世界的コンペの覇者「ソリット!」が目指すオールインクルーシブなファッション

「グッチ(GUCCI)」などを擁するケリング(KERING)やIBM、ロンドン芸術大学、「ヴォーグ ビジネス(VOGUE BUSINESS)」が共同開発したグローバルなファッション・コンペティションの「ファッション・バリュー・チャレンジ(Fashion Values Challenge.以下、FVC)」はこのほど、オールインクルーシブを謳うファッションブランドの「ソリット!(SOLIT!)」にグランプリを授けた。「ソリット!」は、これからの未来に向けて、多様な人々はもちろん、自然や動物も取り残さない社会を目指し、2020年9月に設立。企画段階から商品や環境に課題を感じる当事者を巻き込むインクルーシブ・デザインの手法をもとに、必要とする人に、必要とされるものを、必要な分だけを製造することを目指す。障がいの有無やセクシャリティなどを超えて、自分の好みや体型にあわせて部位ごとに1600通り以上の組み合わせの中からカスタマイズが可能な、自分のために作れるファッションサービスも運営している。田中美咲代表に、コペンハーゲンで開かれた授賞式のあと、話を聞いた。
「ソリット!」は現在2024年4月のバンクーバー・ファッション・ウイークへの参加のためのクラウドファンディングを行っている。返礼品は、オンライン配信のチケットやメイキングのドキュメンタリー映画上映会チケットなど。あわせて今月末まで、新宿マルイにポップアップをオープン中だ。

田中美咲(たなか・みさき)SOLIT代表  プロフィール

社会起業家・ソーシャルデザイナー。1988年生まれ。立命館大学卒業後、東日本大震災をきっかけに福島県における県外避難者向けの情報支援事業を責任担当。2013年「防災をアップデートする」をモットーに「一般社団法人防災ガール」を設立して20年に事業継承。第32回 人間力大賞 経済大臣奨励賞 受賞。18年2月に社会課題解決に特化したPR会社であるmorning after cutting my hairを創設。20年「オール・インクルーシブ経済圏」を実現すべくSOLITを創設。同社が開発したインクルーシブファッションは、世界三大デザインアワード「iF DESIGN AWARD 2022」で最優秀賞GOLDを受賞

――FVCへの参加のきっかけは?グローバルコンペでは、他の地域のファイナリストにどんな印象を抱いた?
田中美咲「ソリット!」代表(以下、田中):FVCはSNSで知っていたのですが、応募するか迷っていました。でも複数の知り合いから「これ『ソリット!』に合っていそう」とのメッセージをもらい、エントリーを決めました。日本のファイナリスト(「ソリット!」を含めて3社)はそれぞれとても魅力的で、グローバルのファイナリストも素敵なデザインのファッションサービスばかりでした。NFTを活用したサービスもあれば、民族・文化的背景からの開発も多く、それぞれが「ファッション」をどのように捉えているのか?がアウトプットに表れていると思いました。

――今回は欧州だけでなく、世界中から数百以上のエントリーがあった。そんな中で勝ち取ったプログラムに期待することは?
田中:これから半年間、ケリングやIBM、「ヴォーグ ビジネス」からのサポートに期待しつつ、こちらからも「これをやりたい」と言いまくろうと思っています。例えば今「ソリット!」ではマーケティングとターゲティングをレビューしていますが、今のコアターゲットは障がいのある方とか、セクシャルマイノリティ、高齢者ら、既存のファッションに「選択肢が少ない」もしくは「選択肢が存在しない」と感じている方々です。今は世の中にサービスは生まれつつあるのに、当事者が選択肢を知らないなどの理由で、マーケットがそもそも生み出されない黎明期にあると思うんです。つまり人数はいるけれど、まだマーケットになっていないのが現状です。私たちがターゲットを変えて、カスタマイズやパーソナライゼーションを楽しんでくれそうな人にシフトする方法もあるけれど、収益のためだけにその意思決定はしたくない。あくまで必要な人のためにモノ作りしたいんです。でもこれって、一社だと市場にならないのでもっとプレイヤーを増やすか、それこそケリングのような先駆的存在が「ここに、ちゃんと市場があるよ」と世の中に発信するなど、光を当てる力のある人たちがもっと注目してくれるといいなと思っていて。今回のプログラムでも、そこを一緒に作っていけるのであれば、とてもありがたいです。

――黎明期のマーケットで起業して、今年で4期目。起業までの経緯は?非営利団体から社会課題解決に特化したPR会社を経て、アパレル業界で起業したのはなぜ?
田中:幼少期から正義感が強く、行動力がありましたが、東日本大震災は大きなトリガーとなりました。自分の人生における時間などのリソースを「社会課題を解決するためにつかう」ことを決めました。まず当時勤めていたサイバーエージェントを辞めて被災地に移住して活動する中で、復興も重要だけど、対処療法的解決ではなく、システムチェンジや根本解決のために「防災」を行うべきと考え、非営利団体の一般社団法人防災ガールを立ち上げ、8年活動しました。
さらに構造的に課題解決をするには、自然災害だけではなく、複合的かつ同時多発的に解決・改善していく必要があると考え、同じく異なる社会課題の解決に挑む社会起業家の仲間たちを支援するため、社会課題解決に特化したPR会社のmorning after cutting my hairを創業しました。
私は、アパレル会社を経営したかったわけでも、ファッションブランドを始めてみたかったわけでもなく、あくまで環境問題や人権侵害などの課題へのソリューションとして「ソリット!」を生み出しています。初めに起業した時から今まで、対象とする課題やアプローチ方法は変わったけれど、いかに本質的に解決をするのかを常に考え、意思決定を続けてきました。大学時代からのバックパッカーで世界を一周するなど、日本の一般的な既存のルールやキャリアパスにあまりとらわれていないことも関係していると思います。

――海外も含め多様性のあるメンバーが参画しているが、普段のコミュニケーションで気をつけていることは?
田中:基本的にはSNSで個別DMが届いたり、知り合いの繋がりで共感してくださった方が「私にも何かできないか?」と連絡をくれたりが多いです。メンバーはみんな気候変動やジェンダー、人権に関して何らか強い意志をもち、アクティビストとは言い切れないまでも自分と社会の距離がとても近いメンバーばかり。1人では解決しきれないので、チームで挑戦したいと考えた人が多いです。
今のメンバーは40人ほどです。できているのかちょっとわかりませんが、私自身結構マメなタイプなので、メンバーとのコミュニケーションは多く取るようにしています。あと私にしかできない業務量をできるだけ減らして分担してもらい、私はみんなに茶々を入れたり「元気?」みたいなことを言ったりして、それぞれが本当にやりたいことをできるように調整することを意識しています。成果が出しやすい・見えやすい環境も作っています。今回のようなアワードを取ったり、ちゃんと売り上げにつなげたり、イベントの参加者を予想以上に伸ばしたり、それぞれに成功体験を経験してもらい、自分達の行動が社会とどうつながっているのかを共有できることがとても嬉しいです。

――今後の展望は?
田中:国内でも少しずつ露出が増えていますが、今回の受賞を機にグローバルにどのように評価されたブランド・会社であることがもっと伝わったり、それがきっかけで私たちのプロダクトが必要とされている方にもっと届いたりするといいなと思っています。
私たちはミッションからスタートしたファッションブランドですが、衣食住や生活環境の中で、よりオールインクルーシブで多様な人にも動植物にも配慮されている選択肢がもっと増えたらいいなと思っています。全てがそんなプロダクトにならなくてもいいけれど、そんな選択肢が50%くらいあると、それぞれ自由に選べて、表現できる幅が増えて、自分がより自分らしくあれる可能性が生み出せる。見たい景色は、ファッショアイテムはもちろんのこと、例えばコンビニで売られているお菓子とか果物、文具も、50%はそういうものから選べる状態です。
まだまだ小さなスタートアップですが、ここからさらにたくさんの企業や自治体の方々と協力しながら、目指す社会を実現していきたいです。

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ピーター・ドゥによる新生「ヘルムート・ラング」がデビュー 全盛期のアーカイブを解釈

デザイナーのピーター・ドゥ(Peter Do)が手がける新生「ヘルムート ラング(HELMUT LANG)」のランウエイショーが9月8日(ニューヨーク現地時間)に行われた。ラングと言えばミニマリズムの先駆者として1990年代に隆盛を極めたデザイナーだが、2005年にデザイナーを退任してからはアーティストとして活動し、ファッションの表舞台から姿を消している。ラングの退任後にリンク・セオリー・ホールディングスの傘下となった「ヘルムート ラング」は、18年春夏シーズンに「フッド・バイ・エアー(HOOD BY AIR)」のシェーン・オリバー(Shayne Oliver)とコラボレーションを行いコレクションを発表したが、今回のコレクションはそれ以来の話題を集めることとなった。

会場の床にはドゥの友人でもあり、同じくベトナムにルーツを持つアーティストのオーシャン・ヴィオング(Ocean Vuong)の詩から引用した言葉が綴られていた。ゲストに配ったコレクションノートもヴィオングによるものだ。彼がロードトリップに出た際の回想から始まり、車という存在について語られている。車はどこにでも行ける自由を提供しつつ、時には部屋のようにリラックスできる場所であり、時には周囲から隠れることのできる場所であり、時には泣くことのできる場所でもあるーー。こうした一節やTシャツにプリントした「YOUR CAR WAS MY FIRST ROOM OUR CLOTHES ON THE FLOOR LIKE STEPPED-ON FLOWERS(あなたの車は私の最初の部屋 私たちの服は踏まれた花のように床に落ちている」と言った言葉には性的マイノリティが感じてきた思いが隠されているとともに、ドゥの思いを代弁しているかのようでもある。

ファーストルックではリーンなシルエットの黒のパンツスーツにシートベルトのようなピンクのファブリックテープをボディに巻き付けた。3ルック目までは同じようにボディをクロスするようにピンクのファブリックテープをあしらい、パンツにもサイドラインをデザインした。ピンクのファブリックテープ使いは「ヘルムート ラング」全盛期の1994年秋冬コレクションで発表したコレクションからのオマージュのようだ。

他にもイエローキャブを彷彿とさせるイエローをシートベルトのように斜めにペイントしたコートや、イエローのファブリックテープをボディで交差したパンツスーツのルック、イエローキャブのグラフィックプリントを施したアイコニックなパンツスーツやセットアップが登場した。コレクションのBGMも車のクラクションやニューヨークの地下鉄のプラットホームで流れるアナウンス音など、慌ただしいニューヨークの日常を彷彿とさせる。98年に「ヘルムート ラング」はファッションブランドとして初めてイエローキャブの上部に広告を出し、タクシーや車はブランドにとってアイコニック的な存在と言ってもいい。こうしたディテールからもドゥのラングへのオマージュが感じられる。

後半はレザーを取り入れたスタイリングやドゥが得意とするクリーンでリーンなシルエットのテーラリングが続き、合間にヴィオングのメッセージをプリントしたシャツやTシャツのスタイリングが登場した。他にもアーカイブからの引用を思わせるシフォンをツイストして体を包み込んだカラードレスなど、ドゥ流に「ヘルムート ラング」を解釈している。「ヘルムート ラング」が紡いだ歴史は今後、現代の感覚を体現するドゥによってどう生まれ変わっていくのだろうか?

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「ラルフ ローレン」4年ぶりにNYでショー開催 洗練とロマンスのアメリカンスタイル

「ラルフ ローレン コレクション(RALPH LAUREN COLLECTION)」が2024年春夏ニューヨーク・ファッション・ウィーク(NYFW)の9月8日(現地時間)に2024年春夏コレクションを発表した。ニューヨークでは4年ぶりのランウエイショーで、洗練された新しいロマンスをテーマに時代を超えたアメリカンスタイルを作り上げた。

ショーはブルックリンのネイビーヤード(造船所跡地)で開催した。実際現役の倉庫に脚を踏み入れると、そこには豪奢なシャンデリアと、木材の床にドレープのかかったキャンバス、漆喰の壁など、アーティストのロフトをイメージしたという素朴な内装。対照的な要素が調和した、今回のテーマを象徴する空間がゲストを出迎えた。

ショーは得意とするデニムのスタイルからスタート。ビーズ刺繍やリバースアップリケ、シアーな花柄のカットアウトをクリスタルビーズで縁取ったスーツ、ラインストーンやフェザーを手刺繍で縫い留めたジャケットなど、デニムをロマンティックなイヴニングウエアに昇華した。続くブラックとゴールドを基調としたラグジュアリーなルックは、タキシードジャケットにゴールドメタリックのスキニーパンツ、ダブルブレストのブレザーとボディースーツの組み合わせなど、クラシックなアイテムを現代的な解釈で再構築した。そしてスタイルはノスタルジックなボヘミアンスタイルに変化する。大胆なカラーコードにメタリックな素材、フリンジのドレス、カラフルなビジューのアクセサリーも印象的だ。新作バッグ“RL 888”も今回のコレクションを彩った。

ラルフ・ローレンは「色褪せたデニムや絵画のような花柄の芸術性、ブラックとゴールドで一新したアイコニックなシェイプのモダンな洗練美、あるいは大胆な色や輝き、そしてラグジュアリーな手仕事のディテールのさまざまな組み合わせを通して、自分だけのスタイルを自由に生み出す。私がデザインのモデルとしたのは、個性とアーティスティックな精神というキャンバスの上で自己表現する、こうした女性たちだ」と語る。

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「ラルフ ローレン」4年ぶりにNYでショー開催 洗練とロマンスのアメリカンスタイル

「ラルフ ローレン コレクション(RALPH LAUREN COLLECTION)」が2024年春夏ニューヨーク・ファッション・ウィーク(NYFW)の9月8日(現地時間)に2024年春夏コレクションを発表した。ニューヨークでは4年ぶりのランウエイショーで、洗練された新しいロマンスをテーマに時代を超えたアメリカンスタイルを作り上げた。

ショーはブルックリンのネイビーヤード(造船所跡地)で開催した。実際現役の倉庫に脚を踏み入れると、そこには豪奢なシャンデリアと、木材の床にドレープのかかったキャンバス、漆喰の壁など、アーティストのロフトをイメージしたという素朴な内装。対照的な要素が調和した、今回のテーマを象徴する空間がゲストを出迎えた。

ショーは得意とするデニムのスタイルからスタート。ビーズ刺繍やリバースアップリケ、シアーな花柄のカットアウトをクリスタルビーズで縁取ったスーツ、ラインストーンやフェザーを手刺繍で縫い留めたジャケットなど、デニムをロマンティックなイヴニングウエアに昇華した。続くブラックとゴールドを基調としたラグジュアリーなルックは、タキシードジャケットにゴールドメタリックのスキニーパンツ、ダブルブレストのブレザーとボディースーツの組み合わせなど、クラシックなアイテムを現代的な解釈で再構築した。そしてスタイルはノスタルジックなボヘミアンスタイルに変化する。大胆なカラーコードにメタリックな素材、フリンジのドレス、カラフルなビジューのアクセサリーも印象的だ。新作バッグ“RL 888”も今回のコレクションを彩った。

ラルフ・ローレンは「色褪せたデニムや絵画のような花柄の芸術性、ブラックとゴールドで一新したアイコニックなシェイプのモダンな洗練美、あるいは大胆な色や輝き、そしてラグジュアリーな手仕事のディテールのさまざまな組み合わせを通して、自分だけのスタイルを自由に生み出す。私がデザインのモデルとしたのは、個性とアーティスティックな精神というキャンバスの上で自己表現する、こうした女性たちだ」と語る。

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若返りを図る「ケイト・スペード」は花が開くポジティブなパワーを表現

「ケイト・スペード ニューヨーク(KATE SPADE NEW YORK)」が2024年春夏ニューヨーク・ファッション・ウィーク(NYFW)の初日となる9月8日(現地時間)に2024年春夏コレクションを発表した。会場はニューヨークの街並みを見渡せる空中庭園の「ハイライン」だ。まだまだ残暑が厳しいニューヨークだが、プレゼンテーション会場に飾られたいくつもの大きな白い花のオブジェは、生命が芽吹く春の象徴。花が開くパワーとエネルギーは、これから待ち構えるニューヨークの長い冬を飛び越えて春を迎える高揚感のようだ。

グリーンの芝生の上に並んだモデルたちが身にまとうのはペールブルーやフレッシュなライムイエロー、ピュアホワイトなど、春を感じさせる若々しい色合い。スパンコールのセットアップやミニドレスも冬のワードローブを脱ぎ捨てた瞬間の前向きな感情を表しているかのようだ。「今シーズンはマンハッタンで初めて春を垣間見る瞬間というアイデアから始まった。春の訪れで活気づいた街には、開放感と興奮、これから起こることへの希望をかき立てる感覚がある。そんな普遍的な感覚と喜びを祝福している」とトム・モーラ(Tom Mora)=シニア・バイス・プレジデント兼RTW&ライフスタイル部門デザイン責任者とジェニファー・リュウ(Jennifer Lyu)=シニア・バイス・プレジデント兼レザーグッズ&アクセサリー部門デザイン責任者。

コレクションは「ケイト・スペード」らしいプリーツスカートやAラインのミニドレス、ツイード風ジャケットなど、ガーリーなニューヨークの子女を彷彿とさせるルックに、パールのアクセサリーやコサージュ使いが優しい春の装いを強調している。ガーリーなルックの対局としてスポーティーなライトコートやキャップ、リラックスしたパンツスタイルも登場した。「ケイト・スペード」は近年、ブランドのDNAを継承しながらも若返りを図っている。今季のコレクションでは1999年にケイト・スペードとアンディ・スペードが発表した名作「ノエル」プリントをトム・モーラとジェニファー・リュウがモダンに再構築した。

ブランドの核となるレザーグッズもアイコニックなアイテムで溢れた。今シーズンの象徴とも言える白い花はレザーバッグに大胆に使用し、ポインテッドトゥのパンプスにも大きくあしらった。スタイリングのアクセントとして加えたコサージュも今季らしい。フラワーコサージュのついたミニバッグは店頭でも人気のアイテムとなりそうだ。

今季のコレクションはプレゼンテーション終了後に一般公開したほか、モデルのアオキ・リー・シモンズ(Aoki Lee Simmons)とパートナーシップを組み、SNSを通じてプレゼンテーションの舞台裏を紹介している。会場は女優のクリスティーナ・リッチ(Christina Ricci)などのセレブの他に、ポップなカラーとガーリーなスタイリングに身を包んだ“ケイト・スペードガール”たちで溢れかえった。

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「コーチ」はスチュアート・ヴィヴァース就任10周年の節目のショー  NYでの軌跡に想いを馳せる

「コーチ(COACH)」は、2024年春夏ニューヨーク・ファッション・ウィーク公式スケジュール前となる9月7日(現地時間)に24年春夏コレクションのショーを開催した。

クリエイティブ・ディレクターのスチュアート・ヴィヴァース(Stuart Vevers)就任10周年目となる今季のコレクションはニューヨーク公共図書館を会場に、ショーの後には多くのゲストを招いてカクテルとディナーを開いた。ディナーではスチュアート本人がこの10年を振り返るスピーチで謝辞を述べる場面もあり、節目を祝うシーズンとなった。

イギリス人のスチュアートがアメリカに拠点を移したのは90年代。コレクションではニューヨークと共に歩んできたキャリアやプライベートの記憶を辿り、彼なりの解釈をオリジナリティーあるデザインに落とし込んでいる。「ヴィンテージのコピーはしたくなかった。今まで生活してきたニューヨークのムードや私の記憶からソースを切り取っている」とスチュアート・ヴィヴァース。

ファーストルックは、黒いレザーのキャミソールドレスにエンジニアブーツのシンプルなスタイル。「オリジナル・アメリカン・ハウス・オブ・レザー」ブランドとしてのレガシーを回顧するとともに、アップサイクルレザーの素材使いやテクニック、スタイリングでスチュワートのモダンさを加えている。ビッグシルエットのレザーのライダーズジャケットにハート型のサングラス、PVCのポップなフラットシューズのスタイリング、ヴィンテージ風のデッドストックを使用したレースのドレスにレザーのランジェリーを合わせるなど、スチュアートが踊り明かした伝説のナイトクラブ「ピラミッドクラブ」のムードを彷彿とさせる。リサイクルコットンを使用したオーバーサイズのボクシーなジャケットは90年代に自立し始めた女性たちのパワフルさを象徴。表面が色褪せたヴィンテージ風のバルマカーンコートなど、スチュアートの記憶からヴィンテージのピースを取り出したようだ。ルックに差し込んだポップなカラーのハイカットスニーカーやバッグなど、今すぐ手に取りたくなるアイテムも多い。

「コーチ」の象徴となるレザーバッグについては、「アーカイブは見ず、自分の解釈を元に『コーチ』のバッグとは何か?と考えた時、タイムレスなデザインでこの先80年は使っていけるものだろうという結論に至った」。スチュアートらしいウィットの効いたカラフルな犬の骨をモチーフにしたバッグやビッグトート、アイコニックなショルダーバッグも登場し、レザーブランドとしての存在感を改めてアピールした。スタイリングのアクセントにもなる“バッグの2個持ち”も印象的だ。

素材や技術面では先シーズンからの継承も見受けられるとともに、さらなる進化を印象付けた。デッドストックレースなどの生地は過去のコレクションのものを引用し、レザーやデニム、恐竜のポップなチャームなどは基本的に再生素材を使用している。ほつれそうに繊細なニットドレスやボタニカル染めのテクニックは先シーズンからさらなる進化を遂げているようだ。今年デビューした「コーチ」のセカンドブランド「コーチトピア」ではストイックなまでにサステナビリティを追求したものづくりをしているが、コレクションラインでもシーズンごとに先進的な環境配慮を行っている。

フィナーレに現れたスチュアート・ヴィヴァースは駆け寄ってきた我が子を抱きかかえ、ゲストに挨拶をして回った。ニューヨークとともに歩んできた10年、これからの10年の進化を予感させるコレクションとなった。

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ビヨンセやリアーナが出資するフランス発の「デストレー」 創業者がビジョンを語る

フランス発の「デストレー(DESTREE)」は、ジェラルディーヌ・ギヨ(Geraldine Guyot)とラティシア・ロンブローゾ(Laetitia Lumbroso)が2016年に立ち上げたブランドだ。商品デザインを手掛けるギヨは、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON)のベルナール・アルノー(Bernard Arnault)会長兼最高経営責任者の次男アレクサンドル・アルノー(Alexandre Arnault)の妻としても知られる。

フランスの伝統的な装飾技術パスマントリーを用いた“ギュンターバッグ”(11万9900円)や、奈良美智の作品に着想を得たジャケット(7万5900円)とパンツ(6万4900円)のセットアップなど、アートに造詣の深いギヨが生み出す商品は、これまでにないデザインを求める女性たちから支持を集める。日本では、グルッポタナカが国内市場における独占販売権を取得し、卸売やポップアップ、公式ECサイトで販売する。

22年には、シリーズAラウンドにおいてベンチャーキャピタル「セコイア・キャピタル (Sequoia Capital)」および女性の個人投資家を引受先とする資金調達を行なった。投資家には、ビヨンセ(Beyonce)やリアーナ(Rihanna)、ジゼル・ブンチェン(Gisele Bundchen)、ガブリエラ・ハースト(Gabriela Hearst)らが名を連ねる。女性経営者として確固たるビジョンを軸に、グローバルにビジネスを広げるギヨに話を聞いた。

WWD:ロンドンの名門セント・マーチン美術大学(CENTRAL SAINT MARTINS)では、美術史を学んだ。アーティストを目指していた?

ジェラルディーヌ・ギヨ=デストレー共同創業者兼チーフ・ブランド・オフィサー(以下、ギヨ):いいえ。昔からアート作品が好きで、ギャラリーや美術館などアーティストを支える仕事に憧れていました。アート批評を学んだ学歴は、ファッションデザイナーとしては珍しいのではないでしょうか。でも、この経験がブランドをユニークなものにしてくれていると思います。

WWD:ブランド立ち上げの動機は?

ギヨ:卒業後フランスに戻り、24歳で共同創業者のラティシア・ロンブローゾと一緒に「デストレー」を立ち上げました。ジュエリーやバッグのカテゴリーはすでに飽和状態で、ビジネス的に苦しんでいるブランドも多く知っていましたから、まずは大好きな帽子を軸にスタートしました。小さい頃から、ファッションは身近な存在で、美しい服で溢れていた母のクローゼットを覗いて、いろんな服を試してみるのが好きでした。思い返せばその頃から、いつか自分のブランドを持ちたいと夢見ていたと思います。

スタートは、フランスのモノづくりにこだわる手頃な価格帯の帽子ブランド

WWD:当時ほかの帽子ブランドには何が欠けていた?

ギヨ:一方に「ザラ(ZARA)」や「トップショップ(TOPSHOP)」のような巨大なブランドがあり、他方で「メゾン・ミッシェル(MAISON MICHEL)」のようなラグジュアリーブランドはありますが、その間のプレイヤーは少ない。私はそこを埋める、高品質で手頃な価格帯のメード・イン・フランスのブランドを立ち上げたいと思いました。帽子のモノづくりは非常に複雑で、真のサヴォアフェールが求められます。情熱を持って作られる長い過程にも感銘を受けました。私たちにとって、地元の経済を支えることもとても大事な視点で、今でもほとんどの商品は、メード・イン・フランスにこだわっています。

WWD:立ち上げ当初から、すでにモノづくりのネットワークを持っていた?

ギヨ:いいえ、全く。グーグルで地元のハットメーカーを検索するところから始めました。片っ端から電話をかけて、「すみません、ハット100個を作りたいのですが………」と頼むんですが、最初は「たった100個?」と笑われました。それでも、「すぐに100万個にしてみせるから」と説得し続けてチャンスを掴むことができました。手頃な価格で実現することも私たちのビジョンでしたから、メーカーと話し合いを重ね、お互いが納得する価格に落とし込むことができました。

WWD:発売当初の反響は?

ギヨ:とてもよく売れました。そこから手応えを感じて、バッグやジュエリー、レディ・トゥ・ウエアにカテゴリーを広げました。今レディ・トゥ・ウエアは特に好調で、ハットの売り上げを超えました。今ではレディ・トゥ・ウエアとハットが私たちのビジネスの2大カテゴリーです。

WWD:デザインの着想源は?

ギヨ:アート作品からヒントを得ることも多いですし、ビンテージ品の場合もあります。どこに旅行しても、現地のビンテージショップは必ずチェックします。服や食器、家具、きっと家にあるものの95%くらいがビンテージ品です。ベッドのシーツでさえも、ビンテージ品なんです(笑)。

新鮮なデザインを求める幅広い女性たちが支持

WWD:憧れている人物は?

ギヨ:父です。父は不動産で起業しました。ジャンルは違いますが、一から会社を立ち上げ、大企業に育て上げた父にはとても影響を受けています。同じ女性起業家としては、トリー・バーチ(Tory Burch)。その両者には、夢を描くことの大切さ、同時にそれを実現するために一生懸命努力し続けることを学びました。まだ「トリー バーチ」には届かないけれど、夢を実現できると思わせてくれる素晴らしいチームがいます。

WWD:現在の顧客層は?

ギヨ:30〜60代まで幅広い年齢層の方に支持されています。彼女たちに共通しているのは、何かこれまでとは違ったデザインを探しているという点。アイコニックな色使いやアシンメトリックで遊び心のあるデザインは、プレス関係者やバイヤーからもユニークだと評価されています。主要マーケットは、米国、フランス、韓国、イギリスがトップ4。9月にはロンドンの百貨店ハロッズでも取り扱いが始まるので、期待しています。特に韓国での伸びは顕著です。大きなマーケティング戦略をするわけでもなく広がっていきましたが、韓国の実業家の李富真が結婚式で、私のバッグを着用してくれたときには、問い合わせが殺到しました。先日友人である、ブラックピンク(BLACKPINK)のロゼ(ROSE)がインスタグラムに上げてくれたので、さらに知名度が上がるはずです。彼女は素晴らしい人物で、ブランドのことも応援してくれています。

WWD:資金調達には、ビヨンセやリアーナらが参加している。

ギヨ:女性の投資家を募ることも、私が自分に課した挑戦の1つでした。女性だけでビジネスを成長させることができると世界に証明したいと思ったから。それを成し遂げた自分たちを誇りに思います。彼女たちには定期的にアドバイスをもらっています。ちょうど先日は、ビヨンセからの依頼で彼女のツアー用にハットを作りましたよ。

WWD:日本では、どのようにブランドを成長させていく?

ギヨ:日本は、世界のトレンドセッターです。流行に敏感で、アヴァンギャルドな商品を好む日本の消費者には、「デストレー」が受け入れられる土壌が十分にあると思っています。まずは卸売に注力しますが、来年をめどに出店もできたらうれしい。

WWD:今後のビジョンは?

ギヨ:今後は世界で出店を加速したい。ちょうど1年前にパリに初めて店舗を出店しましたが、とても好調です。個人的には、大きな夢を描くこと、それに向かって諦めずに努力する素晴らしさを多くの人に伝えていきたいです。

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「メルヴィータ」本国グローバルPRが語る「地球や人に優しいモノづくりを加速」する狙い

ディディエ・テブナン/メルヴィータ グローバルPR&トレーニングディレクター プロフィール

1963 年生まれ。18 歳まで南米、アジアなど海外で過ごす。インテリアデザイナーの PR を経て、98 年ロクシタングループに入社し、ヨーロッパ地区のトレーニングディレクターを務める。2009 年に「メルヴィータ」に参加。 トレーニング部門を立ち上げ、新しい市場の開拓をサポートした後、現職

仏発オーガニックコスメブランド「メルヴィータ(MELVITA)」は、今年創立40周年を迎えた。それを機にWWFフランスが行うウミガメの保全活動をサポートを開始するなど、地球や人に優しいモノづくりをさらに加速する。また技術革新も進み、それを具現化した商品の一つであるネイチャーとサイエンスを融合した化粧水“ソルスデローズ エッセンスローション”(150mL、4400円)を9月6日に発売する。このほど、来日したディディエ・テブナン(Didier Thevenin)=メルヴィータ グローバルPR&トレーニングディレクターがブランドや商品に対する思いを語った。

WWD:来日の目的は?

ディディエ・テブナン=メルヴィータ グローバルPR&トレーニングディレクター(以下、テブナン):日本の年間スケジュールの確認と、新商品のローンチ、日本スタッフとのミーティングを予定する。特にスタッフとは今後の事業戦略や来年に予定する新ロゴ・パッケージの計画などを伝えた。

WWD:日本は2011年から展開するが、日本市場をどうとらえているのか。

テブナン:一言でいうと現在の状況に満足している。スタッフの多くが「メルヴィータ」の根幹を理解して、化粧品だけでなく、本物のライフスタイルを提供するブランドであると広めてくれている。小売り店でも「メルヴィータ」の商品を見かけることが多い。12年前に想定した位置づけと比較すると、さらにライフスタイルを変容できるブランドとして貢献できるし、上を目指せるだろう。現在10カ国で本格展開するが、フランスと日本が常に売り上げ上位を占める。2年以内にアメリカへの進出を計画している。

WWD:本物のライフスタイルとは?

テブナン:健康と環境に配慮した商品を提供することだ。「メルヴィータ」を訴求する際のインスピレーションを与えてくれたハチドリの物語がある。アマゾンで森林火事が発生し、多くの野生動物が森から逃げていたが、ハチドリが川に向かい口に水を含み消化活動をしていた。それを見たある動物がハチドリに「一滴の水で山火事が消せるのか?」と聞くと、ハチドリは「たとえ消せなくても自分にできることをしている。一羽では不可能なことも、みんなが一緒にやれば流れを変えることができる」と応えたという。この話は「メルヴィータ」のことでもあると思っている。「メルヴィータ」を消費者に紹介し、使用してもらうことで環境や人に好循環が生まれることにつながる。

スタッフをブランドアンバサダーに任命

WWD:グローバルPR担当のほか兼務するトレーニングディレクターとして日本で多くのスタッフと対話した。

テブナン:本部のスタッフとはもちろん、3日間で150人の販売スタッフと対話した。その中で重視したのはパッションと教育だ。私は25年前にロクシタングループに入社したが、当時は小さな企業で日本にも進出していなかった。ただ、上記の物語のように巨大なポテンシャルがあるブランドだと思っていたので、「メルヴィータ」を買収した際、「メルヴィータ」で仕事をしたいと手を上げた。新たな市場開拓ができ、好奇心を持って取り組んでいる。こうしたパッションは人に伝わると信じている。

WWD:スタッフの中からブランドの思いを伝えるアンバサダーになるべく人を探している。

テブナン:アンバサダーは役職ではなく、それぞれの職務を果たしながらブランドを体言する人物だ。マーケテイング担当に指南できるほどの知識が深い人、その国にマッチした考えを発信できる人、オプティミスト(楽天的)な考えをしている人、誠実で目的を忘れない人、私が伝えることを自国の言葉で伝えられる人をブランドアンバサダーに任命する。現在、イタリアとスロベニア、マレーシアにアンバサダーがおり、日本でも候補者がいて見極めるタイミングだ。

ブランドが発展するための商品誕生

WWD:“ソルスデローズ エッセンスローション”は「メルヴィータ」が発展していくための期待値の高い商品と聞く。

テブナン:オーガニックスキンケアの概念を覆す、ネイチャーとサイエンスを融合した商品だ。ブランド初のマイクロオイルフラクションテクノロジーを採用し、ピンクの小さな粒が視覚的にも華やかさを演出する。肌を潤すだけでなくふっくらとした健康的な肌へ導く新感覚な化粧水でスペシャルな逸品が完成した。

地球環境・従業員にも優しい取り組みを推進

WWD:ブランド誕生40周年で大地から海への環境保全も強化する。

テブナン:自然を尊重する取り組みを推進する中で、生分解性の高い商品を展開する。ビューティ業界はプラスチック廃棄量が多い産業のため、「メルヴィータ」は海洋成分を採用してきた。その中で絶滅の危機から海洋生物を救う取り組むを行うべきと、WWFフランスとスポンサーシップを結んだ。海洋生物多様性の保全プロジェクトを財政面で支援し、23年から3年にわたって、ウミガメの生育と沿岸漁業の調和を図ったり、保護に活用したりする資金として年間10万ユーロ(約1500万円)を寄付する。

WWD:生産工場も環境に配慮する。

テブナン:創業地であるフランス・アルデッシュ地方に構える生産工場は、使用電力の28%を太陽光発電で賄う。25年までに95%まで引き上げる計画だ。18年から原料の保管庫を半地下に設けた。それにより1年中、冷暖房を使用せずに一定温度を保てている。また、冬に降った水を保管し、雨が少ない夏に植物の散水用に活用する。

工場のスタッフには、乗り合い車で出社を推進する。入り口近くの駐車場は乗り合い車を優先するほか、毎月抽選でガソリンのプレゼントも行う。工場に勤務するスタッフも環境保全の意識が高まり、9月になると夏時期に観光客が多く訪れゴミが増えることから、岸辺のゴミ拾いを労働時間外に自発的に実施するようになった。

若い世代と未来を作る

WWD:若い世代へもアプローチする。

テブナン:未来を作るのは若い世代だ。「メルヴィータ」も若返りを図りたいと思っている。その一つが店舗だ。廃棄物の削減や生物多様性などを訴求すると共に、効果実感のあるスキンケアをそろえていることも伝えていく。現在、フランスに2店舗ほど新コンセプトの店舗を開設しているが、近い将来、日本でも新コンセプトの店舗を構える予定だ。これまでブランドを象徴するアイテムがアルガンオイルだったが、幅広いラインアップを改めて紹介できるだろう。日本においても「メルヴィータ」はさらなる高みを目指していく。

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「メルヴィータ」本国グローバルPRが語る「地球や人に優しいモノづくりを加速」する狙い

ディディエ・テブナン/メルヴィータ グローバルPR&トレーニングディレクター プロフィール

1963 年生まれ。18 歳まで南米、アジアなど海外で過ごす。インテリアデザイナーの PR を経て、98 年ロクシタングループに入社し、ヨーロッパ地区のトレーニングディレクターを務める。2009 年に「メルヴィータ」に参加。 トレーニング部門を立ち上げ、新しい市場の開拓をサポートした後、現職

仏発オーガニックコスメブランド「メルヴィータ(MELVITA)」は、今年創立40周年を迎えた。それを機にWWFフランスが行うウミガメの保全活動をサポートを開始するなど、地球や人に優しいモノづくりをさらに加速する。また技術革新も進み、それを具現化した商品の一つであるネイチャーとサイエンスを融合した化粧水“ソルスデローズ エッセンスローション”(150mL、4400円)を9月6日に発売する。このほど、来日したディディエ・テブナン(Didier Thevenin)=メルヴィータ グローバルPR&トレーニングディレクターがブランドや商品に対する思いを語った。

WWD:来日の目的は?

ディディエ・テブナン=メルヴィータ グローバルPR&トレーニングディレクター(以下、テブナン):日本の年間スケジュールの確認と、新商品のローンチ、日本スタッフとのミーティングを予定する。特にスタッフとは今後の事業戦略や来年に予定する新ロゴ・パッケージの計画などを伝えた。

WWD:日本は2011年から展開するが、日本市場をどうとらえているのか。

テブナン:一言でいうと現在の状況に満足している。スタッフの多くが「メルヴィータ」の根幹を理解して、化粧品だけでなく、本物のライフスタイルを提供するブランドであると広めてくれている。小売り店でも「メルヴィータ」の商品を見かけることが多い。12年前に想定した位置づけと比較すると、さらにライフスタイルを変容できるブランドとして貢献できるし、上を目指せるだろう。現在10カ国で本格展開するが、フランスと日本が常に売り上げ上位を占める。2年以内にアメリカへの進出を計画している。

WWD:本物のライフスタイルとは?

テブナン:健康と環境に配慮した商品を提供することだ。「メルヴィータ」を訴求する際のインスピレーションを与えてくれたハチドリの物語がある。アマゾンで森林火事が発生し、多くの野生動物が森から逃げていたが、ハチドリが川に向かい口に水を含み消化活動をしていた。それを見たある動物がハチドリに「一滴の水で山火事が消せるのか?」と聞くと、ハチドリは「たとえ消せなくても自分にできることをしている。一羽では不可能なことも、みんなが一緒にやれば流れを変えることができる」と応えたという。この話は「メルヴィータ」のことでもあると思っている。「メルヴィータ」を消費者に紹介し、使用してもらうことで環境や人に好循環が生まれることにつながる。

スタッフをブランドアンバサダーに任命

WWD:グローバルPR担当のほか兼務するトレーニングディレクターとして日本で多くのスタッフと対話した。

テブナン:本部のスタッフとはもちろん、3日間で150人の販売スタッフと対話した。その中で重視したのはパッションと教育だ。私は25年前にロクシタングループに入社したが、当時は小さな企業で日本にも進出していなかった。ただ、上記の物語のように巨大なポテンシャルがあるブランドだと思っていたので、「メルヴィータ」を買収した際、「メルヴィータ」で仕事をしたいと手を上げた。新たな市場開拓ができ、好奇心を持って取り組んでいる。こうしたパッションは人に伝わると信じている。

WWD:スタッフの中からブランドの思いを伝えるアンバサダーになるべく人を探している。

テブナン:アンバサダーは役職ではなく、それぞれの職務を果たしながらブランドを体言する人物だ。マーケテイング担当に指南できるほどの知識が深い人、その国にマッチした考えを発信できる人、オプティミスト(楽天的)な考えをしている人、誠実で目的を忘れない人、私が伝えることを自国の言葉で伝えられる人をブランドアンバサダーに任命する。現在、イタリアとスロベニア、マレーシアにアンバサダーがおり、日本でも候補者がいて見極めるタイミングだ。

ブランドが発展するための商品誕生

WWD:“ソルスデローズ エッセンスローション”は「メルヴィータ」が発展していくための期待値の高い商品と聞く。

テブナン:オーガニックスキンケアの概念を覆す、ネイチャーとサイエンスを融合した商品だ。ブランド初のマイクロオイルフラクションテクノロジーを採用し、ピンクの小さな粒が視覚的にも華やかさを演出する。肌を潤すだけでなくふっくらとした健康的な肌へ導く新感覚な化粧水でスペシャルな逸品が完成した。

地球環境・従業員にも優しい取り組みを推進

WWD:ブランド誕生40周年で大地から海への環境保全も強化する。

テブナン:自然を尊重する取り組みを推進する中で、生分解性の高い商品を展開する。ビューティ業界はプラスチック廃棄量が多い産業のため、「メルヴィータ」は海洋成分を採用してきた。その中で絶滅の危機から海洋生物を救う取り組むを行うべきと、WWFフランスとスポンサーシップを結んだ。海洋生物多様性の保全プロジェクトを財政面で支援し、23年から3年にわたって、ウミガメの生育と沿岸漁業の調和を図ったり、保護に活用したりする資金として年間10万ユーロ(約1500万円)を寄付する。

WWD:生産工場も環境に配慮する。

テブナン:創業地であるフランス・アルデッシュ地方に構える生産工場は、使用電力の28%を太陽光発電で賄う。25年までに95%まで引き上げる計画だ。18年から原料の保管庫を半地下に設けた。それにより1年中、冷暖房を使用せずに一定温度を保てている。また、冬に降った水を保管し、雨が少ない夏に植物の散水用に活用する。

工場のスタッフには、乗り合い車で出社を推進する。入り口近くの駐車場は乗り合い車を優先するほか、毎月抽選でガソリンのプレゼントも行う。工場に勤務するスタッフも環境保全の意識が高まり、9月になると夏時期に観光客が多く訪れゴミが増えることから、岸辺のゴミ拾いを労働時間外に自発的に実施するようになった。

若い世代と未来を作る

WWD:若い世代へもアプローチする。

テブナン:未来を作るのは若い世代だ。「メルヴィータ」も若返りを図りたいと思っている。その一つが店舗だ。廃棄物の削減や生物多様性などを訴求すると共に、効果実感のあるスキンケアをそろえていることも伝えていく。現在、フランスに2店舗ほど新コンセプトの店舗を開設しているが、近い将来、日本でも新コンセプトの店舗を構える予定だ。これまでブランドを象徴するアイテムがアルガンオイルだったが、幅広いラインアップを改めて紹介できるだろう。日本においても「メルヴィータ」はさらなる高みを目指していく。

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「Qoo10」ビューティ担当がプレゼン!“メガ割”でチェックすべきアイテム7選

総合ECモールの「キューテン(Qoo10)」は現在、四半期に1回開催しているビッグセール“メガ割”を9月12日まで開催している。運営会社イーベイジャパンの米川由満ビューティ営業部長から、メイクからスキンケアまで“メガ割”対象の注目のアイテムを7つ教えてもらった。

コスメ部門

「エチュード」“ドローイング アイブロウ ペンシル”

価格:各352円
カラー:全7色

韓国コスメブランド「エチュード(ETUDE)」のアイブロウペンシルは、カラー展開が全7色と豊富なラインアップを用意している。「芯の硬さがちょうど良く、非常に描きやすいのが特徴のアイブロウペンシル。352円という気軽に購入できる価格で、コストパフォーマンスも良い」(米川)。

「ジョンセンムル」“エッセンシャル スキン ヌーダー クッション”

価格:各5830円
カラー:全7色

韓国のメイクアップアーティスト、ジョンセンムル(Jung Saem Mool)が手掛けるメイクアップブランド「ジョンセンムル(JUNG SAEM MOOL)」のクッションファンデーションは同ブランドのスターアイテム。自然なカバーとマットな仕上がりを好む日本の消費者から高い支持を得る。「カバー力があって崩れにくい。リピート率が高いクッションファンデーション」(米川)。

「リリミュウ」“トーンアップカラープライマー”

価格:各1760円
カラー:全4色

タレントの指原莉乃がプロデュースするコスメブランド「リリミュウ(RIRIMEW)」の定番アイテムである化粧下地“トーンアップカラープライマー”。「若年層に支持されているブランド『リリミュウ』。化粧下地のカラーは4色あるが、中でも肌の色むらをカバーするイエローが人気」(米川)。

「ハオミー」“メルティーフラワーリップティント”

価格:各1870円
カラー:全7色

インフルエンサーの橋下美好がプロデュースするメイクアップブランド「ハオミー(HAOMII)」のティントリップ。オリーブ果実油やアルガンオイル、ローズヒップエキスなど植物由来の保湿成分を配合し、唇に滑らかにフィットしながら長時間付けたての色をキープする。「皮むけや乾燥の心配がいらないティントリップで、ユーザーからは『色持ちが良く、マスクを着用していても使える』などのレビューが多数投稿されている」(米川)。

「ティルティル」“マスクフィットメイクアップフィクサー”

価格:1650円
容量:80mL

「ティルティル(TIRTIR)」のメイクキープミストは、メイクアップの最後に吹きかけることで長時間メイクをキープする。「クッションファンデーションが人気の『ティルティル』だが、同商品も大変好調の売れ行き。メイクが崩れにくいのはもちろん、潤いも与えられる。霧状の細かいミストで、まんべんなく吹きかけられる」(米川)。

スキンケア部門

「ラゴム」“ラゴム ジェルトゥウォーター クレンザー”

価格:2310円
容量:220mL

「ラゴム(LAGOM)」の朝用洗顔料。顔を濡らさずにそのまま塗布すると、ジェルがウォーターテクスチャーに変化する。皮脂や汚れを優しく洗い流す。「珍しいジェルタイプの朝用洗顔料。スッキリするがツッパリ感がなく、潤いを取り去りすぎない。刺激も少なくて気持ちの良い使い心地」(米川)。

「ファンケル」“ディープクリア洗顔パウダー”

価格:1980円
容量:30個入り

「ファンケル(FANCEL)」の“ディープクリア洗顔パウダー”は、角栓などを浮かして落とし、滑らかな肌に導く酵素洗顔料。「ロングセラーの洗顔料。鼻の黒ずみや毛穴が目立つときに使用すると、つるっとした肌に仕上がる。『ファンケル』の公式ストアで同商品を購入すると“マイルドクレンジングオイル”のミニボトルが付いてくる“メガ割”限定の施策を行なっている。数量限定なので、早めにチェックすると良い」(米川)。

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「Qoo10」ビューティ担当がプレゼン!“メガ割”でチェックすべきアイテム7選

総合ECモールの「キューテン(Qoo10)」は現在、四半期に1回開催しているビッグセール“メガ割”を9月12日まで開催している。運営会社イーベイジャパンの米川由満ビューティ営業部長から、メイクからスキンケアまで“メガ割”対象の注目のアイテムを7つ教えてもらった。

コスメ部門

「エチュード」“ドローイング アイブロウ ペンシル”

価格:各352円
カラー:全7色

韓国コスメブランド「エチュード(ETUDE)」のアイブロウペンシルは、カラー展開が全7色と豊富なラインアップを用意している。「芯の硬さがちょうど良く、非常に描きやすいのが特徴のアイブロウペンシル。352円という気軽に購入できる価格で、コストパフォーマンスも良い」(米川)。

「ジョンセンムル」“エッセンシャル スキン ヌーダー クッション”

価格:各5830円
カラー:全7色

韓国のメイクアップアーティスト、ジョンセンムル(Jung Saem Mool)が手掛けるメイクアップブランド「ジョンセンムル(JUNG SAEM MOOL)」のクッションファンデーションは同ブランドのスターアイテム。自然なカバーとマットな仕上がりを好む日本の消費者から高い支持を得る。「カバー力があって崩れにくい。リピート率が高いクッションファンデーション」(米川)。

「リリミュウ」“トーンアップカラープライマー”

価格:各1760円
カラー:全4色

タレントの指原莉乃がプロデュースするコスメブランド「リリミュウ(RIRIMEW)」の定番アイテムである化粧下地“トーンアップカラープライマー”。「若年層に支持されているブランド『リリミュウ』。化粧下地のカラーは4色あるが、中でも肌の色むらをカバーするイエローが人気」(米川)。

「ハオミー」“メルティーフラワーリップティント”

価格:各1870円
カラー:全7色

インフルエンサーの橋下美好がプロデュースするメイクアップブランド「ハオミー(HAOMII)」のティントリップ。オリーブ果実油やアルガンオイル、ローズヒップエキスなど植物由来の保湿成分を配合し、唇に滑らかにフィットしながら長時間付けたての色をキープする。「皮むけや乾燥の心配がいらないティントリップで、ユーザーからは『色持ちが良く、マスクを着用していても使える』などのレビューが多数投稿されている」(米川)。

「ティルティル」“マスクフィットメイクアップフィクサー”

価格:1650円
容量:80mL

「ティルティル(TIRTIR)」のメイクキープミストは、メイクアップの最後に吹きかけることで長時間メイクをキープする。「クッションファンデーションが人気の『ティルティル』だが、同商品も大変好調の売れ行き。メイクが崩れにくいのはもちろん、潤いも与えられる。霧状の細かいミストで、まんべんなく吹きかけられる」(米川)。

スキンケア部門

「ラゴム」“ラゴム ジェルトゥウォーター クレンザー”

価格:2310円
容量:220mL

「ラゴム(LAGOM)」の朝用洗顔料。顔を濡らさずにそのまま塗布すると、ジェルがウォーターテクスチャーに変化する。皮脂や汚れを優しく洗い流す。「珍しいジェルタイプの朝用洗顔料。スッキリするがツッパリ感がなく、潤いを取り去りすぎない。刺激も少なくて気持ちの良い使い心地」(米川)。

「ファンケル」“ディープクリア洗顔パウダー”

価格:1980円
容量:30個入り

「ファンケル(FANCEL)」の“ディープクリア洗顔パウダー”は、角栓などを浮かして落とし、滑らかな肌に導く酵素洗顔料。「ロングセラーの洗顔料。鼻の黒ずみや毛穴が目立つときに使用すると、つるっとした肌に仕上がる。『ファンケル』の公式ストアで同商品を購入すると“マイルドクレンジングオイル”のミニボトルが付いてくる“メガ割”限定の施策を行なっている。数量限定なので、早めにチェックすると良い」(米川)。

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「Qoo10」ビューティ担当がプレゼン!“メガ割”でチェックすべきアイテム7選

総合ECモールの「キューテン(Qoo10)」は現在、四半期に1回開催しているビッグセール“メガ割”を9月12日まで開催している。運営会社イーベイジャパンの米川由満ビューティ営業部長から、メイクからスキンケアまで“メガ割”対象の注目のアイテムを7つ教えてもらった。

コスメ部門

「エチュード」“ドローイング アイブロウ ペンシル”

価格:各352円
カラー:全7色

韓国コスメブランド「エチュード(ETUDE)」のアイブロウペンシルは、カラー展開が全7色と豊富なラインアップを用意している。「芯の硬さがちょうど良く、非常に描きやすいのが特徴のアイブロウペンシル。352円という気軽に購入できる価格で、コストパフォーマンスも良い」(米川)。

「ジョンセンムル」“エッセンシャル スキン ヌーダー クッション”

価格:各5830円
カラー:全7色

韓国のメイクアップアーティスト、ジョンセンムル(Jung Saem Mool)が手掛けるメイクアップブランド「ジョンセンムル(JUNG SAEM MOOL)」のクッションファンデーションは同ブランドのスターアイテム。自然なカバーとマットな仕上がりを好む日本の消費者から高い支持を得る。「カバー力があって崩れにくい。リピート率が高いクッションファンデーション」(米川)。

「リリミュウ」“トーンアップカラープライマー”

価格:各1760円
カラー:全4色

タレントの指原莉乃がプロデュースするコスメブランド「リリミュウ(RIRIMEW)」の定番アイテムである化粧下地“トーンアップカラープライマー”。「若年層に支持されているブランド『リリミュウ』。化粧下地のカラーは4色あるが、中でも肌の色むらをカバーするイエローが人気」(米川)。

「ハオミー」“メルティーフラワーリップティント”

価格:各1870円
カラー:全7色

インフルエンサーの橋下美好がプロデュースするメイクアップブランド「ハオミー(HAOMII)」のティントリップ。オリーブ果実油やアルガンオイル、ローズヒップエキスなど植物由来の保湿成分を配合し、唇に滑らかにフィットしながら長時間付けたての色をキープする。「皮むけや乾燥の心配がいらないティントリップで、ユーザーからは『色持ちが良く、マスクを着用していても使える』などのレビューが多数投稿されている」(米川)。

「ティルティル」“マスクフィットメイクアップフィクサー”

価格:1650円
容量:80mL

「ティルティル(TIRTIR)」のメイクキープミストは、メイクアップの最後に吹きかけることで長時間メイクをキープする。「クッションファンデーションが人気の『ティルティル』だが、同商品も大変好調の売れ行き。メイクが崩れにくいのはもちろん、潤いも与えられる。霧状の細かいミストで、まんべんなく吹きかけられる」(米川)。

スキンケア部門

「ラゴム」“ラゴム ジェルトゥウォーター クレンザー”

価格:2310円
容量:220mL

「ラゴム(LAGOM)」の朝用洗顔料。顔を濡らさずにそのまま塗布すると、ジェルがウォーターテクスチャーに変化する。皮脂や汚れを優しく洗い流す。「珍しいジェルタイプの朝用洗顔料。スッキリするがツッパリ感がなく、潤いを取り去りすぎない。刺激も少なくて気持ちの良い使い心地」(米川)。

「ファンケル」“ディープクリア洗顔パウダー”

価格:1980円
容量:30個入り

「ファンケル(FANCEL)」の“ディープクリア洗顔パウダー”は、角栓などを浮かして落とし、滑らかな肌に導く酵素洗顔料。「ロングセラーの洗顔料。鼻の黒ずみや毛穴が目立つときに使用すると、つるっとした肌に仕上がる。『ファンケル』の公式ストアで同商品を購入すると“マイルドクレンジングオイル”のミニボトルが付いてくる“メガ割”限定の施策を行なっている。数量限定なので、早めにチェックすると良い」(米川)。

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1位は、「フェティコ」は女性を解放する服 「自由に生きる女性の邪魔をしないで」|週間アクセスランキング TOP10(8月24〜30日)

1位は、「フェティコ」は女性を解放する服 「自由に生きる女性の邪魔をしないで」|週間アクセスランキング TOP10(8月24〜30日)

「WWDJAPAN」 ウイークリートップ10

1週間でアクセス数の多かった「WWDJAPAN」の記事をランキング形式で毎週金曜日にお届け。
今回は、8月24日(木)〜8月30日(水)に配信した記事のトップ10を紹介します。


- 1位 -
「フェティコ」は女性を解放する服 「自由に生きる女性の邪魔をしないで」

 舟山瑛美デザイナーによる「フェティコ(FETICO)」が28日、2024年春夏コレクションのランウエイショーを「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」で行った。過去2シーズンのショーはアワード受賞による支援での開催だったが、今回はブランド独自でショーを実施。公式会場の渋谷ヒカリエを離れ、東京・品川の寺田倉庫へとキャパシティーを拡大した。

> 記事の続きはこちら

- 2位 -
「ケイト」初のクッションファンデ誕生 “リップモンスター”の独自技術を応用

08月29日公開 / 文・WWD STAFF

 「ケイト(KATE)」は10月21日、ブランド初のクッションファンデーション“カラー&カバークッション”(各2035円※編集部調べ、以下同)を発売する。専用のケース(605円)は別売りとなる。

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- 3位 -
ユニクロ社長兼COOに塚越大介グローバル事業CEOが就任 柳井氏は会長兼CEOに

08月28日公開 / 文・五十君 花実

 ユニクロは9月1日付で、現在グローバル事業のCEOを務める塚越大介取締役が、代表取締役社長兼COOに昇格する人事を発表した。現在、ユニクロの代表取締役会長兼社長を務める柳井正ファーストリテイリング会長兼社長は、引き続き代表取締役会長兼CEOとしてユニクロやグループ全体の経営上の意思決定や事業拡大をリードしていく。

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- 4位 -
9月1日発売「ユニクロ × マメ クロゴウチ」2023年秋冬ラストコレクション モデル・ヨガインストラクターの池田莉子がリアルに役立つ肌見せコーデを提案!

08月26日公開 / 文・中野 愛理

 ファッションラバーに絶大な支持を得る、ユニクロと「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI)」とのコラボレーションコレクション「ユニクロ アンド マメ クロゴウチ(UNIQLO AND MAME KUROGOUCHI以下、マメクロ)」が、ついに今シーズンでラストを迎える。“下着と洋服の境界線を越える、新しいインナーウエア”をコンセプトに掲げ、身体のラインを美しく見せるデザインを追求してきた「マメクロ」。その集大成となる2023年秋冬コレクションの魅力を、肌見せコーデにこだわりのあるモデル・ヨガインストラクターの池田莉子がセルフスタイリングとともにお届け。

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- 5位 -
「ニューバランス」と「ダブルタップス」の第3弾コラボスニーカー“990v6” 9月1日発売

08月28日公開 / 文・WWD STAFF

 「ニューバランス(NEW BALANCE)」は、西山徹が手掛ける「ダブルタップス(WTAPS)」とコラボレーションした第3弾スニーカー“990v6”を発表した。価格は4万4000円で、9月1日に「ニューバランス」の公式オンラインストアをはじめ、東京・日本橋浜町のティーハウス ニューバランス(T-HOUSE New Balance)やニューバランス 六本木 19:06、一部店舗などで取り扱う。

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- 6位 -
「オニツカタイガー」から秋の新作スニーカー ぷくっと膨れたフォームがかわいい

08月30日公開 / 文・WWD STAFF

 「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」は9月1日、新作スニーカー“デンティグレ パフ”を発売する。グレー、デザート、ブラックの3色展開で、価格は各2万4200円。

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- 7位 -
「ジェラピケ」×ポケモンが9月28日に発売 ピカチュウやカビゴンがモチーフの全47型

08月25日公開 / 文・WWD STAFF

 「ジェラートピケ(GELATO PIQUE)」は睡眠ゲームアプリ「ポケモン スリープ」とのコラボコレクションを9月28日に発売する。全国の直営店と公式オンラインストア、ECデパートメントストア「ウサギ オンライン」とポケモンセンターで取り扱う(ポケモンセンターは本コレクションの一部を販売する)。各オンラインサイトとアプリでは同日12時に発売を開始する。また、特設ページを9月13日12時からジェラートピケ公式オンラインストア、「ウサギ オンライン」で公開する。

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- 8位 -
デパートで「ダイソー」コスメ異例の完売 企画担当者に聞く“いい意味で100均に見えない”モノづくり

08月25日公開 / 文・利川果奈子

 100円均一ショップ「ダイソー(DAISO)」のコスメが盛り上がりを見せている。ビューティブランドが軒並み値上げを図る昨今、ワンコイン価格でコスメが手に入るとあれば、注目度が高まるのも必然だ。アフターコロナの中でマスクを外す人が増加したことも相まって、売り上げが大幅に伸びている。特に韓国風コスメブランド「コーウ(COOU)」は今年2月の発売開始から欠品が続き、一時は「売っているところを見たことがない」と嘆く声がSNSにあふれた。商品開発の旗振り役は、コスメ部門の企画責任者であるチーフバイヤーに、2021年12月に就任した小林 奈穂氏(32)だ。

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- 9位 -
「ルイ・ヴィトン」が腕時計“タンブール”の新作を9月に発売 ウオッチの高級路線化で現行モデルの約80%を廃番に

08月30日公開 / 文・LILY TEMPLETON

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は、アイコニックなウオッチ“タンブール(TAMBOUR)”をシックかつスポーティーに再解釈した新作を9月に発売する。また、ウオッチの高級路線化を進めるため、今回の新作発売を前に現行モデルの80%程度を順次廃番とする。新作は、直径40mmで厚さ8.3mmの薄型ケースとメタルブレスレットを一体化したユニセックスモデルで、ステンレススティール製を2型、ゴールドを2型、ステンレススティールとゴールドを組み合わせたものを1型の計5型を用意した。価格は“タンブール オトマティック スティール(Tambour Automatic Stainless Steel)”のブルーとシルバーがそれぞれ261万8000円で、ほかのモデルについては近日中に発表する。

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- 10位 -
「ワコール」から服と下着の境界を超える服「アワワコール」がデビュー クリエイティブディレクターに一ツ山佳子

08月24日公開 / 文・WWD STAFF

 ワコールのファッションブランド「アワワコール(OUR WACOAL)」が8月24日、デビューした。同ブランドのクリエイティブディレクターにはスタイリストの一ツ山佳子、デザイナーには酒寄順子を起用。ワコールの人体計測データや下着の開発技術をファッションのスペシャリストの知見を融合した高い実用性とファッション性を兼ね備えたウエアを提案する。

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1位は、「フェティコ」は女性を解放する服 「自由に生きる女性の邪魔をしないで」|週間アクセスランキング TOP10(8月24〜30日)

1位は、「フェティコ」は女性を解放する服 「自由に生きる女性の邪魔をしないで」|週間アクセスランキング TOP10(8月24〜30日)

「WWDJAPAN」 ウイークリートップ10

1週間でアクセス数の多かった「WWDJAPAN」の記事をランキング形式で毎週金曜日にお届け。
今回は、8月24日(木)〜8月30日(水)に配信した記事のトップ10を紹介します。


- 1位 -
「フェティコ」は女性を解放する服 「自由に生きる女性の邪魔をしないで」

 舟山瑛美デザイナーによる「フェティコ(FETICO)」が28日、2024年春夏コレクションのランウエイショーを「楽天 ファッション ウィーク東京(Rakuten Fashion Week TOKYO)」で行った。過去2シーズンのショーはアワード受賞による支援での開催だったが、今回はブランド独自でショーを実施。公式会場の渋谷ヒカリエを離れ、東京・品川の寺田倉庫へとキャパシティーを拡大した。

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- 2位 -
「ケイト」初のクッションファンデ誕生 “リップモンスター”の独自技術を応用

08月29日公開 / 文・WWD STAFF

 「ケイト(KATE)」は10月21日、ブランド初のクッションファンデーション“カラー&カバークッション”(各2035円※編集部調べ、以下同)を発売する。専用のケース(605円)は別売りとなる。

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- 3位 -
ユニクロ社長兼COOに塚越大介グローバル事業CEOが就任 柳井氏は会長兼CEOに

08月28日公開 / 文・五十君 花実

 ユニクロは9月1日付で、現在グローバル事業のCEOを務める塚越大介取締役が、代表取締役社長兼COOに昇格する人事を発表した。現在、ユニクロの代表取締役会長兼社長を務める柳井正ファーストリテイリング会長兼社長は、引き続き代表取締役会長兼CEOとしてユニクロやグループ全体の経営上の意思決定や事業拡大をリードしていく。

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- 4位 -
9月1日発売「ユニクロ × マメ クロゴウチ」2023年秋冬ラストコレクション モデル・ヨガインストラクターの池田莉子がリアルに役立つ肌見せコーデを提案!

08月26日公開 / 文・中野 愛理

 ファッションラバーに絶大な支持を得る、ユニクロと「マメ クロゴウチ(MAME KUROGOUCHI)」とのコラボレーションコレクション「ユニクロ アンド マメ クロゴウチ(UNIQLO AND MAME KUROGOUCHI以下、マメクロ)」が、ついに今シーズンでラストを迎える。“下着と洋服の境界線を越える、新しいインナーウエア”をコンセプトに掲げ、身体のラインを美しく見せるデザインを追求してきた「マメクロ」。その集大成となる2023年秋冬コレクションの魅力を、肌見せコーデにこだわりのあるモデル・ヨガインストラクターの池田莉子がセルフスタイリングとともにお届け。

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- 5位 -
「ニューバランス」と「ダブルタップス」の第3弾コラボスニーカー“990v6” 9月1日発売

08月28日公開 / 文・WWD STAFF

 「ニューバランス(NEW BALANCE)」は、西山徹が手掛ける「ダブルタップス(WTAPS)」とコラボレーションした第3弾スニーカー“990v6”を発表した。価格は4万4000円で、9月1日に「ニューバランス」の公式オンラインストアをはじめ、東京・日本橋浜町のティーハウス ニューバランス(T-HOUSE New Balance)やニューバランス 六本木 19:06、一部店舗などで取り扱う。

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- 6位 -
「オニツカタイガー」から秋の新作スニーカー ぷくっと膨れたフォームがかわいい

08月30日公開 / 文・WWD STAFF

 「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」は9月1日、新作スニーカー“デンティグレ パフ”を発売する。グレー、デザート、ブラックの3色展開で、価格は各2万4200円。

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- 7位 -
「ジェラピケ」×ポケモンが9月28日に発売 ピカチュウやカビゴンがモチーフの全47型

08月25日公開 / 文・WWD STAFF

 「ジェラートピケ(GELATO PIQUE)」は睡眠ゲームアプリ「ポケモン スリープ」とのコラボコレクションを9月28日に発売する。全国の直営店と公式オンラインストア、ECデパートメントストア「ウサギ オンライン」とポケモンセンターで取り扱う(ポケモンセンターは本コレクションの一部を販売する)。各オンラインサイトとアプリでは同日12時に発売を開始する。また、特設ページを9月13日12時からジェラートピケ公式オンラインストア、「ウサギ オンライン」で公開する。

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- 8位 -
デパートで「ダイソー」コスメ異例の完売 企画担当者に聞く“いい意味で100均に見えない”モノづくり

08月25日公開 / 文・利川果奈子

 100円均一ショップ「ダイソー(DAISO)」のコスメが盛り上がりを見せている。ビューティブランドが軒並み値上げを図る昨今、ワンコイン価格でコスメが手に入るとあれば、注目度が高まるのも必然だ。アフターコロナの中でマスクを外す人が増加したことも相まって、売り上げが大幅に伸びている。特に韓国風コスメブランド「コーウ(COOU)」は今年2月の発売開始から欠品が続き、一時は「売っているところを見たことがない」と嘆く声がSNSにあふれた。商品開発の旗振り役は、コスメ部門の企画責任者であるチーフバイヤーに、2021年12月に就任した小林 奈穂氏(32)だ。

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- 9位 -
「ルイ・ヴィトン」が腕時計“タンブール”の新作を9月に発売 ウオッチの高級路線化で現行モデルの約80%を廃番に

08月30日公開 / 文・LILY TEMPLETON

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は、アイコニックなウオッチ“タンブール(TAMBOUR)”をシックかつスポーティーに再解釈した新作を9月に発売する。また、ウオッチの高級路線化を進めるため、今回の新作発売を前に現行モデルの80%程度を順次廃番とする。新作は、直径40mmで厚さ8.3mmの薄型ケースとメタルブレスレットを一体化したユニセックスモデルで、ステンレススティール製を2型、ゴールドを2型、ステンレススティールとゴールドを組み合わせたものを1型の計5型を用意した。価格は“タンブール オトマティック スティール(Tambour Automatic Stainless Steel)”のブルーとシルバーがそれぞれ261万8000円で、ほかのモデルについては近日中に発表する。

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- 10位 -
「ワコール」から服と下着の境界を超える服「アワワコール」がデビュー クリエイティブディレクターに一ツ山佳子

08月24日公開 / 文・WWD STAFF

 ワコールのファッションブランド「アワワコール(OUR WACOAL)」が8月24日、デビューした。同ブランドのクリエイティブディレクターにはスタイリストの一ツ山佳子、デザイナーには酒寄順子を起用。ワコールの人体計測データや下着の開発技術をファッションのスペシャリストの知見を融合した高い実用性とファッション性を兼ね備えたウエアを提案する。

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「ここのがっこう」が10代向けにサマースクール開講 「ファッションの深さを伝えたい」

ファッションスクール「ここのがっこう」を主宰する山縣良和デザイナーは8月29日、自身がディレクターを務める10代に向けたクリエイティブ教育のためのスペース「GAKU」で、「ここのがっこう」のサマースクールを開催した。

「ここのがっこう」は、毎年入門編としてのサマースクールを実施する。今回は、中高校生ら10代を中心に13人が参加。最年少は10歳の小学生だった。前半はファッションの概念を学ぶ講義を行い、後半は“変身”をテーマに、着なくなった服や資材を持ち寄って作品を製作するワークショップを実施した。「変身するなら風になりたいと思った」とオーガンジーでドレスを製作した人や、「変身と聞くと変わらなきゃいけない気がしたけど、自分をさらけ出すことも解釈の1つ」と透明なビニールでドレスを製作した人など、山縣デザイナーの講義からヒントを得た多様なクリエーションが発表された。

講義最後に山縣デザイナーから、「これからの時代にファッションができることは何か?」と問いかけられると、参加者からは「ファッションは、自分の意思表示をする手段だと思う。服を選ぶという自己決定の習慣は、政治や環境活動など他の場でも応用できるようになるのではないか」といった意見が出るなど、ファッションと自分、社会の関係性を考える議論が活発に行われた。講義を終えた山縣デザイナーに話を聞いた。

「ファッションは楽しくもあり、深さもある」

WWD:前半の講義では、山縣さんからの「ファッションとは何か?」という投げかけから始まり、「自分とは?」といった議題に発展した。10代には難しいのではと思われる哲学的な投げかけにも、熱心に回答する参加者の様子が印象的だった。

山縣良和デザイナー(以下、山縣):僕自身も参加者の熱量に驚いた。専門的な教育を受けないかぎり10代でファッションの概念を学べる場はほとんどないからなのか、サマースクールには毎年とてもモチベーションが高い子たちが集まる。

WWD:講義の後半は、「変身」をテーマにワークショップを行ったが、なぜそのテーマに?

山縣:変われる、という体験をしてもらいたかった。何かに悩んだときに、その価値観自体が変幻自在であると理解してもらうために有効だと思った。

WWD:今後、業界全体でサステナビリティを推進していくためにもファッション教育が要になる。「ここのがっこう」では、サステナビリティの概念をどう伝えている?

山縣:以前の方が、「サステナビリティ」という言葉をよく使っていたが、今は少し減ったように思う。今日の講義でも最後に「プラネタリーヘルス」(地球の健康と人間の健康が相互依存的に関係しているという概念)の考え方を紹介したが、自分と社会、環境のつながりを意識してもう少し自発的な問題意識の立ち上がりを大事にしている。

WWD:今回の講義を通して特に持ち帰って欲しかったメッセージは?

山縣:ファッションは楽しくもあり、深さもあるということ。僕の10代は、カッコいいものを探して着飾ることに夢中だった。気候変動しかり、さまざまな社会問題に向き合わざるを得ない時代を生きている世代だからこそ、ファッションの深みに気付くことは重要だと思う。「ここのがっこう」でも、「装いとは何か?」といった概念から講義をする。僕がやるべきことは、本質を理解する手助けをすることで、間口を広げること。あえてファッション表現はこれだと言い切らないことを大事にしている。ファッションを学んで最終的には、それぞれがやりたいことを実現してほしい。

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サロン専売品からニキビケアクレンジングまで注目高まる「シコンエキス」とは?

成分を重視して、スキンケアやヘアケアを選ぶ人が増えている。今回、注目するのは、「シコン(紫根)エキス」。多年草ムラサキの根を乾燥させたもので、赤紫色が美しくポリフェノールが豊富。一見すると、新しい成分のようにも思えるがその歴史は古い。江戸時代に、外科医・華岡清洲が紫根の粉末と豚の脂を混ぜた軟膏「紫雲膏(しうんこう)」を考案。湿疹、ニキビ、火傷などに使える万能外用薬として活用されてきた。各メーカーに、シコンエキスを配合した経緯やヒット商品の売れ行きを聞いた。

ニキビに悩む人の「クレンジング」にも

ランクアップは、2021年5月に発売した皮脂と毛穴の専門ブランド「アクナル(ACNAL)」の“アクナル ピンクハーブクレンジング”(120mL、3190円)にシコンエキスを配合している。ニキビに悩む人のクレンジング・洗顔中は、肌に触れる時間が長く負担がかかりやすいという理由から。佐々木春佳ランクアップ 製品開発部担当は、「繰り返すにきびの原因は、『毛穴の炎症』と『皮脂の酸化』であり、ニキビを繰り返さないために対策が必要だと考えた。クレンジング・洗顔中は、肌に触れる時間が長く負担がかかりやすいが、洗っている間も肌に負担をかけずニキビケアをできたらという発想から、抗炎症・抗菌作用に優れたシコンエキスを選んだ。“アクナル ピンクハーブクレンジング”は、3月の時点で、定期便での契約者数ベースが前年同月比236%増、売り上げは同220%増と好調に推移しており、にきびや毛穴の詰まりに悩む方から高い支持を得ている」。

毎日使える、スカルプケアシャンプーにも

「ウルオッテ(URUOTTE)」のリンス不要シャンプー“ナチュラルシャンプーエキゾチックフラワー”(250mL、3300円)にも、シコンエキスが配合されている。クィーン代表笹川直子は「スカルプケアを習慣化したいと顧客から支持されている。頭皮の小さな炎症によるかゆみやフケが気になる方からも好評で支持を得ている。特に、20〜30代で頭皮ケアを始める女性から人気」とコメント。

水を一滴も使わず日本原種の薔薇ハマナスを使用した美容クリーム

「アムリターラ(AMRITARA)」は、シコンエキスを配合したアイテムを数多く展開する。“ローズエナジークリーム”(30mL、7480円)、“マイルドベールクリーム”(35mL、6710円)、“ピュア トリートメント リップグロス(ボタニカルピンク)”(10g、2640円)など、幅広い。勝田小百合アムリターラ代表兼商品開発は、「紫根の持つ有効成分『シコニン』の効果を、肌や唇にも活かしたいと考えている。また海外産ではなく、在来の日本産の紫根を使いたいという強い思いがあり、北海道産の農薬不使用で栽培した紫根を使用している」。特に“ローズエナジークリーム”の人気が高く、22年3月から23年3月までの累計販売数は1742個にのぼる。

アリミノは新ラインのキー成分に選定。毛髪の酸化抑制に期待

「アリミノ(ARIMINO)」は、美容室専売ブランド「スプリナージュ(SPRINAGE)」より、新ライン・モイストヴェールを発売する。“スプリナージュ シャンプー モイストヴェール”<医薬部外品>(280mL、3300円)、“スプリナージュ トリートメント モイストヴェール”(230g、3300円)、“スプリナージュ モイストヴェール ミスト”(120mL、3300円)、“スプリナージュ モイストヴェール バーム”(25g、3300円)の共通成分として選んだのがシコンエキスだ。津田真希アリミノ商品開発部担当は、「植物は特有の色を持つものが多くあり、その色味成分に有効性が確認できる。色素を持つ植物の検討を行ってきたが、ピンク色を呈することができるシコンをキー成分として選定した。ピンクは心を穏やかにし、女性ホルモンを活性化するなどの心理的効果も報告されており、情緒的価値を創出できると考えた。研究では、肌への新しい有効性や毛髪の酸化抑制へのアプローチも認められた」と話す。

――― 今後、盛り上がりが期待される注目成分は?

佐々木春佳ランクアップ 製品開発部担当:40代以降に肌のハリ不足に着目して開発された、3種の植物の混合成分『ハリスチャー』だ。肌の土台を整え、セラミドを合成するなど、みずからのうるおいを作り出す力をサポートする働きがある。近年、注目されているゾンビ細胞の増殖を抑制する働きも。ハリスチャーの研究結果は日本抗加齢医学会総会にて発表し、2つの特許を申請している。

笹川直子クィーン代表取締役:2020年11月のリニューアル時から米や茶など、日本の土地に根差した植物に着目している。耕作放棄地の茶の実オイルを配合した“ナチュラルシャンプー 無香料”(250mL、2750円)は、サスティナブルコスメアワード2021を受賞した。

津田真希アリミノ商品開発部担当:ルイボスエキス。ルイボスは、南アフリカに自生する落葉亜低木でハーブの一種だ。ルイボスエキスは、体内のたんぱく質と余分な糖がくっつく「AGEs」をブロックする働きがあるといわれている。髪と地肌の糖化を防ぎ、エイジングに有効な植物由来成分として注目している。

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メルローズ50周年記念スペシャル対談 トップランナーに聞く「ファッション半世紀」

メルローズ50周年記念の連載企画「メルローズと私」のスタートに先立ち、メルローズ前社長の武内一志ビギホールディングス社長と、日本のファッションを50年間見つめてきたユナイテッドアローズ創業者の重松理名誉会長の対談を企画した。

「洋服は着るのではなく、着こなす」

WWD:お二人の出会いは?

重松理ユナイテッドアローズ名誉会長(以下、重松):共通の知人を介してお会いしたのが最初です。その後プライベートでも食事にいくようになりました。私の妻が「マルティニーク」が好きでお店での買い物に付き合っていたこともあったので、お会いする以前から武内さんのことは知っていました。「マルティニーク」は、武内さんが立ち上げられたセレクトショップですね。

武内一志ビギホールディングス社長(以下、武内):はい。メルローズの母体であるビギは1970年代から80年代のDCブランドの火付け役で、デザイナーの世界観の強い服を仕掛けてきました。しかし80年代後半から90年代になるとブームは下火となり、海外のブランドやライフスタイルを提案するセレクトショップが若者の人気を集めます。そのトップランナーがユナイテッドアローズでした。初期のユナイテッドアローズのことをよく覚えていますが、店内には“大人のおもちゃ箱”のような高揚感がありました。スタッフさんにもオーラがあり、何よりも知識豊富で洋服のことを何でも教えてくれた。「洋服は着るのではなく、着こなすんだ」と、強く影響を受けました。自分もいつかセレクトショップを作ることが夢になり、2000年に立ち上げたのが「マルティニーク」でした。

東京の風俗と文化が変わる瞬間を演出した

WWD:創立当時のビギやメルローズについて、お二人の印象を教えてください。

重松:私は73年に社会人となり、今年でメルローズと同じく、ファッションの仕事を始めてちょうど50年になります。70年代初頭は、洗練されたブランドといえばインポートでした。そんな中、パルコや西武百貨店の「カプセル」が日本の最先端のブランドを取り上げ、中でも(メルローズの前身である)ビギはひときわ輝いていました。

当時、アパレルメーカーの多くは神田や日本橋の繊維問屋街に事務所を構え、百貨店や専門店に卸売りしていました。その時代に、ビギやメルローズはすでに表参道にブティックを出店していたのです。表参道がファッションの街になったのも、ビギやメルローズの力が大きい。表参道沿いにあった石垣造りの「ビギ」の1号店は、60年代のロンドンの影響も受けていてとてもかっこ良かった。同潤会青山アパートメントにあったニット専門の「メルローズ」の1号店にも行ったことがあると思います。今振り返れば、東京の風俗と文化が変わる瞬間でした。「日本のブランドがかっこいい」ということが新鮮だったのです。

武内:僕は重松さんより年下なのでまだ学生でしたが、テレビドラマ「傷だらけの天使」(74~75年)で「ビギ」を知りました。菊池武夫先生がデザインを手がけていた頃の「ビギ」が衣装提供をしており、ブランドがドラマに衣装提供をすることもそうですが、主演のショーケン(萩原健一)の洗練されたファッションに衝撃を受けました。

学生時代には親に「参考書を買う」と嘘をついておこづかいをもらい、「ビギ」に買い物に行きました(笑)。同潤会の「メルローズ」でも、面白いニットが売っていたので購入していました。

DCブランドからセレクトショップの時代へ

重松:その頃はちょうどビギやメルローズを代表に、日本にも社名を冠したブランドが出てきた時代。私は最初の3年は婦人アパレルメーカーで働いていましたが、社名がブランド名になることに驚きを覚えました。武内さんは、最初はビギに入社したのですよね。

武内:はい。85年にビギに入社し、最初はメンズデザイナーとして働いていました。ようやく仕事に慣れてきた92年、ビギの創業者の大楠(祐二)に「ウィメンズデザインもやってみないか」と背中を押され、グループのメルローズに移籍したのが転機になりました。

DCブランドの後にインポートブランド、セレクトショップと次々と新しい潮流が出てきて、ファッション業界は混沌としていました。僕はビンテージアイテムを中心に、オリジナルとセレクトアイテムを取り扱うウィメンズのセレクトショップ「マルティニーク」と「ティアラ」を立ち上げました。それまでメルローズの出店先は百貨店が多かったのですが、路面店やファッションビルへも販路を広げたのです。重松さんやユナイテッドアローズからも、もちろん影響を受けてのことでした。

重松:メルローズとユナイテッドアローズでの協業はありませんが、私とメルローズとのつながりは、英ブランド「ジョンスメドレー」にもあります(メルローズは18年にジョンスメドレーを輸入販売するリーミルズエージェンシーを子会社化)。セレクトショップに欠かせないブランドで、買い付けもしていました。私自身も大好きで、今は見ない古いタグの時代からのニットを何枚も持っています。

互いに刺激し合い、高めていく

武内:そうですね。235周年を迎えた際の「ジョンスメドレー」のホームページでは、重松さんに愛好家としてご登場いただきました。昨年のピンクハウスの50周年記念展にも多忙の合間を縫ってお越しいただき、メルローズの歴史をいつもしっかり見てくださることに心から感謝しています。

WWD:ビギやメルローズとユナイテッドアローズは、互いに刺激し合い、発展しているのが面白いですね。メルローズには「服―それはあくまで着る人のためにある」というフィロソフィーがあります。これは半世紀の歴史で根付いたのでしょうか。長くビジネスを続けるために大切にすることはありますか。

武内:昔からビギはデザイナーによる個性の際立ったブランドがそろっていました。一方、メルローズはより広い市場を意識し、柔らかい感じのテイストで、多くの方々に愛される服を作る。手に取ったときの気持ちの高まり、袖を通したときのワクワクやドキドキ。長くアパレルビジネスを存続させていくために「まだ見ぬ景色を、お客様にどれだけ見せることができるか」を大切にしてきました。僕はメルローズの経営からは退きましたが、今も脈々と受け継がれていると思います。

WWD:重松さんは昨年、自身が立ち上げられた日本服飾文化振興財団の書籍「日本現代服飾文化史 ジャパンファッション クロニクル インサイトガイド1945~2021」でも、日本のファッションの変遷をまとめられています。ビギやメルローズがけん引したDCブームをはじめさまざまな過去のファッションを記録されていますね。

重松:日本のファッション史は本当に豊かでバラエティに富んでいます。「こんなにも豊かだったのだ」ということを広く伝えたかったのが、出版のきっかけでした。一方でファッションは年々ミニマル化して、引き算になっています。新しい人たちにもっと足し算のファッションを楽しんでほしいと思っています。ファッションは不滅ですから。

TEXT : MAMI OSUGI
問い合わせ先
メルローズ
03-3464-3310(代表)

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「ジョー マローン」のアイコン、イングリッシュ ペアーの香りが進化 ジュース製造過程の廃棄水分を活用

セリーヌ・ルー/「ジョー マローン ロンドン」フレグランス開発責任者 プロフィール

フレグランスとビューティ業界で長年キャリアを積む。クリエイティブスタジオのリーダーとして、専門知識や芸術的な感性、と科学的な知識を組み合わせて唯一無二のブランドを体現する香りをつくり続けている

「ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON以下、ジョー マローン)」のアイコニックな香りである“イングリッシュ ペアー&フリージア(以下、ペアー&フリージア)”が生まれ変わった。洋梨のジュースの製造過程で廃棄される水分から抽出された天然原料の洋梨のエッセンスを使用し、独自の製法で作られるようになったのだ。また、新たに“イングリッシ ペアー&スイート ピー(以下、ペアー&スイート ピー)”が登場。来日したセリーヌ・ルー「ジョー マローン」フレグランス開発責任者にイングリッシュ ペアーや新たな香りなどについて聞いた。

WWD:今回の来日の目的は?

