌が乾燥しやすいので、しっとりとした洗い上がりの“ピュアクレンジングジェル ホワイト”はお気に入りです。ローズとゼラニウムがほのかに香るのもいい感じ。2種類をバスルームに置いておいて、その日の気分に合わせて、肌や心が求めている香りを使うのも良いと思います。重すぎないちょうどいいテクスチャーが肌になじませると心地よいです。
肌本来の実力を発揮するための
“落とすケア”の大切さを発信
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「サラナル」は、肌の変化を感じた時にまず見直すべきは“落とすケア”とし、クレンジングにフォーカスしたシンプルな商品ラインアップを展開する。ブランドコンセプト「まっさらから、はじめよう」には、正しい“落とすケア”で仕事にプライベートに忙しい現代女性が理想的な肌を手に入れて、より前向きに過ごせるようにという思いが込められている。「よく落ちるけど肌が突っ張り、刺激がある」「肌に優しいけれど、メイクが落ちない」「肌負担を減らそうとすると、手間や時間がかかる」といった、クレンジングにまつわる悩みに、3段階に変化するクレンジングを提案。ジェル、オイル、ミルク、ぞれぞれの良さを取り入れた“サラナル ピュアクレンジングジェル クリア”と“同 ホワイト”で、毎日の“落とすケア”を時短でかなえる。
商品購入で
オリジナルポーチをプレゼント
8月1日のコラボパッケージの発売に合わせて、EC(楽天)では2点以上の購入でオリジナルのクリアポーチを1つプレゼントするキャンペーンを実施。パッケージと同様、花のデザインに、「Every day is a new day.(毎日が新しい日)」「Choose to Shine.(輝くことを選ぼう)」というメッセージを添えた。
TEXT:NATSUMI YONEYAMA
株式会社I-ne
0120-333-476
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注目の絵描きリーイズミダとの初コラボ “共感”から生まれた「サラナル」限定パッケージ

1986年、北海道生まれ。幼少期から絵を描き始める。アメリカ留学時に絵を学ぶ。2015年から東京に拠点を移し、19年に本格的に絵描きとしての活動をスタート。アクリル画の作品を中心に、看板や宣伝美術、ウィンドウに用いられる絵や文字を描く PHOTO:YUTA KATO
“共感がなければ描けない”
「サラナル」のコンセプト
WWD:「サラナル」からパッケージ制作の依頼を受けた時の率直な感想を教えてください。
リーイズミダ(以下、イズミダ):正直に言うと、これまで使ったことはなかったんです。ですが、個展などで忙しい毎日を過ごしている私にとって、感触が心地よくて素早くメイクオフできるこのアイテムは、自分の生活や今のムードにマッチしていると思いました。「まっさらから、はじめよう」という「サラナル」のコンセプトの通り、嫌なことや大変なこと、気分が乗らないことがあっても、1日の終わりに顔をすっきりさせると少しだけ気持ちが晴れますよね。そんなブランドの思いに共感できたから描けました。そうでないと、器用じゃないから描けないんです。誰にとってもクレンジング=顔を洗うことは当たり前のことですが、実は、今年の私の目標は「顔をきちんと洗うこと」でした。疲れてそのまま寝てしまうことが多くて……。今のところ、洗顔しないままの寝落ちはまだ数回です(笑)。
WWD:今回のコラボにはどのような価値を感じますか。
イズミダ:もちろん個展をベースに活動しているので、実際に原画を見てもらいたいという思いはぶれませんが、自分の作品が多くの人の目に触れる機会になるのはうれしいです。
「サラナル」はドラッグストアなど販売店舗が多く、ローカルでも買おうと思った時にすぐに購入できるし、値段も手ごろですよね。地元の北海道でも、実際に手に取れるのはすてきなこと。絵が好きな人が手に取った時にうれしい気持ちになってもらえたらいいなと思います。
「変化がなければ愛着がわかない」
リーイズミダの
エイジングとの向き合い方
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WWD:「サラナル」には、女性のエイジングに対する漠然とした不安や葛藤に、前向きになれる手伝いをしたいという思いもあるそう。イズミダさんは、エイジングに対してどのようなマインドで向き合っていますか。
イズミダ:エイジングだって、すてきな変化です。忙しく、毎日頑張っているんだから、老いていくのは当たり前のこと。変化がないと、愛着が湧かないと思いませんか。きれいの定義は人それぞれですし、年齢を重ねるうちに目元のシワがかわいく見えることだってあるでしょう。自分がどういうふうに年を重ねていきたいのか、どうありたいのか次第ですよね。私は健康で、ツルッとしたお肌で元気に絵を描いていたいですね。
WWD:「サラナル」の使い心地や、お気に入りのポイントを教えてください。
イズミダ:どちらも使っていますが、肌が乾燥しやすいので、しっとりとした洗い上がりの“ピュアクレンジングジェル ホワイト”はお気に入りです。ローズとゼラニウムがほのかに香るのもいい感じ。2種類をバスルームに置いておいて、その日の気分に合わせて、肌や心が求めている香りを使うのも良いと思います。重すぎないちょうどいいテクスチャーが肌になじませると心地よいです。
肌本来の実力を発揮するための
“落とすケア”の大切さを発信
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「サラナル」は、肌の変化を感じた時にまず見直すべきは“落とすケア”とし、クレンジングにフォーカスしたシンプルな商品ラインアップを展開する。ブランドコンセプト「まっさらから、はじめよう」には、正しい“落とすケア”で仕事にプライベートに忙しい現代女性が理想的な肌を手に入れて、より前向きに過ごせるようにという思いが込められている。「よく落ちるけど肌が突っ張り、刺激がある」「肌に優しいけれど、メイクが落ちない」「肌負担を減らそうとすると、手間や時間がかかる」といった、クレンジングにまつわる悩みに、3段階に変化するクレンジングを提案。ジェル、オイル、ミルク、ぞれぞれの良さを取り入れた“サラナル ピュアクレンジングジェル クリア”と“同 ホワイト”で、毎日の“落とすケア”を時短でかなえる。
商品購入で
オリジナルポーチをプレゼント
8月1日のコラボパッケージの発売に合わせて、EC(楽天)では2点以上の購入でオリジナルのクリアポーチを1つプレゼントするキャンペーンを実施。パッケージと同様、花のデザインに、「Every day is a new day.(毎日が新しい日)」「Choose to Shine.(輝くことを選ぼう)」というメッセージを添えた。
TEXT:NATSUMI YONEYAMA
株式会社I-ne
0120-333-476
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名門生地メーカートップに聞く「メード・イン・イタリーの強みと課題」 高額品の拡大とサステナビリティ、産地の人手不足

PROFILE:ミラノ工科大学工業工学修士号取得。1663 年創業のイタリア高級紳士服地業界最大手のひとつ、ヴィターレ・バルベリス・カノニコの13 代目当主であり、代表取締役。2020年2月からミラノ・ウニカの会長を、15 年 5 月よりイデアビエッラの会長を務める
素材見本市「第37回 ミラノ・ウニカ(MILANO UNICA)」がこのほど閉幕した。コロナ明けでアジア圏からのバイヤーが戻ったこともあり、来場社数は4701社と前年から16%増えた。今回はトレンドテキスタイルの集積エリアをサステナブルな素材に限定したり、メタバースブースを新設したりなど、新たな試みも目立った。名門テキスタイルメーカーのヴィターレ・バルベリス・カノニコ(VITALE BARBERIS CANONICO)のトップで、ミラノ・ウニカの会長も務めるアレッサンドロ・バルベリス・カノニコ(Alessandro Barberis Canonico)氏に聞いた。
WWD:「ミラノ・ウニカ」全体の手応えは?
アレッサンドロ・バルベリス・カノニコ=ミラノ・ウニカ会長(以下、カノニコ会長):出店社数、来場バイヤー数ともに年々増加傾向にあり、とても上手くいっている。イタリアのテキスタイル市場も好調だ。世界的に高級品市場が盛り上がっている。イタリアのテキスタイルメーカーへの期待に応えるため、展示ブースでも全体的に高級感を出すことを意識した。ビキューナやウール、軽量で柔らかなコート地など最高級素材を楽しんでもらえたと思う。
WWD:今回は新たにメタバースブームを設けたが、狙いは?
カノニコ会長:10年後には、メタバースの存在感はさらに強まっていると見ている。たとえばバーチャルな店舗で試着し実店舗で購入するというような、オン・オフを行き来するような購買体験がもっと浸透しているはず。それにはアバターの再現度が要だが、「フォートナイト」のアバターには驚いた。現実の見た目により近いアバターができれば、メタバース上のファッションに求められる価値も変わってくる。ただ本音を言えば、私はVRゴーグルを装着してメタバースブース空間に入ったら、15分でめまいがした(笑)。今後の技術の進歩を期待したい。
WWD:デジタルファッションは、サステナビリティの文脈でも重要だ。
カノニコ会長:業界の課題の1つは、シーズンが終わるごとに発生する廃棄だ。デジタルはその解決策になる。生産前に消費者が必要なものが確実にわかる仕組みを確立したい。
課題は人手不足 若手に生地の芸術を伝えたい
WWD:各社のサステナビリティの取り組みも進んでいるようだ。
WWD:EUではさまざまな規制で実行段階に来ているが、どう見ている?
カノニコ会長:特に課題だと思っているのは、繊維のリサイクルだ。現在の規制ではリサイクルが推奨されているが、洋服はさまざまな部品で構成されており、単一素材でできていることはほぼない。たとえば、シーズンごとに捨てられてしまうような服は、リサイクルの方法を考えなければいけないだろう。一方、私たちの強みであるハイクラスな素材はそもそも寿命が長くトレンドにもあまり影響されない。廃棄を前提としたリサイクルを考える前に、修繕の仕組みを整えるべきかもしれない。今まさに、どういう特質であればリサイクルをすべきで、リサイクルができないものはどんな風に対応すべきなのかなどを、行政と話し合っているところだ。来年はより具体的な落としどころについて話せると思う。
WWD:イタリアのテキスタイル業界が抱える課題は?