セリーヌ・ルー=「ジョー マローン」フレグランス開発責任者:来日するのはロックダウン後初めて。日本にはたくさんインスピレーション源がある。今回は、イングリッシュ ペアーについて紹介するために来日した。

WWD:ペアーを天然香料にした理由と目的は?

ルー:“ペアー&フリージア”のインスピレーションは果樹園。イギリスで梨の木は日本における桜のようなもので、身近で象徴的な存在。ペアーに天然香料はなく、それがフラストレーションでもあった。天然の果物をフレグランスに使いたいと思ったから、それに挑戦するべきだと思った。この天然香料は、「ジョー マローン」のエクスクルーシブだ。

WWD:洋梨の廃棄物のアップサイクルはどのように行うか?

ルー:ジュースメーカーがジュースを製造する際に廃棄する水分を生かしている。その水分に熱を加えて水蒸気にすると、それに梨の成分が濃縮されている。それを香料として使用する。フレグランス1本につき、約1個の梨の抽出物を使用している。

廃棄物のアップサイクルだけでなく、生産者サポートも

WWD:「ジョー マローン」で使用している天然香料の割合は?

ルー:フレグランスごとに違う。天然のものがあればそれを使うのがルールだ。例えば、ジャスミンやローズには天然香料があるがスイート ピーにはないので、アコードをつくった。また、バランスを考えて天然香料を使うようにしている。

WWD:廃棄物をアップサイクルした香料を使用することにより、どのような効果がどのくらい見込めるか?

ルー:今後、もっと廃棄物をアップサイクルした素材を使っていきたい。自然環境に目を向けて、廃棄物の削減をすることで生産者の支援ができる。廃棄物の利用だけでなく、水の使用量を減らすこともできる。バニラの原料は、マダガスカルの生産者から長年調達している。同じ生産者から調達することで、現地の生産コミュニティーをサポートすることができる。

WWD:“ペアー&スイート ピー”を開発した理由は?

ルー:天然香料のペアーを他のフレグランスに使ってみたいと思ったから。パステルカラーのスイート ピーの花の色を香りで表現した。花のイメージ同様、甘美でロマンティックな香りになっている。“ペアー&フリージア”とレイヤードして楽しむこともできる。

WWD:「ジョー マローン」が他のフレグランスブランドと違う点は?

ルー:英国がインスピレーション源でフレグランスの名前が原材料名であること。また、意外性がある自然な香りで、まといやすい。フレグランスのストーリーには感情的なコネクションが感じられ、香りと共に旅路を歩むような親しみやすい存在であること。

WWD:フレグランス開発におけるこだわりは?

ルー:時間をかけて、自分の直感を信じる。誰にでもアピールする香りだと個性がなくなるから、直感を信じて判断する。

WWD:自分自身にとってフレグランスとは?

ルー:笑顔になるもの。ムードによりフレグランスは変わるが、心地よさや喜びを与えてくれる存在だ。

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返品率11%削減 「アンダーアーマー」とタッグ、バーチャサイズが初の「シューズ のオンライン試着」実装

どの業界でもリアル店舗と同様にECに力を入れているが、特にファッション分野では、試着ができない点をいかに解決するかが長年の課題となってきた。スポーツ用品ブランドである「アンダーアーマー(UNDER ARMOUR)」は4月、シューズのオンライン試着の導入に踏み切った。フィット感を求められるスポーツシューズを主力商材とする「アンダーアーマー」は、なぜシューズのオンライン試着を導入したのか?またその成果は?同サービスを提供したのは、服のオンライン試着サービスを、日本だけでなく世界中のアパレル企業に提供してきたバーチャサイズ(Virtusize)だ。同社にとってもシューズのオンライン試着サービスの提供は世界初。ドームでECを担当する伊藤直樹Eコマース部 開発・運用チーム Head of Teamと、バーチャサイズでヘッドオブウエストを務める野村奈緒バーチャサイズ シニアカスタマーサクセスマネージャーに聞いた。

ECではリアル店舗の
接客に代わる施策を重視

WWDJAPAN(以下、WWD):「アンダーアーマー」のECに対する考え方、運営方針は。

伊藤直樹 ドームEコマース部 開発・運用チーム Head of Team(以下、伊藤):現在「アンダーアーマー」は国内で直営店が4店舗、アウトレットを含めると35店舗です。専門店への卸が中心となっており、自社ECサイトは顧客とのダイレクトな接点という面で非常に重要です。ECは年間2000万セッションほどあり、より顧客とのエンゲージを高めるため、4月にアプリのリニューアルを実施しています。さらに新たな会員制プログラム「UAリワード」を作り、今後は会員限定のアイテム販売やイベントを強化する方針です。豪華なアスリートによる「ハウツー動画」などアプリ限定のコンテンツなども充実させており、アプリやECの強化を図っている真っ最中です。

アンダーアーマーが
バーチャサイズと組んだワケ

WWD:バーチャサイズにとっては世界初となるシューズのオンライン試着サービスを「アンダーアーマー」に導入した経緯は。

野村奈緒バーチャサイズ ヘッドオブウエスト/シニアカスタマーサクセスマネージャー(以下、野村):当社側からシューズサービスの開発のご相談をさせていただいたことがきっかけです。日本で「アンダーアーマー」を展開するドームには、昨年の秋にウエア版の「バーチャサイズ」をすでに導入してもらっており、実績も出ていたので、提案自体には非常に前向きに受け止めてもらえました。ただ、当社にとってもシューズ版のオンライン試着は世界でも実績がない初めての取り組みになります。多くの面でドーム側の協力を受ける必要がありました。その面でウエア版の導入時に、スポーツに対して本気度の高い顧客が多い「アンダーアーマー」のために細かなサイズデータと弊社のノウハウをかけあわせ、かなりのカスタマイズを実施し、成功していたことが評価されました。

WWD:ドーム側は、シューズのオンライン試着をどう考えていたのか?

伊藤:シューズはウエアよりサイズのレンジが細かく、加えて「アンダーアーマー」の顧客はフィット感によりシビアになります。これまでは店舗での試着なしにEC単体ではなかなか買ってもらえないという悩みがありました。また、4月に販売を開始した“UAフロー ベロシティ エリート”というレーシングシューズが少し独特なサイズ感の商品で、店頭で接客していると1サイズか2サイズ下げて買われる方が多くいらっしゃいます。そういった商品ごとのフィット感の違いに対しても、「いつも履いているサイズ」ではなく、きちんとロジックを立てて、ユーザー一人ひとりに合ったサイズを提案できる仕組みが欲しいと考えていました。「バーチャサイズ」はウエアでの取り組みでCVR(コンバージョンレート)の向上や返品率の低下が実際に数字として出ていたので、シューズについても前向きに検討しました。

野村:シューズのオンライン試着サービスは、2021年5月にパートナー企業と共同開発を発表するなど、ずっと事業化の道を探ってきました。シューズの形をAIに読み込ませたり、UI/UXの改善、導入後のサービスのあり方などは、当社も長い間研究開発に取り組んでいました。ただ、最終的にはやはり導入企業の協力が不可欠でした。これは企業文化だと思いますが、ドーム側の「まずはやってみましょう」という姿勢に大変助けられました。

返品率が11%削減!?
シューズのオンライン試着の可能性

WWD:実際に導入してみての感触はどうか。

野村:試験導入段階の数字ですが、バーチャサイズのサイズ比較を使用しない場合と比べ、使用した場合のCVRは4~4.5倍程度向上しました。もちろんバーチャサイズに情報を登録している時点で購買意欲が高いユーザーという点もありますが、返品率も約11%低下しています。あくまで試験導入の数字なので、もう少し長期で数字を見ていかないといけないのですが、かなりの手応えを感じています。今後は返品理由のアンケートなども含めてロジックに反映していく予定です。バーチャサイズのレコメンドしたサイズ通りに買って小さかった/大きかったのか、違うサイズを買って小さかったのかなど、データの細かい部分も含めてデータサイエンスチームが精査します。

伊藤:当社としても期待通りの結果です。課題は、レコメンドの精度ですね。まだ、若干のばらつきがあります。ただ、これはデータを蓄積していくことで解決できるメドは立っています。もう一つは顧客により「バーチャサイズ」を信頼してもらう必要がある点です。実は返品データと照らし合わせると、ウエアよりシューズの方が正しいサイズをレコメンドしていることが分かっているのですが、それでもバーチャサイズが提案したものと違うサイズを買ってしまって返品につながる現象が起きています。

WWD:どう解決する?

伊藤:顧客に繰り返し使っていただいて信頼を積み上げつつ、当社側でも機能や、シューズのオンライン試着への説明を丁寧に行っていこうと思っています。

野村:もちろんこれは当社の課題でもあります。精度を上げる点に関してはデータに基づき、データサイエンスチームとディスカッションして改善していくのですが、現在は「あなたにはこのサイズです」といったシンプルな提案しかしていません。例えば「この靴のサイズは少し小さめです」や「こういったロジックで計算してこのサイズを提案しています」など、データはあるので、もう少し信頼をしてもらいやすくなるインターフェースをデザインチームと相談しているところです。顧客とのコミュニケーションについても、「アンダーアーマー」と相談しながらできることはどんどんやっていこうと考えています。

シューズのオンライン試着の今後

WWD:今後は?

野村:他のパートナー企業も含めたこれまでの実績ですが、バーチャサイズを利用した場合にCVRは約8倍アップ、リピート率は約44%アップという結果が出ています。この実績のあるウエア版では、気になる商品を他の商品とイラスト上で比較したり、どの部分が大きめ、小さめかなどの細かいフィット感を知ることもできるようになっており、シューズ版よりも機能が充実しています。シューズ版では現在、足先の幅や形、よく履いているブランド情報などを活用したシンプルなロジックでサイズをおすすめしています。こちらはデータがたまればたまるほど、精度が上げられますが、これに加え、ユーザーの詳細な身体データ、例えば甲や膝より下の高さなどのデータを取り込むことで、レコメンドのロジックの軸を新たに作れることが分かっています。ウエア版ではユーザー自身が詳細なサイズを入力して精度を上げられる機能がかなり使用されており、シューズ版でも実装すれば活用してもらえるのではと思っています。

伊藤:実は当社でもこれまで店頭などで足形測定ができるイベントを時々やっていましたが、会員データとひもづけられていませんでした。測定したデータをこうしたサービスやEC上での施策に反映することができたら、「アンダーアーマー」ブランドの姿勢である「アスリートに寄り添う」の観点からもとても有効だと考えています。

野村:シューズのオンライン試着も今後は「アンダーアーマー」以外の取り組みを予定していますが、最初に顧客のロイヤルティが高く、かつフィット感などの機能を重視するドーム/「アンダーアーマー」とタッグを組めたことは非常に大きな第一歩になりました。シューズのオンライン試着のポテンシャルはウエアと同等か、それ以上とも考えています。多くのデータを蓄積することで精度を高められるのが、SaaSならではの特徴です。バーチャサイズは4000万のユーザーと1000以上のブランドで利用いただくことができるようになっています。シューズ版のオンライン試着も広げていくことで、ドームをはじめとした導入企業により貢献したいと考えています。

TEXT:MIWAKO ANNEN
PHOTO:KOHEY KANNO
問い合わせ先
バーチャサイズ

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「SK-II」グローバルCEOが描く成長戦略 「ピテラ™️の奇跡をあらゆる手段で伝えたい」

「SK-Ⅱ」は日本市場が復調の兆しを 見せており勢いを取り戻しつつある。昨年2月、P&Gコリア出身のスーキョ ン・リー氏がグローバルCEO(最高経営責任者)に就任した。7月末に東京・表参道で開催した「SK-Ⅱ」商品と独自成分ピテラ™️、美肌の秘密を解き明かす一般向け体験型イベント「シークレットキーハウス」 に合わせて来日したリーCEOに、直近の商況と今後の成長戦略について聞いた。

ピテラ™:特別な酵母の株を独自のプロセスで発酵させ生み出した「SK-Ⅱ」だけの天然由来成分(「SK-Ⅱ」独自のガラクトミセス培養液、整肌保湿成分)

「消費者は品質の重要性を感じている」

WWD:2022年2月の就任から1年半が過ぎたが、「SK-Ⅱ」を取り巻く環境にどんな変化があったか。

スーキョン・リーSK-ⅡグローバルCEO(以下、リー):世界的にポストコロナ時代となり社会情勢は変わってきている。私たちの日常生活においてはマスクを外せるようになったのが大きな変化だ。コロナ禍の3年間を経て、消費者は自然環境や体の健康、体に取り入れるものの品質の重要性を感じている。肌を露出することでスキンケアの品質にこだわりたい人が増え、「SK-Ⅱ」にとって大きなチャンスになっている。

WWD:変化に対してどうアプローチしたか。

リー:奇跡的な出合いで誕生した「SK-Ⅱ」の独自成分ピテラ™️を知ってもらうことに努めた。ピテラ™️は特別な酵母の株から独自のプロセスで発酵させ生み出した天然由来成分で、長年の研究でさまざまな肌への便益が明らかになっている。昨年開催したブランド初のメディアとインフルエンサー向けグローバルイベント「ワールド ピテラ™️ デー」は大変好評を博し、今年は 「ワールド ピテラ™️ マンス」として規模を拡大。7月には一般向け体験イベント「シークレットキーハウス」を実施し、ピテラ™️の科学や研究の結果得られた発見について改めて伝えている。ソーシャルメディア上でも、消費者が知りたい情報を適切なタイミングとプラットフォームで発信する努力をしている。また、スキンケアブランドに期待されているのは商品イノベーションだ。これらを徹底的に追求している。

消費者の声を聞くことを何より重視

WWD:足元の商況は?

リー:日本市場は春以降、インバウンドが急激に回復し、日本人客の消費意欲も上向き良い結果が出ている。その影響がシンガポールや香港にも波及しグローバルでも好調に推移している。日本は成熟した市場ではあるが、特にハイエンドのスキンケアブランドが伸びており「SK-Ⅱ」にはまだまだポテンシャルがある。消費者はより良い体験や商品、イノベーションとエンゲージしたいと思っている。私たちにはチャンスがたくさんある。

WWD:社内に対してはどのような働きかけを行ったか。

リー:元々の風土として備わっていたが、 改めて「より消費者の声を聞こう」「消費者のことをもっと知ろう」という点に徹底的にこだわるよう求めた。私たちはお客さまがどんなことに関心を持ち、どんな気持ちで毎日を送っているのかを考えることに多くの時間を費やすようになった。その結果、「もっとこんなことができるのではないか」など活発な議論が起きるようになった。ピテラ™️に対しても社内の理解を促進したいと考えている。本当に優れた成分なので深く知ろうと思うと終わりがない。その魅力を徹底的に周知し、イノベーションや新しい商品、サービスにつなげたい。

目指すのは優れた商品と体験の提供

WWD:中長期的な目標と、今年後半から来年にかけて実施する施策は?

リー:今「SK-Ⅱ」商品を愛用いただいているお客さまにより優れた商品を提供するのが一つの目標だ。そして、まだ出会えていない多くのお客さまにも「SK-Ⅱ」、そしてピテラ™️のことを知っていただきたい。お手入れの手応えを感じていただけるようどのようなサポートができるか、分かりやすい提案を考え抜く。私たちは肌に対しても高い情熱を持ちコミットしている。肌測定マシン「マジックスキャン」 はビューティ業界で最も進化しているツールの一つだ。画像解析により非接触で短時間のうちに今と今後の肌の状態について情報を得られる。自分の肌を理解するのに非常に役立つので周知していきたい。

「SK-Ⅱ」の“秋田10年肌研究”とは?

「SK-Ⅱ」は1999年、美しい肌を持つ女性が多いといわれる秋田県で、女性の肌の変化を追跡する調査 “秋田10年肌研究 ”をスタートした。5〜64歳までの108人の女性の肌を、ハリ、艶、シミ、シワ、キメなど10の項目で測定した。同一人物で加齢による肌の変化を追跡する調査は化粧品業界でも珍しく、その知見は今なお商品開発に生かされている。同研究を行った医学博士の宮本久喜三P&Gイノベーション リサーチ フェローは、「研究のきっかけは日本の南部と北部で肌の状態の違いを調べる調査。そこで秋田の人の肌が美しいことが分かり、10年肌研究につながった」という。

10年にわたる追跡調査の後、「SK-Ⅱ」商品を使用してもらい、さらに1年間肌の変化を追った。 研究に参加した佐々木志保さんは「10年は特別なスキンケアをしなかった。『SK-Ⅱ』を使ってからは手放せない存在になった」と振り返る。秋田とのつながりを強くするため今年、日本の美を発信する秋田川反の舞妓・芸妓との取り組みをスタート。「SK-Ⅱ」を使い始めて3カ月というまめ佳さんは「肌の調子が良くなった。 白塗りのノリも良く、気持ちも上向きになる」と話した。

問い合わせ先
SK-II お客さま相談室
0120-02-1325

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デパートで「ダイソー」コスメ異例の完売 企画担当者に聞く“いい意味で100均に見えない”モノづくり

100円均一ショップ「ダイソー(DAISO)」のコスメが盛り上がりを見せている。ビューティブランドが軒並み値上げを図る昨今、ワンコイン価格でコスメが手に入るとあれば、注目度が高まるのも必然だ。アフターコロナの中でマスクを外す人が増加したことも相まって、売り上げが大幅に伸びている。特に韓国風コスメブランド「コーウ(COOU)」は今年2月の発売開始から欠品が続き、一時は「売っているところを見たことがない」と嘆く声がSNSにあふれた。商品開発の旗振り役は、コスメ部門の企画責任者であるチーフバイヤーに、2021年12月に就任した小林 奈穂氏(32)だ。

「ダイソー」きってのヒットメーカー

小林氏は大創産業に新卒入社後、「ダイソー」の店舗配属を経てキッチン用品やキャンプ用品のバイヤーを歴任。“ちょこっとまな板”や“メスティン”(※キャンプグッズの一つ。アルミ製の飯ごう)などの人気商品を次々と企画・開発し、社長賞や「グッドデザイン賞」を多数受賞した社内きってのヒットメーカーだ。現在担当するコスメ部門でも1400以上のSKUを1人で担当し、そのすべてに目を通すという徹底ぶり。自他ともに認める“コスメオタク”なのかと思いきや、小林氏は「コスメは人並みに好き」と控えめ。コスメバイヤーになって初めて使用するアイテムも多かったため、日々自分自身で試し学びを新商品の開発に生かしているという。

100均コスメの勝ち筋

「消費者目線」と「売価に対する価値」を常に意識するという小林氏。彼女が企画したコスメは、どれもいい意味で100円には見えない。例えば、冒頭に挙げた韓国風コスメブランド「コーウ」のアイシャドウ(200円)には11種類もの色が入っているし、クッションファンデ(300円)にはパフだけでなく鏡も付いている。容器デザインやブランドの書体を洗練させたり、そもそもプチプラコスメでは入手しづらい大粒のラメパレットやクッションファンデを商品化させたりした。その結果、「コーウ」は1ヶ月分がわずか1週間で売り切れるほどの人気商品となった。「ダイソー」が2月にテナントに入った東武百貨店池袋店では、オープン日に商品を探すため走って店を訪れた客が続出したという。百貨店で100均コスメが完売する異例の事態だった。

「ダイソー」コスメ購入者の属性は多種多様だ。試しやすい価格から、コスメ初心者のエントリーアイテムになりやすい。「100均なら買ってみよう」「失敗しても100円なら許せる」という心理が働く。 “ついで買い”も発生しやすい。日用品を購入する目的で来店した客が、コスメ売り場へ足を伸ばすケースも多い。それゆえ、安価なコスメを求める若年層以上に、実は「ダイソー」のメイン顧客である30〜40代の女性との親和性が高い。最近では男性客も散見され、その理由について小林氏は「百貨店やバラエティーショップよりもハードルが低いのではないか」と推測する。

ユーザーのメイクに関する知識やスキルも千差万別。初心者でも使いやすいようにと、商品の使用方法をパッケージに記載している。ドラッグストアやバラエティーショップのようなテスター設置をせず、百貨店のようなビューティアドバイザーを店頭に配置しない。そのため、アイメイクのグラデーションやハイライトを使った陰影メイクの作り方などを、いかにわかりやすく説明できるかがキモになる。

一方、課題はベースメイクや基礎化粧品をどう売るか。目元や口元周りのポイントメイクには顧客の抵抗感が少ない一方で、より広い肌面積に塗布するアイテムは「100円だから大丈夫なのか?」と品質面で不安を抱かれやすい。小林氏は、「プチプラだからといって、商品の使用感や処方を犠牲にすることはない」と話す。コストカットは梱包資材などの工夫が大きい。パッケージを紙製にしたり説明書きをモノクロ印字にしたりすることで価格を抑える。「ダイソー」は物流も自社でまかなっており、そこで浮いたコストをさらに価格に還元できる。加えて同社は、基本的にはPB商品の協業先は非公開だが、コスメ商品だけは唯一メーカー名を開示し、透明性を強調する。「多くの人に使っていただくために、お客さまの抵抗感をなくしたい」。

小林氏の夢は、フルメイク可能な品揃えのブランドを「ダイソー」に並べること。種まきは少しずつ花開き、今や“ダイソーコスメ”のハッシュタグがSNSに誕生するまでとなった。「私の新作を待ってくれる人がいる」と大きなやりがいを感じている。

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伝説のランジェリーショップ「リュー・ドゥ・リュー」 龍多美子オーナーが40年貫く下着道

伝説のランジェリーショップ「リュー・ドゥ・リュー(RUE DE RYU)」は、1980〜90年代、下着業界に身を置いた事があるなら、知らない者はいない伝説のランジェリーショップだ。オーナーの龍多美子は、16歳でガーターベルトをつけたとき、下着に目覚めた。18歳で下着業界に足を踏み入れ、82年24歳で東京・代官山に「リュー・ドゥ・リュー」をオープン。輸入下着のセレクトショップとして名を轟かせた後に、カウンセリング重視のプライベートブランド(以下、PB)を主力とする店舗になった。下着業界がECに注力する昨今も、年間約4カ月は地方の販売会に自ら出向き、対面フィッティングの販売を徹底して貫く。創業から40年を経て、龍オーナーに下着業界の変遷や下着専門店の存在意義、未来へ渡したいバトンについて聞いた。

WWD JAPAN(WWD):下着に興味を持ったきっかけは?

「リュー・ドゥ・リュー」龍多美子オーナー(以下、龍):青山学院大学の高等部に通っていた16歳の頃、青山学院大学に通っていた5歳年上の恋人がいた。彼がランジェリー好きで、当時、創刊間もない「月刊プレイボーイ」のグラビアを広げて一緒に見ていた。彼が特に好んだのがガーターベルトとストッキングを着けたスタイルで、私は東京の下着屋を探し回ってフランスのエタコ社のガーターベルトを見つけた。それを身に着けた瞬間、「女になった」快感を自覚したのがきっかけだ。その彼とは5年の交際の後、結婚したが、残念ながら2年で離婚した。

WWD:5歳年上の恋人が、下着屋となる龍多美子の生みの親?

龍:そうだが、父が貿易の仕事をしており、渡米する度に母と3人の娘にネグリジェのお土産を買ってきてくれていた。末っ子である小学生の私にも。60年代、母親は海外ブランドの下着をアメ横に買いに行っていたし、2人の姉達も輸入下着を着けていて、私のファーストブラは米国ブランドの「バニティフェア(VANTY FAIR)」だった。それを考えると、その恋人と出会う前から下着屋になる素地はあったのだと思う。

WWD:そこから、インポートランジェリーに魅了されていく。

龍:高校時代は制服姿で下着専門店をめぐる日々だった。学校帰りに恵比寿の「ニャーゴ」へ寄った際、顔見知りのマダムが見せてくれたのが、入荷したばかりの「シモーヌ・ベレール(SIMONE PERELE)」のブラジャーとショーツ。繊細な総リバーレースのワイヤー入りブラで、美しいペパーミントグリーンだった。この下着に出合ったときの感動は忘れられず、品番まで覚えている。このランジェリーとの出合いにより、漠然とした“下着好き”から、“下着屋になりたい”と意識するようになった。短大に進むとすぐに青山にあった下着屋の「ジベ」でアルバイトを始めた。同店に勤めて6年目、23歳のときに店長になったが独立を決めた。

WWD: 「リュー・ドゥ・リュー」のコンセプトは?

龍:その人が持って生まれた肉体に戻るお手伝いをする、というのがコンセプト。最近、やっと“ボディーポジティブ”などの言葉でそれが認知されるようになったが、その核になる部分は40年前から変わらない。黄金比になるとか、新しい体になるとかではなく、その人本来の姿に合う下着を選ぶサポートをすることだ。

WWD:その人が持って生まれた美しさを引き出すということか?

龍:私は「引き出す」というより「戻す」という言い方の方が好きだ。その人本来の姿は、その人自身が知っていて、そこに近づける。“理想のからだ”みたいなものに惑わされるのはやめようということだ。

WWD:龍オーナーの採寸接客はメジャーを使わないことで知られているが?

龍:下着を売る上で大切なのは、感覚を研ぎ澄まし、いかにお客さまの体にフォーカスするかということ。それは、お客さまの体に触れて感じ取ることであり、メジャーで測った数字ではわからない。私だけでなく、当店のスタッフ全員が同じスタイルで接客している。

急激な売り上げ減から脱却できたPBのブラジャー

WWD:独立してから今まで、40年もの間には山も谷もあったはずだが?

龍:出店後、バブルの好景気と共に売り上げは右肩上がりで伸び、92〜93年にピークを迎えた。世の中はバブルが弾けていたが、売り上げは絶好調で年商2億4000万円を記録した。その後、急激に売り上げが下がり、96年には家賃が高すぎた代官山の店から恵比寿へ引っ越した。売り上げの落ち込みはひどく、2000年まで資金繰りが本当に大変だった。なんとか持ち堪え、下着屋のスタートを切った地に戻りたいと思い03年に青山に移った。青山の店は、商品の陳列するのではなく収納するスタイルに変えた。新作を並べて選んでもらうのではなく、まずカウンセリングして、お客さまに合うものを出して提案するという販売に切り替えた。その頃発刊した著書の反響もあって客数が伸び、売り上げも徐々に回復した。そして、13年に現在の吉祥寺に移転した。

WWD:経営が安定した理由は?

龍:完全カウンセリングの店舗にしたことと、出張販売をスタートしたことも大きい。知り合いから「うちのエリアでも販売して欲しい」と言われたのがきっかけで大阪と静岡で始めた。要望があれば売りに行くというパターンができた。当店が主催する販売会は当初7都市だったが、ネイルサロンやヘアサロンなどを経営している全国のお客さまから声がかかり、現在は全国17カ所で開始。週末を中心に年間約4カ月は地方に行っている。

WWD: 40年間のターニングポイントは?

龍:03年にPBを始めたこと。きっかけは、当時世界の下着業界を牽引していたブランドによるモールドブラ(1枚の生地を鋳型に入れてカップを形成するブラ)。モールドカップブラでは私が求めるフィッティングは叶えられないと判断して、PBを作ることにした。今、振り返ればそれは大正解だった。下着は、定番商品がないと厳しい。1980〜90年代はインポートにもそういう商品があったが、2000年以降は少なくなり、PBを作ることは必然だった。現在、売り上げの6割以上を占めるPBを始めていなければ、今の「リュー・ドゥ・リュー」はない。

WWD:それでも輸入下着を販売し続ける理由は?

龍:インポートランジェリーじゃないと伝わらないエッセンスがあるから。ディテールが繊細であるだけでなく、極限まで肉体を誇
り、女を楽しむ要素は国産のランジェリーにはなかなか見られない。とはいえ、納得のいくパターンでないと仕入れないのでセレクトするブランドも商品も少ない。今は、PBを含む国産ブランドが7割、インポートブランドが3割の構成比だ。

WWD:個人で簡単に輸入できるし、円安により日本のディストリビューターには厳しい時代だが?

龍:ヨーロッパのランジェリーブランドも日本のディストリビューターも減っている。インポートランジェリーが市場で生き残るためには、ディストリビューターが消費を喚起するような流れを作らなければ難しい。全て小売店任せでは、輸入下着に未来はない。

ECでの販売はしない。合わないものを売っても意味がないから

WWD:ECで販売したほうが効率がいいのでは?

龍:ECでの販売はしない。体に合わないものを売っても意味がないから。同じブランドでもコレクションが違えばフィッティングが違う。人が手で縫っている以上、1つ1つのブラに微妙な差がある。フィッティングなしの販売は基本しないが、「どうしても」と言われる場合は、オンラインでフィッティングを行ってサイズを見極めるのが当店のやり方だ。地方での販売会は、新作の販売だけでなく、過去に買ったブラジャーを持参してもらい再度フィッティングして、必要であればお直しにも対応している。新品を売ったほうが利益率は高いが、PBは長持ちするからメンテナンスの機会は必須だ。

WWD:下着業界に残したい事は?

龍:メジャーで採寸しない独自のフィッティング法も含め、私がやっていることを広めたい。不定期だが、下着業界の人材育成のため、講座「龍美術」も行っている。日本ではプロダクトアウトの商品ばかりが売られ、その結果が、消費者のブラジャー離れにつながっていると思う。私は、ブラジャーの役割は姿勢を起こすことだと考える。長年着物を着ていた日本人は、DNA的に着物により体を支えることに慣れている。帯が体を支え衣紋を抜くのが、着物のシステムだ。ブラジャーにより胸の下を支えて姿勢を起こすことができる。

WWD:今後の展望は?

龍:他人の目線を気にしてそれに反応する女性が多いと思う。女性が自分の体と向き合い、ブラジャーを通して主体性を取り戻せるように後押しするのが、私のミッションだと思っている。地方での販売会が増えて点が面になりつつある。私がその旗を振るのではなく、お客さま同士がつながり、発信者となって「リュー・ドゥ・リュー」の思想を広めて欲しい。下着は、もっと奥深く、もっと大事なものだと伝えていきたい。

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米津玄師、藤井風、King Gnuらの衣装を手がける スタイリスト・Remi Takenouchiって誰だ?

米津玄師や藤井風、King Gnu、水曜日のカンパネラらアーティストのスタイリングを手がけるスタイリスト・Remi Takenouchi(レミ タケノウチ)。ミュージックビデオやライブ、CMに登場するアーティストのコーディネート提案を行うだけでなく、しばしば衣装制作も行なってきた。業界で華々しく活躍する彼女ではあるものの、その姿や経歴について詳細はほとんど公にされていない。「Remi Takenouchi」とは一体何者なのか?「これまであまりメディアに露出してこなかった」と話す彼女に、「WWDJAPAN」はインタビューを実施した。

人付き合いに苦手意識

WWDJAPAN(以下、WWD):スタイリストを目指したきっかけは?

Remi Takenouchi(以下、Takenouchi):私は日本で服飾の専門学校に通っていたわけではありません。高校卒業後、イギリスのロンドンに一時滞在していたことがあります。ダークで退廃的な街の魅力に取り憑かれ、「ここにもっといたい」と思ったんです。そのためにどこかの学校に通おうと決めたのが21歳のころ。料理か服飾のどちらかを専攻しようと軽く考えていたのですが、自分のこれまでを振り返ったときに、“ご飯を我慢してまで服を買う”ことはしてきたけど、その逆はしたことがないと気づきました。ただ、自分にデザインはできないだろうし、ビジネスに関われるほどの英語力もない。そう考えて“消去法”で残ったのがスタイリストコース。当時は「スタイリストになろう!」と強く意識していたわけではありませんでした。

WWD:もともと服が好きだった?

Takenouchi:大好きでしたし、かわいい服に対する憧れが強かったです。(現在は休刊している雑誌)「キューティ(CUTIE)」や「オリーブ(OLIVE)」の読者だったのですが、服のクレジットに”ラフォーレ原宿“と書いてあるのを多く見かけて。「このおしゃれスポットに行ってみなければ!」と高校1年生のときに意を決して出かけ、「スーパーラバーズ(SUPER LOVERS)」の洋服を買ったこともありました。

WWD:現在に至るまでのキャリア形成は?

Takenouchi:イギリス時代にスタイリストのアシスタントをしていましたが、何度か仕事をしたのちに、結局ケンカ別れをしてフリーランスになりまして(笑)。ただ、私は人付き合いが全く得意ではないので、自分の売り込みができず…。頂いた仕事を引き受けるという“待ちぼうけシステム”をとるしか方法がなかった。ポートフォリオを人に見せることすら怖く、「(ポートフォリオを)持っていますか?」と関係者に聞かれても、「今は他に送ってしまって手元にありません」などと言って切り抜けていました。だから仕事が全くない時期もありましたね。アーティストのスタイリングをするようになったのも、来た仕事がそうだったから、というのが理由です。自分がキャリアをイギリスでスタートさせたので、海外誌やランウエイ、広告の案件を頂いて働いていました。

WWD:転機は。

Takenouchi:The fin.というバンドのミュージックビデオ(以下、MV)でスタイリングをしたことです。ロンドンから帰国して序盤のころに受けた仕事でした。MV撮影の数日前に、美術セットの写真を見て「自分が考えていた衣装のままではダメだ」と思ってしまって。「申し訳ないけど作り直したい」「私を信じてほしい」と頼み込み、美術との相性を再考しながら衣装の準備をし始めたんです。汚し作業(※あえて汚れたように衣装を着色する作業)の担当者に連絡し、撮影日の天候に合わせて汚しの程度も大幅に変更しました。元々人にものを言えない性格だったので、私自身にとっては物申すことを覚えた“事件”でした。

“衣装っぽくない”衣装を追求

WWD:アーティストのスタイリングに関してこだわりはあるか。

Takenouchi:基本的には“いかにステージで映えるか”を考えます。例えばライティング1つとっても、色調によって衣装の見え方が変わってしまう。青色のライトに、寒色系の衣装は合わないですし。衣装の色がどの程度飛んでしまうのか、そして衣装がどの程度透けてしまうのかなど、全て念頭においてスタイリングをします。ライブでダンサーさんがいる場合には、踊ったときに身体や動きをきれいに見せられるかということが重要です。振り付け映像も確認して、ダンサーさんが衣装さばきを考えられるようにしていますね。

私は衣装制作もすることがあるんですが、“衣装すぎる衣装”は作りたくないと思っていて。アーティストの雰囲気とギャップが生まれないように、本人になじむリアルさを意識しています。そうすると、私自身スタイリングしていて気持ちがいいんですよね(笑)。大変身させたい気持ちと同時に、アーティスト本人の素材を生かしたい気持ちが湧いてくる。どれだけ尖った衣装でも、“着せられている感”が出ないようにしています。本人が好きな要素を入れたり、身体のラインを生かしたりすることがその秘けつですかね。ルーズシルエットが好きな方であればその意見を衣装に反映するとか、意見を聞きつつもスタイルがよく見えるデザインを取り入れるとか。

WWD:アーティスト本人の素材に注目し始めたのはいつ?

Takenouchi:アイドルグループのスタイリングが契機かもしれません。それまではモデルの方々を相手にスタイリングすることが多かったので、クライアントが要望するテーマを私なりに解釈し、“一枚絵”を描くように衣装を組んでいました。モデルは衣服を見せることがお仕事なので、私が何を着せても違和感が生まれづらい。一方、アイドルの方々の場合は本人を「魅せる」ことが重要になってきます。本人の素材を無視して“やりすぎた”衣装を着せると、彼らの個性を殺しかねない。だから、衣装デザインを考えることも好きではありますが、それよりも正確なサイジングにこだわりました。リースした大きな衣装をそのまま着せるのではなく、サイズの合うものを着せることに重要性を見出した経験です。

スタイリスト職への思い

WWD:スタイリストとして活動し続ける原動力は。

Takenouchi:自分を救ってくれている仕事でもあるからです。この仕事に私は「生きていても良いんだよ」と言ってもらえている気がします。私は“怠け者”で、領収書の作成やスケジューリングは不得手。さらに、毎日同じ時間に起床して通勤することのできない極度の飽き性です。スタイリストは勤務時間や仕事内容、会う人など全てがいつもバラバラなので、自分の性に合っています。この仕事がなくなったら私は人として終わってしまう。だから必ず成功させなくてはならないんです。

そして、絶対に嫌いになることがない仕事だから、というのも原動力になっています。私は人よりモノに思い入れが強い人間で、その対象が全て服に振り切っている。仕事のネガティブな面を見たとしても嫌いにならないからこそ、うまくやっていけていると思います。“好きな仕事”とあえて表現しないのは、“好き”は“嫌い”になってしまう可能性がある感覚だから。自分の中でしっくりこないんです。ただ、ずっと頭が休まらない職業でもあるので疲れてしまい、「もういつ辞めても後悔しない!」と思うこともしょっちゅうですけどね。そういうときは趣味のゲームをしています(笑)。

WWD:ご自身にとって服は“嫌いになることがない”大事なモノだと。

Takenouchi:大事ですね。スタイリストをしているなかでも、ずっと服に感動してきましたし、コロナ禍を経て服の重要さを再認識しました。私は普段、本当にパジャマばかり着ているんですが、パジャマで過ごすのと、外着を着るのとでは高揚感が全く違う。自分のような人間を変身させてくれる“鎧”です。

WWD:今後目指していくスタイリスト像は。

Takenouchi:実は私、ゲームの国内大会に出場するほどゲームをやり込んできました。だからスタイリストとして「ファミ通」(※KADOKAWAが発行するゲーム雑誌)で連載を持つのが夢。もうこれはずっと言っていますね。人生第一事項です!ゲームのレビューを書くためには本業の休みを増やさなきゃいけないなぁ。あとは、真面目な話ですけど“地球に優しいスタイリスト”になることですね。せっかくこの世界に生まれたから、そろそろ地球に恩返しがしたい。まだ具体的な案はまとまっていませんが、地球環境のための継続できるシステムを業界に作りたいと思っています。「これやりました、でも一瞬で終了しました」では意味がないですから。

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米津玄師、藤井風、King Gnuらの衣装を手がける スタイリスト・Remi Takenouchiって誰だ?

米津玄師や藤井風、King Gnu、水曜日のカンパネラらアーティストのスタイリングを手がけるスタイリスト・Remi Takenouchi(レミ タケノウチ)。ミュージックビデオやライブ、CMに登場するアーティストのコーディネート提案を行うだけでなく、しばしば衣装制作も行なってきた。業界で華々しく活躍する彼女ではあるものの、その姿や経歴について詳細はほとんど公にされていない。「Remi Takenouchi」とは一体何者なのか?「これまであまりメディアに露出してこなかった」と話す彼女に、「WWDJAPAN」はインタビューを実施した。

人付き合いに苦手意識

WWDJAPAN(以下、WWD):スタイリストを目指したきっかけは?

Remi Takenouchi(以下、Takenouchi):私は日本で服飾の専門学校に通っていたわけではありません。高校卒業後、イギリスのロンドンに一時滞在していたことがあります。ダークで退廃的な街の魅力に取り憑かれ、「ここにもっといたい」と思ったんです。そのためにどこかの学校に通おうと決めたのが21歳のころ。料理か服飾のどちらかを専攻しようと軽く考えていたのですが、自分のこれまでを振り返ったときに、“ご飯を我慢してまで服を買う”ことはしてきたけど、その逆はしたことがないと気づきました。ただ、自分にデザインはできないだろうし、ビジネスに関われるほどの英語力もない。そう考えて“消去法”で残ったのがスタイリストコース。当時は「スタイリストになろう!」と強く意識していたわけではありませんでした。

WWD:もともと服が好きだった?

Takenouchi:大好きでしたし、かわいい服に対する憧れが強かったです。(現在は休刊している雑誌)「キューティ(CUTIE)」や「オリーブ(OLIVE)」の読者だったのですが、服のクレジットに”ラフォーレ原宿“と書いてあるのを多く見かけて。「このおしゃれスポットに行ってみなければ!」と高校1年生のときに意を決して出かけ、「スーパーラバーズ(SUPER LOVERS)」の洋服を買ったこともありました。

WWD:現在に至るまでのキャリア形成は?

Takenouchi:イギリス時代にスタイリストのアシスタントをしていましたが、何度か仕事をしたのちに、結局ケンカ別れをしてフリーランスになりまして(笑)。ただ、私は人付き合いが全く得意ではないので、自分の売り込みができず…。頂いた仕事を引き受けるという“待ちぼうけシステム”をとるしか方法がなかった。ポートフォリオを人に見せることすら怖く、「(ポートフォリオを)持っていますか?」と関係者に聞かれても、「今は他に送ってしまって手元にありません」などと言って切り抜けていました。だから仕事が全くない時期もありましたね。アーティストのスタイリングをするようになったのも、来た仕事がそうだったから、というのが理由です。自分がキャリアをイギリスでスタートさせたので、海外誌やランウエイ、広告の案件を頂いて働いていました。

WWD:転機は。

Takenouchi:The fin.というバンドのミュージックビデオ(以下、MV)でスタイリングをしたことです。ロンドンから帰国して序盤のころに受けた仕事でした。MV撮影の数日前に、美術セットの写真を見て「自分が考えていた衣装のままではダメだ」と思ってしまって。「申し訳ないけど作り直したい」「私を信じてほしい」と頼み込み、美術との相性を再考しながら衣装の準備をし始めたんです。汚し作業(※あえて汚れたように衣装を着色する作業)の担当者に連絡し、撮影日の天候に合わせて汚しの程度も大幅に変更しました。元々人にものを言えない性格だったので、私自身にとっては物申すことを覚えた“事件”でした。

“衣装っぽくない”衣装を追求

WWD:アーティストのスタイリングに関してこだわりはあるか。

Takenouchi:基本的には“いかにステージで映えるか”を考えます。例えばライティング1つとっても、色調によって衣装の見え方が変わってしまう。青色のライトに、寒色系の衣装は合わないですし。衣装の色がどの程度飛んでしまうのか、そして衣装がどの程度透けてしまうのかなど、全て念頭においてスタイリングをします。ライブでダンサーさんがいる場合には、踊ったときに身体や動きをきれいに見せられるかということが重要です。振り付け映像も確認して、ダンサーさんが衣装さばきを考えられるようにしていますね。

私は衣装制作もすることがあるんですが、“衣装すぎる衣装”は作りたくないと思っていて。アーティストの雰囲気とギャップが生まれないように、本人になじむリアルさを意識しています。そうすると、私自身スタイリングしていて気持ちがいいんですよね(笑)。大変身させたい気持ちと同時に、アーティスト本人の素材を生かしたい気持ちが湧いてくる。どれだけ尖った衣装でも、“着せられている感”が出ないようにしています。本人が好きな要素を入れたり、身体のラインを生かしたりすることがその秘けつですかね。ルーズシルエットが好きな方であればその意見を衣装に反映するとか、意見を聞きつつもスタイルがよく見えるデザインを取り入れるとか。

WWD:アーティスト本人の素材に注目し始めたのはいつ?

Takenouchi:アイドルグループのスタイリングが契機かもしれません。それまではモデルの方々を相手にスタイリングすることが多かったので、クライアントが要望するテーマを私なりに解釈し、“一枚絵”を描くように衣装を組んでいました。モデルは衣服を見せることがお仕事なので、私が何を着せても違和感が生まれづらい。一方、アイドルの方々の場合は本人を「魅せる」ことが重要になってきます。本人の素材を無視して“やりすぎた”衣装を着せると、彼らの個性を殺しかねない。だから、衣装デザインを考えることも好きではありますが、それよりも正確なサイジングにこだわりました。リースした大きな衣装をそのまま着せるのではなく、サイズの合うものを着せることに重要性を見出した経験です。

スタイリスト職への思い

WWD:スタイリストとして活動し続ける原動力は。

Takenouchi:自分を救ってくれている仕事でもあるからです。この仕事に私は「生きていても良いんだよ」と言ってもらえている気がします。私は“怠け者”で、領収書の作成やスケジューリングは不得手。さらに、毎日同じ時間に起床して通勤することのできない極度の飽き性です。スタイリストは勤務時間や仕事内容、会う人など全てがいつもバラバラなので、自分の性に合っています。この仕事がなくなったら私は人として終わってしまう。だから必ず成功させなくてはならないんです。

そして、絶対に嫌いになることがない仕事だから、というのも原動力になっています。私は人よりモノに思い入れが強い人間で、その対象が全て服に振り切っている。仕事のネガティブな面を見たとしても嫌いにならないからこそ、うまくやっていけていると思います。“好きな仕事”とあえて表現しないのは、“好き”は“嫌い”になってしまう可能性がある感覚だから。自分の中でしっくりこないんです。ただ、ずっと頭が休まらない職業でもあるので疲れてしまい、「もういつ辞めても後悔しない!」と思うこともしょっちゅうですけどね。そういうときは趣味のゲームをしています(笑)。

WWD:ご自身にとって服は“嫌いになることがない”大事なモノだと。

Takenouchi:大事ですね。スタイリストをしているなかでも、ずっと服に感動してきましたし、コロナ禍を経て服の重要さを再認識しました。私は普段、本当にパジャマばかり着ているんですが、パジャマで過ごすのと、外着を着るのとでは高揚感が全く違う。自分のような人間を変身させてくれる“鎧”です。

WWD:今後目指していくスタイリスト像は。

Takenouchi:実は私、ゲームの国内大会に出場するほどゲームをやり込んできました。だからスタイリストとして「ファミ通」(※KADOKAWAが発行するゲーム雑誌)で連載を持つのが夢。もうこれはずっと言っていますね。人生第一事項です!ゲームのレビューを書くためには本業の休みを増やさなきゃいけないなぁ。あとは、真面目な話ですけど“地球に優しいスタイリスト”になることですね。せっかくこの世界に生まれたから、そろそろ地球に恩返しがしたい。まだ具体的な案はまとまっていませんが、地球環境のための継続できるシステムを業界に作りたいと思っています。「これやりました、でも一瞬で終了しました」では意味がないですから。

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英国発「プラム&アシュビー」が上陸 創設者が語る“音楽のように”人生を豊かにする香り

英国発ホームフレグランス「プラム&アシュビー(PLUM & ASHBY)」が、日本に上陸した。同ブランドは2014年、ヴィッキー・ホワイトとフレヤ・ニコルソンが創業。イギリスの田園風景からインスピレーションを得たホームフレグランスで、キャンドルやリードディフューザー、バスソルトなどを提案している。自国では、“ベスト・オブ・ブリティッシュ・ビジネス”賞に選ばれるなど、ビジネス的にも注目を浴びている。日本では、フレグランスなどを輸入販売するイー・エフ・インターナショナルが販売を手掛け、8月30日まで、渋谷ヒカリエ1階でポップアップショップを開催する。上陸を機に来日したニコルソン創業者兼コマーシャル・ディレクターに話を聞いた。

WWD:今回、来日の目的は?
フレヤ・ニコルソン=プラム&アシュビー創業者兼コマーシャル・ディレクター(以下、ニコルソン):ブランドを直接に紹介するために来日した。
WWD:「プラム&アシュビー」のブランド哲学は?
ニコルソン:香りを通して人々のライフスタイルを豊かにすること。香りがあることで、朝の支度や読書、お風呂の時間が豊かになるはず。
WWD:ブランド名はどこから?
ニコルソン:ブランド名は、ヴィッキーが子どものときにつけられたニックネームの“ヴィクトリア プラム”と彼女が幼少期を過ごしたノーザンプシャーの村、キャッスル・アシュビーを組み合わせたもの。
WWD:他のフレグランスと違う点は?
ニコルソン:休暇など特別なひとときを思い出させるようなパワフルでユニークな香りである点。例えば、ベストセラーの一つ“シーウィード&サンファイア”は、ヴィッキーの別荘がイメージソースで、海の休暇を想起させる香り。香りは、まるで音楽のように、人々にすてきなひとときを思い出させたり、喜びを与えたりすることができる。パッケージには、アーティストである私の祖母による手書きのタイポグラフィーを用いている。フローラル、ウッディなどと香り別にカラー分けをして、直感的にナビゲートするニュートラルなパッケージも多くの人にアピールしていると思う。
WWD:ベストセラーの香りは?
ニコルソン:ユニセックスな香りの“シーウィード&サンファイア”、もう少しソフトで繭に包まれたようにソフトな“ワイルドフィグ&サフラン”、若年層や女性にはフレッシュで生き生きした“ネロリ&ベルガモット”の人気が高い

探さないと出合えないニッチなブランド

WWD:現在何カ国、何店舗で販売しているか?
ニコルソン:英国、ノルウェー、ドバイ首長国連邦、台湾、日本の5カ国、約400店舗で販売している。イギリスでは百貨店のハロッズ(HARRODS)やハーヴェイ・ニコルス(HARVEY NICHOLS)、フォートナム&メイソン(FORTNUM & MASON)などでも展開しているが、販路の多くは、知る人ぞ知る小さな専門店を選んでいる。「プラム&アシュビー」には、ギフトとして贈るのに相応しい特別感が大切だと思うから、販売店舗を選ぶのには気を使っている。
WWD:トップ3の市場は?欧州の主要国で販売していない理由は?
ニコルソン:1位がイギリス、2位が台湾、3位がノルウェー。ノルウェーは、イギリス文化が好きで、デザイン重視の国だから受けている。フランスやイタリアなどで販売していないのは、ブレキジットが大きな理由。送料などの費用がとても高いので参入するには困難だ。
WWD:日本に進出した理由と目的は?
ニコルソン:日本にはクオリティーとクラフツマンシップを理解できる土壌があり、強いコネクションを感じている。日本人は、高品質なものの値打ちが分かり、じっくり時間をかけて楽しむ国民性を持っているし、シンプルなデザインを好むので相性が良いと思った。われわれの製品を気に入ってもらえると嬉しい。また、日本ほど、競争の厳しい市場はないと思う。ここで成功できたらどこでも成功できるはずだ。
WWD:日本市場における戦略は?
ニコルソン:メディアやインフルエンサーを通して、消費者にブランドを知ってもらいたい。また、ECだけでなく、ポップアップショップなども開催していく。商品的には、日本市場限定の香りをつくりたい。イギリスと日本を足して2で割ったような香りがイメージ。5年後には「プラム&アシュビー」の世界観を体感できるような路面店を出店したい。
WWD:競合ブランドは?それらとどのように戦うか?
ニコルソン:「ディプティック(DYPTIQUE)」や「ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON)」。彼らは確立されたブランドだけど、「プラム&アシュビー」は新しいワクワクするブランド。どこにでもあるわけでなく、探さないと出合えないニッチな立ち位置だ。また、毎日使って欲しいから、高品質の商品を手に取りやすい価格帯で提供している。ブランドのイメージを消費者に伝えるために写真は大切。だから、ムードボードを使って再現したい記憶に残る瞬間を捉えたイメージを使うようにしている。

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勢いづく「クレージュ」 ニコラス・デ・フェリーチェの改革

ニコラス・デ・フェリーチェ/「クレージュ」アーティスティック・ディレクター プロフィール

1983年生まれ、ベルギー出身。学生時代は音楽に没頭し、ミュージックビデオがきっかけでファッションに興味を持つ。ブリュッセルの有名校ラ・カンブルに進学すると、2008年にニコラ・ジェスキエールが率いる「バレンシアガ」のデザインチームに加入。在籍6年間でウィメンズのメイン・コレクションのシニア・デザイナー兼プレ・コレクションのヘッド・デザイナーを務めた。その後ラフ・シモンズ時代の「ディオール」を経て、15年に「ルイ・ヴィトン」に入社し、ジェスキエールと再び協働する。20年9月から現職

「クレージュ(COURREGES)」が好調だ。現アーティスティック・ディレクターのニコラス・デ・フェリーチェ(Nicolas Di Felice)が2020年9月に就任以降、パンデミックの逆風をものともせず、年間売上高は2年連続で3桁成長を続けている。

デ・フェリーチェ=アーティスティック・ディレクターは現職に就任当初、同ブランドのDNAやヘリテージを大切にしながら「ロマンチックな要素や若い頃に通っていたナイトクラブを感じさせるようなラディカルなムードを加えていきたい」と語っていた。その言葉通り、若々しさを手に入れた新生「クレージュ」はY2Kブームの後押しもあってZ世代の新規顧客も着々と獲得しており、21年から22年にかけての15〜30歳のシェアはグローバルで120%増を達成。また韓国では、BLACKPINKやaespa(エスパ)といったK-POPスターの着用効果などが後押しし、主要卸先の大手ECでは同400%増という伸長率で存在感を急速に強めている。

日本でも、東京・銀座のドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA 以下、DSMG)4階に常設スペースを4月にオープンするなど、アジア市場攻略に向けて着々と進んでいる。デ・フェリーチェ=アーティスティック・ディレクターは、1961年創業の「クレージュ」を約3年間でどう変えたのだろうか。本人に思いを聞いた。

「これはまだ始まりにすぎない」

WWDJAPAN(以下、WWD):現職に就いてからの約3年をどう振り返る?

ニコラス・デ・フェリーチェ(以下、デ・フェリーチェ):実は、ブランドのクリエイティブのトップとして仕事をするのは初めてだったので、就任当初はとても不安だった。サポートをする立場が多かったからね。でも、いざスタートすると余計な雑念はなくなり、満たされた感覚で仕事に取り組めた。そのおかげで、私たちは短期間で素晴らしい結果を残せている。私が就任した2020年ごろの「クレージュ」は低迷期で、世間からの興味関心は薄く、ストリートでも着ている人は少なかった。でも、今は違う。就任当初掲げていた「ブランドを立て直す」という目標はすでに達成できたし、次のフェーズに向けていろいろなアクションを起こしている。私は過去は振り返らないし、立ち止まるのが苦手だから、これはまだ始まりにすぎないよ。

WWD:好調要因の一つが、Z世代のファンを獲得したことだと思う。

デ・フェリーチェ:Z世代だけをターゲットにしていたわけではないから分からないけれど、K-POPスターが「クレージュ」を着てくれていることが、Z世代に影響を与えているのは間違いない。私は昔から音楽やライブが好きで熱中していたので、もしかすると無意識のうちのアーティストが好むような、ステージ映えするデザインになっているのかもしれないね。

WWD:日本市場でも韓国の成功例を応用できる?

デ・フェリーチェ:韓国での急成長は戦略なんて大それたものはなくて、全て自然に起こったこと。テクノロジーの発達で世界中の人々が交流しやすくなり、遠く離れた国に向けても、自分のデザインが愛されるきっかけを作れるようになった。でも、ブランド的にはそこを狙ってマーケティング戦略を打つ段階にはまだなくて、現時点では全てが自然に起こることが一番美しいと考えている。だから日本でも「クレージュ」が自然に浸透していけばうれしいし、そうなる可能性は十分ある。

「ブランドの核は人と人との一体感」

WWD:DSMGにオープンした常設スペースは、「クレージュ」が日本でさらに浸透していくための後押しになりそうだ。

デ・フェリーチェ:これまで多くのブランドがドーバー ストリート マーケットのサポートのおかげで知名度を広げてきたので、常設スペースができてとても光栄に思っている。初めて来日したときはお金がなく、DSMGで何も買えなかったのを覚えているから、なおさら感慨深いよ。売り場に置いた什具は、屋根の上にある白いアンテナをイメージしていて、2023-24年秋冬シーズンのショーに着想したもの。ショーで使った6メートルのアンテナを売り場用に小さくしてはどうかとDSMG側が提案してくれた。

WWD:23-24年秋冬シーズンのショーは、モデルがスマートフォンをタイピングしながら歩く姿が印象的だった。この演出やコレクションで伝えたかったことは?

デ・フェリーチェ:23-24年秋冬のショーは、AIやデジタルについて考えていた際に思いついたアイデアだった。AIは素晴らしい発明かもしれないけれど、私は少し怖れてもいるんだ。テクノロジーの進化はコミュニケーションを活性化し、人類の進化に貢献している一方で、中毒性があり、現代人はスマートフォンを触ることが癖になっている。まるでテクノロジーに監視されているような気分だ。私も恋人と過ごしているのに、一緒にいる感覚になれないことがあった。ショー会場では、スモークをたいて2メートル先が見えないようにすることで、スマートフォンに夢中で近くにいるはずの人の存在を感じない様子を表現した。

WWD:演出だけでなく、前傾姿勢のシルエットでもテーマを表現していた。

デ・フェリーチェ:私は常に新しいシルエットを探求している。23-24年秋冬シーズンでは、スマホ中毒の人たちの曲がった背中をイメージするうちに、私自身がその姿勢になってしまっていることに気付き、それをシルエットにするアイデアを思いついた。

WWD:シルエットのほかに、「クレージュ」ではどのようなクリエイションにこだわってきた?

デ・フェリーチェ:明日には古くなってしまう服を作らないこと。私が現職に就いたころのファッション業界は、デザインや個性よりもサステナビリティが先行しすぎて“目的”になってしまっており、ファッション性が失われているような感覚があった。今は、当時ほど多くの人がサステナビリティに関心を持っていないようにもみえる。持続可能性について考えるのは当然だが、服づくりにおいてはすぐ古いと思われないデザインを考え続けることが最もサステナブルであり、就任以降こだわってきたことだ。

WWD:今後チャレンジしたいことは?

デ・フェリーチェ:つい最近まで、「クレージュ」はフランスでは有名だが、アメリカでは発展途上で、若い人にはあまり知られていない状況だった。今後はまだ開拓できていないエリアに注力しながらブランドを成長させ、世界中のみんなが「クレージュ」を知っている状況を作り出すのが私の夢だ。

WWD:その夢の実現ために必要なものは?

デ・フェリーチェ:私が「クレージュ」で働き始めたころは物理的な交流が一番難しかった時期だったので、人と人との一体感を自然と求めるようになっていた。みんなをつなぐきっかけになることが、私たちが目指すゴール。コロナ禍で感じた一体感の価値は、日常が戻りつつある現在でも考えるテーマだ。全てが元通りになりつつあっても、人々の心はまだ離れたままだと感じることがある。だからこそ、私たちはこれからもクリエイションを通じて一体感のある未来を目指し続けたい。

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勢いづく「クレージュ」 ニコラス・デ・フェリーチェの改革

ニコラス・デ・フェリーチェ/「クレージュ」アーティスティック・ディレクター プロフィール

1983年生まれ、ベルギー出身。学生時代は音楽に没頭し、ミュージックビデオがきっかけでファッションに興味を持つ。ブリュッセルの有名校ラ・カンブルに進学すると、2008年にニコラ・ジェスキエールが率いる「バレンシアガ」のデザインチームに加入。在籍6年間でウィメンズのメイン・コレクションのシニア・デザイナー兼プレ・コレクションのヘッド・デザイナーを務めた。その後ラフ・シモンズ時代の「ディオール」を経て、15年に「ルイ・ヴィトン」に入社し、ジェスキエールと再び協働する。20年9月から現職

「クレージュ(COURREGES)」が好調だ。現アーティスティック・ディレクターのニコラス・デ・フェリーチェ(Nicolas Di Felice)が2020年9月に就任以降、パンデミックの逆風をものともせず、年間売上高は2年連続で3桁成長を続けている。

デ・フェリーチェ=アーティスティック・ディレクターは現職に就任当初、同ブランドのDNAやヘリテージを大切にしながら「ロマンチックな要素や若い頃に通っていたナイトクラブを感じさせるようなラディカルなムードを加えていきたい」と語っていた。その言葉通り、若々しさを手に入れた新生「クレージュ」はY2Kブームの後押しもあってZ世代の新規顧客も着々と獲得しており、21年から22年にかけての15〜30歳のシェアはグローバルで120%増を達成。また韓国では、BLACKPINKやaespa(エスパ)といったK-POPスターの着用効果などが後押しし、主要卸先の大手ECでは同400%増という伸長率で存在感を急速に強めている。

日本でも、東京・銀座のドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA 以下、DSMG)4階に常設スペースを4月にオープンするなど、アジア市場攻略に向けて着々と進んでいる。デ・フェリーチェ=アーティスティック・ディレクターは、1961年創業の「クレージュ」を約3年間でどう変えたのだろうか。本人に思いを聞いた。

「これはまだ始まりにすぎない」

WWDJAPAN(以下、WWD):現職に就いてからの約3年をどう振り返る?

ニコラス・デ・フェリーチェ(以下、デ・フェリーチェ):実は、ブランドのクリエイティブのトップとして仕事をするのは初めてだったので、就任当初はとても不安だった。サポートをする立場が多かったからね。でも、いざスタートすると余計な雑念はなくなり、満たされた感覚で仕事に取り組めた。そのおかげで、私たちは短期間で素晴らしい結果を残せている。私が就任した2020年ごろの「クレージュ」は低迷期で、世間からの興味関心は薄く、ストリートでも着ている人は少なかった。でも、今は違う。就任当初掲げていた「ブランドを立て直す」という目標はすでに達成できたし、次のフェーズに向けていろいろなアクションを起こしている。私は過去は振り返らないし、立ち止まるのが苦手だから、これはまだ始まりにすぎないよ。

WWD:好調要因の一つが、Z世代のファンを獲得したことだと思う。

デ・フェリーチェ:Z世代だけをターゲットにしていたわけではないから分からないけれど、K-POPスターが「クレージュ」を着てくれていることが、Z世代に影響を与えているのは間違いない。私は昔から音楽やライブが好きで熱中していたので、もしかすると無意識のうちのアーティストが好むような、ステージ映えするデザインになっているのかもしれないね。

WWD:日本市場でも韓国の成功例を応用できる?

デ・フェリーチェ:韓国での急成長は戦略なんて大それたものはなくて、全て自然に起こったこと。テクノロジーの発達で世界中の人々が交流しやすくなり、遠く離れた国に向けても、自分のデザインが愛されるきっかけを作れるようになった。でも、ブランド的にはそこを狙ってマーケティング戦略を打つ段階にはまだなくて、現時点では全てが自然に起こることが一番美しいと考えている。だから日本でも「クレージュ」が自然に浸透していけばうれしいし、そうなる可能性は十分ある。

「ブランドの核は人と人との一体感」

WWD:DSMGにオープンした常設スペースは、「クレージュ」が日本でさらに浸透していくための後押しになりそうだ。

デ・フェリーチェ:これまで多くのブランドがドーバー ストリート マーケットのサポートのおかげで知名度を広げてきたので、常設スペースができてとても光栄に思っている。初めて来日したときはお金がなく、DSMGで何も買えなかったのを覚えているから、なおさら感慨深いよ。売り場に置いた什具は、屋根の上にある白いアンテナをイメージしていて、2023-24年秋冬シーズンのショーに着想したもの。ショーで使った6メートルのアンテナを売り場用に小さくしてはどうかとDSMG側が提案してくれた。

WWD:23-24年秋冬シーズンのショーは、モデルがスマートフォンをタイピングしながら歩く姿が印象的だった。この演出やコレクションで伝えたかったことは?

デ・フェリーチェ:23-24年秋冬のショーは、AIやデジタルについて考えていた際に思いついたアイデアだった。AIは素晴らしい発明かもしれないけれど、私は少し怖れてもいるんだ。テクノロジーの進化はコミュニケーションを活性化し、人類の進化に貢献している一方で、中毒性があり、現代人はスマートフォンを触ることが癖になっている。まるでテクノロジーに監視されているような気分だ。私も恋人と過ごしているのに、一緒にいる感覚になれないことがあった。ショー会場では、スモークをたいて2メートル先が見えないようにすることで、スマートフォンに夢中で近くにいるはずの人の存在を感じない様子を表現した。

WWD:演出だけでなく、前傾姿勢のシルエットでもテーマを表現していた。

デ・フェリーチェ:私は常に新しいシルエットを探求している。23-24年秋冬シーズンでは、スマホ中毒の人たちの曲がった背中をイメージするうちに、私自身がその姿勢になってしまっていることに気付き、それをシルエットにするアイデアを思いついた。

WWD:シルエットのほかに、「クレージュ」ではどのようなクリエイションにこだわってきた?

デ・フェリーチェ:明日には古くなってしまう服を作らないこと。私が現職に就いたころのファッション業界は、デザインや個性よりもサステナビリティが先行しすぎて“目的”になってしまっており、ファッション性が失われているような感覚があった。今は、当時ほど多くの人がサステナビリティに関心を持っていないようにもみえる。持続可能性について考えるのは当然だが、服づくりにおいてはすぐ古いと思われないデザインを考え続けることが最もサステナブルであり、就任以降こだわってきたことだ。

WWD:今後チャレンジしたいことは?

デ・フェリーチェ:つい最近まで、「クレージュ」はフランスでは有名だが、アメリカでは発展途上で、若い人にはあまり知られていない状況だった。今後はまだ開拓できていないエリアに注力しながらブランドを成長させ、世界中のみんなが「クレージュ」を知っている状況を作り出すのが私の夢だ。

WWD:その夢の実現ために必要なものは?

デ・フェリーチェ:私が「クレージュ」で働き始めたころは物理的な交流が一番難しかった時期だったので、人と人との一体感を自然と求めるようになっていた。みんなをつなぐきっかけになることが、私たちが目指すゴール。コロナ禍で感じた一体感の価値は、日常が戻りつつある現在でも考えるテーマだ。全てが元通りになりつつあっても、人々の心はまだ離れたままだと感じることがある。だからこそ、私たちはこれからもクリエイションを通じて一体感のある未来を目指し続けたい。

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スターモデル美佳が輝き続ける理由 デビューから今後の夢までを語る

美佳/モデル プロフィール

(みか):2001年8月30日生まれ、フランス・パリ出身で身長178cm。フランス人の父と日本人の母の間に生まれ、フランスや日本、ロシア、インドの4カ国で育ち、仏英日の3カ国語を話す。日本ではモデル事務所のイマージュに所属。ニューヨークはザ・ソサエティ マネジメント、パリ、ミラノ、バルセロナではエリートと契約

美佳は、日本とフランスを代表するスターモデルだ。2019年9月に「プラダ(PRADA)」2020年春夏コレクションでランウエイデビューを果たすと、「サンローラン(SAINT LAURENT)」や「エルメス(HERMES)」のキャンペーンビジュアルをはじめ、米「ヴォーグ」をはじめとするモード誌の表紙にも登場。22年春夏シーズンのショー出演数は30本で、ウィメンズモデルで世界1位になるなど、約4年で大躍進を遂げている。

22歳を迎える美佳は、向上心が高く、好奇心旺盛だ。今年6月にパリの大学を卒業し、いよいよモデルの仕事に専念できる状況になったものの、DJや演技にも興味があり、今後は活躍の場を広げていきたいのだという。天真爛漫な一面と、上品で丁寧な振る舞いが魅力の彼女に、これまでのキャリアや今後の夢について語ってもらった。

——日本に戻ってきたのはいつぶりですか?

美佳:コロナ禍でなかなか日本に帰れなかったのですが、昨年12月に約3年ぶりにプライベートで戻って来られました。その後、今年3月に「シャネル(CHANEL)」の撮影が東京であり、また「シャネル」の2022-23年メティエダール コレクションのショーで6月に帰ってくることができてうれしかったです。

——ショーや撮影でいろいろな国を訪れると思いますが、プライベートの時間はありますか?

美佳:仕事で訪れた国では、少しでも自由に散策できる時間を見つけるようにしています。マネジャーに相談して、1日長く滞在できるようにお願いすることもあります。現地の人と話したり、市場でローカルフードに挑戦したりするのが大好きなんです。「シャネル」のショーで訪れたダカールは、私にとってアフリカ初上陸の国でした。カレーや魚、フルーツなど食べ物もおいしくて、街の人がとても優しかったのがいい思い出です。

4年間で最も忘れられない
「サンローラン」でのパリデビュー

——この4年間でたくさんのファッションショーに出演してきた中で印象深かったブランドは?

美佳:初めてのパリコレで歩いた「サンローラン」です。洋服も音楽もかっこよく、当時18歳だった私にとって何もかもが刺激的でした。雨上がりのエッフェル塔の下で行われた素晴らしいショーだったのですが、慣れないヒールで滑らないようにと内心ヒヤヒヤでした。終了後には緊張が解けて、震えて泣いてしまい、モデルとして成長させてもらえたショーだったと思います。

今年1月に歩いた「アライア(ALAIA)」23年夏秋コレクションも印象深かったです。会場はクリエイティブ・ディレクターのピーター・ミュリエ(Pieter Mulier)さんの自宅で、クローゼットやシャワールーム、キッチン、ベッドルームを通り抜けるショーは楽しくて貴重な体験でした。

——毎シーズン出演しているブランドはありますか?

美佳:決まったブランドはありませんが、「シャネル」「サカイ(SACAI)」「コペルニ(COPERNI)」「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」「ヴェルサーチェ(VERSACE)」などのショーはよく歩いています。ブランドと契約をしているわけではないので必ず呼んでもらえるとは限らないのですが、どんなブランドを歩けるのかは毎シーズン楽しみにしています。

——ショーを歩いてみたいブランドは?

美佳:個人的には「アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)」「ジル サンダー(JIL SANDER)」「ブルマリン(BLUMARINE)」のランウエイを歩いてみたいですね。また「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」のショーにも出てみたい。以前「フェンディ(FENDI)」とコラボレーションしたときに起用してもらいました。

——思い出に残っている撮影は?

美佳:フォトグラファーデュオのルイージ&イアンゴ(Luigi & Iango)さんのニューヨークの自宅で行った、香港版「ヴォーグ」の撮影です。アパートに1日中滞在し、朝と昼ご飯を作っていただきました。プライベートな空間でインティメートな雰囲気もあり、リラックスしながらいい撮影ができましたね。

美容はインナーケアが大事
腸活や枕カバーも取り入れる

——モデルをやっていて、達成感を感じる瞬間は?

美佳:仕事から家に帰ってきてシャワーを浴び、ショーの画像や映像を見返して、「頑張ったな」と思いながら感謝するときです。

——逆に大変だと感じることは?

美佳:移動と時差ですかね。体内時計が狂ってしまうのは辛いんです。1ヵ月で7都市を移動することもあるので、友達やパートナーが恋しくなり、ビデオ通話をしたり、手紙を書いたりしますね。

——美容で気をつけていることはありますか?

美佳:内側からのケアが大事だと思っています。水を飲んで、漢方も取り入れています。あとはコーヒーを飲みすぎず、アルコールは控えること。腸活もしていて、コンブチャとサプリで善玉菌を増やすようにしていますね。スキンケアは決まったプロダクトを3つ程度に絞っていて、つけすぎず肌を休ませることを大切にしています。高いスキンケア用品を買っても睡眠不足だと肌の質が落ちてしまうので、1日8時間は寝るように心掛けているんです。シルクのピローケースがおすすめで、ヘアケアのために買ったのですが肌荒れにも効果が感じられました。

——個人的に好きなファッションは?

美佳:普段はビンテージショップで買い物をしています。この仕事をしているとファッションアイテムや素材について学ぶことも多いので、とても影響を受けています。例えば「ルイ・ヴィトン」の撮影でスカーフの巻き方を教えてもらったり、アトリエで働く方に「この素材はなんですか?」と聞いて詳しく説明してもらったりと、よく質問をするようにしています。

——最近、大学を卒業されましたね。おめでとうございます。コロナ禍で仕事と両立しながらの学業はいかがでしたか?

美佳:パリの大学で3年間、日本語と日本の歴史、国際経済を学びました。私はフランス人学校に通っていたので、日本の歴史について詳しくなかったんです。1年目は講義をオンラインで受けられたのですが、2年目からは実際に通わなければならなくなり、大学に相談して期末試験だけで済むようにしてもらいました。その分、移動中は教科書を読んで、仕事現場でも勉強していましたね。日本語の作文が苦手なので、丁寧語や敬語、歴史は今も学んでいます。

モデルを志す人にアドバイス
“ルックスだけでなく内面も磨いて”

——モデル業に専念できる状況になりましたが、今後のキャリアの目標は?

美佳:今後もプロフェッショナルモデルとしてキャリアを重ねて、自分を確立させたいです。「美佳がいい」と指名されるような、ユニークな存在になりたい。また演劇のスタイルで発表した「メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)」22年“アーティザナル”コレクションのショーに出演してから、演技にも興味が湧きました。それと今は家でDJの練習もしていて、いつかイベントで回してみたいです。

——モデルを目指す人にアドバイスはありますか?