カノニコ会長:一番は人手不足だ。産地は働き手を探しているにもかかわらず、若い人たちの失業率がとても高い。このミスマッチはイタリアの非常に深刻な問題だ。若い人たちは、インフルエンサーやマーケティングなどのコミュニケーションの分野の職に憧れていて、モノづくりの生産に携わる仕事を目指す人が少ない。「ミラノ・ウニカ」でも職人を目指す学生の育成をサポートしたい。取り組みの一つは、私たちがスポンサードしている「タム」プロジェクトだ。これは座学で生地を学んだり、工場での実習をしたりするというもので全てを無料で提供している。2月には、同プロジェクトを通して「ミラノ・ウニカ」に1500人の学生を招いた。生地の芸術を伝え産業のイメージアップに貢献したい。
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元ロリータ少女とバンドマンが自宅クローゼットで画期的な「バーチャル試着サービス」を開発するまで サリー127 鳥巣彩乃&小野沢敦
鳥巣彩乃/サリー127社長(左)、小野沢敦/サリー127取締役CTO(右)
(とす・あやの)千葉県出身。2007年に日本女子大学文学部を卒業後。人材ベンチャーなどを経て、2013年7月にリクルートマーケティングパートナーズ(現リクルート)に入社。2022年までリクルートリカレント事業の業績改革を責任者として牽引。リクルートに所属しながら、2017年12月7日にSally127を創業。22年にリクルートを退社
(おのざわ・あつし)1994年生まれ。14歳よりプログラミングに目覚め、独学で多数のゲームやツールを開発。高校・大学と情報技術専門コースへ進学した生粋のエンジニア。卒業後リクルート100%子会社のニジボックスに入社。リクルート所属の新規事業エンジニアを経て、国内最大級の就職サイト「リクナビ」にて、テクニカルディレクターを務めた。2017年サリー127共同創業。21年7月にニジボックスを退社 PHOTO:HIRONORI SAKUNAGA
サリーワンツーセブン(SALLY127以下、サリー127)は、ちょっと毛色の変わったファッション系のITスタートアップ企業だ。「ヴィヴィアン・ウエストウッド」コレクターの鳥巣彩乃がCEOを、元ヘビメタロッカーでITエンジニアの小野沢敦がCTOを務める。社名の「サリー123」も、氣志團の名曲「國道127號線の白き稲妻」から取ったという。2人はともにリクルートの新規事業開発部出身。「席が近くて、2人とも『ヴィヴィアン』好きだったのですぐ意気投合した」(鳥巣CEO)という。
ここまで聞くと、リクルート出身者が同窓会のノリで作ったような軽いスタートアップに聞こえるかもしれない。だが、サリー127のバーチャル試着のテクノロジーとサービスは本物だ。AR(拡張現実)技術を使う一方、アプリ不要でブラウザ上でも動く超独自技術をベースにしているのだ。「アプリ不要+ブラウザ上で使える」、ということはどんなECサイトも手軽に導入できるということ。このサービスは、小野沢CTOがプログラムからデザイン、UI/UX、データベース設計まで全て一人で、ゼロから作り上げた。鳥巣CEOは「4年をかけて、コツコツと磨き上げてきた。この技術には絶対の自信がある」。
筋金入りの「ロリータ少女」はリクルートへ 転機はある新規事業の挫折
鳥巣CEOは学生時代、筋金入りのロリータだった。「親友と2人で365日ロリータ服を着ていたので、巨大掲示板の2ちゃんねるに(大学のキャンパスのあった)『目白にいつも謎のロリータがいる』みたいなスレが立ったほどでした(笑)」。だが卒業後はファッション関連の仕事には就かず、人材ベンチャーなどを経て、2013年にリクルートに入社した。「働きだしてからもファッションのことはずっと好きで、稼いだお金の大半は服につぎ込んでいました。ただ、勤め先は何度か変わったけど、アパレル会社で働くイメージはどうしても湧かなかった」。
転機は全精力をつぎ込んだ、ある新規プロジェクトの頓挫だった。鳥巣CEOは当時、社内の新規事業コンテストにてグランプリを獲得し、社内起業としてインターネットサービスを立ち上げ、責任者を務めたものの、なかなか軌道に乗らず、結局プロジェクトは終了した。「抜け殻のようになっちゃって。あるとき残業してて、ふっと横を見たら小野沢がいたので『ねえ、一緒に起業してみない?』って誘ったんです。特にやりたい事業があったわけでもないけど、気の合う小野沢とだったら面白いかなって思ったんですよ」。ただ、「いいですね」と答えた小野沢に対して、鳥巣は自分から声をかけたにも関わらず「で、君は何ができるの?」と返したのだ。小野沢曰く「僕も、そろそろ自分で事業を立ち上げたいと思っていたタイミングでした。振り返ってみると、言い方(笑)とは思いますが、当時はじゃあ何をやろうか、という壁打ち感覚でしたね」。
リクルートはルールさえ遵守すれば副業や起業が許されており、2人は17年に起業した。ただ、それから2年間はいわゆる一般的な受託サービスを続けていた。「起業後もしばらくは、実は小野沢が超優秀なエンジニアだって知らなかったんですよ。でもある時、小野沢がいわゆる、フルスタックエンジニア(複数、あるいは全分野を一人で開発できるエンジニアのこと)だと知って、そのときに『だったら、2人とも大好きな服のサービスを作ろう!』って思ったんです」。
超独自のアプリ不要の「バーチャル試着」技術の開発へ
サービスはすぐに「バーチャル試着」に決まった。2人とも服好きで、IT×服のオンラインショッピングにおいて、「試着」が常に高いハードルになっていることがすぐにわかったからだ。裏テーマは「真夜中のランウェイ」だった。「洋服好きの人なら誰でも身に覚えがあると思うのですが、夜中にふと思い立って好きな服を何着も着替えたりすることってあるじゃないですか?そんな風に使ってもらえたら嬉しいなって」。ちなみにこの「真夜中のランウェイ」というコンセプトは、同社の技術検証サイトの同名のサービスとして22年11月にスタートしている。
小野沢CTOは「かなり早い段階から、頭の中にARを使ったサービスのイメージはあった。ただ、1人で作るとなると何年かかるかは分からないことは伝えました」。
鳥巣さんは、「それでもいい、というかそれだ!と思いました。全部小野沢が1人で作るならとことんこだわったプロダクトが作れる。何もない白紙の状態だったけど、その時に『自分たちだけで完成させること』と『妥協しないこと』、この2つだけを決めました」。
バーチャル試着ソフトの開発に着手後、2019年には24時間使用できる台東区のシェアオフィスを借り、終業後や週末を含めて、ほぼ毎日のように開発のためのミーティングを重ねた。「私の役割は顧客目線で使い勝手などを徹底的にリサーチ&検証すること。この部分はリクルートで叩き込まれたので」。
日中はリクルートの仕事があり、開発の仕事ができるのは平日の夜と週末だけだった。小野沢CTOは当時「鳥巣さんとコンセプトを話し合ったり、鳥巣さんがサービス設計を考える横でプログラムを書いていたので、週末も含めて、いつも朝の4時くらいまで仕事をしていました」。副業で毎日、明け方まで働く日々はどうだったのだろうか。「毎日が楽しくて。傍からだと結構激しく議論をしていたように見えたかもしれませんが、それはベースに『お客目線で良いサービスを作る』という軸があったから」。
いま2人はバーチャル試着サービスを「あとおしちゃん」というサービス名に決め、アパレル企業を回る毎日だ。「アプリ開発や高度なITの専用人材、高額の開発費が全て不要ということもあって、かなりの手応えを感じている」と鳥巣CEO。
ガレージならぬ「クローゼット発」の技術で成り上がれ
「あとおしちゃん」のサンプルムービーには、鳥巣CEOがピンク色の建物でバーチャル着替えをするシーンが出てくるが、これは鳥巣CEOの自宅の一部を改装しており、実際の作業は小野沢CTOが行った。小野沢は「もともと父が自分でログハウスを作るほど、工作や大工みたいなことも好きで、自分もよく手伝っていました。手を動かすのが好きなんです。よく鳥巣が部屋の改造を思いつくと、呼び出されてクローゼットの改造を手伝っています(笑)」。GAFAMのような超大手IT企業の多くも、かつてはガレージで生まれた。ならば創業者のクローゼットから巣立つファッションテックもあっていいはずだ。CEOの自宅のクローゼットから成り上がっていく「サリー127」の物語に注目したい。
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元ロリータ少女とバンドマンが自宅クローゼットで画期的な「バーチャル試着サービス」を開発するまで サリー127 鳥巣彩乃&小野沢敦
鳥巣彩乃/サリー127社長(左)、小野沢敦/サリー127取締役CTO(右)
(とす・あやの)千葉県出身。2007年に日本女子大学文学部を卒業後。人材ベンチャーなどを経て、2013年7月にリクルートマーケティングパートナーズ(現リクルート)に入社。2022年までリクルートリカレント事業の業績改革を責任者として牽引。リクルートに所属しながら、2017年12月7日にSally127を創業。22年にリクルートを退社
(おのざわ・あつし)1994年生まれ。14歳よりプログラミングに目覚め、独学で多数のゲームやツールを開発。高校・大学と情報技術専門コースへ進学した生粋のエンジニア。卒業後リクルート100%子会社のニジボックスに入社。リクルート所属の新規事業エンジニアを経て、国内最大級の就職サイト「リクナビ」にて、テクニカルディレクターを務めた。2017年サリー127共同創業。21年7月にニジボックスを退社 PHOTO:HIRONORI SAKUNAGA
サリーワンツーセブン(SALLY127以下、サリー127)は、ちょっと毛色の変わったファッション系のITスタートアップ企業だ。「ヴィヴィアン・ウエストウッド」コレクターの鳥巣彩乃がCEOを、元ヘビメタロッカーでITエンジニアの小野沢敦がCTOを務める。社名の「サリー123」も、氣志團の名曲「國道127號線の白き稲妻」から取ったという。2人はともにリクルートの新規事業開発部出身。「席が近くて、2人とも『ヴィヴィアン』好きだったのですぐ意気投合した」(鳥巣CEO)という。
ここまで聞くと、リクルート出身者が同窓会のノリで作ったような軽いスタートアップに聞こえるかもしれない。だが、サリー127のバーチャル試着のテクノロジーとサービスは本物だ。AR(拡張現実)技術を使う一方、アプリ不要でブラウザ上でも動く超独自技術をベースにしているのだ。「アプリ不要+ブラウザ上で使える」、ということはどんなECサイトも手軽に導入できるということ。このサービスは、小野沢CTOがプログラムからデザイン、UI/UX、データベース設計まで全て一人で、ゼロから作り上げた。鳥巣CEOは「4年をかけて、コツコツと磨き上げてきた。この技術には絶対の自信がある」。
筋金入りの「ロリータ少女」はリクルートへ 転機はある新規事業の挫折
鳥巣CEOは学生時代、筋金入りのロリータだった。「親友と2人で365日ロリータ服を着ていたので、巨大掲示板の2ちゃんねるに(大学のキャンパスのあった)『目白にいつも謎のロリータがいる』みたいなスレが立ったほどでした(笑)」。だが卒業後はファッション関連の仕事には就かず、人材ベンチャーなどを経て、2013年にリクルートに入社した。「働きだしてからもファッションのことはずっと好きで、稼いだお金の大半は服につぎ込んでいました。ただ、勤め先は何度か変わったけど、アパレル会社で働くイメージはどうしても湧かなかった」。
転機は全精力をつぎ込んだ、ある新規プロジェクトの頓挫だった。鳥巣CEOは当時、社内の新規事業コンテストにてグランプリを獲得し、社内起業としてインターネットサービスを立ち上げ、責任者を務めたものの、なかなか軌道に乗らず、結局プロジェクトは終了した。「抜け殻のようになっちゃって。あるとき残業してて、ふっと横を見たら小野沢がいたので『ねえ、一緒に起業してみない?』って誘ったんです。特にやりたい事業があったわけでもないけど、気の合う小野沢とだったら面白いかなって思ったんですよ」。ただ、「いいですね」と答えた小野沢に対して、鳥巣は自分から声をかけたにも関わらず「で、君は何ができるの?」と返したのだ。小野沢曰く「僕も、そろそろ自分で事業を立ち上げたいと思っていたタイミングでした。振り返ってみると、言い方(笑)とは思いますが、当時はじゃあ何をやろうか、という壁打ち感覚でしたね」。