美佳:グローバルに活動することを目指すなら、語学は勉強した方がいいですね。指示が理解できるので、仕事はしやすいはず。そして内面も磨き続けて、礼儀正しく、人に優しく接することを忘れないこと。モデルはルックスだけでなく、性格の美しさも大切です。

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元「マーガレット・ハウエル」のデザイナーが民藝をテーマにパリコレを目指す ノウハウ×職人技が生きる服

民藝をテーマにしたアパレルブランド「ソサエティ オブ ローカルアーツ(SOCIETY OF LOCAL ARTS以下、S.O.L.A)」がデビューした。ディレクションを手掛けるのは、「マーガレット・ハウエル(MARGARETT HOWELL)」などでメンズのデザイナーとして活躍した日下淳。クリエイティブアドバイザーは、民藝に関する多くの著書がある萩原健太郎が担当する。民藝が趣味の日下が、萩原と出会い「S.O.L.A」が誕生した。同ブランドでは、民藝をテーマにしたメンズ中心のウエアや雑貨などを展開。一見、民藝がモチーフとは思えないが、どこか懐かしさを感じさせるアイテムばかりだ。日下と萩原に、ブランド立ち上げの経緯や今後について聞いた。

日下は、「海外デザイナーのブランドを多く手掛けてきて、現地のデザイナーから評価してもらい、アトリエで一緒に働かないかと声をかけてもらったこともある。ただ、欧米のブランドでは、日本人がいくら頑張っても欧米のデザイナーには敵わず、負け試合になる。だから、日本文化をベースにしたブランドを始めたいと思った」と語る。彼は、米ニューヨークの「トッド スナイダー(TOD SNYDER)」の下でも働いたことがある。スナイダーにデザイナーとしての腕を認められたものの、ニューヨークで働くアジア人の待遇は欧米人と比べると悪く、渡米を諦めたという。

彼は、20世紀初頭にイギリス・ロンドンの中心部にあった知識人のサークルである“ブルームズベリー グループ”のプリミティブな生活様式に関心があった。彼が日本で似たようなものとして出合ったのが民藝だった。「日本民藝館に行き、民藝に使われている色柄のセンスや、色合いに感動した。焼き物に描かれた宇宙や空のニュアンスを洋服で表現したいと思った」と日下。そして、彼は萩原の本に出合い、年齢の近い萩原に「S.O.L.A」の企画を持ち込んだ。萩原は、「民藝とは、伝統を後世に伝えるのが使命。現場を見てきて、それが厳しいことはよくわかっている。そこで民藝がファッションに発展するのは面白いと思った」と語る。彼は、民藝を表現する過程における柄の提案を始め、ブランディングや戦略まで関わるようだ。

世界的ハイブランドのメーカーとオリジナルで素材を製作

最初のコレクションは、柄が5つ、雑貨、ウエア共に8型。全てのアイテムは京都でプリントを行っている。「京都には、深いプリントの文化が根付いている。モノ作りも分業性なので、柄やドレープなど細かい表情がつけやすい」と日下。「S.O.L.A」では、京都で世界的なハイブランドの素材を手掛けるメーカーと素材作りを行っている。彼は、「チームの中に、メーカーとの間に入ってくれるプリンティングディレクターがいる。陶器を持参して色と色の重なり具合などを相談する」と話す。民藝的な一つ一つ違う表情をプリントでどのように表現するか細部までこだわっているという。「陶器の滲みを表現するために一晩寝かせたり、版をわざとずらしてニュアンスを描いたり、全て日本民藝館でスケッチしたものを元にプリントし、敢えて無地はつくらなかった」と言う。

コミュニケーションが生まれる服でパリコレへ

「S.O.L.A」は、日下が得意とするミリタリーウエアなどオーセンティックなアイテムをアレンジしたメンズが中心のユニセックスブランド。ビジネス的な意図もあり、ラゲージや帽子などの雑貨も作った。日下は、「長く、いつでも着られるものをと思った。まずは、着たいと思ってもらい、その先に民藝があるのが理想だ。インテリアや民藝が好きな人にも手に取ってほしいし、インバウンドのお土産としても販売したい」と話す。価格はウエアが2万〜7万円、雑貨が6000~1万8000円程度。販売先は、百貨店やセレクトショップ、専門店などのウエアと雑貨売り場を視野に入れている。

デザイナー歴が長い日下は、フィット感をはじめアパレルブランドのノウハウを熟知している。「S.O.L.A」が目指すのはパリコレだ。「『その柄、何?』とコミュニケーションが生まれる服にしたい。ファッションとはコミュニケーション力があるもので、優位性を競うものではない。興味を持つ人で盛り上がり、仲間をつくって5年後パリコレに出るのが目標だ」。

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「エルメス」や「マルジェラ」のビンテージを豊富に揃える隠れ名店「アンダンテアンダンテ」

「アンダンテアンダンテ」は、千葉駅から徒歩5分の立地に構えるビンテージショップだ。店名は“歩くような速度で“という意味の音楽用語を重ねたもので、“時代の移り変わりの速さで人々が見落としてきたものを再発見する”という思いを込めている。商品は、フランスやドイツなどで買い付けたヨーロッパ各国のビンテージやコレクションブランド、インテリア雑貨を扱っている。今回は同店のコウイチオーナーに、ショップのこだわりやおすすめのコーディネートを教えてもらった。

新旧問わず価値を見出すオーナーがそろえる名品

自身の感覚を大切にして買い付けを行うコウイチ「アンダンテアンダンテ」オーナーがセレクトするのは、マルタン・マルジェラ(Martin Margiela)本人が手掛けていた時期の「エルメス(HERMES)」のシャツ“ヴァルーズ”や「ストーンアイランド(STONE ISLAND)」のアイスジャケット、「メゾン マルタン マルジェラ(MAISON MARTIN MARGIELA)」の時期のトロンプルイユ(だまし絵)Tシャツなど玄人もうなる名品ばかりだ。さらに同ブランドの手仕事を発揮した“アーティザナル”コレクションのアーカイブは類を見ないほど充実。他にも仏百貨店の100年前のセットアップや、当時の労働者がつぎはぎしながら使用していたリネンパンツなど、歴史の古いアイテムも扱う。

コウイチオーナーが買い付けする頻度は半年ごとで、ヨーロッパ出張で仕入れを行う。「アントワープに出張に行っていたときに、ブランド『ラフ・シモンズ(RAF SIMONS)』が終了するニュースを知り、現地で多く買い付けてしまった」と笑う。トレンドにアンテナを張りながら、新旧問わずアイテムの価値を見出すオーナーのセンスが、同店に名品がそろう理由なのだろう。

また“「エルメス」のジュエリーオタク”を自称するコウイチオーナーだけあり、シルバージュエリーの豊富さにも注目だ。船のいかりのチェーンを元に1938年に発表した「エルメス」初のシルバーブレスレット“シェーヌダンクル”や、1コマ1コマ違うピースで構成した“アレア”、馬具から着想を得たダブルバックルの“ブックルセリエ”など、希少価値の高い商品をラインアップする。「エルメス」のジュエリー目当てで来店する客も多いという。大都会の喧騒を離れた地方都市らしいゆったりとしたロケーションの店に、わざわざ足を運ぶ価値は十分だ。

おすすめのコーディネート

LOOK1
「エルメス」のシルバージュエリーを目立たせるためのオールブラック

TOPS:「メゾン マルタン マルジェラ」
PANTS:「メゾン マルタン マルジェラ」
JEWELRY:「メゾン マルタン マルジェラ」
SHOES:「メゾン マルタン マルジェラ」

LOOK 2
「コム デ ギャルソン」のPVCパンツで一癖つけたオールホワイト


JACKET:「ストーンアイランド」
T-SHIRT:「メゾン マルタン マルジェラ」
PANTS:「エルメス」
SHORT PANTS:「コム デ ギャルソン」
SHOES:「メゾン マルタン マルジェラ」

LOOK 3
ビンテージ×デザイナーズのMIXコーデ

JACKET:フランスの50年代のブラックモールスキンジャケット
SHIRT:「メゾン マルタン マルジェラ」
PANTS:フランスの50年代のビンテージ
SHOES:「メゾン マルタン マルジェラ」

■アンダンテアンダンテ
住所:千葉県千葉市中央区新田町17-4A
時間:11:00〜21:00

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下着からプロテインまで顧客の買い周りで成長 年商50億円を目指す「バンビウォーター」

2012年にスタートした「バンビウォーター(BAMBI WATER)」は“自分らしく、理想の自分を叶える”をコンセプトとするボディーメイクブランドだ。ボディーケア(ボディ用コスメ)、フェイスケア(フェイス用コスメ)、インナーケア(プロテインやスムージーなどの食品)、スタイルアップ(下着やレギンスなどのウエア)の4つのカテゴリーがあり、ブランド内の買い周りとリピートで着々と売り上げを伸ばしてきた。現在、自社EC、大手通販モール、バラエティーショップで販売。今年、越境ECもスタートして海外進出を加速させ、来期は50億円の売り上げを目指す。

コスメ、食品、下着などを総合的に扱うボディーメイクブランドとして成長した経緯は、「バンビウォーター」を展開するラングレーの栗原淳徳社長の経歴に深く関係する。栗原社長は大学在学時に営業代行の会社を起業し、父親が経営者だったこともあり、「起業したいという思いが強かった」と当時を振り返る。

月一回のエステより、意味のあるボディーメイクを

ECセレクトショップとして順調だったものの、将来を見据えて立ち上げたのがプライベートブランド「バンビウォーター」だ。同ブランドでは、商品を仕入れて販売していたが、2〜3年かけて自社商品を販売するようになった。立ち上げ当時は、ボディークリームとボディージェルのボディーケアカテゴリーからスタート。栗原社長は、「会社は運営できていたが、この商品数と規模感では企業理念である『1人でも多くの笑顔を増やす』を実現できないと思った」と栗原社長。社内の主要メンバーとミーティングを重ねた結果、“ボディーメイクブランド”というコンセプトにたどり着き、18年にリブランディングした。「市場にボディーメイクという概念はあったものの、サービスの提供がメインでプロダクトはなく、お手本になるビジネスモデルがない状況だった。“プロダクトにおけるボディーメイク”について考え、“月一回のエステより、意味のあるデイリーボディーメイクを”という思いをもとに商品開発に挑んだ」。

その結果、18年にインナーケア、19年にスタイルアップ、21年にフェイスケアと展開カテゴリーを徐々に増やしていった。現在の売り上げ構成比はスタイルアップが5割、インナーケアが4割、ボディケアとフェイスケアが合わせて1割で、ビジネス規模も大きく成長した。

ブランドの顔は6サイズ17色展開のナイトブラ

売り上げの5割を占めるスタイルアップの中で最も販売額が大きく、同ブランドの顔となっているのが“スタイルナイトブラ”だ。24時間美胸キープを謳う成形編みのブラで、XSから3Lまでの6サイズで17色展開。発売後から徐々に支持を伸ばし、「楽天年間ランキング2022 インナー・下着・ナイトウェア部門」を受賞、続いて23年上半期も同賞を受賞している。

各カテゴリーで同じような商品を扱うブランドは存在する。しかし、栗原社長は「商品開発、マーケティングも含めすべて“ボディーメイク”を切り口にしているため、どこも競合だとは思わない」と言う。マーケティングに偏らず、工場と二人三脚でものづくりに挑む姿勢がその人気を支える。例えば、主力商品の“スタイルナイトブラ”も、特徴である脇高パーツの高さや角度を調節したり、素材を変えたりなど、細部に至るまでこだわった。「ミリ単位の修正は、工場からは『誤差の範囲』と言われ嫌がられてしまうが、それが着け心地の違いにつながると説明を重ねて理解してもらった」。昨年、マイナーチェンジしたパッドも、工場からは「メール便に入る高さに抑えながら、着け心地を良くするのは難しい」と言われたが説得して1年半をかけて完成させた。消費者は、このように開発された商品の中から見つけた1品をきっかけにECサイトに入り、その後、他の商品を買い周り、気に入ってリピート。その循環で、ビジネスを成長させてきた。

2年後に国内7割、海外3割を目指す

来期は年商50億円を目指すという栗原社長は、3つの目標を掲げる。1つ目は、商品数の拡充。現在の20点を来期は倍の40点にすることを目指している。それに向けて、社員も年内に20人から30人に増員予定で、組織を強化する。2つ目は、ECからの脱却。ECでの販売がメインであることに変わりはないが、ブランド認知度を上げるため、ECに偏ることなくオフラインでの展開も強化する。3つ目は、海外展開。7月にはシンガポールのECモールに出店し、年内に台湾での販売もスタートする予定。2年後に国内7割、海外3割の売り上げ構成を目指すという。「創業時からコツコツと他にはないもの、いいものを作って、顧客を増やしてきた。それが一番の強みだ」。

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菊池武夫84歳、古着の山にワクワク 遊び心あふれる厳選100点を「ラグタグ」で販売

ワールドのメンズブランド「タケオキクチ(TAKEO KIKUCHI)」のクリエイティブディレクターを務める菊池武夫は、グループ企業のティンパンアレイが運営する古着チェーン「ラグタグ(RAGTAG)」と協業する。菊池が倉庫からセレクトした古着100点を、11月にワールド北青山ビルで開催するポップアップイベント「246st マーケット」で販売する。ポップアップにはスタイリストの三田真一、ファッションジャーナリストのシトウレイらも参加する。

7月下旬、菊池は都内のラグタグ倉庫に足を運び、ポップアップで販売する商品をピックアップした。「こりゃあすごいね」。約30万点の古着の山を前に目を輝かせた。「最近はテーラードが気分」と言い、かっちりとしたセットアップスーツを中心にスパンコールのブルゾンやパッチワークのミリタリージャケットもセレクトし、遊び心を忘れない。

衰えぬファッションへの情熱
「過去」を今の感覚でアップデート

「スーツはドレスアップのイメージだけど、自由に楽しんでもらいたい」と菊池。「今はモノも情報も増えたから、皆服をじっくり吟味して選ぶだろう。でも“冒険”はしづらくなっているんじゃないだろうか。着たいものを好きに着るのが一番楽しいんだ」と話す。ピックアップに要したのは1時間余り。「久々にワクワクした。あんなにたくさんの中から、自分が好きな服を選べることは中々ないからね」。

ファッションへの情熱は衰えない。毎朝、自分の服のコーディネートを選ぶのが何よりの楽しみと言う。自身が設立した「タケオキクチ」は来年40周年を迎えるが、今も毎日のようにアトリエに顔を出す。「僕は60年以上も業界にいる。どうしても頭でっかちになって、新鮮に感じられることも少なくなってくる。でも昔の服を今の感覚で着たら、当時とは全く違う気付きがあるものだ。だからファッションは面白い。今日選んだアンティーク(古着)を手にとる若者は、いったいどんな風に着こなしてくれるだろうか。すごく楽しみになった」。

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ベイクル元取締役が新会社立ち上げ 「ビジネスを知らない若手も、喫茶店を始めたい70歳も手伝いたい」

ベイクルーズ出身の森秀人がこのほど独立し、ブランドコンサルティング会社のフェーヴ(FEVE)を立ち上げた。前職では、40歳で取締役に就任しファッション、フード、フィットネス、インテリアなどの多岐にわたる領域で、70以上のブランドディレクションを手掛けた。そこで培った知見を武器に「時流を捉えたクリエイティブソリューションを包括的に提案していく」という。森に立ち上げ経緯を聞いた。

WWD:立ち上げの背景は?

森秀人フェーヴCEO兼クリエイティブ・プロデューサー(以下、森):「エディフィス(EDIFICE)」に憧れて2001年にベイクルーズに入社してから、ほぼ全ブランドのクリエイティブ全般にまつわるディレクションを任せてもらい、さまざまな領域で経験を積ませてもらいました。その中で、20年で一区切りつけようというビジョンをぼんやりと描いていました。20年たち、ある程度の達成感も得ることができ独立を決めました。

WWD:フェーヴとはどんな会社?

森:経営層がモヤモヤしている内容を言語化する仕事から、具体的な店作りや商品作り、SNS運用などの枝葉の業務まで全てを請け負います。「コンサルティングファーム」と名乗っていますが、僕がやりたいのは「何でも屋」。20年間、小売りの現場にいた経験を基に、クライアントの事業成長をお手伝いします。

WWD:強みは?

森:圧倒的な現場主義です。ベイクルーズの窪田(祐)会長には、何をするにも現場に行って、顧客視点を持つことをたたき込まれました。店作りも事業運営も、とにかく店に行って考えろと。そして、常にもっと何かできるかもしれないと批判の目を持つこと。前職では、毎シーズン修正を加えて、サグラダファミリアと呼ばれていた店もありましたね。でも、あえて「完成」を決めない意義も前職で学んだ大事なことです。

1ミリにこだわるディレクションで個性を引き出す

WWD:前職では70以上のブランドのディレクションを手掛けた。それぞれのブランドの個性を引き出すコツは?

森:ベイクルーズは狭いターゲット層の中で、あれだけのブランドを両立させている結構異質な事例だと思います。ディレクションする際はいつも、1ミリずれたら違うブランドだという感覚で、その1ミリにこだわってブランド同士をチューニングする作業を長年やってきました。例えば、同じフレンチシックがテーマの「イエナ(IENA)」と「スローブ イエナ(SLOBE IENA)」でも、彼の両親に会うなら前者、2人で湘南にデートに行くなら後者という具合に、一定の感度を担保してあげられれば1人のお客さまが回遊してくれるようになるわけです。新規のブランドを立ち上げるときには、コンセプトにまつわるインスピレーションを得るために、チームのみんなと一緒にブランドの雰囲気に合う海外に出張したりもしました。「〇〇っぽい天気」「〇〇っぽい海」という具合に、チームで共通言語を築いていく作業はとても楽しかったです。

WWD:「時流を捉えたクリエイティブソリューション」を掲げているが、今求められているブランドの共通点は?

森:メゾンブランドや個人ブランドが売れている背景には、信頼感があると思います。なので、僕がコンサルする際は、ブレない部分をどれだけ持てているかが大事とお伝えします。ブランドのアイデンティティーもそうですし、無駄な在庫を持っていないかどうかといった売り方も含めたうそのないコミュニケーションを取れるかがすごく大事な時代です。

WWD:今後のビジョンは?

森:強みのライフスタイル以外にも、これまで関わることができなかったような領域のお客さまでも経営支援をしていきたい。マーケティング的には、領域を絞った方が勝ち筋なんですが、僕はあえてその逆を行きます。センスはあるけど形にする方法が分からないビジネス未経験の若手も、喫茶店を始めたい70代のおじいちゃんも、「何でも屋」としてサポートしていきたいです。挑戦したいのは、地方活性化の事業です。地方を回ると、イベントを開催しているその部分は盛り上がっていても、周りは閑散としているような風景をよく見かけました。クリエイティブの力で、街全体を盛り上げるような仕掛けをしてみたい。アイデアはいくらでもあります。

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「社会全体で子どもを見る未来をつくりたい」 子育てアドバイザー・河西景翔 が考えるコスメがつなぐ未来とは<後編>

河西景翔/子育てアドバイザー プロフィール

(かわにし・けいと):小学生の頃から保育士を志し、中学生からは保育園でのボランティア活動に参加。2002年に保育士・幼稚園教諭の資格を取得。保育士・幼稚園教諭として15年以上保育の現場で働く。現在は、子育てアドバイザー・保育環境アドバイザーとして保育の現場とも関わりながら、子どものみならず、保護者支援にも注力。“育児も保育もファッションも男女の境はない、ジェンダーレスな社会づくり”を目指し、SNSやウエブなどで日々発信をする

前編では、使われないまま廃棄されるコスメ業界の現状と、その余剰コスメを通じた児童養護施設出身者のアフターケア事業への支援とコスメの可能性を、ビューティ業界特化型PR代理店である千田尚美プレッセ取締役、一般社団法人コンパスナビで児童養護施設退所者のアフターケア事業(クローバーハウス)に携わるブローハン聡氏、子育てアドバイザーの河西景翔氏の鼎談から探った。後編は、保育士として子どもたちやその保護者と関わってきた河西氏に、子育てにおける現状と課題、取り組むコスメやファッションを介した支援活動に耳を傾ける。

保護者の心のケアも必要だと感じた保育士時代

WWD:保育士時代はどんな先生だったのか?

河西:当時から、こんな見た目でしたよ(笑)。2007年くらいは髪も真っ赤で。生徒たちは今でも覚えているそうです。保育園では保育士がその日の過ごし方を決めるのですが、子どもたちと一緒にコスメごっこもしていました。セロハンテープを爪に貼って色を塗ったりとか、スズランテープでエクステをつけたりして。「今日コスメやる?」って言うと、「やるやる!」と目を輝かせるので、本当に楽しい時間でしたね。身だしなみを整えたり、輝けるものに触れたりすることは、子どもだからこそ純粋に感じるのだと思いました。

WWD:そんな河西さんが保育園の枠を超えて保育全体に関わろうと思ったのはなぜ?

河西:子育てにおいて支援するべきは子どもだけでなく、保護者へ目を向ける必要性を感じたからです。保育士時代、4歳児・28人の担任になったある朝、園児を送ってきた母親に「実は子育てで悩んでいる」と相談を受けたんです。朝の受け入れで忙しい時間帯だった自分は、思わず「保育園では元気だし大丈夫、大丈夫!」と言ってしまった。その1カ月後に、園児が足を引きずって登園してきた。聞くと、掃除機の柄で脚を思いっきり叩いてしまったと。「先生が大丈夫って言ってくれたけど、私、全然大丈夫じゃなかった」と言われた時、自分は保護者を全く見れていなかったことにがくぜんとしました。

WWD:その経験から保護者のケアも必要だと考えた。

河西:はい。自分は専門知識を持って保育に向き合っていると思っていたけれど、子どもしか見ていなかったのだと気付かされました。その後、2歳児の担任をしながら休日は学校へ通って、保護者の支援の仕方や話を聞く力を勉強し、保育心理士という資格を取りました。

WWD:学んだ後に保育と向き合ったことで変化は。

河西:保護者の話を聞くことにも注力しました。特に2歳児の保護者は、子どもの発達について悩んでいる方がとても多かった。心が発達し、個人差もある時期なので不安や悩みが出てくるのも当然ですよね。多くの保護者と話す中で、世の中にはきっと同じことで悩んでいるお母さんたちがたくさんいると思ったんです。ならば、自分がここで学んできた専門性と経験を生かして、保育園の中だけでなくいろんな人へ届けたいと思い始めました。その後退職し、子育てアドバイザーになりました。

みんなが子どもの代弁者となる未来に

WWD:どのような活動から始めた?

河西:子育ての現状を知ってもらうために、どうしてもファッション系の雑誌で発信をしたかったので、出版社を周りました。雑誌は美容室に必ず置いてあるから、子育て世代だけでなく、むしろ子育てに関係のない人の目に留まるかもしれないと思ったんです。

WWD:結果、マガジンハウス「Hanako Mama」の連載につながった。

河西:編集長が「面白そう!やろう!」と言ってくださり、「ママのためのカウンセリングルーム」という連載がスタートしました。これから注力したいと思っていたお母さんたちの力になれたことがうれしかったし、同じ悩みを持つお母さんたちの情報共有の場となれたことも良かったです。

WWD:以来、他誌やウエブでの連載が始まり、当初の目標だった“子育て世代以外の目に触れる機会”が増えた。

河西:そうですね。子育て中の人や保育に関わる人にとって当たり前のことも、そうでない人からすれば理解ができないことがたくさんあります。子どもってこういうものなんだ、親ってこんなことが大変なんだということを第三者が知っていれば、社会全体で子どもを見る未来につながると思います。みんなが子どもの代弁者になっていたら世界は変わるのですが、自分だけの世代を生きている人があまりに多い。子どもたちから学べることは本当に沢山ありますから、視野を広く持ってほしい。

子どもたちに、希望や期待を捨ててほしくない

WWD:コスメに興味を持ったきっかけは?

河西:一つは母が資生堂の美容部員だったこと。もう一つは、高校時代に吹き出物ができて人前に出るのも嫌だった自分が、コスメでカバーすることで自信が持てたこと。コスメには人に前を向かせる力があることを、その時身をもって知りました。

WWD:コスメを介して、母親を支援しようと思った理由は?

河西:保育に関わり始めてから、何か子育てにつなげることはできないかと考えていた頃、子ども2人を育てる友人に久しぶりに会ったんです。が、待ち合わせ場所で彼女に気付けなかった。聞けば、年子の子どもたちを平日はワンオペで、自分の時間はなく手間をかけられない、と。そこで自分がコスメをいくつか送ったところ、久しぶりのメイクや香りがリフレッシュになったみたいで、子育てにもちょっとだけ前向きになれたと話してくれました。その時に、自分だったらこういう支援ができるのかもって思ったんです。“自分”があってこそ、子どもに向き合えると思うので。

WWD:先日は子ども食堂でメイクレッスンも主催した。

河西:このイベントはお母さんたちのために開いたものでした。子ども食堂のお手伝いをしていた不登校の子が、お母さんに眉毛を描いてあげる姿を目にしました。きっと勇気が必要だったと思うけれど、彼女がコスメに興味を持てた瞬間だったんでしょうね。

WWD:母親だけでなく子どもたちの可能性を広げている。

河西:そうですね。先日“トー横キッズ”だった子と話す機会があったのですが、現実とは思えない話ばかりでした。小学5年生から体を売ってお金を稼ぐことを覚えてしまった子どももいます。こういう子たちを救い出すのも、親以外の周りの大人なんだと思います。子ども食堂にいた子どもたちも、もしかしたら吸い寄せられてしまうかもしれない。でも今回のようにコスメに触れて、面白い、他の人もきれいにしてあげたいと心が動けば、違う道になっていくじゃないですか。だから、大人たちが楽しそうに働く姿をたくさん見せてあげられる機会をつくりたいんです。

共感する支援活動をシェアすることは、今すぐできる

WWD:シングルマザーへのコスメ提供支援も行っている。シングルマザーはどのようなニーズを抱えていると感じるか。

河西:あくまで僕が関わっている方たちの場合ですが、金銭的に余裕がないことで、子どもにも影響が及んでしまっているのが辛い、という話を耳にします。例えば今の中学生はみんなコスメを持っていて、買えないことで仲間外れにされる。でも自分の収入に余裕がないから、買ってあげることができない、と。金銭的な支援は国が行うべきですが、必要な人にきちんと行き届く物の支援は誰でもすることができる。プレッセが行っているようなコスメを提供する活動は、もっと業界全体で広がっていくべきだと思います。

また、もっと簡単に今すぐにでもできるのは、“情報をシェアすること”だと思います。自分が共感する支援活動をシェアすること。僕がSNSで発信する理由も、支援の輪を広げるためです。100、200人と投稿を見ている中で、一人でも心が動いてくれる人がいたらいい。

WWD:今後はどのような活動をしていきたいか。

河西:子育てや支援について発信している人たちの支えとなる活動をしていきたいです。今はいろいろな考えに柔軟な若い人たちが、SNSをうまく使って発信をしている。これまでは自分が目立つことで表に立ってきたけれど、そこを退いて、“支援する側を支援”したい。例えば、イベントしたいという声があったときに金銭面や協賛などは自分に任せて、参加者のために使える時間を増やせた方がより意味のあるイベントになると思うんです。支援する側が疲弊せず、実現したいことをサポートできたらと考えています。

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PR会社プレッセが余剰コスメを児童養護施設出身者に提供 コスメがつなぐ未来とは<前編>

千田尚美/プレッセ取締役 プロフィール

(せんだ・なおみ):経営に関わりながらオーガニックコスメやドクターズコスメ、美容機器までさまざまな人気ブランドのPRを担当。近年は社会福祉イベントへの協賛や今回紹介する支援など、メディアコミュニケーション以外の視点からも、コスメを介した活動に積極的に参加する

ブローハン聡/一般社団法人コンパスナビ事務局長・支援事業部 部長代理 プロフィール

(ぶろーはん・さとし):フィリピン人の母、日本人の父の間に婚外子として生まれる。4歳から母の結婚相手(義父)から虐待を受け、11歳のときに保護され児童養護施設へ。施設卒園後は病院の看護助手、携帯電話販売ショップなどで働く一方、フリーのモデル・タレントとして活動。現在は埼玉県の一般社団法人コンパスナビで児童養護施設退所者のアフターケア事業(クローバーハウス)に携わる。また児童養護施設出身者として、講演やYoutubeの配信など当事者活動を行う

河西景翔/子育てアドバイザー プロフィール

(かわにし・けいと):小学生の頃から保育士を志し、中学生からは保育園でのボランティア活動に参加。2002年に保育士・幼稚園教諭の資格を取得。保育士・幼稚園教諭として15年以上保育の現場で働く。現在は、子育てアドバイザー・保育環境アドバイザーとして保育の現場とも関わりながら、子どものみならず、保護者支援にも注力。“育児も保育もファッションも男女の境はない、ジェンダーレスな社会づくり”を目指し、SNSやウエブなどで日々発信をする

コスメブランドのマーケティング、ブランディング、宣伝を担うPR会社には、各ブランドからPR用のコスメサンプルが届く。それらは主にメディアへの貸し出しや美容業界関係者へ配布されるが、消費しきれないまま新品のまま残ってしまう現状がある。美容業界特化型のPR会社プレッセは、今春からそれら余剰のPR用サンプルを児童養護施設出身者への支援へつなげている。今回は千田尚美プレッセ取締役、余剰コスメの届け先で児童養護施設出身者のアフターケア事業「クローバーハウス」運営に携わるブローハン聡氏、ジェンダーレスな社会を目指す子育てアドバイザーであり両社の架け橋となった河西景翔氏による鼎談を行った。業界の現状を知るとともに、コスメの可能性について探る。

20代の若手社員たちが声を上げ、支援事業が動き出した

WWD:プレッセにおける余剰サンプルの現状は?

千田尚美プレッセ取締役(以下、千田):弊社は約30社のPRを担当しているので、ヘアケア、スキンケア、ファンデーション、カラーメイクなどメディアへの貸し出しから戻った商品は1カ月間で段ボール何箱分にもなります。各ブランドが一度倉庫から出庫した商品は市場へは出せないため、弊社が預かるのです。ブランドのご好意でわれわれが実際に使わせてもらうことで商品探求へ生かしていますがそれでもかなりの量が残ってしまうのが現状。最終的に破棄することが20年ほど続いていましたが、昨年ようやく社内で具体的な話し合いが始まりました。

WWD:昨年動き出したのは、何かきっかけがあった?

千田:“寄付してどなたかに使ってもらいたい”思いはあったものの、支援先に当てがなく、ブランド側のリスクとしては転売問題がありました。弊社もこの問題を解決する手立てがなく長年破棄せざるを得ませんでした。しかし昨年、20代の社員たちが「どうにかしたい」という声を改めて上げてくれ、今動かなければと。そこで今年1月にイベントでお会いした河西さんに、余剰サンプルをどこかへ寄付できないかと相談しました。

河西景翔・保育アドバイザー(以下、河西):そうでしたね。大阪の育児放棄事件が題材となった映画「子宮に沈める」の公開から10年が経ち、改めて作品と向き合おうというイベントが行われたんです。プレッセはこのイベントに協賛してくださり、ちょうど参加していたブローハンさんを紹介しました。彼が支援しているのは、主に児童養護施設を出た18歳以上の人たちなので、コスメが必要な機会が訪れるはずだと思って。

千田:中学生や高校生にメイクを推奨しないブランドもある中で、全ての条件がぴたりとはまりました。早速ブローハンさんに、サンプルを受け取ってもらえないか聞いたところ、ぜひ受け取らせてください!と。その後すぐにヘアケア、スキンケア、カラーコスメなど約20人分の量を詰めてクローバーハウスへお送りしたんです。

ブローハン聡コンパスナビ事務局長・支援事業部 部長代理(以下、ブローハン):コスメが届いた時の喜びといったらなかったですね。事務所に支援が届くと、利用者登録をしているみなさんにオフィシャルラインで共有するのですが、その日は平日にもかかわらずたくさんの人が来てくれました。

WWD:各ブランドへはどう説明し、どのような反応があったのか?

千田:実は初回は、相談レベルでお話できるブランドのみを送りました。何より受け取られる方の反応を知りたかったんです。結果、懸念していた転売はありませんでしたし、当然SNSに投稿されることもなかった。これは本当に使ってくださっているんだと思っていたところに、「こんなにかわいい化粧品は今まで使ったことがなかったからうれしい」とお礼の手紙をいただいて。お送りしてよかったと思うと同時に、活動を続けなければと思いました。手紙を持って各ブランドへ支援活動の説明に伺うと、ネガティブな声はほぼなく、ぜひ活動に生かしてくださいと言ってくださいました。それから平均して月に1度、余剰のPRサンプルをお送りしています。

WWD:支援活動を始めて半年。感じている課題は?

千田:現在はクローバーハウスと直接のやりとりですし、ブローハンさんが来所者と信頼関係性を築いているのを見ているので、安心して商品をお渡しできます。けれど今後、支援活動が広がったときに、万が一転売サイトへ出されたとしても追うことはできません。また、大量に送りすぎると迷惑をかけてしまうのではという懸念もある。いずれの場合も、コミュニケーションを怠らずに最適な方法を都度考えたいです。活動が広がることはわれわれの願いでもあります。社内できちんと担当化して活動の大きな柱として構えられたら、弊社の担当外のブランドさんへもお声がけしたいですね。そして何より、PRサンプルで行っている活動なので旬なアイテムをお送りしたい。楽しんで使ってもらえたら、これほどうれしいことはありません。

無関心を関心へ。他人事から自分ごとへ。

WWD:河西さんとブローハンさんはどのようにつながったのか?

河西:2020年に、ブローハンさんの新聞記事を読んで僕からコンタクトを取ったんです。児童養護施設についてもっと知りたいと思っていた時に、彼の存在と活動を知って。自分の志ともすごく似ていたので、すぐに意気投合しました。

ブローハン:景翔さんは、オレンジのモコモコしたコートを着ていましたね(笑)。何者なんだろうと思いながら会いに行きました。僕は人と会うのが好きで、呼ばれたら行くというスタンス。福祉の枠を超えた形で、“無関心を関心に変えていきたい”という思いがあるので、景翔さんにはいつも背中を押されています。僕の経験はたしかに辛いものでしたが、悲しいもので終わらせたくありません。Youtubeで自分の経験や活動を発信しているのも、一見無関係な人たちにも、半径5メートルの日常の世界に目を向けてほしいからなんです。

河西:都会はなかなかSOSを出せない人も多いのと同じように、われ関せずと見守ってしまう人も多いですよね。先日、電車で “子どもを助けたいので困っていたら声をかけてください”と書いたバッジを身に付けた18歳前後の女性を見かけました。そういうものがないと動けない社会ってどうなの?という人もいるかもしれませんが、都会においては有効かもしれない、と。この支援の仕方、いいなって思いました。

「人生をリスタートするタイミングに立ち会っている」

WWD:クローバーハウスには主にどのような人が訪れている?

ブローハン:クローバーハウスは埼玉県の児童福祉事業の一つで、児童養護施設(里親、児童自立施設なども含む)を退所した18歳〜30歳前後の人が利用しています。退所後にスムーズに社会に溶け込める人ばかりではなく、施設出身者がシングルマザーとなり子どもをまた施設に預けることになってしまった、妊娠をした、ホームレスになったなどさまざまな事情があり、児童養護施設を介してここへたどり着きます。また、クローバーハウスを拠り所としてくれ、社会へ出たあとも定期的に顔を見せに来てくれる人もいます。利用者が似た状況で困っている友人を紹介してくれるケースもありますね。

WWD:具体的にどのような支援を行っているのか?

ブローハン:スーツや食料、生活必需品、普通運転免許取得のほか、自立支援や就職支援、居住支援など生活全般の支援を行っています。今ではプレッセのように応援してくださる人が増え、支援の輪が広がっています。コスメは初めていただきましたが、施設退所後に就職活動に向かう際にも、心を満たす意味でも大切なものなのだと実感しました。

WWD:18歳で児童養護施設を退所した後に、苦労する人も多いという話も耳にする。

ブローハン:その理由に、高齢児保護が増えてきていることがあると思います。以前は乳幼児期に児童養護施設で預かり、長い年月をかけて職員さんと信頼関係を築きながら成長していくケースがほとんどでしたが、最近は16、17歳でようやく保護されるケースが増えています。心がズタボロの状態で施設へやってきて、初めて衣食住が整う空間で暮らすことができても、18歳までには出なければなりません。虐待を受けた子たちが回復するには、その年月の6倍の時間を要すると言われている中で、時間があまりにも足りない。それまで普通のことを普通に体験してこられなかった子たちが、18歳になってすぐ社会に順応できないことは想像にあまりあると思います。隣の人の手が上がるだけでも反応してしまう、男性を見るだけでも震える、人の顔色を伺ってしまうなど、つまずき方は人それぞれ。僕はクローバーハウスにたどり着いた人と少しずつ会話を深めて、SOSにつながる瞬間を見ています.

WWD:ブローハンさんは、どのような思いを大切に皆さんと向き合っているのか?

ブローハン:いつでも戻ってこられる“居場所である”と伝えたい。クローバーハウスを自分の居場所として利用する人、ここを出発点に次の場所へ進む人、彼氏ができて失敗して戻ってくる人……。どんな状況であれ、自分の人生をリスタートしようとしている子たちと一緒に並走したいと思っています。そして、洋服やコスメを自分で選び、受け取ることは、生まれ変わる瞬間に立ち会えるということ。18歳、19歳というのは、大人になりきれない中途半端さと共にいる難しい時期です。本人たちにとってはじれったい時間かもしれませんが、揺れていた気持ちが自信に変わる瞬間を僕は何度も見ています。コスメは、そのリスタートの大きなきっかけになっていることを今回お伝えしたいと思いました。

WWD:今後、必要なことは?

ブローハン: 細く長く付き合う関係性をたくさん増やしたい。その中で、可能性と選択肢を増やしていきたいんです。先日、プレッセの皆さんがクローバーハウスへ来てくれました。利用者の皆は初めて、届く物にも誰かの思いが乗っていることに触れられたと思います。僕が向き合っている若者たちにとって、選択肢はとても大切です。自分たちを見てくれている人がちゃんと居るんだ、ということを実感できる機会をこれからもつくりたい。その安心感は、自分の人生を主人公として生きることにつながっていくと思います。

WWD:将来、化粧品に携わる仕事をしたいという人がいるかもしれない。

千田:それほどうれしいことはないですね。

ブローハン:それこそ仕事している姿を見てほしいです。家庭から出たことがない子どもたちも多いので、いろんな大人を見るという意味では、仕事をして社会で生きていくこと、人と人の掛け算で仕事が成り立つこと、その姿を見られるというのは視野を広げてくれるはずです。

パフォーマンスではなく、本当に必要な人に届けるべき

WWD:コスメにはどんな力があると感じる?

ブローハン:着の身着のまま沖縄から逃げて来た女の子が、クローバーハウスで洋服やコスメに触れる中で、こんなに人って変わるんだと驚きました。自分の瞳を隠していたカラコンを外して素顔に近づき、自分らしくなれたというか。コスメについては全く無知でしたが、この半年間で変わる力を実感しています。

千田:笑顔にさせることができるんだと改めて感じます。私自身、日々ビジネスとして当たり前のように触れていたので、お手紙から溢れる“使えてうれしい”という純粋な気持ちを知り、この支援を続けたいと強く思いました。

河西:先日、子ども食堂で母親向けのメイクレッスンイベントを行なったんです。その時に一番すごいと感じたのは、コスメのホスピタリティ。子ども食堂では、不登校の子たちがスタッフとして手伝ってくれているのですが、今回のイベントにお母さんと一緒に参加してくれた子がいました。メイクでお母さんがきれいになっていく様子を見て、初めは部屋のすみっこの方にいた子が前へ出てきて、お母さんの眉毛を描いてあげたんですね。それを施設長が見て、「あの子はここへ来ても影に隠れていたけれど、今日は自分が出せたんだと思う。自分がメイクをするんじゃなくて、お母さんをきれいにしてあげようという、その気持ちがうれしい」という言葉を聞いたときに、コスメには人を癒す力があると思いました。

WWD:コロナ禍以前に比べて、支援を必要とする人が増え、ボランティアで活動を行う支援する側が疲弊してしまうという現状もあると聞く。

河西:企業の協賛が多い富裕層へ向けたエシカルイベントはたくさんあるんです。ブローハンさんの言葉を借りると、関心を無関心に変えるきっかけになるので、素晴らしい取り組みだとは思います。けれど、みんなで一緒に育つ社会を目指すのであれば、貧困で悩む人たちにも手を差し伸べることが必要ですよね。例えば、コスメを絵の具に変えてアートを描くという取り組みは、いい思い出にはなる。けれど、使えるコスメを必要な方へ提供したらコスメとしてちゃんと使ってもらえます。提供してもらった人たちにとっては、その時の喜びだけでなく、未来への可能性へつながっていくわけです。誰かが手を差し伸べて助けてくれたという事実があるだけで、未来が全然違うと思うんです。

WWD:エコ、エシカル、SDGs……全て、継続していくべき命題。コスメ業界で考えると、“作ること”全体の話にもなっていくかもしれない。

河西:ファッションイベントでそれらのテーマを掲げていても、裏を返すと何も行われていないこともあります。ジュンから今秋ローンチされる「リ アッシュ」は面白いですよ。循環型ファッションプロジェクトで、リメイクを通して捨てられてしまう洋服に価値を生みながら社会問題にも取り組む試み。貧困層の子どもたちは服を買えない現状がありますが、リメイクすれば洋服は着られる、足した丈だってむしろおしゃれという新たな価値観を作ってくれると思います。コスメもゼロからイチを生み出すばかりではなく、今あるものに“本来の役割”を残した上で使うことを業界全体で考えていけたら、本当に必要な人たちへの支援になると僕は思います。

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PR会社プレッセが余剰コスメを児童養護施設出身者に提供 コスメがつなぐ未来とは<前編>

千田尚美/プレッセ取締役 プロフィール

(せんだ・なおみ):経営に関わりながらオーガニックコスメやドクターズコスメ、美容機器までさまざまな人気ブランドのPRを担当。近年は社会福祉イベントへの協賛や今回紹介する支援など、メディアコミュニケーション以外の視点からも、コスメを介した活動に積極的に参加する

ブローハン聡/一般社団法人コンパスナビ事務局長・支援事業部 部長代理 プロフィール

(ぶろーはん・さとし):フィリピン人の母、日本人の父の間に婚外子として生まれる。4歳から母の結婚相手(義父)から虐待を受け、11歳のときに保護され児童養護施設へ。施設卒園後は病院の看護助手、携帯電話販売ショップなどで働く一方、フリーのモデル・タレントとして活動。現在は埼玉県の一般社団法人コンパスナビで児童養護施設退所者のアフターケア事業(クローバーハウス)に携わる。また児童養護施設出身者として、講演やYoutubeの配信など当事者活動を行う

河西景翔/子育てアドバイザー プロフィール

(かわにし・けいと):小学生の頃から保育士を志し、中学生からは保育園でのボランティア活動に参加。2002年に保育士・幼稚園教諭の資格を取得。保育士・幼稚園教諭として15年以上保育の現場で働く。現在は、子育てアドバイザー・保育環境アドバイザーとして保育の現場とも関わりながら、子どものみならず、保護者支援にも注力。“育児も保育もファッションも男女の境はない、ジェンダーレスな社会づくり”を目指し、SNSやウエブなどで日々発信をする

コスメブランドのマーケティング、ブランディング、宣伝を担うPR会社には、各ブランドからPR用のコスメサンプルが届く。それらは主にメディアへの貸し出しや美容業界関係者へ配布されるが、消費しきれないまま新品のまま残ってしまう現状がある。美容業界特化型のPR会社プレッセは、今春からそれら余剰のPR用サンプルを児童養護施設出身者への支援へつなげている。今回は千田尚美プレッセ取締役、余剰コスメの届け先で児童養護施設出身者のアフターケア事業「クローバーハウス」運営に携わるブローハン聡氏、ジェンダーレスな社会を目指す子育てアドバイザーであり両社の架け橋となった河西景翔氏による鼎談を行った。業界の現状を知るとともに、コスメの可能性について探る。

20代の若手社員たちが声を上げ、支援事業が動き出した

WWD:プレッセにおける余剰サンプルの現状は?

千田尚美プレッセ取締役(以下、千田):弊社は約30社のPRを担当しているので、ヘアケア、スキンケア、ファンデーション、カラーメイクなどメディアへの貸し出しから戻った商品は1カ月間で段ボール何箱分にもなります。各ブランドが一度倉庫から出庫した商品は市場へは出せないため、弊社が預かるのです。ブランドのご好意でわれわれが実際に使わせてもらうことで商品探求へ生かしていますがそれでもかなりの量が残ってしまうのが現状。最終的に破棄することが20年ほど続いていましたが、昨年ようやく社内で具体的な話し合いが始まりました。

WWD:昨年動き出したのは、何かきっかけがあった?

千田:“寄付してどなたかに使ってもらいたい”思いはあったものの、支援先に当てがなく、ブランド側のリスクとしては転売問題がありました。弊社もこの問題を解決する手立てがなく長年破棄せざるを得ませんでした。しかし昨年、20代の社員たちが「どうにかしたい」という声を改めて上げてくれ、今動かなければと。そこで今年1月にイベントでお会いした河西さんに、余剰サンプルをどこかへ寄付できないかと相談しました。

河西景翔・保育アドバイザー(以下、河西):そうでしたね。大阪の育児放棄事件が題材となった映画「子宮に沈める」の公開から10年が経ち、改めて作品と向き合おうというイベントが行われたんです。プレッセはこのイベントに協賛してくださり、ちょうど参加していたブローハンさんを紹介しました。彼が支援しているのは、主に児童養護施設を出た18歳以上の人たちなので、コスメが必要な機会が訪れるはずだと思って。

千田:中学生や高校生にメイクを推奨しないブランドもある中で、全ての条件がぴたりとはまりました。早速ブローハンさんに、サンプルを受け取ってもらえないか聞いたところ、ぜひ受け取らせてください!と。その後すぐにヘアケア、スキンケア、カラーコスメなど約20人分の量を詰めてクローバーハウスへお送りしたんです。

ブローハン聡コンパスナビ事務局長・支援事業部 部長代理(以下、ブローハン):コスメが届いた時の喜びといったらなかったですね。事務所に支援が届くと、利用者登録をしているみなさんにオフィシャルラインで共有するのですが、その日は平日にもかかわらずたくさんの人が来てくれました。

WWD:各ブランドへはどう説明し、どのような反応があったのか?

千田:実は初回は、相談レベルでお話できるブランドのみを送りました。何より受け取られる方の反応を知りたかったんです。結果、懸念していた転売はありませんでしたし、当然SNSに投稿されることもなかった。これは本当に使ってくださっているんだと思っていたところに、「こんなにかわいい化粧品は今まで使ったことがなかったからうれしい」とお礼の手紙をいただいて。お送りしてよかったと思うと同時に、活動を続けなければと思いました。手紙を持って各ブランドへ支援活動の説明に伺うと、ネガティブな声はほぼなく、ぜひ活動に生かしてくださいと言ってくださいました。それから平均して月に1度、余剰のPRサンプルをお送りしています。

WWD:支援活動を始めて半年。感じている課題は?

千田:現在はクローバーハウスと直接のやりとりですし、ブローハンさんが来所者と信頼関係性を築いているのを見ているので、安心して商品をお渡しできます。けれど今後、支援活動が広がったときに、万が一転売サイトへ出されたとしても追うことはできません。また、大量に送りすぎると迷惑をかけてしまうのではという懸念もある。いずれの場合も、コミュニケーションを怠らずに最適な方法を都度考えたいです。活動が広がることはわれわれの願いでもあります。社内できちんと担当化して活動の大きな柱として構えられたら、弊社の担当外のブランドさんへもお声がけしたいですね。そして何より、PRサンプルで行っている活動なので旬なアイテムをお送りしたい。楽しんで使ってもらえたら、これほどうれしいことはありません。

無関心を関心へ。他人事から自分ごとへ。

WWD:河西さんとブローハンさんはどのようにつながったのか?

河西:2020年に、ブローハンさんの新聞記事を読んで僕からコンタクトを取ったんです。児童養護施設についてもっと知りたいと思っていた時に、彼の存在と活動を知って。自分の志ともすごく似ていたので、すぐに意気投合しました。

ブローハン:景翔さんは、オレンジのモコモコしたコートを着ていましたね(笑)。何者なんだろうと思いながら会いに行きました。僕は人と会うのが好きで、呼ばれたら行くというスタンス。福祉の枠を超えた形で、“無関心を関心に変えていきたい”という思いがあるので、景翔さんにはいつも背中を押されています。僕の経験はたしかに辛いものでしたが、悲しいもので終わらせたくありません。Youtubeで自分の経験や活動を発信しているのも、一見無関係な人たちにも、半径5メートルの日常の世界に目を向けてほしいからなんです。

河西:都会はなかなかSOSを出せない人も多いのと同じように、われ関せずと見守ってしまう人も多いですよね。先日、電車で “子どもを助けたいので困っていたら声をかけてください”と書いたバッジを身に付けた18歳前後の女性を見かけました。そういうものがないと動けない社会ってどうなの?という人もいるかもしれませんが、都会においては有効かもしれない、と。この支援の仕方、いいなって思いました。

「人生をリスタートするタイミングに立ち会っている」

WWD:クローバーハウスには主にどのような人が訪れている?

ブローハン:クローバーハウスは埼玉県の児童福祉事業の一つで、児童養護施設(里親、児童自立施設なども含む)を退所した18歳〜30歳前後の人が利用しています。退所後にスムーズに社会に溶け込める人ばかりではなく、施設出身者がシングルマザーとなり子どもをまた施設に預けることになってしまった、妊娠をした、ホームレスになったなどさまざまな事情があり、児童養護施設を介してここへたどり着きます。また、クローバーハウスを拠り所としてくれ、社会へ出たあとも定期的に顔を見せに来てくれる人もいます。利用者が似た状況で困っている友人を紹介してくれるケースもありますね。

WWD:具体的にどのような支援を行っているのか?

ブローハン:スーツや食料、生活必需品、普通運転免許取得のほか、自立支援や就職支援、居住支援など生活全般の支援を行っています。今ではプレッセのように応援してくださる人が増え、支援の輪が広がっています。コスメは初めていただきましたが、施設退所後に就職活動に向かう際にも、心を満たす意味でも大切なものなのだと実感しました。

WWD:18歳で児童養護施設を退所した後に、苦労する人も多いという話も耳にする。

ブローハン:その理由に、高齢児保護が増えてきていることがあると思います。以前は乳幼児期に児童養護施設で預かり、長い年月をかけて職員さんと信頼関係を築きながら成長していくケースがほとんどでしたが、最近は16、17歳でようやく保護されるケースが増えています。心がズタボロの状態で施設へやってきて、初めて衣食住が整う空間で暮らすことができても、18歳までには出なければなりません。虐待を受けた子たちが回復するには、その年月の6倍の時間を要すると言われている中で、時間があまりにも足りない。それまで普通のことを普通に体験してこられなかった子たちが、18歳になってすぐ社会に順応できないことは想像にあまりあると思います。隣の人の手が上がるだけでも反応してしまう、男性を見るだけでも震える、人の顔色を伺ってしまうなど、つまずき方は人それぞれ。僕はクローバーハウスにたどり着いた人と少しずつ会話を深めて、SOSにつながる瞬間を見ています.

WWD:ブローハンさんは、どのような思いを大切に皆さんと向き合っているのか?

ブローハン:いつでも戻ってこられる“居場所である”と伝えたい。クローバーハウスを自分の居場所として利用する人、ここを出発点に次の場所へ進む人、彼氏ができて失敗して戻ってくる人……。どんな状況であれ、自分の人生をリスタートしようとしている子たちと一緒に並走したいと思っています。そして、洋服やコスメを自分で選び、受け取ることは、生まれ変わる瞬間に立ち会えるということ。18歳、19歳というのは、大人になりきれない中途半端さと共にいる難しい時期です。本人たちにとってはじれったい時間かもしれませんが、揺れていた気持ちが自信に変わる瞬間を僕は何度も見ています。コスメは、そのリスタートの大きなきっかけになっていることを今回お伝えしたいと思いました。

WWD:今後、必要なことは?

ブローハン: 細く長く付き合う関係性をたくさん増やしたい。その中で、可能性と選択肢を増やしていきたいんです。先日、プレッセの皆さんがクローバーハウスへ来てくれました。利用者の皆は初めて、届く物にも誰かの思いが乗っていることに触れられたと思います。僕が向き合っている若者たちにとって、選択肢はとても大切です。自分たちを見てくれている人がちゃんと居るんだ、ということを実感できる機会をこれからもつくりたい。その安心感は、自分の人生を主人公として生きることにつながっていくと思います。

WWD:将来、化粧品に携わる仕事をしたいという人がいるかもしれない。

千田:それほどうれしいことはないですね。

ブローハン:それこそ仕事している姿を見てほしいです。家庭から出たことがない子どもたちも多いので、いろんな大人を見るという意味では、仕事をして社会で生きていくこと、人と人の掛け算で仕事が成り立つこと、その姿を見られるというのは視野を広げてくれるはずです。

パフォーマンスではなく、本当に必要な人に届けるべき

WWD:コスメにはどんな力があると感じる?

ブローハン:着の身着のまま沖縄から逃げて来た女の子が、クローバーハウスで洋服やコスメに触れる中で、こんなに人って変わるんだと驚きました。自分の瞳を隠していたカラコンを外して素顔に近づき、自分らしくなれたというか。コスメについては全く無知でしたが、この半年間で変わる力を実感しています。

千田:笑顔にさせることができるんだと改めて感じます。私自身、日々ビジネスとして当たり前のように触れていたので、お手紙から溢れる“使えてうれしい”という純粋な気持ちを知り、この支援を続けたいと強く思いました。

河西:先日、子ども食堂で母親向けのメイクレッスンイベントを行なったんです。その時に一番すごいと感じたのは、コスメのホスピタリティ。子ども食堂では、不登校の子たちがスタッフとして手伝ってくれているのですが、今回のイベントにお母さんと一緒に参加してくれた子がいました。メイクでお母さんがきれいになっていく様子を見て、初めは部屋のすみっこの方にいた子が前へ出てきて、お母さんの眉毛を描いてあげたんですね。それを施設長が見て、「あの子はここへ来ても影に隠れていたけれど、今日は自分が出せたんだと思う。自分がメイクをするんじゃなくて、お母さんをきれいにしてあげようという、その気持ちがうれしい」という言葉を聞いたときに、コスメには人を癒す力があると思いました。

WWD:コロナ禍以前に比べて、支援を必要とする人が増え、ボランティアで活動を行う支援する側が疲弊してしまうという現状もあると聞く。

河西:企業の協賛が多い富裕層へ向けたエシカルイベントはたくさんあるんです。ブローハンさんの言葉を借りると、関心を無関心に変えるきっかけになるので、素晴らしい取り組みだとは思います。けれど、みんなで一緒に育つ社会を目指すのであれば、貧困で悩む人たちにも手を差し伸べることが必要ですよね。例えば、コスメを絵の具に変えてアートを描くという取り組みは、いい思い出にはなる。けれど、使えるコスメを必要な方へ提供したらコスメとしてちゃんと使ってもらえます。提供してもらった人たちにとっては、その時の喜びだけでなく、未来への可能性へつながっていくわけです。誰かが手を差し伸べて助けてくれたという事実があるだけで、未来が全然違うと思うんです。

WWD:エコ、エシカル、SDGs……全て、継続していくべき命題。コスメ業界で考えると、“作ること”全体の話にもなっていくかもしれない。

河西:ファッションイベントでそれらのテーマを掲げていても、裏を返すと何も行われていないこともあります。ジュンから今秋ローンチされる「リ アッシュ」は面白いですよ。循環型ファッションプロジェクトで、リメイクを通して捨てられてしまう洋服に価値を生みながら社会問題にも取り組む試み。貧困層の子どもたちは服を買えない現状がありますが、リメイクすれば洋服は着られる、足した丈だってむしろおしゃれという新たな価値観を作ってくれると思います。コスメもゼロからイチを生み出すばかりではなく、今あるものに“本来の役割”を残した上で使うことを業界全体で考えていけたら、本当に必要な人たちへの支援になると僕は思います。

The post PR会社プレッセが余剰コスメを児童養護施設出身者に提供 コスメがつなぐ未来とは<前編> appeared first on WWDJAPAN.

PR会社プレッセが余剰コスメを児童養護施設出身者に提供 コスメがつなぐ未来とは<前編>

千田尚美/プレッセ取締役 プロフィール

(せんだ・なおみ):経営に関わりながらオーガニックコスメやドクターズコスメ、美容機器までさまざまな人気ブランドのPRを担当。近年は社会福祉イベントへの協賛や今回紹介する支援など、メディアコミュニケーション以外の視点からも、コスメを介した活動に積極的に参加する

ブローハン聡/一般社団法人コンパスナビ事務局長・支援事業部 部長代理 プロフィール

(ぶろーはん・さとし):フィリピン人の母、日本人の父の間に婚外子として生まれる。4歳から母の結婚相手(義父)から虐待を受け、11歳のときに保護され児童養護施設へ。施設卒園後は病院の看護助手、携帯電話販売ショップなどで働く一方、フリーのモデル・タレントとして活動。現在は埼玉県の一般社団法人コンパスナビで児童養護施設退所者のアフターケア事業(クローバーハウス)に携わる。また児童養護施設出身者として、講演やYoutubeの配信など当事者活動を行う

河西景翔/子育てアドバイザー プロフィール

(かわにし・けいと):小学生の頃から保育士を志し、中学生からは保育園でのボランティア活動に参加。2002年に保育士・幼稚園教諭の資格を取得。保育士・幼稚園教諭として15年以上保育の現場で働く。現在は、子育てアドバイザー・保育環境アドバイザーとして保育の現場とも関わりながら、子どものみならず、保護者支援にも注力。“育児も保育もファッションも男女の境はない、ジェンダーレスな社会づくり”を目指し、SNSやウエブなどで日々発信をする

コスメブランドのマーケティング、ブランディング、宣伝を担うPR会社には、各ブランドからPR用のコスメサンプルが届く。それらは主にメディアへの貸し出しや美容業界関係者へ配布されるが、消費しきれないまま新品のまま残ってしまう現状がある。美容業界特化型のPR会社プレッセは、今春からそれら余剰のPR用サンプルを児童養護施設出身者への支援へつなげている。今回は千田尚美プレッセ取締役、余剰コスメの届け先で児童養護施設出身者のアフターケア事業「クローバーハウス」運営に携わるブローハン聡氏、ジェンダーレスな社会を目指す子育てアドバイザーであり両社の架け橋となった河西景翔氏による鼎談を行った。業界の現状を知るとともに、コスメの可能性について探る。

20代の若手社員たちが声を上げ、支援事業が動き出した

WWD:プレッセにおける余剰サンプルの現状は?

千田尚美プレッセ取締役(以下、千田):弊社は約30社のPRを担当しているので、ヘアケア、スキンケア、ファンデーション、カラーメイクなどメディアへの貸し出しから戻った商品は1カ月間で段ボール何箱分にもなります。各ブランドが一度倉庫から出庫した商品は市場へは出せないため、弊社が預かるのです。ブランドのご好意でわれわれが実際に使わせてもらうことで商品探求へ生かしていますがそれでもかなりの量が残ってしまうのが現状。最終的に破棄することが20年ほど続いていましたが、昨年ようやく社内で具体的な話し合いが始まりました。

WWD:昨年動き出したのは、何かきっかけがあった?

千田:“寄付してどなたかに使ってもらいたい”思いはあったものの、支援先に当てがなく、ブランド側のリスクとしては転売問題がありました。弊社もこの問題を解決する手立てがなく長年破棄せざるを得ませんでした。しかし昨年、20代の社員たちが「どうにかしたい」という声を改めて上げてくれ、今動かなければと。そこで今年1月にイベントでお会いした河西さんに、余剰サンプルをどこかへ寄付できないかと相談しました。

河西景翔・保育アドバイザー(以下、河西):そうでしたね。大阪の育児放棄事件が題材となった映画「子宮に沈める」の公開から10年が経ち、改めて作品と向き合おうというイベントが行われたんです。プレッセはこのイベントに協賛してくださり、ちょうど参加していたブローハンさんを紹介しました。彼が支援しているのは、主に児童養護施設を出た18歳以上の人たちなので、コスメが必要な機会が訪れるはずだと思って。

千田:中学生や高校生にメイクを推奨しないブランドもある中で、全ての条件がぴたりとはまりました。早速ブローハンさんに、サンプルを受け取ってもらえないか聞いたところ、ぜひ受け取らせてください!と。その後すぐにヘアケア、スキンケア、カラーコスメなど約20人分の量を詰めてクローバーハウスへお送りしたんです。

ブローハン聡コンパスナビ事務局長・支援事業部 部長代理(以下、ブローハン):コスメが届いた時の喜びといったらなかったですね。事務所に支援が届くと、利用者登録をしているみなさんにオフィシャルラインで共有するのですが、その日は平日にもかかわらずたくさんの人が来てくれました。

WWD:各ブランドへはどう説明し、どのような反応があったのか?

千田:実は初回は、相談レベルでお話できるブランドのみを送りました。何より受け取られる方の反応を知りたかったんです。結果、懸念していた転売はありませんでしたし、当然SNSに投稿されることもなかった。これは本当に使ってくださっているんだと思っていたところに、「こんなにかわいい化粧品は今まで使ったことがなかったからうれしい」とお礼の手紙をいただいて。お送りしてよかったと思うと同時に、活動を続けなければと思いました。手紙を持って各ブランドへ支援活動の説明に伺うと、ネガティブな声はほぼなく、ぜひ活動に生かしてくださいと言ってくださいました。それから平均して月に1度、余剰のPRサンプルをお送りしています。

WWD:支援活動を始めて半年。感じている課題は?

千田:現在はクローバーハウスと直接のやりとりですし、ブローハンさんが来所者と信頼関係性を築いているのを見ているので、安心して商品をお渡しできます。けれど今後、支援活動が広がったときに、万が一転売サイトへ出されたとしても追うことはできません。また、大量に送りすぎると迷惑をかけてしまうのではという懸念もある。いずれの場合も、コミュニケーションを怠らずに最適な方法を都度考えたいです。活動が広がることはわれわれの願いでもあります。社内できちんと担当化して活動の大きな柱として構えられたら、弊社の担当外のブランドさんへもお声がけしたいですね。そして何より、PRサンプルで行っている活動なので旬なアイテムをお送りしたい。楽しんで使ってもらえたら、これほどうれしいことはありません。

無関心を関心へ。他人事から自分ごとへ。

WWD:河西さんとブローハンさんはどのようにつながったのか?

河西:2020年に、ブローハンさんの新聞記事を読んで僕からコンタクトを取ったんです。児童養護施設についてもっと知りたいと思っていた時に、彼の存在と活動を知って。自分の志ともすごく似ていたので、すぐに意気投合しました。

ブローハン:景翔さんは、オレンジのモコモコしたコートを着ていましたね(笑)。何者なんだろうと思いながら会いに行きました。僕は人と会うのが好きで、呼ばれたら行くというスタンス。福祉の枠を超えた形で、“無関心を関心に変えていきたい”という思いがあるので、景翔さんにはいつも背中を押されています。僕の経験はたしかに辛いものでしたが、悲しいもので終わらせたくありません。Youtubeで自分の経験や活動を発信しているのも、一見無関係な人たちにも、半径5メートルの日常の世界に目を向けてほしいからなんです。

河西:都会はなかなかSOSを出せない人も多いのと同じように、われ関せずと見守ってしまう人も多いですよね。先日、電車で “子どもを助けたいので困っていたら声をかけてください”と書いたバッジを身に付けた18歳前後の女性を見かけました。そういうものがないと動けない社会ってどうなの?という人もいるかもしれませんが、都会においては有効かもしれない、と。この支援の仕方、いいなって思いました。

「人生をリスタートするタイミングに立ち会っている」

WWD:クローバーハウスには主にどのような人が訪れている?

ブローハン:クローバーハウスは埼玉県の児童福祉事業の一つで、児童養護施設(里親、児童自立施設なども含む)を退所した18歳〜30歳前後の人が利用しています。退所後にスムーズに社会に溶け込める人ばかりではなく、施設出身者がシングルマザーとなり子どもをまた施設に預けることになってしまった、妊娠をした、ホームレスになったなどさまざまな事情があり、児童養護施設を介してここへたどり着きます。また、クローバーハウスを拠り所としてくれ、社会へ出たあとも定期的に顔を見せに来てくれる人もいます。利用者が似た状況で困っている友人を紹介してくれるケースもありますね。

WWD:具体的にどのような支援を行っているのか?

ブローハン:スーツや食料、生活必需品、普通運転免許取得のほか、自立支援や就職支援、居住支援など生活全般の支援を行っています。今ではプレッセのように応援してくださる人が増え、支援の輪が広がっています。コスメは初めていただきましたが、施設退所後に就職活動に向かう際にも、心を満たす意味でも大切なものなのだと実感しました。

WWD:18歳で児童養護施設を退所した後に、苦労する人も多いという話も耳にする。

ブローハン:その理由に、高齢児保護が増えてきていることがあると思います。以前は乳幼児期に児童養護施設で預かり、長い年月をかけて職員さんと信頼関係を築きながら成長していくケースがほとんどでしたが、最近は16、17歳でようやく保護されるケースが増えています。心がズタボロの状態で施設へやってきて、初めて衣食住が整う空間で暮らすことができても、18歳までには出なければなりません。虐待を受けた子たちが回復するには、その年月の6倍の時間を要すると言われている中で、時間があまりにも足りない。それまで普通のことを普通に体験してこられなかった子たちが、18歳になってすぐ社会に順応できないことは想像にあまりあると思います。隣の人の手が上がるだけでも反応してしまう、男性を見るだけでも震える、人の顔色を伺ってしまうなど、つまずき方は人それぞれ。僕はクローバーハウスにたどり着いた人と少しずつ会話を深めて、SOSにつながる瞬間を見ています.

WWD:ブローハンさんは、どのような思いを大切に皆さんと向き合っているのか?

ブローハン:いつでも戻ってこられる“居場所である”と伝えたい。クローバーハウスを自分の居場所として利用する人、ここを出発点に次の場所へ進む人、彼氏ができて失敗して戻ってくる人……。どんな状況であれ、自分の人生をリスタートしようとしている子たちと一緒に並走したいと思っています。そして、洋服やコスメを自分で選び、受け取ることは、生まれ変わる瞬間に立ち会えるということ。18歳、19歳というのは、大人になりきれない中途半端さと共にいる難しい時期です。本人たちにとってはじれったい時間かもしれませんが、揺れていた気持ちが自信に変わる瞬間を僕は何度も見ています。コスメは、そのリスタートの大きなきっかけになっていることを今回お伝えしたいと思いました。

WWD:今後、必要なことは?

ブローハン: 細く長く付き合う関係性をたくさん増やしたい。その中で、可能性と選択肢を増やしていきたいんです。先日、プレッセの皆さんがクローバーハウスへ来てくれました。利用者の皆は初めて、届く物にも誰かの思いが乗っていることに触れられたと思います。僕が向き合っている若者たちにとって、選択肢はとても大切です。自分たちを見てくれている人がちゃんと居るんだ、ということを実感できる機会をこれからもつくりたい。その安心感は、自分の人生を主人公として生きることにつながっていくと思います。

WWD:将来、化粧品に携わる仕事をしたいという人がいるかもしれない。

千田:それほどうれしいことはないですね。

ブローハン:それこそ仕事している姿を見てほしいです。家庭から出たことがない子どもたちも多いので、いろんな大人を見るという意味では、仕事をして社会で生きていくこと、人と人の掛け算で仕事が成り立つこと、その姿を見られるというのは視野を広げてくれるはずです。

パフォーマンスではなく、本当に必要な人に届けるべき

WWD:コスメにはどんな力があると感じる?

ブローハン:着の身着のまま沖縄から逃げて来た女の子が、クローバーハウスで洋服やコスメに触れる中で、こんなに人って変わるんだと驚きました。自分の瞳を隠していたカラコンを外して素顔に近づき、自分らしくなれたというか。コスメについては全く無知でしたが、この半年間で変わる力を実感しています。

千田:笑顔にさせることができるんだと改めて感じます。私自身、日々ビジネスとして当たり前のように触れていたので、お手紙から溢れる“使えてうれしい”という純粋な気持ちを知り、この支援を続けたいと強く思いました。

河西:先日、子ども食堂で母親向けのメイクレッスンイベントを行なったんです。その時に一番すごいと感じたのは、コスメのホスピタリティ。子ども食堂では、不登校の子たちがスタッフとして手伝ってくれているのですが、今回のイベントにお母さんと一緒に参加してくれた子がいました。メイクでお母さんがきれいになっていく様子を見て、初めは部屋のすみっこの方にいた子が前へ出てきて、お母さんの眉毛を描いてあげたんですね。それを施設長が見て、「あの子はここへ来ても影に隠れていたけれど、今日は自分が出せたんだと思う。自分がメイクをするんじゃなくて、お母さんをきれいにしてあげようという、その気持ちがうれしい」という言葉を聞いたときに、コスメには人を癒す力があると思いました。

WWD:コロナ禍以前に比べて、支援を必要とする人が増え、ボランティアで活動を行う支援する側が疲弊してしまうという現状もあると聞く。

河西:企業の協賛が多い富裕層へ向けたエシカルイベントはたくさんあるんです。ブローハンさんの言葉を借りると、関心を無関心に変えるきっかけになるので、素晴らしい取り組みだとは思います。けれど、みんなで一緒に育つ社会を目指すのであれば、貧困で悩む人たちにも手を差し伸べることが必要ですよね。例えば、コスメを絵の具に変えてアートを描くという取り組みは、いい思い出にはなる。けれど、使えるコスメを必要な方へ提供したらコスメとしてちゃんと使ってもらえます。提供してもらった人たちにとっては、その時の喜びだけでなく、未来への可能性へつながっていくわけです。誰かが手を差し伸べて助けてくれたという事実があるだけで、未来が全然違うと思うんです。

WWD:エコ、エシカル、SDGs……全て、継続していくべき命題。コスメ業界で考えると、“作ること”全体の話にもなっていくかもしれない。

河西:ファッションイベントでそれらのテーマを掲げていても、裏を返すと何も行われていないこともあります。ジュンから今秋ローンチされる「リ アッシュ」は面白いですよ。循環型ファッションプロジェクトで、リメイクを通して捨てられてしまう洋服に価値を生みながら社会問題にも取り組む試み。貧困層の子どもたちは服を買えない現状がありますが、リメイクすれば洋服は着られる、足した丈だってむしろおしゃれという新たな価値観を作ってくれると思います。コスメもゼロからイチを生み出すばかりではなく、今あるものに“本来の役割”を残した上で使うことを業界全体で考えていけたら、本当に必要な人たちへの支援になると僕は思います。

The post PR会社プレッセが余剰コスメを児童養護施設出身者に提供 コスメがつなぐ未来とは<前編> appeared first on WWDJAPAN.

山の日直前! 日本発アウトドアブランド「ティートンブロス」に聞く徹底現場主義なモノ作り

明日8月11日は「山の日」。台風上陸前を狙って、登山予定を立てている人も多いのでは?登山はゴルフと同様にコロナ禍中に若返りが進み、若い登山客を中心に支持を集める新興アウトドアブランドが増えている。「WWDJAPAN」5月8日号の“登山特集”で取り上げた「山と道」が代表格だが、こちらも頻繁に山で着用者を見かけるのが、日本発の「ティートンブロス(TETON BROS.)」だ。山好きなら、フロントファスナーが斜めに走るシェル“ツルギジャケット”のブランドだと聞けば分かるはず。同ブランドの鈴木紀行社長に話を聞いた。

WWD:夏山で「ティートンブロス」の“ツルギライトジャケット”やウィンドブレーカーの着用者を見かける機会が増えている。ブランドのオリジンは冬山だが、そもそもどんな経緯でブランドを始めたのか。

鈴木紀行ティートンブロス社長(以下、鈴木):サッカーの実業団選手を目指して体育大学に進学しましたが、ケガもあって卒業後は体育教師になろうと思っていました。でも教育実習に行ってみると、日本の教え方にはどうにも納得ができない。それで、たまたま米国のワイオミング州の会社がアウトドアインストラクターを募集しているのを見つけて、行ってみたのが全ての始まりです。ワイオミング州のジャクソンホールは、世界一急な斜面があるスキーエリア。英語も得意じゃなかったし、スキーも未経験でしたが、そこでスキーを覚えました。

米国には約3年いて、帰国後もアウトドアガイドなどとして働いていました。そんな中、ジャクソンホールで出会った五輪金メダリストスキーヤーTommy Moeを通じて、米国のスキー代表チームのサプライヤーでもあったスキーウエアブランド「スパイダー(SPYDER)」の日本代理店を務めることになったんです。10年間やって、ディストリビューションだけでなくアウトドアカテゴリー(ゲレンデではなく自然の山の中を滑るバックカントリースキー用ウエアなど)の企画も担当させてもらいましたが、ある年、アウトドアカテゴリーが本国の判断で休止しちゃった。情熱を持って打ち込んでいたものを失って、悩んだ末に「だったら自分たちでやろう」と立ち上げたのが「ティートンブロス」です。それが2007年でした。

東レと組んで素材開発

WWD:アウトドアブランドの運営ノウハウは、「スパイダー」の代理店時代に既に身につけていた?

鈴木:「スパイダー」では販売だけでなく商品企画、モノ作りもさせてもらっていたので、ある程度の土台はできていました。ですが、そうは言っても素人です。作りたい製品の最終形は見えていても、どうパターンに落とし込んだらいいのかといったことは分からない。支えてくれたのは仲間たちです。「スパイダー」時代につながっていた北海道のニセコなど、各地のスキー場パトロールやバックカントリーガイドといった山のプロたちが製品開発をサポートしてくれました。「スパイダー」時代の卸先は、実物の製品を見る前からオーダーを入れてくれました。

07年に製品第1弾であるバックカントリー用シェル“TBジャケット”“TBパンツ”を発売しようと思っていましたが、台湾の素材メーカーと組んで開発していた素材が思った通りに仕上がらず、どうしても納得がいかなかった。その年はドロップすることに決め、オーダーしてくれていた店にはおわび行脚です。その次の年から、東レとタッグを組んでの素材開発をスタートしました。

WWD:ポーラテックと組んでいた期間を経て、現行の“TBジャケット”“TBパンツ”には、東レと組んで開発した防風通気素材「タズマ」を採用している。東レというと、「ユニクロ(UNIQLO)」をはじめとした大手ブランドと組んで素材開発をしているイメージが強いが、何の実績もなかったブランド立ち上げの時点で、どうやって東レを説得したのか。

鈴木:東レがなぜうちと組んで素材開発をしてくれているのかは、今も不思議です(笑)。サンプルをキャリーケースに詰めて東レの本社を飛び込みで訪ねて、1階の受付から電話をして「相談に乗ってほしい」と掛け合いました。ブランドや作りたい製品のことを説明したら、「とりあえず少量でもいいので一緒にやってみましょう」と言ってくれた。これは僕の推測ですが、日本発のアウトドアブランドって、規模が大きくて本格的なものは「モンベル(MONT-BELL)」以降出ていません。一方で、海外にオリジンのあるアウトドアブランドは今非常に人気があるし、そういったブランドには東レをはじめとする日本の大手素材メーカーがみな供給している。日本発のアウトドアブランドを応援しようという気持ちなのかもしれません。

あともう1点、これは僕らの強みですが、「ティートンブロス」は製品のフィールドテストを年中行っています。秋冬製品についても、日本が夏の間は南半球にいる仲間に頼んでテストを続けているので、文字通り1年を通して製品についての生の声を集めることができる。現場からのフィードバックを豊富に提供できることは、東レのR&Dにとってもメリットになっているんだと思います。もちろん、(気温や湿度などを人工的に再現・管理した)研究室の中での数値は東レとしても集めていますが、実際に人が山で製品を使ってみて、初めて分かることもある。例えば、マイナス20度まで耐えられる素材だと研究室では出ていても、実際にマイナス20度で着てみたら硬くなりすぎて動きが制限されてしまうといったこともある。僕自身、冬は仲間たちと頻繁に山に入っています。一緒にいると、わざわざメールや電話で伝えてはこないであろうフィードバックもその場で見聞きできる。そんなふうに、自分が現場にいられる体力やスキルは最低限持っていないといけないなと感じています。

WWD:アウトドアブランドにとって、素材は生死にもかかわる重要なもの。話を聞いていても、素材へのこだわりを強く感じるが、「タズマ」は具体的にどんな機能を持っているのか。

鈴木:「タズマ」は防水通気素材です。一般的にシェルジャケットでは透湿防水といった機能をよく耳にすると思いますが、僕らが一番求めているのは透湿性ではなく通気性。透湿性というのは、ある程度生地の内側と外側で湿度に差が出て初めて蒸気を外側に逃すことができますが、通気性は着た瞬間から換気が始まる。“TBジャケット”で想定しているバックカントリースキーやスノーボードでは、山を自分の足で登るので汗をかく。通気性がなければ汗冷えしてしまいます。

「タズマ」は基布もメンブレン(防水通気フィルムのこと)も東レと組んで開発しています。最終的にわれわれが求める素材のスペックは既に東レに伝えていて、それは現段階では到底達成できない耐水圧と通気性のバランスです。日本の素材メーカーはアイデアの引き出しがたくさんあって、「こうしたい」と要望すると、「じゃあこうしましょう」と違う角度からも提案をくれる。海外メーカーと違って新幹線ですぐ見に行けますし、話がすごく早いのは助かっています。

WWD:冬山の話が続いてきたが、“TBジャケット”と共にブランドの看板になっているのが、夏山でも着用者が多いシェルの“ツルギジャケット”(夏用は“ツルギライトジャケット”)だ。販売枚数としては“ツルギジャケット”がブランドで一番多い。

鈴木:“ツルギジャケット”はアイスクライマーである元NATO山岳部隊所属の友人らと、「“TBジャケット”よりももっと軽いシェルがほしい」という考えで開発を始めました。服のパーツで一番重いのはファスナーなので、ファスナーはできるだけ短くしてプルオーバー型にしたい。でも、ファスナーをセンターに配したままで短くすると、着脱に必要な長さが取れない。それで、ベンチレーションも兼ねて斜めに配置することにしました。センターにファスナーがないので、クライミングをしているときに足元がよく見えて動かしやすい。裾のドローコードストッパーはセンターに設置して、クライミングハーネスに干渉しないようにしています。開発過程では、フィールドテストとして友人たちにモンゴルの未踏峰にも“ツルギジャケット”を着て行ってもらいました。ファスナーが斜めに走っていることで、体を捻った姿勢で滑るスノーボーダーからも体が動かしやすいと支持されています。(アイスクライマーというコアな山のプロのために作った製品が、今では一般登山者にも広く着用されているが)どんな製品も多くの人のことを考えて開発するというよりは、われわれがサポートしている山のプロを第一に想定して作っています。F1カーを先に作れば、一般乗用車を作るのは簡単ですから。

「今の規模感がちょうどいい」

WWD:ブランド立ち上げから15年。卸先店舗数は国内270店、海外12店に広がっている。

鈴木:海外は国や地域別にディストリビューターと組んでいて、韓国、台湾、米国、ドイツ、ニュージーランド、オーストラリア、スイス、ノルウェーなどで販売しています。スキーブームの中国からも問い合わせは多いですが、長く組めるパートナーを見つけて、しっかり準備をしてから臨みたい。ブランドとして売上高は公表していませんが、素材メーカーに迷惑をかけない数量を発注できる規模にはなっています。コロナ禍で急激に伸びて今その反動に苦しんでいるアウトドアブランドもありますが、われわれは流動層に向けたブランドでもないし、ここ3年間の売り上げは毎年前年の1.2〜1.3倍と安定しています。

WWD:ブランドとして、今後どう成長していくことを目指しているか。

鈴木:今、春夏と秋冬で各100型前後企画しています。既にさまざまなアウトドアアクティビティーに対応できるラインアップになっているので、型数をさらに増やすよりは、1つ1つクオリティーをさらに高めていきたい。売ることよりも作ることを重視した、ラボのようなあり方がブランドとしては理想です。(新進ブランドに対し、ガレージブランドという表現がアウトドア界隈ではよく使われるが)米国では元々ガレージブランドとして成功したブランドも、一定以上の規模になるとそう呼ばれることを非常に嫌がります。それは、始めた当初とブランドのフィロソフィーは変わらなくても、ある程度の規模に育つとスケールメリットが出せて、昔は使えなかった素材が使えるようになり、適正な価格で販売できるようになったことに誇りを持っているから。ブランドの規模は大きくなりすぎても身動きが取りづらくなりますが、小さいままでは使いたい素材が使えない。僕たちは今、ブランドとしてそのどちらでもない、ちょうどいいポジション。このポジションを維持するためには、少しずつでも、常に製品を進化させていく必要があると思っています。

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「ゲラン」のキーパーソンが語る 「ラグジュアリーはサステナビリティを否定していた」

LVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH MOET HENNESSY LOUIS VUITTON、以下LVMH)傘下の化粧品ブランド「ゲラン(GUERLAIN)」は、同グループ内でサステナビリティの取り組みをけん引する。5月には、原材料の産地からリサイクルまでを閲覧できるトレーサビリティプラットフォーム「ビーリスペクト(BEE RESPECT)」の提供を日本でも開始し、LVMH傘下のラグジュアリービューティブランドとして初となる取り組みを実現した。

「ゲラン」のセシル・ロシャール(Cecile Lochard)チーフ・サステナビリティ・オフィサーは、その活動をリードする存在だ。金融界からキャリアをスタートし、環境系NGOの世界自然保護基金(以下、WWF)やコンサルティング会社の設立を経て、2015年にLVMH傘下のスキンケアブランド「チャリン(CHA LING)」のサステナブル・ディベロップメント&コミュニケーション・ディレクターに就任し化粧品業界へ。ラグジュアリーとサステナビリティの世界を融合させたいとの思いを持つ彼女に、ラグジュアリー産業の課題や「ゲラン」の取り組みの背景を聞いた。

セシル・ロシャール/ゲラン チーフ・サステナビリティ・オフィサー プロフィール

パリ・ドフィーヌ大学でサステナブル・ディベロップメント(持続可能な開発)、エセック・ビジネススクールで営利及び非営利におけるプロジェクトマネジメントのダブルマスターを取得し、金融界でキャリアをスタートする。8年にわたりWWFで企業とのプライベートパートナーシップを管理した後、コンサルティング会社を設立しラグジュアリーブランドのCSR戦略策定に携わる。2015年、LVMH傘下のスキンケアブランド「チャリン」のサステナブル・ディベロップメント&コミュニケーション・ディレクターに就任。19年、生物多様性プログラム&サステナブル・コミュニケーション・マネージャーとしてゲランに入社し、20年9月から現職

ラグジュアリーブランドだけがサステナビリティを拒否していた

WWD:金融会社の投資部門から環境系NGO、ラグジュアリー化粧品などこれまでのキャリアは多岐にわたる。11年にはラグジュアリー産業とCSR(企業の社会的責任)に関する本「ラグジュアリーとサステナビリティ 新たなる同盟(Luxe et Dévelop-pement Durable : La Nouvelle Alliance)」を執筆した。サステナビリティの重要性が今ほど注目されていない時期に、両者を紐づけたきっかけは?

セシル・ロシャール=ゲラン チーフ・サステナビリティ・オフィサー(以下、セシル):WWFでさまざまな業界と仕事をしていたが、ラグジュアリーブランドだけがサステナビリティと向き合うことを拒否していた。環境や人権に配慮した活動をしていなかったわけではなく、取り組んでいるにも関わらず公表を避けていたのだ。ラグジュアリー産業の根本には、製造の詳細は秘められるべきで、商品は完璧でなくてはならないという思想があった。当時新しい分野だったサステナビリティは「透明性」や「不完全性」が求められた。経済界や社会からの要求も刻一刻と変化し、常に進化することが必要とされる。両者は対極にあった。

本を執筆するにあたり、ラグジュアリー産業におけるサステナビリティはどうあるべきかさまざまな専門家に意見を聞いた。CSR関連の大企業のトップや社会学者、民俗学者、鉱物学者のほか、ファッションではカシミアの専門家、ビューティでは植物学者らに、インタビューを50件ほど行った。産業によってサステナビリティへの感度や対応するスピード感、進捗が全く違っていた

WWD:ビューティ業界はどのように映った?