リクルートはルールさえ遵守すれば副業や起業が許されており、2人は17年に起業した。ただ、それから2年間はいわゆる一般的な受託サービスを続けていた。「起業後もしばらくは、実は小野沢が超優秀なエンジニアだって知らなかったんですよ。でもある時、小野沢がいわゆる、フルスタックエンジニア(複数、あるいは全分野を一人で開発できるエンジニアのこと)だと知って、そのときに『だったら、2人とも大好きな服のサービスを作ろう!』って思ったんです」。
超独自のアプリ不要の「バーチャル試着」技術の開発へ
サービスはすぐに「バーチャル試着」に決まった。2人とも服好きで、IT×服のオンラインショッピングにおいて、「試着」が常に高いハードルになっていることがすぐにわかったからだ。裏テーマは「真夜中のランウェイ」だった。「洋服好きの人なら誰でも身に覚えがあると思うのですが、夜中にふと思い立って好きな服を何着も着替えたりすることってあるじゃないですか?そんな風に使ってもらえたら嬉しいなって」。ちなみにこの「真夜中のランウェイ」というコンセプトは、同社の技術検証サイトの同名のサービスとして22年11月にスタートしている。
小野沢CTOは「かなり早い段階から、頭の中にARを使ったサービスのイメージはあった。ただ、1人で作るとなると何年かかるかは分からないことは伝えました」。
鳥巣さんは、「それでもいい、というかそれだ!と思いました。全部小野沢が1人で作るならとことんこだわったプロダクトが作れる。何もない白紙の状態だったけど、その時に『自分たちだけで完成させること』と『妥協しないこと』、この2つだけを決めました」。
バーチャル試着ソフトの開発に着手後、2019年には24時間使用できる台東区のシェアオフィスを借り、終業後や週末を含めて、ほぼ毎日のように開発のためのミーティングを重ねた。「私の役割は顧客目線で使い勝手などを徹底的にリサーチ&検証すること。この部分はリクルートで叩き込まれたので」。
日中はリクルートの仕事があり、開発の仕事ができるのは平日の夜と週末だけだった。小野沢CTOは当時「鳥巣さんとコンセプトを話し合ったり、鳥巣さんがサービス設計を考える横でプログラムを書いていたので、週末も含めて、いつも朝の4時くらいまで仕事をしていました」。副業で毎日、明け方まで働く日々はどうだったのだろうか。「毎日が楽しくて。傍からだと結構激しく議論をしていたように見えたかもしれませんが、それはベースに『お客目線で良いサービスを作る』という軸があったから」。
いま2人はバーチャル試着サービスを「あとおしちゃん」というサービス名に決め、アパレル企業を回る毎日だ。「アプリ開発や高度なITの専用人材、高額の開発費が全て不要ということもあって、かなりの手応えを感じている」と鳥巣CEO。
ガレージならぬ「クローゼット発」の技術で成り上がれ
「あとおしちゃん」のサンプルムービーには、鳥巣CEOがピンク色の建物でバーチャル着替えをするシーンが出てくるが、これは鳥巣CEOの自宅の一部を改装しており、実際の作業は小野沢CTOが行った。小野沢は「もともと父が自分でログハウスを作るほど、工作や大工みたいなことも好きで、自分もよく手伝っていました。手を動かすのが好きなんです。よく鳥巣が部屋の改造を思いつくと、呼び出されてクローゼットの改造を手伝っています(笑)」。GAFAMのような超大手IT企業の多くも、かつてはガレージで生まれた。ならば創業者のクローゼットから巣立つファッションテックもあっていいはずだ。CEOの自宅のクローゼットから成り上がっていく「サリー127」の物語に注目したい。
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メンズコスメ開発&起業をリアルに描く 大西流星主演ドラマ「紅さすライフ」が生まれた理由
「メンズコスメが浸透している」。そう言われてもピンとこない人もいるかもしれない。10〜20代男性にはスキンケアは当たり前の行為として認知され、コロナ禍のオンラインミーティングやオンライン授業などでモニターに映る自分の顔を見る機会が増えたことで、顔色を明るくするベースメイクアイテムも続々と登場。実際に30代でもファンデーションを使う男性は増えてきていると言われるが、まだまだ発展途上で課題は多い。
そんなメンズコスメ開発を題材にしたドラマがスタートする。日本テレビの「シンドラ」(毎週月曜24:59〜25:29)枠で7月24日(月)からスタートする「紅さすライフ」だ。なぜ今、メンズメイクなのか。日本テレビの森有紗プロデューサーに話を聞いた。
ドラマ「紅さすライフ」とは
大手化粧品メーカー・ペガサス化粧品社長の次男でありながら、父親とはワケあって距離を置いている“三度の飯よりコスメが好き”な大学4年生の北條雅人(なにわ男子・大西流星)は、化粧品業界での起業を夢見ていた。ひょんなことから大学の研究室で働く29歳の理系ポストドクターですっぴん女子の皆本頼子(井桁弘恵)と出会い、2人でメンズコスメブランド立ち上げのために奮闘する。
雅人の兄・一馬役にはSexy Zoneの松島聡、物語のキーパーソンとなるカリスマモデル・矢巻光には少年忍者(ジャニーズJr.)の深田竜生を起用。なにわ男子の主題歌「Make Up Day」が物語を盛り上げる。
日本テレビ「シンドラ」(毎週月曜24:59〜25:29)枠で7月24日(月)からスタート。全10話。「TVer」「Hulu」でも配信する。
【森有紗プロデューサー インタビュー】
「男性がメイクをすることも、女性が毎日すっぴんで過ごすことも、
特別視されることではないと思う」
WWDJAPAN(以下、WWD):メンズコスメを取り上げるドラマが誕生することに驚きました。なぜメンズコスメを?
森有紗プロデューサー(以下、森):企画を考えたのがちょうどコロナ禍のステイホーム期間中で、リップメイク欲が募っていた頃で。そんな時に、“メイクで自分を強くする”男の子と、猪突猛進なすっぴん女子がバティを組みながら、“起業”という一つの夢に向かって奮闘するラブコメが浮かび上がってきました。SNSやYouTubeでもメイク男子の方による情報発信が増えてきていたり、既存のコスメブランドでも、男性モデルを広告塔に起用されるケースを目にしていたので、自然と興味が湧いた形ですね。
WWD:確かにメイク男子のアカウントも増えてきています。また、最近ではインフルエンサーがブランドを立ち上げSNSで宣伝・販売するDtoC(Direct to Consumer)スタイルもあります。
森:今回のドラマで雅人たちがやろうとしていることもまさにそんな感じです。
WWD:ということは、コスメ製造を行うOEM企業も出てくるのでしょうか?
森:出てきます。OEM企業と打ち合わせをするシーンや、雅人たちが予算面で頭を抱えたりするシーンも出てくる予定です。監修にOEM企業の方に入っていただいているので、実際の開発の流れを聞いて盛り込んでいます。
WWD:化粧品OEM企業が登場するドラマは初めてなんじゃないかと思います。なにわ男子の大西流星さんはコスメ男子として知られていますが、起用の理由は?
森:何気なく見ていたバラエティー番組で、プロのような手つきでメイクを施す大西さんが出ていて「これだ!」と。「北條雅人がいる!」と思ってすぐにオファーしました(笑)。
WWD:大西さんは実際にコスメのプロデュースもしていましたし、適任すぎて運命的ですね。撮影現場の様子はいかがですか?
森:大西さんは普段のお仕事でもメイクをしていらっしゃるから、メイクを施す際の所作がとても自然で綺麗なんです。「こうした方がいいかも」とアイデアを出してくださることもありますね。
WWD:一方の井桁さん演じる頼子はすっぴん女子なんですね。
森:男女のバディもので、かたやメイク男子、かたやすっぴん女子という対比もあるのですが、「化粧をしなければいけない」という見え方にはしたくなかったんです。“メイク”というと、世間的には女性がするものというイメージが強いかもしれませんが、本来化粧するしないは個人の自由ですし、ジェンダーや年齢問わず、それぞれの選択でいいんじゃないかと。
いずれは「メイク男子」や「すっぴん女子」という表現すら埋もれていく世の中になったらいいな、とも思います。男性がメイクをすることも、女性が毎日すっぴんで過ごすことも、何ら特別視されることではないと思うので。
WWD:メンズメイクのみならず、メイクとは?という問いかけにもなりそうです
森:雅人にとってメイクは自分を強くするための「武装」でもあって、物語の中ではそう思う彼の中の陰となる部分や、葛藤も描かれていきます。メイクに対する捉え方なども楽しんでいただければと思います。
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メンズコスメ開発&起業をリアルに描く 大西流星主演ドラマ「紅さすライフ」が生まれた理由
「メンズコスメが浸透している」。そう言われてもピンとこない人もいるかもしれない。10〜20代男性にはスキンケアは当たり前の行為として認知され、コロナ禍のオンラインミーティングやオンライン授業などでモニターに映る自分の顔を見る機会が増えたことで、顔色を明るくするベースメイクアイテムも続々と登場。実際に30代でもファンデーションを使う男性は増えてきていると言われるが、まだまだ発展途上で課題は多い。
そんなメンズコスメ開発を題材にしたドラマがスタートする。日本テレビの「シンドラ」(毎週月曜24:59〜25:29)枠で7月24日(月)からスタートする「紅さすライフ」だ。なぜ今、メンズメイクなのか。日本テレビの森有紗プロデューサーに話を聞いた。
ドラマ「紅さすライフ」とは
大手化粧品メーカー・ペガサス化粧品社長の次男でありながら、父親とはワケあって距離を置いている“三度の飯よりコスメが好き”な大学4年生の北條雅人(なにわ男子・大西流星)は、化粧品業界での起業を夢見ていた。ひょんなことから大学の研究室で働く29歳の理系ポストドクターですっぴん女子の皆本頼子(井桁弘恵)と出会い、2人でメンズコスメブランド立ち上げのために奮闘する。
雅人の兄・一馬役にはSexy Zoneの松島聡、物語のキーパーソンとなるカリスマモデル・矢巻光には少年忍者(ジャニーズJr.)の深田竜生を起用。なにわ男子の主題歌「Make Up Day」が物語を盛り上げる。
日本テレビ「シンドラ」(毎週月曜24:59〜25:29)枠で7月24日(月)からスタート。全10話。「TVer」「Hulu」でも配信する。
【森有紗プロデューサー インタビュー】
「男性がメイクをすることも、女性が毎日すっぴんで過ごすことも、
特別視されることではないと思う」
WWDJAPAN(以下、WWD):メンズコスメを取り上げるドラマが誕生することに驚きました。なぜメンズコスメを?
森有紗プロデューサー(以下、森):企画を考えたのがちょうどコロナ禍のステイホーム期間中で、リップメイク欲が募っていた頃で。そんな時に、“メイクで自分を強くする”男の子と、猪突猛進なすっぴん女子がバティを組みながら、“起業”という一つの夢に向かって奮闘するラブコメが浮かび上がってきました。SNSやYouTubeでもメイク男子の方による情報発信が増えてきていたり、既存のコスメブランドでも、男性モデルを広告塔に起用されるケースを目にしていたので、自然と興味が湧いた形ですね。
WWD:確かにメイク男子のアカウントも増えてきています。また、最近ではインフルエンサーがブランドを立ち上げSNSで宣伝・販売するDtoC(Direct to Consumer)スタイルもあります。
森:今回のドラマで雅人たちがやろうとしていることもまさにそんな感じです。
WWD:ということは、コスメ製造を行うOEM企業も出てくるのでしょうか?