セシル:ビューティ業界で扱う商材は非常にデリケートで複雑。例えば化粧品のクリーム一つをとっても、当時は90種類以上の原材料を使っていた。成分や処方、パッケージなど要素が多岐にわたるため、持続可能な商品開発はファッションよりも難しい。ラグジュアリーの中でも化粧品は特にサステナビリティの実現が難しいと感じたが、本を出版後に起業したコンサルティング会社が「ゲラン」と契約していた期間があり、「ゲラン」が自然やミツバチと関係が深いことに引かれた。一つの企業の中でもやるべきことがたくさんあると可能性を感じて入社した。

「ゲラン」を他のブランドが追随できないレベルにしたい

WWD:「ゲラン」に入社して最初に取り組んだことは?

セシル:フレグランスの原材料の80%を占めるアルコールを、オーガニックアルコールに変えた。当時はてんさいを使用していたが、農薬を使うことでミツバチを殺してしまう可能性があった。ミツバチはフレグランスの原料となる花だけでなく、野菜や果物、アーモンドなどさまざまな食物の受粉を担う。ミツバチがいないと人間も存在できないほど、生態系にとって重要な存在だ。

次に、「ゲラン」のサステナビリティ戦略を強化した。他のブランドが追随できないレベルを目指し、第三者機関の認証を取得した。パッケージにたくさんのマークがついているのはセクシーではないかもしれないが、厳しい基準をクリアしていることをお客さまに表明したかった。これは「ゲラン」が他社に先駆けて行い、社会に変化を起こしたと言ってもいいだろう。顧客や市場に後押しされたのではなく、われわれからスタートしたことが、先駆者として認められている自負がある。

WWD: 19年の入社当時から現在まで、「ゲラン」やラグジュアリー化粧品を取り巻く環境はどのように変わった?

セシル:一番大きく感じたのは、人の意識の変化だ。それからビューティ業界、ラグジュアリー業界ではさらに「透明性」が求められるようになった。特にヨーロッパでは顕著で、持続可能性に関する法規制が強化された。消費者もスマートフォンで簡単に情報にアクセスできる。

WWD:日本でもトレーサビリティプラットフォーム「ビーリスペクト」がローンチした。公式サイトからアクセスでき、商品の原材料の産地から輸送、販売、使用後にリサイクルされる場所まで追跡できる。顧客の反応は?

セシル:フランスでプラットフォームを立ち上げたのが5年前。スキンケアから始まってメイクアップ、フレグランスまで広がり、日本では今年5月に正式に開始した。使用状況などもトラッキングしているが、お客さまは一度「ビーリスペクト」を閲覧すると、トレーサビリティツールを繰り返し使うことはあまりないことがわかった。「ゲランは透明性を持った会社だ」と安心している。当初の意図とは異なるが、重要な顧客とのコミュニケーションになっている。

ラグジュアリーは市民社会に対して開かなければならない

WWD:「ゲラン」はラグジュアリーブランドとして初めて「サステナビリティボード」を設立した。13人の著名な専門家で構成し、ブランドの戦略をサポートしている。設立の経緯は?

セシル:ラグジュアリーブランドは市民社会に対してもっと外へ開かなければならない、という強い気持ちがあった。城壁の中にいて、都合のいいことばかりを聞くのではなく、耳が痛いと感じる声も傾聴するべきだ。サステナビリティボードには大学関係者や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の地域議長、ミツバチ保護の専門家、アプリ開発のスタートアップ企業など多様な分野の専門家が名を連ねている。彼らは市民社会を代表するメンバーだ。

「ゲラン」はサステナビリティ戦略の3カ年計画を提出して助言をもらっている。そのフィードバックのおかげで、これまでタブーとされていたPR分野でも持続可能な方法に挑戦できた。昨年、サステナブルなフレグランスシリーズ“アクア アレゴリア ハーベスト”のキャンペーンで、サステナビリティーボードのメンバーであり、写真家でレポーター、映画監督のヤン・アルテュス=ベルトラン(Yann Arthus-Bertrand)と低炭素の撮影に取り組んだ。制作におけるカーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)を抑えるため、彼の過去の作品集のビジュアルを用いたほか、撮影は全てフランス国内で行い、国内で育てられたスローフラワーを使用した。

WWD:日本では容器回収が進まず莫大な廃棄量が問題となっている。欧州での状況は?

セシル:一番大きい変化は法整備がなされたこと。フランスではリサイクルや再利用を促進し、プラスチックの消費を削減することを目的とした「循環型経済のための廃棄物対策法」が22年に発表された。以前から「ゲラン」はリサイクルや容器回収に取り組んでいたが、各社がリサイクルせざるを得ない状況になった。また、LVMHグループが投資するリサイクルセンターがある。売れ残った商品をセンターに集め、リサイクル・再利用している。アルミニウムやアルコールなど、化粧品産業だけでリサイクルできないものは他の産業でリサイクルする。今後は国がリサイクル・回収に関する規制をさらに強化したり、企業としては回収業者のパートナーを見つけたりすることが重要な点になってくる。

WWD:CSR戦略では“4つの柱”を掲げている。その中で特に喫緊の課題とその理由は?

セシル:われわれが掲げる4つの柱は、1.生物多様性の保全とミツバチの保護 2.完全な透明性のもとでのサステナブルイノベーション 3.気候変動に対する行動と、カーボンフットプリントの削減 4.素晴らしい自然を守りながら、社会にポジティブなインパクトを生み出す。これらは全てつながっておりどれも重要だが、カーボンニュートラルの達成を重要視している。スコープ1(直接排出の温室効果ガス)、2(間接排出の温室効果ガス)に関してはすでに達成しているが、スコープ3はまだ困難な状況にある。「ゲラン」はアジア、アメリカ、ヨーロッパなど世界26カ国で販売しており、空輸に依存している点が課題だ。

Bコープの取得も時間はかかるが検討している。10年前にISO14001の取り組みを始め、本社と生産拠点、子会社の80%が認証を受けた。今後は100%に向けて、さらなる取り組みを進める。

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「サマソニ’23」出演のシンガーソングライターUMI 日米にルーツを持つ歌姫の素顔

UMI/シンガーソングライター

PROFILE:1999年生まれ、アメリカ・シアトル出身。日米にルーツを持ち、R&Bやソウル、ヒップホップなどの要素を取り入れたヒーリング効果の高い楽曲を特徴とし、2018年に自主制作した「Remember Me」でブレイク。20年にEP「Introspection」でメジャーデビューし、22年5月にはデビューアルバム「Forest In The City」をリリースした。なお、8月11日に最新シングル「happy im」をリリースし、直後の19~20日に開催される「サマーソニック 2023」に出演予定

シンガーソングライターのUMIは、1999年にアメリカ・シアトルで日本人の母とアメリカ人の父の間に生まれ、現在はロサンゼルスを拠点に活動している。UMIというアーティストネームは、日本語の“海”から名付けられたミドルネームが由来だ。日本では古くから伝わる“名は体を表す”という言葉通り、彼女の歌声は母なる海のように力強さの中に透明感や優しさも兼ね備え、波のように心に響いてくる。

UMIは世界ですでに高い評価を得ており、ブレイクのきっかけになった2018年発表の楽曲「Remember Me」は「スポティファイ(Spotify)」で1億4000万回以上再生されている。さらに「コーチェラ 2023(Coachella 2023)」をはじめ、ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)やハー(H.E.R.)が主催する音楽フェスにも出演し、8月19~20日開催の「サマーソニック 2023(SUMMER SONIC 2023)」のステージにも立つ予定だ。

次世代の音楽シーンをリードする歌姫が先日来日し、気になるあれこれを根掘り葉掘り聞いた。そのチャーミングな性格と天真爛漫な人柄に隠れた、音楽とファッションへのこだわりとは。

ーーまずは、アーティストを志したきっかけから教えてください。

UMI:自分でもなぜだか分からないんだけど、幼い頃から喋ることや食べること、読むことと同じように、歌うことも自然な動作の一つだったの。歌手になって大勢の前で歌うことがずーっと夢で、2人の妹に床に座ってもらって、私がベッドをステージに見立ててよくパフォーマンスをしていたことを覚えているわ(笑)。あと、お医者さんになりたかったの。でも、私は今音楽で聴く人の心を癒していると思うから、それも音楽を使った一種のお医者さんかなって。

ーーそれは、家庭環境も影響しているのでしょうか?

UMI:そうだと思う。お父さんが教会でドラムを叩いていて、お母さんはピアノを弾いていたから、2人の影響は強いし、何かと教えてもらっていたわ。それから、ギターも弾きたくてレッスンを受けたり、ユーチューブで独学で学んだりしたよ。

ーー影響を受けたアーティストはいますか?

UMI:フランク・オーシャン(Frank Ocean)とエリカ・バドゥ(Erykah Badu)、ディアンジェロ(D'Angelo)、シャーデー(Sade)、松田聖子、あと最近はロザリア(Rosalia)かな。家でお母さんが松田聖子をよく聴いていたから、今も曲を書いていると「あれ、このメロディーなんか松田聖子っぽいな」とか思うこともあるわ(笑)。

ーー楽曲を自ら制作するようになったのは、いつ頃からですか?

UMI:4~5歳くらいから曲自体は書いていたんだけど、大勢の人の前で歌うことは恥ずかしくて緊張しちゃうから発表はしていなくて。でも、やっぱりみんなに歌を聴いてほしかったから、2014年の15歳の時にユーチューブに投稿し始めて、そのリンクをみんなにシェアしていたの。

ーーユーチューブにはどのような映像を?

UMI:当時はK-POPをよく聴いていたから、BIGBANGやBTSの曲を英訳したアコースティックカバーが多かったわ。今は結構非公開にしちゃったけど、フランク・オーシャンの「Self Control」のカバーや、お気に入りのいくつかはユーチューブにまだ残してるよ。

投稿を続けていたら登録者が段々と増えていったから、大学に進学するためにロサンゼルスに引っ越したタイミングで、人前で歌うことのトレーニングも始めたの。オープンマイク(注:ライブハウスなどで行われる飛び入り参加型のライブ)にも毎週参加したわ。最初は人前に立つことが怖かったからずっと目を閉じたままでしか歌えなかったけど、ちょっとずつ目を開きながら歌えるようになって、1年ぐらい練習してから自分のライブを開催するようになったの。

ーー楽曲制作におけるインスピレーション源はありますか?

UMI:普段から残しているメモを曲作りに生かすこともあれば、メロディーを聴いて「青色の曲だな」って感じたら青色の感情やストーリーを考えて書いていくかな。私は、物を食べたり触ったり、話を聞いたりすると頭の中に色が浮かぶから、それをメロディーに重ねていく感覚ね。

ーーファレル・ウィリアムスやカニエ・ウェストも持っている共感覚(注:特定の刺激に対して、通常の感覚に加えて別の感覚も生じる特殊な知覚現象)ですね。

UMI:でも、これって特別な能力じゃなくて、みんなもできることだと思っているの。難しいかもしれないけど、感覚に対して素直になることが大事だから、練習してみてほしいな。

ーー以前、UMIさんが思い付いたメロディーをiPhoneのボイスメモにタイトルを付けて保存しているのをSNSで見ました。メモを残しているというのは、そのことですか?

UMI:そうそう!私って、思い出も写真よりボイスメモに残すことが多くて、例えば日本の電車に乗っている時に車内の音を録音して、それをアメリカに戻って聞いたら、写真を見返すよりも鮮明に記憶が蘇ってくる気がするの。あと、曲の中にも日常のボイスメモを取り入れることがあって、そうすることによって雲の上の世界に住んでいると思われがちなアーティストでも、みんなと同じ世界に住んでいることを音を通して伝えられるかなって。iPhoneには14年から録り溜めた3000以上のボイスメモがあるから、アーティスト活動において最も大事なことはiPhoneのストレージを最大容量にすること(笑)。

ーー17年から本格的な音楽活動を始めたきっかけは?

UMI:高校の友達に「やれやれ」って言われ続けたから。1年くらい拒否していたんだけど、今はすごくその子に感謝しているわ。とにかく音楽に詳しくて、学校が終わったら一緒に家に帰って、寝るまでいろいろなアーティストのMVを観続けた関係だったの。2人でストリーミングサービスの配信の仕方を調べたり、「スポティファイ(Spotify)」で人気のプレイリストを作っている人にDMしたり、DIYな活動を2~3年ぐらい続けて20年にレーベルに入ったわ。

ーーミドルネームのUMIをアーティスト名にした理由は?

UMI:ファーストネームがティエラなんだけど、UMIは学校でも呼ばれていた名前で、日常の自分の一面な気がするから。UMIはアーティスティックな自分をエクスプレス(注:感情や意見を表現する)できる名前だと思っていて、名乗る名前で自分が変わる気がするんだよね。

ーーフランク・オーシャンの“Ocean”も由来の一つだと思っていました。

UMI:ワオ!考えたことがなかったけど、言われてみればそうじゃん!気付かせてくれてありがとう!

ーー自分の音楽を一言で定義するなら?

UMI:ヒーリングミュージックだね。いつ聴いてもハッピーでヘルシーになれる曲を作ること、これを常に意識しているかな。私は食べるものも、見るものも、聴くものも、全てが体を構成すると思っているの。だから、自分の体が気持ちいいと感じられない音は聴かないようにしていて、ヘルシーじゃないものを食べたくない感覚と一緒だね。

ーーアルバムに収録されていない「Remember Me」が「スポティファイ」とユーチューブで最も再生されています。ヒットの背景はあるのでしょうか?

UMI:リリースしてから1年後くらいに、ユーチューブのレコメンド機能に突然ピックアップされるようになったからなの。その理由はなぜだか私にも分かっていなくて、とてもラッキーだったわ。それに、MVにもアートワークにも私が映っていなくて、曲の魅力だけで広まったのがさらにうれしかったね。

ーー日本では、初めて日本語のタイトルを採用した19年の「Sukidakara」が広く知られるきっかけでした。

UMI:インターネットサーフィンをしている時にビートを見つけて、かわいらしかったから「あ、日本語が合うかもしれない」って直感的に思ったの。歌詞は、自分ではなく他の人をイメージして書いているね。私自身K-POPが好きだけど何を言っているか分からなくて、英語圏の人もメロディーさえ気に入ってくれれば大丈夫だと思ったらその通りだったね。たまに、「正しい日本語の使い方じゃないよ」って指摘されるけど、私は日本語でも英語でも正しい使い方はないと考えていて、正しいか正しくないかだけでジャッジしてしまったら、本当の気持ちを伝えることも受け取ることもできなくなってしまう。それよりも、「『Sukidakara』を聴いて日本に行きたくなった」とか、「意味を理解したくて日本語を勉強した」って英語圏のファンに言ってもらえてうれしかったな。

ーーデビューアルバム「Forest in the City」を昨年リリースしました。タイトルに込めた思いを教えてください。

UMI:グリフィスパーク(注:ハリウッドサインのあるリー山も含むロサンゼルス中心部の広大な公園)にいる時、鳥の鳴き声や車のクラクション、ヘリコプターの飛ぶ音が全部混ざって聞こえて、「あぁ、私は都会の森にいるんだな」って思ったの。森の中にいると、何もしなくてもピースフルな気持ちになれるけど、街中でそういった場所は探さないと見つからない。だから、聴くだけでヒーリング効果があってピースフルになれるようなアルバムを作りたくて、「Forest in the City」って名付けたの。

ーーということは、先にタイトルが決めてから曲作りがスタートしたのでしょうか?

UMI:未発表曲を50曲くらい完成させたタイミングで、ある日、自分の中で何かが変わる気がしたから、その前にアルバムを1枚完成させたくなった感じ。それで、グリフィスパークに出かけたら「Forest in the City」って言葉が生まれて、収録曲が決まっていったの。

ーーヒーリング効果を意識したアルバムをはじめ、ライブでは途中にメディテーションの時間を取り入れるなど、メンタルヘルスに力を入れていますね。

UMI:朝起きてまず自分と向き合う時間を作らなければ、その日は本当の自分じゃない気がしてしまって。だから、朝起きたらスマートフォンを開いたりパソコンでメールチェックしたりする前に、メディテーションをすることにしているの。内容は日ごとに変わるから走ることあるし、とにかく自分でメンタルケアすることはとても大事。メディテーションの仕方は、人によっても日によっても違うから、自分に合ってるものを探して欲しいな。

ーー現段階で、次回作などについて話せることがあれば教えてください。

UMI:「サマーソニック」前の8月11日に「happy im」ってシングルをリリース予定よ。日本語も入ってる曲だからみんな聴いてくれるとうれしいな。

ーーファッションについても聞きたいのですが、マイルールはありますか?

UMI:ルールがないことがルールだけど、あえて言うなら感情をファッションで表現すること。だから、毎日人が変わったようにファッションも変わるの。あとは……遊ぶこと?かな。今日だったら、ネックレスをベルトとして使ってみたり、タイダイ染めしたストッキングをインナーとして着てみたり、こうやって着るのは好きだね。

ーーSNSを見ていると、古着を着ることが多いんですね。

UMI:持っている洋服はほとんど古着よ。人と同じスタイリングをしたくないから、新作を買うことはあまりないかも。それに、古着は環境に優しいからね。今、世界で着られていない洋服を全部集めたらすごい量になると思わない?だから、新しい洋服はあまり買わないで、前に誰かが着ていた服を着て、洋服の歴史をアップデートするような感覚で購入する方が楽しいはず!

ーー古着を好きになったきっかけなど、忘れられないファッション体験談はありますか?

UMI:高校の最後の夏に、地元でハイウエストデニムが超はやっていたから、友達と古着屋で買ってみたの。その写真を撮っていたら、「あれ、ファッションって楽しいかも」って思えるようになって、ファッションが好きになったかな。

ーーアイブロウピアスやタトゥーもファッションのポイントですよね。

UMI:ツアーでオランダのアムステルダムに訪れた時、朝起きたらなんだかアイブロウピアスを開けたい気分で、散歩してたらたまたま専門店を見つけたからそのまま開けちゃった(笑)。セプタム(注:鼻ピアスの一種)もツアーの前日に思い付きで開けたり、タトゥーも気分で急に入れたりすることが多いわ。

ーーマーチャンダイズではどのようなことを意識していますか?

UMI:作品のイメージに合わせることを意識していて、インスタグラムで見つけたアーティストにDMして依頼したこともあるし、自分で描いた絵をプリントしたマーチャンダイズを作ったこともあるよ。今後は、自分の作品を使ったマーチャンダイズを増やしたいね。

ーー最後に、中高生時代は陸上選手としても活躍していたと耳にしたことがあります。

UMI:中学と高校で短距離走をしていて、高校の時に2人の妹と400メートル・リレーのワシントン州記録(46秒07)をレコードしたことがあるし、ジュニアオリンピックにも出たことがあるよ。地元では“ウィルソン・シスターズ”って有名だったの!今からみんなで走る?(笑)。

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荻原桃子「鎌倉が私を変えた」 新ブランド「OMMO」や家族、新生活について語る

荻原桃子(おぎはら・ももこ)/OMMO代表取締役兼「オーエムエムオー」クリエイティブ・ディレクター プロフィール

1984年1月3日生まれ、大阪府出身。2002年からアパレル業界で販売、企画、バイイングを経験し、マークスタイラーに入社。06年、22歳の若さで「ムルーア」を立ち上げ、クリエイティブ・ディレクターとして9年間、トータルディレクションを行う。16-17年秋冬から「アンスリード」を始動し、デザイナー兼クリエイティブ・ディレクターを務める。20年に和食器の「オーエム」、21年にコスメブランド「ユーエヌディーオー」のプロデュースをスタート。23-24年秋冬から自身のブランド「オーエムエムオー」をスタート。プライベートでは小学1年生男児の母

「オーエムエムオー」 ブランドプロフィール

マークスタイラーで「ムルーア」と「アンスリード」のクリエイティブトップとしてブランドを手掛けてきた荻原桃子が2023-24年秋冬にスタート。自身初のブランドとして、新たな拠点とする鎌倉でのライフスタイルを背景に30〜40代女性に向けた機能的でデザイン性のあるデイリーユースのウエアを発表する

マークスタイラーの「ムルーア(MURUA)」や「アンスリード(UN3D.)」でクリエイティブ・ディレクターなどを歴任した荻原桃子がこの秋、アパレルブランド「オーエムエムオー(OMMO)」をスタートする。荻原はガールズ&ウィメンズ市場をけん引してきたブランドを立て続けに成功させ、独自のクリエイティブ力を磨いてきた。今年春に長男の進学を機に、家族で鎌倉へ移住。新生活を充実させる中、40歳を目前にした彼女の新たなステージに迫る。

新ブランドはこれまでの都会的なスタイルとは違う

――あらためて、「オーエムエムオー」はどんなブランド?

荻原桃子(以下、荻原):30〜40代女性に向けて、カットソーやニット、ワンピースなど、着やすい素材感を追求したアイテムをメーンに構成していきます。私自身家族でアウトドアを楽しむことも増えて、鎌倉で生活し始めてからは動きやすさや着心地を重視したウエアを好むように。これまではジャケットやシャツ、パンプスといった都会的なスタイルを多く提案してきましたが、あらためて“今の自分が着たい服”を作りたいと思い始めたんです。それも「オーエムエムオー」立ち上げのきっかけの一つです。

アウトドアシーンでも最適なはっ水ナイロン素材や伸縮性のあるやわらかいカットソー素材など、アクティブに動きやすいストレスフリーなテキスタイルを多く採用しています。ボトムスは、スニーカーやビーチサンダルにも合う丈感や自転車や車を乗り降りしやすいボリューム感にもこだわりました。また、特徴としてきたカラーパレットは、アウトドアシーンで馴染みやすい色をセレクト。これまで使ってこなかったベージュ系は私自身もとても新鮮に感じています。ビジネスとしては大きく成長させたいとは考えてなくて、卸しなどせず、自社ECのみで販売。自分で育てられるスケールの中で展開していく予定です。毎月3つのコーディネートを提案できるよう、10型程度を新しく発表します。

――鎌倉での生活が新ブランドのスタイルの背景にある。

荻原:ウエアの構想も移住後に膨らんでいって、「自然あふれるここでのライフスタイルにはこんなスタイルが合うな」って自分の体験や街の人たちを見て考えていきました。これまでのクリエイティブの経験や得意とする素材や色使い、EC販売のノウハウなどを活かしながら、どんなスタイルや提案がマッチするか。私自身も車を運転するようになったり、山や海で過ごす時間が増えたり、都内での暮らしとは違うシーンが増えましたね。そうしたライフスタイルを背景にしたくて、ファーストシーズンのルックは鎌倉の建長寺で撮影しました。

――移住の理由は? 独立以外に、鎌倉移住の転機はあったか?

荻原:以前から鎌倉を訪れる機会があり、いつか越してこようと話はしていたんですが、私自身東京での暮らしが長かったので、はじめはなかなか乗り気ではありませんでした。息子も生まれ育った東京とお友だちから離れるのを嫌がっていたんですが、今ではウグイスの鳴き声で朝を迎えながら、海や山のたくさんの自然に触れる環境にとても喜んでいます。

家族との時間が増えたことは私にとってとても大きいです。若い時から仕事を優先する生活だったので、息子が幼いときもシッターに頼ることも多く、仕事をしながらの子育てに葛藤する時期もありました。そのうちに、東京のど真ん中、公園も少ない環境での子育てや仕事を優先しながらの子育てについての悩みが増えていき、コロナ禍でさらにワークライフバランスについて考え、仕事のことや家族のこと、将来のことに向き合うように。すると、「その時に自分がいいと思ったことをしたい」「先々のことは決めない」と自分の思いのままに服作りをしたいという考えがクリアになったんです。鎌倉という地が私を変えてくれたんだと思います。移住に3年悩んだ鎌倉は、人も環境もとても心地よくて、家族の時間を深めることもできて大正解の選択でした。

40歳に向けて、新しいことにチャレンジしたいと思った

――新生活を始めて、あらためて家族の存在とは?

荻原:将来の自分に対して悩んでいる私の背中を押ししてくれたのは主人でした。主人はじっくり考える私とは逆で、何事にも前向きに挑戦するタイプ。新ブランドも移住も主人の提案から決められたことでした。息子も私の仕事のことは理解してくれて、今では一緒にいる時間が増えたことがとても嬉しそうです。好きな仕事の時間と家族との時間をきちんと決めて行動できるようになったのは家族の存在が大きいと思っています。

――ブランド名の「OMMO」は自身の名前“MOMOKO”が由来?

荻原:そうです。40歳になるまでに、新しいことにチャレンジしたいと考えていたし、ゼロからブランドを始める新しい自分のステージに思いを込めて。それと、子どもの名前にかかる数字の“8”にもオマージュしてロゴを作成しました。想いの詰まった名前とデザインです。

毎日の生活の中で本当に必要なものだけを

――ファッションだけじゃなく、和食器「オーエム(OM)」やコスメブランド「ユーエヌディーオー(UNDO)」を立ち上げ、プロデュースの幅を広げている。

荻原:「オーエム」は食卓が楽しくなるものをと1年構想で立ち上げました。ただ、ファッションの経験しかなかった私にとっては、パントーンを使って色を提案するなど服作りの感覚で説明するしかできず、はじめは職人さんを困らせていました(笑)。でもやっていくうちにそんな私のやり方を面白く思ってくれて、瀬戸焼や笠間焼など幅広い表情と形の器を作ることができています。一点一点違う色の化学反応が面白くて、奥深い陶器の世界にどんどんハマっています。

「ユーエヌディーオー」の美容液はオイル好きの私の敏感肌に、またスキンケアにあまり時間をかけずとも使いやすいものをと考案しました。子どもと一緒だと毎日時間はかけられません。これまでたくさんの化粧品を試してきたけれど、あらためて、毎日の生活の中で本当に必要なものだけを選ぶことで、肌や生活スタイルに寄り添えるものが作れているかなと思っています。新しいアイテムを発表していく予定です。

――今後について。

荻原:鎌倉での家族との楽しく心地いい時間とともに、充実したワークライフバランスを送っていきたいです。アトリエは一旦茅ヶ崎に構えましたが、ゆくゆくは鎌倉にスペースを持ちたいと思っています。社会も人のライフスタイルも同じように、服も進化していける。そう信じて、生活に順応した、ペースにあった服作りをしていきたいと思っています。

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次世代ジュエリーブランドを支援 新井恵里那も参加する“ザ ネクスト ジュエリー”とは

ジュエリーブランドの立ち上げ支援プロジェクト“ザ ネクスト ジュエリー”によるポップアップショップが8月8日まで、高島屋新宿店で開催中だ。同プロジェクトは、高島屋と阪急阪神百貨店(以下、阪急阪神)、ジュエリーメーカーのラッキーアンドカンパニー(以下、ラッキー)3社共同企画で昨年9月にスタート。約100件の応募から選ばれた6人のメンバーが3社の支援を受けて約40種類のジュエリーを制作し、ポップアップで販売する。

参加ブランドは、タレントの新井恵里那による「アンディーマ(ANDIIMA)」、池滝祥子による「プウィンク(PWINK)」、土田あやこによる「ビーチェ(BEACE)」、出路加奈子による「マヴォア(MA VOIE)」、野依祐月による「オワリ(OWALI)」、森友里恵による「ユリモリ(YURIMORI)」。同プロジェクトを担当した高島屋MD本部 婦人服・婦人雑貨・子ども・ホビー部のマーチャンダイザーである高橋由紀恵担当部長とバイヤーの木谷文香課長に話を聞いた。

百貨店クオリティーとOEMメーカーの技術力による安心感

ジュエリー業界の活性化を目的にしたこのプロジェクトは、高島屋から業務提携をしている阪急阪神やラッキーへアプローチしたことからスタートした。木谷課長は、「新しいジュエリーブランドが育たないという業界の課題を認識し、百貨店クオリティーの安心感とノウハウ、そしてOEMメーカーの技術を融合させ、ブランドの立ち上げを支援をしたいとはじめた」と語る。ジュエリー業界では、コロナの影響をはじめ、地金やダイヤモンド価格の高騰により、新しいブランドが参入しにくい状況だ。売り場の話題作りのために、各百貨店、ポップアップで目新しいブランドを紹介しているが、常設売り場を設けるほど安定したブランドは少ない。ブランドを立ち上げて継続していくには資金力とノウハウが必要。それらを提供するのがこのプロジェクトだ。

高橋部長は、「百貨店は、売れ筋の商品や価格帯の知識があり、のれん(場所)も提供できる。埋もれている才能を育てたいという思いがあった。ノウハウを提供するのは百貨店の役割だ。高島屋が認めた品質の素敵なブランドの発展に寄与できたら嬉しい」と述べる。百貨店2社共同にした理由は、「東西それぞれに基盤がある百貨店2社が組むことで、注目度もアップするし、応募者へのメリットが高まると考えた。安心感と本気度も高まるはずだ」と続ける。

ブランドの立ち上げ支援で売り場もリフレッシュ

このプロジェクトの選考をするにあたり、カラーストーンやクラフト感、ファッション性などキーワードを設けて、テイストが分かれるようにした。第一期生には、ジュエリー作りのベースがある人もない人もいる。木谷課長は「応募者の熱意が大切。そして、プロジェクトを進めるためのコミュニケーション力も重要だ」と言う。第一期生の一人である野依は伝統工芸品「尾張仏具」の錺金具師(かざりかなぐし)で、通常は百貨店の催事などに参加している。彼女は、「若い世代が来る場所でポップアップができてうれしい。立体的に彫金を施したのは初めてで、メーカーに技術的な部分で助けてもらい完成させた。今後も(ブランド)を継続していきたい」と語った。

6つのブランドは、今回のポップアップでの反応を見つつ、ラッキーのECでも商品を販売する。8月に第一期が終了し、6人がどのようにブランドを続けていくか3社を交えて検討していくという。高橋部長は、「第二期、第三期とこのプロジェクトを継続し、個人事業主が多いジュエリー業界における活躍の場を広げたい。そうすることで百貨店の売り場もリフレッシュさせたい」と話した。

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次世代ジュエリーブランドを支援 新井恵里那も参加する“ザ ネクスト ジュエリー”とは

ジュエリーブランドの立ち上げ支援プロジェクト“ザ ネクスト ジュエリー”によるポップアップショップが8月8日まで、高島屋新宿店で開催中だ。同プロジェクトは、高島屋と阪急阪神百貨店(以下、阪急阪神)、ジュエリーメーカーのラッキーアンドカンパニー(以下、ラッキー)3社共同企画で昨年9月にスタート。約100件の応募から選ばれた6人のメンバーが3社の支援を受けて約40種類のジュエリーを制作し、ポップアップで販売する。

参加ブランドは、タレントの新井恵里那による「アンディーマ(ANDIIMA)」、池滝祥子による「プウィンク(PWINK)」、土田あやこによる「ビーチェ(BEACE)」、出路加奈子による「マヴォア(MA VOIE)」、野依祐月による「オワリ(OWALI)」、森友里恵による「ユリモリ(YURIMORI)」。同プロジェクトを担当した高島屋MD本部 婦人服・婦人雑貨・子ども・ホビー部のマーチャンダイザーである高橋由紀恵担当部長とバイヤーの木谷文香課長に話を聞いた。

百貨店クオリティーとOEMメーカーの技術力による安心感

ジュエリー業界の活性化を目的にしたこのプロジェクトは、高島屋から業務提携をしている阪急阪神やラッキーへアプローチしたことからスタートした。木谷課長は、「新しいジュエリーブランドが育たないという業界の課題を認識し、百貨店クオリティーの安心感とノウハウ、そしてOEMメーカーの技術を融合させ、ブランドの立ち上げを支援をしたいとはじめた」と語る。ジュエリー業界では、コロナの影響をはじめ、地金やダイヤモンド価格の高騰により、新しいブランドが参入しにくい状況だ。売り場の話題作りのために、各百貨店、ポップアップで目新しいブランドを紹介しているが、常設売り場を設けるほど安定したブランドは少ない。ブランドを立ち上げて継続していくには資金力とノウハウが必要。それらを提供するのがこのプロジェクトだ。

高橋部長は、「百貨店は、売れ筋の商品や価格帯の知識があり、のれん(場所)も提供できる。埋もれている才能を育てたいという思いがあった。ノウハウを提供するのは百貨店の役割だ。高島屋が認めた品質の素敵なブランドの発展に寄与できたら嬉しい」と述べる。百貨店2社共同にした理由は、「東西それぞれに基盤がある百貨店2社が組むことで、注目度もアップするし、応募者へのメリットが高まると考えた。安心感と本気度も高まるはずだ」と続ける。

ブランドの立ち上げ支援で売り場もリフレッシュ

このプロジェクトの選考をするにあたり、カラーストーンやクラフト感、ファッション性などキーワードを設けて、テイストが分かれるようにした。第一期生には、ジュエリー作りのベースがある人もない人もいる。木谷課長は「応募者の熱意が大切。そして、プロジェクトを進めるためのコミュニケーション力も重要だ」と言う。第一期生の一人である野依は伝統工芸品「尾張仏具」の錺金具師(かざりかなぐし)で、通常は百貨店の催事などに参加している。彼女は、「若い世代が来る場所でポップアップができてうれしい。立体的に彫金を施したのは初めてで、メーカーに技術的な部分で助けてもらい完成させた。今後も(ブランド)を継続していきたい」と語った。

6つのブランドは、今回のポップアップでの反応を見つつ、ラッキーのECでも商品を販売する。8月に第一期が終了し、6人がどのようにブランドを続けていくか3社を交えて検討していくという。高橋部長は、「第二期、第三期とこのプロジェクトを継続し、個人事業主が多いジュエリー業界における活躍の場を広げたい。そうすることで百貨店の売り場もリフレッシュさせたい」と話した。

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「リーバイス」の日本トップに聞く 150周年を迎えたブランドの好調要因と課題

「リーバイス(LEVI’S)」の日本市場は現在、韓国のトップも務めるデビッド・ハマティ(David Hamaty)北アジア担当ゼネラル・マネジャーが率いている。ブランドは今年、“501”の誕生から150周年というアニバーサリーイヤーを迎え、ここ数年で再度ブームになったプレミアムデニムの勢いも加わって小売が順調。一方、「ライトオン(RIGHT ON)」や「ジーンズメイト(JEAN’S MATE)」に代表される小売店の卸は、量販店の低迷という構造的な課題を抱えている。ハマティ=ゼネラル・マネジャーは、現状をどのように捉えているのか?

デビッド・ハマティ リーバイ ストラウス 北アジア担当ゼネラル・マネジャー プロフィール

ジョージ・ワシントン大学で国際ビジネスを専攻して修士号を取得。コンサルティング業界に20年以上携わり、マーチャンダイジングからサプライチェーン、小売、ストアオペレーションまでのノウハウを提供した。VFコーポレーションでAPACエリアを担当するなど、25年以上にわたり、アジアで仕事をしている。リーバイ ストラウスでは、アジアや中東、アフリカのオムニチャネル戦略を担当。今年、現職に就任した

「WWDJAPAN」(以下、「WWD」):“501”の誕生から150周年というアニバーサリーイヤーに、日韓のトップに就任した率直な心境は? 
デビッド・ハマティ=リーバイ ストラウス北アジア担当ゼネラル・マネジャー(以下、ハマティ=ゼネラル・マネジャー):歴史と逸話が数多い、ジーンズのパイオニアに携わることができて、とても嬉しく思っている。今年は、そんな歴史と逸話を知っているマニアのみならず、新たなファンを獲得しようとさまざまなアクションを仕掛けた。“501”の150周年関連では、ヒップホップ界最高峰のグローバルフェス「ローリング・ラウド」とタッグを組んだクラブナイトショーを開催。原宿の旗艦店ではアート&ミュージックのスペシャルライブのほか、“501”をステンシルやカリグラフィ、シルクスクリーンなどでカスタマイズができるワークショップを開催した。今年一番の瞬間を、皆で祝うことができたと思う。

「WWD」:改めて「リーバイス」の強みとは? 
ハマティ=ゼネラル・マネジャー:市況や組織による紆余曲折はあったが、「リーバイス」というブランドは、創業当時から変わらず、ずっと強い。1920〜50年代にアメリカを代表するブランドとなって、以降は世界的なブランドに成長。ジェームズ・ディーン(James Dean)からスティーブ・ジョブス(Steve Jobs)まで、世界中の人々を魅了し続けている。今後も「リーバイス」のコミュニティに加わりたいというモチベーションを掻き立て、セールなどに依存しないプレミアムブランドとしての道を歩んでいきたい。

「WWD」:新しいファンの、コミュニティへのモチベーションを掻き立てる方法は? 
ハマティ=ゼネラル・マネジャー:150年続く「リーバイス」の魅力の土台となった、過去の名作を忠実に再現する“リーバイスビンテージクロージング”はもちろん、若い世代にはリサイクルデニムや、バギーなどの90年代のスタイルが琴線に触れるかもしれない。60年代後半から70年代、アメリカ西海岸の若者は古着のデニムをリメイクしてウッドストックなどの音楽祭に繰り出した。リサイクルデニムに身を包み野外フェスに出かける今の若者の原型は、あの頃、当時の若者と「リーバイス」が形作ったものだ。Y2Kなスタイルが生まれた90年代も、「リーバイス」は知っている。私たちの「オーセンティシティ(信ぴょう性)」は、ライバルには真似できないものだ。150周年キャンペーンの「Greatest Story Ever Worn(最高の物語を穿こう)」は、逸話を現代に蘇らせ、再度活性化するものだ。「最高の物語を穿こう」は、個人の生活に即した「リーバイス」の楽しみ方、「リーバイス」との付き合い方も表現している。「リーバイス」は、個人の生活をユニークなものにしてくれる。そんな経験を提供し続けることができたら、望まれるブランドであり続けられるだろう。特に今は、いろんなことが起こっている世の中。まずは「自分のことを語っていいんだ」というムードを醸成することも大事だ。そのためには「リーバイス」も大胆に、スタンスを表明し続ける。ただ、これも新たな挑戦ではない。「リーバイス」のレガシーの一部だ。

「WWD」:ハマティ=ゼネラル・マネジャーにとっての、「最高の物語を穿こう」は? 
ハマティ=ゼネラル・マネジャー:私は70年代、兄から“501”を譲り受けた。大学生だった80年代、ボン・ジョヴィ(Bon Jovi)を聴いていた時はいつも「リーバイス」だった。コミュニティーに加わりたいという渇望感を高めるには、当時から音楽も大事なパートナーだ。今年、「リーバイス」はK-POPガールズグループのニュージーンズ(NewJeans)をグローバルアンバサダーに指名している。ユースカルチャーとのつながりもまた、「リーバイス」が本家本元だ。

「WWD」:市場全体で見れば、長らく低迷していたデニムがここ数年で復調している。 
ハマティ=ゼネラル・マネジャー:コロナ禍に伴う“おうち時間”の増加と、サステナビリティへの意識の高まりは大きな影響を与えただろう。日本でも再び通勤・通学する人が増えているが、カジュアル化は進んでいる。仕事の後、すぐに友達に会えるジーンズへの支持は高い。水の使用量を大幅に削減する技術革新のおかげで、そもそも耐久性の高いジーンズは「一度買えば、長く使える」洋服と捉えられるようにもなってきた。ビンテージ市場も盛り上がっている。二次流通には積極的に関与していないが、一方で私たちもビンテージだけを集めたポップアップなどを検討している。課題は、女性マーケットの拡大だ。日本市場では、「リーバイス」は今なお70%以上がメンズ。デニムのトップスやニット、トラッカージャケットなど商材は進化しているが、シンプルでも女性らしくファッショナブルなアイテムがもっと必要だ。同時に、女性に改めて「リーバイス」の魅力を伝える努力も必要だろう。

「WWD」:大事なビジネスパートナーである量販店の復調も課題では? 
ハマティ=ゼネラル・マネジャー:まずは関係を密にしたい。量販店は、他のブランドも取り扱う中で「リーバイス」を売っている。改めて、「リーバイス」のストーリーや商品について、彼らに伝え、理解・代弁してもらうことが必要だ。ヒアリングして、足りない商品を開発することも大事だろう。現状、量販店でも女性向けの商材が足りないのは、私たちの責任だ。

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注目の絵描きリーイズミダとの初コラボ “共感”から生まれた「サラナル」限定パッケージ

I-ne(アイエヌイー)から2021年秋に誕生したプレスキンケアブランド「サラナル(SALANARU)」。ジェルの肌あたり、オイルのクレンジング力、ミルクの洗い流しやすさを併せ持つ機能性クレンジングジェルで、こすらずに素早くメイクをオフできると支持されてきた。このたび、ブランドコンセプトである「まっさらから、はじめよう」というメッセージにリンクすると開発チームが注目していた絵描きのリーイズミダとのコラボレーションが実現。彼女のアイコニックな花のモチーフとブランドの思いを添えた“サラナル ピュアクレンジングジェル クリア”と“同 ホワイト”(各150g、各1980円)が8月1日に数量限定で登場した。パッケージを手がけたイズミダ氏にコラボの背景や、スキンケアのこだわりを聞いた。

“共感がなければ描けない”
「サラナル」のコンセプト

WWD:「サラナル」からパッケージ制作の依頼を受けた時の率直な感想を教えてください。

リーイズミダ(以下、イズミダ):正直に言うと、これまで使ったことはなかったんです。ですが、個展などで忙しい毎日を過ごしている私にとって、感触が心地よくて素早くメイクオフできるこのアイテムは、自分の生活や今のムードにマッチしていると思いました。「まっさらから、はじめよう」という「サラナル」のコンセプトの通り、嫌なことや大変なこと、気分が乗らないことがあっても、1日の終わりに顔をすっきりさせると少しだけ気持ちが晴れますよね。そんなブランドの思いに共感できたから描けました。そうでないと、器用じゃないから描けないんです。誰にとってもクレンジング=顔を洗うことは当たり前のことですが、実は、今年の私の目標は「顔をきちんと洗うこと」でした。疲れてそのまま寝てしまうことが多くて……。今のところ、洗顔しないままの寝落ちはまだ数回です(笑)。

WWD:今回のコラボにはどのような価値を感じますか。

イズミダ:もちろん個展をベースに活動しているので、実際に原画を見てもらいたいという思いはぶれませんが、自分の作品が多くの人の目に触れる機会になるのはうれしいです。
「サラナル」はドラッグストアなど販売店舗が多く、ローカルでも買おうと思った時にすぐに購入できるし、値段も手ごろですよね。地元の北海道でも、実際に手に取れるのはすてきなこと。絵が好きな人が手に取った時にうれしい気持ちになってもらえたらいいなと思います。

「変化がなければ愛着がわかない」
リーイズミダの
エイジングとの向き合い方

WWD:「サラナル」には、女性のエイジングに対する漠然とした不安や葛藤に、前向きになれる手伝いをしたいという思いもあるそう。イズミダさんは、エイジングに対してどのようなマインドで向き合っていますか。

イズミダ:エイジングだって、すてきな変化です。忙しく、毎日頑張っているんだから、老いていくのは当たり前のこと。変化がないと、愛着が湧かないと思いませんか。きれいの定義は人それぞれですし、年齢を重ねるうちに目元のシワがかわいく見えることだってあるでしょう。自分がどういうふうに年を重ねていきたいのか、どうありたいのか次第ですよね。私は健康で、ツルッとしたお肌で元気に絵を描いていたいですね。

WWD:「サラナル」の使い心地や、お気に入りのポイントを教えてください。

イズミダ:どちらも使っていますが、肌が乾燥しやすいので、しっとりとした洗い上がりの“ピュアクレンジングジェル ホワイト”はお気に入りです。ローズとゼラニウムがほのかに香るのもいい感じ。2種類をバスルームに置いておいて、その日の気分に合わせて、肌や心が求めている香りを使うのも良いと思います。重すぎないちょうどいいテクスチャーが肌になじませると心地よいです。

肌本来の実力を発揮するための
“落とすケア”の大切さを発信

「サラナル」は、肌の変化を感じた時にまず見直すべきは“落とすケア”とし、クレンジングにフォーカスしたシンプルな商品ラインアップを展開する。ブランドコンセプト「まっさらから、はじめよう」には、正しい“落とすケア”で仕事にプライベートに忙しい現代女性が理想的な肌を手に入れて、より前向きに過ごせるようにという思いが込められている。「よく落ちるけど肌が突っ張り、刺激がある」「肌に優しいけれど、メイクが落ちない」「肌負担を減らそうとすると、手間や時間がかかる」といった、クレンジングにまつわる悩みに、3段階に変化するクレンジングを提案。ジェル、オイル、ミルク、ぞれぞれの良さを取り入れた“サラナル ピュアクレンジングジェル クリア”と“同 ホワイト”で、毎日の“落とすケア”を時短でかなえる。

商品購入で
オリジナルポーチをプレゼント

8月1日のコラボパッケージの発売に合わせて、EC(楽天)では2点以上の購入でオリジナルのクリアポーチを1つプレゼントするキャンペーンを実施。パッケージと同様、花のデザインに、「Every day is a new day.(毎日が新しい日)」「Choose to Shine.(輝くことを選ぼう)」というメッセージを添えた。

PHOTOS : YUTA KATO
TEXT:NATSUMI YONEYAMA
問い合わせ先
株式会社I-ne
0120-333-476

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注目の絵描きリーイズミダとの初コラボ “共感”から生まれた「サラナル」限定パッケージ

I-ne(アイエヌイー)から2021年秋に誕生したプレスキンケアブランド「サラナル(SALANARU)」。ジェルの肌あたり、オイルのクレンジング力、ミルクの洗い流しやすさを併せ持つ機能性クレンジングジェルで、こすらずに素早くメイクをオフできると支持されてきた。このたび、ブランドコンセプトである「まっさらから、はじめよう」というメッセージにリンクすると開発チームが注目していた絵描きのリーイズミダとのコラボレーションが実現。彼女のアイコニックな花のモチーフとブランドの思いを添えた“サラナル ピュアクレンジングジェル クリア”と“同 ホワイト”(各150g、各1980円)が8月1日に数量限定で登場した。パッケージを手がけたイズミダ氏にコラボの背景や、スキンケアのこだわりを聞いた。

“共感がなければ描けない”
「サラナル」のコンセプト

WWD:「サラナル」からパッケージ制作の依頼を受けた時の率直な感想を教えてください。

リーイズミダ(以下、イズミダ):正直に言うと、これまで使ったことはなかったんです。ですが、個展などで忙しい毎日を過ごしている私にとって、感触が心地よくて素早くメイクオフできるこのアイテムは、自分の生活や今のムードにマッチしていると思いました。「まっさらから、はじめよう」という「サラナル」のコンセプトの通り、嫌なことや大変なこと、気分が乗らないことがあっても、1日の終わりに顔をすっきりさせると少しだけ気持ちが晴れますよね。そんなブランドの思いに共感できたから描けました。そうでないと、器用じゃないから描けないんです。誰にとってもクレンジング=顔を洗うことは当たり前のことですが、実は、今年の私の目標は「顔をきちんと洗うこと」でした。疲れてそのまま寝てしまうことが多くて……。今のところ、洗顔しないままの寝落ちはまだ数回です(笑)。

WWD:今回のコラボにはどのような価値を感じますか。

イズミダ:もちろん個展をベースに活動しているので、実際に原画を見てもらいたいという思いはぶれませんが、自分の作品が多くの人の目に触れる機会になるのはうれしいです。
「サラナル」はドラッグストアなど販売店舗が多く、ローカルでも買おうと思った時にすぐに購入できるし、値段も手ごろですよね。地元の北海道でも、実際に手に取れるのはすてきなこと。絵が好きな人が手に取った時にうれしい気持ちになってもらえたらいいなと思います。

「変化がなければ愛着がわかない」
リーイズミダの
エイジングとの向き合い方

WWD:「サラナル」には、女性のエイジングに対する漠然とした不安や葛藤に、前向きになれる手伝いをしたいという思いもあるそう。イズミダさんは、エイジングに対してどのようなマインドで向き合っていますか。

イズミダ:エイジングだって、すてきな変化です。忙しく、毎日頑張っているんだから、老いていくのは当たり前のこと。変化がないと、愛着が湧かないと思いませんか。きれいの定義は人それぞれですし、年齢を重ねるうちに目元のシワがかわいく見えることだってあるでしょう。自分がどういうふうに年を重ねていきたいのか、どうありたいのか次第ですよね。私は健康で、ツルッとしたお肌で元気に絵を描いていたいですね。

WWD:「サラナル」の使い心地や、お気に入りのポイントを教えてください。

イズミダ:どちらも使っていますが、肌が乾燥しやすいので、しっとりとした洗い上がりの“ピュアクレンジングジェル ホワイト”はお気に入りです。ローズとゼラニウムがほのかに香るのもいい感じ。2種類をバスルームに置いておいて、その日の気分に合わせて、肌や心が求めている香りを使うのも良いと思います。重すぎないちょうどいいテクスチャーが肌になじませると心地よいです。

肌本来の実力を発揮するための
“落とすケア”の大切さを発信

「サラナル」は、肌の変化を感じた時にまず見直すべきは“落とすケア”とし、クレンジングにフォーカスしたシンプルな商品ラインアップを展開する。ブランドコンセプト「まっさらから、はじめよう」には、正しい“落とすケア”で仕事にプライベートに忙しい現代女性が理想的な肌を手に入れて、より前向きに過ごせるようにという思いが込められている。「よく落ちるけど肌が突っ張り、刺激がある」「肌に優しいけれど、メイクが落ちない」「肌負担を減らそうとすると、手間や時間がかかる」といった、クレンジングにまつわる悩みに、3段階に変化するクレンジングを提案。ジェル、オイル、ミルク、ぞれぞれの良さを取り入れた“サラナル ピュアクレンジングジェル クリア”と“同 ホワイト”で、毎日の“落とすケア”を時短でかなえる。

商品購入で
オリジナルポーチをプレゼント

8月1日のコラボパッケージの発売に合わせて、EC(楽天)では2点以上の購入でオリジナルのクリアポーチを1つプレゼントするキャンペーンを実施。パッケージと同様、花のデザインに、「Every day is a new day.(毎日が新しい日)」「Choose to Shine.(輝くことを選ぼう)」というメッセージを添えた。

PHOTOS : YUTA KATO
TEXT:NATSUMI YONEYAMA
問い合わせ先
株式会社I-ne
0120-333-476

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名門生地メーカートップに聞く「メード・イン・イタリーの強みと課題」 高額品の拡大とサステナビリティ、産地の人手不足

素材見本市「第37回 ミラノ・ウニカ(MILANO UNICA)」がこのほど閉幕した。コロナ明けでアジア圏からのバイヤーが戻ったこともあり、来場社数は4701社と前年から16%増えた。今回はトレンドテキスタイルの集積エリアをサステナブルな素材に限定したり、メタバースブースを新設したりなど、新たな試みも目立った。名門テキスタイルメーカーのヴィターレ・バルベリス・カノニコ(VITALE BARBERIS CANONICO)のトップで、ミラノ・ウニカの会長も務めるアレッサンドロ・バルベリス・カノニコ(Alessandro Barberis Canonico)氏に聞いた。

WWD:「ミラノ・ウニカ」全体の手応えは?

アレッサンドロ・バルベリス・カノニコ=ミラノ・ウニカ会長(以下、カノニコ会長):出店社数、来場バイヤー数ともに年々増加傾向にあり、とても上手くいっている。イタリアのテキスタイル市場も好調だ。世界的に高級品市場が盛り上がっている。イタリアのテキスタイルメーカーへの期待に応えるため、展示ブースでも全体的に高級感を出すことを意識した。ビキューナやウール、軽量で柔らかなコート地など最高級素材を楽しんでもらえたと思う。

WWD:今回は新たにメタバースブームを設けたが、狙いは?

カノニコ会長:10年後には、メタバースの存在感はさらに強まっていると見ている。たとえばバーチャルな店舗で試着し実店舗で購入するというような、オン・オフを行き来するような購買体験がもっと浸透しているはず。それにはアバターの再現度が要だが、「フォートナイト」のアバターには驚いた。現実の見た目により近いアバターができれば、メタバース上のファッションに求められる価値も変わってくる。ただ本音を言えば、私はVRゴーグルを装着してメタバースブース空間に入ったら、15分でめまいがした(笑)。今後の技術の進歩を期待したい。

WWD:デジタルファッションは、サステナビリティの文脈でも重要だ。
カノニコ会長:業界の課題の1つは、シーズンが終わるごとに発生する廃棄だ。デジタルはその解決策になる。生産前に消費者が必要なものが確実にわかる仕組みを確立したい。

課題は人手不足 若手に生地の芸術を伝えたい

WWD:各社のサステナビリティの取り組みも進んでいるようだ。

カノニコ会長:トレンドエリアへの出展は今回から、サステナビリティに取り組んでいるかどうかを条件にした。トレンドエリアの名称も「トレンド・サステナビリティ・エリア」に変更し、クリエイティビティだけでなく、サステナビリティも同様に重視していることを打ち出した。実際にブランドからサステナブルな生地を求める声は高まっている。各社は環境負荷の低い生産工程や、労働環境の向上などの社会面での取り組みはかなり進んでいるが、より負荷の低い原料開発にはまだまだ課題がある。

WWD:EUではさまざまな規制で実行段階に来ているが、どう見ている?
カノニコ会長:特に課題だと思っているのは、繊維のリサイクルだ。現在の規制ではリサイクルが推奨されているが、洋服はさまざまな部品で構成されており、単一素材でできていることはほぼない。たとえば、シーズンごとに捨てられてしまうような服は、リサイクルの方法を考えなければいけないだろう。一方、私たちの強みであるハイクラスな素材はそもそも寿命が長くトレンドにもあまり影響されない。廃棄を前提としたリサイクルを考える前に、修繕の仕組みを整えるべきかもしれない。今まさに、どういう特質であればリサイクルをすべきで、リサイクルができないものはどんな風に対応すべきなのかなどを、行政と話し合っているところだ。来年はより具体的な落としどころについて話せると思う。

WWD:イタリアのテキスタイル業界が抱える課題は?
カノニコ会長:一番は人手不足だ。産地は働き手を探しているにもかかわらず、若い人たちの失業率がとても高い。このミスマッチはイタリアの非常に深刻な問題だ。若い人たちは、インフルエンサーやマーケティングなどのコミュニケーションの分野の職に憧れていて、モノづくりの生産に携わる仕事を目指す人が少ない。「ミラノ・ウニカ」でも職人を目指す学生の育成をサポートしたい。取り組みの一つは、私たちがスポンサードしている「タム」プロジェクトだ。これは座学で生地を学んだり、工場での実習をしたりするというもので全てを無料で提供している。2月には、同プロジェクトを通して「ミラノ・ウニカ」に1500人の学生を招いた。生地の芸術を伝え産業のイメージアップに貢献したい。

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元ロリータ少女とバンドマンが自宅クローゼットで画期的な「バーチャル試着サービス」を開発するまで サリー127 鳥巣彩乃&小野沢敦

鳥巣彩乃/サリー127社長(左)、小野沢敦/サリー127取締役CTO(右)

(とす・あやの)千葉県出身。2007年に日本女子大学文学部を卒業後。人材ベンチャーなどを経て、2013年7月にリクルートマーケティングパートナーズ(現リクルート)に入社。2022年までリクルートリカレント事業の業績改革を責任者として牽引。リクルートに所属しながら、2017年12月7日にSally127を創業。22年にリクルートを退社
(おのざわ・あつし)1994年生まれ。14歳よりプログラミングに目覚め、独学で多数のゲームやツールを開発。高校・大学と情報技術専門コースへ進学した生粋のエンジニア。卒業後リクルート100%子会社のニジボックスに入社。リクルート所属の新規事業エンジニアを経て、国内最大級の就職サイト「リクナビ」にて、テクニカルディレクターを務めた。2017年サリー127共同創業。21年7月にニジボックスを退社 PHOTO:HIRONORI SAKUNAGA

サリーワンツーセブン(SALLY127以下、サリー127)は、ちょっと毛色の変わったファッション系のITスタートアップ企業だ。「ヴィヴィアン・ウエストウッド」コレクターの鳥巣彩乃がCEOを、元ヘビメタロッカーでITエンジニアの小野沢敦がCTOを務める。社名の「サリー123」も、氣志團の名曲「國道127號線の白き稲妻」から取ったという。2人はともにリクルートの新規事業開発部出身。「席が近くて、2人とも『ヴィヴィアン』好きだったのですぐ意気投合した」(鳥巣CEO)という。

ここまで聞くと、リクルート出身者が同窓会のノリで作ったような軽いスタートアップに聞こえるかもしれない。だが、サリー127のバーチャル試着のテクノロジーとサービスは本物だ。AR(拡張現実)技術を使う一方、アプリ不要でブラウザ上でも動く超独自技術をベースにしているのだ。「アプリ不要+ブラウザ上で使える」、ということはどんなECサイトも手軽に導入できるということ。このサービスは、小野沢CTOがプログラムからデザイン、UI/UX、データベース設計まで全て一人で、ゼロから作り上げた。鳥巣CEOは「4年をかけて、コツコツと磨き上げてきた。この技術には絶対の自信がある」。

筋金入りの「ロリータ少女」はリクルートへ 転機はある新規事業の挫折

鳥巣CEOは学生時代、筋金入りのロリータだった。「親友と2人で365日ロリータ服を着ていたので、巨大掲示板の2ちゃんねるに(大学のキャンパスのあった)『目白にいつも謎のロリータがいる』みたいなスレが立ったほどでした(笑)」。だが卒業後はファッション関連の仕事には就かず、人材ベンチャーなどを経て、2013年にリクルートに入社した。「働きだしてからもファッションのことはずっと好きで、稼いだお金の大半は服につぎ込んでいました。ただ、勤め先は何度か変わったけど、アパレル会社で働くイメージはどうしても湧かなかった」。

転機は全精力をつぎ込んだ、ある新規プロジェクトの頓挫だった。鳥巣CEOは当時、社内の新規事業コンテストにてグランプリを獲得し、社内起業としてインターネットサービスを立ち上げ、責任者を務めたものの、なかなか軌道に乗らず、結局プロジェクトは終了した。「抜け殻のようになっちゃって。あるとき残業してて、ふっと横を見たら小野沢がいたので『ねえ、一緒に起業してみない?』って誘ったんです。特にやりたい事業があったわけでもないけど、気の合う小野沢とだったら面白いかなって思ったんですよ」。ただ、「いいですね」と答えた小野沢に対して、鳥巣は自分から声をかけたにも関わらず「で、君は何ができるの?」と返したのだ。小野沢曰く「僕も、そろそろ自分で事業を立ち上げたいと思っていたタイミングでした。振り返ってみると、言い方(笑)とは思いますが、当時はじゃあ何をやろうか、という壁打ち感覚でしたね」。

リクルートはルールさえ遵守すれば副業や起業が許されており、2人は17年に起業した。ただ、それから2年間はいわゆる一般的な受託サービスを続けていた。「起業後もしばらくは、実は小野沢が超優秀なエンジニアだって知らなかったんですよ。でもある時、小野沢がいわゆる、フルスタックエンジニア(複数、あるいは全分野を一人で開発できるエンジニアのこと)だと知って、そのときに『だったら、2人とも大好きな服のサービスを作ろう!』って思ったんです」。

超独自のアプリ不要の「バーチャル試着」技術の開発へ

サービスはすぐに「バーチャル試着」に決まった。2人とも服好きで、IT×服のオンラインショッピングにおいて、「試着」が常に高いハードルになっていることがすぐにわかったからだ。裏テーマは「真夜中のランウェイ」だった。「洋服好きの人なら誰でも身に覚えがあると思うのですが、夜中にふと思い立って好きな服を何着も着替えたりすることってあるじゃないですか?そんな風に使ってもらえたら嬉しいなって」。ちなみにこの「真夜中のランウェイ」というコンセプトは、同社の技術検証サイトの同名のサービスとして22年11月にスタートしている。

小野沢CTOは「かなり早い段階から、頭の中にARを使ったサービスのイメージはあった。ただ、1人で作るとなると何年かかるかは分からないことは伝えました」。

鳥巣さんは、「それでもいい、というかそれだ!と思いました。全部小野沢が1人で作るならとことんこだわったプロダクトが作れる。何もない白紙の状態だったけど、その時に『自分たちだけで完成させること』と『妥協しないこと』、この2つだけを決めました」。

バーチャル試着ソフトの開発に着手後、2019年には24時間使用できる台東区のシェアオフィスを借り、終業後や週末を含めて、ほぼ毎日のように開発のためのミーティングを重ねた。「私の役割は顧客目線で使い勝手などを徹底的にリサーチ&検証すること。この部分はリクルートで叩き込まれたので」。

日中はリクルートの仕事があり、開発の仕事ができるのは平日の夜と週末だけだった。小野沢CTOは当時「鳥巣さんとコンセプトを話し合ったり、鳥巣さんがサービス設計を考える横でプログラムを書いていたので、週末も含めて、いつも朝の4時くらいまで仕事をしていました」。副業で毎日、明け方まで働く日々はどうだったのだろうか。「毎日が楽しくて。傍からだと結構激しく議論をしていたように見えたかもしれませんが、それはベースに『お客目線で良いサービスを作る』という軸があったから」。

いま2人はバーチャル試着サービスを「あとおしちゃん」というサービス名に決め、アパレル企業を回る毎日だ。「アプリ開発や高度なITの専用人材、高額の開発費が全て不要ということもあって、かなりの手応えを感じている」と鳥巣CEO。

ガレージならぬ「クローゼット発」の技術で成り上がれ

「あとおしちゃん」のサンプルムービーには、鳥巣CEOがピンク色の建物でバーチャル着替えをするシーンが出てくるが、これは鳥巣CEOの自宅の一部を改装しており、実際の作業は小野沢CTOが行った。小野沢は「もともと父が自分でログハウスを作るほど、工作や大工みたいなことも好きで、自分もよく手伝っていました。手を動かすのが好きなんです。よく鳥巣が部屋の改造を思いつくと、呼び出されてクローゼットの改造を手伝っています(笑)」。GAFAMのような超大手IT企業の多くも、かつてはガレージで生まれた。ならば創業者のクローゼットから巣立つファッションテックもあっていいはずだ。CEOの自宅のクローゼットから成り上がっていく「サリー127」の物語に注目したい。

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元ロリータ少女とバンドマンが自宅クローゼットで画期的な「バーチャル試着サービス」を開発するまで サリー127 鳥巣彩乃&小野沢敦

鳥巣彩乃/サリー127社長(左)、小野沢敦/サリー127取締役CTO(右)

(とす・あやの)千葉県出身。2007年に日本女子大学文学部を卒業後。人材ベンチャーなどを経て、2013年7月にリクルートマーケティングパートナーズ(現リクルート)に入社。2022年までリクルートリカレント事業の業績改革を責任者として牽引。リクルートに所属しながら、2017年12月7日にSally127を創業。22年にリクルートを退社
(おのざわ・あつし)1994年生まれ。14歳よりプログラミングに目覚め、独学で多数のゲームやツールを開発。高校・大学と情報技術専門コースへ進学した生粋のエンジニア。卒業後リクルート100%子会社のニジボックスに入社。リクルート所属の新規事業エンジニアを経て、国内最大級の就職サイト「リクナビ」にて、テクニカルディレクターを務めた。2017年サリー127共同創業。21年7月にニジボックスを退社 PHOTO:HIRONORI SAKUNAGA

サリーワンツーセブン(SALLY127以下、サリー127)は、ちょっと毛色の変わったファッション系のITスタートアップ企業だ。「ヴィヴィアン・ウエストウッド」コレクターの鳥巣彩乃がCEOを、元ヘビメタロッカーでITエンジニアの小野沢敦がCTOを務める。社名の「サリー123」も、氣志團の名曲「國道127號線の白き稲妻」から取ったという。2人はともにリクルートの新規事業開発部出身。「席が近くて、2人とも『ヴィヴィアン』好きだったのですぐ意気投合した」(鳥巣CEO)という。

ここまで聞くと、リクルート出身者が同窓会のノリで作ったような軽いスタートアップに聞こえるかもしれない。だが、サリー127のバーチャル試着のテクノロジーとサービスは本物だ。AR(拡張現実)技術を使う一方、アプリ不要でブラウザ上でも動く超独自技術をベースにしているのだ。「アプリ不要+ブラウザ上で使える」、ということはどんなECサイトも手軽に導入できるということ。このサービスは、小野沢CTOがプログラムからデザイン、UI/UX、データベース設計まで全て一人で、ゼロから作り上げた。鳥巣CEOは「4年をかけて、コツコツと磨き上げてきた。この技術には絶対の自信がある」。

筋金入りの「ロリータ少女」はリクルートへ 転機はある新規事業の挫折

鳥巣CEOは学生時代、筋金入りのロリータだった。「親友と2人で365日ロリータ服を着ていたので、巨大掲示板の2ちゃんねるに(大学のキャンパスのあった)『目白にいつも謎のロリータがいる』みたいなスレが立ったほどでした(笑)」。だが卒業後はファッション関連の仕事には就かず、人材ベンチャーなどを経て、2013年にリクルートに入社した。「働きだしてからもファッションのことはずっと好きで、稼いだお金の大半は服につぎ込んでいました。ただ、勤め先は何度か変わったけど、アパレル会社で働くイメージはどうしても湧かなかった」。

転機は全精力をつぎ込んだ、ある新規プロジェクトの頓挫だった。鳥巣CEOは当時、社内の新規事業コンテストにてグランプリを獲得し、社内起業としてインターネットサービスを立ち上げ、責任者を務めたものの、なかなか軌道に乗らず、結局プロジェクトは終了した。「抜け殻のようになっちゃって。あるとき残業してて、ふっと横を見たら小野沢がいたので『ねえ、一緒に起業してみない?』って誘ったんです。特にやりたい事業があったわけでもないけど、気の合う小野沢とだったら面白いかなって思ったんですよ」。ただ、「いいですね」と答えた小野沢に対して、鳥巣は自分から声をかけたにも関わらず「で、君は何ができるの?」と返したのだ。小野沢曰く「僕も、そろそろ自分で事業を立ち上げたいと思っていたタイミングでした。振り返ってみると、言い方(笑)とは思いますが、当時はじゃあ何をやろうか、という壁打ち感覚でしたね」。

リクルートはルールさえ遵守すれば副業や起業が許されており、2人は17年に起業した。ただ、それから2年間はいわゆる一般的な受託サービスを続けていた。「起業後もしばらくは、実は小野沢が超優秀なエンジニアだって知らなかったんですよ。でもある時、小野沢がいわゆる、フルスタックエンジニア(複数、あるいは全分野を一人で開発できるエンジニアのこと)だと知って、そのときに『だったら、2人とも大好きな服のサービスを作ろう!』って思ったんです」。

超独自のアプリ不要の「バーチャル試着」技術の開発へ

サービスはすぐに「バーチャル試着」に決まった。2人とも服好きで、IT×服のオンラインショッピングにおいて、「試着」が常に高いハードルになっていることがすぐにわかったからだ。裏テーマは「真夜中のランウェイ」だった。「洋服好きの人なら誰でも身に覚えがあると思うのですが、夜中にふと思い立って好きな服を何着も着替えたりすることってあるじゃないですか?そんな風に使ってもらえたら嬉しいなって」。ちなみにこの「真夜中のランウェイ」というコンセプトは、同社の技術検証サイトの同名のサービスとして22年11月にスタートしている。

小野沢CTOは「かなり早い段階から、頭の中にARを使ったサービスのイメージはあった。ただ、1人で作るとなると何年かかるかは分からないことは伝えました」。

鳥巣さんは、「それでもいい、というかそれだ!と思いました。全部小野沢が1人で作るならとことんこだわったプロダクトが作れる。何もない白紙の状態だったけど、その時に『自分たちだけで完成させること』と『妥協しないこと』、この2つだけを決めました」。

バーチャル試着ソフトの開発に着手後、2019年には24時間使用できる台東区のシェアオフィスを借り、終業後や週末を含めて、ほぼ毎日のように開発のためのミーティングを重ねた。「私の役割は顧客目線で使い勝手などを徹底的にリサーチ&検証すること。この部分はリクルートで叩き込まれたので」。

日中はリクルートの仕事があり、開発の仕事ができるのは平日の夜と週末だけだった。小野沢CTOは当時「鳥巣さんとコンセプトを話し合ったり、鳥巣さんがサービス設計を考える横でプログラムを書いていたので、週末も含めて、いつも朝の4時くらいまで仕事をしていました」。副業で毎日、明け方まで働く日々はどうだったのだろうか。「毎日が楽しくて。傍からだと結構激しく議論をしていたように見えたかもしれませんが、それはベースに『お客目線で良いサービスを作る』という軸があったから」。

いま2人はバーチャル試着サービスを「あとおしちゃん」というサービス名に決め、アパレル企業を回る毎日だ。「アプリ開発や高度なITの専用人材、高額の開発費が全て不要ということもあって、かなりの手応えを感じている」と鳥巣CEO。

ガレージならぬ「クローゼット発」の技術で成り上がれ

「あとおしちゃん」のサンプルムービーには、鳥巣CEOがピンク色の建物でバーチャル着替えをするシーンが出てくるが、これは鳥巣CEOの自宅の一部を改装しており、実際の作業は小野沢CTOが行った。小野沢は「もともと父が自分でログハウスを作るほど、工作や大工みたいなことも好きで、自分もよく手伝っていました。手を動かすのが好きなんです。よく鳥巣が部屋の改造を思いつくと、呼び出されてクローゼットの改造を手伝っています(笑)」。GAFAMのような超大手IT企業の多くも、かつてはガレージで生まれた。ならば創業者のクローゼットから巣立つファッションテックもあっていいはずだ。CEOの自宅のクローゼットから成り上がっていく「サリー127」の物語に注目したい。

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メンズコスメ開発&起業をリアルに描く 大西流星主演ドラマ「紅さすライフ」が生まれた理由

「メンズコスメが浸透している」。そう言われてもピンとこない人もいるかもしれない。10〜20代男性にはスキンケアは当たり前の行為として認知され、コロナ禍のオンラインミーティングやオンライン授業などでモニターに映る自分の顔を見る機会が増えたことで、顔色を明るくするベースメイクアイテムも続々と登場。実際に30代でもファンデーションを使う男性は増えてきていると言われるが、まだまだ発展途上で課題は多い。

そんなメンズコスメ開発を題材にしたドラマがスタートする。日本テレビの「シンドラ」(毎週月曜24:59〜25:29)枠で7月24日(月)からスタートする「紅さすライフ」だ。なぜ今、メンズメイクなのか。日本テレビの森有紗プロデューサーに話を聞いた。

ドラマ「紅さすライフ」とは

大手化粧品メーカー・ペガサス化粧品社長の次男でありながら、父親とはワケあって距離を置いている“三度の飯よりコスメが好き”な大学4年生の北條雅人(なにわ男子・大西流星)は、化粧品業界での起業を夢見ていた。ひょんなことから大学の研究室で働く29歳の理系ポストドクターですっぴん女子の皆本頼子(井桁弘恵)と出会い、2人でメンズコスメブランド立ち上げのために奮闘する。

雅人の兄・一馬役にはSexy Zoneの松島聡、物語のキーパーソンとなるカリスマモデル・矢巻光には少年忍者(ジャニーズJr.)の深田竜生を起用。なにわ男子の主題歌「Make Up Day」が物語を盛り上げる。

日本テレビ「シンドラ」(毎週月曜24:59〜25:29)枠で7月24日(月)からスタート。全10話。「TVer」「Hulu」でも配信する。

【森有紗プロデューサー インタビュー】
「男性がメイクをすることも、女性が毎日すっぴんで過ごすことも、
特別視されることではないと思う」

WWDJAPAN(以下、WWD):メンズコスメを取り上げるドラマが誕生することに驚きました。なぜメンズコスメを?

森有紗プロデューサー(以下、森):企画を考えたのがちょうどコロナ禍のステイホーム期間中で、リップメイク欲が募っていた頃で。そんな時に、“メイクで自分を強くする”男の子と、猪突猛進なすっぴん女子がバティを組みながら、“起業”という一つの夢に向かって奮闘するラブコメが浮かび上がってきました。SNSやYouTubeでもメイク男子の方による情報発信が増えてきていたり、既存のコスメブランドでも、男性モデルを広告塔に起用されるケースを目にしていたので、自然と興味が湧いた形ですね。

WWD:確かにメイク男子のアカウントも増えてきています。また、最近ではインフルエンサーがブランドを立ち上げSNSで宣伝・販売するDtoC(Direct to Consumer)スタイルもあります。

森:今回のドラマで雅人たちがやろうとしていることもまさにそんな感じです。

WWD:ということは、コスメ製造を行うOEM企業も出てくるのでしょうか?

森:出てきます。OEM企業と打ち合わせをするシーンや、雅人たちが予算面で頭を抱えたりするシーンも出てくる予定です。監修にOEM企業の方に入っていただいているので、実際の開発の流れを聞いて盛り込んでいます。

WWD:化粧品OEM企業が登場するドラマは初めてなんじゃないかと思います。なにわ男子の大西流星さんはコスメ男子として知られていますが、起用の理由は?

森:何気なく見ていたバラエティー番組で、プロのような手つきでメイクを施す大西さんが出ていて「これだ!」と。「北條雅人がいる!」と思ってすぐにオファーしました(笑)。

WWD:大西さんは実際にコスメのプロデュースもしていましたし、適任すぎて運命的ですね。撮影現場の様子はいかがですか?

森:大西さんは普段のお仕事でもメイクをしていらっしゃるから、メイクを施す際の所作がとても自然で綺麗なんです。「こうした方がいいかも」とアイデアを出してくださることもありますね。

WWD:一方の井桁さん演じる頼子はすっぴん女子なんですね。

森:男女のバディもので、かたやメイク男子、かたやすっぴん女子という対比もあるのですが、「化粧をしなければいけない」という見え方にはしたくなかったんです。“メイク”というと、世間的には女性がするものというイメージが強いかもしれませんが、本来化粧するしないは個人の自由ですし、ジェンダーや年齢問わず、それぞれの選択でいいんじゃないかと。

いずれは「メイク男子」や「すっぴん女子」という表現すら埋もれていく世の中になったらいいな、とも思います。男性がメイクをすることも、女性が毎日すっぴんで過ごすことも、何ら特別視されることではないと思うので。

WWD:メンズメイクのみならず、メイクとは?という問いかけにもなりそうです

森:雅人にとってメイクは自分を強くするための「武装」でもあって、物語の中ではそう思う彼の中の陰となる部分や、葛藤も描かれていきます。メイクに対する捉え方なども楽しんでいただければと思います。

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メンズコスメ開発&起業をリアルに描く 大西流星主演ドラマ「紅さすライフ」が生まれた理由

「メンズコスメが浸透している」。そう言われてもピンとこない人もいるかもしれない。10〜20代男性にはスキンケアは当たり前の行為として認知され、コロナ禍のオンラインミーティングやオンライン授業などでモニターに映る自分の顔を見る機会が増えたことで、顔色を明るくするベースメイクアイテムも続々と登場。実際に30代でもファンデーションを使う男性は増えてきていると言われるが、まだまだ発展途上で課題は多い。

そんなメンズコスメ開発を題材にしたドラマがスタートする。日本テレビの「シンドラ」(毎週月曜24:59〜25:29)枠で7月24日(月)からスタートする「紅さすライフ」だ。なぜ今、メンズメイクなのか。日本テレビの森有紗プロデューサーに話を聞いた。

ドラマ「紅さすライフ」とは

大手化粧品メーカー・ペガサス化粧品社長の次男でありながら、父親とはワケあって距離を置いている“三度の飯よりコスメが好き”な大学4年生の北條雅人(なにわ男子・大西流星)は、化粧品業界での起業を夢見ていた。ひょんなことから大学の研究室で働く29歳の理系ポストドクターですっぴん女子の皆本頼子(井桁弘恵)と出会い、2人でメンズコスメブランド立ち上げのために奮闘する。

雅人の兄・一馬役にはSexy Zoneの松島聡、物語のキーパーソンとなるカリスマモデル・矢巻光には少年忍者(ジャニーズJr.)の深田竜生を起用。なにわ男子の主題歌「Make Up Day」が物語を盛り上げる。

日本テレビ「シンドラ」(毎週月曜24:59〜25:29)枠で7月24日(月)からスタート。全10話。「TVer」「Hulu」でも配信する。

【森有紗プロデューサー インタビュー】
「男性がメイクをすることも、女性が毎日すっぴんで過ごすことも、
特別視されることではないと思う」

WWDJAPAN(以下、WWD):メンズコスメを取り上げるドラマが誕生することに驚きました。なぜメンズコスメを?

森有紗プロデューサー(以下、森):企画を考えたのがちょうどコロナ禍のステイホーム期間中で、リップメイク欲が募っていた頃で。そんな時に、“メイクで自分を強くする”男の子と、猪突猛進なすっぴん女子がバティを組みながら、“起業”という一つの夢に向かって奮闘するラブコメが浮かび上がってきました。SNSやYouTubeでもメイク男子の方による情報発信が増えてきていたり、既存のコスメブランドでも、男性モデルを広告塔に起用されるケースを目にしていたので、自然と興味が湧いた形ですね。

WWD:確かにメイク男子のアカウントも増えてきています。また、最近ではインフルエンサーがブランドを立ち上げSNSで宣伝・販売するDtoC(Direct to Consumer)スタイルもあります。

森:今回のドラマで雅人たちがやろうとしていることもまさにそんな感じです。

WWD:ということは、コスメ製造を行うOEM企業も出てくるのでしょうか?

森:出てきます。OEM企業と打ち合わせをするシーンや、雅人たちが予算面で頭を抱えたりするシーンも出てくる予定です。監修にOEM企業の方に入っていただいているので、実際の開発の流れを聞いて盛り込んでいます。

WWD:化粧品OEM企業が登場するドラマは初めてなんじゃないかと思います。なにわ男子の大西流星さんはコスメ男子として知られていますが、起用の理由は?

森:何気なく見ていたバラエティー番組で、プロのような手つきでメイクを施す大西さんが出ていて「これだ!」と。「北條雅人がいる!」と思ってすぐにオファーしました(笑)。

WWD:大西さんは実際にコスメのプロデュースもしていましたし、適任すぎて運命的ですね。撮影現場の様子はいかがですか?