森:出てきます。OEM企業と打ち合わせをするシーンや、雅人たちが予算面で頭を抱えたりするシーンも出てくる予定です。監修にOEM企業の方に入っていただいているので、実際の開発の流れを聞いて盛り込んでいます。
WWD:化粧品OEM企業が登場するドラマは初めてなんじゃないかと思います。なにわ男子の大西流星さんはコスメ男子として知られていますが、起用の理由は?
森:何気なく見ていたバラエティー番組で、プロのような手つきでメイクを施す大西さんが出ていて「これだ!」と。「北條雅人がいる!」と思ってすぐにオファーしました(笑)。
WWD:大西さんは実際にコスメのプロデュースもしていましたし、適任すぎて運命的ですね。撮影現場の様子はいかがですか?
森:大西さんは普段のお仕事でもメイクをしていらっしゃるから、メイクを施す際の所作がとても自然で綺麗なんです。「こうした方がいいかも」とアイデアを出してくださることもありますね。
WWD:一方の井桁さん演じる頼子はすっぴん女子なんですね。
森:男女のバディもので、かたやメイク男子、かたやすっぴん女子という対比もあるのですが、「化粧をしなければいけない」という見え方にはしたくなかったんです。“メイク”というと、世間的には女性がするものというイメージが強いかもしれませんが、本来化粧するしないは個人の自由ですし、ジェンダーや年齢問わず、それぞれの選択でいいんじゃないかと。
いずれは「メイク男子」や「すっぴん女子」という表現すら埋もれていく世の中になったらいいな、とも思います。男性がメイクをすることも、女性が毎日すっぴんで過ごすことも、何ら特別視されることではないと思うので。
WWD:メンズメイクのみならず、メイクとは?という問いかけにもなりそうです
森:雅人にとってメイクは自分を強くするための「武装」でもあって、物語の中ではそう思う彼の中の陰となる部分や、葛藤も描かれていきます。メイクに対する捉え方なども楽しんでいただければと思います。
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ビンテージアイウエア店ソラックザーデが大阪でトランクショーを開催 “面倒見が良かった時代”のスピリットを継承
東京・原宿のジュエラー&オプティシャン、ソラックザーデ(SOLAKZADE)と、大阪・梅田にある姉妹店、ザ・ラストストア(THE LAST STORE)が、7月12〜18日に阪急うめだ本店、19〜25日に阪急メンズ大阪でトランクショーを開催中だ。
2005年、岡本龍允(たつや)氏と弟・竜(りょう)氏の兄弟により、大阪で日本初のビンテージアイウエア専門の予約制ショールームとして始まったソラックザーデ。12年7月、東京に完全移転し、原宿の「ゴローズ(GORO'S)」の地下に店舗オープンした。15年には同ビル1階にも拡張し、アンティークジュエリーの取り扱いを始め、22年からはビンテージカー部門も立ち上げた。
20年9月には阪急百貨店とのジョイントプロジェクトとして、阪急メンズ大阪1階にザ・ラストストアをオープン。阪急阪神百貨店の出資のもと、岡本兄弟がディレクターとして、コンセプト立案から店舗デザイン、VMD、商品ラインナップや店内体験に至るまでの総合設計を行った。店舗の現場は、阪急百貨店の社員から選抜されたチームが管理・運営を行う。ビンテージ、アンティークのアイウエアや腕時計、ジュエリーを柱とし、「カルティエ(CARTIER)」「ジャガールクルト(JAEGER LECOULTRE)」「ダンヒル(DUNHILL)」をはじめとする、メゾンブランドのスペシャルピースを扱う。
両店舗ともに、購入したアイウエアは永久保証。一人一人のゲストに応じた丁寧なコミュニケーションやメンテナンスサービスが好評で、国内外セレブリティーにもファンが多い。
2年ぶりに大阪で開催する今回のトランクショーのタイトルは「天上天下 唯我独尊」。ソラックザーデから約1000本のアイウエアと約100点のジュエリーを厳選。来場したゲスト一人一人と会話を交わし、その人だけの特別な1本を提案する。両店を牽引する岡本龍允氏に、同イベントの狙いや手応えを聞いた。
WWD:ソラックザーデとザ・ラストストアの違いとは?
岡本龍允(以下、岡本):ソラックザーデではビンテージ品と僕らが手がけるオリジナル商品を扱うのに対して、ザ・ラストストアにはビンテージ品とメゾンブランドのスペシャルピースが並びます。ザ・ラストストアは阪急百貨店の森井専務と取り組んでいるプロジェクトで、メゾンブランドのグローバルCEO達との強いコネクションを持つ唯一無二の場所。それをコンシェルジュ的に対応するのではなく、スタッフそれぞれが専門知識や専門技術を持ち、ゲストにとって価値のある人間であるための努力をし続けた上で、一人一人一本一本と、誠実に丁寧に向き合い、リスペクトと愛のあるリアルな関係をゲストとも仲間たちとも築けたらと願っています。
ザ・ラストストアにはいくつもの小部屋があります。「ヴァシュロン・コンスタンタン(VACHERON CONSTANTIN)」「ピアジェ(PIAGET)」「ジャガー(JAEGER LECOULTRE)」といったリシュモングループの時計ブランドからコンプリケーションウォッチ(複雑時計)を集めたり、「ティファニー(TIFFANY & CO.)」などとハイジュエリーをメンズの括りで展開。「ダンヒル・ナミキ(DUNHILL NAMIKI)」の蒔絵が施されたパイプなどもあります。また、京都の285年の老舗帯匠・誉田屋源兵衛のシークレットイベントもこの中で開催したりしました。
WWD:今回トランクショーを開催した背景は?