森:大西さんは普段のお仕事でもメイクをしていらっしゃるから、メイクを施す際の所作がとても自然で綺麗なんです。「こうした方がいいかも」とアイデアを出してくださることもありますね。

WWD:一方の井桁さん演じる頼子はすっぴん女子なんですね。

森:男女のバディもので、かたやメイク男子、かたやすっぴん女子という対比もあるのですが、「化粧をしなければいけない」という見え方にはしたくなかったんです。“メイク”というと、世間的には女性がするものというイメージが強いかもしれませんが、本来化粧するしないは個人の自由ですし、ジェンダーや年齢問わず、それぞれの選択でいいんじゃないかと。

いずれは「メイク男子」や「すっぴん女子」という表現すら埋もれていく世の中になったらいいな、とも思います。男性がメイクをすることも、女性が毎日すっぴんで過ごすことも、何ら特別視されることではないと思うので。

WWD:メンズメイクのみならず、メイクとは?という問いかけにもなりそうです

森:雅人にとってメイクは自分を強くするための「武装」でもあって、物語の中ではそう思う彼の中の陰となる部分や、葛藤も描かれていきます。メイクに対する捉え方なども楽しんでいただければと思います。

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ビンテージアイウエア店ソラックザーデが大阪でトランクショーを開催 “面倒見が良かった時代”のスピリットを継承

東京・原宿のジュエラー&オプティシャン、ソラックザーデ(SOLAKZADE)と、大阪・梅田にある姉妹店、ザ・ラストストア(THE LAST STORE)が、7月12〜18日に阪急うめだ本店、19〜25日に阪急メンズ大阪でトランクショーを開催中だ。

2005年、岡本龍允(たつや)氏と弟・竜(りょう)氏の兄弟により、大阪で日本初のビンテージアイウエア専門の予約制ショールームとして始まったソラックザーデ。12年7月、東京に完全移転し、原宿の「ゴローズ(GORO'S)」の地下に店舗オープンした。15年には同ビル1階にも拡張し、アンティークジュエリーの取り扱いを始め、22年からはビンテージカー部門も立ち上げた。

20年9月には阪急百貨店とのジョイントプロジェクトとして、阪急メンズ大阪1階にザ・ラストストアをオープン。阪急阪神百貨店の出資のもと、岡本兄弟がディレクターとして、コンセプト立案から店舗デザイン、VMD、商品ラインナップや店内体験に至るまでの総合設計を行った。店舗の現場は、阪急百貨店の社員から選抜されたチームが管理・運営を行う。ビンテージ、アンティークのアイウエアや腕時計、ジュエリーを柱とし、「カルティエ(CARTIER)」「ジャガールクルト(JAEGER LECOULTRE)」「ダンヒル(DUNHILL)」をはじめとする、メゾンブランドのスペシャルピースを扱う。

両店舗ともに、購入したアイウエアは永久保証。一人一人のゲストに応じた丁寧なコミュニケーションやメンテナンスサービスが好評で、国内外セレブリティーにもファンが多い。

2年ぶりに大阪で開催する今回のトランクショーのタイトルは「天上天下 唯我独尊」。ソラックザーデから約1000本のアイウエアと約100点のジュエリーを厳選。来場したゲスト一人一人と会話を交わし、その人だけの特別な1本を提案する。両店を牽引する岡本龍允氏に、同イベントの狙いや手応えを聞いた。

WWD:ソラックザーデとザ・ラストストアの違いとは?
岡本龍允(以下、岡本):ソラックザーデではビンテージ品と僕らが手がけるオリジナル商品を扱うのに対して、ザ・ラストストアにはビンテージ品とメゾンブランドのスペシャルピースが並びます。ザ・ラストストアは阪急百貨店の森井専務と取り組んでいるプロジェクトで、メゾンブランドのグローバルCEO達との強いコネクションを持つ唯一無二の場所。それをコンシェルジュ的に対応するのではなく、スタッフそれぞれが専門知識や専門技術を持ち、ゲストにとって価値のある人間であるための努力をし続けた上で、一人一人一本一本と、誠実に丁寧に向き合い、リスペクトと愛のあるリアルな関係をゲストとも仲間たちとも築けたらと願っています。
ザ・ラストストアにはいくつもの小部屋があります。「ヴァシュロン・コンスタンタン(VACHERON CONSTANTIN)」「ピアジェ(PIAGET)」「ジャガー(JAEGER LECOULTRE)」といったリシュモングループの時計ブランドからコンプリケーションウォッチ(複雑時計)を集めたり、「ティファニー(TIFFANY & CO.)」などとハイジュエリーをメンズの括りで展開。「ダンヒル・ナミキ(DUNHILL NAMIKI)」の蒔絵が施されたパイプなどもあります。また、京都の285年の老舗帯匠・誉田屋源兵衛のシークレットイベントもこの中で開催したりしました。

WWD:今回トランクショーを開催した背景は?
岡本:10年来のソラックザーデのメンバーである山﨑リコが、4月に東京から大阪に移住し、ザ・ラストストアの現場リーダーとして着任しました。そして、5月に加入した新メンバー・幸野リナからのアイデアを山﨑リコがキャッチして、僕や森井専務に提案してくれたのが今回の開催につながりました。1日10〜15万人の来館がある阪急うめだ本店1階の玄関口でトランクショーを開催することで、多くの人にザ・ラストストアを肌で感じてもらおうと企画したのです。

岡本:これまでザ・ラストストアは、SNSもLINEのみ、ホームページも持たず、告知も一切せず、メディア取材も断り続けて、「実力があれば口コミだけでも出来るはず!」という厳しい道を選んでいました。
ソラックザーデは僕自身が20歳の頃に「会社勤めはできそうにないから好きなことをやって生きよう」と始めたプロジェクト。僕自身、社会のレールからはみ出した人間だと思っていてーーでもそういう人間だからこそ、ピュアで美しいものが作れるんじゃないかと思っています。だから「今こそ、はみ出し者がもっと表に出るべきだ」と感じ、こうしたオープンな形でトランクショーに臨むことで仲間を募っていきたいという気持ちもあります。今回出会った一人一人との交流を深め、仲間としての関係を構築していきたいです。

WWD:トランクショーを開催して約1週間が経つが、手応えは?
岡本:当初は色んな人が来館する一階の玄関口という場所でどれだけの人が反応してくれるのか未知数でしたが、昨日も今日も、昼間に入場制限がかかるほどのゲストが来てくれました。ソラックザーデからのメンバー5人のほか、ザ・ラストストアのメンバーが毎日3人と、東京から駆けつけてくれた助っ人メンバー5人。合計13人のスタッフが常に1対1で対応していたので、おそらく1日あたり100人以上の方と接し、その半数以上の方がその場で購入して下さっています。

岡本:「この場所を1週間で終えないで欲しい」「多くのポップアップを見てきたが圧倒的だ」ーーそう言って1週間に何度も訪れる方、紹介で別の友人と一緒に再訪される方もいました。ほとんどのゲストと、強くファンとして、仲間としてリスペクトを持って繋がることができた実感があります。阪急百貨店の森井専務や山口社長も現場を訪れて、荒木会長からは「ブランドの看板ではなく、スタッフの魅力に惹きつけられている。これだけの来店と繋がりは過去になかった。年2回の開催をお願いしたい」との言葉をいただくことができました。

WWD:トランクショーではどのようなことを行う?
岡本:普段僕らがやっているのと同じように、ゲストとコミュニケーションを取りながら、映画や音楽などのカルチャーや歴史の話を交えて、本当に似合うアイテムの提案を行なっています。そして、今後修理や調整が必要になった場合は、ザ・ラストストアに来ていただければ永久に無料でメンテナンス対応します。

岡本:買い付けで世界中を周る中で、商店街の中にある昔ながらの個人店をたくさん見てきて“面倒見が良かった時代”を強く感じました。そのようなスピリットを受け継ぐという意味でも、ソラックザーデ、ザ・ラストストアはどちらも永久保証で、どんな不可能そうな案件でもどうにかして対応する店でありたいと思っています。
ソラックザーデを知っていても来たことがない方多く、写真だけだと一見“強そう”“怖そう”というイメージを持つ方も多いですが(笑)、実際は昔ながらの心を大事にやっていて、チームのみんなもフレンドリーでお茶目なメンバーです。
今や世界中に何百店舗と構えるメゾンブランドも、100年前は2、3店舗の個人店でした。一人一人のお客さまに、オーダーメイドで対応していた。当時のように“世界中に同じものが溢れている今こそ、僕らはここにしかないものを提案しよう”というのが、ソラックザーデやラストストアの精神であり、今回のトランクショーで皆さんに提案している物です。
WWD:顧客とのコミュニケーションの中で大切にしていることは?
岡本:僕らは年に3本くらい、映画のスタイリングを担当することがあり、その中で“同じ俳優でも何者にでもなれる"ということを学びました。アイウエアだけではなくファッションそのものに、その人が何者にでもなれる可能性が無限大にあるのだと感じています。

岡本:俳優だけではなく、ゲストそれぞれの人生も映画のようにストーリーがあります。でも大体の場合は「私にはきっとこんなのは似合わない、無理だ」と自分で決めつけてしまっている場合が多い。似合うものにトレンドは関係ありませんし、僕らが「これは間違いない」と説得力を持ってアイテムを提案することで、目の前の一人一人が「自分の人生はどんな風にも変われるんだ」と自信を持つことに繋がれば良いと思います。

岡本:10代でも80代でも、出身がどこでも、どんなファッションの人でも、その人の中にあるものに向き合い、リスペクトしたいと思っています。自分の中にあるものに、自分でリスペクトできるということーー“誰もが自分の中に必ずある本当に尊いものの存在を信じて引き出す”。それが今回のタイトルである「天上天下 唯我独尊」という言葉の意味です。皆さんが自分自身をリスペクトできるように、僕らがサポートしたいと思っています。

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「ディプティック」CEOが語るポップアップで体感するメゾンの世界観

「ディプティック(DIPTYQUE)」は7月、東京が皮切りのポップアップイベント“アン エール ドゥ パリ(パリの空気)”を表参道のバツアートギャラリーで開催した。同イベントは、メゾン起源、グラフィックとフレグランス、キャンドル、サヴォアフェールのエリアなどで構成。来場者はフランス・パリの町を散策する気分でメゾンの世界観に触れられるイベントになった。イベントのために来日したファビエンヌ・モニー(Fabienne Mauny)「ディプティック」最高経営責任者(CEO)に話を聞いた。

「日本に上陸して20年。アジアで初めてビジネスをスタートした歴史的な場所を皮切りにポップアップイベントを開催できてとてもうれしい」とモニーCEOは語る。このイベントでは、メゾンのエッセンスやクリエイティビティー、サヴォアフェールを表現し、ワークショップなども開催。同CEOは、「他の店舗とは違う雰囲気でメゾンの世界観に触れられるはずだ。散歩道のように『ディプティック』の香りやパッケージに施されたグラフィック、そしてサヴォアフェールを五感で体感してほしい」と話す。

「ディプティック」のキャンドルは今年誕生60周年を迎えた。「1963年当時は香りのキャンドルはなかった。われわれがフレグランスキャンドルの先駆者だ。今では49種類ものバリエーションが楽しめる」とモニーCEO。一つ一つのキャンドルの成分が異なり、ワックスのコンビネーションにこだわり、美しくキャンドルがともるようにつくられている。また、オーバルのラベルのレタリングもユニークだ。「キャンドルには60年間のサヴォアフェールが詰め込まれている。工程に『ディプティック』らしさが表れている」。

「ディプティック」は、フレグランスからデコレーションまで、さまざまな香りの世界観を楽しめる。今年は、メゾンへのオマージュであるフレグランス“ロー パピエ”が登場した。モニーCEOは今後の商品展開について、「9月にリフィル可能なキャンドルが登場する。今までのキャンドルとは違う新しいクリエイションだ」と言う。“ドソン”をはじめとする人気の柱となるフレグランス周りの商品の充実も視野に入れているようだ。「イマジネーションの豊かさを表現するためには、ディスプレーやセノグラフィーも大切。“アン エール ドゥ パリ”でメゾンの美しい思い出を持ち帰ってほしい」。

問い合わせ先
ディプティック ジャパン
03-6450-5735

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ともさかりえが手掛ける「マイ ウィークネス」 「役者と服作りは全く違う、だから楽しい」

俳優のともさかりえさんは、2021年春夏からウィメンズブランドの「マイ ウィークネス(MY WEAKNESS)」を手掛けている。「ホワイトマウンテニアリング(WHITE MOUNTAINEERING)」やウェブメディア「フイナム(HOUYHNHNM)」を運営する制作会社ライノが生産し、ECのみで販売してきたが、このほど初のポップアップイベントを東京・代官山で実施。合わせて、編集者やスタイリストなどに向けた展示会も初めて行った。「自分が今着たいもの、流行とは多少ズレていても、今の自分が好きだと思うもの」を作っているというともさかさんに、ブランド立ち上げの経緯やモノ作りについて聞いた。

WWD:昔からファッション誌にもよく登場してきたが、服を“着る側”ではなく、“作る側”になろうと思ったきっかけは何だったのか。

ともさかりえ(以下、ともさか):12才でデビューして以来、役者の仕事しかしてきませんでした。役者以外の何かを自分がするということも想像してこなかった。でも、コロナ禍で撮影が全て止まって、今後どうなるか全く分からないとなったときに、「やりたいことを形にしよう」と自然に思ったんです。今はSNSで発信もできるので、ECだけでやれるだけやってみよう、って。これまでもいろんなブランドさんとコラボレーションで商品を作る機会はありましたが、それはお膳立てしていただいた中から選択する、といった作り方でした。服作りについて右も左も分からない中で、生産背景も含めてどこに何を頼んでいくのか。素人がゼロから形にしようと思ったらこんなにも大変なのかと実感しました。私はパターンもひけないし、デザイン画も描けませんが、チームに作りたいものを伝えて形にしていっています。

「1本の糸から作るニットは本当に難しい」

WWD:アイテムはデニムを軸に、それに合わせるトップスやアウターで構成している。

ともさか:デニムがすごく好きなんです。デニムはワードローブの定番であると同時に時代性が色濃く反映されるアイテムで、常にアップデートしていく必要がある。2023-24年秋冬物では、ハイウエストでシルエットも太めなメンズライクなジーンズを企画しました。秋冬はニットも好きですが、ニットは生地をカットして縫製していく布帛アイテムとは違い、1本の糸を編んで形にしていくので本当に難しい。サンプルが想定の2倍の大きさになってしまったということも23-24年秋冬物で経験しました。使っている染料によっても糸の伸びが変わってくる。ニットは奥深くて想像がつかないことが多いアイテムです。アイテムごとにお願いする工場は変えていますが、生産は全て国内で行っています。

WWD:ブランド名の「マイ ウィークネス」は直訳すれば“弱点”。どんな思いを込めているのか。

ともさか:「好きすぎて、私はこれに弱い」「これにだけはどうしたってときめいてしまう」という意味です。それを多くの人にシェアできたら嬉しいなと思っています。作っていると、「こうした方が売れるかな」「このデザインの方が売りやすいかな」といったことを考えるときはありますが、(自分の好きを貫いて)ぶれずにやろうと決めています。チームのメンバーや工場の方など、多くの人が関わっているビジネスだということに責任も感じますが、でもそれ(売ること)だけになってしまうと面白くなくなってしまう。そこは軸をぶらさずに運営していこうと思っています。

「細く長く続けていきたい」

WWD:今回、初めて消費者向けのポップアップイベントや業界関係者向けの展示会を開いた。今後も定期的に行っていくのか。

ともさか:21年春夏の立ち上げ以来、卸販売もせずECのみで小さくブランド運営してきましたが、お客さまから「ボトムは試着して買いたい」というお声をいただいていました。それで23年春夏物のポップアップイベントを開くことにしました。せっかく会場を作り込むなら、23-24年秋冬物も見ていただこうと思って展示会も開きましたが、今後のことは特に何も決めていません。役者の仕事もあるので、それとのバランスも見つつ決めていきます。そのときの自分の気持ちにフィットする形でやっていきたい。必ずしも(年2回展示会を開くといった)ファッション業界の慣習に則る必要もないのかなと思っています。ブランドの規模をもっともっと大きくしていこうといったことも、あまり考えてはいません。EC主体で、ときにイベントも行いながら細く長く続けていけたらと思っています。

WWD:役者としてのキャリアはブランドにどう生かされているか。

ともさか:役者と服作りは全く違う時間軸のものです。全く違うから頭を切り替えて、面白がることができている。役者の仕事では、役によってはすてきであること、おしゃれであることが全く求められないこともあります。全然違う時間軸だからこそ、服作りを楽しめているんだと思う。

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冨永愛に聞く新会社設立の背景 “モデルのキャリアは短命が現実。可能性を広げたい”

冨永愛 プロフィール

(とみなが・あい):15歳でモデルデビュー。17歳のときにニューヨークコレクションで世界のランウェイデビューを果たし、一躍話題となる。以後、世界の第一線でトップモデルとして活躍。モデルの他、テレビ、ラジオ、イベントのパーソナリティー、俳優など様々な分野に精力的に挑戦。2023年NHKドラマ10「大奥」の吉宗役では、その演技に高い評価を得た。日本人として唯一無二のキャリアを持つスーパーモデルとして、チャリティー・社会貢献活動や日本の伝統文化を国内外に伝える活動など、その活躍の場をクリエイティブに広げている。公益財団法人ジョイセフ アンバサダー、消費者庁エシカルライフスタイルアンバサダー、ITOCHU SDGs STUDIOのエバンジェリストを務める。

冨永愛がこのほど、新会社Crossover(クロスオーバー)を設立した。陳恵晴(Keisei Chen)CEOらとともに、モデルをはじめ、表現者たちのセカンドキャリアを支援する活動をスタートするという。15歳でファッション界に入り、世界のランウェイで活躍。今もモデルとして第一線で活躍しつつ、同時にTVドラマでの俳優業や社会貢献活動など数多くの場で活躍している。その冨永がなぜ今、新しいビジネスに取り組むのか。東京のオフィスで話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):Crossoverでの愛さんの肩書きは?

冨永愛Crossoverファウンダー(以下、冨永):発起人であり、ファウンダーの一人です。ビジョンを共有したメンバーで立ち上げました。外部からの出資は受けていません。

WWD:立ち上げの経緯は?

冨永:20代の頃からモデル仲間の間で常に出ていた話題が「モデルのキャリアの短さ」でした。20代前半にして将来を案じているモデルも多く、ファッション産業の規模が小さい国の出身モデルたちは「愛は日本に帰れば仕事があるからいいじゃない」と一層不安そうだった。生まれた国が違うだけでキャリアが変わる世界で、自分は恵まれていると思う。とはいえ日本であってもモデルはモデルの仕事がなくなったら事務所を出るしかないのが現状です。

私は36歳から個人事務所なので、自分のキャリアの変化を受け入れながらここまできました。マネージャーと密に話し合い、テレビのバラエティやラジオパーソナリティ、俳優もやらせてもらってきたからこそ、この年齢(40歳)になっても活動できていると思う。

その経験を経て、モデルのセカンドキャリアをサポートできる事務所、その目標を全面に掲げる事務所があってもいいのではと2年くらい前から思うようになりました。志を共にしているケイさん(陳恵晴CEO)という存在があり、一緒に会社を立ち上げるに至りました。

WWD:これだけダイバーシティーが声高に言われてもモデルの仕事には年齢の壁があるのが現実なのでしょうか。

冨永:難しい。多様性と言われ始めて5年くらいですが、まだまだこれからだと思う。

WWD:そんな現実がある中、個人事務所ではマネジャーとじっくり向き合って仕事を作ることで「冨永愛」の幅を広げてきたことが側から見てもわかります。

冨永:まさにそう。いろいろな可能性を自分の中に探して、広げてもらおうとしたし、広げようとしてくれるスタッフがいた。たくさんのことを経験し、すごく勉強をした。そして大所帯の組織では気がつきにくいスタッフの苦労を知るのも個人事務所ならではです。

WWD:スタッフの苦労がわかると、なぜ成長につながる?

冨永:どんなことも根底にあるのは人との関わりですよね。いろいろな人の人生やいろんなタイプの仕事の背景がわかることで、頭の中の回路が繋がっていくような感覚があります。

WWD:人として豊かになることが、表現者としての豊かさにつながる?

冨永:それはきっとそう。モデルとしての表現力は人生の経験がまとうオーラや雰囲気に直結するし、俳優としては演技力に直結する。人間としての深みが増すと、表現にも深みが出ると思う。

だからCrossoverでも所属モデルと、できる限り個人事務所のような関係で付き合っていきたい。モデル自身が自分のライフステージをきちんと考え、それをサポートする、一緒に選択肢を作るスタンスです。

WWD:最初に所属するメンバーは?

冨永:私と森星ちゃん、UTAくんです。

WWD:Crossoverという社名に込めた思いは?

冨永:「オーバー」には境界や垣根、既存のルールなど、いろいろなものを「超えていく」意味が、そして「クロス」には、混じり合ったり繋がったりといった意味がある。 “乗り越えていく”感覚がすごく好きなんです。

実は今回の話の原点は、「クリエイターをプロデュースする会社を作りたい」でした。「プロデュース会社」だとわかりにくいから、「マネージメント会社」としたけど、本質は「才能のプロデュース」。だから今後は、既存のモデル事務所に所属してモデル業を突き詰めながら、Crossoverにも所属して他のキャリアも形成するという方法もあっていいと思う。

それだけじゃない。理念に共感する企業とCrossover自体が協業し、一つの物事の達成を目指すケースも出てくると思う。広義でのマッチングですよね。それこそ“Crossover”で新しい世界を広げたい。

この会社の設立は、自分のモデル25周年の一環として実現すると決めていました。15周年の時は盛大にパーティを開いたけど、今回は、自分のためだけではなく誰かのために何かをしたかったから。8月1日に41歳になり26年目に入るから駆け込みです(笑)。

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「ホロライブ」「チェーンソーマン」、ZOZOが超強力アニメコラボ連発 その裏側をイケメン社員に直撃

「ゾゾタウン(ZOZOTOWN)」を運営するZOZOが、「プロジェクトセカイ」「チェーンソーマン」「ホロライブ」などの超人気アニメコンテンツとのコラボレーションを加速している。ファッションECでは圧倒的な認知度とパワーを持つ「ゾゾタウン」だが、ピンポイントに人気のコンテンツを掘り当て、商品化する手腕は高い。その裏側を、担当するイケメンZOZO社員、柴崎一樹さんに直撃した。

柴崎一樹/ZOZOブランド営業本部 生産企画部・企画営業

(しばざき・かずき)1996年生まれ。2019年にZOZOに中途入社。好きなブランドは「フラグメント」「スチューシー」「グッチ」、デザイナーだとアケクサンドロ・ミケーレなど。服を買いすぎて貯金ができないのが悩み。年100万円以上は「ゾゾタウン」に使い込んでいる PHOTO:ZOZO

「チェンソーマン」「ホロライブ」「プロジェクトセカイ」、超人気IPとコラボ連発

WWD:なぜアニメコラボを?

柴崎一樹ZOZOブランド営業本部 生産企画部・企画営業(以下、柴崎):もともとアニメやマンガが好きで、ZOZOでなにかできないかと思っていて、数年前にコラボ企画を立ち上げました。ZOZOがコラボする企画の大半に関わっています。今は複数のIP(=知的財産、キャラクター)に強い広告代理店の担当者と、定期的にミーティングで情報交換や新しいキャラクターの情報を仕入れたり、企画を練っていて、水面下では常に複数の企画が動いているような状態です。

WWD:「プロジェクトセカイ」「ホロライブ」「チェンソーマン」など超人気アニメやマンガの版権元はどうやって口説き落としている?

柴崎:先ほども言ったように、常に複数の代理店と情報交換を行っており、これぞというものはIPホルダーにコンタクトします。返事をいただければ、それが一番ですが、当然返事がないことの方が多い。こういったときにはあらゆる伝手を辿って、担当者に連絡を取り続けます。

WWD:あまりしつこいと逆に怒られたりしませんか?

柴崎:自分で言うのもなんですが、私はかなりしつこいんですよ。粘り強いとも言えますが(笑)。ただ、これまでの経験上、返事がないときは先方の担当者が忙しすぎて返事ができなかったり、メールを見落としていた、みたいなことが大半です。「関心はあるけど、メールだと細かいニュアンスが伝わらず、なんて返事をすればいいのか」みたいなことが多いんですよ。なので電話がつながると、意外に「じゃあ検討しますね」、みたいな感じで次のステップに進めることが多いですね。

ただ、重要なポイントは次のステップです。フェイス・トゥー・フェイスを、かなり意識しています。お互いの顔が見えた瞬間に、企画がワンステップ上がるのを感じます。先方の温度感もそうですし、こちらの熱意もしっかりと伝えられる。なので、企画書を送った後は、できるだけ会って話すよう、ひたすら連絡を取り続けます。

ヒットの理由は「綿密な設計&仕掛け」にあり

WWD:うまくハマると、「ゾゾタウン」の売れ筋ランキングを独占するほどの大ヒットも。ヒットのコツは?

柴崎:これまでいろいろなコラボ企画を行ってきましたが、大ヒットになる場合は仕込みがハマったときです。コラボ企画をスタートしたばかりのころは、どちらかと言うと自分の熱意や気持ちで突っ走ってきたところもありますし、幸い有力なキャラクターとのコラボも多く、よく売れました。ただ、キャラが有名だから、それだけで売れるってことはほとんどないですし、逆に超有名じゃなくても、熱狂的なファンが多くて、仕掛けがハマればそれこそ過去最大の大ヒットになることも。要は仕掛けが大事ということです。

柴崎:だから仕込みの時間は、どんどん長くなっています。それだけ商品設計、販売設計の重要度が高くなっているからです。どのキャラクターを、どういった商品に落とし込み、どのタイミングでSNSで告知し、そして販売するか。この数年に限っても、商品のサイクルがどんどん短くなっているのも実感しています。話題があるから、人気があるから、というだけの表層的なコラボは本当に難しいですね。

WWD:有名キャラクターのコラボは、ラフォーレ原宿やパルコといったファッションビルもフェアやキャンペーンの一環として仕掛けることも多いが、それは基本的にはテナントも巻き込んだもの。つまり集客イベントであると同時に、テナント支援のための販促キャンペーンでもある。「ゾゾタウン」の場合は、テナントを絡めない単独型も多く、最悪売れたとしても、テナントであるブランドと競合することも。ブランドを絡めない理由は?

柴崎:それはとても耳が痛い話です。ただ、数は少ないですが、テナント様とのコラボも行っています。少ない理由は、単に私の力不足の部分が大きいです。先ほども話した通り、アニメコラボは事前の周到な準備が必要で、精度を高めるためにどんどん工数が増えています。そこにテナントの方々も巻き込んで多彩なアイテムを展開するとなると、難易度はさらに高くなる。キャラクターによって、売れるアイテムやブランドとの相性もあります。基本的にはどのプロジェクトでも出発点は、キャラクターの版権を所有するIPホルダー、テナントであるブランドの方々、そして消費者――この3者全員がウィン-ウィンになるべく、企画を考えているのですが、結果的にIP×当社という形になることも少なくないのはご指摘のとおりです。それは単に難易度が高く、そこまできちんとプロジェクトを落とし込めていないからなんです。

ただすでに60〜70ほどのコラボ企画を担当してきて、ノウハウを蓄積しつつあり、企画力や実行力は以前とは比べ物にならないくらいに上がっていますし、IPホルダーさんからの信頼も徐々に積み上げられている自負もあります。今後は僕らが仕掛けるアニメコラボ、異業種コラボも、「ゾゾタウン」のテナントさんとタッグを組んで展開することも増やしていける思っています。

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ファッション、音楽、映像など現代カルチャーを3次元で拡張 “NEWVIEW プロジェクト”がキックオフイベントを開催


パルコ(PARCO)とサイキックラボ、ロフトワークが共同で取り組む“ニュービュー(NEWVIEW)プロジェクト2023”は、12月の「ニュービュー フェス 2023」開催に先立ち、7月14日に渋谷ファブカフェ トーキョーでキックオフイベントを開催する。ゲストによるトークセッションや17組のXRアーティストによるマーケットが行われる予定だ。

“ニュービュー”はファッション、音楽、映像、グラフィックなど、現代のカルチャーを体現する人々が集まり、3次元空間でのクリエイティブ表現と体験のデザインを開拓、拡張していく実験的プロジェクト。2018年に始動し、今年で6年目を迎える。世界中からXRコンテンツ作品を募る「ニュービュー アワード」、総合芸術としてのXRを学ぶ「ニュービュースクール」、アーティストとのコラボで表現を更新する「フィーチャリング ワーク」、あらゆるジャンルのクリエイティブ表現を行うコミュニティー活動「ニュービュー サイファー」を展開し、複合的にクリエイティブを拡張していく。

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スポーツサンダル「テバ」は“モダンアウトドア”で市場を勝ち抜く

1984年に米で誕生した「テバ(TEVA)」は、スポーツサンダルの元祖と言われている。同社のサンダルは、約40年前のグランドキャニオンの岸辺で誕生した。ビーチサンダルが水辺でも脱げないようにとストラップを付けたことでスポーツサンダルとなり、現在はアウトドアから日常生活、音楽フェスまで幅広いシーンで着用されている。コロナで一時は売り上げが低迷したものの、アウトドアの価値が世界中で見直されたことで復調し、2023年3月期の売上高は前期比12.5%増の1億8310万円だった。アウトドアブランドが数多くある中、支持される理由は何か。親会社デッカーズブランズのアンダース・バーグストロム(Anders Bergstrom)=バイスプレジデント兼グローバルゼネラルマネージャーに聞く。

WWD:好調なマーケットは?

アンダース・バーグストロム=デッカーズブランズ バイスプレジデント兼グローバルゼネラルマネージャー(以下、バーグストロム):拠点であるアメリカをはじめ、ノースアメリカ、アジアパシフィック、ヨーロッパ、中東、アフリカと全地域で伸びている。

WWD:好調なチャネルは?

バーグストロム:ホールセールのニーズが高い。「テバ」は“モダンアウトドア”という独自のポジションを確立しており、アウトドアショップからファッション、ライフスタイルまで幅広いリテーラーと関係性を強めている。

WWD:“モダンアウトドア”の定義とは?

バーグストロム:まずは機能性だ。アウトドアフィールドで確かなパフォーマンスを発揮するために、履き心地や防滑性、通気性といった機能を担保しなくてはならない。加えて、日常に取り入れやすいデザインを組み込むこと。日本は同じポジションに「スノーピーク(SNOW PEAK)」や「ナンガ(NANGA)」がある。両ブランド共にファッション性が高く、顧客の感度も高い。過去にコラボも行っており、われわれも大いに刺激を受けている。

WWD:「テバ」の日本顧客の特徴は?

バーグストロム:すごく活動的で、ファッションとアウトドアを高次元に融合したユーザーだ。晴れていても、雨が降っていても、外に出てさまざまなアクティビティーを楽しむ。日本では当たり前かもしれないが、海外では悪天候だと家にこもりっきりなことも少なくない。環境変化が激しい国だからこそ、常に活動を楽しむマインドが根付いているのだと思う。そもそも“モダンアウトドア”というコンセプトも、アウトドアを日常の延長に据える、日本ユーザーのライフスタイルに大きなインスピレーションを受けている。だからこそ、日本で支持されることは、他のマーケットにはない価値がある。

WWD:若い世代の取り込みにも成功している印象だ。

バーグストローム:若年層の獲得はグローバルのミッションであり、日本は特に成果が出ている。ハイキングやラフティングといった特定のアウトドアシーンではなく、ショッピング、キャンプ、音楽フェス、友人とのハングアウトまで、あらゆる屋外での活動で着用してもらっている。ホールセールではユーザーの年齢までは追えないものの、ウェブへのアクセスは若年層がかなり多い。

WWD:若年層獲得のために行っていることは?

バーグストロム:サステナビリティーの活動が追い風になっている。アウトドアユーザーは環境意識の高い人が多く、特に若者は関心がある。「テバ」は3年前に、ウェビングベルトに使う素材を100%再生ポリエステルに切り替えた。埋め立て予定のペットボトルを再利用し、サンダル1足あたり6本のペットボトルを使う。これまで7000万本を再利用してきた。環境負荷を軽減する施策が、結果として顧客ニーズにも応えてくれている。

WWD:その他に行っている、環境に配慮した取り組みは?

バーグストロム:“テバ フォーエバー”というリサイクルプログラムだ。お客さまが使ったサンダルを回収し、連携するリサイクル会社に提供して新しい製品に活用する。2年前にアメリカでスタートし、日本では昨年導入した。「テバ」の全モデルが対象で、関心の高いユーザーから好評だ。

WWD:来年で40周年を迎える。これからどんなブランドを目指す?

バーグストロム:40年前にスポーツサンダルというプロダクトが誕生し、人々の生活を変化させた。そのオリジンを大事にしながら、冒険的な生活を刺激する施策を積極化させたい。コロナで低迷したからこそ、自然の価値が見直された。心をリフレッシュさせ、心身ともにヘルシーなコンディションを維持するためには、アウトドアが欠かせないことに気づいた。人間は、一度感じた価値をそう簡単には手放さない。アウトドアの楽しみをさらに広げるため、顧客を刺激し続けたい。

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スポーツサンダル「テバ」は“モダンアウトドア”で市場を勝ち抜く

1984年に米で誕生した「テバ(TEVA)」は、スポーツサンダルの元祖と言われている。同社のサンダルは、約40年前のグランドキャニオンの岸辺で誕生した。ビーチサンダルが水辺でも脱げないようにとストラップを付けたことでスポーツサンダルとなり、現在はアウトドアから日常生活、音楽フェスまで幅広いシーンで着用されている。コロナで一時は売り上げが低迷したものの、アウトドアの価値が世界中で見直されたことで復調し、2023年3月期の売上高は前期比12.5%増の1億8310万円だった。アウトドアブランドが数多くある中、支持される理由は何か。親会社デッカーズブランズのアンダース・バーグストロム(Anders Bergstrom)=バイスプレジデント兼グローバルゼネラルマネージャーに聞く。

WWD:好調なマーケットは?

アンダース・バーグストロム=デッカーズブランズ バイスプレジデント兼グローバルゼネラルマネージャー(以下、バーグストロム):拠点であるアメリカをはじめ、ノースアメリカ、アジアパシフィック、ヨーロッパ、中東、アフリカと全地域で伸びている。

WWD:好調なチャネルは?

バーグストロム:ホールセールのニーズが高い。「テバ」は“モダンアウトドア”という独自のポジションを確立しており、アウトドアショップからファッション、ライフスタイルまで幅広いリテーラーと関係性を強めている。

WWD:“モダンアウトドア”の定義とは?

バーグストロム:まずは機能性だ。アウトドアフィールドで確かなパフォーマンスを発揮するために、履き心地や防滑性、通気性といった機能を担保しなくてはならない。加えて、日常に取り入れやすいデザインを組み込むこと。日本は同じポジションに「スノーピーク(SNOW PEAK)」や「ナンガ(NANGA)」がある。両ブランド共にファッション性が高く、顧客の感度も高い。過去にコラボも行っており、われわれも大いに刺激を受けている。

WWD:「テバ」の日本顧客の特徴は?

バーグストロム:すごく活動的で、ファッションとアウトドアを高次元に融合したユーザーだ。晴れていても、雨が降っていても、外に出てさまざまなアクティビティーを楽しむ。日本では当たり前かもしれないが、海外では悪天候だと家にこもりっきりなことも少なくない。環境変化が激しい国だからこそ、常に活動を楽しむマインドが根付いているのだと思う。そもそも“モダンアウトドア”というコンセプトも、アウトドアを日常の延長に据える、日本ユーザーのライフスタイルに大きなインスピレーションを受けている。だからこそ、日本で支持されることは、他のマーケットにはない価値がある。

WWD:若い世代の取り込みにも成功している印象だ。

バーグストローム:若年層の獲得はグローバルのミッションであり、日本は特に成果が出ている。ハイキングやラフティングといった特定のアウトドアシーンではなく、ショッピング、キャンプ、音楽フェス、友人とのハングアウトまで、あらゆる屋外での活動で着用してもらっている。ホールセールではユーザーの年齢までは追えないものの、ウェブへのアクセスは若年層がかなり多い。

WWD:若年層獲得のために行っていることは?

バーグストロム:サステナビリティーの活動が追い風になっている。アウトドアユーザーは環境意識の高い人が多く、特に若者は関心がある。「テバ」は3年前に、ウェビングベルトに使う素材を100%再生ポリエステルに切り替えた。埋め立て予定のペットボトルを再利用し、サンダル1足あたり6本のペットボトルを使う。これまで7000万本を再利用してきた。環境負荷を軽減する施策が、結果として顧客ニーズにも応えてくれている。

WWD:その他に行っている、環境に配慮した取り組みは?

バーグストロム:“テバ フォーエバー”というリサイクルプログラムだ。お客さまが使ったサンダルを回収し、連携するリサイクル会社に提供して新しい製品に活用する。2年前にアメリカでスタートし、日本では昨年導入した。「テバ」の全モデルが対象で、関心の高いユーザーから好評だ。

WWD:来年で40周年を迎える。これからどんなブランドを目指す?

バーグストロム:40年前にスポーツサンダルというプロダクトが誕生し、人々の生活を変化させた。そのオリジンを大事にしながら、冒険的な生活を刺激する施策を積極化させたい。コロナで低迷したからこそ、自然の価値が見直された。心をリフレッシュさせ、心身ともにヘルシーなコンディションを維持するためには、アウトドアが欠かせないことに気づいた。人間は、一度感じた価値をそう簡単には手放さない。アウトドアの楽しみをさらに広げるため、顧客を刺激し続けたい。

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新生ブラック・カントリー・ニュー・ロード 世界が注目するバンドの成り立ちから古着好きな一面まで

ブラック・カントリー・ニュー・ロード/バンド

PROFILE:2018年に結成。メンバーは、タイラー・ハイド(Vo/Ba)とルイス・エヴァンス(Vo/Sax)、ジョージア・エレリー(Vo/Vn)、メイ・カーショウ(Vo/Key)、チャーリー・ウェイン(Dr)、ルーク・マーク(Gt)の6人。1stアルバム「For the First Time」は全英チャート初登場4位を記録し、英国で最も権威ある音楽賞「マーキュリー賞」にもノミネート。2ndアルバム「Ants From Up There」は、リリースの数日前に当時フロントマンのアイザック・ウッドが脱退するも、全英チャート初登場3位を記録。なお、タイラーの父親はアンダーワールドで知られるカール・ハイドで、メイの母親は日本人

才ある新人が日々現れるロンドンのバンドシーンにおいて、ひとくくりでは説明できない多様なサウンドと高い演奏力、冒険的なアイデアで、突如として最前線に躍り出た男女混合6人組がブラック・カントリー・ニュー・ロード(Black Country, New Road以下、BCNR)だ。2021年2月にリリースした1stアルバム「For the first time」は、デビュー作ながら英国で最も権威ある音楽賞「マーキュリー賞」にノミネートされるという快挙を達成し、今後の順風満帆な活動が約束されたかのように思われた。

しかし、22年2月に2ndアルバム「Ants from Up There」をリリースする数日前、当時フロントマンを務めていたアイザック・ウッド(Isaac Wood)が突然の脱退。それでもバンドはこのアクシデントをものともせず、直後のツアーを除くライブや音楽フェスでは、アイザックに敬意を表してアルバム収録曲を一切演奏せず、全て新曲で乗り切るという地力の高さを見せつけた。

「フジロックフェスティバル’22(FUJI ROCK FESTIVAL ’22)」以来の来日公演を行うため、4月に東京を訪れていたバンドを代表して、チャーリー・ウェイン(Dr)とメイ・カーショウ(Vo/Key)、ルーク・マーク(Gt)の3人にインタビューを敢行。バンドの成り立ちやバンド名の由来、アイザック脱退といった音楽的な話とあわせて、古着好きな一面についてを聞いた。

ーーまずは、バンドの成り立ちから教えてください。

チャーリー:ジョージア(Vo/Vn)だけ南西の街コーンウォール出身なんだけど、メンバーのほとんどはケンブリッジ出身なんだ。小さな街だから音楽シーンも小さなコミュニティーで、16~18歳で必然かのように知り合って仲良くなったね。その時、僕とアイザック(Vo/Gt)、タイラー(Vo/Ba)、ルイス(Vo/Sax)、メイ(Vo/Key)、ジョージアがBCNRの前身となるナーバス・コンディションズ(Nervous Conditions)というバンドを組んでいて、解散後の2018年にBCNRを結成し、翌年にルーク(Gt)が入って今の形になったんだ。ただ、ルークはアイザックと小・中学校が同じ古い友人で、よくナーバス・コンディションズのライブも観に来ていたから、みんなとも知り合いの近い関係にあったんだよ。

ーーバンド名の由来は、「ウィキペディア」の“おまかせ表示”が由来と耳にしました。

チャーリー:その通りだよ。相当数の候補があったんだけど、どれもひどいバンド名ばかりで。なかなか決まらないから「ウィキペディア」のページをランダムに表示してくれる“おまかせ表示”を使ってみたら、何度目かのタイミングで“Black Country New Road”というイングランド・ミッドランドに実在する道路が表示されて、みんなが“嫌いじゃなかった”んだ。最低の中で、一番最低じゃないみたいな(笑)。まぁ、バンド名なんて最初は意味がなくて、音楽を通して意味を持つようになるからね。

メイ:というか、全員がこだわりすぎてアイデアがまとまらなかったから、最終的に「もうなんでもいいよ……」が正しいかな。

ーーサウンドにはさまざまなジャンルの要素を感じますが、自分たちの音楽をどのように定義しますか?というのも、2022年の「フジロックフェスティバル(FUJI ROCK FESTIVAL)」で友人をBCNRのパフォーマンスに誘った際、「どんなバンド?」と聞かれて説明に困ってしまったんです。

メイ:私自身もなんて定義すればいいか困っていて(笑)。

ルーク:包括的にはロックミュージックなのかもしれないけど、僕自身はロックではないと思っている。でも、空港でギターを預ける時なんかに「ミュージシャンなんですね。どんなジャンルを?」って聞かれたら、説明するのが面倒だからロックって言っちゃってる(笑)。

チャーリー:まぁロックっぽいし、なんでもいいんじゃない?

ーーありがとうございます。それでは、2022年にアイザックがバンドを脱退したことについて聞かせてください。バンドとしての大きな転換期を迎え、第二章として活動を続けずに解散する可能性もあったのでしょうか?

ルーク:アイザックから脱退の話があった時、残りのメンバーはBCNRとしてバンドを続けたい意思があったし、アイザックもバンドが今後もBCNRとして続けていくことに関して肯定的だったんだ。そもそもBCNRは、アイザックだけのバンドじゃないしね。彼がいなくても困難を乗り切れそうだと意見が一致したから、すぐに新曲を書き始めて次のステップに進んだんだ。というのも、アイザックが歌う楽曲は彼じゃないと表現できないし、無理に再現する必要もないと思ったからね。

チャーリー:アイザックの脱退は2ndアルバム「Ants from Up There」がリリースされる数日前だった。初のアメリカ・ツアーを全て新曲で挑むのもアリだったんだけど、さすがに時間がなかったし、一度も2ndアルバムの楽曲をパフォーマンスせずに次のステップに進むのはいいアイデアではないという話になり、結局キャンセルになっちゃったんだよね。それでも、いまBCNRはこうして日本に来ることができているし、アイザックなしでもバンドを続けたことは正解だったはず。

ーー楽曲制作の面でアイザックの不在を感じることはありますか?また、作曲はセッションの中で組み立てていくのか、それとも誰かが軸となるものを持ってきて肉付けしていくのでしょうか?

メイ:アイザックの脱退前後で、特に制作プロセスは変わってないよね?

チャーリー:そうだね。前身バンドの時はライブでよくジャムをやっていて、そこで生まれた要素を楽曲制作にも取り入れていたけど、最近はちゃんと作り込んでいることが多いかな。誰かが楽曲となる種を持ち込み、どういう曲にしたいかをみんなで話し合って作るから、「20分間のジャムセッションをして、何ができるかやってみよう」みたいなことはないね。

ーーでは、楽曲制作において影響を受けている音楽以外のものはありますか?

メイ:映画や演劇を観ること、本を読むことは、私にとってかなり音楽的な影響を与えてくれているかな。

チャーリー:音楽を仕事にしていると、家から遠く離れた場所でずっと“仕事モード”だけど、家に帰るとその反動で音楽以外について考える自由な時間が増えるから、それをすごく大事にしているよ。僕はアートが好きなんだけど、ロンドンにはテート・モダン(Tate Modern)をはじめ、無料で観られる美術館がたくさんあるからよく行っているんだ。それが実際に僕のドラミングにどう影響を与えているかは分からないけど、何かしらは絶対にあるはずだと思っているよ。

ルーク:僕もチャーリーほど詳しくはないけどアートが好きで、いろいろなアーティストが表現する作品を観に行けば、その人自身の表現力や、表現したかったことが肌で伝わってくる。それに感化されて、アートとは違う音楽という別のメディアで彼らの感覚や姿勢を表現したくなるね。

ーー今回の来日直前、ユーチューブに演出の凝ったライブ映像「Live at Bush Hall」をアップしていましたが、制作した意図を教えてください。

チャーリー:パフォーマンスしている楽曲は、アルバムのために制作したものではなく、アイザックが脱退したことによって制作したものだから、アルバムとは違う何かしらの形で残したかったんだ。アイデアはメンバー全員からいろいろと出てきたんだけど、映像を作ろうという話になったのはみんなでスイスに行った時。3日間の公演を1つの映像にしたビジュアル・プロジェクトで、それぞれの日ごとにテーマを設けて脚本を書き、衣装を用意したり演出したりして楽しかったよ。

メイ:女性メンバーはドレスアップをしたくて、脚本をルークとルイスが書いてくれた結果、最終日はプロムパーティー(卒業目前の高校生が参加するパーティー)をイメージしているの。

チャーリー:僕のインスタグラムを見てくれたら、メンバー全員の役の詳細が書いてあるよ。

ーーここからは、音楽以外のことについてフォーカスさせてください。音楽で生計を立てられるようになってから、ライフスタイルに変化はありましたか?

チャーリー:車とか、高いものをバンバン買えるようになったね(笑)。

ルーク:一時期、食べていけるか不安になったこともあったけど、音楽一本で生計を立てられるようになっても明確な変化は感じられないかな。

ーーファッションの面ではどうでしょうか?みなさんは、プライベートでもステージ上でも古着を着用しているイメージが強いです。

ルーク:基本的にメンバー全員、古着しか着ないんじゃないかな?僕も今日はほとんど古着で、新品で買ったのは「コンバース(CONVERSE)」のグリーンの“オールスター(ALL STAR)”だけなんだけど、色が気に入らなくて白のペンキで全部塗りつぶして履いてるんだ。

チャーリー:ツアーで訪れた国の古着屋には必ず寄るね。いま着ているセーターは、確か3年前にスロベニアの古着屋で買ったもの。古着はとにかく安いってのもあるし、僕らは飛行機で世界中を回るっていう環境に良くないことをしているから、心のどこかで少しでもエコであるように心がけているのかもしれない。だから、ファストファッションの洋服を着るようなこともないね。

ーーお二人とも、おそろいの貝のネックレスを着けていますね。

ルーク:地元にいたら絶対に買わないんだけど、東南アジアのツアーでインドネシアのバリ島を訪れた時にノリで買ったんだ(笑)。ルイスも持っていて、いわゆるツアーファッションだね。

チャーリー:バリ島は自分探しのモードに入っちゃうくらいいいところで、少しでも地元の人のように島になじみたくて買ってみたんだ。イングランドに夏が訪れるまで着けようと思っているよ。

メイ:男性メンバーが楽しそうな横で、女性メンバーは「何それ、絶対買わないわ」みたいになってたけどね(笑)。

ーー先ほど古着の話があがりましたが、イングランド国内でお気に入りの古着屋はありますか?

メイ:「イーベイ(eBay)」かな……?

ルーク:間違いない!僕もだよ。「モンベル(MONT-BELL)」をよく探すね。

ーー日本では「イーベイ」で洋服を購入することがあまり浸透していないんですよ。

メイ:まぁ、ハイリスクハイリターンだからね。「これいいじゃん!」って思って届いたら、「あれ?」みたいなことはよくある(笑)。あとは、「TK マックス(TK Maxx)」(注:ヨーロッパを中心に出店しているアウトレット品などを取り扱うショップ)はよく行くかな。いま履いている「ガニー(GANNI)」のチェルシーブーツは、ずっと探している時にロンドンの「TK マックス」で奇跡的に見つけたの。憧れのアイテムだったから毎日履いているし、Tシャツは10ポンド(約1800円)くらいのものしか着ないから、私が持っている唯一のブランド品だと思う。

チャーリー:そういえば、日本でかっこいいジーンズを買いたくて、東京公演は全身デニムでもいいと思っているんだけど、おすすめはある?古着でもいいし、デザイナーズブランドでもいいんだけど。

ーー古着で探したいのなら「ベルベルジン(BerBerJin)」は一度訪れた方がいいかもしれませんし、日本オリジナルなら「桃太郎ジーンズ(MOMOTARO JEANS)」がいいと思います。

ルーク:ありがとう!このインタビューが終わったら、チャーリーと行ってみるよ。

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「アクリス」、次の100年見据えデザイナーが美学を語る

「アクリス」は2022年にブランド誕生100周年を迎えた。世界を巡回したショーの開催や、スイス・チューリッヒでの大型エキシビションなど、1年間かけてアニバーサリーイヤーを祝うプロジェクトが進行中だ。創業家3代目で、40年以上デザインを手がけるアルベルト・クリームラー=クリエイティブ・ディレクターに、ブランドが歩んできた歴史と自身のデザイン哲学について聞いた。

タイムレスでモダンな
ワードローブを届ける

スイスの北東部の街ザンクト・ガレンを拠点とする「アクリス」の歴史は、創業者のアリス・クリームラー=ショッホが、刺しゅうを施したコットン製エプロンを手がけたことから始まった。「創業から100 年間変わらないことを挙げるとしたら、『目的を持つ女性に向けて服を作る』というパーパスでしょう。創業当時、女性たちが家事や仕事中に毎日身に着けていたのがエプロンで、祖母なりの『目的を持つ女性に届けるワードローブ』でした」とクリームラーは語る。現在、本社兼アトリエを構える建物は、1939年にアリスが購入したもの。「戦時中に、ましてや女性が不動産を買うなんて当時は珍しかったのではないでしょうか。祖母は謙虚で働き者で彼女自身が目的を持つ意志の強い女性でした」。

3代目のクリームラーは、1987年にクリエイティブ・ディレクターに就任した。彼が生み出す現代的でタイムレスなワードローブは、モナコ公国のシャルレーヌ妃やミシェル・オバマ、ニコール・キッドマンらが愛用者に名を連ね、さまざまな分野において第一線で活躍する女性たちから支持を集める。「『アクリス』を着る女性は、人前に立つ立場にいる人が多いです。大勢の前でスピーチをする時、チームの指揮を執る時など、どんな場面でも自分らしくいられる心地よさを提供することが私のデザイナーとしての使命です」。

クリームラーが祖母から受け継いだものの一つが、最高級の生地を見極める審美眼だ。ザンクト・ガレンの名産である刺しゅうが施された軽い手触りのチュールやカシミヤダブルフェースなどはブランドを代表する素材。「デザインをモダンに仕上げるカギは生地にあります。例えば私が24歳の時に手がけたレースのコレクションは、大量のサンプルからとりわけシックなものを選び採用しました。ほかにもタイムレスな生地のひとつとして、80年代に発表したハート柄のプリントを2023年春夏コレクションに取り入れました。イタリアのコモ地方のプリントデザイナー、ジャンパオロ・ギオルディに何度も電話をかけてお願いしました。最初は『私たちはクチュール専門です。あなたはレディ・トゥ・ウエアのブランドでしょう』と断られましたが、それでも諦めない私に最後は彼が『コーヒーだけなら』と話をする時間をくれたことを思い出します。彼は今でも大切なパートナーです」。

アニバーサリーイヤーを祝し
日本でショーを開催

機能性とさまざまなシーンで着られる汎用性も現代服に欠かせない要素だと考える。クリームラー自身がいろいろな土地を旅して得た体験をもとに、独自の素材開発につなげている。清涼感のある独自素材を用いた“ ハイサマーコレクション”は、2010年夏に日本のチームと京都を訪れたことがきっかけ。日本向けにスタートしたが、今では世界中の女性たちから人気のコレクションになっているという。「素材に加えて欠かせないのがテーラリングです。社内には、ドレス、ジャケット、スモーキングスーツなど分野ごとにそれぞれ専門のテーラー職人がいます。『アクリス』の考え抜かれた“シンプル&スリーク”なファッションを実現してくれるのはこの素晴らしい職人たちです。才能にあふれたチームがいたからこそ100年続けられたのだと思います」。

アニバーサリーイヤーを記念して4月には東京・上野の東京国立博物館法隆寺宝物館で2023-24年秋冬コレクションのショーを開催した。ブランドが歩んできた歴史をたたえると同時に次の100年を見据えたコレクションを披露した。「日本には1978年に初上陸し、ほかのグローバルマーケットの中でも最も歴史が古い国です。次の100年に向けてスタートが切れたことをうれしく思います」。

デイヴィッド・チッパーフィールドが
手がける
ミニマルかつセンシュアルな銀座店

2022年には、イギリスの建築家デイヴィッド・チッパーフィールドが手がけた直営店を銀座中央通り沿いにオープンした。1階はバッグやスカーフなどのアクセサリー、2階はアパレルをそろえる。白塗りのメープル素材を多用した内装やヴィチェンツァ産グレーストーンの1枚岩の階段、ホースヘアーを使った試着室など、上質素材とディテールへのこだわりを表した内装が特徴だ。アルベルト・クリームラー=クリエイティブ・ディレクターは、「デイヴィッドは、官能的なミニマリズムを大切にするブランドの世界観をよく表現してくれた。次の100周年に向けた第一歩として勇気づけられるような重要な店舗だ」とコメントした。

チューリッヒデザイン美術館で
メゾンの真髄を体感できる展示

創業地スイスのチューリッヒデザイン美術館では、「アクリス」誕生100周年を記念した特別展示が開催中だ。会期は9月24日まで。

会場には12のテーマに合わせて100点以上のアーカイブルックが並ぶ。各テーマを仕切る壁は、メゾンコードの1つであるトラぺゾイド(台形) 型だ。ルーツであるエプロンのほか、フォトプリントやダブルフェースなどのメゾンコードを、ザンクト・ガレンのクラフトマンシップとともに紹介する。
数々の著名アーティストらとのコラボレーションも、アートや建築に造詣の深いアルベルト・クリームラー=クリエイティブ・ディレクターの仕事を象徴するものだ。トーマス・ルフ、フィンレイ、アレキサンダー・ジラード、藤本壮介らといったさまざまなコラボレーション作品の展示も楽しむことができる。

問い合わせ先
アクリスジャパン
0120 -801-922

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義足のアーティスト片山真里が「セルジオ ロッシ」のハイヒールを履いて見た景色

片山真里 プロフィール

(かたやま・まり):1987 年群馬県出身。2012 年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。自らの身体を模した 手縫いのオブジェ、ペインティング、コラージュのほか、それらの作品を用いて細部まで演出を施したセルフポートレイトなど、多彩な作品を制作。アーティストとしての活動に留まらず、歌手、モデル、講演、執筆など、幅広く活動している。主な展示に2019 年「第58回ヴェネチア・ビエンナーレ」(ヴェネチア、イタリア)、「Broken Heart」(White Rainbow, ロンドン, イギリス)、2017 年「無垢と経験の写真 日本の新進作家 vol.14」(東京都写真美術館、 東京、日本)、2016 年「六本木クロッシング 2016 展:僕の身体、あなたの声」(森美術館、東京、日本)、 2013 年「あいちトリエンナーレ 2013」(納屋橋会場、愛知、日本)など。主な出版物に2019 年「GIFT」 United Vagabondsがある。2019 年第35回写真の町東川賞新人作家賞、2020年第45回木村伊兵衛写真賞を受賞。主なコレクション先に、テート・モダン(ロンドン、イギリス)、森美術館(東京、日本)、東京都写真美術館(東京、日本)など。

片山真里は9歳から両足を義足で歩くアーティストだ。国際的にも高く評価されている作品発表と並行して、2011年からは「ハイヒールを自由に選択できる一つ」とすべく、義足を製作し、街を歩き、ステージに立つ “ハイヒール・プロジェク”を続けている。「セルジオ ロッシ(SERGIO ROSSI)」はこのプロジェクトに賛同し、22年から参画。日伊で対話と試行錯誤を重ね、同年10月に一足のハイヒールにたどり着いた。片山と靴の職人たちが探した“美”とは? 6月に東京で開かれた片山の個展会場で話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):“ハイヒール・プロジェクト”を始めたきっかけは?

片山真里(以下、片山):美大の学費を稼ぐためにしていた夜の仕事でした。周囲には体のことを伝えず、接客をしたり、歌ったりしていたけど、あるとき酔っ払いのお客さんに「ハイヒール履いていない女は、女じゃない!」とお酒をかけられて。よくある一コマかもだけど、すごく悔しくて。ふとステージでモデルを務めていた母のことを思い出しました。

子供の頃、当時の私はまだ足はあったけど、先天性の奇形で足裏が湾曲し地面に付かず、骨がどんどん曲がってきちゃう病気で、矯正用のブーツを履いていました。ある時、母のステージ写真を見つけて「綺麗な靴を履いてドレスを着てママ、素敵!」と言ったことがある。そしたら次の日には写真と、おまけに下駄箱のハイヒールが全部片付けられていた。母の靴に足を入れて「ママの靴が履けた!」と見せ、母は笑ってくれたけどなぜだか罪悪感をおぼえたことも。おちゃらけすら、母を傷つけてしまう。シングルマザーの母は、娘の足について「自分に原因があるんじゃないか」という思いをずっと抱えて生きてきたと、今、自分も母になってわかります。

WWD:それがハイヒールとの関係の始まり?

片山:そうです。だから、母を悲しませないために、ハイヒールという希望は心の中に封印しちゃった。だけど酔っ払いにお酒をかけられたことで「その思い出、君ずっと隠し持っているでしょ?」と秘密を見透かされた気がしたんですよ。悔しさと、自分の心に気づいちゃった気持ちとでいても立ってもいられず、そのまま朝方、店から義足の病院へ向かい、担当の義肢装具士さんに「今一番高くハイヒールが履ける義足部品を取り寄せて!」と伝えた。答えは「あるけど、保険適応外だからアメリカ製を自腹で買わなきゃいけないよ」。2足で60万円、取り寄せて買いました。

ただ、義足は届いたけど、合う靴がなかった。「シンデレラシューズを探すんだ!」ってワクワクしながら靴コーナーに向かうけど、全然ない。やっと見つけても、義足が強すぎるから数歩歩くと壊れて、靴から指が出ちゃったりね。私には足首のクッションがないから、道具として強くなりすぎてしまう。

WWD:それはハードな経験ですね。

片山:そんなとき、大学の先生が「あなたのやっていることは、れっきとしたアートプロジェクトだからきちんと発表しなさい」とアドバイスをくれた。そこから靴の学校や専門家、足や障害者リハビリの専門家のもとへ学びに行き、コミュニティがどんどん広がりました。障害者用の病院に行ったのは、子供のとき以来です。筋トレをして、丈の長い服を着れば義足であることを誰にも気づかれず、歩いてこられたから。コミュニティに入ったことで、色々な問題に切実に向き合っている人たちと出会いました。

WWD:例えば?

片山:障害者が日本の社会福祉制度でどのような扱いを受けているのか、自分は気にしないように生きてきたけど、「障害者と装い」の研究をしている先生からは「『50年前と今では状況は変わっていない。障害者がこの世に生きているだけで100点満点だから、なぜ装いなんて贅沢なものを望むの?それ以上何を望むの?』と言われるのが日本社会。そういう状況が今も変わらない」と教えてもらった。装いはリハビリや障害者支援には含まれていないのです。

実際私も、義足の肌色をピンクや黄色、赤に塗るだけでも福祉対象としては「ダメ」だと言う自治体がある。色が変わることでなんの不利益もないのに、ダメである理由の説明もない。「あなたたちは税金のサポートもあり生活しているのだから、贅沢を言ってはいけない」。そんな無言の圧力が日々降り注いでくる。たとえば左足の高性能の義足は、国では(福祉の申請が)下りるけど、県はNG。高性能な方が安全で、それにより私は三脚を使った撮影、つまり仕事や育児ができていると主張しても、窓口の人に「そんなに危険と隣り合わせの仕事と、安全性とどちらを取るんですか?育児は審査の中には入りません」と言われる。よく聞く「生きがいのある仕事」を障害者が求めたら、この回答です。これは今年4月の話です。

WWD:10年前の話かと思ったら、最近ですか。私なら喧嘩しそうになります。

片山:私の母は役所といつも喧嘩をしていました。“人権”を言葉で理解したつもりになっているだけで、発言と行動と伴っていないシーンにはよく出会います。装い支援の人や障害者当事者の人たちは、同じ問題を共有していると思う。それでも、当事者たちが「わかる!」と愚痴を言っているだけでは絶対に変わらない。当事者の意見として発言しちゃうと、そこで終わってしまう。

「セルジオ ロッシ」のチームと目指した、美とは

WWD:なぜ女性はハイヒールを履きたいのだろう?

片山:私は、単純にハイヒールを履いた時の足の形に惹かれます。つま先にツンっと力が入り、踵がクッっとなる、あの形です。自分の足はコッペパンみたいにツルツルでぺたんこ。ミケランジェロは「人間が作ったものの中で最高傑作は足だ!」って言っており、私も「だよね!」と思う。足は人間の体の中で骨の数が多いんですよ。そのたくさんの骨が重なり合って入り組んで作られる、美しい形と美しい動き。それが、ハイヒールを履いているときに強調されます。これは私のすごくフェティッシュなところですね(笑)。

WWD:ハイヒール談義は「男性の目を意識してか否か」という話になりがちだけど、それとは別に造形美としてのハイヒールの美しさもある、と。

片山:私は人間の体の美しさが本当に好きです。ハイヒールを通した人間の体の、最高傑作の濃縮された一滴が、足だと感じる。作品を入れる額縁の装飾に貝殻をよく使うのは、貝殻が黄金比でできているから。人間は黄金比に触れたとき、「美しい」と思うらしいですね。生き物全てに、その黄金比がある。身体のバランスにコンプレックスを抱く人は多いけど、全体像を見るとそれが正しくて整っている。だから、そもそも生きているだけで美しい。

美しくないものもアートだ、と言われるけど、私は美しいものを作りたいし、見たい、信じたい。体から、足から続くハイヒールには、体そのものを見ている気にさせられる。それがハイヒールに対する自分の中の「美しいものが好き」と言う感情です。

WWD:「セルジオ ロッシ」のチームと目指した、美とはなんですか?

片山:プロジェクトに入る前、撮影用にパンプスを借りました。「オズの魔法使い」の銀色の靴をイメージしてね。それが届いた時、パンプスを触っただけで「これは足だ!自分が欲しかった足だ!」と思いました。足が入ってないパンプスなのに。「いい足ですね!」と、造形美の中に人間の体の美しさを感じました。セルジオ・ロッシさんの言葉に「靴は女性の脚の完璧な延長である」 という言葉があり、私も「そうだね!」と思った。だから「この人たちに靴を作ってもらったら、もしかしたら、自分がずっと欲しいと思っていた美しい足をゲットできるかもしれない」と思った。そういう希望と期待で十分でした。

WWD:十分?今までは妥協した回答しか、人から得なかったから?

片山:そうです。「福祉×アート」や「福祉×ファッション」がなぜこれまでは表層的な関わりしかできなかったのか。それは、やればやるほど技術的な問題やライセンの問題が出てくるからです。靴を履くための義足の部品のような専門的な話になると途端に難しくなる。

どんな美を求めたか、何を目指していったか、その答えは、福祉とデザインチームとの間で共通言語を探って作っていく行為の中にありました。たとえば義足的には、接地面積や並行であること、部品とハイヒールがしっかり一体化し、遊びが無いようにすることなどが大切。「セルジオ ロッシ」チームは美しいデザインに対する妥協がない。間に入る「セルジオ ロッシ」の日本のスタッフが日本語とイタリア語の翻訳を介して双方のニュアンスを理解し、伝える。すごいことです。その対話を経て、美しいものができるのですよね。

WWD:ヒールの高さを決めたのは誰ですか?

「セルジオ ロッシ」スタッフ:インハウスのデザインチーム のひとりシモーネ(Simone)です。高さは11センチで傾斜が7.7センチ。ヒールとプラットフォームとボディのバランスと、アイコン的な彫刻的なヒール、「大胆でアクティブな女性にはいてほしい」というコンセプトからこうなりました。

リップやハイヒールがなぜ必要なんだろう?

WWD:ハイヒールを手にして、何を手に入れましたか?

片山:(プロトタイプを)受け取った途端、「私の足だ!」と思った。不思議です。靴に入るのは義足なのに、入っている足が想像できる。だから、「美しくて惚れ惚れする…」ではなくて、「すぐに履いて歩いて撮影したい!」となりました。「セルジオ ロッシ」のファクトリーで職人の女性がこの靴を縫っている光景を見たときに、「“ハイヒール・プロジェクト”がみなのプロジェクトになった」という思いがこみ上げてきたんですね。だから靴が自分の手元にやってきたら「次は私の仕事、撮影だ」となった。

WWD:プロジェクトの入り口では“怒り”が大きかった。でも、写真作品からはそれがあまり感じられない。

片山:悔しさは生きる原動力にはなるけど、きっかけに過ぎず、完成にたどり着くまでには過程がある。私は、浮かんだキーワードを頭の中の宝箱に入れいきます。キラキラ輝く瞬間は、悔しさの中にさえあるんですよ。それをなるべく綺麗な状態で宝箱に入れて、「制作しよう」となったら開く。すると美しく並んだ要素が見えてくる。

自分のために始めたハイヒール・プロジェクトでしたが、その過程で多くの人と出会ううちにハイヒールでステージに立ち、「もっと社会に出よう、恋をしよう、人と出会おう」というメッセージを伝えたり、「靴一足で自尊心やプライドが保たれる。“人間的な生活”ができるのになぜ認めてくれないの?」と話をしたりすることが目標になってゆきました。

WWD:リップを塗ったりハイヒールを履いたり、ドレスを着たり…。こういった行為はなんで幸せなのだろう?

片山:今の自分が一番好きだったり、鏡を見て「自分、可愛いじゃん!」と思ったり。その気持ちを一番引き出してくれるからじゃないかな。

若い頃は、リップやネイルやウィッグは自分を曝け出さないための“鎧” だった。振り返ってみてもそれは間違ったことではないと思う。でも今はシンプルに“自分が心地良くなるため”かな。自分で選ぶ選択肢ができた今は、ハイヒールを「嫌だな」と思えば履かなくていいし、戦うために自分が必要なら、もしくは気分を上げたいなら履いたらいい。理由はなんでもいい。選べること、それ自体が重要なのです。

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義足のアーティスト片山真里が「セルジオ ロッシ」のハイヒールを履いて見た景色

片山真里 プロフィール

(かたやま・まり):1987 年群馬県出身。2012 年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。自らの身体を模した 手縫いのオブジェ、ペインティング、コラージュのほか、それらの作品を用いて細部まで演出を施したセルフポートレイトなど、多彩な作品を制作。アーティストとしての活動に留まらず、歌手、モデル、講演、執筆など、幅広く活動している。主な展示に2019 年「第58回ヴェネチア・ビエンナーレ」(ヴェネチア、イタリア)、「Broken Heart」(White Rainbow, ロンドン, イギリス)、2017 年「無垢と経験の写真 日本の新進作家 vol.14」(東京都写真美術館、 東京、日本)、2016 年「六本木クロッシング 2016 展:僕の身体、あなたの声」(森美術館、東京、日本)、 2013 年「あいちトリエンナーレ 2013」(納屋橋会場、愛知、日本)など。主な出版物に2019 年「GIFT」 United Vagabondsがある。2019 年第35回写真の町東川賞新人作家賞、2020年第45回木村伊兵衛写真賞を受賞。主なコレクション先に、テート・モダン(ロンドン、イギリス)、森美術館(東京、日本)、東京都写真美術館(東京、日本)など。

片山真里は9歳から両足を義足で歩くアーティストだ。国際的にも高く評価されている作品発表と並行して、2011年からは「ハイヒールを自由に選択できる一つ」とすべく、義足を製作し、街を歩き、ステージに立つ “ハイヒール・プロジェク”を続けている。「セルジオ ロッシ(SERGIO ROSSI)」はこのプロジェクトに賛同し、22年から参画。日伊で対話と試行錯誤を重ね、同年10月に一足のハイヒールにたどり着いた。片山と靴の職人たちが探した“美”とは? 6月に東京で開かれた片山の個展会場で話を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):“ハイヒール・プロジェクト”を始めたきっかけは?

片山真里(以下、片山):美大の学費を稼ぐためにしていた夜の仕事でした。周囲には体のことを伝えず、接客をしたり、歌ったりしていたけど、あるとき酔っ払いのお客さんに「ハイヒール履いていない女は、女じゃない!」とお酒をかけられて。よくある一コマかもだけど、すごく悔しくて。ふとステージでモデルを務めていた母のことを思い出しました。

子供の頃、当時の私はまだ足はあったけど、先天性の奇形で足裏が湾曲し地面に付かず、骨がどんどん曲がってきちゃう病気で、矯正用のブーツを履いていました。ある時、母のステージ写真を見つけて「綺麗な靴を履いてドレスを着てママ、素敵!」と言ったことがある。そしたら次の日には写真と、おまけに下駄箱のハイヒールが全部片付けられていた。母の靴に足を入れて「ママの靴が履けた!」と見せ、母は笑ってくれたけどなぜだか罪悪感をおぼえたことも。おちゃらけすら、母を傷つけてしまう。シングルマザーの母は、娘の足について「自分に原因があるんじゃないか」という思いをずっと抱えて生きてきたと、今、自分も母になってわかります。

WWD:それがハイヒールとの関係の始まり?

片山:そうです。だから、母を悲しませないために、ハイヒールという希望は心の中に封印しちゃった。だけど酔っ払いにお酒をかけられたことで「その思い出、君ずっと隠し持っているでしょ?」と秘密を見透かされた気がしたんですよ。悔しさと、自分の心に気づいちゃった気持ちとでいても立ってもいられず、そのまま朝方、店から義足の病院へ向かい、担当の義肢装具士さんに「今一番高くハイヒールが履ける義足部品を取り寄せて!」と伝えた。答えは「あるけど、保険適応外だからアメリカ製を自腹で買わなきゃいけないよ」。2足で60万円、取り寄せて買いました。

ただ、義足は届いたけど、合う靴がなかった。「シンデレラシューズを探すんだ!」ってワクワクしながら靴コーナーに向かうけど、全然ない。やっと見つけても、義足が強すぎるから数歩歩くと壊れて、靴から指が出ちゃったりね。私には足首のクッションがないから、道具として強くなりすぎてしまう。

WWD:それはハードな経験ですね。

片山:そんなとき、大学の先生が「あなたのやっていることは、れっきとしたアートプロジェクトだからきちんと発表しなさい」とアドバイスをくれた。そこから靴の学校や専門家、足や障害者リハビリの専門家のもとへ学びに行き、コミュニティがどんどん広がりました。障害者用の病院に行ったのは、子供のとき以来です。筋トレをして、丈の長い服を着れば義足であることを誰にも気づかれず、歩いてこられたから。コミュニティに入ったことで、色々な問題に切実に向き合っている人たちと出会いました。

WWD:例えば?

片山:障害者が日本の社会福祉制度でどのような扱いを受けているのか、自分は気にしないように生きてきたけど、「障害者と装い」の研究をしている先生からは「『50年前と今では状況は変わっていない。障害者がこの世に生きているだけで100点満点だから、なぜ装いなんて贅沢なものを望むの?それ以上何を望むの?』と言われるのが日本社会。そういう状況が今も変わらない」と教えてもらった。装いはリハビリや障害者支援には含まれていないのです。

実際私も、義足の肌色をピンクや黄色、赤に塗るだけでも福祉対象としては「ダメ」だと言う自治体がある。色が変わることでなんの不利益もないのに、ダメである理由の説明もない。「あなたたちは税金のサポートもあり生活しているのだから、贅沢を言ってはいけない」。そんな無言の圧力が日々降り注いでくる。たとえば左足の高性能の義足は、国では(福祉の申請が)下りるけど、県はNG。高性能な方が安全で、それにより私は三脚を使った撮影、つまり仕事や育児ができていると主張しても、窓口の人に「そんなに危険と隣り合わせの仕事と、安全性とどちらを取るんですか?育児は審査の中には入りません」と言われる。よく聞く「生きがいのある仕事」を障害者が求めたら、この回答です。これは今年4月の話です。

WWD:10年前の話かと思ったら、最近ですか。私なら喧嘩しそうになります。

片山:私の母は役所といつも喧嘩をしていました。“人権”を言葉で理解したつもりになっているだけで、発言と行動と伴っていないシーンにはよく出会います。装い支援の人や障害者当事者の人たちは、同じ問題を共有していると思う。それでも、当事者たちが「わかる!」と愚痴を言っているだけでは絶対に変わらない。当事者の意見として発言しちゃうと、そこで終わってしまう。

「セルジオ ロッシ」のチームと目指した、美とは

WWD:なぜ女性はハイヒールを履きたいのだろう?

片山:私は、単純にハイヒールを履いた時の足の形に惹かれます。つま先にツンっと力が入り、踵がクッっとなる、あの形です。自分の足はコッペパンみたいにツルツルでぺたんこ。ミケランジェロは「人間が作ったものの中で最高傑作は足だ!」って言っており、私も「だよね!」と思う。足は人間の体の中で骨の数が多いんですよ。そのたくさんの骨が重なり合って入り組んで作られる、美しい形と美しい動き。それが、ハイヒールを履いているときに強調されます。これは私のすごくフェティッシュなところですね(笑)。

WWD:ハイヒール談義は「男性の目を意識してか否か」という話になりがちだけど、それとは別に造形美としてのハイヒールの美しさもある、と。

片山:私は人間の体の美しさが本当に好きです。ハイヒールを通した人間の体の、最高傑作の濃縮された一滴が、足だと感じる。作品を入れる額縁の装飾に貝殻をよく使うのは、貝殻が黄金比でできているから。人間は黄金比に触れたとき、「美しい」と思うらしいですね。生き物全てに、その黄金比がある。身体のバランスにコンプレックスを抱く人は多いけど、全体像を見るとそれが正しくて整っている。だから、そもそも生きているだけで美しい。

美しくないものもアートだ、と言われるけど、私は美しいものを作りたいし、見たい、信じたい。体から、足から続くハイヒールには、体そのものを見ている気にさせられる。それがハイヒールに対する自分の中の「美しいものが好き」と言う感情です。

WWD:「セルジオ ロッシ」のチームと目指した、美とはなんですか?

片山:プロジェクトに入る前、撮影用にパンプスを借りました。「オズの魔法使い」の銀色の靴をイメージしてね。それが届いた時、パンプスを触っただけで「これは足だ!自分が欲しかった足だ!」と思いました。足が入ってないパンプスなのに。「いい足ですね!」と、造形美の中に人間の体の美しさを感じました。セルジオ・ロッシさんの言葉に「靴は女性の脚の完璧な延長である」 という言葉があり、私も「そうだね!」と思った。だから「この人たちに靴を作ってもらったら、もしかしたら、自分がずっと欲しいと思っていた美しい足をゲットできるかもしれない」と思った。そういう希望と期待で十分でした。

WWD:十分?今までは妥協した回答しか、人から得なかったから?

片山:そうです。「福祉×アート」や「福祉×ファッション」がなぜこれまでは表層的な関わりしかできなかったのか。それは、やればやるほど技術的な問題やライセンの問題が出てくるからです。靴を履くための義足の部品のような専門的な話になると途端に難しくなる。

どんな美を求めたか、何を目指していったか、その答えは、福祉とデザインチームとの間で共通言語を探って作っていく行為の中にありました。たとえば義足的には、接地面積や並行であること、部品とハイヒールがしっかり一体化し、遊びが無いようにすることなどが大切。「セルジオ ロッシ」チームは美しいデザインに対する妥協がない。間に入る「セルジオ ロッシ」の日本のスタッフが日本語とイタリア語の翻訳を介して双方のニュアンスを理解し、伝える。すごいことです。その対話を経て、美しいものができるのですよね。

WWD:ヒールの高さを決めたのは誰ですか?

「セルジオ ロッシ」スタッフ:インハウスのデザインチーム のひとりシモーネ(Simone)です。高さは11センチで傾斜が7.7センチ。ヒールとプラットフォームとボディのバランスと、アイコン的な彫刻的なヒール、「大胆でアクティブな女性にはいてほしい」というコンセプトからこうなりました。

リップやハイヒールがなぜ必要なんだろう?

WWD:ハイヒールを手にして、何を手に入れましたか?

片山:(プロトタイプを)受け取った途端、「私の足だ!」と思った。不思議です。靴に入るのは義足なのに、入っている足が想像できる。だから、「美しくて惚れ惚れする…」ではなくて、「すぐに履いて歩いて撮影したい!」となりました。「セルジオ ロッシ」のファクトリーで職人の女性がこの靴を縫っている光景を見たときに、「“ハイヒール・プロジェクト”がみなのプロジェクトになった」という思いがこみ上げてきたんですね。だから靴が自分の手元にやってきたら「次は私の仕事、撮影だ」となった。

WWD:プロジェクトの入り口では“怒り”が大きかった。でも、写真作品からはそれがあまり感じられない。

片山:悔しさは生きる原動力にはなるけど、きっかけに過ぎず、完成にたどり着くまでには過程がある。私は、浮かんだキーワードを頭の中の宝箱に入れいきます。キラキラ輝く瞬間は、悔しさの中にさえあるんですよ。それをなるべく綺麗な状態で宝箱に入れて、「制作しよう」となったら開く。すると美しく並んだ要素が見えてくる。

自分のために始めたハイヒール・プロジェクトでしたが、その過程で多くの人と出会ううちにハイヒールでステージに立ち、「もっと社会に出よう、恋をしよう、人と出会おう」というメッセージを伝えたり、「靴一足で自尊心やプライドが保たれる。“人間的な生活”ができるのになぜ認めてくれないの?」と話をしたりすることが目標になってゆきました。

WWD:リップを塗ったりハイヒールを履いたり、ドレスを着たり…。こういった行為はなんで幸せなのだろう?

片山:今の自分が一番好きだったり、鏡を見て「自分、可愛いじゃん!」と思ったり。その気持ちを一番引き出してくれるからじゃないかな。

若い頃は、リップやネイルやウィッグは自分を曝け出さないための“鎧” だった。振り返ってみてもそれは間違ったことではないと思う。でも今はシンプルに“自分が心地良くなるため”かな。自分で選ぶ選択肢ができた今は、ハイヒールを「嫌だな」と思えば履かなくていいし、戦うために自分が必要なら、もしくは気分を上げたいなら履いたらいい。理由はなんでもいい。選べること、それ自体が重要なのです。

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山梨・甲府の職人と二人三脚でつくりあげる“お菓子のおまけ”のような魅力があるジュエリーブランド「マユラノワール」代表に聞く

ジュエリーブランド「マユラノワール(MAYURANOIR)」が、東京・銀座に直営店をオープンした。同ブランドは、フランスのアンティークジュエリーに魅了された代表を務める吉田麻由良が2020年6月に設立。“アンティークジュエリーは素材が劣化していたり作りが脆く長く付けられないものが多い。100年後も使えるものをつくりたい”という思いからスタートした。

ブランドのコンセプトは、“物語に寄り添うお守りのようなジュエリー”。アール・ヌーヴォーやアール・デコのジュエリーがインスピレーション源で、枠や爪留めなど細部のパーツごとに地金の種類を変えた繊細なデザインが特徴だ。吉田代表に、クリエイションや直営店出店までの歩みについて聞いた。

工場との縁を運んだコロナ

20年というとコロナ禍が始まったばかり。ブランド立ち上げを決意した吉田代表は、メード・イン・ジャパンのジュエリーをつくりたいとさまざまなメーカーへ問い合わせたそうだ。彼女は、「一点ものが多く小ロットであることと、技術が必要なデザインのため断られ続けた。幸運なことに、大手ジュエリーブランドの下請け工場の協力があり、ここまで来ることができた」と語る。大手ブランドの下請け工場ということもあり、品質は確か、通常はなかなか取り引きができないが、コロナが追い風になった。「コロナでオーダーが減ったため、取り引きしてくれることになった」。吉田代表が思い描くジュエリーは、日本の工場が持つ技術だから可能な細かい細工が必要だ。

SNSがきっかけでポップアップを開催

ブランドを立ち上げてからは、インスタグラムなどSNSで発信を行った。それを見た松屋銀座のジュエリー担当からから声がかかり、20年9月には同百貨店でポップアップを開催した。吉田代表は、「ブランドを立ち上げたばかりで、定番が10点程度しかなく、ルースなどをかき集めて販売した」と話す。正に嬉しい悲鳴と言ったところだろう。「予想以上に反響があり、売れた」と吉田代表。その後も松屋銀座から声がかかり、5回ポップアップを行った。昨年行ったイベントでは1週間で約1000万円を売り上げ、確実に手応えを感じているという。

“大人のセボンスター”のようなジュエリー

デザインは吉田代表が手掛け、宝石はインドの最大手ディーラーから調達する。地金の種類は6種類、石の種類も多く、型数は70種類以上で、ほとんどが一点モノだ。ネックレス、ピアスなどもあるが、リングが多く、定番コレクションが4割、高額の特別コレクションが4割、カスタムオーダーが2割程度。中心価格帯は30万円台だ。吉田代表は、「乙女心をくすぐるようなジュエリーで、まるで、集めたくなるおまけ付きのお菓子“セボンスター”と言われる」と話す。色とりどりのキャンディのような宝石に、サイドや裏側まで細かい細工が施されたジュエリーは、集めたくなるかわいらしさに溢れている。
「ジュエリーの品質や細やかさを見て、『高いけど安い』と言われる」と吉田代表。特別コレクションの中には、希少性の高いピジョンブラッドカラーのルビーを使用したリングもある。また、特別コレクションは鑑定書がつき、枠を石に合わせて一つ一つ作る。そのために敏腕の原形師をスタッフに迎えた。ブランド名の「マユラノワール」について、同代表は、「ノワール=黒は、全てを引き立てる色。マユラは私の名前で、黒子のようなもの。人々を引き立てるジュエリーを提供していきたい」と語った。

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山梨・甲府の職人と二人三脚でつくりあげる“お菓子のおまけ”のような魅力があるジュエリーブランド「マユラノワール」代表に聞く

ジュエリーブランド「マユラノワール(MAYURANOIR)」が、東京・銀座に直営店をオープンした。同ブランドは、フランスのアンティークジュエリーに魅了された代表を務める吉田麻由良が2020年6月に設立。“アンティークジュエリーは素材が劣化していたり作りが脆く長く付けられないものが多い。100年後も使えるものをつくりたい”という思いからスタートした。

ブランドのコンセプトは、“物語に寄り添うお守りのようなジュエリー”。アール・ヌーヴォーやアール・デコのジュエリーがインスピレーション源で、枠や爪留めなど細部のパーツごとに地金の種類を変えた繊細なデザインが特徴だ。吉田代表に、クリエイションや直営店出店までの歩みについて聞いた。

工場との縁を運んだコロナ

20年というとコロナ禍が始まったばかり。ブランド立ち上げを決意した吉田代表は、メード・イン・ジャパンのジュエリーをつくりたいとさまざまなメーカーへ問い合わせたそうだ。彼女は、「一点ものが多く小ロットであることと、技術が必要なデザインのため断られ続けた。幸運なことに、大手ジュエリーブランドの下請け工場の協力があり、ここまで来ることができた」と語る。大手ブランドの下請け工場ということもあり、品質は確か、通常はなかなか取り引きができないが、コロナが追い風になった。「コロナでオーダーが減ったため、取り引きしてくれることになった」。吉田代表が思い描くジュエリーは、日本の工場が持つ技術だから可能な細かい細工が必要だ。

SNSがきっかけでポップアップを開催

ブランドを立ち上げてからは、インスタグラムなどSNSで発信を行った。それを見た松屋銀座のジュエリー担当からから声がかかり、20年9月には同百貨店でポップアップを開催した。吉田代表は、「ブランドを立ち上げたばかりで、定番が10点程度しかなく、ルースなどをかき集めて販売した」と話す。正に嬉しい悲鳴と言ったところだろう。「予想以上に反響があり、売れた」と吉田代表。その後も松屋銀座から声がかかり、5回ポップアップを行った。昨年行ったイベントでは1週間で約1000万円を売り上げ、確実に手応えを感じているという。

“大人のセボンスター”のようなジュエリー

デザインは吉田代表が手掛け、宝石はインドの最大手ディーラーから調達する。地金の種類は6種類、石の種類も多く、型数は70種類以上で、ほとんどが一点モノだ。ネックレス、ピアスなどもあるが、リングが多く、定番コレクションが4割、高額の特別コレクションが4割、カスタムオーダーが2割程度。中心価格帯は30万円台だ。吉田代表は、「乙女心をくすぐるようなジュエリーで、まるで、集めたくなるおまけ付きのお菓子“セボンスター”と言われる」と話す。色とりどりのキャンディのような宝石に、サイドや裏側まで細かい細工が施されたジュエリーは、集めたくなるかわいらしさに溢れている。
「ジュエリーの品質や細やかさを見て、『高いけど安い』と言われる」と吉田代表。特別コレクションの中には、希少性の高いピジョンブラッドカラーのルビーを使用したリングもある。また、特別コレクションは鑑定書がつき、枠を石に合わせて一つ一つ作る。そのために敏腕の原形師をスタッフに迎えた。ブランド名の「マユラノワール」について、同代表は、「ノワール=黒は、全てを引き立てる色。マユラは私の名前で、黒子のようなもの。人々を引き立てるジュエリーを提供していきたい」と語った。

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35年ぶり来日のケニー・シャーフ 「限界に縛られないことこそがアート」

ケニー・シャーフ/アーティスト

PROFILE:1958年生まれ、アメリカ・カリフォルニア出身。80年代から“イースト・ヴィレッジ・アート・ムーブメント”を担う1人として、同世代のジャン・ミシェル・バスキアやキース・ヘリング、フューチュラらと共に注目を集める。以降、40年以上にわたり第一線で活躍し、2021年には「ディオール」とのコラボレーションを果たした。唯一話せる日本語は「私はケムクジャラです」

ケニー・シャーフ(Kenny Scharf)は、そのカラフルな色彩とアニメに着想した独特のキャラクターで、1980年代のニューヨークのアートシーンにおいてジャン・ミシェル・バスキア(Jean-Michel Basquiat)やキース・ヘリング(Keith Haring)、フューチュラ(FUTURA)らと共に注目を集めたアーティストだ。ラッパーのドレイク(Drake)が作品を大量に所有しているほか、「ディオール(DIOR)」のメンズを手掛けるキム・ジョーンズ(Kim Jones)は、好きが高じて2021年プレ・フォール・メンズ・コレクションでコラボレーションを果たしている。

シャーフは、長らく日本での活動がなかったものの、32年ぶりの個展「I’m Baaack」を東京・原宿のアートギャラリー「ナンヅカ アンダーグラウンド(NANZUKA UNDERGROUND)」と赤坂の草月会館の2会場で開いた。開催に合わせて35年ぶりの来日を果たした彼に、バイオグラフィーを振り返ってもらいながら、今回の個展について語ってもらった。

ーーどのような幼少期を過ごし、アーティストには志してなったのでしょうか?それとも、なるべくしてなったのでしょうか?

ケニー・シャーフ(以下、シャーフ):俺は、自分がアーティストになるべくして生まれたと思っているよ。というのも、全ての人間がアーティストになれる素質を持って生まれていると思っていて、自分をどう表現するかが問題なんだ。あと、いま俺はブラシでペインティングすることがほとんどだけど、3歳の時に保育園でフィンガーペインティング(注:手や指に絵の具を付けて描く技法)していた感覚と記憶をはっきりと覚えていて、それをずっと大事にしているね。

ーーその後、10代で地元カリフォルニアを離れ、ニューヨークの芸術大学スクール・オブ・ビジュアル・アーツ(School of Visual Arts、以下SVA)に進学されていますね。

シャーフ:アーティストになるためには、ニューヨークに行くことが避けては通れないと思っていたからね。SVAに進学する時、ありがたいことに両親がサポートしてくれたけど、とにかくびっくりしていたよ。だって、当時はいま以上にアーティストとして生計を立てることが難しい時代と世界だったしね。

ーーニューヨークではどのように生計を立てていたんでしょうか?

シャーフ:1980年代のニューヨークは、景気も治安も悪かったから誰もが住みたがるような街ではなくて、家賃は数百ドル(注:当時は1ドルが約240円)くらいだった。だから、一晩だけクラブのドアマンやバーテンダーをすれば、残りの1週間は余裕で暮らせてアートの制作に打ち込めたんだよ。それに、クラブはアーティストにとって素晴らしい空間で、他のアーティストとの交流の場にもなるし、さまざまなカルチャーを知る重要な場所だったね。

ーー日本では、新人のグラフィックデザイナーやアーティストが生計を立てる一つの手段としてフライヤーをデザインすることがあります。あなたも経験はありますか?

シャーフ:もちろん、俺もやっていたよ。ニューヨークの街中に、とにかく貼りまくっていたね。

ーー当時の経験や思い出が、今の着想源になることはありますか?

シャーフ:具体的な着想源になることはないかもしれないけど、間違いなく影響は及ぼしているね。当時は本当に自由で、作品を大勢の人に観てもらわなくちゃいけないとか、業界の有名人にジャッジしてもらわなきゃいけないとか、そういった心のプレッシャーなんか一切なかった。呼吸するように何もかもを自然に吸収して発表していたし、みんなが違うことを毎日やっていたね。たとえば、俺が個展を開催した会場が、次の日にはゴルフ場、その次の日には女子プロレスリングのステージになっていたり、毎日がぶっ飛んでいたよ。いくつか思い出も話そうと思ったけど、公に話せることなんてなかった(笑)。

ーー作風が確立したのもニューヨークにいた頃でしょうか?

シャーフ:24歳の頃だったはずだから、82年くらいかな。ポップアート(注:1960年代に隆盛)でよく見られた“引用”の文脈はまだ根強くて、自分も何かを“引用”したいと考えていた時、幼い頃に観ていた「原始家族フリントストーン」と「宇宙家族ジェットソン」をふと思い出したんだよね。過去の世界を舞台にした「フリントストーン」と未来を舞台にした「ジェットソン」、そこに現代(80年代)の自分をミックスして一緒くたにすれば、時間軸を超越したカオスな世界観を作り上げられると考えた。カオスというとネガティブなイメージがあるかもしれないけど、無秩序な世界だからこそ生まれるものがあるーー“Chaos is creative”だね。

アートシーンには、いわゆるスノッブ(注:知識や教養をひけらかす人物)な人たちが一定数いて、俺はその人たちに歓迎されている気がしなかったし、美術館やギャラリーで知識と教養が無ければ楽しめないようなアートは好きじゃなかった。だから、全ての人を受け入れて、知識がなくても理解ができて、どこにでも存在できるアートを目指した。これが俺のステートメントさ。

ーー素敵なお話をありがとうございます。それでは、今回の個展を開いたきっかけや、タイトルについて教えてください。

シャーフ:2018年頃にナンヅカさん(南塚真史、ナンヅカ代表)と企画し始めたんだけど、パンデミックもあったからこのタイミングになってしまった。タイトルは、35年も来日していなかったからシンプルに戻ってきた感覚が強くて、映画「ターミネーター」の名言「I'll be back」を文字って名付けたんだ。

ーーちなみに、35年前はどういった理由で来日を?

シャーフ:とあるプリントプロジェクトのためだったんだけど、ここで言えるようなことは何もしてない(笑)。初来日自体は1985年で、それは今いる「ナンヅカ アンダーグラウンド」とは別に個展を同時開催している草月会館のテシガワラさん(勅使河原宏、草月流の第三代家元)との出会いがきっかけだね。82年にテシガワラさんとニューヨークで知り合い、草月会館でのグループ展「アート&アクション(ART & ACTION)」(85年)に誘ってもらったんだ。その時、テシガワラさんが「“キャデラック”(注:草月流の創始者・勅使河原蒼風の所有物)を持っているからペイントしてよ」と言ってくれて、草月会館で今展示されている“キャデラック”は85年にライブペインティングした作品だよ。

ーー「草月会館」では立体物を多く展示している一方で、「ナンヅカ アンダーグラウンド」はペインティング作品がメインですね。

シャーフ:ペインティングが14点とTVシリーズが4点、あとはインスタレーションの「Cosmic Cavern」だね。ペインティングは全て今回のためだけに描いた新作で、全部で3カ月くらいで描き上げたかな。

ーーペインティングの中には、日本の新聞の見出しを引用した作品がいくつかありますが、この意図は?

シャーフ:これは“Dire Headline(悲劇的な見出し)”がコンセプトで、日本の新聞の見出しを引用しているけど、俺は日本語が読めないからこの見出しが何を意味しているか理解できていない。ただ、新聞の見出しになるほど重要なニュースということだけは情報として分かるから、“自分の理解の範疇を越えているものにも重要な価値がある”ことを表現したんだ。

この作品だと3つのレイヤーで構成していて、1番下が日本の新聞で、その上にちょっと書道っぽさも意識したアクション・ペインティングを重ねて、1番上にハッピーな表情をした俺のキャラクターたちを載せている。要するに、俺たちは常に悲劇的なことが隣り合わせの生活を歩んでいるけど、それでも人生は続いていくから、どんな悲劇があっても楽しく過ごそう、って感じさ。でも、作品の捉え方は人それぞれでいいと思っていて、人間関係で例えると、ある1人の人間に対して表層的に付き合う人がいれば、親密になる人もいるよね?俺の作品もそれと一緒で、通り過ぎた一瞬に「なんかカラフルでかわいい!」って思うだけでもいいし、「あれ、なんか日本語がある」って注意深く観ても良い。作品の理解に余白を持たせているんだ。

ーーペインティング作品が全て新作の一方で、インスタレーション「Cosmic Cavern」は昔からアップデートを続けている作品だそうですね。

シャーフ:使えなくなったおもちゃや家電をアートに変えたくて、キース・ヘリングと一緒に住んでいた81年にスタートし、40年以上も進化させ続けているよ。ロサンゼルスのスタジオから持ってきたもの、韓国で拾ったもの、日本に来て見つけたものまで、ネオンカラーに染めることでアート作品に生まれ変わっているんだ。

ーー最後に、「ディオール」や「ユニクロ(UNIQLO)」などのアパレルブランドとのコラボも行っていますが、本来は鑑賞が目的だったアートを着用することや、ハンドペインティングの作品をデジタルプリントすることに抵抗はないのでしょうか?

シャーフ:ファッションに落とし込むことを嫌うアーティストは理解できるけど、俺は全く抵抗がないね。むしろ、Tシャツを着て街を歩いてもらうことのほうがハッピーになるよ。活動初期から洋服をアーティストにとっての宣伝媒体だと思っていて、プリントTシャツを配ったりしていたからかな?(笑)。自分の中でアートは、観ても着ても乗っても使ってもOKだと思っている。限界に縛られないことこそがアートさ。

■ケニー・シャーフ個展「I’m Baaack」
日程:〜7月9日
場所:ナンヅカ アンダーグラウンド
住所:東京都渋谷区神宮前3-30-10
入場料:無料

日程:〜6月30日
場所:草月会館
住所:東京都目港区赤坂7-2-21
入場料:無料

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ローラからの進捗報告 “作りたくても素材は限られている。その中で挑戦すると決めているの”

ローラ プロフィール

16歳でモデルデビュー。ハーフモデルとして独自のアイデンティティーをもち、その愛くるしいキャラクターと個性溢れるスタイルで国内外を問わず活躍。多くのファッション誌の表紙を飾り、さまざまな表情でファンを楽しませている。2016年には米映画製作プロデューサーの目にとまり、映画「バイオハザードⅥ:ザ・ファイナル」(16年12月23日公開)の女戦士役に抜擢されハリウッド映画デビューを果たす。20年に「Essentials for a good life」をスローガンに掲げたライフスタイルブランド「ステュディオ アール スリーサーティー」を立ち上げ活動している。

ローラが自身のライフスタイルブランド「ステュディオ アール スリーサーティー(STUDIO R330)」を始動して2年半が経過した。環境再生型農業によるデニムや受注生産の採用などその取り組みは至極真面目で先進的だ。日進月歩のサステナビリティについて、今のローラに見えている世界とは?「マックス マーラ(MAXMARA)」2024年リゾートコレクションのためにスウェーデンを訪れた彼女を現地でキャッチして近況を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):1年半前でのインタビューでは、サステナビリティに関する学びやリサーチを1日数時間行なっていると話していたが、この1年半で何を進化させた?

ローラ:この1年は特にベトナムのデニム工場サイテックス(SAITEX)との話し合いの中で学ぶことが多かったかな。今回、デニム素材に初めてサイテックスの”リジェネラティブコットンデニム”を採用してプレミアムなラインを作ったの。これまで作ってきたトップスと合うように、ブーツカットと少しワイドで切りっぱなしのデザインをね。

WWD:”リジェネラティブコットンデニム”つまり環境再生型農業は、農地そのものを健全に保つ手法で、今注目を集めている。理解するには学びが必要だったのでは。

ローラ:勉強すればするほど深くなってゆく。不耕起栽培で土地も健康になり、循環がしっかり回ることが理想だけど、本当に深くて。それはエコに関する他のことも同じ。例えばオーガニックコットンを目指す農家さんがいて、90%実現しても10%できていなかったらオーガニックとはうたえない。私は最初から100%パーフェクトでなくていいと思うから、そういう農家の人も応援したい。

WWD:認証の有無ではなく、対話をして本気だとわかったらサポートしてゆく姿勢ですね。それにしても少し前まで服を作る人が綿花の作り方まで考えることはなかった。ローラさんにとってはそれも含めてデザイン?

ローラ:そうだね。ベーシックなアイテムをエコな素材で作れたらいいな、といつも思っている。だけど農地の土を含めて環境に優しい生地はまだすごく少なくて、作りたいものがあっても素材は限られている。その中でチャレンジしようと決めているの。

WWD:「ステュディオ アール スリーサーティー」はベーシックなアイテムが多いから一見すると変わらないけど、使用する素材は進化しているのですね。メーンは、オーガニックコットン、リサイクルポリエステル、ウール。

ローラ:リサイクルポリエステルは今回は、ペットボトルからリサイクルした生地を使ってトラウザーを作った。

WWD:繊維由来のリサイクルペットボトルは使っていない?

ローラ:それもすごいいいことだけど、まだ値段が高くて、量も多く使わないといけないから今回はペットボトル由来にしたの。リサイクルウールのコートも作りたかったけど、同じ理由で断念。作る量はたくさんではなく、ほど良い数にしたいから。

リサイクル素材は再生するまでのプロセスが多いから当然価格が上がるでしょ?それなら、ヴァージンウールの方が良いのかな?とか今のベストを常に探している感じ。断念することが多い中でなんとか見つけてやっている。リサイクルでなくてもノンミュールジングウールなら、羊に痛みを与えない形で作られているし、ウールは天然繊維だから海に流れても大丈夫だしとか、一つ一つがすごく深いの。エコの価値、リサイクルの大切さがもっと広がったら変わると思う。

「ステュディオ アール スリーサーティー」は“タイムレスとエコの2つのエネルギーが同時に入った服”

WWD:知らないと選べないことだらけですね。バングラディシュの縫製工場が崩落し多くの方が亡くなったラナプラザの事故から10年。ファッションの世界は良くなっていると思う?

ローラ:あの事故は私も本当にショックで今も覚えている。あれから10年だ……。どうかな、時間はかかっていると思うけど、少しずつ良くなっているかな。私は私ができる形でバランス良くやっているけれど、世界にも少しずつサステナブルやエコの話題が多くなっていると思う。紙ストローにするとか、マイカップを持つとか、物をたくさん持ちすぎない大切さだとかね。

WWD:「ステュディオ アール スリーサーティー」はどんな女性に支持されている?

ローラ:年齢は関係なく様々な女性にタイムレスに着て欲しいと思っていて、共感してくれる人が買ってくれていると思う。エコな服って見つけるのが大変。だから自分で作ろうと思ったのだけど、これをきっかけにエコな服という選択肢があることを知った方も多いのかな、と思う。

WWD:アイロン不要のシャツはいいアイデアですね。"アイロンが面倒で結局着ない服”はタイムレスじゃないから、毎日着ることを考えたデザインは大事だと思う。

ローラ:あのシャツは、オーガニックコットン自体が柔らかいから、アイロンをたくさん使うより、生地の良さが生かされると思ったのもあるの。タイムレスとエコの2つのエネルギーが同時に入った服をデザインチームと考えるのは楽しい。大変だけど少しずつやっている。

WWD:以前、食やアロマなどライフスタイルにも関心があると話していて、実際アロマテラピー検定の1級を取得したとか。他に今、学んでいることは?

ローラ:今は禅について学んでいる。茶道も好きだから千利休さんについて学んだりね。エコは心ともつながっていて、心に余裕がなければ、家に物が溜まっちゃう。「部屋の汚れは心の汚れ」は本当だと思う。エコは自分磨きとつながっているね。

WWD:本質的ですね。

ローラ:ヨガもそう。自分のこと、食、世界のことまでつながっているから楽しくて、学びながら行動している感じかも。

WWD:スウェーデン滞在は楽しんでいますか?

ローラ:このサステナブルの国に前から本当に来たかったから嬉しい。空港に降りてすぐ色々な物が目に入ってきた。子供達の遊具が木で作られていて自然を大切にしていることが感じられたり、お手洗いに使い捨ての紙ではなく繰り返し使えるタオルが置かれていて使い捨てを減らしていこうと言う意識が感じられたり。

WWD:ゴミ箱の分別が細かいですよね。「生ゴミ」「分けられない」という分類まである。

ローラ:それいいよね。30%分解性はどっちだろう?とかゴミって時々難しいから。

WWD:ストックホルムに来た理由である「マックスマーラ」は70年続くブランド。ブランドのクリエイティブ・ディレクターとして長く続けることについて、想いはあるのでは?

ローラ:これだけの長い歴史があり、ベーシックで色々なものに合わせられるタイムレスなデザイン、それが「マックスマーラ」の美しいところだな、といつも思う。色もベーシックカラーが多くて好きな世界観。タイムレスであることもサステナブルにつながると思う。

WWD:タイムレスでい続けるって難しいことで、どこか進化し続けることも必要。

ローラ:そうだね、でもどうだろう。ものを大切にする日本の文化では漆の器は1000年以上持つと言われていて、これは飽きるものではない。だから人それぞれの見方かな、と思う。何年も前に買った大好きなドレスはいつ着ても飽きない。物に対して自分がどう思うか、が進化することも大切。何が程よいバランスなのか常に考えている。

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ローラからの進捗報告 “作りたくても素材は限られている。その中で挑戦すると決めているの”

ローラ プロフィール

16歳でモデルデビュー。ハーフモデルとして独自のアイデンティティーをもち、その愛くるしいキャラクターと個性溢れるスタイルで国内外を問わず活躍。多くのファッション誌の表紙を飾り、さまざまな表情でファンを楽しませている。2016年には米映画製作プロデューサーの目にとまり、映画「バイオハザードⅥ:ザ・ファイナル」(16年12月23日公開)の女戦士役に抜擢されハリウッド映画デビューを果たす。20年に「Essentials for a good life」をスローガンに掲げたライフスタイルブランド「ステュディオ アール スリーサーティー」を立ち上げ活動している。

ローラが自身のライフスタイルブランド「ステュディオ アール スリーサーティー(STUDIO R330)」を始動して2年半が経過した。環境再生型農業によるデニムや受注生産の採用などその取り組みは至極真面目で先進的だ。日進月歩のサステナビリティについて、今のローラに見えている世界とは?「マックス マーラ(MAXMARA)」2024年リゾートコレクションのためにスウェーデンを訪れた彼女を現地でキャッチして近況を聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):1年半前でのインタビューでは、サステナビリティに関する学びやリサーチを1日数時間行なっていると話していたが、この1年半で何を進化させた?

ローラ:この1年は特にベトナムのデニム工場サイテックス(SAITEX)との話し合いの中で学ぶことが多かったかな。今回、デニム素材に初めてサイテックスの”リジェネラティブコットンデニム”を採用してプレミアムなラインを作ったの。これまで作ってきたトップスと合うように、ブーツカットと少しワイドで切りっぱなしのデザインをね。

WWD:”リジェネラティブコットンデニム”つまり環境再生型農業は、農地そのものを健全に保つ手法で、今注目を集めている。理解するには学びが必要だったのでは。

ローラ:勉強すればするほど深くなってゆく。不耕起栽培で土地も健康になり、循環がしっかり回ることが理想だけど、本当に深くて。それはエコに関する他のことも同じ。例えばオーガニックコットンを目指す農家さんがいて、90%実現しても10%できていなかったらオーガニックとはうたえない。私は最初から100%パーフェクトでなくていいと思うから、そういう農家の人も応援したい。

WWD:認証の有無ではなく、対話をして本気だとわかったらサポートしてゆく姿勢ですね。それにしても少し前まで服を作る人が綿花の作り方まで考えることはなかった。ローラさんにとってはそれも含めてデザイン?

ローラ:そうだね。ベーシックなアイテムをエコな素材で作れたらいいな、といつも思っている。だけど農地の土を含めて環境に優しい生地はまだすごく少なくて、作りたいものがあっても素材は限られている。その中でチャレンジしようと決めているの。

WWD:「ステュディオ アール スリーサーティー」はベーシックなアイテムが多いから一見すると変わらないけど、使用する素材は進化しているのですね。メーンは、オーガニックコットン、リサイクルポリエステル、ウール。

ローラ:リサイクルポリエステルは今回は、ペットボトルからリサイクルした生地を使ってトラウザーを作った。

WWD:繊維由来のリサイクルペットボトルは使っていない?

ローラ:それもすごいいいことだけど、まだ値段が高くて、量も多く使わないといけないから今回はペットボトル由来にしたの。リサイクルウールのコートも作りたかったけど、同じ理由で断念。作る量はたくさんではなく、ほど良い数にしたいから。

リサイクル素材は再生するまでのプロセスが多いから当然価格が上がるでしょ?それなら、ヴァージンウールの方が良いのかな?とか今のベストを常に探している感じ。断念することが多い中でなんとか見つけてやっている。リサイクルでなくてもノンミュールジングウールなら、羊に痛みを与えない形で作られているし、ウールは天然繊維だから海に流れても大丈夫だしとか、一つ一つがすごく深いの。エコの価値、リサイクルの大切さがもっと広がったら変わると思う。

「ステュディオ アール スリーサーティー」は“タイムレスとエコの2つのエネルギーが同時に入った服”

WWD:知らないと選べないことだらけですね。バングラディシュの縫製工場が崩落し多くの方が亡くなったラナプラザの事故から10年。ファッションの世界は良くなっていると思う?

ローラ:あの事故は私も本当にショックで今も覚えている。あれから10年だ……。どうかな、時間はかかっていると思うけど、少しずつ良くなっているかな。私は私ができる形でバランス良くやっているけれど、世界にも少しずつサステナブルやエコの話題が多くなっていると思う。紙ストローにするとか、マイカップを持つとか、物をたくさん持ちすぎない大切さだとかね。

WWD:「ステュディオ アール スリーサーティー」はどんな女性に支持されている?

ローラ:年齢は関係なく様々な女性にタイムレスに着て欲しいと思っていて、共感してくれる人が買ってくれていると思う。エコな服って見つけるのが大変。だから自分で作ろうと思ったのだけど、これをきっかけにエコな服という選択肢があることを知った方も多いのかな、と思う。

WWD:アイロン不要のシャツはいいアイデアですね。"アイロンが面倒で結局着ない服”はタイムレスじゃないから、毎日着ることを考えたデザインは大事だと思う。

ローラ:あのシャツは、オーガニックコットン自体が柔らかいから、アイロンをたくさん使うより、生地の良さが生かされると思ったのもあるの。タイムレスとエコの2つのエネルギーが同時に入った服をデザインチームと考えるのは楽しい。大変だけど少しずつやっている。

WWD:以前、食やアロマなどライフスタイルにも関心があると話していて、実際アロマテラピー検定の1級を取得したとか。他に今、学んでいることは?

ローラ:今は禅について学んでいる。茶道も好きだから千利休さんについて学んだりね。エコは心ともつながっていて、心に余裕がなければ、家に物が溜まっちゃう。「部屋の汚れは心の汚れ」は本当だと思う。エコは自分磨きとつながっているね。

WWD:本質的ですね。

ローラ:ヨガもそう。自分のこと、食、世界のことまでつながっているから楽しくて、学びながら行動している感じかも。

WWD:スウェーデン滞在は楽しんでいますか?

ローラ:このサステナブルの国に前から本当に来たかったから嬉しい。空港に降りてすぐ色々な物が目に入ってきた。子供達の遊具が木で作られていて自然を大切にしていることが感じられたり、お手洗いに使い捨ての紙ではなく繰り返し使えるタオルが置かれていて使い捨てを減らしていこうと言う意識が感じられたり。

WWD:ゴミ箱の分別が細かいですよね。「生ゴミ」「分けられない」という分類まである。

ローラ:それいいよね。30%分解性はどっちだろう?とかゴミって時々難しいから。

WWD:ストックホルムに来た理由である「マックスマーラ」は70年続くブランド。ブランドのクリエイティブ・ディレクターとして長く続けることについて、想いはあるのでは?

ローラ:これだけの長い歴史があり、ベーシックで色々なものに合わせられるタイムレスなデザイン、それが「マックスマーラ」の美しいところだな、といつも思う。色もベーシックカラーが多くて好きな世界観。タイムレスであることもサステナブルにつながると思う。

WWD:タイムレスでい続けるって難しいことで、どこか進化し続けることも必要。

ローラ:そうだね、でもどうだろう。ものを大切にする日本の文化では漆の器は1000年以上持つと言われていて、これは飽きるものではない。だから人それぞれの見方かな、と思う。何年も前に買った大好きなドレスはいつ着ても飽きない。物に対して自分がどう思うか、が進化することも大切。何が程よいバランスなのか常に考えている。

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コロナ前より売り上げが30%アップ 仏ランジェリー「オーバドゥ」のセールスマネジャーを直撃

日本の下着市場は、大手下着メーカーによる寡占が長かった。しかし最近は、アパレルブランドが手掛ける下着や新進デザイナーズブランドが注目されるなど、大きく変化している。その中で、改めて存在感を示そうとしているのが、ヨーロッパのインポートランジェリーだ。上質な素材と独創的なデザインで消費者を魅了する一方で、さまざまな施策で購買層を広げようとしている。その一つが、栄進物産が輸入販売するフランスを代表するランジェリーブランド「オーバドゥ(AUBADE)」だ。現状と今後の展開について、アジアや中東などの営業を統括するフランソワ・トレル=オーバドゥ輸出部門エリアセールスマネージャーに聞いた。

WWD:現在の仕事の内容は?

フランソワ・トレル=オーバドゥ輸出部門エリアセールスマジャー(以下、トレル):役職は輸出部門のエリアセールスマネージャー。「オーバドゥ」は現在、約50カ国に輸出しており、私はアジア、イタリア、中東、アフリカ、カリブ海エリアの販売を統括している。

WWD:「オーバドゥ」の現在の売上高は?

トレル:2022年の世界売上高は約7400万ユーロ。(約105億8000万円)。「オーバドゥ」はスイスが本拠地の「カリダ」グループの傘下で、チューリッヒ証券取引所に上場している。そのうち、フランス国内ビジネスは全体の64%を占め、輸出は36%。私が担当している国の中では、日本は1位の売り上げで、重要な国の一つだ。日本は、ファッション、カルチャー、ウェルビーイングという点で非常に刺激的な国と捉えている。

WWD:現在の日本における販売拠点数は?

トレル:現在、伊勢丹新宿本店、松屋銀座、名鉄百貨店、岩田屋本店、栄進物産の直営店舗である青山の「マリアネリ」、帝国ホテルアーケード内の「マリアネリマダム」とECで販売する他、約200に卸している。ECと伊勢丹新宿本店、青山の「マリアネリ」が好調だ。

WWD:他の高級ランジェリーと違う理由は?

トレル:「オーバドゥ」の歴史は1875年まで遡り、医療用コルセットの会社がルーツだ。1958年に“朝の詩”を意味する「オーバドゥ」の名でランジェリーブランドとしてスタートした。“朝の詩”が名前の由来となったのは、愛しい人と過ごした夜を思い出して詠んだ朝の詩をイメージしたランジェリーだから。そのことからもわかるように、「オーバドゥ」は多くの観客に語りかけるエモーショナルなブランドだ。女性に力と幸福を与えるという使命を、自らに課している。

WWD:高級ランジェリーの魅力を伝えるために尽力していることは?

トレル:「オーバドゥ」の魅力を伝えるためには、卓越したビジュアルを見ていただくのが一番だ。製品に対する情熱を饒舌に表現している。また、医療用コルセットメーカーをルーツとしていることからも分かるように、「オーバドゥ」の魅力はそのフィッティングの良さだ。エモーショナルな部分とフィッティングという機能性を兼ね備えていることを顧客一人一人に説明し、「オーバドゥ」を身につけることで喜びを感じてもらうことが重要だ。

WWD:そのための効果的な施策は?

トレル:店頭で「オーバドゥ」の魅力を伝えるセールススタッフのトレーニングに力を入れている。世界各国の代理店との連携も重要で、コロナ禍ではフランス出張がなく、動画にパリ本社のスタッフが出演して、社内を案内したり、ものづくりの現場を紹介したりした。私自身も世界各国の代理店とオンラインでコレクションの説明を行うなど、コミュニケーションを重視した。

ファッションの一部として見せるランジェリーが好調

WWD:コロナ感染拡大がビジネスに与えた影響は?

トレル:ヨーロッパでは、コロナが下着のデザインと販売に大きな影響を与え、一部のブランドは姿を消した。「オーバドゥ」も肌触りのいいシルクのラウンジウエアやノンワイヤーブラを充実させるなど、家の中で快適な時間を過ごすためのアイテムを増やした。それらの戦略が功を奏し、ロックダウンで店舗が全て閉鎖する中、ECが非常に健闘し、コロナ禍でも売り上げを落とすことなく伸長し続けた。22年も、ECの売り上げは前年比18%増だった。

WWD:アフターコロナで売れる商品に変化は見られるか?

トレル:心地いいもの、リラックスできるものを求めていたコロナ禍と異なり、よりファンタジーを掻き立てるような魅惑的なランジェリーが好まれるようになっている。特にファッションとして楽しめるアイテムが人気で、ジャケットの下に着たりデニムとコーディネートしたりする“見せるランジェリー”の動きが活発だ。そんなファッションで、ディナーを楽しんだりスペシャルな場所に出かけたり、女性達は、コロナ後にご褒美を望んでいるのだろう。その結果、ECも店頭も好調で22年の売り上げはコロナ禍前(19年)と比べると30%増になった。

WWD:現在伸びている市場は?

トレル:世の中がアフターコロナのムードに包まれた22年はイギリス、ドイツ、アメリカなどが好調だった。ただ、エネルギーや物価高の影響で、購買意欲が落ちているように思える。ヨーロッパでは、バケーションに向けた買い物が盛んな時期だが、悪天候が重なり、水着やビーチウエアの動きもやや鈍っている。

WWD:今後のグローバル戦略は?

トレル:まずは、最高の商品を提供し続けること。「オーバドゥ」は約50カ国で同じデザインを販売しているが、サイズの幅を広げてHカップまで展開するようにし、多様な体形への対応を進めている。また、モールドプランジブラやブラレットなど新しいブラのデザインやメンズラインも充実させている。23年秋冬は「エリー サーブ(ELIE SAAB)」とコラボレーションしたカプセルコレクションを発売する。国際的なデザイナーとのコラボコレクションは革新性をアピールするためにも積極的に行っていくつもりだ。これは私個人の夢だが、将来、日本人デザイナーとのコラボレーションを実現したい。先日、2023年度「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE)」のグランプリに輝いた「セッチュウ(SETCHU)」とのコラボなどを夢に描いている。

WWD:今後の日本戦略、注力したいカテゴリーや商品は?

トレル:日本に限ったことではないが、魅惑的な商品を提供するだけではなく、多くの人が着けられる幅広いラインアップを展開していく。その一つが、24年春夏に発売するウェルネスウエア“ホットモーション”だ。これは、ヨガやピラティスなどアスレジャー用として楽しんでもらえるスポーツブラやショーツ、ボディースーツ、スポーツレギンスなどだ。スポーツ系セグメントはポテンシャルが高く、多くのハイブランドも手掛けている。話題になりそうなビジュアルも完成しており、日本市場はもちろん、世界で受け入れられると期待している。また、サステナビリティへの取り組みも加速させる。今もいくつかのコレクションにリサイクルレースを採用しているが、今後は全ての新シリーズを100%リサイクルマテリアルとし、継続コレクションも同様にリニューアルしていく計画だ。

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コロナ前より売り上げが30%アップ 仏ランジェリー「オーバドゥ」のセールスマネジャーを直撃

日本の下着市場は、大手下着メーカーによる寡占が長かった。しかし最近は、アパレルブランドが手掛ける下着や新進デザイナーズブランドが注目されるなど、大きく変化している。その中で、改めて存在感を示そうとしているのが、ヨーロッパのインポートランジェリーだ。上質な素材と独創的なデザインで消費者を魅了する一方で、さまざまな施策で購買層を広げようとしている。その一つが、栄進物産が輸入販売するフランスを代表するランジェリーブランド「オーバドゥ(AUBADE)」だ。現状と今後の展開について、アジアや中東などの営業を統括するフランソワ・トレル=オーバドゥ輸出部門エリアセールスマネージャーに聞いた。

WWD:現在の仕事の内容は?

フランソワ・トレル=オーバドゥ輸出部門エリアセールスマジャー(以下、トレル):役職は輸出部門のエリアセールスマネージャー。「オーバドゥ」は現在、約50カ国に輸出しており、私はアジア、イタリア、中東、アフリカ、カリブ海エリアの販売を統括している。

WWD:「オーバドゥ」の現在の売上高は?

トレル:2022年の世界売上高は約7400万ユーロ。(約105億8000万円)。「オーバドゥ」はスイスが本拠地の「カリダ」グループの傘下で、チューリッヒ証券取引所に上場している。そのうち、フランス国内ビジネスは全体の64%を占め、輸出は36%。私が担当している国の中では、日本は1位の売り上げで、重要な国の一つだ。日本は、ファッション、カルチャー、ウェルビーイングという点で非常に刺激的な国と捉えている。

WWD:現在の日本における販売拠点数は?

トレル:現在、伊勢丹新宿本店、松屋銀座、名鉄百貨店、岩田屋本店、栄進物産の直営店舗である青山の「マリアネリ」、帝国ホテルアーケード内の「マリアネリマダム」とECで販売する他、約200に卸している。ECと伊勢丹新宿本店、青山の「マリアネリ」が好調だ。

WWD:他の高級ランジェリーと違う理由は?

トレル:「オーバドゥ」の歴史は1875年まで遡り、医療用コルセットの会社がルーツだ。1958年に“朝の詩”を意味する「オーバドゥ」の名でランジェリーブランドとしてスタートした。“朝の詩”が名前の由来となったのは、愛しい人と過ごした夜を思い出して詠んだ朝の詩をイメージしたランジェリーだから。そのことからもわかるように、「オーバドゥ」は多くの観客に語りかけるエモーショナルなブランドだ。女性に力と幸福を与えるという使命を、自らに課している。

WWD:高級ランジェリーの魅力を伝えるために尽力していることは?

トレル:「オーバドゥ」の魅力を伝えるためには、卓越したビジュアルを見ていただくのが一番だ。製品に対する情熱を饒舌に表現している。また、医療用コルセットメーカーをルーツとしていることからも分かるように、「オーバドゥ」の魅力はそのフィッティングの良さだ。エモーショナルな部分とフィッティングという機能性を兼ね備えていることを顧客一人一人に説明し、「オーバドゥ」を身につけることで喜びを感じてもらうことが重要だ。

WWD:そのための効果的な施策は?

トレル:店頭で「オーバドゥ」の魅力を伝えるセールススタッフのトレーニングに力を入れている。世界各国の代理店との連携も重要で、コロナ禍ではフランス出張がなく、動画にパリ本社のスタッフが出演して、社内を案内したり、ものづくりの現場を紹介したりした。私自身も世界各国の代理店とオンラインでコレクションの説明を行うなど、コミュニケーションを重視した。

ファッションの一部として見せるランジェリーが好調

WWD:コロナ感染拡大がビジネスに与えた影響は?

トレル:ヨーロッパでは、コロナが下着のデザインと販売に大きな影響を与え、一部のブランドは姿を消した。「オーバドゥ」も肌触りのいいシルクのラウンジウエアやノンワイヤーブラを充実させるなど、家の中で快適な時間を過ごすためのアイテムを増やした。それらの戦略が功を奏し、ロックダウンで店舗が全て閉鎖する中、ECが非常に健闘し、コロナ禍でも売り上げを落とすことなく伸長し続けた。22年も、ECの売り上げは前年比18%増だった。

WWD:アフターコロナで売れる商品に変化は見られるか?

トレル:心地いいもの、リラックスできるものを求めていたコロナ禍と異なり、よりファンタジーを掻き立てるような魅惑的なランジェリーが好まれるようになっている。特にファッションとして楽しめるアイテムが人気で、ジャケットの下に着たりデニムとコーディネートしたりする“見せるランジェリー”の動きが活発だ。そんなファッションで、ディナーを楽しんだりスペシャルな場所に出かけたり、女性達は、コロナ後にご褒美を望んでいるのだろう。その結果、ECも店頭も好調で22年の売り上げはコロナ禍前(19年)と比べると30%増になった。

WWD:現在伸びている市場は?

トレル:世の中がアフターコロナのムードに包まれた22年はイギリス、ドイツ、アメリカなどが好調だった。ただ、エネルギーや物価高の影響で、購買意欲が落ちているように思える。ヨーロッパでは、バケーションに向けた買い物が盛んな時期だが、悪天候が重なり、水着やビーチウエアの動きもやや鈍っている。

WWD:今後のグローバル戦略は?

トレル:まずは、最高の商品を提供し続けること。「オーバドゥ」は約50カ国で同じデザインを販売しているが、サイズの幅を広げてHカップまで展開するようにし、多様な体形への対応を進めている。また、モールドプランジブラやブラレットなど新しいブラのデザインやメンズラインも充実させている。23年秋冬は「エリー サーブ(ELIE SAAB)」とコラボレーションしたカプセルコレクションを発売する。国際的なデザイナーとのコラボコレクションは革新性をアピールするためにも積極的に行っていくつもりだ。これは私個人の夢だが、将来、日本人デザイナーとのコラボレーションを実現したい。先日、2023年度「LVMHヤング ファッション デザイナー プライズ(LVMH YOUNG FASHION DESIGNER PRIZE)」のグランプリに輝いた「セッチュウ(SETCHU)」とのコラボなどを夢に描いている。

WWD:今後の日本戦略、注力したいカテゴリーや商品は?

トレル:日本に限ったことではないが、魅惑的な商品を提供するだけではなく、多くの人が着けられる幅広いラインアップを展開していく。その一つが、24年春夏に発売するウェルネスウエア“ホットモーション”だ。これは、ヨガやピラティスなどアスレジャー用として楽しんでもらえるスポーツブラやショーツ、ボディースーツ、スポーツレギンスなどだ。スポーツ系セグメントはポテンシャルが高く、多くのハイブランドも手掛けている。話題になりそうなビジュアルも完成しており、日本市場はもちろん、世界で受け入れられると期待している。また、サステナビリティへの取り組みも加速させる。今もいくつかのコレクションにリサイクルレースを採用しているが、今後は全ての新シリーズを100%リサイクルマテリアルとし、継続コレクションも同様にリニューアルしていく計画だ。

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1位は、ゲリラ販売し話題を呼んだ「キャンメイク」の8色アイシャドウパレット“プティパレットアイズ”に新色 定番化も| 週間アクセスランキング TOP10(6月15〜21日)

1位は、ゲリラ販売し話題を呼んだ「キャンメイク」の8色アイシャドウパレット“プティパレットアイズ”に新色 定番化も| 週間アクセスランキング TOP10(6月15〜21日)

「WWDJAPAN」 ウイークリートップ10

1週間でアクセス数の多かった「WWDJAPAN」の記事をランキング形式で毎週金曜日にお届け。
今回は、6月15日(木)〜21日(水)に配信した記事のトップ10を紹介します。


- 1位 -
ゲリラ販売し話題を呼んだ「キャンメイク」の8色アイシャドウパレット“プティパレットアイズ”に新色 定番化も

06月21日公開 / 文・WWD STAFF

「キャンメイク(CANMAKE)」は7月下旬、ツイッターを中心にSNSで話題を呼んだアイシャドウパレット“プティパレットアイズ”(各1078円)に新色のピンク系“03 ミニョンリボン”を加え、今春販売した柔らかなピンクベージュ系の“01 プリュムフラワー”と、赤みブラウン系の“02 ボヌールマロン”を含めた全3種を発売する。なお、同商品は10月頃に定番化を予定している。

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- 2位 -
浅田舞と稲村亜美が健康的なスポーツブラ姿を披露 ワコール「CW-X」の新広告が登場

06月16日公開 / 文・WWD STAFF

ワコールは、コンディショニングウエアブランド「シーダブリューエックス(CW-X)」のスポーツブラの広告に、元フィギュアスケート選手の浅田舞とタレントの稲村亜美を起用した。

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- 3位 -
「バレンシアガ」がLINEスタンプを無料配布 初のサービス

06月16日公開 / 文・WWD STAFF

「バレンシアガ(BALENCIAGA)」は6月16日、LINEスタンプの配布を開始した。日本の公式アカウントを通じた初のサービスだ。

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- 4位 -
「エル・ジャポン」の表紙に「グッチ」をまとった羽生結弦 SNSで反響が寄せられ発売前重版決定

06月21日公開 / 文・福永千裕

ハースト婦人画報社が発行する「エル・ジャポン(ELLE JAPAN)」は、羽生結弦をフィーチャーした8月号特別版を6月28日に発売する。誌面では、13ページに渡る特集を設け、「グッチ(GUCCI)」をまとったファッションポートレートのほか、芥川賞作家である町屋良平による独占インタビューなどの内容を紹介する。一部ネット書店限定で、ポストカードの特典も用意する。

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- 5位 -
【2023年夏コスメ】「シャネル」のカラフル&ポップな限定アイテムが登場 ブラシセット&ミラー&ネイルファイルの3アイテム

06月16日公開 / 文・WWD STAFF

「シャネル(CHANEL)」は7月7日、夏の限定アイテムとしてメイクアップのアイコニックなシェードをテーマにした限定コレクション“カラーコード”を東京・表参道のシャネル ビューティ ハウスとオンラインストアで数量限定発売する。アイテムはポーチ付きのメイクアップブラシセット“レ パンソー ドゥ シャネル”(全9色、各2万4750円)、コンパクトミラーの“ミロワール ドゥーブル ファセット” (全9色、各6270円)と、“ネイル ファイル”(全9色、各4950円)の3アイテム。オンラインストア限定カラーも用意している。

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- 6位 -
「G-SHOCK」の40周年記念モデルは内部が見えるスケルトン 7月7日に全7モデルを発売

06月15日公開 / 文・WWD STAFF

カシオ計算機の「G-SHOCK」は7月7日に、40周年記念モデルの“クリアリミックス(CLEAR REMIX)”を発売する。“クリアリミックス”は、40周年を記念した新たなチャレンジとしてケースやバンド、液晶、ボタンなどにスケルトン素材を用い、モジュールや回路基板などの内部の部品を見せるなどのデザインを施した。初号機の角型フォームをベースにしたモデルを含む7モデルを用意する。またパッケージにはリサイクル素材を使用した特別仕様となっている。

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- 7位 -
「古着ブーム」に異変あり メジャー化への関門【小島健輔リポート】【期間限定無料公開】

 ファッション業界のご意見板であるコンサルタントの小島健輔氏が、日々のニュースの裏側を解説する。「メルカリ」の浸透などもあって古着が存在感を増すようになって久しい。リユース関連の店舗もこの10年でだいぶ増えた。だが、マーケットを詳しく点検すると潮目が変わってきたと小島氏は主張する。

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- 8位 -
古着「サンタモニカ表参道店」が6月25日に閉店 1979年にオープン

06月18日公開 / 文・三澤 和也

東京・表参道の古着店「サンタモニカ表参道店」が6月25日に閉店する。同店の公式インスタグラムは、「長きにわたりご愛顧頂きましたこと、厚くお礼を申し上げます」とコメントした。

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- 9位 -
衝撃「プラダ」のスライム3トンやジョナサン・アンダーソンのユニホーム着用の理由 2024年春夏メンズコレ取材24時Vol.3

06月21日公開 / 文・大塚 千践

2024年春夏コレクションサーキットが、各都市のメンズ・ファッション・ウイークから本格的に開幕しました。「WWDJAPAN」は今回も現地で連日ほぼ丸一日取材をするノンストップのコレクションリポートを敢行。担当は、メンズ担当の大塚千践「WWDJAPAN」副編集長とパリ在住のライター井上エリの大阪出身コンビ。時には厳しい愛のツッコミを入れながら、現場のリアルな空気感をお届けします。

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- 10位 -
【ユニクロ2023年秋冬 後編】写真82枚で見せる展示会詳報 期待はポロカーデやカーゴパンツ

06月16日公開 / 文・五十君 花実

冬が年々短くなり、分厚いウールアウターの売れ行きが鈍る中で、重ね着を主役にした秋冬の着こなしを打ち出す企業が増えている。「ユニクロ」の2023年秋冬展示会は“レイヤリング”をテーマに、重ね着やトーン・オン・トーンの色合わせ、冬の機能性素材の活用によって、旬の着こなしを打ち出す。

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「メンズコスメに必要な3つを実現できる」 「レタッチ」宮永えいとと「フィフス」木村允人のウィン・ウィンな関係

 メンズコスメブランド「レタッチ(RETOUCH)」、メンズ美容を中心に発信するユーチューブチャンネルやウエブメディア「大人男子ラボ(OTONASANSHI LABO)」を手がける宮永えいとCiiK代表と、原宿発で福岡や名古屋にもサロンを展開する「フィフス(fifth)」グループを率いる木村允人CMO。“男性からの支持率が高い”という共通点を持ちながらも、異なるフィールドでメンズ美容市場を盛り上げてきた二人がタッグを組んで、「レタッチ」の最新アイテム「レタッチ nu ウェーブ」をプロデュースした。

 宮永代表は「メンズコスメに必要なのは、プロダクト、コンテンツ、リアルの3つ」と分析し、「フィフス」とのコラボは理想的な形でこの3つを実現できたと話す。宮永代表と木村CMOにコラボのいきさつや、それぞれが抱くサロンとブランドの未来像について語ってもらった。

実は10年来の仲
ビジネス志向がマッチした

WWDJAPAN(以下、WWD):男性からの人気が高いお2人という印象はありましたが、コラボは意外でした。サロンもテイストも異なると思うのですが、親交が深まった経緯は?

木村允人「フィフス」グループCMO(以下、木村):もともとえいとくんが働いていたサロンと「フィフス」は近くにあって、軽く挨拶するぐらいの関係でした。当時、深く話したことはなかったけれど、10年来の仲といえば親交は長いですね。ぐっと近づいたのはここ2年ほど。えいとくんの本質がとにかくビジネスマンで起業家気質ということを知って、相性の良さを感じました。

宮永えいとCiik代表(以下、宮永):インスタグラムをフォローし合っていて、お互いに活動をチェックしていました。それがある日、木村さんからDMをいただいて渋谷のカフェで夢を語り合っちゃったんですよ(笑)。深くお話しする前は、ストリートテイストで、いかついイメージもあったし、実は昔サロンモデルをやってもらったこともあって、木村さんのビジネス志向に驚きました。

木村:そういえば、僕がフリーター時代にえいとくんのサロンモデルをやったこともあったね。会って話してみて、印象が変わった部分はお互いに大きいよね。それでまず最初に、えいとくんのユーチューブチャンネルで「フィフス」のスタイリスト堀雄大とのコラボをお願いしたんです。

宮永:それまで僕のチャンネルで、人を巻き込んだり、コラボはしたことはありませんでした。でも堀くんが「フィフス」のスタイリストの中でもイチオシで、動画を撮って欲しいとせっかく声をかけてもらったので、やってみようかなと直感で。髪を切ってもらう動画をアップしました。堀くんはルックスもかっこいいし、動画が公開された後売上が爆増したと聞いて、エンゲージメントの高さを感じました。

木村:僕もそれは感じた。えいとくんとコラボさせてもらったことで、堀にはコアなファンが付きました。えいとくんと視聴者=ファンとの深度の深さを感じました。コラボの反響が大きかった分、僕ら「フィフス」がえいとくんに還元できることと言ったら、「レタッチ」の大取引先になること。サロンの中でも全国で1番になるぐらい、仕入れて売ろうと思いました。そうすれば、ビジネス的な関係が成り立ちます。協力会社を作るイメージに近いですね。

フィールドが違うからこそ成り立つ
ウィン・ウィンな関係

WWD:お二人とも美容師ではありますが、現役の美容師・サロン経営とブランドプロデュース・メディアでの発信とで、ビジネスのフィールドが違いますよね。

宮永:美容という領域は一緒ですが、今の時代、特化しないと売れないし、突き抜けられません。だから僕は独自で美容室をやるべきではないと思っています。「フィフス」はプロダクトを作れるのかもしれないけど、今はサロンに集中している。お互い特化して突き抜けて、さらに突き抜けるためにコラボしています。僕は独自で美容室はやらないけど、美容室に送客したいという思いは強くあります。「レタッチ」を現場で使ってもらうことは、つまりスタイリストを通じてお客さまに届けられることなので、メリットしかないんです。でもそこを分かり合えるパートナーってなかなか見つからないんですよね。

木村:美容室のオーナーって比較的自分が表に立ちたい、承認欲求が強いタイプも多いから、そんなえいとくんの思いとはなかなか合意できないんだと思う。僕ら「フィフス」はそうではなくて、次に繋がる何かを作らないといけないという思いがえいとくんの考えとマッチしたんです。お互いが持っているものでフォローし合えるし、親和性はかなり高い。プロダクトは自社でも作れるだろうけど、えいとくん個人や「レタッチ」にコミットした方が相乗効果で大きなものを得られると考えています。

宮永:まさにウィン・ウィンな関係性。僕、人にプレゼントしたり、プレゼントされるのがすごく苦手で。なぜかというとお返しを考えてしまうし、相手に気を使わせるのもなんだかいや。そんな僕が「フィフス」に対しては人生で初めてプレゼントできている感覚なんです。僕の会社で「フィフス」のSNSの運用やHPの制作をやらせてもらったり、サロンに送客したり。その一方で「フィフス」のスタイリストにコンテンツに出てもらったり、製品開発に力を貸してもらったりする。お互いのリソースを使い合うことで、いってしまえばほぼ0円でビジネスが成り立っている。そういうところが僕と木村さんが手を組む本質なんだと思っています。

木村:コラボするようになってから、「フィフス」には明らかにえいとくんのファン層が増えました。それが本当に嬉しくて、次に繋がる何かを0円で生み出している感覚。メンズ美容の総合格闘技を一緒にやっている感じです。メンズサロンは流行っているところがたくさんあって、みなさん立派だけど、2社が、3社が、力を合わせることで、もっと大きなビジネス展開ができると目論んでいます。

プロダクト・コンテンツ・リアル
メンズコスメに欠かせない三角形

WWD:「フィフス」の店舗ではこれまでに2回「レタッチ」のポップアップを開催しましたね。「レタッチ」はECでの販売が中心だと思いますが、リアルで体験して買えるのはやはりメリット?

宮永:ヘアスタイリングは、結局は毎日自分でやらないといけないもの。美容室でかっこよくなった時は美容師がやってくれているからで、差が出てしまうんですよね。でも僕らがスタイリングを教えられるコスメカウンターみたいな場所を作るのはなかなか難しい。だから「フィフス」でのポップアップや、接客の中で使ってもらえるのはすごくありがたいし、お客さまにとって貴重な体験になっているはず。僕らはコンテンツが得意なので、なんとかしてコンテンツを通して伝えようとはしているけれど、パーソナライズはされていないから、美容室には叶わないと思っています。

WWD:「フィフス」との共同開発で誕生したワックスのこだわりは?

木村:えいとくんに堀とコラボしてもらった頃から構想は始まっていて、12回は試作をしました。とにかく質感にこだわりました。ワックスって操作性が悪かったり、緩めでもセット力が欲しかったり、艶が持続しなかったり、僕らがネガティブに思う要素を改善していきました。

宮永:髪の毛につけた時の質感は木村さんや「フィフス」のスタイリストたちにしか分からないんです。そこはプロに任せるというスタンスです。

WWD:そうは言っても、えいとさんも美容師じゃないですか。

宮永:僕はもう全然サロンワークもやっていないですし、今はカットにすごく時間がかかります(笑)。だから「レタッチ」ができることは、コスメの視点。木村さんと話す中で保湿というキーワードが多々上がったので、化粧水と乳液の発想で水分と油分を組み合わせようと閃いて、セラミドやナチュラルオイルをミックスして、スキンケア発想で仕上げていきました。

WWD:ワックスの仕上がりや、ポップアップなど、コラボに満足している?

宮永:僕の中ではメンズコスメで必要なものは、コンテンツとプロダクト、リアルの3つだと考えてます。「フィフス」とコラボすることで、その全てができました。ワックスの発売にあたり、スペシャルコンテンツとしてLPを作りました。そこから「フィフス」のスタイリストの予約が取れるようにしています。もちろん購入の導線も作っていますが、「フィフス」でパーマをかけてスタイリングしてもらってかっこよくなる体験の中で、プロダクトを購入してもらうのがいい流れだと思っています。ウエブ広告も回してみて反響もありましたし、この取り組みをやれたことが1番よかったです。いちメーカーとしてはECで売れるだけで良いと思うんですけど、お客さまが本当にカッコ良くなるための方法を考えたらリアルは外せません。

木村:僕らからしたら予約導線を作ってもらったのは本当に感謝しています。だからこそ、もっと「レタッチ」を売らなきゃって思うんです(笑)。

WWD:今回のコラボを経て、お二人がこれからさらに取り組みたいことを教えてください。

木村:次は「レタッチ by フィフス」でショップを作りたいね。プロダクト×サロンはお互いの夢。コラボしたときに何が起こるのかを見てみたい。流行っているメンズサロンはたくさんあるけれど、より洗練されていてスタイリッシュな空間を作っていきたい。大人が楽しめる空間を「レタッチ」とコラボしたら作れそう。

WWD:カジュアルすぎず、格式高すぎず。30代前後の男性にフィットしそうなメンズサロンって実は少ないのかもしれません。

木村:品があって洗練された大人の集まる場所が理想です。僕らは元々洋服も大好きで、オシャレがしたい。かつて原宿のカルチャーを楽しんだ大人たちが、もう一度楽しめるような場所が欲しいですよね。

宮永:僕も同意見です。あとは先ほどお話した三角形を達成していきたい。コンテンツとプロダクトはできているので、あとはリアル。そういう意味でも「フィフス」とはコラボしたい。イメージはフロントにショップがあって、奥にサロンスペースがある感じ。美容のアイテムから洋服まで、僕だけでなく美容師がセレクトして販売するのも面白いと思う。

WWD:トータルプロデュースですね。

宮永:“一般の方”と言ったら語弊があると思いますが、見た目の先生は美容師だと思っています。髪だけでなく、その人がもっともっとかっこ良くなる方法を美容師は教えるべき。スタイリスト自身はみんな素敵なので、そこにもう少しだけプロダクトやコンテンツが交わるとライフスタイルをデザインできるのでは。

木村:すごく分かる。信頼できる人から洋服やコスメを購入したいという男性は多い。まさに1人の先生に出会うイメージ。えいとくんとならできそう。今は個の時代ってよく言われますが、個では限界がある。フォロワーが何十万人といたって、チームの力が必要。さらにはチームの看板を背負いながら、その垣根を超えていかないと。

WWD:それでいうとえいとさんは個のイメージを持たれることも多いのでは?

えいと:起業して変わりましたね。個の時代も能力を磨く上では大切な時間でした。今は会社のメンバーも増えてきて、チームの大切さを知っています。木村さんや「フィフス」とのコラボでも強く感じたので、これからも期待して見ていてください!

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セレクトショップのイザが移転オープン 商業施設と環境問題の矛盾に切り込む「解体をデザイン」の意図を建築家に聞く

セレクトショップのイザ(IZA)が6月2日、東京旗艦店を拡張移転オープンした。南青山・骨董通りの拡張に伴うもので、移転先は21年8月までユナイテッドアローズ 青山 ウィメンズストアがあった場所だ。一般的に、新店舗は既存店の仕上げを解体して作り直すが、「イザ トウキョウ(IZA TOKYO)」は同ストアの枠組みをそのまま生かした。コンセプトは「解体をデザイン」。白いギャラリーのような内装はよく見ると、異なる質感やトーンの白が重なり、所々に見られる作業を途中で止めたかのような不完全さに人肌を感じる。このユニークな内装について、田中タキ=イザ代表と建築家の小野寺匠吾に聞いた。

工事を控えた今年初めのこと。内装について田中代表から建築家に出されたリクエストは「セレクトしてきたアイテムを美しく展示し、サステナブルを体現する空間」だった。イザは、インディペンデントな企業の代表が自ら世界各国を飛び回り、ラグジュアリーやデザイナーズブランドから集めた美しい服やアクセサリーを扱う店。それらを大切に見せたい、加えてビジネスと両立する “サステナブル”への自分なりの答えを反映したい、そう考えてのリクエストだ。

改装対象の空間は2層で約400㎡、そして居抜き。それに対して小野寺が提出したのはパースや設計図ではなく短い文章だった。「解体をデザイン」と題し、「これからの商業店舗開発をどう考えるか。じっくり解体にこだわることで新しいアプローチを切り開く挑戦」とあった。

小野寺はこれまでに、イザがディストリビューションする「パトゥ(PATOU)」の表参道店の設計などで実績があり信頼もあったというが、それにしても言葉のプレゼンだけから内装プランを選択するのは大きな賭けである。決めた理由について田中代表は「直感だった。以前の自分だったらゼロからピカピカの店を作る方が好きだったけど、今は違う。ゼロからではない、という制約がある方が新しいことをするチャンスだと思った」と振り返る。

内装にアーティスト集団の“視点”を加える

無秩序となりかねない「解体をデザイン」には文脈が必要だ。その役を果たしたのがアーティスト集団アーティファクト(Artifact)だ。普段はそれぞれに作品を作っているアーティストたちが施工チームを結成している。彼らは「解体をデザイン」というお題を受け、大いに盛り上がったという。

「解体をデザインすることは解体廃棄が出ないことだったり、解体しないことだったり、解体しながら考えることであったり、解体したら完成している状態も含む行為だと考えた」と小野寺。まるで禅問答だが、それぞれのアーティストには得意な素材があり、じっくり見て触り、壁や床、装飾のガラスブロック、階段、手すりなどそれぞれの材質や役割に合わせて素材の生かし方を決めたと聞けば、それほど突飛なことではない。

色は白に統一しつつ、最終的に採用した素材は6種類。既存の内装を “覆う”ためにグラスファイバーやガーゼと石膏や樹脂系塗料によって独自のマテリアルも開発した。壁面や天井、什器のマテリアルを加工後アップサイクルするケースや、既存を下地として利用して新しい仕上げを施す試みもある。金属などの素材はメッキを剥がし、変質させ、表情豊かな素材として再生し、新たな照明や什器として再構築した。

田中代表からの条件はひとつ、「繊細な服地が床や壁にひっかからないこと」だ。「便利にしすぎると緊張感がなくなるからメリハリは大事。アーティストの皆が勢いがある分、最後まで完成がイメージできなくてヒヤヒヤで、打ち合わせは常に現場だった。最終的に変更してもらったのは階段の材質だけ。私はハイヒールをはくから、ヒールの音がカンカン鳴る材質は避けてもらった」と言う。

廃棄方法もこだわった。工事期間中に排出される廃材のリサイクル率を高く保つため、現場内で排出されたごみを廃プラスチック、石膏ボード、木くず、金属くず、段ボール、混合廃棄物の6 品目に分別。中間処理工場で混合廃棄物の選別作業と、破砕・圧縮といった処理を実施し、廃棄物を減容し運搬効率を上げてリサイクル先へ出荷した。

“とは言え”で止まる、商業施設と環境問題の矛盾

解体は「どこで止めるか」が難しい。天井をよく見ると、ひっかき傷のようなものがところどこにある。これは包帯の留め具やギブスをイメージしてあえて残したものだ。「再利用することを、ギブスのような治具で治療するイメージと重ねた。解体のプロセスが同時に完成につながっていて、それが同時に現状の課題の改善に向かうという状態デザインしている」と小野寺は言う。

建築・内装における環境配慮はその大部分がリサイクル素材の採用など、資材の“置き換え”にとどまり、根本的な取り組みに至っているケースはまだ少ない。小野寺の元に最近は、環境へ配慮した建築設計の依頼が多く入るというが、根本的な発想の転換を提案しても、最終的には“とは言え”で思考停止。表面的な採用に終わることの方が多いという。

プレゼン資料にあった小野寺の言葉が印象的だ。「ファッション業界だけでなく商業界全体が環境負荷などの課題を認識しながらも、今だに新店舗を構える際には大量の廃棄と新素材を使用して煌びやかな世界観を作り込むことが主流になっている。これまでファッションの世界を切り開いてきたアヴァンギャルドなファッションデザイナーたちのように、この新しい『イザ トウキョウ』が次なる商業世界への姿勢を示す一端を担うことを願っている」。

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【2023年上半期ベストコスメ】BLACKPINKらのヘアメイクを担当 イ・ミョンソン氏に聞くベストコスメ

6月19日から順次発表中の「WWDBEAUTY 2023上半期ベストコスメ」。ここでは番外編として、今をときめく韓国のヘアメイクアーティスト、イ・ミョンソン氏の個人的ベストコスメをご紹介。BLACKPINKや少女時代といった韓国アイドルのほか、ヘリ(Hyeri)やゴ・ジュンヒ(Goojoonhee)などの著名俳優のヘアメイクを手がける彼女の一推しアイテムとは?おすすめのジャパンコスメも一挙にチェック。

◼︎イ・ミョンソン氏の個人的ベストコスメ
【ベースメイク部門】

「アワーグラス」“ヴェール ミネラル プライマー”(30mL、9100円)



ベースメイクとして溺愛するのは、クルエルティーフリーブランドの「アワーグラス(HOURGLASS)」のプライマー。ミネラル由来の日焼け止め成分を配合したエアリーなテクスチャーは、どんな肌にもぴったりフィット。「アイドルたちが踊っても化粧崩れしないよう、ベースメイクはまずこのプライマーを顔全体に。その後にファンデーション、パウダーで仕上げれば、汗をかいてもティッシュオフするだけで、美しいベースメイクがキープできます」

【アイメイク部門】

「マジョリカマジョルカ」“シャドーカスタマイズ”(BE286、1g、550円)



涙袋メイクには、全24色展開の「マジョリカ マジョルカ(MAJOLICA MAJORCA)」“シャドーカスタマイズ”から「BE286 ゴージャス姉妹」をセレクト。ややオレンジ味のあるラメ入りベージュで「涙袋に塗れば5歳は若く見える(笑)。韓国でもずっと愛されているジャパニーズコスメです!」とのこと。

【スキンケア部門】

「ラ・プレリー」“SC リキッドリフト” (50mL、9万9500円)



スイスのスキンケアブランド「ラ・プレリー(LA PRAIRIE)」の人気セラムは、キャビアパールとエマルジョンが分離した状態で1つのボトルにIN。ボタンをプッシュするとブレンドされるフレッシュな美容液だ。「大事なイベント前に必須のアイテム。即効性があるので、ステやクリニックなどスキンケア施術を受けに行く時間がない時に役立ちます」。

【ボディーケア部門】

「アベンヌ」“トリクセラNT フルイドミルク”(200mL、3520円、400mL、5280円)



生後1カ月の赤ちゃんにも使える「アベンヌ(AVENE)」の全身保湿用ミルク。自社の独自開発成分のほか、植物由来のエモリエント成分を配合。「ベタつかず、軽やかな使い心地にも関わらず、水分をギュッと肌に閉じ込めてくれるような感覚。季節に関わらずいつも使えるのも気に入っています」。

【美容機器・ツール部門】

「バイ メン」“#21 ファンデーションブラシ”(2400円)、“#24 コンシーラーブラシ(3D)”(1700円)



ミョンソン氏がプロデュースするメイクアップブランド「バイ メン(BY MAENG)」には、全16種のメイクブラシがラインアップ。「ファンデーションブラシは不要なタッチをせず、1回で薄く広げて塗りたい時にぴったり。滲み感がキュートなスマッジリップを作る時は、リップブラシの代わりにコンシーラーブラシで唇の輪郭をぼかすと、どんなルージュでも理想のリップに仕上がります」。

◼︎イ・ミョンソン氏に聞くNEXTトレンドとメイクテク

WWD:メイクのインスピレーションはどのように得ている?

イ・ミョンソン=ヘアメイクアップアーティスト(以下、イ):特別なものはなく、ほとんどの場合が現場で即興的に生まれるアイデアばかりです。BLACKPINKのメンバーのヘアメイクをよく担当しますが、彼女たちはとても挑戦的だと思います。“こうでなければいけない”というものはなく、色々なスタイルを試すことにとても意欲的です。

WWD:「マジョリカ マジョルカ」以外で好きな日本のコスメは?

イ:『シセイドウ(SHISEIDO)』は韓国でも人気で、特に“オーラ デュウ プリズム イルミネーター”というハイライターは肌が華やかに仕上がるので愛用しています。

WWD:NEXTトレンドとして注目している韓国メイクは?

イ:つるんとした光沢感が特徴の“ガラス玉リップ”に注目しています。透明感のあるジューシーなリップアイテムも増えていて、トレンドになりそうな気がします!

WWD:ステージでも崩れないベースメイクテクニックは?

イ:運動するときや、汗をかきやすい夏にはなるべくベースメイクを軽く仕上げるのがおすすめです。まずはたっぷりスキンケアをした後にプライマーを塗り、油水分バランスを整えるのがマストです。肌のキメが整ったあと、ファンデーションは少量で仕上げましょう。
ファンデーションの厚みが苦手な方は、代わりにトーンアップクリームを使用することで華やかに肌のトーンを補正できます。コンシーラーでくまや赤みだけカバーし、パウダーで軽やかに仕上げるのが良いですよ。

INTERVIEW & TRANSLATION:YOUNJAE LEE

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「セックス・アンド・ザ・シティ」続編がスタート スタイリストが語るキャリーやシャーロットのファッション

人気ドラマシリーズ「セックス・アンド・ザ・シティ(SEX AND THE CITY. 以下、SATC)」のリブート版「AND JUST LIKE THAT... シーズン2/ セックス・アンド・ザ・シティ新章(以下、AJLT2)」の配信が22日、U-NEXTでスタートした。

ニューヨークでは公開前の8日から4日間、期間限定で「SATC」の25周年と「AJLT2」の公開を記念して期間限定イベントが開かれた。会期中にはキャリー演じるサラ・ジェシカ・パーカー(Sarah Jessica Parker)、スタイリングを手がけるスタイリストのモリー・ロジャース(Molly rogers)、ダニー・サンティアゴ(Danny Santiago)も来場してトークセッションを行うなど、同番組の25周年記念とシーズン2公開を祝した。

「SATC」や「AJLT」はキャリーをはじめ、キャストのスタイリングにも注目が集まることで知られている。作中で登場したアイテムはすぐに完売するなど、社会的な現象を巻き起こしてきた。「AJLT」では、オリジナルシリーズからスタイリングを手がけていたパトリシア・フィールド(Patricia Field)が、彼女の右腕として活躍したモリーとダニーにスタイリストの仕事をバトンパス。「AJLT2」の公開に際し、モリーとダニーが作中の注目ファッションについて語ってくれた。

「WWDJAPAN」(以下: 「WWD」):今回シーズン2のスタイリングをする際、特に設けたテーマはある?

モリー・ロジャース(以下、モリー):特定のテーマというものはありませんでしたが、常にインスピレーションを感じられるようなものを探していて、キャストたちには今まで誰も見たことがないようなスタイルを持ち込めたらと思っていました。

シーズン1のミスター・ビッグの死を乗り越え、
シーズン2では成長と希望を表現

「WWD」:シーズン1とシーズン2で、スタイリングに違いはある?

モリー:シーズン1は久しぶりにみんなが集まって、キャリー、シャーロット、ミランダに新しい仲間たちが加わりました。そしてミスター・ビッグの死という大きな出来事があって、お葬式があって、久しぶりに皆が集まって嬉しかったのに悲劇が訪れてしまう。でも、人生にはそういう試練があって、キャリーがどう乗り越えていくのかから何かを学んだ人も多かったと思います。シーズン2の脚本を読んだ時、感じたのは成長と希望です。愛する人が亡くなった後の人生もあれば、年をとってからの人生もある。人生には喜びや悲しみがあって、それがスタイリングにも表れていると思います。

WWD:シーズン1ではキャストが大きく変わり、オリジナルシーズンから時代も変わった。パンデミック後の新しい世界で彼女たちを描くために難しかったことは?

モリー:世の中について行くことですね。パンデミック後、私は世界が加速しているように感じました。あらゆるものへのアクセスも無限大になって、世界が小さくなったように感じたんです。今では当たり前になったオンライン・ミーティングも、以前では考えられなかったこと。シーズン1より前、彼女たちはそんな世界にいなかったけれど、彼女たちの住むニューヨークは世界でもっとも刺激的な都市の一つ。常に最新の情報をキャッチする必要があるし、この世界について行けるようにキャストたちを前進させたいと思いました。

ダニー・サンティアゴ(以下、ダニー):パンデミック後、インターネットを使ったナビゲーションに精通するようになり、情報がより早く得られるようになりました。それでも全てが早いので、トレンドを追うことは前よりも難しくなっています。シーズン1ではマスクが登場したり、キャリーがエレベーターのボタンを押す時に「グッチ(GUCCI)」のグローブをしているシーンが象徴的ですね。

WWD:個性的なキャストたちのスタイルはどのように決め、どのようにアップデートしている?

モリー:25年経つと、オリジナルシリーズはアイコニックなものになっています。最初からこの番組を見ている人なら、シャーロットはアッパーイーストサイドに住んでいて、キャリーはダウンタウンにいてミックスしたスタイルが好きで、ミランダは弁護士で、サマンサは男をもて遊んでいたことを知っていると思います。それはパトリシア・フィールドが彼女たちのDNAを強く打ち出したからです。私はオリジナルシーズンからこの番組に参加し、彼女たちのキャラクターを知り尽くしています。彼女たちのキャラクターを理解しているので、時代が変わって、人生が変わっても、常にアップデートできるんです。

ダニー:そうですね。彼女たちにはしっかりとしたDNAがあるので、2023年に連れてきただけという感じです。彼女たちのスタイリングのコンセプトはブレていませんし、今の時代の装いが反映されていると思います。

モリー:ミランダが一番変わりましたね。昔は弁護士で今は学生。ヘアカラーもグレーからレッドになって、彼女の中身も進化したと思います。それでもパトリシアが作ったロードマップがあるので、キャラクターが成長してもそれにふさわしいスタイリングができるんです。みんなが「SATC」を見てくれているので、世界中のどこの店に行っても「このブラウスはシャーロットが好きでしょ?」という感じでお勧めしてくれるんです。

年齢は単なる数字
お手本はカール・ラガーフェルド

WWD:50 代の女性の人生にフォーカスした番組はあまりないが、スタイリングの際に年齢は考慮している?

モリー:年齢は単なる数字に過ぎないと思っています。何歳になってもどのような格好をするのかにルールはなく、自分がその服を着て自信を持てるか、自分がその服を着て外に出た時に気持ちいいのか、そんな服を選ぶことが重要です。ある年齢になると、色々な経験値から自分に何が似合うのかが分かってきますよね。カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)がまさにそう。同じものを着て自信があって、自分に何が似合うか分かっている。ただ、自分に何が似合うか分かっているからこそ、コンフォートゾーンを抜け出すのが難しいということもあるけれど。

WWD:登場人物もダイバーシティになった今の時代を反映するスタイリングとは、どんなもの?

モリー:世界が早くなった今、私たちは常にアンテナを張っています。この番組にふさわしい商品を見逃さないようにしなければいけないので、ダニーはパソコンの前に座ってインターネットで何時間もビンテージの洋服を見て、私は店頭に赴いて生地を触っています。作中で出てくる鳩のバッグは、見つけるのが大変でした。友人が旅先で持っているのをSNSに投稿していて「それどこの⁉︎」ってすぐに連絡をしました。パンデミックが終わってからは、外に出る喜びを表すように大きなシルエットやカラフルな服が増えました。私たちはビンテージから有名デザイナー、新しいブランドのものまで、さまざまな洋服を扱いますが、有難いことにキャストたちは私たちのスタイリングを受け入れてくれます。サラ・ジェシカ・パーカーはどんなスタイリングでもチャレンジしてくれますね。時代的にサステナビリティを意識したり、ビンテージの洋服は積極的に取り入れたりしています。キャリーやシャーロット、ミランダはビンテージ支持者ですが、不動産業のシーマはビンテージを着ないキャラクターです。スタイリングは常に時代を反映していますが、キャラクターそれぞれの個性は尊重しています。

WWD:シーズン2の中で、特にお気に入りのスタイリングは?

モリー:なんだろう?すごくお気に入りのスタイリングがあっても場面に合わす、採用されないことも多いんですよね。

「ヴァレンティノ」のドレスに
「なんて美しいんだろう」

ダニー:私はニコール・アリ・パーカー(Nicole Ari Parker)演じるリサが着用した真っ赤な「ヴァレンティノ(VALENTINO)」のドレスですね。昨年のオートクチュールでパリに行った際に見たドレスですが、赤で作ってもらえないかとお願いしたんです。彼女がそのドレスを着て道を横断するシーンがあるのですが、スペシャルオーダーで裾のトレーンを長くしてもらいました。あのシーンを現場で見た時に、なんて美しいんだろうと思いました。

WWD:オリジナルシーズンはSNSがない時代だったが、今はその影響を強く感じる?

ダニー:素晴らしい衣装で撮影していても、それがSNSによって世界中に広まってしまうと残念なことがあります。私たちはこのことについて、いつも話しています。拡散されることによってジャッジもされてしまうし、秘密や驚きがなくなってしまいます。それは仕方がないことではあるんですが……。

WWD:日本のファンへ見どころを教えてください。

モリー:キャリーが着ている大きめのスエットは、日本の方も好きだと思います。私も大好き。でスタイリングとしてはシンプルなのですが、これは見てほしいですね。

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「セックス・アンド・ザ・シティ」続編がスタート スタイリストが語るキャリーやシャーロットのファッション

人気ドラマシリーズ「セックス・アンド・ザ・シティ(SEX AND THE CITY. 以下、SATC)」のリブート版「AND JUST LIKE THAT... シーズン2/ セックス・アンド・ザ・シティ新章(以下、AJLT2)」の配信が22日、U-NEXTでスタートした。

ニューヨークでは公開前の8日から4日間、期間限定で「SATC」の25周年と「AJLT2」の公開を記念して期間限定イベントが開かれた。会期中にはキャリー演じるサラ・ジェシカ・パーカー(Sarah Jessica Parker)、スタイリングを手がけるスタイリストのモリー・ロジャース(Molly rogers)、ダニー・サンティアゴ(Danny Santiago)も来場してトークセッションを行うなど、同番組の25周年記念とシーズン2公開を祝した。

「SATC」や「AJLT」はキャリーをはじめ、キャストのスタイリングにも注目が集まることで知られている。作中で登場したアイテムはすぐに完売するなど、社会的な現象を巻き起こしてきた。「AJLT」では、オリジナルシリーズからスタイリングを手がけていたパトリシア・フィールド(Patricia Field)が、彼女の右腕として活躍したモリーとダニーにスタイリストの仕事をバトンパス。「AJLT2」の公開に際し、モリーとダニーが作中の注目ファッションについて語ってくれた。

「WWDJAPAN」(以下: 「WWD」):今回シーズン2のスタイリングをする際、特に設けたテーマはある?

モリー・ロジャース(以下、モリー):特定のテーマというものはありませんでしたが、常にインスピレーションを感じられるようなものを探していて、キャストたちには今まで誰も見たことがないようなスタイルを持ち込めたらと思っていました。

シーズン1のミスター・ビッグの死を乗り越え、
シーズン2では成長と希望を表現

「WWD」:シーズン1とシーズン2で、スタイリングに違いはある?