岡本:10年来のソラックザーデのメンバーである山﨑リコが、4月に東京から大阪に移住し、ザ・ラストストアの現場リーダーとして着任しました。そして、5月に加入した新メンバー・幸野リナからのアイデアを山﨑リコがキャッチして、僕や森井専務に提案してくれたのが今回の開催につながりました。1日10〜15万人の来館がある阪急うめだ本店1階の玄関口でトランクショーを開催することで、多くの人にザ・ラストストアを肌で感じてもらおうと企画したのです。
ソラックザーデは僕自身が20歳の頃に「会社勤めはできそうにないから好きなことをやって生きよう」と始めたプロジェクト。僕自身、社会のレールからはみ出した人間だと思っていてーーでもそういう人間だからこそ、ピュアで美しいものが作れるんじゃないかと思っています。だから「今こそ、はみ出し者がもっと表に出るべきだ」と感じ、こうしたオープンな形でトランクショーに臨むことで仲間を募っていきたいという気持ちもあります。今回出会った一人一人との交流を深め、仲間としての関係を構築していきたいです。
WWD:トランクショーを開催して約1週間が経つが、手応えは?
岡本:当初は色んな人が来館する一階の玄関口という場所でどれだけの人が反応してくれるのか未知数でしたが、昨日も今日も、昼間に入場制限がかかるほどのゲストが来てくれました。ソラックザーデからのメンバー5人のほか、ザ・ラストストアのメンバーが毎日3人と、東京から駆けつけてくれた助っ人メンバー5人。合計13人のスタッフが常に1対1で対応していたので、おそらく1日あたり100人以上の方と接し、その半数以上の方がその場で購入して下さっています。
WWD:トランクショーではどのようなことを行う?
岡本:普段僕らがやっているのと同じように、ゲストとコミュニケーションを取りながら、映画や音楽などのカルチャーや歴史の話を交えて、本当に似合うアイテムの提案を行なっています。そして、今後修理や調整が必要になった場合は、ザ・ラストストアに来ていただければ永久に無料でメンテナンス対応します。
ソラックザーデを知っていても来たことがない方多く、写真だけだと一見“強そう”“怖そう”というイメージを持つ方も多いですが(笑)、実際は昔ながらの心を大事にやっていて、チームのみんなもフレンドリーでお茶目なメンバーです。
今や世界中に何百店舗と構えるメゾンブランドも、100年前は2、3店舗の個人店でした。一人一人のお客さまに、オーダーメイドで対応していた。当時のように“世界中に同じものが溢れている今こそ、僕らはここにしかないものを提案しよう”というのが、ソラックザーデやラストストアの精神であり、今回のトランクショーで皆さんに提案している物です。
WWD:顧客とのコミュニケーションの中で大切にしていることは?
岡本:僕らは年に3本くらい、映画のスタイリングを担当することがあり、その中で“同じ俳優でも何者にでもなれる"ということを学びました。アイウエアだけではなくファッションそのものに、その人が何者にでもなれる可能性が無限大にあるのだと感じています。
岡本:俳優だけではなく、ゲストそれぞれの人生も映画のようにストーリーがあります。でも大体の場合は「私にはきっとこんなのは似合わない、無理だ」と自分で決めつけてしまっている場合が多い。似合うものにトレンドは関係ありませんし、僕らが「これは間違いない」と説得力を持ってアイテムを提案することで、目の前の一人一人が「自分の人生はどんな風にも変われるんだ」と自信を持つことに繋がれば良いと思います。
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「ディプティック」CEOが語るポップアップで体感するメゾンの世界観
「日本に上陸して20年。アジアで初めてビジネスをスタートした歴史的な場所を皮切りにポップアップイベントを開催できてとてもうれしい」とモニーCEOは語る。このイベントでは、メゾンのエッセンスやクリエイティビティー、サヴォアフェールを表現し、ワークショップなども開催。同CEOは、「他の店舗とは違う雰囲気でメゾンの世界観に触れられるはずだ。散歩道のように『ディプティック』の香りやパッケージに施されたグラフィック、そしてサヴォアフェールを五感で体感してほしい」と話す。
「ディプティック」のキャンドルは今年誕生60周年を迎えた。「1963年当時は香りのキャンドルはなかった。われわれがフレグランスキャンドルの先駆者だ。今では49種類ものバリエーションが楽しめる」とモニーCEO。一つ一つのキャンドルの成分が異なり、ワックスのコンビネーションにこだわり、美しくキャンドルがともるようにつくられている。また、オーバルのラベルのレタリングもユニークだ。「キャンドルには60年間のサヴォアフェールが詰め込まれている。工程に『ディプティック』らしさが表れている」。
「ディプティック」は、フレグランスからデコレーションまで、さまざまな香りの世界観を楽しめる。今年は、メゾンへのオマージュであるフレグランス“ロー パピエ”が登場した。モニーCEOは今後の商品展開について、「9月にリフィル可能なキャンドルが登場する。今までのキャンドルとは違う新しいクリエイションだ」と言う。“ドソン”をはじめとする人気の柱となるフレグランス周りの商品の充実も視野に入れているようだ。「イマジネーションの豊かさを表現するためには、ディスプレーやセノグラフィーも大切。“アン エール ドゥ パリ”でメゾンの美しい思い出を持ち帰ってほしい」。
ディプティック ジャパン
03-6450-5735
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