モリー:シーズン1は久しぶりにみんなが集まって、キャリー、シャーロット、ミランダに新しい仲間たちが加わりました。そしてミスター・ビッグの死という大きな出来事があって、お葬式があって、久しぶりに皆が集まって嬉しかったのに悲劇が訪れてしまう。でも、人生にはそういう試練があって、キャリーがどう乗り越えていくのかから何かを学んだ人も多かったと思います。シーズン2の脚本を読んだ時、感じたのは成長と希望です。愛する人が亡くなった後の人生もあれば、年をとってからの人生もある。人生には喜びや悲しみがあって、それがスタイリングにも表れていると思います。

WWD:シーズン1ではキャストが大きく変わり、オリジナルシーズンから時代も変わった。パンデミック後の新しい世界で彼女たちを描くために難しかったことは?

モリー:世の中について行くことですね。パンデミック後、私は世界が加速しているように感じました。あらゆるものへのアクセスも無限大になって、世界が小さくなったように感じたんです。今では当たり前になったオンライン・ミーティングも、以前では考えられなかったこと。シーズン1より前、彼女たちはそんな世界にいなかったけれど、彼女たちの住むニューヨークは世界でもっとも刺激的な都市の一つ。常に最新の情報をキャッチする必要があるし、この世界について行けるようにキャストたちを前進させたいと思いました。

ダニー・サンティアゴ(以下、ダニー):パンデミック後、インターネットを使ったナビゲーションに精通するようになり、情報がより早く得られるようになりました。それでも全てが早いので、トレンドを追うことは前よりも難しくなっています。シーズン1ではマスクが登場したり、キャリーがエレベーターのボタンを押す時に「グッチ(GUCCI)」のグローブをしているシーンが象徴的ですね。

WWD:個性的なキャストたちのスタイルはどのように決め、どのようにアップデートしている?

モリー:25年経つと、オリジナルシリーズはアイコニックなものになっています。最初からこの番組を見ている人なら、シャーロットはアッパーイーストサイドに住んでいて、キャリーはダウンタウンにいてミックスしたスタイルが好きで、ミランダは弁護士で、サマンサは男をもて遊んでいたことを知っていると思います。それはパトリシア・フィールドが彼女たちのDNAを強く打ち出したからです。私はオリジナルシーズンからこの番組に参加し、彼女たちのキャラクターを知り尽くしています。彼女たちのキャラクターを理解しているので、時代が変わって、人生が変わっても、常にアップデートできるんです。

ダニー:そうですね。彼女たちにはしっかりとしたDNAがあるので、2023年に連れてきただけという感じです。彼女たちのスタイリングのコンセプトはブレていませんし、今の時代の装いが反映されていると思います。

モリー:ミランダが一番変わりましたね。昔は弁護士で今は学生。ヘアカラーもグレーからレッドになって、彼女の中身も進化したと思います。それでもパトリシアが作ったロードマップがあるので、キャラクターが成長してもそれにふさわしいスタイリングができるんです。みんなが「SATC」を見てくれているので、世界中のどこの店に行っても「このブラウスはシャーロットが好きでしょ?」という感じでお勧めしてくれるんです。

年齢は単なる数字
お手本はカール・ラガーフェルド

WWD:50 代の女性の人生にフォーカスした番組はあまりないが、スタイリングの際に年齢は考慮している?

モリー:年齢は単なる数字に過ぎないと思っています。何歳になってもどのような格好をするのかにルールはなく、自分がその服を着て自信を持てるか、自分がその服を着て外に出た時に気持ちいいのか、そんな服を選ぶことが重要です。ある年齢になると、色々な経験値から自分に何が似合うのかが分かってきますよね。カール・ラガーフェルド(Karl Lagerfeld)がまさにそう。同じものを着て自信があって、自分に何が似合うか分かっている。ただ、自分に何が似合うか分かっているからこそ、コンフォートゾーンを抜け出すのが難しいということもあるけれど。

WWD:登場人物もダイバーシティになった今の時代を反映するスタイリングとは、どんなもの?

モリー:世界が早くなった今、私たちは常にアンテナを張っています。この番組にふさわしい商品を見逃さないようにしなければいけないので、ダニーはパソコンの前に座ってインターネットで何時間もビンテージの洋服を見て、私は店頭に赴いて生地を触っています。作中で出てくる鳩のバッグは、見つけるのが大変でした。友人が旅先で持っているのをSNSに投稿していて「それどこの⁉︎」ってすぐに連絡をしました。パンデミックが終わってからは、外に出る喜びを表すように大きなシルエットやカラフルな服が増えました。私たちはビンテージから有名デザイナー、新しいブランドのものまで、さまざまな洋服を扱いますが、有難いことにキャストたちは私たちのスタイリングを受け入れてくれます。サラ・ジェシカ・パーカーはどんなスタイリングでもチャレンジしてくれますね。時代的にサステナビリティを意識したり、ビンテージの洋服は積極的に取り入れたりしています。キャリーやシャーロット、ミランダはビンテージ支持者ですが、不動産業のシーマはビンテージを着ないキャラクターです。スタイリングは常に時代を反映していますが、キャラクターそれぞれの個性は尊重しています。

WWD:シーズン2の中で、特にお気に入りのスタイリングは?

モリー:なんだろう?すごくお気に入りのスタイリングがあっても場面に合わす、採用されないことも多いんですよね。

「ヴァレンティノ」のドレスに
「なんて美しいんだろう」

ダニー:私はニコール・アリ・パーカー(Nicole Ari Parker)演じるリサが着用した真っ赤な「ヴァレンティノ(VALENTINO)」のドレスですね。昨年のオートクチュールでパリに行った際に見たドレスですが、赤で作ってもらえないかとお願いしたんです。彼女がそのドレスを着て道を横断するシーンがあるのですが、スペシャルオーダーで裾のトレーンを長くしてもらいました。あのシーンを現場で見た時に、なんて美しいんだろうと思いました。

WWD:オリジナルシーズンはSNSがない時代だったが、今はその影響を強く感じる?

ダニー:素晴らしい衣装で撮影していても、それがSNSによって世界中に広まってしまうと残念なことがあります。私たちはこのことについて、いつも話しています。拡散されることによってジャッジもされてしまうし、秘密や驚きがなくなってしまいます。それは仕方がないことではあるんですが……。

WWD:日本のファンへ見どころを教えてください。

モリー:キャリーが着ている大きめのスエットは、日本の方も好きだと思います。私も大好き。でスタイリングとしてはシンプルなのですが、これは見てほしいですね。

©2023 WarnerMedia Direct, LLC. All Rights Reserved. HBO Max™ is used under license.

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画家ジミー大西がスマホケースをキャンバスに描く 「エジュー」の新井愛子と語るコラボ秘話

今や説明不要のジップバッグ付きスマホケース「エジュー(AJEW)」が、芸人、ジミー大西とコラボした。ジミーといえば、1992年にTV番組の企画をきっかけに絵を描き始め、画家としても国内外で高い評価を得ている。コラボアイテムには、活動初期に描いた代表作「パラダイス」と「ジャングル」を採用。「エジュー」の定番モデルよりも一回り大きいマルチ対応のスマホケースに、色鮮やかなジミー独特の世界観を宿した。気になるのは、ジミーと「エジュー」の出合いだ。数あるスマホケースの中で、なぜジミーが「エジュー」にゾッコンか。「エジュー」の新井愛子デザイナーとジミーに、コラボの裏側を聞いた。

なお、コラボアイテムは26日まで、大阪・阪急うめだ本店9階で開催中の「ジミー大西 画業30年記念作品展『POP OUT』」で販売しており、27日までは、「エジュー」のオンラインストアでも受注生産を受け付ける。

――ジミーさんは普段から「エジュー」を愛用されているそうですね。

ジミー大西(以下、ジミー):去年、僕、銀座三越で個展を開いたんです。そのとき、三越でものすごい可愛らしいスマホケースを見つけたんで(同時期に「エジュー」もポップアップショップを開設)、買ったんですよ。それで、IMALUちゃんが遊びにきたときに、IMALUちゃんにもそのスマホケースをプレゼントしたんです。

新井愛子「エジュー」デザイナー(以下、新井):IMALUさんがストーリーズで、ジミーさんと一緒に店頭で購入されるまでの様子をアップされていて、それを見たときにもう鳥肌が立ちました。ジミーさんは、IMALUさん以外にも毎日いろんな方を連れてきてくださっていたみたいで、これはただ事ではないなと。どうにかお礼を伝えたいと思っていたら、ジミーさんの連絡先を知ってるっていうスタッフが社内にたまたまいて。そういう奇跡があってコラボが始まりました。

ジミー:デザインが可愛いので、自分が見惚れてしまったんです。首から下げられるし、ポケットも付いていて、使い勝手もいいでしょ。それで僕からエジューさんに、スマホケースをデザインしたいって頼んだんですよ。アートの選定から始めて、形になるまで1年ぐらいかかりました。

新井:今回のコラボケースもいろんなサイズのスマホに使ってもらえるように、スマホをクリップで固定するマルチタイプをベースに選んだんですが、ジミーさんはこれを普段使ってくださっているんです。

――ジミーさんは普段、スマホケースのジップポケットに何を入れているんですか?

ジミー:僕は大阪の魂を売ってしまって、「スイカ」を入れています。

絵柄はジミー大西の代表作
サル、トリと相性抜群って?

――スマホケースの絵柄に採用したアートは、「パラダイス」(1998年)と「ジャングルの眼」(1994年)で、いずれもジミーさんの代表作ですね。

ジミー:代表作でいきたかったんです。「パラダイス」は98年にボルネオ島に行って、そのときに実際に見たサルを描きました。僕にとってサルは、ラッキーアニマルなんですね。僕、申年と酉年の人とめちゃくちゃ相性いいんです。

新井:私、酉年です。

ジミー:あら、ほんま!?今回、実はトリを描いたんですけど、ちょっとしっくりこないなと思ってやめたんです。

新井:ピーコックの絵を描き下ろしてくださいましたよね。

ジミー:でもそれが自分では気に入らなかったんですよ。スマホケースにしたときにあんまり良さが出ないなと思って。だからラインアップから外してもらいました。やっぱりしっかり作り込まなきゃあかんなって、すごい反省しています。

――絵を描いて、実際に世に出るのはどれくらいですか?

ジミー:3分の1ぐらいですね。そのときは良くても何年か経つとやめよか、というのもあるし。

新井:テンションが変わってくる感じですか?

ジミー:作品がどんどん生まれてくるんで、この作品はやっぱ要らんとか、そういう気持ちです。手放したくないのは年代ごとにやっぱりあって、今回使ったのは、絶対手放さない作品ですね。

――「ジャングルの眼」についても教えてください。

ジミー:94年に(岡本)太郎先生に見てもらったやつで、ここから画家生活が始まるんですけど、二度と描けない絵なんで、これをエジューさんとのコラボで使えたら最高やなと思って。

新井:本当にありがたいです。見ての通り、スマホケースはキャンバスに比べて小さい面積ですけど、それでも惹きつけられるアートの力をすごく感じます。

ジミー:エジューさんが僕の絵に合わせて、ベースの色を黒とグレーにしてくれたんです。ズシっとした色がバッチリやなと思ってます。

――ジミーさんの絵はどれも色鮮やかですよね。作品の色付けは、どう進めていくんですか?

ジミー:何か一つ使いたい色を決めて、そこから組み立ていく感じです。最初が決まったら早いですよ。ただ、最初に中間色入れたらあかんのです。赤、青、緑とか、直球の色を決めるんですね。スマホケースもすごくたくさん色がありますよね?

新井:そうですね。私も感覚ですけど、トレンドカラーは意識して、それを組み合わせていく感じです。スマホケースは保護することが目的ですが、それだけじゃなくて、ファッションとしても楽しんでもらいたい。だから、トレンド感は出していきたいなって思っています。

ジミー:トレンド=最新ってことやね。

合言葉は
“キャンバスからはみ出せ”

――スマホも毎年進化していきますが、常に最新版を持ちたいと思いますか?

ジミー:そんなこともないですけど、スマホは2年に1回壊れますわ。だからその度にケースを探すじゃないですか。スマホを変えて、ケースを探しているタイミングで、エジューさんと出合って、素敵やからデザインしたいなと思ったんです。運命的やね。

――スマホケースがキャンバスみたいに感じたのかも知れませんね。今、アートで興味あることはなんですか?

ジミー:今、糸を使う技法にチャレンジしてます。絵はいつも吉本興業の社内で描いているんですけど、そのフロアには他の社員さんもいるんですよ。で、僕が絵を描いている斜向かいの女性が綺麗だったんで、冬の寒いときに手袋編んであげよと思ったら、その子に「手袋編む前に絵を描いてください」って言われて。その子が僕の持っていた糸と針をブスッとキャンバスに刺したんです。それが刺しゅうみたいで面白いなと思って、そこから始めました。

――デジタルで絵を描くことはありますか?

ジミー:デジタルは試したけど、自分のもんじゃないですね。味気ない。

新井:今回のコラボのやりとりでジミーさんから「キャンバスからはみ出せ」っていう言葉をいただきました。ジミーさんは、リアルに描くことやリアルに生きることを実現されている方なので、その言葉がすごく響いたというか。そういう意味でもリアルで描くってすごく大事だと思いました。

ジミー:太郎先生からもろうたんですよ。30年以上、絵を描いているといろんな人からいろんな言葉をかけてもらいましてね。言葉がいっぱい頭に入ってるから、「あっ」ていうときに浮かんできます。横尾(忠則)先生から、「絵を商売にしようとしたら大変だ。あくまで趣味で描け」って言われたことがあって、そういう気持ちで絵を描くと不思議とイップスにもなりづらくなりました。

――「エジュー」としての今後の目標を教えてください。

新井:今はまず、ジミーさんとのコラボレーションアイテムを皆さんに知ってもらって、たくさん日常で使っていただきたいです。会社としては、今年から海外展開を強化しています。9月にパリの展示会にも出すので、そこにジミーさんとのアイテムも一緒に並べられたらと思っています。

ジミー:僕はエジューさんでコラボ、もう一回作りたいです。ピンバッジとかどうですか?

新井:嬉しいですね。でも、うちピンバッジ作ったことなくて(笑)。

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ファレル・ウィリアムスに特別インタビュー! 「ルイ・ヴィトン」メンズ初コレクションを前に心境を語る

6月20日21時30分(現地時間)にデビューコレクションを発表する「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)新メンズ・クリエイティブ・ディレクターが、米「WWD」とのインタビューに応じた。2024年春夏パリ・メンズ・ファッション・ウイークで最も注目度が高いといっても過言ではないショーを数日後に控えたファレルは、「ルイ・ヴィトン」本社内にある自身のスタジオで終始リラックスムード。いつも通りの落ち着いた口調で、現職に就任した際の心境やデビューコレクションのショーについて語った。

ファレルは、15日に初のキャンペーンビジュアルを自身のインスタグラム上で公開した。第2子を妊娠中のリアーナ(Rihanna)が、ふっくらとしたお腹を見せるように“ダミエ(Damier)”モチーフのレザーシャツの前を部分的に開けて着用し、両手にはレッド、イエロー、グリーンなど色鮮やかなカラーのバッグを携えている姿が大きな話題となった。リアーナを起用した理由について、「バッグは『ルイ・ヴィトン』はもちろん、私にとっても非常に重要なアイテムなので、いい友人(であるリアーナ)とともに旅を始めたいと思ったんだ」と述べた。

投稿された画像では、ビルボードの前に立つファレルが着用している黒のバイカージャケットとフレアパンツも注目を集めたが、これらは2024年春夏コレクションからの新作で、ブランドのシグネチャーであるエピレザーで仕立てられているという。このインタビューでは、同じジャケットとパンツにスイスの超高級時計「リシャール・ミル(RICHARD MILLE)」による120万ドル(約1億6920万円)の“RM 88 オートマティック トゥールビヨン スマイリー(RM 88 Automatic Tourbillon Smiley)”ウオッチとイエローダイヤモンドのネックレス、「ティファニー(TIFFANY & CO.)」とのコラボによるサングラスを合わせている。

ファレルは、21年11月にがんで急逝したヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)の後任として今年2月に現職に就任。音楽やアート、ファッションなど多彩なフィールドで活躍するとともに、クリエイティブな世界のさまざまな境界を打ち破り、グローバルなカルチャーアイコンとなったそのマルチな経歴は、「ルイ・ヴィトン」と自身のブランド「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」の仕事と並行してDJとして活動したり、アートや家具などのプロジェクトを手掛けたりしてきたヴァージルと重なる。しかし、業界関係者の間では後任候補として多くの若手デザイナーの名前が挙げられていたため、ファレルに決定した際には驚きとともに失望の声もあったという。「確かに私はセントラル・セント・マーチンズ(のような美術学校やデザイン学校)を卒業しているわけではないが、ジュリアード音楽院を卒業したわけでもない。それで、どうなったと思う?」と、13ものグラミー賞を獲得していることを暗に示して問いかけた。「そうした(反対)意見があるのもよく分かるよ。でも、ヴィヴィアン・ウェストウッド(Vivienne Westwood)も安藤忠雄も専門の学校に行っておらず、独学で成功しただろう?私は、自分自身を表現したいだけなんだ」と説明した。

「何より、私は『ルイ・ヴィトン』のファンなんだ」と言うファレルは、ヴァージルの後任にと打診があった際には、「驚いたが、自然な流れだとも感じた」という。「世界最大のラグジュアリーブランドである『ルイ・ヴィトン』には、無限に近いリソースがある。何をしようかと誰でも迷ってしまうぐらいだが、アイデアを出したときに“ノー”と言われることは滅多にない。そして“ノー”である場合には、納得できる合理的で建設的な理由がちゃんとあるし、代わりにさらに大きくて素晴らしいことをする機会を与えてくれる。(天からの)贈り物のようなポジションだ」と思いを述べた。また、ヴァージルについて、「彼のスピリットはまだここに生きているし、彼が築いたものをキャンセルしようとは思わない。むしろ、今後もそれを進化させていきたい」と語った。

インタビュー場所となったデザインスタジオ内にはスピーカーが設置され、音楽制作の機材も置かれている。デビューコレクションでは、ファレルによるオリジナルの楽曲が使われる可能性もゼロではない。「10年以上にわたって作業をしている曲もあるが、どうなるかは当日のお楽しみ」とのことだが、フロントローには大勢のセレブリティーが着席する予定だという。「『ゲーム・オブ・スローンズ(GAME OF THRONES)』になぞらえれば、『ルイ・ヴィトン』は名家中の名家、“ハウス・オブ・ヴィトン”だ。今回のショーは極めて重要なものだが、クリエイティビティーに最高の品質をかけ合わせると、錬金術のように素晴らしい反応が起きる。クレイジーなエネルギーにあふれた、クレイジーなコレクションを披露する、クレイジーなショーになるよ」と自信に満ちた笑顔を見せた。

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ファレル・ウィリアムスに特別インタビュー! 「ルイ・ヴィトン」メンズ初コレクションを前に心境を語る

6月20日21時30分(現地時間)にデビューコレクションを発表する「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)新メンズ・クリエイティブ・ディレクターが、米「WWD」とのインタビューに応じた。2024年春夏パリ・メンズ・ファッション・ウイークで最も注目度が高いといっても過言ではないショーを数日後に控えたファレルは、「ルイ・ヴィトン」本社内にある自身のスタジオで終始リラックスムード。いつも通りの落ち着いた口調で、現職に就任した際の心境やデビューコレクションのショーについて語った。

ファレルは、15日に初のキャンペーンビジュアルを自身のインスタグラム上で公開した。第2子を妊娠中のリアーナ(Rihanna)が、ふっくらとしたお腹を見せるように“ダミエ(Damier)”モチーフのレザーシャツの前を部分的に開けて着用し、両手にはレッド、イエロー、グリーンなど色鮮やかなカラーのバッグを携えている姿が大きな話題となった。リアーナを起用した理由について、「バッグは『ルイ・ヴィトン』はもちろん、私にとっても非常に重要なアイテムなので、いい友人(であるリアーナ)とともに旅を始めたいと思ったんだ」と述べた。

投稿された画像では、ビルボードの前に立つファレルが着用している黒のバイカージャケットとフレアパンツも注目を集めたが、これらは2024年春夏コレクションからの新作で、ブランドのシグネチャーであるエピレザーで仕立てられているという。このインタビューでは、同じジャケットとパンツにスイスの超高級時計「リシャール・ミル(RICHARD MILLE)」による120万ドル(約1億6920万円)の“RM 88 オートマティック トゥールビヨン スマイリー(RM 88 Automatic Tourbillon Smiley)”ウオッチとイエローダイヤモンドのネックレス、「ティファニー(TIFFANY & CO.)」とのコラボによるサングラスを合わせている。

ファレルは、21年11月にがんで急逝したヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)の後任として今年2月に現職に就任。音楽やアート、ファッションなど多彩なフィールドで活躍するとともに、クリエイティブな世界のさまざまな境界を打ち破り、グローバルなカルチャーアイコンとなったそのマルチな経歴は、「ルイ・ヴィトン」と自身のブランド「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」の仕事と並行してDJとして活動したり、アートや家具などのプロジェクトを手掛けたりしてきたヴァージルと重なる。しかし、業界関係者の間では後任候補として多くの若手デザイナーの名前が挙げられていたため、ファレルに決定した際には驚きとともに失望の声もあったという。「確かに私はセントラル・セント・マーチンズ(のような美術学校やデザイン学校)を卒業しているわけではないが、ジュリアード音楽院を卒業したわけでもない。それで、どうなったと思う?」と、13ものグラミー賞を獲得していることを暗に示して問いかけた。「そうした(反対)意見があるのもよく分かるよ。でも、ヴィヴィアン・ウェストウッド(Vivienne Westwood)も安藤忠雄も専門の学校に行っておらず、独学で成功しただろう?私は、自分自身を表現したいだけなんだ」と説明した。

「何より、私は『ルイ・ヴィトン』のファンなんだ」と言うファレルは、ヴァージルの後任にと打診があった際には、「驚いたが、自然な流れだとも感じた」という。「世界最大のラグジュアリーブランドである『ルイ・ヴィトン』には、無限に近いリソースがある。何をしようかと誰でも迷ってしまうぐらいだが、アイデアを出したときに“ノー”と言われることは滅多にない。そして“ノー”である場合には、納得できる合理的で建設的な理由がちゃんとあるし、代わりにさらに大きくて素晴らしいことをする機会を与えてくれる。(天からの)贈り物のようなポジションだ」と思いを述べた。また、ヴァージルについて、「彼のスピリットはまだここに生きているし、彼が築いたものをキャンセルしようとは思わない。むしろ、今後もそれを進化させていきたい」と語った。

インタビュー場所となったデザインスタジオ内にはスピーカーが設置され、音楽制作の機材も置かれている。デビューコレクションでは、ファレルによるオリジナルの楽曲が使われる可能性もゼロではない。「10年以上にわたって作業をしている曲もあるが、どうなるかは当日のお楽しみ」とのことだが、フロントローには大勢のセレブリティーが着席する予定だという。「『ゲーム・オブ・スローンズ(GAME OF THRONES)』になぞらえれば、『ルイ・ヴィトン』は名家中の名家、“ハウス・オブ・ヴィトン”だ。今回のショーは極めて重要なものだが、クリエイティビティーに最高の品質をかけ合わせると、錬金術のように素晴らしい反応が起きる。クレイジーなエネルギーにあふれた、クレイジーなコレクションを披露する、クレイジーなショーになるよ」と自信に満ちた笑顔を見せた。

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1位は、「ルイ・ヴィトン」、BTSのJ-HOPEを起用した初のキャンペーンを発表| 週間アクセスランキング TOP10(6月8〜14日)

1位は、「ルイ・ヴィトン」、BTSのJ-HOPEを起用した初のキャンペーンを発表| 週間アクセスランキング TOP10(6月8〜14日)

「WWDJAPAN」 ウイークリートップ10

1週間でアクセス数の多かった「WWDJAPAN」の記事をランキング形式で毎週金曜日にお届け。
今回は、6月8日(木)〜14日(水)に配信した記事のトップ10を紹介します。


- 1位 -
画像追加:「ルイ・ヴィトン」、BTSのJ-HOPEを起用した初のキャンペーンを発表

06月14日公開 / 文・MILES SOCHA

 「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」は6月14日、BTSのJ-HOPE(ジェイホープ)を起用した初のキャンペーンを発表した。J-HOPEは2月に同ブランドのアンバサダーに就任。今回のキャンペーンのキービジュアルには、アイコニックなバッグ“キーポル(Keepall)”を手に登場している。

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- 2位 -
【2023年水着】“朝から着たくなる水着” 「スピード」が環境配慮型素材の新カテゴリー「マイ コンフィ」始動

06月08日公開 / 文・WWD STAFF

 ゴールドウイン(GOLDWIN)のスイムブランド「スピード(SPEEDO)」は6月9日、新カテゴリー「マイ コンフィ(My Comfy)」をスタートする。テーマは“朝から着たくなる水着”。プールのあるライフスタイルを軸に、日常からスイムシーンまで、快適さや着心地を追求した、インナーなしで着る水陸両用のアイテムをそろえる。ラインアップは、レギンスやトップス、Tシャツなど全10アイテム。同日に、「スピード」のオンラインストアや取扱店舗で発売する予定だ。

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- 3位 -
【ユニクロ2023年秋冬 前編】 ヒット中の“ラウンドミニショルダーバッグ”に続く本命はコレ

06月14日公開 / 文・五十君 花実

 次なるヒットバッグはどれ?––––“ラウンドミニショルダーバッグ”(1500円)がグローバルで売れている「ユニクロ(UNIQLO)」が、2023-24年秋冬物でもバッグの企画に力を入れている。

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- 4位 -
「ニューバランス」がスニーカー“990”シリーズとアパレルのコレクションを発売

06月08日公開 / 文・WWD STAFF

 「ニューバランス(NEW BALANCE)」は6月16日、“Made in USA Season 3コレクション”のファーストドロップとして、スニーカー“990v6クイックストライク”の限定版と、アパレルアイテムを発売する。またその後期間を空け、パープルトーンの“990v4”と“998”を発売する。「ニューバランス」一部店舗および公式オンライン、ティーハウスニューバランス(T-HOUSE New Balance)、その他一部のニューバランス取り扱い店舗で販売する。

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- 5位 -
広末涼子がW不倫を認め、エドウインや日本和装が広告を削除

06月14日公開 / 文・三澤 和也

 俳優・広末涼子がレストラン「シオ」の鳥羽周作オーナーシェフとの不倫関係を認めたことを受け、エドウインや日本和装は広告を削除した。 

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- 6位 -
「ロクシタン」×「ピーナッツ」スヌーピーのコラボ第4弾が登場 レフィルボトル&リユーサブルバッグの特製キット

06月14日公開 / 文・WWD STAFF

 「ロクシタン(L'OCCITANE)」は7月12日、「ピーナッツ(PEANUTS)」とのコラボレーションアイテム第4弾を全国のロクシタン店舗と公式サイトで数量限定で発売する。6月14日から予約を受け付ける。ヘアケアのキット3種とシャワージェルのキット2種で、人気キャラクター・スヌーピーが描かれた限定デザインのレフィルボトル、リユーサブルバッグをセットにしている。

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- 7位 -
【2023年夏コスメ】「ボビイ ブラウン」が限定のアイ&チークパレットを発売 幻想的なピンクのパッケージ

06月13日公開 / 文・WWD STAFF

 「ボビイ ブラウン(BOBBI BROWN)」は7月1日、2023年夏コレクションを数量限定で発売する。限定のアイ&チークパレットや単色アイシャドウなどの全5アイテムで、6月30日から公式オンラインストアおよびアットコスメショッピングで先行販売を行う。

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- 8位 -
SixTONESが「リーボック」とコラボ メンバーのこだわりが詰まったファン必見の一足

06月14日公開 / 文・WWD STAFF

 スポーツブランド「リーボック(REEBOK)」は、アイドルグループのSixTONESのコラボモデルを6月14日に発売する。公式オンラインストアで先着順の販売となる(各1万6900円)。ブラックとクリームの2色展開。

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- 9位 -
「大切なことはすべて販売員時代に学んだ」 日本初の本格的なD2Cブランドを創業 エイミーイストワール 梯真奈美

06月13日公開 / 文・横山 泰明

 「WWDJAPAN」は4月3日号で、ファッション&ビューティ業界の新入社員や若手社員に向けて、「プロになろうーー知っておくべき業界の今」と題した特集を掲載した。それと連動し「WWDJAPAN.com」では、業界で活躍するアラフォー世代以下のリーダーたちに、自身が若手だったころに心掛けていたことや、それが今の仕事にどうつながっているかを取材。連載形式でお届けする。特別編として、2016年にウイメンズD2Cブランドの先駆けとして「エイミーイストワール」をスタートすると、若い女性から圧倒的な支持を得て不動の人気ブランドとしての地位を確立。その後も次々と新ブランドをスタート、現在は「エイミーイストワール(eimy istoire)」に加え、「アイアム(Aíam)」「ジョゼムーン(JOSE MOON)」の3ブランドのクリエイティブディレクターを務める、MANAMIこと梯真奈美さんのインタビューをお届けする。

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- 10位 -
松山ケンイチと小雪夫妻による獣皮を利活用するブランド「モミジ」 和光で2度目のポップアップ

06月12日公開 / 文・WWD STAFF

 俳優の松山ケンイチと小雪による獣⽪の利活用を目的としたライフスタイルブランド「モミジ(MOMIJI)」が6月15~28日、銀座・和光本店4階で期間限定ショップを開く。鹿の別称を名付けた「モミジ」は、2022年3月にスタートした資源をアップサイクルするプロジェクト。立ち上げのきっかけは、松山が里山に移住したこと。人が自然環境へ影響を与え続けている一方で、気候変動などにより個体数が増えた野生動物も生態多様性に影響を与えているということに気付き、捕獲された野生動物の一部は食肉になるものの、皮は廃棄されてしまうという現実を目の当たりにし、プロジェクトを発起したという。獣皮の他にも廃棄される資源を利活用する活動に取り組んでいる。

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川久保玲が手掛けた「ギャルソン」の名作を知る ブランド愛に溢れるアーカイブ ストア店長が解説

アーカイブ ストアは7月2日まで「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」の名作を展示・販売を行うイベント「コム デ ギャルソン: ザ アーカイブス」を開催している。今年、設立50周年を迎えた「コム デ ギャルソン」の1990年~2010年代の商品を中心にそろえる。美術館のような展示スペースは、象徴的な3色“黒”“白”“赤”で構成し、「コム デ ギャルソン」とは改めてなんだろう?を考えるきっかけになるアイテムを並べる。

今回「WWDJAPAN」映像チームは、「コム デ ギャルソン」愛の強い鈴木店長と一緒に店舗内を回遊し、アーカイブの解説してもらい、「コム デ ギャルソン」と川久保玲デザイナーにまつわる裏話などを聞いた。

動画内で鈴木達之アーカイブ ストア店長は「『コム デ ギャルソン』のアーカイブを通じて、素晴らしさや面白さを未来に継承していきたい。過去を知ることで今のファッションはもっと面白くなる」と語る。

アーカイブ ストアは未来ガ驚喜研究所が運営するデザイナーたちが残した過去の名作を扱う美術館型のセレクトショップ。これまでにマルタン・マルジェラ(Martin Margiela)のアーティザナルラインやフィービー・ファイロ(Phoebe Philo)が手掛けていた「セリーヌ(CELINE)」などを展示・販売するイベントを開催してきた。

◾︎コム デ ギャルソン: ザ アーカイブス
日程: 6月8日〜7月2日
場所: アーカイブ ストア
住所: 東京都渋谷区神南1-12-16 和光ビル地下1階

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【2023年キャンプ】忖度なしで使えるウエア&グッズはこれだ! アウトドア系PR会社社長2人が選ぶベスト8

山田昭一/ピープルショールーム代表 PROFILE

(左)1978年11月8日生まれ、埼玉県出身。ジャーナル スタンダードや「スノーピーク」を経て、2018年に独立。21年にピープルショールームを設立。被写体としてもたびたびメディアに登場し、1年の3分の1はアウトドアで過ごす。キャンプの必携グッズはテンカラ(和式の毛針釣り)竿で、渓流釣りを楽しむ

辻井国裕/オフィス ボルシチ代表 PROFILE

1976年7月7日生まれ、愛知県出身。セレクトショップで販売員などを経験後、2004年にオフィス ボルシチを立ち上げる。アウトドア系を中心に15ブランドをハンドリング中だ。プライベートでは、UL(ウルトラライト[装備を軽量化する])自転車キャンプやパックラフトを実践する PHOTO : NORIHITO SUZUKI

夏を間近に、「キャンプに挑戦してみたい!」と思っている人も多いだろう。そこでアウトドアブランドを多数ハンドリングし、プライベートでもキャンプが趣味のPR会社2社の社長に登場いただいた。

こだわったのは1点。“取材あるある”で、この手の依頼をするとクライアントの商品が出てきてしまうのが常だが、今回は「それ以外のブランドで!」と強くお願いしたことだ。泣く泣く紹介してもらった、つまりは“本当に使える(2人が実際に使っている)ウエア&ギア”がそろった。

4アイテムとも1万円台、キャンプ初心者も手を出しやすそうな辻井セレクト

WWD:数多くのアウトドアウエア&ギアを所有しているだろう2人に、4点ずつ厳選して持参いただきました。まずは、辻井国裕オフィス ボルシチ代表の服から紹介してもらえますか?

辻井国裕オフィス ボルシチ代表(以下、辻井):英国のアウトドアブランド「カリマー(KARRIMOR)」のレインポンチョです。3年ほど前に1万円強で購入しました。雨が降っていても気分があがるようにネオンイエローを選びました。これには、山で何かあったときに発見されやすいという実用の意味もあります。ポンチョって袖なしのデザインが基本で、でもそれだと作業中に手がびしょびしょになってしまうんです……。だから、これを見つけたときは即決でした。さらに面ファスナーで袖口も絞れて、雨風を防げます。加えて、ロング(膝下)丈なんですが、小さく畳めるんですよ。

WWD:ナイロンベストはどこのもの?

辻井:カナダ発のアウトドアブランド「アークテリクス(ARC'TERYX)」です。なんと言っても薄さ・軽さが特徴で、たった85gなんです。本来はトレーニングウエアのようですが、僕は夏場の寒さ対策で携行しています。パッカブル仕様なので、バッグやジャケットのポケットに忍ばせています。“保険”というか、お守りというか。山は朝・晩、冷え込みますからね。はっ水・速乾性があって、Tシャツの上に羽織るだけでだいぶ変わり(温かくなり)ます。

山田昭一ピープルショールーム代表(以下、山田):「アークテリクス」、憧れのブランドですよね。でも、ちょっと高くてなかなか手が出ないです……。それとシャープなデザインが多い印象で、体格の良い僕はそこでも躊躇しちゃってます……。

辻井:あ、でも、このベストは約1万円でしたよ。

山田:それはお買い得ですね!というか、辻井さんが買い物上手なのか(笑)。

WWD:シューズもお持ちいただきましたね。

辻井:5月に購入したばかりの「ナイキ(NIKE)」のアウトドアライン“ナイキ ACG”です。1万6000円ほどでした。僕はパックラフト(ゴムボートによる川下り)がキャンプの楽しみなんですが、このシューズはグリップ力がすごいんです。オールホワイトで洒落てるから、雨の日の街履きにも良さそうですよね。モノトーンコーデとかで。

WWD:最後はギアです。

辻井:ギアは本当にたくさんあって悩んだんですが、日本ブランド「ソト(SOTO)」のスタッキング鍋を選びました。価格は約1万5000円で、もう7年くらい使っています。ステンレス製で炒め物もできて、ふたが皿にもなるんです。つまり、これさえあればアウトドアでの調理には困らないのですが、重いのがタマニキズ……。

山田:僕もまったく同じものを持っています。ダッチオーブンみたいにも使えるので、“丸鶏とゴロゴロ野菜のハーブ蒸し”なんかを作っています。

WWD:以前、こちらの動画で紹介してもらったメニューですね。おいしかったです!

山田:ありがとうございます。

WWD:山田さんの言う通り、辻井さんのリコメンドアイテムはどれも1万円台で、キャンプ初心者も手を出しやすそうですね。

レア古着から大人気ブランドまで、山田セレクトに共通するのは“楽しむ”ための道具感

WWD:続いては山田さんの厳選4アイテムです。

山田:1着目は、「パタゴニア(PATAGONIA)」の前身ブランド「シュイナード・イクイップメント(CHOUINARD EQUIPMENT)」のアロハシャツです。

WWD:キャンプにハワイアンシャツ!?

山田:はい、ぜんぜん着て行っちゃいます(笑)。

辻井:実は、自転車キャンプの人もシャツを着ていますよ。

山田、WWD:へー、それは意外ですね。

辻井:着脱が簡単で、体温調整しやすいからだと思います。それに「WWDJAPAN」でも特集していましたが、日本のアウトドアブランド「山と道」の影響もあって、トレンドとも言えるのかと。フィールドでもSNSでも、シャツを着ている自転車キャンパーを多く見かけます。

WWD:現場のリアルな声ですね。勉強になります。ちなみに山田さん、ハワイアンシャツの下は?

山田:「パタゴニア」の“バギーズ”(ショーツ)です。「パタゴニア」×「パタゴニア」ですね(笑)。あ、このシャツ、クライミングギア柄なので、その意味でもアウトドア物と言って良いかと。辻井さんも言っていましたが、キャンプのときって、普段街で着ないような色・柄を着れちゃうんですよね。その方がテンションがあがるというか。それに辻井さんのポンチョほどではないですが、赤もハザードカラーなので実用性もあります。

WWD:古着で購入?

山田:ええ、東京・町田のアウトドア専門古着店バックストリートで2万円ほどでした。1980年代の物だと思います。

WWD:続いてはアウターですね。

山田:「サウス2ウエスト8(SOUTH2 WEST8)」のテンカラジャケットです。

WWD:テンカラとは?

山田:和式の毛針釣りのことです。テンカラは川に入って行うので、ジャケットの着丈が短くなっています。ロッド(竿)ホルダーを設けているのも特徴ですね。防水素材なので、レインウエアとしても使えます。「サウス2ウエスト8」はテンカラに特化しているので機能性も十分で、何より格好良いですよね。シーズンごとに買い足して、5枚を所有しています。価格は各6万円ほど。辻井さん、釣りは?

辻井:やらないですね……。僕にとって川は、もっぱら“下る”ものです(笑)。

山田:キャップは、釣り具ブランド「ダイワ(DAIWA)」のアパレルライン“ダイワ ピア39(DAIWA PIER39)”です。素材にははっ水性があって、裏地がメッシュで夏向きです。青のパイピングがかわいいですよね。

WWD:キャップはよくかぶります?

山田:はい、30個ほどを所有しています。これは、くしゅくしゅっとポケットに突っ込める点も気に入っています。

辻井:帽子はキャンプの必需品ですね。日焼けをすると、体力も奪われてしまいますので。

山田:ギアは僕も本当に悩んで、「WWDJAPAN」の読者にも人気がありそうな「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」のチェアにしました。価格は2万4000円ほどでした。クッション材入りの背もたれが高くて、高身長の僕も安心なんです。コーデュラナイロン製だから丈夫で、長く座っていても疲れないんです。2脚あって、妻と使っています。

WWD:「ザ・ノース・フェイス」はチェア以外にも?

山田:シェルジェケットやパンツを愛用しています。

WWD:辻井さんは?

辻井:ビームス別注の“ヌプシブーツ”やダウンマフラーを持っています。「ザ・ノース・フェイス」は街でも大人気なので、バッティングしないよう“変化球的小物”を選んでいます(笑)。

キャンプ上級者からビギナーにアドバイス、「服もギアも家にある物でいい!」

WWD:最後に2人から、この記事を見て「キャンプ、やってみようかな?」と背中を押されたビギナーにひと言アドバイスをお願いします。

辻井:あれこれ紹介しておいてなんなんですが、極端な話、服は普段着で良いし、ギアも手持ちの物で賄えると思います。最初から全部そろえる必要はないんです。僕は、今回紹介した「ソト」のスタッキング鍋を家でも使っています。

山田:まったくもって、そう思います!敷居を高く感じてしまって、“あれもなきゃダメ、これもなきゃダメ”と最初の一歩が踏み出せなくなるのは残念過ぎます。服で言えば、「ユニクロ(UNIQLO)」や「ワークマン(WORKMAN)」にもキャンプで使える商品がたくさんあります。ちなみに、僕は夏場に“エアリズム”が手放せません。ギアは「無印良品」がおすすめです。

辻井:服で大事なのは雨対策でしょうか。山の天気は変わりやすく、体が濡れると体力を消耗してしまうので。

山田:生地の乾きやすさは、ウエア選びの基準にして良いでしょうね。雨具は防寒具にもなりますし。

WWD:もう十分に服もギアも持っている2人ですが、今夏に狙っている商品はありますか?

辻井:日本のアウトドアブランド「ネイタルデザイン(NATAL DESIGN)」が発売している、スエット地に総柄プリントのショーツに触手が伸びています。ショーツは30着ほど持っているんですが、何枚でも欲しくて(笑)。

山田:僕はパックラフトグッズですね。今日、辻井さんから話を聞いて、すっかりやってみたくなっちゃいました。今度、レクチャーしてください。

辻井:なかなかに“沼”ですよ(笑)。日本市場にはまだ服もギアも少なくて、海外からの取り寄せが基本になります。ちなみに、国内のパックラフト人口は800人ほどとか。

山田:では、僕が801人目になります!

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【2023年キャンプ】忖度なしで使えるウエア&グッズはこれだ! アウトドア系PR会社社長2人が選ぶベスト8

山田昭一/ピープルショールーム代表 PROFILE

(左)1978年11月8日生まれ、埼玉県出身。ジャーナル スタンダードや「スノーピーク」を経て、2018年に独立。21年にピープルショールームを設立。被写体としてもたびたびメディアに登場し、1年の3分の1はアウトドアで過ごす。キャンプの必携グッズはテンカラ(和式の毛針釣り)竿で、渓流釣りを楽しむ

辻井国裕/オフィス ボルシチ代表 PROFILE

1976年7月7日生まれ、愛知県出身。セレクトショップで販売員などを経験後、2004年にオフィス ボルシチを立ち上げる。アウトドア系を中心に15ブランドをハンドリング中だ。プライベートでは、UL(ウルトラライト[装備を軽量化する])自転車キャンプやパックラフトを実践する PHOTO : NORIHITO SUZUKI

夏を間近に、「キャンプに挑戦してみたい!」と思っている人も多いだろう。そこでアウトドアブランドを多数ハンドリングし、プライベートでもキャンプが趣味のPR会社2社の社長に登場いただいた。

こだわったのは1点。“取材あるある”で、この手の依頼をするとクライアントの商品が出てきてしまうのが常だが、今回は「それ以外のブランドで!」と強くお願いしたことだ。泣く泣く紹介してもらった、つまりは“本当に使える(2人が実際に使っている)ウエア&ギア”がそろった。

4アイテムとも1万円台、キャンプ初心者も手を出しやすそうな辻井セレクト

WWD:数多くのアウトドアウエア&ギアを所有しているだろう2人に、4点ずつ厳選して持参いただきました。まずは、辻井国裕オフィス ボルシチ代表の服から紹介してもらえますか?

辻井国裕オフィス ボルシチ代表(以下、辻井):英国のアウトドアブランド「カリマー(KARRIMOR)」のレインポンチョです。3年ほど前に1万円強で購入しました。雨が降っていても気分があがるようにネオンイエローを選びました。これには、山で何かあったときに発見されやすいという実用の意味もあります。ポンチョって袖なしのデザインが基本で、でもそれだと作業中に手がびしょびしょになってしまうんです……。だから、これを見つけたときは即決でした。さらに面ファスナーで袖口も絞れて、雨風を防げます。加えて、ロング(膝下)丈なんですが、小さく畳めるんですよ。

WWD:ナイロンベストはどこのもの?

辻井:カナダ発のアウトドアブランド「アークテリクス(ARC'TERYX)」です。なんと言っても薄さ・軽さが特徴で、たった85gなんです。本来はトレーニングウエアのようですが、僕は夏場の寒さ対策で携行しています。パッカブル仕様なので、バッグやジャケットのポケットに忍ばせています。“保険”というか、お守りというか。山は朝・晩、冷え込みますからね。はっ水・速乾性があって、Tシャツの上に羽織るだけでだいぶ変わり(温かくなり)ます。

山田昭一ピープルショールーム代表(以下、山田):「アークテリクス」、憧れのブランドですよね。でも、ちょっと高くてなかなか手が出ないです……。それとシャープなデザインが多い印象で、体格の良い僕はそこでも躊躇しちゃってます……。

辻井:あ、でも、このベストは約1万円でしたよ。

山田:それはお買い得ですね!というか、辻井さんが買い物上手なのか(笑)。

WWD:シューズもお持ちいただきましたね。

辻井:5月に購入したばかりの「ナイキ(NIKE)」のアウトドアライン“ナイキ ACG”です。1万6000円ほどでした。僕はパックラフト(ゴムボートによる川下り)がキャンプの楽しみなんですが、このシューズはグリップ力がすごいんです。オールホワイトで洒落てるから、雨の日の街履きにも良さそうですよね。モノトーンコーデとかで。

WWD:最後はギアです。

辻井:ギアは本当にたくさんあって悩んだんですが、日本ブランド「ソト(SOTO)」のスタッキング鍋を選びました。価格は約1万5000円で、もう7年くらい使っています。ステンレス製で炒め物もできて、ふたが皿にもなるんです。つまり、これさえあればアウトドアでの調理には困らないのですが、重いのがタマニキズ……。

山田:僕もまったく同じものを持っています。ダッチオーブンみたいにも使えるので、“丸鶏とゴロゴロ野菜のハーブ蒸し”なんかを作っています。

WWD:以前、こちらの動画で紹介してもらったメニューですね。おいしかったです!

山田:ありがとうございます。

WWD:山田さんの言う通り、辻井さんのリコメンドアイテムはどれも1万円台で、キャンプ初心者も手を出しやすそうですね。

レア古着から大人気ブランドまで、山田セレクトに共通するのは“楽しむ”ための道具感

WWD:続いては山田さんの厳選4アイテムです。

山田:1着目は、「パタゴニア(PATAGONIA)」の前身ブランド「シュイナード・イクイップメント(CHOUINARD EQUIPMENT)」のアロハシャツです。

WWD:キャンプにハワイアンシャツ!?

山田:はい、ぜんぜん着て行っちゃいます(笑)。

辻井:実は、自転車キャンプの人もシャツを着ていますよ。

山田、WWD:へー、それは意外ですね。

辻井:着脱が簡単で、体温調整しやすいからだと思います。それに「WWDJAPAN」でも特集していましたが、日本のアウトドアブランド「山と道」の影響もあって、トレンドとも言えるのかと。フィールドでもSNSでも、シャツを着ている自転車キャンパーを多く見かけます。

WWD:現場のリアルな声ですね。勉強になります。ちなみに山田さん、ハワイアンシャツの下は?

山田:「パタゴニア」の“バギーズ”(ショーツ)です。「パタゴニア」×「パタゴニア」ですね(笑)。あ、このシャツ、クライミングギア柄なので、その意味でもアウトドア物と言って良いかと。辻井さんも言っていましたが、キャンプのときって、普段街で着ないような色・柄を着れちゃうんですよね。その方がテンションがあがるというか。それに辻井さんのポンチョほどではないですが、赤もハザードカラーなので実用性もあります。

WWD:古着で購入?

山田:ええ、東京・町田のアウトドア専門古着店バックストリートで2万円ほどでした。1980年代の物だと思います。

WWD:続いてはアウターですね。

山田:「サウス2ウエスト8(SOUTH2 WEST8)」のテンカラジャケットです。

WWD:テンカラとは?

山田:和式の毛針釣りのことです。テンカラは川に入って行うので、ジャケットの着丈が短くなっています。ロッド(竿)ホルダーを設けているのも特徴ですね。防水素材なので、レインウエアとしても使えます。「サウス2ウエスト8」はテンカラに特化しているので機能性も十分で、何より格好良いですよね。シーズンごとに買い足して、5枚を所有しています。価格は各6万円ほど。辻井さん、釣りは?

辻井:やらないですね……。僕にとって川は、もっぱら“下る”ものです(笑)。

山田:キャップは、釣り具ブランド「ダイワ(DAIWA)」のアパレルライン“ダイワ ピア39(DAIWA PIER39)”です。素材にははっ水性があって、裏地がメッシュで夏向きです。青のパイピングがかわいいですよね。

WWD:キャップはよくかぶります?

山田:はい、30個ほどを所有しています。これは、くしゅくしゅっとポケットに突っ込める点も気に入っています。

辻井:帽子はキャンプの必需品ですね。日焼けをすると、体力も奪われてしまいますので。

山田:ギアは僕も本当に悩んで、「WWDJAPAN」の読者にも人気がありそうな「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」のチェアにしました。価格は2万4000円ほどでした。クッション材入りの背もたれが高くて、高身長の僕も安心なんです。コーデュラナイロン製だから丈夫で、長く座っていても疲れないんです。2脚あって、妻と使っています。

WWD:「ザ・ノース・フェイス」はチェア以外にも?

山田:シェルジェケットやパンツを愛用しています。

WWD:辻井さんは?

辻井:ビームス別注の“ヌプシブーツ”やダウンマフラーを持っています。「ザ・ノース・フェイス」は街でも大人気なので、バッティングしないよう“変化球的小物”を選んでいます(笑)。

キャンプ上級者からビギナーにアドバイス、「服もギアも家にある物でいい!」

WWD:最後に2人から、この記事を見て「キャンプ、やってみようかな?」と背中を押されたビギナーにひと言アドバイスをお願いします。

辻井:あれこれ紹介しておいてなんなんですが、極端な話、服は普段着で良いし、ギアも手持ちの物で賄えると思います。最初から全部そろえる必要はないんです。僕は、今回紹介した「ソト」のスタッキング鍋を家でも使っています。

山田:まったくもって、そう思います!敷居を高く感じてしまって、“あれもなきゃダメ、これもなきゃダメ”と最初の一歩が踏み出せなくなるのは残念過ぎます。服で言えば、「ユニクロ(UNIQLO)」や「ワークマン(WORKMAN)」にもキャンプで使える商品がたくさんあります。ちなみに、僕は夏場に“エアリズム”が手放せません。ギアは「無印良品」がおすすめです。

辻井:服で大事なのは雨対策でしょうか。山の天気は変わりやすく、体が濡れると体力を消耗してしまうので。

山田:生地の乾きやすさは、ウエア選びの基準にして良いでしょうね。雨具は防寒具にもなりますし。

WWD:もう十分に服もギアも持っている2人ですが、今夏に狙っている商品はありますか?

辻井:日本のアウトドアブランド「ネイタルデザイン(NATAL DESIGN)」が発売している、スエット地に総柄プリントのショーツに触手が伸びています。ショーツは30着ほど持っているんですが、何枚でも欲しくて(笑)。

山田:僕はパックラフトグッズですね。今日、辻井さんから話を聞いて、すっかりやってみたくなっちゃいました。今度、レクチャーしてください。

辻井:なかなかに“沼”ですよ(笑)。日本市場にはまだ服もギアも少なくて、海外からの取り寄せが基本になります。ちなみに、国内のパックラフト人口は800人ほどとか。

山田:では、僕が801人目になります!

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販売開始30分で売上500万円 ビームス出身の三條場夏海による新ブランド「ガジェス」ができるまで

今回密着したのは、4月に自身のブランド「ガジェス(GAJESS)」をローンチした三條場夏海。プレスになりたいという夢を叶えるためにビームスに新卒入社し、販売員、プレス、ブランドディレクタ「ファッション業界人辞典」は、ファッション業界で働く人にフォーカスし、その仕事に密着リポートします。業界のさまざまな職業を紹介しながら、「実際、どんな仕事をしているの?」「どうしたらその職に就けるのか?」などの疑問を解決。これからの若者たちの指針になるような情報や、業界人が気になるあの人の素顔や過去を、日々の仕事姿や過去の映像・写真を通して発信します。

今回密着したのは、4月に自身のブランド「ガジェス(GAJESS)」を立ち上げた三條場夏海。プレスになりたいという夢を叶えるためにビームスに新卒入社し、販売員、プレス、ブランドディレクターを経験してきた。2022年11月に独立し、自身のブランド「ガジェス」を始動。第一弾はオンラインのみで取り扱い、販売開始30分で売上500万円を達成した。

同ブランドは、要素を削ぎ落とすことで洗練したファッションを提案する。三條場は「スタイリングの足し算が上手なビームス社員が多い中で、シンプルなファッションの自分に不安に感じていたが、上司の一言で引き算のスタイリングが自分の強みだと感じた」と自身のファッションについての転換を語った

今回「WWDJAPAN」映像チームは「ガジェス」の立ち上げまでに密着しながら、新卒3年目でプレスに就き、社内コンペで優勝し、ビームス新ブランド「ジョエブ(JOIEVE)」のディレクターになった経歴を持つ三條場さんに、夢を実現させる秘訣を聞いた。

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夏木マリが「印象派NEO」で「ロエベ」のメンズコート着用 「コレクションを見る中で着たいと思った」

夏木マリは、自身が1993年から続ける“コンセプチュアルシアターシリーズ”「印象派NEO」の最新作「印象派NEO vol.4 The Miracle of Pinocchio(ピノキオの偉烈)」を上演中だ。同公演では夏木の着用衣装を、「ロエベ(LOEWE)」が提供している。プリンシパルには妊娠を公表している土屋太鳳を迎え、6月は国内4カ所12公演とルーマニアのシビウ国際演劇祭で公演を行う。

東京公演の初日である6月14日、夏木は報道関係者向けのメディアプレビューに登場し、フォトコールと取材に応えた。

夏木は2021年秋冬シーズン以来、たびたび「ロエベ」のキャンペーンに登場しており、継続的なパートナー関係にある。この公演で提供されたのは23年秋冬コレクションのカシミヤのプルオーバーコートだ。「今年、私は芸能生活50周年、『ロエベ』も日本上陸50周年ということで話が盛り上がり、応援してもらえることになりました。今回、私はおじいさん役なので、23年秋冬のコレクションを拝見する中で着たいと思ったメンズのコートを貸していただきました。帽子はパリに在住のアーティスト、日爪ノブキさんの作品です」。

夏木と「ロエベ」の交流はこれまでもあり、21年1月、映画「千と千尋の神隠し」とのコラボポップアップストアには、劇中で自身が演じた銭婆のオーバーサイズTシャツを着用して登場。23年春夏プレコレクションキャンペーンビジュアルには、銭湯をバックにした姿が起用された。

また、自身の芸能生活50周年については「歌をやっていて、誘われるままに演劇の世界に来ました。ある時は、集団の中にいる自分が自分らしくない気がして、この世界に向いていないかもしれないと自己嫌悪に陥ることもあった。でもその後、特に『印象派NEO』をスタートしてから一歩前に進んで自分らしく、楽しんで仕事をできるようになりました」と振り返った。

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「大切なことはすべて販売員時代に学んだ」 日本初の本格的なD2Cブランドを創業 エイミーイストワール 梯真奈美

時給800円の広島のアパレル販売員から、最先端のビジネスモデルの華やかなD2Cブランドのファウンダーへ。現在、若い女性から圧倒的な指示を集める人気ブランドのクリエイティブディレクターを務める梯(かけはし)真奈美さんは、まさに現代のシンデレラストーリーの王道を歩んできた。ただ、そのど真ん中には、地道にアパレル販売員のコアである「接客重視」をぶらさずにまい進してきたマインドがある。現在は「エイミーイストワール(eimy istoire)」に加え、「アイアム(Aíam)」「ジョゼムーン(JOSE MOON)」の3ブランドのクリエイティブディレクターを務める、MANAMIこと梯真奈美さんのインタビューをお届けする。

梯真奈美/「エイミーイストワール (eimy istoire)」「アイアム(Aíam)」「ジョゼムーン(JOSE MOON)」クリエイティブ・ディレクター

(かけはし・まなみ)1990年4月26日生まれ、山口県出身。「リエンダ ガールズ」を経て、2016年6月に日本初の本格的なウイメンズのD2Cブランドとなる「エイミーイストワール」をスタート、クリエイティブ・ディレクターに就任。20年9月にコスメブランド「アイアム」を運営するAiamを創業、副社長に就任。23年1月に3ブランド目となる「ジョゼムーン」をスタート PHOTO:YUTA KATO

WWD:ファッション業界に入ったきっかけは?
_
梯真奈美(以下、梯):高校を卒業後に広島パルコの109系のアパレルブランドの販売員になったことがきっかけです。当時は山口の実家に住んでいたので行きは始発、帰りは最終のバスに乗り、往復4時間かけて通勤していました。

WWD:転機は?

梯:東京に上京して、「リエンダ」の販売員になったことです。今につながる大事なことはほぼ全て、「リエンダ」の販売員時代に学んだ、と言っていいほどです。接客や販売といった販売員にとって大事なことだけでなく、服とお客さま一人ひとりにしっかりと向き合うことなど身をもって体験しました。

WWD:具体的には?

梯:当時勤めていた池袋店の店長の影響がものすごく大きくて。今もそうなのですが、「売り上げより、お客さまを喜ばせよう」ということを、口だけでなく実際の仕事のやり方を通して教わりました。おかげで、どうしたらお客さまに満足していただけるか。そればっかりを考えられるようになりました。私は元々物覚えがよくないので、当時は常に大学ノートを店舗のバックヤードやカウンターの下に置いて、お客さまを接客するたびに、時間を見つけてはそのノートにお客さまの特徴や話したこと、ワードローブ、趣味などを細かくつけて、1日の終わりに見返していました。病院のカルテみたいなものですね。

2016年6月に「エイミーイストワール」をスタート。大きな転機に

WWD:2016年6月の「エイミーイストワール」の立ち上げのときのことを教えて下さい。

梯:(ドットワン現CEOの)藤井から声をかけられてブランドを立ち上げることになり、16年1月に販売員を辞めました。ただ、その時点ではブランド名も何も決まってなくて。本当にゼロからです。オフィスも社員も何もなかった。毎日、渋谷の「ベローチェ」に2人で集合して、ブランドコンセプトやブランド名、ターゲットなどを書き出して、横にいる藤井に見せては、ダメ出しをされていました。朝から晩まで、毎日ずっとダメ出しされ続けるので、いつもつらくて泣いていた日々がとても懐かしいです。

当時はSNS発のブランドが国内では今みたいに多くなく、販売員しか経験がない私にはわからないことだらけで手探り状態でした。そんな中でも一緒にブランドを盛り上げたいと思ってくれる仲間が少しずつ増えて、毎日朝まで仕事をして、シャワーだけ浴びてまた会社に戻る。そんな怒涛の日々を過ごしていました。本当にブランドを作ることが今よりも大変な時代だったので、貴重な経験をすることができました。

WWD:販売員時代と変わらないことは?

梯:「お客さま第一」です。お客さまとコミュニケーションする場や手段に、ブログやSNSなどが登場していますが、それは変わりません。今でもDMへの返信はルール上NGですが、基本的にはすべて目を通しています。イベントで初めてお会いするお客さまも、SNSを通してコメントくださったことがある方のことは記憶していることが多く、お会いできた際にお客さまの髪型やメイクの変化に気がついて、お伝えすると「初めて会ったのになんでわかるんですか!?」と、驚かれることも今まで多々ありました。

WWD:今の1日のスケジュールは?

梯:現在は3ブランドをディレクションしているので昔以上に大変な部分もありますが、変わらずに3ブランド共、世界観を作り上げるクリエイティブ周りの確認は全て行っていますし、商品企画から修正まで全てに携わっています。

WWD:SNS全盛の時代だが、逆に誹謗や中傷めいた書き込みも少なくない。どう向き合っている?

梯:どんな内容であっても、ブランドに関してのコメントはできるだけ私自身も目を通すようにしています。正直言って、批判にはとても傷つきます。それはずっと変わりません。ただ、どんな内容であっても、ブランドや私に不満や至らない部分が何かあるからだと思うんです。だから解決策は改善に向けて一つ一つ向き合い地道にできることを積み重ねていくしかないですね。

WWD:最後に販売員など、ファッション業界で働く人たちへのメッセージを。

梯:私は最初からスポットライトが当たる場所にいたわけではありません。キャリアの最初は広島で、時給800円で働く普通の販売員でしたし、さらに言えばそのこと自体に不満があったわけでもありませんでした。でも、思い切って一歩を踏み出せば、自分次第で全ては変えられる。そのことを証明し、かつ、お客さまに勇気や踏み出すきっかけを提供したい、そう思って突っ走ってきました。

私はお客さまの人生の中で小さな幸せを与えられる存在で居たいと思っています。女性にとってファッションを楽しむこと、美容で喜びや自信を得ることはとても大切です。お客様に笑顔になっていただくには何をすべきか。何から始めて良いかわからなかったり、漠然とした不安で、夢に向かう勇気や一歩が踏み出せない事もあると思います。ですが、皆さんが思い描く夢がどんなものであったとしても、叶える価値があることを忘れないでいてください。小さな一歩でも、踏み出してみると人生は少しずつ変わっていきます。自分自身を信じて、まずは一歩を踏み出してみましょう!皆さんの夢を心から応援しています。

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「大切なことはすべて販売員時代に学んだ」 日本初の本格的なD2Cブランドを創業 エイミーイストワール 梯真奈美

時給800円の広島のアパレル販売員から、最先端のビジネスモデルの華やかなD2Cブランドのファウンダーへ。現在、若い女性から圧倒的な指示を集める人気ブランドのクリエイティブディレクターを務める梯(かけはし)真奈美さんは、まさに現代のシンデレラストーリーの王道を歩んできた。ただ、そのど真ん中には、地道にアパレル販売員のコアである「接客重視」をぶらさずにまい進してきたマインドがある。現在は「エイミーイストワール(eimy istoire)」に加え、「アイアム(Aíam)」「ジョゼムーン(JOSE MOON)」の3ブランドのクリエイティブディレクターを務める、MANAMIこと梯真奈美さんのインタビューをお届けする。

梯真奈美/「エイミーイストワール (eimy istoire)」「アイアム(Aíam)」「ジョゼムーン(JOSE MOON)」クリエイティブ・ディレクター

(かけはし・まなみ)1990年4月26日生まれ、山口県出身。「リエンダ ガールズ」を経て、2016年6月に日本初の本格的なウイメンズのD2Cブランドとなる「エイミーイストワール」をスタート、クリエイティブ・ディレクターに就任。20年9月にコスメブランド「アイアム」を運営するAiamを創業、副社長に就任。23年1月に3ブランド目となる「ジョゼムーン」をスタート PHOTO:YUTA KATO

WWD:ファッション業界に入ったきっかけは?
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梯真奈美(以下、梯):高校を卒業後に広島パルコの109系のアパレルブランドの販売員になったことがきっかけです。当時は山口の実家に住んでいたので行きは始発、帰りは最終のバスに乗り、往復4時間かけて通勤していました。

WWD:転機は?

梯:東京に上京して、「リエンダ」の販売員になったことです。今につながる大事なことはほぼ全て、「リエンダ」の販売員時代に学んだ、と言っていいほどです。接客や販売といった販売員にとって大事なことだけでなく、服とお客さま一人ひとりにしっかりと向き合うことなど身をもって体験しました。

WWD:具体的には?

梯:当時勤めていた池袋店の店長の影響がものすごく大きくて。今もそうなのですが、「売り上げより、お客さまを喜ばせよう」ということを、口だけでなく実際の仕事のやり方を通して教わりました。おかげで、どうしたらお客さまに満足していただけるか。そればっかりを考えられるようになりました。私は元々物覚えがよくないので、当時は常に大学ノートを店舗のバックヤードやカウンターの下に置いて、お客さまを接客するたびに、時間を見つけてはそのノートにお客さまの特徴や話したこと、ワードローブ、趣味などを細かくつけて、1日の終わりに見返していました。病院のカルテみたいなものですね。

2016年6月に「エイミーイストワール」をスタート。大きな転機に

WWD:2016年6月の「エイミーイストワール」の立ち上げのときのことを教えて下さい。

梯:(ドットワン現CEOの)藤井から声をかけられてブランドを立ち上げることになり、16年1月に販売員を辞めました。ただ、その時点ではブランド名も何も決まってなくて。本当にゼロからです。オフィスも社員も何もなかった。毎日、渋谷の「ベローチェ」に2人で集合して、ブランドコンセプトやブランド名、ターゲットなどを書き出して、横にいる藤井に見せては、ダメ出しをされていました。朝から晩まで、毎日ずっとダメ出しされ続けるので、いつもつらくて泣いていた日々がとても懐かしいです。

当時はSNS発のブランドが国内では今みたいに多くなく、販売員しか経験がない私にはわからないことだらけで手探り状態でした。そんな中でも一緒にブランドを盛り上げたいと思ってくれる仲間が少しずつ増えて、毎日朝まで仕事をして、シャワーだけ浴びてまた会社に戻る。そんな怒涛の日々を過ごしていました。本当にブランドを作ることが今よりも大変な時代だったので、貴重な経験をすることができました。

WWD:販売員時代と変わらないことは?

梯:「お客さま第一」です。お客さまとコミュニケーションする場や手段に、ブログやSNSなどが登場していますが、それは変わりません。今でもDMへの返信はルール上NGですが、基本的にはすべて目を通しています。イベントで初めてお会いするお客さまも、SNSを通してコメントくださったことがある方のことは記憶していることが多く、お会いできた際にお客さまの髪型やメイクの変化に気がついて、お伝えすると「初めて会ったのになんでわかるんですか!?」と、驚かれることも今まで多々ありました。

WWD:今の1日のスケジュールは?

梯:現在は3ブランドをディレクションしているので昔以上に大変な部分もありますが、変わらずに3ブランド共、世界観を作り上げるクリエイティブ周りの確認は全て行っていますし、商品企画から修正まで全てに携わっています。

WWD:SNS全盛の時代だが、逆に誹謗や中傷めいた書き込みも少なくない。どう向き合っている?

梯:どんな内容であっても、ブランドに関してのコメントはできるだけ私自身も目を通すようにしています。正直言って、批判にはとても傷つきます。それはずっと変わりません。ただ、どんな内容であっても、ブランドや私に不満や至らない部分が何かあるからだと思うんです。だから解決策は改善に向けて一つ一つ向き合い地道にできることを積み重ねていくしかないですね。

WWD:最後に販売員など、ファッション業界で働く人たちへのメッセージを。

梯:私は最初からスポットライトが当たる場所にいたわけではありません。キャリアの最初は広島で、時給800円で働く普通の販売員でしたし、さらに言えばそのこと自体に不満があったわけでもありませんでした。でも、思い切って一歩を踏み出せば、自分次第で全ては変えられる。そのことを証明し、かつ、お客さまに勇気や踏み出すきっかけを提供したい、そう思って突っ走ってきました。

私はお客さまの人生の中で小さな幸せを与えられる存在で居たいと思っています。女性にとってファッションを楽しむこと、美容で喜びや自信を得ることはとても大切です。お客様に笑顔になっていただくには何をすべきか。何から始めて良いかわからなかったり、漠然とした不安で、夢に向かう勇気や一歩が踏み出せない事もあると思います。ですが、皆さんが思い描く夢がどんなものであったとしても、叶える価値があることを忘れないでいてください。小さな一歩でも、踏み出してみると人生は少しずつ変わっていきます。自分自身を信じて、まずは一歩を踏み出してみましょう!皆さんの夢を心から応援しています。

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「大切なことはすべて販売員時代に学んだ」 日本初の本格的なD2Cブランドを創業 エイミーイストワール 梯真奈美

時給800円の広島のアパレル販売員から、最先端のビジネスモデルの華やかなD2Cブランドのファウンダーへ。現在、若い女性から圧倒的な指示を集める人気ブランドのクリエイティブディレクターを務める梯(かけはし)真奈美さんは、まさに現代のシンデレラストーリーの王道を歩んできた。ただ、そのど真ん中には、地道にアパレル販売員のコアである「接客重視」をぶらさずにまい進してきたマインドがある。現在は「エイミーイストワール(eimy istoire)」に加え、「アイアム(Aíam)」「ジョゼムーン(JOSE MOON)」の3ブランドのクリエイティブディレクターを務める、MANAMIこと梯真奈美さんのインタビューをお届けする。

梯真奈美/「エイミーイストワール (eimy istoire)」「アイアム(Aíam)」「ジョゼムーン(JOSE MOON)」クリエイティブ・ディレクター

(かけはし・まなみ)1990年4月26日生まれ、山口県出身。「リエンダ ガールズ」を経て、2016年6月に日本初の本格的なウイメンズのD2Cブランドとなる「エイミーイストワール」をスタート、クリエイティブ・ディレクターに就任。20年9月にコスメブランド「アイアム」を運営するAiamを創業、副社長に就任。23年1月に3ブランド目となる「ジョゼムーン」をスタート PHOTO:YUTA KATO

WWD:ファッション業界に入ったきっかけは?
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梯真奈美(以下、梯):高校を卒業後に広島パルコの109系のアパレルブランドの販売員になったことがきっかけです。当時は山口の実家に住んでいたので行きは始発、帰りは最終のバスに乗り、往復4時間かけて通勤していました。

WWD:転機は?

梯:東京に上京して、「リエンダ」の販売員になったことです。今につながる大事なことはほぼ全て、「リエンダ」の販売員時代に学んだ、と言っていいほどです。接客や販売といった販売員にとって大事なことだけでなく、服とお客さま一人ひとりにしっかりと向き合うことなど身をもって体験しました。

WWD:具体的には?

梯:当時勤めていた池袋店の店長の影響がものすごく大きくて。今もそうなのですが、「売り上げより、お客さまを喜ばせよう」ということを、口だけでなく実際の仕事のやり方を通して教わりました。おかげで、どうしたらお客さまに満足していただけるか。そればっかりを考えられるようになりました。私は元々物覚えがよくないので、当時は常に大学ノートを店舗のバックヤードやカウンターの下に置いて、お客さまを接客するたびに、時間を見つけてはそのノートにお客さまの特徴や話したこと、ワードローブ、趣味などを細かくつけて、1日の終わりに見返していました。病院のカルテみたいなものですね。

2016年6月に「エイミーイストワール」をスタート。大きな転機に

WWD:2016年6月の「エイミーイストワール」の立ち上げのときのことを教えて下さい。

梯:(ドットワン現CEOの)藤井から声をかけられてブランドを立ち上げることになり、16年1月に販売員を辞めました。ただ、その時点ではブランド名も何も決まってなくて。本当にゼロからです。オフィスも社員も何もなかった。毎日、渋谷の「ベローチェ」に2人で集合して、ブランドコンセプトやブランド名、ターゲットなどを書き出して、横にいる藤井に見せては、ダメ出しをされていました。朝から晩まで、毎日ずっとダメ出しされ続けるので、いつもつらくて泣いていた日々がとても懐かしいです。

当時はSNS発のブランドが国内では今みたいに多くなく、販売員しか経験がない私にはわからないことだらけで手探り状態でした。そんな中でも一緒にブランドを盛り上げたいと思ってくれる仲間が少しずつ増えて、毎日朝まで仕事をして、シャワーだけ浴びてまた会社に戻る。そんな怒涛の日々を過ごしていました。本当にブランドを作ることが今よりも大変な時代だったので、貴重な経験をすることができました。

WWD:販売員時代と変わらないことは?

梯:「お客さま第一」です。お客さまとコミュニケーションする場や手段に、ブログやSNSなどが登場していますが、それは変わりません。今でもDMへの返信はルール上NGですが、基本的にはすべて目を通しています。イベントで初めてお会いするお客さまも、SNSを通してコメントくださったことがある方のことは記憶していることが多く、お会いできた際にお客さまの髪型やメイクの変化に気がついて、お伝えすると「初めて会ったのになんでわかるんですか!?」と、驚かれることも今まで多々ありました。

WWD:今の1日のスケジュールは?

梯:現在は3ブランドをディレクションしているので昔以上に大変な部分もありますが、変わらずに3ブランド共、世界観を作り上げるクリエイティブ周りの確認は全て行っていますし、商品企画から修正まで全てに携わっています。

WWD:SNS全盛の時代だが、逆に誹謗や中傷めいた書き込みも少なくない。どう向き合っている?

梯:どんな内容であっても、ブランドに関してのコメントはできるだけ私自身も目を通すようにしています。正直言って、批判にはとても傷つきます。それはずっと変わりません。ただ、どんな内容であっても、ブランドや私に不満や至らない部分が何かあるからだと思うんです。だから解決策は改善に向けて一つ一つ向き合い地道にできることを積み重ねていくしかないですね。

WWD:最後に販売員など、ファッション業界で働く人たちへのメッセージを。

梯:私は最初からスポットライトが当たる場所にいたわけではありません。キャリアの最初は広島で、時給800円で働く普通の販売員でしたし、さらに言えばそのこと自体に不満があったわけでもありませんでした。でも、思い切って一歩を踏み出せば、自分次第で全ては変えられる。そのことを証明し、かつ、お客さまに勇気や踏み出すきっかけを提供したい、そう思って突っ走ってきました。

私はお客さまの人生の中で小さな幸せを与えられる存在で居たいと思っています。女性にとってファッションを楽しむこと、美容で喜びや自信を得ることはとても大切です。お客様に笑顔になっていただくには何をすべきか。何から始めて良いかわからなかったり、漠然とした不安で、夢に向かう勇気や一歩が踏み出せない事もあると思います。ですが、皆さんが思い描く夢がどんなものであったとしても、叶える価値があることを忘れないでいてください。小さな一歩でも、踏み出してみると人生は少しずつ変わっていきます。自分自身を信じて、まずは一歩を踏み出してみましょう!皆さんの夢を心から応援しています。

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1stソロアルバムのリリースを控えるザ・エックス・エックスのロミー 「安心領域を抜け出すような感覚」

2010年代のUKロックシーンを代表するバンドの一つが、ザ・エックス・エックス(The xx)だ。ロミー(Romy)とオリヴァー・シム(Oliver Sim)、ジェイミー・エックス・エックス(Jamie xx)の3人から成るバンドは、2017年にリリースした3rdアルバム「I See You」を最後に充電期間に入っている。しかし、悲しいことだけではない。ジェイミー・エックス・エックスはDJとしてのソロ活動がさらにアクティブになり、オリヴァーも制作に2年を費やしたアルバム「Hideous Bastard」で22年にソロデビュー。そして23年6月、数年前からソロ活動に本腰を入れていたロミーが、満を持して1stアルバム「Mid Air」をリリースすると発表した。

アルバムのリリースに先駆けた2月、「フェンディ(FENDI)」のフラッグシップストア「パラッツォ フェンディ 表参道」のオープニングイベントのために、5年ぶりの来日を果たしたロミーにインタビューを敢行。ソロ活動をスタートしたきっかけから、盟友フレッド・アゲイン(Fred again..、音楽プロデューサーでアーティスト)との出会い、そしてじっこんの仲であるラフ・シモンズ(Raf Simons)との関係についてまでを語ってもらった。

ーーまずは、アーティストとして活動する以前の幼少期の話を聞かせてください。

ロミー:幼い頃はロンドンの郊外に住んでいたんですが、当時はインターネットが今ほど普及していなかったのもあって、何もかもが自分の想像力だけで事足りているような感覚で生きていましたね。ただ、インターネットを使うようになってからは毎日が新しいことの連続で、「マイスペース(MySpace、音楽を中心としたSNS)」で知らない音楽と出合うことが楽しくて楽しくて。それは、単に退屈な時間を音楽で満たしていただけではあるんですけど、結果として今のインスピレーションなどに繋がっています。

ーー音楽一家のもとに生まれたというわけではなかったんでしょうか?

ロミー:そうですね。母親を早くに亡くしたため、幼い頃から父親と2人暮らしだったのですが、彼が生粋のレコードコレクターだったので、自宅では2人で静かに同じ音楽を聴く生活が普通だと思っていました。でも、友達の家に遊びに行くようになってから普通ではないことだと気付いて(笑)。父親からは、家で静かに音楽を聴くライフスタイルを学びましたね。

ーーその後、16歳でザ・エックス・エックスを結成してから15年後の2020年にソロ活動をスタートしました。このきっかけは?

ロミー:ザ・エックス・エックスを初めた頃は、自分に自信がなくシャイだったので、興味はあったけど今こうしてソロアーティストとして活動するだなんて想像もしていませんでした。ただ、2018年にザ・エックス・エックスでのツアーを終えてから、改めて音楽を作ることが本当に1番大好きで、最も自分の情熱を注げるものだと思い、ソロ活動のためではなく誰かに楽曲を提供することを目的に制作を始めたんです。それからフレッド・アゲインと友人になり一緒に制作することが増え、この出会いが自分に自信を持てるきっかけになりました。

そしてある日、私が制作した楽曲を聴いた彼に「これは誰のために作ったの?」と質問され、「……私のためかも」と答えたことがソロアーティストとして活動する第一歩になったんです。いざ活動してみると心に開放感があって、この歳で自分の変化を楽しめているのは驚きですね。

ーーだから1stシングル「Lifetime」にフレッド・アゲインがプロデューサーとして参加しているんですね。

ロミー:アイデア自体はパンデミックによるロックダウン前から持っていて、ロックダウン中に彼と「ズーム」を通じてオンラインで曲作りをしているうちにいい感じに整ったので、「Lifetime」をデビュー曲に選びました。

ーーちなみに、彼とはどのように出会ったんでしょうか?

ロミー:彼は今ソロアーティストとして大活躍していますが、もともとは音楽プロデューサーや楽曲提供を中心としたソングライターです。近しい友人を通して、才能に溢れた人間だということは耳にしていました。そして、ロンドンの音楽シーンでは「この人とこの人を会わせてみよう!」といった動きが活発で、それを機に2018年の9月に出会ったんです。

ーーありがとうございます。それでは、9月にリリースを控えるソロアルバム「Mid Air」の制作に至った経緯を教えてください。

ロミー:フレッド・アゲインの影響もあって、ザ・エックス・エックスではないロミーとしての楽曲を作りたいという気持ちが強くなったことが大きいですね。ザ・エックス・エックスで築き上げた安心領域を抜け出すような感覚で、バンドのサウンドとはかなり毛色が違う、クラブミュージック寄りに仕上げています。

ーー以前、クラブを“癒しとコミュニティーの場”と表現していましたが、今回のアルバムはクラブシーンでプレイされることなども想定しながら制作したんでしょうか?

ロミー:プロデューサーとして関わってもらったフレッドとスチュアート・プライス(Stuart Price)には、「クラブで聴かれるような音楽にしたい」と相談しましたね。すでに全曲の制作は終えているんですが、実はタイトルもアートワークもまだ決まっていなくて、今日このインタビューが終わったら「ズーム」で最終決定する予定なんです(笑)。

ーー先行視聴した楽曲の中では特に「enjoy your life」が好きでした。この楽曲にまつわるエピソードがあれば教えていただけますか?

ロミー:まず、まだアルバムを聴いてくれている人が少なく、どの楽曲がどのようなリアクションをもらえるか気になって仕方がなかったので、こうして具体的に好きな楽曲を伝えてもらえたことがうれしい!ありがとう。

「enjoy your life」は、ロビン(Robyn、スウェーデンのシンガーソングライター)に連れられて観たビバリー・グレン・コープランド(Beverly Glenn-Copeland、トランスジェンダーのシンガーソングライター)のライブに着想しています。そのライブでグレンは、「La Vita」という楽曲を披露したんですが、「My mother says to me enjoy your life」という歌詞が小さい頃に母親を亡くしている私の心に強く響いたんです。その日以降、私は「enjoy your life」と口ずさむようになり、それを聞いたフレッドが「すごくいいフレーズだね!」と反応したので、彼と一緒に「La Vita」をサンプリングする形で「enjoy your life」を制作しました。

ーーここからは、ファッションについて聞かせてください。「Lifetime」のリリース時、「エックスガール(X-GIRL)」とのコラボアイテムを発表していましたね。

ロミー:かなり前にSNSを通じて存在を知り、ブランドについて調べたら立ち上げの中心人物がソニック・ユース(SONIC YOUTH)のキム・ゴードン(Kim Gordon)だし、女性向けのブランドだけどストリートのエッセンスがあることによってデザインがフェミニンすぎないし、それがずっと素敵だと思っていたのでコラボしたんです。

ザ・エックス・エックスの頃は真っ黒な洋服ばかりだったのが、最近は少し柄のあるストリートスタイルが気になっていますね。メンズのアイテムを着ることも好きなんですけど、大半が私の体にはシルエットが大きすぎて困っています......。

ーーここ数年は、丈の短いTシャツもよく着用しているイメージです。

ロミー:「エックスガール」の影響もあるのか分かりませんが(注:1994年設立)、1990年代っぽいミニTの気分なんです。今日着ているのは、「ドーバー ストリート マーケット ロンドン」で購入した「ブラック・コム デ ギャルソン(BLACK COMME DES GARCONS)」と「ナイキ(NIKE)」のコラボTシャツですね。

ーーザ・エックス・エックスでは、ラフ・シモンズとカプセルコレクションやMVを制作するなど親しい仲ですよね。

ロミー:もともとは、ありがたいことにラフ・シモンズがザ・エックス・エックスのファンで、何かのインタビューで公言しているのを見つけてメンバーで喜んでいたところ、ちょうど連絡があったんです。それが、2014年にニューヨークのソロモン・R・グッゲンハイム美術館で行われた「ディオール(DIOR)」のファッションショーでのパフォーマンスの依頼でした。それから密に連絡を取るようになり、「I Dare You」のMVでもコラボしたんです。

ーー最後に、忘れられないファッション体験談があれば教えてください。

ロミー:11歳くらいの時に、従兄からもらったお古の「ナイキ」の“エア マックス プラス(AIR MAX PLUS)”を履いて学校に行ったら、友達みんなが「何そのスニーカー!超クールじゃん」って集まってきたんです。今でもそれが忘れられず、今日も“エア マックス プラス”を履いていて、このモデルは「今後これしか履かないかも」と思うぐらい気に入っていますね。

ーー僕も1番好きなスニーカーが“エア マックス プラス”なので、今日会った時に「あ!」って思っていました(笑)。

ロミー:本当!?イングランドでもあのデザインが刺さる人と刺さらない人がいるので、“エア マックス プラス”が国を越えた共通言語なのはうれしいです。

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「シャネル」本国トップに聞く、「東京での“ファッションショー以上”のイベントの狙いは?」 

「シャネル(CHANEL)」は6月1、2日、東京で2022-23年メティエダール・コレクションのファッションショーに関するイベントを開催した。昨年12月にセネガルの首都ダカールで開催したファッションショーの再演に際しては、東京でも音楽やダンス、カルチャーと融合。VIP顧客にはアンバサダーの小松菜奈や橋本愛を招いたスタイルトークなどを催しつつ、若い世代には同じくアンバサダーのクリステン・スチュワート(Kristen Stewart)や宮沢氷魚を招いて手仕事の魅力やサステナビリティ、女性のエンパワーメントについて語り合うイベントを企画するなど、複合的なイベントでさまざまな人と繋がろうと試みた。ブルーノ・パブロフスキー(Bruno Pavlovsky)=シャネル グローバル ファッション部門 プレジデント兼シャネルSASプレジデントに、その意図を聞いた。

 WWDJAPAN(以下、WWD):ファッションショーとアフターパーティだけでなく、VIP顧客との交流はもちろん、若い世代とのトークイベントまで、「ファッションショーを中核とする複合イベント」を開催する狙いは? 
ブルーノ・パブロフスキー/シャネル ファッション部門プレジデント兼シャネルSASプレジデント (以下、ブルーノ・プレジデント):一言で言えば、さまざまな人と「コネクト」するため。そして、お客さまから若い世代までをインスパイアして、インスピレーションの源としての「シャネル」の存在を知り、愛してもらうためだ。

 WWD:「コネクト」するには、音楽やダンス、カルチャーとの融合が必要なのか? 
ブルーノ・プレジデント:ダカールで音楽やダンス、カルチャーと繋がったら、新たなエネルギーが生まれ、パリとダカールがつながった。東京でも、この街の音楽やダンス、カルチャーと繋がれば、パリとセネガル、そして東京がリンクする。発表したのは、セネガルと同じメティエダール・コレクション。だが環境が変われば、また違って見えるだろう。私たちが最終的に伝えたいのは、「シャネル」の洋服の魅力。手に取り、袖に腕を通して、毎日楽しんでほしい。でも今、洋服を手に取っていただくには、全方位的な、強いコネクションを持つことが欠かせない。そのためには、イベントを複合的に進化させることだ。

 

「パリ・コレクションは『あなたの時間』
「メティエダールは『シャネル』の時間」 

 WWD:メディエダール・コレクションの発表を複同イベントに進化させようと舵を切ったのはいつ頃? 
ブルーノ・プレジデント:ヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)アーティスティック・ディレクターの影響が大きいだろう。彼女は、協業が大好きで、世界に幅広いネットワークを持っている。音楽やダンス、カルチャーと繋がる必要性をいち早く認識していたし、実際コラボレーションを心から楽しんでいる。メゾンも同時に、メティエダール・コレクションをこれまで以上に大事に扱うようになってきた。(オートクチュールのような手仕事の)メティエダール・コレクションは、(とはいえオートクチュールのように)一点モノだったり、美術館に展示されたりするようなものではない。あくまで既製品で、日々楽しんでいただくための洋服で、「シャネル」だけのもの。やっぱり手に取っていただきたい。だから、「シャネル」にしかできない方法で発表したい。3月や10月のパリコレや、オートクチュールのファッション・ウイークで、「シャネル」にしかできない方法を追求するのは難しい。ファッション・ウイークで優先されるのは、(メディアやバイヤーなど)「皆さんの時間」だ。一方、メティエダールと(5月に開催した)クルーズ・コレクションでは、「『シャネル』の時間」を持つことが許される。大きな規模感で、さまざまな楽しみ方を用意し、ユニークさをどこまでも追求したい。

 WWD:ファッションショーの翌日には、都内の大学生らを300人ほど招いて交流を図った。やはり若い世代とのコミュニケーションは必要? 
ブルーノ・プレジデント:もちろんだ。特に若い世代には、「ビハインド・ザ・シーン(舞台裏)」を理解しないと共感してくれない傾向がある。華やかなファッションショーだけでは不十分。じっくり向き合い、彼らの話を聞く必要もあるだろう。

 WWD:注力する若い世代とのコミュニケーションは、成果を伴っている?人件費や材料費の高騰で仕方ない側面も大きいが、値上げは若年層の獲得において大きなハードルだと思うが? 
ブルーノ・プレジデント:若い世代が「シャネル」の商品を買ってくれるかどうか?は、数週間後、数年後にじっくり分析してみよう(笑)。私たちは、即時的な反響を求めない。ビジョンは常にロングタームだ。価格については、バランスだろう。確かにメティエダール・コレクションの刺しゅう入りのジャケットは、高額だ。ただバッグやシューズには、現状の価格をできるだけ維持しようと努力し続けている商品が存在する。今後も、若い世代は何に夢中で、だからこそ、この商品の価格はできるだけ据え置こうなどの戦略は磨き続けたい。現状、化粧品はもっとアフォーダブル(手頃)だ。こうした商品を買っていただくには違う戦略が必要だが、洋服とは違う種類の商品も活かして、若い世代と繋がりたい。

 

全てのイベントで大事なのは
「夢」を見てもらうこと

 WWD:同時に、顧客に向けてのトークイベントやディナーパーティーも開催している。2日の間でたくさん開催したイベントの一貫性は、どのように担保するのか? 
ブルーノ・プレジデント:それぞれのイベントを「誰をターゲットに開催するのか?」考えることは大事だが、同じくらい大事なのは、「みんなに『夢』を見てほしい」と努力することだ。「夢」見せてくれたというエモーションは、ブランドへの興味・関心、理解につながるだろう。東京ビッグサイトまでやってきて、素敵な「夢」が見れたら、人々はきっと「シャネル」のクリエイティビティーを感じてくれるのではないだろうか?一番記憶に残るのが、音楽でも、ダンスでも構わない。東京ビッグサイトで、「シャネル」以外の話をしてくれても良い。ただ、そんなひと時を「シャネル」と共に楽しんだことを忘れないでくれたら嬉しい。私たちは、「夢」を大事にしている。即効性を求めるなら、バッグを売り続ければ良いだろう。ただ、「シャネル」の柱はプレタポルテ(既成服)。洋服を買っていただくには、「夢」見てもらうことが必要だ。幸い、メティエダール・コレクションを核とするイベントでは、着実な成果が現れている。クリアなビジョンを持つ、アルティメット・ラグジュアリー(究極のラグジュアリー)の「シャネル」は今後も、同じ戦略にフォーカスし続けるだろう。アルティメット・ラグジュアリーであり続けるには、進化・深化が大事だ。成功のレシピは、簡単に変えるべきではない。だからこそ私たちは、メンズウエアにも、テーブルウエアにも進出しないんだ。

 WWD:一連のイベントの中で、個人的に一番楽しかったのは? 
ブルーノ・プレジデント:私は、来日そのものが楽しかった(笑)。今回は大阪や京都、東京でも、いつもとは違う場所を訪れることもできたからね。

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「シャネル」本国トップに聞く、「東京での“ファッションショー以上”のイベントの狙いは?」 

「シャネル(CHANEL)」は6月1、2日、東京で2022-23年メティエダール・コレクションのファッションショーに関するイベントを開催した。昨年12月にセネガルの首都ダカールで開催したファッションショーの再演に際しては、東京でも音楽やダンス、カルチャーと融合。VIP顧客にはアンバサダーの小松菜奈や橋本愛を招いたスタイルトークなどを催しつつ、若い世代には同じくアンバサダーのクリステン・スチュワート(Kristen Stewart)や宮沢氷魚を招いて手仕事の魅力やサステナビリティ、女性のエンパワーメントについて語り合うイベントを企画するなど、複合的なイベントでさまざまな人と繋がろうと試みた。ブルーノ・パブロフスキー(Bruno Pavlovsky)=シャネル グローバル ファッション部門 プレジデント兼シャネルSASプレジデントに、その意図を聞いた。

 WWDJAPAN(以下、WWD):ファッションショーとアフターパーティだけでなく、VIP顧客との交流はもちろん、若い世代とのトークイベントまで、「ファッションショーを中核とする複合イベント」を開催する狙いは? 
ブルーノ・パブロフスキー/シャネル ファッション部門プレジデント兼シャネルSASプレジデント (以下、ブルーノ・プレジデント):一言で言えば、さまざまな人と「コネクト」するため。そして、お客さまから若い世代までをインスパイアして、インスピレーションの源としての「シャネル」の存在を知り、愛してもらうためだ。

 WWD:「コネクト」するには、音楽やダンス、カルチャーとの融合が必要なのか? 
ブルーノ・プレジデント:ダカールで音楽やダンス、カルチャーと繋がったら、新たなエネルギーが生まれ、パリとダカールがつながった。東京でも、この街の音楽やダンス、カルチャーと繋がれば、パリとセネガル、そして東京がリンクする。発表したのは、セネガルと同じメティエダール・コレクション。だが環境が変われば、また違って見えるだろう。私たちが最終的に伝えたいのは、「シャネル」の洋服の魅力。手に取り、袖に腕を通して、毎日楽しんでほしい。でも今、洋服を手に取っていただくには、全方位的な、強いコネクションを持つことが欠かせない。そのためには、イベントを複合的に進化させることだ。

 

「パリ・コレクションは『あなたの時間』
「メティエダールは『シャネル』の時間」 

 WWD:メディエダール・コレクションの発表を複同イベントに進化させようと舵を切ったのはいつ頃? 
ブルーノ・プレジデント:ヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)アーティスティック・ディレクターの影響が大きいだろう。彼女は、協業が大好きで、世界に幅広いネットワークを持っている。音楽やダンス、カルチャーと繋がる必要性をいち早く認識していたし、実際コラボレーションを心から楽しんでいる。メゾンも同時に、メティエダール・コレクションをこれまで以上に大事に扱うようになってきた。(オートクチュールのような手仕事の)メティエダール・コレクションは、(とはいえオートクチュールのように)一点モノだったり、美術館に展示されたりするようなものではない。あくまで既製品で、日々楽しんでいただくための洋服で、「シャネル」だけのもの。やっぱり手に取っていただきたい。だから、「シャネル」にしかできない方法で発表したい。3月や10月のパリコレや、オートクチュールのファッション・ウイークで、「シャネル」にしかできない方法を追求するのは難しい。ファッション・ウイークで優先されるのは、(メディアやバイヤーなど)「皆さんの時間」だ。一方、メティエダールと(5月に開催した)クルーズ・コレクションでは、「『シャネル』の時間」を持つことが許される。大きな規模感で、さまざまな楽しみ方を用意し、ユニークさをどこまでも追求したい。

 WWD:ファッションショーの翌日には、都内の大学生らを300人ほど招いて交流を図った。やはり若い世代とのコミュニケーションは必要? 
ブルーノ・プレジデント:もちろんだ。特に若い世代には、「ビハインド・ザ・シーン(舞台裏)」を理解しないと共感してくれない傾向がある。華やかなファッションショーだけでは不十分。じっくり向き合い、彼らの話を聞く必要もあるだろう。

 WWD:注力する若い世代とのコミュニケーションは、成果を伴っている?人件費や材料費の高騰で仕方ない側面も大きいが、値上げは若年層の獲得において大きなハードルだと思うが? 
ブルーノ・プレジデント:若い世代が「シャネル」の商品を買ってくれるかどうか?は、数週間後、数年後にじっくり分析してみよう(笑)。私たちは、即時的な反響を求めない。ビジョンは常にロングタームだ。価格については、バランスだろう。確かにメティエダール・コレクションの刺しゅう入りのジャケットは、高額だ。ただバッグやシューズには、現状の価格をできるだけ維持しようと努力し続けている商品が存在する。今後も、若い世代は何に夢中で、だからこそ、この商品の価格はできるだけ据え置こうなどの戦略は磨き続けたい。現状、化粧品はもっとアフォーダブル(手頃)だ。こうした商品を買っていただくには違う戦略が必要だが、洋服とは違う種類の商品も活かして、若い世代と繋がりたい。

 

全てのイベントで大事なのは
「夢」を見てもらうこと

 WWD:同時に、顧客に向けてのトークイベントやディナーパーティーも開催している。2日の間でたくさん開催したイベントの一貫性は、どのように担保するのか? 
ブルーノ・プレジデント:それぞれのイベントを「誰をターゲットに開催するのか?」考えることは大事だが、同じくらい大事なのは、「みんなに『夢』を見てほしい」と努力することだ。「夢」見せてくれたというエモーションは、ブランドへの興味・関心、理解につながるだろう。東京ビッグサイトまでやってきて、素敵な「夢」が見れたら、人々はきっと「シャネル」のクリエイティビティーを感じてくれるのではないだろうか?一番記憶に残るのが、音楽でも、ダンスでも構わない。東京ビッグサイトで、「シャネル」以外の話をしてくれても良い。ただ、そんなひと時を「シャネル」と共に楽しんだことを忘れないでくれたら嬉しい。私たちは、「夢」を大事にしている。即効性を求めるなら、バッグを売り続ければ良いだろう。ただ、「シャネル」の柱はプレタポルテ(既成服)。洋服を買っていただくには、「夢」見てもらうことが必要だ。幸い、メティエダール・コレクションを核とするイベントでは、着実な成果が現れている。クリアなビジョンを持つ、アルティメット・ラグジュアリー(究極のラグジュアリー)の「シャネル」は今後も、同じ戦略にフォーカスし続けるだろう。アルティメット・ラグジュアリーであり続けるには、進化・深化が大事だ。成功のレシピは、簡単に変えるべきではない。だからこそ私たちは、メンズウエアにも、テーブルウエアにも進出しないんだ。

 WWD:一連のイベントの中で、個人的に一番楽しかったのは? 
ブルーノ・プレジデント:私は、来日そのものが楽しかった(笑)。今回は大阪や京都、東京でも、いつもとは違う場所を訪れることもできたからね。

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資生堂とヤーマンが手掛ける「エフェクティム」がリフト&透明感にアプローチする美容機器発売 日本市場で出店攻勢

資生堂とヤーマンの合弁会社が手掛けるエイジングケアブランド「エフェクティム(EFFECTIM)は7月1日、リフトと透明感をかなえる美容機器“ブライト ビューティー リフティング アクティベーター”(11万円)と美容液“ブライト リフティング セラム”[医薬部外品](30mL、1万6500円)を発売する。中国では8月から販売を開始する。

同社はこれまで、顔のたるみなど形状変化に悩みを持つ生活者をターゲットに、全顔用と目元用の2種の美容機器と専用の美容液を展開してきた。一方で「繰り返すシミを根本からケアしたい」「美容医療のレーザーでシミをとっても時間が経てばまた出てきてしまう」という肌のシミやくすみに関する悩みの声も多く、新商品の開発に着手した。

新美容機器は、「リフトモード」と「ブライトモード」が選べる2つのモードを搭載。それぞれに独自のRFとEMS、電気バルス、導入波形、LEDの5つのエネルギーと、アルファベットのEの文字が2つ重なった独自の電極形状を採用。1回6分で2億回(電流の波の数)のエネルギーを肌の深層に注ぎ込み、効果的かつ集中的なケアを可能にした。

新美容液は、資生堂独自の美白成分で同社主力の美白商品にも配合する、肌の深層からシミを防ぐ4MSKをはじめ、オタネニンジンエキスや、希少な日本産の酵母エキスを含むコンプレックスなど21種の美容成分を配合。エイジングケアと美白ケアの2つの機能を発揮し、ハリと透明感のある肌に導く。

国内は約120店舗導入予定

エフェクティムは、2020年8月に資生堂とヤーマンの合弁会社として設立。資本金は4億9000万円で出資比率は資生堂が65%、ヤーマンが35%で、翌年「エフェクティム」がブランドデビューした。スキンケアの生命科学エネルギーと、美容機器の物理エネルギーを融合し、スキンケアと美容機器の新習慣を提唱する。現在、東京・銀座のシセイドウ ザ ストア(SHISEIDO THE STORE)本店とマツモトキヨシ銀座みゆき通り店、大阪のマツモトキヨシ心斎橋南店の3店舗、中国では2店舗を展開し、ECでも取り扱う。顧客層は40代を中心に、30〜60代の支持を集める。

ブランドの誕生当時は、中国市場の展開を中心に置き、日本は中国のインバウンド(訪日外国人客)向けに展開していたが、立ち上げ直後にコロナ禍に巻き込まれ計画通りには進まなかった。中国ではKOLによるライブコマースでの値引き競争が激しく、中国の巨大セール「W11(独身の日)」で男性美容家の“李佳琦(Austin)”を起用してヒットしたものの、その後は厳しい状況が続いた。

近藤明子ブランド・マーケティング部長は、「『エフェクティム』は、無茶な安売りは向いていない。研究開発の強みやモノ作りの背景をしっかり伝えて、丁寧にお客さまを開拓していきたいという思いから、戦略を練り直した」と述べ、まずは日本市場での知名度を上げるべく、21年末に俳優の高岡早紀をブランドアンバサダーに起用し、タッチポイントの拡大に注力している。昨秋は、伊勢丹新宿本店や神戸阪急でポップアップを開催し、「1回で“効果実感”が得られるので、体験者のうち15%が購入につながった」と好感触だった。当初の売上構成比は中国が9割を占める計画であったが、22年の実績は中国が7割、日本は3割だった。

「日本ではリアル対面でしっかり説明ができ、体験が重要だと再認識した」と、7月からは全国の化粧専門店約120店舗での導入を予定する。一部の店舗では、独自の3D肌解析サービスを実施しているが、今後の店舗には導入予定はないという。「肌診断は興味を持たれるが、購入にはつながらない。今後は、購入後のサポートとしてイベントなどで活用していく。美容機器は継続してもらうことが大切。中長期的にその人の肌の状態を見て、継続的にサポートしていくという、いわゆる『エイジングマネジメント』のサービスを提供できるように努める」。

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靴磨きを“芸術”へ 日本一の若職人の気概

寺島直希さん(28)は、2019年の日本靴磨き選手権で優勝した靴磨き界のトップランナーの一人だ。20年12月には靴磨きの専門店「ハークキョウト(HARK KYOTO) 」を京都にオープンした。念願は果たしたが、「靴磨きは日本ではまだまだニッチ」と寺島さん。靴磨きの新しい可能性を開拓するため、歩みを止めることはない。

京都の路上で靴磨きを始めた寺島さんは、専門店や修理屋で腕を磨いた後に日本一となり、ヨーロッパを周遊後に店を開いた。「ハークキョウト」はコロナ禍でのオープンとなったが徐々に客がついてきた。全国各地から靴を郵送して依頼するだけでなく、わざわざ店を訪れる熱心なファンもいる。

店名の“ハーク(HARK=傾聴するの意)”には、「ひとりひとりのお客さま、靴一足一足と向き合いたい」との思いがこもる。「靴磨きを、単なる革のメンテナンスではなく、お客さまの生活の中に気づきや変化を提供できるものにしたい」。新しい靴磨きの可能性を探求すべく、昨年6月から住友不動産が運営する高級賃貸レジデンス「ラ・トゥール大阪梅田」で居住者向けの専属靴磨きサービスを「世界初の試み」(寺島さん)としてスタートさせ、今は「ラ・トゥール大阪梅田」、「ラ・トゥール京都東山」、「ハークキョウト」を行き来する日々を送る。

設え、所作までが体験価値

「ラ・トゥール大阪梅田」の居住者は、「靴をメンテナンスすることは前提であり、それ以上のホスピタリティと価値提案を求められる方が多い」という。厳しい審美眼を備えた客に対するサービスはクオリティーが求められ、寺島さん自身の刺激にもなっている。仕上がりを追求するため、保湿性から艶感、色味まで追求したオリジナルの液体メンテナンス剤も改良を続けている。2019年に日本靴磨き選手権カラーリング部門で優勝した、レザーカラーリストの斗谷(はかりだに)諒氏と共同開発した。

「ラ・トゥール大阪梅田」ではタイドアップしたスーツに身を包み、メンテナンス剤の瓶をずらりと並べた常設のカウンターで、一足一足を丁寧に磨き上げる。その設えと所作の一つ一つも靴磨きの体験価値と考える。「(利用者は)大切な靴だからこそ、『どこへ託すのか』を大事にされているように感じる」と寺島さん。「お客さまと対話し、実際に靴磨きを見ていただき、納得してようやくファンになっていただける。 認めてもらうまでは大変だが、そのハードルを乗り越えれば太い関係を作ることができる」と手応えを話す。

3月下旬には、三陽商会の紳士靴 「三陽山長」のフラッグシップモデルなどを取りそろえる東京ミッドタウン八重洲の旗艦店「三陽山長 粋」で靴磨きのライブパフォーマンスを行った。6月には東京にも進出するという。「今後はお客さまの前で靴を磨く際の所作や道具、設えをこれまで以上に意識する。これらの練度を高めることにより靴磨きを“芸術”へ昇華し、一つの道を示すことができるはずだ。僕がその旗振り役になることができたら」と前を見据える。

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大竹伸朗に聞く道後温泉アートのパワー 湧き上がる熱気が観る者を魅了する【ファッション&ビューティパトロール】

 「I♥湯」「ニューシャネル」「宇和島駅」――。アートファンならずとも見覚えがあるこのワードセンスと独特のフォントは、画家、大竹伸朗によるもの。愛媛県宇和島市に居を移して35年になる大竹の作品は、絵画、版画、彫刻、インスタレーション、映像、絵本、音楽、エッセイなど、実に多彩だ。その全てがパワフルでエネルギッシュ。さまざまな素材と情報をコラージュし、観る者を圧倒する。大竹は現在、愛媛県美術館で「大竹伸朗展」(7月2日まで)を開催しており、同じく愛媛・道後温泉の保存修理工事で本館を覆うテント膜のアート「熱景/NETSU-KEI」(10月末までを予定)も担当している。大竹がアートに込めた熱気とは?

――1988年に宇和島に拠点を移し、それまで住んでいた東京や外国(ニューヨーク、香港、ロンドン、ナイロビなど)と、制作に対する気持ちの変化はありましたか?

大竹伸朗(以下、大竹):都会にいるといろんな価値観の人が大勢いるから、自分の欲求がガス抜きされる感覚に陥ってしまうんです。何かを作るときは、周囲を遮断して、ひとりになる状況がやっぱり必要になるというかね。楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうじゃないですか。楽しさというのはある意味危険で、都会は面白いことや誘惑が多いから、情報がなるべく入らない場所が必要でした。後悔しない日々を過ごすためには、自分を追い込める状況を作らないと難しい。優先順位の話ではあるけど、自分にとっては作品を作れることが一番の幸せだったんです。

――道後温泉の「熱景/NETSU-KEI」のテーマは、“水・熱・光、また人や街の生み出すあらゆる「エネルギー」”です。大竹さんが道後から感じたエネルギーについて、改めて教えてください。

大竹:温泉には、マグマから生まれる地球の根源と繋がるイメージがありました。だからオファーを受けたときに、道後のエネルギーと人のエネルギーをテーマにしようというのは、すぐに決まったんです。そのエネルギーを月や太陽、雷など、自然のモチーフで表現しました。そのパワーを伝えたいんです。

――大竹さん自身が作品作りのエネルギーにしているものはなんですか?

大竹:自然かな。朝起きると作りたくなるからあまり考えたことはないですが、自然のリズムは感じますね。

――原画を25倍に引き伸ばした今回の作品は、大竹さん史上最大の作品でもあります。いつのも作品作りとの違いを感じましたか?

大竹:やはり、あれだけ大きいと想像しづらいというかね。見上げる視点がすごく極端だから、そこら辺が初めての経験ではありましたけど、面白かったですね。(原画を高精細プリントで拡大し出力した)テント膜は、松山の業者さんにお願いしたのですが、再現度がすごい。原画とは全く違う印象で迫力もありました。

――制作期間が1カ月と短かったとも聞きました。ご自身で完成と判断する基準はなんですか?

大竹:コミッションワークは締め切りがありますが、普段は締め切りがありません。だから、完成を最初から求めていません。作品作りというのは、非常に不自由。自由に好きなことをやっていると思われるけど、いまだに好きなようにはなっていませんから。漠然と展覧会に向けてやるだけ。とにかく毎日やるしかないんです。やった結果が展覧会なんです。

――ありとあらゆる表現方法を手掛ける中で、共通して大事にしていることは?

大竹:あまり考えたことがないですね。思いついたことや作りたいものをどう表現するのが一番いいか、逆算して一番適したメディアを選んでいます。だから思い浮かんでも実現できなかった作品の方が多いし、作品になったものなんて、ほんの一部。自分が考えていることに作業が追いつかないんです。

――僕が大竹さんを初めて知ったのは、高校生のときに雑誌で見かけた「ニューシャネル」のTシャツでした。これは、宇和島にあった廃業したスナックだったとのことですが、この言葉を見かけたときにどのような衝撃を受けたのか、改めて教えてください。

大竹:やっぱり文字ですよね。木のブロックを切って作ったその文字は、すごく素人っぽいんだけど、キャラクターがモロに出ていた。作品のあるべき姿として素晴らしいと思いました。

――大竹さん自身が普段身につけるもので、愛着のあるものやこだわりは?

大竹:子どもの頃からみんなと同じ制服やユニフォームが苦手です。新しいものも。古着にこだわるわけでもないのですが、“ボロい”ものが好きですね。時間がその中に堆積しているというか。やっぱり変な服に興味を惹かれます。みんながびっくりするような、そんな服が欲しいですね。

――アーティストを目指す若者に向けて、“好きなことを仕事にするため”のアドバイスをください。

大竹:それぞれの価値観を大切に、とにかく毎日やること。有名になるとか金持ちになるとか、そういう野心をヘタに抱かず、どうなろうが、とにかく作り続けて欲しい。簡単ではないけど、時間をかけて自分を追い込んでいってください。

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「メンズコスメは信用しない」!? Z世代男子の驚くべきスキンケア意識

Z世代の美容意識に迫る第3弾は、近年注目が高まる「メンズスキンケアケア」にフォーカスする。20代男性のスキンケア習慣や肌意識を探るために、美容やファッションへの関心度に差がある、異なるバックグラウンドの男性に取材を実施。彼らのリアルな声を元に、昭和・平成世代とは一線を画する「スキンケア意識」を深掘りする。

スキンケア開始は中学時代から
「ニキビ経験」が1つの分岐点

今回取材に協力していただいたのは、一般企業の営業職のウタさん(23歳・学生時代は特別ファッションや美容に関心なし)、一般企業のリサーチ部門に所属する二郎さん(23歳・学生時代はファッションサークルで活動)、服飾系の大学に在籍中のヒデキさん(22歳・ファッションにも美容にも関心が高い)の3人である。まずは、普段スキンケアをしているか聞いてみた。

ウタ:顔を洗うくらいで、特に何もしていません。特に肌トラブルなど問題がないので……。

ヒデキ:僕は毎日、化粧水と乳液で保湿して、時々パックをします。肌がとても敏感で物心ついた頃から保湿をメインに習慣にしていましたが、中学生時代、ニキビに悩んでから自発的にスキンケアを始めました。

二郎:僕も中学生から試行錯誤を始めました。ニキビがひどく、頬は乾燥する混合肌で、一時はヒデキ君のようにフルアイテム派でした。今は洗顔と保湿のシンプルケアに落ち着いています。

過去に肌悩みを経験した2人はスキンケア意識が高く、きっかけは共に「思春期のニキビ」(ちなみに、ウタさんはニキビ経験なし)。思春期の経験が、その後のスキンケア行動を左右するように感じたけれど、同世代の男性たちはどうだろうか。周囲にスキンケアしている男性がいるか聞いてみると……?

ウタ:ちょいちょい、いますね。肌感覚では3割くらい?

二郎:僕のまわりは半々くらいかな。ニキビや乾燥肌の人はみんな、なにがしかやってるけれど、肌悩みがないとやらない印象。

ヒデキ:実際、スキンケアしているかどうかは別にして、僕の周囲は「肌のことを気にしてない人はいない」という印象です。

あくまで彼らの感覚に基づいた話ではあるが、Z世代の男性は他の世代に比べて「自身の肌への関心」が高いように思える。少なくとも、思春期の肌悩みを一時的なものとしてやり過ごさず、その後のスキンケア習慣につながっているのがこの世代の傾向ではないだろうか。

相談相手は“女性の友達や家族”
情報収集にはSNSも手堅く活用

スキンケア習慣のある2人に詳しく、過去と現在のお手入れ法を聞くと、洗顔から保湿まで正しい手順を踏んでおり「私が20代の頃よりよっぽど丁寧!?」と驚いた。一体どこからこのような知識を得ているのだろうか?

二郎:僕は姉に相談することが多いですね。

ヒデキ:女性のほうが圧倒的に情報を持っているので、相談相手は姉や女友達です。

ウタ:彼女が敏感肌で悩んでいて時々、洗顔や保湿のアドバイスを受けることがあります。

男性の側から女性に対して、気兼ねなく肌悩みを相談できる環境がうかがえる。そして女性の側も男友達との肌トークを「当たり前のこと」としてとらえているようだ。

ヒデキ:もちろん情報収集には、男性のインスタやユーチューブも参考にします。

二郎:僕は男性と女性両方見るかな。「ニキビ」とか「混合肌」で検索して、ヒットしたものをチェックしています。

ヒデキ:まずは肌悩み優先で、使った感想を見て、良さそうだったら試してみる感じ。

「メンズ専用」コスメは信用しない。
重要なのは、世界観より「どう効くか」

女性が美容情報をリサーチする場合、「ブランド」や「バズっている」ことが、判断基準の1つになることもある。しかし男性の場合(ことスキンケアに関しては)実利重視のようだ。

二郎:ブランド買いとかは全くないですね。レビューを見ます。

ウタ:僕も何か買う場合必ずレビューは見るので、美容系で探すとしたら同じことをすると思います。

二郎:見た目がダサくても「効く」ならそっちのほうがいい。逆に「メンズ専用」をうたっていると、あえて避けたりします。

ヒデキ:それ、めっちゃ分かる。

最後の2人の発言は、衝撃だった。近年、男性の肌や嗜好性を丹念にリサーチしたスキンケアがたくさん登場しているが、それらを「あえて避ける」理由とは何だろう?

二郎:メンズ用は、僕の肌には刺激がある。あとは販売戦略なのか、容量は同じなのに女性用より高めなものが多い。だとしたら、女性用を買うほうが堅実。

ヒデキ:まったく同意見。男性用によくある「スッとした感触」とか「爽快な香り」とか、僕の肌には合わなかった。男性専用といわれると、逆に警戒してしまう。

ウタ:僕は詳しくないので、メンズ専用といわれたらそっちを買っちゃいそう。ただ、2人が言う「強すぎる」というのは共感します。

「男性は皮脂分泌量が多く、さっぱりした感触を好む」「香りもフローラルより爽快系がいい」、これらは決して間違いではないと思う。しかし、ニキビや敏感といった肌悩みに「10代から真摯に向き合ってきた」Z世代には、画一的な男性像は響かないのだ。本質的に肌悩みを解決するものを求める彼らに「どんなスキンケアがあったら理想か」聞いてみた。

二郎:僕は過去に色々試したので、シンプルに完結するものがいい。究極はそこです。

ウタ:僕は経験がないからこそ、複数のステップがあると無理ってなる。1本で80点くらい取れるものがありがたい。

ヒデキ:ビタミンCに信頼感があるので、ビタミンC配合の優れたメンズコスメがあるなら、ぜひ試してみたい。

彼らがこれまでに使ってきたアイテムを参考に、若い男性に多い肌悩みであるニキビに対応し、同時に肌へのやさしさも視野に入れていること。さらにエントリーしやすく多機能という視点で、ジェンダーレスなローションを選んでみた。

昭和・平成世代との決定的な差は
「清潔感」のとらえ方

Z世代の話しを聞いて強く感じたのは、他の世代に比べて「肌が美しいことへの肯定感」が高いことだ。その象徴ともいえるのが、取材中頻繁に出てきた「清潔感」という言葉である。

ウタ:漠然とですが、今後スキンケアしたほうがいいかなという思いがあります。理由は、ちゃんとやってる人は男女問わず、清潔感があるから。

二郎:分かる。上の世代の方たちがいう清潔感って、結局のところ短髪で、白シャツで……というイメージじゃないですか。

ウタ:センタープレスのパンツ履いてタックインして、みたいな。僕らの世代は、こなれ感のある古着だったとしても、髪や髭がきちんと整っていたり、肌がキレイだったら、清潔感があると感じます。

ヒデキ:肌と髪は大事だよね。だから、気にしない人はいないと思う。

髪の長短やピアスのありなし関係なく「肌がキレイであれば、清潔感がある」という言葉に、「なるほどなあ」と深く頷くばかりだった。これまでも清潔感は男性の身だしなみを語る上で、頻繁に使われてきたワードである。しかし、昭和・平成世代が語る清潔感と、Z世代のそれは明らかに一線を画し、Z世代においては清潔感=肌と深く結びついているのが印象的だった。

今回の取材を通して、今後メンズコスメの市場が拡大していくのは、ほぼ間違いないように思う。その一方で自身のメンズケアの常識や情報発信の方向性について「根本的に考え方を変えないといけないな」と考えさせられた取材でもあった。次回はZ世代男性の大多数が関心を抱く「脱毛事情」について深掘りしたい。

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「メンズコスメは信用しない」!? Z世代男子の驚くべきスキンケア意識

Z世代の美容意識に迫る第3弾は、近年注目が高まる「メンズスキンケアケア」にフォーカスする。20代男性のスキンケア習慣や肌意識を探るために、美容やファッションへの関心度に差がある、異なるバックグラウンドの男性に取材を実施。彼らのリアルな声を元に、昭和・平成世代とは一線を画する「スキンケア意識」を深掘りする。

スキンケア開始は中学時代から
「ニキビ経験」が1つの分岐点

今回取材に協力していただいたのは、一般企業の営業職のウタさん(23歳・学生時代は特別ファッションや美容に関心なし)、一般企業のリサーチ部門に所属する二郎さん(23歳・学生時代はファッションサークルで活動)、服飾系の大学に在籍中のヒデキさん(22歳・ファッションにも美容にも関心が高い)の3人である。まずは、普段スキンケアをしているか聞いてみた。

ウタ:顔を洗うくらいで、特に何もしていません。特に肌トラブルなど問題がないので……。

ヒデキ:僕は毎日、化粧水と乳液で保湿して、時々パックをします。肌がとても敏感で物心ついた頃から保湿をメインに習慣にしていましたが、中学生時代、ニキビに悩んでから自発的にスキンケアを始めました。

二郎:僕も中学生から試行錯誤を始めました。ニキビがひどく、頬は乾燥する混合肌で、一時はヒデキ君のようにフルアイテム派でした。今は洗顔と保湿のシンプルケアに落ち着いています。

過去に肌悩みを経験した2人はスキンケア意識が高く、きっかけは共に「思春期のニキビ」(ちなみに、ウタさんはニキビ経験なし)。思春期の経験が、その後のスキンケア行動を左右するように感じたけれど、同世代の男性たちはどうだろうか。周囲にスキンケアしている男性がいるか聞いてみると……?

ウタ:ちょいちょい、いますね。肌感覚では3割くらい?

二郎:僕のまわりは半々くらいかな。ニキビや乾燥肌の人はみんな、なにがしかやってるけれど、肌悩みがないとやらない印象。

ヒデキ:実際、スキンケアしているかどうかは別にして、僕の周囲は「肌のことを気にしてない人はいない」という印象です。

あくまで彼らの感覚に基づいた話ではあるが、Z世代の男性は他の世代に比べて「自身の肌への関心」が高いように思える。少なくとも、思春期の肌悩みを一時的なものとしてやり過ごさず、その後のスキンケア習慣につながっているのがこの世代の傾向ではないだろうか。

相談相手は“女性の友達や家族”
情報収集にはSNSも手堅く活用

スキンケア習慣のある2人に詳しく、過去と現在のお手入れ法を聞くと、洗顔から保湿まで正しい手順を踏んでおり「私が20代の頃よりよっぽど丁寧!?」と驚いた。一体どこからこのような知識を得ているのだろうか?

二郎:僕は姉に相談することが多いですね。

ヒデキ:女性のほうが圧倒的に情報を持っているので、相談相手は姉や女友達です。

ウタ:彼女が敏感肌で悩んでいて時々、洗顔や保湿のアドバイスを受けることがあります。

男性の側から女性に対して、気兼ねなく肌悩みを相談できる環境がうかがえる。そして女性の側も男友達との肌トークを「当たり前のこと」としてとらえているようだ。

ヒデキ:もちろん情報収集には、男性のインスタやユーチューブも参考にします。

二郎:僕は男性と女性両方見るかな。「ニキビ」とか「混合肌」で検索して、ヒットしたものをチェックしています。

ヒデキ:まずは肌悩み優先で、使った感想を見て、良さそうだったら試してみる感じ。

「メンズ専用」コスメは信用しない。
重要なのは、世界観より「どう効くか」

女性が美容情報をリサーチする場合、「ブランド」や「バズっている」ことが、判断基準の1つになることもある。しかし男性の場合(ことスキンケアに関しては)実利重視のようだ。

二郎:ブランド買いとかは全くないですね。レビューを見ます。

ウタ:僕も何か買う場合必ずレビューは見るので、美容系で探すとしたら同じことをすると思います。

二郎:見た目がダサくても「効く」ならそっちのほうがいい。逆に「メンズ専用」をうたっていると、あえて避けたりします。

ヒデキ:それ、めっちゃ分かる。

最後の2人の発言は、衝撃だった。近年、男性の肌や嗜好性を丹念にリサーチしたスキンケアがたくさん登場しているが、それらを「あえて避ける」理由とは何だろう?

二郎:メンズ用は、僕の肌には刺激がある。あとは販売戦略なのか、容量は同じなのに女性用より高めなものが多い。だとしたら、女性用を買うほうが堅実。

ヒデキ:まったく同意見。男性用によくある「スッとした感触」とか「爽快な香り」とか、僕の肌には合わなかった。男性専用といわれると、逆に警戒してしまう。

ウタ:僕は詳しくないので、メンズ専用といわれたらそっちを買っちゃいそう。ただ、2人が言う「強すぎる」というのは共感します。

「男性は皮脂分泌量が多く、さっぱりした感触を好む」「香りもフローラルより爽快系がいい」、これらは決して間違いではないと思う。しかし、ニキビや敏感といった肌悩みに「10代から真摯に向き合ってきた」Z世代には、画一的な男性像は響かないのだ。本質的に肌悩みを解決するものを求める彼らに「どんなスキンケアがあったら理想か」聞いてみた。

二郎:僕は過去に色々試したので、シンプルに完結するものがいい。究極はそこです。

ウタ:僕は経験がないからこそ、複数のステップがあると無理ってなる。1本で80点くらい取れるものがありがたい。

ヒデキ:ビタミンCに信頼感があるので、ビタミンC配合の優れたメンズコスメがあるなら、ぜひ試してみたい。

彼らがこれまでに使ってきたアイテムを参考に、若い男性に多い肌悩みであるニキビに対応し、同時に肌へのやさしさも視野に入れていること。さらにエントリーしやすく多機能という視点で、ジェンダーレスなローションを選んでみた。

昭和・平成世代との決定的な差は
「清潔感」のとらえ方

Z世代の話しを聞いて強く感じたのは、他の世代に比べて「肌が美しいことへの肯定感」が高いことだ。その象徴ともいえるのが、取材中頻繁に出てきた「清潔感」という言葉である。

ウタ:漠然とですが、今後スキンケアしたほうがいいかなという思いがあります。理由は、ちゃんとやってる人は男女問わず、清潔感があるから。

二郎:分かる。上の世代の方たちがいう清潔感って、結局のところ短髪で、白シャツで……というイメージじゃないですか。

ウタ:センタープレスのパンツ履いてタックインして、みたいな。僕らの世代は、こなれ感のある古着だったとしても、髪や髭がきちんと整っていたり、肌がキレイだったら、清潔感があると感じます。

ヒデキ:肌と髪は大事だよね。だから、気にしない人はいないと思う。

髪の長短やピアスのありなし関係なく「肌がキレイであれば、清潔感がある」という言葉に、「なるほどなあ」と深く頷くばかりだった。これまでも清潔感は男性の身だしなみを語る上で、頻繁に使われてきたワードである。しかし、昭和・平成世代が語る清潔感と、Z世代のそれは明らかに一線を画し、Z世代においては清潔感=肌と深く結びついているのが印象的だった。

今回の取材を通して、今後メンズコスメの市場が拡大していくのは、ほぼ間違いないように思う。その一方で自身のメンズケアの常識や情報発信の方向性について「根本的に考え方を変えないといけないな」と考えさせられた取材でもあった。次回はZ世代男性の大多数が関心を抱く「脱毛事情」について深掘りしたい。

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今夏はヘアカラーと合わせたイベントメイクなどを提案していきたい 【二刀流美容師:SHIMA】

ヘアだけでなく、メイクアップもこなす美容師を“二刀流美容師”としてピックアップする連載企画。インスタグラムによる集客が主流となった今、ヘアスタイル投稿だけでなく、メイク投稿もできるとサロンユーザーの関心をより引き付けられるため、注目度が増している。第4回は「SHIMA SEVEN GINZA(シマ セブン ギンザ)」ディレクター&トップスタイリストの原涼香に、美容師がメイクもやることのメリットや、今夏に行いたいメイク提案などを聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):メイクにはどのように取り組んでいる?

「SHIMA SEVEN GINZA」原涼香ディレクター(以下、原):雑誌などの撮影の際には、自分でメイクもするようにしている。日常的に行っているSNSでのヘアの打ち出しの際も、モデルさんを呼んだら自分でメイクをしている。撮影のときにはテーマを決め、それに基づいたイメージソースを集め、そこからインスピレーションを得てモデルに落とし込む。ヘア、メイク、ファッションのトータルで、テーマに沿った世界観を引き出すようにプロデュースしている。

WWD:メイクはいつから取り組み始めた?

原:以前からメイクが好きだった。美容学生の頃から、雑誌やSNSを見て新しいアイテムや流行りのメイクを探るのは日常で、デパートに行ったら1~2時間くらいは化粧品フロアを見て回っていた。「SHIMA」に入るためにブック(自分が手掛けたヘアメイク写真を集めた作品集)を作ったときも、ヘアだけでなくメイクも自分で施した。「SHIMA」に入社してからも、SNSやピンタレストでメイク関連をサーフィンしたり、海外の女の子、特に韓国の女の子が今どういうメイクをしているかを、常にチェックしたりしている。眉毛の太さ、アイシャドウやリップをどうしているかなど、ヘアと同じくらいの熱量でリサーチしている。

WWD:顧客へのアドバイスは?

原:お客さまへのメイクアドバイスに関しては、これから注力していきたい。以前から普段のサロンワークでは、お客さまのメイクやファッションを見て、そのテイストに合ったヘアを提案している。最近は仕上げたヘアカラーから、眉やリップの提案をすることを始めており、今後もさらに取り組んでいき、いずれはメニューにも取り入れていきたいと考えている。お客さまからも、「ヘアカラーを変えたらメイクはどうすればいい?」と聞かれるケースはすごく多い。そのときには、お客さまの顔色や髪型、レングスも考慮して提案するほか、「チークだったら今はこのブランドがおすすめ」「この色はこのブランドがいい」などと、普段からいろいろなブランドをリサーチしている中で得た引き出しから、会話を広げている。ブランドを横断しての提案は、美容師だからこそできることの1つだと思う。

WWD:今気になっているメイクは?

原:新型コロナによる行動制限が解除され、今夏はフェスやライブなどのイベントが増えている。そうしたイベントに行く前に来店してくれる人も多いので、非日常的なイベントメイク、特にストーンやパールを乗せるビジューメイクなどで“いつもとは違う自分”を提案させてほしい。日本でも流行りつつあるビジューシールなども活用できそう。

WWD:「ヘアカラーに合わせたメイクを提案する」とのことだが、今夏に提案したいヘアカラーは?

原:「イルミナカラー(ILLUMINA COLOR)」から4月に登場した新色3シェード(“マリーン”“ビーチ”“サンセット”)が人気で、最近ではほぼ毎日使っている。夏に向けてハイライトを入れて奥行きを楽しむ人が多いが、ハイライトが入ったベースに対しても、新色3シェードは1本できれいに仕上がるのでお客さまの満足度は高い。新色3シェードのベージュ系はトレンドの中心で、中でも肌の透明感が上がって顔色がきれいに見える“ビーチ”は、「くすみ過ぎていない感じがかわいい」として特に人気が高い。

WWD:新色3シェードにはどんなメイクを合わせる?

原:これからの季節、“ビーチ”にはオレンジ系やコーラル系、ヌーディ系のリップなどでヘルシーな印象に仕上げるのが似合うと思う。“サンセット”は大人っぽいきれいなピンクなので、ピンク系で合わせてもかわいいし、ブラウン系とかもマッチする。“マリーン”にもコーラル系のチークやアイシャドウが合う。日本人にはコーラル系が似合うので、日常的に使っている人も多く、メイクをあれこれ変えなくても新色3シェードはいけると思う。

WWD:顧客が求めているテイストは?

原:お客さまによってさまざまだが、カットとカラーリングを合わせて「海外っぽくしたい」とか「外国人の地毛風にしたい」といったオーダーは多い。最近ではインバウンドのお客さまも多く、先日はL.A.(ロサンゼルス)在住で一時帰国している日本人のお客さまが来店したが、L.A. からインスパイアされた“ビーチ”でカラーリングしたら喜んでくれた。

WWD:ネクストシーズンの、秋に向けての提案は?

原:ヘアカラーではややこっくりした感じのブラウン系や、ブラウンベースで気持ちボルドー寄りとか、ちょっとカーキ寄りとかのオーダーが増えると思う。「イルミナカラー」の新色3シェードは色味がしっかり入るので、秋も引き続き提案していくつもりだ。“トワイライト”や“ブロッサム”との組み合わせや、“アンバー”と組み合わせてマロンぽい感じに仕上げるのもかわいい。組み合わせることで、新色3シェードの引き出しも増える。特に“サンセット”に“アンバー”や“トワイライト”を組み合わせ、ちょっと重めにシャドウを演出して艶感を出す提案などをしてみたい。夏に行ったハイライトが褪色してキラキラしてしまった部分を、艶っぽく落ち着いた感じの印象にするオーダーも増えそうだ。それに合わせたメイクも提案していきたい。

WWD:今後の目標は?

原:ほかのスタッフも含めて、SNSにアップしたセルフメイクの動画がバズり、そこから新規のお客さまを集客できる、といった形が増えている。お客さまをモデルにしたポイントメイク動画、リールなども含めて、さまざまな発信をしていきたい。

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アットコスメの口コミから読み解く「日焼け止め・UVケア」ヒットの法則

紫外線は曇りの日も雨の日も降り注ぎ、年間を通して日焼け止めが欠かせない。今回は、アットコスメに寄せられた「日焼け止め」に関する口コミを原田彩子「アットコスメ」リサーチプランナーが解説する(集計期間:4月1日~30日)。

―――「日焼け止め・UVケア」で、象徴的に使われているワードは?

原田彩子「アットコスメ」リサーチプランナー(以下、原田):2022年の同時期の口コミと比較すると、「チーク」「カラー」といったワードが特徴的に使われている。日焼けしやすい部分を強力な紫外線からしっかり守りつつ、ポイントメイクも叶えるという「アリィー(ALLIE)」の“クロノビューティ カラーオンUV”の影響が大きいが、上位5商品を見ても、肌のトーンアップやカラーをチューニングしてくれるような商品が人気の傾向があり、多機能化は進んでいくのではないだろうか。

23年4月「日焼け止め・UVケア」口コミTOP5

1位「ポール & ジョー ボーテ(PAUL&JOE BEAUTE)」“プロテクティング ファンデーション プライマー”[SPF50+・PA++++](全2色、各30mL、各3850円)

原田:アットコスメでも長きに渡り、人気の化粧下地。4月1日にシリーズ累計1100万本(02年8月〜23年1月時点、出荷本数)突破を記念して発売したハーフサイズを購入した人からの口コミが多く投稿された。お試しにといったエントリーだけでなく、「(使い切れるサイズで)衛生面でもありがたい」と既存ユーザーからの評価も得られている。また、同商品の口コミ内には他の商品と比較し「季節」というワードが多く出現している。「紫外線が気になる季節なので他の商品から乗り換え」「UV効果も高く、使用感も重くないのでこれからの季節に重宝しそう」といったコメントが見られる。

2位「コスメデコルテ(DECORTE)」“サンシェルター マルチ プロテクション トーンアップCC”[SPF50+・PA++++](全3色、各35g、各3300円)

原田:「アットコスメ ベストコスメアワード 2022」で殿堂入りにも選ばれたトーンアップCCクリームのリニューアル商品。高い日焼け止め効果がありながら、肌をきれいにトーンアップしてくれると支持されている。「リニューアルしてから伸びが良くなった」「夕方まで乾燥しない」など、もともと評価の高かった使い心地や保湿力に対する満足度もさらに上がっているようだ。デパコスの割に手ごろな価格帯である点もリピーターが多い要因のひとつとなっている。

3位「オルビス(ORBIS)」“オルビス リンクルブライトUVプロテクター”[SPF50+・PA++++]<医薬部外品>(50g、3850円)

原田:シワ改善・美白有効成分が配合したUVケアアイテム。こちらも23年2月にリニューアルした商品だ。人気の成分ナイアシンアミドが配合されていることを購入理由として挙げる声も多く寄せられている。また、シワ改善効果を期待し、顔だけでなく首まできちんと塗っているという口コミが他の商品と比較し特徴的である。その他、ブルーライトカットなど、さまざまな効果への期待もうかがえる多機能商品。

4位「アリィー」“アリィー クロノビューティ カラーチューニング UV 01” [SPF50+・PA++++>(40g、1980円)

原田:「ノーファンデUV」とうたっているように、まだまだ多いノーファンデ派から高い評価を得ている。口コミでは、小田切ヒロ、吉田朱里、石井美保といったインフルエンサーがすすめていたことをきっかけに「興味を持った」という声が散見される。また、スヌーピーの限定パッケージや、ミニサイズ付きの限定パックなども購入のキッカケとして挙げられており、幅広い層から使用されている様子がうかがえる。ブランドが培ってきた日焼け止め効果への信頼感の高さも、安心材料となっているようだ。

5位「ラ ロッシュ ポゼ(LA ROCHE-POSAY)」“UVイデア XL プロテクショントーンア ップ ローズ”[SPF50+・PA++++](30mL、3960円)

原田:肌に透明感・血色感を与えるピンクのトーンアップUV。発売約3年間で9000件を超える口コミが投稿されている。「敏感肌でも使用できる」との口コミが多く寄せられ、リピーターからの投稿が多いのも特徴だ。また、普段は敏感肌でない人も、花粉や黄砂の影響で肌が揺らいだ人も多かった4月。「安心して使用できた」との声が多く見られた。石けんでも落とせて肌負担が少ないことも評価されているようだ。

―――5月に「日焼け止め・UVケア」以外で好調なカテゴリーは。

原田:マスク解禁の影響を受けてか「リップ」カテゴリーへの注目の高まりがみられた。 しかし、依然として「マスク/つく」という表現は減少しておらず、悩みは継続しているものと考えられる。また、リップアイテムに限らず「サッ/塗る」「スルスル/塗る」というような表現が増加した。しばらく離れていたメイクアイテムへの戻りに期待されているのは、塗りやすさや塗り心地の良さかもしれない。

―――「日焼け止め・UVケア」以外のカテゴリーで、注目のキーワードや「トレンドの芽」は?

原田:お直しコスメ、ポーチレス対応コスメ。マスクを外す機会が増えたものの、常に外した状態でいる人もまだまだ少ない状況で、これまで以上にマスク崩れやヨレが気になっていくのではないかと予想している。口コミでも「マスク」というワードの言及は22年と比較し減少する一方で、「マスク崩れ」は増加傾向にある。さらにこれからの季節、汗などによる崩れ悩みも増えていくだろうことを考えると、メイク直しや持ち運びしやすいコスメのニーズが高まっていくのではないか。昨今、ポーチではなく、そのままカバンにコスメを入れる人も増えてきており、「ミニサイズ」「薄型サイズ」「スティック状」、さらには「ぶら下げるタイプ」のコスメなどに注目している。

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火災から1年、「ベンベルグ」の現状と富士吉田産地の今後を聞く

2022年4月の火災事故から約1年。旭化成が宮崎県の延岡工場で90年以上に渡って生産してきた、世界オンリーワンの繊維素材であるキュプラ「ベンベルグ」の供給停止は、どのような影響を与えたのか。現状は?同事業を率いる旭化成の橋本薫ベンベルグ事業部長に聞いた。

WWD:現状は?

橋本薫・旭化成ベンベルグ事業部長(以下、橋本):まずはメーカーとして供給責任を果たせず、多くの方々にご迷惑をおかけしたことをお詫びしたく思います。当初は事故から半年後の23年3月には復旧を予定していました。ただ、思っていた以上に復旧に時間がかかり、ようやく復旧のめどがつき、今年9月ごろから生産能力は従来の7割〜8割まで回復します。

WWD:影響が大きかったのは、他素材への代替のきかない裏地だった。裏地の主な産地である富士吉田への影響は?

橋本:今回被災した紡糸設備が、裏地用に使われていたこともあって、特に影響が大きかった。ただ、裏地はもともと、ストックして在庫を販売するビジネスモデルで、事故直後にも糸、生地の流通在庫の備蓄があり、産地への影響は少なく抑えられるという計画だった。当初の計画が難しくなった段階で、すぐに代替糸の生産・開発に取り掛かったが、実際には必要十分な水準には足りずに、商品不足や供給遅れなどを引き起こしていることもある。

WWD:今後は?

橋本:糸が足りない状況は7-9月期以降は徐々に緩和されていく予定だ。富士吉田産地は長い歴史があり、燃糸、染、織布、整理とサプライチェーン間の連携がしっかりとできていて、糸の供給が始まれば数カ月ほどで裏地の供給量も増えていくのではないかと考えている。

その一方で、今回の火災をきっかけに、構造的な問題も顕在化した。人手不足とサプライチェーンの脆弱化だ。富士吉田は、日本の他の繊維産地と比べると産地自体の縮小幅も小さく、比較的安定している産地ではあるものの、それでも一部では必要な工程や素材が産地内で調達できないことも発生している。4月には、裏地に使用する先染めポリエステル繊維の染色企業が破綻した。キュプラ「裏地」であっても、ワンポイントで使うポリエステルの糸は必要で、染色技術や生産スピードの速さなど、富士吉田に欠かせない存在だった。糸の調達だけなら産地の外から調達は可能だが、従来のように翌日にビーカー(色見本糸の生産のこと)を出せたスピード感はのぞむべくもなく、一部のアイテムはこれまでのように短期間で生産することは難しくなる。

WWD:富士吉田には旭化成グループ傘下で、裏地関連の染色を担ってきた富士セイセンがある。同社が設備増強をすればいいのでは?

橋本:机上の計算では確かにそうだ。需要はあるし、ノウハウもある。ただ実際には、富士吉田の繊維業は人手不足で、とてもじゃないが手が回らないような状況だ。それでも、富士吉田産地は他の産地に比べると遥かに状況はましと言える。

WWD:富士吉田産地の今後は?

橋本:当社のベンベルグ事業、中でも裏地は長い歴史があり、富士吉田産地とともに発展してきた。富士吉田は原糸以降の撚糸、糸染め、織り、反染め、加工・仕上げ、さらには問屋/販売までが産地内で完結する、今の日本ではかなり稀有な産地だ。だからリードタイムも短いし、商品開発力も高い。こうした産地機能を維持し、かつアップデートするためにどうするべきか、改めて見直す時期に来ている。これは単に生産だけにとどまらない。以前のように取引先のアパレルから要望があるから頑張って作る、というのはもう現実的ではない。商品構成を見直し、サプライチェーンが分断しないための投資や再編なども必要になるかもしれない。生産スピードが持ち味の産地ではあるが、一部のアイテムは撤退、あるいは納期を見直すようなこともでてくる。これまでのようには行かないことも多々でてくるだろう。アパレルや小売側へのこうした要望は、我々が時には全面に立って調整に立ちたい。そういった事も含めて、産地全体、日本のアパレル産業全体で、素材、産地、アパレルが一体になって産地のこれからを考える必要があるだろう。

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「RTFKT」共同創始者ブノワ・パゴットに聞く、Web3.0時代にイノベーションを起こすためのルール

2020年のスタート以来、デジタル領域を基点とした製品や体験を世に送り出してきたのが、NFTブランド「アーティファクト(以下、RTFKT)」だ。これまでに「リモワ(RIMOWA)」や「バイレード(BYREDO)」、ジェフ・ステイプル(Jeff Staple)、村上隆などとコラボレーションを果たし、その存在感を知らしめた。

中でも「クローン X(CLONE X)」は「RTFKT」を代表する人気プロジェクトで、アバターを主体としているのが特徴だ。海外セレブリティーにもファンが多く、一時はジャスティン・ビーバー(Justin Bieber)やスヌープ・ドッグ(Snoop Dogg)も保有していた。最近ではスニーカーNFT“RTFKT x Nike Air Force 1”を発売し、期間中に参加することでフィジカルスニーカーが入手できるフォージングイベントも開催。バスケットボール選手のレブロン・ジェームズ(LeBron James)が着用したことでも注目された。

ホルダーならではのコミュニティー体験ができるのも、「クローン X」が支持される理由の1つだろう。SNS上のコミュニケーションにとどまらず、昨年末に渋谷でホルダー向けの有志イベント「クローン X トーキョー(Clone X Tokyo)」が開催されたように、世界中でコミュニティーイベントが実施されている。

21年にナイキによる買収を受け、NFTブランドからファッションブランドへの道のりを着実に進んでいる「RTFKT」は、まさにファッション業界でイノベーションを起こし続ける期待の新星と呼べるだろう。4月29日、共同創始者の1人、ブノワ・パゴット(Benoit Pagotto)に取材することができた。

「RTFKT」の組織編成と人気プロジェクト「クローン X」

WWD(以下、WWD):「RTFKT」について、人々はクリエイター集団と思っていたり、ブランドだと思っていたりするが、あなたは何と定義する?

ブノワ・パゴット(以下、ブノワ):私たちは、何よりもまずブランドです。でも私たちが「RTFKT」を作ったとき、全く新しいブループリントを作る必要があると考えていました。従来のブランドのあり方を超えた、新しいタイプのブランドーー常に境界線がなく、人々を刺激し、革新できるブランドでありたいと思っています。だからこそ、私たちが行うすべてのことは、最もクリエイティブで、革新的でなければいけません。

なので、私たちはわざとCEOがいない構造を作っています。たとえ私が多くの仕事をこなしていても、CEOになることはありません。「RTFKT」をクリエイターの集団にしたかったから、ピラミッド型の組織には反対しているのです。プロジェクトマネジャーも、ファイナンシャルアドバイザーも、何もいない。ただクリエイティブな人たちだけが、自分たちができる最もクールなことをやっているのが理想で、それを形にしたのが「RTFKT」というブランドです。私たちがやることには境界がないので、他のブランドがスニーカーやバッグを作ったりするように、アバターだけではなくアパレルも作れます。なので、人々にとって「『RTFKT』はクリエイティブスタジオだ」とか「アート集団だ」とか、「いや、ブランドだ」とか、理解が難しいのも仕方がありません。

WWD:「RTFKT」がブランドということは、「クローン X(CLONE X)」はプロジェクト?

ブノワ:そうですね。「クローン X」は1つのプロジェクトであり、商品。平たく言えばIP(知的財産)です。「クローン X」を作ったのは、私がもともとファッション業界の出身だったから。ファッション業界にいる中で私が好きではなかったのが“ファッションブランド=製品を作る”ということです。バッグや服、アクセサリーなど、あらゆるものを作る。そしてトレンドに合わせて広告塔を探し、常にモデルを変えていきます。だから、新しく登場したホットなモデルや文化的にビッグな人が現れれば他社と競争して、いち早く手に入れようとします。そのように、ブランドが主体となってモデルを集め、彼らを消費していくのはおかしいと感じていました。

「RTFKT」の根幹は次世代のファッションブランドであること。そしてこれからのファッションブランドは、自分たちでモデルを作ることができるんじゃないかと思いました。そこで「クローン X」を手に入れたコレクターには、商業的権利と知的財産権を与え、彼ら自身がクローンとしてモデルになり、ブランドを紹介し、マーケティングすることができる仕組みを生んだのです。だから「クローンX」は商品カテゴリーであり、IPでもあるということ。アバターという形で国境を越えた、文化的なプロジェクトなのです。村上隆とのコラボレーションも行いました。

このように私たちが考えるファッションブランドの新しい手法は、従来のブランドとは異なる全く新たなカテゴリーなんです。特定のトレンドに乗り、できるだけ早く有名になるのではなく、オリジナルを作り、自分たちのコミュニティーから有名人が生まれることを望んでいます。

NFTが実現するWeb3.0ビジネス

WWD:もしNFTがなかった場合、「RTFKT」はどんな取り組みを行なっていたと思う?

ブノワ:もしNFTがなかったとしたら、近未来的なストリートウェアブランドや、ゲームのプログラムなどを作っていたかもしれません。デジタルビジネスで同じようなことをしていたでしょうね。

NFTの最も素晴らしい点は、デジタルアイテムのビジネスを迅速に行うことができるということです。NFTが生まれる以前、eスポーツの世界で仕事をしたことがありました。eスポーツのファンたちはほとんどの時間をゲーム内で過ごすので、スタジアムでフィジカルなTシャツを着るだけでなく、ゲーム内でもブランドをアピールしたいんです。eスポーツの事業を進める中で、他の共同創業者の2人にも出会いました。クリスはもともと、ゲーム”カウンターストライク(Conter Strike)”のスキン(アバターに着せる服)のデザイナーで、スティーブンはゲームとスニーカーにとても詳しいのです。
ただeゲームにおける事業では、フラストレーションを抱えることが多かったです。まずパブリッシャーとの半年から9カ月に及ぶ交渉が必要で、その後やっとスキンを作ったのに、最終的にはただアイテムにロゴを載せるだけの結果になってしまった。これだけ時間をかけても、自分が望むデザインを作ることすらできなかったのです。

時が経ち、2018年にNFTの存在を知りました。この時「ゲーム会社の許可を得ることなくデジタルアイテムを販売できるのでは」とひらめいたのです。通常、ファッションブランドを立ち上げるとなれば、コレクションをデザインし、メーカーを探し、販路を利用する必要がありますが、NFTがあれば、デジタル上でのファッションならデザインの作成や実装、販売までを1日で行うことができます。つまり、アイデアから製品になるまでが、よりオーガニックでスピーディーなのです。

10代の若者から多くのブランドやクリエイションが生まれている今の時代。このテクノロジーのおかげでクリエイションの幅がさらに広がり、さらにAIと組み合わさって、とんでもないことが起こると思います。氷山の下には才能あふれる若者がたくさんいて、きっと私たちのように独自のコミュニティーを立ち上げるでしょう。彼らは3Dの使い方を知っていますし、ユーチューブでスマートコントラクトの仕組みを学ぶこともで切るので、あっという間に既存ブランドとのギャップを埋めていくでしょう。よりスピーディーに、革命的なことが起きるはずです。

WWD:香りや味覚など、デジタルで伝わりにくいものをNFTとしてどのように提供していく?

ブノワ:そうですね。私たちは、香水でも飛行機でも船でも、未来的で感動的なものであれば、どんなものでもリリースできるようにしたい。「RTFKT」はそのようにあるべきだと思います。

特に香水はラグジュアリーブランドにとってキープロダクトです。なぜならバッグを買えない人でも香水は買いやすいし、香りを嗅ぐといった体験も得られます。もし香りをNFTで伝えるなら、アルケミー(錬金術)にヒントを得るのが良いでしょう。まずコレクターがNFTでデジタル材料を売って、それを混ぜると本物の香りになる、という仕組み。こうすることで、NFTを購入した人に共同創作の感覚を持たせることーーつまり自分たちが参加していると感じられる体験を与えることができるのです。このアイデアは、実は私が大ファンである「ロード・オブ・ザ・リング(The Lord of the Rings)」にインスピレーションを受けています。多くのアイデアは、私たちが愛するビデオゲームや映画などから生まれたものなのです。

「RTFKT」のコミュニティーマネジメントとクリエイター

WWD:ファッションブランドにおける新たな手法として、「RTFKT」のコミュニティーマネジメントは特徴的だ。コミュニティーマネジメントに望ましい人材とは?

ブノワ:そうですね。NFTの世界の特徴の一つとして“顧客が購入品を所有するだけではなく、コミュニティーを形成する”ということが挙げられます。一般的なブランドではカスタマーサービスマネージャーがいて、それぞれの顧客が求めるサービスを管理しクレームに対応しますね。私たちの場合はコレクターがコミュニティーを作っているので、それらを管理することはVIP対応のようなものです。だからこそ、今後はコミュニティーマネジャーとして、高級ホテルなどホスピタリティー分野から来た人を雇おうとしています。特に、オフラインでは人々を歓迎する方法がたくさんありますが、オンラインでの場合、どうすれば歓迎される人に特別感を感じてもらえるのか考えなければいけない。これは私が話しているコミュニティーマネジメントのホスピタリティーに通じるもので、重要なことです。そして将来的には、ホスピタリティーとオタク文化、ディスコード、コミュニティーを組み合わせ、組織化する方法を提案していきたいと思っています。

1番の理想は、コミュニティーの中から人材を見つけることだと思います。コミュニティーマネジャーには適切な人材を見つけたら、次はその人自身の能力の枠から飛び出し、さらに力をつけてやってみよう、と新たな挑戦をしやすい環境を作ってほしい。“アマチュアとプロフェッショナルの隙間を埋める”ということだから、そのバランスを保つのはとても難しいと思います。

WWD:先進的な才能を発見するために意識していることは?

ブノワ:コミュニティーから生まれた最たる才能を組み合わせることです。新たな才能を見つけるには、それぞれの才能を組み合わせる必要があります。そしてどうやってプロをアマチュアから学ばせ、アマチュアがプロからどう学ぶかを考えなければいけません。

例えば3Dチームでは、年配の人たちと、18歳の若者を一緒に働かせます。先輩は技術的なことや課題解決、ノウハウについてよく知っていますが、デジタル領域で最近何が起きているかを理解していません。逆に若者たちは最新の情報やトレンド、インターネット文化を先輩に教えることができます。

そして今度は、コミュニティー内でこれを行う方法を見つけなければいけません。ギャップマネジメントやカスタマーサービスなど、役職経験を持ちながらオープンマインドな先輩を、コミュニティーの優秀な人材を共に働かせて、互いに学び合うようにするにはどうすれば良いのか考える必要があります。

私たちの周りには非常に優秀な人材が多くいますが、あえて彼らを雇わないこともあります。大企業から大物を雇おうとして本来の企業文化が崩壊してしまうことは、スタートアップの企業に起こりがちな失敗例です。マネジメントのそもそもの課題とは“どのようにチームを形成するか”ということ。だから、技術に優れた経験を積んでいる人材と、若くて斬新なセンスを持った人材を探して、組み合わせる必要があると考えています。

「RTFKT」の企業文化として、クリエイターに多くの自由を与え、それぞれがとても積極的であることが大切です。自由で積極的な人々のマネジメントは難しく、新しいことなので、最初からうまくいくとは思っていません。コミュニティーマネジメントを構築する過程では、完璧な公式は存在しないのです。

将来的には、もともとコレクターだった人材がコミュニティーマネジメントとしての新たなブループリントを切り開くことが理想です。刺激的なインターネットの世界において、オンライン・ホスピタリティーとは一体何かーーコレクター経験があるからこそ理解できることと、新しいアイデアを組み合わせることで、さらに突き抜けたスタイルになるでしょう。そしてそれはきっと、新たな雇用を生み出す循環となるはずです。

WWD:それぞれのクリエイターはどのように見つけ、雇用している?

ブノワ:シンプルに言うなら、才能を見つけてDMを送っています。良いアーティストを見つけるのに時間を費やすのが大好きなので、常にたくさんの素晴らしいアーティストをフォローしています。日本には素晴らしいAR(拡張現実)アーティストがたくさんいて、世界でもトップクラスの才能が眠っています。そして、「RTFKT」の日本人メンバーであるアサギのことは、実は彼を雇う1年くらい前からすでにフォローしていたのです。

WWD:「RTFKT」は「クローン X」以外にも多くのプロジェクトを持っている。異なるコミュニティー間で相乗効果を発揮しているのか?

ブノワ:はい、すべてが何らかの形で相互接続されることが目標です。私たちはそれをエコシステムと呼んでいますが、「クローンX」を中心にシューズやアパレルなどのアクセサリーをそろえています。究極の回答があるとは言えませんが、すべてがつながるようにしたいので、1歩ずつ学びながら進めたいと考えています。

私たちのビジネスは、アートやファッション、コレクターズアイテム、そしてテクノロジーをミックスしたもの。私たちが行うすべてのことの主な使命は、イノベーションです。 これまでのファッションブランドには四季があり、そのシーズンが終わるごとに商品が捨てられて、ただ単にPRのために服を作っているように感じました。私たちが「RTFKT」を作ったのは、クールなイノベーションが起きず、長期的に刷新し続けない業界全般に嫌気がさしたから。僕たちは100年後にも「かっこいい」「革命的だ」と思ってもらえるようなものを作りたい。クールだと思ったものをただやるだけです。「RTFKT」は私にとって、10代の時に持っていた夢をもう1度思いさせてくれる、とてもワクワクするもの。だからこそ、最終的な目標は新しい世代にインスピレーションを与えることなのです。

「ナイキ」とのコラボレーションについて

WWD:「RTFKT」の取り組みは非常にスピーディーで先鋭的だと感じるが、ナイキに買収された意義とは?

ブノワ:「RTFKT」が影響を与えることができるのは数十万人程度ですが、「ナイキ(NIKE)」は約1億人に向けて発信することができますからね。フランク・オーシャン(Frank Ocean)が「Nikes」という曲を作ったり、誰もが一度は「ナイキ」を履くように、「ナイキ」は世界で最もクールなブランドの1つだと思います。逆に私たちは、ナイキにツールや技術を提供して彼らを助けることができる。だからこのコラボレーションはとても素晴らしいものです。

しかしナイキほどの規模になると、全て巨大なスケールで取り組む必要があります。身軽に動きにくくなるため、普通であればイノベーションを起こすことが難しくなるでしょう。だから私たちは自分たちのことを、ミレニアム・ファルコン(「スター・ウォーズ」に登場する架空の宇宙船)のようなものだといつも冗談を言っています(笑)。多角的な部分からインスピレーションを受けながら、最終的には独自の道を切り開いていくわけです。探索し、境界を破り、革新するーーそのために今、ここにいる。ナイキと協力することで、私たちが行っていることをより大きなスケールで展開できるか、確かめることができるのです。

とはいえ、私たちも失敗をすることがあります。しかし重要なのは「失敗をいかに自分のモチベーションやビジネスの妨げにしないか」、そして「いかに早くその失敗から学び、二度と同じことを繰り返さないか」です。今私たちが生きているのは、10年、20年に1度の特別な瞬間。時には失敗することがあるかもしれないけど、それを最大限に生かしたいのです。

2020年1月に作った「RTFKT」が、2021年12月にナイキに買収されました。彼らが私たちを買収したのは、今までに私たちのような集団を見たことがないからだと思っています。だから私たちは、「RTFKT」として思う正しいことを実行し、リーダーシップを発揮し続けなければならない立場なのです。ナイキという素晴らしい車に乗って、可能な限りクールなことをやり続けたいと思います。

WWD:「ナイキ」以外で尊敬するブランドを挙げるとしたら?

ブノワ:「メゾン マルタン マルジェラ(MAISON MARTIN MARGIELA)」の大ファンです。彼らの取り組みや雇っている人材は従来のブランドと比較し、とても新鮮だと思います。ファッションやブランドに対するコンセプチュアルなアプローチが好きです。マルタンがブランドを去ったのはずいぶん前のことですが、現在の方向性もとても気に入っています。

また、ブランドではないのですが、私が尊敬している人の1人にコジマプロダクションの小島秀夫がいます。彼はコナミを退社し、独立後にゲーム“デス・ストランディング(DEATH STRANDING)”を手がけました。私は彼のフィギュアやTシャツを買ったりしていますし、ファッションブランドと同じような価値があると思います。

日本は文化とテクノロジーを融合するのに適している

WWD:日本文化のファンだと聞いたが、どのようなきっかけで?

ブノワ:私の母国・フランスの主要なテレビ局では昔、「ドラゴンボールZ」や「北斗の拳」を放送していて、みんな日本のアニメを観て育ちました。映画も人気で、北野武監督もフランスではとても有名です。加えて、多くの日本のマンガがフランス語で翻訳されています。私の場合は父がマンガを買ってきてくれたのがきっかけで日本のアニメ文化の大ファンになり、今でもその影響を大きく受けていると思います。

WWD:「RTFKT」は日本の文化と相性が良いと感じるが、他に期待している国は?

ブノワ:まず日本は芸術の国でありながら、オタク文化がある。パーフェクトです。僕自身も昨年、日本人アーティストのNFTをたくさん買いました。日本人だけが発明できるクレイジーなものが生まれることがあるし、この先もずっとそうであってほしいと思っています。

そしてもう1つ、韓国です。なぜかというと、まずは技術第一なところ。そして韓国は、エンターテインメントで世界にインパクトを与えることができた国。ファッション分野では、現在のブランドアンバサダーは韓国がナンバーワンです。この2つの国は、文化とテクノロジーをミックスするのに適していて、ブランドが影響力を発揮できる良い場所だと思います。

Web3.0時代にイノベーションを起こすために大切なこと

WWD:「RTFKT」と並ぶ2台巨頭として、プロジェクト“クリプトパンクス”や“ベイク”を擁する「ユガラボ(YUGA LABS)」が挙げられるが、ライバルのように感じている?今後コラボする可能性は?

ブノワ:あんなに大規模なのに、ライバルのように見ていると思いますか?(笑)というか実際、本当に仲が良いのです。ファウンダーのゴードン・ゴナー(Gordon Goner)とグレッグ・ソラーノ(Greg Solano)は、昔からディスコードで話したり、アドバイスし合ったりしていた良い友達です。彼らのやっていることはとても野心的だと思うし、「ベイク(BOARD APE YACHT CLUB、以下BAYC)」も最高です。公式な計画は何もないけれどお互いのことをよく理解しているし、尊敬し合っている。だから、将来的にはコラボレーションする可能性もあるかもしれません。

ただ、彼らはNFT文化としてのリーダーであり、NFTの申し子でもあるので、大変なこともあるでしょう。というのもNFTが嫌われたり、逆に好まれるようになったことで、さまざまな意見が生まれます。それらの意見は彼らにストレートに向かっていくことになるでしょう。そんな中で、とても型破りでありながら、誰かがやらなければならないことをやっているーー自分の情熱で何かを作り、何か違うことをしようと挑戦しているのです。だから、私は彼らがやることを支持するし、今後もファンであると思います。

WWD:デジタルファッションにおけるLVMHだとも言われているが、「RTFKT」がここまで成長してきた理由についてどう捉えている?

ブノワ:LVMHは企業同士の合併や買収によって発達したコングロマリットで、たくさんのブランドを持っていますね。私たちはどちらかというと、Web3.0における「シュプリーム(SUPREME)」と呼んだほうが正しいかもしれません。彼らの身軽さや自由さが私たちに似ていると思います。

しかし、LVMHは本当に素敵なグループです。彼らはクリエイティブディレクターとCEOが二人三脚になり仕事をするので、クリエイティビティーとビジネスがうまく融合しています。そして伝統的な職人技を大切にしながら利益を生み出している。彼らのように、僕たちは3DやAIを駆使して、未来の職人技を打ち出していきたいと考えています。

WWD:Web3.0でイノベーションを起こすために、他ブランドにアドバイスするとしたら?

ブノワ:ブランドにアドバイスをすることはいつも同じーーそれは適切なチームを編成すること、そしてそのチームは映画「プレデター(Predator)」の“コマンドー”みたいに独立していなければいけない。つまり、本来ブランドが持っている中枢業務とは分離しているチームが必要なのです。なぜなら、何かイノベーションを起こしたいと考えた時に、時代に合わせてスピーディーに、臨機応変に動いていかなければいけません。ブランドの軸となるビジネスと関わりを持っていたら、彼らは四半期報告書という通常の業務に縛られ、自由に動けなくなってしまう。移り変わりの早い今の時代ではなおさら、その必要があります。

私たちが行っているのは、テクノロジーと文化の組み合わせ。人々が求めるものをフィジカルからデジタルへと移行させるという大きな変革で、従来のビジネスを完全に変えるでしょう。10年後には、今のブランドのビジネスの50%以上がデジタルに移行する可能性があります。だから企業は「その時のための準備ができているのか」「どのように準備すればいいのか」と確認し、備えなければいけません。だからこそ、今雇うべきは未来を見ている人材。そして私たちは、5年後も彼らが働きたいと思える会社でなければいけないと考えています。

WWD:多くのNFTブランドにはロードマップがあるが、「RTFKT」もロードマップを公開する予定はある?

ブノワ:私たちにビジョンやマイルストーン(中間目標)はありますが、ロードマップを持ち、公表することはないでしょう。ロードマップを持つことは、2022年のNFTのマーケティングスタイルだと思っています。本当に重要なのは、日々、自分たちのビジョンに向かってアクションしているかどうかです。「RTFKT」の冒険に賛成してくれる人たちが未来にワクワクし、自分たちのスタイルを形成し合い、それが退屈にならないような構造にするのが大切です。市場の変化が速すぎて、みんな焦ってしまいがちですが、だからこそ会社として、チームとして、1歩引いて考えてみる必要があります。毎日何か新しいことが起きていても、本当に重要なのは長期的なイノベーション。「10年後にどう認識されているか」ということを考えるべきです。

TRANSLATION:DANIEL YAHOLA WILSON

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